- 1: 2011/01/08(土) 01:01:55.50 ID:ZiKesIEqP
- 男「おい」
妹「はい?」
男「なんでここにいる」
妹「失礼だなあ」
ぷくっと顔を膨らせて。
妹「可愛い妹が兄の帰りを待っていたのさ」
男「ならなんで物色してんだよ」
俺の部屋に忘れ物なんてないはずだ。
- 2: 2011/01/08(土) 01:04:14.48 ID:ZiKesIEqP
- 妹「は、ハサミー!」
男「そんな妹はいらない」
妹のとっさの物真似は。
どちらかというと、コジコジっぽかった。
……あれ、あってるのか。
妹「いいじゃん、ちょっとくらい……」
ボソボソと喋りながら、物色再開。 - 3: 2011/01/08(土) 01:06:36.69 ID:ZiKesIEqP
- 男「させるか!」
妹「セクハラ」
男「急に女になるな」
妹「でも、安易に体を触るのは……ちょっとねえ」
男「なんだよ」
ジト目やめろ。 - 6: 2011/01/08(土) 01:08:53.26 ID:ZiKesIEqP
- 妹「……んーん、なんでもない」
男「お、おい」
妹「もういいや、ごめんなさい」
頭を下げて、部屋に戻った。
男「……」
なんか、急に焦燥感。 - 7: 2011/01/08(土) 01:10:23.53 ID:ZiKesIEqP
- ちょっとくらい相手してやるのになあ。
急にいなくなるとつまらない。
暇だ。
妹よ、暇だぞ。
お兄ちゃん、暇だよ!?
男「……いやいやいや」
妹と遊ぶとか。
何考えてんだか。 - 9: 2011/01/08(土) 01:12:09.59 ID:ZiKesIEqP
- でも、気になるよな。
帰ってきたらいきなり部屋を漁ってんだから。
もちろん。
俺相手だから、めちゃくちゃ薄着だったし。
妹じゃなかったら襲ってたぞ。
いや、それはないか。
男「妹ー、飯ー」 - 10: 2011/01/08(土) 01:14:17.50 ID:ZiKesIEqP
- 妹「はいはい」
男「なんだそのめんどくさそうな返事は」
妹「いつもと変わらないじゃん」
男「いいや、違うな。いつもはもっと『はぁい♪』だったはずだ」
妹「裏声はきついよ」
むぅ、冗談に乗ってこないか。 - 11: 2011/01/08(土) 01:18:21.30 ID:ZiKesIEqP
- と、言いつつ、俺に飯を運んでくる。
手際良いなあ、こいつ。
男「なんだよ、おとこでもできたか?」
ピクリと。
妹の体が動く。
妹「……」
あれ、図星か?
最後に、妹はコップを凄い音を鳴らして置いた。
妹「そんなわけ、ないじゃん」
……どうやらこいつの口癖は『~じゃん』らしい。 - 12: 2011/01/08(土) 01:19:48.56 ID:ZiKesIEqP
- というか、なんかめっちゃ怒ってる。
妹「あ、醤油切れてる」
男「せうゆ切れたの?」
妹「……買ってくるね」
男「ちょ、ちょい待ち」
ボケをスルーしたあげくの放置はきついぜ。 - 14: 2011/01/08(土) 01:22:22.24 ID:ZiKesIEqP
- 妹「なに?」
うわあ、めっちゃ冷たい視線。
男「なら一緒に行こうぜ、一人は寂しいぜ」
妹「なに、シスコン?」
男「違う、オリコンだ」
オリジナルシスターコンプレックス。
妹「……行ってきまーす」
男「待てって!」
悪かった、悪かったって! - 16: 2011/01/08(土) 01:24:35.05 ID:ZiKesIEqP
- 妹「私が出したご飯どうするつもり?」
男「食べるから!」
妹「醤油無いけど?」
男「食べるから!」
妹「じゃあその間私は?」
男「食べるから!」
妹「い、妹を食うな!」
男「ぐはっ!」
全部『食べるから!』はまずかったか! - 19: 2011/01/08(土) 01:29:39.37 ID:ZiKesIEqP
- 妹「まったく……」
男「……行ってらっしゃい」
妹「もうっ」
妹は椅子に腰かけた。
男「ん?」
妹「待っててあげるから、食べなよ」
男「おお!」
流石妹!
男「やいやい、このブラコン!」
妹「行っていい?」
男「悪かった」 - 20: 2011/01/08(土) 01:32:17.00 ID:ZiKesIEqP
- それでは、改めて。
男「いただきます」
妹「はい、どうぞ」
機嫌が一向に直らない。
男「……うん、いつもながら美味い」
妹「良かった」
顔は全然喜んでないんだが。 - 21: 2011/01/08(土) 01:34:34.61 ID:ZiKesIEqP
- 男「……」
黙々と食べる。
妹「あんまり早く食べると体に悪いよ」
男「お前を待たせてるから早く食べてるんだ」
妹「嬉しいこと言うじゃん」
あ、笑った。 - 23: 2011/01/08(土) 01:35:53.12 ID:ZiKesIEqP
- 妹「もし、さ」
男「うん」
妹「人生相談したいって言ったらどう思う?」
男「お前のキャラに合わないと思う」
妹「流石だね」
また、笑う。
ツボがわからん。 - 25: 2011/01/08(土) 01:39:17.41 ID:ZiKesIEqP
- 妹「あのさあのさ」
男「あん?」
……待て、妹。
身を乗り出すと、ブラが見えちまうぞ。
いや、別に興味は無いぜ?
妹のブラなんかな。
でもな。
おとことして、おとことしてはこのシチュエーションは素晴らしい。 - 26: 2011/01/08(土) 01:41:00.12 ID:ZiKesIEqP
- 妹「明日のご飯何がいい?」
男「え、えーっとだな」
ブラは忘れるんだ、ブラは忘れろ。
妹のなんの魅力も無い幼稚なブラなんか忘れろ。
お前は兄だろ、しっかりするんだ!
男「飾り気のあるのが、いいかな」
何言ってんだ俺は!? - 28: 2011/01/08(土) 01:46:22.65 ID:ZiKesIEqP
- 妹「ふぅん……」
男「……」
これは、謝ろう。
謝った方がいい。
妹「どんな感じがいいのかな?」
男「色は白!」
妹「白!?」
ああああ、止まらねえええ。 - 29: 2011/01/08(土) 01:50:52.35 ID:ZiKesIEqP
- 妹「ネットは得意じゃないけど、調べてみようかな……」
男「いやいや、わざわざ買わなくてもいいんだぞ」
妹「違うよ、レシピ!」
む、こいつ、なんの話をしてるんだ?
……まさか、錬金術師か!?
ブラの錬金術師!?
妹「……どこ見てんの?」
やべ、凝視してた。 - 30: 2011/01/08(土) 01:52:21.63 ID:ZiKesIEqP
- 男「いや、一心不乱に飯を食ってたから他のことに目がいかなかった」
妹「そっか」
男「……」
また、黙々と食べる。
妹「あのさあの――」
男「ふぃ、ご馳走さま!」
妹「あ……うん」
なんだよ、食べ終わったんだぞ。
名残惜しそうだぞこの野郎。 - 32: 2011/01/08(土) 01:56:57.59 ID:ZiKesIEqP
- 妹「食べ終わったらあっちに置いといて」
男「へいへい」
お前は母さんか。
妹「あとで洗うから……とりあえずお醤油買いに行こう」
男「おう」
妹「着替えるから、待ってて」
男「よし、手伝おう」
妹「……本気?」
んなわけあるか。 - 35: 2011/01/08(土) 02:00:37.69 ID:ZiKesIEqP
- 男「嘘だよ嘘」
妹「……覗かないでね」
わお、警戒心マックスじゃないか。
覗くなと言われて、覗かない奴がいるか!?
覗いてやるぜヒャッハー!
とまあ、ちょっと世紀末風にはしゃいでみたけれど。
うん、覗きませんよ、俺は。 - 36: 2011/01/08(土) 02:02:59.51 ID:ZiKesIEqP
- そして待つこと数分です。
うふふ。
ごめん、ちょっと調子に乗った。
妹「おまたせ」
男「何十分待たせるつもりだ!」
妹「そんなに待ってないじゃん」
男「……いやあ、もっとこう、あのな」
妹「?」
男「もっと豪快にツッコんでくれよ」
妹「そういう趣味なの?」
あれ、なんか勘違いされた? - 37: 2011/01/08(土) 02:05:55.09 ID:ZiKesIEqP
- 男「違う違う、全然違う!」
そういうのじゃなくてさ。
妹「はははっ」
……笑うなよ。
妹「おかしいね」
おかしくねーし。
妹「ほら、行こ」
男「ほいほい」 - 38: 2011/01/08(土) 02:08:21.21 ID:ZiKesIEqP
- なんか、よくわからないけど、腑に落ちないぞ。
妹「どう?」
男「あん?」
妹「ちょっとませてるかな?」
男「いんや」
最近の子はこんなもんなんじゃないか。
男「まあ、お前が何を着てもませガキとしか思わん」
妹「子供扱いはやめて」
怒った。 - 40: 2011/01/08(土) 02:12:07.28 ID:ZiKesIEqP
- でも、ませてるとか言ったのはお前だぞ。
男「悪い悪い」
妹「ふんっ」
怒り方がまだまだ子どもだな。
可愛い奴め。
男「bigAに行くのか?」
妹「普通にダイエーでいいじゃん」
いやいや。
だからここでツッコんで欲しいのよ。 - 42: 2011/01/08(土) 02:18:01.23 ID:ZiKesIEqP
- 妹「まあ、そうだね」
男「近いしな」
妹「うん」
そういえば。
とても久しぶりに一緒に歩く気がする。
男「明日、暇か?」
妹「え?」
まあね、と。
軽い返事。 - 43: 2011/01/08(土) 02:20:02.68 ID:ZiKesIEqP
- 男「そうか」
妹「え、聞いただけ?」
男「そうだけど」
妹「じゃあ、聞かないでよ」
つまんない、とつぶやく。
なんだよ、期待してたのかよ。 - 44: 2011/01/08(土) 02:21:34.20 ID:ZiKesIEqP
- 男「そういえばさ」
妹「ん?」
男「お前、打ち上げとか行かないのか?」
よく、体育祭とかのシーズンになると色んなところでうるさい中学生やらを見かけるけど。
妹「それを言ってる人がどうなのやら」
……。
誘われたことはあっても、行った記憶はないな。 - 45: 2011/01/08(土) 02:24:05.33 ID:ZiKesIEqP
- 妹「ご飯作らなきゃ行けないし、外食して無駄なお金使っちゃうし、あんなの意味無いもん」
男「でも、お前いつも誘われるだろ?」
妹「なんでわかるの?」
男「だって、面白いもん」
妹「バカにしてる?」
男「滅相もない」
妹「バカだから面白い人と、頭いいから面白い人が世の中には存在するの」
男「後者だよ後者」
前者は俺のことを言うのだろう。
……ごめん、バカだけど面白くはなかった。 - 86: 2011/01/08(土) 22:43:46.54 ID:ZiKesIEqP
- もうすぐでダイエーである。
妹「醤油以外にも、明日の用意も買っておこうかな」
男「もう夜遅い。あまり長くはいれないぞ」
妹「わかってるよ」
誰かさんじゃあるまいし、と。
小さくぼやく。
なんだか、嫌な予感がしてならない。
まあ、いつもそうなんだけどな。 - 88: 2011/01/08(土) 22:47:25.38 ID:ZiKesIEqP
- ・ ・ ・
男「おい」
妹「はい?」
ビクリと体を震わせてしまった。
やばい、もう帰って来たのか。
いつもはこんな時間に帰ってこないのに。
もっと遅いじゃん。
男「なんでここにいる」
妹「失礼だなあ」
私は頬を膨らませた。
妹「可愛い妹が兄の帰りを待っていたのさ」
男「ならなんで物色してんだよ」
さて、なんのことでしょう? - 89: 2011/01/08(土) 22:49:33.91 ID:ZiKesIEqP
- とりあえず、ボケて逃げよう。
妹「は、ハサミー!」
男「そんな妹はいらない」
あらら、ちょっとコジコジみたいになっちゃった。
まあ、いっか。
妹「いいじゃん、ちょっとくらい……」
さて。
唐突に私の脇腹をあの人が掴む。
男「させるか!」 - 90: 2011/01/08(土) 22:51:34.75 ID:ZiKesIEqP
- 私が決意を新たにした瞬間に何してんの、この人。
くすぐったい。
妹「セクハラ」
男「急に女になるな」
……女だし。
そういうのは妹だから~とかでもダメだよ。
妹「でも、安易に体を触るのは……ちょっとねえ」
男「なんだよ」
なんかたじろいでる。面白い。 - 91: 2011/01/08(土) 22:53:42.07 ID:ZiKesIEqP
- 反応しなくなっちゃった。
妹「……んーん、なんでもない」
いつも同じ反応で、面白くない。
男「お、おい」
つまんないの。
妹「もういいや、ごめんなさい」
もっと困ってくれてもいいじゃん。
妹「……ふんっ」
ほんと、退屈。 - 92: 2011/01/08(土) 22:56:02.80 ID:ZiKesIEqP
- 私からしかけるといつもこう。
自分からはノリノリで来るくせに。
私からのノリには合わせてこない。
自分勝手な人。
ベッドに倒れこむ。
妹「……はぁ」
小さく溜息。
こぼしても、意味無いけれど。
男「妹ー、飯ー」
だったら私があなたの部屋を出る前に行って欲しい。 - 93: 2011/01/08(土) 22:57:58.50 ID:ZiKesIEqP
- 妹「はいはい」
男「なんだそのめんどくさそうな返事は」
なるでしょ、それは。
それにさ、
妹「いつもと変わらないじゃん」
男「いいや、違うな。いつもはもっと『はぁい♪』だったはずだ」
……出ました、この人のノリ。
妹「裏声はきついよ」
ご飯はできてるので、とりあえず持ってこよう。 - 94: 2011/01/08(土) 23:01:08.73 ID:ZiKesIEqP
- 男「なんだよ、おとこでもできたか?」
……え?
妹「……」
私は硬直した。
いるのがバレたからではない。
実際のところ、いない。
それでも私は、怒った。
違う意味で、だけど。
それでも平然を装って、コップを持っていく。
妹「そんなわけ、ないじゃん」
動揺を隠し切れていないなぁ、自分。 - 96: 2011/01/08(土) 23:03:45.42 ID:ZiKesIEqP
- ……落ち着こう、すこし。
とりあえず、台所の周りの整理でもして、落ち着こう。
……あれ?
妹「あ、醤油切れてる」
どうしよう。醤油が無いとあの人、食べれない。
男「せうゆ切れたの?」
ここでもボケてくるか。
妹「……買ってくるね」
スルー、スルー。
男「ちょ、ちょい待ち」
ツッコまれないときついだろうなあ。
妹「なに?」
ちょっときつめの視線で睨む。 - 97: 2011/01/08(土) 23:05:02.16 ID:ZiKesIEqP
- 男「なら一緒に行こうぜ、一人は寂しいぜ」
いきなり、なんなの。
妹「なに、シスコン?」
理由は何?
男「違う、オリコンだ」
もう、めんどくさい。
妹「……行ってきまーす」
男「待てって!」 - 98: 2011/01/08(土) 23:06:04.22 ID:ZiKesIEqP
- 妹「私が出したご飯どうするつもり?」
男「食べるから!」
あ、良い返事。
妹「醤油無いけど?」
男「食べるから!」
でも、それはちょっと悪いかも。
妹「じゃあその間私は?」
男「食べるから!」
妹「い、妹を食うな!」
男「ぐはっ!」
いきなり性的なのは困る。 - 99: 2011/01/08(土) 23:07:39.64 ID:ZiKesIEqP
- 妹「まったく……」
呆れた人。
男「……行ってらっしゃい」
妹「もうっ」
どうして私は甘いのかな。
男「ん?」
妹「待っててあげるから、食べなよ」
男「おお!」
ふん、なに喜んでるんだか。
男「やいやい、このブラコン!」
……。
妹「行っていい?」
男「悪かった」
素直でよろしい。 - 100: 2011/01/08(土) 23:10:22.76 ID:ZiKesIEqP
- 彼は箸を持って、手を合わせた。
男「いただきます」
妹「はい、どうぞ」
やっと、食べ始める。
男「……うん、いつもながら美味い」
妹「良かった」
工夫とか、色々してるからね。
不味いなんて、言わせない。
男「……」
荒々しい食べ方。ちょっと汚い。
妹「あんまり早く食べると体に悪いよ」
男「お前を待たせてるから早く食べてるんだ」
ふうん、そっか。
妹「嬉しいこと言うじゃん」
ちょっと、嬉しい。 - 102: 2011/01/08(土) 23:12:23.37 ID:ZiKesIEqP
- 妹「もし、さ」
男「うん」
妹「人生相談したいって言ったらどう思う?」
……って、何聞いてんだろ。
いきなりこんなこと言われても、答えらんないじゃん。
男「お前のキャラに合わないと思う」
……そうなんだ。
妹「流石だね」
よくわかってるじゃん。 - 103: 2011/01/08(土) 23:14:28.68 ID:ZiKesIEqP
- 私は何がしたいのだろう。
妹「あのさあのさ」
また、話を振る。
男「あん?」
妹「明日のご飯何がいい?」
また、他愛のない質問。
『なんでもいいよ』って、言われちゃうじゃん
男「え、えーっとだな」
あ、考えてる。
なんか、またボケられるかと思ったけど。 - 104: 2011/01/08(土) 23:18:47.05 ID:ZiKesIEqP
- ちょっと期待してる自分がいる。
男「飾り気のあるのが、いいかな」
なかなかない答えだった。
妹「ふぅん……」
せっかく言ったのに、前向きな答えを出せなかった。
男「……」
ちょっとあっちが落ち込んじゃってる。
これはダメだ。
妹「どんな感じがいいのかな?」
男「色は白!」
妹「白!?」
白い、料理!? - 106: 2011/01/08(土) 23:20:53.04 ID:ZiKesIEqP
- ここまで言ってくれたんだ。何かで見たのかな、聞いたのかな。
妹「ネットは得意じゃないけど、調べてみようかな……」
男「いやいや、わざわざ買わなくてもいいんだぞ」
妹「違うよ、レシピ」
私が作らなきゃ意味無いじゃん。
あなたに美味しいものを作ってあげたいんだから。
……あ、今の無しだから。
とか言ってると、私の胸元を、彼が見ている。
妹「……どこ見てんの?」 - 107: 2011/01/08(土) 23:23:25.12 ID:ZiKesIEqP
- 男「いや、一心不乱に飯を食ってたから他のことに目がいかなかった」
それもそうか。
こんな貧相な胸見ても、面白くないよね。
妹「そっか」
男「……」
会話が途切れてしまった。
なんでもいい、話を続けよう。
妹「あのさあの――」
男「ふぃ、ご馳走さま!」
妹「あ……うん」
どうやら、終わってしまったらしい。 - 108: 2011/01/08(土) 23:27:50.33 ID:ZiKesIEqP
- 妹「食べ終わったらあっちに置いといて」
男「へいへい」
妹「あとで洗うから……とりあえずお醤油買いに行こう」
片づけはいつでもできるからね
男「おう」
妹「着替えるから、待ってて」
薄着じゃあ、寒いし。
……って、私この人の前でちょっと露出しすぎじゃない!?
男「よし、手伝おう」
え、ええ!?
妹「……本気?」
ちょっと、怖い。
男「嘘だよ嘘」
妹「……覗かないでね」
性的なボケにはまだ慣れない。 - 109: 2011/01/08(土) 23:29:14.50 ID:ZiKesIEqP
- ふう。
何期待してるんだか。
覗きになんてこない来ない。
彼のことだ、やはりただの冗談。
……一度、ドアを振りかえる。
彼はいない。
……そういえば、いつ頃から私は彼のことを。
『お兄ちゃん』と呼ばなくなったのだろう。 - 110: 2011/01/08(土) 23:32:04.37 ID:ZiKesIEqP
- 考えるだけ無駄。意味ない、意味ない。
ササっと着替えよう。
私が待たせてたら意味がない。意味ない、意味ない。
妹「おまたせ」
男「何十分待たせるつもりだ!」
ああ、またか。
妹「そんなに待ってないじゃん」
自分のボケだけを見てほしいのはわかるけどさ
男「……いやあ、もっとこう、あのな」
妹「?」
男「もっと豪快にツッコんでくれよ」
ついにツッコミ要請してきた。
妹「そういう趣味なの?」
追い打ちをかけてみたり。 - 111: 2011/01/08(土) 23:33:27.49 ID:ZiKesIEqP
- 男「違う違う、全然違う!」
凄い必死だ。
妹「はははっ」
つい、笑ってしまう。
だっておかしいじゃん。
妹「おかしいね」
ちょっと、彼を倒した気分。
妹「ほら、行こ」
男「ほいほい」 - 113: 2011/01/08(土) 23:35:10.23 ID:ZiKesIEqP
- 少し歩いて。
妹「どう?」
男「あん?」
妹「ちょっとませてるかな?」
……いや、いや。
なにしてるの、私。
服装のこと聞くとか。
……彼女じゃ、あるまいし。
男「いんや」
それ相応、ってところの評価かな
男「まあ、お前が何を着てもませガキとしか思わん」
妹「子供扱いはやめて」
私は怒った。子供扱いは、嫌い。 - 115: 2011/01/08(土) 23:37:06.99 ID:ZiKesIEqP
- 男「悪い悪い」
妹「ふんっ」
この人にだけは、子ども扱いはされたくなかった。
この人にだけは。
男「bigAに行くのか?」
bigA? ……ああ、なるほど。
big=大=ダイ、A=エー。
妹「普通にダイエーでいいじゃん」
ルーさん目指してるの? - 116: 2011/01/08(土) 23:39:33.87 ID:ZiKesIEqP
- 妹「まあ、そうだね」
男「近いしな」
妹「うん」
あんまりスーパーなんか行かないくせに、よく知ってるじゃん。
二人で買い物なんて、何年ぶりよ。
覚えてないや。
男「明日、暇か?」
妹「え?」
サラッと、質問される。
明日は、どうだったっけ。
考えろ私、もしかしたら、どこかに行けるかもしれない。
彼と、どこかに。
妹「まあね」
確か、なかったはず。 - 117: 2011/01/08(土) 23:41:06.15 ID:ZiKesIEqP
- 男「そうか」
……え?
妹「え、聞いただけ?」
男「そうだけど」
『どこか行くか?』とかじゃないの?
……。
妹「じゃあ、聞かないでよ」
最悪。
期待させないで欲しい。 - 118: 2011/01/08(土) 23:42:33.81 ID:ZiKesIEqP
- つまんない。
私は知らぬ間に、つぶやいていた。
どういう意味で言ったのかは、自分でもわからなかった。
男「そういえばさ」
妹「ん?」
あちらから、話を振ってくる。
なんだろう。
男「お前、打ち上げとか行かないのか?」
……私、邪魔なのかな。
妹「それを言ってる人がどうなのやら」 - 120: 2011/01/08(土) 23:51:04.29 ID:ZiKesIEqP
- 妹「ご飯作らなきゃ行けないし、外食して無駄なお金使っちゃうし、あんなの意味無いもん」
男「でも、お前いつも誘われるだろ?」
妹「なんでわかるの?」
誘われても、いかないし。
男「だって、面白いもん」
嘘つき。
妹「バカにしてる?」
男「滅相もない」
それがバカにしてるって言うんだよ。
妹「バカだから面白い人と、頭いいから面白い人が世の中には存在するの」
男「後者だよ後者」
なに、ムキになってるんだろ。 - 123: 2011/01/08(土) 23:56:09.58 ID:ZiKesIEqP
- もうすぐでダイエーなのに。
悪い雰囲気。
妹「醤油以外にも、明日の用意も買っておこうかな」
その間に、調子を戻そう。
久しぶりに、二人だし。
家じゃあんまり話さないからね。
男「もう夜遅い。あまり長くはいれないぞ」
妹「わかってるよ」
誰かさんじゃあるまいし。
なんて、私はつぶやいた。
今日だって、遅く帰ってくると思ってたし。
ちょっと、自分で言って嫌な感じ。
・ ・ ・ - 128: 2011/01/09(日) 00:27:51.32 ID:7RJff9kGP
- 俺はスーパーに行くと。
ガキのころからこれはかかさずやっていた。
お菓子売り場に直行してしまう癖がある。
仕方ない。
まだまだ心は子どもである。
と、いうわけで早速。
妹「先にどこか行かないでね」
釘打たれた。 - 129: 2011/01/09(日) 00:36:13.33 ID:7RJff9kGP
- 男「妹を置いて、どこかに行くと思うのか?」
妹「じゃあなんで私より前にいるの?」
男「……」
そそくさと妹より後ろに行く。
くそう、お見通しか。
久しぶりの買い物なのに。
こいつ、天才か。 - 131: 2011/01/09(日) 00:41:04.58 ID:7RJff9kGP
- 妹「お菓子売り場は、後で二人で行けばいいじゃん」
……。
男「そうだな」
本当に、記憶力がいいな。
妹「とりあえず、明日は何がいい?」
男「ハンバーグ!」
俺は子どもだ。
妹「白くて飾り気のあるものじゃなくていいの?」
男「こ、こんなところでそんな話するなよ!」
妹「え?」
めちゃくちゃキョトンとしている。
ブラはダメだぜ、妹。 - 133: 2011/01/09(日) 01:00:45.07 ID:7RJff9kGP
- 男「俺はハンバーグが食べたいんだ!」
それは譲らんぞ!
妹「いつもと同じじゃん」
男「いいだろ、別に」
はははっ、と。
軽快に笑いやがる。
妹「まあ、いっか」
ニッコリと笑う。 - 134: 2011/01/09(日) 01:03:25.87 ID:7RJff9kGP
- 二重に笑うなんて言葉を使ったけど。
一つ目は笑い声。
二つ目は顔が笑ったということだ。
まあ、わかるか。
妹「じゃあ、ハンバーグの用意、しなきゃね」
男「そうだな、まず肉をだな……」
妹「結局先に行くんじゃん」
別にこれはいいだろ。
俺の勝手である。 - 136: 2011/01/09(日) 01:07:34.74 ID:7RJff9kGP
- その時。
俺の目の前には。
見たことのある人物がいた。
小さな背丈。
憎たらしい笑顔。
?「おや?」
こちらに気づいてしまったようだ。
近づいてくる。
?「やあ、奇遇だね」 - 141: 2011/01/09(日) 01:19:06.46 ID:7RJff9kGP
- 男「お前……」
女「ふふ、こんなところで出会うなんて、運命かな?」
そんなわけないだろう。
女「なにをしてるんだい? 君がこんなところにいるなんて」
男「妹と買い物に来てる」
女「こんな時間に……怪しいね」
怪しくねえよ。 - 142: 2011/01/09(日) 01:24:56.59 ID:7RJff9kGP
- 妹「先に行かないでよ……あっ」
男「……お、おう」
女「やあ」
妹「ど、どうも」
女「ふふっ、妹くん、奇遇だね」
これは面倒くさい。
別にこいつらの仲が悪いわけじゃないけど。
妹はやつに、優しいから……。
妹「……じゃあ、私は買い物の続きしてるから、喋ってていいよ」
男「いや、俺も――」
妹「いい。邪魔だから」
そんな、酷いぜ。 - 143: 2011/01/09(日) 01:32:25.01 ID:7RJff9kGP
- 女「ふふ、反抗期かな?」
男「そうなのだろうか……」
ちょっと心配だ。
すこしくらい生意気でも可愛いやつなのに。
実の兄を『邪魔』ってお前……。
女「まあ、そういうことだから」
男「あん?」
女「ボクも買い物をするよ」
男「そうか? じゃあ俺はどうすればいい?」
女「それは君が決めるんじゃないか?」 - 144: 2011/01/09(日) 01:35:17.88 ID:7RJff9kGP
- なんだよ。
なんかいつもと違うぞ。
男「じゃあ、付きあわせろ」
女「人がいるよ……?」
男「いつものシャレを入れるな」
女「ダメかい?」
……こいつはこいつだな。 - 149: 2011/01/09(日) 01:46:17.24 ID:7RJff9kGP
- 女「それにしても君は……」
男「あん?」
女「……鈍いね」
男「誰がのろいって?」
女「違うよ、にぶいと言ったんだ」
漢字は一緒だ。
女「気づかない?」
男「なにがだよ」
知らぬ間に、俺に何かしたのか? - 151: 2011/01/09(日) 01:53:08.60 ID:7RJff9kGP
- 女「ふうん……」
よくわからんことを言うやつだ。
女「これはボクがどうにかできるものじゃないね」
男「は?」
女「それじゃあ、ボクは買い物に戻るね」
男「じゃあ、付き合うぞ」
女「いいよ、邪魔だから」
ニッコリと。
小悪魔的な発言。
ひでえ。こいつもひでえ。
女「それじゃあ、また」
そして、やつは買い物を再開した。 - 152: 2011/01/09(日) 01:59:27.86 ID:7RJff9kGP
- この後、こいつは俺を完全に無視したため。
仕方なく、俺は妹のところに行くことにした。
妹よ、どこだ。
……妹をちょっと焦りながら探すとは。
どっちが子どもかわからん状態だ。
男「あ、いたいた」
妹「……」
男「お、もう色々入ってるな」
妹「まあね」
口調が刺々しい。 - 154: 2011/01/09(日) 02:05:56.89 ID:7RJff9kGP
- 妹「楽しい会話はいかがでしたか?」
男「あれほど苦痛な時間も無い」
妹「最低」
男「なんでだ」
妹「女さんに失礼だし、私の気遣いにも失礼じゃん」
じゃんが耳から離れなくなるじゃん。
男「まあ……あれだ、言葉の綾ってやつだ」
妹「……平野綾でしょ」
男「俺は久川綾だ」
断じてそこは譲らない。
って、いきなりボケるなよ! 真面目に答えちまったぞ! - 155: 2011/01/09(日) 02:11:51.09 ID:7RJff9kGP
- 男「んなことより」
妹「?」
男「お前は俺に言うことがあるはずだ」
妹「なに?」
男「謝れ」
妹「なんで?」
男「『邪魔』はさすがに悲しいから」
妹「邪魔だもん」
あれ、目から汗……?
男「お前なぁ」 - 156: 2011/01/09(日) 02:18:37.91 ID:7RJff9kGP
- 妹「めんどくさいの」
男「……え」
妹「あんたの相手」
男「……おい」
いくらなんでも。
兄を『あんた』呼ばわりは。
むかつく。
男「あんたって、なんだよ」
妹「……知らない」
男「待てよ」
とっさに腕を掴む。 - 157: 2011/01/09(日) 02:20:10.81 ID:7RJff9kGP
- ビクッとして。
妹「は、離してっ」
顔を赤くする。
なんだこいつ。
男「なんだよ」
妹「……」
あれ……なんか。
泣いてる?
妹「!」
目をゴシゴシと拭いて。
妹「……ふんっ」
プイっとそっぽを向く。 - 219: 2011/01/09(日) 22:03:24.87 ID:7RJff9kGP
- 男「……俺、悪いことしたか?」
妹「……」
無視。
男「なあ?」
妹「……」
そして、カートをレジに持っていこうとする。
流石にそれを阻止するつもりはなかった。
普通に待とう。
俺は入口付近で待つことにした。 - 220: 2011/01/09(日) 22:10:29.52 ID:7RJff9kGP
- ついに、来てしまったのだろうか。
妹の、反抗期。
いや、思春期か。
……ってこともないか。
どうしよう。
下ネタのボケはスルーだったしな……ううむ。
いや、今日のボケはあんまり拾ってくれなかったって感じ。
男「ツッコまれないボケはなんの意味もないんだぞ……」
悲しく、ひとりごちる。 - 241: 2011/01/10(月) 03:41:35.24 ID:qkwc2jQ6P
- 妹「……」
お。おう。
ヌッと俺の後ろにあらわれたのは。
言わなくてもわかるだろうが、妹である。
妹「入れるのくらい手伝ってよ」
ぷんぷんしてる。 - 242: 2011/01/10(月) 03:42:44.38 ID:qkwc2jQ6P
- 男「いやあ、俺は邪魔だから」
妹「それ、屁理屈」
ま、まあ、この子ったら。
女の子のくせに屁だなんて!
妹「……つまんないこと考えてる?」
男「まさか!」
ごめん、考えてました。 - 245: 2011/01/10(月) 03:50:00.71 ID:qkwc2jQ6P
- 妹「……」
冷めた妹だ。
男「まあ、なんにせよ、帰ろうぜ」
妹「女さんに言わなくていいの?」
男「言う必要はない」
なにかにつけてやつを出してくるな。
妹「……そっ」
素っ気ねえ。 - 246: 2011/01/10(月) 03:52:04.61 ID:qkwc2jQ6P
- 男「……」
妹「……」
帰宅途中、である。
帰宅途中っていいづらいな、きたくとちゅう。
……気まずい。
俺、何でこんな目に遭わなければならないのか。 - 247: 2011/01/10(月) 03:55:37.94 ID:qkwc2jQ6P
- 妹「……ねえ」
男「あん?」
急な言葉。
妹「……不良みたい」
男「い、いや、咄嗟だったから……」
咄嗟に『あん?』って出るのもおかしいけど。
妹「……まあ、いいや」
見逃してくれた。 - 248: 2011/01/10(月) 04:03:45.81 ID:qkwc2jQ6P
- 妹「……女さんとは、最近どうなの?」
は?
妹「……付き合ってたり、する?」
いやいやいや。
俺は言いたいね。
さっきお前と同じ反応を俺は取るぞ。
男「そんなわけ、ねえだろ」
流石に『~じゃん』まで同じではないけれど。 - 250: 2011/01/10(月) 04:20:25.39 ID:qkwc2jQ6P
- 妹「ふうん……」
男「そ、そうだ」
ちょっと、どもっちゃった。
妹「あの人以上に、仲良い人いるの」
いるとも!
……いる、とも。 - 252: 2011/01/10(月) 04:51:09.75 ID:qkwc2jQ6P
- 男「……いません」
素直に、俺は答えた。
妹「……ふぅん」
男「ま、まあそういうことだ」
妹「そうなんだ」
私じゃないんだ、と。
つまらなそうに言った。 - 253: 2011/01/10(月) 04:52:09.57 ID:qkwc2jQ6P
- ちょ、ちょっと待て。
その回答もあったのか?
それで良かったのか?
男「……」
ちょっと間が空いてしまった。
突っ込めそうもない。
やめておこう。 - 305: 2011/01/10(月) 20:06:59.67 ID:qkwc2jQ6P
- 男「……あのな、妹よ」
妹「……」
一応、聞いているのだろう。
男「俺はお前と仲が良いのではない」
俺は続ける。
男「むしろ、愛している、LOVEだ」
妹「なんでやねん」
ついにツッコんだ。 - 309: 2011/01/10(月) 20:10:52.44 ID:qkwc2jQ6P
- 男「引いたか?」
妹「冗談はやめてよ」
男「冗談じゃない、愛してる!」
妹「そういう冗談をやめてって言ってるの!」
怒ってる。
なんだよ、そんな顔真っ赤にすることないじゃん。 - 311: 2011/01/10(月) 20:16:09.91 ID:qkwc2jQ6P
- 男「俺の目を見ろ! 俺が冗談を言ってるように見えるか」
妹「っ……」
瞳そらさないで。
男「さあ!」
妹「っ!」
また、そらされる。
妹「そ、そんな目で……み、見るな」
やべえ、顔赤過ぎる。怒り心頭じゃねえか! - 314: 2011/01/10(月) 20:32:43.33 ID:qkwc2jQ6P
- 男「見ろおおおお!」
怒るまで、俺はやめないぜ!
妹「!」
キッと目を細めて。
俺の頬をぶったたいた。
妹「はぁ……はぁ……」
息が荒い。SK5!
すでにキレてる5秒後だ。 - 315: 2011/01/10(月) 20:36:30.87 ID:qkwc2jQ6P
- 男「い、妹……」
妹「そういう冗談が、一番嫌い!」
そう言って、べーっと舌を出して、走り去った。
もちろん、家に帰ったのだ。
男「……やっちゃったかな?」
ここまで怒ると思わなかった。
流石にやりすぎた。
……どうしよう。
どうしようかな。 - 316: 2011/01/10(月) 20:39:07.98 ID:qkwc2jQ6P
- 男「みんな、どうすればいい?」
そう、ここで俺は。
安価をしようと思う。
というわけで>>……。
いや。
しないけれど。 - 319: 2011/01/10(月) 20:43:00.97 ID:qkwc2jQ6P
- 男「さて」
歩こう。
家に帰宅して、妹に謝るしかない。
ちょっと俺は、冗談を言いすぎてしまったのかもしれない。
好きなのは本当なんだがなぁ。
……誤解はするなよ? - 321: 2011/01/10(月) 20:45:48.00 ID:qkwc2jQ6P
- 妹は、可愛いやつである。
兄の俺ですら可愛いというくらいなのだ。
きっと俺だからツンツンしているだけで。
学校ではきっとデレデレなのだろう。
……いや、それはそれでいやだな。
逆にして欲しい。
むしろ『お兄ちゃん』って慕って欲しいぞぉ。 - 323: 2011/01/10(月) 20:52:06.71 ID:qkwc2jQ6P
- どうしよう。
こんなことを言っていると。
叩かれた頬が痛む。
男「……」
早く帰ろう。
ちょっと、真剣モードにならなくては。 - 324: 2011/01/10(月) 20:54:57.97 ID:qkwc2jQ6P
- 帰宅。
男「ただいま」
小さく声が響く。
居間が暗い。
……部屋か。
よし。
夜這いだ! - 326: 2011/01/10(月) 20:58:18.60 ID:qkwc2jQ6P
- 男「なんてな」
普通に行くんだけども。
男「おーい、妹?」
ドアをノックする。
男「いるかー」
いるに決まっているけど、一応確認。
妹「いません」
いた。 - 334: 2011/01/10(月) 23:05:49.56 ID:qkwc2jQ6P
- 男「そうか、いないのか」
どこにいるのかな……。
妹「もっとくまなく探しましょう」
男「妹の下着が目当てだったんだが」
扉が反対側から圧力がかかってくる。
妹「絶対に入れないから」
男「冗談だ、冗談」
しまった。
妹が可愛いために、また冗談を言ってしまった。 - 335: 2011/01/10(月) 23:07:24.31 ID:qkwc2jQ6P
- 妹「……」
扉の圧力が消えた。
男「入っていいか?」
妹「やだ」
男「どうして」
妹「顔、見たくないから」
そりゃないぜ嬢ちゃん。 - 337: 2011/01/10(月) 23:09:35.82 ID:qkwc2jQ6P
- 男「……俺はお前の顔が見たいぞ」
こんなこと。
妹にしか言えないな。
妹「……自分勝手だよ」
男「そうなのかね」
わりと真剣なんだけどな。 - 338: 2011/01/10(月) 23:12:32.37 ID:qkwc2jQ6P
- 男「……入るぞ」
妹「待って」
ドアノブに手をかけた俺に、静止をかけた。
静止、だからな。
妹「あんたが入ってきたら、私はあんたの妹らしくない行動をするかもしれない」
それでも、いい? と。
小さな声で、言った。
男「ああ、もちろんだ」 - 341: 2011/01/10(月) 23:20:04.69 ID:qkwc2jQ6P
- そんなことくらい、受け止めてやろう。
可愛い妹のために。
人肌、脱いでやる。
男「開けるぞ」
ガチャっと。
ドアを開ける。
そこには。
薄いキャミソール姿の、妹がいた。 - 344: 2011/01/10(月) 23:23:58.14 ID:qkwc2jQ6P
- 男「……」
おいおい。
妹「……」
妹は俺と目が合うや否や。
俺を抱きしめた。
ちょっと苦しい。
男「はは……どうした?」 - 353: 2011/01/10(月) 23:33:24.60 ID:qkwc2jQ6P
- 妹「……」
なんかなぁ。
男「いやあ、あのな?」
妹「さっきの、約束」
男「……」
これが、妹らしくない行動――なのか。 - 356: 2011/01/10(月) 23:37:18.63 ID:qkwc2jQ6P
- 妹「どうしてこんなことしてるかわかる?」
妹の顔は。
俺の体で隠れている。
男「……見当もつかん」
さらに力強く抱きしめられ。
妹「顔、見たくないから」
ここまで引っ張ってそれかよ。
妹「それと――離れたくないから」
軽く矛盾してないか……? - 362: 2011/01/10(月) 23:45:02.64 ID:qkwc2jQ6P
- 男「じゃあ、顔見せろよ」
妹「やだ」
男「どうして?」
耳が赤くなっているのがわかる。
というか、体が暖かい。
妹「恥ずかしいじゃん」 - 365: 2011/01/10(月) 23:52:30.92 ID:qkwc2jQ6P
- 妹は。
顔を隠したままである。
男「お前、顔見せなかったら……」
脅してみるか。
男「チューしちゃうぞ。チュー」
妹「!」
すると妹は。
顔を上げて。
俺の唇にキスした。 - 441: 2011/01/11(火) 20:25:23.35 ID:zaqVjo4GP
- ……あ、あれー。
男「え? え?」
妹「……」
わけがわからない間に。
妹は顔を隠した。
今、あいつは俺に何をした?
唇にすこし、違和感がある。 - 444: 2011/01/11(火) 20:41:09.72 ID:zaqVjo4GP
- 男「お、おい」
妹「やだ」
まだ何も言ってない。
男「今、なにした?」
妹「キスした」
キス?
きす?
接吻……? - 446: 2011/01/11(火) 20:54:20.74 ID:zaqVjo4GP
- 妹「恥ずっ」
そして。
耳をまた赤くする。
……恥ずかしいのはこっちも同じだ。
実の妹にキスされて。
いいにおいがするとか、思ってるし。 - 447: 2011/01/11(火) 20:59:35.62 ID:zaqVjo4GP
- ドキドキしてる。
どうしようどうしよう。
すげぇ汗かいてきた。
男「……」
肩を掴んで押す。
妹の体を俺から離そうとするも、妹の体はピッタリとくっついている。
まずい、変な気分になってきた。 - 450: 2011/01/11(火) 21:10:21.71 ID:zaqVjo4GP
- 男「は、な、れ、ろ……!」
妹「い、やぁ……!」
今確認してドキドキを通り越してまずいんだ。
離れてくれ。
フッと、妹に力が抜ける。
力強く、押した俺まで前に倒れる。
男「おわっ」
妹「あっ……」
気がつけば。
顔は数センチの距離になっていた。 - 456: 2011/01/11(火) 21:24:52.50 ID:zaqVjo4GP
- 妹は顔をキッとさせて。
俺をキスしながら、抱きしめた。
こんな抱きしめ方は。
普通、家族にはしないだろう。
この抱きしめ方は。
一人のおんなが。
一人のおとこを愛する時の、それだった。 - 467: 2011/01/11(火) 22:51:37.78 ID:zaqVjo4GP
- 男「……」
ムードがさっきと、まるで違う。
もう、逃げられそうもない。
妹「……もう、駄目だから」
男「あ?」
一体、何がだ。
妹「ここまでさせといて……浮気とか、駄目だから」 - 468: 2011/01/11(火) 22:58:21.80 ID:zaqVjo4GP
- ここまでしたのは。
お前だろう。
男「……」
妹「……」
男「まあ」
可愛いから。
許そう。
妹「ちょっ!? ど、どこ触って……っ!?」 - 474: 2011/01/11(火) 23:06:24.33 ID:zaqVjo4GP
- 本当に。
実の妹に俺は何をしているのだろう。
妹「そ、そんなとこ……触るなぁ」
男「なんで?」
妹「い、言わなくてもわかるでしょっ」
男「わからんなぁ」
説明してくれないと、な。 - 475: 2011/01/11(火) 23:13:46.17 ID:zaqVjo4GP
- 妹「手つきがエロい!」
そう言われても。
男「じゃあ、俺のことを『お兄ちゃん』って呼べるか?」
妹「なんでそんな話になるの?」
男「いやあ、なんとなく」
妹「……呼べるわけないじゃん」
ああ、わかってる。わかってるさ。
- 477: 2011/01/11(火) 23:16:57.33 ID:zaqVjo4GP
- こいつは。
結構前から。
俺のことが好きだったのだろう。
……自分で言うのは恥ずかしいけど。
だから。
俺のことを、兄と。
『お兄ちゃん』と呼びたくなかったのだ。
男「可愛いやつめ」
妹「ひゃっ!」
意地悪したくなるのも仕方ないというやつだ。 - 478: 2011/01/11(火) 23:21:21.62 ID:zaqVjo4GP
- 男「妹ぉ~」
妹「ちょ、バカ! バカ男!」
妹に。
本名で呼ばれる。
男「ああ、バカだ! 俺はバカで変態な兄貴だー!」
妹「あぅ……わ、私にとっては……ひ、一人のおとこの人……なんだから」
ピタリ、と。
俺の手が止まる。 - 480: 2011/01/11(火) 23:24:29.96 ID:zaqVjo4GP
- そうなのだ。
俺は、兄貴じゃなく。
一人の、おとこなのだ。
男「……」
どうしよう。この妹。
愛しくてたまらない。 - 483: 2011/01/11(火) 23:30:07.61 ID:zaqVjo4GP
- 男「わかったよ、妹」
妹「……?」
男「俺は今日からお前の彼氏だ」
妹「!」
男「まあ、彼氏といってもアレだぞ? 本当に、本当の……」
妹「うん、わかってる」
叶わないことくらい、と。
どこか寂しそうに、笑った。 - 485: 2011/01/11(火) 23:34:12.39 ID:zaqVjo4GP
- 妹「たまには早く帰ってきて、私の相手をすること! いい?」
男「もちろんだ」
よく、考えてみると。
俺の帰宅時間はとても遅かった。
それだ。
それが理由だ。
俺の中で妹との距離が離れたと思ったのは、多分、それだろう。 - 498: 2011/01/12(水) 01:30:59.55 ID:zjDzuaOQP
- 妹「じゃあ、約束ね」
そう言って。
小指を立てて、俺の方に差し出した。
男「……子どもかよ」
ムッとした顔をしている。
男「……まあ、嫌いじゃないけどな」
そして俺は妹の小指に、俺の小指を絡ませた。
ユビキリである。 - 499: 2011/01/12(水) 01:34:32.58 ID:zjDzuaOQP
- 妹「嘘ついたら包丁でメッタ刺し……」
ヤンデレだった。
男「いやいや、怖いぞ」
妹「じゃあ、一日本当の彼氏ってことで」
男「はぁ……」
妹「いや?」
男「別に」
むしろ、俺にデメリットがないことに驚いた。 - 500: 2011/01/12(水) 01:38:58.43 ID:zjDzuaOQP
- 妹「それじゃあ、約束」
ちょっと前までの不機嫌な顔はどこに行ったのやら。
妹「そうだ」
男「なんだ?」
何か言い忘れたのか?
妹「女さんとあんまりイチャつかないでね」
男「……お前には俺とあいつの会話がそう捉えられるのか?」
イチャついてないだろ、どう考えても。 - 502: 2011/01/12(水) 01:44:18.78 ID:zjDzuaOQP
- 妹「あんたとあんな楽しそうに会話したことないもん」
……むぅ。
そうなのか。
男「しかし、大した話してないぞ?」
妹「例えば?」
……ごめん。
男「それは言えない」
妹「内緒の話なんだ」
視線を下にずらして、ため息をついた。
違う、ただの下ネタばっかりだからだ。 - 503: 2011/01/12(水) 01:47:28.01 ID:zjDzuaOQP
- 妹「ま、いっか」
男「悪いな」
妹「隠し事のひとつやふたつ、関係ないもん」
前向きな妹だ。
妹「私はあなたが好きだから」
……おう。
一瞬ドキッとしてしまったことは言うまでもない。 - 504: 2011/01/12(水) 01:50:28.61 ID:zjDzuaOQP
- 妹「お風呂入るね~」
男「おう」
妹「早急に部屋から出てね、色々困るから」
何があるというんだ。
男「なんだったら一緒に風呂に入ってやろう」
妹「おふざけ禁止」
男「ちぇっ」
もちろん、おふざけだけども。 - 505: 2011/01/12(水) 01:52:17.69 ID:zjDzuaOQP
- 妹「へへへ……」
男「?」
妹「今日、一緒に寝てもいい?」
男「……いいけど」
妹「やったっ。それじゃあ入ってくるね」
……はぁ。
俺はどうやら。
軽度のシスコンらしい。
END - 520: 2011/01/12(水) 05:41:11.58 ID:zjDzuaOQP
- もし、残っていたら妹視点で書きます
- 558: 2011/01/12(水) 22:07:12.99 ID:zjDzuaOQP
- ・ ・ ・
きっとこの人は。
また勝手にどこか行こうとするのだろう。
ほら。
私より少し先行してる。
妹「先にどこか行かないでね」
ギクッと、体を驚かせてる。 - 559: 2011/01/12(水) 22:11:36.35 ID:zjDzuaOQP
- やっぱりね。
男「妹を置いて、どこかに行くと思うのか?」
妹「じゃあなんで私より前にいるの?」
男「……」
ほら、私の言った通り。
小さいころからそうだった。
……最近は、一緒に行かなくなったけど。 - 561: 2011/01/12(水) 22:32:16.53 ID:zjDzuaOQP
- 妹「お菓子売り場は、後で二人で行けばいいじゃん」
……なに、言ってんだろ。
男「そうだな」
この人も簡単に承諾するし。
調子狂っちゃう。
白い料理ってなんなんだろう。
妹「とりあえず、明日は何がいい?」
男「ハンバーグ!」 - 562: 2011/01/12(水) 22:47:05.17 ID:zjDzuaOQP
- さっき言ってたことと、全然違うし。
むしろ、色は逆でしょ。
豆腐ハンバーグのこと、言ってるのかな?
妹「白くて飾り気のあるものじゃなくていいの?」
男「こ、こんなところでそんな話するなよ!」
妹「え?」
ご飯の話しちゃダメなの? - 564: 2011/01/12(水) 22:56:51.78 ID:zjDzuaOQP
- 男「俺はハンバーグが食べたいんだ!」
凄く真剣な目。
この目、嫌いじゃない。
妹「いつもと同じじゃん」
男「いいだろ、別に」
すねてる。なんか、面白い。
妹「まあ、いっか」
なんだか、嬉しい。
ハンバーグ、作ろっと。
妹「じゃあ、ハンバーグの用意、しなきゃね」
男「そうだな、まず肉をだな……」
そう言って、サッサと歩いて行っちゃう。
妹「結局先に行くんじゃん」
この人、やっぱり駄目な人だ。 - 566: 2011/01/12(水) 23:11:06.48 ID:zjDzuaOQP
- 角を曲がって、私から見えないところに行ってしまう。
妹「ほんとに、もう」
あの人は、昔から変わっていない。
良かった。
知らないあの人には、なっていないようだ。
妹「先に行かないでよ……あっ」
そこには。
この人の、とっても親しい人である、女さんがいた。 - 610: 2011/01/13(木) 20:24:24.28 ID:JnSE24KZP
- 男「……お、おう」
気まずそうに私に対応した。
女「やあ」
妹「ど、どうも」
女「ふふっ、妹くん、奇遇だね」
いつもと同じ、素敵な笑顔。
可愛い人だなぁ、やっぱり。
でも。
今の私は、こんな女さんでさえ、嫌だった。
妹「……じゃあ、私は買い物の続きしてるから、喋ってていいよ」
ここから、離れたくなった。 - 614: 2011/01/13(木) 20:34:49.04 ID:JnSE24KZP
- 男「いや、俺も――」
妹「いい。邪魔だから」
その気持ちは嬉しいよ。
でも、無理しなくていいから。
私は一人でサッサと買い物を済ませることにした。
……あ、お肉はとっとこ。 - 617: 2011/01/13(木) 20:48:51.18 ID:JnSE24KZP
- 子ども扱いするなといいながら。
私は、なんてことをしたのだろう。
子どもしかしそうにないような行動。
子どものように拗ねて。
私は、本当に……。
妹「ダメだなあ」
……空しい。 - 620: 2011/01/13(木) 21:00:56.26 ID:JnSE24KZP
- 次々と無心で物を入れる。
あ、これはいらないかな。
今、彼はどうしているのだろう。
仲良く雑談しているのだろうか。
でも、今さらあっちに戻れないから。
先に帰ってしまおうかな。
男「あ、いたいた」
きっとこのときの私はドキっとしていただろう。
なんでかは、内緒。 - 622: 2011/01/13(木) 21:07:04.67 ID:JnSE24KZP
- 妹「……」
どうしよう、なにも言えない。
男「お、もう色々入ってるな」
妹「まあね」
すっごく素っ気ない言葉。
どうして。
どうしてここに?
女さんと、お話は? - 627: 2011/01/13(木) 21:52:38.24 ID:JnSE24KZP
- 妹「楽しい会話はいかがでしたか?」
カマをかけるつもりはないけれど。
ちょっと、皮肉っぽかったかな?
男「あれほど苦痛な時間も無い」
……え?
妹「最低」
男「なんでだ」
妹「女さんに失礼だし、私の気遣いにも失礼じゃん」
自分の気遣いとか、どうでもいいのに。
なんでこんなに突っ張ってるんだろう。 - 630: 2011/01/13(木) 22:03:45.71 ID:JnSE24KZP
- 男「まあ……あれだ、言葉の綾ってやつだ」
妹「……平野綾でしょ」
つまんないシャレ。
突然出てきたのは多分、つい最近、テレビで見たからかな。
男「俺は久川綾だ」
ケルベロス、懐かしー。
なんて、変なことを言って気を紛らわせてるあたり。
私も結構、困ってるみたい。 - 631: 2011/01/13(木) 22:08:54.09 ID:JnSE24KZP
- 男「んなことより」
妹「?」
男「お前は俺に言うことがあるはずだ」
妹「なに?」
男「謝れ」
妹「なんで?」
男「『邪魔』はさすがに悲しいから」
妹「邪魔だもん」
私は素直じゃない。
邪魔なんて、思ってない。 - 633: 2011/01/13(木) 22:15:11.17 ID:JnSE24KZP
- 男「お前なぁ」
妹「めんどくさいの」
めんどくさいなんて。
思ってないのに。
男「……え」
妹「あんたの相手」
『あんた』、なんて。
私は、何様なのだろう。
男「……おい」
目つきが鋭い、当たり前だ。
私が悪い。 - 636: 2011/01/13(木) 22:38:51.60 ID:JnSE24KZP
- 男「あんたって、なんだよ」
妹「……知らない」
怖い。
言いたくもないことを言っているこの口も。
今の、彼の顔も。
全てから逃げたくて。
私はレジに向かった。
男「待てよ」
腕を掴まれた。 - 639: 2011/01/13(木) 22:54:01.80 ID:JnSE24KZP
- 服からなのに。
彼の手の体温を感じる。
なんだか、恥ずかしい。
妹「は、離してっ」
すぐに掴まれた腕を振るう。
男「なんだよ」
妹「……」
なんでだろう。
目から、なんで……。
妹「!」
見られたかもしれない。 - 640: 2011/01/13(木) 23:07:17.97 ID:JnSE24KZP
- 妹「……ふんっ」
やっぱり私は、素直じゃない。
男「……俺、悪いことしたか?」
妹「……」
やめて。
男「なあ?」
妹「……」
これ以上、話したら。
私は何を言うかわからない。 - 642: 2011/01/13(木) 23:13:52.08 ID:JnSE24KZP
- 私はレジ通る。
会計を済ましているのに、私の心はここに在らずって感じで。
このあと、どんな会話をすればいいのかとか。
そんなことばかり、考えていた。
妹「普通に謝れば、簡単なのに」
店員さんが首を傾げている。
声、出てたみたいだ。
妹「ご、ごめんなさい」
恥ずかしい。 - 643: 2011/01/13(木) 23:20:45.78 ID:JnSE24KZP
- エコバック忘れてきちゃった。
環境、ごめんなさい。
妹「……」
この時も、ずっと考えてることは同じ。
何を話そう。
悩める、妹です。 - 645: 2011/01/13(木) 23:31:14.69 ID:JnSE24KZP
- 入口の前で、彼は待っていた。
呑気な顔をしている。
さっきの怖い顔は、どこにいったのやら。
妹「……」
お待たせとは、言えず。
妹「入れるのくらい手伝ってよ」
毒づいちゃう、嫌な奴だ。
男「いやあ、俺は邪魔だから」
妹「それ、屁理屈」
彼のことを、全否定してるようだ。 - 647: 2011/01/13(木) 23:36:03.37 ID:JnSE24KZP
- 変な顔してる。
妹「……つまんないこと考えてる?」
男「まさか!」
必死に否定してるところを見ると。
考えてたみたい。
妹「……」
男「まあ、なんにせよ」
帰ろうぜ、と。
笑いかけてきた。
妹「女さんに言わなくていいの?」
男「言う必要はない」
キッパリと言った。 - 648: 2011/01/13(木) 23:38:19.33 ID:JnSE24KZP
- 妹「……そっ」
上手く返事ができたらいいのに。
帰りの道。
気になるけれど。
聞いていないことがある。
聞いてみようかな、どうしようかな。
妹「……ねえ」
そう思っているときにはもう、声に出ていた。
男「あん?」
妹「……不良みたい」
なんで反応しちゃうの、自分。 - 652: 2011/01/14(金) 00:23:39.18 ID:OberexHgP
- 男「い、いや、咄嗟だったから……」
妹「……まあ、いいや」
良かった、乗ってこなかった。
これで、本題に移れる。
妹「……女さんとは、最近どうなの?」
彼はこちらに顔を向けるだけで、話さない。
妹「……付き合ってたり、する?」
答えて、くれるかな。
男「そんなわけ、ねえだろ」
あれ、既視感。 - 653: 2011/01/14(金) 00:26:37.60 ID:OberexHgP
- 妹「ふうん……」
男「そ、そうだ」
このどもり、怪しい。
妹「あの人以上に、仲良い人いるの」
畳みかけてみる。
強い瞳をして。
すこし悩んだ末に。
男「……いません」
妹「……ふぅん」
やっぱりね。 - 654: 2011/01/14(金) 00:31:43.52 ID:OberexHgP
- 男「ま、まあそういうことだ」
一番仲が良いのは、女さん。
妹「そうなんだ」
『私じゃ、ないんだ』
って、思ってる。
嘘でもいいから、言って欲しかった。
……あれ、また、言葉にしてた?
聞こえて、ないよね。 - 658: 2011/01/14(金) 01:05:19.28 ID:OberexHgP
- 男「……あのな、妹よ」
妹「……」
聞いてるけど、返事はしない。
男「俺はお前と仲が良いのではない」
……やっぱり、聞こえてたんだ。
男「むしろ、愛している、LOVEだ」
妹「なんでやねん」
恥ずかしさのあまりに、ツッコんじゃった。
いきなり、そんなこと言われたら、ビックリするじゃん。 - 659: 2011/01/14(金) 01:07:53.42 ID:OberexHgP
- こういう冗談は、タチが悪い。
男「引いたか?」
妹「冗談はやめてよ」
気持ちのこもってないLOVEなんて――
男「冗談じゃない、愛してる!」
――いらないから。
妹「そういう冗談をやめてって言ってるの!」
大きな声を出して、私は怒った。
『愛してる』なんて、言わないで。 - 660: 2011/01/14(金) 01:09:03.87 ID:OberexHgP
- 男「俺の目を見ろ! 俺が冗談を言ってるように見えるか」
妹「っ……」
熱い視線。
直視できない。
私は瞳をそらす。
男「さあ!」
妹「っ!」
また、そらす。
妹「そ、そんな目で……み、見るな」
恥ずかしい、見つめないで。 - 661: 2011/01/14(金) 01:20:29.55 ID:OberexHgP
- 男「見ろおおおお!」
楽しんでる。
ひどい。
こっちは本当に、恥ずかしいのに。
妹「!」
すっごく悪いことをしたと思ってる。
でも、仕方ないよね。
私は、彼の頬をビンタした。
ごめんなさい、でも。
酷いのは、お互いさま。
妹「はぁ……はぁ……」
男「い、妹……」
妹「そういう冗談が、一番嫌い!」 - 662: 2011/01/14(金) 01:23:26.50 ID:OberexHgP
- すっごい拒絶した顔をして。
おまけに舌を出して。
私は走って行った。
食べ物を持っているのに、走ったらダメなのに。
私は、彼から逃げたかった。
からかう、『兄』から。 - 663: 2011/01/14(金) 01:24:51.61 ID:OberexHgP
- 仕方ないこと。
私が異常なのだから。
それでも私は。
彼が好きだから。
彼以外はありえない。
どこに行っても、私はいつもそう思う。
彼じゃなきゃ――。 - 664: 2011/01/14(金) 01:28:38.94 ID:OberexHgP
- 家に着いた。
誰もいない、いるわけがない。
妹「……」
荷物を置いて、階段を上る。
私は、無意識に。
服をすこしずつ脱いでいた。 - 666: 2011/01/14(金) 01:34:24.30 ID:OberexHgP
- 体が火照っているのだ。
熱くて熱くて。
心臓が激しく高鳴っていて。
自分が自分じゃないみたいな、感覚。
玄関のドアの音。
彼が帰って来た。 - 669: 2011/01/14(金) 01:41:46.28 ID:OberexHgP
- 小さく、下の階から『ただいま』と聞こえる。
彼の声だ。
おかえりなんて、もちろん言えない。
トントントン。
階段を上る音。
彼が、上ってきている。
男「おーい、妹?」
ドアがノックされる。
私の体はさらに、熱くなった。 - 671: 2011/01/14(金) 01:43:22.39 ID:OberexHgP
- 男「いるかー」
私は、会いたくなかった。
話したくなかった。
話したくないのに。
妹「いません」
話したい。
矛盾する気持ちのせいで、声を出してしまった。
男「そうか、いないのか」 - 674: 2011/01/14(金) 02:00:16.37 ID:OberexHgP
- 妹「もっとくまなく探しましょう」
先生みたいな、言い方。
男「妹の下着が目当てだったんだが」
よく見ると。
私の服装は、下着に近い。
恥ずかしくて、ドアを内側から押して、開けないようにする。
汗もかいてて、なんだか変な感じ。
妹「絶対に入れないから」
男「冗談だ、冗談」
また冗談。もう。 - 675: 2011/01/14(金) 02:01:57.53 ID:OberexHgP
- 妹「……」
やっぱり、冗談なのだ。
さっきの、LOVEも。
私はドアを抑えるのをやめた。
男「入っていいか?」
妹「やだ」
男「どうして」
妹「顔、見たくないから」
顔を見たら。
私じゃなくなりそうだから。
男「……俺はお前の顔が見たいぞ」
妹「……自分勝手だよ」
私は見たくない。
まただ。
見たくないのに、会いたい。 - 676: 2011/01/14(金) 02:03:34.30 ID:OberexHgP
- こういう気持ちって、どうすればいいの?
男「そうなのかね」
ちょっと呆れるような声。
私だって呆れる。
自分の、意味不明さに。
男「……入るぞ」
妹「待って」
心の準備も。
それ以上に何も考えてない。
入ってきたら、どうすればいいのだろう。
わからない。体がさらにさらに熱くなる。
そして、私は変なことを口走った。
妹「あんたが入ってきたら、私はあんたの妹らしくない行動をするかもしれない」
すこし、間を空けて。
妹「それでも……いい?」 - 678: 2011/01/14(金) 02:06:02.31 ID:OberexHgP
- この沈黙は、了解の意味なのだろう。
男「開けるぞ」
意を決した(のかな?)彼が入ってくる。
ゆっくりとドアを開ける。
彼はすこし、ギョッとして、私を見る。
あああ。
こんな姿を、見られたくない。
恥じる顔も、見られたくない。
だから。
私は顔を隠す。
彼に抱きついて。
男「……」
妹「……」
とっても、暖かい。
でも、冷たい沈黙だった。 - 679: 2011/01/14(金) 02:08:35.99 ID:OberexHgP
- でも、いいのだ。
妹「……」
顔は見られていないし。
これは、さっき私が言った通り。
男「いやあ、あのな?」
妹「さっきの、約束」
約束通りの行動だから。
男「……」
妹「どうしてこんなことしてるかわかる?」
男「……見当もつかん」
ギュッと、抱きしめ、さらに見えないように顔をつける。
妹「顔、見たくないから」
見たくない、見られたくない。
でも。
見たい。 - 680: 2011/01/14(金) 02:11:02.28 ID:OberexHgP
- 妹「それと――離れたくないから」
離れたくない。
私はそう言った。
男「じゃあ、顔見せろよ」
『顔見せろ』と言われて。
私はすこし心配になった。
どうか、私の心臓の音、聞こえませんように、と。
妹「やだ」
男「どうして?」
妹「恥ずかしいじゃん」
意識が朦朧としている。ドキドキが止まらない。 - 730: 2011/01/14(金) 18:37:43.05 ID:OberexHgP
- 男「お前、顔見せなかったら……」
息が当たってる。
ゾクッとするのと、ドキッとする。
男「チューしちゃうぞ。チュー」
妹「!」
冗談、なのだろう。
でも、私は。
冗談に、したくない。 - 732: 2011/01/14(金) 18:51:01.69 ID:OberexHgP
- このあと、どうなっても構わない。
冗談なんて、言わせたくない。
だから。
私は、彼の唇に、自分の唇を重ねた。
男「え? え?」
妹「……」
ダメ。
ここから逃げたいくらいに、恥ずかしい。
でも、顔を見られたくない。
今の私は、顔から火が出そう。 - 737: 2011/01/14(金) 19:49:50.11 ID:OberexHgP
- 男「お、おい」
妹「やだ」
聞かないで。
男「今、なにした?」
恥ずかしいよ。
妹「キスした」
考えることも、できない。 - 739: 2011/01/14(金) 20:14:28.41 ID:OberexHgP
- 妹「恥ずっ」
私はさらに、彼の体に顔をうずめる。
彼のにおいがして。
また、頭が大混乱。
男「……」
彼はグッと、私の肩を掴んだ。
一々ドキドキしてるなぁ、自分。 - 740: 2011/01/14(金) 20:18:22.45 ID:OberexHgP
- そして、私を自分の体からはなそうとする。
やだ。
離れたくない。
顔、見られたくない。
こんな真っ赤な顔。
我儘だな、自分。 - 742: 2011/01/14(金) 20:28:53.71 ID:OberexHgP
- すこしずつ、力が強くなる。
男「は、な、れ、ろ……!」
本気みたいだ。
妹「い、やぁ……!」
こんなに拒絶するなんて。
すこし、そんな不安がよぎる。
妹「っ!」
男「おわっ」
そのまま私はベッドに押し倒された。 - 743: 2011/01/14(金) 20:36:06.67 ID:OberexHgP
- 妹「あっ……」
こんなに近くに。
彼の顔がある。
もう、いいよね。
私はもう一度、キスをする。
そして、抱きしめた。
ギュウッと。
本当に大好きな人を、抱きしめた。 - 744: 2011/01/14(金) 20:38:34.58 ID:OberexHgP
- もう、私のもの。
彼は、私のもの。
……なんか、ちょっと病んでるみたいだけど。
私は、彼のことが大好きなのだ。
男「……」
妹「……もう、駄目だから」
後戻りはできない。
男「あ?」
妹「ここまでさせといて……浮気とか、駄目だから」
あああああああ! 妹なのに私何言ってるの!? - 746: 2011/01/14(金) 20:42:15.25 ID:OberexHgP
- 妹が浮気しないで、なんて。
気持ち悪いじゃん。
きっと、嫌な反応をするだろう。
嫌な、反応……。
男「まあ」
えっ?
!?
妹「ちょっ!? ど、どこ触って……っ!?」
私の胸を撫でるように、触って来た。 - 747: 2011/01/14(金) 20:48:09.55 ID:OberexHgP
- 体を弄ばれているようで。
なんだか、嫌だ。
妹「そ、そんなとこ……触るなぁ」
変な声が出る。
やだ、バカ。
男「なんで?」
妹「い、言わなくてもわかるでしょっ」
そう言いながら手を動かすなぁ!
男「わからんなぁ」
さらに激しくなる。 - 757: 2011/01/14(金) 23:52:23.57 ID:OberexHgP
- 妹「手つきがエロい!」
それでも私は、エッチな子みたいで。
抵抗は、しなかった。
男「じゃあ、俺のことを『お兄ちゃん』って呼べるか?」
……うう。
妹「なんでそんな話になるの?」
男「いやあ、なんとなく」
なんか、ちょっと笑ってる……。
妹「……呼べるわけないじゃん」
ここまでしといて。
兄と妹の関係なんて、いやだもん。 - 758: 2011/01/14(金) 23:55:20.05 ID:OberexHgP
- こんな私を受け入れてくれるのだろうか。
ここまでした、私を。
男「可愛いやつめ」
妹「ひゃっ!」
いきなり首を攻められる。
攻められる……なんて、ちょっと恐ろしいよね。
男「妹ぉ~」
妹「ちょ、バカ! バカ男!」
あ。
名前で呼んじゃった。 - 759: 2011/01/14(金) 23:58:39.47 ID:OberexHgP
- 男「ああ、バカだ! 俺はバカで変態な兄貴だー!」
本当に、変態。
この人、もしかして、経験あるのかな。
すっごく、エッチ。
妹「あぅ……わ、私にとっては……ひ、一人のおとこの人……なんだから」
それでも私は。
一人の男性として。
彼を愛してる。
男「……」
彼の動きが全停止する。
男「わかったよ、妹」 - 760: 2011/01/15(土) 00:03:08.51 ID:GJlbLm8jP
- 妹「……?」
なにをだろう。
気持ちは、受け取ってくれたのだろうか。
男「俺は今日からお前の彼氏だ」
妹「!」
彼氏。
ボーイフレンド。
本物の――彼氏。
男「まあ、彼氏といってもアレだぞ? 本当に、本当の……」
……やっぱりね
妹「うん、わかってる。叶わないことくらい」
無理やりにでも、私は笑って言った。 - 761: 2011/01/15(土) 00:05:17.65 ID:GJlbLm8jP
- 当たり前。
世間体ではおかしいことだし。
私が恋愛対象になることなんて、ありえないことだから。
言っていて自分で悲しくなるけれど。
それが普通で、それ以外が異常なのだ。
妹「たまには早く帰ってきて、私の相手をすること! いい?」
男「もちろんだ」
快諾してくれた。そう言って、嘘をつくくせに。
いつも帰るのは八時回ってるでしょ。
帰ってきても、女さんと一緒だったりだし。 - 763: 2011/01/15(土) 00:08:23.91 ID:GJlbLm8jP
- 妹「じゃあ、約束ね」
ユビキリ。
私は小指を立てて、差し出した。
男「……子どもかよ」
いいじゃん、別に。
子ども扱い、やめてよね。
男「……まあ、嫌いじゃないけどな」
小指だけでも、温もりがわかる。
相当敏感になってるなぁ、私。 - 764: 2011/01/15(土) 00:11:54.22 ID:GJlbLm8jP
- 妹「嘘ついたら包丁でメッタ刺し……」
私の精一杯のボケ。
男「いやいや、怖いぞ」
普通のツッコミが帰ってくる。それでいい。
妹「じゃあ、一日本当の彼氏ってことで」
今の私、恥ずかしいくらい顔が緩んでそう。
男「はぁ……」
妹「いや?」
男「別に」
ごめんね、あなたにデレデレだから。 - 766: 2011/01/15(土) 00:15:06.63 ID:GJlbLm8jP
- 妹「それじゃあ、約束」
もうダメダメ。
顔がにやけて、しかたないよ。
彼も安心してるみたい……だけどね、
妹「そうだ」
男「なんだ?」
妹「女さんとあんまりイチャつかないでね」
無理なのはわかってるけど。
それでも、すこしだけでも。
私の方にも意識を向けて欲しいから。
男「……お前には俺とあいつの会話がそう捉えられるのか?」
……仲、良さそうじゃん。 - 767: 2011/01/15(土) 00:17:56.10 ID:GJlbLm8jP
- 妹「あんたとあんな楽しそうに会話したことないもん」
ちょっと、怒っちゃってる自分。
ジェラシーだね。
男「しかし、大した話してないぞ?」
妹「例えば?」
教えてくれても、いいじゃない。
彼は少し目を泳がせて。
男「それは言えない」
やっぱり、言えないような。
濃密な話を、しているんだ。
妹「内緒の話なんだ」
ちょっと、寂しいな。 - 769: 2011/01/15(土) 00:21:10.28 ID:GJlbLm8jP
- 思わずため息が出てしまう。
すっごく、悲しくて。
それでも、負ける気はなくて。
妹「ま、いっか」
男「悪いな」
謝ることなんか、ないよ。
妹「隠し事のひとつやふたつ、関係ないもん」
頑張ってみせる! 立派な女の人になる!
……ちょっと、変かな。はは。
だって、だって。
妹「私はあなたが好きだから」 - 771: 2011/01/15(土) 00:35:54.14 ID:GJlbLm8jP
- 妹「お風呂入るね~」
男「おう」
妹「早急に部屋から出てね、色々困るから」
ちょっとちらかってるから、恥ずかしい。
風呂でたらお掃除しなきゃ。
男「なんだったら一緒に風呂に入ってやろう」
妹「おふざけ禁止」
一瞬本気にしたけど。
そんなことしたら。
男「ちぇっ」
頭がショートしちゃう。 - 773: 2011/01/15(土) 00:45:48.21 ID:GJlbLm8jP
- 妹「へへへ……」
男「?」
妹「今日、一緒に寝てもいい?」
男「……いいけど」
妹「やったっ。それじゃあ入ってくるね」
ふふふ、とっても楽しみ。
私はどうやら。
純粋に恋している。
そして。
軽度のブラコンらしい。
END
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