勇者「今日より旅立ちか」勇者(……それにしても腹が減ったな)【後編】

302: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/24(火) 21:43:24 ID:ghhqJ4C.
前スレ:

勇者「今日より旅立ちか」勇者(……それにしても腹が減ったな)【前編】




勇者「ふう、だいぶ道が楽になってきた。とすると、そろそろ町だろうか?」

勇者「それにしても、この辺りは薬草が豊富だなぁ」

勇者「少し調合しておこうかな」

勇者「流石にソードフォレストで売っても、大した額にはならないだろうから」

勇者「自分で使うか、他所で売ってしまおうか」

勇者「まあ、かさ張る物でもなし。時間の許す限り、集めておくか」
303: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/24(火) 21:45:41 ID:ghhqJ4C.
勇者「これは……ヒール草! 凄いな、こんな珍しい薬草を見つけられるだなんて」

勇者「しかもよく見ればココの実もあるじゃないか」

勇者「もう少し熟すと美味しいんだよなぁ。うーん、タイミングがズレてしまった」

勇者「これは毒食み草か。ちょうど実もついている……」

勇者「潰すと恐ろしく臭いから取り扱い注意だけど、毒を持つ生物を返り討ちにできるんだよなぁ」

勇者「……」

勇者「えい、背に腹は代えられない、これも採集だっ」
304: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/24(火) 21:49:10 ID:ghhqJ4C.

勇者「すっかり暗くなってしまったなぁ」

勇者「情報収集は明日にして、どっかで食事をしてから宿に向かってしまおう」

勇者「というか、明るい建物自体が少ないな」

勇者「ここの人達は夜はすぐに寝てしまうのだろうか?」

勇者「……そうか、この辺りから狩人が多くなるんだっけ。なら納得かもしれない」

勇者「ともすれば、まだ明かりがあるような所は、お店の可能性が高いんだな」
305: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/24(火) 21:51:46 ID:ghhqJ4C.
勇者「ここはいい匂いだな。食べ物屋かな」スンスン

勇者「後は酒場っぽいところとあれは宿か? あそこは……道具屋か?」

勇者「流石に、この時間に酒場に入るのは勇気がいるし……」

勇者「ともすれば悩む間もなしっ」グッ


「おや、こんな時間に珍しい」

勇者「まだやっていますか?」

「ええ、やっていますよ、ご自由におかけ下さい」
306: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/24(火) 21:54:31 ID:ghhqJ4C.
勇者(ほうほう、ここは肉とキノコに野草類か)

勇者(肉という事はやはり狩人が活躍しているのかな)

勇者(ほーキノコの肉詰めっ。これは美味そうだな)

勇者(うん? ラージフラットのステーキ? なんだこれ)

勇者(魔物? 部位? 聞いた事がないなぁ)

勇者(しかもステーキなのに70G。小さいのかな。ラージなのに)

勇者(しかし、気になるな。うーん)

勇者(よぉし、今日は肉とキノコ、これだな!)
307: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/24(火) 21:57:37 ID:ghhqJ4C.
 ラージフラットのステーキ 70G
  巨大キノコのステーキ。大人の手ぐらいの大きさ。
  シンプルにグリルで焼いたものにガーリックソースがかかっている。
 マッシュルームのアヒージョ 25G
  マッシュルームと野草が入ったアヒージョ。
  可もなく不可もなく。


勇者(うーん、これは)

勇者(ラージフラット、想定外にキノコだった)

勇者(いかんな、キノコがダブってしまったぞ)
308: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/24(火) 22:00:14 ID:ghhqJ4C.
勇者(しかしこれはなんとも、大きいキノコだ)

勇者(しかも、何というか、香りがいい)スンスン

勇者(食べてみるか)キコキコ

勇者(ナイフとフォークでキノコを食べる日が来るとは。分からないものだな)パク

勇者(ほほう、こんな感じか。悪くない)モグモグ

勇者(キノコにガーリックソースだなんて、ただのソース味かと思ったけども)キコキコ

勇者(主張し過ぎず、キノコの香りを引き立たせている。こんなキノコ料理、初めてだぞ)モグモグ
309: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/24(火) 22:03:16 ID:ghhqJ4C.
勇者(アヒージョも)パク

勇者(うん、これは普通だな)モグモグ

勇者(けど、野草が入っていてこの味か。もっと苦味が強いかと思った)パク

勇者(安定した味、って感じか)モグモグ

勇者(しかしどっちを食べてもキノコ)キコキコ

勇者(何だか堂々巡りをしているようだ)モグモグ

勇者(とは言え、少しキノコを侮っていたかもしれない)キコキコ
310: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/24(火) 22:06:23 ID:ghhqJ4C.
勇者「うん、美味しかった……」

勇者「あ……」

「どうしました?」

勇者「一つ、聞いてみたかったんですが、皆さんってキノコをよく食べるのですか?」

「まあ、ソードフォレストの人間は皆そうだと思うよ」

勇者「飽きたりしませんか?」

「んー、君、グリーンレイクの人だよね? パンって飽きるかい?」

勇者「……なるほど、育ち、ですか」

「まあ、そうだろうね。キノコなんて、それだけで種類も味もあるからね。飽きないもんだよ」
311: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/24(火) 22:10:02 ID:ghhqJ4C.
「まいどねー」


勇者「うーん、腹も膨れたし眠くなってきたな」

勇者「宿屋をとって、とっとと休むかな」

勇者「しかし、そもそも飽きない、か」

勇者「違う環境で育った自分は、一体いつ食べ飽きるのかなぁ」

勇者「せめて、この国を出るまではもってほしいものだなぁ」
312: 明日役立たない雑学 2016/05/24(火) 22:13:07 ID:ghhqJ4C.
マッシュルーム
和名でツクリタケ。言わずと知れた食用キノコ。
マッシュルームは成長具合で味が変化するキノコである。
イギリスにおいては大きさによって名称が変わる。出世茸。
マッシュルームそのものも種類がある中で、日本で親しまれているあのマッシュルームは、
ボタン・マッシュルーム、クローズドカップ・マッシュルーム、オープンカップ・マッシュルーム、
フラット・マッシュルームと名称が変わっていく。
ボタンをベイビー、フラットをラージフラットを呼ぶ事もあるそうな。

因みにオープンカップから、マッシュルームの傘は黒くなる。
また、大きくなるとあの歯ごたえがなくなるが、香りが増していくそうな。


アヒージョ
スペイン語でニンニク風味という言葉。
オリーブオイルとニンニクで煮込む代表的なスペイン料理。
料理名において、正確には「アル アヒージョ」と言い、エビを使用する場合は「ガンバス アル アヒージョ」となる。
314: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/26(木) 23:08:45 ID:xKqXpYms
翌朝
勇者(うーん、やはり勇者の情報は少ないか……)

勇者(首都南西の道を通って国外に出て行くのが主流か?)

勇者(しかし、そこを抜ければ元ヒューズヒルの現戦場だ。何か対策とか考えあっての事だろうか?)

勇者(魔物は……北部の奥地にヴェノムドラゴンがいるぐらいか)

勇者(お、そうか。鶏の体に尾が蛇のバジリスクがいるんだったか)

勇者(この先、鶏肉あたりは満足にありつけそうだな)

勇者(しかしバジリスクか。毒食み草では効果がない毒を持つ魔物だったはず)

勇者(遭遇しても出番はなしだな)
315: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/26(木) 23:12:16 ID:xKqXpYms
……
勇者「これは……」

バジリスク「」ボロボロ

勇者「明らかな剣の傷。誰か、というよりどっかの勇者が通ったか?」

勇者「勿体無いな、これは。いや、そんな余裕がなかったという事か」

勇者「しかし、こんな所にいるという事は、気をつけないといきなり襲われる可能性もあるのか」

勇者「流石に不意打ちを食らって、バジリスクの毒を回避できるとも思えないし気をつけないとだなぁ」

勇者「確か足の爪……蹴爪に毒があるんだったか」ゴソゴソ

勇者「よし、取れた。貰っておこう」

勇者「ついでに良さそうな羽も……。矢の材料として売れるといいな。ここじゃ無理か。無理だよなぁ」
316: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/26(木) 23:14:47 ID:xKqXpYms
勇者「それにしても、本当にあの町以外は歩きやすいもんだな」

勇者「そろそろもっときつくなってもいいような気がするが」

勇者「もしかしてソードフォレストの首都って、まだまだ先なのか?」

勇者「うーん……最悪、そこまで行かなくてもいいか?」

勇者「いや、今後のプランもないし進むだけ進むとするか」

勇者「本当にこの後どうしようかなぁ……」
317: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/26(木) 23:17:10 ID:xKqXpYms
勇者「……」スラァ

勇者(ふー……ふー……はぁー……)スハァ

バジリスク「!」ガザザッ

勇者「くっ!」ガギィィン

バジリスク「ケーーーーー!」

勇者「よし、先制防いだぞ」ビリビリ
318: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/26(木) 23:18:55 ID:xKqXpYms
バジリスク「コケーーーーー!!」ダダッ

勇者「よっ!」ガギィ

勇者(受け流して背後を取り……)

勇者「風塵魔法!」バァァァ

バジリスク「!!」ザァァッ

勇者「氷結魔法!」

バジリスク「コッコッ!」ビキビキ

勇者「足さえ封じれば」バッ

勇者「たあああ!」ザンッ
319: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/26(木) 23:20:39 ID:xKqXpYms
……
バジリスク「」ドクドク

勇者「さて、そろそろ血抜きもいいか?」

勇者「うーん、いざ獲ってみると扱いに困るな」

勇者「あまり時間もかけてられないし、皮は諦めて中の肉だけ切り出すか」

勇者「流石にこの大きさの羽を一人で毟るのは容易じゃないしなぁ……」

勇者「うん、そうしよう」ザクザク
320: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/26(木) 23:22:15 ID:xKqXpYms
勇者「出来れば、鶏サイズでツボ抜きした中に香草やら何やら詰め込んでローストしたいが……」

勇者「たっぷり鶏肉ローストで我慢するか……」

勇者「まあ、それでも贅沢と言えば贅沢かな」

勇者「しかしこの量、焼くとなるとちょっと木の枝の数が不安だな」

勇者「少し、取りに行って来るか」


鎧を着た男「ひゅー……ひゅー……」

勇者「わぉ……」
321: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/26(木) 23:24:23 ID:xKqXpYms
勇者「兵士さん? しかしこんな鎧見た事がない」

勇者「うーん、なんだ? この紋章は? どっかのお偉い家の方?」

勇者「……」

勇者「え、うん? まさか魔王軍兵士?」

勇者「……」ゴソゴソ

勇者「うわ、見た事ない貨幣。間違いない、この人魔族だ」

勇者「うーん、困ったな。立場上、止めを刺すか見殺すべきなんだろうけど」

勇者「後味悪いよなぁ」
322: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/26(木) 23:26:29 ID:xKqXpYms
勇者「武器と、魔法道具的なもの……」ゴソゴソ

勇者「剣と短剣と魔石が一個……魔王軍兵士の人もカツカツなのかなぁ」

勇者「とりあえずこれは没収。命に別状がないレベルまで軽ーく回復魔法」パァ

兵士「はぁ……はぁ……」

勇者「とりあえず連れて行くか」ズリズリ


勇者「……」シィン

勇者「複合魔法・リジェネレーション!」クワッ

兵士「はぁ……はぁ……」シゥシゥ

勇者「ううーん、相変わらず効き目が悪い……まあ、少しずーつでも傷が塞がっていっているみたいだし」

勇者「今のうちに焼き始めるか」
323: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/26(木) 23:28:16 ID:xKqXpYms
……
兵士「……うぅ」パチ

勇者「……」ジャァァァァ

勇者「胡椒は少量でも発揮する味付け具合って」

勇者「旅人の味方って感じだな」パッパッ

兵士「おま、え……」ムク

勇者「あ、気がついた」

兵士「……助け、たのか? 人間、ではないのか」

勇者「いやまあそうなんですけどね。俺個人はそっちに恨みがないし。いや侵略者か……ううん」
324: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/26(木) 23:31:00 ID:xKqXpYms
勇者「まあ、起き上がれるようになったのなら、とりあえずこれを」コト


 バジリスクだけロースト
  ゴロッゴロのバジリスクの鶏肉だけを焼いたもの。皮なしなのでパリパリ感なし。
  胡椒を振りかけて味付け。


兵士「……」

勇者「……」

兵士「いいのか?」

勇者「獲って成仏、食べて供養。でも食べ手が少ないって事で」
325: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/26(木) 23:32:28 ID:xKqXpYms
兵士「……」モグモグ

勇者「……」モグモグ

兵士「普通に鶏肉だな」

勇者「うん、普通に鶏肉」

兵士「……」パクパク

勇者「……」パクパク

兵士(飽きる)

勇者(飽きてきた)
326: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/26(木) 23:34:35 ID:xKqXpYms
兵士「ふー……食った食った」

勇者「だいぶ、回復してきたようだな」

兵士「ああ……何と言えばいいか分からないが、その、感謝する」

勇者「いいよいいよ。俺も勇者だけど、正直戦いたい訳じゃないし」

兵士「そうか……人間にもそういう考えがあるんだな」

勇者「というと……お違い世知辛いですな」

兵士「ああ」
327: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/26(木) 23:36:57 ID:xKqXpYms
勇者「あ、そうだ。ちょっとそちらの武器とか没収しているんで」

兵士「分かっているよ。助けてもらったんだ、このぐらいの措置、こちらから願い出るところだ」

勇者「しかし、何でまたこんな所に」

兵士「孤立してしまってな。最初は六名ぐらいいたのだが、追撃と魔物の襲撃で今や自分だけだ」

勇者「あー……ご愁傷様です」

兵士「まあ、生きていれば丸儲けの環境だからな」

兵士「不幸を嘆くより、生き延びている事に喜ぶとするよ」

兵士「今、どの辺の位置なんだ?」

勇者「ここがこうでこうでああで」

兵士「恐らく、俺のいた戦場はこの辺り……随分と奥に逃げてきたんだな」

勇者「出会った自分がびっくりですよ」
328: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/26(木) 23:38:40 ID:xKqXpYms
兵士「何か礼がしたいのだが……生憎とこの身ではな」

勇者「あ、この魔石って何なんですか?」

兵士「ああそれはだな……お? へえ、魔法に心得があるのか。プロテクトをかけやがったな」

勇者「魔石の作動を阻害する行為をそう言うんですか。なるほどなるほど」

兵士「変わってるな、お前。そいつは伝達魔法を魔石化したものだ」

勇者「へえ!」

兵士「音等は送れないが文字を送るものでな。視覚に作用する魔法との複合したものだ」

勇者「文字、か」
329: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/26(木) 23:40:05 ID:xKqXpYms
兵士「正直、これが生命線ではあるものの、常に現在地が把握できる環境じゃない以上」

兵士「助けも呼べないし、あまり意味はないな」

勇者「貰ってもいいですか?」

兵士「え? ……。よし、貸してくれ」

勇者「……」サッ

兵士「……言っておいてなんだが、本当に渡すんだな」

勇者「嘘をついている様子がないみたいなんで」

兵士「はは、ありがと」

兵士「……」スッスッ

魔石「」パァァ

勇者「はー……浮き出た文字に触って文章を作るんですね」

兵士「ああ、その通りだ。凄いだろ」
330: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/26(木) 23:42:10 ID:xKqXpYms
勇者「へー……文字、同じなんだ」

兵士「まあ、大昔は人間とも交流があったと聞くしな。ある程度、文化も同じなんだろう」

兵士「よし、これで初期化完了だ」

兵士「悪いが、軍属の設定も消させてもらったから諜報とかできない」

兵士「これでも良ければ」スッ

勇者「おおお、ありがとうございます」

兵士「そ、そんなに喜ばれると気味が悪いな。持っていても、連絡を取れるのはこの魔石を持つ魔族だぞ」

勇者「それはそれで未知の可能性が開かれたと言いますか」

兵士「ふーん?」
331: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/26(木) 23:44:21 ID:xKqXpYms
勇者「こうしてこうでこうっと。登録できた、かな」

兵士「どれ……ああ、問題ない。というかさっき勇者と言ったが、なんだこの紹介文」

兵士「商人の真似事もしているのか」

勇者「ええ、まあ」

兵士「変わっているな。ま、それで連絡とって、何れはこっちの国で商売でもしてくれ」

兵士「一部の魔族にとってしてみれば、人間達との交易というのは、興味がつきない話題でもあるんだ」

勇者「行けるルートがあれば、の話なんだよなぁ」

兵士「まあ、な」
332: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/26(木) 23:46:25 ID:xKqXpYms
兵士「世話になったな」

勇者「こちらこそ」

勇者「あの、こんな事を言うのもどうかと思うけども」

兵士「?」

勇者「どうかご無事で」

兵士「……ああ、あんたもな。何時か酒を交わしたいものだ」

勇者「……下戸なんで」

兵士「そん時は酒の肴で飯でも食ってくれ。俺は飲むからよ」カラカラ

勇者「それは……いいですね」

兵士「じゃあお互い達者でな」
333: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/26(木) 23:48:30 ID:xKqXpYms
勇者「……」

勇者「ルート、か」

勇者「戦場を通らず魔王国へのルート」

勇者「でもばれたら……」

勇者「しかしこれは一攫千金のチャンスのようにも思えるし何より……」

勇者「よし、少しこの路線で考えてみるか」
335: 明日役立たない雑学 2016/05/26(木) 23:56:04 ID:xKqXpYms
バジリスク
古代の伝承ではヤマガカシに似ており、頭に鶏冠みたいなものがある
体を半分上げて移動し、彼らが鳴らす音は蛇を散らすとか何とか

中世においてはコカトリスと同一視されるようになったそうな
因みに石化の力はコカトリスの方で、バジリスクは毒
鶏と蛇っていうのは中世あたりで生まれたイメージらしい
338: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/29(日) 12:33:08 ID:rTxqkbdU

文字伝達魔石「」キラキラ

勇者「それにしてもこの魔石、一切音が出ないんだな」

勇者「魔石の明かりさえ見られなければ、敵地でも使用可能という訳か」

勇者「差し詰め隠密向け、て事だろうか」

勇者「それに使用時における魔力の放出も、文章の送受信の時だけ」

勇者「一方、こちらのは通話中は常に魔力を放出しなくちゃいけない」

勇者「中々面白い違いだなぁ。短時間で多くの情報を得る為に、燃費と隠密性を捨てるか否か」
339: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/29(日) 12:36:11 ID:rTxqkbdU
勇者「にしても、こちらの魔石は元が文字によるやり取りな分、常時見られる情報量も多い」

勇者「紹介文の文字制限もかなり緩いなぁ」

勇者「なんか、アイドルっぽい人とかいるし。眺めている分にはこちらの方が断然面白いな」

勇者「うーん、それに比べて自分の紹介文の事務的感半端ない」

勇者「まあ、受注がもらえるとも限らないし気長に考えるとするか」

勇者「そういえば、あちらとこちらに特産とかの違いってあるのかな」

勇者「魔物の種類によっては、収集物で稼げそうだ。問題は情報と道のりか……」
340: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/29(日) 12:39:22 ID:rTxqkbdU
勇者「ま、今はやれる事をするか」


勇者「ここの町は随分とキノコの乾物が多いんだな」

勇者「キノコか……栽培地がある程度限定されてしまうからな」

勇者「あの旅館の板前さんはどうなんだろう。今度連絡があったら聞いてみるか」

勇者「しかし、ヴォルケイノ火山の周囲にも森はあったし、案外キノコそのものの供給はあるのかも」

勇者「うーん、特別な物は乾物ぐらいか」

勇者「この辺で切り上げるかな」
341: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/29(日) 12:42:26 ID:rTxqkbdU
勇者「腹が減ってきたがお店がない……もしかして、ここも宿屋が料理屋を兼任しているのかな」キョロキョロ

勇者「仕方がない、とっとと宿をとってそこで食べてしまおう」


「食事? ああ、他に店はないよ。メニューはこちら」

勇者「どうも」

勇者(ソードフォレストは宿屋と料理屋を一体化させる文化があるようだけど)

勇者(一体何なのだろうか。やっぱ森を切り開く関係で、土地を狭く使いたいとかなのかなぁ)
342: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/29(日) 12:45:45 ID:rTxqkbdU
勇者(ここもキノコと鶏、というかバジリスクかな)

勇者(キノコパスタ……そろそろいってみるのもいいな)

勇者(うん? バジリスクのガランティーヌ? 馬鹿な)

勇者(こんな場所でそんなオシャンティな料理があるなど……本当なのかな)

勇者(別にガランティーヌが特別好き、という訳ではないけども)

勇者(ソードフォレストの宿で提供されるガランティーヌ。怖い物見たさの好奇心が抑えられないぞ)

勇者(しかも一人前とか四人前とか分かれているけど、どういう事だろう)

勇者(普通に一人前じゃダメなのか? というか六人前って何でだ)
343: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/29(日) 12:48:30 ID:rTxqkbdU
 バジリスクのガランティーヌ 一人前 60G
  予想を大きく覆して、ツボ抜きしたバジリスクに香草等を詰め込んだロースト。
  動体部分を輪切りにしたものが、皿の上で山のようになっている。

勇者(こう来たか。恐るべしソードフォレスト)

勇者(最早も何もガランティーヌじゃない)

勇者(ただの香草詰めしたローストバジリスクじゃないか)

勇者(しかしこの値段でこの量、田舎ならではというか、とっても嬉しいじゃないか)
344: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/29(日) 12:51:22 ID:rTxqkbdU
勇者(更にはこの小型の鉈のようなナイフ。肉の大きさ共に豪快さがとてつもないぞ)ガチャガチャ

勇者(こんなでかいフォークも、山賊や海賊のお話でしか登場しないもんだと思っていた)ザク

勇者(何とも粗野な食欲が溢れてくるものだ)バグゥ

勇者(ほほうっ! これはいいローストバジリスクだ)モグモグ

勇者(何気に色んなスパイスを使っているんだな。しかも外側は黒胡椒をかけてあるのか)ザクザク

勇者(中々大味だが、これは飽きないな)バグ

勇者(この間のバジリスクと被る、とか思ったけども、全然そんな事ないぞ)モグモグ

勇者(別、既に全く別の料理だ!)
345: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/29(日) 12:54:27 ID:rTxqkbdU
勇者(それに何と言っても、やはり鶏肉といったらこの皮のパリパリ感。これがないと始まらないな)バクバク

勇者(そして噛み締めれば感じる、肉のジューシーさと言ったらない)モグモグ

勇者(これで一人前……となると六人前は丸々一匹のバジリスクか。それはそれで食いでがあるんだろう)ザク

勇者(しかし、こう出てくるのなら手羽先も食べたかったけど……流石にそうは上手くいかないか)バグゥ

勇者(だけど、大満足の量と味だ)モグモグ

勇者「げっぷ」

勇者(ふう、美味かった)
346: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/29(日) 12:57:23 ID:rTxqkbdU
勇者「ふー」ゴロリ

勇者「このペースなら2,3週間ぐらいで首都に到着するな」

勇者「その後、どうしようかな」

勇者「大陸の端の方からあちら側にアプローチしようかな」

勇者「一旦、ソードフォレストを抜けてから北を目指さないと、ヴェノムドラゴンと遭遇する可能性があるし」

勇者「結構な長旅になりそうだな」

勇者「しかも完全に敵地か……そもそもあちらまで行ってどうしよう」

勇者「町に入ったら即殺される? 人間かどうかって見た目で分かるものなのかな」

勇者「うーん、難しいな」
347: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/29(日) 13:00:24 ID:rTxqkbdU
一週間後 廃墟
勇者「な、んだ……これ」

勇者「一体何が……」モォッ

勇者「!」ズザァッ

勇者「この僅かな香りは……ヴェノムドラゴンの毒か?」

勇者「だいぶ日にちが経っているのか、毒性はもうないみたいだな」

勇者「確か外気に触れているダメなんだっけ。あれって何日ぐらいなんだろう」

勇者「しかしこれは……首都の方は大丈夫なんだろうか。生息地はもっと先のはずだよなぁ」
348: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/29(日) 13:03:24 ID:rTxqkbdU
更に一週間後
勇者「……町が、ない」

勇者「そうか、さっきの町の次が首都だったか……」

勇者「早めに到着できないと、本格的にサバイバルしないといけなくなるなぁ」

勇者「出来れば食料確保が優先される前に、到着したいものだけど」

勇者「しかしなんだってこんなに拓けた道なんだろう」

勇者「首都の周りはある程度開拓されているのか?」

勇者「けど、割と首都周りは鬱蒼としているって聞いたいたのだが」

勇者「考えていても仕方がない。先に進まないと」
349: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/29(日) 13:06:36 ID:rTxqkbdU
ソードフォレスト 首都
勇者「つ、疲れた……」フラフラ

勇者「もう食料もないし……とにかく腹いっぱい食べたい」ヨロヨロ

勇者「えい、もう、この店でいいや」


「いらっしゃいませー」

勇者「うう……もう考える余力もない」

勇者「あの、何かいっぱい食べられる料理とスープを下さい」

「は、はぁ……」
350: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/29(日) 13:09:14 ID:rTxqkbdU
「お待たせしました、ごゆっくりどうぞー」


 ベックオッファ 100G
  大きな耐熱容器に入っている。
  じゃがいもやたまねぎ、ニンニクや肉類が入っているようだ。
 ソパ・デ・ケソ 35G
  ニンニクスープにチーズとパンが入っている。
  コンソメの香りが食欲を掻き立てる。

勇者「ほほぅ……」

勇者(何だかよく分からない料理が出てきたがとっても美味しそうだ)
351: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/29(日) 13:12:30 ID:rTxqkbdU
勇者(この焼き物はなんだろう)バグ

勇者(ニンニクと肉は何だろう……鶏ではないな)モグモグ

勇者(あとはじゃがいもと玉ねぎ?)バグ

勇者(しかもこれ、層になっているんだ。変わっているな)モグモグ

勇者(味付けはなんだろう。多分、肉とか漬け込んでいるんだろうな)パク

勇者(塩胡椒とハーブっぽい感じがやや強めか。しかし美味しいな)モグモグ
352: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/29(日) 13:15:13 ID:rTxqkbdU
勇者(スープは)ズズゥ

勇者(うーん、ニンニクが効いていて美味い!)ズズ

勇者(そこにパンにチーズか。ちょっとした軽食になるなぁ、このスープ)モグ

勇者(うんうん、滅多にしないが店員さんお任せメニュー、実にいいじゃないか)

勇者(それにしても流石首都なのかな。こんな料理があるもんなんだなぁ)

勇者(何時もなら相当な腹具合だろうけども、今日の腹にはすっぽり収まる丁度いいサイズだ)
353: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/29(日) 13:18:08 ID:rTxqkbdU
「ありがとうございましたー」


勇者「ふう……それにしてもソードフォレスト首都」

勇者「とんでもなくでかいな」

勇者「何だか、無理に広くしている途中みたいだし……そうか、あの町の人達をこっちにとかか」

勇者「今日はもう休んで明日情報収集をしよう」

勇者「原因と経過によってはしばらくはここで、待機していた方がいいかもしれないなぁ」

勇者「さて、何が出てくるのやら……まあ大型爬虫類ぐらいだろうけども」
354: 明日役立たない雑学 2016/05/29(日) 13:19:23 ID:rTxqkbdU
ガランティーヌ
フランス料理で洗練されたという意味のgalantからきたとか。
主には延ばした鶏肉や魚肉で野菜やひき肉を包むように巻いた料理。
これを茹でたり蒸したりするが、提供する時は冷えた状態である。
他にはフランス版煮こごりで覆ったりするものも。

これの冷製のものをバロティーヌというが明確な決まりがなく、人によってまちまち。
元々冷製なんじゃないのか? ガランは冷まして、バロは冷やす? とよく分からない話。


ベックオッファ
フランスのアルザス地方の伝統料理。パン屋という意味。
かつては町のパン屋さんに主婦達が鍋を持ち寄り、釜の余熱を利用して作ったものだとか。
ワイン等で漬け込んだ肉類や玉ねぎ。それとじゃがいもを何層にも敷いて、最後に蓋のようにじゃがいもを乗せる。
ワインも入れたりして、オーブンで1時間半ぐらい煮込むというか蒸すというかして出来上がり。
だし汁をかけてオーブンって事もあるそうな。


ソパ・デ・ケソ
スペイン料理。ソパ(スープ)・デ・アホ(ニンニク)にケソ(チーズ)が入ったニンニクスープ。
調べ不足かもしれないけれど、スペインのスープには割りと直接パンを入れる事が多いような。
入れるパンは固いものでフランスパン等。

余談だけどバケットとはフランスパンの中の一種類で、
フランスパン自体が長さや太さ大きさや形で、何種類にも分かれている。
356: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/06(月) 22:25:37 ID:y19mWGGM
「あーあれか。もう一ヶ月も前の事だよ」

「いきなりヴェノムドラゴンが現われたそうでなー」

勇者(恐ろしい話だ)

「町の人も半数が亡くなったよ」

勇者「先日、その町を通ってきたのですが、香りは残っているものですね」

「あーそりゃ逆だ。ヴェノムドラゴンの毒は外気に触れると無毒になっていくってやつだが」

「それが大体2,3週間かかるんだが、無毒になると臭いを発するようになんだよ」

勇者「だとしても長いのでは……?」

「それだけ強力って事だよ」
357: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/06(月) 22:27:17 ID:y19mWGGM
勇者「因みにそのドラゴンは?」

「逃げられたそうだ。未だに目撃情報がないところを見ると、外に出て行ったのかもしれないなぁ」


勇者「本当に恐ろしい話だなぁ」

勇者「これから先、ヴェノムドラゴンとエンカウントする可能性があるのか……死ぬ」

勇者「うーん、待っていても解決しなさそうだしなぁ」

勇者「けれども、これで森の西側にいたら最悪だ。いっその事、魔王軍の陣に突っ込んで行ってくれないかな」

勇者「とは言え、森の中の方が接近を許す訳だし、急いで国外に出たほうがいいのかな」

勇者「うーん、うーん……悩むなぁ。こんな状態で無理してあちらの国に?」
358: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/06(月) 22:29:25 ID:y19mWGGM
勇者「うん?」

文字伝達魔石「」キラ

勇者「お、おお、連絡来てる」

勇者「ええ、と。……ふむふむ、急ぎではないけどバジリスクかヒクイドリの羽が大量に欲しい」

勇者「年内での納品は可能か、か……向こうにこの二種類の魔物って少ないのかな」

勇者「しかし、バジリスクなら何とでもなる」

勇者「年内か……そもそもどこら辺なんだろ」

勇者「魔王城の装飾師!? と、とんでもないところから依頼がきちゃったぞ」
359: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/06(月) 22:31:50 ID:y19mWGGM
勇者「魔王城ってどの辺りなんだろう。それを聞くのは不味いよなぁ」

勇者「うーん、あの兵士さんに聞いておけばよかったなぁ」

勇者「年内ぐらいには到達できそうな気がするけども……」

勇者「というか見た目とかで人間ってバレるのかな。向こうまで単身で行ったら、気のせいって思われるかな」

勇者「しかしなぁ……ううん……こちらは遠方にいる為、年内での納品は厳しい可能性がございます」

勇者「納期につきまして、都合はつけられますでしょうか? うーん、完全にナメてる内容だな」

勇者「ええと、文章削除は……あ! 送っちゃった!!」

勇者「げぇぇ……」
360: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/06(月) 22:33:49 ID:y19mWGGM
勇者「うわぁ……うわぁ……」

勇者「印象最悪だぁ、挽回できないぞ、これは」

文字伝達魔石「」キラ

勇者「うわぁ……返信きたぁ」

勇者「ええと、それでしたら下記の量と追加で別の素材もお持ち頂けないでしょうか?」

勇者「それでしたら来年の春まででも構いません……ふんふん」

勇者「バジリスクの蹴爪? 装飾師だよなぁ、何に使うんだろう……まあいいか」

勇者「この数なら時間をかけなくても揃えられるし、納期延長は確保できたな……」

勇者「問題は場所だよなぁ……何処なんだろう」


昔の地図「この辺りだよ!」

勇者(わぉ)
361: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/06(月) 22:35:46 ID:y19mWGGM
「あ、勇者さん。欲しい情報は見つかりましたか?」

勇者「はい、ありがとうございます。資料室をお貸し頂きありがとうございます」

「いいのいいの。勇者の方の力になれたのならそれで十分ですって」


勇者「思いがけず知る事が出来た……役場、優秀だなぁ」

勇者「それにしても戦線からだいぶ離れているなぁ。当然か」

勇者「うーん、こうなるとルートはこうでこうで……圧倒的に食料が足りないなぁ」

勇者「これはかなり長丁場になるな」

勇者「携帯食料……栄養価の高い凄い不味いのをいくつも持っていかないと」

勇者「いざという時の生命線だからなぁ。栄養失調で動けなくなるのだけは避けないと」

勇者「腹具合は最悪、野草で凌ぐしかないな」
362: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/06(月) 22:37:31 ID:y19mWGGM
次の町
勇者「ふう……何とか無事着けたか」

勇者「ソードフォレスト領の森の外まであと町が二つ」

勇者「このルートだと、平地であと一つってところか」

勇者「うーん、何とも心細い話だ。これで数ヶ月近い旅になるやもしれな、いと」

勇者「最悪、転移魔法で帰ってこれるとは言え、人がいる地帯まで行かないと転移魔法の標は得られないしなぁ」

勇者「そういえば魔王の国とかどうなんだろう、行ったら転移魔法でひとっ飛びなのかな」
363: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/06(月) 22:39:36 ID:y19mWGGM
勇者「ここの町の特産品はあんまり他と変わりがないなぁ」

勇者「いや、最近は果実ジュースがよく並んでいるな? そういう季節なのかな」

勇者「よし、もう切り上げてちょっと食べたら宿で休もう」

勇者「とは言え、食事にするにはまだ早いな……」

勇者「軽く食べられるものか。屋台的なものはあるんだろうか?」

勇者「うーん、それっぽい建物はいくつかあるけども」

勇者「このお店……酒場っぽい雰囲気だけど、外に出ているメニューは喫茶店だ」

勇者「何か変わったお店だなぁ。しかし悪くなさそうだ。軽く甘いものでも食べるか」
364: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/06(月) 22:41:12 ID:y19mWGGM
カランコロン
「……」チラ

勇者(寡黙な店主と言うべきか、接客向きじゃない店主と言うべきか)

勇者(しかし、目つきが悪い訳でもないし、下手にベタベタされるよりよっぽどいいな)

勇者(しかもこの店、お酒も並んでいる……夜は酒場として営業しているのか)

勇者(中々雰囲気もいいし、これは期待できるやもしれないな)
365: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/06(月) 22:43:32 ID:y19mWGGM
勇者(思ったよりメニューが少ない。メインは酒か)

勇者(うん? サフト? そういえば、あの果実ジュースもそんな名前だったような)

勇者(ほうほう、試しに飲んでみるか)

勇者(あとは食べるものか……ケーキもいいが、たまにはパンケーキにしてみるかな)


 パンヌカック 45G
  四角いパンケーキに、クリームとベリーのジャムが乗っている。
  パンケーキはやや大きめ。
 リンゴンベリーのサフト 10G
  やや透明の赤いジュース。
  とっても爽やか。
366: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/06(月) 22:45:20 ID:y19mWGGM
勇者(ほほう、こりゃ美味そうだ)

勇者(にしても四角いパンケーキ。不思議だ。フライパンが四角なのかな)

勇者(まずはこのサフトとやらを)クピ

勇者(くぅぅぅ、なんだこれ。目の覚めるような酸味っ)

勇者(仄かに甘みもあるけど、中々酸味が強いな。これはかなり好き嫌いが分かれそうだが)グビ

勇者(美味い! これは美味い酸味だ。病み付きになってしまうぞ)
367: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/06(月) 22:47:20 ID:y19mWGGM
勇者(このパンケーキも)パク

勇者(ほう、ほう……味は普通だけど結構どっしりしているんだなぁ)モグモグ

勇者(見た目以上に腹に溜まるな、これ)パク

勇者(その上でこの大きさっていうのは、ちょっとしたトラップのような気がしなくもない)モグモグ

勇者(ここでサフトの援軍)クピ

勇者(うん、うん。これは素晴らしく美味しい口直しだ)

勇者(リンゴンベリーのサフトか。多分これは極端に砂糖を入れていないタイプなんだろうけども)

勇者(覚えておいて損はないな)
368: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/06(月) 22:49:22 ID:y19mWGGM
勇者「ふう……美味しかった」

勇者「味も腹具合も大満足の花丸満点だ」

勇者「しかし、逆に夕食はあまり食べられなさそうだな」

勇者「とは言えこれから先、しばらくはこんな風に腹をさする事もめっきり減るし」

勇者「食える時にめいいっぱい食べておきたいものだ」

勇者「軽く散歩して夕食に備えておくかな」

勇者「食べる事もまた休息と思えばこそ、それも悪くないなぁ」
369: 明日役立たない雑学 2016/06/06(月) 22:51:12 ID:y19mWGGM
パンヌカック
フィンランドの四角いパンケーキで、パンナリという愛称で親しまれている。
四角い天板に生地を流し込んで、オーブンで焼き上げるから四角い形をしているんだとか。
溶かしバターと卵が多く、焼き上がりはどっしりもちもちの出来上がりになる。
食べ方は他のパンケーキと同じでアイスやクリーム、フルーツ添えたりジャムをかけたりして食べる。


サフト
スウェーデンの無添加フルーツジュース。
夏や秋の季節に採れた果実で作るシロップで、水や氷で薄めて飲んだり料理に使ったりする。
冷凍保存する事で、冬場の貴重なビタミン源にも。
人によって作り方は様々。
煮立たない程度に煮る、加水して煮る、こして砂糖を加えて煮て、とろみがついたらビンに。
逆に初めにこして作ったり、保存性は低くなるけど、砂糖の量をちょっぴりだったり。

因みにサフトで作るスープでバールソッパというものがある。
カシスで作ったサフトに、水、砂糖、シナモンスティックを加えて鍋で煮立たないように暖め、
ポテトスターチでとろみをつけて出来る甘いスープだとか。
冬場に飲んでみたくなる話だ。


リンゴンベリー
コケモモの事。
北欧では野生のコケモモが多く、スカンディナヴィア諸国では公有地から収穫することが許可されているんだとか。
酸味が強いため、砂糖を加えてジャムやコンポート等にする。
コケモモのコンポートは肉料理の供え物にする事もあるんだとか。
373: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/07(火) 01:37:23 ID:v91HedmA

旨そうだー
しかし交易やる勇者って珍しいな
376: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/10(金) 09:58:47 ID:mGkQLWd2
美味そうだなあ
商業的なコネがどんどん増えていく!(いいぞ、もっとやれ)
378: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 20:48:27 ID:ogcOt1Sg
二週間後 森の外
勇者「ふう……何とか無事に出れたか」

勇者「ここからは一応、ヒューズヒル領か」

勇者「魔王軍の強襲を受けて、首都を含んだ広域を爆破させた国」

勇者「商業都市の西に小さな建物を建てて、そこを仮設の城代わりにさせているとは聞くが……」

勇者「かなり、厳しい状態だろうな……」
379: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 20:50:17 ID:ogcOt1Sg
勇者「しかし、これは見誤ったかもしれない」

勇者「随分と傾斜がきつめの丘が立ち並ぶな……。ちょっとした崖の合間を歩く巨人の気分だ」

勇者「これでは、意外と敵に近寄られるかもしれない……」

勇者「むしろ、ヴェノムドラゴンがいたらソードフォレストより危険やも」

勇者「とは言え、魔王軍の兵士が入り込んでいないとも限らない。そういう意味では、やり過ごす事もできる」

勇者「なんとも一長一短な話だなぁ……」
380: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 20:52:33 ID:ogcOt1Sg
勇者「丘の上なら……しかし、こちらから見えるという事は相手からも見える」

勇者「何より、ヴェノムドラゴンが相手であれば、この丘の間なんて飛び越えて隣に移れる」

勇者「見つかったら最後、逃げおおせるものじゃない」

勇者「うーん……中々困った土地だなぁ」

勇者「しばらくはひっそりと進むとするか」

勇者「数kmも行けば少し道が穏やかになるし、そこで考えるとしよう」
381: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 20:55:18 ID:ogcOt1Sg
……
勇者「と、思った傍から」


ヴェノムドラゴン「ガアアアアア!」ドドッ

鎧姿の男A「がぁっ!」ドッ
鎧姿の男B「ぐ!」ガッ

鎧姿の男C「くそ……なんて魔物だ」


勇者(あれはどう見ても、魔王軍の兵士の鎧……困ったなぁ)ソヨソヨ

勇者(ヴェノムドラゴンは自らの毒では死なないから、毒の息で殺した獲物をそのまま捕食する)

勇者(あれだけの人数がいれば、ヴェノムドラゴンも満腹だろうし、何とかやり過ごせそうだけど)ソヨソオ

勇者(見殺しにするのも……うん?)フア
382: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 20:58:02 ID:ogcOt1Sg
勇者(あれ、ここは風下? しまった、丘の間の道を通っていくのか)ゾォ

勇者(不味い、彼らがやられたら以前の問題だ。毒の息を吐かれたら最後、こっちも死ぬぞ)

勇者(何としてでも倒さないと!)ダッ


ヴェノムドラゴン「グォォ」スゥゥゥ

D「息を……」

E「炎……いや、このドラゴンは毒か!」

B「駄目だ……間に合わない」

石「」ヒュッ

ヴェノムドラゴン「グル」ガツッ

勇者「……」
383: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 21:00:20 ID:ogcOt1Sg
A「人、間……?」

B「何故……」

ヴェノムドラゴン「オォォ」スゥゥゥ

勇者(間に合っ……)ギリッ

勇者「たっ!」ビュンッ

ヴェノムドラゴン「グル!?」ゴクン

D「何を投げたんだ?」

C「袋……?」
384: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 21:02:01 ID:ogcOt1Sg
ヴェノムドラゴン「ルルル」スゥゥ

勇者「え、嘘ぉ」

勇者(毒食み草は爬虫類や両生類、ドラゴン種のある成分の毒に効くはずなのに)ジリ

勇者(ま、まさか量? 量が足りない? 駄目だ、今からじゃもう逃げられない)

ヴェノムドラゴン「ガアアアア!!」ボコボコボコ

A「ひぃ!」

B「首筋に瘤が……」

勇者(おぉ……だけど、即死じゃなさそうだ……うう、近づきたくないなぁ)
385: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 21:04:17 ID:ogcOt1Sg
ヴェノムドラゴン「アアアアア! ガアアアアアア!」ドズンドズン

C「随分と苦しがっているな」

D「瘤も増える一方だな」

E「隙を見て止めを刺すぞ」

ヴェノムドラゴン「ガヒューー……ガヒューー……」ボタ ボタタタ

勇者(凄い量の粘液を吐き出したな……多分、もう体内に毒素は殆ど)

A「今だ!」バッ

B「かかれぇ!」ザッ
386: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 21:06:58 ID:ogcOt1Sg
ヴェノムドラゴン「」

勇者「止めを刺して下さってありがとうございます」

A「何故、助けたんだ」

勇者「うーん、やはり人の姿をしている相手を見殺しにするのは心苦しい」

勇者「何より、あのまま毒の息を吐かれていたら、風下の自分は死んでいましたし」

B「ああ……だろうな」

勇者「こちらとしては、争う意思はありませんので、そう警戒しないで頂ければと思います」

E「そうか。いや、すまない、感謝する」

C「にしても、今の一体なんだ?」

勇者「毒食み草という植物の実です」
387: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 21:09:12 ID:ogcOt1Sg
勇者「実は潰すと恐ろしく臭いのですが、実と臭いの成分には」

勇者「爬虫類や両生類、ドラゴン種の持つ一部の毒に反応して、無毒の水分に変えてしまうそうです」

D「じゃああの首に出来た瘤は」

勇者「ヴェノムドラゴンは毒を首筋に溜めるそうなんで」

勇者「大抵は無毒化する際に膨張して毒腺などが破裂」

勇者「その勢いで血管や様々な器官に入り込んで、ショック死させたりするのですが」

E「体が大きい分、効きが足りなかったのか」

勇者「恐らくはそうなんでしょうね。いやあ、焦りました」
388: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 21:10:51 ID:ogcOt1Sg
勇者「それにしても、皆さんは何故ここに?」

A「戦場で孤立してな。逃げている内にここまで来てしまったんだ」

B「そうしたらあんなドラゴンに出くわすしな」

C「人間も随分と過酷な環境なんだな」

勇者「ヴェノムドラゴンの襲撃はそうそうあるもんではないですけどね……」

勇者「ただ、大戦の空気を感じてか、多くの魔物がピリピリしていると言いますか」

勇者「普段いないような所に出現したりしていますよ」

D「そいつは悪かったな。だが、俺らも好きでやっている訳じゃないからな?」

勇者「分かっていますよ」
389: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 21:12:50 ID:ogcOt1Sg
勇者「さて……」チラ

ヴェノムドラゴン「」

A「うん? どうした?」

勇者「これからあれを解体しようと思っていますが、皆さんどうでしょうか?」

B「え? なに? 売るのか?」

勇者「いえ、毒抜きではないですが、無毒化も済んでますし」

C「食うのか?!」

D「凄いな……人間は皆あんななのか?」

E「どうなんだろうな……」
390: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 21:15:11 ID:ogcOt1Sg
A「で、俺らはどうすればいい?」

勇者「ええ、と……解体に二人、もう三人は穴掘りと枝や葉っぱを集めてきてほしいです」

B「穴に枝……?」

D「俺とAで解体を手伝おう」

C「じゃあ俺は穴掘るわ」

E「俺も」

B「……薪拾いか」
391: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 21:19:59 ID:ogcOt1Sg
勇者「まずは首と小さい手を落としましょう」

A「この装備で出来るものなのか?」

勇者「こうやって」ゴリュ

勇者「骨を外してやれば、意外と簡単に切れますよ。ただ、急がないと硬直が始まるので」

D「そうなると厄介か」

勇者「ですね。そうしましたら次に……」


C「これが図面か」

E「一体、何に使うんだろうな」
392: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 21:22:18 ID:ogcOt1Sg
二時間後
A「何が意外と簡単だ……」ヒソ

D「滅茶苦茶重労働だ……」ヒソ

勇者「切り分けた肉の塊はこちらに」

B「穴の上に持ってきた枝を格子状にして置け、てこんな感じでいいのか?」

勇者「お、ありがとうございます」

C「こっちの穴の準備は出来たぞ」

E「こっちの被せ物も出来ている」

勇者「じゃあこっちの穴に火をつけちゃいましょう」
393: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 21:24:41 ID:ogcOt1Sg
肉に被せ物をしたところ「」モウモウ

A「はー……上手い事を煙を逃がす道を作ったのか」

D「これで燻せるって事か」

勇者「かなり古い方法ですけどね」

B「どうなっているんだ?」

E「俺もよく分かっていないが、穴の中に火を起こし、煙の逃げ道を肉のある方にってしたんだ」

E「燃すところの穴も別に空気穴がある」

勇者「さて、出来る上がるまでは普通に焼いて食べますか」
394: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 21:26:50 ID:ogcOt1Sg
A「ドラゴンステーキか……」ゴクリ

B「豪勢な」

C「仕方がない」ゴソゴソ

D「お、奮発するか」

勇者「と言いますと?」

C「これだ」コト

暗い色をした小ビン「」

勇者「調味料、ですか?」

C「これはグレープソースを濃縮し、冷凍保存しているものさ」

勇者「へえ!」
395: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 21:29:56 ID:ogcOt1Sg
勇者「しかし、冷凍保存?」

A「中に凍結魔法の魔石を入れているのさ」

勇者「それは……衛生的に問題ないのですか?」

B「食品用の魔石だから、入れておいても平気だぞ。人間側ではないのか」

勇者「そうですね……直接入れるって事はしないですね」

D「あんまし、人間側は魔法や魔力に関する技術って低そうだな。こっちは魔石の衛生問題なんて相当昔だぞ」

E「まあ、こんだけ濃縮させるのも、魔法学が使われているしな」

勇者(魔法学。完全に学問として浸透しているのか。差がある訳だ)
396: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 21:32:07 ID:ogcOt1Sg
C「ま、そんなのは後だ。こいつを軽く砕いて容器に出す」カララララ

C「湯をかけてゆっくり回してやると……」

濃い紫色のソース「」トロォリ

勇者「おお……芳醇な葡萄の香り。これは中々」ゴクリ

A「こっちは焼き始めるか」

B「だな」
397: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 21:34:01 ID:ogcOt1Sg
 ヴェノムドラゴンステーキ ブドウソースがけ
  大きなステーキに惜しまずブドウソースをかけてある。
  骨付き肉もあって見た目のボリュームが凄い。


勇者(うーん、これは堪らないぞ。まさかこんなところでこんなご馳走にありつけるとは)

勇者(しかも野営時。はばかれる事なくかぶり付ける幸せっ)ガブゥ

A「おお、いった」

B「この人、結構ワイルドだな……」コソ

C「ああ、見た目や雰囲気や言動が何というか一致しないというか……」

勇者(美味っ! 美味い! このソース、とってもいけるぞ!)モギュモギュ
398: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 21:36:28 ID:ogcOt1Sg
D「うぐ……流石にこれは」

E「あの巨体だと専用の器具無しだと、川でもない限り血抜きは難しいからなぁ」

B「お、じゃあこいつを」ゴソソ

A「粒マスタードなんて持っていたのか」

B「好きなんだよ」
  
勇者「皆さん……随分と色々とお持ちですね」

A「そりゃあな。食の楽しみを失ったら疲弊するのはすぐだぞ」

勇者「……なるほど」
399: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 21:38:52 ID:ogcOt1Sg
勇者(こういう味も野営での食事の醍醐味だとは思うが……)

B「ほら、あんたも」サッ

勇者「頂きます」ヌラヌラ

勇者「はふっはふっ」ガブゥ

勇者「おほぉっ」

勇者(これはこれで中々! しかも臭みがこんなにも綺麗になるとは。これはいいマスタードだぞ)モギュモギュ

E「良い食いっぷりだな、この人」

D「俺、こんなに美味そうに食べる奴、初めて見たわ」
400: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 21:41:26 ID:ogcOt1Sg
勇者「ふう……大満足の大満腹だ」

A「ああ、食った食った」

B「力になるなぁ」

勇者「おっと、そろそろ良い頃か」カポ


 ドラゴンの燻製肉
  昔の燻製方法で作った。しっかりとしたチップを使った訳ではないので、本当に保存の為の加工。
  中は生なので、食べる時には必ず焼くなりしないといけない。
401: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 21:43:42 ID:ogcOt1Sg
A「悪いな。こんなものまで」

勇者「いえいえ、お互い様ですよ」

B「にしてもあんた、一人で旅をしているのか」

B「これから何処に向かうつもりだ?」

C「……まさか、単身乗り込む気か」

勇者「ええ、まあ」

D「ほ、本気か」

E「……命の恩人とは言え、暗殺者を見過ごす訳にも」

勇者「あ、いえ、取引があるだけです」

ABCDE「は?」
403: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 21:46:14 ID:ogcOt1Sg
勇者「魔王城にいらっしゃる装飾師の方に納品があるんです」

A「の、納品?」

B「どうやって連絡を」

勇者「少し前に、別の魔王軍の方を助けまして。その時にそちらで使われている魔石を譲っていただいたのです」

D「ほう……うーん、ちゃんと初期化しているからいいか」

C「本当にそれだけなんだな?」

勇者「それと……何かあちらの特産とか知っておきたいのと、あちらの料理を食べたいですかね」

D「お、おう……そうか」
404: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 21:47:56 ID:ogcOt1Sg
B「うーん、とりあえず知り合いの門番に連絡しておいとくわ」

B「そいつが非番でなけりゃ、話もスムーズだとは思うが……」

A「まあ、止めはしないが気をつけてくれ。人間と俺達は魔力の質が違う」

A「大抵の魔族なら、お前達に会えば人間かどうかは分かるものだ」

勇者「とすると、やはり全ての町は避けないといけないのですか……」

C「お前、楽観視し過ぎだろ……」
405: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 21:49:41 ID:ogcOt1Sg
A「俺達はこのまま南西に向かい戦線に戻る。そちらは北を行くのだろうし、ここでお別れだな」

B「何にせよ達者でやってくれ」

C「縁があったらまた会おうぜ」

D「だな。礼も返さないといけないしな」

E「あ、これプライベート用の文字伝達魔石だ。連絡先交換しておこう」

勇者「ええと」ゴソソ

E「ここをこうしてこう。こうする事で、このリストからすぐに相手を探して、連絡を取る事ができるんだ」

勇者「なるほど、ありがとうございます」
406: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/11(土) 21:52:14 ID:ogcOt1Sg
勇者「思いがけず大量の食料が得られてしまった……」

勇者「少しは楽になるかなぁ」

勇者「それにしても魔族の人、やっぱり話せるもんだなぁ」

勇者「とっとと和平組んで国交正常化してくれないかな」

勇者「その前に、ひと稼ぎしておきたいなぁ」

勇者「魔族の国、何があるのかなぁ」ワクワク

勇者「さ、まずは生きて着く事だ」
408: 明日役立たない雑学 2016/06/11(土) 21:58:07 ID:ogcOt1Sg
マスタード
カラシナやシロガラシの種子やその粉末に水や酢等を練り上げた調味料。洋がらしとも呼ぶ。
マスタードの歴史は古く、古代ローマ時代には既に使われていたとか。
ギリシアでは紀元前2000年頃の遺跡や、
同時代のエジプトの遺跡からもマスタードの種子が発見されている。
時代を考えると、スパイスは元より臭み消しとしても重宝されていたのは、想像に難くない話だなぁ。
410: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/13(月) 10:00:02 ID:/cQwipO2


これもしかしてホントに商売通して和平結べないか?この勇者
411: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/13(月) 10:15:07 ID:xjA79A1Q
魔族にもヒかれる&感心されるレベルの食欲ってw
しかし腹が減るわ
412: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 19:47:37 ID:N3HQ9Uqk
しばらく後……
勇者「とっくに魔王の領土に入ったわけだけど」ザッザッ

勇者「魔王領土内のこの北の山……」

雪「」シンシン

勇者「参ったな……この山、こんなに早くに雪が降るなんて」

勇者「手前の山が平気そうだから入山したけども、一山超えたら既に積もっているじゃないか」

勇者「本格的な冬までには、魔王城へ南下するだけってところまで行きたかったけど」

勇者「完全にやらかしたなぁ」
413: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 19:50:00 ID:N3HQ9Uqk
勇者「見た事のない魔物いるけども、あまり強くないのが不幸中の幸いか」ザッザッ

勇者「とは言え、うかうかしていたら食料が尽きる……急がないと」ザッザッ

勇者「しかし完全に雪山。下手をすれば死ぬぞ、これ」ザッザッ

勇者「あの時の兵士の人達ともっと情報交換しておけばよかったなぁ」

勇者「まあ、今更言っても」ズボ

勇者「! しま」ボボッ

勇者(落ち……)


勇者「」

「……」
414: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 19:51:34 ID:N3HQ9Uqk
勇者「う……ん」

勇者「!」ガバッ

勇者「いつつつ……」

勇者(どうなった? 確か、雪に隠れていた崖か何かに落ちたはずだが)

勇者(どう見ても家の中だ……狐に化かされているのだろうか)

子供「……」ジー

勇者「おっと……」

子供「母ちゃん母ちゃん! 生き返った!」

女性「こら、死人じゃありません」メッ
415: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 19:53:34 ID:N3HQ9Uqk
男性「目が覚めたか」ノソ

勇者(人……魔族の……)

勇者「はい。貴方がここまで運んで下さったのですか?」

男性「ああ、そうだ。お前さんにとっては、色々と感謝の言葉を言いたいのだろうが」

男性「その前に、こちらの質問に答えてもらいたい」

男性「お前は人間だな?」

勇者「ええ、そうです」

子供「!」ビク

女性「こちらに来なさい」コソ

男性「即答、か」
416: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 19:55:39 ID:N3HQ9Uqk
男性「ここは魔王様の領土だ。何をしにこんなところまで、というのも野暮な事か」

勇者「私は勇者と言う立場の者です。勇者は各国の王が様々な者に任命するもので」

勇者「いくつかの特典と共に、魔王討伐を命じられた者達です」

男性「ほう……」

勇者「私は……気が合う者もなく、こうして一人で旅をしております」

勇者「無論、一人で魔王に叶う訳もなく、討伐の旅のふりをしながら行商をしています」

男性「そうか……うん? え?」

勇者「行商してます」

男性「そ、そう、か?」
417: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 19:57:34 ID:N3HQ9Uqk
勇者「魔物は倒していますが、魔王軍の兵士の方は……一応、六名を助けた事になりますね」

勇者「まあ、流石に国に見つかる事はないでしょうから、反逆罪で捕まる事もありませんが」

男性「……」

勇者「そんな訳でして、私個人は魔族の方と戦う意思はありませんので、どうか警戒を解いてください」

男性「ならば何故、単身こちら側へ? まさか迷子とでも言う訳でもあるまい」

勇者「魔王城にいる方に、商品を届けに行くところです」

男性「……。え? 何だって?」

勇者「こちらがその時のやり取りです」

文字伝達魔石「」ポゥ

男性「……本当だ」
418: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:00:20 ID:N3HQ9Uqk
男性「これは何処で?」

勇者「先ほど言いました魔王軍の兵士の方から譲って頂きました」

勇者「その後に別の方々を助けた際に、登録の方もしてもらいました。一名だけですが」

男性「……」チラ

女性「失礼ながら荷物の方、見させてもらいました」

勇者「ええ、どうぞどうぞ」

女性「……。この大量の羽と爪のような物は何でしょうか?」

勇者「両方ともバジリスクのものです。羽と蹴爪、そちらが今回納品する商品です」

男性「商売の為にこんなところまで……あんた、本当になんなんだ……」
419: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:02:53 ID:N3HQ9Uqk
男性「悪いが長居はさせてやれん。明朝には出て行ってもらうからな」

勇者「明朝まで居させて下さるのですか?!」

男性「あんたといると……調子が狂うな。人間は皆そんなものなのか?」

勇者「いえ、自分が変人なのは自覚の上なので」

男性「……はあ、まあいい。お前」

女性「ええ、もうすぐですよ」

勇者「……?」

女性「あれから一日眠ってらしたんですよ。お腹、空いているでしょう?」

勇者「あ」グゥゥ

勇者「これは、かたじけないです」
420: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:04:56 ID:N3HQ9Uqk
 すいとん入りけんちん鍋
  根野菜たっぷりの中に、ごろっとすいとんが入っている。
  肉はないが豪勢に見える。


男性「ここらは貧しくてな。こんなものしかないが、これで我慢してくれ」

勇者「いえいえ、こんなご馳走、申し訳ないぐらいです」

女性「え、ご馳走?」

子供「何時もこれだけど……」
421: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:06:25 ID:N3HQ9Uqk
勇者(それにしてもこのけんちん、野菜量が半端ないな)パク

勇者(うん、美味い美味い。味噌仕立てか)モグモグ

勇者(これは白米が欲しくなる味だが……米は取れないのかな)パク

勇者(その代わりがすいとんって事なのだろう)モグモグ

勇者(しかしこの暖かは困るな。実に困る。箸が止まらなくなってしまうじゃないか)パク

勇者(こんなにも早くに雪が降る地方ならではなんだろうな)モグモグ

女性「いっぱいありますから、おかわりして下さいね」

勇者「ええ、ありがとうございます」
422: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:08:26 ID:N3HQ9Uqk
勇者(このゴボウ、噛み締める度に味が染み出てくるようだ)モグモグ

勇者(里芋の多さも頼もしい)パク

勇者(ああ、いかん。ついがっついてしまう)モグモグ

勇者(寒い中の熱い鍋、幸せだ。なんて幸せなんだろう)パク

女性「悪い人には、とても見えないわね」フフ

男性「……うるさい」

子供「母ちゃんおかわりっ」

女性「はいはい」
423: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:10:53 ID:N3HQ9Uqk
勇者「ご馳走様でした」

勇者「あの、もしご迷惑でなければ、何か食材等を仕入れてきてお譲りしたいのですが」

男性「裕福でないと……」

勇者「いえ、助けて頂いた事と二泊の恩です。とてもお代は頂けません」

女性「とは言っても……急に言われても中々思いつかないものねぇ」

子供「母ちゃん、俺肉食いたい!」

勇者「お肉、ですか」

男性「というか、一体どれだけ時間をかけるつもりなんだ?」

勇者「転移魔法が使えますので明日、戻ってきますね」

男性「転移魔法だと?」
424: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:12:55 ID:N3HQ9Uqk
男性「お前、分かっているのか?」

男性「それはつまり、一度訪れたところに大量の軍隊をけしかけられると言っているのだぞ」

勇者「そうでもないですよ? 定員ってそこまで多くないですし、基本的に魔方陣は魔法発動と共に消えてしまいます」

勇者「それこそ岩盤に彫ったものでもなければ、魔方陣はその都度書くのが普通」

男性「……人間側の転移魔法は違うのか」

勇者「え? ああ、なるほど。もっと発展したものなのですね。こちらのは」
425: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:14:27 ID:N3HQ9Uqk
勇者「人間側の転移魔法は、魔方陣をその都度描く必要があり、触媒も必要」

勇者「転移できるのは、人が建物を立てている場所。大雑把に言えば町等です」

勇者「これは、人間が建物を建てる事で、地中深くに何かしらを打ち込む」

勇者「これが地脈とでも言うのでしょうか。周囲のそれを支配する事で」

勇者「転移魔法における魔方陣がその地点を探す事ができる、というものです」

勇者「なので、ここから近くの森に兵士を送り続けて、数が揃ったら、という事も出来ません」

勇者「あと、転移魔法は一日一回までしか使えません」

男性「ほお、制約が多いのだな」

男性「だが、それなら……そうだな」
426: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:16:13 ID:N3HQ9Uqk
翌日
勇者「ではこちらが暴れ軍鶏の肉です」ドサッ

子供「おおお! 肉!」

女性「まあまあ、こんなに」

男性「ほ、本当にいいのか? まさかこんな量を持ってくるとは思っても」

勇者「ええ、構いませんよ」

男性「なんだか、すまないな」

勇者「こちらこそ、お世話になりました」
427: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:18:31 ID:N3HQ9Uqk
勇者「ふう……」ザッザッ

勇者「まさかこんな命拾いをするとは……」

勇者「絶対に死んだと思った……」

勇者「気を引き締めていかないと」

勇者「何より、町自体に近寄らないほうがいいんだし……良い人達でよかったぁ」

勇者「さ、まだ少しかかるんだ」

勇者「美味い物も食ったし、食料調達にも戻る事が出来た」

勇者「あと少し……年明けぐらいにはつけるだろうか」
428: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:20:23 ID:N3HQ9Uqk
しばらく後
勇者「……ようやく山を抜けられたか」

勇者「ここからだと……問題がなければあと一月程度かな」

勇者「うん、うん。終わりが見えてきたぞ」

勇者「魔王城、何とか辿り着けそうだ」

勇者「と言ったものの、食料が心細い」

勇者「どうにか得られないとギリギリだなぁ」

勇者「機会があれば、必ず獲る事を意識しないと」
429: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:22:01 ID:N3HQ9Uqk
勇者「しかし、この辺りは魔物も動物も見ないな……何でだろうか」

勇者「うん? あれは……」

勇者「何かの群れかな? 念の為に隠れてやり過ごすか」ガササ

勇者(結構速いな。一体なんだろうか)


グリーンドラゴンの群れ「……」ダガダガダガダガ


勇者(グリーンドラゴン!? 初めて見た……けど、これは不味いんじゃないか?)
430: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:24:27 ID:N3HQ9Uqk
勇者(特定の生息地域なし、常に群れで移動しながら獲物を捕食して生活するドラゴン)

勇者(確かに人間側の領土内での目撃情報は少ないけども……魔王領土内をメインに移動しているのか?)

勇者(生態については詳しく分かっていないんだよなぁ)

勇者(とは言え、10体ぐらいか? 仮に火も何も吹かないとしても、あの数に襲われたら一溜まりもない)

勇者(ここは手を出さずに穏便にやり過ごすしかないな)


緑竜の群れ「……」ザザァ

緑竜の群れ「……」キョロキョロ


勇者(何か探している?)

勇者(ああ、そうか。獲物でも探しているんだろうな……。うん? 何であそこで立ち止まって探しているんだろう)
431: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:26:07 ID:N3HQ9Uqk
緑竜の群れ「……」ジッ


勇者(……こっち、見てる? しまった……嗅覚とかが発達しているのか?!)

勇者(少しずつ……音を立てずに後退して……)ソロリ


緑竜の群れ「……」ソロリソロリ


勇者(! 気づかれている! 絶対にこっちにいる事を分かっていて近づいてきている!)バッ
432: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:28:37 ID:N3HQ9Uqk
勇者(くそっ! なんだ? 何の能力でこっちに気づいた!)ダダダ

緑竜の群れ「クエエエエエエ!!」ダガダガダガ

勇者(駄目だ! 逃げ切れない!)ゴソゴソ

勇者(爆発魔石!)バッ

黄色い魔石「」カラララ カッ

勇者(これで少しでも時間を……!)ッドドドォォォン

爆煙「」モウモウ

爆煙「」ボボフッ

緑竜の群れ「……」ボシュッボボッ

勇者(怯みも警戒もしていない……!?)
433: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:30:20 ID:N3HQ9Uqk
勇者「フランベ!!」カッ

火の海「」ゴォォォ

勇者「それと」バッ

赤い魔石「」ガララララ

火柱「」バァァァン

勇者「どうだ……」ダダダ

緑竜の群れ「……」ダガダガダガ

勇者(まだ来るか!)

勇者(駄目だ、彼らの探索能力を突き止めた所で、撒く為の準備をする時間がない!)
434: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:32:18 ID:N3HQ9Uqk
勇者(追いつかれる!)

緑竜A「ガアアア!」バッ

勇者「くぅ!」ガァァン

緑竜A「クゥゥゥン」バッ

緑竜B「シャアアア!」ザザッ

勇者「つっ!」ガギィン

緑竜B「シィッ!」バッ

勇者(ヒットアンドウェイ!? くそ、嫌な戦い方を!)

緑竜C「シャッ!」ビッ

勇者「くあ!」ザシュゥ

荷物「」ドサァッ

勇者(爪が荷物に当たったか!)
435: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:34:05 ID:N3HQ9Uqk
緑竜D「……」ピク

緑竜E「……」チロチロ

勇者(動きが変わった……? それに舌を出して……)

勇者(逃げられるか?)ササ

緑竜A「……」ソロリ

緑竜G「……」ソロリソロリ

勇者(荷物に集まっていく……嗅覚が発達しているのかも)

勇者(食料……命あってのものだねか)バッ
436: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:36:16 ID:N3HQ9Uqk
勇者「はー……はー……」

勇者(ここまで来るまでにいくつか臭いのトラップや対策をしたけども……)

勇者(これで追いつかれたらもうどうにもならないなぁ)

勇者「……」ゴソゴソ

勇者「納品の品は無事、か。落としたのは食料バックだけ」

勇者「手痛いがよしとするか……」

勇者「問題は食料もそうだけど、持ち運べる量がかなり減ったって事だよなぁ」
437: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:38:19 ID:N3HQ9Uqk
二週間後
勇者「……」フラ フラ

勇者「……」ドザァ

勇者(こっちのバッグにも……もっと水筒になるものを入れておくべきだった)

勇者(空腹より……これは枯死するなぁ)

勇者(何とか凌いできたけど、もう限界だ。池すら、見当たらない……)

勇者(……)
438: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:40:14 ID:N3HQ9Uqk
……
勇者「……」

勇者「……」ムク

勇者「なん、で……生きているんだ」

獣人「あら、気がついたようね」

勇者(獣のような耳と尻尾……魔王の領土にいるという獣人か)

勇者「貴女が助けてくれたんですか?」

獣人「ええ、そうよ。文無しで損したわ」
439: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:42:12 ID:N3HQ9Uqk
獣人「とは言っても、まだ動き回るほど回復していないはずよ」

獣人「食べる物を持ってくるから大人しくしてなさいな」

勇者「ありがとうございます」

獣人「礼はいいわよ。後でしっかりと返してもらうから」

勇者「働けって事ですか」

獣人「物でもいいのよ。貴方、人間でしょ」

獣人「こっちじゃ珍しいものとか、色々と候補はあるんじゃないかしら?」

勇者「まあ、そうですね……」
440: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:44:09 ID:N3HQ9Uqk
 けの汁
  根菜類を中心に細かく刻んだ具が、鍋から溢れんばかりの汁。
  汁物だけど、完全に食べる料理。
  

勇者「ほほう……」

勇者(これは美味そうだ)

獣人「見たところ、飢餓よりも脱水症状が強かったみたいだから、普通の食べる物だけど大丈夫そうか?」

勇者「ええ、量は少なかったですけど、直前まで食べる事はしていました」

獣人「そりゃ良かった。さ、召し上がれ」

勇者「いただきます」パク

勇者(ほうほう、味噌仕立てか。ここらは寒い地域なんかな。やたらと汁物に味噌を入れたがる)モグモグ

勇者(しかし美味いぞ、この鍋。この小さくさいの目に切った野菜達、思った以上に量があるし)パク

勇者(これはかなり大当たりな郷土料理なんじゃないだろうか)モグモグ

獣人「……」
441: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:46:29 ID:N3HQ9Uqk
獣人「口に合うようで何よりだよ。さて、あたしも食べるかな」

勇者(肉は一切入っていないのか。獣人ってもっと肉を食べるもんだと思っていた)モグモグ

勇者(それにしても不思議な味だ。味噌以外にも出汁は取っているんだろうけど……何だろう)

勇者(うーん、何にしても美味しいし、かなり腹が膨れるぞ。そしてヘルシー。いくらでも食べたくなるぞ)

獣人「……」モグモグ ゴクン

獣人「で、あんたはなんでまた一人でこんな所まで来たんだ?」

獣人「とても魔王様を暗殺できるようにも見えないが」
442: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:48:35 ID:N3HQ9Uqk
勇者「一応、魔王討伐を命じられている者の一人ですが、監視がある訳でもないので」

勇者「色々とありまして行商の真似事をしています。それで、魔王城にいる方から注文がありまして」

獣人「それでここまで一人で? あんた……ただの商人、いやここまで来たんだからただの商人でもないか」

獣人「あんた、強いのか?」

勇者「うーん、そこそこ戦える程度ですよ。上手く立ち回って逃げ回っているだけです」

獣人「ふーん、まあそれでもここまで来たんだ。それなりのもん持っているんだろうな」
443: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:50:18 ID:N3HQ9Uqk
獣人「あんたらはどうか知らないけども、あたし達はさ、別に戦争なんてしたい訳じゃないんだ」

獣人「ま、あたしらが徴兵されている訳じゃないけども、やっぱり気分がいいもんじゃないし」

獣人「どうにか上手くやってよ。魔王城に行くんでしょ?」

勇者「流石にそれは無茶振りですよ」

獣人「そこをどうにかしてよって話」

獣人「あ、じゃあこの礼はそれで返してよ」

勇者「転移魔法使えるので、人間側の方から何か買い付けてお譲りしますね。何か欲しい物はありますか?」

獣人「完全スルーかよ」
444: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:52:16 ID:N3HQ9Uqk
獣人「まあ、本気で一人でどうにかなるなんて思っていないわよ」

獣人「ただ、もしも機会があったらお願いって事」

勇者「はあ……」

勇者「あー……その、そもそも何で魔王は侵略を?」

獣人「単純に土地問題ね」

獣人「東の果てには瘴気が溢れる土地があるのよ。その所為でこっち側の土地って」

獣人「面積の割りに使えないところが多いのよ」

勇者「住む場所ですか? それとも食糧問題?」

獣人「差し迫っては食糧問題じゃない? 力のある種族が東に移るとかすれば、居住地は余裕ができるだろうし」
445: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:54:19 ID:N3HQ9Uqk
獣人「野菜だけでいいなら、ここら辺は豊かなんだけどねー」

勇者「獣人の方は肉などは食べないんですか?」

獣人「食べるよー。ただ、ここら辺はよくグリーンドラゴンが通るからね。中々いないのさ」

勇者「食い尽くされる、と」

獣人「お陰で野菜や山菜なんかは多く自生しているんだけどね」

獣人「ぶっちゃけ、ここら辺で肉を得る機会ってそのグリーンドラゴンそのものよ」

勇者「倒すんですか……あれ」
446: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:56:16 ID:N3HQ9Uqk
……
勇者「はー……美味しかった。ご馳走様です」

獣人「はい、どうも」

勇者「しかし、野菜だけなのに力が湧いてくるなぁ」

獣人「肉はないけど豆も多く入っているからね」

勇者「え? 豆?」

獣人「すりつぶした物を溶かしてあんのさ」

勇者(あの不思議な味は豆の味だったか)
447: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 20:58:32 ID:N3HQ9Uqk
獣人「さっきのお礼の話だけど、気にしなくていいからね」

勇者「え?」

獣人「あたしが好きでやった事だからさ」

獣人「何なら、たまにはここに立ち寄っていきなよ。転移魔法あんでしょ?」

獣人「その時に色々と物持ってきて、ここで交換なり販売していってくれればいいよ」

獣人「重要な土地じゃないから、割と魔王様からは見放されているのよ」

獣人「お陰で自国の商人もあんまり来ない。グリーンドラゴンが原因ってのもあるんだけどね」

勇者「ああ、なるほど」
448: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 21:00:41 ID:N3HQ9Uqk
獣人「ま、少しゆっくりしていきなよ」

勇者「……」

勇者「それではご好意に甘えさせてもらいます」


数日後
勇者「お世話になりました」

獣人「こっちこそ、色々手伝ってくれてありがとうね」

獣人「ま、またいらっしゃいな」

勇者「ええ、そうします」

獣人「魔王城はこのまま南下していけば着くだろうけど、歩きだと結構かかるかなぁ」

獣人「ま、気をつけてね」
449: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 21:02:37 ID:N3HQ9Uqk
勇者「また命を拾った……」

勇者「なんか魔族の人に拾われるなぁ」

勇者「それにしても、何だかんだであんまり警戒さていないな」

勇者「まあ、単身でこんな荷物なら争いに来たとは思われない、か」

勇者「意外と話せるもんなのかもしれないなぁ」

勇者「和解ってそう難しくないような……いや、国が関わる事だし、そうでもないか」

勇者「まあ、自分のやるべき事だけしていればいいか」
450: 明日役立たない雑学 2016/06/19(日) 21:05:13 ID:N3HQ9Uqk
けの汁
東北の郷土料理で、津軽から秋田にかけて作られる。
きゃの汁やきゃのことも呼ばれ、細かく刻んだ根菜に、ワラビ等の山菜。
更には高野豆腐に油揚げ、こんにゃくにずんだと具だくさんの汁物である。
野菜の味が染みる事もあって、日が経つ程に美味いという。

名前は粥の汁という意味で、"かゆ"が訛って"け"となったんだとか。
昔は米が貴重だった為、刻んだ野菜を代わりにして食べたのが起因しているそうな。
453: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/19(日) 23:59:57 ID:.yJiQnGc

魔王領は味噌味がお好きかw
けの汁もいいけど、すいとん食べたくなってきた
455: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/20(月) 10:55:29 ID:ceBJY.Ps
いい人(魔族)たちだなあ、どうにか戦争回避したいもの
寒い地方の温かい汁物って美味しいよね……
456: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/26(日) 20:26:03 ID:WzYnEYBs
一ヵ月後
勇者「おお……あれが魔王城」

勇者「かなり立派なもんじゃないか」

勇者「それに城下町も栄えているようだ」

勇者「しかし……」

勇者「この姿で街に入るのは勇気がいるなぁ」プゥーン

勇者「近くに水辺はないし、あったとしてもこの季節に水浴びは自殺行為だしなぁ」

勇者「何より、こっち側の貨幣を持っていない」
457: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/26(日) 20:28:21 ID:WzYnEYBs
魔王軍野営地
E「うん?」

B「どうした?」

E「あの人間から連絡が来た」

A「へえ、まだ生きているんだな」

E「……」

C「ど、どうした?」

E「……」スッ

件名『助けてほしい』
458: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/26(日) 20:30:29 ID:WzYnEYBs
勇者「お」

勇者「ふむふむ……南東に大きな池か」

勇者「……寒いがそこで体とか洗ってから行こう」


勇者「うー寒い寒い……」

勇者「早く魔王城に行って温まりたいなぁ」

勇者「あれ? また連絡が来てる」

伝達魔石『今日の門番、知り合い誰も勤務していないから力になれない。頑張れ』

勇者「うーん、出たとこ勝負か。まあ仕方がない」
459: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/26(日) 20:32:11 ID:WzYnEYBs
勇者「ここの小道を行けば、比較的誰にも会わずに魔王城に……」

勇者「お、門が見えてきた」


門番A「何者だ」

門番B「……ちょっと待て。お前、人間か?」

勇者「はい、勇者と申します」

門番A「人、間……」

門番B「……」ザワッ
460: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/26(日) 20:34:27 ID:WzYnEYBs
勇者「本日は」

門番A「……」ゴクリ

門番B「……」ジリ

勇者「こちらにいらっしゃいます、装飾師様へ商品の納品に伺いました」

門番AB「えっ」

勇者「こちらがその時のやり取りです」スッ

門番AB「えっ」
461: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/26(日) 20:36:15 ID:WzYnEYBs
門番A「……本物っぽいぞ」

門番B「確認をしてくる。ここで待機してもらうぞ」

勇者「……分かりました」

勇者(寒いから中に入れてほしいんだけどなぁ)

門番A「お前……魔王様を暗殺とか企んでいないだろうな」

勇者「考えておりませんよ。むしろ今は……」

勇者「早く暖をとりたいです……」ガタガタ

門番A「……すまないが、もうしばらく待っていてくれ」
462: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/26(日) 20:38:26 ID:WzYnEYBs
門番B「確認は取れたが」

兵士「監視として同行させてもらうぞ」

勇者「はい、どうぞ。というか早く中に入れてください」ブルブル

門番B「……この人間、なんでこんなに震えているんだ?」コソ

門番A「……寒いらしいが、そこまでじゃないんだけどな。人間側の領土は温暖な土地なのかもな」

勇者(若干濡れているからです)フルフル
463: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/26(日) 20:40:45 ID:WzYnEYBs
魔王城内部
勇者(へえ……随分と装飾が)

勇者(やっぱり種族が違うとは言え、魔族も"ヒト"なんだな)

兵士「あまりきょろきょろとするな」

兵士「一挙手一投足を見張られていると思え」

勇者「はあ、そうですか」

勇者(言われても城内なんて今日の商談以外は観光気分だし)

勇者(和平……和平……うん、無理だな)
464: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/26(日) 20:42:35 ID:WzYnEYBs
装飾師「ほ、本当に人間でしたか」

勇者「すみませんね、騙すような形で。ですが、商品は確かに」

装飾師「ふんふん、ええ、物は申し分なしです。本当にありがとうございます」

装飾師「御代はこちらの2000Gです」

勇者(こちら側はギルで、向こうはゴールド。材質はあまり違いはないみたいだけど、流石に絵柄は違うか)ジャラジャラ

勇者(こういうところ、昔は普通に交流があった感があるなぁ)ジャラ

勇者「はい、2000G、確かに受け取りました」
465: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/26(日) 20:44:28 ID:WzYnEYBs
装飾師「それにしても、よくこんな所まで来る気になりましたね……」

勇者「稼ぎ時だと思いまして」

勇者「転移魔法が使えますので、今後はこちら側へも用意に来れます」

勇者「あちら側の物等、ご相談頂ければすぐに対応致しますよ」

装飾師「それはありがたいですが……て、転移魔法か」

勇者「人間側の転移魔法は定員が数人程度、基本的に魔方陣はその都度描く」

勇者「また、一日一回でこういった町など建物がないところへは転移できません」

装飾師「制約が多いのですか……まあ、安心しました」

勇者「ええ、要らぬ誤解で争いなんて、私も望んでいません」
466: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/26(日) 20:46:36 ID:WzYnEYBs
装飾師「うん? もしかして、こちら側の転移魔法をご存知なのですか?」

勇者「かなり便利なものだとは。何度か命の危機に、こちらの方々に助けて頂いた時に聞きました」

装飾師「それはそれでどうなんでしょうか……まあ、私は軍属ではないし、貴方も似たようなものですし……」

装飾師「まあ、また何かありましたらよろしくお願いしますよ」

勇者「ええ、こちらこそ」

勇者「あ……」

装飾師「どうしました?」

勇者「城内で食事を出来るところってありますか?」

装飾師「ええ、食堂がありますよ」

兵士「……案内しよう」

勇者「よろしくお願いします」
467: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/26(日) 20:49:16 ID:WzYnEYBs
食堂
「あれ……? 人間?」ザワザワ
「え? うそ」ザワ
「まさか、いやいやまさか……」ザワザワ

兵士「ここが食堂だ。こちらにある札を持って、あそこでお会計すればそのまま注文となる」

勇者「へえ、そういう仕組みですか」

勇者(しかし、結構メニューは変わらないもんだなぁ)

勇者(ミートサンド……魔王の国の肉って何を使っているんだろう)

勇者(豚肉野菜炒め定食もそそるなぁ)

勇者(カツ丼もあるのか。魔王の国ってパンと米が両方普及しているのかな。珍しいなぁ)

勇者(ふーん、アジの開き定食、魚料理もか。幅広いメニュー、流石は王城)
468: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/26(日) 20:50:39 ID:WzYnEYBs
勇者(それにしても迷うなぁ。ご飯ものはあっちじゃそう多くはないし、ここは定食物でもいってみるか)

勇者(ほうほう、ラーメンにうどんにそばと麺類も豊富か、これは侮れない)

勇者(うん? ちゃんぽん? なんだこれ、初めて見るな)

勇者(うーん、列的には麺類か。ちょっと気になるな)

勇者(へえ、鶏の唐揚げ。単品もあるのか)

勇者(豚の角煮か。これもそそるなぁ)

勇者(困ったぞ……まるで袋小路だ)

兵士(凄い悩んでる……)
469: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/26(日) 20:52:28 ID:WzYnEYBs
勇者(うーん、米……捨てがたいが)

勇者(ちゃんぽん。ここで聞くのは野暮な気もする)

勇者(ご飯物ってだけなら、これから先こっちを旅していればいくらでも食べられそうか……)

勇者(折角の魔王城での食事だ、ここは一つ冒険してみるか)カタ


 ちゃんぽん 50G
  野菜とエビやイカ等がたっぷりのった麺物。
  白めの濁ったスープだが、味はあっさり。
 豚の角煮 35G
  ぶ厚めに切られた3切れの豚の角煮。
  付け合せなのか、ほうれん草が添えられている。


 カツカレー 60G
  兵士の人が頼んだ料理。
  かなり恐ろしくぶ厚いカツがのったカレーで、ニンジンはジャガイモもごろっと入っている。
  グリーンドラゴンの肉らしい。
470: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/26(日) 20:55:01 ID:WzYnEYBs
勇者「いただきます」

兵士「いただきます」

勇者(カツカレー、予想以上の大きさだ。早くも青い芝生に見えるぞ)

勇者(とは言え、このちゃんぽんも中々なものだぞ)

勇者(この野菜の量に負けないエビにイカ。これはアサリか。それに豚肉まで)

勇者(やっぱりごちゃ混ぜって意味合いのちゃんぽんなのかな)フーフー

勇者(! なんだ、この味。予想以上にさっぱりだ)ズゾゾゾ

勇者(もっと大味かと思ったけども。しかし、これは中々、いやとっても美味いぞ)モグモグ
471: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/26(日) 20:56:36 ID:WzYnEYBs
勇者(何ていうか、野菜にもよく合う味だ。いい、これとってもいいぞ)パクパク

勇者(シーフードかと言えば、そうでもないし、本当に不思議な美味しさだ)モグモグ

勇者(ちゃんぽん、かなりやるじゃないか)

勇者(おっと、角煮を疎かにはできないな)パク

勇者(ほほう、うんうん、とっても柔らかくて美味しい)モグモグ

勇者(しっかり味が染み渡っている。これはいい角煮だ)

勇者(となると、このほうれん草も期待しちゃうぞ)パク

勇者(ほうほう、そう来ましたか。豚と一緒に煮込んでいるんだな)モグモグ

勇者(豚の旨みをすっかり吸ってらっしゃる。このほうれん草も強敵だ)パク
472: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/26(日) 20:58:12 ID:WzYnEYBs
勇者(これはどれも箸が止まらないぞ。なんならほうれん草だけでもいいぐらいだ)パク

勇者(魔王国、侮れないぞ)モグモグ

勇者(ああ、美味しいな。ここが魔王城で本来敵国だなんて、どうでもよくなってしまう)パク

勇者(ふふ、食事中にそんな野暮な事考えちゃ、料理に失礼だな)モグモグ

兵士「……」モグモグ

兵士(この人、敵地のど真ん中だってのに、すっげえ美味しそうに食べるなぁ)

兵士(うーん、今日はちゃんぽんにしておけば良かったなぁ)
473: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/26(日) 21:00:32 ID:WzYnEYBs
勇者「ふう……美味しかった」

兵士「この後はどうするつもりだ?」

勇者「そうですね……こちらの貨幣も得られましたし、少し城下町で面白い物がないか見て行こうかと思います」

兵士「あ、いや、そんな直近の話でなく……」

勇者「地図が手に入れば、少し近隣を観光していこうかと」

兵士(観光って言い切っちゃったよ、この人)

勇者「面白い土産物や特産が売っている町とか知りませんかね?」
474: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/26(日) 21:02:15 ID:WzYnEYBs
……
勇者「お世話になりました」

兵士「あ、ああ……」

勇者「また機会がありましたらよろしくお願いしますね」


門番A「行った、か」

門番B「様子はどうだったんだ?」

兵士「商人、かな……」

門番A「え……マジか」

門番B「何だったんだ、本当に」
475: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/26(日) 21:04:16 ID:WzYnEYBs
勇者「それにしても2000G……予想以上の高値で取引されたな」

勇者「うん、やっていけそうだな。魔王の国」

勇者「それにしても魔王の国の物かぁ。出来るだけ、バレないものを探さないとなぁ」

勇者「まあ、何とでもなるだろう」

勇者「それよりも、少しこちらの国の料理について学んでおきたいな」

勇者「ふふ、食った傍からもう次の料理が楽しみになってきている」

勇者「魔王の国、満喫できそうだ」
476: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/26(日) 21:08:30 ID:WzYnEYBs
戦乱の世を一人旅する勇者がいたという。
その者は戦乱を止める役を与えられていたものの、終ぞ直接的に貢献する事はなかったという。
ただ、分け隔てる事無く敵国の者にも接し、更には自らその地に赴いては自らの目的を果たす。
利する事もなければ、害する事もなく。
恐れはすれど臆することはなく。
闘争こそはないものの、別の形の勇気ある者として、永く永く語り継がれたという。


勇者「へえ、このパン屋、外からも見えるようにPOPを書いているのか」

勇者「『当店オススメ、カヌレ・ド・ボルドー』……このカップケーキ、みたいのかな」

勇者「……」

勇者「うん、食後の甘い物はまだだし、食べてみるか」カランコロン
477: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/06/26(日) 21:13:13 ID:WzYnEYBs
ちゃんぽん
ちゃんぽんと言えば長崎ちゃんぽん。
語源は色々と諸説があり、中国の福建語の挨拶やそこの言語での混ぜるという意味合い。
はたまた、沖縄のチャンプルーやマレー語・インドネシア語のチャンプルとか。
福建省の料理をベースにしているらしく、明治時代中期に清国人留学生向けに考案されたらしいが、
異説として明治初年に支那饂飩をちゃんぽんの名で売り出していたともいう。


カヌレ・ド・ボルドー
フランスのボルドー女子修道院で古くから作られているお菓子で、カヌレという名で親しまれている。
蜜蝋を入れる事とカヌレ型と呼ばれる小さな型で焼く事が特徴。
カヌレは溝のついたという意味で、底の形は違うけどプリンの容器が円柱状になっていると思えばイメージし易い。
ボルドーではワインの澱を取り除くのに、鶏卵の卵白を使うため卵黄が大量に余る。
その利用法がこれという話だとか。

卵白卵黄使い道繋がりで。
日本のOTC医薬品でよく使う抗炎症や去痰の効果のある塩化リゾチーム。
これは卵白から作られていて、マヨネーズ工場で余る卵白を利用しているとか。
カヌレの逆バージョン。
484: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/02(土) 23:40:03 ID:TVrLzWiw
二年後 魔王城下町
勇者「60万ゴールドに23万ギル……随分と稼いだもんだなぁ」

勇者「しばらくのんびりしてもいいぐらいだけど、動ける内に稼ぎたいしなぁ」

勇者「さて、納品を済ませてどっかで食事でも取るか」

勇者「それにしても」

勇者「随分と賑やかだな。お祭りでもあるのかな」
485: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/02(土) 23:41:36 ID:TVrLzWiw
装飾師「おお、これが一角兎の皮……まるで宝石のような輝きですね」

勇者「いやぁ、中々大変でしたよ」

勇者「でもまあ、二ヶ月で獲れたのは運がいい方でしょうね」

装飾師「そんなにですか……」

勇者「あ、いえ、自分の能力での話です。狩人の方とかでしたら1,2週間も篭れば大抵は済むらしいですよ」

装飾師「なるほど。しかし何にせよ貴重な物、本当にありがとうございます」

装飾師「こちらが御代の5000Gです」
486: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/02(土) 23:42:55 ID:TVrLzWiw
勇者「それにしても、今日は何かあるんですか?」

装飾師「え? ご存知ではないのですか?」

装飾師「今日は、こちらと人間側との和平が結ばれる日ですよ」

勇者「えっ!」

勇者「全然知らなかった……」

装飾師「人間側では話題になっていないのですか?」

勇者「ここ最近は一角兎の情報集めたりだったんですよ。基本的に辺境の町や村ばかりなので」

装飾師「あーそうでしたか」
487: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/02(土) 23:44:40 ID:TVrLzWiw
装飾師「ここ魔王城で人間側の国々の王が集まるんですよ」

勇者「へー」

勇者「……」

勇者「あ、あの、それって聞いたりする事はできますか?」

装飾師「まあ、秘匿する内容ではないですので、ある程度の権限を持つ者なら傍聴できますが」

勇者「出来れば王達に気づかれないところで」

装飾師「あー……」

装飾師「うーん、それでしたら」
488: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/02(土) 23:45:56 ID:TVrLzWiw
会場隣の部屋
魔王軍騎士「装飾師さん? どうなさったんですか?」

装飾師「ええ、彼が聞きたいそうなので」

勇者「どうも」

騎士「特に面白い話題はないと思いますよ?」

勇者「……いえ、ちょっと気がかりがありまして」

装飾師「というのは?」

勇者「え、ええと、立場的に、とか?」

装飾師「?」
489: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/02(土) 23:47:34 ID:TVrLzWiw
魔王「では、これらの条件の下に和平を結ぶという事で相違はないだろうか」

剣「問題ない」

丘「ああ」

火「相違ない」

商「ええ」

魔王「ではこれにて、人間側七ヶ国並びに魔王国の和平を取り結ぶとする」

魔王「……」

剣丘火商「……」

魔剣丘火商(ふー……)
490: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/02(土) 23:48:35 ID:TVrLzWiw
魔王「しかし、お前達も解せんものだな」

魔王「斥候なのか何なのか知らんが、送り込むだけ送り込んでアクションなし」

魔王「こっちはずっと警戒をしっ放しだったぞ」

丘「なに?」

剣「は?」

火「ほほう、うん?」


勇者「」ゾォッ

装飾師「あ、そういう……」
491: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/02(土) 23:49:57 ID:TVrLzWiw
商「それは一体どういう事でしょうか?」

魔王「勇者という職位の者を送り込んでいるのだろう」

火「ええ、確かに。だが、誰一人として魔王城はおろか、魔王の領土を越えたという話は聞いていないぞ」

魔王「なに? ああ、飽くまで代表としてだからか。この場に出席できなかった三ヶ国の人間という事か」

火「いや、多少なりとも勇者についての情報は交換し合っている」

火「それだけの事を成した者がいるのならば、周知されているはずだ」

魔王「……どういう事だ?」

剣「こちらが聞きたい」
492: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/02(土) 23:51:38 ID:TVrLzWiw
丘「捕らえたりはしていないのですか?」

魔王「現状の法では、その者を捕らえる事が出来ん」

魔王「ごく普通に違法性のない物を取引していくだけだからな」

商「……? 勇者? 商人の間違いでは?」

魔王「いや、勇者であると報告を受けている。此処でそのような嘘を言うメリットはなかろう」

剣「確かに……では一体何者が? しかも何の報告もなしに……商売をしていただけだと?」

商「微妙なラインですね。今こそ和平を結んだとは言え、当時は敵国へのルートを得た訳ですから」

火「それを隠していたとなると、最悪は反逆罪となってもおかしくないな」
493: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/02(土) 23:53:15 ID:TVrLzWiw
勇者「……」

装飾師「……」

勇者「ここから遥か西の土地についてお伺いしてもいいでしょうか?」

勇者「出来れば、長期的な滞在、あるいは移住を受け入れている町とか」

装飾師「ええと……はい。すぐに調べさせます」

勇者「うーん、人間側で商売出来るのは何年後かなぁ」

装飾師「え? そこなんですか?」

勇者「元々孤児なんで、故郷らしい故郷もないんですよ」
494: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/02(土) 23:54:36 ID:TVrLzWiw
装飾師「1,2時間ぐらい時間を頂く事になるかと思います」

勇者「分かりました」

勇者「その間、城下町にいますね」

装飾師「大丈夫でしょうか?」

勇者「まだ人相は割れていませんからね」

装飾師「なるほど、分かりました。ごゆっくりしてきて下さい」

勇者「はい、よろしくお願いします」
495: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/02(土) 23:55:59 ID:TVrLzWiw
城下町
勇者「しかし本格的に和平が結ばれるとなると、これから先、競争相手も出てくるだろうなぁ」

勇者「少し考えなくちゃいけないな」

勇者「まあ今は生活の基盤が先になるのかな」

勇者「何にせよ情報待ちか……」

勇者「さあて、何を食べようか」
496: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/02(土) 23:57:23 ID:TVrLzWiw
勇者「うん?」

看板「本日、海産物仕入れ!」

勇者「普通の料理屋に見えるが……海産物か」

勇者「ここまで大々的にするって事は普通の魚とかじゃないのかな」

勇者「どんな料理なんだろう」

勇者「ここ最近はずっと山だったし……よし、ここにしてみるか」
497: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/02(土) 23:58:55 ID:TVrLzWiw
「いらっしゃい」カランカラン

勇者「あの、外の看板って」

「入荷したのはタカベ、きびなご、あとタコだね」

勇者「へえ、タコってあのデビルフィッシュですか?」

「ああ、そうだよ。そんな事を聞くなんて……あんたまさか人間か?」

「人間側はタコを食わないって聞いた事があるが、本当なんだな」

勇者「ええ、まあ……あの、タカベも聞いた事がないんですが、どういったメニューなんですか?」
498: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/03(日) 00:01:21 ID:6bSLoIw2
「タカベは小さめの魚でな。塩焼きで出している」

「きびなごは天ぷらだな。海よりの地域なら刺身で食うのも中々イケるんだがな」

「タコは刺身と水軍鍋だな」

勇者「……それじゃあ」


 水軍鍋 90G
  白身魚にしいたけ、白菜や水菜と里芋にエビ。
  何と言っても丸々と入っているデビルフィッシュが凄い。


勇者「ほほう……これがデビルフィッシュ。何という存在感だ」
499: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/03(日) 00:02:56 ID:6bSLoIw2
勇者(まずは汁から……)ススゥ

勇者(うん、美味いっ。思いの外、味はあっさり目なんだな)

勇者(魔王の国の鍋物って味噌が多いイメージだけど、これはしょうゆか)パク

勇者(うんうん、いいぞ。この白菜、実にいい)モグモグ

勇者(それにこの抜かりないしいたけの量)パク

勇者(やっぱり鍋と言ったら欠かせないな)モグモグ

勇者(この魚は何だろう?)パク

勇者(うーん、何の魚かは分からないが上等上等)モグモグ
500: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/03(日) 00:04:29 ID:6bSLoIw2
勇者(しかし、勢いで頼んだとは言え)

勇者(このデビルフィッシュの量は想定外だった)ツンツン

勇者(あ、足が一本ずつ切ってあるのか……それにしてもでかい)

勇者(ええい、ままよっ)ガブ

勇者(……)モギュモギュモギュモギュ

勇者(ほう、ほう……デビルフィッシュ、面白い食材だ)モギュモギュモギュ

勇者(デビルフィッシュの味は分からないけど、これは多分食感を楽しむ食材なのかも)モギュモギュ

勇者(しかし、足一本。食べ辛いな)モギュモギュ
501: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/03(日) 00:06:01 ID:6bSLoIw2
勇者(うん、でも悪くないな、デビルフィッシュ)ゴクン

勇者(魔王の国の海辺の町ならもっと、デビルフィッシュを使った料理があるんだろうか?)

勇者(少し興味が湧いてきたぞ)パク

勇者(新たな発見だ。凄いぞ水軍鍋)モグモグ

勇者(しかしあと七本の足か。一人だと中々腹にくるなぁ)

勇者(けど残すのなんて勿体ないな。ここは勇者の見せ所だな)グッ
502: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/03(日) 00:07:17 ID:6bSLoIw2
……
勇者「うう……腹がはち切れそうだ」

勇者「しかし、中々だったな。恐るべし水軍」

勇者「さて……宿屋を取っておくか。食休みしたら魔王城に行って」

勇者「大まかでもこれからの事、考えないとだなぁ」


しかし、彼の事が風の噂でなく、実在した者として広く伝わったのは、
和平が結ばれてから数年たった後であったという。


   勇者「今日より旅立ちか」勇者(……それにしても腹が減ったな) 終
503: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/03(日) 00:08:41 ID:XNR/DBJI
ああ……終わった……終わってしまった
乙乙
504: 明日役立たない雑学 2016/07/03(日) 00:10:57 ID:6bSLoIw2
きびなご
西日本でよく食べられる魚。
小魚で痛みやすく、遠方への流通は少なめ。
薩摩料理において、きびなごの刺身を酢味噌で食べるのが有名。


タカベ
ベントウやベットウとも呼ばれる魚。
名前の由来は、漁師用語で岩礁を意味するたかに、魚を意味する接頭辞のべを付けたと考えられている。
背部の中心から尾鰭全体にかけて特徴的な黄色をしており、中々目立つ魚で岩礁に近くに群生する。
日本固有種の夏の魚で、茨城あたりから西の太平洋に生息。
市場では高値がつく為、高級魚の扱いを受けている。関東圏内に卸される物は大抵伊豆産。
脂が多く塩焼きが絶品らしい。

観光激戦区、伊豆の中木でもよく見る。
スキンダイビング中に見かけては、よく喉を鳴らしている。
食べてみたい。今年の目標である。


海軍鍋
広島の郷土料理の一つ。
室町から戦国にかけて因島を拠点とした村上水軍が、必勝祈願に食べたと言われる。
瀬戸内海の魚介類と海草をふんだんにいれ、八方の敵を食らうという意味でタコを丸々入れるのが特徴。
昆布で出汁をとり、醤油などで味を調える。
506: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/03(日) 01:35:11 ID:6bSLoIw2
あああああああ!
ああああああああああ!!
タコ!
普通にタコって知ってるじゃん!マルミタコォォォ!
しかもタコを普通に食材として認識してるじゃんんうううう!!
507: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/03(日) 01:40:14 ID:yezu6Z0c
最後まで抜かりなく旨そうだった
また新しい地へ旅立つんだ勇者
508: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/03(日) 08:48:53 ID:vQb6cams
乙といいたいけど
ここから勇者が世界を代表する商人になるまでの話は?
509: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/07/03(日) 10:43:35 ID:mQPn6ApM
鱗のない魚が聖書で罵られてるから、デビルフィッシュなんだっけか
この勇者のブレなさ、ほんと好き
タコ初見でも普通に食材と思いそうだしw

毎度のメシテロありがとう、面白かったよ乙!

このシリーズ:

勇者「今日より旅立ちか」勇者(……それにしても腹が減ったな)【前編】


勇者「今日より旅立ちか」勇者(……それにしても腹が減ったな)【後編】


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多少の軽量化

時折修正していきますので、今後ともよろしくお願いします

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