ほむら「ラムダ・ドライバ?」【前編】

1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/10(木) 00:29:34.95
魔法少女まどか☆マギカ×フルメタル・パニック!クロスSSになります

注意点
・まどかの本編がベース

・フルメタは原作終了数ヶ月後の設定

・都合よく改変されてる部分あり(TDDもレーバテインも健在)


などなどになります


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1357745374
2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/10(木) 00:30:20.40
「任務、ですか」
宗介は読んでいる雑誌から目を離し、顔をあげた。

「はい、サガラさん。
以前の様に日本で、護衛の任務です」

目の前にいるのはテレサ・テスタロッサ[大佐]だ。愛称はテッサ。

あどけない顔立ちにそれ相応の年齢。しかしながら、ウィスパードと呼ばれたある「特殊な」事情により類稀なる頭脳で今現在、宗介達の搭乗している超大型潜水艦「トゥアハー・デ・ダナン」を一人で設計したなど、階級に相応しい人物でもある。

「TAROSも未だ健在。
レーバテインの修理も概ね完了しています。そして、ラムダ・ドライバも使用可能。
もっとも、カナメさんの時のように過酷な戦闘が起こるとも思えませんし、問題はないかと」

スラスラと聞き慣れない単語を並べる。
しかし、宗介にしてみれば数ヶ月前まではかなり馴染み深いものであった。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/10(木) 00:31:30.72
メリダ島での決戦から半年。
宗介は所属のない軍隊「ミスリル」での活動は以前程ではないが続けていた。

レーバテイン。

正式には「ARX-8レーバテイン」
ミスリルが有する「ある特殊な装置」を搭載したただ一つのAS。

その特殊な装置ーーーーラムダ・ドライバーーーーはTAROSと深く関係しているのだが、てっきり宗介は使用ができなくなったと思っていた。

「待ってください、大佐殿
TAROSはメリダ島での決戦で壊されたはずでは」

宗介はテッサに疑問を口にした。

「そうですね。
てっきり私もあの時に損傷が酷かったものですから、てっきり壊れてしまったものだと」

これは、艦の中でも私しか知らないですけどね、とあっさりと付け加えるテッサ。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/10(木) 00:32:30.92
「それでも、「ささやき声」が聞こえなくなったなら意味はないはずです」

そして、ウィスパード。
ある特定のタイミングで生まれた人々がもつ力で、頭の中で突然ささやき声が聞こえるようになるのだ。
そのささやき声は所謂ブラックテクノロジーについてなどが多く、このトゥアハー・デ・ダナンもそのささやき声によって作られた部分も多い。

これらの宗介の疑問は当然の事だ。

ウィスパード、TAROS、ラムダ・ドライバ、、、
これらは全て密接に関係しているためどれか一つが使えなくなると、そのどれもが意味をなさなくなってしまう。

それに加え、メリダ島での決戦でテッサはウィスパードではなくなったはずで、さらにTAROSシステムも壊れ、レーバテインも損傷が激しかったため、なくなったと知らされていたからだ。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/10(木) 00:33:27.90
「それが、、、一週間ほど前からまた聞こえるようになったんです」
声のトーンが暗くなった様に宗介は感じた。

「それでも、以前のようなブラックテクノロジーについてではありません。
今回の任務は、そのささやき声に言われているんです」

突然、再び聞こえるようになったささやき声。
そして、伝えられた任務。
宗介は部下として、何より共に戦った仲間として聞かない訳にはいかなかった。

「それで、任務の詳細をお願いします」

テッサはその声を聞いて表情を明るくさせた。

「日本のミタキハラという場所で、マドカ・カナメという人物の護衛です」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/10(木) 00:34:37.26
見滝原中学校門前

またこのパターンか、と内心で宗介はげっそりしていた。
護衛対象は女子中学生、宗介はその生徒と同じ中学に転校して護衛をしろ、とのことだった。

流石に、中学生になるのは無理がある。

ぼんやりと任務について考えながら、宗介は校門を潜ろうとした、その時。

校門の先に並べられた机の数々。
周囲を見渡した宗介の目に入ったものは「手荷物検査実施」とだけ書かれた貼り紙であった。

硬直。
しかし、このまま止まっているのは不自然過ぎる。
不意に視線を感じた。
(いかん、テロリストに勘付かれたか、、、!?)

思わず拳銃を取り出したい衝動に駆られる。
だが、それらしい人物は見当たらず、代わりに自分よりも幾分か小柄な黒髪の少女と目があった。

(とりあえずは、問題ない筈だ)
宗介は、手荷物検査場に向かって行った。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/10(木) 00:35:53.88
朝のホームルーム。

(結局ほとんどの武器は没収されてしまった)
陣代高校に転校した時にもあったように、宗介はどうも手荷物検査のタイミングが悪いのだと思った。
その時、教室から声が聞こえた。
「目玉焼きとは、半熟ですか!完熟ですか!?はい、中沢くん!」
「えぇっ!ど、どっちでもいいんじゃないかと、、、」

実にどうでもいいやり取り。
そんな事よりも気がかりだったのが。
(なんだ、こいつは、、、)

担任の早乙女教諭に案内させられた際に、先に教室前で待機していた、先程校門で目が合った長い黒髪の少女。

宗介の方が先に手荷物検査へ向かった筈だが、没収されるものが多かった為に先を越されていたのだ。

先程から両者とも一言も話そうとすらしない。
(最近の女子中学生とは、こんなに無口で、、、戦士の様な目をするもなのか)

そんな考えが頭をよぎったが、すぐに自分で否定した。
かつて陣代高校でのクラスメイトだった友人たちが、その考えを許さなかった。

宗介がどことなく気まずさを感じると、声がかかった。
無論、真横に立つ少女ではなく教室からだ。

「それじゃあ、入ってきて~」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/10(木) 00:37:51.09
どこか、間の抜けた声が宗介の中で神楽坂教諭を思い出させた。

宗介は無言で教室内に入る。

「じゃあ、自己紹介いってみましょう!」

自己紹介をするように促される。
「相良宗介『軍曹』であります」
言ってしまった後に宗介はしまったと思った。
これでは陣代高校の自己紹介の二の舞になる。
案の定、クラスからざわめきが漏れ始めている。
「サルガッソーっす、ケゲンそうな、、、な訳ないよね、、、」
クラスの奥の方の席、青髪の少女の声がいやに良く聞こえてしまった。

「すみません、軍曹は忘れて下さい。相良宗介です」

「趣味は何?」
目の前の席から、質問される。
声に聞き覚えがあったのは、先程目玉焼きについて質問されていた少年だったからであろう。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/10(木) 00:39:15.88
「読書と釣りです。
読書は特にAS関連のものを購読しています。
日本のASファンも大変興味深い内容で、、、」

教室から、あぁやっぱりか、というような声が聞こえた気がして、宗介はまたやってしまった、と考える

「すみません、忘れて下さい」

いけない、このままでは本格的に陣代高校と同じだ。

「どこの出身なんですかー?」
出身を聞かれる。

「アフガンに、ロシア、アメリカ、日本にもいた事もありますが、どの国にも長く滞在した事はありません」

宗介は思わず即答してしまった。

「相良くんは所謂、本物の帰国子女なのです」

あまりに悲惨だと思ったのか、横で大人しく聞いていた早乙女教諭がフォローを入れた。

「そういう事です。よろしくお願いします」

宗介は窮地を救われたような気分だった。

「好きな音楽とかはあるの?」

時間的に最後の質問になるであろう質問。
声を辿ると、桃色の髪の少女だった。
鹿目まどか。
今回の任務の護衛対象だ。

そこまで考えて、宗介は質問に集中した。

(そういえば、クルーゾー大尉がオススメしていたな)
「ClariSです」

そういった後に後悔をした。
クルーゾーは重度のアニメファンである事を思い出したからだ。

「誰、それ、、、」

「すみません、忘れて下さい」

宗介は最後の最後まで地雷を踏んでしまったようで、クルーゾーを少し恨んだ。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/10(木) 00:40:20.77
この男は何者なのだろうか。
暁美ほむらは今までの時間の中で一度たりとも会ったことのない、謎の転校生に警戒していた。

第一、手荷物検査実施など、繰り返した時間の中でこの学校がしていた試しがない。

そして、その手荷物検査に物の見事に引っかかっていたのが、目の前で自己紹介を終えた「相良宗介『軍曹』」であり、ほむらはその一部始終を目撃していた。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/10(木) 00:41:43.02
時間は少し戻って、手荷物検査実施場。


ほむらはこの手荷物検査に戸惑っていた。

(こんな事は今までなかった筈)

その横を見慣れない男が通り過ぎる。
いくら時間を繰り返し続けたと言えど、全校生徒など覚えている訳がない。

だが、ほむらの目には止まってしまった。

なにしろ、一般的な男子中学生と言うには苦しくさえ思える身長に、見事に伸びた軍人のような姿勢。そして、顎の左脇にある平和とは程遠いような十字の傷跡。

思わずほむらは凝視してしまう。
不意に、その男が軽く振り向いた。
目が、合ってしまった。
何となく気まずさを感じて目を逸らす。
向こうの方もすぐに手荷物検査へ歩き出した。

が。

急に作った措置と言わんばかりに適当に並べられた長テーブルに、その男子生徒は鞄の中身をぶちまける。

出てきた物は、拳銃にサブマシンガン、C4爆薬、ハンドグレネード、バリスティックナイフなどなど。
おおよそ男子中学生が持っている筈のない物だ。

周りからみたら、モデルガンやら何やらに思えるのだろう。

だが、ほむらとこの銃器の所有者は違った。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/10(木) 00:42:53.69
(間違いない、アレは本物、、、!)

都合上で銃器を使う羽目になっているほむらは、その数々の危険性を熟知していた。

その男も、没収されたら危険だと分かっているのか、弁明をしている。
だが、それも虚しく全て仕舞われてしまった。

所有者の生徒はげっそりとしながら校舎へ向かってしまう。

(流石に、あんな物を大人とは言え危険なしに触れるのは無理ね)

特に手榴弾だ。
何かの拍子でピンが外れてしまいかねない。

そう思ったほむらは一旦物陰に隠れ、変身する。
そして、時間停止。

迷いなど一切ない動きで没収された銃器を盾に仕舞い込む。

恐らく紛失してもモデルガンか何かと思われているのだから、大事にはなるまい。

回収を手早く終えて、物陰へ。
変身を解き、自分も手荷物検査を済ませて校舎へ向かった。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/10(木) 00:43:27.68
時間は戻って自己紹介を促される。

「暁美ほむらです。よろしくお願いします」
それだけ言うと、「暁美ほ」まで名前を書いていた早乙女教諭からペンをとり「むら」と付け加えて席へ進んだ。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/10(木) 00:44:16.48
休み時間になると、ほむらは女子生徒たちからの質問攻めを受けていた。

前はどの学校にいたのー、だとか、髪がどうだとか。

しかし、ほむらの頭の中は今朝の事で心ここにあらずといった状態で、質問には適当に答えていた。

「ごめんなさい、ちょっと緊張したみたいで、、、保健室に行かせて貰うわ。
係の人にお願いするから、お構いなく」

少し無愛想だっただろうか。

ぼんやりと考えながら、保健係である鹿目まどかの元へ。
周りには美樹さやかと志筑仁美。
そちらへ向かうのに気が付いたのか、ほむらへ振り向いた。

「鹿目まどかさん。あなたがこのクラスの保健係よね。
連れていってもらえる?保健室」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/10(木) 00:45:08.54
同じ時に宗介は男子生徒から質問攻めにあっていた。
前はどの学校にいただとか、傷だとか、今朝の手荷物検査などだ。

「学校は都立陣代高こ、、、陣代中学だ」

「この傷は正直、よく覚えていない」

「銃器を没収されてしまったのはミスだった。あれだけの量は危険過ぎる」

正直に話してしまいそうなところを、ギリギリで誤魔化していた。

その時、視界の隅で今朝の少女ーーーー暁美ほむらーーーー
がまどかを連れ出すのが見えた。

(いかん、護衛対象を追わねば)

「みんな、すまない。少しだけ席を外すぞ」

それだけ言うと、鹿目まどかたちと話していた少女たちに声を掛ける。自己紹介の時の青髪の少女と、恐らくその友人であろう。

「初めまして、相良宗介だ。
今はクラスメイト達一人一人に挨拶をしようと思って話し掛けさせてもらった」

あたり触りのない内容で話し掛けてみる。

「あぁ、あたしは美樹さやかだよ。気軽に『さやか』って呼んでね」

「私は志筑仁美ですわ。
仁美と呼んでくださいませ」

どこか千鳥かなめを連想させるような元気に溢れた少女の美樹さやかと、どこかの令嬢なのだろう、上品な言葉使いの志筑仁美。

宗介はどこか不思議な組み合わせだと感じた。

「こちらこそ、宜しく頼む。
ところで、先程まで一緒に居た桃色の髪の女子生徒なんだが、、、」

「まどかだね。
なんか、もう一人の転校生に保健室連れてって案内を頼まれたみたいだよー」

宗介が続きをいう前に、先に聞きたい事を答えてくれた。

「そうか、すまない。助かった」

それだけ言うと、宗介は駆け足で教室を後にした。

「まどかも、転校生二人にモテモテだねぇー。ね、仁美」

「そうですわね」

仁美はそれだけ言うとにっこりと笑った。
その際に全力で廊下を駆け抜ける宗介の姿が、さやかの視界に映った
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/10(木) 00:47:13.13
宗介は廊下を駆け抜ける。

事前に入手した地図で保健室への道は完全に頭に入っている為、迷う事は一切なかった。

それに、この全面ガラス張りの校舎だ。
すぐに目標を確認する。

渡り廊下、二人きりで向き合っている。

(なんだ、保健室への道だが行く気がないのか)

宗介の頭の中で不安がよぎる。

もし、この状況でほむらが銃をまどかへ突き付けたなら。

この距離だ、宗介に止める事はできない。
持っている武器も、制服の裏に掛けたグロック19一丁のみ。

(クソッ!油断していた!)

より一層、宗介は早く走り、懐から銃を抜く。

あと少し、少しだけだ。
距離が近づいてくる。

(ここならば、いける、、、!)

この距離ならば射程圏内だ。
トリガーをいつでも引けるように構える。

「動くな!両手を挙げろ!!」

構えたままさらに接近する。

突然の大声にまどかは肩をビクリとさせる。
ほむらは唖然としていた。

「少しでも不審な動きをしてみろ、眉間に穴があくぞ」

ほむらへ銃口を向けた、その瞬間背後から衝撃をうける

「黙らっしゃーい!!」

美樹さやかの声だ。

「何が眉間に穴があくよ、このバカ転校生!
様子が変だったから、追ってきてみて正解だわ!」

それとともにどこからともなく取り出したハリセンで頭をはたかれる。

「痛いじゃないか」

銃口がほむらから外れ、安堵の息がほむらから漏れる。

「助かったわ、美樹さやか」

「え、えぇっ、うん、別にモテルガンでしょ?そんなに礼を言わなくても良いって」

モデルガン。
この認識の甘さがここは日本だと伝えてくれるように感じた。
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/10(木) 00:47:52.14
「そうか、悪意はなかったようだな。すまない、謝罪しよう」

そう言って頭を下げた。

「ず、随分素直なのね、、、」

ほむらはまた唖然とする。

「まぁ、いいわ、鹿目まどか」

「ふぇ!?」

まどかは、いきなり話題を振られて素っ頓狂な声をあげた。

「さっきの忠告覚えておいて。
それから、相良宗介。
あなたに少しだけ用があるの、付いてきて」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/10(木) 00:49:40.01
校舎のひっそりとした一人として人の気配を感じない廊下。

「単刀直入に聞くわ。
あなた、何者なの」

ほむらは既に宗介を一般人と認識はしていなかった。

拳銃の構え方や、銃口を向けた時の動揺のなさ。
明らかにプロフェッショナルのものであったからだ。

それは、宗介も同様で先程は不意をついたものの、今のほむらからは油断を感じず、隙が見当たらない。

彼女もまた戦士なのだろう。

それゆえに、無駄に隠す意味はないと正直に話す。
もしかしたら、協力者になりうるかもしれないと思ったからだ。

「名前は相良宗介。
階級は軍曹。
<ミスリル>作戦部西太平洋戦隊<トゥアハー・デ・ダナン>所属」

所属をはっきりと述べる

「そう。それで、その軍曹さんがこんな学校にいる目的は?」

これは、言うべきなのだろうか。
こちらはグロックが一丁。
対応できるかは五分と五分だ。

「あぁ、そう。正直に話したらこれは返すわ」

そう言って変身。
盾から宗介の装備を取り出す。

その変身だけでも、宗介には驚きを与えたのに、没収された装備まで出てくるのだから、完全に不意をつかれた。

形勢は逆転した。
素直に話しておこう。

「任務は鹿目まどかの護衛だ。
理由は伝えられていない」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/10(木) 00:51:03.25
結局ほむらは、この日の授業はうわの空で受ける羽目となる。

数学では符号を付け間違え、体育では辛うじて走り高跳びの記録は例の「県内記録」を叩き出せたものの、ランニングで足を挫いてしまう始末だ。

頭の中で反復する。

鹿目まどかの護衛だ。

その一言が、ほむらに希望を持たせつつも、多大なる不安を押し付けていた。

(やはり、イレギュラーね)

普段なら早く排除してしまいたいところだが、今回ははっきりと協力者であると明言されている。

それに、名前も知らなかったような軍隊に、今までの時間軸では存在すらしなかったAS(アーム・スレイブ)と呼ばれる人型強襲兵器。

もしかすると、良い方向に働いているのではないか。

だが、もしもそうでなかったとしたら。
先程の会話を思い出し、迂闊だったと言わざるを得ない。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/10(木) 00:52:04.12
時間は少し戻り、ひと気のない廊下


「鹿目まどかの護衛だ。
理由は伝えられていない」

宗介がそう、はっきりと言うとほむらは眩暈がするような気分に陥った。

鹿目まどかの護衛。
まるで、自分と同じではないか。
約束をして、何度も繰り返す。

できるだけ、あの世界に足を踏み込ませないように。

ほむらの様子がおかしいと勘付いたのか、宗介は声を掛ける。

「おい、大丈夫か」

その声でほむらは、ハッと意識を戻す。

「えぇ、すこし呆けてたみたい。問題ないわ」

本当はまだ少し落ち着けていないが、無理に冷静な声を出す。

「そうか、だが無理は良くない」

やはり、暴露ている。
しかし、そんなものは関係ないと割り切り話し出す。

「聞いていないでしょうけど、聞いてもらうわ」

「構わない」

「私の目的も鹿目まどかの護衛」

その一言で今度は宗介が動揺したが、その素振りは見せなかった。

「何故だ。この平和な街で、何一つ危険とは関わりそうにない少女を護衛する?
正直に言うと、俺もその必要は感じない」

珍しく饒舌になり、宗介はまくしたてる。

「色々あるのよ。
そんな任務を出すだなんて現実的に感じないけど、貴方の上官って、女性で、しかも年端もいかない少女でしょう?」

ほむらは聞いてみる。
やはり、図星だったようだ。
少しだけ、こめかみがピクリと動いたのをほむらは見逃さない。

「ここでは関係のない事だ」

宗介は答えようとしなかった。

「そうね。
目的が同じなら、私たちで同盟を組まない?」
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/10(木) 00:52:52.92
学校付近のビル、屋上

「何やってんだ、ソースケの奴」

宗介の部隊の仲間である、ウルズ6のコールサインを持つクルツ・ウェーバー曹長は、ECS(電磁迷彩)をオンにしたM9の狙撃用スコープから宗介の周辺を見張っていた。

「何かあったの?」

同じく宗介の部隊の仲間で、ウルズ2のメリッサ・マオはクルツに様子を聞く。

「なーんか、女の子と二人きりで良さげな空気。
でも別にエンジェルじゃあないみたいだ。特徴がまるで合わない」

エンジェル。
この任務における、鹿目まどかの事だ。
ミスリル側が特定を避ける為に護衛対象につけるコールサイン。
かつて、千鳥かなめにも付けられたサインであった。

「ま、こっからじゃあ何を言ってるのかなんて分からないか。
俺はもう少しここにいるよ、姐さん」

「了解。ウルズ2オーバー」
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/10(木) 19:31:14.02
ほむほむがふもふも言い始めるのか……胸が熱くなるな
こんな面白い設定なんだ、エタらせずに納得いく形で書き終えてほしいぜ
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/11(金) 00:23:36.01
夢中のボーイ・ミーツ・ガール(後)

下校のチャイムが鳴り響く。

今日一日だけで、宗介は異様に疲れが溜まっていた。

わけの分からない護衛の任務と、その理由。

あまりにファンタジーで突飛な話について行けなかったのも一つだが、そのどれもがどこか信頼できるように聞こえた。

魔法少女。

突然すぎる。そんな日本のアニメーションのようなもの、クルーゾーの方が食いつきそうだとさえ感じた。

あの時、同盟を持ちかけられ、今は保留をした。
だが、その護衛の意味だけはほむらから教えてもらった。

魔法少女、魔女、契約、そしてキュゥべえと名乗る宇宙生物インキュベーター。
契約によりどんな願いでも一つだけ叶う事。
魔法少女はやがて魔女になる関係だという事。

そして、鹿目まどかが契約した時の圧倒的な力と魔女になれば地球が滅びる事まで。

何故知っているかは、ほむらは答えなかった。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/11(金) 00:24:55.07
以前ならば、あり得ないの一言で一蹴したであろう。

だが、宗介は既にラムダ・ドライバという現実的にあり得ない装置を幾度となく使用してきた。

その事が、更に信頼性を増したのかもしれない。

(参ったな、、、想像以上に大事だ)

今は一目散にセーフハウスへ戻り、本部へ連絡を入れるべきだろう。

だが、宗介はほむらと共に、事実を確認できると言われた場所へと向かっていた。

学校を後にして15分程度
近場のショッピングモールへと。

(居た、鹿目だ)

ショッピングモールの中のCDショップの中にまどかの姿を確認する。

声を掛けるべきか。

悩んでいると、ほむらに引っ張られてショッピングモールの未改装エリアへと消えていった。
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/11(金) 00:25:45.84
「それにしても、貴方そのコートが似合わないわね」

宗介はコートを羽織っていた。

「仕方ないだろう。便利な物なんだ」

かつてテッサの兄であるレナード・テスタロッサが使っていた「アクティブな防弾衣」を改良した物だ。
デザインはかつてのキザったらしいコートではなく、フード付きの普段着のジャケットとしても扱えそうに変更。

そして、内部AIを移し替えて、宗介の相棒の「アル」のサポートを受けられるようにされている。

「アル、周囲の状態の報告を」

宗介が独り言のように指示を出す。
「ラージャ。
小型の熱源を一つ確認。接近してきます」

アルが熱源を探知。
宗介は銃を構えた。
ほむらもそれに続く。

そして、暗闇から現れた物は宗介の予想を裏切る可愛らしいものであった。

「なんだこいつは」

「インキュベーターよ」

ほむらは即答する。
そして、それを憎んでいるかの様な表情で拳銃を強く構える。

その直後、発砲音。
インキュベーターの目と目の間に綺麗に穴が空いていた。
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/11(金) 00:26:46.44
「これで任務は達成だな」

宗介のグロックの銃口から煙が立ち込めている。即座に発砲したのは宗介であった。

「これで終わるなら、楽なのだけど」

そう言うや否や、新しいインキュベーターが現れる。

「やれやれ、どういうつもりか分からないけど、勿体無いじゃないか」

宗介はまだ銃を構えている。

「それと、僕は君と契約した記憶はないよ、暁美ほむら。
それに、僕が見える男性なんて初めてだ、相良宗介」

あくまでインキュベーターも無表情で語る。

「ええ、私は貴方たちの言うところのイレギュラーよ。
そして、その目論見も、貴方と契約した者の末路も全て知っている」

銃を構えたまま威圧する。
感情がないのだから、恐れはしないのは分かっていた。
だが、ほむらにはこうする他に苛立ちをぶつける手段がなかった。

「目論見だなんて、酷い言い草だなぁ。
これでも僕たちは、君たちが家畜を扱うよりもずっと譲歩をしているよ」

「軍曹。攻撃してもよろしいでしょうか」

インキュベーターが言い終える前に、アルがコートから声をあげる。

「肯定だ。しかし、お前に攻撃手段はあるのか」

宗介の許可を得ると同時に「アクティブな防弾衣」の裾から機械腕が現れインキュベーターにダガーを高速で投擲した。
恐らくAS用対戦車ヒートダガーを小型化したものであろう。
刺さった後にその刃は爆発した。

「こちらも、肯定です」

抑揚のない声だが、少し満足しているように聞こえた。

まさか、改良されたとはいえここまで「アクティブ」だとは思いもしなかった。

「ああ、中々だ」

そんなやり取りをしている間にも次のインキュベーターが現れ、ほむらと宗介の間を走り抜けて行った。

「まずい、このままでは鹿目まどかが奴と遭遇してしまうわ」

今の光景を呆然と見つめていたほむらは我に返りインキュベーターを追いかけはじめる。

宗介もその後ろに続いた。

「まさか、お前一人で攻撃を仕掛けられるとはな」

追いかけながらも、宗介はアルに話しかける。

「あの時に言ったでしょう。
『私は人間ですか?』と。その答えが見えてきたのです」

「そうか」

落ち着いた声だが、相棒の進歩に宗介は心を弾ませていた。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/11(金) 00:27:42.74
CDショップ内

(助けて、、、!まどか、、、!)

幻聴なのだろうか。

まどかはCDショップの試聴用のヘッドホンを外すが、その声は頭から離れなかった。

(誰かが、呼んでる、、、?)

声が段々と強くなってくる。
その声のする方向へフラフラと進み、まどかは未改装エリアへと進んでしまった。

「誰?誰なの?」

人がいなくなった事を確認して声を出して捜索を開始する。

更に少し進むと頭上からズタズタになった白い動物のようなものが降ってきた。

慌ててまどかは駆け寄り、抱き上げる。

「酷い怪我、、、!」

見た事もない生き物だったが、素人目に見ても瀕死なのはまどかも理解していた。

ガラガラと物音。

目の前を見ると、この生き物が降ってきた場所から少しだけ見覚えのある人物が二人ほど降りてきた。

暁美ほむらと相良宗介だ。

「そいつから、離れ
「鹿目!離れろ!危険だ、そいつは生物爆弾だ!」

ほむらが警告するよりも早く、宗介は叫んでいた。

「ふえっ!?」
まどかも驚いて、インキュベーターから手を離す。

しかし、爆発など起こる訳もなかった。当然だ、別に爆弾な訳ではない。

だが、その一瞬を宗介は見落とさなかった。

落とされたインキュベーターを一瞬の早業で掴み取り、まどかに気が付かれないように手榴弾引っ掛けて全力で投げ捨てる。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/11(金) 00:29:38.38






爆発。
暑い風と衝撃波がその周囲を襲った。

ほむらと宗介には慣れた、まどかは慣れているはずもない爆風だ。


「危なかったな、鹿目。
あんな可愛げのある生き物を利用するとは、恐ろしい連中だ」

宗介は冷や汗を手で拭った。

これで当面の危機は去った、、、ように思えたが、まどかはその光景を目の当たりにしてポロポロと涙を零した。

「そんな、、、酷い、酷すぎるよぉ、、、」

この状況は宗介も対応できなかった。

「軍曹。流石に今のは女子中学生にはショッキングだったのでは」

アルは機械音声で語りかける。

「か、鹿目まどか。落ち着いて。
貴女は何も悪くないの。悪いのは、そう、あの生き物を爆弾に仕上げだテロリストなのよ、、、」

宗介に続いて、ほむらも居もしないテロリストをでっち上げる事にした。

「それでも、、、」

「こぉぉぉらぁぁぁあ!!」

この声は、美樹さやかだ。
「今度はまどかの様子がおかしいと思ったら、また相良か!この戦争バカ!」

駆け付けるタイミングが悪かった。さやかには、二人がまどかに悪事を働こうと見えていたに違いない。

「さやかちゃん、違うの、、、」

まどかが説明しようとする。
が、突然目の前の景色が歪み崩れ去った。

「こんな時に、、、!」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/11(金) 00:32:53.70
「こんな時に、、、!」

ほむらは焦っていた。
魔女だ。それも一般人であるまどかとさやかがいる状況で。
流石の宗介も魔女に遭遇するのは初めての筈だ。
ここは、全員で退却するのが賢明か。

「鹿目、美樹!おしゃべりは後だ走るぞ!!」

初めて結界に巻き込まれたにも関わらず臆せず、二人を奮い立たせる。

「相良宗介。手持ちの武装は?」

「グロックが一丁とサブマシンガン2丁。
SMGの予備マガジンは2つにアップルが4つだ」

鞄の中身は全て把握していた。

「わかった。ここから美樹さやかと鹿目まどかを連れて脱出するわ」

既に鋏と髭の使い魔に半ば囲まれている4人だが、なんとかまどかとさやかを立たせる事は出来た。

「何これ、まどか、ねぇ悪い夢でも見てるんだよね!まどかぁ!」

さやかは目の前の異常な景色に狼狽した。

宗介は冷静に銃を構える。
そして、発砲、発砲、発砲、投擲、爆発。

躊躇いもなく銃を撃ち、手榴弾を投げる宗介は、今度は鞄の中からサブマシンガンを二丁取り出した。

「暁美!これを使え!!」
サブマシンガンを地面に滑らせ、ほむらに一丁を渡す。

ほむらはそれを受け取り、やはり躊躇もなく発砲した。

「出口は!?」

「正面よ!」

無駄のない会話。
二人はその方向へ同時に向き直り発砲。

「一点突破するぞ!
鹿目、美樹、絶対に離れるな!」

障害になる使い魔は片付いた。
後は走るだけだ。
その刹那、全ての使い魔が吹き飛ぶ。
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/11(金) 00:33:59.53
出口から一人の人影。
ゆっくりと歩いて近づく。
宗介は警戒をして銃を向ける。

「危なかった、、、って訳でもないようね。
でも、逃げなくても平気よ。もう大丈夫」

宗介の銃に臆する事なく歩み寄る金髪の少女。

「その制服、貴方たちも見滝原中の生徒?」

まどかを見ながら問いかける。

「あ、あなたは、、、?」

「そうそう、自己紹介しなくちゃね。でも、その前に!」

その少女が髪と同じ色の宝石を目の前にかざす。

(彼女もこの街の魔法少女よ。
名前は巴マミ)

一人で話を進める為、置いてけぼりになった宗介にほむらはテレパシーで補足する。

その際にマミは変身を終えて、大量のマスケットを召喚し、一斉射撃を使い魔の残党に見舞う。

その一撃で結界は消滅した。
コラージュ・アートの様な世界が崩れ去り、景色が帰ってくる。

元の世界に戻るとほむらは変身を解く。

マミは変身を解かなかった。

「聞きたい事は多いでしょうけど、先に聞かせて」

マミはまどかとさやかに向き直った。ほむらと宗介には一睨みするだけであった。

「なんで、こんな所に居たのから」

優しく微笑みながら、しかし咎める様な声で問いかける。

「声が、、、聞こえたんです。
あの子、私の名前を呼んで助けてって」

「そう、優しいのね。ありがとう。
それと、貴方たち」

今度は宗介とほむらへ向き返り、睨みながら、冷たい声で呼びかける。
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/11(金) 00:34:58.98
「貴方たちね、キュゥべえに乱暴をしたのは」

実際のところは乱暴などのレベルを越えたものであったが、人間を散々利用しようという連中だ。

「誤解だ。あのインキュベ、、、キュゥべえには何者かが爆弾を括り付けて鹿目を暗殺しようとしていた」

宗介は悪い事をしたとは思わなかったが、とりあえず弁明する事にした。

「でもこの子は傷だらけで私に助けを求めてきたの」

そう言うマミの肩の上にインキュベーターがちょこんと乗る。
無傷で新品のぬいぐるの様なそれが。

「傷は私が治しておいたわ。あのままじゃ、危険だったから」

インキュベーターは肩の上で尻尾を揺らしながら、無表情な瞳で二人を見つめた。
マミの言う傷は騙す為にわざと付けた物だろう。

三匹目は爆破し、四匹目は見掛けていないため、新品の筈だ。


「この子は言ってたの。
十字の傷の男と、黒い魔法少女に襲われたって。
爆弾が本当だとしても、やったのは貴方たちじゃないのかしら」

酷い言い掛かりだ、と宗介は感じた。
今になって、爆殺したのは失敗だったと思う。

「勘違いだ。
俺は君たちと敵対行動をとるつもりはない」

攻撃の意思がない事を全員に伝える。

「私もね」

ほむらもそれに続いた。

その際もマミの二人に対する不信感は募っていた。
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/11(金) 00:36:00.83
「一度冷静になって話し合いましょう。今日のところは私たちは帰らせてもらうわ」

ほむらはこれ以上は無駄だと判断した様だ。

「また学校で会いましょう、巴マミ」

そうとだけ言い切るとほむらは先に消えてしまった。

「話し合い、、、」

マミはぼそりと呟く。

「信じてくれ。俺は攻撃を君たちにするつもりはない」

宗介もそれだけ言って去ろうとした。

「それはどうかしら、ね!」

言うと同時にマスケットを一丁召喚し、宗介に向けて発砲。

風は吹いていなかった。
だが、魔弾が届く直前に突如として宗介のコートがはためき、弾丸を阻んだ。
コートのファーがほんの少しだけ熱を持った気がした。

「だが、俺はスペシャリストだ。テロリスト相手になら容赦はしない」
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/11(金) 00:40:06.48
少し、キザ過ぎただろうか。
あんな去り方は不安を与えかねない。

そんな事を考えながら宗介はショッピングモールを後にして、ほむらとも解散をした。

「軍曹殿」

歩いていると、アルに呼ばれる。

「何だ」

流石にコート相手に喋るので、宗介は小声で返した。

「先程の少女のマスケットによる攻撃ですが、微弱ながらもラムダ・ドライバに限りなく近い力を検出しました」

予想外の報告。
まさか、今になってまた関わるとは思いもしなかった。
だが、「アクティブな防弾衣」には傷一つ付いていなかった。

「アル、損傷報告を」

「損傷無し。
こちらも、弾丸を受ける際に微弱なラムダ・ドライバを発生させました」

やはりか。
さっきの防御の際、空間が歪み力場が発生した感じは正しかったのだ。

アルが搭載されていると言う事でこのコートはラムダ・ドライバを発生させられる事が証明された。

すなわち、この「アクティブな防弾衣」そのものが、レーバテインをモデルに人間サイズに縮めた物なのだろう。それならば、隠し腕が飛び出たのにも納得がいく。

「ラムダ・ドライバは発生させれましたが、ASに搭載されている物よりは弱くなります」

「何故だ」

アルはそのまま報告を続けた。

「それについては理由が二つ。
一つは単純にASと比べ、モデルサイズが極端に小さい事。
もう一つはコートの排熱機構が小型化しているため、大掛かりな使用は装備者に対する負担になる為です。
ですが、ASレベルのサイズ換算にしますと、レーバテインのそれと同レベル出力になります」

ASとコートを比べるのはどうなのか、と思うがそれだけ高性能な品なのだろう。

「それと、このラムダ・ドライバは軍曹殿の意思は関係なく、私単体で発動するのも弱い原因だと思われます。
その為に最大出力を出す事はできません」

あの時、半壊したレーバテインの中でアルは一人でラムダ・ドライバを発動させた。
それも重なって、この程度の規格ならば発動させられるのだろうか。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/11(金) 00:41:49.18
そうこう考えている内に、セーフハウスに辿り着いた。

できるだけ護衛がスムーズに行えるように、鹿目家の付近のアパートをセーフハウスとして提供されていた。

部屋の扉を開ける前に拳銃を抜き出し、顔を出さないように扉を開ける。
室内の安全確認。

(よし、誰もいないな)

生活感がまるでない部屋の中心に置かれた通信機をとる。
本日の状況の報告をするのだ。

その前に時計を確認。
ほむらと解散してから、もう一時間程経過していた。

本部へ合わせて通信。

「こちらウルズ7。たった今セーフハウスに帰還しました」

少しノイズ混じりにスピーカーから声が送られてくる。

「こちらアンスズ。状況の報告をお願いします」

直接通信に出たのはテッサだった。

宗介はこの一日の出来事を全て報告する事にした。

学校での事、魔法少女、魔女、使い魔、インキュベーター、、、

それら全てを説明すると、テッサは通信越しの声でもわかるくらいに半信半疑であった。

「そうですか、、、サガラさん、もしかして疲れてますか?」

「いえ、そのような事は断じてありません。睡眠も充分にとれていますし、戦場の様なストレスもないです」

宗介は即答する。

「それらの全てはこの目で確認しました。
それと、アルのダメージデータの方も送信します。
恐らく、それを見れば信じるに値するものだと」

確かに、いきなり報告するには突飛過ぎる話だ。疑う方が当然の反応だろう。

だからこそ、データには信憑性がある。

そう結論付けた宗介はデータを提出する事にした。

(せめて、もう一人目撃者がいれば信じてもらえそうではあるが、、、)

そう思った時に、インターホンが鳴り響く。

「すみません、大佐殿。
少し待っててもらえますか」

念の為、拳銃を手に玄関へ。
少しだけドアを開けると、そこには見知った顔が二人。
クルツとマオだ。

「よ、ソースケ。
上がってもいいか?」

この二人もこの任務に就いていたのか。

「ああ、構わない」

扉を全て開けるともう一人の姿が。

(しまった、迂闊過ぎた、、、!)

そう思うと即座にドアを乱暴に開け放ち、銃を向ける。

そしてその銃口の先には、暁美ほむらが立っていた。

「今晩は、相良宗介」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/11(金) 00:42:32.77
「それで、大佐殿。
目撃者が3人ほど増えたのですが」

宗介は通信途中の通信機を持ち直して声を掛ける。

「あら、任務に就いているのはサガラさんとウェーバーさんにメリッサだけでしたが」

宗介が3人と言ったのでテッサは困惑した。

「一人は、こちらの民間人で協力者です」

協力者です、と宗介は言い淀みなく言った。

「サガラさんは顔が広いんですね」

皮肉でもなく、単に感心したようにテッサ。

「いえ、会ってから一日も経っていません」

もしかしたら、これでは納得しない気がした。

「まぁ、そちらでの行動は全てサガラさんに任せるつもりです。
こちらではデータ解析などのサポートをしますので、自由にしてください」

機嫌を損ねるかと懸念したが、そんな事はなかったようだ。

「ウェーバーさんとメリッサの報告はまた後日に、個別でお願いします」

「ウルズ2了解」
「ウルズ6も了解」
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/11(金) 00:43:11.52
そこで、通信が切れた。
宗介が通信機から手を離すと、3人に向き直った。

「なんだ、3人とも面識があったのか」

仏頂面で宗介が問いかける。

「こいつが道を聞くフリをして近づこうとした。
胡散臭過ぎて、一発で暴露たけど」

クルツに聞いた所をマオが答える。

「なんで鹿目ではなく暁美に?」

「お前らが学校で二人きりになってたから、何かあるんだろうって踏んだ訳さ」

つまり、学校でのやり取りは全て見られていたという事だ。
あの全面ガラス張り校舎なら外部からでも確かに丸見えである。

「やはり、防犯性がまるでない校舎だな」

的外れな感想を述べる。

「いいんじゃないか?見た所平和そうな街なんだから」

「見た所は、ね」

突然ほむらが口を開く。

「そう、魔女とかいう得体の知れない化物だっけか。
そんなもんがいるんじゃ、危なっかしい世の中だぜ」

クルツが続けた。

「そこまで聞いていたか」

「貴方の同僚なのを知ったから、彼らには貴方と同じ事を伝えたわ。
情報の違いは、実際に遭遇したかどうかの差」

髪をかき上げながらほむらが補足した。

「なっ、早速出たの!?」

話に聞いただけだと、あまり魔女は人前に現れないらしい。
それなのに転校初日に遭遇したものだからか、マオに驚かれた。

「あぁ、魔女とやらの手下だったがな。
銃で撃てば死ぬ。交戦するに当たっての問題は大してなかったぞ」
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/11(金) 00:44:35.46
慌てる事ではない、とでも言うように説明した。

「化物の感想にドライ過ぎ!」

思わずクルツがツッコミを入れる。

「そうね、使い魔はともかく魔女は元々人間なのだから、人と大して変わりないわ」

ほむらも宗介に賛同をする。

「サラッとおっかない事を言う子ね、、、」

「魔女の情報はこんなものだ」

ほむらから伝えられた情報と差異がない事を確認して、二人は納得する。

「私から話す事は特にないわ。
元々来たのも、お二人に誘われたから」

顔合わせが終わったからか、ほむらは帰りの支度をする。

「俺らも個別報告って言われたしお暇しますか」

クルツもそれに乗り、立ち上がって大掛かりな荷物を掴む。
恐らく、荷物の中身は分解済みの狙撃銃だろう。

「そうね。
これからはあたしたちは4人のチームって事でいいの?ソースケ」

マオもそれに賛同し、準備をしながらも宗介に聞く。
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/11(金) 00:45:39.32
「そうだな、直接的な護衛は俺と暁美が引き受けよう」

自分のするべき役割を告げる。

「俺らは学校なんか入れねえから、バックアップを担当させてもらうわ。テッサからもそう言われたし」

バックアップ担当。
基本的に楽天的な男のクルツだが、狙撃に関しては天才的でこれほど心強いバックアップはそうないであろう。

マオも豪快な性格の人物だが、電子戦のスペシャリストであり、こちらもかなり心強いバックアップだ。

「じゃあ、新生ウルズチームって訳ね。ホムラはウルズ11って所かしら」

実際のSRTのコールサインは10までで、その幾つかは欠番になっているため、マオはあえて11と指定した。

「ウルズ、、、11、、、」

ほむらは自分に付けられたサインを呟く。

「了解しました。
これからよろしくお願いします」

歳上に対する態度は弁えているのか、珍しくほむらは敬語を使った。
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/11(金) 00:47:11.88
「じゃ、よろしくな、ホムラちゃん」

クルツは馴れ馴れしく名前で呼ぶ。

コールサインを使うのは基本的に通信や作戦時のみだ。
こうして顔を合わせている時は、本名で呼び合う事にしている。

「暁美。クルツにセクハラされそうになったら迷わず殴って構わんぞ」

クルツがマオにセクハラをしようとして、それを殴られるのはある意味ウルズチームの日常茶飯事でもあるからか、宗介はほむらに注意を告げる。

「わかったわ」

頷いた。

クルツは不服そうな顔をしている。

「それが嫌ならセクハラなんて働かないことね」

マオに杭を刺されてクルツは唸るしか出来なかった。

「それじゃあ、また明日ね。相良宗介」

「宗介で構わない。
フルネームで呼ばれる方が違和感がある」

「わかったわ。おやすみなさい、宗介」

3人が部屋から立ち去り、扉がバタンと音を立てて閉まった。
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/11(金) 00:50:37.06
一方その頃、何処かの孤島。


以前の基地があったメリダ島は放射能汚染が酷く、住める場所ではなくなってしまったので、西太平洋戦隊のメンバーは別の孤島を作戦部としていた。

テッサは何時の間にか侵入していた白い生き物をひっ掴んで廊下を進んでいた。

少しこめかみには冷や汗が浮かんでいる。
マデューカスやヤンに聞いてみたが、この生き物が見えないらしい。


恐らく、宗介の報告にあったインキュベーターなのだろう。


こんな可愛らしい見た目をして、空恐ろしい奴。
そう思ったテッサは報告を個別報告として早く切り上げていたのだ。

「すみません、マデューカスさん。
気分転換に散歩へ行ってきます」

「アイアイ・マム」

横を歩いているマデューカスはやはり、インキュベーターは見えていないようだった。

建物を出るとテッサは駆け足で走り出す。

海岸に着くと、手に持ったインキュベーターをなんの躊躇いもなく海へ投げ捨てた。

「ぬいぐるみとしては欲しかったんですけどね」

誰に言う訳でもなく呟いて、やや満足気に基地へと戻るテッサなのであった。
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/11(金) 07:57:40.77
流石に世界観に差がありすぎる二作品のクロスオーバーだから、違和感が半端ない
でも両作品とも好きだし、面白い挑戦だと思うから頑張って
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/12(土) 01:15:12.82
とっても嬉しい一匹狼?(前)


転校から二日目、セーフハウス。


宗介は適当に部屋のテーブルで朝食をとっていた。

相変わらず通信用の機材が面積の殆どを占めている為、まるで生活感がない。

その中でも特に異質感を放つ着ぐるみ。
犬なんだかネズミなんだかわからない頭部に茶色のボディ。
胴にはタクティカルジャケットを着込み、頭には緑色の帽子、胸には蝶ネクタイを締め、様々な銃器で武装している。

宗介曰く「現代戦の様相を一変させる可能性のある装備」であり、宗介の持つ最も高価な「服」だ。

現代戦の様相を一変させる。と言うのもあながち間違いではなく、一見はただの着ぐるみだが外装は「超アラミド繊維」に変更。
指向性マイク・サーマルセンサー・暗視システムを組み込み、内部からのカメラは6画面、挙句には戦術支援AIさえも搭載された、人間サイズのASと言うに相応しい改造が為されている。

(こいつを使う機会があるかもしれないな)

実のところ、改造される前からこの着ぐるみ「ボン太くん」の事を気に入っていた。

そこまで考えながら、朝食を終える。
食事はできるだけ迅速に済ませるのは教訓であった。

準備を進めようと時計を見る。
登校の時間にはまだ早いが、宗介は陣代高校の頃から護衛をスムーズにする為、かなり早い時間に登校していた。

今回もその為に早く登校をしよう。
銃器の手入れは済んでいる。

洗面所へ向かい歯を磨く。
最後に適当に鞄の中にカロリーメイト(フルーツ味)を詰め込んみ、「アクティブな防弾衣」を着込み家を出た。

別段、防寒着が必要な気温ではないが、各地を転々としている事になっている。

それならば、気温の変化に敏感だとか言えば許可くらいはもらえるだろう。
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/12(土) 01:15:51.51
ほむら宅


いつも通りの時間に、機械的に目を覚ましたほむらは、朝食の準備をしていた。
言っても、食パンをトースターに放り込んだだけだが。

こちらの部屋は宗介の部屋と違う意味で生活感がまるでない。

真っ白な床に、円を描く様に配置されたテーブルと椅子。
そして巨大な振り子。
壁には大量の魔女のデータが病的なまでに並べられている。

パンが焼けるまでの時間さえも惜しく感じるほむらは自室に向かい、銃器の手入れを進める。

トースターが鳴ったようだ。

今度は部屋を後にして、朝食をとる。
焼いた食パンに適当にマーガリンを塗り、口に運ぶ。
随分と簡単な朝食だが、魔法少女であるほむらにはあまり関係のない事だ。

5分程度で食事を終える。

顔を洗い、歯を磨いた後に時計を確認した。

(登校には後1時間近い余裕があるわね)

そう思うとほむらは結局、遅刻寸前まで銃器の手入れと、パイプ爆弾の製作に励んだ。

そして、カロリーメイト(フルーツ味)を鞄に詰め込んで学校へ向かったのであった。
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/12(土) 01:17:21.09
マミ宅


昨日の放課後の出来事。
一夜明けたがマミは未だに反省していた。

自分とした事が、訳も知らずに結界に踏み込んでしまった少女を言い咎めるだなんて。
どうかしている。
彼女たちには悪い事をしてしまった。
昨日の夕方に家に誘った時も気まずく感じて、説明しかできなかった。
謝る事ができなかったのだ。
学校で何とか会って謝ろう。

そして、名も知らなかった十字の傷の彼。
後からキュゥべえから聞いたら相良宗介と言うらしい。
魔法少女でもないのに、発砲してしまうとは。
普段の自分ならばあり得ない事だ。
やってはいけない事だった。
人に危害を加えるなど。

契約してすぐの頃に救えなかった子供を思い出す。
その事をきっかけに、人々を助けようと戦っていたのに。
自分が手を出してしまった。
これではあの子供に顔向けなど到底できない。
キュゥべえが攻撃されて血が上っていたとは言え、自分が許せなく感じる。

一緒にいた黒い魔法少女もそうだ。彼女にも冷たく当たってしまった。
第一、他の魔法少女からしたならば生きていく為に新たな魔法少女の誕生が避けたいのは当然の事だ。
魔法少女だってライバルかもしれないが、人なのには変わりないのだ。
目に映る人々を救いたいのに、敵対視してしまうだなんて、やはり冷静になるべきだ。

謝ろう。

あの時、結界に踏み込んでしまった少女たちに。
あの時、発砲してしまった彼に。
あの時、敵だと思い込んでしまった魔法少女に。

理想の自分である為に。
決意を無駄にしない為にも。
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/12(土) 01:18:38.59
通学路


この通学路を歩くのは、宗介には苦行であった。

街を歩くのには問題ないが、学校付近の必ず通らないとならない道がある。

原因はそこにあった。
左手に小川、右手には木々が生い茂る場所だ。

初日は急いでいた為にペイヴ・メアで急送されたから、こんな道は通らなかった。

(クソッ!ゲリラが潜むのには最適過ぎる!)

その道の手前で、宗介は立ち往生する羽目になっている。
道行く人にはわからない悩み。

結局ここで45分も足止めをされている。

既にその道を歩く生徒は多くなってくる時間だ。

(いかん、このままでは遅刻だ、、、!)

行かねば、進まねばならない。
足を動かすように頭に命令する。

だが、本能はそれを拒否していた。
ふと冷や汗が流れ始める。

長さにしてみれば50m程度なのだろう。
だが、その50mが宗介にはあの世への道にさえ見えた。

一歩踏み出そうとする、その時。
背後から声をかけられた。
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/12(土) 01:20:20.10
「何をしてるのかしら」

ほむらだ。全く気が付かなかった。
普段から警戒を怠らない宗介だが、今回はそれ程に焦っていた。

そして、ほむらは遅刻寸前の時間に出発をしている。
つまり、追いつかれたという事は、時間的にマズイのだろう。

「この道なのだが、、、」

冷や汗を浮かべたまま問題の道を指差す。
ほむらは訳がわからない様子で首を傾げた。

「見ろ、左側には小川、右側には木々が生い茂っている。
どちらとも、ゲリラの待ち伏せにはもってこいだ、危険過ぎる」

至って真剣な顔でほむらに説明した。
ほむらは真面目に聞くのはバカバカしいと思い先に進む。

「先に行くわよ」

「待て!暁美、危険だと言っただろう!」

肩を掴んでほむらを止める。

「急がなければ、遅刻してしまうのだけど」

ほむらは宗介の手を肩から退けて、その手首を掴んだ。

「行きましょう。無意味に目立ちたくないわ」

手首を掴んだまま宗介を引っ張り、例の道を進む。

当然の事だが、ゲリラなど現れる訳もなかった、が。

「お!転校生2人組!
朝から熱々ですなぁー」

後ろから美樹さやかの大きな声が聞こえた。
転校生2人組とはほむらと宗介の事だろう。

「さやかちゃん、声が大き
「っ!敵だ!!」

後から聞こえたのはまどかの声だろうか。
そんな事をほむらが考えている内に宗介は行動をした。
反射的に自分の手首を掴んだほむら諸共、小川に飛び込む。

着水。

派手に水飛沫をあげながら、宗介はグロックを取り出して威嚇射撃をする。勿論実弾だ。

聞き慣れない音に通学路から悲鳴が漏れた。
素早く周囲を確認し、小川から上がる。
テロリストやゲリラと思わしき影は見えなかった。

「暁美、大丈夫だテロリストはいなかった」

当のほむらは安心どころかプルプルと肩を震わせながら、無言で宗介の顎にアッパーカットを決めた。



ちなみに、翌日から目に見えて木の本数が減るのはまた別の話である。
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/12(土) 01:20:57.07
教室


朝の騒動のお陰で制服がびしょ濡れになってしまった。
ほむらと宗介はそれを乾かす為に体操着で授業や受けていた。

濡れたせいか、ほむらは少し肌寒く感じる。

幸いな事に天気は快晴だ。
その上全面ガラス張り校舎だ。
置いておくだけで、否が応でも日光に当たる。
放課後までには制服は乾くだろう。
だが、昼休みまでには乾かないかもしれない。

今は3限目だ。
科目は現代文。
宗介にとってこの学校の授業のレベルは高過ぎるが、特に酷い成績を残した古文の科目がないのは幸運だった。

だが、現代文とは言えども俳句については学ぶものなのだ。

『古池や 蛙飛び込む 水の音』だ。

この俳句を知ってからかなりの時が過ぎたが、未だに宗介には「古い池にカエルが飛び込んで水の音がした」という意味でしか取れない。

水の音がしたからなんだと言うのだ。
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/12(土) 01:21:39.85
以前は「カエルが飛び込んで水の音がした。それに驚いた新兵が声をあげ、敵部隊に発見され自部隊は大損害を被った」と最もらしい(宗介の中では)事を答えたのだが、ふざけているのだと勘違いされた。

今回はそんなヘマをする訳には行かない。

椅子にに掛けてあるアルに聞こうとも考えたが、それは所謂「カンニング(チート行為)」であり、それ以前に人前でアルに喋らせるのは色々問題がある。

アルが一人でに検索をした時は、余韻がどうとかでポエムの傑作だと言っていた。
だが、余韻などどうでもいいと思った。
きっと作者はもっと違う事をこの17字に意味を詰め込んだはずだ。

宗介は配布されたプリントにこう書く事にした。
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/12(土) 01:22:34.68
「作戦は失敗し、撤退の最中。
敵の追撃部隊に追われていて万事休すだったが、カエルが池に飛び込んだ音で、敵部隊の新兵が驚いた。
その隙をついて隊長格を射殺し、自分の部隊は撤退に成功した」

これならばどうだろう。
以前の答えと違い、敵に損害を与える事に成功している。
その上、撤退に成功までしているのだ。
前半の失敗した作戦は他の部隊のミスだと信じたい。

「よし、じゃあ相良。
この俳句の意味を答えてみろ」

現代文の担任に指名される。

「はい。
こそ俳句の意味は
『作戦は失敗し、撤退の最中。
敵の追撃部隊に追われていて万事休すだったが、カエルが池に飛び込んだ音で、敵部隊の新兵が驚いた。
その隙をついて隊長格を射殺し、自分の部隊は撤退に成功した』
であります!」

自信満々に答える。
これならば正解には近いだろう。

だが反応は真逆だった。
教室からは苦笑いが漏れ、教諭からは溜息が漏れた。

「相良。ふざけながら授業を受けいるのか」
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/12(土) 01:23:11.48
屋上


現代文の授業は散々だった。
答えは間違いだったらしく、更にふざけていると判断された宗介は説教までされる事になった。

その事は忘れよう。

現代文の次は体育であった。

前日の夜中に体育がある事を把握していた宗介は、部外者が侵入するのに使えそうな校庭への道に地雷を仕掛けておいたのだ。

(体育は安全なはずだ)

体育の内容はサッカー。
女子は校庭でソフトボール。

宗介が地雷を仕掛けた理由も、女子も校庭での授業だからだ。

女子を監視しながら、サッカーをする。
男子生徒の蹴ったボールが脇道へそれてしまった様だが、監視に忙しい宗介はそれを見逃していた。

飛ばされたボールが地面に落ちる。
落ちた地点は地雷原だ。

爆音。

校庭は一瞬にしてパニックに包まれた。

その中で、ほむらだけは怒りの形相を浮かべて宗介を殴り飛ばしていた。

そして、授業が台無しになり今に至る。
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/12(土) 01:23:53.91
この屋上にいるのは宗介とほむらだけだ。
話があるらしく二人だけで、と。

まどかとさやかは別の棟の屋上にいるようだ。

「話があるんだろう」

カロリーメイトを齧りながら宗介は要件を聞く。

「今日の夕方、昨日の使い魔の本体の魔女が現れる。
この付近の廃ビルよ」

同じくカロリーメイトを齧るほむら。

「何故わかる」

「統計よ」

「そうか」

聞いても教えないだろうし、聞く必要もあまりないと感じて宗介は追求しなかった。

「そして、そこには巴マミが狩りにくる。鹿目まどかと美樹さやかを連れて」

宗介には不思議でならなかった。
なぜ、戦力になどならない二人を戦場へ連れて行くのか。
足で纏いになるだけだ。

「そこに、私たちも向かうわ。
彼女は仲間を欲しているの。
上手く危害はないとわからせて、共闘関係を結ぶ。
そうすれば、あの二人を無理に引き込む事もなくなるはずよ」

一般人を巻き込んで仲間にしようとは。
宗介は納得がいかない様子だった。
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/12(土) 01:24:38.16
「その他にも、魔法少女についてわかってもらいたいのもあるみたいね。
魔法少女体験コース、だそうよ」

「そんなもの、暁美に聞いた方が早いだろう」

宗介は既に魔法少女と魔女の関係を全て聞いていた。
魔女が魔法少女の末路だという事も。
つまり、ほむらの情報量ならば結界内部に入らずとも充分過ぎる事を伝えられる

「あの子たちに私の口から説明するのは恐らく無理ね。
昨日の事で、私たちはインキュベーターを襲う危険人物だと認定されているわ。
昨日助けた分はある程度は信頼されているみたいだけど、魔法少女の事については巴マミの方を信じると思う」

ほむらは手に持っていたカロリーメイトの1ブロックの最期の一口を放り込みながら言った。

「だが、インキュベーターは少女たちを魔女にしようとしている。
そんな胡散臭い奴を攻撃しても問題はないんじゃないか」

宗介も残りの一口を放り込んだ。

「まさか。
あいつは都合の悪い事は言わないわ。
だから、彼女たちが知っている魔法少女は魔女と戦うだけの正義の味方よ。
私たちはその正義の味方を邪魔する悪人でしかないの」
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/12(土) 01:25:22.91
それはそうか、と思う。
確かに、最初から魔女になってくれ!などと言われたら願い事一つで契約するには無理がある。

少ない餌で大きな利益を得ようとするやり方だ。

「なるほど。
だからこそ、早い内に巴と共闘関係を築かねばならないのか」

正義の味方、という響きは懐かしくも感じた。
以前から<ミスリル>は正義の味方気取りとよく言われていたものだ。

「そう。
それを今日の狩りで何とか証明しなければならないの。
これ以上長引かせたら、彼女たちは後戻りできなくなってしまう」

ほむらは珍しく表情に影を落とした。

「できるのか?」

「わからないわ」

宗介の質問は曖昧な形に即答された。

「私たちの武器は、どう見ても信頼できる正義の味方なんてものじゃないわ。
警戒の原因の一つかもしれないわね」

信頼できないと言われる。
宗介はそれに反論する。

「最近の銃器の信頼性はかなり高く仕上がっている。
寒冷地でも砂漠地でも扱えるものを選んでいるぞ」

このグロック19もそうだ、とちらつかせる。

「そう言う意味じゃないのら、
確かにその銃の信頼性は非常に高いわ。でも違うの。
彼女は魔法で戦ってる、現代兵器を使う魔法少女なんて恐らく私だけよ。
つまりビジュアルの問題」
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/12(土) 01:26:01.83
確かに銃と魔法はかけ離れ過ぎている。
以前にラムダ・ドライバを魔法と称された気もするが、宗介も流石にラムダ・ドライバを現代兵器とは言えない。

「そうか、外見だな。
それなら俺に秘策がある。
魔女が現れるまでの時間は下校からどれ位だ」

「丁度1時間程度よ」

秘策がある、と断言した。
その顔はやけに自信に満ちている。

「ならば、問題はないな」

そう言うとほむらがくしゃみをした。
朝からこの格好なのだ、冷えてしまったのだろう。

宗介は羽織っている防弾衣をほむらに掛けてやる。

「悪いわね」

「いえ、それほどでも」

何故かアルが即答した。

「お前に言った訳ではないだろう」

そのやり取りでほむらはくすりと笑った。

「そう言えば軍曹殿。
私が昨日、何故軍曹殿がインキュベーター野郎と魔女が見えるかを考えたのですが」

突然考察を話し出す。

「なんだ、言ってみろ」
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/12(土) 01:27:17.40
「ラージャ。
ホムラ殿は魔法少女の素質は「二次成長期の少女で、人との因果が一定以上と言っていましたね」

アルがほむらに確認をとる。

「ええ、そうね。
私が貴方に話した記憶はないけれど」

ほむらが同意する。

「それについては軍曹殿から聞きました。
軍曹殿は二次成長期でも少女でも勿論ありませんが、人との因果の部分が極端に当てはまるのだと思われます」

宗介と、その周りの人々との因果。
考えてみれば、関わってきた人の数ならば歳以上のものになるだろう。

「人との因果だと?」

だが、それでも年齢と性別の条件を超えるとは宗介には思えなかった。

「考えてみてください。
ガウルンなども含めアマルガムとその周辺を。
世界に数えれる程しかいない「ウィスパード」の知り合いが貴方にはどれだけいますか?」

宗介はザッと考える。
宗介を人間らしく変えてくれた少女、千鳥かなめ
上官であり、仲間でTDD艦長のテレサ・テスタロッサ
その双子の兄で敵として対峙したレナード・テスタロッサ
以前に流れ着いた町でクロスボウの自分が死なせてしまった、ナミもそうかもしれない。
最後に、レーバテインの開発に携わったり、手紙とある動画のデータを渡してくれたクダン・ミラ。

これだけで、5人。
世界中でも数少ないと言われているのにだ。

「多かったでしょう?
それに、軍曹殿はこの世界の改変を止めて見せたのです。
ある意味では世界中の人との因果があります」

TARTAROS破壊の一件の事だ。
ある意味それは、かなめがやったに近いものがあるのだが。
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/12(土) 01:28:08.92
「そうか、それなら僕が見えるなら納得がいくね」

何処からともなくインキュベーターが現れた。
一連の流れを聞いていたらしい。

「そうか」

既に相手にしても意味がないとわかった宗介は興味なさげだ。

「それと相良宗介。
学校中に罠を張られると困るんだよね。
ここに来るまでに、幾つ個体を減らされたか。
問題はないけど、勿体無いじゃないか」

どうやら、正規の道から入ってこなかったようで、地雷の餌食になっていたらしい。

「お前が訓練不足なのはよくわかった。
俺から話す事はない、失せろ」

新しいカロリーメイトを開けて、ブロックを咥えながらグロックを向ける。

インキュベーターは「やれやれ」といった様子で去って行った。

「ところで宗介。
それは何味?」

魔法少女について話す事がなくなったからか、他愛もない事を聞くほむら。

「フルーツだ」

「奇遇ね。私もフルーツ派よ」

そう言いながらほむらは立ち上がる。

「何処へ行くんだ?」

「別の棟の屋上に、美樹さやかと鹿目まどかと話にね。
貴方も行くのよ、宗介」

それだけ言うと先に歩き始めてしまった。
宗介は新しいカロリーメイトの最期の1ブロックを咥えながら後ろから付いて行く事にした。
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/12(土) 01:29:52.66
別の棟・屋上

さやかはフェンス越しに病院を見つめながら呟いた。
「やっぱりさ、あたしたち馬鹿なんだよ。平和馬鹿。
別に何も珍しいモンじゃなくて。
本当にチャンスが欲しい人間なんて幾らでもいるのにさ。
なんであたしたちなんだろう」

それが、さやかが思いを寄せている少年の事だとまどかはすぐに理解した。

「そうだな。
だが、お前たちがわざわざ戦場に赴く必要性はない」

突然扉が開き、宗介とほむらが現れる。
宗介は、さやかの呟きに答えた。

「鹿目まどか。昨日の忠告、覚えているかしら」

ほむらはまどかに話し掛ける事にした。
まどかは遠慮がちに頷く。

「ならいいわ」

そこで会話が途切れた。

「あんたに何がわかるのさ、、、!」

さやかは語気を強めて、宗介のその答えに食ってかかった。
ほむらとまどかはそれを見つめる。

「何もわからないな。
何しろ、会ってから二日だ。
だが願いが叶うとしても、死と隣り合わせだけなら安過ぎる。
それ相応のリスクが更に付くべきだ、怪しいとは思わないのか?」

死ぬ事と同じレベルのリスク。
宗介はぼかしながら魔女化を伝えようとした。

「何さ、リスクって、、、」

ほむらが言っていた通り、死と隣り合わせ以外は知らないようだ。

「気になっただけだ。
それに、今日話しに来たのはこんな為じゃない」

ほむらからは魔女化を明確に教えるな、と言われている為にこれ以上は触れなかった。
マミのメンタルでは魔女化の事実に耐えられないらしい。
その事が、まどか又はさやかを伝って知ってしまう事を危惧しているのだ。

「そう、そして一番用があるのは巴マミ。
出て来なさい、話があるの」
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/12(土) 01:31:41.65
ほむらは、何処か一点を見つめながら話す。
よく見ればそこにはマミの姿があった。
マミはと近くまでとぼとぼと歩み寄る。

「私たちは、貴方と共闘したい。
その事を伝えに来たの」

淡々と告げる、共闘の願い。

「待って、少し落ち着かせて頂戴。
共闘だったわね、答えるけど、お願い、その前に言わせて」

しどろもどろになりながらも、マミは息を整える。

「ここにいる、全員に言わせて。
相良くんも、暁美さんも、鹿目さんも、美樹さんも」

ここで区切って大きく深呼吸。

「昨日はごめんなさい!」

突然過ぎる謝罪。
聞いていた全員は唖然とした。

「まず、鹿目さんと美樹さん。
あんなに言い咎めるような事をして、ごめんなさい」

まずはまどかとさやかへ。

「そ、そんな、私たちはマミさんに感謝してるんです。
あんな所に入って、助けて貰えたんです。
だから、頭を下げないでください、マミさん」
「そうですよ、マミさん。
あんな未改装の場所に入ったのはあたしたちなんです。
危ない所を助けてくれたマミさんには迷惑まで掛けちゃったんです、謝りたいのはこっちですよ」

謝られた二人は本心から言っているようだ。
歳上だからなどの謙遜は全くない。

「ありがとう、二人とも……」

本来はたかだか14.5の歳なのだ。
無理に気張って一人きりで戦い続けるには辛過ぎる。
すっかり責められるものだと覚悟していたマミは、すこし涙ぐんでいた。
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/12(土) 01:33:34.28
「次に相良くん。
頭に血が上っていたとは言え、発砲するなんてどうかしていたわ。
少し違えていたら怪我までさせていたかもしれない。
本当に、ごめんなさい」

次に宗介へ。

「こちらこそすまない。
まず、対話をするのならばこちらから武装解除するべきだった。
慣れない環境だったのでな、こちらも焦っていた」

宗介も本心から告げる。
確かに、サブマシンガンと手榴弾で武装した男に動揺するなと言う方が無理がある。

「それに、都合上撃たれる事もよくある。気にしないでくれ」

気にしないでくれ、は撃った事を気にするなという意味なのか、都合の事を気にするな、なのかは分からないが励ましているらしい。

「ありがとう、相良くんも。
最後に暁美さん。
貴女の行動は、魔法少女としては、っ、当然だと思…
「無理に謝らなくてもいいわ。
とりあえず、泣き止んで頂戴」

マミが話そうとしているのを遮り、ハンカチを手渡す。
何故こうも二人とも不器用なのだろうか、とさやかは思った。

あれは、ほむらなりの気遣いなのだろう。

「謝らなければならないのは、むしろこちらよ。巴マミ。
契約を阻止したいとは言え、強引が過ぎたわ、こう見えても反省しているの」

「俺もだ」

爆破した張本人として、宗介も便乗する。

「二人とも、凄く無表情…」

まどかがこの様子を見てぼそりとこぼす。

「む。そうか…
こういう時にどんな顔をすればいいのか、わからなくてな」
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/12(土) 01:34:13.85
こうしている内に、マミは少し落ち着いたようだ。

「暁美さん…ごめんなさい…
そして、共闘の方は…っ…」

謝罪はできたが、次の答えでつっかえてしまう。

再びほむらはハンカチを手渡そうとする。

「転校生。こういう時は、待つものなの」

さやかもほむらが不器用なのは気が付いていたのか、その行動を止めた。

「なんだ、俺がどうした」

転校生の単語に宗介まで反応する。

「宗介じゃねーよ……」

脇で見ていたマミとまどかが思わず噴き出した。

「これなら言えそうね。
共闘の方、こちらこそお願い」

そう言いながらマミはほむらに右手を差し出した。

ほむらは微笑みながら、その右手をとった。

「一件落着、なのかな…?」
と、まどか。

「そのようだな。
いい事だ」
宗介も続く。

「うんうん、これでこそ青春だね~」
さやかは冷やかすように。

一連のやりとりの青臭さに気が付いたのか、マミとほむらは揃えて顔を赤くした。

宗介の小型通信機に信号が入る。
『こちらウルズ6。羨ましい任務なもんだねぇ』

クルツからも冷やかすような声が届くが、宗介には何の事かわからなかった。

「…?何の事だ」

クルツに通信している間に何やら話が進んでいたらしい。

「そういえば、クッキーを焼いてきたんだけども…
皆で食べない?お昼休みもまだまだ長いし」

この提案は、全員が賛成だった。
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/12(土) 01:36:15.12
放課後、セーフハウス


マミのクッキーの出来は素晴らしいものだった。
あまり食べ物には関心のない宗介がそう感じるのだ、ほかの皆もそうだったのだろう。

結局、あの後にマミの口からまどか、さやかの両名を結界に連れて行く事は辞める事を言い渡された。
やはり、平和でいられるならばそれが一番だ、との事だ。

まどかはそれに快諾した。

悩んでいたさやかも、少し唸った後に納得したようだった。


そして、今はセーフハウス。
一旦装備を取りに戻るとして、帰宅する事にしたのだ。
玄関の前には制服に着替え直したほむらが待っている。

宗介の任務はまどかの護衛だが、魔女の結界は少ない方が良い。
その方が危険性が減らせる。

「まだかしら?」

外から声がかかる。

「もう少し待ってくれ」

宗介は今まさに、ボン太くんを装着している最中だった。

カメラの起動。
バイラテラル角の設定。
その他探知機能の起動確認。
装備確認。
そして、ボイスチェンジャー。

翻訳者が必要になるため、ヘッドセットを一つ持ってゆく。
これは、ボイスチェンジャーに拾われる前の宗介の声を届かせるための物だ。

ボン太くんはどこか故障したらしく、ボイスチェンジャーをオフにすると、全ての機能がシャットダウンされてしまう。

準備は完了だ。

「ふもっふ!」
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/12(土) 16:41:50.41
キュゥべえが動物爆弾にされててワロタwww
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/13(日) 01:31:23.28
とっても嬉しい一匹狼?(後)

集合場所

「ねぇ、宗介。
やっぱりふざけているの?」

「ふも、ふもっふもっふ」
(違う、そんな事はないぞほむら)

ヘッドセットを付けたほむらの耳に宗介の声とボン太くんの声が聞こえてくる。

ふざけているようにしか感じないほむらは溜息を吐いた。

そこにマミが到着する。

「……暁美さん、魔女退治をふざけているのかしら?」

ボン太くんの姿を確認すると、ほむらと同じくやはりふざけていると感じた。

「私は真面目よ。
ふざけているのは、こいつ」

「ふもっ」
(真面目だ)

マイク越しに声が伝わる。

「本人は大真面目らしいけれど」

ほむらは意訳して伝える。

「中身は誰なのかしら…?」

おおよそ検討はついていたが、とりあえず確認しておく。
もっとも、魔女退治にくるのはマミ、ほむら、宗介のメンバーの予定だ。
それならばこの場にいない宗介が妥当であろう。
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/13(日) 01:32:04.86
「ふもも、ふもっふ」
(相良宗介だ)

「……相良宗介だ」

面倒臭そうにほむらは翻訳する。
何故自分がわけのわからない着ぐるみの翻訳をしなければならないのか。

「せめて、そのボイスチェンジャーだけでもどうにかならないの?」

翻訳が面倒になると感じたほむらはボイスチェンジャーを切る提案をする。

「ふももふ、ふもっふもっふ」
(それはできない相談だな)

「何故かしら?変なこだわりならその着ぐるみから引っぺがすわよ」

翻訳する事もせずに、ほむらとボン太くんは会話をする。
当然、マミには会話の流れがわからなかった。

「ふももふもふもふ、ふもっふもっふふももっふ、ふも」
(故障が原因でボイスチェンジャーを切ると、全てのシステムがダウンしてしまう)

ボン太くん語で話し続ける宗介。

「ならその着ぐるみを使わなければいいじゃない!」

思わず大きな声を出してしまった。
ほむらはボン太くんについて、ある程度の説明は受けている。
これが、ある種ASに近い物だとも聞いたが実感はなかった。
ただの着ぐるみにしか見えない。

「ふもももふもっ、ふもっふ」
(そういう訳にはいかない)

ほむらとボン太くんは論争を続ける。
マミにはやはり会話の内容が全くわからなかった。
しかし、これだけは言っておこう。

「あの…二人とも?
結構目立っちゃってるわよ?」

苦笑を顔に貼り付けたマミが二人に告げた。
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/13(日) 01:32:59.77
裏路地


ここならば目立つまい、とマミはボン太くんとほむらを誘導した。

もう長い間一人で戦ってきたため、こういった人が来ない場所は網羅している。

「それで、相良くんは何がなんでもその格好でくるのかしら」

「ふも」

「そうだ、と言っているわ」

人目に晒されてようやく冷静になったほむらは翻訳を再開した。

「そう。なら、仕方ないわね。
でも、私は必ずしもフォローできるとは限らないの。
それでも構わないなら、その装備でついてきても構わないわ」

意外な事に、ボン太くんを認めたのは誰よりも魔女の厳しさを知っているマミだった。

「貴女、正気なの?」

「だって彼、来るなって言っても来るでしょう?」

マミはそう言いながら微笑む。

「ふもっふ」
(勿論だ)

ボン太くんは即答する。
心なしか、ボン太くんの表情が真面目になった気がした。(勿論着ぐるみのため、そんな事はない)

「…仕方ないわね……」
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/13(日) 01:33:32.51
はぁっ、と一つ大きな溜息を吐いて、ほむらも承認した。

「それでも、今回で危険だと判断したらそれは着せないわ。
それでもいい?」

最大限に譲歩する。
流石に自業自得であっても、目の前で死なれては後味が悪い。

「ふもっふ」
(肯定だ)

「そう。なら行きましょう」

条件を飲み込んでくれてほむらは、ほっとした。
そして、翻訳を忘れてしまう。

「……今のふもっふはどっちだったのかしら」

「面倒ね、これ」

ほむらはやはり面倒臭そうに翻訳をするのだった。
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/13(日) 01:34:03.40
街路


三人は、歩きながら魔女を探していた。
ほむらは場所を知っているらしい事を宗介は聞いたが、なぜ知っているかは教えてくれなかった。
そして、その魔女の事をマミには伝えていない。

事情がある。とだけ言われて宗介はそれ以上の追求をしようとは思わなかった。

その事実が知られたくないのか、ほむらはさりげなく魔女の居場所へと誘導する。

それにしても、何と奇妙な一行なのだろうか。
女子中学生二人に、着ぐるみが一匹。
自然と周りの目は集まっていた。

そして何より。
「ふもっ!ふもっ!」
(寄るな!散れ!)

人目につくのを嫌がるボン太くんは拳銃を片手に持ち騒ぎ立てる。
それを、後ろにいるマミは抑えていた。
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/13(日) 01:35:18.82
何発かの銃声が漏れる。

抑えきれずに、引き鉄を絞らせてしまったのだ。
その銃声は明らかにエアガンやらガスガンやらだと言い訳するには苦しいほどの火薬の爆発音を響かせた。

幸い、銃口は真上を向いていたために怪我人はでなかった。

流石に耐えきれなくなったほむらは無言で頭をはたいた。

「ふもっふ…」
(痛いじゃないか)

だが、これに驚き周辺から人が逃げ去ったのは僥倖であった。

『あーあー、こちらウルズ2
明らかに様子のおかしいOLさん発見。
ソースケたちの近くの廃ビル付近ね。あとはよろしく、オーバー』

えらく適当な通信が入る。
恐らく魔女にターゲットにされたのだろう。

「ふもっもっふふもふも、ふもっ!」
(魔女が現れたらしい、行くぞ!)

通信を聞いた宗介は声を挙げる。

「わかったわ!」

ほむらは内容を理解したが、マミには聞こえていない。
マミからしたらただ騒いでいるようだ。

「えっ?どうしたの?」

マミは様子が変わったほむらに問おうとするが、既にボン太くんと共に走り出していた。

「ちょ、ちょっと!待ってよー!!」

遅れて事態を理解したマミは、二人の後ろを追いかける形で走り出した。
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/13(日) 01:35:58.91
廃ビル付近


ボン太くんは、その短い足から想像もつかないほどに俊敏だった。

同時に走り出したほむらも、遅れてほむらに並んだマミもそれなりに後方で走っている。

先にボン太くん一人で到着していたのだ。

ほむらもマミも、女子中学生とはいえ魔法少女だ。
一般人の走りとは比較にならない速さで駆け抜けていたはずだが、ASに近い構造のボン太くんには敵わなかった。

「なんて出鱈目な速さなのよ…」

肩で息をしながらほむらが感心する。

「ふもっふ、ふもふもも~」
(どうだ、中々の性能だろう)

一方ボン太くんふほむらとマミよりも速かったにも関わらず、息が一つも乱れていない。

踏んだ場数もさることながら、ボン太くんの性能のお陰でもある。
もっとも、バイラテラル角をかなり急に設定しているため、宗介自身の動きはかなり少なかったのだが。

「『どうだ、中々の性能だろう』
そうね、見直したわ」

「見直すどころか、驚いたわ」
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/13(日) 01:36:40.76
流石は魔法少女といったところか、驚くべき事に二人の息ももう整っていた。
恐るべきベテラン達である。

「!?あれは…!」

マミは廃ビルを指差す。
釣られてボン太くんとほむらも見上げる。
そこには虚ろな瞳をしたOLが今にも飛び降りようとしていた。
あと、三歩、二歩、一歩。
そして、最後の一歩もなんの躊躇いもなく踏み出した。

それを見てマミは高速で変身する。

「っ!」

そして、腕を伸ばすと何もない空間からリボンが出現する。

OLはリボンに絡め取られ、事なきを得た。

静かに降ろすと、飛び降りた反動でなのか失神しているようだ。

マミは素早く首筋を確認する。
唇の形をした、歪なマーキング。

「間違いない、魔女の仕業ね」

確認を終えるとマミは素早く立ち上がり、ビルへと向かう。
ほむらとボン太くんもそれに続いた。

勢いよく三人は突入する。が、いきなり行き止まりにつく。

「入り口ね」

ほむらが、そっと呟く。
マミは小さく頷いた。

確かに、行き止まりの壁には大きく紋様が描かれている。
よくみれば、先程のマーキングと似た意匠にも見える。

「ふももっふもっ」
(これが入り口か)

「そうよ。行きましょう」
ほむらは先行して進入する。

「ふもっ!」
(了解!)
ボン太くんもそれに続く。

「……何て言ってたのかしら」
釈然としないまま、マミも続いた
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/13(日) 01:37:37.88
結界


相変わらず結界の中はコラージュ・アートのようで、現実からかけ離れていた。

これが危険な空間とは思えんな。

ボン太くんもとい宗介の育った「危険」はもっと殺伐としていた戦場だ。
それぞれの「危険」に差異が生まれるのは当然である。

(だが、危険には変わりないな)

ボン太くんはその可愛らしい見た目に似合わない散弾銃を構えている。

ほむらはその後ろに機銃を、マミは武器を具現化はしていなかった。

目の前に動作。

ボン太くんは素早く髭の使い魔に発砲。

ッポン!と軽快な音と共にラバーボール弾が発射される。
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/13(日) 01:38:51.10














ぐ し ゃ っ 。








106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/13(日) 01:40:34.64
鈍く不快感の強い何かが潰れる音が響く。

何か、ではなく確実に使い魔なのだが。

見事に潰れていた。

訓練弾と言えど、改造を施された弾は使い魔を一撃てひしゃげさせたのだ。

これにはマミもほむらも苦笑いする。

「ふもっふ」
(やわだな)
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/13(日) 01:41:08.39
その後も、ボン太くんの戦果は凄まじいものであった。

化け物であろうが、戦闘には変わりないのだろうか。

サーチアンドデストロイ

まさにその単語を示すように、的確に敵を文字通り「潰して」いった。

発見次第に速射。
ひと塊りとなっている使い魔には確実にロケットランチャーを放ち木っ端微塵に。

対応出来ない数でも、例の素早さが最大の武器ともなった。

勿論、マミとほむらもベテランの力を思う存分に発揮した。
むしろ、ボン太くんの立ち回り方が良かったのかもしれない。

今がまさにそんな状況である。

「ふも~ふも~!ふもっふふもふも!」
(暁美!巴!後ろの奴を頼む!)

ボン太くんはそれなりの数の使い魔に追われていた。

実際は囮になっているのかもしれないが、あの外見だと追われているようにしか見えない。
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/13(日) 01:41:40.73
時に後ろに発砲。ぐしゃ。
前を阻む浮遊型と思しき使い魔は殴り飛ばす。

「『後ろを頼む』って。
巴さん、やるわよ」
「ええ、任せて!」

何時の間にかほむらはマミの呼び方を変えていた。
フルネーム呼びよりも、優しく感じるからだそうな。

「始めるわ」
そういって軽機銃を構える。
魔法とは程遠い見た目。
ボン太くんを追い回す使い魔に照準を合わせ。
掃射。
ズガガガガガガガガ、と凶悪な発射音。
ボン太くんの散弾銃とは比べ物にならない破壊力だ。
こちらは潰れるどころではない、粉々だ。

「こっちもやるわよ!」
マミは意気揚々と大量のマスケットを召喚。
一斉に放つ。
魔法で出来た物だ、出現した時から銃口は全て使い魔へと向いている。
こちらの破壊力も中々際どいものだ。
恐らく、この結界と同じ材質(?)のような敵でなければ、肉片と化しているかのような爆裂。
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/13(日) 01:42:37.04
だ。
恐らく、この結界と同じ材質(?)のような敵でなければ、肉片と化しているかのような爆裂。



数分後、三人の連携によって使い魔は粗方消滅させる事に成功した。

「ふもっ!ふもっ!ふもっ!」
ふもふもと言いながら最後の一体を弾の節約のためにストンピングやら、銃底打撃で攻撃する。
可愛らしい見た目に反して、かなりエグい攻撃方法だ。
既に使い魔は原型をとどめていない。

このボイスチェンジャーは軽い吐息までも感知してボン太くん語として喋ってしまう。
この「ふもふも」はただの息だ。

「ふも~、ふもふもっふふもふも」
(ふう、これで片付いたか)

「『ふう、これで片付いたか』だそうよ。
後は魔女だけね」

「油断はしちゃダメよ。
蓋を開けないからには、中身もわからないし、どんな危険な奴が現れるかもわからないから」

翻訳を聞いたマミが油断せぬように、注意する。

「そうね。確かに油断は死に直結するわ。
絶対に気を抜かないで」

さらに厳重に注意を呼び掛けるほむら。

「ふもっふ」
(勿論だ)

油断が死に直結する。
どんな戦場であっても、変わりのない事だ。
そして、死はどんな有能な戦士にも訪れる事も熟知している。

「それじゃあ、行くわよ!」
そう言ってマミは勢いよく最後の両開き大型の扉を蹴破った。
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/13(日) 01:43:13.80
結界最深部

細い通路を抜ける。
目の前には円形の広い空間。
地面はかなり下にあるため、この通路から飛び降りたら退却は至難だろう。

そして中央には魔女。
これまたかなりのサイズのコラージュ・アートの塊のような姿をしている。

むしろ、使い魔よりも遥かにどんな形状なのか判別がし難く感じる。
使い魔は頭部(?)から直接手足が生えたような、一頭身生命体であることはわかった。

だが、こいつはなんだ。
なにか、植物でも模しているのだろうか。

ボン太くんがそんな事を考えている内に、マミとほむらは飛び降りてしまったようだ。
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/13(日) 01:44:03.06
「先手必勝よ。反撃なんてさせるつもりはないわ」
軽機銃を乱射しながらほむら。
的が大きい分当たりやすいのだろうか、照準は大雑把だ。

「ふっ!」
マミはマスケットを召喚し、踊るような動きで連射。
隙だらけに見えるが、確実に攻撃は回避している。
しかし、その銃撃は幾つか外れ、壁や地面に穴を残した。

最後にボン太くん。
「ふもっふふもふもっふ!!」
(グレネードランチャーで牽制する!)
「グレネードランチャーを使うそうよ!巴さん!巻き込まれないように注意して!」
ほむらは素早く翻訳する。
そうとだけ言うと、ボン太くんは何処からともなく六連装グレネードランチャーを取り出す。
そして、構え、発射。



ポン、ポン、ポン、ポン、ポン、ポン。



ガーン、ガーン、ガーン、ガーン、ガーン、ガーン。



間抜けな発射音と、強烈な爆発音。

全てが魔女に向かい確実に命中する。
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/13(日) 01:44:43.92
これには魔女もたまらなかったのか、仰け反りながらも回避しようと壁を走り回る。

その間に、三人の足元には小さな使い魔が接近していた。
そして、集合した使い魔は一本の蔓になり、三人を束縛しようとする。

ボン太くんだけは、蔓になる前に使い魔を踏み潰した。
ぐしゃ。
見た目とのギャップが激し過ぎるため、何をしてもえげつないな、とほむらは吊るされながら思った。

(あれ?このままじゃマズイかしら?)
捕まってからほむらは考える。

しかし、その心配は必要ないようであった。
マミの銃撃が残した穴から、リボンが生え始める。
それは、急速に伸びて行き、魔女の体を縛り上げた。
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/13(日) 01:45:20.43
マミは自由になった腕で胸元のリボンを外し、それで蔦を切り裂く。

ほむらは同じく自由になった腕で盾からナイフを取り出し、蔦を裂いた。

二人が、ボン太くんを中心にするように着地する。

ほむらとボン太くんはそれぞれRPGを構え、マミは魔法で巨大な大砲を作り上げた。

「喰らいなさい」
「ふもっふ~~~~!!!!!」
「ティロ!フィナーレ!!!」

三者三様同時に叫びながらそれぞれの獲物を魔女に向けて放った。

勿論、木っ端微塵である。

次の瞬間、結界は消滅した。
廃ビルの中に戻ってくる。

「ふもっふふもふも」
(任務完了か)
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/13(日) 01:46:08.82
廃ビル外

三人が廃ビルから出ると、被害者のOLが丁度目を冷ました。

マミの姿を確認すると、自分のした事を思い出し、怯え始める。

「やだっ、私、なんでこんな事…」

震えながらマミに抱きつく。

マミはそっと抱き締めながら、落ち着かせる。

「大丈夫ですよ、ちょっと悪い夢を見ていただけですから」

そんなに抱き締めたら胸で窒息させてしまうのではないか、とほむらは恨めしく思い、自分の胸を凝視した。

見事な平坦。
溜息を吐くが、まあ仕方のないことだろう。

出てくるタイミングを完全に失っていたボン太くんも励まそうと近寄る。

「ふもっふ、ふもふも、もふっふもふも」

何かを励まそうと声を掛けたのだろうか。
ほむらは結界消滅と共にヘッドセットを外して首に掛けていたため、実際になんと言ったのかを知る人はいなくかった。

ボン太くんなりに、優しさを見せたのだろうか。
だが、それは仇となった。

それもそうだ。
顔を挙げたらいきなり巨大な着ぐるみの顔があれば誰でも驚く。

「きゃあああああああ!!!!!」

自分のした事に怯えていたOLだ、そんなに周囲に気を遣う余裕などは一切なかったようだ。

一連の流れを見て、マミとほむらは久しぶりに幸せな気分を味わえた。
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/13(日) 01:47:03.02
一方その頃、何処かの孤島


テッサは莫大な資料に目を通していた。

アマルガムについての報告。
数ヶ月前の決戦に勝利したとは言えど、アマルガムは構造はかなりタフな組織だ。
更に、今の構成員など発足当初のメンバーの理想には遠く及ばない。
ただの危険な技術を持ち合わせたテロ集団に変わりない。

テッサが今、手に持っているのは関係者のある程度のリスト。

その中の一つに目が留まる。

既に故人となっているが、その最終の住所がチラリと見えたからだ。

日本○○県見滝原市

宗介が任務に赴いている地ではないか。

名前を確認する。
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/13(日) 01:47:38.52





美国議員





下の名前は、削除されていた。
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/14(月) 01:22:57.51
サイドアーム
それが、愛でしょう




美国宅付近


「まったく、なんであたしがこんな事を…」

目的地を近くにして、メリッサ・マオはぼやいていた。

昨日の夜中にテッサから連絡があったのだ。
その指令は、兵隊の任務とは無関係と言っても過言ではない。

ある人物のメンタルケアだと言う。

しかも、子供の。

その少女の父親はアムルガムとの関係があったらしく、殺害された。
もっとも、表向きの報道は自殺となっているが。
しかも、自殺の要因を作る為に死後に汚職まで着せられたある種悲劇の人物。

聞くところによると、その少女は14だか15だか。
例の魔法少女とやらの素質があるらしい。
そして、それの阻止の為のメンタルケア。
下手に契約などされては、宗介の任務の障害となりかねない。

そんな名目で見ず知らずの少女のメンタルケアをしろとの事だ。
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/14(月) 01:23:31.70
そうこう考える内に目的地に到着。
建物を見ると、感想をこぼした。

「面倒な事になったわね…」

大層な家だが、窓が割れ、塀には大量の落書きがされている。
海兵隊で育ったマオは、こういった遠回しの手段が嫌いだった。

「行くしかないか…」
と、溜息。

この任務は自分には向いていない。

そこで黒髪セミショートの少女がこの家を見上げている事に気が付いた。

髪型が何処となく自分と似ているな、とマオは思う。

だが自分には関係ないと思い、美国宅へ入ろうとする。

が、声を掛けられた。
家を見ていた少女だ。

「あ、あの…この家の…知り合いの方…ですか…?」

口下手なのだろうか、凄く途切れ途切れに少女は訪ねてきた。

「いや、違うよ」

「…………」

訪ねてきた事に答えたら、今度は喋らなくなるのはどうなんだ。
そう思って、マオが口を開いた。

「どうしたの?」

「あの…付いて行っても…いいですか…?」

やはり、この任務は自分には向いていない。
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/14(月) 01:24:02.07
見滝原中学校


ボン太くんが多大な戦果を挙げた魔女との戦いから5日、転校からは丁度一週間を宗介は迎えた。

だが、相変わらず宗介はこの校舎に慣れていない。
構造の問題ではない。
この全面ガラス張りデザインがダメなのだ。

(これではいつ狙撃されるかなど、分かったものではない…)

実際にはこの街が平和である事、クルツがついている事を考えれば狙撃などあり得ない事ではあるが。

いっそ、自分の教室の窓をコンクリートで固めてしまいたい気もしたが、それを実行したが最後、ほむらとさやかに殴られ、早乙女教諭には怒られ、まどかに愛想を尽かされるのは目に見えていた。
そうなってしまえば、任務の達成は困難だ。

だからこうして、大いなるストレスに耐えながら勉学に励んでいた。


キーンコーンカーンコーン


チャイムが鳴り響いた。

「はい、じゃあ授業はここまで!
後で皆はノートをまとめること!」

そうとだけ言い残して担当の教師は去って行く。

昼休みの時間だ。

あたりは騒がしくなり、ある生徒は購買へ。またある生徒はは弁当を広げた。

宗介は魔女狩りのメンバーのマミ、ほむらに加え、まどか、さやか、仁美の計六人で屋上へ向かった。
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/14(月) 01:24:52.34
屋上


周りに異性しかいないという状況は、宗介には慣れない環境だ。
おそらく、クルツは狙撃砲のスコープからその様子を覗いているのだろうが。

マミ、まどか、さやか、仁美はそれぞれ弁当を広げる。
相変わらず食べ物に無頓着なほむらと宗介はカロリーメイトを当然の様に取り出した。

これでも、陣代高校の最初期に比べたらマシな昼食だ。

そのころは、軍用レーションやら得体の知れない干し肉を無言で貪っていたのだから。

だが、一般中学生の感性からしたらカロリーメイトは昼食には当てはまらないようであった。

「相良くん、ほむらちゃん……それ……」

最初に気になってしまったのは、まどかだった。

「?フルーツ味だ」
「私もよ」

宗介もほむらも、味を聞かれたものだと勘違いして答える。

「そうじゃなくて、まどかが言いたいのは、それで足りるのかって心配でしょ」

続きが言えなかったまどかの言葉をさやかが代弁する。
流石は幼馴染。互いに理解しあっている。

「美樹、侮ってはいけないぞ。
カロリーメイトはこのサイズですぐに食べられる。その上、必要な栄養が揃っている点もかなり評価できる」

宗介はカロリーメイトの利点をざっと並べる。

「栄養じゃなくて、量の問題じゃないのかしら…」
と、更にさやかの言葉をマミが引き継ぐ。

「量なら問題ないわ。
4ブロック入りを二箱も取れば、それなりの満腹感は得られるもの」
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/14(月) 01:25:50.40
今度はほむらがカロリーメイトを語る。
宗介は横で頷いていた。

「二人とも面白い方ですのね」
と仁美。

この中で唯一魔女魔法少女を知らない、本当の意味での一般人。
マミはこんな平和を守る為に戦っていたと行っても間違いではない。

「でも、相良くんは体も大きいし、そうもいかないんじゃないのかなって」
そう言いながら、まどかは宗介とほむらの手元を見る。

ほむらが一箱、宗介は二箱しか持ち合わせていなかった。

「しかも、二人とも自分等で言ってる量より少ないし…」

と、さやかが突っ込む。

「あぁ、昨日の夜に買いだめしようと思っていたら、フルーツ味が売り切れていてな」
「奇遇ね、私もよ」

どうしてこの二人はこう、変なところで共通点があるのだろうか。

「私の弁当を分けるわよ?
って言いたいところだけど、流石に二人ともそれでも足りないわよね…」

マミが分ける提案をする。

「私のも良いよ!」
「あたしのも食いなよ!」
「わたくしのも、どうぞ」

それを皮切りに三人も二人にわけようとする。

「ありがとう、みんな。
でも、そうすると貴女達の方が少なくなってしまうわ」

四人の申し出は素直に嬉しかったが、流石にカロリーメイトしか持っていないのが理由で減らしてしまうのは申し訳ない。

「それじゃあさ!購買に行ってみなよ!
案外イケてるんだよ、あそこのパン」

さやかは更に提案をする。

「コッペパンは人気がないけどね…」
と苦笑いで補足するまどか。

「でも、二人とも言ったことがないんじゃないのかしら」
とマミ。

確かに、二人は転校してから一週間だ。
ほむらも、購買を利用した事は一度もなかった。
二人とも、その間の昼食は全てカロリーメイトで済ませている。

「なら、このさやかちゃんが付いてあげようではないか!」
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/14(月) 01:26:56.11
購買前


「ほら、ここでデカイ声で」

購買の前は生徒で溢れかえっていた。

確かに、始めて訪れるにしては辛いものがあったかもしれない。

「大声を出すのは苦手なのだけど」

ほむらはこんな環境には慣れていない。

「よし、美樹。ありがとう。
あとは俺と暁美で大丈夫だ」

「本当に?」

「ああ、問題ない」

そう言うと、さやかは屋上へ戻って行った。

「大丈夫なの?」
と心配そうにほむら。

「こう見えて、前の学校では購買の販売員もした事がある」

そう言いながらも、宗介は鞄から二丁拳銃を取り出し、一丁をほむらに手渡して耳打ちする。

二人は激戦区のやや後ろに立った。
今回は、ほむらは宗介の案に乗ったのだ。

そして、拳銃を真上に構える。

同時に、発砲。

パァン、と派手な音が響き購買周辺は急に静かになり、二人は注目を浴びる。

「「コッペパンを要求する!!!!」」
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/14(月) 01:27:30.18
再び、屋上


「このバカ転校生ズ!!!」

いきなり宗介はさやかに頭をシバかれた。

先程の銃声は平和な学校にとっては大き過ぎたのだ。
屋上には余裕で届いていたらしい。

「だが、戦利品は得れたぞ」
「そうよ、さやか」

二人は満足気にコッペパンを前に掲げた。

「コッペパンなら問題なく買えたんじゃないかな…って」
遠慮がちにまどかは呟く。

「まぁ、何にせよ買えたようですし、わたくし達も食べましょうか」

仁美がそう言うと、全員ほむらと宗介の帰還待ちだったのか、昼食を再開する。

コッペパンとカロリーメイトだけであったが、ほむらと宗介にとっては久しぶりに色のある昼食となった。
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/14(月) 01:29:32.21
美国宅


マオは目的の家の中に入ることに成功したようだ。
家の前にいた少女の名前は呉キリカと言うらしい。

「それで、何か御用でしょうか…」

そう聞かれてマオはハッとする。
そう言えばメンタルケアとだけ言われて、口実も何も考えていなかった。

「い、いやー、目の前を通りかかったもんだからさ。
家の落書きとか、窓とかを見たわけ。ひでえ事をするファッキング・シットも居たもんだ、と。
何かの政治家の娘さんなんだっけ、この家、ニュースで見たよ。」

咄嗟に言い訳が飛び出し、普段の汚い言葉遣いが出てしまう。
織莉子は、あぁ、この人もか。と少し落胆した。

「あー、あと家にいきなり押しかけたんだから、自己紹介は要るよね。あたしはメリッサ・マオ。
名前の通り中国系のアメリカ人でニューヨークの出身。
今はニホンに住んでるの」

余計な事を聞かれてボロが出る前に必要そうな自己紹介をしてしまう。

「私は、呉キリカ…です」

キリカも名乗る。

「私は…………美国……織莉子と申します」

苗字と名前の間に妙な間があった。

「そう、じゃあオリコって呼ぶわね」

マオは基本的に人の事は名前で呼ぶ事にしている。
織莉子も例外ではなかった。

そして、基本的に名前で呼ばれる事はなかった織莉子は意外そうな表情をする。
事情を知っている人間は皆、美国議員の娘、としか認識しなかったからだ。


美国さんの娘は…
美国さん…美国さん……
誇れる娘さんですな…………


嫌な事ばかり思い出した。
別に、父が嫌いではない。むしろ大好きだ。
汚職など、信じていない。嘘っぱちだ。
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/14(月) 01:30:06.69
そう考えていると、暗い顔になってしまったのか声を掛けられる。

「……大丈夫…?」

意外にも声を掛けたのは、どちらかと言うと積極的にコミュニケーションを取らなそうなキリカだ。


「ええ、少し考え事をしてたみたいです、気にしないでください」

織莉子は硬い言葉遣いはそのままに微笑んだ。
キリカも緊張が和らいだようだ。

「それで、その…今日はお礼に来て……」

「?」

お礼と言われて織莉子は首を傾げた。

「この間、コンビニで……」

「あの時の小銭の事かしら?
お礼をする程の事でもないのにわざわざ……いい人なんですね、キリカさん」

「お礼…言い忘れてたから…」

なんと律義な少女なのだろうか。
礼を言い忘れただけで、自宅まで追ってくるとは。

「それで、ここに来させてもらった理由なんだけど」
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/14(月) 01:30:55.75
見滝原中学校、放課後


魔女の探索は基本的に放課後だが、今日は少しだけ休む事にした。

そこで、さやかの提案でクラスメイトの上條という少年に見舞いを兼ねて宗介とほむらの挨拶に行く事にした。
ついでなのでマミも付いてくる。
仁美は習い事の用事で先に帰ってしまった。

「それじゃあ行こうか。
恭介のいる病院はそう遠くはないよ」

「私が元々いた病院ね」

「ほむらちゃんはそれで休学してたんだね」

「あら、暁美さんは体が弱かったのかしら。そんなイメージは余りないけど」

「その体であれだけ動けるとはな。中々の根性があるようだ」

こうして見ると、この面々で宗介は明らかに浮いていた。
一人だけ男だから、だけでは説明がつかない程に。
育った環境なのか、雰囲気が違う。
魔法少女のベテランであるマミもほむらも普段ならば、普通の女子中学生と変わらない。
こんな平和な街中を警戒しながら歩くのは、宗介くらいだ。

「見舞いの品も持ったし、早いとこ行っちゃいますか!」
と、さやかは元気良くはしゃいでいる。

「そんなに急がなくても、まだ探索の時間にはならないわよ、美樹さん」
マミはそう言ってさやかを落ち着かせる。

「だが、目標行動は迅速にこなすものだ」

「そんな目標じゃないって…て言いたいけど、面会時間は短いからね」

まどかは宗介に突っ込もうとするが、宗介の意見には賛成だった。

「ええ、それじゃあ急ぎましょう。
見滝原総合病院へ」
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/14(月) 01:31:56.35
美国宅


「白い生き物?」

「そ、契約がなんとかって迫ってくるこんな奴」

マオはインキュベーターについての説明をしていた。

「それ…私は見た事ある」

織莉子はわからなかったらしいが、キリカは見た事があるらしい。

「願い事が叶うとか……そんな事言ってて、その時は…疲れてるんだと思ってすぐに寝た」

確かに、あんな小動物が願い事を叶えてくれるなど、あり得ない事だ。
マオはインキュベーターが見えるような歳ではない。
もしも見えたとしても、疲れているんだと酒を飲んで寝てしまうだろう。

「願い事、ですか」

織莉子が食いつく。

マオはそれに傾かない様に注意を呼びかける。

「でもそんなの絶対にダメ。
あいつら、大事な事を隠して理不尽な契約をするらしいから」

「大事な事?」
キリカは疑問をだした。

願い事を叶える。その代わり、怪物と戦う。
これならばかなりフェアかもしれない。

「そうね…知り合いから聞いたんだけど、魔法少女の最後なんて、良くて誰かが見てる所でぶっ殺される。普通で誰も見てない所でぶっ殺される。最悪だと、化け物になる…らしいよ」

全部これらは、ほむらの受け売りだ。
ここまで聞けば、契約などしようとは思わないだろう。

「それでも、もしチャンスがあれば……」

「やめておいた方が良いと思う」

織莉子の声を遮ったのは、キリカだった。

「そんな願い事なんか叶わなくたって、生きていける。
自分を大事に思ってくれる人を裏切る様な事になる。

私は……もし大事な人が死んだり、化け物になったら悲しい」
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/14(月) 01:33:07.15
キリカは自分の思いをぶつける。

「それでも!私は自分の生きる意味を知りたい!」

織莉子も自分の意思を伝えようとする。

「生きる意味なんて、そこらの女子中学生がわかるわけねーっつーの」

その主張にマオは口を開いた。

「そんななぁ、意味のわからねー契約なんぞで知る意味なんて糞喰らえだ。
人はみんな自分で知っていくものなの、そういうのは!」

珍しくマオは語気を強める。

「第一、そんな願いで神様に「海老を採れ」なんて言われたらどうするの?」

神様のお告げで海老を採れと言うのは宗介の前任者の事だ。

「そんな…私の事を大事に思う人なんていないですし……」

織莉子はマオに言われて軽率が過ぎたと反省するが、キリカの言葉の意味を見出せない。

マオはマオでこんな子供に大声を出した事を反省した。

「居るよ。少なくとも…私は織莉子を大事だと思う…………
初めて、あんな些細な事だけど……私に親切にしてくれたの……織莉子だけだから……」

織莉子はそんな理由で?とも思うが、それだけの為に家まで訪ねたのだ。
本当に織莉子が大切だと思うのだろう。

「だから……お願い…少しでも力にならせて欲しい……
大切に思う人が居ないなんて…言わないで欲しい」


マオはこの流れには割り込めず、脇で(青春だなー)などと考えていた。

そこで、時計をチラリと見る。
中学校はとっくに終わっている時間だろうか。

「じゃ、キリカが愛の告白をした所で、家の落書きでも消そうか。
ほら、行くよ!」

突然何を言い出すかと思えば。
それを聞いて、キリカは顔を赤くした。

「!?
それじゃあ、そ、掃除道具を持って来ますね!」

少なからず、織莉子も動揺しているようだった。
それと、掃除の申し出にも驚いているようで、逃げるように掃除道具を取りに行った。
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/14(月) 01:33:41.58
総合病院、病室前


さやか達は病室の前に到着した。
ノックをする。

「どうぞ」

男の声とは思えないか細さ。

「お邪魔しまーす」
そう間延びした声を出しながら、さやかは扉を開く。

「こんにちは、上條くん」
「初めまして。新しいクラスメイトの暁美ほむらです、よろしく」
「同じく、相良宗介だ」
「美樹さんの先輩の巴マミよ、よろしくね」

それぞれ挨拶をしながら病室に入る。

「上條恭介です。よろしく、暁美さん。相良くん。巴先輩。
それと久しぶりだね、鹿目さん。
さやかは、いつもありがとう」

声は明るくしようとしているようだが、もうにも表情が暗い。
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/14(月) 01:34:56.85
ほむらと宗介は転校生だと伝えた。
今日の目的はある意味ではこれで終わりだ。

それからは、他愛もない世間話で時間を潰した。
クラスの事、転校生二人の事、趣味の事。
そして、上條がかつては天才バイオリニストと謳われ、今では左腕が動かない事も。
その事は意外にも上條の口から語られた。

楽しい時間は続いた。
ある話題に触れるまでは。


「そう言えばさ、恭介はさっき何を聴いてたの?」

この一言を聞くと、上條の表情がピクリと動き引き攣ったのを、さやかとまどか以外は見逃さなかった。

「…………亜麻色の髪の乙女」

「あぁ、ドビュッシー?
いい曲だよね!
あたしさ、ほらこんなだから、たまーに曲名とか当てると驚かれたりしちゃって……」

表面上は何の問題もないやりとり。
だが、どこか危険を孕んだやりとりのようにも聞こえた。

「さやかはさ……僕を苛めているのかい?」

やはり、地雷であったようだ。

「何で今でも音楽なんて聞かせるんだ」

上條の声は明らかに怒りを含んでいる。

「だって、恭介は音楽が好きだから……」

さやかは、こんな反応が返ってくるとは思わずに狼狽する。

「もう聴きたくなんかないんだ、こんな、自分で弾けもしない曲なんて!!!」

そう言って、上條は、動かなくなった左腕を、CDプレイヤーに、叩き…………………
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/14(月) 01:35:46.51










叩きつける事はできなかった。











136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/14(月) 01:36:18.81
動きを事前に察知した宗介に手首を掴まれた。

「やめろ、上條。
それを破壊して何になる」

宗介は珍しくまともな事を言った。

それよりも、今のやり取りに怒りを覚えたのは。
他でもない。





暁美ほむらだ。
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/14(月) 01:37:56.33
ほむらは、自分がどんどん怒っているのが分かった。

こんな男の為に……………………
毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も…………………

美樹さんは魔女になっていたと言うのか…………

(ふざけるな、冗談ではない!!)


普段冷静なほむらは、この時だけはその激情に身を任せた。


次の瞬間、ほむらは上條に強烈な平手打ちをした。

さやかとまどかはその光景を呆然と見つめる。
マミは、やれやれ、と言ったような様子だ。
宗介は相変わらず、ムッツリ顔にへの字口。

そのまま、ほむらは上條の胸倉を掴んだ。

「ふざけないで!!!
美樹さんは貴方をどれだけ大切に思っているの!?!?
腕が動かない!?そんなの知らな……」

そこで肩を掴まれる。
マミと宗介だ。
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/14(月) 01:38:51.87
「暁美、そこまでにしておけ。
それとなくお前が腹を立てるのはわかるが、他の病室に迷惑になるぞ」

「そうよ、暁美さん。
貴女の言ってる事の方が正しいかもしれないけど、迷惑を掛けちゃったらいけないじゃない?」

二人にそう言われると、ほむらはようやく冷静さを取り戻した。

「ご、ごめん……あたし、全然恭介の事を考えてなかった。
腕がそんなに深刻だったって事も、何もかも……
今日は、帰らせてもらうね……
本当にごめん……」

先程の和気あいあいとした空間はどこへやら。

「さ、さやかちゃん……」

まどかも、さやかを追って居なくなってしまう。

ほむらも無言で立ち去ろうとする。

「暁美さん…」

その背中にマミが声を掛けた。

「ごめんなさい、ここにいたら私はどうにかなってしまいそう。
まどか達とは病院の外で合流して待って居るわ」

それだけ言い残すと、ほむらは立ち去ってしまう。

マミと宗介と上條だけになった。
この部屋の主の上條はともかく、マミと宗介が残っているのは、中々にメンタルが強い。


「教えてください、先輩」

「何かしら?」

「何でさやかは、バイオリンも弾けなくなった僕に今でも優しくしてくれるんですか?」

この短い時間で、宗介が唐変木である事を察したのか、上條はマミに聞いた。

マミはそれを聞いて微笑みながら、こう言った。
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/14(月) 01:39:19.74













それが、愛でしょう












146 : ◆Upzc6141AI :2013/01/16(水) 07:54:44.11
奇跡と魔法のワン・ナイト・スタンド


「なんでこんな事をしているのかしら…」

誰に言うわけでもなく、ほむらは壁をデッキブラシで擦りながら呟いた。

あまりの怒りに病院から出たあと、マミと宗介と合流した。
そこまではよかった。

その次に宗介は何と言ったか。


マオから連絡が来た。
至急援護に来てくれとの事だ。


宗介はそう言ったのだ。
援護だとか物騒な言い方に、ほむらとマミは魔女が出現したと思い込み、快く頷いた。
そして、まどかとさやかには帰らせようとした。
だが、人数が多い方が都合が良いと、結局残った。

それがどうした事だろうか。

なぜ掃除をしているのだろう。
それも、あの美国織莉子の家の落書きを。

しかも病院からのメンバーに加え、狙撃手のクルツまで来ている。

ある者は雑巾を、ある者はデッキブラシを持ち、一心不乱に擦っている。

とりわけ真面目なのはマミと宗介の二人だ。

この二人は融通が効かない分、どんな事にも誠実にこなそうとする。
もっとも、宗介の場合はその誠実さが空回りする事が殆どだが。

まどかとさやかは純粋に可哀想だと思い、それなりに真剣に取り組んでいる。

クルツは「この後にかわい子ちゃんとお茶を飲む為…」と念仏のように唱えながら雑巾で拭き続ける。

その横ではマオが睨みながらも擦る。

そのマオの奥にいるのは、織莉子と…キリカ……なのだろうか。

外見は以前と変わって居ないのだが、様子が違い過ぎる。
ほむらの知るキリカは愛が何だとか、無限だか有限だかの講釈を垂れ流すアクティブ人間だからだ。

しかし、このキリカはどうもアクティブとは正反対に控え目に見える。
他と比べて一歩引いている感じだ。


そして、自分もなんだかんだで割と真面目に壁を擦っている。


あ、ようやく汚れが落ちた。


そんな事を考えながらもひたすらにこすり続けた。

全員が黙々と擦っていたのは、クルツ、マオ、織莉子、キリカを除けば恐らく先程の病院の一件が原因にあるだろう。

腹が立ったとは言え、いきなりビンタは軽率だった。
さやかの想い人を、さやかの目の前で、全力で。

それからは気まずくてさやかとは話せていない。
マミと宗介は気にするなと言っていた。
まどかも「さやかちゃんの事、そんなに思っててくれて、ほむらちゃんは優しいんだね」と。

てっきり責められると思っていた分、余計に後味が悪く感じてしまった。

その場にいなかった四人は、どうも雰囲気がおかしな事を察したらしく、あえて聞くような真似はしなかった。

そうこうしている内に掃除が終わる。
何だかんだで2時間近くかかってしまったようだ。
147 : ◆Upzc6141AI :2013/01/16(水) 07:55:33.01
「皆さん、本当にありがとうございます」

織莉子は全員の前で深々と頭を下げる。
別にそんな礼が欲しい訳ではなかった。
彼女には、契約しないでいてくれればそれでいい。
今までの「経験」ではそんな事はあり得なかったが。

織莉子はタイムリープをする事に当たってイレギュラーな存在だ。

居る時間軸もあれば、現れない時間軸もある。
居る時はキリカもセットだ。
そして契約をすると大抵が未来予知の魔法を得て、まどかの殺害に移る。
キリカはそんな織莉子を狂愛しており、まどか殺害やインキュベーターの注目を離す為の、魔法少女虐殺さえも何の疑問にさえ思わず実行する。

ほむらの認識では、この二人はこんなもので、危険人物だ。

だが、どうだろう。
このイレギュラーの塊のような時間は。

相良宗介と言う謎の転校生。
その正体はどこの国にも属さない軍隊<ミスリル>所属の兵士。
任務は何故か「鹿目まどかの護衛」


この男を取り巻く人たち。
クルツ・ウェーバー
凄腕の狙撃手らしいが、ほむらはその腕を未だに見ていない。
よってほむらからしたら楽観的で、部隊のムードメーカーのような人物像だ。
宗介のサポートに来ているらしい。


メリッサ・マオは宗介たちの指揮を担当する事が多いらしい。
何よりもこの大人特有の達観した面と、サバサバとした姐御肌。
ある意味では、マオのお陰で契約前の織莉子とキリカとも出会えたようなものだ。


彼らはこの時間軸ではほむらの最初の仲間だ。
そして、宗介の協力もありマミとも和解、更にはまどかとさやかとも好意的に思われている。
織莉子とキリカはどう思っているかわからないが、こうして共同の作業をしたのだ、悪くは思われていないと信じたい。


結論として、ほむらはこの時間軸で起こる奇跡を信じる事にした。
148 : ◆Upzc6141AI :2013/01/16(水) 07:56:10.66
美国邸


「お待たせしました」

そう言いながらお盆に人数分の紅茶を載せた織莉子は慣れた手つきで全員の前へ運んで来た。

それぞれの目の前に紅茶を置く。
その動作は、なんだかとても優雅に思えた。

心なしか、紅茶を配る織莉子も楽しそうだ。

実際にそうなのかもしれないが。

ここにいる面々は、自分が美国議員の娘、という扱いではなく、美国織莉子という一人の人間として見てくれるのだから。


そして、自分をそんな存在にしてしまった父は汚職発覚により自殺。突如として見放され、突き放されるのだ。

そんな時に、インキュベーターが現れてしまうのならば。
契約してしまうのは無理もない事だろう、とほむらは思う。

ある意味、繰り返した時間の中でもっとも悲劇的な契約を果たしている人物なのかもしれない。

だからこそ、奇跡に賭けて優しくなろうと考えた。

それならば、折角のチャンスを失うわけにはいかない。
早くさやかに謝ってしまおう。

幸いにも、テーブルを挟んで問面にさやかは座っている。

「美樹さやか…」
「さやか」
「へっ?」

謝ろうと名前を呼んだ矢先に先制される。

「さやかって呼んでよ。
まどかはまどか、だしマミさんは巴さん。
あたしだけフルネームだと何か慣れないしさ。
どうせ、さっきの事を謝るとかそんな事考えてたんでしょ?あんた優しいからさ。
だから、名前で呼ぶようにしてくれたら、こう言うのも変だけど許すよ」

恐ろしく饒舌に捲し立てる。
そして、例による勘の鋭さ。

その早口にほむらは目を丸くする。

「わかったわ、さやか」

ほむらは微笑みながら認める。
こうしてみると、さやかは本当に心優しく、真っ直ぐで純粋なのだ。
また少しだけ、この時間に期待してしまう。

周りはこのやり取りで和んだようだ。
先程までのギクシャクとした空気はなくなる。

守るべき人と、友人と、仲間と、そしていつかの敵。
そのいつかが訪れるかどうかは、誰にも分からない。

それら全ての人々と過ごす時間は楽しいものとなった。
149 : ◆Upzc6141AI :2013/01/16(水) 07:56:41.57
チラリと時計を見る。
お茶を始めてから30分程度経過した頃に、ほむらは席を立った。

「ごめんなさい、病気の事で少し病院に行かないといけないの。
本当はもう少し居たいけれど、今日のところは失礼するわ」

前半は嘘だ。
だが、まどかやさやかに心配は掛けたくない。

後半は本当の事だ。
最初は不本意だったものの、今ではさる事に名残惜しさを感じる。
久々に本来の中学生らしい事をしているな、と。


だが。
こんな平和を守る為にも、マミを「アレ」に会わせる訳には行かなかった。
150 : ◆Upzc6141AI :2013/01/16(水) 07:57:12.60
病院前


あった。
やはり「アレ」の出現はいつも通りらしい。

お菓子の魔女だ。
厳密にはお菓子の魔女が産まれるグリーフシード。
しかも、何故か孵化寸前で駐輪場に刺さっている。

もう孵化するところなのだろう、激しく点滅を開始する。

最後に眩しく輝き、ほむらの姿は駐輪場から消えた。



お菓子の魔女結界


こうすれば、魔女を探索して見つけた時と違い、いきなり最深部に潜り込む事ができる。
だが、ほむらは焦っていた。

(他に人が居る…!?)

明らかに、自分と魔女以外の気配がする。
周囲を見渡すと見覚えのある姿が。
いや、つい数時間前にビンタをした記憶がある。

上條だ。

恐らく、精神が参っていたのだろうか魔女に狙われてしまったらしい。

さやかとの事が原因なのか、ビンタが原因なのかはわからない。
もし後者が原因なのならば、酷く弱いメンタルだと思えるが。

(出来れば人を巻き込みたくなかった…さっさと倒すしかないわね)

一般人がいる以上は迅速に
ほむらにとっては、この魔女は油断さえしなければ問題にもならないほどに相性が良い。
逆に、一撃で決めに掛かるマミとは非情なまでに相性が悪いのだが。
151 : ◆Upzc6141AI :2013/01/16(水) 07:57:44.23
上空から、可愛らしいぬいぐるみの様な物が降ってくる。

「見つけた」

それを発見したほむらは軽機銃を取り出して接近。
ぬいぐるみの様なソレを蹴り飛ばし、軽機銃を乱射して追撃。

(っ!来る!)

だが、ぬいぐるみの様なソレは本体ではない。
その口から太巻きの様な物体が飛び出して首を喰らいに突進して来る。

わかっていれば、恐れる事はない。
だが知らなければ必殺の一撃であるだろう。
これだからマミと相性が良くない。

そう考えながら後ろに跳んで回避。
太巻きの様な物体の口にお手製のパイプ爆弾を放り込む。

後は、その繰り返しだ。





おかしい。
何故倒れないのだ、この魔女は。
経験上必要な数よりも多くの爆弾を喰わせた筈だ。

ほむらは自分が動揺しているのを感じた。

足場から足場へ飛び移る。
そして、その口の中に爆弾を放り込む。

このサイクルを何度繰り返したのだろうか。

魔女は倒れず、ほむらの集中はだんだんと削げてきた。

次の足場に飛び移る時に、踏み外してしまう。

(しまった……!!)

だが無情にもその顔と口はほむらの眼前にまで迫ってきていた。

盾に手をかざして時間を停止しようとする。
停止が間に合うかどうかはわからない。
やるしかないのだ。
152 : ◆Upzc6141AI :2013/01/16(水) 07:58:27.16
その時、目前まで迫った口に見覚えのあるリボンが巻かれる。

マミのリボンだ。

そして、もう一つ声が聞こえる

「おおー!見える見える!流石テッサお手製の「妖精の目」だぜ!」

自分は幻聴でも聞いて、幻覚でも見ているのだろうか。

だが、次の瞬間それは現実だと悟る。

「はあああああああああああ!!!!!」

マミの叫び声。
咆哮と言った方が似合うかもしれない怒号と共に、お菓子の魔女は弾き飛ばされた。


弾き飛ばされた魔女を76mm狙撃砲の弾丸が襲う。
この大口径はAS規格の物だ。

まさか、と思いほむらが振り返るとそこには。

ECSを解除したM9ガーンズバックが姿を現した。
半透明なのは、ECS解除直後だからだろうか。

ASごと結界に侵入出来るとは思わなかったほむらは絶句する。

「ウルズ11!ぼさっとするな!あいつの弱点は!?」

M9の外部スピーカーからクルツの声が響いた。
真剣な声が、いつものクルツとは別人のようだと感じるが、きっと本来はこちらなのだろう。

魔女は起き上がり、再び突進しようと構える。

「おそらくは、太長い部分よ!
根元の人形は多分フェイク!」

素早い突進。
手痛い打撃を与えてきたM9を脅威だと認識したのか、そちらに向かった。

間一髪のところでクルツは回避機動をとることに成功する。

「危ねえ!なんだこいつは!」

クルツの反応が遅れたのは、魔女が本来は見えないものだからだろう。

M9に搭載された、ラムダ・ドライバを視認する為の装置「妖精の目」を使用して強引に認識しているのだから、無理もない。

おそらくは、アルが言っていた「魔法とラムダ・ドライバが限りなく近い反応」を実証している為に、「妖精の目」で魔法の存在である魔女が見えているのだ。
153 : ◆Upzc6141AI :2013/01/16(水) 08:00:20.16
「くそっ!反撃できねえぞ!?」

お菓子の魔女は執拗にクルツを追い回す。

「ウルズ6、援護するわ」

ほむらはそう言いながら横からRPGを撃ち込んだ。
命中。
派手な爆発と共に魔女が怯む。

「レガーレ・ヴァスタアリア!」

マミが技名と思しきものを叫ぶと無数のリボンで強引に拘束する。

魔女は強引に引きちぎろうと身を捩る。
あの調子では10秒と持たないだろう。

「二人とも!M9の肩に乗れ!」

クルツが叫んだ。
ほむらとマミは素早く反応して乗り移る。
プチリプチリとリボンが千切れ始める。

拘束力が弱まり、千切れるペースが上がる。

二人と一機は一箇所に固まっている為に狙いはM9のままであろう。

「やれるの?」
マミが問う。

「俺にはやれるの!」

短い時間で応答の直後、拘束が解け魔女はM9に突撃する。

まだだ。まだ、待つんだ。

魔女はどんどん接近する。

クルツは「あるタイミング」を測る。

もう少し…………………

時間がスローに感じる。
今だ、いける。

引鉄を引くと、強烈な火薬の爆発音で現実に引き戻される。

クルツは、魔女の体が一直線になるタイミングを狙っていたのだ。
そして、常人の反応では不可能に近い超至近距離「狙撃」をやってのけた。

弾丸が魔女の体を貫く。
それは、太巻きの様な物体と、最終地点にいる可愛らしいぬいぐるみの様な物体をも貫通した。

瞬発火力の高い散弾砲でもこの貫通力を持たない為に出来ない。
クルツの能力と狙撃砲だからできた芸当だ。
その一撃で魔女は動かなくなる。

結界は崩壊を始め、徐々に入り口の駐輪場が帰ってくる。
「やべえ!」

それだけ言うとM9はECSを起動して姿を消した。
この平和な街中で見られるのはマズイのだろう。


病院前、駐輪場


そういえば忘れていた。
上條の事だ、結界に迷い込んでいた。

「世話の掛かる奴ね…
巴さん、手伝って貰えるかしら」
「もちろん」

流石に女子中学生一人が男子生徒を軽々しく抱きかかえていたら疑問に思われてしまうだろう。
そう考えると、ほむらはマミに協力を頼んだ。

この少年も病院生活が長かったのか、えらく軽い。

例のビンタのお陰で罪悪感の残るほむらは早く運んでしまおうと決意した。
155 : ◆Upzc6141AI :2013/01/16(水) 08:54:04.45
同時刻、セーフハウス


「もしもし、千鳥か?宗介だ」

[あー、ソースケ?任務って大丈夫なの?怪我は?]

「ああ、何も問題はない。
このままいけば来月には戻れるだろう」

[あ、それなんだけどさ、今ソースケは見滝原にいるんだっけ?
凄いよねー、あそこ。
同じ日本とは思えない位、街が発展してるよねー。
でさ、近い内に行く事になったからさ、その時はよろしく]

「何?見滝原に訪れるのか?」

[そーゆーこと!]

「そうか、了解した」

[会えるの、楽しみにしてるからねー。
それを伝えたかったから、切るね!]

最後の方はやや一方的に切られてしまった。
声がやや上ずっていたのは気のせいだろうか。
そう考えていると、今度は通信機の方が鳴った。

嫌な予感がしたが出ない訳にはいかない。

「こちらウルズ7」

[あ、サガラさん?
連絡なんですけど、近い内に調査でミタキハラに行く事になったのでよろしくお願いします]

ガチャ、ツー…ツー…ツー…

またもや一方的に切られてしまった。

マズイ事になった……

増援を……至急増援を要求する!!
156 : ◆Upzc6141AI :2013/01/16(水) 08:54:39.65
翌日


結論から言ってしまうと、美樹さやかは契約してしまった。
いろいろ有ったが、やはり病院の出来事が大きいらしい。

ほむらはできる限りは契約をしないよう説得したが、最後は本人に任せる事にした。
魂を抜き取られ、本体がソウルジェムである事はマミとさやかに伝えた。
それを合意の上での契約だった。
魔女化の事は、言えなかった。

「見滝原の平和は、あたし達がガンガン守っちゃいますからねー!」

ほむらの気苦労も知らずに、いつも通りのさやかだ。
いや、むしろいつも通りでいて欲しい。
いつぞやの時間のように、努力がどんどん裏目に出て沈んでいく様は見ていて辛いものがあった。

今はマミもいて、自分とも友好的でいてくれるのだ、そこまでの心配はない筈だが。
157 : ◆Upzc6141AI :2013/01/16(水) 08:55:10.90
見滝原中学校、屋上

いつものようにカロリーメイトを食べながら、ほむらは物思いに耽っていた。

この悩みが分かってくれるのは、おそらく全てを知っているウルズチームだけだろう。

「そういえば暁美さん!
昨日のウルズ11とか6って何かしら!」

そこでマミが目を輝かせながら聞いてくる。

「あれは…その、色々あって」

「?昨日はクルツといたのか?」

そういえば昨日のクルツは解散になった後にすぐ居なくなってしまった。
マミもだ。

「ええ、昨日の病院の帰りで魔女を見つけて」

この場所では魔女の話題はそう出ない。
普段は一般人の仁美が居るからだ。
だが、今日は仁美は学校を休んでいる。風邪らしい。
そして、まどかとさやかだが二人になりたいとの事で、別棟の屋上にいる。

「最初は一人で戦ってたんだけど、途中からマミとクルツさんが駆け付けてくれて」

「あそこを通ったのはたまたまだけどね。そこに急いで向うところを、クルツさんが見てたみたいで合流したの」

その時にコールサインを使ったのか、と宗介は納得した。

「ウルズチームのコールサインだ。11やら6やらは。
もっとも、11は使われていないナンバーを俺たちが勝手に付けたものだがな」

マミはこういった事には強く興味を示す。
厨二病だとか、そんな風に言われてしまう事もあるが、既に異世界に踏み入れているのだから、おかしくはあるまい。

「相良くんも、凄腕だけどクルツさんも凄いのね。
ウルズチームってそんなに凄いものなのかしら」

「ああ、マオは電子戦のスペシャリスト、見滝原にはきていないがウルズ1は格闘戦のスペシャリストだ」
158 : ◆Upzc6141AI :2013/01/16(水) 08:55:42.84
ウルズ1
ベルファンガン・クルーゾー大尉
ウルズチームの中で唯一D系列のM9を扱う人物だ。
趣味………………アニメ鑑賞。

「凄いのね…憧れちゃうわ」

おおよそ女子中学生が憧れるべきのものではないな、とほむらは思った。

「そうそう、それは置いておいて。
キュゥべえ、居るんでしょ?出てきなさい、聞きたい事があるの」

ほむらがそう言うと、音もなくインキュベーターが現れる。

「君から呼ぶなんて、珍しいじゃないか」

「聞きたい事があるって言ったでしょ。
昨日の魔女なんだけど、嫌にタフじゃなかったかしら」

そうだ。昨日はマミとクルツに助けられたが、本来では起こり得ない事だ。

「そうかい?あの魔女は元からあんなものだ。
君は長いのを本体だと思っていたようだけど、半分はハズレだよ。
あれは、どっちも本体なんだ」

そう言う事か、とほむらは一人で納得する。
要するに、いつもはマミのティロ・フィナーレの後に爆破している。
今回は、ティロ・フィナーレがなかった分の体力の差だったのだろう。

「わかったわ、用が済んだし帰ってもいいわよ」
159 : ◆Upzc6141AI :2013/01/16(水) 08:56:26.93
放課後、夜

この日はこれといった魔女の出現もなく平和な一日で終わる筈だった。

だが。

沿岸沿いには、不吉な影が迫っていた。
160 : ◆Upzc6141AI :2013/01/16(水) 08:57:25.80
工場地帯付近

まどかは家路の途中で仁美を見つけた。
どうも様子がおかしい。

首筋には、謎の模様が張り付いていた。
(あれってもしかして……ほむらちゃん達が言ってた…魔女の口づけ!?)

「仁美ちゃん?どうしたの!しっかりして!?」

揺さぶるが、歩みを止めない。
まどかは、ほむら達に連絡する事にした。
161 : ◆Upzc6141AI :2013/01/16(水) 08:58:08.53
ほむら宅


「わかったわ、すぐに向う」

たまたま、魔法少女3人と宗介は今後の話し合いの為に集まっていた。
それが幸いして、同時に向う事ができた。

「さやか、焦らないで。
貴女は始めて戦うんだから、そっちに集中しないと危険よ」

我先にと出発せんところのさやかをほむらは落ち着かせる。

だが、宗介は静止を待たずに行ってしまった。

(くっ!間に合ってくれ…!)

任務の護衛対象がまさかこんな事になるとは予想外だったのだ。

結局、全員全速力でまどかの救助に向う事になる。
162 : ◆Upzc6141AI :2013/01/16(水) 08:58:35.32
廃工場

まどかは絶体絶命の状態だった。
まさに万事休す。

今まさに、魔女のターゲットにされた人々が、集団自殺をしようと所謂「混ぜるな危険」と書かれた2種類の洗剤を混ぜようとしている。
自分は虚しい事に。
仁美に押さえつけられて見ている事しか出来ない。

あぁ、もうだめだ。
そう思った。

次の瞬間、爆音が工場内に響く。
宗介はC4爆薬を使い、強行突破したようだ。

「仁美、ごめんなさい」

それだけ言うと、ほむらは仁美の首の裏を軽く叩き気絶させ、まどかを工場の外へ出す。

周りの人はゾンビかと言わんばかりに呻き声をあげて宗介達に襲いかかる。

「えっ…………」

まどかは目を疑った。
爆破された方とは反対側の、沿岸側。
赤い巨人。
この工場地帯へと向かっているのが見えた。

「あれは……?なに……」

「鹿目、どうした?」

襲いくる人々をあしらいながら宗介もそれを見る。

「あれは……!!」

見間違える事はない。
だが、なぜここにアレがいるのだ…

ベヘモスが……
163 : ◆Upzc6141AI :2013/01/16(水) 08:59:52.90
他の仲間もそれを釣られて見てしまった。
こちらに向かってくる。

向こうを何とかしたいが、魔女もまずい。
板挟みだ。
まずは近くの魔女と、それに操られた人を何とかせねば。

だが、気持ちは焦る。

また一人、スタンガンで気絶させる。
残りの数ならば、一人で捌けるだろう。

「暁美!美樹!魔女を叩け!」

有無を言わさず大声で叫ぶ。

昨日の魔女戦で、魔女に妖精の目が効いたならば……
一か八かだ。その逆もいけるはず。

「巴、コレを。通信機だ。
おそらくマオもクルツもアレに気が付いている。
彼らに合流してくれ。
お前の魔法ならばアレのラムダ・ドライバを貫通できると思う。
頼んだ、さあ、行くんだ!」

こちらも有無を言わさずに行かせる。

目の前には、操られた人の集団が迫っていた。
164 : ◆Upzc6141AI :2013/01/16(水) 09:00:23.80
結界

さやかは敵を視認した。
パソコンを模した魔女。
仁美を操った魔女。
倒すべき、敵。

ほむらはアサルトライフルをマネキンの様な使い魔に撃ち込む。

さやかはパソコンに突撃する。

連続で斬撃を浴びせる。
打ち上げる。
そして

「これで、トドメだあああぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」

剣で勢いよく斬りつけ、そのまま刀身を射出。
地面に叩きつけられた魔女はあっけなく結界を崩壊させた。
165 : ◆Upzc6141AI :2013/01/16(水) 09:01:04.16
工場地帯付近

「くそっ、なんだあいつ!
力場が全体に伸びて全く動かねえ!」

「ぼやいても仕方ない!
接近してみるから、隙間を探して!」

上手く撃ち抜けば一撃なのだが、ラムダ・ドライバの防壁のお陰でそうもいかない。

[ウルズチームの皆さん!
聞こえますか!?巴マミです!
おそらく、魔法による攻撃ならばラムダ・ドライバ?を貫通するそうで……きゃっ!?」

マミの通信を終える前に、発信器を辿り、マオが回収する。

マミはちょこんとM9の肩に乗っている。

「それ本当か!?
でも、試すしかなさそうだな、いけるか、マミちゃん!」

クルツもマミを確認した。

「いけます!]

本当の声と通信の声がどちらも聞こえるお陰でいやに大声に聞こえるのは気のせいだろうか。
166 : ◆Upzc6141AI :2013/01/16(水) 09:03:26.03
「それじゃあ、3カウントで撃つぞ、同時に合わせてくれ」

「マミ、ベヘモスの攻撃はあたしに任せて、クルツと同時ポイントの攻撃に集中して。
チャンスは一回だけよ」

「眉間を狙うぞ!
スリー!」
クルツがカウントを始める。

「ツー!」
マオが続ける。

「ティロ!」
「「ワン!」」
マミは大砲を出現させる。
クルツは引き金に指を掛ける。


「フィナーレ!!」
「ファイヤ!!!」

同時に爆音がした。

夜空に一筋の光が走り、怪物の眉間に直撃する。

そして、ガラガラと音を立てて崩壊した。
167 : ◆Upzc6141AI :2013/01/16(水) 09:03:53.74
廃工場

「魔女は仕留めたようだな」

ほむらとさやかを視認して宗介は告げる。

宗介の足元には、大量の人が倒れている。

「そうね。上手くいったわ」


廃工場付近

「おお、やるねえマミ」

マオは素直に感心した声をあげる。
だが、何故ベヘモスが現れたのか。
なにか絶対に理由があるはずだ。

それよりも今は、緊張の後に腰が抜けてしまったマミが優先だろう。

「まぁ、なにはともあれ、何とかなったみたいだし、よかったよかった。
マミちゃんも、流石だねえ」

クルツもマミを褒める。
まさか本当にベヘモスを倒してしまうとは。


この大きさだが、崩れて沈んだことと場所を考えれば目撃者はそう多くはないだろう。

マミは後ろを振り返る。

見滝原の街は、平和だった。
168 : ◆Upzc6141AI :2013/01/16(水) 09:10:00.09
ここまでになります。

次回からは割とASとかアマルガムも絡んできます。
それと>>1の中では

魔女には通常兵器が効く(魔法による攻撃程ではない。お菓子の魔女が倒せたのは、ほむらの爆弾による蓄積と狙撃砲がそれを差し引いても強力な為)
魔女は「妖精の目」で見える(ただし、漫画版の『つづくオン・マイ・オウン』での、ベヘモス狙撃時の様なシルエットのみ)
魔法による攻撃は強さによるがラムダ・ドライバを貫通する
魔女に対してのラムダ・ドライバは魔法と同等ほどの有効打になる

などの独自解釈を含みます。
172 : ◆Upzc6141AI :2013/01/19(土) 00:13:02.18
後悔できない二死満塁?


セーフハウス


今日はトラブルが多すぎた。
突然の魔女に、それに巻き込まれた仁美。
そして、ベヘモスの襲撃。
装備は有明の時とは違い、大量の火砲を積んでいた。
おそらくメリダ島を襲撃した時の仕様だ。
明らかにあれは廃工場地帯に向かっていた。
事実こちらに向けて発砲してきたのだから。
距離が離れていて助かった。
個人が完全に捕捉できる間合いならば、確実に死人が出ていただろう。

問題はそこではない。
何故現れたかが問題なのだ。

あの機体が現れたと言うことは、少なからずアマルガムが動き出したと言うこと。

狙うとしたならば…
散々アマルガムを苦しめたレーバテインの操縦兵である、宗介か……考えたくはないが。


鹿目まどかだ。


<ミスリル>の任務で宗介はまどかを護衛している。
理由はわからないが、ウィスパードが関係しているのは確実なのだろう。
テッサが聞こえたならば、他の元ウィスパード達もまどかの存在を知っていたとしても不自然ではないのだ。

狙いがそのどちらだとしても、何故場所が割れていたのかは、全くの不明である。

宗介は帰宅と共に本部へ連絡をして、その全ての出来事を伝えた。
それにより、増援の派遣を決定。
テッサはすぐにでも見滝原に訪れてまどかと接触をするそうだ。

それに、ここにはかなめも訪れるそうだ。
その時にささやき声の確認をしよう。
173 : ◆Upzc6141AI :2013/01/19(土) 00:13:44.23
鹿目宅

朝を迎えたが、その陽射しはまどかにとっては気持ちの良いものではなかった。

(寝不足…かな…)

昨日の出来事が原因で寝れなかったかと言われると、そうではない。
勿論それも要因の一つには入るのだが。

何よりも二週間ほど前より聞こえる、幻聴のようなささやき声。
これがだんだんと強く感じてきたのだ。
何を言っているのかはまだまどかにはわからない。

だが、魔法少女に関わる事なのかもしれないのは何となく分かった。

ほむら達には、まだ相談していない。
ただでさえ魔法少女の事を知っているのに、契約すらせず戦いもしない。
自分が役立たずに思えて仕方ない。
それなのに心配は掛けたくない一心なのだ。

このささやき声の内容が気になるが、心の奥底にしまっておく事にした。

いつものように、今日も過ごすんだ。
いつものように…いつものように…

「おはよう、パパ」
174 : ◆Upzc6141AI :2013/01/19(土) 00:14:10.21
通学路


いつもと変わらない通学路。
何も変わらない街並み。
それでも、まどかの世界は先週をキッカケに全く違う物に見えてしまう。

ぼーっと考えながら道を歩く。

こうして何も集中していない時が、一番よくささやき声が聞き取れる。それでも単語が幾らか、といった程度であるが。

何かわからない、そのもどかしさがまどかを突き動かし、聞き取らせようとする。

契約……エントロピー……宇宙…寿命………………

だめだ、やはり単語がぶつ切りで聞こえる。
だけども最初よりもクリアに聞き取る事はできるようになってきた。

「まーどか!」
「まどかさん」

後ろから声を掛けられる。

「ふぇ!?」

聞き取る事に没頭していたまどかは少し驚いた。

一気に現実に引き戻されたお陰で、ささやき声は今は全く聞こえないほどに意識の外へと切り離された。

そうだ、こんないつも通りの風景でいられるだけでいいんだ…

まどかはささやき声について考える事をやめて、楽しく談笑しながら登校する事にした。
175 : ◆Upzc6141AI :2013/01/19(土) 00:14:37.42
教室


着いた頃には、既にほむらも宗介も居た。
心なしか二人とも疲れているように見えるが、昨日の事を考えれば当然の事だ。

それを差し置いても、宗介は異常なまでに周囲を警戒していた。
普段鈍感なまどかでさえもそれは分かった。

チャイムが鳴る。
ホームルームの時間だ。

早乙女先生が教室に入ってくる。

ここまできて、まどかは「あれ?」と思う。
ついこの間体験していたような、既視感。

それが本当ならば次は
『目玉焼きには醤油ですか!?ソースですか!?はい、相良くん!』だ。

そして…

口を重々しく開き。

「目玉焼きには醤油ですか!?ソースですか!?はい、相良くん!」

的中したしまった。
あまり信じたくないのだが、デジャヴュと言うやつなのだろうか。


その先も鮮明に覚えている。

「調味料を使用して食事できるだけでも、幸せであります!先生殿!!」

あたった。あたってしまった。

ならば、次に起こる事は…
新しく更に転校生が来る。

「はい、じゃあ入ってきてー!」

まさか。
二週間で三人目の転校生。
常識的にあり得ない事なので、これは外れると思っていた。
いや、外れて欲しかった。

そして、その転校生の名前は……

「テレサ・テスタロッサです」
176 : ◆Upzc6141AI :2013/01/19(土) 00:15:25.43
昼休み、屋上


テレサ・テスタロッサ。
愛称はテッサで、交換留学生として二週間ほど見滝原に滞在するらしい。

今はテッサも加えた、いつものメンバーで屋上で昼食をとっていた。

そういえば仁美は昨日の一件の事で、精密検査があるらしく早退してしまった。

なのでテッサを除いた全員は魔法少女に関連のある人物だ。

テッサは何やら宗介に耳打ちしている。
宗介が何度か頷くと、テッサは突然立ち上がった。

「ごめんなさい、皆さん。
交換留学生と言うのは、嘘です」

まどかはキョトンとした。
いきなり何を言い出すのか。

「いえ、魔法少女の皆さん。
私は魔法少女の調査も兼ねてココに訪れました。その事を先に謝ります」

突然過ぎる告白。
周りからは、えっ、と声が漏れた。
まどかも例外ではない。

「まぁ、今はそれだけなんですけどね」

それだけ言うと、テッサは昼食を再開し始めた。

魔法少女を知っている、とその一言がマミとほむらを警戒させてしまったようだ。
新人のさやかは、魔法少女同士のいがみ合いを知らない為に何もないらしい。

チャイムが鳴る。

次の授業が始まってしまう。
急いで屋上から教室へ。
その最中のまどかの肩をテッサが叩いた。

「マドカさん、少しだけいいですか?」

ほむらとマミが一気に警戒を高めるが、宗介が耳打ちで
「俺の上司だ、信頼できる」
と告げて、なだめた。
177 : ◆Upzc6141AI :2013/01/19(土) 00:15:53.84
授業前、屋上

宗介やほむら達は先に教室に戻ってしまった。
このテッサという転校生が話があるらしい。

「単刀直入に聞いて申し訳ないんですけど、ここ最近に変なささやき声が聞こえたりしますか?」

「どうして、それを…?」

今朝から悩んでいた事をいきなり言い当てられ動揺する。

「私もだからですよ、マドカさん。
ちなみに、なんて言ってるかは聞き取る事ができたりはしますか?」

まさか自分と同じく、ささやき声が聞こえる人物が現れるとは予想だにしなかったまどかは密かに喜んでいた。

「契約と……エントロピー?……宇宙の……寿命…とか、そんな事が聞こえたりします」

それを聞くと、今度はテッサが驚く番になる。
自分と聞こえている事が違うではないか。

かつてのウィスパードも聞こえる事は人によって分野が違った。

ちなみに、今のテッサに聞こえるささやき声はまどかを助けるように、だけだ。
言っては悪い気がするが、考えようによれば「はい、そうですか」と無視さえもできる内容なのだ。

ところがまどかの聞くささやき声は。
断片的に聞いただけでも何かを意味しているように思える。
魔法に関係する事なのだろうか。

「わかりました。
では、約束してください。そのささやき声を無理に聞き取ろうとしないで」

それだけ言うとテッサは踵を返して戻ろうとするが…
転んでしまった。先程までの威厳はどこへやら。
結局二人は仲良く授業に遅刻した。
178 : ◆Upzc6141AI :2013/01/19(土) 00:16:35.16
放課後

「ごめんね、みんな。
今日はちょっとテッサちゃんとお話したい事があるから、ついていけないの」

ほむらは珍しいと思った。
まどかは基本的に行動に自主性がなく、誰かについて行く事が多いからだ。
そんなまどかが、自分からテッサと二人きりで話したいと切り出したのだから、何か重要な話なのかもしれない。

宗介だけは、この中で先にテッサに知らされている為、話す事の内容を知っていた。

「俺たちはどうする」

特に魔女の探索までの時間をどうするかは決めていなかった。

「そうね、どうしましょうか」

マミも何も考えていなかったようだ。

そこで、ほむらが重そうに口を開く。

「そうね……なら、上條くんの…お見舞いでも行ってみましょう」

この提案には誰もが目を丸くした。
つい二日前にビンタの事もあり、会おうなどと言うとは、誰も予想していなかった。

「いいの?ほむら?」

やはり一番心配そうな声を出したのはさやかだ。
確かにあの場面では上條にあからさまな非があったが、それでもビンタをされて嬉しい訳ではない。

ーーーーほむらが自分を大切に思ってくれてると知れたのは嬉しかったが。

「それじゃあ行こうか、病院」
179 : ◆Upzc6141AI :2013/01/19(土) 00:17:30.31
病院


実のところさやかは、元より病院に向かう予定だった。
上條の腕が治ったので、あるサプライズを用意していたのだ。

まさか、ほむらから病院に行く事を切り出すとは思わなかった為に大所帯となってしまったが、問題はないだろう。

それに、そのサプライズに関しては人が多い方が良いかもしれない。

今から待ちきれない思いに囚われるが、グッと堪えた。

「さやか、何をニヤニヤしているの」

しまった、思わず表情に出ていたらしい。

「い、いやぁ!なんでもないよ!」

そうだ、変にバレる位なら早く行こう。
180 : ◆Upzc6141AI :2013/01/19(土) 00:18:55.58
病室


コンコン、とノックをする。

「どうぞ」
部屋の主から許可が得られた。
扉を開く。
相変わらずベッドに上條はもたれかかっていた。
だが、以前訪れた時とは違い、表情が段違いに明るい。

「お邪魔しまーす」
務めて明るい声を出す。
できるだけ、いつも通りにサプライズに勘付かれぬように。

「こんにちは、上條くん」
と、さやかの後ろからほむらが現れる。
上條の顔が少し引き攣ったのを、もちろん宗介は見逃さなかった。

「どうした、上條。
何を恐れている」
引き攣ったのを見逃してはいないが、なぜ引き攣ったかは宗介には理解できていなかったらしい。

「相良くんは唐変木キャラなのかしら…?
上條くんは二日ぶりね」
と、最後にマミが入室する。

そして、二日前のように談笑をする。
前回のような危うさを孕んだやりとりはない。
さやかの願いで、上條の腕が治ったからだ。

「本当に、さやかには悪い事をしちゃったね…いくら気が滅入ってたとはいえ、ごめん」

「い、いやあ、気にしないで!
ある意味では悪いのはあたしなんだから」

あくまで自分を下げる言い方に、ほむらは少しだけムッとした。
さやかに非は全く無かったと言うのに。
上條もなぜそれを否定しないのか、不思議に思えた。

「それと、暁美さん。
この前のビンタ、ありがとう」

「っ!!??」
ほむらはその一言でさやかの後ろに隠れた。

「べ、別にそんな意味じゃないんだ!
あの時、あんな自分をしっかりと怒ってくれる。
間違いを正してくれた事に感謝してるんだ」
誤解を解く為か、やけに早口になる。

「そ、そう…
別にそんなつもりは無かったわよ。ただ、本当にムカついただけなのだから」

ほむらは割と本心から言った。

「あと、相良くん。
僕の腕を止めてくれてありがとう。
お陰でさやかとの思い出を壊さずに済んだ」
次に宗介へ感謝を示す。

「後悔するようならばやらない事だ。
その時の状況判断もまともに出来ん兵士は生き残れない」

感謝について、宗介は微妙に的外れな答えを出す。

「最後に巴先輩も、ありがとうございました。
あの言葉の意味もしっかり考えさせてもらいます」

あの言葉とは、きっとほむらが怒って去った直後のやり取りの「それが、愛でしょう」の事だろう。

「そう、それはよかったわ」

これを知っているのは、宗介とマミ、そして言われた本人である上條だけだ。

「あ、恭介、みんな。
外の空気、吸いにいこっか」

凄く唐突だが、上條以外はおそらくは先程のニヤつきと関係しているのだろうと考え了承する。
上條は何も知らない様子で「どうしたの?」と聞きながらも賛成のようだ。
181 : ◆Upzc6141AI :2013/01/19(土) 00:19:28.59
屋上への階段


いくら病院が大きいとはいえ、5人でエレベーターはキツかった。
ましてや一人は車椅子なのだから。
結局宗介とほむらは階段で登る事にした。

病室から屋上までは、さほどの高低差は無い為、階段でも苦しくはないだろう。
もっとも、ほむらも階段で来た訳は、宗介に聞きたい事があったからだが。

「まどかがテッサさんと話している事って、貴方は知っているのね」

「あぁ、おそらくはこの任務に関係してもくるだろう」

ほむらが重々しく口を開いた。
宗介もそれについて答える。

あまり、ウィスパードについて口外するべきではないとは分かっているが、ほむらになら教えても問題は無いはずだ。

「以前にラムダ・ドライバなどのブラックテクノロジーについては説明したな。
それに関係しているかもしれない」

「ささやき声、だったかしら。
それとまどかが、どう関係するの?」

当然の疑問だ。
今までもまどかにはそんな声は聞こえていなかった。
イレギュラーな時間だからこそ、何があるかわからないのはほむらも理解はしていた。

「二週間ほど前から、テッサにまた聞こえるようになったそうだが、その内容が」

そこで、一度言葉を区切る。
やはり言わない方が良かっただろうか。

「鹿目まどかを助けてくれ、と」
重々しく、そう言った。
182 : ◆Upzc6141AI :2013/01/19(土) 00:21:11.80
屋上


マミとさやか、上條は先に屋上についていたが当然だろう。

宗介の警戒のペースに合わせたのだ。移動が速いと言えども、遅れはする。
それでも、驚異的なペースで階段を駆け上がっていたが。

「あ、来た。
それじゃ、行こっか」

さやかは、ほむらと宗介を見るとそう言いながら車椅子を押しながら歩き始めた。
屋上の中央に出る。

数人の看護婦と、見知らぬ中年。

その中年は何らかのケースを持っている。
サイズとしては、サブマシンガン程度なら軽く入るだろう。

(いかん!)

咄嗟に宗介は腰の後ろに隠していたグロックを引き抜き、中年の足下に発砲した。

周りから悲鳴が飛び交う。

「うわっ!何だ!」

「それ以上迂闊な動きをしてみろ。言え、そのケースの中身は…」

言葉の途中で鈍い音が響く。
ほむらに殴られたらしい。

「空気を読みなさい、バカ!」

「だが……」

「もう一発ほしいの?」

有無を言わさぬ物言いに、宗介は黙る。

「申し訳ありませんでした」

そう言ってほむらは腰を折り曲げ、深く頭を下げる。

その体勢から宗介の後頭部を引っ掴み、強引に宗介の頭も下げる。
183 : ◆Upzc6141AI :2013/01/19(土) 00:21:45.94
「すまないと思っている」
「もっと真面目に」

「すみませんでした」

一件落着かどうかは怪しいところだが、とりあえずの騒ぎは収まったようだ。

「お前には、これを捨てるように言われたが……私は捨てる事ができなかった……」

そう言って、中年の男は上條にケースを手渡す。

「武器を簡単に病院内に持ち込める程のエージェントが、捨てる事をためらう程の……
一体何が……」

小声で宗介はほむらに聞く。

「あの人は上條くんの父よ。エージェント何かじゃないわ。
中身はバイオリンでしょ、多分」

ほむらが言ったとおり、中からはバイオリンが出てきた。

「さぁ、弾いてごらん。
何も怖がらなくていい」

そのバイオリンを受け取った上條は、それを構える。

そして、演奏を始める。

曲目はアヴェ・マリア

さやかはそれを聴いて涙ぐんでいる。

正直、宗介にはこれといった感想は出せそうに無かったが、純粋に「綺麗な音だ」とは思う。

ほむらやマミはどうだろうか。
さやか程では無かったが、両者とも感動をしているのかもしれない。
少なからず、集中して聴いているのはわかった。


演奏が終わる。
自然と周りから拍手が出る。

さやかは、本当に嬉しそうであった。
184 : ◆Upzc6141AI :2013/01/19(土) 00:22:23.99
何処かのタワー

「なーんだ、どいつもこいつも、チョロそうじゃん。マミの奴もさ」

赤髪の少女と、緑髪の少女はタワーの頂上階の展望スペースにいた。

赤髪の少女ーーーー佐倉杏子ーーーーは望遠鏡から目を離しながら言った。

マミの名前が出て来た事から察するに、病院の屋上を観察していたのだろうか。

緑髪の幼い少女ーーーー千歳ゆまーーーーはずっと杏子の服の裾を掴んでいる。

実のところ、二人とも魔法少女として契約をしている。
ゆまはつい先日までは一般人だったのだが、契約してしまった。

その原因が自分にもある負い目として、杏子はゆまと一緒にいるのだ。
そうでなければ、昔の姿はどうであれ今は現実主義者の杏子は子供を連れて狩りは行わないだろう。

その事もあって、杏子はグリーフシードが足らなくなってきている。
もともと狩場にしていあ風見野は魔女の数が少ないのだ。
そして、隣町の見滝原は急激な都市開発などで住民に差が生まれ、魔女のターゲットになるような人が多い。
その為に、魔女の数が圧倒的に多いのだ。
185 : ◆Upzc6141AI :2013/01/19(土) 00:22:55.83
杏子は再び望遠鏡に目を戻す。
青髪の少女が車椅子の少年を押している。
その少年と対峙する形で立っているのは、その少年の父親だろうか。
何かのケースを渡そうとしている。

そして、その後ろから現れたざんばら髪の少年が。
あろう事か、拳銃を抜き出し。

父親と思わしき男の足下に発砲した。
モデルガンかと思ったが、着弾点の弾痕から察するにおそらくは本物だ。モデルガンであんな威力はまず出るはずが無い。

「うわっ!何だよ、あいつめちゃくちゃじゃないか」

咄嗟にゆまの教育に良くないと思ったのか、杏子は見ては行けないと、ゆまには見えないようにする。

その体勢のまま再三望遠鏡を覗き込む。
ざんばら髪の少年は長い黒髪の少女に頭を抑えられ、強引に謝罪の体勢をとらされていた。

そして、車椅子の少年が撃たれた男からケースの中身を受け取る。

バイオリンだ。

演奏を始めると、周りはピタリと動きを止めて聴き入る。

例の少年は拳銃を後ろ手に持ったまま休めの体勢で直立不動だ。

(マミの奴もエライのとつるんでるねぇ…)

車椅子を押していた青髪は涙を流して聴いている。
その手を見ると、指にはソウルジェムと思わしき指環がはめられていた。

(さてはあいつ……あの坊やの為に契約したな……)

杏子も人の為に願う事から始まった。それは結果としては裏切られて終わる願いになってしまったが。
横にいるゆまは、杏子を助ける為に契約をした。
皮肉な事だろう。
杏子は、人の為に願う事の愚かさを身に沁みるほどに知っているのに。
この子は、自分の為に契約してしまったのだから。
186 : ◆Upzc6141AI :2013/01/19(土) 00:23:24.99
「あーあ、ソースケの奴羨ましいねえ。
女の子に囲まれて、天才バイオリニストのバイオリンまで聴けるなんて役得な任務だぜ」

不意に、横から声が聞こえた。
まるで人の居ないタワーだが公共の建造物だ、他に人が居てもおかしくはない。

だが、その男は魔法少女である杏子にすら、異様に見えた。
覗き込むのは、望遠鏡ではなく、狙撃銃。

これを見た杏子は「見滝原は物騒な街だな」などと思いながらも、やはりゆまの教育に良くないと動き出す。

「おい、あんた。
ちぃーっと、物騒過ぎやしないかな、ソレ。
あの子の教育に悪いからしまってくれたら嬉しいんだけど」

狙撃銃を指差しながら、指摘する。
流石に子供に見せるべきではない。ましてや、つい先日に両親を失った子供には。

「おおっと!すまねえ、嬢ちゃん!」

そう言うと慣れな手つきで分解して、あっという間に鞄に仕舞い込む。

「悪いね、邪魔したみたいで」

「いやいや、気にしないでくれよ。
あんな物騒なもんぶら下げてる方が邪魔者だから」

それだけ言うと、その男はそそくさと降りて行ってしまった。

「じゃ、ゆま。あたし達も行こっか」

「うん!」

そう言うと、続くようにタワーを降りた。
いざ、見滝原へ。
187 : ◆Upzc6141AI :2013/01/19(土) 00:24:05.50



病院から出たあと、宗介はいったんセーフハウスへ戻り、ボン太くんとなって探索に戻ってきた。

メンバーはほむら、マミ、さやか、そしてボン太くんである。

まどかはまだテッサと話をしているようだ。

「ソースケ…なにそれ…」

「そう言えばさやかはボン太くんを見るのは初めてよね」

ボン太くんを初めて見るさやかは絶句する。
明らかに魔女退治に向いてるとは思えない着ぐるみだからだ。

「ふもっふ!ふも!ふもふふももふふもふも」
(安心しろ、美樹。これの性能なら魔女も安全に戦える)

ふもふもと言いながらボン太くんは説明するが、翻訳なしでのボン太くん語はさやかに意味が伝わらない。

「『安心しろ、美樹。これの性能なら魔女も安全に戦える』だそうよ。
大丈夫、ボン太くんの性能なら私たちも保証するわ」

訳を伝えるほむら。
いたって真面目そうに言うものだから、さやかは何とも言えない気分になる。

「まぁ、それについては私も見てるから大丈夫よ、美樹さん。
それよりも、みんな気付いてるわね?」

そう言うとマミはソウルジェムを前に差し出す。
微弱ながらも、反応を示していた。

「ええ、これは使い魔ね。
危ないから、仕留めるけど」

ほむらが言うと、全員それに同意した。

「ほむら、マミさん。
訓練も兼ねて、私に戦わせてもらっていいですか?」

示された裏路地の入り口に立ちながらさやかは提案する。

「そうね、賛成よ。
さやかには早く一人前になってもらわないといけないから」

四人は、さやかを先頭に裏路地に進んだ。
188 : ◆Upzc6141AI :2013/01/19(土) 00:24:40.15
裏路地

魔女の結界のような安定感のない、現実と異世界がごちゃごちゃになった不安定な結界が展開されている。

やはり使い魔のものだ。
だが、危険には変わりないのでマミ達は基本的に使い魔も倒す事にしている。

「それじゃあ、やっちゃいます!」

さやかはそう叫ぶと変身する。
そして、終わると同時に大量に剣を出現させ使い魔に向けて投げつける。

誰もがその命中を確信した。

だが

それは何者かの「槍」によって阻まれた。
佐倉杏子だ。

「なっ!」

「あんた、見てわかんないの?
ありゃ魔女じゃなくて使い魔だよ」

そう言って杏子はさやかと使い魔の間に割り込むように着地した。

「それと、マミ。
あんたはまだ使い魔まで狩ってるんだな。大事な後輩ちゃんを死なせたいのか?」

「ふもっ!」
(いかん!)

杏子の説教の最中にボン太くんは突然割り込むと、逃げ去ろうとする使い魔に散弾銃を撃ち込む。

ッポン! ぐ し ゃ っ

使い魔は物の見事に潰れた。
189 : ◆Upzc6141AI :2013/01/19(土) 00:25:21.72
「あ、あぁ~………」

それを見てしまった杏子は残念そうに声をあげる。

「なんなんだ、この着ぐるみ野郎!」

槍の穂先は、さやかからボン太くんへ。
その槍を振るおうとするが。

「キョーコ!ボン太くんに乱暴しちゃだめ!!」

後ろから現れた幼い少女に阻まれた。

「ゆ、ゆま!」

ゆまに掴まれて杏子は槍を降ろす。

「それで、佐倉さん。
やっぱり、貴女は魔女だけを狙っているのかしら?」

マミは少し悲しそうな表情と声で聞いた。

無言で杏子は頷く。

「それじゃあ、ここにきた理由は…」

悲しみの他に宿った、微かな敵対心。
言葉が先程よりも重く感じる。
そして、眼光は鋭く杏子を捉える。
縄張り争いならば魔法少女ではよくある事なのだから、警戒心が生まれたのだろう。
かつてのコンビとはいえ。
190 : ◆Upzc6141AI :2013/01/19(土) 00:25:54.88
「えぇーい!」

そこまで考えると陽気な声が響いた。
先程までボン太くんを庇っていたゆまだ。
ゆまは知らぬ間にマミに歩み寄り、あろう事か。
スカートを思い切りめくった。

「えっ、ちょっ!」

完全な不意打ちにマミは動揺している。
恥ずかしさで涙が出てきてしまった。

「キョーコは悪い子じゃないもん!
キョーコをいじめるなら、ゆまがやっつけてやる!」

威勢良くゆまは叫んだ。
どうやら何か勘違いをしているらしい。

「ゆま、別にいじめられてる訳じゃないから……
あぁー、マミの奴マジ泣きじゃんか…」
191 : ◆Upzc6141AI :2013/01/19(土) 00:26:23.98
こんな事になると予想していなかった杏子も反応に困る。

さやかはスカートめくりを直接見てしまい硬直していた。

後ろで見ていたほむらは、「杏子ってこんなキャラだったっけ」と思いながら、動かなかった。

ボン太くんはこういう時に直視するとロクな事にならない事を知っているので、後ろを向いて見なかった事にした。


そんな状態で最初に動き出したのは、意外にもボン太くん。

この姿ならあまり警戒されないのをいい事に、ゆまを抱きかかえてマミから引き剥がす。

「そ、それでだな……見滝原に来た理由なんだけど……」

杏子は、先程の下りで完全に毒気を抜かれてしまったようだ。

「縄張り争いをしようって訳じゃない。
少しだけ、見滝原でも狩りをさせて欲しいんだ」
192 : ◆Upzc6141AI :2013/01/19(土) 00:32:41.08


今回はここまでです。
ゆまも登場で本編ベースだと杏子が書きにくい事この上ないです、若干崩壊気味サーセン!

それと、これで5話と同じ位の進行ですかね……



今回の補足は
ゆまが何故契約済みか。
これは、織莉子が契約してなくても、ゆまと杏子が出会いさえすれば杏子の為に契約するかもって所です。
ちなみに願いはおりこ☆マギカと同じく「杏子を助けたい」的なものになっています。

それでは読んでくれた方々、雪道にはお気をつけておやすみなさい!

193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/19(土) 01:55:40.16
おつ
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/19(土) 05:43:56.81
乙です!
なんでだろう…あの一件の後なのにやりとりが脳内で再生してしまうwww
やはりソースケはこうでなくては。
次スレ:

ほむら「ラムダ・ドライバ?」【後編】



このシリーズSS:

ほむら「ラムダ・ドライバ?」【前編】


ほむら「ラムダ・ドライバ?」【後編】



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