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サンドバッグ娘「ご主人様、わたしを殴って下さいませ!」

1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:06:44 ID:HtcPXQkE
─ ボクシングジム ─

ボクサー「シッ、シッ、シッ!」

バスッ! バスッ! バスッ!

トレーナー「ダメだダメだ、こんなんじゃ!」

トレーナー「攻めがワンパターンすぎる! もっと変化や緩急をつけるんだ!」

ボクサー「はいっ!」

バスッ! バスッ!

トレーナー「何度いったら分かる! こんな戦い方が通用するのは格下までだ!」


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2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:09:00 ID:HtcPXQkE
帰り道──

ボクサー「ふぅ……今日も叱られてばっかりだったな……」

友人「お前のボクシングって、古いTVゲームのコンピュータみたいに単調だからな」

友人「初めての相手や弱い相手ならいいが、研究されたら一気に勝率が低くなっちまう」

友人「ちったぁ頭を使えよ」トントン…

ボクサー「なんだと!?」

ボクサー「お前こそ、消極的でレフェリーからいっつも警告されてるくせに!」

ボクサー「逃げ回ったあげく判定負けとか、プロ失格だろ!」

友人「うぐっ……!」

友人「やるか!?」

ボクサー「来いよ!」

ボクサー&友人「……」

ボクサー&友人「ハァ……」
3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:11:01 ID:HtcPXQkE
行商人「ひひひ……ちょいとお二人さん」

ボクサー「ん?」

友人「なんだ、あの怪しいおっさんは?」

行商人「お二人さんにうってつけの商品があるんだが……買っていかんかね?」

ボクサー「商品って?」

行商人「サンドバッグさ」

友人「サンドバッグぅ~? 笑わせんなって!」

友人「俺たちは今、ジムで散々叩いてきたとこだっつうの! なぁ?」

ボクサー「……」
4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:13:20 ID:HtcPXQkE
ボクサー(なんだろう……この気持ち)

ボクサー(なんでか分からないけど、俺はあのサンドバッグを欲しがっている)

ボクサー(買わなきゃいけない気がする)

ボクサー「おじさん、いくらだ?」

友人「え!?」

行商人「ひひひ……一万円です」

ボクサー「買うよ……買わせてくれ!」
5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:15:20 ID:HtcPXQkE
行商人「住所を教えていただければ、後でお届けしますが……?」

ボクサー「いいよ……これぐらいなら自分で持って帰れる」ズシッ…

行商人「さすが、鍛えてらっしゃいますなぁ。毎度あり~」



友人「おいおい……正気かよ!?」

ボクサー「我ながらアホな買い物したかもな……」

ボクサー「だけど、最近スランプだったし、自宅でもちょっと練習するために、さ」

友人「まぁ……お前がいいんならいいけどよ……」
6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:17:16 ID:HtcPXQkE
─ ボクサーの自宅 ─

ボクサー「さぁて、備えつけて、と……」ポスッ…

ボクサー「ん?」

サンドバッグ「……」モコモコ…

ボクサー(な、なんだ!?)

ボクサー(サンドバッグを吊り下げて、パンチを当てたとたん──)

ボクサー(サンドバッグが変形し始めたぞ!?)

ボクサー(そ、それも……これはもしかして、女の子!?)

サンドバッグ「……」モコモコ…
7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:19:15 ID:HtcPXQkE
サンドバッグ娘「こんばんは!」

ボクサー「こ、こんばんは……」

ボクサー(サンドバッグが女の子になっちゃった……)

サンドバッグ娘「わたしはサンドバッグ娘です!」

サンドバッグ娘「ご主人様、わたしを殴って下さいませ!」

ボクサー「へ?」

サンドバッグ娘「お腹でも、胸でも、顔面でも! バッチリ受け止めてみせますよ!」

ボクサー「えええ!?」
8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:21:10 ID:HtcPXQkE
ボクサー「ちょ、ちょっと待ってくれ」

ボクサー「いきなり殴れっていわれてもさ……」

サンドバッグ娘「いつもやっているとおりにやって下さればいいんです! さぁ!」

ボクサー「いや……いくら元がサンドバッグでも女の子は殴れないよ」

サンドバッグ娘「大丈夫、わたしは頑丈ですから!」

ボクサー「頑丈だとかそういう問題じゃなくて……」

サンドバッグ娘「ご主人様は……わたしのこと嫌いなんですか?」ウルッ…

サンドバッグ娘「殴る価値もないとおっしゃるんですね?」ウルウル…

ボクサー「お、おいおい、泣かないでくれ! 参ったな……」
9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:23:14 ID:HtcPXQkE
ボクサー「分かった……じゃあとりあえず一発だけ」スッ…

サンドバッグ娘「はいっ!」

ボクサー「でやっ!」

バスッ!

サンドバッグ娘「あんっ……!」ビクッ

ボクサー(な、なんだ今の感覚は!?)

ボクサー(俺のパンチが吸い込まれるように、彼女の体に命中した……!)

ボクサー(なんという弾力……! なんという心地よさ……!)

ボクサー(今までのボクシング人生で、今みたいな感覚は一度もなかった!)
10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:25:01 ID:HtcPXQkE
ボクサー(な、殴りたくなってる……!)

ボクサー(理性では女の子を殴っちゃいけないと分かってるのに──)

ボクサー(俺のボクサーとしての本能が、この子をもっと殴りたいと訴えている……!)

サンドバッグ娘「ふふっ、我慢しなくていいんですよ」クスッ

ボクサー「!」

サンドバッグ娘「さ、どうぞ! わたしは何発でも受け入れますよ!」

ボクサー(も、もう……我慢できん!)グッ…

ボクサー「じゃあ……本格的に打たせてもらう!」
11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:27:15 ID:HtcPXQkE
ボクサー「シッ、シシッ!」

バスッ! ドドドッ!

サンドバッグ娘「あんっ! いいっ……あぁんっ!」ビクビクッ



ボクサー「シィッ!」

ズドンッ!

サンドバッグ娘「わたしのレバーにクリーンヒット……た、たまりませんっ……!」



ボクサー「シシシッ、シッ!」

ズドドドッ! ドドッ!

サンドバッグ娘「の、ノッてきましたねぇ~……うっ、ああっ……!」ビクビクッ
12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:29:32 ID:HtcPXQkE
サンドバッグ娘「少し……優しく……して……」

ボクサー「こ、こうか?」

スパパァンッ!

サンドバッグ娘「い、いいですよぉ~……ひあぁんっ……!」ビクビクッ

サンドバッグ娘「それじゃ、どんどんギアを上げていってくださぁ~い……」

ボクサー「分かった! ──シシッ、シィッ!」

ドドッ! ボグゥッ!

サンドバッグ娘「んっ……! す、すごぉい……!」ビクビクッ

ボクサー「シメは左フックだ!」

ガゴォッ!

サンドバッグ娘「あぁっ……! あふぅ……」ビク…ビク…
13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:34:50 ID:HtcPXQkE
ボクサー「しまった、大丈夫か!?」

サンドバッグ娘「体はへっちゃらですが……き、気持ちよすぎて……」ビクッビクッ

ボクサー「そ、そうか……(本気で打ってたのに、ホント頑丈だな……)」

ボクサー「!」ハッ

ボクサー(俺は今、この子に最大限の気持ちよさを与えるため──)

ボクサー(強弱さまざまなパンチを使い分けていた……)

ボクサー(そうか……そういうことだったのか!)

ボクサー(緩急や変化……やっと分かってきた!)

ボクサー(俺は今まで得意なパンチで全力で攻めることしか頭になかったが──)

ボクサー(それだけじゃダメだ! 相手だってバカじゃない! 対応されてしまう!)

ボクサー(相手の状態を見極め、最適のパンチを当てなければ……強敵には勝てない!)

ボクサー(まさか、こんな女の子に気づかされるなんてな……!)
14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:36:31 ID:HtcPXQkE
ボクサー「え、と……サンドバッグ娘ちゃん」

サンドバッグ娘「な、なんでしょう……?」ハァハァ…

ボクサー「すまないが、今すぐトレーニングを再開するぞ!」

ボクサー「もう少しでコツが掴めそうなんだ!」

サンドバッグ娘「ご主人様ったらもう……せっかちなんだから……」

サンドバッグ娘「いいですよ! わたしをたっぷり楽しませて下さいね!」

ボクサー「思う存分楽しませてやるさ……いくぞっ!」キュキュッ…

スパパパァンッ! ドスッ! ズドドッ!
15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:38:19 ID:HtcPXQkE
一週間後──

─ ボクシングジム ─

ボクサー「シッ、シシィッ! ──シィッ!」

シュパパッ! ドズゥッ!

トレーナー「よし、いいぞ! ここまでだ!」

トレーナー「力押し一辺倒のファイトスタイルが、この数日でだいぶ改善されたな!」

トレーナー「これなら格上とだって互角以上に戦えるぞ!」

ボクサー「ありがとうございますっ!」



友人(あいつ、いったいどうしたってんだ……?)
16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:40:27 ID:HtcPXQkE
友人「おい……この一週間でずいぶんレベルアップしたって感じだけど」

友人「いったいどんなトレーニングをしたんだよ?」

ボクサー「実はな──」

……

……

……

友人「ええっ、マジかよ!? あのサンドバッグが!?」

ボクサー「ああ、メシもいらないし、パンチを浴びせれば元気になるし」

ボクサー「トレーニング後に体を洗うと喜んでくれるし」

ボクサー「最高のパートナーだよ、彼女は」

友人(ちくしょう、いいなぁ……!)
17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:41:39 ID:HtcPXQkE
友人(たしか、あの時の行商のおっさん、まだ他にもサンドバッグを持ってたよな)

友人(ようし……だったら俺だって!)

友人「悪い、今日は先に帰るわ」サッ

ボクサー「お、おい!」

友人「じゃあな! トレーナーには体調不良とでもいっといてくれや!」
18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:43:28 ID:HtcPXQkE
友人「よかった……まだいた!」

行商人「ひひひ……いらっしゃいませ」

友人「俺にもサンドバッグを売ってくれ! 頼む!」

行商人「では……二万円いただきましょうか」

友人「くそ、足元見やがって……だがしょうがねえ! ほらよ!」パサッ

行商人「毎度あり……。ところでサンドバッグは──」

友人「自分で持って帰るよ! すぐに特訓したいんでな!」
19: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:45:33 ID:HtcPXQkE
─ 友人の自宅 ─

友人「えぇと……たしか、吊り下げてパンチを当てりゃいいんだよな?」ギシッ…

友人「よっと」ポスッ…

サンドバッグ「……」モコモコ…

友人「おお、本当に変形し始めた! すげえ!」

サンドバッグ「……」モコモコ…

友人(あいつのサンドバッグは目がぱっちりした元気な女の子になったらしいけど──)

友人(さぁて、俺のはどんな女の子になるのかな?)

サンドバッグ「……」モコモコ…
20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:47:55 ID:HtcPXQkE
サンドバッグ親父「ぬうんっ!」ムキッ

友人「え」

サンドバッグ親父「吾輩、サンドバッグ親父と申す者!」ムキッ

サンドバッグ親父「さぁ、ご主人よ! 吾輩を殴って下され!」ムキキッ

サンドバッグ親父「どこを殴ってもかまいませんぞ? ──さぁっ!」ムキキッ

友人「……」

友人(な、なんでこうなる、の……?)

友人「ちょっと待っててくれ」

サンドバッグ親父「いくらでも待ちますぞ、ご主人」ニカッ

友人(ふざけんなッ! あの行商人め、問い詰めてやる!)ダッ
21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:50:17 ID:HtcPXQkE
シ~ン……



友人「……いなくなってる」

友人「まるで最初からいなかったみたいに……」

友人(どうしてこうなったんだ……?)

友人(いや……。こうなることは、心のどこかで分かってたかもしれねえ……)

友人(だって、昔話とかってだいたいこんな感じじゃん)

友人(先にやった奴のマネをして後追いした奴は、大抵ろくな目にあわない……)

友人「フフフ、ハハハ……」

友人「ハハハハハ……!」グスッ…
22: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:52:43 ID:HtcPXQkE
─ 友人の自宅 ─

友人「ハハハハハ……」シクシク…

サンドバッグ親父「おや、ご主人? なぜ泣きながら笑ってるのですかな?」

友人「うるせぇぇぇっ!!!」

ドズゥッ! バスゥッ! ズドォンッ!

サンドバッグ親父「おお~! すごい! すごいパンチですぞぉ~!」ムキッ

サンドバッグ親父「さぁ、もっとです! どんどん吾輩にエクスタシーを!」

友人「なにがエクスタシーだ! くたばりやがれぇっ!!!」

ドゴンッ! ズドンッ! ドズンッ! ドバンッ! バズンッ!

サンドバッグ親父「あうお~~~~~っ! たまらんですぞぉ~~~~~っ!」ムキキッ

友人「ちくしょおおおおおおっ!!!」
23: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:54:51 ID:HtcPXQkE
─ ボクサーの自宅 ─

ボクサー「さ、今日もよろしく頼むよ」

サンドバッグ娘「はいっ! 何発でも殴って下さいませ、ご主人様!」

サンドバッグ娘「わたしは何発でも受け止めてみせますので!」

ボクサー「よぉ~し、今日はちょっと強めに打つぞ!」キュキュッ…



─ 友人の自宅 ─

友人「クソッタレめ、何発殴ればぶっ壊れるんだ……こいつは……!」ゼェゼェ…

サンドバッグ親父「さぁ、まだまだ足りませんぞ!」ムキッ

サンドバッグ親父「もっともっともっと、吾輩をブチのめしてくだされぇ!」ムキキッ

友人「うるせえええっ!!!」
24: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 01:58:20 ID:HtcPXQkE
─ ボクシングジム ─

トレーナー(ふむ、素質はあったが、どうしても直らない欠点を持っていた二人が──)

トレーナー(どうやったか知らんが、ついに殻を破ったようだ!)

トレーナー(この二人なら、世界にも通用するかもしれん……!)



ボクサー「シッ、シシッ、シッ!」シュッシュシュッ



友人「うおおおおおおおおっ!!!」ドズッ…ドズッ…



近い将来、このボクシングジムから、

緩急自在にして変幻自在のテクニシャンとノックアウトを量産するハードパンチャー

二人のチャンピオンが生まれることはいうまでもない。




                                   ─ 完 ─
25: ◆OryKfoiqhE 2014/09/22(月) 01:58:51 ID:HtcPXQkE
終わりです
26: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 06:20:38 ID:1SIqe/lI

面白かった
27: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 07:16:26 ID:amTc9Em6

スピード感あってよかった
30: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/22(月) 12:54:59 ID:nFcO2Jfk
乙、面白かった

 

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