提督「朝潮型、解散!」

1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 21:01:32.98

朝潮「お疲れ様です!」

霞「はぁ~、今回の任務は一段と疲れたわ……」

荒潮「うふふ、でも霞ちゃん、大活躍だったわねぇ」

大潮「うーんっ! 早くお風呂入って、おせんべい食べたいー!」

満潮「夕食前に食べる普通?」

霰「大潮はいつも……普通じゃない……」


    ゾロゾロゾロ バタン


提督「朝潮もご苦労様。しばらく休んでいてもいいぞ?」

朝潮「いえ、私は司令官の秘書艦ですから。まだまだお付き合いします!」

提督「ふふふ、そうか……」

朝潮「司令官?」

提督「朝潮、ではいつものように膝へ」ポンポン

朝潮「えっ……すみません、お断りします……」ペコリ



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1447416092
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 02:31:22.11
過去作

提督「朝潮型、整列!」


提督「朝潮型、出撃!」


提督「朝潮型、索敵!」


提督「朝潮型、遠征!」


提督「朝潮型、編成!」


2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 21:10:27.67

提督「そ、そんな……いつもは嬉しそうに飛び乗ってきてくれるのに……ましゃか……私のことが嫌いに……」ガーン

朝潮「い、いえ! 嫌いになったとか、そういうわけではなく! その……」

提督「?」

朝潮「私、任務から帰ってきて、まだお風呂にも入っていませんので……汗臭いですし……」

提督「本当か! よしきた! さぁ朝潮、早く私の膝へ!!」

朝潮「なぜ嬉しそうにしているのですか司令官!?」

提督「お願いします! この通りだから! お願いだから膝へ座ってくれ!」

朝潮「司令官! なぜそんな深々と頭を!!」

提督「頼む! 朝潮のためなら何でもするから!」

朝潮「分かりました! 分かりましたから司令官! どうか顔をお上げください!」

提督「……本当か」キリッ

朝潮「いきなり真面目な顔をされましても……」

提督「心配いらないさ。別に匂いを嗅ごうなんて考えていないから」

朝潮「ぜ、絶対ですよ……。 ……では、失礼します」チョコン

提督「うむ、しっくりくるな。 これで残りの仕事も片付けられそうだ」

朝潮「…………では司令官! 残りのお仕事、がんばりましょう!」

提督「うむ!」カキカキカキ

朝潮「…………」

提督「鋼鉄の艤装に打ち寄せる海の塩分と、髪の生え際から伝ったであろう汗の塩分。

   そしてほのかに香る甘いシャンプーの融合体が……サラサラの長髪が揺れるたび、私に快楽を与える」カキカキカキ

朝潮「司令官、それは……新しい暗号でしょうか……」

3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 21:21:43.40

提督「……朝潮たちがこの鎮守府に来てから、もうどれくらい経っただろうなぁ」カキカキカキ

朝潮「随分と経ちましたね……。まだまだ新米だった私たちも、今では最強の駆逐隊なんて言わてしまって……」

提督「最初に着任したのが荒潮で、次が朝潮だったな。

   その次が満潮、霰、大潮、霞……あの時のインパクトは今でも忘れられない」

朝潮「その時は、まだ秘書艦が陸奥さんでしたね」

提督「あの後、陸奥が中央鎮守府に転属になって、代わりに朝潮が秘書艦になって……それからも色々あったな」

朝潮「霞の第二改装があったり、那珂さんのCD販売で霰が頑張ったり、大潮を旗艦として山に登ったり、

   私たちの遠征中に満潮が観艦式で大活躍したり…………――――」

提督「本当に色々あった。……朝潮、楽しかったか?」

朝潮「はい、とても」

提督「…………」

朝潮「…………こうして素敵な司令官にも、出会えましたし」

提督「あぁ……私も、本当に楽しかった」

朝潮「はい……」

提督「…………あの話、皆には言ったのか?」

朝潮「いいえ、まだです」

提督「私から伝えておこうか?」

朝潮「ありがとうございます。ですが……やはり私が自分で伝えます」

提督「そうか……。ただ、荷物の準備だけは早めに済ませておけよ」

朝潮「はい」

提督「…………七月八日…………朝潮の転属まで、あと少しだからな」

4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 21:31:05.60







        ~ 翌日 駆逐艦寮 会議室 ~



朝潮「本日の議題は、七月七日に開催される、七夕まつりについてです」

大潮「七夕まつりだぁあああーーーー!!! いやっふおぉおおおーー!!」

霞「七夕まつり……もうそんな季節なのね」

満潮「こればっかりは、大潮が浮かれる気持ちも分かるわ」

荒潮「毎年忙しいけれど、なんだかんだ言って楽しいものねぇ」

霰「七夕まつり…………すき」

朝潮「一応概要のおさらいをしておきます。

   鎮守府主催の七夕まつりとは、我々艦娘が出店や出し物を行って、一般のお客さんを迎え入れるという催しです」

荒潮「最後にお客さんの投票があって、一番の部隊には豪華景品がもらえるのよねぇ」

霞「それに今年も朝潮型駆逐隊で参戦するっていうわけね。 ふん、受けて立つわ!」

霰「去年も一昨年も……あと一歩のところで負けたから…………今年こそは……」

大潮「それでそれで! 今年は何やるの朝潮!!」

朝潮「ふふっ、慌てないで大潮。それを今から、皆で決めるのよ」

荒潮「あらー? いつもは朝潮が決めて、私たちも異議はなかったからそれに従っていたのに、どうしてまた?」

朝潮「私……今年は絶対に優勝したいから。皆の力を借りようと思って」

霰「朝潮が……いつも以上に燃えてる……」

満潮「それもいいわね。たとえお祭りといえど、やるからには勝ちたいし」

霞「うーん……でも、そもそも全員の意見がまとまらないから今まで朝潮に一任していたわけで……。

  ううん、分かったわ。今回の会議は長期戦になるかもしれないわね!」

朝潮「それじゃあ皆、まずはいつものように、出し物の案を挙げてください」

5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 21:36:22.20

大潮「ハイハイハーーイ!!」

朝潮「どうぞ」

大潮「動物園をやろう!!」

朝潮「動物園……」キュッキュッ

霞「いやいやいや、意味わかんないし」

大潮「霞、動物園知らないの!? ゾウとかキリンとか、人気の動物がたっくさんいるテーマパークのことだよ!?」

霞「知ってるわよそれくらい!」

荒潮「えぇっと大潮ちゃん……それって実現可能なのかしら?」

大潮「動物を用意するだけでしょ?」

霰「ゾウやキリンを……?」

大潮「うん」

朝潮「ちなみに、部屋の大きさは約8m四方です」

満潮「ゾウに押し潰されて、もう堪らんゾウ。 ふふっ、なーんて……――――」

一同「………………」

霞「もうすぐ夏なのに、冷えるわね」

満潮「う、うるさいわねっ!! 大潮のせいよ!」カァアアッ

大潮「まぁまぁ、満潮もゾウが好きなんだね。うんうん、分かる分かる」

満潮「なんかムカツクわねそのフォロー」

霰「………………」グッb

満潮「殴るわよ霰……」

6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 21:40:46.21

荒潮「あ、じゃあ朝潮、私も意見してもいいかしら?」

朝潮「どうぞ」

荒潮「動物園は無理でも、動物喫茶なんてどうかしら?」

朝潮「ど、動物喫茶……?」

霰「動物喫茶……それは、一見普通の喫茶店。しかし、メニューに書かれているのは全て動物の名前……――――」

大潮「マスター! ここに書いてある、『ニュウドウカジカ』っていうのください!」

霰「かしこまりました」

大潮「聞いた事のない動物だなぁー? これって、とりあえず鹿のお肉が出てくるってことでいいのかなぁー?」

霰「お待たせしました。ニュウドウカジカです」ドン

大潮「うおぉおおーーーー!! って、魚やないかーーーーい!!」

大潮&霰「…………」チラッチラッ

霞「はいはい。突然の茶番をどうも」

満潮「結局ニュウドウカジカって何なのよ」

荒潮「今検索してみたけれど…………あら~、なかなか可愛いじゃない。ほら」

満潮「うげっ……なにこれ宇宙生物?」

朝潮「えぇっと、それはさておき……荒潮、動物喫茶って?」

荒潮「そうそう。実際に動物を用意するのは経費や管理に問題があるから、

   動物に扮した私たちが店員となって、喫茶店を開くっていうものなんだけど」

朝潮「ふむふむ……なるほど、本物の動物ではなく、私たちが動物の仮装をすると……」

霰「動物園よりは現実的……ちょっと恥ずかしいけど」

荒潮「あら? 霰ちゃんはすっごく似合いそうなのに、気まぐれなところが猫そっくりで」

霰「ネコじゃないニャ」

霞「それ別の人」

満潮「ちょ、ちょっと待って!!」

7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 21:46:59.21

朝潮「ん? 満潮、なにか……?」

満潮「わ、私は動物喫茶じゃなくて………………その…………メイド喫茶とか、やりたいんだけど……」


一同「…………」


霞「満潮、アンタ今日飛ばすわねぇ」

満潮「う、うるさいわね! 私は本気よ!」

大潮「へぇ、満潮ってメイドさんになりたかったの?」

霰「お帰りなさいませご主人様って言いたかったんだと思う」

満潮「どっちも違うわよバカ! 私はただ……」

朝潮「ただ?」

満潮「ああいう衣装……可愛いなぁって思って……」モジモジ

大潮「うおっ、まぶしい! 満潮から乙女の後光がァ! ……痛っ!」

満潮「殴るわよ」

大潮「もう殴ってるよぉ……」

荒潮「うふっ、でも分からなくもないわ。私たちは艦娘である前に、女の子だもの。

   可愛いお洋服を着てみたいっていう満潮の気持ち、私たちも同じよ」

満潮「荒潮……」

霰「私たちの中じゃ、満潮が一番オシャレ。特に頭のドーナツが―――おいひひょうへわひゃひふぁひゅひ」

満潮「えぇそうね、うるさいのはこの口よね」グイグイ

8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 21:50:47.02

朝潮「じゃ、じゃあ他には? 霰は何かある?」

霰「相撲部屋」

霞「霰の相撲趣味、まだ続いてるのね。那珂ちゃんが嘆いてたわよ」

朝潮「相撲部屋っていうのは……?」

大潮「大潮知ってる! ガタイの良い大人が狭い部屋でチャンコをつっつく部屋のこと!」

霰「違う」

荒潮「お相撲さんがお稽古するところよねぇ?」

霞「お客さんと相撲でもするつもり?」

霰「霞……さすがにその案はどうかと思うけど」

霞「でしょうね!」

満潮「で? 霰の言う相撲部屋ってのは、結局どういう催しなのよ」

霰「相撲の歴史や戦術、心構えなどを記した自作の資料が置いてある部屋のこと」

大潮「それってただの展示じゃん!!」

荒潮「大潮ちゃんがまともなツッコミを……」

霰「そして、当日はお祭りを楽しむだけ」

大潮「それスゴク良い!! それにしよう!!」

満潮「おいこら」

霞「はあ……まったくアンタたち、本気で優勝取りに行く気あるの?」

大潮「ほーう! じゃあ霞には何か良い案があるっていうのー?」

霞「あるわ。私が考えに考え抜いた、最高の案が」

朝潮「それは一体……」

9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 21:58:43.00

霞「それは………………カレーよ!」

大潮「カレー?」

荒潮「それは……なんというか、すごく他の人たちと被りそうな気が……」

霰「定番中の定番」

霞「そうよ。私たちにとって、カレーのお店は超がつくほど王道。おそらくだけど、絶対に他と被るわ」

満潮「他と被るっていうことは、それだけ競争率が高いってことじゃないの?」

霞「えぇ、でも……だからこそ勝負するのよ。去年の七夕まつりを思い出してみなさい。

  私たちは邪道に邪道を重ねた結果、『大潮雷撃創作ラーメン』という意味不明な名前のお店を出した」

荒潮「たしか朝潮が『待ち時間も楽しめる、一風変わった屋台』というコンセプトを持ち出して……」

霰「ラーメン調理の待ち時間……着ぐるみを着た大潮に向かって、風船魚雷で攻撃してもらうっていう感じになった」

大潮「あれは散々だったよ……」

満潮「で、結果は六位だったわね」

霞「そうよ。 じゃあ一位が何だったか、覚えてる?」

朝潮「一位はたしか、妙高さんたちの極上カレー屋台だったわね……」

荒潮「だから私たちも、今回はカレーにするっていうこと?」

霞「少し違うわ。覚えてない? あれ、たしか三位と四位もカレー屋台だったはずよ」

大潮「あぁー、そういえばそんな気も」

霞「気になって過去の七夕まつりの結果も調べてみたんだけど、必ずカレー屋台が上位に来ているのよ」

満潮「それはつまり……カレー屋台が上位にランクインしやすいってこと!?」

霞「そうみたいね。そもそも一般のお客さんからしたら、鎮守府の名物といえばカレーなわけよ。

  いくらお祭りでも、わざわざ鎮守府まで来てヤキソバやイカ焼き食べるなんて、それこそ邪道!

  お客さんが楽しみにしているのは、私たちの作るカレーなのよ!!」

朝潮「たしかに……そう言われてみればそんな気がするわ。良い案ね、ありがとう霞」

10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 22:02:42.13

霰「朝潮は何か……あるの?」

朝潮「……そうねぇ、私は…………皆が挙げたものを、全部やりたい」

荒潮「全部?」

朝潮「えぇ。メイドさんと動物を融合させた衣装を私たちが着て、メニューは私たちのカレーで、

   壁には動物やお相撲さんの展示があって……。 一言にまとめたら、動物カレー喫茶? かな?」

満潮「なるほどね……いいんじゃない? 多少相撲が浮いて見えるけど、まぁ動物の一種として考えれば」

大潮「うんうん! それすっごくイイ! 面白そう!!」

荒潮「私たちのしたいこと、上手くまとまっていると思うわ」

霰「相撲の魅力……伝わりそう……」

霞「全員一致、ね。さて議長、私たちの出し物はどれになるのか、宣言してもらえるかしら?」


一同「…………」コクン


朝潮「我々、朝潮型駆逐隊の今年の出し物は…………動物カレー喫茶に、決定しました!!」

11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 22:08:03.22






          ~ 翌日 七夕まつりの準備 ~



   パシャ パシャパシャ


大潮「いえーい!」

霰「ぴーすぴーす」

朝潮「二人の作業中の写真が欲しいのだけど……」

大潮「朝潮、今年は写真係なの?」

朝潮「えぇ。出し物とは別に、秘書艦としての任務よ。こうやって皆の準備の様子を、写真に撮って残すの」

霰「そっか……なら大潮、きちんと作業をすすめよう」

大潮「ちょっと休憩にしようよー」

霰「五分くらい前に、休憩を終えたばかり……」

朝潮「ははは……ところで二人は、今どんなことをしているの?」

大潮「へへーん! 大潮と霰は、お店の内装担当だから!」

霰「絵を描いたり、新聞の切り抜きを貼ったりして、動物と相撲についての展示物を作ってる」

朝潮「へぇー、今の段階では、どんなものができたの?」

大潮「じゃーん、これ! 手作り動物進化年表!」

霰「原始時代からの、動物の進化の流れを表したもの。」

朝潮「へぇ、どれどれ……すべては植物から始まり、やがて単細胞の微生物、さらに進化と分岐を繰り返し、

   昆虫や軟体生物、魚類、両生類、爬虫類、恐竜へ……」

大潮「やがて恐竜は絶滅して、今度は哺乳類の誕生。そこからゾウへと進化する」

朝潮「……ん?」

大潮「ゾウはなんやかんやでおサルさんになって、二足歩行を初めて人間へ。食べ物が豊富になり、人間は食に命を燃やす。

   その結果、人間はさらに進化し、最終的にはお相撲さんになる」

朝潮「途中まではすごく良かったのに、終盤へ行くにつれて何だかおかしいような……」

霰「だいたい大潮のせい」

大潮「えぇー、人間の究極体はお相撲さんだって、言ったの霰じゃんかー」

霰「まさか生態系の一部として組み込むとは思わなった」

朝潮「あはは……じゃあ二人とも、私は次の所へ行くから、仲良く頑張って」

大潮「はーい!」

霰「行ってらっしゃい、朝潮」

12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 22:15:35.41

   パシャ パシャパシャ



満潮「ちょ、撮らないでよ!」

荒潮「あらー、別にいいじゃないこれくらい?」

朝潮「二人は何をしているの?」

満潮「衣装のデザインよ。衣装も一から手作りしないといけないから、今日中にはなんとか終わらせたいんだけど……」

朝潮「難航してるの? アイデアが出ないとか……?」

荒潮「逆よぉ。アイデアはたくさん出るのに、満潮ちゃんがイヤイヤってダダこねるもの」

満潮「仕方ないでしょ! ほらこれ見てよ朝潮!

   こんなフリフリで色も派手でスカート丈の短いメイド服、着られるワケないでしょ!?」

朝潮「こ、これは……」

荒潮「メイド服を着てみたいって言ったの、満潮ちゃんじゃない?」

満潮「イメージと違うのよ! 私が想像してたのは、もっとロングスカートで、

   白と黒を基調とした清楚で気品のある……

   でも、その中にちょっとした可愛らしさが含まれるような、もっと大人っぽい……―――」

荒潮「あらあら、満潮ちゃんったら~」

満潮「いちいちそういう反応するのやめて!///////」

荒潮「私のデザインってそんなに変かしら? これに動物要素を足して、耳と尻尾のアクセサリをつけようと思うんだけど?」

満潮「あんたのそれは、そういうお店の衣装にしか見えないのよ! 朝潮も何とか言ってやって!!」

朝潮「それ…………可愛いかもしれないわ」

満潮「ほら見なさい荒潮。うちの旗艦が嫌だって言うんだから、そのデザインは廃止…………って、えぇえええええっ!?」

荒潮「ねー? 朝潮も可愛いと思うでしょ?」

朝潮「たしかに派手で着るのは勇気がいるかもしれないけれど、女子として……興味がなくはないわ……!」

満潮「ちょっ、正気なの朝潮! あんたらしくないわ、冷静になって! これを着た自分の姿を想像してごらんなさいよ!」

朝潮「これを着た満潮…………可愛いわ」

満潮「なんで私に着せてんのよ!!」

荒潮「ならこれで決定ねぇ~」

満潮「だめ! 断固反対! 絶対に阻止!!」

荒潮「もう、頑固ねぇ」

朝潮「じゃあこういうのはどう? メイド服6着のうち、1着だけフリフリの可愛いメイド服ということで」

満潮「その1着は誰が着るのよ……」

朝潮「当日のクジ引きで決めましょう」

荒潮「自分は着たくないけど他の人が着ているところは見たいし、公平でいいかもしれないわねぇ」

満潮「やっぱり荒潮も、自分は着たくないんじゃない……」

荒潮「ふふっ、どうかしら?」

満潮「はあ……分かったわよ。そういうことなら……それでも」

荒潮「あら、腕がなるわぁ」

朝潮「これは楽しみね。……じゃあ私は、そろそろ次に行くから、期待しているわ」

満潮「はいはいどうも、朝潮も頑張って」

荒潮「またねぇ朝潮ー」

13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 22:25:33.90


    パシャパシャ パシャパシャ


霞「うーん……」

朝潮「何か良いアイデア、浮かんだ?」

霞「検討中よ」

朝潮「ごめんなさい。私と霞がカレー担当なのに、霞一人に任せてしまって」

霞「別に気にしなくていいわよ。朝潮も秘書艦の仕事でアッチコッチ動いて忙しいでしょ?

  こっちは考えるだけだし…………まぁ、全然良いアイデアは浮かばないんだけど」

朝潮「動物カレー喫茶のメニュー……ひとことでカレーと言っても、色々あるものねぇ」

霞「そうよね。何というかこう、鎮守府に遊びに来たからこそ、食べることができたカレーみたいなのが欲しいわよね」

朝潮「例年通りであれば、たくさんのお客さんが来ることが予想されるし……メニューが多すぎるのも問題ね」

霞「他に飲食系の出店はたくさんあるから、量は少なめで低価格、メニューはひとつに絞っておくのが最善だわ」

朝潮「さらに他のカレー店との差別化を図るための施策が必要ね……」

霞「何かインパクトのある施策……風船で作った魚雷で、店員(大潮)を自由に雷撃して良い、とか?」

朝潮「それは去年の失敗例だから……」

霞「冗談よ」

朝潮「それに、食事中や待ち時間の暇つぶしに関しては、大潮と霰の展示物があるからいいとして。

   何か特別なカレーを作ったりとかは?」

霞「特別なカレーねぇ。そうなるとまさにアイデア勝負ね。悔しいけど、味では前回優勝の妙高さん達には敵わないわ」

朝潮「羽黒さんからの情報によると、向こうは今年もカレーで勝負するみたいだし」

霞「ちゃっかり羽黒さんをスパイみたいに使ってるのはさすがだわ……」

朝潮「もっとこう、『最強の駆逐隊、朝潮型駆逐隊が作るカレーを食べた!』っていうのが形に残るといいわよね」

霞「なるほど……。自分で言うのもなんだけど、私たちって鎮守府の外でも割と名は知れてるものね」

朝潮「カレーを食べた証……軍事的に言い換えれば、勲章?」

霞「勲章って言っても色々あるじゃない。それに大そうなものは作れないし」

朝潮「じゃあ……写真とか?」

霞「写真?」

朝潮「朝潮型駆逐隊の集合写真。これなら、私たちが作ったカレーを食べたっていう証にならない?」

霞「うっ……それは確かにそうだけど、それって私たちの写真が世にばらまかれるってことにならない?」

朝潮「あっ……それはちょっと、恥ずかしいかも……」

霞「まぁでも、それもひとつの有力な案なのは間違いないわ。写真のことについては色々許可がいるかもしれないから、

  暇なときにクズ司令官に聞いておいて」

朝潮「分かったわ」

霞「さて……あとは肝心のカレーね」

14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 22:31:53.47





        ~ 数日後 司令室 ~



提督「なるほど、朝潮たちは今年はカレーで攻めるのか……。これは私も、食べないわけにはいかないな」

朝潮「ありがとうございます! もしカレーが完成したら、司令官には一番に召し上がっていただきます!」

提督「おぉ、それは楽しみだ」

朝潮「ご期待ください!」

提督「ところで皆の様子はどうだ? 仲良くやれてるか?」

朝潮「はい。 ……あぁー、多少の言い合いはありますが、上手くやっています。

   今年も皆、七夕まつりに向けていつも以上に頑張っています!」

提督「そうか……今年は優勝できるといいな、朝潮」

朝潮「はい」

提督「それで朝潮、例の件なんだが――――――」

朝潮「し、司令官! 少しご質問が!!」

提督「お? どうした?」

朝潮「実は先ほどお話しした動物カレー喫茶の件で、

   来店して頂いたお客さんに手作りの勲章をプレゼントしようと思うのですが……」

提督「ふむ。それで?」

朝潮「その勲章を、私たち朝潮型駆逐隊の写真にしようと思うのですが、いかがでしょうか?」

15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 22:40:16.08

提督「…………朝潮たちの……写真……生写真……」

朝潮「いえ、印刷のつもりですが」

提督「朝潮たちの……生着替え写真……」

朝潮「いえ、着替え終えた後の写真なんですが……」

提督「素晴らしいじゃないか! カメラマンは私に任せてくれ!!」

朝潮「本当ですか!? 良かった……こういうのって、鎮守府の外へ持ちだしてはいけないものだとばかり……」

提督「そ、そうか……! 皆の写真をお客さんに配るっていうことは……

   私の愛しい朝潮型が、衆目にさらされると言うことになるのでは!?」

朝潮「え……?」

提督「くっ……だがしかし、可愛い我が子を世間様に知ってもらう娘自慢的な気持ちもある……!!」

朝潮「あの……もしもし、司令官?」

提督「くっ……どうする…………!!」クシャクシャクシャ

朝潮「…………」

提督「…………ふぅ」キリッ

朝潮「司令官? 結局のところ、写真のプレゼントは……」

提督「許可しよう」

朝潮「本当ですか!」

提督「なにも艦娘の写真が外部へ流出することは、なんら問題ではない。

   君たちは遠洋で戦闘を行っている身……鎮守府がどんな施設で、艦娘が何なのか、本当に戦争をしているのか、

   それすらも知らずに不信感を抱いている国民も多い。だからむしろ、こうやって皆のことを知ってもらえるのは、良い機会だろう」

朝潮「ありがとうございます司令官! それ以前の司令官の葛藤は、聞かなかったことにします!」

提督「ただひとつ、条件がある」

朝潮「条件、ですか? 何でしょうか?」

提督「その写真を二枚……いや、三枚! 撮り終えたら私に、譲ってくれないか?」

朝潮「あ、はい……」

16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 22:44:57.39








         ~ 鎮守府調理室 試作カレー作り ~



朝潮「エプロンよし! 三角巾よし! 食材、調味料、調理道具よし!」ジャジャーン!

霞「今日この調理室に集まってもらった理由は他でもないわ。メニューとして出すカレーを、どういうものにするか……。

  皆がそれぞれカレーを作って、その中で一番良かったものを採用することにしたわ」

朝潮「皆それぞれ自分の担当があって忙しいのに、カレー担当に付き合ってくれてありがとう」

荒潮「あら、全然いいのに」

満潮「ちまちました作業ばっかりで、ちょうど気が狂いそうだったところよ」

霰「こっちの作業はだいたい終わりそうだし……大丈夫」

大潮「私たち、カレー大好きだし!」

霞「そりゃどうも。で、とりあえずカレーのコンセプトだけ私と朝潮で考えたから、一応伝えとくわね。

  私たちが目指すカレーは……ずばり、朝潮型駆逐隊のカレー」

荒潮「えぇっと……つまり、どういうことかしら?」

朝潮「極端な言い方をすれば、私たちにしか作れないカレー。私たちらしさをふんだんに盛り込んで、

   お客さんから『楽しかった』と言ってもらえるような、そんなカレーが理想よ」

霰「わたしたちらしい……カレー……」

大潮「なるほどー! つまり私たちが、何かとんでもないカレーを作ればいいってことだね!!」

満潮「大潮に任せたら、不安しか残らなさそうね……」

17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 22:50:31.15



          ~ 数時間後 ~




朝潮「さて、それじゃあ皆、カレーは完成したわね?」

霞「まずは右から順に、えーっと満潮のカレーから皆で試食しましょ」

満潮「いきなり私? まぁいいわ。あまりの美味しさに腰を抜かすといいわ」

朝潮「それは期待できそうね。どれどれ満潮のカレーは……」

霰「……辛そう」

荒潮「カレーって、こんなに赤い食べ物だったかしらぁ?」

大潮「まぁでも、満潮の正確にマッチした辛さだと思えば…………はむっ、もぐもぐ、これは……!!」

霞「何このカレー…………滅茶苦茶、甘い」モグモグ

朝潮「本当だわ……こんなに赤くて辛そうなのに、すごく甘口で食べやすいわ」

荒潮「味も申し分ないわねぇ」

霰「おいしい……」

大潮「満潮なのに甘くて優しい味。これいかに……!!」カッ!

満潮「どういう意味よ大潮、もういっぺん言ってみなさい」

荒潮「私はこのカレー好きよ。満潮ちゃんの性格にもぴったりだと思うわ」

朝潮「そうね。辛そうに見えて実は優しい甘口っていうところが、とても満潮らしさを表しているわ」

霞「そこまで計算して作るとは……さすがね満潮」モグモグ

満潮「ち、違うわよっ!!」

18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 22:55:21.56

朝潮「さぁ、じゃあドンドン行きましょう。次は霰ね」

霰「どうぞ……名付けて、ちゃんこカレー」グツグツ

大潮「お、おいしそう……」ジュルリ

荒潮「通常のカレーとは一風変わった、豚肉と水餃子、白菜、もやし、キノコ等を使ったカレーね」

朝潮「土鍋に入ったそれは、もはや一目ではカレーと認識されない変わりよう……」

霞「もぐもぐ…………美味いわね。だし汁がしっかり肉や野菜、そして白米と絡み合っているわ」

満潮「どちらかというと雑炊っぽいから、するする口に入って、胃の中に馴染んでいくこの食感……」

霰「これが……相撲界を極めし艦娘の、至高の一品……」

荒潮「……でもこれ、カレーというよりちゃんこ鍋よねぇ」

霞「カレー風味ちゃんこの中に、お米を入れてるだけよね」

霰「途中から、そんな気がしてた」

満潮「いやいや最初に気づきなさいよ……」

荒潮「まぁ、型にとらわれないところが、霰ちゃんらしいといえばらしいわねぇ」

19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 23:00:43.19

朝潮「じゃ、じゃあ次は、大潮のカレーを……」

大潮「大潮のカレーは…………これ!」ドーーーン!

荒潮「……あら? なんかトンデモナイ物体が飛び出すかと思ったら、案外普通のカレーねぇ」

霞「しかも見たところカレーだけで、肝心のライスが見つからないんだけど」

大潮「ふっふっふー、霞殿、良き所にお気づきになりましたのぉ」

霞「え、何よ気持ち悪い」

大潮「大潮カレーの特徴はコレ! テレレテッテレー! お~せ~ん~べ~い~!」

満潮「まさか……それにカレーをつけて食べるっていうんじゃ……」

大潮「その通り! おいしい!」バリバリ

荒潮「まぁ、たしかに悪い組み合わせではないわよね? お煎餅も原料はお米だし」

大潮「え、そうなの?」

霞「知らずに作っていたとは……」

朝潮「うん……バリバリ……でも、実際おいしいわ。おやつ感覚で簡単に食べられる」

霰「色んなおせんべいがあるから……色々と組み合わせを試してみるのもいいかも……」

大潮「大潮のお勧めはズバリ! カレーせんべい!」

満潮「カレー味のおせんべいに、さらにカレーを浸すってことよね……」

大潮「カレーとカレーの組み合わせ! 単純計算で美味しさは二倍になる!」

霞「単純すぎでしょ」

霰「その単純なところが……まさに大潮のカレー……」

20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 23:07:31.73

朝潮「では次のカレーに。 次は……荒潮のカレーね」

荒潮「私のカレーはこれよ。どうぞ、召し上がれ」ニコッ

霞「見たところ、特におかしな所もないごく普通のカレーだけど……」

満潮「そうね……霰、あんた一番に食べなさいよ」

霰「一番は……朝潮に譲る……」

朝潮「私? いや、私より大潮の方が……」

大潮「え、本当? それじゃ遠慮なく、いっただっきまーす!! はむっ」

荒潮「うふふ」ニコニコ

霞「あ、これヤバイ笑顔だ」

大潮「………………んごぉ」プルプルプルプル

朝潮「お、大潮……大丈夫?」

霰「突然、震え出した……」

満潮「荒潮……やっぱり普通で済むはずがないとは思ってたけど……何を入れたのよ」

荒潮「あら~? 別に特別おかしなものは入れてないわよ。ただちょ~っと、スパイスが多めなだけよ。うふっ」

大潮「うわああああああああ辛い! 辛い辛い辛い辛い辛い!! 熱い熱い熱い熱い!!」

朝潮「大潮、お水!」

大潮「ゴクゴクゴク……ぷはぁ……うべぇ……舌が痛いよぉ……」

霞「とんでもない劇薬だったみたいね」

大潮「まさかこんなに辛いなんて……でも、味はすごく美味しい」

霰「はむっ……もぐもぐ……うん、注意しながら少しずつ食べれば、大丈夫みたい」ダラダラダラ

霞「発汗量が全然大丈夫そうに見えないんだけど霰……」

満潮「それだけ辛いとなると……悪いけど私はちょっと……」

荒潮「ごめんなさい。私、辛党だから。満潮ちゃんとは正反対のカレーができちゃったわねぇ」

満潮「普通そうに見えて狂気に満ちた……これぞまさしく、荒潮らしいカレーね……」

21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 23:12:23.02

朝潮「じゃ、じゃあ次は霞のカレーを」

霞「はい、どうぞ。私のカレーはこれ。体の栄養バランスを考えた、特製夏野菜カレーよ」

大潮「具がごろごろ入ってておいしそう!」

霰「健康にも配慮されていて、女性やお年寄りにも人気が出そう……」

荒潮「それじゃあ、さっそく頂こうかしらぁ」


一同「…………」モグモグモグモグモグモグ


霞「ど、どうよ?」

一同「………………」モグモグ……モグ……モ……

大潮「霞……これ、まずい」

満潮「驚いたわ……まさかカレーをここまで不味く調理できるなんて……」

霰「なんか違う意味で汗が出る味わい……」

霞「くっ……わ、悪かったわね! 言っとくけど、今回はたまたま失敗しただけなんだから!」

朝潮「そ、そうよね霞! 失敗は誰にだってあるわ!」

荒潮「うんうん、このカレーだって、きちんと食べ物として機能しているわぁ」

満潮「荒潮、それフォローになってないから……」

霞「いいわよ、どうせ私は料理下手よ。カレーすらまともに作れない私が、さぞかし可笑しいでしょうね」ブツブツ

霰「霞が拗ねてる……」

朝潮「健康を考える霞の優しさと、ちょっとした不器用さが霞を表現しているということで……」

22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 23:15:35.28

大潮「ねぇねぇ、朝潮のカレーはー?」

荒潮「朝潮のカレー、楽しみだわぁ」

朝潮「あ、えぇ……私のは、これよ。面白いお皿があったから、使ってみたの」

霰「なんかオシャレ……」

朝潮「分割カレープレートって言うのかしら? 中央に白米を置いて、その周りのくぼみに色んなカレーを入れてみたわ」

満潮「へぇ……こんなのあったんだ。これで一度に五種類のカレーが楽しめるってわけね」

朝潮「私の主観だけど、五種類のカレーは、それぞれ朝潮型駆逐隊をイメージして作ってみたの」

霞「すごいわねこれ……グリーンカレー?」

朝潮「それは霞をイメージして作ったのよ。

   ココナッツミルクの量を抑えて、お肉も豚肉を使用することで、辛くてもカロリーの低い、体に優しいカレーにしてみたわ」

霞「なるほど……たしかに、私のやろうとしていた夏野菜カレーと同じようなものよね……普通に美味しいし」

大潮「へぇー! じゃあじゃあ! 大潮のカレーはどれ?」

朝潮「大潮のカレーはこれ。大潮の元気印を表すように、具材は大きめにカットして、食べやすい程度の辛さにしてみたわ。

   あと挑戦だけど、一応細かく砕いたお煎餅を振りかけてみたんだけど、どう?」

大潮「美味しい! おせんべいのシャキシャキ感が食べてるうちにふやけてきて、

   何だか後乗せサクサクな天ぷらそばを食べてる気分!」

満潮「何なのその感想……。 それで、私のは?」

23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 23:19:06.48

朝潮「満潮は辛いのがダメだって知っていたから、思い切って果物を入れて甘くしてみたわ。どうぞ、食べてみて」

満潮「どこでそんな情報仕入れてきたのよ……。まぁいいわ、はむっ……あっ、甘い、それに美味しい。この味は……桃?」

朝潮「正解。すり潰した桃を混ぜ込んで、口当たりまろやかなカレーにしてみたわ」

荒潮「じゃあ私は、こっちの辛そうなカレーかしら?」

朝潮「えぇ。あまり辛すぎるのは人を選ぶから抑えてはあるけれど、この中では一番スパイスを利かせてあるわ」

荒潮「あら嬉しい。……うん、良い辛さじゃない」

霰「なら……これが私のカレー? なんだかカレーっぽくないけど」

朝潮「ミルクカレーよ。物静かに見えて実は型破りなところのある霰らしいと思って。

   ミルクベースだけど意外と辛めで、具材はきのこやカリフラワーみたいな、白で統一してみたわ」

霰「おいしい……朝潮、すごい……」

朝潮「ありがとう。それじゃあ、この中から出品するカレーを決めたいのだけど……」

満潮「そんなことする必要ある?」

朝潮「え?」

荒潮「うふふっ、聞くまでもないわ。優勝は朝潮よ」

霞「そうね、まさかここまで凄いものを、しかもこれほど私たちのことを想って作った、なんて言われたらね」

朝潮「え……いいの?」

霰「いいのも何も、一番を狙うなら、朝潮のカレー以外に考えられない」

満潮「それにしてもこのカレーの種類……実は結構勉強したんじゃないの?」

朝潮「あ、うん……どうやったら皆のことを表現できるかなって思って……」

霞「ホント、なんか今回の朝潮の気合の入り方はすごいわね」

大潮「……あれ? でも待って? このカレーって五種類のカレーだよね? 朝潮成分はどこにあるの?」

朝潮「お皿がこれしかなかったから、私のはいいかなって」

荒潮「うふふ、そういう所も朝潮らしいといえば朝潮らしいけど」

満潮「まぁ差し詰め、皆の中心にいる白米こそが、朝潮を象徴してるってことで、いいんじゃないの?」

霰「満潮…………すごくうまいこと言った。ゾウのダジャレを言った人とは思えない」

満潮「いちいちほじくり返すな!」

24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 23:24:29.87




        ~ 数分後 ~



霞「ふぅ……さすがにあの量のカレーを……一気に食べるのはマズかったわ……いや、美味しいんだけど」

大潮「霞のカレーを除いて」

霞「うるさい。いいでしょ、全部食べ切ったんだから」

荒潮「でもやっぱり、朝潮のカレーが一番だったわねぇ」

霰「七夕まつりの優勝……見えてきたかも」

満潮「そういえば優勝したら豪華賞品が貰えるって話だったけど、去年は何だったっけ?」

朝潮「豪華賞品は、たいてい間宮さんのアイス券、一か月分よ」

大潮「どうせなら一年分がいいなぁ」

霰「お腹壊しそう」

朝潮「それと、『願いが叶いやすい短冊』っていうのを一枚、貰えるみたい」

荒潮「願いが叶いやすい短冊?」

朝潮「その短冊に書かれた願い事は、なんでも願いが叶いやすいっていう噂だけど、私も詳しくは知らないわ」

霞「まぁ、大方の予想はつくわ」

霰「霞……なにか知ってるの?」

霞「その短冊はあとで吊るすんでしょ? それをどこぞのクズ司令官が見て、実現可能であれば叶えてくれるっていうことよ」

大潮「それじゃあ! 一生分のおせんべいを下さい! って書けば……!!」

満潮「願いの規模が小さければ小さいほど叶いやすいってことでしょ。せめて一年分とかにしときなさいよ」

荒潮「それに短冊はひとつなんだから、皆が喜ぶお願いをしなきゃよねぇ」

大潮「皆が喜ぶ……じゃあ、おせんべい六年分?」

霞「まず煎餅から離れなさいよ」

25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 23:28:39.88

満潮「たとえばほら、七夕まつりの後に、六人揃って長めの休暇をください、とか?」

朝潮( 七夕まつりの……あと…… )

荒潮「いいわねぇそれ。たまには皆で、鎮守府の外へお出かけしたいわ」

霰「私……遊園地に行きたい」

満潮「ふっ、子供ねぇ霰は」

大潮「じゃあ満潮は置いて五人で行こう!」

満潮「べ、別に行きたくないなんて言ってないわよ!」

霞「まぁ遊園地もいいけど、他にも行きたい所がたくさんあるわ。朝潮はどこか行きたい所とか、ある?」

朝潮「…………」

霞「朝潮? 聞いてる?」

朝潮「え、あ、ごめん。 なんの話だっけ!」

大潮「さては朝潮、お腹いっぱい食べて眠いんでしょー?」

朝潮「あはは……そうかもしれないわね」

霰「それで朝潮は、七夕まつりのあと、皆でどこか行きたい所とかある?」

朝潮「皆で行きたい所……」

満潮「捕らぬ狸の皮算用ってやつだけど、希望だけは出しておいて損はないわよね」

荒潮「やっぱり一番頑張っているのは朝潮だもの。朝潮の行きたい所に行きたいわ」

朝潮「そうだなあ……私は……」

霰「うんうん……」



朝潮「皆と一緒なら、どこでもいいかな」



大潮「じゃあ、おせんべい工場に行こう!」

満潮「一人で行って、どうぞ」

霞( 朝潮…………アンタ何か、隠してるわね…… )

26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 23:34:09.28








           ~ その夜 司令室 ~



提督「ふむふむ、これがお客さんに配る写真か」

朝潮「はい。今日皆でそれぞれカレーを試作して食べてみたので、そのあとに集合写真を撮りました」

提督「ふふっ、艦娘らしさを感じさせない、仲の良い女の子の集合写真だな」

朝潮「あ……すみません。これではダメでしょうか?」

提督「いいや、これ以上の写真は無いさ。みんな笑顔で、見てるこっちまで楽しくなるようだ。

   よし、では改めて、この写真を勲章としてお客さんに配ることを許可しよう」

朝潮「ありがとうございます、司令官! それでその、これが私たちのカレーなんですが……」

提督「おお、本当に持ってきてくれたのか! ちょうど小腹が空いていたところだ」

朝潮「司令官に一番に食べてもらう約束でしたから」

提督「では頂きます。 はむっ……うん、美味しいぞ朝潮」

朝潮「お口に合ったようで、何よりです!」

提督「…………」モグモグ

朝潮「あの司令官……」

提督「……寂しいか?」

朝潮「……はい」

提督「例の件のこと、まだ皆には言ってないんだろ?」

朝潮「はい……その、言おう言おうとは思っているのですが……」

提督「長引けば長引くほど辛くなるぞ。それに、何かの拍子で誰かの耳に入ったら……」

朝潮「……分かっています。七月八日付けでの、中央鎮守府への転属のこと……必ずや私自身の口で……―――」


       ガタン!


提督「誰だ!」

朝潮「扉の前!? しまった……待って!!」


      タッタッタッタッタ……


朝潮「追いかけます!!」

27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 23:39:11.07



           ~ 駆逐艦寮 ~



朝潮( 取り逃がしてしまった……。どうしよう……私の口から言う前に、皆の耳に入ったら…… )トボトボトボ


    ガヤガヤガヤ


朝潮( あれ、部屋が妙に騒がしいような…… ) ガチャ

朝潮「みんな、何を騒いで――――」

霰「朝潮……」

霞「来たわね、朝潮」

朝潮「……え?」

大潮「あー! 朝潮!! 聞いてよ、酷いんだよ霞ってばー!」

朝潮「え、なに?」

大潮「だって突然、朝潮がいなくなっちゃうなんて言い出すんだよ! おかしいよね!?」

朝潮「あ…………」

大潮「霞ってば、自分のカレーが不味くて、朝潮のカレーがすごかったから、僻んでるんだよまったく!」

朝潮「…………」

荒潮「大潮ちゃん、やめなさい」

大潮「朝潮はいなくなったりしないよね! 嘘だよね! 私たちと、ずっと一緒にいるよね!!」

満潮「大潮、いい加減黙りなさい」

大潮「だって! 七夕まつりが終わったら皆で遊びに行くって約束したもん! 朝潮は嘘なんてつかないもん!!」

満潮「大潮ッ!!!」

大潮「うっ……だって……おかしいよ……そんなの…………うぅ……」

霞「朝潮、正直に答えて。七月八日付けで中央鎮守府に転属になるって、本当なの?」

朝潮「…………本当よ。司令室の前で話を聞いていたのは、霞だったのね……」

28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 23:41:54.28

霞「はあ……突然出し物を全員で決めようって言い出したり、カレー作りの気合いが一人だけ違っていたり、

  なんだか様子が変だと思っていたら……そういうことだったのね」

朝潮「えぇ……」

満潮「それはもう、決まったことなのよね」

朝潮「軍令部からの命令だから、変更は無いと司令官が……」

霰「いやだ……朝潮……行かないで」

朝潮「霰……」

荒潮「でも……中央鎮守府といえば軍令部のお膝元よね?

   泣きたくなるほど悲しいけれど……でもこれは、朝潮の優秀さと戦果が、軍令部に認められたということ。

   朝潮にとっては名誉なことだから……本当は、笑って送り出してあげるべきなのよね……」

霞「まぁ、普通に考えれば栄転よね。……でもね朝潮。私は正直な気持ち、お祝いとか寂しさとか、それ以前に腹が立っているの」

朝潮「……」

29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 23:44:29.32

霞「そんな……そんな大事なことなら……どうして……どうしてもっと早く! 言ってくれなかったのよ!!」

朝潮「霞……」

霞「私たちは仲間でしょ!? 姉妹でしょ!? 私たちが困った時にアンタを頼るように、なんでアンタは私たちを頼らないの!?

  一人で抱え込むのがカッコイイとでも思ってるの!? ふざけないで!!」

朝潮「私だって……私だって、何度も言おうとしたわよ!! でも……皆が楽しそうに準備しているのに……

   そんなこと、言えるわけないじゃない……」

霞「それは私たちを信用していない証拠よ! それを聞いて私たちが絶望して、七夕まつりどころじゃなくなるような、

  そんなヤワな連中だとでも思っているの!?」

朝潮「思ってない!! でも、言えなかったのよ!!

   こんなに苦しい気持ちは初めてなの…………。 霞に……霞に私の気持ちの、何が分かるって言うの……!?」

霞「全部分かるに決まってるじゃない!!」

朝潮「嘘よ…………」

霞「嘘じゃない! だって私たちは…………朝潮型駆逐隊だから」

30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 23:48:40.54

朝潮「…………」

霞「…………」

満潮「はいはいやめやめ、これ以上は不毛よ」

荒潮「私たちは朝潮型駆逐隊。お互いのことを分かり合っているのなら、もう言い争っても意味は無いじゃない」

霞「わ……悪かったわ……大きな声を出して」

朝潮「私の方こそ……」

霰「もうすぐ……七夕まつり。だから……最高の思い出を作りたい」

荒潮「霰ちゃんの言う通りね。今は私たちの残された時間を、大切にしていきましょう」

満潮「大潮も、いつまでもメソメソしてるんじゃないわよ」

大潮「な、泣いてなんかないし……。朝潮のことは絶対…………笑って送り出したいから……」

霞「そうね」

満潮「当然よ」

荒潮「えぇ」

霰「絶対に……泣かない」

朝潮「みんな…………ありがとう」

31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 23:52:30.91






        ~ 数日後 七夕まつり当日 ~




朝潮「いらっしゃいませ! 動物カレー喫茶へようこそ!!」

婦人客「おほほ、メイドさんのお洋服かしら? 猫の耳と尻尾も可愛らしいわねぇ」

朝潮「ありがとうございます! ちなみにこれは犬耳です!」

婦人客「あらそう? そう言われてみれば、ウチのペスにそっくりだわ、おっほっほ」

朝潮「あ、ありがとうございます……?」





大潮「がおー! ライオン型駆逐艦大潮です! ご注文は何になさいますか?」

男性客「えっと……何があるんですか?」

大潮「朝潮型駆逐隊カレーだけです!」

男性客「え……じゃあそれを……」

大潮「朝潮型駆逐隊カレーのオーダー入りましたぁあ!!」

霞「大声を出すな! それしかないんだから分かってるわよ!!」

32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/13(金) 23:56:56.38



男児客「ねぇねぇ、黒猫のお姉ちゃん、これ何ー?」

霰「これは、スティコラサウルス……という恐竜。大昔に絶滅して、もういない」

男児客「じゃあこれは?」

霰「これは、力士」

男児客「りきし?」

霰「今は分からなくても良い。 いずれ、君もなる」

母親客「なりません」







霞「ほら盛り付け完了よ。2番テーブルと5番テーブルにお願い」

荒潮「はぁい。じゃあ満潮ちゃんは5番テーブルにお願いね」

満潮「い、嫌よ!! こっ、こんな恥ずかしい格好で出られるわけないじゃない!!」

霞「冷めるから早く持って行きなさいよ、フリフリ白猫の満潮」

満潮「絶対ヤダ! こんな格好で出るなら、まだ全裸の方がマシよ!」

霞「大きく出たわねぇ……」

荒潮「公平なクジ引きの結果でしょう? 諦めて行くわよ満潮ちゃん」グイグイ

満潮「いやぁあああ!! 鬼! 悪魔! 鬼畜ウサギぃいいいい!!」ズルズル


33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 00:05:49.63

朝潮「霞、3番テーブルのお客さん、お会計よ!」

霞「分かったわ」

女性客A「あ、かわいい~。あなたは何の動物なの?」

霞「レッサーパンダです。お会計は合計で600円なります」

女性客B「へぇ~、触ってもいい? あ、もふもふ~。メイド服も可愛いよねぇ~」

霞「どうもありがとうございます。合計600円です」

女性客A「ねぇねぇあなたお名前は?」

女性客B「歳はいくつなの? あ、写真とってもいい!? 一緒に撮ろうよ~」

霞「……お会計は、合計で600円になります、お客様」ギロッ

女性客A「ひぃっ……あ、はい、どうぞ……」

女性客B「ご、ごちそうさまでした~」

霞「ありがとうございましたー」

霰「…………霞、お客さんを怖がらせちゃダメ」

霞「別に何もしてないわよ。突っ立ってただけ、レッサーパンダだってよくやるでしょ?」

霰「レッサーパンダのそれは、まさに威嚇だから……」

34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 00:08:21.61

女児客「お姉ちゃんきれーい」

満潮「ふ、ふん……どうも」

女児客「どうしてお姉ちゃんだけ、他のお姉ちゃんとお洋服が違うの?」

満潮「そ、それは……」

荒潮「それはね、このお姉ちゃんがとびきりキュートで可愛いからよ? あなたもそう思うでしょ?」

女児客「うん! ドーナツのお姉ちゃんかわいい!!」

満潮「ドーナツ……!?」イライライラ

荒潮「だめよ満潮ちゃん。相手は子供なんだから、抑えて抑えて」(小声)

満潮「ぐぬぬ……。あ、ありがとねー。あんたもドーナツでも食べて、可愛くなりなさいよー」

女児「うん! ところでお姉ちゃん、さっきから後ろですごいパシャパシャされてるよ?」

満潮「え?」クルッ


    パシャッ  パシャッ パシャッ


満潮「お客さま、店内での写真撮影は禁止されており……―――――」

提督「大丈夫だ。私は客ではない。通りすがりのローアングラーだ」グッb

満潮「あんた……何してんのよ……」

提督「満潮が非常に可愛いミニスカのメイド服+猫耳尻尾を身に着けると聞いてな」

満潮「死ぬ前に言い残すことは?」

提督「正直……鼻血が出るかと思った……」



     ドゴッ バコッ ボキボキッ メリメリッ



荒潮「鼻血どころじゃなくなったわねぇ」

35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 00:12:48.24

朝潮「し、司令官! なぜこんな酷い状態に……」

提督「いいんだ……これは満潮から私へのご褒美で……」

朝潮「何を言っているのか分かりませんが、とりあえず席に座ってください! 今すぐカレーをお持ちします!」

霞「ちょっと朝潮、カレーを万能薬みたいに使わないでよ」

朝潮「どうぞ司令官! 冷めないうちに!」

提督「ありがとう……うっ、だめだー! 手に力が入らない……これはもう……朝潮に食べさせてもらうしか……」

朝潮「え……!? わ、分かりました! この朝潮、司令官のためなら、全力でご奉仕させて頂きます!」ワンワン

提督「よしきた。じゃあまずは口直しのお水を」ゴクゴク

霰「ふつうに手、使ってる……」

朝潮「で、では司令官……あ、あーん……」

提督「あーん……はむ、もぐもぐ……」

朝潮「いかがでしょうか……?」

提督「メイド服で犬耳の朝潮に食べさせてもらうカレー……私は幸せだ……」ポロポロ

朝潮「泣くほど美味しいなんて……ありがとうございます!」

大潮「あれー? さっき大潮が落っことして、捨てようと思ったゴハン、どっか行っちゃったよー?」

霞「あぁ、それなら今、ゴミクズが食べてるところよ」

提督「ぶーっ!!」

36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 00:17:27.87






         ~ 七夕まつり 後夜祭 キャンプファイヤー ~




大潮「はぁーーーー! 終わったぁああーーーーー!!」

霞「結構大変だったけど、終わってみるとあっという間よねぇ」

霰「疲れた……」

荒潮「皆頑張ったものねぇ、特に満潮は……うふふっ」

満潮「深海棲艦と戦ってる方が、まだ楽だったわよホント……」

朝潮「でも満潮、段々と慣れていって最後の方にはイキイキしていたわね」

満潮「あ、あれは……忙しくなって、それどころじゃなくなっただけよ!! なぜか司令官も乱入してきたし……」

大潮「でも良かった! 朝潮型駆逐隊、妙高さん達を抑えて堂々の一位だよ!!」

霰「がんばった甲斐があった……」

荒潮「豪華景品は今回も間宮さんのアイス券と、例の短冊だったわねぇ」

大潮「でもこうして見ると、一か月分のアイス券って、結構多いよね! 私たち“六人”で使い切れるかな?」

霞「…………」

朝潮「そうね……。じゃあ、今までお世話になった人にプレゼントするっていうのはどう?」

荒潮「あら? じゃあ司令官に一枚?」

霞「なんであのクズにあげなきゃいけないのよ」

大潮「えぇー? だって霞、司令官には散々お世話になったじゃーん。第二改装の時とか」

霞「あ、あれは別に違うわよ!」

満潮「違わないでしょ。落ち込んでた霞を司令官が元気づけてくれて、最後は愛の告白みたいになったって聞いたわよ」

霞「なってない!!」

満潮「あーあぁー、あの場に居なかったのが残念ねぇー」

霞「とにかく! あのクズにはアイス券なんて必要なし! そもそもクズ司令官からのプレゼントなんだから!」

37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 00:20:19.36

霰「……じゃあ、那珂ちゃんに一枚」

荒潮「うふふ、那珂ちゃんの場合はむしろ、一枚貰いたいくらいよねぇ」

満潮「あー、ホントよねー。あの時は夢中になってて何とも思わなかったけど、私たち、出撃もせずにCDの販売なんかしてたわね」

朝潮「でも、あの時の霰には驚いたわ。まさか霰があそこまで那珂ちゃんに対して本気になるとは思わなくて」

霞「今は相撲に対して本気だけどね」

霰「今でも一応、那珂ちゃんのファンだから……」

大潮「でも、なんだかんだ言って楽しかったけどなー。皆で作戦立てて、準備して、色々ピンチがあったけど乗り越えて!」

荒潮「那珂ちゃんのライブは盛り上がったわよねぇ」

霞「あの発電機はもう懲り懲りだけどね……」

朝潮「あはは……確かに、司令官がまさかあんなものを持ってくるなんて思わなかったわ」

満潮「私は個人的に、ステージでの大潮の肝っ玉のデカさに驚いたんだけど……」

38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 00:25:10.35

朝潮「そんなこともあったわねぇ。羽黒さんと行った山の探索でも、大潮はスゴかったわ」

大潮「いやぁ~、それほどでも~」

霰「あの時は……朝潮がポンコツになったり、行方不明になったり、色々大変だった……」

朝潮「め、面目ないわ……」

荒潮「まぁでも、あの時は本気で怖かったものねぇ」

満潮「結局あの照明弾の謎も良く分かってないし……」

霞「あの一件で大潮も少しは良い顔するようになったと思ったけど、朝潮が旗艦に復帰してからはいつものちゃらんぽらんに戻ったわね」

大潮「何をー、失敬なー! あの後の北方での潜水艦狩りでは、大潮大活躍だったでしょー!?」

満潮「あーはいはい、私が置いてけぼりくらったヤツね」

荒潮「あらあら、別に好きで満潮ちゃんを置いて行ったわけじゃないのよ?」

満潮「知ってるわよそれくらい。でもそのせいで、あんな新米三バカの嚮導にさせられるなんて思ってもみなかったわ……」

朝潮「皐月と長月と文月ね。三人とも満潮のこと、すごく慕っていたわ」

霰「満潮先生……ぷふっ」

満潮「冗談じゃないわ。おかげで私たち四人で観艦式に出ることになるし、

   式の最中に深海棲艦が出るしで最悪だったんだから」グイグイ

霰「あうあう」

霞「ま、そう言いつつも、あの子たちから貰った手作りの勲章、大事そうに飾ってるわよね」

大潮「それを見て時々にやっとしてるしねー」

満潮「してない」グリグリグリ

大潮「痛い痛い痛い痛い! なんで私だけー!」

39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 00:27:48.67

朝潮「ふふっ、でもあの子たちを見ていると、私たちが出会った頃のことを思い出すわよね」

荒潮「最初の着任は私だったけれど、その時は駆逐艦が私しかいなくて大変だったのよねぇ」

満潮「私的に一番印象深かったのは、霰ね」

霰「……なんで?」

荒潮「霰ちゃんはあの頃、本当に何を考えてるのか分からない子だったから」

霞「いや、まぁ今でもたまに分からなくなるけど……」

朝潮「初めての大喧嘩もその頃よね。今でも鮮明に覚えてるわ。大潮と満潮がすごい剣幕で言い争って」

荒潮「霞ちゃんと霰ちゃんなんかは、拳と拳の殴り合いだったわ」

満潮「朝潮はびーびー泣いてて、荒潮は心ここにあらずだったわね」

大潮「あの時も色々あったけど、一番変わったのは荒潮だよねー?」

霰「遠征任務が終わった辺りから、急に陸奥さんみたいな喋り方になってた」

荒潮「陸奥さんは私の憧れの艦娘だもの。最初は単なる真似事だったけれど、今ではこれが普通になっちゃったわ」

満潮「変わったのは喋り方だけじゃないと思うけど……」

朝潮「ううん、変わったのは、みんな同じ。今まで色んなことがあって、その度に私たちは乗り越えてきた……」

大潮「うん、これからだってそうだよ! 皆で色んなことしようよ!」

霞「大潮……」

40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 00:31:30.01

大潮「やっぱり皆で司令官にお願いして休暇をもらおう! それで遊園地に行こう!」

満潮「…………」

大潮「あ、そうだ! 温泉とかも行きたいなぁ! 皆で旅館に泊まってさ、露天風呂に入って、お風呂上りには卓球して!」

朝潮「うん」

大潮「あとは街に出て買い物もしようよ! 私服なんて着る機会は滅多にないけど、

   せっかくだから色んな服を着よう! 大潮が皆の服を選ぶから!」

霰「…………うっ……うぅ……」

大潮「あと映画館やゲームセンターにも行きたい! あと……」

荒潮「大潮ちゃん……」

大潮「あと……あとは…………うぅ……あと……は……」

霞「ちょっと大潮……霰も、なに急に……泣いてんのよ……。泣かないって……約束じゃない……」

大潮「泣いてない……目に塩が入っただけ……」

霰「うぅ…………ひっく……」

荒潮「信じられないわね……。朝潮が明日には……この場所にはいないなんて……」

満潮「私たちももう……朝潮に甘えてばかりは……いられないのね」

朝潮「みんな……私……」

霞「朝潮は、ただ前だけ……見つめていればいいから」

朝潮「え?」

霞「私たちなら大丈夫。朝潮がいなくても……きっと上手くやっていける。

  私たちはアンタから…………もう、十分すぎるものを貰ったから……。これ以上は、貰えないわ」

朝潮「霞……」

荒潮「そうね……。ずっと朝潮と一緒だった私たちだもの」

満潮「だから朝潮……安心して、行ってきなさい」

朝潮「本当に? 皆こんなに……泣きそうな顔してるのに……?」

霞「それは……今だけよ。朝潮がいなくなったら、本当に私たち、大丈夫だから……」

朝潮「うん……」

霞「だから…………だから今だけは……少しだけ………………泣かせて……」

朝潮「今だけよ……」

荒潮「朝潮……」

満潮「朝……潮……ぐすっ……」

霞「う……うわぁああああああん!! 朝潮ぉおおおおおおおっ!!!」

大潮「朝潮ぉおおおおっ!! 行っちゃヤダぁあああああああっ!!」

霰「朝潮……行かないで……」

朝潮「ありがとう……荒潮、満潮、霞、大潮、霰…………本当に、ありがとう……」

41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 00:38:16.64






           ~ 翌朝 七月八日 鎮守府桟橋 ~




提督「朝潮はどうした?」

霞「お世話になった人に挨拶してから来るって」

提督「そうか……最後まで律儀だな」

大潮「朝潮はすごいよねぇ」

満潮「何よ今さら」

大潮「だってさ、朝潮は最後まで私たちの前で泣かなかったし、『行きたくない』とか『皆と一緒が良い』とか、

   そういう言葉は一切言わなかったなぁと思って」

霰「そういえばたしかに……」

荒潮「朝潮なりの決心……意志の強さの表れなのかもしれないわねぇ」

霞「私たちの前で……ううん、私たちがいなくても、そういう泣き言を言いたくなかったんでしょ。意志が鈍るから」

満潮「ほんと、最後まで旗艦の鑑よね」

霰「それなら今日……私、絶対に泣かない」

大潮「そうだよね……! 昨日散々泣いたから、今日こそは大丈夫!」

荒潮「ここで泣いて、朝潮の意志を鈍らせたくないものね」

満潮「そうね……最後の最後だからこそ、笑って送り出しましょう」

霞「……来たわ、朝潮よ」

42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 00:40:43.76

朝潮「お待たせしました、司令官」

提督「荷物はそれだけか?」

朝潮「はい、これだけです。もともと私物は少ないので」

提督「そうか……」

霞「忘れ物は……大丈夫?」

朝潮「えぇ、何度も確認したから、大丈夫よ」

霞「そう……」

提督「朝潮、そろそろ船が出発する時間だが最後に言いたいことはあるか?」

朝潮「はい……あの、何を言ったらいいか分からなくなりそうだったので、短いですが手紙を書いてきました」

提督「あぁ。構わない」

朝潮「まずは霰」

霰「うん……」

朝潮「霰へ。あなたは目立つことが苦手で、いつも誰かの陰に隠れてしまいがちです。

   ですが、火が付いた時のあなたの素敵な表情を、私は決して忘れません。

   だからこれからも、ずっとそんなあなたで……私の可愛い霰で、いてください。 朝潮より」

霰「朝潮……私……がんばるから……」

朝潮「えぇ。私はそんな霰が……大好きよ」

   チュッ

霰「………/////」

朝潮「ほっぺのキスは、大好きの証よ」

霰「ありがとう……」

43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 00:42:28.16

朝潮「次は満潮」

満潮「……」

朝潮「満潮へ。あなたは口調が強いせいで、周囲から苦手意識を持たれてしまいますね。

   ですが、本当にあなたのことを知っている私たちは知っています。

   それがあなたの照れ隠しで、寂しがり屋なところで、面倒見の良さであるということを……。

   これからも、満潮の温かい手を、色んな人に差し伸べてあげてください。 朝潮より」

満潮「て、照れ隠しなんかじゃ……」

朝潮「素直じゃない満潮も、私は大好き」

    チュッ

満潮「向こうでも……元気で……ありがとう、朝潮」



朝潮「次は大潮」

大潮「朝潮……」

朝潮「大潮へ。いつも元気なあなたの姿を見ていると、心が落ち着きます。

   元気すぎることが玉に瑕だけれど、朝潮型駆逐隊が明るいのは、あなたのおかげだと思います。

   これからは、二番艦だからと言ってあまり気負いすぎず、存分に姉妹のことを頼って、

   元気な大潮でい続けてください。朝潮より」

大潮「……うん! 皆のことは大潮に任せてよ! えっへへー」

朝潮「そうやって笑ってる大潮が……笑顔のあなたが、大好きよ」

     チュッ

大潮「えへへ、照れますなぁー」

44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 00:44:01.54

朝潮「次は荒潮よ」

荒潮「あら、私ね」

朝潮「荒潮へ。一歩引いた目線から全体を見てくれる荒潮がいてくれて、私は本当に助かりました。

   最初に出会った駆逐艦があなたで、本当に良かったです。

   荒潮は普段あまり本音を口にしないけれど、ふとした瞬間に、私たちだけに本音を言ってくれますね。

   これからもずっとあなたの信頼を、私やここにいる皆に、感じてさせてください。朝潮より」

荒潮「あら朝潮ったら、私を泣かせたいのかしら?」

朝潮「どんな心を持った荒潮でも……私は大好きよ」

    チュッ

荒潮「うふっ、私も大好きよ、朝潮」



朝潮「次は霞」

霞「えぇ」

朝潮「霞へ。あなたは朝潮型駆逐隊の中で、誰よりも厳しくて、誰よりも仲間想いですね。

   誰かの間違いを指摘するのは必要なことだけど、それは周囲から反感を買います。

   それでも霞が指摘してくれるから、朝潮型駆逐隊はここまで強くなれたし、絆も深まりました。

   いつまでもそんな、見習うべき霞の姿で、あり続けてください。朝潮より」

霞「そ、そんなんじゃないわよ……バカ……」

朝潮「私たちを叱ってくれる霞が……私は大好きよ」

     チュッ

霞「うぅ……////////」

45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 00:46:12.74

朝潮「最後に、司令官」

提督「わ、私もか!」

朝潮「司令官へ。司令官は時に優しく、時に厳しく……それと、たまにヘンだったりもするけれど、

   私たち一人ひとりを大事にしてくれているその背中を、ずっと司令室で見てきました。

   私がいなくなっても、きちんとお仕事、頑張ってくださいね。朝潮より」

提督「朝潮……」

朝潮「私は、いつも嬉しそうに頭を撫でてくれる司令官が、大好きです」

提督「うむ。私は頬じゃなくて、唇でいいぞ……ほら……」

朝潮「司令官には握手を」

提督「あ、うん……ですよね……」

朝潮「司令官の大きな手も、大好きです!」ギュッ

提督「あぁ……今まで本当に、ありがとう、朝潮」ギュッ



   ブォオオーーーーー!



霰「汽笛……」

朝潮「そろそろ、お別れの時間ね」

大潮「朝潮……これ」

朝潮「ん?」

満潮「大したものじゃないわ。朝潮が七夕まつりの準備中に撮影した写真よ。今朝現像できたの」

朝潮「あぁ忘れてたわ……ありがとう」

霞「いい? 見るなら船が出向してからよ!」

霰「できれば、鎮守府が見えなくなってからで……」

朝潮「うん。分かったわ」

荒潮「あと、鎮守府の皆から、花束よ。皆が一本ずつ選んだの」

朝潮「きれい……いい香りね……ありがとう……」

46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 00:48:09.49

提督「これでやるべきことは済んだな。あと……最後は…………」

朝潮「はい。お願いします、司令官」

提督「うむ。 コホン……」

一同「…………」

提督「それでは正式に……朝潮型駆逐艦、朝潮。貴艦に……中央鎮守府への転属を命ずる」

朝潮「はい」



提督「そして本日……現時刻をもって……朝潮型駆逐隊は…………―――――――――解隊とする」



大潮「………………」

霰「………………」

荒潮「………………」

満潮「………………」

霞「………………」


   コツコツコツ……


朝潮「みんな、お元気で。またどこかで、必ず会いましょう」



   ブォオオーーーーー!



提督「総員、敬礼!」

大潮「………………」ビシッ

霰「………………」ビシッ

荒潮「………………」ビシッ

満潮「………………」ビシッ

霞「………………」ビシッ



朝潮「…………みんな、さようなら」ビシッ

47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 00:50:40.51

―――――――

――――

――



霰「ふね……見えなくなった……」

満潮「大潮、いつまで敬礼してるつもり?」

大潮「…………うん」スッ

霞「はぁ……朝から、なんだか疲れたわ」

荒潮「えぇ……」

提督「朝潮はこれから……向こうでもきっと活躍する。さらに強くなるだろう」

満潮「当り前じゃない……」

霰「朝潮なら……絶対」

荒潮「えぇ……」

大潮「………………」

霞「…………」

提督「みんな、よく我慢したな」

霞「う…………うるさいのよ…………クズ…………」

48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 00:55:08.61




        ~ 移動中 船内 朝潮 ~




朝潮「最強の朝潮型駆逐隊も……今日で終わりなのね……」

朝潮( そうだ……七夕まつりの写真…… )ガサゴソ

朝潮「うわぁ……皆楽しそう……。ううん、楽しかった。 この写真を撮ったのは、全部私じゃないの………」

朝潮( あ……でも、ということはこの中に私が写っている写真は……無い?

   あはは……そっか、この写真を撮っている時点で、私はもしかしたら、あの鎮守府に存在していなかったのかも……なーんて )


     パラパラパラ…… ヒラリ……ポト


朝潮「写真が落ちて…………あっ……これって……動物カレー喫茶でお客さんに配った写真……。

   私ったらバカね…………いるじゃない……こんなに楽しそうに笑っている私と……皆が」

朝潮「あれ、裏に何か書いて…………」





             『 私たちはずっと、朝潮型駆逐隊! 』





朝潮「もう………………どうして…………。ようやく決心、ついたのに…………ずるいよ……」




朝潮「いや……行きたくない……行きたくないよ……。 ずっと皆と、あの鎮守府に……いさせてよ…………」


49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 00:56:45.23








             ~ 数日後 駆逐艦寮 会議室 ~



大潮「ねー、会議は? やらないの?」

霞「やってもいいけど、議題はどうするのよ」

大潮「……うーん、じゃあ今日の議題は、議題内容を考える、で」

満潮「何よその議題。まるで私たち……ふぁ~……暇人じゃない」

霰「実際……暇……」

荒潮「あ、じゃーあ、七夕まつりで貰った願いの叶いやすい短冊ってあるじゃない?

   あれに何て書くべきか、話し合ってみない?」

大潮「大潮たち皆が願っていること…………そんなの決まってる……」

霞「規模が小さければ小さいほど叶いやすいってこと、忘れないでよ」

満潮「はぁ、結局ささやかなお願いしか聞いてくれないってことね」

霰「今の司令官なら……そのささやかなお願いすら叶えてくれるか怪しい所……」

荒潮「あれ以来、司令官ったら目に見えて元気を失くしているものねぇ」

霞「ふん……あのクズ……見てらんないったら……」

50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 00:58:55.97

大潮「でもさー、悲しいのは分かるけど、そろそろ司令官に元気を取り戻してもらわないと、大潮たちも困るんだよねー」

満潮「私たちは解隊されて無所属のまま。おかげで任務には参加できず、こうして暇を持て余してるし……」

霰「いつもなら処分してるはずの笹も、出しっぱなしになってるし……」

荒潮「それじゃあこの短冊……なんて書こうかしら?」

満潮「どうせ私たち暇なんだし、休暇が欲しいとでも書いておいたら?」

霞「そうね。それならクズ司令官の判子ひとつで実現できそうだし。まぁ、何でもいいんだけど」

霰「異議なし」

大潮「じゃあ大潮が書くねー。えーっと……朝潮型駆逐隊で―――――」キュッキュッ

霞「大潮」

大潮「ん?」

荒潮「その部隊は、もう存在しないでしょ」

大潮「あっ……あ、あははは……そっかー! 少し書いちゃったけど、裏に書けば問題ないよねー!」

満潮「待って大潮」

大潮「なに?」

満潮「それ書く前に、もう一度司令官の所に行ってみない?」

霰「行って……どうするの?」

満潮「確認するだけよ。司令官が今、どれくらい腑抜けになっているのか」

51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 01:02:22.38







           ~ 司令室 ~




提督「おぉ皆。どうしたんだ? 揃いも揃って?」

霞「別に。アンタの様子を見に来ただけよ」

提督「あっはっは、ほんと心配性だなぁ」

霰「司令官……お仕事大変そう……」

荒潮「そろそろ秘書艦をつけた方が良いと思うのだけど……?」

提督「大丈夫。秘書艦ならもう決まっている」

満潮「え、誰!?」

大潮「もしかして秘書艦の経験がある、この大潮――――――」

提督「紹介しよう、この子だ」

こけし「」デデーン!


一同「………………は?」


提督「皆、仲良くしてやってくれよ」

霞「あ、アンタ……ちょっと、それ、本当に大丈夫なの?」

提督「失礼だぞ霞。彼女はとても有能だ」

霞「いや、クズ司令官の頭の話なんだけど……」

こけし「」

提督「ふふふ、しかもこの通り、礼儀正しい」

霰「司令官には……そのこけしの声が聞こえている…………?」

満潮「いやいやいや、ただ頭がおかしいだけでしょ」

52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 01:05:05.65

提督「大潮」

大潮「あ、はい!?」

こけし「」

提督「ホラこの通り、彼女はとても元気でお喋りなんだ。大潮と気が合いそうだと言っているぞ」

大潮「ははは……あぁー、どうも、よろしく……」

こけし「」

提督「はっはっは、今度部屋に遊びに行ってもいいかって言ってるぞ」

大潮「部屋に来るのォ!?」

霰「こわい……」

霞「ちょ、ちょっとクズ司令官! なに狂ってんのよ! 正気に戻りなさい!!」ガシッ グラングラン

提督「はっはっはっは、やめないか霞ー、私もポケットティッシュならよく食べるぞ~」

荒潮「これは……重症ね……」

大潮「いつもおかしい司令官が……さらにおかしくなってる……!!」

満潮「こんなのに休暇申請出しても、まったく無意味ね」

大潮「えぇー、じゃあこの短冊なんて書くのー?」

霞「今さら何を書いたって意味ないわ。メモ書きにでも使えば?」

53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 01:08:40.21

こけし「」

提督「え、暑い? そうかー、もう夏だからな。少し窓でも開けるかー」ガタッ

大潮「くぅ~、司令官! おーい、司令官! しっかりしてってばー!!」

霰「司令官……私、出撃したい……」

満潮「とりあえずその右手のこけし、どうにかしなさいよ!」

荒潮「司令官? 少しお休みになった方が……」

提督「ふぅ…………風が気持ちいいなぁ」ガラガラガラ


一同「………………」


霞「皆……ちょっと、私に任せてくれる?」

荒潮「霞ちゃん? 一体何を……」


    コツコツコツ……


霞「ちょっと、聞きなさいクズ司令官」

こけし「」

提督「なんだ? この子とお友達になりたいのか?」

霞「チッ……」


      ベシッ!!


こけし「」コロンコロン……

提督「こ、こらこら霞、いきなり何を。乱暴は良くな―――」

霞「次はアンタよ、クズ」

提督「え?」


     パシン!!


霰「うわぁ……」

大潮「霞……」

満潮「良い平手打ちじゃない」

荒潮「痛そうねぇ」

54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 01:11:43.48

提督「…………」

霞「いつまで……いつまでそうやって、腑抜けてるつもりよ……」

提督「…………」

霞「朝潮がいなくなる前は平気そうな顔して、私たちを気遣ってくれていたくせに……。

  柄にもなく真面目な顔で朝潮を送り出していたくせに…………。

  何なのよ今さら! 悲しいなら悲しいって言いなさいよ!!

  朝潮がいなくて寂しいなら、そのまま私たちに言えばいいのに!!」

提督「…………」

霞「みんな同じ気持ちなんだから、隠さないで……。強がらないで……。

  私たちにそんなみっともない姿を見せるの……やめてよっ!!」

荒潮「霞……」

提督「そうさ……私は、辛いんだ。悲しいんだ。寂しいんだ。

   いつも隣にいてくれた朝潮がそこにいないだけで……こんなにも辛くなるなんて、思わなかった……」

霞「だったら……」

提督「だが、私がそれを君たちに言ってどうする?

   君たちを指揮する立場の人間が、そんな弱みを君たちに見せてどうする?」

霞「そ、それは……言えば、辛い気持ちも和らぐでしょ……」

提督「それは和らぐのではなく、紛れているだけだ」

霞「私の知ってるアンタはもっと……もっとクズで、変態で、変なことばっか思いつくような……そんな、司令官なのに」

提督「…………すまないが今の私は……そんな気にはなれない」

霞「このクズ……つべこべ言わないでよ……。

  私は……アンタが一人で思い悩んでいるのを、見てらんないだけよ!! 悪い!?」

提督「………………」

55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 01:13:31.09

荒潮「あら……うふふ……」


一同「!?」


荒潮「それって要するに、今の司令官は気合が足りないってことよねぇ」

提督「え……?」

満潮「ふっ、なるほど……たしかにそう聞こえたわ」

霰「私も……」

大潮「気合いかぁ~」ニヤニヤ

提督「え、お前たち……まさか……」

荒潮「うふふ、みんな~、司令官を取り押さえるのよ~」

霰「捕まえた」ギュッ

満潮「逃がさないわ!」ギュッ

荒潮「うふふふ、司令官、大人しくしてくださいねぇ」ギュッ

霞「ほら、観念なさい!!」ギュウウッ

提督「うわっ! ば、ばか! お前たち、やめっ……ひぃ……」

大潮「ふっふっふ……動かないでよ司令官。でないと大潮の指先が……狂っちゃうかもしれないから」

提督「わ、分かった……やめろ大潮……分かったから、私の背後に回るんじゃない……」

荒潮「司令官? 覚悟はいいかしら?」

満潮「大人しくヤられなさい!」

霰「気合いの足りない司令官へ、私たちからのプレゼント……」

霞「さぁヤって! 大潮!!」

56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 01:14:49.47

大潮「さぁーて! いっきまっすよぉおおおーーーーー!!!」

提督「や、やめろ……やめろーーーーー!!」

大潮「必殺! 大潮、ダブル、フィンガァアアアアアアアア!!!」



                ブスリ!!



提督「うわぁあああああああああああああああああっ!!!!!!  あぁっ……」



        バタン……   シーン



満潮「…………あれ?」

荒潮「あらー、どうやら気合いが入りすぎてしまったようねぇ」

大潮「あちゃー、やりすぎた?」

霞「ちょ、ちょっとクズ! 何この程度でくたばってるのよ! 起きなさい!」パシンパシン

霰「追い打ち……」

提督「……………………はっ!」ムクッ

霞「うわぁ!? きゅ、急に起き上がらないでよ!」

荒潮「あら司令官……なんだか目つきが変わったわ」

提督「ひとつ、分かったことがある」キリッ

大潮「分かったこと?」

57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 01:16:21.37

提督「私は長い間、朝潮に頼りきりだったんだ。だから急に朝潮がいなくなって、私は途方に暮れていた。

   だがしかし……このままじゃダメなんだ……。何とかしなくてはいけない」

霞「えぇ、それでこそ司令官――――」

提督「だがしかし、やっぱり朝潮を膝の上に乗せていないと、仕事に集中できない」

霞「うんうん、そうね…………―――――はい?」

提督「答えなど、最初から出ていたんだ。朝潮がここにいないなら、私はどうあっても仕事などできない!」

霰「すごく……潔い……」

荒潮「けど、それじゃあ司令官は……どうするの?」

提督「こんな状態でこの場所にいても意味がない」

満潮「つ、つまり?」

提督「私はしばらく留守にする」

大潮「えぇーっ!? じゃ、じゃあ司令官のお仕事は!? この鎮守府、どうなっちゃうの!?」

提督「うーん……よし、じゃあ霞、私の提督帽を貸そう」パフッ

霞「な、何のつもり……!?」

提督「私が帰ってくるまでの間、提督代理を頼むぞ、霞」

霞「え……」


一同「…………」


霞「はァーーーーーーー!!?」

58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 01:45:18.45









          ~ 数日後 中央鎮守府 司令室 ~





翔鶴「はじめまして。私は提督代理を務めさせて頂いております、航空母艦、翔鶴と申します。こちらは秘書艦で妹の瑞鶴です」

瑞鶴「どうも」

提督「何の連絡もせず、急に来てしまってすまない」

瑞鶴「ほんと、田舎鎮守府の提督さんって、マナーがなってないのね」

翔鶴「だめよ瑞鶴。他方の鎮守府とはいえ、この方も提督よ」

瑞鶴「だったら、今の翔鶴姉と同じ立場なんでしょ? 早く追い返しちゃってよ」

翔鶴「もう、瑞鶴ったら……」

提督「いや、彼女の言う通り、マナー知らずな所は認める」

翔鶴「それで……何故わざわざ、中央鎮守府へ? しかもお一人で」

提督「…………朝潮は、元気にしているか?」

翔鶴「あぁ……そういえば先日転属した朝潮さんは、あなたの鎮守府出身の子でしたね。

   彼女は今、とても頑張ってくれていますよ。 着任早々に主力部隊の護衛として、大きな戦果もあげています」

瑞鶴「正直、駆逐艦だからって侮っていたけど、あの子は本物だったわ。

   私も近くで戦闘を見たけれど、これまで大戦果や勲章を得てきてだけのことはあるわね」

提督「うむ。そうだろう、そうだろう」エッヘン

翔鶴「よろしければ、ここに朝潮さんをお呼びしましょうか?」

提督「いや、その必要はない。私がここへ来ていることは、他言無用で頼む。特に朝潮には」

瑞鶴「…………」

翔鶴「承知致しました」

59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 01:49:35.75

瑞鶴「それで? わざわざ朝潮の様子を聞きに来ただけってワケじゃないんでしょ?」

提督「あぁ。では言葉を選ばず単刀直入に言おう、朝潮をウチに返してくれ」

瑞鶴「はぁー!? そんなの無理に決まってるじゃない!」

提督「そこをなんとか!」

瑞鶴「あのねぇ? あの子はついこの間、ウチに転属したばかりなの。それをまた転属なんて、できるわけ――――」

翔鶴「待って瑞鶴」

瑞鶴「翔鶴姉……。 翔鶴姉も何とか言ってやってよ!」

翔鶴「この中央鎮守府では、戦艦から空母まで、多種多様な艦種が揃っています。

   秘書艦の瑞鶴をはじめ、みなさん優秀な方ばかりです。ですが、この鎮守府の弱点は、駆逐艦にありました」

瑞鶴「どれだけ戦艦や空母が強くても、駆逐艦の練度だけは低いのよ。数は揃っているのに」

翔鶴「その弱点をなんとか克服したいと思い悩んでいたところに、あなた方の鎮守府の噂を耳にしました。

   その鎮守府の駆逐艦は、とにかく強い。特に朝潮型駆逐隊は、最強の駆逐隊と謳われるほどの強さと戦果を誇ると」

提督「それで、朝潮を引き抜いたというのか」

翔鶴「彼女を決め打ちで引き抜いたわけではありません。中央鎮守府における、駆逐艦のスキルアップのため……

   軍令部を通じて、その鎮守府から駆逐艦を一隻頂きたいと、そのような申請をしたまでです」

瑞鶴「別にいいじゃない。何も駆逐隊を丸ごと引き抜こうってワケじゃないんだから」

提督「ははは……よりにもよって秘書艦の朝潮とはな…………軍令部も何を考えているんだか」

翔鶴「ですから申し訳ありませんが、あなたの申し出を受けることはできません。

   どうしてもと仰るのであれば、軍令部を通じて返還の要望を出す他ありません」

瑞鶴「まっ、許可がおりるとは思わないけどね」

提督「では、どうしても朝潮を返す気はないと?」

翔鶴「返す気の有る無しではなく、軍令部の決定です」

提督「なるほど、そうか」

瑞鶴「翔鶴姉の言う通りよ。ほら、分かったらもう帰った帰った」

提督「あぁ、今日の所は退くとしよう」

瑞鶴「今日の所はって、あなたまた来るつもりなの!? どれだけ来たって同じよ!」

提督「では、失礼する」


   コツコツコツ…… ガチャ  バタン


瑞鶴「あ、こら! 無視するなーっ!」

60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 01:51:31.32


           ~ 翌日 中央鎮守府 司令室 ~



提督「頼む! この通り!」

瑞鶴「下手に出たってダメよ!」

提督「朝潮を返したまえ」キリッ

瑞鶴「ドキッ…………って、上から目線でもダメなものはダメだってば!」

提督「…………ところで翔鶴よ」

瑞鶴「だから無視するなー!」

翔鶴「何でしょうか」

提督「君は提督代理とのことだが、そっちの提督は今何をしているんだ?」

翔鶴「ウチの提督は現在ご病気のため療養中です。その間の艦隊指揮を、当時秘書艦だった私に一任されました」

提督「なるほどそういうことか……提督代理だなんて珍しいから、何事かと思った」

瑞鶴「っていうか、そっちの鎮守府はいいの? 提督がこんな所をフラフラしてて」

提督「そこは問題ない。優秀な駆逐艦に提督代理をお願いしてある」

瑞鶴「あなたもある意味病気っぽいし、それが賢明ね」

翔鶴「こら、瑞鶴」

瑞鶴「だって翔鶴姉~……」


61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 01:56:00.06







           ~ 一方その頃 ~




    ガヤガヤガヤ


大潮「ねー? 司令官、間宮さんのアイス券ちょうだいよー」

霰「司令官……私、退屈……」

満潮「うわぁー、すごい仕事量ねー司令官」

荒潮「うふふ、司令室ってなかなか面白い所ねぇ、司令官」

霞「アンタたちねぇ…………手伝うっていうから入室を許可したけど……」イライライラ

大潮「えーっと、また、アイスが食べられますようにっと。ほら霞ー、短冊に書いといたから、よろしくねー!」

霰「今は霞が司令官だから、その権限でアイス券を大量発行すれば……」

満潮「そこに気づくとは、なかなか賢いわね霰」

荒潮「あらー、お腹壊しちゃうわぁ~」

霞「あーーもうっ!! どこ行ってるか知らないけど、さっさと帰ってきなさいよ! あのクズーーーーーーーッ!!」

62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 01:57:33.16





     ~ そのまた翌日 中央鎮守府 執務室 ~



瑞鶴「そっちの鎮守府って、あの一航戦が居るところだってね?」

提督「赤城と加賀か? いかにも」

瑞鶴「へぇー、それなら尚のこと、あなたのお願いなんて聞けないわねー。 ねぇ翔鶴姉?」

翔鶴「何度来ていただいても、朝潮さんをそちらにお返しすることはできません」

瑞鶴「翔鶴姉まで無視しないでよーっ!」

提督「それなら私は、毎日ここに通うことになるが?」

翔鶴「それは構いませんが、無意味です」

提督「無意味にはさせない」

翔鶴「はあ……。あなたはどうしてそこまで、彼女に固執するのですか?」

瑞鶴「そうよ。駆逐艦ならたくさんいるじゃない」

提督「朝潮は、私やその姉妹……もっと言うと、鎮守府全体において特別な存在だ。彼女がいないだけで、ウチは機能しなくなる」

翔鶴「朝潮さんはとても優秀な駆逐艦です。ですが、その駆逐艦一隻が抜けたことで、それほどまでの影響が出るとはとても考えられません」

瑞鶴「そうだそうだ! 翔鶴姉の言う通り!」

提督「何を言うか。私がこうして鎮守府を留守にしている時点で、大きな影響が出ているじゃないか」

瑞鶴「じゃあ早く帰りなさいよ……」

翔鶴「あなたがどうしても朝潮さんを連れて帰りたいというのであれば、それ相応の理由を見せていただかないと、私たちは納得しません」

提督「理由……か……」

翔鶴「はい」

提督「瑞鶴、ちょっと私の膝の上に座ってみてくれないか?」

瑞鶴「ひィ!? な、なによ急に気持ち悪い!!」

提督「これが朝潮であれば、恥じらいつつも、いつも喜んで私の膝に座る」

瑞鶴「どうなってんの、そっちの鎮守府……」

提督「私はいつも、そうやって日々の執務をこなしてきた。しかし、今はそれが出来ない! 故に、仕事ができない!!」

翔鶴「それが、理由だというのですか?」

提督「いかにも。 ……だめ?」

翔鶴「ダメです」

提督「分かった。だがこれだけは覚えておいてくれ。朝潮を返してくれるまで……私は本当に毎日、ここへ通い続ける」

63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 01:58:34.83






瑞鶴「はぁ……何なのよあれ……あの様子じゃ、また明日も来るよね……」


      コンコン


翔鶴「ん? どうぞ」

朝潮「失礼……します」ガチャ

瑞鶴「あ、噂をすれば」

翔鶴「……聞いていたのですね?」

朝潮「はい……すみません、報告書を届けに来たらその……司令官の……元、司令官の声が聞こえて……つい……」

翔鶴「そうですか……。本人は言うなと仰っていましたが、お話くらいしに行ってはどうですか?」

朝潮「い、いえ! 私はもう、この中央鎮守府に属する身です! 私情は挟みません!」

瑞鶴「偉い! よく言ったわ朝潮!」

翔鶴「そう……ならいいのですが」

瑞鶴「あ、報告書を届けに来たんでしょ? 私がチェックしておくわ」

朝潮「はい、よろしくお願いします! では、私はこれで」スッ

翔鶴「朝潮さん」

朝潮「はい」ピタッ

翔鶴「一応言っておくけれど、あなたを元いた鎮守府に戻す方法……無いわけではないわ」

朝潮「えっ……」

翔鶴「朝潮さんとあの方に、相応の意志と覚悟があれば……の話ですが」

64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 01:59:19.85


            ~ 別の日 ~




提督「どうぞ、おいしいお菓子でございます」

瑞鶴「食べ物で釣ろうとしても無駄よ!」

提督「そうか……では翔鶴にはこの高級チーズケーキを」

翔鶴「まぁ、とてもおいしそうですね」

提督「私はこのモンブランを。あ、コーヒーも一緒に」

瑞鶴「…………」

翔鶴「ありがとうございます。頂きます……あら、おいしいです」

提督「もぐもぐ……そうだろう、鎮守府の中にいては、こんなに美味しいケーキはそうそう食べられないからなぁ」

瑞鶴「ちょ、ちょっと二人だけでズルイ! 私の分は!?」

提督「要らないんだろ?」

瑞鶴「だ、誰も要らないなんて言ってないじゃない!!」

提督「じゃあ朝潮を返してくれると言うのなら、この一番高価なスペシャル苺ショートケーキを差し上げよう」

瑞鶴「わ、分かった! 返すから食べさせなさいよ!」

翔鶴「ダメよ瑞鶴?」

瑞鶴「うぅ……」

提督「うまい……こんなの食べたことない」

翔鶴「本当ですね。生まれて初めてです」

瑞鶴「うわぁあああんん!! 私にも食べさせてよぉおおおおおおっ!!」

65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 02:00:24.35

         ~ そのまた別の日 ~




提督「今すぐ朝潮を返さないと、この鎮守府にいる艦娘に対してスカートめくりして回るぞ」

瑞鶴「ふん。いいの? そんなことしたら大問題、あなたはセクハラで捕まって、朝潮を返してもらうどことでは済まなくなるわ」

提督「しかしそうは言っても、艦娘の同意のもとで、スカートめくりをするのであれば何の問題もないのだろう?」

翔鶴「え……まぁ、同意のもとであれば……」

瑞鶴「そ、そんなの無理に決まってるじゃない!」

提督「いや、私はやるぞ」ゴゴゴゴゴゴゴ

瑞鶴( うっ……この気迫……この人なら、本当にやりそうで恐ろしい……。

    きっとウチの艦娘の純粋な心をたぶらかして、あの手この手で納得させて……!! )

翔鶴「では試しに、瑞鶴から同意を得てみてください」

瑞鶴「しょ、翔鶴姉!?」

提督「分かった」

瑞鶴「ふ、ふん! いいわ望むところよ! 五航戦瑞鶴……受けて立つわ!!」

提督「ところでここに、昨日買ったケーキの余りがある」

瑞鶴「ふん! 私が甘いものに目がないってところに着目したのは褒めてあげるわ。

   でも残念ね、同じ手は二度も通用しない! 高級ケーキの一つや二つ……この瑞鶴、我慢できるもん!!」

翔鶴( かわいい…… )

提督( かわいい反応だなおい…… )

提督「で、ここにそのケーキ屋の無料券が30枚ある」

瑞鶴「さっ……30枚!?!?! ふ、ふーんだ! か、数が増えたところで……そんな―――」

提督「これがケーキのカタログだ」ペラッ

瑞鶴「ふぁあああ、美味しそぉおお……はっ! ダメダメ! こんなので――――」キラキラ

提督「これが30個もあったら、それはもう圧巻だろうなぁ……。こんなチャンスは滅多にない」

瑞鶴「ふぁあああ……」ジュルリ

翔鶴( 瑞鶴…… )

提督「これ、欲しいか?」

瑞鶴「欲しい! ちょうだい! スカートめくってもいいから!!」

提督「いやいや、そこまでしなくてもいいさ。ただちょっと、スカートの中の布を今ここで取り外してくれればいいんだ」

瑞鶴「なーんだ、そんなことならお安い御用よ!」シュルリ……

提督「お、おお……」

翔鶴「もう、瑞鶴ったら……」

66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 02:01:12.00


             ~ その翌日 ~



翔鶴「まさか、あなたがここまで執念深いとは思っていませんでした」

提督「ここの艦娘の子たちとも、すっかり顔馴染みになったよ」

翔鶴「あなたの朝潮に対する深い想いは、十分に伝わりました」

提督「じゃ、じゃあ……!!」

翔鶴「伝わりましたが、だからと言っておいそれとお返しすることはできません」

提督「君もなかなか執念深い艦娘だな……」

翔鶴「申し訳ありませんが、これ以降は実力行使に出る場合もございます」

提督「実力行使?」

翔鶴「中央鎮守府への立ち入りを、禁ずるということです」

提督「なるほど……。だがしかし、私はそれでも諦めないぞ」

翔鶴「構いません」

提督「そうか……ところで瑞鶴は?」

翔鶴「昨日の一件から一度冷静になって、ショックで寝込んでいます」

67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 02:02:14.38


          ~ 数日後 ~



瑞鶴「あ、見て翔鶴姉。あいつまた来てる」

翔鶴「鎮守府内への立ち入りは許可しているけれど、この建物内には入れないようにしてあるわ。いずれお帰りになるでしょう」

瑞鶴「まったく……まぁでも、ここまでやればさすがに諦めがつくね! さすが翔鶴姉!」

朝潮「…………」

翔鶴「朝潮さん」

朝潮「はい」

翔鶴「私が、憎いですか?」

朝潮「いえ、そんなことはありません! 翔鶴さんの対応は、当然のことだと思います!」

瑞鶴「そうそう。言っても分からないなら、これくらいしないとね」

翔鶴「では朝潮さん。今回の、あの方の件について……あなたは関与しないということで、よろしいですか?」

朝潮「はい」

翔鶴「分かりました。では、これをあなたへの命令とします。あなたは決して、あの人に関与しないこと」

朝潮「…………」

翔鶴「いいですね?」

朝潮「了解しました」

68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 02:03:42.80


               ~ さらに数日後 ~




瑞鶴「うわー……すごい雨。これじゃあ午前の演習は中止かなぁ」

翔鶴「そろそろ台風の季節だものね……。暴風雨に注意するよう、皆に呼びかけないと」

瑞鶴「…………」

翔鶴「瑞鶴? どうかしたの?」

瑞鶴「いやその……今日はさすがに来ないよねーって、思って……」

翔鶴「……そうねぇ。でも、あれから毎日来ているし……」

瑞鶴「い、いやいやナイナイ! だって建物の中にも入れないんだよ?

   傘を差しても無意味なくらいのこの悪天候で、来るわけないよ! 明日になればまた晴れるって言うしさ!」

翔鶴「え、えぇ……そうだと、いいのだけれど……」




   ・  ・  ・





朝潮「すごい雨……まさか司令官……今日も……」

朝潮( ううん。だって、司令官はいつも言ってた…………天気の悪い日の訓練は控えろって。

    悪天候だからこそ意味があるっていう霞の意見も振り切って……。危ないからって…… )





       『 朝潮を返してくれるまで、私は毎日、ここへ通い続ける 』





朝潮「司令官は…………司令官は、嘘をつかない人……」

69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 02:04:20.74

瑞鶴「ふぅ、これで一通りの書類仕事は終わりっと。

   今日はこの天候のせいで出撃もないし、久しぶりにゆっくりできるね翔鶴姉……―――――って、あぁあーーーーっ!!」

翔鶴「どうしたの?」

瑞鶴「ば、バカじゃないのあいつ……こんな時にまで、来るなんて……!!」

翔鶴「そう……やはり来たのね」

瑞鶴「あーもう! イライラする!! 私、行ってくる!!」

翔鶴「瑞鶴、待ちなさい」

瑞鶴「で、でも翔鶴姉! これはさすがに危険だって! 大丈夫、建物には入れない。追い返してくるだけだから!」

翔鶴「あれを、見て」

瑞鶴「ん? あれ、誰かあいつに近づいて…………って、朝潮!?」

翔鶴「しばらく様子を、見せてもらいましょうか」

70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 02:06:51.53

朝潮「し、司令官……」

提督「ん? 朝潮か! いやぁ、久しぶりだな! あはは、まだ転属から少ししか経ってないけど」

朝潮「…………」

提督「しかし参ったなぁ、すごい雨と風だ。朝潮も濡れるから、早く建物の中に戻りなさい」


朝潮「司令官…………あなたは、バカです」


提督「えっ……?」

朝潮「バカです……大バカです……」

提督「あ、朝潮? いつからそんな言葉を使うように……」

朝潮「どうして……どうして来たんですか!? それも何度も! 何度も何度も何度も!! こんな嵐の日にも!!」

提督「……来ては、いけなかったか?」

朝潮「ダメに決まっています!」

提督「…………」

朝潮「私はずっと……ずっと我慢してきました。司令官や妹たちに心配をかけたくなくて、ずっと……ずっと、心を殺してきました。

   我慢して我慢して我慢し続けて……ようやくこの場所でやっていけると決心がついたのに…………それなのに……」

提督「………………」

朝潮「それなのに……あなたがここへ来てしまったから…………私の、決心は…………」

提督「朝潮」

朝潮「…………」


71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 02:09:47.10

提督「ここへ来る前に、霞に言われたことがあるんだ。

   寂しくて、悲しくて、辛いなら……我慢するな、隠すな、強がるなってな」

朝潮「…………」

提督「私はこう言い返した。君たちを指揮する立場の私が、そんな姿を見せて、心配させてどうするんだと。

   そう……まさに今、朝潮が言ったことと同じだ。

   皆に心配をかけたくなくて、ずっと心を殺して、我慢し続けて、朝潮のいない現状に納得しようとしていた」

朝潮「…………」

提督「だが私は、霞に叩かれて、大潮にお尻を刺されて、ようやく気が付いたんだ。

   そんなことをして幸せになるもんか。どれだけ周りに迷惑をかけたって、素直に生きた方が良いに決まっている!」

朝潮「…………」

提督「だから朝潮……もう我慢するな! 隠すな! 強がるな!

   君の本当の気持ちを、素直な心を、力いっぱい叫んでみせろ!!」

朝潮「…………私は…………私は……」






朝潮「……私……だって、私だって…………司令官や、皆と一緒にいたい……。

   朝潮型駆逐隊として出撃して、力を合わせて戦って、帰投したら司令官に褒められて、頭を撫でてもらって、

   皆でお風呂に入って……並んでアイスが食べたい…………」





提督「あぁ」ガシッ

朝潮「私は……皆の所に……帰りたい。 帰りたいよぉ……うわぁあああああんっ!!」

提督「あぁ……ありがとう朝潮。本当の気持ちを、口にしてくれて」

72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 02:11:24.37

翔鶴「お二方とも、いつまでもそうしていると、風邪をひいてしまいますよ」

瑞鶴「ホントあり得ない。こんな大雨の中、傘も差さずに……ズブ濡れじゃない」

提督「翔鶴、瑞鶴……」

翔鶴「朝潮さん、たしか私は、あなたにこう命令したはずですよ。 この方には決して関与しないようにと」

朝潮「そ、それは……」

翔鶴「それにあなたも、少し度がすぎます。こんな天気の日に出歩くなんて、死ぬ気ですか?」

提督「すまない。だが、今回の件に関して朝潮は悪くない。私が無理に――」

朝潮「いいえ! 悪いのは私です! 処罰でも何でも受けますから、司令官だけは……!」

瑞鶴「朝潮、あなたの司令官は、今は翔鶴姉よ」

朝潮「そ、それは……」

翔鶴「そうです。私は他方の提督に対して処罰など下せる立場ではありません。

   ですが朝潮さん、あなたに対しては命令違反の処罰を下すことができます」

朝潮「はい……」

瑞鶴「翔鶴姉の命令は絶対よ。命を差し出せと言われたら、朝潮は喜んで命を差し出すの。いい?」

朝潮「はい…………」

提督「ま、待て! 朝潮をどうするつもりだ!!」

翔鶴「朝潮さん、これよりあなたに処罰の内容を言い渡します」

朝潮「…………」

提督「翔鶴!!」






翔鶴「朝潮型一番艦、駆逐艦朝潮。


        命令違反を犯したあなたは…………――――――――――――――――解体です」
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 02:12:11.94






         ~ 数時間後 中央鎮守府 司令室 ~



瑞鶴「翔鶴姉……あれで、本当に良かったの?」

翔鶴「いいのよ。瑞鶴も見たでしょ、朝潮さんが持ってきた報告書」

瑞鶴「あのちんぷんかんぷんで、間違いだらけだったやつね」

翔鶴「あの人がここへ通っていることを知った日から、ずっとあんな調子よ。

   あんな状態の子を、私は戦場へ出すことなんてできない。もう、必要ないのよ」

瑞鶴「で、でも……」

翔鶴「それにしてもあの人、私たちの提督とよく似ているわね」

瑞鶴「えぇー!? 全然似てないって! うちの提督はヨボヨボのボケ老人だけど、

   あんなデリカシーの無いヤツと一緒にしないでよ翔鶴姉!」

翔鶴「ふふふっ、そうじゃなくて」

瑞鶴「え?」

翔鶴「私たち艦娘のことを、とても大事に想ってくれているところよ」

瑞鶴「ま、まぁ……そういうことなら……似てなくもないと思うけど……」

翔鶴「そうだ。私たちも病院まで行って、連れ戻しに行く? 提督のこと」

瑞鶴「もぉー! 翔鶴姉まで変なこと言い出さないでよーー!!」

翔鶴「うふふ、冗談よ、瑞鶴」


74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 02:12:48.77





          ~ 鎮守府 司令室 ~




霞「司令官が帰って来たぁ!? ど、どこよ!」

大潮「帰ってきて早々、講堂に入ったみたい! で、全艦娘に招集命令を出してるみたいだよ!!」

満潮「司令室にも寄らずに、いきなり講堂に招集? どういうことよ」

霰「分からない……けど、行くしかない」

荒潮「そうねぇ。講堂へ行かないことには、何も分からないし、始まらないわ」

霞「あのポンコツ鉄クズ司令官……!! 私にこんな苦労かけさせといて、ただじゃおかないわ!!」

霰「霞……嬉しそう」

霞「そ、そんなんじゃないわよ!! ほら、早く行くわよ!!」タッタッタッ

大潮「待ってよぉー!」

75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 02:15:43.39





           ~ 鎮守府 講堂 ~



   ガヤガヤガヤ……


提督「もうどれだけ経ったか把握していないのだが、しばらく留守にして、本当にすまなかった」


荒潮「あら、本物の司令官だわぁ~」

霞「しっ! 聞こえないじゃない!」


提督「そして、私から全員に、改めて伝えておかなければならないことがある。

   知ってのとおり、七月八日、朝潮型の一番艦……朝潮が中央鎮守府へ転属となった。

   皆にとっても、秘書艦である彼女とは何かしらの交流があったと思われる。非常に残念でならない」


大潮「……うーん、てっきり朝潮を連れ帰ったとか、そういう話かと思ったのに」

霰「なんか……違うみたい……」

満潮「待って、まだ何かあるみたいよ」


提督「朝潮の転属に伴い、我々の主力部隊である朝潮型駆逐隊は解隊となった。

   主力であるが故に、このまま放置しておくわけにはいかない。

   そこで、旧朝潮型駆逐隊の欠けた場所に、新たな駆逐艦を、旗艦として配属させることにした」



一同「えぇーーーーっ!?」



霞「ちょ、ちょっと待って……私たちの中に、別の駆逐艦を配属!? しかも、そいつが旗艦になるっていうの!?」

荒潮「特型駆逐艦? それとも陽炎型……夕雲型……?」


提督「苦労はかけるだろうが、理解してほしい。そしてもう一度、新生朝潮型駆逐隊として、最強の座を手に入れてほしい」


満潮「新生朝潮型駆逐隊……?」

大潮「聞いたことある! 私たち以外の、朝潮型駆逐艦……!!」

霰「なんか名前に……『 雲 』とかついてたような…………」

76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 02:17:15.63


提督「では、ひとこと、挨拶を頼む」








???「私は、朝潮型の――――――――」









荒潮「うそ……」

霞「えっ……」

満潮「あれって……」

霰「あ…………」

大潮「もしかして……!!」









朝潮「朝潮型の一番艦、朝潮です!!」









一同「朝潮ぉおおーーーーーーーーっ!!??」

77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 02:18:26.79

荒潮「朝潮……え、どうして……?」

霰「なんで……ここに……」

大潮「そんなの何だっていいよ! だってそこに、朝潮がいるんだもん!!」

満潮「夢じゃ……夢じゃないのよね……」

霞「皆してなに突っ立ってんの? さっさと行くわよ!!」

大潮「突撃ー!!」


    ドタドタドタ バタバタバタ ドンドンドン


提督「こらこら、舞台に上がってくるんじゃない」

霞「うるさいクズ! アンタあとでお仕置きだから!」

提督「お尻以外でお願いします……」

朝潮「みんな……会えて嬉しいわ」

大潮「朝潮……朝潮だ! 本物だよね? 本物の朝潮だよね!? 夢じゃないよね!!」グイーグイー

朝潮「ふぉ、ふぉんほおよ……」

霰「良かった……朝潮……もう、会えないんじゃないかって……」

朝潮「霰……」

荒潮「でも、どうしてここに……?」

満潮「そうよ……中央鎮守府へ転属になったんじゃないの!?」

朝潮「そうなんだけど…………あはは、私、艦娘をクビになっちゃって」

霞「く、クビ!? つまり、解体ってこと!?」

朝潮「何をやってもダメダメで、おまけに命令違反まで犯したから、当然よ」

提督「朝潮は中央鎮守府で解体処分を受け、艤装を失った。つまり、一度普通の女の子に戻ったということだ。

   で、普通の女の子に戻った朝潮を私が推薦し、もう一度艦娘となる手続きを済ませ、ここへ着任させた」

大潮「じゃ、じゃあ再転属とかじゃなくて、一度退役させてから入隊させたってこと?!」

提督「そんなところだ」

78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 02:19:51.89

満潮「そんなところだって……そんなことできるの!?」

提督「艦娘の配属や転属は一度軍令部が決定を下す決まりになっているが、解体は別だ。

   届け出さえ済ませれば、その鎮守府の判断で自由に解体しても良いことになっている。

   解体したあとはまぁ、朝潮は当然、艦娘としての知識も技術も備えた完璧な存在だから、養成所なんて無理矢理パスさせた。

   そして、あとは駆逐艦が抜けたばかりのこの鎮守府へ配属されるように、軍令部に配属の申請をしたってわけだ」

霰「すごい……けど、なんか強引すぎ」

提督「もちろん私の企みなんてバレバレだから、軍令部のお偉い様方にはかなり睨まれたなぁ……ははは」

霞「ぷふっ……バカねぇ、うちの司令官は。 ……まぁでも、その努力に免じてお仕置きは勘弁してあげるわ」

荒潮「でも……本当に夢みたいな話ねぇ……こうしてまた、朝潮と同じ部隊になるなんて」

大潮「奇跡だよ奇跡! ばんざーい!!」ファサッ

朝潮「ふふっ、本当に奇跡的で……――――あれ、大潮、何か落として……」

霰「これ……七夕まつりの短冊……」

満潮「あんたまだこんなの持ってたの?」

大潮「あははー、忘れてたー」

朝潮「結局なんて書いたの?」

霞「大潮が勝手に書いたのよ。見れば分かるわ」

79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 02:20:45.34

朝潮「えーっと……なになに……朝潮駆逐隊で、としか書かれていないけれど……?」

霰「それ、大潮が間違えて書いたやつ」

大潮「裏だようらー」

朝潮「うら……」






     『 また、アイスが食べられますように 』






朝潮「あっ…………」

大潮「いやー、その時はアイスが食べたくって食べたくって」

霞「だいたい、優勝賞品として一緒に一か月分のアイス券も貰ったんだから、その短冊に書く意味あったの?」

大潮「あ、そうだった……」

満潮「大潮に預けたのが間違いだったわね……」

朝潮「…………うっ……うぅ……ぁう……ひっく……」

荒潮「朝潮? どうしたの? 急に泣きだしたりして……」

霰「きっと大潮が……無意味なお願いを短冊に書いちゃったから……」

大潮「え、えぇー!? また大潮のせいぃー!?」

霞「そうよ。朝潮が泣いたのも、クズ司令官のお尻がダメになったのも、全部大潮のせい」

提督「お尻がダメになったってどういうことだ……。   ……見る?」

霞「……」パシン!

提督「あぁっ」

80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 02:29:28.19

満潮「そ、それより朝潮、一体どうしたのよ?」

朝潮「ううん……何でもない……ただ…………嬉しくて……」

大潮「大潮も嬉しい!」

霰「私も」

満潮「まぁ、私も」

荒潮「うふふ、私もよ」

霞「ここにいる全員が、よ」

朝潮「うん…………ありがとう……ありがとう皆……大好き……」
















                『 朝潮型駆逐隊で また、アイスが食べられますように 』












(おわり)
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 02:29:55.12


以上となります。ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
霞、霰、大潮、満潮、荒潮と来て、最後に朝潮を主役としたお話になりました。
朝潮という存在が、この鎮守府でいかに大きな存在であるか……姉妹や提督との絆を表現できていれば幸いです。

さて、ここで六人のストーリーを終えたわけですが、このシリーズはあと一回だけ続きます。
朝潮型に愛を込めて、次回も頑張ります。
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 02:42:31.62

てっきり祭りが本編で最後に短冊で鎮守府に残りたいとか書いて提督が手を回してめでたしめでたしだと思ったら全く違う予想外の展開だった
良い意味で展開が読めなかったのが良かった
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 02:59:54.80

なんとか雲さん達の出番はあるのだろうか…
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/14(土) 04:12:12.98
はぁ・・最高
ツインテールのちょろそうな子が不意打ち的に可愛かった
次回も期待乙
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/17(火) 03:03:21.54
おつん
なんか感慨深いな

この書き手のSSまとめ
(朝潮メインの人・新作もこちらに)


関連記事
タグ:

コメントの投稿



お知らせ
サイトを見やすいように改造しました

改造したところ:
ページ転移に数字送りを実装
多少の軽量化

時折修正していきますので、今後ともよろしくお願いします

旧ブログはこちら  旧ブログ

スポンサーリンク
最新記事
カテゴリ
人気記事
RSSリンクの表示
リンク