夕張「クルマ買いました!」 【後編】

600 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/06(木) 21:50:31.00

前スレ:

夕張「クルマ買いました!」 【中編】




夕張「金剛さんとバトルかぁ……もう少しサスと燃調詰めたいんだけどなぁ」カチャカチャ

夕張「提督の足回り研究すれば、碓氷SPLならぬ都高SPLとして売り出せそうよね、うん」

夕張「とりあえず、何日か待ってもらって実走で詰めていくしかないわね」

由良「夕張ー。居る?」

夕張「ん?どうしたの?」

由良「川内見なかった?今度の哨戒任務の件で話があったんだけど」

夕張「さっきヌー子に乗って何処か行ったわ」

由良「えぇ?もうホントに落ち着きがないんだから」

夕張「と・こ・ろ・で。ちょっとお願いがあるんだけど……」

由良「断る」

夕張「ちょっと。まだ何も言ってないけど……」

由良「どうせ私にメリットが無いようなお願いでしょ」

夕張「うっ……確かに実走セッティングだから、由良に得はないけど」

由良「セッティングなら一人でやればいいじゃない」

夕張「運転しながら空燃比とPCモニター見るなんて、阿修羅にでもならなきゃ無理です」

由良「阿修羅って……ああ、顔が四つあるからってことね。空燃比ってCPUでも弄るの?」

夕張「そそっ。昨日走った時にちょっとモタつくところがあったから、燃調と点火を見直したいのよ」

由良「そうねぇ。何か奢ってくれるなら考えてあげる」

夕張「……間宮さんとこでいい?」

由良「よろしい」
601 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/06(木) 21:51:56.00

喫煙所

山城 フゥー

叢雲「山城」

山城「……どうかした?」

叢雲「一本頂戴」

山城「あら珍しい。アークロイヤルだけど」

叢雲「変なの吸ってるわね」アリガト

山城「気に入ってるんだけど、あまり売ってないのよね」つライター

叢雲「……意外とキツい」

山城「そう?結構甘いと思うけど」

叢雲「タバコなんて暫く吸ってなかったし。ああ……クラっときた」

山城「それで?何か話が有って来たんじゃないの?」

叢雲「大方予想はついているでしょ。扶桑さんのことよ」

山城「それなら私も聞きたいことだらけよ。何で姉様が暴走族になっているのかって」

叢雲「姉様大好きなアンタでも分からないの?」

山城「皆目検討もつかないわ。クルマに興味があったことさえ驚きなんだから」

叢雲「……そう」
602 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/06(木) 21:53:04.61

山城「姉様が前に言っていたの。提督とは信頼関係は築けているのに、何処か距離感があるって」

叢雲「そんなこと言っていたの……あのバカはどうしようもないわね」

山城「何か思い当たることがあるの?」

叢雲「……アイツが酔っ払った時に、少し聞いたことあるわ」

叢雲「扶桑さんは、見た目や仕草も昔の彼女と瓜二つだって。まともに顔が見れないと」

山城「……想像以上に女々しい理由ね。その人とはどうなったのよ」

叢雲「死んだわ」

山城 タバコポロッ

叢雲「都高で事故を起こしたそうよ。一緒に走っていたクルマはその人を庇って大破」

叢雲「でも大破した方は生き残って、今でもピンピンしてるわ。この前会ったし」

山城「ちょっと待って……状況が分からないわ」

叢雲「……不可解な話だけど、それだけの事故にも関わらず彼女が乗っていたクルマは小傷が付いた程度。それでも、ドライバー彼女は亡くなってしまった」

叢雲「そして、そのクルマは未だアイツが所有・保管している」

叢雲「扶桑さんの狙いはそのクルマ……魔王とか言ってたわね」

山城「魔王……」

叢雲「忌み嫌っているのか、忘れたくないからなのかは知らないけど、今でもたまにエンジンだけ掛けてるみたいよ」

山城「それで……何で姉様がその魔王を狙う必要があるのよ」

叢雲「さあね。肝心の当事者達が行方をくらましている以上、私達にはどうすることも出来ないわね」
603 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/06(木) 21:54:51.37

都高・湾岸線

夕張「いやー助かるわぁ。由良が理解ある人で本当に良かった」

由良「夕張と一緒に居たら嫌でも覚えちゃったわよ」

夕張「でも、燃調と点火まで見れるなんて大したものよ」

由良「パワーFCってそういうものじゃないの?簡単に弄れるって感じで」

夕張「付けてる人が皆平等に弄れるワケじゃないわ。やっぱりある程度の知識と経験が無いと」

由良「知識と経験ねぇ……」PCカタカタ

夕張「あ、ココちょっと息継ぎある」

由良「うん……少し濃くなってるわね」ホセイ

夕張「それにしても……」

由良「なぁに?」カタカタ

夕張「私達、艦娘だよね……」

由良「何を今更」

夕張「最近、艤装よりクルマ触ってる時間の方が長いんだけど……マジで」

由良「その内憲兵さんの立ち入りがあるかもね」

夕張「考えるだけでも恐ろしい……」

由良「世間一般で見たら問題児しか居ないからね、ウチの鎮守府」
604 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/06(木) 21:56:14.50

由良「タービン換えたんだっけ」

夕張「うん。GT-SSにね。だからCPUも改めてセットアップし直す必要が出ちゃったのよ」

由良「何馬力位出てるの?」

夕張「常時320馬力位で、最大380ってトコね」

由良「ふーん。結構出るんだ」

夕張「それでもやっぱり湾岸はキツいよ。岩崎さんどころか、提督にもトップで離されたもん」

由良「あの人達が異常なだけでしょ」

夕張「それもそうね」

由良「それにしても、このクルマに幾ら掛けたのよ」

夕張「え、えーっとぉ……幾ら位かなぁアハハ……」

由良「全く、給料日近くになると毎回ご飯せびられるコッチの身にもなってよね」

夕張「反省してまーす」

由良「本音は?」

夕張「今月も多分お願いしまーす……」

由良 ハァ
605 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/06(木) 21:57:41.91

由良「何か音楽掛けてもいい?」

夕張「別にいいけど、セッティング中なのを忘れないでよ」

由良「ハイハイ。再生っと」

♪~

由良「凄い低音……なにこれ」

夕張「提督お薦めのデス・フロム・アバヴ1979ね。テンション上がるわぁ」

由良「これベースの音なの?」

夕張「ベースとドラムの二人組だからね。シンセ通して音を作ってるみたい」

由良「へぇ~。結構カッコいいかも……」

♪~

由良「次は音像がキラキラしてる……昔の邦楽?」

夕張「これは首都高速トライアル2の主題歌、斉藤さおりの『目がすべて』ね」

由良「ジャンルに節操がないわね」

夕張「目がぁ全てさぁ♪」

♪~

由良「急に歌謡曲になったわよ」

夕張「ああー、コレは『ヘドラをやっつけろ』だわ」

由良「アンタのプレイヤーの中身、どうなってんのよ」

夕張「トンボもぉ♪鳥もぉ♪」

夕張「みなごぉろぉしぃ~♪」

由良「曲調と歌詞がここまで合ってない曲も珍しいわ」

夕張「シュールでしょ?」

由良「あとは何が入ってるの?」

夕張「リッジやワイプアウトのサントラとか、ルースターズの『恋をしようよ』とか」

由良「最後何でそれピックアップしたし」
606 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/06(木) 21:59:05.70

夕張「ゲッタップルーシー!」

由良「ゲットアップルーシー」カタカタ

夕張「ゲットアップルーシー!」

由良「ちょっと踏み込んで」

夕張「あ、ハイ」

由良「ハーフで開けて……」

夕張「……おっ」

由良「レブまで全開で加速」

夕張「お、おおぅ……」

由良「うん。反応を見るに良い感じみたいね」

夕張「由良ったら、ROMチューンの才能があるんじゃない?」

由良「元のデータがあるから詰められるのよ」

夕張「じゃあ、私の成果?」

由良「でもガバガバ。今までよくこれで走れてたわね」

夕張「しょうがないじゃない……一人で全部やろうとすると難しいのよ」

由良「このFCコマンダーは飾り?」

夕張「……待って。後ろ、何か来てる」

由良「また赤城さんじゃないの」

夕張「それはそれで嫌だけど……この音、ロータリーじゃない」


夕張「――来るっ!」
607 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/06(木) 22:14:21.84

♪~(某ブルーベリー色の全裸の巨人が出現する時の音)

夕張「うひゃあ!?」ビクゥ

由良「あ、川内からメールだ」

夕張「なな、なんでそんな怖い音を着信設定にしてるのよ……!」

由良「分かりやすくていいかなって思ったんだけど」

夕張「センスを疑うっ!」

由良「あ、でも青色のGT-Rよ。あながち間違いでもないようね」

夕張「青色のR……?」

由良「すっごく速そう。それに綺麗な青色……」

夕張「……提督……」

由良「え……?」

夕張「由良っ!ブースト圧マックスに設定して!追うわよ!」

由良「ちょっと。どうしたの急に」

夕張「あれ提督のRよ!」

由良「ウソ!?」

夕張「前に一度見せてもらったから間違いない!あんなR……他に居るわけがない!」

由良「でも、このクルマで追いつけるの!?」

夕張「無理かもしれないけど!それでも追わなきゃ!」

夕張「今見失ったら、二度と提督に会えない気がする!」


BNR32 スカイラインGT-R・改


“魔王”


――再始動。

610 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/06(木) 22:25:03.29
おつ
このスレを見て久々に湾岸やり始めたぜ
でもSAに乗ってるひといなくて寂しい
617 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/07(金) 23:13:44.59

小ネタ 鈴谷とドリフト

夕張「えっ、ドリフト?」

鈴谷「うん!バリちゃんなら出来ると思って」

夕張「一応それなりには出来るつもりだけど……急にどうしたの?」

鈴谷「ホラ、提督からクルマ貰ったじゃん?それでこの前、熊野と摩耶と一緒に出掛けたんだけど……」


~回想~

鈴谷「あーもう!マニュアルめんどーい!」

熊野「ちょっと鈴谷。もっとマトモな運転は出来なくて?」

鈴谷「そんなこと言ったってクルマ乗るの実習以来だもん!」

熊野「ガックンガックンで酔いそうですわ……」

摩耶「別に難しいことなんかないだろ。半クラで発進したら、あとはギア変える時以外は殆ど使わないし」

鈴谷「摩耶はあんなバイク乗ってるからでしょ!何でこんな目に……」

熊野「信号が変わりましたわ」

摩耶「ホレ、発進して右折」

鈴谷「分かってるよー……ってウワ!?」

摩耶「アクセル踏み過ぎだバカ。カウンター当てろ」

鈴谷「うわわわっ!?」

熊野「グエッ」←頭ぶつけた

鈴谷「……と、止まった。死ぬかと思った……」

熊野「有り得ませんわー……」キュー

摩耶「流石にヤバかったぜ」

鈴谷「今のなにー……?」

摩耶「急にアクセル入れて曲がりゃあそうなる」

鈴谷「ああ……ドリフトってやつ……?」

摩耶「あれじゃただのタコ踊りだ。ま、何事もなくて良かったな」

~終了~


鈴谷「なーんてことがあって……チョー焦ったよぉ」

夕張「ホントによく事故らなかったわね……」

鈴谷「で、二度とあんなこと起きないようにドリフトを覚えようと思ったのです!」ビシッ

夕張「いや、その理屈はおかしい……か?あれ?」
618 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/07(金) 23:16:23.31

夜・埠頭

夕張「結局教えることになってしまった……」

鈴谷「バリちゃん!早く早く!」

夕張「分かったって……じゃあまず基本から。今回は私のクルマだけど、FRであれば操作自体は変わらないからね」

①パワースライド

夕張「ハンドル切りながらガツンとアクセル踏む。すると……」

鈴谷「おお、滑ってる滑ってる」

夕張「これがパワースライド。アクセルの踏み過ぎによって起こるオーバーステアね。鈴谷がやったのはコレじゃない?」

②サイドターン

夕張「コーナー手前で減速、ハンドルを切りつつサイドを引く。すると後輪がロックすることによってテールが流れ始めるから……」

鈴谷「お、おぉー……」

夕張「あとはアクセルを開けてカウンターを当てる。これがサイドターン。低速でもやりやすいし、ドリフトではポピュラーなやり方ね」

鈴谷「さっきよりも横向いてる時間が長かった……」

③クラッチ蹴り

夕張「進入時にクラッチを蹴ると一瞬高回転になる。すると後輪が空転するから……」

鈴谷「うわわ、速いぃっ」

夕張「これもテールを流すキッカケ作りの一つね。サイドターンよりもスピードがある分、最初はちょっと難しいかも」

夕張「でも、回転数が落ち込んだ時にコレを使えば飛距離が伸ばせるわ。覚えておいて損は無いね」

④直ドリ

夕張「これは応用編。とりあえずクラッチ蹴ってキッカケを作り……」

鈴谷「直線で横向いてるぅっ!」

夕張「溜めたらアクセル抜く。すると今度は反対方向に振られるから逆ハン」

鈴谷「ギャー!!事故る事故る!!」

夕張「で、もう一回振ってコーナー進入。この時角度が足りないと思ったらサイド引くのもアリね」グイッ

鈴谷「 」

夕張「あとは同じね。ハンドルとアクセルで調整。そしてコーナー脱出」

夕張「今のは簡単なヤツからやっていったけど、普通にブレーキからキッカケを作ったり、慣性を利用する速いドリフトの方法もあるけど、やってみる?」

鈴谷「も、もうイッパイでち……」チーン
619 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/07(金) 23:19:16.22

おまけ

夕張「ある程度なら勝手に戻ろうとするから、ハンドル持たなくてもいいのよね」パッ

鈴谷「やめてーーー!!!!」


深夜の埠頭にこだまする鈴谷の絶叫……鈴谷は無事にドリフトを習得出来るのか!?

続かない!
620 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/07(金) 23:21:02.83

夕張「台場線に入っていく……?」

由良「着いて来いってことかな」

夕張「それならまだ好都合よ。湾岸じゃ勝ち目はないけど、環状だったら着いて行ける!」

由良「それにしても速い……」

夕張「パワーの差で云ったら、この子の倍は出てるでしょうしね」

由良「古くてもそこはGT-Rってことかな」

夕張「峠ならまだしも、都高でR相手にワンエイティで追いかけるなんて無謀だもの」

夕張「虹色大橋手前のS字……詰めるならココ!」


会心の慣性ドリフトでクリアーする夕張。

今までで最高のコーナリングだと自信を持って言える。

それでも……魔王Rに届かない。


夕張「追いつかない……っ」

由良「どんどん離されてるよ!」

夕張「まだチャンスはある!ココから先はテクニカル区間……タダでは済まさないんだから!」
621 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/07(金) 23:21:55.51

虹色大橋を渡りきると、芝浦の下り連続コーナー。

直線で離された分を少しでも取り戻そうと、夕張は持ちうる力の全てをぶつける。

右、左、そして右……スリッピーな路面も相まって、都高でも屈指の難所である芝浦コーナーを丁寧に捌いていく。

抜ける頃には僅かではあったが、その差は確実に埋まっていた。

初戦の赤城の時とは違う。

自分の走りが出来ている。

そして、ちゃんと成長している――!

テールを追うな。前を見ろ。

いつか提督に投げかけられた言葉を頭の中で復唱する。

特徴的なリング状のテールランプはまだ遠い。

それを追ってはダメだ。目指すのはその先だ。

クルマは自分が向いた方向にしか進まない。

ハンドルを握る手は、若干汗ばんでいた。


夕張「内回り……集中集中」フー

由良「うん。空燃比、排気温度、共に問題無し。まだ行けるよ」カタカタ

夕張「了解!お願い、ワンエイティ――ッ!」


環状に入っても夕張の集中力は途切れない。

それどころか、この緊張感が心地良くさえ思えた。

その原因はやはり、前を行く魔王Rによってもたらされたものだろう。

あまりの速さから魔王と恐れられた、迅帝と並ぶアンダーグラウンドの主。

しかし名前とは裏腹に、摩天楼の灯火に浮かぶ姿は無骨な印象の強いR32とは一線を画す。

どこまでも深く、見ていれば溺れてしまいそうな……妖艶とも取れるブルー。

それはこの都高が持つ独特の空気に飲まれているのか、あるいはRの魔力によって脳髄から犯されてしまったのか。


夕張「怖い話とかさ、時々無性に見たくならない?」

由良「どうしたのよ急に」

夕張「私が思うに……あれって現実の延長線上にある非現実を、少しでも垣間見たいっていう意識が何処かにあるんじゃないのかなって」

夕張「何であのクルマが魔王と呼ばれているのか……少し分かった気がする」
628 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/12(水) 01:00:26.80

小ネタ 江風と邂逅

江風「改白露型の江風だ!ま、よろしく頼むよ」

夕・由「おおー」パチパチ

夕張「制服がスタイリッシュ」

由良「カッコカワイイ」

江風「おいおい、褒めても何も出ないぞ」

江風「まあ、何て言っても改白露型だからな!バランスの良い身体だろ?」

夕・由「バランス……」

白露「江風来たってホントー!?」バーン

夕立「ぽいーっ!」ドタドタ

村雨「失礼しまーす」

江風「おお、姉貴達。よっす」

夕・由 ジーッ

白露「ん?どしたの二人とも」ボイン

夕立「ぽい?」バイン

村雨「……視線が……」ボイーン

江風「何だよ。何処見てんだよ?」ストーン

夕張「そうね。確かにバランスの良い身体ね」ホロリ

由良「大丈夫。まだまだこれからよ」カタポン

江風「分かんねえけどスッゲェムカつく」


むしろ姉貴共がアンバランス。
何がとは言わない。
629 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/12(水) 01:04:33.31

二台は環状・内回りに突入。

魔王Rのテールランプは赤く尾を引き、浮かんでは消える。

コーナーの進入で差を詰めても、クリップ~出口では魔王Rが圧倒的優位。

暴力的な加速の前に、夕張180SXは為す術もなく。

タービンを交換し、CPUのリセッティングによってワンランク上の速さを手に入れたハズなのに、今ばかりは非力な軽自動車のようにさえ思えた。

パワーが足りない。スピードが足りない。

埋まらない差は夕張を苛立たせ、それが呼び水の如くヒリヒリと焦燥感を煽ってくるのだった。


夕張「もーうっ!!全然追いつかない!!」

由良「落ち着いて。離されてはいないよ」

夕張「環状ならどうにかなると思ったのに……!」

由良「インターセプターだっけ。簡単にはいかないよね」

夕張「どうせならもう少し大きいタービン入れれば良かったかしら。T518とかGT2835とか……」

由良「多分結果は変わらないと思う」

夕張「……うぅっ」

由良「したらばは後。今は提督さんでしょ」

夕張「……うんっ」
630 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/12(水) 01:07:43.79

由良「それにしても提督さん、何であのクルマに乗っているんだろう。折角Zがあるのに」

夕張「扶桑さんを止める為……だと思う」

由良「扶桑さん?どういうこと?」

夕張「あの黒いGTOのドライバー……扶桑さんだったみたい」

由良「……冗談でしょ」

夕張「叢雲はハッキリ見たって。まさかとは思ったけど……」

由良「でも止めるって言っても、どうやって?」

夕張「それは分からないけど、扶桑さんの狙いはどうやらあのRらしいの。ワンエイティはブローしちゃったし、Zじゃ勝負にすらならない」

由良「出し惜しみしている場合じゃない……ってことね」

夕張「多分。何があったか知らないけど、あのクルマには嫌な思い出があるみたいだから、ずっと放置していたみたいだし」

由良「とても放置していたようには見えないけど……」

夕張「そうね。いくらガレージに入れていても、綺麗過ぎる」

夕張「提督は『これはただの機械だ』なんて否定していたけど、やっぱり何か特別な力があるとしか思えないわ」

由良「魔王なんて呼ばれている位だから、魔力でも持ち合わせているのかもね」

夕張「魔力……そうね。確かに魔力があるわね」

631 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/12(水) 01:09:18.28

夕張「深峰線へ?」

由良「また湾岸に出るのかな」

夕張「そのまま市川に帰ってくれないかなぁ……」

由良「だったらいいけど、それはないでしょ」

夕張「そうよねぇー……」

由良「でもまた湾岸に出られたら、追いつけっこないね」

夕張「その前に銀座で差が埋まらないんじゃ、深峰線の間に置いて行かれそう」

由良「弱気になるなっ。気持ちで負けたら終わりだよ」

夕張「それはそうだけど……って、あれ?」

由良「……この上って行くのが深峰線よね?」

夕張「うん。コッチは向島線……」

由良「真っ直ぐ行ったら何処に繋がるの?」

夕張「中央環状にぶつかるわ。でも何で……」

由良「……箱崎出口で降りたわね」

夕張「え、あれ?もしかして……」

由良「どうしたの?」

夕張「ココで降りると下がロータリーになっているんだけど、そこにパーキングエリアがあるのよ」

由良「そんな案内標識あった?」

夕張「あまりに小さい所だから、混雑を避ける為にわざと表示してないの。Uターンがてらに使うこともあるんだけど、偶に閉鎖されている時もあるわ」

由良「知らなかった……」

夕張「でも好都合だわ。いい?提督がクルマから降りたら即拘束よ。聞きたいことが山ほどあるからね!」

由良(さっきまで不安と焦りで一杯の表情だったのに……急に元気になっちゃって)クスクス

夕張「……何で笑ってるの」

由良「べっつにー」
632 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/12(水) 01:12:20.11

箱崎パーキング

提督「おーっす夕張。由良も居たn 夕張「食らいやがれぇ!!」トビゲリ

提督「ひでぶっ!」

夕張「何が『おーっす』ですか!丸一日勝手に鎮守府空けるし!Rは動いてるし!」

提督「ちょっ!痛い痛い」

夕張「ホントに心配したんですからね!」

提督「悪かったって。ホントは昼前には帰るつもりだったんだけど、コイツの整備が遅れちゃってさ……」

「あら、職務放棄を人のせいにする気ですか?」

由良「え?」

提督「おー居た居た。来てくれないかと思ってましたよ」

「守る気が無いなら最初から約束しませんよ」フフ

提督「へいへい。そういう人でしたね」

「貴女達は彼の所の艦娘ね」

夕張「あ……ハイッ。市川所属の兵装実験軽巡、夕張です」

由良「同じく、長良型軽巡洋艦・4番艦の由良です」

「夕張さんに由良さんね。はじめまして」

夕張「あのぅ……失礼ですが、貴女は?」

「あらいけない。うっかりしていたわ」

朝日「敷島型二番艦、朝日と申します。工作艦に改装された戦艦……って言えば、分かるかしら」

提督「俺のワンエイティとRを組み上げた張本人だ。昔っから世話になってるのヨ」

夕・由「……え?」
636 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/12(水) 08:39:47.23

提督が組んだわけではなかったのか
といっても運転技術は変態クラスなんだろうけど
641 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/14(金) 15:42:52.25

小ネタ 川内と江風

川内「うーん……キャブ絞り過ぎたかなぁ」カチャカチャ

江風「川内さーん。夜戦行かないの夜戦ー」

川内「これ終わったら行くよー」

江風「マジ!?じゃあ早く早く!」

川内「慌てない慌てない。峠は逃げないよー」

江風「……は?峠?」

川内「うん。峠」

江風「何しに?」

川内「夜戦しに」

江風「いやいや、アタシら艦娘だよ?山に行ってどうするのさ?」

川内「あー、カウル付けるの面倒だし、このままでもいっか」

江風「ちょっと!質問に答えてって!」

川内「そうだ。江風に着任祝いがあるんだ。夕張ー」

夕張<ハーイ

江風「え?なになに?新しい装備?」キラキラ

夕張「お待たせー?これが江風ちゃんの装備よ」

スズキ・RGV250Γ

江風「……なにこれ」

夕張「VJ22の後期型よ。規制でカタログ値は40馬力だけど、きっちり整備してあるから50位は出ているハズよ♪」

江風「え?え?」

川内「これでようやく、『SRTいちかわ水雷魂withSP夕張』が始動ね」

夕張「ハイこれ。江風ちゃんのメット」つドラヘル

江風「あ、ちょっと可愛い……」


江風の色合いが何となくガンマを彷彿させる。
642 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/14(金) 15:49:07.30

小ネタ 川内と江風・その2 ~多分知られていないレースゲーネタ~


今日も峠が私を呼んでいる。

どうした……もうお仕舞か……
もっと速く走れないのか……もっと深く倒せないのか……

目にもの見せてやるから待ってろよ!

私は眠い目をこすりながらイグニッションキーを捻る。

相棒は一発で目を覚ます。
コイツはいつも目覚めがいい。

高回転型エンジンが不安定にむずかりアクセルを強請る。

イヤと云う程回してやるからお前の方がヘバるなよ!

エンジンに火を入れた私は暖機の間に缶コーヒーで、
自分のハートに火を入れる。

オイルの焦げる匂いに心が躍り、
私も一気に目覚める。

――行くぜ、相棒!

アクセルを捻るとキャブレターが鳴き、
レブ・カウンターが躍る!

心地良いエキゾースト・ノートに酔いしれながら、
いつものワインディングロードを目指す!

私はいつしか、バイクと一体になり
エンジンもタイヤも私のハートも熱くなった!!

私は心の中でフラッグを振る。


……そして今、私は熱い風になった。


江風「ヤッベェ……バイク、チョー楽しい」

川内「そうでしょそうでしょ?」

江風「川内さん!こうなりゃ全国制覇目指しましょう!いちかわ水雷魂の名を全国に!」

川内「お、いいじゃん。江風ったら、やる気だねぇ」

夕張「洗脳が完了しました」

由良「ロクでもないわね、アンタ達」


文の元ネタは「峠・伝説 最速バトル」より
首都高バトルを生み出したBPSよりスーファミ末期に発売されたバイクゲーです。

説明書無しでは一見さんお断り状態だけど面白い。
あと、Nチビで首都高走れます。オヌヌメ。
643 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/14(金) 15:51:17.35

夕張「こ……工作艦・朝日って、私達の大先輩じゃないですか!」

由良「何で提督さんと……」

提督「昔、大黒で知り合った」

夕張「いやいやいや……」

提督「俺だって最初は驚いたんだぜ?朝日さんが元艦娘だって知ったのは着任してからだ」

提督「今でこそ艦娘の存在はのっぴらきになったが、当時は重要機密でな。軍関係者の中でもごく一部にしか伝わっていなかった。当然、一介の暴走族風情の俺が知る由もない訳ヨ」

朝日「彼と出会った時には既に退役した身でしたし、一応守秘義務もあったものでしたから」

由良「では何故、提督さんのクルマに手を入れるようになったのですか?」

提督「『Mid-knight』ってチーム、知っているか?」

夕張「都高を走っていて知らない方がモグリですよ……って、まさか」

提督「おうよ。L28改ツインターボのS130。それが朝日さん」

夕張「 」

由良「え?どういうこと?」

夕張「……かつて湾岸に君臨していた伝説のチームよ。その中でも有名だったのはワークスチューンの930ターボと、ABRエアロのZ……同チームの看板マシンね……」

提督「湾岸で実測300キロオーバー。Rやスープラが台頭し始めた頃に、130でこの数字は驚異的だった。ガキの頃に憧れたZが目の前に現れた時は、ホントに興奮したよ」

朝日「懐かしいですね。実際にそこまで出ませんでしたが」

由良「もしかして、そこに止まっているZがそうですか?」

提督「おう。今は赤くなったけど、当時はグレーだったな」

夕張「ちょっと見て来ていい!?」

由良「後にしなさい」

提督「……で、聞けばチューニングはほぼ自分でやっていると。ワンエイティのチューンに悩んでいたこともあって、兎に角拝み倒して以来付き合いが出来たってとこかな」

朝日「最初は自分以外のクルマには責任が持てないと断っていたのですが、彼の走りや考え方を知り了承したのですよ。彼はちゃんと、分かってくれると」

夕張「分かってくれるとは……?」

朝日「正確には知ろうとする姿勢ですね。作業する際は必ず手伝わせていたのですが、一つ一つの作業の意味を考え、キチンと自分の言葉として消化して発する。コレって案外難しいのですよ」

提督「そうですかね?」

朝日「先入観や予備知識というのは、時として価値その物を歪めてしまいます。やがて個が構築されていくと、自分の価値観に無いモノはまず否定してしまう。その方が楽ですからね」

朝日「彼にはそれを感じなかった。若さ故の無知ということもあったのでしょうが、何処かセンスがあったのでしょうね」
644 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/14(金) 15:54:12.81

夕張「センス……ですか」

朝日「これはあくまで私の考え方ですが、センスというのは情報の取捨選択の上手さだと思っています」

朝日「言い換えれば本質を見極める力ですね。だからセンスがある=上達の早さに繋がると」

朝日「人は分かりやすい結果を求めがちです」

朝日「極力無駄を省き、最良の結果を得たい。その考え方は間違いではありません。占いなんかがそうですね」

朝日「ですが……無駄だと決めつけ切り捨ててしまうと、案外それなりの結果しか得られないものです。彼はそれが許せなかったみたいですね」

提督「大事なことは、自分で気が付かなければ意味がない。ただ教わるだけでは身に付かない……ってね」

朝日「あら、それは誰からの受け売り?」

提督「朝日さんからですよ。ここでの走り方、クルマに対する姿勢、考え方……みーんな都高と朝日さんとから教わったんです」

由良「つまり、朝日さんは提督さんにとって師匠みたいな人だったんですね」

提督「まあな。Zを買ったのだって、朝日さんに憧れていたって部分も大きい」

朝日「嬉しいこと言ってくれますね」

提督「事実ですから」

夕張「ところで、朝日さんは何故ココに?」

朝日「Rの様子を見に来ました。この様子だと、問題は無いようですね」

提督「問題があるとすれば俺の方かな。夕張如きを離せないなんて、やっぱり鈍ったんだなぁ……」

夕張「ムカーッ!人がどれだけ心配したかも知らないで!」

提督「だからそれは悪かったって」

朝日「さて、ココで立ち話をしていても他の方に迷惑が掛かりますし、私のガレージに移動しましょう。良ければ、お二人もどうですか?」

由良「いいんですか?」

朝日「ええ。提督としての彼の話も聞きたいですからね」

由良「では、お言葉に甘えて」

夕張「あの130を間近で見れるチャンス……流石に気分が高揚するわっ!」

提督「お前なぁ……」

朝日「ウフフ。では、参りましょうか」
645 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/14(金) 15:58:48.44

朝日のガレージ

夕張「……まさかココまで来るのにも全開だなんて……」ゼィゼィ

朝日「夕張さんも中々の実力をお持ちのようだったので、つい踏んでしまいました」

夕張「それは素直に褒められていると思っていいんですよね……」

朝日「勿論。彼の部下だけあって、昔の彼の走りにソックリ」

提督「俺の方が速かったと思うけどナ」

朝日「いえいえ、夕張さんの方が速い位」

提督「いーやっ、そんなことないねっ」

夕張「何ムキになってるんですか……」

朝日「大人げないというか、子供っぽいところは昔からですね」

由良「ところでこの建物……ガレージと云うより貸倉庫に見えるのですが……」

朝日「作業も出来る広いガレージとなると、こういう所の方が都合が良いのですよ。さあ、どうぞ」ガラガラ

夕・由「お邪魔しまーす……」

朝日「明かりを点けますね」

ラーイトアーップ!!

夕張「お、おおー……っ!!」

由良「スゴい……プロのショップみたい」

提督「むしろプロだよ、この人。そこにあるヨーロッパだって、レストアついでにロータリー載せようとしてるんだし」

夕張「ふえぇぇぇ……」

由良「31、32、33……歴代Zが並んでるズラリと」

朝日「Zは特に思い入れがあるんですよ。でも、純粋なZは32までだと思いますね」

夕張「え?どうしてですか?」

提督「33はルノー提携後のクルマだからな。スポーツカーとしては成功した部類とは云え、朝日さんなりに思う所があるんだろ」

朝日「概ね当たりです。よく出来たクルマではあるのですが」

夕張「な、成程……」
646 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/14(金) 16:04:05.95

朝日のS130フェアレディZ

ABRエアロのレッドパール。
L28改3.1L+TD06タービン×2仕様。
インジェクション+モーテック制御等、各部に現代のパーツを奢る。
NAでも充分速いらしい。
最大出力は約600馬力。


夕張「ノスタルジーな見た目に反して、中身はかなり現代的ですね」

朝日「思い出に浸るのではなく、速いZを作ることが目的ですから」

提督「でもL型って以外は最早別物だよなぁ。これでゼロヨン11秒前半出るし」

夕張「11秒!?下手な四駆より速いじゃないですか!」

提督「しかも、ちゃんと公道で乗れる仕様だからな。驚異としか言えん」

夕張「ヒエー……魔王Rがあんなに速くなったのも納得出来るかも……」

提督「……そうだな」

朝日「組んだ人間からすれば、このクルマが曰く付になってしまったのは悲しいですが」

提督「………」

朝日「その様子だと、まだ話していないみたいですね」

提督「……どうしてもなぁ、このRを見ると思い出しちまうから……」

夕張「……提督。結局このRは何故魔王と呼ばれるのか、どうしてこのRを頑なに拒否するのか……いい加減、話してくれませんか?」

由良「これ以上は執務や士気にも悪影響ですよ。観念してください」

提督「……観念って」

朝日「向かい合うと決めたから、私の元に来たのではないのですか?」

夕張「提督!」

由良「提督さん」

提督「……ああ、もう分かったよ。でも、あんまり他の奴に言うなよ?特に青葉」


その頃の青葉――

青葉「動かないから『あれ?』と思い、ギア弄ったらローに入ってもうウイリーです……」

青葉「おのれkwsk……」ガクッ

摩耶「何だとこの野郎」
647 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/14(金) 16:06:17.31

提督「そもそもこのRは、俺のクルマじゃないのよ」

夕張「え?」

提督「正確には、その当時付き合っていた彼女のクルマだ」

提督「まあ変わり者でさ。華奢で線の細い見た目のクセに、機械科の大学出でな。知り合った時には、既にこのRに乗っていた。まあ、殆どノーマルだったけど」

提督「その頃、俺も岩崎も都高では名前が売れていた。で、何処から聞きつけたのか、実際にそんな速いワンエイティが居るのか見てみたかったと」

由良「本当に変わった人だったんですね……」

提督「そっから意気投合して、男女の関係になるまでにもそう時間は掛からなかった。お互いクルマが好きだったし、同い年だったから話題も事欠かない」

朝日「私の所にもよく顔を出しては、作業を手伝ってくれていました」

提督「一方でワンエイティでは限界を感じ始めていた。乗り換えを考えていると打ち明けたら、このRに乗れと勧められたんだ」

提督「色を塗り替え、エンジン・足回り・ボディ……出来ることは全てやった。完成した時には、感極まって泣いていたな」

朝日「これが当時の写真です。岩崎君も一緒に写っていますね」

由良「……え!?」

夕張「扶桑さんにソックリ……!?」

提督「最初に扶桑と会った時は腰抜かしたよ。生まれ変わって艦娘になったのかって思ったわ」

夕張「生まれ変わって……?」

提督「……死んだよ。このクルマでな」

夕・由「……!?」

提督「このRが組み上がった時は、そりゃあもう速かった。あれだけ苦労していたワンエイティは一体何だったんだって程にな」

提督「で……俺と岩崎が見た目と速さから、Vシネ版の湾岸ミッドナイトに肖って魔王Rと呼び始めた。今思えば、それがコイツを本当に魔王にしてしまうキッカケだったのかもな」
648 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/14(金) 16:08:26.49

提督「そんなもんだから、俺とRは連戦連勝。湾岸じゃあついて行くことが出来なかった岩崎のRとも対等になった」

提督「あの迅帝とタメを張るんだ……噂はあっという間に広まり、最初はシャレで呼び始めた魔王の名が、いつしかコイツを表す通り名になった」

朝日「とてもじゃないけれど、私のZでは太刀打ち出来なくなりました。嬉しい反面、少し寂しくなりましたね」

提督「ところが……アイツが乗ると何故かグズる。最初はABSの誤作動で危うく突っ込みかけた」

提督「まあ当時でも32Rは既に古いクルマだったからな。ちゃんと原因も調べてたこともあって、その時は特に気にしなかった」

提督「しかしその後も不調は続いた。ドライブシャフトが折れたり、エキマニが割れたり、サーモスタッドが壊れたり……アテーサのヒューズがトんだ時は流石に引いたわ(笑)」

朝日「でも彼女が乗ると高確率で不具合が起きるから、君は故障センサー扱いしていたじゃないか」

夕張「え、ひどっ」

提督「余計な事言わないでください……」

由良「でも不思議ね……まるでクルマに拒絶されているみたい」

提督「ああ。だがそれでもアイツはこのRを心底愛してやまなかった。時間があればコイツに向き合い、その細い指を油で黒くしていた」

提督「ついにコイツも観念したのか、次第に不可思議な故障は無くなった。そもそもアイツのクルマだけどな」

提督「すると、今度はアイツの方がRに乗る時間が増えた。まるで取り憑かれたように、寝ても醒めてもRのことばかりだ」

朝日「実は都高における魔王Rの逸話は、殆ど彼女が作り出したものでした。つばさ橋で340キロ出ていた、内回り霞ストレートで300キロオーバー、環状6分切り……実しやかに囁かれた噂は、数多く存在していました」

提督「確か、横浜でゼロヨン10秒切ったなんて話もあったな」

朝日「私が聞いた話では、筑波の走行会で58秒フラットを叩き出したなんていうのもありましたよ」

夕張「どれも出来そうだから怖い……」

提督「いや、いくらなんでも大げさ過ぎだ。ゼロヨンは10秒中盤、筑波は精々1分フラットってとこだ」

夕張「それでも充分とんでもない記録じゃないですか……」

由良「じゃあ、最高速もそこまでは出なかったんですよね?」

提督「……メーター読みで近い速度は出た」

夕張「 」

朝日「確か、330キロは出ていたハズですね」

由良「 」

649 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/14(金) 16:10:44.11

提督「それからしばらく経ったある日だ。アイツから電話があった」

提督「これから岩崎と走ってくる……今日は凄く調子が良いなんて、いつにもなく興奮気味だったよ」

提督「それで翌朝のニュースだ。都高で事故があったなんて流れていて、ふと見たら岩崎のRがグチャグチャになって転がっていた」

提督「あのバカやりやがったのかと思ったら、女性が一人死亡なんて出た。年齢も同じ。連絡しても繋がらない」

提督「頭が真っ白になったよ……」

朝日「二人が事故を起こしたのは環状外回りの京橋ランプ付近。ブレーキ痕は、岩崎君のものしか確認出来なかったそうです」

夕張「きょ、京橋!?」

提督「お前が赤城とヤった時と、ほぼ同じ場所だ。偶然とは云え心臓が止まるかと思ったぜ」

夕張「……そんな……」

朝日「翌日、私が魔王Rを引き取りに行きました。彼は心神喪失状態ですし、関わった者として、自分にも責任がありますからね」

朝日「引き取り自体は警察が渋ったので多少時間は掛かりましたが、現車を見ることは出来ました」

朝日「岩崎君のRがあんな状態では、魔王Rも当然再起不能だろうと思ったのですが……まるで何事も無かった様に、ほぼ無傷」

朝日「警察の方も少し気味悪がっていましたね。今まで何回も悲惨な現場を見て来たが、こんなケースは初めてだ……と」

提督「せいぜい擦り傷があった程度だからな……笑えたよ。笑い過ぎて壊れるかと思った」

提督「そして気付いた。最後の最後に、またコイツは裏切りやがった。アイツを身代わりにして生き残ったんだってな……」

提督「後はお前が知っての通りだ。あのガレージに押し込んで、生かさず殺さず置いていたのヨ」

夕張「でも……提督言ってたじゃないですか!クルマはただの機械だって……!」

提督「……そうだ。それに気付いたのは、お前達艦娘のおかげだよ」

夕張「え……?」

提督「人によっては、艦娘を兵器だと云うヤツがいる。だがそれを操っているのは紛れもなく、感情を持った人間なんだ。機械は結局、人間があってこそだ」

提督「それに気付いたのは……最初に叢雲を預かり、そして小さいながらも艦隊を任されるようになってから……」

提督「やっぱりさ、俺はクルマが好きなのよ。例え連れが大事故を起こし、付き合っていた女が死んでいても……やっぱりクルマは好きだった。憎めなかった」

提督「何より、アイツが愛したクルマだ。これ以上無下にしていたらアイツが悲しむかもしれない。それでも向き合えるようになったのは、ようやく今になってから……随分時間が掛かったけどな」

由良「それで……提督さんは、このRで何をする気ですか?」

提督「……扶桑を止める。何処でRの存在を知ったのかは置いといて、これ以上放っておいたら、かつての俺みたいになっちまう」

提督「クルマのせいで狂う人間なんて、もう見たくもないからな……」
650 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/14(金) 16:35:24.48

提督「俺が話せるのは概ねこんなモンだ」タバコ

朝日「火気厳禁」ヒョイ

提督「へいへい……」

夕張「………」

由良「………」

朝日「言葉が出ないようですね」

提督「だからあんまり話したくなかったんだよ。この二人は特に古株で付き合い長いし」

朝日「ルールの無い喧嘩は殺し合い」

夕張「……?」

朝日「私が艦娘として学び、都高で再確認したことです」

夕張「どういうことですか?」

提督「……あの頃の都高は熱気が異常でさ。毎日何処かしらのチームが走っていた」

提督「中には白熱しすぎて、とんでもない化け物を連れて来る奴が居るのヨ。岩崎しかり、俺しかり」

朝日「しかし事故も増大していました。古参の人達からすれば、実に走りにくくなりましたね」

提督「……そうだな。WRCにおけるグループBみたいなモンだ」

由良「無秩序ですね……」

提督「ああ、まるで制御が効かない。正直なところ、アイツと岩崎の事故も起こるべくして起きた」

夕張「つまり、扶桑さんのGTOみたいなのが沢山居て……」

提督「そう。事故ったり、死んだりだ」

提督「あのGTOは怖いよ。正にその頃を思い出させる」

由良「だからこそ……末路が分かっているからこそ、何としても止めるべき、と」

提督「そういうことだ。特に夕張……出来ればお前には関わって欲しくないと思っている」

提督「これは俺自身の決着と後始末だ。ましてや、相手は俺の部下だしな」

夕張「……最後まで」

夕張「最後まで見守ることは……ダメなんですか?」

提督「……それをお前が望むなら、止めないよ。止める権利は無いさ」

661 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/15(土) 19:05:15.70

補足的な小ネタ

由良「朝日さんのS130って、元ネタがあるのよね?」

夕張「そう。知っている人にはすぐ分かると思うけど、ABR細木のミッドナイトレーシングS130ね」

由良「どんなクルマなの?」

夕張「キャブ仕様のL28改ツインターボ。悪魔のZのモデルになったと言われているわ」

由良「そういえば、彼女のカレラに同じくミッドナイトのポルシェが出ていたような」

夕張「コレも有名なクルマね。途中でも語られている通り、Zと並んでミッドナイトの930ターボも全国的な知名度があったの」

由良「わざわざ本国のポルシェにエンジン送って組んでもらっていたらしいしね……」

夕張「ちなみに、彼女のカレラは>>1は断片的にしか読んでいませんっ」

由良「大鶴義丹主演のVシネマ版湾岸ミッドナイトには、同じくABRボディの白いS130も登場していました」

夕張「ネタバレすると、原作では北見ポジションの人物がS130のドライバーで、悪魔のZとのバトル後に、魔王Rを残して行方を眩ませてしまう……って感じだったハズ」

由良「大昔に視聴したっきりだから、内容はうろ覚えね」

夕張「朝日さんは、一応それを意識しての登場だったけど……ねえ?」

由良「まさかのオリジナル艦娘だし……」

夕張「朝日さんの容姿はご想像にお任せします!ただし、元艦娘ということもあってか、実年齢より遥かに若く見えるということだけ追記しておきますね」

由良「では引き続き、本編をお楽しみください」
662 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/15(土) 19:06:27.10

帰路 都高深峰線

由良「……提督さんにも、色々あったんだね」

夕張「そうね……」

由良「……夕張」

夕張「なに……?」

由良「夕張?大丈夫?ファ○通の攻略本よ」

夕張「……は?」

由良「ゴメン。今の無し」

夕張「お、おう……」

由良「……今のは完全にスベった。死にたい……」

夕張「手で覆い隠す程恥ずかしくなるなら最初から言わないでよ……こっちまで恥ずかしい」

由良「……由良のキャラじゃなかった」

夕張「ああ、もう。そういうのいいから!」

由良「……提督さん、今日はちゃんと帰るって言ってたよね」

夕張「そうね。帰らなきゃ叢雲にボコられそうだし」

由良「酸素魚雷の刑ね、確実に」

夕張「……結局、走ることって何なのかな」

由良「さあ……私には分からないわ」

由良「朝日さん……いつでもおいでって言ってたし、聞いてみればいいんじゃない?」

夕張「そうする。艦娘の頃の話とかも聞きたいし」

由良「……で、さっきから後ろに居るのって……」

夕張「やめてよ……気にしないようにしてたんだから……」
663 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/15(土) 19:08:23.22

由良「緑色のハチロクね」

夕張「そうね……」

<おねえさまあああああああ

由良「何か聞こえるよ」

夕張「どんな声量してるのかしら……」

由良「知り合い?」

夕張「多分、由良も知ってる人……前会った時と色が違うけど」

<黄色いワンエイティ!噂は本当だったんだ!

由良「……横に並んだ」

夕張「あー……」

「やっぱり!夕張さんですね!」

夕張「ああ、うん……案の上だわ」

由良「あの人は……」

比叡「初都高!気合!入れて!!行きます!!!」

夕張「何で比叡さんがココに居るのよ……」

由良「都高走行中でも聞こえる声ってスゴいね」

664 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/15(土) 19:10:19.41

鎮守府最寄りのコンビニ

比叡「お久しぶりです!夕張さん!」アクシュ

夕張「どうしたんですか比叡さん。わざわざココまで……」

比叡「お姉様が心配になって来ちゃいました!」テヘッ

夕張「はぁ。ところで、前とクルマ変わってませんか?」

比叡「ハコ換えしました!これでバッチリです!」

夕張「そ、そうですか……」

由良(やっぱり声大きい……)


比叡のAE86カローラ・レビン改二

ボディ剛性で有利な2ドアに乗り替え。
グリーンメタリックに全塗装。
時代を逆行する直管の爆音マフラーがトレードマーク。
中身は以前のハチゴー改のままと見せかけて……


比叡「エンジンはSR20!リアメンバーもマルチリンクに換装!以前とは別モノですよ!」

由良「つまりシルビアですよね、中身」

夕張「ついにハチロクとしては禁断の領域に……」

比叡「これもひとえに金剛レーシングの名を受け継ぎ、そしてお姉様を目指す為です!」

由良「でも金剛さん、S2000に乗り換えましたよ?」

比叡「……えっ?」

夕張「知らなかったんですか……」
665 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/15(土) 19:12:45.70

比叡「そ、そんな……金剛レーシングは……ハチロクで売っていたのに……」ガクゥ

夕張「でも、榛名さんと霧島さんは86とBRZじゃないですか」

比叡「榛名は元々ハチロクのトレノですよ。お姉様がエンジン壊しちゃったけど……」

夕張「ああ、そういえばそんな事言ってたような……」

比叡「あ、そうそう。その榛名のハチロク、新しいエンジンを組んだので復活したんですよ。今度はフォーミュラトヨタ用の4A-Gです」

夕張「うわ、マニアならヨダレものじゃないですか」

比叡「それもまた速いんですよー。お姉様程ではないけど」

夕張「今度Hakoneに行ったら、是非見させてもらいたですね」

由良「盛り上がってるとこ悪いけど、ちょっといいかな?」

夕・比「??」

由良「いや、中に居る人って……」チラ

金剛@マンガ立ち読み中

比叡「お、お姉様!?」ガビーン

夕張「あの人こんな時間に何してんの……」

由良「金剛姉妹ってフリーダムね」

666 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/15(土) 19:14:34.38

<アリアッシター

金剛「やっぱりToL○veるはサイコーネー」

比叡「お姉様あああぁぁぁぁぁ」ダダダダダ

金剛「ん……OH!比叡!比叡じゃないデスか!」

比叡「お姉様!お久しぶりです!」ダキッ

金剛「どしたノ比叡。草木もスリープなウシミツアワーですヨ」

夕張「そのウシミツアワー?ってのにコンビニでT○Loveる立ち読みしている方が驚くわ……」

由良「さっきから伏字が仕事してない気がするんだけど」

比叡「ああ……久々に体感するお姉様のお胸の感触……感激ですっ!」グイグイ

金剛「くすぐったいヨ比叡」

夕張「で、ホントに何してたんですか」

金剛「ダカラ、ToLove 夕張「それはもういいですって」

比叡「私もお姉様とトラブりたいです!」パフパフ

由良(この人何言ってるのかしら)

金剛「実は暑くて寝付けないからミッドナイトウォークしてたヨ。バリー達は?」

夕張「CPUのセットアップがてら、都高に行ってました。提督にも会えましたよ」

金剛「リアリィ!?提督は!?」

夕張「今晩中には戻るそうです。これ以上鎮守府を空けていると叢雲の報復が怖いみたいなので」

金剛「既に手遅れな気がしマース」

由良「今は朝日さんという元艦娘の方のガレージに居ます。その帰りに、比叡さんと会ったんですよ」

金剛「ワオ!朝日デスか!?」

比叡「ご存じなのですか?お姉様」モゴモゴ

金剛「ネームだけネ。同じルーツを持ってマスし」

夕張「そう言えば、戦艦・朝日も英国生まれでしたね」

比叡「でもその朝日さんとやらが、市川の提督とどんな関係があるんですか?」ムニムニ

由良「比叡さんはそろそろ金剛さんの胸の中で話すの止めませんか?」
667 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/15(土) 19:17:05.68

金剛「提督のクルマは朝日が……驚きネ」

比叡「それに魔王Rと戦艦……都高は恐ろしいです……」ヒエー

夕張「……いや、比叡さんのハチロクの方がブッとんでますって」

由良「魔改造の度合いで云ったらトップクラスですよ……」

金剛「でも、ようやく謎が解けたヨ。前に見た赤いZは朝日だったんデスね」

夕張「そういえば、都高に来るキッカケの一つでしたもんね」

金剛「イエス。ポルシェの方も聞いたら分かるかもネー」

夕張「それで、扶桑さんを止める為にRを復活させて、最終調整といったところです」

金剛「そうなると、都高は暫くブレイクですネ」

比叡「どうしてですか?」

金剛「そんなモンスターが居る中にアタックしたら迷惑が掛かりマース。流れを見ることも大切ネー」

比叡「そんなのお姉様らしくないですよぉ。蹴散らしちゃいましょう!」

金剛「ノンノン。今は扶桑が先決ヨ。二人のバトルを邪魔しないことネ」

比叡「ブー……」

夕張「でも、失礼ですが私も意外です。扶桑さんより先に自分とバトルしろって言うかと思いました」

金剛「ワタシも今は市川の艦娘ヨ。自分のことばかり言ってられないデス」

金剛「それにHakoneでもよくありましたが、横からチャチャ入れられるのは気に食わないヨ」

夕張「……流石Hakoneの女王」

由良「少し見直したかも……」

比叡「素敵です!お姉様!」

金剛(話を聞く限り、今の私じゃ勝てそうにないし……せめてS2をパワーアップしてからね)メソラシ
668 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/15(土) 19:19:02.02

その頃――どっかの峠

川内「やるじゃん江風。私に着いて来れてる」

江風「まだまだ全然でしょー……川内さん、本気じゃなさそうだし」

川内「あ、バレた?」ニシシ

江風「チェッ、悔しいけどしゃーないなぁ」

川内「もっとスパッと曲げちゃっていいと思うよ。そっちの方が低速は速そうだし、出口でグワっとさ」

江風「うーん……右のヘアピンとか、もっとギャーって行きたいんだけど、対向車来ないか怖くって」

川内「そこは気配を感じ取るしかないよ。夜戦と一緒で」

江風「気配ねぇ……」

川内「今だって耳を澄ませば……」

江風「あ……クルマの音だ。コッチに来てる?」

川内「上って来てるね。夕張だったら車種分かるんだろうけど」

江風「それにしても、随分飛ばしてない?タイヤ鳴いてるし」

川内「うん。間違いなく速いねコレ」

江風「どうすんのさ?」

川内「折角だから待ってみようか。もしかしたら一勝負出来るかも」

江風「いいねぇ。そろそろバトルってのをしてみたかったんだ」

川内「ま、相手を見てからだね」
669 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/15(土) 19:21:39.03

「やった♪やった♪トレノが直った嬉しいな♪」ランランルー

「ブローした時は本当に悲しかったけど……少しずつ直していって良かったなぁ」

「86も素敵なクルマだけど、トレノは見た目も可愛いし」

「それにこの4A-Gのサウンド……ああ、堪らないっ」


江風「随分独り言が多い奴だな。大丈夫かアレ」

川内「何か聞き覚えのある声だなぁ……あ、そうだ」

江風「どしたの?」

川内「何かトラブルがあった時でも対処出来るように探照灯持ち歩いているんだ。これで照らしてみよう」テレレレッテレー


夕張特製LED小型探照灯!
赤く光らせることも出来るから夜戦は勿論、天体観測にも使えるぞ!
ライトセーバーごっこにもモッテコイ!
軽量アルマイト仕立て。単四電池を二本使用。


江風「って、ただの懐中電灯じゃん」

川内「こういうのは気分が大事なのよ。じゃ、行ってくる」ピカー

江風「顔を下から照らすな!怖いって!」

ガサッ

「あら?何だろう……?」

川内「ドーモ。ヤセン=ライダーです」ピカー

「~~っ!?血!?血塗れの顔がーーっ!!」

川内「あ、間違えてレッドライトにしちゃってた」

「はわわわわわ……艤装……艤装を……」ガタガタ

川内「落ち着いてって。私だよ私。市川の川内だって。榛名さん」

榛名「……え?」
670 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/15(土) 19:25:19.76

榛名「ううっ……怖かった……」

川内「アハハ、ゴメンゴメン」

榛名「本当に驚いたんですよ!お化けかと思って……ちょっと腰が抜けちゃいました……」

江風(お化けって聞くと白くて丸くて尻尾がニョロニョロしてて舌ベローンって出してるイメージだな……)ソウゾウチュウ

川内「で、随分嬉しそうだったけど何かあったの?」

榛名「ハイ。ブローしてしまったトレノに新しいエンジンが搭載されたので、つい嬉しくなっちゃって……」ハッ

川内「そういえば金剛さんに壊されたんだっけ」

江風「もしかしてウチの金剛さん?」

川内「そうそう。前は榛名さんと同じ所だったけど、ちょっと前に一人だけ異動して来たんだ」

江風「へー。その割にはメチャメチャ馴染んでるよな、あの人」

榛名「あ……あの……」

川内「ん?どしたの?」

榛名「もしかして……見てました……?」

川内「見てた?パンツなら見えたけど」

江風「あれじゃない?クルマ降りた直後から小躍り気味で跳ね回ってたこととかさ」

榛名「わああああああ!!!!」

川内「しょうがないじゃん。こんな時間に山の中で人に会うことなんかまず無いし、エンジン組み上がった直後じゃテンションも上がっちゃうよね」

江風「というか、パンツ見えたの?何色だった?」

川内「黒に白地のラインが入ってた。コ○プのと色が反転した感じ」

江風「ほうほう……黒とはまたエロエロっすなぁ」

榛名 orz

川内「でも私も今黒だよ。ホラ」ピラ

江風「あ、ホントだ。てか、少しは恥じらい持とうぜ」

榛名「色々見られていても……榛名は大丈夫です……」
671 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/15(土) 19:27:30.08

榛名「何だか色々失った気がします……」

川内「まあまあ。それにしても、そのハチロク随分良い音してるね」

榛名「分かります!?」パァ


榛名のAE86スプリンター・トレノ改二

後期型3ドアのホワイトツートン。
金剛にエンジンを壊されたトレノを修復した。
フォーミュラ・トヨタ用の5バルブをベースにしている。
金剛・比叡号がイロモノならば、こちらは正統派に仕上がっている。
パワーは推定200馬力。


榛名「この4A-Gは元々フォーミュラ・トヨタ用のエンジンなので本来はウェーバーのキャブ仕様なのですが、それを4連スロットルのインジェクションに変更、更にドライサンプ化してあります。当初はキャブも面白いかと思ったのですが、やはり信頼性の面ではインジェクションの方が扱いやすいですからね。それと一部分ではありますがグループA仕様のパーツも使っているので9千近くまで回せますよ。ブロー以前の仕様は所謂イナゴだったのですが、良質なレース用エンジンということもあり、排気量はあえてそのままにしています。それと4連スロットルなので吸入方式は当然Dジェトロになるのですが」ペラペラ

江風「あ艦これ」

川内「エンジン以外の所にも火が入っちゃったみたいだね」

榛名「……あっ、失礼しました。4A-Gのことになるとつい夢中になっちゃって」エヘヘ

江風「お、おう……」

川内「好きなんだねぇ」

江風「そういえばコレ何だっけ。マンガとかで有名なんでしょ?」

榛名「イニDですね。主人公も同じハチロクのトレノですが、あちらは前期型です」

江風「やっぱり速いの?」

川内「夕張は今となっては並以下って言ってた」

榛名「流石に30年以上前のクルマですから……」

川内「私達のバイクもそれ位前だけどね」

榛名「そもそもイニDの4A-GはグループA仕様のエンジンを搭載しているという設定ですが、実はよく見るとエキマニが変わっていたりと純粋なグループA仕様ではないんです。公式でフォーミュラトヨタのパーツが使われているとの発表があったので、私とは逆にインジェクションをキャブ化した格好ですね。また劇中では『1万1千までキッチリ回せ』という台詞で4A-Gは超高回転型のイメージが着きましたが、そもそもそこまで回してもパワーのピークは過ぎているしエンジンに負担を掛けるだけなのであまり意味は無いように思えます。事実途中からは9千回転でレブリミットが設定されました。それと、これはあくまで個人的な意見ですが、あのマンガによってハチロクの中古価格が不必要なまでに高騰したことが残念で」ペラペラ

川内「わー、また火が入った」

江風「トーキングマシンだな」

榛名「あくまで4A-G搭載車に乗りたい人は、ハチロクではなくトイチ以降のカローラ系がおススメです!最終のカリーナも穴場ですよ!」

江風「この人トヨタの回し者か?あと誰に言ってるんだ」

川内「戦艦・榛名って川崎造船所出身なのにね」
672 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/15(土) 19:31:27.05

榛名「そういえば川内さんはNSRでしたね。江風さんは……」

川内「何て言ったっけ、コレ」

江風「スズキのガンマでしょ」

川内「そう、それそれ」

榛名「ガンマ……確かNSRと並ぶ、レーサーレプリカを代表する一台でしたね」


江風のRGV250Γ

川内同様の手口で乗せられた夜戦用決戦兵器。
青白ワークスカラーの90年式VJ22型。
夕張の手によりオーバーホールはされているが、ほぼノーマル。
今後、江風の成長次第でステップアップしていく予定。


江風「気に入ってるのはこのヘルメットだっ」

榛名「あら可愛い。ドラえ○ん風ですね」

川内「私何故かポ○モン風にされた。コイツなんだっけ」

江風「多分ゲッコウ○じゃね?」

榛名「ピ○チュウなら偶に見ますけど……」

川内「ルビサファまでしか知らないから分かんない」

江風「それよりさ!榛名さんと夜戦したい!」

榛名「夜戦というのは……砲撃戦ですか?それとも……」

江風「もっちろん!あたしのガンマと!」

榛名「ええっと……バイクとの勝負はあまりしたことはないのですが……」

川内「待って。それなら私がやりたい。だってさ……」

川内「速そうな雰囲気がプンプンするんだ。金剛さんと同等か、それ以上にね」

江風「ええー!?川内さんズルいー!」

川内「多分江風じゃ勝てないよ。マトモにやったら夕張より上じゃないかな?」

榛名「……そんな。金剛姉様の方が速いと思いますけど……」


榛名「ど う し て も と 云 う な ら 、榛 名 は 大 丈 夫 で す 」ニコッ


江風「………!?」ゾクッ

川内「ねっ?言ったとおりでしょ?」

江風「さ、さっきまでと全然違うじゃん……ホントに同じ人!?」

川内「痺れちゃうよねぇ。最高だよ」

681 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/18(火) 00:37:28.36

小ネタ 水雷魂 ←90年代の走り屋チームに実在しそう

江風「SRTいちかわ水雷魂withSP夕張の江風っていうんだ。よろしく」

江風「最速の走り屋になるため、全国の走り屋スポットに遠征し峠を攻めている」

江風「応援してくれ」

江風「……って、これ何なのさ?」

川内「うんうん。上出来上出来」

※SFCソフト「峠・伝説 最速バトル」より引用

江風「しっかし、チームとは云ってもあたしと川内さんしか居ないってのもなぁ」

川内「もう一人位誰か入らないかなー」


瑞鳳「うわ、何でこんな所にオイルが溜まってんのー……」

夕張「何そのボロいバイク。どうしたのソレ」

瑞鳳「ネトオクで見つけたんだ。暇な時にレストアして遊ぼうかなって」カチャカチャ

夕張「それ50Fでしょ?今ホンダの2スト選ぶなんて、苦行もいいところね」

瑞鳳「……そんなにヤバい?」

夕張「NSRの時……純正部品無さ過ぎて禿げかけた」ハイライトオフ

瑞鳳「えー……折角良いオモチャが見つかったと思ったのにぃ」

夕張「ヤマハだったら希望があったのに……」

<どーもー。AKSツール出張サービスでーす

夕張「ハーイ。今行きまーすっ」

瑞鳳「あ、私も欲しい工具があったんだ」パタパタ


速水「ここ、鎮守府ですよね……?」

叢雲「頭痛い……」

若葉「暴かれた世界」トコトコ

速水「何ですか今の」


瑞鳳はクルマより原チャリ弄って遊んでいる方が似合うと思い始めた。
682 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/18(火) 00:39:18.99

スタート地点

榛名「スタートのタイミングはそちらに任せます」

川内「随分余裕そうだねぇ」

榛名「まさか。川内さんの噂は存じていますので」

川内「へえー……ま、いいけどさ」

江風(スッゲェ緊張感……これが峠の夜戦かっ)

川内「夜戦を楽しめれば満足だしね。じゃ、行くよ!」


絶妙なクラッチミートで、ロケットスタートを決める川内。

僅かにフロントタイヤを浮き上がらせ、矢の様に飛んでいく。

しかし榛名のトレノはすぐ後方。

遅れて江風のガンマだ。


川内「やっぱりタイミング合わせて来たかぁ。大人しそうなクセに走りはマジだね」

川内「江風は……ああ、だいぶ離されちゃってる」

川内「あんまり気にしてられないなぁ……あの子、無理しなきゃいいけど」


最初のコーナーまでの直線。

2サイクルエンジンの鼓動と4A-Gの甲高い音が合わさり、さながら管楽器のオーケストラのよう。

ふと後方の江風は、ある違和感に気付く――


江風「ええええ!?川内さん、何でアクセル全開のままシフトアップ出来るんだよ!?」

江風「NSRに出来るなら、ガンマにも……って無理無理無理!」

江風「たまに火吹いてるし……一体どうなってんだ?」
683 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/18(火) 00:40:39.84

まるでレール上を走るように、一切のブレも無い滑らかなコーナリング。

タイヤの性能をフルに使い、僅かに後輪をスライドさせて駆け抜ける様は、時代を築き上げた往年のGPレーサー達を彷彿とさせる。

NSRを手に入れてからの短い期間。

徹底的に研ぎ澄まされたその走りは、日本刀の如く。

闇夜の中でも鋭く、鮮やかに光る。


榛名(速いっ……ライダーとは何回か交えたことはあったけれど、これは間違いなくトップクラス)

榛名(安心感さえ覚えるライディング。特に切り返しが異様に早い)

榛名(それにこの立ち上がり……四駆を相手にしているようだわ)

榛名(テクニックだけじゃない。私のトレノと同様、マシンも細部まで作りこまれている)

榛名(見た目こそアンダーカウルが無い普通のNSRのようだけど、中身は峠に絞ったセッティングのようね)

榛名(シフトアップの度にアフターファイヤーが出ているのは、恐らく点火カットを利用したセミオートシフト……)

榛名(そうすればアクセルを戻すことなく、途切れずに加速することが出来る)

榛名(本当に走り慣れている……走りのリズムが違う分、抜くことは難しそうね)

榛名(しかし、勝てない相手ではない!)
684 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/18(火) 00:42:17.73

川内「よっ、ほっ……と。やっぱ簡単には引き離せないかぁ」

川内「まあ、このコースは短いし、スピードも結構ノるから、このまま逃げ切れれば……いや、そういう考えが通用する相手じゃないな」

川内「見えなくする位に考えないとね。集中集中っと」


レーサーレプリカのヘッドライトは、あまりに頼りない。

照らす為の装置は意味を為さずに、鈍色の道路をほんの少し白濁色に切り取るだけ。

頭上に瞬く星空の方が、遥かに明るく思える。

先の様子さえも掴めない。

それでも右へ左へ……躊躇いもなく突っ切る。

艦娘としての能力か、天賦の才か。

躍るテールランプは、さながら優雅に宙を舞う赤い蝶……


江風「……って言うのは中二臭いか」

江風「しっかし、何であんなスピードで突っ込めるかねぇ」

江風「榛名さんもキレッキレだな。どうなってんだよ、あの二人」

江風「コーナー一つで差が開く。これは流石にあたしの練度不足ってことか」

江風「……つうかこのまま差が開いて、こんな辺鄙な所に一人置いて行かれたら……」

江風「………」

江風「……お、お化けなんてないさ♪お化けなんて嘘さぁ♪」←既に涙目
685 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/18(火) 00:43:43.76

川内「お、江風着いて来てる。やるじゃん」チラ

川内「しかし参ったな。もうすぐゴールだってのに離れないし」

川内「立ち上がりはコッチが上。でもコーナーのスピードは向こうの方がちょっと速い……かな」

川内「クルマの安定感は羨ましいなぁ。タイヤが多いんだから当たり前か」

川内「さて……仕掛けて来るなら、そろそろかな」


ギャラリーコーナー手前。

長く続いたランデブー走行も、いよいよ終盤。

ここに来てついに照準を合わせたのか、榛名トレノが牙をむく。

コーナー入口。榛名トレノは、あろうことかほぼノンブレーキで進入!

慣性によって外へ逃げようとするトレノ

しかしそれを見越していたのか、川内は早めに車体の向きを変えてクリッピングポイントを手前に取る。

自身が有利な脱出からの加速で、詰められた差を帳消しにしようと試みる。

コーナーで繰り広げられるドッグファイト。

タイヤ・トゥ・バンパーとでも呼ぶべき超接近戦。

これで決着か――








ズルッ




川内「あっ……マズい……」

686 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/18(火) 00:45:20.00

ギャラリーコーナー出口

川内「ゴメンッ。大丈夫だった?」

榛名「榛名もトレノも大丈夫です。川内さんの方は?」

川内「コッチも平気。いやぁ冷や汗出たわ」

江風「ええっと……何が起きたんだ?あたしには榛名さんがスピンしてる所しか見えなかったんだけど……」

川内「コーナーの出口でリアが滑っちゃってさ。危うくコケそうになって、それを避けようとした榛名さんがスピン。危なかったぁ……」

榛名「でもお互い怪我が無くて良かったです」

江風 アングリ

川内「それにしてもよく止められたね。あんなの普通突っ込んじゃうよ?」

榛名「いえ、川内さんにも驚きました。まさかあの状態から立て直すなんて」

江風(あたしにゃ、どっちも化けモンに見えるわ……)

川内「ま、今回は私の負けかな。センター割ってたら、とっくに抜かされていただろうからね」

榛名「そんなことありません。こちらも目一杯でしたし、ましてや抜くなんて……」

川内「謙遜しないでって。最後は詰められてたし、ミスったのは私なんだから」

榛名「でしたら、また次の機会に決着をつけましょう」

川内「うーん……そうね。今夜は楽しかったし、また走ろうっ♪」

榛名「はい!勿論です!」



川内NSR・江風Γ vs 榛名トレノ

対戦結果……C 戦術的敗北
687 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/18(火) 00:46:43.55

翌日・談話室

川内「……ってなことがあってさぁ」

夕張「アンタも染まったわね」

川内「まあねぇ。実際楽しいし」

夕張「そういえば、クルマ買うとか言ってたけど結局どうしたの?」

川内「ん?ちょっと良いモノ見つけたから、今度見に行く」

夕張「ふーん。やっぱりシルビア?」

川内「まあね。そうだ、夕張も着いて来てよ。私一人だと、ちょっと不安だからさ」

夕張「うん。いいわよ」

川内「それより提督も大変だねぇ。さっき執務室行ったら叢雲にシバかれてた」

夕張「あー……でしょうね」

川内「結局あの黒いクルマも扶桑さんだったんでしょ?それにあの青いR……存在感が半端じゃなかった」

夕張「今思うと、よくあんなの追いかけようって気になったなぁ……」

川内「私なら道譲るね。怖いもん」

夕張「真っ先に飛び掛かりそうなヤツが何言ってんの」

川内「……これからどうなるんだろうねぇ」

夕張「分からないわよ、そんなこと……」

川内「あ、今までのクルマはどうするんだろ?」

夕張「ワンエイティ?今はZもあるし、廃車かもね……勿体無い気もするけど」

川内「パーツ貰っちゃえば?使える所もあるでしょ」

夕張「ミッションは確かに欲しいわね……R33用とはいえ、容量的に強化されるし……」ムムム

川内「それで、夕張が二代目インターセプター名乗るとかどう?」

夕張「無茶言わないでよ……」
688 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/18(火) 00:51:58.10

執務室

提督「……ホントにスミマセンでした」ボロッ

叢雲「全くよ!このクソ忙しい時期に職務放棄なんて……どういう神経してるのよっ!?」

提督「おっしゃる通りです、ハイ……」

叢雲「それで?扶桑さんについてはどうする気?」

提督「……直に止めてみせるさ。その為にRを引っ張り出して来たんだ」

叢雲「前に言っていたヤツね……」

提督「……あれ?お前に話してたっけ?」

叢雲「あのクルマは当時の彼女のモノ。そして事故を起こして亡くなったこと。クルマは手放さずに今も持っている……要約すると、こんな具合でしょ?」

提督「ああ……うん。そうだな」

叢雲「昔アンタが珍しく泥酔していた時に聞いたわ」

提督「うわ……全然覚えてねぇ」

叢雲「普段お酒を呑むことなんてないから印象に残ってたのよ」

提督「酒呑んだら運転出来ないだろ?」

叢雲「危険運転もアウトよ馬鹿」

提督「……本当にすまなかった。無理矢理お前を連れ出したっていうのに、ケリ着けられなかった」

叢雲「別にいいわよ、そんなこと。二度と乗らないけど」

提督「ハハッ。大丈夫だ……次はもう無いよ」

叢雲「……ようやく?」

提督「ああ」

叢雲「そう。私は役に立った?」

提督「おかげさまでな。ホント、お前にはいつも迷惑掛けっぱなしだ」

叢雲「もう慣れたわ……とっくにね」


金剛「………」ドア越し

金剛(降りる……かあ。その前に、私と勝負してくれないかしら?)

青葉「おや金剛さん。そんな所でどうしたんですか?」

金剛「Oh!何でもないデースHAHAHA!」

青葉「??」
689 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/18(火) 00:53:33.51

休日・国道沿い

川内「着いた着いたっ。ココだよ」

夕張「何でこの道って中古車販売店が多いのかしらね?」

由良「途中に金色のクルマが並んでいる所があったけど、あれもクルマ屋さん?」

夕張「あー、確かにクルマ屋ね。全国的にも有名なショップなの」

川内「えーっと、何処にあるのかなー。スミマセーン」

「ハイ。いらっしゃいませ」

川内「あ、先日電話した“カワウチアヤネ”なんですが」

「カワウチ様ですね。ご来店有難うございます。どうぞこちらへ」

由良「今の本名なのかしら……」

夕張「私も外じゃ“綾瀬”って名乗ってるよ。お……このS15、オーテックバージョンね」

由良「それ夕張の没ネームじゃない」

川内「何の話してるの?さ、行こ行こ」

「お問合せ頂いたのはコチラになりますね。どうぞご覧ください」

川内「ありがとう」

夕張「S15ね。見た目は綺麗だけど……」

川内「そ。どうかなぁ?」

夕張「ふーむ……」ギシギシ

夕張うーん……」ノゾキコミ

由良「どうなの?」

夕張「悪くはないけど、結構使い込まれているみたいね。ホラ、ココなんか溶接が剥離しちゃってる」

由良「ホントだ。ちょっと浮いているね」

夕張「ゴム類の劣化は仕方ないとして、この値段を考えるとちょっと割高かな。最も、シルビアを買おうと思ったらこういう点はある程度覚悟しないといけない部分ではあるけどね」

夕張「同じS15なら、そこにあるオーテックバージョンの方がまだ良さそうかな。真っ先に目に入ったのはそっちだったから」

川内「出来ればターボの方が良いんだけどなぁ……やっぱすぐには見つからないかぁ」

夕張「S15も十年以上前のクルマだし、気長に見ていかないと」

川内「ちぇっ。まあ仕方ないか……ん?」
690 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/18(火) 00:55:07.26

由良「川内?ボーっとしちゃって、どうしたの?」

夕張「あんまり遅いと置いて行くわよー(たまには言ってみたかったのよね、この台詞)」

川内「……ねえ。コレはどうかな?」

夕張「どれどれ?」


SW20・MR2

国産量産車では初となるミッドシップ・レイアウトを採用したMR2の二代目モデル。
初代のAW11から車格を上げ、2Lの3Sエンジンを搭載。
90年代のトヨタを代表する一台である。


夕張「MR2じゃない。奥にあるから気付かなかった」

由良「長良姉さんが乗ってるよね」

夕張「あっちは初代のAWで、これは二代目のSW20……Ⅰ型かな?」

由良「Ⅰ型?何か違うの?」

夕張「SWは大きく分けるとⅡ型までの前期型、Ⅲ型以降の後期型になるんだけど、後期型との見た目の違いはサイドモールの有無とリアガーニッシュかな」

夕張「それでこのⅠ型は最も危険なクルマと云われていたの。一瞬でスピンモードに入って、プロでも手を焼いていたそうよ。プレスを招いたテスト走行時には、半分以上がクラッシュしたなんて話も……」

由良「たんに欠陥なんじゃないの?」

夕張「実際にそう言われていたわ。それ以降は徐々に改善されて、Ⅲ型のターボモデルでは20馬力アップ。車体そのものも熟成が進んでいる分、Ⅰ型はちょっと見劣りしちゃうかもだけど。未だにⅤ型のNAが完成形という意見も強いしね」

夕張「でも、世界でも貴重な2Lのミッドシップマシンだからね。3Sは結構丈夫、ピーキーな特性はタイヤのサイズを変えるだけである程度は軽減出来るみたいだし、チューニングベースにはうってつけじゃないかしら」

由良「ふーん……で、川内が全く動かないのですが」

夕張「年式の割に程度は良さそうね。大きな修理跡も無いし、結構良いかも」
691 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/18(火) 00:56:11.56

川内「……にする」

夕張「え?」

川内「コレ買います!コレにする!」

由良「清々しいまでの即決」

夕張「川内の思い切りの良さ、結構尊敬してるわ」

川内「ね!?ね!?良いでしょ!?」

夕張「低年式な分各部のヤレはあるだろうけど、これなら問題無いと思うわ。キッチリ整備してあげるから任せなさいっ」

川内「やったぁ!待ちに待ったクルマだぁ!」

由良「でも本当にいいの?当初の目当てはシルビアだったじゃない」

川内「直感」キリッ

由良「ホントにもう……流石ね」

夕張「でも、直感っていうのもアリだと思うな。自分が乗りたいと思えるモノが一番でしょ」

川内「スミマセーン!これ買うんでキー下さいっ!」

夕張「いきなり納車出来るワケないでしょ!」
692 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/18(火) 01:05:56.28

バトルシーン、特にラストはもっと書き込める余地があったと投下してから気付く。
全体的にアッサリし過ぎてしまった……。

川内のクルマですが、ニーハンのレプリカみたいなクルマって何だろうと考えた結果、こんな車種になりました。
最初は本当にS15の予定でしたが……

・これ以上SR搭載車増やしても変わり映えしない(比叡までSRだし)
・SW20は色々書けることが多い

以上の点から、直前で変更しました。尚、次点はFCだったり。

一応このスレの着地点も見えて来ましたが、ちゃんと終われるのかコレ……。
693 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/18(火) 01:41:19.33
乙!まさかの殺人マシーンSW20初期型だと!?
やりたいようにやるのが一番捗るから良いと思う。
S15のオーテックは今でも本気で欲しい一台、今となっては唯一といっていい日産のハイパワー?NA5ナンバーFRだしな。
694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/18(火) 10:19:09.46
扶桑編で完結するもよしだし、地方遠征して新キャラ出すもよしよ
オチさえしっかりつけば自由にやっていいと思うよ

個人的には日向さん欲しいです
697 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/19(水) 03:18:02.02
レースとかサーキットとか続く状態のネタの回収も忘れないで
699 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/20(木) 14:29:31.30

数週間後・工廠

川内「ふっふふーん♪」

夕張「納車された途端、ココに入り浸りね……」

川内「だーってカッコいいんだもーん。ねぇー?ミーちゃん」

夕張「ミーちゃん?」

川内「名前っ!NSRはヌー子だし、MR2はミーちゃん!」

夕張「相変わらずよく分からないセンスだこと」


川内のSW20・MR2 改

ブラックメタリックのⅠ型。
パワーはそこそこに、足回りを中心に手を加えた。
前後異形タイヤ、一部Ⅱ型のメンバーに変更等、定番のモディファイ。
パワー系統は吸排気系の交換、タービンをOHついでにハイフロー化。
外装は大型Fリップ、エアロミラー、Ⅴ型純正Rスポイラーを装備。
パワーは推定280馬力。


夕張「で、乗ってみてどう?」

川内「やっぱ難しいね。気を抜くと簡単にスピンするし。それが面白いんだけどさ」

夕張「ミッドシップは私も初めてだから、どうしても手探りなのよねぇ……今度、長良に色々聞いてみようかしら」

川内「そうだねー。乗り方のコツもあるだろうし」

春雨「あ、由良さーん!川内さん居ましたよーっ!」

夕張「あれ?春雨ちゃん?」

川内「ヤベッ。見つかった」

由良「やっぱりココに居た!今日は偵察任務だって言われてたでしょ!早く準備しなさい!」

川内「ヤーダー。ミーちゃんと一緒に居るーっ」

由良「子供かっ!クルマなら帰って来てから眺めなさいっ!春雨ちゃん、そっち掴んで!」

春雨「は、はいっ!」

川内「アイエエエエー……」ズルズル

パタン

夕張「あんなのでも、ウチでは練度トップを誇るエースなのよねぇ……」
700 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/20(木) 14:30:38.93

提督「おーっす。夕張居るかー?」

夕張「あ、提督。お疲れ様です」

提督「おう。とりあえずコレ。本部に整備記録上げなきゃならんから、明後日までに纏めておいてくれ」

夕張「いつものですね。分かりました」

提督「頼むわ。で、これが川内のSWか」

夕張「ええ。各部をリフレッシュして、ようやく形になってきました」

提督「これⅠ型だろ?ここまで綺麗なの、よく見つけられたもんだ」

夕張「でも、私もミッドシップの整備は初めてだから、どうも勝手が分からなくて……」

提督「ワンエイティに比べるとエンジンルームは狭いし、整備性悪いだろう?」

夕張「想像以上でしたね。話には聞いていましたが……」

提督「FFベースの宿命だな。いずれ慣れるさ」

夕張「……ところで提督。扶桑さんの件は……?」

提督「オイオイ、今はSN作戦の真っただ中だぞ。扶桑も制圧部隊に駆り出されているし、当分は何も進展しないよ」

夕張「そうですか……」

提督「とりあえず、燃料の在庫が心もとないから、近々遠征班に回すかもしれんからそのつもりで」

夕張「了解です」

提督「あ、それと。俺のワンエイティ、潰すことにしたわ。何かパーツ欲しかったら持って行け」

夕張「えっ、本気ですか?」

提督「今はZもあるしな。じゃあ、書類よろしくー」

パタン

夕張「………」

夕張 チラ

夕張「エンジンとボディ以外、殆ど残らないと思いますよーっと……」
701 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/20(木) 14:31:31.65

夜・夕張の自室

夕張「あー……今日も疲れた。ようやく明日はオフかぁ」

夕張「とりあえず今日は寝ておこう。また遠征だの残党狩りだのありそうだし……」

コンコン

夕張「………」

夕張「嫌な予感しかしない……」

<ユウバリーヤセンシヨー

夕張「………」ウナダレ

夕張「ああーっ、もう。たまには寝かせてよ……」

<ユウバリガデテコナーイ

<テコノゲンリヲツカエッテキイタゼ

夕張「……不穏な会話が聞こえてくる」

夕張「舎弟(江風)が来てから、やたら活発になったわね……不用意にガンマを渡すんじゃなかった」

<アケロアケロー

<ヤセンヤセンー!

夕張「………」

<ワーッショイ!ワーッショイ!

夕張 ワナワナ

ガチャッ

<ヤカマシイッ!

<ワーニゲロー

夕張「由良に怒られてる……」

夕張「何はともあれ、これでゆっくり眠れるわ……」

夕張「………」

コンコン

夕張 プチッ

夕張「……いい加減にっ!」

夕張「しなさいよっ!」バアーン

「きゃっ!?」

夕張「……あれ?」

扶桑「……御免なさい。やっぱり日を改めた方がいいかしら」

夕張「ふ、扶桑さん……」
702 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/20(木) 14:33:48.39

鎮守府外・海辺

夕張「戻っていたんですね」

扶桑「ええ。制圧も一段落着いたものだから」

夕張「今回はかなり苦戦するだろうと聞いていたので……最初はどうなるかと思いましたよ」

扶桑「そうね。今までに例を見ないタイプも居るし、完全制圧にはまだ時間が掛かりそうだけど……」

夕張「私は精々露払い位しか出来ないので、少し歯痒いです」

扶桑「そんなことないわ。夕張さん達が支えてくれているからこそ、ここまで進めることが出来たのよ。お礼を言いたいのはこちらの方よ」

夕張「いえっ、そんな……」

扶桑「でもね。今日はそんなことを話に来たわけじゃないの」

夕張「……何となく、分かります」

扶桑「そう。それに夕張さんも、何か私に聞きたいことがあるんじゃない?」

夕張「……あり過ぎて、何から質問したらいいか……」

扶桑「そうよね。自分でもビックリしている位だから。私はこんなに積極的になれるのかって……」

夕張「……どうして、扶桑さんが都高を走っているんですか?」

扶桑「あら。じゃあどうして、夕張さんも走っているの?」

夕張「そ、それは……」

扶桑「うふふ。ちょっと意地悪な質問だったわ」
703 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/20(木) 14:36:10.56

扶桑「ここも、だいぶ賑やかになったわね」

夕張「え、ええ……私の後にも、着任した子も居ますしね」

扶桑「最初は提督の指揮の下、私や山城、古鷹さんに龍驤ちゃんが戦力の中心で……叢雲ちゃんが全体を纏めていて」

扶桑「ココに移ってからは、水雷戦隊がだいぶ充実して。最も、ウチは遠征中心の分署だから、規模は大きくないけれど」

扶桑「あの頃は毎日大変だったけど、楽しかったわ……」

夕張「………」

扶桑「でもね、提督は……山城と口喧嘩したり、叢雲ちゃんには甘えたりしているけど……私の所にはあまり来なかった……」

扶桑「あの人、私とは何処か一線を引いていた。最初は気のせいかと思っていたけれど、何処か引っかかっていたの」

扶桑「でもある時……偶然執務室であるモノを見てしまったのよ。まだ若い提督と……私ソックリの女性が並んだ写真……」

夕張(亡くなった……彼女さんだ……)

扶桑「それを見て、確信したわ……ああ、私はこの人に似ているから距離を置かれているんだ、と」

扶桑「それと同時に、気付いてしまったの。この胸の引っかかりは、私が提督を慕っている……好きだからだって」

扶桑「でも近付けば近付くほど、提督は離れていった……」

夕張「………」

扶桑「実はね、一度夜這いを仕掛けたことがあるの」

夕張「ブッ!!?」

扶桑「それでも、あの人は拒んだ……私にはそういう事は出来ないって、そう言われたの」

扶桑「女として否定されたようで悲しくなったわ……」

扶桑「……私ね、一人の女として見てもらいたかった。例え昔の人に似ていたとしても、その人とは別人なんだって……分かってもらいたかった」

夕張「でも、それが都高とどんな関係が……」

扶桑「だって、あの人の前を走ればずっと見てもらえるでしょ?」クスッ

夕張「……!?」

扶桑「私が前を行く限り……あの人は私のことを見てくれる。私のことを考えてくれる」

扶桑「それが独りよがりであっても、私はそれで満足なの」

扶桑「だから……どんな結果になっても、止めないでね。私と、提督を」

夕張「扶桑さん……」

扶桑「長話に付き合わせて御免なさい。そろそろ戻りましょうか」

扶桑「夜風は……やっぱり冷たいものね」
704 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/20(木) 14:36:57.68

夕張「何か私、板挟みになってる気がする……」ハァ

夕張「それにしても扶桑さんの考え方、メン○ラじゃないんだから……」

夕張「もうマヂ無理……ワンエイティいじろ」

江風「テールカチ上げ!峠スタイルはやっぱコレだぜっ」

川内「外見よりまず中身っしょ。ホラ、そこのボックスとラチェット取って」

江風「ほいほーい」

夕張「……無邪気なアンタ達見てると、色々どーでもよくなるわー」

江風「あ、夕張さんチーッス」

川内「うーっす」

夕張「田舎のヤンキーみたいな挨拶ね」

川内「ん?何かあった?」

夕張「何で?」

川内「いや、空気が澱んでるからさー」カチャカチャ

夕張「空気て」

川内「何があったか知らないけど、あんまり溜め込むのも良くないよー」

夕張「……そうね。気を付けるわ」

川内「人間好きな事して生きるのが一番だしね。うわ、プラグ真っ黒」

江風「あーあ……道理で吹けないワケだ」

夕張「で?アンタ達は何してたのよ」

川内「江風のガンマ見てあげてた。やっぱヌー子と作り違うんだね」

夕張「そりゃあメーカーが違うもの。でも基本さえ分かっていれば後はどうにでもなるものよ」

夕張「まあねー。あ、それとミーちゃんなんだけど、頭が逃げるの何とかならない?」

夕張「アンダーってこと?どれ、ちょっと見てみますかっ」ウデマクリ


鎮守府の夜は更ける――。
705 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/20(木) 14:37:47.10

小ネタ 若葉がロボットダンスしている姿を想像してください

若葉「残念ながらロボットさ」

若葉「それの心ここには無い」

若葉「軌道を逸れたロケットさ」

若葉「それの心ここには無い」

若葉「宣伝ばかりで文句ばっか」

若葉「今、ここに心は無い」

若葉「非常によく出来た嘘さ」

若葉「それの心ここには無い」

若葉「ドゥードゥードゥー」

若葉「踊りだす心ここには無い」

若葉「ドゥードゥードゥー」

若葉「今感じる」

若葉「どこで!」クワッ

若葉「誰が!」バッ

若葉「何を!」ズギャァァン


浜風「……何してるんですか、あれ」

浦風「打ち上げの時に披露する出し物じゃて」

浜風「はぁ……」
706 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/20(木) 14:39:49.04

小ネタ 若葉がry

若葉「僕は何処かの提督」

若葉「君の背後にそっと近づいて、ポツリ」

若葉「LOVE」ビシッ

若葉「君は逃げたね」

若葉「君は敏感な駆逐艦だな」

若葉「だけど」

若葉「僕は君に恋してる」

若葉「暇じゃないのにわざと近付いて、ポツリ」

若葉「LOVE」ビシッ

若葉「君に恋してる」

若葉「とても濃厚な僕の墨で」

若葉「君の身体を白く染めたい」

若葉「嘘」

若葉「ホントは食べてみたい」

若葉 ピタッ

若葉「生き物さ……生き物さ……生き物さ……」


浜風「………」

浦風「内容が意味深じゃね」

浜風「そろそろ誰か止めた方がいいんじゃないの……?」


川内「私もヒョットコのお面着けて阿波踊りした方がいいっ?」キラキラ

夕張「うるさい」
708 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/20(木) 14:58:43.72
おつー
インターセプター潰しちゃうか……あれ?提督まさか魔王Rに……?
717 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/21(金) 23:22:47.74

工廠

夕張「……むぅ」

由良「あら。提督さんのクルマ、バラしてるの?」

夕張「うん。予想はしてたけど……やっぱり廃車にするって」

由良「そうなんだ。少し寂しいね」

夕張「まあ……でもクルマ増え過ぎだから、ちょうどいいのかも」

由良「ああ……確かに。トラックとか含めると結構な数よね」

夕張「この前比叡さんが来た時にハチロク引き取って行ったけど、それでも多過ぎだわ」

由良「で、何か移植するの?」

夕張「最初はゴッソリ持っていこうと思ったけど、案外使えそうな所が無いのよ」

由良「そうなの?」

夕張「ホラ、リヤゲートの所見て。クラック入っちゃってる」

由良「うわっ、酷い……」

夕張「見れば見るほど、この子が限界に近かったっていうのが分かるわ。ここまで走れていたのが奇跡のよう」

由良「オーバーホールすれば、使えるところもあるんじゃない?」

夕張「それはそうなんだけど、無意識の内に提督の仕様に近付けてたみたいでね。わざわざ変えなくてもいいかなって」

由良「ふーん?」

夕張「とりあえずミッションとブレーキ一式かな。純正流用とは云え私のより良いの入ってるし……足回りはパーツの違い位で、殆ど変わらないから」

由良「あら、そういう微々たる違いが積み重なっていくものなんじゃない?」

夕張「………」

由良「あら、どうしたの?」

夕張「……もう一回見直すから、ちょっと手伝って」

由良「ハイハイ」
718 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/21(金) 23:23:53.28

執務室

提督「なあ、金剛」カキカキ

金剛「何デスか?」カキカキ

提督「お前、走りから降りるって考えたことあるか?」

金剛「……やっぱり、止める気デスね」

提督「なんだ、知ってたのか?」

金剛「叢雲とトークしてるの聞いたネ」

提督「そっか。で、そこんとこどうよ」

金剛「その前に、提督は何年走ったのヨ」

提督「15の頃から単車転がして山で遊んでたから……もう20年近いかな」

金剛「……無免?」

提督「私有地だから問題ないっ」

金剛「ソレ、ホントに私有地ネ?」

提督「そこは気にするな。所詮田舎のガキだったからよ」

金剛「まあ、いいネ。クエスチョンのアンサーはノー、デスよ」

提督「全くか?」

金剛「全くではないヨ。アウトローなことしてるし」

提督「アウトローねぇ。Hakoneの女王はゴッド・セイブ・ザ・クイーンでも聞いてるのか?(笑)」

金剛「ワタシ、ピストルズよりクラッシュの方が好きデス」

提督「あっそ……」
719 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/21(金) 23:25:02.09

金剛「そもそもワタシ、Hakone行くようになってから一年位だから分からないヨ」

提督「おいおい、それであの実力と人気か。スゲェな」

金剛「フフン、まあネ」

提督「でもさ、相手が居なくてつまらないんじゃないか?」

金剛「そんなことないヨ。いつの間にかクイーンなんて呼ばれていたケド、他にも速い人なんて沢山居るデスよ」

提督「へぇ。ま、Hakoneも都高と同じ位の魔境だし、知らないだけでトンでもないのも居るだろうな」

金剛「ターンパイク辺りなら提督より上のジェントルメンが、ハイスピードで走ってるヨ」

提督「で、皆やっつけたのか」

金剛「フルチューンのR35やラディカルにハチロクで着いて行けと?」

提督「無理ゲー(笑)」

金剛「それで、提督はどうしたいネ?」

提督「それな。人生の半分近くを費やしちまったから、今になって降りようって思っても、どうすればいいのか分からん」

金剛「アプローチが変わるだけじゃナイの?」

提督「アプローチねぇ……」

金剛「別にクルマを遠ざける必要はないヨ。さっきも言ったけど、ターンパイクなら提督よりオールドな人なんてゴロゴロ具沢山ネ」

提督「なんだよ、具沢山て」

金剛「そこはどうでもいいヨ。別にクルマそのものを降りる必要は無いってことネ」

金剛「提督にとって、それはもうライフワーク。ドライビングしない提督をイメージ出来ますカ?」

提督「うん、それ無理」

金剛「じゃあそれでいいじゃないデスか。意識が変われば、アプローチも変わるハズよ」

提督「ふむ……」

金剛「むしろ、提督が何に悩んでいるのかアイドントノウよ」

提督「俺も分からんっ」

金剛「じゃあワタシに聞くなデス」
720 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/21(金) 23:25:52.02

金剛「ヘイ。提督」カキカキ

提督「なんだー?」カキカキ

金剛「もし今みたいならなかったら、何になってたネ?」

提督「お前はどうだ?艦娘じゃなかったら」

金剛「お嫁さん」

提督「うわぁ」

金剛「どういう意味デスか?」

提督「俺は……ふむ、ガキの頃からクルマ好きだったからなぁ」

金剛「クルマ以外に趣味はないノ?」

提督「あー……でもあったわ。音楽で飯食いたかったな」

金剛「そういえば、やたらマイノリティなミュージックばっかり聞いてるネ」

提督「マイノリティ言うな。これでも割と本気だったんだぞ?」

金剛「ヘー。パートは何デース?」

提督「ベース。SGベース振り回してさ。今でもたまに弾くぞ」

金剛「ああ。そういえばそこに飾ってあったネ」

提督「ガリガリに歪んでないと物足りなくてさー。ギターと音域被っちゃって棲み分け大変だったわ」

金剛「それ、ホントにベースの役割果たしてたんデスか?」

提督「挙句オクターバー(一音階上か下の音が出る機材)繋いで弾いたら、ギタリストと殴り合いよ」ワハハ

金剛「やっぱりマイノリティじゃないデスか」

提督「俺より上手いヤツはゴマンと居るが、俺よりカッコいいベーシストは居ないと冗談抜きで思ってたぜ」

金剛「ナルシスト?」

提督「自信家じゃなきゃバンドなんぞやっとれんわ。ぶっちゃけ今でも『コイツらが売れるなら俺ならもっと売れる』って思うし」

金剛「うわぁ」

提督「何だその反応は」
721 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/21(金) 23:26:41.23

夜・芝ふ浦PA

由良「うん。こうして見ると結構絵になるよね」

夕張「そう?」

由良「なんだか二台とも速そうに見える」

川内「ミーちゃんの方がカッコいいっ!」

夕張「ホントそのMR2気に入ってるのね……」

川内「うんっ」

由良「川内自身がMR2に慣れてなさそうだけど」クスッ

川内「うっ……頑張りまーす」

夕張「それにしても、由良も最近よく来るようになったよねぇ」

由良「アンタ達だけじゃ、何しでかすか分からないもの。監視よ、監視」

川内「おっ、ツンデレですか?」ムフフ

由良「そういうオメデタイ頭してるから言ってるんだけど」

夕張「どうせだったら自分のクルマ買っちゃえば?」

由良「うーん……それはちょっと考えたけど、やっぱり二人のを見ているだけで充分かな」

夕張「さいですか」

川内「えー何でー?一緒に夜戦しようよー」

由良「違法行為をしていることを自覚しましょう」

川内「お堅いなぁ……」

夕張「でもさ、由良だったら何乗るんだろう?」

川内「あー、確かに」

由良「シュパン962CR」

夕張「真っ先に出てきたのがソレってどういうことよ……」

由良「じゃあロードスター。NBで」

夕張「急に普通になったわね……良いと思うけど」
722 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/21(金) 23:27:32.85

夕張「そういえば川内。フロントちょっと変えたけど、どう?」

川内「うんっ。前よりいいかも。何したの?」

夕張「前より少しトーをインに振って、キャンバーもほんの少し寝かせたの。本当に調整って感じね」

川内「???」

夕張「……タイヤの向きをちょっと変えたってこと」

川内「へ?そんなこと出来るの?」

夕張「アライメント調整はそこら辺のタイヤ屋さんだってやってるわ。ほんの数ミリの差だけど、これが意外と大きいのよ」

由良「バイクでもある程度はイジるんじゃないの?」

川内「あー……そこまで気にしてなかった」テヘペロ

夕張「NSRも一度見た方が良さそうね……」ハァ

川内「お願いしまーすっ」

由良「ところでさ……今日は何だか静かじゃない?」

夕張「やっぱりそう思う?」

由良「うん。それらしいクルマも全然居ないし……」

川内「あー。そういえばそうかも」

夕張「そうね……まるで嵐の前の静けさのような……」ハッ

川内「!!」ダッ

由良「この音って……!?」


芝ふ浦PAは、僅かながらフェンス越しに反対車線が覗ける。

川内はフェンスに張り付き、夕張と由良は静かに見守る。

現れたのは、巨体を震わせる陸の戦艦……。

V6ツインターボのおどろおどろしい咆哮と共に、虹色大橋へと回遊していく。


由良「探しているのかな……提督さんを」

夕張「多分……」
723 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/21(金) 23:29:44.81

都高・環状線内回り

夕張「うーん……川内の上達ぶりがヤバい」

由良「コーナーの出口がすっごく速いよね。ミッドシップだから?」

夕張「それが一番ね。同じ二駆でも、ワンエイティには無理な芸当だわ」

由良「やっぱりエンジンが後ろにあると、動きが全然違うんだー……」

夕張「でもイジっていて分かったんだけど、MR2って殆どRR(リヤエンジン・リヤドライブ)に近いのよね」

由良「そうなの?」

夕張「FFベースの横置きだから仕方ないんだろうけど、リヤタイヤのほぼ真上にエンジンがあるのよ。あれだと重量が一か所に集中し過ぎて悪癖が出てしまう」

由良「悪癖?」

夕張「長良に聞いたら、MR2は踏み方間違えると出口でアンダーが出やすいんだって」

由良「アンダーなの?オーバーステアじゃなくて?」

夕張「結局リヤに重量が寄り過ぎて、フロントの接地が少なくなるのが原因みたい。足回りはリヤよりフロントに気を遣えって言われたわ」

由良「そっか。前輪が浮いたら舵が効くワケないものね」

夕張「簡単に言えばそういうこと。3Sは特に重たいエンジンだし、フロントは抑えるモノが無いからね」

由良「でも、その割には……」

夕張「うん。キッチリ乗りこなすことが出来てるのよねー……」

由良「もう艦娘辞めてレーサー目指した方がいいんじゃない?」

夕張「それ言ったらまたツケ上がりそうね……あ」

由良「あれって……もしかして」

夕張「魔王……」

ピカ・ピカ・ピカ

由良「ブレーキランプを三回……って、速っ。もう行っちゃった」

夕張「五回でア・イ・シ・テ・ル……だっけ」

由良「じゃあ、三回だと?」

夕張「カ・エ・レ……じゃない?」

由良「ああ、納得」

川内『ねえねえ今の提督でしょ!?追っかけよう!』デンワ

夕張「アンタ何見てたのよ。あからさまなサイン送ってたじゃない」

川内『分かってるよ。ヤ・セ・ンでしょ!?』

由良「ホント、厄介な思考回路してるわ……」ハァ

夕張「 撤 収 っ !」アーッモウ
730 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/24(月) 22:48:56.51

小ネタ 海風着任っ!!

海風「改白露型、海風。本日よりお世話になりますっ」

提督 ジー

海風「えっ、あの……」

提督「B」

海風「ふぇっ!?」

提督「流石白露型だなぁ……時雨位はあるかな」

海風「な、何の話ですか!?」

提督「そのクセ、江風は平家だし……何処で差がつくんだろうな」ウーム

江風「誰が平らだオラァッ!」バーン

リベッチオ「リベはー?」

提督「ん?リベはいいんだよ」ナデナデ

リベ「わーいっ」

江風「何でだよっ!贔屓だ贔屓っ!」

提督「ところで、実家にガンマ用の耐久カウルがあるのだが……」チラ

江風「そうです。江風の胸は平らです」シュタッ

提督「清々しいなオイ」

海風「えっ?えっ?」


白露型はスケベ。
731 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/24(月) 22:50:33.37

突撃!湾岸の青葉さん

●REC

青葉「どーもぉ。青葉ですぅ!今日は三京に来ています!」

青葉「実はココに艦娘が出没するという情報をキャッチしましたので、調査にやって来た次第です!」

青葉「さてさて……その艦娘はぁ、っと」

川内「あれ?青葉じゃん。何してんの?」

青葉「ややっ、川内さんじゃありませんか。こんな所で何を?」

川内「とりあえず、アイス食べる?」ハイ

青葉「あ、いただきます」

川内「前から三京には来てたよー。ドライブにはちょうどいいんだよねぇ」

青葉「神出鬼没ですねぇ」ペロペロ

川内「青葉に言われたくない」

青葉「ところで、もしや川内さんが噂されている“三京の悪魔”ですかっ?」

川内「悪魔?何それ」

青葉「最近三京はその話題で持ち切りですよ?」

川内「ふーん。それって速いの?」

青葉「それはもう。ふらりと現れたと思ったら、一瞬で姿を眩ますことから別名イリュージョンとも呼ばれているそうです」

川内「へぇ。面白そう」ニヤリ

青葉「しかし困りましたねぇ。出現パターンが唐突過ぎて、なかなか正体が掴めないんですよ」

「あらあら。噂だと黒いMR2って話よ?」

川内「ふーん。ミーちゃんと同じかぁ」

青葉「一方で、三京には引退したハズの“エキゾースト・イヴ”が出没するらしいですし……」

川内「なにそれ?」

青葉「かつて湾岸のトップに君臨していた、ワイドボディの80スープラを駆る女性ですよっ」

「あらあら。私と同じね」

川内「で、陸奥さんは何してるの?」

陸奥「見知った顔が居たからものだから、ね」
732 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/24(月) 22:52:30.82

青葉「ヴォーッ!?陸奥さん!?」

陸奥「そんなに驚かなくてもいいじゃない。ちょっと傷付くわ」

青葉「いやスミマセン……あまりにも自然に溶け込んでいたものですから……」

川内「で、そのエキゾースト・イヴってのは陸奥さんなの?」

陸奥「身に覚え無いわね。たまたま同じ車種だから、間違われているんじゃないかしら?」

青葉「じゃ、じゃあ悪魔の正体が黒いMR2というのはっ!?」

陸奥「それは本当よ。そしてそれは間違いなく、貴女」

川内「へっ?私?そんな呼ばれ方されてるの?」

陸奥「ええ。私も以前見かけたことがあるの。水雷魂なんて書かれたステッカーを貼ったMR2なんて、他に居ないでしょ?」

川内「ああ。じゃあ私だわ」

青葉「な、なんと……“三京の悪魔”の正体は、まさかまさかの川内さんだったとは……っ!」

川内「でも、ミーちゃんでココに来るようになったのなんてホントに最近だよ?」

陸奥「それだけ貴女の登場はセンセーショナルだった――そういうことよ」

川内「ふーん。まあ、いいけどさ。ココは夕張の方が速いと思うなぁ」

陸奥「あら、そうなの?」

川内「今は、だけど」

陸奥「フフ。やっぱり面白いわ貴女」

川内「で、どうする?私と夜戦したいんじゃないの?」

陸奥「……今日は遠慮しておくわ。またの機会にしましょ」

川内「ええーっ。夜戦YASENヤセンーッ!」

陸奥「いずれ、ね。どっちかと云うと、楽しみは後に取って置きたいタイプなの」

川内「……今のうちに沈めておかないと、後悔するかもよ?」

陸奥「それもそれで、面白いじゃない」

青葉「待ってる間に砲塔爆発しちゃったりして」ペケー

陸奥「 」

川内 ジトッ

青葉「あれ?どうしたんですか二人とも」

陸奥「……今日はこれで失礼するわ。あと青葉借りてく」

川内「どうぞどうぞ」

青葉「え?あのー……何で青葉、頭を掴まれているのでしょうか?」ス

陸奥「また会う時を楽しみにしているわね。それじゃ」

川内「うん。またね」

青葉「ちょ、ちょっと痛っ!割れる!青葉の中身がパンパカパーンしちゃいますって!陸奥さん!陸奥さーん!?」ズルズル

川内 ノシ

青葉「アッーーー!!」
733 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/24(月) 22:54:21.82

夕張「こ、こんばんわー……朝日さん、いらっしゃいますかー……?」キョロキョロ


鉄製の重い扉を開くと、埃と油の匂いが鼻につく。

朝日さんからの反応は無く、私の声だけがガレージ内に反響する。

留守だろうか?
しかし、奥で白熱灯が光っている……気付いていないのだろうか。

足元を確かめつつ、ソロリソロリと歩を進めつつ、辺りを見渡した。

それにしても、なんという設備だろう。

低床のリフト、大型のサンドブラスター、溶接機材に金属加工用の旋盤まである……隔離された空間はエンジンブース?

薄暗いので正確なことは分からないが、確認できただけでもコレである。

プロのショップでも、ここまで充実しているのは珍しい。


「ほえ~……イチからレーシングカーも作れそうね……」


しかし、鍵も掛けないとは随分不用心だ。

現在時刻、フタマルヨンイチ。
この時間なら居ると言っていたのに……今回は出直した方が良いかもしれない。

――コトン。

「朝日さん?」

ふと物音がする方へ向かうと、淡い光に照らされる魔王Rが佇んでいた。

作業中だったのかボンネットは開けられ、フェンダーの両側には傷予防のカバーが掛けられている。

暗闇に慣れた目には、魔王Rの濃いブルーメタリックは恐ろしく鮮やかで妖艶に思えた。

最初に見た時に感じた「刃物の様な空気感」は和らいでいる。
しかし、ひとたび魅了されてしまえば水面の奥底に沈んでしまいそうな……。

それは、このクルマが持つ魔力というか毒性の質が変わっただけで、依然として危険な存在には違いないことを意味している。

それでも目が離せない――。
離せるわけがない。

魔王Rはただ静かに、その時を待っているようだった。
734 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/24(月) 22:55:24.50

夕張「見れば見るほど不思議なクルマ……」

「わっ!」

夕張「みゃろっ!?」

朝日「フ……フフ……みゃろって……」クククッ

夕張「あ、朝日さん!?驚かせないでくださいっ」

朝日「御免なさい。でも夕張さんったら私が話しかけても気付かないで、ずっとRを見ていたものだから」

夕張「え……?」

朝日「少なくとも10分位はそのままだったと思いますよ」

夕張「う、嘘っ!?私が来たのはほんの数分前で……って9時半!?」

朝日「何時に来たんですか?」

夕張「8時半過ぎ……です」

朝日「一時間近くRを眺めていた、ということでしょうか」

夕張「……見ていて、飽きないんです。何ででしょうね」

朝日「彼女も同じことを言って眺めていましたよ。その椅子に腰掛けて……延々と」コーヒードウゾ

夕張「都高で初めて見た時、魔王と呼ばれる理由が分かった様な気がしました」アザッス

朝日「理由、ですか。お聞きしてもよろしいですか?」

夕張「……凄く、綺麗だったんです。今もそう……目が離せなかった」

朝日「作り手としては嬉しい限りですね」

夕張「どうして……このRはこんなにも特別な雰囲気を持っているのでしょう?」

朝日「それは私にも分かりません。当たり前のことを、当たり前のように組んだまでですよ」

夕張「何かスペシャルなパーツを使ったとかは……」

朝日「いいえ、何も。どれも普通に手に入るばかりですよ。強いて上げればサージタンクとエキマニがワンオフ品です」

夕張「そ、それだけですか!?」

朝日「ええ。彼は音に拘っていましたからね」

夕張「音……」

朝日「どうせ直6に乗るならと、BMWを引き合いにしてきましたからね……当時は困りましたよ」

夕張「あー……私も乗り始めた頃、吸排気はちゃんと選べってやたら念を押されました……」
735 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/24(月) 22:56:22.38

朝日「良ければ乗ってみませんか?」

夕張「ふえっ!?私がっ!?」

朝日「実は可変バルブ仕様にしたのですが、セットアップがまだなんですよ。夕張さんが乗ってくれるなら、私も色々専念出来ますからね」つキー

夕張「そりゃあ本音としては乗ってみたいとは思いますけど、とても私が乗れるような代物じゃ……いやいや、でもこれ程までのRなんてこの先乗る機会なんてまず有り得ないし」ブツブツ


都高・東雲ランプ


夕張「ぬおおおー……クラッチ重いぃぃー」プルプル

朝日「トリプルプレートですからね。仕方ないですよ」

夕張「強化クラッチには慣れていたつもりだったのに……」

朝日「でもエンストせずに来れたじゃないですか」

夕張「こんな状態で湾岸に乗って大丈夫かしら……」

朝日「むしろ楽になると思いますよ。遠慮せずに踏んでください」

夕張「分かりました……行きますっ」
741 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/29(土) 22:15:45.47

夕張「あわわわわ……」

朝日「大丈夫ですか?」

夕張「何処から踏んでも加速するっ!目が追いつかないぃ」

朝日「ピークよりも中間を厚くしています。トップまでの到達時間を如何に速くするかが、このクルマのテーマですね」

夕張「ちなみに……パワーどれ位出ているんですか?」

朝日「そうですねぇ。確か750は出ているハズですよ」

夕張「私のワンエイティの倍出てる……」

朝日「トルクは80キロを超えていましたね」

夕張「80ッ!?」

朝日「確かにとてつもないパワーですが、恐れることはありません。例え魔王と呼ばれていても、クルマには違いないですから」

夕張「そうは言ってもぉ」アセアセ

朝日「身体が強張っていますね。それではどんなクルマでも乗りこなすことは出来ませんよ」

夕張「ぬぬぬ……」

朝日「まずは自分から歩み寄らなければなりません。さあ、深呼吸してください」

夕張「すぅー、はぁー」

朝日「彼から学んでいるハズです。都高という場所を、このクルマの走らせ方を」

夕張「走らせ方……」

朝日「それに基本の方針は、あのワンエイティと同じですよ」ニコ
742 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/29(土) 22:17:12.83

少しずつ視界が開けると同時に、魔王Rというクルマがより見えた気がした。

朝日さんは、提督のワンエイティと同じと云った。

この奥底から湧き上がるようなパワー。
確かに提督のワンエイティにも同じモノを感じた。

むしろクルマ自体の素性の差か、ワンエイティよりも遥かに余裕を感じる。

勿論ハイ・チューンドマシンであることには変わらない。
扱いやすさに感けていると、このRは簡単に裏切るに違いない。当然と云えば当然だ。

しかしこちらがキチンと向き合えば、このクルマはちゃんと応えてくれる。

何と優しい魔王だろう――。

それと同時に、このクルマが持つ本質が分かった。

この優しさは危険だ。

まるで甘い言葉で誘惑し、奈落の底に貶めるような。
嗚呼、それは正に悪魔や魔王の所業じゃないか。

それを理解しても尚、アクセルを緩める気が起きない。

景色が止まって見える。

このクルマとならば、運命を共にしてもいいとさえ思えた。

追い越すクルマが迫ってくる。

そういえば、提督が大事なことを言っていた気がするけど……

オ モ イ ダ セ ナ イ ヤ 。


「夕張さん」

不意に朝日さんの声が聞こえる。
それはとても優しくて。

「公道は生き残ることが全てよ。分かっているハズよね」

――意識が戻る。
そして、異常に気付いた。

「さ、300超えてる……」

現実離れした数字に血の気が引き、アクセルを抜いた。

私の知っているスピードとは、とっくにかけ離れている。

「あら。アクセルを抜いてしまうんですか」

隣の朝日さんが残念そうに言い放つ。

この人は何で平気な顔をしているんだ。
今の今まで何事も無く、セットアップを続けていたのだろうか。

私はと云うと、動悸が収まらない。
汗でハンドルが滑りそう。

やっぱり、このクルマは魔王だ。
次元が違う。

「ですが、おかげで良いデータが取れました。有難うございますね」

「は、ハハ……いえ……」

いつも通りの柔和な表情を浮かべる朝日さん。

多分私の顔は、馬鹿みたいに引きつっていただろう。
743 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/29(土) 22:19:24.05

翌日 鎮守府・外広場

夕張 ボケー

由良「あ、こんな所に居た」

夕張 ヌボー

由良「夕張?夕張ったら」

夕張 ホゲー

由良「えい」ズボッ

夕張「ふごっ!?な、なに!?」

由良「アポロチョコを鼻の穴に突っ込んでみました」

夕張「汚っ!勿体無い!」

由良「で?何を呆けてたの?」

夕張「あー……昨夜さ、魔王Rに乗らせてもらったんだけど……」

由良「ふむふむ」

夕張「すっごい乗りやすくて怖かった……」

由良「どうゆうこと?」

夕張「乗りやすいっていうか、安心感があってね。どこまでも踏めそうな」

由良「それなら別に怖くない気がするけど」

夕張「……逆。安心して踏めるからこそ、危ないのよ」

由良「どういうこと?」

夕張「それだけ深みに嵌れるってことよ。このクルマとだったら死んでもいいとさえ思ったもん」

由良「あー……何しても大丈夫、みたいな?」

夕張「うん、そんな感じ。気付いたら300キロ超えてたし……」

由良「怖っ!そっちの方が怖いっ!」

夕張「簡単にそんな領域まで持って行けるんだから……怖いよ、マジで」

由良「しかもそれ、無意識にでしょ?」

夕張「無意識。頑張って~じゃないもの」

由良「怖ぁ……」

夕張「でも、彼女さんがあのRに入れ込んだのも分かるよ。あれ程完成されたクルマ、ちょっと他に無い」

由良「ワンエイティしか知らないでしょ……」

夕張「ええ、まあ」

由良「どうでもいいけど、これでRに乗り換えるなんて言わないわよね?」

夕張「あんなR作ろうと思ったら、もっと戦果上げて稼がないとねー」

由良「じゃあ提督さんに警備の仕事紹介してもらう?」

夕張「ああー、提督が昔やってたっていう……って、掛け持ちはダメでしょ常考」

由良「でも、たまに民間業者からの依頼で夜中たまにやってるよ。賃金が別で発生するし、バイト感覚でやってる艦娘も居るみたい」

夕張「うそ、んなバカな」


出撃 深夜の沿岸部哨戒任務!
深夜の沿岸部を警備、不審者は撃退せよ!

※勿論ありません。
744 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/29(土) 22:20:41.50

喫煙所

提督 zzz

山城「居た……と思ったら寝てるし」

提督「俺はセナよりはっやーい……」ムニャムニャ

山城「起きなさい。このバカ提督」ビンタ

提督「んん……ああ、山城?何か用か?」

山城「何呑気に寝てるのよ。いつ仕掛けるわけ?」

提督「さあなぁ……時が来れば、かな」スパー

山城「ここ最近、姉様は毎晩のように出てるのよ。そんな悠長な……!」

提督「……お前なぁ、何で俺が眠そうにしてるか分からないのか?」

山城「はあ?いつもじゃない」

提督「普段の俺はどういう風に見えてるんだよ」

山城「クルマと音楽が好きなおっぱい星人」

提督「ああ正解だよクソが」

山城「どうでもいいから、いい加減何とかしてよ!もし姉様に何かあったら提督の責任ですからね!」

提督「オイオイ……勝手に上がって来たのは扶桑の方だぞ?」

山城「関係無いわよ。その魔王とやらに姉様が勝てばそれで終わりでしょ。ならさっさと負けてきなさい」

提督「バカ云うな。負ける気なんて更々ねえよ」

提督「そもそも年端もいかない小娘じゃないんだ。何でこんな愚かな真似してるのか、テメエ自身で分かってるハズだろうに」

山城「なっ!?そもそもアンタが 提督「……なあ、山城」

提督「アイツのクルマさ……俺は冗談かと思ったのよ」フー

山城「なにそれ?どういう意味よ」
745 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/29(土) 22:21:36.94

提督「お前達が背負う艤装……まあ言わずもがな、先の大戦で実在した国産初の超弩級戦艦、扶桑・山城が元になってるよな」

山城「今更ね」

提督「扶桑型は攻撃に偏重し過ぎて速力・防御は疎か。艤装がデカすぎて全体の五割以上が被弾危険個所と来た。まあその他色々問題があって、欠陥戦艦のレッテルを貼られる、と」

山城「……だから何よ」

提督「ところが速力は当時としては実は最速。浮かぶ違法建築と呼ばれるジェンカみたいな艦橋も、海外じゃ大人気だそうだ」

提督「……で、扶桑が乗るGTOだ」

提督「色々と国産初の装備を引っ提げ、性能は当時国産トップクラスを誇った。しかし実際はどうだ……」

提督「ただでさえクソ重たい車重の上に致命的なフロントヘビー。直線は速いがコーナーは遅い、曲がらない。何処でも速いRやNSXと違い、スポーツカーとしては駄作、欠陥呼ばわりだ」

提督「そんで、三菱の旗艦はⅣの辺りからランエボに取って変わられていた。言うなりゃ扶桑型に対しての伊勢型みたいなもんだな」ククク

山城「話が長いし興味持てないんですけど。何が言いたいワケ?」

提督「知ってか知らずか、要するに立ち位置が似てるのよ。何となく」

提督「間違いなくトップクラスの戦闘力を有していたのに、正当な評価を受けず沈んでいった。あ、海外でのウケが良いってトコもな」

山城「ふーん……」

提督「まあ何で数あるクルマの中から、マイナーにカテゴライズされるGTOを選んだのか不思議だったんでな。案外、同じような境遇だからこそ引き込まれたのかと思ってねぇ」

山城「じゃあ、提督のクルマは?GT-Rだっけ?それは何になるのよ」

提督「そうだな……当時の基準だったら、間違いなく大和型だわな。しかも引き籠らせずに、ガンガン出てくるんだぞ。おっかないねぇ」ケラケラ

山城「うわっ……」

提督「だが、それはあくまでノーマルの話だ。大戦期の戦艦がどんなに頑張っても現代のイージス艦には届かないが、クルマはまた別だ」

提督「正直Rを以てしても、ちょっとキツそうなんだよねぇ……アレ」

山城「さっき負ける気は無いって言ったじゃない」

提督「最初から負けること考えて喧嘩買う奴が居るかってことよ」

提督「それに焦らずとも、もうすぐ終わるさ……」

山城「ハァ。講釈垂れてる暇があるなら、さっさと……」ン?

提督 zzz

山城「ちょっと!寝るんじゃないわよ!」
746 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/29(土) 22:23:11.82

小ネタ 警備のバイトを実際にやってみた

夕張「うえぇ……結構不気味ねぇ」

由良「そうね。でも深海棲艦の群れよりマシじゃない?」

夕張「どっちもどっちよ……」

コトンッ

夕張「い、今物音が……!?」

由良「この辺りね……照らすわよ」

ピカー

由良「あっ!メタル泥棒!」

夕張「メタル泥棒ってなに!?」

由良「その名の通り、メタリックな泥棒よ!てーいっ!」バキィ

夕張「木刀持って突っ込んだー!?」

由良「コラ!逃げるなっ!」

夕張「砲撃は!?砲撃はしないの!?何の為の艤装!?」

ドカバキ

夕張「あわわわ……」

♪~(何処かで聞いたことあるようなファンファーレ)

由良「やったぁ。捕まえたっ」

夕張「なに!?何処から流れてるのこの音楽!?」

由良「さあ、警察に突き出してやりましょ。これでボーナスが貰えるハズよ」グイグイ

夕張「もうわけがわからない……」


でも実際、艦娘は陸での運営・展開も考えられると思うの。
747 : ◆v5iNaFrKLk :2015/08/29(土) 22:23:50.91

小ネタ もし由良がクルマを買ったら

夕張「……小粋なクーペが良いと思う」

由良「何の話?」

夕張「由良に合うクルマよ。何かこう、洒落た感じのさぁ」

由良「またそれ?別にクルマを買う予定なんか無いわよ」

夕張「前にロードスターとか言ってたじゃない」

由良「適当に言っただけよ」

夕張「ロードスターも良いと思うケド、ビートやカプチーノみたいな小さいのも似合うと思うのよねぇ」

由良「嫌いではないけど、実用性皆無ね」

夕張「CR-Xも有りかな……」

由良「どうでもいいけど、せめて現行車種にしない?」

夕張「うーん……あっ!コレとか!」

由良「何よ、もう……」

夕張「セラ!トヨタのセラ!」

由良「ええー……」

夕張「スペックはパッとしなくてもライトウェイトだし、ベースがスターレット系だからマイナー車種の中ではパーツも意外と有る方だし、何よりガルウイング・ドア!」

由良「一人で盛り上がってる所悪いけど、買わないからね」

夕張「さて、見積もり依頼を~♪」

由良「人の話を聞きなさい、おバカ」


走るビニールハウスと揶揄されるセラだけど、今となってはスペック的に悪くない気がする。
752 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/30(日) 09:06:56.65
おつ
セラとか最近の若い人は見たこともねえだろww
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/30(日) 18:21:45.86
アルシオーネ「雨漏りするなんて車として最低だぜ」
757 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/30(日) 19:15:32.26
>>756
サンタフェ「おまいうwww」
760 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/03(木) 15:24:17.03

都高・市川PA

夕張「岩崎さん!」

岩崎「やあ、夕張ちゃんじゃないか」

夕張「良かったぁ……今日あたり居るんじゃないかと思ったんですよ」

岩崎「僕に会いたかったのかい?連絡してくれればいいのに」

夕張「……何回も電話しましたよ」

岩崎「え、ホントに?」

夕張「それより、お願いがあるんです」

岩崎「ん?なんだい?」

夕張「……私を乗せてください」

岩崎「上にかい?」

夕張「ち、違いますよ!変なこと言わないでくださいっ!」

岩崎「なんだ、残念」

夕張「GTOを撃墜するって話ですよ!前に言っていたじゃないですか!」

岩崎「ああ、そのことかい」

夕張「バトルの時、私を隣に乗せて欲しいんです!お願いしますっ!」

岩崎「うん、いいよ」ポエ

夕張「危険は承知していm……って、え?」

岩崎「別に構わないよ。多分、そう言うだろうと思ってたし」

夕張「えっと、ホントにいいんですか?」

岩崎「勿論……とは言い切れないけどね。何か起きたら責任取れないし」

岩崎「でもね、僕自身にもメリットもあるのかなーって」

夕張「メリット?」

岩崎「うん。夕張ちゃんみたいな可愛い女の子とドライブデートが出来るんだからね」

夕張「かっ……///」

岩崎「それにね……血肉が沸き立つのを抑えられないんだよ」


あのGTOは久々に――全力で遊んでも壊れなさそうだから。


夕張 ゾクッ

岩崎「自分でも愚かだと思うけどね」クス

夕張「それはつまり、ストッパー……って、ことですか」

岩崎「うん。利用するようで悪いけど」

夕張「い、いえ……」

夕張(やっぱりこの人も生きた伝説……都高の絶対王者と呼ばれた、迅帝だ……っ!)
761 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/03(木) 15:25:03.99

岩崎「それに、実は提督からも言われていたんだ」

夕張「……提督から?」

岩崎「あのGTOのドライバー、艦娘なんでしょ?」

夕張「ハイ……私と同じく、市川所属の艦娘、扶桑型一番艦の扶桑さんです」

岩崎「みたいだね。それで多分、夕張ちゃんが僕の隣に乗せて欲しいと頼んでくるはずだって、聞かされていたんだ」

夕張「……お見通しってことですかね」

岩崎「僕が同じ立場なら、恐らく同じことをしたと思うよ」

岩崎「云わば今都高で一番速い者を決めるバトルだ。しかも当事者が上司と同僚となったら、近くで見たいという気持ちも分かる」

岩崎「でも、それだけじゃないだろう?」

夕張「……ハイ」

岩崎「君はどうやら“魔王”に魅せられてしまったようだね」

夕張「そう、見えますか?」

岩崎「この前乗っていただろう?朝日さんと一緒に」

夕張「見てたんですか!?」

岩崎「製薬会社主催の学会の帰りに、たまたまね。WRXだったんだけど、気付かなかったかい?」

夕張「全然……」

岩崎「僕はね、正直なところGTOには興味無いんだ。あくまで対象は魔王Rだけなんだよ」

岩崎「十年……いや、それ以上か。僕は魔王と再会出来る日を心待ちにしていた。それがGTOに横取りされるとなったら、黙っていられない」

夕張「……まるで扶桑さんは眼中に無いような言い方ですね」

岩崎「ああ、いや。誤解しないでほしいのは、あのGTOだって簡単にはいかないこと位分かっているよ」

岩崎「それでもね……君があのRに魅せられてしまったように、僕も虜になってしまったんだ。あの圧倒的なスピードにね」

岩崎「そして、あのRを墜とすことが出来るのは、僕のRだけだと思っている」

岩崎「君も知ってしまったんだ……分かるだろう?」

夕張「何となくですが……」

岩崎「うん。少しでも伝わってくれているなら、それでいいんだ」

夕張「それにしても岩崎さんって、結構子供っぽい性格ですよね……もっと落ち着いた人だと思ってました」

岩崎「アハハ。痛いところ突かれちゃったなぁ」

夕張「要するに、オモチャを取り上げられそうになって駄々をこねているってことじゃないですか」

岩崎「全くだ。でも生憎、僕は強欲なんだ」

夕張「えー……」

岩崎「フフ。話している間に頃合いだね。そろそろ行こうか」

夕張「……ハイッ」
762 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/03(木) 15:25:40.60

鎮守府・入口

提督 スパー

川内「あ、提督だ。何してるん?」

提督「タバコ吸ってる」

川内「見れば分かるよ」

提督「じゃあ、お前は何してたんだよ」

川内「日課の走り込みだよ」

提督「へー。意外だな」

川内「そこは軍人だしさ。それにバイク乗るのにも体力つけた方がいいしね」

提督「また夜戦夜戦と騒いでるのかと思ったわ」

川内「えー……私ってそんなにうるさいかなぁ?」

提督「他所だと酷いらしいぞ。下手すりゃ砲撃騒ぎだとかなんとか」

川内「そっちの方がうるさいじゃんか」

提督「お前の場合は毎晩の様に2ストの音を響かせているんだから、あんまり変わらん気がするがな」

川内「流石に毎日は行ってないけど」

提督「いーや。江風が来てからなんてほぼ日だね」

川内「でもさでもさ、夕張のワンエイティの方が絶対うるさいって」

提督「クルマやバイクに興味の無いヤツからすればどれも同じよ。無駄に騒音と排ガス撒き散らしてるだけの迷惑な存在だ」

川内「ぶー……」

提督「ま、あれだ。バイクはうるせぇとか言うクセに、その後ランボやフェラーリが来たら良い音とか抜かすヤツも居るけどな」

川内「それこそ違いが分からないよ。フェラーリも2ダボも大差無くない?」

提督「オイオイ、2ダボなんて未だに言うのかよ。俺らの世代の言い方だろソレ」

川内「だってCBRだと今のヤツになっちゃうし。混同しないように2ダボ4ダボって言うようにしてんの」

提督「ほーん。しっかしお前もすっかり峠小僧……いや、峠娘?」

川内「艦娘ですぅっ」
763 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/03(木) 15:26:35.56

川内「で、今日出るんでしょ」

提督「ああ。SN作戦も落ち着いたしな」タバコトリダシ

川内「勝算はあるの?」

提督「さぁてね」

川内「誤魔化さないでよっ」

提督「そうは言ってもなぁ……その場その場で状況なんて変わるし、何とも言えねえよ」

川内「……さっき夕張が出掛けてったよ」

提督「ほお。何処にだ」

川内「多分、都高」

提督「ふーん……」

川内「それでさ、ちょっとお願いがあるんだけど」

提督「断る」スパー

川内「……まだ何にも言ってないけど」

提督「どうせお前も夕張みたいに、隣に乗せろーとか言うんだろ?断るっての」

川内「なんでさっ。いいじゃん、減るもんじゃなしに!」

提督「減りますぅー。俺の気が散りますぅー」

川内「夕張だって、今頃岩崎さんの隣に乗せてもらってるハズだよ!何で私はダメなのさ!」

提督「ホントだったら夕張だって関わらせたくねえよ、こんなことに」

川内「全っ然意味が分かんない!」

提督「とりあえず川内。ちょっと見てみろ」

川内「何を……って、提督……手震えてる……?」

提督「……怖いんだよ、正直。こんな状態でお前らを隣に乗せることなんか出来ない」

川内「………」

提督「昔はこんなこと無かったんだがなぁ」ハハ

川内「提督でも、やっぱり怖いんだ」

提督「怖いね。今日出たら最後、今度こそお日様拝めないんじゃないかって、いつも思うよ」
764 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/03(木) 15:27:29.19

提督「それでもバカなもんでさぁ。クルマに乗ると、純粋だった頃を思い出してしまうわけよ」

川内「純粋、ねえ……」

提督「時に川内よ。今、楽しいか?幸せか?」

川内「何よ、急に」

提督「戦場に身を置く艦娘にこんなこと訊くのも悪趣味だと思うが、今の暮らしは楽しいか?」

川内「うーん……確かに数え切れない位に危ない目にも合ったけど、何だかんだで楽しんではいるかな」

提督「後悔はしたか?」

川内「どうだろ。結局艦娘になるって決めたのは自分自身だし、そこはあまり悔いていないよ」

提督「そうか。なら今のところは安心だ」

川内「そうなの?」

提督「そもそも、お前は悩みがあっても悩むタイプじゃなさそうだし」ククク

川内「ひっどーい!言っとくけど、私にだって悩みの一つや二つはあるからねっ!」

提督「へえ。例えば?」

川内「えっ……おっぱいもう少し大きくなったらいいなー……とか……」

提督「ほーう、どれどれ。オジサンが見てやろう」ワキワキ

川内「何その手の動き。引くわー」

提督「ちょっとした悪ノリだ。反省はしている」

川内「別にいいけどさ。じゃあ提督は今幸せなの?」

提督「こんな美少女達に囲まれて、不幸なワケないだろ」

川内「聞いて損した……」

提督「でもまあ、俺は今も昔も恵まれているよ。後悔なんて山ほどした。それでも好きな事をして生きていられたんだ」

提督「これ以上の幸せが何処にあるよ」

川内「よく分かんない」

提督「ま、オッサンの戯言だ。ごま塩程度に程度に憶えていれば、将来きっと理解できるよ」
765 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/03(木) 15:30:20.70

提督「さて、そろそろ行くかな。ありがとよ」

川内「何のお礼?」

提督「何でもないさ。じゃあな」

川内「あ、提督!」

提督「んー?なんだ?」

川内「負けたら承知しないよ!絶対だからね!」

提督「……俺を誰だと思ってるんだよ」ニヤッ


叢雲「………」ムスッ

時雨「提督、大丈夫そうだね」

叢雲「し、時雨っ!?いつからそこに!?」

時雨「タバコを吸ってる提督を見つけて、話しかけようとしたけど止めてしまった……って辺りかな」

叢雲「つまり最初からね……」ハァ

時雨「随分と膨れっ面をしていたけど、どうしたんだい?」

叢雲「……別に。何もないわ」

時雨「あの場に居るのは川内ではなく、自分だった……とか思っているのかな?」

叢雲「どうしてそう思うの?意味が分からないわね」

時雨「何となくさ。そんな風に見えたんだ」

叢雲「……憶測で人を図るのは感心しないわ」

時雨「でもね、叢雲。君が髪を弄る時は決まって誤魔化そうとしている時だよ。知っていたかい?」

叢雲「……う、うそでしょ?」

時雨「うん。嘘さ」

叢雲「アンタねぇ……」

時雨「君はあまり、本心を出してくれないからね。カマをかけてみたんだ」

叢雲「……嫌な性格」

時雨「フフ。お互い様だよ」

叢雲「きっとココで私達を待つアイツも、同じ気持ちだったんでしょうね。次こそは帰って来ないんじゃないかって……」

時雨「心配するな……は、無責任な言葉だけどさ。信じてあげようよ」

叢雲「そうね……ホント、こんな良い女を待たせるなんて、良い度胸しているわ」

時雨「うん。それでこそ叢雲だ」


時雨(提督、扶桑を……頼んだよ)
768 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/09/03(木) 18:41:45.61
乙!この湾岸的な独特の空気感、最高に盛り上がりますな。
769 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/09/03(木) 18:45:55.49
この決戦前夜な雰囲気
嫌いじゃない
773 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/08(火) 23:38:38.67

湾岸線

岩崎「さて、と。流れは良さそうだね」

夕張「あの……勘で来ちゃいましたけど……」

岩崎「本当に今夜、会えるかってことかい?」

夕張「……ハイ」

岩崎「どうだろうね。そればっかりは僕にも分からないよ」

夕張「そうですよね……」

岩崎「何事にもプロセスがある。夕張ちゃんが今夜を選んで僕を訪ねて来たのも、ある種の必然かもしれないよ」

夕張「クサい台詞ですね」

岩崎「そうかな?」

夕張「ところで、このRも随分乗りやすそうですよね。スゴく安定しているというか」

岩崎「おっ、分かるのかい?」

夕張「何となく……でしかないですけど。比較の対象に出来るとすれば、ワンエイティしかありませんし」

岩崎「僕はね、スタビリティという点でRに勝るモノは居ないと思っているんだ」

夕張「安定性、ですね。インプレッサじゃダメなんですか?」

岩崎「うーん……これはあくまで個人的な好みの問題かもしれないけど、やっぱりインプはRに比べるとまだ線が細い印象かなぁ」

夕張「今の型なら、あまり華奢だとは思いませんが……」

岩崎「そうだね。でも僕にとってインプは振り回すクルマなんだよ。対してRは軽快感は薄いけど、揺らぐことのない幅の太さがある……すなわち、スタビリティだね」

岩崎「特に僕らが走るのは何が起こるか分からない公道だ。一点の速さを求めるよりも、幅の太さを選択した方がリスクが少ないと思うね」

夕張「確かに……提督のワンエイティも、どちらかと言えば破綻しない様な方向性だった気が……」

岩崎「じゃあ同じく第二世代のRがベースの魔王だ。R32とR34という違いはあるけど、基本的には同種だ」

岩崎「魔王Rも確かにスタビリティは高い。だけどいつか裏切られる気がする……そんな感じではなかった?」

夕張「そうですね……でも何故か、それを許せてしまえる気分でした」

岩崎「それがあのクルマの怖いところさ。まるで人喰い花だよ」

岩崎「だからこそなのか、一発の速さは魔王の方が上だったんだよね」

夕張「……それは、今もですか?」

岩崎「今なら負けないよ。それに僕は、負けると分かっている勝負はしない主義だ」
774 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/08(火) 23:39:29.24

夕張「岩崎さんから見て、扶桑さんのGTOはどう思います?」

岩崎「そうだねぇ……本当に速いGTOって、全国的に見ても数は少ないよね」

夕張「そうですね。むしろマイナー車扱いですから……」

岩崎「RにFD、80スープラ……同世代のこれらは、今でも現役でトップを張れるポテンシャルを持っている、が」

夕張「あえてGTOを選び、それらと同等以上のレベルまで持って行った……」

岩崎「その点は本当、尊敬に値するよ。むしろ近年では突出している程だ」

夕張「でも岩崎さんの評価は低い気がするんですよね。身震いするような存在感を持っているのに」

岩崎「うーん……速いことは速いんだけど、それだけかなぁっていう感じ」

夕張「どういうことでしょう?」

岩崎「じゃあさ。仮にグループAのRに乗ったとして、全盛期の星野より速く走れるかい?」

夕張「えっ……多分無理です」

岩崎「うん、僕も自信無い。ある程度近いタイムは出せると思うけどね」

岩崎「四輪のレースはクルマ8のドライバー2なんて言うけど、突き詰めたらやっぱり操るのは人間なんだよ」

岩崎「あのGTOはすぐに消える。クルマとドライバーが一致していないんだ」

夕張「技量が追いついていない……と、いうことでしょうか?」

岩崎「いやいや、技量は十分だよ。でも……結局そこまでというか」

岩崎「職業柄沢山の人を見てきたし、ここにも長く居るものだから、何となく分かるんだ。場違いな程綺麗な人だしね」

夕張「もしかして……扶桑さんに会ったんですか?」

岩崎「偶然ね。最初は、彼女が蘇ったんじゃないかと目を疑ったよ」

夕張「………」

岩崎「僕から見ると、彼女にとってココに上がる意味があやふやなようにも思えた」

夕張「……上がる、意味……」

岩崎「あれ程までのクルマに仕上げたというのに、彼女自身は虚空のようだった。勿論、チューニングという行為自体も虚しい自己満足かもしれないけど、皆それぞれ思いがある」

岩崎「まるで微睡んでいるような、そんな印象だった。あれじゃあ戦艦というより、幽霊船だよ」

夕張「……扶桑さんは、提督の前を走ればずっと見てくれるからって……そう言っていました」

岩崎「見てくれる……かぁ。何であれ、今夜が何事も無く終わることを願うよ」
775 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/08(火) 23:40:17.32

夕張「岩崎さんは、都高を走ることにどんな価値を見出しているんですか?」

岩崎「どうしたんだい、藪から棒に」

夕張「正直に云うと、私もよく分からないままなんです。何でココを走るのか……」

岩崎「そんなモノは無いよ。あるとすれば、それを考えることかな」

夕張「岩崎さん程の人でも、ですか」

岩崎「いくら正当化しても、やっていることは反社会的な行為だからね。それを理解しても尚この場所に上がる……ただの矛盾だ」

夕張「まるで禅問答みたい……」

岩崎「全くだね。僕は精神医学は専門外だけど、もし答えを明確化出来たなら……それが都高を降りる時だ」

夕張「私は……どうなんだろう……」

岩崎「でもね、深く考える必要は無いと思うなぁ。つまるところ『そこに山があるから』とか、そんなレベルだよ」

夕張「そんな乱暴な……」

岩崎「何年、もしくは何十年か先に今を振り返った時にようやく、価値というのは見出せるんじゃないかな。今はきっと、我武者羅な位が丁度良いよ」

夕張「え、えー……」

岩崎「納得いかないかい?でもこればかりは、僕も相応しい回答を持っていないんだ」

岩崎「このバトルが終わってから、提督に聞いてごらん。僕よりかはまだマシな回答を得られるかもよ」

夕張「ちゃんと答えてくれますかねー……」

岩崎「大丈夫だよ。現にホラ……」シフトダウン

夕張「……ッ!?」

岩崎「彼は今、その答えを出そうとしている」


湾岸線西行き、辰巳JCT
魔王R、合流――
776 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/08(火) 23:45:54.54

岩崎「うん、いい音だ魔王」

夕張「て、提督……何処から……」

岩崎「一旦朝日さんの所にでも寄ったんじゃないかな」

岩崎「さて、夕張ちゃんの勘は当たりだよ。この調子なら間違いなくGTOも現れる」

夕張 ゴクッ

岩崎「十年以上経ったというのに、今なお色褪せないね……それどころか、洗練されている」

夕張「昔とは違うんですか?」

岩崎「うん……何かもっと、ギラギラしていたかな」

岩崎「でも本質はやはり同じだね。純度の高い、本物のチューンドカーだ」

夕張「本物のチューンド……」

岩崎「僕にとって、あのRは対等なライバルであり、憧れでもあったんだ」

夕張「憧れって……岩崎さんのRだって、とてつもないクルマじゃないですか」

岩崎「やっぱりねぇ……グループAをリアルタイムで見た世代としては、R32というクルマは特別なんだ」

岩崎「出来ることなら、僕があのRに乗りたかったよ」

夕張(そういえば、岩崎さんの師匠も32R乗りだったって聞いたことあるような……)

岩崎「これからもクルマと向き合っていくなら、よく見ておくといい」

岩崎「何処までも突き詰めた機械がどんな動きをするのか。そして、それを操る人間は何を考え、感じているのか」

岩崎「君ならきっと、見えてくるはずだよ」

夕張「……ハイッ」

岩崎「さて……僕らの因縁を、そろそろ断ち切らせてもらおうか」


魔王GT-R――ッ!!
777 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/08(火) 23:46:53.55

「シーサイドFMよりお送りします、ナイト・オン・ザ・チェック。お相手は私、霧島奈央です」

大井パーキング。
提督と別れた後、どうにも落ち着かなくて、つい来てしまった。

ラジオから流れる聡明な女性の声が耳をくすぐり、幾数多のヘッドライトは光の運河となり目の前を通り過ぎて行く。

そんな景色をぼんやりと眺めつつ、甘ったるい缶コーヒーを口に運ぶ。
眠気覚ましのつもりで買ったのに、かえって眠くなってしまいそうだ。

それにしても、シートを倒せないのは辛いなぁ。

せっかくサンルーフ(夕張曰くTバールーフと云うらしい)が付いているんだから、寝転がって星を見れれば最高だったんだけど。

峠に登れば、それはもう綺麗に見えるはずだ。

「……夕張は提督に会えたのかなぁ」

「それより、何で私まで連れて来たのよ」

冬の高い空にも似た瑠璃色の髪をかき分け、助手席に座る叢雲が言う。
言葉の節には棘が目立ち、あからさまに不機嫌そうだ。

「だってさ、提督のこと気にならないの?」

「アイツ自身はどうでもいいの。ここで問題を起こしたり、ましてや事故を起こして死なれたりでもして、私達にも飛び火するのが嫌なだけ」

「そんなこと言って、さっき物陰から見てたじゃん」

「あれは指定の場所以外で煙草を吸っていたから、注意しようとしただけよ」

「へぇー」

「なにをニヤニヤしているの」

鋭い眼光が私に向けられる。
あんまり揶揄うと後が怖いな。

不意にクルマの音が聞こえてきた。
これだけの交通量の中でも聞き取れる程に、存在感を放つエキゾースト。

おもむろにドアを開けて外に飛び出し、本線側のガードレールに身を乗り出す。
近付いて来る……かなりのスピードだ。

「来たかな……」

「何がよ」

怪訝な顔をして、叢雲が尋ねてきた。

「多分提督と岩崎さん……かな」

「そんなの、分かるもんなの?」

「GT-Rのエンジン……RB26だっけ。あの音って、結構分かりやすいんだ」

「ふーん……」
778 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/08(火) 23:47:46.50

ヘッドライトの運河から、それらは現れた。

水銀灯に照らされる二台の青い狂獣――
並走するその姿は、まるで統率の取れた艦隊のようだ。

下手に飛び込めばズタズタのボロ切れにされそうな、そんな緊張感が伝わる。

魔王Rの前を行く迅帝Rの助手席には、よく見慣れた同僚の姿があった。

夕張だ。
やっぱり岩崎さんのクルマに乗せてもらったみたいだ。

ということは、やっぱり今夜決着なのか。

あとは扶桑さんが来れば、役者は揃うのだが……。

「……あれがアイツが隠し持っていたクルマ、か。何なのあの存在感」

「魔王って呼ばれてるんだって」

「仰々しい名前ね……でも、何でそう呼ばれるのかも分かる気がするわ」

「まあ、ねぇ……私も最近色んな所周っているけど、あんなクルマ他で見たことない」

あるとすれば、あの“戦艦”か……今頃あのGTOに乗って、都高を回遊しているのだろうか。

そう思った矢先、出口から鈍い炸裂音とスキール音が響いた。
カタパルトから射出されたように、黒銀の物体が勢いよく飛び出したのだ。

あれは紛れもなく扶桑さんのGTO……いつの間に居たのだろう。
あんな派手なクルマなのに、今まで気付かなかいワケがない。

「行きましょう、川内」

「そうだね。早くしないと見えなくなっちゃう」

「誰も追えなんて言ってないけど」

「だって夕張ばっかりズルいじゃん。こんな夜戦、後にも先にも見れないかもよ?」

「やっぱり無理にでも降りるべきだったわ……」

項垂れる叢雲を車内に押し込め、私達もパーキングを後にした。
どうでもいいけど、今までで一番良いスタートが出来たと思う。

「それでは本日、最初の曲です。Deepsea Drive Machine『Ray Of Light』」
787 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/30(水) 20:19:20.91

小ネタ 江風vs長波

江風 ナンダコラ

長波 ヤンノカコラ

夕張「……何してんの、あの二人」

川内「ガンの飛ばし合い?」モグモグ

夕張「いや、それは見て分かるんだけど」

川内「どうも長波もバイクに乗ってるみたいでね」

夕張「へー。何乗ってるんだろ」

川内「何だっけ。SRXとか言ってたかな」パクパク

夕張「あら、また懐かしいものに」

川内「で、江風も最近一人でアチコチ遠征してるみたいなんだけど、たまたま行った所が長波のホームだったと」

夕張「つまり、殴り込み?」

川内「そんな感じじゃない?」ガサガサ

夕張「どーでもいいけど、さっきから何食べてんの?」

川内「ミスド。食べりゅ?」

夕張「食べるけど、その口調やめれ」

川内「ハイこれ。新作だって」

夕張「……何この青いドーナツ……」

川内「新作のハレンチクルーザーだって」

夕張「うーん……何処かで聞いたような……」
789 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/30(水) 20:21:07.09

川内「でさー。長波はどうしたいの?」モグモグ

長波「コイツがあたしの縄張りで調子こいてるのが気に食わねえんスよ」

江風「ハッ。縄張りだって?何様のつもりだよ」

長波「ア゙ァ゙!?」

江風「んだコラ!?」

夕張「はいはいストップ。年頃の女の子がそんなコテコテの不良マンガみたいなやり取りしないの」

川内「いけーやれーそのままキスだー」

夕張「ダチョウ倶楽部か」

江風「大体さぁ、ヨンヒャクの単発相手にアタシのガンマが負けるワケないじゃんかさ」

長波「バッカ、ゴヒャクだっつうの」

夕張「え?SRXに500なんてあったっけ?」

長波「ああ。ハヤシのシリンダーとクランクを組んであんだよ。ちょうどボアとストロークが1:1になるらしくて」

夕張「ほほう。それはまた」

長波「ヨンヒャクの時と比べてパンチがあって面白くなったよ。トルクも下からガツンと出るしな」

江風「云うだけならタダだよな」

長波「口だけかどうか試してみるか?」

江風「上等だコラ」

川内「アッハッハ。最近の駆逐は元気があってイイね」

夕張「血の気が多いのは結構だけど……」

江風「何だよ夕張さん。何か言いたい事でもあんの?」

夕張「……何でお互いの制服着てるの?」

長波「興味があったから」

江風「面白そうだったから」

夕張「アンタ達、実は仲良いでしょ?」

江・長「ええ、まあ」


この二人は気が合いそう。
ただし胸のサイズはry
790 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/30(水) 20:24:53.18

夕張「このまま湾岸ですね……」

岩崎「うん。提督なら横羽を選ぶと思ったんだけどなぁ」

夕張「そうなんですか?」

岩崎「得意みたいだよ。ワンエイティでもちゃんと勝負出来るって」

夕張「湾岸ならどっちが速いんでしょう?」

岩崎「どうだろ。上の伸びは若干僕の方が良いと思うケド。ホラ、コッチはT51Rだから高回転は強いと思いたいんだよね(笑)」

夕張「パワー出ているとは思っていたけど、まさかそんな大きいの入れてたとは……」

岩崎「ボンネット開けた時にさ、ドーンと大きいカタツムリが居るのってロマンが溢れていると思わないかい?」

夕張「でも一昔前なら兎も角、シングルとツインでそこまで差は出ないんじゃないですか?プラシーボ効果みたいな感じで」

岩崎「それで片付けちゃったら勿体無いさ。チューニングは積み重ねが大事だよ」

夕張「それはそうですけど……」

岩崎「提督はツキが良いからってツインにしているんだよ。ホントはRX6より、もう少し小さいタービン使いたいんじゃない?」

夕張「ワンエイティでも似たようなことを言ってたような……」

岩崎「M3のCSLみたいなワンエイティに仕立て上げたいなんてよく口にしていたよ」

夕張「外装をカーボンにでもする気だったんですかね?」

岩崎「そういう意味じゃないでしょ(笑)。そうだな、さしづめ完成されたFRってことかな」

夕張「あー……それは共感出来ますね。CSLは間違いなく、FRの完成形ですから。BMW乗ったこと無いですが」

岩崎「アハハ。僕もBMWは教習所で乗ったっきりだなぁ。日本も大概だけど、ドイツの偏執っぷりは尊敬に値するよ」

ピカッ

夕張「え……?」

岩崎「さて、役者は揃ったね。後ろを見てごらん?」

夕張「……GTO……」

岩崎「大井から飛び出して来てたんだよ。気付かなかったかい?」

岩崎「それにしても参ったなぁ。このペースで走っていて追いついて来るなんて……これは本気で行かないとね」
791 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/30(水) 20:27:39.18

空港トンネル手前――。

規則的に並ぶ水銀灯の光は白く線を引き続ける。
まるで往年の縦スクロールシューティングの様に景色が飛んでいく。

それだけで、今このクルマは非常識的なスピードで走行していると理解できた。

大井JCTから続く長い直線からの左コーナーは、一見すると緩やかなカーブだ。

しかし魔王・迅帝・戦艦の超弩級とも云うべき三台のマシンには、このカーブでさえも恐ろしい急カーブになる。

ただでさえスピードが乗りやすい区間。
加えて東海JCTを過ぎてからの下り勾配。

三台の速度は、既に300キロに迫っていた。

……未知の領域だ。

近い速度は知っている。
しかし300キロを超えた途端、ココまで世界が変わって見えるのか……と。

両足に力が入る。
グリップを握る手がジットリと汗が滲む。

先頭を走る魔王Rが最初にコーナーへ飛び込み、次いで迅帝・戦艦が雪崩れ込んだ。

肢体を包むようなセミバケットシートもあって、身体は殆ど固定されている。
それでも強烈な横Gのせいか、はたまた現実味の無い景観のせいか、血の気が引いてクラクラしていた。

「やっぱり速いね」

この人はこんな状況でも涼しい顔を崩さない。
それどころか、うっすらと笑みを浮かべている。

経験の差……とはまた違う。
危機感と云うか、そういうものが欠落しているとしか思えない。

「GTOがですか?」

「それもあるけど、魔王もさ」

空港下トンネルに入る。
青いボディに反射する照明は、さながら空を巡る飛行機雲のように淡く線を描く。

二台の青いスカイラインGT-R……元を辿ればスカイラインもゼロ戦と同じ血筋。
連なり合って駆け抜ける様は、地上の戦闘機そのものだと思えた。

しかし馴れ合いはない。
前を行く魔王に対して迅帝Rは車体を半分ほどずらして走行する。

モータースポーツにおいて、この行為は一見無意味に見えるだろう。
長い直線では前車の真後ろに着き、スリップストリームと呼ばれる空間に入ることが定石だからだ。

それにより本来自身が受けるべき空気抵抗を低減し、最高速を伸ばすという効果をもたらす。

国内最長のストレートを持つ富士スピードウェイでは、この効果を駆使して第一コーナーで勝負を仕掛けるという光景が何度も見られる。

超高速のドッグファイト、そしてフルブレーキングからのコーナーでの応酬。
見ていて胸が熱くなる。
792 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/30(水) 20:32:40.50

しかし、ここは公道。
競技上の300キロとは意味が違う。

勿論、後ろに着けばスリップの効果で最高速が伸びて追い越すことも可能だ。

前方で何かあっても対応出来るように、わざとずらしているのだ。
同時に、いつでも抜けるという牽制の意味もあるのだろう。

それにしても、提督……魔王Rに動きが見えない。
遭遇してからの加速は確かに目を見張るものがあった。

でも、それだけ。
これでは、ただ速いだけ……。

「GTOが前に出るよ」

岩崎さんの言葉で、意識がそちらに向く。
中央車線を走るトラックを挟み、左側から抜きにかかる黒銀の巨影が見えた。

「この速度から差がつくもんかなぁ……」

速度差は推定5キロ前後。
やはり最高速ではGTOが有利か。

魔王Rと横並びになりながら、空港の直下を疾走する戦艦。

喰らいつく――

「いいねえ、彼女」

相変わらず岩崎さんは笑っていた。
子供のような純真な眼差しで。

「でもね、そのクルマは仮にも魔王だよ?」
793 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/30(水) 20:33:53.10

戦艦が僅かに前に出た途端、魔王が再び差を詰めた。
いや、前に出た。

「どんなに追っても追いつけない……魔王Rは、そういうクルマだったんだよ」

多摩川トンネルを抜けると、大黒々JCTまで延々と直線が続く。

トップランナーにもなると、つばさ橋までで320キロを優に超えてくる人も居るらしい。

神奈川方面に近付くにつれ、クルマの流れはまばらになっている。
この三台なら間違いなく320キロの大台に入れてくるだろう。

魔王Rを中心に、三台が横並びになる。
前方に影は無し……オールクリア。

「夕張ちゃん」

不意に岩崎さんが呼びかけてきた。
彼の横顔に緊張の色は見られない。

「僕達みたいになってはいけないよ」

「どういう意味ですか?」

「そのままの意味さ」

タコメーターの針が頂上付近に近付く。

310……311……312……
エンジンが悲鳴を上げてもなお、少しずつその速度が上がっていく。

均衡は崩れない。

誰が一番速いのか。

その答えが出たところで、何の功績も称号も得られない。

この場に身を置けた……この経験が、いつか何かに変わるのだろうか。

315……316……317……
扇島のコンビナート群がやけにあっさり視界から消えていく。

「君は艦娘だ。それは君にとって生涯誇れることだろう」

エキゾーストや風切り音が遠のいていく感覚。
そのせいか、岩崎さんの声はやけに透き通って聞こえた。

「でもね、こんなことは精々酒の肴で良い。酔っぱらいが零した、嘘かホントか分からない程度のね」

319……320……321……
つばさ橋手前、ついに320キロを超えた。
794 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/30(水) 20:35:25.46

私は、本当に頑張ったのでしょうか――


思えば私には何の取り柄も無かった。

何かに夢中になったことも、やりたいことも思いつかない。

誰も愛せないし、愛された記憶も無い。

それなら、無理して生きることもなかったのかもしれない。


艦娘としての適性があると分かった時、直感した。

ああ、きっと私はこの為に生かされたのだと。

不思議と恐怖は無かった。

いつかは花も枯れていく。

それが早いか遅いかの違いでしかない。

誰かが私を必要としてくれる。

本当はそれだけを望んでいたのかもしれない。


例えば今、ここで舞い散ることになっても、

それでも良いように思っている。


明日を落とすことになっても、

別に構わない。


私は、どんな風に頑張れば良かったのでしょうか――


スピードメーターの表示は320キロを超えている。

そういえば、提督はいつも何て言っていたっけ。


ああ――そうだ。
795 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/30(水) 20:37:38.13

岩崎「……ちょっとマズいかな」

夕張「えっ?」

岩崎「GTOが揺らいでる」

夕張「それって……」

岩崎「うん。このままだと危ないね」

夕張「………!?」

岩崎「ココで大黒々線に入って、一旦休めたいところではあるけど……問題は提督だ」

夕張「……提督が?」

岩崎「かつてない程乗れていることには間違いないんだけどねぇ」

夕張「??」

岩崎「何事も『過ぎて』しまうと毒なんだよ」

夕張「……度が過ぎているってことですか?」

岩崎「そうそう。正直僕も、隣に夕張ちゃんが乗っていて話をしているから冷静でいられるけど――」

夕張「……それ以上は言わないでください」

岩崎「そうだね……今は目の前に集中しようか」
796 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/30(水) 20:38:58.09

300キロオーバーから、一気に半分以下まで減速……都高ではよくあるシチュエーションだ。

この先は道幅も狭くなり生麦JCTでは一車線になるから、ある程度クールダウンすることも出来るだろう。

それでも戦艦はピッタリと魔王の後ろに着け、パスする機会を伺っているようだった。

――まだ息は抜けない。

肌を焼きつくようなヒリヒリとした緊張感が、それを教えてくれる。

これ程のバトルを、この先体験することは早々に無いだろう。

いや、これは本当にバトルなのだろうか?

先ほど岩崎さんが口にしかけた言葉……。

傍観者でしかいることの出来ない私は……ただ一瞬でも早く、この夜が終わってくれることを願うしかなかった。
797 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/30(水) 20:40:21.73

なあ……見ているか?

お前のRはまだ、あの頃と変わらない姿で走っているぞ。

岩崎だってそうだ。

相も変わらず、涼しい顔をしてココを走っている。

お互いいい歳になったっていうのに、笑えるだろう?

このRは最高だよ。

この存在は俺が死ぬまで、きっと塗り替えられることは無いだろう。

それでも俺がこのクルマに乗るのは、これが最後だ。

こうして都高に上がることも最後になる。

お前が死んでから、コッチは色々変わったよ。

深海棲艦と名付けられたワケの分からない連中が世界の海を蹂躙して、

何の因果か、今じゃ俺も司令官様だ。

誰かを守れる、そういう人間になりたかったのヨ。


そういえば、お前ソックリの女に会えたよ。

お前も顔を会せたら、きっと驚くさ。


あれから10年以上か……早いよナ。

何だかこのRに乗っていると、お前と話しているような気分になるよ。


今夜が終わったら、それで最後だ。

ありがとう。
798 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/30(水) 20:42:22.68

その瞬間は唐突にやって来た。

生麦JCT、合流手前の急な右カーブ。

工事の影響もあり、一車線になるこのコーナーで戦艦がスピンを喫した。

何の前触れもなく挙動が破綻し、制御する暇もなく大きく半回転。

ゼブラゾーンに沿って設置されたゴム製のポールをなぎ倒し、壁寸前のところで戦艦の車体はようやく止まった。

「クルマを止めよう。大したことはなさそうだけど、このままじゃ危ない。僕は発煙筒置いて来るから、夕張ちゃんはGTOをお願い」

「わ、わかりましたっ」

クルマを降りて戦艦に駆け寄る。

暗くてハッキリとは確認できないが、車両に損傷は無さそうだ。

それでも、戦艦はピクリとも動かない。

「扶桑さん!大丈夫ですかっ?」

「あら、夕張さん……どうしてココに?」

「いわ……あ、いえ。迅帝さんのクルマに乗せてもらっていたんです。それより怪我はありませんか?」

「ええ、私は大丈夫……クルマも、ぶつかっていないし……」

「そうですか……よかったぁ」

扶桑さんの顔は、今の今までハイスピードバトルを繰り広げていたとは思えない程、穏やかな表情だった。

魔王Rの姿は既に闇夜に紛れ、同時にこの狂乱の夜が終わりだということを実感する。

私はようやく、安堵した。

「兎に角、ココで止まっているワケにも行きませんし、近くのランプで降りましょう。クルマ、動かせます?」

「大丈夫よ。ごめんなさい、心配かけて」

「謝るのは後でもいいですから、急ぎましょう」
799 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/30(水) 20:44:14.11

一方その頃――

叢雲「ちょっと!全然見えなくなっちゃったじゃない!」

川内「揺らさないでよー事故るー」ユッサユッサ

叢雲「もっとスピード出ないワケ!?」

川内「無理無理。ファイナル換えてるからスピード伸びないし」

叢雲「何それ」

川内「ギア比。パワーも無いし、多分220キロ位しか出ないよ」

叢雲「 」

川内「あ、でもやろうと思えばMR2でも300キロ狙えるって夕張が言ってたわ」

叢雲「今出ないと意味ないでしょうがっ!!」

川内「そんなこと言ってもさぁ。私峠とか環状とかが中心だから、トップスピードはあんまり求めてないんだよね」

叢雲「……完っ全に誤算だわ……」

川内「そうは言うけどさぁ、アレに着いて行けるのなんてウチには居ないよ。せめて環状辺りだったら何とかなったけど」

叢雲「……夕張や金剛のクルマでも?」

川内「似たり寄ったりだね」

叢雲 コメカミオサエ

川内「まあまあ落ち着きなって。私らはあくまで安否を確認するだけなんだから」

叢雲「……それもそうね……」

川内「そして次の瞬間、我々は衝撃の瞬間を目撃する……っ!」

叢雲「縁起でもないから止めてっ」

川内「そう云えば前にヅホにゃんから見せてもらったけど、クルマって結構簡単に宙を舞うのね」

叢雲「……な、なにそれ」

川内「何だっけ、ル・マンだったっけ?ベンツのレーシングカーがストレートでこう……」

叢雲 ゴクリ

川内「……離陸したのち、縦に大回転……」

叢雲「冗談でしょ……」

川内「マジマジ。今頃誰かがつばさ橋辺りで~」

叢雲「……止めろっつてんでしょ!」ビンタ

川内「顔はやめてよぉ」

叢雲「やかましいっ!」
800 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/30(水) 20:45:30.99

川内「うーん……大黒々にも居ないか」

叢雲「それにしても、こんな時間だってのに結構人が居るものね」

川内「都高だと一番大きいパーキングだしね。あ、何か飲む?もしくは食べりゅ?」

叢雲「別に空腹ではないわ。あとその語尾止めなさい」

川内「夕張にも気持ち悪いって言われたんだけど、そんなに変かなぁ?」

叢雲「……アンタが云うとウザい」

川内「酷っ」

叢雲「事実を述べたまでよ」

川内「ブー……ん?あれ?」

叢雲「何よ?」

川内「あそこに居るの、由良じゃない?」

叢雲「え?」

川内「おーい。由良ぁ」ガバッ

叢雲「私服でもあのポニーだとすぐに分かるわね……」

由良「へ?川内に叢雲ちゃん?どうしてココに?」

川内「叢雲がさ、提督が心配だーって私に運転させたのよ」

叢雲「そ、そんなこと一言も言ってないでしょ!?」

川内「で?由良は何してたの?というか、何で来たのさ」

由良「クルマよ。当たり前じゃない」

叢雲「……ウチには自転車で行くようなバカも居るでしょ」

由良「ああー……」
801 : ◆v5iNaFrKLk :2015/09/30(水) 20:46:23.52

川内「クルマ!?どれどれ!?どんなのに乗ってるの!?」

由良「どんなのって……あそこにあるスカイライン」

川内「あれ?ヅホにゃんのクルマじゃん」

由良「うん。借りたのよ」

叢雲「で、何で由良さんはココに?」

由良「何だか寝付けなくてね。ちょっと散歩してたら、ちょっと出てみないかって誘われたの」

川内「誘われた?ヅホにゃんに?」

叢雲「クルマを借りたって言ってるんだから、瑞鳳ではないでしょ」

川内「あ、そっか」

由良「さっきまでココに居たんだけど、ソフトクリーム買いに行くって売店に……」

川内「あ、いいなぁ。私も買ってこよっかな」

叢雲「太るわよ」

川内「私食べても太らない体質だし」

叢雲「あ〝?」

「お待たせー」トテトテ

由良「あ、帰って来た」

川内「……あれ?」

叢雲「……ちょっと待って……何で……」

「あっ――」コケッ

ベチャッ

由良「わっ、大丈夫ですか――」


由良「扶桑さんっ」


扶桑「心配要らないわ。ソフトクリームとフランクフルトは無事よ」

由良「いや、ソフトクリームより……って、どんだけ買ってるんですか」

叢雲「……折角の登場シーンだってのに、締まらないわね……」
808 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/10/01(木) 18:43:30.96
乙!これで都高編のバトルはひとまず終了?かな、都高編エピローグ後に次のステージといったところか。
815 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/12(月) 23:56:02.01

小ネタ ある人の呟き

瑞鳳「ハァ……」

夕張「どうしたのよ、溜息なんか吐いて」

瑞鳳「……私、最近出番が全然無い……」

夕張「あ、ああ……」

瑞鳳「K4GPだってとっくに終わっちゃってるし、ラリーネタも……」

夕張「うっ……そういえば」

瑞鳳「なんか私、忘れられているんじゃないのかなぁ」

夕張(何も言えねぇ……)

「忘れられているって……?」

夕張「そ、その声は……!?」

千歳「ウフフフフ……」

夕張「ち、千歳さん……!」

千歳「割と最初の頃に名前が出ていたのに、待てど暮せど出番は無し……言葉を借りるなら、まさに『不幸』だわ……」

瑞鳳「そういえば私が名前を口にしたんだっけ……」

千歳「私もクルマ買ったら出れるのかなー……でも、このスレもうすぐ終わっちゃうしなー……」フラフラ

夕張「と云うか千歳さん、また呑んでますね!」

千歳「呑みたくもなるわよー……ああー出番欲しいー……」

バタッ

瑞鳳「あ、倒れちゃった」

夕張「千歳さーんっ!」


なかなか出せるポイントが無かった……
816 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/12(月) 23:57:03.02

産業道路沿い・とある店

提督「おう、来たな。お疲れ」タバコスパー

夕張「提督、何か久々に会った気がしますね……」

提督「確かに、都高で会わない方が珍しいからな」

夕張「そうじゃなくて、出番的に……」

提督「そういうこと言わない」

夕張「あ、ハイ」

提督「さてと、どういうことか説明してもらえるか?」


提督「山城よ」


夕張「……は?」

扶桑?「………」

提督「由良から連絡が来た。俺達はまんまと騙されていたってことだよ」

夕張「ちょちょちょ、待ってください。ココに居るのは間違いなく……」

提督「だから、それが間違いだったのよ。本物の扶桑は今頃、大黒々で由良と一緒に居るよ」

扶桑?「……そうね。バレちゃったなら仕方ないわ」ファサッ

夕張「……ウィッグ……!?」

山城「ええ。ココに居るのは間違いなく、扶桑型戦艦、妹の方の山城よ」

提督「まさかのキャスティングだったな」

夕張「……どういうことなんですか……」

山城「どうもこうも、私が姉様のフリをして走っていた。ただそれだけの話」

提督「……由良から連絡が入った時は驚いたよ。まさかお前だったなんてな」

夕張「い、一体何の為に……」
817 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/12(月) 23:58:01.89

山城「そうね。ソイツが持っている写真が原因かしら」

提督「……ああ」

夕張「もしかして……亡くなった彼女さん、ですか」

山城「本当に偶然だったけど……正直驚いたわ。姉様ソックリな女の人が写っているんですもの」

提督「しかし分からんな。お前が扶桑のフリをして走ることと、どう繋がる」

山城「私はあくまで姉様の為に動いたまでよ」

提督「だから、それがどうしてこの現状になるんだ」

山城「アンタが姉様を遠ざけるからじゃない。昔の女をいつまでも……女々しいったらありゃしない」

提督「……ま、そこは否定できんわ」

山城「だから、その思い出を潰してあげようと思ったのよ」

夕張「いや、あの……それだとちょっと端折り過ぎじゃ……」

山城「あ、クルマは元々姉様が所有しているものだから」

提督「へえ、それは意外だな」

山城「私は反対したのよ、危ないし。でも、提督と同じ趣味を持ちたいからって」

夕張「その結果があんなモンスターマシンですか……」

山城「やり過ぎよね、正直」

提督「で、どうだ?目的は果たせたのか?」

山城「……さて、ね。どうでもよくなってきたわ」

岩崎「ちょっといいかな?」

山城「ああ、貴方が噂の迅帝さん?」

岩崎「岩崎だよ。ところで、魔王Rのこと……何処で知ったんだい?」

山城「……姉様がね、普段このクルマを預けている人から教えてもらったらしいの」

岩崎「その人は、もしかして――」

提督「十中八苦、朝日さんだろ」

山城「そう。あの人、元艦娘なんですってね。世間は狭いものだわ」

提督「こんなクルマを組めるとしたら、あの人しか居ないだろうしな」

夕張「……やっぱり、凄腕なんですね。朝日さんって……」

提督「腕もそうだが、ただでさえ元艦娘……しかも工作艦だぞ?案外妖精と一緒にクルマを組んでいるんじゃないのか?」

夕張「んなアホな」

提督「そうじゃなきゃRといい、このGTOといい……作るもんが毎度毎度速くなり過ぎだっての」

岩崎「そう云えば朝日さんが作業している姿って、あんまり見かけなかったね」
818 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/12(月) 23:59:34.30

山城「ま、結果としては私の負けね」

提督「負け、ねえ……本当にそう思っているのか?」

山城「あんな所でミスっているんだもの。認めるしかないじゃない」

提督「そうは言っても、このGTOの方がRより速かっただろう」

山城「誰が速いかじゃなくて、誰が生き残ったか、でしょ」

山城「あのまま壁に突っ込んでたら最悪お陀仏よ」

岩崎「ふむ、確かに」

山城「……別に私としてはそれでも良かったけどね。死に場所が海上か陸上かの差でしかないわ」

提督 ピクッ

山城「所詮私達は兵器なワケだし、いずれお役目御免で捨てられるでしょうからね」

夕張「そんな言い方……っ!」

山城「何よ、事実でしょ。しょうもない希望を見る位ならいっそ……」

提督「チョップ」ズビシ

山城「痛っ!?」

提督「今のは身勝手な思いに振り回されたクルマの分だ」

山城「ハァ!?」

提督「それとGTOの持ち主である扶桑の分。そしてGTOを組んだ朝日さんの分」

山城「ちょ、ちょっ……痛っ!止めなさいよ!?」

提督「それとコレは自らを兵器と称した事へのチョップ。ウチの人数分な」

山城「多過ぎでしょ!?や、やめ……」

提督「そしてコレが、俺の怒りを込めた一撃だっ!喰らえ!モンゴリアン!」

山城「――ッ!」

プニュ

山城「……は?」

提督「ふむ、文句なし」ムニュムニュ

夕張「……提督……?」

提督「Fカップ」モミモミ

岩崎「ほぅ」

山城「~~~~~~っっっ!!!!???」

夕張「な、何してやがるんですか!?憲兵に突き出しますよ!?」

提督「鎮守府の外だから。大丈夫だ、問題ない」ムニムニ

夕張「なら警察ですっ」

提督「それはアカンな」パッ

岩崎「いいなぁ……」

夕張「自重しろっオッサン共!」
819 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/13(火) 00:01:13.57

提督「ま、理由はどうあれ。お前はもう都高に上がるな」

山城「アンタがそれ言えるの?」

提督「俺だから言えるの。散々やってきた俺だからな」

山城「何それ」

提督「ついでに、俺はもう走らん。都高は今日で終わりだ」

山城「は?」

夕張「本気ですか!?」

提督「マジマジ。降りるよ」

岩崎「やっぱりか」

提督「あ、分かってた?」

岩崎「うん。そんな気はしてたよ」

提督「なので、ただのクルマが好きなオッサンに戻ります♪」

夕張「ええー……」

山城「じゃあそのRも用済みよね?確かZも買ったんでしょ」

提督「用済み、か……確かにな」

山城「なら、ココで壊しても問題ないわよね?」スッ

提督「オイオイ。流石に破壊するのはやめてくれ。スト2のボーナスステージじゃないんだから」

山城「元はと云えば、アンタがいつまでもこのクルマを持っているのが原因でしょうが」

提督「やめろって。それに、そのクルマの行先はもう決まってるんだ」

夕張「へ?何処ですか?」

提督「舞鶴。多少手直しをした後、朝日さんの知り合いに売られるよ」

夕張「マジですか」

提督「昔の同僚が程度の良い32Rを探しているらしくてさ。腕も良いみたいだし、あの人なら問題無いだろうって」

夕張「同僚……ってことは、その人も艦娘なんですかね?」

提督「同じ元敷島型だってよ」

夕張「わお」

提督「そんだけ離れてくれていりゃあ、二度と見ることもないだろうからな。ようやくこのRともお別れだ」

岩崎「そうか、寂しくなるなぁ」

山城「……まあ、それならそれでいいわ。後は、姉様への態度を改めてくれれば、私もココに来る必要はないしね」

提督「ん。それならいいさ。ちょうど本人も来たみたいだし」

山城「え?」

夕張「あれは……瑞鳳の鉄仮面と川内のMR2?」

提督「アイツら、今まで大黒々に居たらしい。そんなに距離もないから呼んでおいた」
820 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/13(火) 00:02:49.36

扶桑「山城。お疲れさま」

山城「……ごめんなさい姉様。勝手にクルマを持ち出した挙句、負けました」

扶桑「勝ち負けなんてどうでもいいのよ。貴方が無事なら……」ギュッ

山城「ハイ……」

扶桑「方法はどうあれ、私を思ってのことだったのでしょう?咎めるつもりなんてこれっぽっちもないわ」

山城「……ハイ」

提督「ま、とりあえず一件落着かな?」

川内「ところで提督。扶桑さんって何であんなに速いの?全然着いていけなかったんだけど」

由良「隣に乗っていましたけど、凄過ぎて何が何だか……」

提督「……あー。それは俺にも分からん」

夕張「そ、そんなに凄いんですか?」

提督「前に横に乗った叢雲が失神していたな」ワハハ

叢雲「ちょ!?言わないでよ!」

川内「マジで!?勝負してくれないかなぁ」

提督「やめとけ。マジになったら俺でもキツい」

夕張「ええー……」

提督「女には秘密の一つや二つはあるもんなんだろ?扶桑の方から語らん限り、無理には聞かないさ」

夕張「それを提督がいいますか」
821 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/13(火) 00:03:36.87

一週間後 執務室

提督 カリカリ

叢雲 カリカリ

提督「はぁ~……」

扶桑「溜息なんて吐いて……どうかしましたか?」

提督「ヲウ、扶桑=サン。居たの?」

扶桑「今日の秘書艦ですから」

提督「そりゃ溜息だって出ますよー……」

扶桑「私で良ければ、お聞かせください」

提督「だって昨日もハンコポンポン。一昨日もハンコポンポン。その前もハンコポンポン」

扶桑「色々バタバタしちゃいましかたからね」

提督「多分、今度の東京モーターショー開催期間もハンコポンポン。毎日毎日同じことの繰り返しで、生きている気がしないんだよぉ」

扶桑「ところで提督?芸風を変えたんですか?」

提督「ハァ……クルマ乗りたい」

扶桑「クルマ、処分しちゃったんですよね?」

提督「まあね。Rは今頃舞鶴だ」

扶桑「私のGTOに乗りますか?」

提督「……結局、何であのクルマを仕上げたんだ?」

扶桑「気が付いたら……ではダメですか」

提督「……まあ、俺も気が付いたらこうなってたしなぁ」

扶桑「フフ。休憩がてら、色々お話を聞かせてください」

提督「おっ、語らすと止まらないぞ?」

扶桑「ええ。是非」
822 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/13(火) 00:05:16.95

工廠

瑞鳳「じゃあ結局Rも売っちゃったんだ」

夕張「うん。ワンエイティも使える所は取っちゃったし」

瑞鳳「そういえば結局魔王号見れてないよ」

夕張「あれ?そうだっけ?」

瑞鳳「それで、夕張は何してるの?」

夕張「泥落としついでにパッド交換」

瑞鳳「泥?インテ乗ってたんだ」

夕張「たまにね。DC2だと来年から出れなくなるみたいだから」

瑞鳳「へ?そうなの?」

夕張「規定が改正されて殆ど旧車は締め出し状態だよ。地方戦とかは出れるけどねぇ」

瑞鳳「えー、参加車両減っちゃいそうー……」

夕張「結構てんやわんやしているみたいだよ?だからこのインテも練習用に格下げ」

瑞鳳「折角仕上がってるのに、勿体無いねぇ」

夕張「まあね。どうせ練習用にするならもっとボロいのがいいかな」

瑞鳳「解体屋に転がってるような?」

夕張「そうそう。インテRだと良いクルマ過ぎるのよ」

瑞鳳「その言葉を待っていた」

夕張「……え?」

瑞鳳「実はN1仕様のスターレットを見つけちゃったんだけどー……共同で買わない?」

夕張「……また何か企んでるんでしょ」

瑞鳳「んー?そんなことないよー」

夕張「まさか、由良も絡んでるんじゃないでしょうね」

瑞鳳「……テヘッ」

夕張「ま、いっか。で、そのスターレットって?」

瑞鳳「うん。これなんだけどねー」
823 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/13(火) 00:06:39.60

談話室

川内「あ、お疲れー」

由良「お疲れ。どう?そっちは」

川内「大変だよ、秋刀魚捕り」

由良「やっぱり?コッチも全然」

川内「だよねー。ああ、夜戦したいなぁー」

由良「そういえばMR2預けたんだって?」

川内「うん。ちょっとばかしリメイクを」

由良「へえ。何する気?」

川内「ただの整備だよ。ちょっと手直しもするけど」

由良「パワーアップはしないの?」

川内「うーん……今のパワーでも充分かなぁ。流石に湾岸みたいなトコだとキツいけど」

由良「そんなもんかしら」

川内「提督にも言われたんだけど、下手にイジってお金をつぎ込む位ならタイヤとオイル替えろってさ」

由良「自分はつぎ込んでるクセにね」

川内「アハハ。むしろ自分が散々やってるからじゃないの」

由良「それもそっか」

川内「由良こそ何か裏でやってるんでしょ。ヅホにゃんとダートコース行ってるって聞いたよ」

由良「あら、バレてたの?」

川内「ねえねえ、何してるの?」

由良「ただの練習よ。提督から練習場所を教えてもらったの」

川内「マジ?由良も走るの?」

由良「私には無理よ。でも、少し理解してあげようと思ったの」

川内「ふーん。クルマ買わないの?」

由良「うーん、それはまだ分かんない」

川内「えー?どうせなら買おうよー」

由良「いずれ、ね?」

川内「それは期待していいのカナ?」

由良「秘密」

川内「えー」
832 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/21(水) 00:00:20.93

小ネタ 扶桑GTOの仕様

ダークグレーの後期型。
3.2L化された6G72にT88を装着して推定800馬力。
各部軽量化を施してはいるものの、エアコン等の快適装備は残されている。
白いワーク・マイスターが映える。


提督「こうして見るとその辺に居るような湾岸・ゼロヨン仕様って感じだな」

夕張「こんなハイ・チューンドマシン、その辺に居るワケないでしょ……」

扶桑「最初はココまでするつもりはなかったのだけど……」

提督「しっかし速かったよなぁ。平気で直線置いて行かれるし」

扶桑「あら、GTOはノーマルでも速いんですよ」

夕張「そういえば、N1でもGT-Rとほぼ互角でしたっけ」

提督「しっかし、何でGTOを選んだんだ?」

扶桑「そうですね……このクルマって私に似ているなーって」

提督「ああ、ボン・キュッ・ボンだしな」

夕張「そこ!?」

扶桑「境遇とかなんですけど……」


関係ないけど、N1のGTOを調べていたら馴染みのあるKORGのロゴ……。
そう云えばJGTCにも同じカラーリングのポルシェが居たなと思い調べたら、サザンの野沢氏のチームだったことを今更知る。
そうか、だからコルグのシンセばっかり欲しくなるワケだ(本当に関係ない)
833 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/21(水) 00:08:10.06

小ネタ 調べてたら懐かしくなったので

由良「何見てるの?」

夕張「JGTCのムック本。こうして見ると面白いのよね」

川内「へー、SR載せたスカイラインって面白そう」

瑞鳳「えっ!?GTに037出てたの!?」

提督「おー懐かしい。初期のGTはホントごった煮だったからな」

夕張「CカーにJSS、N1、グループA……ホントに異種格闘技戦ですね」

瑞鳳「このZってIMSAの?」

提督「スゴい時なんかR30からR33までのスカイラインが同時に走ったりしてたなぁ」

由良「提督はこの辺リアルタイム世代ですよね?」

提督「まあな。何回か富士まで見に行ったもんだ」

夕張「じゃあ、一番印象に残っているのはレースは?」

提督「あー、いや……実はさ。レース当日は見るので精一杯というかさぁ。帰って来た後雑誌で知るってこともあったわ」

川内「えー?見てれば分かるもんじゃないの?」

提督「そりゃあホームで見たり、サーキット内放送とか聞けば分かるさ」

提督「でも例えば富士の100Rとか、ちょっと外れたトコで見るともうダメ。特にピットストップとかで順位が入れ替わるとサッパリだ」

瑞鳳「見えないもんね」

提督「あと朝早いから途中で眠くなる(笑)」

夕張「何しに行ったのか分かりませんね、それじゃあ……」

提督「ワハハ。でも初めて行った時は本当に驚いてさ。音もデカいし、思わず耳塞いじゃったよ」

川内「自分のクルマだって相当じゃんか」

提督「筑波とかだと音でスタンドが揺れた」

川内「何それ怖い」

瑞鳳「でも生で見てみたいなぁ」

提督「そうだなぁ。俺も久々に行きたくなってきた」


>>1が初めて見たのは02年のJGTC富士。
HKSベンツが成績的にも物理的にも炎上した年だから間違いない。
834 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/21(水) 00:11:55.39

夜・工廠

夕張「ふーむ……」カチャカチャ

由良「夕張?また何かやってるの?」

夕張「あ、良い所に。ちょっと手伝ってー」

由良「お風呂入ったばかりだから、汚れるような事は嫌よ?」

夕張「大丈夫。ブレーキ踏んでもらうだけだから」

由良「ああ、エア抜き?」

夕張「うん。フルード交換したからね」

由良「で、熱心に整備しているみたいだけど何かあったの?」

夕張「近い内にやるであろうバトルに向けてね」

由良「バトル?」フムヨー

夕張「川内よ。前のが有耶無耶になっちゃったし」モウイッカーイ

由良「ああ、だからMR2預けたんだ」

夕張「短期間で上手くなったしね。難しいクルマでよくやるよ」

由良「で、アンタはどうするの?」

夕張「私は私。出来うる限りのことをするだけだよ」

由良「ふーん」

夕張「な、なによ」

由良「別にぃ。楽しそうだから羨ましいかなって」

夕張「そうかな?」

由良「さっきからニヤけているわよ」

夕張「あらー?」

由良「フフ。まあ事故を起こさないように頑張りなさいな」

夕張「き、気をつけまーす……」
835 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/21(水) 00:16:38.81

江風「へー。川内さんも自分でイジるようになったんだ」

川内「自分のクルマだから、やっぱりある程度はね」

江風「単車だってイジってなかったでしょうに」

川内「最近は自分でやってるよ。ホラ、艤装みたいなもんだから」

江風「艤装かぁ。確かに」

川内「ま、流石に夕張みたいなことは出来ないけどね」

江風「それでこの人に、かぁ」

明石 イエーイ

江風「大丈夫なの、この人」

明石「任せなさいって。本職ですからっ」

江風「いや、本職は工作艦だよね」

明石「今回はエアロや剛性アップが目的だから、ある意味本職同様だって」

江風「本気で言ってるの?ねえ?」

川内「で、モノは出来てるんだっけ」

明石「バッチリ。ボンネットにエンジンフード、それにアンダーカバーも」

川内「さっすが。仕事が早い」

江風「ライトも変わったんだ」

明石「空力を考えて固定式にしてみました。どうせならがっつりエアロ組み込みたかったけど」

川内「今の見た目が良いんだよ」

明石「あ、でもちょっとワイド化しちゃった♡」

川内「え、ウソ」

明石「フェンダーを叩き出したの。ついでにトレッドも拡がったから、前より踏ん張りが効くと思うよ」

江風「見た目変わんないじゃん」

明石「それは私の技術力」フンス

明石「それとフロント周りを見直して、足も一部ピロ化してあるから、初期応答性がよりクイックになったと思う」

江風「ロールバーだけじゃないんだ」

明石「車体が捻じれ易い所に手を加えたの。ただでさえ古いクルマだから、気を使わないとね」

川内「ありがとね。あとは走って様子を見るよ」

明石「いいのいいの。良い暇潰しになったわ。何かあったらまた来てくださいな」

川内「さて、これで夕張をやっつけますか」
836 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/21(水) 00:20:17.98

芝ふ浦PA

金剛 ジッポートリダシ

金剛 フー

陸奥「あら、貴女ってタバコ吸うのね」

金剛「ムっちゃん?久々ネー」

陸奥「お久しぶり。隣いい?」

金剛「イエー。カモーン」

陸奥「それにしても意外だわ。吸っているところ、初めて見たわ」

金剛「人前で舌を出したい気分ヨ」

陸奥「それ手巻きなの?」

金剛「イエース」

陸奥「ハイハイ。そういえば貴女のクルマってハチロクじゃなかったかしら?」

金剛「買い替えたヨ。流石にボロボロだからネ」

陸奥「ふぅーん」

金剛「ムっちゃんこそ、どうしてココに居るネ?」

陸奥「真夜中のドライブって気持ちいいじゃない?」

金剛「ドライブ、デスか」ニヤッ

陸奥「なぁに、その意味ありげな笑いは」

金剛「三京の白いスープラと云えば有名ネ。しかも操っているのはセクシーダイナマイトな女性とか」

陸奥「ふうん。それで?」

金剛「オーケー。つまり貴女が三京の白いスープラってことデスよ」

陸奥「あらあら」

金剛「で、実際のところドウデス?」

陸奥「買い被り過ぎ。言っとくけど、貴女のハチロクと違って私のは殆どノーマルだからね」

金剛「でも噂があるのは事実ヨ」

陸奥「ま、悪い気はしないわ」

金剛「そこで一つお願いがありマス」

陸奥「お断りします♡」

金剛「まだ何も言ってまセーン!」

陸奥「どうせ勝負しろって言いたいんでしょ?私はただ、真夜中の散歩を楽しんでいるだけですもの」

金剛「ならその散歩に同行させてヨ」

陸奥「それなら構わないけど……はぐれても知らないわよ?」クスッ

金剛「言うネー」

陸奥「あ、そういえば。インターセプターってまだ走っているの?」

金剛「……彼ならもう居ないヨ」

陸奥「そう、残念だわ」

金剛「狙ってたノ?」

陸奥「興味があっただけよ」
837 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/21(水) 00:22:13.60

青葉 カキカキ

江風「青葉さん?何を書いてるんだ?」

青葉「これはですねぇ、この周辺で所謂走り屋さんをしている艦娘を纏めたデータでして」

江風「え、そんなに居るもんなの」

青葉「ちょっとドライブ程度からガチな方まで様々ですけどね」

江風「へぇー。ちょっと見せてもらっていい?」

青葉「どうぞどうぞ。最新のデータですよ」

江風「うわ、多いな。こんなバカな事ウチの連中位かと思っていた」

青葉「Hakoneの金剛レーシングは内外で有名ですしね。陸奥さんが80スープラ、伊勢・日向さんのお二人は共にランエボに乗っていたりしますね」

江風「足柄さんがS14の後期、三隈さんがプジョー106……葛城さんはルノー・V6ターボって何だそりゃ?」

青葉「意外と外車に乗っている方も多いようですよ」

江風「こうして見ると戦艦や重巡が多いなぁ。水雷だと……清霜がシビック?」

青葉「そうなんですよ。バイオレットのカッティングが派手なサイド管で車高短ペッタンコなシビックに乗っていました」

江風「……はぁ?」

青葉「何でも武蔵さんに勧められたそうですよ。クルマはやっぱりワンダーとか何とか」

江風「ああ、もうワンダーの時点で察しがついた」

青葉「水雷戦隊の方ですと、クルマよりバイクの方が多いですね。先日の長波さんはSRXですし、菊月さんはポケバイのレースに出ているそうです」

江風「意外と多いんだなぁ。島風がR1-Zに、木曾さんはニンジャ?」

青葉「GPzの方ですよ。天龍さんに影響されたそうです」
838 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/21(水) 00:23:45.96

青葉「しかし濃ゆさでいったらやはりウチがダントツですね。夕張さんを筆頭にアチコチで名前が売れています」

江風「提督からしてアレだもんな」

摩耶「ん?お前ら何してんだ」

青葉「おや摩耶さん。秋刀魚漁お疲れ様です」

摩耶「うっせ。あたしらが獲ってるワケじゃねえよ」

江風「青葉さんがこの辺で走ってる艦娘を纏めたらしいスよ」

摩耶「暇なことしてるなー。どれどれ」ヒョイ

青葉「摩耶さんもヤビツや湘南辺りでは未だに名前を聞きますよ」

摩耶「昔ヤンチャしてた頃になー……そう云えば川内ってバイク乗り換えんの?」

江風「ウソ、聞いてない」

摩耶「なんかCBRとYZFのこと訊かれたからさ」

江風「えー……そんなもん乗られたらますます敵わないじゃんかー……」

青葉「大型の取得は検討しているみたいですよ?今はMR2がありますし、あくまで将来的に、といったところでしょうか」

江風「うーん……アタシも取ろうかなぁ」

摩耶「大型は殆ど趣味の領域だぞ。どうしてもってのが有るなら良いと思うケドな」

江風「油冷乗りたい!油冷!」

摩耶「すっかり染まったな、お前も……」

青葉「しかし意外ですね。NSRはかなり気に入ってるように思っていましたが」

摩耶「アイツはああ見えて誰かと張り合ってないと気が済まないタイプだからな。ま、当面は変えないだろ」

江風「張り合う相手?」

摩耶「ちょうど近くに居るだろ。アイツを走りに引き込んだ張本人」

青葉「ふむ、なるほど」

摩耶「いずれ単車でも勝つ気でいるんじゃないか?だからリッターもちょっと考えてるんだろ」

青葉「はっはーん。面白くなりそうですねぇ」
839 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/21(水) 00:33:02.80

小ネタ 若葉が弾き語りしている姿を想像してください

若葉「ラット1つを商売道具にしているさ」

若葉「そしたらベンジー、あたしをグレッチでぶって~」

………

若葉「………浅井健一にグレッチで殴られる……」

若葉「……悪くないっ!」ハァハァ



夕張「ウチの若葉ちゃんは何処に向かっているのだろう」

由良「ドキドキするようなイカれた人生を送りたいんじゃない?」


むしろ時雨がラット使いそう。
ターボラット。

848 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/23(金) 17:07:46.01

小ネタ ワンダー清霜

江風「……うわぁ……何だこれ」

長波「言うな……みなまで言うな……」

清霜 フンス

江風「見てる……めっちゃ見てるよ……」

長波「見たらダメだぞ。調子にのるから」


清霜のワンダー・シビック

どう見てもアレなシビック。後期型。
エンジンは殆どノーマルだが、内装は外されているので意外と速い。
ホワイトのボディにバイオレットのラインがやたら派手。
清霜自体はクルマについて無知だが、メルセデス・アルトとかは貼らない。


江風「また何ちゅうクルマに乗ってんだよ……」

長波「武蔵が昔乗ってたんだと」

江風「それを聞いて乗り始めたって感じか」

清霜「どうかなどうかな?カッコいいでしょ!」

江風「お、おう……」

清霜「試しに乗り始めたけど、クルマって速いんだねぇ!」

長波「いいからエンジン止めろ。うるせぇんだよ」

江風「サイド管だろ、コレ……子供泣くわ、この音量……」

清霜「でもさぁ、何かすんごいピョンピョン跳ねるの。スピード出してると気にならないんだけどね」

江風「オイオイ、タイヤがもうボウズだぞ!?」

長波「Sタイヤなんだぜ、それ」

江風「勿体無いな……」

清霜「でねでねっ。ぶいてっく?っていうのが気になるんだけどさ」

江風「ワンダーに載るもんなの?」

長波「武蔵は載せてたらしい。B18Cだったかな」

清霜「これを乗りこなして最速になったら、戦艦になれるかなぁ」キラキラ

江風「アイツにとっての戦艦って、どんなイメージなんだよ」

長波「単純なんだよ、頭の作りが」


今だったら、あえてシングルカムのVT?に乗るのが渋いと思う。
849 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/23(金) 17:08:29.68

市川PA

由良「ハイ、MAXコーヒー」

夕張「何故にそのチョイス」

由良「嫌いだった?」

夕張「いや、いいけど……」

由良「それにしても、ワンエイティ随分変わったね」

夕張「……私ね、少し分かったことがあって」

由良「何よ急に」

夕張「チューニングって、結局代償というか……因果応報なんだなって」

由良「え……ホントに何なの」

夕張「いいからっ。例えばさ、パワーを上げたいのでブーストを上げます。するとタービンが壊れたので交換しました」

由良「ふむ」

夕張「そしたらエンジンが壊れたので直すついでにピストンやらコンロッドを強化品に変えました」

夕張「そしたら今度はエンジンブロックが割れました。もう再起不能です、と」

夕張「なんて云うかこう……イタチごっこみたいなことを繰り返した上に、全て無になったというかさ」

夕張「そもそも良かれと思って強化品に変える事自体がクルマの寿命を縮めることになるんだけどさ」

夕張「だからチューニングって因果応報でさ。お金は勿論だけど、何も残らないんだって」

由良「本当に何なの、アンタ」

夕張「少しは語らせてくれてもいいじゃないっ」

由良「ひくわー。夕張さんひくわー」

夕張「何なのよそれっ」

由良「夕張さんひくわーフライアウェーイ」ファサッ

夕張「由良さん、腰のライン綺麗ッスね……」
850 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/23(金) 17:09:24.25

由良「と、こんな分かりづらいネタはどうでもいいのよ」

夕張「せめて川内か那珂にやらせるべきよね」

由良「それで?結局何が言いたかったの?」

夕張「いや、まあ大したことじゃないんだけどさ。オチも無いし」

由良「じゃあいいや」

夕張「酷いっ」

由良「それを分かっていても尚止める気なんて無いじゃない。それに大したことじゃないんでしょ」

夕張「まあ、ね」

由良「いいんじゃない?少しは何かを考えられるキッカケが出来たんだから」

夕張「そうだね……うん、その通りだわ」

由良「語りたいなら、後から幾らでも聞いてあげるわよ。今は……」チラッ

由良「川内との決着、でしょ?」

夕張「来たわね、夜戦号」

由良「最近『ステルス』って通り名が付いてるらしいわよ」

夕張「マジで?提督と同じじゃないの」

由良「ちなみに夕張は黄色のワンエイティ」

夕張「まんまじゃん!」

由良「アンタのはパッと見ドリ車にしか見えないからじゃない?」

夕張「こんな高い車高でドリ車なワケないでしょ」

由良「大して変わらないわ」
851 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/23(金) 17:10:23.06

川内「ようやく、自分自身でも納得出来るようになったからね。改めて勝負させてもらうよ」

夕張「なーんか随分派手になっちゃって……」

川内「そうかな?かなり大人しめな見た目だと思うケド」

夕張「確かにエアロを組んだとはいえ、そこまで派手な外見ではないけどさ……」

夕張「バンパーの飛び石跡、ホイールに付いたブレーキダスト、というかSタイヤじゃないコレ」

川内「あ、やっぱりバレた?」

夕張「とにかく、ちょっと見ればコレがどんな走り方しているのか大方見当がつくわ」

夕張「無論、速いってこともね」

川内「ん~……何か褒められてるみたいで嬉しいなぁ」テレッ

川内「でもさぁ、そっちはどうなのさ」

夕張「私のは普通よ普通。どうせドリ車だもんね……」

由良「何で急に拗ねてるのよ」

川内「ただのドリ車がそんな雰囲気纏っているワケないでしょ」

夕張「ふーんだ……」

由良「めんどくさいわね、ホント……」
852 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/23(金) 17:11:24.52

それぞれの仕様

川内のMR2改

外装は明石製のシンプルなエアロで纏められている。
低いGTウィングとエアダクトが目を引く。

エンジン本体はノーマル。
吸排気系交換、純正改ハイフロータービン、大容量ラジエター&オイルクーラー装備。
CPUは何気にフルコン。

足回りはジオメトリーを見直し。車高調は勿論ロアアームも交換。
大径ブレーキローターに交換する為、前後17インチのTE37(ブロンズ)を装着。

駆動系は1.5WAY機械式LSD、シングル強化クラッチ、フライホイール軽量化。
ファイナルもローギヤード化(加速寄り)している。

アンダーコートを剥がし、軽量化。
前後タワーバー、ロールケージを装着。

足回り中心のライトチューン+αで纏められている。
コーナー一つで姿を消すことから“ステルス”とも呼ばれているとか。
853 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/23(金) 17:12:30.97

夕張の180SX改

外装は後期純正フルエアロ。
フロント部分にはMA70のターボAダクトを装着。
GTウイングを外した分、自作のアンダーパネル&ディフェーザーを装備。

エンジンは腰下ノーマル。
ポンカムとGT-SSタービンで耐久性とレスポンスを重視。

足回りはS14純正アームを利用し剛性アップ。一部ピロボール化している。
R32用キャリパーを流用しブレーキも強化。

R33ミッション、2WAY機械式LSD、強化クラッチに変更。

リヤシートを取り外し、ロールケージを装着。
剛性アップはバランスを考慮しているので難しいらしい。

純正パーツを流用しつつ、全体的に手を加えている。
本人曰くR35にも負けないらしい。
しかし由良からはドリ車扱いされている。
854 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/23(金) 17:13:35.26

喫煙所

提督 スパー

叢雲「まだ仕事残ってるんじゃないの?」

提督「今日の分は終わり」

叢雲「あっそ」

提督「……吸うか?」

叢雲「貰うわ」

提督「おう」

叢雲「で?結局、ケリはついたの?」

提督「何だよ急に」

叢雲「納得出来たから降りたんでしょ。ちゃんと答えは見つかったのかって」

提督「……まあ、一応な」

叢雲「なによ、その微妙な反応」

提督「ハハ。自分でも納得できたか分かんないだよ」

叢雲「釈然としないわね」

提督「案外そんなもんじゃないか?充実感はあるし」

叢雲「ふうん」

提督「それに、もう公道で300キロを出す根性無いわ」

叢雲「どの口が言ってるのよ」

提督「気持ちが切り替わったせいか、いかに自分が恐ろしいことしてたか気付いたワケよ」

叢雲「あの子達はどうするの?」

提督「何が?」

叢雲「軽巡のおバカ達よ。ストッパーだと思っていた由良さんですら悪ノリしてるし」

提督「ワハハ。アイツらもいずれ、今を笑えるようになるさ」

叢雲「笑える程度ならいいんだけどね」

提督「俺は都高で色々なことを教わったよ。クルマの動かし方は勿論、人間関係とかもな」

提督「俺はさ、因果応報って言葉が一番好きなのヨ」

叢雲「は?」

提督「何事も過ぎると毒だろ?食べ過ぎ、飲み過ぎ、遊び過ぎ……過ぎると悪い方向で跳ね返る」

提督「当然スピード出し過ぎればお巡りさんに捕まる。よく出来たシステムだよ」

叢雲「何を今更」

提督「でも、良い事もちゃんと返って来るんだぜ?」

叢雲「何よ、良い事もあったの?」

提督「ああ。だから今の俺が居る。積み上げて巡ったからこそ、今の俺が有る」

叢雲「それの折り合いがついたから、ようやく降りれた……って解釈で良いのかしら?」

提督「流石。よく分かってらっしゃる」
855 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/23(金) 17:14:39.24

叢雲「これからどうする気?」

提督「勿論、世の中が平和になるまで心身捧げるつもりであります」

叢雲「ウソおっしゃい」

提督「ウソジャナイヨー」

叢雲「アンタがそんなタマ?この不良司令官」

提督「じゃあ将来への妄想を暴露すればいいか?素敵な家に犬が居るような」

叢雲「何よ、素敵な家って」

提督「そうだなー……ちょっと田舎の所に住んでさ。立派じゃなくてもガレージがあって、休みの日にはそこでクルマをイジるのよ」

叢雲「あんまり今と変わらないじゃない」

提督「バッカ、気持ちの問題だよ」

叢雲「それで?」

提督「金は不自由しない程度で良いな。大金持ちになんかならなくていい。ま、クルマを趣味にしてたら金は飛ぶんだけどさ」

提督「いっそ庭に畑を作るのもいいな。時々仲間が集まったりしてさ。そんで笑いながら、最後は煙になるのよ」

叢雲「それはアンタ一人で?」

提督「勿論、家族も居るよ。子供はー……俺育てられるかなぁ」

叢雲「バカね。それを誰と築きたいかって聞いてるのよ」

提督「ふむ」

叢雲「な、何よ。何で私を見るのよ」

提督「……ダメ?」

叢雲「おととい出直してきやがれ」

提督「ああ、でもアレだ……叢雲さんがもう少し胸が大きければなぁ」

叢雲「死ね」
856 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/23(金) 17:15:40.36

時雨「結局この一連の騒動って、何が原因だったんだい?」

扶桑「そうね……一番は私かしら」

時雨「そうなの?」

扶桑「多分、クルマに乗るようになったのは……提督に近付きたいからって、そんな風に思ったんじゃないかしら」

扶桑「あんまりお金の使い道が無かったこともあって……エスカレートしちゃっただけなのにね」

時雨「それが何で扶桑のフリをすることに?」

扶桑「提督の写真のこともあるけど……いつまでも煮え切らない態度に苛立ったのかもしれないわね」

時雨「つまり山城が勝手に――」

扶桑「それでも発端が私にあることは間違いないの。だから、ね?」

時雨「……扶桑は甘いよ」

扶桑「ええ……でも、人を責めたりしても何もならないじゃない」

時雨「それともう一つ気になるんだけど、扶桑自身は元々クルマに興味があったのかい?」

扶桑 キョロキョロ

時雨「??」

扶桑「これは内緒……ね?」

ゴニョゴニョゴニョ

時雨「……へっ!?」

扶桑「ウフフ」

時雨「ちょ、ちょっと待ってよ!それって……!?」

扶桑「今あの人には私じゃなくて、叢雲ちゃんみたいな人の方が似合っているわ。それに……」

時雨「それに?」

扶桑「意外と私、幸福だから」ニコッ

時雨「う~ん……」

扶桑「そうだ。今度乗せてあげましょうか?」

時雨「え、遠慮しておこうかな……」
857 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/23(金) 17:16:31.04

小ネタ ワンダー清霜

川内「ひゃあ。すっごい音だね」

夕張「まだこういうクルマが居るんだ……スゴいなぁ」

江風「コレどう思う?」

川内「まんまレーシングカーみたいだね。いいんじゃない?」

夕張「音はともかく、中身は結構マジだしね」

江風「ええー……」

清霜「ねえねえ!これなら戦艦になれるかな!?」

夕張「あー……戦艦にはなれないけど、下手な戦艦には勝てると思う」

清霜「戦艦に勝てる……つまり!私も戦艦ってことだね!」

江風「何その誤変換的なポジティブ思考」

清霜「ん?ということは軽巡である夕張さんと川内さんにも勝てる……ってことかな?」

夕張「……おや?刃先が此方に向いた?」

川内「いいねぇ。夜戦なら受けて立つよ」

清霜「よっし!勝負です!」

江風「 」
858 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/23(金) 17:17:24.57

数十分後……

清霜 チーン

江風「……まあ、そうなるな……」

清霜「何故だぁ……ホームだっていうのに……」

江風「ちょちょちょ!何普通に勝っちゃってるんだよ!大人げない!」

夕張「いやー、ついうっかり……」

川内「挑まれた以上は全力でやらないと失礼でしょ」

江風「見てみろよ、清霜の顔!本気で落ち込んじゃってるじゃんっ!」

清霜 ズーン

夕張「清霜ちゃん、このワンダーって乗り始めてからどれ位経つ?」

清霜「……二週間……」グスッ

夕張「ということは、まだまだクルマに慣れ切ってないわね」

清霜「……毎日乗ってるけどなぁ……」

川内「ちょっと足も硬すぎて跳ねちゃってたよね。乗りずらくない?」

清霜「そういうもんだと思ってたから……」

夕張「いい?大和さんや武蔵さんだって最初からあの艤装を上手く扱えたワケじゃないわ。自分に合わせて、少しずつ慣らしていったの」

夕張「それに同じ大和型の艤装でも、皆それぞれ調整の仕方が違うの。大和さんが武蔵さんの艤装を使っても全然ダメなんだって」

川内「あー、私も神通の艤装は扱える気がしないわ」

江風「え?そうなの?」

川内「那珂はどうだか分からないけど、あの子のはピーキー過ぎる」

夕張「だから清霜ちゃんも自分に合わせた、自分が使いやすいようにセットアップしたら、もっと速くなると思うよ」

清霜「……ホント?」

夕張「バッチリよっ。戦艦も余裕でやっつけられちゃうわ」

清霜「……うんっ!じゃあ頑張る!」
859 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/23(金) 17:18:01.56

で……

江風「……ってなことがあったんだけど、あれからキヨシーどうなん?」

長波「ああー……それがさ」

江風「うわっ、何だこの音!?爆撃!?」

長波「噂をすれば……」

清霜「ヤッホー!二人ともーっ!!」

江風「……この前と音違くない?」

長波「いや、インテRだっけ?そのエンジンに載せ替えたんだわ。あたしには違いが分からねえんだけど」

江風「悪化してねえか?」

長波「あたしはもう知らん……」


のちに、Rキラーと呼ばれるとか何とか。

860 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/23(金) 17:18:53.21

川内「さて、じゃあやりますかっ」

夕張「そうね。決着つけさせてもらいますかね」

「ストーップ!」

夕・川「!?」

金剛「何やら面白そうなことになってるみたいだから、ワタシも混ぜてヨ!」

夕張「こ、金剛さん!?」

陸奥「こんばんわー」

由良「あ、陸奥さん。お久しぶりです」

川内「待った待った。これは私と夕張との勝負だよ。いくら金剛さんとはいえ、邪魔させないよ」

金剛「それは分かりマース。バット、貴女方は幸せ者ネー」

川内「……へっ?」

金剛「提督と勝負したくて市川に異動したのに……肝心の提督が降りちゃったネー……」

夕張「あ、ああー……」

川内「そういえば最初そんなだったね」

金剛「なのでっ!せめて提督の弟子達に勝たないと気が収まらいヨ!」

夕張「いつから私達が提督の弟子に……」

川内「そういうことなら……受けてやろうじゃないっ!」

夕張「あっさり受けちゃうんだ!?」

ワイノワイノ

陸奥「フフ、楽しそうね」

由良「やってることは暴走行為ですけどね」

陸奥「そうね」

由良「はぁ……ところで、陸奥さんは何で?」

陸奥「夜のお散歩♪」

由良「………」
861 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/23(金) 17:19:32.10

自分の考えを理解してもらおうとは思わない

結局外れてしまったことへの言い訳だから


それでも――

あの時間を過ごせたことを、決して忘れない


あの頃の自分を――

きっと誇れる時が来るから


今日もまた夜が来る

あの領域に行くことは、もうない
862 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/23(金) 17:21:43.08
本編は一旦これで終わりになります。
残りは小ネタやら何やらで埋めていこうと思います。

お付き合い頂き、ありがとうございました!!
863 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/10/23(金) 17:35:32.84
乙でした!おもしろかった
864 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/10/23(金) 18:19:38.22
車の知識ないけどすごく面白かった! スピンオフのような形で続きが見たい!
小ネタとして、映画や特撮・アニメの車を見て興奮する夕張たちが見たい!
某300キロタクシー(フランス版)、仮面ライダードライブのトライドロン(変形シーン)、ライドクロッサー(合体シーンなど)
867 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/10/23(金) 19:23:10.67
乙!
車の知識は無いけどスゲー楽しめたし面白かったぜ!
868 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/10/23(金) 20:06:30.54
乙乙
俺も車なんてほとんど知らなかったけどすごくおもしろかったよ
色々解説も入ってて分かりやすかった

ラリー編待ってます
870 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/10/24(土) 01:32:39.62
乙でした
小ネタと新スレも楽しみにしてますよ?よ?

むっちゃんとお散歩したいだけの日々だった
872 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/24(土) 10:54:30.18

見た目は大事

夕張「ディフューザー外そうかしら……でも羽根が無い分抑えが足りないのよねぇ……」

由良「そういえば何で見た目純正風にしたの?いつの間にかGTウイングも無くなってるし」

夕張「んー……ホラ、提督のワンエイティって見た目ほぼノーマルっぽかったじゃない?」

由良「そうね。車高は低いけど」

夕張「てっきりワンエイティの見た目が好きだから変えてないのかと思ったんだけど、ちょっと違うみたいなのよ」

由良「そうなの?」

夕張「元々クルマって改造が全面的に禁止されていて、車検を通すにしてもマル改申請をするかヤミ車検かのどちらかで、凄く手間が掛ったの」

夕張「提督の世代では既に規制緩和された後だけど、それ以前は箱スカの純正オバフェンですらアウトなんて時代だったらしいわ」

由良「今じゃ考えられないわね」

※95年より規制緩和

夕張「じゃあ当時の人はどうしていたのかというと……外見を派手にすることは避けて、ノーマル風を装っている人が大半だったんだって」

由良「単にパーツが出回っていなかったんじゃないの?」

夕張「それもあると思うわ。昔の雑誌とか見ていると、エアロに限らず純正品を加工・流用するかレース用を持ってくるかだし」

夕張「基本的に中身と腕で主張する感じだったみたいね。それに見た目だけだと、初日の出暴走みたいで嫌だったんじゃないかな」

由良「あっ。つまり提督さんがあまり見た目を変えないのは、その頃にならって?」

夕張「そういうこと。速いクルマはどんな見た目してても速いっていう意思表示だったみたい」

由良「ふーん。じゃあ夕張も?」

夕張「私は実験的な意味合いが強いかなぁ。ちょっと意識はあるけどね」

由良「でもね、夕張」

夕張「なあに?」

由良「そうは云っても、ワンエイティの後期ルック、しかも黄色ってやっぱりドリ車にしか見えないわよ」

夕張「……色だけは変えないわよ」


人によって好みや諸事情はあるとはいえ、エアロレスにGTウイングとか着けているのには個人的には疑問符が。
決して否定はしないし、カッコいいと思えるクルマも沢山ありますが、今現在の自己主張の激しい派手な外見はちょっと苦手です。
873 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/24(土) 10:55:35.84

時々混乱する

時雨「ちょっと質問があるけど、いいかい?」

夕張「時雨ちゃん?珍しいわね」

時雨「クルマやバイクを改造することをチューニングするって言い方をするというのは本当かい?」

夕張「確かに云うわね。でもどうして?」

時雨「チューニングって、本来は調律って意味じゃないか」

夕張「ああ、そっか。時雨ちゃんは提督からギターを教わったんだもんね。それで違和感があるんだ」

時雨「うん。何か意味があるのかい?」

夕張「うーん……詳しい語源は私にも分からないわ。でもちょっと見方を変えると納得出来るかも」

時雨「見方を変える?」

夕張「例えばココにバケットシートがあります。元々のシートを外して、バケットに変える……これは改造、カスタムね」

時雨「ふむふむ」

夕張「じゃあ今度はシートの位置を自分に合った位置に決めます。コレって調律……つまり、チューニングにならないカナ?」

時雨「それはむしろ調節……セットアップにならないかい?」

夕張「んー……一理あるわ。クルマの場合、どれが正しいってことはないから難しいのよねぇ」

時雨「ギターのチューニングだと、EADGBE(※ドレミでいうとミラレソシミ)って基準があるからね」

夕張「私の中では……そうね。セットアップって作業を指す言葉で、チューニングは用途に合わせることって解釈をしていたんだけど……」

時雨「用途?」

夕張「直線主体のコースでコーナー重視の調律はしないってことよ。ギヤ比を加速寄りに変えたり、ダウンフォースを減らしたり……」

時雨「えっ!?ダウンフォースが有ればマシンは速くなるんじゃないのかい!?」

夕張「それはミニ四駆……しかもマンガだけの話よ……」

時雨「兎に角、そのコースに応じた仕様に調律するって意味だと思っていたわ」

時雨「要するに、ただパーツを付け替えるのはあくまで改造=カスタムってことだね」

夕張「そうそう。でもコレは私も勉強不足だったわねー……」


某女子高生バイク漫画ではカスタム=乗りにくくするなんて言い方をしていましたね。
あながち間違いじゃないのが何とも……ww

余談ですが、ミニ四駆の速度では空気抵抗はあってもダウンフォースはあまり発生しません。土屋博士ェ
874 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/24(土) 10:56:41.01

飼い主に似る

赤城「ではオジ様。宜しくお願いします」

「おうっ。任せておきなっ」

加賀「……またクルマのメンテナンスですか」

赤城「ええ。定期健診みたいなものかしら」

加賀「改造車は、そこまでしないといけないの?」

赤城「他のクルマはよく分からないけど、ロータリーは特に気をつけないといけないのよ」

加賀「煩わしくないんですか?」

赤城「確かに大変かもしれないけど、常に100%の実力が出せないと勿体無いじゃない」

加賀「ガソリンもすぐ減るようですし」

赤城「それは……仕方ないです」

赤城「ロータリーは代替えの効かない、素晴らしい魅力を持ったクルマだもの。それ位、苦労にはなりません」

加賀「………」

よく食べて……
赤城=ボーキサイトの女王
ロータリー=燃費が悪い

よく寝る……
赤城=入渠時間が長い
ロータリー=すぐショップ入り

加賀「クルマも持ち主に似るのね……」

赤城「かっ、加賀さんまで私が大喰らいだって云うのっ!?」


そしてエロボディも共通。
875 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/24(土) 10:57:34.11

突撃!湾岸の青葉さん

青葉「どもっ!青葉ですぅ!今回はなんと……大阪に来ています!」

青葉「いやぁ活気があってご飯も美味しいですねっ。青葉気に入っちゃいましたっ」

青葉「さてさて。ココはとあるスポットなのですが、何やらココにも艦娘が出没するとの情報をキャッチ……?」

青葉「のわっ!?闇夜を切り裂く複数台の直管サウンド!シビックです!シビックの群れです!」

青葉「ほえー……今でも環状はホンダ車がメインですか。しかしこの音量では近所迷惑になりそうですねぇ」

青葉「おや?反対側からも一台来ました。あれはまた、随分古いシビック……清霜さんと同じですね」

ドスンッ

青葉「ええっ!?街路樹にぶつかっちゃいましたよ!?まさかの事故遭遇!?」

青葉「おっと、ドライバーが出て来ました。どうやら無事みたいですね……しかし、何故道の真ん中に立っているのでしょう?」

「何やワレェ!邪魔じゃどかんかいっ!」
「いてまうぞコラァ!」

青葉「もう一触即発ムードです。しかしあのツナギを着たメガネの……女性ですかね?長身ですが美人……って、あれ?」

武蔵「オドレかぁ~うるさくて眠れへんわボケェ~」

青葉「武蔵さーん!?何してるんですか、あの人!?」

青葉「というか武蔵さん長崎出身ですよね!?何でそんな任侠映画みたいな口調なんですか!?」

「何やコラ!やるんかワ 武蔵「そうりゃあ!」バチーン

青葉「引っ叩いたぁーっ!?出てきた人を躊躇もなく引っ叩いたぁ!!」

武蔵「ワーッハッハッハ!祭りじゃ祭りじゃあ!!」

青葉「はわわわ……もう大乱闘スマッシュ娘状態です……とりあえず逃げなきゃ……」

武蔵「んん~?オドレも仲間かぁ~?」

青葉「ギャーッ!?武蔵さん!?そんな……何で……」チラッ

死屍累々

青葉「一人残らずシバいてらっしゃるーっ!?」

武蔵「人様に迷惑かけよってからにぃ~。そうりゃあ!」


――その日の記憶は、そこで途切れました。
後日撮影した映像を確認すると、ヒエーと悲鳴を上げながら吹っ飛ばされる私・青葉と、

「何や。オドレは金剛型やったんかい」

という冗談なのか本気なのかよく分からない武蔵さんの音声が収録されていました。
青葉があの領域に行くことは、もう……無い。

……それにしても、青葉は毎回酷い目にあってませんかね?
888 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/29(木) 14:47:23.60
小ネタ 扶桑姉様の台詞集


MVP時

扶桑「主砲の火力だけは自慢なの。防御力と速力?そんなの……欲しい、けど……」


GTO搭乗時

扶桑「エンジンの出力だけは自慢なの。アフターパーツと旋回性?そんなの……欲しい、けど……」


由良「扶桑さんのゼロヨンベストタイム、10秒2だって」

夕張「いくらなんでも速過ぎでしょ……」


ゼロヨンチャンプでの愛車は決まってGTOでした。

889 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/29(木) 14:48:02.15

予告!

噂の黒いMR2って知ってるか……

妙に速い黄色いワンエイティってのが居て……

あの二人、仲間なんだろ?

どっちも若い女の子で、しかもめっちゃ可愛いって……

ココだけの話な……その二人って艦娘らしいぜ……


青葉「恐縮です!青葉です!」●REC

青葉「今回は青葉が所属する鎮守府の紹介を致しますっ」

青葉「まずは我らが司令官の登場です!」

提督「私が、湊川です」


吹雪「この鎮守府って、クルマが好きな方が多いんですか?」

由良「……正確に云うと一部というか……バカ二人がねぇ」

吹雪「??」


「へぇ……私と夜戦したんだ?」

「言ったでしょ?夜はまた別の顔だって」


かみんぐすーん。
890 : ◆v5iNaFrKLk :2015/10/29(木) 15:01:23.74
次回……というか次レスの件ですが、以前にもお伝えした通り一旦整理しようと思います。
由良張内のメイン三人はほぼそのままですが、

・提督のキャラ変更
・登場艦娘の変更
・それに合わせて一部搭乗車種も変更

……などなど、世界観はそのままに手直しします。
完全リセットではありませんが、現スレとの繋がりはあまりありません。

ほったらかしになっているラリー編などは、正直なところ未定です。
というのも、書いてるとラリーというよりダートラっぽくなるので……。

自分の技術不足を痛感しましたが、それでも沢山の人に読まれたことは何より励みになりました。
近い内に次スレという形で改めて上げていこうと思いますので、その際はまた立ち寄って頂ければ幸いです。

とりあえずこのスレはまだそのままにしておきますので、意見・質問などがあればお気軽に。
ではでは。
891 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/10/29(木) 15:07:37.81
>「へぇ……私と夜戦したんだ?」
記憶喪失かな?(すっとぼけ)
896 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/10/29(木) 23:03:45.28
おつおつ
新スレ待ってるよ

仮面ライダーがドライバーでさらにATに乗ってた事にショックを受けたのは俺だけなのか…
902 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/06(金) 02:18:04.87

なかなか興味深いスレだった
このシリーズSS:

夕張「クルマ買いました!」 【前編】


夕張「クルマ買いました!」 【中編】


夕張「クルマ買いました!」 【後編】



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