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今日も学園都市には雨が降る

2: ていとう子 ♯ruffryde 2011/04/25(月) 20:26:06.81 ID:JKHRjRmz0
禁「なんで?」

禁書目録と呼ばれる少女は目の前の二人に問いかける

神裂「・・・」
ステ「・・・君を、助けるためなんだ」

二人はうつむきながら答えた
その顔には悲しみが浮かんでいる

禁「私の記憶を消さないといけないってどういうこと?」

少女はまた二人に問いかける

神裂「あなたの脳は85%を魔道書の記憶に使ってしまっているのです、
1年ごとに記憶を消さないとあなたは・・・」

神裂が辛そうに答える

禁「嘘だよね?」

三人で笑いあったこと
ステイルをどうにか禁煙させようと神裂と二人、奮闘したこと
神裂の格好がおかしくて、それを伝えたら言い合いになったこと
ステイルが自分を守って怪我をしたこと
神裂と一緒に服を買いに行ったこと

三人でずっと一緒にいようと誓い合ったこと

それらが全部
消されてしまう

禁「なんで!?いやだよそんなの!!」

二人に対して初めて少女が怒りを見せる


3: ていとう子 2011/04/25(月) 20:26:48.19 ID:JKHRjRmz0
禁書目録と呼ばれる少女は
禁書目録を背負わされた少女は
1年前からの記憶がない

もしかしたら
1年前にもこんなやり取りを誰かとしたのだろうか

今となっては思い出せない誰かと

ステ「時間だ」
低い声で淡々と、しかし辛そうに少年が告げる

禁「ステイル・・・香織・・・」

神裂「・・・許してください、インデックス・・・」


少女はそっと目を閉じた
楽しかった日々を思い返す
もう二度と思い返せなくなるから
もう二度と三人一緒にいられないから




禁「・・・ここはどこ?あなた達は誰?」

知らない二人が自分を見つめている
悲しそうな顔で


その日、禁書目録という少女の心に
4: ていとう子 2011/04/25(月) 20:28:12.98 ID:JKHRjRmz0
ミスった・・・



禁書目録と呼ばれる少女は
禁書目録を背負わされた少女は
1年前からの記憶がない

もしかしたら
1年前にもこんなやり取りを誰かとしたのだろうか

今となっては思い出せない誰かと

ステ「時間だ」
低い声で淡々と、しかし辛そうに少年が告げる

禁「ステイル・・・香織・・・」

神裂「・・・許してください、インデックス・・・」


少女はそっと目を閉じた
楽しかった日々を思い返す
もう二度と思い返せなくなるから
もう二度と三人一緒にいられないから




禁「・・・ここはどこ?あなた達は誰?」

知らない二人が自分を見つめている
悲しそうな顔で


その日、禁書目録という少女の心には雨が降っていた

6: ていとう子 2011/04/25(月) 20:54:30.19 ID:JKHRjRmz0
ステ「・・・まったく」
ステイルという少年はポツリとつぶやいた

彼は今、イギリス行きの飛行機の中にいる
先ほどまで、学園都市と呼ばれる街にいた

一人の少女の記憶を消すために

しかし、結局それはかなわなかった
いや、する必要がなかった

彼とは違う、別の青年が少女を救ったのだ
自分が必死に望み、それでもかなわなかった結末を
その青年は作り上げてしまった
7: ていとう子 2011/04/25(月) 20:54:57.10 ID:JKHRjRmz0
なぜ青年にできて少年にはできなかったのだろう

ステ(・・・まったく)
気に入らない、そう心の中で毒を吐く

あの少女の隣にいたいのは自分なのに
あの少女の隣に居るべきなのはあの青年だ

「いい加減に始めようぜ、魔術師!!」

青年の言葉を思い出す

ステ(始める・・・か)

ステ(いや、それはもう無理だよ)


少年の望んだ幻想は
少女の隣にいたいという幻想は

あの瞬間に殺されてしまったから

ステ(けどね、上条当麻)

それでも少年は少女を守り続ける
たとえ忘れられていても
たとえ遠くからでも


少年に傘を差し伸べてくれる少女は現れなかった
いつまでたっても現れなかった
11: ◆G2uuPnv9Q. 2011/04/25(月) 21:30:59.92 ID:JKHRjRmz0
上条当麻は病室にいた
彼は一つのことを考えていた

上条(記憶喪失・・・)

一人の少女を救った代償に、彼は今までの記憶をなくしていた

上条(俺は・・・あの子とどうやって知り合ったんだ?)

カエルに似た医者からある程度自分のことは聞いた
右手に宿る力、少女を救ったこと、そして自分の記憶は戻らないこと

彼は迷っていた
きっと、自分が何も覚えていないと言ったら少女は悲しむだろう

上条(どんな子なんだろう)

自分が記憶を失ってでも守りたかった女の子だ
きっととても大切な存在だったのだろう


上条(そうだよな・・・)

言えない

言えるわけがない

自分がそんなことを言ったら少女は涙を流すだろう
心のどこかで、それはダメだと声がする
分からないけど、覚えてないけど、泣かせたらいけない存在なんだ
12: ◆G2uuPnv9Q. 2011/04/25(月) 21:31:37.50 ID:JKHRjRmz0
ドアがノックされた
一人の少女が病室に入ってくる

上条(この子が・・・)


禁「覚えてない?」

ああ

禁「インデックスは・・・」

覚えてなんかいない

禁「とうまのことが」

だけど

禁「大好きだったんだよ?」

この子の涙は
もう見たくない

だからこそ

上条「なーんつって!!」

彼は嘘をつく

似合わないとは分かっていた
淡い幻想を作り出してしまうなんて

でも、少女の幻想を壊したくなかった
たった一つの幻想だけは守りたかった
13: ◆G2uuPnv9Q. 2011/04/25(月) 21:32:06.32 ID:JKHRjRmz0
上条(・・・いってぇ)
少女は噛み付き攻撃を仕掛けてきたあと、怒って帰っていった

入れ違いに医者が入ってくる

蛙「キミ、本当は何も覚えていないんだろう?」

それがどうした

蛙「いったい何処に思い出が残っているんだい?」

そんなこと、決まっている


上条「心に・・・じゃ、ないですか?」


その日、ヒーローだった青年の心は青空だった
それは雲ひとつない、澄みすぎた青空だった
15: ◆G2uuPnv9Q. 2011/04/26(火) 15:26:21.72 ID:SQMJ+aYg0
最近、毎晩お姉さまがでかけている
でかける、と言っても楽しそうではない
むしろその逆

黒子(お姉さま・・・)

日に日に、自分の慕っている人がやつれていく
この前、ある殿方と公園で話していたときはあんなに楽しそうだったのに

黒子(どうして・・・)
また、悲しそうにされているのですか?

お姉さまが隠し事をしているのは明らかだった
きっと、自分を巻き込みたくないのだろう

16: ◆G2uuPnv9Q. 2011/04/26(火) 15:26:50.23 ID:SQMJ+aYg0
では、なぜ
自分を巻き込みたくないのか

自分が大切な後輩だからか?
自分が赤の他人だからか?

いや、違う
白井黒子を巻き込みたくないのではない

誰も巻き込みたくはないのだ

御坂美琴は優しすぎる
人のことは心配し、気にかけるが自分のことは他人に打ち明けない

自分のせいで、誰かが傷つくのをいやがる
優しく、清らかで、それでいて脆い

誰かに頼るということを知らず
誰かに背中を預けることを許さず

ギュッと、美琴の枕を抱きしめる
17: ◆G2uuPnv9Q. 2011/04/26(火) 15:27:29.94 ID:SQMJ+aYg0
黒子(わたくしは・・・信用に値しないのでしょうか・・)

誰でもいい
自分が助け、自分が解決してあげたいなんてわがままは言わない

だから
誰かお姉さまを助けてほしい

黒子(件のあの馬鹿さん・・・)
あなたが、あなただけがお姉さまを助けられるのだと

黒子は気づいていた
そのとき

部屋のチャイムが鳴る


上条「上条だけど・・・御坂、いるか?」

その日、白井黒子の曇り空は一筋の月明かりに照らされた
18: ◆G2uuPnv9Q. 2011/04/26(火) 20:31:50.89 ID:SQMJ+aYg0
打ち止め「聞いてるの?って、ミサカはミサカはぶーたれてみたり」

打ち止めは今、一方通行と呼ばれる能力者の部屋にいた

一方「・・・」
一方通行は答えない

打ち止めも黙ってしまう

打ち止めは、この能力者が分からなかった

実験で10031人もの妹達を殺した人間が目の前に居る
そんな実感が沸かなかった

もっと残忍な性格かと思っていた
出会った瞬間に殺されるかとも思っていた
19: ◆G2uuPnv9Q. 2011/04/26(火) 20:32:18.05 ID:SQMJ+aYg0
でも

この能力者は自分を部屋に入れたのだ

打ち止めは彼を観察する
そして分かった

強い力を持っているだけで、人生の道を誤っただけで
彼は結局、ただの青年なのだと

きっと彼は実験なんて行いたくはなかった
でも止める方法を知らず、止められなかった

今更何を言っても遅いが、彼もまた被害者なのかもしれない

そう分かった途端、彼を哀れに思った
もしこんな力がなければ、彼はそこらへんにいるただの高校生だったのだ

打ち止め(・・・助けたい)
この人を助けてあげたいと思った

自分には何もできないかもしれないけど
20: ◆G2uuPnv9Q. 2011/04/26(火) 20:32:47.54 ID:SQMJ+aYg0
違った
少女は彼を助けたりはできなかった

自分が助けられてしまった
今、彼はベッドで横になっている

自分を助けるために、傷を負ったらしい

妹達の記憶を再ダウンロードしたことで、あの夜に何が起きたかを思い出した
彼は、自分のことをクズと言っていた

それでも彼は守ってくれた
出会って間もない打ち止めを

辛い気持ちが打ち止めを襲う
自分がいなければ、彼は傷つかなかった
また、彼は妹達の被害者に・・・
21: ◆G2uuPnv9Q. 2011/04/26(火) 20:33:18.21 ID:SQMJ+aYg0
一方「それでこのガキが殺されていいことには、ならねぇだろうが!!」


彼の言葉は、心に突き刺さる

そうだ、今少女がするべきなのは嘆くことではない

打ち止め(この人が起きたら・・・)
自分がそばにいてあげよう

もう二度と道を誤らないように
道を逸れたら無理やり手を引っ張ってもとの道に戻せるように


だから、ずっと一緒にいたい


その日、打ち止めの心に初めて空が生まれた
22: ◆G2uuPnv9Q. 2011/04/28(木) 17:05:45.52 ID:fGQFGzlS0
風斬氷華は歩いていた
すれ違う人々となんら変わらず

でも、彼女は知っている
自分は人とは違う

あの変なゴーレム使いが現れて、自分の正体を知った

もちろん、辛かった
しかし彼女には友達が居る
23: ◆G2uuPnv9Q. 2011/04/28(木) 17:06:28.99 ID:fGQFGzlS0
一人の青年がこの世界には救いがあると教えてくれた

一人の少女は自分を友達だと言ってくれた

こんな化け物を、人と言ってくれた

「それにしてもリアルな立体映像だな・・・」

警備員だろうか
後ろで男性が驚いている

たしかに、自分は何も知らない人からしたらタチの悪いイタズラで作られた立体映像かもしれない
24: ◆G2uuPnv9Q. 2011/04/28(木) 17:06:59.67 ID:fGQFGzlS0
それでも彼女は幸せだった
こんな体だから友達を守れた
こんな体だから自分も助かった
こんな体だから・・・あの二人と出会えた

そう考えたら自分も悪くないな、と微笑む

今度あの二人に会ったら何をしようか

またゲームセンターに行きたい
いや、バッティングセンターとか、体を動かすのもいいかもしれない

自分の怪力なら場外どころか地球外ホームランもできたり、と考えたら楽しくなってくる

そして、遊び終わったら「またね」なんて言って帰るのだろう

「さよなら」ではなく「またね」と言って

そういうことを考えていたとき
彼女の体に異変が起きた
25: ◆G2uuPnv9Q. 2011/04/28(木) 17:07:53.10 ID:fGQFGzlS0
気づいたら
自分が街を破壊していた
いや、おかしい

自分の体なのに動かし方が分からない
そもそもこれは本当に自分なのか?

確かなのは、彼女が街を瓦礫の山へと変えていること

そして、奇抜な格好をしている女性と戦っていること

その女性は、自分を化け物と言っている

いやだ
いやだ

やっぱり、自分は化け物なのか?
原因は分からないけれど、こんなことになるなんてやっぱり自分は・・・

そのとき彼女は聞いた
懐かしい声を

友達の声を
26: ◆G2uuPnv9Q. 2011/04/28(木) 17:08:21.91 ID:fGQFGzlS0
上条「人の友達を、なんだと思ってやがる!!」

ああ、彼は
このヒーローは

それでもまだ自分を友達だと言ってくれるのか

風斬氷華の頬を涙が伝う


その日、彼女の世界はまた救われた
大切な友達によって
27: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/01(日) 10:46:10.71 ID:FBEfWsAd0
御坂美琴「アンタが記憶喪失だってことくらい、知ってるわよ!!」

美琴は叫んでいた
目の前の一人の青年を助けるために
なぜだか分からないけど、彼を止めたかった

彼が記憶喪失だと知ってから、美琴は悩んでいた
いつから、どこから記憶がないのか
なぜ記憶を無くしたのか

あのバカのことだ、きっと厄介ごとに突っ込んでいってそして・・・

美琴(・・・アイツは)
覚えているのだろうか

あの実験から自分を救い出した日のことを

あの日から美琴の心は大きく揺らいだ
青年のことを考えると胸が締め付けられた
青年を見ると心に歯止めが効かなくなった
28: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/01(日) 10:46:37.74 ID:FBEfWsAd0
そして今
やはり美琴の心は揺らいでいた

上条「お前・・・」

妹達のことを口にしたとき、覚えている、という反応を示した
そんなことを確認している場合ではない

それでも確認したかった
自分の意地汚さに嫌気が差す

覚えている
あの日のことを

それを確認するために美琴は立ちふさがったのか
いや、違う

あの時彼が立ちふさがったように
美琴も彼を止めるためにここにいるのだ

青年は少し寂しげな顔をする
心が痛んだが、構わず彼の手を取る
29: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/01(日) 10:47:04.69 ID:FBEfWsAd0
しかし

上条「                     」


彼は言った

自分は、上条当麻は

記憶のあるなしで揺らぐような人間ではないと

分かっていた
彼は昔から・・・美琴との出会いのときから、正義感あふれるヤツだった

誰かを守るために身を張って
誰かのために傷ついて

そして、最後はその誰かと一緒に笑う

そんな男だと
30: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/01(日) 10:47:37.07 ID:FBEfWsAd0
彼は進んだ
迷うことなく、美琴の手を離して進んでいった

美琴(・・・バカ)
また傷ついて戻ってくるに決まっている

バカだ、と思う
本当にアイツはバカなんだ

でも

美琴(無事に帰ってきてほしい)
そう願ってしまう

なぜか、願っていて・・・

美琴(ううん、違う)
なぜか、なんて曖昧な理由じゃない

美琴はそのとき、その感情の名前を知る

彼女の知らないところで、太陽は誰かを照らしていた
31: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/02(月) 19:54:15.74 ID:3lkrxHS80
太陽みたいな人だな
御坂美琴に初めて会ったとき、エツァリは思った

誰にでも優しく、誰にでも明るく振舞う
太陽みたいだ、と

強い人だなとも感じた
誰かが困っていたら、迷わず救いの手を差し伸べる
その反面、絶対に自分の悩みは人に打ち明けない

誰にも苦しみを背負わせない、というのは自分一人で苦しみを背負うということだ
それがなぜか、エツァリは気になった
32: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/02(月) 19:54:41.26 ID:3lkrxHS80
エツァリは気づいていた
自分が御坂美琴に好意を寄せているのだと

しかし、彼は上条勢力を潰すために派遣された
その上条勢力の中には、彼女も含まれていた

どうすればよいだろうか、エツァリは悩んで一つの答えを出した
海原光貴の姿を借り、御坂美琴と接触する

そうすればおそらく上条当麻とも出会えるはず
もし上条が危険であると判断できない場合は、穏便に事を済ませる

上手くいってほしい、御坂美琴の、彼女の悲しむ顔は見たくなかった
33: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/02(月) 19:55:11.63 ID:3lkrxHS80
海原「御坂さんじゃないですか」
それからというもの、エツァリは毎日のように美琴と接触した
偽者の顔に偽者の姿

それでもよかった
彼は、美琴のことをよく知りたいと思った

もしかしたら、自分が支えになれるかもしれない
彼女を守れるかもしれない、と


数日して彼は思った
やはり、彼女は自分にも心を開いてはくれないと

ほかの友人や知り合いに接するのと同じく、どこか距離をとっている
自分も彼女にとっては他人なのだと
自分では彼女の支えにはなれないと

辛かった
でも、エツァリはそれでもよかった
今はダメでも、いつかは心を開いてくれるかもしれない

そう、思っていた
34: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/02(月) 19:55:39.96 ID:3lkrxHS80
そんなある日

美琴「無視すんなやゴルァァァァァァ!!」
上条「ゴフッ!!」

エツァリは初めて見た
美琴が、あんな顔をするのを
あんなにも自分を曝けるのを

上条当麻にタックルした彼女は、すぐさまその手をひいてどこかへ走り去った

御坂美琴は、彼女は、あんな顔ができるのだ、と思った
上条は気づいていないだろう、だが彼女があんなにも恥を考えずタックルするなんて、信じられなかった

どこか周りと距離をとっている彼女が、自分から誰かの元に飛び込む
ああそうか、彼女にはもう支えがあったのだと

本来ならここであきらめて帰るべきなのだろう、しかし彼には任務があった
とても辛い、任務があった
35: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/02(月) 19:56:07.53 ID:3lkrxHS80
上条「お前とは、本当に友達になれると思ってたんだぜ」
目の前の上条がそんなことを言う

この男は前向きだな、と思った
きっと、魔術だの科学だの勢力だの
そんなことに捕われず、誰でも救ってしまうんだと

うらやましかった
自分も、彼女を救えたら

海原「自分は一度もそんな風に思ったことはありませんよ」

彼は敵だった
とても面倒で、とても愚かしくて、とても無知で

でも、とても真っ直ぐで、とても純粋で、とても強かった

彼は美琴を救ったのだ
彼女に対して、ほかと変わらないように接して、ほかと変わらないように守って

うらやましかった
決して自分の辿り着けない場所に、彼はいたのだ


エツァリ「偽者じゃダメなんですか?」
36: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/02(月) 19:56:34.54 ID:3lkrxHS80
辛かった
自分が誰かの姿を借りないとその場所を目指せないのが

辛かった
自分がどれだけ走っても、その場所には辿り着けないのが

辛かった
目指している場所に、もうこの男がいたのが

けれど

嬉しかった
こんな自分に、こんなにも卑怯な自分に、目指したい場所ができたのが

嬉しかった
こんな自分が、精一杯走れると知ったから

嬉しかった
自分では絶対に辿り着けない場所に、彼女のとなりに
こんなにも力強いヒーローがいるのだから

エツァリは笑っていた
彼との戦いが終わるその瞬間、笑っていた
37: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/02(月) 19:57:03.26 ID:3lkrxHS80
負けたんだな、とエツァリは思った
やっぱり彼はヒーローだ
こんな風に、また美琴を救ってしまう


エツァリ「自分は・・・負けたんですか?」
上条「さあね」

この男は、勝ち負けなど気にしていない
誰かを救うために、ただ走って、その拳を振るうだけなんだと
うらやましかった

自分が叶えられないたった一つの願いを、きっとこの男は簡単に叶えてしまう
だからエツァリは言った


「彼女を、御坂美琴を守ってくれますか?」

「ああ・・・守ってみせるよ、御坂と、その周りの世界は俺が守る」
38: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/02(月) 19:57:31.38 ID:3lkrxHS80
敵わない、この男は、彼女だけでなくその周り全てを守るのか、と
それはとても無謀で、でもうらやましくて

彼が彼女とその周りの世界を救うたび、さらに彼女は惹かれるのだろう
この、ヒーローに

うらやましかった
そうやって彼女を守れる彼が
隣に立っていられる彼が

本当なら、自分がなりたかった存在に、彼はなってしまう
それはとても嬉しく、しかしとても辛かった

エツァリは、彼女の幸せを影から見守ることしかできなくなってしまう
だから言った
小さな声で、少しだけ寂しげに

「最低の返事だ」

その日、エツァリを照らしていた太陽は沈んでしまった
もう二度と昇ることのできない、深い闇の中へと
39: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/03(火) 19:37:02.21 ID:0syP/W1z0
白い翼と黒い翼
悪党と悪党
闇と闇
運命に縛られた青年とあがき続ける青年
正義を知らない哀れな者と正義を夢見た愚か者


垣根帝督は知っていた
人間とは愚かだと
40: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/03(火) 19:37:33.10 ID:0syP/W1z0
彼が始めてそう思ったのは、親に対してだった
自分の子供を、能力を開発するためにならなんでも行うという酔狂な街に住まわせる
それのどこが賢いのだろうか

彼が二度目にそう思ったのは、友人に対してだった
初めてできた友人
なのに

能力が大きくなるにつれ、友人は怯えた目つきで自分を見た

アイツは化け物だ
アイツに近寄るとロクなことがない

ヒソヒソと、すれ違う誰かが話していた

自分と友人、人間と人間
根幹は同じなのに力があるという理由で遠ざかる
それのどこが賢いのだろうか
41: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/03(火) 19:38:07.58 ID:0syP/W1z0
彼が三度目にそう思ったのは、同僚に対してだった
ある同僚は、金をもらって知らない大人と個室で話をするという
ある同僚は、関係のない一般人でも平気で命を奪うという
ある同僚は、狙撃手の誇り、などというくだらないものをもっているという

垣根には分からなかった
それのどこが賢いのだろうか
42: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/03(火) 19:38:36.88 ID:0syP/W1z0
そして

四度目にそう思ったのは

目の前にいるもう一人の自分に対してであった

もう一人の自分は過去にたくさんの命を奪った
それでも尚、その罪を償うために一人の少女を命を賭けて守っていた

くだらない

垣根帝督は知っていた

そんなことはムダだと

暗闇の中で光を求めても、絶望の中で明日を夢見ても
何も起きないのだから
43: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/03(火) 19:39:03.60 ID:0syP/W1z0
なのに

もう一人の自分は
垣根が最も憎み、最も妬み、最も憧れた青年は

一人の女性が見せたほんの小さな明かりを求めた
そんな小さな明かりで暗闇を照らすことなどできないのに

ふざけるな

垣根はその女性を潰そうと決めた
そんなくだらない幻想をソイツに見せるな
そんなくだらない夢物語を

俺に見せるな


もう一人の自分が垣根を襲う
44: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/03(火) 19:39:30.44 ID:0syP/W1z0
垣根は思っていた
彼に自分は倒せないと

彼は悪党になりきれていない
自分はなりきっている

中途半端な悪が、純粋な悪に勝てるわけがないと



垣根帝督は地に伏せていた
一瞬、何が起きたのか理解できない
が、それもすぐに分かった

俺は負けるのだと

もう一人の自分が、一方通行が
俺の命を奪うのだと
45: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/03(火) 19:39:56.49 ID:0syP/W1z0
そのときなぜか、垣根は思い出した
愚かだと思っていた、親や友人、同僚の顔を
愚かなハズなのに、彼らは皆、なぜか少し楽しそうだった

同じ暗闇にいるハズの同僚でさえ、笑っていた

そうか、と垣根は苦笑する

黒い翼が彼の頭上から降りかかる
垣根は何もしなかった

彼が最後に愚かだと思ったのは
自分に対してだった

46: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/03(火) 21:52:55.75 ID:0syP/W1z0
ふざけんなよ、と浜面仕上は小さくつぶやいた

彼は今、滝壺理后を背負いながら走っている
理由は簡単

一人の超能力者、麦野沈利から逃げるためだ

アイテム

それが、浜面や滝壺、そして麦野の所属していた組織の名だ
浜面が麦野を殺害したことによって解散した

いや、したはずだった
47: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/03(火) 21:53:22.20 ID:0syP/W1z0
ところが、麦野は今、まさに浜面と滝壺の首を狩ろうと迫ってきている

地獄から這い上がってきたのか、そもそも地獄になんか堕ちなかったのか
どちらかは分からないが、麦野はその魔の手を広げ、二人を追いかけている

浜面(やべぇ・・・このままじゃ!!)

逃げ切れない、ふとそんな想像をしてしまう
もしも逃げられなかったら

麦野にどのような仕打ちをされるのか
簡単に死なせるとは思わない
彼女はおそらく、二人の心を極限まで弄び、それを高笑いしながら見つめるのだろう
48: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/03(火) 21:53:49.66 ID:0syP/W1z0
浜面(ちくしょう・・・捕まってたまるかよ!!)

やっと守りたいものができた
スキルアウトにいたころのように、誰かを傷つけるでもなく
アイテムにいたころのように、仲間が傷つくのをただ見ているだけでもなく

自分の両手で抱きしめた、たった一人の大切な少女を守りたい

そのためには、麦野と戦わなければならない
麦野は、あの超能力者は、自分を狙っている

復讐という名の炎に縁取られた瞳で、虎視眈々と自分の心臓を狙っているのだ

浜面(・・・なんで・・・)
ふと、アイテムで集まったファミレスの光景を思い浮かべる

ジュース持って来い、とパシられいやいや持ってきたら、遅い、とか温い、とか

そんな文句を言われ、屈辱的だと思い、それでもなんとなく楽しかったあの光景を
49: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/03(火) 21:54:27.25 ID:0syP/W1z0
あれは、幻想だったのだろうか
あの時、麦野は偽りの笑顔を浮かべていたのだろうか
あの時、フレンダは本当に浜面を気持ち悪いと思っていたのだろうか
あの時、絹旗は自分の周りにいつも通り壁を作っていたのだろうか
あの時、滝壺はそれが幻想だなんて思っていたのだろうか

あの時、浜面はその光景を、本当に鬱陶しいと思っていたのだろうか


浜面(ちくしょう・・・)
今更後悔してももう戻れない

ならば前に進むだけだ

かつて、自分を諭し、そして殴り飛ばしたアイツのように
守りたいものを守るために

浜面(悪いな、麦野・・・)

彼は一つの決意をする
たった一人の少女のヒ-ローになるために

その日、浜面仕上はほんの一歩、太陽に向かって歩き出した
51: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/04(水) 16:29:06.05 ID:LXcwpeUH0
アックア(・・・まさか、私が負けるとは・・・)
驚きである、と苦笑しながらつぶやく

上条当麻という青年を粛清せよ

そんな命令を受けたアックアだったが、それは叶わなかった

彼には仲間がいた
背中を預けられる仲間が、支えてくれる仲間が

そっとアックアは目を閉じる
52: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/04(水) 16:29:57.69 ID:LXcwpeUH0
彼にも昔は、仲間がいた

面倒なヤツだった
正義感はある、実力も伴っている
だが、どこか抜けているというか、厳格な自分とは反りが合わないような性格

そんな一人の男が、アックアの仲間だった


事あるごとに、騎士にならないか、と誘ってきた
断る度、うんざりしつつも少し嬉しかった
彼は自分を認めてくれていた

いや、彼だけではない
彼の部下も、英国王女・・・あの、ヴィリアン王女も
53: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/04(水) 16:30:59.25 ID:LXcwpeUH0
懐かしい日々

あの時、もしもあの男と共に英国を出ていたら
今の自分はいなかったのだろうか

神の右席なんていう、卑怯な連中の集まりに所属などしないで、その両手をふるって誰かをまもっていたのか

違うな、とアックアは自嘲する

自分のことだ、きっとあの男がいてもどこかでこの道に堕ちただろう
むしろ、あの男にそんな醜態を晒さないですんだだけ、今のほうがマシか
54: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/04(水) 16:31:27.03 ID:LXcwpeUH0
アックアは迷っていた
彼は、ローマ正教の人間だ
ローマ教皇の命令は絶対

それを成し遂げられなかった自分に、価値があるのだろうか
後方のアックアに、価値など存在するのだろうか
55: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/04(水) 16:32:15.01 ID:LXcwpeUH0
アックア「・・・何を悩んでいるのであるか」
自分に問いかける

自分は何をしているのか
第三王女を守るため、そのために旅立ったというのに
いつの間にか、まったく関係ない命令を守るために動いて
まっすぐな、昔の自分に似た青年の命を奪おうとして
56: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/04(水) 16:32:52.60 ID:LXcwpeUH0
アックア「・・・何をしているのであるか」
間違っている

彼は、ウィリアム・オルウェルは
そんなことのために旅立ったのではない

傷ついた体を無理やりに奮い立たせる
幸い、力は一時的に封じられたに過ぎない

そう、まだやれるのだ
まだ、大切なものを守れるのだ
57: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/04(水) 16:33:31.13 ID:LXcwpeUH0
ウィリアム「行くぞ・・・」

あの時と同じように
守り抜いてみせると誓ったあの夜のように
彼は名乗る

ウィリアム「名乗るべき時がきた!!」

目指すは、イギリス
たった一つの帰るべき場所
58: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/04(水) 16:34:10.84 ID:LXcwpeUH0
ウィリアム「我が名は!!」

誰に聞かせるわけでも、誰に名乗るわけでもなく、自分の心に

ウィリアム「flere210!!」

誰かの

ウィリアム「その涙の理由を変える者である!!」

涙の理由を変えるために


ウィリアム・オルウェルは地を駆けていた
まるで、誰かの願いを叶える流れ星であるかのように
60: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/05(木) 17:51:35.91 ID:RmU341Gg0
麦野沈利は呆れていた
浜面仕上と和解してしまった自分に

麦野(アタシらしくねぇな・・・)

まったく、自分が何をしたいのか分からない
しかも、「お前は滝壺を選んだじゃないか」なんて、受け取り方によっては告白とも取れる言葉まで言ってしまった

麦野(あー・・・なんかイライラする)

浜面「おーい、滝壺!!どこだ!!」

目の前の男は、滝壺を必死に探している

なんでか分からないが、それがイライラする

(そうだよ、俺は滝壺を選んだ!!)

その言葉がイライラする
63: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/06(金) 17:56:01.09 ID:myh9p5130
麦野(はっ・・・アタシがこんなダメ男に惚れたってか?)
そんな風に自嘲するが、彼女の顔は嫉妬に染まっていた
もっとも、醜い嫉妬というより、いじけている、といった表現が合うが

だから

麦野「そろそろ可憐に倒れてしまうかもしれないわ」
なんて似合わない台詞で浜面の気を引こうとする

それを浜面は普通にかわし、また滝壺を探し始める

麦野(・・・この野郎)
さらに麦野の顔が険しくなる
64: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/06(金) 18:07:27.64 ID:myh9p5130
そういえば昔、恋する乙女は強くなる、なんて話を聞いたことがある
そのときは馬鹿馬鹿しいと思ったが今ならなんとなく信じられる

だって

今ならなんとなくだが、いつもより高い出力の原子崩しが打てそうな気がしたから

認めるのはイヤだったが、麦野の中で浜面は大きな存在になっていた
一時は命を奪おうとまで思ったのに、そんな自分を許し、それどころかもう一度やり直そうと言った浜面が

麦野(なんなんだよこの気持ち)
65: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/07(土) 16:58:36.43 ID:3ff+8IVT0
彼女は恋なんてしたことがなかった
だからこそ、焦っている

これが恋なのか、はたまた違うのか、それさえ分からないから

ツンデレ・・・そんな言葉が浮かぶ
なんでも、好きな人にツンツンしてしまって、中々素直になれない人を差すらしい
自分もそうなのかな・・・なんて、乙女なことを考えていた

彼女の知り合いが聞いたら、十中八九、「いえ、それはヤンデレです」と答えただろう

とにかく、麦野は浜面に好意を抱いていた
それは叶わない好意かもしれない
66: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/07(土) 16:59:02.54 ID:3ff+8IVT0
でも

麦野(いいじゃねぇか・・・この世には略奪愛って言葉もあるんだし)
そんな物騒なことを考え、一人でにやける

浜面はそんな麦野に気づいていない

麦野(しっかし・・・アタシほど不器用な女なんてこの世にはいねぇだろうな・・・)
溜息をつきながら、雪原を歩く

こんなこと、戦場で考えるものではない
それだけ今彼女は混乱しているのだろう
67: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/07(土) 16:59:29.42 ID:3ff+8IVT0
ちなみに、彼女のように不器用なツンデレがもう一人、学園都市に存在する
その彼女は、そのころ戦闘機に乗っているのだが

麦野(やっべ、なんか楽しくなってきたかも・・・)
学園都市に早く帰って、計画を練らないと、そう決める

世界を巻き込んだ大戦は、この後すぐに終結する
しかし、それと同時にオンナの戦いが幕を開けるのであった
68: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/10(火) 10:49:16.32 ID:5dufVKbV0
フィアンマにとって世界とは
儚いものだった

力を奮えばすぐに壊れる
力を見せればすぐに怯える

フィアンマにとって世界とは
愚かなものだった

流行に乗り遅れまいとする人々
金だ女だと叫ぶ人々
幸せになりたいと運命を天に任せた人々

フィアンマにとって世界とは
悲しいものだった
自分だけでは生きていけないから
他人を信じてもいつかは裏切られるから

フィアンマにとって世界とは
69: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/10(火) 10:49:43.43 ID:5dufVKbV0
上条当麻
それがあの男の名前だった
別に、どんな性格をしているのか、どんな人生を歩んできたのかなんて興味がない

ただ、粛清しろ、と命じられたから殺す
自分の計画にとって邪魔だから殺す

その程度の存在だった

なのに

あの男は自分を超えていた
くだらないと、愚かだと、儚いと、悲しいと思っていた世界に、意味があると言って
自分を助けるために、要塞に残ったあの男は

あの男なら、世界を救えたのだろうか
救ってやる、のではなく、救えたのだろうか
70: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/10(火) 10:50:13.55 ID:5dufVKbV0
自分の右手は切り落とされた
力があると思っていた右手は、魔術師の一撃で脆くも切り落とされたのだ

今のフィアンマには何も残っていなかった
力も、気力も、もう一度立ち上がる意地汚ささえも

雪が重くのしかかってくる
昔の自分なら、手で振り払ってすぐに起き上がれたのに
今は、小さな雪でさえも自分には重いのだ

世界とは、こんなにも重いんだな
フィアンマは小さく笑った

今までずっと目を背けてきた
見る価値などない、そう言い訳をして

怖かった
逃げ出したかった
71: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/10(火) 10:50:39.40 ID:5dufVKbV0
本当は、世界を救いたくなんかなかったのかもしれない
ただ、彼は・・・

世界を好きになりたかっただけなのだと

気づいたときにはもう遅かった
世界は自分から遠くに離れてしまった
もう手の届かないところへ、離れてしまった

涙なんか流れなかった
それでもフィアンマは泣いていた
もしやり直せるなら、今度こそ世界を好きになってみせると

あの、青年のように

そのとき、フィアンマは気づいた
二つの人影が自分に近づいてくるのに

もしかしたら
自分はまだ、世界を好きになれるかもしれない

冷たい雪の中、フィアンマの心に小さな明かりが灯った
74: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/19(木) 19:45:55.36 ID:0tbCQQOf0
あぁ、もしかしたら
自分はもう、帰れないかもしれない

上条当麻はそう思った

天使と呼ばれる存在を目の前にして

彼は、そう思った


禁書目録という少女を守りたかった
御坂美琴という少女を守りたかった
一方通行という青年を守りたかった

彼には、守りたいものがあった
75: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/19(木) 19:49:30.27 ID:0tbCQQOf0
自分がたとえ犠牲になってでも
守りたいものがあった

きっと
昔の自分も、こんな気持ちだったのだろうかと

もう思い出すことはできなくても

きっと、一人の少女を救ったかつての自分は
今、誰かを守ろうとしている自分と

同じ気持ちだったのだろう

上条はゆっくり右手を掲げた

その表情は、なぜか笑っていた
76: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/19(木) 19:50:25.73 ID:0tbCQQOf0
神様

この世界がアンタの作った奇跡の通りに動いてるってんなら

まずは、その幻想をぶち殺す!!!
77: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/19(木) 19:50:52.60 ID:0tbCQQOf0
10月30日
世界に再び光が戻った

人々は歓喜し、その光を喜んでいた

でも
その光は

なぜか、少しだけ
悲しい色をしていた
78: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/19(木) 19:53:27.38 ID:0tbCQQOf0
まだ、やるべきことがある
上条当麻はそう言って御坂美琴の手を離した

美琴は、救えなかった
彼を、かつて命を賭けて自分を救ってくれた彼を

あの港で拾ったストラップ
あれは間違いなく彼が携帯につけていた物だった

美琴(・・・)
彼がいなくなってから、美琴は何も考えられなくなった
学校の授業でも、寮の部屋でも

まるで、魂が抜けたかのように過ごしていた
涙なんてもうとっくに枯れていた

彼女に気を遣ってか、誰も無駄な詮索はしてこない
あの黒子でさえ、今は美琴をそっとしているのだ

彼女は、それほどまでに荒んでいたのだ
79: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/19(木) 19:54:01.38 ID:0tbCQQOf0
また、今日も街中をフラフラと歩く
スキルアウトだろうか、自分に何か言ってくる
その中の一人が手を引っ張ってきた

無意識に、電撃を飛ばす
それだけで、彼らは倒れてしまう

それだけで、倒れてしまう

そういえばあの馬鹿と出会ったのもスキルアウトに絡まれてた時だったな
そんな風に昔を思い出す
実際には、まだ半年も経っていない

なのにずいぶんと昔に感じる
それは、きっと彼が今ここにいないからだ
80: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/19(木) 19:54:33.69 ID:0tbCQQOf0
いつもなら、自分が絡まれてたら助けてくれたのに
いつもなら、自分が電撃を飛ばしたら呆れながら注意してくれたのに

美琴の中では、彼と歩いた日々がいつもの日常になっていたのだ
大切なものは無くしてから気づく、なんて言うけどそうじゃないかもな、とつぶやく
当たり前が無くなった瞬間に、それは大切なものになるのだと
81: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/19(木) 19:55:08.98 ID:0tbCQQOf0
美琴は歩いていた
フラフラした足取りで

誰かにぶつかった
「おっと、すまねぇ」と謝られた気がするが美琴は応えなかった

彼はもういない
美琴を救ってくれた彼は、美琴が初めて好きになった彼は

御坂美琴は探していた
沈んでしまった太陽を、フラフラとした足取りで
82: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/19(木) 19:55:39.10 ID:0tbCQQOf0
『おー、そうじゃん。打ち止めがアンタと買い物したいんだって。あと番外個体も』
一方通行は電話で黄泉川と話していた

今、打ち止めと番外個体は黄泉川と外出している
芳川は家で寝ているので、自分も寝るか、と思った矢先に電話が掛かってきたのだ

一方「買い物・・・ねェ」
正直、彼はそんなことはしたくなかった
しかし、これから光の世界で生きていくならたまにはそういう普通の生活もしなければならない

はァ、と大きな溜息をついてから「分かったから、近くのバス停で待ってろ」と応える

部屋の鍵を取ると、彼は最寄のバス停へと向かう
たしか打ち止め達が今いるところまでは20分程度で行けるはずだ
83: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/19(木) 19:56:17.75 ID:0tbCQQOf0
あいにく、外は大雨だった
こんな日に外出するなんて物好きだ、と思ったが黄泉川は仕事が忙しく、今日しか休みがとれなかったらしい

一方(めンどくせェ・・・)
鬱陶しそうに杖をつきながら歩く

バスはすぐに到着した
彼が乗ったときには、バスはがら空きだった

今日は平日、しかも昼なのでほとんどの学生は学校に言っている
平日によく黄泉川は休みを取れたな、と考えながら適当に席に座る

景色がゆっくりと動き出す
バスの窓に雨粒がぶつかる音が、一方通行をさらに不機嫌にさせる
84: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/19(木) 19:56:54.06 ID:0tbCQQOf0
一方通行(最近の天気予報は当てにならねェからな・・・)
しかめっ面な彼は、傍から見たら恐ろしい般若に見えただろう

まぁ、打ち止めが喜ぶのならばそれでいいだろう
彼は、妹達のためになら命を投げ出す覚悟もできている
買い物に付き合うだけで喜んでもらえるなら悪くはない


一方(これで晴れだったらまだマシなンだがなァ・・・)
雨の日は、杖が汚れる、打ち止めが走るから地面に溜まった水が脚にかかる・・・
それに、その様を見て番外個体がゲラゲラと笑うのだ

仕方ないことだがストレスが溜まる
はァ、と先ほどより大きい溜息をつく
85: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/19(木) 19:57:34.41 ID:0tbCQQOf0
そんな風に憂鬱になっている間に、目的地につきそうになっていた
そろそろか、と思ったとき、一方通行はふと気づいた

次のバス停・・・つまり、一方通行が降りる予定のバス停のベンチに、少女が一人座っている
ただの少女なら特別気にはかけない
しかし、あれは妹達だ

彼がかつて傷つけ、そして今は守ると決めた、少女
一方(なンでこンなところに・・・)

疑問に感じたそのとき、彼はふと少女を注視した
そして、はっと息を呑む
86: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/19(木) 19:58:02.62 ID:0tbCQQOf0
見間違えだろうか
その可能性のほうが高い

あの少女には、なぜ左足がないのか
あの少女は、なぜカエルのキャラクターのピンバッジをしているのか

一方(まさか・・・)
まさか

忘れるわけがない
忘れられるわけがない

最初に殺害した妹達も
それから殺害した何人もの妹達も
そして・・・

一方(アイツ!!)
87: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/19(木) 19:58:32.00 ID:0tbCQQOf0
気づいたら彼は駆け出していた
杖をついてなので、危うく転倒しそうになるが、構わず走る

一方(アイツは!!)

その少女が一方通行のほうを見る
そして、深く頭を下げる

一方(待て!!)

その少女は、顔を挙げ、何かをつぶやく
その口の動きで、何を言っているのかが彼にはわかった

「残った妹達をよろしくお願いします」
88: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/19(木) 19:59:01.66 ID:0tbCQQOf0
ベンチに辿り着いたとき、もう少女はいなかった
あれは幻だったのか

一方(・・・アイツは・・・)
忘れるわけがない
あの少女は・・・
89: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/19(木) 19:59:30.64 ID:0tbCQQOf0
打ち止め「あ、いたいた!!一方通行!!」
ドン、と思いっきり打ち止めがタックルする

番外「コラコラ、そんなことしたら天下の第一位様が怒っちゃうよ」
ゲラゲラ、と番外個体が笑う

それを無視して彼は尋ねる

一方「黄泉川はどうした?」
打ち止め「用事があるからって別行動!!ってミサカはミサカはちょっと不機嫌になってみたり!」
一方「そォか」
番外「あらら?なんだかしんみりしてるじゃないの」

おかしなものを見る目で番外個体が見つめる
90: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/19(木) 19:59:59.60 ID:0tbCQQOf0
一方「どォでもいいだろうが」
そう言うと、打ち止めが手に提げている買い物袋をそっと持つ
カエルのキャラクターの菓子ばっかり買ったようだ

打ち止め「あ、ありがとってミサカはミサカはいつもと違うアナタに驚いてみたり・・・」
番外「ヘンなものでも食べちゃった?」
ギャハハ、とまた番外個体が笑う

一方「ンなわけねェだろ、お前のも貸せ」
番外「なんか気色わるーい」
一方「いいだろォがたまには」

そう言って、番外個体の荷物も受け取る

二人が首を捻っているが、気にせず歩く
91: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/19(木) 20:00:30.85 ID:0tbCQQOf0
一方(妹達をよろしく・・・か)
あの少女が言っていただろうことを思い返す
彼女達は・・・一方通行に殺害された妹達は、彼を恨んでいるだろうに
それでも、自分に妹達を託した

一方(あァ・・・守ってみせるさ)
後ろから二人が着いてくる

一方(もう誰一人死なせねェ・・・)
92: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/19(木) 20:01:08.80 ID:0tbCQQOf0
ふと空を見上げる
雨雲が広がり、雨が落ちてくる
三人は、できる限り濡れないように歩いていく

一方(そォか・・・)

ふと、あの日を思い出す

一方(今日も・・・)


雨が降ってるんだな、と

93: ◆G2uuPnv9Q. 2011/05/19(木) 20:01:50.66 ID:0tbCQQOf0
これでおしまい

なんか書きたくなったから書いたって感じになってしまいました

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コメント

  1. とある陛下の全知全能 2020年06月12日

    オムニバス形式風もいいもんだね
    禁書と電磁で上条視点と御坂視点で妹達編を観た時も思ったけど
    同じ事件も違うキャラからすると見え方が違って面白い

 

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