美神「横島クン、346プロからの依頼よ」
- カテゴリ:アイドルマスター シンデレラガールズ
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- 736: 2017/12/26(火) 22:51:32.70 ID:8EuqIeCio
- 横島「346プロってあの……アイドル事務所の!?」
美神「ええ。そこの女子寮に悪霊が出たみたいなの」
横島「!? 女子寮に……悪霊が……!?」
美神「それも、相当厄介な奴らしいわ」
横島「大変じゃないですか!? さあ、今すぐ行きましょう!」
美神「だから、今回アンタは留守番よ」
横島「!? なんでですか!?」
美神「アンタ、絶対問題起こすもの」
横島「何を言うんですか! この目を見てくださいよ!」ドヨーン
美神「……ものの見事に濁ってるわね」
https://www.youtube.com/watch?v=avngzfSBvZc
- 737: 2017/12/26(火) 22:56:04.21 ID:8EuqIeCio
- ・ ・ ・
横島「生まれる前から愛してました――ッ!」
ちひろ「キャ――ッ!?」
横島「ボカァもう、ボカァ――ッ!」
ちひろ「イヤ――ッ!?」
三神・早苗「何をしとるかアンタはああっ!」
ギリギリッ!
横島「ああっ!? 二人のボディコン美女にだなんて……ああっ……!」ビクンビクンッ
ちひろ「はぁ……はぁ……!」
おキヌ「あの、大丈夫ですか?」
ちひろ「はい、何とか……って、浮いてる……!?」
おキヌ「はい! 私、幽霊ですから!」
ちひろ「……本当に大丈夫なのかしら……!?」
横島「あ――ッ!? そ、そこは……だ、ダメ――ッ!」ビクンビクンッ - 738: 2017/12/26(火) 22:57:31.30 ID:8EuqIeCio
- 誤)>三神・早苗「何をしとるかアンタはああっ!」
正)>美神・早苗「何をしとるかアンタはああっ!」
多分このミス多いです - 739: 2017/12/26(火) 23:02:37.08 ID:8EuqIeCio
- ・ ・ ・
横島「しっかし、本当に悪霊なんて出るんスか~?」
ズリズリ
ちひろ「スマキのまま這って移動してる……!?」
美神「気にしないで。いつもの事だから」
おキヌ「横島サーン、頑張ってくださーい」
ちひろ「は……はぁ」
美神「それで? 悪霊って言ったのは……」
小梅「私、だよ……正確には……この子……」
ちひろ「……だ、そうなんです」
美神「ふーん? 続けて」
ちひろ「最近、女子寮でその……下着がなくなったり……」
横島「! 俺にはわかる! この先に悪霊が! しかも大量に!」
小梅「そ、その先は……ランドリー……だよ……」
ちひろ「……!」ヒクヒク - 740: 2017/12/26(火) 23:07:29.08 ID:8EuqIeCio
- ちひろ「写真を撮られている気がするって子も居て……」
横島「女子寮の写真……これは資料! そう、資料なんだ――ッ!」
パシャパシャ!
ちひろ「あの……」
美神・おキヌ「?」
ちひろ「あの人が……犯人では……!?」
横島「アイドル達が吸っている空気……! 染み渡る……染み渡るぞオオ――ッ!」
美神「アンタはちょっと静かにせんか――ッ!」
ゲシゲシッ!
横島「ああっ!? ひどいっ……!?」 - 741: 2017/12/26(火) 23:13:21.85 ID:8EuqIeCio
- 横島「なっ、何も殴るこたぁ無いじゃないですか……!?」
美神「殴ってないわよ、イヤね横島クン」
おヌキ「はーい! 踏んだんですよね、美神さん!」
美神「正解!」
ちひろ「あの……!? こっちは真面目に話してるんですけど……!?」ヒクヒク
美神「お……おほほほほ! これも、リラックスするためなのよ!」
横島「嫌だなぁ、美神さんが緊張なんてするわけ――」
ゲシッ!
横島「ぶっ!?」
美神「良いから話を合わせなさい! この依頼、報酬がすっごく良いんだから!」ボソボソ
横島「そ……そんなにスか……?」ボソボソ
美神「失敗したら……そうね……アンタを東京湾に沈めるだけじゃ足りないわ」ボソボソ
横島「安心してくださいッ! この、ゴーストスイーパー横島が解決してみせますよ!」キリッ!
ちひろ「だ……大丈夫なのかしら……!?」 - 743: 2017/12/26(火) 23:19:03.96 ID:8EuqIeCio
- 小梅「お願い……悪霊、何とかして……」
横島「任せとけって。こっちもプロだから、ちゃんとやるさ」
小梅「この子も……すっごく、怖がってるの……」
横島「そうなのか?」
横島「安心しな! 絶対、何とかするさ!」
グッ!
小梅「! この子が……見えるの……?」
横島「見えるケド……それが……?」
小梅「……!」パアアッ
ちひろ「なッ……何も無い所に向かってサムズアップ……!?」
美神「あー……こういうリアクション新鮮ねー」
おキヌ「あのー、私が見えるのは?」
美神「大人の事情よ」 - 744: 2017/12/26(火) 23:25:51.41 ID:8EuqIeCio
- 小梅「女子寮を……お願いします……!」
横島「おう! 悪霊なんか、極楽にいかせてやるぜ!」
横島「――美神さんがッ!」
グッ!
小梅・ちひろ「……!」だああーっ!
美神「横島クン……アンタ、恥ずかしくないの……!?」
おキヌ「今のはかっこ悪いですよ、横島サン……!?」
横島「だってしょうがないでしょう……!? 俺はまだ見習いですよ……!?」
小梅・ちひろ・美神・おキヌ「……」
横島「お……俺だって……! もっと後の設定なら活躍出来るんや……!」
横島「でも……この時の設定じゃないとダメなんや……!」
ちひろ「あの……メタ発言が多すぎません……!?」
美神「こんなもんだったわよ」 - 745: 2017/12/26(火) 23:32:17.50 ID:8EuqIeCio
- 横島「チクショオオ――ッ!」
『男……女子寮に男が居る……!』
見鬼くん「あっち! あっち!」
おキヌ「! 美神さん! 見鬼くんに反応が!」
美神「うっわ! 懐かしい!」
おキヌ「美神さん!? 戻ってきてください!」
美神「あったあった! テレビと漫画で扱いに差があるのよね!」
おキヌ「へ――ん!? 美神さは――ん!?」ビー!
小梅「この声……!」ビクビク
横島「今の声が悪霊……!? って、何で男に怒ってるんだ……!?」
悪霊『アイドルも、この女子寮も全部俺のもんだ――ッ!』
美神・横島・おキヌ「……」 - 746: 2017/12/26(火) 23:37:24.92 ID:8EuqIeCio
- 美神「ねえ……あれが悪霊……?」
悪霊『誰にも渡さへん! 渡さへんぞオオ――ッ!』
横島「被ってるのはパンツ……!? 変態じゃないか……!?」
おキヌ「あの……横島サン、ポケットから何か……」
横島「ああっ!? いや、これは……!?」
美神「……」
スルッ
美神・おキヌ・小梅「……」
横島「――パンツが、俺のポケットに入りたいって言ったんですよ」ファサッ
美神「ドサクサに紛れて何やっとるか――ッ!?」
ゲシゲシッ!
横島「あ――ッ!?」
悪霊『あのー……無視しないでもらえます……?』
おキヌ「すっ、すみません! すぐすみますから!」ペコペコ - 747: 2017/12/26(火) 23:44:17.08 ID:8EuqIeCio
- 悪霊『……ゴホン!』
美神「待ってるなんて、案外律儀な奴ね」ボソボソ
横島「いやでも、完全に変態ですよ」ボソボソ
悪霊『……ゴホンゴホン!』
おキヌ「あれが……言ってた悪霊ですか?」ボソボソ
小梅「うん……皆、凄く困ってるの……」ボソボソ
悪霊『あーもう! 感じ悪いなお前ら!?』
美神「スキありッ!」
ヒュッ!
悪霊『危なああいッ!?』
美神「チッ! 外したか!」
横島「でも、この手でサクッといけそうですね!」ボソボソ
おキヌ「でも……ちょっと可哀想じゃないですか?」ボソボソ
小梅「いっぱい悪さしたから……こらしめないと……」ボソボソ
悪霊『聞こえてるからな……!? 全部聞こえてるからなお前ら……!?』 - 749: 2017/12/26(火) 23:49:13.81 ID:8EuqIeCio
- 悪霊『全く! これだから普通の女は!』
パシャパシャ!
横島「!? 写真を撮り出した……!?」
美神「何かの攻撃!? まずい、油断した――!?」
悪霊『あ――ッ! イイよ、小梅タン! 凄くイイ――ッ!』
パシャパシャ!
小梅「お、オフだから……撮らないで……!」
悪霊『この写真……これは資料! そう、資料なんだ――ッ!』
パシャパシャ!
横島「アイツ! 無理矢理写真を撮るなんて、なんて奴だッ!?」
おキヌ「どこかで聞いたセリフなんですけど……!?」 - 750: 2017/12/26(火) 23:55:21.16 ID:8EuqIeCio
- 悪霊『アイドル達が吸っている空気……! 染み渡る……染み渡るぞオオ――ッ!』
横島「美神サン! とっとと除霊しちゃってください!」
美神「そうしたいのは山々なんだけど……!」
おキヌ「!? まさか、そんなに強い悪霊なんですか!?」
美神「あんなのに触りたくないのよ!」ドーン
横島・おキヌ「……!」だああーっ!
美神「横島クン、アンタがなんとかしなさい」
横島「お……俺がですか……!?」
美神「アレ、アンタの仲間でしょ?」
横島「違ーわい! なんで悪霊の仲間扱いなんですか!?」
悪霊『ボカァもう、ボカァ――ッ!』
横島「お前も紛らわしい事言うなコラ――ッ!?」 - 751: 2017/12/27(水) 00:00:23.36 ID:dzcU8BSRo
- 悪霊『小梅タン……! ハァハァ……! 小梅タン……!』
ズアァァァ!
小梅「ひっ……!?」
美神「! アイツ……横島クンと同じ、煩悩を力にする奴みたい……!」
おキヌ「それじゃあ、すぐにでもやっつけないと!?」
横島「おキヌちゃん……キミだけは信じてたのに……」ツーッ
おキヌ「ああっ!? そういう意味じゃなくて……!?」
悪霊『小梅タアアア――ンッ!』
グワッ!
小梅「……!?」
美神「まずいッ! 横島クン、これを使いなさい!」
横島「! これは――ッ!?」 - 752: 2017/12/27(水) 00:04:46.88 ID:dzcU8BSRo
- 悪霊『可愛いよオオオ――ッ!』
グワッ!
横島「だりゃあああ――ッ!」
ガキィン!
悪霊『何ッ!? 受け止めた……!?』
横島「ヘッ、どうやら俺とお前の力は互角のよーだなッ!」
悪霊『お前……顔にパンツを……!? やだ、変態!?』
横島「お前に言われとーないわい!」
おキヌ「大丈夫ですか!?」
小梅「う、うん……」
美神「どうやら、うまくいったみたいね!」
小梅「そういえば……ちひろさん、は……?」
美神「アイツが出た時点ですぐ気絶してたわよ?」
ちひろ「」チーン - 753: 2017/12/27(水) 00:11:13.06 ID:dzcU8BSRo
- 横島「さあッ! 諦めて、極楽に行きやがれ!」
悪霊『グウウッ!? 何故、お前の方が力が強い……!?』
横島「ハーッハッハッハ! コイツを見ろ!」
悪霊『パンツに……染みが……!?』
横島「どこの誰のかは知らんが、これを被った俺は無敵じゃ――ッ!」
悪霊『ぐううっ……!? そんな……俺は消えるのか……!?』
横島「さあ! 極楽に――」
悪霊『もう……女子浴場を覗けないなんて……!』
横島「何ッ……!?」
悪霊『ああ……さらば、乳、尻、ふともも……!』
横島「待てッ! 諦めるなッ!」
悪霊『お前……何を……!?』
横島「写真! 写真とかは残ってないのかッ!?」
悪霊『お前……』
横島「悪霊……」
ガシッ!
美神「スキあり」
スバーッ!
横島・悪霊「『あああ――――ッ!?」』 - 754: 2017/12/27(水) 00:16:57.26 ID:dzcU8BSRo
- ・ ・ ・
美神「ちゅうちゅうたこかいな……っと!」
おキヌ「うわー! 凄い量のお金ですね!」
美神「大手事務所だからねー、この不景気に凄いわよ」
おキヌ「それで……あのー……」
横島「やっぱり普通の女はダメだよな!」
悪霊『お前もわかるか、アイドルの良さが!』
横島「おお! 見ろ、小梅ちゃんが写真送ってくれたぞ!」
悪霊『ええ子や……! ホンマええ子や……!』
横島「ああっ! 俺たちで、この笑顔を守っていこうぜッ!」
悪霊『もちろんだぜ!』
ガシッ!
おキヌ「なんか……ついてきちゃったんですけど……!?」
美神「ほっときゃその内飽きるでしょ」
横島・悪霊「『ハーッハッハッハ! ハーッハッハッハ!」』
おわり - 748: 2017/12/26(火) 23:48:34.94 ID:FEHNBFfS0
- 乙
そろそろきれいな楓さんが見たい - 759: 2017/12/27(水) 01:00:12.05 ID:dzcU8BSRo
-
「……ふぅ」
突然の、雨。
午前中は降らない予報だったのに、なんて気まぐれな雨なのかしら。
事務所まではもう少しの距離だけど、カフェの軒先で雨宿り。
「ホットコーヒーで、ホッと一息……」
ついてるだけの時間は……ないわよね。
あぁ、それにしてもついてないわ。
どうして、よりによって折り畳み傘を持っていない時に、こんな――
「……高垣さん?」
――なんて、思っていたら、よく見知った顔がこちらを見ていた。
いつもの無表情の彼だけど、驚いているのがわかる。
……と言うか、そんなにキョトンとする必要は無いと思いません?
私だって、こういう時もあります。
「――おはようございます」
だから、あえていつも通りの朝の挨拶をする。
こんなの、なんて事ないですよ、という強がりも込めて。
「おはよう、ございます」
そんな強がりを意に介さず、彼もまた、いつも通りに挨拶してきた。
左手にカバン、右手に傘を持っているのに、その姿勢はとても綺麗。 - 760: 2017/12/27(水) 01:13:28.35 ID:dzcU8BSRo
-
「あの……よろしければ、これを」
この人はとても不器用だけど、手先まで不器用な訳ではない。
器用に、左手に持っていたカバンを右手の指で持つと、
ポケットから青いハンカチを取り出してこちらに差し出してきた。
「すみません、お借りします」
それには何の意味も込められていないのだろうけど、
きちんと傘くらいは持って出てください、と言われているような気がした。
……たまたまなんです! いつもは、持ってますからね!
なんて、私の考え過ぎよね。
「……」
「……」
パタパタと、せめて上品にハンカチを使おうと心がける。
そんな私の姿を彼は無言で見つめている。
「……」
彼は、いつの間にか右手の指にかけていたカバンを左手に持ち直していた。
それには意味が込められているのが、わかる。
私がハンカチを返そうとしたら、きっと、こう言うのだ。
手が塞がっているので、ハンカチはそのまま使ってくださって結構です、と。
「……」
私は、無言で左手を動かし、水滴をハンカチに染み込ませていく。
手持ち無沙汰な右手は、一体どうしていようかしらと考えながら。 - 761: 2017/12/27(水) 01:27:10.68 ID:dzcU8BSRo
-
「ありがとうございました。お陰様で、助かりました」
「いえ。偶然ですが、通りがかって良かったです」
そう言うと、彼は右手を差し出して来た。
あら? 私が思っていたのとは、違ってたみたい。
あっ、そうよね、小指でカバンを持てるんだもの、
ハンカチを受け取るくらい、訳ないわよね。
「はい、お返しします」
洗って返した方が良いわよね、なんて考えてたのが無駄になっちゃった。
柔軟剤を使うと吸水性が下がるけど、この人はどっち派? なんて。
「では、これを」
そんな事を考えながら彼の指にハンカチを引っ掛けると、
彼の右手が私の左手を優しく包み込んだ。
何故、そんな事をするのかと思った次の瞬間には、彼の手は離れていた。
そして、私の手には――
「……――傘?」
が、握らされていた。
あの、私に傘を渡してしまったら、貴方が濡れてしまうんじゃ――
「それでは、失礼します」
「……ちょっ、ちょっと!?」
彼は、可愛らしくペコリと頭を下げると私の言葉を聞かずに走り出した。
「待ってください!」
そんな彼を追って、私も走り出した。
だって、私に傘を渡しちゃったら、貴方が濡れちゃうじゃないですか! - 762: 2017/12/27(水) 01:40:09.64 ID:dzcU8BSRo
-
「!? 高垣さん!?」
「待ってくださいって言ってるでしょ!?」
私はバッグを肩にかけ、右手に傘。
対する彼は、左手にカバンを持っているだけ。
距離は、どんどん離れていく。
「っ……!」
元々、走るのは得意じゃないのよ!
それなのに、私だけ傘を持って走ってたら、追いつけるわけないじゃない!
バッグも揺れてとっても気になるし……!
「ああっ、もう!」
さしていた傘を閉じて右手に持ち、バッグを左手にしっかり持つ。
これで、とっても走りやすくなったわ!
なのに、彼ったら、
「か、傘をさしてください!」
なんて、戻ってきちゃうのよ?
これから、レッスンで鍛えた私の走りを見せようと思ったのに……得意じゃないけど。
「これは、お返しします!」
焦ってるみたいだけど、焦ったのはこっちです!
貴方が使うはずの傘を私に渡しちゃったら、
「「濡れますから!」」
言葉は、同じ。
考えている事も、同じ。 - 763: 2017/12/27(水) 01:52:34.48 ID:dzcU8BSRo
-
「……」
「……」
とっても似ているのに、私達の考えは交わらない平行線。
傘を差し出す私に、受け取らない彼。
雨は、しとしとと降り続いている。
「……」
「……」
観念したのか、彼は私の差し出す傘を受け取った。
そして、すぐさま傘を開く。
もう、受け取るなら受け取るで、最初から素直に受け取ってください。
おかげで、濡れちゃったじゃないですか。
「……」
「……」
……もう! なんで、開いた傘を私に差し出すんですか!?
ああ、どんどん雨に濡れて……!
「……!」
「あ、あの、高垣さん!?」
ふふっ、これなら貴方も傘に入らざるを得ませんよね?
私は、差し出された彼の右腕をパタンと両手で折りたたみ、
空に向かって真っすぐ差されている傘の下に入り込んだ。 - 764: 2017/12/27(水) 02:11:03.47 ID:dzcU8BSRo
-
「しかし、これは……!」
事務所までもうすぐなんですから、ワガママ言わないでください。
走ったお陰で、本当にもうちょっとなんですから。
ちょっとだけ、ほんの、少しだけです。
「はい、しゅっぱ~つ!」
「……!」
私は、バッグを肩にかけ、とっても大きな折りたたみ傘を差しながら歩き出した。
けれど、この折りたたみ傘はとっても頑固で、
いくら私が傾けようとしても、器用に手首を使って反対に傾けてくる。
こんなに使いにくい傘は、生まれて初めてだわ!
「あの……手を……!」
「離したら、傘はどっちに傾くと思います?」
貴方の考えている事なんて、お見通しです。
私は、伊達にアイドルじゃないんですよ。
プロデューサーの人の考える事なんて、わかっちゃうんですから。
「そうではなく、ですね……」
口ごもる彼の言葉を聞いて、考えている事がわかった。
私は慌てて、彼から手を離した。
傾きそうになった傘は、彼のいつもの癖と打ち消しあって、そのまま真っすぐ天に向けられていた。 - 765: 2017/12/27(水) 02:34:54.31 ID:dzcU8BSRo
-
自分の年齢を考えなさい、高垣楓。
相合傘位で恥ずかしがる様な歳でも無いでしょうに。
それに、スタッフさんが差してくれた傘に入るなんて、普通にある事でしょう?
彼はプロデューサーなんだし、そう思えば良いのよ。
……でも、今は出勤前なのよね。
「「っ!?」」
そう思って彼を見たら、視線がバッチリと合ってしまった。
その気まずさを誤魔化すために、
さっき渡されたハンカチで、濡れた所をパタパタとはたく。
「あ、あの……私は、結構ですので……」
「す、すみません……」
だって、これは元々貴方のハンカチなんだから!
ちょっと間違えちゃうのも、仕方ないと思います!
「ですが……ありがとう、ございます」
正しいはずなのに、間違いで。
謝ったら、お礼を言われて。
なんだか、とってもおかしな話よね、これって。
「……ふふっ!」
「高垣さん?」
傘は、雨に濡れないためにあるのに。
それを使わせるために雨に濡れるのは、おかしい話だ。
「傘は、活かさないと……いけませんね♪」
おわり
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