【艦これ】曙「このアホ提督!」 陸奥「アホ提督ね♪」

1: ◆8sA8xtnAbg 2016/03/16(水) 21:04:50.92 ID:/RloWyPno

※ 艦これの『曙』と『陸奥』と提督を主人公としたお話です。

※ エロやグロなどはありません。

※ キャラの性格や口調、お互いの呼称などはなるべくゲームに合わせていますが、筆者の独自解釈も多いです。そういうのが許せない方は読まないほうがよろしいかと思います。

★このお話は下記スレッドの続きとなっております。単体でも読めるとは思いますが、あちこちよくわからない箇所が出てきてしまうと思います。長くて恐縮なのですが、よろしければ前のお話からお読み頂けますと幸いです。

【艦これ】 陸奥「堅物なこまったさんね~」





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4: ◆8sA8xtnAbg 2016/03/16(水) 21:33:19.42 ID:/RloWyPno

駆逐艦 曙

それがあたしの名前。

大勢いる駆逐艦の中で、特にこれといった戦果も特徴もない、ごく普通の駆逐艦。強いて言うなら、貧乏くじをたくさん引いたことが特徴かしら。

敵を誤認したり、無茶な命令をされたり、理不尽な責任転嫁をされたり……。

目の前で仲間が……妹が沈んだり。



5: ◆8sA8xtnAbg 2016/03/16(水) 21:33:48.57 ID:/RloWyPno

別にいいのよ。海軍という大きな組織の中では、そういうこともあるでしょう。
司令部の理不尽さに、乗組員共々ものすごく腹を立てたけど……。

でも誇りをもって、がんばってがんばって任務をこなし、仲間を護り……そして沈んだ。

駆逐艦 曙の艦生は終わり、船の魂たるあたしは、海の底で静かに眠った。

これは死。再び目覚めることなんてありえない。



6: ◆8sA8xtnAbg 2016/03/16(水) 21:34:16.59 ID:/RloWyPno

……そのはずなのに、今なぜか意識を持っている。どういうことなのかしら?

それに……遠くに光が見える。なんだろう、あそこはとても暖かそう。暗く冷たい海底とは似ても似つかない場所。

導かれるように光に近づいた。

不思議な暖かな光がどんどん大きくなって……あたしは完全に光に包まれた……そして……



7: ◆8sA8xtnAbg 2016/03/16(水) 21:35:01.30 ID:/RloWyPno

――――― 1年以上前 工廠


五月雨「新しい仲間……楽しみですね! 」

提督 「そうだな……。ただうちも随分と仲間が増えたから、そろそろ誰が誰だかわからなくなりそうだ」

五月雨「あー! 提督、ちゃんと見分けてくれないとイヤですよっ! 」

提督 「さすがに五月雨を間違えたりはしないけどな」

五月雨「えへへ……って、駄目です、わたしだけじゃなくて他のみんなもちゃんと見分けて下さい! 」

提督 「いや……その、顔を真っ直ぐ見るのが照れくさくてな。それでなかなか顔を覚えられないんだ」

五月雨「もー! すごく提督らしいですけど、頑張ってくださいっ」

提督 「ああ、頑張るよ」

五月雨「あ、もうすぐですよ!」


シュワーン



8: ◆8sA8xtnAbg 2016/03/16(水) 21:35:44.86 ID:/RloWyPno

曙 「………… 」

五月雨「あ、駆逐艦の子ですね。誰かな? 」

提督 「また仲間が増えたな。良かった良かった」


……なんだろう、長い夢を見ていたような、ぼんやりした感覚。

あたしは……曙。今、艦娘として転生したのね。


五月雨(わくわく)


生まれたわたしを見守っているあの子は……五月雨。仲間はちゃんと分かる。そう……あたしたちは、国と人を護るために転生したんだ……あの人の手で。


提督 「…… (どきどき)」


そう、あの人があたしの提督……あたしの司令官。ひと目でわかる。



9: ◆8sA8xtnAbg 2016/03/16(水) 21:36:38.80 ID:/RloWyPno

五月雨「あの……曙ちゃんだよね……? 」

提督 「曙なのか……どうしたんだ、大丈夫か? 」


司令官……理不尽な命令……ひどい責任転嫁……そういう嫌な記憶が頭をよぎる。

でも……それなのに……。この人を見ていると心が暖かいもので満たされる。魂のつながり……暖かなつながりを感じる……どうして? この人はわたしと乗組員を苦しめるだけの司令官なのに!?


五月雨「曙ちゃん、大丈夫? 」


あ、心配をかけちゃいけないわね


曙 「五月雨……よね? 大丈夫。改めて、特型駆逐艦 曙よ」

提督 「やはり曙なのか。その……はじめまして」


憎むべき司令官のはずなのに……気弱げにあたしを見るその姿を見て、抱きつきたいような衝動に駆られる。そんな心の不整合を振り払うように、あたしは大声で叫んだ




10: ◆8sA8xtnAbg 2016/03/16(水) 21:37:06.02 ID:/RloWyPno

曙 「こっち見んな! このクソ提督!! 」


11: ◆8sA8xtnAbg 2016/03/16(水) 21:38:20.36 ID:/RloWyPno

++++++++++


これが、あたしと提督……あのアホ提督とのはじまり。

もし今この場所に行けるなら……馬鹿なあたしを引っ叩いてやりたい。本当に死ぬほど後悔してる。

でも……それでも、とてもとても大切な出会いの瞬間だった


++++++++++



12: ◆8sA8xtnAbg 2016/03/16(水) 21:40:15.31 ID:/RloWyPno
プロローグは以上となります。

続きは、早ければ週末、遅くとも来週頭からスタートします。第一部と比べると大分短くする予定です。

>>1で書きました通り、このお話は続きとなっております。もしよろしければ前話からお読み頂けますと嬉しいです。

それではまたしばしお付き合い下さいませ。
31: ◆8sA8xtnAbg 2016/03/30(水) 00:14:44.37 ID:UHRjKF2Do

――――― 曙着任から1ヶ月後 鎮守府近海


漣 「おー、やっぱり実戦の海は違うね~」

曙 「何も変わらないわよ」

潮 「そうかなぁ。わたしはすごく緊張するよ」

朧 「そうだね、海は変わらないけど心構えはやっぱり違うね」

漣 「ま、実戦なんぞ漣は余裕ですぞ」

曙 「いくら近海とは言え、潜水艦が出る場所なんだよ。気を抜いてるんじゃ無いわよっ」

潮 「そうだよー、突然雷撃がドーンってくるから気をつけてね。漣ちゃんはまだ練度低いんだし」

漣 「大丈夫! ぼのたんが守ってくれるから! 」

朧 「ぼのたん…… 」

曙 「ぼのたん言うなっ! 」



32: ◆8sA8xtnAbg 2016/03/30(水) 00:15:16.75 ID:UHRjKF2Do

++++++++++


着任から1ヶ月。姉妹である第七駆逐隊が次々と着任して、あたしの周りはとても賑やかになった。最初は1人部屋だったのにね。

着任が遅れていた漣も先日ついに仲間に加わり、この日がはじめての第七駆逐隊勢揃いの出撃。漣がお気楽すぎてちょっと心配だったけど……


++++++++++



33: ◆8sA8xtnAbg 2016/03/30(水) 00:16:13.13 ID:UHRjKF2Do

朧 「そういえば漣、どうして提督のことをご主人様って呼ぶの? 」

潮 「それはわたしも気になっちゃった。提督すごく困ってたよ」

漣 「えー、なんか艦娘って提督に仕える娘って感じでメイドっぽいでしょ? だからメイドさん風味なのだ! 」

曙 「仕えるって……あたしはそんな気はしてないわよ、あんなクソ提督に! 」

潮 「曙ちゃん、その……そんな呼び方しちゃ駄目だよ」

朧 「そうだよ。提督は上官なんだから」

漣 「そーそー。クソ提督に比べたらご主人様なんてかわいいものだよね」

曙 「い、いいのよ。あたしはそう呼びたいんだからっ。それを言ったら霞なんて、『このクズ!』なんて言ってるじゃない」

潮 「霞ちゃんのそれ、最初に聞いた時は心臓が止まるかと思ったよ……。曙ちゃんも霞ちゃんも、提督のことが嫌いなの? 」

曙 「う゛……、そ、そんなこと言ったら、潮だってクソ提督が一歩近づいただけで叫んで逃げたじゃない」

漣 「えー! そんなことしたの!? 」

朧 「あれはちょっと提督が可哀想だったね…… 」

潮 「ううう……だって、なんだか恥ずかしいし……提督はすごく大きくてなんだかちょっと怖くて…… 」


話題そらし成功……! って、なんであたしがクソ提督のことで焦らなきゃいけないのよっ。



34: ◆8sA8xtnAbg 2016/03/30(水) 00:16:58.36 ID:UHRjKF2Do

朧 「さて、そろそろ敵がいてもおかしくない場所だよ。索敵開始! カニさんたちも敵を探してね」

潮 「カニさん……いいな…… 」

曙 「あたしは羨ましくない」

漣 「ほいさっさー、じゃあうさ吉も索敵お願いね」

曙 「朧のカニさんもだけど、あんたのうさ吉も謎よね……」

潮 「いいなぁーいいなぁー」

朧 「良くわからないけど、きっとカニさんもうさ吉も艤装の一部みたいな感じなんだろうね。黒焦げになっても入渠で治るし」

漣 「そうなんだ! だってさうさ吉、黒焦げになっても大丈夫だよ! 」

うさ吉(ぶるぶる)

潮 「わたしもかわいい艤装がほしいよー」

曙 「あんたは連装砲がかわいいからいいじゃない」


なんて馬鹿な話をして油断していたら……



35: ◆8sA8xtnAbg 2016/03/30(水) 00:17:30.47 ID:UHRjKF2Do

朧 「!!! 雷跡!! みんな緊急回避! 」

潮 「え、うそうそ~ 」

曙 「くっ、潜水艦かっ! 」

漣 「え、え、どこ!? 」

朧 「漣、そっちに向かってる、避けてー! 」

漣 「え……あ……うわぁぁぁっぁ」


ドーーン


直撃! 漣はすごい水柱に包まれていた。

あたしは全身の血の気が引くのを感じていた。漣が……沈んじゃう……



36: ◆8sA8xtnAbg 2016/03/30(水) 00:18:19.65 ID:UHRjKF2Do

曙 「う、うそだ……いやだよ、漣ーー! 」

朧 「あ、曙、落ち着いて! 大丈夫だからっ」

曙 「だ、大丈夫なもんかっ、漣が、漣がっ!! 潮、はなせっ」

潮 「曙ちゃん、落ち着いてよく見て! ほら、漣ちゃん大丈夫だからっ! 」

曙 「え……? 」

漣 「い……てて……、うわ、中破しちゃった。くっそー! 」


あ……良かった……漣、無事……


へなへなへな


潮 「ね、大丈夫でしょ? 被弾はしちゃったみたいだけど」

朧 「おそらく敵は1隻。さ、みんな、気を取り直して敵潜探そう! 」

漣 「まっかせて。仕返ししてやるからっ」

潮 「曙ちゃん、大丈夫? 」

曙 「あ……うん。よし、もう大丈夫! あたしたちも対潜哨戒しよう」

潮 「うん! 」


ちょっと赤面。あたしは何を焦っていたんだか。艦娘は魚雷一発でいきなり轟沈なんてしない……そう聞いている。経験上もそれで間違いないってわかってるのに……。



37: ◆8sA8xtnAbg 2016/03/30(水) 00:19:06.54 ID:UHRjKF2Do

漣 「ふー、せっかくの初出撃だったのに中破とはついてない。この格好でご主人様の前に行くのはちょっと嫌だな~」

朧 「こら。基地に帰り着くまでが出撃だよ。まだ気を抜かないっ」

潮 「朧ちゃん先生みたいー」

曙 「報告はあたしが行くから大丈夫。漣は帰ったらみんなとすぐに入渠してきなよ」

漣 「あら、ぼのたん優しい~。うっふっふ~、心配しちゃった? 」

曙 「な、なによ」

漣 「聞こえてたよ~、ぼのたんの必死な声」

曙 「なっ! ///」

朧 「こら漣。茶化さないっ。仲間を心配するのは当然でしょ」

潮 「そうだよー。でも、曙ちゃんがあんなに取り乱したのはびっくりしたけど」

曙 「ふ、ふんっ。練度が低いのに油断しまくりの漣だったから、一発でひどいことになるんじゃないかって思っただけよ! 」


もちろん……ほんとは違うけど。また目の前で一瞬で沈んじゃうのかと……



38: ◆8sA8xtnAbg 2016/03/30(水) 00:19:46.60 ID:UHRjKF2Do

――――― 帰還後 鎮守府


潮 「じゃあわたしたちは入渠してくるね」

朧 「曙も後で来てね」

漣 「待ってるぜー! 」

曙 「はいはい、報告終わったらね」

潮 「でも……報告いつも行ってもらってごめんね? 」

曙 「いいのよ。潮も行くと、潮もクソ提督もすごい緊張するからね」

朧 「潮が緊張するのはいつもだけど、提督も? 」

曙 「うん。また叫ばれないかって、超ビクビクしてる。小心者なのよ、あのクソ提督は」

潮 「うう……提督はわたしを怖がらせないように気にしてくれてるんだよ。優しいのに怖がっちゃって……わたしって駄目だなぁ」

漣 「ま、でも潮らしくていいじゃん! ゆっくりやんなよ~ 」

曙 「それじゃ、ちゃっちゃと行ってくるわ」



39: ◆8sA8xtnAbg 2016/03/30(水) 00:20:53.26 ID:UHRjKF2Do

――――― 提督執務室


コンコンコン


五月雨「どうぞー 」


ガチャ


曙 「曙、入るわよ」

五月雨「曙ちゃん、いらっしゃい! 報告かな? 」

曙 「ええ。第七駆逐隊での近海対潜哨戒任務は無事終了。潜水艦1隻と遭遇し撃沈。こちらの被害は漣が中破。以上」

提督 「漣が中破か。大丈夫だったか? 」

曙 「ええ。今もう入渠してるけど、練度低いからすぐ治るわよ」

五月雨「そっかー。漣ちゃん初実戦だったよね。無事終わって良かった~ 」

曙 「じゃああたしも入渠するから行くわね。報告終わり」

五月雨「はーい、お疲れ様でした! 」

提督 「あ……曙、待ってくれ」

曙 「ん……なによ? 」

提督 「その……目の前で漣が被弾して……お前は大丈夫だったか……? 」


何か見透かされたような気がして……一気に顔に血が上る……。何よ、あんたあたしのことをどこまで知ってるのよ!


曙 「/// だ、大丈夫に決まってるでしょ! 被弾したのは漣であたしはかすった程度なんだから」

提督 「あ、いや、そういう意味では…… 」

曙 「大丈夫だって言ってるでしょ! しつこいのっ、このクソ提督!! 」


バタン



40: ◆8sA8xtnAbg 2016/03/30(水) 00:21:40.63 ID:UHRjKF2Do

++++++++++


この頃にはもう分かってた。あいつは……あのアホ提督は、前世であたしが憎んでいたような司令部とは違う。あたしたちを大事にして、沈まないように必死に気を使ってる。

それどころか、艦娘としてのあたしたちの生活や心にすごく気を使ってる。その……とても……優しいやつなんだって。

ただ……最初に掛け違えたボタン。いきなりひどいことを言ってしまったこと。その後引っ込みがつかずに反発を続けている日々。ひどい自己嫌悪を抱える日々だった。

自分しか見ていない……ああ、なんて子どもだったんだあたしは!


++++++++++



51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/31(木) 22:53:28.02 ID:8JTWqaACo

陸奥の一人称は難しいだろうと思うのだけど陸奥らしさがしっくりきて良かったです。
曙太郎がどうなるのか楽しみです。
52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/02(土) 00:33:16.33 ID:bzZqjj8W0
乙、曙は今日も可愛い
むっちゃんの出番も楽しみにしてる
53: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/03(日) 23:23:46.55 ID:kW0WHzjOo

――――― 曙着任から2ヶ月後 鎮守府近海



54: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/03(日) 23:24:34.26 ID:kW0WHzjOo

荒潮 「やっと帰ってこられたわね~。やっぱり北方は寒くていやぁね~」

朝潮 「荒潮、任務に文句を言わないの」

大潮 「でも、やっとキス島制圧できたからね! これでもう北方に通う必要もなくなるから、もーアゲアゲだよ! 」

満潮 「苦労させられたわね、まったく! ひどい損傷しちゃったし」

朝潮 「満潮、大破目前の中破よね。そんなひどい損傷はじめてだと思うけど、大丈夫? 」

満潮 「大丈夫よこのくらい! 」

大潮 「でもさ、ずっと挑戦してたキス島攻略、第八駆逐隊で制圧できたの嬉しいね! 」

荒潮 「八駆だけの力じゃないでしょ~。霞ちゃん、曙ちゃん、応援ありがとね」

霞 「あたしにとっても因縁ある場所だったからね。参加できて良かったわ」

曙 「あたしもちょっとだけ北方は参加したことあるからね」


 駆逐艦だけで挑まないといけない北方のキス島。なかなか攻略できないでいたんだけど、本日無事攻略完了! うちの鎮守府は順調に……うん、順調に成長してる。あいつが頑張ってるってことよね。

※筆者注:今では軽巡1隻も参加可能のようですがこの頃は駆逐艦オンリーでした。



55: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/03(日) 23:25:14.33 ID:kW0WHzjOo

――――― 少し後 提督執務室


朝潮 「以上、無事キス島攻略完了です。損害は満潮、霞、曙が中破。以上です」

提督 「きつい戦いをよく頑張ってくれた。ありがとう」

五月雨「みんなお疲れ様です! 何度も出撃しては追い返された場所ですから……ううー、わたしも参加したかったなぁ」

涼風 「参加したいんなら、秘書仕事をさっさと片付けなきゃだよね」

村雨 「みんなで手伝ってなんとかって感じだもんね~」

五月雨「うう、がんばります……」



56: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/03(日) 23:25:42.91 ID:kW0WHzjOo

提督 「何はともあれ、出撃メンバーの皆は本当にご苦労だった。損傷した満潮、霞、曙はすぐに入渠してくれ」

荒潮 「満潮ちゃん、しっかり治してくるのよ~ 」

満潮 「……必要ないわ。まだ中破じゃない! このまま出撃しても全然大丈夫よ! 」

五月雨「そんなぁ。あちこちボロボロだし服だって破れちゃってますし……。なによりそれで出撃なんて危ないです! 」

朝潮 「そうよ。それに命令なんだからすぐに入渠しなさい」

満潮 「いやよ! そんな命令聞けないっ。撤回を要求するわ! 」

大潮 「そんなぁ。満潮どうしちゃったの? 」

霞 「…… 」

曙 「…… 」


……あたしには分かる。霞もきっとわかってる。そうよね、前世のトラウマっていうのは重くのしかかってくるもの。



57: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/03(日) 23:26:32.25 ID:kW0WHzjOo

提督 「わかった、では命令を変更する」

朝潮 「そんな、司令官。わたしからちゃんと言い聞かせますので! 」

満潮 「なによ、わたしのわがままみたいな言い方しないでっ」

五月雨「ほ、ほんとにどうしちゃったんですか(おろおろ)」

提督 「いいから、命令変更だ。第八駆逐隊はこれから全員で入渠すること。満潮が入渠完了するまでは、ドックで一緒にいること」

大潮 「え? あたしたち損傷してないよ~ 」

提督 「損傷してなくてもだ。今後第八駆逐隊は、誰かが損傷したら全員で入渠すること。誰かが入渠している時に間違っても出撃したりしないこと。いいな? 」

荒潮 「あらあら、すごい命令ね~。ま、わたしはお風呂大好きだから大歓迎よ。じゃあみんなで行きましょ? 」

朝潮 「はいっ。ご命令とあらば! 」

満潮 「ちょ、ちょっと、そんなのおかしいでしょっ。わたしは別に……そんな…… 」

提督 「満潮。司令官命令だ。聞き分けてくれ」

満潮 「……分かったわよ。命令に従います」

大潮 「はーい、じゃあみんなで行こ行こ! みんなでお風呂ってなんか楽しいね。アゲアゲになってきたぁ~! 」


ガヤガヤ バタン



58: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/03(日) 23:27:20.03 ID:kW0WHzjOo

五月雨「……納得してもらえたみたいですけど、なんだか不思議な命令でしたね? 」

村雨 「みんなでお風呂いいね。二駆もそうしようかっ」

涼風 「おっと待ちなっ。五月雨はいつもあたいと一緒にお風呂なんだ。とらないでくれよ~ 」

五月雨「えへへ、みんなで入ればいいよ。広いんだもん! 」


ワイワイ


曙 「…… 」


うん、いかにもクソ提督らしかった。でも……なんだかムカムカするのよね。


提督 「霞も曙もご苦労だった」

霞 「…………甘やかし過ぎよっ! ふんっ!」

ツカツカ バタン


霞もなんかイライラしてたわね。うん、気持ちわかる


曙 「霞に同感よ、このクソ提督っ」


足早に執務室を出る……。あいつは別に悪いことはしてない。それどころか、艦娘をとても大切にしているあり方を再確認出来たぐらいだ。それなのに……なんでこんなにイライラするんだろう。



59: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/03(日) 23:28:01.00 ID:kW0WHzjOo

――――― 少し後 ドック兼大浴場


満潮 「まったく……どうして……ブツブツ……」

荒潮 「提督がさみしがりやの満潮ちゃんに配慮してくれたんじゃない~。ここは喜ぶところよ~♪ 」

朝潮 「なんだ、満潮は一人でお風呂が寂しかったの? それならわざわざ命令されなくても一緒に入ってあげるのに」

満潮 「/// はぁぁぁ? 全然違うし! 」

大潮 「みんなでお風呂楽しいね~♪ 」


ワイワイ


霞 「…… 」

曙 「…… 」

霞 「……別にね、あいつが悪いわけじゃないのよ。それどころか、姉妹である満潮を気にしてくれて感謝してるぐらい」

曙 「……うん。だけどなぜだかイライラするんでしょ。あたしもそう」



60: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/03(日) 23:28:38.22 ID:kW0WHzjOo

霞 「あいつ……怒ってると思う? 」

曙 「…… 」


考える。あたしの暴言にも一度たりとも怒ったことがない。いつも無表情に……でも少しだけ悲しそうな目で黙っているだけ。思い出しただけでイライラする。


曙 「怒ってくれるなら、こんなにイライラしないわよ」

霞 「同感。やっぱあんたは分かってるわ」

曙 「クソ提督のこと分かっても嬉しくもなんともないけどね」

霞 「大体あいつは、わたしたちみたいなのに気を使いすぎなのよ」

曙 「そーそー。腫れ物を触るような扱いが気に障るのよ」

ワイワイ


霞とは仲が良いわけじゃないけど、クソ提督への文句と悪口だけは盛り上がる。そういう関係。



61: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/03(日) 23:29:35.09 ID:kW0WHzjOo

――――― 夜 第七駆逐隊の部屋


朧 「それじゃ電気消すよ」

漣 「こんな健全な時間に寝るなんて……漣も堕落しちゃったよ…… 」

潮 「堕落って……健全な時間に寝るなら更生じゃ……? 」

曙 「はいはい、漣の相手をしてるとまた寝るのが遅くなるからね。おやすみー」

漣 「ぼのたんひどいっ」

曙 「ぼのたん言うなっ! 」


眠ろうと目を閉じると、今日の出来事が頭をよぎる。

一人取り残された辛い記憶に苦しむ満潮。それを知っていてなんとかしようとするクソ提督。そんなクソ提督を見てイライラする霞やあたし。まったく、なんでクソ提督のことでモヤモヤしなきゃなんないのよっ!



62: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/03(日) 23:30:21.20 ID:kW0WHzjOo

潮 「曙ちゃん……? 大丈夫? 」

曙 「大丈夫って? ちゃんと入渠も終えてきたし大丈夫よ」

潮 「ううん、そうじゃなくて。なんだか元気が無かったから。何か嫌なことがあったのかなって」


暗くて見えないけど、きっと心配そうな目でこっちを見てるであろう潮。この子は真面目で優しくて、あたしのちょっとした変化をいつも見逃さない。


曙 「元気よ元気。キス島攻略も無事終えたしね。一緒に行ったメンバーともちゃんと仲良くやってきたわ」

潮 「でも……。元気が無いというか、なんだか苦しそうだったんだもん」

曙 「ほんとに大丈夫よ。心配してくれてありがと。おやすみ」

潮 「うん、おやすみなさい…… 」


この子はどうして、あたしのちょっとした変化がわかるんだろ。それで、どうしてあたしなんかのことをこんなに心配してくれるんだろう。そして……あいつも……クソ提督も、どうしてあたしなんかのことをあんなに気にして心配するんだろう。どうして……あたし以外の子もあんなに心配するんだろう。

優しい人達。その優しさにツンツンとした返事しか出来ないあたし。そう……悪いのは素直になれないあたしの方。



63: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/03(日) 23:31:57.52 ID:kW0WHzjOo

暗い中、目を閉じて落ち着いて考える。さっきの潮の優しさが、心の棘を少しだけ柔らかくしているのを自覚する。

そう、なぜイライラするかはともかく……クソ提督があたしや仲間たちを大切にしてくれていること、心配してくれていること。それは間違いない。それにはちゃんと感謝しよう。優しい言葉を返そう。そのぐらいはすべきだ。

なんとか素直な返事を返せた自分を想像する。その時クソ提督は……きっとびっくりして、次いでオロオロした感じでしどろもどろに返事をする。まったく、大人のくせにしっかりしなさいよね!

よし決めた! 今度クソ提督と二人になった時に、ちゃんと話して、これまでの態度を謝ろう。


曙 「ふふふ……その時を楽しみにしてなさいよ、クソ提督♪ 」


朧 (曙、声に出ちゃってるよ……)

漣 (うはラブ妄想ktkr! からかいたいけどここはぐっと我慢我慢!)

潮 (曙ちゃん、やっぱり提督のことで悩んでたんだ。わたしも怖がらないようにがんばろう……)



64: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/03(日) 23:32:27.94 ID:kW0WHzjOo

++++++++++


今思えば……。なんでこの時にもっと積極的に、ちゃんと自分から動けなかったのか!

なんで「次に二人きりになった時に……」なんて逃げ腰だったのか!

ほんと、自分の臆病さが情けない!

でも……悩んで、臆病に逃げて……そしてまた悩んで。そういう日々があったからこそ今の自分があるのよね。だからこれもまた必要な日々だったんだろうと……そう思いでもしなきゃやってられないわよ!


++++++++++



71: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/06(水) 20:10:26.09 ID:QnPQBTkbo

――――― 曙着任から3ヶ月後 鎮守府廊下



72: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/06(水) 20:10:53.77 ID:QnPQBTkbo

曙 「さて、じゃあ遠征報告行ってくるわ」

潮 「あ、わたしも行くよ」

朧 「潮、また提督に叫んだりしちゃわない?」

漣 「ご主人様もびっくりするのが面白いよね! 」

潮 「だ、大丈夫だよ……多分…… 」

曙 「潮も大分クソ提督に慣れてきたよね」

朧 「提督のほうが、いつ叫ばれるかとビクビクしてる感じだね、最近は」

漣 「潮も頑張って苦手克服してるんだねぇ。これも毎日の近代化改装のおかげかもね☆」

潮 「漣ちゃん! もうわかってるもん! 補給だよ補給! 」

朧 「あははは」



73: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/06(水) 20:12:14.79 ID:QnPQBTkbo

――――― 少し後 提督執務室


曙 「以上、遠征は成功しました」

五月雨「遠征お疲れ様でしたー! 南方の遠征はいかがですか? 」

曙 「きつかった。成功したものの結構ギリギリだったわ」

比叡 「遠征も大変そうね。お疲れ様」

潮 「比叡さん、今日はどうされたんですか? 」

比叡 「今朝廊下でね、五月雨が目の前で転んで、大事な資料をわたしにぶちまけたのよ……。その流れで手伝いにね」

五月雨「あ、あはは…… 」

時雨 「五月雨のドジは相変わらずだからね」

羽黒 「あはは……でも、五月雨ちゃんのおかげでお手伝いがいっぱいいるからね」

利根 「五月雨は顔が広いからのー」

曙 「確かに、最近はいつも執務室は人でいっぱいよね。クソ提督、こんなんでちゃんと執務できてるの? 」

提督 「ああ、皆手伝ってくれて助かっている。それで遠征の件だが、曙でも南方の燃料輸送遠征は厳しそうか? 」

曙 「そうね……燃料を得るとなるともう少し奥地に行かないと駄目そうだから、もう一段階高い練度がいるでしょうね」

提督 「そうか……ありがとう。七駆は数日は休暇になる。ゆっくり休んでくれ。潮もご苦労だった」

潮 「は、はいぃぃぃ、ありがとうございます!(裏声) 」



74: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/06(水) 20:12:53.05 ID:QnPQBTkbo

――――― 直後 鎮守府廊下


曙 「潮も大分慣れたじゃない。急に話しかけられても叫ばなかったし」

潮 「う、うん。すごくびっくりしたけど、ギリギリセーフだったよ」

曙 「最初は、一歩近づかれるだけで泣きながら逃げ出してたのにね」

潮 「だって……提督すごく大きいし……いつも難しい顔してるし……怖かったんだもん」

曙 「今は怖くないんだ? 」

潮 「うん。実はすごく優しい人だって分かったし……。だからみんなも提督とすごく仲良くなってるみたいだし」

曙 「そうねぇ……まったく、あんなクソ提督のどこが良いんだか」

潮 「うふふ、曙ちゃんもすっかり提督と仲良しだね」

曙 「今の発言からどうしてそうなるのよ! 」



75: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/06(水) 20:13:22.15 ID:QnPQBTkbo

++++++++++

 この頃は、執務室にいつも何人かの艦娘が入り浸っていて、五月雨を手伝って秘書艦業務をしてたのよね。アホ提督と二人になったときに昔のことを謝りたいと思っていたあたしは、考えてみたら二人きりになる時間なんて全く無いと気がついて……イライラしていた。一歩踏み出せば二人で話せる時間なんていくらでも作れるのにね。ほんと、あたしのアホ!

 だけど……この後事態はどんどん悪くなっていく。それもまたあたしのせいでもあったんだけどね……

++++++++++



76: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/06(水) 20:14:17.93 ID:QnPQBTkbo

――――― 1週間後 港


朧 「ええっ! 五月雨ちゃんが旗艦なの!? 」

五月雨「はいっ! 今後当分はわたしが旗艦でこの遠征を続けますのでよろしくお願いしますっ」

潮 「え、え? じゃあ秘書艦はどうするの? 」

五月雨「秘書艦は……神通さんに交代になりました。だからわたしもこれからは遠征要員です! よろしくねっ」

曙 「よろしくねって……最初からずっと秘書艦だったのに、五月雨はそれでいいの? 」

涼風 「ああっと、みんな、ちょっと来てくんなっ」

涼風 (五月雨、さんざん泣いて落ち込んで、やっと元気になったんだ。どうか触れないでやってくれよ)

漣 (やっぱりショックだったんですね。ご主人様はどうして秘書艦交代なんてしたんだろ)

五月雨「これ涼風! 旗艦のわたしをのけものにしてナイショ話しないのっ! この遠征の旗艦を努められる練度の駆逐艦ってわたしだけだから仕方ないの」

潮 「確かに五月雨ちゃんはうちで一番練度が高い駆逐艦だけど…… 」

五月雨「それに……最近は人数がすごく増えて行ける海域も増えて……わたしは事務作業とか得意じゃないから、秘書艦仕事も限界だったのかなって。だから自分にできる仕事として、遠征頑張るよ!」

朧 「そうだね。確かに五月雨にしか出来ない役割だもんねこれは。あたし達も練度上げて、交代できるようにならなきゃ」

曙 (………… )



77: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/06(水) 20:15:08.36 ID:QnPQBTkbo

――――― 午後 提督執務室


五月雨「というわけで、遠征は無事成功です! 燃料と鋼材をいっぱい持って帰ってきました! 」

神通 「五月雨ちゃん、お疲れ様でした」

提督 「ひさしぶりの遠征なのに、いきなりきついのを任せてすまなかった。無事でホッとした」

五月雨「えへへ、がんばっちゃいました! さて、この後もう1回行ってきますね! 」

提督 「1日2回で計画しているが、どうか無理はしないでくれ。早急に駆逐艦の練度を上げて、交代できるようにするからな」

五月雨「このくらいへっちゃらですよ! それじゃあ行ってきまーす! 」


バタン


曙 「……クソ提督、何考えてんのよ」

提督 「……」

曙 「そりゃこの遠征を上手く回せれば資材はすごく楽になるわよ。でもそのために五月雨を秘書から外すってどういうことよ! 」

提督 「神通が秘書では不満か……? 」

神通 「…… 」

曙 「え!? 神通さんで不満とかそういう話じゃなくて…… 」

提督 「秘書艦をずっと固定している鎮守府のほうが珍しいんだ。それに最近は秘書仕事が多すぎて、五月雨に毎日残業してもらって苦労をかけていた。そういうことも含めた判断だ」

曙 「……えーえー、確かに正論なんでしょうよ。でも、あたしがしてるのはそういう話じゃないのっ。その様子じゃ五月雨にもちゃんと話して無いんでしょ? まったく、ほんとにクソ提督よ、このクソ提督!! 」


バタン



78: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/06(水) 20:15:56.95 ID:QnPQBTkbo

提督 「……………………はぁ 」

神通 「提督……差し出がましいとは思いますが……曙ちゃんの言うことも一理あります。五月雨ちゃん、すごく落ち込んでると思いますよ」

提督 「…… 」

神通 「五月雨ちゃんを急に秘書から外したこと、代わりにわたしを秘書に起用されたこと。突然過ぎて、わたしも含めてみな首をかしげています。少なくとも五月雨ちゃんと……わたしには、理由をご説明いただけると嬉しいです。それから、何を期待してわたしを秘書艦に起用したのかも知りたいですね」

提督 「……。俺はミスが怖い。司令部の判断ミスで、誰かが沈んだり傷ついたりすることが無いように努めたい。そういう点では五月雨は俺の秘書艦にはあまり向いていない。どちらかと言えば『ミスをしない』の対極にいるような子だからな」

神通 「そんな……。確かにドジな子ですけれど、その分がんばり屋で、大勢の仲間に支えられて、しっかり秘書艦を努めてきたじゃないですか」

提督 「ああ。だが、俺の期待に応えるために無理に無理を重ねているのは見ていて辛かった。本当ならもっと早く秘書艦を交代すべきだったんだ。だが、俺が彼女に甘えてここまで引っ張ってしまった」

神通 「…… 」

提督 「君に期待することは、俺がミスをしないよう、どこまでも厳しく監督することだ。よろしく頼む」

神通 「はい……承知しました…… 」



79: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/06(水) 20:16:41.88 ID:QnPQBTkbo

――――― 数日後 港


漣 「ふー、無事帰還! 今日はこれで終わりかぁ。毎日忙しくてやんなっちゃう! 」

朧 「うん、急に忙しくなったね。南方の遠征に出られる練度の駆逐艦が少ないから仕方ないけど」

潮 「はふー、ほんとに疲れたよー」

曙 「文句言わない。五月雨なんてわたしたちよりもう1回多く遠征出たんだよ、今日も」

五月雨「曙ちゃんありがとうー。でも電ちゃんも旗艦出来るようになったから楽になったよ、すっごく」

涼風 「でも五月雨もちょっと疲れてるよ。さ、すぐ帰って早く寝よう」

曙 「それがいいよ。報告はあたしの方で行っておくからさ」

五月雨「うん、ありがとう~」



80: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/06(水) 20:17:23.96 ID:QnPQBTkbo

――――― 少し後 提督執務室


コンコンコン

曙 「曙、入ります」

神通 「遠征報告ですね。お疲れ様です」

曙 「はい。遠征は無事大成功でした」

提督 「お疲れ様」


シーン


神通 「…… 」

曙 「…… 」


毎日あんなに賑やかだった執務室が……。もちろん、これが普通なのは分かる。でも……。


提督 「曙、後ほど皆にも通達が行くが、今後は遠征報告は執務室まで来なくても大丈夫だ」

曙 「……どういうこと? 」

提督 「港横の工廠入り口で、夕張が遠征報告を受け付ける仕組みにした。だから明日からはいちいち執務室まで上がらなくて大丈夫だ」

曙 「……ご配慮アリガトウ。心から感謝いたしますわ、このクソ提督っ! 」


バタン



81: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/06(水) 20:17:51.47 ID:QnPQBTkbo

――――― 夜 第七駆逐隊の部屋


漣 (潮、ほら頼んだっ)

朧 (潮、お願いね)

潮 (えー、どうしてわたしばっかり……)

曙 「……何こそこそ話してんのよ」

漣 「え!? いや、ほら……ねぇ」

朧 「え、えっと、潮から話があるんだって。ほら、潮」

潮 「え、えー! 」

曙 「……何なのよ」

潮 「あの……あのね曙ちゃん。帰ってきてからずっと難しい顔してるけど、どうしたの……? 」

曙 「はぁ? 別になにもないわよ」

漣 「いやー、それは無理があるでしょ。ずっと眉間にシワがよりっぱなしだし」

朧 「何か思い出しては『チッ』とか舌打ちしてるし…… 」

曙 「……チッ」

漣 「ひぃぃ」



82: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/06(水) 20:18:43.78 ID:QnPQBTkbo

曙 「……悪かったわよ。ちょっとイライラしてたから」

潮 「提督のところに行ってからだよね。提督とケンカしちゃった? 」

漣 (聞きにくいことをナチュラルに聞いたっ。そこに痺れるあk(ry

曙 「……何も無いわよ」

潮 「なにもないならどうして? 」

曙 「何もなかったからイライラしてたの! 」

潮 「……ふぇ? 」

曙 「だからー! 潮も聞いたでしょ? 遠征報告で執務室に行かなくて良くなるって」

潮 「あ、うん。聞いたけど……それがどうしたの? 」

曙 「秘書艦が五月雨じゃなくなったから、執務室に人が集まらなくなったでしょ! その上、報告も誰も行かなくなるんだよ? つまり執務室は1日中、クソ提督と神通さんが無言で作業をするだけの場所になっちゃうのよ! 」

潮 「そっか……そうだね。なんだか急に寂しくなっちゃうね」

曙 「そうよ! せっかく賑やかで楽しそうだったのに! 今日行った時も、無言の寒々しい雰囲気だったわよ! 」

潮 「えっと、それは分かるんだけど……それでどうして曙ちゃんがイライラしちゃうの? 」

曙 「え!? えっと、それは…… 」

潮 「提督が寂しくなっちゃって可哀想だから? 」

曙 「/// ばっ、馬鹿言わないでよ! クソ提督が寂しかろうがあたしには全然関係ないわよ。そもそも自業自得……そう、自業自得なのに寂しそうにしてたからイライラしたのよ! 」

潮 「ふーん。なんだか難しいね」

漣 「うんうん、そうなんだよ潮くん。ぼのたんは難しい子なのだ」

曙 「漣っ! 何わかった風なこと言ってるのよっ」

漣 「きゃー、ぼのたんが怒ったー! 」


ワイワイ



83: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/06(水) 20:19:10.38 ID:QnPQBTkbo

++++++++++

この時あたしは、アホ提督がわざと自分を追い込むような決断をしたんだって知らなかった。

だから、色々やってみては墓穴を掘っておかしな方向に進んでいると思って、それでイライラしていたのだ。

知らないっていうのは本当に罪深い。提督の自業自得なんて言っていたけれど……自業自得なのはあたしの方じゃないか!

++++++++++



89: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/08(金) 14:47:01.19 ID:zkgBqo9Eo

――――― 1週間後 工廠前



90: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/08(金) 14:47:46.82 ID:zkgBqo9Eo

曙 「遠征から帰還しました。無事完了です」

夕張 「はい、確かに。七駆は今日はこれで終わりね。おつかれさまー」

潮 「ありがとうございます。南方の遠征もすっかり慣れちゃったね」

漣 「慣れてみると意外と良いよね。北方のあの寒さを思えば……」

朧 「北方と違ってカニさんがあんまりいないのが……」

曙 「カニにこだわってるのは朧だけだからっ」

夕張 「うふふ、七駆は当分南方遠征だろうし、夏は水着でも用意しておくわ。そのまま艤装付けて遠征行けるやつね」

漣 「ひゃっほー! それなら涼しく行けるYO! 」

潮 「み、水着で遠征ですか……うーん…… 」

夕張 「あっと、それはともかくとして、遠征報告のことなんだけどね」

朧 「? 」

夕張 「神通さんからの希望で、大成功だとか、何か特記事項があった時は、執務室まで報告に来てほしいって」



91: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/08(金) 14:48:38.04 ID:zkgBqo9Eo

曙 「ふんっ。クソ提督は報告なんて来てほしく無いんじゃないの? 」

夕張 「どうかなー。執務室に行かなくてい良い仕組みってね、わたしが相談されてこういう形にしたんだけどさ」

漣 「ふむふむ」

夕張 「近海の短時間遠征に何度も行ってるチームがいるでしょ? 30分で帰ってくるみたいな」

潮 「警備任務とかですよね。最初はわたしも良く行きました~ 」

夕張 「そういう子たちが、帰ってくるたびに報告に執務室行っていて、その手間が申し訳ないからなんとかしたいって言われたのよ」

朧 「確かに、何度も連続して遠征に行ってる子たちからしたら面倒ですよね…… 」

夕張 「だけどその代償として、艦娘が提督に直接会う機会がガクンと減っちゃったでしょ? 神通さんはそれを心配してるみたいだよ」

曙 「……ふんっ。全く……。了解、大成功の時とかは報告に行くようにする」

夕張 「お願いねっ」


……分かってるわよ。クソ提督が、艦娘を邪険に扱ったりしないことぐらい。そんなことだろうと思ってたわよ。でもだからって……あー、イライラするっ!



92: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/08(金) 14:49:11.36 ID:zkgBqo9Eo

++++++++++


こうして、1週間に1回くらい顔をあわせる程度になったわけだけど……。アホ提督はどんどん無表情に、無口になっていった。その変化にイライラして、あたしはきつく当たるばかり……。

そうこうしているうちに……


++++++++++



93: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/08(金) 14:49:38.27 ID:zkgBqo9Eo

――――― 2ヶ月後 鳳翔さんのお店


曙 「……あ」

潮 「? 曙ちゃんどうしたの? 」

曙 「ちょっと行ってくる。潮はみんなと食べて」

潮 「行くってどこへ~~? 」


ダダッ


曙 「あの、神通さん」

神通 「あら曙ちゃん、どうしたの? 」

曙 「その……少しお話をしたくて……ご一緒しても良いですか? 」

神通 「ええ、どうぞ」



94: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/08(金) 14:50:30.08 ID:zkgBqo9Eo

神通 「お話って、秘書艦のことでしょう? 」

川内 「なー。突然秘書艦交代って聞いて、あたしもびっくりだよ」

神通 「実は結構前からお話はあったんだけどね。一応機密だから……黙っててごめんね、姉さん」

曙 「その……理由とか聞いても良いですか? 」

神通 「そうねぇ。あんまり詳しくはお話できないけど…… 」

曙 「…… 」

神通 「わたしが秘書艦になった時、なにを期待しているかを聞いていたの。その期待に応えるように頑張ってきたんだけど……。最近ね、その期待に応えたくないって反発したの」

川内 「おいおい神通。提督と真っ向からケンカ? 凄いことするね」

神通 「ケンカしたわけじゃないわ。ただ、ご期待は存じていますが、もっと違う秘書であるべきだと思いますと意見させてもらった感じです。提督が怒ったりしないことに甘えてのことですけど」

曙 「その……それで……? 」

神通 「提督、すごく悩まれて……。わたしの言うことももっともだけど、今は自分の方針を貫きたいっておっしゃってね。その方針にあった秘書艦に交代することになったの」

川内 「我が妹ながら強いなー。提督とそこまでやりあっていたとはっ」

曙 「提督がどんなことを期待していたのか……。教えてもらえませんか? 」

神通 「それは言えません。知りたいのであれば、提督に直接聞きに行くべきですね」

曙 「…………分かりました。ありがとうございました」



95: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/08(金) 14:51:00.35 ID:zkgBqo9Eo

++++++++++


どんどん無口に無表情になっていく様子……そして秘書艦の交代。アホ提督がどんどん暗いところに入り込んでるのは、なんとなく感じていた。でも、その原因も、対処も、全然分からなくて……。ただイライラしながら遠くから眺めているだけだった。


++++++++++



96: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/08(金) 14:52:02.97 ID:zkgBqo9Eo

――――― 1ヶ月後 提督執務室


那智 「今日はこれで終了だな。わたしもこの後演習に参加して、上がらせてもらおう」

提督 「ああ、今日もお疲れ様」

那智 「演習の後、千歳や隼鷹と一杯やる予定なんだ。貴様もどうだ? 」

提督 「……いや、遠慮しておくよ」

那智 「そういえば呑んでいるところを見たことが無いな。もしかして下戸なのか? 」

提督 「いや、酒は好きなんだがな……。訳あって禁酒しているんだ」

那智 「なんともったいない。人生の楽しみも、嫌なことを忘れる事も、すべて酒が賄うというのに、その酒を遠ざけるとは……。わざわざ損な生き方をすることもあるまいに」

提督 「うぐ……確かに酒は素晴らしい。だがな、うちの艦隊には潔癖な子も大勢いる。司令官が酔っ払っている姿を見たら、不安になったり腹が立ったりするかもしれない。だから我慢するしか無いんだ」

那智 「なるほど……貴様は真面目だな。確かに言うこともわかるが……。それなら、誰にも見つからないように飲めば良いのではないか? 」

提督 「……それも考えたが、執務室で酒をあおったり、私室に酒瓶が転がっていたりするのは、やはり司令官としどうかと思う」

那智 「難しく考えすぎだと思うがな。見つからずに呑める場所などいくらでもあるだろう。おっと時間だな、では失礼する」

提督 「ああ、お疲れ様」


バタン


提督 「酒……か……。そうだな、呑めば少しは明るい気持ちになれるだろうか」



97: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/08(金) 14:53:17.81 ID:zkgBqo9Eo

――――― 1ヶ月後 七駆の部屋


漣 「ビッッッックニューース!! 」

潮 「わぁ、びっくりした! 漣ちゃんどうしたの? 」

漣 「今、青葉さんの極秘新聞もらってきたんだけどさ、見て見て! 」

朧 「なになに……『司令官、深夜にお忍びでお出かけ! 外部に愛人か!? 』 って、えええ! 」

曙 (ぴくっ)

潮 「あ、あ、愛人って…… 」

漣 「ぼのたんも来て来て! 超ビックニュースだよ! 」

曙 「なによ、まったくくだらない……。なになに……『深夜にこっそりと玄関から出て行く提督が目撃される。目撃者Sさんによると、目撃したのはこれで2回めとのこと。どうやら頻繁に抜けだしているようだ。外部の人か、はたまた誰かと外で待ち合わせなのか! 青葉を中心とした調査隊が尾行予定なので乞うご期待! 』 まったく、青葉さんのデマにも困ったもんだね」

漣 「それがね、目撃者の川内さんにも聞いたんだけど、ほんとに2回見かけたらしいよ。なんかリュックサック背負ってコソコソ出て行ったって」

朧 「夜遅くに内緒で出て行くとなると……愛人とかはわからないけど、ちょっと気になるね」

曙 「ふんっ。クソ提督がどこに行こうが知ったこっちゃないわ」

潮 (とかいいつつ曙ちゃん、耳が真っ赤だね……)

漣 「青葉さんと川内さんが中心になって、本気の追跡隊を結成するって言ってたから、続報楽しみだよ! 」

曙 「ま、興味ないけど……どうせ聞いて欲しいんだろうから、結果が分かったら聞いてあげるわよ」

漣 (ぼのたん、分かりやすすぎるやろ~! )



98: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/08(金) 14:54:24.83 ID:zkgBqo9Eo

――――― 4日後 七駆の部屋


漣 「追跡結果でたよ~~! 」

朧 「え、提督の外出の話? 」

漣 「そうそう、ご主人様が昨夜外出したの、バッチリ追跡出来たって」

潮 「そ、それで……あ、あ、あ、愛人さんは…… 」

曙 「まったく騒がしいわね。それで、どうしたって? 」

漣 (ぼのたん、声がちょっと震えてる……萌え(゚∀゚)

朧 「もったいぶらないで教えてよー」

漣 「えっと、結果はちょっとガッカリというか、やっぱりと言うかだったみたい」

潮 「がっかり? 」

漣 「うん。ご主人様ね、鎮守府の横の森に入っていって……小さなテント立てて焚き火してたって」

曙 「……は? 」

潮 「え? テント? 焚き火? 」

朧 「それって……深夜にわざわざ1人でキャンプしに行ってたってこと? 」

漣 「うん、そういうこと。それで早朝に片付けしてこっそり戻ってきて、普通に仕事してたって」

曙 「な……な……なによそれっ。全くもう人騒がせな……人の気も知らないで! あのクソ提督っ! 」

漣 「あれぇ~。人の気も知らないでって、ぼのたん、どんな心配してたの~ニヨニヨ 」

曙 「/// う、うっさい! 」



99: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/08(金) 14:55:14.11 ID:zkgBqo9Eo

潮 「でも……なんだか不思議だね。何か理由があるのかな? 」

朧 「うーん。多分趣味なんじゃないかな」

漣 「深夜に1人でテントを張る趣味……でゅふふ」

曙 「なによその気持ち悪い笑い。あーあ、まったく何を考えてるんだか、ほんとクソ提督」

漣 「そうそう、後でちゃんと通達が来ると思うけど、みんな邪魔をしないようにしようって」

潮 「そうだね、静かにお星様とか見たいのかも……。邪魔しちゃ駄目だよね」

曙 「お星様って顔じゃないでしょ、クソ提督は」

潮 「顔で見るわけじゃないよね…… 」

朧 「あたしは邪魔しないのに大賛成。あたしのカニさん趣味もそうだけど、周りに理解されない趣味ってあるからね」

曙 「確かに、実は艤装の中にカニさんをいっぱい飼ってるの、人によってはドン引きしそうだよね」

潮 「カニさんもうさ吉もうらやましいな……」

漣 「うさ吉、カニさんと同列かぁ……」

曙 「ま、あたしも邪魔しないのは賛成。内容はともかく、あの仕事仕事のクソ提督が趣味らしきものを楽しんでるなら良いことじゃない」

潮 (曙ちゃん、結局、提督のこと心配してるんだね……)



100: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/08(金) 14:55:40.81 ID:zkgBqo9Eo

――――― 数日後 深夜 七駆の部屋


朧 「じゃあ電気消すよ。おやすみー」

漣 「今日は夜更かし出来たから満足じゃ」

潮 「明日は出撃無いから、ついついおしゃべりしちゃったね」

曙 「まったく、毎日一緒にいるのに、なんでこんなにしゃべることがあるのよ…… 」

潮 「えー。だって毎日いろんなことがあるもん」

漣 「そーそー、毎日いろんな事件があるからね! 」

朧 「こらこら、またおしゃべり始まっちゃうよ。じゃ、おやすみー」


パチン



101: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/08(金) 14:56:14.08 ID:zkgBqo9Eo

曙 (…………)


シーン


曙 (そーっと、そーっと)


パタン


潮 「……みんな起きてる? 」

漣 「うん、曙、今日も出かけたね」

朧 「トイレかと思ったけど、こうも毎晩だと違うかな? 」

潮 「でもすぐ帰ってくるから、やっぱりおトイレかなー? 」

漣 「でも、これで3日連続だよ。さすがにちょっと気になるなー。ちょっと見てくるね」

潮 「あ、わたしも行くー」

朧 「それならわたしも行くけど、くれぐれも曙に見つからないようにしようね。見られたくないことかもしれないし……」

漣 「み、見られたくないこと(゚∀゚) 」

潮 「? 」



102: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/08(金) 14:57:15.47 ID:zkgBqo9Eo

――――― 鎮守府廊下


曙 「はぁ……あたし何やってんだろ」


あの話を聞いて以来、どうしても気になって……。でも邪魔しちゃだめだから3階の窓から探してる。でも、毎日出かけているわけじゃないだろうし、そもそも森のなかじゃ窓からなんて見えないわよね。ほんと、何やってるんだろ……。


曙 「あっ…… 」


でも今日は変化があった。森のなかに小さな明かりが見える。ゆらゆらと揺らめく明かり……おそらくは焚き火の明かり……あそこにいるんだ……。


曙 「まったく、こんな深夜に何やってるのよ! 」


暗い森のなか、1人焚き火の前で座っているクソ提督が目に浮かぶ。おそらくは堅い暗い顔で、じっと火を見つめている姿。

その姿は……どこまでもどこまでも孤独だった。


曙 「なんで………… 」


同じ状況に置かれた自分を想像してみる。そもそも想像するのが難しかった。転生してからずっと潮と一緒で……すぐ七駆みんな揃って、部屋も出撃もいつでも一緒。あたしは孤独とは無縁だった。だから、1人暗い森のなかにいる自分を想像すると……寂しさと不安でいっぱいになる。



103: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/08(金) 14:58:24.46 ID:zkgBqo9Eo

曙 「ほんとに何でなのよ…… 」


日々孤独な方に自分を追いやって……余暇のささやかな楽しみでも孤独に沈む……。あんた最初はそんなんじゃ無かったじゃない……ほんとに一体どうしちゃったのよ!


曙 「ぐす……ほんと馬鹿みたいに……あれ……? 」


あいつは大人だ。男の人だ。だからきっと自分とは違うんだろう。それはわかってる。だけど……だけど……あんまりにも……寂しいじゃない……。あたしだって、落ち込んだ時やイライラした時に、七駆のみんながいてくれなかったら……。


曙 「ちょっと……どうして止まらないの……ぐす……うぐ……う……うう……。あたし、泣きたくなんか……ひっく…… 」


あいつはきっと泣いたりしない。ただ無表情にしてるだけ……。そうやって泣けないことすらもとても悲しいことに思えて……もう泣き止むのは無理だった。


曙 「ぐす……ひぐっ……ずずっ……ばか……ぐす……クソ提督……ひぐっ……なんであんたなんかのことで……ぐすっ……泣いたりなんか……ひっく…… 」


もう頭のなかがぐちゃぐちゃで……何も考えられなかった。焚き火の前で静かに座るクソ提督の幻だけが消えず……涙もしばらく止まらなかった……。



潮 (…… )

漣 (…… )

朧 (……帰ろ。気軽に見に来ちゃ駄目だったよ)

潮 (うん…… )



104: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/08(金) 14:58:52.86 ID:zkgBqo9Eo

++++++++++

あの時、どうしてあんなに泣いたんだろう。

アホ提督が孤独で寂しいこと。周りにはあいつを慕う大勢の艦娘も……あたしもいるのに……それなのにどこまでも孤独なこと。間にある絶望的な距離。そういう諸々が頭を巡っていたのは覚えてる。

本当はあたしとアホ提督に距離なんて無かった。ただお互い背中を向け合っていただけだった。どうして……ちゃんと向き合えなかったんだろう。

++++++++++



107: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/08(金) 16:08:42.41 ID:Ishgt6c2o

これは陸奥スレのはずだと忘れてしまうな
後半に期待
108: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/08(金) 16:14:56.82 ID:IniAqFnRo
ぼのたんぼのたん
112: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/12(火) 01:19:47.13 ID:T3KczMZeo

――――― 1ヶ月後 北方海域



113: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/12(火) 01:20:34.72 ID:T3KczMZeo

那智 「ああ、やはりわたしは戦場の方が性に合うな」

足柄 「2ヶ月もろくに出撃出来なくて、良く我慢出来たわね。わたしなら絶対無理ね」

潮 「那智さんとの出撃、ひさしぶりですね」

霞 「でも、秘書艦をやめてしまって良かったの? 」

那智 「ま、これからは長門さんがしっかりやってくれるだろうから安心だよ」

曙 「長門さんは元々連合艦隊旗艦だし、上手くやってくれると思うけど…… 」


那智さんが秘書艦を降りると聞いて、もしかしたらクソ提督を明るくしてくれるような秘書艦になるかもしれないと少しだけ期待してた。そう、五月雨みたいな秘書艦なら……。でもやっぱり、あのクソ提督がそんな秘書艦を選ぶわけもなく……。本人の希望もあって長門さんに決定したそうだ。



114: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/12(火) 01:21:16.04 ID:T3KczMZeo

足柄 「でも、長門さんも着任したてで練度も低いし、そもそもあの人も戦場が好きな人でしょ? 秘書艦になって大丈夫なのかしら? 」

那智 「長門さんもそれは考えていたみたいでな。自分も戦場に出られるように、陸奥さんに補佐を頼むそうだ。実質的には、二人で交互に秘書艦をやることになるのではないか? 」

霞 「そうね……一人で秘書艦をやりきろうとすると大変だし……良い判断だわ」

那智 「提督は渋い顔をしていたがな。長門さんに押し切られていたよ」

潮 「長門さん強そうですもんね~」

曙 「そう……陸奥さんも…… 」


陸奥さんとは何度か会ったけど、明るくて優しいお姉さんだった。そっか、陸奥さんが秘書艦をやってくれるなら、クソ提督も少しは元気になる……かも



115: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/12(火) 01:21:44.52 ID:T3KczMZeo

++++++++++


アホ提督との大きな距離を感じて、何も出来ない無力感でいっぱいだったこの頃のあたしは、自分で何かしようなどと全然思わず、新秘書艦の陸奥さんに勝手な期待をしていた。

とはいえ、もちろん劇的に何かが変わるわけでもなく……。ただ、陸奥さんが秘書艦のときに執務室に行くと……少しだけ以前のような明るい雰囲気があって……それが喜びだった。

そういう停滞した日々が続いて……もうそれが当たり前になってきている頃にまた変化が訪れた。


++++++++++



116: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/12(火) 01:22:11.13 ID:T3KczMZeo

――――― 数ヶ月後 鳳翔さんのお店



117: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/12(火) 01:22:48.54 ID:T3KczMZeo

曙 「あ、霞。ちょっといい? 」

霞 「……いいわよ。ごめん不知火、少し曙と話してから行くわ」

不知火「わかった」

曙 「悪いわね」


霞 「話なんて珍しいわね。どうしたの? ま、あんたが話しかけてくるときは、大体あいつの件だけどね」

曙 「……ま、そうよ。ちょっと情報交換したくてね」

霞 「ふーん……。いいわ、まず話を聞きましょうか」

曙 「あんた、五月雨がひさしぶりに秘書艦業務に復帰してるって知ってる? 」

霞 「ちらっと噂で聞いてたけど、ほんとだったんだ? 」

曙 「ええ。陸奥さんの提案で、長門さんや陸奥さんの補佐をしてるらしいわ。もう何度も行ってるとか」

霞 「あいつ、どういう風の吹き回しかしら」

曙 「あたしも気になるのよ。それで、あんたの方も何か知らないかと思って。最近、朝潮型が随分バタバタしてるから」



118: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/12(火) 01:23:44.66 ID:T3KczMZeo

霞 「……幾つかあるわよ、あいつの話」

曙 「そうなの? 」

霞 「ええ。まず最近、荒潮が何度か執務室に呼ばれてるわ」

曙 「! どうして……? 」

霞 「理由は内緒だって教えてもらえなかった。でも直後に、朝潮が何度か長門さんに呼ばれて……何故かぬいぐるみを買ってきたりしてる」

曙 「……訳がわからないわ」

霞 「それだけじゃなくて……これはついこの間のことなんだけど……わたし、あいつと街の近くで会ったわよ」

曙 「街って……ええ!! 司令官は鎮守府外への外出は禁止でしょ!? 」

霞 「そうなのよ。それが長門さんと二人でコソコソと隠れながら歩いてて。慌てて問い詰めたら、陸奥さんの悩みがどうこうってごちゃごちゃ言うから、一喝して帰らせたわ」

曙 「あいつ……一体何してんのよっ」

霞 「わからないけど……でも、今までよりは良いと思うわよ。ムカつくけどね。じゃあ時間だから行くわ」

曙 「確かにムカつくわね。ありがと」



119: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/12(火) 01:24:52.44 ID:T3KczMZeo

――――― 夜 七駆の部屋


曙 「……という話なのよ」

潮 「鎮守府の外に出てるなんて、提督すごくアクティブになったんだね」

朧 「潮、それ全然違うと思うよ」

漣 「朝潮のぬいぐるみの件は聞いたよ。この間は、不公平にならないように大潮と満潮もお揃いのぬいぐるみを買ったとかなんとか」

朧 「それに提督が関わっているってこと? 」

漣 「噂では、長門さんと陸奥さんに買ってもらったらしいけど……荒潮が執務室に呼ばれてたってことは、ご主人様も一枚噛んでるんじゃない? 」

潮 「ぬいぐるみいいなぁ。わたしたちも買ってもらえるのかな? 」

曙 「ふむ……誰か他に何か聞いてない? 」

潮 「えっと、関係あるかわからないけど……。この間、五月雨ちゃんと長門さんが一緒にご飯食べてるの見たよー。楽しそうだった」

朧 「長門さん、最初はすごく怖かったけど、最近は仲良くしてる子が増えてきてるね」

漣 「漣の情報網によると、長門さんは実はぬいぐるみとか大好きで、この間もすごく大きなくじらのぬいぐるみを買って帰ってきたとか」

潮 「かっこいいのにかわいいね」

朧 「話が逸れたけど、提督の生活がちょっと変化してるねって話だよね? 曙は情報を集めてどうするの? 」

曙 「……知らないわよ。ちょっと気になっただけ」

潮 「………… 」


クソ提督に何か変化があったのは確かみたいね。でも急にどうして……? この間会った時にも特に違いは感じなかったのに……。

ていうか、他の子たちとの関係を良くしていってるのに、あたしには変化なしって……どういうことよ。あームカつく!



120: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/12(火) 01:25:19.64 ID:T3KczMZeo

潮 「曙ちゃん。ちょっと二人でお話したいんだけど! 」

曙 「な、何よ突然大きな声で……別に良いけど」

潮 「じゃあ、ゆっくり話せそうなところに行きましょ! 」

曙 「ちょっと、ここじゃ駄目なの? どこ行くのよ、もう」

朧 「いってらっしゃーい」

漣 「先に寝てるからね」

曙 「そんなに遅くなんないわよ! 」

潮 「ほら、曙ちゃん、行くよ! 」

曙 「わかったって……もう、何なのよ」

朧・漣(潮がんばれ! )



121: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/12(火) 01:25:59.36 ID:T3KczMZeo

――――― 少し後 3階廊下


曙 「ちょっと、どこまで行くのよ」

潮 「ここ」


シーン


曙 「ここって…… 」

潮 「そう、曙ちゃんがしょっちゅう、キャンプしてる提督を見つめてる場所だよ」

曙 「!! あ、あんた着いてきてたのっ」

潮 「だって、あんなにしょっちゅう夜に抜け出してたら、どうしても気になっちゃうよ。わたしだけじゃなくて、朧ちゃんと漣ちゃんも一緒にだよ」


み、見られてた……お、落ち着くのよあたし。大泣きした時に見ていたとは限らない……落ち着いて……。


曙 「……それで、話って何よ」

潮 「話をする前に。今だけは、嘘をついたりごまかしたりしないって約束して。本当に大事なお話だから! 」

曙 「…… 」


何の話かは想像できる。だからさっさと切り上げて逃げてしまいたい。でもこういう時の潮は絶対に引き下がらない。ぼやっとして弱っちく見えるくせに、実は一番がんこで強い。そして、こういう時の潮は……自分のためじゃなく誰かのために……今はあたしのために……必死になっている時。



122: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/12(火) 01:26:53.06 ID:T3KczMZeo

曙 「はぁ……まったくあんたは……わかったわよ、約束する」

潮 「良かった……。じゃあ聞くね。曙ちゃんは、提督がどんどん元気をなくしちゃって、すっかり寂しそうにしてるのが心配で気になるんだよね? 」

曙 「……心配かはともかく、気になってるのは正解。あんただってそうでしょ? あいつ、昔はあんなじゃなかったし」

潮 「うん気になるよ。でもわたしは、別の人の元気がどんどん無くなってしょんぼりしてるのが、もっと気になるよ」

曙 「なあに、クソ提督以外にもそんな人がいるんだ? 」

潮 「曙ちゃんのことだよ! 」

曙 「なっ! 何言ってるのよ、あたしは違うでしょっ」

潮 「違わないよ! 溜息ついたりイライラしたり上の空だったり夜にこっそりでかけたり……ずっとずっとそうでしょ」

曙 「…… 」


悔しいけど……否定できなかった。


曙 「あ……あははは。そっか、あたしも同じように見えてたわけだ」

潮 「提督みたいに全然会えなくなっちゃった訳じゃないけど……元気がなくてすごく心配だよ。元気がない理由は提督が心配だから。あってるよね……? 」

曙 「……さっき言ったとおり、心配かどうかはともかく気になってるわ。クソ提督のあの様子でイライラしたりしてるのもあってる」



123: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/12(火) 01:27:36.55 ID:T3KczMZeo

潮 「やっぱりそうだよね……それじゃあ、どうして……どうして見てるだけなのっ」

曙 「!! な、なんですって! 」

潮 「だって曙ちゃんは、いつだって思い立ったら遠慮なく即行動するのに……提督をなんとかするために何かしないの変だよ! 」


カッと頭に血がのぼる


曙 「あ、あんたに何が分かるっていうのよ! 」

潮 「分かるもん! 曙ちゃんは提督のことが心配でしょうが無いのに何も出来なくて……それでイライラしてるんだって、落ち込んでるんだって」


ますます頭に血が上る。それはきっと図星を突かれたから。


曙 「ちっ……ほんとに何も分かってないくせに! あいつに何をしたって…… 」

潮 「うん、わたしは提督のことは何も分かってないけど……曙ちゃんのことなら分かるもん。曙ちゃんは遠くから見つめてため息ついてたって絶対元気になれない。何かしないと! 」

曙 「……話はそれだけね? もう十分よ。帰る」


これまで自分の中で問いかけてはそうしてきたように……今度は潮から逃げようとする……だけど……



124: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/12(火) 01:28:23.08 ID:T3KczMZeo

潮 「まって、行っちゃ駄目だよ……! あ、曙ちゃんのばかぁぁっぁあ!! 」

曙 「えっ……しまっ……油断したっ」


説明しよう。潮は普段は乳牛みたいだけど、たまに暴走して闘牛みたいになるのだ!
一瞬で間合いを詰められ、無我夢中の頭突きをみぞおちに受けて吹っ飛ぶ……。


曙 「げふっ……」


呼吸が止まる……ふっとばされて完全に浮揚する……ああ、潮にふっとばされるのもひさしぶりね……


ドダン ズザザーー


落下の衝撃でまた呼吸が止まる……艦娘だからこの程度でかすり傷ひとつつかないけど……痛い……


潮 「あ、あああ! 曙ちゃん、ごめんね、ごめんね、大丈夫!? ぐすっ、ひっく」


そして自分でふっ飛ばしておいて心配してオロオロ泣くのよね。まったくこの子は……


曙 「あ、あんたね……ごほごほ……なに加害者が泣いてんのよ」

潮 「ご、ごめんね、無我夢中で……ごめんね」



125: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/12(火) 01:29:36.60 ID:T3KczMZeo

曙 「無我夢中ね…… 」

潮 「うん、ごめんね、ごめんね。でも、絶対に今日は分かってもらうんだって思ってたから、お話終わらせたくなくて……そしたら…… 」

曙 「それで、とりあえず突進して頭突きって……あんた、ほんと闘牛ね。乳牛卒業したほうがいいわ」

潮 「そ、そもそも牛じゃないもん! 曙ちゃんひどいよ~ 」

曙 「あはは……そうね、無我夢中か」


何をすれば良いか一生懸命考えたつもり。でも分からなくて立ち止まる……失敗して落ち込んだり嫌われたりするのが怖くて立ち止まり続けている。でもそんなあたしより、頭突きしてでもなんとかしようとする潮のほうがずっとかっこいい。
少なくとも……あたしのために、不器用なりに全力を尽くしてくれているのは伝わった。うん、それでいいのかもね。


曙 「…… 」

潮 「曙……ちゃん? 」

曙 「潮、ありがと。今の頭突きで目が覚めたわ。乳牛だと乳ばっかりで役に立たないから、やっぱ闘牛でいたほうがいいわ」

潮 「も、もう! でも、目が覚めたって……? 」

曙 「あんたの言うとおり、あたしらしく無かった。どうすればいいかわかんなくて、それで立ち止まってた。結果なんて気にせず、思いついたことをどんどんやるのがあたしだよね」

潮 「曙……ちゃん……。う、うん、そうだよ! とりあえず突っ走るのが曙ちゃんの十八番だもん! 」

曙 「……そういう評価もなんかむかつくわね。ま、いいわ。さ、明日から気合入れるわ」

潮 「うん! わたしにできることがあったら何でも言ってね! 」

曙 「うーん、じゃあとりあえず、クソ提督に今の頭突きをかまして目を覚まさしてやって」

潮 「そんなことできるわけないよ!>< 」



126: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/12(火) 01:30:03.05 ID:T3KczMZeo

++++++++++

ほんと、潮の言うとおりだった。あたしらしくもない、立ち止まってうじうじじて遠くから見つめて、勝手に泣いて……。あたしを良く知ってる七駆のみんなからしたら、ほんとに奇異に……よっぽど元気が無いように見えてたよね。

でも……この時はしょうがなかったのだ。どうしてそうだったのか、気がついたのはずっとずっと後のこと。

++++++++++



132: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/15(金) 00:19:19.89 ID:cQ3/WVaBo

――――― 翌日 第七駆逐隊の部屋


133: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/15(金) 00:20:10.03 ID:cQ3/WVaBo

曙 「とは言え具体的に何をしようかしら」

潮 「難しいよね。提督がなんで元気がなくなっちゃったのか、全然わかんないもん」

漣 「なになに何の話? 潮の口からご主人様が元気とか聞こえると、色々捗るんだけど」

朧 「提督が元気がない件がどうしたの? 」

潮 「曙ちゃんが、提督が元気出せるように頑張って何かするって」

曙 「ちょっと、そこまでは言ってないわよ」

漣 「おー! じゃあ潮、ぼのたんとちゃんとお話しできたんだ? 」

朧 「大成功だったみたいだね! 」

潮 「うん! 」

曙 「くっ…… 」

漣 「まぁまぁ。からかったりしないからさ。曙が元気ないと、漣たちだってやっぱり心配だよ」

朧 「でもこれで大丈夫だね。あとは行動あるのみ! 」



134: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/15(金) 00:20:59.53 ID:cQ3/WVaBo

潮 「それで、具体的に何をしたら良いかなって悩んでたの」

曙 「あたしとしては、七駆が誇る闘牛『潮』を執務室に放り込んで、元気が出るまでクソ提督に頭突きしてもらうのが良いかなと思ってるんだけど」

漣 「……? 潮は乳牛だよね? 」

朧 「うん、乳牛」

曙 「それが、たまに闘牛になって追い回して頭突きとかするんだわ」

潮 「もう、みんなっ! 絶対そんなことしないから>< 素直に元気出してって言えばいいよ! 」

朧 「うーん、あたしはあんまり賛成できないなぁ」

漣 「そうだよねー」

潮 「どうして? 」

曙 「どうして元気が無いか分からないのに元気出せっていうのは、無責任な感じがするわ」

朧 「無責任っていうのは言いすぎかもだけど……。直接話すなら、まずは元気が無い理由を聞いて、一緒に解決策を考えるとかのほうが良いよね」

潮 「そっかぁ。みんな大人だあ」

漣 「でも、ご主人様に元気がない理由を聞いたところで、謝られるだけで絶対に理由とか言わなさそうだよね」

曙 「間違いなくそうね。ほんっとクソ提督」



135: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/15(金) 00:22:14.45 ID:cQ3/WVaBo

朧 「多分だけど、これまでもいろんな人が提督を元気づけようと色々やってると思うんだ。それでもこんな感じだから、きっと誰も上手く聞き出せて無いんだろうね」

漣 「うーん……そうは言っても、最近ちょっと変わってきてると思わない? 」

潮 「思う思う! 五月雨ちゃんがひさしぶりに秘書艦やったりしてたもん」

曙 「……艦娘とのコミュニケーションを徹底的に避けてたけど、なにか理由があって、少しずつまた接点を持ち始めてる感じなのよね」

潮 「理由かぁ。なんだろう? 」

朧 「理由はともかく、少しでも接点持てるなら嬉しいよね。あたしもまた提督に会いたいな」

漣 「漣もまたご主人様と遊びたーい」

曙 「あたしたちにはなんの接触も変化もないわね。五月雨や朝潮型にはあるのに……」

潮 「曙ちゃん、顔怖いっ」

漣 「嫉妬のオーラがにじみ出てるよ、ぼのたん」

曙 「し、嫉妬とかじゃないわよっ/// 」

朧 「朝潮型の話って、頑張ったご褒美にぬいぐるみを買ってもらったっていうやつでしょ? 六駆が、次はわたしたちがもらうぞーって盛り上がってたの聞いた」

潮 「ぬいぐるみいいなぁ。わたしたちも頑張ったら買ってもらえるかな? 」

漣 「ふむ……何か戦果を上げればご主人様との接点が持てる可能性が高いと……そういうことかな? 」

朧 「それなら、確か近々、小規模な作戦があるっていう話だから、そこで頑張ってみようか? 」

潮 「素敵だね! なんとか曙ちゃんに大戦果を上げてもらって、ご褒美に提督と仲良くとか…… 」

曙 「な、なによそれっ! 」

漣 「潮かしこいっ。それで行こう! 」



136: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/15(金) 00:22:54.82 ID:cQ3/WVaBo

――――― 数日後 第七駆逐隊の部屋


漣 「えー、作戦はサンマ漁だったわけですが……なにそれって感じだね」

朧 「カニ漁なら出番だったのになー」

潮 「曙ちゃん、サンマ釣りってやったことある? 」

曙 「……あるわけ無いでしょ。まったく、大本営は何を考えてるんだか…… 」

漣 「ライバルとなる六駆はめっちゃ気合入れてたよ。うちもなんとかしないとね」

朧 「釣りで必要なのは知識と道具……。曙、図書室で釣りの本を借りて読んでおいてよ。あたしたちで道具を揃えるから」

曙 「いいけど……あたし釣りなんてしたことないわよ」

朧 「変な作戦なのは確かだけど、きちんとやんないと提督が叱られちゃうでしょ。だからがんばろう」

漣 「そうそう。理不尽な命令でも従うしかないのが軍だもんね」

曙 「……そうね。イヤになるわ、ほんと」

潮 「わたしも一生懸命用意するからね! 」



137: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/15(金) 00:23:34.66 ID:cQ3/WVaBo

――――― 数日後


漣 「おお、ぼのたん釣り人バージョン、意外と様になってる! 」

曙 「あたし、すごい恥ずかしいんだけど……」

潮 「曙ちゃん、かっこいいよ! 」

朧 「全体としては、サンマは兵装を使って捕まえる形で準備してるみたいだけど……。釣りの準備で大丈夫だったかな? 」

曙 「ま、せっかく用意してくれたんだし、これで頑張ってみるわ」

漣 「おお! ぼのたんがやる気だっ」

曙 「ぼのたん言うなっ。ま、あれよ、うだうだしてるよりは、こうやって立ち向かうほうが性に合ってるわ、やっぱり」

潮 「うん、そうだよ! 」

朧 「曙らしいね。がんばっておいでね! 」

曙 「うん、ありがと! 」



138: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/15(金) 00:24:05.65 ID:cQ3/WVaBo

――――― 後日 北方海域


大淀 「ソナーに感あり。サンマ魚群と思われます」

神通 「探照灯照射! 」

雷 「爆雷投下! あったれー! 」


ドーンドーン


ぷかぁ


電 「やったのです! サンマげっとなのです! 」

大淀 「やはりこのやり方が一番のようですね」

雷 「この調子で、もっともっと集めてもいいのよ! 」

曙 「………… 」

神通 「曙ちゃん、釣りの方はどうですか? 」

曙 「駄目ね。爆雷の音でみんな逃げちゃうから。釣りでやるなら別行動の方が良さそうだわ」

神通 「そうですか……。沢山集めないといけないようですので、曙ちゃんもがんばって! 」

曙 「釣りなら弾薬も使わないし、頑張ってみます」



139: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/15(金) 00:24:34.64 ID:cQ3/WVaBo

――――― 翌日 鎮守府近海


潮 「……意外と釣れないんだね」

漣 「竿が一本しか無いからねー。みんなでやればまた違うのかもだけど」

朧 「弾薬も燃料も使わないし、のんびりやればいいよ」

曙 「だぁーイライラする! もっとちゃちゃっと食いつきなさいよね、サンマ! 」

潮 「曙ちゃん、落ち着いて……どうどう」

曙 「……あんた、闘牛って言われたののお返し? 」

潮 「? 」

朧 「あ、引いてるよ! 」

曙 「え! わっとっと…… 」

ワイワイ



140: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/15(金) 00:25:36.07 ID:cQ3/WVaBo

――――― 後日 第七駆逐隊の部屋


曙 「30匹で無事作戦完了と……。で、あたしが釣り上げたのは2匹…… 」

潮 「が、がんばったよね! 」

朧 「総数としては少ないけど、ちゃんと作戦に貢献できた……よね? 」

漣 「六駆が爆雷方式で大戦果だったから、ちょっと負けちゃったけどねー」

曙 「ま、しょうが無いわよ。やることはやったし、釣りもなかなか面白いって分かったし、良かったわ。あたしだけ浮いてたけど」

漣 「ぼのたんだけ、釣り人フル装備だったもんね……」

曙 「服はあんたが用意したんでしょうか! でもいいわ。仕掛けとかちょっとしたものをしまうのに、ポケットが多い釣り服は確かに便利だったし」

潮 「曙ちゃん、すっかり釣り人だね」

朧 「こんどカニ釣り一緒に行こうよ」

曙 「ま、気が向いたらね」

漣 「そういえば、今回は作戦の打ち上げをやるらしいよ。鳳翔さんのお店を借りきって本格的に打ち上げパーティーだって」

潮 「すごいよねー。食べ放題らしいよ。楽しみ~」



141: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/15(金) 00:26:42.15 ID:cQ3/WVaBo

――――― 打ち上げの日 鳳翔さんのお店


長門 「それでは、皆楽しんでくれ」


ワイワイ ガヤガヤ


潮 「おいしーおいしー」

漣 「長門さんがギャグを交えた挨拶をするとは……雪でも降るんじゃない? 」

曙 「長門さんも最近いろんな駆逐艦と仲良く話してるし、多分馴染んできてるんじゃないの? 」

朧 「前は怖くて近寄りがたい感じだったから、こっちのほうが良いかもね」

潮 「曙ちゃん、このお料理美味しいよ」

曙 「……この食欲が潮パイの秘密なのかもね。はいはい、いただくから」


作戦後の打ち上げなんてはじめてだった。いつの間にか大所帯になった我が鎮守府。100人以上の艦娘が集まって、皆楽しそうに飲んだり食べたり。

でも……あいつはいない。この鎮守府で一人だけここにいない。あームカつく!



142: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/15(金) 00:29:38.46 ID:cQ3/WVaBo

長門 「皆、歓談中に悪いが注目してくれ」

朧 「あれ、もう終わりなのかな」

潮 「そんなぁ。まだ食べ始めたばっかりなのに」

漣 「まさかぁ。また誰か挨拶……って! 」

曙 「うそ…… 」


赤くなりながらマイクを渡されてる……執務室の外で見るのはどの位ぶりだろう……やっとあの部屋から出てきたんだ……クソ提督……。


提督 「皆、任務ご苦労だった。なぜサンマ漁なんて任務が来るんだと疑問に思った者も多いと思う。……正直俺にもわからん」


しどろもどろで……そりゃそうよ、人前で話すなんてどの位ぶりよ。赤くなってうつむいて……司令官でしょっ、もっと堂々と話しなさいよね! ほんと、クソ提督……クソ提督……クソ提督…………。

頭がぐちゃぐちゃで、クソ提督が何を言ってるかすらわからないぐらいで……たどたどしく真っ赤になりながら話すクソ提督から目が離せず……そんなテンパってる時に突然あたしの名前が出た。


提督 「あ、曙なんて、気合入れた釣り装備までして、一生懸命勉強してくれてたみたいだしな」


!!!

テンパってたあたしは、とっさに言い返す……これがあたしの悪い癖なのよね……


曙 「/// なっ……! ど、どうせ空回りだったわよ! 何よ嫌味なの、このクソ提督! 」

提督 「い、いや……成果はともかく、こんなおかしな任務でも全力を尽くしてくれたことが本当に嬉しいんだ。その……ありがとう」

曙 「べ、別にっ! 任務だしっ! 」

提督 「そ、そうか……」


……ていうか、どうしてわたしの動向なんて知ってんのよ! ちゃんと……見てるの?



143: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/15(金) 00:30:29.96 ID:cQ3/WVaBo

潮 「提督……すぐ部屋に帰っちゃったね」

朧 「そうだね。でも、みんなの前で挨拶なんてはじめてじゃない? すごい心境の変化があったのかな? 」

曙 「はじめてじゃないわ。鎮守府が出来立ての頃は、みんなの前で作戦説明とかやってたんだから」

漣 「そうだったんだ。不器用ながらも前向きになっていいじゃんいいじゃん! 」


陸奥 「いたいた! ねぇねぇ、七駆の子たちも、良かったら提督の部屋に突撃しない? 」

潮 「突撃……ですか? 」

陸奥 「そうよー。提督、せっかくの打ち上げなのにすぐ帰っちゃったでしょ? ひさしぶりに会ったっていう子も多いのにね。それでね、もっと提督と話したい子でお部屋に突入しちゃおうって」

漣 「はいはーい、行きます行きます! ぼのたんが行きますっ」

曙 「言ってないでしょ、そんなこと! 」

朧 「あたしも行きたいな。みんなで行こうよ」

潮 「潮もいきまーす」

陸奥 「七駆は全員参加ねー。なんだか凄い人数になりそうだけど、ま、良いわよね♪ 」



144: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/15(金) 00:31:11.59 ID:cQ3/WVaBo

――――― 少し後 提督執務室


ガヤガヤガヤ ワイワイワイ


朧 「なんか、満員電車みたいになってるね……」

漣 「これはご主人様と話すどころじゃないわぁ」

潮 「でも、執務室が賑やかなの、なんだかすごく懐かしいね、曙ちゃん」

曙 「そう……ね…… 」


元気な駆逐艦に取り囲まれて、汗をかきながら対応するクソ提督。ほんと懐かしい……。

きっと陸奥さんや五月雨ががんばってこういう風になってるんだって分かる。あたしは何の役にもたってなくて、それは悔しいけど……。でも、それでもクソ提督がみんなの前に戻ってきた……それで……どうしようもなく心がいっぱいになる。


曙 「ちょっと行ってくるわ」


なんとか人混みをかき分けてクソ提督に近づく。せめて一言だけ……



145: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/15(金) 00:32:00.73 ID:cQ3/WVaBo

曙 「ちょっとクソ提督! 」

提督 「曙も来てたのか。さっきはすまなかったな」


挨拶の時のことを言ってるのよね。ほんっと、的外れのクソ提督っ


曙 「それは良いんだけど。駆逐艦に囲まれて、すっかりご満悦じゃない」

夕立 「ご満悦って何っぽい? 」

島風 「難しい言葉つかってるー」

提督 「いや、ご満悦ではないが…… 」


夕立や島風にベタベタされて、赤くなって硬くなってるクソ提督。ふふ、ほんと、ご満悦どころか勘弁して下さいって感じよね。まったく……


曙 「ふふふ……せっかくの打ち上げなのに、挨拶だけで逃げ出した結果なんだから自業自得よ。せいぜいみんなのおもちゃになることね、このクソ提督♪ 」

夕立 「おもちゃにしていいっぽい? 」

提督 「おもちゃ……いや、ほんと勘弁してくれ…… 」

ワイワイ



潮 「見て見て、曙ちゃんが提督とお話して笑ってる」

漣 「おー! 笑顔でご主人様と話すぼのたんなんて、スーパーレアですなっ」

朧 「うん、良かったね! 」



146: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/15(金) 00:32:37.48 ID:cQ3/WVaBo

++++++++++

立ち止まって落ち込んでいた自分。立ち止まって暗く沈んでいたアホ提督。
それが少しずつ動き始めた……そんな頃。

この日あたしは……アホ提督が遠くから帰ってきてくれたような……そんな気持ちで無邪気にはしゃいでいた。今思えばこれもまた幼いことだけど……。

でも……本当に、本当に嬉しかったのだ。今にも泣き出してしまいそうなぐらい。

++++++++++



159: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/18(月) 20:11:25.95 ID:TIhE83gYo

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 Side 陸奥

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160: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/18(月) 20:12:10.02 ID:TIhE83gYo

――――― 数日後 提督執務室


陸奥 「あら、もう3時ね。おやつにしましょ、提督」

提督 「もうそんな時間か。わかった、一休みしよう」


最近は、休憩するときにゴネないから楽ね~。以前は「いや、休憩はやめておこう」なんて難しい顔で抵抗したりしてたけど……。ま、いつでも力ずくで休憩させちゃうんだけどね♪


陸奥 「はい、お茶」

提督 「ありがとう」


開けた窓から、そよそよと良い風が入ってくる。常夏の島だから秋っぽさは全く無いんだけどね。


コンコンコン


隼鷹 「提督、今ちょっといいかい? 」

飛鷹 「お仕事の話じゃないから、今じゃなくても良いんだけど」

陸奥 「あら二人とも珍しいわね。今ちょうど休憩中なのよ。だからいいわよね、提督? 」

提督 「ああ、入ってくれ」

飛鷹 「おじゃまします」

陸奥 「ちょうどおやつ中だったよの。はい、お茶と、おまんじゅうも食べてね」

隼鷹 「甘いものかぁ。酒はないのかい? 」

陸奥 「三時のおやつにお酒飲むわけ無いでしょ~」

飛鷹 「そもそも執務室でお酒を飲む司令官がいるわけ無いでしょ、ばかっ」

陸奥 (ぎくっ)



161: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/18(月) 20:12:54.32 ID:TIhE83gYo

提督 「それで、どうしたんだ? 」

飛鷹 「あ、えっと、別に大した用事じゃないんだけどね」

隼鷹 「ほらー、そんなごちゃごちゃ言ってないでさ」

飛鷹 「心の準備とかあるのよ、もうっ」

提督 「? 」

飛鷹 「その……ね。この間、本当にひさしぶりにみんなの前に出てきてくれたでしょ。それで、その……元気なのかなとか気になって」

陸奥 「うふふ……ほらね、やっぱり大事件だったのよ、提督? 」

提督 「ぐぬ……。心配をかけていたならすまなかった。具体的にできることが無くても、皆の前に顔を出して話すことが大事だと陸奥に説得されてな」

隼鷹 「おお、陸奥さんが引っ張りだしたのか! 偉いぜ陸奥さんっ」

陸奥 「でしょ~♪ 」

飛鷹 「そうでしたか。でも……そうですね、本当に嬉しかったです」



162: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/18(月) 20:13:51.65 ID:TIhE83gYo

提督 「そ、そうか……。ぐぬぬ……これは陸奥にも話したことだが……俺は口下手でろくな挨拶も出来ないのに、俺なんぞが出て行くだけで何故か皆が喜んでくれる……不思議な事だ」

隼鷹 「はっ、分かってないね提督。こりゃ陸奥さんの苦労がしのばれるよ」

飛鷹 「ずっと出てこないと思ったらそんなことを考えていたんですか。ほんと、提督は分かっていませんね」

陸奥 「そうなのよぉ。わたしの苦労、分かってくれる?(にやにや)」

提督 (俺フルボッコ……)

隼鷹 「飛鷹なんてさ。この間の打ち上げの後も執務室にすっげー行きたそうだったんだぜ。でも駆逐艦の子たちに交じるのは恥ずかしいからって諦めてさ」

飛鷹 「ちょ、ちょっと隼鷹! /// 」

隼鷹 「でももっと提督とお話したかったって毎日愚痴るから、今日はこうやって引っ張ってきたんだ」

飛鷹 「/// 」

陸奥 「ほーら、自分がいかに駄目だったか分かるでしょ、提督。ほら反省反省」

提督 「う、うむ……。その、ほんとにすまん、反省してる」

隼鷹 「あはは、飛鷹がもうしゃべれそうにないから行くけど、ほんと、これからはもっとオープンでいてくれよな……いてて、悪かったよ飛鷹」

飛鷹 (バシバシバシ)



163: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/18(月) 20:14:37.98 ID:TIhE83gYo

隼鷹 「ほんじゃなー 」

飛鷹 「し、失礼しましたっ」


バタン


陸奥 「うふふ、なかなか楽しかったわね」

提督 「俺はなかなか針のむしろだったけどな」

陸奥 「自業自得ね♪ 」

提督 「しかし、いつも冷静な飛鷹がああいう風に考えていたとはな……俺は本当に何も見えていないな」

陸奥 「提督は人の心を読むのが苦手な上に、女心に関しては壊滅的に駄目よね~。ま、士官学校出の軍人なんてそんなものよ。前世でわたしに乗っていたみんなも、やっぱり女心は全然だったもの」

提督 「ああ、返す言葉もない。なかなか難しいものだな」

陸奥 「ほんとね~。百数十人の艦娘がいるんだもの、一人ひとりを見きれないのも当然といえば当然だしねぇ」

提督 「そうだな……。だから俺としては何人か基準となる艦娘を決めて、その子に合わせてやり方を考えたりしていたが……もっと一人ひとりを見ないといけないな」

陸奥 「そうねぇ。理想としてはそうありたいわね」

提督 「時間はあるんだ。とりあえずできることをやっていくよ」

陸奥 「あ、前向きっ! そういうの素敵よ、ほんと♪ 」

提督 「/// からかうのは勘弁してくれ」

陸奥 「うふふ♪ 」



164: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/18(月) 20:15:52.08 ID:TIhE83gYo

提督 「とりあえずできることの話なんだが、ちょっと長門に相談しようと思ってることがある」

陸奥 「わたしじゃなくて長門なの? 」

提督 「ああ、長門と仲のよい子のことでな。それで、できれば陸奥も一緒に聞いていてもらいたいんだ」

陸奥 「いいわよ、大歓迎♪ 」

提督 「それじゃあ、明日の執務終了ぐらいに合わせて陸奥に来てもらうのがいいか? 」

陸奥 「うーん……でも最近は執務室にお客さんが来ることも増えたから、内々の相談はちょっとやりにくいわよね」

提督 「そうだな……」

陸奥 「あ、それじゃあ提督。今日はうちに晩ごはんを食べに来て。作るのは二人分も三人分も一緒だし、食べながらゆっくり相談できるでしょ」

提督 「いや、そんな迷惑をかけるわけにはいかない」

陸奥 「て・い・と・く・? まだまだお勉強が足りないみたいね?」

提督 「え、あれ、何か間違ったか……?」

陸奥 「わたしが食事に誘ってるのに、それに応じることが迷惑な訳無いでしょ? せっかくだから一緒に食べたいって言ってるの! それに、わたしのお料理もたまには食べて欲しいじゃない」

提督 「あ、う、そ、そうか……」

陸奥 「そうよ! 提督は夕食の予定は特にないんでしょ?」

提督 「ああ」

陸奥 「じゃあ決まり。1900にうちに来て。ちゃーんと作って待ってるから!」

提督 「わかった……急にすまんな、うかがおう」



165: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/18(月) 20:16:51.22 ID:TIhE83gYo

――――― 1850 長門と陸奥の部屋


陸奥 「ふんふんふ~ん♪ 」


提督は、普段はお弁当やおにぎりを食べていることが多いから、メニューは考えた末にシチューに。
あーあ、来ると分かっていたらもっとじっくり煮込めたんだけど……美味しいから大丈夫か♪


長門 「ああ、もう時間がない! くっ、仕方ない、余計なものはすべて寝室に投げ込んでしまうか……」

陸奥 「ながとー。別にそのままで良いじゃない。汚れている訳じゃないんだし」

長門 「ばかものっ。提督をお招きするというのに生活感のある部屋に入れられる訳がないだろうっ。ああ、なぜ突然ご招待したんだっ」

陸奥 「もー、考えすぎ! ちょっと晩ごはん食べに来るだけなのに」


最近どんどん増えたぬいぐるみが居間に侵食してるから、きっとそれを見られたくないのね……。今更隠すことないのに。



166: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/18(月) 20:17:17.94 ID:TIhE83gYo

――――― 1900 長門と陸奥の部屋


コンコンコン

陸奥 「はーい、どうぞー、開いてるわ」

提督 「すまんな、邪魔をする」

長門 「提督、良く来てくれた。さ、こちらに」

陸奥 「これから並べるから先に座ってて~」

提督 「何か手伝うことはあるか? 」

陸奥 「うふふ……提督や長門に手伝ってもらったらお皿が割れるだけよ。いいから座っていて」

提督 「面目ない……」

長門 「そうそう提督。こちらは私室だから扉は絶対に開けてはいかんぞ!」

提督 「女性の部屋を覗いたりしないよ。大丈夫」

長門 「そ、そうか、ならいいんだが……」



167: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/18(月) 20:18:05.81 ID:TIhE83gYo

陸奥 「はい、めしあがれー」

提督 「シチューなんで本当にひさしぶりだ。頂きます……うん美味い。それに懐かしいな……」

陸奥 「提督は普段からおにぎりだとかばっかりだものね。晩ごはんぐらいちゃんと食べるようにしてよ~」

提督 「そうだな、そうすべきか……」

長門 「わたしも陸奥が作ってくれなければ、ひどい食生活になっているだろう」

陸奥 「まったく、食べる楽しみをもっと感じてほしいわぁ。食べることは後回しで好きなことに夢中って、なんだか男の子が二人いるみたい」

長門 「男の子……」

提督 「あはは……長門言われてるぞ」

長門 「提督もいい歳をして男の子扱いされてるぞ」

陸奥 「うふふ、ごめんね♪ 」



168: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/18(月) 20:19:19.25 ID:TIhE83gYo

陸奥 「そうそう、今日は長門に話があるんでしょ?」

長門 「そうだったな。なんだろうか?」

提督 「ああ、長門は酒匂と縁があるだろ? 仲はいいのか?」


酒匂ちゃんというのは阿賀野型軽巡の末っ子。結構最近加わった子よね。


長門 「そうだな、顔を会わせれば立ち話をする程度だが」

提督 「そうか、あまり個人的な親交はないんだな」

陸奥 「提督、酒匂ちゃんがどうしたの?」

提督 「えっとだな……酒匂は結構数奇な前世を送ってる。それで転生した今……具体的にどんな配慮をすれば良いのかイマイチよく分からなくてな。俺も酒匂とは着任挨拶で一言話しただけで接点は全くないしな」

長門 「ふむ……具体的にはどういうことだ?」

提督 「そうだな……。前世では戦局の関係もあって、姉妹や仲間がバラバラになることなんかが多かっただろ?」

陸奥 「そうね……沈んで欠員がでたら再編成されたりして……どんどんバラバラになっちゃったわね。仕方のない事だけど」

提督 「そうだな。だから今は、せめて駆逐艦は、姉妹や仲間を出来るだけ一緒に、離れ離れにならないようにしているわけだが」

長門 「駆逐隊をなるべくセット単位で扱うのはそういう理由か」

提督 「だが軽巡以上の艦になると、指揮艦になったり戦力配分の関係で、そういうわけに行かない。前世でもそうだよな。軽巡は水雷戦隊旗艦として軽巡1隻と駆逐艦で組んだりしていた」

陸奥 「それは仕方が無いわよね。軽巡だけの艦隊とか戦艦だけの艦隊なんて困っちゃうし」

提督 「だからせめて姉妹同室になるように工夫したりしているわけだ」

長門 「ふむふむ……」



169: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/18(月) 20:20:11.06 ID:TIhE83gYo

提督 「それで酒匂なんだが……。彼女は軽巡の末っ子でとても幼い。俺からすると駆逐艦とあまりかわらなく見える」

陸奥 「うふふ、そうね、小柄で可愛かったわ」

長門 「言葉遣いも少し幼いな」

提督 「だから駆逐艦のように寂しくないような配慮をしたほうが良いのかなと思ったんだ。まして、沈んだ時の記憶なんかはひどいものだと思うしな……」

長門 「そう……だな。わたしやプリンツよりひどいはずだ」

陸奥 「……」


酒匂ちゃんや長門やプリンツは、超強力な新型爆弾の実験で沈んだのよね……。


提督 「今は姉の矢矧と同室。出撃時は数少ない縁のある艦として雪風や初霜なんかと組ませてる」

陸奥 「そうね」

提督 「この現状で満足してるだろうか? もっと誰かと組みたいとかの希望は無いだろうか」

長門 「どうだろうな……今までそういう話は出たことはないが……」

陸奥 「わたしは個人的に話したこともないからわからないわ」

提督 「ふむ……そうか」

長門 「ただそうだな……置いて行かれることにおびえている感じはあったな。寂しがりなんだろう」



170: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/18(月) 20:21:08.68 ID:TIhE83gYo

提督 「そうか……。しかし矢矧とも接点が全く無いし、雪風や初霜に聞いてみたほうが良いだろうか……」

長門 「力になれずすまんな」

提督 「いや、もし何か知っていれば位の気持ちだったんだ。十分参考になった」

陸奥 「うーん……」

長門 「? どうした陸奥? 」

陸奥 「ね、提督。どうして本人に直接聞かないの? 」

提督 「まぁ、そうだな……本人に聞いてみても良いのか……」

長門 「ふむ、言われてみればそうだな」

陸奥 「それが普通でしょ? 探偵じゃないんだから周りに聞き込みなんてしなくていいじゃない」

提督 「それはそうだが……」


きっとまた……前世で人間が彼女にした仕打ちを思うと後ろめたいとかそういうことよね……。


陸奥 「陸奥さんのおすすめは、ちゃんと本人に聞くこと! ……この間の打ち上げのことを忘れないで。みんな提督を大事に思ってること、分かったでしょ? 」

提督 「…………そうだな。考えてみる」

陸奥 「ええ、そうしてね♪ さ、なんだか湿っぽくなっちゃったし、食後に一杯行きましょ!」


ドンッ!


長門 「またお前は……」

提督 「いや、知ってるだろう、俺は鎮守府内では呑まないんだ」

陸奥 「ちょっとだけよちょっとだけ! それに……このお酒を見てもまだ呑まないなんて言えるかしら……?」

提督 「なに……十四代だと…………! 」

陸奥 「美味しいわよ~♪ 」



171: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/18(月) 20:22:10.21 ID:TIhE83gYo

長門 「これは……確かに美味いな……」

陸奥 「でしょぉ? 」

提督 「いつの間にこんな良い酒を……」

陸奥 「提督と一緒。明石さんにお願いしたのよ。気長に待つからって」

提督 「そうか。しかし……旨い酒に釣られて自戒を破るとは……俺もまだまだだな」

陸奥 「なーに言ってるの。自分一人で勝手に決めてるルールなんて、自分の都合で変えればいいのよー」

長門 「さすがに陸奥の意見はゆるすぎると思うが……たまに少し酒を呑むくらい、悪いことでは無いと思うがな」

提督 「……」

陸奥 「まぁまぁ、せっかく美味しいお酒なんだから、難しいことを考えずに味わいましょうよ」

提督 「そうだな。楽しませてもらおう」


……



長門 「ぐおー、ぐおー」

提督 「さて、長門も寝てしまったし、俺はそろそろお暇する。おいしい食事と旨い酒、ごちそうさまでした」

陸奥 「今日は楽しかったわ。また是非来てね♪ 」

提督 「そうだな……またおじゃまさせてもらおう」

陸奥 「うふふ……また美味しいお酒を手に入れなきゃ」

提督 「酒は……。いや、そうだな、期待しておくよ」

陸奥 「ええ♪ 」


こうしてうちに来てくれたり、お酒に付き合ってくれたり。
提督の確かな変化を感じてとっても嬉しいわ。うふふ……この調子で、大勢で笑ってお酒を呑める日が来るといいわね。その時は……この人もきっと、心から笑ってくれるはず……。



172: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/18(月) 20:22:36.49 ID:TIhE83gYo

++++++++++

 Side 曙

++++++++++



173: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/18(月) 20:23:02.49 ID:TIhE83gYo

――――― 深夜 鎮守府3F廊下


曙 「はぁ……今日は行かないのかな」


夜、なんとなくここに来て森を見るのが習慣になってしまっている。まったく、何をやっているんだか。でも今日はいないみたい。


曙 「別に……いないほうがいいんだけどさ。さ、帰ろ帰ろ」


コツコツコツ


あれ、こんな時間に足音? また潮が来たのかしら


提督 「ん、曙か。こんな時間にどうしたんだ? 」


!!!!



174: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/18(月) 20:23:42.43 ID:TIhE83gYo

顔に血が上るのが分かる。びっくりした! まさか……窓から探してるの見られたっ!?


曙 「な、な……なんで……なんであんたがこんなところにいるのよっ! 」

提督 「え……? いや、執務室に戻る所なんだが……」

曙 「戻るってこんな時間に……お酒の匂いする。お酒飲んでたのね、この酔っぱらい! 」

提督 「酔ってはいないが、まぁ少しだけな」

曙 「と、とにかく。司令官が酔っ払ってて判断誤ったりしたら大変なんだから、気をつけなさいよね、このクソ提督! 」

提督 「あ、ああ。気をつけるよ」

曙 「な、ならいいのよ! じゃあねっ! 」


ドスドスドスドス



お、落ち着けあたし……ここで何をしてたかとか分かるわけないんだから……。
そうよ。あたしもクソ提督も偶然通りかかっただけ……それで大丈夫よね、うん。

でも……あいつがお酒飲むなんて知らなかった。誰かと……お酒飲んでたのかな……。



185: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/21(木) 20:33:21.75 ID:A/3aq7Fco

――――― 数日後 工廠横



186: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/21(木) 20:34:31.77 ID:A/3aq7Fco

夕張 「はい、報告確かに受けました。大成功したのね、さすが~! 」

曙 「まーね。南方への遠征はベテランだもの」

潮 「曙ちゃん、遠征の時すっごく頑張るもんね」

漣 「なんというかぁ~。大成功するぞ!っていう執念を感じるっていうかぁ~」

曙 「……なによ。何か言いたげじゃない」

朧 「重要な遠征なんだ。大成功で資源に余裕ができるのは良いことだよ」

夕張 「そーそー。燃料弾薬鋼材、どれをとっても南方遠征が欠かせないからね。ほんとにお疲れ様!」

霞 「北方の遠征も大変よ。あーもー、寒かった! 」

夕張 「霞ちゃんもおかえり! 北方遠征お疲れ様。そちらも大成功なのね」

霞 「当然よ。北方はもう庭みたいなものだわ」

夕張 「ほんと、通い始めてウンヶ月だもんね。じゃあ悪いけど提督に大成功報告、お願いね」

霞 「了解。じゃあわたしが行っておくからみんなは先に戻ってて」

陽炎 「たまにはわたしが報告に行こうか? 」

不知火「そうね、いつも霞だから」

霞 「ふん、もう慣れっこよ。じゃあ行ってくるから」

曙 「じゃああたしも行ってくるわ」

漣 「はいはい、いってらっしゃーい」



187: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/21(木) 20:35:40.89 ID:A/3aq7Fco

――――― 鎮守府 廊下


コツコツコツコツ

霞 「…… 」

曙 「…… 」


コツコツコツコツ


霞 「ん? 」

曙 「あの二人なにしてるのかしら」


初霜 (雪風ちゃん、聞こえる?)

雪風 (ドアにピッタリ耳をつければ聞こえますね)


曙 「……あんた達、なにしてるの? 」

雪風 「うわぁ! しーっ、しーっ! 」

霞 「なに? 盗み聞きなの? まったく、なにしてるのよ」

初霜 「実は……酒匂さんが急に提督に呼び出されまして」

曙 「ああ、確か阿賀野型の……わたしはよく知らないけど」

雪風 「建造が遅かったですからね! 酒匂さん、最近仲間に加わって、わたしたちと練度上げしてたんですけど、帰ってきたら急に呼び出しで……一人で執務室に来なさいって」

初霜 「急なことで、酒匂さんすごく怯えちゃって……ドアの前まではついてきたんです」

霞 「あいつが呼び出しをかけるなんてめったに無いことよね…… 」

曙 「そうね……あたしも長くここにいるけど、一回も無いわ、そんなこと」

雪風 「そうですよね……それでなんとかお話を聞こうと」

曙 「……そういうことなら仕方ないわね。見逃してあげるわ(ピタ)」

霞 「そうね、感心しないけど特別な事情ということで許してあげるわ(ピタ)」

雪風 「許すもなにもお二人だって聞きたいんじゃないですか!(ピタ)」

初霜 「しーっ、しーっ! 雪風ちゃん声が大きいよ(ピタ)」


……気になる! 何を話してるんだろ!



188: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/21(木) 20:36:07.24 ID:A/3aq7Fco

**********

 Side 陸奥

**********



189: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/21(木) 20:38:09.48 ID:A/3aq7Fco

――――― 提督執務室


酒匂 (カチンコチン)


あらあら、ガッチガチに硬くなってるわね。でも、慣れない中で提督に突然呼び出されたら仕方ないかぁ。


陸奥 「酒匂ちゃん、はい、お茶」

酒匂 「ぴゃ! あ、ありがとうございますっ」

陸奥 「そんなに緊張しなくて大丈夫よぉ。提督、全然怖くないから」

酒匂 「は、はいっ」

陸奥 「さて、わたしも座っちゃお。酒匂ちゃん、おとなりに失礼(ストン)」

酒匂 「ぴゃー……」

陸奥 「酒匂ちゃん、長門と仲良しなんでしょ? 長門から色々聞いてるわ。知ってると思うけど、わたしは長門の妹なのよ♪ 」

酒匂 「はいっ。そっか、長門さんと同じ服なんだぁ。でも、雰囲気は全然違うんですね? 」

陸奥 「うふふ、長門はわたしと違って堅物さんだからね。最近は少しやわらかくなったけど」

酒匂 「うちの矢矧ちゃんもキリッとしてます。わたしとは全然似てないんだぁ」

陸奥 「うちと同じね。姉妹だから似てるし、服装も一緒だけど、性格は全然違うのよねー。でもね、長門はあんなにできる女風だけど、家事とかはからっきしなのよ」

酒匂 「あ、矢作ちゃんもですねー、すごく真面目そうだけど、実は戦闘以外のことは苦手で、書き物とかお片づけとか家事とか、すぐ面倒くさくなってやめちゃうんですよぉ」

陸奥 「あら意外! 何でもそつなくこなしそうなのにね。片付けとかは能代の方が得意そうね」

酒匂 「能代お姉ちゃんですかー……姉妹なのにあんまり知らなくて……」

陸奥 「そうよねぇ……」


阿賀野型は四姉妹なんだけど、酒匂が竣工した頃には、阿賀野と能代はもう沈んだ後だったのよね。姿を見ることも無かった姉妹ってどんな感じなのかしら……不思議な感じ。



190: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/21(木) 20:39:36.33 ID:A/3aq7Fco

提督 「いや、すまんすまん、呼び出しておいて待たせてしまった」

酒匂 「ぴゃっ! 」

陸奥 「おつかれさま。はい、提督もお茶」

提督 「ありがとう」


提督 「……」

酒匂 「…………ピャー」


もう、提督ったら黙っちゃって! 口下手なのは分かるけど、酒匂ちゃん困ってるじゃない。

ま、仕方ないか。酒匂ちゃんと縁がある長門が秘書官の日じゃなく、わたしの日に呼んだのは……きっとこういう時の助け舟になってほしいのよね。頼られてる以上、陸奥さんもしっかりやらないとね!


陸奥 「提督。酒匂ちゃんが困ってますよ。お話したいことがあるんでしょ? 」

酒匂 「あの……酒匂なにかしちゃった……? 」

提督 「あ、いや違うんだ。怒るとかそういう話じゃなくて……そうか、俺が黙っちゃうとそう感じちゃうんだな」

陸奥 「そりゃそうよー。偉い人が難しい顔して黙ってたら、提督だって『やべっ』って思うでしょ? 」

提督 「む……言われてみればそうだな。俺はあんまり自分が偉いって気がしないから、その辺の配慮がなってないのか」

陸奥 「そうよぉ。提督はうちで一番えらいっていう自覚が足りないわ。ねー、酒匂ちゃんだって怖いわよねー」

酒匂 「ぴゃっ……。はい、すごく怖い人だって思ってたけど……なんかイメージ違ったかも? 」

陸奥 「うふふ……提督は人見知りな上に女の子に慣れてないんですって。だから目を見て話すだけで赤くなっちゃうから、こうやって怖い顔してあっちを向いて話したがるのよ」

提督 「ぐぬ……本当のことだが、もう少し言い方が……」

酒匂 「うふ……うふふ…………なんだか二人とも楽しそう! 」



191: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/21(木) 20:41:16.32 ID:A/3aq7Fco

陸奥 「うふふ……さ、ほぐれたところで、提督、お話お話」

提督 「ああ、そうだな。えっとだな酒匂」

酒匂 「ぴゃん! 」

提督 「えーっと……、その……。俺はその、君の前世のことは、記録を読んで分かっているつもりだ。随分寂しい思いをさせたし、辛い最後だったと思う」

酒匂 「ぴゃー……。ぼんやりしか覚えてないけど、そうかも」

提督 「それでな……その……その分、転生した今は楽しく過ごせたらいいなと思うんだ。だが、前世がちょっと特殊なせいもあって……その……どんな生活なら君が楽しいか、ちょっとわからない部分があってな」

陸奥 「わたしも提督に相談されたんだけどね、良くわからないから本人に直接聞けばいいじゃない! という事になって、今日来てもらってるの」

酒匂 「ぴゅー! 酒匂もよく分からないよっ! 」

提督 「ちょっと抽象的過ぎたか。えっとだな、例えば……。前世では姉の阿賀野や能代に会えなかっただろ? それで……今は『前世でも会ったこと無くてよく知らないからあんまり……』なのか、『前世で会えなかったからこそ今世ではたくさん一緒にいたい』のか、とか」

陸奥 「あとはそうねぇ。あなたはわたしと同じように、前世では実戦参加の機会がほとんど無かったでしょ? その分、今世ではバンバン戦いたいと思うのか、やっぱり実戦は怖いのか、そのあたりよね。ちなみにわたしは、前世で出来なかった実戦を思いっきり楽しんでるわ♪ 」


あら、酒匂ちゃん、びっくりした顔で固まっちゃってるけど……どうしたのかしら?



192: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/21(木) 20:43:47.82 ID:A/3aq7Fco

提督 「どうした……? 一気に話されて混乱しちゃったか? 」

酒匂 「ぴゃ! う、ううん、そうじゃなくて……。酒匂のこと、そんなに考えてくれてるんだって……嬉しくて、びっくりして…………グス」

陸奥 「あらあら、泣かないで。大事な仲間だもの、当然よ~ 」

酒匂 「わたし、前世では一人で置いてかれてたから……矢矧ちゃんや雪風ちゃんや初霜ちゃんと一緒に出撃出来るだけで、すっごくすっごく幸せだったの……グス」

提督 「そうか……」

酒匂 「だから、これ以上もっとなんて全然考えてなかったけど……いいの? 」

陸奥 「もちろんよ♪ そのためにこうやってお話を聞いてるんだから」

提督 「ああ。どんどん希望を言ってくれ。そうしてくれないと俺も辛いんだ」

酒匂 「ぴゃー! じゃ、じゃあ……。出撃は今みたいにみんなとどこかで戦えたら十分だよ。だから、これからも出撃させてほしいっ」

提督 「ああ、もちろんだ」

酒匂 「あと……あとは……お姉ちゃんたちには迷惑かもしれないけど……阿賀野ちゃん、能代ちゃんとも一緒にいたい……四人でいつも一緒にいたいよ…………前世で会えなかったの寂しくて……転生してからは、どんな風に接したらいいか分からなくて……でももっとお話したくて……グス……ピャーンピャーン……グスグス」


ああ……そうね、わたしが長門に感じる特別な絆と同じなのね。こういう、提督では感じることが出来ないことこそ、わたしがしっかり伝えないと行けないのに……わたしも修行が足りないわね。



193: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/21(木) 20:44:53.61 ID:A/3aq7Fco

陸奥 「良し良し、泣かないで……。提督……きっと、阿賀野や能代も同じ気持です。今更ではありますが、阿賀野型四姉妹を同室にする手配を提案します」

提督 「そうか……そうだな、じゃあ早速、阿賀野たちにも話して、同室にする準備をしよう」

酒匂 「グスグス……阿賀野ちゃんや能代ちゃん、嫌じゃないかな? 」

陸奥 「大丈夫よ。姉妹艦の絆っていうのはやっぱり特別。一緒に居たくないはずがないの。阿賀野たちも言い出せなかったのね、きっと。やっぱり、もっと意見しやすい、開かれた執務室を目指さないと駄目ね! 」

提督 「そうだな……俺はほんとに駄目だな……着任して随分経つのに、艦娘のことが全然分かってない」

酒匂 「ぴゃん! そんなこと無いよ! 提督、こうやってわたしなんかのこと真剣に考えてくれて! すごく感謝してるもんっ」

陸奥 「そうよぉ。頑張ってるし駄目じゃないわ。ちょぉっと鈍いけどね♪ 」

提督 「…………鈍い……のかなぁ」


ワイワイ


うふふ、確かに鈍いけれど……。その分、確実に一歩一歩前進する強さが素敵よ、提督♪
こうやってちょっとずつでも分かり合っていければ、いつかはみんなと仲良くなれるわ。がんばってね!



194: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/21(木) 20:45:19.77 ID:A/3aq7Fco

++++++++++

 Side 曙

++++++++++



195: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/21(木) 20:46:06.16 ID:A/3aq7Fco

雪風 「うう、いいお話でした……」

初霜 「叱られちゃうなんて、とんでもなかったですね。良かったー 」

霞 「そうね。ふんっ、わたしはもう行くわ(イライラ)」

曙 「陸奥さんは優しいわねほんと。さ、あたしも帰る(イライラ)」



ドスドスドスドス


霞 「……」

曙 「……」

霞 「……あんた、あんな話されたことある……? 」

曙 「……もちろん無いわよ。そういうあんたも? 」

霞 「あるわけ無いわよ! もう長い付き合いなんだけどね! 」

曙 「あたしなんてあんたより古参なのよ! 」

霞 「ふんっ。どーせ、ああいう可愛くて気弱な感じの子だけちやほやするのよ、あのクズはっ!」

曙 「ふんっ。あたし達みたいなうるさい女はお呼びじゃないってね! 」


あー、もうもうもう! あのクソ提督クソ提督クソ提督!

どうして……どうして酒匂さんなの……? ほんとに……ああいう子が好みなの……?

急に部屋から出てきたと思ったら……今度は酒匂さんと仲良くしたりして……あんたが何考えてるのか全然わかんないわよ……ああもう、クソ提督!クソ提督!



202: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/24(日) 21:44:33.32 ID:548nDRJpo

――――― 2日後 鳳翔さんのお店



203: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/24(日) 21:45:45.73 ID:548nDRJpo

曙 「ごちそうさま……先に戻ってるわ」

潮 「あ、うん……」



漣 「ぼのたん、一昨日は烈火のごとく荒れてて、昨日は一日イライラしてたと思ったら、今朝は落ち込んでるし、どうしちゃたのかねぇ」

朧 「提督のところから戻ってからだもん。また何かあったんだよ」

潮 「……曙ちゃんのあれこれって、結局全部提督絡みだよね」

漣 「恋する乙女なんだもん、しゃーないよー」

朧 「一昨日は霞と一緒に執務室に行ってたよね。霞は何か知ってるんじゃない? 」

潮 「わたしもそう思ったんだけど、霞ちゃんが見当たらないの。いつも一緒の霰ちゃんは今日は一人で食べてるし」

漣 「ほんとだ。ちょっと聞いてみよう」


霰 (もぐもぐ)

潮 「霰ちゃんおはよう。今日は霞ちゃんは一緒じゃないの? 」

霰 「もぐもぐ……おはよう。霞は朝ごはんいらないって。イルカさんを抱っこしてごろごろしてた」

朧 「そういう霞はなんかイメージできないね」

漣 「霞も変なのかぁ。うちの曙もなのよ。霰、なにか聞いてない? 」

霰 (フルフル)

漣 「そっか、ありがと」

潮 「うーん……どうしよう、またお話を聞いたほうがいいのかなぁ……」



204: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/24(日) 21:47:09.73 ID:548nDRJpo

――――― 第七駆逐隊の部屋


曙 「……はぁぁぁぁぁ…………(ごろごろ)」


昨日までは怒り心頭でイライラしてたけど、冷静になってみるとガッカリ落ち込んでしまった。

だってね……全然おかしくないじゃない。優しい子やかわいい子。陸奥さんという、いつも大人の余裕でサポートしてくれる秘書もいる。クソ提督の周りには、そういう素敵な艦娘がいっぱい。じゃああたしはと言えば……出会いでつまずいてから、暴言暴言また暴言。そりゃ、近づきたくないわよね……。


曙 「ていうか、あいつは自分のなすべきことをしてるだけなのよね…… 」


提督として、艦娘のことを考えて、できることをしてるんだから何も悪く無い。それなのにあんなに腹が立ったのは……ごまかしてもしょうがない。嫉妬よね、嫉妬。


曙 「あたしってホント子ども……。本当なら喜ぶべきことだっていうのに…… 」


そう。あいつが一人孤独に沈んでいることが心配だった。イヤだった。でも、こうしてまた艦娘との関係を取り戻してきてるんだから、嬉しいことよね。



205: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/24(日) 21:48:11.90 ID:548nDRJpo

漣 「ただいまー」

朧 「ただいま」

潮 「ただいま。曙ちゃん大丈夫? おなか痛いの? 」

曙 「おかえり。大丈夫よ」


でも……でも、それでもまだクソ提督は孤独に見える。暗いの森のなか、一人焚き火を見つめるクソ提督の幻が頭をよぎる。

あたしは違う。あたしがちょっと苛ついたり落ち込んだりすると、飛んできてあれこれ世話を焼こうとする潮。からかいながらも一番にあたしの異変に気づく漣。いつも真面目に一番良い解決策を考えてくれる朧。いつもあたしと一緒にいてくれる大事な姉妹。

でも……クソ提督にはそんなに近い人はいないはず。いくら秘書でも、仲良しでも、きっとあいつとは壁があり距離がある。あいつは本当に落ち込むと、やっぱり森のなかに入って、一人で焚き火をするんだ。


潮 「な、なに曙ちゃん。そんなじっと見られたら困っちゃうよ…… ///」


駄目だ、あいつはまだまだ寂しい身だ。嫉妬なんてしてる暇はない。やれることをやるって決めたんだ。立ち止まるな曙!



206: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/24(日) 21:49:04.20 ID:548nDRJpo

曙 「ねえ潮。あんた最近、すごく嬉しかったとか幸せだったみたいなことあった? 」

潮 「ふぇ……? うーん……この間、焼き芋したときは、すごく甘くて美味しくて幸せだった……かな? 」

曙 「……あんた、ほんとに食い意地はってるわね」

漣 「さすが七駆の食欲魔神! ま、どれだけ食べても栄養が胸に行くからいいよね」

潮 「漣ちゃんひどいよ >< 」

朧 「まぁ、あたしも楽しかったよ。焼き芋も初めて食べたけど美味しかったし」

曙 「焼き芋ね……よし、今日は遠征もないから、また焼き芋しよ。ちょっとお芋買ってくるわ」

潮 「えぇ! どうしちゃったの、曙ちゃん! 」

曙 「その潮の幸せを、クソ提督にも分けてやるのよ。この間は差し入れとかしなかったしね」

潮 「そっか……うん、いいね! あんなに美味しいんだもん、提督だってきっと喜んでくれるよっ」

漣 「ほほぉ。突然どういう心境の変化か知らないけど、良い傾向ですにゃぁ~(ΦωΦ) 」

曙 「うっさい、漣も買い出し手伝えっ」

朧 「そうだよ、からかったりしないでちゃんと手伝お? 」



207: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/24(日) 21:49:44.33 ID:548nDRJpo

――――― 午後 鎮守府中庭


パチパチパチ


漣 「ふー、焚き火も結構たいへんだね。たまには良いけどさ」

潮 「まだかなぁ、まだ焼けないかなぁ? 」

曙 「今焼き始めたばっかでしょ」

明石 「お芋いっぱい入れたから、うんざりするぐらい食べられますよ! 」

朧 「明石さんすみません、手伝ってもらって」

明石 「いいんですよー。それより、大量に補給されて困っていたお芋を焼いてくれるんですから、わたしのほうが感謝です! でも、突然焼き芋をやりたいなんて、何かあったんですか? 」

曙 「いえ、なんとなk」

漣 「実はですね! ぼのたんが、美味しい焼き芋を提督に食べてもらって喜んでもらいたいって!」

潮 「そうなんですよー。焼き芋を食べると幸せな気持ちになれるからって」

曙 「あーもう、うっさいうっさい! /// 」

明石 「そうでしたか! 提督は甘いものが好きですから喜ばれますよ! 」

潮 「だってー! よかったね、曙ちゃん」

曙 「あーもう、うっさいうっさいうっさい! /// 」



208: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/24(日) 21:50:29.30 ID:548nDRJpo

明石 「そろそろ焼けた頃ですね……一つ取り出してみてと……おお、いい感じで焼けてますよ! 」

潮 「うわぁ……はふはふ……あまーい! あつつっ」

曙 「潮、あんた食べるの早すぎ…… 」


阿賀野「あれ……なんかいい匂い……ふらふら~ 」

明石 「あれ、阿賀野さん、大荷物を抱えてどうしたんですか? 」

阿賀野「ああ! 焼き芋だ! 阿賀野にもちょーだい! あつっあつっ」

曙 「阿賀野さんは引っ越しでしょ? いいの、寄り道してて? 」

阿賀野「ふぇ? どうしてお引越しだって知ってるの~? はふっはふっ」

能代 「あがの姉~! あがの姉~! 」

朧 「阿賀野さん、呼ばれてますよ」

阿賀野「あ、やばい! じゃあ焼き芋ごちそうさま~♪ 」

酒匂 「あ、阿賀野ちゃんいた~。ぴゃ! そんな荷物いっぱいかかえて大丈夫なの!? 」

阿賀野「ふふーん、お姉ちゃんは強いから大丈夫だゾ! 」

酒匂 「阿賀野ちゃんすごーい! 」

阿賀野「えっへん! さ、運ぼう運ぼう~」

能代 「ああ! あがの姉、逆逆! 持って帰っちゃダメ! 」

矢矧 「……なんだか面倒になってきたな。もうこれは全部捨ててしまってもいいんじゃないか? 」

酒匂 「だ、だめだよ矢矧ちゃん! 」


ワイワイ



209: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/24(日) 21:50:59.70 ID:548nDRJpo

朧 「……こんな時期に引っ越しなんてどうしたんだろうね……はふっはふっ」

漣 「新加入艦とかいないよね、確か? あつっあつっ」

明石 「阿賀野型はこれまで2部屋に分かれてたんですけど、急遽4人部屋に移ることになったそうですよ……はふはふ」

潮 「そっかー。姉妹なら同室がいいよね。よかったねー……もくもく」


早速引っ越しね……。酒匂さん……良かったね。クソ提督いいことしたじゃない。もちろんっ!陸奥さんががんばったんだよね、きっと。


曙 「さて、ちょうど1500だし、焼き芋を届けてくるわ」

漣 「はーい、いってらっしゃーい」



210: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/24(日) 21:51:37.90 ID:548nDRJpo

――――― 1500 提督執務室


陸奥 「1500。提督、おやつの時間よ~」

提督 「もうそんな時間か。じゃあ一息いれるか」


コンコンコン


陸奥「はぁーい、どうぞ~」

曙 「失礼します」

陸奥「あら曙ちゃん。どうしたの? 今日は遠征じゃなかったはずだけど」

曙 「いえ、その……中庭の掃除ついでに焼き芋をしたので、差し入れに……」

陸奥 「あら、ありがとう♪ ちょうどおやつの時間だったのよ。食べましょ食べましょ♪ 」

提督 「焼き芋か……懐かしいな。ありがたくいただこう」

曙 「う……あ……、が、がんばって焼いたんだから味わって食べなさいよ、このクソ提督! 」

提督 「ああ、大事に食べさせてもらうよ」

陸奥 「曙ちゃんも一緒に食べていきましょうよ」

曙 「え……! で、でも……」

提督 「そうだな、せっかくだから一緒に食べて行くといい」

曙 「そ、そんなこといって、あたしがいたら落ち着いて食べられないでしょっ! 」

提督 「? いや、そんなことは無いが」

曙 「そ、そう……そこまで言うならしょうがないわね」

陸奥 「くすくす……じゃあ曙ちゃんの分もお茶を淹れるわね」



211: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/24(日) 21:53:36.84 ID:548nDRJpo

陸奥 「そっかー、中庭で焚き火してるなーって見てたんだけど、焼き芋のためだったのね」

曙 「そうなんです。潮に最近幸せだったことを聞いたら『焼き芋が甘くて美味しくて幸せだった~』なんて言うから」

陸奥 「ぷっ……。潮ちゃんらしいわね」

提督 「そうか、潮は焼き芋が好きなのか」

曙 「焼き芋がじゃなくて、食べるのが好きなのよ。あの子は食欲すごいのよ。七駆では食欲魔神って呼ばれてるわ。あとは闘牛とか乳牛とか……」

陸奥 「ぶはっ……失礼、吹き出しちゃった」

提督 「ふふふ……七駆は仲良くやってるみたいだな」


……クソ提督が微笑んだ。お父さんみたいな優しい目をして……。それを見て顔に一気に血が上る


曙 「/// そ、そうよ、仲良く楽しくやってるわ! あ、あんたも楽しく生活するのよ、このクソ提督! 」


クソ提督が……すごくびっくりした顔で硬直して……そして、ゆっくりと表情を崩して言った。


提督 「ああ……そうだな。少しでも日々を楽しく暮らせるように頑張るよ。……曙、ありがとう」

曙 「ふ、ふんっ! 感謝しなさいよね、このクソ提督! じゃ、じゃあ、みんながまだ焚き火してるから戻るから! ごちそうさまっ! 」



212: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/24(日) 21:54:21.40 ID:548nDRJpo

たったったったった


曙 「ふふ…………ふふふふ………… 」


ずっと前、まだ執務室が賑やかだった頃。執務室で楽しそうにおしゃべりしている子たちが羨ましかった……それで随分きついことも言った気がする。


曙 「こんなに……簡単なことだったんだ…… 」


でも今日、はじめて執務室でお茶しておしゃべりをした。本当にたったそれだけのことなのに……


潮 「曙ちゃんおかえり。はふはふ」

曙 「なに、あんたまだ食べてるの。どれ、どの程度肉がついたか確かめてあげる。それっ(ぎゅ~) 」

潮 「きゃ、きゃあ! 急に抱きつかないでよぉ~ 」

曙 「おお、この柔らかな抱き心地が……」

潮 「もう >< 」


朧 (曙、ごきげんだね。いいことあったのかな)

漣 (ほんとにわかりやすい乙女回路だよね~。ま、嬉しそうだからいっか! )



姉妹たちのおかげで少しだけ成長したあたしが、ほんの少しだけ前進して、出来なかったことができて……、ただそれだけのことが本当に幸せな、そんな秋の日だった。



218: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/26(火) 19:33:15.09 ID:J2XSBqmbo

**********

 Side 陸奥

**********



219: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/26(火) 19:34:13.03 ID:J2XSBqmbo

――――― 提督執務室 曙が帰った後


いつも提督にキツくあたっていた曙ちゃんが、今日はどういうわけかとっても好意的(?)だったわけだけど……。

提督はちょっと呆けたように焼き芋を黙々と食べ続けてる……でもこれは、色々想いをめぐらせてるのね、きっと。


陸奥 「提督、曙ちゃんと話せてよかったわね」

提督 「……そうだな…………。正直言えば曙が一番気になる存在だからな……あとは霞もそうか……。だから、こうして少しでも話せるのは嬉しい」


むっ……むむっ……! 提督ってまさか……ろ……。そんでもってM……。ううん、まったまった、思い込みは良くないわね!


陸奥 「でも、ほんとうにどういう風の吹き回しだったのかしらね? 」

提督 「そうだなぁ。司令官である俺を少しでも許してくれてのことならいいんだがな……」


……なんだか、微妙な言い回しね。



220: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/26(火) 19:34:44.26 ID:J2XSBqmbo

コンコンコン


陸奥 「はーい、どなたー? 」

霞 「霞です」

陸奥 「あら、噂をすれば。どうぞ~ 」

霞 「失礼します! 」

提督 「どうした、今日はオフのはずだが……? 」


キッ


提督 (ビクッ)


な、何かしら……すごい殺気で提督を睨んでるけど……さっきの曙ちゃんといい、今日は一体どういう日なの!


陸奥 「うん、確かにオフよね。どうしたの? 」

霞 「ちょっとそいつに話があるのよ」

提督 「聞こう」


ほんとに険悪ね~。でも、霞ちゃんが怒るようなこと、何かあったかしら? さっきの焼き芋、実は霞ちゃんのだったとか……違うか!



221: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/26(火) 19:35:56.21 ID:J2XSBqmbo

霞 「あんたはここの総司令官でしょ? 」

提督 「? ああ。若輩の身ではあるがこの鎮守府の総司令官なのは確かだ」

霞 「それじゃあ、重い責任があるし、部下に対しては公明正大でなきゃ駄目よね? 」

提督 「そうだな。同感だ」

霞 「はぁ!? あんた自分好みの子をいっぱい贔屓してるじゃない! そういうのやめなさいって言いに来たのよ! 」

提督 「……。いや、覚えが無いが……」

霞 「ごまかしてるつもり!? 満潮の件だって、酒匂さんの件だって知ってるんだからね! 」

提督 「……? ああ、八駆は全員で入渠するルールとか、酒匂のは……阿賀野型で同室にする件か? 」

霞 「そうよ! 」

提督 「気に障ったならすまないが、それもまた公平な対応の一環なんだ。だから断じて贔屓などではない」


提督が珍しく断言! 霞ちゃん相手にはいつも弱腰というか、反応を探るような雰囲気だったけど、ここは堂々としてるわね。そうよねー、提督が一番こだわっている所だもんね。でも、霞ちゃんはほんとにどうしちゃったのかしら?


霞 「……ふんっ。認めないなら結構よ。このクズ! えーえー、あたしや曙みたいなうるさいのは北方や南方にでも追いやって、自分は好みの子と仲良くしてればいいのよ! じゃあね!」


クル スタスタスタ


提督 「霞、待て」

霞 「もう話すことなんか無いわよっ」


ガチャ



222: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/26(火) 19:36:22.62 ID:J2XSBqmbo

陸奥 「止まりなさい、霞。命令よ」



223: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/26(火) 19:37:04.32 ID:J2XSBqmbo

霞 (ビクッ)

陸奥 「はぁ~。突然どうしたのか知らないけれど、そんな捨て台詞で逃げ出したら、この後が辛いわよ」

霞 「!! に、逃げてなんか! 」

陸奥 「だったら、戻ってきて座りなさい。提督が、あなたが納得できるような話をしてくれるから」

提督 「…… 」

陸奥 「もー! ここは乗ってくれるところでしょ! 」

提督 「え!? あ、ああ、そうだな。上手く話せるか自信は無いが、確かに話さないといけないことがたくさんあるようだ。霞、座ってくれ」

霞 「…………分かったわよ」


ストン


陸奥 「長くなりそうね。会議中につき入室禁止の札を出してくるわ。あとはお茶入れるわね」

提督 「ああ頼む」

霞 「……」



224: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/26(火) 19:37:43.08 ID:J2XSBqmbo

さてさて、ほんとに今日は色々ね。酒匂ちゃんの話が出てたから……どこからかその話が伝わって、それがきっかけで爆発したような感じなのかしら?

おっとっと、早くお茶を入れて戻らなきゃね。


陸奥 「はい、おまたせ」(コト)

提督 「ああ、ありがとう」

霞 「……ありがとうございます」


ずずー


提督 「……」

霞 「……」


はぁ~。お茶を入れてる間もひたすら黙っていたのね……。ほんとに進歩が無いんだから!


陸奥 「提督? 黙っていたら相手が困るだけだって、この間言ったばかりよ?」

提督 「あ、ああ、そうだったな。えっとだな、霞」

霞 「……なによ」

提督 「その……俺が艦娘みんなに対して公明正大でありたいと思っているのは本当だ。これは神に誓っていい」

霞 「……」



225: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/26(火) 19:38:15.62 ID:J2XSBqmbo

提督 「ただその……何と言えばいいのか……そのだな……」

陸奥 「提督提督。どういうふうに公平かとか、そういうことを言わないと……」

提督 「おお、そうだな! えっとだな……」

霞 「なによ。これじゃ陸奥さんと話したほうが早いじゃない」

提督 「いやその……すまん……」

陸奥 「駄目よ。霞ちゃん、あなたは提督の心を聞きたんでしょ? 提督は確かに口下手だけど、時間をかけてちゃんと話してくれるから、変に急かさないの」

霞 「……はい」

提督 「いや、俺がもっと気合を入れてちゃんと喋ればいいんだよな。頑張るから少しだけ許してくれ」

霞 「……ふふ。焦らなくていいわよ。あたしも悪かったわ。ちゃんと聞くから」



226: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/26(火) 19:40:38.38 ID:J2XSBqmbo

提督 「えっとそれでだな…………。俺は提督になるにあたって、自分が率いることになるであろう艦娘たちの情報……前世だな……を詳しく学んだんだ。もちろん一人ひとり違った艦生だが……総じて、あまり幸せなものでは無かったと思う。戦時中の戦闘艦だ……当然のことかもしれないがな」

霞 「……それで? 」

提督 「それでその……そういう艦生を終えて眠っている魂を、俺たち人間の都合で呼び戻して、また人間のために戦わせる。俺は提督という仕事をそうとらえた。なかなかひどい話だと思う」

霞 「……」

提督 「深海棲艦と戦うために転生させられる。それはもう動かせない。だからせめて……新たな艦生が……戦いと悲劇だけじゃない、少しでも幸せなものになればいいと……そんなふうに思っている」

霞 「…………」


提督……ちゃんと話せてるじゃない。そうよ、変に隠したり取り繕ったりせず、わたしに話すみたいに、心にあるものを正直に言葉にすればいいのよっ。



227: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/26(火) 19:41:54.95 ID:J2XSBqmbo

提督 「俺にできることは限られているが……。まずは誰も沈まないこと。離れたくなかった相手と一緒にいられること。前世の心残りを果たすこと……。そういうことが少しでも出来たらいいと……そう思っている」

霞 「満潮の入渠の件は、やっぱり前世とのからみでそうしたってことね」

提督 「……そうだ。満潮は一人で入渠することにひどい恐怖を感じているように見えた。だから特例とした」

霞 「なるほどね……。酒匂さんのことはよく知らないけど、そっちも同じような感じってことね」

提督 「そうだな」

霞 「他にも……ひとりひとり、前世を考えながら、あれこれと対応してるってこと? 」

提督 「…………」


提督が……遠い目をしてる。着任以来ずっと悩み続けて頑張り続けて……それでも……。


提督 「正直……どこまでできているか分からない。その艦娘がどうすれば幸せなのか……前世の情報があってもな……わからないんだ」

霞 「そう……よね…………。幸せなんて目に見えるものじゃないもの」

陸奥 「ま、それにしても提督が鈍いっていうのもあるけれどね! 」

提督 「……いつも鈍い鈍い言われるなぁ」

陸奥 「だって聞いてよ霞ちゃん。わたしなんて、楽しく遊んで最前線で主砲ぶっ放して、とっても幸せなんだけど、提督ったら、わたしが不幸に沈んで悩んでるって思ってたくらいなのよ♪ 」

霞 「……ふんっ。クズ司令官らしいわね! こんなに身近にいる秘書艦のことすら見えてないなんて! 」

提督 「いや……そうは言うが、艦娘の価値観がわからない上に……女心とか言われると……正直、途方に暮れるばかりでな……」

陸奥 「あは♪ 確かに女心に敏感な提督とか、想像も出来ないわっ」

霞 「残念ながら同感ね」

提督 「はぁ……」



228: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/26(火) 19:44:35.96 ID:J2XSBqmbo

霞 「じゃ、じゃあさ……あたしのことは……どういうふうに見ていたの?(ドキドキ) 」

提督 「……霞は特に難しいと思っている。正直手探りだ」

霞 「なによっ! 気難しくて悪かったわね! 」

提督 「いや、そういう意味じゃない。前世が複雑だから、どうすれば幸せか見えないってことだ」

霞 「……どういうことよ」

提督 「えっとだな……。お前は大戦末期まで数々の戦いを生き抜いて……多くの仲間を失った記憶を持っているはずだ」

霞 「……」

提督 「それに……司令部からひどい扱いを受けたり、ひどい作戦に参加させられて……海軍上層部を……この鎮守府で言えば俺をだな……恨んだり憎んだりしていると思う」

霞 「そんなっ……ことは…………」

提督 「それに、駆逐艦でありながら艦隊旗艦をつとめて、指揮統率の苦労も知っている……こんな多彩な経歴をもった駆逐艦は霞だけだと思う」

霞 「そうね……」

提督 「だからそうだな……まず司令官たる俺自身がどのような行動を取るべきか……。そういう指標として霞の価値観を見させてもらっていた」

霞 「……? 」



229: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/26(火) 19:45:41.87 ID:J2XSBqmbo

提督 「それから……霞は前世で多くの艦と組んでいたから色々試させてもらったが……。やはり第十八駆逐隊メンバーといる時が一番幸せそうに見えた。だから第十八駆逐隊を固定編成にさせてもらった。……不知火と仲良さそうだよな」

霞 「/// べ、別にっ! 」


あら、赤くなる霞ちゃんなんて珍しい。この子は普段オフェンス一辺倒だから、自分の話になると上手くかわしたり出来ないのかも。いつも大人っぽい子だけど、こういうところは可愛いわね~♪


提督 「あとは……霰の所在をいつも気にしている風に見えた。だから部屋は霰と同室とさせてもらった」

霞 「/// し、仕方ないでしょ! 霰はちょっと目を離すとすぐいなくなっちゃうから! 」

提督 「それから……息抜きという訳ではないが、たまに礼号作戦時の艦隊を組むようにしている」

霞 「それはほんと意味分かんない! あの艦隊になると、足柄さんはイケイケで言うこと聞かないし、大淀さんも普段と違ってノリノリになっちゃうし、清霜も朝霜も人の話聞いてないし、もう大変なのよ! 」

提督 「それはそうなんだろうが……足柄や大淀に振り回されたり、清霜におにぎりを作ってやったり……そういうのが、とても楽しそうというか、いきいきして見えたんだ……もしかして迷惑だっただろうか」

霞 「べ、別に迷惑だなんて言ってないし! あの艦隊を何とかできるのはあたしだけだから、ちゃんと何とかするし! 」



230: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/26(火) 19:48:23.89 ID:J2XSBqmbo

提督 「……この程度なんだ……。霞にはもっともっとできることがあればいいと思うんだが……。今の俺ではこの程度のことしかできていない……」

霞 「この程度ってなによ!!!! 」

提督 「……」

霞 「あたしのことちゃんと見て……できることやってるじゃない! なんで卑下すんのよ! ほんっっと、意味分かんないわよ(ぽろぽろぽろぽろ)」

提督 「霞……」

霞 「えーえー、言うとおりよ!(ぐすっ) 霰が見当たらないと、またいなくなっちゃうんじゃないかと不安になるわよ! だから同室でありがたく思ってるわよ!(ひっく) 十八駆で一緒に出撃できて嬉しいわよ! 陽炎や不知火と肩を並べて、こんどこそ霰を護るって思ってるわよ!(ぐす) 礼号艦隊もほんっとに大変だけど楽しいわよ! 」

提督 「そう……か…………。良かった……」

霞 「良くないわよ! 何よ人のこと見透かして!……(ぐすっ)……ほんとに……(ひっく)……迷惑よ……(ぐす)……。こんな生活してたら……(ひっく)……失うのが……怖くなるじゃない……(ぐす)」

提督 「……大丈夫だ。君たちを沈めたりしない。この生命をかけてでも絶対に沈めない」

霞 「ひっく……ぐす……う……うわぁっぁぁあぁぁぁん」


いつも大人びて、強い責任感で張り詰めている霞ちゃんだけど……この子だって駆逐艦だもの。やっぱり、歳相応に泣いたり甘えたりすべきよね。この子、転生してはじめて泣けたんじゃないかしら。


陸奥 「よしよし。こんな時ぐらい思いっきり泣くといいわ……」

霞 「う、うわぁぁぁん……ぐす……」

提督 (おろおろ)


あーあ、本当ならここで優しく抱きしめるのはわたしじゃなくて提督の仕事なんだけど……まったく困った人ねぇ。



231: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/26(火) 19:49:02.56 ID:J2XSBqmbo

霞 「……ぐす……ほんとはね、ちゃんと分かってた。司令官があたしのこともちゃんと気にかけてくれてるって」

陸奥 「うんうん……そうね」

霞 「でも……あたし以外の子にはもっと世話を焼いているように見えて……なのにあたしには、なんだかおどおどと接してくるし……」

陸奥 「困った提督よねー。でも提督なりに、霞ちゃんのことを知ろうとしての事だったみたいね」

霞 「ぐす……そんなの……わかんないわよ……ひっく……」

陸奥 「ほんと……堅物で鈍くて口下手で困った人よね~…………でも、もう誤解は解けたわね? 」

霞 「…………はい」

陸奥 「うん、良かったわ♪」

提督 「…………ふぅ……(ぐったり)」


ふふっ……提督、お疲れ様。たどたどしくだけど、しっかりと心を伝えてたの、カッコ良かったわよ♪ ……ま、明らかに贔屓目だと思うけどね♪



232: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/26(火) 19:49:36.87 ID:J2XSBqmbo

陸奥 「落ち着いた? 」

霞 「/// は、はいっ。その……子どもみたいに泣いてしまって……申し訳ありませんでした」

提督 「いやその……なんというか……」

霞 「/// あ、あんたに言ったんじゃないから! なによっ、ちょっと泣かせたぐらいで勝ったと思わないでよね! あんたなんてまだまだなんだから! 」

提督 「そ、そうだな! 俺もまだまだ未熟者だ。意見があったら是非聞かせてほしい」

霞 「ふ、ふんっ。当たり前よ! これからもビシビシ行くからね! その……し……司令官っ」


あら♪ 『クズ』が消えたのね♪


提督 「ああ、よろしく頼む」


そしてその変化に気づかない提督……ほんっと、駄目ねぇ……怒られるわよ……。


霞 「ふ、ふんっ! 早速なってないわね、もう意味分かんない! じゃあねっ! /// 」


ツカツカツカ バタン



233: ◆8sA8xtnAbg 2016/04/26(火) 19:50:30.41 ID:J2XSBqmbo

提督 「……? 」

陸奥 「うふふ、やれやれね。はい、お茶のおかわりよ」

提督 「ああ、ありがとう。……しかし、ほんとに艦娘心と女心はわからん……」

陸奥 「そんなことも言ってられないでしょ。時間はいくらでもあるんだから、ゆっくりと分かっていかないとね」

提督 「時間をかければ分かるようになるだろうか? 」

陸奥 「う……ごめんなさい、全然イメージわかないわ」

提督 「うぐ……だ、だよなぁ……」

陸奥 「あははは、ほら元気出して……困ったときはおねーさんが助けてあげるから♪」

提督 「今日も沢山助けてもらったからな……本当に感謝してる」

陸奥 「あらあら、これはお礼を期待しても良いのかしら♪」

提督 「……俺にできることにしてくれよ」

陸奥 「うふふ……考えておくわ♪ 」


あーあ、本当に分かってないんだから。こうやってあなたの力になれること……あなたに頼ってもらえること……それこそがわたしの幸せなのに♪

……提督じゃないけど、時間をかければ分かってもらえるようになるのかしら……はぁ、まだまだ前途多難ね!



235: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/26(火) 19:56:52.59 ID:+SfrIkbKo
おつ
霞様かわいい
240: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/27(水) 00:20:20.60 ID:ul7b2QXxo

さすがむっちゃん有能すぐる
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