FC2ブログ

八幡「やはり俺の世にも奇妙な物語は間違っている」 【前編】

1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/17(日) 23:22:21.01

キーンコーンカーンコーン

いつも通り学校が終わり、義務を終えた生徒達はそれぞれ帰り支度を始めたり、部活動へと向かったりする。

八幡「さて、部室に向かうとするか」

八幡「ん……あれは……」

リア充女「ちょっと○○く~ん。こんなとこでくっつかないでよ~」

リア充男「いいだろ~? どうせ誰も見てないんだし~」

リア充女「でも~」

ちょっと? 俺ここにいるんですけど? ステルスヒッキー効果高すぎだろ。

八幡「けっ……」

八幡「リア充、爆発しろ」

リア充男「あれ? なんか踏んだような……」

リア充女「カチカチ言うんだけど~?」

ドカーンッッ!!!

八幡「!?!?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1408285329


注目記事




2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/17(日) 23:24:13.71
あ…ありのまま今、起こった事を話すぜ!

俺は今目の前のリア充に対して爆発しろと思った!

そしたら爆発した!

な…何を言っているのかわからねーと思うが 

未来予知だとか超能力だとか

そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

……おっと、現実逃避をしていた。

何が起こったかを整理しよう。

部室へ向かう途中、イチャイチャしているリア充を見つけた。

俺はそいつらに対して爆発しろと、呟いた。

爆発した。

なんだこれ、わけがわからん
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/17(日) 23:25:21.47
八幡「こういう時はどうすんだっけ……!? 110番? 119?」アタフタ

ポチッ

八幡「ん、今変な音が……」

チッチッチッチッ……ゴビョウマエ

八幡「」

ドカーンッッ!!!
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/17(日) 23:29:23.18
テッテッテレレーテレレーテレレー

テッテッテレレーテーンテレーン

タモリ「人を呪わば穴二つ、という言葉があります」

タモリ「他人への呪いは必ず自分に返ってくるという意味で有名ですが」

タモリ「誰かへの呪いの言葉が飛び回る現代は、呪いが呪いを生むループに陥っているのかもしれません」

タモリ「おや、ここにいくつか穴がありますねぇ……」

タモリ「今宵、奇妙な世界に迷い込む少年は、何の呪いが返ってきたのでしょうか……?」

テレレッテッテレレーテッテッ

テレテッテッテッテッテレレレレーレー

テッテッテレレーテレレーテレレ

テーンテレレレレレン
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/17(日) 23:32:33.84
現実でファンタスティックな事は起こらない。

異次元の世界から美少女がやって来て世界を救って欲しいと言われる事なんてないし

偶然作り出してしまったタイムマシンで、タイムリープを繰り返すなんて事もない。

突然特集能力に目覚めたりはしないし

名前を書けば人が死ぬノートは落ちて来ない

俺はそんなどこまでも現実的な世界に生きているが、それを嘆いちゃいない。

むしろ大歓迎。

この平穏なボッチ生活こそが最高なのだ。

万一、何か漫画で起きるような大事件があったって、俺はどうせ名前すら貰えないモブキャラあたりだろう。

いや、そもそも登場するのかどうかすら怪しい……やだ、俺の存在感薄すぎ……!
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/17(日) 23:34:27.70
雪乃「そろそろ時間ね」

八幡「おう、じゃあ俺は帰るな」

雪乃「ええ、私は鍵を平塚先生に返しに行ってくるわ」

結衣「ゆきのん! 私は下駄箱で待ってるね!」

雪乃「えっ、由比ヶ浜さん、別に先に帰っててもいいのよ?」

結衣「いいの! 今日はゆきのんと一緒に帰りたいんだー!」

いつも通り仲の良いことで。お邪魔虫はそそくさ退散するとしますか。

八幡「じゃあな」

結衣「うん、ヒッキーまた明日ね!」

八幡「おう」

ガララーピシャッ
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/17(日) 23:35:19.52
八幡「さてと」コツコツ

…マーン

なんか聞こえたような……いや気のせいだな。

…チマーン

うん、気のせい。幻聴だ。

ハチマーン

幻聴……だと思いたかった。

「はぁぁちぃぃぃまあああああああああああああんんん!!!」

八幡「うっせーよ、材木座」

材木座「ようやく我に気づいたか! 八幡!!」

八幡「気づきたくなかったけどな。で、なに?」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/17(日) 23:35:21.84
ワロタwwww
そしてトラウマBGMが脳内再生される…

期待
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/17(日) 23:37:39.73
材木座「ふふふ……ついに我の新作の…」

八幡「あっそいや用事あるんだ、帰らねーと」

材木座「待って! せめて最後まで聞いてっ!」

八幡「お前キャラブレすぎだろ」

材木座「ゴラムゴラム。これこそが我の真の姿……剣豪将軍!! 材木座義輝っ!!!」

八幡「あーそういうのいいから」

今一瞬後ろから光が見えたが気のせいだなきっと。

材木座「八幡! 今回は設定集などではない! ちゃんと本編を書いてきたのだ!!」

八幡「わーったよ。読めばいいんだろ、読めば」

材木座「うむ! 早く感想を聞かせるがいいっ!!」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/17(日) 23:42:05.37
今回の材木座の小説は今までのようなファンタジーものではなく、作風を変えてホラーだった。

しかもなかなか怖い。本当にこいつが書いたのか? コピペかなんかじゃねーの? オボカタなの? STAP細胞はあります。

八幡「いろいろつっこみたいところはあるが……」

材木座「うむ、何でも言うがいい」

八幡「……何で主人公俺なの?」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/17(日) 23:47:19.02
材木座「たまにはリアルなのもいいと思ってな。どうだ! 八幡!」

八幡「リアルなのとリアルの人物を使うのは違うって事をお前には教えなきゃいけないようだな」

材木座「まあそこはお遊びだ。八幡に見せるために書いたからな! あとで直しておくとも」

八幡「あっそ。まあそこ以外はなかなかいいんじゃないか?」

材木座「ほっ本当か!? 八幡!」

八幡「で、あれなんのパクり?」

材木座「ぐほぉっ!!」

空には綺麗な赤いアーチがかかりました。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/17(日) 23:55:29.69
八幡「あいつなんだかんだ書く毎に成長してるよな……」

初めこそ誤字脱字があったり、文法の基礎から崩壊していたが、最近はそれを反省してかまともな文章を書けるようになっている。

八幡「俺はちょくちょく読んでたからあれだけど、雪ノ下が今の材木座の読んだら驚くだろうな。あいつは最初のあれ以降読んでないし」

八幡「本当、今日のは俺も驚いた。最後のページなんか鳥肌たったし」

本人に言うとめんどくさいから言わないが。今回もあくまで批評で、褒めるのはなるだけ控えた。あいつも欲しいのはそういう意見のはずだし、褒めすぎるのもよくない。

所謂飴と鞭ってやつだ。……鞭が多すぎな気もするが。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 00:07:02.18
八幡「おっそういや教室に教科書忘れてたっけ。明日小テストあるから取りに行かねーと」

放課後の教室はリア充のたまり場だ。彼らしかいない時にその中に入るのには勇気がいる。ドアとか閉まってる時だと最悪。開ける時に全員一斉にこっち見るのは本当やめて欲しい。ボッチは視線に敏感なの。

八幡「なんだ、誰もいないのか」

陽が落ちかけているこの時間帯にも関わらず教室から光は漏れていない。つまり中には誰もいないという事だろう。

八幡「助かった……」

目的のブツを手に入れ、すぐに教室を出る。なんか泥棒みたいでやだね!
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 00:15:21.82
教室を出た瞬間、俺は強い違和感を感じた。

八幡「静かすぎ……じゃないか……?」

この階には教室が七つある。そのどこからも電気の光が漏れていないのだ。

俺はよく部活のあとにこの教室の前を通る。そしていつもいくつかの教室の光がついているのだ。なのに、どこも光っていない。

どこからも声が聞こえない。

他の階から少しくらい声が聞こえてもいいはずなのに、それもない。

八幡「!」

俺は校庭が見える窓に走った。そこには……

八幡「なんで……誰もいないんだよ……!?」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 00:22:33.73
この時間はまだ外の運動部は活動をしているはずだ。なのに誰もいない。

八幡「どうなってんだ……?」

しかし気になっていても仕方がない。早く家に帰ってマイプリティーシスターの小町に会いたいしな。

階段を降りて、下駄箱へ向かう。

八幡「!?」

しかし、下駄箱へ向かう道が、机で出来たバリケードのようなもので通れなくなっていた。

八幡「なんだよ……これ……!」

しかもいくつも重なって出来ているせいで、ちょっとやそっとじゃ動きそうもない。少なくとも一人では不可能だ。

八幡「職員室……! 平塚先生に聞けば何かわか……」

「比企谷くん……」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 00:31:54.85
八幡「!?」

雪乃「どうしたのかしら……? まるで幽霊でも見ているかのようよ……?」

八幡「あっああ……雪ノ下か……。なんだ、驚かせやがって……」

雪乃「驚き方が尋常じゃなかったわよ、ビビり谷くん……」

八幡「うっせーな、てかこんなの見ていたら驚くに決まって……」

……おかしい。なぜ雪ノ下が今ここにいる?

俺は材木座の小説を読んでいたせいで、かなりの時間を廊下で過ごしていた。

ならば今は雪ノ下は既に由比ヶ浜と帰っているはず……。

八幡「おい、雪ノ下。由比ヶ浜は? 待たせてるんじゃないのか?」

雪乃「由比ヶ浜さん……? 何の事かしら……?」

八幡「はっ? さっき一緒に帰るって言ってたろ?」

雪乃「そんな事……言ってたかしら……? いえ、言ってないわ……」

八幡「おいおいからかうのもいい加減にしろよ」

雪乃「ふふふ……比企谷くんはおかしいわね……。その頭の中――」



雪乃「ミテミタイ」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 00:37:54.47
雪ノ下はそう言うと、後ろに隠していた右手を俺に見せる。

その手には、包丁が握られていた。

八幡「雪ノ下……何を……?」

雪乃「わからないの? 本当にあなたは低脳ね。その頭の中に脳みそ入っているのかしら?」

雪乃「……それを確認するのよ」

雪ノ下はニヤァっと笑うと、包丁を向けて俺に突進し始めた。

八幡「くっ……!」

小学校のドッジボールで鍛えた反射能力で間一髪躱す。

雪乃「どうして、避けるの……?」

雪ノ下のその目は、イカれていた。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 00:43:09.82
雪乃「ねぇ、どうして……どうして……」

八幡「う、うわあああああああ!!!」

俺は恐怖で逃げ出した。あいつは雪ノ下じゃない。ついさっきまで部室で話していたいつもの雪ノ下じゃない!

八幡「とりあえず職員室に……!」

しかし職員室へ行くための道も、さっきと同じように机のバリケードで塞がれている。

八幡「くそっ! マジかよ!」

ここで何かが思い当たる。

俺は似たようなものを見なかったか?
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 00:46:32.55
八幡「もしも……」

もしもここで生徒会室へ向かう道以外全て塞がれていたなら、俺の仮説は正しいという事になる。

八幡「やっぱりか……」

予想通り、他の道は全て塞がれている。

そうだ……これは……。

八幡「材木座の小説と、全く同じじゃないか……」
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 00:51:05.07
少し前の話

八幡「材木座、俺が出てるのは置いといて、なんで雪ノ下たちまで出てくるんだ?」

材木座「その方が怖いであろう! 気を許せる相手が狂うなど、恐怖であろうが!!」

八幡「まあそこは認めるが……。俺は良くても、あいつらには風評被害以外の何物でもないぞ」

材木座「だからあやつらには見せぬ!!」

八幡「失礼だという自覚はあるのか」
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 01:03:08.52
八幡「あり得ねえ……こんなのあり得ねえぞ……」

結衣「ヒッキー……」

すると、生徒会室の中から、カッターナイフを持った由比ヶ浜が現れた。

八幡「嘘だろ……ここまで同じなのかよぉっ!!」

ひたすら走って逃げる。同じだ、全く同じだ。

雪ノ下の次に由比ヶ浜が出てくる。持っている凶器はカッターナイフ……同じじゃないか!

八幡「思い出せ……八幡……次は、何だった……?」

確か主人公は職員室に逃げ込もうとして、そこで平塚先生が出てくるんだ。凶器はなし。だが、鍛え抜かれたその肉体は下手な凶器より強力って設定だったな。材木座よ。なんでここだけ微妙にギャグなんだ?

八幡「バリケードが……なくなってる……」

階段まで戻るとさっきまであったはずの職員室への道にあったバリケードが消えていた。

八幡「机が一つもない……」

あんなにあった机をこの短時間で運び出すのは実質不可能だ。ボブサップが五人くらいいる。
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 01:08:00.81
平塚「比企谷ぁ……」

職員室の扉が開き、平塚先生が出てくる。今までの二人と同じように、その目はおかしい。

八幡「平塚先生……」

ギュイイイイイイン

八幡「!?」

平塚「比企谷ぁ……いつもいつも私の事をバカにしやがって……」

八幡「えっいや、そういうわけじゃ……」

平塚「いけない生徒には……特別指導が必要だな……」ギュイイイイイイイインッッ!!

平塚先生は、なぜかチェーンソーを構えていた。
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 01:12:29.37
八幡「なんで……ここまで全部同じだったのに……」

八幡「! まさか……!」

俺はさっき材木座に平塚先生の凶器なしの部分を指摘した。

八幡「あいつ……書き替えやがった……!?」

平塚「ひぃぃぃぃきぃぃぃぃぃがぁぁぁぁぁやぁぁぁああああああああああ!!!」

八幡「ひぃっ!!!」

チェーンソーを振り回す平塚先生から俺は逃げる。何であの人あんな重いもの振り回せんの?
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 01:21:19.70
八幡「あの話のラストって確か……」

八幡「屋上で追い詰められて、落とされて死ぬんだっけ……」

八幡「多分このままだと俺も同じ運命辿るよな……」

普段から漫画とか読んどいてよかった。こういう事態にもすぐ対応できた。まさかこんな風に役に立つとは思わなかったが。

八幡「しかし平塚先生の行動は変わった。恐らく俺のアドバイスで書き替えたんだ」

八幡「なら、今からラストを変えてもらえば……?」

すぐに携帯電話を取り出し、発信履歴を確認。二番目に材木座の文字。日付があの文化祭の日であるが、気にしない。もちろん一番目は小町だ。
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 01:28:32.13
トゥルルルルルルルル

『我だ』

八幡「もしもし、材木座か? 俺の話を――」

『我は今電話に出れぬ。ピーという音の後に……』

八幡「ややこしいんだよちくしょう!!!」

思わず携帯電話を投げ出したくなる衝動を抑え付ける。今ここでこれが壊れてしまえば俺は確実に死ぬ。

あいつの事だ。きっとすぐに電話はかかってくる。

雪乃「比企谷くん……」

振り向くと包丁を振り上げた雪ノ下の姿があった。

八幡「そいや、平塚先生の次は雪ノ下だっけ!」

振り下ろされた包丁を避けると、包丁はそのまま廊下の床に当たって火花が散った。

……なんで包丁と廊下で火花が散るんですかね?
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 01:36:35.77
材木座が書き替えていなければあと残るのは屋上のみ。恐らくそれ以外の道はさっきと同じように通れないだろう。しかし雪ノ下が追ってくるからもう時間稼ぎもできない。

八幡「早くしろ……材木座……!」

ポケットに入れた携帯電話に祈る。早くそのバイブよ、鳴れ。

ブーーン

八幡「! 来たか!?」

『Sub:ユカリです☆良かったらお友達に』

八幡「ならねぇよ!!!」

何でこのタイミングで迷惑メールなんだよ!! いつも送られてこないのに、何でこういう時に限って来るんだよ! ボッチは基本メール来ないから普段はこういうのでも嬉しいんだぞ! 何で今なんだよ!!
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 01:40:34.25
雪乃「比企谷くん、そこにいるの……?」

くっ……つっこんだせいで見つかった!

結衣「ヒッキー……逃げちゃ……いやだよ……?」

ガハマさん……目が、怖いです……。

平塚「ひきがギュイイイイイイイインッ!!」

平塚先生、チェーンソーのせいで何言ってるのかわかりません。
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 01:47:38.80
八幡「早く……材木座……!」

俺は階段を一段飛ばしで駆け上る。後ろから三人も追って来る。その目はさっきよりもさらに狂っていた。

平塚先生、だからなんでチェーンソー持ってそのスピードで階段で走れるんですか? バーサーカーですか?

屋上への扉に思いっきり体当たりすると、壊れた鍵は吹っ飛んで扉は開いた。悪いな、女子たちよ。これじゃあ屋上の鍵直されて、入れなくなっちまうわ。

八幡「はぁっ……はぁっ……」

陽は既に沈んでいて、外は真っ暗だった。ぱっと見誰もいない。材木座の小説でも誰かいたりはしなかったはずだ。

とりあえず物陰に隠れる。広くないここではあまり意味がないが、今は一秒でも多く時間を稼がなければならない。
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 01:54:31.87
雪乃「みーつけた」

雪ノ下の包丁が脇腹を狙う。

八幡「!?」

反射的に避けたが、完全には避けきれずかすってしまった。血で白いシャツが赤く染まる。

八幡「っ……! いってぇ……っ!!」

よく大怪我しても漫画とかではピンピン動くシーンあるけど、あれが嘘だってようやくわかったわ。掠っただけでこの痛みだろ? もろに食らったら動けねぇよ。

結衣「ヒッキー……もう観念しなよ……」

いつの間にか三人に包囲されて、俺は崖っぷちに立っていた。あと一歩下がれば、落ちる。

ブーーンブーーン

八幡「!!!」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 02:02:31.01
八幡「材木座!!」

材木座『我だが、どうしたのだ? 時間を置いたおかげで、我の才能に気づいたか?』

八幡「いいから! 早くさっき書いたやつを消せ! 印刷したやつは破いて、PCとスマホにあるあの小説のデータを消せ!」

材木座『八幡? 何があったのだ? そんな藪からスティックに』

八幡「早くしろっ!!! 俺の命がかかってんだっ!!!」

材木座『わっわかった。消すから消すから』

八幡「ああ! 紙の方は最後の方から破いてくれ!」

材木座『了解!!』

八幡「ありがとな! 愛してるぜ材木座!」

材木座『おう、我もだ!』

八幡「うるせぇきめぇ!」

雪乃「何を茶番を」

ドンっと雪ノ下は俺の体を強く押す。痛みで力の出ない俺は重力に従い、そのまま落ちていく。

八幡「ああ、間に合わなかったか……」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 02:11:03.28
しかしここでまだ諦めるわけにはいかない。ここで諦めるような男だったら、俺は今、ボッチ道を極めていない。

諦めない心、それが今の俺を生んだのだ。

八幡「だから……俺は……最後まで……諦めねぇ……!」

屋上の端を片手で掴む。それから携帯電話をポケットにいれて、もう一方の手を使う。これで数秒は持つ。

結衣「ヒッキーしぶといね……」

由比ヶ浜はそう言うと、足で俺の手を踏みつけた。靴のザラザラが俺の手の皮膚を確実に傷つける。

八幡「くっああああああっ……!!!」

痛みが着実に俺の精神を削る。

どうして頑張っているのだろう? こんなに苦しいなら手を離せばいい。それだけでこの手の痛みからも脇腹の痛みからも解放される。

八幡「もう、いいよな……」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 02:12:32.79
がんばれ八幡
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 02:15:58.13
そう呟くと手から自然に力が抜けていった。あ、もう限界なんだ……。

八幡「小町、ごめん。兄ちゃん頑張ったけど、ダメだったわ……」

手が離れた瞬間、脳内にいろんな映像が流れ込んで来る。これが走馬灯ってやつか。

生まれた頃の俺。そして小町が生まれて、俺の暗黒歴史がよぎる。今思えばあの人生も悪くなかったのかもしれない。

戸塚の顔が思い浮かぶ。そう言えばずっと天使天使言ってたっけ……。戸塚が本物の天使なら、死ぬのも悪くないかもな……。
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 02:19:22.70
しかしその映像は急に途切れた。目の前には誰かの手。その手が俺には何よりも力強く見えた。

「比企谷っ! 大丈夫か!?」

「ヒッキー!? 何でこんな事に……?」

「由比ヶ浜さん、それは比企谷くんを引き上げてからにしましょう」

これは、幻か……?

いつもの声が聞こえる。

ここは、天国なのか……?
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 02:27:26.65
八幡「いやー、死ぬかと思ったわ」

平塚「驚いたぞ、比企谷。気づいたら目の前に落ちかけているお前がいたんだからな」

八幡「流石ですよ、先生は。そこから反応して俺を引き上げるなんて」

きっと材木座の処理が間に合ったのだ。もう三人ともさっきのような狂気を感じられない。ついでに言うと、凶器も消えていた。狂気が消えたからだろうか?

八幡「馬鹿力と言いますか……」

平塚「比企谷ぁ?」

八幡「何でもありません」

結衣「でもどうしてヒッキーそんなにボロボロなの? どうして落ちかけてたの?」

八幡「あーそりゃー俺もわからん。気づいたら落ちてたんだわ」

彼女たちにこの記憶はないようだ。なら、俺も話を合わせておこう。その方が彼女たちも傷つかず、俺も説明をせずに済む。

雪乃「本当に?」

八幡「ああ」

こうして俺は死なずに済んだのであった。
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 02:31:20.92
次の日 コケコッコー

八幡「材木座ぁ……!」

材木座「ひぃっ! はっ八幡! なぜ我を睨む!?」

八幡「お前のせいで俺は昨日死にかけたんだぞ」

材木座「はぁっ!? それってどういう」

八幡「お前の書いた小説の内容が現実でも起こったんだ」

材木座「八幡……お主も目覚めたか?」

八幡「うっせぇ! お前みたいな中二病じゃねぇよ!!」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 02:34:54.66
八幡「ったく……。マジだ。マジの事なんだ。証拠と言うならあれだが」

俺は昨日の傷跡を見せる。

八幡「昨日雪ノ下にやられた。お前の小説通りにな」

材木座「ふむぅ……俄かには信じられ難いが、しかし場所も我の書いたのと一致している……」

八幡「だからな、お前は少し……」

ブーーブーー

八幡「おっ電話だ。珍しいなって小町か」

材木座「む? むむっ!?」
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 02:39:55.17
小町『お兄ちゃん』

八幡「おー小町か。どうした?」

小町『あのね、お兄ちゃん、これまでいっぱい傷ついたよね』

八幡「傷ついた?」

小町『文化祭だったり、奉仕部の活動のせいでお兄ちゃんいっぱい心に傷、負ったよね』

八幡「バッカ、そんなの対したことねーよ」

材木座「は……八幡……」

八幡「うるせーな、今俺は小町と話してんだよ。で、何だよ、小町?」

小町『お兄ちゃんはいつだってそうやって平気なふりをするよね』
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 02:43:14.29
八幡「まどろっこしいな。何なんだよ?」

材木座「八幡……我、我……」

小町『だから私がお兄ちゃんを救ってあげる』

八幡「はっ? それってどういう」

小町『お兄ちゃん、上を見て』

八幡「おっおう」

上を見ると



目の前に小町の顔があった。
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 02:44:18.86
ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 02:49:38.64
どうして上に小町がいるのだろう?

俺の上にあるのは空だけ……いや、あれは屋上か。

そうか、小町は屋上から落ちてきたんだ。

これはどうやっても小町が俺に当たる。

そして頭と頭がぶつかって二人とも頭が砕けるんだ。

材木座……お前、このエンドはないd……
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 02:51:02.05
小町『お兄ちゃん、小町が一緒に死んであげる』
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 02:52:30.65
おしまいです。

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました!

実は世にも奇妙な物語のある話をちょっとパクってます(笑)
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 02:56:29.81

このシリーズらしい安定のオチ。そして材木座ェ…

面白かったです
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 02:56:54.12
>>56
え?
世にも奇妙って1セット5話ぐらいだよね?
ってことは1スレに最低5話は必要じゃね?




乙。続きはよ。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 02:57:50.33
おまけ


テッテッテレレーテレレーテレレー

テッテッテレレーテーンテレーン

タモリ「言霊、それは言葉に宿る力の事」

タモリ「よく、口にした事は本当になるといいますが」

タモリ「それは言霊の力なのかもしれません」

タモリ「今宵巻き込まれた少年の友人の力は」

タモリ「一体どれほどのものたったのでしょうかねぇ……?」

テレレッテッテレレーテッテッ

テレテッテッテッテッテレレレレーレー

テッテッテレレーテレレーテレレ

テーンテレレレレレン
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/18(月) 03:07:10.28
とりあえず一番書きたかった話は書けたので、今日はおしまい
またいつかここに二話を書きますので、その時にまた会いましょう

次回予告

ハヤハチ
79 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 00:03:35.36

では二話です


テッテッテレレーテレレーテレレー

テッテッテレレーテーンテレーン

タモリ「この世界で自分と全く同じ行動をとる人はいるのか?」

タモリ「そんな事を考えた事があると思います」

タモリ「例えば同じ瞬間に同じ曲を聞いたり」

タモリ「例えば同じ瞬間に同じものを食べたり」

タモリ「それを偶然という事もできますが」

タモリ「案外それが、奇妙な世界への入り口なのかもしれません」

テレレッテッテレレーテッテッ

テレテッテッテッテッテレレレレーレー

テッテッテレレーテレレーテレレ

テーンテレレレレレン
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/19(火) 00:05:26.75
キタ━━━(゚∀゚)━━ !!!!!
82 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 00:06:46.48
ありがとうございます!
更新されてるの見たら一文字でも書いてください
よろしくお願いします


八幡「そんな訳でテスト前である」

結衣「そうだねー、あっそうだ! これからみんなでどっかで勉強しようよ!」

八幡「断る。するメリットがない」

結衣「えー、いいじゃんー」

八幡「いいか、学生の本分は勉学だ。どうせ集まって勉強したって、雑談に走るのがオチだろ。そして俺は誰かと一緒に勉強したところで意味はない」

大体自分でわかるしな。わからないところもググればほぼ確実に解決する。グーグル先生本当素晴らしい。でも数学に関してだと大学以上の範囲を普通に出してくるグーグル先生恐ろしい。

八幡「だから俺は行かない」

結衣「ヒッキーのケチー」ブー

八幡「何とでも言え」
84 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 00:10:49.47
八幡「さて、うるさい奴も説得できたし……家に帰るとするか」

八幡「だが俺には勉強するのに必要なものがある……!」ゴゴゴ…

八幡「勉強のお供にどうぞ! 脳が疲れた時の糖分補給用飲料! その名も! MAXコーヒー!」

八幡「やっぱあれがないとなー」ヤッパコレダネー

八幡「さて、赤い自販赤い自販……」キョロキョロ

八幡「おっ見っけ……なんだこれ、マッ缶ねぇじゃねぇか。使えない自販だな」

八幡「仕方ない。他の探すか……」トボトボ
88 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 00:13:23.13
時同じ頃

戸部「隼人くん今日一緒にマックで勉強しねー?」

葉山「んー、今日はちょっと用事もあるし、パスするよ」

戸部「マジかー隼人くんダメかー」

三浦「戸部っち、隼人の邪魔するのはあーしが許さないからね?」

戸部「わかってるって!」

葉山「じゃあお先に」
90 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 00:14:13.13
葉山「やっぱり戸部に悪かったかな……」テクテク

葉山「用事なんて本当はないのに」

葉山「でも流石にそろそろちゃんと勉強始めないと、成績にも影響が出るし」

葉山「おっ、自動販売機だ。何か買って行こうかな」

葉山「いつもコーラだし、たまには違うのを買ってみるのもいいかもしれないな」

葉山「……とは言え迷うな」
93 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 00:20:15.46
八幡「おっ、この自販にはあるな。やはり千葉県民ならMAXコーヒーだろ」

葉山「運に任せるのも悪くないな」

八幡「この黄色いフォルム……最早芸術と呼んでも良い」

葉山「そうだ、目をつむって押してみよう」

八幡・葉山 ポチットナ

選ばれたのはMAXコーヒーでした
95 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 00:30:44.17
皆様の支援に感謝



パッキイイイイイイイイイン



八幡「何だ……今の……?」

八幡「……さっきと微妙に雰囲気がちが……ってえっ?」

八幡「ここ、どこ……?」



葉山「今、すごい光と眩暈が……って何だろう、体が重いな」

葉山「心なしか視界が淀んで見える」

葉山「あれ? おかしいな、自動販売機にヒキタニくんが写ってるような……」

一分後

八幡「俺の身体が葉山になってるよな、これ」

葉山「なんで俺がヒキタニくんになってるんだ?」

八幡・葉山「「まさか……」」

八幡・葉山「「入れ替わったっっ!?!?」」
97 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 00:35:52.52
八幡 in 葉山's body(以下八幡)

葉山 in 八幡's body(以下葉山)

八幡「どうなってんだよこれ……。なんでMAXコーヒー買おうとしたら、身体が葉山になってんの? 何これドッキリ?」

八幡「いや、ドッキリでも無理だな、これは」

八幡「しかしやばいな、これ早く何とかしないと……」

八幡「おっポケットに携帯入ってるな、悪いが使わせてもらうぜ」

トゥルルルルル

ゴーインゴーインアロンウェーイオレノーミーチーヲーイクーゼー

葉山「!」

葉山「俺の番号……!」
100 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 00:44:36.84
八幡「……葉山か?」

葉山「やっぱりヒキタニくんか」

八幡「どうなってんだよ、これ」

葉山「正直俺にもさっぱりだよ」

八幡「……お前もMAXコーヒー好きなのか?」

葉山「えっ何の……あっそっか。さっきの適当に選んだときの……」

八幡「適当に選んだだと!?」

葉山「!?!?」
103 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 00:49:37.75
八幡「……なんて怒るところじゃないな。今はそれどころじゃない」コブシプルプル

葉山「…………(ちょっと焦った。ヒキタニくんあんな声出せるんだ)」

葉山(あっ今は俺の身体だからか)

八幡「で、今葉山が買ったのがMAXコーヒー……、俺が買おうとしたのもMAXコーヒー……」

八幡「まさかMAXコーヒーで俺ら入れ替わったのか!?」

葉山「そんな……あり得ないよ……」

八幡「でもそれしか考えられねーだろ……」
105 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 00:54:40.23
八幡(MAXコーヒーで入れ替わる……。そんなの現実的に考えればあり得ない)

八幡(でもそれ以外に原因は考えられない)

八幡(MAXコーヒーすごすぎだろ……甘いだけじゃなかったのか……)

葉山「これから、どうする?」

八幡「この状態で誰かに接触したくはないな」

葉山「でも今日はテスト前だし、もう校内にあまり人はいないと思う。学校で集合っていうのはどうだい?」

八幡「…………」
107 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 00:58:24.67
八幡(由比ヶ浜と雪ノ下はどこかで、少なくとも校外で一緒に勉強しているはず)

八幡(戸塚も部活がないからいる理由がない)

八幡(他には……平塚先生にだけ気をつければ……)

八幡(ザイモクザ? 誰それ?)

八幡「そうだな、そうしよう」

葉山「よし、じゃあクラスの教室の前に集合にしよう」

八幡「わかった」
109 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 01:10:00.15
八幡「さてと、着いたな」

八幡「本当に人の気配がしねーな。学校開いてんの?」

三浦「あれー? 隼人じゃん」

八幡「!?」

三浦「用事あるんじゃなかったの?」

八幡「み、三浦……」

三浦「はぁ? 隼人あーしのことそんな風に呼んでたっけ?」

八幡(やべぇっ! しまった! 焦ってミスった!)

八幡「ゆ……優美子……」

三浦「そ、そんな呼び方すんなし!///」

八幡(か、かわいい……)
111 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 01:15:50.10
八幡「い、いや……ちょっと忘れ物しちまっ……じゃなくて、したから取りに戻ってたんだ」

三浦「ああ、そーなの」

八幡「おう、じゃあな」

三浦「隼人」

八幡「…………」

三浦「隼人!」

八幡「……あっ俺か」

三浦「無視すんなし……」

八幡「す、すまん……。で、なんだ?」

三浦「隼人の目、ヒキオみたいに少し腐ってるけど、何かあったの?」

八幡「…………」

八幡(これ身体的特徴じゃなかったのか……)
113 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 01:19:03.37
八幡「わ、わからん! と、とりあえず用事があるみたいだからまたな!」タッタッタッ

三浦「あっ……」



八幡「危なかった……バレてねぇよな……?」

八幡「バレてないと祈ろう……」

葉山「……なんか、変な気分だな。自分の姿が目の前にあると」

八幡「葉山か。やべ、本当に俺が目の前にいる。気持ち悪いな……」

葉山「……とりあえず状況を整理しよう」

カクカクシカジカ

八幡「……原因やっぱりMAXコーヒーか?」

葉山「ここまで来るとそうとしか思えないな」
115 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 01:22:59.59
今日は昨日より早めに落ちると思います
この話も終わらないかも……



海老名「あれ、隼人くんにヒキタニくん。こんな時間にこんなところで何してるの?」

八幡・葉山「「!?!?」」

八幡(しまったああああああああああああこの場で一番出くわしちゃいけないやつ出てきたあああああああああああ!!!)

葉山(ヒキタニくんすごい汗かいてるな……)

海老名「まさか! 秘密の会談!? 二人でコソコソ何をしてたの!? ねぇっ! 教えてっ!!」

葉山(そういえばこんなキャラだったっけ)
117 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 01:28:26.61
八幡「い、いえ、何でもないですよ、海老名さん……」

海老名「海老名……さん……?」

八幡(くそ! またやっちまった!)

八幡「じゃなくて、何でもないよ、……姫菜」プイッ

海老名「」ポクポクポク

海老名「/////」チーン

葉山「…………」
119 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 01:36:00.10
八幡(うおおおおおおお恥ずかし恥ずかし恥ずかしいいいいいいいい!!!)

八幡(リア充はこんなのいとも簡単にやってのけるのかあああああ!!!)

八幡(うわあああああああああああああああああああああっっ!!!)

八幡(……ふぅ、賢者タイムなう)

八幡「と、とりあえず! 何でもな……」

海老名「隼人くんが……デレた……隼人くんが……照れた……隼人くんが……」ユラーリユラーリ

葉山「」

八幡「」
121 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 01:42:04.98
八幡「葉山、場所を移そう。ここじゃもう無理だ」

葉山「えっ、でも姫菜は……」

八幡「大丈夫だ(多分)」

葉山(いや、そっちじゃなくて。姫菜の中での俺のイメージが大変な事になってるような……)

八幡「いいから行くぞ!」テヲギュッ

葉山「!?」

海老名「ハヤハチ(海老名から見て)!! キマシタワーーーーーーーーー!!!」ブォウワアアアアアアアアアア

八幡「うおおっ!? 鼻血でここら一体が真っ赤になってんぞ!?」

葉山「このままじゃ姫菜が出血多量で死ぬ!」ダッ

八幡「くっ……仕方ねぇ……!」ダッ
125 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 01:48:37.59
八幡「ふぅ……ヤバかったな……」

葉山「軽い貧血で済んだみたいだね」

八幡「あの出血量で、貧血程度って……海老名さん何者なんだ?」

葉山「よくやってるから、耐性がついたのかもね。ただ……」チラッ

葉山「まだ廊下は酷いけど……」

八幡「ん、どれどれ……げっ……何だこれ、ここで誰か殺されたのか?ってレベルだな……」

葉山「掃除しとかないと、固まったら落ちなくなる」

八幡「何でこんな事に……」
127 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 01:57:30.74
結局俺らはまたさっきの自販機に戻ってくることになった。

本当、さっきの移動は何だったんだよ……。

八幡「よし、かけるか」

トゥルルルルル

葉山『もしもし』

八幡「こちら比企谷。自販機の前に着いた」

葉山『そうか。俺もそろそろ着くよ……あっあれだ』

チャリン、チャリン

八幡「……押すぞ。携帯の電話だと時間差が生まれるから、さっき言ったとおりの時間ぴったりにな」

葉山『ああ』

カチッカチッポチットナ

選ばれたのはMAXコーヒーでした。
129 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 02:06:41.11
ガタッガタッドカンッ
マックスコーヒーダヨー

八幡「……何も起こらねぇな。体も戻ってない」

葉山『……あっ』

八幡「? 何だよ?」

葉山『今、君はさっき君がMAXコーヒーを買った場所に行った』

八幡「そうだな」

葉山『つまり、最初の状態と今の状態、身体が逆なんだ』

八幡「あっ……」


場所         A      B
最初      八幡in八幡body 葉山in葉山body
入れ替わり後  葉山in八幡body 八幡in葉山body
現在      八幡in葉山body 葉山in八幡body
131 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 02:13:52.75
俺らは今度は場所を交換した

しかし

ガタッガタッドカンッ
マックスコーヒーダヨー

八幡「結局戻らねーじゃねーか!!」

葉山『……すまない』

八幡「あ、いや……お前が謝るような事じゃない。こっちこそすまなかった」

葉山(ヒキタニくん……)ドキッ

ピーンッ

海老名「今っ何かを感じた!」ガバッ

三浦「ほら、姫菜。動かないの」
133 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 02:23:04.91
八幡「万策尽きたな……」

葉山「もうどうしようもないね……」

八幡「…………」ボー

葉山「…………」ボー

八幡「自然に戻るのを待つか」

葉山「……戻るのか?」

八幡「漫画とかではな」

葉山「そうか」

八幡「…………」ボー

葉山「…………」ボー
135 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 02:28:44.33
八幡「そういや、今週末テストだっけな」

葉山「そうだ……な!?」バッ

八幡「ん、どーした?」

葉山「ヒキタニくん。このままだったら、テストは誰が受けるんだ!?」

八幡「そりゃーお前の分を俺が受けて、俺の分をお前が受けるんだろ?」

葉山「そうだ、大問題だ!」

八幡「?」

葉山「ヒキタニくん……俺は、指定校推薦、狙ってるんだ」

八幡「そうか、頑張れよ」

葉山「だから! 一度でもテストで失敗すると、それを取るのは難しくなる!」

八幡「……おい、お前……まさか」
138 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 02:35:04.29
葉山「ヒキタニくん」ガッ

八幡「!?」ゾワゾワ

葉山「これからテストまで勉強会をしよう」

八幡「!?!?」

ピーン

海老名「キ! マ! シ! タ! ワ!ーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!」ブワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

三浦「姫菜!?」



151 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 22:34:50.51

八幡「で、なんでサイゼなんだ」

葉山「二人とも昼食まだだったしね。ここなら勉強もできて、丁度いい」

八幡「……お前あれマジか?」

葉山「うん。ヒキタニくんに悪い点数取られたらこっちが困るからね。もちろん俺も頑張るから、お互いに悪い話じゃないだろう?」

八幡「まあ、そうだが……」

葉山「じゃあ、始めよう。善は急げと言うし」

八幡「くっ……あの時マッ缶買わなきゃ数学は赤点ギリギリでもよかったのに……!」

八幡「生まれて初めて、MAXコーヒーを恨むぜ……」

葉山「ははは……。でもヒキタニくん、総武高入れるくらいだから、全くできないわけじゃないんだろう? なら今回の範囲は難しくないし、まだ数日ある。いけるよ。」

デネーユキノンー

八幡・葉山「「!?」」
153 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 22:39:27.40
八幡「何であいつらここにいるんだよ!」ヒソヒソ

葉山「予想外だったね。せっかく少し遠目のサイゼにしたのに」ヒソヒソ

八幡「まあ、この距離なら見つからないよな。こっちの方にトイレとかドリンクバーないから、来る事もないだろうし」ヒソヒソ

葉山「本当、不幸中の幸いってやつだね」ヒソヒソ

アーヒッキーダー

八幡「あいつどこかの原住民なの? ここ結構距離あるぞ?」

葉山「実は超能力とかあるのかもしれないな」
157 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 22:42:33.46
葉山「どうする?」

八幡「どうするも何も、見つかっちまったら無視できねーだろ」

葉山「そうだな……。あー結衣たちも来てたんだー」テヲフル

八幡「おいバカ……!」

結衣「ゆ……結衣!? てかヒッキーが気持ち悪いくらい爽やかな笑顔でこっちに手を振ってる!?」

雪乃「比企谷くん、いくら由比ヶ浜さんが優しくてもやっていい事と悪い事があるのよ?」

葉山「」
159 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 22:46:50.86
八幡「あー、雪ノ下……さんたちも来てたんだ」

八幡(よし、今度は完璧だ。マジ俺順応性高すぎ。これなら死んだ世界戦線でもやってけるな。無理か。無理だな)

雪乃「どうして葉山くんと、比企谷くんが一緒にいるのかしら?」

八幡「あーそれはー」

葉山「葉山のやろーが一緒に勉強しようってしつこくてな。それにサイゼで奢るって言ってくれたし」

八幡(こいつ……! 俺の口調をほぼ完璧にコピーしてやがる!)

結衣「それでも珍しいねー。ヒッキー奢るって言われても隼人くんにはついて行かなそうなのにー」

八幡(俺だってこの状況じゃなかったら、ついてかねえよ!)
162 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 22:57:29.68

葉山「まーそーいうわけだ。これから俺ら勉強するから、あっち行ってくれ。ゆい……がはま……」

八幡(流石に呼び方を急に変えるのはむずいわな)

八幡(ん? 待てよ? 当分俺ら戻れないかもしれないんだよな……?)

八幡(じゃあ俺、由比ヶ浜の事を結衣って呼ばなきゃいけなくなるのか!?)

八幡(そんなの無理だぞ!)

結衣「そっかー、勉強の邪魔しちゃ悪いもんね」

葉山「ああ、お前も頑張れよ」

結衣「うん! またね、ヒッキー!」

葉山「よし、じゃあ始めるぞ、葉山」

八幡「うん、そうだね」シャベリヅレー



結衣「……私の時は、断ったくせに」ボソッ
164 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 23:01:30.07
八幡「……ふぅ、行ったな」

葉山「ヒヤヒヤしたね」

八幡「お前すごいな。よくもまああそこまで言い方を真似られるもんだ」

葉山「君の方こそ」

八幡「まあしゃべくってる時間はねーしな。さっさと始めるぞ」

葉山「うん。じゃあヒキタニくん。方程式はわかる?」

八幡「お前は俺をバカにしてるのか……?」
170 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 23:12:32.89
十分後

八幡「なるほどな。ベクトルってのはそういうことだったのか。ずっとただの矢印かと思ってたぜ」

葉山「実際、テストで点数取るんだったら、このくらいわかれば基礎は十分なんじゃないかな。それにしてもヒキタニくん、すごいね。ものの十分でここまでわかるようになるなんて」

八幡「いや、これはお前の教え方のおかげだ。数学アレルギーの俺にここまでわかりやすく教えられるなんて、お前、教師に向いてんじゃねーの?」

葉山「あはは、そこまででもないよ……。ヒキタニくん、実は数学食べず嫌いなんじゃないかな?」

八幡「……もしかしたらそうなのかもな」

八幡「……お前に対しても」ボソリ

葉山「ん、何か言った?」

八幡「いや、何でもない」
174 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 23:18:20.14
八幡「む……葉山、これはどう解くんだ?」

葉山「ん、えーっとね……ここを、こうして……」

八幡「あーなるほどな。この内積で角度を出すのか」

葉山「そういうこと」

カリカリカリ…

葉山「ヒキタニくん」

八幡「なんだ?」

葉山「れんごくってどんな字だっけ?」

八幡「…………」サラサラ

『煉獄』

葉山「あっこんな字なんだ。すごいね、ヒキタニくん」

八幡「ん、大したことねーよ」

八幡(ただの中二病時代の忘れ形見だ)
177 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 23:30:23.56

カリカリカリカリ…

葉山「…………」カリカリカリカリ…

八幡「…………」ボー

八幡(こいつ本当にいいやつだよな……)

八幡(ボッチの俺に話しかけてくれたり)

八幡(こんな風に勉強教えてくれたり)

八幡(もしもあんな事がなかったら、こんなのなかったんだろうけど)

八幡(もしかしたら、俺とこいつは友達に……)

八幡(いやいやそれはない。キングオブボッチとキングオブリア充がそんなのになれるわけがない)
181 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 23:37:18.49
葉山「……ん、どうかしたかい?」チラッ

八幡「あっいや、何でもねぇ」

葉山「そうか」カリカリカリ…

八幡(こいつの中の俺は、ただのボッチのかわいそうな子だろう)

八幡(そう、きっとそうだ。だから勘違いなどしてはいけない)

八幡(あの日々を思い出せ、俺は何度あの苦しみを味わった?)

八幡(こいつは根本的に誰にだって優しいだけだ)

八幡(葉山の優しさにすがってはいけない。葉山の親切心に甘えてはならない)

八幡(感情の処理は適切に)

八幡(彼我の距離は適当に)



八幡(――だから、もう一歩くらいは、踏み込んでも、いいのだろうか)
184 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 23:42:03.09
葉山「んんんーっと」カラダノビー

八幡「お疲れ」

葉山「そっちもね。ドリンクバー行ってくるけど、ヒキタニくんおかわりいる?」

八幡(何だこれ、友達みたいだな)

八幡「あ、ああ……。じゃあコーヒーと、ミルク一つ、それとガムシロ十個頼む」

葉山「ああ、わかっ……えっ、十個?」
189 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/19(火) 23:49:53.44
カリカリカリ…

八幡「葉山」

葉山「なんだい?」

八幡「本当にこれやるだけでいいのか?」

葉山「ああ、確かに不安になるよね。でもうちの先生は、その問題集とほとんど同じ問題しか出さないから、その範囲の問題解けるようになれば、それだけで九割越えるよ」

八幡「えっ、そんな甘いのか。うちの数学」

葉山「気づいてる人は少ないけどね」

八幡「…………」

八幡(やっぱこいつすげぇな)
191 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/20(水) 00:01:47.83
八幡「ふぅ、とりあえずこの辺は大体解けるようになったな」

葉山「ヒキタニくん、実は理系の方が向いてるんじゃ……?」

八幡「いや、そんなわけねーだろ」

葉山「でも……君が最後に解いてたの、国立大の入試問題だよ……?」

八幡「えっマジで? ……マジだ」ジー

葉山「まさか一日でこんなにできるようになるなんて……」

八幡「さっきも言ったけど、お前が教えてくれたからだ。すごいわかりやすかったし、そのおかげでアレルギーも克服できたしな」

葉山「そう……なのかな……? 毎日戸部に教えてたのがよかったのかな……?」

八幡(でもそんなに成績が良くないんだよな……あいつ……。テスト返却の度にウェイウェイ言ってるし。……それはいつもの事だな)

八幡「今日一日で少し数学も好きになったし、もしかしたら来年国公立目指す事になるかもしれん」

八幡「だからもしそうなったら……」

八幡「……その時はまた、教えてくれないか?」
193 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/20(水) 00:06:49.58
葉山「……ああ、もちろん!」サワヤカスマイル

八幡「そうか、ありがとな」プイッ

葉山「別にそのくらいいいよ。えーと……もう十時過ぎか……結構勉強してたね」

八幡「うぉっ!? 外真っ暗じゃねぇか」

葉山「じゃあもう帰ろう。えっと、俺が食べた分を俺の体に入ってるヒキタニくんが出して……」

八幡「ややこしいな、これ」
195 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/20(水) 00:20:30.96

八幡「…………」テクテク

葉山「…………」テクテク

葉山「ヒキタニくん」

八幡「なんだ?」

葉山「MAXコーヒーっておいしいのか?」

八幡「俺にとっては最高の飲み物だな。最早神からの贈り物と言ってもいい」

葉山「君が欲しいと言うから全部あげたけど、やっぱり一本貰えないか?」

八幡「……まあ六本もあるから一本くらいやるよ」ポイッ

葉山「おっと」キャッチ
198 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/20(水) 00:26:48.25
カチャッ

葉山「試しに一口」ゴクゴク

葉山「……甘い。すごく甘い」

八幡「そりゃそうだ。MAXコーヒーなんだからな」

葉山「産まれて初めて飲んだ」

八幡「はぁっ!? 千葉県民でその歳でMAXコーヒー飲んだ事ないやつっていたのか!?」

葉山「見た事はあったけど、飲んだ事はなかったんだ」

八幡「ったく、不味いんなら俺にくれ。そう思われるくらいなら俺が飲んだ方がマッ缶も喜ぶ」

葉山「いや……悪くない。これからもたまに買おうかな」

八幡「…………」スッ

葉山「?」

八幡「もう一本、やる。やっぱ自分の好きなものを、他の誰かが好きになってくれると、何か嬉しいし」

葉山「ああ、ありがたく頂くよ」
200 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/20(水) 00:31:50.93
八幡(そんなこんなでテスト当日になっても、俺らの体は元に戻らなかった)

八幡(この数日間で特に変わった事もなかった。せいぜい、俺と葉山が話す事が多くなって、海老名さんがずっとうるさいくらいだった)

八幡(俺も葉山もお互いを装うのが上手くなって、誰かに気づかれたりするなんてハプニングも起きなかった)

八幡(……それでも俺はまだ由比ヶ浜を結衣とは呼べないが)
202 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/20(水) 00:39:44.44
教師「テスト開始」

ペラッカリッコッコッコッハヤハチサイコー

八幡(本当に葉山の言った通りだ。見た事ある問題ばかりだ)

八幡(これ、問題集で解いた問題だ! ……普通だな)

葉山(ヒキタニくん、ちゃんと解けてるかな……? 大丈夫だよな……?)

葉山(この問題ならヒキタニくんは大丈夫なはず)

八幡(解ける! 解けるぞ!)

葉山(もう信じるしかない)
204 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/20(水) 00:47:04.77
八幡(手が止まらない。数学でこんな感覚は初めてだ)

八幡(今の俺なら何でも解けそうな気がする……!)

八幡(見ろ! ベクトルがゴミのようじゃないか! ……あっこれは内積0になって直角なんすね)

葉山(ふぅ……解き終わった。ヒキタニ君の手も順調に動いてるし、もう心配はいらないだろう)

葉山(しかし疲れたな……。この数日間、いろいろ大変だったし)カラダノビー

ガンッ!

葉山(あっ、カバン蹴っちゃった)

八幡(あと十分! これなら全問解ける!)カリカリカリカリ…

カリカリカサカサ

八幡(しまった、芯が切れた! 早く交換しないと!)アセアセ

ガンッ!

八幡(あっ、俺のカバンが!)

フワッ

二人のカバンから飛び出たのは、MAXコーヒーでした。
206 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/20(水) 00:51:01.14





八幡・葉山「「すいません。MAXコーヒー落としました」」





パッキイイイイイイイイイン




208 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/20(水) 00:56:57.04
八幡(この感覚……どっかで……)

八幡(あれ、テストが解き終わってる)

八幡(まさか……戻ったのか!?)

八幡(よく見るとシャーペンも違うし、俺の場所も変わってる)

八幡(てかさっき俺が座ってた場所に葉山が座ってる)

八幡(戻ったん……だよな……?)

葉山(戻った……みたいだ)

葉山(ヒキタニくんが、頑張ったおかげでテストもほとんど俺のと同じ、あとは最後の証明の数行を書き足すだけだ)

葉山(はぁ……よかった……)

八幡(てか戻る原因もやっぱりMAXコーヒーかよ)
211 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/20(水) 01:06:06.17
テスト後

八幡「葉山……だよな?」

葉山「そういう君は……ヒキタニ君で合ってるかい?」

八幡「……戻ったな」

葉山「ああ。よかったよ、本当に」

八幡「数学……あれで問題なかったろ?」

葉山「ああ、ばっちりだったよ。もしかしたら君の方がいいかもしれないな」

八幡「おいおい、やめろよ謙遜は。お前の方が良いに決まってんだろ」

葉山「わからないよ。師を越える弟子の話ってよくあるし」

八幡「……お前、俺の漫画読んだな?」

葉山「あっバレたか」

八幡「バレるわ」
213 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/20(水) 01:11:54.66
葉山「……じゃあ」クルッ

八幡「あっ……」

葉山 テクテク

八幡(これで終わっていいのだろうか?)

八幡(この一件で俺は葉山についていろんな事を知った)

八幡(それでわかったのだ)

八幡(葉山は俺の思うような完璧な人間ではないと)

八幡(彼もまた長所も短所もある一人の人間であるのだと)

八幡(そしてこの数日間で俺はこう思ったのだ)
217 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/20(水) 01:17:21.92
八幡「葉山!」

葉山「ん?」クルッ

八幡(もう一歩)

八幡「俺と……」

八幡(踏み込んでみよう)





八幡「俺と、友達になってくれ!」
220 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/20(水) 01:23:29.45
葉山「…………」ポカーン

八幡「…………」

八幡(小学校の頃を嫌な記憶が脳裏を回りまくるが、それを今は見て見ぬ振りだ。八幡、今はそんな事を思い出さないでくれ)

葉山「…………」グッ

八幡(葉山は何かを言おうとして口を開いては閉じるを繰り返している。……やはりダメなのだろうか)

葉山「……千葉村」

八幡「はっ?」

葉山「千葉村でのキャンプのこと、覚えているか?」
222 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/20(水) 01:32:13.64
八幡(千葉村? ああ、ルミルミ可愛かったよな)

八幡「千葉村がどうかしたのか?」

葉山「俺は答える前に一つ、比企谷に言わなければならない事があるんだ」

八幡「何だよそれ……」

八幡(あれか? 断る前の前置きか? どうせ断るならサッと断って欲しいものだ)

八幡(あれ、今、比企谷って……)

葉山「俺はあの時、君にこう言った」

『なぁ、もし、ヒキタニくんが俺と同じ小学校だったらどうなってたかな』

『決まってんだろ。お前の学校にぼっちが一人増えるだけだよ』

『そうかな』

『そうだろ』

『俺はいろんなことが違う結末になったと思うよ。ただ、それでも……』

『比企谷君とは仲よくできなかったろうな』
224 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/20(水) 01:44:10.13
八幡「…………」

葉山「でも、この数日間、君と関わるうちに、俺の君への印象は変わっていった」

葉山「だから、身勝手ではあるけど、言わせて欲しい」

葉山「あの時の言葉を、取り消すって」

八幡「…………」

八幡「……はっ」

葉山「?」

八幡「ったく、俺もお前もめんどくせーな、本当に」

八幡「そもそも俺はあんなの気にしちゃいねーよ」

八幡「ただ、お前がそうしなきゃ気が済まないなら、そうすればいい」

葉山「比企谷……」

八幡「これが俺の答えだ」

八幡「だから……お前の答えを、教えて欲しい」

葉山「……もちろん、イエスだ」



こうして俺は、うまれて初めて、友達が出来たのだった。


226 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/20(水) 01:48:32.91
ガララー

八幡「うーす」

結衣「あっヒッキーだ」

八幡「なんだ、由比ヶ浜。先に来てたのか」

雪乃「私は無視かしら」

八幡「お前はいつも先にいるだろ」

結衣「……ヒッキー何かあった?」

八幡「えっなんで?」

結衣「ずっとニヤニヤしてる」

雪乃「比企谷くん、校内への侵入は不法侵入で捕まるわよ」

八幡「勝手に俺を不審者にするな」

雪乃「あら、そう言えば仮にもここの生徒だったわね。ごめんなさい、不審谷くん」

八幡「なんでも『ガヤ』つければいいと思ってんじゃねーぞ」
228 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/20(水) 01:53:06.29
八幡「さてと、テストも終わったことだし、マッ缶買いに行ってくるかな」

結衣「あれ? ヒッキーテスト中に持ってたじゃん?」

八幡「ああ、あれは何と言うか……賞味期限切れてて飲めないんだわ」

八幡(それはもちろん嘘だ。俺はマッ缶を無駄には絶対しない)

八幡(ただ、俺と葉山を救ってくれたあのマッ缶を飲んでしまいたくはなかったのだ)

雪乃「あら、そうなの。じゃあ私の分も買ってきてくれないかしら?」

八幡「人をさりげなくパシるな」
231 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/20(水) 02:01:44.58
時同じ頃

三浦「あれ、隼人そんなの飲んでたっけ?」

葉山「あぁ、比企谷に勧められて最近ハマったんだ」

海老名「比企谷……? ヒキタニじゃなくて……?」

ピカーン

海老名「隼人くん! 一体何があったの!? ねぇ! まさかのハチハヤ!? ねぇ!! ハチハヤなの!?!?」ガッ

葉山「あはは……」

三浦「姫菜擬態しろし」

三浦「……ふーん、戸部っち」

戸部「んー?」



八幡「で、何買ってくればいいの?」

雪乃「じゃあ」



雪乃・三浦「「MAXコーヒー買ってきて」」



パッキイイイイイイイイイン


233 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/20(水) 02:08:16.23



雪乃「あれ、ヒキオ……なんで……」

八幡「」



三浦「葉山……くん……?」

葉山「」



235 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/20(水) 02:16:35.86
十分後



八幡「……やはりそっちもそうか」

葉山「みたいだね。今度は」

八幡・葉山「「雪ノ下(さん)と三浦(優美子)が入れ替わった」」

葉山「……どうする?」

八幡「うーん、スルーだな。当分変なのには関わり合いたくない」

葉山「人間的にどうかとも思うけど、正直俺も同じだ」

八幡「まああの二人ならどうにかなるだろーよ」

葉山「俺らみたいにあの二人も仲良くなるといいなぁ……」

八幡「ブフォアッ!?」ブシャー

葉山「だ、大丈夫か!?」

八幡「あ、ああ……。いきなり変な事言うんじゃねぇよ……」

葉山「?」

八幡(あ、こいつ素だ)
237 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/20(水) 02:21:45.49
葉山「あ、MAXコーヒー持ってるんだね」

八幡「ああ、さっき落としたやつな」

葉山「奇遇だね。俺もそれ持ってるんだ」サッ

八幡「じゃあ」カチャッ

葉山「そうだな」カチャッ

八幡「俺ら、この数日間頑張ったよな」

葉山「ああ!」

セーノ

八幡・葉山「乾杯!」

カンッと缶同士がぶつかり、綺麗な音がなった。

誰かと飲むMAXコーヒーも、なかなか悪くない。
239 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/20(水) 02:30:53.60
雪乃「なんであーしがあんたと入れ替わんだし! 意味がわかんないし!!」

三浦「私だってあなたみたいな、キャンキャンうるさい犬のような人と入れ替わりたくなかったわ」

雪乃「あーしが犬!?」

三浦「ええ、そうよ。耳が悪くて聞こえづらかったのなら、もう一度言うけど?」

雪乃「雪ノ下雪乃……あんた、絶対許さない!!」

三浦「ええ、何とでも言うがいいわ」



世にも
奇妙
な物語
241 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/20(水) 02:37:01.39
テッテッテレレーテレレーテレレー

テッテッテレレーテーンテレーン

タモリ「思わぬ偶然から、一生の仲になる」

タモリ「そんな話を聞く事があります」

タモリ「そう言う意味では、奇妙な世界に迷い込むのも」

タモリ「実は悪くないのかもしれませんねぇ」 ニヤリ

テレレッテッテレレーテッテッ

テレテッテッテッテッテレレレレーレー

テッテッテレレーテレレーテレレ

テーンテレレレレレン

https://www.youtube.com/watch?v=ccMfyDn7RHI
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/20(水) 14:48:14.31
これは巧妙なはやはちスレ
キマシタワー
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/20(水) 15:21:27.02
いやーおもろい
海老名さん大歓喜だわ
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/20(水) 18:34:01.31
悔しいけどハヤハチが仲良くなるとニヤニヤしてしまう
258 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/21(木) 00:06:41.48
それは、『比企谷八幡』になれなかった、比企谷八幡の物語。



俺は知っている。

俺を取り巻く環境が偽物である事を。

俺は比企谷八幡であって、『比企谷八幡』ではない。

だから俺はすがってはいけなかったのだ。『比企谷八幡』に。

それなのに、俺はすがってしまった。

あの世界を、望んでしまった。

これは、そんな俺への、罰なのかもしれない。
260 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/21(木) 00:09:16.12
※時系列的には9巻のラストあたりからですが、正直あまり関係ありません。



「だって、ヒッキー絶対予定ないし……。あ、だからパーティー! あたし、ゆきのんのケーキ食べたいなぁ」

ようやく平穏を取り戻した奉仕部の部室。そこで由比ヶ浜がいつものように俺に話しかける。

その言葉が俺に向けられたものではない事を、俺はまだ忘れている。

それ以降も続く二人の会話を俺はただ横目で見ている。二人の間に俺が入る隙間はない。

「……そうね、それなら考えなくもないわ」

雪ノ下がそう告げると突然、世界が暗闇に満ちた空間となり、どこからか音楽が流れ始めた。

そして下から白い文字が流れ始める。これには見覚えがあるな。そうだ、これは、映画やゲームでよく見る、エンディングだ。

俺はその状況をまだ最初は理解できないが、時間が流れるにつれて、現状を理解する。そう、いつも通りに。
262 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/21(木) 00:24:22.92
平塚先生に奉仕部に入れさせられ、雪ノ下や由比ヶ浜と知り合い、いろんな問題を乗り越えた数ヶ月間。

その日々は俺にとってかけがえのないものだった。

しかしいつだって現実とは残酷で、だから俺はまたこの夢に逃げ込んでしまうのだ。

エンディングが終わると、身体が急に重くなったように感じる。そしてそれまで見えていた視界が一度ブラックアウトし、数秒経つと俺が本当に生きるべき世界の風景が映し出される。俺の周りは機械の回路だらけで、何がどうなっているのかわからない。

『やはり俺の青春ラブコメは間違っている。ボリューム9は以上です。お気をつけてお帰りください。お帰りの際、忘れ物はなさいませんよう……』

いつもと同じように流れる無機質な機械音声。

これが、俺の現実だ。
264 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/21(木) 00:31:14.44
俺のいる現実に、雪ノ下はいない。由比ヶ浜もいない。戸塚もいないし、平塚先生だっていない。それはそうだ。みんな全て空想のお話の登場人物なのだから。

始まりはほんの些細な出来心だった。たまたま学校から帰る途中で、怪しい店を見つけて、その中に入ってしまった。

その店は、自分の発明品を売って生計を立てているという、今時の子ども用アニメにも出てこないような怪しいおっさんが経営していた。

彼が作った発明品の中でも最高傑作(自称)。それは、俺の心を引くのには十分すぎるものだった。

彼が俺に勧めたのは『仮想現実体験装置』
デジタルで構成された別の世界へ行く事ができる装置だ。

もちろん俺はそんなのをバカ正直に信じられるほど純真無垢ではない。しかし彼は俺に初回だからと一回五千円のところを五百円にしてくれた。九割引きという響きに圧倒された俺は、マッ缶を四回我慢すればいいだけだと思い、その男に一枚の硬貨を渡してしまったのだ。

それからはお察しの通り。仮想現実の中の『俺ガイル』の世界にどっぷりハマってしまった俺は、いつしかそこだけが俺の生きがいになってしまっていた。
266 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/21(木) 00:47:24.85
樋口さん一人を男に渡し、俺は店を出た。目に映るこの世界はモノクロに見える。夕陽で赤くなっているはずの空も、俺の腐った目には白と黒のグラデーションにしか感じられない。

「……帰るか」

そして俺は歩き出す。またいつもの日常を。

――瞬間、見覚えのある顔が俺とすれ違った。

「……えっ、今のは」

思わず振り返る。今すれ違ったのは、誰だ?

「……あっ、あの!」

今思えばあの時の俺はイカれてたとしか思えない。もし仮に彼女が現実にいたとしても、俺と彼女とは接点がないのだから。

――それでも、求めずにはいられなかった。

この世界で唯一見えた色。

それを逃したくなかった、

「……何でしょうか?」

振り返ったのは、夢で何度も見た黒髪の美少女――

――雪ノ下雪乃だった。


やはり俺の世にも奇妙な物語は間違っている。
最終話
『そして比企谷八幡は夢から覚める』

Coming Soon!!



以上です。

書いてみてわかったけど、やっぱり小説形式は難しいのとダラダラ長くなるから、本編は前回までと同じく、脚本形式で書くかもです。
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/21(木) 00:52:28.91
乙、楽しみに待ってる
274 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/22(金) 23:13:18.11
ピピピピ

八幡「うーん……朝か……」

八幡「ふぁーあ……今日は……まだか。目的の日まではまだ先だな」

昨日は休日でフリーダムな一日だったが、今日は学校あるんだったな。サザエさんやってたのに、すっかり忘れてたわ。

八幡「……起きねぇと」

冬の朝の寒さ対策に室内用の上着を羽織る。うん、あったかい。

床の冷たさに耐えながらリビングへと向かう。

そこにいるのは、俺の両親。母親は朝ごはんの準備をしていて、父親は新聞を読んでいる。

そして、この家に、比企谷小町はいない。
276 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/22(金) 23:18:07.90
朝ごはんを食べ、いつもの時間に家を出ると、マイチャリは今日も変わらず、同じ場所で俺を待っていた。

高校入学の時に買ってもらって、それからずっと愛用しているチャリだ。

サドルをまたぎ、イヤホンを耳につけ、ペダルを踏む。違法だとかそんなの知ったこっちゃない。……まあ捕まったらアウトだが。

見慣れた風景がそれなりのスピードで過ぎ去る。街を歩く誰もが自分の人生を生きていて、それ以外を望まない。

俺以外は。



あの日、俺は事故に遭わなかった。

278 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/22(金) 23:23:24.80
俺に友達がいないのは言わずもがなであるが、それ以上に俺、比企谷八幡が『比企谷八幡』と圧倒的に異なる点、それは――

俺が真のボッチである事だ。

俺に近づく人間はいないし、誰かに話しかけられる事はほぼ皆無と言っていい。

『比企谷八幡』にはボッチとは言え、それでもその周りに人がいた。

奉仕部のやつらや、戸塚や、材木座や……あいつ実はリア充じゃね? 実はボッチじゃなくて、自称ボッチなんじゃね?

しかし当の俺は休み時間はほぼ確実に寝てるか、スマホを弄ぶか、読んでいない本を読むかのどれかだ。校内で口を開く事はない。

そして最後に、絶望的な事実を告げよう。

俺の通う高校は、総武高校ではなく――海浜総合高校だ。
280 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/22(金) 23:33:59.48
八幡「はぁ……最新話の更新まであと二日か……長いな」

八幡「まあ、ちょうどその日クリスマスだし、自分へのクリスマスプレゼントとしていいかもな」

家のベッドに寝転んで、スマホを弄る。メールが来るのは親と、メルマガと、たまに来る女の子からのメールだけだ。

ゴーインゴーインアロンウェーイオレノーミーチーヲーイクーゼー

八幡「おっメールだ。この時間に来るとなると……」

ボッチはメルマガの届く時間を把握している。このメルマガは朝に、このメルマガは夜に、という風にだ。……やっぱりそういうのわかると、機械がやってるってわかっちゃうよね。

しかしこの時間にメルマガが届く事はまずない。つまりそれは……

『Sub:ユカリです☆良かったらお友達に』

八幡「なってくれ」

そして一番違うのは、俺がこの孤独を寂しく感じていることだ。

俺は『比企谷八幡』のように、強くなかった。
282 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/22(金) 23:46:02.75
八幡「ふふふ……ようやく来たな……この時が……」

八幡「『俺ガイル』ボリューム9 長い間これを待ち焦がれたぜ……」

八幡「8での終わり方があまりにもなぁ……。もう一日千秋とはこの事だと思ったわ」

八幡「さて、入るか」

博士「いらっしゃい。ああ、あんたか」

八幡「9は……?」

博士「悪いが、ちょっと先客がいてな。まああと三十分もせずに終わるから、外でブラブラしててくれ」

たまに俺の他にこの仮想現実体験装置を使っている人間がいる。それが誰なのかはわからない。この怪しいおっさん曰く、「顧客情報は極秘」らしい。

八幡「わかったっす。じゃあまた三十分後に」

そう言って店を出る。俺以外の仮想現実体験装置を使っている人間が誰であるが気にならないと言えば嘘になるが、かと言って意地でも知りたいかと言えばそういうわけでもない。

八幡「うーむ、何をしようか」

八幡「やっぱゲーセンか?」
284 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/22(金) 23:49:17.53
近場のゲーセンの格ゲーで時間を潰し、店に戻ると装置内は空っぽになっていた。前の人は終わって帰ったらしい。

博士「兄ちゃん、若いのによくそんな金あるね。まだ高校生だろう?」

『俺ガイル』は一回五千円。9までやったから、これで四万五千円の出費だ。高校生に痛くないわけがない。

八幡「……他に使い道がないんすよ」

あとはあれだ。MAXコーヒー。俺の小遣いは大体この二つで消える。何それ悲しい。

博士「『俺ガイル』のボリューム9で間違いないな?」

八幡「大丈夫です」

博士「んじゃ、行って来な」

装置を頭につけて、真っ黒な箱の中に入る。中は狭いが、始まれば気にならない。

……本当に別の世界に行くのだから。
287 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/22(金) 23:57:33.49
八幡「……ここは、奉仕部の部室?」

八幡「なのに俺以外誰もいないな」

八幡「よく見るといつも三つある椅子も一つしかない」

八幡「とりあえず外に……!?」ガッガッ

八幡「開かない……?」
290 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/23(土) 00:04:45.31
八幡「…………」ポロポロ

博士「……大丈夫かい、兄ちゃん?」

八幡「はい……っ、だいじょぶ……でず……」

あんな終わり方になるなんて思わなかった。くそ、泣かせんじゃねーよ。8まであれだから、絶対バッドだと思ってたじゃねーか。

博士「まあ、満足してもらえたならいいや。兄ちゃん、代金」

八幡「はい……っひぐっ」バイバイヒグチ

博士「うむ、確かに頂いた。じゃあまた来てくれよ」
293 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/23(土) 00:13:43.59
『俺ガイル』をやってる時はいい。

ただ、終わると、ひどく死にたくなる。

俺は一体何をしているのだろう、と。

名前や顔が設定できるからとは言え、俺と同じ名前の人間があんな青春を送っているのに――まあ多少間違っているが。

そんな自分を嫌悪する事はある。

しかしそれでも、俺はやめられないのだ。あれにしか人生に楽しみを感じられない。

俺は生きがいを感じられない。唯一の生きがいが『俺ガイル』だ。金を払って生きがいができるのなら、いくらだって使ってやる。

しかし、いつからだろう。

八幡「こんなにも生きるのがつまらなくなったのは……」
295 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/23(土) 00:19:17.50
八幡「…………」コツコツ

??「…………」テクテク

スッ

八幡「……えっ、今のは?」

その後ろ姿に、俺は見覚えがある。

八幡「……あっ、あの!」

しかしなぜ、彼女がここにいるのか。それが俺にはわからなかった。

??「……何でしょうか?」

八幡「雪ノ下……!」
298 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/23(土) 00:27:19.68
雪乃「……どうして私の名前を?」

八幡「えっ? あっ、えーとそれは……」

八幡「いや、そうじゃなくて、何でお前がここにいるんだ?」

雪乃「私が質問しているのだけれど? 質問を質問で返すなんて今時小学生でもしないわよ?」

八幡「…………」

まさか現実で雪ノ下の罵倒を受ける日が来るとは思わなかった。てかなんだこれ、夢? ほっぺたつねってみよう、……痛い。これ夢じゃねぇな。夢だけど、夢じゃなかった!

雪乃「ちなみに私は今学校から帰ろうとしていたところなのだけれど、私、あなたに会った事があったかしら?」

八幡「あー、会ったことはあると言うかなんと言うか……」

流石にゲームの中で会ったなんて言えない。

雪乃「はっきりしない人ね……」
300 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/23(土) 00:31:31.60
気が動転して話しかけてしまったが、そもそもどうするつもりだったんだ俺は。いきなり見ず知らずの女子に話しかけるなんて不審者もいいところだな。千葉県警のお世話にはなりたくない。

八幡「あーなんかどっかで会ったような気がして……」

雪乃「……まあいいわ。それでも、なぜ名前を?」

八幡「ぐっ……!」

雪乃「あなた……まさか私のストーカー?」

八幡「違う違う違う違う。本当に違う。俺もお前と会ったのは初めてだし」

雪乃「えっ?」

八幡「えっ?」

あれ、俺、いま墓穴掘ったんじゃね?
302 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/23(土) 00:39:50.27
雪乃「ちょっと待ってなさい」

雪ノ下は携帯を取り出した。ヤバい、タイーホフラグだ。

思いつくんだ、八幡! この場をおさめる方法を!

八幡「待ってくれ雪ノ下! 新聞! 新聞で見たんだ! お前の記事を!」

雪ノ下は番号を押す指を止めた。よかった、多分正解だ。

雪乃「……新聞?」

八幡「ああそうだ! 地方欄に載ってたやつだけどな!」

これは賭けだ。まず確実性はゼロ。そんなの見た記憶はないし、完全に出まかせだ。

しかし雪ノ下は反応した。つまり雪ノ下は新聞に載ったことがあるということだ。

ならばそれは何だ? 雪ノ下が新聞に載る理由は?

いくつもの可能性を浮かべては吟味する。この間わずか二秒。ボッチの思考スキルなめるな。
304 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/23(土) 00:47:33.95
やっぱりあれが一番可能性が高いな。

八幡「雪ノ下雪乃。俺らが小六の時の県の読書感想文コンクールで賞をかっさらった、天才少女」

八幡「確かそうだろ?」

俺がそう言うと、雪ノ下は携帯をしまった。すげぇ、一発で抜けれた。

雪ノ下「……そう、あれを見たのね」

八幡「あっああ、俺もあの時出したからな。よく覚えてるんだ」

ちなみに俺はあれ出した事がない。よくこんなにポンポン嘘出てくるなー。普段、人と話さないのに。
306 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/23(土) 00:57:02.83
前のレスの一つだけ雪ノ下になってる……。作者のミスです。



雪乃「なるほどね。でもなぜ私に話しかけてきたのかしら?」

八幡「えーとな、んーと、あれだ、新聞に載るようなすごい人間とすれ違ったから、つい反射的に……」

八幡(なんじゃそりゃああああああああああああ!?)

素晴らしく怪しい理由だが、今の俺にこれ以上の説明はできない。もっと頭が冴えていれば、マシな言い訳もできたかもしれないが。

雪乃「……筋は通っているわね」

ですよねー。やっぱり疑いますよねー。でも携帯を出さないところを見ると、通報する気はないらしい。助かった。

八幡「じゃ、じゃあ、俺はこれで」

無理だ、これ以上こいつと話していられる気がしない。いずれ本当の事を話させられて、警察行きだ。だから千葉県警にお世話にはなりたくないんだって。親に迷惑かけたくねーし。

雪乃「待ちなさい」

八幡「ぐぅ……!?」
308 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/23(土) 01:04:21.97
雪乃「あなたには聞きたい事がまだたくさんあるわ。勝手に逃げないでくれるかしら?」

八幡「でも……妹が……」

現実にいねぇだろ、俺。

雪乃「あら、そうなの。でもそんなので私が諦めると思うの? 一応私、あなたの事をストーカーだとまだ疑っているのよ?」

八幡「だがしかし……」

メリークリースマーストクベーツナーパーティーヲーキーミトスーゴシーターイー

八幡「?」

雪乃「あら、私の携帯ね。少し待ってくれるかしら」

八幡「お、おう……」

どうする……ここで逃げるか……?
310 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/23(土) 01:08:34.29
雪乃「もしもし、由比ヶ浜さん?」

八幡「!?」

雪乃「ちょっと私はいま忙しいのよ。ストーカーが私を……えっ? 連れて来て? 何を言って……あっ」

八幡「……帰らせて」

雪乃「予定が変わったわ。あなた、名前は知らないけどとりあえずついて来てくれるかしら?」

八幡「……嫌だと言ったら」

雪乃「…………」ケイタイサッ

八幡「喜んでついて行かせてもらいます」
312 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/23(土) 01:13:31.37
雪乃「ところで、あなた、名前は?」

八幡「比企谷八幡」

雪乃「随分と変わった名前ね」

八幡「うまれて初めて言われたよ」

雪乃「そう、意外ね」

八幡「だろ?」

だってそういう事話す相手いなかったし。

雪乃「比企谷……八幡」

雪乃「いい名前ね」

八幡「そうか?」

雪乃「ええ、名前はその人を表すというけれど、あなたにぴったりじゃない」

八幡「遠回しに貶してんじゃねぇか。うちの親に謝れ」

雪乃「ストーカーの親に謝る気はないわ」

八幡「だから俺はそんなんじゃないっつーの」
314 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/23(土) 01:23:52.19
こんな会話、『俺ガイル』の世界でもあったなと思う。一体どうなっているのだろう? あのゲームは現実世界とリンクしているのだろうか?

八幡「てか俺に対してそんなんでいいのか?」

雪乃「?」

八幡「だから、お前は俺をストーカーだと疑ってるんだろう? なのに、こんな風に話してるのは普通じゃなくないか?」

雪乃「普通の女子ならよくないでしょうけどね。でも、私ならあなた程度の体格の男ならいざ襲って来ても、余裕で勝てるから」

雪ノ下……恐ろしい子……!

雪乃「……着いたわね。さて、比企谷くん」

おっこの呼ばれ方を現実でされるのは、なかなか新鮮だな。

てかなんだここ、ただのサイゼじゃないか。

雪乃「これからあなたに会わせるのは私の親友よ。下手に手を出したら、あなたを社会的に抹殺するわ」

八幡「はい、わかりました。出しません」

両手を上げて降参のポーズをする。目が怖い。雪ノ下さん、凄く目が怖いです。



330 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/23(土) 22:59:54.32

結衣「ゆきのんやっと来たねー。えっ、ゆきのん誰それ……?」

予想通りそこにいたのは、『俺ガイル』の中と同じ、由比ヶ浜結衣だった。現実でもこの二人は友達らしい。世界を違えどもこの二人の友情は不変なんですね。これもう、ゆるゆりどころがガチゆりなんじゃねぇの?

雪乃「さっきも言ったでしょう? 私に対してのストーカーよ」

いや、だから違いますからね? まあそう思われても何も言い返せないが。

結衣「……目が」

八幡「腐ってんのは自覚ありだ」

結衣「!」ビクッ

由比ヶ浜は体を強張らせる。そうか、俺にとっては長い時を共にした知り合いではあるが、今の由比ヶ浜にとって、俺はただの雪ノ下のストーカーだもんな。それが初印象ってハードル高すぎじゃね?
332 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/23(土) 23:07:21.68
雪乃「比企谷くん? 手を出したらってさっき……」

八幡「手は出してない。口は出したが」

雪乃「屁理屈はいいわ」ケイタイサッ

八幡「ストップだ、ストップ。じゃあもうゆ……この人には話しかけない」

危なかった。思わず名前を出してしまうところだった。いくら電話で名前を聞いたからって、いきなりそれで呼ぶのはアウトだ。

雪乃「……ならいいのだけれど」スッ
334 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/23(土) 23:17:15.54

結衣「……で、比企谷くん、だっけ?」

八幡「…………」コクン

俺は頷く。話しかけないと言ったから、それだけで肯定の意を示す。

結衣「ゆきのんのストーカーって本当?」

八幡「…………」フリフリ

雪乃「由比ヶ浜さん、そんな事を聞いても認めるわけないでしょう? どこにその質問に対して「はい、私がストーカーです」と認めるストーカーがいるのかしら?」

結衣「あっそうか」

由比ヶ浜のバカさ加減はあまり変わらないらしい。

結衣「今、すごくバカにされたような……」

……てかこいつやっぱり超能力とかあるんじゃねぇの?
340 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/23(土) 23:25:02.27
結衣「あと比企谷くん……? 別に喋ってもいいからね?」

八幡「…………」チラッ

雪乃「本人がそう言うなら、私は止めないわ」

結衣「ゆきのんもこう言ってるし。正直喋ってくれないと私も話しづらいよ」

八幡「……そうか」

結衣「うん!」

雪乃「比企谷くん」

八幡「わかってる。由比ヶ浜、さっきのはすまなかったな」

結衣「え? あー……。でも私が失礼な事言っちゃったのが先だから、お互い様と言うか……」

やっぱりこいつ現実でも良いやつだな。中学の頃の俺だったら速攻で告白して振られているところだよ。え、振られちゃうのかよ。
342 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/23(土) 23:37:00.53
結衣「で、比企谷くんはゆきのんのストーカーなの?」

八幡「だから違うっつーの。ただ、見た事のある顔だったからつい話しかけちまったんだよ」

結衣「……ゆきのん、会ったことあるの?」

雪乃「いえ、ないわ」

結衣「じゃあなんで?」

カクカクシカジカ

結衣「へー、ゆきのん新聞に載ったことあるんだー! すごいねー!」

驚くとこそこかよ。まあ由比ヶ浜らしいと言えば由比ヶ浜らしいな。
345 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/23(土) 23:54:35.84
雪乃「え、ええ。銀賞しか取れなかったけれど」

結衣「それでもすごいよ! へー、私はいつも夏休みの最後の方で、冷や汗かきながら書いてたなー」

ああ、すごい想像できる。こいつそういうの苦手そうだもんなー。

雪乃「由比ヶ浜さん、そんな話は今はどうでもいいのだけれど」

結衣「あ、そうだった。で、比企谷くん……なんか呼びづらいね、呼び方変えてもいいかな?」

八幡「ん? あ、ああ」

すごく、先の展開が予想できる。何なの、あの機械? まさか現実世界の未来を見せちゃうやつなの? 俺はあの間違った青春ラブコメを現実で体験できちゃうの? それなら大歓迎だが。

結衣「じゃあ、比企谷くんだからヒッキーって呼ばせてもらうね! ……いいよね?」

八幡「あ、ああ」

さっきから同じ事しか言ってないな、俺。まさかロボットなの? ……SFって怖いよね。
349 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/24(日) 00:02:51.37
結衣「じゃあヒッキーは、ゆきのんの事を新聞で見て知ってて、それでたまたますれ違った時に話しかけたって事?」

八幡「……まあ、そういうわけだな」

結衣「それは……ストーカーって言うか微妙だね……」

雪乃「由比ヶ浜さん、この男の言う事を全部信じる気?」

結衣「うん?」

雪乃「それは今考えたその男の嘘かもしれないのよ? 新聞で見たのは本当なのかもしれないけれど、そこからずっと私をストーキングしていた可能性もあるのだし」

流石雪ノ下さん、一筋縄ではうまくいかない。……まあ俺の言い訳がザルなだけなのだが。

さて……ここからどうする?
351 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/24(日) 00:09:51.26
今の持ち駒でこの場を打開する方法が思いつかない。

ならば方法は一つだ。

この現状を信じてくれそうな誰かの力を借りる。……それに該当するのは誰だ……?

……あの人しかいない。

もしもあの人が現実にいて、なおかつ総武高にいるのなら、雪ノ下たちと知り合っていてもおかしくはない。

八幡「あー、ちょっとトイレ行ってきてもいいか?」

話し合っている二人に許可を取る。本当は外に出たいが、雪ノ下が許さないだろう。

雪乃「ええ、構わないわ。逃げたりしなければね」

八幡「逃げねぇよ」

逃げても通報されてバッドエンドだ。そんな事くらいわかる。
354 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/24(日) 00:18:24.65
八幡「……今度は『俺ガイル』の知識に助けられるかもな」

あの中で『比企谷八幡』は何度もその人物からの着信を受けていた。だから、その番号を覚えていたのだ。

あの人なら……もしかしたら信じてくれるかもしれない。

何度も何度も確かめながらゆっくりと番号を押す。

そして受話器のボタンを押す。

トゥルルルルルル

八幡「よし、コールが鳴った!」

つまり、この番号を持っている携帯が存在しているという事だ。緊張で心臓の鼓動が早まる、

トゥルルプツッ

??『もしもし、平塚ですが』
356 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/24(日) 00:24:40.12
ビンゴ!! トイレの個室内で思いっきりガッツポーズを決める。こりゃ、Gacktさんも顔負けだな。ガッツポーズ世界選手権とかあったら、余裕で一位取れるレベル。

平塚『何でしょうか? いたずら電話なら切りますよ?』

雪ノ下たちと話している時にも思ったが、さっきまでゲームの中でしか聞けなかった声が現実で聞こえると、少し変な感じがする。

八幡「いえ、いたずら電話とかではありません」

平塚『男……』

八幡「えっ?」

平塚『い、いえっ! 何でもありません!』

……これは、多分本物だよな。

八幡「総武高で勤務している平塚先生で間違いないでしょうか?」

平塚『ひゃっ、はい、そうです!』

何この平塚先生、すごく可愛い。ひらつかわいい、しずかわいい。
360 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/24(日) 00:32:05.03
平塚『えっと……そちらは……?』

八幡「比企谷八幡といいます。平塚先生、これから俺の言う話を信じてください」

平塚『えっ、あっ、はい』

そこから俺は話した。俺自身の事や、『俺ガイル』の事を。

平塚『……俄かには信じられない話だな』

こっちが年下とわかると、平塚先生はいつものような話し方になった。……あの平塚先生可愛かったのに。

八幡「でも、本当なんです。信じてください」

平塚『いや、比企谷とか言ったか? 信じるも何も、私は信じざるを得ないのだよ』

八幡「えっ?」
364 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/24(日) 00:37:08.93
平塚『君の話は、私たちの身に起きた出来事とあまりに一致しすぎている。……まるで、本当にその場にいたかのように』

平塚『もちろん、君がいたわけではなかったから、解決方法は違ったが』

やはり、あの卑屈な方法を使う人間はいないか。まあそうだよな、『比企谷八幡』もあくまで解決ではなく、問題の解消しかしてなかったし。

平塚『例え、君がずっと私たちを見張っていたとしても、そこまで細かい説明はできないだろう』

平塚『だから信じる信じないの話じゃないんだ。信じざるを、得ない』

八幡「ありがとうございます。先生なら信じてくれると思いました」

平塚『だが、勘違いするな。私が信じたのはあくまでも、『君が言った事』のみだ。君自体を全面的に信じたわけじゃない』

八幡「それでも構いません」

今は協力者を得た、ということだけで十分だ。
366 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/24(日) 00:53:54.84
平塚『……で、君は私にどうして欲しいんだ?』

八幡「今、俺は雪ノ下たちに捕まっているんです」

平塚『……それは、どういう状況だ?』

八幡「あっ、いや、別に犯罪的な意味ではなくてですね。さっきの話からもわかる通り、俺の中で雪ノ下たちは現実にいない人物だと思っていたので、道端で出くわして興奮してつい話しかけたら……」

平塚『ああ……もうわかった』

受話器の向こうから、はぁ……という溜息が聞こえる。

八幡「なので、俺が雪ノ下たちを知っていた理由の証人になってください」

平塚『つまり……嘘をつけと?』
369 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/24(日) 01:07:31.73
八幡「察しが早くて助かります」

平塚『君がさっき私に話したみたいに、彼女たちにも真実を言えばいいじゃないか』

八幡「……雪ノ下たちが俺の言う事を信じてくれると思います?」

平塚『…………』

八幡「漫画とかそういうのを読む先生だから、話せたんです。そうじゃなかったら話せませんよ」

平塚『ま、待て、比企谷! 私はそのゲームの中でも私が見ていたアニメとかの話をしていたのか……?』

八幡「はぁ……まぁ……」

平塚『つまり君は私が話していた話がわかっていたんだな!?』

八幡「そうっすね」

平塚『そうか……!』

平塚先生は受話器の向こうで嬉しそうな声を出している。だからこの平塚先生可愛すぎるだろ。何で結婚できないんだよ。
371 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/24(日) 01:13:45.50
八幡「とりあえずこの場をやり過ごすために、先生の力が必要なんです」

平塚『……状況は理解した。ただし一つ条件がある』

八幡「……なんですか?」

何故だろうか、すごく嫌な予感がする。
373 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/24(日) 01:18:01.83



八幡「……どうしてこうなった」

雪乃「比企谷くん、それはこっちのセリフよ?」

雪乃「どうしてあなたがここにいるの?」

俺が今いるのは、見慣れた部屋。

奉仕部の部室だった。

八幡「……平塚先生に頼まれてな」
376 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/24(日) 01:27:00.26
以下、回想

平塚『なら比企谷。奉仕部に入らないか?』

八幡「はっ? いや、それおかしくないすか?」

平塚『君が話しているのが本当なら、そのゲームの中で君は奉仕部に入っていたわけだろう? なら君としても実は願ったりなんじゃないか?』

八幡「…………」

俺はそれを否定できなかった。なぜあんなにも金を湯水のように使っていたのか、それはあの世界を望んでいたからじゃないのか?

八幡「でも、いきなり俺のようなやつが入って来ても、雪ノ下たちに迷惑がかかるんじゃ……」

平塚『そうかも知れないがな、ただ、今のままでも、よくないんだ……』

八幡「……?」

平塚『とりあえず、君が奉仕部に入るのなら、私は君と口裏を合わすが、どうする?』

俺の答えは、想像の通りだ。

以上、回想、終ワリ
379 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/24(日) 01:31:19.04
雪乃「平塚先生が入れろと言うから入部させたけれど……」

八幡「他校の人間が校内にいるから、いろんなやつにジロジロ見られたわ」

雪乃「ええ、そうね。……それ以上にその目が原因と思われるけれど」

八幡「…………」ジーン

雪乃「!?」

まさか現実でこうなる日が来るなんて思わなかった……! 思わず感極まって泣きそう。

雪乃「……ごめんなさい」

八幡「!?」
381 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/24(日) 01:34:44.95
何で雪ノ下が俺に謝ってんだ!? 雪ノ下こんなに優しかったっけ!? まだあっちからしたら会ったばかりだから、もっと酷い事を言われると思ってたんだけど!?

雪乃「あなたがそんなに傷つくと思ってなくて……」

あ、なるほど。俺が感極まって泣きそうになってたのを、雪ノ下は自分の言葉のせいだと勘違いしたのか。俺の事をよく知らないからこそ、この事態が起こったんだな。何これ、自分がタイムトラベルものの主人公になった気分。

八幡「あー、いや、大丈夫だから。そんなんで俺は傷つかん。今のはちょっとあくびで目がうるんだだけだ」

雪乃「そ、そうなの?」

少し遠慮がちに話してくる雪ノ下が可愛過ぎて生きるのが辛い。こんなの『俺ガイル』でもなかった気がするぞ。

八幡「あ、ああ」
383 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/24(日) 01:37:53.52
ガララ

結衣「やっはろー!」

結衣「ってヒッキー何でいるの!?」

八幡「平塚先生に入れと頼まれたんだ」

正確にはほぼ命令に近いがな。

結衣「へぇー、先生が……」

八幡「そんなわけでよろしくな、由比ヶ浜」

結衣「あっうん! よろしくね! ヒッキー!」

八幡「ああ」

こうして、俺は現実世界でも奉仕部に入る事になった。俺はこの世界に、人生に意味を持てないでいたが、小さな偶然、勇気のおかげでそれを得る事ができた。

人生何が起こるかわからないものである。ゲームの話が現実で起こるなんて事も、本当ならば世にも奇妙な物語に出て来そうなものだが、俺はそれを否定したりしない。これは、俺が望んだ事なのだから。

だから――

やはり俺の世にも奇妙な物語は間違っている。



世にも
奇妙
な物語
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/24(日) 01:41:08.60
だが、小町はいない…
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/24(日) 01:42:06.85
乙です
よかったです
389 : ◆.6GznXWe75C2 :2014/08/24(日) 01:43:37.58



世にも
奇妙
な物語



世にも    I   ピュー
奇妙 <ワッナンダ I==
な物語    I



もI<ウワー
 I==
語I





それで終わればよかったと、今は思う。





つづく
このシリーズSS:

八幡「やはり俺の世にも奇妙な物語は間違っている」【前編】


八幡「やはり俺の世にも奇妙な物語は間違っている」【後編】





関連スレ:

この書き手のSSまとめ



 

注目記事!




関連記事
  タグ:

コメントの投稿

とあるSSの訪問者

ハヤハチ以外いらねぇなこれ


お知らせ
また、サイトを見やすいように改造しました

改造したところ:
カテゴリをあいうえお順にしました、

時折修正していきますので、今後ともよろしくお願いします

旧ブログはこちら  旧ブログ

Twitter

SSなびのTwitterアカウントです

最新記事
ピックアップカテゴリ
カテゴリ
人気記事
RSSリンクの表示
リンク
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:


※メールの打ち間違いにお気をつけください。
返事無い時は、メールの打ち間違いの可能性がありますので、再度送信していただくか、コメント欄をご使用下さい。