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五条「ククク……三沢塾?」

関連スレ:

五条「ククク… ここが学園都市ですか」


とある五条の蹴球闘技


五条「ククク……三沢塾?」



14: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/01(水) 22:37:54.37 ID:awFqAhP6O
────────────
八月三日 夏休み十五日目
────────────

出頭しろとの命を受けた記憶はあるが、わざわざ病院にまで使いの者を寄越してくれるとは、統括理事長も随分と気が効いている。

これでは出頭ではなく、連行じゃないか。

両脇をサングラスをかけた体格の良い男に囲まれながら、高速で流れていく窓の外の風景に目をやる。
退院をしたら挨拶に行きたかった人間が何人か居るのだが、この調子では最悪もう挨拶も出来なくなるのではないだろうか。

五条「……ククク……オマエは統括理事長の用向きを伺っていますか?」

右隣の席に座る男に声をかける。

『…………』

男は、何も言葉を発そうとはしない。
よく訓練されているのだろうか。
或いは自身の意思など存在していないのだろうか。
懐の携帯電話に手を伸ばし、ディスプレイの表示を確認した。

──────圏外。
18: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/01(水) 22:42:49.19 ID:awFqAhP6O
当たり前かと小さくため息をつき、再度窓の外に目をやった。
トンネルに入った為だろうか。
先刻まで見えていた夏の街並みは一変し、昼とはいえ薄暗いその空間の中、無機質なコンクリートの壁を橙色の照明が浮かび上がらせている退屈なものへと変化していた。

その様子はこれより向かう陰鬱な部屋を想起させ、ただでさえ低迷している気勢をさらに低く押さえつけてくれる。

五条(……あまり、長くならなければ良いのですが……)

携帯電話を懐にしまい、両腕を組んで眼を閉じた。
暗くなった視界を、チラチラと規則的に流れるトンネルの明かりが照らしていた。

────────────

『急に済まない、"認識阻害(デコグニション)"』

眼前の橙色に発行する円筒の中、その上方に逆さに漂っている人間が口を開いた。

五条「……ククク……まぁ病み上がりでゆっくりしたかったのも確かなんですが……建前としては"別に構いませんよ、統括理事長"と言っておきましょうか……」

『賢明だ』

こちらの皮肉に眉の一つを動かすこともなく、眼前の人間が続ける。

『さて、もう呼ばれた理由は理解しているね?』
20: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/01(水) 22:47:59.00 ID:awFqAhP6O
五条「……ククク……なんの事でしょうか?オレにはさっぱり……」
『……』

両腕を水平に開き、オーバーな調子で言ってみたものの、眼前の人間は黙り込んで静かにこちらを見下ろしているだけだった。
何も語らぬその姿にさえ威圧感を感じ、背筋をつうと冷や汗が伝うのがわかった。

五条「……能力の乱用についてですね……ヒヒヒ……」
『……その通りだ、"認識阻害"』

五条「……」
『……君の能力が負っているリスクは前に伝えた通りだ』

以前、学園都市に来て直ぐの事。
身体計測(システムスキャン)が行なわれて直ぐに、此度と同様この部屋へ連行された際の事を思い出す。

『そして君が先に行なった空間、ひいては世界そのものへの干渉により、君が負っているリスクの度合いが飛躍的に高まった。時計の針が大幅に進んでしまったのだよ』

上条当麻の傍に舞っていた羽を、能力で除去した際のことを思い出し、ずきりと目の奥が痛む。

五条「……少々、やり過ぎましたかね……」

『先の干渉を起した君が今現在、未だ人の形を成していることに私は驚きを隠せないんだがね』

眼をそらし、ぽりぽりと頭を掻いた。
22: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/01(水) 22:53:01.86 ID:awFqAhP6O
『万一君が"最悪の事態"を起こしてしまう事になるのならば、私は知り得るものとして、それを抑制しなければならない責務がある』

五条「……わかっていますよ……」

『ならば問おう。君は"最悪"が起こりそうになった際には、どう対処しようと言うのかね』

五条「……」

『……返答次第によっては、ここ「捧げます」
相手の言葉を遮り、自身の覚悟を語る。

五条「……"最悪"が降る前に、この身を世界に捧げると誓いましょう……」
『……』

五条「……ククク……話は以上ですか……?」
『君の意思は確認させて貰った。重ねて告げるが、以後も能力の乱用は控える様に。可能な限り、私は君を観測していたい』

五条「……留意しておきましょう……では……」

円筒へと背を向け、来た道を歩む。

『それとは別に、一つ頼みたいことがある』
立ち去ろうとした矢先声を掛けられたので首だけ振り返り、肩越しに円筒の中を見た。

『詳細は近いうちにまた使いを送ろう。君にはLevel0としてはあり得ない程の対価を支払っているんだ。身代金以外にもいくらか役に立ってもらわなければ勿体が無いだろう?』
27: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/01(水) 22:59:06.57 ID:awFqAhP6O
五条「……内容次第でしょうか……まぁ、使いを送るというのは了解しました……」

言葉を返し、視線を前方に戻して左手を掲げたまま歩を進める。
光源から遠ざかるにつれ、次第に大きくなっていく自身の影に少し怖気を感じた。

────────────

窓の無いビルを抜けると、日は随分と高い位置に届いていた。
先刻までの陰鬱な風景が嘘の様に、街に射す日は眩しく、忙しさにかまけて忘れ去っていた季節の実感が一気に押し寄せて来るのを感じた。

五条(……ククク……さて……溜まっている"約束"を消化しに行きますか……)

そのままの足でタクシーを拾い、先の一軒で世話になった木山が留置されている留置場へと向かった。

本日二箇所めの居心地の悪い場所に腰を据えて待つと、先日と同じく拘束服姿の木山が重そうな扉から姿を現し、強化ガラス越しの対面に座った。

五条「……ククク……お世話になりました……お陰で、先の少女を救うことが出来ました……」
34: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/01(水) 23:04:30.45 ID:awFqAhP6O
真実を全て伝えるのは躊躇われた為、
・少女が苦しんでいたのは別の要因でした
・木山先生のお陰で原因を特定出来たので、彼女は無事です
とだけ掻い摘んで伝えると、乏しい印象を受ける表情を僅かながらに嬉しそうに変え、

木山「役に立てたのなら何よりだよ」

と溢していた。
礼を言った去り際に、

木山「五条…勝だったな。何時になるかはわからないが、私が再び外に出ることが出来たら、詳しく今回のことを聞かせてくれ」

と言葉を投げられた辺り、こちらに只ならぬ事情があったのを察されてしまったのだろうか。
能力を得て暴走した彼女が、今度は魔術に傾倒する事となったら……
想像するだけで恐ろしい。

軽く首を振って邪念を払い、次の目的地へと向かった。

────────────

『……なっ!?』
『五条さん!来てくれたんですか!』

自分の姿を視認するなり、あんぐりと口を開けたまま固まったツインテールの脇で、色とりどりの花飾りが嬉しそうにぴょこぴょこと揺れた。
こちらも先の一件で世話になった初春飾利に礼を言う為、二度目となる風紀委員第一七七支部に足を踏み入れる。
36: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/01(水) 23:09:28.02 ID:awFqAhP6O
五条「……ククク……先の礼を兼ねて、遊びに来ましたよ……先日はありがとうございました……」
初春「お礼なんていりませんよ、私と五条さんの仲じゃないですか。今お茶入れますから、そこで少し待っててくださいね!」

ぱたぱたと給湯室へと姿を消す初春。
と、唐突に風景が支部の外へと切り替わった。
何事かと肩に置かれた手の先を見る。

満面の笑みを浮かべて肩に手を置いている、見慣れた転送能力者の少女。

黒子「……勝さん。どういう事ですの?」
五条「……?」

話が見えず、首を傾げる。

黒子「なああああああああああああんであなたと初春がそんなに親しげですのおおおおおおおおおう!?」

突然鬼の様な表情になり、彼女が雄たけびを上げた。
叫びながらむんずと前髪を掴まれ、ブンブンと左右に揺さぶられる。

五条「……!?違ッ、これはッ!痛ッ!」
ふっと再び景色が切り替わり、第一七七支部の天井と地面が逆になっている不思議な光景が眼に入る。
刹那、自身の身体を逆になった重力が襲う。
ごちんと頭部に強い衝撃。
五条「……へぇあッ!?」

初春「お待たせしましたー、ハーブティーが……?どうされましたか?」
40: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/01(水) 23:14:39.88 ID:awFqAhP6O
額を抑えて蹲っている自身に対して、初春が怪訝な眼差しを向けてくる。

黒子「あらあら五条さん、そんな所で転ばれましたの?日ごろの行いにはもう少しご注意遊ばせ!」

言うなりツンとした表情で書類に向かう黒子。

その様を見た初春がニヤリと笑い、ハーブティーを自身のデスクへと置いて近寄って来た。

初春「あら?オデコにコブが出来てますね」
初春が机の上の救急箱から軟膏を取り出し、その指に少量を取り分け、再び自身へと向き直る。

初春「すぐ済みますから、動かないで下さいねー」

互いの膝が付きそうな程の距離で対面に座った彼女の指が、自身の額に触れた。
誰かに額に軟膏を塗られた経験など無かったが、思った以上にこそばゆい。
ましてや塗っているのが異性の指ともなると、流石に気恥ずかしいものだ。

五条「……ククク……すみません……ッ!?」

と、只ならぬ殺気を感じ、殺気の元へと目線を走らせると初春の背の向こう側の黒子と眼が合った。

先に肩に手を乗せた時と変わらぬ満面の笑みを浮かべながら、声を発さずパクパクと口を動かしている。
43: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/01(水) 23:20:42.20 ID:awFqAhP6O
五条(……?)
なんだろう、一体何を言ってるんだろう。
一定の間隔でパクパクと開閉する口から、読唇術を試みてみる。

オオイアウアオ?
こおいますあよ?

──────コ・ロ・シ・マ・ス・ワ・ヨ?
ピシィ、と音を立てて、メガネにヒビが入る様な錯覚を覚えた。

五条「……ヒヒヒ……ッ!」
黒子の口が示す言葉を理解した瞬間、咄嗟に黒子から下方へと目線を逸らした。
必然的に、間近に居た初春のセーラー服の胸元が視界に入る。

初春「…やだ五条さん、どこ見てるんですか?恥ずかしいです」

慌てて初春の声に慌てて視線を戻すと、顔を仄かに赤く染め俯いている初春と、その向こう側で、変わらぬ笑みを湛えている黒子が眼に入った。
その黒子の手のひらに、一粒の画鋲がちょこんと鎮座している。

五条「……!違っ」
眼前で照れる少女を挟んで、黒子の手のひらに置かれた画鋲が、ふっと消失するのが見えた。
五条「ひぎぃッ!?」

次いで、足の裏を襲う洒落にならない程の激痛。

初春「……?どうしました?」

唐突に奇声を発し、足の裏を押さえてピクピクと悶絶している自分を見て、初春が心配そうに声を掛けてくる。
46: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/01(水) 23:25:27.09 ID:awFqAhP6O
五条「……すみません……用事を思い出したので帰ります……ヒヒヒ……」

画鋲の刺さっていない方の足に体重を掛けながら、ひょこひょこと出口に向かった。

初春「え!?もう帰られちゃうんですか!?」

少し悲しそうにこちらを見つめる初春少々申し訳の無い気持ちは抱いたが、これ以上ここに居ると、いつ胃袋に釘を転送されるか判ったものではない。

いや、それならばまだマシな方だろう。
ここ最近間近に居すぎたせいか、すっかり黒子の元来の通り名を忘れていた。
今後初春に用事がある時は、黒子が留守の時に訪れる事にしよう。

五条「……えぇ、また時間がある時に来ますよ……」

言って、第一七七支部の出口へと向かう。
ようやくこの惨憺たる地獄から逃れる事が出来る。

黒子「あら五条さん、帰られますの?偶然ですわね、わたくしも丁度警邏に行こうかと思っておりましたの」

背後から、縋る亡者の声を聞いた気がした。
カンダタは、きっとこんな気持ちだったのだろうか。

────────────
47: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/01(水) 23:30:19.68 ID:awFqAhP6O
────────────

僅かに西に傾いた日がその光を茜色へと変え、窓から見える通りを暖かい色へと染め上げていく。
とかく学生の多いこの街においては、夏休み中のこの期間のこの時間は、普段のそれとは殊更に人通りの様が変化しているのを感じ取れた。
普段は学生服を纏って闊歩しているのであろう少年や少女が、短い夏を謳歌する蝉の様にその制服という抜け殻を脱ぎ捨t『どういう事ですの?』

左耳へと響いた声で、意識が現実へと引き戻される。
声のした方向へと目線を送ると、テーブルの上に並ぶスイーツと、憤怒の表情でそれにフォーク伸ばす少女という、酷く対角的な光景が眼に入った。

五条「……ククク……どういう事とは……?」

声の主である、白井黒子の目を見つめ、問いを投げ返す。
途端に憤怒の形相を一変させ、親に叱られて拗ねている子どもの様な表情で、黒子が再び口を開いた。

黒子「あ……その……どうして勝さんと初春があんなに親しげでしたの?」

五条「ああ……それに関してですか……」
49: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/01(水) 23:36:49.96 ID:awFqAhP6O
七月二十七日。
完全記憶能力者の少女(以前黒子も会ったシスター)が苦しんでおり、その原因を特定する為に、急いで優秀な脳医学者を探す必要があった。
その為、以前黒子が"情報能力に長けた同僚が居る"と初春を称していた事を思い出したので、木山の起した事件を処理した際に初春より教わった番号に連絡をし、彼女とコンタクトを取った。
彼女にアンチスキルに拘束されている木山との面会を取り付けて貰った。

これらの事実を整理しながら語る。

ええ、ええと話を聞いていた黒子の表情に、話が進むにつれて次第に恥ずかしさの色が混じるのが見て取れた。

黒子「……そうだったんですの、私てっきり……」
五条「……てっきり?」

黒子「……まあ良いじゃないですの、オホホホホホ!」
五条「……?」

黒子から目線を外し、再び窓の外に眼を向ける。
喫茶店の前の植え込みから栗色の髪の毛の様なものがチラチラと見えるが、子どもがかくれんぼでもしているのだろうか。

そんなことを考えていると、不意に懐の携帯電話が鳴動した。
ディスプレイに写る、見慣れない番号。

一瞬黒子と目を合わせ、電話に出る。

五条「……ククク……オレです……」
53: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/01(水) 23:41:42.16 ID:awFqAhP6O
五条「……ククク……オレです……」
『あ、五条……さん……で合ってますよね?』

聞き覚えのある声に、少しの思案を挟んで問いかける。
五条「……上条さんですか……?」

『……合ってたか、良かったぁ。上条だけど、携帯電話買ったから、登録よろしくな』

五条「……了解しました……登録しておきましょう……」
『あ、それと今夜何してる?少し話したい事もあるから、こないだの礼も兼ねて銭湯でも行かないか?』

対面の黒子へと眼を向ける。
電話の内容が会話口から漏れていたのだろうか、いつも通りの笑顔に戻った彼女は、困った様な微笑みで親指を自身に向けた後、手を開き横に振った。

五条「……了解しました。それでは後ほど……」
『おう、後で』

電話を切り、黒子に向かい口を開く。

五条「……失礼しました……」

黒子「あのつんつん頭の殿方ですの?」

五条「……えぇ、この間の礼も兼ねて、風呂にでも行かないかと……」

黒子「あら、広いお風呂は少し羨ましいですわね」
54: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/01(水) 23:46:18.47 ID:awFqAhP6O
五条「……オマエも来ますか?」
黒子「……実は、未だ始末書が少々残っておりますの」
はあ、と深くため息を吐く彼女。

五条「……ククク……」

そんな彼女を見て、自然と笑顔がこぼれた。

────────────

上条「それで、あの娘と明日約束をしてると」

湯船に浸かる上条が、隣のペンギンの頭を撫でながら言葉を吐いた。

五条「……ククク……」

別れ際に黒子が「明日お暇なら一日お付き合い下さいませ、私も暇ですので」と言って来たので、構わないと返答したは良いものの……

上条「そりゃどう見てもデートなんじゃないかって、上条さんは思いますよ?」

五条「……冷静に考えてみれば……そうですね……」

いざそうなってみると、黒子と二人でどこかに出かける等、事件現場に共に行った事や事後処理を除いては、一切ありはしない。
そもそも、プライベートでの白井黒子という人間を、自分は全く知らない。

上条「まぁ、大いに悩め少年よっ!可能ならその幸せを少しオレにもわけてくれっ!」

楽しそうにゲラゲラと笑う上条を脇目にため息を吐く。
60: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/01(水) 23:52:38.64 ID:awFqAhP6O
楽しそうにゲラゲラと笑う上条を脇目にため息を吐く。

五条「……そういえば、お話したい事とは……?」

本来の目的から反れた話を、一息つき終え本流へと返す。

上条「んん、話したい事っつーか質問なんだわ……答えたくなかったら構わないんだけどな」
五条「……?」

次がれる言葉を待っていると、上条が大きく深呼吸した後、表情を堅いものへと変化させ、言葉を吐いた。

上条「オマエの能力って、何なんだ?」

五条「……」

上条「あの時、俺達の傍の羽が消えたのって、きっとオマエの能力だよな?」
五条「……ええ……」
少し俯きながら言葉を返す。

上条「……いや、結構な魔力で出来たものだったろ、あの羽。それを能力で消すってのが、どうも考え辛くてさ」

あまり踏み込まれたくない部分に触れられたのが表情に出ていたのだろうか。
取り繕う様に少し軽い雰囲気で、上条が言葉を続けた。
66: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/02(木) 00:00:13.10 ID:QHKzse28O
上条「オレもこんな右手を持ってるし、もしかしたらオマエも似た様な何かなのかなって思って、ちょっと気になって……」

上条「あ、話したくなければ無理に話さないで良いぞ!少し気になったって程度だから!」

五条「……」

男性浴場内には、自分と上条を除き誰も居ない。
ふと横を見ると、企鵝の一羽と目が合った。
少しの間目を合わせていると、人間でいう耳の部分に両の羽を沿え、ふるふると首を横に振った。

少々逡巡した後、生まれ持った右手が原因となって不幸な運命を背負った目の前の男にならば或いは、との考えにたどり着き、間を置いて言葉を紡ぐ。

五条「……話しましょうか……ククク……いえ、オレもオマエに聞いておいて頂きたい……」

もったいぶるわけでもないが、大きく深呼吸をした後に、言葉を吐き出した。

五条「……オレがこの学園都市に来る前からの話になるので……少し話が長くなるのですが……」

──────オレはね、ただ、サッカーが大好きだったんですよ。

──────fin──────
149: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/02(木) 23:45:36.45 ID:QHKzse28O
──────『影が薄い奴だ』

色々な人間から、そう称されて生きてきた。

生まれてこの方、父と呼ばれる存在と対面をした事が無かった。

会話の端々で母が、
『あなたのお父さんは、凄く立派なひとなのよ、勝』
といっていたのを、憶えている。

初めて自分の存在が誰かに認知され辛いのだと知ったのは、幼稚園の時。

自分を幼稚園に預けた母が、なかなか迎えに来ない事が多かった。

次々と帰宅していく級友達を尻目に迎えに来ない母を待ち侘び、自分が母にとって不要な存在なのではないかと、子どもながらに悲しい気持ちになったのを、今でも時々思い出す。

そんな母も、園の職員が自宅に電話をするとすっ飛んできて、いつも一人園に残っていた自分を抱きしめながら、わあわあと泣き喚いてひたすら謝罪の言葉を繰り返していた。

『ごめんね勝、母さん、なんでこんなに忘れっぽいんだろうね。寂しい思いさせてごめんね、勝』
153: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/02(木) 23:53:22.39 ID:QHKzse28O
抱きしめられながら考える事は、自分は母にとって不要な存在ではなかったのだという安堵感と、何故悪くない母がこんなに涙を流して謝罪をしなければならないのかという、一抹の憤りの感情だった。

小学校に入る頃に、家庭の事情が一変した。

今となっては病名もわからないが、母が病に倒れ徐々に衰弱していく様を、学校と病院と、預けられた母方の祖父の家を行ったり来たりしている生活の中で目にし続けていた。

病院に見舞いに行く度に、次第に自分の事を認識出来なくなっていく母を見続けるのが辛かった。

『……あら、勝、今日の学校はどうだった?』
『……あら……勝、何か困っている事は無い?』
『勝……勝よね?少し見ないうちに、どんどん大きくなっていくわね』
『……?どうかしましたか……?って……勝……だったわよね、あらやだ、母さんボケちゃったのかしら?』
『……?どうしましたか?……何だか、あなたとはどこかで会った様な気がするわね』
『……?』
158: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 00:01:46.51 ID:b+UzxjoxO
最期には、自分と眼を合わせても何の反応も示さなくなった母を見て、あれだけ優しかった母が、遅れても必ず幼稚園に迎えに来てくれた母が、自分の事すら判らなくなってしまうのかと、深く悲しむと同時に、病気とはこんなに怖いものなのかと肝を冷やしていた。

──────今にして思えば、病気など、なんら関係は無かったのだが。

────────────

小学校に入学したばかりの頃に自分にも、それなりに友人たちが居た。
関わりを断ってから久しいので、もうその名前を思い出す事も出来ないのだが。
いや、思い出したくないだけなのかも知れない。
仲がよかった友人が居た事も。
そんな友人たちから、ある日一斉に無視をされ始めた事も。

最初は非常に戸惑ったものだ。
皆から無視をされるなんて、一体自分は何をしたんだろう。
自分が何か悪い事をしたのならば、友人たちに謝罪をしなければならない。

『ねえ、○○君、ぼく何か悪いことした?』
『悪いことしたなら謝るよ、ごめんね。だから仲直りしよう?』

一体何度謝罪の言葉を連ねただろう。
自分に憶えの無い罪に怯えて、どれ程の時間を思慮に割いただろう。
結局自分の声は、彼らに届く事はなかった。
163: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 00:10:30.33 ID:b+UzxjoxO
謝れど、泣けど、自分の存在が彼らの目に止まる事は無い。
まるで、透明人間にでもなったかの様な気がした。

それ以来、ぽつりぽつりとクラスメイトと会話を交わす事はあれど、誰かと積極的に関わる事を避ける様になった。

いつしか、自分が誰とも関わる事は無く、自分一人で生活を送る事に、何の疑問も持たなくなっていた。
一人黙々と教室の隅で読書に耽っている時間だけが、自身にとって唯一救われる時間。
そんな毎日を送る内に読書をし過ぎて視力が低下し、眼鏡をかけ始めたのはこの頃だ。

ある日、突然の転機が訪れた。
小学校も高学年に入ったばかりの頃。

体育の授業で、サッカーが行なわれた。
サッカーと言っても、クラスの男子を半分半分にわけて行なう、八対八の模擬的なものだったのだが。

この時のサッカーの授業を境に、これまでの生活が一変する事となる。

────────────

いつの間にか浴槽から企鵝達の姿が消え、真面目な表情の上条が黙って話を聞き入っていた。

五条「……ククク……退屈な話でしょう?」

こちらを向いた上条と、目線がぶつかる。
167: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 00:18:32.92 ID:b+UzxjoxO
上条「……退屈なワケがあるか。今までの話だって、充分人に聞かせるのに覚悟がいるもんだってわかるよ。お前が覚悟を決めて話をしてくれてるってのに、退屈だなんて思う程、オレは落ちぶれちゃいませんよ」

浴場の壁に掛けられている時計に目線を送ると、つられて上条の目線も時計へと向かうのがわかった。

五条「……随分時間が経ってしまいましたね」

午後九時の少し前。
九時丁度に銭湯の前でインデックスと待ち合わせをしているので、このまま話こんでいては彼女を待たせる事となってしまう。
上条「……上がるか。今日まだ時間あるか?」
五条「……構いませんが……」

上条「よし。んじゃあ、最後まで聞かせてくれ」
言い終え、浴槽から立ち上がり洗面所へと向かう上条。

五条「……酔狂な方ですね……ヒヒヒ……」

────────────

市外からは少し外れた所にある公園のベンチへ、一人で腰掛けていた。

何となく視線が流れた先の街灯は、緑の多い公園だからだろうか、その明かりに誘われた羽虫たちが集まっており、夏の夜だという季節感を一層濃いものへと演出してくれていた。
171: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 00:27:50.44 ID:b+UzxjoxO
不意に頭上を仰ぎ見る。
見上げた夜空は、街の明かりを反射して紫色に染まった雲が一面を覆い尽くし、いつその涙を流されてもおかしくない様な状況だ。

そんな様子を眺めていると、現在の天気予報が気になったので携帯電話を開き、お天気情報のページへアクセスしてみる。

降水確率80%。

これから来る男が雨具を持っているかいないかで、きっと天気が決定される。
何となくそんな予感がした矢先、こつこつと足音が響き、公園の入り口にウニ頭のシルエットが浮かび上がった。

『悪い、待たせちゃいましたかねぇ?』
五条「……ククク……構いませんよ……」

影に向かって、座ったまま傍らの缶コーヒーを放る。

『お、ありがとな』

街灯に照らされ、手ぶらの男の姿がくっきりと浮かび上がった。

五条(……降りますかね……)

黙ってベンチを立ち、少し離れた場所にあるアーケードのある箇所のベンチへと移動して、再度腰を据える。

五条「……さて、どこまで話したでしょうか……」

────────────

その日に行なわれたサッカーの授業は、周囲の目線を集めるには充分過ぎる程の結果となった。
181: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 00:36:50.25 ID:b+UzxjoxO
十八対零。
小学校の授業としてはあり得ないスコア差となったその試合で自分が挙げた得点は、十七点にも登った。

自分がボールを持って攻めあがると、誰もが動きを読めず、ブロックに入れない。
自分がボールをカットしようとすると、誰もが気付かない内にボールをカットされている。

そして試合後に周囲から次々と浴びせられる歓声。

『すっげー!』
『五条!お前どうやったんだよ!』

初めて、自分を活かせる場にめぐり合えたその時の感動は、今でもハッキリと思い出せる。
賞賛を送る面子の中には、以前に自分を無視していた友人達の姿もあり、複雑な気持ちを抱いていたのだが。

その後サッカーの楽しさに目覚めた自分は、地元のサッカークラブに所属し、ひたすらに努力を重ね続けていた。

相手がいる時は、クラブの誰かとボールを蹴りあい、また誰も居ない時には壁に向かいボールを蹴り続け。
思えば、よく飽きもせずに毎日毎日そんな事を繰り返していたものだ。
学校が終って、日が暮れるまでサッカーボールを追って過ごす。
その頃は、サッカーをすることがひたすらに楽しかった。
186: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 00:45:02.30 ID:b+UzxjoxO
何よりも、皆がサッカーをしている自分を見て賞賛を送ってくれる事が、嬉しくてたまらなかった。

自分の所属するそのサッカークラブはめきめきと頭角を現して行き、六年生へと進学した時には、地区大会の常連チームにまで成り上がっていた。

そして地区大会に優勝したある日、一人の身なりの良い男が話しかけて来た。
その男が以前からちらほらクラブの監督と話をしていたのは目撃していたが、直接自分が話しかけられるとは思ってもいなかったので、当時の自分は随分と驚愕していたものだ。

『五条……勝君だね』

「……はい、そうですが……」

『今よりももっともっと、君のその才能を活かせる場所があるんだ』

────────────

男は、帝国学園のスカウトだと名乗った。

──────帝国学園。
おおよそサッカーに携わる小中学生ならば、必ず一度は耳にした事があるその名前。
中学サッカーチームの全国最強を決める大会、フットボールフロンティアで40年間無敗を誇る、知る人ぞ知るサッカーの超名門校。

そんな場所から自分にスカウトが来た。
それ程の場所が、自分を必要としてくれている。
188: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 00:53:06.62 ID:b+UzxjoxO
この時ほど、サッカーをやっていて良かったと思えた事はなかった。
自分の好きなサッカーに打ちこむ事ができ、祖父に経済的な負担を掛けないでも済む。

男の言葉に、二つ返事で返答したのは、当たり前のことだろう。
当時同居をしていた母方の祖父も、まるで自分の事の様に喜んでくれた。
クラブの仲間達も口々に祝福や賛辞を送ってくれ、やっと自身が胸を張って認められる存在になれたんだ。

五条「……その時は、そう思えていたのですが……」

────────────

ぽつぽつと、プラスチックのアーケードを雨粒が叩き始めた。

隣のベンチに腰掛ける男が手ぶらで来たのを見て覚悟はしていたが、本格的に降り始めたらどうしようか、少々頭を捻る。

上条「……」

上条当麻は真剣な表情で、缶コーヒーを片手に中空を見据えていた。

五条「……ククク……雨具は持参していますか……?」

止めるならココで止めても良いぞというニュアンスを含み、皮肉っぽく問いかけてみる。
189: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 01:00:06.16 ID:b+UzxjoxO
上条「そう見えますか?……構わないから続けてくれ」

五条「……わかりました……ヒヒヒ……」

上条の言葉に、昔語りを続ける。

五条「……そして帝国学園への入学を間近に控えた、クラブのお別れ大会での事です……」

────────────

入団して以来、苦楽を共にしたクラブの仲間と行なう最後の試合。
相手は、同じ地区のクラブチーム。

その試合の最中の事だった。

相手のチームが蹴ったボールが自陣のゴールポストに当たり、跳ね返ったボールをクリアしようと駆け寄った途端、相手チームのFWと衝突し、眼鏡が割れてしまった。

心配して寄ってくるチームメイト達に特に怪我は無い旨を伝え、割れてしまった眼鏡を観戦に来ていた祖父に渡し、裸眼で試合を続ける。

多少見づらくはなっているものの、問題なくプレーは可能だった。
相手チームがファウルを取られ、自チームボールのフリーキックで試合が再開される。
DFのフリーキックを友人が受け取り駆け出すのを見て、それに併走した。

隣を走る友人の一人が、自分に微笑みかけてパスを出してくる。

ボールを受け取りドリブルをしながら自陣を駆け上がり、パスを出す友人を見定めようと周囲を見回す。
194: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 01:06:29.11 ID:b+UzxjoxO
と、飛び込んでくる視線。視線。視線。

相手チームは元より、先の瞬間まで笑みを交わしながらプレーしていた友人までもが、
得体の知れない"何か"に対する恐怖を宿した眼差しを、自分に向けてくる。

五条『え……?』

視線。深く突き刺さる視線。

チームで最も信を置いていた、鋭い目をした友人が怪訝な視線のまま言葉を吐いた。

『……なぁ……おまえ誰だ……?』

五条「……?何を言ってるんですか、俺です、五条勝です」

言葉を返した友人の視線が中空を舞い、何事も無かったかの様にプレーが再開される。

ふと気がつくと、自身に向けられていた視線は、既に反らされており、それ以後試合終了まで自分にボールが回ることもなく、最後の試合は幕を閉じた。

先刻まで、共にプレーをしていた友人達が手を取り合い、互いの健闘を称え合い、そのクラブチームでの最後の幕引きを惜しんでいる。

五条「…お疲れ様でした!皆さん!」

その輪に混ざり声を張り上げてみるも、誰も自身に眼を向ける事はない。

自身だけが、世界から取り残されるこの感覚。
以前にも嫌というほど味わったこの孤独感。
201: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 01:13:30.26 ID:b+UzxjoxO
まるで、あの、読書を始める前の自分に戻ったかの様な──────!

────────────

五条「……そこで、オレは思ったんです。"メガネを外して視たものが、自身を認識しなくなるのではないか"と」

五条「……当然最初は疑いもしました。そんな非現実的な事が起こるはずが無いと」

五条「……しかし何度か悪戯で同級生相手にこの眼を試してみて、この眼の能力を認識させられました……」

ごくり、と上条が唾を飲み込む音が聞こえた。

五条「……自分でも心底驚きはしましたが……メガネさえ外さなければ、誰かにこの能力をぶつける事さえなければ、きっと大丈夫だろうと……」

五条「……ところが、オレの能力が度を過ぎている事を知るハメになったのが、卒業式とその後での事です……」

ふう……と深くため息をつく。

上条「……?何があったんだ?まさか卒業出来なかったとか?」

五条「……いえ、あくまで義務教育なので卒業はできましたし、証書も無事に受け取る事が出来ました。しかし……」

上条「……?」
204: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 01:20:22.27 ID:b+UzxjoxO
五条「学校内では常にメガネをかけて生活していたにも関わらず……卒業式を終える頃には、誰一人、俺の事を憶えている人間が居なかったのです……」

驚きなのだろうか。上条の目が大きく開かれる。

五条「……唯一頼れる身内であった祖父ですら、家を出て寮に移る頃には、私の事を忘れ、認識しなくなっていました……ククク……皮肉なものです……祖父の為でもある門出すら、認識されないとは……」

ぽつぽつと、雨粒が当たっては弾けていくアーケードを見上げる。

五条「……どうやら、メガネを掛けていてもオレの存在自体が、まるで水の止まらなくなった壊れた蛇口の様に、無意識に少しずつ周囲の記憶や認識を阻害しているのではないか……」

五条「……そんな疑問を持ち始めたのは、その頃の事でした……」

────────────

『五条勝……学籍こそ確かに存在はしているが、過去の経歴は一切不明か』

以前話をしていたスカウトの人間が、まるで自分を初めて見る人間であるかの様に話しかけてくる。

五条「……ククク……お役には立てるかと思いますよ……」

『……まぁ、実力さえ伴えば一向に構わない』

入学した帝国学園での数ヶ月間はあっという間に過ぎていった。
208: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 01:25:21.74 ID:b+UzxjoxO
入学したての頃にこそ、サッカー部の模擬試合や対外戦で活躍は出来ていたのだが、順調かに思えた部活動にも次第に影が落ち始める。

小学生の頃は、数年間何も無かったのだからと完全に油断し切っていた。

入学当初より、多少少なく感じたパスの回数だったが、ある日を境に試合中に完全にチームメイトからパスが回されなくなる。

これは自身でボールに喰らいついて行けばどうにか回避出来る難点だったので、暫くは周囲の圧力を感じる事も無かった。

試合が終わりチームメイト達と顔を合わせた際も、彼らは自分を『仲間』として扱ってくれていて、ただの杞憂なのだろうと胸をなでおろしたりもしていた。

思えばこの頃から、もうこの能力は制御しきれない程に膨らんでいたのかも知れない。

そんなある日、自分のとったプレーが、完全に周囲から無かったことになっているのに気がついた。

誰かにパスを出しても、何もない場所から唐突にボールが飛んできたかの様に受け損ねられ。
自分が決めたゴールは、まるで何事もなく、突風でボールがゴールに運ばれたかの様に処理され。

この頃には、試合を終えたチームメイト達も、完全に自分を認識しなくなっていた。
214: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 01:30:23.40 ID:b+UzxjoxO
そんな自分がレギュラーの座に座り続ける事が出来るほど、帝国学園という場所は甘くは無かった。

数値上だけ見ても、何の役にも立っていなかった自分がレギュラーから外され、今後自分を待っているであろう灰色の生活に嫌気がさし始めた時、唐突に帝国学園の学長から呼び出しを喰らう。

五条(……いよいよ、お役御免ですかね……)

覚悟を決めて学長室のドアをノックする。

『……入りたまえ』

威厳を感じる声が響き渡り、そのドアを開く。

視界に入った学長が、こちらに背を向けたまま言葉を発した。

『……どうも、君には超能力の素質があるようだ』

────────────

五条「……とまあ、これがオレが学園都市に来る事となった経歴なのですが……」

飲み終えた空き缶を中空に放り、近くにあるゴミ箱へと軽く蹴った。
かこん、と小気味の良い音が響く。

五条「……ここまで話せば、もうオレの能力はおわかりですね……?」

上条「認識の阻害と、記憶の消去…か?」
215: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 01:35:32.08 ID:b+UzxjoxO
言いながら、上条が飲み終えた空き缶を手渡してきた。
五条「……ククク……前者は正解ですが後者は能力ではなく、能力の影響が生んだ結果ですかね……」

再び空き缶を放り、ゴミ箱へと蹴り上げる。
かこん、雨に濡れた公園に、再度小気味の良い音が木霊する。

五条「……学園都市に来て、多少能力の制御方法は身に付いたのですが……ここ最近で能力を使い過ぎたせいでしょうか……どうにも人から忘れられ易い体質は改善出来ていない様です……もう既に、"一部の方に影響が出始めている"……」

(「五条さん……で間違いございませんわよね?」)
(「あらあらあら五条さん!いらしてましたの!?」)

はぁ、とため息をつく。

五条「……まぁ、人というのは誰かと関わりを持った以上、いずれ別れ、そして互いに忘れられるものだというのは理解出来るのですが……」

五条「……少し、寂しいですかね……ヒヒヒ……」

自嘲を交えた微笑みで上条を見る。
彼は俯いたまま、何も言おうとはしない。

五条「……暗い話になってs『五条勝。』

唐突に上条が顔を上げる。
その目じりから、一筋の線が地面へと落ちるのが見えた。

上条「……辛かったな」
221: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 01:41:01.29 ID:b+UzxjoxO
それきり上条は黙り込む。

五条「ッ……!」

上条に背を向け、アーケードを仰ぎ見る。
視界の隅に入った街灯の頼りない明かりが、ゆらゆらと水面に漂う様に揺らぐのがわかる。
その様子を見ても、背後の上条は何も言おうとはしない。

五条「……オマエに……オマエに話せて良かったッ!!」

昂ぶる感情を抑えきれず、語尾を強めて叫び、眼を閉じる。
自分の中で抱えていた重圧が、音を立てて氷解していくのが判った。
次いで、解けたソレに押される様に、目じりから頬へと熱い液体が流下する。

ああ、きっとこのアーケードには欠陥がある。
こんな所に雨漏りを起している箇所があるじゃないか。

五条「……ご静聴、ありがとうございました……明日がありますので……オレはこれで……」
振り返らずに声を投げ、そのまま雨の中へと足を踏み出した。

五条「……また連絡しますね……ヒヒヒ……」
右手を高く掲げ、雨の中を一歩一歩踏みしめて歩く。

公園をでた所で、メガネを外し空を仰いだ。
大粒の雨が、一つ、二つと頬を濡らす。

──────今夜が雨になってくれて、本当に良かった。

──────fin――――――
294: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 22:36:07.02 ID:b+UzxjoxO
携帯電話の電子音で目が覚めた。

端末を開かずとも、その電子音が電話の呼び出しではなく、eメールが受信された事を教えてくれていた。

寝ぼけた頭で眺めた部屋の中が未だ薄暗いのを確認して、ブラインドに指で隙間を作り、窓の外を見る。

雨音が聞こえないところを考えると、夜半に降り始めた雨はもうすっかり上がっている様だ。

少し空に明るみがさしてはいるものの、夏の夜の短さを考えれば、まだ目を覚ますには随分と早すぎる。
一体こんな時間に誰からのメールだろう。

枕もとのペットボトルのミネラルウォーターを一口飲み下し、端末を開きメールの受信ボックスを表示させる。

差出アドレスが空欄。
添付データあり。

明らかに普通ではないそのメールに一抹の不安を覚えつつ、その内容を表示させるボタンをクリックする。

受信ボックスから内容表示の画面に移動した途端、端末の液晶画面に巫女装束を纏った女性の姿が表示された。

五条(……?見覚えの無い女性ですね……)
298: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 22:46:59.70 ID:b+UzxjoxO
顔立ちこそ整ってはいるものの、まるで証明写真でも撮っているかの様に無表情に写真に収められているその女性に見覚えが無いことを確認し、画面を下部へとスクロールさせる。

画像が途切れ、次第にその下に記された文章が表示され始めた。

"姫神 秋沙(ひめがみ あいさ) "
"原石として『吸血殺し(ディープブラッド)』の能力を所持"
"現在学園都市内の何処かに潜伏している可能性あり"
"彼女の居所を至急調査すべし"

"アレイスター統括理事長"

最下部に表示された署名を確認して、眉間にシワを寄せる。

刹那、唐突に携帯電話の電源が落ちた。
再度携帯電話の電源を入れなおし、先のメールを確認する。

──────無い。

五条「……ククク……」

夜も明けていない内から、随分と効果的な嫌がらせをしてくれる。

五条(……進んで動く義理もありませんが……施しを受けっぱなしというのも余り良い気はしませんね……)
瞼を閉じ、先の巫女装束を纏った女性の顔を思い浮かべる。

五条(……まぁ、都合よく見つかるとも思えませんが……見つけたら、調査程度はしておきますか……)
時計に目線を送り、未だ午前の四時を回ってもいない事を確認した後、再度ベッドに身を投げた。

300: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 22:55:46.09 ID:b+UzxjoxO
────────────
八月四日 夏休み十六日目
────────────

ぴんぽーん

眠りを貪っていた耳に、来客を告げるチャイムが届いた。

ピンポーン

次いで二度。
靄の降りる頭を一気に覚醒させ、自室のドアへと向かう。
届け物?宗教の勧誘?
憶えの無い来客が居るであろうドアの外に向かい声を投げる。

五条「……ククク……どちらさまですk『私ですの』

ドアと向かい合って立つ自身の後方から、転送能力者の声が響く。
ため息を一つ吐き出してから、ゆっくりと後ろを振り返った。

赤いリボンで二房に束ねられた頭髪。
まるで猫の様な瞳で悪戯そうな笑みを浮かべている、休日だというのに制服に身を包んだ風紀委員の少女の姿がそこにあった。
いつもその腕に飾り付けられている盾の紋章が刻まれた深緑の腕章は無く、その片手にはビニール袋がぶら下がっている。

黒子「今お目覚めですの?随分ごゆっくりですのね」
言われて時計を眺める。
午前9時25分。

健全な中学生としては、休日にこの時間まで惰睡を貪るのは、決して随分ゆっくりなどと評されるものだとは思えないのだが。
307: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 23:04:16.24 ID:b+UzxjoxO
五条「……ククク……オレの部屋の住所を知っている理由は、この際不問とします……しかし……」
黒子「……?」

五条「……オマエはもう少し、ドアの役割というものを憶えておいた方が良い……」

黒子の目線が、自分の身体を走る。
下半身こそ、色落ちさせる為のジーンズを身に着けていたから良いものの、上半身には身体を覆う衣服の類は何一つ身に着けていない。

みるみる内に黒子の顔が紅潮し、その視線を塞ぐためか、両手で顔を覆う様に隠した。

黒子「ッ……これは御失礼ッ!」

両手で顔を覆って視界を遮るのは別段構わないが、何故チラチラと指の隙間からこちらを伺っているのだろう。

黒子「……線は細いですけれど、案外逞しいのですわね……」

チラチラとこちらを見ながら何やら呟いている彼女を残し、風呂場へと向かった。

────────────

黒子を部屋に残したままシャワーを浴び終え、洗面台にて手早く髪の毛をセットする。
風呂場を出ると、途端に空腹を煽る匂いが鼻についた。
匂いの元を辿ると、制服の上にエプロンを身に着けて鼻歌を歌いながら鍋をかき混ぜている黒子の姿が目に入る。
316: 五条ファン(夏は全裸派) ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 23:12:24.55 ID:b+UzxjoxO
五条「……?ククク……何をされているのですか……?」
黒子「あら、お上がりですの?ちょっとお台所を拝借しておりますわ」

彼女の背中越しに、かき混ぜられている鍋の中を見る。
優しいコンソメの匂いを放つ茶色く澄んだスープの上に、スライスされた玉ねぎが漂っている。

黒子「……すぐに済みますので、勝さんはおかけになってて下さいまし」

五条「……はぁ……」

返答し、リビングのソファに座りテレビをつける。

朝のワイドショーでは、先日壊れた人工衛星の破損原因が宇宙人の仕業である、等とリポーターが喚き立てていた。

黒子「卵はどうされます?」

背後のキッチンから声が投げられたので、ソファに腰掛けたまま背もたれを反り変え、黒子と目を合わせる。

五条「……お任せします……」
黒子「でしたら、オムレツにさせて頂きますの」

次いで、じゅうと威勢の良い音と共に、バターが焦げる匂いが室内に満ちた。

黒子「換気扇は」
五条「そこのボタンです」
黒子「ああ、これですのね」

ボタンを押し、ふんふんと鼻歌を歌いながら菜ばしでボールの中身を攪拌する黒子の様が見える。
321: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 23:21:16.33 ID:b+UzxjoxO
五条(……朝食を……作っているのですよね……どう見ても……)

フライパンの取っ手を持ち上げ、ポンポンと腕を叩いている黒子を見続ける。
存外に手際の良いものだ。
確か常盤台はお嬢様学校だったはずだが、一般教養として料理も身につけさせられるのだろうか。

ひょいと二つ分のプレートを両手に持った黒子が、キッチンからこちらへと歩み寄ってきた。

黒子「簡単なものですみませんけども」

眼前にプレートが置かれる。

バターの匂いが香ばしい主菜のオムレツが、ふるふると揺れているのがわかる。
その脇をに盛られたサニーレタスと刻みパプリカとオニオンスライスには、薄い桃色がかったドレッシングがかけられており、見た目に華を添えてくれている。

黒子「食べられないものはありませんわよね?」

次いでぱたぱたとキッチンから掛けてきた黒子の手には、先に鍋の中で暖められていたスープが汲まれた皿が持たれていた。

眼前を通過した皿の放つ匂いだけで、おなかが音を立てそうになる。
茶色く澄んだスープの上にはとろけたチーズが漂い、その中心を散らされたパセリが彩っている。

335: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 23:28:23.58 ID:b+UzxjoxO
黒子「では!」

最後に、適度な大きさにカットされたバゲットを盛ったバスケットが、どんとテーブルの中央に置かれた。

「『頂きます』」

────────────

五条「……一体、どうされたというのですか……?」

プレートの表面を泡立ったスポンジでこすりながら、ソファーでTVを眺めている黒子へと言葉を投げた。

黒子「……?何がですの?」

先の自分と同じく、背もたれに反り返る様にして逆さになった黒子の顔がこちらを向いた。

五条「……いえ、大変美味しかったので助かりましたが……何故急に朝食を作りに……?」

"美味しかった"のと言葉にした辺りで、彼女の表情が柔らかくなった気がした。

黒子「殿方のお一人暮らしですと、まともなお料理を口にしてそうにも無かったので気にかかりましたのでっ!」

逆さのまま、フンと自慢げに鼻を鳴らす黒子。
言い終えると、今度は途端に少し申し訳のなさそうな表情になり言葉を続ける。
343: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 23:34:59.26 ID:b+UzxjoxO
黒子「あとは……昨日の誤解のお詫びも兼ねましてですわ」

五条(……昨日……)
ずきりと足の裏に痛みが走った気がした。
一瞬血の気が引いたのを理解した後、プレートの水気を切り、食器乾燥機へと立てかける。

きゅ、と蛇口を捻り水道の水を止め、傍らのタオルで手を拭く。

五条「……別にもう構いませんよ……」

言葉を返し、リビングへ足を運ぶ。
と、未だ逆さにこちらを見ている黒子と目が合った。

黒子「……?」

普段自分が座っているソファー中央のポジションに、黒子が腰掛けている。

五条「……ククク……どいて頂けますか……?」

黒子「……ここが一番テレビを見やすいですわね」

五条「……ええ……オレの指定席です……」

黒子「……」
五条「……」

暫し、互いに無言で見つめ合う。
352: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 23:39:57.57 ID:b+UzxjoxO
黒子「……こういう時は、ご来客を優先されるのが常ではございませんの?」

五条「……招いた客でしたらね……ヒヒヒ……」

黒子「……その前髪、絶対後ろにお流ししておいた方がよろしいですわよ」

五条「……うるさいですよオマエ……」

黒子「……こうして見ると、案外オデコがお広いですのね」

五条「……だからうるさいですよオマエ……」

黒子「……」
五条「……」

逆さの状態の彼女と見つめあう。

黒子「……首が疲れますの」
五条「……戻せば良いでしょう……」

ふっと彼女は上体をもどし、はあと深くため息をついてその身体を少し浮かせ、左へと移動した。

黒子「……折衷案ですわ」

ぽんぽんと、空いたソファの右側が叩かれる。

五条「……ククク……」

自分も軽くため息をつき、叩かれた箇所へと腰を据えた。
362: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 23:45:05.28 ID:b+UzxjoxO
────────────

ワイドショーのスタッフロールが終わり、さして面白くも無い昼のドラマが放映され始めた。
一通りのザッピングを終え、興味を引くチャンネルも無かったので、テレビの電源を落とす。

黒子「……考えてみたら、こうしてプライベートでお会いするのは初めてでしたわね」

隣の黒子が呟いた。

五条「……ククク……いつもオマエが仕事中の時にしか顔を合わせませんからね……」

黒子「……小学校の頃のアルバムとか、ございませんの?」

五条「……無いのです……色々とワケがありまして……」

黒子「……そうですの……」

五条「……えぇ……」

黒子「勝さんって、普段は何をされてますの?」

五条「……?」

黒子「こういう予定の無い日ですわ」

黒子の問いに、暫し頭を捻る。
366: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 23:50:47.26 ID:b+UzxjoxO
五条「……ククク……洗濯……?」
黒子「他には?」

五条「……掃除とか……ヒヒヒ……」
黒子「……他には?」

五条「……筋トレ?」

はあ、と黒子がため息を吐き、首を横に振るのが見えた。
次いで、すくっと立ち上がる彼女。

黒子「……出かけませんこと?お暇なら、お買い物に付き合って下さいまし」

────────────

両手に紙袋を抱えたまま、いつぞやの公園のベンチに腰掛ける。

黒子「あ、ちょっとお待ち下さいまし」

公園の脇に停まっている移動販売の車へと黒子が駆け出した。
……暑い。とにかく暑い。

夏の昼間なのだから至極当然のことなのだろうが、昨晩の雨の影響も相まってか街中で感じる熱気は一段と湿度を帯びていて、ただ歩いているだけでも身体中が汗だくになるのが判った。

ふと目線を向かいの茂みへ投げる。
陽炎に揺らぐ茂みの影で、白梅の花飾りがヒョコヒョコと揺れている。
この猛暑の中公園で遊ぶ元気がある子供がいるなんて、流石は学園都市としか言いようがない。

黒子「お待たせしましたの!」
374: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/03(金) 23:55:19.99 ID:b+UzxjoxO
唐突に視界をカキ氷が塞いだ。

真っ白な氷の上にかけられている真っ赤なシロップが、口に運ぶ前からその冷たさを際立たせ、若干涼感を感じられた。

黒子「荷物持ちの報酬ですわ」

カキ氷の先へと視線をやると、またも自信たっぷりな笑みを浮かべている彼女の姿。
その手に持たれているメロンのシロップがかかったカキ氷。

視線に気付いた彼女が自分のカキ氷を見て言葉を吐く。

黒子「……?こちらの方がよろしいですの?」

口を開かぬままこくりと頷き、メロン味のカキ氷を受け取った。

────────────

シャリシャリとカキ氷を食べていると、不意に横から伸びたスプーンが、自分のカキ氷を一掬いさらって行った。

五条(……?)

気にもせず、再びしゃりしゃりとカキ氷をかき混ぜ、口に運ぶ。
380: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/04(土) 00:00:04.91 ID:tO24yqkRO
再度横から伸びるスプーンと、一口分さらわれるメロン味のカキ氷。

五条(……)

しゃりしゃりとカキ氷をかき混ぜる。

黒子「……勝さん」

隣から声を掛けられ、黒子へと向き直る。

五条「……ククク……どうされましたか……」

黒子がイチゴ味のカキ氷を眼前にずいと伸ばしてくる。

黒子「……食べられませんの?こちらは?」

……いまいち、質問の意図がわからない。

五条「……いえ、結構ですが……」

黒子「……そうですの……」
はぁ、と息をついたかと思うと、一転してガツガツと自分のカキ氷を貪り始める黒子。
本当に忙しい女だ。

ずずずずず……
黒子「っくあぁー!」

カップの底に残ったシロップを飲み干した黒子が大きく息を吐く。
そんな様子を見て、自分のカキ氷に視線を落とした。
既に完食した彼女に対して、自分のカキ氷は未だカップの三分の一ほど残っている。
386: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/04(土) 00:04:48.01 ID:tO24yqkRO
黒子「ごゆっくりお召し上がりなさいませ」

こちらの様子を見て取ったのだろうか、再度黒子へ視線を移すと、彼女は満足気に微笑んでいた。

五条「……えぇ、わかりました……ヒヒヒ……」

多少、ペースを上げてカキ氷をつつく。

黒子「そういえば、初めて勝さんとお会いしたのも、この公園でしたわね」

五条「……そうでしたね……」

黒子「……早いものですわ、もうあれから季節が一周しようとしているのですから」

そんな言葉に手を止めて、黒子を見る。
何か大切なものを懐かしむ様な表情で、眼前の陽炎を眺めていた。
再び手を動かし、少し残ったカキ氷のカップを口に当てると、残ったシロップもろとも、一気に飲み干した。

次いで、キーンと言う頭痛が襲ってきて身震いする。
くすくすと笑い声が聞こえたので黒子を見ると、おかしそうに口に手を当てていた。

黒子「ゆっくりで結構と申しましたのに…」

言って、再びおかしそうに笑う彼女。
少し気恥ずかしくなったので、立ち上がり、言葉を吐いた。

五条「……ククク……さて、喉の渇きも癒えましたし……」
388: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/04(土) 00:08:23.42 ID:tO24yqkRO
五条「……昼食でも取りに行きましょうか……」

言って腕時計に目線を送る。
午後一時半。

若干遅くも感じるが、昼食を取るには丁度良い時間帯だ。

黒子「……ではここからは、エスコートして下さいまし」

黒子が立ち上がり、スカートのふちをポンポンと叩いた。

五条「……丁度、前から行きたかった店があるのです……」

────────────

黒子「……で?ここがそのお店ですの?」
五条「……ククク……」

眼前には、午後も2時を回ろうとしているにも関わらず、多数の行列。
通りに面してガラス張りになっている厨房内では、この暑さに関わらずビシッとコック服に身を包んだ店員が、世話しなく次々と肉の塊を鉄板に乗せている。

"ステーキ&ハンバーグ ぼん"

最近学園都市にオープンしたばかりのその店舗は、その値段の安さと品質の高さから評判が評判を呼び、連日超満員の賑わいを見せている。

本日も炎天下に関わらず多数の客が長蛇の列を作っており、遊園地の人気アトラクションと見紛う程の待ち時間が予想された。
399: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/04(土) 00:13:47.47 ID:tO24yqkRO
黒子「……これに並びますの?」
隣の黒子が、愕然としながら言葉を吐き出した。

五条「……ええ……もちろんです……もちろんですとも……さぁ……並べッ……純粋に……!」

店内から漂う芳しい香りに胸が踊り出すのが判る。
若干引いている黒子の袖を摘みながらずるずると引きずり、最後尾へと並んだ。

黒子「……何時間待たされますの、一体」
列が、少し前に進む。

五条「……些細な事です……ヒヒヒ……」
再び、列が少し前に進む。
黒子がはあ、と息を吐くのが見えた。

黒子「本当にお好きですのね、ハンバーグが」

五条「……ええ、嫌いじゃあありません…ククク…アーッハッハッハ!」

黒子「恥ずかしいから、ここで笑うのはお止め下さいまし!」
列が前に進む。

黒子「……?」
列が前に進む。

黒子「……何か、異様に進みが速くございません?」

五条「……気のせいでしょう……ククク……」
405: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/04(土) 00:18:03.66 ID:tO24yqkRO
後に白井黒子は語る。

『あの時の勝さんの目の輝き方は、明らかに異様でしたわ』と──────

────────────

並び始めてから30分程が経過しただろうか。

ようやく次に自分達が店内に足を踏み入れる番となった。

『こちら、よろしければお待ちの間にご覧下さい』

店の外に立っていたウエイターが、メニューを手渡してきた。

黒子「あらあら……」
五条「……ククク……A5黒毛和牛ですか……」

真新しいメニューに並ぶ品は、どれもこれもが美味そうに感じられる。

黒子「……最近少し食べ過ぎて怖いのですけれども……」
五条「……3セット……3セットまでなら行けますかね……」

カランカラン

『ありがとうございました──!』

店のドアが開く音がして、次いで店員の威勢の良い挨拶が響き渡る。
414: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/04(土) 00:23:22.77 ID:tO24yqkRO
五条(……ッ!来ましたかッ!)

高まる胸を押さえきれず、弾かれる様に反射的に、目線をドアへと向ける。

その視界に写ったのは、真夏だと言うのにしっかりと着込まれた巫女服。
視界を上げる。
いっそのこと、悪い夢であって欲しかった。
そして悪い夢ならば、直ぐに覚めて欲しかった。

何故、何故よりにもよってこのタイミングなのだ。

ドアから出てきたその巫女服を纏う少女は、今朝方統括理事長より送られてきたメールに添付されていた画像に写っていた吸血殺し(ディープブラッド)

──────姫神 秋沙に相違なかった。

──────to be continued──────
504: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/04(土) 23:11:38.01 ID:tO24yqkRO
──────決断の時というものは、往々にして夏の夕立が如く、唐突にやってくるものだ。

少々の思案すら、時間は待ってはくれない。

あの娘は待ってはくれない。
隣の娘も待ってはくれない。

──────ハンバーグもまた、待ってはくれない。

『どうされましたの?勝さん』
「へぇあッ!?」

隣の黒子に声をかけられ、意識が一気に現実へと引き戻された。

五条「……ククク……何でも、何でもありませんよ……」
黒子に目線を送り、慌てて取り繕う。
店の前に備え付けられたパイプ椅子に座る自分達の前を、姫神が横切った。

五条(……どうしたものでしょうか……)

黒子「勝さん」
再度声を掛けられ、黒子に目線を送る。

黒子「……あちらの女性、ですわね?」

姫神が去っていった方へと黒子の目線が動く。

五条「……」

508: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/04(土) 23:20:43.43 ID:tO24yqkRO
はあ、とため息を吐き出した後、メニューを閉じて少し残念そうな笑顔を浮かべた黒子が言葉を続けた。

黒子「どう見ても珍妙な方ですし……勝さん、目が本気ですの……何かございますのでしょう?」

五条「……ククク……」
咄嗟に黒子から目線を外す。

黒子「……お行き下さいませ、五条勝さん。この白井黒子、私情であなたの足を引っ張る程、落ちぶれてはおりませんの」

意外な言葉が耳に入ったので、再度視線を黒子へと移す。
その表情には先の残念そうな笑顔は露も残っておらず、只凛とした表情でこちらを見据える瞳が輝いていた。

黒子「お手伝いはご不要でして?」

がた、っと立ち上がり、黒子に頭を下げる。

五条「……いりませんよ……この埋め合わせは必ず……」
黒子「……」

頭を下げたまま黒子の言葉を待つ。
次に吐かれる言葉を思い、心臓がどくどくと早鐘を打つのが判った。

『行ってらっしゃいませ』

言葉を聴き、頭を上げる。
先の表情から再び一変し、『仕方ないですの』といった笑顔で右手をひらひらと振っている黒子。
519: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/04(土) 23:30:01.48 ID:tO24yqkRO
黒子「あまり、ご無理をされすぎません様……」

手を振る黒子に背を向け、雑踏に消えかかっている姫神の背中に向かい、駆け出した。

────────────

一定の距離を保ったまま、姫神秋沙の後をつける。

人通りの多い交差点を渡り、歩道橋を抜け、モノレールの駅を利用するでもなく、その脇を通り過ぎ……

只でさえこの学園都市では目立つ格好をしている少女が歩く。
すれ違った男性が随分と振り返ることが多かった様な気がするが、彼女の奇異ないでたちに好奇心を引かれたのだろうか。
或いは、その整った容姿に惹かれたのだろうか。

次第にひと気の無い方面へと向かい始めた彼女が、裏路地の交差点を曲がる。

曲がると同時に塀で姿が隠れたので、慌てて距離を詰め、その交差点をまg…──
『吸血鬼』

角を曲がると同時に投げられた声に驚愕し、思わず飛びのく。
角を曲がったかに見えた姫神が、曲がった直後の死角部分に身を隠し、こちらを伺っていた。

五条(……気付かれていましたか……)
すっと彼女が懐から金色の針を取り出すのが見え、距離をおいたまま身構える。

五条(……?)
524: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/04(土) 23:39:31.94 ID:tO24yqkRO
彼女はその針を自らの左手のひとさし指に押し当て、一瞬痛そうに表情を歪めたあとその指をずいとこちらへ向けてきた。

五条(……!?)
彼女が何をしようとしているのかは理解出来ないが、少し腰を低くし、いつでも飛びのける様な体勢を作る。

……………………何も起こらない。

指先をこちらへと向けたまま、姫神が首をかしげる。

姫神「……吸血鬼?」

構えを解いてとことこと姫神に近寄り、ポケットから取り出したハンカチをその手に被せる。

刹那、複数の人の気配が辺りを取り囲んだ。
辺りを見回すと、複数の男が自分と彼女の周りを取り囲む様に立ちはだかっている。

五条「……ククク……何事ですか……?」
周囲の男達から明確な敵意を感じた。
再び身構え、パチンと指を鳴らす。
めきめきと鈍い音と共に隆起し、砕けちるアスファルト。
その中から五羽の企鵝が飛び出し、自身を中心に円陣を組んだ。

姫神「待って」

一触即発の空気の中、唐突に姫神の声が響いた。

姫神「この人。吸血鬼じゃない。普通の人」
次いで発された姫神の言葉に、男達の敵意が散るのを感じた。
ぞろぞろと散って行く男達。
535: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/04(土) 23:49:14.62 ID:tO24yqkRO
取り残される、自分と姫神。

姫神「何か用?」

考える間も無く、姫神から声を掛けられた。
五条(……さて、どうしたものでしょうか……)

────────────

姫神「知り合いに似ていた?私が?」
五条「……ククク……知人の巫女と見間違えまして……」

表情の薄い瞳を細め、こちらを見つめてくる姫神。
流石に苦しい言い訳なのは理解しているが、咄嗟に出たものとしてはマシな部類なのではなかろうか。

姫神「……ナンパ?」
五条「……いえ、違います……ヒヒヒ……」

姫神「……まあ良い。これ。ありがとう」

すっと彼女が血を拭ったハンカチを差し出してくる。
差し出されたハンカチを受け取ろうとしたした瞬間、はっとした表情を浮かべた彼女がそのハンカチを引いた。

五条「……」

姫神「……やっぱり。ダメ」
547: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/05(日) 00:00:29.69 ID:NajFcg0jO
首を傾げ、彼女に問いを投げる。
五条「……?何故です?」

姫神「私の血。吸血鬼を呼ぶから」
五条「……吸血鬼ですか……」

化物退治ならば経験はあるが、次は吸血鬼まで出てくるものなのかと少しうんざりしていると、彼女が踵を返した。

姫神「……ついて来て。別なのを渡す」

言い終えて、歩き出す彼女。

五条「……はい……わかりましたよ……ヒヒヒ……」

これで、ヤサの場所でも押さえられればしめたものなのだが。

────────────

不意に彼女が一つの大きなビルの前で立ち止まった。
上を見上げる彼女に釣られ、自身も上を見上げる。

四本の同型のビルが正方形を描く様に立ち並び、中空で渡り廊下の様なモノが各々のビルを繋いでいる。

姫神「塾。三沢塾」
五条「ククク……三沢塾?」

言い終えるなり足を進め、入り口のドアを潜った彼女に続く。
吹き抜けになっており、。開放感のあるロビーで制服姿の男女が歓談している様が目に入った。
553: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/05(日) 00:09:25.63 ID:E0BBca9EO
五条(……?)

妙な違和感を感じた。
街中を歩いていた時にはあれ程人目を引いた彼女が、この塾の人間からは一切の目線を投げられていない。

同様に、塾のドアを潜った自身に対しても、誰一人反応する素振りすら見られない。

気になってメガネを触った。
問題なく、掛かっている。
能力が発動しているわけでは無さそうなので、単純に周囲の状態がおかしいのだろう。

五条(……嫌な予感がしますね……)

『唖然。お前が客を連れてくるとは。その者は吸血鬼か?』

唐突にロビーに男の声が響き渡る。
堂々とした声に周囲を見回すと、いつの間にか正面の中二階の踊り場に一人の男がこちらを見ながら立っている。
深い緑色がかった総髪。
瞳の色も同じく緑。
白いスーツに身を包んだまま、口元に自信に満ちた笑みを湛えている。

男があれだけ声を張り上げたにも関わらず、やはり周囲の学生は反応を示さない。

姫神「違う。只のお客さん。血を出した時に彼にハンカチを貰ったから。別なものを出してあげて欲しい」

『間然。仔細無い、かの者の手に格調高き布片を』

男が口にすると同時に、右手に違和感を感じた。
562: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/05(日) 00:18:26.10 ID:E0BBca9EO
いつの間にか閉じられた手に、金刺繍が美しいハンカチが握られている。

五条「なッ……!?」

姫神がその様を見ると薄い表情を僅かに嬉々に染め、男へと言葉を吐いた。

姫神「ありがとう。あとは」

『当然。貴様の恩人なれば、害成す由は無し。されど記憶は消させて貰う』

筆舌に尽くしがたい程の嫌な気配を感じ、咄嗟にメガネに手を伸ばす。

『動くな少年』

男が言葉を発すると同時に、身体が動かなくなった。

五条(……虎の尾を……踏みましたかッ……?)

眼球へと力を集中するも、能力が発動しそうな気配は無い。

『案ずるな。殺しはしない』

男がいつの間にかその手に黄金の針を持っている。
ゆったりとした動きで、男は自分の首筋に向かい針を突き刺した。

『吸血殺しを目視せし時より、これまでの全てを忘れよ』

────────────
567: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/05(日) 00:27:37.75 ID:E0BBca9EO
────────────

未だ赤くは無い西に傾いた太陽が注ぐ中、公園のブランコに腰掛けていた。

妙だ。

一体自分が何故こんなところに居るのか、全くの理解が出来ない。
確か黒子とハンバーグを食べる為、行列に並んでいたと思ったのだが。
何故自分はこんな所に居るんだろうか。
時計を眺める。
午後三時台も、直に終わりを告げようとしていた。

『……あんたは人の妹分ブッちぎって……』

不意に、背後に殺気を感じた。
慌てて地を蹴り、ブランコを囲む鉄柵を飛び越える。

『こんなところで何しとんじゃああああああああああ!!』

先に自身が座っていた箇所の後方から、バチバチと音を立てて電光が走る。
電光はブランコとその鉄製の部位に帯電し、ブランコの鉄柵から内側を目まぐるしく駆け回っている。

その電光の源を見る。
先ほどまで自分の隣に居たはずの白井黒子と同様の制服。
栗色のショートカットにヘアピン。
憤怒の形相でバチバチと周囲に電気を撒き散らす学園都市第三位、御坂美琴の姿がそこにあった。

五条「……!?お姉さまっ!?」
美琴「だれがお姉さまよッ!?」
573: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/05(日) 00:36:07.38 ID:E0BBca9EO
再び自身へと走る電光。
すんでの所で回避し、再度美琴へ言葉を投げる。

五条「……ククク……襲撃される理由がよくわからないのですが……」
パチン、と指を鳴らす。
土中から現れた企鵝達の一羽をひょいとツマミ上げ、自身の前に掲げた。

五条「……さぁ、来るなら来なさい……もしもオマエが電撃を放ったら……」

持ち上げた企鵝が、短い手足をジタバタと振る。

五条かこ「……こいつ諸共、丸焦げですよ……ヒヒヒ……」

美琴の憤怒の形相が凍りつく。

美琴「へぇ……黒子とのデートをブッチして他の女について行った挙句、今度は自分のペットを盾に……?あんたの事、誤解してたわ……」

五条「……ブッチ……?オレがですか……?」

美琴「とぼけんじゃないわよッ!」
美琴が再度電撃を放つ。

企鵝を抱えたまま横っ飛びし、電撃を回避する。

美琴「あの娘がッ……あの娘がどんな気持ちでッ……!!」
次から次へと襲い来る電撃を回避し続ける。

美琴「それをアンタはッ……!!」
美琴の眼前の中空に、銀色のコインが踊った。
588: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/05(日) 00:44:08.95 ID:E0BBca9EO
咄嗟に手にした企鵝を美琴へと蹴り飛ばす。
コインが落下するより早く美琴へと到達した企鵝が大きく爆ぜ、周囲の土煙を巻き上げた。

もうもうと立ち込める次第に土煙が晴れ出した先に、一層大きく空中放電を撒き散らしている美琴の影が見える。

その影に向かい、深く頭を下げ続けた。

美琴「覚悟は……って!?」

自分の姿を確認した美琴が素っ頓狂な声をあげる。

五条「……ククク……すみませんが……詳しくお伺いしたいお話が……」

頭を下げ続けている状態でも、その音で次第に美琴の傍の帯電が収まる様が判った。

美琴「もういいわ……ごめん、ちょっと熱くなり過ぎた……」

美琴の許しが聞こえ、頭を上げる。

五条「……感謝します……」

怪訝そうに眉間にシワを寄せている美琴の瞳を見つめ、言葉を続けた。

五条「……教えて頂けますか……オレが……何をしていたのか……」

────────────

美琴「……で、あのビルから出てきたアンタがふらふらこの公園に来たんで、声をかけたってワケ」

五条「……そうですか……」
597: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/05(日) 00:53:37.84 ID:E0BBca9EO
声をかけたのではなく、どう見ても先制攻撃を仕掛けてきたのだろうとツッコミを入れたくなったが、話を聞く限りでは完全に自分が悪人だ。

はあ、と深くため息をつく。

美琴「ホントに何も憶えてないの?」
五条「……残念ながら……」

再びついたため息に、自分の肩が落ちるのがわかった。
恐らく、自分と共にあのビルへと入った女は姫神秋沙に間違いは無いだろう。
美琴から聞いた外見的な特徴は完全に一致している。

そして、美琴の話を聞く限りでは自分が姫神を見つけてから以後の記憶が完全に欠落している。
彼女が何らかの能力者なのだろうか。
美琴の説明振りでは、最低でもあのビルに入るまでは、自発的に行動を執っていたらしいのだが。

美琴「……何かの能力者かしら?頼みたくないけどあの女に……いや、マズイわよね……」

ぶつぶつと呟いている美琴を見て、ふと湧いた疑問をぶつける。

五条「……ククク……そういえば……」
美琴「?」

五条「……何故、オレの行動を把握しているのですか……?」

身体をビクッと竦ませた後、美琴がゆっくりとこちらを向いた。

美琴「いやー……それはー……そのー……」

黙って美琴を見据える。
603: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/05(日) 01:02:50.02 ID:E0BBca9EO
美琴「アタシは黒子の先輩としてー……」

はぁ、と本日何度目か判らなくなったため息を吐いて、しどろもどろに言葉を続けている美琴に口を開いた。

五条「……まぁ、お陰で助かりましたよ……ヒヒヒ……今日の事は黒子には伝えないで下さい……余計な心配をかけたくない……」

言い終え、ブランコから腰を上げた。

美琴「……これからどうするの?」
五条「……彼女の居所がわかれば、もう充分なんです……あとは……」

右手で銃の形を作り、自身のこめかみに当てる。

五条「……一件、アテがありますので……」

────────────
『よお、元気そうで良かったわ』

五条「……ククク……突然済みませんね……」

随分と空に留まっていた太陽が西の山に隠れようとし始める頃、上条当麻の部屋にたどり着いた。

五条「……こちら、お宅の聖職者様に……」

駅前のコージーコーナーで買ったシュークリームの箱を眼前に差し出すと同時に、上条の背から飛び出した一つの影が素早くその箱を攫う。
609: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/05(日) 01:11:52.58 ID:E0BBca9EO
『天にまします我らの父よ、この慈悲深き五条勝に貴方のしゅくふk』
上条「こらこら、行儀わるいですよオマエ……ったく、悪いな。毎度気ぃ使わせちゃって」
五条「いえ……お布施としては安いものです……」

わーい、シュークリームシュークリームー、ありがとうマサルー、と嬉しそうに箱を抱えて部屋を駆け回るシスターの姿が上条の向こうに見える。

上条「で、頼みってなんだ?上がってくか?」
五条「……いや、あまり時間がありません……」
首を左右に振った後、右手の人差し指を突き立て、とんとんと自分の額を叩いた。

上条「……?」
五条「ダメで元々なのですが……右手で……デコピン、して頂けますか……」

不思議そうな表情のまま、上条が親指を中指で抑えた右手を眼前に差し出してくる。
前髪を上げ、額をさらけ出した。

ばちんッ

途端に目前の曇りガラスが割れて落ちる様に、靄が掛かっていた記憶が一気に戻ってくる。
姫神を見つけた事。
背を押してくれた黒子に見送られ、彼女のあとを追った事。
彼女に尾行を気取られ、妙な男達に取り囲まれた事。
彼女に引かれて入った塾の中で、緑髪の男と出会った事。
そしてその男が起した不可思議な現象。
613: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/05(日) 01:21:01.12 ID:E0BBca9EO
加えて、自身が男の術中にはまり、まんまと記憶を失くしていた事に対する自責の念と、男に対する憤怒の感情がふつふつと湧き上がって来る。

五条「ククク……アーッハッハッハ!!」

昂ぶる感情を抑えきれず、高笑いを上げた。

上条「あのー、人んちの前で高笑いするのやめてもらえます……?」

五条「……ククク……これは失礼を……いや……助かりましたよ……本当に助かりました……」

踵を返し、上条の家の前から歩を進める。

『よくわかんないけど頑張れよー』

背中に投げられた声に、黙ったまま右手を高く掲げた。

────────────

自宅に帰り着き、ふと自身が昼から何も食べていない事に気がついた。
何か無いものかとキッチンを見ると、朝に黒子が持ってきたバゲットの残りを見つけた。

冷蔵庫に残っていたツナの缶詰を開き、マヨネーズと微量の醤油をたらしてかき混ぜる。

これまた朝の残り物のサニーレタスを程よい大きさに千切り、カットしたバゲットに載せ、スプーンでツナを盛り付ける。

五条(……少し、味気ないですが……)

手早く食事を終え、黒子の携帯電話をコールした。
623: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/05(日) 01:29:52.95 ID:E0BBca9EO
数回の呼び出しを経て、彼女の声が受話器から響く。

『どうされました?』

五条「……今日は本当にすみませんでした……」

『……構いませんわよ、別に』

受話器から聞こえる声色から、特に怒りは感じ取れない。

五条「……そう言ってもらえると助かります……」

五条「……今日のお詫びと言ってはなんですが……明日お時間は……」

『申し訳ございませんわ、明日以降はちょっと用事が立て込みますの』

何故だろうか、少し胸が痛んで眩暈がした。

『盛夏祭が近くなっておりますので』

五条「……盛夏祭?」

『常盤台中学、うちの中学校の文化祭みたいなものですわね。また近い内に、追ってご案内差し上げますわ』

五条「……初耳です……その準備ですか……ヒヒヒ……」
628: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/05(日) 01:35:27.53 ID:E0BBca9EO
『ええ。風紀委員のお仕事もありますので、当面は暇も無さそうですの』

五条「……オマエは少し頑張り過ぎますから……あまり根を詰め過ぎないで下さいね……」

『お互い様ですの』

くすくすと笑う声が受話器から伝わった。
自然と、自身も笑みがこぼれる。

五条「……ではまた……」

『えぇ、またご連絡しますわ』

電話を切り、ソファに腰を投げる。

五条(……統括理事長へ、彼女の居所の報告だけしておきますか……)

思い出した様に携帯電話を開いて、暫し思案した。

五条「……」

自分は、統括理事長と、コンタクトが、取れない。
634: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/05(日) 01:41:27.14 ID:E0BBca9EO
次第に、食べ損ねたハンバーグに対する怒りと、一方的に仕事を投げられた統括理事長への怒りと、不意打ちをしてくれた昼に会った緑髪の男への怒りが腹の中でグルグルと渦を巻き、ドス黒いマグマの様な感情の奔流が身体中に広がるのが理解できる。

ハンバーグは別に構わない、いずれまた食べに行けば良いだけだ。

「……ククク……」

飯を食わせて貰っている身として、統括理事長の依頼を聞くというのも、自身で決めた事だ。

「…クックックック……」

最後に残ったこの感情の原因を特定する。
不意打ちをしかけ、やりたい放題やってくれたあの男。
眼前に、自信に満ちた笑みを浮かべる男の顔が浮かび上がる。

「ア───ッハッハッハッハ!!」

赤子の手を捻るとは、まさにこの事じゃないか。
あんなにワンサイドゲームであしらわれたのは初めてだ。
いとも簡単に、人の記憶を好き勝手いじくり回して、まるでピエロの様に踊らせてくれたあの男。

──────あの男だけは、絶対に許さない。


──────to be continued──────
720: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/05(日) 23:09:20.31 ID:E0BBca9EO
────────────
八月五日 夏休み十七日目
────────────

『成程、三沢塾か』

五条「……ククク……」

学園都市に来て以来、三度目に足を踏み入れる事となる橙色のビーカーが鎮座する薄暗い部屋で、緑色の手術衣に身を包んだ逆さの人間と向かい合っていた。

『少々前にこの学園都市に一人の錬金術師が姿を現していてね』

五条「……錬金術師?」

『ローマ正教に所属していたチューリッヒ学派の錬金術師が学園都市に潜入したとの事だったんだが……君が会ったという緑髪の男で間違いないだろう』

五条「……」

昨日の男を思い返す。
不意を突かれたとは言え、自身が学園都市に踏み入れて以来初めての敗北を味あわせてくれた男。
ぐつぐつと、ハラワタが沸騰する様な感覚が蘇ってくる。

『ご苦労だったね認識阻害。下がりたまえ』

統括理事長の声を聞き、踵を返した。

五条「……」
729: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/05(日) 23:19:00.97 ID:E0BBca9EO
『どうした?未だ何かあるのか?』

足を進めない自身を見て、統括理事長が尋ねてくる。

五条「……一つ、お伺いさせて頂きたいのですが……」

『何だね』

五条「……姫神……吸血殺しを確保するご予定などは……?ヒヒヒ……」

表情を変えぬまま、統括理事長が声を返してくる。

『事情の詳細まで語る気は無いが、ローマ正教を離反した錬金術師が関わっている時点で、この件に関しては能力者では無く魔術師を対処に当てなければならなくなった。近日中に彼女を確保する為の魔術師を召集して、その確保に当たらせようと思う』

五条「……そうですか……」

『何か残念そうだね?』

五条「……ええ……人の記憶を弄んでくれたあの錬金術師が、少々気に食いませんので……ヒヒヒ……」

『……』

統括理事長に背を向けたまま言葉を投げる。
暫しの沈黙を挟み、背後から言葉が返ってきた。

『その言葉は覚えておこう』
737: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/05(日) 23:28:45.63 ID:E0BBca9EO
五条「ククク……期待しておきますよ……」

────────────

それからというものの、二日程退屈な時間が続いた。
黒子が盛夏祭の準備と風紀委員の仕事に追われているというので、あまり負担を増やすものではないだろうし、黒子が居ないと万が一アンチスキルに拘束された際も穏やかに場を切り抜けられる自信が無かった為、揉め事も起こさずにだらだらと惰性で二日を過ごした。

五条(……風紀委員入りも、考えてみますかね……)
七日に黒子から電話があり、

『十二日に常盤学園中で盛夏祭が行なわれますので、是非ご来場下さいませ!』
と告げられた事が、唯一の変化らしい変化だったろうか。
仕方が無いので、十二日までは大人しくしていようかと思っていた矢先、事態が急を迎える。

────────────
八月八日 夏休み二十日目
────────────

ぴんぽーん

昼食をとり終えて暫く時間が経った頃、ソファに腰掛け企鵝を撫でながら他愛も無いワイドショーを眺めていた折、唐突に来客を告げるインターホンが鳴る。

五条「……?どちら様でしょう?」
ソファから立ち上がり、ドアの向こうへと声を投げる。
742: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/05(日) 23:39:23.73 ID:E0BBca9EO
『ボクだ』

数日ぶりに聞く声が、ドアの向こうから響いて来た。
咄嗟に二日前に統括理事長が魔術師を対処に当てると言っていたのを思い出し、気だるさに沈んでいた気持ちが、一気に高揚するのが理解出来た。

五条「……ククク……オレは空飛ぶスパゲッティ・モンスター教ですので……宗教の勧誘はお断りしております……」

『……』
五条「……」

『無理やり開けて良いかな?』
五条「……今開けますよ……ヒヒヒ……」

ドアのロックを外し、扉を開く。
視界を塞ぐ巨躯、目の下のバーコード、咥えたタバコの灰。
赤髪の神父、ステイル=マグヌスの姿がそこにあった。

五条「……何用ですか……?」

ふう、と紫煙を吐き出し、ステイルが口を開く。

ステイル「学園都市の統括理事長に召集を受けてね。不本意ながら君と上条当麻を伴って任に当たれとの命が下されたんだ」

五条「……命とは……?」

ステイル「チューリッヒ学派の錬金術師がこの街で女の子を監禁しているとの事だ。術師の名前はアウレオルス=イザード。三年前から行方を眩ませていてね。三年間どこで何をやっていたのか……それがひょっこり戻ってきたワケだ」
755: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/05(日) 23:53:23.60 ID:E0BBca9EO
間違いない、先の件だ。

五条「……グヒヒ……もう結構……吸血殺し、姫神の確保ですね……」

ステイルが目を見開き、驚いた表情を作る。
ぽろ、と煙草の灰が落ちた。

五条「……ククク……オレも一枚その件に噛んでいましてね……」

ステイル「……話が早い。僕はこれから三沢塾に特攻をかける。頼めるかい、五条勝」

五条「……アウレオルス=イザードの処理は、任の内に入っているのですか……?」

ステイル「ああ、処理をしろとまでは言われていないが、間違いなく彼とは矛を交える事になるだろうね」

五条「……了解しました……受けましょうか……」

答えて、踵を返す。

ステイル「……厄介な相手になると思う。準備をしたら、上条当麻の自宅の前で落ち合おう。じゃあ」

背後からステイルがドアを閉める音が聞こえた。

厄介な相手?
五条「……知ってますよ……ククク……アーッハッハッハ!!」

────────────
761: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 00:03:26.31 ID:SsiD0agXO
サッカーウェアに身を包み、巨大なサッカーバッグを背に追ったまま、ビルの前に立ち尽くしていた。

隣には、炎の魔術師が吐き出す煙がゆらゆらと揺れており、その向こう側に幻想殺しの右手を持つ高校生の姿が見える。

上条「これが三沢塾……?別に怪しくは見えないけど……」

ステイル「怪しくは、見えないね。だけど建物自体が錬金術師の強力な結界になっている」

五条(……この間は気付けませんでしたね……)

上条「強いのか?それ」

ステイル「アウレオルス=イザード。彼のパラケルススの末裔さ。君達は錬金術師について何を知っている?」

ステイルが、講釈を垂れる教師の様な口調で呟いた。

上条「鉛を金に変えるとか、不老不死の薬を調合するとかって?」

五条「……修道院を名乗ってお酒を造っている方々もおりますね……確かあの方々はフランスのカト『ボクはイギリス正教徒だから構わないが、敬虔なプロテスタントの前であまりその手の話をしない方が良いと思うよ』

ステイルに遮られた。

ステイル「まぁ良い、錬金術師には本来、究極的な目的が存在するんだ」

五条「……?」
765: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 00:13:31.78 ID:SsiD0agXO
ステイル「世界の全てをシミュレートする事さ」

上条「何だそりゃ?」

間をおかず、上条の声が飛ぶ。

ステイル「もし、頭の中に描いた物を現実世界に引っ張り出せたら……どうなると思う?」

上条「はあ?何でも好きに持ち出せるって事か?そんなの勝てるワケ無いだろうが」

上条の声を聞いたステイルが皮肉っぽく笑みながら、言葉を続けた。

ステイル「じゃあどうする?君はここでお留守番しているのかい?」

話が込んでいる二人の脇を過ぎ、ガラス張りのロビーを外から眺めた。
こうして眺める分には至って通常の進学塾そのものだが、この間の現象は一体どうなっているのだろうか。
ステイルが居れば、何となく原理は説明でもしてくれそうなものだが。

ステイル「気が早いね五条」

二人を伴い、塾のドアを潜った。

上条「……?何か、意外と普通だな」

ステイル「そりゃそうさ、表向きは今も予備校として営業中なんだ」

上条「……あれは何だ?」

不意に上条が目線を送った先に、つられて目線を送る。
玄関ホールの柱の枠に、先日は見られなかった中世西欧風の甲冑が投げかけられている。
766: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 00:22:35.61 ID:SsiD0agXO
甲冑に近づき、上条が言葉を発した。

上条「……ロボット?壊れてんのか?」

ステイル「どうした?ここには何も無い。移動した方が賢明だと思うけど」

五条「……ククク……その言い方は感心しませんね……」
ステイル「……」

上条「……?何言ってるんだお前ら」

五条「……どう見ても……人の遺体でしょう……それは……」

上条「……ッ!?」

上条が改めて遺体を眺める。
つい今しがた絶命したところなのだろうか、遺体から流れた血液が象る血だまりが、徐々にその大きさを増して行くのが見てとれた。

上条「死体!?」

ステイル「恐らく、ローマ正教の十三騎士団だろうね。この様子じゃ恐らく全滅だろう」
上条「……どうして……」

五条「……物騒な気配はしていましたがね……まぁ、覚悟はしていましたが、こんなに早く死人を見るハメになるとは思いませんでした……ヒヒヒ……」

上条「こんな所に死体があるってのに、何で誰も騒ぎ立てないんだ?」

ステイル「コインの表と裏さ、ここは……」
770: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 00:32:33.94 ID:SsiD0agXO
ステイルが懐からコインを取り出し、ピンと音を立てて中空に弾いた。

ステイル「コインの表である住人である生徒たちは、コインの裏の住人、ぼくたち外敵に気付くことが出来ない」

五条「……ククク……」

ステイル「ぼくたちも、彼らに一切干渉する事は出来ない」

上条が暫し思案した後に右手で遺体に触れようとするのをステイルが遮る。

ステイル「無駄だよ、結界の核を破壊しない限り、この状態は解除されない」

小さく十字を切ったステイルが呟いた。
ステイル「……戦う理由が、増えたみたいだ」

────────────

──────ひたすらに駆けていた。
眼前には長大な廊下。
後方には、自身を追ってきている無数の光球。

ステイル「おい!逃げるな!」
後方からステイルの声が響く。

ステイル「上条の右手はドラゴンブレスの一撃を、五条の目はドラゴンブレスの羽を退けたんだぞ!」

上条「人を盾にしておいてよく言うぜ!量が絶望的だ、あんなもん右手一つで対処出来るか!!五条はッ!?」

五条「……ククク……能力も無限に使えるわけでもありませんので……トラップ程度に無駄遣いはしたくありません……」
773: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 00:41:29.97 ID:SsiD0agXO
迫ってきた曲がり角を三人で右折する。

五条「へぇあッッ!!」

曲がる直前に、瓦礫で進路を塞げないかと壁に蹴りを入れ破壊を試みるが、壁面は異様な程に硬く、びくともしない。

ステイル「無駄だ!コインの裏の住人である僕らの物理干渉は、コインの表にある建物自体には通用しない!エレベーターも使えないとさっき言っただろう!?」
五条「……試してみたくなりましてね……」

言って、全力で駆ける。

五条「……お先に失礼させて頂きます……」

背後から掛けられる怨嗟交じりの静止の声を振り切り駆けた。
なんであれ、この状況になってしまったら一旦体制を立て直す必要性がありそうだ。

眼前に見えた階段を跳躍し、中下階の踊り場に着地する。
暫しの静寂。勢いをつけた後、次いでさらに跳躍。
もう一フロア下の踊り場に着地した時、先と同様に無数の光球が更に下のフロアからせり上がってくるのが視界に入った。

五条(……このままでは、挟まれますかね……)

咄嗟に階段脇のフロアへと身を躍らせる。
光球は自身の居た箇所を追い越し、上のフロアへと向かってせり上がっていった。

五条(……さて、これからどうしたものでしょうか……)
776: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 00:51:47.23 ID:SsiD0agXO
眼前の踊り場を完全に飲み込み、徐々に上へと競りあがっていく光球達を眺める。
その一つがふわりとこちらに漂う。

それに続く様に、徐々にこちらへと侵食し始める光球達。
次いで、大量に殺到する光球。

五条「ッ!?」

慌てて踵を返して駆け出す。
幾ばくか駆けた先で、絶望的な光景が視界に飛び込んできた。

五条「……行き止まり……ですか……」

振り返り、背後の光球達を見据える。
五条(……空間……世界の認識阻害ともなると……また統括理事長の大目玉を喰らいかねませんね……)

ふう、とため息を吐いた後、サッカーバッグのファスナーを開く。
中からひょこひょこと五羽の企鵝が飛び出し、先頭の一羽が足もとにサッカーボールを置いた。

五条(……爆発で連鎖はしてくれるでしょうか……試す程度ならばッ!)

次第に迫り来る光球に向かい、ボールを蹴りつける。
五羽の企鵝がボールに纏わりつく様に舞い、ボールと光球が激突すると同時に大きく爆ぜた。

もくもくと黒煙が立ち込める中、黒煙を抜けてこちらへ向かって来る光球を視認した。

五条(……最後の手段ですっ……!)
780: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 01:01:48.92 ID:SsiD0agXO
メガネを外そうと右手を伸ばした途端、眼前で光球が静止した。
五条(……?)

静止したまま重力に引かれる様、一つ、また一つと床へ落下していく光球。
光球が落下した箇所では、仄かに青白い炎が燃え上がっている。

しばしそれを確認した後、再度上層階を目指すべく先の階段に向かって歩を進めた。

階段にたどり着き、様子を伺う。
と、上階から誰かが降りてくる気配を感じたので慌てて壁に身を隠した。
何者かが自分の隠れている踊り場の壁を通過し、更に階下へと降りんと足を進める。

僅かに壁から上体を覗かせその影を視認した。

上条当麻。

先に別れた上条が、呆けた表情で階下へと向かっているのが見えた。
慌ててその後を追い肩を叩く。

五条「……ククク……何をされているのです?」
肩に手を置くが上条は気付く素振りも無く歩を進めていた。

目に生気が感じられないその様は、まるで誰かに操られているかの様にも見て取れる。
783: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 01:10:51.04 ID:SsiD0agXO
五条(……あの男の仕業ですかね……)

ステイルがどうなったのかも気に掛かったが、先の光球が消えたのは、きっとステイルが術式を解除でもしたからなのだろう。
或いは術者があえて自分を追い詰めるだけで消滅させたのだというのなら、そこまで濃密な殺意を感じ取る事も出来ないので、危険性は高く無いだろう。
どちらにしろ無事であろうとの考えを浮かべながら、上条の後を追った。

────────────

上条が以前自分が気付いた公園のブランコに腰掛けたのを確認すると、再度踵を返し、三沢塾へと向かう。
塾へ向かう途中、先の上条と同様に呆けたステイルの姿が見えたので、同じくその後を追った。

先刻まで周囲を包んでいた夕闇は徐々にその姿を宵闇へと移し変え始めている。
ステイルが上条と同じ公園へとたどり着くと、上条の隣の空いたブランコへと腰を据える。
しかし、何故あの錬金術師はこの公園のブランコにここまで人を座りたがらせるのだろうか。

二人で並んでブランコに腰かけたまま呆けている状況に携帯電話を向け、その様を画像データとして保存する。
保存が終った後、呆けている上条の右手を掴み、その額へとあてがった。
792: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 01:20:41.58 ID:SsiD0agXO
途端に上条の目に意思の光が宿り、キョロキョロとあたりを見回し始める。

上条「……!?ここは……」
五条「……塾の傍の公園ですよ……してやられましたね……」

ハッとした表情になった上条が隣に目線を送り、座ったまま呆けているステイルを見てニヤリと笑う。

上条「……この野郎ッ……」

立ち上がった後に右拳を握り締め、ステイルの前へと移動し、大きく振りかぶる上条。

上条「よくも人様を囮に使って逃げ延びやがったな記念ッッッ!!」

そのまま打ち下ろしぎみの右ストレートがステイルの顔面に炸裂し、その巨躯が地面へと叩きつけられた。

────────────

三度、三沢塾の前に立っていた。

先に二度訪れた時とは異なり、辺りを完全に夜の帳が覆い尽くしている。
塾の入り口に人影を見つけて立ち止まった上条が口を開く。

上条「おい、アイツら、入り口に居た……」

目線を上条が指した方向へと向けると、入り口で屍となっていた騎士と同様の甲冑を纏った七つの影が、一列に並び各々の右手に剣を携えている。

五条「……ククク……何か少々滑稽に見えますね……」

ステイル「十三騎士団の生き残りか……」
793: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 01:30:33.37 ID:SsiD0agXO
『攻撃を開始する!!』

騎士の内の一人が高らかに叫び、右手の剣を掲げた。
次いで、同様に右手の剣を掲げる騎士達。

ステイル「真・聖歌隊(グレゴリオ=クアイア)……」

傍らのステイルが、驚愕した様に呟く。

上条「はぁ?」

ステイル「正真正銘のグレゴリオの聖歌隊だよ」
上条「けどオマエ、グレゴリオの何とかには、大人数が必要だって……」

ステイル「今頃バチカン大聖堂では、3333人の信徒が聖呪(いのり)を捧げているんだろうさ」

最初に剣を掲げた男が高らかに叫ぶ。

『ヨハネ黙示録第八章!第七節より抜粋!第一の御遣い、その手に持つ滅びの管楽器の音をここに再現せよ!!』

叫びと同時に掲げられた剣より赤い光が激しく迸り、周囲を同様の赤色へと染めていく。
いつの間にか塾の上空を黒い雲が覆い尽くし、激しく赤い雷光を撒き散らしていた。

五条「……ククク……相当物騒な事を仰っていますね……終末なんて呼ばれたら、たまったものではありません……」

ステイル「聖呪爆撃ッ…!?」
上条「爆撃ッ!?」

ステイルの呟きに声を挙げた上条が、昂ぶった様子で言葉を続ける。
794: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 01:37:31.37 ID:SsiD0agXO
上条「あの中には姫神がッ!無関係な生徒達だって!」

──────刹那に赤い雷光が落ち、轟音と共に大気が爆ぜた。

巨大な三沢塾の表面に配されたガラスというガラスが音を立て砕け散り、中心よりビルが倒壊を始めた。

ステイル「崩れるぞッ!」
更なる轟音が大気を揺らし、ビルが次第にその姿を崩していく最中。
ビルの倒壊がぴたりと停止し、まるでビデオの巻き戻しを見ている様に、ビルが復元を始める。

ステイル「黄金練成(アルス=マグナ)……」
五条「……黄金練成……?」

ステイル「あれが僕らの敵、アウレオルスの本当の実力……!」

中空に爆ぜていたガラスまでもが、巻き戻される様にぴたり復元される。
復元されると同時に、騎士団達が放つ赤い光が止まり、黒雲が晴れた。

──────にゃーん……

黒雲が晴れ静けさを取り戻した塾の前に、唐突に猫の鳴き声が響いた。
足元を見ると、どこかで見た様な白い布切れがもそもそと蠢いている。

五条(……?)
布の隅から、一匹の三毛猫がひょこりと顔を出した。

上条「スフィンクス!」
猫が顔を出した布を拾い上げた上条の顔色が、みるみる青ざめていく。
796: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 01:41:15.85 ID:SsiD0agXO
上条「まさか……これ……インデックスの……?」

呟きを聞いたステイルが、何かに弾かれる様に駆け出した。

その様を見た自分も、同様に駆け出す。

少し遅れて、上条の足音が続いた。

三人の駆ける足音が、静寂に包まれた市外に響き渡っていた。

──────to be continued──────
834: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 21:29:21.40 ID:P1C+Qi/4O
五条「……ステイル!アウレオルスの居所の特定は……?」

駆けながらステイルに問いかける。

ステイル「北棟の最上階、校長室のフロアだ!さっき結界を解除しておいたから、もうエレベーターが使える!一気に上がって、奴を叩くぞ!」

駆け抜けようとした入り口脇で先の騎士達が呆然と立ち尽くしているのが見え、思わず足を止める。

上条「おわっ!……どうしたんだ突然!?」

後に続いていた上条が体をかわして声を吐く。

五条「……すぐに追いつきます!先に向かって下さい……!」

わかった!と叫び、ステイルの後に続く上条、その背を見送り、傍らの騎士達に声を投げた。

五条「……ククク……ローマ正教、十三騎士団の方々ですね……?」

隊長格と思しき、先に最初に剣を掲げた騎士の体がピクリと反応し、言葉が返ってくる。

『……如何にも。我々はローマ正教十三騎士団。そして私は『ランスロット』の称を拝するビットリオ=カゼラである』

鎧越しに聞こえるその声は威厳に満ちており力強く、曲がりなりにも眼前の甲冑騎士達がそれなりの戦線を乗り越えてきた事を伺わせる。
835: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 21:35:39.40 ID:P1C+Qi/4O
カゼラ「五条殿……それで、我々に一体何用か?」

訝しげに尋ねてきた男の背後で、六つの影がガシャガシャと居住いを正す。

五条「……あなた方は、一体何をしているのです……?」

カゼラ「何を、とは?」

五条「……見ての通り、オレと先の仲間達は、これより敵の首魁であるアウレオルス=イザードの討伐に向かおうとしています……敵の強大さは、先のあなた方の聖呪爆撃が通用しない点より拝見させて頂きました……」

カゼラ「……」

黙って話を聞くカゼラに続ける。

五条「……呆然としている様を見る限り……あの真・聖歌隊があなた方の切り札だったのですね……?」

カゼラ「……如何にも。彼の術式さえ無効化されては、我々には最早切り札が……」
言って、カゼラが力なく首を横に振る。

五条「……ククク……理解させて頂きました……で、これからどうされるのですか……?」

カゼラ「……本国に帰還し、新たな方策を練ろうかと『判りました』

カゼラの言葉を遮り、更に言葉を続ける。

五条「……残念です……残念ですが判りました……道中お気をつけてお帰り下さい……」
カゼラ「……」
839: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 21:43:23.41 ID:P1C+Qi/4O
五条「……オレが御伽噺の中で見た騎士というものは、もっと勇敢なものだったと思ったのですが……失望です……」

カゼラ「……!」

五条「……至極残念ですよ、湖の騎士……きっとオレは、今後クラブのジャックを眺める度にため息を吐くことになるのでしょう……」

五条「……居なかった……悪い魔法使いをやっつけ、ドラゴンの首を切り落とし、美しい姫を助け出す……皆から英雄と崇められる御伽噺の騎士は……どこにも、居なかったのですね……」

言い終え、深くため息を吐いた。

カゼラ「しかし我々にh『その右手の中のものは何なのです!』

再びカゼラの言葉を遮り続ける。

五条「……その剣は、一体何を守る為にあるのですかっ……!?」

五条「……一度や二度、切り札を破られたからとて、敵前よりあっさりと逃亡をするのがあなた方の正義ですか……?あなた方の信念なのですかッ……!?それが……それが騎士道だというのですかッッッ……!?」
841: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 21:50:55.40 ID:P1C+Qi/4O
カゼラ「……」

黙って右手に視線を落としていたカゼラがガシャリと踵を返した、その後方には六人の十三騎士団が一列に並び、姿勢を正している。

カゼラ「……ライオネル」

『はッ!』

カゼラが名を呼ぶと、一番右翼に立っていた騎士が、一歩前に進み出た。

カゼラ「……貴殿が一番、年若かったな……これより本国に帰還し、大聖堂に伝えよ」

カゼラ「ローマ正教十三騎士団はアウレオルス=イザードの討伐に失敗。民間人の防衛を最優先した結果、恐らくは全滅したと」

進み出た騎士の体が、わなわなと震えるのがわかる。
『しかしッ……!』
カゼラ「返事をしろッ!ライオネル!」

『ッ……了解致しましたッ!』

カゼラ「行けぃッ!」

命じられた騎士が眼前に剣を掲げ、踵を返して駆け出した。
その様を見たカゼラが、ジャッと威勢の良い音と共に、眼前に剣を掲げる。

カゼラ「ローマ正教十三騎士団『ランスロット』ビットリオ=カゼラが問わん!」

ジャッと一列に並ぶ五人の騎士達が同様の姿勢をとる。
844: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 21:57:48.31 ID:P1C+Qi/4O
カゼラ「我らが担いし悪を払う剣の名を答えよ!」

『『『PROWESS! (優れた戦闘能力)』』』

カゼラの問い、五人の男達が返答する。

カゼラ「我らが担いし、魔を防ぐ盾の名を答えよ!」

『『『COURAGE! (勇気) 』』』

カゼラ「我らの背後に鎮座せし、守るべき者達の名を答えよ!」

『『『HONESTY! LOYALTY ! GENEROSITY!(高潔・忠節・寛容) 』』』

カゼラ「続けよ!我らの守るべきものの名を!」

『『『FAITH! FAITH! FAITH!(信頼・信念・教義)』』』

傍目にも、男達の士気が見る間に高揚していくのがわかる。

カゼラ「なれば行かん!我が兄弟達よ!我らが父なる神の名の下、今こそ邪悪を打ち滅ぼす時也!!」

『『『『AaaaaaaaaaaaaaMennnn!!!』』』』

騎士達が掲げた剣より、先の赤い雷光とは異なる優しい光が溢れ出し、自身と騎士達を包み込んだ。
849: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 22:05:15.26 ID:P1C+Qi/4O
五条「……ククク……これは……?」

カゼラ「喜ぶが良い五条殿!我らが主の祝福は、貴殿にも等しく注がれたッ!」

かけられた声に顔を上げると、一同が剣を携えガシャガシャとこちらに近寄ってきている。

カゼラ「感謝しよう……我々は危うく、騎士としての道を逸れる所であった。さぁ!いざ行かん!邪悪を討滅しにッ!」

五条(……体育会系ですね……弾除け位には、なってくれると良いのですが……)

────────────

十三騎士団を伴い、ロビーに足を踏み入れる。
ステイルの手により結界が消滅した影響であろうか、先に訪れた際の違和感は完全に消え失せていた。

カゼラ「して五条殿、アウレオルス=イザードの居処は?」

五条「……ククク……北棟の最上階、校長室とのことです……」

既にロビーに上条とステイルの姿は無い。
エレベーターが最上階に留まっているのを確認して、ボタンを押す。

カゼラ「五条殿……あの男に挑むとなれば、策はあるのでしょうな?」

五条「……ええ。策はありますが、あの男の隙……あの男の不意を打つ必要があります……すみませんがオレが指示を出したタイミングで、校長室に突撃をお願いします……」
854: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 22:13:21.60 ID:P1C+Qi/4O
開いたエレベーターに乗り込む。
ガチャガチャと甲冑姿の男達が続き、最上階のボタンを押し、ドアを閉じた。

最上階で停止したエレベーターより出て、歩を進める。
やがて校長室が視界に入ったので、手でカゼラ達を遮り、開け放たれたドアの脇の壁へ身を潜めた。

派手にドンパチやっているのではないかと予想していた部屋の中から、話し声が聞こえる。

『吸血鬼とは無限の命を持つもの。無限の記憶を人と同じ脳に蓄え続けるもの』

先日聞いたアウレオルスの声が耳に届き、若干の苛立ちを覚える。

『あるのだよ吸血鬼には!どれだけ多くの記憶を取り入れても、決して自我を見失わぬ術が!』

五条(……記憶?)

一体何の会話をしているのか、皆目検討がつかない。

ステイル「成る程、吸血鬼からその方法を教えてもらおうってわけか」
上条「おお?」

部屋の中から、上条とステイルの言葉も聞こえてくる。
未だ全滅というわけでは無さそうなので、ほっと胸をなで下ろした。

ステイル「念のために聞くけど、その方法が人の身に無効だとしたら?」

アウレオルス「当然。禁書目録を人の身から外すまで」
858: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 22:19:17.69 ID:P1C+Qi/4O
禁書目録……インデックス?
聞こえてきた情報を整理する。

・アウレオルスは、無限の記憶力を得る為に吸血鬼を探している。
・先の行動から鑑みるに、恐らく姫神は吸血鬼を釣る為のルアー。
・アウレオルスはインデックスを吸血鬼にしてでも無限の記憶力を与えようとしている。

……妙だ。どうにも辻褄が合わない。
現状では、アウレオルスの動機が推測しきれない。
あの男が、一体何の為インデックスに、無限の記憶力を与えようとしているのか。

ふう、とステイルが紫煙を吐く音が聞こえた。
ステイル「その娘を吸血鬼にするわけだ」

アウレオルス「必然。それでも禁書目録が救われる事に変わりは無い!」

最後のピースが嵌った。
恐らくアウレオルスは、先のネセサリウスの嘘を信じ、インデックスが一年おきに記憶を消さなければ死んでしまうと思っている。
そしてそれを救う為、吸血鬼の知識を求めてこの塾に姿を現し、潜伏(?)していた姫神を利用した。
三年間潜伏していた為、アウレオルスはインデックスの首輪が開放された事を知らない。
アウレオルス「貴様にもそれはわかるハズだ!正しく一年毎にめぐり来る、この娘の最後を見たであろう貴様には!」
861: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 22:27:15.15 ID:P1C+Qi/4O
アウレオルス「あの時、この娘は告げたのだ。決して忘れたくないと。教えを破り死のうとも、胸に抱えた思い出を消したくは無いと!指一本動かせぬ体で!」

アウレオルスはインデックスの昔のパートナーであり、この娘、との言葉から、部屋の中にインデックスが同席している可能性が高い事も推察出来た。

五条(……このまま話し合いで解決でしょうか……?)
背後に視線を送り、十三騎士団を見る。

先頭のカゼラが剣を構えたまま首を傾げ、「まだであるか?」といった素振りを見せたので、手を突き出し静止させておく。

現状のみで推察していると多少手段を誤っている感はあるが、あのアウレオルスがそこまで悪人だとは思えない内容だ。
インデックスを救う為、この状況を作るのを邪魔されたくなかったのだとしたら、先日の不意打ち記憶消去もいくらか許容に値する。

次第に、怒りに染まっていた自身の胸中が落ち着いて行くのを感じた。

それよりも、万一このまま事態が収束してしまったら、この血気に逸る騎士団達をどうしたものだろうか。

アウレオルス「この娘は笑いながら告げたのだッ!」

悲哀の色が混じったアウレオルスの声が部屋に響き渡る。
863: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 22:34:55.21 ID:P1C+Qi/4O
悲哀の色が混じったアウレオルスの声が部屋に響き渡る。

ステイル「……どうあっても自分の考えは曲げない……か。それなら、ほら!言ってやれよ今代のパートナー!致命的な欠陥を抱えた目の前の錬金術師に!」

一瞬の静寂。

上条「オマエ……一体いつの話をしてんだよ?」
アウレオルス「何?」

ステイル「そういう事さ。インデックスはとっくに救われてるんだ。君ではなく、ここに居る上条当麻によってね」
ステイル「君には出来なかった事を、こいつはもう成し遂げてしまったんだよ。ローマ正教を裏切り、三年間も地下に潜っていた君には、知る由も無かったろうがね」

アウレオルス「……そんな……馬鹿な!あり得ん……人の身で……そんな……魔術師でもなければ錬金術師でもない人間に……一体何が出来ると言うのだ!」

若干取り乱した様子のアウレオルスの声が響いた。

ステイル「必要悪の教会の……イギリス正教の沽券に関わるので他言は控えるが、そうだねぇ……こいつの右手は幻想殺しと言う、つまり人の身に余る能力の持ち主ってワケだ」
アウレオルス「待て……ならばッ!」
865: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 22:42:42.76 ID:P1C+Qi/4O
ステイル「そう、君の努力は全くの無駄骨だったってワケだ。だが気にするな、インデックスは君が望んだ通り、今のパートナーと一緒に居てとても幸せそうだよ?」

アウレオルス「~~ッ!!」

がたんと物音が響く。
恐らくアウレオルスにとって、この事実は余程衝撃的だったのだろう。
自身が三年もの間血の滲む努力をして追いかけ続けた女性が、とうに他の男に掻っ攫われていたとしたら言葉を失うのも当然だ。
ましてや、今眼前にその男が居る。

アウレオルスの度量次第で、展開が大きく動くだろう事が予測出来た。
再度後方に目線を送る。
十三騎士団が剣を抱えたまま、痺れを切らす様にソワソワとしている。

先頭のカゼラが再び首を傾げる。
親指とひとさし指でちょっとを作った後、再び掌を突き出して待て、を表現した。
外国人に通用するジェスチャーなのかどうか多少不安になったが、きっと大丈夫だろう。

『とうま……』

部屋の中に響いた声で、インデックスの同席が確認出来た。
今の今まで発言していない点や、同席する人間達の発言から考えるに、意識が無い状態である線が濃厚だろう。

インデックス「とうまぁ……」
アウレオルス「あぁ……ッ!」
871: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 22:51:49.88 ID:P1C+Qi/4O
上条「インデックス!」
インデックス「とうまぁ……」
ぎゅーという腹の音が室内に響く。

インデックス「お腹減ったぁ……」
五条(!?)

インデックス「うーん……林檎ぉ……林檎はぁ……青森ぃ……」
インデックスの声についで、ステイルがプっと噴出す音が聞こえた。

ステイル「ク……こいつは良い……フ……フフ……」
上条「えへへ……へへへへ……」

次いで聞こえる二人の笑い声と、それに混じるアウレオルスの笑い声。
アウレオルス「ク……ククク……ハハハハハハハ!」

五条(……今です!)
その異様さを感じ取ったので、咄嗟に右手を振る。
待ちくたびれたかの様に、十三騎士団が殺到し、校長室のドアから部屋へと侵入しようとした刹那、アウレオルスの声が響き渡った。

アウレオルス「倒れ伏せッ!侵入者どもッ!」
上条「ぐぁッ!?」
ステイル「ぐッ!?」
『ぐぉッ!』
『うわッ!』
『ひぃッ!』
『ぬぅおッ!』
『ひぎいッ!』
『ぐぇあッ!』
眼前で次々と床に倒れ付す十三騎士団達。
879: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 22:58:07.94 ID:P1C+Qi/4O
先の嗚咽の中に、上条とステイルの声が混ざって聞こえたので、恐らくは部屋の中も同様の状態なのだろう。

ここでまた少し思案する。

「倒れ伏せ侵入者ども」の言葉に対して、自身は倒れ伏してはいない。
アウレオルスの魔術が、言ったとおりに現実を改変するものならば、侵入者に該当する自身が倒れていないのは少々辻褄が合わない。
奴の発声自体に瞬間催眠の様な何らかの効力があるのかと思ってもいたが、発声を聞いて自分が地に伏していないのでこれは除外。
眼前で同時に多数の人間が倒れたので対象範囲は相当に広いものと考えられるが、距離的に考えて自身に効力が無いことを考えると、認識されていない人間には効力が無い様だ。
認識範囲に関しては、部屋の中より視認される廊下の位置に居たので、騎士団連中も倒れ伏してのだろう。

認識をしていない人間には効力が無い。
勝機としては、十二分に過ぎる。

アウレオルス「我が想いを踏みにじり……我が辛苦をあざ笑い……!」

相応な怒気を帯びたアウレオルスの声が、部屋に響く。

アウレオルス「よかろう……この屈辱……貴様らの死で贖ってくれる!」

『待って!』

次いで唐突に響いた女の声。

五条(……姫神も同席していましたか……)

上条「姫神ッ……!やめろッ……!」
885: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 23:04:24.03 ID:P1C+Qi/4O
姫神「わかる。私。貴方の気持ち」

上条「そいつはッ……もうッ……!」

姫神「でも。違う。今の貴方は」

──────刹那、視界が灰色に染まる。
眼前に写る世界が、その刻みを停止していた。
色彩が消え失せた世界で、一歩足を踏み出す。
まるで自身が水あめの中にでも放り込まれたかの如く、足を振り上げるのにも相当な負荷がかかる。
ぎしり。
異様に重い体を強引に引きずり、一歩。もう一歩。
歩くたびに全身の筋肉がぎしぎしと軋みを上げる中、校長室に入り、姫神の脇をすり抜け、アウレオルスの眼前に立った。

五条「……Heavens Time.(天国の刻)」

力を振り絞り右手を高く掲げ、その指をパチンと鳴らした。
一瞬で世界の色彩が戻り、時が再生を始める。
先の歩みに沿って生み出された真空を補う様に、突風が吹き荒び、部屋の中を蹂躙していく。

アウレオルス「なッ……!?」
五条「……ククク……途中までは及第点だったのですが……」

突如眼前に現れた自身に対して戸惑いを見せたアウレオルスに向かいメガネを外し、視線を投げた。

五条「……残念ですよ、錬金術師……狂え……純粋にッ……!」
894: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 23:10:07.25 ID:P1C+Qi/4O
眼球に力を込め、眼前の男を睨み付ける。

アウレオルス「!?……窒息死!」

睨み付けられたアウレオルスが、首に黄金の針を刺し、高らかに叫んだ。
……何も起こらない。

上条「五条ッ!!」

右手で異能の力を消したのだろうか、上条の声が響く。
咄嗟にメガネを装着し、上条へと目線を投げる。
立ち上がった上条が、心配そうにこちらを見つめていた。

五条「……ククク……使い過ぎてはいません……ご心配なく……」

アウレオルス「圧殺ッ!!」
再度その首に黄金の針を刺し、アウレオルスが叫ぶ。
……やはり、何も起こらない。

アウレオルス「……ば……馬鹿な……一体……ッ!」

若干後ろにたじろいだアウレオルスが、今度は上条へと目線を投げ、首に黄金の針を突き立てる。

アウレオルス「感電死!」

言葉と同時に中空に激しい雷光が舞い、上条へと走った。

上条「くッ!!」

右手を掲げ、雷光を受け止める上条。
899: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 23:16:42.69 ID:P1C+Qi/4O
雷光は右手に触れると同時に四散し、その姿を虚空へと消して行く。
アウレオルス「……なればッ!」
五条「させませんッ!」

アウレオルスが再び針を取り出そうとした右手に向かい、サッカーボールを蹴りつける。サッカーボールが手に当たった衝撃で、黄金の針はその手から離れ、アウレオルスが体勢を崩す。
同時に、身に纏っていたのズボンのポケットから大量の黄金の針が飛び出した。

アウレオルス「しまったッ……!」

慌てて針を拾おうと膝をついたアウレオルスに向かい、上条と共に駆け出した。

上条「いいぜ」
五条「結構です」

上条「テメェが何でも思い通りに出来るってなら!」
五条「オマエが全てを随意にするというのなら!」
針を拾いながらアウレオルスがこちらを見るのがわかった。
その顔は、恐怖に歪んでいる。

上条「その幻想を」
五条「その認識を」
アウレオルスの顎を蹴り上げ、素早く背後に回る。

上条「ぶち殺す!」
五条「阻害します!」

──────上条の右手が、浮き上がったアウレオルスの顔面を
──────自身の右足が、その後頭部を捉えた

鈍い手ごたえと共に、錬金術師の体から力が抜けるのを感じ取れた。
909: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 23:23:06.33 ID:P1C+Qi/4O
────────────

『呆然、私は敗れたというのか』

ぐちゃぐちゃに乱れた校長室に、錬金術師の声が響いた。
部屋の中に存在する影は四つ。

仰向けに倒れたまま嘆声を上げた緑髪の錬金術師、アウレオルス=イザード。
煙草を咥えて割れた窓から夜景を眺めている魔術師ステイル=マグヌス。
傍らの書棚に持たれかかり、腕を組んで笑っている認識阻害、五条勝。
そして、倒れている緑髪の錬金術師の手をとり涙を流している吸血殺し、姫神秋沙。

アウレオルス「殺せ。最早私が生きる由も無し」

ポーンと小気味の良い音が響き、アウレオルスの頭にサッカーボールがぶつかる。
五条「ヒヒヒ……オマエは、自分の右手も見ずにそういう事を言いますか……」

五条の言葉に、アウレオルスは視線を自分の右手へと投げた。
吸血殺しの少女が、その両の瞳に涙を湛え、彼の右手を両手で包み込む様に握り締めている。

姫神「良かった。あなたが生きていて。皆が傷つかないで。本当に。良かった」

その様を見た錬金術師が軽く微笑み、言葉を吐く。

アウレオルス「俄然、そんなに泣くな、吸血殺し。貴様には随分と世話をかけてしまったな」
914: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 23:28:38.24 ID:P1C+Qi/4O
錬金術師の右手がするりと姫神の手を抜け、その頭を撫でる。

アウレオルス「倫敦の神父よ、この娘の異能を抑える方法は『それなら心配しないで構わない』
ステイル「その娘は、再度うちの教会で身柄を預かる事になった」

窓の外を見据えていたステイルが、咥えタバコを右手に持ち直し、言葉を続ける。

ステイル「擬似的なものだけど、その娘の異能を抑える方法もある……余計な心配はしないで良いと思うよ」
アウレオルス「間然、なれば心配の余地も無し」

ステイル「憑き物が落ちたみたいな顔だね……女にフラれた気分はどうだい、錬金術師?」
ステイルがくつくつと肩を揺らした。

アウレオルス「悠然。他愛も無いものだな……最早俗世に興味も失せた。何処かで眠りにでも」

再びポーンと音が響き、アウレオルスの頭にサッカーボールがぶつかる。

五条「……だからオマエは自分の右手をですね……」
姫神「私。いや。あなたが居なくなるのは。嫌」

姫神を見ていたアウレオルスの瞳が丸くなる。

五条「……ククク……縋る手を無情に振り払われる辛さは……つい数十分前に学んだでしょう……?」
920: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 23:33:15.21 ID:P1C+Qi/4O
アウレオルスが、ふっと微笑み、言葉を続ける。
アウレオルス「……必然。このまま消えるというわけにも行かぬ様だな」

言い終えたアウレオルスが体を起こす。
アウレオルス「先の騎士団は何処へ消え失せた?」

ステイル「……帰ったよ。礼ならそこの五条に言うんだね。色々とワケがあって、君はあの騎士団共にきっちりと粛清された事になっている。これでローマ正教に終われる心配は無くなったわけだ」

アウレオルスの視線が五条へ走る。
アウレオルス「愕然。礼を言おう少年」

五条「……先にオマエから貰ったハンカチが中学生には高価過ぎましてね……つり銭みたいなものでしょうか……ヒヒヒ……」

ステイル「……で、これからどうするんだい?」

ステイルが煙草の煙を吐く。
その問いを聞いたアウレオルスが立ち上がった。
アウレオルス「自然。如何に姿形を変えようと、最早俗世に私の懸かる余地は無し。当面は世俗を離れようか」

ステイル「……わかってるとは思うけど」

アウレオルス「当然。最早私には欲するもの無し。黄金練成は封じ、魔術の道も閉ざすと誓う」

ステイル「……聞き届けよう。私的には少し勿体無い気もするんだけどね……」
925: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 23:38:13.51 ID:P1C+Qi/4O
アウレオルス「唖然。なれば黄金練成を教授するか?倫敦の神父よ」
ステイル「異端審問にかけられるわけにも行かないから、遠慮しておくよ」

アウレオルス「そうか……」
姫神「あの」
アウレオルス「どうした、吸血殺し……いや、姫神秋沙」

姫神「また。会える?」

その問いかけに答えず、アウレオルスは視線をステイルに送った。
ステイルが黙って首を縦に振る。

アウレオルス「当然。姿形は変わるだろうが、必ずまた会いに来ると誓おう」

その様子を見たステイルが微笑み、こつこつと歩き始めた。

ステイル「姫神秋沙。明朝午前九時に、この塾のロビーにて落ち合おう。荷物をまとめておいてくれよ」
言いながら右手を掲げ、校長室を後にする。

五条「……ではオレもこれで……」
同様に右手を掲げ、部屋を出る。

姫神「待って」
姫神が発した言葉に、五条の足が止まった。

姫神「ありがとう。また」
特に言葉も返さず、黙って右手を掲げ、校長室を後にした。

────────────
929: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 23:44:06.88 ID:P1C+Qi/4O
ステイル「お疲れ様」
五条「……えぇ、お疲れ様でした……」

三沢塾の前で、ステイルと共に足を止め挨拶を交わした。

ステイル「と言っても、ぼくの方はまだやる事が残ってるんだけどね」

言って、三沢塾を見上げるステイル。

五条「……ククク……ご苦労な事です……」

ステイル「全くだ」
ステイル「けど良いのかい?随分腹に据えかねてたみたいだけど、ご丁寧に逃亡の手助けまでしてあげちゃって」

問いを投げたステイルが、懐から煙草を取り出した。

五条「……一本頂いて良いでしょうか……」

自身の言葉に少し驚愕の表情を浮かべたステイルが、箱から二本煙草を抜き出し、一本を自身に差し出してくる。
受け取った煙草を口に咥えた。
次いで、ピンと澄んだ音が響き、眼前にジッポライターの火が踊る。
フィルターを軽く吸ったまま、煙草の先を火へと近づけた。

ジッと小さな音がして、煙草の先に火が灯る。
口中に紫煙が入ったのを感じ、大きく息を吸って、吐いた。
932: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 23:48:48.09 ID:P1C+Qi/4O
五条「……結局アウレオルスも、過程と結果が違っただけで、根っこはオマエや上条とかわりませんからね……ヒヒヒ……」
ステイル「……」
次いで煙草に火をつけたステイルが、考えこむ様な表情で黙り込んでいる。

五条「……手段は大変誤っていて、それにオレが巻き込まれたのも確かに腹の立つ話ですが……動機を考えれば、完全否定は出来ませんよ……」

再びフィルターに口をつけ、紫煙を肺へと送り込み、吐き出す。
疲れた体に、普段摂取しないニコチンが染み渡るのを感じた。

ステイル「……甘い人間だね、君は」
939: 五条ファン ◆APKLrJzDFw 2010/12/06(月) 23:51:37.82 ID:P1C+Qi/4O
五条「……ククク……どうでしょうか……大切な誰かを守りたいと思う気持ちは、多かれ少なかれ皆が持っているものでしょう……それを否定出来るほど、オレは偉くはありませんよ……」

言いながら左手で携帯電話を開き、幾度かボタンを押す。

『もしもし……オレです……』

『眠っていましたか……?ああ……なら良かった……』

『いや……特に用は無いんですが……』

『ええ……楽しみです……また前日にでも連絡しますよ……』

電話をしながらふと見ると、ステイルが右手を上げて去っていくのが見えた。
見えはしないだろうが、その背中に煙草を挟んだままの掌を向けて左右に振る。

右手の煙草を口に咥え、夜空を仰ぎ見た。
夏も中盤を終えようとしている空に、僅かながら、鈴虫の声が響き渡っていた。

五条「……マズいものですね……」

──────to be continued──────
943: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/06(月) 23:54:17.38 ID:jQn18ckO0
声が聞きくて電話とか
既に交際状態じゃねーかw…………お幸せに

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コメント

  1. とあるSSの訪問者 2020年02月08日

    五条さん祭りももう10年前か……懐かしい

 

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サイトのデザインを大幅に変更しました。
まだまだ、改良していこうと思います。

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