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先輩「不老不死になりました」 後輩「はぁ」

1: ◆UhQaGpUR76 2019/11/12(火) 22:52:34.12 ID:xbGiBxwf0
百合です

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2: ◆UhQaGpUR76 2019/11/12(火) 22:55:03.60 ID:xbGiBxwf0





先輩「よっと。よいしょ……」

先輩「よし……、こっちのがサバで~」

先輩「こっちのイカが、にぃ、しぃ、ろぅ、はち……」

先輩「アジにツブ貝にマグロ――……、……うん?」

先輩「……?」

先輩「ん~……?」

先輩「店長ぉ~、ちょっといいっスか店長~」

店長「はい、はいはい。はいよ、どうしたん?」

先輩「いやぁ、これなんですけど」

店長「これ?」

先輩「えぇ。なんかマグロのケースに、違うの混ざっててぇ」

3: ◆UhQaGpUR76 2019/11/12(火) 22:56:12.64 ID:xbGiBxwf0
店長「ありゃ。向こうの出荷ミスかな」

先輩「な~んスかね、これ。白身の……、何だろ?」

店長「あんたね、もうこの店も長いんだから。パッと切り身を見たら、これは何の魚だって、サッと言えるようにならんと」

先輩「はぁ……。で、何スか、これ?」

店長「これはね」

先輩「……」

店長「……」

先輩「……」

店長「……ん~~?」

先輩「ちょっと。ちょっと店長」

店長「いや~、何かしらね、これ。初めて見たかも……」

先輩「まあ、何でもいいんですけど。どうします、これ? お店には出せないっスよね」

店長「まぁねぇ……、何の魚か分からんもん、お客様に出すのは、さすがにねぇ……」

先輩「ですよね」
4: ◆UhQaGpUR76 2019/11/12(火) 22:56:55.13 ID:xbGiBxwf0
店長「う~ん……」

先輩「あ、じゃあこれ、私もらっちゃってもいいですか?」

店長「え。いいけど、どうするん?」

先輩「今日のまかないに食べてやろうと思って」

店長「うえぇ、本気で言ってんのあんた……。何か分からない切り身見て、よくそんな気起きるわねぇ」

先輩「もしかしたら、メチャクチャ美味しいかもしれないじゃないっスかぁ」

店長「はぁ……、好きにしたらいいけどさ。アタっても自己責任だよ。労災出ないからね」

先輩「分かってますってぇ。えへへ、ゴチでぇ~っす!」






5: ◆UhQaGpUR76 2019/11/12(火) 22:59:00.97 ID:xbGiBxwf0






先輩「……――ってな感じでな」

後輩「はぁ」

先輩「まぁ、あれが世に言う、人魚の肉ってやつだったんだろうなぁ……」

後輩「先輩……、留年しすぎて、ついに気まで〇っちゃったんですね」

先輩「うは、後輩ちゃん辛辣っ! いやいや! マジなんだって! 大マジのマジで!」

後輩「大マジの……不老不死?」

先輩「不老不死」

後輩「……お医者さん行きます? 心の」

先輩「少しは信じろよ~! すごいんだぞ~! 何かな、怪我とかしても、すぐ治っちゃうんだよ! ジュワワワ~ッってなって!」

後輩「ワインとステーキでも山ほどやったんですか?」

先輩「ビスケット・オリバじゃねーのよ、私は」
6: ◆UhQaGpUR76 2019/11/12(火) 22:59:47.60 ID:xbGiBxwf0
後輩「……じゃ、不老の方は?」

先輩「あ?」

後輩「キズが治るのは、もし本当なら、何となく不死? 感ありますけど……。不老なのは、どうやって分かったんですか?」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……なんか、若々しい気分になった、感じがする。気持ち的に」

後輩(バカだ……)

先輩「ま、人魚の肉をな、食べた当人には、何となく分かんのよ。感覚的に」

後輩「ちなみにお味は」

先輩「薄味のブリ?」

後輩「はぁ……。悪くもねぇ感じですね」

先輩「なんつーか、お前、アレだな。水族館とか行ったら、泳いでる魚見て『うわ~♪ 美味しそ~♪』とか言っちゃうタイプだな」

後輩「ほっといてください」
7: ◆UhQaGpUR76 2019/11/12(火) 23:01:22.35 ID:xbGiBxwf0
先輩「はぁ……。ま、やっぱり実際に目にしてみねーと、理解(ワカ)ってもらえねぇんだろうなぁ」チキチキチキ

後輩「うわっ、何してんですかちょっと! 何でカッターなんて持ってるんですか先輩っ!」

先輩「そりゃ、もしもの時の防衛手段だろ。乙女のたしなみだろうが」

後輩「そんな乙女いません」

先輩「いいか、よく見てろよ? カッターでちょっと指切ったくらいなら、あっという間に治っちゃうんだからよ」グッ

後輩「うゎ、わわ! や、やめましょうって、先輩ぃ……」

先輩「黙って見てろい! ちょっと指切ったくらいなら……」

後輩「う……」

先輩「ちょっと指を……」グ

後輩「……」

先輩「ちょーっと……」ググ

後輩「……」

先輩「……」ググッ

後輩「……先輩」

先輩「どわぁ!? バカお前っ! やめろよ! 急に声かけんなよなっ!」

後輩「どヘタレじゃねえか」
8: ◆UhQaGpUR76 2019/11/12(火) 23:03:26.34 ID:xbGiBxwf0
先輩「いや……まぁ、治るってわかっててもさぁ、いざ自分でやろうと思うと、ふんぎりがさぁ……」

後輩「だったらやらなきゃいいじゃないですか……」

先輩「あっ、そうだ! 後輩ちゃんやってよ!」

後輩「はぁ!? 何で私が!」

先輩「いいだろー! そもそもお前が信じようとしねえから、証拠見せてやるって言ってんじゃん! お前が疑ってかからなきゃ、こんなことしなくたっていんだからなっ! ほらっ、分かったら早く!」

後輩「何で私のせいみたいになってるんですか……。まったく……、分かりましたよ」チキチキ

先輩「ちょっとだからな! ちょっと切るだけでいいんだからな!」

後輩「はいはい。じゃ、せーのっ――……」グイッ

先輩「うわぁぁ!? バカバカ!」バッ

後輩「わっ! 何ですか! 暴れないでくださいよいきなり……」

先輩「いやお前……、お前なんでノータイムで人刺そうと出来るんだよ!? 怖ぇわ! シリアルキラーか! バッファロー・ビルか!」

後輩「先輩がやれって言ったんじゃん」
9: ◆UhQaGpUR76 2019/11/12(火) 23:04:19.31 ID:xbGiBxwf0
先輩「いや、せめて5カウントくらいからさぁ……、頼むよ……こっちにも心の準備ってもんがあるんだからよ」

後輩「うるさいなぁ、もう……。分かりましたよ。じゃ……5、4……」グッ

先輩「ぅぐ……」

後輩「3、2……」

先輩「……っ」

後輩「1」グイッ

先輩「ああああダメダメ!!!! やっぱちょっと待って!!!!」ジタバタ

後輩「何なんですか! 何なんですかマジでもう!!」

先輩「怖ぇぇぇ! マっっっジでおっかねぇ! うわぁ……、ちょっと……、やば……」

後輩「こんなクソダサい不老不死がいてたまるか」

先輩「いや、ごめんて……。ちゃんとやるから」

後輩「はぁ……、もう。次でラストですからね?」

先輩「ウ、ウス」
10: ◆UhQaGpUR76 2019/11/12(火) 23:05:20.59 ID:xbGiBxwf0
後輩「……そうだ。じゃあ、こうやって……、後ろから……」ギュ

先輩「え、いや……後輩ちゃん?」

後輩「こう……、身体を、先輩が逃げないように、押さえつけながらですね」ガシッ

先輩「いやっ、ちょっ、無理ムリこれ怖ぇ! 待って! 怖いから! 怖いからこれ!」

後輩「へっへっへ、そんな暴れても無駄ですよ……。大人しくしてくださいよ……」

先輩「うぅぅぅ~~~~っっ」ギュウッ

後輩「行きますよ、先輩……。イタいのは最初だけですからね」

先輩「こ、後輩ぃ……っ!」

後輩「……」チクッ

先輩「ひっ!」

後輩「……」チクチク

先輩「きゃひっ!……お前っ! お、おま、お前なぁぁ……っ」

後輩「はぁぁぁぁ……、先輩が私の腕の中で、小さくなって震えてる……。まるでいたいけな子犬の様に……、あの先輩が……」ゾクゾクッ

先輩「性癖イカツいんだよお前ぇ……!」
13: ◆UhQaGpUR76 2019/11/23(土) 19:20:35.38 ID:IYqJZyLx0
後輩「……っ!」プツ

先輩「ぎゃっ」

後輩「あっ……!」

先輩「……」

後輩「すみません、ちょっと深くいきすぎ――……」

先輩「……」

後輩「ぁ……」

先輩「……」

後輩「血が……、止まって……」

先輩「……」

後輩「……傷、塞がってる……」

先輩「……」

後輩「嘘……」

先輩「……ふ。驚いたろ?」グス

後輩「半ベソじゃねーですか」
14: ◆UhQaGpUR76 2019/11/23(土) 19:21:35.30 ID:IYqJZyLx0
先輩「ほっとけ! それより! 見たな! 見ただろ後輩! 嘘じゃなかっただろーが!」

後輩「はぁ、まぁ……」

先輩「なー! これで信じるだろ! なぁ! 信じるだろ不老不死!」

後輩「まぁ……、さすがに実際に目の当たりにしちゃうと、信じないわけには……」

先輩「そーだろそーだろ! か~っ! 得ちゃったんだよなぁ~! 永遠に尽きない命! そして絶対に傷つかない体ってヤツをさぁ~~っ! かぁ~~~っ!!」

後輩(急にウザくなったな……)

後輩「絶対に傷つかな――……あっ」

先輩「あ?」

後輩「……」カプ

先輩「ふぁぁぁ!?」ビクン
15: ◆UhQaGpUR76 2019/11/23(土) 19:22:08.36 ID:IYqJZyLx0
後輩「……」チュゥゥゥ

先輩「~~~~~っっっ!?!?!?」バシッ

後輩「あうっ!」

先輩「ば、バカっ! や、やめろって言ってんじゃん首! やめろって! いっつもいっつもぉ!」

後輩「首筋、アホみたいに弱いですよね、先輩」

先輩「っ!」ゲシッゲシッ

後輩「あうっ! あっ、すみませっ、すみませんっ! 痛い!」

先輩「バーカ! バカ後輩! どうすんだよお前、また痕残ったら!」

後輩「残してるんですよ」

先輩「バカぁぁ! お前なぁ、人が毎度毎度、どうやって隠そうと――……あ」
16: ◆UhQaGpUR76 2019/11/23(土) 19:22:41.12 ID:IYqJZyLx0
後輩「……」

先輩「あ~……」

後輩「……」

先輩「……消えた?」

後輩「消えた」

先輩「……ぉーん」

後輩「……はぁぁぁぁぁ」

先輩「いやいや」

後輩「はぁぁぁぁ~~~~~~……」ガックリ

先輩「こんなことでそこまで萎える?」





17: ◆UhQaGpUR76 2019/11/23(土) 19:23:20.62 ID:IYqJZyLx0





~大学構内~


後輩「……」

後輩「……ふぅん」ペラ

後輩「……」


後輩(昔、ある漁村の娘が――……)

後輩(そうと知らずに、人魚の肉を食べてしまった――……)


後輩「……」ペラ

後輩「……」


後輩(以来、娘は不老不死の体となり――……)

後輩(八百年の歳月を生き、やがて八百比丘尼と呼ばれるようになった――……)


後輩「……はぁ」
18: ◆UhQaGpUR76 2019/11/23(土) 19:24:01.38 ID:IYqJZyLx0
後輩(八百年かぁ……)

後輩(言うほど永遠の命感はないな)

後輩(鶴は千年、亀は万年だぞ)


後輩「……」


後輩(まぁ、でも……)

後輩(八百年は……)

後輩(長い、かな……)


後輩「……」パタン

後輩友「おいっすー! なになに? 何読んでんの?」

後輩「ああ、友か……。別に、何でもないよ」

友「ん~?『人魚の民話』……、アンタ民俗学なんて取ってたっけ?」

後輩「何でもないったら。ただ、暇つぶしに読んでただけ」

友「ほぉ~ん? ま、いいや。今日道場行く?」

後輩「ああ。……行くよ」

友「んじゃ、一緒に行こー!」

後輩「はいよ」





19: ◆UhQaGpUR76 2019/11/23(土) 19:24:39.34 ID:IYqJZyLx0





後輩「あのさぁ」

友「ん?」

後輩「もしさ、不老不死になれるとしたら……、友、なりたい?」

友「は? 何じゃそりゃ」

後輩「いや、ただの世間話」

友「あぁ、さっき読んでた本の話? 人魚の肉ってやつでしょ?」

後輩「ま、そんなとこ」

友「ん~、どうかなぁ。そうだねぇ……。正直、私は絶対ノーサンキューって感じかな」

後輩「そう?」

友「そりゃそうよ。別に長生きしてまで、やりたいことないし」

後輩「意外とドライよね、友ちゃんさ」

友「ほっとけ。それにさぁ、人に知られたりしたら、絶対ヒドい目にあうでしょ」

後輩「ヒドい目?」
20: ◆UhQaGpUR76 2019/11/23(土) 19:25:33.23 ID:IYqJZyLx0
友「たとえばほら、怪しい研究機関にさらわれて、謎の人体実験されたり」

後輩「……」

友「カルト宗教の団体に監禁されて、謎の儀式のイケニエにされたり」

後輩「は、はは……、ま、まさか……」

友「カブトガニ工場みたいな目にあったり!」

後輩「カブトガニ工場……」

友「だって不老不死だよ? どんな手使ってでも研究したい、調べたいって人なんて、山ほどいるに決まってるじゃん」

後輩「……」

友「それ考えたらさぁ、ただの小市民として、分相応に生きてくのが一番……ん? どした後輩?」

後輩「……別に。何でも」

友「そう? ……あ」
21: ◆UhQaGpUR76 2019/11/23(土) 19:26:00.98 ID:IYqJZyLx0
後輩「ん?」

友「あそこ、駐車場に停まってるレクサス」

後輩「ゲ、今日師範いるんだ」

友「はぁ~。まーたシゴかれるよ。目ぇつけられてんのよ私、あのババアに」

後輩「ま、ドンマイ」

友「はぁぁ~……」





22: ◆UhQaGpUR76 2019/11/23(土) 19:26:38.73 ID:IYqJZyLx0





~剣道場~



後輩(人体実験……、儀式のイケニエ……)

後輩(……確かに、不老不死なんて知れたら、放っておかれるはずがないよな……)

後輩(先輩……)



正面に礼ー!

神前に礼ー!


アザッシターー!!!


後輩「あざっしたー」

後輩「……」


後輩(もし、先輩が……)

後輩(悪い連中につかまっちゃったら……)

後輩(それで、人体実験なんてされて……)





23: ◆UhQaGpUR76 2019/11/23(土) 19:27:15.71 ID:IYqJZyLx0





先輩『ひぃィっ……! な、何すんだよぉ! やめろよぉ!』

先輩『お、おい……、何だよソレ……。そんなドリルなんて、何に使――……うわぁぁっ!』

先輩『いやだ! いやだよぉ! カブトガニみたいなことしないでよぉ!』







後輩「……」


後輩(……先輩)

後輩(泣いちゃうだろうな。ヘタレだし……)


後輩「……」


後輩(それはちょっと……、可哀想だな……)
24: ◆UhQaGpUR76 2019/11/23(土) 19:27:42.63 ID:IYqJZyLx0
後輩「……」

友「おつ~……」

後輩「おつかれ、友」

友「あのババア、いつか絶対泣かす」

後輩「イジめられたね、今日は」

友「ほんとクソ。……あ、この後どうする? メシでも行く?」

後輩「あー、ごめん。今日これから飲み」

友「お、合コン?」

後輩「まさか」

友「じゃ、あの先輩さん?」

後輩「……ま、ね」
25: ◆UhQaGpUR76 2019/11/23(土) 19:28:18.12 ID:IYqJZyLx0
友「いやぁ~、ま~たですかぁ? おアツいことで、結構でございますなぁ! ヒューヒュー!」

後輩「うっさい。ヒューヒューは古い」

友「まったくぅ、いーっつも先輩さんじゃん。妬けちゃうわっ、もうっ」

後輩「何でちょっとオネエ入ったの今」

友「あのクールな後輩が、こんなにベッタリになる人がいるなんてねぇ……。高校の時の下の子たちが見たら、腰抜かすわよ」

後輩「別に、ベッタリってわけじゃ……」

友「はいはい。ま、たまには友ちゃんとも遊んでよねぇ?」

後輩「分かった分かった。じゃ、またね」

友「うい、おつかれ」





26: ◆UhQaGpUR76 2019/11/23(土) 19:28:53.50 ID:IYqJZyLx0





~駅前~


先輩「いつもんトコでいいか?」

後輩「ええ、はい」

先輩「おっし、行くかぁ」

後輩「……」


後輩(……先輩)


先輩「空いてっかなぁ、今日~」

後輩「……」チラ


後輩(もし、不老不死のことが、周りに知られたら……)

後輩(……うっかりバレちゃいそうだしな、先輩アホだし……)


先輩「なーんか」

後輩「へっ?」ビクッ
27: ◆UhQaGpUR76 2019/11/23(土) 19:29:52.85 ID:IYqJZyLx0
先輩「今日元気ねーね、後輩ちゃん」

後輩「そ、そうですか? 別にそんなこと……」

先輩「や、何となく」

後輩「……稽古が厳しかったんで、ちょっと疲れてるんですよ。それだけ」

先輩「ふーん? ま、無理すんなよ」

後輩「どうも……」


後輩(アホだけど……、優しいところもあるし……)

後輩(この人が、可哀想な目にあうのは……)

後輩(ちょっと……、いや、それなりに、結構……、だいぶ……)

後輩(……いやだな)


後輩「……」チラ

先輩「~~♪」
28: ◆UhQaGpUR76 2019/11/23(土) 19:30:20.95 ID:IYqJZyLx0
後輩(私が守らなくちゃ)

後輩(私が助けなくちゃ)

後輩(私が――……)


先輩「あっ! 待って、お金おろしてねぇ!」

後輩「ちょっとぉ……、コンビニ過ぎちゃいましたよ?」

先輩「ちょ、ちょい待ってて! すぐ行ってくるから」ダッ

後輩「もう……」


後輩(私が……、先輩を――……)





29: ◆UhQaGpUR76 2019/11/23(土) 19:32:13.51 ID:IYqJZyLx0
今日はここまでです
32: ◆UhQaGpUR76 2019/11/26(火) 22:22:06.58 ID:Ud6Zs9i30





~居酒屋~


イラッシャイマセー

ラッシャッセー!!!


店長「いらっしゃー……って、なんだ、先輩ちゃんかぁ」

先輩「えっへっへ……、店長どうも。席あいてる?」

店長「ちょうどよかった! ちょっとあんた、手伝ってきなさいよ! 今日はもうてんてこまいなんよー!」

先輩「えぇ~~」

店長「いいじゃない、一時間だけでいいからさ、ねっ。どうせ暇してて飲みに来たんでしょ?」

先輩「やですよ、今日は客っス。ほれ、ツレもいるし」

後輩「ど、どうも」ペコリ

店長「あーらまあ、後輩ちゃんじゃない! 久しぶりー!」

後輩「ごぶさたしてます……」

店長「あっはっは、そんなにかしこまんないでぇ! ま、ゆっくりしてってよ」

後輩「は、はぁ」

先輩「この扱いの差よ……」

店長「当たり前でしょー! ま、後輩ちゃんが一緒ならしゃーないかー。はい、2名様ごあんなーい!」


ヨロコンデー

ヨーコンデェェイイ!!!





33: ◆UhQaGpUR76 2019/11/26(火) 22:22:44.02 ID:Ud6Zs9i30





先輩「かんぱーい」カチン

後輩「かんぱーい」チン

先輩「……」グビグビ

後輩「……」グビグビ

先輩「……っぷはぁー!」

後輩「……っぷはぁ……」

先輩「はぁ……、シメサバ頼む?」

後輩「頼みます」

先輩「あとどうしよっかなぁ……」

後輩「っていうか、先輩」

先輩「あん?」

後輩「その後、変わりないです?」

先輩「え? あぁ、相変わらずよ。完全無欠の不死身っぷり」

後輩「そっかぁ……」
34: ◆UhQaGpUR76 2019/11/26(火) 22:23:48.20 ID:Ud6Zs9i30
先輩「昨日なんかな、机のカドに、太腿ガツーンって、まあまあエグめにぶつけちゃったのに、アザもあっという間に消えちゃってさぁ」

後輩「バカ丸出しじゃないですか」

先輩「ほっとけ! いやぁ、しかし便利なもんだなぁ、不老不死ってのはさ」

後輩「不死はすごいですけど……、でも不老の方は、言ってもたかだか、八百年くらいなんでしょ?」

先輩「おん?」

後輩「屋久島の杉の木は千年ですよ、千年」

先輩「いや、屋久杉はすげーけどさ……、八百年って何よ」

後輩「ほら、八百比丘尼って」

先輩「……後輩ちゃんね」

後輩「はい?」

先輩「『八百』っつーのはさ、古い言葉だと『めっちゃいっぱい』くらいの意味よ?」

後輩「え、そうなの?」
35: ◆UhQaGpUR76 2019/11/26(火) 22:24:29.62 ID:Ud6Zs9i30
先輩「そうだよ。ほら、あるじゃん。『八百万』とか、『ウソ八百』とか」

後輩「八百屋とか……?」

先輩「そう……、あ、いや、それは、どうだろ。分からんけど」グビ

後輩「でも、私の読んだ本だと、八百年生きたから八百比丘尼って……」

先輩「ま、諸説あります、って感じ?」グビグビ

後輩「じゃあ、八百年以上……先輩は生きるってこと?」

先輩「知らねぇよ。参考事例もねぇんだし」グビ

後輩「……そっかぁ」

先輩「つーか、いちいちそんなの調べなくても――……ん……?」

後輩「……どうかしました?」

先輩「……」グビグビグビ

後輩「ちょっと、そんな一気にいったら……、先輩弱いんだから……」

先輩「けふっ。……ん~~?」
36: ◆UhQaGpUR76 2019/11/26(火) 22:25:19.74 ID:Ud6Zs9i30
後輩「先輩?」

先輩「これ、ビールか? 本当に」

後輩「そりゃそうでしょ」

先輩「いやだって、全然酔わない、これ。ノンアルじゃねーの?」

後輩「まさかぁ……。ちょっとください」

先輩「ほいよ」

後輩「……」グビグビ

先輩「あっ、飲みすぎ! おいっ」

後輩「けふっ」

先輩「……どうよ」

後輩「……どうって、普通にビールですね。普通の」

先輩「あっれ~? ……っかしいなぁ、普段なら一杯目から、まあまあ気持ちよくなるはずなんだけど……」

後輩「……あ。あれじゃないですか? 不老不死だから」

先輩「だから?」

後輩「毒が効きません、的な理屈で、アルコールにも耐性ができてる、みたいな」

先輩「あー」

後輩「とか」
37: ◆UhQaGpUR76 2019/11/26(火) 22:25:52.15 ID:Ud6Zs9i30
先輩「なるほどね」

後輩「適当ですけど」

先輩「いや、それっぽい! ってことはあれか! 今ならシコタマ飲みまくっても、酔いつぶれねーし、二日酔いにもならないってことかぁ!」

後輩「い、いや、それは分からな――……」

先輩「いやっほう! いやー、前からやってみたかったんだよな! バカ強い酒を浴びるほど飲むやつ!」

後輩「ちょっと……、そんな、無理しない方が……」

先輩「すみませーん!」


ハーイ


後輩「もう、先輩……」

店長「はいはい」

先輩「お、店長。注文ね! シメサバとー、イカとー……」

店長「はいよ」

先輩「……あと、このジンを、ストレートで」ニヤリ

後輩「はぁ……、アホだ……」
38: ◆UhQaGpUR76 2019/11/26(火) 22:26:33.74 ID:Ud6Zs9i30
店長「ちょっとあんた、こんなの頼んで大丈夫なわけ? いくら不老不死だからって……」

後輩「え」

先輩「だーいじょうぶ、だいじょーぶ! 酒の毒も効かねーの、不老不死だから!」

後輩「ちょ――……」

店長「いいけど、お店で吐かんでよ? ……あ、後輩ちゃんも、飲み物頼む?」

後輩「え、いや、え? あ、あの……」

店長「?」

後輩「……な、生で」

店長「はぁーい! ご注文いただきましたぁー!」


スタスタ

39: ◆UhQaGpUR76 2019/11/26(火) 22:27:05.51 ID:Ud6Zs9i30
後輩「……ちょ、あの……先輩?」

先輩「大丈夫だっつーの! マジで全然酔わねえんだから!」

後輩「じゃなくて……。あの、なんで店長さんが、知ってるんですか。その……」

先輩「不老不死のこと?」

後輩「えぇ……」

先輩「なんでって……、言ったから」

後輩「は……はぁぁぁ!?」ガタッ

先輩「わっ、なんだよ」

後輩「ど、どういうつもりなんですか! どうしてそんな大事なこと、軽々しく他人に――!」

先輩「当然だろー、健康上の問題なんだから、勤め先の責任者には、一応伝えとくってのが一般ジョーシキだろ」

後輩「いやいや……」

先輩「何かあったら、お店にだって迷惑が掛かるんだしな。バイトっつっても、そういうとこはしっかりしねーとさぁ」
40: ◆UhQaGpUR76 2019/11/26(火) 22:28:12.92 ID:Ud6Zs9i30
後輩「だ、だけど……、もし他の人にバレたり、噂が広まったり……」

先輩「そんなん、お前に話したのだって一緒じゃん」

後輩「そ、それは……、そう、です……けど」

先輩「だろー?」

後輩「……」

先輩「安心しろってー、話したのは店長と、あとお前だけなんだから」

後輩「……」

先輩「店長も、口カタい人だしな」

後輩「……」


後輩(……なんだ)

後輩(……私にだけじゃ、なかったんだ……)


後輩「……」

先輩「後輩ちゃーん? どしたのほんと。今日元気ねーね、マジで」

後輩「……何でも、ないです……」

先輩「そう?」
41: ◆UhQaGpUR76 2019/11/26(火) 22:28:50.84 ID:Ud6Zs9i30
後輩「……それで、店長さんにも見せたんですか? あの傷がムニョムニョ治るやつ」

先輩「へ? 見せてないけど?」

後輩「え……」

先輩「いや~、やっぱそういうとこ、お前よりか大人だわ、あの人」

後輩「……」

先輩「私が一言、こういうことなんで―っ! って伝えたら、店長もはいはい了解ーっ! ってなもんでな」

後輩「そ――……」


後輩(そんなこと……)

後輩(そんなことって、あるか、普通……!?)

後輩(本気にしてない、にしても……)


後輩「……」


後輩(いや、そもそも……)

後輩(ただの飲み屋に、人魚の肉なんてものが、どうして届いた……?)

後輩(どうして店長さんは、先輩が食べるのを、強く止めなかった……?)

後輩(何の魚かも分からないものを――……)



後輩「……」

先輩「? ……後輩?」
42: ◆UhQaGpUR76 2019/11/26(火) 22:29:50.66 ID:Ud6Zs9i30
店長「おっ待たせしゃーした~♪」

後輩「っ!」ビクッ

先輩「おっ、きたきた!」

店長「あんたはホント、ほどほどにしとくんよ?」

先輩「へいへ~い」

後輩「……」ジッ


後輩(わざわざ店長さんが、自分で注文を持って……?)

後輩(いったい、何のために……?)



後輩「……」ジー

店長「……」

後輩「……」ジー

店長「あたしの顔、なんかついてる?」

後輩「へっ!?」ビクッ

店長「いやぁ~、そんな情熱的に見つめられたら、オネーさん照れちゃうわあ♪」

後輩「いっ、いや! 別にっ、そういうわけでは……っ!!」ワタワタ
43: ◆UhQaGpUR76 2019/11/26(火) 22:30:59.53 ID:Ud6Zs9i30
店長「あっはは、後輩ちゃんって、からかいがいあるよねぇ」

先輩「後輩ぃ~、ちょっかい出すのもいいけど、この人旦那さんいるぜー?」

店長「今は! バツ! イチ! だっての! ――って、何言わすのあんたは!!」ペシッ

先輩「ってぇ!」

後輩「あ、あはは……」

店長「あ~、あんたらと話してると飽きんわ、ほんと」ケラケラ

先輩「だからって店長、酒運んでまで遊びに来てたら駄目でしょー。真面目に働いてくださいよー」

店長「うっさい! 見に来たかったからいーの! あたしの店だからいいんだー!」ケラケラ

先輩「あっ、さてはまた飲んでやがるな、この人!」

後輩「……」ジー


後輩(店長さん、この人は一体……)

後輩(どこまでが本気なんだ……?)


店長「ごゆっくりどうぞ~♪」スタスタ

先輩「やれやれ、仕事中に飲むなよなぁ、まったく……」グビグビ

後輩「……」

先輩「……っくぅ~~! ストレートは効くなぁ~! 効かねぇけど!」
44: ◆UhQaGpUR76 2019/11/26(火) 22:31:35.45 ID:Ud6Zs9i30
後輩「……」

先輩「……後輩?」グビグビ


後輩(冗談のつもりなのか……)

後輩(それとも、何か……)

後輩(何か裏が……、隠してるものが……?)

後輩(もし……、そうだとしたら……)

後輩(私は――……)



先輩「……後輩」

後輩「え? あ、すみません。ちょっとボーッとしちゃって……」

先輩「あのさ……」

後輩「は、はい?」

先輩「ちっとも酔わないのも、割とつまんないのね、お酒って」

後輩「でしょうね」





48: ◆UhQaGpUR76 2019/12/10(火) 21:18:31.58 ID:hgHB/eFA0





ダッダッダッ


後輩『はっ……はっ、はぁ……!』タッタッ

先輩『ハッ、ハッ、ハ……』タッタッタッ


こっちだー!

逃がすなー!


後輩『……っ! こっちです、先輩……!』ダッ

先輩『お、おい、後輩!』タッタッ


ダッダッダッ

ダッダッ





49: ◆UhQaGpUR76 2019/12/10(火) 21:19:03.20 ID:hgHB/eFA0





後輩『あっ――……』

先輩『うぉ……っ』


ザザーン

ザーン


後輩『……』ハァハァ

先輩『嘘だろ……』ハァハァ

後輩『……』

先輩『崖かよ……、行き止まりじゃねえか……』


ザッ


黒服1『追い詰めたぞ』

黒服2『さぁ、大人しくその女を渡してもらおう』

後輩『……』

先輩『はぁ……、くそ……っ』
50: ◆UhQaGpUR76 2019/12/10(火) 21:19:48.58 ID:hgHB/eFA0


ザザーン


後輩『……先輩』

先輩『あ?』

後輩『先輩ひとりなら……、ここから飛んでも、生きて逃げられますよね……?』

先輩『お、おい……、どういう意味だよ、後輩……』

後輩『ここは私が食いとめます』

先輩『なっ……!』

後輩『私は大丈夫です! だから、どうか先輩だけでも!』

先輩『馬鹿やろ……っ! お前な――……』



『お、いたいた』



後輩『へ?』

先輩『は?』
51: ◆UhQaGpUR76 2019/12/10(火) 21:20:41.49 ID:hgHB/eFA0
店長『おーい。先輩ちゃーん』

先輩『あれ、店長ぉー』

後輩『な……っ!?』

店長『何してんのよ、もう。そんな危ないとこいないで、こっち来んさい、こっち』

先輩『えぇ~? いやでもさぁ……、うぅん、まいったなぁ、もぉ』

後輩『せ、先輩! 駄目です! そいつらのところに行ったら……!』

店長『だーいじょーぶだってぇ。悪いようにはしないからさぁ』

先輩『うーん……、まぁ、店長がそういうなら……』スタスタ

後輩『先輩ぃ!』

先輩『悪ぃな、後輩。店長に言われちゃったらさぁ、ほら、しゃーないじゃん?』

後輩『そ、そんなぁ……!』
52: ◆UhQaGpUR76 2019/12/10(火) 21:21:11.01 ID:hgHB/eFA0
先輩『そんじゃな、後輩』

店長『そうそう、おいでおいで。あ、ついでに今日シフト入れる?』

先輩『え~、それは勘弁っスよ、店長~』スタスタ

店長『固いこと言わんでさぁ』スタスタ

後輩『せ……せんぱ……』ヨロッ


ガラッ


後輩『あっ!』


ガララッ!!


後輩『あ~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!』





53: ◆UhQaGpUR76 2019/12/10(火) 21:26:59.17 ID:hgHB/eFA0





ピピピピピピピピピピピピピピピ


後輩「~~~~~~~~~っっっ!!!」ガバッ

後輩「っっ!?!?」


ピピピピピピピピヒ


ピッ


後輩「……」

後輩「……」

後輩「……夢?」

後輩「……」

後輩「……」ハァ


~数日後・早朝 後輩のアパート~


後輩(何つー夢だ……)


後輩「……」ハァァァ
54: ◆UhQaGpUR76 2019/12/10(火) 21:27:34.18 ID:hgHB/eFA0
後輩(結局、あの日の店長さんの真意は……)

後輩(考えれば考えるほど、分からなくて……)

後輩(ずっと悶々とした挙句……、こんなしょーもない夢まで……)


後輩「……」


後輩(……いや、ありえないんですけどね、普通に考えて)

後輩(こんな陰謀論じみた妄想、真剣に悩んでる方が、アタマおかしいです)


後輩「……」

後輩「……ぅん」

後輩「……うぅぅん」


後輩(けど……)

後輩(そもそも不老不死なんて、ありえないことが起こっている以上、何があったって不思議とは言えないわけで……)


後輩「うぅ~~ん……」ブンブン

後輩「いやぁ~~……」ブンブンブン
55: ◆UhQaGpUR76 2019/12/10(火) 21:28:12.93 ID:hgHB/eFA0
先輩「お、起きた」

後輩「あっ! お、おはよう……ございます……」

先輩「何してんの、お前」

後輩「え? あー、いや……、朝の……体操……?」

先輩「へぇ。起き抜けから大変ね、剣道ガール」

後輩「あ、あはは……」

先輩「つーかお前、結構うなされてたぞ? 大丈夫か?」

後輩「え」

先輩「何か、明け方ずっと、カブトガニぃ~、って言ってた」

後輩「な、なな何ですかねっ!? 変な夢でも見たのかな!? あは、あははは……」
56: ◆UhQaGpUR76 2019/12/10(火) 21:29:03.70 ID:hgHB/eFA0
先輩「また変なストレス溜めてんじゃねーの?」

後輩「や、あの、別に、何ともないですから!」

先輩「そう?」

後輩「も、もちろん! 元気いっぱい! いっぱいいっぱい!」

先輩「いっぱいいっぱいなのかよ」



後輩(先輩……)

後輩(今、先輩に、妄想みたいな話をして……)

後輩(怖がらせたり、不安にさせたりするのは……)

後輩(それは……、いやだな……)


後輩「……」
57: ◆UhQaGpUR76 2019/12/10(火) 21:29:36.06 ID:hgHB/eFA0
後輩「って、ていうか、先輩、今朝は珍しく早いですね」

先輩「1コマ目出なきゃなんだよ、今日」

後輩「へぇ~、すごい。ついに卒業する気になったんですね」

先輩「シバくぞこの野郎」

後輩「はは……」

先輩「ったく……」

後輩「……あの」

先輩「ん?」

後輩「先輩、今日バイトあります?」

先輩「あー? おう、7時から」

後輩「私、飲み行っていいですか、今日?」

先輩「別にいいけど。相手してやれねーぞ。金曜だから混むしな」

後輩「え、えぇ。大丈夫です。普通に飲むだけなんで……」

先輩「ほーん……?」

後輩「……」





62: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:20:34.84 ID:xfZunq6b0





~夜・居酒屋~


後輩「……」ガラッ


イラッシャイマセー!

ラッシャッセェェーイ!!


後輩「……うーん」


後輩(本当に混んでた……)


先輩「いらっしゃ……うわ、お前、本当に来たのかよ」

後輩「はぁ、すみません……。席、空いてます?」

先輩「空いてるけどさ。……カウンターでいいよな?」

後輩「ええ、全然」
63: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:21:42.12 ID:xfZunq6b0
先輩「んじゃ、そこの席な」

後輩「どうも。……って、あれ。予約席?」

先輩「取っといてやったんだろが。お前が来るっていうから」

後輩「うわぁ、何か、すみません。ありがとうございます」

先輩「つーか、マジで相手してやれねーからな、今日は」

後輩「わ、分かってますって」

先輩「生でいいかー?」

後輩「お願いします」

先輩「はいよー」

後輩「……」


後輩(……なんか、気ぃ遣わせちゃったな)

後輩(……まあ、とにもかくにも)


後輩「……」キョロキョロ
64: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:22:50.85 ID:xfZunq6b0
後輩(店長さん……)

後輩(あの人の様子を探って……)


後輩「……」


店長「はい、これ4卓様ー!」


後輩(……いた)


後輩「……」ジッ


後輩(もし店長さんが、先輩のことに、何か関係してるとしたら)

後輩(何か、怪しい動きがあるはず……)

後輩(先輩をこっそり観察していたり……、妙な態度を見せたり……)

後輩(何か、不自然なところが……)


後輩「……」ジーッ

店長「……」

後輩「……」ジーー

店長「……?」ニコ

後輩「あ」

店長「……」ヒラヒラ

後輩「……」ペコリ
65: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:23:45.33 ID:xfZunq6b0
後輩(……うーん)

後輩(……普通だ)


先輩「なーにボケっとしてんだよ」

後輩「うひゃあ!」

先輩「変な声出すなバカ」

後輩「せ、先輩……。な、何ですかもう……」

先輩「お前が何なんだよ。ほら、ビール」

後輩「あ、どうも……」

先輩「それと、お通し」

後輩「わぁ……」

先輩「これが山芋のたまり漬け。こっちがつぶ貝の甘辛煮で、あと豆あじのマリネな」

後輩「また、こじゃれたものを……」

先輩「店長の趣味だよ。……じゃ、あとはごゆっくり。飲みすぎんなよー」

後輩「分かってますよぅ……」
66: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:24:35.24 ID:xfZunq6b0
後輩「……」


後輩(……ふぅ)


後輩「……」グビ


後輩(店長さんは……)


後輩「……」


後輩(相変わらず、忙しそうだけど)

後輩(別に変ったところは……)


後輩「……」

後輩「……」ジー

後輩「……」グビ

後輩「……」


後輩(……山芋)


後輩「……」パクリ

後輩「……」シャキ モグ

後輩「……!」


後輩(美味しい……!)
67: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:25:07.07 ID:xfZunq6b0
後輩「……」パクパク


後輩(ほのかに生姜の風味がきいてて……)


後輩「……」グビグビ


後輩(お酒にもよく合う……!)


後輩「……」プハ


後輩(……つぶ貝)


後輩「……」モグ


後輩(美味……っ)

後輩(柔らっかぁ……!)

後輩(どんな仕組みだこれ……!)


後輩「……」モグモグ

後輩「……」グビグビ

後輩「……」モグモグ

後輩「……すみませーん! 生ひとつー!」


ハーイ!!
68: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:26:33.77 ID:xfZunq6b0
後輩「……♪」


後輩(次は何頼もっかなぁ)

後輩(お揚げと漬物……)

後輩(いやいや、まずは刺身のお勧めの引いてもらって……)


後輩「……」ハッ


後輩(……って、違う違う!)

後輩(今日は店長さんの動向を、調べないと!)

後輩(そのために来たんだってば!)


後輩「……っ」ジー

後輩「……」

後輩「……」キョロ


後輩(……お勧めはホンビノスの酒蒸しかぁ……)


後輩「……!」ハッ


後輩(違うってば私ーーー!!!)





69: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:27:12.70 ID:xfZunq6b0





先輩「はい4卓様おかえりでーす!」


アリガトーゴザイマシター!

アリャーシタァァー!!


先輩「……ふぅ」

先輩「……お」


先輩(あいつ、まだ飲んでたんだ)


先輩「……」

先輩「……?」







後輩「……」

後輩「……」ジー







先輩「……」


先輩(何だ? 何かジッと見て……?)
70: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:28:22.85 ID:xfZunq6b0
先輩「……」ヒョイ


店長「またお越しくださーい、ありがとうございましたー!」ニコニコ

後輩「……」


先輩「……?」


先輩(……店長?)

先輩(何だってアイツ、店長のことなんてジロジロと――……)


先輩「……あ」


先輩(そういや、後輩……)

先輩(この前店に来た時も、店長のこと……)


先輩「……ほほーん」

店長「ちょっと先輩ちゃん! 何突っ立ってんの! 席かたしちゃって!」

先輩「あ、サーセーン」





71: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:29:03.17 ID:xfZunq6b0





~後日・大学~


キーンコーンカーンコーン


後輩「……ふぅ」


後輩(……あれから)

後輩(何度か、お店に行ってみたけど……)

後輩(これといった手ごたえもなく……)


後輩「……」


後輩(店長さんが先輩をジッと見ていることは、確かに何度となくあった)

後輩(でも、単なる仕事上の目配りと言ってしまえば、それまでで……)


後輩「……」


後輩(怪しむ理由にはなりませんよね)

後輩(でも、疑いを晴らすほどの根拠もありません……)
72: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:30:07.12 ID:xfZunq6b0
後輩「……はぁー」


後輩(これ以上、お店に顔を出しても、この状況が進展する気はしないし……)

後輩(そして何より――……)


先輩「おーっす後輩ー!」

後輩「あ……、先輩。どうもです」

先輩「あれ、お前、次この教室?」

後輩「法学棟ですよ。ちょっと疲れたんで、休んでただけです」

先輩「あっはは、飲み疲れだろ、どうせ」

後輩「ですかねー……」

先輩「そうだって。ここのとこ連チャンじゃん。おっさんかよ」

後輩「否定できないのがムカつく……」

先輩「んで? 今日はどうする? また一人で飲み来ちゃう?」

後輩「……――ません」

先輩「ん?」

後輩「行け、ません……。もう無理ですよ……」
73: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:31:10.80 ID:xfZunq6b0
先輩「何だよ」

後輩「お金ないんですよぅ……!」

先輩「あっはははは!」

後輩「笑い事じゃないんですよっ」

先輩「あははは!そりゃだって、お前、あんな毎晩あれだけ飲み食いしてりゃさぁ!」

後輩「お店のメニューが美味しいのが悪いんですよ……」

先輩「お前がアホなだけだろー?」

後輩「うっさいですっ!」

先輩「あははは」

後輩「……先輩、念のため聞きますけど……」

先輩「金なら貸さねーぞ」

後輩「ですよね……」


後輩(……まさかこの歳になって、親に仕送りの前借りを頼むハメになるとは……)

後輩(こうなっては、お店でこっそり探りを入れることもできません)

後輩(いったい、どうしたら……)
74: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:31:43.10 ID:xfZunq6b0
後輩「……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……な、なぁ、後輩さ。お前さ、最近よく来るのって、やっぱ店長が――……」

後輩「……あ、はい? ごめんなさい、何です?」

先輩「い、いや、だからさ。お前、店長を――……」


キーンコーンカーンコーン


後輩「あっ、やば! 授業始まった! ……すみません! またです!」ダッ

先輩「あっ……」


タッタッタッ


先輩「……」

先輩「……ほーん」





75: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:32:36.41 ID:xfZunq6b0





~夕方・居酒屋~


店長「~♪」トントン

店員1「大根こっちオッケーでーす」

店長「あんがと~、そこ置いといてー」

店員1「うぃっすー」

店員2「店長~!」

店長「はいはーい」

店員2「お客さんですけどぉ~」

店長「へ? 私?」

店員2「あの何でしたっけ? 先輩ちゃんとこの……」

店長「……後輩ちゃん?」




76: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:33:12.18 ID:xfZunq6b0





後輩「……」


後輩(来てしまった……)

後輩(いや、でも……、もう探りを入れてもラチがあかない)

後輩(そもそも、もう懐も余裕がない)

後輩(だとしたら、もうこの際、仕方がない……)

後輩(イチかバチか! 直接聞いてみるしかない……っ!)


後輩「……」

後輩「……何やってんだろ、私……」


店長「あ~、ごめんごめん」

後輩「あっ」

店長「や!」

後輩「ど、どうも……」ペコリ
77: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:33:46.35 ID:xfZunq6b0
店長「どしたのー。まだお店開かないよー?」

後輩「す、すみません、忙しい時に……」

店長「いやぁ、いいんよいいんよ。それで? どしたん?」

後輩「……あの。実は、先輩の、ことで……」

店長「うん? 先輩ちゃん……?」

後輩「……へ、ヘンな話、なんです、けど……。あの、先輩が……、店長さんに……」

店長「うん」

後輩「……ふ、不老不死、って……」

店長「……」

後輩「あの話……、店長さんは、その、そ、率直に言って、どう思――……」

店長「……ぶっ!」

後輩「え?」

店長「あっっはははははっ! あはははははっっ!!」

後輩「あ、あの……」

店長「あははははっ! ひぃ……っ! ははっ、な、何もぉ! 後輩ちゃんもグルなん? あのしょうもないネター!」

後輩「え、あ……」
78: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:34:14.16 ID:xfZunq6b0
店長「ドッキリ……ってか、モニタリング? あの子もアホだよねー!『店長……、私、死ねない体になった……』ってさあ……クッ、クックク……」

後輩「ドッキリ……」

店長「ハイハイ、っつって流したけど、後輩ちゃんまで仕掛け人なのは……ぶふっ……あははは! あー、駄目だぁ、アホすぎて笑っちゃう!」

後輩「え、えっと……、あ、あー……、あははー、ば、バレてましたかぁー」

店長「あったりまえでしょー! 今時ね、もうちょっとヒネらないと! あんなん、小学生でも引っかからんよー」

後輩「で、ですよねー」

店長「後輩ちゃんもね、あのアホの子に付き合って、しょうもないことやってたらいけんよ? 冗談の通じない相手だったら、カーッていかれてんよ?」

後輩「ご、ごめんなさい」

店長「んっふふ……、私は大丈夫だけど! 面白かったから全然オッケー! はー、久しぶりにアホ見た」ケラケラ

後輩「……」


後輩(……やっばい)

後輩(めちゃくちゃ恥ずかしい……)

後輩(もう絶対、お店飲みに行けない……)
79: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:34:51.77 ID:xfZunq6b0
後輩「……はぁぁ」

店長「ま、アンタたちがこんな、仲良しカップルなのはね、お姉さん的にも見てて嬉しいけどね」

後輩「か、カップル……」

店長「あら、違った?」

後輩「違っては~……、いやまぁ、そういうのじゃ……、まぁ何か、腐れ縁……っていうかぁ、いやま、そのぉ……」

店長「……あ、へぇ。う~ん」

後輩「……え、何です?」

店長「ああ、ごめんね。後輩ちゃんね」

後輩「はい」

店長「好きでしょ? 先輩ちゃんのこと」

後輩「ぶっ!」

店長「違うん?」

後輩「違っ…………」

店長「……」

後輩「……く、ないです」
80: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:35:24.28 ID:xfZunq6b0
店長「……」

後輩「……好き、です」

店長「だーよねー! でさでさ、それって、ちゃんと先輩ちゃんにも言ってる?」

後輩「そ、それはぁ~……」

店長「……」

後輩「でも、わ、わざわざ言うこともないっていうか……。一緒に生活してますし、なんやかんや、いっつも一緒ですし、それも中学から一緒だし、それに――……」

店長「言ってないん?」

後輩「……えっと、あの……」

店長「……」

後輩「……」コクン

店長「あ、違うんよ。責めてるとか、駄目よって言ってるわけじゃ、なくてね?」

後輩「は、はい……」

店長「ただねぇ……。ほら、アホでしょ、あの子」

後輩「はい」

店長「まぁまぁのアホでしょ」

後輩「はい」
81: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:36:39.87 ID:xfZunq6b0
店長「だからね……。もし後輩ちゃんが、あの子のこと大好きで、大切に思ってても……」

後輩「……」

店長「近くにいるのが当たり前すぎるとね、その気持ちに気付けないことって、きっとあると思うんよ。……先輩ちゃんみたいな子は、特にね」

後輩「当たり前……」

店長「そう、当たり前。……一緒にいるのが当たり前だから、一緒にいるのか。好きだから一緒にいるのか……」

後輩「……」

店長「……同じ一緒でも、きっと、ちょっと違うの」

後輩「……」

店長「もし、あなたたちに何か、ちょっとしたトラブルが――……たとえば、たとえばよ?」

後輩「はい……」

店長「何かを試されるような、そんなことが起きたとして」

後輩「……」

店長「そのピンチを救ってくれるのって――……、きっと、そういうちょっとした違いだったりするんよね」

後輩「……店長さん」

店長「……なんてね。ちょっと説教はいっちゃった? ごめんね!」

後輩「い、いえ……」
82: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:37:20.33 ID:xfZunq6b0


後輩(……店長さん……)


店長「……、……バツイチの言葉は重いなって思ったでしょ」

後輩「お、思ってない! 思ってません!」

店長「あっはは! ……ね、後輩ちゃん」

後輩「はい……」

店長「私ねぇ、後輩ちゃんと先輩ちゃん、あなたたちのこと、本当に大好きなの」

後輩「……」

店長「二人にはずっと仲良しでいてほしいし、二人でずっとアホやって、笑っててほしいし、暇なときは二人で、私のお店に来て、そんで山ほど飲んでほしいわけ」

後輩「……」

店長「だからさ、二人が苦しそうだったり、気まずそうにしてるところは、見たくないんよ……」

後輩「店長さん……」
83: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:38:00.24 ID:xfZunq6b0
店長「……でもね、そんな風になっても、きっとあなたたちは、何やかんや乗り越えて……」

後輩「……」

店長「それで、またアホみたいに笑かしてくれるって」

後輩「……」

店長「そう思ってるよ、私は。本当に」

後輩「はい……」

店長「応援してるんよ、私。これでも」

後輩「……店長さん」

店長「……」ニッコリ

後輩「ありがとうございます」ペコリ

店長「んふふ、真面目よねぇ、後輩ちゃんは!」




84: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:40:19.06 ID:xfZunq6b0





~後日・大学~


先輩「……ふぁ、ねむ」ファー

先輩「……っ」ノビー

後輩「せーんぱいっ!」ダキッ

先輩「うわぁ! びっくりしたぁ!」

後輩「ふふっ、もう、ビビりすぎですよぉ」クスクス

先輩「やめろよ、お前……、心臓止まるかと思っただろ……」

後輩「おっ、不老不死ジョークですね? いやぁ、キレてますねぇ、今日の先輩!」

先輩「……今日は機嫌いいわね、後輩ちゃんよ」

後輩「え~、そうですかぁ? いつもと変わんないと思いますけどぉ」ギュー

先輩「めっちゃひっついてくるじゃん……」

後輩「えへへ……、当たり前ですよぉ」

先輩「当たり前なのかよ」

後輩「でも、当たり前じゃないんですよ」

先輩「……は? 禅問答か?」
85: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:40:56.24 ID:xfZunq6b0
後輩「……ふふ、あのね、先輩」

先輩「何だよ」

後輩「……あ、あー、でもやっぱり、今じゃない方がいっかぁ……。もうちょっと、やっぱり、雰囲気とか……、せっかくだし……」ゴニョゴニョ

先輩「あ、何て?」

後輩「な、何でもないですっ」パッ

先輩「……後輩?」

後輩「また今度、ちゃんとお話しします! ……とっても、大事な話」ニコニコ

先輩「……」

後輩「じゃ、先輩! またでーす」タッタッタッ

先輩「お、おー……」


先輩「……」


先輩(……どうしちゃったんだ、アイツ?)

先輩(近頃妙に、思いつめた顔してると思ってたら……)

先輩(急にアホ面で、ニヤニヤしちゃって……)


先輩「ほーん……」


先輩(とっても……、大事な話……)


先輩「ほほーん……」




86: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:41:40.60 ID:xfZunq6b0





~夜・居酒屋~


先輩「4卓オッケーでーす!」

店員2「ウェーイ」

先輩「洗いもん、手伝いますー」

店員2「ウェイ、サンキュー」

先輩「ウェーイ」

店員2「……」ジャブジャブ

先輩「……」ガチャガチャ

店員2「……」ジャブジャブ

先輩「……」

店員2「……あ、そういやさぁ」

先輩「はい?」
87: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:42:25.84 ID:xfZunq6b0
店員2「何つったっけ? 先輩ちゃんといっつも一緒のさ、あの子」

先輩「後輩?」

店員2「あ、そうそう。後輩ちゃん」

先輩「アイツ、どうかしました?」

店員2「何かさ、こないだお店に来てたよ」

先輩「あー、最近ちょくちょく来てますよね。一人で」

店員2「いや、そうじゃなくてさ。開店前に」

先輩「へ? 開店前? ……何スかそれ?」

店員2「それがさぁ、店長に話したいことがあるとか、何とかってさ」

先輩「……」

店員2「何か、真剣っつーか、こう……、思いつめた顔してて」

先輩「……な、何の用だったんすかねぇ~……?」

店員2「いや、話の内容までは分かんなかったんだけど」

先輩「……」
88: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:42:57.43 ID:xfZunq6b0
店員2「でもさ、店長、戻ってきたら妙にニコニコしちゃっててさぁ!」

先輩「……そっかぁ」

店員2「そっかぁ、じゃないでしょ。どーすんのアンタ」

先輩「どー、って、何をどうするんですか」

店員2「だってさぁ!」

先輩「だっても何も、別に私ら、付き合ってるわけでもねーですし」

店員2「えっ!?」ガッシャン

先輩「うわっ! ちょっ……!? 割れた!?」

店員2「割れてない割れてない! セーフ! ……セェーッフ」

先輩「ちょっとぉ……」

店員2「え、ていうか、真面目に? 恋人じゃないの?」

先輩「違いますって」
89: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:43:58.87 ID:xfZunq6b0
店員2「でも、同棲してんじゃん」

先輩「ルームシェアですって」

店員2「セックスだって」

先輩「!?」ガッシャン

店員2「あっ! ちょっ!?」

先輩「割れてない割れてない!!」

店員2「セェーフ……」

先輩「はぁ……」

店員2「……」

先輩「……何で知ってんスか」

店員2「だってアンタ、たまに首にキスマーク……」

先輩「うぁー……」

店員2「それで付き合ってないってのはさ、ちょっとアレでしょ」

先輩「アレですか」

店員2「アレだよー」
90: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:44:32.32 ID:xfZunq6b0
先輩「……でも実際、お互い告白とか、そういうのもしてねぇですし」

店員2「や、告白とかは、別になくてもいいっしょ」

先輩「恋人っぽいこととかも、まぁ、全然」

店員2「何それ、たとえば?」

先輩「えー? 何だろ……クリスマスデートとか?」

店員2「しないんだ」

先輩「しませんよ」

店員2「バレンタインは?」

先輩「あ、それは友チョコ的なのを」

店員2「あぁ、へぇ……」
91: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:45:03.13 ID:xfZunq6b0
先輩「……だから、アイツが店長とどうにかなったって、別に私に、とやかく言える筋合いはないってワケでしてね……」

店員2「そうかなぁ、筋とか別に、関係ないと思うけどなぁ……」

先輩「リーダー、実は割とイケイケですよね……」

店員2「えぇ~、そんなことないと思うけど~――……」


3名様ご来店でーす!


先輩「いらっしゃいませー」

店員2「ラッシャッセェェーッッ!!」

先輩「……掛け声イカつすぎません?」

店員2「そんなことないと思うけど~……」




92: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:45:36.84 ID:xfZunq6b0





先輩「お先失礼しまーす」


お疲れさまー

お疲れー


ガラララ バタン


先輩「……ふぅ」

先輩「……」


先輩(……後輩)


先輩「……そっかぁ」

先輩「……」
93: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:46:23.85 ID:xfZunq6b0
先輩(……ちゃんと)

先輩(言っとけばよかったなぁ……)

先輩(ちゃんと……、思ってること……)


先輩「……無理じゃんね、もう」

先輩「……死ねない身体なんかじゃ、ね……」

先輩「……」

先輩「……はぁ」

先輩「……」




94: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:47:20.29 ID:xfZunq6b0





~後日・後輩宅~


先輩「……」ペラ

先輩「……」


先輩(八百比丘尼は――……)

先輩(その長い生涯を経たのち……)

先輩(福井にあるお寺で、入定を果たしたという――……)


先輩「……」ペラ

先輩「……」

先輩「福井かぁ……」

先輩「越前ガニだな……」ペラ

先輩「……」パタン

先輩「よし」
95: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:48:59.21 ID:xfZunq6b0
先輩「準備オッケー」


先輩(……悪いな、後輩)

先輩(黙っていくなんて、申し訳ないけど……)


先輩「……」

先輩「これでいいんだ、これで……」

先輩「……行くか」スッ


ドタドタ ガチャン


後輩「ただいまです~! は~、疲れ――……」

先輩「あっ」

後輩「え?」

先輩「……」

後輩「……あの」

先輩「お……、おかえり」
96: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:50:17.55 ID:xfZunq6b0
後輩「はぁ。ただいまです。……お出かけです?」

先輩「あー……まぁ、その……」

後輩「ってか、何ですかその大荷物。旅行行くんじゃない……ん……で――……」

先輩「……」

後輩「……先輩?」

先輩「あー、コホン」

後輩「……」

先輩「んー、後輩」

後輩「はぁ」

先輩「店長と……、仲良く、な」

後輩「はぁ?」

先輩「じゃ」ピッ
97: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:51:25.82 ID:xfZunq6b0
後輩「ちょ、ちょっ、ちょ……っ! じゃ! じゃないんですよ! 何訳わかんないこと言ってるんですかアンタ」ガシッ

先輩「ふぎゃっ」ガクン

後輩「何なんですかいやマジで! 店長さんと仲良くって、どういうことですか! ってかそもそも、どこに行く気なんですかぁ!?」

先輩「ふ、福井……」

後輩「何で福井! 越前ガニでも食べ行く気なんですか! アホなんですかアンタは!」ガッチリ

先輩「うーるーせー! はーなーせー!!」ジタバタ

後輩「やーあーだー!!」


ドタバタ! ドタン! バタタン!!

ドスン!



先輩「ぎゃんっ」

後輩「はぁ……はぁ、ふー……、ふぅー……っ」

先輩「はぁ、はぁ、はぁ……」
98: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:52:11.82 ID:xfZunq6b0
後輩「先輩……」

先輩「ちょ……、退きなさいよ、重……」

後輩「どこに行く……つもりだったんですか」

先輩「……福井のお寺にな、八百比丘尼が最期をむかえたお洞があってな……」

後輩「な……」

先輩「……そこで過ごすのさ。この永遠の命が尽きるまで、ひっそりとな……」

後輩「アホじゃん」

先輩「んだとー!」

後輩「いやアホですよ! アホそのものー! そんなの先輩絶対無理ですから! 一人で一日もいられない寂しんぼのくせに!」

先輩「う、うるせーうるせー!」

後輩「お寺なんて、美味しいもんも何もないんですよ! お酒だって飲めないし!」

先輩「うっ……、飲めないのは……、うぅん……」
99: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:53:06.55 ID:xfZunq6b0
後輩「だいたい! 何のつもりでそんなアホなこと思いついたんですか。小学生の家出じゃあるまいし」

先輩「は……っ、定命の者には分からねぇだろうよ……。トコシエに生きる宿命の、その孤独なんて……」フッ

後輩「うっわ」

先輩「引いてんじゃねーこの野郎ー!」

後輩「……先輩、昔好きでしたもんね、そういう系の。ファンタジー? ラノベ? みたいなやつ」

先輩「やめろー! 昔の話はやめろー!」

後輩「なーにがジョーミョーノモノですか、アホのくせに賢ぶっちゃって……」

先輩「うるせっつーの! い、いいから、さっさとどけ! そんで店長のとこでも行ってこい!」

後輩「あ、それ!何なんですかそれ! なんで店長さんが出てくるんですか!」

先輩「いやだって、この間お前……、店来たんだろ? 開店前に。店長に会いに」

後輩「えっ、なぜそれを……」
100: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:54:13.70 ID:xfZunq6b0
先輩「で、言ったんだろ?」

後輩「へ?」

先輩「付き合ってください的なさ」

後輩「いえ?」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……告白……」

後輩「いやしませんし」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「え?」

後輩「え? 何で? 何でそうなるんです?」

先輩「い、いやだって、何か色々、雰囲気がこう……ゴニョゴニョ。……っつーか、だったらお前、何しに行ったんだよ、店長のとこなんて」

後輩「あ、そ、それは~……、黒幕的な、色々、雰囲気がこう……、ゴニョゴニョ……」

先輩「何で泣きそうなんだよ、そこで」
101: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:55:13.43 ID:xfZunq6b0
後輩「と、とにかく! 全然違います! そんな話、全然してないんです!」

先輩「じゃ、どんな話したんだよ!」

後輩「それは――……」

先輩「あ?」

後輩「……」

先輩「……?」

後輩「……あぁ、そうか」

先輩「ん?」

後輩「こういうことだったんですね、店長さん……」

先輩「……後輩?」

後輩「先輩」

先輩「お、おう」

後輩「私、先輩に、どこにも行ってほしくありません」

先輩「……!」
102: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:55:43.28 ID:xfZunq6b0
後輩「ずっと一緒にいたいし、もっと近くにいたいし、いっぱい二人の時間がほしい」

先輩「こうは――……」

後輩「一緒にいて当たり前、だからじゃなくて。私が、そうしたいから」

先輩「……」

後輩「先輩のことが、好きだから……」

先輩「……っっ」

後輩「だから……、どこにも、行かないでください、先輩……」

先輩「……バカ」

後輩「お願い……」

先輩「……私、多分死なないんだよ?」

後輩「……はい」

先輩「だったら、ずっと一緒なんて、いれないじゃん……」

後輩「……」

先輩「……だから。だから……、私に、お前の隣にいる資格なんて……」
103: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:56:59.65 ID:xfZunq6b0
後輩「関係ないんです。先輩が何歳まで生きたって。私が死んじゃったって」

先輩「……」

後輩「それでも、離ればなれになんて、なりたくないんです。好きだから……」

先輩「……こ、後は――……」

後輩「……」

先輩「……い……」

後輩「……」

先輩「……いいのか?」

後輩「……」コクン

先輩「……不老不死だよ?」

後輩「……」コクン

先輩「お前がお婆ちゃんになっても、私、ピッチピチだったりするんだよ?」

後輩「お婆ちゃんになっても、一緒にいてくれんですね?」

先輩「……お前」

後輩「本当です。先輩が不老不死でも、人間じゃなくても、カブトガニでも……。私、先輩のこと、好きだって言えます」

先輩「……あはは」
104: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:57:47.30 ID:xfZunq6b0
後輩「……」

先輩「カブトガニは、ちょっと無理だろ」

後輩「ふふ……、そうかも」グスッ

先輩「……泣くなよ」

後輩「だってぇ……」グスグス

先輩「……ごめんな、後輩。……ありがとう」

後輩「……」

先輩「私もね、後輩のこと、好き。大好き。たぶん、ずっと前から」





105: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:58:14.15 ID:xfZunq6b0


106: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:58:51.79 ID:xfZunq6b0





後輩「……」

先輩「はぁ……」

後輩「……」

先輩「水いるか?」

後輩「あ、はい」

先輩「ほい」ヒョイ

後輩「どうも」

先輩「……ってかさぁ」

後輩「はい?」

先輩「マジでさ。店長のこと。何の用だったん?」

後輩「いやぁ~……、別にその、本当、大したことじゃなくて……」

先輩「何だよもう」
107: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:59:17.31 ID:xfZunq6b0
後輩「いや何て言うか……、……あ! そう! 先輩のためだったんですからね!」

先輩「はぁ? 何で私?」

後輩「先輩のために、私がどれだけ骨を折っていたか! 身も心も擦り減らして、懐も散々寒くして……」

先輩「あー、はいはい。どうせまたしょーもないことで、空回ってたんだろ? アホくさ」

後輩「なっ……、アホにアホって言われたくありませんー!」

先輩「いや、あはは、どう考えてもアホじゃんお前さー」

後輩「2留の方がアホじゃん」

先輩「だから2留以下じゃん。下の下じゃん。アホレースの一等賞じゃん。優勝ー、後輩ちゃーん」

後輩「~~~~~っっ!!」ガブッ

先輩「ふぁぁぁっ!」ビクン

後輩「……」チュゥゥゥゥ

先輩「~~~~~っっ!!」バシッ バシッ

後輩「あうっ! あうっ!」
108: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 00:59:46.06 ID:xfZunq6b0
先輩「首は! やめろって! 言ってるだろが! いいか! 首はダメ!」ハァハァ

後輩「ちぇ……、いいじゃん、どうせ痕消えるんだし……」

先輩「あのな、そういう問題じゃ――……」

後輩「……え?」

先輩「おい、聞いてんのかよ。人の話をなぁ――……」

後輩「待って! 先輩ちょっとストップ!」

先輩「なーんだよ! 話逸らす――……」

後輩「痕!」

先輩「あと……?」

後輩「……あと、消えない……」

先輩「……嘘」
109: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 01:00:23.50 ID:xfZunq6b0
後輩「……」

先輩「……ちょっと、鏡ある? 見せて?」

後輩「……」スッ

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……え」

後輩「……」

先輩「……消えて、ない」

後輩「……」

先輩「元に……、戻った……?」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……あは」

後輩「……ぷっ」
110: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 01:00:56.79 ID:xfZunq6b0
先輩「あは、あっははははは!」

後輩「ふっ、ぶふ、ふふふふふ! ふふふっ!」

先輩「あははははっ! あーっはっはっはは!」

後輩「ふふふ! あはははは!」

先輩「はははっ! お前、どうすんだよこれー! また人に見られたら恥ずかしいだろー!」ケラケラ

後輩「クスクス……。もっといっぱい付けてあげます」

先輩「にゃろー! 仕返しだっ、この!」カプッ

後輩「ひぁっ! やっ、ちょっと、駄目ですって! もう、バカぁ!」

先輩「ふ、ふふっ。……なぁ」

後輩「何です?」

先輩「……愛してるよ、後輩ちゃん」ギュ

後輩「バカ……。……私もですっ」ギュッ

先輩「んふふ……」




111: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 01:01:41.77 ID:xfZunq6b0


112: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 01:02:15.39 ID:xfZunq6b0


113: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 01:02:56.14 ID:xfZunq6b0





~????~

プルルル

プルルル


店長「あー、もしもし? 私わたしー」

店長「うん、そうそう、その話。……ま、簡潔に言うね」

店長「『研究所』からのレポートよ。被験者№7は『不適合』」

店長「……そ。そういうこと。『教団』もすでに、彼女の監視を解いたわ」

店長「私たちも、早急に次のテストケースに移行すべきって、伝えといて」

店長「……」

店長「……ホッとしてる? 私が?」

店長「ふふっ……、どうかしらね。秘密よ、秘密」

店長「とにかく、次の『人魚の肉』は、早めに回してね。そうね、来週中にでも」

店長「『教団』にも、『研究所』にも、絶対に先を越されちゃいけないからね」

店長「『比丘尼計画』……、プロジェクトの主導権を握るのは私たち」

店長「……そう、我々『カンパニー』こそが、不死の謎を解き」

店長「そして、生命の真実を手に入れるのよ――……」

店長「ふっ……、ふふふ……っ! あーっはっはっはっはっは!!」




114: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 01:03:59.14 ID:xfZunq6b0


~おわり~


115: ◆UhQaGpUR76 2020/01/16(木) 01:05:02.99 ID:xfZunq6b0
これでこのお話は終わりです
お読みいただいてありがとうございました

……間空いちゃったり、急ぎ足になっちゃったりですみませんでした
それでは
116: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/16(木) 07:17:23.21 ID:vxeRrYUBo

最後で回収するとはwwwwww

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