食蜂「本っ当に退屈ね、この街は」【中編】

154: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 09:56:33.07 ID:JDo3T/bx0

前スレ:

食蜂「本っ当に退屈ね、この街は」【前編】




上条達は6:30に冥土帰しの病院に到着。
まず上条は、五和をとある高校の制服から学園都市の協力機関が持ってきた濃いピンクのウインドブレーカーと
濃いグレーのパンツに着替えさせた。その後今の状況を簡単に説明。ここまでで約20分経過していた。

上条「そう言う事だから、本当は巻き込みたくないんだけど、五和にも協力してほしい」

五和「分かりました。それで、その、本当にごめんなさい。操られていたとはいえ、当麻さんに攻撃するなんて……」

上条「いいよ別に。特に怪我とかないし。それよりさ、これ」

そう言って上条が五和に見せた物は、今は亡き神裂火織が使っていた『七天七刀』だった。

五和「これは、女教皇(プリエステス)の……どうして……?」

上条「よく分かんねーんだけど、学園都市の協力機関が持ってきたんだよ。
とりあえずさ、槍も壊れちまったわけだし護身用に持っておけよ」

五和「わ、私ごときがプリエステスの得物を使いこなせるでしょうか……まして私は本来、槍使いですし……」

上条「別に使いこなせなくたっていいだろ。何もないよりはマシさ。なあに、いざとなったら俺が守ってやるからさ」

五和「当麻さん///」

上条「そう言う事だからさ、朝飯食おうぜ。協力機関が持ってきたおにぎりとかの軽食になるけど」

五和「え、そんな呑気にしていて良いんですか?」

上条「多分だけど、大丈夫だ。食蜂にとってこの戦いはゲームにすぎない。
だから徹底的に俺らを追い詰めるとかは、まだしないはずだ。
この病院だけは、まだあえて見逃されているはずなんだ」

五和「そ、そんな希望的観測で大丈夫ですか?」

上条「大丈夫だって。万が一能力者が攻め込んできても、俺が守るから」

五和「当麻さん///」
155: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 09:57:59.53 ID:JDo3T/bx0
そうして2人は軽い朝食を摂った。時刻は7:00になっていた。

上条「さーて、朝食も食べ終わった事だし、行きますか」

五和「あの、今更なんですけど、当麻さんは2度目の朝食だったんじゃないですか?
もしかして、私に付き合って無理して」

上条「確かに2度目だったけど、腹減っちゃってさ。腹が減っては戦はできぬって言うし?貴重な食料食べちゃった」

五和「そ、そうですか。あはは……」

ちょっと残念だったが、食べちゃった。が、お茶目で可愛いと思ってしまった。

上条「よし。じゃあ行きますか」

五和「はい」

垣根「ちょーっと待って下さいよー」

戦場に舞い戻ろうとした2人を、病院の入口で垣根が阻んだ。
そしてその垣根の隣には、十九世紀のフランス市民に見られた格好(全身黄色)をした人物が御坂を背負って立っていた。

「はろ~」

上条「ヴェント!?と傷だらけの御坂!?」

ヴェント「詳しい説明は病院の中でする。もうすぐダーリンと、一方通行だっけ?そいつも戻ってくるからさ」
156: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 10:01:26.80 ID:JDo3T/bx0
ヴェントの言う通り、7:10には絹旗を背負った一方通行と、真っ赤なスーツに身を包んだフィアンマが病院に戻ってきた。
傷だらけの御坂と絹旗は、五和とヴェントと一方通行によって応急処置。
フィアンマは、上条、垣根に病院のロビーで状況説明をすることになった。

上条「聞きたい事があり過ぎて、頭がパンクしそうなんだが……」

「俺様達がここに居るのは、雲川芹亜に指示されたからだ。助っ人の6人の内の2人だ」

上条「他の助っ人は?」

フィアンマ「他も各々役目を果たしているよ。削板軍覇なんかは既に戦闘を開始しているからな」

上条「本当に大丈夫なのか?雲川先輩も頼りになる強い助っ人だって言っていたけど、正直信じられない。
だって俺の能力で『原石』の力を失って、しかも能力開発していないから完璧な一般人。
それでレベル5に対抗できるとはとても思えない」

フィアンマ「そう思ってやつには魔術を仕込んだ。今や俺様達でも理解不能な魔術を使う。
   それと、やつは戦闘に関しては天賦の才がある。何も心配いらん」

上条「マジかよ……」

垣根「で、他の3人は?窒素のチビガキは助っ人じゃないって聞いたんだが」

フィアンマ「戦争の時に一緒に居た服部半蔵と郭とか言う忍と、闇咲逢魔だ」

垣根「ああー、忍ね。確かに居たような気もするけど。で、やみさかおうま?誰だよ」

フィアンマ「魔術師だよ。結構使える奴だ。何せ透明になる魔術を使える。今頃はどこかに侵入しているんじゃないか?」

上条「なるほど。助っ人については分かった。じゃあ次の疑問だ。
皆戦った能力者はどうした?フィアンマとヴェントは侵入者なんだから、当然ここに来るまでに迎撃されたんだろ?
垣根もだ。わざわざテレポートされて、誰とも戦ってないわけがない。
御坂に至っては傷ついて帰ってきた。まさか、逃げてきただけか?」

フィアンマ「もっともな疑問だが、それは問題ない」

そう言うとフィアンマは、右手に持っていた魔道書らしきものを上条に見せる。

フィアンマ「この本の中に能力者を回収する事ができる。
   さらに言うと、準備をしておけば本の中に居る人間を好きな場所に移動させる事も出来る」

上条「よ、よく分からんけどスゲー!……って垣根はあんま驚かないのな」

垣根「助っ人の話はともかく、本の説明は黄色いねーちゃんからもう聞いたからな」

フィアンマ「要するにだ。救った能力者はこの本の中に閉じ込める。
   またはこの本を通じて、ある場所にワープさせる事も出来る。これで救った能力者達は安全だろ?」

上条「凄いな!これで能力者の心配はいらなくなった訳だ。五和も転送してもらおうかな」

フィアンマ「俺様はどっちでもいいぞ。後で話し合ってくれ。この本は俺様の他にも、助っ人全員が持っている。
   忍ペアは2人で1つだがな」

上条「そっか。じゃあ垣根や一方通行は、救った人を転送してもらったんだな」

フィアンマ「ちなみに現時点で回収したのは、合計9名。
   今も戦っている削板と俺様達が回収したのを合わせると、65名となる」

上条「お前らどんだけ回収したんだよ!」

フィアンマ「普通だ。それより俺様達はあくまで回収したにすぎず、洗脳自体は解いていない。
   だから今から、お前の『幻想殺し』で解除する」

上条「どうやって?」

フィアンマ「こうやって」

フィアンマは手に持っていた魔道書を開く。するとそこから、56人の人間が飛び出て来た。
157: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 10:03:36.44 ID:JDo3T/bx0
上条「うわっ!ちょっと、おい!」

56人の人間は乱雑にばら撒かれた。全員気絶している。

フィアンマ「こう言う風に、5冊の魔道書はリンクしていて、魔道書の中身は別の魔道書に自由に移動できる。
   距離の制限は特にない。さあ早く頭を触れ」

上条「……お、おう」

上条は56人の頭に次々と触れて行く。独特の音が56回響き渡る。

フィアンマ「よし。じゃあ転送するぞ」

フィアンマは特に何のモーションも呪文らしき事も唱えなかった。
それでも56人の人間は、開いている魔道書に吸い込まれていった。

上条「すげーな。でもその魔道書、破壊されたらどうなるんだ?」

フィアンマ「中に何かが入っているときは、その入っているモノも壊れるが壊させはしないし、
   基本的に本の中に入れっ放しにはせずに、すぐに転送するから心配はいらんよ」

上条「それ超便利なんだけど、俺らにもないのかよ?」

フィアンマ「あと1冊だけある。だがこの魔道書は『幻想殺し』を持つお前はもちろん、能力者にも使えない。
   使えるのは、何の才能もない一般人か魔術師のみだ。
   土御門の為に用意したんだが、どうやら洗脳されたらしいじゃないか。
   だから、お前の彼女に持たせるのが妥当かな」

上条「そっか」

フィアンマ「さて、女の子達の治療が終わったら、軽く作戦会議だ」
158: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 10:04:44.56 ID:JDo3T/bx0
食蜂陣営

食蜂「で、結局今の状況は?」

土御門「侵入者3名に合計56人が奪還。一方通行には3人殺され1人奪還。
 その後御坂と絹旗の救助に向かい、1人殺され6人奪還。他は垣根に20人倒され1人奪還。
 上条に1人奪還されていますね」

食蜂「合計89の手駒が減ったわけねぇ」

折原「向こうの状況は、御坂美琴と絹旗最愛が満身創痍。一方通行様にダメージ。上条様と垣根様は無傷ですね」

食蜂「なかなか楽しいゲームねぇ。さぁて、お次はどうしましょうか……」
159: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 10:08:59.05 ID:JDo3T/bx0
7:20 第14学区

「おっしゃあ!これで8人目!」

これまでに『洗脳能力』(マリオネッテ)『思念使い』(マテリアライズ)の精神系能力者2名、
肉体強化の能力者1名、テレポーター1名、『量子変速』(シンクロトロン)の釧路帷子と介旅初矢の2名、
『絶対等速』(イコールスピード)の合計7名を倒し奪還。
そしてたった今、絹旗が先日拘束した『肉体鋼化』の女を、削板軍覇は奪還した。

削板「次はどいつだぁ!」

叫ぶ削板に呼応するように、9人目の能力者が削板の目の前にテレポートされた。少しぽっちゃり気味で、おかっぱの少年。
普通の制服を着ているが、首からは派手なシルバーアクセサリーがいくつもぶらさがっていた。

削板「おおう、なんか似合ってないぞ。その首にぶら下がっている銀色の奴」

「間違った昭和の番長みたいな恰好をしている君には言われたくないね」

鋼盾掬彦は若干キレ気味で返す。

削板「何だと!?俺は怒ったぞ!」

削板は地面を蹴って駆けだした。
2人の距離は10m以上開いていたが、削板はその距離をわずか2歩で埋め、時間にして1秒強で鋼盾の懐に入った。

削板「っ!」

放たれた拳は、しかし空を切った。鋼盾が右に移動したからだ。

削板「やるじゃねぇか。ガッチリした体型の割には、動けるんだな」

鋼盾「君の今までの戦いをずっと見ていたんだ。今更その程度では倒されないよ。僕には油断も慢心もない。
次は僕の力を見せてあげるよ」

そう言って鋼盾は、首にいくつもぶら下がっているシルバーアクセサリーの1つを触った。
すると金属はウネウネと動き出し、最終的に1.5mほどの鎌になって、彼の手に収まった。

鋼盾「『金属使い』(メタルマスター)の僕は、あらゆる金属を使いこなす事が出来る。
さっきの体を鋼鉄化するだけの脳なしじゃないからね」

削板「なるほどな。今の発言で確信したよ。お前はただの根性無しだ」

鋼盾「何だって?どうしてさ」

削板「お前は今、あの女の事を馬鹿にした。他人の事を馬鹿にするような根性無しには、絶対負けない」

鋼盾「なんだそりゃ。お前みたいな熱血馬鹿は死ねっ!」

鋼盾が駆け出す。意外と素早い彼は削板にある程度近付き、首を刎ねる為に鎌を水平に振るった。

対して削板は、その場で思い切りジャンプ。避けた鎌の刃の部分に乗り、棒の部分に1歩踏み出す。

鋼盾(コイツ……!)

このままでは顔面を蹴られる。そう考えた鋼盾は鎌をあっさり手放し、後退する。
結果削板の蹴りは空を切り、バランスを崩す。

その隙に鋼盾は、左手でアクセサリーの1つに触れて槍にして、削板に放つ。
しかし削板は、ほんの少しだけ横に移動して槍を掴み取った。

鋼盾(尋常じゃない反射神経だな……)

だが鋼盾は別段焦っていなかった。右手でアクセサリーの1つに触れ鎖を作り、落ちている鎌と繋いだからだ。

鋼盾「おらおらおらぁ!」

鎖で繋いだ鎌をやたらめったら振りまわすが、削板は涼しい顔して避ける。

鋼盾(何で……何で当たらないんだーっ!?)

削板の戦闘は見てきた。確かに彼は、なぜか攻撃を避けるスキルが高く、テレポーターですら彼を倒せなかった。
だからと言って、これだけ避けるのは異常すぎる。

鋼盾が焦り始めたころには、避けながらも少しずつ近付いていた削板が、彼の懐に入っていた。

削板「せいっ!」

鋼盾「くそっ……!」

鋼盾はギリギリで盾を作り出して、削板の拳を防いだ。防いだが、地面を数mスライドした。
160: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 10:10:14.27 ID:JDo3T/bx0
鋼盾(なんて威力だ……!)

避けるスキルだけではなく、攻撃の威力も半端じゃない。
削板の戦いを見ているときは、なぜ攻撃を当てられず、それどころか負けてしまうのかよく分からなかったが、
実際に対峙してみるとその強さが分かった。

削板「おらぁ!」

削板は虚空から魔法陣らしきものを出し、それを掴み取って円盤投げの要領で投げた。

鋼盾(そんなもの、僕の盾の前では!)

バカ正直に真正面から来た魔法陣を、盾で防ぎ上に弾いた。が、その威力で鋼盾は盾ごと仰け反った。

削板「終わりだ」

その隙に削板は鋼盾の前に行き、落下してきた魔法陣に拳を通す。
魔法陣を通った拳は青く輝き、盾など破壊して、鋼盾の腹部に深く突き刺さった。

鋼盾「め……ちゃくちゃだ……」

腹部に強烈な一撃をもらい、地面に崩れ落ちる鋼盾を、削板は魔道書で回収した。
161: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 10:12:47.99 ID:JDo3T/bx0
7:30になって、御坂と絹旗が復活した。
御坂はオレンジ色のジャケットに黄色のスカートと茶色のブーツ、絹旗に至っては上下ともジャージという出で立ちだ。

上条「御坂……服が、明るいな……」

御坂「し、仕方ないじゃない!もう服がないのよ!」

絹旗「そうです!私なんか超ジャージですよ!」

上条「す、すまん」

一方通行「仕方ねェから、服屋行くぞ」

垣根「まあ今の地上の学園都市には俺達しかいないからな。服も盗み放題って訳だ」

御坂「服を盗むなんてダメですよ!」

上条「自販機に蹴りぶち当てて、無銭で缶ジュース飲んでいた奴がそれを言うか?」

御坂「あれは私の1万円札を飲んだんだからいーの!まだ貯金ある筈よ」

一方通行「まァどうでもいい。金は俺が払ってやるから。ドチビもだ。好きなの選べ」

絹旗「うぇ?一方通行が超優しい……だと……」

垣根「あれ?ひょっとして一方通行はロリコンなんですかー?」

一方通行「そンなンじゃねェよ。服は大事だろォが」

垣根「そもそもさー。別に美琴ちゃんや最愛ちゃんはもう戦わなくてもいいんだぜ?俺達で何とかするし」

御坂「遠慮します。一方通行が守ってくれるって言っていますし、負けたままでは終われないので」

絹旗「私も、超迷惑でなければ、皆さんと一緒に戦いたいです。一方通行、いざとなったら私の事も守ってくれますよね?」

一方通行「オマエが望むのなら、守ってやる」

絹旗「という事で、私も戦いからは降りません」

上条「一方通行、お前何ハーレム築いているんだよ。羨ましいなチックショー!」

御坂「アンタ、それ本気の発言?」

上条「本気だけど。何か変なこと言った?あと名前で呼んでくれって」

垣根「つーか彼女の前でそういう発言どうなの?」

五和「当麻さん……」

上条「え、あ、いや、その、あれですよ。男だったら、誰でも一度はハーレム築きたいって願望あるし、そうだよね?」

一方通行「ねェけど」

垣根「同じく」

五和「当麻さん……」

上条「だから、その、すいませんでしたーっ!」

上条の本気の土下座が繰り出された。
162: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 10:15:14.39 ID:JDo3T/bx0
フィアンマ「いつまでコントをやっているんだ。少し黙れ」

垣根「全くだ」

一方通行「オマエが言うな」

御坂「一方通行が言えた立場じゃないでしょ」

絹旗「超同感です」

ヴェント「あーもう!無限ループか!」

フィアンマ「もういい。まずは、服を買う組と能力者奪還組に分かれる。
   一方通行と女の子2人、ヴェントが服組、上条と俺様と垣根と五和が能力者奪還組だ」

上条「つーか思うんだけど、服を買う暇あるか?食蜂にまたテレポートされたら」

一方通行「それは多分大丈夫だ。いくら食蜂のクソアマでも、服を買う余裕ぐらい与えるはずだ」

そんな一方通行の希望的観測に呼応するように。

食蜂「うんうん。いいよいいよ。服でも食糧でも武器でも、何でも思う存分準備しちゃってぇ~。
やっぱりさぁ。弱りかけや不意打ちで倒してもつまらないのよねぇ。
準備万端で『これで負けたら仕方ない』っていうレベルのあなた達を真正面から叩き潰したいからさぁ」

病院内に食蜂の声が響き渡った。

絹旗「な、なんで……」

一方通行「別に盗聴や監視されていたって不思議じゃねェ。こンなことでいちいちうろたえるなドチビ」

御坂「じゃあ何よ。着替えとかトイレとかも見られちゃうわけ?」

垣根「まだいいじゃねぇか。女の子同士なんだから。俺ら男の方が問題だっつーの」

上条「いやでも、土御門とかからも見えるんじゃないか?」

食蜂「うーん。当麻君の言う通りカナぁ。まぁ気にしないでよ」

絹旗「気にしますよ!見られるなんて、超嫌です!」

御坂「ていうか当麻って気安く呼ぶんじゃないわよ」

食蜂「なんで?当麻君の事をどう呼ぼうが私の勝手でしょ?あなたに何の権限があるの?彼女でもないくせに」

御坂「……っ」

五和「ではその彼女から言わせてもらいましょうか。不愉快です。当麻さんの事を名前で呼ぶのは止めてください」

食蜂「彼女でもないくせに。と例えで言ったのは私だけど、それを決めるのは当麻君本人だよ?」

上条「気持ち悪いから止めてくんねぇかな」

食蜂「あっそ。じゃあ止めるわ。ところで準備が完了したら『完了した』って叫んでね。
そこから第2ラウンド開始だから。そして、これは私からのプレゼント。じゃあね~」

ヒュン!と上条達の目の前に削板がテレポートされてきた。
163: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 10:16:33.35 ID:JDo3T/bx0
削板「おう。久しぶり」

上条「あ、ああ。なんか、いろんな意味で大丈夫か?」

削板「おう。そんなことより、能力者4人奪還したから戻してくれ」

そうして削板が魔道書から出した4人の頭を、上条が右手で触り再びそれを回収する削板。

フィアンマ「それじゃあ、お言葉に甘えていろいろ準備させてもらいますか」

上条「そうだな。一方通行組は服だったよな。俺らはどうすんの?」

フィアンマ「武器とか、装備を強化するとか。時間はあるんだ。ゆっくりじっくり考えて準備しようじゃないか」

垣根「マジで呑気にしていて良いのか?食蜂が嘘ついているかもしれねぇぜ」

ヴェント「その時はその時でしょ。でも実際、監視や盗聴はされても、この病院は襲撃されてない。
  私達をある程度泳がせてから倒すと言うのは、嘘じゃないんじゃない?」

御坂「そうね。ドSの食蜂のことだから、万全な状態の私達を叩きのめしたいって言うのは、本当の事だと思うわ」

上条「もう食蜂の考えている事なんてわかんねーよ。あれこれ考えるのはもう止めてさ、能力者が来れば奪還。
来なければ準備を続ける。それでいいじゃねーか」

垣根「……そうだな」

フィアンマ「意見はまとまったようだな。それでは行くぞ」
164: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 10:17:49.90 ID:JDo3T/bx0
食蜂陣営

折原「本当に泳がせるのですか?特に垣根様は体力を回復させると厄介なのでは」

食蜂「いいのよ。何かね。物足りないのよ。このままじわじわといたぶるだけじゃあ駄目なの。
もっと派手に、豪快な戦いを演じてほしいからね」

折原「はあ」

食蜂「それよりも、闇咲って人と半蔵って奴と郭って奴は見つかったの?」

土御門「まだですね。盗聴した通り、闇咲は透明になる魔術を使える。
 視覚的にはまず見つけられない。他の2名も、腐っても忍。なかなか見つからないですね」

食蜂「まぁ放っておいても所詮はネズミ3匹。問題ないか」
165: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 10:19:36.99 ID:JDo3T/bx0
時刻は9:00。上条達、一方通行達はそれぞれ準備が終わり、病院前に集合していた。
御坂は緑色のウインドブレーカーにホットパンツ、絹旗はふわふわしたニットのワンピースという出で立ちだった。
ちなみに今更ではあるが、一方通行と垣根は紺碧色の長点上機の制服を着ている。

上条「ホットパンツ……」

御坂「何か文句ある?」

上条「いくら春とはいえ、寒くないのかなって」

御坂「ちょっとだけ寒いけど、我慢できるレベルよ」

絹旗「女の子は超強いんですよ」

上条「そ、そっか」

一方通行「寒くないのかって言うのもあるが、コイツらの脚が出しっ放しなのは、危険でしかねェ」

御坂「いいのよ。こっちの方が動きやすいし」

絹旗「そうですよ。というか脚見るとか超キモいです」

一方通行「ふざけンな。オマエらの身を案じて言ってンだよ。ジャージとかで良いから着れば良かったのによォ」

御坂「ジャージはダサすぎるわ」

絹旗「それに、いざとなったら一方通行が超守ってくれるんですよね?なら大丈夫ですよ」

一方通行「はァ……分かった。じゃあ俺から離れンなよ」

御坂・絹旗「うん(ええ)」

垣根「何で一方通行ばっかりモテてるんだ……俺も女の子に好かれたいよーっ!」

上条「垣根は彼女居るだろ」

垣根「彼女がいるのとモテたいのは別。お前だってハーレム築きたいって言っていたじゃねぇか」

上条「それはもう忘れろ」

削板「お前ら何を言っているんだ!彼女一筋が普通だろうが!その根性叩き直してやろうか!」

五和「ですよね!当麻さんに鉄槌お願いします!」

削板「よっしゃ!」

上条「何で俺だけ!?五和さん、許して下さいーっ!」

フィアンマ・ヴェント「「……」」

なんかもういろいろとカオスな空気になってきた。だいぶ前から思っていた事だが、コイツらは緊張感がなさすぎる。

フィアンマ「完了だ!」

なのでフィアンマは、合言葉を叫んだ。その瞬間、上条と一方通行以外の人間がテレポートされた。
166: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 10:21:00.39 ID:JDo3T/bx0
上条「またかよ……!」

一方通行「気ィ抜くなよ」

身構える2人の目の前に、8人の人間がテレポートされた。

吹寄「さーて、今度こそ勝負してよね」

「いざ尋常に。勝負」

とある高校の制服を着ている吹寄と、巫女服の姫神。

「久しぶりですね。一方通行さん」

「殴られたお礼、今果たすわ」

「えへへ。ようやくこのロリコンを嬲れると思ったら興奮するなー、ってミサカはミサカは心中を吐露してみる」

「それ私の台詞なんだけどー。ミサカもあんなところやこんなところが勃っちゃってるぅ」

芳川「あなたは危険すぎるわ。ここで処分する」

フレメア「大体そう言う事だから、死んでよ一方通行。にゃあ」

スーツの海原に、とある高校の制服の結標、水玉のワンピースに大きめのYシャツの打ち止め、
アオザイの番外個体、アンチスキルの装備の芳川に、RPGの姫キャラ風のフレメアだ。

上条「8対2か」

一方通行「俺が6人やる。オマエは巫女服とデコをやれ」

上条「初めからそのつもりだけど。本当に6人大丈夫か?」

一方通行「誰に向かって口聞いてやがる?」

上条「オッケー」

上条は『幻想殺し』を解除。『竜王』の力を解放し、一方通行は笑みを浮かべた。
167: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 10:22:16.31 ID:JDo3T/bx0
御坂「またここか……」

御坂は再び第11学区にテレポートされていた。先程の戦闘の名残か、倉庫やコンテナが瓦礫となって大地に転がっている。

御坂「っ!」

御坂は何の前触れもなく、横に転がった。直後、上から可視出来るほどの風の刃が伸び、地面に直撃した。
横に転がっていなければ、真っ二つになっていたところだった。

佐天「さっすが御坂さん。不意打ちもあっさり避けちゃうなんて」

声は上から。佐天はふわふわと浮いていた。

御坂「佐天さん、パンツ見えちゃうわよ」

佐天「あれ?案外驚かないんですね。私がここいることを」

御坂「逃げていたんでしょ?最愛は気絶させただけだって言っていたからね」

佐天「なぁーんだ、つまんないなー。ま、いいや。楽しみましょう。2人きりで」

御坂「お断りするわ。速攻で終わらせてやる」
168: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 10:24:28.41 ID:JDo3T/bx0
垣根は第23学区、より詳しく言うと、かつてオリアナと上条・ステイルのコンビの最終決戦の場にテレポートされた。
彼の目の前には、20人の女子がいる。

垣根「可愛い子ばかりじゃん。なんだこれ、食蜂は俺にサービスしてくれているのか?
もしかしてハーレムなのか?俺の時代到来なのか?」

「shit……勘違いも甚だしい」

ギョロ目にウェーブのかかった黒髪が特徴的な、ゴスロリ服を着用している布束砥信が、侮蔑するように言った。

「私は好きだよ。あなたみたいなイケメン」

茶髪ロング、白いブラウスにホットパンツを着用している柳迫碧美が垣根をフォローする。

「私もカッコイイから好きだな。お兄ちゃんになってほしい!」

フード付きパーカーを着ている金髪ツインテール少女、木原那由他も柳迫に続いた。

「そうかぁ?私はあんなひ弱そうな男より、もっとマッチョな男が良いと思うけど」

ポニーテールで、胸にサラシを巻いた目つきの悪いサラシ女がそんな事を言った。
他16名の少女達も、垣根に評価を下す。

垣根(何なんだこいつら……ムカついてきた)

それでも垣根は、少女達が評価を下している間は何もしなかった。そして少女達が導き出した垣根の最終評価は。

垣根がイケメン派7名、そうでもない派13名、結論、垣根は大した男じゃない。

垣根「オッケー。戦争だボケェ!」

垣根は背中に『未元物質』の翼を生やし、少女達の集団に向かっていく。
少女達は炎や電撃、水流を出したりして垣根を迎撃するが通じす、突っ込まれて四方八方に吹っ飛んだ。

垣根「へぇ。お前らはやるようだな」

先程の垣根の一撃で、吹っ飛んだ少女16人は戦闘不能になった。
しかし4人の少女は平然と突進を避けていて、垣根を取り囲むように立っていた。

布束「Of course……その程度ではやられない」

柳迫「イケメン君ともっとお話したいからね」

那由他「そうだよ。垣根お兄ちゃんが、那由他のお兄ちゃんにしてください。
 って懇願するまで、やられるわけにはいかないからね」

サラシ女「お前みたいなひ弱そうな男に負けるのは、プライドが許さねぇ」

垣根「茶髪と金髪ツインテの2人は良い。ポニーテールとギョロ目女は、ムカついた」

比喩ではなく、垣根の目の色が変わる。右がオレンジ、左が青に。4人の少女も身構える。
169: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 10:27:56.18 ID:JDo3T/bx0
絹旗「食蜂のクソアマ、超悪趣味ですね……!」

第10学区の墓地にテレポートされた絹旗の目の前には、

「久しぶりだねぇ。絹旗」

「きぬはた、可愛くなったね」

「そうか?いつも通りチビだけど」

「結局、私達は絹旗を殺す訳よ」

明るい色のトレンチコートにストッキングの麦野沈利、ピンクジャージの滝壺理后、彼女に合わせているのか、
紺色のジャージの浜面仕上、なぜかメイド服のフレンダ=セイヴェルンだった。

目の前に広がるこの異様な光景を説明するとすれば、可能性としては4つある。
1つ。『肉体変化』(メタモルフォーゼ)能力者が彼らの姿に変身している可能性。
ただし学園都市に『肉体変化』はわずか3人しかいない。つまり、1人分説明がつかない。
もっとも、それは去年のデータであるため、増減している可能性もあるが。

2つ。クローンやロボなどの『作り物』と言う可能性だ。生前の内に、何らかの手段でDNAを採取。
そこからクローンを生み出す事も、学園都市の技術なら出来なくもない気がする。または精巧なロボットなのかもしれない。
だが4人を見た感じ、無機物ではなく本当に生きている気がする。

3つ目。精神系能力者もしくは『幻術使い』(イリュージョニスト)が、自分に麦野達の幻影を見させている可能性だ。
ここは墓地。身を隠せる墓石などいくらでもある。

4つ目。彼女達に似ている人間をコーディネートして、それっぽく見せているか。

だが、どの可能性にも1つだけ言える事がある。

絹旗(こいつらは本物の麦野達ではない)

当然のことながら、死者は蘇らない。学園都市の技術がどれだけ進んでいようが、それだけは絶対に揺るがない事実だ。

麦野「なぜだ?なぜ私達が本物ではないと言い切れる?」

麦野は絹旗の心理を読みとったような発言をした。
絹旗は一瞬動揺したが『精神感応』(テレパス)を応用すれば、難しくない事にすぐ気付いた。

麦野「私達が麦野沈利や滝壺理后、浜面仕上にフレンダのDNAや細胞から出来たクローンだとすれば、
私達はオリジナルと細胞レベルで同じなんだ」

絹旗「何が言いたいんですか?」

麦野「細胞レベルでオリジナルと一緒な私達に、絹旗と一緒に過ごした記憶があるとすれば、それは本物とどう違うんだ?」

絹旗「それは……」

麦野「私達が争う必要なんてないんだよ。絹旗もこっちにこいよ」

絹旗「……ぁ」

目の前には、かつて仲間だった人間がいる。去年の10月、暗部抗争の時に麦野に粛清されたフレンダまでいる。
暗部の時は、なんだかんだ言って楽しかった。同年代の女の子と過ごす日々。
浜面という情けないけどやる時はやる男の存在。生まれて物心ついた時には『置き去り』で、
その後計画に巻き込まれ理不尽な人生を過ごしてきた絹旗にとって、暗部での仕事仲間にすぎなかったとはいえ
麦野達とは、『アイテム』とは唯一の自分の居場所であった。

滝壺「楽になろうよ、きぬはた」

浜面「そうだぞ。戻って来いよ」

フレンダ「結局、さっきの殺すって言うのは嘘だった訳よ」

だが、違う。目の前に居るのは確かに麦野達の姿形はしている。でも所詮は作り物の体に、記憶を入れたものだ。
絹旗と共に過ごした麦野達ではない。

麦野「共に過ごしたもクソもないわよ。私達は紛れもなく『アイテム』そのものよ」

絹旗「違います。それは、あなた達が超クローンだった時の話です。あなた達がクローンとは限りませんから」
170: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 10:29:19.17 ID:JDo3T/bx0
滝壺「なかなか鋭いね」

浜面「そうだよ。俺達はクローンじゃない。でも」

フレンダ「結局、絹旗には私達が『アイテム』に見えている訳でしょ?
  そして、私達は絹旗と共に過ごしてきた記憶も持ち合わせている」

麦野「それってやっぱり、絹旗から見れば私達は『アイテム』と同義ってことじゃない?
人格とかが違うとか言う詭弁は止めてね。そんなのはいくらでも“調整”できるから」

絹旗「いえ、やっぱり超違いますよ。お前達は『アイテム』じゃない」

きっぱりと、言い切った。

絹旗「お前ら幻影の“嘘”なんて超必要(いら)ないんですよ。“本当”ならもう知っています」

フレンダ「はぁ?」

絹旗「――どっかの、超素直になれない電撃姫を助けるために駆けつけて、さらには私まで助けて、
200万対4という絶望的状況で立ち上がった白髪のモヤシを知っています。
それに加えて、頭に花飾りを乗っけたハッカーに、ドSツインテール。それが今の私の“本当”の居場所なんです」

麦野「詭弁どころか、支離滅裂な感情論か」

滝壺「つまり、きぬはたが言いたいことって?」

浜面「俺達はもう必要ない。いいからやろうぜ。ってことだろ」

絹旗「超そう言う事です。なんだ、浜面にしては理解が早いですね」

麦野「分かったわよ。そこまで言うなら、お望み通り叩き潰してあげるわよ」
171: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 10:29:59.14 ID:JDo3T/bx0
削板は第1学区の広い通りにテレポートされていた。

「やあ。久しぶりだね」

ダッフルコートにジーパンの好青年を見て、削板は尋ねる。

削板「お前は……誰だっけ?」

「去年の10月、学園都市でやりあっただろう?オッレルスだよ」

削板「ああ……そんな事があったような気もするな」

オッレルスが目の前に居る事は、いろいろと異常なのだが、特になにも考えず言った。

削板「まあいいや。やろうか」

オッレルス「そうだね」

2人は同時に地面を蹴った。
172: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 10:30:37.54 ID:JDo3T/bx0
フィアンマとヴェントは、第7学区の窓のないビルの跡地にテレポートされていた。
背中合わせに立っている2人の周囲には約100の能力者。
掌から炎を出しているところを見ると『発火能力者』(パイロキネシスト)らしかった。

フィアンマ「目には目をと言うが、この俺様相手に火で勝負してくるとはな」

ヴェント「私にとっては天敵だけどね」

フィアンマ「ここは俺様だけで十分だ。ヴェントは他の奴らのところに行け」

ヴェント「逃げられそうもないんだけど」

フィアンマ「大丈夫。俺様が活路を開く」
173: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 10:31:44.68 ID:JDo3T/bx0
五和は第12学区にある施設、高崎大学の図書館にテレポートされていた。

五和「……」

周囲に怪しい気配はないが、五和は不意打ちにも対応できるように神経を研ぎ澄ませる。

「そんなに緊張しなくてもいいのよな?」

突如、建宮斎字の声が図書館内に響いた。

五和「建宮さん!?」

建宮「そうだ。五和さんに殺された建宮さんなのよな」

五和「うっ……」

自分を揺さぶる為の小細工と分かってはいるが、分かっていても辛いものがある。

建宮「あの時の痛み、一生忘れないのよな」

五和「……」

建宮「まあいい。そんなことより、ゲームの説明をするのよな」

五和(ゲーム……?)

建宮「この大学には、俺を含む天草式メンバーがいたる所に居る。
その網を掻い潜り、大学から出たらお前さんの勝ち。それ以外はお前さんの負け。簡単だろ?」

五和「人数的にも状況的にも、私が圧倒的に不利ですね」

建宮「だがお前さんに選択肢はない。返事は『はい』か『YES』かなのよな」

五和「いいですよ。やりましょうか」

直後、五和の周囲に4人の男女がテレポートされた。4人は一斉に五和に襲い掛かる。

五和「――!」
175: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 20:20:06.39 ID:JDo3T/bx0
吹寄「いくわよ」

意外と綺麗な吹寄の脚に、膨大な風が集まる。

吹寄「喰っらぇぇぇえええ!」

風を纏った脚で上条に特攻し、彼の顔面目がけて蹴りを繰り出す。
レベル5級の風が渦巻いている蹴りを、しかし上条はあっさり受け止めた。

上条「吹寄、パンツ見えているぞ」

吹寄「貴様、この状況でよくもまあ……この変態!」

吹寄は一旦後退して、再び特攻するつもりだった。しかし上条はそれを許さなかった。
空いている手で吹寄の胸倉をつかみ、引き寄せ、頭突きをかました。

吹寄「いっ……たぁ……」

掴んでいた手を離すと、吹寄は地面に崩れ落ちた。

上条「次はお前だな。姫神」

姫神「私は。制理のようにはいかない」

自信ありげな姫神の背中からは、炎の翼が生えていた。
その形容は、例えるなら朱雀のようだった。手には扇子らしきものがある。
だが上条は臆せず、

上条「お前も一瞬だ。姫神」

宣言した。
176: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 20:23:32.40 ID:JDo3T/bx0
一方通行「ギャハッ!」

一方通行は一瞬で結標の懐に潜り込んだ。しかし結標はテレポートであっさり避ける。
それでも一方通行は270度方向転換して、めげずにもう一度結標の方へ行く。対して結標は再びテレポートで避ける。
けれども一方通行は諦めずに、三度結標の方へ行く。対して結標もやっぱりテレポート。

その間に番外個体は、御坂よりは弱いが『超電磁砲』を発射できるようにカスタマイズされたメタルイーターで、
擬似『超電磁砲』を連射。打ち止めとフレメアはレディースの拳銃で射撃。
海原は自身の能力『念動力』(テレキネシス)で不可視の波動を放ち、芳川もアンチスキル装備にライフルで狙撃する。

それらは高速で動く一方通行にはさほど当たらず、当たったとしてもダメージは通らなかった。
ただ一方通行は反射どころか、弾丸を弾くことすらしなかった。当たった弾丸は、一方通行の皮膚のところで止まっている。
理由はもちろん、皆を傷つけない為だ。彼は結標を追いかけながら、そんな事を平然とやってのけている。

番外個体「やってくれるじゃない?ミサカ、興奮して濡れてきちゃった☆」

打ち止め・フレメア「「早く死ねよロリコン」」

芳川「あなたなんてただの犯罪者なのよ。死んだ方が社会の為になるの。だから死んでよ」

海原「忘れたんですか?
あなたがどれだけ頑張ろうとも、御坂さんのクローン1万人以上殺した事実は消えないんですよ!?」

結標「そうよ!その上女の顔面まで殴るなんて!鬼!クズ!サド!死んじゃえ!」

一方通行「無理」

もはや声を出すのもだるいと言った調子で、一方通行は適当に答えた。
177: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 20:27:02.23 ID:JDo3T/bx0
なおも結標と一方通行の追いかけっこ、そしてそれを横から邪魔をする海原達という構図は続いた。

結標(コイツは一体何が狙いなの?)

テレポートで悉く逃げられるのは分かっているのに、一方通行は追撃を止めない。それが不気味で仕方ない。

結標(まさか、体力切れ狙い?)

でもそれは非効率と言うか、一方通行が不利過ぎる。
だって自分は点から点の移動をするだけだが、一方通行は自分を追う間ずっと能力を使用しっぱなしだ。
加えて、海原達の攻撃を受け止め、余計に演算を行っている。
この条件で長時間戦い続ければ、どちらが先にヘバるかは明らかだ。

結標(何なの?気持ち悪い!)

一方通行「ハハッ!無様なローアングルを晒してくれてアリガトウ!」

一方通行は笑っている。この不利な状況で。周囲になど目もくれず。ただ結標だけを狙って、彼は追いかけてくる。
それはもう、結標からすれば不気味さを通り越して一種の恐怖でしかなかった。

結標(やだ……!絶対に捕まりたくない……!)

それはほんのわずかではあるが、演算に狂いを生じさせる。結果として結標のテレポートの精度はわずかに落ちる。
テレポートごとに常に20mの距離をとっていたのが、19m99cmになる。
たかが1cmではあるが、超高速の一方通行相手には油断できない演算の狂いだ。

さらにその様子は、結標だけでなく他の人間の冷静さも失わせる。

番外個体「ミサカをシカトしてんじゃねーぞゴラァァァ!」

メタルイーターを連射させる。しかし一方通行には通じない。そしてついに弾丸が切れた。一方通行はそれを見逃さない。
彼は肌に付着して止まっていた弾丸の3つを、メタルイーター目がけ投げる。
ベクトルの力を受けて投擲された3つの弾丸は、あっさりとメタルイーターを引き裂いた。

その間にフレメア・打ち止めの拳銃の弾丸も、替えも含めて尽きた。
一方通行は先程と同じように弾丸を投げ、拳銃を破壊した。

海原には付着していた弾丸をいくつか投げた。対して海原は能力で自身を分子レベルで固めて両腕をクロスしてガードする。
レベル5の『念動力』で作った鎧だ。ミサイルなら3発は耐えられるレベルである。
弾丸など何発喰らったところで、問題ない。

しかし一方通行が投げた弾丸はベクトルの力を受け『超電磁砲』以上の速度で雨となって海原の体に直撃した。
これにはさすがの海原も悶絶した。痛みで演算に集中できず、鎧が解ける。
そこへ一方通行は、残りの弾丸を彼の手足にぶち込んだ。

唯一冷静だった芳川は、だからこそ悟った。
一方通行には勝てない。そんな彼女の手足にも、一方通行は容赦なく弾丸をぶち込んだ。

これで3人が武器なし、2人が使い物にならなくなった。結標の焦りは、より加速する。

結標(どうすれば……)

一方通行は結標に余裕を与えなかった。ポケットに手を突っ込み、スタングレネードを投げる。

結標(まず――)

莫大な光と音に周囲は包まれ――
178: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 20:28:32.93 ID:JDo3T/bx0
一方通行は、正体は『肉体変化』能力者だった番外個体と打ち止め、学園都市外へ逃がしたはずのフレメアと芳川、
割とどうでもいい海原、貴重なテレポーターの結標の全てを救った。

一方通行(ったく、都市外に逃がしたフレメアと芳川をわざわざ捕まえて洗脳するたァ、
  食蜂のクソアマも、なかなかゲスな手を使うじゃねェか)

どうでもいい海原はともかく、芳川の血のベクトルを操りながら、そんな事を考えていた時だった。

上条当麻が巫女服の女を抱えて空から落ちてきた。

一方通行「オマエ……何したンだ?」

上条「別に。上空で姫神と一騎打ちで正面衝突しただけだよ」

あっさり言う上条は全くの無傷で、ダメージを受けていたのは巫女服の女だけだった。

一方通行「さすが、ヒーローは違うねェ。ギリギリで勝った俺とは大違いだ」

上条「お前もかなり余裕そうだけど。……っと、吹寄の頭に触らなくちゃ」

上条は吹寄の下に駆け寄り、頭を触った。甲高い音が響く。

一方通行「さァて、まずはコイツらを魔道書持ちのアイツらに届けねェとな」

上条「そうだな」
179: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 20:31:06.46 ID:JDo3T/bx0
佐天が瓦礫と言う瓦礫を風で拾い集め、御坂に向かって放つ。御坂はそれを、電撃を飛ばして破壊する。

佐天「だりゃあ!」

今度は可視できるほどの風の刃を連続で放つ。縦に横に十字に。
御坂はそれらを電撃で防御するまでもなく、避けながら佐天に肉迫する。

佐天「ちっ!」

肉迫された佐天は空中へ避難する。そして風の刃の連発。
対して御坂は深追いせず、一旦後退する。

佐天「御坂さんは覚えていますか?
レベルについて悩んでいる私に『レベルなんてどうでもいい事じゃない』って言った事を」

御坂「……それがどうしたの?」

佐天「どうでもいいわけないじゃないですか。
あの場は、御坂さんなりに私を励ましているんだって自分を納得させましたけど、
どう考えたってレベル5の御坂さんが言うことじゃないです。説得力がなさすぎます」

御坂「じゃあ聞くけど、その台詞をレベル0の人が言ったって、ただの負け惜しみにしか聞こえないと思わない?」

佐天「そうですね。
そうかもしれませんけど、そうやって言うってことは、私達低レベルの能力者を見下していたんですね!」

御坂「……そうね。全く見下していないと言ったら、嘘になる。それは認める」

けど、と御坂は続けて、

御坂「『レベルなんてどうでもいい事』って言うのは、あの時だけの方便じゃない。本心よ」

力強く、言い切った。

佐天「そんなわけないでしょう?嘘はいけませんよ」

御坂「嘘じゃない。私は今この瞬間、たとえレベル0になろうとも、佐天さんを救う事を止めないわ。
それだけは絶対に言える」

佐天「何でそんな嘘を……平然と……」

御坂「私はレベル5だから戦っているんじゃない。そんな次元の話じゃない。
私は皆を救うために戦っているんだから、それにレベルなんて関係ないことなの」

佐天「綺麗事を……!なら実際にやってみて下さいよ。御坂さんはこの戦いで能力を使わないでください」

御坂「……分かったわ」

御坂は、纏っていた電撃を解除した。
180: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 20:32:34.52 ID:JDo3T/bx0
佐天「え?まさか、本当に……」

御坂「ただし、抵抗はするわよ」

佐天「……いいでしょう。綺麗事を抜かす御坂さんに、痛い目を見てもらいます!」

風の刃の攻撃が再開される。さっきよりも速く、多くの刃で御坂を攻撃する。

御坂「くっ、おっ……」

走り、跳び、転がり、クリーンヒットはなんとか避けるが、頬や腕、剥き出しの脚にいくつか掠める。

佐天(本当の本当に能力を使わない気か……!)

佐天は加速して一気に御坂の前に躍り出る。そして右掌を前に出す。
空気の波動が発射され、御坂は数十m吹き飛ばされ、地面を何回もバウンドした。

御坂「ぅ……ぁ……」

痛む体に鞭を打って、やっとの思いで立ち上がった御坂の視界に飛び込んできたものは、
一直線にこっちに向かって飛んでくる、風に乗った大量の石つぶてだった。

御坂「……が……あ……」

大量の石つぶてが御坂の体を叩いた。
両腕をクロスして顔だけは守ったが、もはや立っていられるだけの力すら残っていなかった。

崩れ落ち、膝立ち状態になった御坂の懐に潜り込んだ佐天は、彼女の耳元で呟く。

佐天「まだ終わりませんよ」

御坂の腹に触る。人体に噴射点は作れないが、掌から膨大な空気を放出する。
結果、御坂は数百m先の倉庫の壁まで飛ばされた。
181: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 20:35:30.44 ID:JDo3T/bx0
御坂「ごほっ!」

咳き込んだ御坂の口から、鮮血が溢れる。

御坂(私って、やっぱり駄目ね……)

レベル5相手に能力なしで戦うのが無謀なのは分かっていた。
さっきはボロボロのところを一方通行に助けてもらって、五和やヴェントに治療までしてもらったのに、もうこのザマだ。

それでも証明したかった。レベルなんてどうでもいいと言う事を。大切なのは気持ちなのだと言う事を。

馬鹿な事をしているとは分かっていた。
能力を使わないフリして、不意打ちで使って怯ませて、頭を触る事も出来たかもしれない。
でもそれをしなかった。嘘だけはつきたくなかったから。

その結果がこれだ。もう仲間達に顔向けできないほど迷惑をかけていると思う。けどやってしまったのだから仕方ない。

御坂(でも……せめて……)

佐天だけは、どうにかしたい!

佐天「みーさかさん」

壁にもたれかかって、ぐったりとしている御坂を佐天は見下す。

佐天「分かりますか?今の御坂さんの状態が、私達レベルの低い人が常に感じていた事なんですよ」

御坂「……」

佐天「何か……言って下さいよ……」

御坂「どうして……泣いているの……?」

佐天「え?」

言われて両手で頬を触ると、確かに温かい滴が流れていた。

佐天「あれ……なんで私、涙なんかを……」

必死で拭う涙は、けれどもとめどなく溢れる。

御坂「佐天さん。大事なのはレベルじゃなくて気持ちなのよ」

佐天「違う!この世界は所詮、力がある者が、権力を持つ人が得するように出来ている!
だから、幸せになる為には、力を手に入れるしかないんですよ!」

泣きながら叫ぶ佐天に、しかし御坂は冷静に、諭すように語りかける。

御坂「そんな事、ないわよ。気持ちさえしっかりしていれば、力なんてなくたって、弱くたって変われる。
レベル0だから何も出来ないなんて事ない。佐天さんは私の事を励ましてくれたじゃない。
私は、それで気持ちが楽になったよ?佐天さんのおかげで元気が出たんだよ?」

佐天「だから……なんだって言うんですか!?」

御坂「何度も言っているけど、レベルなんて関係ないってこと。
レベル0だって、レベル5を元気づける事が出来る。大事なのは気持ち。だから、こんな事はもう止めよう?」

佐天「そんな……御坂さんの言っている事は感情論ですよ……だって、そんな……」

御坂「佐天さんも分かっているんでしょう?こんなことをしても虚しいって。だから、泣いているんでしょ?」

佐天「違う!私は、私は――」

佐天は右手を振り上げた。この手が振り下ろされれば、御坂は風に切り裂かれて死ぬ。

佐天「うわああああああああああ!」

御坂は最期のときも目を閉じなかった。右手が振り下ろされる。
182: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 20:36:56.75 ID:JDo3T/bx0
パシッ!と一方通行の手が、完全に振り下ろされる寸前の佐天の右手を掴んだ。

一方通行「ここら辺で勘弁してくれませンかねェ」

佐天「くっ!」

佐天は逃げようとするが、とんでもない力で掴まれている腕を振りほどけない。

佐天(ならば!)

空いている左手で、一方通行の体に触る。あとは空気を発射すれば、彼の体は吹き飛ぶ。

佐天(喰っらえ!)

佐天の左手から、膨大な空気が発射された。しかし8割方の空気は横に反らされ、2割の空気が反射された。

佐天「な!?」

2割とはいえ、反射された空気を喰らった佐天は、軽く数十mは吹き飛ばされる。
それでも彼女は地面をスライドして何とか踏ん張る。

一方通行「ご苦労さン」

声は真後ろから。佐天が振り返ろうとした時には、一方通行は後頭部に触れていて。

一方通行「――コマンド実行――削除」

毎度少しの狂いもなく、またしても2秒で終わらせた。

一方通行「まァた無茶しやがって」

佐天を抱えながら、一方通行は話しかける。

御坂「また……助けられちゃったわね……」

一方通行「それは別に良い。ただよォ、もう少し自分を大切にしろ」

御坂「うん」

緊張の糸が切れたためか、御坂はそこで気絶した。
183: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 20:38:52.41 ID:JDo3T/bx0
サラシ女の『表層融解』(フラックスコート)も、いまやレベル5。
彼女はアスファルトの粘度をコントロールして大量の針を生み出す。

垣根「くだらね」

垣根は空を飛び、針山と化した地面に一瞥をくれる。しかしこれでは、残り3人の少女もただでは済まないはずだが。

垣根「ありゃ?」

少女3人の姿が見当たらない。その事実に気付いた直後だった。

空中に居る垣根の真後ろから放たれた布束の蹴りが、彼の側頭部に直撃した。

垣根「痛ってぇな」

布束「Wow……やるじゃない」

布束は多少驚きながらそう呟いた。垣根がノーダメージだからだ。

布束「体を超硬質化して、私の一撃を凌ぐなんてね。本当に常識は通用しないのね」

言葉では垣根を褒めているが、若干小馬鹿にしたようなニュアンスも感じられる。

布束「But……彼女の攻撃はどうかしら?」

柳迫「ひゃっほーう!」

垣根の目の前に躍り出た柳迫が、彼の頭頂部目がけてかかと落としを繰り出す。

垣根「ふん」

垣根は全く焦ることなく、冷静に翼でガードする。

垣根「ぬがっ!」

とてつもない衝撃が垣根を襲った。
ただのかかと落としを喰らって、彼は針山の地面にたたき落とされた。
184: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 20:41:12.26 ID:JDo3T/bx0
垣根「マジで痛ってぇな。そして完全にムカついた」

かかと落としをまともに喰らい、針山の地面にたたき落とされたが、針山だけが砕け、垣根はやっぱりノーダメージだった。しかし疑問は残る。かかと落としごときで叩き落とされた事だ。

超硬質化した今の垣根は、殴る蹴るなどの体術は愚か、銃弾やナイフなどの凶器ですら傷一つつかず、揺るがない。
物理的ダメージは通らないと言っていい。
にもかかわらず、いくら上からの衝撃とはいえ叩き落とされる事は、明らかな異常だ。

那由他「お兄ちゃん“この俺がこんなことになるなんて”って顔をしているねー」

垣根「うぜぇなお前。可愛いから許すけど」

布束「Oh my god……あなた、ロリコンだったのね」

垣根「うるせぇ。ゴスロリ似合ってないぞ」

柳迫「ねーねー、私は私は?」

垣根「ビッチっぽい。0点」

柳迫「ふっざけんな!私は処女だっつーの!」

つい余計な事を口走りながら、柳迫は空中から垣根に肉迫する。

柳迫「ムカついたのは私の方だ!」

柳迫の蹴りを翼で防ぐが、衝撃を殺しきれず、針山を大量にぶち抜きながら吹っ飛んだ。
185: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 20:44:20.95 ID:JDo3T/bx0
垣根「なるほどね。衝撃を増幅させているわけね」

やっぱりノーダメージの垣根は平然と立ち上がる。

柳迫「そうだよ。
『衝撃拡散』(ショックアブソーバー)って言う、受けた運動量を散らすことで衝撃を軽減する能力なんだけど、
レベル5の今は、衝撃を増やす事も出来るんだ」

垣根「そんなんじゃあ、俺をポンポン飛ばす事は出来ても、ダメージは与えられねぇぞ」

柳迫「でも徐々に消耗はしていくよね?」

垣根「そりゃそうだけど、お前らじゃあ無理だ」

柳迫「なら、させてみせるよ!」

垣根を蹴り飛ばす為、柳迫は駆け出す。

垣根「大体、お前の能力はそうでもねぇ」

迫る柳迫を前に、垣根は会話をするような調子だ。

柳迫「強がりは、攻略してから言ってよね!」

柳迫の回し蹴りが、ガードした垣根の翼に直撃した。しかし、垣根は吹き飛ばされなかった。

柳迫「何で?」

垣根「衝撃を拡散なんてことは、俺の翼でも簡単にできるっつーの」

柳迫「くっ!」

距離を取ろうとするが柳迫を、蛇のように動く垣根の翼が掴み、包んだ。

サラシ女「敵はその女だけじゃねぇぜ!」

粘度を操られたアスファルトが針となって生え、垣根に襲い掛かる。

垣根「もちろん、そんな事は分かっているぜ」

『未元物質』に包まれ繭のような状態になっている柳迫を、サラシ女に向かって投げる。

サラシ女「うぇ!?んなのアリかよ!?」

繭の柳迫は針山など次々と砕きながら、サラシ女に向かって行く。
ゴキャア!と、サラシ女がギリギリで生み出したアスファルトの盾は砕けた。それで繭の勢いもなくなった。

サラシ女(へっ。なんだ。大した事――)

垣根「2人目――」

何とか繭を防ぎ少しだけ気の抜けたサラシ女の懐に、垣根は入った。

サラシ女(まず――)

とその時、サラシ女の体がふわっと浮き、あっという間に浮いている布束の横についた。
186: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 20:47:37.79 ID:JDo3T/bx0
垣根「ちっ。無駄な抵抗しやがって」

布束「油断するなと言ったはずだ。Really……世話が焼ける」

サラシ女「分かってる分かってる」

注意を促す布束を、サラシ女は適当に流す。

垣根「今の会話の感じだと、ギョロ目がリーダー的ポジションってところか。
今お前らが浮いているのも、お前の仕業だろギョロ目」

布束「Exactly……私の能力は大気系『空気風船』(エアバッグ)のレベル5。
能力の特性上、かまいたちとか、竜巻は生み出せない。
However……空気の粘度を操ることには長けていて、普通の大気系能力者には出来ない事が出来る」

サラシ女「よく喋るなあ……ってキャ!」

垣根ではなく、仲間であるはずのサラシ女がそう呟いた直後、彼女は一直線に地面に落下していった。

サラシ女「や、やばい!」

しかしサラシ女は、ぽよん。と空気の風船の上に落ちて安全に地面に着地した。

垣根「今のが実演か……」

布束「針をいくつか作って」

サラシ女「……はいはい」

地に両手をつき、針を10本ほど生やす。

布束「それを地面から切り離して。出来るでしょ」

サラシ女「(何が狙いなんだよ……)はいはい」

プチンと、針がアスファルトから切り離された。同時、それらはフワフワと浮き始める。

布束「Example……こんな感じで、物を浮かす事が出来る」

垣根「そんなもん普通の大気系能力者でも出来るだろ」

布束「Indeed……ここまでなら普通の大気系能力者でもできる。But……ここからが違う」

布束はそう言って、指をバチンと鳴らす。するとフワフワと浮いていただけの針がくるくると回り始めた。

垣根「で、それがどうしたの?」

布束「まだ分からないの?一般的な大気系能力者でも瓦礫などは“風に乗せる”ことはできる。
けれど、それは大雑把で直線的な攻撃にしかならない。
その点私の能力でなら、自由自在に変則的な攻撃が出来る」

垣根「ふーん。でもそれなら、普通の大気系能力者の方がメリット大きくね?」

布束「まあ、やってみればわかる、さ」

針はドリルのように回転して、垣根に向かう。

垣根「しょっぱいねぇ」

垣根は軽く翼を振るう。だったそれだけで針など全て砕け散った。
187: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 20:48:56.95 ID:JDo3T/bx0
垣根「終わりか?」

布束「ちょっと、何でも良いから、もっと大きいのお願い」

サラシ女「はいはい」

サラシ女により、ビルのような大きさの針が大量に出来上がる。
それも先程の針と同じくフワフワと浮かび上がり、ギャルルル!とドリルのように回転して、再び垣根の下に向かう。

垣根「うっぜぇ。まずはサラシ女から仕留めないとエンドレスか……!」

飛んでくる針を、時には避け、受け流し、破壊してサラシ女に近付いて行く。

サラシ女「くっそ!もう能力は使えない!助けてくれ!」

サラシ女の救援要請に、布束は答えない。

サラシ女「なんで……」

垣根「能力が使えなくなった足手まといは要らないってことじゃねぇの?」

狼狽するサラシ女の懐に飛び込んだ垣根は『未元物質』で彼女を包み込む。
能力が使えない彼女に『未元物質』に対抗する力はなかった。
188: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 20:50:40.34 ID:JDo3T/bx0
布束「ここは一旦退くべきか……ん?どうした、なゆ――」

那由他「邪魔」

サラシ女が捕まる様を見て撤退を思案し始めた布束の胸を、那由他の腕が貫いた。

布束「な……」

那由他「弱者は要らない」

ズボッ!と那由他の腕が引き抜かれ、空中に居た布束は落下し地面にたたきつけられた。

垣根「あらら。まさか仲間殺しちゃうなんてな」

那由他「仕方ないよ。弱者は足を引っ張るだけだからね」

垣根「気持ちは分からないでもないけどな。ところで、俺が言うのもアレだけど、何でお前は今まで攻撃しなかった?」

那由他「だってー、お兄ちゃんと2人きりが良かったんだもん♡」

垣根「うぜぇなブリッ娘。可愛いから許すけど」

那由他「可愛いは正義ってね」

垣根「ま、誤魔化すならそれでいいよ。どんな意図があるかはしらねぇが、こっちのやることに変わりはないしな」

那由他「言っとくけど、3人とは格が違うからね?」

垣根「この眼で見りゃあわかる。AIM拡散力場をある程度操れるんだろ?
ギョロ目がいないのに空中に居れるのは、AIM拡散力場で足場を作りその上に立っているからだ」

那由他「うわぁー。お兄ちゃんすっごーい!その眼ってAIM拡散力場も見えるんだー!
 でもでもー、それが勝敗まで左右するとは限らないけどねー」

垣根「そうだな。俺がAIM拡散力場を可視出来ようが出来なかろうが、
お前がAIM拡散力場を操れようが操れなかろうが、俺の勝ちに変わりはない」

那由他「かっこいー。私、お兄ちゃんに惚れちゃいそうだよー」

垣根「お喋りはここまでだ。さっさと始めようぜ」
189: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 20:52:17.22 ID:JDo3T/bx0
先に仕掛けたのは那由他の方だった。
凄まじい速度で空中から垣根の懐に入った彼女は、右手でAIM拡散力場を掴み刀にして、彼の腹を切り裂く為に振るった。

垣根「ふん」

垣根は余裕と言った調子で『未元物質』で生み出した刀で、那由他の一閃を受け止める。

那由他「とう!てい!やあ!」

左手にもAIM拡散力場の刀を持ち、二刀流で斬りかかるが、垣根は難なくあしらう。

那由他「んもう!」

埒が明かないと思った那由他は、一旦後退して刀を捨て拳銃を生み出す。

垣根「ほう」

那由他「死んじゃえ!」

拳銃の引き金を引く。AIM拡散力場で出来ている拳銃なので弾丸も同じものであるが、威力は通常の弾丸より速く、高い。

垣根「無駄だって」

しかし垣根の翼の前では、AIM拡散力場の弾丸など無意味に等しかった。全ての弾丸を防ぎ、逆に羽毛を発射する。

那由他「それこそ無駄だもん!」

前方にAIM拡散力場の盾を展開し、羽毛を防ぎきる。那由他はさらに、周囲に設置型の大砲をいくつか生み出す。

那由他「撃てー!」

那由他の掛け声と共に、いくつもある大砲が火を吹いた。砲弾はかなりの速さで垣根やその周囲の地面に着弾し、爆発した。
190: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 20:53:39.87 ID:JDo3T/bx0
垣根「はー、すげぇな。こりゃあ、いつか戦ったピンクジャージの女より強ぇや」

周囲が火の海に包まれている中、垣根は形だけ那由他を褒め称える。

那由他「滝壺のお姉ちゃんの事だね。そうだよ。今の私は滝壺のお姉ちゃんの全盛期を超える。
 油断していると、死んじゃうよ?」

垣根「その程度では、俺の『未元物質』を暴発させることはできねぇぜ」

那由他「本当にそうかな?」

垣根「やってみろコラ」

那由他「なら、いっくよー!」

人間とは思えない速度で、那由他は垣根の懐に入る。だが垣根は既に、カウンターの右拳を放っていた。

ドゴォ!と那由他の腹部に拳が叩きこまれたが、

那由他「つーかまえた♡」

那由他は万力のような力で、左手で垣根の右腕を締め上げる。

垣根(ヤベッ。抜けねぇと――)

霊体化でもして左手から抜けだそうと試みようとした垣根より早く、那由他は右腕ごと彼の口に『体晶』を放りこんだ。

垣根「ク、ソがあああああああああああ!」

那由他が垣根から離れると同時、『未元物質』は暴発し柱となり彼の体を飲み込んだ。
191: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 20:54:59.70 ID:JDo3T/bx0
『未元物質』の柱は10秒ほどで消え去った。その後には、血まみれで倒れている垣根だけだった。

那由他「アハッ!やった。やったよ。私の力でレベル6の垣根お兄ちゃんを倒したよー!」

歓喜の声をあげて、ワナワナと震え出す那由他は興奮を抑えきれない。

那由他「えへへ。お兄ちゃん、お兄ちゃぁぁん」

倒れている垣根に近付いた那由他は、彼の頭を踏みつける。ゴッガッゴリッ!と生々しい音が続く。

那由他「アハハ、アハハ、アハ……あれ?」

足に違和感。なんだと思って那由他は自分の足を見ると、垣根の手に掴まれていた。

那由他「まだ動けるんだ?」

垣根「まあな。本当に情けねぇ。完全に油断しちまっていた」

ゴキャリ!と垣根の手が那由他の機械の足を握りつぶした。

那由他「どんな握力――」

驚愕した直後、ズバン!と那由他の機械の左腕が千切れ飛んだ。

那由他「な――」

狼狽する暇もなく、さらに那由他の右腕、左足、握りつぶした右足までもが引き裂かれた。
ゴトリと、那由他の胴体だけが無残に転がった。
192: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 20:57:33.26 ID:JDo3T/bx0
垣根「ク……ソが……」

何とか立ち上がった垣根の腹部辺りは、紺碧色の制服の上からでも分かるほど赤黒く染まっていた。

那由他「へへ。苦しそうだね、お兄ちゃん」

一方で那由他の方は、体の9割が義体だったため大した苦しみはなかった。

垣根「畜生が……全身機械の……サイボーグかよ……」

那由他「そうだよ。私は今まで様々な実験を受けてきて、体が爆発して……今では脳と心臓以外は機械で出来ているの」

垣根「なんで……そこまでして……」

那由他「お兄ちゃんにはまだファミリーネームを言っていなかったね。
 私は木原一族の木原那由他。ここまで言えば、お兄ちゃんなら大体分かるよね」

垣根「なるほどね……あの木原一族か……道理でトチ狂った奴だと……思ったぜ」

那由他「そんなことよりいいの?そのままだと、お兄ちゃん出血多量で死んじゃうよ?」

垣根「いらねぇ心配だ。能力で……傷は塞いだ……」

那由他「そんなこと出来るの?それ以前に『体晶』で能力は使えないはず……」

垣根「自分で腹に穴空けて、とった。そしてその穴も、体中の傷も、臓器の孔も『未元物質』で、塞いだ……」

那由他「そんな……有り得ないよ……」

垣根「有り得ないって、そりゃそうだ。俺の『未元物質』に、常識は通用しねぇ」

那由他「常識は通用しないなんて……そんな言葉で片付けられるレベルじゃないよ」

垣根「これが……レベル6『神ならぬ身にて天井の意志に辿り着く者』の力だ」

那由他「ふふ。そう、だね。やっぱりお兄ちゃんはカッコイイや。――けれど、私もまだ終わらないよ」

胴体だけだった那由他の四肢にAIM拡散力場が集まり、それぞれ手足を象る。
那由他はゆっくりと立ち上がった。

垣根「はは。お前も十分常識が通用しねぇよ」

那由他「まだだよ」

那由他の背中に、さらにAIM拡散力場が集まり羽を象る。色は虹。
その姿は蝶のようで幻想的だった。那由他は飛び上がり、垣根から距離をとる。

垣根「綺麗じゃねぇか」

那由他「最後の勝負だよ。お兄ちゃん」

垣根「上等じゃねぇか」

『未元物質』で応急処置的に大きな傷を塞ぎはしたが、大量の血液を失い、ダメージが残っている事に変わりはない。
無理して一騎打ちをするべきではない。それでも垣根は、あえて那由他に挑む事を選んだ。

那由他「いくよ!」

凄まじい速度で那由他は空中から垣根に突っ込んでいく。垣根も那由他へ突っ込む。

那由他「――!」

垣根「――!」

正面衝突した2人は、白い光に包まれて――
193: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 20:58:59.99 ID:JDo3T/bx0
那由他「やる、ね、お兄ちゃん」

白い光の中で、その言葉を最期に那由他は消し跳んだ。

垣根「負けるわけには、いかねぇんだよ。『絶対迎えに行く』って、約束しちまったからな」

魔術vs科学の戦争では生き延びはしたが、その約束は果たせなかった。
だから彼女を魔道書で送る時に、あえて同じ約束をした。今度こそ果たす為に。

垣根「しかし、このままだとヤベェな。もしここで敵が襲ってきたら――」

そう言う時に限って、都合の悪い事は起こるものである。垣根は後ろに人の気配を感じた。

垣根(くそっ!)

なりふり構わず、翼を振るう。
194: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:01:14.39 ID:JDo3T/bx0
フレンダ「結局、私達の誘いを断った事を後悔させるって訳よ!」

絹旗(体が……超動かない!)

体の自由が効かない絹旗の顔面に、フレンダの蹴りがクリーンヒットした。
絹旗は数個の墓石をぶち抜きながらぶっ飛ばされた。

絹旗「超痛ってー」

体の自由が利かなくなろうとも、窒素を纏えなくなった訳ではない。つまり、絹旗は無傷だった。

麦野「相変わらず頑丈だねぇ。『窒素装甲』」

麦野は褒め称えるが、考え事に夢中で当の本人は聞いていなかった。

絹旗(体の自由が超利かなかったのは、おそらくは『洗脳操作』の仕業……どっかに隠れているはずですが、
いちいち探している暇はありませんし……ここら一帯を、まとめて吹き飛ばしますかね……)

滝壺「物騒な事を考えているね。きぬはた」

絹旗「心も読まれていますし、超やりづらいですね」

浜面「これで分かったろ?この状況、どう考えたってお前が不利だ。今俺達の仲間になるってんなら」

絹旗「バカ面は超黙っていてください」

浜面「なにおう!?」

フレンダ「そんなことより、私の蹴りについてはノーリアクションな訳!?」

絹旗「どうせ肉体系能力の何かでしょう。超しょぼいです。と言うか地味」

フレンダ「なにおう!?私のこの美しい脚を最大限に生かす能力、『脚色脚力』(アダプテーション)を馬鹿にする訳!?」

絹旗「結局、肉体系能力ってことでいいですか?」

フレンダ「結局そうよ!」

麦野「フレンダは確かにしょぼいよ。脚だけを強化する能力、所詮は三流の能力さ」

フレンダ「麦野まで!?」

麦野「だけど私達は違う。言っておくけど、私と滝壺は生前と同じ能力、
『原子崩し』(メルトダウナー)と『能力追跡』(AIMストーカー)だ」

絹旗「……超浜面はどうなんですか?」

麦野「浜面は、私と滝壺の一流の能力者と違って二流かな。
『爆裂空拳』(バーンナックル)って言って、フレンダよりは使えるぐらい」

フレンダ「麦野酷い」

麦野「そしてもう気付いていると思うけど『精神感応』と『洗脳操作』によって絹旗の心は読めるし、
体の自由もある程度奪っている。頭の良い絹旗なら、この状況がどれだけ不利かは分かっているわよねぇ?」

絹旗「……」

麦野「もう一度だけ言う。これが最後だ。私達のところにこい」

絹旗「……超断ります」
195: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:02:48.45 ID:JDo3T/bx0
浜面「おいおい考え直せ。どう考えたってお前に勝ち目ねぇって!」

絹旗「どうしたんですか浜面?そこまでして私を引き込みたいなんて、もしかして私の事が超好きだったりして」

浜面「な!?そんなわけねぇだろ!俺は滝壺一筋だしぃ!」

滝壺「はまづら……?きぬはたは確かに可愛いけど、浮気は駄目だよ?」

浜面「きっぱり否定しましたが!?」

絹旗「ふふ。なるほど再現度は超高いですね。
麦野の傍若無人っぷりに、フレンダがあしらわれる感じ、浜面の情けないオーラに、滝壺さんの嫉妬。
本物と比べてもなんら遜色ないです」

フレンダ「いきなりどうしたの?」

絹旗「別に。ただ麦野が私に選択肢を超与えたのが気になっただけですよ。
本来の麦野なら、容赦なく叩き潰しているのにです」

麦野「そうだよ。本来の私なら叩き潰している。けど、あえて聞いたのよ。
私だって無闇やたらに人を殺したくはないからねぇ」

絹旗「麦野はそんな超殊勝な人じゃなかったですよ」

麦野「私も変わったのさ。けれど、もう容赦しない。ここからは本気で叩き潰す」

絹旗「そうこなくっちゃ」
196: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:05:13.14 ID:JDo3T/bx0
麦野「ふん」

麦野が軽く右腕を振るった。『原子崩し』の光線が放たれる。

絹旗(やっぱり体の自由が利かない!)

それでも窒素を纏い、操る事は出来る。だから絹旗は、前方に窒素の盾を展開した。
窒素の盾は光線を一瞬は受け止めたが、3秒もたずに引き裂かれ、絹旗は飲み込まれた。

フレンダ「絹旗の奴、結局あっさりと消し飛ばされた訳よ」

滝壺「まだだよ、ふれんだ」

フレンダ「え?」

滝壺が注意を喚起した直後。絹旗の方から、窒素の衝撃波が飛んできた。

フレンダ「はにゃーーーーーー!?」

ゴバッ!と、窒素の衝撃波は麦野が生み出した『原子崩し』の盾に阻まれた。

麦野「油断するなフレンダ。絹旗もレベル5。絶対防御と言っても過言ではない防御力があるんだから」

フレンダ「わ、分かった」

麦野「浜面、フレンダ、アンタらは絹旗に近付いて休みなく攻撃し続けなさい。私と滝壺が、後方から支援する」

浜面「なんだよそれ。俺は麦野の流れ弾喰らって死ぬのなんて嫌だぞ」

麦野「大丈夫だ。信じているぞ」

フレンダ「全く心がこもっていないって訳よ……」

麦野「いいから行く!」

浜面・フレンダ「「はいはい」」
197: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:08:27.95 ID:JDo3T/bx0
フレンダ「見よ!この脚線美!」

相変わらず体の自由が利かない絹旗は避ける動作は出来ず、
繰り出された蹴りに対して、なんとか腕を出すことしか出来なかった。

ドゴォ!とフレンダの脚と絹旗の腕がぶつかり合い凄まじい音が響くが、絹旗はぶっ飛ばされなかった。

フレンダ「おりょ?」

浜面「どけ!フレンダ!」

フレンダと入れ替わるように、浜面の右拳が飛んできた。絹旗は左拳で対抗する。
そうして拳と拳がぶつかり合った瞬間――

ボガァ!と浜面の拳が爆発し、絹旗は吹っ飛んだ。

絹旗(超浜面のくせに――爆発する拳ですか。生意気です)

心の中で毒づきながらも、絹旗は無傷だった。窒素を拳に集中する事によってダメージを最小限にとどめたのだ。
フレンダの一撃も腕に窒素を集中させることによって、ダメージどころかぶっ飛ばされることさえも防いだのだ。

麦野「なるほど、窒素一点集中か。それで私達の連携攻撃にどこまで耐えられるかねぇ。いけ。フレンダ、浜面」

麦野の命令と同時、2人は駆け出す。麦野も何かを斜め上に投擲した。
その正体を確認する暇もなく、今度は腹部を狙うフレンダの蹴りと、顔面を狙う浜面の拳が同時に突き刺さった。

絹旗「ぐおっ!」

両腕をクロスして顔面を守り、腕と腹部に窒素を集中させていたのにもかかわらず、
墓石をぶち抜きながら数m地面をバウンドした。
198: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:10:39.66 ID:JDo3T/bx0
麦野「まだだよ絹旗」

絹旗「……!」

ねっとりとした麦野の声に、ゾクリと背筋に冷たいモノが走る。
極太の『原子崩し』の光線が空中に放たれ、浮いているミラーボールのようなモノに直撃したかと思うと、
それは拡散して雨となって降り注いだ。

浜面「うわっ!」

フレンダ「さすがにヤバいって訳よ!」

敵味方を無視した『原子崩し』の雨は約10秒間も続き、周囲の大地は荒れ果てた。

浜面「危ねぇよ麦野!」

フレンダ「こればっかりは浜面に同意。けど浜面の爆発する拳も危ない」

先程の絹旗への同時攻撃時、浜面の爆発の煽りを受けたフレンダは、ススにまみれたかのように多少黒ずんでいた。

滝壺「はまづら、ふれんだ、油断しちゃだめだよ。きぬはたはまだ生きている」

浜面・フレンダ「「え??」」

麦野「改造型『拡散支援半導体』(シリコンバーン)を利用した私の攻撃を防ぐとはやるじゃない」

滝壺「くる。5mぐらいの大きさの窒素のブーメラン」

滝壺の予言の直後、煙を引き裂き、窒素のブーメランが飛んできた。
飛んできたと言っても、滝壺以外の3人には可視すら出来ないため、来ている事自体が分かりにくい。

麦野「どのへんだ滝壺!」

滝壺「違う。ブーメランは私達を狙っていない。これは――」

ブーメランは滝壺達から逸れ、周囲の墓石を破壊しながら乱れ飛ぶ。
するとゴリッ!と、明らかに墓石が破壊された音ではない音が2回響いた。

滝壺「『洗脳操作』と『精神感応』がやられた。残っているのは私達を『アイテム』に見せている『幻術使い』だけ」

麦野「本当にやるじゃない。絹旗」

絹旗「お前らなんかに負けてたまりますか」

麦野「言うね絹旗。でも、もう飽きちゃったし、次の攻撃で終わらせるか。滝壺」

滝壺「うん」

滝壺は返事をして両手を前に出す。ボシュウ!と絹旗の体を覆っていた窒素が失われた。

絹旗「これは――」

麦野「『能力追跡』で一時的に能力を剥奪した。やっておしまい、フレンダ、浜面」

浜面・フレンダ「「おう(うん)!」」

2人が絹旗に迫る。

絹旗(くっ……そ――!)
199: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:11:41.06 ID:JDo3T/bx0
爆発が起こった。という事は、浜面の拳がちゃんとぶつかった証でもある。

麦野「終わったか」

前方に広がる煙を見て、麦野は決着を確信したが、

滝壺「あぐっ!」

滝壺の喘ぐ声。麦野は思わず振り返った。彼女は地面に伏していて、既に気絶していた。

麦野(まさか……)

前方に振り向き直すと、煙は晴れていて、気絶して倒れているフレンダと浜面がいた。
比べて絹旗は超然と立っていた。勝負はまだ決していなかった。

麦野「どういうことかしら……?」

絹旗「超気合い、ですかね」

麦野「まさかとは思うが、気合いで滝壺から能力を奪い返し、さらには窒素を操り3人を一気に押し潰したとでも言うのか?
爆発が起こったのは、絹旗の体にではなく窒素にぶつかったからか」

絹旗「そうなりますね」

麦野「随分タフになったねぇ。けど、私は野垂れている3人とは違うわよ」

絹旗「超御託は良いです。さっさとやりましょうか」

戦局は1対1。正真正銘のラストバトルが幕を開ける。
200: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:13:29.03 ID:JDo3T/bx0
ギュイーン!と連続で放たれる光線を、絹旗は紙一重で避けて麦野に肉迫する。

麦野「目が良いな。私の光線を見切れるとはね。だけど」

使い捨てではなく、拡散できる範囲も広がった改造型シリコンバーンを前方に投げる。
それに光線を当てて、拡散させる。全方向に拡散される為、横に跳ぼうが上に跳ぼうが完全に避ける事は出来ない。

絹旗「ぐあっ!」

ズドドドド!と絹旗は光線の雨を体中に喰らい、その勢いで地面を数m転がる。

麦野「あらぁ?もう限界なのかなぁ?」

立ち上がった絹旗の着用しているふわふわのニットのワンピースは、ところどころ溶けていた。
それは麦野の『原子崩し』が一部通ったことを表していた。

麦野(拡散された分、威力が弱くなった『原子崩し』であのザマか。なら拡散されていない一撃で終了だな)

考えてみれば、絹旗は3人を倒す為に窒素を操り、能力をかなり消耗している。このチャンスを逃さない手はない。

麦野「そりゃ!」

『原子崩し』を絹旗の両隣の大地に走らせる。つまり、絹旗の横への回避を封じた。

麦野「消し飛べ」

直径2mほどの光線が放たれる。横に跳べない絹旗はとりあえず左手を出すが、あっさりと飲み込まれた。
201: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:15:27.95 ID:JDo3T/bx0
麦野「意外としぶといわね」

絹旗「はぁ、はぁ」

左腕を覆っていたワンピースは肩まで消えていたが、腕は健在だった。

絹旗「くっ!」

勝てないと思ったのか、絹旗は麦野に背を向けて逃げ出した。

麦野「逃がすか!」

光線をいくつか放射するが、墓石をいくつか貫いただけで仕留められなかった。

麦野「この墓地内限定で鬼ごっこってわけね。やってやろうじゃない」

麦野は光線を撒き散らしながら、ゆっくりと闊歩していく。決着の時は近い。
202: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:19:11.64 ID:JDo3T/bx0
墓石が破壊される音が断続的に響く。

麦野「いつまで隠れている気だ?墓石もいつかは無くなるんだぞ」

一定の間隔で光線を全方向に放射している麦野に隙はほとんどない。
もう墓地の5割が蹂躙されている。それでも絹旗は焦らず、墓石の隙間を移動しながらチャンスを窺っていた。

絹旗(もう少し……もう少し……)

麦野が歩き出して30歩目を踏み出した瞬間、

絹旗(そこです!)

麦野「うぇ――」

突然、麦野は前のめりになって地に手をついた。理由は単純。
絹旗が窒素を操って作ったわずかな凹凸につまずいたからだ。

麦野「クッソ――」

絹旗「とりゃ!」

麦野に追い討ちをかけるかのごとく、絹旗はスタングレネードを投げた。
同時、それは激しい光と轟音を撒き散らした。

麦野「ぐあああああ!クッソガキがあああああ!」

目と耳を潰された麦野は、なりふり構わず周囲に『原子崩し』を乱発する。
それは墓石、気絶していた浜面、滝壺、フレンダまでをも消し飛ばした。

麦野「きぃぬはたぁぁぁあああああああ!」

光線の威力は一層激しさを増す。麦野の目と耳がある程度回復するまでの、ややしばらくは光線が墓地を蹂躙した。
203: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:22:39.00 ID:JDo3T/bx0
麦野「はぁ、はぁ」

光線を乱発し続けたせいで、さすがの麦野も疲れ始めていた。だが、これで終わっただろう。
麦野はそう思っていたのだが、

絹旗「そろそろ、超決着つけましょうか」

声は後ろから。8割の墓地が破壊され、ほとんど荒れ果てた大地のようになっているこの状況で、絹旗最愛は生きていた。

麦野「やるわねぇ。でも、私の前にノコノコ姿を現したってことは、消し飛ぶ覚悟は出来ているんだよね?」

絹旗「いいえ。私は、超勝つ為の準備が整ったから姿を現したんです」

麦野「へぇ。見せてもらおうじゃないの。その準備って奴を!」

『原子崩し』を大地に走らせる。これで絹旗は左右に回避できなくなった。
万が一上に跳んだ場合でも、跳んだところで避けられないレベルの太さの『原子崩し』を放つつもりだし、
億が一避けられたとしても空中で撃ち抜くだけだ。

つまり、麦野の勝利は確定的だった。

麦野「終わりだよ!」

最後の光線が放たれた。対して絹旗は墓石の破片なのか、とにかく塊を投げた。

麦野(ふっ!そんなのでどうにかなるとでも思ったか!)

勝った!と麦野が確信した時、光線と塊がぶつかった。瞬間――

ズバッ!と拡散された光線が跳ね返され、麦野の体と右腕を貫いた。

麦野「ぐ、ああああああ!」

かなり細かく拡散された為、右腕や体には鉛筆の直径ほどの穴がいくつか空いただけだった。
しかしながら激痛である事に変わりはない。麦野は悶絶した。

絹旗「超チェックメイトです!」

絹旗の声と、ガチャリという拳銃のトリガーを引いた音が聞こえた。
撃たれる。そう直感した麦野は半透明の『原子崩し』の盾を生み出す。今の麦野には、それぐらいしか出来なかった。

パンパンパン!と銃声が連続で木霊する。絹旗は替えの銃弾が尽きるまで撃ち続けたが、結局盾は貫けなかった。
ならもういい。と言った調子で絹旗は拳銃を横に投げ捨てた。そして駆け出す。
ほんの少しだけ回復した己の能力で、窒素を纏った拳で殴る為に。

絹旗「終わり、です!」

バリィン!と絹旗の拳は半透明の『原子崩し』の盾をぶち破り、麦野の顔面に直撃した。
殴られた麦野は、地面を数m転がった。
204: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:26:49.85 ID:JDo3T/bx0
絹旗「超やりました……」

緊張の糸が解け、一気に力が抜けた絹旗は尻餅をついて呟いた。

絹旗(我ながら、超あっぱれの作戦でしたね……)

最後の光線の時に対抗して投げた塊は、実は改造型シリコンバーンだった。スタングレネードを投げたと同時、
あらかじめ位置を把握しておいた空中に浮きっぱなしだったシリコンバーンを撃ち抜き、回収しておいたのだ。
光線が乱発されている中で回収するのは苦労したものだ。
以前なら到底出来なかった芸当だが、ジャッジメントになるために色々努力してきた結果がここで実を結んだ気がする。

そしてあの最後の攻防に繋がる。
砂をまぶしてカムフラージュしたシリコンバーンを投げ、光線を拡散、反射させた。
もっとも、光線が放たれた時点でリセットはできないのだから、カムフラージュは必要なかったと言えば必要なかったが。
気持ち的にやったというのもあった。

しかし改造型シリコンバーンは、一方向だけでなく全方向に拡散させる代物だったため、
シリコンバーン投げたと同時、背中を丸めて背中に窒素を集中して何とか耐えなければならなかった。

結果として直撃した部分の服は溶け、多少の火傷を負ったものの致命傷は避けた。
本当に、ここまで上手くいったのは奇跡だと思う。

絹旗(ですが、もう動けません……)

もういっそのこと仰向けになろうかと考えていた、その時だった。ザリッと音がしたかと思うと、麦野が立ち上がっていた。

絹旗「――!」

麦野「立てよ絹旗。次が本当の最後の攻撃だ」

そう言う麦野の左腕には『原子崩し』がドリルのように回転して渦巻いていた。徐々にこっちに近付いてくる。

絹旗「――ふぅ」

絹旗は覚悟を決めた。もう能力も体力も限界だが、このまま黙ってやられることだけは嫌だ。
右腕に窒素を集め、ドリルのように回転させる。そして2人は同時に駆けだす。

絹旗「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

麦野「らあああああああああああああああああああああ!」

2人の咆哮が重なり、ドリルとドリルがぶつかり合った。
3秒ほど拮抗したのち、轟音と共に2人は弾き飛ばされ地面を何回もバウンドした。
麦野も絹旗も、完全に意識を失った。
205: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:30:34.60 ID:JDo3T/bx0
削板「どらぁ!」

削板の右拳がオッレルスの顔面に突き刺さった。グラリと揺らぐオッレルスの腹部に、さらに左拳を叩きこむ。
極めつけにくの字に折れ曲がったオッレルスの頭に、拳骨を叩きこんだ。
思い切り地面に叩きつけられたオッレルスは、スーパーボールのように2、3回跳ねた。

削板「堅ってぇなー」

削板はじんじんと痛む己の拳を見ながら呟いた。オッレルスは平然と立ち上がる。

オッレルス「痛いなー。もう少し手加減してくれてもいいだろ?」

削板「何で?お前が『念動力』の鎧を纏っている事ぐらい、1発殴ったら分かった。そんな相手に手加減する理由はない」

オッレルス「いくら『念動力』の鎧があると言っても、全くのノーダメージって訳じゃないからね」

削板「あっそ」

直後に数mの距離を埋めて、左拳をオッレルスの腹目がけて放った。

オッレルス「甘いよ」

しかしオッレルスの右手が左拳を受け止めた。ならばと、右拳を顎目がけて放ったが、それも左手で受け止められた。

削板(――まずい!)

直感した削板は距離を取ろうとするが、両手を掴まれている為叶わない。
そして、オッレルスの掌から強力な不可視の波動が放たれた。

削板「ぐおっ!」

超至近距離で能力の波動を喰らった削板は数十mほど吹き飛ばされるが、
しっかり地に足をつき、地面を何mかスライドしただけで済んだ。
206: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:34:00.73 ID:JDo3T/bx0
削板「――っと!」

削板は突然、その場で高さ3mほどのバク宙をした。
直後、轟音と共に莫大な風が一直線に走ってきて、その先に居たオッレルスにぶつかった。
バク宙をしていなければ、風に引き裂かれているところだった。

オッレルス「いったいなー。ちゃんとしてくれよシルビア!」

風をまともに喰らったと言うのに、平然とオッレルスは叫んでいた。
と、それに呼応するように、

「仕方ないだろ!そこの坊やが避けるから悪いんだ!」

肩までかかる金髪に青い瞳、パッツン前髪の額の上には大きなゴーグルを掲げ、 作業着のような服に白いエプロンを纏い、動き易そうな靴、という容貌の女が叫び返しながらロケットのように飛んできた。その手には剣の柄だけが握られている。

削板「へぇ。面白いねえちゃんだ!」

まだバク宙の途中で宙を舞っている削板の右手に、青い光の刀が握られる。

シルビア「喰らいやがれ!」

シルビアは柄だけの剣を振るう。削板も青い光の刀を振るった。
ガキィン!と金属がぶつかり合ったような音がした。

シルビア「ふっ」

削板「へっ」

2人は笑みを浮かべた。そして地面に着地した削板とシルビアは、何回か斬り合いをして互いに距離をとった。
207: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:35:04.17 ID:JDo3T/bx0
削板「やるねぇ姉ちゃん。俺は削板軍覇って言うんだけど、姉ちゃんは?」

シルビア「シルビア。お前が今まで戦っていた男の許嫁だよ」

オッレルス「適当言うなよ」

シルビア「良いじゃん別に」

削板「ふーん。まあいいや。早くやろうぜ」

オッレルス「君から聞いといてそれはないんじゃないかな?」

シルビア「私も君に同感だよ。早くやろうじゃないか!」

削板とシルビアの2人は地面を蹴った。
208: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:37:49.37 ID:JDo3T/bx0
ゴキィンガキィン!と金属がぶつかりあうような音が連続で木霊する。シルビアと削板の斬り合いのせいだ。

シルビア「おい!突っ立ってないで協力しろ!」

オッレルス「俺は体術が得意じゃない。君達の戦いには割り込めないよ」

シルビア「甘えんな!私が指示を出すから、その通りに動け!」

オッレルス「あ、ああ」

シルビア「まずは、この男の後ろに回り込め!そこで波動を放て!」

オッレルス「オッケー」

シルビアに言われた通り、削板の後ろに回り込んだオッレルスの掌から波動が放たれた。

削板「ふん!」

シルビア「きゃっ」

削板は鍔迫り合い状態から一歩引いて受け流し、ジャンプした。これで波動はシルビアに直撃する。

シルビア「なーんて、ね」

しかしシルビアは弾かれなかった。オッレルスが波動を消したからだ。

シルビア「そらぁ!」

空中で身動きが取れない削板を狙って、柄しかない剣が振るわれた。それで削板は引き裂かれるはずだった。

しかし削板は、足の裏に小さな魔法陣を2つ顕現させ、それを蹴って風の刃を回避。
シルビアから大きく距離を取り、目の前に直径2mほどの魔法陣を3つ並べて顕現させる。

シルビア「あれはヤバいわね。オッレルス!」

オッレルス「はいはい」

オッレルスとシルビアは隣合わせになる。
オッレルスは両掌の間に『念動力』をチャージし、シルビアは突きを繰り出す為に柄しかない剣を引く。

削板「『三重魔法陣の衝撃』(トライスペルインパクト)!」

叫びながら、自身が顕現させた魔法陣を思い切り殴った。
その一撃で魔法陣は3枚とも壊れ、とてつもない衝撃波が生まれ飛ばされる!

シルビア「いくわよ!」

オッレルス「ああ」

シルビアの柄しかない剣は学園都市製で、周囲の大気を集めて、刀身をそれで代用する事が出来る代物だった。
そして今、限界まで集めた大気を突きで一気に放出した。
そのパワーは、レベル5の大気系能力者が生み出す突風と比べても劣っていない。

その一撃にオッレルスがチャージした『念動力』の波動が上乗せされ、核シェルターをも引き裂く、究極の衝撃波となる。

2つの衝撃波は真正面からぶつかり合い、拮抗する。

オッレルス「シルビア、追加の――」

シルビア「違う!」

シルビアはオッレルスの手を取り、柄しかない剣から大気を放出して空を飛ぶ。その直後だった。

削板「『五重魔法陣の衝撃』(ペンタスペルインパクト)!」

削板の掛け声が聞こえたと思ったら、ゴッバァ!と、とてつもない衝撃波が走った。
飛んでいなければ、間違いなくぶっ飛ばされていた。
209: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:40:05.45 ID:JDo3T/bx0
オッレルス「うっひゃあ。喰らっていたら『念動力』を纏っている俺でさえ再起不能になっていたかも」

シルビア「油断するな!前方に『念動力』の盾を展開しろ!私が支えるから!」

衝撃が走った後の地に足をつけながら、背中合わせになる2人。シルビアは柄しかない剣に大気を集める。
その間に削板は直径3mほどの青い魔法陣を、目の前に20個ほど顕現させる。

削板「『多重魔法陣の衝撃』(デュアルスペルインパクト)!」

掛け声と共に、その魔法陣の内の1個を殴り、壊す。
一部分が相互に重なり合っていた20個の魔法陣は、1個壊れた事によって連動して壊れていく。
つまり、連動して魔法陣20個分の広範囲衝撃波が放たれる。

オッレルス「これはヤバいな……!」

両掌を前に出し『念動力』の盾を展開する。背中に居るシルビアは、柄しかない剣から大気を放出してオッレルスを支える。

オッレルス「嘘……だろ……」

ビキリ、と全力の『念動力』の盾にヒビが入る。シルビアにも支えてもらっているのに衝撃波が抑えきれない。そして――

オッレルス・シルビア「――!」

盾が割れ、悲鳴を上げることもできず2人は吹き飛ばされた。

シルビア「くっそ……」

気絶しているオッレルスをどかしながら、シルビアは立ち上がる。すると目の前には、削板が息を切らしながら立っていた。
シルビアは削板が魔道書をかざしたのを見て、後退する。よって、オッレルスだけ魔道書に回収された。

削板「さすがに、お前までは、倒しきれなかったか」

シルビア「どうやら私1人では君に勝てないみたい。ここは退かせてもらうわ」

削板「くっ。待て!」

削板の呼びかけなどシルビアは当然無視し、柄しかない剣から大気を放出してロケットのように飛んでいった。
大技を3連続で使った削板には、追いかける力は残っていなかった。
210: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:43:05.65 ID:JDo3T/bx0
五和「――七閃!」

見様見真似で周囲に放った七閃は、見事に4人の人間を吹き飛ばした。

建宮「結構やるのよな。だが、能力者達は洗脳状態で痛みは感じない。その上肉体のリミッターも振り切っている。
何が言いたいかと言うと、そいつらは完全に殺さないと止まらないのよな」

五和「そうですか。アドバイス感謝しますよ!――七閃!」

再び七閃が繰り出される。西洋剣を持っている男、野母崎ただ1人だけを狙って。

「くそっ!」

野母崎は西洋剣を振るって鋼糸(ワイヤー)を断ち切ろうとするが叶わず、まともに喰らい柱に巻きつけられた。

「どりゃあ!」

五和の後方から牛深が斧を投擲する。それはブーメランのようになって五和に向かう。

五和「甘いです!」

ガキィン!と七天七刀で斧を上に弾いた五和は、鞘に収まっている七天七刀を逆さまに持ちかえて、バットのように振った。
するとスポーン!と七天七刀が鞘から抜け出し放たれ、ブーメランのように回転して牛深に向かう。

牛深「ぬおっ!?」

牛深は面食らったが、なんとかジャンプでそれを回避。しかしそれは五和の計算通りだった。

刀が射出されたと同時に駆けだし、ジャンプしていた五和は、ジャンプした牛深の真正面で鞘を思い切り振り下ろした。

ガッ!と鞘の一撃をまともに受けた牛深は、地面にひれ伏す。それでもすぐに立ち上がろうとしたが、

五和「させません!」

フィアンマから譲り受けた魔道書で牛深を回収した。

「よくも!」

七天七刀の長さほどではないが、太刀を持っている女が五和に迫り突きを繰り出す。
五和は臆せず、刀を納める穴がある方を太刀の切っ先に向けて、鞘を突き出す。

太刀女「へっ?」

突き出された鞘の中に太刀はスライドしていき、つられて五和の懐に入ってしまう。
五和はそこへ、膝蹴りを女の腹部に叩きこんだ。さらにそのまま抱きこむように、魔道書で女を回収した。

「やるわね五和!」

最後の1人、ドレスソードを持った浦上が、五和を切り裂く為に駆けだしている。

五和「ふっ!」

短く息を吐き、先程納めた太刀で居合い斬りを繰り出す。ガッキィン!とドレスソードと太刀がぶつかり合う。

浦上「ぐっ……」

ぶつかり合った時の衝撃が大きすぎて、腕が痺れてしまった浦上はドレスソードを落とす。
一方五和は、太刀を投げ捨て鞘の先端を浦上の腹部に向けて、放った。

浦上「ぐはっ!」

五和「まだです!」

鞘が浦上の腹部にめり込んだまま、五和は走りだす。奥の柱に巻きつけられている、野母崎のもとへ。

野母崎「や、やめろおおおお!」

ドゴォ!と鞘に押された浦上が、野母崎にぶつかった。
野母崎と鞘のサンドイッチになった浦上は吐瀉物を撒き散らし、鞘と柱のサンドイッチになった野母崎も、悶絶した。

五和「回収します」

五和は魔道書をかざし、2人を一気に回収。その後放った七天七刀を拾い上げ鞘に納めたところで、建宮の放送がかかった。
211: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:44:22.54 ID:JDo3T/bx0
建宮「いやいや、お見事ですな五和さん。七天七刀を使いこなしているとは言い難かったが、動きは素晴らしかったのよな」

五和「馬鹿みたいに修行していた訳ではありませんが、日々の鍛錬は怠らなかったですから」

建宮「日々の鍛錬だけでは、そこまでは出来ないのよな。ひょっとしたら、センスでもあるのかもしれないのよな」

五和「それはどうも」

建宮「時に五和よ。よくもまあ、かつて仲間だった凄教徒達を容赦なく殴れるようになったもんなのよな?」

五和「何を言うんですか?こんなもの、幻覚か何かを見せているだけじゃないですか。もう皆死んでしまったんです。
死んだ人は戻ってきません」

建宮「随分と冷たくなったのよな」

五和「何とでも言ってください。私は今の生活と、この世界を守るためなら鬼になりますよ」

建宮「威勢が良いのよな。どうやら、楽しいゲームになりそうなのよな」

4人回収した訳だが凄教徒は約50人いるため、残りは40人以上だ。ゲームはまだ始まったばかり。
212: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:48:19.47 ID:JDo3T/bx0
五和「――唯閃!」

見様見真似で図書館の壁に斬りかかった五和だったが、ただの居合い斬りにしかならず図書館の壁を壊す事は叶わなかった。

五和(わざわざ玄関から出なくても、壁を壊して出て行けばいいと思いましたが……さすが学園都市の施設。
私程度の居合いでは傷をつけることすら出来ませんね)

まあいい。壁が駄目なら、図書館から出て廊下の窓から出るという方法もある。
五和はそう考え、勢いよく図書館を飛び出した。その直後だった。

初老の男、諫早が五和に跳びかかり、両手で持っていたメイスを振り下ろした。

五和「――っ!」

間一髪、七天七刀を水平に構えてメイスを受け止めた。しかし油断は出来ない。現在進行形でメイスの重圧は続いている。

「ぬおおおおおおお!」

五和(力が増した!?)

メキメキと諫早のメイスが圧してくる。初老の力とは思えない。
もっとも、幻覚か何かでそう見えているだけだろうから、実際はマッチョな人間なのかもしれないが。

五和(っ。このままだと圧し潰される……!やるしかない!)

覚悟を決めた五和は、クイッと七天七刀を傾けてメイスを左に反らす。
ゴトン!とメイスは地面に直撃した。

五和(今だ!)

鞘から七天七刀を引き抜き、峰打ちを繰り出す。

諫早「甘いわ!」

諫早は驚くほどの身軽さで峰打ちを跳んでかわし、反撃の蹴りを五和の顔面に叩きこんだ。

諫早「まだだ!」

五和の脇腹を狙って、メイスを横薙ぎにする。
五和は七天七刀を縦に構えてガードを試みたが、受け切る事は出来ず薙ぎ払われ、尻餅をついた。

五和「いたた……っ――!」

立ち上がる暇もなく追い討ちの振り下ろされたメイスを、七天七刀を水平に構えて何とか受け切ったが、

五和(どう……すれば……)

尻餅をついた状態で上からのメイスの圧力。潰されるのは時間の問題だ。
先程のように受け流して居合い斬りはもう通用しない。そもそも初めから居合い斬りを実戦で使うには無理があった。

2mほどの大きさの七天七刀は、元々は人間の膂力を遥かに上回る『聖人』であり、身長も180cmほどある神裂火織の得物だった。
それを魔術師とはいえ膂力も身長も普通の女の子でしかない五和が片手で振り回すなど、最初から無茶な話だったのだ。
ましてや五和の本来の得物は槍なのだから。

諫早は確かに身軽だった。しかしながら、神裂の一閃なら諫早は避けられなかっただろう。
五和の一閃だから避けられたのだ。

五和(私……ここで負けるのかな……)

もう腕が痛い。地面についているお尻だって痛い。峰の方とは言え、添えている左手からは血が流れるし痛い。
上条の口車に乗せられて調子に乗って七天七刀を手に取った事が――

五和(――当麻さん!)
213: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:50:35.25 ID:JDo3T/bx0
諫早(んん!?)

尻餅をついた状態の五和が押し返してきたので、諫早は若干動揺する。

諫早「やるじゃないか五和。ふん!」

諫早はマックスのパワーをメイスに加えた。それで今五和にかかっている負荷は優に300kgを超えている。
しかし彼女は潰れなかった。

諫早(なんだと!?)

五和「んがああああああああああああああ!」

左手がさらに深く裂け、鮮血が流れるが気にしない。
絶対に、負けるわけにはいかない!

五和「りゃああああああああああああああ!」

男勝りの雄叫びをあげながら、ついに五和が諫早を押し返した。
押し返され仰け反る諫早の顔面に、五和は上段蹴りを叩きこんだ。

諫早「ぐへっ!」

情けない声をあげながら、諫早はメイスを落として倒れた。
かけていた眼鏡は割れてしまっていて、破片がいくつか顔に突き刺さっていた。そんな諫早を、五和は魔道書で回収した。
214: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:53:17.09 ID:JDo3T/bx0
建宮「やるのよな。まさかあの状況から逆転するとは」

五和「当麻さんを初めとする仲間の顔を思い浮かべたら、絶対負けられないと思いましたから」

建宮「ふーん。思い一つでそこまで力が出せるとは、感心なのよな。
ところで五和さんよ、もしかして窓からこの大学を出ようと思っているのよな?」

五和「それが何か?建宮さんはこう言いましたよ。『この大学から出れば良い』って。玄関からという指定はありません」

建宮「そっかそっか。それは俺が悪かったのよな。じゃあ今のうちに言っておく。窓には爆弾が仕掛けられている。
窓から出ようとすれば、俺がスイッチを押して爆発させる。要するに、お前さんは玄関からしか出てはいけない」

五和「嘘……ですよね?」

建宮「仕方ないのよな」

建宮がそう呟いた直後だった。ゴォン!と上の階から地響きのような音が聞こえた。

建宮「お前さんが今いるのは1階、今のは4階の爆弾を爆発させた。これを至近距離で喰らえば、どうなるかは明白なのよな」

五和「ブラフですね。あの程度の音、能力者を使えば出せるんじゃないですか」

建宮「お前さんがそう思いたいなら、そう思えばいいさ」

五和(くっ)

こんなの冗談だ。せめて目の前で爆発を見ない限りはそう思う。そう思うが、もし本当だったら……。

建宮「悩む事はないのよな。別に玄関から出れば良いだけなのよな」

五和「そんなこと言って、玄関にも爆弾を仕掛けているんじゃないですか」

建宮「そこまではしないのよな。これはあくまで公平なゲーム。玄関からは無事に出られる。
ただ窓からは駄目なだけなのよな。ちなみに、屋上からならアリなのよな。
まあ無事に着地できるかは保証しないし、1階から屋上目指すより、1階にある玄関探した方が効率的だとは思うが」

五和(どうする?)

建宮「まだ悩んでいるのよな?ならもう1つだけ言っておくのよな。
もしお前さんが無理にでも窓から脱出しようものなら、能力者の何人かを殺す」

五和「な――」

建宮「分かったら、大人しく玄関から出るのよな」

五和(くそっ……)

単なる揺さぶりなのかもしれないが、食蜂は200万人の能力者を従えている。
何人か死んだところで、大勢に影響は出ないだろう。とすると、何人かを殺すと言うのは、あながち有り得ない話ではない。
つまるところ、五和には玄関から出るという選択しかなかった。

五和(いいでしょう。やってやりますよ)

どの方向に行けば玄関があるのかも分からないが、とりあえず駆け出した。
215: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:55:08.69 ID:JDo3T/bx0
五和「はぁ、はぁ」

大学内を走り回り始めてから、かれこれ7分くらい経っている気がする。
廊下や講義を行う教室、ロビーなど、至る所でテレポートされてくる天草式の凄教徒数名を何とか倒し、回収してきた。
そうして疲労がたまってきた五和が次に辿り着いた場所は、体育館だった。

五和(あれは……)

割と広い体育館の中心にぽつんと、小柄な少年が1人立っていた。

「次は俺っすよ。五和さん!」

言うが早いか、両手に短剣を持った香焼が一直線にこっちに向かってくる。

五和(なかなか速いですが、スピードに溺れすぎですよ!)

一直線に向かってくる香焼に、五和は素直に突きを繰り出す。

香焼「ほんと、五和さんは単純すね!」

香焼はジャンプして突き出された七天七刀に乗り、踏み出す。五和の顔面を蹴り飛ばす為に。

五和「くっ――」

五和はギリギリで体を仰け反らせ、香焼の蹴りを回避。
さらに七天七刀を一旦手放し、香焼の足を掴み取り地面に叩きつけた。

香焼「いってぇ~!」

五和「回収!」

悶絶する香焼に、五和は魔道書をかざす。

香焼「それは勘弁!」

香焼は自らゴロゴロ転がって、魔道書の回収を回避。そしてすぐに立ち上がった。

五和(めちゃくちゃな動き……まるで読めない……)

そして何より、圧倒的な身軽さ。今までだましだましやってきたが、香焼相手には自分の攻撃はまず当たらないだろう。

五和(それでも――)

負けるわけにはいかない。

香焼「いくっすよ!」
216: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:58:01.81 ID:JDo3T/bx0
2本の短剣で一切の余裕を与えないように連続で斬りつけてくる香焼の攻撃に、
五和は刀を水平に構えて後退するだけの防戦一方だった。

香焼「とうっ!ていっ!やあっ!」

五和(くぅ……)

怒涛の攻撃に何も出来ない五和は、ある疑問を抱き始めていた。
これだけ絶え間なく攻撃を続けていたらスタミナが切れるはずなのに、動きが全く衰えないのだ。

五和(なん、で……?)

香焼「そこだ!」

五和が一瞬弱気になったところを香焼は見逃さず、左手の短剣を思い切り振り下ろす。
ガキィン!とそれを七天七刀で受け止めた五和は、その衝撃で左腕が痺れてしまい左手を離してしまう。
それでも右手は離さなかった。

香焼「そりゃ!」

ガラ空きとなった五和の胸辺りを狙って、香焼は右手の短剣を振るった。
五和は何とか後退して、短剣の一閃を掠める程度に留めた。

香焼「あーあ、今の一閃、短剣じゃなければ致命傷だったのに。
短剣って、動きやすいかわりにリーチが短いのが難点なんすよね~」

余裕の態度を見せる香焼に、五和は無視して七閃を繰り出す。
一瞬という時間に七度殺せるレベルのワイヤー攻撃が、香焼に襲い掛かる。

香焼「そんな前時代的攻撃、喰らわないっすよ!」

しかし香焼は、短剣でワイヤーを切るのではなく受け流し、少しだけ跳び、ワイヤーを抜けかわした。

香焼「こうやって狭い隙間を抜けられるのが、小柄な体格のいいところなんすよね~」

確かに、香焼ほど小柄じゃなければ今の攻撃は抜けられなかった。

五和(ならば、賭けですが――)

五和はさっきの一閃で多少引き裂かれたウインドブレーカーを脱ぎ、水色のタンクトップ姿になった。
ただでさえ大きめな胸が、さらに際立つ。

香焼「でかっ!」

構わず五和は香焼に向かってウインドブレーカーを投げつける。

香焼「目眩ましっすか?甘いっすよ!」

カウンターがくることを分かっていながら香焼は突っ込んだ。
217: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 21:58:45.14 ID:JDo3T/bx0
ウインドブレーカーを引き裂いた先には案の定、鞘を引いている五和がいた。

香焼(突き程度で仕留められるほど甘くはないんすよ!)

繰り出された突きを、今度は思い切り屈んで回避した香焼は、まずは足でも切ってやろうと、短剣を振るう。

香焼(獲った!)

五和「――!」

グシュ!と肉を貫く音が木霊し、体育館の床には血溜まりが広がった。
218: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 22:03:11.57 ID:JDo3T/bx0
香焼「あ……れ……?」

香焼は床に伏していた。左肩を七天七刀に貫かれて。

五和「回収します」

魔道書をかざして香焼を回収した五和は、床に刺さった七天七刀を引き抜く。

五和「ふぅ」

香焼との一戦を終え、一息つく五和。我ながらあれだけ上手くいったのは、かなりラッキーだと思う。

香焼との最後の攻防の前、ウインドブレーカーを投げた時に七天七刀も上に投げていた。
そしてそれは、香焼がいよいよ五和の足を切断しようと言う時に落ちてきて、左肩を貫いたのだ。

しかしながら、香焼にうまく当たるとは限らなかったし、気付かれてかわされたかもしれないし、
七天七刀が落ちてくるのがもう少し遅かったら先にやられる、もしくは相討ちだったかもしれない。でも上手くいった。
だからラッキー。

五和(でも……このままでは……)

やはり今の対香焼でも得物をまともには使えず、運頼りの奇策で勝利したに過ぎない。
運も実力のうちとは言うが、この先運だけで勝てるほど甘くはないと思う。
おそらくではあるが、この戦いも監視されている。打てる策もなおさら減っていく。

結局、自分はまだ七天七刀を使いこなせない。
だったらと、今回収した香焼の短剣の内の1本を拝借しようと思ったところで、

「油断しすぎじゃない?」

後ろからの声に振り返るが、グシュ!と左肩が対馬のレイピアに貫かれた。
219: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 22:04:14.99 ID:JDo3T/bx0
ポタポタと、五和の左肩から血が滴り落ちる。

五和「うぅ……」

左肩を貫通しているレイピアを、右手で掴む。

対馬「それ、貴方の血で汚れたからあげる。私はまだあるから」

対馬は腰につけているレイピアをゆっくりと引きぬく。

対馬「次は心臓を一突きにして、終わりにしてあげるからね。大丈夫。一瞬で楽になるから」

そうして最後の一突きを放ったが、

対馬「な――ぐはっ!」

思い切り屈んだ五和にあっさりと回避され、逆に掌底を腹に叩きこまれた。

五和「う……くっ!」

対馬が怯んでいる間に、五和は左肩に刺さっているレイピアを抜いて、握った。

五和「さあ、やりましょうか対馬さん」

対馬「随分タフじゃない。本来の得物ではないレイピアで、どこまでやれるかしらね」
220: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 22:06:38.22 ID:JDo3T/bx0
対馬(嘘でしょ!?この子、本来の得物じゃないのに――)

レイピアでの決闘が始まって約1分。押されているのは対馬の方だった。
徐々に壁際に追いやられていく対馬は、しかし何の対策も出来ず攻撃を防ぐので精一杯だった。

対馬(やばい。そろそろ)

壁にぶつかる。このままだと貫かれてしまうだけだ。

対馬(こうなったら、一か八かだけど)

対馬は壁際ギリギリまで後退する。そして鬼気迫る五和の胸を狙って突きを繰り出した。最低でも相討ちにする為に。

五和も突きを放つ。しかしそれは、対馬を狙ったものではない。
突き出された対馬のレイピアの先端を狙って放たれたものだ。

レイピアとレイピアの先端がぶつかった。
瞬間、刃の部分を曲げたノコギリが戻った時のような独特な音が響き、対馬のレイピアが薪のように割れた。

対馬(嘘……でしょ……)

得物を失った対馬は、五和のレイピアに右肩を貫かれ、壁に縫い付けられた。

対馬「ひょっとして、火事場の馬鹿力って奴……?」

五和「回収します」

レイピアを手放した五和は、魔道書をかざして対馬を回収した。
221: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 22:10:14.16 ID:JDo3T/bx0
五和「やっ……た……」

ぺたりと、女の子座りをした。もう戦える力は残っていない。

五和「どうしよう……」

痛む左肩を抑えながら五和は考える。今まで回収した凄教徒の合計は10名程。
あと40名ぐらい残っている。ここで凄教徒に襲われたら、やられるだけだ。

五和「……逃げなきゃ」

せめてどうにかして玄関に辿りつけば、何とかなるかもしれない。そんな希望的観測を抱き始めた時だった。

建宮「ざぁんねん。ゲームオーバーなのよな」

クワガタのような髪型に、衣類も白地に斜めの赤十字が染め抜かれた、ぶかぶかのTシャツにだぼだぼのジーンズ、
1m程もの長さの靴紐、首には小型の扇風機を4つぶらさげている建宮が、五和の真後ろに立っていた。
その手には『フランベルジェ』が握られている。

建宮「今のお前さんには、戦うどころか走り回る体力すらないのよな。ここで一思いに処刑してやるのよな」

五和は首だけを後ろに向けて建宮を見た。そして悟った。この状況、どう足掻いてもひっくり返せない。
戦闘スキルでも、気持ちでも、運でも、奇策でも、火事場の馬鹿力でも。奇跡が起こらない限りは。

建宮「お前さんはよく頑張ったよ。使いこなせない得物で、10名程の凄教徒を回収したのは、誇って良い事だと思うのよな」

言いながら、フランベルジェを持っている右手を上げる。
絶体絶命の状況で五和は、このフランベルジェはフランベルジェの形をしているだけの、ただの鈍だろうな。
なんてことを漠然と考えていた。

建宮「もしかして、助けが来るとかっていう幻想抱いているのよな?無理無理。戦いは各地で行われている。
万が一戦いを終えたとしても、この学区にお前さんがいる事までは分からない。
億が一分かったとしても、この学区に来るまでに妨害が入る。
兆が一この学区に入る事が出来たとしても幻術でこの大学は視覚的には見えない。助けは絶対にないのよな」

ああ、そうか。奇跡など起こらなくとも、誰かが助けに来てくれればいいんだ。
そんな事、なぜかは分からないけど考えつかなかった。

でも、建宮の言う通りだ。この体育館に辿り着ける可能性は限りなくゼロに近い。
けれども、屁理屈だけれども、可能性が低いとはつまり、ゼロじゃない。
だから他力本願だけれども、助けは絶対に来ないなんていう建宮の幻想を完璧にぶち壊して、助けに来てほしい。

五和は、とある少年の顔を思い浮かべた。

建宮「終わりだ!」

建宮のフランベルジェが振り下ろされる。
それでも五和は、助けが来る事を信じて目を閉じなかった。そして――

ドゴォ!と体育館の天井を壊して上から降ってきた少年に、建宮は殴り飛ばされた。

上条「遅くなってすまなかった」

五和「ぁ……」

その声を聞いて安心した五和は、思わず涙ぐんだ。

上条「だけど、もう大丈夫だ。俺が来たからには、何人たりとも、指一本触れさせない」

五和を背に守るようにして立つ上条は、そう宣言した。
222: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 22:12:39.36 ID:JDo3T/bx0
建宮「ぐ……やってくれるのよな」

殴れれた頬をさすりながら、建宮は立ち上がる。

建宮「ここは俺1人では荷が重い。人海戦術でいくのよな」

パッ!と約40人の凄教徒がテレポートされた。

建宮(これには、さすがのやつも少しはビビッているはずのよな)

そう思い、上条達を見る建宮だったが、

五和「でも、わざわざ天井を破壊する事はなかったんじゃないですか?……弁償するハメになったらどうするんですか?」

上条「えー!?俺弁償する必要あるの!?だって緊急時だったのに、本当に俺が悪いの!?」

五和「でも、嬉しいです。本当に駆けつけてくれるなんて///」

上条「彼女を守るのは当然だろ。ほら、これ被っていろ」

上条はウインドブレーカーを脱ぎ、五和にかぶせた。

五和「///」

そしてこの状況の中で、頬を赤らめる五和。

建宮(やつら、緊張感がなさすぎるのよな……そして何より、ムカつく!)

少女「やっていまいましょうよ!教皇代理!」

建宮「おう!一斉にかかれ!」

建宮の号令と共に、凄教徒が一斉に上条目がけて駆けだす。

五和「当麻さん!」

上条「大丈夫。任せとけ!」

上条は右手に『竜王の顎』を顕現し、咆哮させた。
その咆哮はとてつもない衝撃波となり、体育館のライトは全て割れ、凄教徒は全て吹き飛ばされた。

五和「きゃ!」

上条「ウインドブレーカー、ちゃんと被っていろよ!」

ドン!と上条は体育館の床を蹴った。
223: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 22:14:57.65 ID:JDo3T/bx0
上条が来てから、ものの5分程度で全ての決着がついた。咆哮に吹き飛ばされ、
ライトの破片の雨にさらされた凄教徒は怯み、ロクに行動できず『竜王』の力を使役する上条の前に、
為す術なくやられていった。建宮なんかはフランベルジェを砕かれ、顔面殴られてノックアウトだった。

五和「鮮やかなお手並みですね」

上条「ありがとよ。それより、その傷をどうにかしないと」

五和「こんなの、かすり傷ですよ。そんなことより、早く皆を回収しないと……っ!」

上条「無理するなって。こいつら程度ならいつでも倒せるし、食蜂の性格上、一度倒された奴を使うとは考えにくい。
焦らなくていい」

五和「当麻さん……」

五和は上条に寄りかかる。

上条「ちょ、ちょっと」

五和「疲れたんです。少し寄りかからせて下さい」

上条「いや、そうじゃなくて」

五和「……嫌、ですか」

五和はしゅんとして、涙目になって上条を見つめる。

上条「いやだから、そうじゃなくてだな」

五和「じゃあ何でですか?もしかして照れているんですか?いいじゃないですか。家ではこうやっていつも――」

その時だった。

ヴェント「あのさー、イチャつくのは構わないけども、時と場所を考えてって言うかー。もうちょい緊張感もとうよ」

ぐいぐい迫る五和の対応に困る上条の数m後ろにいたヴェントが、気だるそうに言った。

五和「……え?まさか、今までの全部」

上条「そうだよ。見られた」

五和「はぅ……」

思わず上条のウインドブレーカーで顔を覆う。

上条「もう回収終わったのか?終わったなら五和の傷を頼む」

ヴェント「はいはい。人使いが荒いですね」

文句を言いながらも、ヴェントは魔術で応急処置的に五和の左肩の傷を塞いだ。

上条「よし。じゃあ一旦病院に戻るか」



時刻は9:30。戦いの第二局面が終了した。
224: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 22:23:10.42 ID:JDo3T/bx0
9:40になって、上条、五和、ヴェントが病院に戻ってきた。既に他のメンバーは全員戻ってきていた。

フィアンマ「ようやく戻ったか。早速だがヴェント、重傷者が3人いる。
   ここから1番近い病室のベッドに寝かせてあるから、回復魔術を頼む」

ヴェント「分かった」

上条「ちょ、五和も頼む」

五和をおんぶしている上条が言う。

ヴェント「分かっているわよ。アンタが病室まで運びなさい。彼女も、私に運ばれるよりそれを望んでいるでしょう」

上条「そうなのか五和?」

ぎゅっ、と五和の抱きしめる力が少し強くなったので、上条は自分で運ぶことにした。
その様子を、上条の手によって正気に戻った姫神は、ぼんやりと眺めて、

姫神「あれってもしかして。上条君の彼女……」

ずーん、という効果音が聞こえてきそうな位、姫神は落ち込む。

吹寄「まあまあ姫神さん。今は落ち込んでいる場合じゃないでしょ?」

姫神「うう……」
225: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 22:27:16.92 ID:JDo3T/bx0
一方通行「そうだ。落ち込ンでる場合じゃねェ。オマエら2人も魔道書で転送してもらえ」

吹寄と姫神を睨みながら、一方通行は言った。すると言われた吹寄は急に真面目な顔になって、反論する。

吹寄「いえ、それだけは遠慮します。
軽く説明を受けて、未だに信じられないけど実際被害者になったし、リベンジと、皆さんの力になりたいです」

姫神「むしろ淡希こそ。何でここに残るの?」

結標「私?私はあれよ。ある男にいろいろ聞きたいのと、ぶん殴りたいのと、とにかくいろいろすることがあるの」

吹寄「完全な私用ですか……」

結標「悪い?」

吹寄「いえ、別に……」

一方通行「つーかだからよォ、結標はともかく、オマエら2人には大人しく転送されてほしいンだけど。
  レベル5相手だぞ。どう考えたって、オマエらには手に余る」

吹寄「分かっています。分かっていますけど」

姫神「皆が頑張っているのに。自分は安全圏でのんびりしているだけなんて。我慢できない」

一方通行「オマエら、あのツンツン頭のクラスメイトなンだって?
  だったら分かるだろ。オマエらが危険な目に会うのを、アイツは我慢できねェだろォよ」

吹寄「分かっています。けど、じっとしていられません。上条が何を言おうとも、私達の考えは変わりません」

一方通行「あっそ。じゃあ勝手にしろ」

吹寄「はい。勝手にします」

結標「え?ちょ、ちょっと、本当にそれでいいの?彼女達、絶対ただでは済まないわよ」

一方通行「これだけ忠告しても効かない馬鹿について、これ以上は俺の知った事じゃねェ。ま、何とかなるンじゃねェ?」

結標「いや、ならないでしょ。あなた達も良く考えなさいよ。レベル5よ。勝てないどころか殺されるわよ!?」

垣根「俺も結標に同意だ」

病室から戻ってきた垣根が、結標に続いた。
226: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 22:29:08.31 ID:JDo3T/bx0
垣根「はっきり言って足手まといだ」

姫神「足手まといにならないように。頑張る」

垣根「頑張るだぁ?そんな生半可な気持ちでどうにかなるほど、この戦いは甘くねぇぞ」

垣根の言葉は、誰が聞いても分かるほどに刺々しかった。

御坂「垣根先輩、何もそこまで言う事はないんじゃないですか?」

絹旗「超そうですよ。戦力が増える事は良い事じゃないですか」

垣根と同じく病室から戻ってきていた御坂と絹旗は、姫神をフォローする。

垣根「戦力が増える?何言ってやがる。コイツらなんてマジで邪魔なだけだ。
つーかお前らガキ2人も、最早足手まといだぜ。特に連敗続きの御坂はな」

御坂「そ、それは謝りますけど」

佐天「そ、その言い方はないんじゃないですか!御坂さんだって、必死に頑張ったんですよ!」

病室の御坂にずっと付きっきりだった佐天が垣根に噛みつく。

垣根「お前、あれだけ病室で忠告したのに、まだ転送してもらってなかったのか」

佐天「私にだって、出来る事はきっとありますから。大切なのはレベルじゃなくて気持ちですから。
私も皆さんと一緒に戦います」

御坂「佐天さん……」

垣根「糞みたいな感情論だな。さっきから言っている通り、そんなことでどうにかなるほど、この戦いは甘くねぇ」

一方通行「まァまァ落ち着けって。自分が追い込まれたからって八つ当たりは良くねェ」

垣根「何だと」

結標「あーもう!今は喧嘩している場合じゃないでしょ!」

結標の怒号で、場が一瞬鎮まり返る。
227: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 22:31:31.74 ID:JDo3T/bx0
垣根「とにかく、ガキどもは帰れ。レベル6の俺ですらこうして追い込まれたんだ。
お前らには絶対にどうすることもできない」

佐天「嫌です!絶対に残ります!」

垣根「じゃあ多数決だ。ガキどもは帰ったほうがいいと思う人、挙手」

その言葉に、一方通行、フィアンマ、結標、病室から戻ってきていたヴェントが手を挙げた。
しかし、少女達以外に手を挙げてない少年が1人いた。

垣根「あれ?上条、お前はガキどもが残った方が良いと言うのか?」

上条「いや、そうじゃないけど……」

垣根「何だ。はっきり言え」

上条「皆の気持ちが痛いほどよく分かるんだよ。じっとしていられない。
誰かが頑張っているのに、自分だけ楽するなんて耐えられない。って気持ちが」

垣根「で?」

上条「だから、本当は反対だよ。皆にこれ以上傷ついてほしくないし。けど、俺は吹寄達を止められない。
俺が吹寄達の立場だったら、皆と一緒に戦いたいって言うと思うから」

垣根「じゃあ中立ってわけか?」

上条「まあ、そんなところかな」

垣根「俺含めて反対派が5人。戦いたいとのたまう少女も5人。1人が中立。
あとは五和、お前と病室で仮眠をとっている削板次第だが」

上条「五和は?」

五和「私も、当麻さんと同意見です」

垣根「はぁ……中立2人。決着がつかねぇな。しょうがねぇ。削板を起こしに行くか」

そうして垣根が病室に向かおうとしたところで、

一方通行「もう良いンじゃねェの?1回戦わせてあげれば」

一方通行が投げやり気味に言った。
228: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 22:33:36.77 ID:JDo3T/bx0
垣根「造反か一方通行」

一方通行「そンな大層なもンじゃねェ。もう議論がだりィって言ってンだよ。一度痛い目見れば、分かるだろ」

垣根「痛い目を見ても挫けないガキが2人いるんだが?」

一方通行「その挫けない電撃姫とチビは俺が守るよ。
  ぶっちゃけ守るの疲れたし、大人しく転送されてほしいンだけど、一度約束しちまったからなァ」

垣根「……そこまで言うなら、百歩譲って相討ちらしかった絹旗と、レベル5の第3位である御坂は良いよ。
でも残りカス3人は」

上条「じゃあ俺が守るよ。クラスメイトだしな」

垣根「佐天とか言うガキは違うだろ」

上条「そうだけど、約束って意味では、佐天さんも守らなきゃいけないんだ。
『御坂美琴とその周囲の世界を守る』って、今はもういないけど、気障な男と約束しちまったからな」

垣根「……もういい。勝手にしろ。俺はもう少し寝る」

垣根はそう吐き捨てて病室へ向かって行った。

フィアンマ「……結局、少女達も参戦するで良いのかな?」

上条「良いんじゃないのか?」

吹寄「上条……ありがとう」

上条「別にお礼を言われるような事はしてねーよ」

姫神(上条君が。護ってくれる///)

佐天(なるほど。素であんなこと言っちゃう人なんだ。こりゃあ御坂さんも惚れる訳だ)

フィアンマ「よし。では皆、覚悟は」

ヴェント「ちょっと待ってダーリン。実はね」
229: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 22:36:16.11 ID:JDo3T/bx0
食蜂陣営

折原「本当に良いのですか?またしても奴らを泳がせるなんて」

食蜂「勝手な行動した黒夜が言っていたでしょ?やっぱりさぁ。完膚なきまでに叩きのめしたいのよね。
ただ潰すだけじゃなくて、何もかも吐き出した空っぽな状態の、絶望したやつらを叩きのめしたいのよ。
その為には、まだ足りないの」

折原「ですが、やつらは魔術などという得体のしれない技術で回復してしまいますよ。時間を与えれば、能力も体力も」

食蜂「大丈夫よ。その辺りは土御門に聞いてみなさい」

折原「私、土御門はあまり好きではないのですが……」

食蜂「仕方ないわねぇ。じゃぁ、説明してあげる。感謝しなさい」

折原「はい」

食蜂「土御門曰くね、魔術発動には魔力が必要なんだって。ゲームで言えば、MPってとろこかしらぁ。
回復魔術だって、攻撃魔術だってMPは消費するのよ。つまり、やつらの回復は無限じゃないの」

折原「ですが、それも休めば回復するのでは?」

食蜂「まぁそうなんだけどぉ。それってつまり、やつらが傷つく、魔術で回復。
傷つく、回復。で何度も苦しみや痛みを与えられるってことでしょ?」

折原「そうかもしれませんが、じわじわ軍が減っているのは、こちらの方ですよ」

食蜂「こっちは大人も含めて約230万人の駒があるのよぉ。
確かに、結標淡希を奪還されたとかはあるけどぉ、人数的には1万分の1もやられてないのよぉ。
分かる?1万分の1も減らせてないのに、御坂と絹旗は2度殺されかけ、垣根ですら追い詰められ、
一方通行はダメージを受けた。この調子で行けば、どちらが有利かなんて、火を見るより明らかじゃない?」

折原「確かにそうですね。しかしながら、上条様はノーダメージですね」

食蜂「そうなのよねぇ。上条君と赤い奴と黄色い奴、削板軍覇が忌々しい。五和とか言う女はゴミね。いつでもやれる」

折原「何気にあの本も厄介ですよね。あの本のせいで戦える能力者も、少しひるんだ程度で回収されてしまいます」

食蜂「そうなのよねぇ。五和は明らかに魔道書に助けられていたわよねぇ」

丁度その時だった。

土御門「終わりました。報告します」

これまでの戦況の確認を終えた土御門が口を開く。
230: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 22:39:21.26 ID:JDo3T/bx0
食蜂「お願い」

土御門「まずは上条・一方通行ペアにより8人が奪還。奪還した結標、吹寄、姫神は、そのまま使うみたいですね」

食蜂「へぇ。あの巨乳と地味女をねぇ」

土御門「次に、御坂が佐天と交戦。能力を使わないと言う暴挙に出るも、一方通行の助けにより奪還されました。
 ちなみに一方通行が助けにいけたのは、ヴェントが上条達の前に現れて奪還した能力者を任せる事が出来たからです」

食蜂「魔術師達うざいわね」

土御門「そうです。100人の『発火能力者』を簡単に退け、その後もフィアンマの方は能力者を何人か回収。
 機動力があるヴェントが他の奴らの救援に行く。そんな感じです」

食蜂「本当邪魔ねぇ」

土御門「垣根対少女軍団ですが、レベル6だけあってしばらくは無双していましたが、木原那由他が
 『体晶』を飲み込ませた事により、追い込むことに成功。まあ最終的には勝利されましたがね。
 ちなみにそこにも、ヴェントが駆けつけています」

食蜂「次は?」

土御門「絹旗対『アイテム』は盤石の構えでしたし、実際終始押し気味でしたが、最終的には絹旗の底力の前に相討ち。
 駆け付けたフィアンマにより回収されました」

食蜂「次」

土御門「削板対オッレルス・シルビアですが、これもまた削板の一方的な勝利でしたね。
 全く持って理解不能な魔術を使っています。
 しかしながら『予知能力』(ファービジョン)のシルビアが何とか逃げ切りました」

食蜂「ふぅん。次」

土御門「最後に、五和対天草式十字凄教徒達ですが、約50人いるメンバーの内、10人ほどしか回収できなかった訳ですが、
 上条当麻とヴェントが救援に来たことにより形勢は逆転。全員回収されました」

食蜂「成程分かったわ。邪魔なのは、やっぱり魔術師ね」

土御門「そうですね。フィアンマとヴェントがかなり暗躍しています。
 最初の戦いでも、スタジアムの天井を壊して黄泉川を回収したのはフィアンマ、
 春上や初春、『心理定規』を回収したのはヴェントです」

食蜂「どうにか魔術師を止める能力者はいないの?」

土御門「そうですね。フィアンマやヴェントは、魔術師でもトップクラスですからね。ただ、削板なら対策法ありますよ」

食蜂「それは私にも分かっている。フィアンマとヴェントをどうにかしたいの」

土御門「なら、アイツを使わせて下さい」

食蜂「誰よ?」

土御門「妃雛菊(きさきひなぎく)。彼女なら何とかなるかもしれません」

食蜂「分かった。いいわよ」
231: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 22:40:42.22 ID:JDo3T/bx0
フィアンマ「俺達に2時間の猶予を与える、か」

ヴェント「そう。その間に準備を整えてらっしゃい。て言っていたわ。そうでしょ当麻?」

上条「ん?ああ。食蜂がわざわざ目の前に出てきてそう言っていたな。つーか何で名前?」

フィアンマ「おい上条。俺の女に何吹きこんだ?」

ゆらりと、フィアンマは病院のロビーの椅子から立ち上がる。

上条「え?いや、俺は何も、つーかヴェントさんよーく見て!明らかに笑い堪えているから!
意図的にこの状況作り出して楽しんでいるから!」

フィアンマ「何?そうなのかヴェント?」

ヴェント「う、うん、ま、まあね」

笑いを我慢しながら答えた。

一方通行「緊張感ねェなァ」

フィアンマ「お前ら科学サイドだけには言われたくないな」

一方通行「しっかし、俺達を空っぽにして絶望させたい、ねェ」

フィアンマのツッコミを無視して呟いた。

上条「そうなんだ。2時間後、あっちから指示を出すらしい」

一方通行「強引なテレポートは止めンのか」

上条「ああ。今度からは指定された場所に、指定された人が来てもらうらしい。
指示に従わなかった場合は、能力者を殺すってよ」

一方通行「へェ」

フィアンマ「俺様達はこの2時間で十分に体を休ませ、なおかつ準備をさらに整えればいい訳か」

上条「そういうこと」

一方通行「まずはガキどもの服からだな」
232: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/27(火) 22:42:03.28 ID:JDo3T/bx0
結標、五和、ヴェント以外の女性陣は、ジャージを買うことにした。比較的安価で、動きやすいからだ。
御坂と絹旗も2連敗(正確には絹旗は相討ちではあるが)で、ダサいとも言っていられなくなってきたのだ。

ヴェントは未だノーダメージなので特に着替える必要はなく、結標はかつて着用していた霧ヶ丘女学院の装いになった。
五和は普通に服を買い、組み合わせることによって、魔術的に意味のある装いになった。

一方男子勢は、武器や装備、食糧をかき集めた。
そして病院で合流し、少々早めの昼食を摂り、装備を分配したところで2時間が経過した。
余談ではあるが、上条と一方通行と御坂は、回収した能力者の洗脳を解く仕事もあった。

削板「よっしゃあ!全力全開だぜ!」

仮眠を取り、十分な食物を摂った削板は万全のようだった。

一方通行「うるせェな。約束の時間だから静かにしてろ」

鬱陶しそうに削板を注意したその時、

食蜂「はぁ~い。皆さんお待ちかねの時間でぇ~す☆」

食蜂の声が病院内に響き渡る。

食蜂「上条君とかには言ってあるから分かっていると思うけど、これから指示を出しまぁーす。
一度しか言わないからよ~く聞いてねぇ」

そして食蜂から指示が飛ばされる。
236: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 08:32:15.07 ID:BMIoR+No0
指示通り三沢塾に入った上条と、ニットセーターにジーンズの五和ペアを待ち受けていた者は、

「ようやく君をぶちのめす事が出来そうだよ」

「魔術対科学の戦争で『聖人崩し』を喰らったリベンジです」

真っ赤な髪に、右目の下にはバーコードというトンデモ神父ステイル=マグヌスと、
長い髪をポニーテールに括り、Tシャツに片方の裾を根元までぶった切ったジーンズ、
腰のウエスタンベルトには七天七刀という格好の神裂火織だった。

五和「プリエステスに……ステイルさんですか。おそらく、幻覚か何かでしょうね」

上条「そうかもしれないけど、もう1つ可能性がある」

五和「え?」

上条「目の前に居る2人が、それっぽい恰好をしただけの能力者だって可能性だ」

五和「ど、どう言う事でしょうか?」

上条「さっき五和を助けた時、俺の目の前には建宮がいた。でもそれっておかしいんだ。
『竜王』の力を解放した俺の瞳は、幻術の類を見抜く。だから幻術で建宮に見えるってことは、まず無いんだ」

五和「つまり、髪型をクワガタのようにして、フランベルジェを持った能力者が建宮さんのように振る舞っていただけと言う事ですか?」

上条「そう言う事。体格さえ合えば、顔は特殊メイク、髪は染めれば、よく見ない限り見分けはつかないしな」

五和「なるほど」

上条「つっても、2mの男と180cmの女なんてそうはいない。
『竜王』の力はまだ解放してないから、目の前に居るこいつらは幻術なのかもしれないけど」

五和「しかし、200万に大人の分の+αがいるわけですし、成りすまし説もあり得ますね」

上条「どの道、俺らがやる事に変わりはないけどな」

ステイル「不毛な会話はすんだかい?」

神裂「空気を読んで待っていましたが、そろそろ行きますよ」

ステイルは掌から炎を出し、神裂は七天七刀を模した太刀をゆっくりと引き抜いた。

上条「俺はステイル。五和は神裂だ。いくぞ!」

五和「はい!」
237: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 08:34:09.32 ID:BMIoR+No0
御坂は自動車関連学校の為に用意された実験用サーキットに来ていた。典型的な『騒音の出る施設』である。

御坂(なるほどね)

もう先が読める。どう考えたってキャパシティダウンを流すつもりだ。御坂の予感は的中する。

キィィィン!と高レベルの能力者にとっては、あまりに不快な音が響いた。

御坂「うぐ……ああ!」

御坂は両手で頭を抑え、その場に蹲ってしまう。と、ズドン!と地面が揺れた。

「あっはっは!無様だねぇ。『超電磁砲』」

「このFIVE_Over.Modelcase_”RAILGUN”(ファイブオーバーモデルケースレールガン)がどこまで通用するか楽しみだよ」

5メートル前後の巨体を誇る2体の『カマキリ』が御坂の後ろに立った。
パイロットはテレスティーナ=木原=ライフライン、シルバークロース=アルファだ。

御坂「どこまで通用するかって言っといて……これはないんじゃないの?」

必死に声を絞り出し、問いかける。

シルバークロース「この女がうるさいからさ。本当は純粋な力比べをしたいのに」

テレスティーナ「この程度であっさりやられるなら、所詮その程度ってことさ」

シルバークロース「……と一点張りでね。まあ同意できる面もあるから、仕方なくさ」

テレスティーナ「さて、3秒後に発射するわよ。3」

カウントが始まったが、御坂は未だ動けない。

テレスティーナ「2」

2秒前。それでも御坂は動けない。

テレスティーナ「1」

シルバークロース「やはり駄目か」

テレスティーナ「0」

カウントが0になったと同時、束ねられた3つの銃身が回転し、
一発一発が戦車を貫き、壁に直径1メートルほどの風穴を空ける威力を持つ、分間4000発もの金属砲弾が撃ち放たれた。
238: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 08:36:22.46 ID:BMIoR+No0
一方通行は、第23学区の上条らとオリアナが激突した場所に来ていた。
彼の目の前には、よく見知っている1人の男と少女の大群。

「久しぶりだなぁ一方通行。お前をボコれるこの日をどれだけ待ち望んだことか」

「ここで会ったが100年目です。とミサカ達は喧嘩を売ります」

一方通行には精神系能力すら効かない。
よって、顔面に刺青で研究服の木原数多や、常盤台の冬服に身を包んだ大量の妹達がこの目に映るのは、心を操られてとかではない。

一方通行(可能性はいくつかあるが、まァどォでもいい事だ)

誰が相手だろうとやる事は変わらないのだから。

木原「いくぜ!マゾ太君!」

木原数多が駆けだした。
239: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 08:38:57.08 ID:BMIoR+No0
絹旗と佐天は第19学区の更地に来ていた。

佐天「何にもないですね」

絹旗「そうですね。ですが、超気を緩めてはいけませんよ」

佐天「はい」

2人は気を緩めずに周囲を見回す。誰も居ないし何もない。
一体何だと、2人が疑問を抱き始めたところで、

突如、2人の視界が真っ暗になった。

佐天「え?え?」

絹旗「超大丈夫ですか佐天さん!」

佐天「大丈夫じゃないです!真っ暗です!どうして!何で!」

佐天はパニくり、とにかく叫ぶ。

絹旗「超落ち着いてください!敵の能力ですよ!大丈夫です。私に触れれば、佐天さんも窒素に包みこめますから」

佐天「でも、どこに居るの絹旗さん!」

絹旗「横です!落ち着いて耳を澄ませれば大丈夫ですから!」

佐天「わ、分かりました!」

佐天は言われた通り耳を澄ます。確かに絹旗の声が聞こえる。
大分近いところに居る。それはそうだ。だってさっきまで隣同士だったんだから。手を伸ばせば、きっと握り返してくれる。

佐天「絹旗さん!」

絹旗「はい!」

2人の手が触れ合った。瞬間。

佐天(え?)

絹旗の手が消えた。

佐天「絹旗さん!絹旗さん!」

返事はない。まさか、テレポートされた?

佐天「嘘、でしょ?」

レベル5の仲間を唐突に失い、途端に不安が爆発する。

佐天(う、うわあああああああ!ど、どどど、どうしよう!?)

佐天は、私も戦いたいとのたまった自分を後悔しつつ、情けないと思った。

「佐天さん……佐天さん」

泣きそうになっている佐天の耳に、聞いた事のある声が届いた。

佐天「この声は……重福さん?」

重福「そうだよ。佐天さんの友達、重福省帆だよ」

佐天「な、んで……」

重福「佐天さん達の相手は、私なの……」
240: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 08:39:49.28 ID:BMIoR+No0
垣根は木原研究所の前に来ていた。
彼の目の前には、いくつもの自律型駆動鎧(パワードスーツ)が並んでいる。

垣根「ただのからくりとは、俺もなめられたもんだなぁ」

垣根はゆっくりと両手を広げる。どこからでもかかってこいと言わんばかりに。
その動作に応えるように、パワードスーツ達の腕から大量のミサイルが発射された。
241: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 08:41:07.03 ID:BMIoR+No0
吹寄と姫神は、かつて一方通行と上条が争った、そして御坂と上条が戦い荒れ地になった操車場に来ていた。

吹寄「あなたが相手ね?」

吹寄は目の前の、黒髪ストレートロングで霧ヶ丘女学院の制服を着ている女性に尋ねた。

「常識的に考えれば、質問しなくても分かると思うけど」

吹寄の質問に無愛想な回答をした彼女は、柊奈美(ひいらぎなみ)と言う。

吹寄「じゃあ遠慮なくいかせてもらおうじゃない!」

吹寄の脚に風が集まる。

柊「見た感じ、レベル3ってところね」

吹寄「『烈風迅脚』(エアロソニック)で申請しているんだけどね。
まあそんな事はどうでもいいとして、姫神さん、準備は良い?」

姫神「いつでも。いける」

そう答えた姫神の右手には扇子があり、左の掌からは炎が灯っていた。

吹寄「いくわよ!」

姫神「うん!」
242: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 08:42:25.51 ID:BMIoR+No0
削板は再び第1学区の大きな通りにいた。
相手も先程と同じシルビア。ただし、7人ほど人間を引き連れていた。

シルビア「私には見えるよ。君が無様に地面に這いつくばっている未来が」

削板「はぁ?意味不明だぞ。頭大丈夫か?」

シルビア「頭大丈夫かはこっちの台詞よ。『予知能力』も知らないの?」

削板「ふーん。そんなのあるんだ?」

シルビア「学園都市に住んでいる癖に、分からない能力があるって恥ずかしくないの?」

削板「別に。気にしたことねぇしなぁ」

もっとも、学園都市に存在する多種多様な能力を全て言える人間の方が少ないが。

シルビア「ふーん。じゃあ親切なお姉さんが教えてあげよっか?私の能力がどういうことなのかを」

削板「いらん。いいからやろうぜ」

シルビア「まあ聞きなって。聞いといて損はないからさ」

削板「そうか?じゃあ聞くか」

単純である。
243: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 08:47:49.87 ID:BMIoR+No0
シルビア「いい?私の能力は読んで字のごとく、予知する能力。
  時系列的に見て、その時点では発生していない事柄について予め知ること」

削板「んんー?もうよく分からないぞ」

シルビア「これ以上は説明のしようがないんだけど。まあいいわ。それでね。
  私の能力の凄いところは、予め知るだけでなく、その光景を見る事が出来るの」

削板「どう凄いのか分からん」

シルビア「……まともな説明は理解できないようね。いいわ。比較して説明しましょう」

削板「助かる!……かもしれん」

シルビア「たとえば心理系能力者なら、敵の心を読んで行動を先読みするわよね。
  一見凄い事のように見えるけど、実際はいくつか弱点があるのよね」

削板「ほう」

シルビア「何でちょっと偉そうなのよ。まあいいわ。まず1つ。急な心変わりに対応できない。
  2つ。どれだけ行動を先読み出来ても、体がそれについていかない」

削板「ん?どう言う意味だ?」

シルビア「これ以上どう説明しろって言うのよ……」

削板「だからさー、早くやろうぜ」

シルビア「いやちょっと待って。説明するから」

削板「じゃあ早くしてくれよ」

何故か偉そうな削板に、シルビアはちょっといら立つ。

シルビア「だから、君は殴るつもりで敵に向かって駆け出したとします。
  で、心理系能力者は当然拳が飛んでくると思う訳だけど、
  君が攻撃の直前で、やっぱ足技にしようと蹴りを出す事に変更しました。
  そうすると心理系能力者はどうなると思う?」

削板「何とか反応して、受け止めたり、受け流したり、避けたりする」

シルビア「……超人的反応は除く」

削板「拳が来ると思っていたのに、蹴りが来たら不意打ちだよなぁ」

シルビア「つまり?」

削板「蹴られる?」

シルビア「正解(はぁー、疲れる)。じゃあ次の説明だけど」

削板「もういいよ!早くやろうぜ!」

シルビア「ああーもう分かったわよ!端折りまくるけど、私の予知はそれら心理系能力者の弱点を克服している!
  つまり君に勝ち目はないから、大人しく殺されてくれないかな!?」

削板「はぁ?それっておかしくねぇか?」

シルビア「おかしくないわよ!だって不毛な戦いじゃない!
  私には見えるわよ。このまま戦えば、君は苦しんで死ぬことになる。
  でも大人しく殺されるなら、痛みすら感じさせずに殺してあげるし、私達も楽だし、一石二鳥じゃない!」

削板「え!?予知していようが、超人的な動きには対応できなくね!?」

シルビア「2つ目の弱点について分かってたんかい!」

削板「どうなんだよ!」

シルビア「そうだけど、ただの心理系能力者と違って、色々な未来が見えるし、私には超人的動きも通用しない!」

削板「回答になってねーし、それ結局お前だからじゃねーか!」

シルビア「うっさいわね!お望み通りやってやろうじゃない!」

キレたシルビアが柄しかない剣を振るう。それが戦いの合図だった。
244: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 08:49:15.56 ID:BMIoR+No0
結標は、あすなろ園の前で立ち尽くしていた。
目の前にかつての仲間たちと、何人かの男児と、青い髪に耳にピアスをしている少年がいるからだ。

青ピ「どうしたんや淡希」

結標「どうしたじゃないわよ……殴られる覚悟は出来ているのでしょうね?」

青ピ「何で僕が殴られなきゃいけないん?」

結標「自分のやったこと、よーく思い出してみなさいよ」

青ピ「うーん、心当たりないな~」

結標「よし。殴るわ」

言うが早いか、結標は青髪の前にテレポートする。そして固く握り締められた拳を放った。
245: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 08:51:00.47 ID:BMIoR+No0
フィアンマとヴェントは、第9学区の植物園に来ていた。
彼らの目の前には、ピンク色のミディアムヘアに桃色のパーティドレスと言うとんでもない恰好の、
おそらくは高校生くらいの少女がいた。

フィアンマ「これから一戦交える奴の恰好とは思えんな」

「はぁ?誰に向かって口聞いているの?」

一言聞いただけで、高飛車お嬢様な感じが伝わってくる。

ヴェント「この場には私達とアンタしかいないんだから、アンタ以外有り得ないでしょーが」

「アンタじゃない。妃雛菊。妃お嬢様とでも呼びなさい」

フィアンマ「お前、ひょっとして操られていないのか……?」

あまりにも生意気だったので、なんとなくそう思ったフィアンマは尋ねる。

妃「あら?愚民のくせによく分かったじゃない?そうよ。私は操祈の案に乗って、自分の意思でこの場に居る」

ヴェント「世界滅亡よ?なんでそれに賛成しているの?」

妃「この世界は、穢れている」

急に真面目な顔つきになって、彼女は語りだす。

妃「操祈はね、一口に世界滅亡と謳っているけど、それには並々ならぬ理由があるの」

フィアンマ「どんな理由があろうと、世界滅亡はぶっ飛びすぎだろう。イカれているとしか思えん」

妃「皆そう言うけどね、操祈の話を聞いたら、きっと共感できるわ」

ヴェント「じゃあそれを世界中に聞かせれば良いんじゃないの?そうすれば皆共感して、自殺するかもよ?」

冗談を言うヴェントだったが、意外な答えが返ってきた。

妃「それは無理よ。自殺なんかする訳ないでしょ」

フィアンマ「じゃあやっぱり、世界滅亡はあまりにも突飛な話と言う事じゃないか」

妃「違う。あなた達、私の言いたい事が本気で分からないの?この世界は美しくない。滅ぶべきなのよ」

ヴェント「分かるわかないでしょ。そんなふざけた思想」

妃「分かったわ。そこまで言うなら、私が美しく滅ぼしてあげるわよ」

妃が両手をゆっくりと広げる。戦いが、始まる。
246: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 08:53:41.50 ID:BMIoR+No0
ガッ!キン!と刀と槍をぶつけあいながら、神裂は五和に語りかける。

神裂「五和、その槍は何ですか?」

その問いに対し、五和も律儀に答える。

五和「すみませんプリエステス。
これはもともと七天七刀だったんですが、フィアンマさんが熱して溶かして槍にしてくれたモノです。
それより、プリエステスの持っている“それ”こそ、ただの鈍ですよね?」

神裂「もちろん本物の七天七刀ではありませんが、だからと言って鈍ではありませんよ」

五和「へぇ」

ガキィン!となおも刀と槍の打ち合いは続く。

一方で、ステイルと上条は、

ステイル「『魔女狩りの王』(イノケンティウス)!」

ステイルが叫ぶと同時、三沢塾のロビーの床から、彼を守るように炎の巨人が現れる。

上条「ま、レベル5の『発火能力者』なら、これぐらいの芸当出来て当然だよな」

上条は炎の巨人を殴りつける。すると独特の甲高い音が響き、炎の巨人は虚空に消えた。

ステイル「『竜王』とやらの力は解放しなくていいのかい?」

上条「『竜王』の力じゃ洗脳は解けないし、お前程度ならな!」

そして上条の右拳が、ステイルの顔面を通り抜けた。

上条「何かって言ったら蜃気楼ばっかり……馬鹿の一つ覚えかよ!」

ステイル「それに毎回騙されているのは、どこの誰だろうね」

言いながら上条の数m後ろに居たステイルは、両手に持っている拳銃の引き金を引く。
しかし上条は、顔面や心臓狙って放たれた2、3発の弾丸を、上半身を軽く振って避ける。

上条「その程度『竜王』の力なんてなくとも、素で避けられるんだよ!」

ステイル「なるほど」

肉迫する上条に、ステイルは後退しながらさらに拳銃の引き金を引く。今度は脚を狙って。

上条「いっ!」

と、弾丸が直撃して痛む様子を見せる上条だったが、その勢い自体は止まらない。

ステイル「何!?」

上条「終わりだ」

ステイルがうろたえている間に、上条はあっさりと彼の頭に触れた。
独特の甲高い音が響き、彼の体が地面に向かって倒れていく。上条はそれを受け止めた。そして五和に問いかける。

上条「こっちは終わったぞ。そっちは大丈夫か?」

五和「大丈夫です。こっちも速攻で終わらせます」

はっきりと、言い切った。
247: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 08:55:46.04 ID:BMIoR+No0
そんな上条と五和のやりとりを聞いていた神裂は、

神裂「私を馬鹿にしているのですか?七閃!」

神裂の手が一瞬だけぶれる。瞬間、変幻自在の7本のワイヤーが五和に襲い掛かる。

五和「――七教七刃!」

五和も負けじと7本のワイヤーで対抗する。弾丸よりも速い速度でワイヤーとワイヤーがぶつかって、擦れた。

五和「そこです!」

間髪入れずに槍を投擲する。それはワイヤーの隙間をすり抜け、一直線に神裂に向かう。

神裂「その程度で私を穿てるとでも!」

七天七刀を突き出し、槍を迎え撃った。
そして激突の衝撃で刀と槍、双方とも粉々に砕け散った。

神裂(馬鹿な――!いやしかし、武器がないのは五和も同じ事!)

そんな神裂の思惑は外れる。こちらに迫ってくる五和の右手には、メイスが握られている。

神裂「なぜ!?」

五和「ふっ!」

短く息を吐き、メイスを左から右に薙ぎ払う。
武器がない神裂は為す術なくメイスの一撃をまともに受け、数m先の壁に叩きつけられ、力なく地面に崩れ落ちて行った。

五和「回収します」

そんな神裂をあっさり回収して、上条の方を向き直し、言う。

五和「終わりました!」
248: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:03:03.40 ID:BMIoR+No0
テレスティーナとシルバークロースの2人は、多少黒焦げになって地面に転がっていた。
そうなったのは、御坂にやられたからにほかならない。

テレスティーナ「糞が……」

ぼやきながら、つい1分前ほどに自分の身に起こった事を反芻する。

ガトリングレールガンの連射が始まって5秒ほど経過したところで、
背後から御坂の電撃を受けカマキリを破壊され、おまけに直接電撃を喰らったのだ。

もちろん電撃対策はしてあったが、レベル5級の電撃をまともに受け切れるほどではなかった。ここで疑問が浮上する。
御坂美琴はキャパシティダウンで弱っていたのではないか?

テレスティーナだって、シルバークロースだってそう思っていた。
にもかかわらず、御坂は背後に回り、全力の電撃を放ってきた。
つまり、彼女にはキャパシティダウンが効いていなかったのだ。

テレスティーナ「どう言う事だよ?『超電磁砲』」

うつ伏せになりながら、荒々しい口調で御坂に尋ねる。

御坂「どう言う事って?キャパシティダウンが効かなかったこと?」

テレスティーナ「それ以外に何があるのよ?」

御坂「はいはい。何で騒音が効かなかったのか。その答えは、これ」

言いながら御坂は、ジャージのポケットから耳栓を取りだした。

御坂「騒音を耳栓で防ぐ。単純な話でしょ?」

テレスティーナ「そんなふざけた方法で……」

御坂「騒音に頼り過ぎなのよ」

そうして御坂は、テレスティーナの頭を触る。そこで違和感。彼女の脳波に乱れがないのだ。

御坂「アンタ、ひょっとして操られていない?」

テレスティーナ「今更気付いたの?」

御坂「何で……食蜂の野望を知らないの?」

テレスティーナ「ああ知らないね。私は、お前に復讐できればそれで良かった。でも負けた」

御坂「そう……まあ何となく危険な感じがしたから、電撃ぶち当てて動けなくしたんだけどね。
その予感は的中したってことか」

テレスティーナ「私とこの男を倒した位で調子に乗らないほうがいいわよ。これからはもっと強力な刺客がお前を襲う」

御坂「あら、心配してくれているの?」

テレスティーナ「違うわよ。お前はこの私が殺す。だからそれまで死ぬなって言っているのよ」

その言葉を残して、彼女は気絶した。
御坂は久々に白星をあげ、多少の自信を取り戻し、いくつか確信したことがあった。
これからの戦い、勝機はある。

御坂「……よし!」

屈んでいた御坂は立ちあがり、気合を入れる。その時だった。

「次の相手は、この私だよ」
249: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:06:36.41 ID:BMIoR+No0
一方通行はこの戦いが始まる前に、垣根と修行をした。
修行と言っても、無理をしない程度に、能力アリの殴り合いをしただけだが。
だがそれは確実にお互いを成長させた。
よくモヤシとバカにされる一方通行だったが、今の彼の体術は不良程度なら余裕。
ジャッジメントやアンチスキルなど訓練を積んでいるような人間相手でも、1人までなら倒せるほどになった。

しかしながら、所詮はそこまで。たかだか数日の修行で武術の達人になれるはずもない。
よって相手が相当の体術の使い手だった場合、勝てない。

そしておそらく、一方通行に迫る木原数多は勿論本物ではないが、木原数多の技術を刷り込まれている。
もっと言えば、一方通行の対策法を叩きこまれている格闘のプロである可能性が高い。

しかし、いくら格闘のプロだろうと、木原神拳は一朝一夕で習得できるものではない。
おそらくは、一方通行にダメージを与える事が出来たとしても、攻撃した側もダメージを受けるだろう。

とここまでの話は、わざわざ接近戦を挑んだ場合だ。
近距離戦に強い相手に、近距離で挑まなけらばいけないルールなどない。
だから一方通行は素直に距離を取り、遠距離から攻撃することにした。
もっとも、風は対処されるだろうし、小石を蹴った攻撃程度なら避けられるだろう。

一方通行(これならどうだァ)

一方通行の軸足が、2回地面を踏んだ。
1度目の足踏みで地面に規則的な亀裂が入り、2度目の踏み付けでその亀裂をなぞって、
幅1m四方のアスファルトの立方体が、彼の前に3個浮き上がった。
そしてその3個のアスファルトを蹴る。ただし手加減はしてある。
直撃しても死にはしないはずだ。それがまずかった。

木原「なんだその腑抜けた攻撃は!」

手加減してあるとはつまり、スピードが抑えられているという事。
あろうことか木原数多は、それらを3mのジャンプで悠々と超え、一方通行に飛び蹴りをかました。

一方通行(ちっ……もしかして、肉体強化なのか?)

地面を数m転がった一方通行だったが、すぐに起き上がり木原を凝視する。
木原の右足からは血が出ていた。やはり完璧には木原神拳を使いこなせていないようだ。
250: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:09:09.85 ID:BMIoR+No0
木原「よーく見とけよ一方通行。これが俺の能力だ」

直後、木原の足がみるみるうちに元通りになっていく。

一方通行「『肉体再生』(オートリバース)か」

木原「御名答。これで俺は、不完全でも木原神拳を存分に使えるって訳だ。
それだけじゃねぇ。脳のリミッターを意図的に外してもいる。つまり、今の俺は火事場の馬鹿力状態だ。
これが何を意味するか、お前なら分かるよな?」

一方通行「火事場の馬鹿力って言うのは、肉体的負担が半端ねェ。
  だが『肉体再生』だから、それも気にせず戦える……って言いてェのか?」

木原「そう言う事。俺を倒すには、圧倒的な一撃で殺すしかない。
だがお前は俺を救うために戦っている。殺せない。
と言う事は、お前に勝ち目はないって事だ。分かってくれたかな?」

一方通行「チッ」

木原「つーわけでさー、大人しく死んでくれねーかなー?」

一方通行「断る」

木原「じゃあ殺すっきゃねーか!」

ドン!と地面を蹴り、弾丸のような速度で一方通行に肉迫する。

一方通行「面倒くせェ!」

一方通行は再び地面を2回踏んだ。
彼の目の前のアスファルトが細かい砂利と化し、ゴバッ!と木原に向かう。
上条当麻と戦った時には思い切り屈まれて回避されたが、屈んでも回避できないように砂利を飛ばした。

木原「甘いねぇ」

木原は回避行動どころか、防御姿勢も取らなかった。
数いる妹達の何人かが、一方通行と木原の間に割って入り砂利の盾になったからだ。
妹達は赤い液体を撒き散らしながら倒れて行く。

一方通行「な――」

木原「おらよ!」

動揺する一方通行の顔面に、木原の渾身の拳がクリーンヒットした。
その一撃で数m地面を転がる一方通行の下へ、木原は追撃のかかと落としを繰り出す為に脚を上げていた。

それを視界の隅に捉えた一方通行は自ら地面を転がり、かかと落としを回避して起き上がる。と同時、

――世界が、真っ白に塗りつぶされた。
251: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:11:32.83 ID:BMIoR+No0
一方通行「あァァァ!」

両目を抑え悶絶する一方通行の腹部に、木原の膝蹴りが叩きこまれた。
蹴られた彼の口からは血があふれ、その場で蹲る。

修行を通して耐久力が増さなかった訳ではないが、もともと貧弱な体の彼には今の木原の一撃は厳しかった。

木原は蹲る一方通行の頭を容赦なく踏みつけながら、嬉々として語りだす。

木原「テメェの能力には致命的な弱点がある。生きていく上でどうしても反射出来ないものがあるということだ。
酸素然り、光然り、音然り」

一方通行「うるせェ!」

地に両手をつき、思い切り体を起こす。突然の出来事に木原はバランスを崩し、後退する。

木原「力で俺の足を押し返すとは、やるじゃねーか」

一方通行「チクショウが……」

未だに明滅する視界の中、一方通行は距離をとって木原を見据える。
木原はいつのまにかゴーグルを着けていた。

木原「テメェはもう勝てねーよ。さっきの一連の攻防で分かっただろ?
俺の能力、妹達の捨て身の盾、そして妹達の出す電撃での目眩まし。
俺は無駄に疲労したくねーんだわ。もう一度聞くぞ。大人しく殺されてくれねーかな!?」

一方通行「あァ。そうだな」

木原の言う通り、このままじゃ勝てない。
拳銃などの武器はあるが、レベル5の『肉体再生』には即回復される。
それ以前に妹達の壁に、目眩ましの強烈な光もある。
そして刺激的な光を受け続ければ、光過敏性発作で体調を崩すことにもなる。
だからと言って目を閉じて戦うのも無理がある。

木原「物分かり良いじゃねーか。じゃ、死んでもらおうか!」

木原が迫ってくる。あと3秒もあれば、一方通行の顔面に拳を叩きこめるだろう。

一方通行「確かに“今のまま”じゃ勝てねェ。だから――」

一方通行の背中から、白い翼が顕現した。頭上には、同色の輪が浮いている。

木原「その姿は――」

一方通行「あンまり使いたくなかったンだけどな」

ズバァ!と光の雨が全妹達に降り注いだ。圧倒的な光の雨の前に、全妹達は為すすべなく蒸発した。
252: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:13:04.63 ID:BMIoR+No0
木原「テメェ、よくもまああっさりと……」

一方通行「はァ?何殊勝な事言ってやがるンですかァ?
  オマエも俺も、今更人殺した位でゴチャゴチャ言うことねェだろ」

その間にも一方通行は羽ばたく。
それは突風とかまいたちとなり、木原数多に切り傷を加え、吹き飛ばした。

木原「ちっくしょうが……」

ベクトルによって操られた風ならば対処できるが、純粋に力によって変えられた空気の流れである風は防ぎようがない。

しかしながら『肉体再生』の前では、それすらも結局は無意味。
脳や心臓などの重要な器官を潰すか、先程の光の雨や、マグマの海に突き落とすなど、
色々方法はあるが、とにかく一気に殺すか。そうでなければ木原数多は殺せない。
そんな事は一方通行も分かっているはずなのに。

木原(なぜ決定的な一撃を放たなかった?)

ようやく傷が再生しきって立ち上がった木原の頭に、一方通行の右手が触れた。

一方通行「終わりだ」

決着はあまりにもあっさりと。一方通行が2秒で洗脳を解いたことでついた。
253: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:14:07.41 ID:BMIoR+No0
強烈な光は妹達が出した電撃ではなく、妹達が投げた超強力な閃光玉によるものだった。
では妹達とは何だったのか。ただ木原の盾になる為だけにいたのか。
あるいは一方通行の精神を揺さぶる為か。またはその両方か。ただ、一方通行は1つだけ確信した事があった。

蒸発した妹達は、人間じゃない。

では何か。それは一方通行にも未だに分からない。でも人間ではなかったと言い切れる。
なぜなら木原の壁になって赤い液体を撒き散らしながら吹っ飛んだ時、その赤い液体が血には見えなかったから。

一方通行(何かある……)

ここでただただ悩んでいても仕方がない。今自分がやるべき事は。
254: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:16:25.70 ID:BMIoR+No0
佐天「じゃあ今真っ暗闇なのは、重福さんの仕業なの……?」

重福「そうだよ。私の能力『五感支配』(センスコントロール)で、佐天さんと絹旗さんの五感を支配しているの」

佐天「『視覚阻害』(ダミーチェック)がレベル5になると、そんなことになるのか……」

重福「そうみたいだね。だから、佐天さん達に勝ち目はないよ」

確かに、重福の言う通りだろう。
五感を支配される事がどれだけ不利なことか、素人の佐天でも分かる。
絹旗はおそらく『窒素装甲』があるから、見えない、聞こえないからと言って、どうってことはないだろうが佐天は違う。
この無音と暗闇の状態で、殴る蹴るなどの暴行をされればアウトだ。
そしていくら温厚な重福だろうと、それぐらいはできる。
絹旗も肉体的には無事でも、感覚的に支配されている以上、助けに入る事は出来ない。

重福「だからさ、もう一度私達のところに戻ってきてよ」

佐天「な、なんで?食蜂って人は、世界滅亡を企んでいるんでしょ?そんなの、いけないことじゃない!」

こんな事言ったって、洗脳されている重福には意味ないかもしれない。
それでも佐天は、言わずにはいられなかった。

重福「それでも、仕方ないかなって思う。だって、食蜂さんの言い分も分かるもの」

佐天「え?食蜂って人が、何で世界滅亡を企んでいるか分かるの?」

重福「分かるよ。佐天さんの脳にも残ってない?食蜂さんの考えが」

佐天「あ……」

言われた瞬間、眠っていた洗脳中の記憶が呼び覚まされた。
255: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:20:55.69 ID:BMIoR+No0
佐天「そうか。だから食蜂は、こんなことを……」

重福「そうだよ。私は、どうせ世界が滅亡するなら、それまでの間、佐天さんと一緒に居たい」

佐天「重福さん……もしかして操られていないの?」

重福「うん」

佐天「そっか」

佐天は呼び覚まされた記憶で、食蜂がなぜこんな馬鹿な事をやっているのかが分かった。
そして食蜂の考えに同意できる部分もある。だけど。

佐天「私は、食蜂の考えに完全には同意できない」

重福「……私だって、そう思うよ。でも、食蜂さんに反逆したって勝てっこない!
だったら、少しの間でも佐天さんと一緒に居たいよ!」

悲痛な叫びだった。重福も食蜂の意見がおかしいと思っているところがあるのだ。
でも勝ち目はないから、どうせ世界が終わるのなら、という逃げの考え。
それは利口な考えかもしれない。けれども。

佐天「本当にそれでいいの?世界が滅亡しちゃったら、皆と私とも会えなくなるんだよ?私は嫌だよ?
御坂さんとも、白井さんとも、初春とも、絹旗さんとも、アケミにむーちゃんにマコちんとも、
そして重福さんと会えなくなるなんて」

重福「……私だって、嫌だよ。出来る事なら、老衰するまで佐天さんと友達でいたいよ!
もっと遊びたいよ!泣いたり笑ったり怒ったりしたいよ!」

佐天「だったら!反抗してみようよ!私だけじゃない!皆いる!きっと出来るから!重福さんも戻ってきてよー!」

重福「――」

今の佐天の発言は、この戦いの状況をある程度把握している重福にとってみれば、滑稽と言っても良かった。
何せ2人いるレベル6はそれなりのダメージを受け、レベル5の2人に至っては2度敗北していて、まともに戦えているのは、
上条と削板、魔術師2人だけなのだから。加えて食蜂の軍は、まだ1万分の1も減っていない。どう考えたって佐天達の方が不利だ。
頭ではそう分かっていた。

重福「……うん」

しかし重福は、佐天達と共にする事を選んだ。だってそうだ。
佐天は頑固な人間で、自分がいくら食蜂の下に引き戻そうとしたって、首を縦に振るわけがない。
でも佐天とは一緒に居たい。

だったら、自分が佐天の仲間になればいい。
佐天側についたら不利なのは分かっているし、最悪殺されるかもしれない。
けれどそれは、食蜂側に居たって同じだ。最終的には死ぬ。
どうせ死ぬのなら、敵としてではなく、仲間として死にたい。
いや、万が一ではあるが、ひょっとしたら食蜂達に勝てるかもしれない。

重福にはもう、迷いはなかった。

重福「ゴメンね佐天さん。今、能力を解くから」
256: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:22:55.16 ID:BMIoR+No0
そして佐天の視界と聴力は元に戻った。
同時、関所中学の冬服に身を包んだ、太くて個性的な眉毛が特徴的な重福が佐天に抱きついた。

佐天「分かって、くれたんだね?」

重福「うん。本当にごめんなさい」

重福は佐天の胸に顔を埋め、今までの行為を詫びた。

佐天「別に大丈夫だよ。こうして無傷だしね」

重福「私、もう佐天さんから一生離れませんから!」

佐天「そ、それは困るかな~」

なんてやりとりをしながら、佐天は気付く。絹旗の声が聞こえない。

佐天「あれ?」

佐天は思わず周囲を見回す。すると絹旗は数m先で顔を伏せて突っ立っていた。

佐天「ちょっと。何突っ立っているんですか絹旗さーん」

呼びかけるが、絹旗から一切の反応が返って来ない。

佐天「あれ?ねぇ重福さん、絹旗さんの分の能力はちゃんと解除した?」

そう問いかけたが、重福からの反応もない。と、ずしりと重福の重さが増した。

佐天「え?」

佐天は力の抜けた重福の体を支える。彼女は気絶しているのだ。

佐天「なん、で……」

絹旗「それはねぇ。超私の仕業だったりするのよねぇ☆」

突如、絹旗が喋り出した。しかし彼女の発言には違和感がある。

初春から聞いて、実際に会っても実感したが、絹旗最愛と言う少女は相手が誰であっても、基本的には敬語である。

それが今は、ギャルみたいな間延びしたような喋り方だった。
ただし、会話の中で用いる単語に『超』とつける口調は健在している。

佐天「どういうこと……?」

絹旗「さぁて、超ゲームを楽しみましょう☆」
257: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:25:21.71 ID:BMIoR+No0
垣根「他愛ねぇ」

自律型パワードスーツなど、垣根の敵ではなかった。
吐き捨てた彼の傍らには、パワードスーツの残骸が散らばっている。

「ふむ。やはりこの程度では傷一つつける事は出来ないか」

木原研究所の中から『Equ.DarkMatter』のようなスーツを着用した木原幻生が現れた。

垣根「まさかクソジジイ、テメェ自身が戦うつもりか?」

幻生「まあね。那由他でもパワードスーツでも駄目なら、私が出るしかないだろう?」

垣根「那由他がああなったのは、やはりテメェのせいか」

幻生「何を憤っている?君には何の関係もないだろう?
それに私は、実験を強制した覚えはない。力が欲しいとあの子から言ってきたから、協力してあげただけだよ」

垣根「ふざけんな。どうせお前らが、幼い時の那由他に力が欲しいと言わせるように仕向けたんだろ」

幻生「だったら何だと言うんだ?最終的に判断したのは那由他自身だよ」

垣根「ふっざけんな! 那由他は『木原一族』なんて狂った家系に生まれてこなければ!
もっと普通の女の子として、幸せな人生を歩めたんだぞ!」

幻生「本当にどうしたと言うのだ?たとえそうだとして、君に何の関係がある?何をそんなに憤っている?」

垣根「……キャラじゃないこと位、自覚している。自分でも何でこんなにキレているのか分かんねぇ。
だが、1つだけ分かった事がある。――テメェみたいな外道は、ここで殺すべきだってな」

幻生「酷い言われようだな……」

垣根「テメェ、操られてないだろ。寧ろ、貴重なデータが手に入るとかで食蜂に手を貸しているんだろ?」

幻生「ふむ。確かに貴重なデータが手に入るとは思っているが、進んで食蜂に手を貸している訳ではないよ。
私は私のやりたいように勝手にやっているのだよ」

垣根「そっか。まあいいや。じゃあそろそろ死ね」

『未元物質』の翼を伸ばす。
それは一直線に木原幻生のもとへ向かい、直撃した。しかし。

幻生「ふふふ」

木原幻生は無傷だった。
258: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:27:41.81 ID:BMIoR+No0
垣根「あ?」

微笑んでいる幻生をよく見ると、黒いスーツが白に変わっていた。
厳密に言うと、黒いスーツの上を白い物質が包み込んでいた。より正確に言うと『未元物質』が、だ。

垣根「まーた小細工か」

幻生「さあ、かかってきなさい。こないならこっちから行くがね」

垣根「言われなくても『未元物質』を少しばかり使役できる程度の相手にビビる俺じゃねぇんだよ!」

翼をはためかせ、ロケットのように幻生へ突っ込んだ垣根だったが、見事に受け止められた。

幻生「何故この俺が止められた?って顔だな」

幻生の背中から『未元物質』の翼が生える。そしてそれは、垣根を包み込んだ。

幻生「その答えは『未元物質』だからだよ」

垣根「はぁ?」

幻生「簡単な道理の話さ。炎に炎をぶつけたって、元の炎は消えないだろう?
水に水を加えたって、水の量が増えるだけで打ち消し合うわけじゃない。
それと同じさ。『未元物質』に『未元物質』は効果がないのだよ」

垣根「俺は今日、既に『未元物質』を使う仮面20人をぶっ倒しているぜ」

幻生「あれはレベル5の時の『未元物質』を参考にした未完成のゴミだよ。
今私が纏っているモノは、レベル6になった『未元物質』を参考にした完成形なのだよ。
そしてだ。このまま君を取り込ませてもらうよ。その能力も、若い体も、かっこいい顔もね」

幻生の言っている事は、嘘ではないかもしれない。現に幻生の『未元物質』は、体に喰い込んできている。
痛みはないが、徐々に蝕まれていくのが分かる。その状況で垣根は、

垣根「馬鹿だなぁ、ジジイ」

あくまで余裕と言った調子で、そう呟いた。
259: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:29:48.86 ID:BMIoR+No0
幻生「何がだね?」

垣根「そもそも『未元物質』に『未元物質』が通じないと言う前提が間違っている。
だってそうだろ?仮面の男には通じたんだから」

幻生「だから言っているだろう?仮面のやつらは未完成だったんだ。
レベル5の『未元物質』とレベル6の『未元物質』は別物だよ。そりゃあ攻撃は通じるさ」

垣根「そうか。そこまで分かっていて、俺に勝てないってことは分からないんだな?」

幻生「世迷言を。君の攻撃を受け止め、あまつさえこうして取り込んでいるのだよ。
どう考えたって君の方が圧倒的に不利じゃないか」

垣根「じゃあ説明してやっか。俺のとテメェの『未元物質』は全くの別物だ。だから俺には勝てねぇ」

幻生「何を言っている?確かに完全に同質とまでは言わないが、現に攻撃を止め、取り込み始めることができた時点で」

垣根「そこから違うんだよ。俺の2回の攻撃は本気じゃなかった」

幻生「本気じゃないだと?殺す気マンマンだったではないか」

垣根「ああ。殺す気はバリバリあったよ。だから殺す攻撃はした。
だが本気の攻撃はしちゃいねぇ。最初っから全力を出さないで油断する。俺の悪い癖だ。改めなきゃな」

幻生「意味が分からん。殺す攻撃と本気の攻撃、どう違うと言うのだ?」

垣根「言わなきゃ分からねぇのか。まあ説明してやるけどよ。
とりあえずこのままだと、いくら別物とはいえ取り込まれちまいそうだから抜けるわ」

軽い調子で呟いた垣根は、強引に自身の翼を広げて幻生の包み込んでいた翼をこじ開け、後退して距離を取った。
260: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:31:46.20 ID:BMIoR+No0
垣根「クソジジイはよぉ、人間殺すとき、どうやって殺す?」

何が言いたいのかよく分からない幻生だったが、とりあえず答える。

幻生「そりゃあいろいろあるだろうが、拳銃で、かな」

垣根「だよな。人間殺すには、拳銃の弾丸一発、ナイフのひと突きで十分だ。
日本刀で何回も斬りつける、核兵器ぶち込む、なんてことしなくてもな」

幻生「なるほどそういうわけか」

幻生はようやく垣根の言いたい事が分かった。
垣根が今まで行ってきた攻撃は、所詮は拳銃の弾丸のような攻撃にすぎなかったのだ。
その気になれば、もっと強力な攻撃、オーバーキルが出来ると言外ににおわせている。

幻生「だが、先程の攻撃は完璧に受けとめたのだぞ。
それより強力な攻撃が出来るからと言って、私を殺せるとは限らんぞ?」

垣根「なら試してみるか?一撃で沈めてやるよ」

幻生「出来るものならやってきなさい!」

垣根「じゃ、遠慮なく」

垣根がはばたいた。幻生がそう認識した時には、垣根は既に幻生の懐に入っていた。

幻生「――!」

ぐしゃり、と生々しい音が木霊した。

垣根「無様だなクソジジイ」

上半身だけになって転がっている幻生を見下ろしながら言った。

幻生「う……あ……」

垣根「『未元物質』に『未元物質』が効かないとか、そんな戯言を言っている時点で、テメェの負けだったんだよ」

しかし幻生に言い返す気力は当然なく、多少呻いた後に事切れた。

垣根「さて、お次はどうするべきかね」
261: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:34:36.36 ID:BMIoR+No0
吹寄「喰らいなさいっ!」

脚に風を集めた吹寄は2秒で柊の手前まで迫り、脇腹狙って蹴りを放った。
レベル5が当たり前の戦いでレベル3なんて、と思われるかもしれないが、何の対策もしていなければ十分致命傷となるレベルだ。

対し柊は、冷静に数歩後退することで蹴りを回避。そして自身の能力で生み出した氷の爪を飛ばす。

姫神「制理!」

吹寄「うん!」

姫神に返事をしながら、ギリギリで氷の爪を回避し後退する。
そして吹寄と入れ替わるように、人間を包む込む事が出来るほどの大きさの炎が柊に直撃した。

吹寄「やった……わけないよね」

姫神「当然。そうだろうね」

2人の予感は的中する。柊を包み込んでいた炎は消え、彼女は超然と立っていた。
その手を包み込んでいるのは氷の爪。手首から肘の間の腕には氷の刃があった。

吹寄「氷の能力?」

姫神「みたいだね」

柊「『氷刃無爪』(アイシクルクロウ)。氷の爪や刃で相手を切り裂く」

姫神「私の。能力紹介がまだだったね。私は」

柊「いらない。どうせ『発火能力者』でしょ?」

姫神「そうだけど。私は『緋色朱雀』(スカーレットヴァミリオン)で。申請している。
ちなみに。『異能力者』(レベル2)」

柊「レベル2?さっきの炎はレベル2の大きさではなかったけど。
  ……なるほどその扇子ね。それで擬似的に風を巻き起こし、炎を大きくしているのか」

吹寄「凄い分析力ね」

姫神「そっか。制理。この勝負。勝てるよ」

吹寄「それは当たり前でしょ?この勝負、絶対に負けるわけにはいかないんだから」

柊「御託は良いから、やりましょ」
262: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:36:57.15 ID:BMIoR+No0
柊の疾走が始まった。その様は美しく、思わず見惚れるほどだった。

吹寄「姫神さん!」

姫神「真正面からとは。馬鹿にしすぎ!」

姫神は学園都市製の扇子を振るい、突風を生み出す。
さらにそこへ自身の炎をぶつけ、超小規模の火災旋風を正面から来る柊狙って巻き起こす。

柊「ふっ」

しかし柊は、鼻で笑って炎の中へ飛び込んだ。

姫神「え?」

目の前で起きた出来事に、鳩が豆鉄砲を食ったようになった姫神の顔が、直後に苦悶に歪んだ。

柊が伸ばした氷の爪の一本が、姫神の胸部に直撃したからだ。

しかしながら氷の爪は、あくまで直撃しただけであり、貫くどころか、刺さりすらしなかった。

だから柊は、炎を通り抜け姫神に止めを刺そうと氷の刃を振るおうとして、

吹寄「させない!」

たった今抜けてきたばかりの炎が渦巻いている真後ろから声。
柊は反射的に振り返り、氷の刃をクロスして吹寄の炎の両足飛び蹴りと拮抗した。

吹寄「おおおおおおおおおおお!」

柊(風に乗せて炎を纏う事も出来る……か!)

柊は少々力を込めて、吹寄を弾いた。と同時。

姫神「喰らえっ!」

喰らえ。この言葉が発せられた瞬間、柊は思考した。まず間違いなく、何らかの攻撃が来るだろう。
十中八九炎による攻撃だとは思うが、拳銃や爆弾などの可能性も捨てきれない。
もしも拳銃や爆弾なら、横へ跳んで回避すればいいだけの話だ。炎もレベル2なら一直線にしか出せないだろう。
ただ姫神には扇子がある。その扇子を使って炎を拡散出来るやもしれない。
よって氷の鎧を展開して横に跳べば、ノーダメージで切り抜けられる。

と一瞬の内にそう判断し、実行に移したのだが。

柊(なに!?)

一切の攻撃がないどころか、姫神は微動だにすらしなかった。
263: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:39:11.66 ID:BMIoR+No0
柊(何だ?ただのブラフだったのか?)

だとしても、何の意味が?一瞬ではあるが動揺した柊の下へ、吹寄が特攻する。

吹寄「おおおおおおおお!」

弾かれただけで、脚に纏っている炎が消えた訳じゃない。
吹寄は渾身の両足飛び蹴りをかますが、またしても柊にあっさりと弾かれた。

吹寄「それなら!」

弾かれ空中を舞っている吹寄は脚を振るった。
吹寄の脚に纏われていた、炎が乗った風が柊目がけて飛んでいく。

柊「ふん」

ザン!と、柊は至って冷静に氷の刃で炎を斬った。斬られた炎が、ちりちりと虚空へ消えて行く。

吹寄「まだまだ行くわよ!姫神さん、炎を頂戴!」

姫神「うん」

左手から炎を出し、吹寄に向かって放つ。吹寄はそれを脚で受け止め、纏った。

柊「またそれか。芸がないわね」

吹寄「あなただって、氷の爪と刃の一辺倒じゃない?」

柊「なら、見せてあげるわよ」

不敵に微笑んだ柊は、両手を地につけた。
瞬間、吹寄達を貫くべく、柊の方の地面から氷の針が連続で飛び出した。

吹寄「くっ!」

地上に居ては貫かれるだけ。吹寄は面食らいながらも、何とか後退し姫神を抱えて空中へ避難した。
264: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:41:51.15 ID:BMIoR+No0
柊「降りてきなさい」

吹寄「そう言われて、はいそうですかって言う馬鹿いると思う?」

柊「なら死ね」

言いながら柊は両手を振るった。
その軌道からいくつもの氷の礫が生み出され、吹寄達の下へ向かう。

吹寄「しっかり掴まっていてよ姫神さん!」

姫神「うん!」

姫神の力強い返事と同時、吹寄が空中を駆けだす。
なおも連続で放たれる氷の礫を、吹寄達は紙一重で避けていく。

柊「埒が明かないな……」

これ以上は能力の無駄だと悟った柊は、両腕を大きく振るった。
両腕の氷の刃がブーメランとなって発射される。

吹寄「そんなに大きいなら、わざわざ避けるまでもないわね!」

ゴッ!と、氷のブーメランを蹴り返す。
しかしながら、柊は跳ね返されたブーメランをいとも簡単に避け、両腕を大きく2回振るう。
すなわち、4枚の氷のブーメランが発射されたと言う事。

吹寄(負けてたまるか!)

吹寄は2枚のブーメランを避け、2枚を蹴り返す。当然、柊はそれを避ける。

姫神「制理!後ろ!」

吹寄「え?」

姫神が注意を喚起し、吹寄が後ろを振り返った時はもう遅かった。
2枚のブーメランが彼女らに直撃した。その一撃で昏倒しかけた吹寄と姫神は、地面へ落下していく。

柊「終わりだ」

両手を地につける。吹寄らの落下地点に氷の針山を生み出す。

吹寄「な、めるなーーーーー!」

針山まであと数cmと言うところで、吹寄が気合で持ち直し姫神と共に再び上昇した。
265: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:45:25.50 ID:BMIoR+No0
吹寄「はぁ、はぁ」

柊(粘るな……そもそも、ブーメランで切り裂かれていないこと自体おかしい。
  あの地味なほうの女の胸に一撃与えた時もそうだ。本来ならば貫かれていなければおかしい。
  これらから導き出せる答えは、あの女達はジャージの下に、丈夫な学園都市製のジャケットを着込んでいる)

だが決してノーダメージではない。手はいくらでもある。さて、次はどうしようかと、柊は思案し始める。
一方、姫神達はと言えば、

姫神「制理。このままじゃ。ジリ貧。ここらで一気に。攻勢に出るべき」

吹寄「そうしたいのは山々だけど。もう“いける”の?」

姫神「まだだけど。さっきの一撃で分かったはず。このままじゃ。やられる」

吹寄「そんな事言ったって、地上には氷の針山がある。私はともかく、姫神さんはどうしようも……」

姫神「大丈夫。考えならある。私をあの女のところに。投げて」

吹寄「何をする気なの?」

姫神「打ち合う。あの女の近くなら。針山攻撃は出来ない。なぜなら。あの女自身も傷つくから」

吹寄「それはそうかもしれないけど……姫神さんにあの人とまともに打ち合う事は出来ないわよ」

姫神「出来る出来ないじゃないよ。やらなきゃ。やらなきゃやられる」

吹寄「冷静になって姫神さん。そんな事ないわよ。
主に地上戦が得意そうな相手に、無理に地上で戦わなくてもいいじゃない。
私達が空中に居る限りは、相手だって決定打を与える事は出来ないわよ」

姫神「でも。さっきも言った通り。このままでは。ジリ貧。決定打はなくとも。
徐々に追い詰められ。最終的には。やられる」

吹寄「でも、たとえその通りだとしても、何も無茶する事は――」

姫神「無茶せずに……無茶せずに勝てる相手じゃないよ」

吹寄の言葉を遮って、切実な調子で姫神は言った。

吹寄「でも……」

姫神「大丈夫だよ。あの女も。薄々気づいていると思うけど。私達は。かなり丈夫な。ジャケットを着ている。
ちょっとやそっと切り裂かれた位では。死にはしない」

まあ大ダメージは。避けられないと思うけど。と姫神は真剣な調子で続ける。

姫神「だから。私を信じて」

吹寄「……分かったわ。私も、出来るだけのサポートをする」

姫神「うん」
266: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:46:48.46 ID:BMIoR+No0
吹寄「おおおおお!」

先にアクションを起こしたのは吹寄ら。空中から姫神を柊へ投げ飛ばす。

柊(何を考えているかは知らないけど、得意の接近戦をしてくれるのなら、こっちとしても好都合!)

左の氷の刃が、姫神の首目がけ振るわれた。それで終わる筈だった。

ガキィン!と姫神の扇子が氷の刃を受け止めなければ。

柊「へぇ。その扇子、丈夫さも兼ね備えているんだ」

姫神「正々堂々。一騎討ち!」

姫神は右手に持った扇子を振るう、振るいまくる。
柊はそれを爪と刃で払う、払いきる。

柊(わざわざ接近戦を挑みにきたから、実は相当な体術を心得ているのかと思えば、闇雲に扇子を振るうだけ。ヤケクソか!)

刃を思い切り振るって、扇子を払いのけた。それで姫神は大きく仰け反り、胴体がガラ空きとなる。

柊「死ね!」

そして首目がけて、刃を振るう。ヒュオッ!と刃は空を切った。

柊(ド素人に私の攻撃が避けられた?)

驚きで目を見開く柊をよそに、姫神は薄く微笑んで、

姫神「首狙いが。分かりやすすぎる。いくら素人の私でも。そこまであからさまだと。避けられるよ」

挑発した。
267: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:49:06.16 ID:BMIoR+No0
柊「なめるなよド素人が!」

柊の目の色が変わった。今まであしらうような防御姿勢だったが、一転攻撃態勢に移行。
怒涛の攻撃で、着実にダメージを与えていく。しかし姫神は、その中でも意外と冷静に分析を行っていた。

姫神(確かに。一撃一撃の。重みは増した。だけど)

攻撃はそれに比例するように大振りになり、粗も出始めていた。
そして柊が一段と大振りになったその時、

姫神(そこ!)

左手の炎の掌底が、柊の大きめな胸の中心に叩きこまれた。
だが所詮はレベル2の一撃。とてもじゃないが致命傷には程遠い。

柊「そんな攻撃、無意味なのよ!」

ドゴォ!と、姫神の鳩尾に蹴りが叩きこまれた。思わず屈みこむ姫神の頭上で、柊は右手を振り上げる。
首を刎ねるのではなく、脳天から真っ二つに引き裂く為に。

吹寄「私も居るっつーの!」

その柊の頭上にかかと落としを叩きこむべく、吹寄が右脚を振り下ろした。
それは柊がサイドステップをして距離を取ったことで虚しく空を切ったが、その後も吹寄は果敢に柊に挑んでいく。

柊「雑魚のくせに……しつこい!」

柊は右脚を軸に、わずかではあるが駒のように回転して、吹寄を弾き飛ばした。

吹寄「くっ……これはどうだ!」

めげない吹寄は一度空中に跳んで、足のつまさきを先端としてドリルのように回転し始めた。

吹寄「おおおおおおおおお!」

回転は激しさを増して、柊へと向かって行く。

柊(毎回毎回奇声を発しながら突っ込んでくるの、気持ち悪いのよ!)

心の中で毒づきながらも、柊は吹寄に対して背を向けて逃げ出す。

柊(受けて立つ必要性はない……)

ドリルのように横回転している吹寄が、逃げ回る自分を方向転換しながら追いかければ酔うのは明らか。
無理に迎え撃たなくても、すぐに砂利だらけの地面に転がって、勝手に擦り傷だらけになってくれる。

柊(無様に自滅してしまえ!)

しかし吹寄は柊の予想を超えた。吹寄の回転は衰えず、追跡も終わらない。

柊(くそっ……かれこれ3分ぐらいは粘っているぞ……)

もう受け止めてしまおうか、という考えが一瞬頭に過ぎるが、

柊(いや、ここまできたら意地だ。逃げ切って、後でゆっくりぶち殺す)
268: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:51:51.41 ID:BMIoR+No0
それから2分が経過した。さすがの吹寄も酔いが回り、いよいよ軌道がフラつき地面に落下し、転がった。

吹寄「おえぇ!」

ビチャビチャ!と、吹寄は耳を抑えながら蹲まって吐瀉物を撒き散らした。その背後には、既に柊が立っていた。

柊「よく粘ったわね。でも、ここまでね」

そうして氷の刃を振り下ろそうとした時、吹寄のジャージのポケットから、スタングレネードが零れおちた。

柊「な――」

柊が氷の刃を振り下ろす前に、それは轟音と刺激的な光を撒き散らして、彼女の目と耳を潰した。

柊「うぐあああああ!」

吹寄(もらった!)

横からではなく突くような蹴りを、柊の腹部目がけて繰り出す。

柊(負けるかっ!)

目と耳を潰された柊には、吹寄の蹴りは見えないし、音も聞こえない。
でも彼女達にとってみればこの絶好のチャンス、攻撃しないわけがない。
だから柊は、棘だらけの氷の鎧を即席で纏った。

ガキャリ!と案の定やってきた蹴りを受け切った。
だがそこに違和感。蹴りとは普通、薙ぎ払うように横から来るものではないか?
真正面から来る蹴りが、奇策と言うほどおかしい事でもないが。
と、思考していた柊だったが、答えは直後に身を持って知る。

直撃した吹寄の足の裏から、槍のような風が発射され、柊は20mほど地面を転がった。
269: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:54:23.36 ID:BMIoR+No0
柊(くそっ……)

氷の鎧を纏っていたし、一点集中とは言え疲れきっていての一撃だったので致命傷にはならなかった。
だがそんなことは当然彼女達も分かっているはず。何らかの追撃があるに違いない。

わずかではあるが戻った視力で、砂利を飛ばす為に左脚を振るっている吹寄を捉えた。

柊(その程度で……仕留められると思うな!)

両腕を振るって氷の礫を飛ばす。ドドドドド!と礫と砂利は相殺した。

柊(まずはあの巨乳から!)

氷の刃をブーメランのように放つ。
酔いが回って擦り傷だらけで満身創痍の吹寄には、避けられるほどの体力は残っていないはずだ。

そんな柊の予想通り、吹寄は避ける素振りを見せなかった。直撃まであと1m。

柊(勝った!)

と、柊は純粋に思ったのだが、スパン!と氷のブーメランが切り裂かれた。
そして潰れているはずの耳には、しっかりと届いていた。

姫神「ありがとう制理。もう大丈夫だよ」

力強い、姫神の声が。

柊「な、にが……」

姫神「これで。終わり」

再び姫神の声が耳に届いた。
と同時、ゴバァ!と柊の体を竜巻が包み込んだ。

柊「がああ!(こ、これは)」

小規模ではあるが、竜巻に飲み込まれた柊は、そこから抜け出せない。
この状況で炎を喰らえば、いくらレベル5の氷とはいえ溶かされ致命傷は避けられない。

柊(くっ……そ)

思えば、姫神の行動にはおかしいところがいくつかあった。
最初の方の2回の攻撃以外、頑なに扇子を振るわなかった。
わざわざ弱弱しい炎で攻撃するし、接近戦を挑んだときだってそうだ。
あの近距離で扇子を振るえば、多少なりともダメージになったはずだ。
にもかかわらず、振るわなかった。

これだけ不自然な点があったのに、なぜ自分は気付かなかったのだろう。
扇子には色々な機能があって“風を溜める事が出来る”という可能性に、気付く事が出来なかったのだろう。
だが後悔したところでもう遅い。

姫神「能力を全力で使用すれば。多分。死にはしない」

姫神の左手から、人間の顔3つ分ほどの大きさの炎が放たれる。

柊「うがあああああああああああああ!」

柊が断末魔の叫びをあげたと同時、竜巻に炎が加えられた。
それは高さ30mほどの火柱となって、柊の体を炙った。
270: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:56:06.42 ID:BMIoR+No0
姫神「大丈夫?」

吹寄を抱えながら、尋ねる。

吹寄「大丈夫に決まっているじゃない。姫神さんが助けてくれたんだし。姫神さんこそ、大丈夫?」

姫神「うん。制理が頑張ってくれたからね」

吹寄「ふふふ」

姫神「あはは」

思わず笑みがこぼれる2人の耳に、シュウウウウウウ!と水が蒸発するような音が届いた。その音源は火柱からだ。

吹寄「まさか……」

姫神「死にはしないけど。もう戦えませんっていうのが。ベストだったんだけど」

火柱は既に鎮火されていた。2人の目に映るのは、火傷や血だらけになっていながらも、仁王立ちしている柊だった。

柊「よくも……やってくれたな……」

一歩、また一歩と柊が近付いてくる。

姫神「仕方ない。もう少しだけ。痛い目を見てもらおう」

立ち上がり、柊の顔面狙いの左手から炎を放つ。ボッ!と炎はあっさりと直撃した。

柊「殺す……」

しかし柊は止まるどころか、歩調を早めた。右腕を氷柱型の氷が包み込んでいる。

姫神(これは。まずいかも)

そうして二撃目の炎を放とうとしたところで、

柊「……死ね!」

急に駆けだした柊の右腕の氷の槍が、姫神向かって放たれた。

姫神「くっ」

不意打ちの一撃を、扇子で何とか受け止める。
が、直後にピキピキと扇子が凍りだし、挙句破壊され、胸の中心を穿たれた。
271: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:58:07.02 ID:BMIoR+No0
姫神(あ……ふ……凍らせて。砕いたのか……)

まだそこまでの繊細な演算が出来るとは恐れ入る。
だがここまできて、ただでやられるわけにはいかない。

姫神「お願い。辛いと思うけど。制理!」

柊を逃がさない為に、氷の槍を掴む。掌から炎を出し続ければ、凍らされる事はないはずだから。

吹寄「あああああああ!」

吹寄だって満身創痍だ。戦うどころか立ち上がるのすら辛いはずだ。それでも応えてくれた。

吹寄のわずかに風を纏った右脚が、柊の左脇腹狙って放たれる。
対し柊は、わずかに氷で覆われた左手でそれを迎え撃つ。

ゴキャリ!と右脚と左手、双方から嫌な音が鳴った。

吹寄「く、おおおおおお!」

柊「っ、あああああああ!」

吹寄は使い物にならなくなった右脚を引っ込め、左脚を繰り出そうとしたが、右足で踏みつけられて妨げられた。

柊「終わりだ!」

脛の辺りに氷の刃を生やした柊の左脚が、吹寄の右脇腹目がけ放たれる。
右足で踏みつけている以上、かわすことはできない。

グシャア!と吹寄の右脇腹に柊の左脚がクリーンヒットした。
しかし吹寄は揺るがず、しっかりと両手で左脚を掴んだ。

柊「くっ、放せっ!」

柊は体を揺らして抵抗するが、右手の槍を姫神に掴まれ、左手は潰れ、左脚を掴まれ、
そんな状態で吹寄から抜け出せない。

姫神「決めちゃって。制理」

吹寄「もちろん」

柊(決めちゃって、だと……)

もうなんか、2人とも悟ったように薄く微笑んでいた。
自分が追い込まれているのは事実であるが、それは彼女達にも当てはまる。
この状況からどう決めると言うのか。と、そんな事を思考していたら、グイッ!と左脚を引っ張られ、前につんのめり、

吹寄「両手両足使えなくなったら、これしかないでしょ」

ゴガァ!と吹寄の広めの額が柊の額にクリーンヒットした。
その痛烈な一撃で、柊は白目をむいて地面に崩れ落ちた。
272: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 09:59:26.25 ID:BMIoR+No0
姫神「やったね。制理」

吹寄「本当、やればできるものね」

と、吹寄はドサリと尻餅をついた。

吹寄「それにしても、あの火柱をどうやって耐えたのかしらね」

姫神「それは多分。耐火性のジャケットか何かを。着こんでいたんだと思う。
それにレベル5の氷が合わされば。耐えられるのも。不思議ではない。
もともと。ギリギリ殺さないように。ほんの少しだけど。手加減もしていたしね」

吹寄「……姫神さんって、意外と頭いいわよね」

姫神「……意外と?」

吹寄「あ、いや、そんなつもりで言ったんじゃ」

姫神「冗談だよ。冗談。それより制理。そろそろ私の事を。名前で呼んでくれても。いいのではないでしょうか」

吹寄「何で敬語?……そうね。改めてよろしく、秋沙」

姫神「うん」

「そんな呑気にしていていいんですかね」

強敵を倒して生まれた楽観的ムードを引き裂く様に、彼女達の前に新たなる刺客が現れた。
273: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 10:00:52.27 ID:BMIoR+No0
削板「『二重魔法陣の衝撃』(ダブルスペルインパクト)!」

魔法陣2枚分の衝撃波が、シルビアの衝撃波など軽々と食い破り、逆に彼女に襲い掛かる。

シルビア「それじゃあ、届かないわよ」

シルビアの前に中学生くらいの少年が躍り出る。彼女の盾になるように。

プシュウウウウウ!と削板の衝撃波が拡散された。

削板「お?」

シルビア「『衝撃拡散』で衝撃波を拡散しただけだよ。分かる?もう衝撃波攻撃、いや物理攻撃は効かないんだよ」

削板「何だそう言うことか。だったら、拡散しきれない衝撃波をぶつければ良いだけじゃねぇか」

シルビア「そう思うなら、やってみればいいじゃない?」

削板「言われなくてもいくぜ!『六重魔法陣の衝撃』(ヘキサスペルインパクト)!」

魔法陣6枚分の衝撃。単純に考えて先程の3倍の威力。

シルビア「ふふ」

余裕の笑みを崩さないシルビアの前に、今度は中学生くらいの少女が2人、彼女の前に躍り出る。
ズドゴォォ!と魔法陣の衝撃波が跳ね返された。

削板「おお?」

疑問を露にしながらも、跳ね返された衝撃波はきっちりと避けた。
274: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 10:02:11.77 ID:BMIoR+No0
シルビア「ま、魔法陣の衝撃波攻撃は直線的だものね。かわすのは比較的難しいことじゃない」

削板「仕方ねぇ。もっともっと強力な、根性ある一撃を放つっきゃねぇか」

シルビア「待って。不毛な戦いは止めましょう。これ以上は疲れるだけだよ?」

削板「俺はスタミナと根性には自信あるんだが?」

シルビア「あのさぁ、今衝撃波跳ね返されたばっかじゃん。それで分かんないの?君の衝撃波対策は万全なんだよ?」

削板「いーや、俺の衝撃波が足りなかっただけだね」

シルビア「あのね、君が魔法陣を最大8枚まで並べて顕現させる事が出来ることは分かっているんだよ?
  それを見越したうえで、準備万端だって言っているの。
  さっきオッレルスを倒した時のやつは、避けられない為の広範囲攻撃だから、一点に固まって冷静に防御すれば問題ないしね」

削板「おいおい。超能力者か?」

シルビア「超能力が当たり前の学園都市で何言っているの。私の『予知能力』のすごさ、分かったでしょ?」

削板「分かったけど、俺が退く理由にはならねぇなぁ」

シルビア「そうね。もう私の能力の凄さを説いても意味ない気がする。だから、彼らの素晴らしさを説くことにするわ」
275: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 10:04:51.89 ID:BMIoR+No0
削板「いや、必要ないん」

シルビア「まずね。あなたの攻撃を拡散させる『衝撃拡散』が3人。この人達は衝撃を増幅させる事も出来るの」

削板の言葉を遮って、シルビアは続ける。

シルビア「でね、さっきの反射した2人が『衝撃反射』(ショックリフレクト)。言葉通り、あらゆる衝撃を反射するのね」

削板「そうか。んじゃあ」

シルビア「で、極めつけは残りの2人。『衝撃吸収』(ショックドレイン)って言って、衝撃を吸収するの。
  吸収するだけじゃなくて、吸収した衝撃を放出する事も出来るの」

削板「もう分かったから、それじゃあ」

シルビア「てことはね。
  衝撃を増幅させる事も出来る『衝撃拡散』が『衝撃吸収』に攻撃して、衝撃を吸収させる事が出来る訳よ。
  つまり、永久機関の完成。そして防御は『衝撃拡散』と『衝撃反射』がやってくれる。
  この完璧な布陣、崩せるかしら?」

削板「うーん、よく分からねぇけど、根性出しきるだけだな」

シルビア「はぁ。これだけ説明しても分からないの?簡潔に、たった1つの答えを教えてあげる。
  “今の君”じゃ、どうやったって勝てやしないよ。物理攻撃は効かないからね。
  炎とか電撃とか、エネルギーでしか私達は倒せない」

削板「関係ねぇよ。根性で何とかする」

シルビア「この分からず屋が。もういい。やっちゃいなさい」

シルビアがそう命令すると高校生ぐらいの少年、『衝撃吸収』の2人が彼女の前に躍り出て、両手を前に突き出した。
同時、

ゴバッ!と壮絶な衝撃波が発射された。

削板(避け――られねぇなぁ!)

避けられる一撃を、あえて真正面から受け止めたくなったとかではない。
超強力かつ超広範囲の衝撃波が迫ってきている。迎え撃つしかない。
目の前に8枚の魔法陣を並べて顕現させ、それを殴り飛ばす。

削板「『八重魔法陣の衝撃』(オクタスペルインパクト)!」

魔法陣が壊れ、衝撃波が放たれる。魔法陣8枚分の衝撃は、一点集中型の攻撃の中では削板の最強技。
つまり、これが破られれば削板の攻撃は全て通じない事になる。

最強の衝撃波と究極の衝撃波がぶつかり3秒ほど拮抗するが、最終的には『衝撃吸収』の衝撃波が食い破り削板に向かう。

削板「ちっ!」

舌打ちをしながら、自身の身長と同じくらいの魔法陣を目の前に3枚ほど顕現させる。ガードの為だ。

しかし衝撃波はそれすらも簡単に食い破り、削板にぶつかった。

削板「ぐおっ!」

喰らった衝撃波により数十mは吹き飛ばされるが、地面をスライドする事によって倒れる事はなかった。
276: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 10:05:58.41 ID:BMIoR+No0
削板「ふぅ」

溜息をついて背中から地面に倒れ、大の字で仰向けになった。

削板(参ったなオイ。攻撃は悉く通用しねぇし、もう疲れたし)

諦めた訳じゃない。諦めた訳じゃないが、どうしても勝つ方法が分からない。
一旦退くか?いや、そんな根性のない事は出来ない。

削板「……俺1人じゃどうしようもねぇな」

一方、倒れている削板の様子を見ていたシルビア達は、

シルビア「どうやらようやく諦めたようね。最後の引導は私が渡してくる」

柄しかない剣を地面に向けて、風を放つ。
シルビアはロケットのように浮かび上がった。削板を真上から刺す為に。

削板は数十m真上にシルビアを見た。柄しかない剣は下に向けられている。このまま倒れていたら殺される。

シルビア「さようなら」

大気を放出から、刃の形へ変更。シルビアの自由落下が始まり、隕石の如く削板へ突っ込んでいく。

ゴドン!と風の刃が地面に直撃し、莫大な煙が発生した。
277: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 10:11:42.90 ID:BMIoR+No0
シルビア「……避けられた」

今のを喰らっていれば楽に死ねたのに。八方塞がりな事に変わりはないのだから、諦めてさっさと死ねよ。
そんな事を思っているシルビアの数m横で、

削板「もしもし、ちょっと根性あるアドバイスが欲しい」

呑気に携帯で電話をかけていた。

雲川『何だ?今の私は、軍覇達の行動を把握しきれていないのだけど』

削板「んーとなぁ、俺の攻撃が全て通用しない。どうやったら勝てる?」

説明もへったくれもなかった。
今の発言を聞いて常人なら「もうちょっとくわしく……」とか「逃げるしかないんじゃね?」とか、
とにかくまともなアドバイスは出来ないだろう。
しかしながら雲川芹亜という少女は、削板と幼馴染であり、恋人であり、彼を理解している彼女は、
まともな説明は期待していなかった。そして論理的な説明をしたって理解してくれないのも分かっている。
だから彼女は、簡潔に言った。

雲川『攻撃が通用しないとはつまり“今の軍覇”ではどうやったって勝てない訳だ。
なら話は簡単だけど。強くなればいい。この戦いで進化して、新技を編み出す。
たったそれだけのお話さ。簡単だろう?』

こんなアドバイス、常人なら「ふざけんな」となっているだろう。しかし削板軍覇という少年は、常人ではない。

削板「……そっか。ありがとう芹亜。おかげで勝てそうだ」

雲川『当たり前だけど。軍覇には私とイチャイチャして、結婚して、子供を授かって、幸せな家庭を築き、
私と子供と孫に看取られて大往生するという義務がある。死ぬのはもちろん、負けることすら許さないけど』

削板「もちろんだ。けど、俺の方が長生きする。俺がお前を看取る。最愛の人を失う悲しみを、お前には味あわせない」

雲川『……バカ。私だって、軍覇に失う悲しみを味あわせたくない。先に死ぬのはお前だ!』

削板「いーや俺の方が根性で長生きするね。200歳まで生きるもんね!」

雲川『だ、だったら私は300歳だけど!絶対絶対ぜーったい私の方が長生きしてやるし!』

削板「いーや俺が――」

シルビア「おーまえらあー!」

通話の内容がわずかながらに聞こえていたシルビアがぶちぎれた。
理由はいろいろある。戦闘中に電話をかけていたり、呑気に会話していたり、挙句の果ての惚気。
そして進化して勝つなど、もう発言のすべてがムカつく。

シルビア「行くぞ皆!このムカつく馬鹿どもをぶちのめす!」

削板「なんかキレているみたいだから切るわ」

雲川『うん。愛している』

通話が終わり、戦いは最終局面へ。
278: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 10:15:53.34 ID:BMIoR+No0
シルビア「『衝撃拡散』は『衝撃吸収』に攻撃しまくって衝撃を溜めろ!次で確実にぶちのめす。
  『衝撃反射』と余りの『衝撃拡散』は私の周りにつけ。最大まで大気をチャージする。
  それまでお前らは防御だ」

シルビア達はあえて動かず究極の一撃の為のチャージの段階に入った。
それが意味する事は、ジタバタしなくても勝てる。というシルビアの宣戦布告。

削板(あの女を狙っても、衝撃を溜めているところを狙っても、どうしようもないか)

やはりこの状況、セオリー通りなら逃げるか、ジタバタせずに体力回復を図るか。
どの道闇雲に攻撃をする事だけは有り得ない。さすがの削板にもそれは分かる。
だからと言って、逃げる気も更々ないが。

削板(あの女も芹亜も“今の俺”じゃあ勝てないと断言している。
勝つには進化して新技を編み出すしかない……)

無い頭を振り絞って、削板は考える。

削板(……待てよ。あの女、確か炎や電撃などのエネルギーでしか倒せない。と言っていたな)

つまり裏を返せば、炎や電撃などのエネルギーならば、倒せると言う事。

削板(だが今の俺では、そんな技は出来やしない……けど、過去の俺は)

『念動砲弾』という、まあ端的に言えば衝撃波攻撃とか、殴るなどの物理攻撃。
過去の自分も今の状況では勝てない。と思ったが、よくよく思い出してみると、

削板(あれ?確か俺、爆発も起こしてなかったっけ?)

そうだ。事あるごとに背中に七色の爆発を起こしていた。それも衝撃と言えば衝撃だが、火力も伴っている。

削板(つまり、それが起こせりゃあ――)

この勝負、勝てる!

削板(――けど、あの時は漠然と力使っていたからなぁ。まあ今もだけど)

削板はある意味天才的な人間だ。IQと言う意味では点で駄目だが、戦闘センスがずば抜けている。
故に戦闘に関しては、あまり考えた事がない。どうすれば勝てるとか、どうすれば攻撃を避ける事が出来るとか。

削板(なんとなくでは、駄目なのか)

考えるときに来ているのかもしれない。とは言えそんなに時間もない。せいぜいあと2分ぐらいではないか。

削板(そう言えばアイツら、大事なのはイメージって言っていたな)

魔術を教わったフィアンマとヴェントを思い浮かべながら、彼らに言われた事を思い出していた。
例えばフィアンマなら、炎を出すとき、頭の中で炎をイメージしていると言う。

削板(イメージか……考える余地もなく、やるっきゃねぇよなぁ)

かつて爆発を起こしていた。という事で炎をイメージしてみる。せっかくだからシルビアが言っていた電撃も。
279: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 10:19:20.19 ID:BMIoR+No0
シルビア(さっきから仁王立ちしているが、結局諦めたと言う事で良いのか?)

もうあと10秒もすれば、チャージは完了する。『衝撃吸収』の方も、もう充分だろう。

シルビア「皆、10秒後発射するからね!」

削板(10秒か……)

10、9、とシルビアのカウントが始まるが、どうせ超広範囲攻撃が来るだろうからジタバタしない事に決めた。
だからと言って正面から受け止めるのも芸がない。

削板(イメージしろ……)

魔術とは『才能の無い人間がそれでも才能ある人間と対等になる為の技術』である。
それを使役するのには、色々な手順を踏まなければいけない。
イメージする事は確かに重要ではあるが、今までできなかった(もしくはしなかった)ことを、
イメージすればいきなり出来るようになるほど、魔術は甘くない。
そんな事は、さすがの削板も理解している。だがそれでも。

削板(――やるしかない。大丈夫だ。絶対に出来る!)

削板が、頭の中にあるイメージを浮かべた、その時だった。

シルビア「3、2、1、発射ぁ!」

カウントが終わり、シルビアの柄しかない剣から膨大な風が吹き荒れ、『衝撃吸収』の両手から衝撃波が放たれ、合わさった。
超広範囲、超強力なその衝撃波は喰らえば即死だ。おそらく欠片も残らない。
先程のは自身の衝撃波とガードで大分弱っていたから耐えられたが。

削板「俺も行くぜ!空に!」

ドッゴォン!と削板の足下から爆発が起きた。その勢いで彼は100mほど真上に跳び上がる。

シルビア「えええええ!」

シルビア達の衝撃波は扇状に広がり高さは30mほどだ。到底避けられるものでも、受け止められるものでもないはずなのに。

削板「今度はこっちの番だっー!」

削板の両腕を青い炎が覆う。そしてジャブを打つように連続で突き出す。
ボボボボボ!と覆われていた青い炎の一部が連続で放たれ、流星群のようにシルビア達に降り注ぐ!

シルビア「……終わった」

たった今書き換えられた未来を予知したシルビアは悟った。
この勝負、勝てない。それどころか、逃げることすら叶わないと。

降り注ぐ青い炎が地面に直撃した煽りで、所詮は衝撃に対抗できるだけで特に動けもしない7人の男女は倒れた。
シルビアだけは足掻きで煽りを避けるが、

削板「終わりだぁぁぁ!」

いつの間にかシルビアの後ろに立っていた削板は、電撃を纏わせた右拳を繰り出した。
一応反撃は出来たが、どうせやられると分かっていたシルビアは、甘んじてその拳を喰らった。
その一撃でシルビアはノックアウト。勝負は決した。
280: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 10:20:00.04 ID:BMIoR+No0
削板「ふぅー」

滅茶苦茶疲れた。今すぐにでも休みたいところだが、そうも言っていられない。
まずは8人を回収して増援に行かないと。

削板は魔道書を持って、シルビアにかざそうとしたところで、魔道書が震えている事に気付いた。

削板「ん?……まあ、いいか」

構わず魔道書をかざす。と同時、

削板「おわぁ!」

魔道書から黒い影が飛びだした。
281: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 10:21:31.03 ID:BMIoR+No0
所詮は少女の拳。結標が放ったそれは、青髪の掌にあっさりと受け止められた。

結標「くっ!」

結標はすぐにテレポートして体勢を立て直して、もう一度アタックを仕掛けようとして、

青ピ「させへんよ」

青髪が彼女の体を引き寄せ、抱きしめた。

結標「あふ……」

恋焦がれている彼氏に抱きしめられた嬉しさで、頭が空白になった。組み上げた計算式が吹っ飛んだ。
しかしすぐさま切り替え、テレポートしようとした時には遅かった。

体が『洗脳操作』に支配され、動かせない。

結標「下衆な真似をしてくれるわね……!」

嬉しさで頭が真っ白になったその一瞬。
その一瞬で『洗脳操作』が結標の体を支配したのだ。これでテレポートもできない。
厳密に言えば使えない訳ではないのだが、使うのは得策ではない。
たとえば『窒素装甲』なら、体が動こうが動かなかろうが、窒素を纏って害はない。
しかしテレポーターには弊害が発生する。
体が動かなければ、たとえば上にテレポートすれば通常なら着地できるところを、受け身も取れずに地面に落下することになる。
他には、基本的にテレポーターは自由度の高すぎる能力に基準をつけるため、使用する際に何らかの動作をする事が多い。
結標なら、現在は行っていないが軍用懐中電灯を軽く振るっていた。
白井黒子は金属矢をテレポートする時腕を振るう。その方がイメージしやすいからだ。

青ピ「すまんな淡希。手荒な真似はしたくないから、こうするしかないんや」

結標「何が手荒な真似はしたくないよ。4月8日、私の水筒に薬を仕込んだのはどこの誰だったかしら?
……いつまで抱きしめているつもり?さっさとその汚い体を離しなさいよ」

思っている事と正反対の言葉で、しかも追い詰められているにもかかわらず強気で口汚く青髪を罵る結標。

青ピ「本当に悪いと思っている。これには理由があるんや」

言いながらも、青髪は結標の言う事に素直に従って、彼女から少し離れた。

結標「理由がある?理由があったら彼女を傷つけて良いと思っているの?世界を滅亡させていいと思っているの?」

ここぞとばかりにたたみ掛ける結標だったが、その返答は意外なものだった。

青ピ「いいわけ……あらへんよ」

自身にも食蜂にも否定的な返答。

結標「え?」

青ピ「だから、理由がある言うてるやろ。それを聞いてほしい」
282: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 10:24:01.35 ID:BMIoR+No0
青ピ「せやなぁ。まず僕の返事で分かったと思うけど、僕は操られていないんや」

結標「……そう」

青ピ「意外と驚ろかへんねんな」

結標「だって、洗脳されていないと初めから思っていたもの。だからこそ、食蜂に協力しているあなたに憤っていたのよ」

青ピ「その割には、僕の返答に少し困惑していたやないか」

結標「演技を続けるかと思っていたから、素直な返答に戸惑っただけよ。
状況を打破する考えが浮かぶまでの、時間稼ぎのつもりだったのだけどね」

青ピ「どうやって、いつ気付いたん?」

結標「初めからって言っているでしょ。
自分が洗脳されていたという事実を知覚した、つまり洗脳が解けた瞬間から。どうやっては、騙されたからよ」

青ピ「騙された?薬のことかいな?」

結標「そうよ。4月8日の朝、あなたは男子禁制の女子寮まで来て、お弁当を作ってくれた。
でもね、かつて仮にも暗部に身を置いていた私は、一般人よりは勘が優れているつもりだし、
人間が洗脳されているかどうかぐらい分かる。
けれど、あなたにはそういう異常が見当たらなかった。
だからこそ、弁当と水筒に不信感を持たず、まんまと騙された」

青ピ「つっちーから連絡来なかったん?」

結標「来なかったわよ。なぜかは知らないけど、おそらく、私を心配してなのでしょうね。
あなたは洗脳されている。という事実を私が知れば、錯乱するとでも思ったんじゃないかしら」

青ピ「ふーん。つっちーなら、もっといい選択が出来たと思うけどなぁ」

結標「アイツだって動揺していたんでしょ。そんな事より、その理由とやらを聞かせなさいよ。
良い訳ないと分かっていながらも、彼女を傷つけ、食蜂に協力するだけの理由を」

青ピ「言葉責めにも程があるやろ……そうやな。
間違っていると分かっていながらも食蜂に協力する理由、
それは、彼女の考えに同意できる部分があるのと、僕の恩人だからや」
283: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 10:27:48.05 ID:BMIoR+No0
結標「恩……人?」

青ピ「そう。恩人や。彼女のおかげで、僕は救われた」

結標「どういう……意味?」

青ピ「それを説明するには、僕の過去を紐解く必要がある。
僕はね、実を言うと『置き去り』で5歳のころから学園都市に身を置き、
様々な実験のたらい回しにされ、小学4年生の時点でレベル5となった」

結標「……」

青ピ「それで、僕は酷く寂しがりやでな。どうしても友達が欲しかった。
だから能力使って研究者達と真っ向から対立した。僕を研究したかったら、学校に通わせろってね」

何となく、この時点でこの話の結末が分かった。
高位能力者なら高確率で歩む道が、容易に想像できる。

青ピ「でな。あっさりと通学の許可は下りた。そして意気揚々と登校した。
ここまでは良かった。いざ学校生活が始まると、レベル5の僕に友達なんて1人として出来なかった。
高位能力者の淡希なら、少しは経験したんじゃないかと思う。力があるがゆえに起こる弊害。
僕は強力な能力によって妬まれ、疎まれ、畏れられ、避けられ、媚びられた」

そうだ。全員とは言わないが、高位能力者の大概はそうなる。
レベル4だった結標ですら、友達はなかなかできなかった。それがレベル5なら、尚更だろう。

青ピ「それだけやない。妬みが、実行に移された。つまり、いじめや。
僕はいじめられた。でも、やり返す事は出来なかった。皆を傷つけたくなかったから」

結標「いじ、め……」

さすがの自分でも、いじめはなかった。やさぐれて刺々しかった態度を取っていた為、報復を恐れたのかもしれない。
だが彼は違ったのだろう。皆と友達になりたいがために、必要以上に優しく下手に出たのだろう。
そのせいでなめられたのだろう。レベル5が反撃すれば相手を傷つけるどころか殺してしまうかもしれない。
つまり反撃できない事をいいことに、いじめが起こったのだろう。

青ピ「それでも僕は考えたよ。でも、どうしても解決する手段は思い浮かばなかった。
僕は、僕をこの学園都市に捨てた親と、こんな能力を生み出させた研究者と、
何よりこんな能力を扱えるようになってしまった僕自身を恨んだ」

結標「そんな、あなたは何も悪くないじゃない……」

思わず同情してしまっていた。

青ピ「それでも諦めずに学校に通い続けたけど、結局友達は出来ず卒業した。
僕はもう絶望していた。こんな僕には、友達は一生出来ないんやろな。って。
レベル4ぐらいまでなら、名門中学に行けば力の差はあまりなく妬みとかも少ないはずやけど、
奇しくも僕は、当時7人しかいないレベル5。もう、あの時は自暴自棄やった」

そう言えばと、結標は思いだす。自分も中学の頃は小学校より楽しかった記憶がある。
きっと彼の言う背景があったからだろう。
284: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 10:31:43.63 ID:BMIoR+No0
青ピ「そんな時、僕は食蜂に出会った。
『心理掌握』の彼女は、一目見ただけで僕の気持ちを汲み取り、親身になって話まで聞いてくれた。
同じ穴の狢だったからかもしれない。そして1つの提案が出された。嘘をつけばいい。ってな」

結標「なるほど。でも『身体検査』(システムスキャン)は誤魔化せないじゃない?」

青ピ「ところが、そうでもない。システムスキャンは大きく分けて、2つあるやろ。
実技と機械の検査。実技に関しては、わざと手を抜けばいい。
誰だって全力を出すシステムスキャンで、まさか手を抜いているとは思わないやろ?」

結標「それはそうかもしれないけど、機械の方はどうするのよ?」

青ピ「あれなぁ。実は拒否する事が出来る。それも、特別な理由とかは無しでなぁ」

結標「えぇ!?」

衝撃の事実に、驚きを隠せない。

青ピ「まあでも、拒否するバカはいない。誰だって今の実力を知りたいしな。
だからこそ、頭がおかしいとは思われるけど、断る事自体は出来る。
でも結果オーライやったで。僕には念願の友達が出来た。カミやんとつっちーも、その時友達になった」

結標「よかった……」

感情移入してしまい、思わず呟いていた。

青ピ「もうめちゃくちゃ嬉しかったね。毎日が楽しかった。
途中カミやんがグレたりしたけども、更生できたし、寧ろその一件でカミやんとつっちーとは親友になった」

そこまで言われて、結標は多少冷静になって、

結標「……その親友を、あなたは裏切っているのよ。
最っ低の親友を持って、彼らもあなたのことを軽蔑しているでしょうね。勿論私もだけど」

青ピ「唐突に毒舌復活やな。けれど、最後まで話は聞いてほしい。
結局嘘をつき続けて、今までうまくやってきた。
これができたのは、紛れもなく食蜂と出会い、アドバイスしてもらったからや。
まあ12月の学園都市の危機には、今までひた隠しにしていたレベル5を明かしてしまったけどな。
知っているのは一部の人間だけやし、まだ大丈夫や」

結標「何が大丈夫なのよ?あなたはこの街を守りたくて、12月わざわざ出てきたんでしょ?
それなのに、世界滅亡の加担をしていいの?」

青ピ「よくないけども、恩人やし、考えに賛同できる部分もある言うてるやろ。
淡希の脳にも残っているはずやで。食蜂の考えが」

結標「そんな事分かっているわよ。それでも世界滅亡なんて間違っているでしょ。
あなただってそれが分かっているから、反対なのでしょう?だったらどうして反抗しないの!?」

青ピ「無理に決まっているやろ。200万の脳を統べる食蜂に勝てるわけないし、何度も言うけど、恩人で」

結標「恩人恩人って、嘘つくように言っただけでしょうが!あなただってその内気付く事が出来たはずよ!」

青ピ「いや、それはおそらく有り得へん。
確かに実技の手を抜く位は思いついたかもしれんかったけど、機械検査を拒否できる事までは、案外想像できひん。
それにや。実は万が一僕がレベル5と知れた時には、その人の記憶を消してあげるとまで言われている。
淡希達にはその必要がないから頼まへんかったけど、姫やんとか一部の例外を除き、クラスメイトにバレたら頼むつもりや」

結標「はぁ?意味が分からないわ。記憶を消すとかどうとか、世界の滅亡と天秤にかける事じゃないわ!
そこまでしてレベル5が露見する事が嫌なの!?」

青ピ「嫌や」

即答だった。
285: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 10:36:14.22 ID:BMIoR+No0
結標「……私を馬鹿にしているの?私も今やレベル5。私という彼女と同列な事がそんなに嫌かしら?」

青ピ「嫌やね。絶対嫌や」

結標「見損なった。本当に見損なった。あなたと同じ息すら吸いたくない」

青ピ「なら、この際言わせてもらうけど、淡希友達いないやろ?」

結標「っ!それがどうしたって言うのよ!」

青ピ「分かっているんやろ?淡希は綺麗やし、巨乳やし、実は優しい人や。
なのに友達が出来ない理由は、たった1つ。レベルの高さや。レベル5になって、妬みとかが加速した結果や」

結標「そうかもしれないけど、そこまでしてレベル5が知れるのを恐れるのは間違っているわ!」

青ピ「それは淡希が、レベル5になって日が浅いからや。それに今となっては、ある風潮が薄れてきたからな」

結標「ある風潮?」

青ピ「レベル5は人格破綻者の集まり、ってやつや。最近はレベル5の面子も一新して、この風潮は薄れてきたけどな。
少し前までは、わりと有名な風潮やった」

結標「それにカテゴリーされるのが嫌だから、って言いたいの?」

青ピ「そりゃそうやろ。人格破綻者言われて喜ぶ奴なんて、よっぽどのマゾくらいや」

結標「でも所詮は噂みたいなものでしょう?噂なんて関係ないじゃない。ちゃんとしていれば、皆理解してくれるはずよ」

青ピ「それはないな。
レベル5の中で1番まともと思われる御坂美琴ですら、人の輪の中心に立つ事は出来ても、人の輪に入る事は出来ない。
これって別に、彼女の性格とかは関係ない。レベル5だから。それだけでや」

結標「そんなの……違うでしょ……何で言い切れるのよ」

青ピ「僕だってレベル5だからや。淡希もその内実感すると思うで。
レベル5であることの弊害を。妬みや媚びなどはレベル4の比ではないよ。
周囲からの過剰な期待もあるし、一歩間違えればノイローゼになる。
レベル5の皆はね、初めは普通の人間だった。それが実験や周囲の反応で狂っていった。
僕はレベル5であることを知られるのはどうしても嫌や。トラウマなんや」

結標「そう……」

理屈は分かる。理屈は分かるが、納得は出来ない。
だって、だとしても、そんなのはおかしい。

結標「結局のところあなたは、理由を並べるだけ並べて自分の行動を正当化している愚図なのね。
心底見損なった。もう無理。あなたがこの世に存在していることが許せなくなったわ」

辛辣な言葉に、平静を決め込んで来た青髪もさすがに声を荒げる。

青ピ「淡希はレベル5の辛さを分かっていない!強すぎるが故の孤独!嫉妬と羨望の眼差し!
そして暗部には利用されるだけ利用されて!僕の気持ち分かるやろ!」

結標「分からないわ。あなたみたいなチキン野郎の気持ちなんて分からない。
私は逃げなかった。負け犬にだけはならなかった」

青ピ「何やと……」

結標「レベル5だから友達が出来ない?そんなものは自分の体たらくの言い訳でしょうが!」

確かに、高位能力者が様々な背景で友達が出来にくいのは事実だ。だが、

結標「美琴は、彼女を心から尊敬している後輩がいるし、友達も居る。   
一方通行は、今まで散々もがき苦しみながらも、彼なりの平和を築いている。垣根帝督だって、今や彼女がいる。
元ナンバーセブン削板軍覇にも彼女がいるし、絹旗最愛にも友達がいる」

今言った事も事実だ。
286: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 10:37:57.97 ID:BMIoR+No0
結標「そして私にだって、大切な仲間達がいる。人の理解を得るのは困難だけど、不可能じゃない。
それをレベル5だからという理由で理解を得られないと言うのは、あなたの甘えでしかない!」

かつて年下のテレポーターに言われた事を思い出す。

結標「危険な能力を持っていれば、危険に思われると本気で信じているの?
私や美琴、レベル5の皆が楽な方法でこの場所に立っていると思っているの?
皆努力して、頑張って、自分の持てる力で何が出来るかを必死に考えて行動して、
それを認めてもらってようやく居場所を作れているのよ!?」

青ピ「っ……」

結標「結局あなたの言い草は、見下し精神丸出しの汚い逃げでしかないわ!そんな腐った性根、私が叩き直してやる!」

その時、結標の力強い意志が奇跡を起こした。
『洗脳操作』の支配を一時的に破り、繰り出した拳が青髪の顔面を捉えた。

青ピ「が……」

結標「目は覚めた?……まだよね。いいわ。もう一発ぶん殴って――」

しかし、結標の言葉はそこで途切れた。男児の1人が、彼女の脇腹を拳銃で撃ち抜いたからだ。

青ピ「な……何やっとるんや!彼女に手荒な真似はするなと言うたやろ!」

どうやら青髪の意思ではないらしい。そりゃそうだ。
今更になって撃ち抜く位なら『洗脳操作』で体を止めるなんて言う回りくどい事はせず、初めから撃っているだろう。
つまりこれは、男児の独断。

結標「く……そ……」

奇しくも、かつて年下のテレポーターを追い詰めた文明の利器にやられた形になった。

青ピ「くっそ!」

青髪は水流を生み出し、男児どころか結標を除く全ての人間を水流で飲み込んだ。そして結標を抱きかかえる。

青ピ「大丈夫か淡希!?」

結標「触ら……ないで。吐き気が……する」

青ピ「僕が嫌いなのは分かる。けど今はそんなこと言っている場合や――」

青髪の言葉も、最後まで続かなかった。一陣の風が吹いたかと思えば、一方通行が青髪の後ろに立っていた。
既に右手を伸ばしている。

青ピ「――くっ!」

右手が頭に触れる直前で、青髪は結標を抱えながら距離を取った。
287: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 10:39:37.52 ID:BMIoR+No0
結標「待っ、て……彼は……洗脳されて……いないの……」

一方通行「はァ?じゃあ何か。目の前に居るコイツは、自らの意思で食蜂に協力してンのか。
  まァそうか。じゃなきゃオマエを抱える理由がねェもンなァ。
  あァ?違うか。オマエもまた洗脳されてンのか結標。テレポーターは利用価値高いからなァ。
  待てよ。食蜂は一度」

結標「変な勘繰り……しないで……私はもう正常だし……彼も洗脳はされていない。
食蜂に加担する……とてつもないアホだけど……」

青ピ「一方通行君なら分かるやろ?僕の苦しみ――」

青髪は、一方通行に簡潔に説明をした。意外にも一方通行は大人しく聞いていた。
そして聞き終わって、開口一番、

一方通行「成程ねェ。つまり、オマエは自分可愛さに彼女や親友、世界をも捨てられる、とンでもねェ薄情者って訳だ」

止めの一言を告げた。

一方通行「なァ、薄情者に抱きかかえられている結標さンよォ、もうコイツのこと軽蔑してンだろ?
  殺しはしねェけどよォ、手足バッキバキに折るぐらいはいいンだよなァ?」

結標「そうね……お願い……」

青ピ「ちょ、ちょい待てや!僕の気持ちも――」

一方通行「黙れよクソ野郎。オマエを見ているとムカつくンだよ。かつてのバカな俺を見ているようでなァ!」

ドゴン!と一方通行が地面を蹴って駆け出した。
288: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 10:41:21.50 ID:BMIoR+No0
妃「狂い咲け」

植物園の植物が蠢きだし、蔦がフィアンマ達に向かう。

ヴェント(蔦……嫌な感じ……)

かつて『神の神秘』(ラジエル)という植物を操る天使と戦い殺されかけた為、蔦や蔓などには軽いトラウマがあった。

フィアンマ(焼き払うのは簡単だが……)

ここで植物を燃焼させれば相手はもちろん、ヴェントすら巻き込んでしまう。
それにいくら洗脳されていないとはいえ、殺す訳にはいかない。

よってフィアンマは、若干足が竦んでいるヴェントを抱え、植物園から抜け出した。

妃「あらら。無様に逃げるなんて、なんて情けない……」

彼女もあっさりと植物園から抜け出し、フィアンマ達の前に立つ。

フィアンマ「操れる植物がなくなってしまったぞ。いいのか?」

妃「何を言っているのかしらあなたは。
  私の『百花繚乱』(ブルームランブル)は、植物を操るなんて事、数ある能力の1つにすぎないわ」

フィアンマ「そうか」

ヴェント「どうするフィアンマ?」

フィアンマ「どうするもこうするもな。能力の全容を把握しきれない以上は何とも言えんだろう」

妃「ねぇ。考え直さない?あなた達では私には勝てないわ。
  吸いつくされて、カラッカラに干からびて死ぬだけよ?」

フィアンマ「愚問だな。俺様達は死ぬつもりもないしな」

妃「あなたもかつては、世界を救おうとしたのでしょ?なら分かるはずよ。この世界が、どれだけ穢れているか」

フィアンマ「ああ。俺様もかつてはそう思っていた。でも、世界はちゃんと機能している。
   悪意も蔓延っているが、それ以上に善意で満ちている。
   世界に目を向けたこともないくせに滅亡滅亡と言っているのは、いささか滑稽だぞ」

妃「待ってよ。世界に目を向けた事もない?馬鹿言わないで。
  操祈も私も、世界を見た上で言っているのよ。操祈は人の深層心理すら覗ける。
  覗いたうえで、この世界を滅ぼそうと言っているの」

ヴェント「もういいよフィアンマ。結局は決裂。戦うしかない」

フィアンマ「やむを得ないな」

妃「調子に乗らないでよ愚民ども」
289: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 10:43:37.59 ID:BMIoR+No0
妃「饗宴のお時間よ」

両手を広げて、天を仰ぐ。
同時、彼女の周囲の虚空からいくつもの真っ白な花が咲き乱れる。

フィアンマ「あれは何だ」

ヴェント「まずいんじゃない」

ヴェントが危機を感じた時、真っ白な花から光線が放たれた。ズバァ!と光線はフィアンマ達の下に向かい駆け抜けた。

フィアンマ「危ないなぁ」

光線を避け妃の後ろに回り込んでいたフィアンマは、炎を纏った右拳を放つ。

妃「甘いわね愚民」

拳が来る程度、問題ないと言った調子だった。
妃の後ろの空間から咲いた赤い花が、フィアンマの拳を受け止めた。さらに纏っていた炎が吸収されていく。

フィアンマ(何だこれは?)

ズボと右手を抜き、後退して距離を取る。
それに入れ替わるようにヴェントがハンマーを振るい、風の杭を飛ばす。

妃「だからー、甘いって」

銀色の花が妃の体を包み込む。風の杭は直撃こそしたが、全く傷ついていなかった。

妃「今度はこっちの番ね」

フィアンマとヴェントの周囲に白い花が咲く。多角的に彼らを撃ち抜く為に。ズバァ!と光線が放たれる。

フィアンマ「ぐおっ!?」

ヴェント「いっ!?」

2人は無理に体を捻り光線を避けた。その為わずかに隙が生まれ、

妃「ほい!」

いつの間にかピンク色の傘を持ち、フィアンマに肉迫していた妃は、その傘を思い切り振るい彼の顔面を殴り飛ばした。

フィアンマ「がは!」

妃「まだよ」

パチン!と妃が指を鳴らす。するとフィアンマの胸の辺りに赤い花が咲き、爆発した。

フィアンマ「ぐおっ!」

いくら炎に耐性があるとはいえ、さすがに今の一撃はきつかった。

妃「まだよ」

ヴェント「させるか!」

2度目の追撃を阻むために、ヴェントが妃に突っ込んでいく。
その時フィアンマは、クス、と妃が微笑んだのを見逃さなかった。

フィアンマ「引っ込め!」

ヴェント「え?」

妃「飛んで火に入る夏の虫とは、まさにこのことね」

突っ込んでくるヴェントの目の前の空間に、彼女を包み込むぐらいの黄色い花が咲く。
それなりの速度を出していた彼女は、方向転換も出来ず黄色い花に飲み込まれた。

ヴェント「な――」

妃「ビリビリ拷問のお時間です」

ビリビリィ!と黄色い花から電撃が流れ、ヴェントを焦がした。
10秒後、花が開いて地面に落ちたヴェントは、死んではいないようだが、戦うのは無理そうだった。
290: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 10:46:20.61 ID:BMIoR+No0
フィアンマ「ヴェントぉぉぉ!」

叫びながら炎を纏った拳で妃を殴り飛ばそうとするが、やはり赤い花に阻まれる。それどころか、

妃「ぶっ、飛べっー!」

黒い花から噴き出した衝撃波が、フィアンマを襲った。

フィアンマ「くっそ」

吹き飛ばされ倒れているフィアンマの下に、青い花からウォーターカッターのような鋭い水流が放たれるが、
とび起きて避ける。

すると間髪いれずに、今度は水の鞭が飛んできた。
右腕を振るう事で軽く蒸発させ、水蒸気が発生したところで、

彼の体を、雷撃の槍が射貫いた。

フィアンマ「か……は……」

妃「まだよ」

そう言った時には、妃はフィアンマの目の前まで近づいていて、ドゴォ!と、傘の先端を彼の喉仏に食い込ませた。

それだけで終わらず、緑色の花を咲かせ、そこから蔦を出しフィアンマの体をぐるぐる巻きにして拘束した。

妃「さて、私の下僕になると言うのなら、解放してもよくってよ」

フィアンマ「喉を……潰しておいて……何を……言っている……」

かすれた声で、言葉を絞り出す。

妃「でもそうやって喋れない事はないでしょう?それに返事は、首を縦に振ればいい。私の下僕になるわよね?」

フィアンマは、何か諦めたように微笑んで、首を横に振った。

妃「はぁ?何でよ!?何でなのよ!?」

ゴッガッバキ!と、傘でフィアンマを何度も殴りつける。そんな中で彼は、漠然と考えていた。

今目の前に居る少女は、今まで戦ってきた人間の中では間違いなく最強だ。
今までのレベル5とは格が、次元が違いすぎる。
正直言って、このままでは勝てない。“救うための戦い”では、勝てない。

フィアンマ(あまり使いたくはなかったが……)

ヴェントも立ち上がっているのが見えた。その顔には覚悟の色が窺える。

フィアンマ(やるしか、ないな……)

フィアンマはまたしても笑った。

妃「何で……この状況で、笑っていられるのよ!」

両手で振り上げた傘を、思い切り振り下ろす。
が、力技で蔦から抜け出したフィアンマはそれを右手でキャッチした。
そして2秒もしない内に、傘を灰にした。

妃「な……」

フィアンマ「すまないな。少しだけ本気を出させてもらうぞ。死ぬなよ」

妃「何を……言って……」

妃が狼狽している間に、フィアンマの背中から赤いテレズマが翼のように噴出した。
ヴェントも同様に、背中から黄色いテレズマを噴出する。

フィアンマ「終わりだ」
291: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 10:47:21.09 ID:BMIoR+No0
そこからの戦いは1分もしないうちに決着した。
妃はありとあらゆる手段で攻撃防御を実行したが、大天使の力の一部を使役するフィアンマとヴェントには手も足も出なかった。
それでも生き永らえただけ称賛に値するだろう。

フィアンマ「何とか生き延びてくれたな」

ヴェント「ええ」

フィアンマ「傷は大丈夫かヴェント」

ヴェント「何とかね。多少は自己回復したし。フィアンマこそ大丈夫?」

フィアンマ「ああ。俺様は丈夫だからな。なら、もう気付いていると思うが、まだ戦えるんだな?」

ヴェント「というか、戦うしかないでしょ。さすがのあなたでも1人じゃ無理よ」

フィアンマ「そう言ってもらえて助かる。覚悟は良いか?」

ヴェント「もちろん」
295: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/12/30(金) 18:39:21.11 ID:BMIoR+No0
三沢塾の2階廊下で上条達の前に立ち塞がったのは、緑に染めたオールバックに黄金の甲冑を着こんだアウレオルス=イザードだった。

アウレオルス「死ね」

右手に持っていたの拳銃の銃口を上条達に向け、引き金を引く。
弾丸が常人では反応出来ない速度で上条の額に向かう。

五和「させません!」

ガキィン!と、上条の前に躍り出た五和のメイスによってあっさりと弾かれた。

上条「別に避けられたのに。けどありがとう」

五和「いえいえ」

アウレオルス「愕然。まさか拳銃程度では殺せないのか?」

アウレオルスはわずかに動揺する。すると上条達は、

上条「五和、逃げるぞ」

五和「え?でも」

上条「いいから」

五和の手を引き、階段を駆け下りて行く。

アウレオルス「まさか、気付いたのか?」

アウレオルスはまたしても驚愕した。
だが自分も悠長にここに留まっていられない。早く脱出しなければ。

アウレオルスは廊下の窓から飛び降りた。

次スレ:

食蜂「本っ当に退屈ね、この街は」【後編】


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