佐久間まゆ「『MAYU'Sキッチン in キッチンスタジアム』始まりますよぉ」

1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:05:26.42 ID:WLnDyA0B0

まゆ「今回は出張スペシャルということで、料理界では一等名高いここ、キッチンスタジアムからの放送となっています」

まゆ「とぉっても素敵なキッチンですね」

まゆ「今日は特番ということで、素敵なゲスト様をたぁくさんお呼びして、贅沢に進行していこうと思っています。皆さんお付き合い下さいね」



以前MAYU'Sキッチンを書かれていた方とは別人です。
一部設定をお借りしています。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1367759126
2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:08:06.55 ID:WLnDyA0B0

まゆ「本日のお品書きはいつもと趣向を変え、自負高き料理人達をお呼びしての料理勝負となっています」

まゆ「まずは解説兼審査員のご紹介です。まずは人種の坩堝アメリカにて技能を磨き、料理においても名立たる美食家達を虜にさせた腕前を持たれるという木場真奈美さん」

真奈美「――お呼び戴き光栄だ。私情を挟むことなく公正に判定することを誓おう」

まゆ「お次は元秘書業として数々の接待に浸した舌は如何な裁定を下すのか。和久井留美さんです」

留美「――よろしく。役者不足ですが鋭意務めさせて頂きます」

まゆ「そして温泉めぐりが趣味という高垣楓さん。全国の珍味、特産への知識に期待します」

楓「――お手柔らかにお願いします。素敵な時間と巡り会えますよう願っております」

まゆ「最後に、いつも私達を影で支えてくれる頼りになる人、Pさんです」

P「――俺裏方なのにどうしてこんな所にいるんだろう?」

まゆ「うふふ、Pさんの出演はまゆから是非にとお願いしたんですよぉ?今日は、特別な日になりそうでしたから」

P「徹夜明けにはスポットライトが眩しいなぁ」

まゆ「ふふっ、実況とレポーターにはそれぞれ川島瑞樹さん千川ちひろさんを迎え、何れ劣らぬこの豪華メンバーでお送りしたいと思います」
3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:09:37.42 ID:WLnDyA0B0



まゆ「さて、今回対決して戴く料理人のご紹介ですが――私はその人選に悩みました」

まゆ「素敵なゲストをお呼びする以上、最高の物を供したい。ならば最高の食事とは、いや料理とは何か?」

まゆ「腕か?器材か?食材か?或いは欲に飢えた胃袋か――――?」

まゆ「――――気づいたのです」

まゆ「喰らうという事は生きるという事。即ち、料理とは命を奪い、継ぐ事に他ならない」

まゆ「その行為は紛れもない、"愛" であると」

         アイドル
まゆ「ならばそれは私達の領分。万人に愛を与えし一騎当千の博愛者、中より選りすぐった九人の偶像達よ――」


まゆ「さあ!それではお呼び致しましょう!!我がCGプロが誇る料理人達を!皆さん、盛大な拍手でお迎え下さい!!



   ――――――蘇るがいい!Idol Chef!!」


4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:10:55.45 ID:WLnDyA0B0


瑞樹 幾人のアイドル達が此処に屹立する夢を散らしていったのか。羨望を受け輝く者達に惜しみない称賛と喝采を――――


   チーム・モノポリーシンデレラ! 十時愛梨&楊菲菲!!

   チーム・幸せ糖分タイム! 三村かな子&椎名法子!!

   チーム・貴方に尽くす嫁の会! 五十嵐響子&首藤葵!!

   チーム・Triad Prims! 渋谷凛&神谷奈緒&北条加蓮!!


   ――――以上九名による乙女のゼロサムゲーム。栄光を手にするのは果たしてどのチームか?


   ルールを説明します。

   制限時間は50分、一皿勝負。飲料、ソースならば別の器でも可。
   調理器具、皿の持ち込み自由。
   出汁・スープ類は一点のみ持ち込み可。
   漬け込み、寝し等の事前調理が必要なものは、素材の状態ならば可。(カット、加熱は認められない)
   食材は各自で調達。但し資金は当番組払いとする。
   審査は一人20点満点。合計得点数の高いものが勝者となる。

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:12:19.45 ID:WLnDyA0B0


まゆ「本日のテーマは愛。しかし、これでは余りにも漠然に過ぎる。ですので皆さん全員に愛を与えうる人物を私が見据え、リクエストを聞き出して参りました。

   愛を受け、愛を与え返す事こそがアイドルの責務―――喰らい、産み出し、満足させよ――――


   震えるがいい!全霊を持って愛を供せる事に!愛は血となり二人の想いは繋がれる!!



   本日のリクエストを発表します!それは――――――



               『がっつりイケる物』!!





                     ――――――Allez cuisine!!」

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:13:25.22 ID:WLnDyA0B0





まゆ「まゆの記憶が確かならば――この番組は全国のスポンサーからの "愛" で放送していまぁす♥(はぁと)」



7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:14:53.52 ID:WLnDyA0B0



瑞樹 開始ファンファーレと共に一斉に雛壇を駆け下りる各チーム。料理の神は一体誰に微笑むのか。



真奈美「しかし『がっつりイケる物』とは……愛よりましだがまだ漠然としているな。誰のリクエストだ?」

まゆ「うふふ、これはPさんのリクエストです」

P「え、俺?あー、……そういえば二週間ぐらい前にそんなこと聞かれたかも」

真奈美「君なぁ、仮にもプロデュース業に就いているのならもう少し番組構成をだなぁ……」

P「いやぁ、昼飯の相談だと思って」

留美「貴方らしい失態ね――――調理が始まったわよ」

ちひろ『まゆさんレポートです!各陣営とも一斉に食材の取り出しと洗浄を始めました!十時&楊チームのメインは赤身牛肉!背肉でしょうか照りの映える高級肉のようです!!三村&椎名チームのメインは持ち込んだバットの中で見えません!マリネ液に食材が漬け込まれている模様!五十嵐&首藤チームのメインは蟹……でしょうか?魚介類を中心に多様な食材が並べられております!これは和食で勝負か!!残る渋谷&神谷&北条のチームは――――じゃが芋と玉ネギと人参…………何やら見覚えのある素材が並んでいますが、各チーム他にも雑多に食材を並べ何を作るのか全く予想できません!目を離せない状況が続きそうです!!』

まゆ「ちひろさん有難うございます。和洋で別れることになるのでしょうか?」

楓「プロデュサーは苦手な物はありましたっけ?」

P「日本人が食べる物であれは大抵は。エスカルゴぐらいの異文化食になれば二の足を踏むといった所でしょうか」

真奈美「今後の参考にしよう。しかし彼女達はかなり手馴れているようだな?」

留美「ええ、料理といってもお菓子作りが専門の子達だと思っていたのだけど」

まゆ「実は料理人には三日前にリクエストを伝えてあるんですよぉ。そうでないと単純に腕の差で決まってしまいますから」

真奈美「成程。相手を想いメニューを組む時間も愛の内という訳か」
8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:16:54.22 ID:WLnDyA0B0

P「あの意味深長なオープニングは何だったんだ……しかし豪勢なセットですね、借りるにしても随分掛かったんじゃないですか?」

ちひろ『投資とは更なる利益を呼び込む為に行うものですよ!』

P「流石、我社の財務を握って離さないちひろさん。守銭奴臭が目に沁みます」

まゆ「ああ、もう一つ伝え忘れていましたぁ……本日の優勝者には豪華賞品を用意しています」

P「また俺の自由剥奪権とかだろ、もう好きにしてくれよ……」

ちひろ『いいえ!今日の商品は一味違いますよ――CGプロ一日社長代行権です!!』

P「えっ?俺そんな話聞いてないよ?」

ちひろ『面白そうなので黙ってました!さあ、権力に物言わせて気に入らないアイツを地方に飛ばすなり、会社の株式全部売っ払って高飛びするなり、やりたい放題執行権は一体誰の手に渡るのか?!』

P「おいいいいぃ?!何してくれちゃってんのォ?!十代の子供にそんなモン渡さないでぇ?!」

ちひろ『えぇー、でも社長から全権委任状だって貰ってますしぃー』

P「それ絶対一日駅長とかのノリで書かせただろう?!くっそ社長に電話してチクってやる!」

ちひろ『あ、晶葉ちゃん銀紙吹雪お願いします』<パーン

P「圏外……?!紙吹雪で電波欺瞞だと?!」

晶葉『あ~テステス、すまん助手よ。こっちの方が面白そうだったからちひろ嬢に付くことにしたよ。因みに放送設備及び警備システムは私の管理下だ』

まゆ「Pさん?撮影中に携帯はダぁメ、ですよぉ?」<トリアゲ

P「あっ……くっそ、よく見りゃスタッフ全員悪乗りで有名な人達ばっかりじゃないか。――ま、まあ、あまり無茶はしなさそうな面子だし……大丈夫かな」

真奈美「それは読みが甘すぎるな」

P「えっ」<ガンバレミンナー!!

楓「応援席の皆さん、随分熱心に事前協力してましたよね」

P「えっえっ」<トラブルオイシイヨー!!

留美「集る気満タンって事かしら。気の優しい子が多いから返って裏目に出るかもしれないわね」

P「……鬼!悪魔!ちひろ!!」<ワタシヲアナタノヨメニシテー!!
9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:19:00.03 ID:WLnDyA0B0

ちひろ『とか何とか言ってる間に各陣準備が終わり調理に入ります!ここで目立つのは――やはり楊菲菲選手!肉柵に向かい中華包丁を高々と振り上げるぅ!!』

愛梨「菲菲ちゃんお肉お願い!私生地作る!」

菲菲「まかせるヨー!打ち合わせ通りネ!」ダンッダンッ!

留美「豪快な切り分けから一転、油身掃除の細かい作業――全部同じ包丁でやってしまうのね」

真奈美「中華料理はあれ一本で解体から飾り切りまで熟せるからな。切る、割る、潰すと多彩に使える万能包丁だ。反面取り扱いは難しいんだが見事なものだよ」

まゆ「愛梨さんは薄力粉とバターをそぼろ状に混ぜてますねぇ」

P「パイ生地かな。包焼き――フランス料理で来ましたか」

楓「フランス料理のマナーは不安っす……ふふっ」

ちひろ『まゆさん!五十嵐&首藤チームのレポートです!それぞれ五十嵐選手が出汁引きと蒸籠担当、首藤選手が食材切りを担当して――ああっと速い速い!首藤選手、見る見る内に蟹を解体していく!無言で蟹鍋突っつくカップルよ私を見習え!これはカール・ゴッチも真っ青だ!!』

留美「あれは松葉蟹ね。郷土料理で攻めるのかしら」

楓「響子ちゃんの出身地である鳥取県は日本有数の蟹の漁獲量を誇ってるんですよ」

ちひろ『まゆさん!首藤さんからのコメントが入りました!『蟹の解体なんか河豚に比べれば訳ないよ』だそうです!!』

P「河豚捌けるのかよ……もうアイドルのレベルじゃねぇな」

真奈美「響子君の方も面白いな。あれはアゴと手羽先の合わせ出汁か?別々に煮出しているが」

P「アゴ?」

真奈美「飛魚だ。磯臭さのない、上品でスッキリとした甘味と独自の旨味が特徴の出汁が取れる。これも山陰地方によく見る特徴だ。やはり郷土料理で攻めるようだな」
10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:20:29.72 ID:WLnDyA0B0

ちひろ『まゆさん!三村&椎名チームのマリネ液の中身が判明しました!鶏肉と玉ねぎが入っています!!椎名選手が鶏を解体しフライヤーを用意中!』

留美「ケバブかシャシリク……かしら。フライヤーは不可解だけど」

まゆ「シャシリクはロシア式のバーベキューですねぇ。通常は炭火焼ですが、フライヤーが気になります」

ちひろ『まゆさん!マリネ液のレシピを伺いました!玉葱、パセリ、万能葱、三つ葉を刻んだ物、潰した大蒜に、タイム、クミン、クローブ、ローリエ、コリアンダーの乾燥ハーブ、後は醤油、レモン汁、バルサミコ酢、岩塩、黒胡椒をグルジア赤ワインに混ぜ暫く寝かせた物、との事です!!』

P「随分複雑な構成ですね。和食で使う食材も多く見られましたが」

留美「食べるのは飽くまで日本人、ということでしょうね。場所が変われば好みも変わる。何事も本場が一番という事はないわ」

奈緒「あれ?このコンロどうやって火着けるんだ?」

楓「……ええと、かな子ちゃんはゼラチンを湯煎してますね。それに生クリームを泡立ててます」

P「ムースかな……これはどんな料理か全く分かりませんね」

凛「加蓮、ピーラーで手を切らないでよ」

加蓮「凛こそお鍋引っくり返さないようにー」

まゆ「うふふ。皆さん早くも白熱した展開に身を投じていまぁす」
11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:22:48.55 ID:WLnDyA0B0


瑞樹 10分経過。残り時間40分。


ちひろ『まゆさん!各チーム加速しています!まずは十時&楊チーム!切り分けたブロック肉をフライパンに放り込み焼き目を付けている楊選手!香ばしい匂いが漂い出しています!』

留美「ブロック肉五つという事はそれぞれ一人前ね。握り拳大はあるけど」

ちひろ『続けて十時選手!纏め終わったパイ生地を冷蔵庫に仕舞い、切り分けられた脂身とハーブを混ぜた物をミキサーに掛け始めました!同時に野菜の微塵切りを始めます!』

楓「脂身ですか?ソースにしては素材が……まだ混ぜるのかしら」

ちひろ『チーム変わって五十嵐&首藤チーム!五十嵐選手出汁鍋を見ながら解体された蟹を湧いた鍋の中に次々放り込んでいきます!首藤選手、包丁の先が踊る踊る!竹輪!人参!牛蒡!筍!芹!蕨!そして大粒の牡蠣登場!プリっぷりです!!』

P「うわー、豪華ですねぇ」

真奈美「米を用意している所を見ると炊き込むつもりだな。しかし随分食材が多い」

楓「魚介中心ですけど出汁に手羽先も使ってますし……あ、焼き網も出してますよ」

ちひろ『まゆさん!五十嵐選手に素材について聞いた所、ほぼ鳥取直送の食材ばかりだそうです!コメント戴きました!『鳥取はいい所ですから皆さん遊びに来てください』だそうです!』

P「鳥取って何かありましたっけ?」

楓「温泉は多いですよ。関金、三朝、皆生、東郷……他にもたくさん。プロデュサー今度一緒にいかがですか?」

P「あ~っと、しかし皆手際いいのにやけに急いでますね。全く余裕がなさそうに見えますが」

楓「……もう、いけず」

留美「ここ、刃物あるから」

真奈美「火もな。まあ……急いでいるのは当然だろう。一皿勝負とは言え五人分だぞ?皆手の込んだものを作っているし、付け合せも作るようだ。はっきり言って、これは私でもきつい」

P「え?鉄人は毎回四~五品は作っていましたよ?」

真奈美「紛う事なき世界トップの人間と比べてやるな。あれは鉄人が奇怪しいんだ。助手も二人いたし時間も60分だった。十時君と五十嵐君のチームはオーブンと焚き上げの時間もある。それまでに下処理を済ませないといけないから尚更だろうな」
12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:24:08.30 ID:WLnDyA0B0

まゆ「うふふ、木場さんはもし出ていたとしたらどんなお料理を作りますかぁ?」

真奈美「私か?私は気取らずに鍋でも作るさ」

留美「あら、意外ね」

真奈美「そうか?卓を囲むという行為はそれだけで心満たされるものだ。テーマが愛ならば腹も心も温める鍋はそう悪くない選択だと思うぞ」

ちひろ『まゆさん、まゆさん!神谷選手が『その手があったかぁ!』と叫んでいます!!各陣営苦い顔をしている模様!』

楓「ふふっ、流石ですね真奈美さん」

ちひろ『まゆさん三村&椎名チームのレポートです!ドーナツ一辺倒かと思われた椎名選手、意外にも手際よく鳥を解体しています!もうすぐ三体目を処理し終える所!』

法子「あたしだって普通の料理ぐらいするよー。幼稚園の頃から台所に出入りしてるんだからねっ」

P「うーん、でもあのフライヤーは――素揚げ?フライ?」

留美「素揚げだと油に香りが逃げるし、フライだと厚い衣と下味を付けた肉の相性がちょっとね……」

ちひろ『まゆさんまゆさん!三村選手、ホールトマトを加熱し始めました!加えてシャンパンを開封!』

楓「あら、未成年」

真奈美「吐き出して飲み込まなければ問題ないよ。ああ、こっちもミキサーを出した」

留美「中身は根セロリとレモングラスとさっきのシャンパンに――ココナッツミルク。それにあの機械は、」

まゆ「アイスクリームメーカーですねぇ。シャーベットでしょうか?糖分は入れていなかったようですけど。あ、更に鍋を出しましたよ」

楓「一皿勝負、ですよね?」

真奈美「ソースじゃないかな。一つの品も複数の味で楽しめるように、という配慮なのかもしれない」

ちひろ『まゆさん!三村選手に伺いました!もうひとつの鍋の中身はグリーンソースとの事です!』

まゆ「有難うございますちひろさん。各陣営独自の方向に色を出し始めました。皆さん普段とは全く違う雰囲気で――――」
13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:26:06.87 ID:WLnDyA0B0


瑞樹 20分経過。残り時間30分。


まゆ「――ここでもうすぐ半分の時間が過ぎようかという所になりました」

凛「えっ?もう?!」

葵「やばいよヤバイ!響子出汁まだぁ?!」

響子「もう上がる!カニの身お願い!!」

奈緒「加蓮、蒸し器出してくれ!」

愛梨「菲菲ちゃん私ソース作る!フライパン開けて!!」

菲菲「好呀!」

加蓮「ああん、もう!急がしい!」

P「おお……皆動き速いな。あんな眼付き見た事ないぞ」

まゆ「普段見ない一面ですねぇ」

ちひろ『まゆさんまゆさん!十時&楊チーム、メインの肉が焼き上がりました!楊選手それを観音開きに切り開いていきま――うっわ、凄っい焼き色付いてますよ!いい匂いだっ!ヨダレが止まらなぁい!!』

留美「脇に用意しているのは……オブラート?」

真奈美「巻いていくつもりだろうな。問題は何を巻くのかだが」

ちひろ『十時選手フライパンに溜まった油を別のフライパンに移し、微塵切りにしていた野菜を炒める炒める!楊選手のお株を奪う業務用コンロ最大出力!!入れ替わりに楊選手がパイ生地を伸ばしに走ります!』
14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:28:25.17 ID:WLnDyA0B0

響子「葵ちゃん出汁上がったよ!」

葵「時間なか!釜出して詰めてきぃ!」

ちひろ『時間に追われる五十嵐&首藤チーム!どうやらメニューは釜飯のようです!』

真奈美「残り三十分で炊飯――微妙な所だな」

楓「蒸らす時間がありますからね。子供泣いても蓋取るな、でしたっけ」

留美「あら?……蒸籠の中身は米みたいね。ということは――」

ちひろ『まゆさん!五十嵐選手から訂正が入りました!釜飯ではなく、正しくは『大山おこわ』という物のようです!失礼致しました!』

楓「鳥取の郷土料理ですね。祝い事の際に戴く物で、古くは汗入りおこわと呼ばれていた物です」

P「汗入りですか?」

楓「ふふっ、地名ですよ。霊峰大山で修行をしていた僧兵達が必勝を祈願して、お山で採れた食材を米と一緒に炊いて食べたのが始まりと言われています。ただ、現代では各家庭毎に派生があるらしくて、今作っているのは漁師町の色が濃く出ているみたいです」

真奈美「蒸しが入っているのなら時間の勘定も合う。流石料亭の娘なだけはあるな」

ちひろ『まゆさん!十時選手が炒めていたフライパンに赤ワインとフォンドヴォー、それに水溶き片栗粉を投入しました!煮詰めてミキサーの中身も加えるそうです!』

留美「フレンチで片栗粉は使うのかしら?」

真奈美「いや、聞かないな。もともとフレンチには熱物はないんだ。白人は総じて猫舌だからな」

楓「ミキサーの中身は何でしたっけ?」

まゆ「脂身とハーブですよぉ」
15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:30:05.10 ID:WLnDyA0B0

ちひろ『各チーム加速は留まる所を知りません!一人で二つ三つの鍋担当は当たり前!三村選手も手を変え品を変え次は生米を炒っています!そして――あれ?』

留美「メインの鶏肉を放ったらかしにしてる?」

まゆ「法子さんは小麦粉を練っているようですが……」

ちひろ『三村選手に伺った所、今作っているのは全粒粉の無発酵パンとの事です!』

真奈美「無発酵パン。という事はやはりケバブかな」

楓「トルコ料理は世界三大料理の一つで、スパイシーですが日本人の味覚にもよく合う料理ですね」

留美「ヨーロッパとアジアの交易点で発達した料理で、東西の食文化がミックスされた幅広い味と調理法が特徴といわれているわね。近年国内でも専門店をよく見かけるようになってきたわ」

P「肉を加熱していないのは完成時間に合わせるためかな。本来羊肉がメインの料理なんですが、鳥肉に変えるなど和風アレンジもしているようですね。楽しみです」

葵「……っはい!オッケー!そいぎ蓋ば閉めて加熱!」

響子「はじめチョロチョロ中パッパっと、……はー、何とかなりそうだね!」

ちひろ『五十嵐&首藤チームどうやら完成への算段が付いたようです!お話を伺ってみたいと思います!ここまでの経過はいかがでしょうか?!』

響子「はい!ウチは前半が肝でしたから何とか納得できるものを出せそうですっ!鳥取の意地を見せますよ!」

葵「響子!まだ気ば抜ゆうなかばいよ!細かいあいどん残っとる!!」

響子「はーい!……じゃあプロデューサーさん楽しみにしてて下さいねっ!」
16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:31:17.55 ID:WLnDyA0B0

まゆ「有難うございます。――十時さんの所も巻に入っているようですね。ちひろさん?」

ちひろ『はい!今十時選手と楊選手が手分けして開いた肉を巻き始めています!中に巻き込んでいるのは先程まで作っていたソースとローズマリーとタイムの若葉との事!』

真奈美「ん?ソースを中に入れてしまうのか?」

楓「フランス料理ではソースはお皿に掛けますよね。こう……メインの周りを飾るようにして」

留美「フランス料理の始まりは11~15世紀に古代ローマ文明がフランスに伝わった事が始まりよ。当時は大皿に多様な料理を盛り付けるような粗野な物だったらしいわ。それがカテリーナ・デ・メディチがイタリアの食文化を持込み、カレーム、エスコフィエと偉大な料理人達によって洗練され、現在のコースやサービスの流れが確立したのは1970年代、ミシェル・ゲラールという料理人が起したヌーベルキュイジーヌというスタイルからね。」

真奈美「バターや生クリームを多く使ったカロリーの高い当時の調理法を見直し、軽く、食材の鮮度を重視したスタイル――だったかな」

楓「日本の会席料理の影響も受けたらしいですね。ただ――――」

留美「ええ、――そこに中華料理の影響があったのかは知らないわ」

P「ははっ、という事は愛梨と菲菲はフランス料理の新しいページを開こうとしているのかも知れませんね」

ちひろ『という訳で巻き上がりました十時&楊チームのパイ包み焼き!端を閉じ卵黄を塗って予熱しておいたオーブンへ運びま――』

愛梨「あっ?!――」<ガシャン!!

P「愛梨っ?!」

まゆ「あら、」

楓「まあ……」

留美「あ、――」

真奈美「これは――――」

ちひろ『え?―――うそ?と、十時選手転倒――――ッ?!ここで転倒?!ホントに?!料理は大丈夫かぁッ――――?!』
18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:32:42.37 ID:WLnDyA0B0

愛梨「痛ぁー……あ、」

菲菲「…………愛梨、請當心。危險。正要變得弄壞」

ちひろ『セエェェェェェェェッェェッフッ!!楊選手ファインプレー!尻餅付きながらも天パンインターセプトォぁ!!』

愛梨「ご、ごめん菲菲ちゃん。あ、ありがとう」

菲菲「我想心臟是不是停。?也沒有傷??」

愛梨「な、なに言ってるのか分かんないよぉー」

ちひろ『えー、どうやら両者とも無事のようです。今度は慎重にオーブンへ天パンを投入します』

P「お、――――おぁ、あ?」

まゆ「落ち着いてください、Pさん」

真奈美「とりあえず無事のようだ。席に戻れP」

楓「大事はなかったようですね。驚きました……」

留美「―――、こういうの弱いから……勘弁して欲しいわ」

愛梨「すっ、すいません!お騒がせしましたぁ!」

ちひろ『気を取り直してお話を伺ってみましょう!こちらも調理の山場は終わったようですが出来はいかがでしょうか?』

愛梨「お騒がせして済みませんでした……、ええと、料理の出来は凄くいいと思いますよっ。二人で色々考えて作った物ですから、期待してください!――――冷や汗かいちゃいましたよ☆」

ちひろ『ナチュラルに服脱ごうとしないでください。見せつけてるんですかちくしょうめ。楊選手、引き続きお願いしますね』

菲菲「請託付ー」

ちひろ『以上、十時&楊チームからのレポートでしたっ!』
20: >>17 画像有難うございます 2013/05/05(日) 22:34:23.93 ID:WLnDyA0B0


瑞樹 30分経過。残り時間20分。


まゆ「ここで後半戦も佳境に突入ですが――ちひろさん?三村さんのチームはどうなっていますかぁ?」

ちひろ『はーい!香ばしいカレー粉の匂いが漂ってきています!三村選手炒っていた米はどうやらピラフになるようです!フライパンにスープを投入し焚き上げに入っています』

P「ふう、――かな子達もご飯物を出してきましたか」

楓「それにしても調理数が多いですね」

真奈美「トルコ料理は大皿に複数種の料理を並べる事も多いからな。パーティー向けの料理、と言えるだろうか」

留美「元々中央アジアは大家族が基本だからでしょうね。三、四世帯同居も珍しくないというわ」

P「しかし今から米を炊いて間に合うんですか?」

真奈美「インディカ米を使っているようだから問題ないだろう。インディカ米は日本で使われているジャポニカ米と違い水分を吸いやすいという性質を持つ。加えて湯取り方という熱湯を投入して一気に炊き上げる調理法もあるんだ。これならば10分加熱7分蒸らしで出来上がる」

楓「インディカ米というとタイ米が輸入された時にあまりいい噂は聞きませんでしたけど、それは炊き上げ方が違っているからなんですよ。本来の調理法に合わせてあげるとポップコーンのようなとてもいい香りがするんです」

留美「日本では米はそのまま食べる物だからでしょうね。世界では様々な食物があって、それぞれに相応しい調理法が各地で発達したわ。それを他国から輸入して、無理やり合わない方法で調理しても美味しくないのは当たり前。貴方の仕事にも通じるんじゃない?」

P「肝に銘じます。――ところで」

留美「ええ」

P「さっきから小麦粉捏ねて焼いてる法子なんですが、どうにも法子と小麦粉とフライヤーの関係は嫌な予感しかしないんですが」

真奈美「脇に置いてあるのは砂糖だな……いや、使ってくれても構わないんだが」

まゆ「流石にそんな無茶はしないと思いますよぉ。多分」

P「まゆにそう言われる位には、アイツも大概なんだよなぁ」
21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:36:01.42 ID:WLnDyA0B0

ちひろ『まゆさん!五十嵐&首藤チームに伺います!先程一番大きな仕事は終わったようですが、まだ作業されてますね。こちらは何を?』

響子「栗の甘露煮です。既製品ですけど、そのままでは甘すぎるので茹でて甘さを抜いています。あともう一工夫しますが」

ちひろ『ほうほう。首藤選手はまだ魚を捌いていますよ!次は鯛ですか!』

葵「これは焼物にする分。鱗剥ぐけん近くにいると危なかよ。」

ちひろ『他にも幾つか器材を出していますね。まだまだ工夫は止まりそうにありません!続いて十時&楊チームを伺いましょう――――』

凛「……私達ってハブにされてるよね。いいんだけど」  

奈緒「場違い感半端ないからな。無理もないけど」

加蓮「ちひろさん素通りしていったよね。寂しいけど」

凛「……編集でいない事にされたりして」

奈緒「辛っ!そんな辛い想像すんなよ!」

加蓮「あながち冗談じゃないかもね……ふふふ」

ちひろ『やっほー!黒いオーラに背中を押されてコンニチワ!十時選手こちらは付け合せですか?』

愛梨「茸ソテーです。中身はエリンギ、舞茸、シメジ。後でチーズも加えよ――――」<ファッーーークッ?!ワタシノトモダチガマルヤキムガッモガッ!!

ちひろ『えー、只今音声の乱れがありました。大変失礼致しました。楊選手の方は温野菜とマッシュポテトですか?素材毎に別の鍋で煮ているんですね』

菲菲「それぞれ火入るちがうヨ。当然ダヨー」

ちひろ『勉強になります。それでは――』

かな子「法子ちゃん時間だよ!メインお願い!」

法子「待ってたよっ!揚げ物はあたしの独壇場っ!」

ちひろ『おっと、ここで三村&椎名チーム放置していた鶏肉に取り掛かるようですが――』
22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:38:42.61 ID:WLnDyA0B0


瑞樹 40分経過。残り時間10分。


ちひろ『残り時間が10分となってしまいました!各チームラストスパート!!』

楓「あら、法子ちゃん衣付けて揚げてますよ」

P「成程、唐揚げか!」

留美「衣で香りを逃がさない計算ね」

P「ああ、炭火焼もするみたいですよ。串焼きを用意しています。――――うわ、これは……肉の焼ける匂いが……」

真奈美「むぅ……堪らんな、これは」

ちひろ『おぉ――――うぉ、おぉお?――――』

P「ちひろさーん!つまみ食いはダメですよぉっ!!」

留美「これは――狙っていたのかしらね」

P「何をです?」

留美「私達の興味よ。この時間になると他のチームは仕上げに追われて大きな動きはない。加えて私達は50分近くもお預けをくらった腹ペコ状態。そこにこの刺激よ?正直辛抱たまらないわ」

楓「……よく冷えたビールを、」

P「楓さん!それだけはッ言って欲しくなかったッ!!」

まゆ「うふふ、欲に抵抗するPさんも素敵です」
23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:40:42.50 ID:WLnDyA0B0

ちひろ『おぉ、この強烈な誘惑に負けずワタシはレポートをゾッコウしまス――――はい!三村選手ですが二つの鍋の管理と同時に盛り付けも始めました!取り出したのは――でっかっ!一抱えはありそうな大皿です!』

真奈美「ははっ、一皿勝負の括りを逆手に取ったな」

留美「普段の彼女からは考えられない管理能力ね」

ちひろ『銀食器に入れられて、トマトベースと法蓮草ベースのソースが並びます!他にも何時の間に作ったのかヨーグルトソースとジェノバソースがそれに続く!』

楓「あっ、あっ、響子ちゃんが山芋摺り卸してますよ」

P「?ハンドミキサーなんか用意してますね?」

真奈美「フライパンの上で何かが炒られているな……何だ?」

留美「すり鉢を出してるわね……ふりかけ?」

ちひろ『まゆさんまゆさん!十時選手のフライパンから甘酸っぱい匂いが漂っています!これは?!』

愛梨「ベリーソースですっ。パイ用の箸休めですね」

ちひろ『楊選手は――おっとオーブンの前だっ!焼き加減はどうですか?!』

菲菲「まだネ、もうチョット……」

愛梨「どう?菲菲ちゃん」
24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:43:03.31 ID:WLnDyA0B0


瑞樹 残り5分前。


菲菲「まだヨ……マダネ……」

愛梨「ギリギリだね……」

葵「いぃヨシ!上がったばい!仕上げば響子!」

ちひろ『ああっと!五十嵐&首藤チームのメインが炊き上がったようです!ちょっと行ってみましょう!』

響子「栗と松露とエシャロットと木の芽と――鯛は?!」

葵「慌とらんで。上がったばい。ほい急須」

響子「んじゃ後は小鉢を添えて……完成だね!」

葵「ん!そいぎ、片付けてまおう!」

ちひろ『五十嵐&首藤チーム終了した模様!!そのまま片付けに入りました!自分の仕事場は汚さない!これぞ料亭娘の心意気!!今の御心境は?!』

響子「私達に出来る最高の一品です!!」

ちひろ『有難うございます!勝利宣言一番乗り!五十嵐響子&首藤葵、チーム・貴方に尽くす嫁の会でしたっ!!』<ヨッ!パチパチパチパチ!!

かな子「よしっと、ピラフ完成!法子ちゃん揚がったの持ってくよ!」

法子「油を見ると心が踊るよぉっ!」

ちひろ『こちらもほぼ完成の三村&椎名チーム!!おっと、揚げ物は唐揚げだけではなく鳥天風の物もありますね!これはガッチリ胃袋掴まれそうです!この中央の器は?』

かな子「キャラメルムースです。甘さは抑えてますから、口直しにもソースにも」

ちひろ『なるほど、では御心境の程を伺います!』

かな子「出来る事は全てやりました。あとは――p、Pさん次第ですっ!!」

ちひろ『やった!大胆発言待ったなし!最多品目を仕上げた三村かな子&椎名法子、チーム・幸せ糖分タイムでしたぁ!!』<パチパチパチパチ!!オイシソー!!

かな子「あっ?!アイスクリームメーカー!」

法子「弾けるよぉォッ?!」

ちひろ『…………大丈夫かな』
25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:45:53.08 ID:WLnDyA0B0

凛「これ……もういいんじゃない?」

奈緒「まだだって。煮汁残ってるだろ」

加蓮「器出しといたよー」

ちひろ『あ、すいません。正直貴女達の事忘れてました。今の意気込みをどうぞ』

奈緒「……はっきり言われると傷つくなー」

凛「まあ、程ほどに」

加蓮「ふっふっふ、他の組と隔離したインタビューってもうアレだよね。フラグだよね」


瑞樹 残り1分前。


奈緒「うわっ?!やべぇ、よそえよそえ!」

凛「もう、だから言ったのに!」

加蓮「喧嘩しないで早く早く!」

ちひろ『はい、チームとらぷり肉じゃがでしたー。――残る一チーム十時&楊チームは間に合うのでしょうかっ?!』<ハラヘッタゾー

愛梨「まだかな?パイの焼き色はいい感じだよ」

菲菲「慌てるよくないヨ、中の音まだ来なイ……盛り付けもう終わってるネ?」


瑞樹 30秒前。


愛梨「うん、……私が転けちゃったから、かな」

菲菲「かもしれないし違うかもしれないネ、ワタシには分からないヨ。でも、――――あと、――――もう、チョット――――」
26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:47:42.90 ID:WLnDyA0B0


瑞樹 15秒前。


愛梨「菲菲ちゃん、もう――」

菲菲「しっ、静かにするネ!聞こえないヨ!今――――――――あ、」


瑞樹 10秒前。


菲菲「きたネっ!テッパン出すヨ!急いで!!」

愛梨「う、うんっ!」

菲菲「引っくり返す良くないヨ!急ぐケド落ち着いて――」


瑞樹 5秒前。


愛梨「慌てず焦らず迅速にだね!!」


瑞樹 3。


菲菲「ヤケドしない並べるネ!グラスは?!」


瑞樹 2。


愛梨「出してる!じゃあ――」


瑞樹 1。


菲菲「――完成ネッ!!」


瑞樹 終了――――――、試食に移ります。
27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:51:04.18 ID:WLnDyA0B0

愛梨「やったよ菲菲ちゃん!」<オワッタアアァァァァ!!

菲菲「間に合ったヨ!どうなるか思たヨ!」<マワセ!ソノサラヲワタシタチニマワセ!!

ちひろ『よかった!ギリギリでした!間に合いましたよ!今の自身の程を――いえ、勝利宣言をどうぞ!!』<ガンバッタヨオオオオォ!!

愛梨「人生で一番短かった50分でしたけど、わ、私っ、達の愛は誰にも負けませぇんっ!!」<ナニイッテヤガルチョウシノンナ!!

ちひろ『王座は誰にも渡さない!十時愛梨&楊菲菲、チーム・モノポリーシンデレラでした!!四者四様それぞれの愛の訴えを思い人はどう受け止めるのかっ?!シェイクスピアも赤面する告白劇が始まりますッ!!』<CGプロハセカイイチイイイイィィィィ!!

P「よくやったぞぉ!!」<Yeaaaaaaaaaaaaaaaah!!

楓「間に合った……手に汗握っちゃいました」<パチパチパチパチパチ!!

留美「P君、意味分かってないわよね」<パチパチパチパチパチ!!

真奈美「はは、それも彼らしいさ。――さあ、ここからが私達の仕事だ」<パチパチパチパチパチ!!

まゆ「それでは――――これより、審査に移ります。皆さん席の移動を――――」<パチパチパチパチパチ!!



瑞樹 斯して各者の想いを尽くした告白劇は終わりを遂げる。料理の神に抱かれるのは誰なのか。戀愛神の矢は思い人の胸を貫くか。恋の裁判、ここに開幕――――――


28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:56:01.05 ID:WLnDyA0B0



まゆ「それでは席も移動し、これから審査を始めるのですが――Pさん、どのチームのお料理から戴きますかぁ?」

P「え?俺が決めていいの?」

まゆ「はい。今日の主賓は間違いなく貴方ですから」

P「そう?じゃあー、かな子達のチームから」

真奈美「その心は?」

P「揚げ物は熱いうちに食べた方がいいでしょう?後の三チームは蒸らす時間をおいた方が美味しくなります。保温器具だってありますし」

真奈美「なるほど公平だな、支持しよう」

留美「ええ、それに――」

楓「まずは駆けつけ一杯、ですね」

まゆ「うふふ、では三村さんのチームから――――」


29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:00:55.62 ID:WLnDyA0B0



瑞樹 チーム・幸せ糖分タイム、三村かな子&椎名法子の供する料理はこの一皿――――

   ~トルコ風、地鶏の揚げ物三種。ピラフを添えて~

   拘りのマリネ液に漬け込んだ鶏肉を炭火焼、鳥天、唐揚げの三種に仕上げ、脇にピラフと薄焼き無発酵パン、無農薬サラダを添えました。
   トマト、法蓮草、ジェノバ、ヨーグルトの四種のソースが皿を彩り、シャンパンシャーベットとキャラメルムースが皿を締める、大勢で囲む卓に適した一皿です。



まゆ「それでは皆さん――戴きましょう」

P「いただきます!」

かな子「はい、お召し上がり下さい。ふふっ」

P「の、前にかな子さん?」

かな子「何でしょうPさん?」

P「私は一抹の不安と仄かな期待で胸がいっぱいです」

かな子「もうっ……あまり飲み過ぎないと約束してもらえるのならお出しします」

P「やたっ!約束する!します!流石かな子様!俺の女神!」

留美「貴女は出来る子だと思っていたわ」

楓「銘柄は――ヱビスですねっ」

かな子「Pさんお好きでしたよね?」

真奈美「しっかりしたコクと旨味、程好い苦味と香りが飲み込んだ瞬間喉で消える爽快感。ああ、いいビールだ。食前、食中酒としも申し分ない」

P「いやー、親父がたまーにいい事あるとこれ飲んでたんですよ」

法子「因みにお酒はあたし達じゃ買えなかったからスタッフさんにお願いしたよ」

P「それじゃあ改めまして――」

全員『乾パーーーーイ!!』
30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:04:51.81 ID:WLnDyA0B0

P「……んっぷはッ、いやぁ、仕事中にビールとか、こんな美味しい仕事あっていいんですかねぇ」

楓「ふふっ、Pさんヒゲ付いてますよ」

留美「あ"ーーーー靴脱ぎたくなってきちゃった」

真奈美「ああ、お絞りこっちにも回してくれ」

まゆ「因みにまゆの分はノンアルコールですよ?」

P「それじゃあ早速メインから……うわっうわッうめェッ!肉汁がっ」

真奈美「……む」

留美「……そんな」

楓「……ここまで」

まゆ「…………」

P「凄いなかな子!スゲェ美味いよ!これなら幾らでも――」

真奈美「待つんだP」

P「え?」

かな子「ど、どうしました皆さん?お口に合わなかったとか――」

楓「いいえ」

留美「逆ね」

真奈美「ああ、君達に謝りたいんだ。私達は実際に口に入れるまで、あれだけのハーブ類を纏めるだけでも一苦労、ましてやあの量の食材を一皿に集約するなど君達の歳では到底不可能。……そう思っていたんだ」

留美「ええ。でも食材は互いを殺し合っていなくて、それでいて個々を感じ取れる」

楓「そして口の中で溶け合うように食材の大きさ、分量、火加減まで調整されていて……」

真奈美「率直に言おう。美味い。脱帽だ。これは本腰を入れなければ君達に悪い、そう思ったから仕切り直させてもらった。……それでは論評だが――どうしたなぜ泣く?」

かな子「いえっ――木場さんはっ、私が知ってる中で、一番大人らしい人でっ、私はのんびりしてるってよく怒られてて、そんな人に、褒められるなんて――わたしっ思ってなくてっ」

法子「かな子ちゃん頑張ってたもんねぇ、泣かない泣かない」

真奈美「全く……本番はこれからだぞ?」

かな子「はいっ……!自信作ですからドンドンぶつけて来て下さい!」
31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:08:09.06 ID:WLnDyA0B0

留美「じゃあ私から質問。トルコ料理を選んだのは何故なのかしら。やっぱりリクエストに合わせて?」

かな子「はい、そうです。『ガッツリいけるもの』との事でしたので、形式ばった物ではなく、皆で囲って遠慮なく食べられる物を目指しました」

真奈美「肉を羊から鳥に変えたことは英断だな。羊肉は臭みが強く日本人は食べ慣れない。かと言って牛や豚ではクドさがあり量は食べられないだろう」

楓「炭火焼はしっかり皮目を焼いて余計な脂を落とし、唐揚げと鳥天はさっくり軽く仕上げられていますね。これは?」

法子「揚げ物はあたしの特技だからねっ!コツは素材をしっかり衣で包むこと!今回は肉自体にしっかり下味と香り付けがされてたから、クセのない100%キャノーラ油で揚げてみたよ!」

楓「そう、そうです!ワインの芳醇な味わいの上にスパイスと醤油の旨みが効いていて、口に入れるとハーブの爽やかさが鼻に抜けてくる――それでいて噛めば鳥本来の旨味と肉汁が溢れ出すんです!美味しい!」

真奈美「ああ、炭火焼、唐揚げ、鳥天、と三様に異なる食感を楽しめるのもポイントだ。いい鶏を使っている。品種は?」

かな子「京地鶏です」

まゆ「京都は古くから黄鶏にうるさい地域ですねぇ。肉質が締まっていて、とてもコクがあります」

留美「地鶏は身が締まりすぎてややもすると硬くなりがちだけど、そこはマリネに漬け込んだおかげね。噛み切れるけど弾力もあって食べごたえがあるわ」

真奈美「マリネ液に入っていた玉葱には蛋白質分解酵素が含まれていて、香味もある。肉の下処理にはよく登場する食品だな。同時にビネガーに含まれる酢酸は、蛋白質の保水力を高めジューシーさを保つ作用がある」

楓「鳥天の衣もちゃんと氷水で冷やしてましたよね。粉を振るいにかけて粘りを出さずに纏めてるから、サクサクした感触が歯に嬉しい」

留美「揚げ物のコツは水分の蒸発量を見極める事よ。油の加熱で食材の水分の蒸発が始まるのだけど、水と油は融和しないから衣内の水蒸気が抜けきるまで油は食材の中に入っていかない。衣に油は入っても素材に油は入っていない。そのタイミングを見極める事が軽い歯触りを作り出す要諦だわ」
32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:11:53.72 ID:WLnDyA0B0

真奈美「そして四種のソースだ。――これはほとんど反則だぞ?」

かな子「えへへ……」

留美「どれもボリュームがあるから単品として扱ってもいいくらいね」

楓「まずはトマトベースですけどバジルとオレガノ、ローストガーリックとチリペッパー、それをコンソメと塩、黒胡椒で煮込んだ物ですね」

まゆ「……うふ、生のトマトも入れていたようですねぇ。トマトの酸味が際立ってます」

留美「そしてグリーンソース。ピューレにした法蓮草にバターと挽肉を加えて炒め、オールスパイス。このもっちりとした舌触りは――枝豆、かしら?」

かな子「凄い。見破られちゃいました」

真奈美「それだけではないぞ。この奥に隠してあるホロ苦さと香ばしさ。これはチョコレートだな?」

かな子「――お手上げです。隠しておくつもりだったのに」

楓「チョコレート、ですか?」

真奈美「不思議な話でもないさ。フレンチの肉料理にはたまにソースとして出てくる」

かな子「普段食べるミルクチョコレートとは違って本来のカカオは苦い食べ物ですから。味もスパイシーさを前面に出したものが多いと思います。これは隠し味程度に抑えましたけど」

まゆ「ジェノバソースとヨーグルトソースも負けていませんねぇ。ジェノバはクレイジーソルトと松の実とチーズ。ヨーグルトはレモン果汁に黒胡椒と胡瓜。シンプルな構成が逆に引き立ちます」

留美「ピラフも香り高さでは負けてないわ。ハーブとはまた違うカレー粉の刺激と香り。そして米自体がもつポップコーンのような香ばしさ。これは?」

かな子「国産の香り米、サリークイーンという品種です。インディカ米としては最高品質のバスマティ米と日本晴を掛け合わせた種で、食感と芳香の繊細さは本家のそれに負けません。むしろ輸入米は出荷の過程で品質が落ちますから、国内で食べる分にはこれ以上はないんじゃないでしょうか」

楓「確かに、国内のインド料理屋さんで食べる物より香り高い……」

真奈美「ピラフという所がまた憎いな。ナンに野菜と肉と一緒に抱き込んで食べれば美味さが混ざる。口一杯に頬張りたい欲に答えてくれるんだ」

まゆ「野菜はレタスとベビーリーフと――この玉葱はマリネ液に漬けられていたものですね。牛蒡の辛子胡麻マヨネーズ和えも添えられています」

留美「ナンにソースと肉、米、サラダ……味を変え品を変え、飽きることがないわね」

法子「そのナンは北インドで食べられてるチャパティっていうパンだよ!水と塩と小麦粉があれば簡単にできるんだっ!」

留美「貴女の事だから砂糖とシナモンを混ぜてドーナツ仕立てにでもするんじゃないかと思ってたわ」

法子「もちろんそれも作ったよっ……ドーナツ、乗せてみよっかっ?」

P「……んぶッ?!」

かな子「法子ちゃん?――私あれほどドーナツは止めようって……言ったよね……?」

法子「じょ、冗談だよ……」

P「いや、まあ、これはこれで……うん」
33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:17:02.23 ID:WLnDyA0B0

楓「ふふっ、でも美味しすぎて食べ疲れちゃいますね」

かな子「もうっ――、そんな時はこちらのキャラメルムースとシャンパンシャーベットを味わい下さい」

まゆ「このムースはここまでなかった味ですねぇ。……キャラメルの甘い苦さに舌が溶けそうです」

楓「このシャーベット、根セロリとレモングラスの爽やかさが炭酸で弾けて……口の中が洗われるみたい」

真奈美「至れり尽せりだな。これは計算の内なのか?」

かな子「ふふっ、頑張った甲斐があります」

留美「ねぇ、P君どうかしたの?ずっと黙ってるけど」

P「え?……はは、いや――皆さんすごいレベルで審査されるから、萎縮してしまって」

真奈美「思った事を言えばいい。個人の好みもあるだろうが、それも言葉にしないと相手に上手く伝わらない事もある」

P「じゃあ……ここまで美味い料理がビールにピッタリだっていうのも考えての事……なのかな?」

かな子「はい、――もちろん!私はまだお酒は飲めませんけど、Pさんは凄く嬉しそうにお酒を飲まれますから、それに合う料理を念頭に置いて作りました!」

法子「あたしも案出ししたよっ!」

P「マジか……」

真奈美「……参ったな、という事はつまり」

楓「この料理自体が引き立て役でしかなかった、という事ですよね」

留美「括りで言えばオードブルという訳?じゃあ主菜はどうなるのよ……」

まゆ「……うふ」

かな子「お楽しみいただけました?」

P「はは……ああ、凄い――美味しかったよ!かな子!」

留美「一人目でこれじゃ、この仕事は辛い内容になりそうね」

真奈美「参ったな、軽い気持ちで審査を引き受けたんだが……これは素人の仕事ではないぞ」

楓「玄人の料理を食らおうと……ふふっ」

まゆ「それでは皆さん、一組目の審査を終わりたいと思います」

かな子「お粗末さまでした」

法子「どういたしまして!」
34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:19:18.30 ID:WLnDyA0B0



瑞樹 チーム・貴方に尽くす嫁の会、五十嵐響子&首藤葵の供する料理はこの一皿――――

   ~鳥取郷土名物、大山おこわ~

   五十嵐選手の故郷、鳥取県の幸をふんだんに使った郷土料理。海鮮物を主体に餅米と一緒に炊き上げた珠玉の一品。
   釜とは別に用意したエシャロット、鯛、松露、栗が釜内を飾り、添えられた小鉢に長芋のホイップを置きました。柚と木の芽の香りが爽やかに香る一皿です。



まゆ「それでは二組目の審査です」

楓「今度は一転して和食ですね」

まゆ「因みに、二品目にこのチームの料理を選んだ理由はなんですかぁ?」

P「愛梨達のチームはもう少し余熱の時間が欲しいだろうからさ。凛達は煮物だ、時間を置いた方が美味くなる」

留美「何時如何なる時でもアイドルの全力を引き出す……プロデュサーの鏡ね」

P「魅力は十二分に感じたいタチなんですよ」

真奈美「さあ、戴こうか」

楓「――わぁ、お米が立ってますね」

P「木の芽の香りが爽やかです」

留美「これは凄い出汁を使ってるわね。旨味が湯気に乗って昇って来てる……」

真奈美「彩りも美しい。一組目は賑やかな色彩だったが、こちらは一転趣のある――会席に出ても可笑しくはないな」

葵「申し訳ありませんが本日は酒席ではなく、茶席とさせて戴きたいと思います」

真奈美「催促したわけではないんだが――いや、罰が悪いな」

響子「どうか御気を楽に。――御茶になります」

P「今日の響子は随分お淑やかだな」

響子「えへへ、からかわないで下さい、Pさん」

まゆ「――このお茶甘い香りがありますねぇ。それに、味の方にも」

葵「梨の皮を炒った物を茶葉に混ぜて煎じました」

P「へえ、梨皮を茶にですか。あまり聞きませんね」
35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:21:07.88 ID:WLnDyA0B0

留美「梨は薬膳でも利用される立派な生薬よ。薬効は生津、潤燥、清熱、化痰――循環器系ね。日本では幸水、豊水、二十世紀、新高の4品種が主に出回っているけど――」

幸子「呼びましたか?!カワイイボクの名前を二文字も使うなんてとても優秀な梨ですね!」

P「呼んでねぇから。撮影中に乱入すんな。十円やるから応援席に帰れ」

幸子「ひどっ?!ちょっとこんなにカワイイボクと同じ卓に着ける栄誉を噛み締めたいと思わないんですか?!物理的にっ!」

ちひろ「ハイハイ幸子ちゃん貰った十円でチロルチョロでも買いに行きましょうねぇ」

幸子「――ちょッ千川さん何するんですかっ――――あっこの人余り物食べ――――――――――――エナドリッ」

留美「――――この内二十世紀は鳥取産が八割を占めているわ」

真奈美「ブレないな君も。さて、では改めて――箸は黒漆の鉄木か。蟹の赤味に映えるな」

楓「……んぅ、――凄い、炊き込んでるのに蟹の身がプリプリしてる。鮮度がいいから?」

真奈美「それもあるがこれは――」

葵「湯通しする際、檸檬を使いました」

真奈美「――流石。先のマリネと同じだよ。檸檬の酸は蛋白質を変性させ保水力を高める」

楓「米が出汁をよく吸ってます。うるち米だけでは出せない粘弾性が噛み応えで満足感を後押ししてますね。あっ、山椒粒」

留美「出汁はアゴと手羽先を使っていたと覚えているけど、全然クドくないのね。この出汁を引いたのは貴女だったかしら?」

響子「はい。二種の出汁を別々の鍋で引き、手羽先の方は丁寧に油を掬って濾しました。それを両方の風味を殺さない割合で混ぜた物を使っています」

留美「アゴの上品さに手羽先のコクと旨味がプラスされてる。味わい深いわね……」

真奈美「味付けは素材の邪魔をしない薄味仕立て。酒は赤酒かな、深みが出ているよ」
36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:23:52.83 ID:WLnDyA0B0

まゆ「具は蟹、竹輪、筍、人参、牛蒡、芹、蕨、それと中央に置かれた牡蠣。ここまでが炊き上げ前に入れられたもので、鯛、エシャロット、松露、栗の甘露煮、木の芽、これが炊き上げ後に入れられたものですねぇ」

P「一つの釜で炊き上げられたのに、それぞれの味も歯触りも違うのが解ります。不思議ですね。――うわ、牡蠣の味が濃いなぁ」

留美「ええ、ホントに――あら?この時期は真牡蠣、岩牡蠣どちらの旬からも外れていた筈だけど……」

響子「これは隠岐諸島で生産されている春香という岩牡蠣です。ちょうど四~五月が旬になる物で、その美味しさは数ある品種の中でもトップクラスを誇るんですよ!……ただ、隠岐は鳥取じゃなくて島根なんですけどね」

真奈美「うん、牡蠣の味が周辺に沁みてまた味わい深い物になっている。しかし同じ釜の中でこれだけの変化を出せるとは……」

楓「ちょっとお行儀悪い表現ですけど、一口食べる度に新しい発見があって宝探しみたいです」

真奈美「それだけ出汁と調味料、加熱の塩梅がいいんだ。和食は素材の良し悪しと調理者の腕が諸に出る料理だからな。私がやってもこうはいかないだろう」

まゆ「木場さんでもですかぁ?」

真奈美「ああ、無理だ。事、和食に関しては何よりも経験が重要になる。包丁の入れ方一つで食味が変わるんだぞ?その意味では産まれた時から厨房に関わっている首藤君に叶うべくもないさ」

葵「恐縮です」

P「……お前ら今日は大人しいな。どうかしたか?何時もはもっと姦しいだろう」

響子「あはは……和食に合う料亭の雰囲気でお構いしようっていうのと……葵ちゃんが全国ネットで方言出るのは恥ずかしいからって」

葵「ちょ?!それは言わん約束ばい?!」

P「調理中は佐賀弁全開だったろうが」

葵「そら興奮しとったば……」
37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:26:24.73 ID:WLnDyA0B0

留美「私も産まれは近くなんだけどね。所でこの栗の甘露煮も一手間掛けていたわね」

響子「はい!缶詰物ですが一度茹でて甘さを抜いた後、焼いて香りを出しましたっ」

真奈美「その際にラム酒に浸しているだろう。――うん、箸休めにちょうどいい甘さだ。ラムと栗の香ばしさに鼻腔が満たされる」

楓「箸休めではこのエシャロットもいいですよね。他の具にはない生のシャッキリ感と独特の辛味が舌を覚まさせてくれます」

留美「これはエシャロットじゃないわよ」

響子「えっ?」

楓「そうなんですか?」

留美「勘違いするのも無理はないけどね。日本で出回っているエシャロットはエシャロットという商品名の根辣韮なの。海外で栽培されている本来のそれとは別物だわ」

響子「そ、そうだったんですか?!」

留美「本来のエシャロットが一般化する前に、同じ商品名の別の種が流通してしまったのが原因なんでしょうね。――御免なさい、ケチを付けるつもりじゃなかったのよ?実際美味しいし、この料理にもよく合っているわ」

響子「はー、全然知りませんでした」

楓「私も。海外で食べた物と違うのは分かってたんですけど、土地の差かと思ってました」

P「残るは鯛と松露か。――ん、鯛は振られた荒塩が身の甘さを引き出してますね。表面はパリッと仕上がってるのに、中はふっくら柔らかい。自分で焼いてもこうはいかない。プロの技ですね、これは」

葵「焼物は板の腕の見せ所じゃき!」

留美「松露は私も食べるのは初めてよ。高原の珍味。松に発生する腹菌類に属する茸ね」

まゆ「茸――なんですか?」

真奈美「傘も足もないからそう見えないがな。栽培法も確立されていない品種で、しかもこれはまだ若い米松露だ。希少品だよ」

葵「偶然手に入ったけん、今回ば分かりやすく網焼きにしたっちゃよ」

P「希少品って聞くと緊張しますね。――あ、松の香りが」

楓「柔らかで、歯切れがよくて――淡白ですけど、ほんのり甘い」

真奈美「松茸に似ているな。まだ傘の開いていない若いやつだ」
38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:30:36.68 ID:WLnDyA0B0

留美「ふぅ、旨みのオンパレードね。それぞれの味が際立ってるのに調和が取れてて満足感が凄い。――これで一通りは確認したのかしら?」

まゆ「うふ、ひとつお忘れになってますよ?」

楓「あ、竹輪。そういえば随分と変わった風味の竹輪でしたよね」

真奈美「確かに、魚肉の練り物とは大分違うようだが――これは?」

響子「ふっふっふっ、鳥取特産とうふちくわです!」

葵「豆腐と魚肉ば合わせた練り物たい。天日に干した物ば出汁で戻して使うたと」

留美「ああ、そういえば高野豆腐にも似ているかしら。噛めば出汁が染み出してくる。美味しいわ……」

P「戻した出汁はアゴと手羽先の合わせ出汁とは違いますね。もっとこってりとして味わい深い。これは――」

楓「牛筋、ですね」

真奈美「うん、油分を吸って加熱されたこの竹輪は舌の上で蕩ける様だ。油は旨みを隠してしまう物だが、竹輪の中に封じる事で海鮮中心では得られないコクを作り出したという訳か。いや、凄いなこれは」

P「――ええ。ですがまだ、まだ何かありますよね。こう、――奥の方に」

留美「確かに……――――米、ね。それぞれの素材を包んでいる餅米と粳米のブレンド。この調和を支えている土台に何か――」

楓「このお米――餅米主体なのにふっくらと柔らかいですよね。それに甘さが……砂糖や味醂では出ない米自体の甘さが凄い……!」

真奈美「これは……そうか、そうか!これは――麹だ……!」

留美「麹で発酵させたって言うの?でも麹菌は六十度以上の熱で死滅してしまうから、この短時間の加熱調理じゃ――」

真奈美「甘酒を作るんじゃない。完全に発酵しなくていいんだ。旨味、甘味、柔らかさを与えるだけなら少量の麹を蒸しの段階で混ぜるだけで十分だ。そうか、こんな手法が……」

楓「土台の味がしっかりしているからこそ種々の素材を際立たせる事ができるんですね。……これでどーだい、なんて、ふふっ」

まゆ「……ちょっとした一手間でここまで変わってしまうものなんですねぇ。勉強になります」

葵「あー、やっぱ木場さん達は騙せんかったちゃよ。秘密にしたかったちゃが」

響子「あははっ、でもプロデューサーが気付かなかったらイケてたかもしれないよ?」
39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:32:46.65 ID:WLnDyA0B0

P「ふふん、俺の貧乏舌も捨てたもんじゃないって事だ。――さてと。それじゃあ、この小鉢なんだけど。これは?」

響子「それは長芋を摺り卸した物に、出汁醤油と柚子を混ぜた物です。味を変えたい時にお使い下さい」

P「ああ、ソースって訳か。てっきり副菜かと思ってた」

葵「そりゃ違反っちゃよ」

楓「わぁ、――柚子の香りが胸に広がりますね」

響子「匙です。お使い下さい」

P「ん、ありがとう。――おお、柑橘系が入ると爽やかに味が一変しますね」

楓「卸しただけの長芋とは違って口当たりも軽やかです。ハンドミキサーはこれに使ったんですね」

真奈美「長芋は多量の消化酵素を多種に渡って含んでいる。胃凭れの防止としては最適だな。それに柑橘類の酸は長芋の変色防止にも一役買っている」

留美「醤油ベースに柑橘系は悪魔が発見したんだと思うわ。舌が縮むような刺激と旨みでもうっ――手が止まらない」

まゆ「長芋のトロトロ感が胃にも優しいですしねぇ。……滋養も付きますしぃ?」

P「やべ。幾らでも食べられるな、これ」

楓「――ふぅ、食べ終わった後の梨皮茶がまた新鮮ですね。残った柚子の香りに淡い甘さを強く感じます」

留美「ええ、――山の幸と海の幸、両者が違和感なく融合した極上の一品だったわ。余程の料亭に行かないとここまでの物は出ないわよ」

真奈美「香り高く目にも鮮やかな一品だった。美味かったよ。――しかし食べたのは釜飯程度の量なのに凄い満腹感だな。これもリクエストを狙っての効果かな?」

響子「えへへ、――計画通りっ!」

葵「――ったい!」

楓「感服ならぬ満腹ですね。ふふっ」

まゆ「うふふ、それではこれで二組目の審査を終わりたいと思います」

P「御馳走様でした!」
40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:35:04.83 ID:WLnDyA0B0



瑞樹 チーム・モノポリーシンデレラ、十時愛梨&楊菲菲の供する料理はこの一皿――――

   ~黒毛和牛のパイ包み焼き 赤ワインソースを巻いて~

   良質な和牛肉にソースを巻き、パイで包み焼いた一皿。
   濃厚なソースとハーブの香りがパイ生地の中に包まれています。温野菜とマッシュしたポテトにベリーソースを添えました。秘めた恋を表すような、思い人に届けたい一品です。



まゆ「では三チーム目の審査です」

P「愛梨達か。――このチームは最後まで苦労してましたよね」

真奈美「予想通り一人一本づつか。ここに来て肉は少し重いな」

P「え?そうですか?」

留美「君、全部残さず食べてたわよね。審査なのに……」

まゆ「うふ、一皿勝負にしたのもそれが理由です。Pさんは全て残さず食べようとするでしょうから」

楓「ふふっ、よく食べる人は好きですよ?」

留美「もう戴いてもいいのかしら?」

愛梨「その前に食前酒を用意しています!」

真奈美「ワインか……フルボディの赤、銘柄は――――ミッシェル・トリノ "コレクション" カベルネ・ソーヴィニヨン、2009……どうかな?」

菲菲「すごイ。当たったヨ」

留美「流石ね。私はソムリエの真似事をしても年までは無理だわ」

真奈美「ははっ、私も驚いているよ――志乃さんに付き合っていた成果かな?」

P「高いワインなんですか?」

真奈美「いや?アルゼンチン北西部のカファジャテを代表するワイナリーだが……千円そこそこで買えるんじゃないか?」

P「え?その値段にしては随分味と香りに深みを感じますが……」

留美「ワインは畑、樽、年、保存状態で個体差が大きいから値段と品質が比例しない事が多いのよ。個人の好みもあるしね。値段の理由は――アルゼンチンは人件費が安いという事と、近年急に伸びてきたワイナリーだから、という所かしら」

真奈美「特徴としては、ほとんど透けて通らない濃い赤色。杉の木のような清涼感と完熟果実の厚い香り――」

楓「その裏に焼けた樽のロースト香がありますね。口に含むと濃い果実味と優しい渋味……カカオやヴァニラの風味も感じます。香辛料のような刺激と――――、うん、甘味は豊かで柔らかいんですけど――――余韻が、長い――――――――」

真奈美「……ははっ、やはりいい感覚をしている。一口でそこまで理解されるのなら作った者も本望だろう」

留美「手の熱で香りが昇ってくる……。複数種の葡萄を使って作るボルドーらしいワインね。深くて、落ち着くし――葡萄が育った土地が見えるみたい」

P「……家帰ったら買っとこう」

まゆ「うふふ、まゆは葡萄ジュースですよ?」

真奈美「――さて?このワインに相応しい料理を君達は提供してくれるのかな?」

愛梨「はい!もちろん!」
41: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:37:12.02 ID:WLnDyA0B0

留美「切り分けるのは自分でやっていいのかしら?」

愛梨「はいっ、その為の仕掛けもしてありますから!」

P「おお……パイ生地がサクサクだ」

真奈美「何だと?……これは――」

楓「わ、パイを開けるとお肉の香ばしさと一緒に爽やかな甘い香りも昇ってきますね」

留美「これ――林檎だわ。焼き色を付ける時に林檎と一緒に炒めたのね」

まゆ「意外に思われるかもしれませんが、りんごは豚肉などと相性のいい素材です。酢豚におけるパイナップルのような、林檎酸のお肉を柔らかくする効果を持っています」

楓「それに林檎のウッドチップは燻製にもよく使われていますよね。マイルドで優しい風味に仕上がるんですよ」

P「他にもタイムとローズマリーの若葉を巻き込んでましたっけ。肉料理ではよく見る組み合わせですけど……木の実のような物も確認出来ますね。これは?」

まゆ「ジュニパーベリーですねぇ。松の実に似た香りで仄かな苦味と甘味のある木の実です。日本語では西洋杜松の実と言って、抗炎症作用や……強精、作用があるハーブですよぉ?」

菲菲「お肉良かったからハーブ控えめなハズヨ」

P「うん、飽くまで肉が主体って感じだな。戴きまーす――うわっ?!脂がッ……うまっトロける……ッ!!」

楓「赤身主体なのに――柔らかくて、凄い肉汁が溢れてきて、でもサクサクした噛み噛み応えもあります……っ」

留美「その脂もしつこくないどころか甘味さえ感じるわ――それに巻き込まれたソースがまったりとよく絡むの」

P「ワインの風味を損なう事なく、でも香味野菜の風味とハーブのホロ苦さ爽やかさはしっかりプラスされてて――そこに肉汁の旨味に乗ってキツ目の塩分と香辛料が舌を襲って――痺れるんです!」

楓「この香辛料、黒胡椒だけじゃありませんよね。粉山椒――花椒?ううん、五香粉かも!」

P「この肉、ブランド品だよな?産地は?」

愛梨「米沢の手ノ子牛です!今回はしっかり食べたいという事でしたのでランプ肉を使いました!」

留美「最高品種ね。米沢は明治の初めから牛の畜産を行っている地域。その中でも飯豊、手ノ子は別格と言われているブランドだわ。その美味しさは体温で油が溶けると言われるほど。ランプもサーロインに次ぐ味わいのある赤身肉で、肉のきめが細かく風味もあり、サシも適度に入っている部分。包み焼きに適している部位だわ。でも、この肉汁の量は一体――」

真奈美「――なるほどな。洋と中の合作か。いや、恐れ入った」
42: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:39:20.42 ID:WLnDyA0B0

P「何か分かったんですか?」

真奈美「見た目通りのフランス料理ではないという事だよ。――まずこの肉、焼き目を付けるときに蜂蜜を使ったな?」

菲菲「正解ダヨ。中華では豚や家鴨なんかによくやるネ」

まゆ「日本でも蜂蜜は照り焼きなんかに使いますねぇ」

真奈美「私が不思議に思ったのは、パイ生地が殆ど湿気っていない事なんだ。通常、包み焼きというのは素材から出る水分でどうしてもパイが湿気る。これだけ良い肉だったら溢れる肉汁もプラスされて底から染み出していてもおかしくない筈だろう?」

楓「フレンチのお店ではそれを嫌って客の前で取り分けて食べさせない所もありますよね。せっかく美味しそうな焼き色が付いてるのに……」

P「それを蜂蜜で肉の表面をコーティングして防いだって訳ですか?」

真奈美「それだけでは無理だ。この料理ではそこに更にプラスしてソースも中に抱き込んでいる。つまり肉の隙間から何時水分が溢れ出してもおかしくない状態の筈。それなのに――」

留美「そういえばこのソースやけに肉に絡むというか――――ジュレ状になってるわ」

楓「あ、それで片栗粉を……」

真奈美「ああ、フランス料理でソースにトロミを付ける場合は、通常小麦粉や卵黄、若しくは煮詰めて濃縮する等のリエという手法が取られるが……これらの方法では味に影響が出てしまう」

留美「卵黄は元より、小麦粉もグルテンというタンパク質が含まれているから、それが味に出てしまうのよ。煮込んで水分を飛ばすのは言わずもがな。風味が飛んでしまうわ」

まゆ「でも、おかしくないですかぁ?オーブンから出して三十分は経っています。片栗粉は塩分を含ませると、いくら保温してもトロミは弱くなるはずですよ?」

真奈美「油だ」
43: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:41:43.22 ID:WLnDyA0B0

P「油?」

真奈美「中華料理でよく使われる技法だ。片栗粉を糊化させた後、少量の香油を混ぜる事で糊化は長時間持続されるようになる」

留美「澱粉粒子はとても分子量の大きい構造体よ。水中でそれを加熱すると糖鎖が壊れて広がり水分子を抱え込む事になる。これが糊化。でも澱粉は水分子を抱え込んだだけであって、水中に溶けた訳ではないの。だから時間が経つに従い、水分子を遊離して再結晶化する。これが老化」

真奈美「油は澱粉の分子構造間に入り糖鎖が壊れた状態の澱粉を支える役割をするんだ。これが加熱して時間が経っても失われない、このソースのトロミの正体だ」

まゆ「なるほどぉ。ソースをジュレ状にするには普通ゼラチンを使うかと思いますが、それではオーブンの加熱で溶けていまいますもんねぇ」

愛梨「はー、皆さん随分物知りなんですね」

楓「加えて赤身肉に足りない油分を補充する役割も兼ねてますね。普通包み焼きで脂というとフォアグラを使うと思うんですけど、この料理はこのお肉から採った脂を使っているので味に無理がありません」

真奈美「それが肉の中にしっかり包まれた状態でパイの中で蒸し上げられた。つまりこの料理は焼き、蒸し料理であると同時に、煮込み料理でもある、という訳だ」

P「でも、それだけじゃ肉から出る油は防ぎきれないと思うんですが」

真奈美「ああ、だから三つ目の工夫。――オブラートだ」

楓「そう言えば巻き込む時に使っていましたよね。でも、それらしい舌触りは感じませんでしたよ?」

留美「ええ、肉の表面には香ばしく焼かれたあの独特の感触が残っていた。オブラートも澱粉なんだから水を吸えばワンタンの皮のような食感が肉に張り付く筈」

真奈美「肉に巻いたんじゃない、パイ生地の間に挟み込んだんだ」

まゆ「――本当ですねぇ、パイ生地の層毎に生地と一緒に焼けたオブラートが確認できます。という事は――」

真奈美「生地が焼けて膨らむに連れて肉から離れ、しかし水蒸気はパイ生地を湿らせず内部に密閉された釜を作り上げた。例えるなら巨大な洋風小龍包――これは君の案だな?」

菲菲「是!中華の技マダマダいっぱいあるヨ、ソレ見せたかっタ。でもソレ理由あるネ」

P「あ、それは俺も分かる。このパイを守りたかったからだろ?すげぇ美味い」

菲菲「好!愛梨のパイとても美味!これは私も敵わないヨ!」
44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:43:43.52 ID:WLnDyA0B0

楓「お肉の存在に負けないくらいのサクサクした食感。軽い風味と程よい塩分でまるでクラッカーみたいになってます」

留美「夕日色まで焦げ目の付いた小麦粉の美味しさは魔力的だわ。時々歯に当たるこの感触は胡桃ね?いいアクセントになってる」

まゆ「それにアマレットでしょうか?杏の風味が小麦の香ばしさと合わさって、口の中でも燻ってるみたいです」

真奈美「そしてバターだ。これも普通の物ではないぞ」

留美「確かに。普通バターに感じる乳臭さが……全く無いわ。それどころか油その物に香ばしさを感じる。これって――」

楓「これ……ギーですね。凄い、同じ油なのにクドくない所か軽さすら感じるなんて」

真奈美「ほう、知っていたか。インドや中近東で使われている澄ましバター。乳酸発酵させた乳を攪拌凝固させた後、黄金色になるまで加熱して漉した純粋な乳脂肪分だ。糖分、蛋白質等の不純物を全く含んでおらず、料理から薬品まで用途は広い」

愛梨「今回は及川牧場に連絡して雫ちゃんに特別に用意してもらいました!朝一番の搾りたて特濃牛乳を使用した出来たてほやほやのバターですよっ!」<ガンバリマシター

P「アーユルヴェーダなんかに使われている物ですよね。美肌効果に高い作用が――――スイマセン、観客席からすごいプレッシャーを感じるんですけど」<ショウサイヲオシエナサイッ!

真奈美「まったく、乱入はしないでくれよ……香ばしさの正体は加熱の際のメイラード反応。ギーの香り高さは数ある油の中でも頭抜けた物だよ。フランス料理では似た物にブール・ノワゼットというバターソースがある。十時君の着想はこちらからかな?」

楓「アップルパイ・プリンセスの面目躍如、という訳ですね。ふふっ」

留美「皿に添えられた甘酸っぱいベリーソースがまたこのパイ生地に合うわね。欧州ではこういったソースもステーキに使ったりするけど、中は苦味のあるジュニパーベリーだった。これはP君の好みを見越しての事かしら?」

P「えぇ?肉に甘酸っぱいソースを掛けるんですか?それは……」

愛梨「はいっ。えへへ、男の人は甘味と酸味じゃなくて塩味と旨味で攻めろって、お母さんが」

まゆ「……実用的な教えですねぇ。うふ」

真奈美「付け合せは逆にシンプルに徹しているな。マッシュポテトにはレモン果汁とドライパセリ。爽やかに仕上がっている」

菲菲「そうダヨ。いくらこの肉美味しい言っても、ここまでの油はしんどいヨ。さっぱりしたいネ」

楓「こちらの温野菜もほんのり塩味が付いているくらいでほぼ素のままですよね。でもフレンチはソースの味が濃いから、嬉しい……」

まゆ「それぞれの素材を別の鍋で煮ていましたよねぇ」

真奈美「――うん、野菜毎の美味い茹で加減を知っている味だ。好感が持てるよ」

留美「そして茸のチーズソテー。それら一皿に飾られた料理をワインが更なる深い味わいに彩ってくれてる。――これを選んだのは貴女?」

愛梨「いいえ志乃さんですっ。私はまだ未成年ですから。それに私お酒には弱くって」

留美「あら、そうだったわね…………弱い?」
45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:46:12.77 ID:WLnDyA0B0

愛梨「はいっ、お菓子作りの時も蒸発したラム酒で赤くなっちゃうくらいで……」

P「あ、愛梨さっき転けたのってまさか――」

みく「PチャンPチャン、みくお腹すいたにゃ」

P「また乱入かよ……ほれ五円やるからとっとと帰れ」

みく「幸子チャンの時より値段下がってるにゃ?!」

P「ちひろさーん、みくを連れて……って気絶してる?!」

みく「猫は野生の魂を持ってるにゃ。自分の欲望に忠実なのにゃ♪」

P「殴り倒したのか……命知らずな奴め……」

愛梨「あのー、今度みくちゃんの分も作ってあげますから……」

P「ほら愛梨もこう言ってくれてる。大人しく引っ込めよ」

みく「ふんだ!お前みたいにPチャン誘惑する奴の言うことなんか聞ーかなーいにゃー。それにみくは今お腹すいてるんだにゃ!」

P「我侭な……しかも誘惑ってなんだそりゃ?愛梨は色仕掛けなんてしてないぞ」

みく「ふんだ!Pチャンはコイツの色香に騙されてるにゃ!その証拠にぃー、……コイツ料理中にブラのホック外してたにゃっ!!ぷるんぷるんにゃっ!!野生の目は誤魔化せないにゃ!!」

P「え?」

楓「まあ?」

真奈美「全く……」

留美「頭痛くなったきたわ……」

まゆ「…………………………………うふ?」

菲菲「愛梨またヤったか。練習中も気ついたら服減ってて大変だったヨ」

P「………そういや随分……え?お前ホントに酔ってるのか?」

愛梨「………………え、えへっ?――――ち、ちがっ、違うんです!これは……そう!暑くて!キッチンの中が暑かったからなんですっ!別に決してやましい理由があった訳じゃ――」

P「あー、もう分かった分かった。もう審査終わりだから奥で直してこい。みくも一切れやるから応援席に帰れ」

みく「ホントー?!さっすがPチャン!やっさしいにゃあ!ん――まいにゃあ!って……何これマジうまぃ?!Pチャンばっかり美味しい仕事取ってズルイにゃ!みくにもっとぎゅ?!」

P「あーはいはい。だまれダマレ口塞げ。後でちひろさんに謝っとけよ。無駄だろうけど」

愛梨『――もう、上手くいかないなぁ……』

菲菲『――小細工よくないヨ?真っ直ぐ大事ダヨ』

P「まゆー?どこ見てんだよ、次の審査に移ろうぜー」

まゆ「……………………うふ、ふふふ?それでは――三組目の審査を終わります、ね?」

P「ごちそうさまでしたっ!」
47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:47:56.24 ID:WLnDyA0B0



瑞樹 チーム・Triad Prims、渋谷凛&神谷奈緒&北条加蓮の供する料理はこの一皿――――

   ~肉じゃが~

   丁寧に煮込んだ肉じゃがを藤原肇提供の備前緋襷の器によそった逸品です。



凛「……笑っていいよ」

P「何を言うんだ。凛達は全力で作ってくれたんだろう?もっと自信持ちな」

加蓮「でも……」

留美「確かに料理は見た目や複雑な工程も楽しむ物だけど、それは一要素に過ぎないわ」

楓「肉じゃがも立派な料理です。家庭的な味わいで、私はとても好きですよ?それに器も選ばれいてとても可愛い……」

真奈美「うん、加えて過去に肉じゃがで鉄人に勝った主婦もいるんだ。馬鹿にした物ではないぞ?」

奈緒「え?マジで?」

P「お前達が試行錯誤しながら練習して来たのは見ててちゃんと伝わってるよ。実際、美味そうだ」

まゆ「うふふ。では皆さん、最後の審査です。戴きましょうか」

真奈美「……む」

留美「……これは」

楓「……あら」

P「――――あ、」

まゆ「――うふ。お味はいかがですかぁ、皆さん?」
48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:51:37.43 ID:WLnDyA0B0

楓「このじゃがいも、一度蒸されてますね。少し煮崩れてますけどその分味が染みて――」

留美「お肉も酒と生姜で臭い消しと香り付けがされているわね。肉じゃがに生姜は意外な組み合わせだけど、さっぱりしていて美味しいわ」

真奈美「隠元の彩もいいアクセントになっている。定番だが安心感のある組み合わせだな。それに人参の皮を剥いていない事もポイントだ」

加蓮「……ぇ?」

まゆ「あら、減点対象かと思いました」

真奈美「サラダの類ならな。しかし現代の西洋人参はどんな料理にでも合うように品種改良で風味が弱くなっている。特に肉じゃがではじゃが芋の抉味、玉葱の甘味、何よりも肉の脂で人参は没個性になりがちだ。減衰する風味を補完する意味で皮を残す――というのは評価ポイントだと私は思う」

留美「そもそも人参は出荷時点で大雑把に皮は剥かれている物よ。普段皮だと思っている物は内鞘細胞という香り成分や、ポリフェノール、旨味が豊富に詰まっている部分。きれいに洗ってあれば問題ないわ。乱切りにしてしまえば煮物に使っても大丈夫」

まゆ「――だそうですよ。良かったですねぇ、加蓮さん」

加蓮「あははー……」

凛「加蓮……」

楓「それに何といってもこの大根!肉じゃがに入れるとこんなに美味しくなるんですね、私知りませんでした」

真奈美「肉じゃがの定義からは少し外れる素材だが、確かに美味い。この大根は米のとぎ汁で下茹でしたな」

奈緒「え?そんな事まで分かるんだ」

留美「大根特有の水っぽい灰汁が抜けてるわ。とぎ汁に含まれる澱粉は大根の苦味や辛味の成分を吸着し、円やかでふっくら仕上げる事が出来る。料亭でも使われている技よ」

奈緒「へー、母さんがやってた事そのまま真似しただけなんだけどなぁ」

真奈美「いい母御殿だな。他にも一度凍らせる等の下処理法があるが、甘味のある肉じゃがにはこちらの方が合っているだろう。糸蒟蒻もちゃんと熱湯で湯掻いて臭みを取っている」

楓「プツプツした歯触りは他のどの食品にもない触感ですよね。ホクホクしたじゃが芋との違いが楽しいですっ」

留美「それぞれのバランスも良くて、飲み込む度にお腹にじんわりと熱が広がっていく……この感覚は久しぶりかもね」
49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:53:28.60 ID:WLnDyA0B0

P「………………うーん」

まゆ「Pさん、どうかしましたかぁ?」

P「いや、――なんだか凄く懐かしい味がして」

真奈美「ふむ……P、君の出身は何処だったかな?」

P「え?関西です。ただ、母は九州の出身ですが」

真奈美「ああ、合点した。それは出汁の所為だな――ふふ、始めから一点突破狙いだった訳か」

楓「出汁は地域によって素材が違うんですよ。関東は鰹で関西は昆布、これは有名ですが九州、四国ではそこに煮干が加わります」

留美「高度経済成長期、九州の人達は大量に大阪近傍に出稼ぎに出たわ。主に地理的に首都より近かった事が要因だけど、その数は大阪にいる人達だけで同窓会が開ける数よ。そしてそこで九州と関西の料理文化も混じり合った」

真奈美「これは煮干と昆布の合わせ出汁だよ。先のアゴ出汁と違い、料亭向けではない雑味のある味、しかし鰹節では出ない魚そのものの風味が楽しめる素材だ」

留美「私達日本人が赤ん坊の頃から味わってきた昆布のグルタミン酸と魚介のイノシン酸。この二つは味の相乗効果もあって、醤油や味噌との相性は抜群にいい。素材が少ないのも逆にそれぞれの旨味を引き立てるように働いているわね」

楓「ええ、これまでの料理は昆布出汁は使われていませんでしたから懐かしさも一入です。風味の強い物が多かったから舌が吃驚してしまって……ほっとする味ですね」

真奈美「そういうわけだ。十分検討に値する一皿だったと私は思うよ。――美味しかった、ご馳走様」

加蓮「やったね凛」

凛「……ヤバイ。かな子の気持ちが分かる。木場さん達に褒められるとホントに嬉しい。プロデュサーに褒められるより嬉しいかも……私も泣きそう」

真奈美「……そんなに厳しく接していたつもりはないんだが……考えを改めた方がいいんだろうか」
50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:55:56.10 ID:WLnDyA0B0

奈緒「あははっ、Pさんも美味かったか?」

P「うん。胃が解けるというか――――安心する」

奈緒「そっ、――んな真剣な顔で答えられると恥ずかしいっつーか……」

P「――――――」

凛「?、どうかした?」

P「ん、――いや、お代わりくれ。後ご飯ある?」

加蓮「……まだ食べるの?男の人の食欲って凄いね。私はその半分でお腹いっぱいなのに」

まゆ「うふふ、それではこれで全ての審査を終了したいと思います。皆様、封書をお配りしますので思う評価を連ねて下さいね」

楓「うぅん、迷いますね」

真奈美「P、全員満点は論外だからな」

P「う、バレましたか」

まゆ「気にしないで、思うところを書いてください」

留美「そうよ、例えここで負けても彼女達にはまだ先があるんだから」

真奈美「普段の仕事と同じだ。褒めるだけでは人は伸びない。欠点と直面するからこそ成長するんだ」

P「ああっ、仕事の事まで考えると余計迷ってしまいますよ」

楓「ふふっ、あの娘達が羨ましい……」
51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:57:50.08 ID:WLnDyA0B0



まゆ「――ここに勝敗の行方は記されました。結果は神のみぞ知る所ですが、今はまだ、祝福の鐘の音が彼女達の何れにも響くように願いたいと思います。

   紡がれた想いが花開くのは誰なのか。

   固く塞がれた愛の結実は、今、私の手の中に。

   ――――――――結果、発表です」



瑞樹 審議の舞台は幕を閉じた。少女達の想いを込めた一皿は愛の妙薬と成るのか否か。神の御手を差し伸べられるのはどの恋か――――


53: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:03:45.09 ID:8JiXQA3J0



まゆ「――――50分。貴女達は乙女の魅力を存分に現しました。

   私達の耳目は余さず貴女達に奪われ、その告白に想い人も又――――魅せ付けられた事でしょう。私は貴女方全てを賞賛したい。

   しかし、彼の人の胸は一つだけ。貴女達の想いが実と成る為には剪定の儀式を行わなければなりません。


   ――――後は緞帳を降ろすのみ。


   泣いても笑っても月桂冠を頂く勝者は唯一組。さあ、それでは発表します――――」


瑞樹 全力で恋の迷路を駆け抜けた50分間。否、思い起こせば想い人に触れたあの瞬間に、懊悩を重ねる彼女達の苦悩は始まっていたのでしょう。

   迷い、嘆き、苦しくもあった。しかし焦がれるあの人は出口で両手を広げて待っている。

   ああ、君よ君よ。どうかその腕で私の体を抱き留めて欲しい。想いは既に、貴方の元へと届けたのだから。

   情動に駆け抜け、思慕する彼の人の元へと飛び込んだのはどのチームか?今、ここに示されます――――


54: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:06:05.36 ID:8JiXQA3J0






まゆ「勝者、――――チーム・Triad Prims!!」





56: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:07:35.93 ID:8JiXQA3J0

凛「えっ?私達?」<Yeaaaaaaaaaaaaaaaah!!

加蓮「ちょっ、ちょっと待ってよ……!!」<オメデトオォォオオオォォォォオ!!


瑞樹 採点表が入ってまいりました。<ミンナガンバリマシタ!!

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   従って、僅差を制し栄光を掴んだのはチーム・Triad Prims。<パチパチパチパチパチ!!
   惜しみない万雷の拍手が称賛の嵐と共に三人の少女に送られます。<パチパチパチパチパチ!!


奈緒「まって……っ!待てって!流石におかしいだろ!これは!!」<パチパチパチパチ――

真奈美「ほう?私達の判定に不満があると?」

奈緒「あるよ!……だって、――だってさ」

凛「――私達のチームは一番出来が悪かったと思う。だからこの結果は納得いかない。これじゃ……まさかとは思うけど」

留美「不正があったんじゃないかって事?逆の意味の話なら持ちかけられたけどね。『番組的に面白くなるから厳しく審査して下さい』って」

加蓮「嘘……み、皆だっておかしいと思うでしょ?!」

葵「うんにゃ?」

かな子「順当だと思いますよ?」

加蓮「そんな……っ!」
57: >>56 罫線ズレまくりや… 2013/05/06(月) 00:09:54.91 ID:8JiXQA3J0

留美「採点表をよく見てみなさい。P君の一位選出は貴女達よ」

奈緒「?それに何の意味があるんだよ?」

真奈美「やれやれ、この類の話は君達の審査の冒頭でした筈なんだがな。――今回のテーマとリクエストを答えてみなさい」

凛「愛と……がっつりイケる物、でしょ?」

楓「いいえ。愛と――"プロデューサーが"がっつりイケる物、です」

菲菲「考えれば当然だったヨ。プロデューサーさん、美味しいはアイドル連れていっぱい食べてるヨ」

響子「それでも足りない何かが欲しかったって事ですよね。――私の特技そのままだったのに……失敗したなぁ」

留美「私達の採点基準にはもちろん、技巧や美しさ、革新性なんかも加味しているわ。でも、それもテーマとリクエストに添っていればの話」

楓「プロデューサーは三チーム分の料理を完食した後なのに、貴女達の料理はお代わりまでした。それが答えですよ」

加蓮「……なんだか釈然としないわ」

愛梨「まあまあ、せっかく勝ったんですからパーッと祝勝会でもしましょうよ」

真奈美「まったく……君達は今回、何故肉じゃがを選んだんだ?というか何故出場した?事務所の面々には等しく出場機会が設けられていたが、実際出場したのは君達四組だけだ」

加蓮「それは――私達には肉じゃがで精一杯だったっていうのと――――……今度、食べさせてあげるって約束、してたから」

響子「えッ?!そんな約束してたんですか?!私は誘っても何時もスルーされるのにっ?!」

法子「びっくり。最初から勝負は決まってたんだね」

奈緒「ちょッ!勘違いすんなよ?!そう言う意味じゃねぇからなっ!!」

菲菲「じゃあどういう意味ヨ」

奈緒「そりゃ……Pさん最近寂しそうな目してる時あったからさ、およ、家庭的なモンがいいんじゃないのかなって……恥ずかしい事言わせんなよっ!!」

法子「え、プロデュサーホームシックだったの?全然気づかなかったよ……」
58: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:13:20.88 ID:8JiXQA3J0

真奈美「料理は供する相手が在ればこそ魅力輝く物になる。君達――特に凛はPがこの事務所に来た時からの仲なんだろう?それだけ他の者より信頼関係が築けていて、互いに理解し合えていた結果という訳だ。ほら、P」

P「……あー、凛、奈緒、加蓮。優勝おめでとう。これトロフィーと王冠と花束」

奈緒「――まぁ、納得できない事はあるけどさ、Pさんが祝ってくれるっていうんなら、受け取っとく。ありがとう。へへ……」

P「心配掛けてたみたいだな。そんなつもり無かったんだけど」

加蓮「ちゃんと休みも取ってよ。したい事するのも大事な事なんだから。――これは王冠じゃなくてティアラって言うの。ね、Pさんが着けて」

P「大丈夫、今はお前達といる事が俺のしたい事だ。似合ってる……どうした凛?」

凛「……………スターチスとワレモコウ」

P「おう、綺麗だろ。俺が選んだんだぞ……花束に顔突っ込むなよ」

凛「うるさい。バカ。こっち見ないで」

P「はは、照れるなよ――――これからもよろしく、凛」

凛「――――、なっ」

まゆ「うふふふふ。ここでお時間が来てしまいました、『MAYU'Sキッチン in キッチンスタジアム』。お楽しみいただけましたかぁ?視聴者の皆さんも、今晩はぜひ愛する人と食卓を囲んでくださいね。それが何よりの調味料になるでしょうから。名残惜しいですが、それでは皆さん――良い愛を」



瑞樹 沸き起こる喝采は少女達の愛への賛歌か前奏曲か。恋の果実は未だ青く、熟成の時は杳として知れず。

   少女達が歌い踊った夢回廊に恋慕の想いは満ちたのか。帳に隠れた甘美な恋に乾杯を。今宵は収穫の夢に酔うとしよう。

                         ―――― La fin de cuire.


59: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:15:35.12 ID:8JiXQA3J0

とりあえず本編終わりです。後おまけがちょっとだけあります。
60: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:22:06.79 ID:8JiXQA3J0

奈緒「だーっ!終わんねぇ!……そっちどうよ?」

加蓮「全っ然っ。っていうか話しかけないで。ただでさえ意味分かんない漢字とか数字とかで頭いっぱいなのに」

奈緒「凛は……結構余裕そうだな」

凛「うん。家でも発注とか帳簿付けやってるし。……規模が違うけど」

加蓮「あの二人、本当に毎日こんな仕事こなしてたの?」

凛「これでも一部って話だけど」

奈緒「分身でも使わないと無理だろそれ。っていうか何であたし達がこんな……やべっ」<コンコン

留美「失礼します社長。進捗の程は如何でしょうか」<ガチャ

奈緒「まだ……全然……です」

凛「こっちも……です」

留美「――――…………チッ」

奈緒「……なあ、今舌打ちされたよな」

凛「……かなりキてるね。マジでキレちゃう5秒前?」

奈緒「……想像できねぇ」

留美「無駄口叩かないで手を動かす」

凛&奈緒『ハイ。スミマセン……』
61: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:23:26.43 ID:8JiXQA3J0

加蓮「……分かんなぁーいっ!和久井さんこんなの私達じゃ無理だよ!」

留美「泣き言を仰らないで下さい。現在は名実共に貴女方がCGプロの社長及びプロデューサー代行です。その承認が終わらなければ下の者に仕事が廻らなくなるばかりか、契約他社にも影響が出てしまいます」

加蓮「それは分かってるけどぉー……」

凛「まさか本当に二人の代行をさせられるなんて思ってなかったし……」

奈緒「なんだかんだ言って一日駅長みたいなノリのイベントやらされるのかと……」

留美「ちひろさんのイタズラがそんな細部まで詰められている訳が無いでしょう。それに報酬の社長代行もP君の有給消化も貴女達が望んだ事な筈よ」

加蓮「そおーだけどぉー……」

凛「……せめてプロデュサーの有給は別の日にずらすべきだったね」

奈緒「いや、でもそれが目的であの番組に出たんだし……」

留美「しっかりして。これでも法務確認と契約、決算書作成なんかはこっちで持ってるんだから。貴女達が出来る仕事しか廻していない筈よ」

奈緒「確かに単純作業的なもんが多いけど……量が尋常じゃないんだよ!量が!!」

加蓮「あの二人ホントにこんな仕事量毎日やってたの?!やった端から書類とかメールが送られてきて逆に増えてるんだけど!!」
62: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:24:28.81 ID:8JiXQA3J0

留美「後一時間で終わらせて下さい。繰り返しますが、本日の予定は11時迄に企画と予算の承認。12時からMobage TV社屋にて企画部長との会談。12時半より同社屋にてクロスメディアに於ける消費者マーケティング会議出席並びに演説。13時45分より株式会社バンダイナムコゲームス社にて商談確認。15時より省庁にて総務省事務方との面会、企画提出。17時より都内祭場にて同業20社との懇親会。帰ってからは中期経営計画の策定会議に出席してもらいます。他に時間がありません」

奈緒「ちょっと待てよ?!何か不穏な単語が結構聞こえたぞ?!」

加蓮「あーっ!もうやだぁ!!お腹痛いからお家帰るぅーっ!!」

凛「鬼だ……鬼がいる……」

留美「総会に捩じ込まれなかっただけ有難いと思う事ね。それとこれは先月分の経費です。目を通しておいて下さい」<ドサッ!

奈緒「もうダメだ……」

加蓮「ホントにお腹痛くなってきた……」

凛「……和久井さん」

留美「何でしょうか、渋谷プロデューサー代行」

凛「――――無理、かな?……えへっ☆」

留美「はぁ……――――、……人を増やします。貴女はこのまま事務処理を、――神谷、北条両社長代行は出発の準備をして下さい」

奈緒「え?でもまだ時間は――」

留美「部長会談の前に飛び込み営業に行きます。貴女達に必要なのは度胸と慣れよ」

加蓮「ア――――ッ?!モウヤダキコエナイィ――――ッ!!!!」

留美「逃げるな」<ムンズ

奈緒「ごめんなさいすいませんガキが調子乗ってました許してやめて凛たすけ――――――…………」<パタン

凛「――………………おおぅ」
63: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:26:31.47 ID:8JiXQA3J0

まゆ「調子はどうですかぁ、凛さん?」<ガチャ

凛「わっ?!――――って、何だ、まゆか」

まゆ「和久井さんに事務処理を言い付けられました。凛さんはプロデュサー代行でしたよね?」

凛「う、うん。でも外回りは木場さんがやってくれてるからまだマシ、かな」

まゆ「うふふ、Pさんの日頃の苦労が偲ばれますねぇ。でもびっくりしました。朝いきなり『プロデュサーは今すぐ有給消化しないとクビにする』なんて言い出すんですから」

凛「あはは……やっぱり急すぎたよね」

まゆ「はい。おかげで皆さんアイドル業務とスケジュール調整に自己プロデュースと上へ下への大騒ぎですよ。引き継ぎも最低限しか出来ていませんでしたし」

凛「……ゴメンなさい」

まゆ「うふふ、でも関心はしました。これで事務所の皆さんもPさんに頼りすぎだった事が分かるでしょうから。さすがに無理やり休みを取らせるのは予想外でしたけど」

凛「……ね、まゆ、聞いてもいい?あの番組にプロデュサーをゲスト出演させたのはまゆなんだよね?何処まで予想――予定してたの?」

まゆ「全部ですよ?」

凛「全部って……」

まゆ「ちひろさんが社長代行権を賞品にしたのも、Pさんがここの所ナーバスになっていたのも、Pさんをゲスト出演させたのも、Pさんが貴女達を選ぶであろうことも、貴女達がPさんのために行動を起こすであろうことも、それらのために皆さんのスケジュールを少し弄ったのも、全部です」

凛「ホントに?」

まゆ「あ、Pさん最近カップ麺ばかりでしたので栄養を摂らせようとも思ってましたねぇ。うふふ。最近はアイドルと距離を取ろうとしてか、誰からの接触も避けていたようですから。お弁当も受け取ってもらえなかったんですよ?」

凛「………………」
64: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:30:44.35 ID:8JiXQA3J0

まゆ「ですから、貴女達の予想外な行動には少し慌ててしまいました。凄いですね、凛さんは」

凛「……まゆはさ、何でそこまでしたの?」

まゆ「Pさんとは最近夕食をご一緒する機会がありませんでしたから。とっても美味しかったですよ、あの肉じゃが」

凛「……そう言う意味じゃ――――、まあいいや……すごいね、まゆは。私には出来ないかな」

まゆ「まゆも、凛さんにはなれません」

凛「……プロデューサーはさ、大体の事は気付いてるみたいだった」

まゆ「あの花束ですか?」

凛「うん。感謝とか、変わらない誓いとか、そんな感じ。私達が心配してる事とか知ってて、その上で私達をトップアイドルにする夢は諦めないぞって――そう言う意味だと思う。たぶん、まゆの事もね」

まゆ「うふふ、流石Pさん。ロマンチストですねぇ。でも、花束の意味はそれだけじゃないでしょう?……スターチスとワレモコウ、それに――――オドントグロッサムとニセアカシア……も、ありましたっけ」

凛「なんの事かな?」

まゆ「なんのことでしょうか?」

凛「…………負けないよ」

まゆ「当然です。うふふ」

凛「もう……早く仕事を片付けちゃおう。11時までにこれ全部終わらせないと大変な事になるらしいよ」

まゆ「不可能です。人を増やしましょう」

凛「そうだね。ちひろさんに押し付けちゃおう。事の元凶なんだし」

まゆ「うふふ、賛成です」

凛「でも一筋縄で行きそうにないね。どうしようか?」

まゆ「どうにでも。私達なら簡単ですよ」

凛「ふふっ、それもそうだ。じゃあここは一つ、――――共闘と行こうか?」


                                おわり
65: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:33:41.26 ID:PWy0W0IAO

クッソ腹ヘった
67: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:37:23.65 ID:HDzDTxUlO
乙ー

腹減った……コレはある意味テロだわ
70: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:30:14.44 ID:nsfmA/dAO
乙、腹の減るグルメってか良いバトルモノだった

身体が熱くなるな、これは

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