武内P「もうすぐ、ダーマ寺ですね」他短編 高垣楓甘え
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武内P「はい。そのあたりは、大人の事情です」
美嘉「ふーん? でも、転職とかは出来るんだよね?★」
武内P「そのはずです」
楓「今の職が天職だと思ってるので、転職はショックです」
武内P「あの……高垣さんは、本当に何の職なんですか!?」
仁奈「ここは通さねーでごぜーますよ!」
武内P「野盗、ですね」
凛「だけど、あれならすぐ倒せそう」
美嘉「ちょっと!? 容赦なさすぎない!?」
楓「もしかしたら、野盗じゃないかもしれないですし……」
仁奈「さんぞくの気持ちになるでごぜーます!」
楓「ほら、やっぱり♪」
武内P「あまり、変わりがないと思うのですが」
凛「まずいね……山賊は、ちょっと厄介かな」
美嘉「えっ!? 野盗とそんなに変わらなくない!?」
武内P「申し訳ありません。旅を続けるため、それは出来ません」
凛「どうしてもどかないなら、倒してでも通して貰うから」
美嘉「まぁ、しょうがないか。ホラホラ、さっさと通して―」
楓「野盗なんて、やっとると駄目ですよ」
仁奈「もう、コンビニのオニギリは飽きてきたでごぜーます……」
武内P「ぐっ!? まずい、気をしっかり保ってください!」
武内P「あの野盗は、精神攻撃を仕掛けてきています!」
棺桶×3
武内P「三人揃って即死じゃないですか!」
武内P「……何とか、1000円で見逃して貰いました」
武内P「しかし、これからどうすれば……」
棺桶×3
武内P「……私が一人で運ぶしか、なさそうですね」
武内P「よっこい……せっ!」
武内P「……くっ、さすがに重い……!」
ドンドンドンドンッ!
武内P「ひいっ!? あ、あの、申し訳ありませんでした!」
武内P「棺桶の内側から叩かないでください! お願いします!」
武内P「か、軽い軽ーい!」
武内P「途中で、野良クラリスさんに会えて助かりました」
凛「凄いね。タダで復活させてくれたんでしょ?」
武内P「ええ。お代は頂けないと、とても、良い笑顔でした」
楓「仲間になってくれたら、とっても頼もしい僧侶さんですね」
武内P「はい。そう、思いました」
美嘉「ま、まあでも!? このパーティーにはアタシがいるし!?」
一同「……」
美嘉「やっぱりカリスマって大事だし!?★」
楓「――と、このタイミングで、新しい呪文を閃いた私です」
武内P「! 高垣さんは……やはり、魔法使いだったのですね!?」
楓「? あの……どうして、そう思ったんですか?」
武内P「……いえ、何でもありません」
武内P・凛・美嘉「……!」ゴクリ
楓「こ……ここ……こっ」
武内P・凛・美嘉「……!」ゴクリッ
楓「……ふふっ! 見つめられると、うふふっ、照れちゃいます」
バシバシ!
武内P「痛い、痛い! す、すみません……」
楓「……新しい呪文の名前は――」
楓「――『こいかぜ』」
武内P・凛・美嘉「『こいかぜ』……!?」
楓「ええ、そうよ」
凛「ふーん。でも、戦闘の役には立た無さそう」
楓「そんな凛ちゃんに――『こいかぜ』っ!」
ぽわぽわ~ん!
凛「? 別に何も変わった事は無いけど……っ!? く、苦しい!」
武内P「!? 渋谷さん!? だ、大丈夫ですか!?」
凛「だ、駄目っ! 満ちては欠ける想いが今、苦しくて溢れ出しそう!」
武内P「意味がわかりません!」
凛「舞い踊る風の中でえええっ! プロデューサ――ッ!」
ガバッ!
武内P「!? は、離れて! 離れてください渋谷さん!」
武内P「や、やめっ、やめてください! いけません!」
凛「幻の大地を越えてえええっ!」
武内P「ドラクエ6ネタを絡めても許されないですから!」
凛「あなたと未来へええっ! 歩きた」
楓「――『こいかぜ』っ!」
ぽわぽわ~ん!
凛「……」
武内P「と、止まった……!」
楓「『こいかぜ』は、恋する気持ちを最大限に高める呪文です」
楓「恋する少女は……ふふっ、無敵ですね♪」
凛「――楓さん! 私に、もう一度『こいかぜ』を!」
武内P「絶対にやめてください!」
武内P「小ネタで、もう半分も過ぎてしまいました」
武内P「ですが……ダーマ寺には辿り着けましたね」
美嘉「……アタシ、転職しようかなー」
武内P「城ヶ崎さん?」
美嘉「結構レベルも上がってきたしさ、賢者とかどう?★」
武内P「成る程。それは、戦力アップになりそうですね」
美嘉「でしょ!★ そうすればほら……アンタも嬉しいだろうし///」
武内P「はい、とても」
美嘉「そ、そっか……///」
凛・楓「……」
武内P「いえ、私はプロデュ……勇者ですので」
美嘉「勇者と賢者……うん、お似合いだよね★」
武内P「はい?」
美嘉「うっ、ううん!? な、何でもないよ!?」
武内P「……?」
美嘉「……///」
凛「――それじゃあ」
楓「――天職に、転職してきます」
武内P「お二人も、ですか?」
凛「うん。待ってて」ニコリ
楓「はい。待ってます」ニコリ
武内P「?……良い、笑顔ですが……」
武内P「……何か、嫌な予感が……」
凛(王女)「――お待たせ」
武内P「どうして転職出来たんですか!?」
凛(王女)「これはもう、勇者と結婚するしか無いかな」
武内P「戦闘力がガタ落ちじゃないですか!」
凛(王女)「大丈夫。夜の戦闘力は、上がってるはずだから」
武内P「何を言ってるんですか渋谷さーん!」
楓(幼馴染)「――私、帰りを待ってますから」
武内P「あの、そんなのにも転職出来るんですか!?」
楓(幼馴染)「アナタは、きっと帰ってきてくれる……信じてます」
武内P「せめて、一緒に旅に出られる職にしてください!」
楓(幼馴染)「そうしたら……一生、一緒ですよ♪」
武内P「何てことだ……! 二人も戦力外に……!」
武内P「! 城ヶ崎さんは!? 城ヶ崎さんは無事でしょうか!?」
武内P「! 城ヶ崎さん!」
美嘉(僧侶)「ヤッホー★ お待たせっ★」
武内P「転職は……しなかったのですか?」
美嘉(僧侶)「うーん、もうちょっと僧侶で経験を積んだ後の方が良いかな、って」
武内P「成る程。もう少しで呪文を覚える、という事もありますしね」
美嘉(僧侶)「そうそう! やっぱり、呪文って大事だからさ★」
美嘉(僧侶)「――南無阿弥陀仏」
武内P「僧侶違いじゃないですか!」
武内P「それは、王女ではなく宿屋の台詞です」
楓(幼馴染)「ぬわーーっっ!!」
武内P「それは、幼馴染ではなく父親の台詞です」
美嘉(僧侶)「南無大慈大悲救苦救難……」
武内P「あの……鬼の手でも、使うつもりですか?」
武内P「……皆さん、今すぐ、元の職に戻してきてください」
武内P「そうでなければ……私が、寺に駆け込んでしまいそうです」
凛「うん、やっぱり戦士が一番向いてるかな」
武内P「はい。とても頼もしいと、そう、思います」
美嘉「アタシも、なんだかんだで僧侶に愛着わいたかも★」
武内P「ええ。普段とは違った魅力に溢れています」
楓「私も……やっぱり、これが天職だと思います」
武内P「あの……結局、高垣さんの職業は何なのでしょうか?」
楓「――『こいかぜ』っ!」
ぽわぽわ~ん!
武内P「!? ぐっ、数え切れない涙と、言えない思いを抱きしめている気分が!?」
凛「……なんだか、困ってるけどハッキリ言い出せない人みたいだね」
美嘉「……やっぱり? アタシもそう思った」
凛「! 凄い、『こいかぜ』に抵抗してる!」
武内P「揺れる思い、惑わされている訳には……いかない!」
美嘉「いや、これ抵抗しきれてなくない!?」
楓「うふふっ、素直になるのが一番ですよ♪」
ピシャーン! ゴロゴロゴロ!
凛・美嘉・楓「!?」
???「……ふっふっふ!」
凛・美嘉・楓「この声は……!」
魔王蘭子「煩わしい太陽ね」
凛「蘭子か」
美嘉「アタシ、てっきり仏が来るかと思った」
楓「どうしたの、蘭子ちゃーん?」
魔王蘭子「あの……ちょっと親しげなのは、控えめで……」
魔王蘭子「勇者よ! 魔王たる我を倒さんとする愚か者よ!」
魔王蘭子「我のこの姿……しかとその目に焼き付けよ!」ビシッ!
凛「凄い……あの衣装、もの凄く豪華」
美嘉「衣装さん、めっちゃ気合入れて作ったらしいよ★」
楓「まあ、そうなの? 素敵よ、蘭子ちゃーん」
魔王蘭子「……あの、親しげなのは……あの、本当」
武内P「魔王神崎さん……! よく、似合っています……!」
武内P「そして……ずっと、君を探している!」
魔王蘭子「ふっ! 放浪の果てに、汝は我の元に辿り着けるかな?」
魔王蘭子「我が魂の輝きは、今にも世界を覆い尽くさんと脈動し」
武内P「ただ君に会いたい! only you!!」
魔王蘭子「ぴっ!?///」
魔王蘭子「きゅ、急にそんな事言われても、えっと……///」
魔王蘭子「そんな、勇者……ぷっ、ぷぷぷ……///」
凛「……『こいかぜ』、きいてるね」
美嘉「……アタシ、魔王やればよかったカモ」
魔王蘭子「ぷっぷプロプロ……プロヴァンスの風!」
武内P「巡る……こいかぜ!」
魔王蘭子「恋!?///」
魔王蘭子「あ……う……///」
ピシャーン! ゴロゴロゴロ!
凛・美嘉「『まおうは にげだした!』」
武内P「魔王神崎さん……とても、強大な相手のようです」
凛・美嘉「どこが?」
武内P「……しかし」
武内P「『こいかぜ』をフルで歌う羽目になるとは……思ってもみませんでした」
凛「悪くなかったよ。ううん、かなり良かったと思う」
美嘉「アンタ、プロデュ……勇者よりも、そっちの方が向いてるんじゃない?★」
武内P「いえ、そんな事はありません」
武内P「私には、アイドルの皆さんを笑顔にする、プロデュ……勇者が一番です」
楓「天職なので、転職する気は無い、と?」
武内P「はい。転職する――」
楓「『こいかぜ』っ♪」
ぽわぽわ~ん!
武内P「――踏み出す力下さい!」
武内P「……やめてください!」
おわり
見たいな!!!
「キミ達の距離感について話したい」
彼女専用の執務室に、押し殺したような声が響いた。
震える彼女の肩から察するに、そうとうお冠のようだ。
だが、大声を張り上げないだけ、彼女も成長したのだろう。
年若い頃から知っている身からすれば、なんとも嬉しいものだ。
「私達の……距離感ですか?」
自分が、何を言われているかわからないといった様子の男。
不器用なこの男は、事態の深刻さを理解していないようだ。
己が誠実だからと言って、他もそうとは限らないのだよ、キミ。
「……」
私は、男の横に立つ高垣くんに目を向けた。
真剣な表情の男とは対照的に、その顔には押し殺したような笑みが。
……そう、高垣くんは、笑いをこらえながら、
「……」
彼の後頭部にいつも在る、チョロリと立った寝癖を人差し指で弄んでいる。
まるで、じゃれつく猫のような高垣くんは、彼女の方を一度も見ていない。
それが、ことさらに怒りを刺激するのだろう。
「……!」
鋭い目から放たれる眼光は凄みを増し、哀れな男はその余波に晒されている。
青ざめる男と、怒る女に、微笑む女。
「……やれやれ」
そして、巻き込まれた、哀れな私。
「そうだ。キミ達は、プロデューサーと……」
彼女が、男に視線を向ける。
その視線を受け、男は居住まいを正し直立不動。
背筋を伸ばした彼は、元から長身なのも相まってより、大きく見える。
「……アイドルだろう……!?」
彼女が、高垣くんに視線を向ける。
「……♪」
が、高垣くんはそれを無視。
寝癖を弄ぶ指の動きは激しさを増し、そしてリズミカルに。
パンチングボールを叩くボクサーのようなその姿は、無邪気な子供そのもの。
「……?」
先程から何も言葉を発しない高垣くんを不審に思ったのか、
男はチラリと横目で彼女の方を見た。
「――はい、その通りです」
早い。
そして、速い。
今の高垣くんは、両手を前で組み、とても美しい姿勢で専務に目を向けている。
凛としたその表情には、先程の無邪気さはどこにも見当たらない。
「……」
男が、少し高垣くんに見惚れたのがわかった。
が、それはプロデューサーとして正しいことではないと思ったのか、
かぶりをふって、また専務の方に視線を戻す。
「……♪」
そして、また寝癖弄りが再開された。
「……!」
彼女の額に、青筋がクッキリと浮かび上がった。
眉間に寄せられた皺、引き締められた唇。
瞳の奥に見える炎は、正に怒りの化身。
「……!?」
普段の彼女だったならば、詩的な表現で男と会話していただろう。
だが、今の彼女は明らかに冷静さを欠いている。
原因は、言うまでもなく、
「……♪」
高垣くんだ。
……しかし、彼の寝癖を弄ぶのはそこまで楽しいのかね?
なんだか、私もやってみたくなってしまったじゃあないか。
「……」
厳しい視線に晒され、男は右手を首筋にやり、困った顔をした。
彼も、随分と表情が豊かになったものだ。
これもアイドルの――プロジェクトの、彼女達の影響かね?
「~♪」
はっはっは、高垣くん。
彼の右腕が作った空間は、キミの手をスポスポと通すための場所じゃあないよ。
いやはや、あまり大きな空間では無いのに、器用に手を通すじゃないか。
うんうん、やめようね? 本当に。
「……!」
電流は通っていないが、それはイライラ棒だよ、高垣くん!
「……いい加減にしなさい……!」
人が感情だけで他者を害せる生き物だったならば、
恐らく私達は今頃物言わぬ躯になっていた事だろう。
その怒りを高垣くんも察したのか、手をスポスポするのをやめた。
が、
「……」
左の手を首筋にやり、男と鏡の様に対称な姿勢を取った。
「っぶふっ!?」
それはずるいよ、高垣くん!
そんなの、笑うに決まってるじゃあないか、ええ!?
「……部長?」
男が、不審げに私を見る。
「……」
高垣くんが、ニッコリとドヤ顔で私を見る。
「笑っている場合ですか……!?」
ハハハ、そうだろうね。
こんな時に笑ったら、いくらキミでも爆ギレするというものだろう。
「いや、すまなかった」
ゴホンと咳払いをし、今のは笑ったのでは無いとアピールする。
それを信じたのは……悲しいかな、不器用な男だけだった。
「……私は、専務の仰っている事が、よくわかりません」
そりゃそうだろう。
だって、キミは気付いていないんだから。
「はい……私も、ビックリしています」
私はね、キミがビックリした事にビックリしたよ?
「ですが……誤解を招くような事があったのならば、今後は気をつけます」
「はい。私も、彼と同じ気持ちです」
「ほう……!」
二人の真剣な表情とぶつかり合う、専務の怒り。
「……!」
勝ったのは、
「……良いでしょう。今後は気をつけたまえ」
不器用だが、誠実な男と、美しく、神秘的な女だった。
専務のその言葉を聞き、
「――はい」
男は、深々とお辞儀をした。
「――はいっ」
高垣くんは、そんな男の背中に両手を付き、馬跳びの要領で跳んだ。
フワリ、と、そう表現するのが的確だろう。
高垣くんは、女性にしては身長が高い方だが、とても軽い。
長い手足も相まって、それは跳ぶと言うよりも、飛んでいるように見えた。
「……」
カツンッ、と、高垣くんが履いていたサンダルが音を立てた。
「……」
誰も、言葉を発さない。
高垣くんは、やり遂げた顔をしている。
専務は、あまりの怒りで絶句している。
男は……さすがに気付いたのか、顔を上げられずにいる。
「……」
全く、彼女は本当に仕方ない子だね。
こんな状況じゃ、私が尻拭いをせざるを得ないじゃないか。
「――いやぁ、懐かしいね! 私も子供の頃はよくやったものだよ!」
張り詰める場の空気を切り裂くように、努めて明るく、大声で。
一斉に私に視線が集中するが、それを受け流して男の元へと向かう。
「ぶ、部長……?」
何をする気ですか? と、男が視線で問いかけてくる。
良いから合わせろ! と、私は視線で彼に命令する。
「――どうぞ」
男は、両手を膝にやり、馬跳びの馬の体勢を取った。
「……♪」
ワクワクと、動向を見守る高垣くん。
「……!」
イライラと、動向を睨んでいる専務。
「……」
ハラハラと、流されるがままの男。
正に、三者三様。
そんな彼らを前にして、私が出来る事などほんのちっぽけなものだ。
「ふむ……これは、少し助走が必要だな」
手を膝にやって腰を曲げている男を見ながら、つぶやく。
そして、距離を測るように少しずつ後ろ歩きを。
あと少し……もう少しで――
――ドアに辿り着く!
「……!」
ドキドキと、逃げるチャンスを伺う私!
……すまない、出来る事なら彼女の怒りを和らげてやりたかった。
だけどほら、見てみたまえ。
「……!」
専務の顔、とても人間とは思えない程歪んでいるよ。
無理だよ、私には。
尻拭いをしようと思ったけれど、出来ないものは出来ない。
だってね、彼女の視線を浴びただけで思考が停止してしまったんだ。
「……!」
――よし、ドアまで辿り着いた。
あとは、後ろ手でノブを回し、ドアを開けて――
ガチャリッ。
「……!?」
――開かない!?
何故!? どうしてだ!
「……♪」
高垣くん?
なんだい、その笑みは?
とても、良い笑顔じゃないか。
ふむ……何をしたかわからないが、キミが何かしたんだね。
「……」
良いだろう、私も腹をくくった。
本気を……出そうじゃないか!
結局、あの後専務の怒りが爆発する事は無かった。
何故かって?
馬跳びに失敗した私の足が、彼の側頭部にモロに入ってそれ所じゃなくなったからさ。
おわり
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