八幡「なんだ、かわ……川越?」沙希「川崎なんだけど、ぶつよ?」3

544 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/16(火) 00:28:43.23
前回スレ:

八幡「なんだ、かわ……川越?」沙希「川崎なんだけど、ぶつよ?」2



八幡「………………」

沙希「一緒に、寝てくれない?」

八幡「聞き間違いじゃなかったのか…………いやいや何を考えてんだお前は」

沙希「あたしだって寂しくなることはあるよ。出来ることがあったら遠慮なく言えって言ったのはあんたでしょ。そばにいてやるくらいのことはする、とも」

八幡「いや、それは出来ないほうだろ」

沙希「何で? あたしの隣で寝るだけでしょ」

八幡「物理的な話じゃねえよ心理的な問題だ。あのな、俺は男でお前は女、OK?」

沙希「当たり前じゃないそんなの。あたしが男で誰が得をするのさ。海老名以外」

八幡「一応真面目な話だから茶化すな。男女二人が同衾していいわけないだろうが」

沙希「何で?」

八幡「何でって……間違いがあったらどうすんだよ」

沙希「寝てて無防備だったあたしにすら手を出さなかった男が何言ってんのさ。それともあたしの事がそんなに嫌い?」

八幡「んなわけねーだろ…………もう恥を忍んで言うけどな、見てしまおう触ってしまおうって誘惑と何度戦ったか自分でもわかんねえんだぞ。俺じゃなかったらお前はとっくに襲われてる」

沙希「でもあんたは我慢したんでしょ?」
545 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/16(火) 00:30:14.45
八幡「ギリギリいっぱいいっぱいのとこでな。お前の親御さんにも信用されて預けられてるんだ。あとお前を傷付けたくないし」

沙希「こっそり見たり触ったりなんて黙ってりゃわかんないのに」

八幡「俺自身が嫌なんだよそういうの。でも俺の理性なんてちょっとしたことで決壊しかねんぞ。男子高校生の尋常じゃない性欲を舐めんなよ」

沙希「そんなのどうとでもなるでしょ。それよりちょっと手を貸してよ」

八幡「ん? ああ」

八幡(上半身を起こした川崎に俺は右手を差し伸べる。川崎はその手を掴み、思い切り自分の方に引っ張った)

八幡「うおっ!」

八幡(勢い良く川崎ともつれるように倒れ込み、端から見ると俺が川崎を押し倒したかのように見えるだろう)

八幡「何すんだよ…………大丈夫か?」

沙希「ねえ、あんたさ、この状況でも何にも思わないの?」

八幡「…………」

沙希「あたしってそんなに魅力ない?」

八幡「そんなわけあるか、川崎は良い女だ。それだけは俺が断言する」

沙希「じゃあ」

八幡「でもな、今のこれは違うだろ。家を飛び出すくらいなんだ、多少なりとも自棄になってないとは言えないだろ」

沙希「それは…………」
546 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/16(火) 00:32:28.93
八幡「とりあえず今は休んどけ。寝るまで手くらいは繋いどいてやるから」

沙希「じゃあ比企谷の手、借りてもいい?」

八幡「おう、好きなだけ使え」

八幡(俺がそう言うと川崎は俺の手の甲側を握り、スススと自分の腹を這わせさせる)

八幡(何を、と思う間もなく川崎はその手をジャージの中に突っ込ませた)

八幡「!! お、おい何を!?」

沙希「んっ…………さっき男子高校生うんぬん言ってたけどさ、女子高校生にだって性欲はあるんだよ」

八幡「!!」

沙希「ん、はぁ……比企谷がしてくれないなら自分でするしかないじゃない…………んっ」

八幡(川崎の手に導かれた右手の指に感じる濡れた感触と柔らかさと熱さ。これが、女の、川崎の女性器)

沙希「う、んっ……これは比企谷が手を出してるんじゃなくて、あたしが自分で慰めてるだけだから…………ちょっと比企谷の手を借りてるだけ……んっ」

八幡(あまりの眼下の光景に言葉が出てこない。目の前で、川崎が自慰行為をしているなんて)

沙希「いいっ……比企谷の指、気持ちいいよぉ…………んんっ」

八幡「か、川崎……」

沙希「ごめん、ごめんね比企谷、こんな女でごめん」

八幡(謝りながらも川崎の指の動きは激しさを増していく。少し固い豆のようなものを俺の指の腹に当てて擦り付ける。これがクリトリスというやつだろうか?)
547 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/16(火) 00:33:40.91
沙希「あ……あ……ごめん比企谷…………もうダメ、あたし、イってもいい?」

八幡(川崎は切なそうな表情で、懇願するような目で問い掛けてくる)

八幡(俺は川崎の耳元まで顔を寄せて囁いた)

八幡「いいぞ、思いっきりイってしまえ。お前がイくとこ、しっかり見ててやるから」

沙希「うんっ……うんっ……見て、見てて…………比企谷っ、比企谷ぁっ」

八幡(頭を起こして川崎の顔を覗き込むと、呼吸を荒くして泣きながら笑っているような表情になる)

沙希「あ、あ、あ、あ…………ああああっ!」

八幡(川崎はびくんっと身体を大きく震わせて一際甲高い声を上げた。どうやらイったらしい)

沙希「あ……あ……あん」

八幡(びくんびくんと身体を痙攣させ、余韻に浸る川崎。俺の指先はぐしょぐしょに濡れているのがわかる)
548 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/16(火) 00:35:05.82
沙希「ごめん……指、汚しちゃったね」

八幡(ジャージから引き抜くと滴りそうなほどになっていた。早いとこ洗面所に、と思ったところで川崎はその俺の指を自分の口に含んだ)

八幡「お、おい、何を」

沙希「あたしが、んちゅ、汚したんだから、ちゅ、綺麗に、れろ、してるんじゃない」

八幡「それヤバい、もうヤバいから。ちょっと一回離してくれ!」

沙希「んっ……ちゅ……比企谷さ、どうせこの部屋出てどっかで一人でする気でしょ?」

八幡「え、あ、いや…………」

沙希「だったら比企谷もここでしてよ、あたしの手を使っていいから」

八幡(川崎はそう言うとズボンの上から堅くなった俺の肉棒に触れてきた)

八幡「や、やめ……」

沙希「比企谷だってオナニーくらいするでしょ? ただそれをあたしの手でするだけ。あたしに何かしてるわけじゃないんだから、ね?」

八幡(そう言ってズボンの上から撫で回す動きに、とうとう俺の理性は決壊した)

八幡(チャックを下ろして肉棒を取り出し、川崎の右手に握らせる)

沙希「ん、あ、熱っ……すごい……」

八幡「さっきからずっと我慢に我慢を重ねてたんだ。もう遠慮しねえしすぐ限界だからな!」
549 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/16(火) 00:38:24.05
沙希「ん、いいよ。あたしの手で気持ち良くなって」

八幡(握らせた手に自分の手を添え、激しく上下に擦らせる。していることは自分でするのと変わらないのに快感の度合いが段違いだ。川崎の手が柔らかくてすべすべですごく気持ち良い)

八幡(あっという間に限界を迎えた俺は傍らにあったティッシュを取って肉棒の先っぽを包み込ませる)

沙希「イきそうなんだね比企谷? イって。イって。あたしの手で出しちゃって」

八幡(俺の顔を見つめながら囁く言葉にとうとう俺は限界を越えた)

八幡「あうっ! うっ! うっ! ううっ!」

八幡(すごい勢いで精液が尿道を通り抜け、大量に射精する。当然一度で出し切らず幾度も繰り返し、そのたびに俺は呻き声をあげた)

八幡「はあっ……はあっ…………はあ」

八幡(すべて出し切ったあと、身体から力が抜けてドサッと川崎の横に倒れ込む)

沙希「ふふ、お疲れさま。気持ち良さそうな比企谷の顔、可愛かったよ」

八幡「…………勘弁してくれ」

八幡(俺はのろのろと後始末をし始める。自分で出したのを零さないようにさらにティッシュで包み、ゴミ箱に放った)

八幡(川崎も局部を拭き、後処理をしている)
550 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/16(火) 00:42:48.12
沙希「ね、比企谷。スッキリした?」

八幡「そんなこと聞くなよ……今賢者モードで落ち込んでんだから」

沙希「賢者モード? 何それ」

八幡「あー……簡単に言うと、したあとに妙に冷静になって落ち着いてるってことだ」

沙希「ふうん……大志も妙に落ち着いてる時とかあったけどそれなのね」

八幡「え、何? 大志?」

沙希「うん、時々こそこそ一人でしてるけど隠せてないんだよね。トイレでしてるのもバレバレだし」

八幡「それ絶対本人に言うなよ? オナニーしてんのバレてるなんてマジで自殺もんだからな」

沙希「わかってるよ……比企谷は?」

八幡「あん?」

沙希「比企谷はバレたりしてない? 小町とかに」

八幡「それは大丈夫……と思いたいが…………」

沙希「女性向け雑誌とかには『わかってもそっとしておいてあげましょう』ってあるよ。もしかしたらバレてるかもね」

八幡「マジかよ……家ですんの止めとこうかな……」

沙希「ところでさ」

八幡「ん?」

沙希「その……あたしに幻滅とか、した?」

八幡「あ? しねえしねえ。むしろ可愛いとこ見せてもらったって感じだ」

沙希「う……そ、そう?」

八幡「お前は? 俺に幻滅したりしたか?」

沙希「するわけないよ」

八幡「ならいいだろ」

沙希「うん、じゃあさ」
551 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/16(火) 00:45:18.26
八幡「何だ?」

沙希「もうスッキリしたなら大丈夫だよね? 一緒に寝よ?」

八幡「あー……わかったわかった。俺も疲れたし、寝るか」

沙希「ん」

八幡(俺は寝間着に着替え、川崎が横になっているベッドに潜り込む)

沙希「比企谷、腕枕してよ」

八幡「お前本当に遠慮しなくなったな…………あとで思い出して恥ずかしくなるぞ」

沙希「わかってるよ」

八幡「わかってんのかよ」

沙希「でも今はそうして欲しい気分なの。早くしな」

八幡「へいへい」

八幡(俺が腕を伸ばすと川崎は嬉しそうに頭を乗せ、身体を寄せてくる)

沙希「お休み、八幡」

八幡「おう、お休み、沙希」

八幡(よっぽど疲れていたのか、それともすっきりしあったせいか、俺達はあっという間に夢の世界へと旅立った)
556 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/16(火) 00:54:04.44
普通の性行為よりはるかにエロいな
559 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/16(火) 01:04:10.55
本番無しなのになんだろう、興奮とは別にほっこりしました
とりあえず乙です
574 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/17(水) 15:02:26.77
沙希(あったかい…………)

沙希(そうだ、あたし今比企谷と一緒に寝てるんだっけ。腕枕してもらって)

沙希(少し前だったら信じられないよねこんな状況)

沙希(嬉しい…………)

沙希(本当はこのまま起きててそばに感じていたいけど…………やっぱりもう少し寝させてもらおう)

沙希(ちょっと腕回して抱きつかせてもらうけどこんくらいはいいよね)ギュ

沙希(比企谷…………あたし、あんたが……)
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/17(水) 15:03:09.29
八幡「ん…………」

八幡(目が覚めて真っ先に感じた違和感はのしかかる重さと柔らかさだった)

八幡(一瞬ドキッとしたがすぐに思い出す。昨晩川崎を泊めて一瞬に寝たのだが……)

八幡「何で抱きついてきてんだ…………」

八幡(押し付けられてる胸がヤバい。下着つけてねえから特に)

八幡(昨晩ヌいてなかったら手を出してしまってたかもしんねえな…………いや今も俺の八幡大菩薩は反応しちゃってるんですけどね)

八幡(時計と窓の外を確認すると、すでに明るくなって雨も降っていないようだ)

八幡(小町や両親が帰ってくる前に起きないとな…………でも)

八幡(ちょっとだけ名残惜しくて俺は空いてる手で川崎の頭を撫でる)ナデナデ

八幡(まああんまりやると起こしちまうかもしれんな)スッ

沙希「ん、もっと」

八幡「…………起きてたのかよ」

沙希「少し前にね。ほら早く」

八幡「ったく……誰か帰ってくる前に色々しなきゃなんねえから少しだけだぞ」ナデナデ

沙希「ん…………」
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/17(水) 15:04:06.85
八幡(ひとしきり撫でた後、乾いた服や下着を渡して朝食の準備をする)

八幡(といっても昨晩作ったものとおにぎりだが)

八幡「入るぞー」

沙希「いいよ」

八幡(ドア越しに声を掛けてから部屋に戻る。着替え中にばったり、なんて漫画みたいなヘマはしない)

八幡「よし食おうぜ。味は期待すんなよ」

沙希「ごめんね、ありがとう」

八幡(部屋の中央にお盆を置き、着替え終わった川崎と食べ始める)

沙希「そういえば比企谷、あとで袋かなんか貸してくれない? ジャージ、洗濯して返すから」モグモグ

八幡「あん? 気にしねえでいいのに。ウチの洗濯機に放り込んでりゃいいだろ」モグモグ

沙希「だってそうするとあんた後で匂いとか嗅ぐでしょ?」

八幡「! ゴホッ! ゴホッ! な、何言ってんだお前」

沙希「別に泊めてくれたお礼に新たなオカズ提供してもいいんだけどさ」

八幡「よしわかった持って帰れ。てか新たなって何だよ……」

沙希「今までも結構密着とかしてたし、その感触思い出して使ってるかなって。さっき起きた時も大きくなってたし」

八幡「そりゃあんだけくっつかれたらな…………でもあれだ、お前をオカズにしたことなんてねえぞ」
577 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/17(水) 15:04:50.11
沙希「え…………」

八幡「なんでショック受けてんだよ、されてたら普通気持ち悪いんじゃねえか?」

沙希「いや……だって……」

八幡「ん?」

沙希「その……あたしはしてるよ、あんたで」

八幡「!」

沙希「ど、どう? こう言われて気持ち悪い?」

八幡「いや、その、なんつーか…………光栄かな、なんて」

沙希「うん、だからその……あたしも比企谷なら気持ち悪いなんて思わないし、むしろ魅力ないのかなって思っちゃう」

八幡「あーいや、しようと思ったことは何度もあるんだが……万一バレた時に怖かったり、あとお前を汚してしまう気がしてな」

沙希「別にいいのに…………これからは遠慮なく使ってよ」

八幡「お、おう、じゃあ今度から使わせてもらうな」

沙希「う、うん」

八幡「…………」

沙希「…………」

八幡「朝っぱらからなんつー会話してんだろうな…………」

沙希「昨晩もっと恥ずかしいことしたしリミッター外れちゃってるのかもね……」
578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/17(水) 15:06:31.01
八幡「で、今日はどうすんだ? 夕方くらいまではウチにいるか?」

沙希「ううん、雨止んでるならもう帰るよ。もう一回親とちゃんと話し合ってみる」

八幡「そうか、なら送ってく。準備するからちょっと待っててくれ」

沙希「うん、ありがと」

八幡(俺は使った食器を水に浸け、外出着に着替える)

八幡「よし、行こうぜ」

沙希「うん」

八幡(階段を下り、玄関についたところで川崎が俺の袖をくい、と引っ張る)

八幡「何だ?」

沙希「あのさ、ちょっと相談というか頼みがあるんだけど」

八幡「あー……多分同じ事考えてると思う」

沙希「本当? じゃあちょっと同時に言ってみようか」

八幡「ああ、せーの」

八幡・沙希「「やっぱり恥ずかしいから昨晩から今朝までのはなかったことにしよう」」

八幡・沙希「「…………」」

沙希「…………ぷっ」

八幡「くくっ、一字一句まで同じとはな」

沙希「んじゃそういう事でいいよね」

八幡「ああ、あの玄関を出たら綺麗すっぱり忘れる。俺は川崎が寝てる間はリビングのソファーで寝てたからな」

沙希「うん、ごめんねベッド独り占めしちゃって」

八幡「なに、気にすんな」
579 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/17(水) 15:07:50.13
八幡(俺は靴を履いて立ち上がり、ドアノブに手をかけようとする)

八幡(が、そこでまた川崎に服の裾を掴まれて動きを止められた)

八幡「まだ何か……って、おっと」

沙希「ごめん、ちょっとだけこうさせてて……どうせ外出たら忘れるんだしいいでしょ?」ギュッ

八幡「はあ……しょうがねえやつだなまったく」ナデナデ

八幡(正面から抱きついてきた川崎を受け止め、頭を撫でてやる)

八幡(まあこいつもたまには人に甘えたいこともあるだろ。どうせ誰に見られるわけでもなし、好きにさせてやるか)

小町「あーやっと帰れたねカー君、愛しの我が家ですよー」ガチャ

八幡・沙希「「!」」

小町「あっ…………えっ?」
589 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/17(水) 21:37:48.24
沙希「こ、小町、これはその」

小町「あ、あはは、カー君、もう少し外を散歩してこよっか」バタン

沙希「ま、待って小町!」

八幡「あー…………よしとけ、多分今何を言っても逆効果だ」

沙希「で、でも」

八幡「それに今小町はカマクラ……ウチの猫を連れてる。お前を近付けるわけにはいかねえよ」

沙希「う…………」

八幡「それに元々小町には昨晩のことをある程度話して協力してもらおう思ってたんだ」

沙希「え、そうなの?」

八幡「ああ、川崎の親御さんには俺一人じゃなくて妹もいるように伝えてあるからな。さすがに男一人のとこに泊まるのはまずいだろ。だから小町には口裏を合わせてもらわないと」

沙希「……まあそうだね」

八幡「小町には後で俺から上手く話しておくから心配すんな」

沙希「うん、わかった…………よろしく頼むね」

八幡「おう、じゃ、改めて送るぜ」
590 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/17(水) 21:38:35.17
八幡(さて、比企谷タクシー出動ですっと)キコキコ

沙希「…………」ギュッ

八幡(……うん。あんなこともあったしさすがに気まずいかなと思ったけどそんなことはないな)キコキコ

八幡(でもまあ一言言っといてやるか)キコキコ

八幡「なあ川崎」キコキコ

沙希「ん、何?」

八幡「話し合いとかどうなるかはわかんねえけどさ、また何かあったら俺のとこ来いよ。遠慮なんかしねえでさ」キコキコ

沙希「それ、昨晩も聞いたよ」クス

八幡「昨晩は何もなかっただろ。ただお前が俺の部屋で寝ただけだ」キコキコ

沙希「そうだったね。じゃあ比企谷を頼りにしてるから」

八幡「ま、俺じゃ大したことなんて出来ないだろうけどな」キコキコ

沙希「ううん、比企谷がいるってだけで全然違う」

八幡「え?」

沙希「辛いときにはそばにいてくれるんだってだけで精神的に全然違うよ。あんただって相模の時に予備校でそんなこと言ってたでしょ」

八幡「…………そう、だな」キコキコ
592 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/17(水) 21:41:38.80
八幡(間もなくして川崎家が見えてきた)

八幡「あー、悪い川崎。さすがに俺がお前の家族と出くわすのは気が進まん。ここらでいいか?」キキッ

沙希「うん、ありがとね」ヒョイ

八幡(川崎が荷台から降りる。しかしそこから動かず、じっと俺を見つめる目にはわずかに不安な色が見て取れた)

八幡「…………」

八幡(まあいいか。川崎の救いになるのなら恥ずかしい思いくらいしてやる)

八幡(俺は自転車から降り、川崎をそっと抱きしめた)

八幡「じゃあな沙希、また明日の朝な」ギュ

沙希「……うん、また明日待ってるからね、八幡」ギュ

八幡(少しだけ俺達は抱きしめ合い、離れる)

八幡(俺は自転車に乗り、手を軽く振ってペダルを踏み込んだ)

八幡(……………………)

八幡(くっそおおぉぉぉ!)

八幡(何で今更あんくらいで恥ずかしくなるんだよちくしょう! 玄関でだって似たような事を平然とやっただろ!?)

八幡(本当の恋人ってわけでもねえのに抱きしめるなんて!)

八幡(………………)

八幡(…………本当の、恋人ってわけでもねえのに)

八幡(…………くそっ)
594 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/17(水) 21:44:12.30
八幡(帰宅し、ドアを開けると小町の靴があった。どうやらもういるらしい)

八幡「小町ー、いるか?」

小町「あ、お、お兄ちゃん、お帰りなさい……」モジモジ

八幡(あちゃー、これは完全に誤解してる顔ですわ)

八幡「ちょっと話があるんだ。真面目な話な」

小町「え? …………うん」

八幡(俺の表情から何かを読み取ったか、小町も顔を引き締めた)

八幡(俺達はリビングに移動し、小町の淹れてくれたコーヒーを飲みながら昨日のことを大まかに説明する)

八幡「まあそんなわけで……お前もこの家にいたってことにしといてくれ。体裁良くないからな」

小町「うんわかった、大志君にも小町が一緒にいたって言っとくね」

八幡「いや、それはいらない。むしろボロが出ないようにあいつとは一生口を聞くな。連絡先も消して着信拒否しておけ」

小町「お兄ちゃん……真面目な話なのにそういうのはポイント低いよ……」

八幡「俺は百二十%本気だぞ?」

小町「もう……じゃあさ、玄関で抱き合ってたのは何だったの? やっぱり実は何かあったんじゃないの?」ニヤニヤ

八幡「違えよ。あの段階で川崎がすげえ不安そうにしてたからどうにかしようと思ってな」

小町「うんうん、それはそれでポイント高い! 沙希さんもお兄ちゃんに惚れ直しちゃうよ!」

八幡「ばーか…………とりあえず俺は寝直すわ。ソファーじゃよく眠れなかったのか少し頭が重いし」

小町「はいはーい、お休みー」

八幡(俺は自室に戻り、ベッドに横になる)

八幡「川崎の匂いがするな…………」

八幡(他人が聞いたら気持ち悪いことこの上ないであろう台詞を呟き、俺は眠りについた)
600 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/17(水) 22:57:13.60

つーか今、画面に滅茶苦茶ニヤニヤしたキモい奴うつったんだけどさ…マジで気持ち悪かったわ
601 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/17(水) 23:26:32.64
>>600
それってあれじゃね?
いや、まぁ、うん...
603 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/17(水) 23:40:36.59
おつおつ
俺の画面には葉山みたいなやつ映ってたわ
604 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/18(木) 02:53:53.57
材木座の間違いでは?ニヤニヤ
605 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/18(木) 20:24:01.86
小町「お兄ちゃん、夕ご飯ですよー」コンコンガチャ

八幡「…………」

小町「ありゃ、まだ寝てるのか。起きてお兄ちゃーん」

八幡「…………」

小町「お兄ちゃん?」

八幡「う…………ハァ、ハァ」

小町「お兄ちゃん!? お兄ちゃんしっかりして!?」
606 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/18(木) 20:24:54.92
沙希「え、比企谷が風邪!?」

小町『はい、なので明日は学校休むから朝は迎えに行けないと伝えてくれって』

沙希「それで、比企谷の具合はどうなの?」

小町『そんなに大したことはないですよー、大事を取って休むだけですから。月曜日から学校行かなくていいとはツイてるなって喜んでましたし』

沙希「…………ねえ小町」

小町『はい、何ですか?』

沙希「本当の事を教えて」

小町『! な、何ですか本当の事って?』

沙希「自惚れかもしんないけどさ、あたしと比企谷はそれなりの関係を築いてると思ってる。なのに比企谷が自分で連絡よこさない時点でおかしいと思うよ」

小町『…………お兄ちゃんには口止めされてますが、結構辛そうです。あと、ちょっと喉がやられてまともに声が出ません』

沙希「そう…………あたしのせいだね。雨の時に濡らしちゃったから」

小町『違います! 沙希さんのせいなんかじゃありません! でも沙希さんがそう思っちゃうから黙っとけってお兄ちゃんが…………』

沙希「小町、あのさ」

小町『駄目です』

沙希「……まだ何も言ってないよ」

小町『明日学校サボってお兄ちゃんの看病するって話じゃないんですか?』
607 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/18(木) 20:26:54.33
沙希「合ってるけど…………」

小町『そりゃお兄ちゃんだって沙希さんが看病してくれるなら喜ぶかもしれません。でも学校サボらせてまでさせたいとは思ってませんよ』

沙希「…………自分は授業サボってあたしの妹の為に動いてくれたってのにねぇ」

小町『えっ、何ですかそのポイント爆上げしそうな話!? 聞かせてください!』

沙希「看病しに行っていいなら教えてあげるよ」

小町『うー……じゃあいいです…………あ、でも学校終わったあとなら構わないと思いますよ』

沙希「そう? じゃあ夕方お邪魔させてもらってもいいかな?」

小町『はい。小町が帰るまではウチの親どっちかがいますので伝えておきますね』

沙希「ん、よろしく。それじゃあね」

沙希(小町との電話を切り、あたしはその場で崩れるようにへたり込んだ)

沙希(あたしのせいだ。あたしのせいだ。あたしのせいだ)

沙希(あたし、どんだけ比企谷に迷惑をかければ気が済むの!?)

沙希(行くとは言ったけどどんな顔して行けばいいんだろう。合わす顔なんてないよ…………)

沙希(比企谷はこんなにもあたしにしてくれてるのに、あたしは精々お弁当を作るだけ)

沙希(比企谷…………)

沙希(あたし、あんたに何がしてあげられるの……?)
624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/19(金) 07:20:54.76
沙希(今日はあいつの分のお弁当はいらない。だから量を間違えないようにしないと)

沙希(みんなの分のお弁当と朝食を用意し、通学の準備を先に済ませておく)

沙希(明らかにあたしの様子がおかしいとわかるのだろう、家族がみんな怪訝な視線を向けてくる)

沙希(昨日の話し合いも穏便に終わったので思い当たることもなく、純粋に心配してくれるが、それが少し鬱陶しい。本当はこんなこと言っちゃいけないけど)

沙希(適当に誤魔化してさっさと家を出た。久しぶりのバス通学がものすごく味気なく感じられる)

沙希(あたしは朝に比企谷が迎えに来てくれるのをどれだけ楽しみにしていたかを改めて思い知った)

沙希(学校で会いたくても会えない。喉がやられたと言っていたからせめて電話で声だけでも、と思っても聞けない)

沙希(いつの間に)


沙希(いつの間にこんなにも比企谷の存在が大きくなっていたんだろう)

沙希(世間の恋人は少し離れただけでこんなになるのをどう堪えているんだろうか?)

沙希(…………違う)

沙希(あたし達は本当の恋人じゃない)

沙希(本当に繋がっているわけじゃないから、本物じゃないから寂しくて、不安になるんだ)
625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/19(金) 07:22:11.85
沙希(でも)

沙希(依頼とか口実なしに、純粋に恋人同士になりたいと言って比企谷は受け入れてくれるだろうか?)

沙希(こういったことは初めてだけど、世間一般的には付き合うのに充分な距離になってると思う)

沙希(それでも比企谷は)

沙希(比企谷はトラウマを抱えているから)

沙希(冗談混じりに聞いた比企谷の恋愛に関するトラウマ)

沙希(あれはひょっとしてもう二度とまともな恋愛をするつもりはないという周りに対するサインなんじゃないの?)

沙希(少なくとも比企谷の方から積極的に恋人を作ろうという気はないはず)

沙希(だったらこっちから行くしかないんだけれど)

沙希(怖い)

沙希(拒絶されるのが怖い。今より関係が悪くなるのが怖い。それならいっそ今のままの方がいいのかな)

沙希(フリとはいえ、嘘とはいえ、恋人として振る舞える欺瞞の関係)

沙希(わからない、どうしたらいいのかわからない)

沙希(でも一つだけ、はっきりわかったことがある)

沙希(あたしは比企谷の事が好き)

沙希(それだけは、フリでもない、演技でもない、欺瞞でもない、あたしにとっての本物)
626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/19(金) 07:23:26.02
彩加「川崎さん、今日八幡休みらしいけど何か知ってる?」

沙希(HRが終わり、一時間目の準備をしていると戸塚が話し掛けてきた)

沙希「…………どうしてあたしに聞くの?」

彩加「最近川崎さんは八幡と仲が良いからね、何か聞いてるかなって」

沙希「風邪、らしいよ。そんなに重くはないけど大事を取って休むって聞いた」

沙希(嘘は言ってない。小町からそう聞いたのだから)

彩加「そう、結構ひどいんだね……お見舞いとか行った方がいいのかな?」

沙希「…………あたしそんなに重くないって言ったよね?」

彩加「うん」

沙希「戸塚の言ってることおかしくない?」

彩加「川崎さんは『聞いた』って言ったよね、『言ってた』じゃなくて。八幡から直接聞いたわけじゃないならもしかしてって思ったんだけど」

沙希(驚いた。戸塚はあたしと同じようにして同じ答えにたどり着いてるんだ)

沙希(戸塚彩加。ある時を境に比企谷に絶対的とも言える信頼を寄せているクラスメート。比企谷にどんな悪評が起こってもその距離を変えることがなかったほぼ唯一の男子)

沙希「ねえ、戸塚、不躾で悪いけどさ」

彩加「ん、何かな?」

沙希「昼休み、相談に乗ってもらっていい?」
629 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/19(金) 08:09:08.88
乙!
もう戸塚と重婚で良いんじゃないかな?(錯乱
635 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/19(金) 12:41:02.52
ニヤニヤしすぎて顔面が崩壊しそうww

あっ……もうしてたorz
637 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/19(金) 17:25:31.98
彩加「お待たせ川崎さん」

沙希「ごめんね付き合わせちゃって」

彩加「ううん気にしないで、よいしょ」

沙希(いつも比企谷と食べている場所、いわゆる比企谷の言うベストプレイスでお弁当を広げる)

彩加「それで相談ってのは八幡のこと?」

沙希「うん……その前に確認しておきたいんだけど、戸塚ってあたしと比企谷の関係を知ってる?」

彩加「詳しくは知らないかな。噂でなら聞いてるけど本当のことは」

沙希「そう。実はね…………」

沙希(あたしはかいつまんで戸塚に比企谷との関係を話した)
638 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/19(金) 17:26:28.21
彩加「そうだったんだ、でも…………」

沙希「でも?」

彩加「その割には随分自然な仲の良さに見えたけど」

沙希「そう見えた?」

彩加「うん。だからフリってのを聞いて逆にびっくりしたかな」

沙希「それはたぶん……あたしが本当に比企谷のことを好きだからだと思う」

彩加「……そうなんだ」

沙希「うん。でも比企谷の方は何とも思ってないんじゃないかな」

彩加「どうして?」

沙希「あいつさ、恋愛沙汰に関して色々トラウマを抱えてるでしょ? それなのにこんな真似事に付き合ってくれるってことは意識してないってことじゃない」

彩加「……僕は逆だと思うな」

沙希「えっ?」

彩加「川崎さんといる時の八幡の目、誰とも違ってたよ。少なくとも何とも思ってないってことはない」

沙希「…………」

彩加「でもたぶん八幡自身はその事をわかってないと思う。自分でも川崎さんをどう思っているかわからないんじゃないかな?」

沙希「…………」

彩加「僕の個人的な考えだけど他の女子、例えば雪ノ下さんや由比ヶ浜さんに川崎さんと同じ依頼をされたとしても引き受けなかったんじゃないかと思うよ」
639 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/19(金) 17:27:17.58
沙希「そう……かな?」

彩加「うん、他の解決策を探すだろうね。だってそういう方法って八幡が嫌いそうだもの。選択肢がなかったらするだろうけど」

沙希(そういえば海老名に告白したのもとっさのことで他に方法が思いつかないからやむなくって感じなんだっけ)

沙希「…………戸塚は、あいつのことよく理解してるんだね」

彩加「それは川崎さんもでしょ? それに僕より川崎さんの方が信頼されてる」

沙希「どうして?」

彩加「だって僕、八幡の恋愛のトラウマなんて知らないもの」

沙希「!!」

彩加「そういったのがあるってのは知ってるよ。でも具体的な内容は知らない。川崎さんさっき『色々』って言ったよね? なら八幡から聞いてるんでしょ」

沙希「……うん。でもそれくらいなら雪ノ下達にだって」

彩加「違うよ。それは八幡風に言うなら黒歴史。トラウマじゃない。それなら僕も聞いてる」

沙希「…………」

彩加「知ってるんだよね? 根っこのとこにある八幡の本当のトラウマ。むしろそれを知っちゃってるから川崎さんは不安に思ってる」

沙希「うん……」
640 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/19(金) 17:28:20.46
沙希(普段の会話でするような感じで、でもとても笑い飛ばせるような内容じゃない話を何度かされている)

沙希(あたしが言葉に詰まるとすぐに話題を変えていたけど…………あれは雪ノ下や由比ヶ浜にも話してないの?)

沙希(近しい女子みんなに話して牽制しているのかとも思ったけど、あたしにだけ?)

沙希(…………駄目だ、比企谷の意図がわからない)

彩加「川崎さんは八幡とどうしたくて、どうなりたくて僕に何を相談したいの?」

沙希「あたしは、できれば比企谷とちゃんとした恋人になりたいと思ってる…………でも、この想いが比企谷にとって苦痛になるなら今のままでもいい。ただ比企谷の考えがあたしにはわからない。だから比企谷と一番仲の良い戸塚に相談したの」

彩加「一番って言って貰えるのは光栄だね。僕から見れば今は川崎さんの方が一番だと思うけど…………ごめん、僕には今の八幡の考えはわからないや」

沙希「そう……」

彩加「少し前なら川崎さんとそういった関係になるのは拒絶してたと思う」

沙希「え?」

彩加「今は……だいぶ揺れている状態じゃないかな? トラウマと天秤にかけちゃうくらい川崎さんの存在は八幡にとって大きくなってる」
641 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/19(金) 17:28:58.52
沙希(あたしと同じように…………比企谷の中ではあたしが大きくなってる?)

彩加「いずれにしても川崎さんがちゃんと考えて決めたことなら八幡は蔑ろにはしないよ。悪くなるってことはないんじゃないかな」

沙希「そう…………なんかごめんね、こんなことで煩わせちゃって」

彩加「ううん、相談してくれて嬉しいよ……川崎さん」

沙希「何?」

彩加「八幡をよろしくね」
642 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/19(金) 17:31:51.61
沙希(お見舞いは川崎さんに任せるね、と言って戸塚は教室に戻っていった)

沙希(戸塚、か。見た目からは信じられないほど強いね。比企谷の近くにいるのもわかる気がする)

沙希(…………戸塚に相談とは言ったもののただ話を聞いてもらっただけに等しく、進展らしい進展はない)

沙希(でも心が少し軽くなったかな。とりあえずあたしにできることをしよう)

沙希(差し当たって今日の授業のノートをコピーして持って行ってあげるとしよっか)

646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/19(金) 17:40:02.74
乙乙!
戸塚が普通にカッコいいぞ、惚れる
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/19(金) 19:22:45.40
沙希(………………)

沙希(放課後、あたしは比企谷の家の前にいた)

沙希「うー…………」

沙希(どんな顔をすればいいのか、何を言えばいいのかわからず、呼び鈴を鳴らすのを躊躇ってしまう)

沙希(ええい、女は度胸!)

沙希(何分か逡巡したあと、あたしは思い切って呼び鈴を鳴らした)ピンポーン

小町『はいはーい、沙希さんいらっしゃい。今開けますねー』

沙希(インターホンから小町の声がして少しほっとする。やっぱり御両親に会うより気が楽だ)

小町「こんにちはー、どうぞあがってください」ガチャ

沙希「ん、お邪魔するね」

沙希(玄関で靴を脱ぎ、家の中に入る)

沙希「比企谷の様子はどう?」

小町「夕べや朝よりはだいぶ楽になってるみたいですよ。呼吸も安定してますし」

沙希「そう」

沙希(階段を上がり、比企谷の部屋の前まで来る)

小町「さっきまた寝たばっかりなんで少し静かにお願いしますね」

沙希「うん、わかった」

沙希(少し安心した。比企谷の顔が見れて、会話しなくていいのなら。だって何を言えばいいかわからないから……)

沙希(本当なら謝りたいけど比企谷はそれをよしとしないだろうし)
648 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/19(金) 19:23:48.74
小町「お兄ちゃん、入るねー」ソー

沙希(小町が小声で断りながら部屋に入り、あたしはその後に続く)

沙希(ベッドで少し顔を紅潮させて寝ている比企谷が目に入る。見た感じは確かにそこまで辛そうではないようだ)

沙希(あたしはそっと比企谷の頬を撫でた)

八幡「ん…………」

沙希(あ、やば。起こしちゃったかな)

八幡「…………」

沙希(わずかに瞼を開き、焦点の合っていない目であたしを見る)

八幡「さ……き……………」

沙希「えっ」

沙希(名前で呼ばれた? かと思うとあたしの方に腕を伸ばしてくる)

沙希(その手が首の後ろに回ったかと思った瞬間、ぐいっと引き寄せられた)

沙希「あっ……」

沙希(上半身を比企谷の身体に突っ伏し、強く抱きしめられる)

沙希「ちょ、ちょっと、比企谷?」

沙希(思いのほかその力は強くて抜け出せない。視界の端に驚きながらも笑っている小町の顔が見えた)

八幡「さき…………さきぃ……あさ、いけなくて……ごめんな」

沙希(あたしはそれを聞いてぴたりと抵抗をやめる)

沙希(…………なんであんたはこんな時にそんな心配してるのさ)
649 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/19(金) 19:25:44.48
沙希(小町がそっと部屋を出て行ったのを確認し、あたしは比企谷の胸に顔を埋めたまま比企谷の頭を撫でる)

八幡「ん…………さ、き……」スゥ

沙希(たぶん寝ぼけていたのだろうけど、再び眠りに落ちた比企谷から力が抜ける)

沙希(なのにあたしはそこから動かず、比企谷に抱きしめられたまま比企谷の頭を撫で続けた)

沙希(早く良くなってまた朝迎えに来てよ……)
650 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/19(金) 19:27:12.28
八幡「…………川崎?」

八幡(目を覚ましての俺の第一声はそれだった)

八幡(時計を確認するとそろそろ夕食といったところか。身体の方はだいぶ回復している。俺は上半身を起こした)

八幡(何故だろう? ついさっきまで川崎がここにいた気がする。抱きしめたような感触も。匂いも)

八幡(階下に降りると小町が夕飯の支度をしていた)

小町「あ、お兄ちゃん、大丈夫なの?」

八幡「おう、心配かけたな、腹減ったわ」

小町「もう少しで出来るから待っててね。栄養多めのうどん作ってるから」

八幡「ああ……なあ小町、今日ウチに川崎来た?」

小町「え、あ、えーと、お兄ちゃん寝てる間に今日のノートのコピー持ってきてくれたよ」

八幡「マジか、それはありがたいな…………えっと、俺の部屋に入ったりした?」

小町「ううん、来たがったけど風邪移しちゃいけないからって小町が止めといた。沙希さんに会いたかったら早くちゃんと完治させてね」

八幡「ん、そうか」

八幡(朧気なあれは…………やっぱり夢だったのか?)

小町(あんな真っ赤になって口止めされたら言うわけにいかないよね……てかお兄ちゃん沙希さんに会いたいっての否定しないんだ)
659 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/20(土) 18:18:39.46
八幡(ここでぶり返したら厄介、ということで念の為に明日も休むことになった)

八幡(そのこととノートのお礼を伝えるために、夕飯の後川崎にメールを送る)

八幡(『ちょっと電話してもいいか?』送信っと)ピッ

八幡(ほどなくして川崎からOKのメールが来たので履歴から川崎の携帯にかける)

沙希『も、もしもし』

八幡「おう川崎か、俺だ、比企谷」

沙希『わかってるよ。あんたからの番号なのにあんた以外なわけないでしょ』

八幡「いやいや、この前はお前の携帯からだったのに大志が出たぞ」

沙希『あ…………うん』

八幡(あれ、何でしおらしくなったの? そこから色々連想しちゃった?)

八幡「今日ウチ来てノートのコピーくれたろ? 頼めるやつなんかいないから助かったわ、サンキューな」

沙希『いいよそれくらい。だってあたしのせいであんたが…………』

八幡「いや、お前のせいじゃねえって。だいたいあの日はお前の方が雨に打たれてる時間長かったろ? そんなお前がピンピンしてんのに俺が風邪引いたってのはちょっとな。だからむしろ原因は別にあったことにしてほしいんぐらいなんだが」

沙希『ふふっ、何それ』
660 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/20(土) 18:19:20.38
八幡「ま、要約すると気にすんなって事だ。それより聞きたいんだけどお前今日ウチ来たんだよな。その時俺の部屋に入った?」

沙希『え、えっと、小町から聞いてない? 入ろうとしたら止められたんだけど』

八幡「うーん、そうか…………」

沙希『な、何かあったの?』

八幡「いや、お前がいたような気がしたんだけど、幻覚だったみたいだ」

沙希『ふふ、どんだけあたしに会いたがってんのさ』

八幡「そうだな。今声だけでも聞けて良かったぜ」

沙希『んなっ!? な、何を!?』

八幡「ははは、自分から言い出しといて戸惑ってんなよ」

沙希『もう……からかわないでよ』

八幡「でも残念ながら明日も念の為休めって言われてんだわ、悪いけど送り迎えは明後日からな」

沙希『ん、気にしないで。無理して来られるほうが心配だから』

八幡「おう。えっと、明日もノートお願いしていいか? 明後日の朝受け取るから」

沙希『任されたよ…………そういえばちょっと聞きたかったことあるんだけど、いい?』

八幡「あん? まあ答えられることなら答えるぞ」
661 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/20(土) 18:19:56.27
沙希『あの時さ、あたしを公園で見つけてくれたじゃない? あれ偶然じゃないんだよね?』

八幡「ああ、通りかかったわけじゃなくて大志に聞いて探しに行った」

沙希『いや、そこじゃなくてさ、大志が言うには最初からあたしがあそこにいるってわかってたような口振りだったらしいじゃない。なんで?』

八幡「なんでって……お前がどう行動するか考えたらあそこが思い当たったんだが」

沙希『比企谷の家から結構距離あるよね。無駄足になるかもとか考えなかったの?』

八幡「正直無駄足であってくれと願ったよ。傘も持ってねえやつがあんなとこにいるのはなぁ……」

沙希『う……』

八幡「ま、最終的にお前に何もなくて良かったよ。家族の話し合いも穏便に済んだんだろ?」

沙希『うん…………あ、あのさ、比企谷』

八幡「膝枕」

沙希『やっぱりあんたにちゃんとしたお礼を…………え?』

八幡「今度さ、昼休みみたいに短時間じゃなくて本格的にお前の膝で寝てみたい。もし俺に礼なり詫びなり何かしたいと思ってんならこの願いを叶えてくれねえか?」

沙希『…………そんなの礼とか関係なく言えばしてあげるよ、比企谷なら』
662 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/20(土) 18:20:38.59
八幡「こういう時でもねえと言いづらいんだよ察しろ」

沙希『ふふ……うん、わかった。今度の週末にでもしてあげる』

八幡「おう、じゃあせっかくだからまたどっか遊びに行くか」

沙希『いいの!?』

八幡「うおビックリした、何だよその食い付き」

沙希『あ、ごめん。でも比企谷からそんなふうに誘ってくれるとは思わなくて』

八幡「まあそうだな」

沙希『認めちゃうんだ……』

八幡「でもどこに行くかなんてプランは俺には立てらんねえぞ。川崎はどうだ?」

沙希『うーん……まだ時間あるし少し考えてみよっか』

八幡「だな。でもあんまり疲れるとこは勘弁してくれよ」

沙希『それはあたしもだよ。ま、あたしは比企谷と一緒にいられればどこでもいいけどね』

八幡「そうだな、俺も川崎といられりゃいいわ」

沙希『………………』

八幡「………………」

沙希『ごめん、今のなしで』

八幡「俺もなかったことにしといてくれ」

八幡(失言ってレベルじゃねーぞ!)
663 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/20(土) 18:21:36.89
沙希『あ、そうだ、これ言っとかないと』

八幡「何だ?」

沙希『ごめん、あたし今日浮気した。他の男子と昼ご飯食べたんだけど』

八幡「あー……いやまあそれくらいは。俺だって由比ヶ浜と食ったことあるし…………いや、でも」

沙希『戸塚となんだけど』

八幡「はあああぁぁぁ!!? ふざけんなよテメェ!! 何にもしてねえだろうな!? 手を出したらただじゃおかねえぞ!!」

沙希『予想通りどころか予想以上の反応だね…………何にもしてないしされてないよ。あんたが休みの理由を聞かれてその流れで一緒にしただけさ。つまりあんたが原因だから責めるなら自分を責めな』

八幡「ぐっ……と、戸塚はどうだった? 俺に関して何か言ってたか!?」

沙希『必死過ぎて怖いんだけど……まあ心配はしてたよ。明後日からこれそうって明日伝えといてあげるから』

八幡「そ、そうか、心配してたか。お詫びに今度何か奢ってやらないと」

沙希『比企谷、あたしも心配してるんだけど』

八幡「ん、ああ。んじゃ今度頭撫でてやろう」

沙希『え、あ、うん、それでお願い(やった!)』
664 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/20(土) 18:22:35.48
八幡(その後軽くお喋りしてから電話を切った)

八幡(………………)

八幡(本当に夢だったのかアレ)

八幡(確かに川崎を抱きしめたような記憶と感触があるんだが)

八幡(ひょっとして空想具現化能力にでも目覚めたか?)

八幡(よし、戸塚を出してみよう)

八幡(…………)ムムムム

八幡(出るわけねえか、アホらし)

八幡(結構寝たけどまだ少しダルいし横になっとくか)

八幡(あ、今日川崎を名前で呼んでねえ)

八幡(幻覚の中では呼んだけど……よし)

八幡「お休み、沙希」ボソッ

八幡(………………)

八幡(何言ってんだ俺は…………寝よ寝よ)
678 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/21(日) 02:17:16.80
八幡「もうとっくに昼回ってんのか……」

八幡(目が覚めて時計を確認し、俺は上半身を起こす)

八幡(昨晩は目を閉じると何故か川崎の顔が浮かび、色々考えてしまってまともに寝付けなかったのだ)

八幡(その上アレやコレやを思い出してしまい、ついつい自家発電にも励んでしまった…………いや、本人の許可もらってるし別にいいよね)

八幡(川崎でするのは今までよりずっと気持ち良かった…………いやまあさすがに川崎の手を使った時ほどじゃないけど)

八幡(何か川崎のことばっか考えてんな……気晴らしに外に出るか。家にいるよりはマシだろ)
679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/21(日) 02:18:32.20
八幡(いつもなら自転車で来るようなとこだが、ぶらぶらと歩いて駅前や本屋を巡る)

八幡(それでも時々ふっと川崎の顔が頭をよぎるのだ)

八幡(服屋を通りかかったらあいつに似合うかななんて考え、弁当屋を通りかかるとあいつの手作り弁当の味を思い出す)

八幡(何でだよ……本物の恋人じゃねえのに)

義輝「おお、そこにいるのは我が盟友、八幡ではないか!」

八幡「あ? なんだ材木座か。どうしたこんなとこで」

義輝「いやそれは我のセリフであろう? お主学校を休んでいたではないか。そなたがいないから我の依頼が断られてしまったのだぞ!」

八幡「ややこしいから二人称は統一しやがれ。まあちょっと体調崩してな、今は治ったから気晴らしに散歩してるだけだ」

義輝「ふむ……ではどうだ、我と一緒にゲーセンでも行かぬか?」

八幡「あー……たまにはいいか。暇だし付き合ってやんよ」

義輝「おお! 実はちょっと格ゲーで頼みたいこともあるのだ。無論礼はするから手伝ってくれ」

八幡(一人でいるよりはマシかと思い、俺は材木座の誘いに乗ってゲーセンに向かう)
688 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/21(日) 20:05:02.96
義輝「これは少しゲーセン仲間には頼みづらくてな、よろしく頼むぞ」

八幡「おう」

八幡(まだ夕方前のため誰もプレイしてない某2D格闘ゲームを材木座がやり始め、俺はそれに乱入した)

八幡(俺は延々と投げを仕掛け、材木座はそれを投げ抜けでかわす。材木座の依頼による、チャレンジモード達成のための行動だ)

八幡(まあ1プレイで投げ抜けを三十回やれってのは結構な実力がないと難しいだろうな。しかし[ピザ]で喋りのウザいやつが持ちキャラって…………)

義輝「手間を取らせたな八幡、しかしおかげで達成できた! 飲み物でも奢ろうではないか!」

八幡(嬉しいのか少々テンションの高い材木座だ。まあゴチになっとくか)

義輝「受け取るがいい」ポイ

八幡「おう、サンキュ」パシ

八幡(休憩用のベンチで待っていると材木座がマッ缶を買ってきて俺に放り投げる)

義輝「ときに八幡よ」

八幡「あん?」

義輝「我で良ければ相談にのるぞ?」

八幡「あ? なんだよ突然」

義輝「お主の様子がおかしいことなど我の眼力にかかればすぐに見抜ける。他に見破れるとしたらせいぜい家族か奉仕部の連中か生徒会長、戸塚嬢くらいのものよ」

八幡(俺の交際関係ほぼすべてなんですがそれは。それと戸塚は男な。気持ちはわかるが)

義輝「あとは川崎女史か」

八幡「…………」

義輝「近しい人にこそ出来ぬ相談もあろう? 我には言いふらす相手もおらぬゆえ秘密厳守には自信がある」

八幡(どこかで聞いたようなセリフだ。あ、俺でしたね)

義輝「まあ無理にとは言わぬ。しかし迷ったり悩んだりした時には我と言わずとも誰かを頼っても良いのだぞ。昔ならいざ知らず今の八幡は一人ではないゆえに」

八幡(………………)

八幡(誰だコイツ?)

八幡(あまりの衝撃か俺は血迷ったことを口走った)

八幡「じゃあ……ちょっと聞いてくれるか?」
689 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/21(日) 20:06:33.75
八幡(俺は材木座にかいつまんで話をした)

八幡(ここ最近のことと、俺の心情をやんわりと)

材木座「ふむ…………」

八幡(材木座は茶化すでもなくただ黙って俺の話を聞いていた)

八幡(しばらく沈黙が続いた後、材木座が口を開く)

材木座「要約すると八幡は本物を求めており、今の川崎女史との偽物の関係が嫌だ。しかし今の関係が本物になったとして、偽物から始まったそれが本物と言っていいかわからない。そういうことで合っておるか?」

八幡「まあ……だいたいは」

義輝「馬鹿らしい」

八幡「何!?」

義輝「他人からすれば何をそんなどうでもいいことで悩んでおるのだという気しかせん。もっともお主はこれまでこういった局面に出くわしたことがないゆえ、仕方ないのかもしれぬがな」

八幡「………………」

義輝「そもそも本物と偽物の区別など誰が付けるというのだ。当事者である八幡自身ではないか。お主が川崎女史の事を好いておるのは間違いないのだろう?」

八幡「ああ、それは断言する。俺は川崎が好きだ」

義輝「例え偽物だったとしてもその中にある本物まで否定しかねん行動をするのはどうかと我は思うぞ」

八幡「…………」
690 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/21(日) 20:07:22.73
義輝「ひとつ質問といこう。本物と、本物そっくりで誰が見ても区別のつかない偽物、どっちが価値があると思う?」

八幡「……そりゃ本物だろ。まあ物によっては同価値なのもあるかもしれねえが」

義輝「普通はそうだな。だが、この場合偽物の方が価値があるという意見もある」

八幡「は? 何でだよ、さすがに納得できねえぞ」

義輝「同価値という意見には納得できるか?」

八幡「まあそれなら」

義輝「偽物にはそれに加えて本物に近付こうとする過程が、意思が、気概があった。その分だけ本物より尊い…………もちろん屁理屈かもしれぬが、一蹴するほどでもなかろう?」

八幡「…………」

義輝「いいではないか偽物でも。それが本物以上に価値があるのなら。あるいは本物以上にしてしまえば」

八幡「材木座…………」

義輝「なあに、もし川崎女史にフられたら我のところに来い。本物である三次元の女を捨て、偽物の二次元の萌えキャラ世界に共に旅立とうではないか!」

八幡「台無しだ! ……いや、でもサンキューな、何か悩んでんのがアホらしくなってきたわ」

義輝「けぷこんけぷこん、それは重畳。ところでお主このあと用事があるのではないか?」
691 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/21(日) 20:08:21.23
八幡「え?」

義輝「ないのか?」

八幡「…………いや、あったわ。悪いけど今日はここで」

義輝「うむ、我はゲーセン仲間と待ち合わせしておるゆえ別れの時だ、また明日の闘いの時に手を組もうではないか」

八幡「ただの体育の二人組だろ……じゃあまた明日」

八幡(俺がそこを去ると同時に何人かが材木座のもとに歩いていく。あれがゲーセン仲間とやらのようだ)

八幡(店を出るときに振り返ると彼らは楽しそうに談笑していた。今日は材木座の意外な面をいくつも見たな)

八幡「今度からもうちょっとちゃんと相手してやるか…………」

八幡(俺はそう呟いて歩き始めた)
692 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/21(日) 20:12:51.53
八幡(俺は少し時間を潰してから目的地に向かう)

八幡(やがてそこに辿り着き、スマホを取り出して電話をかける)

沙希『はい、もしもし』

八幡「俺だ、今お前家にいるか?」

沙希『うん、夕飯の支度中だよ。どうかした?』

八幡「そうか。悪いけど少しだけ出て来れねえか? 今お前の家の前にいる」

沙希『え? ちょ、ちょっと待ってて!』

八幡(すぐに玄関から川崎が出てきた…………エプロンを着けたまま)

沙希「どうしたのさ突然…………あっ」

八幡(俺の視線に気付いたか慌てて後ろ手にエプロンの紐を外そうとする。それに構わず俺は川崎に近付き、川崎を抱きしめた)

沙希「え? ひ、比企谷?」

八幡(川崎が戸惑った声を上げる。しかし逃げたり抵抗したりはしない)

八幡(少し強めに抱きしめても何も言わず、俺の腕の中でじっとしている…………いや、おずおずと腕を上げ、ゆっくりと俺の背中に回してきた)

八幡(しばらくそうした後、俺は力を抜いて一歩下がり、川崎を解放する)

沙希「あ…………」

八幡「すまん、突然変なことして」

沙希「ううん、いい…………もう、身体大丈夫なの?」

八幡「ああ。明日からは普通に学校行くつもりだ。朝、迎えに来るからな」

沙希「うん」

八幡「悪いな、飯の支度中だったんだろ? もう帰るから」

沙希「えと、け、結局比企谷は何しに来たの?」

八幡「決まってんだろそんなの」

八幡(俺は川崎をまっすぐ見ながら答える)

八幡「お前に会いたかったから会いに来たんだよ、沙希」
694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/21(日) 20:37:40.56
材木座マジかっこいいな
696 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/21(日) 21:16:43.32
名前負けしてない材木座を見たのは初めてだ
乙です
705 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/22(月) 18:47:14.79
八幡(しどろもどろになった川崎にまた明日、と言って俺は帰路につく)

八幡(決めた。もう迷わない)

八幡(今週末に会う約束、デート)

八幡(その時に俺は川崎に想いを告げる)

八幡(結果がどちらに傾いても恋人ごっこはそこで終わりだ)
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/22(月) 18:47:44.57
八幡「ただいま」

小町「おかえりお兄ちゃん、どこ行ってたの? 身体はもう平気?」

八幡「ああ、もう大丈夫だ。ちょっと気晴らしに外にな」

小町「お兄ちゃんがわざわざ外に出るなんて…………あー、わかったー、沙希さんに会いに行ってたんでしょー……なーんて」ニヒヒ

八幡「ん、そうだ。よくわかったな」

小町「え」

八幡「あ、ついでだからノートのコピーもらえばよかった。顔見ることばっか考えてたから忘れてたわ」

小町「お、お兄ちゃん? ホントにお兄ちゃん? それともまだ体調悪い?」

八幡「何でだよ……あー、川崎んち歩きだとちょっと遠かったから疲れた。部屋で休んでっからメシ出来たら呼んでくれ」

小町「あ、うん、わかった」

小町「………………」

小町(た、大志君に連絡取らなきゃ!)
707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/22(月) 18:49:29.05
八幡「いただきます」

小町「いただきまーす」

八幡「うむ、相変わらず小町のメシは美味いな」モグモグ

小町「えへへ、ありがと。そんなふうに珍しく素直に言ってくれるお兄ちゃんポイント高い!」

八幡「俺はいつも素直だろ。世の中の方が嘘や欺瞞ばかりだ」モグモグ

小町(大志君によれば明らかに沙希さんの様子がおかしかったらしい。誰かから電話かかってきて五分くらい外に出たあとみたいだけど…………やっぱりお兄ちゃんなのかな?)ジー

八幡「?」

小町「じゃあその素直なお兄ちゃんに質問! お兄ちゃんは沙希さんのことをどう思ってるの?」

八幡「好きだぞ」

小町「へ?」

八幡「もちろん一人の女性としてな。あ、でもまだ誰にも言うなよ。今週末に告白するつもりなんだから、その前にバレてると興醒めだからな」

小町「え、ええー、えー?」

八幡「何だよ?」

小町「…………お兄ちゃん、どういう心境の変化?」

八幡「いや、好きだったのは多分前々からだぞ。ただそれをはっきり自覚しただけだ」

小町「そうじゃなくって、その…………恋愛に関して」

八幡「んん?」

小町「お兄ちゃん……人を好きになるの、怖くないの?」
708 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/22(月) 18:51:31.16
八幡「怖えよ、怖くてたまんねえ」

小町「…………」

八幡「でもそれ以上にこのまま俺の気持ちを伝えられない方が嫌だ。例えフられたとしても川崎には俺の想いを知ってもらいたい」

小町「……もう、トラウマは大丈夫なの?」

八幡「…………クラスメートがな、言ってたんだ。俺達くらいの年代の恋愛なんて『恋に恋する』とか、『ステータスとして』とか、『憧れ』とか、そういうのばっかりだって」

小町「あー……わかる気がする」

八幡「俺も中学ん時とかはそうだったんだろうな。だからちょっとしたことで惚れたり勘違いしたりでコロコロ心変わりして、負の要素ばかり溜め込んで、傷ばかり増やして、後悔ばかりして、こんなふうになっちまった」

小町「お兄ちゃん……」

八幡「でもな、今回は違うんだよ。例えこっぴどくフられたって、バカにされたって、絶対に後悔はしない。トラウマにもならない。自信を持ってあいつを、川崎沙希を好きになって良かったって言える」
709 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/22(月) 18:52:27.04




八幡「俺は生まれて初めて本気で人を好きになったんだよ」




710 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/22(月) 18:53:40.79
小町「お兄ちゃん……お兄ちゃぁぁん!」グスグス

八幡「おいおい、何でお前が泣くんだよ」

小町「だって、だってあのお兄ちゃんがぁぁ」エグエグ

八幡「仕方ねえやつだなまったく」

八幡(俺は箸を置いて小町のそばに立ち、頭を撫でてやる)

小町「あの捻くれててなんだかんだ素直じゃないあのお兄ちゃんがぁぁ」エグエグ

八幡「はは、言い返せねえな」

小町「ぼっちで友達いなくていつも独りでネットゲームですらソロプレイのあのお兄ちゃんがぁぁ」エグエグ

八幡「…………」

小町「働きたくないから専業主夫希望なんて世の中舐めた事言ってヒキコモリって指差されてもなにも言い返せないほど動かないヘタレのあのお兄ちゃんがぁぁ」エグエグ

八幡「ねえ、そろそろやめない? 俺の方が泣いちゃうよ?」

小町「でもでも、ちょっとクサかったけどすごい心に響いたよ。沙希さんに聞かせてあげたかった!」

八幡「やめろ、これはお前だから話したんだ。川崎には好きって気持ちだけ伝えるさ」

小町「うん、大丈夫だよ絶対! 沙希さんもきっとお兄ちゃんのこと好きだってば!」

八幡「だったら嬉しいな」フッ

小町「うわー……ホント素直になったんだ」
711 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/22(月) 18:54:44.33
八幡「開き直ったとも言うかな? フられたって構わねえってのは半分本気だし」

小町「もう半分は?」

八幡「一週間くらい部屋の隅に座って落ち込む」

小町「うわあ……じゃあ何としても告白を成功させないとね! 週末告白って言ってたけど何かあるの?」

八幡「一応どっか出掛けようかって話はしてある。プランはまた打ち合わせようってことになってるな」

小町「よし、じゃあ小町がアドバイスするよ!」

八幡「いや、いらねえ」

小町「え?」

八幡「悪いけどこれは俺と川崎だけで決めたいんだ…………だから小町には別のこと、服のコーディネートとかを相談したいんだが」

小町「お兄ちゃん……わかった任せて! 前回より更に力を入れるよ!」

八幡「おう、よろしく頼むわ」
718 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/22(月) 21:25:13.23
八幡(今日は久々の学校だ)

八幡(つまり川崎の送り迎えも久々なわけで、自然とペダルを漕ぐ足が急いてしまう)

八幡(おっと、ちょうど出てきた)

八幡(もう迷わないって決心したしな。少しでも好印象を与えるために爽やかな挨拶をせねば)

八幡「お、おおおおおはよう川崎、今日もいい天気、だな!」

沙希「…………何キョドってんの?」

八幡(やり直しを要求したい)ズーン

沙希(今度は落ち込みだした?)

八幡「…………何でもねえ。行くから後ろ乗れよ」

沙希「いや、何でもないってあんた」

八幡「何でもねえ」

沙希「はいはいわかったわかった。んじゃお邪魔するよ」

八幡「ん」

八幡(川崎が荷台に座り、俺の身体に掴まったのを確認してペダルを漕ぎ出す)

八幡(やっぱりらしくねえことをするもんじゃねえのかなあ…………)キコキコ

八幡(ま、週末告白はするんですけどね。いくららしくなくても)キコキコ
719 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/22(月) 21:25:51.49
八幡(そしていつもの公園に到着)キキッ

沙希「ん、ありがと」

八幡「おう。じゃ、先行ってる」

沙希「あ、待って。今のうちに聞いときたいんだけど」

八幡「ん、何だ?」

沙希「昨日のあれさ」

八幡「あ、ああ」

沙希「身体はもう何ともないってのを少しでも早く見せようってことだったの? あたしが気にしないように」

八幡「…………違えよ。言ったろ、ただお前に会いたかったんだって。他に何の理由もねえよ」

沙希「そ。ならそう思っとく」

八幡(本心なんだけどなあ)

沙希(ほ、本心だったらどうしよ)ドキドキ

八幡「ま、いいや。またあとでな」

沙希「うん、またあとで」
720 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/22(月) 21:28:25.67
八幡(教室に到着。あ、川崎からノートのコピーもらってねえや)

結衣「あ、ヒッキーやっはろー! もう身体大丈夫なの?」

八幡「おう。ちょっと風邪気味だっただけだ、大したことねえよ」

結衣「そっか、良かった」

彩加「あ、八幡おはよう。風邪大丈夫?」

八幡「おお戸塚! おはよう! この通りもう全快だ! 心配かけてすまなかったな、お詫びに飲み物でも奢ろうか? なに遠慮するな、俺達の仲じゃないか」

結衣「ちょっとヒッキー!? あたしと反応が違い過ぎない!?」

彩加「あはは、治ったみたいで良かった。川崎さんも心配してたよ」

八幡「そういやあいつと昼飯食ったんだってな。何もされてないか? 脅されててもすぐに言え、ちゃんと話つけとくから」

沙希「…………あんたあたしを何だと思ってるの?」

結衣「あ、サキサキおはよう」

彩加「おはよう川崎さん」

沙希「ん、おはよ。比企谷、はいこれ」

八幡(川崎はカバンから紙袋を取り出して俺に突き出す)

八幡「ああ、ノートのコピーか。サンキューな」

沙希「ん」

八幡(それだけのやり取りをして川崎は自分の席に向かう)

八幡(が、川崎を見る戸塚の目がやけに優しげなのが気になった)

八幡(マジで浮気してねえだろうな…………なんてな)ククッ

彩加・結衣「?」
737 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/23(火) 21:48:28.72
沙希「はい、今日の分」

八幡「おう。ほいお前の分」

沙希「ん」

八幡(昼休み。俺が弁当を受け取り、飲み物を川崎に渡してベンチに座る。いつものやり取り)

八幡(最近は食べる場所がベストプレイスでなく中庭のこっちになってるな)

八幡「ちょい久しぶりにいただきます、っと」

沙希「うん、召し上がれ」

八幡(俺は早速玉子焼きに箸を伸ばす…………うん、甘くなくて味付けがしっかりしてて美味い。もうすっかりこれの虜になっちまってるな)モグモグ

八幡(どれ、もう一つ……と思ったところで川崎の箸が俺の弁当箱に伸びてきた)

八幡(そのまま玉子焼きを掴み、俺の口に持ってくる。こ、これは!?)

沙希「はい、あーん」

八幡「え、えと……」

沙希「どうしたのさ、口開けなよ」

八幡「あ、あーん」

沙希「ほら……ふふ、美味しい?」

八幡「お、おう」モグモグ

八幡(甘くないのに甘い気がする……くそ、やり返してやる!)

八幡(今度は俺が川崎の弁当箱に箸を伸ばし、ウインナーを掴む)

八幡「川崎、あー……」

沙希「はむっ、ん、おいし」モグモグ

八幡(俺が言い終わる前に…………)
738 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/23(火) 21:49:44.63
八幡(川崎は恥ずかしがり屋な面もあるが、結構恥ずかしい事を平気でやる)

八幡(多分どこまでなら平気というラインがあり、キャパシティを超えるとその面が顔を見せるのだろうが……まあメシ時にちょっかい出すのは止めとくか)モグモグ

沙希「ごちそうさま」

八幡「俺もごちそうさまだ。今日も美味かった」

沙希「ん、お粗末さまでした」

八幡(川崎は空の弁当箱を俺から受け取るとそれを包みにしまう)ジー

沙希「ん? …………ふふ、いいよ、おいで」

八幡(川崎は俺の視線に気付くとベンチの端に寄り、微笑みながら太ももを叩く)

八幡(そういう意味で見ていたのではないが、せっかくだししてもらうか)

八幡「じゃあちょっとお邪魔するわ」

八幡(俺はベンチに仰向けになって頭を川崎の太ももに乗せた)

沙希「ん、いらっしゃい」ナデナデ

八幡(早速頭を撫でてくる。しかし…………)

沙希「?」ナデナデ

八幡(ホントこうして見ると巨乳だなこいつ。胸が邪魔で顔がまともに見えん…………ん? 何だ?)

沙希「あ、ごめん、あたしの」

八幡(振動を感じたと思ったら川崎がポケットから携帯を取り出した。メールらしい)
739 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/23(火) 21:51:43.28
八幡「何かあったか?」

沙希「ん、今日あたしが京華を園に迎えに行ってくれってさ……一回家に帰るのも面倒だしちょっと図書室で時間潰してから行こ」

八幡「さーちゃんは大変だな」

沙希「さーちゃん言うな」ペシ

八幡(実際はそんな苦だなんて思ってもいないだろうけど)

沙希「ん、よしっと……あっ」

八幡(川崎はメール返信したあと携帯をしまおうとし、手が滑ったのか携帯を取り落とした)

八幡(その落とした場所が微妙にまずかった。川崎から見て俺の顔の向こう側だ。つまり携帯を取ろうとしてとっさに手を伸ばして身体を倒すと……)

八幡「んぐっ!」ムギュッ

八幡(俺の顔に川崎の豊満な胸が思いっきり押し付けられてしまうわけで)

沙希「あ、ごめん比企谷。痛くなかった?」

八幡「………………」

沙希「比企谷?」

八幡「う……」

沙希「?」

八幡「うわあああああ!」

沙希「ひ、比企谷っ!?」

八幡(俺は色々いっぱいいっぱいになり、起き上がってその場から全力で走って逃げ出した)
740 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/23(火) 21:53:27.59
八幡「くそ、川崎のやつ無防備すぎだろあれは…………」

八幡(俺は男子トイレの個室で一人ごちた)

八幡(別に抜きに来たとかそういうわけじゃない。ただ完全に一人になれる場所にいたかったのだ)

八幡(川崎のあの無防備さは俺相手だからなのか……?)

八幡「はぁ…………」

八幡(小町には昨日かっこつけたものの、いざ川崎本人を目の前にしたらこれだ)

八幡(やっぱりそんな簡単には変われねえのかなあ)

八幡(いやいや、そんなことはねえ。現時点ですでに俺は変わってる。その自信も自覚もある)

八幡(とりあえずあとで川崎に謝らねえと)

八幡(しかしやっぱりあいつデカかったな、そして柔らかかった)

八幡(……まだ昼休みが少しあるな)

八幡(……………………)

八幡(……………………)

八幡(………………ふぅ)

八幡(どうして世の中から戦争はなくならないんだろうか)ジャー

八幡(…………とりあえず教室に戻るか。五限が始まってしまう)
752 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/24(水) 22:15:03.85
八幡(とりあえず『さっきはすまん』とメールを送っておいた。『うん』とだけの短い返信が来たが、川崎のデフォルトはこんなもんだ)

八幡(放課後になってもう一回直接謝っておこうと思ったが、二日休んでた間の連絡事項のために担任に呼び止められ、その間に川崎は教室を出て行ってしまった)

八幡(まあいいか、どうしてもってわけじゃないし。明日の朝にでも言っとこう)

八幡「うっす」ガラガラ

八幡(奉仕部部室のドアを開けるとすでに俺以外の部員が揃っていた)

結衣「あ、ヒッキーやっはろー」

雪乃「こんにちは風邪引き谷君」

いろは「こんにちはー。風邪だなんて先輩意外と軟弱なんですね」

八幡(訂正。部員でないやつも揃っていた)

八幡「意外とって何だよ。俺は結構デリケートなんだぞ」

いろは「えっ? バリケード?」

八幡「どんな聞き間違いだよ……生徒会とサッカー部はどうした?」

いろは「そんなに忙しくないからもうちょっとあとでも大丈夫です。先輩が久しぶりに登校するって聞いて可愛い後輩が会いに来てあげました。嬉しいですよね?」

八幡「はいはいあざといあざとい」

いろは「あざとくないですっ」
753 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/24(水) 22:16:17.84
八幡(俺はカバンを置いて椅子に座る。そのタイミングで雪ノ下が立ち上がった)

雪乃「比企谷君、紅茶を淹れるけどあなたも飲むかしら?」

八幡「ん、ああ、頼んでいいか」

八幡(…………見ると由比ヶ浜や一色にもまだカップは出されてない。ひょっとしてみんな俺が来るのを待っててくれたんだろうか)

雪乃「どうぞ」コトッ

八幡「おう、サンキュー」ズズッ

結衣「ゆきのんありがとー」

いろは「ありがとうございます雪ノ下先輩」

八幡(少し久々の雪ノ下の紅茶。意外と俺は学校に来る楽しみが多いらしい)

雪乃「そういえば比企谷君、二日とはいえその間の授業は大丈夫なのかしら? な、なんなら私が教えてあげても……」

八幡「ん? ああ、いや、大丈夫だ。川崎にノート取っといてもらったから」

雪乃「そ、そう」

八幡「まあわかんないとこあったら頼むわ……せっかくだから今ちょっと見とくか」

いろは「ほえー、先輩って意外と真面目なんですね」

八幡「さっきから意外とって言い過ぎだろ。俺は目と性格と数学以外は高スペックなんだよ…………おっと」バサバサ
754 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/24(水) 22:17:16.80
八幡(一色にツッコミを入れていたらカバンから目を離してしまい、中身をぶちまけてしまった)

結衣「あれ…………?」

雪乃「どうしたの由比ヶ浜さん?」

結衣「ヒッキー、それ……」

八幡(由比ヶ浜が指したのは零れた中身の紙袋からはみ出たジャージだった)

結衣「その袋、朝サキサキから受け取ってたやつだよね……ジャージってどういうこと?」

八幡「あー…………」

八幡(何か面倒くさい事になりそうだな)

雪乃「比企谷君、どういうことかしら? 説明してちょうだい」

八幡「…………嫌だ」

雪乃「!」

八幡「勘違いすんなよ、別にやましいことがあるってわけじゃねえ。ただ俺じゃなく川崎のプライベートな問題も絡んでるから俺が勝手に話すわけにはいかねえってことだ」

いろは「プライベートって…………」

八幡「言っとくけど真面目な話だ。訳あって川崎をウチに泊めた事があってな、そん時に貸したんだよ」

結衣「と、泊まったの!? ヒッキーの家に!?」

八幡「ああ」

雪乃「あなた何を考えてるの? 仮にも年頃の女性を泊めるなんて」

八幡「だからやむを得ない事情があったって言ってんだろ」
755 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/24(水) 22:18:24.33
結衣「どんな事情があればヒッキーのおうちに泊まることになるの!?」

八幡「それは言えねえってば」

いろは「先輩! 川崎先輩には何もしてないですよね!?」

雪乃「川崎さんが気付いてないだけで何かしている可能性はあるわね」

結衣「サキサキもどっか泊まるならあたしに言ってくれればいいのに!」

八幡「…………」

八幡(俺って本当に信用されてねえんだなあ)

八幡(女性陣の口々にちょっと悲しくなってきたぞ…………)

八幡(ていうか俺自身あれは余計なことをしたんじゃないかと思い始めてきた)

八幡(川崎自身が望み、親御さんが許可したとは言え、無理にでも自宅に帰らすべきだったのではないだろうか)

八幡(あるいは他の女子を頼るべきだったのではないか)

八幡(雪ノ下や由比ヶ浜なら助けてくれただろうし、海老名さんあたりだって力になってくれたはずだ)

八幡(あの時は頭に浮かばなかったが、俺は無意識に川崎と二人っきりになれるという状況を選んでしまったのでは…………)
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/24(水) 22:19:08.68
結衣「ヒッキー! ヒッキーってば!」ユサユサ

八幡「え? お、おう」

八幡(何やら考え込んでしまったようで由比ヶ浜に身体を揺すられるまで周りの声が耳に入っていなかった)

八幡(が、それをどう捉えたのかみんな神妙な顔付きになっている)

雪乃「あ、あの、少し言い過ぎたかもしれないわ…………その」

八幡「悪い」ガタッ

八幡(雪ノ下が何か言いかけたが、それを遮って俺は立ち上がる)

八幡「ちょっと今日は帰らしてもらうわ」

結衣「ヒッキー!」

いろは「先輩!」

八幡(皆が呼び止めようとするのを振り切り、俺はカバンを掴んで部室を出た)
757 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/24(水) 22:20:21.86
八幡(まだ放課後になってそんなに時間は経ってない。ならばまだいるかもしれない。俺は早足で歩く)

八幡(図書室の入口が見えたところで、ちょうどその入口から川崎が出て来た)

八幡「川崎!」

沙希「え、比企谷? 奉仕部はどうしたのさ?」

八幡(俺が川崎に駆け寄ると驚いた表情をする)

八幡「抜けてきた。ちょっと話したいことがあるんだが、一緒に帰っていいか?」
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/25(木) 18:14:50.37
沙希「あたしは構わないけど…………でも京華を迎えに園に行くんだよ?」

八幡「ああ。なんなら園まで自転車で送ってくぞ?」

沙希「それだとちょっと早いかな……歩いて行かない? 話、あるんでしょ?」

八幡「わかった。自転車取ってくるから校門で待っててくれ」

沙希「はいよ」

八幡(俺は一旦川崎と別れ、駐輪場に向かう)

八幡(自転車を押して校門を出、塀に寄りかかっていた川崎に声をかける)

八幡「わり、待たせたな」

沙希「いいよこんくらい。行こっか」

八幡「ああ、ほら」

八幡(俺が手を伸ばすと川崎は一瞬考え、すぐに得心したようにカバンを俺に渡してくる)

八幡(俺はそれを受け取り、自転車の前カゴに入れた)

沙希「ん、ありがと」

八幡「おう、行こうぜ」

八幡(俺と川崎は並んで歩き出す。えーと、こういう時は男が車道側、だったな)

沙希「で、話って何?」

八幡「あー……まず昼休みのことなんだけど」

沙希「うん、あれ何だったの? 突然どっか行っちゃって」

八幡「ああ、えっとだな…………」

八幡(…………あれ? 何て説明しよう?)
771 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/25(木) 18:15:43.38
八幡「………………」

沙希「?」

八幡(……まあ正直に言っとくか)

八幡「いや、あん時さ、お前携帯取ろうとして屈んだだろ?」

沙希「うん、それが?」

八幡(何でこんな平然としてんだよ……)

八幡「その…………俺の顔に胸が思いっきり押し付けられたのが、その、な」

沙希「…………えっ!?」ババッ

八幡「えっ?」

八幡(とっさに両腕を交差させるように川崎は自分の胸を隠す仕草をする。もしかして気付いてなかったのか?)

八幡(てか何? 顔を赤らめてからのその反応。可愛くて好きになっちゃうじゃねえか。もうなってるけど)

八幡「だから、嫌ってわけじゃねえんだけど……ちょっと対応に困って、つい逃げちまったんだ、すまん」

沙希「う、うん、なんかごめんね」

八幡「いや、別にお前が謝るようなことじゃないだろ。むしろその、ごちそうさまっていうか…………とりあえず気にすんな。忘れようぜ」

沙希「わ、わかった……でも、その……別に、今夜にでも、アレに使っていいからね」

八幡「お、おう」

八幡(何言っちゃってんのこの子!?)

八幡(まあまさか既に使わせてもらったなんて夢にも思わないだろうが)
772 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/25(木) 18:16:13.87
八幡「コホン……んで話は変わるけどさ、実はさっき部室でお前をウチに泊めたのがバレたんだ」

沙希「え、そうなの?」

八幡「ああ。朝お前から受け取った袋の中身を見られてな、ジャージのことを問い詰められて…………すまん」

沙希「ふうん……で、それがどうかしたの?」

八幡「えっ?」

沙希「えっ?」

八幡「だって、お前、男のいる家で一晩過ごしたなんて知られたくないだろ」

沙希「いや、別に…………ちゃんと事情があったわけだし。その辺説明すればわかってくれたんじゃない?」

八幡「説明なんて出来ねえって。お前のプライバシーもあるし…………それにどんな理由があっても女子を泊めるのはどうかって思い始めてな」

沙希「あたしは構わないのに……じゃあ結局雪ノ下達には何て説明したの?」

八幡「別に何も。途中で逃げてきたからな」フフン

沙希「何で得意気なのさ……でも比企谷、あんた色々言われてんでしょ、あたしのことは気にせず説明したっていいよ」

八幡「いや、それはなあ…………」

沙希「じゃ、あたしが自分で説明する」

八幡「え、お前が?」

沙希「うん、あたしも明日奉仕部に行くよ。大丈夫、悪いようにはしないから」
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/25(木) 18:17:52.57
八幡「じゃあまあ……よろしく頼む。あいつらに延々と問い詰められるのは精神上良くないからな」

沙希「はいはい。ところでさ、週末どっか出掛けるってのどうする?」

八幡「ああ、一応少し考えたけど……お前は?」

沙希「あたしは考えたけど思い浮かばなかった…………いや、正直なことを言うと目的とかなく商店街とかららぽーととかをただブラブラするのも楽しいんじゃないかな、なんて思ったけど」

八幡「やっべ、同じこと考えてやがる」

沙希「え、そ、そうなの!?」

八幡「川崎とならそういうのも楽しめると思ってた。あとはまた映画かなって。この前見たやつ面白かったろ? あれのスピンオフが同時上映されてるらしいんだ」

沙希「あ、それはちょっと見たいかも」

八幡「んじゃそんな感じでいくか。今日帰ったら上映時間調べとくから、そしたらおいおい待ち合わせとか決めようぜ」

沙希「ん、そうだね」

八幡(そこまで話したとこで、川崎が周囲を見回す。園まではあと三分の一といったところか)
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/25(木) 18:19:06.54
沙希「…………比企谷、嫌だったら言ってね」スッ

八幡「! お、おう、別に」

八幡(川崎が身体を寄せてきたかと思うと、そのまま俺の腕に自分の手を回してきた)

八幡(俺は押してる自転車のハンドルを握っているので本当に軽く絡めてきているだけなのだが、だからといって俺の激しくなってる動悸が軽くなるわけでもない)

八幡(動揺を悟られないようにしながら歩く道中はとても短く感じられた)

八幡(この信号を渡ればすぐに園が見えてくるはずだ。ちょうど歩行者用信号が赤になって俺達は立ち止まる)

八幡(俺は組まれてない方の腕の手をハンドルから離し、組んできてる川崎の手にそっと重ねた)

沙希「あ…………」

八幡(川崎は短い声をあげたが、避ける素振りは見せない。俺はその手を軽く握る)

八幡(車用の信号が赤になり、周りの人達が横断歩道を渡り出す。しかし俺は川崎に重ねた手を離さない)

沙希「…………比企谷?」

八幡「まだ、赤だからさ」

沙希「え?」

八幡「赤、だから」

沙希「…………うん、そうだね」

八幡(川崎は短く答え、とん、と俺の肩に頭を乗せてきた)
783 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/25(木) 23:48:48.52
八幡(やたらと赤信号が長かった横断歩道を渡り、俺達はようやく保育園に着いた)

八幡(専用の置き場に自転車を停め、川崎と一緒に敷地内に入る)

八幡「川崎、俺から離れんなよ。俺を一人にすると即通報されっからな」

沙希「そんな大袈裟な……」

八幡「いやいや、一人で歩いてるだけで職務質問や警備員からの声掛けの比率が一般の五倍以上はあるからな俺」

沙希「あんたは態度が卑屈過ぎなの。もっと堂々としなって」

八幡「ぼっちが堂々と出来るか。俺は常に日陰を歩いていたい」

沙希「まったく……」

八幡(しかし実際大袈裟ではないと思う。やはり子供を迎えに来た母親らしき人達が俺の顔を見てはびくっとしてるし)

京華「あー、さーちゃんだー! はーちゃんもいるー!」

八幡(そんな中でも物怖じせずに建物内から俺に駆け寄って来てくれるけーちゃんの天使っぷりは異常。嬉しくなってつい抱き上げて高い高いまでしてしまった)

八幡「よう、けーちゃん。今日は俺達が迎えに来たぞ」タカイタカイ

京華「わーい!」キャッキャッ

八幡(その様子に周りが穏やかな空気になる。あ、これあれだ。先週教室で海老名さんがしてくれたやつだ)

八幡(つまり海老名さんも天使? 腐ってるけど)
784 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/25(木) 23:50:33.13
保育士「あ、先日はどうも」

八幡(けーちゃんを下ろすと同時に声を掛けられる。見るとこの前病院で会った保育士さんだった)

保育士「今日も御一緒に京華ちゃんのお迎えですか?」

八幡(ちら、と川崎を見て言う保育士さん。てかよく俺の事覚えてたな。まあ十中八九この目のせいだろうが)

八幡「ええ、まあ」

沙希「ほらけーちゃん、帰るから準備してきなさい」

京華「はーい」

八幡(川崎に促されてけーちゃんは保育士さんと一旦建物内に戻る)

八幡(そして保育士さんとの会話で警戒心も完全に取っ払われたのだろう。ママさん達がわらわらと寄ってきた)

八幡(『沙希ちゃん良い人がいたのね』とか『目が少し怖いけどさっきの見たら結構優しそうじゃない』とか『若いっていいわねえ』とか川崎を取り囲んで口々に話しかけている)

八幡(色々質問されたりしていっぱいいっぱいになっているな。仕方ない、助けてやるか)

八幡「あの、すいません。こいつ結構恥ずかしがり屋なんで勘弁してやってくれませんか?」

八幡(川崎との間に割り込むようにそう言ったが、ママさん達は気を悪くするどころか姦しい声を上げた)
785 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/25(木) 23:52:52.09
八幡(『やっぱり優しいわね』とか『男の子はこうでなくちゃ』とか騒いでる。そして今度はターゲットが俺になるかと思われた時、タイミングよくけーちゃんが出て来た)

京華「さーちゃん、はーちゃん、かえろー」

沙希「あ、うん、行こっか」

八幡「おう。えっと、失礼します」

八幡(ぺこりと頭を下げると、ママさん達は最後まで賑やかしく見送ってくれた)

八幡(でも『子供できたらここの園お薦めよー』ってのはさすがに気が早過ぎだろ)

京華「はーちゃんはーちゃん、またかたぐるましてー」

八幡「ん、ああ。えっと……」

沙希「お願いできる? あたしが自転車取ってくるよ」

八幡「おう、頼むわ」

八幡(この前と同じように俺はけーちゃんを肩車し、俺の自転車を押す川崎と並んで川崎家に向かって歩き始める)

八幡(こうやってると川崎と夫婦になったみたいだな…………)

八幡(はは、まだ本当に付き合えてるわけでもないのに気が早いか)

八幡(たわいもない、それでも楽しく雑談をしながら川崎家に帰宅した)

八幡「じゃあな沙希、また明日の朝」

沙希「うん八幡、待ってるから」

八幡(けーちゃんを家に入れたあと、川崎と別れの挨拶をして俺は帰路につく)

八幡(…………映画の時間、調べとかないとな)
791 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/26(金) 19:42:08.15
   ~ 翌日 ~

八幡(調べたところ映画の上映時間は昼と夜に一回ずつだった)

八幡(どっちを見に行くかとその前後の流れは今日決めとくか。明日だとギリギリになっちゃうからな)

八幡「んじゃ小町、俺はもう行くわ」

小町「はいはい行ってらっしゃい。ハンカチは持った? 財布忘れてない? 沙希さんへの愛情は充分?」

八幡「大丈夫だ。特に最後のは溢れ出て止まんねえよ」

小町「うーん、小町的には『な、何言ってんだよ』みたいに焦るお兄ちゃんも捨てがたかったけど……素直なそれも沙希さん的にポイント高いね!」

八幡(本人を前にしたらヘタレるけどな……さて、行くか)
792 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/26(金) 19:43:42.05
八幡「うっす」

沙希「おはよ、今日もよろしく」

八幡「おう」

八幡(短い朝のやり取りをし、川崎は後ろに座って俺の身体に掴まる)

八幡(…………こういう時に胸が当たってんのは分かってるはずなんだが、昨日のあれは何というか可愛かった)

八幡(察するにまったく自分の想定外な事が起こっても恥ずかしがり屋が顔を出すようだ)

八幡(いや、余裕綽々な川崎もいいけどね)

八幡(何が言いたいかと言うと、もう俺は川崎にベタ惚れなわけで)

八幡(サキサキ最高! …………うん、キモいからやめよう)

八幡(あ、そういえば最近気付いたけど……)

八幡「なあ、川崎」

沙希「ん、何?」

八幡「サキサキってお前のあだ名、クラスの女子の間で定着してね?」

沙希「ああ、うん……はあ」

八幡(川崎は大きく溜め息をついた)

沙希「最初は海老名だけだったんだけど、ていうか話し掛けてくるのなんていなかったんだけど、由比ヶ浜が真似して呼び始めてさ。やめてって言っても聞かなくて」

八幡「お前もか……」

沙希「そしたらいつの間にかクラスの女子みんなが挨拶とかの時にそう呼ぶようになっててさ……」

八幡「トップカーストの影響恐るべし、だな…………」
793 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/26(金) 19:44:17.54
八幡(しばらくしていつもの公園に到着。川崎が腕を離して自転車から降りる)

八幡「じゃあ……」

沙希「ねえ、たまには一緒に行かない?」

八幡「…………おう」

八幡(川崎は自転車から降りた俺の横に並ぶ。表情がわずかに弛んでいるのは気のせいだろうか?)

八幡「そういえば明後日の映画な、時間が昼イチと夜イチのどっちかだったんだが、どっちがいい?」

沙希「んー……ちょっとだけ考えさせて。昼休みまでには決めとくから」

八幡「わかった、んじゃメシん時に予定立てるか」

沙希「そうだね」

八幡(そこから適当に雑談をしているうちに学校に着く)

八幡「じゃあ俺は自転車置いてくるから」

沙希「そんな寂しいこと言わないでよ、一緒に行く」

八幡「…………」

沙希「…………」

八幡「くくっ」

沙希「ふふっ」

八幡(もとよりここから別行動なんてお互いに微塵も思っちゃいない。わかってて言ってるのだ)

八幡「行くか」

沙希「うん」
794 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/26(金) 19:44:58.42
八幡(自転車を置いて下駄箱で靴を履き替え、二人で教室に向かう)

八幡(特に会話はなく、他人から見れば微妙な距離感)

八幡(だけど俺にはそれが心地良い。見ずとも存在を感じられる距離にいるのだから)

八幡(が、教室に入ろうとしたところで由比ヶ浜に呼び止められた)

結衣「サキサキ、おはよ。ヒッキー、お、おはよ…………その、昨日は」

沙希「おはよ由比ヶ浜、今日放課後あたし奉仕部に行くから」

結衣「え?」

沙希「なんかあたしが比企谷んちに泊まったので揉めたらしいじゃない。説明しに行くよ、雪ノ下にも伝えといて」

結衣「え? え?」

沙希「じゃ、また」スタスタ

八幡「まあそんなわけだ。よろしく」

結衣「ちょっと待ってヒッキー!」ガシッ

八幡「何だよ」

結衣「どういうことなの!?」

八幡「だから川崎がウチに泊まった理由を説明するって言ってんだろ」

結衣「で、でもわざわざサキサキに来てもらわなくても」

八幡「いや、別に知りたくなきゃそれでいいんだぞ? いいならいいで川崎に伝えるが」

結衣「う、ううん、わかった……ゆきのん達に伝えとくから」

八幡「おう。そろそろ予鈴鳴るぞ」

結衣「うん……」
803 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/27(土) 03:35:47.03
八幡(さて、昼休みである)

八幡(今日も今日とて自販機に寄ったあと例の中庭へ向かう)

八幡(先にベンチに座っていた川崎が俺に気付き、軽く手を振ってきた)

八幡(それに手を上げて応え、俺は川崎の隣に座る)

沙希「はい」

八幡「サンキュ、ほい」

沙希「ん、ありがと」

八幡(すっかり定番化した弁当と飲み物のやり取りを行い、俺は弁当に手をかける)

八幡「そういや明後日どうするか決めたか?」モグモグ

沙希「うん、夜の方を見に行かない?」

八幡「おう、構わねえぞ。その前後の流れはどうする?」

沙希「少し早いかもだけど夕ご飯どっかで食べてから映画館行こ。見終わってからだとちょっと遅いでしょ」

八幡「だな。空腹で映画に集中出来なかったとか嫌だし」

沙希「昼ご飯はあたしが簡単なものを作るからウチで食べてよ。夕ご飯が早いからこっちも早めにする。十一時過ぎくらいでいいかな、そのあたりにウチに来て」

八幡「ん、家族みんなはいいのかそれで?」
804 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/27(土) 03:36:40.80
沙希「ああ、あたし以外は朝からいないから。比企谷もその方がいいでしょ?」

八幡「キャー、沙希さんたら家族いないスキに男を家に連れ込むなんてだいたーん」

沙希「昼ご飯は米と塩でいい?」

八幡「ごめんなさい」

沙希「まったく…………それはそうと何かリクエストある? 簡単なものって言ったけど別に本格的なものでもいいよ、あたしが作れるなら」

八幡「んー、こう言われると困るだろうけど何でもいいぞ。川崎が作るなら味は保証されてるし、その時の冷蔵庫の中身で作れるものって感じで」

沙希「ん、わかった」

八幡「んで駅前出て適当にぶらついてメシ食って映画って流れか」

沙希「ちょっと、肝心なのが抜けてるよ」

八幡「あ? 何かあったっけ?」

沙希「いや、そもそも週末に会う目的はあたしの膝枕で寝たいってやつでしょ。そのついでで出掛けようって話になってるんじゃないの」
805 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/27(土) 03:38:09.41
八幡「あっ」

沙希「忘れてたんだ…………」

八幡「あ、いや、その…………川崎とお出掛けするってのが楽しみで、つい……すまん」

沙希「…………いいけどね。どうする? しないで出掛ける?」

八幡「いや、寝る。こんな機会滅多にないし」

沙希「そう、わかった……ごちそうさま」

八幡「俺もごちそうさまだ、こんだけ毎日食っても飽きないって地味にすげえよな」

沙希「ふふ、ありがと。で、今日はどうする?」

八幡(川崎は自分の太ももをポンと叩く)

八幡「今日はいいや、明後日の有り難みを大きくしとこう」

沙希「何それ」クスッ

八幡「あー、でも誰が見てるかわかんねえか。恋人のフリはしないとな」

沙希「え?」

八幡「こっち、来いよ」

沙希「…………うん」

八幡(そう言うと川崎は俺の方に寄り、身体をくっつけてくる)

八幡(俺は川崎の肩に手を回し、軽く力を入れた)

沙希「ん…………」

八幡(肩に頭を横に乗せ、体重を完全に預けてくる川崎。そのまま何も会話せずに予鈴が鳴るまで俺達はくっついていた)
812 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/27(土) 12:34:32.68
八幡(さて、放課後になった)

八幡(いつもならここからさっさと奉仕部部室に一人で向かうのだが、今日は川崎も一緒だ)

八幡(教室を出ようとすると由比ヶ浜も着いてきた)

八幡「三浦達はいいのか? いつも何か喋ってから来てたが」

結衣「うん、大丈夫。行こ」

八幡「ああ」

沙希「はいよ」

八幡(道中は由比ヶ浜が話して俺や川崎が答えるといった身にもならない会話をする。別に嫌というわけじゃない、俺も川崎も楽しんではいる)

八幡(そんなこんなで部室に到着)

八幡「うっす」ガラガラ

結衣「やっはろー!」

沙希「お邪魔するよ」

八幡(三人で入ると雪ノ下と一色がすでにいた)

雪乃「こんにちは」

いろは「先輩方、どうもー」ペコ
813 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/27(土) 12:37:45.98
八幡(思い思いに挨拶をして、俺以外は椅子に座る)

雪乃「……比企谷君?」

八幡(雪ノ下が訝しそうに俺を呼ぶ。が、俺はそのまま川崎に話し掛けた)

八幡「川崎、俺はどうしたほうがいい?」

沙希「ん、そうだね……悪いけどさ」

八幡「わかった」

八幡(俺はカバンだけ置いて部室を出ようとする)

結衣「ちょ、ちょっとヒッキー、どこ行くの!?」

八幡「俺がいない方が話しやすいだろ、終わったら携帯で呼んでくれ」

八幡(そう言って俺は部室を出る。どんな事を話すのか気になるといえば気になるが、そこは川崎を信用しよう)

八幡(図書室でも行くか)
820 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/28(日) 02:46:49.72
雪乃「どうぞ」

沙希「ん、ありがと」

沙希(雪ノ下が紅茶を紙コップに入れて差し出してくれた)

沙希(ポットの横にある使ってないティーカップ、あれは比企谷の分なんだろう)

沙希(ここは比企谷の居場所、紙コップのあたしがいるべき場所じゃない…………なんて少し穿ち過ぎだね)コク

沙希「ん、おいし……雪ノ下って紅茶淹れるの上手だよね。あたしと何が違うんだろ?」

いろは「ですよねー、何かコツとかあるんですか?」

雪乃「時間と温度を気にするくらいかしら? といってもお茶系の飲み物はほぼそれに左右されるけれども」

沙希「ふうん、あたしも少し勉強してみようかな」

結衣「えーやめてよ、ただでさえ料理とか上手いサキサキが紅茶まで上手くなったらあたしますます勝てないじゃん」

沙希「勝てないって……別に何かを争って戦ってるわけじゃないでしょ」

結衣「あ、えっと……そ、そうだね!」アセアセ

雪乃「コホン、それじゃ川崎さん、本題に入らせてもらってもいいかしら?」

沙希「ん、いいよ。何でも聞いて」

雪乃「その、比企谷君からあなたが比企谷君の家に泊まったと聞いたわ。あまりいいことではないと思うのだけれど経緯を聞かせてもらえる?」
821 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/28(日) 02:47:17.10
沙希「ん、わかった。あ、一応オフレコでお願いね。あんた達を信用して話すから」

雪乃「ええ」

結衣「わかった!」

いろは「はい」

沙希「この前の土曜日、あの天気悪かった日、あたし両親と喧嘩しちゃってね。あ、原因は伏せさせてもらうけど」

結衣「え、サキサキが喧嘩!?」

雪乃「珍しいわね。あなたが家族とそんなことをするなんて」

沙希「そうだね、自分でもそう思う。だから止め時もわからなくてどんどんヒートアップしちゃって、こじれたまんまあたしは衝動的に家を飛び出したんだ」

結衣「え……」

沙希「なんかもう頭の中ぐちゃぐちゃになってさ、とにかくそこから逃げ出したかった。財布も携帯も、傘すら持たずにね」

いろは「なるほど、それで先輩のとこに行ったんですね」

沙希「違うよ」

いろは「え?」

沙希「考えなくもなかったけどやっぱり迷惑かけられないって気持ちが先立っちゃってさ、あたしは小さな公園のベンチに座ってた。屋根なんか申し訳程度で役に立たないし、ずぶ濡れになったけど動く気力もなくてそこで震えてたんだ」

結衣「サキサキ…………」
822 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/28(日) 02:47:51.13
沙希「あたしにとって大半だった家族とこうなったならあたしにはもう価値なんかないんだって思っちゃってさ」

結衣「そんなことない! そんなことないよ!」

沙希「ありがと由比ヶ浜。でもその時のあたしは本気でそう思った。そのまま消えてしまえばいいともね。でも…………」

いろは「でも?」

沙希「そこに比企谷が来たんだ」

結衣「え、ヒッキーが?」

沙希「ああ、弟から連絡受けたみたいでね、真っ先にそこに来たよ。都合の良い幻覚かとも疑ったけど寒がってるあたしを抱きしめてくれた。それがやけに暖かくて、恥ずかしいけどあたしはそこで気を失っちゃったんだ」

雪乃「……それで比企谷君は川崎さんを家に連れ込んだのね」

沙希「うん。元々はあたしの家に連れて帰ろうとしたんだけど、あたしが気絶する直前にそれを頑なに嫌がったんだ。だから比企谷の意志じゃないことはわかってほしい」

いろは「はー、なるほど……」
823 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/28(日) 02:48:34.84
沙希「そして比企谷はあたしが寝てる間に色々してくれたよ」

結衣「え、い、色々って……?」

沙希「あたしを連れ帰って着替えやら身体を拭いたりやら……ああ、この辺は小町だから勘違いしないでね。そんであたしの親とも連絡を取って、一晩比企谷家にお世話になることになったのさ。これがあの日に泊まることになった真相だよ」

結衣「な、なーんだそういうことだったんだ、それならそうとヒッキーも言ってくれればいいのに」

沙希「いやいや、比企谷も言ってたけどあんた達が比企谷を偏見の目で見てまともに聞いてくれないからでしょ、だからあたしが直接話してるんじゃない」

いろは「へ、偏見だなんてそんな」

沙希「そう? 寝てる間に何かしたとか手を出したとか散々言われたって聞いたけど」

結衣「だ、だって男はみんな送り狼なんだよ! ヒッキーだって男だし!」

雪乃「由比ヶ浜さん、送り狼でなく狼よ。でも言ってることは間違ってないと思うのだけれど」

沙希「…………あんた達さ、比企谷をそんな男だと思ってるの? 寝てる女に悪戯するような男だって」

雪乃「…………」

結衣「…………」

いろは「…………」
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/28(日) 02:49:37.50
沙希「あたしは思ってないよ。むしろ思ったら申し訳ない。だって…………」

いろは「……だって?」

沙希「あたしの世話を優先したから、比企谷は風邪を引いちゃったんだから」

結衣「えっ!?」

沙希「着替えさすのも身体を拭くのも、自分のことは構わずに……小町と一緒に世話を焼いてくれて、自分を後回しにしちゃって…………だから比企谷が風邪を引いたのはあたしのせいなの。本人は絶対認めないけど」

雪乃「川崎さん…………」

沙希(知らず知らずあたしの声は震え、雪ノ下が戸惑いながら名前を呼んでくる)

沙希(いけない、感情的になってしまった。このままじゃまた比企谷に迷惑をかけてしまう)

沙希「ごめん、大丈夫だから……ま、そんで一晩お世話になって頭を冷やして、翌朝帰って無事家族と和解した。こんなところさ」

雪乃「そう、御家族との問題がなくなったのはいいことね。でも比企谷君はどうして私達を頼ってくれなかったのかしら? 女性を泊めるなら特に一人暮らしの私なんか最適だとは思うのだけれど」

沙希「それは問題があたしと家族の事だからね。いたずらに多くの人を巻き込むのをあたしが嫌がると思ったんでしょ。事実だし、あの場に比企谷が来なかったらあたしは比企谷にも頼ってない。やや強引に連れられたからこそあたしは比企谷にお世話になることにしたんだ。こんなところだけど他に何か質問ある?」
825 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/28(日) 02:50:33.11
いろは「じゃあ……はい」

沙希「何?」

いろは「川崎先輩がいた公園に真っ先に先輩が来たって言ってましたけど、先輩はどうして川崎先輩がそこにいるってわかったんですか?」

沙希「…………その質問必要?」

いろは「いえ、必要ではないですけど気になっちゃいまして」

沙希「そう。ま、あたしも知らないけど」

いろは「え?」

沙希「あたしもそれは気になったから聞いたけど、何となくってしか答えてくれなかった。だから知らない。無理に聞くことでもないし」

いろは「そう、ですか」

結衣「あのさ、サキサキ……ちょっとしつこいようだけどヒッキーとは何にもなかったんだよね?」

沙希「何があるっていうのさ?」

結衣「そ、それはその、うう……」

沙希「だいたいあんたらだってあいつと二人きりになることくらいあったでしょ。その時に何かされたの?」

雪乃「あら、私はあんな男に負けるほど弱くはないわよ。それは彼もわかっているから」

結衣「そういえばゆきのん合気道やってるんだっけ?」

沙希「そんなんで勝てるわけないじゃない。比企谷は強いよ」
826 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/28(日) 02:51:38.77
いろは「え、先輩が強いって……部活も何もしてないじゃないですか」

沙希「むしろ何もしてないから身体を鍛えてるんでしょ。ぼっちだから一人でやらなきゃいけないことも多いし。そうでなきゃあたしを担いで何十分も雨の中歩き続けるなんて出来やしないって」

いろは「へえー……」

沙希「それに良い腹筋してたしね。同年代ではある方じゃないかな」

結衣「ふ、腹筋って、そんなのいつ見たの!?」

沙希「いつって、泊まった時だよ。自宅にいる男子なんてそんなもん…………ああ、そうか」

雪乃「? 何かしら?」

沙希「あんた達って男兄弟いないんだね。だから男に対する見方があたしと少し違うんだ」

結衣「どーいうこと?」

沙希「いや、これは言ってもわからないだろうからいいよ」

いろは「そう言われると気になるんですけど……」

沙希「ま、とにかく比企谷は見た目じゃわかんないけど結構力はあるよ。腕も贅肉とかそんなについてないし」

いろは「へー、あとで確かめてみましょう」

沙希「ほどほどにね。あたしが言ったことで比企谷に迷惑になるのは嫌だし」

いろは「はーい」
827 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/28(日) 02:53:45.78
沙希「こんなもんかな? とりあえずわかってほしいのは、比企谷はちゃんと良識を持ってるってこと、周りが言うほどひどい人間でもないこと、だね」

雪乃「そんなこと……彼のことは良くわかっているわよ」

結衣「うん」

いろは「ですね」

沙希「わかってないよ」

雪乃・結衣・いろは「!」

沙希「ま、あたしもわかってないかもしれないけど…………もういいよね?」

沙希(誰も何も言わないのを確認し、あたしは立ち上がる)

沙希「紅茶、ごちそうさま。あたしはもう引き上げるから比企谷には誰か連絡してやってよ」

沙希(ドアを開けて外に出る。あー、ごめん比企谷……迷惑かけちゃうかもだけどこれは言わせて)

沙希「一応確認しとくけどさ、もし比企谷んちに泊まった時に何かあってもあんた達には関係ないよね?」

沙希(あたしはそう言って反応がある前にドアを閉め、すぐにそこを離れた)

沙希(最低だよね、あたしって…………)
828 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/28(日) 02:55:35.86
八幡(由比ヶ浜からメールが来たので部室に戻ることにした。向かう途中川崎に会う)

八幡「おう、もういいのか」

沙希「うん、適当に話しておいた。えっとね……」

八幡(齟齬がないように会話を確認しておく。またボロが出ても面倒だしな)

沙希「そんなとこかな。あとあんたの筋肉がそれなりだって言ったから確かめてくるかも」

八幡「何をどうしたらそんな会話が出てくるんだよ……」

八幡(女子の会話力はよくわからん)

八幡「ま、いいや、また明日の朝な」

沙希「うん、また明日ね」

八幡「………………」

沙希「………………」

八幡「ちょっとやり直していいか?」

沙希「……うん」

八幡(俺は周りを見渡して人がいないのを確認する)

八幡「また明日な、沙希」

沙希「また明日ね、八幡」

八幡(俺達は微かに笑みを浮かべながらその場を別々に離れた)
839 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/28(日) 22:54:22.19
八幡(そんなわけで奉仕部に戻ってきたのだが)

雪乃「…………」

結衣「…………」

いろは「…………」

八幡(何だこの空気?)

八幡(川崎と何かあったのか? でもあいつは普段通りに見えたし……)

八幡(何か言葉を発しようとした時、珍しくドアがノックされた)

雪乃「どうぞ」

八幡(雪ノ下がいつものような凛とした声で対応し、ドアが開かれた)

義輝「八幡はおるか! 八幡はおるか! 八幡はおるか!」

八幡「ここにいるぞ! …………ってなんで唐突に魏延ネタなんだよ」

義輝「勢いだすまぬ。ところでお主に依頼したいことがあるのだが」

八幡「なんだ、またラノベの添削か?」

義輝「いや、そのう……お主の持ちキャラは確かB+であったよな?」

八幡「何だ格ゲーの方か。またチャレンジモードか?」

義輝「うむ、ランク条件付きなのでな……また相手を頼めないか?」

八幡「今日は予備校あるから無理だ。明日の部活後ならいいぞ」

義輝「おお本当か! では明日頼むぞ! お騒がせしたな皆の者!」

八幡(そう言って部室部室を出ようとする材木座。俺はそれを呼び止める)

八幡「ちょっと待った」
840 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/28(日) 22:55:02.00
義輝「うん? 何だ?」

八幡「暇な時はちゃんと相手してやるから俺個人への頼み事は今度から電話なりメールなりでしてこい。奉仕部を通さなくていいから」

義輝「は、は、は、八幡がデレた!?」

八幡「デレてねえようるせえな。わかったか?」

義輝「しょ、承知した! 明日の夕方にまた連絡させていただくぞ!」

八幡(最後までうるさいまま材木座は部室を出て行った)

八幡「本当騒がしいやつだなあいつは…………ってどうした?」

八幡(雪ノ下達がぽかんとした表情でこっちを見ていた)

結衣「ヒ、ヒッキー、ちゅうにに対して態度が変わってない?」

八幡「あん? ああ、ちょっとな」

雪乃「どういう心境の変化かしら…………」

八幡「んなもんどうでもいいだろ」

雪乃「それもそうね」

結衣「いいんだ……」
841 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/28(日) 22:56:13.51
八幡「で、川崎から話は聞いたか?」

雪乃「ええ……」

結衣「うん……」

いろは「はい……」

八幡「まあ確かにお前らの言う通り俺みたいなのが女子を家に入れるというのは世間体も良くないからな。言いたくなる気持ちはわかる」

結衣「そ、そんなことないって!」

八幡「慰めはいらねえからさ……一応親御さんの許可を得たりとその場で俺にできる最大限の努力はしたつもりなんだ。だからこの話はもう止めてくれ」

いろは「せ、先輩、あの、わたし達は本気で言ってるわけじゃ……」

八幡「いいから。もう蒸し返さないでくれ。終わった事だし当人達がそう言ってるんだから」

いろは「…………はい」

いろは(話も……聞いてもらえないんですね…………)

結衣(ヒッキーはサキサキを本気で心配して雨の中探しに行って……風邪引いてまで頑張ったのに…………)

雪乃(比企谷くんは本来褒められるべきことをしたのに、軽々しく責めたり偉そうに上から目線で窘めたりなんかして……怒って当然に決まっているわ…………)

八幡(あまりヘタに話すとボロが出て二人きりだったこととかバレかねんからな。多少強引でも打ち切らせてもらおう)
842 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/28(日) 22:57:15.04
雪乃「…………」

結衣「…………」

いろは「…………」

八幡(なんだ? また空気が重苦しくなったぞ? 何か話題を……あ、そうだ)

八幡「そういえば例の川崎からの依頼だけどな、あれ今週で終わりにするわ」

結衣「えっ!?」

八幡「やっぱりあんなの長いこと続けるのは良くないだろ。まだ川崎には話してねえけど」

雪乃「そ、そう、じゃあ明日で終わりにするのね?」

八幡「いや、明後日野暮用で会うからその時に話すわ」

いろは「デ、デートですか?」

八幡「まあデートっちゃあデートかな。対外的には付き合ってる男女が出掛けるわけだし。フリだけど」

雪乃「どこに行く予定なのかしら?」

八幡「いや、どこだっていいだろ」

雪乃「変なところに行かないか心配をしているのよ。早く白状しなさい」

八幡「変なところってなんだよ…………さすがにアニメショップとかには行かねえぞ」

結衣「デートでアニメショップなんて有り得ないでしょ!」

八幡「まあ適当だよ。メシ食ってぶらぶらしようってだけだ」

いろは「うわー、色気がないですね……」

八幡「いいだろ別に」

いろは(まあその方がいいんですけど)

八幡「そういや一色、お前サッカー部はいいのか?」

いろは「あ、そうでした、そろそろ行かないと。では先輩方、失礼しますね」

八幡「おう」

雪乃「ええ」

結衣「またねいろはちゃん」

八幡(一色は慌ただしく出て行った。あいつも忙しいやつだよな……)
850 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/28(日) 23:58:16.13
八幡(相変わらず依頼も来ず、適当にダラダラしてたらいつの間にか下校時間が近付いていた)

雪乃「今日はもう終わりにしましょうか」

結衣「うん。ねーゆきのん、たまにはどっかで夕ご飯食べてかない? あたしんち今日みんな帰るの遅くってさ」

雪乃「そうね……たまにはいいかしら」

結衣「やった! あ、ヒッキーも行こ!」

八幡「いや、俺彼女いるから他の女子とそういうのはちょっと」

結衣「だからフリでしょそれ!」

雪乃「知っている私達に通用する言い訳ではないわよ」

八幡「冗談だ。でもさっきも言ったけど俺は今日予備校あんだよ。誘ってくれたのは嬉しいけど今回はパスな」

雪乃「…………」

結衣「…………」

八幡「? 何だ?」

結衣「ううん! 何でもない! えへへ」

雪乃(比企谷君が……)

結衣(誘ってくれたのは嬉しいって言った!)

八幡「?」

八幡(二人とも何で笑ってんだ? 俺の顔に腐った目以外に何か付いてんの?)
851 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/28(日) 23:58:43.49
八幡「よっ、と」

八幡(雪ノ下達と別れ、駐輪場で自転車に跨がる)

八幡(帰って軽く何か食って予備校か)

八幡(そう、予備校だ)

八幡(さっき川崎といつもの癖でまた明日、なんて言い合ったけど予備校で会うんだよな…………ちょっと気まずい)

八幡(まあそんな気にするものでもないのだが)

八幡(このまままっすぐ帰って…………いや、ちょっとだけ寄り道するか)

八幡(全然意味もない、ただ時間を潰してしまうだけの寄り道になるけどな)
852 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/28(日) 23:59:29.58
八幡「………………」

沙希「………………」

八幡「何でここにいるんだ……」

沙希「何でここに来たのさ……」

八幡(いつも朝に川崎を自転車から下ろしてるこの公園)

八幡(何となく寄ってみたらベンチに川崎が座っていた)

八幡「いや、俺は何となく帰り道で遠回りして寄っただけで……」

沙希「あたしは今日直接予備校に行くつもりでさっきまで図書室にいたんだ。下校時間になったからここで少し時間潰してからバスで行こうと思ってて…………」

八幡「…………」

沙希「…………」

八幡「あー、俺んち経由していいなら一緒に行くか? 俺は予備校の準備してねえからさ」

沙希「うん、せっかくだしそうしようか」

八幡「よし、んじゃ後ろ乗れよ。とりあえずウチに行くから」

沙希「ん」

八幡(川崎は荷台に腰を下ろし、俺に掴まる)

八幡(それを確認して俺はペダルを漕ぎ出した)

八幡(…………)

八幡(…………やべ)

八幡(すっげえ嬉しい。顔がニヤケる)

八幡(こんな偶然で川崎といられるなんて)

八幡(薄暗くて良かった。一般人から見たら通報ものの表情だろうからな)

八幡(俺はほんの少しゆっくりと自宅を目指した)
858 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/29(月) 00:56:21.78

素晴らしい
次回スレ:

八幡「なんだ、かわ……川越?」沙希「川崎なんだけど、ぶつよ?」4



関連スレ:

シリーズ一覧及び・この書き手SSまとめ

(川崎沙希好きの書き手です)

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