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ハーピー「おかえりー」

1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/10/20(日) 11:45:33 ID:xSExf21c
男「ただいまー」ガチャコ

ハーピー「雨降られなかった?」

男「ぎりぎり大丈夫。マンションの入り口で降りだしたから」

ハーピー「そりゃ良かった。お風呂まだだから、体冷えてたらアレかなーって」

男「ありがと。で、すっごくいい匂いなんだけど今日のご飯は?」

ハーピー「ほうれん草のおひたしと、昨日の大根の煮物の残りと、鶏皮とニラもやしの炒めもの」

男「……ん?とり、かわ?」

ハーピー「うん。あ、もしかして嫌いだった?」

男「いや、平気……だけd」

ハーピー「んじゃ、着替えたら味噌汁よそってくれない?煮物レンチンするから」

男「お、おう」
3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/10/20(日) 11:52:00 ID:xSExf21c
ハーピー「いただきまーす!」

男「いただきます」

ハーピー「肉屋のおっちゃんに教えてもらってさー、鶏油作ったんだよねー」

ハーピー「今日は脂搾り取られた後の鶏皮を再利用です。はいこれ、おつかれビール」

男「……発泡酒じゃん」

ハーピー「鰯の頭も信心から、だよ。リピートアフタミー……”This is beer."」

男「なにその華麗な発音……で、でぃすいずびーる」

ハーピー「はいだめー。ビー"ル"じゃなくて、下唇を歯でかんで息をふいてー……"Beer"」

男「び、びあー」

ハーピー「んー、まぁいいかな。今日も一日、お疲れ様でした」

男「あー、うん。五臓六腑に染み渡るわ」

ハーピー「ふふーん……あ、これ美味しい!久々の大当たり新作だね」
4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/10/20(日) 11:56:31 ID:xSExf21c
ハーピー「あ、ところで>>1のIDが露骨だけど、エロ描写はないからね?」

男「いきなり何言ってるのハーピーさん……?」
5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/10/20(日) 12:02:46 ID:xSExf21c
男「……ねぇこの鶏皮……まさかとは思うけど……」

ハーピー「ん?」

男「その……」

ハーピー「あ、やっぱ分かる?」

男「え?!やっぱりハ」

ハーピー「やー、見切り品で半額だったんだけど、古くなってた?」

男「あ、そうなんだ、全然気付かなかったよはははー」ホッ

ハーピー「……あ」

ハーピー「あー、もしかしてそういうこと?私の皮なわけないじゃん!」

ハーピー「第一、私の皮から取った油は……『ハピ油』?」

男「すごく怪しげだね」

ハーピー「出ないけどね」
6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/10/20(日) 12:08:36 ID:xSExf21c

男「ごちそうさまでした」

ハーピー「はーい、お粗末さまでした」

オユガタマリマシタ オユガタマリマシタ

ハーピー「ナイスタイミング。先入っちゃってー」

男「はいよー」



男(…………)

男(同居して1ヶ月)

男(……たまーに鶏肉出てくるんだけど……)

男(共食いじゃないのかな)

男(いっそ聞いてみるか?)

男(『ねぇハーピーさん、鳥が鳥肉食べたら、共食いじゃない?』)

男(いやいやいやいや。ないわー、さすがに無理だわ)

ハーピー「男ー、お湯かげんどう?」

男「あー!ちょうどいいよー!」
11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/10/20(日) 19:24:46 ID:xSExf21c
ハーピー「洗濯、おしまいっ!食器も片付けたし、後は夕飯の買い出しまで自由だなー……っと」

テレビポチッ

レポーター『クリスマス商戦が、早くも火花を散らしております!』

ハーピー「…………」

ハーピー「……くりすます、ねぇ」

ハーピー「この国じゃ色々歪んで伝わってるらしいけど」

ハーピー「……私もプレゼントくらい、男に用意したほうがいいのかな?」
12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/10/20(日) 19:26:53 ID:xSExf21c
ハーピー「……」

ハーピー(とはいえ、男から家事の対価でいただくお小遣いでは雀の涙)

CM『おっす!おらニート!ひゃー、チチに家を追い出されちまった!』(野沢ましゃこの声)

CM『でも大丈夫!おらにはこれがある!』

CM『バイト情報誌なら”SAVI-ZANN”!!来週も絶対買ってくれよな!』

ハーピー「……アルバイトかぁ」
13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/10/20(日) 19:32:53 ID:xSExf21c
----------その日の夜

男「ハーピーさんただいまー……何読んでるの?」

ハーピー「んー……バイト情報誌」

男「……なんでまた急に」

ハーピー「やーほら、居候して1ヶ月もたつとさー……何かと入り用だし、いつまでも男にお金せびるのもなんだしね」

男「気にしなくていいのに。服?靴?かばん?」

ハーピー「男が気にしなくても、私にも神話の時代から脈々と続く、妖鳥の矜持というものがあるの」

ハーピー「いつまでも男に養ってもらうのは悪いし」

ハーピー「さりとて、ここを出てまた野ねずみや鳩を貪る生活も辛いしね」

男「割と壮絶だね」
14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/10/20(日) 19:37:39 ID:xSExf21c
男「で、どっか働く目星はついたの?」

ハーピー「ここ!」ズビシッ

男「レンタッキーフライドチキン……」

ハーピー「ここならほら!ね!もう私はマスコット的な何かですよ!」

男「レンタって、社内規則厳しいから廃棄持ち帰り不可だよ?」

ハーピー「……」

男「やめといたら?」

ハーピー「いやいやいやいや、そんな不純な動機じゃないから!」

ハーピー「見てろー!明日早速電話して、店長から泣いて土下座して請われて働いてやる!」

男「……がんばってね」
15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/10/20(日) 19:51:11 ID:xSExf21c
----------翌日

ハーピー「」グッタリ

男「ハーピーさんただいm」

男「!!!」

ハーピー「あ、おかえり……」ドンヨリ

男「何かあったの?」

ハーピー「バイト……電話しただけで断られた……」

男「そりゃ、手厳しいね」

ハーピー「レンタッキーだけじゃなくて、ミクドナルドもルッカルッカ弁当もダメだった……」

男「そりゃあ……ご愁傷様、としか。でも、なんでまた?」



ハーピー「『羽毛は衛生的にちょっと……』って」
16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/10/20(日) 20:01:37 ID:xSExf21c
----------そのまた翌日

ハーピー「ごめん……今日のごはん、チキンラーメン……」グッタリ

男「……大丈夫?」

ハーピー「大丈夫。大分精神が鍛えられた……」

男「今日もダメだったの?」

ハーピー「だめだったー!」

男「ちなみに今日はどこを?」

ハーピー「工事現場」

男「またそりゃ進路大きく曲げたね」

ハーピー「やー……手当たり次第電話したけど、全部ダメ」

ハーピー「過去にハーピー雇ったはいいけど、労災出まくりで大変だったらしくてさー」

男「あー……骨、中空なんだっけ?」

ハーピー「そそ。体も大胸筋以外は概ねへちょいしねー」
18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/10/20(日) 20:09:10 ID:xSExf21c
PiPiPiPi...

男「先に、ハーピーさんができないバイトを消去していくほうが簡単かもね」ズゾゾゾ

ハーピー「んー……」

男「とりあえず……モグモグ……飲食とガテン系は無理」

ハーピー「だね……」

男「コールセンターは?」

ハーピー「会話して1分で『お前もう死ねよ』とか言ってもいいならやる」

男「ペット系は?シッターとか獣医師補助とかあるよ」

ハーピー「あー……多分無理。基本、ビビられるか威嚇されるかの二択」

男「……塾講師」

ハーピー「……無理。男子とか、ガチで石投げたり羽根むしったりするかんね。ちょーいたい」
19: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/10/20(日) 20:17:52 ID:xSExf21c
男「……」

男「……じ、自宅警備」

ハーピー「おいやめろ」

男「ああそうだ!家事手伝い!そうです既に家事手伝いとして立派に労働されているじゃないですか」

ハーピー「」ライフ0

男「無理してバイト探す必要もないですよ。今の僕の給料でも十分やっていけてるんですから」

ハーピー「……うー……でも……」

男「それに」

ハーピー「?」

男「『ただいま』って言うと『おかえり』ってハーピーさんが言ってくれるだけで十分ですから」

ハーピー「ひぇひふ?!」ゲホゲホ
20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/10/20(日) 20:25:07 ID:xSExf21c
ハーピー「げほっ……あー、気管入った、げほっ」

男「あーあーほら、お茶どうぞ」

ハーピー「あ、ありがと」ズズズズ

ハーピー(……い、今の発言何?毎日『おかえり』を言って欲しいってアレか?)

ハーピー(専業主婦、ってことか?)

男「ハーピーさん?」

ハーピー「あー、うん、もう大丈夫。やっぱりちょっと、疲れてるみたいだから早めにお風呂入って寝るよ」

男「お大事に。何か欲しいものとかあったら、遠慮なく言ってくださいねー」



ハーピー(むー……天然ジゴロだ……)
17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/10/20(日) 20:05:46 ID:U/nU4M4o
雇ったことあるんかよwwww
配線関係なら飛んでケーブル運んだり
浮いた状態で工具使えればどれだけ楽か
と何度思ったことか……
21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/10/20(日) 20:34:16 ID:xSExf21c
今日はここまで、ですが、一応>>17に回答を。

----------

男「ところでハーピーさん、工事現場なら高いところで工具使ったり、活躍できそうなんですけど?」

ハーピー「無理無理。私みたいな大型鳥類系って、基本羽ばたかずに上昇気流捉えて飛ぶから」

ハーピー「1箇所にずっととどまってホバリングなんて、ハチドリみたいに器用なことは無理」

ハーピー「やってやれないことはないけど、超絶疲労して、3分でダウンする自信があるね!」

男「そんなこと、自信まんまんに言われても……」

ハーピー「羽ばたくのに翼使っちゃうと、工具持って作業するのは足の爪だし、それこそ即ヒヤリハット報告されちゃうね」

ハーピー「足場に登って、普通に両手使って作業して。普通の高所作業と、効率変わらないよ?」

ハーピー「高いところに恐怖心ないから、そういう場所での作業は効率よくできるかもー、だけど」
22: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/10/20(日) 20:40:39 ID:xSExf21c
ハーピー「あと、高所に物運ぶのも、あんまり得意じゃない」

ハーピー「一旦荷物なしで高度稼いだ後、急降下して荷物掴んで、後は運動エネルギーを位置エネルギーに変えて昇るから」

ハーピー「多分、普通に玉掛けしてクレーンで吊ったほうが早いよ。早いし安全」

男「……もしかして、そういう経験、あり?」

ハーピー「あるよー、色々やったよ。マグロ漁船に乗ったり」

男「マグロ漁船?!」

ハーピー「超重用してもらったよ?通信機だけ持って船の上飛んで、鳥山見つけて報告するだけの簡単なお仕事」

ハーピー「でも、その、周りが男の人だらけで、まぁ貞操の危機になったり船員同士がギスギスしちゃったりして」

ハーピー「……おろされちゃった」テヘペロ

男「いや、テヘペロしてる場合じゃないでしょそれ」
27: 1 2013/10/24(木) 20:08:04 ID:Y7HMk2JE
数日後、商店街入口

ハーピー「タイムセール……鶏もも肉100g40円……」

ハーピー「万難を排してでも買わなきゃねー……と?」



キキキキキキィーッ!!

ガシャーン!!!

ハーピー「おー、バイク便の兄ちゃん、派手にコケたねー」

ハーピー「おーい、大丈夫ー?」

単車男「いててててて……あー、や、大丈夫、っぽい?」

ハーピー「体はね。バイクのほうはおしゃかっぽいけど」

単車男「ああああああ!」
28: 1 2013/10/24(木) 20:15:47 ID:Y7HMk2JE
ハーピー「あー……スポークぐっしゃぐしゃのカウルべっこべこ」

単車男「……ちょっとお姉さん、警察に電話してくれない?こっち、会社に電話しなきゃなんなくて」

ハーピー「んー、よかよー」ポポピ

----------

単車男「え?!代車無理?!カオルちゃんは?……渋滞……そっか……」

ハーピー「…………」

ハーピー(まずい……事情聴取で時間をとられるとタイムセールが……)

単車男「あー、お姉さんありがとね、通報してもらった上にバイク動かすのまで手伝ってもらっちゃって」

ハーピー「え?ああ、気にしなくてもー。困った時はお互い様だし」

単車男「しっかし参ったよ。飛び出してきた猫避けたらこのざま」

ハーピー「あー……そりゃ運が悪かったね」
29: 1 2013/10/24(木) 20:19:02 ID:Y7HMk2JE


単車男「しっかも急ぎの配達なのに、こんな時に限って人がいなくてさー」

ハーピー「バイク便かぁ……同業他社とか」

単車男「今その線で動いてもらってるけど、ギリギリっぽいんだよねー」チラッ

ハーピー(つとめて無視……)

単車男「いやぁ困ったなぁ……遅配ひとつで、うちみたいな小さな会社は信用ガタ落ちだよー」チラッチラッ

ハーピー「へー……大変だねぇ」

単車男「いっそヘリや飛行機みたいに、渋滞や信号関係なく配達できたらなぁ~」チラッ

ハーピー「あーもう!分かったから住所と荷物貸して!!!あと名刺も!」
30: 1 2013/10/24(木) 20:24:54 ID:Y7HMk2JE
ハーピー「またよろしくお願いしますー」

ハーピー(さて、事故の事情聴取受けなきゃ……)

ハーピー(嗚呼、さようなら私の鶏もも肉グラム40円……)

ハーピー「風、よし!前後左右、障害物、よし!上空電線および標識よし!」

ハーピー「……せぇぇのっ!!」バサッ!!
31: 1 2013/10/24(木) 20:38:04 ID:Y7HMk2JE
----------

----その日の夜@男宅

ハーピー「……ってなことがあってさー」

男「それが、うちの食卓に高級地鶏ハムが並んでいる理由?」

ハーピー「うん。社長直々に接待していただきました」

男「まぁ何にせよ、人助けはいいことだと思うよ」

ハーピー「でしょでしょ」

男「僕がその社長なら、社員の危機意識がなってない!って怒るけど」

ハーピー「むぅ……そこはほら、私の体からにじみでるいい人オーラが」

男「……そういうことにしておこうか」

ハーピー「ぶーぶーぶー」

男「できれば来週は、特売の鶏肉で唐揚げ作って欲しいな。結構好きなんだよね、あの味」

ハーピー「ほんと?じゃあ張り切っちゃうよー」
32: 1 2013/10/24(木) 20:45:52 ID:Y7HMk2JE
男「ごちそうさまでした」

ハーピー「はーい、おそm……いや、今日はかなり豪華だから、お粗末なんていったら罰があたりそう」

男「かもね」

男「そだ、食器洗っておくから先にお風呂入ったら?」

ハーピー「いいの?」

男「ぬるめだから、ゆっくり長風呂しなよ」

ハーピー「分かった。けど、覗いちゃだめだよー?」

男「はいはい、覗かない覗かない」

ハーピー「むぅ……それはそれで性別雌としてどこかむかつく……」

ハーピー「たまには、『きゃー男さんのえっちー』って言いたいじゃん」

男「……好きなだけ言えば?」

ハーピー「男さんのえっちー!レイプ魔!ペドフィリアー!」

男「」
33: 1 2013/10/24(木) 20:51:09 ID:Y7HMk2JE
ハーピー「男が私のお風呂を覗くまでこの部屋に居座ってやる!」

男「はいはい、じゃあ一生ですね」

ハーピー「えっ?!」

男「まぁ、好きなだけいて構いませんし、出て行く時は鍵だけ返してもらえれば。携帯はプリペイドですし」

ハーピー「ああ、うん……うん、その、うん」

ハーピー「お、お風呂入る!!」

男「……?」

----------

チャプ

ハーピー「……急にあんなこと言われたら……」ブクブクブクブク

ハーピー(一生この部屋にいる、って意味、きちんと分かってるのかな?)

ハーピー(分かってないから、あんな薄い反応なんだろうなぁ)

ハーピー「男の……ばーか」
36: 1 2013/10/25(金) 22:19:13 ID:v9J2qEPk
男(っていうか、ペド……じゃないよな俺)

男(ハーピーさんはどうみても成熟した女性だし)

男(まぁ、ロリというか、自分のうすい胸を指して言っていることは間違いないだろう)

男(それを指摘したら、もれなく蹴爪で頭かち割られそうだから言わないけど)

ハーピー「おとこー、先にもらったよー」ホカホカ

男「え、あ、はい」

男(う、タンクトップに湯上がりで桜色の肌が……今日はやけに艶かしい……)

ハーピー「おとこ?」

男「はい?」

ハーピー「髪の毛、乾かしてほしいなー」

男「はいはい」
37: 1 2013/10/25(金) 22:26:06 ID:v9J2qEPk
男「ハーピーさん」ブォォォォ

ハーピー「はい?」

男「……いえ、特に何か用があるわけでは」ブォォォ

ハーピー「なにそれ、へんなの」ケラケラ

男「……」ブォォォォ

ハーピー「……」

男「……」ォォォン...

男「はい、おしまいです」

ハーピー「まだ横の方濡れてる」

男「あとは自分でどーぞ。僕もお風呂もらいます」

ハーピー「いい鶏ガラ出汁が出てるよー」

男「飲みませんって」
38: 1 2013/10/25(金) 22:32:55 ID:v9J2qEPk
ザバァ...

ハーピー「……」

ハーピー「いつ男の入浴シーンを覗き見るか?」



ハーピー「今でしょ」



@洗面所

ハーピー「おじゃましまーす」コッソリ
39: 1 2013/10/25(金) 22:34:45 ID:v9J2qEPk
ハーピー(……都合よく、すりガラス越しに男の姿が見える)

ハーピー(これはチャーンス)

ハーピー「おーい男、シャンプーきれて、な……」ガラッ

男「切れてませんよ。一昨日変えたばっかりでしょう」ゴシゴシ

男「っていうか寒いので、ドア閉めてもらってもいいですか?」

ハーピー「あ、はい、すいません」



ハーピー(…………)

ハーピー(何あの……背中の火傷……)
40: 1 2013/10/25(金) 22:45:01 ID:v9J2qEPk
----15分後@リビング

男「はー、いいお湯でした」

ハーピー「…………あ、うん、おかえり」

男「どうかしましたか?」

ハーピー「や、なんにも。いい出汁出てた?」

男「ええ、しっかり灰汁もとっておきましたよ」

ハーピー「……は?」

男「……いや、そっちの話にのっかったのに、その反応はやめてくださいませんか」

ハーピー「あー、うん、ごめん」

男「どうかしました?湯あたり?風邪ひかないでくださいよ?」

ハーピー「あ、私の体調心配してくれるの?うれしいなー」

男「いや、ハーピーさんの体内で鳥インフルエンザが人にも効くように突然変異されると困るので」
41: 1 2013/10/25(金) 22:53:40 ID:v9J2qEPk
男「じゃあ、僕は寝ますので。ハーピーさん、寝る前に」

ハーピー「分かってます。戸締まり、ガス、電気の確認はします」

男「ふぁい、おねがいしまふ……」

ハーピー「添い寝しようか?」

男「のーせんきゅー」

男「寝る時、首筋や腕がガサガサすると眠れないので」

ハーピー「じゃあ、腕枕してもらえないじゃん!」

男「ハーピーさんとピロウトークする予定はありませんので」

ハーピー「ぶーぶー」

男「それじゃあおやすみなさい。夜更かしは美容に悪いですよ」

ハーピー「あ、ねぇ、男!」

男「…………?」

ハーピー「……なんでもない、おやすみ」

男「おやすみなさい」
42: 1 2013/10/25(金) 22:59:01 ID:v9J2qEPk
ハーピー(……ねぇ、その背中の明らかにアイロンの跡っぽい火傷、どうしたの?)

ハーピー(なんて聞けるわけないじゃん……)

ハーピー(……私もたまには、日付変わる前に寝ようかな)
43: 1 2013/10/25(金) 23:23:02 ID:v9J2qEPk
----翌日夕方

男「あれ、鍵がかかってる……」

ガチャガチャ

男「ただいま……」

男「…………」

男「……ハーピーさん?!」

ハーピー「呼んだ?」ヒョイ

男「…………」ホッ

ハーピー「やーごめんごめん、ちょっと寄り道のつもりがついフラフラと」

男「どっかに行っちゃったかと思いましたよ」

ハーピー「んー、あ、そだ」



ハーピー「ただいまー」

男「はい、おかえりなさい。ご飯作るの手伝いますよ」
44: 1 2013/10/25(金) 23:30:34 ID:v9J2qEPk
----そのまた翌日、夕方

男「ただいまー」

ハーピー「ひゃ?!おかえり!!」ササッ

男「……何か、隠しました?」

ハーピー「な、何も?」

男「…………昨日といい、何か隠してませんか?」ジトー

ハーピー「な、なにも……?」

男「なんで最後、疑問形なんですか」

ハーピー「やー、だって、その、ほら……あれよ!アレ!!」

男「あれ?」

ハーピー「……その、下着のカタログ」

男「……う、あー、あー……そうでしたか、失礼しました」

ハーピー「男が選んでくれてもいいよ?ほーれほーれ」

男「ちょ、ちょっとやめてください」
45: 1 2013/10/25(金) 23:36:22 ID:v9J2qEPk
ハーピー「まぁ冗談はともかく、さすがに下着は恥ずかしいので、うん」

男「あー……そうでしたか、失礼しました」

男「んじゃ、ちゃちゃっと着替えますか」

ハーピー「今日のご飯は肉じゃがと大根サラダだよー」

男「美味しそう」スタスタ

ハーピー(……ほっ、なんとか誤魔化せた、かな)
49: 1 2013/10/26(土) 20:49:44 ID:cUFHAWa2
男(最近、ハーピーさんの様子がおかしい)

男(いつもなら、僕が帰ったら晩ご飯の準備はほとんど終わってるはずなのに)

男(『ごめん、ご飯まだなんだー』とか『洗濯物、取り込んでもらっていいー?』とか)

男(今日だって、帰り道でスーパーの袋を重そうに運ぶハーピーさんに出会った)

男(タイムセールでー……なんて言ってたけど)

男(……どうかしたのかな)
50: 1 2013/10/26(土) 20:56:23 ID:cUFHAWa2
男(……まさか、恋人?)パタパタ

男(……って言ったって、僕はとやかく言える立場じゃないし)ガサゴソ

男(家事やってもらって助かってるから、文句いう筋合いもないし。でもなぁ)ハァ

ハーピー「男ー、ご飯おまた……あのさ」

男「ん?」

ハーピー「私のパンツ両手でひっぱりながら、ため息つくのやめてくれない?」
51: 1 2013/10/26(土) 21:09:23 ID:cUFHAWa2
男「今日のご飯は?」

ハーピー「サンマの塩焼きとしめじご飯。大根おろし作って欲しいかも」

男「辛め?」

ハーピー「甘めで」ゴトッ

男「はいよー」ショーリショーリ

ハーピー「ごめんねー、ご飯作るのは私、って役割分担してたのに」

男「やー、別にいいけど。なんか困ってる?最近帰り遅いし」

ハーピー「え、そうかなー……まぁ、帰り遅いのは気をつけるよ」

男「大分、日が落ちるのも早くなったしね……ほい、大根おろしできたよ」

ハーピー「ん、こっちもサンマ焼けたっぽい」
52: 1 2013/10/26(土) 21:15:01 ID:cUFHAWa2
----その日の夜中@男寝室

男(……)

男(のど乾いたな)ヨッコラセッ

ギィッ

男(……リビングに灯りが……ハーピーさん、まだ起きてるのかな?)

ハーピー「……zzz」

男(……机に突っ伏して寝てる。これは……街の地図?なんでまた……やたらと付箋はってあるし……)
53: 1 2013/10/27(日) 07:01:02 ID:GiXfM8hk
男(……机に突っ伏して寝てる。これは……街の地図?なんでまた……やたらと付箋はってあるし……)

男(……なんか、してるんだろうな)

男「ハーピーさん、ハーピーさん」

ハーピー「はひ……?」

男「こんな所で寝てたら風邪ひくよ、ハーピーさん、ほら、部屋で寝ないと」

ハーピー「はこんで……ムニャ」

男「…………」

男「仰せのままに」オヒメサマダッコ

男「よいしょ、って言う必要ないくらい軽いんだもんなー」
54: 1 2013/10/27(日) 07:11:01 ID:GiXfM8hk
男「ほらハーピーさん、部屋の中は自分で歩いてね」

ハーピー「やー」

男「最初にルール決めたでしょ、互いの部屋に入る時は許可制」

ハーピー「きょか」

男「じゃあ、おじゃまします」

男(……元は空き部屋だったとはいえ、殺風景だな)

男「はい、巣に着いたよ」

ハーピー「……ん」コロン

男(やっぱ、膝丸めて翼腕で体を覆うみたいにして……こういう所は鳥っぽいんだよな)

男「…………毛布かけとくね」ファサ

男「おやすみ、ハーピーさん」

ガチャ...バタン

ハーピー「おとこ……おやすみ……」
55: 1 2013/10/27(日) 07:23:20 ID:GiXfM8hk
----3日後@男、勤務中

男「はい、分かりました。それでは、至急バイク便で送らせていただきます」ガチャコ

男「えーと、バイク便、バイク便……」ピポ、ピパポポ、ピポポパ

男「集荷お願いします、南区から中央区へ。はい、○○工業です」ガチャコ


??「失礼しまーす、お荷物集荷に伺いました、総務課のおとこ……さん、は?」

男「は、はい、ぼくです……けど……」
56: 1 2013/10/27(日) 07:27:04 ID:GiXfM8hk



男「なにしてるの、ハーピーさん?」

ハーピー「え、いや、鳥ちがいじゃないですかね?」



57: 1 2013/10/27(日) 07:33:01 ID:GiXfM8hk
エ、アレ、ハーピー? ワタシハジメテミター ケッコウツバサオッキーイ

男「…………」

男「あ、ああそう、ごめんね、知り合いのハーピーに似てたからさ」

ハーピー「え、あ、え?あ、ああ、そっすか」

男「荷物、これです。中央区のヤマクリ建設まで」

ハーピー「は、はい、承りました。こちらにサインお願いします」

男「はい、道中気をつけてくださいね」サラサラ

ハーピー「はい、バイク便のご用命はカイト・デリバリー・サービスへ、これからもよろしくおねがいします!」

タッタッタッタ...

男性社員「男くん、意外だねぇ、人外口説いちゃう?」

男「や、そんなんじゃないですよ。珍しいだけで」

男(……なにしてるんだか、ハーピーさんは)
58: 1 2013/10/27(日) 07:42:10 ID:GiXfM8hk
----その日の夜@自宅

男「ただいまー」

ハーピー「……お、おかえりなさい」

男「今日さー、別のハーピー見たよ。もうハーピーさんにそっくり」

ハーピー「そ、そう……せ、狭い街なのに2羽もいるなんて奇遇だなーあはははは」

男「……」

ハーピー「あはははー」

男「…………」

ハーピー「あはははー、はは……はい、ごめんなさい私です」

男「まぁ最初から分かってましたけどね」

ハーピー「やっぱり?」
60: 1 2013/10/27(日) 07:51:56 ID:GiXfM8hk
男「まぁ、まずはご飯にしましょう」

ハーピー「じ、実は私も帰ってきたばっかりで……」

男「知ってます。だからはいこれ」

ハーピー「焼き鳥!しかもこれ、駅前の鳥よしの奴!いっつも満員なのに!」

男「ハーピーさん、世の中には電話注文という便利なものがてあるんですよ」

ハーピー「あ、しかも塩!分かってるねー」

男「と、発泡酒じゃないビール」

ハーピー「え、え、何?最後の晩餐的なアレなの?」

男「最後の晩餐なら、もうちょっといいもの食べます。これは単に、ハーピーさんのお仕事がんばれ会」

ハーピー「そっか、ありがと」

男「これだけじゃ足りないので、冷凍ご飯解凍して、残り物温めましょう」
61: 1 2013/10/27(日) 07:57:59 ID:GiXfM8hk
…………

……

男「で」

ハーピー「はい」

男「説明を要求します」

ハーピー「この前、バイク便のお兄さんをたすけた、って話したよね」

男「ええ」

ハーピー「あの翌日、社長に会って、スカウトされたの」

ハーピー「ほら、私なら渋滞も規制も割と関係なく荷物運べるし」

ハーピー「……それに、やっぱり、男に負担かけてるの、苦痛だし」

男「そういうことだったんですか」

ハーピー「そういうことだったんです」

男「それで昨日も街の地図見て勉強してたんですね」
62: 1 2013/10/27(日) 08:04:13 ID:GiXfM8hk
ハーピー「ごめんね、黙ってて。でも、反対されたらどうしようかと思って」

男「なんで反対するんですか。ハーピーさんを拘束する権利は僕にはありません」

男「お金稼いで、自分で部屋を借りて出て行くなら、それで構いませんよ」

ハーピー「……男は、出て行って欲しい?私、邪魔?」
63: 1 2013/10/27(日) 08:16:02 ID:GiXfM8hk
男「ハーピーさんとルームシェア、きらいじゃないですよ」

男「前にも言ったと思いますけど」

男「僕はずっと一人暮らしだったので、家に帰ってきて誰かがいて、『おかえり』って言ってくれるの、すごく嬉しいんです」

男「でも、だからってハーピーさんを拘束して、ずっとここにいてくれ、って言う訳にもいかないじゃないですか」

ハーピー「……そっか」

男「それと、なんで僕に相談してくれなかったんですか」

ハーピー「だって、反対されたらどうしよう、って」

男「そうじゃなくて。仕事もして、僕にバレないように家事も今まで通りして」

男「そんなの、無理に決まってます。事実、ここ数日は変でしたよ」

男「ご飯食べたら、きちんと家事の分担表作りますから。いいですね」

ハーピー「あ、うん、ありがとう」
64: 1 2013/10/27(日) 08:19:16 ID:GiXfM8hk
男「……あと」

ハーピー「?」

男「もし、出て行く事になりそうなら、一声かけてくださいね」

ハーピー「そんな予定はないってば」

男「そう思っていても、未来はわかりませんから」

男「昨日まで一緒にいた人が急にいなくなるのは、とても辛いので」

ハーピー「…………」

ハーピー「や、やだなぁ。なんでそんな湿っぽいの……あ、ぼんじりラスト1個もーらい」ヒョイパク

男「あ、とっておいたのに!!」

ハーピー「弱肉強食」モグモグ

男「じゃあこのハツはもらいます」ヒョイパクヒョイパク

ハーピー「ああああっ!!私の好物って知ってて取ったな!」
68: 1 2013/10/27(日) 21:25:54 ID:GiXfM8hk
男「じゃあネギマ串を1本、そちらに渡すことで手打ちにしましょう」

ハーピー「むー……仕方ない……」

…………


……

男「ごちそうさまでした」

ハーピー「はー、ごちそうさま。冷めても美味しい焼き鳥って素晴らしいね」

男「ですね」

ハーピー「ねぇ、男」

男「はい?」

ハーピー「来月から、お給料入ったらちゃんと食費とか、出すから」

ハーピー「ふたりで共有の生活費財布、つくろうね」

男「それってなんか……」ゴニョゴニョ

ハーピー「ふえ?なんか言った?」

男「あーいや、なんでもないです!と、とりあえず家事分担表、作っちゃいますね」

男(共働きの夫婦みたい、だなんて、言えないよな……)
69: 1 2013/10/27(日) 21:28:31 ID:GiXfM8hk
ーーーーこっから別Ep----

シトシトシトシト

男「長雨ですねー」

ハーピー「そだねー……あ、男、どっか遊びにいこうよ」グデー

男「どこか、って?」

ハーピー「どこかはどこか。ココじゃないところ」

男「……近所のコンビニとか」

ハーピー「どう遊べと」

男「バーコードに書かれた数字が素数かどうか確認する遊び、ってのはどうです?」

ハーピー「……そういう知的でフラストレーションたまるのは避ける方向で」

男「んーと……」カチャカチャカチャ

男「ここ。初心者でもパラグライダーが体験できます、だって」

ハーピー「雨!雨ですよー!」

男「わがままな……」
70: 1 2013/10/27(日) 21:32:55 ID:GiXfM8hk
男「まぁ、いつかパラグライダーは行きましょう。僕も一度、ハーピーさんの見てる景色を見てみたいので」

ハーピー「これから寒くなるから、春先でもいい?」

男「はは、じゃあスケジュール予約しておきますね……ああ、そうだ」

男「ハーピーさんは歌、好きですよね」

ハーピー「まぁ、好きか嫌いかで言えば、好きだけど?」

男「じゃあカラオケいきますか。取引先からもらった優待券が……あ、あったあった」

ハーピー「ん、じゃあ着替えるね」ヌギッ

男「できれば自室でお願いします」
71: 1 2013/10/27(日) 21:37:36 ID:GiXfM8hk
男「ところで、ハーピーさんはやっぱり、歌で船を迷わせて沈没させたりしたんですか?」

ハーピー「……それ、セイレーンとまじってない?」

男「え?」

ハーピー「セイレーンもハーピーも同じ妖鳥の類だけどさー、ハーピーって種族は基本、そういう魅了の声は出せないんだよ」

ハーピー「まぁ、今じゃ海図の精度もすごいし、船も鋼鉄製で座礁はしても沈められないし」

ハーピー「何より『海を汚すなボケェ!』って人魚や海坊主から激怒されて、そういうのやめたんだってさ」

男「……はぁ」

ハーピー「で、今はハーピーみたいに人の社会に紛れることを選んで……ほら、このポスター」

男「……?ああ、これ、今人気の歌手じゃないですか。”1stアルバム、再入荷!”、売れてますね」

ハーピー「だから、この娘、セイレーンの血が混じってる」

男「え?!」
72: 1 2013/10/27(日) 21:40:00 ID:GiXfM8hk
ハーピー「まぁ、魅了の声は使ってない、っていうか出せないみたいだけどねー」

ハーピー「最近多いよ、人間との交雑が進んで、見た目も能力もほぼ人間、って魔物」

男「そ、そうなんですか……」

ハーピー「いない?やたらと毛深いとか、やたらと舌が長いとか」

男「あー……」

ハーピー「日本は妖怪や山の神さまの化身に嫁入りする昔話も多いからね。そういう交雑も進みやすいみたい」

男「……へぇ」

ハーピー「今夜あたり、ハーピーと人間の交雑について実技してもいいけどー?」

男「や、それは慎んでご遠慮します」

ハーピー「ぶーぶー」
73: 1 2013/10/27(日) 21:47:02 ID:GiXfM8hk
男「はい、ここです」

ハーピー「お、カラオケ最新機種入ってる!やーりぃ!」

イラッシャイマセー

男「えーと、広めの部屋で空いてるところ、あります?」

店員「でしたら、こちらはいかがでしょう」

男「あー、じゃあそれで。3時間ソフトドリンクフリーのコースで2人。タバコは吸いません」

店員「はい、ご案内いたします。最初のドリンクはいかがなさいますか?」

ハーピー「私、メロンソーダ!!」

男「と、温かいウーロン茶で」
74: 1 2013/10/27(日) 21:49:47 ID:GiXfM8hk
ハーピー「さて、まずはステージ造り……っと」テーブルズリズリ

ハーピー「ありがとね。普通の部屋だと、やっぱり翼窮屈でさ」

男「なんとなく想像できましたから。さ、好きなだけ歌ってください」

ハーピー「ねぇねぇ、何か縛って歌おうよ!」

男「……えーと、AKB縛りとか、ジャニーズ縛りとかそういうのですか」

ハーピー「そうそう!」

男「えーと……じゃあ『タイトルに”鳥”が入る歌』縛りで。それなら、備え付けのタブレットで検索できますし」

ハーピー「おっけーい、んじゃ早速……と」ピピッ

男(鳥の歌……って杉田かおるだっけ?あれ、でもあれは鳥の”詩”だっけ?)
75: 1 2013/10/27(日) 21:56:10 ID:GiXfM8hk
Ah...カゲニナァタマチーデー

男「え?ロボットアニメ?!」

ハーピー「そうだよー♪



ハーピー「はーい、後奏カット」ポチ

男「おおー、すごい上手だった」パチパチパチ

ハーピー「ありがと。あれ、まだ決めてないの?」

男「あ、うん、好きなだけ歌っていいよ。僕はそんなにレパートリーないし」

ハーピー「却下。別に『鳥の名前』ならなんでもいいから。交代で歌わないと縛りで遊ぶ意味ないじゃん」

ハーピー「負けた方は今晩、缶ビール(ただし発泡酒をのぞく)をおごること!」

ハーピー「あ、歌い終わって2分以内に決まらない場合も無条件負けで」

男「えええー……仕方ないなぁ……ほい」ピピピ

ハーピー「あははは、なにそれ、空飛ぶペンギンって!」
76: 1 2013/10/27(日) 22:00:48 ID:GiXfM8hk
フシギッナデキゴト、ペンギンガー,ソラヲトーブナンテウーソミタイッ!!

ハーピー「おー、いい歌だったー。なんだようまいじゃん!」

男「どうもー」

ハーピー「んじゃー……これっ!」ピピピ

男「Do As Infinity……おお、知ってるよー」
77: 1 2013/10/27(日) 22:06:19 ID:GiXfM8hk
ヨルノーヤミニマーギレー ボクラ テイクウデトビツヅーケタ



男「超鬱ソングなんですけど……」

ハーピー「仕様です」

男「あと、四足歩行ロボット……」

ハーピー「ロボじゃなくて、金属生命体。それも仕様です」

男「っていうかハーピーさん、もしかして」

ハーピー「?」

男「わりとオタク……?」

ハーピー「ん、そうかもね。人よりアニメは多く見てると思う」

男「そっか。それでハーピーさんの評価が変わるわけじゃあないけどさ。新しい一面を見たよ」

ハーピー「ところで男、そろそろ制限時間2分」

男「え?!タイマーとめてないの?!」
78: 1 2013/10/27(日) 22:28:11 ID:GiXfM8hk
ーーーー(約)3時間後

prrrr......

男「はいー、延長しません、はーい」

ハーピー「ありゃ、もうそんな時間かー。んじゃ、最後の曲ね、男も一緒に歌え」

男「いや、僕は聴いてるだけでも十分楽しめてるよ」

ハーピー「むー!だーめ、はいこれ、”エルコンドルパサー”」

男「それは有名な競走馬の名前じゃ……」

ハーピー「のんのん。歌い出し聴いたらわかるから。はい、マイク持って」

アイド ラーザー ビーアスパーロゥ ザンナスネール♪

男「あー!知ってる!」

ハーピー「でしょー」
80: 1 2013/10/27(日) 23:03:41 ID:GiXfM8hk
----店の外

男「コンドルは飛んでいく、の原曲があんな風だったとは」

ハーピー「あー、わりとしんみり、っていうか、盛り上がる系じゃないよね」

男「サイモン&ガーファンクルですからね」

ハーピー「”Sound of Silence”とか?」

男「そんなところです。ところで、今日の晩ご飯遅くなってもいいですか?」

ハーピー「なんで?」

男「ロールキャベツでも作ろうかと。ハーブたっぷりで」

ハーピー「スカボロー・フェア?」

男「スカボロー・フェアです」
81: 1 2013/10/27(日) 23:11:32 ID:GiXfM8hk
----スーパーマーケットの前

アリガトーゴザイマシター

男「結構大荷物になっちゃいましたね」

ハーピー「だね、半分持とうか?」

男「いーえ、大丈夫です」

ハーピー「ねぇ」

男「はい?」

ハーピー「ありがと。今日、無理やり誘いだしたみたいになったのに、付き合ってくれて」

男「どういたしまして。それと、ありがとう」

男「久しぶりに楽しい休日でした」

ハーピー「ん」

男「……」

ハーピー「……」

男「……」

ハーピー「……ねえ」
82: 1 2013/10/27(日) 23:25:14 ID:GiXfM8hk


ハーピー「来年も再来年もその先も、ずっと貴方の隣にいても、いいですか?」ボソッ

ブロロロロロ......

男「え、ハーピーさん何か言った?」

ハーピー「…………ううん、なんにも」

男「……」

ハーピー「さ、帰りましょ、帰りましょ。ロールキャベツとデザートのアイスクリームの待つ我が家へ!」

男「そうですね。日も暮れることですし」

ハーピー「あ、今ならもれなく、男の分のアイスまで食べてあげるよ?」

男「却下」
79: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/10/27(日) 22:33:46 ID:kJ3P9OVs
釘になるよりは
金槌になりたい

そうだ、その方がずっといい
できることなら
84: 1 2013/10/27(日) 23:37:59 ID:GiXfM8hk
今日はここまでです
見てくれている方、ありがとうございます

ーーーー>>79が日本語歌詞書いてくれたのでおまけーーーーー

男「”釘になるなら、金槌になるほうがいい”ですか」

ハーピー「ん、ああ、今日のあれ」モグモグ

男「でもその後、もしできるなら、って続くんですよね。ってことは……その男はまだ『釘』なわけで」

男「でも、釘にも釘の人生があると思うんですよ」

男「人を上から叩きのめすだけの金槌よりは」

男「誰かに叩かれて、踏まれても見えなくてもじっと柱をつなぎとめ続ける、そんな釘も、そんな悪くないんじゃないかと」

ハーピー「……深いね。それに、難しいね」

男「ま、今適当に考えたんですけどね」

ハーピー「だいなし」
90: 1 2013/11/04(月) 04:52:21 ID:.3NZWEvw
休日@ベランダ

男「……はい、ハーピーさんこっち持ってください」

ハーピー「なにこれ。布団?」

男「……の、ようなものです。そろそろ出してもいいかなー、と。そのためにもまずは虫干しですね」

ハーピー「ふぅん」

男「よっこらせ、っと。次はちゃぶ台片付けるので、掃除機かけてもらえます?」

ハーピー「はーい」



男「えーと……この奥……あった」ガサゴソ

ハーピー「なにがー?」ブィィィィ

男「これです」

ハーピー「……なにこれ、コンセントつきのちゃぶ台じゃん」

男「いいえ、これは日本の冬をぬくぬく過ごすための必須アイテムにして一度はまれば抜け出すことは困難な最強最悪のトラップ……」



男「こたつです」
91: 1 2013/11/04(月) 04:54:26 ID:.3NZWEvw
半日後@リビング

ハーピー「……」ヌクヌク

ハーピー「男、リモコンとってー」ヌクヌク

男「お断りします」ヌクヌク

ハーピー「ちょっとくらいいいじゃーん」ヌクヌク

男「ご自分でどうぞ……今日の晩ご飯、店屋物でいいですよね」ヌクヌク

ハーピー「さんせーい」ヌクヌク

男「あ、ハーピーさん、そっちにお蕎麦屋さんの出前メニュー表あるので、とってもらえませんか?」ヌクヌク

ハーピー「えー……あ、そうだ、じゃんけんで決めよう」ヌクヌク

男「……もういいです、僕がとります」ハァ

ハーピー「悪いねー、あ、ついでにリモコンとってー」ヌクヌク
92: 1 2013/11/04(月) 04:56:46 ID:.3NZWEvw
男「動かないでいると、お肉がついて飛べなくなっても知りませんよ?バイトくびになっちゃいますよ?」

ハーピー「それはこまるけどー、寒い所もそこそこ苦手なのよねー」ヌクヌク

ハーピー「ギリシャって、冬でも気温10度前後だし。日本に来て初めて雪を見たくらいだし」ヌクヌク

男「そうですか」ヨッコラセ

ハーピー「ところで男ー」ヌクヌク

男「はい?」ヌクヌク

ハーピー「もしお肉がついて、飛べなくなったら養ってくれる?」ヌクヌク

男「……食肉卸売市場に引き渡しますよ?」ヌクヌク

ハーピー「それは困る」ヌクヌク
93: 1 2013/11/04(月) 05:02:55 ID:.3NZWEvw
男「で、飛べなくなったら即屠畜場行きのハーピーさん、何食べます?」ヌクヌク

ハーピー「最近、当たり強くない?……えーと、鴨南蛮」ヌクヌク

男「僕は……親子丼セットのうどんにします」ヌクヌク

ハーピー「炭水化物プラス炭水化物……」ヌクヌク

男「そういうこと言うと、親子丼の鶏肉、一口あげませんよ?」ヌクヌク

ハーピー「炭水化物、最高!」ヌクヌク

ピピポピポパポピ

男「あ、出前お願いします、男です。……はい、5丁目の。鴨南蛮と、親子丼セットうどんで」ヌクヌク
94: 1 2013/11/04(月) 05:05:21 ID:.3NZWEvw
…………

……

男「ごちそうさまでした」

ハーピー「ごちそうさまでしたー」ゴロン

男「食べてすぐ寝ると牛になりますよ」

ハーピー「鳥だもーん」

男「まぁ、鳥でも牛でも、最期はドナドナされてゆくんですがね」

ハーピー「」

男「大学時代、屠殺場のすぐそばに住んでたんですけど。徹夜した早朝とか、どこからともなくブモーブモーと悲しげに嘶く声が辺りに響いて……」

ハーピー「ちょうやめて」
95: 1 2013/11/04(月) 05:13:11 ID:.3NZWEvw
男「あ、それと」

男「主に電気代の観点から、コタツで寝るのは原則禁止します。低温ヤケドや風邪をひくこともありますので」

ハーピー「はぁい……」

男「ちなみに、朝、コタツで寝ているのを発見した場合、証拠の写メを残しておいてください」

男「罰として『相手に家事を1つやらせることができる』とします」

ハーピー「んー……わかったー」ウトウト

男「僕の話聞いてましたかハーピーさん」
96: 1 2013/11/04(月) 05:18:53 ID:.3NZWEvw
ハーピー「むー、こたつ、ぬくぬくしてていいけど、足が……」

男「まぁ、そこは日本特有の譲り合いの精神でお願いします」

男「もう少し大きいものに買い換えてもいいんですが、どうせ11月から遅くて3月くらいまでしか使いませんし」

ハーピー「むー、でもこれ以上人が増えたら、さすがに狭いねー」

男「人、増えるんですか?」

ハーピー「はひぇ?!あー、ほら、お客さん呼んだりとか」

ハーピー「あ、そだ、お、お風呂、先にもらうね!!」

男「……?はぁ……ごゆっくりどうぞ」



ハーピー(……なんで私、ナチュラルに男の雛を産む気でいたんだろ)チャプ

ハーピー(……いや、まぁ、うん、男のこと好きだけど)ブクブク

ハーピー(……待って、まがりなりにも性別:雌と同居してるっていうのに)

ハーピー(なんで男はああも、がっつかないというか、達観してるというか)

ハーピー(エロ関係を忌避しているというか……)

ハーピー(うう、もしかして女じゃなくて、鳥扱い……っていうか、ペット?!愛玩動物?!)
97: 1 2013/11/04(月) 05:21:52 ID:.3NZWEvw
ハーピー(……)ブクブクブク

ハーピー「……おとこぉ」

男『ハーピーさぁん』

ハーピー「わひゃ?!」ザバァ

男「だ、大丈夫ですか?」

ハーピー「うん、どしたー?」

男「いや、長い間漬かってるから、寝てないかと思って」

ハーピー「平気ー。あ、明日から一緒に入る?それなら寝てないか監視できるよー?」

男「……や、遠慮しておきます」

ハーピー「ぶーぶー」
98: 1 2013/11/04(月) 05:24:49 ID:.3NZWEvw
ハーピー「はー、いいお湯でした。お先にもらったよー」

男「はーい。じゃあ僕ももらおうかなぁ……といいつつ、なかなか起き上がれないのがコタツの魔力なんですけどね」

ハーピー「あー……わかるかも」

ハーピー(あれ?さっきは、脱衣所まで来てくれたのに……?)

男「ハーピーさん?どうしたんです、そんな眉間に皺よせて」

ハーピー「んー、なんでもないような、なんでもなくないような」

男「意味がわかりませんが……じゃ、お風呂もらいます。湯冷めしないようにしてくださいね」

ハーピー「……ぶー」
99: 1 2013/11/04(月) 05:29:21 ID:.3NZWEvw
ハーピー(男は私のこと、どう思ってるんだろう)ヌクヌク

ハーピー(少なくとも、好き……じゃないんだろうなぁ)ヌクヌク

ハーピー(居候?それともペット?……はぁ)ヌクヌク

ハーピー(仕方ない。私みたいな鳥頭がない知恵絞ったところで、いい案は浮かばないし)ヌクヌク

ハーピー(直球でぶつけてみるか)ヌクヌク

ハーピー(……それでもし、この部屋に居られなくなったらその時はその時)ヌクヌク

ハーピー(ちょっとこの季節、放り出されると寒いけど)ヌクヌク

ハーピー(……こ、こたつを仕舞うまで待ってもいいかも)

ハーピー(ねぇ男……私は男のこと、好きだよ)ウトウト

ハーピー(男は私のこと……どう、思って、る……?)
100: 1 2013/11/04(月) 05:32:19 ID:.3NZWEvw
ハーピー「」zzz

男「早速こたつで寝落ちしないでほしいんですが……」

男「……」

男「もうちょっとだけ、見ててもいいかな……」

男「…………」

男「」zzz



翌朝

男「……首筋寝違えた」

ハーピー「ぎゃあ!寝癖が!朝ごはんが!時間がないっ!?」
110: 1 2013/11/10(日) 21:28:01 ID:DkCeg9zM
住宅街@夕方

ハーピー(……今日言おう)

ハーピー(男のことが好き、ってちゃんと言おう)

ハーピー(うまく言ったらそれでよし。ダメなら……まぁ、うん、その時はその時)

ハーピー(ちょっとこの季節、放り出されると辛いけど)

ハーピー(春先まで待っても……こたつ片付けるまで、このままでも……)

ハーピー(……)

ハーピー(いや、だめだめ、自信持っていかなきゃ)ブンブン

ハーピー(大丈夫、星座占いなら恋愛◎)

ハーピー(神社のおみくじは大吉、恋愛は進むが吉)

ハーピー(大丈夫、うまくいく)

ハーピー(いつもどおりでいいんだから)
111: 1 2013/11/10(日) 21:30:27 ID:DkCeg9zM
ハーピー(うちに帰って、ご飯準備して食べて、お風呂入って綺麗にして)

ハーピー(綺麗、ってそういう意味じゃなく……もないか。いつもより念入りに洗おう)

ハーピー(もしかしたら、そういう展開もなきにしもあらずだし)

ハーピー(『ハーピーさん、ぼくもずっと前から君のその蹴爪がたまらなくセクシーで、僕は、僕はもうっ!』)

ハーピー(いやん、男が脚フェチだったなんて)クネクネ

幼女「ママー、あの鳥のお姉ちゃん、くねくねしてるよー?」

母親「見ちゃいけません!」
112: 1 2013/11/10(日) 21:33:50 ID:DkCeg9zM
ハーピー(待てよ、告白がうまくいかなかった時のパターンも予想しておいたほうがいいんじゃないかな)

ハーピー(こういう時って、上手く行った時のことだけ考えるほうがいい、っていうけど)

ハーピー(今まで色々、色仕掛けしたけど通じなかったもんなぁ)

ハーピー(実は恋人がいるパターン、実はペットだと思っていたパターン、実は男性が好きなパt……)

ハーピー(……最後のだけは勘弁してほしい)

ハーピー(『君の風切羽は素敵だけど、僕と腕を組むにはちょっと……くすぐったいんだ』)

ハーピー(なんてことになったら……)orz

幼女「ままー、今度は膝抱えてるよー?」

母親「そうしたい気分なんでしょう……さ、帰ってご飯にしましょ。今日は鶏南蛮よ」

幼女「わーい、とりなんばんだいすきー!」
113: 1 2013/11/10(日) 21:37:16 ID:DkCeg9zM
ハーピー(仕方ない、当たって砕ける!砕けてバラバラになるほどヤワな人生してないし!)

ハーピー(……まぁ半分鳥だけど)

ハーピー(はぁ……うう、家帰らないと、でも、緊張する……)

ハーピー(……)

ハーピー(よし、帰ろう!帰って男の顔と声を満喫するんだ!)

男「あれ、ハーピーさん?」

ハーピー「わひゃい?!お、男!?」

男「どうしたの、こんな道端で。お腹痛いとか?」

ハーピー「あ、いや、大丈夫だけど、ごめんね、帰ってご飯作るから」

男「あー……そのことなんだけど」

ハーピー「?」
114: 1 2013/11/10(日) 21:40:09 ID:DkCeg9zM
男「ごめん、急に出張入っちゃって。着替えと携帯の充電器取りに来ただけなんだ」

ハーピー「え?」

男「携帯にメール入れたんだけど、まだ見てない?」

ハーピー「あー、電源切ってる、かも」

男「飛行機の時間あるから行くね。家に着いたらまず鍵とチェーンをかけること、それじゃ」

ハーピー「い……いってらっしゃい……」

男「うん、行ってきまーす!」

…………

……

ハーピー「うそぉ」
115: 1 2013/11/10(日) 21:44:05 ID:DkCeg9zM
ハーピー「……ただいまー」ガチャコ

ハーピー「……じゃじゃーん!今日は奮発してピーマンの肉詰めだよー」コネコネ

ハーピー「ふふーん、日々の節約はこうやって放出するのだ、わははー」グワシグワシ

ハーピー「……」ジュワーッ

ハーピー「……いただきます」モグモグ

ハーピー「」

ハーピー「あんまりだ……どうしてくれよう、このやり場のない怒りとも憎しみともとれぬ気持ちは……」

ハーピー「……ぬあーっ!!」

ハーピー「いいもんいいもん!男がいないから、好き放題やっちゃうもんねーっ!」

ハーピー「ぶーぶー!男のばーか!ばーか!はやく帰ってこーい!」
116: 1 2013/11/10(日) 21:46:27 ID:DkCeg9zM
ハーピー「まずは……」カポーン

ハーピー「泡風呂だー!」モコモコモコモコ

ハーピー「一度やってみたかったんだー」ザボン

ハーピー「ふんふふーんふんふんふんふんふふ~ん、ぷぷっぴどぅ~♪」

ハーピー「どうよおとこー、悩殺しちゃうぞー、おーい」チャポン

ハーピー「あ、いないんだった……」
117: 1 2013/11/10(日) 21:48:11 ID:DkCeg9zM
ハーピー「むー、ドライヤーどこー?もー……男じゃないとどこしまってあるんだか……」

ハーピー「あ、あったあった」ブオー

---

ハーピー「発泡酒よいか、ヨシ!」ビシッ

ハーピー「サキイカよいか、ヨシ!」ビシッ

ハーピー「おこた電源よいか、ヨシ!」ビシッ

ハーピー「録画したお笑い番組よいかー、ヨシ!」ビシッ

ハーピー「おこたでごろ寝テレビー、はじめー!」ゴロリン
118: 1 2013/11/10(日) 21:49:19 ID:DkCeg9zM
ハーピー「ぷっ……ははははは」

ハーピー「あはは、うしろ!うしろー!」

ハーピー「……はは」

ハーピー「ぶーぶー」



ハーピー「おーい男ー、このままコタツで寝ちゃうぞー」

ハーピー「いいのかなー、風邪ひいちゃうかもなー」

ハーピー「部屋まで連れてってほしいなー」

ハーピー「……ぶー」

ハーピー「……」
119: 1 2013/11/10(日) 21:58:29 ID:DkCeg9zM
ガチャコ

ハーピー「おじゃましまーす」コッソリ

ハーピー(男の部屋、はじめて入るなぁ)

ハーピー「『僕の部屋は掃除要りませんから!』きりっ!……だもんなぁ」

ハーピー「……PCデスクと、色々な本の入った棚と、クローゼットとベッド。割合殺風景な部屋だねぇ」

ハーピー「……はーい、エロ本ちぇーっく!」ガサゴソ
120: 1 2013/11/10(日) 22:04:03 ID:DkCeg9zM
ハーピー「一冊もない、だと……」

ハーピー「まさかこうやって本を引っ張ると隠し扉がごごごごー」

ハーピー「……」

ハーピー「なんて、あるわけないよね」

ハーピー「さて……家探しも飽きたしそろそろ寝よっかなー」

ハーピー(……うう、一人だとなんか不安)

ハーピー(……)

ハーピー(…………)



ハーピー「枕から男の匂いがする……落ち着くかも……」クンカクンカ

ハーピー「こうしたら、男と一緒に寝てるみたいで……」

ハーピー「……」モゾモゾ
121: 1 2013/11/10(日) 22:09:35 ID:DkCeg9zM
ハーピー「『ハーピーさん』」

ハーピー「おとこ……すっごく、気持よかったよ」

ハーピー「『うん……僕も』」

ハーピー「いーっぱい出しちゃったね……卵できちゃう」

ハーピー「『もしそうなったら責任はとるよ……二人で温かい家庭を作ろうね』」

ハーピー「おとこ……ふふ、だぁいすき」



ハーピー「……段々虚しくなってきた」
122: 1 2013/11/10(日) 22:14:42 ID:DkCeg9zM
途中送信してしまった

-----

ハーピー「……段々虚しくなってきた」

ハーピー「……はぁ、もう寝るぞー」

ハーピー「……おやすみ、おとこ」

ハーピー「」スゥスゥ...
123: 1 2013/11/10(日) 22:22:01 ID:DkCeg9zM
----2日後@玄関

男「ただいまー」ガチャコ

ハーピー「おかえりなさーい」パタパタ

ハーピー「はい、カバンはもらっとく。お風呂先入っちゃってー、それからゆっくりご飯にしよう、今日は鍋だよ」

男「あ、え、どうしたのハーピーさん」

ハーピー「なにがー?」

男「あ、いや、玄関までお迎えに来てくれるなんて初めてじゃない?」

ハーピー「なんなら、三指ついてお帰りなさいませ、ってやってもいいよ?」

男「そこまでする必要はありませんけど」

ハーピー「ぶー」
124: 1 2013/11/10(日) 22:33:31 ID:DkCeg9zM
30分後

男「ふぅ」ホカホカ

ハーピー「あ、ちょうど出来たよ鶏団子鍋。冷蔵庫にビールとグラスも冷やしてあるよー」

男「……えっと、ハーピーさん、何したんですか?怒らないから素直に言ってください」

ハーピー「心外だなぁ。何も割ってないし壊してないってば。さぁほら、食べよ食べよ」

男「はぁ……」



ハーピー「……ビール、もう1本飲む?」

男「……あー、いや、やめておきます。そこまで強くないので」

ハーピー「じゃあ、この中途半端に空いた奴だけ飲む」グビグビ

男「酔っても介抱しませんよ」

ハーピー「んー」プハァ

ハーピー「お酒の力がないと、恥ずかしくて言えないの」ボソッ
125: 1 2013/11/10(日) 22:46:05 ID:DkCeg9zM
ハーピー「……男」

男「はい?」

ハーピー「ちょっと詰めて、隣いくから」

男「え?えっと……」

ハーピー「となり!いくの!」モゾモゾ

男「あ、ちょっと……もう」

ハーピー「……おかえり」ギュ

男「な、なんですかハーピーさん近いですって!」

ハーピー「……この二日間、私を寂しがらせた罰なので、このままでいて……お願い」

ハーピー「寂しかった……男のいない部屋、広すぎて寂しかったの……寂しかったんだよ……ぐすっ」

男「ああ、あの、ハーピーさん?」

ハーピー「……」ギューッ

男「今日だけですからね」ギュ

ハーピー「ん」
126: 1 2013/11/10(日) 22:57:40 ID:DkCeg9zM
…………

……

ハーピー「あのね」

男「はい」

ハーピー「私、男のこと……好きなの」

ハーピー「ライクじゃないよ、ラブなの。大好きなの。姿を見るだけでドキドキするし、話してる時なんて、口から心臓飛び出しそう」

ハーピー「…………男は、私のこと、どう思ってる?ただの同居人?ペット?」

男「ペットじゃあないですし、その、うん、緊張というか、ドキドキします。今もドキドキしてます。ただ……」

ハーピー「ただ?」

男「お付き合いするかは別というか……唐突すぎて思考が追いついてない、というか」

男「……ちょっとだけ、答え待ってもらっても、いいですか?」

ハーピー「ん……いいよ」
127: 1 2013/11/10(日) 23:09:22 ID:DkCeg9zM
ハーピー「うし、満足。ずっと心の中のモヤモヤしてたのが、なんか取れた気がする」

男「そうですか」

ハーピー「返事、ノーでもいいからね。もし一緒に暮らしづらいなら、出てくし」

男「何度も言うようですが、僕から『出て行け』とは言いません。もし出て行く時はハーピーさんが『もうここにはいたくない』とおもった時です」

ハーピー「じゃあずーっとここにいる」

男「分かりました、じゃあ来年も再来年も、こうやってコタツの中でお鍋つつきましょう」

ハーピー「こうやって?座椅子に座った男の上に私が向かい合ってまたがった状態で?大分器用な鍋のつつき方だとおもうけど……」

男「そういう意味じゃなくて」

ハーピー「分かってる……ちょっと酔いすぎたし、言いたいこと言ったし、今日はもう寝る」フラリ

男「え、あ、はい」

ハーピー「おやすみ、男」カァッ

パタパタパタパタ

男「……おやすみなさい、ハーピーさん」
132: 1 2013/11/17(日) 21:07:41 ID:ZAgCl4DM
ハーピー「ただいまー」

男「おかえり」

ハーピー「いつもと逆だね」

男「たまには、ね」

ハーピー「今日のご飯はー?」

男「ナスとミートソースのグラタン、ミネストローネ、半額になってたバケットで作ったガーリックトースト」

ハーピー「洋風だね。おこたで洋食、和洋折衷でいいと思う」

男「とりあえず、うがい手洗い」

ハーピー「……あのー、構造上、私の手って翼部分の大半なんですけどー」パタパタ

男「え、そうなんですか?」

ハーピー「ここが肘でしょー、んで手首、手、指4本……プラス小指」バサァ

男「小指だけで腕の半分あるんですけど」

ハーピー「そりゃまぁ、半分鳥だからねー、で、手洗いもお風呂も変わらないんですけど、うがい手洗い?」

男「……分かりました、うがいだけでもしてくださいね」

ハーピー「はいはーい」
133: 1 2013/11/17(日) 21:12:11 ID:ZAgCl4DM
ハーピー「……うまー!!なにこれ、うま!ナス美味しい!あちち」ハフハフ

男「よく噛んで食べる」

ハーピー「このガーリックトーストもなかなか」カプッ

男「気に入ってもらえて光栄です」

ハーピー「そういえばさー、秋茄子は嫁に食わすな、っていうけど」

男「へ、え、ええ、まぁ、そ、そう言いますね」

ハーピー「あれって、美味しいからもったいない、っていう人と体を冷やすからよくない、って人といるよねー」

男「い、いいいいますね、げほっ」

ハーピー「ありゃ、むせた?」
134: 1 2013/11/17(日) 21:14:02 ID:ZAgCl4DM
男「ああ、いや、平気です…………あれ?」

ハーピー「んー?」

男「ああ、いや、いつもならこの辺で『ところで、私をお嫁さんにー』とかくるから」

ハーピー「うん、うーん……まぁ、ね、それはほら、その、ね」



男「…………」

ハーピー「…………」

男「…………」

ハーピー「…………」

男「あ、8時過ぎてる、ちょっとニュース見ますね」ポチッ

ハーピー「う、うん、どーぞどーぞ。私も明日の天気知りたいし」
135: 1 2013/11/17(日) 21:18:33 ID:ZAgCl4DM
男「あー、リモコンリモコン」

ハーピー「はい」

男「ありが」ピト

ハーピー「ひゃ?!」ガタッ

男「ご、ごめん」



男(気まずい)

ハーピー(気まずい)
136: 1 2013/11/17(日) 21:21:51 ID:ZAgCl4DM
ポチッ

TV『続いて市内のニュースです。今日、公園で翼にボウガンと思われる矢が刺さった鳩が発見され、警察で保護しています』

ハーピー「ひどいことするなぁ」

男「本当ですね」

ハーピー「狩った獲物はきちんと食べないと」ジュルリ

男「……そっちですか」

ハーピー「男、私たちは他の生命を奪って生きてるんだよ。だから、食べる前に『いただきます』って言うの」

男「まさかハーピーさんからそんな言葉が飛び出すとは……」

ハーピー「ひどいなぁ、ぶーぶー」

男「でも、確かにその通りですね」

ハーピー「自分で狩りをしなくなると、忘れちゃうよね、そういうこと」

男「……明日からもうちょっと、お肉に敬意を払います」

ハーピー「じゃあ明日は高級地鶏のローストチキンを食べよう!」

男「そんな大きいオーブンうちにないです。第一、なんでそんな結論になるんですか」

ハーピー「ぶー」
137: 1 2013/11/17(日) 21:23:29 ID:ZAgCl4DM
----------

ハーピー「ごちそうさまー」

男「おそまつさまでした。お風呂、先にもらいます」

ハーピー「んー……」



ハーピー「ねぇ、男」



男「はい?」

ハーピー「私は待つよ、男が私の告白になんて答えてくれるか。ちょうたのしみ」
138: 1 2013/11/17(日) 21:25:05 ID:ZAgCl4DM
男「はい?」

ハーピー「私は待つよ、男が私の告白になんて答えてくれるか。ちょうたのしみ」

男「難易度爆上げじゃないですか」

ハーピー「だって……」

男「ああ、まぁその、うん、嫌いな人と寝食をともにするのは無理です」

ハーピー「どっちの意味ともとれる婉曲表現」

男「玉虫色でとても日本的でしょう?」

ハーピー「ぶー」

男「あの……ですね、うん、つまりその」



男「……お風呂入ってきます」

ハーピー「ぶー!!」
139: 1 2013/11/17(日) 21:30:39 ID:ZAgCl4DM
『ねぇおかあさん』

『おかあさん』

『うるさい!ぎゃんぎゃんわめくな!』

『……ごめんなさい』

『あんたなんか産まなきゃよかった』

『……』

『男には逃げられる、金はかかる、ほんと、うざいったらありゃしない』

『…………ごめんなさい』

『謝ったら済むの?は、楽ちんね。誰のせいでこんな苦労してると思ってるの?ちょっとは頭使いなさいよ』

『保険金かけてあるんだからさ、ちょっと死になよ』

『……おかあさん?』

『あんたがいなきゃ、今頃もっと楽に生きてたの。わかる?あんたが死ねば私に保険金が入るの。今まで苦しめた慰謝料ってわけ』

『え……え……』

『あんたが!あんたがいたせいで!死ね!死ね!!溺れて死ね!!』

『ごめんなさい!ごめんなさい!やべでおがあざ!やm』ガボッ
140: 1 2013/11/17(日) 21:33:32 ID:ZAgCl4DM
男「がはっ!!げほっ!!」



パタパタパタパタ

ハーピー「男、すごい音したけど大丈夫!?」

男「……ああ、すいませんお風呂で寝ちゃったみたいです。ああ、鼻に水が、いたた、げほっ」

ハーピー「もう……心配したじゃん。あ、ところでお背中流しましょうかー?」

男「結構です」

ハーピー「その言い方はどっちともとれるねー、ビバ玉虫色!」ガラ...ガタガタ

ハーピー「ありゃ、鍵かかってる?」

男「はいはい、もう上がるんで、脱衣所から出ていただけないでしょうか」

ハーピー「じゃあバスタオルここに置いておくからー」

男「ありがとうございます」

ハーピー「……ぶー」
141: 1 2013/11/17(日) 21:41:48 ID:ZAgCl4DM
男「…………」

ハーピー「男?」

男「…………」

ハーピー「おーい、お風呂入るけどー」

男「…………」

ハーピー「……あー、お風呂はいるけどー、覗かれたらどうしよー、まさか男がそんな野獣だったなんてー」ボウヨミ

男「…………」

ハーピー「ね、ねぇ男、大丈夫?」ユサユサ

男「触らないでください。ほっといてください……覗きませんので、ゆっくりつかって、しっかり体を温めてください。僕は先に寝ます」

ハーピー「あ、え、うん……」
142: 1 2013/11/17(日) 21:47:24 ID:ZAgCl4DM
@男の寝室

男(…………)

男(ああくそ、何やってるんだ……)

男(何も知らないハーピーさんに当たって……情けない)

男(…………)

男(ハーピーさん)

男(彼女を信じていいんだろうか……)
143: 1 2013/11/17(日) 21:59:20 ID:ZAgCl4DM
男(信じて、裏切られて、こりたつもりで、また他人を信用しようとして……)

男(ハーピーさんだって、陰で俺のこと笑ってるのかも)

男(……いつか裏切られるなら、最初から人を遠ざけて生きよう)

男(そうやって今まで生きてきたじゃないか)

男(それを今更、好意を向けられたくらいで翻して……)

男(どうせまた裏切られて傷つくんだ、なら、最初から……信じないほうがいい。それなら裏切られる心配はない)

男(「ああ、やっぱりね」なんて、分かったフリで苦笑いする羽目になるんだ)

男(過去の経験からよく分かってるじゃないか)
145: 1 2013/11/17(日) 22:11:11 ID:ZAgCl4DM
男(……付き合えない、って断ろう)

男(嫌いじゃない。家には好きなだけ居てもらって構わない。でも、付き合えない)

男「はは」

男(我ながらひどい言い訳)

男(まぁ仕方ない。うん、そうだ仕方ない。仕方ないよな、うん……)

男(……)
146: 1 2013/11/17(日) 22:22:07 ID:ZAgCl4DM
男(…………ハーピーさん、泣くかな、泣かれるといやだな)

男(……て、何言ってるんだ)

男(……そりゃ、泣くよな)

男(泣かれたくないなぁ……)

男(むしのいい話だよな、そんなの。それは分かってるんだけど、でも……)



男(ハーピーさんには笑顔が似合うよな)

男(じゃあ自分を殺して、ハーピーさんの告白に応えて、そして……)

男(いつか裏切られる)



男(……だめだ、思考がループする。もう寝よう)
149: 1 2013/11/23(土) 23:33:37 ID:VnLQmbEU
数日後@午前2時

男「……ただいまー」ボソッ

男「……」

男「……」ホッ

男「よっと」

男「……なにかテレビ……は、もう通販ぐらいしかやってないか」

男「……はぁ」カシュッ

男(……ああ、ひとりごとなんて久しぶりかも)

男(以前はけっこう、独り言多かった……気がするんだけど)
151: 1 2013/11/23(土) 23:41:42 ID:VnLQmbEU
男(眠れないから夜中に酒買いにコンビニ行くのも、随分久しぶりな気がするな)

男(……眠れない)チビリ

男「…………はぁ」

男(苦しいな……思い出したくないことばかり思い出して……)

男「……」
152: 1 2013/11/23(土) 23:49:34 ID:VnLQmbEU
ハーピー「つまみもなしにお酒飲むと、胃に悪いよ」

男「……起こしちゃいましたか?」

ハーピー「ううん、おトイレに起きてきたら、ドアのチェーンはかかってないし、男の靴もなかったから」

男「なかなか寝付けなくて。この一杯でおしまいにします」

ハーピー「『別に……どれだけ飲もうと、ぼくには文句を言う権利はありませんから』……どう、男のものまね。似てる?」

男「びみょー」

ハーピー「あはははは、待ってて、おつまみ作るよ」トテトテ
153: 1 2013/11/24(日) 00:05:15 ID:8MCNRutg
男「…………」チビリ

男「……」ポチ

ザーーーーーーーーー

男「……まずい安酒」チビリ

ハーピー「はーい、”梅きゅうちくわ”おまちど……何見てるの?」

男「砂嵐」

ハーピー「……楽しい?」

男「……まぁそれなにり。宇宙人からの秘密のメッセージが入っているかと思ったけど、残念ながら今日はないみたいです」

ハーピー「病んでる……」

男「おつまみ、ありがとうございます。座ります?」

ハーピー「……うん」

男「テレビ、消しますね」

ハーピー「宇宙人からのメッセージはいいの?」

男「奴ら、既読なのに返信しないと怒るんで」

ハーピー「そか」プツン
154: 1 2013/11/24(日) 00:14:18 ID:8MCNRutg
男「……」チビリ

ハーピー「よいしょ……っと」

男「寒くないですか?毛布、ありますよ」

ハーピー「ん、もらう」

男「……」チビリ

ハーピー「へへー、私もお酒もーらいっと。あ、手酌するから平気」コポコポコポ

男「…………」

ハーピー「…………」

男「ああ、おつまみ、いただきます」

ハーピー「ちくわの穴にきゅうりと叩いた梅干しを入れただけの手抜き品だけどね」

男「正直、寝酒のおつまみにがっつり唐揚げ出されても困るんで、これくらいで……うん、美味しいです」

ハーピー「よかった。私もひとつ……ん、成功かも」グビ
155: 1 2013/11/24(日) 00:24:24 ID:8MCNRutg
男「……」チビリ

ハーピー「……」ジー

男「…………」

ハーピー「…………」ジー

男「なんですか、ハーピーさん」

ハーピー「んー、特に何も。強いて言うなら、好きな男の顔見て、ほくほくしてる」

男「げほっ」

ハーピー「あはは、ごめんね。でも、目で追っちゃうんだなー、これが」

男「…………」チビリ

男「どこがいいんですか?」

ハーピー「どこ、って?」

男「僕なんかのどこがいいんです?イケメンでもなければ、話がうまいわけでもない」

男「恋愛には奥手だし、給料だって高くないし……告白を保留にしたままはぐらかし続けるなんて、不誠実でしょう」

ハーピー「……よくもまぁ、自分をそこまで悪しざまに言えるねぇ」
156: 1 2013/11/24(日) 00:43:58 ID:8MCNRutg
ハーピー「ええと」

男「……」ジー

ハーピー「……なんか恥ずかしいなぁ、もう」

男「自分で聞いておいてなんですが、僕もこっ恥ずかしくなってきました」

ハーピー「ええとね……笑えるの」

男「僕の姿は滑稽ですか?」

ハーピー「そうじゃなくて。私、男と話してると楽しいんだよねー。けっこう笑ってる気がする」

ハーピー「心の底から笑って、心がポカポカしてくるというか……うん、そんな感じ」

ハーピー「あと重要なことなんだけど、男は私を怖がったり気味悪がったり、やたら好奇の目で見たりしないところ」

男「そうですか……」

ハーピー「顔とか関係ないよ。恋愛に奥手なのも、気にしない。その分私がぐいぐい行くから」

ハーピー「まぁ、返事もらえないのは稀によく不安になるけど……期限切ったわけじゃないしね」
157: 1 2013/11/24(日) 01:10:34 ID:8MCNRutg
男「……じゃあ、クリスマスの前までには」

ハーピー「今じゃないんだ」

男「……今じゃないです」

ハーピー「ぶー」

男「ハーピーさん、その……」

ハーピー「んー?」

男「……ありがとう。こんな僕に、好きって言ってくれて」

ハーピー「”こんな”って言わない。卑下しない。男はかっこいい。それは自信持っていいと思う」

男「そうでしょうか」

ハーピー「そうだよー。でも、顔から好きになったわけじゃない、ってのは信じて欲しい」

男「はい、信じます」

ハーピー「ならよし。さて、そろそろ寝ないと、明日の仕事に響きそう」

男「ですね。片付けておくので、こたつの電源落としてもらえますか」
158: 1 2013/11/24(日) 01:22:42 ID:8MCNRutg
男「グラスは水につけておきますね。明日の……正確には今日の夜洗いますから」

ハーピー「……」

男「て、なんですかハーピーさん、そんな市川悦子ばりの覗き見して」

ハーピー「んー、台所に立つ男の背中もかっこいいなー、と思って見とれてる」

男「そんな事言ったって、家事の当番引き受けたりはしませんよ。最近、水が冷たいからっておざなりに食器洗ってるのはバレてますからね」

ハーピー「ぶー……あ」

男「?」

ハーピー「男、ちょっと右向いて」

男「なんですか急に……こうですか?」

ハーピー「そう、そのまま────隙あり」

チュ

男「!!」

ハーピー「おやすみ、大好きな人」

パタパタパタパタ...バタン

男「お、おやすみなさい」
169: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/01(日) 09:14:56 ID:AqfhILqo
とある平日朝@ハーピー自室前

----------

男「ハーピーさん!ハーピーさーん!」ドンドンドン

ハーピー「……ふぁーい」ガサゴソ

男「遅刻しますよー!バイトの時間ですよー!」

ハーピー「あとごふん……」

男「そんな事言ってもダメです!昨日もそんな事言って遅刻ギリギリだったじゃないですか!」

ハーピー「……わかってまーふ」

男「分かってないでしょ!」

ハーピー「おとこのちゅーでおきる……」

男「はいはい……あ、そうそう、昨日の深夜アニメ、ニュース特番で時間ずれてましたよ」

ハーピー「うそぉ?!」ガタガタガタッ、ガチャン!!

男「キスがなくても起きられるじゃないですか」

ハーピー「……ぶぅぅぅー」
170: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/01(日) 09:16:10 ID:AqfhILqo
とある日曜日朝@男自室

男「……」

男「……うう、さむい」

オオッ!!オー!マサカノシンフォーム!?カッコイー!

男「……なんだよもう……朝からハーピーさんは元気だなぁ……」

男「……昨日は日付変わってもハーピーさんのアニメ鑑賞会につきあわされて眠いのに……」

男「……はちじじゅうごふん……ああ、いつものテレビ番組か……」

ヘンシンポーズガ!!ポーズガカッコイイ!!ウヒョー!!

男「二度寝……するか、ふぁぁ」

…………

……
171: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/01(日) 09:16:49 ID:AqfhILqo
バタァン!!

ハーピー「おとこぉー!朝ごはん!朝ごはん!!」

男「みればわかるでしょはぁぴぃさん……今二度寝にいそがしいんです……ていうか無断で部屋にはいらない」

ハーピー「ぶーぶー……あ、そだ、キスしたら起きるかな」ンチュー

男「断固阻止」ガシッ

ハーピー「くっ!?だが阻止できるかな……くらえ、荒ぶるハーピーのポォォズ!!」

男「……なにそれ」

ハーピー「ちょう威嚇中~」

男「エプロンつけてフライ返しとおたま持って威嚇されても……あ、起きるからどいてください」

ハーピー「ぶー……あ、起きてからチューしてもいいよー」
172: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/01(日) 09:17:45 ID:AqfhILqo
男「ん、分かりました」スッ

ニギッ、チュッ

ハーピー「!?!?!?」

男「手の甲でも、キスはキスですからね」

ハーピー「ああ、うん、えへへ、にへー」デレー

男「はいはい、とろけてないで、朝ごはんにしましょう、今日のメニューは?」

ハーピー「ふへへー」デレー

男「だめだこりゃ」
175: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/01(日) 23:01:44 ID:AqfhILqo
夕方@商店街

男「初めて入るけど……こんな所に本当に売ってるのかな」

店員「いらっしゃい。新顔だね」

男「一見なんですけど……ええと、帽子を探してまして」

店員「三軒隣に、こじゃれた帽子屋があるだろ」

男「そこで聞いたら、僕が探しているような帽子はここじゃないか、と」

店員「どんなの?」

男「ええと……」

…………

……
176: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/01(日) 23:02:54 ID:AqfhILqo
店員「これ?」

男「ああ!これ!こういうのです……う」

店員「う?」

男「正直、予想してたのよりゼロが1つ多くて」

店員「あはは、現品限り、製造元は倒産、掘り出し物だからねぇ」

店員「でも本革だし、ファーも本物だし、ゴーグルついてるし、きちんと手入れしたら長く使えるはずさ」

男「……じゃあ、これを。プレゼント用に包装なんてのは……」

店員「んじゃ、サービスしちゃおう。あとこれ、クリスマス用のメッセージカード」

男「…………」

男「…………」サラサラ

店員「お兄さん、意外とロマンチストだねぇ……んじゃ、一緒に包んでおくよ」

男「ありがとうございます」
177: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/01(日) 23:05:12 ID:AqfhILqo
男「すっかり遅くなっちゃったなぁ……」

男(日が暮れるのも早いし、底冷えするし)

男(早く帰ってこたつに入って晩酌しよう)

男(熱燗とかどうかな……ハーピーさんは飲むかな……?)

男(……)

男(いつの間にか、ハーピーさんがいること前提になってるな)

男(悪い気はしないけど、でも……)

男(やめよう、そんなこと考えても仕方ない)

イシヤーキイモー オイモー

男(……)

ホッカホカデ オイシイヨー

男「……すいませーん、小さいの2つください」
178: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/01(日) 23:08:09 ID:AqfhILqo
男「ただいまー」

男(……)

男「あれ、ハーピーさん?」

ハーピー「あ、男、おかえりー」

男「はいこれお土産、焼き芋」

ハーピー「あー、ありがとー。実は私も、肉まんお土産に買ってきたんだ。コンビニのじゃないよ?本格中華点心のやつ」

男「……で、どこにあるんです、その本格点心は?」

ハーピー「どこ見てるの、目の前にあるじゃん」

男「……ああ、もう食べたのでお腹の中ってオチですね」

ハーピー「ぶっぶー、はずれー」

男「?」

ハーピー「ほれほれ、昨日よりもナイスバディだと思わない?」ボイーン
179: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/01(日) 23:09:41 ID:AqfhILqo
男「……」

男「……熱くないですか?」

ハーピー「実はかなり」

男「食べ物で遊ばない」

ハーピー「ぶー」ポロリン

ハーピー「ああ、夢だった胸の谷間が……」

男「はいはい。んじゃ、冷めないうちに1つもらいますね」パク

ハーピー「あ」

男「うん、生姜が効いてておいしいじゃないですか」モグモグ

ハーピー「あ、うん、そだね、おいしいならいいんだけど……その……」

男「?」

ハーピー「私のおっぱいに密着してた肉まん、って言うとすごく卑猥じゃない?」

男「げふっ?!げほっ!!」
180: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/01(日) 23:11:38 ID:AqfhILqo
ハーピー「ご、ごめん大丈夫?!」

男「いたぁ?!餡が鼻に入った!げほっ!あぁ……いたたた」

ハーピー「はい、ティッシュ」

男「と゛う゛も゛……」ズビー

ハーピー「むー……せっかく熱いの我慢してやったのにー」

男「食べ物使って人をからかって遊ばないでください。とりあえず着替えてきます」

ハーピー「ぶーぶー」

男「……」

ハーピー「……」

ハーピー「……あ、焼き芋先にもらっちゃうねー」

男「どうぞどうぞ。温かいうちに」
181: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/01(日) 23:13:20 ID:AqfhILqo
V『では、次のニュースです。今朝、市内の公園で矢で撃たれて死亡している鳩が見つかりました。同様の事件は連続して4件起きており……』

ハーピー「むぅ……だんだん物騒になってきたね」

男「ですね。安全だけが取り柄の町だと思っていたんですが」

ハーピー「あ、そういう油断が空き巣や強盗に狙われるんだよ。ここだって、オートロックだからって安心しない」

男「そうですね。空からいきなり人語を解する大型の鳥類が墜落してくるかもしれませんし」

ハーピー「本当、あの時はごめんねー。お腹すきすぎてバランス崩しちゃって」

男「別にいいですけどね。あそこでハーピーさんに出会わなかったら多分……」

ハーピー「多分?」

男「……多分……なんだろ。まぁ、ひとりさびしい生活を送ってたでしょうね」

ハーピー「つまり私は命の恩人ってこと?」

男「ちがいます」

ハーピー「ぶー」
182: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/01(日) 23:15:31 ID:AqfhILqo
ハーピー「はー……食べた食べた。ごちそうさま」

男「肉まん食べて、焼き芋食べて、その上味噌煮込みうどんまで……けっこうカロリー高くついちゃいますね」

ハーピー「んー……そこはほら、羽ばたきで消費するから」

男「残念ながら僕にはそういう便利な翼腕はついていませんので」
183: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/01(日) 23:19:28 ID:AqfhILqo
ハーピー「それじゃあ、運動するしかないねー」

男「このくっそ寒い中、ですか……正直、勘弁願いたいんですが」

ハーピー「んー、部屋の中でもできて、けっこう汗かく運動ならひとつ知ってるけど」

男「へぇ……って、なんかイヤな予感するんですがもしかして」

ハーピー「そりゃもう、男と女がぬっぷぬっぷ」

男「その卑猥なジェスチャーやめてください……」
184: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/01(日) 23:21:31 ID:AqfhILqo
ハーピー「ぶーぶー……あ、忘れないうちに」ガサゴソ

ハーピー「きゅうりょうめいさいー!てーてれーれてれれれーでんどん!」

男「あえてドラえもん外してきましたね」

ハーピー「ふふーん。あ、でね、来月からの生活費、家賃の半分+2万円で足りるかなぁ」

男「ええと。水光熱費と修繕積立費と管理費の半分、家賃の一部、プラス生活費……まぁ、このくらいかと」デンタクポチポチ

ハーピー「こんなに安くていいの?」

男「構いませんよ。それに、これから冬物とか買うのに、お金がいりますから」

ハーピー「だねぇ……申し訳ないけど、甘えさせてもらおうかな」

男「どうぞどうぞ……あ、ところで」

ハーピー「?」

男「でかける時も割と薄着ですけど、寒くないんですか?」
185: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/01(日) 23:23:11 ID:AqfhILqo
ハーピー「正直、寒いよ」

男「やっぱり」

ハーピー「羽のある部分はまだ空気の層で断熱できるし、体温も割と高めなんだけどさー」

ハーピー「人の部分はね。ちょっと寒い」

ハーピー「ヒートテックとかダウンベストとかジョギング用のぴっちりスパッツで対応してるけど、寒い」

ハーピー「耳とか特に寒い。でもさ、寒いからって厚着すると……」

男「すると?」

ハーピー「気流が乱れてうまく飛べないの」ドヤァ

男「それ言いたいだけでしょ」

ハーピー「ばれたか」

男「バレバレです」
186: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/01(日) 23:26:23 ID:AqfhILqo
TV『ナンデヤネンナホンマニモー...』『ナハハ、ナハハハ!!』デデーン

男「……」

ハーピー「……」

男「…………こたつに囚われてはや3時間経過しましたよハーピーさん」グデー

ハーピー「お風呂わいてるねー」ダラー

男「じゃんまけ先風呂でいかがでしょう」グデー

ハーピー「うらみっこなしの一発勝負ねー」ダラー

男「……」

ハーピー「あそれ、出さんと負けよ、じゃん・けん・ぽんっ!」グー

男「お先にどーぞ」パー

ハーピー「やっぱ3本勝負にしない?」

男「却下」

ハーピー「ぶー……お風呂場冷たくて、心臓麻痺でポックリ逝っちゃうかもー」チラッ

男「どうぞ」

ハーピー「ひどい!ぶーぶー」
194: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/08(日) 22:44:07 ID:5tTJvNZg
ハーピー「んもー……先に入ればいいんでしょー……よい、しょ、っと」

男「!!!」

ハーピー「?」

男「……あー、いや、なんでもないです」

ハーピー「……なんで顔赤いのかなぁ」

男「な・ん・で・も・な・い・で・す」

ハーピー「前かがみになった時に、ブラ見えちゃったんじゃないのかなー」

男「っていうかブラしてないじゃいですか!なんでノーブ……あ」

ハーピー「……見てないんだよね?」

男「み……見えちゃいました。が、あくまでも不可抗力です」

ハーピー「どうだった?」

男「どうだった、って言われても中の方は暗くて見えませんでした」

ハーピー「ふーん」
195: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/08(日) 22:45:50 ID:5tTJvNZg
男「成人女性が男性と一つ屋根の下なんですから、せめて身なりには気をつかってくださいよ!ブラとか!」

男「そ、その、目のやり場に困るので……これでも色々我慢しなきゃいけないものがあるので……」ゴニョゴニョ

ハーピー「えー、でもブラ紐が羽ばたく筋肉の動き阻害するからイヤ」

男「常時コタツの中じゃないですか!」

ハーピー「やー、これ一応胸の部分にパッド入ってて、ブラ不要のシャツなんだよねー」

男「分かりました、分かりましたから!胸元パタパタしないの!」

ハーピー「えー、でも見えてないんだよね?」

男「……み、見えてませんよ?」

ハーピー「……まぁ信用してあげ」

男「」ホッ

ハーピー「ないっ!」ガバッ

男「うわちょっと、ハーピーさん?!」ジタバタ
196: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/08(日) 22:47:51 ID:5tTJvNZg
ハーピー「私だけ見られたらずるいでしょ、男の乳首もみせてよー」

男「いやです!家主権限で断固拒否します!」

ハーピー「ぐへへへー、よいではないかよいではないか!」

男「あーれー、お代官様ご無体な……っていうか本当にやめてください!」

ハーピー「うんよし、ノリノリだから和姦。乙女の柔肌をタダで見れると思うなよ」

男「あ、ちょっと座椅子が倒れ……うわぁっ?!」

ガタバタドタン

男「いったぁ……」

ハーピー「ふっふーん、マウントとったもんねー、あそれ御開帳~」ペラ

男「!!」
197: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/08(日) 22:50:15 ID:5tTJvNZg
ハーピー「……」

男「……」

ハーピー「…………なんで、こんなに火傷だらけなの?」

男「だから、やめてって言ったじゃないですか……人に見せていいようなきれいな肌じゃないんです」

ハーピー「これなんか、明らかにタバコ押し付けた跡、だよね……」

男「ほら、見たなら戻してください」

ハーピー「や」

男「嫌、って言われても……」

ハーピー「……ちゃんと話して」

男「……」

ハーピー「聞きたい。男の口から、ちゃんと。何があったの?それは……答えを保留していることに、関係あるの?」


男「…………」

ハーピー「おとこ……」

男「分かりました、話しますから……とりあえず起き上がってもいいですか」
198: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/08(日) 22:52:40 ID:5tTJvNZg
男「楽しい話じゃないですけど……」

ハーピー「好きな人の過去を知りたいの。男の声で聞きたいの」

男「……」

男「子供の頃……小学校に上がる前くらいから、母親に虐待を受けていました」

男「それが虐待だと理解したのは、大分後になってからですけどね」

男「普段は優しい母親が……何かの拍子に豹変するんです」

男「真冬に裸でベランダに立たされたり、熱湯をかけられたり、単純に殴られたり蹴られたり……」

ハーピー「もしかして……背中のアイロンの跡も……」

男「……はい」
199: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/08(日) 22:55:17 ID:5tTJvNZg
ハーピー「痛む?」

男「最後に虐待されたのは14の時でしたから……10年以上前、ですか」

男「冬になると肌がつっぱって違和感を覚える程度で……もう、平気です」

ハーピー「そんな悲痛な声で言われても、信ぴょう性ない」

男「……本当に、痛みはないです」

男「辛かったのは……言葉のほう、ですね」

男「『いらない』『お前さえいなければ』『産まなきゃよかった』『死ねばいいのに』……」

男「一時期、本当に自殺を図ったこともあったんですよ、ほら、手首に傷残ってるでしょ?知ってました?こう、横に傷いれてもダメなんです」

ハーピー「……」

男「結局死ねずに、母親に見つかって……肋骨にヒビが入るまで、蹴られ続けました」

男「『死ぬなら事故にみせかけて死ね』ってなじなれながら」
200: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/08(日) 22:56:41 ID:5tTJvNZg
男「何より辛いのは、時折母親が優しくなることでしたね」

男「『ごめんね』『母さんが悪かった』『もうこんなことはしない』『仲直りしよう』」

男「でも結局……次の日にはまた、酒を飲みながら殴られました。顔を殴るとバレるので、主に太腿とか腹とか」

ハーピー「……で、お母さんは?」

男「死にました……酔って階段から落ちて、頭を強く打って」

ハーピー「…………」

男「頭を打った時はまだ、息があったんです」

男「『助けて……助けて……』って必死に口を動かしていました」

男「それを僕はただ……見ていただけで、何もしませんでした」

男「彼女が死んだのは多分……僕のせいでしょう。1時間近く、息があったのですから」

男「必死に電話台のほうへ、這って行こうとしていました」

男「それがなぜか滑稽で、笑っていたのを覚えています」

ハーピー「…………」
201: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/08(日) 23:02:23 ID:5tTJvNZg
男「何度も何度も『もうしないから』って言って……何度も何度も裏切られて」

男「母親が死んで、親戚に引き取られた後も色々と。母の遺産がいつのまにかすっからかんだったり」

男「他人は信用しないほうがいい。どうせ裏切られて、自分が傷つくだけです」

男「なら最初から信用しないで生きる。そうやって10年以上、表面上の付き合いだけで生きてきたら、こんな人間になりました」

ハーピー「ねぇ、男」

男「はい」

ハーピー「もしかして今も……裏切られるから最初から信用しない、って考えてる?」

男「ええ」

ハーピー「私のことも……信じられない?いつか裏切ると思ってる?」

男「……はい」

ハーピー「……そか」

男「……」

ハーピー「まぁそりゃ、人なんか信じられないまんま、暗くてジメジメしてカビが生えてきのこも出来ちゃうような青春をしてたらさー」

ハーピー「こぉんな、ひねくれものの、皮肉屋の、諦めの早い、対人スキルの欠けた奴になっちゃうのもしかたない」

男「ひどい」
202: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/08(日) 23:10:07 ID:5tTJvNZg
ハーピー「でも私は、そんな男が好き」

男「……」ハァ

男「……ごめん、今はまだ、誰かと付き合う気にはなれない」

ハーピー「ぶー」

男「でも、ハーピーさんのことは、嫌いじゃない。可愛いし、気になる」

ハーピー「でも、付き合えないんでしょ……生殺しだ……」

男「ごめん。でもいつか……」

ハーピー「いつか?!いつかっていつ!?何年何月何日何時何分何秒地球が何回回った時!?」グニー

男「いひゃいいひゃい!ほっへはひっはらはひへ!!」
203: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/08(日) 23:20:53 ID:5tTJvNZg
ハーピー「ねぇ男、知ってる?人間の細胞が全部入れ替わるのに、6年かかるんだって」

ハーピー「最後の虐待が10年前だとして、もう男は、その時の男とは別のもの」

ハーピー「今は難しいかもしれないけど、でも、過去をひきずってほしくない」

男「ハーピーさん……」

ハーピー「つまり……うんその……まぁ、なんていうか、よくわからなくなってきたからお風呂入る」

男「はは……ごゆっくりどうぞ」

ハーピー「ごめんね男、見せたくないもの、無理矢理見ちゃって。でも、うん、見てよかった。モヤモヤしなくていい」
204: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/08(日) 23:27:52 ID:5tTJvNZg
男「……ハーピーさん」

ハーピー「なにー」

男「この部屋に、これからもいてくれますか?」

ハーピー「……」

男「……」

ハーピー「私は都合のいい女、ってこと?」

男「い、いえいえいえ!決してそんなことはないんですがその……いなくなってほしくないな、って」

ハーピー「ふふーん、ちょっとうれしいかも。初めて私が必要って言ってくれた」

男「いえ、そこまでは言ってない……」

ハーピー「お願いされたら仕方ない、この部屋でコタツムリして冬を越す。さぁ男、私のためにお茶をいれておくれー」

男「だからそこまで言ってませんって……っていうかそれただの召使」
205: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/08(日) 23:32:11 ID:5tTJvNZg
男「ほら、じゃんまけした鳥はさっさとお風呂入ってください。後つっかえてるんですから」

ハーピー「あ、じゃあ一緒に入ろう」

男「……そうですね、たまにはいいかもしれませんね」

ハーピー「ひゃい?!あ、え、本気!?あ、いえその、いやじゃないけどここここここ心の準備がまだ!」ボッ

男「冗談です」

ハーピー「ぶー」
206: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/08(日) 23:45:14 ID:5tTJvNZg
────翌朝

男「おふぁようございますー」ファー

ハーピー「お、おはよう」ササッ

男「?」

ハーピー「ご、ごめん、ちょっと目が腫れぼったくて……」

男「だ、大丈夫ですか!?病気ですか?えっと、人間用の家庭の医学でいけますか?もしかして文鳥とかそっち系の医療サイトのほうがいいですか?」

ハーピー「落ち着いてよ男、ちょっと昨日、部屋で泣いちゃって、ほら、一応フラレ女だから」

男「あ、あー……はい」

ハーピー「平気平気。さ、ご飯食べよ。確か今日から出張だっけ?」

男「すいません、青森支店の社内監査に駆り出されまして……戻りは金曜になりますね」
207: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/08(日) 23:52:12 ID:5tTJvNZg
男「じゃあ、いってきます。僕がいないから、って夜更かししすぎないこと。コタツで寝ないこと。戸締まりはしっかり。帰る時は家の前で電話しますから、それまで開けないこと」

ハーピー「分かってますよーだ。いってらっしゃい。おみやげ、ぜひぜひ日本酒で」

男「品を指定した時点で、それはおみやげじゃなくてお使いです。でもまぁ、一人と一羽で晩酌しましょうか」

ハーピー「ん。あ、男、ちょっと」サワッ

男「な、なんですかハーピーさん顔近づけないでくださいよ……」

ハーピー「んー、ほいっと、剃り残し発見」プチンッ

男「……びっくりさせないでくださいよ」

ハーピー「んー?ふふーん、キスされちゃうかもって思った?ちょっと残念?」

男「…………ええ、まぁ、前科がありますから」ポリポリ

ハーピー「照れちゃって可愛いなぁもう……隙あり!」チュ

男「!!!!」

ハーピー「わ、私もそろそろバイトだ、じゃあ男!いってらっしゃい!!」パタパタパタパタ
223: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/14(土) 20:07:06 ID:wAGS9QSY
水曜日19:00@カイト・デリバリー・サービス 事務所

社長「おかえりハーちゃん。ハーちゃん来てくれて本当に助かってるわー。商売繁盛増収増益、ハーちゃん指名で集荷依頼も来るようになったしねぇ」

ハーピー「えー、その依頼の半分は珍しいもの見たさじゃないですかー……珍獣扱いしすぎると、鳥類愛護団体がうるさいですよ?」

社長「相変わらず鳥と人のいいとこどりねぇ……」

ハーピー「そいじゃあ、失礼しまーっす」

社長「あーそうだ、ハーちゃん明日の夜、暇?」

ハーピー「ちょう忙しいです」

社長「あらそうなの?」

ハーピー「コタツの中で一人さびしく湯豆腐しながら借りてきたDVD見るので」

社長「あら残念。明日の夜、駅前の居酒屋であなたの歓迎会やろうかと思ってたのに。鶏料理が絶品なんだけど」

ハーピー「ちょう暇です。あまりに暇なのでコタツの中で一人さびしく湯豆腐しながら借りてきたDVD見ようかと思ってたところなんですよー」

社長「てきとうねぇ……あ」

ハーピー「まだなにかー?」

社長「前から聞きたかったのだけど、あなた鶏食べて大丈夫なの?」
224: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/14(土) 20:08:46 ID:wAGS9QSY

ハーピー「それはどういう……」

社長「鳥が鳥食べたら共食いじゃないのかしら?」

ハーピー「その理屈だと、マグロがイワシ食べたら共食いですよ社長」

ハーピー「見てくださいこの美脚の踵に燦然と輝く蹴爪、この力強い翼に備わった鋭い鉤爪。つまり猛禽なので……つまりラブ鶏肉。鳥よしのハツとか!」

社長「じゃあ砂肝もあるの?」

ハーピー「その部分は人間なので、普通に胃で消化します」

社長「デタラメな生態ねぇ……じゃ、引き止めて悪かったわ、明日もよろしくねー」

ハーピー「はい、失礼しまーす」タイムカードガチャン
225: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/14(土) 20:10:59 ID:wAGS9QSY
ハーピー「ただいまぁー」

ハーピー「『おかえりなさいハーピーさん、食事にします?お風呂?それとも……ぼ・く?』」

ハーピー「いやーんそんな男ったら大胆なんだから、玄関でなんてー」クネクネ

ハーピー「……」

ハーピー「あまりの虚しさに自分でも涙が出そう」ハァ

ハーピー「……あ!ちょっと炊飯器のタイマー入ってないじゃん今日の当番はお……とこだから、そりゃスイッチ入ってないよねー」ハァ

ハーピー「サンマの缶詰温めてビールでいいよもぅ……レッツお笑い番組ー」

TV『今日は通常の番組内容を変更して、特番を────』プツンッ

ハーピー「あああ……もう、ついてない……」

ハーピー「ここでねこう、男から電話が、『出張が早く終わったから帰るよ、一刻も早くハーピーさんに会いたくて』だ、なーんてね、ないかなー』

ハーピー「ないっ!悲しいことにないっ!!」グビッ
226: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/14(土) 20:12:00 ID:wAGS9QSY
同時刻、駅前ビジネスホテル

男「……あ、ご飯のタイマー……」

男「大丈夫だよね、ハーピーさんだって一応は社会人なんだし、ちゃんとご飯作ってるよね」

男「……一応、確認だけしておこうかな」

ポチポチポチ、prrrr...

ハーピー『はーい!はいはいはい!どうしたの男?もしかして出張早くおわって帰ってくる?』

男「いや、まさかハーピーさん、ご飯のスイッチ入れ忘れたりしてないよねー、って確認」

ハーピー『ぶー。そりゃ私だって、ほら、うん、忘れてたから今ひとり晩酌中ー』

男「……まったく。お酒の飲み過ぎには注意してくださいね」

ハーピー『男は何してるの?』

男「……ビールとナッツでひとり晩酌中」グビリ

ハーピー『一緒じゃん』

男「奇遇ですね」
227: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/14(土) 20:13:20 ID:wAGS9QSY
ハーピー『だねぇ……じゃあこのままつながっていられる?電話代大丈夫かな?』

男「定額電話し放題なんで、大丈夫ですよ」

ハーピー『ふへへー……お電話デートだね』

男「んぐふっ?!何言い出すんですかいきなり!」

ハーピー『かわいいなぁ、もう……私もね、男から電話こないかなー、って思ってたところ。以心伝心?』

男「ハーピーさんの行動パターンはお見通し、といって欲しいです」

ハーピー『それはそれで嬉しい』

男「まぁ、声だけでも聞けて嬉しいですよ」

ハーピー『そっか、うん、私もうれしい。あ、明日ね、職場の歓迎会なんだ、一応1ヶ月もったら、ってのがルールみたい』

男「あー……分からないでもないです。前にウチの会社で、歓迎会した翌日にバックレた新人が……」

ハーピー『それは何か別の理由があったんじゃ……ん、まぁいいけど』

男「じゃあ、明日は楽しんでください。飲み過ぎないように」

ハーピー『酔ってお持ち帰りされちゃったらどうしよー』

男「……それは、い、いいんじゃないですか別に」
228: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/14(土) 20:15:04 ID:wAGS9QSY
ハーピー『いいのかな、本当にー』

男「好きにどうぞ」

ハーピー『ぶー』

男「……やっぱり、ちょっと嫌です」

ハーピー『え、やっぱり?仕方ないなぁ』

男「見知らぬ男を家主のいない間に引っ張り込まれるのはさすがにちょっと……」

ハーピー『ぶー!そっち!?そっちの心配なの!?っていうか私誘う前提!?』

男「ごめんごめん、冗談です」

ハーピー『冗談でも言っていいことと悪いことがあると思うんですけどー』

男「ごめんなさい。でも、楽しんできてくださいね、それは本気です。あと飲んだら飛ばない。飛ぶなら飲まない」

ハーピー『はぁい……』
229: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/14(土) 20:17:14 ID:wAGS9QSY
男「あと」

ハーピー『んー?』

男「イヤならちゃんと断ってくださいね。その、ほ、ホテル誘われたりとか、セクハラとか」

ハーピー『社長が女性だし、そこは大丈夫だと思うけどー……うん、へへ』

男「なんです?」

ハーピー『心配?心配?心配なら早く帰ってきて駅前まで迎えに来たらどう?』

男「無理です」

ハーピー『分かってるけど、即答されるとそれはそれでむかつく』

男「金曜日は早めに帰りますから。一緒にどこかご飯食べに行きましょう」

ハーピー『それより、何か作るよ。おうちごはんwithお土産の大吟醸』

男「さらっとお土産のレベルあげないでください……美味しい地酒、支店の人にリサーチしてるんでお待ちください」

ハーピー『へへへ、男、大好き』

男「はいはい、ありがとうございます」

ハーピー『ぶー、返事がおざなりー』
230: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/14(土) 20:18:32 ID:wAGS9QSY
男『そういう本音は、口にしすぎると価値がうすれますよ?』

ハーピー「定期的に言っておかないと、空気中の男大好き濃度が薄れるので」

男『なにそれちょっとキモいです』

ハーピー「ひどーい」ゴロン

ハーピー「あ、男、空見た?ホテルの窓から見える?」

男『なんですかもう……あ、おー見事な満月ですね』

ハーピー「んふー……同じ月を見てるね」

男『はぁ……』

ハーピー「感動うすーい。声を聞きながら、同じ風景を見ながら、おんなじことしてるよ。私はけっこう感動っていうか、嬉しい」

男『あー……ちょっとだけ分かるかもしれません』

ハーピー「ぶー……ちょっとだけー?」

男『でも、同じ月を見てる、ですか。なんかロマンティックですね』

ハーピー「ですよねですよねー」
231: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/14(土) 20:22:44 ID:wAGS9QSY
ハーピー「ありゃ、お酒が……もう1本出そうかなぁ」

男『飲み過ぎ禁止。僕は明、朝が早いのでこれでおしまい。シャワー浴びて寝ます』

ハーピー「うん、じゃあ、おやす……あ」

ハーピー「ねぇ……お土産、別にいらないから。男がちゃんと帰ってきたら、それでいいからね?」

男『ありがとうございます……あ、そうだハーピーさん。僕からも言っておくことが』

ハーピー「なにー?おやつは冷蔵庫の中にあるよ系?」

男『残念ながら違います』

ハーピー「なになにー、もったいぶらずに聞かせてよ」

男『……月が綺麗ですね』

ハーピー「うん、綺麗だね、ってそれー?じゃあ帰ってきたら、一緒にお月見しよ!日本酒、湯豆腐、コタツでお月見!」

男『……うん、そっか、知らないならいいです。お月見楽しみにしてます、おやすみなさい』

ハーピー「うん、おやすみー」
232: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/14(土) 20:25:10 ID:wAGS9QSY
翌朝7:27@男宅

ハーピー「男ー!なんで起こしてくれなかったのよー!そこはモーニングコールでしょう、もー!」

TV『今日の星占い!』

ハーピー「ありゃ、もうこんな時間?!えーと携帯携帯っと……」

ハーピー「鍵持った、ガスの元栓オッケー、窓の施錠確認」

TV『今日一番運が悪いのは牡羊座のあなた!大事なものを無くさないように気をつけて、ラッキーアイテムは白のワイシャツ!それじゃあ今日もいってr』プツン

ハーピー「最悪ぅ……あ、そうだ」



ハーピー「ラッキーアイテムは白のワイシャツ……」

ハーピー「洗濯してない男のワイシャツ……これも一応ラッキーアイテムだよね」

ハーピー「……」クンカクンカクンカクンカ

ハーピー「うし!男エキス吸入完了!いってきまーす!!」
245: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/16(月) 23:48:43 ID:01XcUhXM
木曜日 15:30 山道

男「あーあ、雪降りだしちゃったよ……」ギュッコ、ギュッコ

男「一応このレンタカー、スタッドレスだって言ってたから大丈夫だとは思うけど」

男「……しかし部長も人が悪いよなー、こんな日に山の中の現場に陣中見舞いにいけだなんて」

男「……って、くさっても仕方ないか」

男「……」

男「でもまぁ、直帰していい、って話だし、目星つけた造り酒屋に寄ってみるか。試飲できないのが残念だけど」

男「あーもう、雪の山道なんか走らせないでく」

ギャギャギャギャギャギャッ


男「れ」



ガシャンッ!!
246: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/16(月) 23:49:45 ID:01XcUhXM
同日 17:00 カイト・デリバリー・サービス 事務所

ハーピー「社長!配達終了!ただいま鶏肉もどりました!」

社長「ハーちゃん、変な単語まじったわよ。ほかのライダーもあと少しで戻るから、伝票整理おねがい」

ハーピー「アイ、マム!!」ビシッ



ピッ

ハーピー「あれ……?お守りが……」

社長「あらー、どうしたの?」

ハーピー「あ、いや、同居人がくれた安全祈願のお守りなんですけど、首からぶら下げる紐が……」

社長「あらやだ不吉じゃない」

ハーピー「そ、そういう事言わないでください!でも、一応、ちょっとだけ、電話してもいいですか?」

社長「そのお守りくれた彼氏に?良いわよー」

ハーピー「かかか彼氏じゃないです」

社長「あら、じゃあ彼女?それとも雌雄同体?まさかプラナリアみたいに無性生殖とか?」

ハーピー「いやまぁ確かに同居人の性別は雄ですが……」
247: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/16(月) 23:56:20 ID:01XcUhXM
prrrrr...

ハーピー「!?」

prrrrr...

ハーピー「……は、はい、ハーピーですが」

ハーピー『……』

ハーピー『……やめてください、イタズラでも警察の名前を詐称したら……え?』

ハーピー『……だってそんなっ……そんな……うそ』

ハーピー『……』

ピ

社長「ハーちゃん?」

ハーピー「ごめんなさい、社長……歓迎会、出られなくなっちゃいました」
248: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/17(火) 00:09:34 ID:DLO0H.MQ
ハーピー「男が、事故にあって……」

ハーピー「カーブ曲がり損ねた対向車と衝突だって。崖の下に車ごと落ちた……って」

社長「……」

ハーピー「ど、どうしよう……わた、わたしっ、わた……っ」ヒック

社長「……落ち着いて。深呼吸して。かかってきた番号教えて」ガサゴソ

ハーピー「……こ、これ」

社長「よし。今私の手持ちが10万ある。これ使って今すぐ青森いけ。新幹線乗ったら私に連絡しな。向こうで警察と合流できるように手配してあげる」

ハーピー「……で、でも、行っても何もできない……」

社長「うるさい知るか!いいから行ってこい、このアホウドリ!!まだ何もわかっちゃいないけど、ここでグズグズ待ってても仕方ないんだよ!」

社長「一旦タクシー拾って家に帰って、着替えと防寒着を持ってマンションの前で待ってろ。カオルを回しておく。ケツに乗せてもらって駅まで行け。いいな」
249: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/17(火) 00:15:32 ID:DLO0H.MQ
…………

……

『あんたなんか産まなきゃよかった!』

『死ね!死んで私に詫びろ!』

『私は男が好き』

『お前のせいで!このっ!このぉっ!!』

『私、男のこと……好きなの』

『ごめんね、ごめんね、母さんもうこんなことしないから……』

『おかえり、男』

『ただいまぁ、あー疲れたわぁ……あら、どうしたのおとこ?なんで泣いてるの?さみしかった?』

『おとこ……おきて……』

『おとこ……』
250: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/17(火) 00:26:29 ID:DLO0H.MQ
男「う……あ、が」

男「なんだ……なんで……いっ」

男「あああああああああああああっ!!!!!」

男「なん、いだいっ!いだいいだいいだいいだいっ!!」

男「……おちつけ、おちつ……ふぅっ、ふぅっ、ふうっ、ううう」

男「うああああああっ!!!」

男「ちくしょう、なんだよこれ、なんで……」

男「……」

男「…………じこ」

男「そうだじっ、ぎ、ぎっ、ごっ、かひっ」

男「車の中、なのか?痛い、脚、なんだこれ、挟まってるのか……?」

男「フロントガラスは蜘蛛の巣だし……まわりは……まっくら……」

男「電話、そうだ携帯……くそ、見えやしない……」

男「誰か……死にたくない……誰か……ハーピーさん……」
251: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/17(火) 00:39:17 ID:DLO0H.MQ
ガイド音声『おかけになった電話は、現在電波の通じない場所におられるか、電源が切られています。おかけになった────』

プツッ

ハーピー「……電池、切れないようにしないと。いつ……男からかかってくるか分からないもんね……」

ハーピー(神様お願いです。男を助けて下さい。私は地獄に墜ちてもいい。羽がもげたっていい。だからお願いです、どうか神様……)

ハーピー「……」

ハーピー「『今日の牡羊座、運勢は最悪。大事なものをなくさないように気をつけて』」

ハーピー「ラッキーアイテムは……白のワイシャツ」ギュ

ハーピー「持って来たけど……大丈夫、かなぁ?」

ハーピー(大丈夫。大丈夫。大丈夫。大丈夫大丈夫大丈夫。まずは私が信じること。大丈夫、絶対ぜったい、大丈夫なんだから)


案内放送『皆様、東北新幹線をご利用いただき、誠にありがとうございます。まもなく、八戸、八戸に停車いたします────』s
252: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/17(火) 00:45:25 ID:DLO0H.MQ

ハーピー「社長ですか?今新青森駅……え、出たところに出迎え?」

???「あー、あなたがハーピーさん?」

ハーピー「はい、え?あ、ちょっと待って……合流できたみたいです!」プチッ

???「山岳救助隊の、センバです。サウザンドウェーブで、千波」

ハーピー「……いぬみみ?」

千波「その言い方したら、あんただってとりはねでしょうが」

ハーピー「……ごめん。よろしくおねがいします」

千波「んー。とりあえず、警察の近くに宿とったから。寒くない?」

ハーピー「寒いけど、平気」
253: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/17(火) 00:56:55 ID:DLO0H.MQ
────ビジネスホテル@青森

千波「んじゃ、今分かってることだけ、とりあえずで伝えておくわね」

千波「事故が起きたのは今日の午後3時すぎ。無理に追い越しかけようとした車が対向車線に飛び出して、男さんの乗るレンタカーと衝突」

千波「運悪くオフセット衝突で、男さんのレンタカーはガードレールを突き破って崖……ってほどでもないけど斜面を転落」

千波「連絡を受けた警察が現場についた頃には……この大雪の中で日没間近」

千波「救助は明日の朝から始まる」

ハーピー「……生きてるよね?」

千波「それこそ、神のみぞ知る、ってやつだね」

ハーピー「千波さん。ひとつお願いが」

千波「却下。あんたが救助隊に加わったところで、何もできないし二重遭難がオチ」

ハーピー「……でも」

千波「それより、風呂に入ってしっかり体を温めて寝る。これが一番大事なこと。明日のためにね」

ハーピー「……はい」
254: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/17(火) 01:07:04 ID:DLO0H.MQ
ハーピー「話は変わるけど、千波さんは……その、種族的には……」

千波「ばあさんがロシア。あとはスイス人と日本人。血の元はキキーモラ……らしいけど」

ハーピー「あー……ロシア」

千波「そ。でも何を間違えたのかセントバーナードの耳と尻尾と嗅覚備えた、ぽっちゃり女の出来上がり」

ハーピー「いや、安定感があるというか安産型のおしりというか……」

千波「それ褒めてる?まぁいいや。しっかりと働き者の性質だけ受け継いで、今は市内の居酒屋で働きながらボランティアの山岳救助隊してる」

ハーピー「その、山岳救助隊してる千波さんから見て、男は?」

千波「……正直に言えば、厳しいよ。今日は零下まで気温下がるし、ケガの具合や出血の有無によっちゃ、だめかもね」

ハーピー「……」

千波「ごめん……本当なら夜間行軍してでも助けるべきなのかもしれないけどさ……」

千波「自分の命が守れない奴が他人を守れたりはしない。そう考えてるプロたちが、今日は危ない、って言ってる」
255: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/17(火) 01:11:58 ID:DLO0H.MQ
ハーピー「……分かった。勝負は明日。男の運の良さを祈るだけしかできないんだね」

千波「……その、男さんは、運は良さそう?」

ハーピー「……あー……どうかな。子供の頃はすごく運が悪かったみたい」

千波「じゃあそろそろ、反動でラッキーが舞い降りて欲しいもんだ」

ハーピー「そうだね……」

千波「よし、もう寝ろ!明日は早いよ。5時に迎えにくる」

ハーピー「う……うん」

千波「早寝早起きは苦手、って顔だね。少しだけお酒を飲むのもいいと思う」

ハーピー「そんな気分じゃ……ないかな」

千波「じゃあ私は家に帰る。また明日」

ハーピー「うん。ありがとう」
256: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/17(火) 01:17:40 ID:DLO0H.MQ
…………

……

男「さむい……息白いや……」

男「いま、何時だ……ごほっ」

男「助手席に……かばんとコート……あったはずなんだけど……」

男「脚……くそ、感覚ないや……」

男「死ぬのかな……死にたくないなぁ」

男「ざまぁないなぁ……ハーピーさんに『ここにいてくれ』なんて言いながら、ハーピーさんを残して死ぬのか……」

男「……」

男「……それは、いやだなぁ」

男「……」

男「…………もう一度会って、そしたら言わなきゃ」

男「またせてごめん……大好きだ……」


男「大好きだ……ハーピーさん……」
262: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/21(土) 23:17:51 ID:G0L.Ae66
ハーピー「『千波さん、見つからない。3往復目にはいる』」

千波『はいよ。一度戻れなんて言わないから、好きなだけ飛んで。こっちは……そうだね、捜索予定範囲の4割は稼いだ、ってところかな』

ハーピー「『了解……定時連絡を終わる』」ガガガッ

ハーピー「っとぉ!!風の向きが変わる……っ!」

ビュオオオオオオオッ

ハーピー「グレーのコンパクトカー、グレーのコンパクトカー、グレーの……」
263: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/21(土) 23:19:47 ID:G0L.Ae66
金曜日 6:40 山岳救助隊 事務所

千波「……そんな事、許可できるわけないでしょう」

ハーピー「じゃあ独りで飛ぶ。後で捜索する相手が一人増えるよ?」

千波「自殺志願者まで探す気にはならないね。雪解けの頃、カチンコチンのミイラが1体見つかるだけさ」

ハーピー「……それでも、私も探したい」

千波「こんな視界ゼロの吹雪の中じゃ、いくらあんたの目がよくたって……」

ハーピー「でも!……でも……」

千波「私があんたの立場だったら、居てもたってもいられないだろうね。でも、危険すぎて、あんたを連れてはいけないよ」

ハーピー「……分かってる。だから上から探す。この地形なら、V字の谷に沿って風が吹き上がって上昇気流が出来る。翼が凍りついて重くなるまでなら、なんとか飛べると思う」

千波「……今は、人の命がかかってる。男さんの命も、私達救助隊の命も、だ。私情で動いてる場合じゃないんだ」



ハーピー「私情の何がいけないの?私は愛してる人のそばにいたいの。飛んでいって、温めてあげたいの!だからっ……だからお願い……します……」ペコリ
264: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/21(土) 23:21:44 ID:G0L.Ae66
千波「……探す目標はグレーのコンパクトカー。体勢が分からない。横転してるか逆さまか。雪の不自然な盛り上がりを探すしかない……もし、木にぶつかって止まってたら、ね」

千波「あとこれ、雪崩に巻き込まれた人を探す用のトランスポンダ。2つ持って行って。1つは常時身につけておく、あなたが遭難した時用。もう1つは、目星をつけたら投げ落として。それを目標に探す」

ハーピー「……それじゃあ」

千波「上空からの支援は欲しい。いくら山に慣れているとはいえ、ヘリも飛ばせない天候ってのはね」

千波「隊員をひとりつける。事故現場より標高の高いところから飛んで、この辺りを上から探して……」

ハーピー「分かった。絶対探す」

千波「一つだけ。あんたは死なないこと。無理だと思ったら道路に降りて、隊員にピックアップしてもらってここまで戻る」

ハーピー「ありがとう」

千波「いや、同好の徒っぽいから」

ハーピー「へ?」

千波「モーニング・グローリーの台詞でしょ?ドミニクへたれ攻め、いいよね」

ハーピー「えっ?」

千波「えっ?」
265: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/21(土) 23:23:40 ID:G0L.Ae66
…………

……

男「……」

男「…………」

男「…………さむいな。でも、かぜがなくなった……」

男「ああ、ゆきにかこまれた、のか……ふったなぁ……」



男「……ふぅ……ふぅ」

男「……なんのおと、だ?」

男「気のせい、かな……ああ、また……ねちゃだめ、だ……でも……さむ……」
266: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/21(土) 23:25:23 ID:G0L.Ae66
ハーピー「……いない、いない、いない」

ハーピー「グレー、グレー、ぐ……けほっ」

ハーピー「大分、羽根が重くなっちゃったな……寒いし……」

ハーピー「おとこぉぉぉぉっ!!へんじしろ、このぉ、ばかぁぁっ!!」



男「……ハーピーさんのこえが……」

男「……」

男「うああああああっ!!」

男「くそっ、くそっ!!くそぉっ!死にたくない、死にたくない、死にたくない!!」ガチャッ!ガチャッ!!

男「……」スゥ...

男「ハーピーさぁんっ!!はぁぁぴぃぃさぁぁん!!!!!!」
267: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/21(土) 23:28:11 ID:G0L.Ae66
────ぁぁん

ハーピー「……今の」

ハーピー「声、聞こえた気がする……けど……」

ハーピー(どうする?降りたら上昇するのに時間がかかる。しかも、雪の上を歩くのなんて無理……)

ハーピー(……って、決まってるか。信じる。私の持ってる鷹の目を)

ハーピー(……信じる。今のは、私を呼んでくれた男の声だって)

ハーピー「ええい、急降下、だぁっ!!」ゴォォッ!!
268: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/21(土) 23:33:23 ID:G0L.Ae66
ハーピー「……この辺り、この木のそばで動いたと思ったんだけど……」

ハーピー「……」

ハーピー「あの木の枝、折れてる……あそこも、あれも!全部斜め上から下に折れてる……じゃあ!」

ハーピー「やっぱこの辺りだ!おぉぉぉい!男ぉぉっ!!」

ハーピー「……あの雪だまり……」

ザッ

ハーピー「……あれ、金属の棒……アンテナ?」

ハーピー「!!!」

ハーピー「男!男!男!!お願い!!」ザッザッザッザッ!!



カツン

ハーピー「……グレーの塗装……車の窓ガラス……」
269: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/21(土) 23:36:00 ID:G0L.Ae66
カツン

男「……」

男「……こん、こん、こん、なんのおと?かぜのおと……」ゴホッ!ゴホッ!!

カツン...ガタッ!...ガチャッ

男「……こん、こん、こん、なんのおと?」







ハーピー「大好きな人に、会いに来た音」
270: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/21(土) 23:38:41 ID:G0L.Ae66
男「ああ、ハーピーさん……じゃあ、僕、いえに……」

ハーピー「ちがうよ、私が男に会いに来たの。助けに来たよ」

男「たすけに……?ああ、でも、あしが…てn」

ハーピー「!!」



ハーピー「『千波さん、聞こえる!?男を見つけた!でも……足が……足が歪んだボディに挟まれて身動き取れない!』」

千波『わかった。大体の場所は!?』

ハーピー「『事故現場より、街側。道路から100mは下に滑り落ちてる……目印は特に無い!トランスポンダを起動させたよ!!』」

千波『分かった。まずはメディカルチェックだ。呼吸、脈 、体温、その 外傷、とにかく教え  だ!いいかわ   な……」ガガガピー

ハーピー「『千波さん!?千波さん!?』」

ハーピー「……と、とにかく、男の様子を見ないと!!」
271: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/21(土) 23:46:50 ID:G0L.Ae66
ハーピー「男、しっかりして!どこか痛いところは?」

男「……ない、かな」

ハーピー「足は?!」

男「はじめはすごく痛かったけど……今は、平気」

ハーピー「……」

ハーピー「寒かったり、お腹へったりしてない?」

男「……正直、して、る」

ハーピー「待って……これ、アルミブランケット」ガサガサ

ハーピー「……一応、食べ物……チョコだけど……」

男「……ああ」ゴホッ

ハーピー「一欠片だけ、ね。シート、ゆっくりリクライニングさせるから。痛かったら言って」

男「ん……」

ハーピー「……」ギュ
273: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 07:03:23 ID:zsn/9S/I
男「……手、つめたいね」

ハーピー「ずっと飛んでたから。外、すごい吹雪」

男「だね……ごほっ」

ハーピー「大丈夫?まだ寒い?」

男「うん……なんか、ハーピーさんのかおみたらあんしんして、ねむく……」

ハーピー「……」

ハーピー「だ!だめだめだめ!それ寝たら死ぬよフラグだからダメ……っくしゅ!」

男「……でも、体の芯からさむくて、もう……」

ハーピー「男、だめ!起きて!おねが……い」

男「……」

ハーピー「お、とこ……?」

ハーピー「うそ……」

ハーピー「男!!」
274: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 07:10:41 ID:zsn/9S/I
男「……」スゥ...スゥ...

ハーピー「……まぎらわしい」ホッ

ハーピー「とはいえ、脈も弱いし息も辛そうだし……」オデコペトッ

ハーピー「すごい熱……」

ハーピー「え、えっと!千波さんが持たせてくれた荷物の中に何か……」

ガサゴソ

ハーピー「ないか。第一、私が持ち運べる量なんてたかが知れてるよね」

ハーピー「……」



…………

……
275: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 07:22:15 ID:zsn/9S/I
男「……ごほっ」

ハーピー「男!大丈夫!?雪溶かしてお水作ってあるよ、飲む?」

男「今……?」

ハーピー「お昼前。吹雪はやんだから、もうすぐ救助隊がくるよ」

男「…………あ、はーぴーさん」

ハーピー「……?」

男「……はじめてあったとき……家のベランダに落ちてきた時……天使だとおもったんだ……」

ハーピー「……ね、ねぇちょっとやめてよ」

男「あの日、あそこから飛び降りて死のうと思ってた……なぜだか分からないけど絶望して、なんだかそんな気分だったんだ……」

ハーピー「やめて、家に帰ろう?帰ったら好きなだけ聞くから」

男「かみさまが、死んだらだめだ、って言ってくれた気がして……おかしいよね、一度も信じたことなんかなかったのに」

ハーピー「そんなフラグまみれの言葉聞きたくない!」

男「ハーピーさん」
276: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 07:30:13 ID:zsn/9S/I
男「ぼくは……ハーピーさんのことが……」

男「……」

男「はーぴーさんのことなんか、なんとも思ってないんだ……」

ハーピー「……」グス

男「ただの同居人……ちょっと変わった、どうきょにん……」

ハーピー「お、男、何言って……?」

男「だから、ぼくが……いなくなったら……飛んでいけ……」



男「自由に……」



ハーピー「おとこ……男!!」
277: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 07:55:04 ID:zsn/9S/I
ハーピー「あ……アホかぁっ!!」

ハーピー「言いたいことだけ言って死ねると思うなよ!」グッ

ハーピー「いち、にぃ、さん、しぃ、ごっ!!」グッ!!グッ!!グッ!!グッ!!グッ!!

ハーピー「……これはカウントされません」チュ...フーッ、フーッ!

ハーピー「勝手に!死ぬな!この!唐変木の!朴念仁!!」

ハーピー「大好きなの!まだ男としたいこと!あるんだからっ!!」

ハーピー「……だから戻ってこい!戻ってきて!戻ってきて!お願い!お願い!!」

ハーピー「まだ、何も!してないんだから!デートも!エッチなことも!まだ男の卵だって産んでないっ!」

ハーピー「だから戻ってきて、男!お願い!大好きなの!」



男「……ごふ」



ハーピー「……おとこ」ホッ
278: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 08:09:56 ID:zsn/9S/I
ハーピー「……このままだと、あぶないよね」

ハーピー「……ごめん、ね。本当ならちゃんと、段階踏みたいんだけど……」プチプチプチ

男「……ごほっ……ぴーさん?」

ハーピー「ベタ、だね。ごめんね、肌見られたくないのは知ってるけど、緊急事態ってことで」シュルリ

ハーピー「……」ギュゥ

ハーピー「……ん」ガサゴソ

男「……な、に……?」

ハーピー「人肌あっため……あれ?鳥肌?ハピ肌?」

ハーピー「……とにかく、うん、そういうことで」

男「……そ、か」
279: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 08:22:20 ID:zsn/9S/I
ハーピー「お水、のも?」グビッ...チュ

男「……」コクン

ハーピー「……チョコも、ね」モグモグ

ハーピー「口、開けられそうかな……ん」チュ...

男「……」ムグ...ゴクン

ハーピー「……へんな気分になっちゃいそう」ギュ

ハーピー「男、まだ寒い?ごめんね、人肌以外はカイロくらいしかなくて……」ギューッ

男「……はぁぴぃさん」

ハーピー「ほら、手まわして、もっとくっつく」

ハーピー「……男、二人であの部屋、帰ろうよ」
280: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 08:35:42 ID:zsn/9S/I
…………

……

千波「いたぁ!!」

ハーピー「……」

千波「ああ、ちょっと!二人共生きてるの!?」ドンドンドン

ハーピー「平気。男も……生きてる」

千波「はいー、じゃあ非日常で情事にふけると気持ちいいのも分かるけど、とりあえず服着て」

ハーピー「割とそれどころじゃなかったんですが……」

千波「彼氏のほうは……なにー、ピロウトークもなしに眠ってるだけ、みたいだね。足は……と」

千波「……これ、痛がってた?」

ハーピー「最初は痛かったけど、今は平気だって……」

千波「ちょっとまずいかも、ね。このトレッキングポールで隙間を作ることができればいいけ、どっ!」

ギギギ

千波「……今、引き抜いて!!」

ハーピー「よい、しょぉっ!!」
281: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 09:05:08 ID:zsn/9S/I
…………

……
282: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 09:05:46 ID:zsn/9S/I
────月曜日@カイト・デリバリー・サービス事務所

ハーピー「お騒がせいたしました」

社長「いいよいいよ。その分働いてー」

ハーピー「それはもう。あ、これお土産の八戸銘菓『鶴子まんじゅう』と、借りたお金」

社長「あれ、利子は?4日間で20%」

ハーピー「うえ?!」

社長「冗談よ。ハーちゃんおかえり」ギュ

ハーピー「ありがとうございます」

社長「で、彼氏は?」

ハーピー「今、青森の病院に入院中です。っていうか彼氏じゃないです。同居人、ただの同居人」

ハーピー(……裸で密着したり口の中に舌入れたりしたけど)
284: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 09:14:55 ID:zsn/9S/I
────1ヶ月後

ハーピー「クーリスマスがことしもやってくるー♪独りきり、コンビニの、肉まんかじるっ♪」

社長「……何その虚しい歌、時給さげるわよ?」

ハーピー「それは勘弁してください社長、あ、これ伝票。これで今日は終わりですかね」

社長「かもねー」

ハーピー「んじゃあ時間まで伝票整理でも」

prrr...

社長「はい、カイト・デリバリー・サービスでございます」

社長「集荷でございますね。ありがとうございます、集荷先のご住所を……え?」チラ

社長「……」

社長「はぁ、はい、承知いたしました。市内、総合病院、屋上……でございますか、はぁ、ちょうどそういう所に適したライダーがおりますので、はい」

ハーピー「……うげ」

ガチャン

ハーピー「お仕事ですか?」

社長「正解」
285: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 09:33:41 ID:zsn/9S/I
ハーピー「ちょっと聞こえてきましたけど、病院の屋上なんて変なところに集荷ですね」

社長「いや、それは届け先。集荷先はここ」チョイチョイ

ハーピー「ここ?うちの事務所、ってことですか?」

社長「そ。ちょっと伝票書くから待っててね」サラサラサラ

ハーピー「……?」

社長「集荷先はここ、カイト・デリバリー・サービス事務所」

社長「荷届け先は聞こえた通り、市内総合病の屋上」

ハーピー「……はぁ。荷物は?」



社長「人語を解する大型の猛禽類」ペタン

ハーピー「……へ、私?」

社長「そ。ちなみに依頼主は……」

ハーピー「い、いってきます!!」ドタドタドタドタ

社長「おー、青春青春」
286: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 09:58:24 ID:zsn/9S/I
────市内総合病院屋上@夕方

バサバサバサバサッ

ハーピー「お、おまたせいたしました、カイト・デリバリー・サービス……です」

ハーピー「……」

ハーピー「あ、あの……荷物、お届けに参りました」

男「……久しぶり、ハーピーさん」

ハーピー「男っ!!」ダキッ

男「ただいま」ギュッ





ハーピー「おかえりー!!」
287: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 10:09:24 ID:zsn/9S/I
ハーピー「向こうの病院……退院したんだ」

男「うん。ギプス取れるにはもう少しかかるけど、あとはこっちでリハビリ。少し麻痺が残るかも、ってことだけど」

ハーピー「そっか……」

男「明日には家に帰れます。今日は一応、入院」

ハーピー「会社は?」

男「1回報告で出社しますが、きちんと出るのは年明けからです」

ハーピー「じゃあ、ウチでゆっくりできるね」

男「ですかね」

ハーピー「こたつ周りを片付けておかないと」

男「……だと思いました」
288: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 10:10:58 ID:zsn/9S/I
男「で、ハーピーさん……その」

ハーピー「は、はい」

男「……これ、受け取ってほしいんだけど」

ハーピー「なにこれ?指輪……にしてはぶ厚いしスカスカ」スポスポ

男「……」ポリポリ

ハーピー「?」

男「足輪、です。鷹匠が鷹につけるような奴」

ハーピー「ありがとー、どうしたの?」

男「……さ、察してほしいんですが」

ハーピー「へ?察してって……あ!」

男「……まぁ、そういうことです」

ハーピー「……うん、その、受け取っても、いいの?だって、どこにでも飛んでいけ、って……」

男「……そ、そんなこと、言いましたっけ?あの時は朦朧としていて、正直何を言ったか覚えていないので……」
289: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 10:25:45 ID:zsn/9S/I
男「じゃあその……飛んでいってもいいんですが、家に戻ってきてくれますか?」

ハーピー「うん」

男「あとその、一緒に暮らしてくれますか?」

ハーピー「今もそうでしょ」

男「ああいや、そうなんですけど……そうじゃなくてその」

ハーピー「ぶー……ちゃんと男の口から聞きたい」

男「……ああ、ええと」



男「ハーピーさんが好きです。結婚して、くれますか?」



ハーピー「お、おう、う、えーと、なんか階段を3段飛びに駆け上がってない?」

男「そういうつもりで足輪を渡したつもりなんですが……」

ハーピー「うん、じゃあその……」



ハーピー「はい、ふ、不束者ですが、よろしくおねがいします」
293: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 10:36:25 ID:zsn/9S/I
ハーピー「うん、ふへへ……」

男「はは、へ、へくしょっ!」

ハーピー「あ、うん、寒いよね、病室入る?」

男「あ、でもその前に……」ギュ

ハーピー「あ、うん、これはあれだよね、目、閉じたほうがいいよね……ん」スッ



prrrr...prrrr...



男「……どうぞ」

ハーピー「ごめん……あ、社長、はい、着荷しました。ええ……はい、じゃあ直帰します、うん、二人で。それじゃあ」

男「終わった?続きいい?」

ハーピー「ど、どうぞ」



チュ

                                                 終
294: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 12:17:22 ID:JogSamRg
スレ立った頃から追っかけてた
モン娘はやはり良いものだ

乙。
297: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 12:57:00 ID:jYvoh2lo
後日談は…
298: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 21:07:21 ID:zsn/9S/I
掌編を3つ投稿して本当に終わりにさせてください
299: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 21:08:46 ID:zsn/9S/I
『ハーピーさんの生い立ち編』



男「そういえば……ハーピーさんのご両親って」

ハーピー「んー……いるよー。木の股から生まれたわけじゃないし」

男「ですよ、ねー」

男「えっと、やっぱりギリシャ……?」

ハーピー「ううん、越谷!」

男「近っ!!え、だって、え!?うちから中目黒乗り換えで1本じゃないですか!」

ハーピー「あー……あー……うん、えーと、どこから話したらいいか……」

男「じゃあ最初から」

ハーピー「パパとママが、ギリシャはミノス島で出会ってー」

男「ごめん、そこはいらない」
300: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 21:12:33 ID:zsn/9S/I
ハーピー「ぶー……えーと、じゃあ、私ねー、子供の頃はサーカス団の一員だったのよ」

男「え?初耳ですけど!?」

ハーピー「話したことないからねー。あ、見世物扱いじゃないよ?」

ハーピー「まだショーに出してはもらえなかったけど、ジャグリングの練習はしてたよ。パパもママも団員だったからね。ほら」ヒョイヒョイヒョイ

男「おおー」

ハーピー「でも12の時かなー、事故でぽっくり逝っちゃってねー」

男「割と壮絶じゃないですかそれ……あれ?でもご両親は越谷……あ、あれ、お墓とかそういう……?」

ハーピー「最後までちゃんと聞く。それで、パパの旧友だった人が養子にしてくれたの。日本に来てはや14年。ちなみに遠野女子短大文学科卒」

男「……道理で日本語ペラペラだと思いましたよ。じゃあその、育ての親は健在なんですね」

ハーピー「そうだよー。ちなみに」

男「はい?」

ハーピー「彼氏が挨拶に来ないから、とてもピリピリしておられます」

男「こ、今度の土曜日にでも早速ご挨拶にいかせていただきます」
301: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 21:20:35 ID:zsn/9S/I
『もしも男のかわりにハーピーさんに死亡フラグが立ってたら、編』

多くの方々が推察されていたように
ところどころ入ってた事件の報道はハーピーさんが矢ーピーさんになる前フリだったのですが
何度考えても男が間に合わずレイプ目バッドエンドにしかならなかったので
今の方向になりました
供養目的でちょっといじって投下
302: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 21:22:03 ID:zsn/9S/I
────2月初旬

TV『……犯人は高校生3人組で、警察の取り調べに対して”受験のストレスでむしゃくしゃした』と意味不明な供述をしており』

男「あー……捕まりましたね、例のボウガン事件の犯人』

ハーピー「ありがちー」

男「ですねぇ……アナウンサーの言い方もトゲがあるような……」

ハーピー「だねぇ、あ、男、みかん取ってー」

男「はい。ああ、コタツでミカンは最高ですね」

ハーピー「だねぇ、あー……そういえばー」

男「どうしたんですか?」

ハーピー「今日、この件で事務所に警察来た」

男「え?!」

ハーピー「なんかねー……次の目標私だったんだって」

男「は?!」

ハーピー「勤務時間とか帰りのルートとか、色々な情報調べてたらしいよー」モグモグ

男「もぐもぐミカン食べてる場合じゃないでしょそれ!」
303: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 21:24:31 ID:zsn/9S/I
ハーピー「でもさー、一歩間違えれば危なかったよ」

男「そうですよね」

ハーピー「例えばさー」



prrr...

男「知らない番号だ……けど」

男「はい、男です」

社長『あの、私カイト・デリバリー・サービスの社長と申しますが……』

男「あ、いつもハーピーさんがお世話になっております」

社長『ハーちゃん……いえ、ハーピーさんはそちらに戻ってないですよね?!』

男「ええ、まだですが……」

社長『……実は、集荷が済んだ時点で来るはずの連絡がまだなくて』

男「え?」

社長『集荷に出たのは2時間も前なんですが……』

男「ちょっ、え、こ、こっちから携帯にかけてみます!」
304: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 21:25:18 ID:zsn/9S/I
…………

……

ハーピー「……う、ここ、は?」

高校生A「お、気づいたっぽいぜー?」

高校生B「んじゃ、早速やっちゃうか?」

高校生C「やー……まずは試し撃ちでしょ」

ハーピー「え?な、何これ?!」ガチャガチャ

高校生A「おねーさんさ、ハーピーだよね?俺たちさぁ、鳥撃つのに飽きちゃって、でも人撃ったらダメじゃん?でもおねーさんならさー……鳥部分ならオッケーでしょ」

ハーピー「一応、人権あるから傷害罪だよ?」

高校生C「大丈夫だよー?ボクの父親の権力で割ともみ消せるし」

高校生B「それでも警察駆け込めば、レイプされた画像が出回るよー?君って有名だからさ、バイト先の評判も下がるかもね」
305: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 21:25:56 ID:zsn/9S/I
ハーピー「私ひとり攫うのに、3人がかりで他人の権力ふりかざして脅さないとダメとか……情けないなぁ」

高校生A「はいはい、そういう煽りはいいから」カチッ

ビィンッ

ハーピー「!?!?!?」

ハーピー「ああああああっ?!」

高校生C「お、いい声。翔べなくなったら彼氏さんに捨てられちゃうかもね」

ハーピー「……う、うううっ」

高校生B「次俺なー、やっぱ左右対称がいいよねー」ビィン

ハーピー「ひ、ぎっ!」

高校生C「足も撃ったら、標本みたいになるかなー?」ビィン

ハーピー「!!」

高校生C「避けちゃだめじゃーん」ケラケラ
306: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 21:26:53 ID:zsn/9S/I
高校生B「でさー、そろそろ犯っちゃってもいい?」

高校生A「お前は猿かよ」

高校生B「さすがに鳩の穴は小さすぎるからなー」

高校生A「変態すぎるだろ……」

ハーピー「いた、い……なんで、わた、し……?」

高校生C「あんたみたいに亜人種で、しかも外国産だと法律的に微妙なところなんだよねー……」

ハーピー「いたいよ……おとこ、助けて……」

高校生A「こないよー、ここ、工事途中で放り出された廃ビルだし」

高校生B「だねー、色々な女の子と遊ぶのにちょうどいいんだよ」

高校生C「でー、犯るの?犯らないならアソコに撃ちこんでみたいんだけど」

ハーピー「…………ひっ!」
307: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 21:28:22 ID:zsn/9S/I
…………

……

prrr...prrr...タダイマ、デンパノトドカナイトコロニオラレルカ、デンゲンガ...

男「ハーピーさん、ハーピーさん……」タッタッタッ

男「いない、いつもの公園も、商店街もスーパーも……」

男「……ハーピーさん」

タッタッタッ

男「はぁぁぴぃぃさぁぁん!!」

通行人「なにあれ、撮影ー?」

通行人「うわ、はずー」



男「はぁぁぴぃぃさぁぁん!!!!!」
308: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 21:29:14 ID:zsn/9S/I
ハーピー「!!」

ハーピー「おとこぉぉっ!!助けて!男ぉっ!!!」

高校生C「来るわけないじゃん……んで、どうするの?早く次撃ちたいんだけど。至近距離から目とかどう?」

ハーピー「やだ、やだよ!助けて!助けて男!男!!」

高校生B「いいねー、でも先に味見させてくれよ」

高校生A「お前すぐ中出ししようとするのやめろよ、一周するまでは外にだしとけ」

ハーピー「いや……いやっ……い、ぎっ!!」

高校生C「だからぁ、助けなんかこないんd」

バキィッ!!



男「悪かったな、助けにきて」

ハーピー「!!」

高校生A「な、なんでここが……」

男「ハーピーさんの声が聞こえた気がしたから、人のいなさそうな場所片っ端から入ったんだよ……最後は勘だよ!」
309: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 21:31:05 ID:zsn/9S/I
高校生C「ご、ごめんなさいちょっとしたイタズラで……」

男「はぁ?……ちょっとしたイタズラで、ハーピーさんに傷をつけたのか」

高校生C「そ、それは……」

ツカツカツカツカ

男「坊主」ガシッ

高校生C「……っ!」

男「俺が惚れた女に手を出してなぁ……タダで済んでいいわきゃねぇんだよぉっ!!」バキッ

高校生C「……ぱ、パパに言いつけてや、ぎゃっ!」

男「知るか……ハーピーさんを傷物にした罰……受けてもらうぞ」パキポキ

……

…………

ハーピー「みーたーいーなー」ミカンモグモグ

男「僕の一人称が違うし、口調そんな荒くないし……」
310: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/22(日) 21:36:44 ID:zsn/9S/I

ハーピー「そんなわけで、もしかしたらハーピーじゃなくて矢ーピーになってたかもね」

男「うまく言ったつもりですかそれ……まぁでも」

ハーピー「?」

男「ハーピーさんが攫われたって犯人を……殴ったりはしないでしょうね」

ハーピー「えー、ぶー、恋人が貞操の危機!乙女なハーピー大ピンチ!なのに?」

男「殴るなんて生易しい。フライス盤使って、指の関節をひとつずつえぐります」

ハーピー「え?」

男「それから、グラインダで皮膚の突起部分をけずります。#80→#120→#320→#500で鏡面仕上げまで。最後はプレスで……」

ハーピー「す、ストップストップ!分かった!分かったからそのグロ表現すとーっぷ!」

男「まだ足の裏から鼓膜まで、死んだほうがマシなくらいの責め苦があるのに?」

ハーピー「あ、ありがたいけど、うん、未だ見ぬ犯人のために、誘拐されないように頑張る」

男「そうしてください、愛しいハーピーさん」
319: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 17:59:17 ID:JHm1rJZA
『ハーピーさんとはじめての温泉旅行編』

────春のある日の夕方@スーパーマーケット前

男「……」ペラ

ハーピー「おまたせー……って、何みてるの?」

男「んー、温泉ツアーのパンフレット」

ハーピー「温泉、好きだっけ?」

男「いや……行ったことがないんですよ、温泉も銭湯も」

ハーピー「あれ?部屋のお風呂にはあんなにも温泉の素が揃ってるのに?」

男「ほら、傷だらけでしょ?周りの好奇の視線がひどいので。学生時代もプールは特例免除でしたし」

ハーピー「そっかー」

男「そうです。じゃあ帰りましょうか」

ハーピー「半分持つよー」

男「いや、持てますから」

ハーピー「ぶーぶー、男が両手にスーパーの袋持ってたら、私はどうやって男と手をつなげばいいの?」

男「……じゃあこっち。軽いほう」

ハーピー「へへへー」ギュ
320: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 18:02:08 ID:JHm1rJZA
────数日後@自宅

ハーピー「ただいまー」

男「おかえりなさーい」

ハーピー「リハビリ頑張るねぇ……あ、ねぇ男、これなーんだ?」

男「なんですかそれ……何かのチケット?」

ハーピー「んー……次の3連休に旅行行く」

男「……急ですね。いってらっしゃい」

ハーピー「何言ってるの!男と私の二人旅!この前、温泉のパンフ見てたから探してみた」

男「え?!」

ハーピー「はいこれー!亜人種用浴衣完備!海辺に建ってる旅館の離れ、しかも専用露天風呂つき」

ハーピー「プラス、マヒに効く泉質!さらに、近くにパラグライダーが体験できる所もあるの。どう?どう?」

男「……ありがとうございます。でもその、お金とか……」

ハーピー「そういうことは言わないの!そういうこと言う男にはぁ……こう!」チュ

男「……ん」チュ
321: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 18:04:41 ID:JHm1rJZA
男「……」ザパーン

ハーピー「お風呂けっこう広いねー。どう?どうこの浴衣?」パタパタ

男「似合ってます。どこの大和撫子かと思いました。こっから見える庭も綺麗ですね、後で散歩しませんか」

ハーピー「だねだね。あ、でも足……平気?」

男「平気ですって。心配性だなぁ、ハーピーさんは」ポフポフ

ハーピー「だって……うー」

男「僕もお風呂、見てこようかな」

ハーピー「混浴だよこ・ん・よ・く」(ハァト

男「おー、お風呂からも海見えるんですねー……あ、別々に入るに決まってるでしょ」

ハーピー「ぶーぶー」
322: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 18:06:45 ID:JHm1rJZA
男「いや、玉砂利のふみ心地がなかなか……あ、この花知ってます?」サクサク

ハーピー「えー……あー、花札の5月!」

男「あやめ、です。変な覚え方を……」

ハーピー「お父さん直伝だしねー」

男「あー……こいこいからバカラまでひと通りやりましたもんね、カード使うギャンブル」

ハーピー「そういえば、お父さんまた来いって言ってたよー」

男「……日本酒出てくるんでしょ?」

ハーピー「かなりの確率でね。美味しい焼き鳥を食べながら蹴爪について語り合おうって」

男「蹴爪フェチではないんですが……」

ハーピー「まぁ、お父さん動物園の猛禽担当だしねー」

男「ごほん、まぁ、それはそれとして……あやめの花言葉知ってます?」

ハーピー「んー……信頼とかそんな感じでしょ?」

男「『あなたを大切にします』ですよ」

ハーピー「え、うん……そ、そっか、ありがとー」ニコニコ
323: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 18:09:02 ID:JHm1rJZA
男「……」

ハーピー「へへへへー」ギューッ

男「うわ、ちょっと!もたれかかるの禁止です!」

ハーピー「だって、その、そういう意味、だよね……へへへ、嬉しい」チュ

男「こら、人の目があるところでキスしないの!」

ハーピー「いないもーん」ンチュー

男「と、とにかく禁止です!」グイー

ハーピー「ぶーぶー……あ、男、じゃあこの花は知ってる?」

男「さぁ……」

ハーピー「これはねー、イカリソウ。花言葉はー」



ハーピー「『君を離さない』だよー」ギューッ

男「うわ、バランス崩れる崩れる転ぶ転ぶ!」ワタワタワタ
324: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 18:13:47 ID:JHm1rJZA
……

男「すごい料理。食べきれるかな」

ハーピー「美味しいものは別腹の法則!海の幸満載!初ガツオにアジのなめろう!これは……カレイかな?」

男「ありがとうハーピーさん。つれてきてくれて」

ハーピー「へへー、まぁまぁ、まずは一献」

男「あ、どうもどうも……」トクトクトク

ハーピー「これも地酒だってさー、おかわり頼んじゃおうね」

男「飲み過ぎ禁止です。僕は後で湯船に日本酒を浮かべて月見酒するのでゆっくり飲みます」

ハーピー「なにそれずるい!」

男「ずるくないです」
325: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 18:15:34 ID:JHm1rJZA
男「あー、この鰹の血合いの時雨煮もホロホロで美味しい」

ハーピー「えー、ちょうだーい」

男「いいですよー……はい、あーん」

ハーピー「え、えぇ……ん、あ、あーーーん」

仲居「失礼いたします、メインの伊勢海老の陶板焼き、お持ちいたしましたけど……あらあら、仲のいい新婚さんですこと」

ハーピー「はひゃあ!?」

男「あ、お願いします。ほら、ハーピーさんあーん」

ハーピー「ひえ!?あ、あーむっ、あ、ん!ほんとだ美味しい!お酒進みそう!仲居さん、もう1本、人肌でお願いします!」

仲居「はい、お持ちいたしますね」

スゥーッ

ハーピー「……これなんて羞恥プレイ」カァァッ

男「えー、可愛いかったですよ」
326: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 18:16:38 ID:JHm1rJZA
ハーピー「あ、ありがと……う、うう」

男「人前でキスするのは良くて、あーんされてるところはだめなの?」

ハーピー「と、とにかくだめなの、うん、でも、美味しいのでこの時雨煮は没収」モグモグ

男「どうぞ」モグモグ

ハーピー「と、言いつつそれは最後の一欠ーっ!?」

男「ばれてましたか」

ハーピー「ばれいでか……ぶー」
327: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 18:19:15 ID:JHm1rJZA
ハーピー「最後の水菓子まで美味しくいただきましたー。ごちそうさまでした」

仲居「はい、ありがとうございます。お膳お下げいたしますね、明日の朝食ですが、こちらでお召し上がりですか?」

男「そう……ですね。8時にお願いします」

仲居「承知いたしました。お布団は続きの間に引いてありますので、こちらからお部屋にお邪魔することはございません。ごゆるりとお過ごしください」

パタン

男「……」

ハーピー「……」

男「じゃあその、お風呂先にもらっても大丈夫ですかね?」

ハーピー「うん、どうぞどうぞ」


カポーン...

男「……よ、っと」

男「新婚さん、か。どういう名前で予約取ったんだか……」ザバーッ

男「……」ワシワシワシワシ

男「…………」ゴシゴシゴシゴシ

男「……い、一応ここも」ゴシゴシゴシゴシ
328: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 18:20:25 ID:JHm1rJZA
ガラッ

ハーピー「男の背中を洗い隊!全1名ただいま推参!」

男「うわっ!な、なんですかハーピーさん!っていうかば、バスタオル巻いてくださいよ!」

ハーピー「えー、そういうのはルール違反です。ほら、タオル貸してー」

男「……」

ハーピー「何度見ても、広い背中だねぇ……はい、ごしごしごしっと」

男「あ、あの、ハーピーさん?」

ハーピー「だって、一向にキスから先に進む気配がないんだもーん。はい、おしまいっと」

男「あ、ありがとうございます。先、お湯につかりますね」

ハーピー「えー、私の髪の毛も洗ってよー。あと羽根もわしゃわしゃしてほしいし、背中もー」

男「は、はい」
329: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 18:22:15 ID:JHm1rJZA
男「痒いところはないですか?」ゴシゴシ

ハーピー「ちく 男「却下」 」

ハーピー「ぶー」

男「はい、言われた通り、背中と髪の毛と羽毛部分、洗いおわりっ!」ペチン

ハーピー「ひゃんっ!」

男「あー……すいませんつい。なんだか叩き心地がよさげなお尻だったので」

ハーピー「もう、好きなだけ触って撫でてくれてもいいよー?」

男「はいはい。僕は先に湯船浸かりますので、しっかり洗ってからどうぞ」

ハーピー「ぶー」
330: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 18:23:39 ID:JHm1rJZA
男「……」チャプ

男「……ふーっ」

ハーピー「どう?人生初温泉、初露天風呂は?」

男「……いたって、普通の野外にあるお風呂ですねぇ。でも、暑くなったら夜風にあたって体を冷ませるというのはいいかもしれません」

ハーピー「そかそか……あ、私も湯船入るけど、その前に」パタパタパタ

ハーピー「じゃじゃーん!月見酒セットー!」

男「そうそう。お盆に徳利におちょこが2つ……ふたつ?」

ハーピー「そりゃ私だって飲むもの。はーい、浮かべて浮かべてー……そーっと入る、と」チャプ

ハーピー「あー、男!タオルは湯船につけちゃいけません!こう、しぼって畳んで額にのせてこう!」

男「こ、こうですか?」ポフ

ハーピー「そう、そして体内の毒素を全て喉から外へ放り出すように……」



ハーピー「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ……ァ」

男「」
331: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 18:28:35 ID:JHm1rJZA
男「……」チビリ

ハーピー「……」チビリ

男「……」チャプ

ハーピー「あ、ねぇ」

男「なんですかハーピーさん」

ハーピー「I love you.ってなんて訳すか知ってる?」

男「普通に、愛してますじゃだめなんですか?」



ハーピー「『月が綺麗ですね』」


男「げほっ!?」

ハーピー「確か事故の前、電話でそう言ってくれたよね」

男「……おぼえてないなぁ」

ハーピー「こっち見る!」グイッ

男「いい、ましたね」

ハーピー「……ありがとう、男」
332: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 18:36:04 ID:JHm1rJZA
ハーピー「はーい、ちょっとお盆どけてー」プカー

男「?」

ハーピー「男」ザバッ

男「!!」

ハーピー「私、こんなだよ?鳥だよ?卵産むよ?そんな私でも……本当にいいの?」

男「ハーピーさんがいいんです。ハーピーさんじゃなきゃだめなんです」

ハーピー「う、うん……キャッ!」ダキッ

男「……その、お布団……くっつけてあるの、見ました?」

ハーピー「……うん。へへ、ふふーん、なんだ、ちゃんとそんな所までチェックしてるんじゃーん!」

男「だから、こっそり離しておいたんですけど、またくっつけてありましたね」

ハーピー「だって、私がくっつけたんだもん」

男「……はぁ。いいんですか?僕みたいな偏屈な人間が相手で」

ハーピー「男がいい……その、今日……が、いいな……ね?」
333: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 18:40:29 ID:JHm1rJZA
男「ハーピーさん……」

ハーピー「おとこ……んっ」チュ...



…………

……



男「あ、ゴム……」

ハーピー「今日はなくても平気」

男「でも……」

ハーピー「平気ったら平気ったら平気。それより、ね」

男「……」

ハーピー「こんな風にお腹見せるのは、食べられる時と服従する時だけ、だよ」

男「僕に?」

ハーピー「へへー……そ、男に……食べられちゃ……っ!ひぐっ!いっ!いった!いっ!!」ギュウウウッ
334: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 18:49:07 ID:JHm1rJZA
…………

……

男「」ボロッ

ハーピー「ご、ごめんつい必死でしがみついちゃった」

男「ええそりゃもう、蹴爪に鉤爪て …挙句最後は肩口に噛み付くし……いたたた」

ハーピー「……だって、声漏れちゃいそうになったから」

男「……さっき傷薬持ってきてくれた仲居さんのニヤニヤ顔が……」

ハーピー「ごめんね。でも、気持よくしてもらっちゃったもんねー……へへへー」

男「まぁ、たっぷり出してしまったのでおあいこということで」

ハーピー「う、うん……あ」

男「?」

ハーピー「たれてきちゃった」カァァッ

男「!!」カァァッ
335: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 18:57:53 ID:JHm1rJZA
男「ううう、傷口にすっごい染みるんですが……」チャポ

ハーピー「だーかーらー、ごめん、って。半身浴にすればいいのに」

男「や、でもこう……せっかく温泉来たのに」

ハーピー「んじゃ、あとで背中ペロペロしてあげる。殺菌作用があるよー?」

男「や、普通にマキロンと絆創膏でいいです……あ」

ハーピー「どしたん?」

男「流れ星が」

ハーピー「うっそ!見逃したー!」

男「ちなみに、流れ星にお願いするとしたら、何を?」

ハーピー「焼き鳥!焼き鳥!焼き鳥!」

男「そこは嘘でもいいから僕と幸せな家庭を……とか言って欲しいんですが」

ハーピー「それはさー……流れ星にお願いするまでもなく、自分の力でつくり上げるものでしょ、うん」
337: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 19:02:03 ID:JHm1rJZA
男「幸せな家庭を作りましょうね」

ハーピー「だねぇ。子供は3人くらい?」

男「僕は2人いれば十分かと思いますけど……」

ハーピー「それはお父さんの頑張り次第、かなー?」ホッペチュ

男「はいはい」ポムポム

…………

……
338: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 19:06:49 ID:JHm1rJZA
翌日

男「おおおおおおっ?!」

ハーピー「ひゃーっ!きんもちいーっ!!」

男「これが……ハーピーさんの世界……すごい……視界全部が空と大地だ……」

ハーピー「どう?男ーっ!楽しい!?」

男「たのしーいっ!!」

ハーピー「あ、そこー!上昇気流あるよー、せーの……それーっ!!」バサーッ

男「うわっ、もうあんな高くまで……」

インストラクター「タンデムのモーターセーリングじゃあそこまでは無理ですね」

インストラクター「どうです?自分でレバー動かしてみますか?」

男「はい!やってみます!!」
339: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 19:14:38 ID:JHm1rJZA
男「ありがとうございました」

インストラクター「やー、いい筋してるよ、バンクとるの怖がらないからよく曲がるし、長く滞空できる。本格的にやってみたら?」

男「この足が治ったら考えます……と、ハーピーさんは?」

ハーピー「いーやっほーぅ!1番機、ハーピー!着艦しまーす!ぎゅわーん!ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃっ!!」

男「十分楽しんだみたいだね」

インストラクター「彼女も、やっぱすごいわ。上昇気流捉えるのうますぎ。どうやってるの?」

ハーピー「やー、どーもどーも。え、上昇気流……?木の揺れ方とか斜面の形状とか」

男「普通の人間には無理ってことですね」
340: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 19:20:40 ID:JHm1rJZA
男「その帽子って」

ハーピー「あーこれ?男のクリスマスプレゼント。耳垂のファーが外せるから、年中使用中~」

男「ありがとうございます」

ハーピー「あ、もう1回飛んできてもいい?男も行こうよー」

男「すいません、着地の衝撃がすごいので、無理はやめておきます。ここから見上げてますよ」

ハーピー「そっか……んじゃ、もう1回だけ……すいませーん!のりまーす!」パタパタパタパタ

…………

……
341: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 19:23:31 ID:JHm1rJZA
ハーピー「つかれた……」

男「はしゃいでパワーダイブなんかやるから……」

ハーピー「だって、男に格好良い所見せたかったの」

男「十分堪能しましたよ。じゃあ帰りましょうか」

ハーピー「私達の巣へ」

男「僕達の愛の巣へ」



ハーピー「言ってて恥ずかしくない?」

男「実は少し」
342: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 19:26:19 ID:JHm1rJZA
掌編3つ、って言ったけど4つ目



『男、ハーピーさんのご両親に挨拶する、編』
343: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 19:32:33 ID:JHm1rJZA
男「……めちゃくちゃ緊張する」

ハーピー「なんでー?普通の熟年夫婦だよ」

男「とはいえ……ね、ネクタイ歪んでないですか?」

ハーピー「それ、聞くの4回め。大丈夫だって」

男「……はぁ」


ハーピー「ただーいまー!」ガチャリ


???「あらあらあらあら、おかえりなさい。あら、そちらが彼氏さん?まーまーまーまーハーピーの母です」

男「あ、男ともうします。ほ、本日はお招きいただきありがとうございます。ご挨拶が遅くなってm……」

ハピ母「いーからいーから!上がってちょうだいな。今、お昼ごはん作ってるの。やっぱり男の子がいると、いっぱい作ったほうがいいわよねー」パタパタパタ

男「……」

ハーピー「ごめん、なんかテンション高いおばちゃんで」
344: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 19:38:28 ID:JHm1rJZA
ハーピー「お父さんただいまー!」

???「成人した女性がばたばた騒ぐんじゃない!みっともない」

男「あ、あのぉ……男と申します。ご挨拶が遅れて申し訳ありません」ペコリ

ハピ父「…………話は娘から聞いているよ。まぁ座りなさい」

ハピ父「……ビールでいいかね?かあさん!かあさんビール!!」

ハピ母「はいはいはい、今日は発泡酒じゃなくておビール。今唐揚げ上がるから待っててねー」パタパタパタ

男「……」ゴクリ

ハーピー「ちょっとお母さん!揚げ物なんか後でいいから、ちゃんと紹介するから座って!」
345: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 19:44:39 ID:JHm1rJZA
ハーピー「やたら目つきが悪いのが父さん。こっちの、やたらちっちゃいのが母さん」

男「あ、改めまして、ハーピーさんとお付き合いさせていただいている、男と申します。あ、これ、近所の和菓子屋の大福です。お口に合えばいいのですが……」

ハピ母「あらあら、これはご丁寧にどうも」

ハピ父「……」ギロリ

男「あ、甘いものはお嫌いでしたか?……と、いうか、ハーピーさんを少しお預かりします」コソコソ

ハーピー「?」



男「ハーピーさん、あの、お義父さんなんですけど……」

ハーピー「んー?」



男「天狗(物理的な意味で)?」

ハーピー「そ、鴉天狗(物理的な意味で)」
346: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 19:48:56 ID:JHm1rJZA
ハピ父「男くん、何か?」

男「い、いえいえいえいえ!なんでもないです!」

ハーピー「もうお父さん!そんな腕組んでむすっとしてたら男が困るでしょ!」

ハピ母「でも、渋い顔で素敵よお父さん」

ハピ父「……か、母さん、人前でそういう事を言うのはやめなさい!」

男「……それでですねお義父さん」

ハピ父「君にお義父さんと呼ばれる覚えはないっ!」ドンッ!!

男「……」

男「あります!僕はハーピーさんと結婚します!ですから、お義父さんお義母さんと呼ばせてくださいっ!!」

ハーピー「男……」キュン
347: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 19:56:15 ID:JHm1rJZA
ハピ父「……娘さんを僕にください、ではないんだな」

男「ハーピーさんは僕のプロポーズに『はい』と言ってくれました。成人した子供を、いつまでも所有物扱いしてほしくありません」

ハピ母「まーかっこいい!ハーピーったらこぉんないい男の子見つけてくるなんて!お父さんの若い頃そっくり!」

ハピ父「かかか母さんやめなさい!……男くん。月並みな言葉でわるいが、君はうちの娘を幸せにできるのかね?」

男「……してみせます」

ハピ父「ハーピー、このひょろい、くちばしの無い、翼のない、般若心経も唱えられそうにない男で、いいんだな」

ハーピー「そ、強情っぱりで性格ひねくれてる男がいいの」

ハピ父「男くんのご両親にはこの事は言ったのかね?付き合っている女性は、有翼人種だと」

男「両親とは死別しています。ただ、二人で墓参りには行きました」

ハピ父「そうか」

ハピ母「あらー、じゃあそろそろお昼にしましょ、今お刺身だすわねー。ハーピー、ちょっと手伝って」

男「……」

ハピ父「すまん、その……家内は少々……人の話を聞かない」

男「心中お察しします」
348: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 20:03:59 ID:JHm1rJZA
…………

……

ハピ父「この写真の左側の男がハーピーの実の父親、中央が実の母親、そして右側が若いころの私だ」

男「おふたりとも、ハーピーなんですね」

ハピ父「そう。若いころ、私は見聞を広め、真理にたどり着くために欧州諸国を歩いていた」

ハピ母「自分探しに行ってくる、だなんて訳の分からないこと言って、恋人だった私は2年放置されたのよーひどいわよねー」

ハピ父「そ、それは謝っただろう母さん……ごほん」

ハピ父「ハーピーはな、実の両親に私と母さん、4人分の……」

ハピ母「3羽と1人の」

ハピ父「……3羽と1人のふかーい愛情が詰まっているんだ、わかっているのかね君は!」

ハーピー「お、お父さん!酔ってるでしょう!もー!」

ハピ母「いいじゃない今日くらい……緊張してるのよ、娘が彼氏を連れてくるなんていうから」
349: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 20:11:59 ID:JHm1rJZA
ハピ父「つまり……タダで娘を嫁に出すと思うな!花札で勝負だ!私に勝ったら、娘と結婚してもいい!!」

男「……えぇぇ」

ハーピー「ごめん男、付き合ってあげて」

男「まぁ、一応やり方くらいは知ってますから……」

…………

……

男「こい……雨四光、月見て一杯」

ハピ父「こ、これはほんの小手調べだ!ブラックジャックで勝負だ!母さん!ディーラーを頼む!」

……

男「ステイ……BJです」

ハピ父「ポーカーで勝負だ!」

……

ハピ父「どうだ!8とJのフルハウス!」

男「……すいません、ジョーカーこみでQの4カードです」
350: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 20:18:57 ID:JHm1rJZA
……

ハピ父「だれだ!クラブの8を止めている奴は!ハートの5も!」

ハーピー「あ、ハートは私」

男「すいません、クラブは僕です」

ハピ父「ぐぬぬぬぬ……ぱ、パス3」

……

男「……こっち、かな……あ、上がりです」

……

ハピ父「どうだ!4で革命!」

男「革命返し」

…………

……

男「で、花札からインディアンポーカーまで、全ての勝負に勝ちましたが?」

ハピ父「す、好きにしろ!勝手に結婚すればいい!」
351: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 20:23:59 ID:JHm1rJZA
男「そうじゃないでしょう!」バン!

ハピ父「なんだと若僧が!」

男「僕の挨拶とか、勝負とか、どうでもいいでしょう!なんでハーピーさんに一言おめでとう、って言ってあげないんですか!!」

ハーピー「お、男……」

ハピ父「……」

ハピ父「……いや、確かにそうだ。男くん、うちの娘を頼む。ハーピー……この人となら、幸せになれるんだな」

ハーピー「うん」

ハピ父「そうか。分かった。きちんと幸せになりなさい。結納だなんだ、そんな時代じゃあないが、何か祝いの品くらいは買っておけ、いいな」

男「はい、お義父さん」

ハピ父「かあさん!母さん!俺は酔ったから昼寝するぞ!3人でこじゃれたカフェーでも行ってきなさい!」

スタスタスタスタ...

ハピ母「ごめんなさいね、昔気質な亭主関白で。素直じゃないの」

ハーピー「ううん、ありがとうお母さん」
352: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 20:28:33 ID:JHm1rJZA
…………

……

ハーピー「男、ありがとう。あの啖呵、かっこよかった」

男「……いえ。それよりお義母さんにありがとうと」

ハーピー「なんでー?」

男「……あのトランプの手札、全部こっちに有利に渡してますよ、あの人。実力で勝ったのは最初の花札くらいだと思います」

ハーピー「……さすが元・座敷童」

男「うそぉ!?」



────そして、
353: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 20:38:00 ID:JHm1rJZA
郵便局員『千波さん、千波さーん!郵便でーす』

千波「はいはーい」

千波「……おや、おやおやおや、珍しい二人からだ」

千波「この上質な白い封筒にハートのシールはもしかして……」
354: 1 ◆vgfJH61Cmw 2013/12/23(月) 20:45:38 ID:JHm1rJZA
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

拝啓

皆様におかれましてはお健やかにお過ごしのこととお慶び申し上げます。
このたび、私たちは結婚式を挙げることになりました。
つきましては、ご報告かたがた末永いおつきあいをお願いしたく、心ばかりの祝宴を催したいと存じます
ご多用中誠に恐縮ではございますがぜひご臨席を賜りますようお願い申し上げます

敬具

新郎・男
新婦・ハーピー

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ハーピー「おかえりー」          本当におしまい。

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まだまだ、改良していこうと思います。

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