修道女「雨にも負けず風にも負けず」男(何だコイツ?)

1: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 01:23:17.031 ID:/X60e+V0aUSO
男(あれからどれくらい経っただろうか)

男(国の為に、戦友のために、愛する者の為に命を懸けて――)

男(そのはずだった)

男(帰ってきて、俺を迎えてくれたのは罵詈雑言の嵐)

男(国の為に戦ったはずだ……)

男(赤子殺し、人殺し、悪魔――散々な言われよう、迫害も同様)

男(そして、国に置いてきた愛する女)

男(俺が遠い異国にいる間、他の男を作って消えた――私はあなたにとって何なの?)

男(そんな言葉を残して)

男(俺の傍には何も残らなかった。俺を置いて死んでいった戦友、蒸発した母親と戦死した親父、愛した女……。何もかも)

男「生きている理由など何も――」

ガタッ

男「――!?」
3: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 01:32:14.294 ID:/X60e+V0aUSO
男「最近はこの街もろくでなし共が集まるようになってきたからな……」

男(銃を持っていくか)

 ガタッ!

男「……」

男「――誰だ」

修道女「……」

修道女「いったぁーい……」

男「……」

男「おい」

修道女「あっ――し、失礼しました!!」

男「泥棒にしちゃ随分と派手な登場だな」

修道女「ど、泥棒なんて失礼な! そんなんじゃありません!」

男「なら、なぜこんなところにいる」

男「街の外れ――クソみたいな俺の家の前に」

修道女「そ、それは……」

男「やっぱり泥棒か……」スチャ

修道女「そ、そんなものを私に向けないで下さい!!」

男「正当防衛だ。お前は泥棒だろ?」

修道女「だ、だから違いますっ!」

男「なら、何だ?」

修道女「し、シスターです……」
5: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 01:41:30.348 ID:/X60e+V0aUSO
男「シスター……見れば分かる」

修道女「そ、そうでしょう!? 私は泥棒じゃありません!」

男「それじゃ――シスターさんが俺に何か用か? 残念だがこの街には神はいないみたいだ」

修道女「……」

修道女「ええ……。だからこの街へ来たんです」

男「……」

男「熱心なことだな」

男「この街には教会はない――神が見捨てた教会ならあるけどな」

修道女「神が見捨てた……」

男「ああ」

修道女「それです!!」

男「はっ?」

修道女「その教会へ私を案内してください!!」

男「どういうことだ?」

修道女「その教会を目指していたはずが……迷ってしまったんです」

修道女「うぅ……」

男「……」

男「それで、ここへ?」

修道女「……」

修道女「は、はい……」

男(こいつアホだな)
6: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 01:52:01.132 ID:/X60e+V0aUSO
修道女「あ、『こいつアホだな』とか思いましたね?」

男「……」

修道女「なんとか言って下さいよ」

男「それにしても、シスターね……。今日は仮装パーティか?」

修道女「どういうことですか?」

男「神職に就いてる人間にしちゃ、世俗的な恰好じゃねぇか」

男「やけに丈の短い修道服……。そういう集まりでもあるのか?」

修道女「な――! ち、違います!」

修道女「こ、これは……。お、オシャレです……」

男「おい、『おしゃれ』なんて言葉が出やがったぞ。シスターから」

修道女「か、神は許して下さいます……」

男「その言葉が免罪符か?」

修道女「ちょ、ちょっとくらい……いいじゃないですかぁ」

男「お前――やっぱり泥棒だろ」

修道女「だ、だから違います! 物騒なそれをしまって下さい!!」
8: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 02:00:21.850 ID:/X60e+V0aUSO
男「それで、『教会へつれてけ』だったか?」

修道女「な、なんて清き心の持ち主なんでしょうか――神の祝福がありますように」

男「誰もつれてくとは言ってないぞ?」

修道女「……」

男「無言の訴えか……。無駄だ」

男「お前はどうも怪しい」

男「リスクは避ける。それが生き残るコツだ」

修道女「……」

修道女「哀れな心に、神の御心がありますよう――」

男「ハレルヤ」

修道女「嘘ですごめんなさいお願いですから銃をしまって……!」

修道女「うぅ……」

男(見るからに怪しい奴だが……。こいつが俺をはめて何の得がある?)

男(金もねぇ、財産もねぇ……)

修道女「それでは、道のりだけ教えてくださいますでしょうか……?」

男「……」

男「ついてこい」
9: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 02:18:38.793 ID:/X60e+V0aUSO
修道女「……!!」

修道女「ここが――その教会ですか?」

男「ああ」

修道女「こ、こんな近くにあったなんて……」

男「……」

男「それで、この廃墟に何の用だ?」

男「俺がこの街に来たときから、この教会は見捨てられていた」

男「そんな幽霊教会を今更どうするつもりだ?」

修道女「私……。ここへ派遣されてきました」

男「派遣……?」

修道女「はい。持ち主が完全にいなくなってしまった教会があると聞きました」

修道女「その権利を私たちが譲り受けたんです」

修道女「そして、聖庁からの命を受け……私はここへ派遣されたというわけです」

男「……」

男「えっと」

修道女「……?」

男「お前、一人が?」

男「普通、一端の修道女が一つの教会を任されるなんてことはないと思うんだが」

修道女「うぅ……」

男「お前、もしかして」

男「左遷され――」

修道女「ち、違います!!」

修道女「これは……神が与えて下さった試練です!!」

修道女「神は乗り越えるべき試練を与えて下さったのです!」

男「試練ねぇ……」

男「随分な試練だな」

修道女「……」

男「神が去った廃墟に厄介払いされるとはな」
13: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 02:34:26.629 ID:/X60e+V0aUSO
修道女「や、厄介払い……」

男「まあ、神様とやらが与えて下さった試練――頑張って乗り越えることだな」

男「じゃ、俺はこれで」

修道女「ま、待って下さい!!」

男「……?」

修道女「わ、私は……」

修道女「私は――どうすればいいのでしょうかっ!?」

男「おい」

男「俺が知るか」

男「じゃあな」

修道女「あっ、ちょっと――!!」

男「アーメンハレルヤサヨウナラ」

 ――

男「ったく、今日は一段とおかしな一日だったぜ」

男「遂にハルマゲドンがやって来るのかもな」

男「まあ、俺にとっちゃその方がいいのかもな――」

男(死ぬこともできず、過去に閉じこもり、ただ時間に流され続ける)

男(死ぬこともできず、悪夢にうなされる……)

男(軍の恩給もそろそろキツくなってきた)

 『死ね!!』『悪魔!!』

男「……」

男「おい」

少年たち「……!!」

少年たち「や、やべ!! 逃げろ殺される!!」

男「お前ら、今日という今日はただじゃ――」

少年たち「人殺しだ逃げろ!!」

男「クソッ……。これだからクソガキは」

 『死ね!!』『悪魔!!』

男「また、ペンキを塗りなおさなくちゃいけねーな」
16: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 02:45:37.960 ID:/X60e+V0aUSO
男(もうこんな時間か)

男「そういえば――」

男(あいつ、今頃どうしてるだろうか)

男(腹でも空かせてぶっ倒れてんじゃねーだろーな)

男(あんな廃墟に電気やガスが通ってるのかも知らねーけど)

男(……)

男「ったく……。クソが」

 ――

修道女「――ッ」

男「……」

修道女「オナカスイタ」

男「……」

男「金は?」

修道女「オロスノワスレタ」

男「……」

男「所持金は?」

修道女「コ、コノクライ……」

男「……」

修道女「オナカ、オナカスイ――」

男「あぁ、神様。哀れな男をお許し下さい」

修道女「オナカスイタ……!!」

男「……」

男「○ね」

 ――

修道女「いやぁ、本当に助かりましたぁ!!」ホクホク

修道女「こんなおいしいお料理を恵んで下さるなんて! 神に感謝しないといけませんね!」

男「……」

男「○ね」

男「感謝されるべきは神じゃなくて俺の方だろ……」
17: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 02:54:55.534 ID:/X60e+V0aUSO
修道女「本当にありがとうございました」

修道女「助けて下さったお礼に――」

男「神様とやらのありがたいお言葉を説いてくださる」

男「ってか?」

修道女「え――は、はい」

男「いや、礼なんざいらない」

男「そんな言葉じゃ何も救えない」

修道女「そ、そんなことは――」

男「救えないんだ」

修道女「……」

男「……」

男「後は勝手にしろ」

男「シャワーを使うなら20分以内に済ませろ」

男「奥の部屋が空いてる」

男「着替えは――いや、そこまでやってやる義理はないだろ? 俺の服しかないしな」

男「それじゃ俺は寝る」

男「あぁ、出る時は挨拶はいらねぇから」

男「勝手に出てけ」

男「それじゃお休み」

修道女「あっ、ちょ……!!」

修道女「……」
18: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 03:03:39.392 ID:/X60e+V0aUSO
男(耐えろ! もう少しで迎えが!)

戦友(あぁ……)

男(大丈夫だ! あいつら逃げてくぞ! ははっ、俺たちの勝ちだくそったれ!)

戦友(そ……う……だ……)

男(おい、しっかりしろ!)

男(やっと国に帰れるぜ? かみさんと娘が待ってるぞ!)

男(やっと帰れるんだ!)

戦友(な……)

男(どうした!)

戦友(こ、これを――妻に)

男(馬鹿野郎、自分で渡すんだろ?)

男(ほら、迎えが来たぜ!)

男(おい! 早くしろ! こいつを、こいつを頼む!)

男(大丈夫だ、もう少しだぞ!)

戦友(あ……あぁ……。も、すこし……)

戦友(むか……え……)

戦友(あ――)

戦友(むか……え……。き……た……)

男(おい、しっかりしろ!)

男(馬鹿野郎! 目を覚ませ!)

男(おきろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお)
19: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 03:12:43.861 ID:/X60e+V0aUSO
男「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

男「――!!」

男「……」

男「はぁ……。はぁ……」

男(また、あの夢――)

修道女「大丈夫……ですか……?」

男「……」

修道女「お、おはようございます」

男「おい」

男「挨拶はいらないって言ったはずだが」

修道女「あ、あの……!」

修道女「き、昨日のお礼に」

男「だから、お礼もいらないと言っただろ」

修道女「そんな……!!」

男「おっと――もうこんな時間か」

男「まずいな」

修道女「あ、あの……」

男「俺はこれから大事な用があるんだ」

修道女「あの、それなら朝食を!」

修道女「私、ご迷惑をお掛けしたせめてもの償いとして――」

男「時間がない」

男「着替える。悪いが部屋から出て行ってくれ」

修道女「あの、朝食を作っているので――」

男「ほら、時間がないんだ」ガチャ

修道女「あのっ……!」

修道女「……」
23: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 03:24:31.661 ID:/X60e+V0aUSO
修道女「あの……。朝食が……」

修道女「正装をして、どちらへ……?」

男「家を出るぞ。鍵を閉めるからお前も出てけ」

修道女「あの……」

男「俺はしつこい奴が嫌いだ」

男「そして卑怯な奴も嫌いだ」

男「人間の皮を被った悪魔」

修道女「……?」

男「潰しても潰しても、そいつは蛆虫みてぇにわいてくる」

男「だからこっちも、守る為に殺しつくす」

修道女「……ッ!」

男「一匹残らずな」

男「……」

男「ほら、出るぞ」

修道女「あ、あなたは……」

男「……」

男「分かった――ほら」

修道女「……?」

男「鍵はお前に預ける。出て行く時はちゃんと施錠しろ。鍵はこの植木鉢の下に入れておけ」

男「クソガキどもが来るかもしれないから、その姿を見られないようにな」

男「じゃ、俺は出るぞ――」

修道女「ま、待って下さい……!」

男「しつこい奴は嫌いだ」

男「いつまでもすがりつくのはやめろ。神様って奴でもどうにもできないことがあるんだ」

男「だから――時には諦めることも大切だ」

修道女「……」
25: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 03:49:38.939 ID:/X60e+V0aUSO
面接官「えー、軍を退役なされたということで――」

男「はい」

面接官「そうでしたか……。お疲れ様でした……」

男「……」

面接官「ですがねぇ……」

面接官「私としてもなんとか力になりたいのですが」

面接官「人員は足りていますし――」

男「そこをなんとか……!!」

 ――

男「……」

男「……」

男「クソッ……」

男「駄目だったか」

男「いや、まだだ……。次だ……」

男「次が――」

男「何で……。俺、こんなことやってるんだ?」

男「……」

 『ねえ、あれ……』

男「……」

 『あぁ、あそこの……』『よく顔向けできるわね』『人殺し』『税金泥棒』

男「……」

男「帰るか」
26: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 04:06:19.090 ID:/X60e+V0aUSO
男「――ッ」

男「これは……」

男(ペンキが塗ってある……)

 ソンナコトシタラー アナタハジゴクニオチマスヨ アノカタガアナタニナニヲシタノデスカ?

男「……?」

 ニクムベキハリンジンデモイホージンデモアリマセン オノガココロデス ニクシミトイウオノガココロデス センソウトイウニクシミデス

男「……」

修道女「分かりましたね?」

少年たち「わ、分かったよ……」

男「おい」

修道女「あ、おかえりなさいませ!」

男「これは……」

少年たち「……」

修道女「ちゃんと、壁は塗りなおしましたよ!」

修道女「この子たちが!」

男「……」

修道女「ほら……!」

少年たち「ひ、酷いことをして……ご、ごめんなさい」

男「これはどういう真似だ?」

修道女「そうだ、ちょうどランチタイムですね!」

修道女「みんなでランチにしましょう!」

男「おい……」

修道女「ということで、このお兄さんがお昼を作ってくれますよ!」

男「おい……」
27: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 04:22:13.794 ID:/X60e+V0aUSO
 ――

少年「あ、ありがと……」

男「……」

修道女「また来てくださいね!」

男「ここは俺の家だぞ」

修道女「さて――私もここで」

男「おい」

修道女「本当にお世話になりました。この御恩は絶対に忘れません」

男「どこへ行くんだ」

修道女「教会を修復しないと」

男「……?」

修道女「あのままじゃ、廃墟ですもんね」

男「お前はどうするつもりだ?」

修道女「教会を直して、教会を開いて」

修道女「皆さんに心の平穏を――」

男「……」

修道女「この御恩は、必ず返します――そうだ!」

男「……?」

修道女「あなたのお名前は……?」

男「……」

男「俺は、『男』だ」

修道女「男さん、ですか……」

修道女「私は『女』といいます」

修道女「男さんも、是非教会へお立ち寄りください」

修道女「そして――私は、諦めません」

男「……?」

修道女「試練が立ち塞がろうと、諦めません」

修道女「それでは、また――」

男「お、おい……!」
30: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 04:45:05.797 ID:/X60e+V0aUSO
面接官「残念ですが――」

男「そうですか、失礼します……」

 ――

男「……」

 『ねえ、知ってる?』『あの気色悪い教会……』

男「……?」

 『変なシスターが一人で……』『何をするつもりなのかしら』

男「……」

 ――

男「……」

男「おい」

修道女「きゃっ――」

修道女「お、男さんじゃないですか! ごきげんよう!」

男「何してるんだ」

修道女「何って……。見ての通り、教会を直してるんじゃないですかぁ!」

男「……」

男「じゃあな」

修道女「あ、せっかくだから祈りを捧げて――」

 ――

男「来たぞ――」

男「あれから……」

男「あいつはまだ部隊でよろしくやってるらしい」

男「そうだ、あいつからこの前手紙が届いたよ」

男「旅に出るってよ。まったく呑気なやつだぜ」

男「……」

男「また……また来るぜ」
31: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 04:51:32.301 ID:/X60e+V0aUSO
戦友妻「あっ……」

男「……」

戦友妻「ありがとうございます」

男「いえ……。俺はこれで……」

戦友妻「あっ――」

 ――

修道女「あっ、男さん! 今日もいい天気ですねっ!」

男「……」

男「直すどころか、かえって壊れてる気がするんだが」

修道女「えっ……!? そ、そんなはずは!」

男「あのなぁ……」

男「かしてみろ」

修道女「――えっ?」

男「だいたい、業者にでも頼めばいいだろ……」カンカン

修道女「聖庁からあまりお金がおりなくて……」

男「……」カンカン

修道女「あの、またご迷惑をお掛けしてしまいました……」

男「礼はいらないからな。もうあんな勝手はこりごりだ」

修道女「う、うぅ……」

男「ほら、お前も手を動かせ。そこの釘を持ってろ」

修道女「は、はいっ!」
33: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 05:02:38.802 ID:/X60e+V0aUSO
 ――

修道女「あ、男さん!? こんにち――」

修道女「あ、あの……。これは一体……」

男「ちまちまやってねーで、こういうのは一気にやっちまおうぜ」

修道女「あ……。は、はい!!」

修道女「でも、こんな資材を……お金……」

男「今の俺にはこれが限界だ」

男「まあ、これで外面はなんとか誤魔化せるだろ」

男「最後にペンキでも塗ってやれば、だいぶマシになるはずだ」

修道女「そ、そんな……」

男「お礼はやめろよ」

修道女「……」

修道女「あ、ありがとう……ございます……。本当に……もう……」

男「ほら、とっととやるぞ!!」

修道女「は、はい!!」

男「それといい加減、お前は着替えてこい」

男「修道服のまま大工作業やるつもりか?」

修道女「は、はい――ひゃっ!!」ガクッ

男「危ねぇーな、気を付けろ」ダキッ

修道女「は、はい……。す、すみません着替えてきます!!」ダッ
35: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 05:18:41.319 ID:/X60e+V0aUSO
修道女「お、男さん凄いです……!」

修道女「こんなに立派になって……!!」

修道女「奇跡が、奇跡が起きました! 神様!」

男「大袈裟な……。誤魔化しただけだ」

修道女「凄い……!!」

男「さて、少し休憩するか」

修道女「それなら中へお入り下さい! お茶を入れますね!」

 ――

男「こんな教会だったのか……」

男「てっきりボロボロかと思ったが……。これは全部お前が?」

修道女「そ、掃除しただけですけどね……。あはは……」

男(小さな教会とはいえ、一人でこれだけのことを)

男「……」

修道女「あの、お茶……召し上がって下さい」

男「ああ……」

修道女「……」

男「……」

男「なあ」

修道女「ひゃ、ひゃい!?」

男「……」

男「どうしてお前は、ここまでするんだ?」
37: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 05:38:42.209 ID:/X60e+V0aUSO
男「こんな陰鬱な田舎街へ飛ばされてきて」

男「廃墟同然の教会を背負わされて」

男「不本意だったろう?」

男「誰に称賛されるわけでもなく」

男「後ろ指をさされて」

男「それでも――どうしてここまでやろうとする?」

修道女「……」

修道女「それは――私がそうしたいからです」

男「……」

修道女「確かに……このような立場とは言え、私も人間ですから」

修道女「悔しかったし、ちょっぴり憎らしくも感じました」

修道女「私はできそこないで、迷惑をかけてばかりで」

修道女「この異動はクビ宣言も同じです」

修道女「ですが――私にもできることがあるんじゃないかって」

修道女「そう思ったんです」

男「できること……」

修道女「意固地になってるだけかもしれませんし、使命やプライドという名の鎖に縛られているだけかもしれません」

修道女「ですが……。私がこうしたいんです」

修道女「だからこうしたんです……」

修道女「どんなに些細な歩幅でも、きっと」

修道女「歩き続ければ、何かが起きるって」

修道女「その積み重ねが奇跡なんだって」

修道女「変わろうとするのに、決して遅いことなんてないって」

修道女「そう信じたいから……」

修道女「だから、私は私ができるだけの些細な奇跡を起こしたいと思ったんです」
39: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 05:51:25.240 ID:/X60e+V0aUSO
修道女「人間はちっぽけな存在ですけど」

修道女「なかなかしぶといんですよね」

男「シスターが言うような言葉じゃないな」

修道女「ふふっ……。そうですね」

男「……」

男「そうか……」

男「さて、だいぶ体力も回復した」

男「俺は外の雑草をなんとかしてくる」

修道女「わ、私もやりますっ――」

 ――

男「こんなもんか……」

修道女「疲れました……」

男「もうすっかりこんな時間だな」

修道女「はい……。あの、休憩していきませんか?」

男「……」

男「そうだな」
40: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 06:03:53.934 ID:/X60e+V0aUSO
 『ほら、見てよあれ』

修道女「……?」

 『まったく、何か企んでるんじゃないでしょうね?』

男「……」

 『人殺し……』

修道女「――ッ!!」

修道女「お、男さんはそんな人じゃ――」

男「やめろ」

修道女「……ッ!?」

修道女「ど、どうして……!?」

 『怖いわぁ……』『行きましょっ! ほら!』

修道女「どうして……」

男「いいんだ」

修道女「男さんは、あんなことを言われるような……」

修道女「どうして男さんは――」

男「あいつらの言う通りだ」

修道女「……?」

男「俺は――俺は、人殺しなんだ」

 ――

修道女「あの……。男さんのことが聞きたいです」

修道女「どうして……。こんな……」

男「絶対に諦めない――そう言ったな?」

修道女「……?」

男「俺もかつてはそう思っていた」

男「こんなクソみたいな世界をどうにかして変えようと、そう思っていた」
41: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 06:14:59.996 ID:/X60e+V0aUSO
男「俺の父親は、俺がまだ幼い頃に戦争へ行った」

男「そして死んだ」

男「それから母親は気を病んで、薬をやって酒に溺れて、どこから来たかも知らねぇような男とどこかへ消えた」

男「取り残された俺は親戚中をたらい回しにされ、各地を転々とした」

男「俺はこんな世界を変えようともがいた」

男「俺にとってはその方法が、軍隊へ入ることだった」

男「親戚もせいせいしただろう。『厄介な荷物がいなくなった』ってな」

修道女「そ、そんなことは……」

男「軍隊はキツかったが、楽しかった。家族みたいだった」

男「そして、俺は世界の果ての紛争へ行った」

男「なになに主義とか、そんな理由の……。誰のために戦っているか分からないような戦いだ」

男「だから俺は……愛する者を、仲間を守る為に戦った」

男「何人も殺した」

男「女もいた。まだ年端もいかないようなガキも殺した」

男「そいつらが仲間を殺したから、俺もやり返した」

男「やって、やり返して」

男「そして、戦友は俺を庇って死んだ」
42: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 06:28:39.992 ID:/X60e+V0aUSO
男「そうして紛争は終わった」

男「帰ってきたら――何もかもが変わっていた」

男「国の人間が、俺と同じ国の人間が」

男「薬でとんでる『ピース』野郎どもが俺たちを糾弾しはじめた」

男「人殺しってな」

修道女「……」

男「それが他の奴らに伝染して、俺たちは赤子殺しのサイコ野郎になった」

男「だが、俺たちは何も言い返せなかった――何でかって?」

男「多かれ少なかれ、どいつもこいつも殺したからだ」

男「そうして俺に残ったのは」

男「人殺しの俺に愛想をつかして、他の男とどこかへ消えた愛人と一緒に購入したあのボロ家だ」

男「なあ……。教えてくれ」

修道女「男さん……」

男「俺は何の為に戦ったんだ? 俺は人殺しなのか? 悪魔か?」

男「俺は……俺は!!」

男「神様は試練を与えるんだったな!」

男「これがその試練か!」

男「俺は――俺は何で生きてるんだっ!!」

修道女「――男さん」
43: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 06:46:47.750 ID:/X60e+V0aUSO
修道女「男さん……」ダキッ

男「……」

男「すまない。取り乱した」

修道女「私こそ――すみません」ギュッ

男「……」

修道女「救いを説く立場なのに」

修道女「私は……どう言葉を掛けていいのか……ごめんなさい」

男「いいんだ」

男「俺の罪は言葉では晴らせない。死をもってもなお、有り余るだろう」

修道女「……」

男「なあ」

男「だけど俺は、死んでしま――」

修道女「いけません」

男「……」

男「もう十分だ。俺は十分生きた」

修道女「……」

男「なぜだ」

修道女「いけません」

男「なぜだ……!」

修道女「いけません……!」

男「どうしてだ」

修道女「私が『いけない』と言ったから」

男「そんな馬鹿みてぇな……」

修道女「それじゃ駄目ですかっ……!」

修道女「私が『いけない』と言ったから」

修道女「今は……それが理由では駄目ですかっ……!!」

男「……」

男「すまない……」
46: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 07:06:18.492 ID:/X60e+V0aUSO
男「すまなかった。今日はもう帰る」

修道女「はい」

男「おい」

修道女「……?」

男「なぜついてくる」

修道女「男さんがよからぬ事態になりそうだからです」

男「大丈夫だ。俺は……」

修道女「駄目です」

男「来るな」

修道女「嫌です」

男「帰れ」

修道女「嫌です」

男「お前それでもシスター――」

修道女「嫌です」

 ――

男「俺はもう寝る」

修道女「はい」

男「おい」

修道女「……?」

男「お前、殴るぞ」

修道女「駄目です」

男「どうして俺の寝室までついて来る」

修道女「なにかよからぬ事態が――」

男「……」ドスッ

修道女「痛っ」

男「これが『良からぬ事態』だ」
47: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 07:19:42.304 ID:/X60e+V0aUSO
修道女「何もしませんってば!」

男「じゃあ最初から来るな!」

修道女「嫌です!」

男「お前は何がしたいんだ……!」

修道女「ほら、寝室はあっちですよほら!」

男「お前、俺を殺す気か?」

修道女「ほら早くっ――」

 ――

男「なあ、どういうつもりだ」

修道女「悪夢を見ないおまじないです」ギュッ

男「……」

男「俺はガキじゃないんだぞ」

修道女「ええ」

男「なら、その手を――」

修道女「讃美歌の子守歌もどうですか?」

男「おい、俺はあの世へ渡る寸前のジジイじゃないんだぞ」

修道女「大丈夫です――ここに私がいます」

男「誰も頼んだ覚えはないんだがな」

修道女「――♪」

男「……」

 ――

修道女「そうだ、男さん」

男「何だ」

修道女「一つだけ――こんな詩があります」

男「詩?」

修道女「雨にも負けず――という詩です」

修道女「困難にも負けず、苦しむ人には手を差し伸べ、人々のいさかいをやめさせ、疲れた人には寄り添ってその疲れを癒し」

修道女「欲を持たず、褒められもせず、質素に暮らし」

修道女「静かに、優しく笑って見守っているような」

修道女「そんな人になりたい――というような詩だったかと思います」
50: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 07:41:56.021 ID:/X60e+V0aUSO
男「ただの達観した完璧人間じゃねぇか……」

修道女「そうですねっ」

修道女「でも――そんな人になれたらいいですね」

男「何が言いたいんだ」

修道女「この詩には、定かではありませんが……モデルになった人物がいるとか」

修道女「その人物にも、筆舌に尽くし難いほどの困難や不幸があったといいます」

修道女「それでも神の教えを説き、己が使命を全うされた――そんな人物になりたいと、この詩の作者は思ったのでしょうか」

男「……」

男「さあな」

修道女「私たちは生きています」

修道女「救いは、天上だけではありません」

修道女「きっと、今この世界にも」

修道女「どこかにあるんだと、そう思います」

修道女「あなたは、今ここで生きています」

修道女「どうか、罪をお許しください」

修道女「私たちは全ての罪を告白します。どうか、私たちと隣人の罪をお許し下さい」

修道女「悪から私たちをお守り下さい」

修道女「神の祝福がありますように」

男「……」

男「今夜は嫌な夢を見ずに寝られそうだ」

修道女「はい……。いい夢を」

男「――ッ」

修道女「……」

修道女「……ッ」
51: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 07:51:37.325 ID:/X60e+V0aUSO
 
 ――

男「……」

男「何か、夢を見たような……」

男「嫌なものではなく――」

男「……?」

修道女「――」zzz

男「……」

 ――

修道女「さて、私はこれで――」

男「そういえば、花壇の手入れがまだだったな」

男「雑草は抜いたが、土がぐちゃぐちゃで……」

修道女「そうだ……! 花を植えましょう!」

男「……」

男「ああ。そうだな」

男「行くか」

修道女「……!」

修道女「はい!」

 ――

男「……」

男「おい……。なんだよ……」

修道女「そんな――」

 『悪魔教会』

男「落書き……誰がこんなことを……!」

修道女「そんな……!! あれだけ頑張って直したのに!」

男「修復した教会が――ぶち壊されてやがる!」
53: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 08:12:36.042 ID:/X60e+V0aUSO
男「クソ……! 誰だ……!」

男「許さねぇ……!」

男「ぶっ殺――」

修道女「いけません」

男「お前……」

男「いいのか!? 俺たちの心が踏みにじられたんだぞ!」

修道女「いけません……」

修道女「いけ……ひぐっ……ま゛せ゛ん゛」

修道女「雨にも負けず――です」

修道女「また、直せば……また……!」

修道女「ま゛た゛……な゛お゛せ゛は゛」

男「おまえ……」

男「……」ダキ

修道女「また……直しましょう……何度でも……!」

修道女「う゛っ……ひぐっ……う゛っ」

男「……」
56: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 08:22:55.415 ID:/X60e+V0aUSO
少年たち「あ、あの――」

男「……!!」

男「お前ら――」

男(いや……違う……!)

少年たち「俺たちじゃねぇ!」

少年たち「俺、見ちゃったんだ……」

男「どういうことだ!?」

少年たち「この街の不良の奴らが……」

少年たち「夜、昨日の夜に……」

少年たち「ぐちゃぐちゃに壊してたんだ!!」

男「……」

男「おい、そいつらはどこに溜まってる?」

修道女「駄目です、男さん」

男「おい……」

修道女「今から、直しましょ?」ニコッ

男「でも、また一から資材を……」

修道女「幸いにも、全壊というわけでもありませんから……。なんとか」

少年たち「お、俺たちも手伝うよ!」

少年たち「そうだ! 俺、母ちゃんに頼んでみる!」

少年たち「俺もとーちゃんに言ってくるよ!」

少年たち「俺は……俺は……。じーちゃんのとこ行ってくるわ!」

男「お、おい! お前ら――」
58: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 08:42:58.714 ID:/X60e+V0aUSO
 ――

男「これは……」

少年母「これは酷いわね」

少年父「ちょうど友人から色々と資材を貰ってきたからよ」

少年祖父「今まで気づけんで、すまなかったよ……」

少年たち「よし、教会復活作戦だ!!」

少年たち「うおおおおおお」

市民「私たちも手伝うわ」ゾロゾロ

男「……」

男(どういうことだ!?)

修道女「あ、ありがとうございますっ!」

男「……」

修道女「ほら、私たちもやらなくちゃ!」

男「お、おう」
62: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 09:09:24.214 ID:/X60e+V0aUSO
 ――

修道女「みんなで力を合わせれば、あっという間に終わってしまいましたね」

男「お、おう……」

修道女「どうしたんですか?」

男「……」

少年たち「ほら……みんな……!」ゾロゾロ

少年父「君たち、本当に申し訳なかった」

少年母「私たち、あなたたちのことを――」

少年祖父「みな、自分のことしか考えていなかった」

市民「みんな、様々なことに流されて……。自分勝手に生きていた」

市民「好き勝手にやるうちに、教会はなくなっていた」

少年父「それでもいいと思っていた……。そして、気付いたら何もかも荒れ果てていた」

少年父「言い訳はできない」

少年父「本当に申し訳ない」

市民「そして、あなたのことも……」

男「……」

男「女……女さんは、この教会を新しくしようとしている」

男「そしてまた、教会を開こうとしている」

男「だから、皆さんにも手伝ってほしい」

男「もし、可能なら――私のことは大丈夫、気にしないで下さい」

修道女「……ッ!!」

少年たち「教会が直ったぞおおおおおおお」

少年たち「腹減ったー!」

修道女「そうだ……! 皆さんでお昼にしましょう!」
63: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 09:26:52.022 ID:/X60e+V0aUSO
 ――

男「……」

修道女「ここにいたんですか?」

修道女「教会の敷地内でおタバコは――」

男「今日だけなら神様も許してくれるだろ」

修道女「もう……」

修道女「皆さんのところに行かないんですか?」

男「吸い終わったら行く」

修道女「待ってますからね」

 ――

修道女「本当に良かったですね!」

修道女「私、奇跡……起こせたんでしょうか?」

男「ああ……。起こせたさ」

修道女「いや……。私じゃない……」

男「……?」

修道女「私と、男さんと、みなさんで起こした奇跡です!」

男「……」

男「そうだと、いいけどな」

修道女「きっとそうです! これは福音です」

男「……」

男「俺は、今日はこのへんで帰る」

修道女「え、もう少し居られたらどうですか?」

男「いや、ちょっくらやることがあるから――」
64: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 09:43:57.984 ID:/X60e+V0aUSO
 ――

男(街の不良……)

男(溜まり場になるとしたら……あそこしかないな)

男(国道の外れ、工場の廃墟)

男(――弾は充分にある)

男(いい夢を見させてもらった)

男(お前ら……俺も、もしかしたらすぐにそっちへ行くぜ)

男「地獄で会おう」

修道女「――ごきげんよう」

男「……!!」

修道女「どうしたんですか?」

男「あのな、さっき別れたばかりだろ」

男「何か用か?」

修道女「あ、あの……」

修道女「何でもないです!」

男「帰れ」
67: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 10:05:35.000 ID:/X60e+V0aUSO
修道女「お、男さんが良からぬ事態に――」

男「ならねぇよ」

男「色々と疲れた。仮眠をとる」

男「お前も帰って休んだらどうだ?」

男「それに、教会もいい具合に復活しそうなんだ」

男「そろそろ修道女としての仕事を本格的に始めたらどうだ?」

修道女「仕事……?」

男「祈りとか、教会の運営とか奉仕活動とか色々あるだろうが」

男「何で俺が忠告しなくちゃいけねーんだよ」

修道女「あ、それはもちろんですけど……!」

修道女「男さんが何か良からぬ事態に――」

男「どういうつもりだ。何がしたい」

修道女「……」

男「……」

男「俺は寝る」

男「……」

男「そうだ」

修道女「……ッ!!」

男「すまない。少し、讃美歌を歌って欲しい」

修道女「は、はい……!」

男(すまない)

 ――

男「そうだ」

修道女「どうしました?」

男「お前も少し休んだらどうだ――ほら」ダキッ

修道女「きゃっ……!!」
69: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 10:17:31.646 ID:/X60e+V0aUSO
修道女「ちょ、ちょちょちょちょ!!」

修道女「男さん! 私は修道女でこのような破廉恥で世俗的なことはあばばばbbb」

男「勘違いするな……。お前も休め」

男「一緒に仮眠をとる」

男「それだけのことだ。他意はない」

修道女「だったら……。この腕を離して下さい……」

男「枕があった方が快適だ」

修道女「ひ、ひとのことを枕だなんて……!!」

修道女「う、うぅ……//」

 ――

男「……」

修道女「zzz」

男「……」

男(すまないな)

男(この街にはやはり神はいない)

男(だが――お前がいる)

男(それで充分だ)

修道女「zzz……」

男「まったく」

男(お前が現れてから何もかも変わった)

男(俺を救ったのは神ではなくお前だ)

男「――じゃあな、シスター」

 ――

男(世界から見放されたようなこの街)

男(警察なんて見向きもしねぇ)

男(廃墟だった教会がいくら壊れようと取り合ってもらえないだろうな)

男(そして……。不良どもは教会をまたゲームのように壊しに来る)

男(銃も持ってるだろう。市民じゃ手に負えない)

男(だったら――)
72: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 10:32:42.945 ID:/X60e+V0aUSO
男(警察は期待できねぇ)

男(だが――人死にが出るような事態なら別だ)

男(こんな街にも警察は来る)

男(銃でも使って流血沙汰が起こればな)

男(……)

男(俺の罪も、これで少しは晴れるだろうか――)

男(まあ、それでも余りあるけどな)

男(日は暮れてきてる)

男(奴らの活動時間か)

男「さて、OK牧場の決闘といこうか」

 ――

男(読み通りだ)

不良たち「wwwwww」

男(軍を辞めてブランクはあるが……頭が忘れようと、体に染みついた動きは消えない)

男(強襲、偵察……しっかりと染みついている。忘れようとも)

男(俺はこれから殺す。殺し尽くす)

男(何の躊躇いもなく、モノ同然で殺す)

不良たち「でよー、あの教会のシスターがめっちゃいい女らしくてよwwww」

不良たち「どうする? まわしてやろうぜ!」

不良たち「やめとけよ。修道女を犯したら大変なことになるぜ?」

不良たち「お前チキン野郎だなwwwww」

男(――殺す)
75: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 10:53:35.755 ID:/X60e+V0aUSO
 ――

男「もしもし」

警察官「事件ですか? 事故で――」

男「事件だ」

男「撃たれた」

男「○○の○○、国道沿いの廃工場だ」

男「地元の不良どもに撃たれた」

警察官「だ、大丈――」

男「もう、駄目だ」

警察官「あの――!」

 ――

不良「おい……。誰だアイツ」

不良「おい、あいつやべぇー奴じゃねぇか!」

不良「赤子殺しの――」

男「おい」

不良「お、俺たちに何の用だ」

男「お前らか? 教会を好き放題してくれたのは」

不良「……」

不良「アッハッハッwwwwwwww」

不良「人殺しの口から『教会』だとよ!! 聞いたか!?」

不良「あんな廃墟、どーなろーが知ったこっちゃねーだろ!?」

男「あの教会は再び開かれる」

男「街の奴らも通うことになる」

男「だから、もう手を出すな。いいな?」

不良「てめぇ何様だよ」

男「もし教会に手を出したら――お前らを地の果てまで追い詰めてぶち殺す」

男「じわじわと苦しみを与えてな」

不良「こいつ……イカれてやがる」ゾッ

不良「や、やっちまおうぜ!」

不良「死ねぇ――!」
79: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 11:16:38.729 ID:/X60e+V0aUSO
修道女「あ……」

修道女「いけない、私――」

修道女「あれ……?」

修道女「男さん?」

修道女「どこ行っちゃったんだろう」

修道女「男さーん!?」

修道女「……」

修道女「ここにはいない……!?」

修道女「教会に行ったのかな? でも……」

修道女「男さーん!?」

修道女「……」

修道女「どこいっちゃったんだろう」

 ――

男「――!!」

不良「んんんんんんん!!!!」

不良「やめろおおおおおおおおおおおおおおおお」

男「どうする? こいつ死ぬぞ?」

不良「てめぇ!!」

男「――ッ!!」バキィ

不良「おふっ――」

不良「て、てめえよくも……!!」

男「もう教会に手を出さないと誓え」

不良「……ッ!!」

不良「……」
82: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 11:35:16.564 ID:/X60e+V0aUSO
不良(やっちまえ)

不良(もう……知らねぇかんな!!)

不良(こんな奴死んだところでどーってことねぇよ)

不良「……」

不良「おい、調子に乗るのもそこまでしろよ!!」

不良「止まれ!! じゃないとこいつで」

不良「撃ち殺す!!」スチャ

男(拳銃か――)

不良「そいつから離れろ」

男「……」

不良「そうだ、できるじゃねぇか」

不良「ははっ、銃には勝てねぇよなぁ!?」

男「……」

男「そうだな」

男「だが――」

男(それを待っていた)

不良「おい!! 動くな!!」

不良「撃つぞクソが!!」

男「……」

不良(おい……! あいつ……!)

不良(懐に手を伸ばして――)

不良「あいつも銃を持ってるぞ!!」

不良「撃てっ! 殺せ!」

男「……」

男「ハレルヤ」ニヤッ
84: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 11:44:00.091 ID:/X60e+V0aUSO
修道女「教会かな……」

 ウウウウウウウウウウウウウウ!!!!

修道女「……!?」

修道女「パトカー――どういうこと!?」

修道女「嫌な……嫌な予感がする……」

修道女「怖い……男さん……」

 ――

男「――ッ」

 ウウウウウウウウウウウウウウ……

男「――」

不良「や、やべぇ……!! 俺、やっちまった!!」

不良「撃っちまったよ……!! ああああああああ!!」

不良「何ビビってんだよ! 童貞じゃあるめーし」

不良「この前もそいつでぶちのめしたじゃねーかよ」

不良「だ、だだ、だけど……!! こいつ!!」

不良「イカれてる野郎でも……さすがに死んだよな!? なぁ!?」

男「……」

不良「まだ息してるんじゃねーか!?」

不良「確実に殺しておこうぜ」スチャ

ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!

不良「や、やべぇ!! 警察だ!!」
87: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 11:52:01.103 ID:/X60e+V0aUSO
不良「おい、逃げるぞ!」

不良「ま、待てよ! おい!」

警察官「止まれ! 武器を捨てろ!」

不良「来るな!!」バン! バン!

警察官「撃ってきたぞ!」

警察官「撃て! 撃て!」ダン!

警察官「逃げたぞ! 追え!」

警察官「負傷者がいる! 負傷者を救護しろ!」

警察官「救急隊は――」

男「ッ」

男「タバコ……ライター……」

男「火を……くれ……」

男「迎えが……くる……」

男「お前ら……待ってろよ……俺も……そっち……」

 ――
90: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 12:08:21.675 ID:/X60e+V0a
警察官「不良グループは○○のギャングの端くれでした」

警察官「一人は過去の○○との抗争で相手を射殺しています」

警察官「あと一人は強盗容疑がかかってますね」

警察官「それでもう一人は、薬の運びをやってます」

警察官「更に彼らは○○の教会跡を……」

警察官「いえ、今は再開されて……現役の教会でしたね」

警察官「そこを荒らしています」

警察官「ええ。被害者は退役軍人です」

警察官「○○紛争に参加していたようですね……。第○○レンジャー大隊です」

警察官「まだはっきりとした状況は掴めませんが」

警察官「彼は……。いえ、その際の彼は武器は未所持でした」

警察官「丸腰で不良と争ったようです」
95: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 12:19:38.588 ID:/X60e+V0a
男「待っててくれたんだな」

男「まったく、お前が死んじまうから……」

男「かみさんは――いや、すまん」

男「なんとかたくましくやってるよ」

男「ああ、大丈夫だ」

男「これで俺も罪から解放される」

男「なに……!? 違う!?」

男「どういうことだ」

男「俺はまだ、罪を晴らしていない……?」

男「どうしてそんなことが分かるんだよ」

男「おい、行くなよ。せっかく会えたんだ」

男「お前は俺を庇って――なに?」

男「許さない?」

男「どういうことだよ」

男「俺が……罪を晴らす方法……だって?」

男「そんな……。馬鹿言うなよ」

男「おい――おい!!」

男「待て!!」

 ――

修道女「――」

男(ここは……)

修道女「――」

男(女神……?)

男(ここが天国か)

男(いや――俺が天国に行けるわけはないな)

男(そうすると、ここは)

男(地獄か?)

修道女「――」

男(いや、地獄に女神なんているはずはない)

男(せめて、その顔を――)
97: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 12:25:51.563 ID:/X60e+V0a
修道女「――」

修道女「――ッ!!」

修道女「――ッ!!」

男(何を言っているんだ?)

修道女「……ッ!!」

男(聞こえない)

修道女「男 さ ん !!」

男「――ッ!!」

男「この声……」

男「ああ――そうか」

男「おまえが――」

修道女「――!!」

修道女「男さんっ!!」
101: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 12:40:20.603 ID:/X60e+V0a
修道女「あ、あのー……ですね」

修道女「説教……なんて大それたものでもないのですが……」

少年「おーいお姉ちゃん!! しっかり!!」

修道女「し、しーっ!! 静かにしなさい!!」

修道女「それでは、今日は特別にこんなお話をしたいと思います!」

市民「頑張れー!」

修道女(救いを説く立場の者が救われている……)

修道女(説教の時間に『頑張れ』ってどういうこと?)

修道女(私、情けない……。うぅ……)

修道女「きょ、今日は……ある詩人が書いた詩の一節を紹介しましょう!」

少年「えー、腹減ったよー!」

修道女「こ、こら!」

 アハハハハハハハハ

修道女「も、もぅ……」

修道女「ごほん……! その詩の名前は」

修道女「雨にも負けず――です!」

修道女「これはどういう内容かといいますと――」

 ――

戦友娘「ママ―、お腹空いたー」

戦友妻「こら……!」

戦友妻「何から何まですみません」

戦友妻「でも――行かなくて良かったんですか?」

戦友妻「ミサ、始まっていますよ?」

戦友妻「え? 『私も抜け出してきたんだろ?』って……」

戦友妻「夫が言っていた通りですね……。ふふっ……」

戦友妻「そちらが呼んで下さったのではないですかっ」
104: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 12:56:39.709 ID:/X60e+V0a
戦友妻「でも――そろそろいきますよ?」

戦友妻「え? 神なんて信じない?」

戦友妻「まあまあ……ほら、行きますよ?」

戦友妻「もうお体の方も良くなったんでしょう?」

戦友娘「ママ―、早く行こっ」

戦友妻「娘を待たせるつもりですか?」

戦友妻「ほら、行きますよ!」

 ――

修道女「ですから、たった些細な行動でも――」

戦友妻「……」ニコ

修道女「――ッ」

修道女「……」

修道女「と く に !」

修道女「ひ と り よ が り な 行 動 は」

修道女「必ずしも良いことではありません!」

修道女「それは偽りの善、偽善という行為であって」

修道女「決して悪い行為というわけでもないのですが……」

修道女「隣人の気持ちに寄り添うことが大切なのです!!」

修道女「己が良かれと思ってやったことでも!」

修道女「隣人を悲しませているかもしれません!!」

少年「なぁ、お姉ちゃん怒ってる……?」

少年「静かにしとけって。めっちゃこえーよ……」

修道女「ですから! 隣人の気持ちに寄り添って! 己の欲のままに行動することがないように!」

修道女「よ ろ し く お 願 い し ま す !!」

 シーン
108: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 13:12:46.847 ID:/X60e+V0a
修道女「よろしく……お願いします……」

修道女「それでは、最後に聖歌を――」

 ――

修道女「終わった……」

修道女「……」

修道女「私、これでいいんですよね」

修道女「神よ――」

男「そうだな」

修道女「――ッ!!」

男「たまには、懺悔やら祈りやら……してみるのも悪くはないか」

修道女「男……さん……」

修道女「も、もうミサは終わりました」

男「祈るだけなら自由だろ?」

男「広い方がいいしな」

修道女「あなたは……地獄行きです……」

男「シスターのセリフじゃねぇな」

男「だが――ふふっ、違いねぇ」

修道女「わ、笑いごとじゃありません!!」

修道女「私があの時どれだけ――」

男「ひとりよがりな行動は慎め」

男「分かってるさ」

男「何度も聞いた」
110: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 13:20:29.136 ID:/X60e+V0a
修道女「……」

修道女「汚い言葉と承知で言わせていただきます」

男「……?」

修道女「――バカ」

修道女「あなたがいなくなってしまったら……!!」

修道女「わたし――いえ!!」

修道女「天国の仲間が!!」

修道女「私も……ですけど……」

男「分かってる」

修道女「分かってません!!」

修道女「物は壊れても直せます! 新しいものに取り換えることもできます!」

修道女「ですが!」

修道女「人は――生命は!!」

修道女「二度と……同じ生物として戻ってくることはないのですよ……?」

男「転生とかって教義にはないのか?」

修道女「ふざけないで!!」

修道女「これは私が、私は、あなたのことが――」

男「そうだな」

男「もうあんなことは二度としない」
113: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 13:34:53.312 ID:/X60e+V0a
男「約束する」

男(だが、あいつらが檻から出てきたときには、もしくは――いや)

修道女「……」

男「だから」

男「だから――許してくれるか?」

修道女「嫌です」

男「は?」

修道女「許しません」

男「おい……。それじゃ、俺はどうすれば……」

修道女「ですから、神のお言葉をお借りして」

修道女「あなたに、男さんに捧げます」

男「お、おう」

修道女「あなたが命を無駄にすることを許しません」

修道女「あなたは、その命を……一生をもって」

修道女「罪を背負い、そして償い続けてください」

男「これじゃ、地獄どころの騒ぎじゃねぇな」

男「重すぎて潰れるかもしれねぇ」

修道女「でも、大丈夫です」

男「……?」

修道女「その罪は、一人では背負いきれませんから」

修道女「支え合って、分かち合って……。共に背負っていきましょう」

男「こんな重いもんを背負ってくれる馬鹿なんていねぇよ」

修道女「いますよ」

男「……?」

修道女「ここに――ここに私がいます」

男「お前」

修道女「雨にも負けず――」

修道女「私はずっとここにいます」
115: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 13:54:23.026 ID:/X60e+V0a
 ――

修道女「おはようございますっ!!」

男「おい……。朝から一体何の騒ぎだ」

修道女「男さん、清掃に行きますよ!」

男「何で俺も行かなくちゃいけねーんだよ」

修道女「朝に体を動かすと気持ちいいですよ!!」

男「ふざけるな、それなら給料を――」

修道女「ボランティアです」

男「ふざけるな」

修道女「いいじゃないですか――あ、そういえば」

修道女「私たちの活動が聖庁の耳にも入ったみたいで」

修道女「色々と支援してもらえることになりそうです! やった!」

男「……」

男「私『たち』だと……?」

修道女「はい!」

修道女「男さんはもう教会で働く立派な職員さんですもんね!」

男「ふざけるな!」

男「俺はあんな辛気臭い場所で働く気はないし、神なんて信じちゃいねぇ!」

修道女「そんなこと言わずにー!」

男「俺は絶対にあんな教会の一部にはならねぇ!」

修道女「これからも一緒に頑張りましょうねー!」

男「嫌だ。俺は逃げる」

修道女「あー! 男さーん待って下さい!」

男「この街に神はいない!」

修道女「でも、私がいます!!」

修道女「ですよねっ!?」

男「アーメンだクソったれ!」




 終。
118: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 14:11:07.102 ID:/X60e+V0a
保守してくださった方々、本当にありがとうございました

レスにもあって気付いている方もいるかと思いましたが、最後は映画「グラントリノ」の一部をグッドエンディング?ルートに変えたような展開にしちゃいましたすみません

では、ありがとうございました
122: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/04/01(金) 14:41:00.705 ID:D6mV4bE/0
おつ!
面白かったし映画も見てみるわ

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改造したところ:
カテゴリをあいうえお順にしました、

時折修正していきますので、今後ともよろしくお願いします

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