武内P「諸星さんを高い高い、ですか?」
- カテゴリ:アイドルマスター シンデレラガールズ
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- 121: 2017/12/16(土) 19:35:57.04 ID:oW8lMPIso
- みりあ「ねぇねぇ、お願いプロデューサー!」
莉嘉「良いでしょP君! カリスマJCのぉ、お・ね・が・い☆」
きらり「ふ、二人とも~! Pちゃん、困っちゃうにぃ!」
みりあ「大丈夫だよ! きらりちゃん、やってもらおう?」
莉嘉「遠慮するコトないって! P君、力強そうだもん!」
きらり「で、でも~……」
武内P「……あの、どうしてそういう話になったのでしょうか?」
- 122: 2017/12/16(土) 19:39:05.31 ID:oW8lMPIso
- みりあ「あのね、みりあ達はたまに高い高いしてもらうでしょ?」
莉嘉「えへへ! して貰うって言っても、強引にだけどさ☆」
武内P「それは……はい、そうですね」
みりあ「三人でね、この前その事について話したんだ~」
莉嘉「そうしたら、きらりちゃんが二人は小さくて羨ましい、って言ってたの」
きらり「も、もうこの話はやめやめ~! Pちゃん、きらりは大丈夫だゆ!?」
武内P「……」 - 123: 2017/12/16(土) 19:42:18.43 ID:oW8lMPIso
- みりあ「小さくなるのは無理だけど……」
莉嘉「高い高いなら、Pくんだったら出来ると思ったの!」
武内P「……成る程、そういう事でしたか」
きらり「……にょわー。ごめんねPちゃん、きらりが変な事言ったから……」
武内P「諸星さん」
きらり「……ごめんねぇ」
武内P「高い高いを……させて、頂けないでしょうか?」
きらり「!?」
- 124: 2017/12/16(土) 19:44:55.96 ID:oW8lMPIso
- みりあ「ほんと!?」
莉嘉「さっすがPくん!」
きらり「む、無理しないで良いよ~! きらりは、いつでもハピハピだゆ!」
武内P「申し訳ありません。諸星さんに、そんな思いをさせていたとは」
きらり「Pちゃん……」
武内P「お願いします。私に、諸星さんを高い高いさせてください」
きらり「……はい、お願いします///」
みりあ・莉嘉「やったー!」 - 125: 2017/12/16(土) 19:48:23.71 ID:oW8lMPIso
- きらり「でもでも、きらりは皆より重たいにぃ」
武内P「いえ、何も問題はありません」
スルッ
みりあ「? ねぇねぇ、上着を脱いでどうするの?」
武内P「この後も仕事がありますので、服が破れては困りますから」
シュルッ
莉嘉「ちょ、ちょっとPくん! ネクタイを外してどうするの!?」
武内P「上半身の衣類は、全て脱ぎます」
みりあ・莉嘉・きらり「!?」 - 126: 2017/12/16(土) 19:51:07.27 ID:oW8lMPIso
- みりあ「えーっ!? 上、裸になっちゃうの!?」
武内P「申し訳ありません、見苦しいものをお見せしてしまいます」
ファサッ
莉嘉「わっ、わっ! あとシャツ一枚だよ!」
武内P「今日は……少し、肌寒いですね」
ヌギヌギ……
きらり「う、うっきゃ~っ……!?」
武内P「――お待たせしました」
ムキムキッ! - 127: 2017/12/16(土) 19:55:25.62 ID:oW8lMPIso
- みりあ「すっごーい! 筋肉、むっきむきだー!」
武内P「プロデューサーは、全員鍛えています」
莉嘉「へ、へー? そうなんだ?」チラチラッ
武内P「そうでなければ、皆さんを笑顔に出来ません」
きらり「す、凄いにぃ……///」
武内P「そして――」
武内P「――セルフ・プロデュース!」
ビキビキ…! ムキイッ!
武内P「……これが、80%の力になります」
みりあ・莉嘉・きらり「……!?」 - 128: 2017/12/16(土) 19:58:47.93 ID:oW8lMPIso
- 武内P「諸星さん」
きらり「ひゃ、ひゃい!?///」
武内P「諸星さんは、私からすればとても軽い、可愛らしいシンデレラの一人です」
きらり「う、うっきゃーっ!/// は、恥ずかすぃー!///」
武内P「さあ、高い高いを――」
ガチャッ
みりあ・莉嘉「あっ!?」
専務「……キミは、何をしている?」
武内P「っ!? 専務……?」 - 129: 2017/12/16(土) 20:01:37.21 ID:oW8lMPIso
- 武内P「これは……事情がありまして」
専務「言い訳は聞きたくはない」
武内P「……」
みりあ「あっ、あのね! プロデューサーは悪くないの!」
莉嘉「アタシ達が頼んだから、Pくんは!」
専務「……ふむ」
きらり「きらりが悪いんです! 怒るなら、きらりを怒ってください!」
武内P「皆さん……」
専務「……」 - 130: 2017/12/16(土) 20:04:34.22 ID:oW8lMPIso
- 専務「アイドルのため、か」
武内P「……」
専務「しかし、見過ごすわけにはいかない問題もある」
みりあ・莉嘉・きらり「そんな!?」
専務「勘違いをしているようですね。私も、鬼では無い」
みりあ・莉嘉・きらり「えっ?」
専務「――ネクタイはしたまえ。身だしなみには気をつけなさい」
シュルッ
武内P「せ、専務……」
みりあ・莉嘉・きらり「……!」 - 131: 2017/12/16(土) 20:07:19.53 ID:oW8lMPIso
- 専務「クライアントが最初に会うのはキミだ」
武内P「……はい、ありがとうございます」
専務「それに、肌寒いとは言え……この乳首はいただけないな」
くりくりっ
武内P「あうんっ!?」ビクンッ!
専務「城ヶ崎莉嘉くん、キミはシール集めが趣味だと聞いている」
莉嘉「は、はい!」
専務「余っているものがあれば、それで彼の乳首を隠してあげなさい」
莉嘉「! はいっ! チョーカワイクデコっちゃいます!」
みりあ「はーい! みりあもやるー!」
専務「よろしい」 - 132: 2017/12/16(土) 20:11:59.60 ID:oW8lMPIso
- 莉嘉「左の乳首には、ハートのを貼ってあげるね☆」
ペタッ!
武内P「んんっ!……城ヶ崎さん、ありがとうございます!」
みりあ「右の乳首にはぁ――」
ぎゅっ!
武内P「うーふっ!?」
みりあ「お星様! えへへ、すっごくかっこいいよ!」
ペタッ!
武内P「何故シールを貼る前に乳首をつねって……いえ、赤城さん、ありがとうございます」 - 133: 2017/12/16(土) 20:14:48.23 ID:oW8lMPIso
- 武内P「……専務、いかがでしょうか」
専務「ふむ、悪くないな」
武内P「ありがとうございます」
専務「キミは優秀だ。アイドルのため、これからも頑張りなさい」
武内P「はい、必ず」
専務「では、私はこれで失礼する。励み給え」
ガチャッ…バタンッ
みりあ「専務……」
莉嘉「いい人だったね!」
みりあ・莉嘉「ねー!」 - 134: 2017/12/16(土) 20:18:28.93 ID:oW8lMPIso
- 武内P「……お待たせしました、諸星さん」
きらり「Pちゃん……きらりのために、そこまで……!」
武内P「私は、貴女のプロデューサーですから」
きらり「うぇへへ、きらり、と~ってもハピハピだゆ☆」
莉嘉「満足するのははやいよ、きらりちゃん!」
みりあ「そうだよ! 高い高いしてもらわないと!」
きらり「そうだった~! あんまりにもハピハピで、忘れちゃってたにぃ☆」
武内P「それでは……外へ向かいましょうか」
みりあ・莉嘉・きらり「……外?」 - 135: 2017/12/16(土) 20:22:24.16 ID:oW8lMPIso
- 武内P「はい。ここでは、頭をぶつけてしまいますから」
みりあ「えっ? でも、高い高いするだけだよね?」
武内P「ええ、しかし、普通とは違い私が掴むのは諸星さんの足首ですので」
莉嘉「足首!? えっ、なんで足首を持つ必要が!?」
武内P「脇に手をやると胸に触る恐れがあり、腰もよろしいとは言えませんから」
きらり「えちぃのはメッだけど……でもぉ……」
武内P「そのための、80%筋肉、ネクタイ装備の乳首隠しです」
みりあ・莉嘉・きらり「なるほど!」 - 137: 2017/12/16(土) 20:39:52.61 ID:oW8lMPIso
- ・ ・ ・
346プロ エントランスホール
武内P「ここなら、屋外に出る必要も無さそうですね」
みりあ「うん! お外だと、やっぱり寒いもんね!」
武内P「そうですね、乳首がシールを突き破ってしまう所でした」
莉嘉「きらりちゃん、心の準備は良い?」
きらり「カンペキパーペキ☆ バッチシだゆ☆」
武内P「……それでは、諸星さん」
きらり「……Pちゃん」
武内P「高い高い――させて頂きます」 - 138: 2017/12/16(土) 20:43:18.84 ID:oW8lMPIso
- 武内P「パワー!」
ガシッ!
きらり「! 凄い力だにぃ! これなら――!」
武内P「オブ!」
ググググッ……!
きらり「視界が――どんどん高く――」
武内P「スマイル!」
グイーッ!
きらり「……とっても、高い高いにぃ……!」
みりあ「すっごーい! すごいすごい!」
莉嘉「ヤバーイ! あれ、二人合わせて何メートルになるの!?」 - 139: 2017/12/16(土) 20:48:15.43 ID:oW8lMPIso
- 武内P「いかがですか諸星さん、高い高いの感想は」
きらり「えーっ!? ごめんにぃ、よく聞こえないよ~!」
武内P「……遠いから、聞こえにくいのですね」
武内P「諸星さーん! 高い高いは、いかがですかー!」
きらり「……と~っても、ハピハピだにぃ~☆」
武内P「良い、笑顔……あ……///」
きらり「何か言ったPちゃーん!?」
武内P「い、今は上を向けませーん!///」
きらり「う、うっきゃ~っ!?///Pちゃん、えちぃのはメッ! だゆ!///」 - 140: 2017/12/16(土) 20:54:48.86 ID:oW8lMPIso
- ・ ・ ・
ちひろ「……それで、結局どうなったんですか?」
武内P「社長に見つかり、常務と二人でお叱りを受けました」
ちひろ「常務? 専務ではなく、ですか?」
武内P「はい、常務です」
ちひろ「……あっ」
武内P「私は口頭注意で済んだのが、幸いです」
ちひろ「……」
武内P「常務は半ベソをかいていましたが」
ちひろ「それはまた、高い高いの結果としては――」
ちひろ「……随分と、高い代償ですね」
おわり - 145: 2017/12/17(日) 03:08:59.46 ID:rRIEETvGo
- いい話なはずなのになんだこの釈然としなさは
- 150: 2017/12/17(日) 14:43:11.75 ID:zAmIkrrhO
- 皆さんの10年後の他の面子バージョンが見たいです
- 151: 2017/12/17(日) 20:56:08.47 ID:LOedC/RGo
- >>150
書きます - 152: 2017/12/17(日) 21:07:45.02 ID:LOedC/RGo
- 私は、実はお酒が好きだ。
愛しているとまでは言わないが、かなり。
お酒もそれに応えてくれているらしく、私はお酒が人よりは強い。
しかし、そのおかげで、今のこの状況があるならば下戸でいたかった。
「それで、キミはどう思うね?」
何が悪かったのだろう。
言わずもがな、目の前の部長が原因だ。
お酒が美味しく、お料理が美味しく、話も弾んでいた。
そう、悪くは無かったのだ。
「ほらほら、早く吐かないと逮捕しちゃうわよ!」
「困るわ。このタイミングで、吐くとか言わないでよ」
「ナナも気になりますねー」
「うふふっ! 観念しないと、駄目だかんねん♪」
意外にも楽しいお酒だった。
昔話に花を咲かせ、今の自分達の努力を褒め合う。
そして、会話が途切れて私がお酒を口に含んだ時、部長が言い出したのだ。
「……皆さんの10年後、ですか」
私は、笑顔が好きだ。
しかし今は、向けられた笑顔が、突きつけられた銃口に見える。 - 153: 2017/12/17(日) 21:18:09.14 ID:LOedC/RGo
- 事の発端は、部長が同僚と飲みに行くから付き合え、と言ったからだ。
思えば、誰が来るのかを確認せず了承した私が迂闊だった。
その迂闊さが巡り巡ってこの状況を作り出しているとしたら、
私は「お供します」と言った時の自分を殴り飛ばしてやりたい。
「10年後かー。うー、考えたくないわねぇ!」
「わかるわ。でも、他の人の意見を聞くのは大事よね」
「な、ナナは10年後でも17歳ですよ! きゃはっ!」
「まあ、それなら私もピッチピチの25歳でーす」
冗談交じりで盛り上がる彼女達は、とても楽しげだ。
そして、部長も私がなんと答えるのかを眺めている。
「10年後……うーん、どうなっているんだろうねぇ!」
「……」
一方で、私は酔いが一気に覚め、背中で大量の汗を流していた。
自然と右手が首筋にいきそうになるが、それは耐える。
迂闊な答えは死を招き、動揺を悟られるのもまた同様。
……一緒に飲んでいると、駄洒落が移るというのは本当ですね。 - 154: 2017/12/17(日) 21:27:01.56 ID:LOedC/RGo
-
「――それじゃあ、あたしはどうなってると思う?」
年齢順で聞いて――と、この考え方はまずい!
今は年齢の話をしているのではく、10年後の話をしているのだ。
藪をつついて蛇を出す必要はない。
「そうですね……」
最適解は、何だ。
いや、最適でないにせよ、明日へ命を繋ぐ選択肢は、何だ。
「10年後でも、とても魅力的で……アイドルを続けて――」
死。
「――いる、かは、わかりませんが……!」
何だ……何だと言うのだ、今の悪寒は!?
「……へぇ、あたしは引退してるかもしれないんだ?」
穏やかに見える笑顔が、今は只々恐ろしい。
この笑顔のまま、猛スピードで走るトラックの前へ放り投げられても不思議ではない。 - 155: 2017/12/17(日) 21:37:00.07 ID:LOedC/RGo
- 「そう、ですね……はい」
「ふーん?」
アイドルを続けている、という答えでは不正解だったようだ。
何とか、ギリギリで命を繋いだ。
「それで?」
しかし、危機は未だ目の前にある。
生と死のデッド・ヒートは未だ続いている。
「10年後ともなれば、今よりも落ち着きが出て……」
「……それで?」
命がけのチキン・ラン。
待つのは爆発炎上か、
「――子供の友達が羨む、素敵なお母さんになっていると思います」
明日のための緊急停止か。
「……なるほどね」
私は、この賭けに――
「す、素敵なお母さんかー! あたしって、そんな風になりそう?」
――勝利した。 - 156: 2017/12/17(日) 21:51:15.11 ID:LOedC/RGo
- 「面倒見が良く、締める所は締める。理想的な母親像だと、私は思います」
「そ、そう? いやー、なんか照れちゃうわねー!」
まあまあ飲みなさいよ、と手元のタッチパネルを操作してビールを注文している。
非常に機嫌が良さそうで、とても良い笑顔だ。
私は、追加注文されたビールが来る前に、手元にある残りを一気に飲み干した。
何故かいつもよりも苦味を感じ、飲み下すのにも苦労したが。
「――ねぇ、私はどうなってると思う?」
タン、とジョッキをテーブルに置いたと同時に、新手。
今の勝利は、所詮は四連戦の内の初戦。
……駄洒落ている場合ではないのだ。
「そうですね……」
こういう時は、まずは相手を褒めるのが良いと聞いた事がある。
まずは褒めて、少し気分を良くして貰おう。
「今は、とても綺麗――」
死。
「――と、いうか……か、可愛らしいので……!」
お酒によって軽くなるのは、気分や足取り、財布だけではない。
命もそうなのだと、私は今日知った。 - 159: 2017/12/17(日) 22:04:25.36 ID:LOedC/RGo
- 「可愛らしいだなんて……いやだわ、もう!」
「いえ……私は、そう思います」
お酒が入ってほんのりと赤く染まっていた頬が、僅かだが赤味を増した。
軌道修正は上手く行ったようだが、胸をなでおろす暇はない。
「それで?」
嗚呼、何故私の前には読み上げる原稿が無いのだろう。
今の私は、海図も無しに航海に出る船旅人。
「10年後ですと、さすがに見た目に年齢を感じるようになるでしょうが……」
「……それで?」
しかし、漕ぎ出さなければ始まらない。
待つのは嵐か、
「――新たな可愛らしい一面が見つかり、より一層魅力的な女性になっていると思います」
快晴の末の、財宝か。
「……なるほどね」
彼女の天気は――
「そ、そんなに可愛らしいって言われたら困るわ! ち、ちなみにどんな所が可愛い?」
――晴れマーク。 - 160: 2017/12/17(日) 22:15:54.25 ID:LOedC/RGo
- 「ふとした瞬間に見せる無邪気な表情が、とても可愛らしいと、私は思います」
「わ、私そんな表情してる時がある? キミって、よく見てるのね……」
まあまあ食べなさい、と手元のタッチパネルを操作しておつまみを注文している。
非常に機嫌が良さそうで、とても良い笑顔だ。
私は、いつの間にか来ていたビールを半分程飲み干した。
心なしか、先程のものよりも美味しく感じられるのが不思議だ。
「――それで、ナナはどうなってると思います?」
タンッ、とジョッキをテーブルに置いたと同時に、新手。
前半戦は過ぎ、残すは後半戦。
もうひと踏ん張り、あと少しだ。
「そうですね……」
残すは後……一人。
彼女? 彼女は、言うなれば、そう――
「むしろ……10年後、ウサミン星はどうなっていますか?」
ボーナスステージだ。
「は、はいっ!? 10年後のウサミン星ですか!?」
聞き返されるとは思ってもいなかったのか、とても焦っている様だ。
今はとても有り難いが、容易すぎて彼女の10年後が逆に不安になる。 - 161: 2017/12/17(日) 22:26:54.23 ID:LOedC/RGo
- 「じゅ、10年後のウサミン星は関係ないと思います!」
「いえ……とても、大事な事です」
彼女もかなり酔っているのか、思考が上手くまとまらないようだ。
酒に溺れ、目が泳ぎ、思考の海に沈んでいくウサミン星人。
「じゅ、10年後のウサミン星は……」
電波の受信が上手くいかないらしい。
しかし、残念ながら私も酔っているので助ける事は出来ない。
「み、皆とっても笑顔で、楽しく暮らしてて……」
「……それで?」
皆が笑顔……とても、素晴らしい場所だ。
そんな、素晴らしい場所は、
「……――う、ウサミン星は、永久に不滅です!」
何故か、巨人軍の住処のようになっているようだ。
いや、マスコットキャラクターは、ウサギをモチーフにしたものだったか?
「……なるほど」
後日――
「ウサミン星は、とても、素晴らしい所ですね」
――姫川さんに聞いてみよう。 - 164: 2017/12/17(日) 22:41:53.23 ID:LOedC/RGo
- 「10年後も不滅な素晴らしい場所が故郷、それはとても誇れる事だと、私は思います」
「そ、そうなんです! 私はウサミン星人である事を誇りに思いますよ! キャハッ!」
なんだかおかしい気がする、とキュウリの浅漬けをポリポリと齧っている。
首を傾げて不思議そうにしているが、話をぶり返す気はないようだ。
私は、いつの間にか来ていた唐揚げを頬張ると、ジューシーな肉の油が口の中で弾けた。
熱々の肉汁はほんのりと甘く、付けられた下味と絶妙に絡みあって至高のハーモニーを織りなす。
それをサッと冷えたビールの苦味と喉越しで流すのは、最高の贅沢だ。
「――はーい♪ 最後は私でーす♪」
しかし、贅沢ばかりもしてはいられない。
戦いの前の贅沢は済んだ。
この先私が口にするのは、勝利の美酒か、最後の晩餐か。
「そうですね……」
最後の一人。
ここを乗り切れば、笑顔で終われる。
「そう、ですね……」
……だというのに、何も浮かばない!
「10年後の私は、どうなってると思いますか?」
催促するように言われているが、何が正解なのかわからない。
わからないので、一先ずジョッキの残りを飲み干した。 - 165: 2017/12/17(日) 22:57:33.57 ID:LOedC/RGo
- 「まあ! もしかして、皆には言ったのに私だけ仲間外れですか?」
「いえ……貴女は、とても素晴らしいアイドルです。それも、目が離せない程の」
手元のタッチパネルを操作して追加注文しようとするが、うまくいかない。
……なるほど、水滴がついて誤反応を起こしていたのか。
「それで?」
と、問われても思い浮かばないのだから答えようがない。
すみませんが、ナプキンで水滴を拭いているので待ってください。
「10年後……そうですね、10年後ですか……」
「……」
よし、これで注文が出来る。
我ながら、
「――貴女を見続けていたら、何年経っているか忘れてしまいそうですね」
完璧だ。
「……なるほど」
しかし、追加の注文は――
「詳しく聞きたいので、賢明なら、二軒目行きましょう♪」
――出来そうにない。 - 166: 2017/12/17(日) 23:06:15.29 ID:LOedC/RGo
- ・ ・ ・
「それじゃあ、年寄りはここで失礼させて貰うよ」
会計が済んだ後、店の前で突然部長はそう言った。
面白いものを見せて貰ったと、先程の店は部長の奢りだ。
「部長、二軒目は私が出しますので」
「いやいや! あまり無理をさせないでくれ!」
そう言うと、笑いながら部長はこちらに背を向け、駅に向けて歩き出した。
「……それでは、私もここで――」
私もそれに倣おうとしたが、
「なんて言い分が通ると思ってるの!? 強制連行よ!」
「今帰るなんてあり得ないわ。まだまだ、夜はこれからよ」
「あれ!? ナナの10年後の話、してませんよね!?」
「お酒は避けられず、飲みに行くのみ♪」
……と、言う事らしい。
おわり
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