- 1: 2019/04/03(水) 23:05:41.130 ID:i8vSEx5M0
- 医者「あの患者の遺族が雇ったのか……? あれは事故だったんだっ!」
暗殺者「……」
医者「わ、分かった、全て話す! わざと誤った薬品を注入して殺したんだっ!」
暗殺者「……」
医者「全て公表するっ! だから撃たないで――」
暗殺者「……」パシュッ!
医者「がふっ……」ドサッ
- 6: 2019/04/03(水) 23:08:48.397 ID:i8vSEx5M0
- 女「どうだった、あたしの作った銃は?」
暗殺者「……」
女「狙いバッチリだったでしょ? やっぱりあたしって武器作りの天才よねー」
暗殺者「……」
女「銃器だって刃物だって……ねえ聞いてる?」
暗殺者「……」
女「銃にサイレンサー付けてるからって無口にならないでよ!」 - 8: 2019/04/03(水) 23:12:43.046 ID:i8vSEx5M0
- 暗殺者「ここまでだなぁ、悪徳政治家さんよォ!」
政治家「ゆ、許して……」
暗殺者「おっと許すわけにはいかないぜ。あんたにゃ大勢の人間が泣かされてるんだ。
これまで散々甘い汁を吸ってきたんだ。最後にゃあんたが赤い血を流すってのが道理ってもんだろ。
これからあんたにゃハチの巣になってもらう。いっとくが穴だらけにするって意味の比喩だからな。
そういや、ハチの巣といや、ハニカム構造になってるってのを知ってるか。
ハニカムってのは六角形が並んだ構造のことをいい、とても頑丈なんだ。
誰に教えられたわけでもないのに、ハチはハニカム構造で巣を作るんだぜ、すげえだろ。
そういや、日本語で恥ずかしがるって意味の“はにかむ”って言葉があるが、
ハニカム構造とはにかむってなにか関連があると思うか? 俺はあると思う。
おっと、ハニカムで一つジョークを思いついたから冥土の土産に聞いてくれ。
ハニカム構造の柄のシャツを着ていったら笑われてはにかむ。な、面白いだろ? 笑っちゃうだろ?
地獄で閻魔様に聞かせてあげてくれや」
ガガガガガガガガガガッ… - 9: 2019/04/03(水) 23:15:30.560 ID:i8vSEx5M0
- 女「今日のお仕事はどうだった?」
暗殺者「おう、バッチリさ。標的の政治家、体じゅうに穴があいて血を噴き出してやがった。
穴といえば穴があくほど見つめるなんて言葉があるがよ、ホントにそんなことできるのかな。
もし、そんなことができれば、この稼業も楽になるんだがよ。
だって、見るだけで標的を殺せるんだぜ? こんなに楽な殺し方があるかよ。
あ、だけど逆にいうと見られるだけで死ぬ可能性もあるわけで、人の視線が怖くなっちゃうかも。
あと、恥ずかしいって意味で穴があれば入りたいなんて言葉もあるけど、
穴に入るって行為自体恥ずかしいよな。だって考えてもみろよ。
都会のど真ん中で穴に入ってる奴いたら、絶対イカれてると思うだろ? 笑っちゃうだろ?
でも、マンホールの中で作業してる人は別に恥ずかしくないよな。むしろ立派だ。
ああいう人達のおかげで下水道とかが正常に機能してるんだから。
給料どれぐらいなんだろうな。俺が偉い人だったら給料たっぷりあげたいわ」
女「……今日は早口でよく喋るね」
女(そういや、マシンガンで仕事したんだっけ) - 10: 2019/04/03(水) 23:16:21.191 ID:nQiuVfkBr
- なんだこいつは
- 11: 2019/04/03(水) 23:18:31.462 ID:i8vSEx5M0
- 暗殺者「追い詰めたぜェェェェェ!!!」ジャキッ
放火魔「ひ、ひええっ……! なぜ俺を狙う……!?」
暗殺者「お前に全てを燃やされた人からの依頼、とだけいっておこうかァ!」
暗殺者「その人達の恨みを込めて、今ッ! 俺の炎がッ! 燃えたぎるゥゥゥゥゥゥ!!!」
暗殺者「ファイヤァァァァァッ!!!!!」
ゴォワァァァァァァァァァァッ!!!
放火魔「ぎぃやぁぁぁぁぁ……!」 - 12: 2019/04/03(水) 23:21:36.086 ID:i8vSEx5M0
- 暗殺者「うおおおおおおおおおおおおっ!!!」
女「うわっ!?」
暗殺者「お前の作った火炎放射器、すンげえバーニングだったぜぇぇぇぇぇ!!!」
女「あ、そう? はじめて作ったけど、役に立ってよかったわ」
暗殺者「おかげであの放火野郎は、俺の紅蓮の炎に焼かれて昇天ンンンンン!!!!!」
暗殺者「俺の心もォォォォォォ!!! ヴォルケェェェェェェェノォォォォォ!!!!!」
女「うっさい!」 - 13: 2019/04/03(水) 23:24:51.354 ID:i8vSEx5M0
- 暗殺者「ウフ~ン」スゥ…
悪女「だ、誰!?」
暗殺者「あんた、なかなかの悪女みたいねぇん」
暗殺者「女を知らない純朴そうな青年を捕まえては、たっぷり貢がせた後捨ててるとか……」
暗殺者「そういう悪い子はぁ~、あたしが首をかっ切って、あ、げ、る」
ザクッ!
悪女「ぎゃあああっ!」ブシュゥゥゥゥゥ…
ドサッ… - 14: 2019/04/03(水) 23:27:47.759 ID:i8vSEx5M0
- アサシン「爪の手入れ、ありがと。おー、ピカピカになってる!」
女「お安い御用よ」
暗殺者「ハァ~イ」
アサシン「!」ギョッ
暗殺者「あら、あんたも武器のお手入れ? あら鉄爪? いっそネイルアートしちゃえばいいのにぃ」
アサシン「ど、どうしたんだ、お前……?」
女「鎌を使って仕事したらしいの」
アサシン「ホント、お前は自分の使う武器に影響を受けやすいな」
暗殺者「ひっどーい! 感受性が豊かっていって!」クネクネ - 16: 2019/04/03(水) 23:31:22.018 ID:i8vSEx5M0
- 格闘家「こ、殺されてたまるか!」
暗殺者「格闘家だけあってなかなかやるな。だが、ここまでだ」
格闘家「このぉっ!」ブンッ
暗殺者「なかなかのスピードだ。だが、遅い」シュッ
グサッ!
格闘家「ぐぎゃっ……!」ドサッ…
暗殺者「死んだか。だが、お前を殺した俺もきっとろくな死に方はすまい」 - 17: 2019/04/03(水) 23:34:30.511 ID:i8vSEx5M0
- 女「今日も鮮やかな仕事っぷりだったそうで」
暗殺者「だが、死体の後片付けに手こずってしまった」
女「あんたって後始末まで自分でやるんだ? 大変だねー。てっきり専門の業者を呼ぶのかと」
暗殺者「だが、後始末まで自分で出来てこそ、真のプロだ」
女「えーと、今日使った武器はたしか……」
暗殺者「ダガーだ」
暗殺者「だが、この喋り方とは一切関係ない」
女(絶対あるでしょ……) - 18: 2019/04/03(水) 23:38:27.113 ID:i8vSEx5M0
- 社長「ううう……ワシを始末するために雇われたのは貴様か!?」
暗殺者「そう、ワイや!」
暗殺者「ワイの暗殺テクニックで、あんさんを地獄に送ったるでぇ!」ヒュルルッ
ギュッ…
社長「ぐええっ……! 首が……!」
暗殺者「よう覚えておきや。あんさんを始末したのはワイや!」
社長「……」ガクッ - 19: 2019/04/03(水) 23:41:23.326 ID:i8vSEx5M0
- 暗殺者「いやー、今日も見事な仕事したでぇ!」
女「さっき川に化学薬品垂れ流してた会社の社長が死んだってニュースやってたけど、もしかしてあんた?」
暗殺者「そう、ワイや!」
女「今日の武器もあたしが用意したけど、ワイヤーだったわよね」
暗殺者「そう、ワイヤーや!」
女「だんだんクイズみたいになってきたわね……」 - 21: 2019/04/03(水) 23:44:16.801 ID:i8vSEx5M0
- 暗殺者「こちら、ロケ弁でーす!」
俳優「お、サンキュー!」
俳優「いただきまーす!」モグモグ
俳優「……う!?」
俳優「ぐええっ……! く、苦しい……!」
俳優「あぐぅ……」ガクッ
暗殺者「スキャンダルまみれのゴミクズ三流俳優に相応しい、無様で哀れな死に様だな」 - 22: 2019/04/03(水) 23:48:30.848 ID:i8vSEx5M0
- 女「今日の仕事はどうだった?」
暗殺者「どうだった? あんなゴミを始末したところで、なんの感想も抱きはしない」
暗殺者「だいたい、お前はあくまで武器屋なんだ。あまり俺のすることに立ち入ろうとするな。悪い癖だぞ」
女「ご、ごめん」
アサシン「まあまあ、そういうなって」
暗殺者「アサシンもいたか。近頃お前、たるんでるんじゃないか。おまえはすぐ調子に乗るからな」
暗殺者「まったく世の中どいつもこいつも俺の足元にも及ばん奴ばかりだ」
アサシン「……なんだか、今日はやけに毒舌だな」
女「毒で仕事したからね」 - 23: 2019/04/03(水) 23:51:30.929 ID:i8vSEx5M0
- 暗殺者(標的を見つけた……)
暗殺者(そらっ!)ポイッ
ドゴォォォォォンッ!!!
「なんだなんだ!?」 「組長が殺られた!」 「ちくしょう、誰だっ!?」 - 24: 2019/04/03(水) 23:54:05.946 ID:i8vSEx5M0
- 暗殺者「今日は爆弾発言をしたいと思う!」
女「え……」
暗殺者「実は俺は――」
女「……」ドキドキ…
暗殺者「小6までオネショしてた!」
女「あらら……」ガクッ - 25: 2019/04/03(水) 23:56:21.095 ID:i8vSEx5M0
- 女(――もう、さっきはドキドキしちゃった!)
女(爆弾発言なんていうから、てっきり私に対する気持ちをいってくれるもんかと……)
女(いい加減、あたしの気持ちに気づいてくれてもいいと思うんだけどなぁ……)
女(あたしのこと、なんとも思ってないのかな……) - 26: 2019/04/03(水) 23:59:19.686 ID:i8vSEx5M0
- 女「明日は……あたしたちが出会った日だね」
暗殺者「お前とも長い付き合いになるな」
女「もしよかったら、明日……二人でデートでもしない?」
暗殺者「悪いが、仕事がある」
女「あ、だったら武器を用意しよっか?」
暗殺者「いらん。素手で十分な仕事だ」
女「あ、そう……」 - 27: 2019/04/04(木) 00:04:16.122 ID:G08Bxdwg0
- アサシン「あれ、どうしたの元気ないね」
女「今日はあたしとあいつが出会った記念日みたいなもんなんだけど」
女「デートに誘ったけど、あいつ仕事があるらしくて」
女「しかも、武器はいらないっていわれちゃって……嫌われちゃったのかな」
アサシン「武器はいらない? そんなバカな!」
女「え?」
アサシン「だって、今日あいつが命じられた仕事は……」 - 28: 2019/04/04(木) 00:07:42.289 ID:G08Bxdwg0
- アサシン「ある犯罪組織の“壊滅”だぜ!?」
女「え!?」
アサシン「いつもみたいに一人二人を殺せばいい仕事じゃない。下手すりゃ100人はいるかも……」
女「ええっ!?」
アサシン「てっきりここで重火器をたっぷり装備していくと思ってたんだが……」
女(なにやってんのあいつ!? まさか、死ぬつもり!?) - 30: 2019/04/04(木) 00:12:06.015 ID:G08Bxdwg0
- パァンッ! パァンッ! ズキューンッ!
タタタタタッ…
暗殺者「ハァ、ハァ、ハァ……ッ」
「逃がすなーっ!」 「追えーっ!」 「相手は丸腰だぞっ!」
暗殺者「……」スッ…
暗殺者(ここで待ち伏せて……やってきたところを素手で仕留める!) - 31: 2019/04/04(木) 00:15:18.110 ID:G08Bxdwg0
- 構成員「どこ行った?」キョロキョロ
暗殺者「ここだ」ガシッ
構成員「うっ!?」
ボキィッ!
暗殺者(だいぶ負傷したが……今日の仕事だけは……ッ! 今日だけは……ッ!)
ガシッ ボキィッ! ベキィッ! バキィッ! - 32: 2019/04/04(木) 00:18:27.421 ID:G08Bxdwg0
- 暗殺者「お前が……最後の一人だな」ハァ…ハァ…
ボス「ひ、ひいいい……!」
ボス「バカな……私の部下をたった一人で、しかも素手で……!」
暗殺者「さすがに、無茶だったけどな……」
暗殺者「ぐっ……!」ガクッ
ボス(膝をついた!)
ボス「もらったァ!」スチャッ
暗殺者「……!」
パァンッ… - 34: 2019/04/04(木) 00:22:33.996 ID:G08Bxdwg0
- ……
……
……
女(いつもならこの時間には仕事を終えて、ここにやってくるのに……)
女(来ない……!)
女(お願い、いつものようにあたしに顔を見せて……!)
ザッ
女「――!」ハッ - 35: 2019/04/04(木) 00:25:40.980 ID:G08Bxdwg0
- 暗殺者「よう」ボロッ…
女「!」
暗殺者「いやー、キツかった。お前の武器のありがたみがよく分かったよ」
暗殺者「特に最後のボスの一弾は……奴の射撃の腕がよかったらアウトだった」
女「バカァ!」
女「そんなボロボロになって! なんで武器なしで犯罪組織に立ち向かってんのよ!」
女「あんたは暗殺者なのよ!? 特撮ヒーローじゃないのよ!?」
女「仕事のためなら、銃だろうが毒だろうが爆弾だろうが使いなさいよ!」
女「そのために、あたしがいるんだから……!」 - 37: 2019/04/04(木) 00:28:07.820 ID:G08Bxdwg0
- 暗殺者「だって……今日は俺らが出会った記念日だろ?」
暗殺者「今からいう言葉だけは、武器の影響を受けるわけにはいかなかった……」
暗殺者「素の自分で伝えたかった……」
女「へ……?」
暗殺者「結婚しよう」
女「!」 - 38: 2019/04/04(木) 00:32:05.466 ID:G08Bxdwg0
- 暗殺者「俺の仕事は血塗られた仕事だ……。人の命を奪って金を得てる」
暗殺者「絶対ろくな死に方しないし、死んだら地獄行きは間違いない。お前を幸せにできる自信もない」
暗殺者「それでもよければ……俺についてきてくれ」
女「……うん!」
女「あたしだって、似たようなものだもの! 人を殺すための武器を作ってるんだから……」
暗殺者「だったらこれからは……武器だけでなく、俺のために味噌汁を作ってくれ」
女「料理はあまり得意じゃないけど……それでよければ」
暗殺者「かまわないさ」 - 40: 2019/04/04(木) 00:35:26.278 ID:G08Bxdwg0
- ……
…………
アサシン「今日は結婚後、はじめての仕事か?」
暗殺者「ああ、もちろんあいつの作った武器でな」
アサシン「結婚していきなり、彼女を未亡人にするなよー!」
暗殺者「分かってるさといいたいが、死と隣り合わせなのが俺らの稼業だからな」 - 41: 2019/04/04(木) 00:38:25.291 ID:G08Bxdwg0
- ブロロロロロ…
カチッ
運転手「――ん? なにか踏んだ……」
ズガァァァァァン!!!
パラパラパラ…
暗殺者「標的は……車もろとも爆死したな」
暗殺者「よし、帰るか」 - 43: 2019/04/04(木) 00:41:18.905 ID:G08Bxdwg0
- 暗殺者「ただいま」
女「お帰り、約束通り味噌汁作っておいたよ!」
暗殺者「お、ありがとう! これが楽しみだったんだ!」
女「ったく、暗殺者のくせにウキウキしちゃって」
暗殺者「ウキウキもするさ。なんたって新妻の手料理なんだから」
暗殺者「いただきま――」ジュル…
暗殺者「う゛」 - 44: 2019/04/04(木) 00:43:33.937 ID:G08Bxdwg0
- 暗殺者(なんだこれ……!? メチャクチャまずいんですけど……!)
女「あ、やっぱり不味かった? 味見はしたんだけど……あたしの味覚って独特みたいで」
女「残してもいいからね?」
暗殺者「い、いや……全部飲むよ」グビッ
暗殺者(どうやら俺は、とんだ地雷を踏んでしまったようだ……)
―おわり―
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