- 1: 2019/04/22(月) 21:42:08.252 ID:AavLdVJt0
- 男「赤ちゃんはどうやってできるか知ってるかな?」
少女「んーとねー」
少女「キャベツ畑で産まれたり、コウノトリさんが運んできてくれたりするんだよ!」
男「ハッハッハ、そうかい!」
男「……だったらこれからおじさんがいいところに連れてってあげよう」
少女「わーい、やったー!」
男「クックック……」
- 4: 2019/04/22(月) 21:45:20.243 ID:AavLdVJt0
- ブロロロロロ…
少女「どこ行くの?」
男「キャベツ畑さ」
少女「キャベツ畑ー?」
男「知り合いにキャベツ農家をやってる人がいてね……そこに連れてってあげるよ」
少女「わーい、やったー!」
男「クックック……」 - 7: 2019/04/22(月) 21:48:25.775 ID:AavLdVJt0
- 男「この人がキャベツ農家をやってる方だよ」
少女「はじめましてー!」
男「今日はよろしくお願いします」
主人「よろしく」
主人「ところで、お嬢ちゃんはキャベツは元々どこにあった野菜か分かるかな?」
少女「どこだろー、アメリカとか?」
主人「キャベツの先祖といわれる野菜は、地中海沿岸から中近東に生えていたといわれてるんだ」
少女「へぇー!」 - 10: 2019/04/22(月) 21:50:49.313 ID:AavLdVJt0
- 主人「古代ギリシャやローマでは、キャベツは健康食として好んで食されてたんだよ」
主人「当時からすでに胃腸にいい食べ物だといわれてたとされている」
少女「そうなんだ!」
男「そういえばキャベジンコーワなんて胃薬もありますね」
主人「あれもキャベツに含まれる胃腸に効くビタミンUが、由来だからね」
男「キャベツって体にいいんですねえ!」
主人「キャベツとよく似たケールという野菜は、今でも青汁の材料になったりしてるんだよ」 - 13: 2019/04/22(月) 21:52:56.382 ID:AavLdVJt0
- 男「ところで、なぜキャベツ畑で赤ちゃんが産まれるという伝承が生まれたんでしょう?」
主人「中世のスコットランドではキャベツは恋占いに使われていたんだ」
男「恋占い?」
主人「若者が目隠ししてキャベツ畑に行き、引き抜いた根っこに土がついているかとか」
主人「かじった葉っぱの味だとかで、恋占いをしていたそうだよ」
少女「わぁー、ロマンチック!」
男「そうしたところから由来して、キャベツ畑で子供を授かる的なイメージがついたんですね」 - 18: 2019/04/22(月) 21:55:15.726 ID:AavLdVJt0
- 主人「ではそろそろキャベツ畑に行こう」
男「はい」
少女「はーい!」
スタスタ…
主人「ここで質問だ。キャベツは春夏秋冬、どの季節に獲れるでしょう?」
少女「んー、春キャベツだなんて聞くし、春!」
主人「正解は全部の季節だ。土地を選ばない野菜だから、一年中色んなところで収穫されている」
少女「うう、ずるーい!」
男「キャベツは好物なんで、一年中食べられるのはありがたいですね」 - 20: 2019/04/22(月) 21:58:21.115 ID:AavLdVJt0
- 主人「キャベツ畑だ」
男「おおっ!」
少女「わーっ、キャベツがいっぱい!」
少女「まん丸だぁ~」
主人「さて、キャベツはどうやって丸くなると思う?」
少女「え……うーん……」
少女「最初から丸いのがポンッと土から出てくるんじゃないの?」
主人「実は最初は、他の植物のように普通の芽が出てくるんだ」
主人「育っていくにつれ、大きくなった葉が丸まっていき、こういう丸いキャベツになるんだ」
主人「これを“結球”という」
少女「最初から丸いわけじゃないんだー」
男「“結球”だなんて、なんだかかっこいいな」 - 22: 2019/04/22(月) 22:01:07.593 ID:AavLdVJt0
- 男「どうして丸くなるんですか?」
主人「元々キャベツは丸くなる野菜ではなかった」
主人「しかし、品種改良の結果、丸まるようになっていった」
男「丸まるようにして、なにかメリットがあるんですか?」
主人「まず、球になっていた方が葉が柔らかくなる」
主人「また球になってた方が運びやすいし、虫にも食われにくくなるからね」
男「へぇー」
少女「でも人間の都合でムリヤリ丸まるようにしただなんて、ちょっと可哀想……」
主人「仕方ないこととはいえね。そういう気持ちはずっと大事に持っててもらえると嬉しいよ」
少女「うん!」 - 25: 2019/04/22(月) 22:04:24.484 ID:AavLdVJt0
- 少女「キャベツが外国から入ってきたのはいつなのー?」
主人「日本に入ってきたのは幕末ぐらいで、当初は観賞用の野菜として扱われてた」
主人「しかし、明治時代に入ってから本格的に食べられるようになったんだ」
主人「今やおなじみのキャベツの千切りとトンカツの組み合わせも、この頃発明されたものなんだ」
男「脂っこいトンカツと胃にいいキャベツの組み合わせは最強ですもんね」
男「世界三大飯コンビの一角とされてますから」
少女「残り二つはー?」
男「なんだろ……考えてなかった」 - 27: 2019/04/22(月) 22:07:19.520 ID:AavLdVJt0
- 主人「話はこれくらいにして、さっそくキャベツを食べてもらおうか」
主人「今日はキャベツの千切りとロールキャベツを用意したよ」
男「おおっ!」
少女「おいしそー!」
男「いただきます!」ムシャムシャ
少女「いただきまーす」ハムッ
男「おおっ、この千切りシャキシャキだ!」
少女「ロールキャベツもおいし~!」 - 28: 2019/04/22(月) 22:10:01.524 ID:AavLdVJt0
- 男「ごちそうさまでした」
少女「おいしかったー!」
男「今日はキャベツについて勉強させてもらいました」
男「これからはキャベツを食べる時、今日学んだことを意識したいと思います」
少女「おもいまーす!」
主人「ハハハ、こちらこそ楽しかったよ」
男「それでは失礼します」
少女「さよならー!」 - 30: 2019/04/22(月) 22:14:15.136 ID:AavLdVJt0
- ブロロロロロ…
男「おいしかったな」
少女「うん!」
男「さて……次の場所に向かおうか」
少女「どこ行くのー?」
男「次はコウノトリに詳しい学者さんのところに連れてってあげるよ」
少女「たのしみー!」
男「クックック……」 - 31: 2019/04/22(月) 22:17:05.610 ID:AavLdVJt0
- 男「こんにちは」
少女「こんにちはー!」
学者「お待ちしてました」
男「今日はコウノトリについて色々とお話を聞かせて下さい」
学者「分かりました」 - 34: 2019/04/22(月) 22:19:57.690 ID:AavLdVJt0
- 学者「コウノトリというと、どういうイメージをお持ちですか?」
男「恥ずかしながら、赤ちゃんを運ぶ鳥という伝説のあるイメージしかなくって……」
男「あとは山とかにいるってイメージですかね」
学者「実はコウノトリは絶滅寸前の鳥なんです」
学者「日本では特別天然記念物に指定されています」
男「えっ、そうなんですか!」
少女「特別天然記念物って?」
男「んー、すっごい貴重ってことだよ」
少女「へぇー」
学者「天然記念物のうち、さらに価値が高いとされた自然物のことです」 - 36: 2019/04/22(月) 22:21:35.464 ID:AavLdVJt0
- 学者「コウノトリは河川や沼地で暮らす肉食性の鳥です」
学者「世界的にいうと主に東アジアに分布し、かつては日本にも野生のコウノトリが多くいました」
学者「江戸時代の資料からも、日本各地にコウノトリがいたことが分かります」
学者「しかし、明治時代になると禁猟もゆるみ、コウノトリも乱獲されるようになりました」
学者「やがてコウノトリは兵庫県の但馬地域でしか見られなくなっていきました」
男「さっきのキャベツもそうだけど、明治ってのは大きな転換期なんだなぁ」
少女「うん」 - 37: 2019/04/22(月) 22:23:25.127 ID:AavLdVJt0
- 学者「戦争が終わると、復興のためもあり、農業に大きな変化が起こります」
学者「田んぼに耕運機を入れたり、水路をコンクリートで固めたり」
学者「コウノトリを取り巻く環境が大きく変化していったのです」
男「なるほど……」
学者「さらに田んぼには毒性の強い農薬が使われ、これがさらに追い打ちをかけ……」
学者「1971年、野生のコウノトリは日本から絶滅してしまったのです」
少女「かわいそー……」
男「人には人の都合があるとはいえ、酷な話ですね」 - 39: 2019/04/22(月) 22:25:13.995 ID:AavLdVJt0
- 学者「しかし、その後、野生のコウノトリを取り戻そうという運動が始まりました」
学者「兵庫県豊岡市や各地の動物園で、コウノトリの人工飼育が行われたのです」
学者「ですが、コウノトリは非常に飼育が難しい鳥です」
学者「気性が荒く、オスとメスをつがいにさせても殺し合いをしてしまうことがあります」
学者「試みはなかなかうまくいきませんでした」
男「優美な鳥というイメージがあるけど、実像は結構違うんですね」
少女「実像は違うといったら、ネズミさんは本当はチーズを食べないっていうしね」
男「え、ホント!? ショックなんだけど……」 - 41: 2019/04/22(月) 22:27:28.295 ID:AavLdVJt0
- 学者「コウノトリの復活に不可欠なのは、地域の人達の協力です」
学者「農家の人達がキレイな環境を整え、コウノトリが住みやすい環境を作らなければなりません」
学者「かといって、農家の人達にも生活があります」
学者「コウノトリを守るために生活が苦しくなってはたまりません」
男「まあ、そりゃそうですね」
男「俺だって動物を守るために仕事の仕方を変えろって言われたら抵抗がありますもん」 - 44: 2019/04/22(月) 22:29:49.680 ID:AavLdVJt0
- 学者「ですから、豊岡市の人達は発想の転換をしました」
学者「コウノトリのために尽くすのではなく、人とコウノトリが共生できる仕組みを作ろう、と」
学者「たとえばコウノトリが繁殖して地元の名物になれば、それは街づくりにもつながりますからね」
学者「こうして農家の人々も農薬の散布を抑えるなど協力して、コウノトリの飼育は進んでいきました」
男「今でいうウィンウィンというやつですね」
少女「よかったー!」 - 45: 2019/04/22(月) 22:31:27.072 ID:AavLdVJt0
- 学者「やがて、2007年に実に43年ぶりになる野生の巣立ちが成功し」
学者「今もなお、コウノトリの野生復帰の試みは続けられています」
学者「いずれ、野生のコウノトリを普通に見られる時代が来るかもしれませんね」
男「今だったらスマホで写真を撮る子も多そうですね」
少女「インスタ映えってやつ?」
男「お、よく知ってるな」
少女「えへへー!」 - 49: 2019/04/22(月) 22:33:29.538 ID:AavLdVJt0
- 学者「では本日はこれで」
男「どうもありがとうございました」
少女「ありがとうございました!」
男「ん?」
バサバサ…
男「あれは……もしかしてコウノトリ!?」
少女「ホントだー! キレーイ!」
学者「もしかすると、あなたたちにちょっと挨拶しに来たのかもしれませんね」
少女「コウノトリさん、ありがとー!」 - 51: 2019/04/22(月) 22:36:08.405 ID:AavLdVJt0
- 男「さ、帰ろうか」
少女「うんっ!」
ブロロロロロ…
男「今日はどうだった?」
少女「キャベツとコウノトリのことがとてもよく分かって、楽しかったー!」
男「ならおじさんも嬉しいよ」 - 54: 2019/04/22(月) 22:39:10.539 ID:AavLdVJt0
- 男「君んちはここらへんだったっけ?」
少女「うん!」
母「ちょっとあなた!」
男「はい?」
少女「ママ!」
母「人の子を勝手に連れ回して……いったいなに考えてるの!」
母「事情によっては、警察に通報しますからね!」
男「……」 - 57: 2019/04/22(月) 22:42:48.838 ID:AavLdVJt0
- 男「なにをいうか!」
母「えっ!」ビクッ
男「この子は未だに赤ちゃんはキャベツ畑で産まれたりコウノトリが運ぶだなんて信じていた」
男「だから俺がこの子に教えてやったんだ!」
男「キャベツ畑やコウノトリのことをな!」
母「くっ!」
少女「正確には農家の人や学者さんがだけどね」
男「くっ!」 - 59: 2019/04/22(月) 22:45:45.583 ID:AavLdVJt0
- 少女「ママ、このおじさんは悪くないよ。ゆるしてあげて」
母「分かったわ……」
母「今日のところは不問に付しましょう」
母「ですが、次からはちゃんと私にも連絡するようにして下さい」
男「分かりました」
男「じゃ……さようなら」
少女「じゃーねー、おじさん!」
ブロロロロ… - 60: 2019/04/22(月) 22:48:28.630 ID:AavLdVJt0
- 男「ただいまー」
妻「お帰りなさい。どこ行ってたの?」
男「キャベツ畑やコウノトリを信じている女の子に無修正のキャベツ畑とコウノトリを突きつけて下卑た快感を味わってきた」
妻「あら、そうだったの」
妻「他人の子を叱るだけで問題になるご時世だし、通報されないように気をつけてよ」
男「分かってるよ」 - 62: 2019/04/22(月) 22:51:28.147 ID:AavLdVJt0
- 男(そういや、うちの娘もあの子と同じぐらいの年だよな……)
男「クイズを出そう」
娘「なに、パパ」
男「赤ちゃんはどうやってできるか知ってるか?」
娘「知ってるよ。男と女がヤッたらできるんでしょ」
男「……」
男(あまりに早熟なのも問題あるのかもな……)
―おわり― - 67: 2019/04/22(月) 22:57:25.208 ID:MGL8L/ZTa
- 乙
途中でなんか美味しんぼ読んでる感覚になった
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サイトのデザインを大幅に変更しました。まだまだ、改良していこうと思います。
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