八幡「ブラコンめ」沙希「シスコンめ」【前編】

1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:03:45.15
木曜日


帰り道。
友達とおしゃべりをしたり恋人と手をつないだりして帰路につく高校生はごまんと居る。
そして同様に、誰と話すわけでもなくただ一人哀愁だけを背負って帰路につく高校生も当然居る。
さながら残業上がりのサラリーマンのごとく。

あー、もう皆死なねーかなー。

しかし今日の俺はちゃんと目的をもって歩いている。
我が愛する妹君の為に、百戦錬磨のババアどもが徘徊する死地へと向かわねばならぬのだ。


覚悟を決め、自動ドアを潜る。
夕方時、それ即ちスーパーのタイムセール時。
部活が終わったタイミングでここに寄るとジャストタイミングなんですわ。


うん、今日の我が家は俺が料理担当なんだ。




修学旅行も終わり、秋ももうじき終わろうとしている。
俺の心には一足先に冬が到来している。

しょーがないよねー、フラれちゃったもんねー、いや嘘告白だけど。

あの一件以来俺は部室でも居心地が悪い。
雪ノ下は以前に比べると殆ど毒舌を挟んで来なくなった。最早氷の女王は氷の氷像状態。
由比ヶ浜は頑張って俺に話しかけようとする姿勢は見えるが、無理しているのがバレバレだ。
寒いぜ・・・あの部屋、冷凍ピザとか保存できるんじゃないかな。

対して今目の前に広がる光景はどうだ。
若奥様から魑魅魍魎までよりどりみどりの熱気に溢れているではないか。
あ、今日は鶏肉が安いのね。

オーケィ。
ホットでクールにレッツパーリィだぜ。
今日は親子丼に決定だな。
間を取って兄妹丼とか誕生させちゃるよ。

「「あ」」

鶏肉に手を伸ばし、触れようとしたところで別の何かに触れた。人の手だった。
指先がちょこーっと触れただけだが、相手はすごい勢いでバッっと手を引いた。

川崎沙希
2年F組屈指のブラコンがそこに居た。

3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:06:18.71
「ひ、比企谷か・・・」
「おう、お前も夕飯の買い出しか?」

やべーよ超ビクついてるよ。
思い返せば文化祭が終わったくらいからこいつは俺に対して妙によそよそしい。

こいつの家と俺の家は、駅にしてみれば近い。
学校帰りのタイミングでタイムセールをやっているスーパーで出くわす確率も否定するわけじゃない。
しかし正直なところ、コイツに限らず誰とも会いたくなかったなぁ・・・
最近ステルス機能調子悪くね?

「う、うん・・・今日はあたしが料理担当でね・・・」

マジかよ、比企谷家とカブってんですけどー真似すんなよー。

「そうかそうか・・・で、お前も鶏肉?」
「え?あんたも鶏肉?」
「鶏肉」
「鶏肉」

意味不明なニクニクしいトークの後、一呼吸。
出会い頭は意図せぬ相手と出くわしたためか挙動不審だったがすぐに落ち着きを取り戻したようだ。
その一瞬、ふと悲しげな目をこちらに向けた気がした。
・・・気がしただけか?出会ったのが俺ってのがそんなに悲しい事なのか?心当たりは・・・ありすぎるわ。

「いやー、今日は親子丼にしようと思ってなぁー。小町も肉大好きの肉食系なもんでねぇー。」
「ん・・・大志がから揚げ好きだからさ。今日はゼミもないし、タイムセール狙って少し時間潰してたんだ。」

そういって二人とも同じ商品に手をかけようとする。

「「・・・」」

あれ・・・?もうこれ1パックしかなくね?
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:07:29.65
その時、二人に電流走る。


「へ、へぇー・・・でもよぉ、大志も中学3年だろ?思春期真っ盛りジャン。油モノばかり食べさせるとニキビ増えちゃうんじゃないの?こっちの方がいいって。」
そう言って俺は隣に鎮座していた豆腐を差し出してやる。
クラスメイトの弟の顔面事情をさりげなく気遣ってやる俺カッコイー。

「お、おいおい・・・それはあんたの妹さんだって同じだろ?高校入学前にお肉ばっかり食べてたら体重気にしちゃうんじゃないか?あたしなら気にするね。だからこっちにしときなよ。」
あっさりスルーして俺にアスパラガスを差し出してきやがった。しかもこっちから視線逸らさずに取りやがった。
何それ超テキトー。何でもいいんかい。
にゃろう・・・譲らない気か・・・。

「甘く見ないでくれよ、俺が妹にそんな重荷を背負わせるような雑な料理するわけないだろ?健康管理にはバッチリ気を使ってるだからこの肉は比企谷家のもんだ。」
ちょっと裏声になっちゃったぞ。
「あんたが作るのか。わざわざ気を遣ってもらってるとこ悪いがあたしだって女であり姉なんでね、弟の肌の手入れくらいお手のもんなのだからコレはウチの食卓のから揚げになるの。」
お前もちょっと裏声になるんかい。

「いい加減にしなさいよぉ!?どうしてチミは弟の事になるとそんなムキになるんですかそろそろ突き放してみるのも愛なんじゃないのブラコンぼっちが!」
「あんたに言われたくないんだよいい年こいて妹中心の食生活で恥ずかしくないのかシスコンぼっちめ!」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:08:45.70
一触即発の睨み合い。
しかし、こいつは割と押しに弱いと思ってたんだがな・・・。
ブラコンこわっ!近寄らんどこ・・・って今すげぇ近いじゃん。

ははぁ・・・さては俺の妹への愛を目の当たりにしてブラコン魂が炎上しちゃった系だな?
いいだろう、ここは白黒はっきりさせて───

「「ああっ!?」」

鶏肉の霊圧が・・・消えた・・・?

振り返る。
そこに鶏肉はあった。
(バ、ババアーーーーーー!?)
名も知らぬババアの手の中に。

そして俺たちが無駄な言い争いをする原因となった"ソレ"は最後の1パックだった。
鶏肉1パックから始まった戦いはババアの不戦勝で幕を閉じた。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:09:33.70
「なんなのお前、そんなにうちの食卓邪魔したいの?お前のものは俺のもの理論なの?ジャイアンなの?・・・はぁ・・・」
「そんなわけないだろ結局手に入らなかったんだから!・・・はぁ・・・」

お互いお目当てのセール品は全く買えなかったようだ。
スーパーの前で項垂れる俺とブラコン女。

「大体あんた専業主夫志望とか言ってたけど、本当に料理できんの?」
「当たり前だ。なんなら小町の弁当を毎朝でも作れるわ。寝坊の多いお前にゃ無理かもしれんがな。」
「人の事言えんの?あんただって結構遅刻してんじゃん。」

い・・・痛いとこ突くじゃないの・・・
だが俺は比企谷八幡だ。天下一シスコン会が開催されたら千葉で2位くらいには食いこむ自信がある。
こんなブラコンに押されてなるものか。ってか1位誰だよ!
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:10:43.34
「いつもどこで食ってるか知らないけど、購買でパン買ってるとこくらいは見たことあるよ。そんなあんたが弁当だなんて。」
「なんで見たことあるんだよ。それってお前もパン買いに来てるって事じゃねーか。」
「何?そんなにあたしの作った弁当が見たいわけ?疑ってるの?」
「お前こそ俺の弁当スキルを疑いまくってるじゃないか。」

舐めんな、最近の楽しみは毎週月曜のソーマなんだぜ。


「「・・・・・」」

しばしの沈黙。



「ブラコンめ」
「シスコンめ」



「「明日が楽しみだなぁ?」」

こうして木曜日が終わる。
沈黙のコックが2匹、厨房という名の檻から解き放たれた。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:25:53.48
金曜日


午前の授業が終わり昼休み。2年F組で異変は起こった。


我がクラスには2人のぼっちが確認されている。


比企谷八幡
川崎沙希


ぼっちは本来お互いに干渉し合わないからぼっちであるからして、イベント等以外ではこの2人が教室内で向き合う事はほぼ無い。
はずだった。


最初に動いたのは川崎の方だった。
鞄からお弁当箱らしき包みを取り出し、迷いなくある方向へ歩いていく。
それだけなら誰も気に留めないのだが、向かっていく先にはもう1人のぼっちが座っていた。
いつもなら真っ先に教室から姿を消し、いつの間にか午後の授業に居る男。

比企谷は川崎の行動を視認すると鞄からお弁当箱を取り出し机の上に置く。

そして2人は向き合った。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:26:19.23
一瞬で教室内が静まり返った。
男女がお互いのお弁当を出し合って見つめ合うなんて光景は、普通に考えれば冷やかしの1つや2つ飛ばされてもいいだろう。
普通であれば。



「・・・・・」
「・・・・・」



(((見つめ合うどころか睨み合いなんですけどぉー!?)))


「席、借りるよ。」
比企谷の前の席に居た女子に一切目もくれず川崎が言い放つ
「は、はひぃ!?」
猛スピードで立ち退く彼女。

そしてやっぱり一切目を逸らさずに座る川崎。
対して一切目を逸らさずに微動だにしない比企谷。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:26:45.20
(やべーよ怖いよ何なのアレ?ロマンチックのかけらもないんだけど!つーか何でこの組み合わせ!?)
(川崎さん普段から怖い印象だけど今日は一段と怖くいらっしゃるー!)
(比企谷お前いつもの腐った目はドコいったんだよ!?今日は腐った悪魔の瞳じゃねーか!いつもの目は擬態なのぉ!?結局腐ってるけど!)
(そう言えば川崎さんは何かヤンキーっぽいし、比企谷はいつぞや凄い暴言を平然と吐いたらしいし・・・)
(う、動けねぇ!誰か金の針使ってくれぇ!教室内全員石化じゃねーか!)


注目の2人はしばらくするとお互いの弁当を相手側に差し出す。
交換されたお弁当の包みを全く同時に開いていく。



「・・・・・」
「・・・・・」



視線を逸らさずに。



(((弁当を見ろよぉぉぉぉ!!)))
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:28:17.41
(視線を逸らしたら死ぬの?石になるの?確かに俺ら身動き取れないですけど!)
(何で全く同じ動きなんだよフュージョンかよ!魔人はお前らの方だろ!)
(こんな精神と時の部屋はイヤだぁー!超帰りてぇー!)


お弁当の中身が露わになる。
その出来栄えは小さな弁当箱に彩り良く丁寧に詰められた、誰が見ても素晴らしい中身であった。
少なくとも見た目だけでは勝敗を付けられない。


「へぇ・・・言うだけはあるじゃないか。正直驚いたよ、あんたにこんな腕があるなんてね。」

(いや、一切弁当に目ぇ向けてないじゃん!いつ中身確認したんだよ確かにすげぇ小奇麗だけど!A型かよ!)
(つーかあれ比企谷が作ったの!?ふざけんなよ私が作ったのより10倍は美味そうじゃないか[ピーーー]よ!)
(俺のなんてばーちゃんが作った弁当だぞ!かーちゃんですらないんだぞ!)
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:29:05.54
「よせよ、お前の腕前だって中々だぞ?まぁ俺が作ってきたのは小町の弁当を完璧にコピーした弁当だし、当然っちゃ当然よ。」

(手作り弁当の交換会だとぉ!?何だコレ普通なら超羨ましい状況なのに全然羨ましくねぇぇぇ!)
(完璧にコピーってどういう言い回しだよ、Ctrl+AからCtrl+Cしたの?そして弁当箱クリックしてCtrl+Vしたの?)
(つーか小町って誰だよ!)


「随分気合入れてくれたんだ、ご苦労さん。あたしのは大志の弁当を昨日の夕飯のありあわせで作って、更にそれの余りで作ってきたてきとーな弁当だけど。」

(ありあわせの更に余りって何だよ!?それビックリマンチョコのシールのおまけでついてくるウエハースの、更に下に敷いてある厚紙レベルじゃねーか!)
(それだと普段大志クン何食ってるんだよ!どんだけいいもん食ってんだよ小指骨折しろ!)
(つーか大志って誰だよ!)
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:30:02.60
言いたいことを言ったのか、2人は箸をつけ始める。


(あんだけ顔が近いのに全然ドキドキした光景じゃないんですけどむしろハラハラするんですけど!)
(何で食ってる時すら睨み合い!?)
(お前らいい加減弁当見ろよ!顎に第三の目でもついてんのか!)

どれくらい時間が経っただろうか。
お互い完食し、ようやく箸を置いたようだ。



「「やるじゃない」」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:31:08.50
「味の方も想像以上だったよ。犬のエサレベルと踏んでいたんだがね。」

(川崎さーん!褒めるのかバカにすんのかどっちかにしてー!)
(フェイントかけていきなり近大パンチ仕込んできたよこの人!)


「残念ながら家で飼ってるのは猫でね、ドッグフードは持ち合わせてねぇんだ。」

(かわしたぁ!?立ちパン見てからしゃがみ回避余裕でした!?)


「そいつは俺が妹の為に作ったブツの模造品だぞ?不味いわけないだろ。そっちの弁当こそ驚きだよ。俺はてっきりタッパーにウォッカをブチ込まれてくると思ってたぜ。」

(そのままカウンターのしゃがみ大パンチ!?俺たちしゃがみ大ピンチ!誰一人立ち上がれねぇ!)
(それもう弁当じゃねーよ!丸々酒だよ!進学校で急性アルコール中毒患者を出すつもりか!)
(って妹?さっき言ってた小町って子は妹?)


「大志の弁当のついでって言っただろ。あんたウチの弟をアルコールランプか何かと勘違いしてんじゃないの?」

(立ちパンもフェイントだとぉ!?そのまま直前ガードでやりすごしたぁぁぁ!)
(・・・え?大志ってのは弟?弟って言った?)
(これって・・・)
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:31:40.81
(((ただのシスコンとブラコンのぶつかり合いじゃねーか!!)))


(ちょ・・・え・・・えぇー!?あんなにガン飛ばし合っておいて内容が妹と弟への愛情比べ!?)
(何でこいつらハイレベルな弁当使ってローレベルな争い繰り広げてるわけ!?)
(そんなみみっちい争いの余波ごときで動けない俺ら何なんだよ!あと大志小指燃えろ!見たこともないけれど!)
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:35:13.50
由比ヶ浜は何が起こったのか判らないのか、オロオロとしている。
三浦は女王の威厳はどこへ行ったやら、涙目になっている。トラウマでもあるんだろうか。
葉山は普段のイケメンっぷりからはかけ離れて、変な顔で口を半開きにしている。
海老名は多少余裕があるのだろうか、真剣に携帯で動画撮影している。
戸塚は真っ直ぐ2人の元へ歩いて・・・・歩いて!?



「はい、そこまでだよ2人とも」


(((と、戸塚ぁぁぁぁぁぁぁぁ!?)))
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:35:41.78
2人の間に割って入って来た。



「何かの勝負事だと思うんだけど、そんなんじゃ決着つかないよ?」

(ど、ど、ど、どういう事だ?石化してたんじゃないのか?)
(というか今まさに悪魔の瞳×4に挟まれてるんだぞ!?状態異常無効なのか?)
(まさかリボンか!?リボン装備しているのか!?)
(リボン装備戸塚だとぉ!?もっとやれ!)
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:36:10.88
「・・・・・」
「・・・・・」

争いが平行線なのを理解したのか、2人の肩から力が抜けていった。
どうやら一時休戦のようだ

「だからさ、来週は僕とお弁当一緒に食べよ?2人で交互に作ってきて、週末に僕が判定するの。」

「・・・ふむ」
「・・・・ん」

「も、勿論、僕もお弁当持ってきて分けてあげるよ?それに・・・僕も八幡や川崎さんと一緒にお昼食べたいし・・・ダメ・・・かな?」

(((と、戸塚ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)))
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:37:38.86
「・・・戸塚がそこまで言うなら聞かないわけにはいかないな。」
「・・・ふん。じゃぁ月曜はあたしから行かせてもらうよ。」

そう言うと2人は教室を静かに出て行った。

(((た、助かった・・・)))


(スゲーよ戸塚。あの状況をたった数秒で打破しやがったマジ天使)
(しかも来週以降の悪魔の晩餐会をナチュラルに普通の食事会に落とし込んだマジ天使)
(悪魔2匹を一瞬で抑え込む戸塚マジ天使)
(ヒキタニ君と川崎さんにヤキモチ焼いて割って入ってくる戸塚君・・・ブッハァ!)
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:41:01.33
放課後


「川崎さんお待たせ。」
「いや、あたし部活やってないから時間は平気だよ。」
「僕も今日は用事があるって言って、抜け出してきちゃった。」

あたしは戸塚に呼び出されていた。


「お昼は急にごめんね。」
「気にしてないよ、大丈夫。」

そう、別にあれは比企谷を憎んでやった行動ではない。

「うん、だと思った。」

そして戸塚はそれを見抜いていたようだ。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:41:50.35
「川崎さん、ここ最近八幡が元気ないの気づいていたでしょ?」
「まぁね、修学旅行が終わった辺りからどうも変だった。平然を装っているけど、たまに辛そう。」


戸塚は比企谷に対してかなりの信頼を寄せている。
そんなヤツだからだろうか、あたしは素直に思っている事を言った。
多分他のヤツ相手だったら言えないだろうなぁ・・・恥ずかしくて。
これじゃまるでいつもあいつを見てるみたいじゃないか。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:43:18.46
「昨日の帰り、スーパーであいつと会ったんだ。相変わらず元気なさそうだったけど妹の事になったらちょっとだけ気力が出てきたみたいでね。」
「小町ちゃん、川崎さんの弟さんと同級生だっけ?そっかぁ、それで・・・」

どうやら察してくれたようだ。

「うん、だからちょっと対抗心を煽って、あいつに本気になってもらおうと、ね。小芝居をうって出たのさ。」

まぁちょっとだけ・・・ほんのちょっとだけあたしも本気だったけど。鶏肉目当てだったのは本当だし。


「ハ、ハハ・・・あれ芝居だったんだ・・でもそうだね。あんなに活き活きしてる八幡見るの、久しぶりだった。」

方法はちょっとアレだが、どんな事であれあいつが本気になってくれた。
あの弁当美味しかったな・・・ちょっと悔しい。
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:44:05.38
「・・・八幡はね・・・あんまり関心のない人に対しては結構素直に言っちゃう人なんだ。」

・・・なんとなく判る。あたしもそういう相手にはズケズケと言うところがある。

「でもね・・・ある程度仲良くなった相手には言葉選んじゃうんだよ。」

・・・・・うん。

「そして本音は・・・本当に辛い事や悲しい事は誰にも話さないんだ。」

・・・すごいな戸塚。そこまで見抜いているんだ。

「だから今日のお昼の事は、僕にとってチャンスだったんだ。」
「チャンス?」
「うん、八幡と本当の友達になれるチャンス。八幡が本気になって向き合ってくれるチャンス。」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:44:57.92
「昼の一件から既に察していたっていうのかい?あんた相当すごいよ・・・。」
あいつ、あたしを突き放す気満々だったし。

「そりゃ最初はちょっと怖かったかな。でも川崎さん、八幡が言い返すのをちゃんと聞いてあげて同じだけ返してあげてた。」
「・・・うん。」
「八幡の言い回しに、ちゃんと同じ位置に立って答えてた。」
「・・・うん。」
「八幡怖い目してたのに、ちゃんと目を逸らさないでいてあげてた。」

あ、それは単純に逸らせなかっただけ。
本当はすごい怖かったの。

「そういうの、僕にはできないから・・・川崎さんと2人がかりなら八幡にもっと近づけると思ったんだ。」
「そっか・・・」
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:45:42.99
なんとなくだが見えてきた・・・。

「だからあいつはシスコンなのかなぁ・・・」

あのシスコンの正体が。

「どういう事?」
「あいつが今一番心を許しているのは妹なんだと思う。多分雪ノ下や由比ヶ浜以上に。」
「うん。」
「要するにあいつは一度心を許した相手にはすごい甘くなるんだと思う。・・・だから必要以上に他人と仲良くならない。」
「あ・・・でもそれじゃ結局・・・」
「そ、だからあいつはシスコンのまま。」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:46:20.55
恐らくあいつは、あたしとは全く違う"他人との距離の取り方"をしている。
あたしは高い壁を作って周囲を見えないようにし、無関心を貫くやり方。
あいつは深い溝を作って周囲を見つつも、踏み込ませないやり方。

そうだ・・・あいつは周囲をしっかり見て、見渡して、観察した上で、それぞれに対応した深さの溝を掘っているんだ。

強ぇ・・・周囲を見ないやり方をしてきたあたしじゃ、きっと耐えられない。
だけど・・・だからこそ・・・同時に墓穴を掘る事を恐れている。

踏み出してしまえば自分も落ちてしまう。深く掘った穴を埋めるには時間がかかりすぎてしまう。
そしてちゃんと踏み固めなければ・・・やはり崩れ落ちてしまう。

あいつにとって妹は、溝の内側に居る唯一の存在なんだろう。
それこそがコンプレックス。あいつの正体。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:47:24.26
そんな事を戸塚に話してみると

「そっかぁ・・・うん、僕が感じてたのと大体同じ。ギリギリのところで線を引いた部分があったんだと思う。」

やっぱりか・・・。
男友達でもこの有様じゃ、異性のあたしは溝を埋めるのにどれだけかかるか・・・

「来週一週間で飛び越えられるかなぁ。」

!?

「土日でどれだけ助走つけられるかが勝負だね。」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:47:52.77
・・・驚愕した。
この戸塚彩加という人物は、ハナから溝を埋めるつもりなんてなかった。
どれだけ溝が深かろうとお構いなしな手段に出ている。
チャンスってそういう事か・・・こいつはワンチャンスで内側の世界へ行くつもりだ。

全く・・・あたしの周りの男はどうしてこう強いヤツばかりなんだろうね・・・


飛び越えるかぁ・・・それなら・・・

「なら、サポーターが必要だな。」

いっそのこと羽を付けて飛べばいい。別にルールとか無いし。
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:51:21.20
なにこれおもしろいんですけど
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:52:33.59
奉仕部


「・・・・・」


今日の彼は最初の挨拶以外一言も発していない。
それだけなら今までも似たような事はあった。

修学旅行以来、彼とは部室においてもあまり会話していない。
判っていた、話しかけようとしていないのはむしろ私たちの方だ。
心がモヤモヤする。彼と私たちの距離感は今、大きな亀裂によって離れてしまっている。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:53:37.04
しかし今日はちょっといつもと違っていた。

彼はいつもは文庫本を黙々と読んでいる。読書という点では今日も変わりはない。

"放課後キッチン"
"今日と明日のお弁当レシピ"
"お手軽ランチ教室"

書物の内容を除けば。
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:54:06.40
彼は専業主夫という馬鹿げた進路希望を望んではいるが、多少の料理スキルは持ち合わせている。
怠惰なこの男の事だ。それ以上の能力は余計だと判断して今まで一定の能力をキープしてきたんだと思う。
それが何故今になって?

「ヒ、ヒッキー・・・川崎さんとの勝負・・・ちゃんと続ける気なんだ。」

川崎さん・・・?勝負・・・?

「あぁ、あいつにだけは絶対に負けるわけにはいかん。」

負けるわけにはいかない・・・ですって?
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:54:36.32
私は小声で由比ヶ浜さんに話しかける。
「あの男が負けたくないだなんで、何があったのかしら?」

"負ける事に関しては最強"を貫いてきたこの男から、明確な勝利への渇望が湧き出ている。

「今日、川崎さんがヒッキーにお弁当渡したんだよ・・・それでヒッキーも川崎さんにお弁当渡したの。お互いの手作りみたい。」

一瞬言葉を忘れそうになる。

「まさか・・・ありえないわ・・・」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:55:18.12
比企谷君が女の子と手作り弁当を交換?
自分でもよくわからない衝動に駆られる。

「そりゃあたしもね、最初は川崎さんがヒッキーの所へお弁当持って行った時はびっくりしたんだけど・・・」
「したのだけれど・・・?」
「全然その・・・イチャイチャーみたいな空気じゃなくて・・・既に険悪ムードだったの・・・教室の全員が動けなくなるくらい・・・」

ますます意味が判らない。


「それがね・・・なんかわかんないけど川崎さんとケンカ・・・?してるみたいで・・・」
「喧嘩・・・?あまり穏やかではないわね・・・それが何故料理資料を読んでいる事やお弁当に繋がるのかしら?」
「あ、うん。ケンカの原因はわかんないんだけど内容は判るんだ・・・ハハ・・・」
「・・・?」


・・・・・
・・・・
・・・
・・
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:56:12.58
「呆れた・・・」
「ハハ・・・まぁ・・・そうだよね。」

元々妹さんへの歪んだ愛情が強烈な男とは思っていたけど、まさか対抗馬が居るとは。

シスコン、というカテゴリでは私も身に覚えが無いわけではない。
完璧な存在である姉が私にはいる。故に劣等感を感じることもある。
これも一種のシスコンのうちなんだろう。


しかし同じシスコンでも私と彼は全く違う方向性だ。彼はこれでもかと言うくらいに溺愛している。
そう、私と彼が似ているわけではない。

彼が妹の話をし始めると、大体の人間は引いてしまう内容だ。
だからこそ、全く引かずにぶつかってくる存在が居る事が意外だった。
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:57:05.81
少し・・・逸らしていた目を向けてみよう。
悔しいからではない。決して。

「ア、アハハー・・・あ、あたしもお弁当一緒に持っていこうかなー・・・なーんて・・・」
「そうだな、作れたらな。」
「はうぅ!」

由比ヶ浜さん、3秒で撃沈。

「あら、私はお弁当くらい作れるわよ。」
「お前じゃ無理だ、勝負にならん。」

迷いなく返してきた。

「どういう事かしら?私の料理があなたのそれに劣るとでも?」
「料理の出来がどうこうじゃねーんだ。お前、姉に対して手作り弁当作れるか?」
「・・・・・無理ね。」

私は試合放棄した。

「ゆ・・・ゆきのんがあっさり沈んだ!?」
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:58:03.29
「そういう事だ、これは兄の意地を賭けた負けられない戦いなんだよ。」
「ものすごくしょーもない戦いに見えるんだけど・・・」
「低レベル極まりないわね・・・」

くだらない・・・けど・・・そんなくだらないやり取りを久しぶりにやった。
だから今日の所は私の負けにしてあげる。
姉さんにお弁当作る機会は今後無いでしょうけど。

「そんなわけだしよ。他の事ならともかく、この勝負に限っては俺1人で挑まにゃ意味がないのさ。」

あ・・・

「んじゃそろそろいい時間だしけぇーるわ。またな。」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:58:40.84
「ゆきのん・・・あれって・・・」
「・・・えぇ。」


"他の事ならともかく"


「他の事だったら、ちゃんと頼ってくれるのかな。」

由比ヶ浜さんが私の気持ちを代弁してくれる。

「だといいわね・・・」

こんな距離になったって、しっかりと、彼はこちらを見ているのだ。
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:59:06.80
「それにちょっとだけ、元気になった気がするんだぁ。」
「お昼の話かしら?」
「うん。確かにその・・・トゲのあるやりとりだったけど・・・アハハ・・・」

まぁ・・・まだちょっとぎこちない私たちだけれども・・・それでも・・・
今日はほんの少しだけ、奉仕部が以前のような空気に戻った気がした。
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 19:59:54.50
日曜日

先週の一件以来、俺は鈍った料理スキルを磨きあげるべく奮闘を続けている。
金、土曜と一心不乱に献立を頭に叩き込み、今日から実践開始だ。
恐らく川崎家の事だ、普段ゼミがあるとき以外は川崎本人が料理担当していると予想される。
対して比企谷家はたまに俺が担当するくらいで殆どが小町担当だ。

ま、まぁそれでも負ける気はしないけど?足元がお留守になる前に補強くらいはね?

「お兄ちゃんおはよ~・・・ってお兄ちゃんが日曜なのに小町より早く起きてる!?しかも朝食作ってるー!?」
「おう、おはようさん。ちょっとばかし理由があってなー。」
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:00:33.05
小町には今日から一週間、俺が料理を担当することを伝えた。
ゼミの日は仕方ないので、その日だけは自分で作るとも伝えた。

「お兄ちゃん急にどうしたの?そりゃお兄ちゃんの料理食べられる機会が増えるのは嬉しいけど。あ、今の・・・」
「小町的にポイント高い、だろ?まぁちょっとな。今週の火、木、それと金曜日は弁当作っていかないといけねぇんだ。」
「お、お、お兄ちゃんがお弁当作り!?ま、まさかとは思うけどそれって誰かと一緒に食べるって事!?」
「あぁ、その通りだ。」

予想通りの反応どうもありがとうよ。
その後ちょっと可愛いニヤけ面になることも想定済みだ。

「へぇ~、それってもしかして~、結衣さんと一緒に食べるの~?それともクラス跨いでまで雪乃さんの所へ行くのぉ~?」
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:01:01.05
全く予想を裏切らないマイシスター。だが俺の答えはきっと小町にとっては変化球だろう。

「いや、川崎と戸塚。明日は川崎が作ってきて、そっから交互に作る。」
「ほわっ!?た、大志くんのお姉さんとですってー!?しかもお兄ちゃんに対してお弁当を作って来るですってー!?って・・・戸塚さんも?」
「あぁ、明日から一週間、川崎と弁当勝負だ。戸塚はそのジャッジ。」

まったく珍しい組み合わせもあったもんだ。

「まったく珍しい組み合わせもあるもんだねぇ~」

何コレ、当たり前のように心読んでるよこの子。サイコメトラーなの?EIJIなの?触れられてもいないんですけどぉー?
ハッ!?もしかして逆!?俺がサトラレ!?だから皆して俺が何もしてないのに『うわ何あいつキモーい』とかそんな目で見てたわけ!?
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:02:34.21
「しかし第三勢力か~。小町の視界に入らないところで着々と力をつけていたとは驚きだよ~。」

なんだよ第三勢力って。ジャンプ・サンデーの間に入ってくるマガジン的存在?
確かに川崎のキャラ的にはマガジンっぽいけどさぁ。
どっちかっつーと俺は戸塚とBOYS BEだよ!君のいる街にぬぷぬぷっとアゲインしたいよ!
そのうち第四勢力にチャンピオンが来るの?
フジケン連載最中にエイケン始まっちゃうような気まずいぽわぽわした存在なの?それとも背中に鬼背負ったモンスター勢力?
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:03:24.05
やべえ彩ちゃんカッコいい……
惚れるわ、いやすでに惚れてたわ
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:03:24.26
回答者の居ない質問攻めを虚空に投げかけていると小町の携帯が悲鳴を上げ始めた。

「小町ぃーメールだぞー。」
「あいあーい。」

携帯をぽちぽちいじくりまわしている小町を横目に朝食を並べる。さっぱりとした和食だ。

「準備できたぞ。いつでもどうぞ。」
「ちょっと待っててー。一緒に食べよー。」

こういう事サラリと言うところでポイント高いアピールしない所がポイント高いわ。
なんか胸のこのへんとかあのへんとかがキュンってなっちゃっただろキュンって。


「「いただきまーす。」」
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:04:18.74
「あ、お兄ちゃん。小町今日お昼前くらいから友達と会う事になったの。」
「あいよー。弁当はいるか?昼前だったら一緒に作っちゃってもいいけど?」
「ほんっとそのポイントの高さ他の人に向けてあげられないかなー。ま、今回は大丈夫だよ。色々あって、相手が奢ってくれるみたいだし。」
「あー、もしかしてさっきのメールってその事か。わかったよ、夕飯は戻ってくるの?」
「うん、そこまで時間掛からないよ。」
「そーかぁ。今日は親2人揃って休日出勤みたいだし、夕飯のリクエストあれば聞くぞ。」

まったく不憫なものである。
カレンダーが赤い日に職場に足向けるなんざ、考えただけでも死にたくなる。働きたくねぇー。
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:05:00.32
「そうだなぁー・・・ドリアが食べたい!」

完全にサイゼ脳だよこれ。サイゼ舌だよこれ。ミラノ風の追い風に乗ってきちゃったよこれぇ。

「ま、今日は時間たっぷりあるし・・・299円の挑戦状受けてやるよ。」
「おぉー、マジですか。お兄ちゃん本気だなぁ・・・これはひょっとするとひょっとするかも・・・」

小町が小声で何かブツブツ言っている。だがそれくらいの挑戦は受けて立たねばこの一週間、勝ち残れない。
あ、弁当用のちっさいグラタンとかに応用できるかも。一緒に作って試してみよ。
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:05:49.18
「それじゃ、いってきまーす!」
「おぅ、いってらっしゃっせー。」

さて・・・具は何にすっかな。
エビかナスか・・・キノコもありかな。

久しく感じていなかった微かな充実感。
いつも無気力を装い、"それなりに"を目標点にしていた自分が、何かに本気に取り組んでいる事に。
この時俺は気づいていなかった。


そして俺たちの弁当ウォーゲームが始まる。
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:06:48.30
月曜日

「うわぁ~。改めてみると川崎さんのお弁当綺麗に整ってるね。・・・うん、それに美味しい!」

先攻は川崎のターン。
戸塚は自分の分は用意しているようで、比企谷と川崎自身の2人分のお弁当が拡げられている。
ジャッジである戸塚は自分のお弁当の具を少しずつ交換しながら食べている。

「まぁね、裁縫とかと一緒で整えるのは得意なんだ。」
「しっかし大志にはちょっと物足りないんじゃないのー?中学生男子なめんな。」
「いいんだよ大志は好き嫌いない子だし。下手に量が多いだけよりも、栄養価が高い方が頭も体も動けるんだよ。」
「つーかなんだよこのアスパラガスとミニウィンナーを串で連ねたヤツ。爆竹みてぇな絵ヅラじゃねーか。」

(何でいちいち攻撃しないと食べられないんだよ小姑かお前は!)
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:07:15.55
「よく子供がカエルで遊んでるだろヒキガエル。」
「完全に俺への当てつけじゃねーか!大志関係ねーよ!何でお前が俺のトラウマネーム知ってんだよ!爆破テロか!?」

(聞きたくもねぇトラウマ発掘されたー!果てしなくどうでもいいんだよそんな個人情報は!)

「まぁまぁ八幡。物足りないなら僕のサンドイッチいる?」
「いる!超いる!食べさせてください!」
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:08:15.62
火曜日

「八幡のお弁当は可愛らしいね。あ、このミニグラタンも手作り?すごいなぁ。」

後攻は比企谷のターン。
本人の見た目とは裏腹にどうやら可愛さアピール全開のようだ。

「そりゃ小町用の弁当だしな。あいつに無骨な中身の弁当を広げさせるわけにはいかねーさ。」
「馬鹿じゃないの?いちいち周りの目なんか気にしちゃってさ。」
「ったくお前ってヤツは。お前みたいなのが周りがEXILEの話題で盛り上がってる中で、一人だけSADSあたりのファンで会話の輪に入れないんだよ。」
「時代背景が古いんだよ!冷たい地下室にブチ込まれたいの!?」

(結局清春好きなんかい!図星なの?会話の輪に入れなかったの?きっとファン居たって!EXILEと方向性がちょっと違っただけでちゃんと居たって!)
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:08:46.33
「誰が硝子の少年だよ。俺のガラスハートを砕くつもりか?」
「それ違う少年じゃないか!どいつもこいつもミーハーぶりやがって!」

(やべーよ超ムキになってるよ!こっちもこっちでトラウマ発掘しちゃったよー!そっちも古ぃーよ!)

「まぁまぁ川崎さん。僕はちょっと興味湧いたかな。」
「ほんと?今度CD貸すよ。」
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:09:15.05
水曜日

川崎のターン。

「あ、今日はちょっと男の子っぽい内容だね。」
「ま、まぁね。そんな日もあるよ。」

(対抗心燃やしまくりじゃないですか・・・)

「あ、このハンバーグ、中にチーズが入ってるんだ。美味しいー。」
「てっめこのチーズどうせアレだろ?裂けるチーズなんだろ?さきさき。」
「全然うまくないんだよ!何であたしの名前と弁当の内容が直結するんだよ!あとさきさき言うな!八つ裂きにされたいの!?」
「おいやめろ、それもうさきさきじゃなくてザキだ。」

(やめてぇー!教室が血の海になるぅー!もうお肉食べられなくなっちゃうー!)
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:09:42.84
木曜日

比企谷のターン。

「今日のお弁当、なんだかちょっと大人っぽいね。野菜多めだぁ。」
「おう、レパートリーは豊富な方がいいからな。ドレッシングもあるぞ。」

(見た目に変化つけるのもう義務なの?やらなきゃいけない事なの?)

「しそ風味のドレッシング?僕好きなんだぁ。」
「知らないなら教えてやるけど、犬って肉食なんだよ、HACHI。」
「HACHIってなんだよハチって!昨日の仕返しか!?そういう事は渋谷駅前に俺の銅像立ててから言いやがれ!」
「目の腐った銅像を集合場所にする人の身にもなりなよ。」

(ソレもうただのカルト集団じゃねーか!あるわけねぇだろそんな銅像!)
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:10:32.06

(つーか週頭の頃はまだ妹弟バトルっぽかったのに後半の方はもう敵しか見てねぇじゃねーか!)
(前半でお互いのトラウマ発掘したのがそんなに堪えたの?お互い一撃必殺だよこれ!)
(こえーよあいつら、目ぇ合わせただけで過去のトラウマ見抜かれるとか恐怖以外の何物でもねーよ!)
(ぼっち同士が徒党を組んだらどんな事になるか・・・その片鱗を垣間見てしまった・・・)
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:11:52.05
そして最終日

「じゃあ今日は最後だし、場所を変えよ?」
「そうだね、あんたも無様に負ける様を他人に見られたくないだろ?」
「ふざけんなよ何で俺が負ける事前提なんだよ。」

そう言って3人は教室を出て行った。
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:14:13.01
1週間もその光景を目にしてきたからか、居なくなったらなったで少しだけ寂しさが残る。

「なんていうか意外だったねー。」
「そうだねー。最初はあのシスコンっぷりとブラコンっぷりにちょっと・・・いやかなり引いちゃったけど。」
「なんだかんだであの3人のトークは面白かったなぁ・・・会話だけなら面白いんだけど・・・目が・・・」
「あぁ判る、比企谷と川崎さんが言い争ってそれを戸塚が抑え込む様式美みたいな?」
「いやー・・・でもやっぱりあの2人はちょっと怖いかな、私。」
「川崎さんはともかく、比企谷なんかにお弁当の内容で負けたのはホントにムカつくわ・・・マジキモい。」

ひそひそとだが、思い思いの言葉を語り合っている。
もうどっちが勝つかなんて、どうでもいいのだろう。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:15:16.06
屋上

「うん、ちょっと寒いけど風もないし、天気もいいから問題ないかな。」

太陽にさらされた戸塚の白い笑顔が眩しい。
最初から屋上で食べるのを決めていたのか、戸塚はビニールシートを持ってきていた。
3人でシートを広げ腰を下ろす。

短いようで長く感じた1週間だった。
待ってろ小町。お兄ちゃんが勝利を持ち帰ってやるからな。
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:15:50.32
俺と川崎が持ってきた弁当は、先週の金曜日の時とほぼ同じものだった。
ふっ・・・判ってるじゃないか川崎。

「最初と同じ弁当か・・・あんたのシスコンっぷりもここまで来ると呆れるね。」
「お前だってしっかり最初のをチョイスしてんじゃないかブラコン。まぁ最終回でOP曲が流れるのは清々しい最後に相応しいだろ?」
「あんたはどうせバッドエンドなんだし、素直にドッグフード詰め込んで来ればよかったんじゃないの?」

こんにゃろう・・・事あるごとに挑発してきやがって・・・雪ノ下とは違うベクトルで口撃してきやがる。
ってか戸塚サン?この状況でニコニコしてるとか結構肝据わってますね。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:16:36.39
「んなわけねーだろ!小町の弁当の丸コピーだって言っただろ!?」
「何が妹の弁当だよ見栄ばっかり張っちゃって。大体あんたの妹の中学はお昼給食じゃないか馬鹿。」
「馬鹿はお前だ!そんな事お前んとこの弟も同じだろーが!小町と大志はそもそも同級せ・・・」

え・・・?

俺は今・・・何に気付いた・・・?

中学・・・同級生・・・給食・・・

・・・あっ!?
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:18:01.56
川崎を見る。
今まで見たこともないニヤけ面で『今更気づいたのか』みたいな視線を投げかけてくる。

戸塚を見る。
胸の手前で手を合わせ『ゴメンネ』とでも言いたそうな顔をこちらに向ける。可愛い。

そうだよ・・・確かに俺は知っていた・・・小町の中学が給食だって事を。俺も同じ中学だったし。
だから最初から"小町の為の弁当"なんてものはハッタリだったんだよ。全力で作ったけど。
そんでもってこいつは・・・こいつも・・・
・・・って・・・あ・・・あ・・・ああああああああああああ!?



「あんたの負けだな。」



ハメやがったああああああああああああああああああ!!


比企谷八幡、完全敗北の瞬間だった。
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:21:18.71
弁当を食い終わり、俺は敗北の余韻に浸っていた。

「つーか何?もしかして最初にスーパーで会った時から今日のこの時まで丸々茶番?」
「あっはははははははは!まぁそういう事になるかな。多少、まぁ多少は本気だったけど・・・ッククク。」

川崎がこんなに笑うのを初めて見た。殴りてぇ・・・返り討ちになるのがオチだろうけど。

「八幡ごめんね。でも今週の件は僕の案だったんだ。」

ぐぬぬ・・・戸塚がそう言うなら許してやらん事もないが・・・
それにしたって何だってこんな・・・
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:22:28.90
「それで、どう?全力になれた感想は?」
「なっ・・・!?」

「今週の八幡、先週とは比べ物にならないくらい元気だったよ。」
「んなっ・・・!?」

「1週間続くかどうかは結構賭けだったんだけど、こうも上手く行くとはねぇ。」
「な、何がだよ・・・」
「八幡ってさ、あんまり思ったことをすぐに口にしないタイプでしょ?心の中で一度整理してから言葉を選んでたよね。」
「だ、だから何を言って・・・」
「これまでのやり取りを思い返してみなよ。普段の慎重さなんてすっかり忘れたような頭の悪い内容だったよ。」

お・・・お前ら・・・
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:23:24.79
「ほら、昼休みもそろそろ終わりだよ。」
「八幡、放課後部活前にちょっと時間取れる?」
「あ、あぁ・・・」
「じゃあもう一度ここに来て。そこで色々話したいことがあるから。」
「・・・わーったよ。負けちまったし、断るわけにはいかねーな・・・くっははは」

自然と笑い声が出た。
わり、小町。俺、負けちまった。

まったくよぉ・・・
やっぱり最終回でOP曲が流れるのは清々しい最後に相応しかったってわけだ。
最初の弁当どころか、最初のきっかけで決着つけられちまったぜ・・・
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:24:54.48
放課後

「由比ヶ浜ー、今日の部活は遅れるって伝えといてくれ。」
「え?うん、わかった。何か用事?」
「あぁ、昼の決着つけてくるわ。」
「そっか。それじゃ伝えとくね・・・へへへ・・」
「なんだよいきなり気持ち悪ぃ・・・」
「キモくないし!なんていうか、さ・・・ヒッキーなんだかすっきりした顔してる。」
「今更俺の顔褒めても目の腐敗くらいしかやれねぇぞ?」
「いらないよ!」
「そうだな、俺も簡単に手放さんよコイツは。」

そう言って、俺は屋上へと足を運んだ。
去り際に見た由比ヶ浜の顔は、なんだか不思議そうな顔をしていた。
ま、そりゃそうか。
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:27:49.81
「来たぞー。」
「ん・・・」
「あ、八幡ー。」

屋上についたのは俺が最後のようだ。
もう勝負はついた。
これからは種明かしだ。
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:28:17.31
「おう。お話、聞こうじゃないか。」
「うん、この1週間の事なんだけどね・・・」
「実はね、サポーターが居たんだよ。」
「サポーター?」

「そ、あたしたちの・・・じゃなくて戸塚の目的は文化祭や修学旅行で何があってあんたが落ち込んでいるかを、他ならぬあんたから聞き出すこと。」
「でも普通に聞いたら絶対教えてくれないもん。だから八幡が、僕らの事を"本音が言える友達"って判らせる必要があったんだよ。」

と、友達って・・・

「八幡、どんな関係の人にも辛い事とか話してくれないんだもの。」

う・・・

「んで、その協力者が・・・あんたの妹だよ。」
「うえぇ!?」
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:29:53.61
日曜日の朝、小町の携帯に来たメールは川崎からの呼び出しメールだった。
ご丁寧に俺にバレないように大志経由で。
にゃろうあの男・・・小町のメアドを消してないとはまだ諦めてなかったのか?
呼び出したはいいが、その時は文化祭や修学旅行の事は何も聞かなかったらしい。
いやどうせ小町にも話してないけど。
昼食をダシに小町は川崎たちにある依頼を受けた。

俺の弁当献立を教える事。
俺の好きな弁当の具を教える事。

そして

普段の小町と俺の会話やりとりを教える事。
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:31:20.00
妙に川崎が会話の切り替えし上手かったのはそのせいか・・・
戸塚がなだめるタイミングも妙に自然だったし・・・

「しかしなんだってこんな・・・」
「八幡。」

戸塚が俺の言葉を遮る。

「僕、ちょっと怒ってるんだからね?」
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:32:15.22


・・・それは。
・・・いつだったか、誰かが言った台詞。
・・・その時の相手は・・・意地を張って無理していたヤツだ。


そっか。
俺ってば、そう見えてたんだな。
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:33:34.67
「話してほしいな、八幡の辛かったこと。」
「あぁ・・・」

俺は文化祭まで遡り、その出来事を話した。
そして、修学旅行で何をしたのか。それ以来の奉仕部内の空気の事を。

・・・・・
・・・・
・・・
・・




「真相さえ聞いてしまえば何てことはないな。」

えぇー・・・それはそれで悲しすぎるんですけどー・・・
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:34:09.91
「八幡が考えた事だもん。時間が無かったり、切羽詰まった場面で仕方ない事だってあるよ。」
「・・・」

「でもね、僕たちが聞きたかったのは、そういった八幡の悩みとかなんだよ。」



「すまんかった・・・」
「ダメだよ。許してあげない。」

ぐあぁ!
と、戸塚に・・・戸塚に見捨てられる!?
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:35:47.95
「だからちょっとお願いを聞いてもらうよ。」
「わ、わかった!」

戸塚はにこにこと微笑んでいる。
あ、この返し方と頼み方は小町に似てるなー。
こんな細かいやり取りまで教えてたのか・・・

「これからは、僕の事名前で呼んで?」
「え!?あ・・・」
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:36:51.61
戸塚マジメインヒロイン
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:36:59.48



「・・・彩加。」
「うん!八幡!」


敵わねぇな・・・
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:37:29.70
「じゃあ、僕からはおしまい。次は川崎さんだよ。」
「えっ、あ、あぁ・・・」
「僕ちょっとジュース買ってくるね。」
「あ、ちょ・・・」

とつ・・・彩加は行ってしまった。
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:38:54.17
川崎は何やら言いづらそうにモジモジとしている。
弁当ウォーズの時は芝居だったり、小町から聞いた情報から予行演習するなりして平気だったかもしれんが・・・
こいつは結構口下手なんだよな。

わざとらしく深呼吸をすると、ようやく口を開き始めた。
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:41:09.86
「比企谷・・・さっきあたしは"真相さえ聞いてしまえば何てことはない"って言ったよな?」
「あぁ。」
「何てことないんだよ。あんたが変な解消法で自爆したり、自分に欺瞞を感じたって構いやしないよ。」
「へ・・・?」
「あたしたちはまだ高校生だろ?そんな何でもかんでもやってのけようなんて無理だよ。」
「あ、あぁ・・・」
「だから、あんたが考え抜いた方法で派手に墓穴掘っても、あたしも戸塚も遠ざかってやんない。」


!?
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:41:36.30
誰だよ口下手って言ったヤツ。
あぁ俺だ。この1週間こいつとしゃべり続けた俺だったわ。

こいつはもう俺に対して遠慮しない距離に居るんだな・・・
あれだけ同じ部活で一緒に過ごした雪ノ下や由比ヶ浜でも招き入れた事のない不可侵領域。
17年間、小町だけが居座り続けた孤島。
たった1週間で・・・この2人は・・・俺が溝を作る暇を与えずにやって来た。
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:42:47.07
「あんたはやたら人との間に溝作るのは得意みたいだけど、ここまで来たんだ。もうあたしたちには通用しないよ。」
「・・・・・」
「戸塚が1週間前に何言い出したと思う?溝を埋める方法じゃなくて飛び越える方法だったよ。」
「んげっ・・・」

反則じゃねぇか・・・ってルールとか別に無かったか。

「斜め下ばっかり見てっから、斜め上に気付かなかったんじゃないの?あんた。」
「ごもっともです・・・。」
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:43:48.03
シスコンブラコン戦争は俺に下を向かせるフェイク。
その間に空からやって来られちゃ勝ち目ねぇわな・・・どうやって飛んだんだよ・・・
あ、と・・・彩加は天使だったか。そりゃ空も飛べるわマジ天使。
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:44:31.54
気づいた。
とんでもなく強引で、凄まじく効果的。そんな方法をいつも取り続けてきた人物。


・・・俺じゃねぇか。


自分で言うのもなんだが、そんな悪魔みたいな方法なんて思いつくのなんて、周囲を一切気にしないぼっちくらいにしか・・・
あ、こいつぼっちだったわ。そりゃこんな強行策を思いつくはずだわマジ悪魔。
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:47:25.19
「し、しかしなんだってお前まで俺に近づこうとしたんだ?」
「ん?」
「だ、だってよ・・・お前だってその・・・女だし・・・?あんまりそうやって強引に近づかれるとその・・・」
「あぁ、その事か。」

そう言って、彼女は俺に近づいてくる。

真っ直ぐこっちを見て。

鼓動が早くなる。

目が離せない。

そして俺の目の前まで来て。






「愛してるぜ、比企谷。」

言ってのけた。
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:48:02.39


・・・・・
・・・・
・・・
・・



「どうだい?どこまで勘違いした?」
「ふへっ!?」



勘違い・・・勘違い・・・そう、いつも俺が自分を戒めてきた事・・・



「思い知ったか!あたしが文化祭以来抱えてきたモヤモヤを!」
「あ・・・あぁ!?あああああああああああああああああ!?」
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:49:28.85
言った!確かに言った言っちゃってたぁぁぁぁぁ!


何てこった・・・俺が勘違いしたんじゃなくて、俺が勘違いさせていたんだった!

「あれ以来まともにあんたを視界に入れられない日々が続いちゃったよ!」
「うああああああ・・・」
「ずっと何て話しかけていいか判んなかったよ!」
「うああああああ・・・」
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:50:30.83
「・・・クハハ。ま、これで許してあげる。」
「・・・え?」
「あんたさっきから『え?』とか『へ?』とか『うああああああ』とかしか言ってないよ?」
「し、仕方ねぇだろ!あんな事言われちゃ・・・」
「・・・あたしも言われたんだけど。」
「う・・・」
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:51:19.56
「その場のノリみたいなもんだってのは判ってたんだけどさ、やっぱりそうなっちゃうじゃない?」
「そうだな・・・それは良く判る。」
「だから、これで貸し借り無し。謝罪もいらない。」

それは・・・いつか俺が誰かに言った言葉。

「そんで、こっからやり直し。」

それは・・・いつか誰かが俺に言った言葉。

「それがあたしが今回やりたかった事。あんただったら貸し借り無しにした時点で、それまでの関係ごと溝の外へふっ飛ばしちゃうんだろうけど。」

確かにそうだった。
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:52:26.33
「あんたとあたしは、ちょっとくらい似てたかもしれないけど、全然違うからね。」
「あぁ、そうだな。」


ったく、今日は負けてばっかりだ・・・ほんっと、敵わない。
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:53:16.08



「おまたせ2人とも。」

しばらくして彩加が戻ってくる。
むぅ・・・心の中でも名前呼びはちょっと恥ずかしいものがある。

「はい八幡。」
「あぁ、サンキュー。でもいいのか?貰っちゃって。」
「うんいいよ。これまでお弁当たくさん分けて貰ってたし。」
「はい川崎さんも。お疲れ。」
「ん。」
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:54:03.84
3人、壁を背にして座り込む。
俺の両脇に座る彩加と川崎。俺たちの距離感を表現したような位置。

俺たちの距離感だって・・・?全く、普段の俺からは想像もつかない考えに行きついちまったもんだ。

「ったくお前ら良かったのか?俺と居るとろくな人間にならんぞ?」

この期に及んで見苦しいが、つい聞いてしまう。
もしかしたらこの一言で怒られてしまうかもしれなかったのに。
それでも聞きたかった。
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:55:05.53
「アハハ。それは無いよ。」

彩加が笑って切り返す。
断言しちゃうのか。

「ずっと一緒に居たあんたの妹さんは、ろくな人間じゃないって言うの?」

川崎が横目で切り返す。
おのれさすがブラコン。シスコンを言いくるめる術を知ってらっしゃる。
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:55:49.09



「あんたは自分の目を腐らせちゃったけど、妹さんは腐らせない。そうだろ?」
「おま・・・っ!お前らまさか・・・」
「うん、小町ちゃんから八幡の目の話、聞いたよ。」


98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:56:23.13
昔。小町が中学に上がった頃。
小町が家で泣いたことがあった。
原因は俺・・・の風評。
俺自身はその頃にはもう風当たりの強さには慣れてしまっていたが、小町はそうもいかなかった。
小町自身が悪く言われたわけではないのに。

我が家で小町が泣いているという絵ヅラは非常に不味く、こんな光景が両親に見られたら間違いなく俺がどやされる。
その時の俺は多分そんな事を考えていたんだろう。

俺は小町にこう教えたんだ。
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:57:05.18
"涙流してしまえば辛い事なんざ一緒に流されていく"
"でも流しきれないうちにまた辛い事があると悪循環が起こって目元に辛い事が溜まっちゃうんだ"
"結果、目が腐る"

しかしあいつは不貞腐れて『なら小町もお兄ちゃんと一緒に腐る』とか言い出しちゃったんだ。
そんな事になってみろ、俺は家を追い出されかねん。

"俺は別にこの目が嫌いなわけじゃないんだ、むしろ気に入ってるまである"
"腐っちまった目ん玉だから腐らせちゃいけないものくらい一発で解るんだぜ"
"お前は腐っちゃいけないヤツだから、辛い事があったら逆に笑うんだ"









「『じゃないと俺はこの家から追い出されるぞ』だっけか?」
「うがあぁぁぁぁ!比企谷家でトップクラスに恥ずかしいエピソードをお前らぁぁぁ!」
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:58:18.68
川なんとかさんかわいい
ヒッキーもかわいい
みんな可愛い
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 20:59:20.48
俺が家から居なくなるのが嫌だったのか・・・どうかは知らないが、それから小町は常に笑うようになった。
俺が妹離れできないくらいに強い子になった。

「だから僕たちが間違ったら、八幡が止めてくれるよ。」
「うぅぅ・・・うぅぅ・・・」

唸るな俺、これじゃ本当に犬みたいだ、HACHIだ。
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:00:13.75


「あのさ・・・戸塚。さっきから気になってたんだけど・・・僕"たち"って・・・あたしは別にその・・・」

さっきまでの余裕ヅラはどこへ行ったのか、川崎が照れくさそうに言う。

「ううん、八幡はもう川崎さんを放っておかないよ。」

聞いてるこっちが恥ずかしい事をさらりと言う彩加。

「あ、もしかして僕たちが名前で呼び合ってるから?じゃあ2人も名前で呼び合って欲しいな。」
「「えぇ!?」」

笑顔で何て事言い出すんだ可愛いなその顔。
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:01:29.80
「僕もこれからは沙希ちゃんって呼ぶから、ね?」
「う・・・」
「じゃあ僕から、沙希ちゃん。」

ほんと彩加すげぇな。迷いがねぇ。

「え・・・さ・・・さ・・・・・・・・・・彩加。」

消え入るような声でボソっと言う。
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:02:11.91
「じゃあ次だね。ほら、八幡も。」

逃げ道にシャッターが下ろされた。これはもう断れないムード。
べべべべべ、別に?彩加だって呼べるんだから、こここここ、こいつの事だって、よ、余裕だしぃ?
"さきさき"を2文字略せばいいだけだしぃ?

「さ・・・さ・・・」

パンダかよ・・・

「は・・・は・・・」

カーチャンかよ・・・

かゆ・・・うま・・・じゃないんだよ。
彩加は何でこんな時だけ男らしいんだ。惚れちゃうだろ。
えぇい!決めろ八幡!あいつのゴールネットにアステロイドキャノンだ!
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:02:54.77



「・・・沙希。」
「・・・八幡。」


・・・・・
・・・・
・・・
・・




「・・・ぷっ!」
「・・・クハハ。」
「アハハハ。」


「「「アハハハハハハハハハ!!」」」
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:03:21.29


何時ぐらいぶりだろうか。
もしかしたら初めてかもしれない。



こんなに、腹の底から、大声で笑ったのは。

107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:04:48.52
奉仕部

「遅いね・・・」

ヒッキーはまだ来ない。

「・・・」

ゆきのんは黙ったままだ。
以前なら、こういう時もあれこれ小言を言ってたんだけどなぁ。

部活の時間はもうすぐ終わろうとしている。
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:05:33.93
コンコン

「うーっす。」

ノックの後、ガラッっと扉が開く。

「ヒッキー遅いよ!もう部活終わっちゃうよ?」
「まったく・・・部活動を何だと思ってるのかしら。」

ゆきのんがようやく口を開く。
やっぱり・・・ゆきのんもちょっと寂しかったのかな。
そんな事を勘ぐってしまう。
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:06:09.40
「悪い悪い・・・ってもうそんな時間だったのか?」
「気づかなかったの!?」
「呆れるくらいに無頓着ね・・・」

「だから悪かったって、下校時刻まではちゃんと居るからさ。」


びっくりした。
ヒッキーの口からナチュラルに出た言葉は、すごい柔らかかった。
ゆきのんも同じことを感じたのか、驚いたような目をしている。


椅子に腰を掛けたヒッキーはいつも通り本を開く。それはもう料理関係の本ではなかった。
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:07:06.75
「そ、そういえばヒッキー、結局勝敗はどうなったの?」
「そうね、そのための遅刻だったのでしょう?ちゃんと負けてきたのでしょうね?」

ま、負ける事前提なんだ・・・


「あぁ負けた。もう完膚なきまでに。」



ドキっとする。
相変わらず腐った目で・・・なのにそんな顔しちゃうんだ。
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:07:44.15
「そ、そう・・・それにしては不思議な顔をしてるのね。」
「ん?あぁそりゃな。あんなに笑ったのは初めてかもしれねーし、そりゃ摩訶不思議の1つや2つあるさ。」
「えぇー!?ヒッキーがそんなに笑ったの!?」

な、何があったんだろう・・・
私じゃ・・・私たちじゃできない事なのかな・・・?
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:08:26.95
「ま、無理はねーかもな。俺自身が信じられんくらいに腹から笑ったわ。」
「その割には目が腐ったままなのだけれど。神様は残酷ね、あなたに爽やかさは与えてくれなかったようね。」
「そ、そーだよ!やっぱり負けた事気にしてるんだ!」

ヒッキーの目は何も変わっていなかった。
出会ったときから何も変わらない・・・優しい目。
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:08:59.07
「仕方ねーだろ。俺はなんだかんだで、お前らの言う腐った目ん玉が結構気に入ってんだよ。」
「え・・・?」
「何を言っているのかしら、普通の感性を持っていたらその目を気に入るなんてありえないと思うのだけれど。」
「じゃあ普通じゃなかったんだろ?それだけの話さ。」
「理由!理由は何なのー!?」

あたしは聞いてみる。
知ってみたい。その理由。
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:09:46.92
「おいおい、俺がその理由を知ってていいと思えるヤツなんて友達だけだ。」
「なら誰も知らないって事ね。」
「ヒッキー友達いないじゃない!」
「はっはっは、だからお前らにはまだ教えてやんね。」

あたしたちの悪態にものともせず、ヒッキーはすっと立ち上がる。
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:11:09.96
"まだ"
って事はそのうち教えてくれるのかな。
そうだといいな。

「そろそろいい時間だなー。そんじゃそろそろ帰るわ。」
「そうだねー、ヒッキー10分くらいしかここに居なかったけど。」
「仕方ないわね。今日は依頼者も来なかったし。」
「ゆきのんー。一緒にかえろー。」
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:12:08.84
この感じ。
やっと奉仕部にいつもの空気が戻ってきた。
ヒッキーが少し元気になっただけなのに。
やっぱり奉仕部の中心はヒッキーなのかな・・・。



そんな事を思いヒッキーを見ていると、扉の前で少し立ち止まった。
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:13:11.90
「そうそう、理由だっけか・・・そいつを知ってるのはなー・・・」



くるりとこちらに顔を向け、悪戯っ子のようなニヤけ面で



「この学校内で、"沙希"と"彩加"だけだ。」

パタン

扉が閉まる。






「・・・なっ!?」
「えええええええええええええええええええええええええええ!?」
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:14:44.54
校門

いつだったか、雪ノ下に言った事がある。

友達って『達』ってついてるから基本的に複数居る事が前提なんだよな。

確かに屁理屈。単なるしょーもないやり取りの一つ。
しかし雪ノ下の事だ、そんなしょーもない事の1つもちゃんと覚えてるんだろう。


いつだったか、由比ヶ浜に言われたことがある。

・・・じゃ、じゃあ、ゆい。でも、いい

名前を呼ぶ、という行為。あの時はちょっと口を滑らせたが、以降名前で呼んだ事は無い。
どうせ由比ヶ浜の事だ、未だに名前で呼ばれる事を諦めてはいないんだろう。
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:15:10.97



だからこれは、今までの、ちょっとした仕返し。
お前らが腐らない程度には見ててやっからよ。
今は悶えまくれボケが。クハハハ。
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:16:44.37
校門の横に2人を確認する。
心を落ち着かせ、脳内で名前を繰り返す。
・・・沙希・・・彩加・・・沙希・・・彩加・・・よし、大丈夫。

「おう、お待たせ沙希、彩加。」
「あぁ、は、八幡・・・」

ククク。どもってるなぁ?

「はちまーん、お疲れ様。それじゃ帰ろうか。」



俺たちは歩き出す。初めての友達との集団下校だ。
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:17:38.18
「2人は今日ゼミだっけ?それじゃ明日か明後日3人で遊ぼうよ。」
「おー、いいぞ。どうせ予定ないし。」
「沙希ちゃん、八幡のお家知らないんだっけ?行ってみない?」
「い、いきなり家に上がるのか・・・?あたしの家からさほど遠くないって事くらいは知ってるけど・・・」
「やめとけ彩加。こいつ確か猫アレルギーだし。」
「あ、そうなんだ。僕は沙希ちゃんのお家知らないし・・・」
「きゅ、急にあたしの家だなんて・・・」

まぁそうだわな、ぼっちが家族以外を自分の家に招き入れるってのはハードルが高いものなのだ。
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:18:14.96
「無難に3人でどっか出かけるのがいーんじゃないか?」
「あ、それなら3人でプリクラ撮りに行こうよ。前に八幡と撮った所で。」
「え?彩加あんた八幡と一緒に撮ったの?」

おー、俺の名前どもらずに言えたか、えらいえらい。
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:19:00.79
「うん、大変だったんだよ。あの時はカップルじゃないと入れませんって言われちゃって。」
「あんた・・・」
「い、いや!その!コッソリ!コッソリ入って撮ったんだよ!」
「見る?これなんだけど・・・」

彩加は携帯を取り出し裏面を沙希に見せる。
そこに貼ってるのか・・・うわー恥ずかしい。何で俺が恥ずかしい。
もう1枚のは別に取っといてあるんだろうか。

「ふ、ふーん。しかし八幡変な顔してるな。」
「うっせ、プリクラなんて初めてだったからシャッターのタイミングが判らなかったんだよ・・・」
「クハハ・・・ん?なんか後ろに写ってる・・・え?何コレ・・・幽・・・霊・・・?」

あぁ、そんな事もあったな・・・
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:20:02.72
「あぁそれは材も・・・」
「幽霊じゃないぞ、そいつはちゃんと実在している。実在の妖怪だ。豚の妖怪。」
「は?何言ってんの?あんた彩加を猿の妖怪扱いするつもり?」
「俺ぁ河童確定かよ!何でゲーセンの隅っこにガンダーラが設置されてんだよ!あるわけねぇだろ!」

太陽拳の使い手は三蔵だったのか。
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:22:54.53
「それに今回は八幡と沙希ちゃんが居るから、すんなり入れるんじゃないかな?3人で入っていいかは聞かなきゃいけないかもだけど。」
「え・・・そ、それって八幡とカ・・・カップ・・・」
「いーじゃねぇか沙希。利用できるもんは利用しちまおうぜぇ。」
「ほわぁっ!?ま、まぁ・・・3人で入って大丈夫なら・・・」

くっはー。俺も言うようになったもんだねぇ。
ここで冷静な切り返しができるなんて八幡的にポイント高い♪

・・・もしかしたら小町的にもポイント高い・・・かもな。
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:23:44.90
俺たちは、明日遊びに行く約束を取り付けたところで別れた。
彩加が俺の家を知っているので、沙希と彩加が合流して俺を迎えに来てくれるようだ。
まったく小町になんて言われることやら。

そんなことを考えながら、俺は玄関のドアを開けた。



「ただいまー。」
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/07(日) 21:33:47.06
乙ですー。
いやこれは素晴らしい……いいモノを読ませて頂きました。
まさかこの三人の絡みが見られるとは、眼福眼福。
続き楽しみにしてます。
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:42:44.94
土曜日


ピンポーン

「はいはーい。」

時刻は午前11時過ぎ。
玄関に立っていたのはお兄ちゃんのお客さんだ。

「こ、こんちわ。」
「あ~これはこれは沙希さーん。兄がお世話になってます~。」

川崎沙希さん。
驚くべき速度でお兄ちゃんに急接近したダークホース。
大志くんは学校で見かけるけど、お姉ちゃんとこうして再び顔を合わせる事になるとは。
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:43:13.35
ううむ・・・考えてみればお兄ちゃんの部活関連の女の人以外はなかなか情報得られないからなー。
灯台下暗し。ごめんネ大志くん。小町が絡んであげられなくて。
直接言う機会は多分無いだろうから、心の中で謝っておくヨ☆

「あ、いやこちらこそ・・・えっと・・・八幡、いる?」
「あぁちょっと待っててくださ・・・ってうえぇぇぇ!?は、はち・・・」

ななななななんですってー!?お兄ちゃんが既に名前で呼ばれているですとー!?
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:43:40.68
「え!?あ、あの・・・だからこれは・・・」

うっわーマジですか。だって1週間ですよ?
小町が言うのもなんですが、兄の攻略難易度はビニールテープでレインボーブリッジからバンジージャンプするくらいですよ?
強くてニューゲーム?

しかし・・・ほう・・・ちょっと照れたこの感じ・・・これは・・・
第一印象とのギャップがまた・・・うんうん・・・たまりませんなぁ。

はっ!?いかんいかんお兄ちゃんじゃあるまいし・・・
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:44:06.58
「こんにちわ小町ちゃん。」
「あ、戸塚さーん。こんにちわですー。」

沙希さんの後ろからひょこっと顔を覗かせる戸塚さん。
ふむー。やっぱりお兄ちゃんと沙希さんと戸塚さんとは珍しい組み合わせだなぁ。

「八幡を迎えに来たんだけど、いるかな?」
「っと、そうだった。ちょっと待っててくださいねー・・・お兄ちゃーん!」

「聞こえてるよ。」

身支度をしていたのか、着替え終えて階段から降りてくるお兄ちゃん。
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:44:33.49
「はちまーん。おはよ。」
「あ、お、おはよう。」
「おう、おはよ。」

ほほう・・・このトリオ・・・ありかもしれない・・・

「つーわけで小町ぃ。今日は沙希と彩加と出かけるわ。」
「ふへぇ!?あ、あぁ~うん、かしこまりかしこまちぃ~。」
「なんだよその頭悪そうな返事・・・」

いかんいかん動揺が表に出てしまった。まさかお兄ちゃんまで名前呼び捨てとは・・・しかしこれはいける・・・いけるぞ・・・!
ごめんなさい結衣さん雪乃さん。小町は誰の味方かと言われたらお兄ちゃんの味方なのです、テヘッ☆

しかもこちらのトリオ、女性は沙希さんオンリー!フフフ・・・これは一本道ルート待ったなし!
・・・とは言い難いのがお兄ちゃんなんだよなぁ・・・なーんせ戸塚さんが大穴に控えてるし。
ぐぬぬ・・・小町は許しませんよ!そんな・・そんな・・・
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:45:12.10
「そんじゃ、何かあったら連絡するわ。」
「いってきます。小町ちゃん。」
「はーい、いってらっしゃーい・・・あ、沙希さん沙希さんちょっと待ってください。」
「ん?あたし?」

沙希さんを呼び止める。
そしてお兄ちゃんの死角に入るようにして・・・


「沙希さん、メアド交換してもらってもいいですか?」
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:45:37.58
「あたしとか?ま、まぁいいけど。」
「ありがとうございます~。これで大志くん経由じゃなくても小町が色々サポートしちゃいますよー。」
「へ?あぁ、そりゃどうも・・・?」

うーん、よしよし。予想通りちょっと判ってない感じの返事だ。
うふふふ、今はそれでいいですよー。
ぽちぽちぽち・・・っとほい完了っ。

「沙希ー。どしたー?」
「うん、今行くよ。それじゃ、えっと、妹さん、どうも。」
「えへへー、"小町"でいいですよ~お姉ちゃん。」
「うわぁぁ、まったくもう!意地が悪いところは兄とそっくりだな・・・」

そう言って沙希さんも歩き出した。
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:46:10.17


「ま、まぁ何かあったらあたしにもメール寄越しなよ・・・小町。」



・・・・・
・・・・
・・・
・・




は・・・
は・・・・・
破壊力すごっ!?
くっは~!なんじゃこりゃぁぁぁぁ!小町殉職しちゃうよ!
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:46:37.02
総合アミューズメントパーク『ムー大』

カラオケ、ゲーセンから居酒屋に至るまでなんでもござれのごった煮空間。
本当になんでもあるんで、昼飯もここで済ませちゃおうという流れだ。

「とっ言っても俺、さほど腹減ってないぞ。」
「ならクレープとかでいいんじゃないか?」
「あ、いいねクレープ!八幡は甘いのが好きだよね。」

クレープか・・・うん、今の腹具合にはぴったりかもしれん。
選ぶものによっては量も調整できるし、うむ、悪くないチョイスだ。
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:47:14.16
オープンテラス式のクレープ屋を見つけ、沙希に席を取って置いてもらう。
丸机に椅子が3つ。っかー!意味はわかんねぇけどそこはかとなくリア充臭がする。いやほんと意味わかんねぇけど。
俺と彩加でクレープを注文しに行く。使いパシリは男の仕事だからな。決して彩加と2人っきりになりたいわけではない。



「いらっしゃいませー。」

女の子の店員が元気よく挨拶する。

「アップルカスタードとハムチーズサラダ1つずつ、彩加は?」
「僕はストロベリー生クリームを1つ。」

特別読み切り!さいかちゃんストロベリー!生クリーム添え!作:比企谷八幡。
このままでは俺がストロベる。
さっさと沙希の所へ戻って平常運転に切り替えよう。
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:47:44.85
「戻ったどー。ほい、サラダ。」
「ありがと。」
「サラダもこうしてみると美味しそうだねー。僕クレープって甘いものってイメージだから、なかなかサラダ注文できないんだ。」
「そうだね。最初はちょっと戸惑うかもね。」
「まぁ俺はどの道甘い方選んじゃうけどな。」

他愛のない会話をしながら食べ始める。
こうして3人で食事をするのは先週散々やってきた。
普通であれば俺の心に執筆している『敗北!トラウマ日記帳』の新たな1ページとなるくらいのエピソード。



しかし俺は全く新しい自由帳の記念すべき1ページ目に記載した。
こうして3人で机を囲んで食事ができるのも、あの1週間の・・・あぁやめだやめだ。
誰に語りかけてるわけでもないのに気恥ずかしさが湧いてくる。

それより彩加とストロベリるぜ!あ、俺のリンゴだった。
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:48:15.08
「まさかこうして3人で食うのを続けられるとはね。」

沙希も同じことを思っていたのか、ふとそんなことを漏らす。
まぁ内容はアレだったしなぁ・・・俺相当頭に血が上ってたし。

「そうかな?僕はこんな何気ない関係結構憧れてたんだけどな。あ、女の子1人だから?小町ちゃんも呼べばよかったかな?」
「い、いや!流石にもう・・・その・・・友達ってのに慣れてなくて・・・いっぱいいっぱい・・・次回以降で。」

などと気恥ずかしそうに口走る沙希。
普段の突っぱねた態度を見ているだけに、こういう場面に出くわすとニヤけてしまう。
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:48:43.47
「お前なぁ、俺が本音を言えるようにするのが目的だったんだろ?今のお前もすっげぇ口緩いぞ。本音ダダ漏れ。」
「う、うっさい!あんただってそんなムカつくニヤけ面をポンポン見せるようなヤツじゃなかっただろ!」
「なーに言ってんのぉー?これはお前が勝利宣言した時のニヤけ面の真似ですぅー。」
「じゃあ真似すんな!と言うかそんな顔してない!」

なんというか、先週丸々コイツとの口論に費やして思ったのだが・・・沙希は話しやすい。
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:49:44.12
雪ノ下とのしょーもないいがみ合いも結構好きだ。
由比ヶ浜とのしょーもないじゃれ合いも結構好きだ。

こいつは・・・なんだろう・・・そのどっちも内包していて、どっちとも全然違う。そんな新鮮な感覚。
俺はこの感覚を忘れないように、また自由帳に・・・ってやめい。これほんと恥ずかしい。


「アハハ、もう2人とも。喋ってばかりで全然進んで無いよ。」
「あ、悪ぃ。」
「あれ?彩加もう食べ終わっちゃったの?」

見ると彩加のクレープは無くなっており、包み紙が綺麗に折りたたまれていた。
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:50:10.88
「うん、僕のはそんなに大きいやつじゃなかったからね。」

何てこった。ストロベリーが彩加にストロベリられるところを見逃してしまった。

「ゴミ捨てるついでにジュース買ってくるよ。何がいい?」
「コーヒー。」
「あ、ならあたしも。」
「うん、待っててね。」

こうしてまた2人ぼっち。前回も彩加はジュース買いに行って退場してしまったな。
ジュースの女神さまはどうやら俺と彩加が一緒に居る事に妬いているらしい。困ったもんだぜ。
仕方ないので戻ってくるまでに食い終わらせようとクレープを頬張る。
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:50:37.83
「あ、八幡。落ちそう。」
「え?」

齧り付いた場所が悪かったのか、俺の口元からポロリとリンゴが落ちかける。

「あ。」

その時、ひょいっと沙希の手が伸びた。
見事にリンゴの一欠けらは地面への不時着を回避した。すげぇ。


・・・・・で、そのリンゴどーすんの?俺の口から落ちたやつなんだけど。
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:51:06.04
沙希もそれに気付いたのか、あわあわと口を開きながら『どうしよう?』みたいな目でリンゴと俺を交互に見る。
いや、間に俺を見ないでくれ。俺だって困る。

まさか自分で食べる気じゃないだろうな?そんな光景目の当たりにしたら八幡どうにかなっちゃうよ。

沙希は。
その手を。


「・・・っ。」

俺の口に戻した。
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:51:35.37



いやいやいやいやいやおかしいでしょ!
数ある選択肢の中で一番おかしい選択でしょそれ!

「あああああああああそんな顔しないでくれぇ!」
「む、無理言うな!何でこの選択肢にしたんだよ!」
「思わず手が伸びただけでキャッチできるとは思ってなかったんだよぉ!自分で食うわけにもいかないだろぉ!」
「こっちの方がもっと恥ずかしいわ!どーすんだよこれぇ!なんかもう残りのリンゴも恥ずかしさの塊に見えて来ただろ!」
「食え!何もかも忘れて食え!あたしも残り食うから!」
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:52:02.39
もう俺の自由帳が『羞恥!ハズカシメ日記帳』に変貌しつつある。

俺たちは顔から赤みを振り払うように残りのクレープを食った。
味なんて忘れた。


「おまたせー。」

彩加ぁぁぁ!待ってたよ彩加ぁぁぁ!
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:52:33.21
「はい。」
「サ、サンキュー。」
「う、うん。」

裏声になりかけた。

俺たちはコーヒーを受け取るとそのまま一口飲む。

「あれ?八幡シロップは?」
「あ、あぁ。最初の一口はそのまま飲みたいんだよ・・・」
「あ、あたしも、そう・・・」

この口の中でぽわぽわとしたリンゴとカスタードの甘みがヤバいんだ。



・・・・・
・・・・
・・・
・・



184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:52:51.34
小町視点かわいい!

185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:52:59.67
ゲームコーナー

ようやく目的地に着いた。
そう、ようやくだ。
時間にしたらそれほどでもないけど、とにかくようやく着いたんだ。

「八幡、たしかこっちだよ。」

あぁ、俺も今視界に入れたところだ

"女子・カップル専用ゾーン"

見間違えようがない。まさしく愛の国ガンダーラ。
やべーよ本当にあったよ。
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:53:57.04
「すんなり行けるといいね、店員さんどこかな。」
「や、やっぱり無理なんじゃないかな・・・」

沙希がちょっと消極的になってきている。
いや判る、すげー判る。気持ちはすげー判る。

少し前までこいつも勘違い生命体だったんだ。
あんなビックリドキドキイベントの直後だもの。"カップル"なんて単語が目の前にあったらどうなるか。




意識しまくりですよホント。

しかし今日の日を一番楽しみにしていた彩加の為にもここは避けて通れぬ道なのだ。
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:54:24.09
「あ、見つけたよ。」
「んじゃちょっと待っててくれ、俺が聞いてくるよ。」

ここは俺が男を見せる時。というかこの場面で俺が聞きに行かないと色々とオカシイ。


「すいません、店員さん。」
「っしゃーせ。何でしょっか?」

軽いノリの店員さんだ。以前と同じ人物か・・・?
しかしこれなら・・・いけるかもしれない。
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:54:55.43
「俺らプリクラ撮りたいんですけど、3人ってOKですかね?」
「3人っすかー?一応カップル用として置いてあるんっすけどー。」
「あっちの2人が連れなんですがね。」

そう言って視線を2人に向ける。

「おぉー、女子2に男子1っすか。」
「いやー今日はですね、Wデートの男役が1人2役なもんでしてね。」
「あ、あぁ~なるほど~。お兄サンやりますね~。」

何をだよ。

「いいっすよ。どうぞお通りくだっさい。」

おっけぃ。大きく出てみるもんだぜ。
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:55:21.88
「ただし一応ですねー・・・」

ん?

「ホラお客さん。あっこにカメラありますでしょ?ウチもバイトとは言え仕事なもんでしてねー。」

店員さんがやや小声になる。

「入るところがカメラに収まっちゃうんでー、ウチが言い訳できるように判るように入って欲しいんっすよ。」

バイトも大変だな、全く。

「っつーわけでしてね・・・」



190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:55:47.69



「あ、八幡おかえり。」
「で、ど、どうだった。」
「あぁ、オッケー貰えたよ。」
「マジでか・・・」

「・・・3人で手ぇ繋いで入場すればオッケーだってよ。」


「う、うえぇ!?」
「よく判んないけど、それで入れるのかな?」
「俺も良く判らん・・・」
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:56:41.43
ゲームコーナー:数刻前

むふん、本日は晴天ナリ晴天ナリィ。
絶好のあるかな日和であーる。

最近は他のあるかな勢も力を着けてきておるからな。
                 アナザー ファイティング テクニック
特に!初心者を名乗りつつ百 戦 錬 磨 の 指 使 いを有する戦士たちを相手にした場合は特に困る!
上級テクニックや基盤バグを知り尽くさねば初心者狩りができぬぅぅぅぅ!
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:57:07.44
む!?センサーに反応が・・・?
あ、あれは我が盟友!八幡ではないか!?横にはと・・・戸塚氏!

このような戦場で出会うとは最早これは運命!さながら我らは遠い昔から強い絆で結ばれた数百年越しの戦友に違いない!

「はちま・・・む?」

道行く人の1人と思っていたがよく見ると横で八幡に話しかけているあの女狐・・・いやあれは・・・女豹、いやそれも違う・・・魔女!?
な、なんだあれわぁぁぁぁぁぁぁぁ!
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:57:33.14
違う!いつもの八幡じゃない!
その女は魔女なのよ!ラリアットが弱点なの!


うむむいかんいかん、もっとよく見たらいつものラスボス女でも遊び人女とも違う・・・あれは・・・誰でおじゃる?
むむ・・・何か怪しげな密談をしておる・・・

「プリクラってどっちだっけ?」
「八幡、たしかこっちだよ。」



ピコーン!



「店員殿ー!」
「あ、まーたアンタっすかぁ・・・今度は何やらかすんです?」
「えぇい我の事ではなぁぁぁぁい!1つ頼みごとがあるのだが・・・・」
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:58:25.88



うむ!我の目論み通りである!
八幡のヤツ、戸塚氏と魔女と手を繋ぎプリクラに向かって行きおった・・・


パシャリ!






ムホホホホ!今日の所は見逃してやるぞ八幡!だが!お主は後に知ることになる・・・
この剣豪将軍、材木座義輝に妖刀を握らせていた事をなぁ!ムハハハハハハハ!!
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:58:56.36
プリクラ台

「このプリクラ毎度毎度入場難易度高すぎなんですけどー。」
「う、うぅ・・・」
「まぁまぁ、でもやっと着いたねー。前回と同じ台でいい?八幡。」
「おー。」

正直見分けつかねーし。

相変わらずサンプル画像にはモンスターどもが貼り付けられている。
よくこんなのを他の人が見れるところに貼れるな。仮にこれが俺だったら磔だぞ、同じ読みでもこんなに違う。

「そういや沙希、お前プリクラ撮った事あんの?」
「いや・・・こういうのは初めて・・・」
「あ、そうなんだー。いいの撮ろうね、沙希ちゃん。」
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:59:23.17
筐体は流石に3人だと狭い。
そりゃそうだ、もともと女子・カップル用と言うのだから2人が限度なんだろう。
なんという密度。

「じゃぁ今日は背景これにしようかなー。」
「プリクラは元々彩加の要望なんだし、任せる。」
「うん、任された。」

あぁ・・・以前まだ"戸塚"と呼んでいた頃の関係じゃ、今の返し文句は絶対無かったな・・・
お前が彩加でよかったぜ。
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 00:59:49.63
「いいみたいだよ。」

そう言って彩加が1歩下がる。

横を見てみると。

「・・・・・」

うへぇ・・・
目に見えて超緊張しておる。
口元凄い事になってるもん、『へ』の字から更に口元を無理矢理釣り上げたような感じになってるもん。
目凄い事になってるもん、ガン開きだもん。
おいおい、そんなんじゃ三蔵法師の太陽拳は耐えられないぜ?以前の俺よりも無様な顔になりかねん。

ま、それはそれで面白いんだけど
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 01:00:19.15
俺は以前撮った時のシャッタータイミングを思い出す。




ここだ!

「ふへぇ!?」

パシャ!

199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 01:00:47.50
帰り道

「だーもう!何てことしてくれるんだよ!」

沙希は1枚目のプリクラをつまみつつ俺に怒鳴りつける。

「いいじゃねぇか、おかげでフラッシュに目を潰されずに済んだだろ?」

真ん中で笑顔を作る彩加。
渾身のニヤけ面で笑う俺。

そして・・・



「だからってこれは無いんじゃない!?」

俺に頬を引っ張られて、びっくりしたような目で俺を見る沙希。
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 01:01:15.92
「アハハハハ。」
「でもほら、これ2枚連続で撮ってくれるし!」

そして2枚目。

俺と沙希は頬の引っ張り合いどつき合い。
それが写った画面を指さして笑いこけている彩加。

「でも今日はバッチリいいのが撮れて良かったよ!」
「やったな沙希。要望者がご満足のようだぜ。」
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 01:01:43.07
「うー・・・ま、まぁ・・・いいけど・・・」



そう言った沙希の手の中には──

3枚目、逆三角形を描くように顔を並べて3人で笑う1枚が握られていた。
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 01:49:53.80
月曜日

午前中の授業が終わり、時は昼休み。
先週の嵐のような昼休みは、金曜日には台風の目に差し掛かった。

比企谷八幡
川崎沙希

嵐を巻き起こした2人が1人の天使、戸塚彩加の手によって移動した事で、一時の平穏を取り戻した。
しかし、台風の目はあくまで中心部である。

2年F組に、再び嵐が巻き起こった。
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 01:50:25.78
「戸塚くん、ちょっといいかな?」
「え?僕?」

エンゼル戸塚に声を掛けたのは海老名姫菜だった。

「今日のお昼も3人で?」
「うん、そうだよ。」

さも当たり前のように肯定する戸塚。
戦争は先週で終わったのではないのか・・・?
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 01:50:51.65
「一緒に着いて行ってもいいかな?あ、別に一緒にお昼食べようとまで厚かましい事言わないよ。ただ数枚写真を撮らせてほしくて・・・」

(((十分厚かましいわぁ!!)))

「うーん・・・アハハ・・・そういうのはやらない方がいいと思うな・・・アハハ。」

(あ、あれ・・・?)
(戸塚が結構明確に拒否してるぞ・・・?)
(ま、まさか!?海老名さんの本意に気付いてしまったのか戸塚!)
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 01:51:34.56
「あ、変な意味じゃなくて、その。あの2人は言い争いが始まると結構騒がしいから・・・迷惑なんじゃないかなと思って・・・」

(や、やっぱり険悪なのか・・・?)

「お願いっ!10枚でいいから!」

(((だから厚かましいわぁ!!)))

「なんなら場所だけでもっ!ヒキタニくんと戸塚くんの逢引き現場だけでも押さえさせ・・・」
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 01:52:00.77
「おい。」

戸塚の肩を引き、庇うように前に出た男。

「あ。」

戸塚は安心しきった顔をしている。

「その辺にしといてやれ。」

比企谷八幡、その人だった。


そして・・・
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 01:52:27.38



「あんまり彩加に変な事教えんなよ。」



ショッキング発言。


(な・・・)
(な・・・・・・)
(((名前呼びだとぉぉぉぉぉぉ!?)))
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 01:53:22.47



「お・・・」

海老名が震える。

「お・・・お・・・」

海老名の顔が染まっていく。

「あ、まずっ!ヒキオ!逃げ・・・」
「『俺の彩加に手を出すな』ですってぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

(((言ってねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!)))


本日も海老名姫菜はアクセルベタ踏みだった。


「エクスタシィッ!」

ブシャァッ!!
ビチャァッ!!

「・・・あ。」
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 01:54:01.42
三浦が止めに入ったが時既に遅し。
戸塚を庇う様に立っていた比企谷の顔面は、海老名の鼻血によって紅に染まった。

「アチャー・・・」
「え、海老名さん大丈夫!?ヒキタニくんも大丈・・・」

駆け寄った戸部が比企谷の顔を覗く。

「って怖っ!血まみれのヒキタニくんの目ぇ超怖っ!」

何て事を口走った・・・









「オッケェェェェェイ!アリ!アリよヒキタニくん!血まみれの眼光をしたヤンデレな攻めガヤくんアリよぉぉぉぉぉぉぉあああああああ!今までヘタレ受けだと思っていたけどダメ!ダメよ姫菜!可能性よ!新たな可能性を発掘するのよぉぉぉぉぉ!!」

どうやら予備電源に切り替わったらしい。
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 01:54:32.09
「あ、あぁもう、海老名落ち着けし。ほれ、ちーん。」

オカン三浦もここまでのエキセントリックは珍しい光景なのか、ちょっと手こずっている。

「あふん。」

活動停止。予備も動きません。


そこに長いポニーテールを揺らし近づく1つの影。

「ちょっといい?」
「へ?」

川崎沙希、その人だった。
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 01:54:58.61
「ティッシュ、分けてほしいんだけど。」
「う・・・おう、まだあるし。」

三浦の苦手なタイプなのだろうか。ちょっとビクついたが、すぐさまポケットティッシュをもう1袋取り出し、川崎に渡す。

「ありがと。」

川崎は受け取ったティッシュを開く。

そして・・・
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 01:55:28.55




「ほら、八幡。じっとしてな。」
「あ、あぁ悪い、沙希。」

比企谷の顔を拭き始めた。





ショッキング映像。



(((はあああああああああああああああああああああ!?)))

嵐の初日である睨み合い、その比ではなかった。
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 01:56:01.69
(いやいやいやいやだってこれ・・・だって・・・えええええ!?)
(おかしいでしょおかしいよねおかしいだろ!!)
(だって金曜教室から出ていく時もアレだったじゃん!アレがあんな感じであぁだったじゃん!?)
(それがどこをどうしたらこうなんのおぉぉぉぉぉぉ!?)



彼らは周りの視線などお構いなしである。
最早見えてないまである。
実際比企谷は血で前が見えてないようだ。
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 01:56:51.72
「八幡、大丈夫?僕を庇ったばかりに・・・あ、Yシャツにもちょっと血がついてる。早く脱いで洗わないと。」
「あ、ホントか?しょうがねぇ、午後は着替えるか。」



「ヌガシッ!」

EVINA初号機、再起動。

「ああああああああああああああああヒキタニくんヒキタニくんあああああああああああヒキタニくぅぅぅぅぅん!貴方はどうして!どうして!どうしてそんなに私を喜ばせるのぉぉぉぉぉぉ!」

馬鹿な・・・っ!動くはずがない・・・っ!

「着替え!?着替える!?何に!?タキシード!?ウェディングドレス!?燕尾服!?それともメイド服ぅぅぅぅぅぅ!?ハァァァ・・・ハァァァ・・・・っ!」

まさか・・・暴走・・・!?

「今のお前が一番冥途の近くにいるわ。」

(((比企谷ぁぁぁぁ!うまい事言ってる場合じゃないぃぃぃぃ!それ本当に洒落になって無いってぇぇぇぇ!)))
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 01:57:20.39
「そこに居るのは三浦と戸部か?俺がここに居ると死者が出そうだし退散するわ。すまんが後は頼む。」
「へっ!?あ、あぁ、任せろし・・・」
「あ、うん判った・・・お気をつけて・・・」

3人は出て行った。

「ほら八幡、水道はこっちだ。」
「おうサンキュー。イチチ・・・まだ前がよく見えねぇ・・・」


「アヒッ・・・アヒッヒヒッヒヒヒヒ・・・」

昼休み、海老名姫菜が戻ってくる事は無かった。
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 01:57:54.78
放課後

「戸塚くん」

俺は声を掛ける。

「あれ?葉山くん。どうしたの?」
「あぁ、部活前にちょっと聞いてみたい事があってね。」

今、比企谷の最も近くに居る人物の1人。俺が見間違っていないなら雪ノ下さんや結衣よりも。

「もしかして、八幡の事?」

戸塚くんはこう見えて結構鋭い。

「あぁ、戸塚くんは以前からヒキタニくんと仲が良かったみたいだけど。」
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 01:58:24.37
そう。
戸塚くんはあの文化祭の一件の後でも、比企谷との関係を失わなかった。
雪ノ下さんと結衣は判る。同じ部員である彼女たちが事情を知らない訳がない。
同時に彼に惹かれている。

川崎さんは判らない。
なぜ突然彼女が比企谷の近くに現れたのか。
彼女は比企谷のどんな核心に触れたのか。

そして彼、戸塚くん。
以前テニスコートを賭けて比企谷と勝負したことがある。
それ以来、彼は比企谷に対して絶対的な信頼を寄せている。
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 01:58:51.13
「俺もヒキタニくんとは仲良くやっていきたいんだ。彼の事、少し教えてもらえないかな?」

俺は自分の気持ちが理解できないでいる。

文化祭での件、目の前で自ら傷ついてゆく彼を見て、俺はどう思っていたのか。

修学旅行での件、そんな方法を取ると知りつつ彼に頼ってしまった時、俺は何を思っていたのか。



悔しさか?憐みか?怒りか?憎しみか?それとも嫉妬だろうか?
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 01:59:27.68
「うーん・・・葉山くんは八幡と仲良くやっていきたいの?それとも上手くやっていきたいのかな?」

ドキリとする。

「できれば仲良くなりたいと思っているよ。」
「そっかぁ・・・葉山くん、多分だけど・・・」
「うん?」
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 01:59:55.54



「今の葉山くんだと、難しいと思うな・・・」
「え・・・?」

心臓の鼓動が早くなる・・・

「そろそろ部活行くね?それと今度僕に八幡の事聞きたい時は・・・名前、間違えないでほしいな。」




いつもと変わらない笑顔を向けられて・・・鼓動が止まったかと思った。


見透かされていた。
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:00:22.67



「ご、ごめん・・・」

そう言うのが精一杯だった・・・
戸塚くんはそのままテニスコートへ向かって行った。
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:00:50.22
奉仕部

「む~・・・」

部活が始まって以降、由比ヶ浜さんはふくれている。
視線の先は判っている。いつもと変わらぬ姿勢でいつも通りに読書している男だ。

読んでいる本は文庫本に戻った。
しかし彼はまた1つ変化を持ち込んでいた。

「・・・」
ポチポチポチ・・・

・・・
・・


ブブブブブ・・・

マナーモードの振動音。
彼は"友達"とメールをするようになった。
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:01:38.83
「ヒッキー!」
「ん?どした?」

少し余裕のある返事をする比企谷くん。
腹立つわね・・・

「あたしとは!?あたしとは全然メールしないじゃん!」
「だっておめぇよぉ、顔文字つけねーと文句言うじゃん」

どうやら由比ヶ浜さんと比企谷くんはさほど頻繁にはメールのやり取りをしていないようだ。

「だって表情描かないとどんな顔してるのかわかんないじゃん!」

私の隣でぎゃぁぎゃぁと喚き散らす由比ヶ浜さん。
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:02:16.59
「メール!あたしともメールしろぉ!」
「・・・」



ジャーンジャーンジャーンジャジャージャジャーン

由比ヶ浜さんの携帯から着信音が鳴り響く。

「はぁ・・・由比ヶ浜さん、マナーモードにしてくれるかしら?」
「アハハハ・・・ごめんごめん。」

由比ヶ浜さんが携帯を開くと画面が視界に入る。


FROM ヒッキー


「え!?」

驚いた由比ヶ浜さんが恐る恐るボタンを押す。
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:02:45.26





----------------
FROM ヒッキー
TITLE nontitle

('A`)

----------------
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:03:11.53
「ほわあああああああああああ!?」

絶叫。

顔文字に疎い私でもなんとなくこの表情は読み取れた。

「今度機会があったら常にその顔文字つけとくわ。」
「や、やめろぉー!だ、大体ヒッキーいつもこんな顔してんじゃん!」
「そうね、比企谷くんに相応しい顔ね。」

今にも死にそうな顔ね。
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:03:51.78
「よく判ってんじゃん。つまり由比ヶ浜は顔文字なんて無くても俺の表情くらい判るという訳だ。」
「へ?あ、う、うん・・・」

う、頷いちゃうのねこの子・・・

「・・・って今馬鹿にしたでしょ!?からかったでしょ!?」
「あぁした。」

あっさり認める。

「今お前は『俺が由比ヶ浜をからかった』という事実を読み取った。突き詰めれば『メールなんてしなくても思いは伝わる』という事だ。つまり、俺とおまえはメールなんてしなくても通じ合えている、OK?」

無茶苦茶な暴論が発せられた。

「え・・・そ、そうかな・・・エヘヘ・・・通じ合ってるだなんて・・・」
「由比ヶ浜さん、流石にそれは納得するところじゃないわ。」

なんでこの子はこんな簡単な屁理屈に丸め込まれるのかしら。
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:04:19.20
「まぁ確かに比企谷くんの言うとおり、顔文字というのは必要性を感じないわね。メールなんだし、要点さえ伝えられればいいと思うのだけれど。」
「全くもって同意だ。」
「えぇー!じゃぁゆきのんとヒッキーだったらどんなメールするのさ!?」

ふむ・・・想像はつかないわね・・・

「なら比企谷くん、私にメールを送ってみてくれるかしら?」
「あいよー。」

ポチポチポチ・・・

・・・
・・


ブブブブブ・・・
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:04:54.02
マナーモードの振動音。
・・・比企谷くんの携帯から。


「あちゃー、MALER-DAEMONさんから返信きちゃったわー。」
「・・・比企谷くん、一体どこにメールを送ったのかしら?」
「んぁ?hidoiyoyukinoshitaあっと・・・」
「もういいわ・・・」


そもそも連絡先を教えていなかったわ。


「というかヒッキーは誰とメールしてるの!?」
「あぁ、この時間は彩加は部活中だし、沙希しかいねーぞ。」
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:05:33.13
"彩加"
"沙希"

彼の友達。

「ってそうそれ!何で川崎さんとさいちゃんを名前で呼んでるの!?」
「あいつらにゃ負けちまったんでね。」
「負けたら名前で呼ばなきゃいけないの!?・・・ってさいちゃんも?」
「あぁ、金曜の件は沙希の罠 だったが、先週の月曜からのは彩加の罠だ。」
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:06:00.33
川崎さんと戸塚くんが・・・罠・・・?

「まぁ俺はまんまとあいつらの罠に引っ掛かって1週間マヌケぶっこいちまったワケさ。」

あ・・・
少し、ほんの少しだけ見えた気がした。
罠の意味・・・彼が元気になった意味・・・
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:06:32.18
「メールの内容は?どんな事やり取りしてるの?」
「沙希はゼミの話や弟の話、あとはスーパーのセール品の話とか。彩加だったらテニスの話や休日の予定とか、期末試験の話もしたかな。」
「な、なんか思ってたより普通だね・・・ってかセール品の話って・・・」
「見返してみりゃお前と縁のありそうな話は殆どねぇな。やっぱり俺とメールはしなくていいんじゃないか?」
「だーっ!そんな事ないもん!うー・・・」

全貌が見えたわけじゃないけど・・・
そうね・・・川崎さんと戸塚くんには・・・感謝しないといけないわね。
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:07:06.48
図書室


うちがここに来たのはたまたまだった。
そこまで目立つほど成績のいいわけじゃないうちだもの、図書室に参考書を借りに来る事くらいある。

そこで見つけてしまった。川崎さんの姿を。



川崎さんは静かに勉強しながら、たまにメールを打っている。
ふーん・・・川崎さんがメールかぁ・・・相手はこの間の騒ぎの時に言ってた弟さんだろうか?
それとも・・・比企谷だろうか・・・?
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:08:01.93
比企谷。
うちのトラウマとも言える人物。
文化祭最終日、居場所を見失い屋上に逃げたうちを真っ先に発見し暴言を浴びせた。
・・・あの目で。

その後あいつは当たり前のように周囲から軽蔑の目で見られていた。正直、ざまぁみろと思っていた。
だけど・・・あの目は。奥底から向けられるあの目だけは未だに怖い。
いつか報復が来るのではないか?そんな恐怖と向き合わないよう、あいつの事を極力視界に入れないようにしていた。

そんな目をしたあいつとまともに睨み合い、あの暴言の数々を同じ分だけ打ち返した人物が目の前に居る。


本棚の影に隠れてしまった。
・・・このまま静かに出て行こう。
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:08:32.52
そう思ったところで意外な人物が川崎さんに声を掛けた。


「ここに居たんだ、川崎さん。」

葉山隼人。屋上に駆け付けたもう1人の人物。
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:09:14.95
正直に言うと、うちは少しだけ葉山くんが苦手になった。
確かにあの時助けてくれたのは感謝している。でも時々、本当に時々頭の隅っこでチラつくのだ。


あそこで葉山くんの言う通り戻っていたら、どうなってた?


事実は変わらない。うちは余計な考えだと頭を振る。
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:09:48.13
「隣、いいかな?」

葉山くんが川崎さんに語りかける。

「ダメ。」

即、却下される。
何を考えているんだろうあの人は。



「あたしの隣に馴れ馴れしく座っていい男は、弟と、彩加と・・・」

少し区切って、川崎さんは葉山くんを睨み返す。

「八幡だけ。」

とんでもない事を考えていた、あの人は。
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:10:24.25
「どうせあんたが聞きたいのも、八幡の事でしょ?」

「・・・バレてたか。ハハハ。」


何・・・?葉山くんが比企谷の事を・・・?



「あいつの事を聞きたいなら、その位置からお願い。」
「あぁ、わかった。」

一体何を聞くんだろう?
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:10:54.48
「川崎さん、先々週はびっくりしたよ。正直声も出なかった。」
「・・・」
「そしたら今日はそれ以上にびっくりしたよ。俺も彼とは仲良くなりたいんだ。少し彼の事を教えてくれないだろうか?」



比企谷と仲良くなりたい・・・?
いや・・・葉山くんならそうだろう。彼は誰とでも仲良くしようとする人だ。
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:11:23.62
「・・・彩加にはもう聞いたの?」
「あぁ・・・やんわりと、だけどはっきり断られたよ。」

戸塚くんが・・・?

「でしょうね。判ってるとは思うけど、彩加は強いよ。あまり怒らせちゃダメだからね。」
「身をもって知ったよ。」

何がどうなっているんだ・・・
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:11:51.50
「ま、少しだけ教えてやるけど、その前に結論だけ言うよ。」
「え?」
「あいつと"仲良く"するのは、今のあんたじゃ無理。」


・・・比企谷と仲良くするなんて、うちじゃ全く想像できない世界だけどなぁ。
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:12:22.13
「・・・そうなのか?」
「少したとえ話にしてやろうか。あんた、家庭の中で"父親"の役割って何だと思う?」
「それは何か関係が?」
「わかりやすくしてんだ、質問に答えな。」
「・・・一家を支える大黒柱、かな。」

うん・・・うちの答えもそうだ。






「ハズレ。結論にもう1つ加えるよ。あんたが八幡と"仲良く"出来ない原因は、あんたがガキだからよ。」
「・・・なっ!?」
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:12:59.35
何を言っているんだ。
川崎さんが何を言っているのか、全然わからない。




「さっきの答え・・・父親の役割。」
「・・・」
「子供に嫌われる事。疎ましく思われる事。」
「!?」

・・・・・・・・・・・・・あっ!?

「思春期の息子には敵視され、思春期の娘には蔑ろにされる。それでもそんな子供たちから絶対に目を逸らさない。」
「・・・」
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:13:29.60
「それが、家庭における"父親"の役割。」

・・・それって・・・つまり・・・



「あいつのガキは、呆れるくらいに多いのさ。」
「・・・」
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:14:07.53
葉山くんは恐らく絶句しているのだろう。
うちもそうだ。今何か喋れと言われたところで、何も口から出てきやしないだろう。

「なら・・・川崎さんと戸塚くんは・・・一体何をして彼の近くまで辿り着いたんだ・・・?」
「簡単な事だよ。父親の弱点を知っていたのさ。」
「・・・」
「あたしからはもう話すことは無いよ。ただ・・・」

・・・

「あいつと"上手く"やりたいなら、今のままでいるこったね。」
「・・・・・わかった、ありがとう。」


葉山くんは出て行った。
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:14:42.94
う、うちも・・・


「盗み聞きですか?趣味がいいとは言えませんね。」

ビクッ!



「平塚先生。」

「あー、悪い悪い。本当に偶然なんだ。許してくれ。」


び、びっくりした・・・うちじゃなかったんだ。
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:15:22.81
「川崎、私からはあまり語る事はないが・・・礼を言っておきたい。ありがとう。」
「いえ・・・」
「君は・・・君たちは私とは違う答えに行きついたようだ。」
「・・・いいんじゃないですか?痛ましく思う人も居れば、見ないふりをする人も居ます。」
「その通りだ。そして、支える人も居る。」
「・・・ええ。」
「さっきも言ったが、私から語る事はあまり無いんでね。君たちは私が何か言うよりも、きっといい答えが出せるよ。」
「・・・ええ。」
「行きたまえ。そろそろ下校時刻だ。」



「ええ。失礼します。」



最後に聞いた川崎さんの声は・・・
はっきりとした・・・透き通るような声だった。
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:15:59.67



「私も出て行くが、君も今の事は好きに解釈するといい。"上手く"やるのも間違いじゃないさ。」


・・・バレてた。
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:16:32.20
校門


「はぁ~・・・」

今日は喋りすぎた。
図書室なら静かに過ごせると思ってたのに。
まったくどいつもこいつも、なんだかんだで気にかけられてんだねぇ八幡。



さっき自分の口から発せられた言葉を思い出す。
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:16:59.14
"それが、家庭における父親の役割"

あたしはそんな事を思っていたのか・・・
すごい自然に口から出てきた。

そしてもう1つ。

"簡単な事だよ。父親の弱点を知っていたのさ"
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:17:44.68
父親の弱点。
1つ、甘えてくる子供には滅法弱い。
1つ、大人になった我が子は話し相手であり飲み友達。

そして・・・もう1つ。




奥さんには頭が上がらない。


・・・ば。


・・・・・馬鹿じゃないの・・・・
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:18:46.47
「沙希ちゃーん。」
「おう、お待たせ、沙希。」

下校時刻。
2人との・・・あたし達の待ち合わせ場所。
顔の赤みを夕日のせいにした。
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/11(木) 02:43:53.28
ここまで我のツボをつくとは…
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/12(金) 00:26:04.34
屋上手前:踊り場


「小町の成績はどうなの?」
「あぁ、もちっと伸ばせば総武高に届くかな。文系が伸びてないのがやや危ういってとこ。」
「そっかぁ、小町ちゃんがんばってるんだね。」

あれから数日。
季節はとうとう冬へと足を踏み入れた。
ある程度天気が良くても、流石に屋外での食事は難しくなってきた頃だ。
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/12(金) 00:27:00.99
以前の勝負の時は屋上でのランチだったが、この季節の風は冷たい。
たかが数日だというのに、あっという間に寒くなるものだ。

そんなわけで、屋上の1歩手前。踊り場の床が昼休み中の俺たちのテリトリーとなっていた。

「大志はどうなんだ?」
「こっちもあと1歩ってとこ。だけど以前話した時に比べれば凄い勢いで伸びたと思う。苦手教科はあんまりないんだけど、全体的に補強したいかな。」



2学期も終わろうとしている。
高校入試を控えた中学3年生にとって、次に迎える冬休みは正念場である。
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/12(金) 00:27:47.30
「僕も中学生の頃のこの時期は大変だったなー。」
「まぁ受かったあたしらが先輩なんだし、あたしらが教えてやれば受かるさ。」
「そだな、入試問題とかまだ取っておいてあるし。」

甘やかし根性全開である。
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/12(金) 00:28:43.52
「ってか八幡。あんた文系得意なんだろ?なんで小町の文系が伸び悩んでんだよ。」
「あいつ文系で行き詰ると上手い事俺を丸め込んで、結局俺が問題解いちゃうんだよ。あいつの作文7割は俺が書いたまである。」
「それはちょっと・・・」
「いや、別に伸び悩んでるってわけじゃないんだ。そこら辺のツケが回ってきただけであって、文系学力自体は悪くない。」

そう、結局纏めるところは自分で纏めるし、教えてやれば飲み込みも早い。
俺が解いた問題の回答を見て答えを覚えているんだ。
つまり間接的に俺がしっかり教えていると言える。
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/12(金) 00:29:12.58
「はぁ・・・小町、理系はさほど問題無さそうだな。」
「良く判ったな。」
「計算高いしな。」
「そこに繋がっちゃうんだ・・・」



否定はせん。
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/12(金) 00:30:04.63
「甘やかすにも限度ってもんがあるでしょ。」
「うっさい。特徴がある方が可愛げがあるだろ。」
「何?全体的に優秀になった大志が特徴のない子だって言うの?」
「さっき全体的に補強したいって言ったばかりだろ。水増ししてんじゃねぇよ。」


「・・・」
「・・・」


308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/12(金) 00:31:09.78
階段


ヒキタニくんと戸塚くんが昼休み教室から出て行くようになってから数日・・・
ついに私は突き止めた!2人の密会場所を!

携帯の容量は十分か・・・?

・・・オッケィ!
動画撮影機能・・・ON!
グフフフフフ・・・これだけ焦らされたんだもの・・・写真なんかじゃ済まさないわよぉ~。
いざ!秘密の薔薇園へ!


「ヒキタニくーん!戸塚くーん!見ーつけたぞー!」
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/12(金) 00:31:43.51



「るっせぇぇぇぇ!それはてめぇが風呂上りに服も着ねぇでうろちょろしてっからだろうが!集中できるわけねーだろ!!」
「やっかましい!余計なお世話だ!それと集中力は関係ないだろ!自分の甘やかしを棚に上げといてよく言えたもんだよ!!」
「あ、海老名さん。アハハ、見つかっちゃったね。」



oh・・・ジーザス。



カメラ越しに映り込んだのは、もみくちゃになりつつあるヒキタニくんとサキサキ。
ショッキング発言と共にショッキング映像がバッチリ録画されてしまった。



310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/12(金) 00:32:50.09
「ヒヒヒヒヒヒキタニくんとササササササキサキはすすすす既にそんななななな!?」
「あれ、海老名さん。何でここに。」
「ん?何、あんた1人?あとサキサキ言うな。」


何平然としてるのぉ!?
既に2人はそれが日常!?
知らないうちにとんでもない事に首を突っ込んでしまった!?

311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/12(金) 00:33:53.08
「だだだだだってほら!コレ!思わずそのまま録画しちゃったんだよ!?」

"るっせぇぇぇぇ!それはてめぇが風呂上りに服も着ねぇでうろちょろしてっからだろうが!集中できるわけねーだろ!!"
"やっかましい!余計なお世話だ!それと集中力は関係ないだろ!自分の甘やかしを棚に上げといてよく言えたもんだよ!!"

「ほらぁ!どうしたらいいのよ私!」
「は?あんた、あたしたちのケンカ風景なんて録画してどーすんの?」
「海老名さんの趣味のソレとはちょっと違うんじゃねーか?」






「いや、その、ハハハハ・・・だ、大丈夫!私腐ってもノーマルだって全然オッケーだから!腐ってる方がイイけど!そっちもちゃんと判ってるから!」
「は、はぁ・・・」
「どうしたんだ海老名さん。」
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/12(金) 00:34:53.00
大丈夫!大丈夫!私だってBLだけを詰め込んでいるわけじゃない!
ノーマルだってちゃんと認めた上でそっちに走ってるんだ!だから大丈夫!
サキサキは背もスラリと高い方だから男装キャラとして脳内変換するのもお手の物だからぁ!


「ごめんね海老名さん。2人はいつもこんな感じだからさ、ちょっと教室だと・・・ね。」
「う、うんうんうん!そうだよね!そうだよね!流石にそうだよね!大丈夫!ちゃんと判ってる!」
「え、あぁ・・そりゃどうも・・・」
「大丈夫とか判ってるとか、海老名さんさっきからそればかりだぞ・・・?」


そんな事を言いつつも2人はお互い服を掴んだままの姿勢だ。
あーもー何コレ?私何をしにここに来たの?
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/12(金) 00:35:38.67
「ほら2人とも、まだお弁当半分も残ってるよ。」
「おっと、そうだった悪い悪い。」
「うん、そろそろ食べきっちゃおうか。」


改めて・・・戸塚くんすげー。
当たり前のように自然に纏めちゃったよ・・・
それをすんなり聞き入れてお弁当に戻る2人・・・え?ホントどーゆー関係なのこの3人。
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/12(金) 00:36:43.46
「おい、海老名さん。あとは俺ら弁当食ってるだけだぞ?」
「えっ?あ、何ていうかそのー、タイミングを逃しちゃってね・・・ハハハ。」

鼻血噴出してお弁当をダメにするのは流石に良くないと思って、即録画!即脱出!後に堪能!ってプランだったのに・・・

「あぁ、2人の迫力に押されちゃったかな・・・?」
「ん、それほどでもないと思うけど?」
「あぁ、どうせいつもこんな感じだしなー。」

い、いつも・・・?
いつも戸塚くんは2人の赤裸々なトークを平然と聞いてるの?


「いつも突っかかってくるのは沙希だし。」
「いつも突っかかってくるのは八幡だし。」



「・・・」
「・・・」



「なんだぁ!?」
「なんだと!?」

え、ちょ、えぇぇ!?
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/12(金) 00:38:01.78
「はいストーップ。」



戸塚くんは2つのフォークを器用にそれぞれのお弁当箱に突き刺す。
取り出されたのは小さなウインナー。その手を交差させるようにスッと振り上げ・・・


「「!?」」

2人の口へホールインワン。


「「んんんんんんんんんー!?」」

ウィンナーを口に含んだままバッと立ち退く2人。



「もう、すぐこれなんだから。」

仕方ないなぁといった感じに微笑む戸塚くん。



「「モゴモゴ・・・ゴクン・・・ごめんなさい。」」

なんと・・・
なんと鮮やか・・・
この光景こそ録画したかった・・・くっ!
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/12(金) 00:39:26.69
「そういや海老名、あんた自分の昼飯は?」
「え?あぁ今日は元々ここに来るつもりだったから早弁しちゃった、ハハ・・・」
「ワルイコめ。」

しかも任務失敗だし・・・まぁいいや。

「元々って・・・最初からあんなの録画するつもりだったのかい?変なヤツだねあんたも。」
「だ、大丈夫!あれは後でちゃんとPCに移して携帯のは消すから!」
「いやほんとあんな動画どーすんだよ・・・」
「どうもしないよ!?」
「まぁまぁ、ね?海老名さん。以前言った通り騒がしかったでしょ?」

確かに・・・まぁ・・・目的は達成できなかったけど・・・
本当に騒がしく・・・無茶苦茶なランチタイムだったけど・・・
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/12(金) 00:39:56.40



ヒキタニくんとサキサキの珍しい光景が見れたからよしとしよう。



「ふふふ、そうね。」
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/12(金) 00:40:45.01
以前、ヒキタニくんに言った事がある。

"そうやって、どうでもいいと思っている人間には素直になるとこは嫌いじゃないよ"

この間の教室でのお弁当交換の様子を思い出してみる。

・・・・・


"素直"と"本音"は・・・似ているけど違う・・・

"本音"でぶつかり合っているヒキタニくんとサキサキは・・・うん・・・


嫌いじゃない。





あ、でもこの動画はほんとヤバイかも。別の種類の鼻血出そう。
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/12(金) 00:58:48.18
我をここまで悶えさるSS… 恐ろしい破壊力だ!

次回スレ:

八幡「ブラコンめ」沙希「シスコンめ」【後編】

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活字中毒者

今までのssの中で一番感動しました!

とあるSSの訪問者

千葉1位は高坂さん家の息子さんだろ


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