いろは「わたし、葉山先輩のことが…」葉山「…俺は彼の代わりにはなれない」【前編】

1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/05(火) 14:29:52.64
新生徒会長 一色いろはに生徒会としての初めての大きな仕事が与えられた
内容は他校と合同イベントを開催する、というものである

まだ生徒会長になったばかりのうえまだ1年生
どのように進めていけばいいのか不安で仕方がない
だが、成り行きでなったとはいえ仕事をしないわけにはいかない

しかし時は無情にも第一回の合同会議を迎えてしまう

最初ということで、顔合わせと少しの作業で済んだのだが、彼女の顔色は優れない
その理由は2つ


生徒会長として何をしていけばいいのかまだわからないこと

生徒会役員といまいち打ち解けていないこと


「はぁ…」


思わず溜息が漏れる
役員と打ち解けてないことで会議中でも気まずく、合同会議にもかかわらず
こちらからの意見は何もなかった

「しかも向こうの会長なーんか微妙なんですよねー」

似たようなことばかり言っていて有意義な話し合いには到底思えなかった


「…はぁ。どーしよ。とりあえず打ち解けることが先…でも…はぁ」


先のことを考えると溜息が止まらなかった



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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/08/05(火) 14:31:41.51

  * * *


次の日さっそく生徒会で集まり会議を始める…のだが


「えぇっと。どうしたらいいですか…ねぇ?」


その言葉に対する役員たちの反応は悪い。


「あはは…。いきなりこんな大仕事って困っちゃいますよねぇ~」

副会長がそれに答える

「あぁ。始まったばかりなのにな」

 
「ですよねぇ~」


そこで会話はプツリと止まる
とても生産的な会話が出来ているとは思えない


「あ~…あ!めぐり先輩に聞いてきましょうか!」

「でももう引退した人に頼るのも気が引けるよねー」

「まぁ受験生ですし、さすがに悪いですよねー」


また別の役員が反応をしてくれるがそこから会話が発展する気配はない


「じゃ、じゃあ他に頼れる人とかっ」

「会長」

「は、はい!」

そこで副会長がいろはを呼ぶが

「……いや、なんでもない」

「あ、そ、そうですか」

一体何を言おうとしたのか。いやうすうす分かってはいる
外部に頼ろうとしている事になにかいいかけたのだろう


3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/08/05(火) 14:32:43.76
「…今日はこのくらいにしておきましょう!次の合同会議でなにか動きがあるでしょうし、
  各自でアイデアを考えておくということで…どうですか?」

「まぁ…そうだな」


副会長の同意を合図に他の役員も帰る支度をし、
それぞれ控えめにおつかれーといって解散していく


手を振り、はにかんでいたいろはは机に突っ伏し脱力する


「っぷはぁぁー。あーもう無理。限界。助けて葉山先輩ー」


と、いいつつも葉山に頼るつもりなどさらさらなく、これからどうしようかと考えていたのだが


「戸部先輩は使え…頼りになるけどアホだし。あ、いるじゃん。手伝ってくれそうな人」


意地悪い笑みを浮かべると帰り支度を済ませる


「次の会議は明日だから、放課後に行けばいいよね。泣いて頼めばこっちのもんですよ!」
「確か…奉仕部、だよね」


その足取りは幾ばくか軽かった
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/08/05(火) 14:33:23.46

  * * *


ディスティニーランドに行けとチケットを貰ったのはいいが、この4人と行くのはさすがにきつい。


「あの仲良し?3人と一緒に行けとか平塚先生もエグイこと言いますよねー」


雪ノ下さんが年パス持っててよかったーと思いつつ余ったチケットを握り歩く

向かう先は部活中の葉山がいるであろうグラウンド


「いやぁ。こんな賭けみたいなことするつもりなかったんだけどなー」


賭け。一色いろはのような計算高い人間は賭けるようなことは好まない
当然金の掛かったギャンブルではない
今回でいう賭けというのは、葉山にアタックするということだ

部活のかわいい後輩マネージャーとして葉山に近づいているのだが、彼は表面上では親しげにしつつも、
どこか1歩引いたとこにいるように思えた

そんな相手を遊び(あわよくばデート)に誘ってもやんわり断られるのが関だ



なぜ彼女がこんな攻勢に出たかと言えば…この間の出来事のせいだろう


奉仕部に寄った彼女が偶然にも聞いてしまった比企谷八幡の本音、願い
言葉数は少なかれどその思いはよく伝わってきた


いつも周りに好かれるために行動し、自分のイメージのために生きてきた彼女のこころを動かすには充分だった

そのことが今回の賭けにでた理由である



しかし今回はあくまで仕事としてのお願いだ。失敗してもダメージはない
それに奉仕部面々とは交友がある。勝算は高いように思える


心の中で大丈夫大丈夫と祈っていると目的の姿が目に入る
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/08/05(火) 14:34:19.27
「あ、葉山せんぱーい!」

「あぁ、いろはか。どうかしたか?」


相変わらず皆を虜にするにこやかな笑みを浮かべている


うん。かっこいい。………あれ?こんだけだっけ?
いやいや!…好き。好き?あれ?


「いろは?」


突然固まったいろはをみて不思議に思った葉山が声をかけてくる


「は!いえいえなんでもないです!あ、それよりこれ!見てくださいよ~」


「これは…ディスティニーのチケットか?どうしたんだこれ?」


「いえいえ実はですねー、生徒会の仕事の参考になるってことで平塚先生に渡されたんですけど1枚余ってて、
 それで奉仕部の方々と行くことになってるんですけどそのー、気まずくて?だから葉山先輩についてきてほしいかなーなんて」


「奉仕部と…。そうか。じゃあせっかくだし無料券もらえるなら行こうかな」


「ほんとですか!やったー!」


と喜ぶ一色であったが、ここは人目に付くグラウンド。そううまくいくはずもなく…


「よっいろはす~。ん?ディスティニーランドのチケットじゃん!はやとくんどうしたのこれ?」

「あぁ、戸部。実はディスティニーに取材にいくことになってな」

「ちょ、なにそれ羨ましすぎっしょ!っべーこれは俺も行くしかないっしょ~」

「ははっ、言っとくがこれは仕事だぞ?」

「とかいって~半分くらいは遊びみたいなもんっしょ!いろはす!俺もいっていいべ?」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/08/05(火) 14:35:46.84
突然の戸部の襲来に不機嫌そうないろはだったが、すぐに取り繕う


「え!あ~でもすみません、チケットもうないんですよ~」

「まじか~。あ、じゃあ優美子たちも誘ってみんなで遊び行くべ!俺たちは自腹になっけどさ」


は?なぜそうなる
と言いたいところをグッと抑え、やんわりとお断り体制に入る


「それもいいですね~。でも今回は仕事なのでちょっと…」

「まぁいいじゃないか。遊びながらでも取材はできるわけだし。最近こいつらと遊ぶ時間も取れてなかったしな」

「さっすがはやとく~ん話がわかる!」

「はぁ…そういうことなら」


葉山に言われてはどうしようもないのか、渋々と承諾する


「んじゃ!ちょっくら優美子たちに連絡いれてくるわ!」

「おいおい、今は部活中だぞ?」

「っべ~!テンションあがりまくりで忘れてたわ~」

「おいおい。いろは、集合場所とか決まったら連絡頼む。じゃあ部活戻るな」

「りょうかいで~す…。あぁ」


困り顔で微笑みながらそういうと2人はコートに戻っていく
残されたいろはは戸部を恨みがましい目で見つつ、三浦との諍いを想像して頭を抱える
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/08/05(火) 14:36:21.81

  * * *


ディスティニーランド当日



三浦と睨み合いながらもそれなりに楽しく園内を回っていた
ふと気になり、奉仕部のメンツを見やる


いろはが彼らを正確に認識したのは生徒会長の一件からなので、それ以前の仲はわかりかねるが、
どうも喧嘩しているようだった。それがこの間解消されたようで、ぎこちないながらもどこか楽しそうだった



先輩 雪ノ下さん 結衣さん



私にはないものを持っている。それがなにかわからないけど
でも、この3人がとても綺麗なものに見えた

同時に自分はこの中に入れないと思い、胸が痛んだ
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/08/05(火) 14:38:38.08

って、いや。別に入りたいわけじゃないですけどね?
ただなんか…こう。うらやましいなぁ。
先輩。私って先輩にどう思われてるんでしょうか。可愛い後輩?ないな。あざとい後輩?あるよ。


そこで自分の考えていたことにハッ!となる


いやいやいやいや!なに!?違うでしょ!いや違わない!
そう、『葉山』先輩のことだから。うん。間違っても腐敗した方の先輩ではない。



そして、一つの思いが芽生えた。野望と言ってもいいかもしれない

比企谷八幡が求めた"本物"

そして彼女もまたそれを求めた


私も、本物が、欲しい
だから葉山先輩を…


それは自らを誤魔化しているようでもあった

手に入らないものから目をそらし、目を曇らせ、目を伏せた

彼女自身よくわからなくなっていた

だが決意した

おそらく、この魔法の国の効果もあったのだろう


「……戸部先輩、ちょっといいですか?」

「おー、どした、いろはす」



間違っているのかもしれない
それでもやらずにはいられないと思った



「……え、マジ?」



  葉山隼人に告白する決意を

9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/08/05(火) 14:39:40.43

  * * *


パレードが終わり花火が打ち上がろうとしている。

いろはは、八幡や戸部達とは少し離れた場所にいた。傍には葉山もいる。

あらかじめ戸部に頼んで2人きりにしてもらえるようにしたのだ。


「あれ、戸部達とはぐれたか?」

「…みたいですね。あの、葉山先輩」

「うん?あまり遠くに行ってないといいが…」

「あの!少し…お話し、いいですか?」


声は震えていたと思う。
こんな経験初めてだった。

自分は傷を負わないように。
プライドを傷つけないように。
告白は相手にさせようと思っていた。

まさか自分からしようと思うなんて思ってもみなかった。


「あぁ」


葉山は短くそう答えると、いつもの笑顔を消し、真剣な顔になる
だがその顔はどこか痛々しいものをみるような、申し訳なさそうな顔つきだった


正直もう吐きそうだった

だがここまで来て今更退けない
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/08/05(火) 14:40:13.81

「わたし、その…ですね」


しかし、いざとなるとなかなか言葉が出てこない

ふとある光景を思い出す

実際は声しか聞いていないのでその場を見ていたわけではないが、
必死になりながら、うまく言葉もまとめられず泣きながら思いをぶつけていた人の光景を



もう震えはなくなっていた




「わたし、葉山先輩のことが…好きです」




葉山はその言葉をきくとゆっくりと目を閉じる


あぁーこれはだめかー。


と思い、なにか言おうとしたのだがその前に葉山が口を開く




「…俺は彼の代わりにはなれない」

11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/08/05(火) 14:40:46.56

何を言っているのか理解できなかった


「…は、へ?」


「君は…君が好きなのは俺じゃない」


意味がわからない。なぜそんなことをいうのか
何を根拠にいっているのか


「いや、え?わたしは葉山先輩のことを…」


葉山は優しい笑みを浮かべている


「いろはの気持ちは素直にうれしいし、いい子だと思ってる。薄々気づいてた。
 でも、今はもう違うだろう?君が本当に好きなのは…」


「待って…ください。なに、を」


「…すまない。いらないことを話してしまったな。
 好きになってくれてありがとう。でもごめん。」


「いぇ…わたし、すみません」


もうこの場にいることが耐えられず、気がついたら走り出していた
途中驚いた顔をした先輩方を見かけたが構わず走り続けた


残された葉山は、誰に言うでもなく呟いた


「最低だな…らしくない。ただ一言いえば済んだものを……」


12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/08/05(火) 14:41:54.92

  * * *


帰りの電車の中。先の一件で周りは御通夜ムード。
どうもすみません!空気悪くしちゃって!泣いてもいいですか!


途中戸部先輩グループは乗り換えのため降りたのは幸いだった。


まぁ奉仕部グループと一緒に帰るってのもだいぶ辛いんですけどね。


わたしが逃げ出したあと三浦先輩たちがわたしのとこに来てくれて慰められてたんですけど、
あの人おかんみたいな人ですね。面倒見のいいっていうかババアっていうか。

戸部先輩なんかおろおろしてて、ぶっちゃけキモかったんですけど。
でも気遣いには感謝してます。ツンデレなわたし可愛い!



「では、私はここで」

「あ、あたしもここで」

「お前まだ先だろ」

「明日休みだし、今日はゆきのんち泊まるの」

「あ、そう」


どうやら雪ノ下さんと結衣さんはここで降りるみたいですねー。
…先輩、家どこなんですかね。


「一色、お前駅どこだ」


なんだろう。泣きそうになった。先輩最低ですね。


「先輩。荷物超重いです」

「買いすぎなんだよ……」


なんだかんだいって先輩ってお人好しですよねー。あざといです。

そんな先輩を見て、結衣先輩は微笑む

 
「うん、そのほうがいいかもね」
「一色さん。くれぐれも気をつけて」


ハハッ!先輩にそんな度胸ないので大丈夫です。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/08/05(火) 14:42:25.62

  * * *



車内には先輩とわたし2人きり。


「はー……。駄目でしたねー……」

「いや、お前、今行っても駄目なことくらいわかってたろ」

「だって、しょうがないじゃないですか。盛り上がっちゃったんだから」

「意外だな、お前はそういう場の雰囲気に流されないやつだと思ってたぞ」
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/08/05(火) 14:43:25.42
 
その言葉に、笑顔で返す


「わたしも意外です。もっと冷めてるんだと思ってました」

「あぁ、お前、恋愛脳に見せかけて、結構クレバーっていうか」

「わたしじゃなくて、……先輩の話です」

「は?」


しばし先輩をみつめ、真剣な顔をする
してるよね?


「あんなの見せられた心動いちゃいますよ」

「何が」

「わたしも、本物が欲しくなったんです」

「聞いてたのかよ」

「声、普通に漏れてましたよ」

「忘れてくれ」


照れてますかね。
ネタにするつもりはないんですけど、たまにはこんな先輩もいいですね。


「忘れませんよ。……忘れられません」

「だから、今日踏み出そうって思ったんです」


結果的には振られちゃったけど、そのおかげで気づけたことがある。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/08/05(火) 14:44:20.30

「その、なに。あれだな、気にすんなよ。お前が悪いわけじゃないし」

「なんですか傷心につけ込んで口説いてるんですかごめんなさいまだちょっと無理です」

「ちげぇよ…」


気付いてませんかね?ちょっと踏み込んだ言い方したつもりなんですけど。



「ていうか、まだ終わってませんし。むしろ、これこそ葉山先輩への有効な攻め方です。
 みんなわたしに同情するし、周囲も遠慮するじゃないですかー?」

「……お、おう。そういうもんか」

「そういうもんです。それに、振られるとわかってても行かなきゃいけないこともあるんです。あとあれです。
 振った相手のことって気にしますよね?可哀想だって思うじゃないですか。申し訳なく思うのが普通です。
 ……だから、この敗北は布石です。次を有利に進めるための…だから、その、…がんばらないと」


さすがに今日の出来事はこたえたのか、また涙腺が緩む
そんな状態を見ていた先輩は励ますでもなく、ただ一言だけ


「すごいな、お前」


その言葉が何より嬉しかった。
うん、やっぱりこの人じゃなきゃだめだ。

16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/08/05(火) 14:44:46.85

葉山先輩は好きだった。でも本気じゃなかった。本気になった振りをしてた。そう自分に言い聞かせた。
告白したのも、あの人たちを見ているのが辛かったから。多分何でもいいから欲しくなったんだ。
だってわたしが本当に求めた人は、わたしじゃ手に入りそうになかったから。


矛盾してる。本物を求めたのに、それが手に入れづらいものだと知って、仮初のものを求めた。

そう。でも、気づけたから。

逃げないで、近づこうと思った。



わたしが初めて気を許した人

気を遣わなくても苦しくならない人

傍にいると不思議と落ち着く人




先輩が…比企谷先輩が







わたしの本当にもとめた人だ。







「先輩のせいですからね、わたしがこうなったの」


「いや、会長の件はそうだけど他のは」


なにもわかってないであろう先輩に近づき、耳もとで囁く。


 
「責任、とってくださいね」



17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/05(火) 15:11:16.91
素晴らしい
続きはよ
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/05(火) 15:35:04.35
可愛いろはす
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/08/05(火) 17:17:25.38
素晴らしい

これで終わりだったらまじ怒(真顔)
30 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/05(火) 18:19:54.30
書き溜めここまでしかない
正直ここで終わろうと思ってた

一応大まかな流れはあるから待ってくれ
酉つけとく


あと八幡といろは2視点切り替えでやってこうと思ってるけどいいか
43 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/05(火) 21:26:08.85
冬休みが終わり、学校が始まる


あー、いきたくねー


特に学校で嫌なイベントがあるとか、そういうわけではない
奉仕部の面々と顔を合わせるのが辛い、というわけでもない

休み前の奉仕部の居心地の悪さはすでに改善され、以前のように
いや、以前よりも空気が良くなった気がする

まて、俺の存在は空気に等しい。
つまり俺という存在もまた良いものになったということだ。
いやー、俺みたいな人が増えれば空気が澄んでいくわけだなー。

働く気のないぼっち量産とか国終わってんだろ。


先ほどからつまらないうえに、よくわからないことを考えては突っ込むのを繰り返している
こう嫌なことから逃げたいときによくなるね

じゃあ嫌なことってなによ?

ずばり学校に行きたくない。寒いし。それだけ。
休みの間グダグダしていた分、切り替えが難しい。もっと休んでいたい

長期休暇のあとの働きたくなさは異常…は!だから社畜には休みが少ないのか!


ほんとお疲れ様です。
身を削ってまで働くその心意気を尊敬しつつ、
自分は専業主夫になってだらだらすごしてやる。と、思いを強くしました。


そんな軽い逃避をしていたらいつのまにか、校舎についてしまった


さすがにここまでくれば、先ほどまでの学校にたいしての嫌悪は消えうせる。
大人しく勉学に励むとしよう。やだ!社畜の才能あり過ぎ!
44 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/05(火) 21:27:03.17


「あ、ヒッキーおはよ!」

「…おー」


教室に着くと、先に来ていた由比ヶ浜に声をかけられる
まさか声をかけられるとは思っていなかったので、少し驚いた
返事を返すと、おしゃべり中だったのであろう。でさー、と会話に戻る


いや、話しかけられること自体は前からあったっちゃあった。
だが、わざわざ挨拶するために会話を切るなんてことなかった気がする。
それにわざわざぼっちで嫌われ者の俺に、目立つように声をかけるなんて前の彼女からは考えられない。

彼女の中でなにか心境の変化があったのだろう。…まぁ、おれも変わったという自覚はある。

少しすると、小柄の天使が入ってくる


「八幡おはよう!」

「おう!おはよう戸塚!」


おっといけない!俺のクールなキャラが崩れちまうぜ!
え、そんなキャラついてない?ネクラマンサーとかかな。


45 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/05(火) 21:27:37.40

戸塚は俺のテンションがおかしかったのか、口元に手を当ててクスリと笑う


「久しぶり!雪ノ下さんの誕生日会以来だね」

「そうだな。俺はほぼ家からでないからな」


そう。冬休みと言えば頑なに外に出たがらなかい俺だが、今年は珍しく外に出る機会があった。
一つは戸塚が言ったように雪ノ下の誕生日だ。まぁ、やることはクリパと大差なかったし、
その前にみんなで初詣に行ったくらいか。その時の話は割愛させてもらうとして。

他には……ないな。うん。
あれ?やっぱり家から出てないじゃん。


「もぉ。少しくらい外でなきゃ身体に悪いよ?僕が部活忙しくなかったら遊びに誘ったんだけど……」


Oh ! Shit ! 許さないぞ部活動!


「まぁ…なんだ。暇なときはいつでも誘ってくれ。どうせいつも暇だからな」

「うん!じゃあまたあとでね」

戸塚はにっこり微笑むと自分の席に向かう

いやぁ、朝から癒されましたね。
46 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/05(火) 21:28:40.91

  * * *



何ごともなく授業は終わり放課後、部室へと向かう
由比ヶ浜は三浦たちと話していたし来るのは少し遅れるだろう

部室の戸を開け、中に入ると先客がいる
読んでいた本から目を離しこちらに顔を向ける


「こんにちは」


「うす」


いつもの席に座るとカバンから本を取り出す


「お久しぶりね。由比ヶ浜さんはまだ来ないのかしら」


なんなのん?おまえほんとガハマさん好きだな。


「三浦たちと話してたからな。まぁ、すぐ来るだろ」


「そう。てっきり一緒に来るものだと思っていたから」


「いや。ないだろ、ない」


いや、ほんと。そういうの恥ずいんで。


「お茶は、由比ヶ浜さんが来てからにしましょうか」


そういうと、雪ノ下は読書に戻る
俺もまた取り出した本を読み始める

47 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/05(火) 21:29:08.50
…のだが。
妙に視線を感じる。恐らく、というか確実に雪ノ下なのだが。
こいつは相変わらずだな。


「どうかしたか」

と、一言聞くと咳払いをしたのちに口を開く。


「その……。今度、あなたの家にお邪魔してもいいかしら」

「は?あー、小町か?」

「え、えぇ。その…お菓子作りの練習を頼まれてしまって」


あいつ……もう受験間近だぞ。マジか☆マヂカ


「もちろんそのあと、私が勉強を見てあげる予定だから心配はいらないわ」

「……まぁ、お前が見てくれるんなら少しくらいいいか」

「小町さんのお願いなのに、あなたの許可を取らなければいけないなんて変な話ね」

「半分保護者みたいなものだからな」

「小町さんも大変ね。こんなめんどくさい人の面倒を見なくてはいけないなんて」

「俺が保護者って意味なんだが」

雪ノ下はクスッと笑うと


「では、次の土曜日。お邪魔するわね」


と言ってまた読書に戻る


特に話したいこともないので、俺も本に目を通し始める


久しぶりだな。ほんと。


しばらくして由比ヶ浜が部室に来る

お腹すいたーというもんだからそこからは小さなお茶会が始まった

58 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/06(水) 13:22:03.01
  * * *


時は進み、土曜日
今日は雪ノ下が来ることになっている

うむ。おれはどうしようか。部屋に籠ってた方がいいのだろうか。
小町の客なわけだし俺が出ていくのはおかしよな。

などと柄にもなく、そわそわしている自分が憎い!



程なくして、来訪を告げるチャイムが鳴る


「はいはーい!おまちくださーい!」


小町が颯爽と玄関まで行き扉を開けてくる


「こんにちは小町さん」

「どうもどうもです、雪乃さん!どうぞ上がってください!」

にっこにこ笑顔で雪ノ下を迎え入れる
59 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/06(水) 13:23:16.46
「こんにちは比企谷くん。お邪魔するわね」


今日はいつもと違い髪を一つに束ね、前に垂らしている
その髪を束ねているものは、以前クリスマスにプレゼントしたシュシュだった


「おう。……あー、使ってんのな、それ」

「ええ。愛用させてもらってるわ」


嬉しそうに微笑む雪ノ下に一瞬見とれてしまったが、すぐに気を持ち直す


「……そうか。じゃあ俺は2階に上がるわ」

「別に気を遣わなくていいわ。あなたに意見を貰いたいところだし」

「いや、そっちこそ気にすんな。呼んでくれたらすぐ行く」

雪ノ下は少しうつむく

「……そう。あなたも…一緒にどうかしら、と思ったのだけれど」


そういわれてドキッとする。
以前の自分だったら即座に断っていただろう。


「あー…いいのか?」


と、問うと彼女は笑顔を見せる


「ええ。小町さんも、いいかしら」


小町は俺たちのやり取りを見て驚いていたようで、目をパチクリさせていたが

「もっちろんですよ!兄と一緒になにか出来るなんて、なかなかないので
 ハッピーです!あ、今の小町的にポイント高い!」


「だそうだ。じゃあ、準備してくるわ」

準備っつっても手洗うくらいなんだがな

「んふふ~。お兄ちゃんも隅に置けませんな~」


小町がニヤけ顔でついてくる


「なにが」

「べっつに~?」


ダル絡みされる前に退散退散、悪霊退散。


「…よかったね。お兄ちゃん」


なにか呟いていた気がするが知らん顔でその場を去る

…あっちー、顔赤くなってるのばれてただろうか。


60 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/06(水) 13:23:53.63


  * * *


「ふむ。いいできね」

「だな」

「いいですね~。さっすが雪乃さん!」


お菓子作りは、無事終了する
作ったものはクッキーだ
シンプルながらも、雪ノ下先生にご教授いただいた結果、
店に出せるレベルのモノが出来た。……材木座あたりから金を取ろうか



「つーか、なんでクッキーなんだ。わざわざ雪ノ下を呼ぶくらいだから、
 もっと凝ったものかと思ってたぞ」

「あら、クッキーも馬鹿に出来ないわよ?誰でも作れるものは、差が出やすいのだし。
 でも確かに、凝ったものを作るのだと思ってたわ」

確かにな。一流の料理人ってのはただのオムレツですら絶品と言われるほどのものを
作るらしいしな。

小町が不敵に笑う

「フッフッフ。なぜクッキーなのか……それは!」

「もったいぶってないで、さっさと言え」

「ぶー。これだからゴミいちゃんは…。ずばりですね、お礼の品ですよ」

「は?誰にだよ。まさか川なんとかさんの弟か?やめとけ。純粋な中学生男子をからかうんじゃありません」

「……それはあなたが、小町さんと関わられるのが嫌なだけでしょう」


雪ノ下は頭を抱え、呆れたように息を吐く



しかし実際、女子からの贈り物をされるなんて勘違いの塊でしかない。特に個人のみ贈る場合
これがクラス全員とかならまだしも、あのクソガキにだけ渡すなんて死人が出る
主に、弟を抹殺しようとした俺が、姉のほうに殺される


「あー、それにも渡すけど、お兄ちゃんが!お世話になった人に渡すんだよ」


さりげなく酷いこと言ったな。それって。ちょっと同情する、だが妹はやらん


「世話になったって……あの件でか?」


思い当たるのは、雪ノ下、由比ヶ浜を生徒会長にさせないようにするための件だ。
あの場で話し合った程度だが、感謝するには充分だ。
材木座には、大分危険な橋を渡ってもらったが。まあ、材木座だし。金払うならやらんこともない。
あと、戸塚かわいいしな。え?関係ない?

61 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/06(水) 13:24:41.93

「そうだよ!みんな快く協力してくれたのに、なにもお礼しないなんておかしいでしょ?」

「まあ、そうだな。戸塚には随分と世話になったからな」

「お兄ちゃん……戸塚さん好きすぎるでしょ。やはりお兄ちゃんの恋愛は間違っている」


なんだよそのラノベタイトルみたいなの。もう流行んないぞ。


「確かに感謝の気持ちは大切ね。それではラッピングをしましょうか」


そういうと、慣れた手つきで包装していく


俺が人に感謝するような出来事があったということに対し、何も言及はされなかった
ある程度の察しはついているのだろう。


大した作業量でもないので、包装はすぐに終わった
あとは、誰に渡すかなんだが

「戸塚と……あと誰に渡せばいい」

「川…大志くんのお姉ちゃんと、中二さん。大志くんには小町が渡すよ」

「いや、その必要はない。姉の方に渡しとけば事足りる」


シスコン
ボソッとそう聞こえる

しょうがないだろ。千葉住の兄妹なんだから。


「にしても、少し数が多くないか」


8袋分できてしまった
その4人に渡すとして残りはどうするか
余ったのを4袋に詰めてもいいのだが、いささか数が多い


「うーん。雪乃さんと結衣さんは確定として。あ、先生とか?」

「自分たちで作ったものを貰うなんて、変な気分ね」

たしかに

ふと、思い当たる奴がいる。


「あー、じゃあ後1人は適当に渡しとくわ。自分で食ってもいいしな」

「ほ~。じゃあ、これでミッションコンプリート!あとはお兄ちゃんの仕事です!
 雪乃さんもありがとうございました!」

「いえ、大したことはしていないし、楽しかったわ」

「小町も楽しかったですよ~」


と言って雪ノ下に抱き着く。困った笑みを浮かべながらも、どこか嬉しそうだ
62 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/06(水) 13:25:16.93

「いい息抜きにもなったし、これから小町は勉強タイムに入ります!」

「そうね。遅れを取り戻さなくてはいけないものね」

「はい!あ、でも最近調子がよくてなんとかなりそうなんですよね~。躓いたら助けを求めるので、
 雪乃さんはお兄ちゃんの面倒を見てて貰えると助かります!」

「おい、なんでそうなる」

「調子がいいと慢心したときが一番危ないわ。人に教えるのも苦ではないし、気にすることはないわ。
 それに心配しなくても、彼は一人で生きていけるわ」

「そいつは無理だ。おれは誰かに養ってもらわないと生きていけない。働く気はないからな」


いい笑顔でそう告げてやると、雪ノ下は、また頭を抱えた
小町にはにやけ顔キモいよと指摘された
え?もしかして今までイケてると思ってやってきたのは全部にやけ顔だったの?
なにそれ超恥ずい。むしろ今までの人生すべて恥ずかしいまである


「まあ、そういうことなんで、兄の面倒よろしくできませんかね?
 友達いないくせにパーティーゲームとか買ってくるんですけど、小町しか相手いなくてー
 しかもお兄ちゃん"強い"ので全然"勝てない"んですよね~」


「強い…勝てない……。比企谷くん、それはどういうゲームなのかしら」


うわぁ……勝負ごとに目がない雪ノ下さんが食いついちゃったよ。


「あれだ、テレビゲーム。マリカとかスマブラとかだよ。ていうか一人でもできる」

「マリ……それはどういうものなのかしら。ゲームとかやらないから」

「はい!用意しましたよ~。存分に楽しんでください!それでは小町は勉強してきまーす」

追随を許さぬかの如く早口でまくしたて、部屋に向かう
なんだよやめろよ2人きりにしないでくれ。変に意識しちゃうだろ。

一方雪ノ下はゲームを興味深そうに眺めちょんちょん触っている。


「これ、どうやって使うのかしら」

「あー、貸してみろ」


テレビを点け、ゲームを起動する


「じゃあやり方から説明するか」
63 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/06(水) 13:27:04.98
雪ノ下は説明するたび、ふむふむと頷いている。ちなみにスマブラ。
試しに実戦をしてみたのだが、もちろんぼっちマスターこと俺に勝てることもなく、
少し悔しそうな顔をしていた。


「なるほど、なかなか分かってきたわ。同じコマンドでもキャラによって攻撃のタイプが違うのね」

「そうだな。全部のキャラを覚えるのも大変だが、パターンを覚えちまえば大分戦える」


呑み込みの早い雪ノ下は、何戦か続けていくうちにめきめきと上達していく
正直やばい。俺も結構必死になってる。こいつゲームにも才能あるのかよ。
頭のいい奴はみんなこうなのかもな。



更に数戦した結果

「ふふ、完勝ね」

「おい嘘だろ。ていうか投げ連なんてどこで覚えた」


相手の機を一切減らせずに負けた。
いや、あれだし?ゆーてガチキャラで挑んでないし?
でも、初心者相手にガチになるのもあれだし?

いるよなーこういうやつ。負けるの認めたがらないで言い訳はじめる。
友達いないから知らんけど。



「たまには、ゲーム…というのも楽しいわね」

「だな。おれもあんまやる方じゃないし、人とやる機会もないからな」

「今のは負けた言い訳かしら」

「ぐっ…」


くすくすとおかしそうに笑う
つられて俺も笑みがこぼれる

「でも、少し疲れたわね。小町さんに呼ばれるまでどうしようかしら」

「…いつもどおり、本でも読んでりゃいいんじゃねーか?」

「そうね。でも、いつもは持っているのだけれど今日は入れてこなかったのよね。
 なにかおすすめを借りてもいいかしら」

「ああ、ちょっと待ってろ」


自分の部屋から適当に数冊持ってくる
2人、ソファに寄りかかりながら本を読み始める

こいつとこんな近距離で本を読むのなんて初めてじゃなかろうか。
隣にいるといい香りが漂ってくる。
いかんいかん、これはキモいぞ。


邪念を払うためにも本に没頭し始める


随分とゆったりとした時間が流れる


静かな空間と温かみのある部屋
隣から香る心地よい香りが自然と眠気を誘う
思考もままならず、うつらうつらと船を漕ぎ始める

あーやばい眠い。

しかし睡魔には抗えず、いつのまにか眠りに落ちていた

64 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/06(水) 13:28:09.78

  * * *



「すいませーん!小町寝ちゃってましたー……ってあら?お兄ちゃん?雪乃さんは?」

時刻は午後7時
比企谷小町はリビングに降りると部屋の電気が点いてないことに気付く

「お兄ちゃーん?雪乃さん帰っちゃったー?」

部屋の灯りを点けて周囲を確認する


「…え?ほへぇ~」


目的の人物を見つけると、ニヤニヤしだす
かと、思えば優しく慈愛に満ちた表情になる


「ほんと、よかったねお兄ちゃん。……欲しいもの、手に入ったね」


一人呟く
その手に握られているのはカメラモードになったスマホ


「はい、ぴーなっつ」


カシャッと音を立てると、画面に今しがた撮影したものが表示される

そこには、互いに寄り添い合い眠りにつく男女がいた




65 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/06(水) 13:28:45.59

  * * *


休み明けの学校
比企谷八幡は机に突っ伏し、考え事をしていた


部活いきたくねえええええええええええええ!


この間雪ノ下が家に来た
そこまではいい。お菓子作りにゲーム。何ら問題ない。
本を読んでる最中に寝てしまう。そんなこと多々ある。

だが、その寝てしまうのが悪かった。
カシャッという音と共に目が覚め、あたりを見回すと違和感に気付いた。
寄り添うように雪ノ下が寝てるではないか!
彼女もまた謎の音で起き、寝ぼけているのかきょろきょろすると、次第に事態を把握した。


そこからの行動は早かった。赤くなった顔を隠すようにマフラーやらなんやら装着し、
荷物をまとめ早口でまくしたてると玄関に急ぐ。

一応、遅いし送ってく、と言ったのだがやんわりと断られ、俺もまた気恥ずかしさから
断られたことにほっとした。


最後の一言だけが鮮明に頭に残っている



『……また。……遊びにきても、いいかしら』



それが先ほどから何どもリピートされ悶えのた打ち回っている
っべーよ、ぱないわ。ちな教室


「ヒッキ―……どうしたの、すんごいキモい」


「……ほっとけ」


わかってる。だがなんともいえない感情が暴れまわっている。
これは本当に俺か?にゃる様に乗っ取られたんじゃなかろうか

66 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/06(水) 13:29:22.72

そういえば、由比ヶ浜を見て思い出した


「これ、やるよ」

「ん?クッキー?どうしたのヒッキ―!?」


なんかラップっぽくなってる

Hey!これはクッキー!お前はヒッキ―!

俺は誰だよ



「あー、なんか小町がな。世話になってる人に渡してこいってな」

「ほあー、なるほど。でもひ、ヒッキ―を世話してるって、なんかあれだね…養ってるみたいな……
 や!全然そういうんじゃなくてね!?」

「むしろ俺が世話してるもんな」

「されてないし!?」


少し気が紛れたな。
由比ヶ浜に感謝しつつ、そろそろ周りの目が痛くなってきたのでシッシッと追い払う


さて、さっさとこいつを配っちまうか。

67 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/06(水) 13:30:10.96

目的の人物を探す
どこだ!戸塚はどこだ!
いない。あ、川……川デックスさんがいた。先にこっちに渡すとしよう。

声が裏返らないように気を付けて、ドスの利いた声を発する
いや、ダメでしょそれ。


「よう」

「ひぁ!」


川崎は、突然背後から声をかけられたことに驚いたのか、なんとも可愛らしい悲鳴を上げる
あ、川崎だよ川崎。


「な、なに!?んん゛……何?」


今の反応をなかったことにしたいのか、咳払いをすると軽くにらみながら聞いてくる


「これ。まえ世話になったのになんも礼してなかったからな。こっちは弟さんの分だ」


「別にいらないって……まあもったいないから貰っとく」


少し態度が柔らかくなった。弟に土産が出来たからか?このブラコンめ。

なんて口に出したら殺されかねないのでその言葉は心の中にしまっておく
私のココロ!アンロック!いや開けちゃだめでしょ。



「ん。じゃな」

「あ、あんたさ」
68 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/06(水) 13:30:51.44
「あ?」

「いや…もうすぐ総武高の受験始まるでしょ?終わったらさ……うちの弟に息抜きさせてあげたくて、
 あんたんとこの妹も同じでしょ?」

「妹はやらん」

「だれも欲しいなんて言ってないでしょ、このシスコン」

「弟のためになんかしてあげたいとかいうブラコンに言われたくない」

「あ゛?」


こわいからやめて。てか先にふっかけてきたのそっちなんですがそれは。



「……話し戻すけど、だからなんかパーティー?とか」

「意外だな、そんな言葉がお前から出るなんて」

「うっさい」

「まあ、お前の弟はどうでもいいとして、小町に労いをかけてやるのは賛成だな」

「あんたしばき倒すよ」

だからこわいって。あとこわい。

「どっちみち、受験終わらないと何も言えんしな。後々考えようぜ」

「……ん」

一緒にやってくれるんだ、と小さな呟きを漏らした

紳士なおれは聞こえないふり聞こえないふり。
え?なんだって?
69 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/06(水) 13:31:30.38

その場を離れ自分の席に向かうと、ちょうどいいタイミングで戸塚が入ってくる


「あ、八幡!おはよ」


相変わらずの戸塚スマイルである。


「よ。戸塚、これを受け取ってくれ」


その言葉を発した俺は、まるでプロポーズに指輪を渡しているような態度だっただろう

クッキーの入った袋を受け取ると嬉しそうに

「うわぁ、これ八幡が作ったの?ありがとう!でも、どうしたのこれ?」


「戸塚にはいろいろ感謝してるからな。今まで礼らしいこともできてなかったし」

「別に気にしなくていいのに。ぼくがしたいことをしてるだけだよ」


うむ。美しきかな 謙虚な心 日本人 (字余り)


「ありがとな」


特に何を言えばいいのかわからず、そう一言付け加えると、


「ううん。友達だもん」


といって、笑う
70 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/06(水) 13:33:07.66

"友達"

なのだろうか。俺と戸塚は

そもそも友達の定義がわからない

友達がいたことがないから分かりようがない

いままで、そういったあやふやな関係は否定してきた

自分が傷つかないために

誰かを傷つけないように

だが、それは驕りだ

誰かを傷つけないなんて出来るわけがない

否定している時点で、相手に傷を与えてしまっているのだろう

自分は傷つかない。ならそれでいいのかもしれない

だが、それは偽りだ

否定することで自分も傷ついている

人を傷つけてしまったのではないか、と傷つく

平塚先生に言われた通り

傷をつけないなんてことはできない

そんなものがあるとしたら、それは偽物だ

ならば、本物とは何か

分からないし、解らない

もう、手に入らないものかもしれないし、既に手に入ってるかもしれない

まだ、諦めるのは早い

長い人生の序盤

だったらもう少しくらい期待してみてもいいかもしれない

俺と戸塚はもう友達なんだろうか

彼女たちともまた、そうなのかもしれない

そうであってほしい。そう考えて

71 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/06(水) 13:33:37.62

「八幡?」


長い間考え込んでしまっていたようで、不安そうに戸塚が見てくる


「ああ、悪い。そうだな、友達…だからな」


すると、驚いたように瞬きをする
が、すぐに笑顔になる


「うん!」


軽く言葉を交わし、授業の準備をする

次は、現国か。


雪ノ下にはあの日に渡してあるから、クッキーの袋はあと3つ
あとは、材木座……には、下駄箱に入れとけばいいな、うん。
直接渡すのもなんかあれだし、勘違いさせておこう。

平塚先生は、教員だしな。部室に来た時くらいし渡せないな。

となると、あと一つ。渡しに行かねばならない奴がいる。

別に渡さないって選択肢もあるが、負い目もあることだしな。


「おらー、席につけー」


現国教師である、平塚先生がやってくる。

俺はどうやって渡そうかなーなんて考えつつ、適当に授業を聞いていた

75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/06(水) 15:00:51.75
ゆきのんかわいい
いろはすはよ!
78 :今日は終わりといったなあれは嘘だ ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/06(水) 17:11:14.25
どうも、1年生にして新生徒会長の一色いろはです。

休み前に抱いた想いを胸に抱えたまま学校が始まり、しばらく経ちました。
めっちゃもやもやしてます。

なぜかって?
せっかく自分の想いに気付けたのに、なんにもアクションを起こせないからですよ!


冬休み中、遊びの誘いでも入れようかと思ったとこで気づきました。
先輩の連絡先知りません。

あわよくば街で偶然会えればー、なんて淡い期待をもって外に出ましたが、
あの先輩のことです。めったに家を出ない、出ても人の目につかないところだろうと。


ということで、もやもやとした休みを過ごしました。
せっかくの休みなのに……。先輩に会ったら文句言ってやる。


しかし、ここでもう一つの問題発生
先輩に会いに行く理由がない!

いや、そんなの気にせず行けよって思うかもしれませんが、
無理ですよ。表向きは、葉山先輩好きなわけですし?
振られたばっかで、さっそく別の男にちょっかい出してると思われたくないし?


いくらわたしが変わったといっても、根底から覆すなんて無理なわけで、
今でも、みんなが可愛いと思うわたし、でいたいわけですよ。


あわよくば、本物が欲しい。みたいな。


軽いですかね。でも、それがわたしです。
79 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/06(水) 17:12:01.59

そんなこんなで今、生徒会室にて絶賛仕事中。溜息つきまくりですよ。はぁ


「会長。これにハンコ頼む」


「あ、はーい」


「そろそろ、紅茶入れますね」


「ありがとうございま~す」


副会長に書類を渡され、書記の子がお茶を入れる
奉仕部を真似して紅茶のセットを置いてみたりしたのだが、
これがなかなかいい息抜きになる

周りは2年生なのに対し、トップが年下ということで距離感がよくわからず、
空気が悪かったのですが、先のイベントを通し、なんとかいい雰囲気にはなったかな?

これも、先輩のおかげですね。いや、そもそもこうなったのは先輩のせいでした。文句言ってやる。


一応、役員の紹介でもしときますか。
副会長の武藤(♂)
会計の城ノ内(♂)
書記の本田(♀) 
今、命名
多分そんな感じの名前です。

80 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/06(水) 17:12:34.79

「会長、なんか悩みか?」

「え?わたしそんな顔してましたか?」

「いや、溜息ばっかしてたから。むしろ気づいてくださいって言ってるのかと思ったぞ」

「あははーすみません。実はですね」

「あ、やっぱり語りたかったんですね」

本田さんがあははと笑う

「副会長の言うとおり、悩みがありまして。ずばり、わたしがフェイクの方を狙ってる風を装いながら
 本命と仲良くするにはどうしたらいいのかと」

「…ひどいな」

副会長がドン引きしている

そんなの知ってますよう、ぷんぷん。
わたしの本命には強力なライバルがいますからね、正攻法じゃ無理なわけですよ。
葉山先輩の一件をうまく使いつつ、先輩に情を沸かさせるという作戦です。

フられた人には優しくする、という心理。フった人が優しくなるのはもちろん、
そばでその状況を知っていた先輩は、わたしに優しくしてくれるというわけです。

わたしをフッた葉山先輩には、悪いですが利用させてもらいましょう。

やだ!いろはったら完璧!
性格悪い?褒め言葉です。


「その本命とは、現状でどのくらいの仲なの?」


ここまで口を開かなかった城ノ内先輩が疑問を聞いてくる

うーん、そういわれるとなんて答えたらいいんでしょう。
わたしを会長に推したことで、負い目を感じているように思えます。


「びみょ~な感じです、かね?」

「これはまたアバウトな回答だな」


副会長が困ったように言う

81 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/06(水) 17:13:20.93

「連絡先とかは持ってるんですよね?」

各員のカップに紅茶を注ぎ足しながら本田さんが問う

「う、持ってないです。あ、どうもです」

「いえいえ。そうですか、それだと難しいですね。なにかイベントでもあればいいんですけど」

「もう、この時期になると受験しかないからねー。あとは学校のイベントではないけど、
 バレンタインとかくらいかなー」

バレンタイン
それは魅力ですけどまだまだ先だ。その間に向こうの仲が進展しないとは限らない
となると、なるべく早く行動したいわけなのだが


「遠いですねー。なんか生徒会でイベント作っちゃいましょうか!」

「受験シーズンでそれは無理だ。というかその仕事を今頑張ってるんだが」

「うぐぐ、世界がわたしを邪魔する……」


あれ、そういえば先輩の妹さんがここを受験するって言ってたような…。
ふむ、なにかうまく繋げられませんかね。


「まあ、あまり外部に頼むのは気が引けるが、また仕事を頼めばいいんじゃないか?
 そういう部活なんだろ?」


言われてなるほど、と頷く。ん?


「え?へ?何の話ですか?」

「ん?ちがうのか?てっきり、ヒキ…ヒキガ……、前に手伝ってくれた奴かと思っていたんだが」

「あ、わたしもそう思ってたんですけど、違うんですか?」

「へええええええええええええ!?なんでばれて…は!」

「まぁ僕らが会長の友好関係わからないから、それっぽい雰囲気だった彼を想像するのは当然じゃないかな」


城ノ内先輩がにやにやと笑う
本田さんも微笑ましいものを見るかのようにニコニコしてる

アイエエエエ!バレテル!?バレテルナンデ!?

葉山先輩にもばれてたみたいだし、わたしって結構わかりやすいのかな。

82 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/06(水) 17:14:14.99

「むぅ、そうですとも!誰にも言わないでください、お願いします!」

「大丈夫だ。ここにいる奴は他言するような奴じゃない」

「おー、副会長から好評価いただきましたー」


くっそぅ、やれれましたー。




  * * *



「それで、彼との関わりをつくるためにどうすればいいかだが……」

「副会長なんだかんだ言って乗り気だね~」

「な、なにをいっている。これは会長が悩みを解消しないと仕事の効率が落ちるからやっているだけだ」

「ツンデレなんだね~」

「うわぁ、私ツンデレ生で初めて見ました」


城ノ内先輩と本田さんにいじられて、副会長は居心地が悪そうだ


「ありがとうございます副会長。やっぱり仕事頼むのが手っ取り早いですかね?」

「そうなるんじゃないかなー。こっちとしても助かるしねー」

「気が進まんがそうだな。こちらとしてもなかなか忙しい上に、会長がこんな状態で効率が悪い」

「も、申し訳なく思っております」


しかし、今回の仕事は地味なうえになにも面白いことがない
祭りをしようという前回の仕事ではなく、ただ受験生のデータの管理と当日の誘導やら監視やらの指示等


でも、デスクワークとか先輩超得意そうですね。


「でも、仕事受けてくれない可能性ありますよね~」

「そうなったら仕方ないな」

「そんな~」


ぐでーとしていると、コンコンと生徒会室の扉が叩かれる


「あ、はいどうぞ~」


訪問を促すとそこにいたのは、


「おす。あー、一色ちょっといいか」

「先輩!」


まさに今求めていた人がそこにいた

83 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/06(水) 17:14:56.87

「だいじょぶですよ~。あ、すみません少し席外しますね」


役員たちに断りを入れ生徒会室を出る


「どうしたんですか先輩、わたしに会いたくなっちゃいましたか~?」

向こうから来ることなどないと思っていた故に喜びが大きい
自然と笑顔になる

「あざとい……。これ、渡そうと思ってな」

「なんですか?これクッキー?どうしたんですか先輩あざといです」

「うるせー、いろんな奴に配ってんだよ。で、余った分やる奴が思いつかなくてな、
 いらないなら俺が食うから気を遣わなくていいぞ」

「いえいえいりますよ!貰えるものはなんでも貰っておきます」


むぅー。プレゼントはいいんですが理由が気に入りません。わたしはついでですか。

84 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/06(水) 17:15:54.09

「そうか、じゃあ俺はこれで」

「え、もう帰っちゃうんですか?」


せっかくのチャンス、逃したくはない


「いや、ほかに用途かないし……部活もあるしな」

「そういわずにちょっと寄ってってくださいよ。お茶出しますし、仕事もたくさんありますよ~」

「いらねーよ。よくそれで引き止められると思ったな」

「えー先輩お茶好きじゃないんですかー。じゃあ仕事だけでもどうですか?」

「逆だよ!仕事がいらねーっての、じゃあな」

「じゃあ奉仕部に依頼です!手伝ってください!」

「うちは何でも屋じゃねーっていったろ。ただの仕事の手伝いじゃうちの部長はお断りなんだよ」


そういえばそんなこと言ってた気がする。ならば煽り作戦です。


「先輩は雪ノ下さんの許可がないと動けないんですか?」

「ああ。飼いならされてるからな」


く、手ごわい。


「じゃ、じゃあ……先輩個人にお願いは、ダメですか?」


裾をつかみ、うつむきがちに問う
これは効いたのか、少し顔をゆがめる


「俺は働かないと決めているからな」


わー、これでもだめか。絶望的に脈がないのだろうか。
でもクッキーくれるくらいにはわたしの印象は残ってますよね。

85 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/06(水) 17:16:30.36

「ただ、ほんとうにやばくなったら頼れ。そのときはなんとかしてやる」

「…! ほ、ほんとですか先輩!約束ですよ!」

「お、おう。そんなやばいのか」

「えへへ~、やばいですよ~」

主に先輩のせいで。

「そんな笑顔なら大丈夫だな、じゃこれで」

「ストップです先輩!携帯!携帯貸してください!」

「あ?なんでだよ…変なことすんなよ?」

「といいつつ、渡しちゃうんですね。危機感薄いですよ」

「やっぱ返せ」

「ウェイウェイ!……はい!できました!わたしのメアドと電話番号です」

「ああ。おい……愛しの後輩って誰だよ。うちの妹まだ入学してないんだが」

「わたしのことですよ!?ていうかシスコンなんですね、ドン引きです」

「まあいいや。今度こそ、またな」

「はい!ありがとうございました、先輩!」



やりましたね。やりましたよ!遂に進展しちゃいましたよ!
いやー、がんばったなわたし。

うん、これでがんばれる。


これからの事を考えて思わず笑みがこぼれる

ようやく始まる、わたしの恋路


97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/07(木) 07:09:09.24
>>62
>一方雪ノ下はゲームを興味深そうに眺めちょんちょん触っている。

ん?かわいい
103 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/07(木) 17:28:56.98


「ただいまー」

「あ、お兄ちゃんおかえりー」


冷えた体を温めるために炬燵に潜り込む
僕を癒してくれるのは君だけだよ、炬燵君。それとマッ缶。あと戸塚くらいかな。
だけ、といったな。あれは嘘だ。


あの後一色と別れ、部室に向かった
すでに由比ヶ浜は来ていて、雪ノ下と談笑していた


努めて平静にいこうと思っていたのだが、最初の一声が裏返ってしまった。
それに連られ雪ノ下もキョドってしまい、何ごとかと
由比ヶ浜に問い詰められたりしたが、なんとかいつも通りに過ごすことが出来た。



「ねぇーお兄ちゃん。雪乃さんとどうだった?」


ニヤニヤしながら聞いてくる


「あ?なんもねーよ」


「えー!なんにもないことないでしょ、なんか進展は?」


「なんだよ進展て……。別にいつも通りだったぞ」


その返答に小町は、あれー?おかしなー?なんて言っていたが、
なにもおかしいことなんかない。俺にとって、おそらく雪ノ下にとっても、
あの出来事は気恥ずかしいものではあったが、自分が一歩進むためのものだった。

だから、特にそれを引きずることもなく受け止められた。受け入れた。

104 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/07(木) 17:29:25.81

過去の自分が、今の俺を見たらなんと言うだろうか。
無謀だ。学習しない。勘違い乙。なんて言うかもしれない。
もしかしたこの先、何も信じられない状態に戻ることもありえる。

だが、そんなことに対して、心の中でフッと笑う。

俺は卑屈で、陰湿で、劣悪だ。つまり闇属性。
闇属性の孤独な傷心主人公。なにそれかっこいい。俺が編集者だったら速攻でボツだね!
傷ついても、その分なにか得られれば文句がない。

開き直りではない。失敗しても、それはいい経験だとか、
青春の1ページだとかいうつもりもさらさらない。


ただ、純粋に欲しくなってしまったから。わがままを言う子供のように。


ずっと焦がれてきたもの。何度も諦め、そのたびに何度でも手に入れたがる。


傷をつけずに生きていくなんて不可能だ。だからその分の見返りがあるべきなのだ。


今まで傷を最低限に抑える生き方をしてきた。それでも、0ではない。


だから、傷の量関係なしに、見返りを求めようと思った。ただそれだけのこと。

105 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/07(木) 17:30:19.63


「ふふ。小町はね、嬉しいよお兄ちゃん。成長したね~」

「何様だお前は。ていうか勉強はどうした、もう後がないぞ」

「もー!受験生にそういうこといったらダメでしょーが!やる気がなくなる以前に心が折れるよ!」

「そうなったら俺が癒してやるよ。今の八幡的にポイント高い」

「うわぁ……、今のはポイント低いよ。ちょっと気持ち悪い」


え?まじで?
やばい心折れそう。


「でも、妹である小町には効果ばつぐんだよ!あ、今の小町的にポイント高い!」

「はいはい、たかいたかい。じゃあ俺は自分の部屋に籠るとするかね」

「ほいほーい」


最後に一言、勉強がんばれよ、と言おうとしたのだが、頑張ってるやつにそれは禁句だったな。
だから、妹に対して適切な言葉を使おう。


「小町、愛してるぞ」

「……へ?……ふぇええええええええええ!?」


謎の小町の絶叫を聞きリビングをでる

なんだよ、おまえが言えって言ったんじゃねーか……

106 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/07(木) 17:30:50.87


  * * *



自室にて、ラフな格好に着替え、ベッドにダイブする
ふと、携帯を見てみるとメールが届いていた


「どこからだ?」


我ながら、"誰"ではなく"どこ"で思うあたり自分の友好がないのがうかがえる


「あん?一色?……さっそく泣き言いってんじゃねーだろな」


メールの相手は今日、アドレスを交換したばかりの一色いろはであった。(登録されてた名前は修正した)


『こんばんは先輩!特にこれといった用もないんですけどメールしてみました☆』


なんなんだこいつ。まあ、特に用もないならスルーでいいな、スルーで。


と、携帯を放り投げ、読みかけの本を取り出す

107 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/07(木) 17:31:39.01

――――――
―――――
―――


本を読み進めて数分、携帯のバイブ音が聞こえてくる

確認してみると、予想通り一色だ


『先輩メールみました?暇だから見てますよね?返事くださいよー』


「はぁー……。用もないのになんて返せばいいんだよ」


一言
『見た。用がないなら話すこともないだろ』
とだけ送る

すると、ものの数秒で返信が来る

由比ヶ浜といい、なんで女子校生っていう生き物はこうメールが好きなのだろうか。


『ぶー、冷たいですよ先輩……泣いちゃいます。ていうかそれ、コミュ力低すぎですよー』


うわっ……わたしのコミュ力、低すぎ!?
このネタ前にもやったな。


『いつも通りだ。あと、あざとい。こちとら、メールする相手なんてそうそういないからな』


『えー。結衣さんとか雪ノ下さんとやり取りしてるんじゃないんですかー?』


『たまに由比ヶ浜とすることはあるが、そんな頻繁でもないし、雪ノ下に至っては連絡先知らん』


あとは平塚先生くらいだが、あれはやり取りというよりは、
業務連絡とか、個人の日記を無理やり読まされてる感がある。


『……へー、意外です。ところで先輩、明日の放課後暇ですか?
 暇ですよね、ちょっと付き合ってほしいんですけど』


なんか興味なさげなんですけど、聞いてきたのあなただよね?別に興味持たなくていいが。
てか、さっきばっちり用がないって書いてあったよな。確実に今思いついただろ。


『放課後は部活だから無理だ。知ってるだろ』

『でも、依頼なんてほとんど来ませんよね?大丈夫ですよ』


まったくもってその通り。

108 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/07(木) 17:32:07.93

『どこにいって何するかによる。仕事と関係あるならついてく』


これに対する返信に少しかかったのか、間が空いてからメールが届く


『もちろん仕事です。今、受験関連で仕事中なわけですけど、少し相談事がありまして。
 話が長くなるので、直接話をしたいんですけど……駄目ですか?』


……どうするかな。確かに部活は暇なことが多いし、俺一人かけたところで問題ない。
依頼を受けるかどうか決めるのは雪ノ下だ。俺が直接依頼人に合わなくても大丈夫だ。

…仕事、大変そうだしな。とりあえず、話だけでも聞いてみるか。


『わかった。じゃあ、集合場所はサイゼとかでいいか』

『ありがとうございます。というか、同じ学校にいるんですし、
 校門集合とかでいいじゃないですか…。サイゼはなんかあれですけど賛成です』

『じゃあ、そういうわけで。おやすみ』

『ぶった切ってきましたね…。まあいいです、おやすみなさい』


決してもう寝る時刻、というわけではなくあいさつ的な意味だ。


仕事内容はなんだろうか。めんどうじゃないといいんだけどなー。
大体俺がやる仕事は、面倒な気がする。というか仕事自体がめんどい。


おかしいなー。
仕事から逃げているはずなのに、逆に囚われている気がするよー。

109 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/07(木) 17:32:47.73


  * * *



「あ、せーんぱい!」

「……なんでいる」


放課後、今日は部活を休むと伝え、校門を出ようとしてたところである。
なぜかそこで待機していた一色に捕まってしまった。


ちなみに、奉仕部の2人には何事か聞かれたが、特に隠す気もなく正直に話してきた。

最初は訝しんでいた彼女たちだったが、まだやるか決めてないということと、
内容によっては頼ってもいいかと聞いたところ、快く承諾してくれた。



「だって、店で合流って完全に二度手間じゃないですか。
 どうせ、前みたいな一緒にいて恥ずかしいとかいう理由でしょうけど、
 店の中で合流するのも恥ずかしいですよ。あと駅前ならどっちみちうちの学生多いですし」


ぐぬぬ……。こやつやりおる!


「……たしかにそうだが、二人一緒に歩いてるところを見られる方がやばいだろ。
 言っとくが俺は、嫌われ者だぞ」

「全然やばくないです。それに先輩のことなんか誰も見えてませんよ、自意識過剰です」

「おい、俺は透明人間か」


もしくは、幻のシックスメン。


「とにかく、もう合流しちゃったわけですし、今更時間ずらすなんてさせませんよ?」


ニコッとはにかみながら歩き始める。
やめろよ、可愛いじゃねーか。


「……つーか、いいのかよ。葉山とかに見られでもしたら」

「今は部活中なので問題ありません」


そういえばそうだったな。
こいつは部活出てるのだろうか。

110 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/07(木) 17:33:20.26


しかたなく、自転車を押して歩く


「一色、カバンこっちよこせ」

「え!?な、なんでですか?なにするつもりですか!?」

「別になんもしねーよ……。チャリあるし、カゴにいれてけばって意味だ」

一色は少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔に変わる

「先輩、あざといですよ。もしかして口説いてるんですか?すみません今は無理です」

「うぜぇ……。ま、べつにいいならかまわねぇよ」

「まあ、お言葉に甘えるんですけどね」


というと自分のカバンを自転車のカゴに詰める

おい、今の無駄なやり取りはなんだったんだ。

そんな風に思いつつもこんなのも悪くはないな、なんて思ってる俺がいた


111 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/07(木) 17:34:09.36

  * * *


「さて、何食べましょうか。甘いものですかね。それともガッツリいっときます?」

「ドリンクバーくらいでいいだろ……。そんなかかるのか」

「そりゃかかりますよー、今日は帰しませんからね?せーんぱい」

「あざといっての。ちょっと妹に飯いらないって断りいれてくる」

「え?……あ、はい」


といって席を立つ


残された一色は小さな声でつぶやく


「にへへ~。ほんと先輩はお人好しですね~」


そう言った一色の頬は、だらしなく緩んでいた


「しかし、どうしますかね。まさか時間かかるっていうのを信じるとは思いませんでしたからねー。
 なんとかして引き延ばさないと、先輩の妹さんに悪いですねー」


そこには、今更ながら仕事の内容を何にしようか悩んでる生徒会長がいた

112 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/07(木) 17:34:44.17

――――――
――――
――


「悪いな、少し時間かかった。妹のやつにダル絡みされてな」

「いえいえ、おかげで考える暇もできましたしー。妹さんと仲いいんですね~」


俺がいない間仕事のこと考えてたのか。なかなかきちんと会長やってるんだな。



「そうか。まあ、小町ほどかわいい妹ならそりゃ可愛がるだろ」

「……シスコン。そこまで言われると気になっちゃいます。どんな子なんですか?」

「あー、一言で言うとお前みたいな感じだ」

「え、え?せ、せんぱい、こんなところで急に告白ですか!?」

「は、ばっかちげーっての!性格の特徴がだいたい似てるってだけだ。実際は全然違う」

「でも、わたしを可愛がりたいって意味にも聞こえます。
 すみませんまだちょっと恥ずかしいんで無理です」

「なぜそうなる。あーもうこの話はやめだ。つーか仕事しに来たんだろ」

「お、せんぱ~い。やる気満々じゃないですか~」


う、うっぜぇ……


113 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/07(木) 17:35:23.62

  * * *



「で?具体的になにするんだ」


「えっとですね、せっかく私が生徒会長になったんですから、他と違うことやりたいんですよ。
 1年生にして仕事をきちんとこなし、ユニークな発想とイベントを思いつくなんて、
 ポイント高いじゃないですか?」


そこらへんが小町っぽいんだよな。小町のほうが100倍可愛いけど。


「そこで思いついたのが、我が校を受ける受験生の緊張を和らげるようなイベント。
 終わった後の労いのイベントって感じなんですけど、どうでしょう?」


なるほどな。確かに受験てのは将来を決めるであろう大事なイベントだ。
故に緊張するし、体調も崩しやすい。それを和らげることで万全の状態で試験に臨んでもらう。
総武校の印象もよくなるし学校側としても、受験生にしても双方にプラスの効果を得られる。
まさにWin-Winの関係だね!


労いのイベントというのもいいだろう。
張りつめていた緊張感をなくし、リラックスさせることができる。

しかし、このどちらにも穴がある。


「発想自体はなかなかいいな。だが問題もある。まずは前者の案だが、
 緊張を和らげるというのは非常にいい。では、緊張を和らげうるイベントとは何か。
 インパクトの強い物か、そうでないのか。そうでない場合あまり効果がない場合がある。
 それに、インパクトが強いと覚えたことを忘れかねない。実際はそんなことないかもしれないが、
 そこは問題じゃない。逃げ道を与えてしまうことが問題なんだ。万が一受験に失敗した場合、
 あのイベントのせいで内容が飛んだ、どうしてくれる。なんて責任問題になりかねない」


「う、うわぁ…。それはひどい話ですね……」

114 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/07(木) 17:36:21.15

「次に後者だ。アフターケアまでしてくれるのは本人たちにとって嬉しいだろう。
 ここまで頑張ってきて、やり終えた人たちにプレゼントを与えるというのは、
 好印象だし、いい気分転換だ。だが、失敗した人はどうする。自身がない、
 落ちたかもしれない、そんな不安な気持ちを抱えた人たちからしたら、
 終わったねーなんていって騒いでる人たちがいるのは気に食わないだろ。」


「な、なるほど……。先輩って頭いいんですね~見直しました」

「……このくらい誰でも思いつく。で、それに対するプランはあるのか」

「ないです」

「は?」


おい、こいつ本気でただ自分がやりたいことやるだけだったのかよ……


「あ、ち、違うんですよ!?私ひとりじゃ厳しかったので、このプランを考える
 パートナーが欲しかったんです」

「そうだな、確かにひとりで考えるのにも限界がある。自分じゃ気付けない
 ポイントってのはあるからな。そのために会議があるわけだし。」

「で、ですよね~。と、いうわけで協力してほしいんですけど……お願いできますか?」


……乗りかかった船だし、その対象には小町も入るからな。
あの毒虫は知らん。勝手に落ちろ。


「わかった、手伝おう」

「ほ、ほんとですか!?」

「ああ。しっかしそうなると、俺だけじゃ厳しいな……。
 雪ノ下たちにも手伝ってもらうとするか」

「え…あ、はい。そのほうがいいですよね……」


…? ああ、こいつ雪ノ下が苦手なのか?


「雪ノ下たちとは俺を通してやってけばいい。お前は生徒会メンバーをメインに動いてくれればいい」

まあ、それが普通なんだが。
しかし、一色の歯切れは悪い。ぼそぼそとなにか呟く

「やー、そういうことじゃないんですけどー……。わかりましたそちらはお任せしますね」

「ああ、了解した」

「せんぱい……、ありがとうございます」

「気にすんな、そういう部活だ」


と告げると、少し困ったような笑い方をする


「頼りにしてますよ、先輩」



そのあとは軽いアイデアを出していく作業に移り、ある程度でたところで解散ということになった

115 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/07(木) 17:37:10.79

  * * *



「もう、暗いし送ってくぞ」

「いえ、そんな遠くありませんし、気にしなくて大丈夫ですよ」


ん?てっきり口説いてるんですか?とか聞かれるかと思ったが。
まあ、はっきり断られてるのを無理して送る必要はないな。


「そうか、じゃあまたな」


と、背を向けて走り出そうとすると、控えめに背を引かれる


「おい、一色?」

「先輩……。雪ノ下さんとか、結衣さんのこと…どう思ってます」


どう思ってるとはどういうことだろうか。
どんな人物かだろうか。あるいは…
いやいや、とかぶりを振る


「雪ノ下は……何でもできているようで、実はできない。不器用な奴、て感じか。
 由比ヶ浜は……アホだな。うん。でも、そのアホさになんども救われた。
 俺も…雪ノ下も…」

「…そうですか。じゃあ、わたしは?」

「おい、さっきからどうしたんだ?おまえ――」

といったところで一色にさえぎられる

「答えて…くれませんか?」

116 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/07(木) 17:37:43.66

といわれて考える

俺にとって一色とはどんな存在だ。

生徒会長に半ば無理やり推薦したことで負い目がある。

いや、ちがう。こいつはもう大丈夫だ。生徒会長として充分やっていける。

ならば、負い目を感じる必要もない。

じゃあ、なぜこいつを手伝う?

奉仕部だから。仕事だから。……はたしてそうだろうか。

それならば雪ノ下たちと共に話を聞けばよかった。

俺が個人的に話を聞きたかった?

……どうだろうか。

一つだけ思い当たるとしたら――――

117 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/07(木) 17:38:20.44

「ほっとけない、可愛い妹……みたいな存在…かもな」



最後のほうに行くにつれ、声は小さくなっていったが、一色にはしっかりと聞こえていたようで


「なんですかそれ。口説いてるんですか?」


その声音は、いつもの明るく、あざといものに戻っていた


「ちげーよ。じゃあもう大丈夫そうだし、いくな」


「せんぱい」


呼ばれて振り向こうとするが、それは拒まれた
後ろからなにかに抱き着かれている。いや、この場において一色意外に思いつかないのだが


「お、おい?一色?」


なにか言ってるようにも聞こえるがその音は小さく、外の喧騒もあってか聞くことは叶わない


「えへへ。ちょっと感極まっちゃいました~。それじゃ先輩、おやすみなさい!」


と言って、その場を逃げるように去っていく


俺はうるさく、鳴り止まない心臓を誤魔化すように全力で自転車を漕ぐ


一体何のつもりだったのだろうか。最後のほうの一色はなにかおかしかった


「……あー、さぶ」


少し、頭を冷やしてから帰るか。



途中MAX缶コーヒーを買い公園に寄っていく
暖かい缶を手の中で少し転がし、一気にあおる


「……あっま」

その日飲んだコーヒーは、いつもより甘く感じた



118 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/07(木) 17:40:25.80
終了
いろは視点で甘いやつ行こうかと思ってたけどなんかシリアスになっちゃったな
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/07(木) 17:49:02.71
十分甘いゾイ
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/07(木) 17:52:44.36
いろはす可愛すぎていろはすが甘いわ
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/08(金) 00:17:06.66
なにこれくっそ可愛い
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/08(金) 01:00:17.68
クッキーには多少塩を混ぜ込んだほうが美味しくなるんだぜ
132 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/08(金) 01:35:06.60

やっちまいましたね。
あれはさすがにまずかったですかね。


別れ際に、自分がしたことを思い出しつつ、うわー、なんて言いながらごろごろと自室のベットを転がる


いやー、だって仕方ないじゃないですか。なんかそういう雰囲気だったじゃないですかー。


空気に流されて行動するのは、これで二回目
一度目は、葉山先輩への告白


ほんと、先輩はわたしを狂わす。
自分自身の行動に、驚かされる。


「ふへへ、かわいい妹~。えへへへ~」


先輩に言われた言葉を反芻しては、湧き上がる気持ちを抑えられず、枕をぎゅっと抱きしめる


はあ~本格的にわたしは先輩にお熱のようです。
でも、いまいっても絶対無理ですからねー。我慢我慢。


「あれ?妹みたいな存在ってよく考えたらマイナス?」


よく聞く話で、『妹のように可愛がる』とか『妹みたいな存在』っていうものは、
恋愛対象になってないようなことがしばしばある。

といっても、友達と話を合わせるために読んでいる恋愛系の少女マンガの知識だったりで、
実際にはわからない。だが、あり得る話だ


先輩に妹がいるのは知っているし、わたしに似ているとも言ってた。
ということは、今の評価はまずい気がする。
でも、思っていたよりはいい結果だった。
まだ先輩のことをよく知っているわけじゃないけど、拒絶される可能性は十分あった。

それを考えると、出だしとしてはいいのかもしれない。

今はそれでもいいだろう。まだ始まったばかり。
とりあえずは余韻に浸りたいと思った。


「は~、切ないです。せんぱいー」


悶々とした気持ちを抱えたまま、気がつけば微睡の中にいた

133 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/08(金) 01:36:08.56

  * * *



朝、学校にて
先輩に会えないかな~なんて思いつつ、昇降口周辺を見回していた

すると偶然にも、その姿を発見する


「あ、せんぱ―――」


しかし、その言葉は最後まで言えなかった


「よう」

「あら、おはよう。比企谷くん」


その場に雪ノ下雪乃の存在があったからだ


「昨日、一色に仕事を頼まれてな。ちょっと俺一人じゃ厳しいから力を借りたい」

「ふふ、わかったわ。それにしても、仕事嫌いなあなたが積極的に仕事をしにいくなんて、
 皮肉な話ね」

「まあな。むしろ今仕事の辛さを経験することで、将来仕事に就くもんかと決意するまである」

「なぜそうなるのか全く理解できないのだけれど……」

呆れたように溜息を吐く

134 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/08(金) 01:36:38.13
「俺が理解しているから何も問題ない」

「問題しかないのだけれど……。ほんと、小町さんが大変ね」

「そうだな、うまく専業主夫になれなければ小町に養ってもらうしかないからな」

「それはどうなのかしら……」

彼女はふいに笑うと

「あなたのことだから、なんだかんだ言いながら働くのでしょうけど、
 もしそうなったら私が面倒を見てあげるわ」

先輩は顔を赤らめ、焦ったように言う

「お、おい。変な勘違いされるぞ」

「え?……あ、あぅ、ち、ちがくて、その……」

「いや、いい。わかってる」

「……わかってないじゃない」


軽くむくれて、小さな声でつぶやく


てっきり慌てた雪ノ下さんが先に行ってしまうのだと思っていたが、
二人はそのまま校内を歩いていく



その光景をみて、胸が絞めつけられた


「……っくはぁ。…きっついなぁ」


先輩、いつの間にあんな仲良くなってるんですか。
ついこの間までびみょーな感じだったのに、進むの早すぎですよー。


「……かなわないなぁ」


しばらくその場を動けず、思考が停止していた


もたもたしてられない、ってことですよね。
しかしあの人相手に駆け足では意味がない。
どうすればいいんだろう……



先ほどとは一転、わたしの気分はどん底に落ちていた

135 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/08(金) 01:53:38.04

  * * *



「おい、またか会長」

「はやかったですねー。昨日まではうきうきしてたのに」


現在、生徒会室でわたしは机に伏せていた


なんだか、ここがわたしの安らげる第二の場所な気がする。
第一は当然先輩。


役員たちとは友達、のような間柄ではないが、それなりに気を抜ける人たちだった
取り繕わなくてよくなったのは、わたしの想い人が露呈し、距離が近まったからかもしれない


「だってー、衝撃的なものをみせられてー、そりゃこうもなりますよー」

「……別に何があったか話せとはいわんが、相談事ならいつでも聞くぞ。
 仕事に支障が出るからな」

「やっぱツンデレだねー」

「なかなかテンプレの人だったんですね、副会長さん」


この微妙な関係が妙に落ち着く
打ち明けてしまおうか、とも思ったがそれに意味はない


そうだ。今はこの仕事をどうするか決めないと。
グダグダしてる暇があったら、やれることをやる。

わたしが先輩に近づけるチャンスは、今はこれしかない。
だからちゃんとやんなきゃ。


キリッとした表情をみせ、役員たちに口を開く


「みなさん聞いてください。一つイベントを考えてまして―――」


137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/08(金) 03:21:47.49
やばい、甘すぎて死ぬ…
147 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/09(土) 13:50:14.04


「――――ということなんだが」


奉仕部にて、昨夜一色に頼まれた仕事を2人に説明した


「なるほど……。彼女、しっかり仕事をしているのね」


「ね!……一時はどうなるかと思ったけど、ちゃんと会長やれてるんだ」


ツッコむところそこかよ……
確かに、自分からイベントの提示してくるのは意外だったが。


「で、どう思う」

「そうね、現状だとあなたの言ったように失敗する可能性が高いわ。
 なにかそれを打破するものを見つけないといけないのだけれど」

「あ、じゃあさ、自由参加で試験前日にっていうのはどう?
 自由なら参加した人の責任だし、こっちに被害は来ないんじゃない?」


ガハマさんがちょっと黒いこと言ってる……
だが、それではまだ弱い。


「それも無理でしょうね。試験前日というのは最後の追い込みをしたい大事な時期なわけだし、
 リラックスさせたいという目的のイベントなのだから、全員参加型でないとあとあと問題が出るわ」

「人が集まるかどうかも怪しいしな。やるんなら当日ちょっとした息抜きになるモノになるが……」

「それだとやはり、そのイベントのせいで落ちた…なんて話も出てくるでしょうし」

「うわー……。なんか難しいね」


雪ノ下は小さく嘆息し、由比ヶ浜はちょっと引いているようだ。

148 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/09(土) 13:50:55.65

「……なんか悪いな、勝手に依頼受けてきて頼んじまって」


というと二人は微笑む


「気にしないでちょうだい。これは奉仕部の活動なのだし、あなた一人にやらせる方が不服だわ」

「そーそー。……あたしたちもヒッキ―に頼られて嬉しいんだよ」


別に私は……、なんて雪ノ下が続け、またまたーなんていいながら由比ヶ浜がじゃれつく

……別にいいんですけど、よそでやってもらえませんかね。美少女二人の絡みなんて目の毒だ。



「そうか、ありがとう。んで、話を戻すが――――」



そのあともいくつか意見を出しては、問題点を指摘するという作業が続いた
昨夜同様、有用な意見は出せず、改めてこの依頼の難易度を実感した


なにせ前例がない。どこかにはあるのかもしれないが、手元に情報はなく、
また、俺や雪ノ下まで知らないとなればそれが上手くいったものではない、と想像できる。


とりあえず、一旦生徒会と連携を取った方がいいのだろうか。向こうでも意見交換はしているだろう。
……一色が、雪ノ下を苦手としているようなのが気がかりだが、そうもいってられない。

149 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/09(土) 13:51:28.17


「……直接生徒会と話し合うか」

「そうね……。生徒会主催なのだし、向こうの意見も聞きたいところね」

「じゃあ今から行く?あたしが連絡取ってみるよ」

「いや、いい。俺から連絡入れる。受けたのは俺だしな」



由比ヶ浜は、そっか、といって携帯をしまう。が、違和感に気付き慌てたようにまくしたてる


「って、ヒッキーいろはちゃんのメアド知ってるの!?いつ?どこで!?」


雪ノ下もまた怪訝そうにこちらを軽く睨んでいる


「別に驚くことじゃねーだろ。昨日だよ。連絡先知ってた方が連携取りやすいからな」

「……そうね。一色さんも、あなたとなら気兼ねしなくていいでしょうし」


その視線は相変わらず鋭い

こわいからやめてくれ。由比ヶ浜もなにか納得いっていないようでプクーッと頬を膨らませる
つついてやろうか。や、恥ずかしいんでやりませんけどね。


とりあえず一色にメールで伝える
するとすぐに返信が来て、今すぐにでもやりたいとのことだった


その旨を二人に伝え、共に生徒会室へ向かった

150 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/09(土) 13:52:18.35

  * * *



「えー、皆さん今日はお集まりいただきありがとうございます」

「そういうのいいから。普通に始めてくれ」

「むっ!先輩、これはわたしの生徒会長としての進行の練習なんですよ!」

「確かに実践してみることは大事ね」

「ですよね~!や~い先輩怒られてやんの~」

「いや、別に怒られてはいないだろ……。むしろ今のお前の態度に怒ってるぞ」

「ええ!?すみませんでした!」

「……いえ。始めてもらえるかしら」

「はい!それではまず、今回の議題についてですが――――」



雪ノ下が苦手なのかと思ったがそうはみえない。
それを隠すことができるのも、彼女のスキルの一つなのだが。
進行もしっかりできている、他の役員とも以前のような距離はないようだ。



ここまでのまとめのような話が終わり、会議は次の段階に進む
151 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/09(土) 13:52:47.46

「それで具体的な案はまだでてきてない感じです…」

「そうね。では、考え方を変えましょう。これまでは先に気分転換になるようなアイデアを
 考えていたわけだけど、問題点をまとめてそれを潰していくやり方にするわ」

「そうだな。とりあえず今まで出た問題点をまとめちまうか」


皆、思いつく限りの問題点をあげ、
書記の子がそれをホワイトボードに書き上げる


リストに上がった大きな問題点はこうだ。


・受験に失敗したときの責任転嫁

・成功者と失敗者を引合すことで起きる不和

・個々に対し不平等になる可能性


細かい問題も多々あるが、大体に共通する問題はこの3つだ。


「ほへー。案外まとめてみるといけそうだね」

「ばっかおまえ、これを消化するのが大変なんだよ」

「……やっぱり、無謀ですかね」

「どうだろうな。……少なくともいい試みではあるんじゃないか」

「……せんぱい」

「んん……話を戻してもいいかしら」


ジロリと一睨みされたあと、会議は続行される

152 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/09(土) 13:53:29.59


  * * *




結局、あれからもうまい解決策は出てこなかった。
まだ初日だしこんなものだろう。と言いたいところだが、
イベントの規模にもよるが、このままでは間に合わなくなる。


とりあえず今日のところは解散し、帰宅した

リビングに入ると、炬燵に潜り込む小町を発見する


「おーい、風邪ひくぞー」

「寝てないからだいじょうぶー」


それは寝落ちしそうな奴が言うセリフだ。ソースは俺。


「ちゃんと勉強したのか」

「してるよー。今は休憩中なのー」


そうか、休憩中ならしかたない。
俺もよく休憩を挟んだものだ。あれ?だめじゃねそれ。



……そういえば、受験生側の意見というものを聞いていなかった。小町に聞いてみるか。

153 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/09(土) 13:54:16.51


「なあ小町」

「なにー?」


こいつ本気で寝ちまいそうだな。言葉数はいつもより少ないし、気怠そうだ。


「……受験当日に緊張感を紛らわすようなイベントってうれしいか?」

「えー?なに?なんかやるのー?そいえば最近帰り遅いよねー」

「ああ。受験生のためになにか出来ることはないかって、生徒会長さんに依頼されてな」


というと小町はガバッと起き上がる


「うーん、小町的には嬉しいんだけど、やっぱり追い込みたいだろうし、試験ぎりぎりまで
 暗記モノとかやりたいと思うよ?」

「だよな。じゃあ試験後に、お疲れ様的なのはどうだ?」

「それはダメだよー。試験にうまくいかなかった人たちが可哀想だもん」


やはり、俺たちで考えうる問題は、受験生の間でもトラブルになりかねない…か。


「ねえお兄ちゃん、それって当日じゃなきゃだめなの?」


「ん?いや、前日だと同じように追い込み期間だろ?それに当日の緊張感を和らげたいとなると―――」


「そこだよお兄ちゃん!そこで間違ってるんだよ!」


途中で言葉を遮られ小町に指を指される。やめなさい、行儀悪いわよ。

154 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/09(土) 13:56:23.15

「あん?どういうことだ?」

「ちっちっちー、お兄ちゃんもまだまだ甘いね!前提を間違えてます」


……ちょっとむかつくが、ここは素直に聞いておくべきだろう。
小町の言うことだから聞いてあげるんだからね!あ、今の八幡的にポイント高い。


「たしかにみんな緊張するだろうし、それを和らげたいっていうのは凄くありがたいよ?
 でも、緊張感って悪いことばかりじゃないでしょ?」

「……まあ、一理あることもある」


緊張というのは自分の行動を制限するものであるが、緊張感というのは闘争心に近い。
緊迫した空気の中で自分の力をどれだけ出せるかの勝負どころである。
モチベーションといってもいいのかもしれない。


………いや、まて。モチベーション?


気付くと小町がその通り、といった感じに頷いている


「感のいいお兄ちゃんはもう気づいたと思うけど、
 モチベーションを上げるイベントのほうが盛り上がるし、俄然やる気がでるんだよ!」


「……つまり、当日にやる必要はなくて数日前に、ここが総武校のいいところ、
 というのを紹介してこの学校に入りたいと思わせることが大事なわけか」


「そゆこと!」


なるほどな、それは盲点だった。たしかにアプローチを間違えていた。
この前それを平塚先生に教わったばかりなのに、もう忘れていた。

155 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/09(土) 13:56:51.33

「あとね、試験後の受験生のお疲れ様パーティーとかはね、各自でやると思うし、
 学校側はあまり考えなくてもいいんじゃないかな」


それもそうだな。学校主催の固っ苦しい物よりも、
友人と勝手に騒いだ方が盛り上がるし気も抜ける。

ぼっちには関係ないですけどね、フヒヒ。


「……ありがとな、小町。ちょっと息詰まってたから助かった」

「おお!お兄ちゃんが素直に感謝するなんて……今日はお赤飯だね!」

「いや、いみわかんねーから……」


別に珍しいことじゃないだろ。
……え?おれって感謝できる人間だと思ってたけど違うの?


「んじゃ、さっそく作戦考えるとすっかな」

「おー、がんばれお兄ちゃん!小町のためにもね!」


そういや一色のやつ、俺が前に言った妹のためにもいい学校にしてくれ、
ってやつを覚えていて今回のイベントを思いついたのだろうか。まさかな。


可愛い妹の頭を一撫でしてやると、えへへーなんてかわいい声を出す


………さて、これで方向性は決まった。あとは何をやるかだ。

165 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/10(日) 01:58:15.75

  * * *


再度生徒会室に集まり、方針の変更を促す
そちらの方が現実的かつ、対象である受験生直々の提案だ
全員そのことに不満は無いようで、新しい議題を前に議論がなされる


「ただ総武校の見どころを説明するだけでは効果はないでしょうね」

「ああ、それに学校説明会とか最低限の知識は大方しってるだろ」


副会長がふむ、と何か考える


「となると、この学校の特色を実際に触れてみてもらうのがいいんじゃないか?」

「あ、それいいですね!…部活の体験入部、とかですかね?」

「まあ、ありっちゃありだな。つってもうちの特色って言われても他になにがある」

「正直、前面に押し出せるようなものはあまりないのよね……」


雪ノ下は困ったように顔をしかめる

166 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/10(日) 01:58:45.35

「う~ん、うちの見所か~。あ!はやとくんとか!」

「おい、あいつは動物園のパンダか。つか、おい」

「え?あ、やば…」

「……パンダ」


なんか雪ノ下さんが反応してた気がするがスルーで。

それよりも葉山の話が出て一色は…


「それいいですね結衣先輩!目玉となる先輩がいれば女子はより燃えるでしょうし、
 問題は男子のほうですねー。あ、かわいい生徒会長なんてどうでしょう?先輩!萌えませんか?」

「いや…俺に聞くなよ。まあ釣れるんじゃないか?」

「釣れるって……なんか嫌な言い方ですね。でも、遠回しにかわいいよ、いろはって言ってますよね?
 人前で口説くなんてさすがですね。でも仕事に集中したいので無理です」

「お前の自意識過剰っぷりは俺もびっくりだ。……おまえらもこっちみんな」

「見てないわ。自意識過剰なんじゃないかしら」

「べべべ、別にヒッキ―のこと見てても何も得しないし!?じーしきかじょー?だよ!」


言葉重ねるのやめろ。恥ずかしくなるだろ。
恐らく意味を理解してないであろう由比ヶ浜さんにはあとで教えるとして、
一色のやつは、あまり気にしてないみたいだな。


「……おまえがそれでいいんならそれでいこう。葉山のやつも頼めば断らないだろ」

「じゃあ目玉は決定ですね。でも、そうなるとサッカー部の紹介になるんですかね?」

「いや、どうせなら"体験入学"だな」


雪ノ下はふむ、と顎に手をあて続ける


「それなら自分が入学したらどういうことをするかのシュミレートができて、
 個々人のモチベーションもあがるわね。比企谷くんにしてはまともな案がでるじゃない」


HAHAHA ! まるでいつも卑屈な案しか出してないみたいじゃないか! 自覚はある。

167 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/10(日) 01:59:20.59

「今回はトラブルとかじゃないしな。正攻法でなんとかなるならそうするさ」

すると雪ノ下は言いよどむ

「そうね、でも。……トラブルのときでも、あまり無茶…しないで」

「……善処する」

由比ヶ浜はにっこり笑うと

「大丈夫!3人でやればうまくいくから!」

「……そうね。ありがとう由比ヶ浜さん」

優しげな顔を見せると由比ヶ浜はまたじゃれつき始める

……話がそれたな。


「んで、具体案だが。まず受験生を男女で分ける。男子は一色に、女子は葉山に頼んで
 校内を見学してもらう。部活動も回ってもらうがテニスとサッカーをメインにする」

「あ、テニスならさいちゃんいるもんねー」


そのとおり。戸塚を衆目に晒すのは気が引けるが、あの天使っぷりをみせれば
男女問わずプラスになるだろう。


葉山は女子にはもちろんプラスであることは間違いないが、男子からはヘイトを集めかねない。

またその二つは目を引くものがあるので、最後にまわす。



「運動部のほうはそれで構わない。だが文化系に花が無くなる。
 そこで雪ノ下と由比ヶ浜にそっちの紹介を頼みたい」

「ええ、かまわないわ」

「うぇ!?う、うんやってみる。ゆきのんと一緒なら大丈夫」


その言葉に照れているやつがいたが、また逸れるのも癪なのでスルー

168 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/10(日) 01:59:50.81

「よろしく頼む。あとは好きな部活を体験させたり、自由行動で好きに動き回ってもらう。
 もちろん監視の行き届く範囲でな。部活もハードなことさせてけがをさせないよう監督する」


副会長がそれに一言


「監督は生徒会と委員会が責任をもって行う。あとでそれに対する打ち合わせもしておこう」

「ああ、頼む」


しかし、なにか足りない。部活動も学校の特色の一つであることに違いはない。
だが、それではまだ、わざわざ受験前にやるようなものではない。


「あの~、もひとついいですか」


一色が控えめに手を挙げる


「どうしたのかしら?」


「えっと、なんか物足りないなって感じて……。あ、悪いとかじゃなくてですねー」


少し歯切れの悪い一色だったが、顔を引き締め一つ、提案する


「なので、全体で集まってLHRみたいなことをやってなにか団結できるようなことをやらせたい…みたいな」


LHR
即ちロングホームルームのことである。
略すとなんかの団体みたいだがなんてことはない。大体この時間に修学旅行関連だったり、文化祭の出し物
についての話し合いをしたりする。
この時間は、学生にとって貴重な時間で、クラスが団結するまたとない機会だ。
いつもは小グループで行っている遊び。その規模が大きくなればなるほど、
なにかを成し遂げた後の気分はいい物になるだろう。

ちなみに俺はその団体の外にいる。
別に気にしてないけどね?ほら、そういうの苦手だし。


雪ノ下は満足そうに頷き、賛成の意を唱える


「いいと思うわ。出来ることは限られてくるでしょうけど概ね賛成よ」

169 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/10(日) 02:01:11.67

そういえば今回の彼女は、あまり口を出したり、仕切ったりしていないことに気が付いた。
いつもならあれこれ的確な指示やらしそうなものだが、一色を試しているような感じだった。

ふと、奉仕部の理念というものを思い出す。

腹を空かせてる人に餌を与えることはしないが、餌の取り方を教えてやる


自分の行動を振り返り、反省する。

少し手を出し過ぎただろうか。本来なら一色にうまく考えてもらい指揮させるとこなのだが。


「……っていっても、具体的なことは何も言えないんですけどね~」


少し頼りないところもあるが、十分だ。彼女は確かに成長している。


「それじゃあ僕たち在校生と一緒に授業受ける感じのほうがいいのかなー?」


これまで空気だった会計のひとが発言する


「あ、それいいね!現役生と一緒の方がりんじょーかん?とか味わえそうだし!」


おお、ガハマさん、その使い方は大体あってるぞ!だがなんとなくわかってない気がする。


「たしかにそれなら特別感もあるな」

「でしょでしょ!オリンポス?とかいうやつ!」

「まさかオリエンテーション、といいたいのかしら」

「そ、それそれ」


もはやわざと言ってるのではないかという間違い。なんなの?山なの?十二神なの?
というか、この場合オリエンテーションでいいのだろうか。


「そうだなやる内容としては、この学校に入って何がしたいとかの意見の交換の場だったり、
 俺たちがやってきた事のおさらいとかな。んで、最後にみんなで遊ぶ内容を決める会議」

「それってあたしたちも参加していいの?」

「むしろ参加することに意味がある。当然決まった人に頼むことになるが」

「ふ~ん。じゃあはやとくん、さいちゃん、いろはちゃん、ゆきのんとあたしってこと?」


雪ノ下は、いえ……わたしは、なんて言ってその場にいることを想像したのか、戦慄していた。

170 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/10(日) 02:01:43.55

「まあ、あとは戸部とかな。こういう時に盛り上がれる奴を呼んだ方がいいだろう。こういうイベントなら喜んで参加すると思うし」


いやー戸部ってホントいいやつだわー。
ちなみに盛り上がれる奴うんぬんをきいてホッと安堵していたやつが約一名。


「よし!それではとりあえず今までの意見をまとめて、固めていきましょう!」


そう言った一色いろはは、とてもいい笑顔をしていた




171 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/10(日) 02:02:29.09

  * * *



「あー、疲れたなー」

「そうね、少し根を詰め過ぎたかしら。でも時間もないのよね」

「だねー。なんかお腹すいちゃった」


会議は一段落し、ようやく帰りである
あとのことは生徒会と委員会にまかせるとして、俺たちのやるべきことはほぼないだろう。

あるとすれば、各人へのイベント協力の申し出と、当日のサポートだ。
当日、由比ヶ浜には少し働いてもらうことになるが、本人も乗り気のようで問題はない。


「あ、先輩」

「ん?ああ、悪い先行っててくれ」


一色に呼び止められ、彼女たちの歩も止まったので、先に行かせる


「どうした」

「いえ。いろいろとお礼が言いたくて」

「別に気にすんな。むしろ悪いな、少し手を出し過ぎて」

「そんなことないですよ、むしろ大助かりです。わたしだけじゃ無理でしたから」

「……おまえはよくやってると思うぞ」

「ありがとうございます」


えへへ、と軽く笑う
その自然な笑みに思わず見惚れてしまう


「わたし、先輩がいったような楽しい学校、作れますかね」


やっぱ覚えてたのか。あのときは適当に聞き流されたと思っていたが。


「さあな。先のことなんかわからん」

「えー、そこは嘘でもできるっていうとこですよー」

「自分以外のことに嘘はつけないからな」

「なんですかそれ」

一色は手を口元にあて、くすくすとおかしそうにしている

172 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/10(日) 02:03:02.75

もう用はないのか、そこで会話は止まる


「じゃあ、また次の打ち合わせの時にな」


といってその場を去ろうとすると、裾を引かれる


「……まだなんかあるのか?」


「あの、えっと。………いえ、なんでもないです」


なにか言いたそうにしていたが、本人が何でもないというのだからそうなのだろう。


「じゃあな、一色」


と、自然な感じで頭を撫でてやる。
………あれれぇ!?何やってんだ俺やばいやばい。通報されるまである。


自分の行動を不審に思いつつ、一色の反応を見る。下手したらマジで通報かもしれん。


「………っ」


一色は最初こそ驚いて固まっていたが、
次第に顔を赤くし、見られないようにするため腕でで覆うが、隠しきれてない


俺はその手をどうしたらいいかわからずそのままでいたのだが、
ハッと我に返り手をどける。


「す、すまん。つい」


上手く言葉が出てこず言いよどむと、一色が口を開く


「いえ、その、びっくりしましたけど……いやじゃないです」


最後の方は小さくて聞き取りづらかったのだが、そこはぼっちの習性。ばっちり耳に残ってしまった


「そ、それじゃまだやることあるのでし、失礼します」


逃げるように生徒会室の戸に手をかけるが、一旦止まりこちらに顔を向ける


「それでは……また」


まだ赤いのが引かない状態で明るく、優しい笑みを浮かべる
その姿が印象的で、彼女が去った後もその場を動けなかった


「……ほんと、何やってんだ俺」


顔が熱い。多分俺の顔も赤くなっているのだろう
いやじゃない、その言葉がぐるぐると頭の中を回り続ける

173 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/10(日) 02:03:36.46

「はら、へったな」


気を紛らわすように別のことを考えようていると、下駄箱に着く
そこには奉仕部の二人が待っていた


「あ、ヒッキ―おそーい!もうお腹ペコペコだよー」

「いや、しらねーよ。つか先に帰ったんじゃなかったのか」

「だって一緒にご飯食べに行くんなら待ってた方がいいでしょ?」

「いや、そもそも食いに行くこと自体初耳なんだが……」

「……私も、今初めて聞いたのだけれど」

「えぇ!?一緒に食べに行く流れじゃなかったの!?」


なぜか彼女のなかではそうなっていたようである。リア充の考えてることはわからんな。


「まあ確かに腹は減ってるしな」


雪ノ下もクスリと笑うと


「そうね、たまにはいいかもしれないわね」


と、前向きな返事をする。
それを聞いた由比ヶ浜は笑顔になり飛び跳ねる


「よーし、いこいこー!あたし甘いものとか食べたーい!」

「太るぞ」

「そういうこと言うの禁止だし!?」

「……少しくらいなら大丈夫じゃないかしら」


由比ヶ浜はだよねーなんていいながら雪ノ下にくっつく
雪ノ下は鬱陶しそうにしながらも強く拒絶したりしない


ほんと仲いいねー君たち。

174 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/10(日) 02:32:29.12

二人より一歩先を自転車を押しながら歩く


そういや、小町に連絡いれとかなきゃな。
もう出来てるかもしれないし怒られるかもな。


「あー、小町?今日飯いらんから。……そうだが。ん、わかった」


小町に伝えると、どうやらご飯の用意はまだのようだった。
一瞬で由比ヶ浜たちといることを見抜かれ、自分も一緒に食べたいとのことだった。


「なあ、小町も来たいって言ってるんだが」

「小町ちゃん?もちろんおっけーだよ!」


快諾されたのでそのことを伝えると、40秒で支度しな!とかいって切られた。
支度するのは俺じゃないんだけどな。



俺たちは駅のほうに進む。多分サイゼ。学生はほんとサイゼ好きだなー。俺も好きだぜ。



仲良く談笑している二人の前をなに食べようかなーなんて考えて歩きつづける





***
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/10(日) 16:18:22.48
いろはすが可愛すぎて辛い…
206 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/14(木) 17:15:13.22


生徒会と委員会の連携により、イベントの準備は滞りなく進み、当日


あれから奉仕部がすることは特になく、当日を待つのみの暇な時間だった。
一色からも特にコンタクトはなかった。


今は協力してもらう人物を集め、最終確認を行っている最中だ。
ちなみに、今日の俺の仕事は見回りである。
簡単なようだが各ポイントを監視している人たちよりも行動範囲が広く、
運動不足の俺にとっては、なかなか辛い。
あと、なんかあの人ついてくるーみたいに思われて辛い。
や、まだ始まってないんだけどね。


雪ノ下はいたって平静だったが、由比ヶ浜はどことなく緊張しているように思える。


「おい、あんま気張るなよ。おまえが失敗したらうちの学校に傷がつくだけだ。
 なんにも心配する必要はない」

「う、うんそうだよね……。ってダメだよ!?励ますの下手くない!?」

「いつからおまえを励ましていると錯覚していた?」

「なんかうざい!あと中二っぽかった」


おいやめろ。


「えへへ、でもありがとヒッキー。ちょっと気が楽になったよ」


由比ヶ浜は自分の頭のお団子をくしくしと触ると、顔を引き締める。
こいつはもう大丈夫だろ。


「雪ノ下は大丈夫か」

「あら、あなたに心配をされるなんて、屈辱だわ」

「大丈夫そうだな。まあわかってたけど」


一色に目をやる。こういうイベントごとには強いのか、緊張している様子は見えない。
ふと、目が合うがすばやく逸らされる。
いや、多分あの出来事のせいなんだろうけど。あれからどことなく距離をとられているように感じる。

どことなく、ではなく明らかなのだが。


……そのことは今は置いとくとしよう。それよりも今日のイベントを成功させることが先決だ。

207 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/14(木) 17:15:44.69


「―――と、いうことです。みなさん大丈夫ですか?」


一色が今一度確認を取る。みんな大丈夫なようでこくりと頷く


「それではみなさん、今日はお願いします。楽しんでいきましょう!」


その掛け声におー!という声が上がり、各自の持ち場へと移動を始める。


持ち場に行く前に、運動部男子の目玉となる戸塚がこちらへ寄ってくる


「八幡!今日は小町ちゃんのためにもがんばろうね!」

「ああ。頼むな戸塚」

「うん!じゃあいくね」


戸塚を手を振りその場を立ち去る。由比ヶ浜たちは先にいったようだ

……一応一色に声かけとくか。


「あー、一色」

「はい。て、せ、せんぱい…!ど、どうしました?」


一色はあわあわと居心地悪そうに身をよじる

やっぱこの間のこと引きずってるよな……。


「いや、このあいだはすまなかったなと思ってな。そんだけだ。じゃ頑張ってくれよ」

「あ、あ、せんぱい……その」


何を言ってよいのか分からないといった感じできょろきょろ視線を動かす


「えと、がんばりましょうね」

「……おう」


どこかぎごちないが、笑みをみせる。それを確認して俺も持ち場に向かう。

持ち場とか学校全体みたいなもんですけどね。

208 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/14(木) 17:16:15.17
――――――――――



あああああ、キョドってしまいました……。
変に思われてないですかね。って、普通変だと思いますよね。


でも無理です無理。顔合わせられません。


あの掌の感触を思い出し、かぁ、と頬が染まる


あの時から先輩との接し方がわからなくなり、自然と避けるようになってしまいました。
これじゃ意味無いのに、意外と奥手なわたしにびっくりです。


「先輩が悪いんです。急にあんなことするから」


ぶぅーと唇を突出しむくれる



……とりあえずやるべきことをやってしまいましょう。

209 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/14(木) 17:16:55.36

わたしは、受験生が集う体育館へと足を運ぶ
道中葉山先輩を見つけたので声をかけてみる


「葉山先輩!」

「ああ、いろはか……。どうした?」


にこっ、と爽やかな笑みを浮かべる。自分に向けられた優しい笑みに何人の女性が勘違いしてきただろう。
そんな笑顔にも、今はなにも思わない。


「わざわざすみません、協力してもらって」

「いや、いいんだ。こういうの好きだしね。戸部たちもノリノリだったよ」

「そういわれると救われます」


あはは、と笑う

葉山先輩はなにか言いたそうにしているようなので、こちらから話をふってみますかね。


「一応なにか聞いておきたいこととかありますか?」

「自分の仕事については大丈夫だよ。……ただ、ひとつ聞きたい……いや、やめとこう」

「………葉山先輩には感謝してます」

「……俺はなにもしてないさ」

「いえいえ。おかけで気づけたんですから。まあ、今行き詰ってるんですけどねー、いろいろ」

「はは。君なら大丈夫さ……きっと」

「そうですかね……。それではよろしくお願いしますね!」


葉山先輩の返事を聞いたあと、早足で立ち去る


うん、大丈夫。
自分に自信をつけるためにも、まずは目の前のことをやりきってみせる。




―――――――


210 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/14(木) 17:17:26.84

HQ HQ こちら八幡 異常はなかった これより帰還する


いや、帰れないんだけどさ。
現在外で待機中。めちゃくちゃ寒い。


部活見学&体験が始まりそれに合わせ適当に見回る。
他にも監視している人物はおり、時折無線で連絡を取る。

今のところなにも問題はない。
が、これからなにか起こるかもしれない。自分の性分が嫌になる。
先ほどから悪い想像がぽんぽん出てくる。


いろいろ対策は取っているが、それでも無茶な企画だ。
どこで破綻するかわからない。


なにも起きなければいいのだが、こういうときの悪い予感というのは当たるものだ。


無線に入る報告を漏らさず聴き、いざという時に備える。


しばらくして、不穏な報告が耳に入る。
……やっぱきたか。



どうやら運動部のほうを回っている最中に問題が起きたらしい。
場所は体育館。バスケやバレーボールなんかの部活がいるところだろう。

急ぎその場所へと向かう

211 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/14(木) 17:17:52.51


  * * *



武道館に着くと、なにやら怒号が聞こえてくる


「つーか、あんた1年なんだろ?そんなやつが考えたモノが上出来だとでも思ったのかよ!」

「そ、それは、ですから……」


責められている相手は一色のようだ。
どういう状況なのか把握するため、近くにいた委員会の腕章をつけているやつに話を聞く。


どうやらバスケの体験をしていたようなのだが試合をしたいというものが現れたらしい。
本来、怪我などのトラブルを極力避けるため、部活体験で出来ることは抑制してある。
バスケなどの球技はシュートやパス程度のことなのだが、そのことについて不満があったとのことだ。


一色はそれを許可できない理由を説明したのだが、それが逆効果だったようで、
じゃあそもそもこんな企画やるんじゃねー的な展開だった。
それに対しうまく言い返せないところを、一方的に攻め立てられてしまったらしい。


……こいつはまずいな。彼は受験勉強に必死だったのだろう。
自分のしたいことを抑えるほどに。
こんなイベントを出されれば、なんで自分が必死こいて勉強してるのを
邪魔するんだ、ということになるだろう。


迂闊だったとしかいえない。


息抜きやモチベ向上には最適かもしれないが、それはある程度の余裕がある者だけだ。
ぎりぎりまで、一時の休みを許さないほどの追い込みをしている人の存在を考えていなかった。


そんなこと考えなくてもわかるじゃないか。なぜ見落としていた。
いや、違う。そうじゃない。見逃したかったのだ。


一色が生徒会長として、学校を盛り上げたい。だれかの役に立ちたいという願いを優先してしまった。
本来ならやるべきではなかったのだ。時期が悪すぎる。
なぜ、一色の願いを優先した?……いや、今考えるのはそこではない。


しかし、そんなことを言ってもどうしようもないし、考えるだけ無駄だ。
今は目の前の不祥事を解決せねば。


とりあえず涙目になっている一色を下げる、といきたいところではあるが、
それでは焼け石に水だろう。

212 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/14(木) 17:18:24.54

どうする、考えろ。


と、そこで救世主になるかもしれない人物が現れる


「なにごとかしら」


雪ノ下雪乃はこの状況でも凛とした姿勢を崩さないでいた


彼女たち誘導班には無線をもたせていないのだが、異常を察知した監視員が報告を入れたのだろう。


その美しい容姿と冷たい声音に、周囲は静寂に包まれる
が、それも一瞬。次の瞬間には怒りの矛先が雪ノ下に向けられる


「なにごとかじゃねーよ!こっちは必死こいて勉強してんのに、
 こんな遊びみたいなことやらされてんのに黙ってられるかよ!」


「……比企谷くん。彼は何をほざいてるのかしら?」

「いや、聞いたまんまだろ。何煽ってんだ。つか、自分の持ち場はどうした」

「あちらは由比ヶ浜さんに任せたわ。向こうは温厚な子が多いから彼女一人でも大丈夫でしょう」


その雪ノ下の余裕な態度に相手の怒りは増していく


「おい!無視してんじゃねーよ!」

「口のきき方がなっていないわね。年上に対する敬意を知らないのかしら」


その喧嘩腰の雪ノ下に小声で注意する


「おい雪ノ下、あまり相手を刺激するな。不利なのはこっちだ」
213 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/14(木) 17:18:53.20

雪ノ下はわかってるわ、と一言。ほんとにわかってんのかよこいつ……。


「はぁ?そっちこそそんな態度でいいのかよ。
 俺があんたらのやってることに文句言ったら困るのはそっちじゃないのか?」


少年はニヤニヤと勝ち誇った笑みを浮かべる。


「……好きにすればいいじゃない」

「んな!?」


おいおいまじかよ雪ノ下さん。さすがにまずいぞ。

雪ノ下は俺の方を見たあと、一色の方に目をやる

……ああ、そういうことか。

俺は呆れたように息を吐き、一色の方へ向かう



「大丈夫か」

「は、はい。でも、雪ノ下さん、あれまずいですよね?」

「……いや、多分大丈夫だ。それよりもあれを治めるにはお前の一言が必要だ。いいか――」

「―――――はい、わかりました」



その間にも言い争いは続く
214 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/14(木) 17:19:19.75
「は、はぁ?あんたおかしいんじゃねーの?意味わかってーねーだろ」

「わかっているわ。そのうえであなたに言ったつもりなのだけれど。
 もしかして理解できなかったかしら。好きにしなさいと言ったのよ」



正直ものすごくヒヤヒヤするやり取りだ。
しかし、その動じない雪ノ下の態度に相手は焦りを見せる。


彼女は当然、その焦りを見逃すはずがない。その隙を逃さず一気に攻めたてる。



「あなたの言うとおり、私たちのやっていることは随分と無謀だと言えるわ。
 あなた一人の言葉でこの学校は悲惨なものになるわね。
 在校生はもちろん、ここを受験しようとしている人たちも、ね」

「……な」



最後の一言に、我関せずでいた他の受験生たちもざわめきだす。
彼らは本気でここに入学をすることを目指し頑張ってきた。
しかし、それが一人の発言により周囲から責められるような問題校になってしまう。
ここでの学校生活を夢見た者達からしたらたまったものではないだろう。



「……は、おどしのつもりかよ」



そういう少年の顔は、先ほどのような余裕は無く、周囲の視線を気にしだす

215 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/14(木) 17:19:48.75

「ええ、そうよ。あなたの行動ひとつでここにいる彼らの人生も決まってしまうのよ?
 ……どうすればいいかわからないあなたに選択肢をあげるわ。
 一つ、一時のテンションに身を任せ、周りを、挙句自分すらも壊すもの
 二つ、怒りを抑え、その感情を別の労力に使うことでこれからの道を形成すること」



少年の目はこれでもかというくらいに泳いでいる。
雪ノ下はそんな少年に、これまでの冷めた表情から一転、優しいものになり諭すように言う。



「利口なあなたならわかるはずよね。あなたのストレスはもっともだわ。
 でも、それであなたのこれまでの努力を無駄にするのは愚かだわ」



それはもう洗脳と言ってもよかった。
彼からはもう反論する気配はない。ここでもうひと押しだ。
一色が前にでて頭を下げる。



「こちらの配慮が足りず、不快な思いをさせてごめんなさい。
 許してもらえるなら……諦めずにここを目指してください
 わたしにできたんです。あなたにできないわけがありません」



最後のは一見、挑発のようにも思えるかもしれない。
だが、これでいい。
こいつは周りの人間からの攻撃を恐れ、見下した相手からも劣るわけにはいかない。
こういう輩には、妙なプライドがある。
ならばここで投げるようなことはしないはず。


正直酷い賭けだ。こいつがこの件を問題にしないとは限らない。
しかし、そうはならないという確信があった。だから雪ノ下はこの方法を取った。


「………いえ、こちらこそ迷惑かけてすみません」


というと彼は俯いたまま、皆の輪に戻る

216 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/14(木) 17:20:16.52

この周囲の人間がこいつを縛る枷となる。
そもそも総武の学力は高いほうで、仮にもここを目指すような人間が自分をも貶めかねないことなんてしないはず。
なんて考えだろうが正直苦しいな。
……人の心なんざいつだって変わる可能性はある。

運が良かった……とでも思っとくか。


俺は雪ノ下に近寄り小声で声をかける


「よくあんなこと思いついたな」

「別に……あなたの真似をしただけよ。正直いい気はしないわね」

「そりゃそうだろ」


恐らく体育祭の会議でのことを言っているのだろう。
真似と言っても、あの時に限っては直接手を出したわけではないのだが。


「あなたならすぐこの方法に出ると思っていたのだけれど、柄にもなく焦っていたようね」

「……別に。たまたま出てこなかっただけだ」


雪ノ下は、そう、と呟くと再度動き出した集団についていく


「私もこちらにつくわ。また問題を起こされても面倒だし」

「ああ、頼む」

「………それと、彼女のケアは任せるわ。あなた以上に適任はいないでしょうし」


一言任せろとだけ言って俺もその後を追う

217 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/14(木) 17:20:45.26

  * * *



以降の見学では少し空気が悪かったがテニス部の体験をするころには皆笑顔に戻っていた。
さすが戸塚パワーだ。だがそれ以上近づくことは俺が許さん。



そのあとも特に問題は起きず最終段階までいき、
うぇーい集団のおかげもあってか全体的に雰囲気はよかった。

お調子者の戸部とアホの由比ヶ浜がなかなかいい盛り上げ方をしてくれ、
その馬鹿っぷりをみて安心した奴も少なくないだろう。二人には感謝している。

あと、おまえらほんとにどうやって入学したの?
総武校七不思議のひとつに認定されるまである。


他には、そこにいるのにいない人とか。あ、俺か。



中学生たちは帰り際に絶対受かってみせます!と意気込んでいる奴らもちらほらいた。
そのなかに小町や、川崎大志っす!が口癖の川なんとかさん弟がいた。……まさか一緒に来たなんてことないよな?


依然落ち込んでいる様子の一色であったが、その言葉にはいくらか救われただろう。



イベントのあとには当然片付けやらなんやらの後処理がある。
とはいえ、文化祭のようなゴミが大量に出るものでもないので、机やイスを運ぶ程度だ。




だらだらとイスを運んでいるところに、一人の男が近づいてきた。


「やあ」


そいつは爽やかな笑みを貼り付け、馴れ馴れしく声をかけてくる。
葉山隼人。一色いろはの想い人である。


「よぉ……」


なにか用があるのだろうが、なにも言わず隣を歩く

なんだ、なんだよ、なんですかァ?言いたいことあるならさっさと言えっての。

218 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/14(木) 17:21:22.93

「おい、なんか用があったんじゃないのか?」

「はは。用がなければ共に行動しちゃダメなのか?まあ用はあるんだけどね」


少しイラッときたが、ここは大人しく聞いてやろう。でもムカつくからちょっと小言いってやろ。


「そりゃだめだろ。俺とお前はそんな仲じゃないからな。んで?なんだよ」

「相変わらずキツイな。………今回のことだよ。いろはがこんなことしたのには君が一枚絡んでるんだろう?」

「まるで俺があいつをけしかけたみたいな言い方だな。確かに協力はしたが、提案したのはあいつだ」

「そうか。でも君がいなければ彼女はあんなことしなかった」


その言い方に俺の目は鋭く、攻撃的な声になっていた


「……なにがいいたい」

「ははは、そう睨まないでくれ。別に誰が悪いとかいう話をしに来たわけじゃないよ。
 むしろあの変化はいいものだと思ってるよ。結果がどうあれ……ね」

「は、どうだか。最終的な結果としちゃあながち失敗でもねーだろ」


強がりだ、わかっている。今回は完全に失敗だ。10人中10人が満足しなければ意味のないような企画だった。

葉山はまるで見透かした風に笑い、話を続ける。


「雪ノ下さんは気づいてたんじゃないかな。今回の結末について」

「…かもな。実際問題が起きたときの行動も早かったし、対策も早かった。まぁ穴だらけの策だが」

「……さっきいった彼女という言葉。雪ノ下さんも含まれてたんだけど……気づいたかな」

「………さあな」

219 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/14(木) 17:21:52.21

話している間に気付けば片付けは終わっていた
これ以上こいつといるといらんことを言いそうだし、さっさと退散するとしよう


「君は、すごいな。羨ましくて……妬ましいよ」


その言葉に足を止める。


「は?俺に羨む要素なんかどこにある。ただの卑屈なぼっちだ」

「……俺にはできないことをやってのけるところだよ」


そんなもの過大評価だ。

……そういえば俺を褒めるのは自分のためだとかいってたな。
俺は無意識のうちに、前から思っていた疑問をぶつけようとしていた。


「お前、前好きな奴がいるって言ってたが……あれは―――」


葉山はただ哀しそうに笑い、告げる


「……俺にそんな感情を抱く資格はないよ。……君がどんな選択をして、
 誰を選ぶかはわからないけど、それがいいものであることを祈っているよ」


最後に意味深で、理解不能な言葉を残し、その場を去っていく。
つーかあいつは監視者かなんかなの?もしかして俺の秘められた力がうんちゃらかんちゃら。


「選択……か」


そんなもの、俺にあるのだろうか。
そもそもなんの選択をするというのだ。


「……とりあえず、一色のケアを頼まれたからな」


誰に言い訳するでもなくそう口にすると、目的の人物を捜すために歩き出す。


220 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/14(木) 17:22:24.14

  * * *



生徒会室に足を運ぶと、そこに一色いろははいた。
既にほかの役員たちはおらず一色一人のようだ。


「あ、先輩……」


俺の姿を確認すると、顔を俯かせる。
少しだけ近づくと、うなだれたまま口を開く。


「……あははー、なんかダメダメでしたねーわたし」

「……よくやってたと思うぞ」

「全然だめですよ。やっぱり無茶でした。
 みなさんに負担もかけてしまいましたし、雪ノ下さんまで……」


その声は震えていて、必死に涙を堪えているようだった。


「仕事なんだ。誰にだって負担はかかる」

「そういうことじゃないです!……わたしは!」

「お前は悪くないだろ。今回のことは俺に責任がある」

「……なんでそうなるんですか。先輩は悪くありません。わたし、が」

「おおまかな提案をしたのは俺だ。もっとうまくやる方法だってあった。完全に俺のミスだ」

221 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/14(木) 17:22:54.30

一色はあはは、と力なく笑う。


「先輩慰めるの下手ですね~。気を遣ってるのバレバレですよ。
 ……むしろはっきり言ってもらった方が、ひらき、なおれ」


最後まで言葉にできず、小さな嗚咽が聞こえる。


俺は無意識に、自然に、彼女を慰めるべく、その頭に手をやる。


「頑張ってたよ、お前は。確かに失敗だったかもな。時期は最悪だったし、やったこともむちゃくちゃだ。
 でも、おれも共犯だ。むしろ戦犯まである。お前だけがしょい込む必要はない。
 この学校を盛り上げようとしたお前は……立派だったぞ」


「ぜん……ぱい゛」


一色は俺にしがみつくかのように抱き着いてくる。
少し驚いたが、ここで引きはがすのもさすがに可哀想だ。
それに………嫌ってわけでもない。


なおも泣き続ける一色の頭を撫で続ける。



なぜだろうか。
自分の今までの行動を振り返り、よく考える。

以前、雪ノ下に甘やかすなと言われたことがある。

俺は一色のことを甘やかしすぎたのだろうか。

では、なぜ甘やかした。

小町に通ずるとこがあったからか。

それもあるだろう。だが、すべてじゃない。

……まだ、よくわからない。

少なくとも、こいつのことは……嫌いじゃない。

222 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/14(木) 17:23:23.26

「……もう、落ち着いたか」

「……もう少し、こうしてたいです」


既に嗚咽は鳴り止み、落ち着いてはいるのだろう。
この気恥ずかしい状態は続いたままだが、すでに十分恥ずかしいので1秒も1分も変わらない。


「先輩。なんでわたしによくしてくれるんですか?わたしみたいな人、苦手そうなのに……」

「さあな。慣れたんじゃねーの」


言われて気づく。
こいつを、一色いろはを初めて認識したときどう感じた。
柔道部からの依頼の時に初めて知った。俺は確か危険な奴だと称した。
こういった人間は苦手ではなかったか。


「えへへ……。やっぱり年下好きなんですね先輩って」

「別にそういうわけじゃないだろ……。お前のことはなんも思ってないしな」

「えー!?ここまでやっといてそれは酷いですよせんぱーい!」

「おい、誤解を招く発言をするな。つーかそろそろ離れろ。誰かに見られて葉山の耳にでも入っても知らんぞ」

「へ?なんで葉山先輩がでてく……あー、そうですねはい」


一色は、ふっふっふーと謎の笑みを浮かべると、こちらに目を向ける。

223 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/14(木) 17:23:53.77

「あ?なんだよ」

「いえいえ。名残惜しいですが、今日は充分堪能しましたし離してあげましょう」


あざといなー。俺じゃなかったら、え?こいつ俺のこと好きなん?って勘違いするところだぞ。


「あ、わたし葉山先輩狙うのやめましたんで」

「は?なんで急に…」

「別に急じゃないですよ?それよりも難易度高い人を落としたくなったんですよ先輩」

「葉山より難易度高いとかそれもう無理だろ。つーか葉山ですらダメなのにそいつはいけんのかよ」

「ぐっはぁ、先輩なかなかストレートに抉ってきますね……。でも、なんかいけそうな気がします!」

「ほーん。まーがんばれよ」

「はい!というわけで覚悟してくださいよ?せーんぱい?」

「は?」


可愛らしい笑みを浮かべると荷物をまとめ颯爽とこの場から立ち去っていく。
なんか嵐みたいな奴だな。


つーか個々の鍵どうすんだよ……。俺にかたしに行けってか。


はぁー、と溜息をこぼし部屋に鍵をかけ、その鍵を返すべく職員室へと向かう

224 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/14(木) 17:24:20.82

選択。

ギャルゲーなんかでいえば、ヒロインの選択だろうか。

1 雪ノ下
2 由比ヶ浜
3 一色
4 小町
5 戸塚

みたいな。……なにこの妄想恥ずかしい!
安易に知り合いをたとえ話に用いるのはやめておこう。
つか、小町とかおかしいだろ。戸塚?それは別におかしくない。


だが、それは物語の中のお話。
セーブ前に戻って選択を変えることはできない。
そもそも俺に選択肢なんてあるのだろうか。


仮にあったとして、俺が選ぶルートなんか決まっている。
実質的には一本道だ。


BAD ENDやHAPPY ENDなんてものがあるが、それは本人からしたらだ。
誰かにとってハッピーでも、別の人からしたらバッド。逆もまた然り。


そんな選択を迫られたとき、俺はどうするだろう。
ま、そんな経験ないし、これからもするとは思えないんだけどな。


ふと外をみるとだいぶ暗い。
もう小町は家についてるだろう。飯が出来ているかもしれない。


「さっさと帰るか」


今日はいろいろ考えすぎて疲れたしな。はやく自室でゆっくりしたい。


鍵を返し、駐輪場へ向かう。


その頭の片隅にあるのは、可愛らしい後輩の笑顔だった。



***
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/14(木) 17:48:05.87
俺なら6のハーレムだな
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/14(木) 18:20:42.73
選択か……胸がアツくなるな!!
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/14(木) 19:02:12.57
美人教師が抜けているようだが
254 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/16(土) 19:04:23.90


「……ふぃー」


一色いろは、現在自販機前で休憩中


生徒会主催のイベントから数日
わたしたちの仕事はまた作業ゲーよろしく延々と書類に目を通す作業が続いていた


正直、前回の失敗はだいぶ堪えました。
一応立ち直ってはいるんですが、なんとなく先輩に会い辛いといいますか……
やらかしてしまった手前ニコニコするのが億劫といいますか、
大胆な行動もしてしまいましたし。


「お、会長おつかれー」

「あ、どうもお疲れ様でーす」


今声をかけてくれたのは生徒会の人ではなく、委員会の人。
てっきり、みんなからは白い目で見られるのかと思っていたわけですが、
割と友好的……というかなんというか。前よりも好印象っぽいです。


とにかく悪目立ちはしてないのが救いです。
それはなぜか副会長たちにきいてみたんですけど、頑張ってた姿を評価された的なテキーラ?


たしかに、わたしってちゃんと仕事するように見えませんしねー。
こいつちゃんとやってんなー、てのを見せれてラッキーです。


でも、あの時のことを思い出すとぐわぁーってなります。
これが黒歴史というやつでしょうか。


先輩もあれからなんにもアクションないですし。
えー、まさかあんなことしておいてなんにも感情抱いてないとかありますかー?

……ありそうでこわい。なんか仕事のためなら何でもしそうな人ですし。

255 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/16(土) 19:04:59.38


「ん?一色か」

「へ?あ、先輩!」



えへへー、おっといけない。ニヤケ顔気をつけなくては。キリッ!


なんという偶然。これは運命感じちゃいますね!
……なーんて。ここの自販、先輩よく使ってるの知っててここにいたんですけどね。
買うものは決まって甘ったるいMAX缶コーヒー。

なんかわたしストーカーみたいだな。でもこうでもしないと会えない先輩のキャラが悪い!


「あれー?もしかして部室追い出されちゃったりしますー?」

「ちげーよ。甘いもん飲みたくなったから買いに来ただけだ。
 ……お前こそ仕事から逃げ出したのか?ちゃんと働いてもらわなきゃ困るぞ。俺が働く羽目になる」

「逃げてませんよー。てゆーか心配が自分のためって……さすがですね」

「まあな。俺は自分の負担を減らすためなら労力を惜しまない」


とかいってー、なんだかんだ自分が背負い込むんですからこの人はー。
そこが好きなんですけどね。口にしませんけど。

先輩は缶コーヒーを手に入れるとその場から立ち去ろうとする。


「じゃあな一色」

「もういっちゃうんですかー?もっとお話ししましょうよ」

「なにも話す話題がない。それに一応部活中だ。おまえも仕事戻んなくていいのか」

「どうせ依頼なんか滅多にこないじゃないですか。心配しなくてももう少ししたら戻りますよー」

256 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/16(土) 19:05:30.73

しぶっていた先輩だが、結局少し離れたところに腰を下ろす。
もーかわいいなー。


「そんな離れなくても、もっとこっちきたらいいじゃないですか」

「近寄る理由もないだろ」

「離れる理由もありません」


うぐ、とうめき声を漏らす。
といってもその距離が埋まるわけではないですが。
……まぁ、こっちから近づけばいいんですけどね。


わたしは、んしょ、んしょ、と先輩のほうに近づく


「……ちけぇよ」

「えー?でもこのほうが話しやすくないですかー?」

「別に離れてても一緒だろ」

「またまたー、それに近いっていってもゼロ距離じゃないですし、
 意識しすぎですよ。ぶっちゃけキモいです」

「悪かったな。こちとら自意識の化け物なんで」

「なんですかそれ」



しばらく他愛のない話が続く。このままずっとここにいたいのもやまやまですが、
さすがに仕事をほっぽりだしとくわけにはいきませんので、ここらでお開きですかね。

257 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/16(土) 19:06:01.64


「んじゃ、そろそろ戻るわ。お前もしっかりやれよ」

「言われなくてもわかってますよーだ。あ、そうだ先輩」

「あ?」

「今度の休みに、一緒にお買いもの行きましょうよ」

「断る」

「それを断ります」

「……なんだそのドヤ顔。うぜぇ……」

「な、ドヤ顔なんかしてません!てゆーかうざいとか酷すぎません!?」


ちょっとグサッっときたのは秘密。


「つっても、休みが無理な理由があるからな。小町たちの遊びに付き合わなきゃいかん」

「小町……って妹さんですよね?家族でお出かけですか?」

「いや……、雪ノ下とか由比ヶ浜とかな。妹の奴完全に受験終わった空気出しててな」

「え?……あー、そう、ですか」

258 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/16(土) 19:06:28.62

うあー、聞きたくなかったなー。
とすると、受験おつかれパーティー的な感じでしょうか?……いいなぁ。

わたしも参加したいんですけど、先輩以外の人と仲いいわけじゃないですし……。


あまり表に出すつもりはなかったのですが、うなだれてしまったようで、
それを見かねた先輩が声をかけてくる。


「……その買い物っての、休みじゃなきゃだめなのか?」

「……はへ?」


先輩は、あー、なんていいながら頭をがしがし掻いている。


「買い物、放課後とかじゃだめなのか?」

「……いえ。いえいえいえ全然だめじゃないです!むしろ今のはポイント高いです!」

「……おまえ小町と会ったことないよな?」


なにいってるんですかね。
でもそんなことはどうでもいいです!はぁ?この人ほんとに先輩ですか?
まさかこんな展開誰が予想できたでしょう。


「まあいい。んで、いつにするよ」

「そうですね、今日はちょっと厳しいので……。明後日なら多分いけますね!」

「じゃあその日に。そんじゃあな」

「はい!お疲れ様でーす!」



259 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/16(土) 19:06:56.36




ふえへへへーい。
ちょっとまってやばい。顔がやばい引きつりそう。
こんな顔だれかに見られたらやばいです。もう、先輩のせいで仕事に遅れが出てしまいます。


……ふふ、放課後デートですよこれ。完全に。


もしかして先輩もうだいぶ落ちてたりします?……お人好しだからそれはないかー。


とりあえずもう少しここで休まないと。今の自分を人に見られるわけにはいきませんからね。
さっさと仕事を片付けて、明後日思いっきり遊びましょう。よし!がんばります!




そのあと、帰りの遅かったわたしは副会長に怒られてしましましたがそれは秘密で。



263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/08/16(土) 19:28:38.05
いろはすが最高に可愛い
270 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/16(土) 23:41:17.78


  * * *



HQ HQ こちらいろは ターゲットを捕捉 これより追跡を始める


「おい、なにやってんだ」

「えへへー。先輩いつ気付くかなーみたいな。……気づくの早すぎですよ」

「ぼっちの気配察知能力舐めんなよ?あと、あざとい」


はい、というわけで約束の日。放課後先輩とデートです。
絶対否定されますけどね。


待ち合わせ場所は駅前なわけですが、このひとも相変わらずですねー。
前のように校門で待ち伏せしようと思っていたら、それを見こされて
先に行かれてしまいました。軽く傷つくんですけど……。


「ほら、いくぞ。で?何買うつもりなんだ」

「はい?いや、とくに決まってないですけど」

「は?じゃあなんで誘ったんだよ……」

「先輩とお出かけしたかったからですがなにか?」

「なんでちょっと半ギレなんだよ……。つーか俺じゃなくて好きな奴誘えよ」

「まあまあ(笑)」


ここはスルーでいきましょう。とりあえず動いてしまえばこっちのもんです。
271 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/16(土) 23:41:49.09

「とりあえずララポいきましょう」

「はぁー。まあいいか、たまには」

「んふふ~、そういう先輩好きですよ」

「うっせ。好きとか軽々しく言うな」

「軽くないのでいいです」

「は?」

「ほらほら先輩、いきますよ!」


あわわわ。つい口がすべっちゃいました。
でも逆に意識させること、できたかな?



272 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/16(土) 23:42:26.96

  * * *




「はい、とーちゃーく。あざといは禁止ですよ」

「あざとい」


さーて、この出不精さんをどう楽しませましょうかね。
人嫌いでこもりがち、本をよく読む先輩には~
………あれ、結構きついかも。なにがいいんだろ。


「先輩、どっかいきたいとこあります?」

「家」

「ちょ、来たばっかなんですけど……」


しかも一文字で返されるとか。


「じゃあわたしがルート決めちゃってもいいですかね?」

「好きにしろ。もともとお前の買い物に付き合ってるんだからな」


前半と後半録音したいですね。……ってわたし完全にキモい。ジョークですよ?

273 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/16(土) 23:42:54.57

「そういえば妹さん受験終わったんですよね?なんかプレゼントあげるのどうです?」

「いや、まだ受かったかわかんないんですけど……。
 今度パーティーやるし、いつも貢いでるから別にいいんじゃないか?」

「いつも貢いでるんですか……。
 んー、でも一緒に食べるお菓子くらいならいいんじゃないですか?」

「まあ一理あるな。だが一色、一つ見落としている。
 あいつは俺に渡されたお茶菓子を、本人の知らぬ間に食べちまうようなやつだ」

「わ、わーそうなんですかー。なのに仲いいんですね」

「うちの男は小町のすることなら許しちまうからな」

「なんという家族愛……。わたしもそんな便利な人欲しかったなー」

「言い方に悪意があるんだが……」


ふーむ。じゃあ特に先輩はなにも買うつもりないみたいですね。
なんか連れまわすみたいで気が引けますが、先輩だし、いっか♪


「あ、わたしあっちみたいです!いきましょう!」

「おい引っ張るな。そんなに強くひっぱったら服が破けちゃうだろうが!」

「駆逐系男子ですか……。リアルで聞くとキモいですね」

「お前進撃知ってんのかよ」


それからもしぶしぶ、といった感じの先輩を連れまわすこと数分
ちょっと小腹もすいてきたことですし、カフェに向かいます

274 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/16(土) 23:43:26.68

「なにか食べます?」

「いや、コーヒーだけでいい」

「んー、わたしは……パフェでも食べましょうかね」

「太るぞ」

「……先輩。刺されますよ。わたしはあんま太らないので気にしませんが」

「お前の方が敵作りそうなもんだが……」

「わたしが周りの好感下げるようなこと言うわけないじゃないですかー」

「その遠回しに『わたしの周り』に俺は入ってない発言とかいいから。知ってるから」

「そうですね。先輩はわたしの傍、ですからね」

「……あほか」


あは、先輩てれてるー。
なんか恋人っぽい雰囲気ですよこれ、いけちゃいますかこれ!
……うん、それで失敗したから抑えますよ今回は。

275 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/16(土) 23:44:01.06


「あれ?ヒッキー……と、いろは、ちゃん?」

「どうしたの由比ヶ浜さ……あら」

「へ?」

「あ?」


あ、奉仕部メンツがそろった。……じゃなくて!
あれ、これまずいです。修羅場です!


「奇遇ねこんなところで。部活を休んで遊びに来ていたなんて」

「いや、おまえに言われたくないんだけど……」

「あははー、用事っていろはちゃんと買い物だったの?いってくれればいいのにー」

「特に言わなきゃいけない理由もなかったしな。おまえらは?」

「私たちは今度のお疲れ様会の準備のためにちょっと買い物を、ね」

「そうか、悪いな任せちまって」

「いいっていいって!こっちは任せてよ!」

「……それでは、また」

「おう。じゃあな」

「ばいばいヒッキー。いろはちゃんもまたねー」

「あ、さよならでーす」

276 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/16(土) 23:44:31.95

……あ、あれぇ?


「なんか普通だったんですけど」

「は?何が」

「え?だって……んん?」


てっきり気まずい空気になるものだとばかり……
あれー?わたしの早とちり?いや、でも結衣さんはそうっぽいし……。
それとも眼中にないとか?うーん。


「おーい。なに変顔してんだ」

「別に変顔なんかしてませんよ!ほら、ちょうぷりちーです」

「はいはい、かわいいかわいい」


うわーてきとうだー。
まったくこっちの気も知らないでー。

277 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/16(土) 23:45:04.05

「ところで先輩」

「どうした」

「もうお腹いっぱいで食べられません」

「……それを俺にどうしろと」

「はい、あーん」

「やめろ。ほんとやめて」

「もったいないですよー?甘いの好きですよね?はい、あーん」

「……勘弁してくれ。別に残してもいいだろ」

「ぶー、しょうがないですねー。はいあーん」

「おまえ馬鹿なの?」


失礼な!
ちょっとした冗談ですよ!



カフェを後にしてまたぶらぶらと店内をまわる
あ、そうだせっかくなので先輩にプレゼントをあげましょう。
いろいろお世話になってますしね。なにがいいかなー。ガンダムとか?


男の子ですし難しいですねー。
マフラーとか季節にあってるんですけど、ちょっと重いかな。
あんまお金のかかるものは受け取ってもらえなさそうですし。

男子高校生といえば数珠ですか?戸部先輩あたりつけてそうですよね。
でも、先輩はつけないだろうし、つけてたらそれはそれで……。
むしろ数珠つけてる人馬鹿にしてそうですね。正直わたしも理解しがたいです。


小物……とか。あ、実用的なものとかいいですね。
となるとコップとか食器類でしょうか。

278 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/16(土) 23:46:08.98

「先輩ここからちょっと別行動でもいいですか?」

「ああいいぞ。おれもちょっとみたいとこあるしな」

「じゃあちょうどいいですね。では、30分後にまた会いましょう」

「りょーかい」



てなわけで、先輩と別れ目的のものを買いに行きます。
……先輩のみたいものってのが気になりますけどね。




279 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/16(土) 23:47:06.36

  * * *




「お待たせしました~」

「おつかれさん」


お目当てのものを購入し先輩と合流する


「先輩早いですね」

「まあ買うもの決まってたからな」

「じゃあちょっと待たせちゃいましたか?」

「いんや、てきとーにぶらついてたから問題ない」

「そうですか。それじゃそろそろ帰りますか」

「だな」


モール内を出て帰宅するために足を進める
280 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/16(土) 23:47:36.29

けど、帰りたくないなー。
ずっと一緒にいたいです……。さすがに恥ずかしいんで口にできませんけど。


「一色、もう暗いし送るぞ」


……なーんも下心なくこんなこと言える先輩ってすごいですよね。


「なんですか!?暗がりに紛れてなにするつもりですか!?」

「なんもしねーよ……」

「あはは、さすがに悪いので大丈夫です」

「そうか」

「そうです」


しばらく会話もなく歩き続け、次第に別れなければいけないところまでくる。


「それじゃ……ここでお別れですね」

「だな」

「今日はありがとうございました。楽しかったですよ~」

「まあ、俺も楽しかった……かもしれん」


えへへ。素直じゃないですね~。

281 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/16(土) 23:48:07.33

「そんな先輩にプレゼントです!はいどーぞ」

「んあ?なんで」

「いろいろお世話になってるお礼です。……いらないなら、その」

「あ、いや、ありがとな」


といってわたしの手からブツを受け取る

へっへっへ、どうですか。なんだかんだ拒否しそうな先輩でも、
こういってしまえば受け取らざるを得なくなってしまう。完璧ですね。


「これ、マグカップか?」

「はい、そうです。せんぱいコーヒーとかよく飲むんですよね?
 実用的なのを考えてみたんですけど……」

「まあよく飲むな。ありがとな一色」


ほとんど表情を変えない先輩が笑顔になる。それだけで買ったかいがありました。

282 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/16(土) 23:48:40.21

「あー、お返しと言っちゃなんだが。これ、やるよ」

「へ?なんですか?」


綺麗に包装された包みを渡される
一応許可をとってその場で開けてみると


「わぁ……かわいい。シュシュですか」

「ああ。なんか迷惑かけてるし、その詫びだ。いらなかったら返してくれも―――」

「いえ、ありがとうございます!土下座されても返しません。というか迷惑かけてるのはわたしのほうな気が」


しばらく眺めてて気づく


「もしかして、結衣先輩たちのもってたのも先輩からのですか?」

「あー、まあ一応」


やはり。どうりでたまに見かけたとき大事そうにしてたわけですね。


通常なら、他の子にもあげているというのはマイナスな事実ですが、
この場合はむしろプラスですね。


先輩の求めた"本物"
それがあの二人なのだとしたら、わたしも、もしかしたら―――

283 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/16(土) 23:49:26.13
そう考えていたらつい、口を開いてしまいました


「先輩のいう本物にわたしは入ってますか?」

「おい、もう忘れてくれっていったろ」


先輩は恥ずかしそうに顔を背けるが、わたしの真面目な態度を察してこちらに向き直る


「わたしは、先輩にとってただの後輩ですか?」



しばらくの無言ののちに小さな声が聞こえてくる




「………ただの後輩にプレゼントなんかするか」




あー、ははは。これは………嬉しいです。というかかわいすぎます先輩!



「もう!先輩のほうがあざといじゃないですか!」

「なにいってんだこいつ」



ですが一色いろはここで焦らなーい。
はやる気持ちを抑えます、抑えましょう、抑えました。

284 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/16(土) 23:50:04.97


「それでは先輩、おやすみなさい」

「ああ、おやす―――」


その言葉を待たず、ぎゅっと先輩に抱き着く


「は、な、おい一色」

「えへへー照れてるんですか?別に初めてじゃないですしそんな慌てなくても」


と言ってるわたしの顔は真っ赤だろう。暗くてよかった。


「おまえ、新しいやつの攻略するとか言っておきながらこんなことしてていいのか」

「言い方わるいですよねぇ!?わたしが節操ないみたいじゃないですか!」


絶賛攻略中ですがなにか?


「それじゃ今度こそほんとうに、おやすみなさい」

「……おう。ほんとに送ってかなくてもいいのか」

「なんですか送りたいんですか?もしかして口説いてます?ごめんなさい、もう少しまってください」

「別にそういうわけじゃねーよ。じゃ、きをつけてな」

「はい、先輩こそ」


先輩に手を振ってその場を後にする

285 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/16(土) 23:50:36.06

確実に前へ進んでる実感から、自然とスキップをしてしまう。
いつものニコニコしてる表情とは別の、なんとも言い難い顔をしてる気がする。



「んー……はぁ」


少し伸びをして息を吐く。その吐息は白くこの場の寒さを物語っている。
それとは裏腹に、わたしの体は熱いままだ。


すごくドキドキします。こんな経験いままでなかったですからね。
ちょっと恥ずかしいような気もします。


ふと目に入ったのは、自販機にあるコーヒー
いつもなら気にも留めなかった飲み物を、気づいたら購入していた


「んく、んく……ふあー、あっま」


なんか久しぶりに飲みましたけど、めちゃくちゃ甘いですねこれ。
胸焼けしそうな甘さが、まさに今の自分の心境のようでくせになりそうだった。



「……明日も会えるかな」



奉仕部でないわたしは、先輩に会う大義名分がないわけですが―――


「うん。もうちょっと攻めてみましょう。手始めに昼食を一緒に……とか」


多分嫌がるであろう先輩の姿を想像して、笑いが込み上げる。


最近は毎日"明日"を楽しみにしている気がする。


次はどんなふうにしようかなー、なんて考えながら甘ったるい液体を胃に流し込んでいた。





うえぇ……むねやけしそう。







***
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/08/17(日) 10:42:10.14
いろはす可愛すぎてワロタ
298 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/17(日) 17:50:58.01


「で、どうすればいいと思いますか」

「なぜ俺に聞くんだ……」


またも生徒会室にて、副会長に話をふっかけてみます。


「んと、なんとなく?ですかね」


どことなく先輩と雰囲気が近いからですかね。
勘違いされても困るんで言いませんけど。


「それより、そこに同性がいるだろう」

「えぇ!私ですかぁ!?……そ、その、そういった経験はないのでちょっと」

「おれもないんだが……」

「えーそなの?なんか大人の付き合いとか知ってそうじゃない?」

「なぜそうなる。そういうおまえはどうなんだ」

「僕もないよー。まだ遊んでいたい時期だからねー」


あはは。なんか面白くなってきましたねー。
案外固い人たちかと思えば割と普通に青春したい気持ちもあるのでしょうか。

299 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/17(日) 17:51:27.28

「以外ですね。城ノ内さんとか経験豊富そうですが」

「びみょーなとこかな。付き合う一歩手前までが楽しいっていうかさ」

「あ、それわかります」

「わかるのか……。それって、その……不健全じゃないのか」

「やだなー副会長ー。純情だなー」

「このくらい普通ですよねー?なにもいけないことはしてませんよー?」

「……うるさい」


なんか副会長って面白いですよね、いろいろと。


「それよりもいろはちゃんの恋路を手伝わないとね。ね?副会長」

「そうだな。仕事に支障が―――おい何見てる」


ふふ。最近は楽しいですね~。

先輩、いまごろ何やってるんだろ。

………ちょっと奉仕部に遊びに、って無理ですよねー。

300 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/17(日) 17:51:56.34

「弁当でも作ってやるってのはどうだ?」

「やだー副会長かーわーいーいー」

「貴様……」


わなわなと震えてる副課長を本田さんがなだめる

しかし弁当、弁当ですかー。いやーそれはさすがにハードル高いですよ。
いやでも後輩からの差し入れとかポイント高くないですか?
まさにハイリスクハイリターンですね!ドヤァ



「えと、それもありだと思うんですけど、まだはやいかなーなんて」

「たしかに付き合ってもない異性に弁当なんて何ごとかって話だよねー」

「あ、でも一緒にお昼くらいならいいんじゃないかな」

「それも考えましたけど……。前狙ってた人がそこのクラスなんでちょっと」

「メールで呼び出せばいいじゃないか」

「あの人はメールごときで動きません」

「……それはなんか。大変だねー」


多分みなさんびみょーな顔してたと思います。
最近先輩のことばかり考えてたから"普通"が先輩基準になってる気がします。

301 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/17(日) 17:52:27.81

「いろはさんなら結構がつがつ行きそうなイメージでしたけど」

「そんなことないですよ。あまりアタックしてると引かれそうですし、
 周囲の目も悪くなりますからねー。あとみんなに優しいみたいな
 キャラなので目立った好意はわたし的にちょっとまずいって感じです」

「聞きたくない話だなそれは」


なんとも言えない表情で腕を組んでいる
まあ、最近のわたしは結構がつがついってる気もしますがね。



「やーあの……ヒキタニくんだっけ?なんかメタルスライムを思い出すよ」

「ん?ドラクエのはなしか?」


副会長はただのゲームの話にしか思ってないのだろう
本田さんは理解してるのか、くすくすと笑っている


「でも、最近のお話を聞いてる限り、結構よさそうな感じですよね」

「そうだな。よくわからんが好感は持たれてるように思えるぞ」

「ですよね!ふっふっふ、一色いろはが先輩を落とす日も近いですね!」


ほんとうにそうならいいんですけどね。

302 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/17(日) 17:52:58.92

「それで、次はどうするのか決めたのか?」

「うぐ……。どうしましょうか」


はい、ここで振り出しにもどりまーす。
人生ゲームで振り出しに戻されるときの屈辱は異常。

あ、ある意味人生のゲーム中ですね。


今がゲームだとしたら終わりはどこでしょう?
け、けっこんとかですかね。


やーでもわたしたちそこまでいけるかなー。
行けますよそりゃ先輩一途ぽいですし、わたしも先輩になら一途になれる気がします。

なんかもう付き合ってる感じで話してるのはスルーで。
話してませんけど。



「あいつと接触するためには、偶然会うか、依頼しかないだろうな」


なんかもう超メタルスライムって感じですね。
わたしのいろは斬りで手なずけたくなります。


「なんかイベントでもやるー?」

「うぐ、ちょ、ちょっとしばらくはいいです」


やめてくださいよー忘れてたのにー!
枕があったら抱き着いて転がるレベルです。
先輩がいたら抱き着いて甘えるレベルです。えへへ。


わかってて言ってるであろう城ノ内先輩に激オコです。

303 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/17(日) 17:53:30.17

「まあダメもとでメールしてみたらいいんじゃないかな、お昼一緒にどうですかーって」

「そうだな。結果はダメだろうが連絡取らなければ始まらない」

「ダメなの決定なんですね……。でもそうですねとりあえずそれでいってみましょう」


そこで本田さんから意見が


「奉仕部の方々と仲良くなるのはどうですか?」

「あ、それです!将を射んと欲すれば……豚?をなんとか!」

「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、だ。
 ……まさか彼女たちの事を豚なんて思ってないよな?」

「し、失礼な!そんなこと思ってません!」


やだなー性悪みたいに思われるじゃないですかー。
いや、こう考えてる時点で充分悪いかも……。


「でもそれなら奉仕部に遊びにいける口実が出来るよねー」

「ですよね、いいと思ます」


うんうん。でもそれが難しいのわかってますか?
結衣さんはともかく雪ノ下さんとかどう考えてもラスボスですよ。

そういえばお姉さんがいるんでしたっけ?その人はきっと魔王ですね。

現段階で仲良くなれる気があまりしないので置いておきましょう。

304 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/17(日) 17:54:23.46

「まあそれは後々考えるとして、とりあえず明日のお昼でも誘ってみます」

「おう、がんばれよ」

「ファイトー」

「応援してますよ!」


なんと心温まる方たちでしょう!
わたしは高らかに発言します!


「それでは今日の生徒会はこれにて!」

「あほか帰さんぞ」




ちぇー。





  * * * 
331 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/29(金) 01:51:51.16
  * * * 



というわけで、
先輩にメールを送ってみたわけですが。


見事に やだ の二文字で帰ってきました。


ええ、わかってますとも予想通りです。
めげずに送り続けますよ~。


『えーいいじゃないですかー。どうせ一人でしょ先輩?』


『一人がいいんだよ』


『お話しながら食べるとおいしく感じません?』


『まったく』


くぅ、冷たい反応!返信が簡素すぎてちょっと不安になるレベルです。
でもこの人はこういう人ですから。……めんどくさく思われてませんよね?


しかーし!この流れも想定済み!ここからが本番です。
なら今までの流れいるか?てのは無しで。


『一緒に食べましょーよー。いまなら可愛い後輩にあーんしてもらえます』


『だからいらねーって……。つーかなんで俺なんだよ。お友達と食べとけ』


『実はわたしあんまり仲のいい友達いないんですよー。先輩となら気兼ねなくお食事できるかなーって……』


『あざとすぎる。あとお前が友達いないなんて想像できねーよ』


ちぃ!普通の男子なら今のでいけてますよ。
……それに友達いないってのも、案外嘘じゃないですしね。

いや、ぼっちとか嫌われ者とかいう先輩のような属性はないですよ?
むしろ愛されキャラです☆……でも、そのせいで特に親しいと思う人がいないんです。

今まではそれでいいと思ってたし、一緒に遊ぶような友達もいる。
けれど"本物"ではない気がするから。


なんかもう呪いみたいですね。ないと気づいてしまったら必死にそれを求めたくなる。
この考え方は一生付きまとうんでしょうか。



暗くなってしまったのを払うかのように、慣れた手つきでメールを打ち込んでいく。

332 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/29(金) 01:52:48.66

『ぶーぶー、一回くらいいーじゃないですかー。減るもんじゃないですし』


『減る。主に俺の精神力が』


『というかもしかしてわたしに気をつかってたりします?』


『それはない。めんどくさいことになりでもしたら俺が大変だからな。俺のためだ』


やっぱり気つかってますよね。わたしは何に対して気をつかってるか書いてないのに。
多分、嫌われ者の自分と親しいことで、わたしに害が及ばないようにしてるんでしょう。多分。
……半分くらい自分のためにも思えてきました。むしろ9割ぐらい。

まあいいです。最終兵器投下しますねー。


『じゃあ先輩の教室に突撃します。まっててくださいね~』

『どうぞご自由に』


ははーん。これは来てもいいがそこに俺はいないぞってことですね。
授業終わったと同時にさっさと抜け出すつもりでしょうがそうはいきません。



『じゃあ勝手にさせていただきまーす。逃げないでくださいね。
 あ、先輩のお弁当作ってきましょうか』


『いらん。小町の愛妹弁当があるからな』


『それではまた明日~』



スルーするー。笑ってもいいですよ?


はいミッションこんぷり~つ!……なんかすごい疲れた。
しかもなんだろう……今更ながらちょっとドキドキする。


まあいつも通りでいきましょう、おやすみなさ~い!



333 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/29(金) 01:53:21.62



  * * *



間もなく授業終了のチャイムが鳴るという頃、わたしは先輩のいる教室の前で待機中です。
ちなみに体調が悪いってことで教室を抜け出してきました。てへぺろ。


チャイムが鳴り、程なくして教室の戸が開く


「せ~んぱい」

「……なんでいんだよ」

「待ち伏せてました。にひひ~」

「みりゃわかる。生徒の模範となる人間が授業さぼっていいのか」

「失礼な!さぼってませーん。体調悪かったんですぅー」


1回だけ!1回だけだから許して!


はぁ~、とめんどくさそうなのを隠しもせず豪快に溜息を吐く先輩。


「じゃ、俺は飯食いにいくんで」

「御一緒しますよ!」

「来なくていい。つーかなんでそんなに俺に構うんだよ。狙ってるやつはどうした」



む~、このままではいけませんね。
………なら。



「はい。だからそのことでお話があるかな~なんて……」



と返すと先輩はガシガシと頭をかいたあとに渋々といった感じで、わかったよと返してくる。



「裏庭でいいか」

「そんな人目につかないとこでわたしに何をする気なんですか!?」

「うぜぇ……」



334 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/29(金) 01:53:55.92


  * * *



「んで、話って具体的になんだ。依頼と受け取っていいのか」


裏庭にあるベンチに二人で座り、お弁当を広げつつ話をふってくる。


「んーと、依頼って感じじゃ……なくてですね。相談?に近いかもしれません」


微妙にぼかしつつとりあえず先に食べちゃいましょう、という雰囲気を醸し出しておく。


というか流れで進んできてしまいましたがこれ、どうしましょう。
もうわたしの想いをぶっちゃけちゃいましょうか。



「……話が長引いて飯食えないのは嫌だしな。先に食ってからにするか」

「そうですねー。はいあーん」

「いや、もうそれはいいから」



まったく。可愛い後輩のあーんを断るなんて尋常じゃない防御力ですよねー。

でも、なんとなくこのやりとりが好きな自分がいる。
これ先輩ただ恥ずかしがってるだけだったりするんじゃないでしょうか。ないですね。



そうだ、せっかくだし情報を引き出してみましょう。
情報こそが現代における最強の武器です!



「先輩いつもここで食べてるんですか?というかいつも一人?」

「一人で悪かったな。いつもじゃないが大体な」

「雪ノ下さんとかと食べたりしないんですか?結衣さんならクラスも一緒ですよね?」

「ない。あいつらは一緒にいるらしいけどな」

「ああ、先輩。奉仕部という少人数の場でさえハブられてるなんて……」

「やめろ哀れみのまなざしを向けるな。むしろ少人数だからこそ俺のぼっちスキルが輝く」

「なにいってるんですか?……本気で何が言いたかったんですか今」



実際どうなんでしょう。そこに入りたい気持ちってあるんですかね。

335 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/29(金) 01:54:28.97

「じゃあ先輩休み時間ってなにしてるんですか?瞑想?」

「瞑想を真剣にやってる人に謝りなさい。読書とかだよ」

「めんご。そういえば先輩博識ですもんね。雪ノ下さんもそんなイメージありますね」

「まあイメージ通りだな。割とそこは話が合うとこではあるが、バトルになることもある」

「……あの、後半の意味が解らないんですけど」

「いろいろ知識が多いと軽く論争になったりするからな。
 加えてあいつは負けず嫌いだからな。どうでもいいことでも勝手に勝負になったりする」

「そんなもんですか~」



ふ~ん。やっぱり仲いいですねー。
わたしも話題作りのために本でも読みましょうかね。すぐ寝れそう。
先輩!昨日はよく眠れました!

それならあるね♪ ありえる♪



「でも、先輩と雪ノ下さんはわかるんですけど、結衣さんと仲いいのはなんでですか?
 二人とタイプ違いますけど」

「ああ、あの二人な。なんかしらんがあいつが雪ノ下に懐いてるんだよな。
 雪ノ下もまんざらじゃないみたいだし。タイプの違いなんか関係ないんじゃないか」

「んと、先輩がそこに含まれてないのは意図的でしょうか」

「基本蚊帳の外だからな。あまり百合百合されると肩身が狭い」

「3人しかいない部室でハブられるなんて、だれにでも出来ることじゃないですね」


336 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/29(金) 01:55:05.18


しばらく会話……というかわたしの一方的な聞き込みは続き、
二人とも弁当の中身がカラになると、先輩が本題に入る。



「それで話ってのは?」



あぁ~ついにこの時が来てしまった。
気分は悪いことしたのが親にばれたときの感じです。


しかし周りにはあまり人はおらず、会話の内容を聞かれることもないでしょう。
ここで一気に踏み込むのもありか、否か。


ここで逃げることもできますが、せっかくのチャンスのうえ、次が来ないかもしれない。



わたしの言い辛そうな態度を察して、先輩はただ黙って待っている。


とりあえず無難な感じに攻めつつ相手の反応をみましょう。
いつものように明るくつとめてきいてみる。



「えと、その狙ってる人がですね~全然気づいてくれなくて。
 結構アタックしてるつもりなんですけど、その堅物が手ごわくて。
 どうすれば振り向いてくれるんですか?」


「いや、俺にきかれても……。つーか今更だが、俺に恋愛ごとの相談しても力になれないと思うぞ」

337 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/29(金) 01:55:41.70


気づいてない。いや、気づいててとぼけた振りしている可能性もありますね。
今の話も本心で言っているようにも思えますが、この場から立ち去る算段にも思えます。
さすがに深読みしすぎでしょうか。

とりあえず念のため退路を塞いでおきます。


「いいんですよ。こんな話できるのは先輩ぐらいですし、聞いてもらえるだけでも」

「そうか。……あー、具体的にどんなことしてきたんだ?」

「それきいちゃいます?プライベートに踏み込んじゃいます?」

「すまん。不躾だったな」

「メールしたり、買い物に付き合ってもらったりですかね~」

「いうのかよ」


作戦その1
これ、自分にもあてはまるんじゃね?と思わせること


大抵の人ならここで変に考えますよね~。勘違い乙!
でも勘違いしてくれていいですよ?勘違いじゃないんだからね!

やばいなんか意味わかんない。

338 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/29(金) 01:56:07.63


「確かに結構アタックしてるな。異性と買い物なんてそうそうないイベントだろうし、
 もう相手は勘違いによりドキマギしてるまである」



ならドキマギしてください。
この人わざと言ってませんか?と思うレベル。


「でも、まったくそんなそぶりみせないんですよね~」


といいつつ、先輩のことを見つめます。


作戦その2
不自然なタイミング意味深な態度で勘違いを誘う



「いや、そんな期待されてもそうそういいアイデアなんかでねーよ」



勘 違 い 乙 !

この人実は馬鹿なんですか?
わたしのことをあざとい後輩認定してるのでこの手の攻撃は無意味ですかねー。


ええい!作戦その3!
相手の服の一部を引っ張ってもえもえきゅん作戦!

しかし効果はいまひとつのようだ

ですよねー!前々からやってるのに動じないんですもんわかってました!
なんかテンションおかしくなってきた。

339 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/29(金) 01:56:57.86


「はぁ~。なんかもういいです。疲れました」

「……あー、すまんな力になれなくて」

「謝らないでくださいよ。先輩のそういうとこわかってて回りくどいことしましたし」

「あ?」


……もうぶっちゃけてもいいよね。



先輩って鈍感なのかもしれませんが、意図的にそういうの避けてる感ありますし、
こんな遠回りなやり方ではなにも進展しないでしょう。
失敗を恐れて、安全なやり方ばかり選んでいたら、
本物なんて手に入らない……そんな気もします。



先輩に向き直り、じっと見つめる。
握った拳が痛い。心臓は今までにないくらい早鐘を打ち、声が震えそうになるのを必死に抑える。

ほんと、こんな経験初めてだ。
いざ本気になってみるとこんなにも怖いなんて。


でも我慢できなくて、失敗してもいいなんて思えないけど……それでも。
現状を破壊してまでも、欲しくなってしまったから。


これは作戦その4です。
多分、ここまで先輩に踏み込んだことをした人はいない……と思います。
だからこれはわたしを、一番に、印象付けるための……作戦。

断られるのは怖いけれど、それでも先輩に近づけるなら成功……ですよね?



340 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/29(金) 01:58:00.50


「先輩、わたし、その……。わたしが好きなのは――――」




「あ、おーいいろはす~。ん?お、ヒキタニ君も一緒じゃーん。どしたん珍しい」


わたしが想いを伝えようとした瞬間、
向こうから戸部先輩、葉山先輩たちグループが歩いてくる。

思わぬ空気ブレイカー出現にわたしは声も出なかった。


「……おい、戸部」

「ん?どったんはやとく……あ、れ?もしかして俺お邪魔しちまった、か?」


やばい、ここは誤魔化さなきゃ。
……先輩に迷惑がかかる。


「いえいえ大丈夫ですよ~。ちょっと奉仕部に相談ごと持ってきてただけなんで」

「あ、あ~焦ったわ~。俺としたことがやっちまったかと思ったわ~」

「あはは、なんですかそれ~」


………ほんとなんですかそれ。


戸部先輩はまだわたしが葉山先輩のことを想ってるって思ってるでしょうし、この場は大丈夫ですよね?

それにしても瞬時に笑顔貼り付けられるわたしの技量には惚れ惚れしますね~。
とりあえず明るくしなきゃ。……あまりいやな感情は持ちたくないですから。

341 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/29(金) 01:58:46.62



「なに?ヒキオいんの?」

「二人ともはろはろ~」



後ろから女王こと三浦先輩と妃菜先輩が続く。

先輩は、うすと返事をしている。
変な返事ですねー。



「みなさんおそろいでどうしたんですか?もうお昼休み終わっちゃいますよ~?」

「え、まじ?んだよ~せっかくフリスビーやろうとおもってたんによ~」

「だからいったろ時間あんまないぞって」

「……じゃあなに?あーしたち無駄に歩かされたわけ?」

「ちょ、ごめんて~。飲み物おごるからさ~」

「あーしスタバのフラペチーノが飲みたいんだけど」

「えぇ!?そこは缶ジュースとかじゃないの!?」


三浦先輩が半ギレになったり周りが茶化したりして盛り上がる。
わたしはそのなかに混じる気分にもなれず、その場を離れるとする。

342 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/29(金) 01:59:16.54

「じゃあみなさんおつかれさまでーす」


戸部先輩をはじめ、じゃーなーなんて返事をきいてから足を動かす。
去り際に、すまないなんて声が聞こえた気がするが、気のせいだと思います。


さりげなく、じゃあおれも戻るわ、なんて言って帰る先輩のあとに続いていく。


343 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/08/29(金) 01:59:43.44


無言で歩き続ける。……さっきの続きを聞いてきたりしないのでしょうか。
それとも聞きたくなかったり……なんて。


「じゃあおれはこっちだから」

「あ、はい。話聞いてくれて……ありがとうございました」

「……気にすんな。じゃあな」

「はい……それでは」



先輩が先に進んでいくのを見送り、わたしはその場で立ち尽くします。

なんかどうしようもない空気になってしましました。
ほんっと最悪なタイミングでしたね。……いってもどうしようもないので忘れるとしましょう。




まだ終われません。……終われません、が。
なにかが終わってしまったような気分になるのは………気のせいでしょうか。




***

346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/29(金) 02:22:43.25


相変わらず面白い
368 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/09/02(火) 18:12:16.69



告白未遂から数日、またもわたしは何もできずにいた。
言葉にできない気まずさからこれまた自分から距離を置いてしまっている。

しかし、前回と違うのは距離を置いた理由だ。
先輩に顔を合わせるのが恥ずかしい、というなんとも可愛らしいものとは違い、
先輩と顔を合わせるのが怖い、というものである。



まさか自分で軽く引くくらい先輩に惚れこんでいるというのに、
こんなにも会いたくないなんて思うことに驚きだ。



なにが怖いって?
そりゃ避けられてしまうかもしれないという不安ですよ。
先輩と会って、もし、互いの態度が上っ面なものになってしまったらどうしよう、とか。
自然と先輩がその手の話題を潰してきたり、わたしのアピールを避けてきたりして。


そして気づけば今までのことがなかったかのような関係に―――



「なったらどうしましょう……」


「……ここは相談を受けるとこではなく、生徒の見本となる者の仕事場なんだが」


「わたしの唯一の安らげる場なんですよ~。大目に見てくださ~い」



はい、また生徒会室でございます。
わたし専用奉仕部みたいな?ハッハッハ。


でもここでしか不満を吐けないですしー、ストレスを貯め込むのはよくないっていいますしー。



「その関係を潰したくないならなおさら距離をとるのはまずいんじゃないのか。
 だったら、関係悪化を恐れず素直に気持ちをぶつけてみるのはどうだ」

「それもそうですけどー。それができたら苦労しないっていうかー」



その素直な気持ちをぶつけられる相手ならいいんですけど、相手の鉄壁を崩せる気がしません。
ていうか風ですね風。流される的な?なにそれ辛い。

369 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/09/02(火) 18:12:54.77


「あのぉ、逆に距離をとるのもありなんじゃないですか?恋愛ではよくある戦法ですよね?」

「こんな状況じゃなきゃありかもですけど、そのまま疎遠になっていく気がします……」


目があっても何事もなかったかのように逸らされるなんて想像して絶望。
それにすでに距離とっちゃってますし。


「そもそも彼は避けてたのかな?もしかしたら言ってくれるのを待ってた線もあるんじゃない?」

「あーそれもあるかもですねー。でもあの先輩ですし……」


なんか楽観視できないってゆうかー、
うわぁ……いつになく弱気だなー、わたし。


「その不安てのは、あくまで会長の想像だろ?だったら本人はどう考えてるかわからないじゃないか。
 もしかしたら城ノ内のいったとおりかもしれないぞ」


……まぁ確かにわたしが勝手に決めつけてるだけですけど?
ちょっとマイナスになりすぎ、ってのは自分でもわかってるんですけどね


自分で思ってるほど深刻な話でもないかもしれないし、わたしの捉えようの問題だ。
これまで通り当たっていけばいいのだろう。


……そうですね、やることはどうせ同じですし。
ちょっと空気が悪くなった程度どうってことないです。

と、いうことにこの場ではしておきます。

370 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/09/02(火) 18:13:32.90


「……副会長の言うとおりですね。すみません!弱気になってました!
 それじゃさっそく行動してきます、皆さんお疲れ様でした!」



「待て。それとこれとは話が別だ。この書類にハンコを押してもらう作業をしてもらおう」


ですよねー。




371 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/09/02(火) 18:14:15.41


  * * *




あの場ではああ言いましたが、弱気なのは変わらずで、行動する気もさらさらありません。
こんなんじゃだめだなー、と思いつつもどうしてもいい方に考えがいかない。


でもこのままでは、全てが台無しになるのも事実。
だったらダメもとで……最近ダメもとで行動することが多い気がします。

無理なものに手を出さず、自分を傷つけずでいたのに。
100%以外は0%くらいの考えだったのに。



「はぁー、早く帰ろ」



足を速めた矢先に、今は会いたくなかった人と出会う。


「……よお」

「あ、どうも……先輩」


少しの間沈黙が続き、先輩のほうから口を開く。


「もう帰りか?」

「あ、あー、いえ、まだ仕事途中でこれからちょっと」

「そうか頑張れよ」

「はい~。それではおつかれさまでーす」

「おう」


本当はもう仕事が終わり帰るところだったのだが、つい嘘をついてしまった。
どう考えても不自然……でしたよね。あぁ…ド壺にはまっていく。

372 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/09/02(火) 18:14:55.86

先輩にああ言ってしまった手前、今すぐに帰るわけにもいかずそこらを適当にぶらぶらする。


すると一人の教師が目に留まる。
どうやら、あちらもわたしの存在に気付いたようでこちらに寄ってくる。


「おお一色、生徒会ご苦労だな。マネージャーもしてるのに偉いこった」

「いえいえ、まだぜんぜんうまくいってなくて~」


暗くなっていても笑顔を取り繕うことは忘れない。
考え方が変わってきていても、いままでのスタイルまで変わることはない。

見た感じ体育系のこのおっさんはサッカー部の顧問である。


「いやいや頑張ってるとおもうぞー?そんで、忙しいだろうが部活の備品が足りてなくてだな、
 悪いんだが補充しといてくれないか」

「……あ、はい~了解です!」

「すまんな忙しいのに」

「それを承知の上で生徒会入ってるんで、どうってことないです!」


まったくそんなことはないのだが。
半ば洗脳されて入ってしまった感じですし。


顧問は一言礼を言うと職員室の方に向かって歩いていく。

373 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/09/02(火) 18:15:21.80

なんでわたしなんですかねー、マネは他にもいるでしょうに。

たまたまそこにいたからだろうか。なんて運の悪い。
なんか今日はレアエネミーのエンカウント率高いですねー。
ボールが少ない時にでる伝説ポケモンみたいな。ポケモンとか金銀くらいしか知りませんけど。


「頼まれたからには仕方ないですね~。明日にでもいってきましょう」


ついでに戸部先輩も使おう。別にこの間の腹いせとかじゃないですよ?
使え……優しい先輩なので協力してもらうだけです。



嫌なことから逃げるときに人の心は少し軽くなるもので、
先輩に会わなくていい口実が出来たことに少なからず喜んでしまっているわたしがいた。



そんな自分に気づき、胸のつかえが酷く、重くなったような気がした。







374 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/09/02(火) 18:16:14.90


  * * *




「ねーねー、いろはちゃん。最近あの先輩と一緒にいるとこ見ないけど、喧嘩でもしたの?」

「そうそれ。気になってたんだよね~」

「はへ?」


クラスメイトであり、わたしの仲の好いお友達である二人が変なことを聞いてくる。


「あ~葉山先輩?いや~今は距離をとって様子見というか?逆に意識させちゃう作戦みたいな?」

「あれ?まだ葉山先輩狙ってたの?てっきりあの先輩に乗り換えたかと思ったのに」

「え……」

「ほら、なんてったっけ?ひき……ヒキガ……タニ?あ、そうだヒキタニ先輩だ!」


違うんですけど。ヒキガタニて……弾き語りみたいでちょっと面白いじゃないですか。
ていうか、え?なんで?そんな目立ってましたっけ?


「あ、あ~そっちの先輩ね、あはは。そんな一緒にいたかなー?
 仕事の話くらいしかしてなかったと思うけど」

「えー、よくみるよー。この間一緒にお昼とか食べてたんでしょ?てっきり付き合ってるのかと」

「それ思った。なんかいい雰囲気だったじゃん?」

375 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/09/02(火) 18:17:01.97

これはあれか。葉山先輩を狙うものを一人でも多く潰したい女子の心理戦か。
別にもう狙ってないんでどうでもいいですけど。

ていうかなんでこんなガッツリ知られてるんでしょうか……。
わたしって実は隙だらけ?先輩に好きだらけ故に。うわつまんね。

というかこの手のネタは今はちょっと堪えますね……。


先ほどまで笑ってた二人だったが、急に真面目な顔をする。


「それで、実際のとこどうなの。ヒキタニ先輩好きなの?」


あーちょっとめんどうだなー。
これは、絶対言わないでね!わかった!の繰り返しで拡散していくパターンですね。


そこそこ仲のいい友人だったが、わたし自身、そこまで踏み込もうとしていないので、
どうも薄っぺらく、深読みするような間柄である。

正直もういいかなーとか思ったり。


「……まあ、そのー。うん」


と答えると、きゃーやっぱねーキェアーなんて盛り上がる。
ああ、こりゃネタになりますね、と思ったが予想外の返事をもらう。


「よかったねーいろは。やっと本気になれる人見つかって」

「うんうん。いろはちゃんなんか誰に対しても妙な距離とってたし心配してたよ~」

「ね。だから葉山先輩狙うって言ってたときは、あーってなったけど」

「わざわざ一部で悪評の絶えない先輩を選ぶってことは、よほどのことがあったわけでしょ」


……なんだろうこれは。新手の戦略でしょうか。
日々女子は周りの関係を壊さず攻撃を与える技術を産み出してるのでしょうか。
わたしもそれ系の女子ですけどね、えへっ!

376 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/09/02(火) 18:17:29.80

「あははーそうかばれてたのかー。わたし的には上手くやってると思ったんだけどな~」

「もう超丸わかりって感じだったよ~」

「そーそー。……だってあの先輩と一緒にいるいろはって、一番楽しそうにしてるんだもん」

「妬けちゃうよね~」


そう口にした二人は、戦略女子特有の嫌な笑みではなく、どこかやさしい笑みだった。


「もー妬けるってなによ」


わたしはこの空気をどうしたらいいかわからず戸惑い、誤魔化すように笑う。


「実際さ……あたしらはいろはと仲いいつもりだけど、いろははそう思ってないのかなーって思うことがあってさ」

「うん。なんとなく距離あいてるのかなーなんて……思ってた」

「あ……え、と」

「まあ、あたしらの勝手な思い込みだし、だからなに、って言えないんだけどさ」

「もしかしたら、あんまり楽しくないのかな~って」

377 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/09/02(火) 18:19:48.18

核心をつかれドキッとする。
予想外の彼女たちの分析に素直に驚いた。……いや、そんなものではない。

彼女たちと遊ぶのは楽しい。そりゃ当然だけれど。
でもそれは遊ぶことが、だったのか彼女たちだから、だったのかは……わからない。



「だからあの人と本当に楽しそうにしてるいろはが見れてよかったよ」



ちょっといい笑顔でニコっとしている。
対するわたしは少し泣きそうだ。


わたしの友達はちゃんと友達だった。
なにいってるか自分でもよくわからないけどそういうことだ。


分析してたとかそういうのじゃなくて、純粋にわたしを見ていてくれたのだ。
……もしかして本物というのは彼女たちのようなことを言うのだろうか。
わたしのほうが偽物ということか。

いろいろ考えていたわたしが恥ずかしく思える。


「ちょいろは大丈夫!?」


気付いたら涙が出でいた。
なんかいろいろと申し訳なくて……。



「あは、は……。だいじょうぶ。ちょっと目に大量のゴミがね」

「ええ!それだいじょうぶじゃないよ~」



泣き止むまでのほんの数分。
さすられていた背中はとってもあたたかかった。



378 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/09/02(火) 18:20:21.74







「いや~お見苦しいところをお見せしました~」

「ほんとだよ、びっくりしたわ」

「そんないいかたダメだよー」


三人ともあはは、と笑いあう。


「……ごめんね二人とも。ありがと」

「ん~なにが~?」

「えへへ~」


軽い青春劇に皆少し恥ずかしく感じたのか軽く流し、話を戻してくる。


「それで!あの先輩と喧嘩したわけ?どうなの?」

「え、えーその話まだ続くのー……」

「そりゃいろはの一世一代のバトルですから!」


こういうのは気の持ちようの違いなのだろうか。
なんだか楽しく思える。

今までも楽しかったといえばそうでけど、それとは別に、ね。


「まあ、ちょっとギクシャクしてたけど多分大丈夫」

379 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/09/02(火) 18:20:56.40

その時のわたしの顔はいい笑顔してたんじゃないかなと思う。
二人とも、おお、なんて言ってるし。


多分、もうだいじょうぶ。
なんとなくだけど、わたしにも"本物"が見えた気がするから。



彼女たちはずっと本気だったのだろう。わたしが見ていなかっただけで。

これで本物になれたとは思わないけど、少しでも近づけたらいいな。



「よし!その大丈夫っていう根拠を聞かせてもらおうかのぅ~」

「あはは、誰それ~」

「秘密で~す!」

「実はノープランだったりするんじゃないのー?」

「はい」



また笑いがうまれる。




なんかすごくいい気分です。



授業開始したにも関わらず笑いが止まらなくて、
こんなわたしの姿を初めて見たであろう先生は驚いてなにも言えなくなってました。

まあ、あとで怒られましたけどね。







  * * *


380 : ◆HXOW7gYdL6 :2014/09/02(火) 18:23:10.46
これにて導入終了
次から動きますかね
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/03(水) 18:50:13.41
いろはすかわええ
安定して質が高いから期待
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/04(木) 22:58:27.90
うむ、>>1のいろはは非常に可愛い
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/04(木) 23:05:56.69
いろはのモノローグ、好きです
次スレ:

いろは「わたし、葉山先輩のことが…」葉山「…俺は彼の代わりにはなれない」【後編】



このシリーズSS:

いろは「わたし、葉山先輩のことが…」葉山「…俺は彼の代わりにはなれない」【前編】


いろは「わたし、葉山先輩のことが…」葉山「…俺は彼の代わりにはなれない」【後編】



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