八幡「なんだ、かわ……川越?」沙希「川崎なんだけど、ぶつよ?」2

326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/06(土) 19:33:41.04
前回スレ:

八幡「なんだ、かわ……川越?」沙希「川崎なんだけど、ぶつよ?」1



八幡「…………と、まあそんなわけだ。な、大したことなかったろ?」

沙希「そう思ってるなら何であんなに怒ったのさ?」

八幡「さあ、何でだろうな」

八幡(本当に何でだろう)

八幡(いくら考えてもわからない。しかしじゃあ今同じ状況になったら怒らないかというとそれはない)

八幡(怒るだけの理由はあるはずなのに、それが見つからない)

八幡(いや……見つけるのを無意識に恐れているのかもしれないが)

沙希「今度はとぼけているってわけでもなさそうだね…………でもさ、その子も本気で言ったわけじゃないんでしょ?」

八幡「たぶんな……確証がないからつい怒っちまったんだろうが」

沙希「ねえ比企谷、そういえばさ」

八幡「ん?」

沙希「依頼をしてから一週間経つけど、色々あったし色々したよね」

八幡「ああ」

沙希「一緒に帰ったり弁当作ったり、映画とか見に行ったり」

八幡「そうだな、あと膝枕したり」

沙希「う…………コホン、そして中にはそういうのを目撃されたりとかもしてるのがあるけど」

八幡「写真撮られたりな」

沙希「そんななのにあの子が演技だってバラしても周囲は信じると思う?」
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/06(土) 19:34:31.28
八幡「どうだろうな……実際目の当たりにしている方が信じられやすいとは思うが」

沙希「もし演技だって噂が流れてもあたし達が変わらずにいたらやっぱり噂の方が否定されるんじゃない?」

八幡「それはそうだろうな」

沙希「じゃあ別にいいじゃない。比企谷にはまだまだ彼氏役でいてもらいたいし、あの写真のせいでそうしておかないとむしろ困る」

八幡「写真? 何でだ? まあ確かに彼氏彼女でもないのあんなことしていたら変な目で見られるか」

沙希「違うよ」

八幡「え?」

沙希「自分で言うのもなんだけど……あの写真のあたし、その、普段あんま見せないような顔してたでしょ?」

八幡「ああ、すっげー優しい表情してた。生で見てないのが残念だ」

八幡(むしろそこだけは写真に残した相模に感謝だな)

沙希「そ、そう……それでね、ついさっきの話なんだけど、どうしてあたしがあの場でタイミングよくあんたのところに来たんだと思う?」

八幡「そういやそうだな。放課後になってから少し経つんだからとっくに帰ってるはずだろ?」

沙希「うん、実はクラスの男子に呼び出されてた」

八幡「え……」
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/06(土) 19:35:19.89
沙希「あの写真を見てあたしが気になりだしたんだって。だからあんたとの関係を教えてくれってさ」

八幡「…………」

沙希「どうしたの? 顔が強張ってるよ」クス

八幡「あ、いや」

沙希「ちゃんと答えたよ、あたしは比企谷以外と付き合うつもりはないからって」

八幡「そ、そうか」

沙希「だからこれからも彼氏役、しっかり務めてね。あんたが嫌になるまで、さ」

八幡「……ああ、お前がもういいと言うまできっちりやり通すさ。こう見えても責任感は強いつもりだ」

沙希「ん、ありがと。それじゃあ……」

八幡(そう言って川崎はまた近付いてきた)

八幡(だが残念だったな、ハグされる心構えはもう出来てるぜ、取り乱したりはせん。さあ来い!)

八幡(川崎は俺の肩に手を乗せ、俺の右頬に自分の唇をくっつけてきた)

八幡(え………………?)

八幡「かっ、かっ、かわっ、おまっ」

沙希「あたしのこれに免じてあの子は許してやってくれないかな? たぶん今頃反省してるよ」

八幡「な、な、な」

沙希「まだ足りない? もう一回しとこうか、今度は反対側に」
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/06(土) 19:36:17.36
八幡「わかった! もう一色にも怒ってないから! だから一旦落ち着け、な!?」

沙希「あたしは落ち着いてるよ、むしろあんたの方でしょ……ああ、落ち着けるにはこうすれば」

八幡「う、うわあああ!」

八幡(腕を背中に回そうとしてくる川崎から慌てて離れ、三メートルほど距離を取る。おかしそうに笑ってる川崎が憎らしい)

八幡「くそ、男心を弄びやがって……」

沙希「何言ってんの、あたしだって恥ずかしいよ」

八幡「本気で恥ずかしがってるときとのギャップでか過ぎだろ……あのしおらしいお前と今のお前…………」

沙希「あの子はきっと明日にでも謝罪してくるよ、ちゃんと許してやってね」

八幡「ああ、ついでにこれを機に面倒事を持ってくる回数減らしてくれりゃいいんだがな」

沙希「推薦者は大変だね」

八幡「まったくだ」

八幡(俺は苦笑し、川崎は微笑む)

八幡(本物じゃない俺達の関係)

八幡(俺がよしとしない偽物の関係、それでも)

八幡(例え偽物でも、今は川崎とこうやって笑い合っていたい)
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/06(土) 19:38:18.37
沙希「そう言えばさっきの話が途中だったけど」

八幡「あ? 何だっけ?」

八幡(背中側から声がかけられる。ついでだからと川崎を自転車で家まで送ることにしたのだ)

沙希「クラスの男子と話し終わったあと、海老名から電話が来たの」

八幡「海老名さん?」

沙希「うん、『ヒキタニくんがすっごい怖い! 無理! 優美子怯えてる! 結衣でも戸塚くんでも無理! 早く校門のとこまで来て! サキサキじゃなきゃ無理!』って」

八幡「あー…………遠目に見た三浦や海老名さん、怖がってたもんな……え、あの海老名さんをそんなにパニックにさせるって俺どんだけ怖かったの?」

沙希「あれを目撃した人の見る目が明日から劇的に変化してるよきっと」

八幡「ええー……由比ヶ浜や一色にはちょっと悪いことしたかな。てか川崎は平気だったのか?」

沙希「なんであたしがあんたを怖がるのさ」

八幡「…………そうだな」

沙希「ん」

八幡(腰に巻かれる腕の力が少しだけ強くなった気がした)

八幡(偽物なのはわかってる)

八幡(でも)

八幡(もう少しだけ……)
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/06(土) 19:52:03.63
乙ですー
川崎さんは大胆ですなぁ
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/06(土) 20:01:03.39
川崎さんいいよなぁ
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/06(土) 21:43:45.67
あんた…最高だよ
サキサキ可愛すぎ
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/07(日) 21:50:58.97
沙希「…………」

八幡「…………」

沙希(また沈黙)

沙希(でも、全然嫌じゃない)

沙希(特にこの自転車で送ってもらってる時間は好き)

沙希(比企谷はあたしが後ろに乗ってると嬉しいって言った)

沙希(どういう意味なんだろう? 勘違いしちゃっても、自惚れちゃっても、いいのかな)

八幡「なあ、川崎」

沙希「ん、なに?」

八幡「今日は買い物とかはしないでいいのか?」

沙希「うん、今日は大丈夫だから」

八幡「……そうか」

沙希(……あれ?)

沙希(ほんの少しだけだけど、今比企谷残念そうだったような)

沙希(…………)

沙希(よく周り見てみると)

沙希(確かにあたしの家に向かってるけど、注意しなきゃわからないくらいに遠回りしてる……)

沙希(ちょっと急げば間に合う信号も停まるし……もしかして)

沙希(少しでも長くあたしといたいなんて思っててくれてたり、とか……)
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/07(日) 21:52:15.41
沙希「ひ、比企谷!」

八幡「ん、どうした?」

沙希「あ、えと……」

八幡「おう」

沙希「ご、ごめん、何でもない」

八幡「?」

沙希(うう……)

八幡「ほい、着いたぞ」キキッ

沙希「ん、ありがと」

沙希(た、たまにはあたしから言おう)

沙希「じゃあ明日の朝からよろしくね、八幡」

八幡「! おう、また明日な、沙希」

沙希(あたしは手を軽く振って比企谷を見送る。少し離れたとこで振り向いて手を振り返してくれたのがやけに嬉しく感じた)

沙希(比企谷の姿が見えなくなり、あたしは鍵を開けて家の中に入る。まだ誰もいないようだ)

沙希(あたしは鞄を放り投げて自分のベッドに倒れ込む)

沙希(う…………)

沙希「うああああああ!」バタバタ

沙希(しちゃった! 比企谷のほっぺにキスしちゃったよ!)バタバタ

沙希(しかも抱きついたりもしたし! はしたないとか思われてないかな!?)バタバタ

沙希「はあ……」グッタリ

沙希(何やってんだろあたし……)

沙希(大胆な行動する割に肝心なことは言えない)

沙希(彼氏の“フリ”を続けて欲しい、なんて)

沙希(でも…………)
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/07(日) 21:53:40.30
沙希(海老名から電話あった時は何事かと思った)

沙希(比企谷が怒ってるなんて大袈裟に言ってるんだと思ってたし)

沙希(強がったけど……やっぱりあの時の比企谷はちょっと怖かった)

沙希(比企谷は自分がなんで怒ったのかわからないって言ってたけど、あれってあたしのために怒ってくれたんだよね……)

沙希(比企谷…………)

沙希(比企谷は嘘や欺瞞が嫌いだってのをあたしは知ってる)

沙希(あたしと比企谷の関係はまさにそれ)

沙希(なのに比企谷はあたしに付き合ってくれてる)

沙希(……わからない)

沙希(わからないよ、あんた何なの? 比企谷八幡)
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/07(日) 23:47:53.31
八幡「ただいまー……っても誰もいないか」

八幡(自分の部屋に行き、私服に着替える)

八幡(疲れた……俺らしくもないことをしたからか)

八幡(怒るって結構エネルギー使うんだな)

八幡(他人と関わらなきゃそんなことしなくてすむんだが)

八幡「はぁ…………」
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/07(日) 23:48:31.95
小町「お兄ちゃん晩御飯だよー」

八幡「んあ?」

八幡(いつの間にか寝てたのか)

八幡「おう、すぐ行くわ」

小町「はいはいー」
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/07(日) 23:49:46.05
八幡・小町「いただきます」

八幡(手を合わせたあと、箸を取って小町の作った夕食を食べ始める)

八幡(うむ、美味い)モグモグ

小町「そういえばお兄ちゃん、沙希さんの送り迎えはどうなったの?」

八幡「ああ、明日から朝はあいつの家に迎えに行くことになった」

小町「おおー!」

八幡「だから悪いけど川崎が自転車を買うまで小町は送ってやれない、すまんな」

小町「何言ってんのお兄ちゃん、小町から言い出したことだよ?」ニコニコ

八幡「まあそうなんだが」

八幡(てかなんでそんな嬉しそうなの? 俺の後ろそんなに嫌だったの? 泣いちゃうよ俺)

八幡「…………なあ小町」

小町「ん? 何?」

八幡「俺ってさ、その……怒ると怖いか?」

小町「え?」

八幡「いや、すまん何でもない、忘れてくれ」

八幡(よくよく考えたら小町に怒ったことなんてないもんな、わかるわけないか)

小町「?」
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/07(日) 23:50:42.56
小町(洗い物はお兄ちゃんがやってくれるとのこと。そんなわけで勉強のために自室に戻った小町なわけですが)

小町「あれ、結衣さんからメール来てる?」

『ヒッキーのことで話があるんだけど電話してもいいかな?』

小町「…………結衣さんが絵文字も顔文字も使わないなんて、何かあったのかな」

『はい、今自分の部屋ですからいつでもいいですよ』

小町(メールを送ってからすぐに電話がかかってきた)

小町「はいはい小町ですよー」

結衣『あ、ごめんね突然』

小町「大丈夫です。それより兄がどうかしましたか?」

結衣『うん……あ、その前に、今ヒッキーの様子ってどんな感じ?』

小町「質問の意味が良くわからないんですけど……いつも通りなんじゃないですかね?」

結衣『そっか……』

小町「えっと、何なのか聞いてもいいですか?」

結衣『あ、うん……実は今日学校でね…………』
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/07(日) 23:55:39.30
結衣『……てなことがあってね』

小町「なるほど……だからお兄ちゃんあんなこと聞いてきたんだ」

結衣『あんなこと?』

小町「俺って怒ると怖いかって聞いてきましたよ」

結衣『うん……正直すっごい怖かった。怒鳴ったりとかはしないけど表情がね…………腰が抜けちゃうかと思ったもん』

小町「結衣さんにそこまで言わせるなんて……よっぽどだったんですね」

結衣『だから今はどうかなって思ってさ。いろはちゃん明日ヒッキーに謝るって言ってたし』

小町「うーんどうでしょう? 小町にはいつも通りに見えるんですが、兄は結構感情を隠しますからねー」

結衣『うん、だからこそいろはちゃんにあそこまで怒ってたのが余計にびっくりしちゃって……』

小町「大丈夫ですよきっと。ちゃんと謝ればわかってくれますって」

結衣『そうだといいんだけど…………あたしもゆきのんもヒッキーにいろはちゃんを許してあげるようにサポートするつもりなんだ。小町ちゃんも頼りにしていいかな?』

小町「はい。何ができるかわからないですが、今回は結衣さん達の味方をしますよー」

結衣『ありがとうね小町ちゃん』

小町「いえいえ」

小町(そのあとしばらく結衣さんとおしゃべりをしてから電話を切った)
小町(…………あのお兄ちゃんが怒ったんだ)

小町(沙希さん大事にされてますねー)

小町(義姉候補は結衣さんか雪乃さんだと思ったんだけどなあ……まさか沙希さんがここまでお兄ちゃん争奪レースに食い込むなんて)

小町(お二人ともうかうかしてると沙希さんで決まっちゃいますよ)
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/08(月) 13:58:27.88
八幡「んじゃそろそろ行くわ」

小町「はいはい、沙希さんによろしくー」

八幡(小町に手を振られながらいつもより少し早い時間に家を出る)

八幡(学校ではなく川崎家を目指して自転車を漕ぐ)

八幡(昨日の事で夜はあまり寝れなかったが眠くはない。むしろ気分は高翌揚しているほうだ)

八幡(自然とペダルを踏む足に力も入り、スピードが出る)

八幡(……見えた、あの角を曲がれば川崎家だ)

ブロロロロ!
キキィ!
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/08(月) 13:59:10.44
八幡(危ねえなあの車……一時停止くらいしろよ)

八幡(でも昨晩川崎に『ちゃんと安全運転で来なよ』って注意されなきゃ飛び出してぶつかったかもしれねえな)

八幡(もう交通事故なんかゴメンだぜ)

八幡(家の前に着いたところでちょうど川崎が出てきた)

八幡「よ、おはよう」

沙希「ん、おはよ、よろしくね」

八幡(それだけの挨拶をし、川崎は自転車の荷台に腰を下ろす)

八幡(身体に腕が回されてしっかり捕まったのを確認し、俺はペダルを漕ぎ出した)

八幡(相変わらず会話はないが流れる雰囲気は心地良い)

八幡(…………川崎も同じ気持ちなら嬉しいんだがな)

八幡(大通りを避けながら昨日の公園に到着した。人目もなく学校からそう離れてもないので好都合な場所ではある)

八幡「んじゃまたあとでな」

沙希「ん、ありがと。またあとでね」

八幡(一緒に歩いて行ってもいいのだが、昨日のあれのせいで俺達二人が一緒にいるのは目立つだろうからここで一旦お別れだ)

八幡(軽くなった荷台に少し戸惑いながら俺は再び自転車を漕ぎ出す)
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/08(月) 21:52:16.49
いろは(先輩、そろそろ来るかな……)

いろは(朝からこんな下駄箱で待ち伏せするような真似して迷惑にならないかな……)

いろは(もし許してくれなかったら……ううん、わたしを見てまたあんな顔をしたら……)

いろは(ダメだ、悪いことばかり頭に出てきちゃう……あーもう、早く来てください先輩! あ、でももうちょっと心の準備を…………あ、き、来た!)

いろは(今のところ表情はいつも通り。腐った目に気怠げな感じ……あれが昨日みたいになりませんように!)

いろは(ほぼ祈るような感じでわたしは勢い良く靴を履き替えた先輩の前に出て頭を下げる)

いろは「先輩! 昨日はごめんなさい! 本当にすみませんでした!」

いろは(わかってる。こんなところでこんな目立つような真似は先輩も良く思わないって)

いろは(でもこれはわたし自身への罰でもあるのだ。大声でわたしが謝っている以上、周りから見ても悪者はあくまでわたしなのだから)

いろは(先輩の反応が怖い。怒鳴られるか、冷ややかに何か言われるか、それとも無視されるか)

いろは(でも)

いろは(先輩の反応はそのどれとも違った)
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/08(月) 21:53:31.17
八幡「おう、わかった」

いろは「…………え?」

いろは(いつもと変わらない声音で先輩らしい短い返事)

いろは(思わず顔を上げるとやはりいつもと変わらない表情)

八幡「んじゃまたな」

いろは(そう言って歩き出そうとする先輩を慌てて引き留める)

いろは「ちょ、ちょっと先輩! わたしあんなこと言ったんですよ!? なんでそんな平然としてるんですか!?」

八幡「朝からうるせえな……だから許してもらおうと今謝ったんだろ?」

いろは「そ、そうですけど……」

八幡「だから俺はその謝罪を受け入れてお前を許した。それで今回のことは終わりだ」

いろは「で、でも……」

八幡「それともなんだ? 許して欲しくなかったのか?」

いろは「い、いえ、そんなことはないですけど……」

八幡「じゃあいいじゃねえか。服掴んでるその手を離せって。目立つだろ」

いろは(わからない、何で?)

八幡「一色?」

いろは(昨日のあれは演技なんかじゃなかった。一日経ってここまで変わるものなの?)

沙希「お熱いねお二人さん」
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/08(月) 21:55:19.02
いろは「か、川崎先輩!」

沙希「朝っぱらから浮気とは感心しないよ」

八幡「おいおい何言ってんだ。俺は川崎ひとすじだっての」

沙希「はいはいあたしもさ、先に行ってるからね」

いろは「あ、ま、待ってください川崎先輩!」

沙希「ん?」

いろは「え、えっと、その」

沙希「…………」ナデナデ

いろは「!」

いろは(ちょっと俯いていると突然頭を撫でられた)

いろは(驚いて顔を上げると川崎先輩はとても優しい表情をしていた。まるで母親のように)

いろは(ああ、この人は全部わかってるんだ)

いろは(この人だから先輩は怒り、そしてこの人がきっと先輩に何か言ったから先輩はわたしをあんなにあっさり許したのだろう)

沙希「これからも比企谷と仲良くしてやってよ、それじゃ」ポンポン

いろは「は、はい!」

いろは(最後に頭を軽く叩き、川崎先輩は行ってしまった)

八幡「あいつは気にしてねえから俺がどうこう言う話じゃない。それでいいな」

いろは「はい……あの、先輩は……」

八幡「なんだ?」

いろは「……いえ、何でもないです」

いろは(聞けない。本当にフリなんですか、なんて)

八幡「んじゃ俺ももう行くぞ、またな」

いろは「は、はい。川崎先輩にもよろしく言っておいてください」

八幡「ああ」
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/08(月) 21:59:27.89
あーまーいーぞーおおおぉ
もっとやってくださいね。
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/08(月) 22:03:23.06
なんやこれぇ…!
最高やん
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/08(月) 23:06:44.55

川崎の圧倒的正妻力
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/09(火) 00:06:41.02
八幡(さて、一色と別れて教室に向かっている俺であるが)

八幡(…………すげえ視線を感じる)

八幡(いつもは悪意や敵意に近いものを受けているのだが、それにプラスして怯えが混じっていた)

八幡(ええー……本当にそこまで怖かったの俺?)

八幡(もう帰ろうかな…………というわけにもいかず、教室の前まで来る)

八幡(やっぱり川崎と一緒にくれば良かった……なんて今更言っても仕方ねえか、よっと)ガラガラ

八幡(うん、やっぱり何人かは顔を逸らしつつチラチラこっちを見てる)

八幡(あの、名も知らぬ女生徒さん、あからさまに背中向けないでください悲しくなります。あと川崎、声を出さずに笑ってんなよちくしょう)

八幡(そんな緊迫した雰囲気の中、俺に近付くひとつの影)

八幡(それは意外や意外、海老名さんだった)

姫菜「やーおはようヒキタニ君」

八幡「…………おはよう海老名さん」

八幡(挨拶をしたあと、小声で囁くように言葉を繋げる)

姫菜「昨日のヒキタニ君、ちょっと怖かったけどもう大丈夫みたいだね。サキサキ呼んじゃったけど余計なことだった?」

八幡「…………いや、正直助かった。ありがとう」

八幡(俺の返事に海老名さんは満足したように頷き、俺の背中をバンバンと叩く)

姫菜「いやーでもヒキタニ君ってあんなワイルドな一面もあったんだね! てっきりヘタレ受け専門だと思ってたけどやるじゃない!」

八幡「いや、その専門にもなった覚えはねーから……あと背中叩かないでください痛いです」
373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/09(火) 00:10:28.93
八幡(そんなやり取りを目にしてクラスに弛緩した空気が流れる)

八幡(海老名さんはそれを確認して俺にウインクを飛ばしてきた。俺のためにしてくれたのか、やべえ惚れちゃいそう。今なら戸部の気持ちがわからないでもない)

八幡(昔の俺だったら放課後に呼び出して告白してごめんなさいされるまであるな。あれ、やっぱりフられるのか?)

八幡(まあ海老名さんにはとっくにフられてるんですけどね、演技とはいえ)

八幡「よいしょっと」

八幡(カバンを置いて椅子に座るとまたもや俺に近付く影。今度は予想に違わず由比ヶ浜だった)

結衣「ヒ、ヒッキー、おはよ」

八幡「おう、昨日は怖がらせてすまなかったな」

結衣「あ、うん、あたしはいいんだけど、その……」

八幡「一色ならもう謝ってきて片が付いたぞ。だから気に病むな」

結衣「え、そうなの……よかったぁ」

八幡(ホッとしたように肩の力を抜く由比ヶ浜。他人事なのに我が身のように心配していたようだ)

結衣「で、その、少しお話したいから今日お昼部室で一緒に食べない? あ、サキサキも一緒に」

八幡「あ? まあ川崎が構わねえなら俺はいいけど」

結衣「うん、じゃあサキサキにも聞いてくる」

八幡(由比ヶ浜は川崎の方に駆けていった)

八幡(今の由比ヶ浜の押しに川崎が抵抗しきれるとも思えん。今日の昼は部室で決まりだな)
375 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/09(火) 00:11:29.29
乙乙

このサキサキには流石のいろはも勝てないか…そろそろあねのんが登場するのだろうか
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/09(火) 20:17:22.56
八幡(さて、昼休みである)

八幡(自販機に寄ってから部室に行くと、すでに三人が揃っていた)

八幡「よう」

雪乃「こんにちは」

八幡(今日お初にお目にかかる雪ノ下に挨拶し、俺は席に着く)

八幡(てか今日は机の配置が違うんだな。川崎がいるためか二つの机の正面をくっつけあってテーブル席みたいになってる)

沙希「はい、今日の分」

八幡「おう、ありがとな。ほい」

沙希「ん、ありがと」

八幡(隣の川崎から弁当を受け取り、自販機で購入した川崎の分の飲み物を渡す)

八幡(ここ最近のいつものやり取り。なのだが)

雪乃・結衣「…………」

八幡「なんだよ?」

雪乃「……いえ」

結衣「うう……」

八幡「?」

沙希「…………」
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/09(火) 20:19:21.74
八幡(手を合わせていただきますをし、蓋を開けて箸を取る)

結衣「わー、サキサキのお弁当美味しそうだね。ちょっと交換しない?」

沙希「あ、ああ、構わないよ。ほら、好きなの取りな」

結衣「じゃあこの玉子焼きもらうね。んー甘くて美味しい!」モグモグ

八幡(ネタバレされた……しかし川崎のやつ戸惑ってるな。友達慣れしてないのが丸分かりだぜ! そしてその気持ちは良くわかるぞ)

結衣「サキサキ自分で作ってるんでしょ? すごいなあ……あたしもお母さんやゆきのんに教えてもらってるけどなかなか上手く行かなくて」

雪乃「由比ヶ浜さんはちゃんと手順通りにやらないからよ、変なアレンジをしようとしなければだいぶマシになると思うのだけれど」

結衣「でも普通ってつまんなくない? せっかく作るならもっと美味しくなるようにしたいじゃん」

沙希「…………由比ヶ浜、あんた好きな人いる?」

結衣「え……ええええ!? と、突然何?」

八幡(川崎のいきなりの質問に戸惑う由比ヶ浜。もちろん俺も雪ノ下も一瞬唖然とした)

沙希「好きな人がいたとしてさ、いきなり告白するのと少しずつ仲良くなって距離を縮めてお互いをよく知ってから告白するのとどっちが上手くいきやすいと思う?」

結衣「それは……やっぱりあとの方じゃないかな」

沙希「そうだね。前者も上手くいくことはあるけど後者の方が一般的にはいいと思うよ、程度の差はあるけど。そしてそれは料理も勉強も同じ」

結衣「あ…………」

沙希「美味しい料理ってゴールに辿り着くにはいきなり色々するより少しずつ基本から知っていく方が確実だよ。そうしたほうが色んなものが見えてくるから」

結衣「サキサキ…………うん、そうだね! あたし頑張ってみる!」

八幡(何かを得心したように拳を握る由比ヶ浜。似たようなことは雪ノ下も言っているのだがなかなか理解されていなかった。それを恋愛で例えたらようやくわかったようだ、これで少しは改善されるといいのだが)
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/09(火) 20:20:57.89
雪乃「そういえば、その、比企谷君」

八幡「あん?」

雪乃「その、昨日は一色さんと少し揉めたらしいわね」

八幡「う、その…………」

雪乃「いえ、責めているわけではないのよ。聞く限り一色さんの方に非があったようだし」

八幡「いや、俺もちょっと大人気なかったっていうか……まあその問題はもう朝に一色が謝ってきて解決したからいいだろ」

雪乃「ええ、だから興味本位で聞いているの。もの凄く怖い顔をしたらしいじゃない?」

八幡(雪ノ下がそう言うと由比ヶ浜が一瞬強張り、川崎がくくっと笑う)

八幡「やめてくれ……朝からそれで注目浴びたんだから」

雪乃「私は見てないから何とも言えないけど多少の噂にはなってるらしいわよ」

八幡「マジか……まあ今更悪評が一つ増えたってどうでもいいけどな」

沙希「昨日のあれは見てて圧巻だったよ。比企谷が来ると人波が左右に分かれて道が出来るんだもの」

結衣「え、サキサキも見たの?」

沙希「ああ、その比企谷に話し掛けることよりそんな状況で比企谷に近付くことの方が緊張したくらいでね。目立つのもあれだしさっさと連れ出したよ」
388 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/09(火) 20:23:38.91
結衣(そっか…………あのあとサキサキがヒッキーに何か言ったからいろはちゃんを許したんだねきっと)

八幡「なんつーか、迷惑かけたな」

沙希「どうってことないって。それより海老名には礼を言ったの? 朝のことも」

八幡「ああ。海老名さんていい人だよな。腐ってなきゃもっとモテるだろうに」

雪乃「目が腐ってるあなたに言われるのもどうなのかしら……というか海老名さんがどうかしたの?」

八幡「ああ、えっと…………」

八幡(あれ? なんて説明すればいいんだ?)

八幡(『キレた俺を止められるのは川崎しかいないので電話で呼んでくれました』って? いやいや、ダメだろ)

八幡(その辺の説明はなんかしたくないし、適当に誤魔化そう)

八幡「朝のことなんだけどな、クラスの空気が緊迫してたんだ。いや、俺が来たせいなんだが」

雪乃「ええ」

八幡「そんな俺に軽い感じで絡んでくれて大したことじゃないように振る舞ってくれて元の雰囲気に戻してくれたんだ。あれは正直助かった。な、由比ヶ浜?」

結衣「あ、うん、優美子も最初ちょっと怯えてたからどうなるかと思ったけど」

雪乃「ふうん、海老名さんて結構強いのね」

八幡(そりゃあんな趣味を全面的に押し出すくらいだし精神的にはタフだろう。つっても昨日俺が怯えさせちゃったわけだが)
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/09(火) 20:24:46.57
結衣「ねえ、ヒッキー、サキサキ、その……」

沙希「ん?」

八幡「なんだ?」

結衣「サキサキの依頼って…………まだ続けるの?」

雪乃「そういえば一週間くらいの予定だったわね、もう経つのだけれど」

沙希「…………」

八幡「ああ、まだ期間延長するつもりだ」

結衣「そ、そうなんだ……その相手ってそんなにしつこいの?」

八幡「いや、そいつはもういいんだが……新しいのが湧いて出て来てしまってな」

結衣「え?」

八幡「ほら、例の写真あるだろ。あん時の川崎の表情を見て惚れたってのがいてな」

結衣「あー、良い顔してたもんねサキサキ」

沙希「うう……」

八幡(赤くなって俯くサキサキ可愛い)

八幡「まあ俺にはその写真の責任もあるしまだしばらくは虫除けを務めることにするわ。別に誰に迷惑をかけるわけでもないし他にしなきゃならんことがあるならそっちを優先するし」

雪乃「そ、そう……奉仕部の活動が疎かにならなければ構わないのだけれど……」

八幡「そんなほいほい依頼なんか来ねえけどな」

八幡(ここで予鈴が鳴り、昼はお開きとなった)

八幡(川崎が後半静かだったのが何か気になるな……)
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/10(水) 16:58:09.76
八幡「…………」

雪乃「…………」チラ

結衣「…………」チラ

八幡(何なんだいったい)

八幡(部活始まってからやたら二人がチラチラこっちを見てくる)

八幡(煩わしい……つってもそれを指摘するとそれはそれでうるさいことになりそうだが)

八幡(落ち着かねえ…………誰かこの空気をぶち壊してくれ。依頼人か平塚先生あたり……いや、この際材木座でも誰でもいい。誰か!)

陽乃「ひゃっはろー! 雪乃ちゃん元気してる?」ガラッ

八幡(すいません誰でもいいというのは嘘です。さっきのお願いキャンセルできませんか神様?)
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/10(水) 16:58:45.46
雪乃「たった今元気がなくなったわ、できればすぐに帰ってちょうだい」

陽乃「えーそれは大変だ、お姉ちゃんが元気を分けてあげよう。それっ」ダキッ

雪乃「暑苦しいから離れてちょうだい。というか何でここにいるのよ」

陽乃「んーちょっと進路関係で呼び出されてね。簡単に言うと私の大学の紹介文を」

雪乃「なるほどわかったわ帰ってちょうだい」

陽乃「ひどーい、愛しのお姉ちゃんを追い出すの? ガハマちゃんも何か言ってよ」

結衣「あ、えと……あはは」

八幡(戸惑ってやがるな由比ヶ浜。まああの状況に何か言えって言われても困るか。俺にできるのはとばっちりが来ないように…………じゃない、事態をややこしくしないように大人しくしていることだ。全力ステルスモード発動!)

陽乃「あれー比企谷君どうしたの? 今日は随分大人しいじゃない」

八幡(なん……だと……ステルスモードが通用しない?)

八幡「俺はいつもこんなんですよ。ぼっちは誰にも迷惑かけないように大人しく静かに部屋の片隅にいるんです」
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/10(水) 16:59:58.27
陽乃「うんうん今日はそうっぽいね。でも昨日は大人しくしてなかったみたいじゃない?」

八幡「…………」

八幡(何なのこの人どこで聞いてくるの怖い)

陽乃「結構噂になってるよ。何人かの後輩に『最近面白い事あった?』って聞くとみんな昨日のこと話してくるもん」

八幡(ええー……)

雪乃「ちなみにどんなことを言われてるのかしら? 大体想像はつくのだけれど」

陽乃「うん、『目の腐った男子が般若のような表情で獲物を探し回って校内を練り歩き、ひとりの女生徒をさらっていった』って」

八幡「いや、尾鰭背鰭腹鰭付きすぎでしょ。何だよ獲物って…………」

陽乃「あっはっは、それでちょっと聞き回ってみたんだけどね、『比企谷君が怖い顔をして歩いてたらひとりの女生徒に呼び止められて一緒に学校を出て行った』が真相っぽいけど合ってる?」

八幡「まあ概ねは」

陽乃「何が比企谷君をそこまで怒らせたのかなってもー気になっちゃって気になっちゃって。あとその女生徒、かわ、かわ……」

八幡「川村がどうかしましたか?」

陽乃「あーそんな名前だっけ? 川村さんがどうしてそんな状態の比企谷君に近付いてったのかなって」
425 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/10(水) 17:01:56.82
八幡「俺が怒るなんて珍しくても有り得ないことではないでしょう? それとその女生徒はクラスメートです」

陽乃「ただのクラスメートが怒ってる比企谷君に話し掛けたの?」

八幡「ただの、じゃないですね。少なくとも雪ノ下や由比ヶ浜と同レベルには親しい間柄かと」

雪乃・結衣「!!」

陽乃「ひ、比企谷君がデレた!? まさか偽物! 本物をどこにやったの!?」

八幡「なんでそこまで言われるんですか…………まあ俺が一方的に思ってるだけですけどね。こんな俺を相手してくれるだけありがたいと思いますよ」

陽乃「へー…………でもいつの間にそんな川村さんみたいな子と仲良くなったの? 雪乃ちゃんがいるのに浮気は駄目だぞっ」

八幡「なんで俺と雪ノ下が付き合ってるみたいな言い方なんですか…………むしろ逆ですよ。俺は沙希の方と付き合ってます」

陽乃「え、沙希って?」

八幡「怒り狂う俺にも臆さずに近付いて来てくれるとても出来た彼女ですよ」

陽乃「あ、あはは、やだなー比企谷君たら、お姉さんを騙そうったってそうは…………」チラ

雪乃「…………」

結衣「…………」

陽乃「ほ、ホントに? ホントにその川村さんと付き合ってるの?」
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/10(水) 17:07:15.56
八幡「まあ俺自身信じられないとこもありますが…………」

陽乃「ゆ、雪乃ちゃん、ホントに比企谷君と川村さんが?」

雪乃「…………」プイ

陽乃「ガ、ガハマちゃん、川村さんって……」

結衣「…………」プイ

陽乃「あはは、地雷、踏んじゃったかな…………あ、そろそろ私帰るね、じゃあまた」スタスタ、ガラガラピシャ

八幡「…………」

雪乃「…………」

結衣「…………」

八幡「くくっ……」

雪乃「ひ、比企谷君、川崎さんを川村さんで通すのはやめてほしかったのだけれど」クスクス

結衣「そーだよ! あたし何度も笑いそうになったじゃん! あんな真面目な顔で川村さん川村さんて。つい顔そむけちゃったよ!」アハハ

八幡「すまんすまん……あー、ついに雪ノ下さんに一矢報いた気がする」

雪乃「でもバレた時が怖いわよ」

八幡「そんときゃお前らも道連れだ」

結衣「ひどい! …………でもヒッキーのあの言葉、あたし嬉しかった」

八幡「あ? 何だっけ?」

結衣「サキサキとすごく仲良くなってあたし達とちょっと距離ができちゃったかな、なんて思ってたけど…………そのサキサキとおんなじくらい仲が良いって言ってくれて」

八幡「あー…………すまんな、気持ち悪いこと言って」

結衣「嬉しかったって言ってるじゃん!」

雪乃「そうよ、普段の態度はあれでも心の底ではあなたのことを認めているわ。由比ヶ浜さんも、私も」

八幡「雪ノ下…………なんか素直で不気味だな」

雪乃「なっ! そ、それこそあなたには言われたくないわ!」

結衣「あはは、ゆきのん赤くなって可愛い!」ダキッ

雪乃「ゆ、由比ヶ浜さん、あまりからかわないでちょうだい」

八幡(今ここにあるのは間違いなく俺が望んだいつもの奉仕部の空気だった)

八幡(陽乃さんを上手く追い返せたし、結局俺が怒ってた理由も聞かれなかったし…………てか俺が川崎と付き合ってるというのはそんなに衝撃的だったのか?)

八幡(…………あんな言葉が素直にスルッと出たのも川崎の影響だろうか?)

八幡(そんな益体もないことを考えながら俺は読書の続きに戻った)
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/10(水) 22:46:49.42
八幡「と、まあそんなことが今日放課後にあってな」

沙希「ふうん……あ、これわかる?」

八幡「ああ、これはだな…………」

八幡(現在の舞台は予備校である。今の時間の担当の講師が大幅に遅れるということで自習を言い渡されているのだ)

八幡(大半は進学校の生徒なため、皆それなりに真面目に取り組んではいるがやはりそこは学生、いまいち身が入ってなかったりお喋りに興じたりしているものも多い)

八幡(俺と川崎も多少の雑談をしながら参考書の問題を解いていく)

八幡(まあ時々周囲の目が痛いんですけどね、『てめえみてえなのが可愛い女の子とイチャイチャしやがって!』って視線が突き刺さります。別にイチャイチャはしてないんですが)

八幡(でも女の子と二人で勉強してるやつがいたら俺も負のオーラをぶつけますね、はい)

沙希「で、その陽乃さん、だっけ。何かしてくるの?」

八幡「わかんねえ、あの人は本当に読めねえからな。何故かよく知らんがやたら俺と雪ノ下をくっつけようとしてたし」

沙希「…………そう。それ、あんたはどうなの?」
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/10(水) 22:48:08.99
八幡「何がだ?」

沙希「だから、その……雪ノ下とくっつこうって考えはあんたにはないのかなって」

八幡「いや、そんなの真面目に考えたことねえし。そもそも釣り合ってないだろ」

沙希「…………恋愛ってのは釣り合っているいないで決めるもんじゃないと思うんだけど」

八幡「まあ、そうかもな」

沙希「想像すらしたことないの?」

八幡「ないと言えば嘘になるが……やっぱり現実味がねえんだよな。今となっちゃ川崎の方がずっといいし」

沙希「なっ……!」

八幡(……あれ? 俺今ちょっと恥ずかしいことを)

講師「すまん遅れた! すぐ始めるぞ!」

八幡(遅れていた講師が飛び込んできたため、俺達の会話と思考はそこで中断された)

八幡(スカラシップのためにも一旦気持ちを切り換えて集中しないとな)
437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/10(水) 22:55:13.21
八幡(そして今日も比企谷タクシーは元気に出動。川崎さんを乗せて走ります)キコキコ

八幡(もちろんもう暗いからゆっくりと安全運転で。他意はありません)キコキコ

八幡(しかし何でだろうな。正面から抱きつかれるとあんなに恥ずかしいのにこうやって背中から抱きつかれるのにそれ程抵抗ないのは)キコキコ

八幡(やっぱり大義名分があるからか? いやでも…………あ、もうすぐ着いちゃうな)キコキコ

沙希「…………」ギュウッ

八幡(え、なに? 何かめっちゃ抱き締められてるんだけど!?)

沙希「…………」ギュウウ

八幡(えっと、こういう時どうすればいいの!? 教えてくれ葉山! お前ならわかるだろ!?)

沙希「…………」キュ

八幡(あ、緩んだ、そして川崎家の前に着いた)キッ

沙希「……ありがとね」ヒョイ

八幡「おう」

八幡(心なしか自転車から降りた川崎の様子がおかしい。いつもならここで名前を呼び合って別れの挨拶をするところなのだが…………俺は一旦自転車から降り、スタンドを立てた)

八幡(まあ……さっき川崎もやってきたし、おあいこでいいだろ…………)

八幡(緊張で身体が強張る。喉がカラカラになる。そんな状態で俺は震える手を川崎の方に伸ばした)

八幡(そのまま川崎の背中に両腕を回し、思い切り抱き締める)

沙希「ひ、比企谷!?」

八幡(うおおおお! やっぱ無理!)

八幡(俺はすぐに腕を解き、自転車に飛び乗って漕ぎ出した)

八幡(挨拶することも振り返ることも今は無理だ。全力でその場から離れた)

八幡(恥ずかしい! 恥ずかしい! 俺は何てことを!)

八幡(うわあああああああ!)













沙希「比企谷の方から……抱きしめて、くれた…………」

沙希「だめ……ニヤケちゃう…………こんな顔じゃ、家、入れない……」

沙希「ばか、ばか…………どうしてくれんのさ、ばか」
441 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/10(水) 23:17:24.95
うわぁぁぁぁぁぁぁサキサキ可愛いぃぃぃぃぃぃぃ
451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/11(木) 20:17:34.17
八幡「はあ……学校行きたくねえ」

小町「起こしに来たらいきなりそんな事を言われる小町の身にもなってよお兄ちゃん、ポイント低いよ…………てか何? また寝不足?」

八幡「ああ、なんだか寝付けなくて…………だから体調不良で休んでもいいよな」

小町「何言ってんの、沙希さんを迎えに行かなきゃいけないんでしょ。早く起きてご飯食べて」

八幡「うー……」

小町「…………もしかして沙希さんと喧嘩でもした?」

八幡「いや、そんなんじゃないんだが…………ちょっとやらかして……会いづらいんだ」

小町「うーん、よければ小町が話聞くよ。とりあえず朝ご飯食べよ」

八幡「ああ……」
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/11(木) 20:19:33.51
小町「ええーっ! お、お兄ちゃんが!? 沙希さんを抱きしめた!?」

八幡「声がでけえよ……てか俺自身信じられねえ、何であんな行動に出たんだか…………川崎には悪いことをしたと思ってる」

小町「えーそっかなー、案外沙希さんも嬉しく感じてるかもよ」

八幡「何でそんなポジティブに考えられるんだよ……」

小町「お兄ちゃんはネガティブ過ぎ! 本当に嫌だったら今日の送り迎え断ってきたりするでしょ。それがないんだから少なくとも嫌とは感じてないって」

八幡「そ、そうかな」

小町「そうだって。もしかしたら恥ずかしがるかもしれないけどそこはお兄ちゃんが余裕を持って接してあげればいいの」

八幡「そんなもんなのか……よ、よし、気にしないようにして頑張ってみるか」

小町「そうそう、むしろ気張らずにいつも通りに接する方がいいって」

八幡「わかった……ごちそうさん、悪いけど俺はもう行くな。片付け頼んでいいか?」

小町「お任せあれ。沙希さんによろしくー」

八幡「おう」
453 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/11(木) 20:27:00.69
八幡(小町との会話でヒントになったことがある)

八幡(そう、恥ずかしがるというアレだ。似たようなことが先週にもあった)

八幡(なら同じようになかったことにしてしまえばいいのだ。きっと川崎も同じことを考えるだろう)

八幡(現金なもので、解決策を思い付くと俺の足取りは軽くなり、軽快に自転車を漕いでいく)

八幡(見えた、川崎家だ…………お、ちょうど川崎が出て来た)

八幡(こちらに気付いたか手を振ってくる。何か機嫌が良さそうだ。到着、っと)

沙希「おはよ比企谷」ニコニコ

八幡「おはよう川崎、ずいぶん機嫌良さそうだな」

沙希「ん、ちょっとね」

八幡「昨日何かあったのか? 俺は何のイベントもなかったから幸せのお裾分けしてくれよ」

八幡(ここでなかったことにしようとする意志をさりげなく強調しておく。マジ俺策士)

沙希「仕方ないね、教えてあげる。実は昨日さ」

八幡「おう」

沙希「比企谷があたしを抱きしめてくれたんだ」

ガッシャアアアン!

沙希「ど、どしたの派手にずっこけて!? 大丈夫!?」

八幡「お、おま、な、何を」

沙希「とりあえず立ちなよ、ほら」スッ

八幡「あ、えっと……わりぃ」

沙希「んっ、しょ」

八幡(川崎の差し伸べてくれた手を掴み、俺は立ち上がる)
454 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/11(木) 20:29:18.61
沙希「さ、行こ。あんまりのんびりしてると遅刻しちゃうよ」

八幡「あ、ああ」

八幡(俺は自転車を起こし、跨がる)

八幡(すぐに川崎も後ろに乗り、俺の身体に腕を回してきた)

八幡「じゃ、じゃあ行くぞ」

沙希「ん、よろしく」

八幡(あれ? あっれー?)

八幡(むしろ川崎さんの方がいつも通りに接してますよねこれ。しかも昨日のことをなかったことにしないまんま)

八幡(いや、ギクシャクしたりするより全然いいんだけどさ)

八幡(それより気になるのは…………)



『比企谷があたしを抱きしめてくれたんだ』



八幡(…………川崎はあれを『いいこと』として捉えているってことだよな)

八幡(…………)

八幡(…………)

八幡(…………うん、あれだ)

八幡(川崎は長女だからな。あんなふうに人から抱きしめられることがあまりなかったんだろう)

八幡(膝枕と同じだ。してあげるばかりでしてもらうことが少なかったから、それを嬉しく感じてるんだ)

八幡(まったく。男を勘違いさせそうになるなんて罪な女だぜ)
464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/11(木) 22:09:37.14
八幡(さて、例の公園に到着っと)キキッ

沙希「よっ、と」ヒョイ

八幡「んじゃまたあとでな」

沙希「あ、ちょっと待って」

八幡「うん?」

沙希「ごめん、ちょっとそっちに立ってくれる?」

八幡(川崎が指したのはベンチのそばだ。とりあえず自転車を止めて言うとおりにする)

八幡「これでいいのか?」

沙希「ん」

八幡(短く返事をした川崎は俺に近付く……って近い近い、近過ぎじゃね? もう身体が密着しそうなんだけど!)

八幡「な、何だよ」

沙希「さっき言ってたでしょ。幸せの、お裾分け」

八幡(そう言うと川崎は俺の背中に腕を回して抱き付いてきた)

八幡「かっ、川崎っ、止めろって!」

沙希「嫌だったら無理やり振りほどいていいよ。抵抗はしないし、それであたしがどうこう思うことはないからさ」

八幡「い、嫌じゃないけど」

八幡(良い匂い柔らかいヤバいヤバいヤバい)

沙希「ん、このぐらいにしとこっか」スッ

八幡「はあっ、はあっ、お、お前な……」

沙希「あたしは比企谷に抱き締められるの、好きだよ」

八幡「!!」

沙希「比企谷もそうだと嬉しいな…………じゃ、あたしは先に行くね」

八幡(そう言って川崎は公園を出て行った)

八幡(それを見届けて俺はベンチにへたり込む)

八幡「なんつーか……やられっぱなしだな」

八幡(でも……それが嫌だとは全然思わない)

八幡(…………)

八幡(…………)

八幡「学校、行くか……」

八幡(今までに幾度か感じた川崎の身体の柔らかさや匂いを何となく思い出しながら、俺は自転車を漕ぎ出した)
472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/12(金) 20:13:12.16
八幡(さて、昼休みだ)

八幡(今日は教室でもベストプレイスでもなく、あの人気のない裏庭で昼食を取ることになっている)

八幡(…………くそ、なんか意識してしまうな)

八幡(授業中につい川崎の方を見ていたってのが何度かあったし)

八幡(はあ…………)
473 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/12(金) 20:15:33.23
八幡「待たせたな」

沙希「ん」

八幡(先にベンチに座っていた川崎に声をかけ、弁当を受け取って買ってきた飲み物を渡す。もう定番化したいつものやり取りだ)

八幡(川崎の隣に座り、手を合わせて弁当箱の蓋を開ける)

八幡「相変わらず美味そうだな。いや実際美味いんだが」

沙希「ふふ、ありがと」

八幡「ん? 作ってもらってるのは俺なんだから川崎が礼を言うのはおかしくねえか?」

沙希「いいんだよ」

八幡「?」

八幡(よくわからないまま俺は箸をつける)

八幡(やっぱり美味い)モグモグ

八幡(そしてやはり絶品な甘くない玉子焼き。うわー絶対俺今キモい表情になってるわ)モグモグ

沙希「ねえ比企谷」

八幡「ん、何だ? 俺の顔がキモかったか? すまん」

沙希「違うよ…………むしろその、ありがとうね」

八幡「さっきもだけど俺が礼を言われる意味がわからん。何もしてねえぞ」

沙希「ううん。あたしの作った弁当を美味しそうに食べてくれてるよ」

八幡「いや、だって本当に美味いし。だったらやっぱり俺から礼を言うとこだろここは」

沙希「でもね、あたし比企谷が美味しそうに食べてる時の表情を見てるとすごく嬉しくなるんだよ」
474 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/12(金) 20:17:10.38
八幡「なっ…………」

沙希「あたしの作ったものがこんなに人を喜ばせてるんだって感じられてさ」

八幡「…………」

沙希「もちろん家族も感謝はしてくれてるよ、でもそれがもう日常になっちゃってるからね。だから久々にこんな気分にさせてくれた比企谷には感謝、てね」

八幡「…………」

沙希「ごめん、何言ってんのかなあたし。気にしないでいいから」

八幡「川崎」

沙希「ん、何?」

八幡「お前、良い女だな」

沙希「んなっ!? 何言ってんのさ突然!?」

八幡「いや、だってなあ……」

沙希「もう……褒めたって弁当くらいしか出ないよ」

八幡「充分過ぎるものが出てるんですがそれは…………ごちそうさまでした、っと」

沙希「ん、お粗末様でした……って比企谷、御飯粒ついてるよ」

八幡「え、マジ? うわ恥ずい、どこだ?」

沙希「取ったげるよ、動かないで」

八幡「お、おう」

八幡(ここでまさか指でつまんで取ってそのまま食べる、なんて恥ずかしいことはやらないよな……………………やらないよね?)
475 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/12(金) 20:19:00.03
沙希「ん……っと」チュ

八幡「え」

沙希「はい取れた」

八幡「お、お前、今、え?」

沙希「頬に付いてたのを口で取っただけでしょ。あたしまだ食べ終わってないから両手塞がってるし」

八幡「いやいやいやいや、色々おかしいだろ!」

沙希「ん、ごちそうさまでした」

八幡「話聞けって!」

沙希「もう過ぎたことをうるさいね。寝不足で気が立ってるんじゃない? 何度か欠伸してたし」

八幡「過ぎたことって…………いや、確かに寝不足だけどな」

沙希「そう、ならあんたが良く眠れる枕、あたし知ってるんだけどさ」

八幡(くそ……ずっと川崎のペースのままじゃねえか。何とか一矢報いたいとこだが…………よし)

八幡「へえ、ならそれ貸してくんない?」

沙希「ん、いいよ。ほら」

八幡(予想通り川崎はベンチの端に移動して自分の太ももを叩く)

八幡(だがその余裕顔もそこまでだ、喰らえ!)
480 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/12(金) 23:54:13.28
ポスン

八幡(どうだ! 仰向けでなくお前の腹側に顔を向けての膝枕だ! スカートだし恥ずかしいだろ、戸惑え!)

沙希「ふふっ、ちゃんと昼休み終わる頃には起こすからね」ナデナデ

八幡(あれ?)

沙希「♪~」ナデナデ

八幡(鼻歌まで始めちゃったよオイ、こうなると俺だけが恥ずかしいんだけど。めっちゃ良い匂いするし俺から離れるわけにもいかないし)

沙希「比企谷、もう寝ちゃった?」ナデナデ

八幡(寝てません、寝れません、眠気なんかどっか行っちゃいました。でも寝たふりするしかないじゃないですかー!)

沙希「…………嬉しいな」ナデナデ

八幡(ん?)

沙希「あたしの前ではそんだけ気を許してくれてるってことだよね」ナデナデ

八幡(まあ……それはそうかもな)

沙希「そこだけは雪ノ下や由比ヶ浜たちに勝ててるよね」ナデナデ

八幡(なんであいつらの名前が出てくるんだ? てか勝ち負けがあるのか?)

沙希「ま、あたしの膝だとドキドキして寝れなかったってシチュエーションも捨てがたいけど」ナデナデ

八幡(すいません今まさにそれです)

沙希「でもこうしていられる時間があるってのは幸せなんだろうねきっと」ナデナデ

八幡(…………)
481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/12(金) 23:55:07.68
沙希「ところでさ」

八幡(…………)

沙希「バレバレなんだけど。ずっとそうしてるつもりじゃないよね?」

八幡(え? バレてる!?)

姫菜「あちゃー、バレてたか」ヒョコ

八幡(なんだ俺じゃなかったのか……この声は海老名さん?)

沙希「この前の写真の時から少し周りに注意するようになったからね。別に見られて困るようなことはないんだけどさ」

八幡(見られて恥ずかしいことはしてます、今まさに。顔が隠れてて本当に良かった)

姫菜「ごめんね、邪魔するつもりはなかったんだけど…………思った以上にサキサキがいい表情してたから見とれちゃった」

沙希「見とれるって…………まああたしいつも仏頂面かもね」

姫菜「違うよ、サキサキ限定じゃない」

沙希「うん?」

姫菜「女子が男子の前でするような表情じゃないよアレは」

沙希「ちょっとよくわかんないんだけど……」

八幡(俺も俺も)

姫菜「なんて言うかさ、『恋に恋する』とか、『ステータスとして』とか、『憧れ』とか。わたしたちくらいの年齢だと恋愛ってそういう感じが多くない?」

沙希「ん…………まあそういうのもあるかもね」

八幡(わからんでもない)
482 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/12(金) 23:56:08.68
姫菜「でもサキサキのは違う。心から相手を信じてるって、信頼してるって表情に見える」

沙希「…………」

八幡(…………)

姫菜「わたしたちくらいの歳で男女間でそんな『本物』みたいな関係を築けるっていいなあって思ってさ」

沙希「…………」

八幡(…………)

姫菜「ちょっとサキサキが羨ましいな」

沙希「…………そんなんじゃないかもよ。まあどう解釈しても勝手だけどね」

八幡(…………そうだ。俺達の関係は本物じゃない。海老名さんが羨むようなものじゃないんだ)

姫菜「あ、今更確認するけどヒキタニ君寝てるんだよね? 起きてないよね?」

沙希「ん、ああ。大丈夫、ぐっすりだよ」

八幡(ばっちり起きてますすいません)

姫菜「うん、じゃあ今のうちに話しとこうかな」

沙希「何かあんの?」

姫菜「えっとね、わたしヒキタニ君に告白されたことがあるの」

沙希「…………突然なに?」

姫菜「あ、違う違う。実は奉仕部への依頼の一環でね」

沙希「知ってるよ。戸部からの告白を避けるためにやったんでしょ?」

姫菜「あ、それも知ってたんだ…………うん、それのことを言いたかったんだけど」
483 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/12(金) 23:57:38.06
沙希「んん……よくわからないね」

姫菜「だからね、もしこのことをサキサキが知らなくて、どっかからヒキタニ君があたしにフられたなんて噂を耳にしたら気分良くないかなって思って」

沙希「別にそのくらい…………いや、どうかな、そうなってみないとわからないかも。気を遣ってくれてありがとね海老名」

姫菜「うん…………やっぱり少し変わったねサキサキ」

沙希「あたしが? 自分じゃそうは思わないけど」

姫菜「なんというか、雰囲気が以前より柔らかくなってるよ。ヒキタニ君のおかげなのかな?」

沙希「…………そうかもしれないね」

姫菜「なんだかんだ言ってわたしは結構ヒキタニ君のこと認めてるよ。クラスの男子で付き合うなら誰って言われたらヒキタニ君を選ぶくらいには」

沙希「…………こいつが人に認めてもらえるのはあたしも嬉しいけど、あげないよ」

姫菜「わかってるって。むしろ離しちゃ駄目だからね。ヒキタニ君とサキサキならずっとやっていけると思ってるから…………それじゃお邪魔しました」

沙希「ん、またあとでね」
488 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/13(土) 01:40:40.12
乙です
優しいサキサキ最高です!
489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/13(土) 07:46:01.23
八幡「はあ…………結局やられっぱなしの昼休みだったな」

八幡「……………………本物、か」

八幡(海老名さんには悪いことをしたかな)

八幡(本物じゃないんだよ俺達は)

八幡(そりゃ俺だって…………)

八幡(はあ…………)
490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/13(土) 07:46:51.59
 ~ 週末 ~

八幡「すげえ雨になったな」

八幡(窓の外を見て俺は思わず呟いた)

八幡(大粒が窓を叩き、少し耳障りだ。仕事行ってるうちの両親は大丈夫だろうか?)

八幡(そんなふうに思った途端、家の電話が鳴る。ナンバーディスプレイを見ると親父からだ)

八幡(出ると両親とも今日は帰れそうにないとの連絡だった。この豪雨で交通機関が色々麻痺してるらしい)

八幡(小町は朝から友達の家に行っていてそのまま泊まってくるらしい。勉強会という名目だったが、カマクラを連れて行くのはどうなんだ?)

八幡(まあ最近受験勉強頑張っていたし、たまには息抜きもいいか。カマクラを相手の子の家に連れ込むのも初めてじゃないようだしな)

八幡(今夜一晩は完全に俺一人か。とりあえずやることもないしちょっと寝ますかね)
491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/13(土) 07:47:45.44
八幡「ふぁ……ちょっと寝過ぎたかな?」

八幡(時計を確認すると夕飯の時間はとっくに過ぎていた。まあ今日はそんなにエネルギーを使ってないので空腹感はあまりないのだが)

八幡(ふと傍らを見ると、俺のスマホに不在着信の通知が何件か表示されていた)

八幡「川崎?」

八幡(何分かおきにかかってきていたそれは全て川崎からによるものだった。何かあったのか?)

八幡(訝しがりながらも俺は川崎に電話をかけた)

八幡(2コールもかからず相手が出る)

八幡「おう、どうした?」

大志『お兄さんすか!? 俺です大志です!』

八幡「なんでお前が川崎の携帯に出てんだ? あと俺をお兄さんと呼ぶな」

大志『それどころじゃないっす! 姉ちゃんが家出しちゃったんすよ!』

八幡「…………あん?」
496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/13(土) 13:07:05.18
八幡(……家出?)

大志『この雨の中どこ行ったんだか……もし事故とかにあったら!』

八幡「落ち着け」

大志『どっかで具合悪くなって倒れてたりとか、ああ!』

八幡「大志、落ち着け!」

大志『っ…………!』

八幡「まず鼻で大きく息を吸え。んで口から大きく息を吐き出すんだ。それを二回繰り返せ」

大志『すーっ、はーっ、すーっ、はーっ』

八幡「よし、順序立てて説明しろ」

大志『は、はい。俺はちょっとした買い物があってコンビニに行ってたんす。んで帰ったら居間で親と姉ちゃんが何か言い合いをしてて。俺が様子見に行くと姉ちゃんが居間から飛び出してきて』

八幡「川崎が親と言い争い? 珍しいな」

大志『はい。でも親に聞いても原因は教えてくれなかったっす。んで部屋に閉じこもっているんだろうと思ってしばらく放っておいたんすけど……夕飯だから呼びに行ったら部屋にはいなくて、家の中を探したら姉ちゃんの靴がなくなってたんです。鍵も開いてたから外に行ったのは間違いないっす』

八幡「携帯も持たずに、か」

大志『さらに財布も置きっぱなしでした。多分俺とすれ違った時にそのまま飛び出して行ったんじゃないかと』
497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/13(土) 13:07:55.22
八幡「親御さんはどうしてる?」

大志『何もしてないっす。いや、どうしたらいいかわかんなくておろおろしてるだけで…………警察に連絡するのも何だかって感じで。お兄さんとこに行ったりはしてないんすよね?』

八幡「ああ、来てない。ちょっと確認してほしいんだが、川崎は傘を持って出たのか?」

大志『少し待ってください…………全部、あるっすね……姉ちゃん、この雨の中傘も持たずに出てったのか!?』

八幡「どこに行ったか心当たりはあるか?」

大志『情けない話ですがないっす。唯一思い浮かんだのがお兄さんとこなんで姉ちゃんの携帯借りて電話したんすが』

八幡「そうか」

八幡(焦るな、落ち着け八幡、闇雲に探したって見つからない)

八幡(川崎の思考をトレースしろ。俺なら出来る。仮初めとはいえ川崎の恋人として付き合い、ここしばらく一緒にいたんだ)

八幡(……………………)

大志『お兄さん?』

八幡「大志、ちょっと俺は川崎を探しに行ってくる。一時間後くらいにまたその携帯にかけ直すから」

大志『どこ行ったかわかるんすか!?』

八幡「どうだろうな……この天気じゃ皆で探し回るわけにもいかないからお前は家で待ってろ。ひょっこり帰ってくるかもしれんからな」

大志『で、でも』

八幡「いいから。また後でな」

八幡(俺は電話を打ち切り、出掛ける準備を始める)
498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/13(土) 13:08:26.97
八幡(川崎にとって最も大きい心の拠り所は家族だ)

八幡(だけど今回はその家族と揉めた。だったらどこに行く?)

八幡(自意識過剰かもしれないが、きっと俺を頼ろうと考えてくれはしただろう。しかし俺に迷惑をかけられないという思考も働いたはずだ)

八幡「これでよし、と」

八幡(すれ違いになった時のことを考えて、インターホンの脇に玄関で待っておくよう貼り紙をしておく)

八幡「よし、行くか」

八幡(俺は傘を差して豪雨の中を歩き出す)

八幡(川崎は行動範囲がそれほど広くない)

八幡(基本ぼっちだし、家のことがある分俺より狭いかもしれない)

八幡(まず学校や予備校はない。今日はそもそもやってないから入ることが出来ない)

八幡(だからといってスーパーや商店街など論外だ。むしろ一人になりたいと思ってる時に出てくる選択肢じゃない)

八幡(あいつが知ってて人気がない場所、俺の事を少しでも思い浮かべてくれたなら、きっとあそこにいる)

八幡(しかしこの予想は外れて欲しい。あんなところで傘も持たずにいるなんて身体をおかしくするぞ)
499 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/13(土) 13:10:05.84
八幡(普段自転車で行くような距離だ。結構な時間をかけて歩き、到着した)

八幡(学校の近く、いつも川崎を迎えに行って降ろしてる公園)

八幡(申し訳程度の屋根は全く意味をなさず、ベンチはずぶ濡れになっている)

八幡(そしてそのベンチに川崎はいた)

八幡(膝を抱えるようにして顔を伏せ、女子にしては長身な身体を小さく縮こまらせて、消えてしまいそうだった)

八幡「川崎っ!」

八幡(今にも壊れるんじゃないかといった弱々しい様子に、俺は傘を投げ出して矢も盾もたまらず川崎に駆け寄り、強くその身体を抱き締めた)

八幡(冷たい、なんて冷たい。こんなに冷え切って、どれだけここで雨に打たれていたのだろう)

沙希「比企……谷……?」

八幡「何やってんだ、何やってんだよこんなとこで……」

沙希「ごめん……」

八幡「仕方ないやつだな全く……さ、送って行くから帰ろうぜ」

沙希「…………いや」

八幡「川崎?」

沙希「帰りたくない……帰りたくないよ……」

八幡「んなこと言ったってお前……」

沙希「いや…………」フラッ

八幡「! おい、川崎!? しっかりしろ!」
505 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/13(土) 22:49:16.42
八幡「つ…………疲れた」

八幡(もういっぱいいっぱいだ。川崎をおんぶしてウチまで帰ってきて)

八幡(色々後始末をしてようやくベッドに寝かせられた)

八幡(肉体的にも精神的にも限界だ)

八幡(リビングに下りてきて崩れるようにソファーに座り込む)

八幡「でも、あとひとつやんなきゃな」

八幡(俺はスマホを取り出して発信履歴から再び川崎の携帯にコールする)

大志『もしもし! お兄さんすか!?』

八幡「ああ、俺だ」

大志『姉ちゃんは! 姉ちゃんは見つかったんすか!?』

八幡「落ち着け、大丈夫だ。今ウチにいるから」

大志『そ、そうっすか、良かった……』

八幡「あーそれでだな……ちょっと親御さんと話がしたいんだが」

大志『え? あ、わかりました、すぐ変わります』

川崎母『もしもし、お電話変わりました。沙希の母です』

八幡「先日はどうも。比企谷です」

川崎母『あの、沙希が見つかったと聞いたのですが』

八幡「はい、今ウチにいます。それでちょっとその事でお話が……」

川崎母『何でしょうか?』

八幡「その、本当はそちらの家に送り届けようとしたのですが、沙希さんはどうしても嫌だと言い張りまして」
506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/13(土) 22:49:56.89
川崎母『え…………』

八幡「やむなくウチに連れてきたのですが、年頃の娘がこうなのはあまり親御さんにとっていい気がしないかと思いまして」

川崎母『…………その、沙希は今近くにいるのかしら?』

八幡「いえ、疲れたのか妹のベッドで寝ています。少し濡れてましたのであったかくさせてますが」

八幡(本当は俺のベッドだが、こう言っておいた方がいいだろう)

川崎母『そうですか…………あの、比企谷君』

八幡「はい?」

川崎母『大変申し訳ないのですが少しだけ沙希を預かっておいてもらえないでしょうか?』

八幡「え?」

川崎母『お恥ずかしながら私どもと沙希が少し言い争いをしてしまいまして。あの子にはちょっと考えてほしいんです』

八幡「…………」

川崎母『多分今のあの子にはあなたがそばにいてくれるほうがいいと思います。大変身勝手なお願いとは承知しているのですが……』

八幡「その……いいんですか? 年頃の娘さんが男のいる家に」

川崎母『あなたなら平気です。こう見えても人を見る目はあるつもりですし、何より沙希が選んだ男の子なら』

八幡「…………」

川崎母『その、どうでしょうか?』
507 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/13(土) 22:50:26.20
八幡「…………まあこの雨だと送り迎えもままなりませんし、わかりました。責任持ってお預かりします」

川崎母『本当にすみません、御礼は後日必ず致しますので』

八幡「いえ、それより弟さん達には安心するようにお伝えください。きっと皆不安がってると思いますので」

川崎母『はい、どうか沙希をよろしくお願いします』

八幡(最後に家の電話番号を聞き、こちらの連絡先を教えて通話を終えた)

八幡(なんだろう、川崎家からの俺に対する信頼がハンパない気がする。俺そこまでのことしてないよな?)

八幡(…………とりあえずなんか軽いもん作っとくか。川崎は夕飯食べてないみたいだし)

八幡(さっきまでの様子だと風邪とかは引いてないようだからな。油断は禁物だが一応は良かった)
508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/13(土) 22:50:59.68
八幡(さて、まだ起きてないかな)ガチャ

沙希「…………」スースー

八幡(まだ寝てるか……ん、手が布団からはみ出てんな)ヒョイ

沙希「…………」スースー、ギュツ

八幡(…………)

八幡(布団の中に手を入れてあげようとしたら握られて離してくれなくなったでござる)

八幡(まあいいか)
526 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/14(日) 23:40:22.53
沙希(…………ん)

沙希(あれ、あたし……どうしたんだっけ?)

沙希(…………そうだ)

沙希(父さん母さんとケンカして、雨の中家を飛び出して)

沙希(いつの間にかあの公園にいてベンチでうずくまってたんだっけ)

沙希(そんで疲れて寒くて寝ちゃいそうになった時に比企谷が来てくれて……そうだ、比企谷は!?)

沙希(あ、ベッドに上半身預けて寝てる…………あたしと手を繋いだまんま)

沙希(ずっと、そばにいてくれてたのかな)

沙希(見覚えないけどここ多分比企谷の部屋だよね。置いてある本とか服とかあいつのっぽいし)

沙希(こんな形で比企谷の部屋にお邪魔することになるなんて)

沙希(…………結局比企谷に迷惑かけちゃったな)

沙希(でも)

沙希(ありがとう、比企谷)

沙希(………………)

沙希(………………)

沙希(あたし今比企谷の部屋で、比企谷のベッドに寝てるんだよね…………)

沙希(やば…………)
527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/14(日) 23:40:52.95
八幡「う…………」

八幡(あ、やべ。いつの間にか眠ってた)

八幡(そうだ川崎は?)

沙希「…………」

八幡「…………」

八幡(ばっちり目が合いました。起き抜けだったから一瞬言葉が出てこなかった)

八幡「…………よう、目が覚めてたか。体調はどうだ?」

沙希「うん、何ともないかな…………比企谷、その」

八幡「ああ、言いたいことも聞きたいこともあるだろうけどその前にちょっといいか?」

沙希「え、何?」

八幡(俺は繋いでいた手を離し、その場で手をついて頭を下げる。いわゆる土下座の体勢だ)

沙希「ちょ、ちょっと、何してんの!?」

八幡「その、お前に謝らなければいけないことがある」

沙希「え?」

八幡「実は、ここ俺んちで、今ウチには俺しかいなくて」

沙希「うん」

八幡「で、その、お前ずぶ濡れだったから、つまり……」

八幡(そこまで言うと川崎はかけられていた布団を持ち上げて自分の格好を確認した。今川崎は素肌に俺のジャージ上下を着ている状態だ)

沙希「あたしの服をあんたが脱がしたってこと?」

八幡「それだけじゃなくて…………タオルで拭いたりもしたから……その」

沙希「うん」
528 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/14(日) 23:42:23.56
八幡「なるべく見ないようにはしたが…………やっぱり、拭く時はどうしてもタオル越しとはいえお前の身体に触っちまったんだ! すまん!」

沙希「ええー……」

八幡「怒るのも気持ち悪いってのもわかる。でもな」

沙希「違うよ、あたしは呆れてんの」

八幡「え?」

沙希「比企谷はさ、あたしの体調とかを心配してそうしてくれたんでしょ? だったら感謝はしても怒ることなんてないよ」

八幡「で、でも、寝てる間に何かしたかもしんねーぞ?」

沙希「してないよ、だってほら」バサ

八幡「え?」

沙希「ジャージ、後ろ前に履かせてるじゃない。わざわざ見ないようにしてくれて間違えたようなやつがそんなことしないでしょ」

八幡「あ…………」

沙希「ま、別に触られるくらい全然構わないけどね。比企谷なら」

八幡「な、何言ってんだよ」

沙希「ふふ」

八幡「あんまからかうなよ……それより腹は減ってるか? 簡単なもの作ってるけど」

沙希「今はいらないかな…………ねえ比企谷、本当にごめんね。あたし、あんたに迷惑ばかりかけてる」
529 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/14(日) 23:43:55.45
八幡「そうだな」

沙希「うん……」

八幡「だからもう気を使うな」

沙希「えっ」

八幡「俺はな、頼ってもらえないことの方が嫌だし迷惑なんだよ。今回の事だって家族間の事だから俺に出来ることなんてたかが知れてる。でもそばにいてやるくらいのことはするからさ」

八幡(今ならわかる。以前の雪ノ下や由比ヶ浜の気持ちが)

八幡(近くにいるのに頼ってもらえない辛さが。何もしてやれない歯がゆさが)

八幡(いずれこの事はきちんと謝りにいこう)

沙希「うん……家を飛び出した時あんたの事もちらっと思い浮かべたんだけど…………やっぱり悪いなって思っちゃって」

八幡「遠慮なんてするなよ。偽物とはいえ恋人なんだから、さ」

沙希「……………………うん」

八幡「よし。今服は洗濯して乾かしてる最中だ。この雨だし親御さんには連絡してあるから今夜は泊まっていけ」

沙希「え?」

八幡「何か必要な物あったら適当に用意するから遠慮なく言ってくれ。ただしあまり俺の部屋から出るなよ? 猫アレルギー出たら大変だからな」

沙希「あ、うん……じゃなくて、ウチの親に連絡したの!?」

八幡「そりゃそうだろ、年頃の娘なんだぞお前は」
530 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/14(日) 23:44:56.57
沙希「その……親は何て言ってた?」

八幡「内容は知らんけど、一回冷静になって考えてみてくれってさ。んでウチに泊まるのを了承してた」

沙希「そう……内容は聞かないの? 聞いてこないけど」

八幡「あんま立ち入っていいものかどうかわかんねえからな。川崎が話したきゃ聞くが」

沙希「…………ううん、いい。やっぱりあたしが自分で考えなきゃいけないことだから」

八幡「そっか、まあ俺に出来ることがあったら遠慮なく言えよな」

沙希「じゃあ…………一つお願いしていいかな?」

八幡「何だ?」

沙希「なんか疲れちゃってさ、もう少し寝たいんだけど」

八幡「ん、おう、わかった。俺はリビングにいるからゆっくりしとけ」

沙希「ううん、そうじゃなくて」

八幡「ん?」

沙希「一緒に、寝てくれない?」
531 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/14(日) 23:47:43.16
とりあえずここまで
次回は多分少しエロいので名前欄の「エロ注意」をNGによろ
まったく無くしてもいいけど男女二人でいて何もないのは不自然だと思ったので、すまんが書かせていただく
534 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/14(日) 23:51:54.53
確かに男女二人きりのお泊りで何もないのは逆に不健全だな
537 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/15(月) 02:22:30.36
乙乙
これはまごうことなき本物の関係。
540 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/15(月) 08:29:56.97
少しエロいってどこまでなんだろうな………
次回スレ:

八幡「なんだ、かわ……川越?」沙希「川崎なんだけど、ぶつよ?」3



関連スレ:

シリーズ一覧及び・この書き手SSまとめ

(川崎沙希好きの書き手です)

関連記事
タグ:

コメントの投稿



お知らせ
サイトを見やすいように改造しました

改造したところ:
ページ転移に数字送りを実装
多少の軽量化

時折修正していきますので、今後ともよろしくお願いします

旧ブログはこちら  旧ブログ

スポンサーリンク
最新記事
カテゴリ
人気記事
RSSリンクの表示
リンク