藍子「CPのプロデューサーさん(武内P)ってかっこいいですね」未央「」

1: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/18(金) 21:40:47.62 ID:nh94n7r+0

加蓮「CPのプロデューサーってかっこいいよね」凛「」


莉嘉「Pくんってかっこいいよね!」美嘉「」【※武内Pもの】


早苗「CPのプロデューサー君(武内P)ってかっこいいじゃない」楓「どやぁ」



上記三つの別Ver.です
別に続いているわけではないので読む必要はありません

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2: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/18(金) 21:42:22.38 ID:nh94n7r+0
※注意事項

・アニメ基準

・武内Pもの

・関連作品は読んでいなくても大丈夫です





藍子「最初の頃は顔が怖くて体もおっきいし、口数も少なくて苦手でしたけど、少しすると私たちがアイドルとして輝けるようにがんばっていただけているのが伝わってきて」

未央「」

藍子「そのことがわかると怖いと思っていた顔も愛嬌があるように思えて、ちっちゃい子たちに振り回されて困り顔になっているところを見かけた時は、断りも無いのについ写真を撮っちゃいました。ふふ」

未央「」

藍子「傍に立たれると影に覆われてびっくりしていたのが、今では大きな盾に守られているようで安心できて、思わず笑ってしまいます」

未央「」

藍子「私が笑った理由がわからなくて、不思議そうに首に手をあてる姿がまたおかしくって、あとで茜ちゃんから聞いたら私たち五分ぐらいそんな感じだったそうです」

未央「」

藍子「気は優しくて力持ちという言葉は、未央ちゃんたちのプロデューサーさんのような方のためにあるんでしょうね……未央ちゃん?」

未央「……え、あ、何?」ガタガタ、ブルブル

藍子「どうしたんですか? 急に顔色が悪くなったような気が……」

未央「いやいやいや。今日も未央ちゃんは元気ですし」

藍子「それに、なんだか体も震えてませんか? ひょっとして風邪をひいたんじゃ」

未央「ハッハッハッ。ポジティブパッションは常にバーニング! 風邪なんかかかったりしないからアハハハハハ!」

藍子「でも唇だって青いし、テンションもなんだか上下が激しくないですか?」

未央「光の加減と目の錯覚だよ。テンションについてはパッションだからね。ちかたないね」

藍子「は、はあ」

未央「いやー、それにしても! さすがはあーちゃん! うちのプロデューサーの良さに気づくだなんて!」

未央「とってもいい人なんだけど誤解されやすいから、こうやってわかってくれる人がいてお母さんは嬉しいです」

藍子「もう未央ちゃんってば。プロデューサーさんは未央ちゃんの倍ぐらい年上でしょ」

未央「アハハ。そばにいると心配したりやきもきしちゃって、つい。まあ私の方がよっぽどプロデューサーの世話になってるんだけどさ」

藍子「フフ。でもあれほどかっこいい人ですから」

未央「うん?」

藍子「当然彼女とかいらして、ひょっとしたら結婚の約束とかもされて――未央ちゃん?」

未央「」



3: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/18(金) 21:44:01.60 ID:nh94n7r+0
藍子「み、未央ちゃん!? しっかり、しっかりしてください!」

未央「だ、大丈夫。ポジティブ……私はポジティブ」ゼエハア

藍子「大丈夫じゃないですよ! 息止まってましたよ!」

未央「つ、唾の飲み込み方を間違っただけだから。そ、それより!」

藍子「は、はい!」

未央「プ、プロデューサーに彼女なんかいるわけないでしょ。ましてやこここ婚約者だなんて! 確かにあーちゃんの言うとおりとってもかっこいい人で、困っている時や悩んでいる時は一緒になって悩んでくれたり見守ってくれて、プロデューサーが後ろにいてくれれば大舞台でも平気へっちゃらだけど、女心のわからなさについては346で並ぶ者無しの鈍感プロデューサーなんだよ!」

藍子「……うん、うん。わかりました。ほら未央ちゃん、落ち着きましょうね」

未央「あ、うん」

未央「い、いやー。あーちゃんがあまりにも有り得ないこと言い出すもんだから、つい気が動転しちゃったよ」

藍子「……」

藍子「未央ちゃん、プロデューサーさんのこと好きなんですね」

未央「は、ハアアアアアアアア!? すすす好きって!?」

藍子「え?」

未央「あ……はい。信頼してます。感謝しています。尊敬も、していると思います。プロデューサーをからかったりじゃれつくの、好きです」

藍子「ね♪」

未央「けどあーちゃん、さっきのは誤解をまねくよ。まるで私がプロデューサーのこと、その……まるで」

藍子「え、なんですか?」

未央「あーもう! なんでもありません!」

藍子「え~。教えてくださいよ」

未央「やだったらやーだ! あ、話は戻すけどプロデューサーに彼女はいないよ。だってそんな気配しないもん」

藍子「彼女がいると気配がするんですか?」

未央「うちの兄貴はそうだったよ。何か急に余裕が出てきたというか、携帯いじくる時間が増えたり、女の扱いがうまくなったり。一番決定的なのは兄貴のじゃない香水の匂いが服からしてたり、長くてよく手入れされてた髪の毛がついてた時かな」

藍子「はー、なるほど」

未央「まあプロデューサーの場合は、莉嘉ちーが美嘉ねぇのマネして香水つけた状態でじゃれついたり、(私も)抱きついたりして匂いや髪の毛がついてたりするからそこからは判断できないけどね」

藍子「でも確かにプロデューサーさんは私たちに丁寧すぎるぐらいで、女性の扱いがうまいとはちょっと……」

未央「でしょ。よってプロデューサーに彼女はいない。証明終了♪」

藍子(でもプロデューサーさんって彼女がいても女性の扱いが下手なイメージが……)

藍子「あ、でも」

未央「ん、何かねあーちゃん」

藍子「プロデューサーさんと彼女になりたい、結婚したいと思っている人はたくさんいますよね」

未央「」

藍子「この前のことなんですけど――」

未央「」
4: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/18(金) 21:45:51.17 ID:nh94n7r+0
※ ※ ※



杏「むにゃ……むにゃ……」

藍子「……」


コンコン、ガチャ


武内P「失礼します。ここに双葉さんは……これは?」

藍子「あ、こんにちはプロデューサーさん。杏ちゃんはその……」

武内P「ひざ枕……ですか?」

藍子「はい。私がそばにいるとなんだか眠くなるそうでして、ひざ枕をしてもらえれば熟睡できるに違いないと」

武内P「その……ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

藍子「いえいえそんなこと! 私は撮った写真を見直していて動く必要はありませんでしたし、杏ちゃんは軽いから大丈夫でしたよ」

武内P「そう言っていただけると助かります」

杏「……んー、どしたのよ藍子ちゃん――って」

武内P「双葉さん……ラジオ収録の時間まであと少しです」

杏「あー、あーあー。そっかー、もうそんな時間だったんだね。ここは俗世とは時の流れが違うから気づけなかったよ。てへぺろ☆」

武内P「そういうわけなので高森さんにお礼を言って、すぐにスタジオに向かいましょう」

杏「藍子ちゃんありがとね。いやー、本当によく眠れた。藍子ちゃんからはきっと本当のマイナスイオンが出てるよ」

藍子「本当の……?」

杏「ほら、別にマイナスイオンが出ていても人体に何の効能も無いのにうたい文句にしている商品あるでしょ。それなんかとは違って藍子ちゃんのマイナスイオンは効果があるマイナスイオンなのだ」

藍子「ふふっ。なんですかそれ」

武内P「……双葉さん。そろそろ起き上がられてください」

杏「プロデューサー。いつから杏の寝起きがいいと錯覚していた?」

武内P「いえ、その……失礼ながら」

藍子「プロデューサーさん。否定するだけなのに何も汗流しながら目をそらさなくても」

武内P「は、はあ」サスリサスリ

杏「ふふーん。プロデューサーがダメ出しするアイドルなんて杏ぐらいなもんだよ。ドヤッ★」

武内P「双葉さん、胸を張れることではないですからね?」

杏「聞いた藍子ちゃん? 杏たちには張るほど胸がないってさ。ダメだしだけじゃなくてセクハラまでしてくれたよ」

武内P「」

藍子「あ・ん・ず・ちゃ・ん? プロデューサーさんを困らせたらいけませんよ」ニッコリ



5: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/18(金) 21:46:50.63 ID:nh94n7r+0
杏「おおうっ、思わぬところに飛び火しちゃった。ごめんねプロデューサー。ついでに起こして」

武内P「……はい」

杏「んっしょ。ついでに抱きかかえて」

武内P「は――い、ではなく。双葉さん、歩いていきますよ」

杏「えー? でも起こされるまでダラダラしてたから、もう時間あんまりないよ。杏の歩幅だと駆け足じゃないと間に合わないよ。ラジオ収録で息が切れてるってまずいよね?」

武内P「そ、それは……」

杏「アイドルが男に抱きかかえられるのって字面だけ見ると相当やばいけど、杏とプロデューサーの組み合わせだよ? きらりみたいにボインボインでも、美波ちゃんみたいな色気があるわけでもない。問題視した奴の方がむしろ、そういった願望があるんじゃないかって疑われるロリボディな杏だよ?」

武内P「いえ……そもそも双葉さんは年頃の女性ですし」

杏「その年頃の女性からの提案だよ? 何の問題も無いよね? あ、でもプロデューサーが杏みたいな体型が好みなら……その///」

武内P「……ッ」

藍子(……? なんでしょうこの緊張感。プロデューサーさんが二択を迫られているのは、なんとなくわかるんですけど)

武内P(私がアイドルの体を抱きかかえるのは避けたいこと。たとえ双葉さんの言うとおり問題視されにくいとはいえ、その可能性は決してゼロではない。しかし断るためには私は――ッ!!)

武内P「わ、私は……」

杏「ん?」

武内P「……わ、私は双葉さんを非常に……みみ、魅力的だと思っていますので、どうかご自分の足で向かってください」

杏「……ふーーーーーーーん」

藍子(よくわからないけど杏ちゃん、すごく嬉しそう)

杏「そっかー。プロデューサーってばロリコンだったんだー。杏びっくりしたなー」

武内P「い、いえ。そういった意味では!」

杏「じゃあちっちゃい娘が好きなんじゃなくて、杏が特別なだけ?」

武内P「そうです! 双葉さんが特別なだけです」

杏「……そっかー。杏はプロデューサーにとって特別なんだね。えへへー♪」

武内P「そういったわけなので、私が双葉さんを抱きかかえるのは問題があるのでどうか――」

杏「じゃあいつも頑張ってるプロデューサーへのご褒美だね」

武内P「……はい?」

藍子(あ、わかりました。これ二択じゃなくて、強制一択なんですね!)

杏「杏は楽に移動できる。プロデューサーは杏の体にふれられる。ウィンウィンだね」

武内P「いえ……その……」

杏「まあこうやって話しているうちにも時間がたって、選択の余地はないんだけどさ」

武内P「~~~~~っっっ」

杏「さ、プロデューサー。お願いだから、優しくしてね」
6: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/18(金) 21:48:24.50 ID:nh94n7r+0
武内P「……………………では、どうぞ」ガックシ

杏「……え? おぶるの? お姫様だっこじゃなくて?」

武内P「そういったものは、いつかくる大切な時のためにとっておいた方がよろしいかと」

杏「そうだね、とっておいてあげるね」

武内P「……ん?」

杏「どうしたの?」

武内P「いえ、気のせいか妙なニュアンスがあったように思いまして」

杏「あー、気のせい気のせいだよ。あ、藍子ちゃんお願いしていい?」

藍子「……? ……ッ! いいですよ♪」

武内P「……? それでは高森さん、お騒がせしました」

杏「ふふー。やっぱりプロデューサーの背中って、広いうえに広背筋なのか弾力と熱もあっていいね。今度ここで寝かせてよ」


スタスタ、スタスタ


武内P「その……双葉さん。貴女ならば自分の言動がアイドル活動にどれほど影響を与えかねないか理解できると思います。仕事に遅れかけたこともそうですが、印税生活を夢見るのでしたらその辺りを一度考えてみてください」

杏「んー、夢のぐうたら生活のためには印税は大きいなあ」

武内P「はい」

杏「でも最近、ぐうたら生活を手に入れる方法は印税だけじゃないって思うようになってね。あ、別にアイドルのモチベが下がったわけじゃないよ。むしろ逆だから」

武内P「と、言いますと?」

杏「主婦ってさ、子どもがいなければ掃除・洗濯・食事は数時間で済むよね。子どもがいたらグンッと忙しくなるんだろうけどさ。まあ杏は相手が望むなら何人でも産むけどね」

武内P「……? なぜそれがアイドル活動のモチベーションが上がることにつながるのですか?」

杏「さあ、どうしてだろうね? アイドルを輝かせるのが生きがいのプロデューサーさん?」ギュッ

武内P「双葉さん?」

杏「さ、急がないと! 杏はしっかり抱きついてるからスピード上げて大丈夫だよ」

武内P「そうですね。それでは急ぎますので気をつけてください」

杏「……ふふっ」


カシャ


藍子「――うん、きっと良い画が撮れた。あとで杏ちゃんに見せてあげないと」
7: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/18(金) 21:50:11.45 ID:nh94n7r+0
※ ※ ※



藍子「――――ということがあって、これがその時の写真です」

未央「」

藍子「プロデューサーさんは杏ちゃんを背負っているからか、いつも以上に強張った表情なのに対して、杏ちゃんってばすごく安心して嬉しそうな顔をしていますね」

未央「」

藍子「立ち去って行く二人をよく撮れるところを探すのはたいへんでしたけど、その甲斐があった――――未央ちゃん?」

未央「……コヒュー…………コヒュー…………」

藍子「み、未央ちゃん!? これってもしかして過呼吸ですか!? い、いったいどうすれば……」オロオロ

未央「コヒュー……コヒュー…………」

藍子「え? どこを指差して……あのビニール袋ですね! 待っててください!」



――豆腐メンタルちゃんみおの容体が安定するまで少々お待ちください――



※ペーパーバック法は一昔前は推奨されていて効果もありますが、血液中の二酸化炭素濃度が濃くなりすぎる危険があることから病院で酸素濃度を測定しながら行う方法が安全です。病院外で素人が応急処置として行うのはやめたほうがいいんだとか。
9: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/18(金) 21:53:33.06 ID:nh94n7r+0
――――

――――――――

――――――――――――



藍子「落ち着きましたか?」

未央「ん……だいぶ。ごめんねびっくりさせちゃって」

藍子「良かった~。過呼吸になった人初めて見たから、どうしたらいいのか私わからなくて」

未央「未央ちゃんも自分が過呼吸になるとは夢にも思いませんでした……」

藍子「ねえ未央ちゃん。念のため医務室に行きませんか?」

未央「んー、そだね。でも医務室はちょっと遠いし、もうちょっとここでおしゃべりして体力回復させてからにしたいな」

藍子「……わかりました。でももし悪くなるようだったら、プロデューサーさんに電話しますからね」

未央「うう。忙しいプロデューサーに迷惑かけたくないんだけどなあ」

藍子「プロデューサーさん……あれから考えたんですけど、ひょっとして杏ちゃんはプロデューサーさんと結婚したいと思っているんですかね?」

未央「………………あーちゃん。それは少し早計というものだよ」

藍子「そうなんですか?」

未央「確かに杏ちゃんは隙あれば楽しようとするし、専業主婦っていう選択肢は頭にあるだろうけど、冗談交じりでそれをプロデューサーに言ったからって本気と受け取るのはちょっとね」

藍子「でも私が見た感じだと、冗談交じりというには本気の割合が多かったといいますか、冗談を装った本気にさえ見え――」

未央「と・に・か・く! 杏ちゃんはからかい甲斐のあるプロデューサーをおちょくっただけ! ……っていうかスタイルは負けないけど、駆け引きで杏ちゃんに勝てる自信なんか無いから、そうじゃないと困るし……」ボソッ

藍子「え? 今何か言いましたか?」

未央「う、ううん! なんでも、なんでも無いから! アハ、アハハハハハハ!」

藍子「うーん? でも未央ちゃんの言うとおりかもしれませんね。杏ちゃんのプロデューサーさんへの想いは、いつもそばで頑張ってくれている人に向ける親愛かもしれません」

未央「そうそう、それだよ!」

藍子「でも」

未央「え……何?」

藍子「他にもプロデューサーさんの彼女になりたい、結婚したいと思っていそうな人を見かけまして」

未央「」

藍子「廊下で歩いていた時なんですけど――」

未央「」
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/18(金) 22:51:10.92 ID:HLXxxLHj0
乙です。
このシリーズ好きだからまた投稿されて嬉しい。
41: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/19(土) 20:16:50.87 ID:2sHfOYFW0
※ ※ ※



藍子「♪~♪~~」

藍子(良い天気だなあ。事務所の大きな窓越しに降り注ぐ太陽の光と、少し離れたところに並び立つ樹木と同じ視線。事務所のなかで散歩しても幸せになれるんだ)


「うあ――――――――――ッ!!」


藍子「!!?」

藍子(今のは……悲鳴? 何か大変なことが起きたんじゃ!)


タタタッ


藍子「大丈夫です――――か」

菜々「アイタタタタタタ。こ、腰が~~~」

藍子「」

菜々「うう~。苦節●●年、そろそろかな、そろそろかなーという嫌な予感はしていましたが、ついに来てしまいました」

藍子「」

菜々「バラエティで若い娘と一緒に出るといけませんねイタタ。つい引きずられるように若い頃を思い出して無茶しちゃいます」

藍子(どうしよう……見なかったことにしたほうがいいかな? でも廊下でうずくまってるし……けど今のを聞かれたと知ったら菜々さんショックでのけぞってさらに腰を……)

藍子(あれ? あそこにいるのは)

武内P「……」

藍子(曲がり角で気づかなかった。苦虫をかみ殺したような表情をするなんて、珍しいような)

武内P「……」チラッ

藍子「……!」

武内P「……」スッ、スススッ

藍子(えっと……ここは自分に任せて戻っていてください……という意味みたいですね)ササッ

藍子(でも心配ですし、隠れて見守っていましょう)

武内P「…………安部さん」

菜々「うげ――――――って、プロデューサーじゃないですか。驚かさないでください」

武内P「腰を痛められたのですか?」

菜々「や、ヤダなー! ナナはピチピチのJKですよ。腰を痛めるなんてこと、ああ、あるはずないじゃないですか。きゃは☆ ……ウグッ」プルプル

武内P「その……女子高生でも部活動などで腰を痛めることはあり得ることだと思います。安部さんもダンスにバラエティと体に大きな負担をかけていますので」

菜々「え……そうですか?」

武内P「はい。それを防ぐためにも、アイドルの皆さんにはレッスン前後には入念に柔軟をさせるとトレーナーさんが言われていました」

菜々「そ、そうなんですよ! ナナも普段から体のケアはしていますけど、ここ最近ちょっと忙しくてですね! これは歳のせいではなく、ハードワークのせいです!」

武内P「はい、はい。よくわかっていますから」



42: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/19(土) 20:17:55.26 ID:2sHfOYFW0
菜々「なんだか腰を痛めたことへの同情というより、哀れんでいるような視線が気になりますねえ……」

武内P「ンンッ。取りあえず医務室に……それとも最寄りの整体に行きましょうか? かかりつけの整体はありますか?」

菜々「そうですね。清掃のおばあさんに紹介された整体があるんです。そこがすごい良い所で、ナナの四十肩ゲフンゲフン」

武内P「……聞くところによると、四十肩はあくまでその年代の頃になりやすいものですが、20・30代でもなる方はいるそうです」

菜々「そ、それです――じゃなくて! ナナは17歳です! 20代でも、ましてや30代なんかじゃありません!」

武内P「……菜々お姉さんが17歳なら、私も学生になってしまいますよ」

菜々「あー、アーアーアー! ウサミン星からの電波受信! 駿ちゃんが何を言ったのかまるで聞こえません!」

藍子「……? ……!?」

藍子(駿ちゃんってプロデューサーさんの下の名前? 姉弟? でも苗字は違うし顔も似てないし、身長差も大きい……ご近所さん?)

武内P「では車まで行きましょうか」

菜々「あ、待ってください。実はナナ、16:30からインタビューの予定が入っていまして」

武内P「インタビューですか……楽な姿勢のままで受け答えだけをすることは可能ですか?」

菜々「それならば大丈夫です」

武内P「それではいったん医務室に向かい、応急処置と安部さんの担当への連絡をしましょうか。どうぞ背中へ」ヨッコイショ

菜々「……ちょっと駿ちゃん」

武内P「どうかされましたか? それと、さっきはつい私も昔の呼び方をしてしまいましたが、誰が聞いているのかわからないので――」

菜々「聞くところによると、杏ちゃんをおぶる時はずいぶん抵抗したのに、お姉ちゃん相手にはどうしてすんなりとできるんですか? 葛藤とかは?」

藍子(ナチュラルに自分のことお姉ちゃん呼びしてる。ふふっ)

武内P「……双葉さんとの話は、もしかして広がっているのですか?」

菜々「そんなことはどうでもいいですから、さあ早く答えてください」

武内P「は、はあ。しかし理由を聞かれましても、安部さんは歩くに歩けない状態であったのに対して、双葉さんは歩きたくないだけだったので対応が違うのは当然だと思いますが」

菜々「そ、それはそうかもしれませんけど。だからといって、もうちょっと恥ずかしがったり、ためらったり……よ、喜んだり」ボソボソ

武内P「あの安部さん? 何とおっしゃられているのですか?」

菜々「……知りません」プイッ

武内P「その……とにかく医務室に向かいませんか」

菜々「ええ、わかりましたわかりました。そんなに大きな背中になったんです。遠慮なく全力でしがみつきますからね!」

武内P「あ、いえ。それはそれで少し問題があり――」

菜々「問答無用! メルヘンチェ~ンジッ! モード、コアラ!」ガバッ


ムニュウ


菜々「あ……」

武内P「……」

菜々「///」

武内P「///」

菜々「そ、それではよろしくお願いします!」

武内P「は、はい!」

藍子(行っちゃった……プロデューサーさんのパワーなら大丈夫だろうけど、エレベーターのボタンを押したりドアを開けたり人手が必要かも。念のため後を追いましょう)
43: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/19(土) 20:19:20.31 ID:2sHfOYFW0
スタスタ、スタスタ


武内P「どんな仕事であっても全力で前向きなところは安部さんの良い所だとは思います。しかし自分の体は大事にされてください」

菜々「はい、すみません」

武内P「いえ、謝られることではありません。ただお母様も心配されてましたよ」

菜々「お母さん…………え?」

武内P「何か?」

菜々「駿ちゃん、今年の盆も正月も地元に帰ってませんよね。いつうちのお母さんと会ったんですか?」

武内P「あ」

菜々「……駿ちゃん。チョークスリーパーが嫌なら、正直にお姉ちゃんに話してくださいね」ギギ、ギギギギ

武内P「その……安部さんが346に所属して間もない頃にですが、うちの母を通じて私の番号を知ったらしく、定期的に連絡を取り合っていました」

菜々「ハア? ハアアアアアアアアアアアア!? もうかなり前からじゃないですか!」

武内P「その……安部さんは電話越しでは本当のことを言ってくれないからと」

菜々「まったくあの人は……あれだけ電話で人に好き勝手言っておきながら、さらに駿ちゃんまで巻き込んで……あれ?」

武内P「どうかされましたか?」

菜々「しゅしゅ、駿ちゃん? そのー、お母さん駿ちゃんに変な事言ったりしてない?」

武内P「変な事?」

菜々「いや、言ってないんだったら別にいいんですよアハハハハ」

武内P「変……というわけではないのですが」

菜々「な、何ですか!?」

武内P「アイドルが恋愛禁止なことと、安部さんがアイドル引退後に結婚を約束している男性がいないかということを強く気にされていました」

菜々「あんの人は~~~っっっ」

武内P「そして私に――」

菜々「しゅ、駿ちゃんに!?」

武内P「アイドル引退後の面倒を見てくれないかとお願いされました」

菜々「!!?」

菜々「そ、それで……駿ちゃんは……何と答えたんですか」

武内P「それはもちろん――」

菜々「も、もちろん……?」ゴクリ

武内P「その時はまかせてくださいと返事をしました」

菜々「ほ、本当……本気、ですか?」

武内P「ええ、当然のことです」
44: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/19(土) 20:20:28.32 ID:2sHfOYFW0
菜々(え、嘘。あの駿ちゃんがナナのことを!? ここ数年はすっかり大人っぽくて礼儀正しくなったかわりに、他人行儀になってしまって……)

菜々(大きくなったらナナと結婚するって言ってたけど、もしかするとずっと覚えていてくれたんでしょうか)

菜々(しゅ、駿ちゃんのことはちょっと、いえ、かなりいいなって思っていましたけど、まさか小さい頃から知っていたこんなに良い子が菜々のことを好きだったなんて)

菜々(ど、どうしましょう。涙が勝手に――)

武内P「346に長年勤め、貢献されてきた人です。その後のサポートはしっかり行わなければなりません」

菜々「―――――――は?」

武内P「女優部門への異動や、社内のカフェや事務員への就職はもちろんのこと、それ以外の道であっても346には関連企業も多くあります。我々のサポートと安部さんの人柄があれば必ず希望する職に就けます」

菜々「」

武内P「私としてはアイドル引退後も女優やコメンテーターなどの形で、業界に関わり続けてもらいたい……安部さん?」

菜々「…………知っていますか駿ちゃん?」ギギ、ギギギギギ

武内P「な……何を、で……しょうか?」

菜々「一度極まった裸絞めからは逃げられないことを、ですよ!」ギュシッ

武内P「…………ッ!!」


バタン


菜々「ふう……なんだか全力を出したら腰の痛みが治っちゃいました! 違っていた筋が今の拍子で戻ったんですかね?」

菜々「あれれ~? こんなところにCPのプロデューサーが寝てます! もう、仕方ないからナナが医務室に運んじゃいますね。きゃはっ☆」


ズリズリ、ズリズリ――


藍子「プロデューサーさん……かわいそうだけど、今のはないですよ」
45: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/19(土) 20:23:21.46 ID:2sHfOYFW0
※ ※ ※



藍子「――ということがありまして」

未央「」

藍子「菜々さん最後は怒っちゃいましたけど、それまでは照れてはいましたけど嬉しそうだったし、他の人がいないところではあの二人はあんなに仲が良かったなんて知りませんでした……未央ちゃん?」

未央「」

藍子「未央ちゃん? 未央ちゃん!?」


ガバッ


藍子「みゃ、脈が今にも止まりそう! どど、どうすれば!? とにかく人を――」

未央「……ぅ……ぁ」プルプル

藍子「未央ちゃん、そこで大人しく……え? これ? は、はい」


つ スタドリ


未央「……プハーッ! 生き返るねこの味。疲労がポンッととれちゃうよ」

藍子「あの……未央ちゃん? 大丈夫なんですか?」

未央「大丈夫大丈夫。ちょっと心臓の動かし方を忘れただけだから!」

藍子「ええ~? 忘れることでも覚えなきゃできないことでもありませんよ」

未央「ハッハッハッハッハ。まあそれはともかくとして!」

藍子「納得いかないけど、何ですか?」

未央「ウサミンは17歳だから」

藍子「え?」

未央「ウサミンは17歳なんです」

藍子「……どうしたの未央ちゃん?」

未央「だから三十前後のプロデューサーの近所のお姉ちゃんだったりするわけがなく、ましてや将来お姉ちゃんと結婚する約束をしていたとか、お母さん同士が仲良くて密かにそれを狙っているとかベタでうらやまけしからん展開なんてありっこないから」

藍子「は、はい」

未央「そのうえあのプロ意識の高いみくにゃんが一目置く人だからね。ファンを裏切るようなことするはずないよハッハッハッハ」

未央「っていうか幼馴染のお姉ちゃんとかずるいじゃん。そのうえ永遠の17歳とか、まともに相手して勝ち目ないし……」ボソッ

藍子「……未央ちゃん。ひょっとしてプロデューサーさんのこと好きなんですか?」

未央「あ、あーちゃん? それならさっき好きっていったじゃない。尊敬してるって」

藍子「そうじゃなくて、LikeじゃなくてLoveなんじゃないかなって」

未央「や、やだなーあーちゃん。私がプロデューサーを好きなのは杏ちゃんと同じで、親愛として――」

藍子「未央ちゃん。自分自身も騙せないような嘘は、聞いてる方を不快にさせますよ」

未央「う……」

藍子「ここで自分の気持ちに向き合って認めて、目の前の現実を直視しないと一生後悔することになっちゃいます」

未央「だ、だってそんなこと言われても……私、プロデューサーに一緒にいてほしいって思ってるけど、この気持ちが杏ちゃんやウサミンと同じなのか……自分でもわかんないよ」

藍子「わからないならもっと考えましょう。一人でわからないなら私も手伝います」

藍子「このことを伝えるかは迷いましたけど、今から私が話す内容を聞いて、感じたことを素直に話してみてください――」
55: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/20(日) 19:53:59.19 ID:xqRyAbuy0
※ ※ ※



藍子(今日は朝早くに集合だけど、まだ日も昇ってない。もうこんな季節になってしまったんですね……)


ガチャ


武内P「……高森さん? おはようございます」

藍子「おはようございます。プロデューサーさんも早いんですね。誰かの付き添いですか」

武内P「ええ……そのようなものです」

藍子「……?」

藍子(今プロデューサーさんが出てきた部屋って……仮眠室?)

藍子「あの……プロデューサーさん、ひょっとして昨日は帰られなかったんですか?」

武内P「はい。急に企画を変更することになり、それを今朝までに終わらせる必要があったものでして」

藍子「その……無理をしたくてされているわけではないとは知っています。けど体には気をつけてくださいね。未央ちゃんたちも心配してましたよ」

武内P「ご心配をかけてしまい申し訳ありません。ですがこのような無茶はそうそうしませんので」

「そうそう、ですか」

武内P「……ッ」ビクッ

藍子「あ、おはようございますちひろさん」

ちひろ「はい、おはようございます藍子ちゃん」

武内P「……おはようございます、千川さん」

ちひろ「ええ、約束を破った人もおはようございます」ニッコリ

武内P「」



56: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/20(日) 19:55:25.44 ID:xqRyAbuy0
藍子「約束……ですか?」

ちひろ「そうなんですよ藍子ちゃん。この人ったら私も一緒に残ろうとしたのに、女性が夜遅くを一人で歩くのはいけませんって言って21時に帰らせられたんです」

藍子「そうだったんですか。気持ちは嬉しいですけど、それを言った人がこんな眠そうな顔をされてしまったら……」

ちひろ「そうですよね? だから私は何とか居残ろうとしたのに、『私も終電までには帰りますから』って言いきられてしまって」

ちひろ「けど終電までに終わる量じゃなかったから、こうして朝早くに出勤して残りをしようと思ってきてみれば……ね、プロデューサーさん?」

武内P「はい……その」

ちひろ「こういったことが月に一度程度なら私も怒ったりしません。けどプロデューサーさんの場合、週に一度はありますよね? 聞いてください藍子ちゃん。この人三日前に会社で二連泊したばかりなんですよ」

藍子「プロデューサーさん……ダメですよ、ちひろさんにこんなに心配させるだなんて」

武内P「……はい。返す言葉もありません」

ちひろ「代わりに部長から言ってもらっても、大人しくなるのは一週間ぐらい。確かにプロデューサーさんの仕事量は多いですけど、クオリティを求めすぎですし、それなのに私や他の人に頼らないし」

武内P「はい……はい……」

ちひろ「そんなんじゃいつ倒れるか心配でたまりません。で・す・の・で! はい、どうぞ」

武内P「これは……」

藍子「お弁当……手作りですか!」

ちひろ「野菜や果物はもちろん、一日中頑張れるようにプロデューサーさんの好物のハンバーグも入ってます♪」

武内P「そんな、わざわざ……悪いですよ」

ちひろ「悪いと言われましても、私はもう朝食べてますし、こんなにたくさんの量食べられるのは体が大きいプロデューサーさんだけですよ。さ、どうぞ」

武内P「……すみません千川さん。そして、ありがとうございます」

ちひろ「ふふ、いいんですよプロデューサーさん」

藍子(ちひろさんすごく嬉しそう。ひょっとしてちひろさんプロデューサーさんのこと……)

ちひろ「ところでプロデューサーさん。こんなに家に帰っていなくて、洗濯物や部屋の掃除、冷蔵庫の中身といったことは大丈夫なんですか?」

武内P「洗濯や掃除は時間がある時に一気にするようにしています。冷蔵庫は……飲み物や冷凍食品に調味料ばかりで、料理は食べ切れる量だけを買ってするようにしています」

藍子「それだと色々と制限があってたいへんそうですね……」

武内P「ワイシャツは何枚も用意していますし、部屋は物がほとんどないので掃除もすぐに済むので、あとは慣れさえすれば大丈夫ですよ」

藍子「そういうものなんですか?」

ちひろ「……藍子ちゃんが心配している通りだと思います。プロデューサーさんは慣れさえすれば大丈夫と言いますが、それは我慢することに慣れているだけです。そういった我慢はやがて体調の悪化という形で噴出しかねません」

武内P「そういうもの……でしょうか?」

ちひろ「はい、ですので」





ちひろ「今度の休日、私がプロデューサーさんの家に行きますね」





武内P・藍子『…………え?』
57: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/20(日) 19:56:01.69 ID:xqRyAbuy0
ちひろ「洗濯物や部屋の掃除、それに日持ちがする料理を一週間分用意してあげますから」

武内P「せせ、千川さん。それは問題があります」

ちひろ「何がでしょうか?」

武内P「その……部下に身の回りの世話をさせるなど、パワハラ……この場合はセクハラにもなりかねません」

ちひろ「ハラスメントは権力を持つ上の人が、下の者に圧力や不快感を与えることだと私は受け止めています。藍子ちゃん、今どこかにそんな要素はありましたか?」

藍子「え? えっと……ちひろさんの方からの善意だと……思います」

ちひろ「ですよね? 問題は何もありません」

武内P「し、しかしですね。若い女性が男の部屋に入るのは問題があります。(手を出さないと)信頼していただけるのは嬉しいのですが」

ちひろ「ええ、(男の部屋で二人っきりになれば流石に手を出すと)信頼しています」

武内P「……ん?」

ちひろ「これというのもプロデューサーさんが私との約束を破って心配させるからですよ。身の回りのお世話をさせていただけるのなら、私も安心することができます。これは私のためだと思って」

武内P「い、いえ。しかしこれは流石に!」

ちひろ「それとも……私なんかを家に入れては、ご近所の方に馬鹿にされて恥ずかしかったり……その、差し出がましいことを」

武内P「そんなわけはありません! むしろ自慢できるぐらいで――」

ちひろ「でしたら何の問題もありませんね」ニッコリ

武内P「」
58: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/20(日) 19:56:56.48 ID:xqRyAbuy0
※ ※ ※



藍子「――――ということが今朝ありました」

未央「……」

藍子「その場はプロデューサーさんは何とか話をそらしましたけど、ちひろさんは次の休みに押し掛けかねない雰囲気でした」

未央「……ウソ」

藍子「プロデューサーさんもちひろさんのこと、嫌いじゃありません。それどころか好きな方だと思います。このままいくと、二人は付き合って結婚だってするかもしれません」

藍子「未央ちゃん。今の話を聞いて感じたことを正直に私に話してください」

未央「…………………………」

未央「私ね……アイドルになるまで自分の思い通りにいってたんだ」

未央「クラスの誰とだって仲良くなれるし、勉強はわかんないとこがあっても少し頑張ればわかって、たいていのスポーツは初めてでもかなりやれてさ」

未央「だから……初めてのライブの時だって、美嘉ねぇのライブみたいにたくさんのお客さんが熱狂してくれるんだって思い込んでた」

未央「バカだよね……たった一回美嘉ねぇのバックをやっただけの、無名の新人の初ライブなんて、足を止めて目に入れてくれるだけで感謝しなきゃなんないのに」

藍子「……」

未央「思い上がったままステージに上がって……自分は裸の王様だったんだって気づかされて……そんな私の姿を友達にまで見られて……もう、頭の中がグチャグチャでわけわかんなくて」

未央「こんな勝手に勘違いして勝手に落ち込んだ奴なんか、プロデューサーは一回か二回足を運んで、それでやる気が出ないなら捨てちゃえばよかったんだよ」

未央「でも……あの人は何回も何回も来てくれて……バカな私がわかるまで、根気強く」

未央「本当にバカだなあ私。今だって、私がまたあの時みたいに落ち込んだら、プロデューサーがまた何回でも来てくれるんだって、無意識に思ってた」

藍子「……バカなんかじゃありません。プロデューサーさんならそうしてくれるって、ちゃんと信頼しているだけです」

未央「でも……でもプロデューサーに恋人ができて結婚しちゃったら?」

藍子「……ちひろさんはアイドルじゃなくて同僚で、そうなってもまったくおかしくありません」

未央「お似合いだと思うよ。二人とも、きっと幸せになれると思う。けど……けどプロデューサーは仕事がどんなに大切でも、恋人や奥さんをないがしろにするとは思えない。どうしたって私のことは二の次になる」

未央「――それを、私はたまらなく嫌だと思ってる」

藍子「うん……うん。未央ちゃん、頑張りましたね。やっと自分の気持ちに素直になれました」

未央「あーちゃん……でも私、どうしたらいいかわかんないよ。私のことを大切にしてほしいから、彼女をつくらないで結婚もしてほしくないなんて……プロデューサー三十歳ぐらいなんだよ? こんな残酷なお願い、どうすればいいの?」

藍子「……そのまま話しましょう」

未央「そのまま……?」

藍子「未央ちゃんがプロデューサーさんが誰かと付き合うかも、結婚するかもって考えた時に、何を想ったのか。包み隠さず話しちゃいましょう」

未央「そ、そんなの恥ずかしいよ……!」

藍子「でも未央ちゃん。未央ちゃんの一番恥ずかしいところ、プロデューサーさんはもう見てるんでしょ?」

未央「え、あ……は、恥ずかしさのベクトルが違うし、今回の方がずっと恥ずかしいよ!」

藍子「じゃあ未央ちゃんの一番恥ずかしいことを知っている人が、プロデューサーさんからプロデューサーさんのままになりますね。不動の一番です」

未央「……ププッ。何それ」

藍子「え? おかしかったですか?」

未央「ううん。素敵な考えだったよ」

藍子「それと、未央ちゃんはお願いをしてプロデューサーさんに迷惑をかけちゃうことを心配してましたよね?」

未央「う、うん」

藍子「迷惑、かけちゃいましょう」

未央「…………………………へ?」
59: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/20(日) 19:58:08.88 ID:xqRyAbuy0
藍子「未央ちゃんは忘れているかもしれませんが、私は未央ちゃんより年上なんですよ?」

未央「う、うん。忘れていないけど」

藍子「年下に頼られるのって、すごく嬉しいことなんです。たとえその悩みが今のように重いことであっても、この娘はこんなに重要なことを私に打ち明けてくれたんだって」

未央「そ……そうなの?」

藍子「はい。お母さんからの受け売りですけど」

藍子「プロデューサーさんは未央ちゃんよりずっと年上です。悩み事を打ち明けられ、お願いされて、確かに困るかもしれません。けどそれ以上に嬉しくなります」

未央「う、嬉しく……?」

藍子「ひょっとしたら今以上に未央ちゃんのことカワイイと思うかもしれませんね」

未央「か、かわ……っ///」

藍子「……確かに未央ちゃんのお願いは残酷かもしれません。けど、願いを聞くかどうかを判断するのはプロデューサーさんです。未央ちゃんの倍近く生きた人がその経験から判断することです。でしたら、未央ちゃんは深く考えずに年上のプロデューサーさんに判断を委ねて、甘えちゃえばいいんです」

未央「……甘えて、いいのかな?」

藍子「はい。だって私たち、まだ女の娘ですから♪」

未央「……ふふっ。女の娘、すごく得だね」

藍子「悩み事が多い時期ですから」

未央「ああ。だから映画やご飯が安くなるのか」

藍子「ああ、だからかもしれませんね」

未央「よーし、そうと決まれば!」ガバッ

藍子「未央ちゃん?」

未央「プロデューサーのところに行ってくる! 鉄は熱いうちに打て! 早くしないとあーちゃんにもらった熱がすぐ冷めちゃうから。骨は拾ってよ!」

藍子「はい。行ってらっしゃい未央ちゃん」


タッタッタッタッタッ


未央(伝えるんだ。私が想っていること全部余さず!)

未央(言ってしまったらどうなるかなんてそんなこと、今は考えなくていい。考えちゃったらまたウジウジ考え込んじゃう)

未央(最速で! 最短で! まっすぐに! 一直線に! 胸の想いを全て伝えよう!)


ガチャッ!!


「プロデューサー!!! 私、プロデューサーにお願いが――――」
60: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/20(日) 19:58:57.31 ID:xqRyAbuy0
ここからエンディングを二つあげます
初めにあげる方は、ほんわかシンプル
後にあげる方は、地の文でシリアス

片方読めば完結するので、合わないなと思ったエンドは流してください

あと今さらですが、これは未央の誕生日(12/1)に投稿を予定していたものを、諸事情があって前倒ししたものです
61: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/20(日) 20:00:52.77 ID:xqRyAbuy0
END①



――――

――――――――

――――――――――――ー



ん、どうしたの私の顔見て黙り込んじゃって?

ハハーン? 元トップアイドルを奥さんにできた幸せを噛みしめて――ちょ、ちょっと。真顔でうなずかないでよ。

あー、もう恥ずかしいな!

で、本当は何だったの?

……や、やめて! ストップストップ!! あの時の話は禁止!!!

もう……何で今さらあんな前のこと、しみじみと思い出しながら話すの? もう十年はたつんじゃないかな。

私ね、あの日の夜はもう恥ずかしくって恥ずかしくって、布団を頭にかぶったけど何回も自分が言ったこと思い出しちゃってちっとも眠れなかったんだからね。

おかげさまで今だって一言一句……何その顔?

誤魔化されないからね! そういうアナタだってあの時の顔は相当見物だったんですからね、ふーんだ!

……何なら、もう一回言ってあげようか?

コホン。





……私を見ていてほしい。私が輝く姿、頑張る姿、くじけてしまって一人じゃ立ち上がれない姿。カッコイイところも悪いところも全部全部見てほしい。見続けてほしい。

私が苦しい時は、他の何よりも私を大事にしてほしい。恋人も、奥さんも、子どももつくらないで――――誰とも付き合わず、誰とも一緒にならないで。

私を――――プロデューサーの一番にしてください。





……ハハッ、どんなもんだい。あ、顔隠すな!

ほら、やっぱり顔真っ赤だ。あの時とちっとも変わって……わ、私は別に顔赤くなってないし!!!

ヤダヤダ見せない! ってキャー!  襲われ……え、ちょっとアナタ? あ、アハハハハ? スイッチ入っちゃった?

……ううん、別に謝んなくていいよ。





私も実はちょっとだけ……そんな気分だったから。





~おしまい~
62: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/20(日) 20:02:03.97 ID:xqRyAbuy0
END②



――――

――――――――

――――――――――――ー





大きな城のようなビル。
シンデレラを夢見る少女たちと、それを支える魔法使いたちが時に笑い、悩み、泣き、ぶつかり、そして手を取り合い、ファンを魅了する魔法を練り上げる場所。

既に日は落ち、中庭には夜のとばりと社内からの光でコントラストが浮かび上がる。
そこで一人の女性が物思いにふけり、光の側でほっと安堵の息を吐いていた。

冬の夜は彼女の息を白く染め上げ、そして霧散する。
散ってしまった彼女の心配の種は上空へと舞い上がったのか、大都市の明かりに照らされる夜空はくもっていた。

曇り空。くすんだ色から舞い落ちるのは肌を刺すような冷たい雨か、心温める純白の雪か。

胸中で渦巻く不安と期待を反映したような空の下で彼女は待つ。
その姿は寒空の下であっても強く美しく咲き誇る花のようであった。

たとえ凍てついた風がなぎ倒さんとしてもしなやかに曲がることでいなし、その葉の上に雪が積もっても雪解けの日を辛抱強く待ち続ける。
いつか太陽が昇ることを知り、それを支えに何度も冬を耐え抜いた美しさがあった。

今日は彼女の二十五歳の誕生日。
アイドルとなって十回目の日。
そして――今日から新たに、アイドルを辞めた日が加えられた。

引退の記者会見はつつがなく終わった。
つい数刻前の大勢の記者たちによるフラッシュと好奇を隠そうともしない質問の数々を無事に終え、一段落しているところだ。

彼女は静寂な空間で、一つ一つ過去を振り返るように辺りを見渡す。
これまでの十年間を充実感と寂しさを伴いながら振り返る。

辛いこともあった。でもそれを仲間と共に乗り越えたからこそ、この充実感がある。
そしてそれをもう味わえなくなることについ涙腺が緩みそうになる。

次々と胸中を満たす想いの一つ一つが、彼女に勇気と力を与えてくれた。

引退の記者会見。
これまで応援してくれたファンに向けた、ないがしろにすることは許されない大切な儀式。
手など一切抜いていない。
最後の仕事を全力でやり終えたことで、心地よい疲労と安堵が満たされていた。

それでも――彼女にとっての本番はこれからだった。
63: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/20(日) 20:03:00.63 ID:xqRyAbuy0
夜のとばりが占める方から、誰かが走ってくる音が響く。
姿が見えなくてもそれが誰なのか彼女にはわかる。
十年間想い続けた相手だ。
相手を待たせまいと走っている時の歩幅と踏み出す間隔は、意識して覚えようとしなくとも自然と覚えていた。


「……私を見ていてほしい。私が輝く姿、頑張る姿、くじけてしまって一人じゃ立ち上がれない姿。カッコイイところも悪いところも全部全部見てほしい。見続けてほしい」


彼が近づいてくるとおのずと思い返される。
十年前の稚拙で残酷な、何の装飾(うそいつわり)も無い願い事。


「私が苦しい時は、他の何よりも私を大事にしてほしい。恋人よりも、奥さんよりも、子どもよりも――誰とも付き合わず、誰とも一緒にならないで」


あの日の夜はあまりの恥ずかしさに寝ることはできなかった。
頭の中で身勝手な告白が幾度となく再生され、十年の時を経ても一言一句違わず呟けてしまう。


「私を――――プロデューサーの一番にしてください」


若く無謀でなければ言えないような体当たりの告白。
彼女の頬が自嘲で歪むが、その胸中は甘酸っぱさと満足感で満たされていた。

もしあの時、親友の助言に従っていなければどれだけの後悔があったか。
彼女のおかげで、ついにここまでこれた。

響き渡る駆け足の間隔がゆっくりとなり、やや肩を上下させた大男が姿を現す。
まだ壮年の歳だが、散見される白髪は彼がどれだけの激務をこなしているかを容易に想像させる。


「お待たせしてしまい、申し訳ありません」

「ううん、こっちこそ呼び出しちゃってごめんなさい」

「……本田さん、改めて十年間お疲れ様でした」


男はその体を深々と曲げる。
親しき仲にも礼儀あり。それはついに十年経っても変わらなかった。
いや、死ぬまで変わらないだろう。

そして別に変わる必要は無い。
彼女をはじめ、彼の周りにいる人たちはそんな彼の人柄を好んでいるのだから。


「ありがとう……私が十年間頑張れたのは、プロデューサーのおかげだよ」


そんなことはない、と否定しようとする男を彼女は手で遮った。


「私がここまでやれたのはプロデューサーのおかげ。私の我がままで……プロデューサーの人生を縛ったせいだよ」

「私のせいでプロデューサーを十年も寂しい想いをさせちゃった」

「だから、ありがとう。そして、ごめんなさい」


今度は彼女の方が深々と頭を下げた。
たとえ願いを聞き入れるという判断をしたのが、自分より経験豊富な男の方だとしても、このことは謝るべきだとずっと考えていた。


「……自分でも図々しいと思うけど、最後に一つだけ、プロデューサーにお願いがあるの」
64: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/20(日) 20:03:49.56 ID:xqRyAbuy0
唇が渇く。緊張で心臓が鐘のように鳴る。膝が震え、彼の姿が遠ざかったり近づいたりする。

目を閉じ、一つ大きく深呼吸した。
冬の夜の空気が、興奮した体にいくぶんかの冷静さを取り戻す。

意を決して目を開くと――手を伸ばせば届く距離に彼がいた。


「……ッ!?」


驚きがさめぬまま、今度は力強い腕に抱きしめられた。
突然のことに硬直しようとする反射と、夢にまで見た感触に緩もうとする衝動とがぶつかり合い、身も心も混乱していると――


「結婚してください――――未央」


耳元に低く優しい声が与えられた。

はらはらと落ちる。
夜空から雪が舞い落ちる。
彼女の頬をつたって涙が落ちる。


「――――うん。お願いです、私を幸せにしてください」


彼女の頬を濡らす涙は、まるで雪解けの水のように輝いていた。





~おしまい~
65: ◆SbXzuGhlwpak 2016/11/20(日) 20:04:56.64 ID:xqRyAbuy0
最後まで読んでいただきありがとうございました
今作は未央の誕生日(12/1)に投稿予定だったのですが、誕生日前後に引っ越しと転職が重なったためにフライングさせてもらいました
(SS自体は二週間ほど前にできあがっていました)

新しい環境に慣れるまでの数ヵ月間はSSは書けないと思うので、これが今年最後の投稿となります
来年もどうかよろしくお願いします

去年の誕生日SS

未央「貴方の視線」



あとシンフォギア書きました

調「このままじゃマリアが」切歌「だめんずに引っかかってしまうデス!」


66: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/20(日) 20:37:56.31 ID:4qzui2v40
おつおつ、次も待ってるで
67: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/20(日) 21:24:15.38 ID:a55bDKFRo
おつおつ
70: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/20(日) 22:27:45.28 ID:L9tKLfZDo
良かった…乙でした

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