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前スレ:

食蜂「永遠に変わらない心と愛」前編


543 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/21(土) 17:24:02.85 ID:q60Nt27c0

彼は寮への帰り道をふらふらとおぼつかない足取りで帰っていた。

上条(そういや俺、何も食べてねーんだった……)

上条(インデックスにも何も作ってないし……どう言い訳しようかな……)

出来る限りインデックスを巻き込みたくは無い。だから食蜂の毒のこともずっと黙ったままであった。

現在の時刻は午前11時。朝食を食べていないインデックスはどれほど凶暴化しているのか考えるだけで足が重くなる。




ガチャ

上条「ただいまー……」

禁書「……」

上条「ご、ごめんインデックス。ちょっと色々あってさ……今からたくさん作ってやるから」

禁書「それもだけど、ほかに言うことがあるんじゃないのかな?」


544 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/21(土) 17:25:12.92 ID:q60Nt27c0

上条「言うこと……?」

禁書「私が気付かないとでも思った?最近のとうま、どこからどう見てもやつれてるんだよ」

上条「え…」

自分では全く気がつかなかった。そういえばここ最近鏡を見ていない気がする。
自分の顔がどうなっているのか確認する余裕すらなかったらしい。

禁書「ていうか、今日は平日なんだよ。学校はどうしたのかな?」

しまった、と思った。そういえば今日は平日だった。午前中に帰ってきているのはどう考えても不自然だ。

禁書「そして本題!毎日とうまはなにをしているの?」

インデックスの追求に言葉が出ない上条。それは気まずくて答えられないのではない。頭がぼーっとして何も言葉が浮かんでこないのだ。
彼女の言うとおり、自分は相当疲れていたらしい。

上条「学校は、具合が悪いから早退したんだよ。ご飯作ったら少し寝かせてくれ」

禁書「それは分かったんだよ。とうまは毎日どこへ行っているのか教えて欲しいかも」

上条「……時が来れば、話すよ」

ただそれだけ呟いて、上条は台所に向かった。
545 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/21(土) 17:27:55.76 ID:q60Nt27c0


しばらく昼寝をして起きると、大分体が軽くなっていた。ひとまずは元の体調に戻せたようだ。

上条(俺、やっぱ情けねえ……たったの2週間毎日お見舞いに行っただけでこの始末だ……もっと心を強く持たねぇと…)


上条「俺はアイツを助けるんだ…助ける…助ける…一番辛いのはアイツなんだ……俺が支えてあげなくてどうする……俺が…俺が…」ブツブツ



禁書「……とうま?何ブツブツいってるの?」


上条「」ハッ


上条「いや、なんでもねぇよ。昼寝したおかげで元気になった」

禁書「なら、いいんだけど」

インデックスは半ば疑うようにしてそう呟いた。
547 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/21(土) 17:30:10.64 ID:q60Nt27c0


――――――――――――――――――

―――――――――




食蜂が入院してから一ヶ月が過ぎた



現在上条はアイマスクを装着した食蜂を車椅子に乗せて、病院のちょっとした広場を散歩していた。

上条「なー操祈」

食蜂「なあに当麻さん」

上条「今日はいいもん持ってきたぞ」

食蜂「え?いいもの?」

すると車椅子を止めた上条はゴソゴソとかばんの中を漁り、二つのものを取り出した。

上条「これ、お前の友達が取ってきてくれたんだ」

彼は食蜂の目の前にそれを持って行くが、当然彼女は見ることが出来ない。

上条「おっと、こっちのほうが分かりやすかったな」

そうして彼女の耳元へと移動させた。

548 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/21(土) 17:32:07.46 ID:q60Nt27c0

サラサラサラ……


食蜂「あ……この音は……」


食蜂「砂時計……」


それは、記憶を失う前の上条と、今の上条の両方にプレゼントしてもらったものだ。
どちらも大切な宝物である。

上条「これ、なんで2つあるんだ?」

食蜂「ふふ、あなたにプレゼントしてもらった分と、前のあなたにプレゼントしてもらった分よぉ」

上条「え?2つとも俺が?」

食蜂「そうよぉ。2つ目を貰ったとき、私は気付いたの。記憶が無くなったって、あなたはなぁんにも変わってないんだなって」

食蜂「改めて、お礼を言うわぁ。プレゼントありがとう」

上条は照れくさそうに頬を掻くと、ポンと食蜂の頭に手を置いて撫でた。

上条「お礼なんていーんだよ。早く元気になろうな」

食蜂「うん!もちろんよぉ!」

食蜂はにっこりと笑った。彼女の笑顔によって、最近疲れで精神的に余裕の無かった上条の心は癒されていく。
彼女が笑うだけで元気になった。彼女は自分の生きる価値ともいえる存在なのだ。



これ以上、もう彼女を壊されたくない―――
549 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/21(土) 17:34:10.08 ID:q60Nt27c0

砂時計を渡してから2週間が経ったある日のこと



今日は土曜日であり、上条はいつものように病院に訪れていた。

上条「おーい操祈、今日も来たぞー」

軽い感じで挨拶をすると、食蜂はびっくりしたように口をあんぐりと開けた。

上条「ど、どうした?そんなに驚いて」

食蜂「だ、だって当麻さん…「今日も」って、さっき来たばかりじゃない」



上条「……………は?」

550 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/21(土) 17:35:19.61 ID:q60Nt27c0


上条「何言ってんだよ……?」

そう、上条が最後にここを訪れたのは昨日の午後5時。「さっき来た」という言葉が食蜂の口から出るのはどう考えたって
ありえないことだった―――本来ならば


上条(まさか、まさか、まさか……!!)


どれほど食蜂を苦しめれば気が済むのだろうか。
信じたくない。信じられない。
だが、目の前で不思議そうに首をかしげる食蜂を見て、どうしようもなく確信してしまう。




―――――記憶が……ごちゃごちゃになってんのか……?



551 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/21(土) 17:36:50.82 ID:q60Nt27c0

嫌な汗が頬を伝った。ごくり、と生唾を飲み込み、おそるおそる尋ねる。

上条「なぁ……操祈。昨日の晩御飯、何食べたか覚えてるか……?」

食蜂は人差し指を頬に当て、うんうん唸りながら首を捻った。

食蜂「昨日の……晩御飯…?昨日……あれ?今日は何日だったかしらぁ?ていうか、何月…?」



上条はただ茫然と立ち尽くした。


その日、彼は頭の中が真っ白になる、というのを初めて体感した

566 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/22(日) 21:09:26.82 ID:QzzmSQFB0

―院長室―


冥土帰し「……そうか…記憶が…」

上条「先生……俺は一体…どうすれば……」

上条は驚くほど顔が青かった。
以前食蜂を絶望させた「記憶」が、今度は上条へと牙を剥く。

冥土帰し「しかし、彼女の記憶はキミと違って全部壊れてしまったわけじゃない。一時的なものかもしれないし、少し様子を見てみよう」


上条「……はい」


上条の顔色は終始優れなかった

567 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/22(日) 21:13:51.73 ID:QzzmSQFB0

翌日、上条は内心ビクビクしながらも病室のドアを開けた。

上条「お、おはよ……操祈」

彼女の反応が怖くて仕方が無かった。
彼女が視力を失ったときと昨日の記憶の一件で軽くお見舞いがトラウマになりつつあった。

食蜂「あ!当麻さん!」


食蜂「昨日は来てくれなかったけど、何かあったのかしらぁ?」




上条(…っ!)




上条「悪いな、ちょっと用事が長引いちゃってさ」ハハハ
568 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/22(日) 21:17:05.10 ID:QzzmSQFB0

食蜂は光を失い、あまっさえ記憶もあやふやな状態になってしまっているのだ。
記憶のことは彼女には黙っていたほうがいいだろう。これ以上彼女を苦しめるのはあまりにも心苦しい。


食蜂「用事って?」

上条「い、色々あるんだよ俺にも」

食蜂「ふぅ~ん……」ジトー

上条「な、なんだよ」

食蜂「べっつにぃ~」



食蜂「当麻さんは、私にだけは隠し事なんてしない人だと思ってたのに」



上条(………)


上条(それでも、話すわけにはいかないんだ)


上条(それが操祈のためなんだ)
569 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/22(日) 21:28:34.26 ID:QzzmSQFB0

それからは毎日、必死に自分にそう言い聞かせた。彼は、心の奥底では自身の本当の気持ちに気付いている。
本当は彼女のためだけではなく、もう自分が傷つきたくないから話さないのだと。
自分の醜さ、愚かさを隠すように、必死に頭に「彼女のため」だと刻み込んでいるのだ。


彼女に対して何も出来ない無力感、自己嫌悪に苛まれながらも、それでも彼は明日、明後日と毎日食蜂へのお見舞いを続けた。
それは、無力さからの罪悪感か、義務感か、彼女への愛情からか。様々な感情が入り混じり、彼の疲労は目に見えて溜まっていった。


そして日を重ねるごとに、彼女の記憶はどんどん崩壊していくのが手に取るように分かった。

あまりに辛い現実。

だがそれでも、今日までなんとかお見舞いを続けてこれたのも、彼女が上条のことだけは忘れていないからだった。

570 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/22(日) 21:30:17.59 ID:QzzmSQFB0

食蜂が入院してから二ヶ月が経とうとしていた。


彼女が入院したときはうだるような暑さだったが、すでに季節は秋。時の流れを感じずにはいられない。

上条は病院に行く前に彼女が大好きなスターチスの花束を購入していた。

ガチャッ


上条「操祈ー俺だぞー」

彼女の前では勤めて明るく振舞う上条。せめて少しだけでも安心させてやりたいからだ。

食蜂「………」

食蜂は何も言わなかった。どうしたのだろう。

上条「どうした?操祈」

きょとんとした表情で尋ねる。彼女が自分といるときに無言になることなんてほとんど無いからだ。

食蜂はこちらに顔を向け、首をかしげた。




食蜂「あなたはだぁれ?」



571 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/22(日) 21:31:09.90 ID:QzzmSQFB0

上条は、ゆっくりとまぶたを閉じた。現実から目を背けるように。


食蜂「あなた、私の名前を知っているようだけどぉ、どこかで会ったかしらぁ?」

食蜂「もしそうだとしたらごめんなさいねぇ。私、見ての通り目が視えないのよぉ」

食蜂「だから、一、二回会っただけなら誰だか分からないかもしれないわぁ」


食蜂「あれ?聞いてる?もういないのぉ?」


しーん


食蜂「いないみたいねぇ……誰だったのかしら?」





俺は、俺はここにいるよ、操祈
そうか、目が視えないから分からないんだな
ん?でもさっき俺の声を聞いても誰だか分かってなかったんじゃないか?
それなら、どうすれば俺だって分かってくれるんだ?
操祈の目は見えない、声を聞いても俺のことが分からない
あれ?それってつまり





俺は操祈から忘れられた

572 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/22(日) 21:48:36.17 ID:QzzmSQFB0

走る。走る。走る―――


上条は全力で走った。病院から遠ざかるために、現実から遠ざかるために。

寮に着き、自分の部屋に転がるようにして駆け込んだ。

インデックスの置手紙があった。散歩に行っているらしい。

だが、そんなことは今の上条の頭に入ってこなかった。


部屋の壁に力なくもたれかかり、全身の力が抜けて座り込む。

573 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/22(日) 21:49:05.32 ID:QzzmSQFB0

上条「あなたはだぁれ……か」

上条「あはは……」

自嘲気味に笑うと、右手に握るスターチスの花束が目に入った。



―――永遠に変わらない心


―――私たちにピッタリの花でしょ?


―――私の心も愛も、永遠に貴方のもだゾ☆




上条「永遠に変わらない心……か」



上条「現実は……残酷だなぁ……」ポロポロ

574 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/22(日) 21:50:29.17 ID:QzzmSQFB0


上条「俺は、無力だ……」ポロポロ


上条「ごめん……ごめんな……操祈……俺……は……お前に…何もしてやれなかった……!」グスッ


上条は、目を覆いながら激しく嗚咽を漏らして泣いた。
二ヶ月のお見舞い生活で、彼は今日初めて涙を流した。
彼の深い悲しみと絶望に呼応するように、涙が彼の頬を濡らす。


上条「うぅ……操祈……みさ……きぃ……」


彼の悲痛な叫びは、ひとりぼっちの部屋で寂しく響いた―――




そうして、翌日

上条は、この二ヶ月間で初めて病院を訪れなかった。


見舞いをするべき大切な人は、もういないのだから
586 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/23(月) 23:59:18.91 ID:GA1EVTYY0
上条は病院にも行かず、幸せだった彼女との日々を思い出していた。




砂時計をプレゼントした


一方通行が営んでいる喫茶店に行った


四季の花が全部揃った花屋にも行った


垣根との決戦で入院した自分をお見舞いしてくれた


退院してからプラネタリウムを見に行った


いつか星空を見に行こうと約束した


公園で彼女お手製の弁当を食べたときもあった
587 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/24(火) 00:03:36.09 ID:F4Xh6YPn0

上条(楽しかったな……あの頃は……)

上条(たった3か月なんだよな、操祈と過ごしたのは)

上条(それでこんだけ色々楽しくやってこれたのは全部アイツのおかげだよな……)





……それだけ?

なんだろうか、この心に引っかかっているモヤモヤしたものは

いままで挙げたのでほんとに全部か?

違うだろ そうじゃないだろ

操祈と俺はどんな状況で会った?俺が初めて操祈と会ったのはどんな時だった?

逃げんなよ 上条当麻

お前は傷付きたくないだけだろ もう絶望したくないから、だから逃げてるんだ

アイツは、食蜂操祈という少女は、俺と初めて会った時、どんな状況だった?




今の俺と同じ状況だっただろうが!!!!

588 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/24(火) 00:33:58.03 ID:F4Xh6YPn0

アイツは、俺が記憶を失って、その記憶はもう一生思い出せなくて、きっと絶望してたんだ!

今まで俺はその時の操祈の気持ちを深く考えたことが無かった。
考えることが怖かったから、アイツに申し訳なかったから、自分がとても情けなかったから

今の俺はどうだ?そんなに自分が可愛いのかよ!
傷付きたくない!?絶望したくない!?

操祈が俺に会いに来てくれたとき、操祈がそうじゃなかったとでも!?

俺は、あの時の恩返しをしなくちゃダメなんじゃないのか!?
このままずっと部屋に閉じこもってる気か!?

お前を助ける、安心しろって言ったのはどこのどいつだ!?


アイツが俺のことが見えなくても、覚えていなくても、俺はアイツを助けなくちゃならねえ!

589 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/24(火) 00:41:40.21 ID:F4Xh6YPn0

上条「………行かなきゃ!」

そう思った瞬間、心に渦巻いていた何かが消えた。
急いで服を着替え、玄関に向かおうとすると、ポケットに入っていた携帯電話が着信音を響かせた。

上条「……はい」

冥土帰し「……上条君、私だ」

上条「先生…」

冥土帰し「今から来てくれ。伝えなければならないことがあるんだ」


上条「……もちろんです」
590 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/24(火) 01:04:33.92 ID:F4Xh6YPn0
―院長室―


冥土帰し「この2か月、食蜂さんの毒について色々調べたが、やはりこの毒は未知の物質だ」

上条「……それはつまり、もう操祈は助からない、ということですか?」

上条はこのことを考えたことがないわけではない。2か月のお見舞い生活で疲労がピークに達した時、ふと考えてしまったことがある。


操祈は本当に助かるのか、と


だが本当にこの瞬間がこようとは―――


歯を食いしばって涙をこらえていた上条だったが、冥土帰しは首を横に振った。

冥土帰し「調べてみたところ、未知の物質を生み出す能力者がいるようだ」

冥土帰し「その能力者があの毒を作り出した可能性が極めて高いと見ているよ」

上条「その能力者っていうのは…?」

冥土帰し「おそらく、学園都市第二位 垣根帝督だ」


598 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/25(水) 20:17:57.56 ID:5dY70+jD0


上条「垣根……?」

上条は疑問符を浮かべた。
かつて妹達を救うために戦ったのが学園都市第二位・垣根帝督である。
彼の絶大な力に圧倒されながらも、御坂美琴と協力して辛くも勝利した相手だ。
その垣根の能力で毒を作ったとすると、復讐のために食蜂を狙ったのだろうか…

考えられることではある。だが、決着の瞬間に彼が見せた柔らかな笑顔が脳裏をよぎる。



上条「……垣根じゃないと思います」



自然にその言葉が出た。根拠なんてほとんどないが、彼じゃないという漠然とした自信があった。

冥土帰し「私もそう思っているよ」

上条「え?でもさっきは……」

冥土帰し「正しくは、彼の作った物質を何者かが利用した、といったところかな」
599 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/25(水) 20:19:21.84 ID:5dY70+jD0

冥土帰し「色々調べてみて分かったんだけど、キミたちと戦って以来、垣根くんの姿を見た者はひとりもいないそうだ」

上条「え……?」

冥土帰し「つまり彼はある研究所に囚われて無理矢理能力を引き出されている可能性が高いね」

冥土帰し「おそらく食蜂さんに毒を打ちこんだのはその研究者たちだろう」

上条は無意識の内にきつく拳を握りしめていた。

上条「その研究者ってのは誰なんですか?」


冥土帰し「レベル5を捕えることのできる組織なんてほとんど存在しない……考えられるのは……『木原』」


冥土帰し「木原一族の内の誰かだろうね……彼らはまさしく狂気に満ちた集団だ。生半可な覚悟で立ち向かうもんじゃないよ」


上条「……覚悟なんて、もう決めてますよ。俺は行きます。操祈を助けなくちゃいけないんだ」


冥土帰し「………キミならすぐそう言うと思ったよ」

冥土帰し「死なない限りは私が絶対に治すから、思い切りやってきなさい」




上条「はい!」
600 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/25(水) 20:20:33.32 ID:5dY70+jD0

冥土帰し「しかし、もう一つ君に言っておかなくてはならないことがある」


冥土帰し「食蜂さんのことだ。彼女の毒は私たちの予想を遥かに上回るスピードで侵食が進んだ。仮に奴らから血清を
奪えたとして、彼女の視力や記憶は治らないかもしれない。もうその段階に来てしまっているんだ」



冥土帰し「それでも、君は行くのかい?」



上条の答えは、すでに決まっていた。





上条「たとえ目が見えなくても、記憶が無くても、操祈が生きてくれさえすれば、俺は満足です」


ニッコリと微笑んで、堂々とそう答えた

601 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/25(水) 20:21:39.51 ID:5dY70+jD0
―――――――――――――――

――――――――――

ガチャ


食蜂「あらぁ?どちら様?」



上条「……名乗るほどのもんじゃないさ」



上条「名前なんてどうでもいい。ただ、約束するよ」



上条「俺が君を必ず救い出してみせる」




上条「それだけ言いたかったんだ。じゃあな」



バタン



食蜂「……今のは……誰……?」

602 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/25(水) 20:24:00.56 ID:5dY70+jD0


それから一週間、彼は寝る間も惜しんで毒を作ったであろう研究所を探し当てた。
そして3日後には学園都市中の研究員がほとんど出席する会議のようなものがあることを突き止めた。
つまり毒を作った研究所には数人しか残らない。
攻め入るならその日しかチャンスは無いだろう。

上条(やっと、やっとここまで来たんだ……絶対に毒の血清を奪ってやる)

相手がどんな組織だろうが関係ない。自分はひたすら食蜂を助けるために動けばいい。それが俺にとっての正解なのだと上

条は思っていた。









そして、3日後 時は来た



早朝4時、インデックスを起こさないように静かにムクリと起き上がって着替えはじめた。
そろそろ研究者たちがぞろぞろと会議に向けて出ていっている頃だろう。

上条(急がなきゃ……!)

足音を立てないように、そろそろと玄関に向かう。片方のスニーカーを履きかけたその時、



禁書「とうま」




上条「…………インデックス」




後ろから声が響いた。
603 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/25(水) 20:30:27.27 ID:5dY70+jD0

しまった、と思った。インデックスに気づかれてしまうとは、とんだ失態を犯してしまった。
何があろうともインデックスだけは絶対に巻き込みたくない。
どうすれば誤魔化せるだろうかと考えを巡らせていると、インデックスは予想外の言葉を放った。


禁書「いってらっしゃい」


上条は一瞬耳を疑った。この少女は寝惚けているのかと思い、まじまじと見つめるが、彼女の顔は食事を目の前にしたとき
のように眠気の欠片も感じられなかった。


禁書「早く帰ってきてね、とうま」


この少女は具体的にとまではいかずとも、上条がこれから何をしに行くのかは大体察知しているらしい。
だがそれを察知してなお、こうして笑顔で送り出してくれるのだ。彼女の優しさは素直に尊敬できる。
にっこりとほほ笑んでそう言うインデックスに、上条は照れくさそうにはにかみながら親指を突き立てた。


上条「おう!!」



決戦へ向けて、上条当麻は力強く足を踏み出した。

604 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/25(水) 20:35:26.59 ID:5dY70+jD0

――――――――――――――――――――――――

―――――――――――

そして上条は研究所に着いた。

計画通りだ。窓枠から覗き込んでそう思った。
中は閑散としている。研究員の数がこれほど少なければ血清を奪える確率はグンと上がる。

上条(よし……さっき拾ったこの石で…)


パリン!


軽快な破壊音が鳴り響く。石で窓ガラスを割った上条は素早く研究所の内部に入り込んだ。

上条(この研究所のどこかに血清があるはずだ……虱潰しに探していくしかないか)

迷ってばかりでは時間の無駄だ。迅速な行動をしなくてはならない。

上条(よし、まずはこの部屋から………)

そうして上条は虱潰しにドアを開けていった。

607 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/25(水) 20:57:24.88 ID:5dY70+jD0


上条(くっそ……この部屋も違うか……)

現在11部屋目。血清らしきものは一つも発見できなかった。
だが4部屋目を開いた時に一人の研究員と遭遇し、素早く殴って気絶させたことで白衣と眼鏡を剥ぎ取ることが出来た。
これで他の研究員と遭遇しても幾分か誤魔化せるだろう。

上条(にしても度がきついな……気分が悪くなりそうだ)

ゆらゆらとゆらめく視界に頭を抱えながら、この日12部屋目の一際大きな扉を開いた












――――その部屋は明らかに異質だった


608 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/25(水) 20:58:52.33 ID:5dY70+jD0


大きな筒状のケースに、培養液に漬かった巨大な脳みそのようなものが浮かんでいる。
その巨大な脳のケースの左右には男と女の研究員が一人ずつ配置されており、なにやら機材をいじっていた。




――――――そして、もう一人。その巨大な脳を見つめる男がいた




「これは『外装代脳(エクステリア)』」



男は巨大な脳を見つめながら、独り言のように声を発した。



「食蜂くんの大脳皮質の一部を切り取って培養・巨大化させたものであり、私の目的を達成させるために不可欠な装置だ」


「この『外装代脳』が完成した今、私は食蜂くんの存在価値に疑問を抱いた」



「なぜなら、彼女に出来ることは『外装代脳』があれば誰でもできる。まぁ、全部彼女と同じ、とはいかないだろうけど、

大抵のことはそこらの一般人でも出来るよ」



上条「…………だから操祈に毒を打ちこんだのか?」




その男―――木原幻生はようやく上条の方を振り返って、ニタリと笑った。



幻生「御名答。初めまして、幻想殺し」

609 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/25(水) 21:08:18.79 ID:5dY70+jD0

幻生「私の崇高な目的を達成するためには、『心理掌握』の力が必要だった。しかし、『心理掌握』本人の彼女は全くもっ

て力を使いこなせていない。あれほどの力を有していながら、つまらん遊びにしか使っていないんだからね。そのくせこの

『外装代脳』の干渉すら受け付けない強固なプロテクトを張っているのだよ。タチが悪いったらありゃしない」



幻生「まぁ彼女に毒を打ちこんだ理由はそんなところだよ。私は彼女よりも『心理掌握』を遥かに使いこなして計画を完遂

させる」


上条はフン、とせせら笑う。


上条「べらべらとよく喋るジジイだな」



幻生「何?」



上条「操祈が能力を使いこなせてない、だと?『心理掌握』が危険な能力だって分かってたからこそ、アイツは本気で能力

を使わなかったんだろうが!!!そんなことも分かんねぇお前に、『心理掌握』を使う資格はねぇ!!!」


上条「お前のような奴に、操祈は殺させない」

そして上条は血清よりも、まず一番最初に確認しなくてはならないことがあった。




上条「オイじいさん。垣根はどこだ?」
610 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/25(水) 21:15:46.41 ID:5dY70+jD0

幻生「ほう……君はもうそこまで辿り着いていたのか」

幻生「だが残念だったね。今回多くの研究員が集められる会議、あれは垣根くんの未元物質が主題の会議だよ。すでに別の

場所へ輸送されているよ」

上条(くっ……垣根さえ助けることが出来たらあとはどうとでもなるのに……)


上条「だがあれほど強力な毒だ。血清を作っていないはずがない。もし自分たちが狙われたら困るだろうからな」



上条「あの毒の血清はどこだ?」




幻生「……ふん、君は血清が欲しいのか」

上条「何処にあるのか答えろ」

静かな怒りに満ちた上条の声に、幻生は余裕を持って答えた。



幻生「あの毒の血清はほとんど作っていなくてね。そしてその貴重な血清は……」

幻生は懐から小さな注射器を取り出した。中には白いサラサラとした液体のようなものが詰まっている。



幻生「私が持っているよ」ニタ



幻生「ま、譲るつもりは勿論ないけどね」

そう言って再び注射器を懐へ収める。

幻生「キミももう諦めなさい。彼女を助けるなんて無理だよ」


上条「んなもんテメェが決めることじゃねぇだろ」



上条「俺が決めることだ」



そう言うと研究員から奪った眼鏡と白衣を投げ捨て、諸悪の根源・木原幻生を鋭く睨みつけた。

614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2013/12/25(水) 22:00:50.18 ID:WGH7wUwA0
乙です!
がんばれ上条さん!!
623 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/26(木) 17:47:21.90 ID:98+0oD7v0

幻生「ふん、癇に障るね」

幻生は鼻を鳴らすと、食蜂のものとはまた違ったタイプの細型のリモコンを取出してスイッチを押した。
すると、『外装代脳』の横で機材をいじっていた白衣の男がビクンと体を震わせた。
まるでロボットのようなぎこちない動きで振り返り、懐から銃を取り出して構える。


幻生「いくら君が異能の力を無効化できても、普通の銃には太刀打ち出来ないんだよねぇ」

上条「……っ」



幻生「撃て」

男「ハイ」ダン!

上条は低く身をかがめ、寸でのところで銃弾をかわす。

幻生「ちっ、反射神経が良いのかねぇ」

舌打ちする幻生を横目に上条は驚異の足の速さで男へと走り出す。

上条「おおおおっ!!」

右の拳を振り上げ、白衣の男の鼻っ柱にぶち込んだ。

『外装代脳』の力から解き放たれると同時に気絶し、倒れ込む。

上条(こいつらがいくら銃を持とうが、所詮は研究ばっかやってきたモヤシだ!これならなんとか……!)
624 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/26(木) 17:48:29.26 ID:98+0oD7v0

上条「血清を渡せっっっ!!!」


怒号を上げながら幻生のもとへと走り出すが、



バンッ!



上条「ぐっ!?」



あと少しで幻生に到達するというところで床に突っ伏してしまう。その原因は、



上条(くッ…右足に銃弾が……)

右足のふくらはぎに銃弾が撃ち込まれ、血が噴き出していた。
銃弾が飛んできた方向を確認すると、今まで機材をいじっていた白衣の女が銃を構えている。


上条(ぐっ…あの女か……!)

そんな上条の様子を幻生はニヤニヤとしながら見下ろしていた。

幻生「キミは銃には勝てないんだよ。もう分かっただろ?」
625 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/26(木) 17:50:11.39 ID:98+0oD7v0

上条(足に銃弾が当たったくらいで何だ!!操祈を助けるためなら、これくらい!!)ググッ

立ち上がろうとした瞬間、激痛が体中を駆け巡るが、圧倒的な精神力でねじ伏せる。
そして目の前の幻生をぶん殴るために左腕を上げた。

上条「おおおおおっ!!!」


バンッ!!!


上条「ぐっ……ああァぁっ!!」


白衣の女が放った弾丸が振り上げた左腕に命中する。
苦痛で顔を歪ませながらも、目の前の幻生を殴ることにだけ集中する。


上条「ぐおおおおあああっっ!!」バキッ


拳を幻生の頬に叩き付けた。だが殴った瞬間、途方もない激痛が迸る。

上条「が……あ……」
626 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/26(木) 17:52:24.47 ID:98+0oD7v0

上条の攻撃によって床を滑る幻生。
だが、頬をさすりながらすぐさまムクリと起き上がる。

幻生「全くキミの精神力も大したものだよ……手足に銃弾をを撃ち込まれてまだ殴れる力があるんだからね」

幻生「だがやはり冷静さを失っているようだ。今のは左じゃなく、右で殴るべきだったよ。銃を撃ち込まれていない方の腕
で殴られていれば私も倒れていたかもしれないねぇ」



幻生「そんなんじゃ、食蜂くんを助けるなんて到底無理な話だよ」



上条「お前が決めるなっつってんだろうが!!!」



今度は右腕を振り上げ、今度こそ幻生を倒すため足を踏ん張るが、


バンッ!!


またしても白衣の女の銃によって阻止される。今度は右腕に弾丸を撃ち込まれてしまう。


上条「ちっく…しょうがああぁぁ!」

無理矢理右腕を振るうが、速度は大したものではなく、安々とかわされてしまう。
627 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/26(木) 17:53:40.20 ID:98+0oD7v0

幻生「ハハッ!やはり冷静さを失っているようだねぇ。あんな安い挑発にのるようじゃまだまだだ」

あいかわらず人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべている幻生に、上条はありったけの怒りと敵意を込めて睨みつける。


上条(でも、まずはコイツよりもあの女を何とかする方が先だ!)


激しい怒りが功を奏したのか、痛みは先程よりも感じなくなっていた。
右足の傷を物ともせずに白衣の女に向けて突っ走る。女は上条を近づかせまいと発砲するが、焦っているのか標準がずれて

おり上条にかすりもしない。

ようやく女のもとへと辿り着き、長い髪を乱暴に掴んで床に叩き付ける。
なおも立ち上がろうとする女の頭を左足で思い切り踏みつけて気絶させた。
しかし、


バンッ!


上条「がっ……!?」

背後から銃声が聞こえたと思った瞬間、背中に激痛が走る。
思わず息が止まった。
震えながらも背後を振り返ると、銃を持った幻生が満面の笑みで佇んでいた。

628 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/26(木) 17:58:17.05 ID:98+0oD7v0

幻生「いやはや、ここまで銃を出し惜しみして良かったよ。油断している馬鹿を背後から撃つ……これほどの快感が得られ

るとはねぇ」ニヤニヤ

上条「ハッ……外道が……」

口では強気でも、はっきり言って限界が近かった。それもそのはず、すでに彼は4発も銃弾を受けているのだ。大丈夫なは

ずがない。

幻生「外道で結構」


バンッ!

躊躇うことなく引き金を引く。
撃ち出された弾丸は背中の激痛で動けない上条の鳩尾に突き刺さった。


上条「が……あ……」


鳩尾から瞬く間に大量の血が溢れ出し、ボタボタと床に零れ落ちた。


上条「ぐ……ほっ……」

629 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/26(木) 18:03:58.30 ID:98+0oD7v0

口から血を吐き、虚ろな目で片膝をついた。
鳩尾はもちろん、今の上条は全身から血が流れ出ている状況だった。


幻生「おとなしく帰りたまえ。あの医者のとこに行けば今ならまだ間に合うかもしれないよ」


ニヤけつつそんなことをほざく幻生。
しかし上条はすぐには反応できなかった。あまりの痛みで呼吸すらままならないのだ。


だが、それでも上条は必死に声を絞り出し、血を吐きながらも堂々と幻生に向けて言い放った。




上条「引き返す……わけねぇだろう……」




上条「そうだろ……操祈……」




661 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 16:24:53.87 ID:BtEm/6UY0

幻生「全く馬鹿な奴だよ、君は」スチャ

哀れみの表情で銃を構える幻生。
対する上条は、腹にぽっかりと空いてしまった穴を抑えながら、荒々しく呼吸をしながら跪いていた。
まさに絶体絶命の状況だった。


上条(このままじゃ……操祈を助けられない……)


痛みと絶望で視界がぐらつく。
そして、今現在も毒に蝕まれているであろう食蜂の姿を頭に浮かべる。


目も見えず、記憶も崩壊している彼女を助けられるのは、自分だけだ。

上条(俺が、助けるんだ……操祈を……必ず……)


上条(何か、突破口を……)


上条「ご……ふ……」ビチャビチャ


口から大量の血が零れ落ちる。彼の身体はとっくの昔に限界が来ていたのかもしれない。
だがそれでも上条は諦めない。必ず救うと約束した少女が待っているから―――
662 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 16:27:24.78 ID:BtEm/6UY0

上条(……アイツは、これまで研究ばっかして来たやつだ……何か一瞬でも気をそらせれば、その隙に距離を詰められる可

能性は十分ある……今のところ突破口はこれくらいしかねぇな……)

上条はそのままの姿勢を保ちながら、右手は腹の穴を抑え、左手をポケットへと伸ばした。

上条(奴に気付かれないよう……慎重に……)


上条「ごぼっ……」ボタボタ


幻生「ふふふ……私が殺すまでも無いかな?酷い出血じゃないか」ニヤニヤ


上条(アイツは油断しきってる……やるなら今だ……準備はできてる……)


上条と幻生の距離は約10メートル。
全力で突っ込めば何とか幻生に到達できる。
しかし体中にある傷はどれも酷く、この状態で果たして全力が出せるのか……


上条(いや、出せるのか、じゃない。出さなきゃいけないんだ)

663 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 16:56:41.42 ID:BtEm/6UY0

幻生「どうしたんだい?もう喋ることすら……」

上条(今だ!!!!!)



ポーン



左のポケットに忍ばせていた石を足元から投げ上げた。
その石はこの研究所に侵入する際、窓を割って鍵を開ける時に使用した物だった。
突如として現れた石に思わずビクリとする幻生。
このチャンスを見逃す上条ではない。全身に力を込め、一気に突き進む。だが当然、5発もの銃弾を受けている上条の体中

からは血が噴き出す。それでも彼は構わず全力で突っ込んだ。

しかし幻生もすぐに我に返り銃を撃った。
だが標準が定まって無い状態で撃ったために先程の2発に比べれば甘い。


上条(避けれるっ!)


ぐらっ


上条(!?あ、足がからまっ……)



ズチュッッ!



上条「か……は……」



幻生の放った弾丸が、脇腹に炸裂した―――――

665 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 17:27:37.18 ID:BtEm/6UY0

上条「ぐ……」



上条「あああああああああああああああああああああっっっ!!!」




広い部屋に上条の絶叫が響き渡る。だがそれは苦痛に悶えて発したものではなかった。
激痛で気絶しないよう、死力を振り絞って叫んでいるのだ。
脇腹に弾丸が突き刺さってもなお、上条は一度も動きを止めずに幻生へ向けて走り寄る。



幻生(な、なんだコイツは!?なぜ倒れない!?)



焦ってももう遅い。すでに上条は十分拳が届く距離まで迫ってきていた。


幻生(マズイ!!このままでは……っ!!!)



上条「お前のクソみてぇな計画で操祈を殺そうってんなら!!!!!」




上条「俺がその幻想をぶち殺す!!!!」



666 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 17:29:01.24 ID:BtEm/6UY0

恐怖と焦燥に歪む幻生の顔面に、ありったけの力を振り絞って拳を叩きこんだ。
上条の全てが込められたその一撃は、幻生を5メートル近く吹き飛ばして気絶させた。
床には、殴られた衝撃で折れたのか幻生の歯がいくつも転がっている。


上条「はっ……はっ……はっ……」


体中から血が流れ出ており、力が入らない。今こうして意識があるのが不思議なくらいだった。
それでも彼は此処で倒れるわけにはいかないのだ。
ズルズルと足を引きずって幻生へと近づく。懐のポケットを探ると先程幻生がチラつかせていた注射器を取り出した。

上条(やっと……手に入ったんだ……)
675 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 21:06:47.92 ID:BtEm/6UY0


血清を手に入れ、安堵する上条。
だが、


上条「ごぼっ……」ビチャビチャ


口から大量の血が溢れ出す。鳩尾と脇腹に銃弾を喰らっているのだ。いつ死んでもおかしくない状態だった。


上条「げほっ……がは……ぁ」


上条(あと……少しなんだ……もってくれ……)
676 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 21:08:52.74 ID:BtEm/6UY0

上条は幻生から白衣を剥ぎ取り、胴体に巻き付けた。
これで止血もできるし、通行人に傷を見られなくてすむ。
だが、依然として腹の傷口から血が止まることはなく、白衣にどんどん染みて来ていた。

上条(もうちょっと……もうちょっとだから……俺を……)








研究所を出た上条は腹に巻いた白衣に染み出た血を懸命に隠しつつタクシーを止める。

キキッ

運転手「お客さん、どちらま……ってその腕どうしたんですか!?」

上条は言われて腕を見る。腹にばかり注意が行っていて腕を確認する余裕がなかったのだ。

上条「これは……ですね……ファッションです……」

運転手「へ~そうなんですか!あ、乗ってください。それでどちらまで?」




上条「第7学区……病院まで……」


上条はゆっくりとした動きでタクシーに乗り込んだ。
タクシーの窓から虚ろな目で景色を眺める上条。背中の傷は腹に比べれば浅かったようで血はほぼ止まりかけていたが、腹

からは今だに血が滲んでいた。
しかし、血が滲み出てはいるものの痛みは感じなくなっていた。
それがまずいことだということに、上条は気付いており、もう受け入れてしまっていた。
そして、頭の中でこれまでの短い人生を振り返っていた―――
677 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 21:10:22.14 ID:BtEm/6UY0



―――俺は、目が覚めたとき記憶がなかった


それからすぐにインデックスが来て、泣きながら謝ってきた


俺は彼女を泣かせたくないと、漠然とそう思ったんだ


だから嘘を吐いた。その時はこの娘を助けられたんなら記憶なんて安いものだと楽観していたんだ


でも、操祈が来た時に俺の中の全部がひっくり返った。操祈は記憶を失う前は俺と幼馴染で恋人だって言ってきたからだ


操祈は泣いていた。それはまぎれもなく自分のせいだって、楽観できるわけがない現実を突き付けられた


俺は自分が酷く情けなくて、何が何でも操祈を泣かせないように一生そばに居るって決意したんだ―――



上条「げほっ!!がはっ!!」ボタボタ



でも……一生そばに居るってのはもう無理かもしれない……


だけど、お前は絶対に死なせない……絶対にこの血清は届けるよ……
678 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 21:11:52.67 ID:BtEm/6UY0



まだ俺という人格が生まれて3か月くらいしか経ってないけどさ、俺にも立派な夢があったんだぜ



それは、食蜂操祈と結婚して、幸せな家庭を築くこと



派手に結婚式挙げて、みんなが祝ってくれて、新婚生活を楽しんで……



いろんな所に二人で旅行して、いろんな景色を見て……



元気な子供も生まれて……パパとか呼ばれたりしてな……一緒に笑ったり……泣いたりして……



子供も大きくなって……孫にも恵まれて……静かでゆったりとした老後生活をして……



そんな風に……生きてみたかったんだ……







操祈と……いつまでも……ずっと……


681 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 21:38:47.46 ID:BtEm/6UY0


キキッ


運転手「お客さん着きましたよー、さっきから咳が酷いけど大丈夫ですか?はやく風邪直してくださいねー」


上条「はは……ありがとう……ございました……」


足を引きずりながら上条は病院へと入っていった。看護師やロビーにいる患者に気付かれないよう、白衣に染みている腹の
血を隠しながら、ゆっくりと。


上条(はぁ…はぁ…操祈……待っててくれ……)


もうとっくに限界を超えているボロボロの体に鞭打って、食蜂のいる病室を目指した。


上条「げほっ!げほっ!」ビチャビチャ


上条(もうちょっと……あと少しなんだ……)


そしてついに食蜂のいる部屋へと到達した。

682 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 21:39:39.42 ID:BtEm/6UY0

ガチャ


食蜂「……………」スースー


上条(みさ……き……寝てるのか……)


食蜂はベッドの上でスヤスヤと眠っていた。アイマスクを外している彼女を見るのは本当に久しぶりだ。
上条はポケットから血清が入った注射器を取り出して食蜂の枕元にそっと置いた。


上条(持ってきたぞ……操祈……)


注射器を置いた瞬間、上条はドサっとうつ伏せに倒れてしまった。もう立ち上がるほどの気力は残っていなかった


上条(ああ……やっと……操祈は……毒から解放されるんだ)


上条(記憶も……視力も戻らないかもって先生は言ってたけど……)


上条(生きてくれさえすれば……俺は……それで……)

683 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 21:40:59.42 ID:BtEm/6UY0


俺は、操祈といれて本当に幸せだった……



もう一度……お前のそばで……一緒に……過ごしたかったんだけど……



上条「ごふ……がはっ……」ビチャビチャ



俺……もう無理だからさ……




お前は生きてくれ……



記憶が無かろうが……視力が無かろうが……お前なら絶対に……幸せになれるから……



……俺が幸せにしてやりたかったんだけどなぁ……



ごめんな……
684 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 21:41:58.77 ID:BtEm/6UY0

もう意識が無くなる直前、様々な人の顔が頭の中を駆け巡った。


すでに限界を超えていたその体は、もう声を出すことなど到底無理なはずだった。


しかし上条には何が何でも言葉で彼女に伝えたいことがあったのだ。



上条「み………さ……き………」



かすれた声で。小さな声で。


だが、確かに。



上条「愛して……る……」





上条「また……いつか…………会おうな…………」






たった一人の少女を助けるために、自分の全てをかけて戦った男は、





静かに瞼を閉じた―――――



685 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 21:55:41.39 ID:BtEm/6UY0

――――――――――――――――――――

―――――――――――――

―――――

食蜂「ん……」


冥土帰し「気が付いたかな?」


食蜂「あなたは……?」


冥土帰し「私は君の医者だ」


食蜂「あ…そうなんですかぁ?」


食蜂は上体を起こした。すると、すぐに自身の異変に気が付いた。


身体が異様に軽い。何か憑き物でも落ちたかのようだ。




冥土帰し「………君の身体の中を這いずりまわっていた毒は、綺麗さっぱり無くなったよ」


しかし、予想はしていたが血清を使っても視力や記憶は戻らなかった。
だがもう命に別状はない。
彼女は生きていくことが出来るのだ。
686 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 21:58:02.78 ID:BtEm/6UY0


食蜂「毒が無くなった……?」


冥土帰し「君を救うために、血清を手に入れた人がいるんだ」


食蜂「ほんとぉ?すごい人なのねぇ。いくら感謝してもしたりないわぁ」


冥土帰し「ああ……本当に……」


食蜂「その人は今どこなのぉ?御礼に行かないと!」








冥土帰し「………もういないんだ、この世界のどこにも」

687 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 21:59:21.68 ID:BtEm/6UY0

食蜂「え……」


冥土帰し「彼は、君のことをとても大切にしていた……」


冥土帰し「きっと、君を救うためなら自分がどうなったっていいって考えだったんだろうね……」


冥土帰し「それくらい、彼は君のことを愛していた」



食蜂「でも……私は……その人のことを……覚えていない……」



食蜂「…………」



食蜂「あの……その人の名前……教えてください……」

690 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 22:02:04.90 ID:BtEm/6UY0


冥土帰し「上条当麻」




冥土帰し「キミがこの世界で一番愛していた人だ」




食蜂「上条……当麻……」




食蜂「…………あれ……?」ポロ




食蜂「なんでかしら……上条当麻なんて名前……聞いたこと……無いのに……」ポロポロ




食蜂「なんで……涙が溢れてくるの……?」ポロポロ




食蜂「うええええぇぇぇん…………」ポロポロ




なぜこんなにも涙が溢れるのか、自分でも良く分からなかった。
ただ死ぬほど悲しくて、辛くて、切なくて―――


張り裂けそうな胸を押さえるように手を当てて、ひたすらに泣いた。




691 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 22:03:03.09 ID:BtEm/6UY0





エピローグ



697 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 22:32:29.01 ID:BtEm/6UY0


一ヶ月後・学園都市外



心地よい波の音が耳に響いた。眼下には綺麗な海が広がっているが、残念ながら彼女はそれを見ることはできない。


禁書「ふう……やっと着いたんだよ」

食蜂「ごめんなさいねぇ、インちゃん。車椅子押して貰っちゃって」

禁書「全然平気なんだよ!……それにしても……綺麗な丘なんだよ……」


食蜂はあれからインデックスと冥土帰しから全てを聞いて、とめどなく涙を溢れさせた。
そして現在、どうして学園都市の外に来ているかと言えば、

禁書「あそこにあるのが……とうまのお墓なんだね……」

綺麗に整備された丘の真ん中に、同じく綺麗な墓が立っていた。


食蜂「今……私の目の前に……上条当麻さんがいるのねぇ……」

698 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 22:53:44.32 ID:BtEm/6UY0

インデックスが車椅子を押し、上条が眠る墓へと近づいて行った。


食蜂「…………インちゃん、今、目の前に上条さんのお墓があるのぉ?」


禁書「そうだよ……」


頷くインデックス。彼女の肯定を聞いた食蜂は車椅子から立ち上がって、両手に携えていたスターチスの花束をそっと備え

た。


食蜂「……お久しぶりねぇ……上条当麻さん……」


食蜂「私は……あなたに命を助けてもらって……でも、あなたのことを覚えていなくて……」


食蜂「とっても自分が嫌になったわ……時には死にたくなることもあった……」

699 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 23:03:15.90 ID:BtEm/6UY0

食蜂「それでも、そう思うたびに、記憶にいないはずのあなたが『頑張れ、生きろ』って言っているような気がして」


食蜂「……信じられる?私はあなたと過ごしたことを覚えていないのに、いつの間にかまた貴方のことを好きになってたのよぉ」


食蜂「あなたが私に何度も送ってくれてたっていう、スターチスの花言葉」


食蜂「意味を調べたとき、涙が止まらなかった……」


食蜂「あなたが私に誓ってくれた、永遠に変わらない心と愛は、私もこれからずぅっと誓うって決めたの」


食蜂「私にはそれくらいしかできないけど、絶対に約束するわぁ」




食蜂「一生、あなただけを愛し続ける」




食蜂「あなたに貰ったこの命が果てるまで」




食蜂「だから……あなたと会えるのはもうちょっと先になっちゃうけど……」




食蜂「信じて待ってて」


700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/12/28(土) 23:05:13.62 ID:XbcXj3M70
みさきち…
702 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 23:24:17.06 ID:BtEm/6UY0



刹那、そよ風が吹いた―――――




きっと、彼が喜んでいるんだ




直感的に食蜂はそう感じた




そう考えるとなんだか嬉しくて、天を仰いで微笑んだ





食蜂「永遠に変わらない心」






食蜂「私達二人にピッタリでしょ?」



703 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 23:25:44.09 ID:BtEm/6UY0

――――――――――――――――――――

――――――――――

―――――



そして月日は流れ、食蜂は今、上条に助けられたこの命が尽き果てようとしていた。
こうして体が老いて、天寿を真っ当しようとするこの瞬間まで、彼女はただの一度も上条以外の異性を愛したことは無かっ

た。それは別に罪悪感から来るものではなく、ただ純粋に彼を愛していたのだ。



そうして彼女は、かつて上条がそうであったように、最期まで愛する人を想いながら天国へと旅立っていった。

704 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 23:27:12.15 ID:BtEm/6UY0
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       
705 : ◆SoZEW6Fbg2 :2013/12/28(土) 23:29:00.09 ID:BtEm/6UY0


食蜂は色とりどりのスターチスが咲き誇る花畑を歩いていた。
自分の思いの強さゆえか、姿は彼がまだ生きていた頃の年齢に戻っている。
さらには失っていた視力も、記憶も取り戻していた。



どれくらい歩いただろうか。ひたすらスターチスの花畑を進んでいると、ある一人の男が立っていた。



ツンツンした黒髪で


意志の強そうな瞳をしていて


優しそうな顔立ちで


世界で一番自分が会いたかった人




―――――花びらが美しく舞う




彼は優しく微笑んで、自分に手を差し伸べて言った。





「よう、操祈じゃねーか」






fin



708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/12/28(土) 23:38:07.59 ID:ds75rBX+0
今年一番感動した
素晴らしい作品をありがとう
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2013/12/29(日) 01:01:28.08 ID:zHVO8WbL0
マジ泣きした。ありがとう
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2013/12/30(月) 08:33:34.54 ID:QspSTSlh0
乙!!上食もっと増えろ~!!
関連スレ:

食蜂「永遠に変わらない心と愛」前編


上条「よう、操祈じゃねーか」


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コメント

  1. とあるSSの訪問者 2014年04月10日

    結構泣ける話だった

  2. とあるSSの訪問者 2014年04月15日

    泣ける。・゜・(ノД`)・゜・。

  3. とあるSSの訪問者 2014年05月23日

    最高だよぉ・・・・!

  4. とあるSSの訪問者 2014年06月08日

    久しぶりに涙が出るほど感動した。良作をありがとう(ToT)/~~~

  5. とあるSSの訪問者 2014年07月03日

    やばい…マジ泣きした

  6. とあるSSの訪問者 2014年08月29日

    あなたは天才ですか!?
    永遠の零以上感動したよ!

  7. とあるSSの訪問者 2014年09月19日

    泣いてしまいそうだ・・・。

  8. とあるSSの訪問者 2014年12月06日

    涙が止まらないよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ

  9. とあるSSの訪問者 2015年04月11日

    いまもね、おもいびとをのこしてね
    おわるものが、
    いるんだよ

  10. とあるSSの訪問者 2016年03月08日

    最高だった。ガチ泣きした。作者と管理人、ありがとう。

  11. とあるSSの訪問者 2019年08月19日

    やばい凄く号泣しました!

 

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サイトのデザインを大幅に変更しました。
まだまだ、改良していこうと思います。

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