- 1: 2019/11/06(水) 22:57:06.116 ID:Aguy5MDt0
- 花売り娘「はい、花束」
会社員「ありがとうございます」
花売り娘「誰かに渡すわけ?」
会社員「ええ、上司が本社に栄転するもので」
花売り娘「フフッ……ホントに花だけでいいの?」
会社員「え……?」
花売り娘「ホントはもっと違う花……欲しいんじゃない?」
会社員「いや、あの……あっ、そろそろ会社戻らないと! 仕事あるんで!」タタタッ
花売り娘「……ちっ」
- 4: 2019/11/06(水) 23:01:14.120 ID:Aguy5MDt0
- 役人「見てたぞ。ああいう純朴そうなのをからかうなよ」
花売り娘「“からかい上手の花売り娘”って呼んでくれる?」
役人「呼ばねえよ」
役人「……それに、そろそろ“娘”と呼ぶには怪しい年齢――」
花売り娘「…………」チクッ
役人「いってえ! バラのトゲで刺すな!」
花売り娘「で、何しにきたの」
役人「黒バラを一輪、もらいたい」
花売り娘「黒バラが欲しい……すなわち“闇の仕事”の依頼というわけね」
役人「口に出すなって。符牒にしてる意味ないじゃん」
花売り娘「どうせ誰も聞いてないって」 - 5: 2019/11/06(水) 23:04:21.742 ID:Aguy5MDt0
- 役人「この間のテロ組織『ルート(根っこ)』の壊滅は見事だった」
役人「組織の爆発物担当には惜しくも逃げられてしまったが、ま、時間の問題だろう」
花売り娘「――で、今回の仕事は?」
役人「こいつだ」ピラッ
花売り娘「テレビでよく見る政治家ね」
役人「この男、遊ぶ金欲しさに国家機密を海外に流してやがった。すみやかに消して欲しい」
花売り娘「分かったわ」 - 6: 2019/11/06(水) 23:07:19.669 ID:Aguy5MDt0
- <キャバクラ>
政治家「ワァッハッハ……」
キャバ嬢「まぁっ、いい飲みっぷり」
政治家「臨時収入があってねえ。ジャンジャン酒を持ってきてくれたまえ」
キャバ嬢「もっちろん! たっぷり楽しんでいって!」
花売り娘「…………」スッ
キャバ嬢「あら、あなた新人? もっとボトル持ってきて!」 - 8: 2019/11/06(水) 23:10:09.447 ID:Aguy5MDt0
- 政治家「よーし、いいとこ見せてやる!」グビグビッ
キャバ嬢「ステキ~」
政治家「……うっ!」
政治家「ぐぐぐ……」
キャバ嬢「どうしたの?」
政治家「し、心臓が……! う、うぐっ……!」
ドサッ…
キャァァァァ…
花売り娘(私が毒花毒草で調合した猛毒……じっくり味わって地獄に落ちるといいわ) - 10: 2019/11/06(水) 23:14:27.814 ID:Aguy5MDt0
- <路上>
花売り娘「お花いかがですか~、どのお花もキレイですよ~」
DQN「へえ、こんなとこに花売りなんていたんだ」
花売り娘「あら、いらっしゃいませ」
DQN「花を売るってようするによぉ……ヤらせてくれるってこったろ?」
花売り娘(きたっ!)
花売り娘「そうよ……よく分かってるじゃない。お金は持ってるんでしょうね?」
DQN「おう、もちろん!」 - 11: 2019/11/06(水) 23:17:40.165 ID:Aguy5MDt0
- 花売り娘「じっくり……楽しみましょう? 二人で……」
DQN「…………!」
DQN(なんだこの女……)
DQN「うわっ!」
ニュルニュルニュル… ニュルニュルニュル… ニュルルルル…
DQN(まるで、紫色の茨が巻きついてくるような……ッ!)
DQN(もし巻きつかれたら……俺は終わっちまうような気がするッ!)
DQN「すいませんでしたぁっ!」タタタタタッ
花売り娘「あっ! ちょっ……タダでもいいから!」 - 12: 2019/11/06(水) 23:21:15.166 ID:Aguy5MDt0
- 花売り娘「はぁ……」
役人「見てたぞ」
花売り娘「気配には気づいてたわ」
役人「気づいててあんなことしてたのかよ……」
役人「なに焦ってんだ? お前ほどの女なら男には不自由しないだろうに」
役人「今までだって一体何人と寝たんだ? ほら、いってみろ」
花売り娘「…………」
役人「もしかして数えきれないとか?」
花売り娘「…………」
役人「いや、そんな感じじゃないな」
役人「お前、もしかしてまだ処――」
花売り娘「言うなァ!!!」 - 13: 2019/11/06(水) 23:25:07.581 ID:Aguy5MDt0
- 役人「そうだったのか……。この雰囲気だし、てっきり経験ご豊富かと……」
花売り娘「……ねえ」
役人「ん?」
花売り娘「この際だから、あんたが相手になってよ」
役人「いや、そりゃ無理だ! 俺には妻子もいるし、お前より10歳以上年上だぞ!」
花売り娘「それでもかまわない。このまま枯れた花になりたくないもの」
役人「かまわないって……お前には女としてのプライドがないのか?」
花売り娘「無いッ!」
役人「言い切るなよぉ! こっちまで悲しくなる!」 - 14: 2019/11/06(水) 23:29:08.212 ID:Aguy5MDt0
- 役人「この話はひとまず終わり、な?」
役人「いずれ誰かいい人紹介してやるから。エリートどころを見繕ってやるよ」
花売り娘「きっとよ」
役人(目がマジじゃねえか……怖いよ)
花売り娘「で、今日は?」
役人「黒バラを一輪、売ってもらいたい」
花売り娘「標的は?」
役人「クスリの売人だ。ただし格闘技をやってたらしく、警官複数人を叩きのめしたこともある」
役人「せいぜい気をつけてくれ」
花売り娘「相手が何者だろうと仕留めるのが私の稼業よ」 - 15: 2019/11/06(水) 23:32:16.179 ID:Aguy5MDt0
- <路地裏>
売人「なんだ、女。クスリ売って欲しいってツラじゃねえな」
花売り娘「ええ、ちょっと死んで頂きたいの」
売人「へぇ~、俺が何者か知らねえのか?」トンットンッ
売人「死ぬのはてめえだッ!」ビュオッ
チクッ
売人「痛っ! てめえ、なにしやがる!」
花売り娘「…………」 - 16: 2019/11/06(水) 23:35:04.238 ID:Aguy5MDt0
- 売人「か、体が……! 動かね……!」ドザッ
売人「ううっ、ぐ、ぐるじ……!」
ガクッ…
花売り娘「覚えときなさい。キレイな薔薇にはトゲがあるのよ」 - 17: 2019/11/06(水) 23:38:08.485 ID:Aguy5MDt0
- <花売りの家>
花売り娘「マンドラゴラちゃん、トリカブトちゃん、ベラドンナちゃん、お水あげるわよ」シャー
花売り娘「私が品種改良した毒植物や武器植物もみんな生き生きしてるわ」シャー
花売り娘(殺しの腕はだいぶ上がったけど、おかげで男からは避けられるようになっちゃった)
花売り娘(役人は紹介するだなんていってたけど信用できないし、このままじゃ結婚できない)
TV『先日開催された婚活パーティーに大勢の男女が集まり……』
TV『こちらのカップルは見事にゴールイン……』
花売り娘「婚活か……」
花売り娘「ちょっとやってみようかな」 - 20: 2019/11/06(水) 23:41:58.412 ID:Aguy5MDt0
- <結婚相談所>
アドバイザー「では、こちらに相手に求める条件をお書き下さい」
花売り娘「こんなところで」
アドバイザー「“男であればだいたいOK”……す、すごいですね」
花売り娘「稼ぎは十分あるし、贅沢はいってられないの」
アドバイザー「あなたの美貌でこれなら色んな男性と会えますし、きっと――」
花売り娘「なんならあなたでもいいのよ?」
ニュルニュルニュル… ニュルニュルニュル… ニュルルルル…
アドバイザー「ヒッ!」
アドバイザー「必ずいい人を紹介しますんで! ご勘弁を!」
花売り娘(逃げやがった) - 21: 2019/11/06(水) 23:44:36.676 ID:Aguy5MDt0
- ……
エリート「外資系の企業で働いています。年収は1000万を越えています」
花売り娘「まあ、素晴らしい」
エリート「こちらこそ、あなたのような美しい方と巡り合えて嬉しいですよ」
花売り娘「じゃあさっそく今夜……私という花を咲かせて下さらない?」
エリート「ハハ、喜ん――」
エリート「!」
キシャアアアアアア… グパァァァァァァ…
エリート(な、なんだ!? この人が急に巨大な人喰い植物のように見え――)
エリート「ごめんなさいぃぃぃぃぃ! 急に腹が痛くなってぇぇぇぇぇ!」タタタタタッ
花売り娘「あっ、待って!」 - 22: 2019/11/06(水) 23:47:23.587 ID:Aguy5MDt0
- ニート「ニートです……働く気なんてありません……」
花売り娘「全然問題ないわ。私が養ってあげるから、一生ね」
花売り娘「あなたはただ私を愛してくれればいいの。フフッ、こんな簡単なお仕事ないでしょ?」
ニート「本当ですか……嬉しいなぁ……」ニチャア…
ワサワサワサワサワサ…
ニート「……ん?」
ニート(足元から……毒のツタがどんどん生えてくるような――)
ニート(もし、ここでこの人と一緒になったら、もう一生立ち直れない気がする――)
ニート「あのっ! 心入れ替えてハローワーク行きます!」シャキーンッ
花売り娘「ちょっ、なんでぇ!?」 - 24: 2019/11/06(水) 23:50:36.328 ID:Aguy5MDt0
- ……
役人「婚活は上手くいってるか?」
花売り娘「どこで情報仕入れたんだか……全然よ。みんな逃げちゃう」
役人「並みの男じゃ、お前を恐れてしまうんだろう。じっくりやることだ」
花売り娘「じっくりやってる暇はないんだけどね。で、今日も黒バラ買いにきたの?」
役人「いや、今日は情報提供だけだ」
役人「新しいテロ組織『フラワー(花)』というのが結成され、小さい事件をいくつか起こしてる」
役人「詳細が割れたら、いずれお前に依頼をすることになるかもしれない」
花売り娘「嫌な組織名……まるで私がボスみたいじゃない」
役人「もし、そうだとしたら……こっちとしては最悪の展開だな」
花売り娘「安心して。私のトゲは、罪のない人傷つけるようには出来てないから」
役人「ああ、分かってるよ」
役人(いい女だと思うんだがなぁ……ま、そこらの男じゃ手に負えないのも事実だ) - 25: 2019/11/06(水) 23:53:12.189 ID:Aguy5MDt0
- ……
アドバイザー「今回紹介するのはこの方です」
青年「はじめまして」
花売り娘「はじめまして」
アドバイザー「一度お二人でデートしてみるのはいかがでしょう?」
青年「じゃあ、今度の週末にでも……」
花売り娘「よろしくお願いします」 - 26: 2019/11/06(水) 23:55:24.034 ID:Aguy5MDt0
- 青年「ここら辺、僕詳しいんですよ! お食事でもしましょうか」
花売り娘「ええ、そうしましょう」
青年「あの店! あの店がおいしいんですよ~」
CLOSED
青年「……あ」
花売り娘「今日はお休みだったみたいね」
青年「す、すみません……! おかしいな、こんなはずじゃ……」
花売り娘(ちょっと頼りないけど……真面目そうでいい人じゃない) - 27: 2019/11/06(水) 23:59:04.749 ID:Aguy5MDt0
- 青年「すみません、結局ファーストフードになっちゃって」
花売り娘「いえいえ、私ファーストフード好きだから」
青年「よ、よかった……」
花売り娘「じゃあ、次は――」
青年「…………」ムズッ
花売り娘「?」
青年「ハークション! ハークショ! ハークション!」
花売り娘「どうしたの!?」 - 29: 2019/11/07(木) 00:03:18.578 ID:gNG050Rg0
- 青年「あ、いや……僕、ものすごい花粉症で……」
青年「普通の花の花粉にも反応しちゃうほどで……この辺に花はないんですけど……なんでだろ」
花売り娘「ごめんなさい。それきっと私のせいだわ」
青年「え?」
花売り娘「私、花売りをやってて、今も至る所に花を持ってるし」
花売り娘「私自身、だいぶ花粉をまとっちゃってるから……」
青年「! そうだったんですか……ハークショッ!」
花売り娘(あーあ、こりゃ二度目はないわ……) - 30: 2019/11/07(木) 00:06:29.749 ID:gNG050Rg0
- ところが――
アドバイザー「先方がぜひもう一度お会いしたいと……」
花売り娘「ええっ!?」
青年「どうもこんにちは!」
花売り娘「どうして、また会ってくれたの? 私といると花粉症が……」
青年「僕、花粉症ですけど……花は大好きですから!」
花売り娘「!」
青年「それに、こうしてマスクしてれば大丈夫なんで! 花売りさんさえよければ……」
花売り娘「ありがとう、嬉しいわ」 - 31: 2019/11/07(木) 00:09:15.970 ID:gNG050Rg0
- ワイワイ… ガヤガヤ…
花売り娘「今日はこの通りは混雑してるわね。仕方ないことだけど」
青年「だけど僕……人混みって好きなんですよね」
花売り娘「どうして?」
青年「人が一杯ワイワイやってるって、それだけ平和ってことじゃないですか」
青年「……ってなんかおかしいですかね、僕」
花売り娘「ちょっと変わってるけど……でも嫌いじゃないわよ」
青年「ありがとうございます」 - 32: 2019/11/07(木) 00:12:37.413 ID:gNG050Rg0
- 花売り娘「ところで、あなたはなんの仕事をしてるの?」
青年「あ、僕ですか……」
花売り娘「ええ」
青年「…………」
青年「ちょっと……人にはいえない仕事なんです……す、すみません!」
花売り娘「いいのよ! 気にしないで! 詮索しようとしてごめんなさい!」
花売り娘(人にいえない仕事はお互い様だしね) - 33: 2019/11/07(木) 00:15:21.118 ID:gNG050Rg0
- <花売りの家>
花売り娘(あれから何度かデートを重ねてるけど……)
花売り娘(彼と私の距離は確実に縮まってる気がする……)
花売り娘(彼となら、きっと私……!)
TV『本日爆発事故がまた発生しました』
TV『化学薬品工場で爆発が起こり、十数人が重軽傷を……』
花売り娘「…………」
花売り娘(これ、おそらく役人のいってた新テロ組織の仕業だわ)
花売り娘(黒バラが売れる日も近いかもしれないわね) - 35: 2019/11/07(木) 00:19:23.259 ID:gNG050Rg0
- そんなある日――
花売り娘「はい、カーネーションです」
花売り娘「ありがとうございましたー」
役人「普通の商売の方も順調のようだな」
花売り娘「あら、いらっしゃい」
役人「今日は……黒いバラを“二輪”売ってもらいたい」
花売り娘「…………」
花売り娘「黒バラ二輪は……“いつもより危険な仕事”という合図ね」
役人「だから口に出すなって」 - 37: 2019/11/07(木) 00:23:17.591 ID:gNG050Rg0
- 役人「しかし、冗談抜きで本当に危険な仕事だ」
花売り娘「内容は?」
役人「テロ組織『フラワー』の根城が分かった」
役人「奴ら、郊外の廃ビルに姿を隠していやがった」
役人「しかし、うかつに手を出すと、逃げられ取り返しのつかない事態を招く恐れもある」
役人「たとえば大きい都市に逃げられ、ヤケクソのテロなど起こされたら最悪だ」
役人「そこでお前に白羽の矢が立った。この花を速やかに摘んでもらいたい」
花売り娘「分かったわ」
役人「……それと、個人的には俺はお前に死んで欲しくない」
役人「応援も送るが、くれぐれも自分を大事にしろ。無茶はするな」
花売り娘「フフッ、ありがと。奥さんと仲良くね」 - 38: 2019/11/07(木) 00:27:19.560 ID:gNG050Rg0
- <廃ビル>
ボス「…………」
部下A「も、申し訳ありませんっ!」
ボス「これから本格的にテロを行おうという時に、政府の諜報員に尾行されるとはな……」
部下A「この失態は必ず取り返しますので――」
ボス「もういい、花になれ」ポイッ
部下A「ひっ!」
ドゴォォォォォォン!!!
ボス「うーん、イマイチな咲き具合だな。最後まで役に立たない奴だった」
部下B「容赦ない処刑だ……」
部下C「さすがボス……」 - 40: 2019/11/07(木) 00:30:52.118 ID:gNG050Rg0
- ボス「ここはもう捨てるしかないな。新しい花壇を探そう」
部下B「それにしてもボスは花がお好きですね」
ボス「まぁね。といっても人が爆発で花みたいに咲くところが好きなんだけどね」
ボス「特に人混みを見ると、ああ爆破したいなぁ……って気分になるよ」
ボス「たとえば通勤ラッシュ時の駅を見ると、あそこに僕お手製の爆弾を投げ込んだら」
ボス「一体何十人死ぬのか……それを想像するだけで股間がうずいてしまうよ」
部下B「…………!」ゾッ…
ボス「それに、本物の花はそこまで好きじゃない」
部下B「なぜです?」
ボス「僕ってひどい花粉症なんだよねー。フラワーを名乗る組織のボスが花粉症って、笑えるだろ?」
部下B「ハ、ハハ……」 - 41: 2019/11/07(木) 00:33:08.610 ID:gNG050Rg0
- 一方――
花売り娘(ここがテロ組織『フラワー』のアジトね)
見張りA「でさー……」
見張りB「マジかよ?」
花売り娘(毒の花粉を……)サラサラ…
見張りA「うっ……!?」
見張りB「ゲボッ!」
花売り娘(侵入開始!)ダッ - 42: 2019/11/07(木) 00:37:27.408 ID:gNG050Rg0
- 部下C「あっ、お前は!?」
チクッ
部下C「うぐぅ……」ドサッ…
花売り娘(ツタで絞め上げる!)グググッ…
部下D「ぐぐぐ……ぐるじ……!」ガクッ
花売り娘(よく研いだ花びらで……頸動脈を切断!)ザシュッ!
部下E「ぐああっ……!」ドザッ - 44: 2019/11/07(木) 00:39:28.968 ID:gNG050Rg0
- 部下B「ボス、侵入者です!」
ボス「政府が刺客を送り込んできたか。ずいぶんと早いな」
ボス「それで? 死んだ連中はどんなやられ方をしている?」
部下B「まるで植物に殺されたようなやられ方を……」
ボス「そういえば、さっきからやけに鼻がぐずつくな……」グシュッ
ボス「――分かった! この侵入者の正体が!」
部下B「えっ!」
ボス「あの女のことはよく知ってる……大広間で歓迎してやろう」
部下B「分かりました!」
ボス「ああ、それと……お前にこの御守りをやろう。お前は優秀だからな。死なれたら困る」
部下B「ありがとうございます!」 - 45: 2019/11/07(木) 00:41:21.173 ID:gNG050Rg0
- コソッ…
花売り娘「…………」
花売り娘(ビル内の敵はあらかた倒して、残るはあの大きな部屋だけ……)
花売り娘(明らかに罠だけど、そうやって勘ぐらせるための時間稼ぎの可能性もある)
花売り娘(危険を承知で行くしかないわね)
ザッ - 46: 2019/11/07(木) 00:44:22.886 ID:gNG050Rg0
- <大広間>
部下B「待っていたぞ」
花売り娘「…………」
部下B「お前はこの俺が仕留める!」ダッ
花売り娘「バカね」
花売り娘(バラのトゲで――)サッ
花売り娘「…………」ゾクッ
花売り娘(この男、何か嫌な予感がする!)
ドォォォォォォン!!! - 47: 2019/11/07(木) 00:46:50.879 ID:gNG050Rg0
- 花売り娘「きゃあっ!」ドザァッ
花売り娘(自爆した……!?)
ボス「あー、惜しい惜しい。御守り爆弾作戦失敗。だけどさすが僕の爆弾、ダメージはあったようだね」
花売り娘「あなたは……!」 - 48: 2019/11/07(木) 00:50:24.471 ID:gNG050Rg0
- 花売り娘「たしか、テロ組織『ルート』の……!」
ボス「知っててくれて嬉しいね。爆弾作りを担当してた者さ」
花売り娘「あなたがこの組織のボスだったのね」
ボス「せっかく僕の作った爆弾を有効活用してくれていた『ルート』を君に潰された僕は」
ボス「新たに国に不満を持つ連中を集めて自らテロ組織を築き上げた」
ボス「地中に潜る根っこを卒業して、僕は花(フラワー)になったのさ!」
花売り娘「その花のやることが……部下に爆弾仕込んで、自爆させる作戦なんてね……」
ボス「なんとでもいえよ。君の戦い方は知ってたからね。自爆が有効だと思っていた」
ボス「さー、みんな。あの女にトドメを刺すんだ」
ボス「派手に死に花咲かせてくれよ、政府の刺客さん」
ジャキッ ジャキッ ジャキッ
花売り娘「くっ……!」 - 49: 2019/11/07(木) 00:53:30.639 ID:gNG050Rg0
- 花売り娘「ちょ、ちょっと待って……」
ボス「ん?」
花売り娘「最後に一つだけお願いがあるんだけど」
ボス「おやおや、命乞いかい?」
花売り娘「命はどうでもいいけど、最後に私と寝てくれない?」
ボス「は?」
花売り娘「お願い! 私未経験のまま死にたくないの! 最後の思い出にどうか私を抱いて!」
花売り娘「なんだったら部下全員に襲わせてもいいから! 丸腰になるから!」
ボス「その手は食わないよ。ハニートラップに決まってる」
花売り娘「ホントなのに!」
ボス「さあ、あの女を撃ち殺せ!」
花売り娘(ああ……私は花を咲かせないまま散るのね……) - 51: 2019/11/07(木) 00:57:50.343 ID:gNG050Rg0
- ガガガガガガガガガガガガッ!
「ぐあっ!」 「うげえっ!」 「がはっ!」
ボス「!?」
ボス「なんだ、新手か!?」
マスク男「…………」ガガガガガガガガガガッ
「ぎゃあっ!」 「ぐはっ!」 「うげっ!」
ボス「ちいっ!」バッ
花売り娘「え……誰!?」
花売り娘(しかも、すごい腕だわ! 大勢いた部下を次々仕留めてる!)
役人『応援も送るが――』
花売り娘(もしかして、このマスクマンが応援!?) - 52: 2019/11/07(木) 01:00:26.358 ID:gNG050Rg0
- ボス「くそっ……花女だけに気を取られてた……! まだいやがったのか……!」
ボス「だが……!」
ボゥンッ!!!
マスク男「……自爆!?」
花売り娘「違うわ……あの男はそんなタマじゃない」
花売り娘「もう……逃がさない!」 - 53: 2019/11/07(木) 01:03:16.846 ID:gNG050Rg0
- タッタッタ…
ボス「僕はまだ負けてないぞ……。逃げて、再び新しい組織を……!」
サラサラ…
ボス「…………」ムズッ
ボス「ハークショッ! ……こ、これは!?」
コツ… コツ…
花売り娘「あなたが派手に爆弾使ったおかげで花粉もまき散らしやすいわ」
ボス「!」ビクッ
花売り娘「たとえば体を麻痺させる花粉なんかもね……」
ボス「ヒッ!?」 - 54: 2019/11/07(木) 01:06:45.450 ID:gNG050Rg0
- ボス(まだ爆弾はある! こいつに投げつければ――)
ボス(手足が麻痺して……ッ! 動かな……ッ!)
花売り娘「フフッ……どうやって死に花咲かせるのがお望み?」
花売り娘「毒のトゲで死ぬ? 茨で絞められる? 花びらで頸動脈切断もできるわよ」
ボス「ま、待ってくれ! 命だけは……ッ!」
花売り娘「大サービスでフルコースってのもいいかもねえ……」クスッ
ボス「あ、あああ、あぁぁ……ッ」
…………
…… - 55: 2019/11/07(木) 01:09:26.114 ID:gNG050Rg0
- 花売り娘「助かったわ……あなたがいなきゃ私は死んでた」
花売り娘「それにしても応援があなたみたいな凄腕だなんてビックリしたわ」
マスク男「僕もビックリですよ」
花売り娘「?」
マスク男「先にやってきてたのが、あなただったなんて」
花売り娘「私、あなたなんか知らないけど……」
カポッ
青年「僕ですよ、僕!」
花売り娘「あーっ!!!」 - 58: 2019/11/07(木) 01:12:54.022 ID:gNG050Rg0
- 花売り娘「あなたの仕事って……」
青年「ええ、対テロ部隊の隊員だったんです」
青年「敵の制圧より射殺を求められる部隊所属なので……黙ってました。すみません」
花売り娘「そういうことだったんだ」
花売り娘「だけど、私の本性があんなんだって知って……幻滅したでしょ?」
青年「いえ、その逆です!」
花売り娘「!」 - 59: 2019/11/07(木) 01:15:21.866 ID:gNG050Rg0
- 青年「たった一人でテロ組織に立ち向かう姿……僕は感動しましたし」
青年「なにより本当に美しかった!」
花売り娘「え……」
青年「改めて言います」
青年「どうか僕とお付き合いして下さい!」バッ
花売り娘「……こちらこそ」
青年「ありがとうございますッ!」 - 60: 2019/11/07(木) 01:18:22.327 ID:gNG050Rg0
- 花売り娘「……じゃあ、あなたの胸に飛び込んでもいい?」
青年「! ど、どうぞ」
花売り娘(私、やっと……運命の男性に巡り合えたんだわ)
ギュッ…
青年「…………」ムズッ
花売り娘「?」
青年「ハークショッ! ハークショッ! うう……ハークション!」
花売り娘「わっ、私に鼻がっ! ちょっ、わっ、きゃあああっ!」
青年「ず、ずびばぜん……」グシュッ - 65: 2019/11/07(木) 02:03:34.171 ID:gNG050Rg0
- ……
……
役人「まさか、お前たちがすでに知り合ってたとはなぁ」
青年「ええ、結婚相談所で」
花売り娘「ビックリしたでしょ?」
役人「ビックリしたよ」
花売り娘「やっぱり不倫しときゃよかった……と思ったでしょ?」
役人「思わねえよ」 - 66: 2019/11/07(木) 02:06:11.500 ID:gNG050Rg0
- 役人「で、さすがにもうベッドインまでいったんだろ?」
花売り娘「それが……ねえ」
青年「いざ本番ってところで、僕がクシャミしまくりでそれどころじゃなくなっちゃって」
役人「オイオイ」
青年「だけど僕、本格的に花粉症を軽減・克服する治療を始めたんです!」
役人「ああ、今はそういう治療もあるらしいな」
青年「そしたら僕……花売り娘さんを思い切り抱き締めてみせます!」
花売り娘「フフッ、思い切り乱れ咲きさせてね」
役人「ハハ、いつになるやら、だな」
役人(だが近いうち、花売りと洟垂らしの最強夫婦が誕生する予感がするよ)
~おわり~ - 68: 2019/11/07(木) 02:08:36.890 ID:gNG050Rg0
- 最後PCトラブルで遅れましたが完結です
ありがとうございました
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お知らせ
サイトのデザインを大幅に変更しました。まだまだ、改良していこうと思います。