終電降車 俺「ふいー」 女の子「あ、あの、すいません」俺「え、あ、はい、なんでしょう」

1: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/10/10(土) 02:33:36.630 ID:YlFZALbd0
女の子「突然、なんですが、一晩、泊めていただけないでしょうか」

俺「え、それは一体どういう」

女の子「いまのが最終列車ですね」

俺「はい」

女の子「乗り遅れてしまいまして。宿もないようですし、民家もまばらでどうしていいやら」

俺「えー……いや、構わないんだけどもね、」

女の子「では、ぜひ」

俺「……ちょっと面倒なことがあってね、いや俺がじゃなくて、そちらが多少ね」

女の子「いえ、構いません、軒を借りる程度でもいいんです、駅舎とか、そこらのベンチではすこし、不安というだけですので」

俺「……ん、わかった。もうおそいから行きましょう」

女の子「はい、ありがとうございます」

俺「…」
7: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/10/10(土) 02:41:46.105 ID:YlFZALbd0
俺「しばらく歩くからね」

女の子「はい。あ、お荷物お持ちましょうか」

俺「いや、それは俺が言ってこそなんだが……それより、なぜにこんな田舎に」

女の子「……そういうの、聞きたいですか」

俺「あ、ごめん、ふつうは聞かないですね」

女の子「…いえ……その、現実逃避というか、跳梁跋扈というか」

俺「へえ、そうですか。昼間に山の方でも行ってきたんですかね」

女の子「!」

俺「……わかりますよ。ここにくる都会の人は、仕事なんてありませんし、実家に帰ってくるなら全員顔見知りでわかりますから、それでなければそういうことです」

女の子「……」

俺「まあ一晩ゆっくりしてください。ずいぶん考えた結果ここまで来たんでしょうし」

女の子「…こういうこと、よくありますか」

俺「……ふつうは、あの電車で帰るよ、下山した人に限るけどね」
8: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/10/10(土) 02:47:44.868 ID:YlFZALbd0
女の子「……立派なお屋敷ですね」

俺「古いだけだよ。手放しても足しにもならないし、いちおう実家だし、思い入れもあるから住んでる」

女の子「ご家族は……あ、すいません」

俺「ふふ、いいよ、あがって」

女の子「おじゃまします」

俺「あ、あがるまえに靴下を脱いでね、悪いんだけど」

女の子「?…は、はい」

俺「ただいま」

?「おかえり」

女の子「!」

女の子「……あの」

俺「言った通りだけど、やめときますか。あるいは離れが掃除してないけどあることにはある。そちらはへいき」

女の子「……いえ、とりあえずは」

俺「うん、悪いね」
9: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/10/10(土) 02:54:40.092 ID:YlFZALbd0
俺「じゃあいろいろ家事があるので、こちらでしばらく」

女の子「……やっぱり、聞いてもいいですか」

俺「いわゆる幽霊ではなくてね、おまじないの一種なんだけど、こう、家ってのはそういう力の領域として定義されて、うーん、説明はむずかしいな」

女の子「……なにか、わたしが気をつけることはありますか」

俺「もちろん、これは『住んでる人』以外についての話だからね。そうだな、たとえば、引き戸は決して開けないでくださいね。大変です」

女の子「……というと」

俺「もともとは寝込みを襲う強盗や空き巣みたいなのを懲らしめるものだったらしいけど、更新が滞って住むもの以外はすべて対象になっていてね、手がなくなったり、首が落ちたり、するかも」

女の子「…」

俺「まあすぐ来ます、この部屋でいてくれれば」

女の子「……はい」
10: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/10/10(土) 03:04:42.363 ID:YlFZALbd0
女の子(和室。畳が新品みたい。桐の棚、かけじく、障子窓、これは火鉢ですかね、ほんとの古いおうちです)

女の子(……なんか、みられているような気がしてなりません)

女の子(おまじない。家と住む人を守る、とおっしゃっていました)

女の子(異物は排除されるか、無害化されます。自然の基本原理ですね)

女の子(……落ち着かない)

女の子(……)

俺「おまたせしました」

女の子「ひっ、あ、どうも」

俺「すこし、失礼かとも思いましたが、こちらの服に着替えていただけないですか」

女の子「……」

俺「うちにずっとあるものですから、変な気配とかを、軽減できるかもしれません」

女の子「あ、なるほど……では、試してみます」

俺「……それでですね、うちのものですから、うちの者以外が触れると、わかりますか」

女の子「……首が」

俺「……はい、ですので、その……お着替えを、お手伝いするようなかたちになります」
12: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/10/10(土) 03:10:43.661 ID:YlFZALbd0
女の子「……構いません、お願いします」

俺「……はい」

女の子「……えっと、ぬ、脱ぎますよ」

俺「……なるべく、見ないので」

女の子「……」ヌギヌギ

俺「……」

女の子「……えと、お願いします」

俺「し、しつれいします」キセキセ

女の子「……和服、ですか、いいですね」

俺「……え、あ、はい、洗ってすこししているので、臭ったらすいません」

女の子「……いえ、いい香りがしますよ」

俺「……す、すみました、もう、ご自分で直されたりして、平気ですので、ではまたお待ちください」

女の子「あ、あの………行ってしまわれ、ました」
16: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/10/10(土) 03:18:13.816 ID:YlFZALbd0
女の子(あ、ほんとだ、すこし、気が楽になった)

女の子(……気持ち次第なのかな)

女の子(……気持ち次第)

女の子(……こんなこと自分でいうなんて、最低)

女の子(あああ嫌なこと思い出したぁ……)

俺「失礼、食事の用意をしますが、まだこちらにいられますか、それとも炊事場に近いほうに来られますか」

女の子「あ、えっと、はい、そちらへ」

俺「ではどうぞ」

女の子「……あの、」

俺「なんでしょう」

女の子「気を、つかわせてますか、なんだか、むりに丁寧にしてもらっている気がして」

俺「ああ、いえ、うちではこうでして、いえ、こういうルールでしてね、すいません」

女の子「…」
19: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/10/10(土) 03:24:48.940 ID:YlFZALbd0
女の子「…冷蔵庫、あるんですね」

俺「知り合いには雰囲気がぶちこわしだと言われましたが、やはり住むなら必要ですので」

女の子「……冷蔵庫も、開けると、大変ですか」

俺「そうですね、あれ、どうだったかな、これまで誰かが開けたということはないので、ちょっと……でも、念のためですね」

女の子「……はい」

俺「……」

女の子「……どうかしましたか?」

俺「あ、いえ、和服、お似合いですよ、と思っただけで、あれ、ちがうな、なんでこんなこと言ってんだか」

女の子「……ふふ、ちょっと、へん、でしたね」

俺「……では、なにか、簡単なものをこしらえますので」

女の子「あ、囲炉裏があるんですね、ここに座っていても」

俺「ええ、かまいませんよ、ただし、いろいろ触れないように」

女の子「はい、了解であります」
22: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/10/10(土) 03:31:50.281 ID:YlFZALbd0
俺(はあ、こまった)

俺(どうやって一緒に寝ないとだめって伝えようか)

俺(着替えさせちゃった、させちゃったし、)

俺(離れなんてとても使えないし、)

俺(縁側で寝かすわけにもいかないし…)

女の子「あの、よろしいですか」

俺「ひっ、ち、ちが、べつにへんなこt」ザクリ

女の子「あっ、ご、ごめんなさい、大丈夫ですか、ああたくさん血が出てる、どうしよ」

俺「ん、えっと、だいじょぶ、ほら、」

女の子「ぜんぜんだめです、なにか、救急箱とか、あ、でも」

俺「……じゃあ、ちょっと、一緒に、座敷まで」

女の子「はやくいきましょう、失血死します」

俺「……」
25: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/10/10(土) 03:38:51.061 ID:YlFZALbd0
女の子「はあ、すいません、こんなことに」

俺「いえ、いいんですよ、えーと、救急箱はこれだったかな」

女の子「……絆創膏、貼りましょうか」

俺「……ん、そうだね、お願いしようかな」

女の子「……へいき、ですかね」

俺「ああ、これ、この前買ったものだし、盗まれても大して実害ないでしょう、だから起きても小物が落ちてくるぐらいでしょう」

女の子「…では、はりますね」

俺「……いてて」

女の子「……ところで、こちらは、寝室なんですか」

俺「!…え、あ、押し入れの布団がみえましたか」

女の子「はい。あ、そうですね、わたしは、どちらでどのように寝ればいいですか、最悪縁側や庭先でもかまいませんよ」

俺「……え、えっとですね」

女の子「はい」
26: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/10/10(土) 03:46:08.934 ID:YlFZALbd0
俺「……」

女の子「……」

俺「……念のため言いますと、いかがわしい考えに基づくでまかせでは、ありません」

女の子「……」

俺「そ、それか、朝まで、あたりを散歩などしてはどうでしょうか自分はあした休みですから」

女の子「……いえ、構いません、よ」

俺「……え」

女の子「……男性の家に泊めてもらうなんて、それくらいのこと、覚悟しないで、頼んだり、してません、ので」

俺「……え、ええと、なんと弁解したらいいのか、決してそういうつもりで言ったわけでも」

女の子「わかっていますよ」

俺「……」

女の子「……お腹、すきませんか」

俺「え、あ、そうでした、もう、出来上がるところでしたから、いただきましょう、ええ、ええ」

女の子「……」
29: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/10/10(土) 03:51:41.177 ID:YlFZALbd0
俺「…それで、またしても面倒、いえ問題なのですが」

女の子「……食器ですか」

俺「……はい。自分が使ったものを、とはさすがにできませんので、とりあえず一口はこちらで、となります」

女の子「あーん、ってされるんですね」

俺「……まあ、そうなりますね」

女の子「……着替えと比べると、個人的にはあまり」

俺「す、すいません」

女の子「……でも、和服、すてきでしたから、気にはしていませんよ」

俺「……では、お持ちしますね」

女の子「はい」
33: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/10/10(土) 04:00:25.437 ID:YlFZALbd0
俺「……やるんですか」

女の子「ひとおもいに」

俺「あ、あーん」

女の子「あーん、ん、」パクリ

女の子「……」モグモグ

俺「す、すいません、こんなぐらいしか用意できなくて」

女の子「いえ、いただけるだけだけ、失礼、おいしいですよ、とっても」

俺「じゃ、じゃあ、いただきましょうか」

女の子「………ところでその、無礼ながら、お風呂、とかは、」

俺「えっ、ええと、うちのものはしばらく使ってなくて、普段は街の銭湯に」

女の子「……山歩きして、身体、におうので……その」

俺「……なにか、タオルとかで、よろしいですか」

女の子「……おねがい、します」

俺「……」パクリ

女の子「……」パクパクモグモグ
36: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/10/10(土) 04:07:42.221 ID:YlFZALbd0
~しばらく~

女の子「えっと、もう、入って、平気ですので、どうぞ」

俺「し、しつれいします」

女の子「……タオル、ありがとう、ございました」

俺「……なにか、ありませんでしたか」

女の子「……棚から、こけしが飛んできました」

俺「あちゃあタオルはだめかあ……すいません、怪我はないですか」

女の子「……はい」

俺「で、では、片付けて、すぐ来ますので」

女の子「はい」


女の子(……そ、そりゃあ、男の人に泊めてもらうんです、覚悟はしていましたよ)

女の子(でもこういうふうになるのは、予想外、というか、予想できるわけないっていうか……)

女の子(……ふふ、今朝まで死ぬつもりだったのに、おっかしいなあ)

女の子(……俺さん、いいひと、なのかな)

女の子(……女だなあ)
38: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/10/10(土) 04:13:22.541 ID:YlFZALbd0
俺「……では、その、就寝なんですが」

女の子「はい」

俺「ちゃんと説明するとですね、布団や枕というのは、衣類についで、あるいは衣類より時間的な意味で重要な対象になっていまして、まず簡単にお貸ししたりはできないわけです」

女の子「はい」

俺「…で、ですが住んでいる者の使用があればなにも問題はなくなります、ですから、同じ布団で、というふうになりまして」

女の子「はい、大丈夫です」

俺「……えっと、それではその、はい、どうぞ」バサリ

女の子「しっ、しつれい、します」

俺「……あ、朝まで、自分はできれば動かないことを誓います」

女の子「……べつに、いいんですよ」

俺「……」

女の子「……すこし、おはなししても、かまいませんか」

俺「……はい」
44: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/10/10(土) 04:20:50.301 ID:YlFZALbd0
女の子「……駅からあるいてるとき、すこし、お話しましたね」

俺「……触れないつもりでしたが」

女の子「……はい、でもいいんです。わたし、山に来たんですよ、もちろん」

俺「……でも、思いとどまったのですか」

女の子「……いえ、ただ、決心したはずなのに、どうしてか、踏ん切りがつかなくて」

俺「……聞いてしまいますが、またどうして」

女の子「……いろいろ疲れてしまったんです。ひとつひとつは些細なことです。でも積み重なってきたものを見た時、ひどく惨めで、こんなことに耐える必要があるのか、わからなくなって」

俺「……」

女の子「……そういうこと、ないですか」

俺「……ない、かな」

女の子「……そう、ですよね。言われました。考え方次第だとか、ふつうは気にしないとか、気分転換しろとか。べつに、ないのが楽してるとか、そういうふうには決しておもいませんよ」

俺「……」

女の子「でも、ちがうんです。ずっと考えていたんです。このことも、今日のことも」
47: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/10/10(土) 04:28:32.804 ID:YlFZALbd0
俺「……明日も、いくんですか」

女の子「……引き止めたり、しないんですね」

俺「……人の意志はあらゆる意味で尊重されるべきだと、考えているわけでして、もちろん、これまで見てきた方に、なにかしたりもしませんでした。傍観ではなく、それが主張だと、いいたいんですね」

女の子「……きっと、いきます。いえ、たとえば、ちょっと駅によって、ちょうど列車がきていたら、乗ってしまうかもしれないです」

俺「……どちらにせよ、おおくりしますよ」

女の子「……ふつう、こういうときは、抱きしめて、引き止めるんですよ、ご存知無いですか」

俺「……そう、かもね………いえ、いえ、少なくともですね、個人的な意見として」

女の子「ふふ、いいんですよ、わかってます」

俺「……」

女の子「……わたしも、引き止めてもらいたいとか、そういうのじゃないです。でも、話をするのって、いいですね。頭の中が、整理されていきます」

俺「……ん、まあ、そう、ですね」
48: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/10/10(土) 04:35:18.972 ID:YlFZALbd0
女の子「……でも」

俺「でも…?」

女の子「……一宿一飯の恩義といいますね、ならば多少追加されても釣り銭が減ってかえっていいだろうと思いましてね、ひとつ、お願い事をしようかと」

俺「……なんでしょう」

女の子「……」

俺「……あの」

女の子「……わたし、女です」

俺「……しっていますが」

女の子「……よろしければ、その、あなたに、甘えさせて、ください」

俺「」
49: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/10/10(土) 04:45:40.750 ID:YlFZALbd0
~朝~

すずめ「チュンチュン」

俺「……えっと、何時かな」

女の子「……まだ4時半です」

女の子「…………その、えっと、あ、そうです、朝食の支度をお手伝いしますのでね、先に炊事場に」

俺「……あ、ちょ、まって、開けるのは」

女の子「あっ」

フスマ「スッ」

俺「……」

女の子「……なにも、おきませんね」

俺「……そう、ですね」

俺「……」

女の子「……ふふ、わたし、この家にいてもいいみたいですね」

俺「…………はい」


めでたしめでたし
30: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/10/10(土) 03:55:58.565 ID:xpYpjAEiM
なんか好きだわこの雰囲気
58: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/10/10(土) 05:49:49.214 ID:xxtqTAg90
いいじゃん
60: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/10/10(土) 06:15:01.021 ID:9vxRClvW0
朝から楽しませて貰った

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