箒「もしも一夏が、私にぞっこんだったら!」

1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:10:06.31

   その日は、夜風が気持ち良かった。

   やっとムシムシした空気が無くなり、心地よい気候に移りつつある。

   私は、部活動の後、虫の音を聞きながら月を愛でようと、IS学園の裏にある

   雑木林奥の丘を目指した。


   

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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:11:12.96
箒「……?」

箒「なんだこれは?」

箒「…………」

箒「……どう見ても電話ボックスだが」

箒「何故、こんな所に?」

箒「…………」

箒「……そういえば幼い頃見ていたアニメに、こんな道具があったな」 クスッ

   キィ…… パタン ……ガチャ

箒「もしも一夏が、私にぞっこんだったら!」

箒「……なんてn」

   ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリンッ!!

箒「……!?」

3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:11:44.85
   バッ…… バタンッ!!

箒「くっ……なんなんだ!?」

箒「………………」

箒「…………」

箒「……帰るか」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:12:28.94
 ――翌日・休日の早朝――

 ――IS学園寮・箒の部屋――



   コン コン

一夏「箒、起きてるか?」

箒「……!? 一夏か?」

箒「なんだ? こんな朝早く?」

一夏「……? 何って……朝稽古する約束していただろう?」

箒「それは……そうだが」

箒「お前は、休日の朝稽古には乗り気じゃなかったじゃないか……」

一夏「……? 何言ってるんだよ」

5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:13:00.69


一夏「お前との大切な、二人の時間をないがしろにするわけ無いだろ?」



箒「!!??」 ///

箒「なっ、何を言ってるんだ! 朝っぱらから!」 ///

一夏(……? 箒……今日は、元気がいいな?)

一夏「悪い、起きているのならいいんだ。 先に道場に行ってるからな」

箒「あ、ああ……」 ///

箒「…………」 ///

箒(い、いったい、どうしたんだ? 一夏の奴……) ///
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:13:54.40
 ――IS学園・道場――



   パンッ! パパンッ! パンッ!

箒「はあっ!」 パシンッ!!

一夏「ぐうっ!」

   スルッ……バッ(面をとった音)

箒「……まだまだ、脇が甘いぞ、一夏?」 フフン

一夏「!?」

一夏(今、笑った……!?)

箒「? どうした? 一夏?」

一夏「! い、いや、何でもない……」

箒「?」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:14:37.05
一夏「……箒」

箒「なんだ?」

一夏「そ、その……何か、いい事でもあったのか?」

箒「……? いや、特にないが?」

一夏「そ、そうか……」

箒「……?」



一夏(……どういう事だろう?)

一夏(アレ以来……笑顔を見せた事なんて、一度も無かったのに……)

一夏(………………)

一夏(強いて言うなら……付き合い始めた頃の箒みたいだ)

一夏(………………)
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:15:17.08
一夏「……箒、そういえばこの後、予定はあるか?」

箒「普通に部活動だが?」



一夏(……!? 部活動!?)

一夏(…………)

一夏(やっぱり……おかしい)

9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:16:35.31
箒「一夏?」

一夏「……ああ、すまん」

一夏「もしヒマなら……デートでもどうかと思ってな」

箒「…………」

箒「はあっ!?」 ///

一夏「……ほ、箒?」

箒「い、今、何と言ったのだ!? デートと言ったか!?」 ///

一夏「お、おう……」

箒「デ、デートというのは、あ、あれか? こ、恋人同士がするアレの事か!?」 ///

箒「実は出・糸でした! なんてオチじゃないのか!?」 ///

一夏「……なんだよ、その意味不明なオチは? というか、それ以外の何があるんだよ?」

箒「…………」 ///

一夏「……? 箒……さん?」

箒「…………行く」 ///

箒「絶対、行く!!」 ///

10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:17:15.58
 ――午前中――

 ――ショッピングモール――



箒「…………」 ///

一夏「……箒?」

箒「な、なんでもない……」 ///



箒(……いったい、何なんだ? わ、私は緊張で い、今にも押し潰れそうなのに) ///

箒(一夏め……ずい分と、慣れている感じじゃないか……) ///



一夏(こりゃ、いよいよもって、初めの頃の箒だな) クス
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:17:46.22
一夏「さて、どこに行こうか?」

箒「そ、そうだな……」 ///

箒「…………」 ウ~ン……///

箒「と、とりあえず、服が、み、見たいかな……」 ///

一夏「よし、服な」

12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:18:31.22
 ――ショッピングモール・洋服売り場――



一夏「箒、これなんて似合いそうじゃないか?」

箒「私は、丈の長いスカートは好きじゃない……」

一夏「……あ、そうだったな。 動きにくいから駄目なんだっけ……」

箒「……?」



箒(あれ? どうして……その事を知っている?)

箒(無意識に話していた……か?)

箒(……まあいいか)
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:19:10.92
箒「一夏、これとこれ、どっちが良さそうだ?」

一夏「そうだな……そっちの空色のブラウスかな?」

箒「ほう……こっちの緑のトレーナーは、似合わないか?」

一夏「いや、そんな事は無いと思う。 強いて言えば、ってだけだから」 ニコ

箒「そ、そうか……」 ///

一夏「両方とも試着してみろよ。 俺が見てやるから」 ニコ

箒「う、うむ。 そ、それじゃあ……」 ///

   シャッ…… ゴソゴソ…… シャッ……

箒「……どうだ?」 ///
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:20:00.42
一夏「うん、ブラウス、いい感じだ」

箒「うん、私も良いと思う」 ///

箒「よし、着替える、ちょっと待っててくれ……」

   シャッ…… ゴソゴソ…… シャッ……

箒「今度は、どうだ?」

一夏「おう、似合ってるぞ。 でも、やっぱり俺は、ブラウスの方が好きかな」

箒「そうか……」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:21:03.71
箒(私は……こっちの方が好きなんだけどな)



一夏「箒は、トレーナーの方が 気に入ってるのか?」

箒「えっ?」

一夏「あくまで俺の意見だから。 それにさっきも言ったけど」

一夏「強いて言えば、ってだけだし。 両方とも良く似合ってるぞ?」 ニコ

箒「そ、そうか……」 ///



箒(ど、どうするかな) ///
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:21:56.14
一夏「結局、両方買ったのか」

箒「ああ、こういうのは一期一会だからな……」

箒「せっかく気に入ったのだし、思い切った」 クス

一夏「良いと思うぞ」 クス

   アハハ……

一夏「さて、少し早いけど、昼にするか?」

箒「うむ、そうだな」

一夏「どこで、何を食うかな……?」

箒「ふむ……うどんは、どうだろう?」

一夏「そうだな、軽いものがいいな」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:22:39.00
 ――昼前――

 ――ショッピングモール内レストラン――



箒「天ぷらうどんを」

一夏「俺は、かき揚げの天ぷらうどんを」

   カシコマリマシター

箒「今日は……ありがとうな、一夏」

一夏「ふふ、どういたしまして」 クス

一夏「俺も箒が喜んでくれて……うれしいよ」 ニコ

箒「……っ」 ドキ///

箒「…………」 ///
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:23:20.30
箒(……なんだろう) ///

箒(本当に付き合っているみたいだ……) ///

箒(…………) ///

箒(……あ)

箒(もしかして、あの電話ボックス!?)

箒(ほ、本物だったのか……!?)

箒(…………)

箒(じゃあ……この一夏は)

箒(私に……ぞっこん、なの……か?) ///

箒(…………) ///
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:23:58.16
箒「……なあ、一夏」

一夏「ん?」

箒「その……私達は、つ、付き合っているんだよな?」

一夏(……!)

一夏「ああ、もちろん」 ニコ

箒「そ……そうだよな、う、うん」 ///



箒(や、やっぱり!) ///
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:24:26.06
一夏(……箒)

一夏(もしかして……)

一夏(記憶を無くした!?)

一夏(…………)

一夏(……だとしたら)

一夏(その方が……箒の為かもしれない)

一夏(…………)

一夏(とにかく、今は様子を見よう……)
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:25:09.04
   アリガトウ ゴザイマシター

箒「うむ、美味かった」

一夏「ああ、一心地ついたな」

一夏「箒、この後はどうする? 映画でも見るか?」

箒「う、うむ。 それで構わないぞ?」

一夏「よし、シネコンに行こう」
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:26:00.90
 ――シネマ・コンプレックス――



一夏「どれどれ……アクション物に、ヒューマンドラマ……」

一夏「戦争物に、恋愛物……どれにする?」

箒「一夏に任せる。 ……私は、そういう物に疎いから」

箒「私が見ても 楽しめそうな映画を選んでくれないか?」

一夏「そうか……それじゃあ……」

一夏「これにするかな」
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:26:55.24

―――――――――――


箒「アクション物か」

一夏「おう、面白いって評判だ」

箒「ふふ、楽しみだな」

一夏「ああ」



一夏(…………)

一夏(やっぱり、覚えてないんだな……)
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:27:27.25
   ソンナ……ボクニ、ボクニ! ナニガ デキルッテ、イウンダヨ!!

   オマエハエラバレタ……ソレヲウケイレロ!!

箒「…………」

一夏「…………」

   イヤダ……イヤダ! ドウシテ、ボクバカリ コンナメニ!

   サイノウガアルカラダ! オオクノニンゲンハ、ソレヲノゾミナガラ

   サワルコトスラ ユルサレナイ! ソレハ、オウノシカクナノダ!!

箒「…………」

一夏「…………」

25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:28:05.86
   オネガイ……イキテ…………。 アタシノ……ゼンブ、アゲルカラ……

   ……ドウシテ…………ドウシテ、コンナコトニ!

   ゴメン……ボクガ……ボクガ、マチガッテタ……

箒「…………」 グスッ…

一夏「…………」

   ボクガ、ゼンブアツメル。 ニクシミモ、カナシミモ、ナニモカモ!

   ボクガ、オウニナル!!

箒「…………」

一夏「…………」
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:28:51.57
   イヤダ! モウボクハ、アキラメナイ! カノウセイガナンダ!

   ウオオオオオオオオオッ!!

箒「…………」 ハラハラ

一夏「…………」

   コレデ……イインダヨネ。 コレガ、キミノノゾンダ

   セカイ ナンダカラ……

箒「…………」

一夏「…………」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:29:34.76
箒「なんだ! あの主人公は!」 プンプン!

一夏「ハハハ……」

箒「ヘタレで意気地なしで……なすがまま行動していたくせに」

箒「ここぞという時に、徹底して逃げ出してばかりいた!」

箒「ここまで腹の立つ主人公は、初めてだ!」 プンプン!

一夏「最後は、頑張っていたじゃないか」

箒「むっ……確かにそうだが……」

箒「それにしたって幼馴染の扱いが、あんまりじゃないか!」 プンプン!

箒「主人公の気持ちを知りながら、健気に尽くしていたのに……」

箒「あんな最後は、酷すぎる!」 プンプン!
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:30:20.09
一夏「ああ、それについては反論できないな」

一夏「生き延びて欲しかったキャラが、全部死んでしまったし……」

箒「まったくだ!」

箒「生き延びたのはビッチに、裏切り者に……」

箒「とにかく、主人公を利用したか、ひどい目に合わせた連中ばかりだ!」 プンプン!

一夏「いくら主人公が覚醒して、心が広くなったと言っても」

一夏「あれは寛容になりすぎだよな……」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:30:55.90
箒「まったく……どうしてくれるんだ、一夏!」

箒「私は、気分が悪くなったぞ!」 イライラ

一夏「ハハ……すまん。 評判なんて当てにならないな」

一夏「じゃあ……体を動かして、うさを晴らすか?」

箒「ふむ……それには賛成だ」

一夏「よし、ボウリングなんてどうだろう?」

箒「うむ! いいぞ!」
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:31:45.96
 ――午後――

 ――ショッピングモール内・ボウリング場――



   ゴロ ゴロ ゴロ ゴロ…… ガッコーン!

一夏「くあっ! 取り切れなかったか……!」

箒「惜しかったな」 クスッ

一夏「これで150にも届かないな……」

箒「なかなかの成績じゃないか」

一夏「箒は、180オーバー確定だろ……」

箒「ふふん♪」

一夏「くっ……!」

一夏「箒! もう一回! もう一回、勝負だ!」

箒「ああ、構わんぞ?」 クスッ
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:32:19.92
箒「では……」 スッ…

一夏「箒!」

箒「? なんだ?」

一夏「愛してる……」 キリッ☆

箒「!!?」 ドキッ///

箒「なななな、何を、突然!?」 ///

一夏「ほら、早く、投げろよ?」

箒「くっ……!」 ///

箒「……ふんっ!」 ゴロ ゴロ ゴロ ゴロ…

箒「ああ……」 ガター…
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:32:49.94
箒「一夏! 貴様、ずるいぞ!」 ///

一夏「なんでだよ?」 クスクス

箒「! あ、あんな事を、こ、公衆の面前で言うなんて!」 ///

一夏「おう、それはすまなかった」

一夏「ぜひ、仕返ししてくれ?」 ニコ

箒「!?」 ///

箒「くっ……よ、よし、やってやる!」 ///
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:33:46.97
一夏(……ふふふ、できるかな?)



一夏「…………」 スッ…

箒「! ……あ、あいっ……あいし……」 シドロ モドロッ///

一夏「……!?」 ゴロ ゴロ ゴロ ゴロ…

一夏「あ……」 ガター…

箒「!」

箒「そら! 見たことか!」 フフン!

一夏「…………」



一夏(顔を真っ赤にして必死な箒……可愛いすぎる) ///

一夏(反則だろ、こんなの……) ///
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:34:38.39

―――――――――――


箒「どうだ! 三戦全勝!」 ドヤ!

一夏「……負けました。 完敗です……」 クスン…

一夏「おまけに肩は、痛いし……」 シクシク…

箒「情けない……普段から鍛えていないからだ」

一夏「ごもっともでございます……」

35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:35:16.99
箒「……もう、夕方か。 日が落ちるのが早くなって来たな」

一夏「そうだな」

一夏「…………」

一夏「箒、良かったら……少し歩かないか?」

箒「……!」

箒「……う、うむ、構わないぞ、私は」 ///

一夏「そうか……」 クスッ
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:35:55.86
 ――ひとけのない公園――



一夏「おっ、ベンチがある。 座ろうぜ?」

箒「……あ、ああ」 ///



箒(こ、こ、これは! も……もしかして……) ///

箒(ふ、雰囲気もあるし、や、やっぱり……) ///

箒(こ、心の準備がっ……!) ///



一夏「……箒?」

箒「!? ……す、すまない。 ……なんでもない」 ソソクサ……ストン///

一夏「…………」
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:36:39.64
一夏「箒、今日は、ありがとうな」

箒「い、いや……こっちこそ。 私も楽しかった」 ///

一夏「映画は、ミスったけどな……」 クスッ…

箒「…………」

箒「ふふ……確かに」 クスッ

一夏「…………」

38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:37:07.93


   ……言葉は、無かった。

   私の右隣に座る一夏は、私の肩に手をやり、そっと自分の方へ抱き寄せる。

   手馴れている感じがした。



   私の緊張は、限界を突破していて……ブルブルと無様に体を震わせていた。

   そんな私を察してか、一夏は急がなかった。


   
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:37:37.62


   一夏の肩に頭を載せ……私は、どこともなく虚空を眺めていた。

   一夏の呼吸音が聞こえる。 一夏の体温を感じる。 一夏の匂いがする……。

   私は……いつしか、安心していた。



   ころあい、と見たのか。 一夏が、私の名を呼んだ。

   私は……ゆっくりと一夏の方へ顔を向けると、彼の顔を見ながら

   静かに目を閉じた。


   
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:38:36.79


   ……それは、聞いていたのとは、少し違っていると思った。

   「甘酸っぱい味」なんてものじゃない。



   もっと……優しくて、体中が溶けそうになる様な……そんな「感覚」しかない。

   適当な言葉が、思いつかない。



   一夏の感情すら、そこから流れてくるような気がした……。


   
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:39:13.90
箒「…………」 ///

一夏「…………」 ///

箒「…………」 ///

一夏「…………箒」 ///

箒「…………」 ///

一夏「……箒?」

箒「!? ……な、なんだ?」 ///

一夏「大丈夫か?」 クスッ

箒「う、うむ。 こ、これぐらいなんでもない」 ///
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:39:59.96
一夏「…………」

一夏「箒、聞きたい事があるんだけど……」

箒「? なんだ?」

一夏「違っていたら謝るけど」

一夏「もしかしたら……記憶を無くしているんじゃないのか?」

箒「!?」

箒「…………どうして、そう思う?」

一夏「今日の箒、いつもと違っていたからな……」

一夏「確信したのは、一度見た映画を何の疑問もなく見た時」

箒「…………」
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:40:38.34
箒(私は、記憶を無くしたわけではないが……)

箒(私の事情を説明するのも手間だな)

箒(…………)

箒(よし、ここは話を合わせよう)



箒「……そうか。 バレていたのか」

箒「私は、相変わらず隠し事が下手だな……」

一夏「ふふ、言えてる」

一夏「今のキスも、初めて、と言ってる様だったしな」 クス

箒「なっ!?」 ///

一夏「ハハハ……」
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:41:17.47
一夏「まあ、冗談はこれくらいにして、だな」

一夏「……箒」

箒「うん?」

一夏「無くした記憶を、取り戻したいと思うか?」

箒「……?」

箒「それは……そうだろう? 普通」

一夏「…………」

一夏「………だよな」
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:41:47.01
一夏「でもな……箒。 あえて言う」

一夏「止めておくんだ……」

箒「!?」

箒「……なぜだ?」

一夏「…………」

一夏「お前にとって……辛い事だからだ」

箒「…………」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:42:17.11
一夏「きっと……」

一夏「これから先、疑問に思う事がたくさんあるだろう」

一夏「誰かが居ないとか、ここが違う、とかな……」

一夏「でも、それらすべてを無視するんだ」

一夏「…………」

一夏「頼む……」

箒「………………」



箒(いったい……何があったんだ?)
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:45:50.22
 ――翌日の朝――

 ――IS学園・1組教室――



箒「……………………」

箒(居ない……)

箒(セシリアが、ラウラが、シャルロットが……)

箒(…………)

箒(しかし……シャルロットの席には人が居るが)

箒(セシリアとラウラの席は、空席のまま……)

箒(…………)

箒(一夏の話し方から推測すると……)

箒(…………嫌な予感しかしない)
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:46:33.54
 ――昼休み――

 ――食堂――



箒「…………」 モグモグ…

箒(気のせいか……)

箒(クラスの皆も 私に対して、よそよそしい感じがした)

箒(…………)

箒(……私は、何かしたのだろうか)

一夏「……箒」

箒「……!」

箒「一夏……」
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:47:42.86
一夏「…………」

一夏「つ、次の授業、なんだっけ?」

箒「…………」

箒「……現国だ、一夏」

箒「それに、私は大丈夫だ。 心配するな」 ニコ

一夏「そ、そうか……」
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:48:28.07
 ――数日後・放課後――

 ――IS学園・図書室――



箒(………………)

箒(……とは言うものの、やはり気になる)

箒(一夏は、あから様に話題をそらそうとするし……)

箒(合同授業の際に分かったが)

箒(鈴と千冬さんまで居ないなんて……)

箒(………………)

51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:49:26.79
箒(図書室の端末からなら……行けるだろうか?) ピピ……ピ……ピ……ピ……

箒(…………) ピ……ピ……ピピ……ピ

箒(……!!)

箒(アクセスできた……!)

箒(……全学園生徒の名簿!)

箒()

箒(抹消!?)

箒(…………)

箒(全員……在籍を抹消されている)

箒(…………)

箒(一夏……)
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:50:28.33
 ――夕方――

 ――IS学園寮・一夏の部屋――



   コン コン

一夏「は~い」 ガチャ…

一夏「!」

箒「…… 一夏」

一夏「箒……」

53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:51:16.01

―――――――――――


一夏「……ほら、お茶」

箒「……ありがとう、一夏」 ズズッ…

箒「……ふう」

一夏「…………」

一夏「……それで? 何の用かな?」

箒「…………」

箒「……わかっているのだろう?」

一夏「…………」
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:52:28.40
箒「一夏……お前が私の為を思って」

箒「過去を探るな、と言ってくれた事は感謝している」

一夏「…………」

箒「でも……やはり気になって仕方ないんだ」

箒「…………」

箒「頼む」

箒「教えてくれ、頼む……!」

一夏「…………」
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:53:39.89
一夏「……酷い状態だったんだ」

箒「……え?」

一夏「あの時以来、箒は目に見えて元気が無くなっていった……」

一夏「食事もほとんど取らなかったし、いつも泣き腫らしていた」

一夏「……代われるものなら、俺が代わってやりたかった」

箒「…………」

一夏「それでも最近は少しずつ持ち直して、良くなっていると思ってた」

一夏「……そんな時」

一夏「お前は、記憶を無くして、劇的に元気になっていたんだ」

一夏「……嬉しかった」

箒「…………」
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:55:13.66
一夏「だから……俺は怖い」

一夏「また元の様に、生気を失う事になるんじゃないかって……」

一夏「出来るなら、あんな箒は……もう見たくない」

箒「…………」

一夏「今からでも遅くない。 考え直してくれないだろうか?」

箒「…………」

一夏「…………」

箒「一夏……」

箒「余程……恐ろしい事、なのだろうな……」

箒「私にとって……」
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:56:27.24
箒「……でも、一夏が居てくれるのだろう?」

一夏「……!」

箒「それなら……きっと私は大丈夫だ」

一夏「…………」

箒「一夏が迷惑に感じるのなら……諦める」

一夏「…………っ」

箒「…………」

58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:57:24.26
一夏「…………」

一夏「わかった……」

箒「……!」

一夏「どこから話すかな……」

一夏「…………」

一夏「まず、シャルロットから始めるか」

箒「…………」

一夏「シャルロットが、女の子だったのに男装して転入して来た事は」

一夏「覚えているだろうか?」

箒「ああ……」
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 22:58:39.39
一夏「……俺は、彼女に同情しつつも 産業スパイである事実を見過ごせず」

一夏「千冬姉に相談して……できるだけ穏便に強制送還してもらった」

箒「…………」


箒(この一夏は、IS学園特記事項を使わなかったのか……)


一夏「……そして」

一夏「ラウラの事件が起こった」

箒「……転校初日に一夏を平手打ちしてたな」

一夏「そうだったな」

一夏「理由は分からずじまいだけど……ラウラは俺を嫌っていた」

一夏「……いや、憎んでいた」

箒「…………」
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:00:17.32
一夏「ある日、鈴とセシリアが、ラウラに一方的にヤられていた」

一夏「俺は二人を助けに入ったけど……」

一夏「逆にコテンパンにされてしまう」



箒(……私の方はあの時、シャルロットも助けに入ったな)

61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:01:25.69
一夏「はっきり言って、殺されると思った」

一夏「……そこに、千冬姉が助けに入ってくれたんだ」

箒「…………」

一夏「だが……ラウラは、何かに火が付いていた」

一夏「尊敬しているはずの千冬姉の制止を振り切って、俺に止めを刺そうとした」

箒「…………」

一夏「もちろん千冬姉はラウラを止めた。 力ずくでな」

一夏「だけど……ラウラは暴走してしまう」

箒「…………」
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:02:23.39
一夏「千冬姉は、それをも切り伏せたけど……」

一夏「あいつは……ラウラは、何度も立ち上がっては、俺を殺そうとした」

一夏「そして、千冬姉もラウラが立ち上がる度に 切り伏せ続けた……」

箒「…………」

一夏「どのくらい時間が経ったのか……」

一夏「突然……ラウラは、パタリと倒れた」

箒「…………」

一夏「……ラウラは死んでいた」

一夏「直接の死因は、折れた肋骨が肺に刺さった事による、窒息死だそうだが……」

一夏「体中の骨が何十箇所も折れていて……酷い状態だったらしい」

一夏「千冬姉がラウラを救おうとして、何度も峰打ちを繰り返したせいだとか……」

箒「…………」
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:03:24.82
箒「……千冬さんが学園に居ないのは、そのせいか?」

一夏「いや、違う……」

一夏「ラウラの事は、『事故』として処理されたから」

一夏「表向きは、お咎めなしだった……」

一夏「もっとも……本人は相当ショックを受けていたけどな」

箒「…………」

一夏「……さて、ここから いよいよ佳境に入る」

箒(……! ここから、だと!?)

一夏「……覚悟はいいか?」

箒「……あ、ああ」

一夏「よし……」
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:04:34.79
一夏「ラウラの事件の後……」

一夏「福音事件が発生した」

一夏「覚えているか? 箒?」

箒「臨海学校の時だったな」

一夏「そうだ……」

一夏「当初の作戦は、俺と箒で福音を仕留める手はずだった」

一夏「ふふ……俺も箒も、息巻いていたっけ……」

箒「…………」

一夏「でも……俺のドジのせいで、俺は死にかけてしまった」

箒「……お前は、悪くない」

箒「私の方こそ、専用機を与えられて……浮かれていた」

一夏「…………」
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:05:54.75
一夏「……ここから先は、お前から聞いた話だ」

箒「う、うむ」

一夏「お前は、先の戦いで負傷した俺のかたきを打つため」

一夏「千冬姉に無断で、しかもたった一人で福音に向かおうとした」

箒「……!?」

箒(あの時……私は、一夏の傍にいる事も、何かをする事も出来ずにいたはず……)

一夏「……そんな時、二人の協力者が現れた」

一夏「鈴とセシリアだ……」

66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:07:02.27
一夏「二人は、こう言ったそうだ」



鈴「別にあんたの為じゃない」

鈴「あんたが死ぬと、一夏が悲しむ……それが嫌なだけよ」

セシリア「それに……ドイツの代表候補生から救っていただいた御恩を」

セシリア「わたくし達は、一夏さんにお返ししていませんしね」



箒「……!!」
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:07:44.70
一夏「……お前は、心から二人に感謝したそうだ」

一夏「…………」

一夏「…………でも」

一夏「それが……」

箒「…………」



一夏「二人の……最期の言葉になった……」



箒「!!!!!!!!」
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:08:29.74
一夏「福音との戦いは熾烈を極め……」

一夏「二人共シールドエネルギーが尽きかけていたのに」

一夏「上空1000m付近で戦い続け……」

箒「…………」

一夏「ISが強制解除され……そのまま落下……」

箒「……!!!!」
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:09:50.40
一夏「俺が白式の力で怪我を治し、駆けつけた時に見たものは」

一夏「箒が半狂乱になって戦っている姿だった……」

箒「…………」

一夏「その時、俺は状況がよく分かっていなかったので」

一夏「とにかく箒をなだめて、目の前の敵を殲滅させる事に集中させた……」

一夏「事の真相を知ったのは……福音を倒した後だった」

箒「…………」

70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:12:04.82
一夏「その直後、俺たちは学園の教師部隊と共に、二人を捜索したけど」

一夏「鈴は遺体で見つかり……セシリアは……行方不明のまま」

一夏「死亡認定された……」

箒「……そう……だったのか」

一夏「……大丈夫か? 箒?」

箒「………………」

箒「……ショックを受けている」

一夏「……そうか」
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:12:50.00
一夏「本当は謹慎と減俸処分で済むはずだったんだけど……」

一夏「千冬姉は、その責任を取って辞職した」

箒「……!」

一夏「まわりは、俺を含めて、みんな止めたけどな……」

一夏「千冬姉の決意は、硬かった」

箒「………………」

一夏「……これですべてだ」

箒「………………」



箒(……きっと、こっちの私は)

箒(とてつもない自責の念に囚われたのだろうな……)

箒(…………)

箒(一夏が話したがらなかったわけだ……)
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:14:37.23
箒「…………」

箒「一夏」

一夏「うん?」

箒「ありがとう。 真実を話してくれて」

一夏「…………」

箒「……だけど」

箒「もしかしたら……また私は、迷ってしまうかもしれない」

箒「だから、頼まれてくれないだろうか?」

一夏「! ……うん」

箒「……その時は」
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:15:21.68


箒「優しく……抱きしめて欲しい」 ///



一夏「…………」

   ガバッ…

箒「!!!???!?!!?」 ///

一夏「ああ……! わかった……!」



箒(こ、こら、い、今は……違っ……) アタフタ///
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:16:08.09
一夏「……箒、覚えているか? 教室で再会した時の事を」

箒「えっ?」

一夏「俺……びっくりしたよ」

一夏「幼馴染の箒が、こんなに綺麗になっていた……」

箒「……!!!」 ///

一夏「ふふ、そういえば、男女なのに同室にされてお互いびっくりしたよな?」

箒「……う、うむ」 ///

一夏「最初は身構えていたけど……昔の話や、近況報告で盛り上がって」

一夏「いつの間にか打ち解けていた……」

箒(……そこは、違うな)
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:17:31.27
一夏「再開して数日だったけど……俺、思い切ってお前に告白したら」

一夏「OKがもらえて信じられないくらい嬉しかった……」

箒(……そ、そんな早い段階で!?) ///

一夏「…………でも」

箒「……?」

一夏「千冬姉もそうだけど……箒も俺を……」

一夏「『守るべき者』と認識していた」

箒「……!?」

箒「そ、そんな事は無い!!」

一夏「……絶対に無いか?」

箒「ああ!」
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:18:44.16
一夏「そうか……」

一夏「気のせいなら謝るけど」

一夏「箒が……俺を頼ってくれた事は、あるか?」

箒「……え?」

一夏「そりゃデートとか、一緒に過ごした事は、たくさんあるけど……」

一夏「俺が箒に『何か』を頼られた事は一度もなかった」

一夏「勉強も、ISも、料理も……何一つな」

箒「…………」

箒(……そう言われてみると……確かに……)

77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:20:05.75
一夏「もちろん、ただのわがままかもしれない」

一夏「頑張って、実力をつけて、それからだ、とも思った」

一夏「しかし……現実は待ってくれなかった」

一夏「福音の時も、その後の箒も……俺は、守る事が出来なかった……!」

箒「一夏……」

一夏「……だけど」

一夏「今、箒は、俺に頼み事をしてくれた……!」

箒「……!」

一夏「俺は……嬉しい、箒……」 グスッ…

一夏「俺を……初めて……頼ってくれた……!」 ギュッ…

箒「…………」
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:20:55.41
一夏「どんどん頼ってくれ、箒」

一夏「どこまで役に立てるか、分からないけど……」

一夏「お前が笑ってくれるなら……」

一夏「どんな重みも、辛さも、痛みも……俺が背負うから」

一夏「背負ってみせるから……!」

箒「一夏……」

79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:21:30.26
箒(……伝わる)

箒(伝わってくる)

箒(一夏の……気持ちが……想いが……)

箒(…………)

箒(とても……暖かい……)

箒(…………)

箒(……いや)

箒(この一夏の想いを受けるべきなのは……)

箒(……私では無い)

箒(…………)
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:22:07.78
 ――夜――

 ――IS学園寮・箒の部屋――



箒(…………) カリカリ……

箒(…………) カリカリ……

箒(…………ふむ)

箒(……こんなものか)

箒(…………)

箒(読んでくれるといいが……)
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:22:59.05
 ――深夜――

 ――IS学園裏・雑木林奥――



箒「…………」 ザッ ザッ

箒「……確か、この辺り」 ザッ ザッ

箒「……!」

箒「あった……!」

箒「…………」

   カチャン……キィ……パタン……
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:23:48.39


   私は、電話ボックスに入ると、受話器を取ろうとした。



箒(…………)

箒(……どうして私は、もっと早く こうしなかったのだろう?)

箒(…………)

箒(好奇心に負けた……)

箒(人の性……)

箒(いや……業、と言うべきか……)

箒(…………)
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:24:51.43


   私は、止めていた手を動かして受話器を取った。



箒「…………」

箒「元の世界に……もどれ!」

   ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリンッ!!

箒「…………」

   キィ……パタン

箒「紅椿!」 スウウウウウウンッ!

84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:25:40.89


   私は、ISを起動すると電話ボックスを持ち上げ、湖の中央まで運び

   それを思い切り放り投げた。



箒「カラワレ! アマヅキ!」 ズバァ! ズバァ!



   ボウンッ!!


   
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:26:28.62


   砕け散る電話ボックス……。 それは、静かに湖面へ消えていった。



箒「…………」

箒(これでいい)

箒(あれは、在ってはいけないものだ……)

86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:27:16.33
 ――翌日の朝――

 ――IS学園・1組教室――



箒「おはよう!」

一夏「! ……お、おう! おはよう!」

セシリア「お、おはようございます、箒さん」

シャル「おはよう、箒」

ラウラ「おはよう」

一同(珍しい……箒(さん)から挨拶してきた……)
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:27:58.59
 ――休み時間――

 ――IS学園・1組教室――



箒「……あ、一夏」

一夏「ん? どうした?」

箒「少し頼みがあるのだが……」

一夏「? なんだ?」

箒「なに、大した事じゃない」 クスッ

88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:28:43.73
箒「職員室にこのプリントを届けてくれと 山田先生に頼まれていたのだが」

箒「代わりに届けてくれないだろうか?」

一夏「なんだ、そんな事か。 いいぜ、お安い御用だ」 ニコ

箒「すまないな、恩に着る」 ニコ

一夏「いいって事さ」 クスッ



セシリア(むむ……なんですの?)

ラウラ(そこはかとなく)

シャル(いい雰囲気……)
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:29:32.23
箒「……なあ、みんな」

シャル「……!?」

セシリア「は、はい、なんでしょうか?」

ラウラ「何か用か? 箒?」

箒「まあ、用……というか、お昼なんだが」

箒「たまには一夏抜きで……」

箒「私達だけで、食べないか?」

シャ・セシ・ラウ「???」

箒「鈴には、私から声を掛けておく」 ニコ

90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:30:22.72
 ――昼休み――

 ――屋上――



箒「すまないな、急に誘って……」

シャル「ううん、別に構わないよ?」

鈴「ま、たまには、いいんじゃない?」

鈴(ちょっと驚いたけどね……)

セシリア「そういえば、こうやって女の子だけで集まるのは、初めてかもしれませんわね」

ラウラ「いつも一夏中心で行動していたしな……」

ラウラ「それで? いったいどうしたのだ?」
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:31:44.91
箒「う、うむ……」

箒「…………実は、な」

シャル「うん?」

箒「……恐ろしい夢を見た」

ラウラ「ほう?」

箒「その夢の中での一夏は、私にぞっこんでな……」

セシリア「……どこが恐ろしい夢ですの?」

鈴「うらやましい夢、見てんじゃないわよ……」

箒「それだけですめば……そうだったんだけどな」 クスッ…

シャル「……と言うと?」
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:32:35.80
箒「結論から言うと……」

箒「ここにいる全員と、千冬さんがいなかった」

セシリア「……!?」



箒「ある者は、強制送還され」

シャル(……ボク?)

箒「ある者は、暴走で命を落とし」

ラウラ(……私の事か?)

箒「残りは……福音との戦いで戦死していた」

鈴「……なんか……リアルね」

箒「ああ……本当にリアルだった。 だから……目を覚ました時」

93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:33:24.84


箒「心から、夢で良かったと……私は思った」



セシ・シャ・ラウ・鈴「………………」

箒「…………」

箒「……どうして、そんな夢を見たのか、わからないが」

箒「みんなと話がしたくなってな……」

箒「わざわざ来てもらった、というわけだ」

鈴「…………」

94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:34:17.94
鈴「コメントに困るわね……」

シャル「そう? ボクは嬉しく思ったけど」 ニコ

セシリア「わたくしもですわ」 クスッ

ラウラ「私は、鈴と同意見だ……」

箒「ふふ……さ、私のくだらない夢の話は、これで終わりだ」

箒「これからの事を話さないか?」
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:35:03.12
鈴「これからの事?」

箒「そうだ。 例えば……みんなでボウリングとかどうだ?」

箒「もちろん一夏も誘って」 ニコ

セシリア「まあ! それはナイスアイデアですわ! 箒さん!」 キラキラ

シャル「うん、いいね! それ!」

ラウラ「……ボウリング? 地質調査でもするのか?」

鈴「ラウラ……お約束のボケはいいから……」

箒「ハハハ……」

96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:35:43.48


   こうして……私の不可思議な体験は、幕を閉じた。

   まるで本当に夢だったかの様に……。



   しかし、そうではない事を示す証拠が手元に残っていた。


   
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:36:47.41
 ――夜――

 ――IS学園寮・箒の部屋――



箒(あの時買ったブラウスとトレーナー……)

箒(なぜ……?)

箒(…………)

箒(……考えても無駄だな)

箒(そして……)

箒(あの手紙は無い)

箒(…………)

箒(……読んでくれただろうか?)

箒(向こうの私……)
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:38:28.99


   篠ノ之 箒へ

 お前は、一人では無い。

お前には、一夏が居てくれている。



 過去の過ちに囚われて、今を生きる自分を殺しても……

一夏をも巻き込んで悲しいだけだ。



 抱え込むな。 吐き出せ。 一夏は、お前の苦しみを受け止めてくれる。

一人では辛い事も、二人でなら重みは半分になる。



 恐れるな。 幸せになる事を。 お前が不幸になる事を一夏は望まない。

一夏の幸せは、望む事は、お前が幸せになる事なのだから。

   もう一人の 篠ノ之 箒 より


   
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:39:11.29
箒(……身勝手な事を書いたかな)

箒(だが)

箒(偽る事のない、私の本心だ……)

箒(……どうか……幸せに)

箒(………………)

100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:39:55.49
箒(さて……)

箒(私の方は前途多難だな……) フウ…

箒(…………)

箒(でも……)

箒(いつか、こっちの一夏と あ、あんなキスを……) ///

箒(~~~~~~~!!) ジタバタ ジタバタ ///

箒(………………) ///

箒(……よし!) ///

箒(ボウリングには、あのブラウスを着て) ///

箒(気合を入れるぞ!) ///



   おしまい
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:41:02.31
箒編でした。
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 23:43:10.97
激しく乙。

このワンサマーはいいワンサマー。
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/19(日) 15:18:32.48
乙です

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