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前スレ:

神娘「我を呼んだか!」男「呼んでません」



347: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 01:49:44 ID:yGdevo2Y
―――――――

男「……」バッ

チュンチュン チュンチュン

男「……夢?」

男母「ご飯よー」

男「今行く」

ジリリリリリリ…

男「なんだったんだ、あれは…」パチンッ
357: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 14:21:07 ID:yGdevo2Y
先生「であるから、恒常的な平和のために」

友「結局何もわかんなかったなぁ」

男「ああ」

友「なんかわかると思ったんだけどなぁ」

男「そうだな」

友「やっぱり何もないのかなぁ」

男「そうかもしれんな」

友「……」バッバッ

男「んだよ」

友「いや、なんか生返事しかしないから」

男「ああ…うん、心配するな」

友「心配するわ」

先生「…おい、そこの二人」

男「げっ」

友「うわっ」
358: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 14:24:20 ID:yGdevo2Y
―――

友「まさか両方引っかかるなんて」バリバリ

男「お蔭でこっちまで課題が降って沸いた…」

友「すまんすまん、なんか奢ってやるから」

男「いや、そう言う事じゃなくてだな」

友「ああん?」

男「今日は放課後約束があるんだが」

友「えっ、お前彼女いるの?」

男「んな訳ないだろう」

友「じゃあ遊ぶ約束?」

男「それも違う、些細な用事だ」

友「なーんだ」

男「(神様待ってるかな、待ってるだろうな)」
359: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 14:56:22 ID:yGdevo2Y
―――

神娘「…遅い」

神娘「全く…大事な話なのに遅れるとは何事ぞ」

神娘「しかしまぁ、あやつにも外せん用事があるのかもしれん」

神娘「それまでこの本を読むとするか…」

神娘「……」

神娘「………ぐぅ」スヤスヤ
360: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 15:24:08 ID:yGdevo2Y
――――

男「ったく…ようやく終わった…」タッタッタ

男「神様?居るんだろ?」

男「神様?どこに居るんだ?」

神娘「…むにゃ」スゥ

男「寝てるのか」

神娘「………」スゥ

男「…なんか眠くなってきたな」

神娘「……」

男「……」

神娘「……」

男「……」グゥ
361: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 15:56:38 ID:yGdevo2Y
――――――
男「(……ここは)」

娘「おとん」

娘父「なんだ」

娘「おとん、戦争に行っちゃうの?」

娘父「すぐ戻ってくるさ」

娘「うん…絶対だよ?絶対戻ってきてね?」

娘父「ああ、きっと戻ってくるとも…今回はこっちの方が有利なんだ」

娘「……」

娘父「……」

娘「嘘、ついてないよね?」

娘父「…ついてないとも」

男「(これは…)」
362: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 16:06:17 ID:yGdevo2Y
娘「おとん、帰ってこないね」

娘母「そうね」

娘「おとん、この海の向こうに居るのかな」

娘母「そうかもね」

娘「おかん、泣いてるの?」

娘母「泣いてないわよ」

娘「…そっか」

娘母「そうよ」ゴホゴホ

娘「おかん?」

娘母「大丈夫…大丈夫だから」

娘「おかん、嘘ついてない?」

娘母「ついてないよ」
363: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 16:09:52 ID:yGdevo2Y
娘「……」

爺「親御さんは?」

娘「居ないよ、海の向こうに行っちゃった」

爺「そうか…」

娘「二人とも嘘をついたんだよ、ひどいね」

爺「お前の事を思っていたんだよ」

娘「でも、私を連れて行ってくれればいいのに」

爺「……」

娘「戦争が二人とも持っていっちゃったんだ、国が弱いのが悪いんだってさ」

爺「確かに、この国は昔から抗争が絶えなかった…立地、立場…この国は報われなさすぎる」

娘「戦争って嫌だね」

爺「嫌なもんだ」
364: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 16:11:59 ID:yGdevo2Y
爺「…なあ、お前さんや」

娘「なに?」

爺「もしかしたら、お前がなんとか出来るかもしれん」

娘「えっ?」

爺「戦争の被害者をなくせるかもしれん、お前さんには素質がある」

娘「本当に?私が戦争をなくせる?」

爺「戦争をなくすとは…」

娘「本当に?」

爺「……ああ、なくせるとも」
365: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 16:15:20 ID:yGdevo2Y
殿「神の候補が出来たと!」

爺「ええ、戦争をなくすと言ったら喜んで協力してくれました」

殿「そうかそうか…わが国にも神がいれば戦争に勝てるぞ!」

爺「……」

殿「いやぁ、お手柄だぞ爺!褒美は何がいい?」

爺「…あの子に、精一杯のご飯と寝床をあげてくれれば」

殿「お?そうかそうか…確かにこれから神になる娘だからな、あれは」

爺「(すまん、すまん…)」

殿「何としても神を迎えねばならんからな…そうすればこの国もいずれは大国に…」
366: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 16:19:10 ID:yGdevo2Y
 神様!

娘「…違う」

 神様!神様!

娘「…こんなんじゃない」

 神様!戦争に行ってきます!力を!

娘「こんなものの為に…神様になったんじゃない」

 神様!どうぞ力を!敵を打倒す力を!

娘「…違うんだ」


 神様!

 神様!神様!神様!神様!神様!神様!

娘「………」
367: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 16:24:58 ID:yGdevo2Y
娘「(…背負えと言うか、私に)」

 力が足りません!

娘「(死者も、信仰も、全てを背負えと言うか)」

 もっと力を!

娘「………分かった」

 おお!神様!

神娘「力をくれてやる、敵を圧倒する力をくれてやる」

 神様!

神娘「我を崇めよ!我を称えよ!我を畏れよ!信仰を捧げよ!」

 万歳!神様万歳!

神娘「私の為に死んで来い!」

 うおおおおおおおおおお!

神娘「(……背負ってやる、背負ってやるさ)」

男「(……神様)」

神娘「私は、神様だからな」
370: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 16:59:51 ID:yGdevo2Y
―――――

男「神様!」バッ

神娘「ようやっと起きたか」

男「あ…おはよう」

神娘「おはよう」

男「(気まずい)」

神娘「…懐かしい夢を見たんだ」

男「神様って、色々ありそうだからな」

神娘「昔の私が居て、お前が居た」

男「えっ」

神娘「…見てたんだろう?全部」

男「全部じゃない、でもあれは…」
371: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 17:07:09 ID:yGdevo2Y
神娘「私は、風の神様でも道祖神でも…人を護るための神様でもない、そんな優しい存在じゃない」

男「……」

神娘「人を戦争へと駆り立てる神、戦う者たちの為の神…戦神だ、私は」

男「戦神…」

神娘「私は人を生かす為ではない、人を殺すための神だ」

男「それは」

神娘「戦争を止める為ではない、戦争を続けるための神だ」

男「神様」

神娘「あの後、私の願いとは裏腹に国は戦争に勝ち続けて…その度に膨大な被害者を出した」

男「……」

神娘「どこかで止められた筈なんだ、私が居なければ戦争なんて無かったかもしれないんだ…」
372: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 17:11:47 ID:yGdevo2Y
男「(傷つけていたのか?)」

神娘「そうじゃなくても、力を与えさえしなければ…そう思う事が何度あったか分からん」

男「(神様だと、そう自覚させるたびに知らずに傷つけていたのか?)」

神娘「でもやるしかなかったんだ、力を与えて殺すか、与えずむざむざ殺させるかしか…」

男「神様!」

神娘「……」ビクッ

男「落ち着きなよ、その為に神主はここに居る」

神娘「…すまん、取り乱した」

男「お茶でも飲もう、持ってくる」

神娘「ああ」
373: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 17:19:41 ID:yGdevo2Y
男「持ってきたよ」

神娘「座れ、話がしたい」

男「すっかり調子が戻ってるな」ポリポリ

神娘「さっきがおかしかったのだ、神は冷静でなければならぬ」シャキッ

男「…それでいいのか?」コトン

神娘「あの時決めたのだ、全てを背負うと」ズズ…

男「……」ススス

神娘「恨みも憎しみも全てを受け入れてやると誓った、止められぬならばせめても死なないように祈った」

男「(強いのか弱いのかわからないな)」

神娘「人が我を見て希望となるように、戦う者たちが頭をあげて剣を掲げられるように…そうあろうとした」

男「(戦争、か)」

神娘「…今考えても、他に何が出来たのか分からん」
374: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 17:23:07 ID:yGdevo2Y
神娘「1人で考えても…分からん」

男「難しいもんな」

神娘「ああ難しい、神ですら分からぬこともある」

男「自分が元人間だって自覚は?」

神娘「無い」

男「きっぱりしてるな」

神娘「あの時人間としての私は死んで、その代り神である私が生まれた、それだけだ」

男「……」ズズ

神娘「それだけの…簡単な話だ」
375: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 18:12:12 ID:yGdevo2Y
男「……」ズズ

神娘「お代わり」コトッ

男「あいよ」

神娘「……」

男「…」トポポポ

神娘「なぁ」

男「ん?」コトッ

神娘「軽蔑しないのか?」ズズ

男「なんでさ」トポポ

神娘「なんでって」

男「別に、しないよ」ズズ

神娘「戦神なんて、軽蔑されてしかるべき存在だ」

男「そんなの神様の意見だろ?」

神娘「確かに、そうだが」
376: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 18:16:21 ID:yGdevo2Y
男「別に、仕方ないんじゃないかなぁ」

神娘「軽々しく言える事じゃないと思うんだが」

男「だって戦争なんて知らないもん」

神娘「……」

男「おかしい?戦争を知らない奴はどれだけ聞かされたってその恐ろしさは分からないよ」

神娘「確かにな」

男「今は、戦争なんて遠い場所にある」

神娘「らしいな」

男「その中で神様がいる」

神娘「おかしいか?」

男「全然?」

神娘「……」ズズ

男「…新しく生きろって事じゃないかなぁ」

神娘「新しく…無理だ」

男「なんでさ」
377: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 18:18:23 ID:yGdevo2Y
神娘「私には、かつて私を信じた者達をを忘れる事なんてできん」

男「そう言う事じゃないよ」

神娘「は?」

男「忘れるんじゃなくて、その上で新しく生きるんだよ」

神娘「出来るだろうか」

男「だってさ、こうして話している事とか…それだけでもいいんだと思う」

神娘「難しいな」

男「難しく考えてるだけだよ、簡単だって」

神娘「……」
378: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 19:15:47 ID:yGdevo2Y
神娘「たくさん殺したんだぞ」

男「神様が殺したわけじゃない」

神娘「戦神なんて今時流行らん」

男「だからそれ以外の生き方考えればいいじゃないか」

神娘「私を恨んでるのがいるかも」

男「恨みも背負ってやるって言ったじゃないか」

神娘「…正直、どうしたらいいか分からん」

男「時間なんて幾らでもあるだろうし、正解なんてないよ」
379: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 19:47:30 ID:yGdevo2Y
男「きっと神様を信仰してた人たちも、今の神様は望んでないんじゃないかな」

神娘「そうだろうか」

男「うん、きっと」

神娘「……そうか」

男「少なくとも、何時までも縛られているよりは…そちらの方がいいんじゃないかとは思う」

神娘「なあ、私の考えは間違っていたのか?」

男「間違いなんてどこにもない、そう思う」

神娘「…そうかもな」
380: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 20:14:54 ID:yGdevo2Y
神娘「神主、来い」スクッ

男「なんだよ」

神娘「お前に見せたいものがある、良いから来い」

男「分かった」パカラッ

神娘「…そういえば、何時からお前下駄に変えた?」

男「ここで下駄に履き替えてんの、なんか気に入ったから」

神娘「そうか」

男「可笑しいか?」

神娘「いや、懐かしい」フッ

男「やっぱり、神様は笑ってる方がいいよ」

神娘「褒めるな、照れる」
381: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 20:28:18 ID:yGdevo2Y
男「……」ザカザカ

神娘「……」ザッザッ

男「こんな道あったんだな」ザッ

神娘「今までは閉ざしていた場所だからな」ザシュッ

男「ばれないようにか」ザカッ

神娘「阿保な事をしたものだ、隠そうと私にとって何も変わらないと言うのに」ザシザシ

男「(吹っ切れたみたいだな)」ザシッ
382: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 23:04:35 ID:yGdevo2Y
神娘「……ここだ」

男「(広場だ、巨大な岩一つ以外には何もない)」

神娘「なんだかわかるか」

男「巨大な石以外には…あ」

神娘「なんだ」

男「…墓石?」

神娘「然様、これは戦死者の為の墓石だ…とは言っても自己満足に過ぎんが」

男「神様、これを護っていたの?」

神娘「そうかもしれない、無意味と思いつつも私は…ここを護る為に消えずに居たのかもしれない」

男「……」

神娘「私が消えればこの森も消える、そしてはこの墓石も…だからかもしれない」

男「うん」

神娘「無意味なのに、私はここが何か神聖な場所のように思えて…」

男「ああ」

神娘「…なんでなんだろうな」
383: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 23:08:09 ID:yGdevo2Y
男「…神様、手を出して」

神娘「あ?ああ…なんだ」

男「……」ギュゥ

神娘「…ん」

男「少し冷たい」

神娘「人の手なんて、久々に触った」

男「でも、死んでは無い」

神娘「ああ」

男「生きている」

神娘「ああ」

男「だったら…いや、なんでもない」

神娘「なんだ、言いかけは気になるな」
384: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 23:11:22 ID:yGdevo2Y
男「説明は苦手だ、答えは神様が見つければいい」

神娘「…ふ、ふふ」

男「なぜ笑うし」

神娘「なんだか、小さなことに囚われていたような気がしてな」

男「小さくはないけどな」

神娘「でもまあこうして…なんだか救われた気がした」ギュウ

男「そうか、よかった」

神娘「お前は私とともにある、それだけで…良い気がした」

男「ああ」

神娘「神主よ」

男「なんだ」

神娘「神の名において、感謝するぞ」ニコリ

男「(…可愛いな)」


ザァァァァァァッ
385: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 23:15:39 ID:yGdevo2Y
神娘「なんだ?」

男「…神様!あれを!」

ザァァァァッ ザァァァァァ…

神娘「葉が…緑だった葉が紅くなって…」

男「紅葉しているのか…?」

神娘「一体何が起こっているんだ」

リーン… リーン… カラカラカラ…

男「虫が…でもいつもと違う」

神娘「夏の虫じゃないぞ、これは秋の虫だ」

男「神様、なにかやったのか?」

神娘「知らん、だが急にこの森の季節が変わったのだ」

サァァァァァァァ…

神娘「夏が…いつまでも変わらなかった夏が秋になった…」

男「急に様変わりしたな」
386: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 23:20:52 ID:yGdevo2Y
男「(秋の匂いがする)」

神娘「……どうなっている?」

男「(夏の草の香りとは違う…香り立つ秋の匂いがする)」

神娘「なあ、神主は驚いてないのか?」

男「いや、興奮した」

神娘「興奮?」

男「秋だ…すげえ、周り一面の秋だぞ神様!」

神娘「お、おう」

男「この森全体が紅葉しているんだ、一気に様変わりして…凄いよ神様」

神娘「そうだな、なんか私もわくわくしてきたぞ」

男「明日は一緒に探索しよう神様」

神娘「よし、良い銀杏がある場所を教えてやるぞ」

男「調理器具は持ってきたからすぐ食えるな」

神娘「ああ…美味いぞ、秋の食べ物は」
387: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 23:25:50 ID:yGdevo2Y
男「ははっ、こりゃいいぞ…いいなぁ」

神娘「…ふふ、お前は何だか変わらんなぁ」

男「神様に毒されたのかもしれない」

神娘「今ではお前の方がよほど順応している気がするがな」

男「神様よりアウトドアだし」

神娘「なにお言うか、こちとら元気があれば散策に出かけてるわ」

男「言ったな?」

神娘「言ったさ」
388: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 23:36:23 ID:yGdevo2Y
男「まあ神様も元気になったみたいだし」

神娘「神主の癖に生意気な口をききおって」

男「神様の為ですから」

神娘「ああそうか、ありがたいな」

男「…明日は楽しみだな」

神娘「うむ、私も楽しみにしている」
389: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 23:37:09 ID:yGdevo2Y
男「良かったよ、本当に」

神娘「お前には世話になりっぱなしだな、私からは何もしてないと言うのに…」

男「別にいいから、そういうの」

神娘「では私は帰るとするが…どうする?」

男「……」

神娘「神主?」

男「…少し、ここに残るよ」

神娘「そうか…まあ迷う事もあるまい、一直線だからな」ザッザッ

男「……」

ザァァァァァァ…

男「……」

娘「……気づいていたのだな」

男「まあな」
390: ◆lwQY2qw84A 2013/09/23(月) 23:45:16 ID:yGdevo2Y
娘「良くやったよ、お前は」

男「褒められたのか?」

娘「褒めたつもりなのだが」

男「えらくひねてるな、神様とは大違いだ」

娘「私は神様であって神様でないからな」

男「はい?」

娘「神様としての役割に耐えきれなかった彼女が私だよ、分かる?」

男「パラレルワールドって奴か、そんな簡単に出てくるもんなのかい」

娘「ここは神様の領土だ、何が起こっても不思議じゃないさ」

男「じゃあ…急に季節が変わったことも?」

娘「そもそも延々と夏が続く事からしておかしいがね」
391: ◆lwQY2qw84A 2013/09/24(火) 00:17:24 ID:1mIJ17yY
娘「ありがとう」

男「うん?」

娘「彼女は救われたよ」

男「良かった」

娘「これで、私の役目も終わった」スゥ

男「消えるのか」

娘「元々彼女の強い罪の意識が私を呼んだんだ、もうそれも無くなった」

男「悲しくないのか?」

娘「いいや?だって彼女は私がなれなかった私だから」

男「……そうか」
392: ◆lwQY2qw84A 2013/09/24(火) 00:18:09 ID:1mIJ17yY
娘「ああ、あと気を付けた方がいいぞ?」スゥゥゥ…

男「うん?」

娘「お前にとっての彼女は変わり無いだろうけど、逆はそうでもないから」

男「それって、どういう」

娘「さあね、自分で考えなよ」フッ

男「…行っちまったのか」
399: ◆lwQY2qw84A 2013/09/24(火) 21:52:02 ID:1mIJ17yY
男「……」

ジリリリリ ジリリリ

男「……」パチン

男「……」

シーン

男「……」スヤァ

神娘「そこは起きるべきだろうが」

男「はぁっ!?」バッ

神娘「や、おはよう」ニコッ

男「…おはよう」
400: ◆lwQY2qw84A 2013/09/24(火) 21:55:20 ID:1mIJ17yY
男「えっ?神様?」

神娘「神だが」

男「なんでここに」

神娘「普通に来れると言ってなかったか」

男「いや、別にそうじゃなくて…どうして来たって事で」

神娘「来たくなったから」

男「…えーっとぉ…」

神娘「駄目か?」

男「駄目じゃ無いけど」

神娘「細かい事は気にするな」

男「ん、ああ、まあそうする」
401: ◆lwQY2qw84A 2013/09/24(火) 22:07:44 ID:1mIJ17yY
男「……神様?」

神娘「ん?」

男「もしかして今絶好調?」

神娘「いやぁ、なんだか昨日の晩から力が湧いてきてな」

男「(完全に吹っ切れた所為じゃないかなこれは)」
403: ◆lwQY2qw84A 2013/09/24(火) 22:36:51 ID:1mIJ17yY
神娘「いやぁ、お蔭で実体化までできる様に」

男「えっ」

神娘「触ってみるか?」

男「…」ソロー

神娘「変な所は触るなよ?」

男「触るか!…おお?」サワッ

神娘「な?」

男「おお…どうなってんだこりゃ、本物じゃないよな?」

神娘「ちょいっとこっち側に多く比重を置いただけだ」

男「なんだかよく分からんが」

神娘「全体で1になればいいだけの話よ、ただ”本体”はあの森に居るから力が無ければ”こっち”に多く比重は保てないがな」

男「ほほー、つまりそれだけ力が蓄えられたと」

神娘「うむ」

男「それで嬉しくなってはしゃいでたと」

神娘「そこまでは言っていないぞ」
404: ◆lwQY2qw84A 2013/09/24(火) 23:35:35 ID:1mIJ17yY
男「で、家に乗り込んできてまで何をする気だ」

神娘「うむ」

男「今日は森の散策に行く予定だろ?」

神娘「まあそうなのだがな?」

男「じゃあ何で来たのさ」

神娘「いや、今日はお前と学び舎に行こうかと」

男「つまり、学校?」

神娘「うむ」

男「…えっ?」
405: ◆lwQY2qw84A 2013/09/25(水) 00:31:25 ID:GKnAZIlc
―――

神娘「いやはや、楽しみだな!」

男「(どうしてこうなったし)」

神娘「一度お前と一緒の校舎に行ってみたかったのだ」

男「(なんで神様こんなに笑ってるんだよ)」

神娘「神主」

男「ん?」

神娘「手を出せ」

男「お、ああ」

神娘「よしよし」ニギッ

男「…神様?」

神娘「いやぁ、こうして居るとなんだか力が湧いてきてだな」

男「神様ぁ!?」
406: ◆lwQY2qw84A 2013/09/25(水) 00:58:53 ID:GKnAZIlc
神娘「ふんふーん」

男「(なんか神様急に変わった気がするんだが)」

神娘「どうした?」

男「いや、なんでも」

神娘「そうか」ギュッ

男「(うわぁ、手が柔らかい…じゃなくてだな)」ブンブン

―――娘「お前にとっての彼女は変わり無いだろうけど、逆はそうでもないから」

男「なるほどな」

神娘「どした?」

男「空耳じゃね?」

神娘「そうか…」
407: ◆lwQY2qw84A 2013/09/25(水) 03:04:45 ID:GKnAZIlc
男「そんなに楽しみなのか?」

神娘「久々の外界だ、まあ神宮には行ったが…それでも見知らぬ場所を探索するのは気分がいい」

男「冒険家なんだな」

神娘「そうともいう、危険には好奇心がつきものだ」

男「好奇心には危険が付きものなんじゃないの?」

神娘「さてはお前、卵と鶏を知らんな?」

男「知ってるけど」
408: ◆lwQY2qw84A 2013/09/25(水) 03:10:25 ID:GKnAZIlc
神娘「お前にはユーモアが足りんよ」ブンブン

男「ちょっ、いきなり手を振りまわすな」

神娘「生意気にも人が神にたてつくからだ!」

男「(ああ、神様今妙なテンションになってる)」

神娘「第一だな、いきなり女の手を掴むとは何事だ」

男「(そしてテンションが高くなると一番面倒なタイプだこれ)」

神娘「そう言うのは好きな者にする事であってだな」

男「学校着いたぞ」

神娘「なにっ」

男「(助かった)」
409: ◆lwQY2qw84A 2013/09/25(水) 03:25:28 ID:GKnAZIlc
神娘「ほぉぉ…中々大きいのだな」

男「…神様?」

神娘「なんぞ?」

男「そろそろ手を離してくれ」

神娘「確かにこれでは不便だな、ふむ」ヒョイ

男「神様、そう言えば草履なのね」

神娘「これが割かし”ラフ”な格好とやらか、ふふん」

男「(違う気がするんだけどなぁ)」
410: ◆lwQY2qw84A 2013/09/25(水) 03:28:15 ID:GKnAZIlc
男「第一、そんな言葉どこで仕入れてくるのさ」

神娘「大抵お前が持ってきた外の書物にだな」

男「(変なもの持ってくるんじゃなかった)」

神娘「私はあれだな、あれが好きだった」

男「神様の事だから伝承か何かか?」

神娘「うむ、そんな感じだ…えらく冒涜的な話だったな、白痴の神がうんたら」

男「……神様?」

神娘「うん?」

男「その本後で回収するから」

神娘「はい?」
414: ◆lwQY2qw84A 2013/09/25(水) 18:11:36 ID:GKnAZIlc
男「あそこが渡り廊下、あそこが購買」

神娘「購買?」

男「色々売ってる、結構便利」

神娘「我は財布を持っていないぞ」

男「そりゃあたりまえだがな」

神娘「そうか…」

男「アイスぐらいなら買うよ」

神娘「ほほぉ?アイスとはかき氷の様なものだと聞いたが」

男「間違っちゃいないな、うん」
415: ◆lwQY2qw84A 2013/09/25(水) 18:18:44 ID:GKnAZIlc
神娘「まあそれはさておくとしよう、まだ面白そうなものが沢山ある」

男「一気に見ようとすると大変だぞ、それにもうじき講義が始まるし」

神娘「講義?どれだ?」

男「次が政治論理学だな」

神娘「ははぁ」

男「まあ権謀術数とかなら神様の方が上手い気がするけど」

神娘「かか、人に負けるようでは神はやっていけんよ」

男「(本当に教授位なら退けちゃいそうなんだよなぁ…)」
416: ◆lwQY2qw84A 2013/09/25(水) 18:25:15 ID:GKnAZIlc
男「神様はどうする?講義一緒に受ける?」ヒソヒソ

神娘「ちょっと待て、なぜいきなり声を潜める」

男「忘れてたけど神様って普通に人には見えないじゃないか、こっちが変な奴に見られたら困るし」ヒソヒソ

神娘「むむ…確かに一理あるな」

男「だから学校に居る間はな?ちょっと黙る」

神娘「仕方なし、手を繋いでおくとしよう」

男「どうしてそうなったし」
417: ◆lwQY2qw84A 2013/09/25(水) 19:03:06 ID:GKnAZIlc
神娘「いやぁな、ここの学生は皆活気に満ちているな!」ブンブン

男「……」

神娘「若さゆえの力と言うか…そうだな、やはり若いっていいな神主よ」

男「ああ」

神娘「ここの生徒が皆私の信徒となれば…いやさ言うまいて」

男「(落ち着け、落ち着くんだ)」

神娘「あれが書架で、あれが時計塔か…立派なものだ」

男「(今は学校、右手にはしっかり捕まった神様、でもここは学校)」

神娘「神主、あれはなんだ?」

男「(今は学校今は学校今は学校)」
418: ◆lwQY2qw84A 2013/09/25(水) 19:14:49 ID:GKnAZIlc

神娘「いやはや…広大だなここは」

男「…これ」ピラッ

神娘「お?この学校のパンフレットか…」

男「これ読んで観光にでも行ったらどうだ?」

神娘「ほほー、中々興味深くはある」

男「だろ?」

神娘「だが、私はお前と一緒に回りたいぞ」

男「………」
421: ◆lwQY2qw84A 2013/09/26(木) 08:51:11 ID:D1SazN5E
神娘「迷子になるかもしれんしな!」

男「んな自慢げに言われてもな」

神娘「それにだ、こういった探索は道案内を連れて行けと兼好も言っていた」

男「兼好?」
422: ◆lwQY2qw84A 2013/09/26(木) 09:50:08 ID:D1SazN5E
男「んーっと…講義は第二講義室か」

神娘「ああ、そこをまがって右だな」

男「(もう覚えてるのかよ)」

神娘「まあ、な」

男「あん?」

神娘「色々理由をあげ諂ったが、結局はお前と一緒に歩きたいだけだ」

男「…いきなりそういう事言うなって」
423: ◆lwQY2qw84A 2013/09/26(木) 10:17:31 ID:D1SazN5E
男「なあ」

神娘「なんぞ」

男「神様っ俺のことどう思ってるの?」

神娘「私の自慢の神主だ!」

男「…そうか」

神娘「お前と出会えてよかったと思っているぞ」

男「うん、俺もだよ…うん」
424: ◆lwQY2qw84A 2013/09/26(木) 14:45:12 ID:D1SazN5E
神娘「で、講義に行くんだろう?」

男「おっとそうだった…ここだここ」

神娘「中々広そうな部屋だな」

男「(まさか中に”見える”奴なんていないよな…)」

神娘「ん?どうした?」

男「なんでもない」ガラッ

学生A「……」カリカリ

学生B「……」ペラッ

学生C「……」サラサラサラ

男「(杞憂か)」ホッ

先生「……」コホン

男「あ、すみません」
425: ◆lwQY2qw84A 2013/09/26(木) 14:48:14 ID:D1SazN5E
先生「では講義を始める、起立、礼」

友「危なかったな」

男「ああ、ぼーっとしててな」

神娘「遅刻はいかんぞ?」

男「(誰のせいだよ)」

学生D「……」ジーッ

神娘「(…やっぱり、居るか)」ハァ

男「どうした?」ヒソッ

神娘「いいや?なんでも」
426: ◆lwQY2qw84A 2013/09/26(木) 15:01:22 ID:D1SazN5E
――――――

男「(こちら人間、性別男、ただいまピンチです)」

友「なあ、なんか寒くね?」

男「(原因は分かっています)」

神娘「……………………」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

男「(神様、なんで怒ってるんですが)」

先生「であるからして、戦争に加担した者は須らく…」

神娘「……」ゴォッ

先生「ひいっ!?」ビクッ

男「(あ、授業内容か)」

友「なんか冷や汗止まんねえんだけど」

男「先生、私腹が痛くて…」

先生「お?ああ、行って来い」

男「神様、行くぞ」グイッ

神娘「おおっ!?」
427: ◆lwQY2qw84A 2013/09/26(木) 15:23:36 ID:D1SazN5E
男「ったく、なんで怒ってるんだよ」

神娘「よい、大人げなく怒ってしまったが…あれが今の人の考えならばやむを得ない」

男「神様」

神娘「なんだ」

男「学校さぼってあの森に行こうや、な?」

神娘「いいのか?」

男「いーんだ、疲れたし」

神娘「…すまん」

男「いいって」
428: ◆lwQY2qw84A 2013/09/26(木) 17:33:49 ID:D1SazN5E
―――――

男「うん、結構採れたな…これ全部食えるの?」

神娘「美味いぞ?」

男「毒キノコとか混じってないよな…」

神娘「ベニテングダケは美味い」

男「えっ、でも毒があるんじゃ」

神娘「少量なら大丈夫だって、しにゃーせん」

男「……」

神娘「まあこの中に毒は混じっとらんから安心せい」

男「本当?」

神娘「お前は私の言う事を信じろと何度言ったらわかる」

男「わーったよ…」
429: ◆lwQY2qw84A 2013/09/26(木) 19:58:47 ID:D1SazN5E
男「ガスコンロってどこにあったっけ」

神娘「七輪の方がよくないか?」

男「じゃあ炭」

神娘「あそこにあるぞ」

男「網とか」

神娘「あの戸棚の中」

男「あれ」

神娘「お前の手元にある」

男「気付かなんだ」

神娘「阿呆かお前は」
430: ◆lwQY2qw84A 2013/09/26(木) 20:15:09 ID:D1SazN5E
男「”男の目線は女の目線と違う”って誰かが言ってた」

神娘「ほぉ?」

男「曰く、男は狩りにひいでるために視点が遠くに集中するようになったから手元が見えて無い」

神娘「その代わり女は手元が見えると」

男「そうそう」

神娘「中々良いじゃないか、ええ?」

男「神様もやっぱり女なんだな」

神娘「駄目か?」

男「まったくもって」

神娘「ふふん」
431: ◆lwQY2qw84A 2013/09/27(金) 00:24:24 ID:n8St8b3w
男「後は焼けるのを待つだけ」

神娘「やはり茸は素焼きが一番だぞ、醤油で」

男「醤油あったかな」

神娘「前にお前が買ってきただろうに」

男「あ?あー…秋刀魚食った時か」

神娘「そうそう、いきなり醤油買ってないとか言って飛び出して…」

男「いやぁ、うっかりしてた」

神娘「注意力散漫すぎるぞ」

男「さんまに集中してたし」
432: ◆lwQY2qw84A 2013/09/27(金) 02:17:11 ID:n8St8b3w
男「しっかしなー…」

神娘「ん?」

男「周り見てみると、えらくここも所帯じみてきた」

神娘「まあここで生活する分には問題ないものな」

男「ああ、まあな」

神娘「便利だの」

男「神様って普段飯食わないの?」

神娘「食わなくても普通に生活できる…がやはり食うのはいい、心が穏やかになる」

男「そっか、そうだよな」

神娘「そうだとも」
433: ◆lwQY2qw84A 2013/09/27(金) 02:23:14 ID:n8St8b3w
神娘「……」ツンツン

男「もうあがったか?」

神娘「いや、まだだな」

男「結構時間かかるのな」

神娘「じっくり火を通すのがいい、まったりと待とう」

男「そうしよう、酒持って来ればよかった」

神娘「買ってくるか?」

男「いや、今はここで紅葉を眺めているよ」

神娘「それもいい、一面の紅葉は綺麗だな」

男「神様の隣で見ると猶更」

神娘「そうだろう、なんたって私は神だからな!」

男「………ま、いいか」
434: ◆lwQY2qw84A 2013/09/27(金) 02:26:05 ID:n8St8b3w
男「そういえばさ」

神娘「あん?」

男「なんであの時神様あんだけ怒ってたんだ?」

神娘「そうか…そうだなぁ、神主には分かってもらえるかもな」

男「期待されても困るが」

神娘「まあ分からんでもしょうがない事だ」

男「うん」
435: ◆lwQY2qw84A 2013/09/27(金) 02:30:00 ID:n8St8b3w
神娘「”戦争は忘れなければならない事”今はそう聞いているな」

男「今はな」

神娘「それでは駄目だ、忘れてはならぬ、怖ろしい事は忘れてはいけないのだ」

男「でも、嫌な事は忘れてしまいたいだろう?」

神娘「それだ、まさにそれが忘れてはならない理由だ」

男「はぁ」

神娘「人は嫌な事を忘れたがる、戦争の恐怖は年を重ねるごとに薄れていく」

男「……」

神娘「だが忘れた所で戦争はなくなるか?否、戦争の脅威を忘れた国こそが戦争を起こす」

男「…胸が痛くなるな」

神娘「決して忘れてはならぬ…それが戦争だ、忘れては元も子もないのだ」

男「だから怒ったんだ」

神娘「いや…まあ、それもあるが」

男「うん?」
436: ◆lwQY2qw84A 2013/09/27(金) 02:36:32 ID:n8St8b3w
神娘「…これは身勝手な理由だ、理解してくれなくても良い」

男「それでも話してよ」

神娘「私は、戦争に参加した者達を侮辱されたことが一番怒りを覚えた」

男「侮辱?」

神娘「今は、戦争に加担した者は悪だと教えていた」

男「そうだけど」

神娘「果たしてそうなのか?止むに止まれず参加したものは果たして悪なのか?」

男「それは…」

神娘「自らの為に、自らの大事な者の為に剣を取った人間を果たしてそれで済ませていいのか?」

男「……」

神娘「私はそれが許せなかった、あの戦争を無かったことにするのは…海の向こうで散った者達への侮蔑でしかない」

男「(そうか…神様の両親も)」

神娘「…あくまで、私の考えだが」
437: ◆lwQY2qw84A 2013/09/27(金) 02:47:53 ID:n8St8b3w
男「そうか」

神娘「うん?」

男「時々、神様って人間らしくなるのはこういった理由だったのか」

神娘「何だそりゃ…って焦げてる焦げてる」

男「やべっ、お皿とってお皿」

神娘「先に食え」

男「良いの?」

神娘「我は猫舌ぞ」

男「何と言う残念な告白、神様の癖に」

神娘「言うな」
449: ◆lwQY2qw84A 2013/09/28(土) 00:39:49 ID:UJVbsEcA
男「よしよし、いい香りだな」

神娘「秋の味覚というやつだ、たんと食え」

男「分かった、じゃあそこの箸取って」

神娘「よしよし」ヒョイ

男「神様?」

神娘「こうだな…醤油をちょいちょいと」

男「神様猫舌なんじゃないのか?」

神娘「ほれ」ズイッ

男「え」

神娘「食え、食え」

男「えーっと」

神娘「あーん」

男「……」
450: ◆lwQY2qw84A 2013/09/28(土) 00:40:58 ID:UJVbsEcA
神娘「おらっ、神の飯が食えんか!」

男「(覚悟を決めるか)」

神娘「ええい分からんやつめ!口を開けろ!」

男「あ、あーん?」

神娘「さあ食え!」ズイズイ

男「おごぉっ!?あふぃっ!あふぃぃっ!!?」

神娘「熱いうちが美味いと言うだろう!ほれほれ!」

男「やめろぉぉぉぉ…」
451: ◆lwQY2qw84A 2013/09/28(土) 00:49:40 ID:UJVbsEcA
―――――
―――

男「で」

神娘「はい」

男「面白くなってやったと」

神娘「はい」

男「聞いてる?こっちの体人間だよ?」

神娘「知ってる」

男「反省してる?」

神娘「してない」

男「………」
453: ◆lwQY2qw84A 2013/09/28(土) 01:22:42 ID:UJVbsEcA
男「凄い痛かったぞ?暑い通り越して痛かったぞ?」

神娘「反省はしていない」

男「頼むからして下さい」

神娘「今は痛いか?」

男「治ったけど」

神娘「ほぉ?やっぱりお前…」

男「なんだよ」

神娘「考えてみろ、それだけの火傷をしてたった数分で治ると思うか?」

男「…確かに、おかしいな」

神娘「つまり、それだけお前は”こちら”に近づいていると言う事だ」

男「なんだか気味悪いな」

神娘「言うな」
454: ◆lwQY2qw84A 2013/09/28(土) 01:52:16 ID:UJVbsEcA
男「じゃあ、まさかそのことを確認するために?」

神娘「それは別の話だ」キリッ

男「なんだ…」ガックシ

神娘「なあ神主」

男「あ?」

神娘「1つ聞いておくが…このままでもいいのか?」

男「と言うと」

神娘「いずれこのままではお前の体は此方に近づく…いずれ川を越えるだろうな」

男「…そっか」

神娘「本当にいいのか?私への憐れみだけでお前が…」
455: ◆lwQY2qw84A 2013/09/28(土) 01:52:46 ID:UJVbsEcA

男「いいよ、別に」

神娘「…そうか、うん」

男「ほれ」ズイッ

神娘「うん?」

男「あーん」

神娘「…ん」パクッ

男「どうだ?」

神娘「…熱い」
460: ◆lwQY2qw84A 2013/09/28(土) 13:10:09 ID:UJVbsEcA
男「結構焼けて来たな」

神娘「良い香りだ、秋の山は美味い物がたんとあるぞ」

男「でも不思議なもんだよな」

神娘「ん?」

男「あんだけ歩いても全く終わりが見えない、この空間ってとんでもなく広いのか?」

神娘「んー…ま、この森について纏めて説明しておこうかの」

男「おう、ありがたい」

神娘「ま、そこに直れ」
461: ◆lwQY2qw84A 2013/09/28(土) 13:15:56 ID:UJVbsEcA
神娘「この森は…と言うよりこの山は私が作り上げた空間と言ったな」

男「うん」

神娘「ありゃ嘘だ」

男「なん…だと…」

神娘「空間を作り上げるだけの力があったら主神どころか創造神だぞそれ」

男「じゃあ嘘で通してたのかよ…」

神娘「説明するのが面倒くさかっただけだから」

男「…神様って案外ずぼらなんだな」

神娘「説明とか柄じゃないのでな」

男「頑張れよ」

神娘「嫌じゃ」
463: ◆lwQY2qw84A 2013/09/28(土) 18:29:12 ID:UJVbsEcA
神娘「私は元々二つの社を持っていた」

男「それって結構すごい事なんじゃないか?」

神娘「まあ自宅と別荘みたいなものだ、公務の為に大きな社があって休憩のために小さな社があった」

男「つまり…こっちはその大きな社?」

神娘「いや?小さい方」

男「えっ」キョロキョロ

男「(明らかにドでかい鳥居がある、慎ましくも本殿はこれまたでかいし、一式きちんとそろった立派な神社だ)」

男「こっちが小さい方?」

神娘「おう、でかい方は正直疲れる」

男「へ、へえ…」

神娘「あっちは人が多いわ自然が無いわでな…体に合わない」

男「じゃあこっちの方を公務用にしたらいいじゃん」

神娘「ところがそうもいかんのよ」

男「うん?」
464: ◆lwQY2qw84A 2013/09/28(土) 18:35:29 ID:UJVbsEcA
神娘「こっちにも体面やら面子やらあるのさ、威厳ってもんが大事なの」

男「(の割にはだらしない所も見せてる気がするが…)」

神娘「お前は別だ」

男「なんでさ」

神娘「神主だからな」

男「お、おう?」

神娘「まあ、あと…四六時中硬くなるのも疲れるしな」

男「……まあ、それなら」
465: ◆lwQY2qw84A 2013/09/28(土) 18:37:47 ID:UJVbsEcA
神娘「そう言えばお前と会う時間も長くなったな」

男「流石に学校はそうサボる訳にもいかんけど…うん」

神娘「休日とかいつもここに来てるじゃないか」

男「ここに居ると疲れがとれるんだよ」

神娘「それはいいのだが、食事とかここで取ってても大丈夫なのか?心配されんか?」

男「あ?あー…それは」

神娘「うん?」
466: ◆lwQY2qw84A 2013/09/28(土) 18:40:05 ID:UJVbsEcA
―――――

男母「ねえ」

男「うん?」

男母「彼女出来た?」

男「ぶごっ」

男母「最近家に帰る時間遅いし…休みの日にもどこか行ってるみたいじゃない」

男「ま、まあな」

男母「紹介しなさいよ」

男「そんなんじゃないからさ」

男母「えー?」
467: ◆lwQY2qw84A 2013/09/28(土) 18:41:31 ID:UJVbsEcA
―――――

男「(言えねえ…)」

神娘「おい?どうした?おい?」

男「なんでもない」

神娘「と言うかお前ここに住んでるのも同然だと思うがな」

男「そこまでは…そこまでは流石に」

神娘「否定できんか」

男「…ソウダネ」
468: ◆lwQY2qw84A 2013/09/28(土) 18:44:18 ID:UJVbsEcA
神娘「我としては構わんがな!」

男「えっ」

神娘「話し相手も増えるし、なんだかんだ言ってお前と話していると楽しい」

男「ああ…うん、そうか」

神娘「で、だ」

男「おう」

神娘「ここの空間はその小さな社になるわけだ」

男「ほうほう?」
469: ◆lwQY2qw84A 2013/09/29(日) 01:43:02 ID:1cTWrAj2
神娘「あの時、このままでは私はいずれ消えゆく事は分かっていた」

男「…ふむ」

神娘「故に、私には力の消費を極限まで下げる事の出来る空間が必要だった」

男「うん」

神娘「だから私は、小さい方の社とその周辺の山を複製し結界を張ったのだ」

男「…うん?」

神娘「そして複製した空間を内包した結界をこの世界からちょいずらしてだな…」

男「待った」

神娘「ん?」

男「空間を複製して位相をずらした?」

神娘「そうだな」

男「それって案外凄い事なんじゃないの?」

神娘「まあ、そこそこ?」

男「(そこそこの基準がとんでもないんだが)」
470: ◆lwQY2qw84A 2013/09/29(日) 01:49:28 ID:1cTWrAj2
神娘「そいでずらした空間の中に居る事で力の漏れを極限まで減らし、かつ時間軸を弄る事で長時間…」

男「段々こんがらがって来たんだが」

神娘「要するにここは私の空間で入ることは物凄く難しい」

男「要約ありがとう、でも普通に入ってこれたのはなんでだろうな」

神娘「本当になんでだろうな、空間に歪みでも出来たか?」

男「そこのところは分からん」
471: ◆lwQY2qw84A 2013/09/29(日) 01:55:52 ID:1cTWrAj2
神娘「この空間は、謂わば私の最後の領土」

男「前にも言ってたな」

神娘「同時に私を生き永らせるための揺り籠でもある」

男「揺り籠、ねえ…」

神娘「誰よりも長く生きる神が揺り籠とは、皮肉だろう?」

男「……」

―――――

神娘「……むにゃ」スゥ

男「……」

神娘「…ふ、ふふ…」グゥ

―――――

男「案外的を射た表現だな…」

神娘「なにか?」

男「なにも」
472: ◆lwQY2qw84A 2013/09/29(日) 02:03:59 ID:1cTWrAj2
神娘「と言う訳で…まあこの空間についての説明は終わりだ」

男「で、だ」

神娘「ん」

ヒュルルルルルル…

男「木枯らしがきつい」

神娘「確かに…寒いな」

男「そう言えばこの間のあれは急に夏から秋になったわけだが

神娘「あれか…あれは私にも分からん」

男「この空間は神様の物だったら、分からない事ってあるのか」

神娘「この空間は私の物だが、私の物ではない」

男「は?」
473: ◆lwQY2qw84A 2013/09/29(日) 02:39:30 ID:1cTWrAj2
神娘「お前は、表面上に出ている意識が自分の全部だと思うか?」

男「うん?うーん…どう言う事だ」

神娘「自分の無意識は自分ではないと言えるか?自分の意識できていない自分は自分でないのか?」

男「それは…違うな」

神娘「つまり、この空間をすべているのは私だ、だがそれは私の表面意識ではなく無意識すら含めた”私”だ」

男「だから、神様が分からない事があると」

神娘「その通り、面倒極まりないが…まあ私の意識下だけでこの空間を構築するとどうしても無理が出る、負担が大きすぎてな」

男「なるほどなるほど、さっぱりわからん」

神娘「知っとる、お前が途中から食う事に集中し始めたあたりから」

男「そういう神様もどんどん食ってるじゃん」

神娘「ばれたか」

男「ばれないとおもいでか」

神娘「こやつめ、ははは」
474: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/29(日) 03:34:15 ID:1cTWrAj2
神娘「一応夏にも戻せるがな、夏に秋のものくってもなーと」ムシャムシャ

男「まーね」モグモグ

神娘「しっかし、花より団子だな」バクバク

男「この場合紅葉だけどな、ちゃんと見てるよ」ムシャムシャ

神娘「久しぶりに見るな、ずっと夏だったから」

男「…見渡す限りの広葉樹だな」

神娘「杉なんてないぞ、花粉症がな」

男「広葉樹なんてもう絶滅危惧種だぞ」

神娘「悲しいものだ」

男「この景色を見て…そう思った」

ヒュッ ヒュゥゥゥゥ

男「…寒い」

神娘「七輪の炎が暖かい…」

男「あっ、独り占めするなよ」
475: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/29(日) 03:38:12 ID:1cTWrAj2
―――――

神娘「神主」

男「ん?」

神娘「私の隣に座れ」ポンポン

男「おう」スタスタ

神娘「……」

男「よっと」

神娘「……」

男「……」

神娘「綺麗だな」

男「絶景って、こう言う事だよな」

神娘「間違いない」
476: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/29(日) 03:50:36 ID:1cTWrAj2
神娘「何も変わらん、時が流れても美しいと思う心は」

男「ああ」

神娘「ただ…もう私の周りには奴らはいない」

男「不満か?」

神娘「…最初はきっと、私のどこかに引っかかりを覚えるだろうと思っていた」

男「うん」

神娘「だが不思議だな…こうして隣にはお前しか居ないと言うのに、あの頃の様な賑やかさはないと言うのに…不思議としっくりくる」

男「……」

神娘「なんだか…落ち着くんだ、こうしてお前と二人きりでいると」

男「そっか」

神娘「…不思議だな」フッ

男「不思議なもんだな」

神娘「ちゃんと神の話は聞け」

男「聞いてますよーだ」
486: ◆lwQY2qw84A 2013/10/02(水) 01:34:29 ID:SsT.cAvE
閑話休題

男「そういえば」

神娘「ん」

男「神様ってどれぐらい力が使えるようになったの?」

神娘「ふむ、そうだな…試してみるか」

男「神様の力が見れるんだって?」

神娘「おう見せちゃる、腰抜かすなよ?」

男「流石にそこまではしないって」
487: ◆lwQY2qw84A 2013/10/02(水) 01:38:56 ID:SsT.cAvE
神娘「とは言えどあまり広範囲でど派手な力は使えんな」

男「正にそう言うのを見たいんだが」

神娘「馬鹿言え、そんな力使ったら赤子でもここに”なにか”がいることぐらいばれるわ」

男「今までばれなかったのが不思議だけどね」

神娘「それは…人徳ならぬ神徳だろう」

男「はいはい、じゃあ風は使えないの?」

神娘「多分今の力なら小さい山の一つや二つへ消し飛ばせるだろうな」

男「…凄くないかそれ?」

神娘「かか、お前の信仰の賜物だ」

男「なんか嬉しいな、信者として」

神娘「おう、誇れ誇れ」
488: ◆lwQY2qw84A 2013/10/02(水) 01:46:33 ID:SsT.cAvE
神娘「うーむ…中々思いつかんな」

男「じゃああれだ、加護なんかどうだ?」

神娘「加護を?」

男「例えば身体強化とかさ…それをつけてどれぐらい力がついたかとか」

神娘「やめた方がいいぞ?」

男「なんでさ」

神娘「いきなり垂直にすっとんだり車に轢かれても大丈夫な人間になりたいか?」

男「えっ」

神娘「正直加減が上手くいくか分からん、なにせ数世紀ぶりだしの」

男「じゃあいざって時使えないじゃん」

神娘「リハビリはしとる」ムッスー

男「えっ?」
489: ◆lwQY2qw84A 2013/10/02(水) 01:49:45 ID:SsT.cAvE
神娘「なに心配はいらん、最近目覚めがよくなったとか無いか?」

男「まあ、でもこの神社で昼寝するなんていつもの事だし」

神娘「やけに探索しても疲労してない事とか」

男「そう言えば…ってまさか」

神娘「ちょーっとづつ、ちょーっとづつ慣らしていけば問題ない」

男「そう言う事は相談してくれよな…」

神娘「善処しよう」
490: ◆lwQY2qw84A 2013/10/02(水) 21:41:51 ID:SsT.cAvE
神娘「第一だな、私としてもお前の役に立ちたい」

男「そりゃ嬉しいけどさ」

神娘「だからまあ、こうしてさり気ない心遣いをだな」

男「さり気ない必要ってあるの?」

神娘「えっ?」

男「いや、なんでさり気ない気回しする必要あるのかなと」

神娘「そりゃ、そのだな」

男「特に必要ないよね」

神娘「…言われてみれば」
491: ◆lwQY2qw84A 2013/10/02(水) 21:44:01 ID:SsT.cAvE
神娘「じゃあどうすれば良いのかわからん」

男「別に、堂々としてればいいんじゃないかな」

神娘「…うむ」

男「うん」

神娘「私はお前を護ってやるからな」

男「ありがとうございます、神様」

神娘「うむっ!」
492: ◆lwQY2qw84A 2013/10/02(水) 22:00:48 ID:SsT.cAvE
神娘「これだけ色々と世話をされて見返りを与えられなければ神の名が廃るからな」

男「まあこっちは気にしないけど」

神娘「我が気にするのだ、お前は我を信仰していればよい」

男「そうなのかな」

神娘「そういうものだ」
500: ◆lwQY2qw84A 2013/10/03(木) 20:40:22 ID:0r7Mz6sA
神娘「ううむ、力が戻ったとはいえやはり慣れないと碌に使えん」

男「例えばどんなことしてるのさ」

神娘「こんなの」パチンッ ボッ

男「…指パッチンしたら炎が」

神娘「別に指を鳴らす必要はない…が、鳴らした方が”それっぽい”だろう?」

男「なるほどね、神の力をより見せつけると」

神娘「神はエンターテイナーでなければならない」

男「宗教家が聞いたら絶句しそうだけど」

神娘「なに、奴等とてやっている事は同じよ」

男「成程、神様に似たんだな」

神娘「違うな、奴らが似せたのだよ」
501: ◆lwQY2qw84A 2013/10/03(木) 20:46:23 ID:0r7Mz6sA
神娘「まあ待っているがいい、私が完全に馴染んだ暁にはお前はエースにだな」

男「ちょい待て、何のエースだ」

神娘「撃墜数ナンバーワン…」

男「何の撃墜だ」

神娘「…夜の?」

男「えっ」

神娘「とんでもない事に気付いた」

男「うん」

神娘「私は戦神だな?」

男「そう言ってたな」

神娘「自ずと掛けられる加護の種類もそっちになっていくな?」

男「おう」

神娘「今時、そんなの要るか?」

男「……」フッ

神娘「おいこら笑うな、笑うな」
509: ◆lwQY2qw84A 2013/10/05(土) 00:39:11 ID:MiJPYV96
男「神様」

神娘「なんぞ」

男「別に、いいよ」

神娘「あん?」

男「なにもくれなくたって、いいんだ」

神娘「…神の威厳か」

男「言ってたね」

神娘「そんなもの、どこで役に立つのだろうな」

男「矜持じゃない?」

神娘「矜持だの、誇りだの…そんなものは」

男「……」

神娘「戦争の中で生まれた私にそんなものはあるのだろうか」

男「分からん」

神娘「だろうな」
510: ◆lwQY2qw84A 2013/10/05(土) 00:43:52 ID:MiJPYV96
男「あのお墓、お墓?行ってきたよ」

神娘「最近妙に綺麗になったと思ったらそうか、お前が…」

男「うん、最近は慣れてきて少しずつ掃除する範囲が広くなってきたしさ」

神娘「まあ、あそこには何も埋まってないが…」

男「埋まってる」

神娘「は?」

男「あの場所には神様の想いが埋まってるんだ、神様の今までが埋まっているんだ」

神娘「…今まで」

男「神様の”今まで”があそこにあって、神様の”これから”がここにある」

神娘「人の子…」

男「だからさ、別にそんな自分を卑下する必要ないって」
511: ◆lwQY2qw84A 2013/10/05(土) 00:46:22 ID:MiJPYV96
男「だから気にすんなって、な?」

神娘「ううむ、人の癖にいっちょ前な事を言う」

男「ひどっ!?」

神娘「…だが、嬉しかったぞ」

男「光栄の極み」

神娘「お前に生かされ、お前に諭されるとは…少しは自立せねばな」

男「このままでもいい気はするけど」

神娘「たわけが」
512: ◆lwQY2qw84A 2013/10/05(土) 14:00:28 ID:MiJPYV96
――――――

「で、見つかったのか」

「ええ、某地方の大学で確認されたようです」

「なんと…大学と」

「驚くべきことに実態に近い姿で顕現していたと」

「力を蓄えていたのだろうか?」

「恐らくはしかし神の力がそう易々と回復するとは…」

「やはり協力者が?」

「そうでしょう、恐らくは小規模なグループ単位の信者を確保したかと」

「バックも調べるとして、ともかく監視を続けろ」

「はい、いずれは協力を仰ぎに?」

「うむ、時間はもうないのだ」

「了解しました」
513: ◆lwQY2qw84A 2013/10/05(土) 15:14:53 ID:MiJPYV96
―――――

男「暇だ」

先生「えー…諸君はもうじきそれぞれの進路に進むのであって」

友「分かりきってること説明されてもな」

男「ああ」

先生「それには早過ぎと言う事は…」

友「で、お前はどこに行くよ」

男「…大学でも行くかなぁ」

友「俺も」

先生「であるからして…」

男「…暇だな」

友「暇だな」
514: ◆lwQY2qw84A 2013/10/05(土) 15:26:47 ID:MiJPYV96
――――――

友「あー…だりー…」ザッザッ

男「進路決定が?」

友「全部」

男「それ言ったらおしまいだろ」

友「わーってるけどさー…」

男「……」クイッ

友「ん?どした?」

男「年柄年中変わらない気候だ」

友「そりゃぁな、制御されてるしな」

男「季節か」

友「季節?…ああ、先生が言ってたな」
515: ◆lwQY2qw84A 2013/10/05(土) 15:37:42 ID:MiJPYV96
男「”季節、と言う言葉が死語になってから早数世紀が過ぎた”」

友「そうそう、それまでは季節の変わり目に病気する奴が沢山いたらしいぜ?」

男「らしいな」

友「それをなくしていつも一定の快適な気候を作り出したって事らしいな」

男「教科書の通りだとな」

友「お蔭でこっちは仮病もしにくくてさー…困っちゃうよな?」

男「……」

友「おーい?」

男「ん、ああ…そうだな」

友「あーだりー…」ザッザッ

男「(季節か)」
516: ◆lwQY2qw84A 2013/10/05(土) 15:41:31 ID:MiJPYV96
友「んじゃ、俺はここで帰るわ」

男「家はこっちじゃなかったっけ」

友「そうなんだが、塾講のバイト初めてさ」

男「…いつの間に」

友「すまん、最近色々あって会ってなかったしな」

男「でも、授業中よく怒られてるお前が塾講になれるのかよ」

友「ひどっ!お前のせいでもあるんだぞ」

男「すまなんだ」
517: ◆lwQY2qw84A 2013/10/05(土) 15:44:04 ID:MiJPYV96
友「ん、じゃーな」

男「…ん、友よ」

友「あん?」

男「今日は車に気を付けた方がいいぞ」

友「なんだそりゃ」

男「別に、友人としての忠告」

友「…なあ」

男「ん?」

友「なんだかお前、段々変わってきたな」

男「ああ?」
518: ◆lwQY2qw84A 2013/10/05(土) 20:03:01 ID:MiJPYV96
友「なんか、どんどんこの世から離れていっていると言うか…」

男「……」

友「何言ってるんだろうな、じゃあ」

男「…じゃあな」

友「体には気をつけろよー!」タカタカ

男「…変わった、か…」
519: ◆lwQY2qw84A 2013/10/05(土) 20:12:23 ID:MiJPYV96
シャワシャワシャワ…

神娘「……ん」コクン

ザワッ ザザザザ

神娘「………」コクッ

ミーン ミーンミーン

神娘「…あうっ」コクンッ

男「おー…よく寝てる」

神娘「…ほぅっ」ガクッ

男「見てると面白いな」

神娘「……ん、お前か」グシグシ

男「おはよう神様」

神娘「おはよう、神主」
520: ◆lwQY2qw84A 2013/10/05(土) 21:23:53 ID:MiJPYV96
男「座るよ」ドカッ

神娘「もうちょい慎重に座ってくれ…寝起きだ」

男「あ、ごめん」

神娘「ふぁぁ…麦茶でも持ってくるか…」

男「いや、神様は行かなくていいよ」ドッ

神娘「ありがたい」
521: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 00:13:52 ID:kflSxJR6
男「おまたせ」カタン

神娘「ん、ありがとう」

男「いつの間に冷蔵庫なんて持ってきたんだ…」

神娘「神を舐めるなよ?」

男「いや、神とか関係ない気がするんだけど」

神娘「あー…まあ簡単だ」ゴクゴク

男「おう」ゴクッ

神娘「私が半実体化したのと同じ原理を使った、”存在の固定化”」

男「ごめん、やっぱいいや」

神娘「言うと思った」

男「神様って実は頭がいい?」

神娘「小難しい方が説明しやすい」

男「煙に巻きやすいんじゃなくて?」

神娘「頭のいいやつは大体やってることだからな」グビッ
522: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 00:20:04 ID:kflSxJR6
神娘「と言う訳でうちには大抵の家電がある」

男「どこか我が家で見たものと言うのは」

神娘「こないだお前のうちに行ったときに見て来たものだから」

男「ははぁ…どうにでどうも面白みがない」

神娘「別に色々なものを見ればその都度変えられるが」

男「いや、良いや面倒くさい」

神娘「外に出るのはいいけど疲れるんだよ、あれ」

男「力の消費とか」

神娘「そうじゃない、精神力が居る」

男「精神力?」

神娘「幾ら実態に近くなっても本当の実態は”ここ”にあるからな」

男「言ってたな」

神娘「形を向こう側に移すのには色々要るんだよ、大体根性が」

男「ははぁ」
523: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 00:23:08 ID:kflSxJR6
男「大変なんだな、神様も」

神娘「今更か」

男「改めてだよ」

神娘「ふん…」

男「そう言えば、大分力は回復したみたいだね」

神娘「そうだそうだ、不自由しないまでには回復したぞ」

男「最初会った時と比べてまぁ…元気になったな」

神娘「うむ、お前のおかげだ」

男「…おう」
524: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 00:27:17 ID:kflSxJR6
男「今日は夏なんだな」

神娘「やっぱり夏の日差しは気持ちがよいからな」

男「秋は昼寝に向かない」

神娘「木枯らしに当たっているとな…風邪をひかぬ身と言えど背筋が震える」

男「こっちは風邪をひきかねん」

神娘「この間は羽織を持ってきたな、貸してやるが」

男「いいよ、自分の常備する方がいい」

神娘「そうか」

男「まあ、ずっと夏より秋もあった方がいいし」

神娘「それは実感している」

男「神様はずっとここに居るしね」

神娘「うむ」
525: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 00:30:57 ID:kflSxJR6
神娘「秋は良い、美味い物が多いし」

男「神様って物食わないでも生きていけるんじゃなかったっけ」

神娘「この世には点滴、たるものががあるらしいな」

男「把握した、それは辛いわ」

神娘「経験があるのか」

男「中学の頃にな…あれは辛かった」ブルッ

神娘「ようやく物食うのに不自由しないこの嬉しさよ」

男「確かに、秋は焚火の温かさも嬉しいから一概に嫌とは言えない」

神娘「天高く馬肥ゆる秋、だな」

男「なんだな、季節によって楽しみってあるんだな」
526: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 00:38:04 ID:kflSxJR6
神娘「外に出て驚いた、本当に季節と言うものが無いのだな」

男「そうだよ、お蔭で体調不良にはならないけど…」

神娘「つまらんな」

男「こうして夏の日差しや、秋の木枯らしに当たってるとね」

神娘「人は季節によって自らの体を育ててきた、季節をなくすと言うのはつまり体を虚弱にしてゆく…」

男「あー…そう言えばここに始めて来た時風邪ひいたわ、親に心配された」

神娘「あの時はまさか外がそんな事になってると思わずにな、迂闊だった」

男「仕方ないよ、神様の時代には季節が当たり前にあったんだろ?」

神娘「うむ、我々は季節と共に生きて来たといっても過言ではない」

男「それを捨てるという事は…」

神娘「言いたくはないが…愚かになったものだ、人間も」

男「……」

神娘「戦争をしていた頃と何も変わっていない…いや傲慢に学ぼうともしない当たりそれよりも…」

男「…そうだな」
527: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 00:47:30 ID:kflSxJR6
男「冬と、春か」

神娘「もう半分だな、冬と春だ」

男「なんで夏しかなかったこの森に秋が来たんだろう」

神娘「……恐らく」

男「ん?」

神娘「私が、ゆるしたから…ではないだろうか」

男「許した?今まで何か悪い事をしたっけ」ポリポリ

神娘「そうじゃない、一つは私が過去の私を赦したからだ、そして過去の私が今の私を赦したのだ」
528: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 00:50:23 ID:kflSxJR6
神娘「それによるものが一つ、もう一つは…」

男「もう一つは?」

神娘「私がお前を心の底から許した、私の今まで誰も触れたことの無い部分に触れる事を許可した…だろう」

男「…なんか、気恥ずかしいな」

神娘「胸を張れ、お前は神に許された者だ」

男「許された…」

神娘「下を向く事は許さん、それは私を侮蔑する事と同じだ…お前はお前らしく胸を張れ」

男「…分かったよ、神様」ニッ

神娘「それでよい、それでこそ私の神主だ」ニヤッ
530: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 00:58:11 ID:kflSxJR6
男「じゃ、残った季節は」

神娘「解放される条件は分からん、ただ私の心理に影響されるとみて間違いないだろう」

男「しっかし、これ以上何かあるのか?」

神娘「分からん、がそれを今考えてもしょうがない」

男「ま、そうだな」

神娘「いずれ分かるかもしれんし、分からんかもしれん」

男「待ちゃいいな」

神娘「散々待ったのだ、今数十年待とうと短い」

男「流石にスパンが違うな」
531: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 01:04:03 ID:kflSxJR6
男「しかしなぁ」

神娘「ん?」

男「ここに居ると…帰りたくなくなる」

神娘「ここに居たらどうだ?どうせその年なら一人暮らしでも…」

男「親に詮索されたら駄目だよ、それに正式な住居が無いと色々困るし」

神娘「不便なものだな」

男「不便だよ、昔に行ってみたいけど」

神娘「そりゃ無理だ、神の力を持っても過去には帰られない」

男「そうだよな…」

神娘「まあ、私としてはお前がここに毎日通うだけで信仰が溜まるが」

男「積み重ねだな」

神娘「そうだが、ちょい違うな」

男「ん?」
532: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 01:11:48 ID:kflSxJR6
神娘「お前は”初日の参拝”のと”二日目の参拝”の、どちらの方が一日毎の信仰が高いと思う?」

男「そりゃ後者だけど…実感しにくいな」

神娘「では”一ヶ月の参拝”と”一年の参拝”ではどうだ」

男「そりゃ一年参拝し続ける方が信仰が強いな」

神娘「つまりはそう言う事だ」

男「…うむ?」

神娘「参拝を積み重ねるうちにその者が持つ”信仰”はより強固に、より心に根付く」

男「読めて来たぞ」
533: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 01:12:22 ID:kflSxJR6
神娘「お前が今までに捧げた信仰は一定ではない、一日毎により大きく、より深い信仰を私に捧げているのだ」

男「自覚ないけどな」

神娘「私は感じるぞ、お前の私を信じる気持ちを」

男「……そうか?」

神娘「ではどうだ?お前は初対面の物と私、どちらを信じる」

男「勿論神様だ」

神娘「つまりそう言う事だよ、少年」ツンツン

男「やめろよ、なんか恥ずかしい」バッ

神娘「初々しいねぇ」ケタケタ
534: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 01:15:52 ID:kflSxJR6
神娘「積み重ねは大事だよ、どんなことに付けても」

男「今はスピード理解が大事らしいけど」

神娘「それは一時しのぎの知識だ、積み重ねには勝てん」

男「なんか勇気でたぞ」

神娘「まあ効率悪いのと積み重ねたのは違うぞ、そこ取り違えるな」

男「うぐっ」

神娘「甘えるな、自分の行ったことに自分は嘘をつかん」

男「分かったよ…やっぱ神様は言う事が違うな」

神娘「生きた期間が違うのよ、こんななりだが人間でいう婆もいい所だ」

男「でも神様の中では」

神娘「若い方だった」

男「神様ってすげえのな…」

神娘「なにを今更いうか」
535: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 01:20:48 ID:kflSxJR6
男「んじゃ、また明日も来るよ」

神娘「麦茶冷やして待ってるぞ」

男「夏にしておいてくれよ?」ザリッ

神娘「抜かりはないわ」ケタケタ

男「かえっかー…」

―――――――

男「ただいも」

男母「おかいも」

男「飯か、丁度良い時に帰って来た」

男母「ああそうだ、言わなきゃいけないことがね」

男「うん」

男母「引っ越すことにしたの」

男「…は?」
539: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 18:01:34 ID:kflSxJR6
男「…引っ越す?」

男母「お父さんの仕事でね?どうにも単身赴任が長引きそうなのよ」

男「だから向こうに行くって事?」

男母「そうそう」

男「じゃあ、この家は」

男母「売っちゃおうかって、そのお金で向こうに家を買っても良いし…」

男「大学とか…」

男母「別に遠くじゃないから問題ないわよ、ちょっと移動距離が延びるだけで」

男「……」

男母「いいわね?」

男「いや、考えさせてくれ」

男母「うん?何か問題?」

男「(大問題だよ)」
540: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 18:09:36 ID:kflSxJR6
男「(そもそも今まで大学と家が近いからあの森に行けた様なもんだし…)」

男母「今日はカレーよー」

男「ん」

男「(多分、引っ越したらあの森はいけない)」

男母「どしたの?」

男「…なんでもない」

男母「お父さんも久々に顔が見れるって喜んでたわ」

男「(……どうすりゃいいんだ)」
543: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 18:22:51 ID:kflSxJR6
男「部屋戻るわ」ガチャ

男母「ちゃんと寝るのよー」

男「おう」バタン

男「…あー…」ドサッ

男「週末だけとかになりそうだな…引っ越すと」

男「え?神様と週末にしか会えないの?あの森に行けんのか?」

男「…嫌だな、そりゃ」
544: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 18:25:16 ID:kflSxJR6
――――――

先生「えー、この数式を用いてベクトル分解を行う事で」

男「……」

友「どした、やけに元気がないな」

男「引っ越しか…」

友「えっ、まじ?」

男「まじ…」

友「でもまあ、大学は変わらんだろ?」

男「まあな」

友「なら…まあ、いいんじゃね」

男「そうでもないんだよ…」ガクッ

友「はぁ?なんでさ」

男「えっと、まあ、通学面倒だし?」

友「そっかーそれもあるよなー…」

男「(セーフ)」
545: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 18:32:04 ID:kflSxJR6
友「でもさー、そろそろ一人暮らしでもよくね?」

男「うちは親が煩いんだよ…」

友「関係あるの?」

男「親にとやかく言われるの面倒くさいだろ?」

友「いや、お前がやりたくないならちゃんと言えよ」

男「……そうか」

友「何も言わないから意見を通されるんだぞ?しっかししろよ」

男「友よ」

友「あん?」

男「恩にきる」

友「ジュース一本奢れよ」
547: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 19:16:28 ID:kflSxJR6
――――――

男「と言う事があってだな」

神娘「……」

男「引っ越すかと言われて…」

神娘「……」

男「神様?」

神娘「……神主」

男「うん?」

神娘「我が嫌いになったか?」ウルッ

男「……ん?」
548: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 19:17:12 ID:kflSxJR6
神娘「いや…言うまい、お前がそうしたいと思うならば…」

男「いやいやいや、行かないからね!?」

神娘「…ん?」

男「ちゃんと断るから」

神娘「………取り乱した」グシグシ

男「(可愛い)」
549: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 19:27:57 ID:kflSxJR6
神娘「結論から先に言え!驚いただろうが…」

男「すまん、そのつもりは微塵も無かった」

神娘「…ったくもう…」

男「まさか泣かれるとは思ってなかった」

神娘「今の私は謂わばお前に生かされているのだ、分かるな?」

男「分かってるって…でも引っ越しても週末には会えるけどさ」

神娘「そりゃ、そうだがな…うむ」

男「まあそれでもここには毎日来たいけど」

神娘「それでこそ我が神主だ!」バシバシ

男「痛い、痛いって」
551: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 19:42:47 ID:kflSxJR6
男「いやぁ、友には良い事を言われたもんだ」

神娘「私からも礼を言わねばな…やはり持つべきものは友だ、大事だぞ」

男「あの後ジュースを奢りたかったんだがな」

神娘「ん?どうかしたか?」

男「先生からチョークとお叱りと罰則の課題を受けて…」

神娘「……そうか」

男「眉間から煙が出てた」

神娘「先生も友人も人間ではないのではないか?」
552: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 20:21:28 ID:kflSxJR6
神娘「ではお前はどうする?」

男「んー…それは相談だな、家を売ることが確定してたらどこかに泊まるよ」

神娘「そっか…」

男「ん?」

神娘「いや?なんでもないぞ」コテン

男「(可愛い、いや本当に)」
553: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 20:37:03 ID:kflSxJR6
――――――

男母「え?ここに残る?」

男「うん、通学とかもあるし」

男母「でも…ううん、あなたもそろそろそう言う年頃よね」

男「まあ家事とかは普通にできるしさ」

男母「でもこの家はもう売っちゃう事になってるのよ…契約もすんじゃって」

男「アパートかなんか借りるからいいよ、それにこの家は一人には大きすぎるし」

男母「…ねえ」

男「ん?」

男母「やっぱり好きな人できたんでしょ」

男「冗談言わないでよ」
554: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 20:40:17 ID:kflSxJR6
男「もう寝るよ」ガチャ

男母「おやすみ~」

男「おやすみ」バタン

男「……」

男「と言う訳だ」

神娘「気付いていたのか」

男「どれぐらいの付き合いだと思ってるのさ」

神娘「それもそうだ」カラカラ

男「油断も隙もありゃしないんだから…」

男「」
555: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 20:43:46 ID:kflSxJR6
神娘「帰るぞ、私は」

男「嫌に早いな」

神娘「なに、そんなに長く憑くつもりは無かったのでな」

男「確かこっちの体力も使うんだっけ」

神娘「僅かだがな、お前は私に慣れてるから憑くにしても消費が少ない」

男「便利な体になったもんだ」

神娘「もうすっかりこちら側だよ、お前は」
556: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 20:47:09 ID:kflSxJR6
男「こちら側か、確かに自由に”この世の者ではない”奴等が見えるし…分かる」

神娘「何か不満か?」

男「いや、でも友には薄々気付かれてるんだろうな」

神娘「……ほう」

男「『この世から離れているみたい』だってさ」

神娘「あながち間違えてはいない、お前は最早我々の領土に居るのだからな」

男「それは三途の川を越えたって意味で?」

神娘「死んでは無い、だが”生きても居ない”」

男「随分大ごとだな…」
557: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 20:50:33 ID:kflSxJR6
神娘「神主よ」

男「あん?」

神娘「貴様は今やこちらの住人だ、神々の領土の民だ」

男「そりゃ、光栄…」

神娘「自覚は無いだろうが…お前にも直に分かるだろう」

男「それは真面目に受け取った方がいいか?」

神娘「さあ、どうだろう」

男「神様は汚いな」

神娘「私の生まれを考えれば当然」
558: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 20:54:17 ID:kflSxJR6
神娘「では、帰るよ」スゥ

男「…なあ神様」

神娘「ん?」

男「ひょっとして今日憑いてたのは…」

神娘「…もし本当に引っ越すことになった時、お前とここで話したかったんだ」

男「心配しなくていいのに」

神娘「どうにもならない事もあるから」

男「……」

神娘「ふ、私らしくも無い」

男「大丈夫だよ、出来る限り神様の傍に居るからさ」

神娘「そうもいかんよ」

男「…へ?」
559: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 20:59:35 ID:kflSxJR6
神娘「お前は人間で、私は神だ、それはお前がいくら変わっても変わる筈は無い」

男「うん」

神娘「お前が人間である内は、お前は人と契り、子を成さなければならない」

男「…そんな先の事なんて、分からない」

神娘「気付いていないのか?お前は既に人として成熟しているのだぞ」

男「……」

神娘「それは人の義務だ、在るべき姿だ、私は神である限りお前がその道を進む様導かねばならない」

男「人」

神娘「それが人だ、それが神だ。関係は崩れてまた構成される、それがこの世だ」

男「じゃあ、もし神様がまた一人になったら」

神娘「その時は…大人しく消えるさ」

男「折角ここまで戻ったのに?」

神娘「そもそもなぜ生きるか分からなかった命だ、神の役目には替えられんよ」

男「神様…」

神娘「そんな顔をするな、私まで悲しくなる」
560: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 21:04:20 ID:kflSxJR6
神娘「さて、もうお前は寝ろ」

男「まだ話は終わってないのに?」

神娘「人を寝かすのも神の役目だよ」

男「卑怯だ」

神娘「今更」

男「さて、家はどうするかな」

神娘「それなら…いや、明日話そう」

男「そうしてくれ、疲れた」

神娘「おやすみ、人の子よ」スゥゥ…

男「おやすみ、神様」
561: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 21:07:14 ID:kflSxJR6
男「静かだ」

男「暗い」

男「ここに残る事になったな、家はどうしよう」

男「でも神様可愛かったな、人間なら好きになってた」

男「駄目だ」

男「こうしていると頭がこんがらがる」

男「寝ないと」

男「…寝れない」

男「目が冴える」

男「寝れない」
562: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 21:09:51 ID:kflSxJR6
男「神様と離れなくてよかった」

男「あの場所好きだから、離れたくない」

男「…それだけか?」

男「それだけの為に、あれだけ焦ったのか?」

男「本当に?神様が心配だからだけで?」

男「それだけであれだけ焦るのか?」

男「これも信仰なのか?それとも違うのか?」
563: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 21:21:50 ID:kflSxJR6
男「神様は可愛い」

男「ふとした仕草なんて素晴らしいと思う」

男「きっと人間なら大層持てたんじゃないかな」

男「でも」

男「”神様には畏敬以外の感情を持てない”」

男「神様を友人だと思ったことも無い」

男「ましてや恋愛の対象なんてもってのほかだ」

男「神様は神様であって、同じ次元の存在じゃない」

男「これが神様の言っていたフィルターなのか?」

男「可愛いと思う、でもそれだけだ」

男「時々綺麗だと思う、それだけだ」

男「それ以上は無い」

男「…もうやめよう」

男「神様は神様なんだ」

男「……」
564: ◆lwQY2qw84A 2013/10/06(日) 22:36:51 ID:kflSxJR6
―――――

男「で、何だ話って」

神娘「別に、大した話ではない」

男「おう」

神娘「お前、まだ済む場所は決まってないよな?」

男「引っ越すのもまだだいぶかかるらしいし」

神娘「よかった…」

男「どうかしたか?」

神娘「神主、ここに住まんか?」

男「…ん?」
578: ◆lwQY2qw84A 2013/10/07(月) 21:04:50 ID:uPJI2h6A

神娘「…ふむ、暇だ」

神娘「神主が居たら紛れるが…無理に呼び出す事も無し」

神娘「あやつを待つとするか、時間なら有り余っている」

神娘「どうやって待つか…」

神娘「…」

神娘「…」スゥ


断章


神娘「……」

ミーン ミーン…

神娘「……」

シャワシャワ…

神娘「……」
579: ◆lwQY2qw84A 2013/10/07(月) 21:08:03 ID:uPJI2h6A
神娘「……」

―――――ま

神娘「……」

―――――さま

神娘「…ん」

―――――神様

神娘「何だ…もう来たのか?」

子供「何言ってんだ?神様」

神娘「…ん?」

子供A「約束して無い筈だけどなぁ」

子供B「んだ、んだ」

子供C「でもおっかぁが神様に取り付けたのかもしれんな」

子供B「そんだなぁ」

子供A「そっかもしれんなぁ」
580: ◆lwQY2qw84A 2013/10/07(月) 21:13:04 ID:uPJI2h6A
神娘「(なんだ?これは)」

子供A「おっかぁがもうじき奉納にくっから、先に来てたんだ!」

子供C「最初に勝った奴が神様に頭撫でてもらえるんださ!」

子供A「俺が勝っただ!」

子供B「いーや俺だ!」

子供C「どっちも同じだと思うがなぁ」

子供A「俺だ!」

子供B「なんだと!」

神娘「(なんだこれは)」
581: ◆lwQY2qw84A 2013/10/07(月) 21:19:54 ID:uPJI2h6A
神娘「(知らぬ相手なら幻覚だと勘違いできるだろう)」

子供A「ぐぬぬ…」

神娘「(だが私はこの景色を知っている、この子供達を知っている)」

子供B「ぐぬぅ…」

神娘「(忘れもしない、私が治めていた国だ、私が居た場所だ)」

子供C「あわわわわ…」

神娘「(そして彼らは…私が戦争に送り出す…)」

神娘「……」

女「ばっきゃろー!」

神娘「ふぉっ!?」

子供達「「「うわっ!おっかぁ!」」」
582: ◆lwQY2qw84A 2013/10/07(月) 21:26:23 ID:uPJI2h6A
母「ったく…神様の前で喧嘩なんてしてんじゃないよ!」

子供A「ご、ごめんよ…」

子供B「ごめんなさい…」

母「謝るんだったら神様に謝りな!…すみません神様、うちの馬鹿どもが」

神娘「ああ良いとも、子供は元気が一番」

母「すんませんねぇ…あ、奉納しに来ましたよ」

神娘「ほほぉ!これはまた見事な西瓜」

母「よーく川で冷やしてありますよ!」

神娘「よしよし…では食すとしよう、お前たちも一緒にな」

母「えっ?」

子供達「いいのか?」

神娘「無論だ、一人で食すより多くで食べた方が飯は美味い」
583: ◆lwQY2qw84A 2013/10/07(月) 21:32:40 ID:uPJI2h6A
神娘「(平和だ)」シャクシャク

ミーン ミーン

神娘「(こうして皆と食べているとまるであれが嘘のように思えてくる)」

ミーン ミーン

神娘「(力を失い、自ら閉じこもり、そして…)」

子供「神様ぁ」

神娘「ん?」

子供「最近は戦無いなぁ」

神娘「まあ…良い事じゃないか」

子供「うん、そうだね」

神娘「ああ」

子供「このままなければいいのにね」

神娘「…ああ」
584: ◆lwQY2qw84A 2013/10/07(月) 21:36:02 ID:uPJI2h6A
母「なに、神様が何とかしてくれるさ」

神娘「それは買いかぶりすぎだ、私にそんな力はない」

母「いやいや、現にこの国は神様の威光があって戦争が少なくなりましたよ」

神娘「…そうかな」

母「そうですとも」

神娘「私は、役に立てているかな」

母「神様…」
585: ◆lwQY2qw84A 2013/10/07(月) 21:39:30 ID:uPJI2h6A
母「神様、そんな気負わんでもいいんだよ」

神娘「うん?」

母「神様はそこに居るだけでみんなの希望なんだ、それだけで十分なんだよ」

神娘「まるで置物だな」ハハ

母「いいじゃないか、私は神様の事を人形さんみたいに思ってるんだから」

神娘「それは光栄だな」

母「おっとぉ、口が滑ったねこりゃ!」パシーン
586: ◆lwQY2qw84A 2013/10/07(月) 21:46:45 ID:uPJI2h6A
爺「おぉ神様!今日もありがとうございます!」ペコリ

神娘「私は何もしてないが」

爺「儂が元気なのも孫が皆元気なのも神様のおかげですぞ!」

神娘「そんな力はないがな」

爺「なんのなんの!神様ですからな!」

神娘「…そうだ!それもこれも私の威光あっての事だ、信仰するがよいぞ」

爺「ありがたやありがたや…」

母「ありがたいありがたい」

子供「ありがとうございます」

神娘「(これでいい、これこそ神の姿だ)」

―――男「神様」

神娘「(…今となってはもうお前しかいないがな)」
587: ◆lwQY2qw84A 2013/10/07(月) 21:53:31 ID:uPJI2h6A
婆「神様ぁ、取れたての胡瓜です」

爺「儂は茄子をもって来たぞい!」

神娘「よしよし、ならば台所に立てい!新鮮なうちに野菜を食すぞ!」

母「ちょっと仲間呼んでこないと…」イソイソ

子供「俺たちも呼んでくるぞ!」

神娘「(…ああ、これだ)」

神娘「(これが私が望んでいた光景だ)」

神娘「(これこそが…)」
588: ◆lwQY2qw84A 2013/10/07(月) 21:56:23 ID:uPJI2h6A
神娘「(…足りない)」

神娘「(望んでいた光景なのに…足りない)」

―――男「神様」

神娘「ああ、そうか」

母「どうかしたかい?」

神娘「いいや?なんでもない」

神様「(神主、今はお前が居なければ…そうだな)」
589: ◆lwQY2qw84A 2013/10/07(月) 21:58:38 ID:uPJI2h6A
神娘「…すまん、少し寝るよ」

母「おや、疲れましたか?」

爺「神様には悪いが騒がせてもらうぞ!はっはっは!」

婆「この年になって騒ぐとは年甲斐もないがねぇ!」カラカラ

神娘「(…夢でも、見れて良かったな)」
590: ◆lwQY2qw84A 2013/10/07(月) 22:00:37 ID:uPJI2h6A
子供「神様、寝ちゃうの?」

神娘「すぐ起きるよ」ウトウト

子供「神様」

神娘「なんだい?人の子よ」

子供「…僕ね」

神娘「ああ」

子供?「神様に会えてよかったよ」

神娘「……そうか」
591: ◆lwQY2qw84A 2013/10/07(月) 22:03:13 ID:uPJI2h6A
子供?「ここに居るみんなそう思ってるんだ」

ミーンミーン

神娘「そりゃ、よかったよ」

少年「神様は皆が恨んでると思ってるけど、それは違うよ」

神娘「そうかな」

少年「そうだよ」

ミーンミーン…
592: ◆lwQY2qw84A 2013/10/07(月) 22:06:03 ID:uPJI2h6A
少年「ここに居るみんなは神様を愛しているんだ」

神娘「そりゃ…嬉しい、嬉しいに決まってる」ウトウト

少年「少なくとも今も、神様の事なんて少しも恨んでない」

神娘「本当に?」

少年「嘘をついたら神様が悲しむから」

神娘「そりゃ、そうだな…」
593: ◆lwQY2qw84A 2013/10/07(月) 22:08:39 ID:uPJI2h6A
少年「神様」

神娘「ん?」

少年「愛してるよ、これまでもこれからも」

神娘「告白かい?」

少年「半分はね人間は神様に恋できないけど」

神娘「残念だ」

少年「残念だね」
594: ◆lwQY2qw84A 2013/10/07(月) 22:10:52 ID:uPJI2h6A
少年「愛してるから、もう僕らの事は忘れていいよ」

神娘「そんな事は出来ないさ」

少年「神様」

神娘「なんだ」

少年「僕らは死んだんだ」

神娘「……」

シャワシャワシャワ…
595: ◆lwQY2qw84A 2013/10/07(月) 22:13:18 ID:uPJI2h6A
少年「僕らは死んだんだ」

少年「あの時戦争で死んだんだ」

少年「1人だって生き残らなかった」

少年「お国のために命を投げ出したんだ」

少年「でもね、神様」

少年「ぼくら、神様を恨んでないよ」

少年「それよりも感謝してるんだ」

青年「神様を護れたことを」

青年「今まで護ってくれた神様を護れたことを」
596: ◆lwQY2qw84A 2013/10/07(月) 22:15:29 ID:uPJI2h6A
青年「だから神様、忘れてくれ」

青年「貴方には私達とは違う今がある、生きている」

青年「私達はあなたを束縛するつもりなんてないんだ」

青年「…だから神様」



青年「もうそろそろ目覚めて下さい」

男「神様?」

シャリリリリリリ…

ミーン ミーン ミーン…
597: ◆lwQY2qw84A 2013/10/07(月) 22:19:27 ID:uPJI2h6A
男「おはよう神様」

神娘「…寝ているところを見られたな、不覚」

男「気にしてない癖に」

神娘「まあな…神主」

男「ん?」

神娘「私はどんな顔をしていた?」

男「どうって」

神娘「分からなかったならいいんだが」

男「なんか、少し辛そうだったな」

神娘「…そうか」

男「でも」

神娘「ん?」

男「笑ってたよ、神様」

神娘「…そうか」
598: ◆lwQY2qw84A 2013/10/07(月) 22:21:34 ID:uPJI2h6A
男「なあ神様」

神娘「なんだ?」

男「どんな夢を見ていたんだ?」

神娘「気になるか?」

男「気になる、神様そういうの頓着してそうだし」

神娘「そうだなぁ」

男「うん」

神娘「とんでもない悪夢を見たよ」フッ

男「なんだそれ」
599: ◆lwQY2qw84A 2013/10/07(月) 22:25:07 ID:uPJI2h6A
神娘「さて、上がれ」

男「なにかある?」

神娘「西瓜が一丁」

男「お、いいね」

神娘「既に切り分けてあるからこれもって縁側に行ってくれ」

男「りょーかい」

神娘「あ、先に行っててくれないか」

男「分かったー…おっと」

神娘「おとすでないぞー」

男「わーってるって」
600: ◆lwQY2qw84A 2013/10/07(月) 22:25:48 ID:uPJI2h6A
神娘「……」

シャワシャワシャワ

神娘「忘れる事は出来ない」

ミーンミーン

神娘「だが、私は前に進むことにしたよ」

ザァァァァァァァァ

神娘「それでいいんだろう?」




『ありがとう、神様』

ザァァァァァァァッ…
613: ◆lwQY2qw84A 2013/10/12(土) 14:29:39 ID:b/vbd9Sg
男「神様?ここでは暮らせないって言った気がするんだけど」

神娘「外での体面がどうかこうかだろう?心配するな!」

男「なにか策でもあるのか」

神娘「おうとも、お前に家をくれてやろうとな」

男「スケールのでかすぎる話だと思うんだが、騙してないよな?」

神娘「心配するな、ちゃんとした家だ」

男「神様って外界に干渉できたっけ」

神娘「直接的にはまだ干渉するに至ってないが、間接的なら」

男「維持費とか」

神娘「その程度親からぶんどってこい」

男「えー…」
614: ◆lwQY2qw84A 2013/10/12(土) 20:18:30 ID:b/vbd9Sg
男「でも家をくれてやるって言ってもだよ、どこにあるのかわからん」

神娘「この森の向かいに家があるだろう」

男「あー、あそこ?ぼろい家だよね」

神娘「そこ」

男「…そこ?」

神娘「その家をくれてやる」

男「あのぼろ屋をくれる、かぁ…」

神娘「ただだぞ」

男「確かに維持費とかはただ同然だと思うけど…雨漏りしない?」

神娘「多分な」

男「多分って…」
615: ◆lwQY2qw84A 2013/10/13(日) 05:13:51 ID:.04iUGV2
神娘「ま、色々あるのだ」

男「結構気になるんだがな」

神娘「黙って従え、損はない」

男「はいはい」

神娘「不満か?」

男「滅相も無い」

神娘「…むぅ」
616: ◆lwQY2qw84A 2013/10/13(日) 05:52:18 ID:.04iUGV2
神娘「取り敢えず見に行くといいぞ、下見で」

男「んーそうだな、行ってくるか」

神娘「おおそうか!じゃ、行くぞ」ポン

男「神様も来るのか?」

神娘「当たり前だぞ、神主が仮とはいえ己の住居にする所だからな」

男「へーへーありがたい事で」

神娘「馬鹿にしたな!?」

男「全然、神様の加護があれば万事大丈夫だろうね」

神娘「お、おう」
617: ◆lwQY2qw84A 2013/10/13(日) 07:26:55 ID:.04iUGV2
―――――

男「…で、だ」

神娘「おう」

男「これがその…家?なんだな?」

神娘「そうだな」

男「どう見ても廃墟なんだが」

神娘「雨をしのげるだけはあるな、多分」

男「ここに住めと?神主に?」

神娘「お前は何を言っているのだ阿保め」

男「口が悪いな」

神娘「私はお前にこの家をくれてやるとは言ったが、住めとは言っていない」

男「そうだな」

神娘「お前…私が最初なんでこの家をやると言ったか忘れてないか?」

男「実はそうなんだ、なんだか衝撃的な事を言われた気がして」
618: ◆lwQY2qw84A 2013/10/13(日) 07:29:57 ID:.04iUGV2
神娘「お前はな、私と住むんだ」ズイッ

男「おう」

神娘「私と」ズイッ

男「神様と」

神娘「あの森で」ズイズイッ

男「あの森で」

神娘「一緒に住むんだ!」ズズイッ

男「住む」

神娘「分かったな?」

男「全然」

神娘「この馬鹿たれが!」バチコーン

男「あべしっ!?」
619: ◆lwQY2qw84A 2013/10/13(日) 08:05:51 ID:.04iUGV2
神娘「お前が『取り敢えず住居が無くては困る』と言うから思い出したわけだよ」

男「なんとなくは分かったがな」

神娘「だからその取り敢えずの住居を与えると言っているのだ」

男「……」

神娘「これさえあれば問題ないだろう?な?」

男「なあ神様」

神娘「おん?」

男「神様はなんでそんなに積極的なんだ?」

神娘「言わせるな恥ずかしい」

男「…おう」
620: ◆lwQY2qw84A 2013/10/13(日) 08:14:20 ID:.04iUGV2
神娘「逆に聞くが、異論はあるのか?」

男「無論ない」

神娘「なら良いではないか」

男「…そうだな、別に何にもおかしいことは無い」

神娘「神である私が言うのだ、間違いはない」エッヘン

男「なんでえばるんだよ」

神娘「私が神だからだ」
623: ◆lwQY2qw84A 2013/10/13(日) 17:14:32 ID:.04iUGV2
男「しっかし…ぼろい家だな、家として認められるのかこれは」

神娘「一応は家だろう、住所のない家なんて家じゃない」

男「お、おう」

神娘「それにだ…こうしてみるとほら、なんとなーくまともに」

男「見えないな」

神娘「お前には心眼が足らん!」

男「んな理不尽な」
624: ◆lwQY2qw84A 2013/10/13(日) 17:21:22 ID:.04iUGV2
男「んで、だ」

神娘「おう」

男「実をいうとあまり持ち物を持っていなかったりする」

神娘「なんだ、ここは荷物置き場にもならんか」

男「(やっぱりぼろいって思ってるんじゃないか?)」

神娘「はて、しかし年頃の男がそんなものを持ってないとは」

男「だってほとんどあの神社に持っていっちまったんだもの」

神娘「えっちぃのとかは」

男「…そんなのわざわざ言うと思うか?」

神娘「つまらん奴め」
627: ◆lwQY2qw84A 2013/10/13(日) 21:27:48 ID:.04iUGV2
男「だから引っ越しってもあんまりやる事ないんじゃないかなとは思うよ」

神娘「…まあ、随分と雑多になったものだとは思っていたが」

男「持っている者なんて本ぐらいしかなかったもんなぁ」

神娘「ゲームと言うのがあるらしいが、それはないのか?」

男「なんか飽きたから売っちまった」

神娘「…遊んでみたかったのだが」

男「じゃあ適当な奴買ってくるよ」

神娘「操作が優しいのがいいのだが」

男「探しとく」
628: ◆lwQY2qw84A 2013/10/13(日) 21:32:56 ID:.04iUGV2
男「んー…じゃ、下見も終わったし帰るか」

神娘「おう、で引っ越しはいつになる」

男「二・三週間後かなぁ」

神娘「そうかそうか…ふふ」

男「うん?」

神娘「これからは一つ屋根の下だな神主」

男「(そう言えばそうなんだよなぁ)」

神娘「これからは沢山探索に出かけような」

男「いつもやってることじゃないか」

神娘「そうだったな」
629: ◆lwQY2qw84A 2013/10/13(日) 22:25:10 ID:.04iUGV2
神娘「…っと、もう言う事も無いな」

男「最近はぐでってばかりだしな」

神娘「随分となれたものだよ」

男「誰のせいだと思ってるんだ」

神娘「でも、それで見える景色もあるだろう」

男「…確かに、まあ」

神娘「神社に寄るか?」

男「いや、今日は帰るよ」

神娘「そうか」

男「ああ」
630: ◆lwQY2qw84A 2013/10/13(日) 22:49:20 ID:.04iUGV2
神娘「…なあ」

男「後悔ならしてないぞ」

神娘「すっかりばれてるな」

男「神様は心配性だな」

神娘「いや…」

男「ん?」

神娘「嫌な予感がするのだ、もうじき何かが起こる…そんな気配が」

男「気を付けておくよ」

神娘「お前に何かあったら…いや言うまい」

男「おう」
632: ◆lwQY2qw84A 2013/10/14(月) 17:50:07 ID:qcd8UKL6
―――――

男「じゃ、寝るよ」

男母「はーい」

男「あ、住むところは見つけて来たから」

男母「あらそう、準備はしてたのねー」

男「まあね」ガチャン

男「ふぅ…」ドサッ

――――これからは一つ屋根の下だな

男「…楽しみにしている自分が堪らなく卑しいぜ」
633: ◆lwQY2qw84A 2013/10/14(月) 17:53:25 ID:qcd8UKL6
――二週間後

男母「じゃ、ちゃんと栄養取りなさいよ?」

男「分かってるって」

男母「時々電話寄越しなさいね」

男「そこまでせんでもいいだろうに」

男母「心配だし…」

男「こちとらもう子供じゃないからね?」

男母「それもそうね、じゃ」

男「とおさんと仲良くやりなよー」

男母「何言ってるのよ、私はあの人の妻よ?」ブロロロロ

男「…いっちまったな」

神娘「いつも思うが如何にも人のよさそうな顔をしているの」

男「実際そうだよってかナチュラルに隣に居座るなよ」

神娘「良いではないか」
636: ◆lwQY2qw84A 2013/10/14(月) 18:24:14 ID:qcd8UKL6
神娘「今日は休日だったか」

男「あーね、もうじき試験だと言うのにのんびりもしてられんが」

神娘「見てやろうか?勉強」

男「あいにく一夜漬けなんて度胸は無い性格なので」

神娘「良き心がけ、だがまあ効率も大事だぞ?」

男「神様が言うセリフかよ」

神娘「私は仏でもないから俗にまみれても良いのだ」

男「そりゃ、結構な事で」
637: ◆lwQY2qw84A 2013/10/14(月) 23:46:58 ID:qcd8UKL6
神娘「神と言うのは俗っぽいもんだ」

男「ふぅん」

神娘「酒も煙草もやる、喧嘩もする」

男「人間と変わらんじゃないか」

神娘「つまりそこだよ、神は人と近いんだ」

男「近い…まあ確かに、時々人間と話しているみたいに思えるけど」

神娘「神は人より生まれ、人と共に生きている…つまりそう言う事だよ」

男「そっか」

神娘「そうだ、じゃあ行こう」

男「行こう、神様の森へ」

神娘「私達の森だろう?」

男「ん、ああ」
638: ◆lwQY2qw84A 2013/10/15(火) 01:48:24 ID:JATOYglo
リーン…リーン…

男「あ、今秋なのね」

神娘「ちょっくら見せたいものがあってだな」

男「うん?」

神娘「これだこれ、このために秋にした」

男「…なんだこれ」

神娘「囲炉裏を知らんか?」

男「いろり?」

神娘「知らんか…ともかく良いものだぞ、これは」

男「ほほぉ」
639: ◆lwQY2qw84A 2013/10/16(水) 18:40:18 ID:phMnUy7E
神娘「ここを囲んで鍋をつついたりするんだ」

男「ああ、郷土資料で見たことがあるかもしれん」

神娘「いいものだぞ、これは」

男「早速つけてみるか」

神娘「点火用具、点火用具は…」

男「コンビニで売ってたかな」

神娘「あった、マッチ」

男「…時代を感じる」
640: ◆lwQY2qw84A 2013/10/16(水) 18:43:32 ID:phMnUy7E
神娘「ふふん、こんな事もあろうかと用意しておいたのだ」

男「そりゃ大した心がけで、付くの?」

神娘「多分付くだろ…えいしょ」シュッ

男「……」

神娘「んしょ、えいしょっ」シュッ シュッ

男「……」

神娘「ええい、このっ、くそっ、この…」シュッシュッシュッ

男「…買ってこようか?」

神娘「黙っておれ!」スカスカスカスカッ
641: ◆lwQY2qw84A 2013/10/16(水) 18:47:13 ID:phMnUy7E
神娘「この馬鹿物がっ」

男「(今日から神様と一つ屋根の下かぁ)」

神娘「言う事を聞かんか!」

男「(学校行って、帰ったら散策でもして、本を読みあったりして)」

神娘「神の言う事が聞けんと申すかっ」

男「(…いつもと変わらなくね?)」

神娘「くそっ、このっ」

男「(…別に変に違うよりそっちの方が楽だな)」
642: ◆lwQY2qw84A 2013/10/16(水) 19:06:32 ID:phMnUy7E
神娘「……」シュッ

男「(それにしても)」

神娘「……」シュッシュッ

男「(変な所で諦め悪いよな神様も)」

神娘「……」シュッ

男「(引っ越すって言った時はあっさり引いた…いやあれは引いてなかった気がする)」

神娘「……」

男「買ってくるよ」ザッ

神娘「頼む」

男「(こっちから動いてやらなきゃ諦めないんだもんな)」
645: ◆lwQY2qw84A 2013/10/20(日) 01:33:56 ID:z/pufPvQ
――――

男「もうちょっと言ってくれてもいいんだぞ?」

神娘「そうはいってもだな」

男「神主なんだから、神様の言う事聞くのは当たり前だろう」

神娘「確かに!」ポン

男「…もしかして覚えて無かったりする」

神娘「そんなことは無い、ちょっと置いておいただけだ」

男「口が上手い事で」

神娘「褒めるな」
646: ◆lwQY2qw84A 2013/10/20(日) 01:42:55 ID:z/pufPvQ
パチパチパチ…

神娘「暖かいな」

男「火で暖を取るってことは無いから新鮮だ」

神娘「昔はよくこうしていたんだがなぁ」

男「悪くないな」

神娘「しかしあれだ…足りん」

男「なにがさ」

神娘「鍋」

男「鍋?」

神娘「鍋が足りん、鍋が」
647: ◆lwQY2qw84A 2013/10/20(日) 02:31:14 ID:z/pufPvQ
神娘「囲炉裏と言ったら鍋だ」

男「お、おう」

神娘「鍋が無い囲炉裏なんて囲炉裏ではない」

男「流石にそれは言い過ぎじゃないか」

神娘「言い過ぎではない、それほど鍋と囲炉裏は重要なものだ」

男「(そういうものなのか?)」

神娘「ああ、鍋が食いたい」

男「取ってくればいいじゃん」

神娘「獲ってくるか」

男「そうだな、一緒に行こう」

神娘「おうともさ」
648: ◆lwQY2qw84A 2013/10/20(日) 03:50:53 ID:z/pufPvQ
神娘「茸鍋がいいな、うん」イソイソ

男「そう言えば神様っていつも同じ服装だけどいいの?」

神娘「ここは俗世とは無縁の場所、さらに私は神だから穢れも出さないから汚れない」

男「…便所は?」

神娘「人用だ」

男「食ったもの何処に行くの?」

神娘「力となる」

男「うわ、なんかずるい」
650: ◆lwQY2qw84A 2013/10/20(日) 15:37:35 ID:z/pufPvQ
神娘「人の体を捨ててよかったことだな、うん」

男「割かし現金なんだね」

神娘「夢なんて昔に捨てた」

男「反応に困るんだが」

神娘「すまんな」

男「それにしても、服替えないの?」

神娘「一応神具と呼ばれる礼装だからな」

男「えっ、それそんなに大事な物なのかよ」

神娘「下位のではあるがな、これを着ていないと示しがつかんしな」
651: ◆lwQY2qw84A 2013/10/20(日) 15:39:19 ID:z/pufPvQ
男「すっかり下駄が染みついたなぁ、こっちも」パカッ

神娘「流石にそれで散策に出たら転ぶぞ」

男「その時は運動靴を履くさ、ここに置いてある」

神娘「手馴れたもんだな」

男「自分でも驚くほど適応してる、うん」
653: ◆lwQY2qw84A 2013/10/20(日) 17:15:50 ID:z/pufPvQ
神娘「うっ、寒い」

男「上着持ってきた」

神娘「助かる…」

男「神様って寒い暑いは感じるんだな」

神娘「悪いか」

男「いや、別に食べなくてもいい体だし」

神娘「寒暖を感じるのは季節を感じるのと同意、肌で感じるのもまた楽しからずや」

男「そんなもんか」

神娘「そんなもんだ」
654: ◆lwQY2qw84A 2013/10/20(日) 19:29:28 ID:z/pufPvQ
神娘「秋と言うのがこんなに寒いなんて忘れてた」ザカザカ

男「ふぅん」ザッザッ

神娘「冬の寒さはこれの日では無かった気がするな」

男「忘れたのか?」

神娘「…ずっと夏だったからな」

男「そうか」
655: ◆lwQY2qw84A 2013/10/20(日) 19:33:47 ID:z/pufPvQ
神娘「身を切るような寒い風、まるで時が止まった様な灰色の景色…そして雪」

男「…冬か」

神娘「厳しい冬を乗り越えてこそ、春が訪れる」

男「春?」

神娘「生命の春、冬の試練を乗り越した者のみが享受できる季節だよ」

男「知らないな」

神娘「いずれ訪れれば、二人で花見をしような」

男「楽しみだけど、そんな日が来るかな」

神娘「くるよ、きっと」

男「待っているよ、神様がそう言うなら」
657: ◆lwQY2qw84A 2013/10/20(日) 20:17:53 ID:z/pufPvQ
神娘「あっ、しめじだ」

男「舞茸はあるかな」

神娘「外では舞茸の養殖が盛んらしいな」

男「んー、まあ一番馴染みのあると言うか」

神娘「実はきくらげもキノコの一種…生えてはないが」

男「ないのか」

神娘「探せばあるかもしれん、諦めるな」

男「…これって松茸?」

神娘「そうだが」

男「天然ものは大変高級なんだがね」

神娘「結構そこら辺に生えてるが」

男「まあ、うん、予想通りと言うか」
658: ◆lwQY2qw84A 2013/10/20(日) 22:10:55 ID:z/pufPvQ
男「大分取れたな」

神娘「帰るか、あ」

男「ん?」

神娘「鍋はあったっけ」

男「土鍋があった気がする」

神娘「出汁とか、昆布があった気がするが」

男「簡易台所にあったなー」

神娘「そう言えば正式な台所は無かったか」

男「元々本殿の中だからなー、台所がある方がおかしい」

神娘「作るか…」

男「木材には困らなさそうだから作れる気がする」

神娘「神の力で身体強化ぐらいなら出来そうだぞ」

男「頼んだ」
659: ◆lwQY2qw84A 2013/10/21(月) 00:00:27 ID:WonozZfM
神娘「……」ザカザカ

男「……」ザッザッ

ヒュルゥッ

神娘「…寒い」

男「寒いな」

神娘「懐かしい寒さだ」

男「うん」

神娘「昔は、こんな寒い日には皆が集まって…暖を取って」

男「うん」

神娘「…涙もろくなったな、私も」

男「神様」

神娘「うん?」

男「ここに居るさ、神様は一人じゃない」

神娘「…そうだな、そうだよな」

男「ああ、そうだよ」
660: ◆lwQY2qw84A 2013/10/21(月) 19:36:46 ID:WonozZfM
――――

グツグツ

神娘「……」スジュル

男「……」ゴクリ

グツグツグツ

神娘「…もういいか?」

男「駄目だ、まだ煮えていない」

グツグツグツ

神娘「ちょっとだけ」

男「駄目だ」

グツグツグツグツ

神娘「……なあ」

男「駄目」

神娘「ぬぅーっ!」
661: ◆lwQY2qw84A 2013/10/21(月) 19:42:40 ID:WonozZfM
神娘「まさか貴様に”鍋奉行”の素質があったとは…」

男「鍋奉行?」

神娘「鍋の事になると途端に口やかましくなる輩の事だ!」

男「こうした方が美味いと思うんだが」

神娘「うぐぅっ」

男「神様堪え性ないと駄目だぞ?」

神娘「うぐっ…」

男「…ん、そろそろかな」

神娘「そうか!」パァッ

男「……」

神娘「…貴様、今私の事を馬鹿にしたな?」

男「いや、滅相も無い」
664: ◆lwQY2qw84A 2013/10/21(月) 21:37:25 ID:WonozZfM
神娘「ええいまったく!お前は最近不遜すぎるぞ!」パクパク

男「さーせんしたー」パクパク

神娘「第一な、お前は神主であって私は神だぞ」

男「さいで」

神娘「もっと敬いをもってだな」

男「あーん」

神娘「んむっ、ん…美味い!」

男「肉が無いと物足りないと思ったけどそんな事も無かったな」

神娘「だろう?」エッヘン
667: ◆lwQY2qw84A 2013/10/21(月) 23:18:10 ID:WonozZfM
男「こうして鍋をつつくのも中々良いな、うん」

神娘「そりゃ、昔はこうして親睦を深めたものだ」

男「あ、それ取るなよ」

神娘「早い者勝ちだ馬鹿者」

男「じゃあこっち貰った」

神娘「ちぃっ」

男「早い者勝ちだ」
669: ◆lwQY2qw84A 2013/10/22(火) 18:11:43 ID:GM7JJw1M
神娘「ふむふむ」モッチャモッチャ

男「美味いな」ムグムグ

神娘「やっぱりこうでないとな、茸しか入ってないが」

男「野菜は買ってくるべきだったな」

神娘「概ね同意する」

男「お、もう食べ終わるか」

神娘「うどんでも作ろう、うどん」

男「お、いいなそれ」
670: ◆lwQY2qw84A 2013/10/22(火) 18:37:00 ID:GM7JJw1M
―――――

男「食ったな」

神娘「いやぁ、食った食った」

男「それにしても神様はよく食うなぁ」

神娘「お前が食わなさすぎだ」

男「そんな事も無いと思うけど」

神娘「もっと食え 健康で居ろ」

男「お前は親か」

神娘「なってもいいぞ」

男「えっ」

神娘「と言うより人は皆神の子だぞ」

男「あ、そう…うん」

神娘「甘えてきていいのだぞ!」

男「(どう反応していいんだこれは)」
672: ◆lwQY2qw84A 2013/10/22(火) 18:59:34 ID:GM7JJw1M
神娘「神主、一緒に月を見よう」

男「月?」

神娘「ここから月が見れるんだ」

男「…あ、本当だ」

神娘「いつもは暗くなる前に帰るからな、お前」

男「帰されるんだがな」

神娘「言うな、時々ここの時間は私の予期しない速さで進む」

男「そうなのか」

神娘「安定している時は外と同じだけ進むようにしている、お前が取り残されることないように」

男「ありがとう?」

神娘「当然の事よ」
673: ◆lwQY2qw84A 2013/10/22(火) 19:03:08 ID:GM7JJw1M
神娘「こうして月を見ると、あれだな」

男「うん?」

神娘「……いやいい、今更終わった事だ」

男「…そうか」ウトウト

神娘「眠いか?」

男「少し…」

神娘「よし、じゃあここに横になれ」ポンポン

男「うん?」

神娘「膝枕してやる」

男「……(不意打ち過ぎるだろこれ)」

神娘「さあさあ遠慮するな、減らんから」

男「…じゃ、遠慮なく」ドサ

神娘「神に膝枕される人は珍しいぞ」カカ

男「…恥ずかしい」
674: ◆lwQY2qw84A 2013/10/22(火) 19:58:04 ID:GM7JJw1M
神娘「月が見えるな」

男「うん、綺麗だ」

神娘「真ん丸で美味しそうだな」

男「神様」

神娘「なんだ」

男「月が綺麗ですね」

神娘「そういうのは人に言え、神に言う言葉ではない」

男「なんだばれてたか」

神娘「さり気なく馬鹿にしているな?」

男「めっそうもない」
676: ◆lwQY2qw84A 2013/10/22(火) 21:05:54 ID:GM7JJw1M
神娘「人か」ナデナデ

男「撫でないでくれ」

神娘「減るもんじゃない」

男「まあそうだが」

神娘「お前はもうちょい私に頼れ」

男「えー」

神娘「助けられてばかりだ」

男「そんな大仰な事はしてない」

神娘「…いや、確かに助けられてばかりだ」
677: ◆lwQY2qw84A 2013/10/22(火) 21:30:07 ID:GM7JJw1M
神娘「お前に力をもらった」

神娘「お前が私の過去を断ち切った」

神娘「お前は外の知識を私に持ってきた」

神娘「この森に季節を齎した」

神娘「全てお前のおかげだ」

男「……どうも」
678: ◆lwQY2qw84A 2013/10/22(火) 21:46:49 ID:GM7JJw1M
神娘「……」ナデナデ

男「妙な気分だ」

神娘「ん?」

男「初めて会った時は、こんな事されるなんて思っても無かった」

神娘「そりゃ、私もだよ」

男「そっか」

神娘「なんか迷い込んできた人間、その程度だった」

男「自分のことながら酷い言い草だ」

神娘「ついでに利用できないかと考えたよ」

男「本当に酷いな」

神娘「だろう?」
679: ◆lwQY2qw84A 2013/10/22(火) 21:51:18 ID:GM7JJw1M
神娘「だが私はお前の誠意に触れた、お前は私に信仰を捧げた」

男「役目だからな、それが」

神娘「神主の役を継いだ、そしてこうして私の隣に居る」

男「それは…役目なのかな」

神娘「さあ、どうだろうな」

男「なんだそれ」

神娘「神主にもいろいろいると言う事だよ」

男「そっか」
680: ◆lwQY2qw84A 2013/10/22(火) 22:03:20 ID:GM7JJw1M
神娘「そろそろ寝るか」

男「それがいい…あ」

神娘「ん?」

男「布団ってある?」

神娘「…どうだったか」

男「と言うより神様って普段寝るの?」

神娘「寝ないな、うん」

男「えー…」

神娘「あ、でも一応の為に布団が」

男「一組しかないと言うベタな展開とか」

神娘「いや、結構ある」

男「あるんかい」

神娘「来客とかいるからな、龍とか」

男「成程」
681: ◆lwQY2qw84A 2013/10/22(火) 22:19:40 ID:GM7JJw1M
―――――

神娘「こうして隣で誰かが寝るなんて久しぶりだな!」ハッハッハァ

男「お、おう」

神娘「まあ布団は別だがな」

男「(一緒だったらどうしようかと思った)」

神娘「残念だったな!」

男「テンション高いな神様」

神娘「そうか?」

男「うん」

神娘「…そうか」
682: ◆lwQY2qw84A 2013/10/22(火) 22:29:48 ID:GM7JJw1M
神娘「なあ」

男「ん」

神娘「最近嫌な予感がするんだ」

男「嫌な予感?」

神娘「戦争の時に感じた気配、死の匂いがする」

男「なんだって!?」

神娘「近い将来何かが起こる、私には分かる」

男「…そうか」

神娘「怖いんだ」

男「そりゃ、死の匂いなんてしたら…」

神娘「違う?」

男「え?」
683: ◆lwQY2qw84A 2013/10/22(火) 22:42:14 ID:GM7JJw1M
神娘「私はお前と離れるのが怖い」

男「そりゃ…唐突な告白か?」

神娘「分からん、ただ私にとって今一番交友関係の不快のは間違えなくお前だ」

男「こっちもだよ、そりゃ」

神娘「失うのが怖い、怖いんだ」

男「(…確かに、神様が居なくなるのは怖いな)」

神娘「私の中ではまだ、時々戦火に焼かれる者の声が聞こえるんだ」

神娘「噎び泣きが、怒号が、断末魔が、狂気の笑いがまだ聞こえるんだ…」

男「神様、そっち行くよ」ズリズリ

神娘「へっ?」

男「そのまま寝てりゃ良いからさ」ドスッ

神娘「神の布団に入ってくるなんて不届き者め」

男「罰してくれても構わんよ」

神娘「お前は私の神主だからな、この程度は許そう」

男「ありがたい」
684: ◆lwQY2qw84A 2013/10/22(火) 23:07:26 ID:GM7JJw1M
男「ずっと居なくならないなんて、そんな事は言えない」

神娘「その程度、知っている」

男「知っていても、理解はできても、納得できない」

神娘「…っ」ギゥ

男「そんなこと知ってる、神様だけじゃないから」

神娘「私だけじゃない?」

男「神様と別れたくないよ、同じだ、同じなんだ」

神娘「…神主」

男「だから、約束しよう」

神娘「約束」

男「『いれる内は、一緒に居よう』って約束しよう」

神娘「いいのか?」

男「いいよ」

神娘「神との約束は高くつくぞ」

男「知ってる」
691: ◆lwQY2qw84A 2013/10/23(水) 23:32:57 ID:iFA1sV2A
神娘「…」

男「…心臓の音がする」

神娘「そう聞こえるだけだ」

男「動いてないのか?」

神娘「私が人間を止めた日に私は人間としては死んだから」

男「でも確かに、聞こえる」

神娘「また気づいていないのさ、私が死んだことに」

男「…そうか」

神娘「滑稽なもんだ、全部滑稽だ」
692: ◆lwQY2qw84A 2013/10/23(水) 23:45:54 ID:iFA1sV2A
神娘「私が護りたかったものは皆死んで、死んでも良かった私だけが生きている」

男「…そうか」

神娘「挙句私はお前に頼り切って生きている、自分では何もできない」

男「……」

神娘「何のための神だ、だれが為の神なんだ」

男「……」

神娘「私は、無力だ」

神娘「無力だ…」
693: ◆lwQY2qw84A 2013/10/24(木) 00:35:31 ID:sbbvZof2
男「だったら、守ってよ」

神娘「誰を」

男「神様の神主を」

神娘「…お前を?」

男「そうだよ」

神娘「でも、私はお前に護られてばかりで」

男「関係ないよ、神様に信仰を捧げる代わりに神様が護ってくれればいいんだよ」

神娘「…神主」

男「悪い予感がするなら護ってくれ、頼む」

神娘「……」

男「神様」
694: ◆lwQY2qw84A 2013/10/24(木) 00:44:44 ID:sbbvZof2
神娘「おい、人の子」

男「なんぞ」

神娘「私を誰だと思ってる、まさかただ人の形をした無能とは思っているまいな」

男「おう」

神娘「我は神、我は絶対の力」

神娘「信ずる者に加護を与え、戦の野に立つ者ぞ」

神娘「たかが人一人を護る事造作も無い、我を畏れよ、我を崇めよ」

神娘「…さすれば、私はお前を護ってやる」

男「そうか!」

神娘「ああ、護ってやるさ」

男「神様が居るなら安心だよ」

神娘「く、くく…まったくお前は時々妙な事を言う」

男「しゃーないだろ」
695: ◆lwQY2qw84A 2013/10/24(木) 00:45:48 ID:sbbvZof2
神娘「人の子」

男「あん?」

神娘「ありがとう」

男「…おう」

神娘「さて、寝るか」

男「1人で寝れるか?」

神娘「馬鹿にするな」

男「安心した」

神娘「…はぁ」
696: ◆lwQY2qw84A 2013/10/24(木) 01:04:42 ID:sbbvZof2
男「……」グゥ

神娘「…んー…」

男「……」

神娘「やっぱり、そうなのか?」

男「…むにゃ」

神娘「人は神に恋をできない」

男「………」

神娘「だが、その逆はそうとは限らんな」

男「……」ゴロン

神娘「…おやすみ、人の子」
697: ◆lwQY2qw84A 2013/10/24(木) 01:07:38 ID:sbbvZof2
――――――

男「んー…良く寝た」

神娘「おう、起きたか」

男「神様ってこんな早く起きるのか」

神娘「元々寝る必要も無いからな」

男「ふぅん、便利なもんだ」

神娘「不便な所もあるがな」

男「えっ」

神娘「まあお前は気付くまい、あくまで人だからな」

男「含みのある言い方だなおい」ノビー
698: ◆lwQY2qw84A 2013/10/24(木) 01:10:12 ID:sbbvZof2
神娘「神主、こっちを向け」

男「良いけど…なんでさ」

神娘「……ふーむ」ジーッ

男「なんなのさ」

神娘「うーん、もうちょっと眉が太くてきりっとしたのが好みだった気がするが…」

男「神様って起きて一番に人の顔の品評するのが趣味だったりするの?」

神娘「ふーむ」ジー

男「ちょっと、神様近い」

神娘「…趣味が変わったか?」

男「何の話!?」
699: ◆lwQY2qw84A 2013/10/24(木) 01:16:13 ID:sbbvZof2
神娘「まあいい、ほらこれ」ズイ

男「なにこれ」

神娘「弁当」

男「買ってきたの?」

神娘「馬鹿言うな、作った」

男「えっ」

神娘「もしやお前、私が料理できないと思ったか?」

男「いや、何度か食べてるから美味いなとは思ってたけど」

神娘「なんだ、何が不満だ」

男「いや、でもこれ神様が造ったんだろ?」

神娘「そうだが」

男「…ありがたくいただきます」

神娘「栄養満点だ」

次スレ:

神娘「我を呼んだか!」男「呼んでません」【後編】


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