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1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/06/12(日) 21:23:55.48 ID:J4atmiJqo
まどか「神様でも何でもいい。
 今日まで魔女と戦ってきたみんなを、希望を信じた魔法少女を、私は泣かせたくない。
 最後まで笑顔でいてほしい。それを邪魔するルールなんて、壊してみせる、変えてみせる。
 これが私の祈り、私の願い。さあ、叶えてよ、インキュベーター!」

 まどかを眩い光が包む。

「…………!」

 黒髪の少女が何かを叫ぶ。その声はまどかに届かない。
 奇妙な、それでいてどこか懐かしく感じる、そんな夢。

 目を覚ますと、そこは自室のベッドだった。

まどか「……夢オチぃ?」
3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/06/12(日) 21:26:59.43 ID:J4atmiJqo
 通学路。
 いつもより少しだけ遅い時間を登校している三人は、少しだけ早足になりながら、
いつものようにお喋りに花を咲かせていた。

まどか「でね、ラブレターでなく直に告白できるようでなきゃダメだって」

さやか「相変わらずまどかのママはかっこいいなあ。美人だしバリキャリだし」

仁美「そんな風にきっぱり割り切れたらいいんだけど……はぁ」

さやか「うらやましい悩みだねぇ」

 志筑仁美の声は、少しだけ暗い。
その時、まどかの頭の中で線が一つ張り詰めたような、奇妙な感覚があった。

まどか「ねえ、仁美ちゃんって、どうしていつも告白断っちゃうの?」

仁美「ええっ? そ、それは」

さやか「ほーう? さては既に意中の人がいて、他の男子に興味は無いと。
    そういう事ですかな?」

仁美「ちょっと、さやかさん!?」

さやか「うんうん。仁美ちゃんも色を知る年頃ですもんね?
    で・も、一体誰かなのかな~、その幸運な男子は?
    白状しないと~、こうだっ!」

仁美「や、ちょっと、やめ、やめて~~!?」

まどか「あの~、ちょっと」

さやか・仁美「え?」

 じゃれ合う二人が、我に返る。

まどか「ほら、早く行かなきゃ。ね?」
4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/06/12(日) 21:27:50.10 ID:J4atmiJqo
先生「今日はみなさんに転校生を紹介します」

 俄かに教室が沸き立つ。長い黒髪の少女が入ってきた。

さやか「うわ、すっげー美人!」

まどか「……えっ」

 まどかの脳裏に今朝の夢が蘇る。
 思いがけず、その名前が口を衝いて出た。

まどか「ほむら、ちゃん?」

 呼んでしまってから、急激に鼓動が高まるのを感じた。知らないはずの名前なのだ。
 小声だったが、席の近い数人がまどかの方を振り向き、またすぐ前に向き直る。

先生「はいっ。それじゃあ自己紹介いってみよう」

ほむら「暁美ほむらです。よろしくお願いします」

 そっけない挨拶。その極度に感情を抑えた喋り方で、まどかが言った通りに名乗った。
ピンと張り詰めた空気の中、控え目な拍手が起きる。

さやか「まどか、知り合い?」

まどか「ううん……」

 ふと転校生と目が合う。彼女はそのまま、しばらく目を逸らそうとしなかった。
5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/06/12(日) 21:29:46.29 ID:J4atmiJqo
「あ、あのー、その、わたしが保健係って、どうして」

「早乙女先生から聞いたの」

「あ、そうなんだ……」

 渡り廊下を移動しながら、ぎこちない会話を交わす。
 休憩時間になると、転校生はすぐに向こうから話しかけてきた。
なんでも気分がすぐれないので、保健室に連れて行ってほしいらしい。

まどか(でも、あんまり体調が悪いようには、見えないな……)

まどか「えっとさ、保健室は……あっ」

ほむら「こっちよね」

まどか「その、もしかして……場所知ってるの?」

 返事は無かった。

まどか「あ、暁美さん?」

ほむら「ほむらでいいわ」

まどか「ほむら……ちゃん」

ほむら「…………」

 ほむらは足を止めた。振り返り、まどかを直視する。

ほむら「鹿目まどか、あなた、私の名前を知っていたわね」

まどか「へっ?」

ほむら「教室で、あなたは真っ先に私の名前を呟いた。ちゃんと聞こえていたのよ」

まどか「あっ、あの、その……」

 彼女に見つめられると、どうにもまごついてしまう。言葉が出てこない。

まどか「……えっと、耳、良いんだね。えへへ」

ほむら「とぼけないで」

まどか「へうっ」

 真っ直ぐに刺さる視線。まどかは正直に話す事にした。

まどか「夕べ、夢の中で会った……気がして」

 ふと思い直し、慌てて付け足す。

まどか「あの、違うの。これもとぼけてるんじゃなくて、わたしホントに――って、
    本当かどうかわたしも分かんないんだけど、えっとね……」

ほむら「…………」

 ほむらはますます感情の抜けた顔になって、横を向く。

まどか「ごめんなさい。その……わたし達どこかで、会った事あるのかな?」

ほむら「無いわ」

 もう一度、まどかの方を向いて切り出す。

ほむら「まどか、あなたにとって一番大切なものは何? 家族? それとも友達かしら」

まどか「え……えっと、わたしは……大切だよ。家族も、友達の皆も。
    大好きで、とっても大事な人達だよ」

ほむら「そうじゃなくて。ひとつだけ、一番大切なものは何かを聞いているのよ」

まどか「ええ……? そんなの、選べないよ。パパもママも、友達も、みんな大事だと思う」

ほむら「もしも、あなたにとって全ての人が同じように大事で、
    何も選べないのだとしたら、それは誰も大事にしてないのと同じよ。
    よく考えておくことね。それが正しくても、間違っていても、
    あなたにもいつか、選ぶ時が来るかもしれない」
6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/06/12(日) 21:35:36.54 ID:J4atmiJqo
 放課後、喫茶店で。いつものように、いつもの三人で他愛の無い話をする。
いつしか話題は転校生の話になった。

さやか「あははは。すげー、まどかまでキャラが立ち始めたよ」

まどか「ひどいよぉ。わたし真面目に悩んでるのに」

仁美「……夢って、どんな夢でしたの?」

まどか「それが、何だかよく思い出せないんだけど。とにかく変な夢だったってだけで」

仁美「もしかしたら、本当は暁美さんと会ったことがあるのかもしれませんわ」

まどか「ふぇ?」

仁美「まどかさん自身は覚えていないつもりでも、深層心理には彼女の印象が残っていて、
   それが夢に出てきたのかもしれません」

さやか「うーん。出来過ぎって感じもするけど……でも、名前を知ってたのはホントだもんねぇ」

仁美「そうね……あら、もうこんな時間。ごめんなさい、お先に失礼しますわ」

まどか「私達もいこっか」

さやか「あ、まどか、帰りにCD屋に寄ってもいい?」

まどか「いいよ。また上条君の?」

さやか「へへ。まあね」

 その時何故か仁美の後姿が気になった。

まどか(ホントに変だな、今日の私。一体どうしたんだろう)
7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/06/12(日) 21:40:27.27 ID:J4atmiJqo
「助けて……」

まどか「え……? え?」

 さやかと二人、CDショップへ行くと、まどかはそこで不思議な声を聞いた。

「助けて、まどか……」

まどか「誰? 誰なの?」

 頭の中に直接響く声。まどかは恐る恐る、声のする方へ進む。
 「店内改装中」 人気の無いフロアに入ると一層『声』は近くなる。
 明かりの無いフロアを更に進むと、突如、天井を破り、白い動物が落下した。

まどか「あなたなの?」

「助けて……」

 後を追うように、奇妙な格好の少女が現われる。暁美ほむらだった。

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「そいつから離れて」

まどか「だ、だって、この子、怪我してる」

 その小動物は、あちこちから血を流しながら、息も絶え絶えといった様子だ。

まどか「ダ、ダメだよ、ひどいことしないで」

ほむら「あなたには関係無い」

まどか「だってこの子、私を呼んでた。聞こえたんだもん、助けてって」

ほむら「そう……」

 その時、ほむらの背後から別の動物の鳴き声がした。
 見れば、暗がりから染み出したような真っ黒な猫がほむらに擦り寄っている。
 その姿を見て、まどかはまたも奇妙な感覚を味わう。頭の中に糸が張るような、あの感覚。

「ミャァーン」
8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/06/12(日) 21:41:28.27 ID:J4atmiJqo
ほむら「! こんな時に、もう……」

まどか「その子……ほむらちゃんの?」

 赤い首輪が目を引いた。
 だが、問いには答えず、ほむらは言った。

ほむら「やめておきなさい、美樹さやか。そんなもの、私には効かないけれど、
    この子にかかったら可哀相でしょう?」

さやか「うぐ」

まどか「さやかちゃん!?」

 さやかは消火器でほむらを狙っていた。まどかの様子がおかしいと感じ、つけてきたのだ。

さやか「うっさい! 動物虐待してるアンタに言われたくないわよ」

ほむら「そいつの姿に惑わされてはダメよ。見た目は小動物でも、中身は悪魔そのもの」

まどか「えぇっ?」

さやか「あー、もうっ! 何なのよアンタ!
    こんなコスプレで通り魔みたいな事して、今度は動物のせいにするつもり?」

「ミャァーン」

 息詰まる空気をぶち壊しにする、甘ったるい鳴き声。黒猫はほむらに良く懐いてるようだった。

ほむら「……仕方ないわね。そいつの怪我を治すから、こっちに来て」

まどか「ほんと?」

さやか「ちょっと、まどか!」

まどか「大丈夫だよ。ほむらちゃんはきっと、嘘付いたりしない」

さやか「おいおい……」
9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/06/12(日) 21:43:40.86 ID:J4atmiJqo
ほむら「まったく。とんだ茶番ね……キュゥべえ」

 ほむらは治癒魔法を使いながら、毒づいた。
『魔法』を目の当たりにして、呆気に取られる二人を余所に。

さやか「ホントだ……怪我が治ってる」

まどか「キュゥべえ? この子の名前なの?」

ほむら「そうよ」

 ほむらは少し考えてから、言葉を続けた。

ほむら「何でも覚えてるってわけじゃ、無いみたいね」

まどか「えっ」

 すっかり傷が治ると、その動物、キュゥべえは喋り始めた。

QB「ありがとうまどか、助かったよ」

さやか「うわっ、喋った」

まどか「治してくれたのはほむらちゃんだよ?」

ほむら「感謝される覚えは無いわ。本当は今からだって殺したいと思ってる」

QB「そうみたいだね」

 うろたえるまどかを尻目に、キュゥべえは落ち着き払っている。

QB「君達は……」

 ほむらと黒猫を見て、訝しげに発した念話は、すぐに断ち切られた。

ほむら「それよりあなた達、早くここを離れなさい。
    『魔法』に反応して、悪い虫がやってくるわよ」

 言うが早いか、辺りの空間が歪み、まどか達を飲み込む。
10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/06/12(日) 21:47:40.10 ID:J4atmiJqo
 魔女の結界に取り込まれたまどか達は、その内部で、またも別の少女――巴マミに出会う。
魔女の気配を追ってきた彼女は、魔女の使い魔と交戦するほむらに加勢した。
 魔法らしい魔法を使わず、銃と実弾で戦うほむらを『戦闘に不向きなタイプ』と判断したのだ。

マミ「危なかったわね。でももう大丈夫」

 使い魔を駆逐し終えたマミがまどかのもとへ来て、言った。

マミ「私は巴マミ。あなたたちと同じ、見滝原中の三年生。
   そして、キュゥべえと契約した、魔法少女よ」

まどか「魔法少女?」

QB「そうだよ。彼女達は魔法少女。魔女を狩る者達さ」

ほむら「感謝するわ、巴マミ」

マミ「あなたこそ、キュゥべえを助けてくれて。ありがとう。その子は私の大切な友達なの」

ほむら「残念だけど、私はそいつを助けようとしたわけじゃない」

マミ「あら、そうなの?」

ほむら「私はそいつを止めに来たの。そいつはまどか達を契約させるために、ここに来た。
    私はそれを追ってきたまで」

 ほむらは喋りながらも、じゃれついてくる黒猫をあやすのに気を取られた。

マミ「フフ、そう。でも、助けてくれたのは事実よ。どうもありがとう」

 そう言うと、マミは礼儀正しくお辞儀をした。

ほむら「…………」

さやか「ねぇ、契約って?」

QB「そうだよ。鹿目まどか、それと美樹さやか。僕、君たちにお願いがあって来たんだ」

まどか「お、お願い?」

QB「僕と契約して、魔法少女になって欲しいんだ」
17: ◆NqJArk5IVdBU 2011/06/30(木) 23:48:10.53 ID:/ZSKL5Oxo
 見滝原中学。
 一限目の授業中、まどかはノートに鉛筆を走らせながら昨日の事を思い返していた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ほむら「忠告しておくけれど、そいつの言うことに一切耳を貸してはダメよ。
    さもないと、あなたは必ず後悔することになる」

マミ「あなたは、ええと」

ほむら「暁美ほむら」

マミ「そう。じゃあ暁美さん、私の考えを言わせてもらうわね。
   鹿目さん達はキュゥべえに選ばれた。
   彼女達は魔法少女に関して、知る資格があると思うわ」

ほむら「キュゥべえの都合で考えるのは止しなさい。魔法少女は無闇に増やすべきじゃない」

マミ「この世に魔女がいる以上、新たな魔法少女の誕生は必要な事よ。
   それに彼女達も、せめて話くらいは聞きたいと思うのではないかしら」

 そう言ってマミが目を配ると、さやかが大げさに二度、頷く。
まどかはさやかに倣う事はせず、ほむらの方を見て、言った。

まどか「私は、ちゃんと説明してほしいな。ほむらちゃんに」

 一同に、一斉に疑問符が浮かぶ。
 マミとさやかにしてみればまるで意図の分からない発言だが、
ほむらは、今朝感じた疑問をぶり返す事になった。

ほむら(このまどかは、どうも勘が良すぎる。
    知らないはずの事まで知っていたし、いつもの時間とは明らかに態度が違う)

 少しの沈黙と、思考の後に、ほむらは答える。

ほむら「残念だけど、今話せる事は何も無い。少なくともそいつの前では、ね」

 キュゥべえを睨んで、言い切る。当の本人はどこ吹く風と言った様子である。

マミ「つまり、あなたはあくまでキュゥべえの行動を阻止するし、理由も一切説明出来ない、
   そういう事で良いのかしら」

ほむら「そうよ」

マミ「言葉を持たないなら、実力行使をしてでも?」

ほむら「そう」

 マミは一つ溜息をついて、考え込む。
 沈黙が続く間、黒猫が夢中で毛繕いする音だけが耳をくすぐった。
18: ◆NqJArk5IVdBU 2011/06/30(木) 23:49:08.39 ID:/ZSKL5Oxo
 巴マミという人間は温厚そうに見える反面、魔法少女としてのプライドが非常に高い。
それは実力と行動を伴うものであったし、誇り高い『正義の味方』を貫く過程で、他の魔法少女は
少なからず敵視する対象になっていったのも無理もない事ではある。
 目の前の無礼者に対し、力の差を分からせてみようかという考えが浮かぶ。
 この暁美ほむらもまた、グリーフシードの回収だけを目的とする、意地汚い行動原理の持ち主
なのだろうか。

マミ(それだけとも言い切れない、かしらね)

 ただのヒールにしては行動も、言動も、全てが異質過ぎる。それが却って、いかにも事情があると
言わんばかりであったし、結局、出会ったばかりのまどか達の目前で、魔法少女同士の諍いを見せる
のはみっともない事と考え、静かな怒りを胸中にしまい込んだ。

マミ「あなたのしてる事に納得は出来ないけれど、今日のところは引き下がる事にするわ。
   キュゥべえは私が連れて帰るから」

QB「マミ、連れて帰ると言うけど、それは僕の意思に反する」

 キュゥべえがマミの返事に驚き、食い下がる。

マミ「あまり女の子を困らせてはダメよ、キュゥべえ。
   無理にでもつけ回すとそれこそ、その子に実力行使されちゃうわよ」

 冗談交じりにそう言うと、キュゥべえは無表情のまま、黙り込んだ。

ほむら「ありがとう。巴マミ」

マミ「その代わり」

 ほむらの言葉を制するように、マミが言う。

マミ「あなたも私の知らないところでキュゥべえを虐めたりしないでね。その時は本当に怒るわよ」

 ほむらは返事をしなかった。

マミ「鹿目さん、美樹さんも、その気になったらいつでも声をかけて頂戴ね。
   いつでもレクチャーしてあげるから。それじゃ、また」

 マミは踵を返し、立ち去った。キュゥべえもまどか達を一度振り向いて、
それからマミの後を追う。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


先生「はい、それじゃ今日はここまで。宿題は来週月曜に集めるから、忘れずにね」

 授業終了のチャイムが鳴る。まどかは自分のノートに書き上げた『作品』の出来栄えに
ご満悦だった。

さやか「まどか、何書いてたの?」

まどか「てへへ、秘密」

 それはまどかのイメージする、魔法少女の衣装だった。
19: ◆NqJArk5IVdBU 2011/06/30(木) 23:54:07.71 ID:/ZSKL5Oxo
 放課後。
 まどかとさやかの二人は、昨日の件で質問攻めにするため、ほむらと待ち合わせていた。
 ファーストフード店で腰を据えて、三人は話し始める。

 キュゥべえとの契約、魔法少女とソウルジェム、魔女とグリーフシード。
 彼女達が昨日見知った存在、これから関わるであろうものの一つ一つに、一通りの説明をした。
だが、それらの関係性についてまで、ほむらは深く語ろうとはしなかった。つまり、キュゥべえが
普段魔法少女に語っているであろう程度の内容に、留めたのである。
 違うのは、決して契約しないように、繰り返し念を押した事だ。

ほむら「魔法少女になるという事は、結局は人間をやめるというのと同じ事よ。
    一度契約してしまえば元の生活には戻れない。
    人と違うものを見て、人知れず戦って、人知れず死ぬ。
    正義の味方だとか、そんな生ぬるいものじゃない」

さやか「でもさ、人間をやめるっていうのは、ちょっと大げさじゃない?
    誰でも秘密の一つや二つはあるんだし」

ほむら「そういう甘い考えが身を滅ぼすのよ」

 ほむらは手元のアイスコーヒーを回しながら、喋る。
さっきからちっとも口をつけようとしないな、と、さやかは関係の無い事を考えた。

ほむら「食物連鎖って、知ってるわよね」

さやか「知ってるけど、何か関係があるわけ?」

ほむら「魔法少女は魔女を討つ存在ではあるけれど、もしも魔女がいなくなれば私達は生きられない。
    ただ生きているだけでもソウルジェムは穢れていく。
    穢れを浄化するために、グリーフシードを集めなければならない。
    ある意味で、共生関係なのよ。人が家畜を食べて生きるように、魔女は人を食べて、
    魔法少女が魔女を食べる。そうしなければ私達魔法少女は生きていけない」

 まどか達の表情が強張る。特にさやかのそれは怒りをはらんでいた。

さやか「じゃあ、あんたは人が家畜を育てるのと同じに、魔女を育ててるわけ?」

ほむら「そんなことしないわよ。でも、事実、そういう魔法少女も中には居る。
    そうして生き残った魔法少女の方が、却って多くの魔女を倒して、
    より多くの人の命を救う事だってある。
    別に意地悪で嫌な例えをしてるわけじゃない。そういう仕組みなの。
    魔法少女として生きる限り、いつか必ずこの仕組みを思い知らされる。
    そうして人と違う価値観を持って、人間よりも、魔女に近い場所に生きるようになる。
    私達に必要なのは、人間よりも、魔女だから」

 慣れない講釈にほむらは疲れを感じながらも、懸命に言い聞かせる。
 それは核心を避けながら嘘も使わず、事実に近い悪印象を与えるための、方便だった。

ほむら「もし運良く生き残って魔女を狩りつくせば、別の狩場も必要になるわね。
    別の街へ行って、そこで暮らす事だってある。
    魔法少女同士で縄張り争いをして、住む街を追われる事もある。
    そうして次第に人の社会との関わりさえ、足かせになって、
    そんな生き方が普通の人間に理解されることは、決して無い」

 実際の所、彼女達の問題は、長く戦い抜いた先にあるわけではないのだが、それをストレートに
話すわけにもいかない。ほむらは遠回しな理屈を並べて、説得しようとしているのだ。
それは、彼女が一度諦めた道でもある。
20: ◆NqJArk5IVdBU 2011/06/30(木) 23:55:45.89 ID:/ZSKL5Oxo
さやか「なんかさー、悪い所ばっかり強調してない?」

ほむら「言ったはずよ。甘い考えは捨てなさい」

 まどかが沈黙を保っている事が、ほむらには不安だった。あの妙に鋭い勘を働かせて、また核心を
突こうとするのではないかと身構えていたのだが、結局それは取り越し苦労に終わる。

まどか「ほむらちゃんは、それで平気なの?」

 どうやら、いつもの優しい考えにとらわれて、黙り込んでいたらしい。
 都合の悪い事を聞かれずに済んで、ほむらは内心ほっとした。

ほむら「私は平気よ」

まどか「でも」

さやか「じゃあさ、皆で一緒に戦ったらいいんじゃない? 皆魔法少女になってさ。
    そしたらあんたも寂しくないし、願い事も叶うし、ほら、一石二鳥ってやつ?」

 無警戒だったさやかの方が、これ以上無いくらい都合の悪い事を言い始めた。
ほむらは怒りを感じながら、矛先を慎重に見定める。

ほむら「黙りなさい、美樹さやか。あなたは本当に愚か者ね」

さやか「な、なによ。そんな言い方無いでしょ」

ほむら「いいえ、言わせてもらうわ。これだけ話したのに、あなたは何も分かってない。
    私達が何のために戦うのか、誰のために戦うのか、あなたの言い草がどれだけ
    私達を侮辱する事になるか。
    命を賭けるというのは、それ以外方法が無い者がすれば良いこと。
    人並みの平和の中で生きているあなたが、そんな軽はずみな気持ちで契約するなら、
    私はあなたを許さない」

さやか「……あー、うん、そうだよね。
    ゴメン、私が悪かったよ、うん」



 店を出て、別れる前にまどかが言う。

まどか「ほむらちゃんはなんで、魔法少女になったの?」

ほむら「あなたには、関係の無いことよ」

 こうして気持ちと裏腹のやり取りをする事も上手くなってきたと、ほむらは思った。
21: ◆NqJArk5IVdBU 2011/06/30(木) 23:57:45.81 ID:/ZSKL5Oxo
 ほむらの自宅。浴室で。

 ほむらは帰宅すると猫の世話を始めた。
 髪を結って、半袖にショートパンツの格好で、猫にシャンプーをかける。
短い袖を肩までまくって、お湯を嫌がる猫にぶつぶつと話しかけながら、念入りに洗う。

ほむら「もう、あなた勝手に擦り寄ってくるんだから、ノミくらい、おとなしく取らせなさい」

 その黒猫は元々は野良で、ずっと前にエイミーと名付けられていた。
ほむらが時間を巻き戻す度に、すぐに車に轢かれて命を落とす運命にあるのだが、
ある事情により、ほむらは毎度欠かさず、その小さな命を救っている。

ほむら「ほら、あなたも手伝って。この子、全然おとなしくしてくれないんだもの。
    ……くすぐったいって、仕方ないでしょう。こんな事に魔法を使うわけにも……」

 そこにはほむらとエイミーしか居ないのだが、ほむらは他の誰かに話しかけるように喋り続けた。

ほむら「……今回のまどかは、いつもと違う。もしかしたら時間の繰り返しで因果を束ねた事が、
    記憶にも影響してるのかもしれない。そんな事って、有り得ると思う?」

ほむら「……そう。だとしたら厄介ね。今のまどかはどんな行動に出るか、私には予想しきれない。
    あなたの手を借りる機会が増えそうね」

ほむら「……バカな事言ってないで、手伝って。
    それじゃ、まるで猫と一緒じゃない」

 時折、ほむらは笑みを浮かべていた。それはつい最近まで、ずっと長い間、忘れていた表情だった。
22: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/01(金) 00:00:25.77 ID:NkYUZiyPo
 同時刻。巴マミの自室。

 テーブルの上に紅茶が一人分と、キュゥべえが鎮座している。
 キュゥべえが尻尾を振ると埃が舞うので、普段はテーブルに乗せないのだが、
今日のように大事な話をする時に限っては、目線の合うテーブルの高さに昇る事を許していた。

QB「彼女達は途轍もないイレギュラーだ。これ以上無く危険な状態にあると言って良いね」

マミ「イレギュラーって?」

QB「まず暁美ほむら。僕は彼女と契約した覚えが無い」

マミ「どういうことかしら」

QB「それが、僕にも分からない。契約をしていないのに、彼女は間違いなく魔法少女だ。
  通常は、有り得ない事だね」

マミ「でも現実には有り得てるのでしょ」

QB「どんな事にも例外は存在し得るよ。前例も無いわけじゃない。
  例えば以前、自分に関する記憶と、記録の消去を願った子がいた。
  彼女は僕にすら認知されない魔法少女として、長い間存在していた」

QB「ただ、暁美ほむらがその例に当て嵌まるかどうか、現時点では断言できない。
  彼女の能力はヒントになるはずだけれど」

マミ「願いと能力は密接な関係にあるものね」

QB「そうだよ。でも彼女はその能力をまだ見せていないし、意図的に隠してる。
  それに、僕はもっと別の可能性も考えてるんだ」

マミ「別って、どんな?」

QB「イレギュラーがもう一人いる。この子も僕と契約していない魔法少女だ」

マミ「誰の事を言ってるのかしら」

QB「まだマミは顔も知らない子さ。でも彼女はどういうわけか、暁美ほむらと同時期に現われ
  しかも彼女よりずっと強い魔力を持っている。彼女の力がどんなものか分からないけれど、
  力が強い分だけ、より危険な存在だ」

マミ「その二人は仲間なのかしら」

QB「そう考えるのが妥当だね」

マミ「魔法少女が二人、協力して存在できているなら」

 マミは目を閉じて、暁美ほむらの顔を思い出す。

マミ「やっぱりあの子、単なるグリーフシードの亡者ってわけじゃないのね」

QB「彼女の目的は、自ら言った通り、鹿目まどかの契約を阻止する事だろうね」

マミ「でもどうしてかしら。そんな事をして彼女にメリットがあるとは思えないのだけど」

QB「鹿目まどかもまた、通常では有り得ない存在だからさ。
  彼女の潜在的な素質は、誇張を交えず、宇宙を揺るがす規模のものだと言えるね」

マミ「宇宙、って……そんな事が有り得るの?」

QB「だから、通常では有り得ない事なんだ。
  だけど現にその異常事態が今、この見滝原に起こってる。
  暁美ほむらもそれを知っているからこそ、特異な行動を取ってるんじゃないかな」

QB「僕は鹿目まどかに対して、特別な処置をしなきゃいけない。
  マミ、君にはそれを手伝ってほしいんだ」
31: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/04(月) 20:47:02.57 ID:sQTKwEORo
 隣町。ホテルの一室。
 佐倉杏子はジャンクフードを頬張っている。

杏子「それで、そんな事してあたしに何の得があんのさ」

QB「見返りは無いよ。ただ、見過ごせば人が大勢危険に晒される異常事態なんだ。
 君にも是非協力してほしい」

杏子「はんッ! バカバカしい」

 新たにポテトチップスの袋を開ける。

杏子「でも、そいつ、何者なんだい? ちょっと面白そうじゃん。
  退屈過ぎてもなんだしさ。教えなよ。そいつ、どこにいるのさ」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 教室。授業中。

 さやかは一つあくびをして教室を見回す。今日のまどかは真面目に勉強しているようだった。
仁美はいつも通り。あの転校生は、これもいつも通り、つまらなそうにしている。

さやか『ねえ、転校生』

 テレパシーで話しかけてみる。
 その場にキュゥべえはいなかったが、こうしてテレパシーの中継は常に行われていた。
 大方、マミと共に三年の教室にいるのだろう。

ほむら『なに? 美樹さやか』

さやか『今日さ、学校終わったら、魔女退治に連れてってよ』

 ノートに立てていたシャーペンの芯が、折れる。ほむらは無言のまま、さやかを睨んだ。

さやか『怖い顔しないでよ。あたしもっと良く知りたい。百聞は一見にしかず、って言うじゃない』

まどか『ほむらちゃん、わたしも……』

 予想できない事ではない。遅かれ早かれ、こうなるのだ。いくら警告したところで、さやかには
事情があるし、まどかはその性分から、首を突っ込まずにいられない。

マミ『あら、いいじゃない。暁美さん、私からもお願いするわ』

  離れた教室から、マミがテレパシーに入ってくる

ほむら『どういうこと?』

マミ『本人達がああ言ってるんだから、聞いてあげるべきなのよ。
  もしあなたが断るなら、私が連れて行ってあげてもいいのよ』

さやか『いいんですか?』

マミ『もちろんよ』

QB『僕も同意見だね』

ほむら『バカ言わないで』

 ほむらは溜息をついて、答えた。

ほむら『仕方ないわね』
32: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/04(月) 20:52:49.46 ID:sQTKwEORo
 結局、ほむらは二人の同行を許した。

 できることなら、避けたかった事ではある。
 彼女は二人に対しても能力を見せたくないと考えていたし、ある秘密のために、付きまとわれる
と不都合が多い。
 致命的な情報は隠し通すとして、銃の出所ひとつ取っても、馬鹿正直には話しにくい事なのだ。

 それでも、巴マミに任せるわけにはいかない。彼女本人はともかく、彼女と行動を共にする
キュゥべえを、出来る限りまどか達から遠ざけたかった。

ほむら(せめて少しでも悪い印象を持たせるように、努力するしかないわね)

 オマケのように、猫のエイミーも一緒にいた。
 猫の足では遠い距離を、まどかが抱いて歩く。

 魔女退治。
 ソウルジェムの反応を手がかりに魔女を探す。地道に足を使って――というのは普通の
魔法少女の話。ほむらは魔女が出現する時と場所に、最短経路で到達できる。
 魔女の結界に侵入する。
 使い魔を小火器で蹴散らし、結界の奥へ進む。
 その最深部に現れたのは、薔薇園の魔女、ゲルトルート。

まどか「あれが、魔女?」

さやか「うわ……グロい」

 ほむらはまどか達を置いて、薔薇園を見下ろす高台から飛び降りる。

 彼女の戦いぶりには平凡なところも、奇妙なところもあった。
 それはまどか達にも分かった。彼女達も以前、マミとの共同戦線を目撃し、個性の差を
認識しているのだ。

 まず使用する武器が実在の銃と火薬であることが、魔法少女として相応しくなかった。
 スピードや身のこなしも、普通の人間と比べ、かけ離れたものではない。マミに比べると
見劣りするように感じられた。
 だが、その動きで難なく魔女の猛攻をいなしてしまう事こそが、もっとも奇妙な点だった。
彼女はゆらりとした動きで、彼女以上に素早く、多角的な魔女の攻撃をかわし続けた。
 まどか達の目で追える程度の、ごく普通の体裁きで、魔法的な手段は何ら感じさせないまま
一方的に銃撃を浴びせ続ける。
 時折、使い魔がまどかの方へ飛んでくると、その機先を制して銃弾が撃ち込まれ、確実に彼女達を
守る。これは道中からずっと、そうだった。
 そうして一分の隙も見せないまま、危なげなく魔女にトドメを刺し、戦闘を終えた。

 グリーフシードが地へ転がり、結界が解ける。
 ほむらはまどか達の方に歩いてきて、言った。

ほむら「こんなものよ。大体理解できたかしら」

 ほむらはグリーフシードを浄化に使った。
33: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/04(月) 20:54:25.74 ID:sQTKwEORo
ほむら「今回は弱い魔女だったけれど、いつもこう上手く行くとは限らないわ。
   危険な時もある。見てて面白いものでもないし、あなた達がこれで満足してくれれば
   これ以上、無駄な時間を取らせないで済むのだけれど」

まどか「ううん、そんなことないよ。ほむらちゃん、かっこよかった」

 ほむらはつい、首を傾げた。

さやか「あたしも、もうしばらく見てみたいかなぁ」

 複雑な気分になる。
 そして、ほむらは不意に後方の日影になった路地へ向けて、グリーフシードを投げた。

ほむら「あなたも、もういいでしょう。巴マミ」

 影からマミと、キュゥべえが現れる。

ほむら「あなたに、人をつける趣味があるとは思わなかったわ」

マミ「返すわよ。これはあなたのもの」

 マミはグリーフシードを投げ返す。

マミ「暁美さん、あなたって変よね」

ほむら「失礼ね」

マミ「あら、ごめんなさい。でも普通の戦い方じゃなかったから」

QB「君は魔法を使わないのかい? それとも気付かない内に使ってるのかな」

ほむら「それを調べにきたのね」

QB「そんなところだね」

ほむら「答えるつもりは無いわ。帰って頂戴」

マミ「そうね……また会いましょう。それじゃ」



さやか「マミさん、どうしたんだろ」

 やけに大人しく引き下がった事に、ほむらは違和感を覚えた。
34: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/04(月) 21:00:12.02 ID:sQTKwEORo
 深夜の公園。
 ほむらは噴水に腰掛け、エイミーをあやしている。

マミ「つけられてるのを分かってて、わざとこんな場所に来たの? 恐れ入るわね」

 暗がりから、またもマミが現れる。

ほむら「あなた一体どういうつもりなの?」

マミ「あなたの事を調べる必要がある。そう思ったのよ。
  今度はキュゥべえも置いてきた。じっくり話がしたいわ」

ほむら「どうだか」

 エイミーの顎を擽っていた手を止めて、立ち上がる。エイミーは指示されたかのように、
ほむらから離れ、公園の隅で座り込んだ。

ほむら「あなたは置いてきたつもりでも、あいつはあなた以上に気配を殺すのが上手いわ。
   当てにならない。それに、あなたも結局、キュゥべえに何か吹き込まれてるでしょう」

マミ「そうね。でも、私は納得して行動してるわよ。
  聞きたい事は沢山ある。あなたの目的は何? もう一人の魔法少女はどこ?
  もし、おかしな事を企んでるなら」

ほむら「力ずくで聞き出すのかしら」

マミ「そうよ」

 空気が張り詰める。だが、人の近付く気配を感じ、二人は出した手を引っ込める。
 新たに現れたのも、また、魔法少女だった。

杏子「おーおー、待ちなよ」

マミ「佐倉さん?」

杏子「そいつが噂のイレギュラーかい? マミ、無理やり吐かせるつもりなら、あたしにやらせなよ。
  そういうのは、あたしが得意だからさ」

 杏子は不敵な笑みを浮かべる。

ほむら「あなたもキュゥべえに唆されたのね」

杏子「ふん、あんなのは関係ない。あたしはあんたに用があるのさ」

ほむら「用?」

 返事代わりに槍をくれてやる。杏子がそう思った矢先、マミのリボンが飛んだ。
 普通の人間なら反応も出来ない速度で拘束する、巴マミのリボン。
 杏子まで含めて、完全に不意を打つタイミングで放たれたそれは、ほむら目掛けて飛び掛り、
彼女をぐるぐる巻きに拘束する、かと思われた。
 しかし、ほむらは一瞬早く動いて、回避していた。

杏子「オイオイ、どんな奇跡だぁ? こりゃあ」

 矢継ぎ早にマミのリボンが飛び交い、ほむらを狙う。
 先を越された杏子は見物を決め込む事にした。ポッキーを口にくわえ、頭の後ろで手を組む。
 ポッキーを三分の一ほど齧った辺りで、杏子は唖然として、口から落としそうになる。

 ほむらは反撃もせずに、ひたすらリボンをかわし続けていた。
 杏子からすればトロくさいとしか言えない動きで、それでも何故か捕まらない。
 マミがリボンの動きを加速させつつ、マスケット銃を構え、ほむらの足元に撃ち込む。
 弾痕から飛び出すリボン。同時に、銃をほむらに直接照準して発射する。銃弾が空中でほどけて、
投げ網の形を作る。
 いよいよ逃げ場が無くなった瞬間、ほむらの姿が消えた。

 マミの視界を何かが遮る。ほむらのかざした手がマミの眼前を覆っていた。
 マミは身をすくめて、目を閉じる。
 額に痛みを感じ、後ずさる。
 おそるおそる目を開けると、ほむらの手は相変わらず空だった。額を触るも、外傷は無い。
 でこピンをされたらしい事に気付いて、肩を落とす。

マミ「あなたの勝ちね」

ほむら「別に私はあなたと戦いたいわけじゃない」

杏子「てめぇ、何者だ」

 杏子が顔を顰める。
35: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/04(月) 21:07:19.63 ID:sQTKwEORo
 杏子が跳びかかり、容赦なく突きの連打を浴びせる。
 一撃でも当たれば、杏子の槍は容易くほむらの体を貫くだろうが、ほむらは盾も構えずに悠々と
かわし続ける。
 ここまでは杏子の予想通りだった。

 杏子は敢えて踏み込みを浅く突く。
 当然、少しのスウェーでかわされる。鼻まで届きそうな切っ先を突きつけられても、ほむらは
涼しい顔をしている。
 そこから体を捻って、姿勢を低く、前方へ滑り込ませ、横薙ぎで足元をすくう。
 ほむらが地面を蹴って飛び退く。
 杏子はそこで初めて槍を変形させて、多節棍の形態を取る。薙ぎ払った勢いのままに多節棍を
伸ばし、空中のほむらを追う。

 確実に捉えたはずが、多節棍はむなしく絡まり、ほむらは後方に易々と着地していた。
 杏子の髪が解ける。杏子は、地面に落ちそうになるリボンを慌てて拾った。

杏子「どうなってんだオイ。一体、何をした?」

マミ「今のがあなたの魔法ね、暁美さん」

 そう言うマミは、ほむらの能力を目撃したものの、はっきりと理解できたわけではない。

ほむら「何度も言わせないで。私はあなた達と戦いたいわけじゃないの」

杏子「……チッ」

 杏子は加えたままのポッキーを噛み砕いた。
 隅にいた黒猫が、またほむらの足元に寄ってくる。

杏子「だったら、何なんだよ、ただのイチ魔法少女でござい、ってか」

 ほむらはそこで少し考えてから、口を開く。

ほむら「全てを明かす事はできないけれど。
   杏子、あなたがここに来た事は幸運かもしれないわね」

杏子「はぁ?」

 杏子は困惑する。

杏子「名前、言ったっけか?」

ほむら「どうかしら」

 ほむらは、マミと杏子を見回して、言う。

ほむら「二週間後、この街にワルプルギスの夜が来る。私はあなた達に協力してほしい」

マミ「信用しろって言うの?」

ほむら「私はあなた達よりも未来の事が分かる。あいつに対抗するには、仲間が必要よ」

杏子「ふうん……ワルプルギスの夜ね。確かに手強いが」

ほむら「私は別に、あなた達が吹き込まれたような、妙な考えは持ってないわ。
   あいつさえ倒せば、この街を明け渡しても良い。手を貸してほしいの」

杏子「乗ったよ。ほら、食うかい?」

マミ「……少し考えさせてもらえるかしら」
40: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/06(水) 01:21:34.57 ID:qhCRi9rlo
 翌日。放課後。
 マミに呼び出されて、ほむらはまどか達と反対の方面に下校する。
 校門を通るなり、どこからか現れたエイミーがほむらに擦り寄る。
 マミの肩に乗るキュゥべえといい、まどかは微笑ましく思うのだった。
 まどか達の行き先はと言うと、上条恭介の居る病院である。



 歩道橋。
 産業道路の上に設置されたそこは、車の交通量は多いものの、歩行者はほとんど見られず、
魔法を使って暴れるには絶好のポイントである。
 その場所で、ほむらとマミは対峙する。

ほむら「懲りない人ね。あまりしつこいと、私も態度を考えるわよ」

 彼女には先日協力を申し込んだばかりだが、どう見ても良い返事は貰えそうもない状況である。

ほむら「何度聞かれても、答えは同じ。今話せる事は何も無い。
   それとも、魔法少女同士の勝ち負けに拘っているのかしら」

マミ「気にしてないと言えば嘘になるけど、そんな理由で戦うほど私は落ちぶれてないわよ。
  どうしても、確かめたい事があるの」

 マミは躊躇い混じりに続ける。 

マミ「ちょっと信じ難いけれど……あなたが連れてるその子、ただの猫じゃないそうね?」

 答えに詰まる。
 ほむらは攻撃の気配を察知した。

ほむら「やめなさい、巴マミ」

マミ「ごめんなさいね」

 またしてもリボンが飛ぶ。ただし、今回の標的はエイミーである。
 リボンは宙を舞い、エイミーはからくも難を逃れる。ほむらが瞬時に移動し、庇ったのだ。
 だが、移動した先で、待ち構えていたようにリボンが出現し、ほむらとエイミーは共々、
捕まってしまう。
 マミが戦いの場に歩道橋を選んだのは、このためだった。移動場所を制限した上で、橋の影に
沿ってリボンを潜ませる。彼女達を捕まえるには、この上なく好都合な場所である。

マミ「今、時間を止めたわね」

 ほむらは言葉を飲み込んだが、その表情は驚きを隠せない。

マミ「時間操作の魔術、キュゥべえの言った通りね」

QB「確実すぎる攻撃予測。瞬間移動。予言。これらが全て同じ答えを示していたからね」

ほむら「やっぱり、昨日の一件も見てたのね」

QB「君がいつも追い詰められるギリギリまで時間を止めなかったのは、能力を隠したかった
 だけじゃない。連続して能力を使う事ができないからだろう?」

マミ「さあ、教えて頂戴。この子が魔法少女と言うのは本当?
  猫の姿でいるのはどうして? どんな魔法で姿を変えたの?」

 マミは紛れも無く、エイミーを見て、魔法少女の疑いをかけた。
 当然ながら、動物は魔法少女になれない。
 魔法少女の素質を持ち得るのは、第二次性徴期の少女である。

 ほむらは答えない。
 するとキュゥべえがサッと駆け出し、リボン伝いにエイミーの前まで登った。

ほむら「やめて! その子に近付かないで!」

 ほむらが力任せにもがくと、リボンは自動的に締め付ける力を強めて、ほむらの体を軋ませる。

マミ「動かないで!」

ほむら「放して! 放しなさい! 巴マミ!」

 ほむらの反応は、マミの中の疑惑を確信に変える。
 マミは拘束を解かなかった。
 キュゥべえの前足が、エイミーの首輪に触れる。すると、首輪は光って形を変え、ピンク色の
宝石になった。
 ソウルジェムだった。
 それは猫の首を離れ、地に落ちて転がり、垂直に立って止まる。
41: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/06(水) 01:26:07.42 ID:qhCRi9rlo
 突如、エイミーが暴れだす。マミは一瞬戸惑ったが、猫に怪我をさせる前に、解放する。
 エイミーが一目散に逃げ出す。驚きを感じつつも、マミはそれを見逃す事にした。

 キュゥべえは転がったソウルジェムを追って、もう一度触れる。
 ソウルジェムが輝きを増し、うねる水面のような模様を浮かべた。

QB「この魔力のパターンは……やっぱりね」

マミ「もういいかしら、キュゥべえ」

QB「十分だよ、マミ。お手柄だね」

 マミはほむらの拘束を解く。
 するとほむらは間髪いれず時間を止めて、ソウルジェムを奪い返した。

『バレちゃったね、ほむらちゃん』

マミ「! その声」

 ソウルジェムがテレパシーを発する。その声は鹿目まどかのそれだった。



まどか「ほむらちゃん! マミさん!」

 その時現れたのは人間の方のまどかだった。
 名前を呼びつつ、大慌てで彼女達の元へ駆けつける。一目見て、ただ事ではない様子である。
 ほむらは間の悪さを呪うが、『いつものスケジュール』通りなら、まどかが助けを呼びに来る
時間である事も知っていた。

まどか「お願い、助けて、病院に魔女が! 今にも孵化しそうなの、さやかちゃんが残ってて」

ほむら「そう」

マミ「まさか、結界の中に!?」

 マミの顔が青ざめる。

マミ「なんてこと」

 魔女の結界の内部は複雑な迷路である。さやかの元へ辿り着くには相応の時間がかかるだろう。
せめて、内部からテレパシーで誘導でも出来れば、話は別なのだが。
 マミにしてみれば、さやかの救出はもはや絶望的に思えた。

 まどかは取り乱している。今にも泣き出しそうな彼女に、ほむらは言う。

ほむら「愚かね」

 まどかの顔が引き攣る。

ほむら「何度も忠告したはずよ。後悔する事になるって。あなた達は関わるべきじゃなかった」

 ほむらは背を向けて瞬時に姿を消す。病院に向かったのだ。
 彼女の頭の中にあるのは、さやかの身を案じる気持ちではない。
 エイミーの秘密が露見してしまった今、その場に残りたくない気持ちが強かったのだが、
後に残ったまどかがマミと何を話すのかは、気がかりだった。

『ほむらちゃん、間に合う?』

 ほむらの手の中で、ソウルジェムが尋ねる。

ほむら『大丈夫、安心して。間に合わせるから』

 彼女はそもそも、時間的猶予を正確に知っているのだ。焦りは無かった。
42: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/06(水) 01:34:18.51 ID:qhCRi9rlo
 病院。魔女の結界内部。

 ほむらは魔女の発生する時期を知っているが故に、出現場所に待ち構えてすかさず仕留める事も
あれば、逆に、今回のように他の用事にかまけて、ギリギリまで魔女を放置する事もしばしば有った。
そのため他の魔法少女に獲物を譲る事も度々あるのだが、今回も例に漏れず、同じ事が起きようと
していた。

 ほむらが到着すると同時に、お菓子の魔女・シャルロッテが孵化する。
 さやかは予定通り無事だが、そこに杏子が居たのが予定外だった。
 杏子は先日の一件以来、見滝原で生活していたが、今ここに居合わせたのは全くの偶然である。
 ほむらは気付かれないように、彼女の戦いを見守る事にした。

杏子「なんだぁコイツ? 歯応えがありゃしないね」

 杏子はシャルロッテの最初の形態を串刺しにする。
 そのまま空中へ放り投げて、追い討ちをかける。シャルロッテはいとも容易く細切れになった。

杏子「……なにィ!?」

 倒したと思った瞬間、シャルロッテはその牙を剥く。人形のような体の残骸から巨大な顔が
飛び出し、杏子に襲い掛かる。

 もしも、この奇襲で彼女が命を落とすなら、ほむらは時間停止の魔法で救う用意があった。

『大丈夫。杏子ちゃん、ちゃんと防いでる』

 それを聞いて、ほむらは警戒を解く。
 その言葉通りに、杏子は自分に迫る巨大な口を、槍を伸ばして弾き、難を逃れた。

 最も危険な攻撃を防いだ杏子は、何度も復活するシャルロッテを切り刻み続け、順当に勝利した。
 この時期の杏子は、その実力も、精神面も、魔法少女として突出した強さだと言える。

 戦闘を終えた杏子は、見知らぬ闖入者に目をやる。

さやか「誰だか知らないけど、ありがと。もうホントに死ぬかと思ったよ」

杏子「あんた、結界に入れるって事は……『素質』があるってわけ?」

さやか「え、まあ、そうみたいだけど」

杏子「魔法少女でもないアンタが、何考えて結界に入ったのか知らないけどさぁ」

 杏子は槍をさやかに向けた。

杏子「おふざけで首突っ込んでるなら、今すぐ手を引きな。
  あんたみたいなやつが、やれ正義だ人助けだとか言い出すのが、あたしは一番むかつくんだ。
  万が一、そんな理由で契約でもしたら、あたしは許さない。いの一番にぶっ潰すよ」

 さやかは呆気にとられてしまった。
 そうこうしてる内に結界が消える。杏子は槍を引き、変身を解いた。

杏子「……うん?」

 見回すと、そこには見知った顔がいた。暁美ほむら、巴マミ。
 勿論、マミの横にはまどかとキュゥべえもいた。
46: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/06(水) 20:39:19.78 ID:qhCRi9rlo
 少し未来の話。二週間ほど先の見滝原市。ほむらにとっては過去の体験。一つ前の時間軸。

 ほむらはワルプルギスの夜に敗北した。
 彼女の目の前で、まどかが契約を結ぶ。

まどか「全ての魔女を、生まれる前に消し去りたい。
   全ての宇宙、過去と未来の全ての魔女を、この手で」

まどか「神様でも何でもいい。
   今日まで魔女と戦ってきたみんなを、希望を信じた魔法少女を、私は泣かせたくない。
   最後まで笑顔でいてほしい。それを邪魔するルールなんて、壊してみせる、変えてみせる。
   これが私の祈り、私の願い。さあ、叶えてよ、インキュベーター!」

 眩い光に包まれ、まどかは魔法少女になった。
 壮大な願いと、それに見合う強固な意志。彼女の祈りはそれまでのどんな魔法少女をも
超えて、結実した。
 その途方も無い魔力が、宇宙そのものを標的にして、弓の形を作り上げる。

ほむら「イヤーッ!」

 口を衝いて出た声。感情任せのそれは悲鳴に近い。

ほむら「やめて……やめてよ、お願いだから」

 パニックに陥りそうな思考を、頭を振って繋ぎ止める。
 まどかが弓を下ろすと、渦巻く雲の隙間から夕陽が差し、彼女達を赤く染めた。

ほむら「まどか、その願いがどんなに恐ろしい事か、分かってるの?
   人の精神は、永遠を生きる事はできない。全ての時間と全ての宇宙へ干渉し続ければ、
   きっとあなたは、あなたの自我さえも失って、宇宙の歯車に成り果ててしまう」

まどか「いいんだよ、ほむらちゃん。わたし、それで良いって思えたの。
   みんなの涙が間違いじゃなかったって、証明できるなら」

 まどかは微笑む。どこか寂しさを帯びた笑顔だった。

ほむら「だからって、あなた一人が犠牲になっても良いって言うの?
   あなたを大切に思う家族も、私の事も、みんな置き去りにして」

 涙が流れた。言葉につられて、感情の箍が緩む。

ほむら「きっと私はもう、あなたがいない世界では生きられない。
   繰り返した時間の中で、数え切れない人を犠牲にして。
   それでもあなたが消えてしまうなら、もう私には未来を生きる資格が無い」

 嗚咽が漏れる。自分の足を押し潰す岩盤にすがるようにして、息を整える。
 涙で霞む目もそのままに、顔を上げ、最後の懇願をする。

ほむら「お願いだから、私を置いていかないで」

まどか「ごめんね。ホントにごめん。
   わたし、ほむらちゃんの事も、パパもママも皆大好きで、絶対に守りたい。
   絶対に、誰も見捨てたりしたくない。
   だから、どうしても私がやらなきゃいけないの」

 揺るがない決意。まどかは振り返り、ワルプルギスの夜を睨む。
47: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/06(水) 20:52:02.24 ID:qhCRi9rlo
 胸の奥が泡立つような感覚が、ほむらを襲う。
 急激な熱気が、思考ごと麻痺させるような熱量でつま先から頭まで昇ると、まるで走馬灯のように、
スローモーションの進行で、今という瞬間が本当に取り返しの付かない終わりに向かっている事を、
ほむらに警告していた。

 コツン。
 ほむらは最後のグリーフシードを使った。
 彼女はこれまでの経験から、最後の最後という瞬間までは必ず、グリーフシードを一つ
残すようにしている。
 それを今、使い切った。そうして役目を終えたそれは無造作に投げ捨てられ、一度地面で
跳ねた後、そのまま空中で静止した。
 ほむらが時間を止めていた。

 ダメージを受けた足に魔力を注ぎ、歯を食いしばり、岩盤から脱け出す。
 涙の跡を拭い、覚悟を決めて、立ち上がる。
 歩を進め、背を向けたまどかの向こう、足場になりそうな鉄塔に飛び移り、そうして、
もう一度彼女を見据える。

 まどかは決意の表情のままに凍りついている。もはや彼女にはどんな言葉も届かないだろう。
彼女は彼女の自己犠牲が、ほむらをも救うと信じている。だが、仮にそうであったとしても、
それはほむらが望んだ形とは違うのだ。

 時間が動き出す。夕焼けは刻々とその色を変えている。
 まどかは立ち塞がるほむらの姿を認めたが、何も言わず、ただ強い眼差しを向けている。
 ほむらは呟くように、しかし鋭い語気を込めて、宣戦布告を始める。

ほむら「まどか、あなたがあくまで破滅に向かうなら、私は私の全てを賭けて止めてみせる。
   何を犠牲にしても、構わない。あなたを救うためなら、私は手段を選ばない!」

 再び、時間停止。
 凍りついた時の中を、一歩ずつ、確実に距離を詰めていく。

 ほむらの狙いは再び時間を巻き戻す事である。まどかの恐ろしい願いを無かった事にするには、
それしかない。
 ただしその前に、確実にまどかを封じなければならない。彼女を放っておけば、その願いは
巻き戻した世界にまで影響を及ぼすだろう。

 まどかの目の前で足を止め、ソウルジェムに触れる。
 まどかに対する実力行使。その、もしもの時の備えとして麻酔や睡眠剤の準備もしていたが
それが有効なのはあくまで人間のまどかに対して、である。
 魔法少女となったまどかを制するには、もはやソウルジェムを砕くしかない。
 巨大な魔力を秘めたそれは、今はコンパクトな形状で彼女の胸に収まっている。

 銃口を向け、引き金を絞る。

ほむら「また、あなたを殺すのね」

 罪悪感が、引き金を止めた。
 自分の手で殺すか、死より恐ろしい結末を見届けるか。これまでほむらが辿ってきた経緯を思えば、
迷う余地は無いはずだった。
 だが、引き金が動かない。

 逡巡。
 撃てば、『この』まどかを失うという事以上に、何か重大な欠落を生む。そんな予感がした。

ほむら「時間を戻したその先で、またあなたと出会ったとしても」

 一体、どんな顔をすれば良いのか。

 まどかを手にかけるのは一度目ではない。前回と違うのは、それがまどか自身の意志に
沿っているか、否か。
 今回ばかりは全くのエゴだった。まどかの決意も、まどか以外の全ての幸福もそっちのけにして、
ただまどか一人を、自分が望む結末に収めるためだけに、再び殺害しようとしている。
 そうして今ここでまどかの意志を否定してしまえば、その結果出会う『新しい』まどかには、
まどかの意志が紡がれないのではないか。
 それでは、ただまどかの姿をした人形に等しいのではないか。自分自身のエゴが作り出す
傀儡同然になってしまうのではないか。

 銃口が定まらない。力を込めて手の震えを抑え込もうとするが、仕舞いには肩まで震えだす。
目を瞑り、結局は銃を下ろした。

まどか「ありがとう、ほむらちゃん」

ほむら「まどか!?」

 時間は動いていない。
 止まったままの時間の中で、まどかは微笑みかけてきた。
 なんとなく、予感はあった。もはや自分の力の及ばない領域に、まどかは居るのだと。
48: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/06(水) 20:53:30.08 ID:qhCRi9rlo
まどか「ほむらちゃん優しいから、簡単に撃てないって事、分かってたの。
   私のために、ずっとずっと頑張ってくれたほむらちゃんだから、
   きっとこんな風に悩んじゃうって事も」

 そう言いながら、両手を広げる。

まどか「でも、いいんだよ。
   わたし、ほむらちゃんに決めてほしい。
   今のわたしがあるのは、全部ほむらちゃんのおかげだから」

 まどかはまた、あの寂しい笑顔を浮かべていた。

まどか「ホントはね、わたしにも分からないんだ。
   どうすれば皆が幸せになれるのか。何が皆の幸せなのか。
   でも、正しくても、間違ってても、今が決める時なんだと思う」

ほむら「まどか……」

まどか「お願い、ほむらちゃん」

 時間が動き出す。
 ほむらの盾の内部、そこに組み込まれた砂時計。
 その砂が今、全て落ちようとしていた。

ほむら「私は、私は……」





 結局、ほむらは何も選ばなかった。ただ、咄嗟にまどかを突き飛ばし、ソウルジェムを奪い
――時間を巻き戻した。
49: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/06(水) 20:56:18.77 ID:qhCRi9rlo
 ほむらが盾の中の砂時計を返す時、時間遡行の能力が発動する。
 帰る場所はいつもあの病室。時間を超えて戻ってこれるのは、ほむらのソウルジェムだけ。
ほむらはそう理解していた。
 しかし、目を覚ましたほむらの手には、自身のソウルジェムと、もう一つ、鹿目まどかのそれが
収まっていた。

 まどかはその願いにより、時間の概念に縛られない能力を持っていた。
 そのため、ほむらの能力に『乗り合わせて』時間遡行を成功させたのだが、ほむらがそれを
理解するには、もうしばらくの時間を要する。

 ともあれ、ほむらは目の前にある魂の容れ物がどんな状態にあるのか確認する事にした。
 枕元の眼鏡をかけて、ピンク色のソウルジェムを見る。
 それが時間を戻す前よりも穢れを溜めている事は、一目見て分かった。しかも、今なお、進行形で
穢れの蓄積は続いていた。

ほむら「まどか!? まどか、しっかりして」

 慌てて声をかける。
 ソウルジェム自体に聴覚は備わっていないのだが、思わず、そうしてしまった。

まどか『ほむらちゃん……ほむらちゃん、どこ……?』

 呼びかけに答えたのか、どうか。
 まどかはか細い声で――いや、テレパシーで、ほむらを呼んでいた。

ほむら『まどか! 聞こえるの?』

まどか『ほむらちゃん!?』

 イントネーションが変わった。ほむらに気付いたのだ。

まどか『わたし、死んじゃったの? 何も見えないし、感じない、どうして――』

ほむら『大丈夫、あなたのソウルジェムは無事よ。
   ただ、ごめんなさい。あなたの体は、前の時間に置いてきてしまった』

 それからほむらは謝罪の言葉と、いたわりの言葉を繰り返しかけ続けた。
 まどかは最初驚いていたが、状況を把握すると、それほど悲観もしていないようで、しばらくの後、
唐突な言葉を投げかけた。

まどか『ほむらちゃん、皆に会いに行こう? 時間が戻ったなら、皆いるんだよね』

ほむら『それは――』

まどか『そうだ。わたし、わたしに会いたいな。えへへ、今頃、何してるんだろ』

ほむら『! 待って、それはダメ』

 ほむらはその経験から、良くない事が起こると直感した。

 ほむらは何度も同じ時間を繰り返す中で、自分の能力についていくらか分析をしていた。
試して分かった事もあれば、新たに疑問を抱き、仮説を立てている部分もある。

 ほむらが時間を戻す時、時間を超えてソウルジェムだけが病室へ戻る。
 それ以外の物は全て前の時間に置いてくる。身に着けていたもの、盾に格納した火器、そして
ほむらの肉体さえも全て置いて、ソウルジェムだけが時間を遡り、そこで一ヶ月前のほむらの
肉体に合流する。

 ただ、今の自分自身はソウルジェムに収まっているが、一ヶ月前の自分は違う。当時は紛れもなく
普通の人間だったのだから、その肉体は抜け殻ではなく魂を有するはずである。そこに疑問が有った。
 時間を戻してソウルジェムと肉体が合流した時、そこに二人のほむらが存在する事になる。だが、
実際にはほむらの意識は二つに分裂することなどなく、常に一つの魂として在り続けている。
 それは何故か。
 おそらく、同じ魂が二つ重なると、二つあったものが一つに融合してしまうのだろう。
ほむらはそう考えていた。
50: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/06(水) 20:59:23.17 ID:qhCRi9rlo
 では、このまどかのソウルジェムが『今のまどか』に触れれば、どうなるか。
 同じ事が起きるのではないか。
 あらためてキュゥべえと契約するまでもなく、魔法少女まどかが復活するのではないか。
 そうなれば元の木阿弥ではないか。

ほむら『まどか、私の予想通りなら、あなたは自分の体に戻れるかもしれない。でも待ってほしいの。
   私達には一ヶ月の猶予がある。あなたが魔法少女として体を取り戻すのは、最後の答えを
   迫られるその時まで、待ってほしい。それまでに、今度こそ、私が何とかしてみせる。
   あなたを悲しませる全部を、解決してみせる。あんな悲しい答えを出さないように、
   希望を見つけてみせるから』

 そう言ってどうにかまどかを説き伏せて、ほむらは最後のチャンスを得る。
 今度の時間で決着をつける。ワルプルギスの夜を倒し、諸々の問題も全て解決する。そうして、
まどかの願いを取り下げさせてやる。
 薄氷を踏むような危うさだが、やるしかない。できなければ、まどかはまたあの恐ろしい願いを
叶えようとするだろう。

 ただ、当然の事ながら、体を失ったまどかをそのまま放置するわけにもいかなかった。
 まどか自身が楽観視していても、ほむらから見てあまりに可哀想だったし、五感を全て失った
ストレスでいずれ穢れを溜めこんでしまうのは、想像に難くなかった。
 当面、本人の体の代わりとして、どこぞの誰かの死体でも借りる事をほむらは考えたが、
たまたま試したエイミーの体で上手くいったため、えげつない手段は取らずに済んだ。

 本来、抜け殻の体を操って動く魔法少女達は、条件を満たせば、生きたままの他者の体を乗っ取る
事も、可能だったのだ。
 相手の魔力を大幅に上回っている事。
 弱点であるソウルジェムを、相手の体に十分近づける事。もちろん、直に接触するのが最良だが。
 これらを満たせば、相手が人間である必要さえない。まどかはエイミーをいとも容易く操り、
自らのソウルジェムを首輪の形に変化させ、取り付けた。そうして猫の生活が始まった。

 普通なら、元の体が死んでしまうなど、不都合が多く、実行に移す者は滅多にいないのだが、
このまどかにはうってつけの方法だったと言える。
 エイミー自身もすぐほむらに懐き、時折、体の自由を奪われる事にも慣れて、怖がらなくなり、
まどかの良い宿主になっていった。
57: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/09(土) 02:47:12.06 ID:VUotToyTo
 エイミーは願いの副作用により、過去から未来に渡る全ての可能性について、覗き見る能力を
持っていた。
 本来の、魔女を消す能力は封印されているが、ちょっとした予知程度は猫の体のままで十分に
可能である。今までほむらの戦闘を助けたのも、この能力だった。
 最初の頃は、テレパシーで未来を教えた。
 慣れるとすぐに、目を合わせて直接映像で伝える事が出来るようになり。
 今では目線を外してもしばらくの間、未来視の能力を貸す事ができる。

 活用すれば万能に近い能力なのだが、エイミーは努めてフォロー役に徹していたため、
戦闘で言えば数秒先の未来を教えるに留まっていたし、将来の予知に関しても消極的だった。
 ――結局、彼女は潜在意識でも自らの能力を否定して、本当に知りたい未来を予知できなくなる
のだが、それはまた先の話になる。

 時と場所を二週間後の病院に戻す。
 この事態はエイミー達にとっても、全くの想定外である。
 シャルロッテの結界が解けて、一堂に会する魔法少女達。
 杏子は開口一番に、悪態をつく。

杏子「なにさ一体? がん首揃えちゃって、さ」

まどか「さやかちゃん! さやかちゃん、大丈夫!?」

 見知らぬ恩人に目もくれず、まどかはさやかの元へ駆けつける。

さやか「大丈夫、大丈夫。ちゃんと生きてるから。ほら、落ち着いて」

マミ「佐倉さんが助けてくれたのね? 良かった、本当に……」

杏子「関係ねぇよ、そんなやつ。あたしの目当ては、コレ」

 杏子はそう言うと、グリーフシードを拾って笑う。

マミ「相変わらずね。でもお礼を言わせて頂戴。本当にありがとう」

杏子「ふん」

マミ「それで、その……暁美さん? 聞かせてくれるわよね。あなた達が何をしているのか」

 マミはどこか気まずそうに、おずおずとした態度で切り出した。
 先ほどと違い、マミはこの場所で戦う準備は無い。ほむらがあくまで白を切るなら、それ以上
マミに追求する手段は無い。
 真正面から戦って勝てない、というのは十分に分かっていたし、猫を手荒く扱った事も、
後ろめたく感じていた。

マミ「今話しにくい事なら、場所を変えても、人を選んでもらっても構わないわ。
  でも私にも話したい事がある。後回しでも良いの。聞かせてほしい」

ほむら「結構よ」

 ほむらはキュゥべえを見て考える。
 あいつに気付かれてしまった今、だんまりを決め込んでも意味は無い。
 あいつは一言聞かれれば、事実に近い所までぺらぺらと言い当ててしまうだろう。
それよりも、マミが満足するだけの回答を、必要最小限に絞ってこちらから与えた方が良い。
 それに――

ほむら「この場にいる全員に聞いてほしい。これは魔法少女の根幹に関わる話だから」
58: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/09(土) 02:50:50.88 ID:VUotToyTo
ほむら「巴マミ、あなたも声を聞いたように、このソウルジェムは鹿目まどかのものよ」

 ほむらが手の中のソウルジェムを露にする。
 すると、それはピンクの光を明滅させて、テレパシーを発した。

エイミー『えへへ。わたし、猫の方のまどか。エイミーって呼んで』

まどか「えっ、ええっ!?」

ほむら「……バカ」

さやか「猫、って、まどかの声にしか聞こえませんけど?」

ほむら「彼女は紛れもなく人間よ。まどか、ややこしくなる事を言わないで」

エイミー『ええー、そうかな? わたしが二人いるのに、まどかって呼んだら、
    わかんなくなっちゃうよ』

マミ「それもそうね」

杏子「その猫のエイミーちゃんはさ、なんでソウルジェムから喋ってんのさ?
  そこに居るその子が本体なのかい?」

 この時、杏子はまどかと初対面だったが、彼女達を交互に見比べて怪訝そうにしている。

QB「まどかは僕と契約してない。これは事実だ。
 だけど、そのソウルジェムは彼女の魂と同一のパターンを持っている」

杏子「なんだそりゃ?」

QB「今ここに、まどかが二人いるって事さ」

 杏子はその答えに引っ掛かりを覚えたが、それが何なのか分からない。

ほむら「私もこの子も、未来から来た。エイミーの方は未来から来たまどか。だから二人いるの」

さやか「未来から、って……」

ほむら「信じてもらわなくても結構よ」

マミ「信じるわ」

 意外な反応にほむらは驚き、声の主をまじまじと見つめる。

マミ「信じるわよ。そういう魔法なんでしょう? そうじゃなきゃ説明できない」

ほむら「そう」

まどか「わたし、未来では魔法少女になってるの?」

ほむら「そういう未来もあった、それだけのことよ」

 ほむらは全員を見回す。話の核心に入る事にしたのだ。

ほむら「もう一つの疑問に答えるわね。この子、ええと、エイミーが、何故猫の振りをしてたのか」

 ほむらは慣れない調子で名前を選んだ。

ほむら「彼女は自分の肉体を失って、ソウルジェムだけの状態で生きている。
   猫の姿は借り物なの。野良猫の体をソウルジェムで操って生活してるだけ。
   ソウルジェムを引き剥がされた時、猫が急に逃げ出したのはそのせいよ」

 絶句する一同を余所に、続ける。

ほむら「彼女の事を可哀想と思うかしら。
   でも、私達魔法少女は皆、彼女と同じなのよ」

ほむら「そいつと契約するという事は、魂を抜き取ってソウルジェムに変えるという事。
   元の体は抜け殻に過ぎない。ソウルジェムの魔力で死体を操っているだけ。それが私達」

ほむら「エイミーはソウルジェムを引き剥がされて、ただの猫に戻った。
   私達が同じ事をすればどうなると思う?
   百メートルも離せば十分。それだけでコントロールを失って、死体が一つ転がるわ」

 キュゥべえを問い詰めるマミ。
 白々しい弁解を始めるキュゥべえ。
 それに激しい剣幕で詰め寄る杏子。
 契約をしていない二人は、恐ろしい事実に肩を震わせていた。ほむらにとって、それが収穫だった。
59: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/09(土) 02:55:31.75 ID:VUotToyTo
 それから数日。
 彼女達は、今まで繰り返した時間を概ねなぞるように、代わり映えのしない、それでいて
彼女達にとって都合の悪い出来事を、淡々と積み重ねていた。
 つまり、さやかは既に魔法少女の契約を交わしてしまったし、その直後から何度か杏子と諍いを
起こしていた。
 納得して契約したと言いつつも、自分の体をゾンビと呼んで自暴自棄な戦いをしては、マミに
窘められる事もあった。
 ほむらとも折り合いが付かず、別行動を取る事が多かった。

 まどかの自宅。深夜。

まどか「ママ、ちょっといい?」

洵子「おーう、まどか。どうした?」

まどか「なんだか、寝れなくて」

 洵子は遅めの晩酌中だった。
 テーブルの向かいにまどかが座る。

まどか「友達がね、大変なの。
   わたし、助けてあげたくて、色んな事しなくちゃって思うんだけど、全然力になれなくて。
   邪魔にはなりたくないけど、何もしないのも嫌。でもわたし、遠ざけられてるみたいで。
   友達の事、大事なのに、役に立てない。わたし、どうしたらいいんだろう」

洵子「まぁどかぁ」

 悩むまどかを見て、洵子はおかしそうに笑う。

洵子「あのなぁ、そこまで何でもかんでも、自分で背負い込む必要は無いんだよ」

まどか「そう、なのかな」

洵子「そうだよぉ。
  いいかい、上手に生きるコツはね、バチが当たらない程度に少しだけ我が儘をすることさ」

 グラスを回して、言う。

洵子「人間ってのは誰でも何か抱え込んでるもんさ。
  だけど、ふとした気まぐれでそいつを台無しにもできる。
  タツヤだって、その気になれば壊せるオモチャを持ってるんだ。
  それが大人なら、もうちょっとでかいもんを抱えてる。
  誰だってそう。人によって、ちょろーっとスケールが違うだけ。
  ま、それがでかくなるほど責任も重くなるんだけどねぇ。そうなると、まるで人のために
  尽くすのが当然、そうしないのが悪い事に思えちまうけど、だからって自分の気持ちを
  空っぽにして、尽くすためだけに生きるのが正しいかってぇと、そいつぁ全然違うのさ」

まどか「ふぅん……」

洵子「だからさ、まどか、あんたにも身の丈にあったモノの考え方ってもんがある。
  そいつを大事にしてやらないと、却ってダメになっちまうよ」

まどか「何もしないほうがいいの?」

洵子「そうとも限らない。まどか、あんたはどっちだい?
  何もしないのが苦しいなら、その子の邪魔になってみたって良いんだよ」

まどか「えぇっ、邪魔しちゃうの?」

洵子「その子は大事な友達なんだろ? なら、ちょっとくらい我が儘を聞いてもらったって良いのさ。
  重すぎるものを背負ってダメになるくらいなら、少しだけ我が儘になれば良い。
  それで失敗する事もあるし、後になって正解だったって分かる事もある。
  だからさ。大人になる前に、我が儘の仕方も勉強しときな」
60: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/09(土) 02:59:33.58 ID:VUotToyTo
 ほむらの自宅。

ほむら「それで、私にどうしろって言うのよ……」

エイミー「えへへ、ほむらちゃんは全部解決してくれるんだよね?
    だったら、さやかちゃんの事も助けてあげなきゃね」

ほむら「人の恋路を邪魔するなんて、趣味が悪いわよ」

エイミー「でも、やらなきゃ、さやかちゃんは駄目になっちゃうから」

 エイミーの中のまどかは、やけに上機嫌だった。
 彼女は相変わらず猫の体を借りて、ほむらの相談相手を務めている。

 ほむらはつくづく恨めしく思う。
 美樹さやかには何度も警告を重ねて、予めソウルジェムの真実も伝えた。にも関わらず、
その意志を変える事はできなかった。
 まどかへの影響も大きい。全てを救う、その約束も今や風前の灯になってしまった。

ほむら「確かに、私は、なんでもする覚悟よ。
   たった一つの祈りのために、他の事は諦める。そう言った事もある。
   けど、だからってプライドまで捨てるつもりは無いわ」

エイミー「でも、それしか方法は無いんだよ。わたし、全部見えてるもん」

 エイミーの未来視は、濫用すれば穢れを溜め込むばかりか、精神的負担も相当に抱え込む事になる。
 彼女は以前、キュゥべえの目を通して、過去の魔法少女達の運命を目撃しているが、それは
思い返すだけで吐き気が込み上げるような凄惨な体験であった。
 未来視の濫用はそれと同じ結果を引き起こす。
 さやかの未来を占えば、それを試した数だけ彼女の悲しみと不幸な結末を追体験する事になる。

 ほむらもそれを良く知っていた。繰り返した時間の数だけ目撃した、まどかの死。それは悪夢
以外の何者でもない。
 だから、こうしてエイミーの未来視が惜しげもなくさやかのために使われる事を、羨ましくも、
また、少々面白くない事だとも感じてしまう。

 ともあれ、そうした事情により、エイミーが積極的に未来視を活用するケースは稀だったのだが、
それが今回、さやかの件でほむらが行き詰りを見せたため、珍しくエイミーが主導権を取って、
目指すべき未来と、そこに至る方法を示したのだ。

 しかしその内容がまた、ほむらにとっては甚だしく不服だった。
61: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/09(土) 03:01:15.95 ID:VUotToyTo
 バス停。
 夜も更け、強い雨の振る中、まどかとさやかは二人、雨宿りをしている。

 さやかは先刻、魔女との戦闘を終えたばかりである。彼女は相変わらず無茶な戦い方をして、
疲弊していた。マミの援護が無ければ殺されていたかもしれない。
 帰り道の違うマミと別れた後、雨に打たれ、屋根の付いたこの場所に逃げ込んだ。

まどか「さやかちゃん…あんな戦い方、ないよ」

 まどかはさやかを気遣うばかりに、彼女の戦いぶりに口を出した。
 それが彼女の憤りに火を付けてしまう。
 彼女は自分勝手な不満や、妬みを、親友に洗いざらいぶつけて、捨て台詞を吐く。

さやか「ついて来ないで」

 そう言って彼女は雨の中を駆けていった。
 まどかはショックで固まってしまう。

 まどかは悲しみで体が冷え切っていくのを感じた。
 まどかの知る彼女は、一見がさつなようで、その実繊細な、本当の優しさを持った親友だった。
 彼女にあんな酷い事を言われたのは初めてだった。もしかすると、あんな悪態でさえも、まどかを
危険から遠ざけるための嘘なのかもしれないと思う。その思いつきはますますまどかの足を重くする。

 まどかは、それでもさやかを追った。
 それは頭の隅に母の言葉が残っていたからかもしれない。
62: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/09(土) 03:04:49.56 ID:VUotToyTo
 翌日。教室。授業開始前。

 さやかは動揺していた。
 昨日、家にも帰らずふらふらしてるところをまどかに捕まって、結局、こうやって
登校するまで半ば無理やりに付き添われたのだ。
 まどかには随分ひどいことを言った。
 教室には恭介がいる。すぐ後ろの席に仁美もいる。

 昨日、仁美から、宣戦布告を受けたばかりだった。彼女は今日の放課後に告白する。
 皆、何食わぬ顔をしていたが、さやかは気が気でなかった。

 すると思いがけず、恭介がさやかの前に来て、言う。

恭介「さやか、ちょっといいかな。相談があるんだけど」

さやか「えっ」

 二人は内緒の話ができるように、場所を変えた。



恭介「実は昨日……あの転校生の子に、告白されちゃって」

さやか「……は?」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 一日遡って、昼休み。屋上。

恭介「話って何?」

ほむら「話というのは、その」

恭介「君はさやかと良く一緒にいるよね。彼女の事かい」

ほむら「そうじゃなくて、ええと」

恭介「?」

ほむら『まどか、やっぱり嫌よ、こんなの』

エイミー『頑張って!』

 周囲に猫の姿は無い。ほむらは後ろに手を組んで、もじもじとしているが、その手にピンクの
ソウルジェムが握られていた。
 この件でエイミーは、自身が同行する事を絶対条件としたが、校舎に猫が入るわけにもいかず、
こんな事に魔法を使うのも憚られたので、この方法を取る事になった。
 エイミー、というか、まどかのソウルジェムは、ほむらの五感を共有して一部始終を見守っていた。

ほむら「ごめんなさい。ええと、なんでもないの。忘れて頂戴」

恭介「ええっ?」

エイミー『ダメだよ!』

 まどかのソウルジェムが光り、指輪に変化して、左の中指に嵌る。
 それだけで、ほむらは体の自由を奪われてしまった。

ほむら「……と思ったけど、やっぱり聞いて!」

恭介「??」

 まどかが操る暁美ほむらが、態度を豹変させる。
 深呼吸を一つ。それから、両手を胸の前で組んで、はっきりと告げる。

ほむら「わたし、あなたの事が好きです。もし良かったら、付き合ってください!」

 風になびく髪。懇願するような上目遣い。
 目を潤ませてるのが、ほむらの意識にも分かる。

ほむら(まどかも案外、役者ね)

 客観的には可憐な美少女の告白そのものである。大抵の男なら篭絡できそうな威力があった。
案の定、恭介も満更ではなさそうな様子で、顔を真っ赤にしていた。
63: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/09(土) 03:06:15.76 ID:VUotToyTo
恭介「ご、ごめん。ちょっと、急にそんな事言われても」

 あれ、とまどかは内心思う。

恭介「ごめん、また今度」

 恭介は逃げるようにその場を去った。

エイミー『やっぱり、いきなり過ぎたかな』

 恭介を見送ってから、テレパシーで呟く。

ほむら『あなた、結果が先に見えてるんでしょ。それとも本当にオーケーさせるつもりだったの?」

エイミー『んー、そうじゃないんだけど。それでも信じられなくって』

 そう言って、彼女は髪をかきあげてみた。

エイミー『だって、こんなに可愛いのに』

ほむら『……早く体のコントロールを返してくれないかしら。いい加減怒るわよ』


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


恭介「自分でも、男らしくないと思うんだけど、なんか、どうして良いかわかんなくて。
  冗談めかした感じでもなかったから、返事しなきゃいけないと思うんだけど……」

恭介「さやかはあの子と良く一緒にいるだろう? どういう子なのか、教えてくれないかな」

 さやかは何も言えずに、その場から逃げ出してしまった。



さやか「どういうことよっ!?」

 教室に戻ったさやかは、ほむらの机に両手を叩きつけ、怒鳴った。

ほむら「どうもこうも、私の勝手よ」

さやか「あんた、どれだけ人を馬鹿にしてんのよ……!」

 ほむらは横を向いて不機嫌そうにしている。
 横目にさやかを見て、言う。

ほむら「あなたが怒る理由が分からないわ。そんなにあの子が気になるなら、
   あなたも言ってみれば良いじゃない」

 それ以上の追及は出来なかった。
 さやかの視界の端で、仁美がピクリと反応するのが見えたからだ。
64: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/09(土) 03:07:56.96 ID:VUotToyTo
 また、昼休み。屋上で。

 今度は、さやかが恭介を呼び出していた。

さやか「恭介、あんなやつと付き合っちゃダメだよ」

恭介「あんなやつって、なんでそんな言い方するんだい?」

 さやかは背を向けた。

さやか「あいつはからかってるだけだから。あたしには分かる。それに、他にもね、恭介に
   告白しようとしてる子がいるんだよ」

恭介「それって」

 恭介は怪訝そうな顔をした。

さやか「今日の放課後にも告白するって、言ってた。その子は本当に恭介の事好きで、
   ずっと真剣に悩んでて、やっと決心したの。だから、ちゃんと答えてあげて」

恭介「もしかして、さやかは自分の事を言ってるのかい?」

さやか「え……ち、違う! あたしはそんなんじゃないよ。恭介だって知ってるでしょ?」

 さやかは振り向いて、行き違いを正そうとする。

恭介「あはは、ごめんごめん。そうだよね。でも、それならその子って誰なんだい?
  ちっとも身に覚えがないよ」

さやか「あたしからは言えないよ」

 また、視線を逸らす。さやかは少し考えた後、切り出した。

さやか「全然違う話なんだけどさ。あたしも、恭介に、相談していいかな」

 恭介が頷くのを待って、続ける。

さやか「あたしね、ちょっと悪いやつと関わっちゃって」

 さやかは無理に笑顔を作った。目に涙が滲んでいる。

さやか「その、変な体にされちゃった、の」

 作り笑いが固まったまま、崩せない。

さやか「あはは、自業自得なんだけどね。
   でも、なんとなく、恭介には言わなきゃいけない気がして」

 近くの壁に左手をあてながら、言う。

さやか「ちょっと驚くかもしれないけど、ごめんね」

 さやかは隠し持っていたカッターを取り出し、左手に突き刺した。

恭介「さやか!?」

 恭介は駆け寄って、さやかを取り押さえる。
 大型刃のカッターが深々と手の甲をえぐり、出血していた。

恭介「なんで、こんな!」

 恭介はさやかの行動を、リストカットか何かの真似と思い、叱りそうになる。
 だが、すぐに異変に気付き、言葉を失った。
 左手の傷が、淡く光ったかと思うと、たちまち消えてしまったのだ。

さやか「ごめんね……気持ち悪いでしょ? これが今のあたしなの」

 さやかは涙を流している。

さやか「あたし、人間じゃなくなっちゃった。もう、恭介にも近寄らないから」

 押さえつける手を振り払う。

さやか「さよなら」

 そう言って、さやかは走り去る。
 恭介は呆気に取られて、立ち尽くしていた。
65: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/09(土) 03:10:59.81 ID:VUotToyTo
 さやかは学校を飛び出して、家にも帰らず、街を放浪していた。
 ソウルジェムの反応に従い、使い魔を見つけ、蹴散らす。
 必要以上に力を消耗させて、くたびれた体を引き摺るようにして歩く。

 ふと、人気の無い公園にベンチを見つけた。
 腰を下ろして、凝った意匠の噴水を無感動のままに眺める。
 体を休めていると、どうしても友人達の事が頭に浮かんだ。
 今頃は仁美が恭介を捕まえているのだろうか。
 まどかがまた自分を探しているのかと思うと、申し訳なかった。
 あの転校生はまた悪さをしてるのだろうか。仁美の邪魔をしていなければいいが。

 転校生の事を思い出すと、また怒りが込み上げてくる。
 アイツは最後まで何を考えてるのか、分からなかった。
 恭介にあんな事をしてしまったのも、勢いだったとはいえ、元はと言えばアイツのせいだ。
 もう恭介に会わす顔が無い。このまま消えてしまいたい。

 魔女と戦う使命が、今は自傷の免罪符に感じられた。
 またソウルジェムを手に、立ち上がる。

 その時、不意に足音がして、振り返る。
 今さっきまで思い浮かべていた顔が、そこにいた。

さやか「恭介? どうしてここに」

 恭介は上がった息を整えようとして、しばらく返事をしなかった。
 松葉杖の姿が痛ましい。

恭介「ここにいるって、教えてもらったんだ。さやかこそ、どうしてこんなとこに」

 行き先を予知で知り得る、ほむらの入れ知恵だった。
 彼女の話しぶりは先日の告白が無かった事のように、淡々としたものだった。

さやか「仁美は、どうしたの」

恭介「えっ、ああ、何か用があるみたいだったけど、また今度にしてもらったよ」

 さやかは全身の力が抜けていくように感じた。一度立ったベンチに、また力無く座り込む。

恭介「隣、座ってもいいかい?」

 さやかは返事をしなかった。恭介は構わず座る。

恭介「何に巻き込まれてるのか分からないけど、何も言わずに飛び出すなんて、ちょっと
  ひどいんじゃないかな」

 さやかは答えない。

恭介「もう近寄らないなんて、そんな事言わないでくれ。僕達は親友だろう?」

 さやかが、言葉尻に反応する。

さやか「あたしはっ!」

 思わず声を荒げて、それから消え入りそうな声に変わる。

さやか「あたしは、ずっと好きだった。ホントは、ずっと」

 また、泣いてしまった。この場を逃げ出したい衝動に駆られる。

恭介「なんだ」

 予想外に軽いリアクションに、さやかの思考が止まる。

恭介「昼に話してた、告白したい子って、やっぱりさやかじゃないか」

さやか「違う! それは本当に」

恭介「だって、さやかじゃなかったら、その子で三人目になっちゃうよ。
  そんな毎日毎日、女の子の方から立て続けに告白されるものかな。
  本当にそうなったら、悪戯か何かじゃないかって、僕じゃなくても不安になると思うよ」

 そう言って、恭介は笑う。
 言い分はもっともなのだが、仁美の真剣さを知っているさやかは、居た堪れない気持ちになる。
66: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/09(土) 03:12:31.14 ID:VUotToyTo
恭介「でも、さやかは嘘じゃ無さそうだね」

 その言葉に、さやかは硬直してしまう。
 ただ、泣きはらしたせいで、しゃっくりが止まっていないのが間抜けに感じられた。

恭介「正直に言うと、僕はあんまり君の事を、女の子として見てなかった」

恭介「だから、その事に、すぐに良い返事は返せない。僕も嘘は付きたくないから。
  でも、さやかの怪我した手、君は自分で人間じゃないって言ったけど、その事に関して
  僕の返事はハッキリしてる」

恭介「さやかが何であろうと、ずっと僕を支えてくれた事に変わりない。
  笑うかもしれないけどね、君がいたから、僕の手に奇跡が起こったんだって、そう信じてるんだ。
  あの時、君が支えてくれたように、今度は僕が君の力になりたい。
  奇跡でも魔法でも信じるから、打ち明けてくれないかな」

さやか「……ずるいよ」

恭介「え」

さやか「あたしは、ちゃんと、好きって言ったのに」

恭介「まあ、その、恋人でも友達でも、何でも良いよ。
  何であろうと、さやかは僕の一番大切な人だから。
  せっかくバイオリンを弾いても、いつも聞いてくれる君がいなかったら、勿体無いだろ?
  だからもう、急にいなくなったり、しないでほしい」

さやか「ホント、ずるい、最低だよ」

 そう言ってまた、涙が零れる。
 あべこべに、恭介は無垢な笑顔を浮かべ、さやかの手をとって、両手に包む。
 それでさやかは我慢をやめて、すがり付いて泣いた。

 結局、彼らはそれ以上の言葉を持たず、ただ黙って帰路についた。
 家が近い二人は帰り道も同じである。
 途中、電車の中で、さやかは恭介の左手をとって、繋ぐ。
 どうすればこの唐変木をその気にさせられるのか、つらつらと考えた。
67: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/09(土) 03:14:44.79 ID:VUotToyTo
 翌朝。登校中。

 少し早めに登校するさやか、いつもの待ち合わせの場所に着くと、既にまどかが待っていた。
 彼女はさやかを見るや否や飛びついてきた。昨日、さやかを心配して、遅くまで探し回ったらしい。

さやか「ごめんね~。ホントにごめん。
   あたしなら大丈夫だからさ。もう心配しないで」

 話を聞くと、どうもあの杏子と共に、駅周辺でニアミスしてたらしい事が気になったが、
ともかくさやかは謝り通すのだった。
 ほどなく仁美が現れる。
 さやかは恋敵に会うのが気まずかったが、向こうは平然と話しかけてくる。

仁美「さやかさん、おはようございます」

さやか「う、おはよう」

仁美「昨日はどうでしたか? 上条君と会っていらしたのでしょう?」

 仁美は笑顔だった。さやかにはそれが逆に怖い。

さやか「いや、別に、何もなかったかな?」

仁美「あら、そうですの。残念ですわ」

さやか「残念って、あんた」

仁美「きっと上手くいくと思ってましたのに。でも、それなら私にもチャンスは残ってますのね。
  昨日は振られてしまいましたが、今日こそ――」

さやか「ちょっと待って! それは待って」

仁美「ええ、どうしてですの?」

さやか「どうもこうも……」

仁美「じゃあやっぱり、私達ライバルですのね。宜しくお願いしますわ」

 やはり、仁美は笑顔だった。



 教室。
 暁美ほむらは、登校してくるなり真っ先にさやかの席まで来て、言う。

ほむら「美樹さやか、ちゃんと戻ってきたのね」

さやか「あんたねぇ……」

ほむら「別に私は、人のものを横取りする趣味は無い。あなたがウジウジしてたから、
   仕方なくやってあげたのよ」

さやか「すっげームカつく事、ドストレートに言ってくれるわね」

ほむら「本音よ」

さやか「あとで覚えてなさいよ」

 ほむらが自分の席に着く。
 それを待って、さやかは誰にも聞こえないように呟く。

さやか「まあ……ありがとね」

 恭介の席がある方には、視線を送る事さえ憚られた。
 恐る恐る目をやると、運悪く恭介もこちらに気付き、手を振ってくるのだった。

 ちなみに、この数日間、佐倉杏子は屋上を始めとした各所を望遠鏡で覗いており、
そこで繰り広げた寸劇を一部始終、目撃している。
 それを当然のように、後々まで、彼女達をからかうネタとして活用したのだった。
77: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/10(日) 06:37:23.15 ID:J5Z+P8o1o
 ほむらの自宅。

QB「時間遡行者、暁美ほむら。君が時間を巻き戻してきた理由はただ一つ、鹿目まどかの安否だね」

QB「まどかの持つ途方も無い魔力係数。
 それが示すのは、彼女を中心とした同じ因果の繰り返しだ。
 二人目のまどかが少し劣った係数を持つ事も、それを裏付けている」

QB「ねえ、ほむら。
 ひょっとしてまどかの願いは、宇宙の法則に干渉するものだったんじゃないかい?」

QB「やっぱりね。彼女にとっては時間遡行すらも副作用だったんだ。
 時間の概念すら無視する願いだったとすれば、あの桁外れの魔力にも納得が行く。
 彼女がいったいどんな願いで契約したのか、とても興味深い」

ほむら「……あの子は元の体に戻れるの?」

QB「勿論。君も分かってるんだろう? まどかはただ自分のソウルジェムを手にするだけでいい。
 それだけで二つの魂は交じり合い、より強力な魔法少女として生まれ変わる事が出来るよ」

ほむら「まどかの願いは、全ての魔女を生まれる前に消し去る事。
   あの子に力を使わせたくなければ、余計な真似はしない事ね」

QB「その願いは……」

ほむら「叶えられたら困るのでしょ。
   あまりあの子を追い詰めると、自分の首を絞めるわよ」

QB「君達はそうまでして宇宙を枯れさせたいのかい?」

ほむら「お前の思い通りにはさせない。諦めなさい。インキュベーター」

QB「……そもそも僕は何もしないよ。
 契約するのも、魔女になるのも、君達の行動が招く結果だからね」
78: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/10(日) 06:39:37.32 ID:J5Z+P8o1o
 さやかの問題を解決して以来、魔法少女達は急速に結束を強めていた。
 さやかは意固地に杏子やほむらを拒まなくなった。
 杏子は憎まれ口を叩きながらも、経験の浅いさやかに面倒見良く接するようになった。
 ほむらは以前ほど他者を遠ざけたり、互いの行動を阻害する必要が無くなり、自然と協力関係を
築いていった。
 マミは既にキュゥべえが信用に足らないものであった事を認識し、ほむらと和解しており、
それまでの行動に負い目を感じつつも、魔法少女達のリーダーとして奮闘していた。

 ワルプルギスの夜が来るその日まで、四人の連携を深める事と、さやかに経験を積ませる事を
当面の課題とし、魔法少女達は日々、肩を並べて魔女狩りに励む。



 魔女の結界内部。
 委員長の魔女、パトリシア。
 パトリシアは青空の広がる風変わりな結界に、蜘蛛のように糸を張って自在に動き回る。
 身体能力の低い者にとっては結界自体が厄介な障害である。

さやか「そこだぁーっ!」

 さやかは空中で何度も軌道を変えて飛び回り、パトリシアに突進した。
 しかし如何せん直線的な動きである。難無くかわされて態勢を崩してしまう。

ほむら「……バカ」

 糸の上を滑る使い魔達がさやかを襲う。この使い魔はパトリシアの意思の元、その動きを
統率されている。攻撃の機会を待ち構えていたのだ。

 ほむらは時間を止めて、使い魔を撃ち落とす。
 いつかのように手榴弾も投げ込んでやりたい所だが、魔女本体まで距離を詰める事はできなかった。
 尤も、惜しまず重火器を使えば即座に倒す事も出来るのだが、ほむらはそれを温存していた。
 時間が動く。

ほむら「マミ、今よ」

マミ「オッケー!」

 マミは蜘蛛の糸にリボンを絡ませて編む。そうして瞬時に空中にかかる道を作り上げる。

マミ「佐倉さん、お願い!」

杏子「よっしゃー!」

 杏子は標的に向けて一直線に伸びた道を駆け抜け、跳んだ。
 逃げようとするパトリシアを追って、糸を蹴って更に跳び、得意の斬撃を浴びせる。
 一瞬に繰り出される無数の攻撃で、パトリシアはバラバラになった。

 結界が解け、景色が元の廃ビルに変わる。
79: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/10(日) 06:41:42.43 ID:J5Z+P8o1o
マミ「私達魔法少女カルテットも、だんだん板についてきたわね」

 変身を解いたマミが満足そうに言う。

杏子「さやかさぁ、あんたは一人で突っ込みすぎなんだよ。
  いくら回復できるからって、そんな戦い方してたら持たないっしょ」

さやか「いやーゴメンゴメン。あはは……」

マミ「力は強くなってるんだけれど、ね。後は使い方よね」

さやか「あ、マミさんもそう思います? あたし、何か前より魔法が強くなった感じがして」

 言葉通り、さやかは実力を伸ばした部分もある。特に回復の力は目に見えて強くなっていた。
 今の彼女なら例え四肢を欠いたとしても即座に回復してみせるだろう。
 反面、戦い方が能力に頼りきりの猪突猛進型である事は相変わらずだったが。

 彼女達から少し遠巻きに、まどか、エイミー、キュゥべえが様子を見守るのもこの頃の常であった。
 キュゥべえの、その人間と違う価値観は既に露見しているのだが、何食わぬ顔で付きまとう彼を
追い払う術も無く、まどか達は嫌悪しながらも、泳がせているのだった。

QB「戦いというのは色んな要素で成り立つものだけど、君達魔法少女にとって一番重要なのは
 精神の在りようだね。感情エネルギーを武器に戦う君達は、心の強さが、力の強さに直結する。
 さやか、君達魔法少女が最も力を発揮するのがどんな時か、分かるかい」

さやか「ん、わかんない。どんな?」

QB「簡潔に言えば、保身無き自己犠牲に身を投じる、その瞬間さ。
 英雄的行為や殉教者精神に身を委ねた魔法少女は、いつの時代も強い力を持っていた。
 逆を言えば、油断や甘さは戦いを不利にするばかりか、君達の魔力そのものをスポイルする
 原因でもあるんだ」

さやか「良く分かんないけど……もっと捨て身になれってこと?」

杏子「バカ、逆だ逆」
80: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/10(日) 06:43:37.87 ID:J5Z+P8o1o
 まどかの自宅。
 まどかは既にベッドに入り、就寝しようというところである。

まどか「皆にばっかり戦わせて、自分で何もしない私って、やっぱり卑怯なのかな」

QB「彼女達に引け目を感じているのかい?」

まどか「そうなのかな。
   ……でも契約はしないから。騙そうとしても無駄だからね」

QB「心外だなぁ。これでも、まどかには慎重に考えてほしいと思ってるんだよ」

まどか「嘘でしょ」

QB「本当さ。まどか、君は人より強い資質を持っている。その分だけ願い事は慎重に考えてほしい。
 どんな希望もそれが条理にそぐわないものである限り、必ず何らかの歪みを生み出すものなんだ。
 だからね、君には出来るだけ素朴な願い事をして貰えると、有り難いんだけど」

まどか「素朴って、どんな?」

QB「大きなケーキなんか、良いんじゃないかな」

まどか「……馬鹿にしないでよ、もう」

 まどかはふと思い出して、キュゥべえに尋ねてみる。

まどか「わたしね、たまに変な感じがするんだけど、あれって何なのかな」

QB「というと?」

まどか「この前さやかちゃん探して歩き回った時とか……
   もっと前にも、変な夢見たり、知らない事知ってたり」

 まどかはその時の感覚を反芻しながら、言葉を探す。

まどか「なんだか、何か内緒で抱え込んでるような人に限って、ピンと来るような……」

QB「じゃあ、まどか、君は僕の考えてる事が分かるかい?」

まどか「それは、わかんないよ」

QB「なら僕にも分からない。疲労の蓄積から来る思い込みじゃないのかい」

まどか「うーん……」
85: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/16(土) 17:19:22.42 ID:KDL2y4Vxo
杏子「予知能力ゥ?」

 エイミーは危険を察知して、身をかわした。
 杏子が飛び付いてきて乱暴に身体を揺する所まで、予知が働いたのだ。

杏子「オイ、何でもっと早く……」

 空を切った手を握り、咳払いをひとつ。
 気を取り直して、ニコニコしながら、言い方を可愛い感じに改める。

杏子「まったくもう、そういう事はもっと早く言ってよねェ?」

エイミー「ど、どうしたの? 杏子ちゃん」

杏子「未来が見えるなら、やる事は決まってるじゃん」

 杏子の目が光る。

杏子「宝くじ、買うしかないよねぇ!」

エイミー「……ごめんなさい。できないの」

杏子「え?」

エイミー「わたしの予知は、魔法少女を追いかける形でしか見えないから、
    売り子の魔法少女さんでも見つけないと、そういう未来は見えないんだ」

 杏子の反応が途絶える。

エイミー「ごめんね。てへへ」

 杏子は大きな溜息をついた。

杏子「悪用できない能力なんて持って、どうすんのさ。
  あんた身体も猫だし、ホント可哀想だね……」

エイミー「そんな事ないよぉ」

杏子「じゃ、じゃあさ、大当たりじゃなくても、あたしが買おうとするクジが
  当たりかどうかくらいは、分かるんだろ?」

エイミー「ええっ? それはちょっと……」

 通学路脇の公園。学生が下校を始める時間帯。
 学校に入れない杏子とエイミーは、魔法少女四人が揃うまで取り留めのない話をする。

 今日一番に姿を見せたのは巴マミだった。

マミ「こんにちは。佐倉さん、エイミーちゃん」

杏子「おーう。残りの二人は?」

マミ「先生のホームルームが長引いてるみたい。そんなに時間はかからないと思うんだけど」
86: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/16(土) 17:30:05.47 ID:KDL2y4Vxo
 見滝原中学。教室。

先生「というわけで、皆さんはメールの内容に細かくケチをつける大人には、絶対ならないように!
  ……はい。それじゃ今日のホームルームはここまで。皆さん、気をつけて下校して下さいね」

 生徒達は一様に脱力して、放課後の活動を始める。

さやか「仁美、ごめん、今日もちょっと野暮用が……」

さやか「ごめん、ごめんって! 今度絶対埋め合わせするから、ね」

 最近は志筑仁美と一緒に下校する事も、ほとんど出来なくなっていた。

さやか「はあぁぁ。なんだかあたし、どっと疲れたよ」

まどか「てへへ。これからもっと疲れるのにね」

さやか「ホントにね……」

ほむら「二人とも、早く行くわよ。巴マミは先に行ったようだし」

さやか「はーい」

 ほむらとしては、まどかが魔女退治に同行するのはどうか、と思わなくもないのだが
一人にしてキュゥべえに付き纏われるよりは、目の届くところに居てもらう方がマシではある。
 それに、正直な所、こうして一緒に下校するのも満更ではないように思えていた。
 ワルプルギスの夜も近い。呑気な事を言ってられる時期でもないのだが、まどかの近くにいると
つい楽しかった頃を思い出してしまう。

まどか「ほむらちゃんってさ、なんだか、カッコいい名前だよね」

 不意を突かれて、返事に詰まる。
 楽しそうに言うまどかに悪気は無いのだろうが、その言葉は、繰り返しの中で
しばしばほむらの胸を抉るものだった。

ほむら「……そんな事ないわよ。からかわないで」

まどか「てへへ。ごめん」

 思いの外、動じなかった今回の自分自身を、ほむらは不思議に思う。
 いつもより心に余裕が有る。それが油断による物なら言語道断だが、そうとも思えなかった。

 ほむらは何となくエイミーの事を考えた。



杏子「どうしたんだい? マミ。元気ないじゃんかよ」

マミ「佐倉さん、ちょっと聞かせてほしいのだけど」

マミ「あなたがこの街へ来る時、キュゥべえからは何を言われたの?
  初めから暁美さんの事は聞いていたようだけど」

杏子「んー? どうだったっけなぁ」

杏子「……魔法少女を二人、とっちめてほしい、って。
  最初は乗り気じゃなかったから、突っ撥ねたんだけどさ」

マミ「でも、結局はここに来たのね」

杏子「そうそう。あの時は確か……
  あたしにやらせたら勢い余ってぶっ殺しちまうぞ、って言って脅したのさ。
  それで引き下がると思って。そしたらあいつ、それで構わないって言うから。
  胡散臭い話だったけど、それで二人に興味が沸いて、結局来ちまったんだよねぇ」

エイミー「わたし達の事、こ、殺しちゃうつもりだったの?」
87: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/16(土) 17:37:44.92 ID:KDL2y4Vxo
マミ「やっぱり、キュゥべえは、私達の事なんて何とも思ってないのね」

 マミの表情が固まっていた。

杏子「ちょっとちょっと、いまさら何言ってんのさ」

マミ「私には、殺せなんて、絶対に言わなかった。私がどんな反応をするかも見越して、
  良いように操ってたんだわ」

マミ「私、ずっと魔法少女をやってたのに、魂を抜かれてるなんて全然知らなかった。
  契約がどんな意味を持つのか、疑いもしなかった。
  自分は正しい事をしてるって思い込んで、佐倉さんの事もずっと悪い子だと思ってたの」

杏子「マミ、よしなよ」

マミ「ごめんなさい。本当は、あなたや暁美さんの方がずっと正しかった。
  私、キュゥべえの言いなりになって、鹿目さんも勧誘するような事して」

マミ「病院に魔女が現れた時、美樹さんを失いかけた事、今でも後悔してるの。
  私のせいで、一歩間違えれば、彼女は命を落とすところだった。
  あの時、佐倉さんがいなければ、どうなっていたか……」

杏子「わっかんねぇなぁ。
  なんであんたが後悔してんのさ。
  あんたは騙されてただけじゃんか。
  普通はさ、騙されたら、騙したやつを憎むもんだ。それじゃダメなのかい?」

マミ「だって、それは……私も一緒になって騙してたようなものじゃない」

杏子「それでも、騙されてただけなんだよ。
  第一、気付かなかったのは、あんただけじゃない。
  あたしだって、まさか知らない内に魂を弄られてるなんて思わなかった。
  皆それぞれ、自業自得でそうなったんだ。
  だからさ、あたしは後悔してないし、あんたもそうなればいい。開き直っちゃえばいいのさ」

マミ「私はそんな風に思えない。
  今までの事が全部間違いだったなら、私は皆に顔向けできない。
  先輩ぶってカッコつけてるくせに、本当は私が一番ダメなの。
  後ろめたくて、それでもあなた達に頼らないと、ダメになりそうで。
  今度こそ、本当の一人ぼっちになって……」

エイミー「やっぱり、マミさんはマミさんですね」

 そう言って、エイミーは嬉しそうに笑う。
 彼女はいつかの言葉をなぞる事にした。

エイミー「マミさんは、もう一人ぼっちなんかじゃないです。
    私達は皆、マミさんの事大好きですから」

杏子「……踊らされてたとしても、さ。
  あんたは自分の信じたものを押し通して、結局はそれで人を救ってきたんだ。
  それで十分さ。胸張りなよ。
  あんたは立派にやってきたし、間違いにも気付いてる。
  これからも上手くやっていけるよ」

 杏子はマミの手を取り、ハイチュウを一つ握らせた。

杏子「しっかりしなよ、リーダー?」



さやか「お待たせー、みんなー」

 さやかの調子はずれな挨拶は、湿った空気を和ませるのに役立った。

さやか「エイミーちゃん、ゴメンね、待った? ムフフー」

エイミー「さやかちゃん、くすぐったいよ」

さやか「えへへへ、よーしよし、見ててねー。
   今日もさやかちゃんは街の平和をガンガン守っちゃいますからねー」

マミ「美樹さん、見た目が猫だからって、あまりぞんざいに扱うのは関心できないわ」

さやか「う……ごめんなさい」

マミ「ふふ、それじゃ行きましょうか」

 そう言うマミの足取りは、軽い。
 杏子とエイミーは胸を撫で下ろした。
91: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/16(土) 21:00:55.56 ID:KDL2y4Vxo
 日付は少し進んで、ワルプルギスの夜の前日。
 ほむらの自宅に、魔法少女四人が集まる。
 ほむらはここで、最後の秘密を明かそうとしていた。

 ワルプルギスの夜を迎えるにあたって、最も注意を払うべきなのはソウルジェムの限界だ。
 今までの経験上、あの魔女を倒すのは不可能ではない。
 しかし、その時は例外無くまどかが犠牲になっていた。
 倒すために魔力を使い過ぎて、ソウルジェムが限界に達してしまうのだ。
 となれば、アイツと戦う前に、限界に達したソウルジェムの最期がどんな事になるのか、
知らせておく必要はあった。
 勿論、戦いの行方以前に、エイミーを納得させるためにやっている事でもあるのだが。

ほむら「本題に入る前に、少し別の話をするわね。
   私が今まで繰り返した時間の中で、今と同じように真実を全て打ち明けようとした事があって。
   その時の私の言葉はあなた達に届かなかった。信じて貰えなかった。
   だからその話の前に、私の素性について話したい。それで少しでも納得して、信じてほしい。
   ……いいかしら?」

ほむら「そう」

 ほむらは皆の同意を確認すると、静かに語り始めた。

ほむら「私の目的は一つ。鹿目まどかを救う事。
   まどかは……」

 ほむらは言葉に詰まって、俯いた。
 声が震えないように、注意深く口を開く。

ほむら「私にとっての、まどかは……」

 また、詰まってしまう。
 気を落ち着かせようと、大きく息を吐く。
 ほむらは気持ちを言葉にしようとすればするほど、平静を保てなくなるのを感じて、
努めて簡素な表現を選ぶ事にした。

ほむら「……まどかは、友達、だったから。
   初めてまどかが死んでしまった時、私はやり直しを願った。
   何度も同じ時間を繰り返して、その度にまどかが死ぬ所を見てきた。
   どうすればまどかを救えるのか、その答えだけを探して、何度も初めからやり直して」

 そこまで話すと、胸の痞えが楽になるように感じた。俯いた顔を上げる。

ほむら「だけど、ホンの偶然だったけれど、たった一人、初めて生き残ったのがあの子なの。
   今は猫になりきって、能天気な事ばかり言ってるけれど、今の私にはあの子が全て。
   繰り返す時間の中で生きた私を、あの子だけは『見て』くれる。
   私はもう二度と、あの子を失いたくない。
   だから今度こそ、絶対にワルプルギスの夜を倒す。
   まどかの力は使わせない」

 あらためて聴衆を見回す。

ほむら「……これで全部よ。これが私の事情。信じてもらえるかしら」

 一同が頷く。

マミ「もっと詳しく聞きたい所もあるけれど……ひとまず置いておくわね。
  あなたという人間を信用するには、今の話で十分」

杏子「そんなツラで言われたら、信じるしかねーよなぁ」

 ほむらの話しぶりには、平静を装った裏に、悲痛な気持ちが見て取れた。
 どこか胡散臭いイレギュラーは、その実、純粋過ぎるくらい純粋で、孤独に苛まれながらも
懸命に戦っていたのだ。
 この場に集まった誰もが、身に詰まされる部分があった。

さやか「あんたが未来人だって事は、今まで一緒に行動して、十分わかってるもの。
   いまさら疑ったりしないよ」

ほむら「そうね。そう言ってもらえると助かるわ」

ほむら「本題に入るわね。
   これから話すのはソウルジェムの最後の秘密。
   インキュベーターが魔法少女を作る本当の理由。
   私達が向き合わなければならない現実よ」
92: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/16(土) 21:09:29.88 ID:KDL2y4Vxo
 玄関前。
 エイミーは一人、待ちぼうけをしていた。
 どうしても席を外してほしいとほむらに頼まれたからだが、その理由は気恥ずかしさだけでなく、
別にも有る。
 案の定、その『理由』が訪ねてきた。

まどか「エイミー? どうしたの、中にも入らずに」

エイミー「えへへ、待ってたんだ」

まどか「入っていいかな?」

エイミー「ダメ。わたし、あなたを止めるようにお願いされてるの」

 まどかは少し驚いて、それからすぐ悲しみの表情に変わる。

まどか「やっぱり、わたし邪魔なのかな」

エイミー「ううん。それは違うよ。全部あなたのためだもの。
    あなたと、私のために、みんな頑張ってくれてる」

まどか「でも、わたしだけ何も知らない。ほむらちゃんだって、わたしにだけ冷たい。
   どうしてなの? わたし、こんなの嫌だよ」

エイミー「……今のほむらちゃんは、そうしないと戦えないの。
    あなたにだけは、自分を曝け出す事を怖がってる。
    拒絶される事も怖がってるし、反対に受け入れられてしまったら、
    自分はきっと弱くなるって、そんなふうに思ってる」

 神妙な調子から一転して、エイミーは猫の笑顔を作ってみせる。

エイミー「でもね。えへへ……ホントは打ち明けたくて仕方ないんだよ。
    本心では、わたしの知ってる事、全部あなたにも知ってほしいって思ってる。
    えへへ、こんな事聞かれたら怒られちゃうよね」

まどか「わたしだって、教えてほしい! ほむらちゃんの事、ちゃんと知りたいもん」

エイミー「う~ん、じゃあね、約束して」

まどか「え?」

エイミー「ほむらちゃんには、絶対内緒」

 まどかは黙って頷いた。
 エイミーが目を合わせて、自分の過去の体験をまどかの瞳に直接投影する。
 映像の中で、まどかはほむらに抱擁され、悲痛な告白を受ける。
 それは前回の時間軸、同じ場所、同じ時間での体験だった。
93: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/16(土) 21:21:43.59 ID:KDL2y4Vxo
杏子「なんだと……」

さやか「嘘でしょ? そんな」

 魔女の正体、ソウルジェムの最後の秘密。
 その真実を聞かされて、魔法少女達は呆気に取られていた。
 ショックを受ける以前に、狐につままれたような反応だった。
 ただ、巴マミだけは、反応そのものが無い。口を開かず、ピクリとも動かずに固まっている。
 こういう時の彼女こそ良くない状態に陥ってるという事を、ほむらは良く知っていた。

ほむら「忘れないでほしいのは、もし私達が絶望に負けて、戦うのをやめてしまったら、
   明日、間違いなくワルプルギスの夜が現れて、大勢の人を殺すという事。
   ショックを受けるのも仕方ないけれど、もしも子供がオモチャを壊すみたいに、
   衝動で何もかも台無しにしようなんて考えが浮かぶなら、そんなものは今すぐ捨てて頂戴」

 マミは反応しない。

ほむら「その上で言わせて貰うわ。
   醜い魔女の姿を自分達に重ねてみたり、
   魔女を倒す事に関して罪悪感を覚えたりするような考えも、捨てなさい。
   断言してもいい。そんなものは少女趣味の幻想よ。
   そんな発想は、今すぐここで捨てるの。そうしなければ、私達は戦えない」

ほむら「魔女は魔法少女の中から生まれるけれど、一度魔女になってしまえば、それに心は無い。
   人を呪う衝動しか残されていない。彼女達を殺す事は、人間や魔法少女を殺す事と
   同じに捉えてはいけない」

ほむら「美樹さやか、あなたに会ったばかりの頃、食物連鎖の話を聞かせたわね。覚えてる?」

ほむら「人間を魔女が食べ、魔女を魔法少女が食べる。あまり趣味の良い例えではなかったけれど、
   この事は今の私達にとって重要な意味を持ってる」

ほむら「この仕組みの上では、お互いがお互いを必要としてるという事よ。
   どれか一つだけを欠かす事は出来ない。
   魔女だけを絶やす事も、魔法少女だけを絶やす事も出来ない。
   そして、結局は人間も、魔女と魔法少女を必要としているという事」

ほむら「家畜のプロセスを見た事があるかしら。
   小さな子供がその現実と向き合うのと同じ事。
   同じ事だと思えばいい。
   残酷だとしても、私達はもう一度、この世界のルールと向き合うの。
   そうして、乗り越えなければいけない」

ほむら「人間は魔法少女を必要としてる。
   私達魔法少女も、お互いを必要としてる。
   だから戦って、生き抜くの。他の魔法少女の亡骸に縋ってでも」

ほむら「例え人間じゃなくなったとしても、一人じゃない。
   例え本性が化物だったとしても、人のために戦って、人を救う事ができる。
   だから、乗り越えればその先に、幸せはきっとあるって、私は思うの」
94: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/16(土) 21:29:26.67 ID:KDL2y4Vxo
 ほむらは喋り終えると、そのまま押し黙った。
 返事を促す事もせず、しばらく沈黙を続けた。
 言うべき事は言った。
 だが、それでも彼女達がどんな反応を示すのか、不安は拭えなかった。

 さやかはそもそも恋のために契約した。今もあの少年との関係は続いている。
 そんな彼女が、自分が正真正銘の化物だと知らされて平気なはずが無い。

 杏子は彼女自身よりも、さやかやマミに共感して逆上してしまう恐れがある。

 そして何より、マミが問題だった。
 彼女は潔癖すぎる気性から、最悪の事態を招く可能性が高い。
 もし乱心するようであれば、自分の手で止めるしかない。

 重い沈黙が覆う中、ほむらは最悪の展開に備えて緊張を募らせる。
 最初に口を開いたのはさやかだった。

さやか「確かに酷い話だよね。あんたが今まで隠してきたのも、良く分かるよ」

 存外、彼女は平常心を保っているように見えた。

さやか「でもさ、結局今までと、やる事は変わんないんでしょ?
   魔女と戦って、皆を救う。
   それなら、もうとっくに覚悟を決めてるからさ」

杏子「さやか、あんた、平気なのかい?」

さやか「うーん。あたしバカだからね。考えが追いついてないかもしれないけど」

 さやかはほむらを見て、言う。

さやか「あんたが言うような幸せがホントに待ってるのか、分かんないけどさ。
   あたしは戦うよ。ここまで来たら、もうやるしかないもんね」

ほむら「ありがとう。
   杏子、あなたはどう?」

杏子「あたしは、まあ元々、ある意味人間じゃないような生き方してたからなぁ」

 杏子の言葉は悲観的だが、口調は落ち着き払っていた。

杏子「まぁ、あの詐欺ヤロウは許さねぇよ。今度見たら酷い目に遭わせてやる」

マミ「ひどいわね」

 ようやくマミが口を開く。

マミ「何を感じても、何を考えても、こんな日に打ち明けられたら、我慢するしかないじゃない。
  暁美さん、それを分かってて、この日を選んだの? 本当にひどい」

 マミは涙を堪えていた。
 彼女が全てを受け入れたかどうかは分からない。
 が、少なくとも、この場で取り乱すような事態は避ける事が出来たようだ。

 マミが平静を取り戻した後、彼女達は引き続き明日の作戦について話し合った。
95: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/16(土) 21:35:44.45 ID:KDL2y4Vxo
 あくる日。ワルプルギスの夜。
 避難所。人気の無いブースで。
 まどかとキュゥべえは、肩を並べて嵐の様子を見守っていた。

まどか「本当に、勝てるのかな?」

QB「無謀だね。よしんば勝った所で彼女達の犠牲は免れない。
 四人の魔力では、ワルプルギスを破壊するために必ず誰かが力を使い果たすだろうね」

まどか「……わたしなら、勝てる? 誰も犠牲にせずに」

QB「君なら申し分ない。易々とやってのけるだろうね。
 だけど僕は、今の君と契約するつもりは無いよ」

まどか「どういうこと?」

QB「君の力は強すぎるんだ。
 魔法少女の力は、元々の素質と、願いの強さで決まる。
 もし君が、こんな追い詰められた状況で契約すれば、その力は星一つでは済まない。
 規格外の魔女が、いつか宇宙そのものを滅ぼすだろう。
 それは僕達にとっても望むところではないからね」

まどか「それじゃ、このまま黙って見てれば良いって言うの?」

QB「それは君達の問題だよ」

まどか「ひどいよ。やっぱりあなたは敵なんだね」

QB「僕はそう思ってないよ。僕達はこれまでずっと、人類の歴史を共に歩んできた。
 人類にとっても良きパートナーだったはずさ。今までも、これからも、ずっとね」

 キュゥべえが背を向ける。その先にエイミーが居た。

QB「まどか、パートナーとして最後に一つ、忠告させてもらうよ。
 彼女を頼って、力を手にしようだなんて、決して考えちゃダメだ。
 人の手に余る力は、いつか最悪の魔女を生む。
 君の迂闊な判断で宇宙の危機を招かないよう、祈ってるよ」

 キュゥべえが去っていく。
 それと入れ替わるようにエイミーが来て、まどかの脇の手すりに登った。
96: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/16(土) 21:39:24.50 ID:KDL2y4Vxo
まどか「わたしに会いに来たの?」

エイミー「うん」

まどか「ねえ、教えて。あなたって未来が見えるんでしょ?
   皆は無事に帰ってこれる? 誰も犠牲にならないように、未来を選んだんだよね?」

エイミー「……ごめん。わたしにも分からないの」

まどか「えっ」

エイミー「本当なら、わたしの魔法は、どんな未来でも見通す事ができる。
    知りたければ、十年後でも百年後でも、どれだけ先の未来でも見えるの。
    でも、なぜだか、今のわたしには、ワルプルギスの夜の先が見えない」

まどか「それって――」

エイミー「未来が見えないのは、そこでわたし達の未来が消えてるから、なのかな」

まどか「それじゃあ!」

 まどかが語気を強める。

まどか「わたし達、こんな所にいちゃダメじゃない!」

 エイミーは首を振る。

エイミー「わたし、ほむらちゃんと約束したの」

 まどかの目を見て、映像を送る。

エイミー「わたしの願いは全ての魔女を、生まれる前に消し去る事。
    それが叶えばわたしは消えていなくなっちゃうけれど、
    過去に存在した魔法少女も、これから生まれてくる魔法少女も、皆救う事が出来る。
    今すぐにでも、皆を悲しませるルールを壊して、笑顔にしてあげられる」

まどか「それって……」

エイミー「自分勝手かもしれない。そう、だから、ほむらちゃんも止めたんだと思う」

 エイミーは目を閉じる。

エイミー「ほむらちゃんは、この時間で全部解決してみせる、って言ってた。
    今度はわたしが悲しい答えを出さないように、希望を見つけてくれるって、言ってくれたの。
    それが出来なければ、その時はわたしが猫をやめて、魔法少女に戻る。
    それが、わたしとほむらちゃんの約束」

 もう一度、まどかの方を向いて、続ける。

エイミー「わたし、ほむらちゃんを信じたい。でも、信じたいのに、未来が見えない。
    ねえ、あなたはどう思う? こんな世界壊して、作り直してしまいたいと思う?」
97: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/16(土) 21:41:14.12 ID:KDL2y4Vxo
まどか「わたしはそんなこと、思わないよ」

 その返事を聞いて、エイミーは笑顔を見せた。それからまた素面で話し始める。

エイミー「わたし達は答えを出さなきゃいけないの。
    どうすれば皆が幸せになれるのか。何が皆の幸せなのか。
    わたしにとっては、ずっと前に投げ出した宿題。
    だけど、今なら分かる。
    誰も見捨てない、自分も捨てない、大切な人の笑顔を最後まで守れる。
    そんな結末にたどり着きたい。
    だから、あなたにお願いがあるの」

 食い入るような視線で、言う。

エイミー「鹿目まどか、この世界の私自身。
    どうかわたしを受け入れて、魔法少女になってほしい」

まどか「いいよ」

 まどかはあっさりと答えた。

まどか「当たり前だよ。だって、わたしはわたしだもん。きっと同じ事考えてる」

 まどかは笑顔だった。不安を感じさせないその笑顔が、エイミーには嬉しかった。

まどか「答え合わせ、しちゃおっか」

 まどかはエイミーのソウルジェムを手に取った。
 融合を始める二つの魂。
 その過程で、まどか達は理解した事がある。
 魂が混ざり、自分でないものが以前からの自分になる感覚。
 知り得ないはずのものを知り、感じ得ないはずのものを感じ取る。
 その感覚は、以前からずっとあったのだ。
 魂の緩やかな融合と、同調。それが鹿目まどかの『鋭すぎる勘』の正体だった。
 まどかは一切の不安から解放されて、自らの変化を受け入れた。 





 まどかは走った。皆が戦う、その場所へ。
 魔法少女の衣装をまとい、息を切らせて、ひた走る。
 二人のまどかは、今や一つになっていた。
98: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/16(土) 21:43:00.24 ID:KDL2y4Vxo
 ワルプルギスの夜が生み出す、嵐の中心。そこにほむら達はいた。
 彼女達は既にその総力をぶつけているが、ワルプルギスの夜は依然として健在だった。

ほむら「どうして!? 四人がかりでも敵わないって言うの?」

 火器は全て使い切った。魔力も消耗が激しい。他の三人も今や防戦一方だ。
 幸い、全員軽症で済んではいたが、隙をフォローするために時間停止を使い過ぎたのも、
この状況の一因かもしれないと、ほむらは思う。
 一度防戦に回ると、ほとんど取り付く島が無いと言っていいほどに、畳み掛けるような攻撃が
待っている。この戦いはいつもそうだった。
 犠牲を惜しむ守りの姿勢では、ワルプルギスの夜には勝てないのかもしれない。

ほむら「虫が良すぎたのね。全部を丸く治めようなんて。
   このままじゃ……」

 このままでは、結局あの時と同じ、まどかが魔法少女になってしまう。
 まどかとエイミーが共に避難所にいるのは彼女達の安全を考えれば当然の事ではあるが、
ほむらにしてみれば人質を取られたようなものでもある。

 勝ち目は無い。やり直しも出来ない。
 八方ふさがりの状況で、ほむらの精神が絶望に負けそうになる。
 ソウルジェムが穢れていく。
 だが、新たな魔女を生もうとする、そのサインを見て、ほむらは一つの方法に思い至った。
 今まで一度も使った事がない、最後の手段。
 以前、他の魔法少女がやったのを見たことがある。
 自分自身を投げ打って爆発的な魔力を生み出す、ソウルジェム自爆。この方法なら、あるいは。

ほむら「マミ、杏子、さやか! 聞いて!」

マミ「暁美さん?」

 散開して戦う魔法少女達が、ほむらの声に答える。
 彼女達はワルプルギスの夜の射程の外で、集結した。

ほむら「このままじゃ、あいつに勝てない。あなた達は一度ここから逃げて」

杏子「はあ?」

さやか「ちょっと、なに言っちゃってんのよ?」

ほむら「出直してって、言ってるの。距離をとって、態勢を立て直すのよ」

マミ「暁美さん、あなたはどうするの?」

ほむら「私はここに残る」

マミ「あなた、死ぬつもり?」

杏子「馬鹿かテメェは」

ほむら「止めても無駄よ」

さやか「止めるに決まってるでしょ!」

ほむら「できないわ」

 ほむらが盾に手を触れようとしたその時。

まどか「ほむらちゃん!」

 まどかが駆けつけた。
 肩で息をする彼女を見て、一同は驚く。
 彼女の姿が、既に魔法少女のそれだったからだ。
103: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/17(日) 17:59:42.22 ID:3RNaMLYEo
ほむら「まどか、どうして……」

 言うまでもない。現に、ほむら達は敗北しようとしていたのだから。

マミ「鹿目さん、やっぱり来ちゃったのね」

さやか「こういう時、まどかが大人しくしてるわけないもんね」

まどか「皆、今まで、ごめん。
   本当は最初から全部、わたしがやれば良かったの。
   ううん、わたしがやるしかない、わたしにしかできないって、分かってた。
   分かってたのに、皆がこんなに傷付くまで、ほったらかしにして。
   ひどいよね。怒られても、嫌われちゃっても、当然だと思う」

まどか「でも、嬉しかったの。
   皆が一緒に頑張ってる時間が、ほんの束の間でも、幸せな夢みたいで。
   もう少しだけ、夢の続きを見ていたい。そんな風に思ってた」

まどか「でも、もうそれも終わり」

 その言葉は、ほむらにとって最も恐ろしい結末を予感させた。

ほむら「まどか、待って!」

まどか「見てて、ほむらちゃん。わたし、答えを出すから」

 まどかは弓を引き絞る。標的はワルプルギスの夜。その矢には、救済ではなく、破壊の力がこもる。

まどか「わたしは、わたしの大切な人を守るため、この力を使う。
   この幸せを、夢で終わらせたくない。本物の未来に変えてみせる。
   守りたいものを最後まで守り通す。宇宙の事なんて、その後で良い!」

 全く予想外の言葉に、ほむらは目を点にして、瞳孔を見開く。
 ほむらは自分の抱いた感情の大きさに戸惑った。確かめるように、胸に手を当て、噛み締める。
 ――嬉しかったのだ。心の底から嬉しかった。ずっと待っていた言葉。それを今になって、
思い知らされた。

 ワルプルギスの夜がまどかの射程に入る。
 攻撃の意思を察知して、ワルプルギスの夜もまた、まどか目掛けて光線を放つ。
 それはまどかが矢を放つのと、同時だった。

 矢は光の尾を引いて、光線とぶつかり合い、そして――
 あっさり砕け散った。
 わずかに軌道の反れた光線がまどかの足元に着弾する。

まどか「きゃぁっ!?」

   「まどか!?」

 炸裂する衝撃と破片。軽症で済んだものの、砂煙の中、まどかは困惑する。

まどか「あれ、あれ? ……えーっと」

 いたたまれなさに冷や汗を浮かべ、目を瞑る。

まどか「ご、ごめん。わたし、弱くなっちゃったかも!?」

さやか「はぁ??」

マミ「鹿目さん!?」

杏子「オイ、冗談言ってる場合かよ!」

 壮絶な肩透かしに、ブーイングが巻き起こった。
104: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/17(日) 18:04:53.23 ID:3RNaMLYEo
 ほむらはあまりの事に言葉も無い。繰り返す時間の中、まどかの魔力を目撃してきた者として、
この醜態が信じられない。

ほむら「……まさか」

 ほむらはキュゥべえの言葉を思い出す。

QB『君達魔法少女にとって、特に重要なのは精神の在りようだね。
 感情エネルギーを武器に戦う君達は、心の強さが、力の強さに直結する』

ほむら「まどか、もう一度弓を引きなさい!」

まどか「う、うん」

 再び、弓を絞る。
 矢じりが光り、通常の魔女ならいとも簡単に粉砕するであろう、強烈な魔力がこもる。
 だが、それでもワルプルギスの夜には通用しない事が、ほむらにも分かった。
 最初の一撃と同じ程度の力しか出せていないのだ。

まどか「だ、ダメ。これじゃ全然足りない」

ほむら「慌てないで、そのまま矢に魔力を集めて。
   時間なら私達が稼ぐから」

 その言葉を聞いて、あらためてまどかは仲間を見る。
 皆、一様に消耗しているのが見て取れた。回復する余裕も無かったのだろう、体中の傷が
それを物語る。しかし誰も深手を負ってはいなかったし、諦めた目もしていなかった。
 皆がまどかを見て、言葉を待っている。
 まどかは頷く。

まどか「ごめん、みんな、ちょっとだけ手伝って!」

マミ「オッケー、任せて!」

杏子「ったく、ホント世話焼けるよな」

さやか「こりゃ後で奢り決定ですな?」

 魔法少女達がまどかを中心に、防御の布陣を作る。
 左翼にマミがリボンの壁を、右翼に杏子が鎖のフェンスを作り、さやかは剣を十字に構え、
治癒魔法を全開にして、正面に立つ。

ほむら「信じるの、まどか。あなたはあいつに負けたりしない」

まどか「ほむらちゃん……」

 ほむらは、弓を絞るまどかの背中から、自分の手を重ねた。

ほむら「私に残った魔力を、あなたに託す」

 目を閉じて、つぶやく。

ほむら「大丈夫、絶対に上手くいく。あなたは最強の魔法少女。あなたは、私達の希望なのよ」
105: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/17(日) 18:11:11.62 ID:3RNaMLYEo
 ワルプルギスの夜の容赦無い攻撃が浴びせられる。しかも、まどかが魔力を強めるに従って、
攻撃は苛烈さを増していた。

杏子「クソッ、こいつ、いくらなんでもしつけーっつうの!」

 鎖のフェンスの外で、杏子は使い魔を掃討する。
 素早い身のこなしを身上とする彼女は、反面、ダメージを受ければあっさり倒れる脆さが
あるのだが、今のところは消耗も少なく、安定した戦いぶりを見せていた。

 マミは攻防に活躍するリボンで、確実に持ち場を守っている。使い魔が側面を突こうとすれば、
その都度、危なげなく銃で撃破する。こちらも、もうしばらく持ちこたえそうな余裕があった。

 一方、さやかは追い詰められていた。頑強な体と回復力を駆使し、敵の真正面に立った彼女は、
否応なしに魔力を消耗する。
 このまま防戦が長引けば破綻は免れない。
 杏子もマミも、それを察して、それぞれの防御壁でさやかをフォローしていた。

さやか「う、く、うぅッ!」

まどか「まだ!? まだなの!? 早くしないとさやかちゃんが!」

 矢に集まった魔力は、ワルプルギスの夜を仕留めるには、未だ不十分だった。
 共に魔力を込めるほむらも、穢れを蓄積し過ぎている。

ほむら(このままではジリ貧ね。何か手を打たないと)

 ほむらはテレパシーを飛ばす。

ほむら『美樹さやか、聞こえる?』

さやか『な、何? 今、手が離せないんだけど!?』
106: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/17(日) 18:16:07.83 ID:3RNaMLYEo
 その時、均衡を崩す、巨大な一撃が放たれた。
 さやか目掛けて飛来する、ビルの投擲。まともに受ければさやかも、その背後のまどか達も、
一巻の終わりである。
 マミは咄嗟に巨大な銃を出現させ、ビル目掛けて発砲する。

マミ「ティロ・フィナーレ!」

 砲撃がビルを丸ごと撃ち抜いた後、リボンに変化して絡みつき、粉々に打ち砕く。
 巴マミの必殺技、その威力は折り紙つきだが、技を放った瞬間、防御が手薄になるのは
避けられない事だった。
 左翼に展開した、リボンの防御壁がほどける。その隙間を突いて、細く分裂した光線が侵入する。

さやか「あぶない!」

 まどかを狙う光線。その間にさやかが割って入る。
 その一つが、剣のガードをすり抜けて、さやかの胴に命中した。

 減衰しながらも十分な威力を持っていた光線は、さやかの体を起点に跳弾する。
 衝撃と瓦礫がまどか達にも届く。ほむらは盾を中心に球状の魔法壁を展開し、まどかを守る。
 さやかを呼ぶ声は、炸裂音にかき消された。

 まどかは弓を構えた姿勢のまま、背中越しに一部始終を見てしまった。
 地に転がるさやかの体。その下腹部――ソウルジェムが収まっていた位置――には、
風穴が開いていた。

まどか「うそ!? うそでしょ!? さやかちゃん! ねぇ!」

 ほむらが手に力を込めて、取り乱しそうなまどかを制する。
 そうしなければまどかは、弓を放り投げてさやかの元へ駆けつけてしまっただろう。

ほむら「ダメ! まどか、あなたは前を見て」

まどか「でも!」

 攻撃の手は緩まない。正面から、光線の束が迫る。
 ほむらは迷わず時間を止めた。

ほむら「まどか、タイムリミットよ。これが最後の時間停止。正真正銘、最後のチャンス」

まどか「最後?」

ほむら「もう私には魔力が残ってないの」

 まどかは重ねられた左手を見る。そこに嵌められた紫色のソウルジェムは、既に穢れきっていた。

まどか「!! ダメ! ほむらちゃん、それ、もう限界だよ! これ以上力を使ったら」

ほむら「お願い、まどか、負けないで。
   絶対に、未来を、変えて――」

 糸が切れたように、ほむらの手から力が抜け、足元にくず折れる。
 時間の歯車が噛み合い、動き出そうとする感触が、まどかに伝わる。

まどか「いや……いやああああああ!!」

 矢の光は急激に強くなり、ついにワルプルギス目掛けて放たれた。
 迫る光線を真っ向から蹴散らして突き進み、的を貫く。
 そして巨大な光の球に変化して、標的を圧倒的な破壊の力で焼き尽くした。
107: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/17(日) 18:25:17.29 ID:3RNaMLYEo
 斯くしてその一撃で、ワルプルギスの夜は撃破された。
 まどかは一歩も動く事ができず、天を仰ぎながら涙を流し続けている。

まどか「やだ……やだよう……」

 マミと杏子はかける言葉を見つけられず、固唾をのんでその様子を見守る。
 さやかはまどかの後方でむくりと起き上がり、穴の開いた胴体を修復する。
 ほむらはまどかの足元で伏せたまま、虎の子のグリーフシードを使い、難を逃れている。

杏子「ひどい茶番だな、オイ」

ほむら「あら、上手くできたと思うけど」

まどか「ひっ!?」

 まどかは驚きのあまり、振り向いた勢いのまま尻餅をつく。

まどか「そんな、どうして……?」

マミ「鹿目さんの感情を爆発させるために、死んだフリをしたのね。
  理屈は分かるけど、ちょっとこれは、あんまりよね……」

さやか「ソウルジェムは、髪留めに変えておいたのさっ」

 満面の笑みで、さやかが言う。

さやか「いや~、ごめんね~?
   悪いとは思ったんだけど、ここまで上手くいくと何か逆に気持ち良いっていうか。
   まどかったら、もう完全に信じきってたもんね。
   魔法少女になっても、やっぱりまどかはまどかだわぁ」

ほむら「あなたの魔力の強さは、私が一番良く知ってる。 
   あのワルプルギスの夜を一撃で仕留めて尚、余力を残すほどだと、知ってたの。
   ただ、きっかけが必要だったのよ」

まどか「~~~~ッ!!!」

 まどかはしばらくの間、大声で泣き続けた。
 マミがそれを優しく抱きとめる。残りの三人は気まずい思いをしながら、互いに傷の手当をした。



 まどかは一頻り泣き終えると、もう一度だけ弓を引いた。
 天に向け放たれた矢は一筋の尾を引き、虚空へ消える。

 魔女を消す救済の矢。その対象は、未来の自分自身。
 矢を番えれば対象の人生を一望し、矢を放てば対象に纏わるありとあらゆる可能性の未来に
飛んでいく。
 こうして彼女は最悪の魔女を予め封じ、自分の死期も知り、その時こそは全ての魔女の救済に
身を捧げる事を決意した。
 つまるところ、救済の先送りと、確約である。
 自らの存在と引き換えに全てを救う力。彼女はそれを、直ちには行使せず、保留したのだ。
 それが彼女の答え、せめて人としての生を全うするための選択だった。

まどか「わたし一人の命じゃない。わたしがいなくなれば、悲しんでくれる人がいる。
   なら、簡単に消えちゃうわけにはいかないよね」

 希望を信じて、涙に終わる少女達。歴史の裏で積み重ねられる悲しみの連鎖。
 帰るべき日常。家族。友人。人間らしい、人並みの幸福。
 誰も見捨てず、置き去りにしない、幸せな結末へ向かう道を探して。
 彼女達はようやく一つの答えを選び出し、未来へと歩き始めた。
108: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/17(日) 18:31:35.83 ID:3RNaMLYEo
 あれから数日。
 人知れず街の危機を救った魔法少女達は、取り戻した日常を噛み締めるように、
それぞれの生活に帰っていた。

 ショッピングモール。
 至って平和な午後のひとときを、佐倉杏子が闊歩する。歩きながら口に食べ物を運ぶ姿も
相変わらずである。
 普通、魔女の動きが活発になるのは夕刻以降であるので、それまで如何に退屈しのぎをするか
という問題が、これまた相も変わらず、彼女を悩ませる。
 友人達が学校に行っているこの時間を、彼女は以前にも増して退屈に感じるようになっていた。
 それで彼女は新作映画の看板にあっさり釣られて、まだ人も疎らな映画館に立ち寄るのだった。
 そこに魔女が居たのは、純然たる偶然だった。

 暗闇の魔女、ズライカ。
 暗所に潜むこの魔女は、魔法少女の用いる魔力探知からも、かなりの程度まで隠れる性質を持つ。
 杏子は映画館に入るや否や微弱な魔力を感じ取り、目当てだった流行りの映画とは別の、いかにも
客足の遠いホールに足を踏み入れた。
 杏子はその弱い気配の主が使い魔だとばかり思っていたのだが、それを放置しようとはしなかった。
 重いドアを開けた途端、その気配が魔女に相応しいものになる。
 杏子は少し驚いて、唇を固く結ぶ。

杏子「こいつは……」

 強い眼差しの先にソウルジェムを掲げ、変身する。そして即座に結界に侵入した。
 以前の彼女なら、思いがけぬ魔女の気配に舌舐めずりの一つでもしていただろうが、
本人も知らず知らずの内に、そんなヒールの所作を過去の物にしていた。

 ズライカの結界は、ホールの形はそのままに、物質の表面を独特の幾何学模様で覆い尽くす。
 その闇が深ければ深いほどズライカは力を増すのだが、灯りの多い現代において、彼女が真価を
発揮する機会はまず無いと言って良い。

 戦いは一方的だった。
 スクリーンの消えた場内は薄暗かったが、杏子が暴れまわるには十分な視界が確保されている。
 暗がりから暗がりへ逃げ回るズライカを、杏子は的確に追い詰め、ダメージを与える。
 結局の所、光源を妨げる手段を持たない事が、この魔女の最大の欠陥だと言える。
 ついにズライカは逃げ道を失って、動きを止めた。

杏子「もういい」

杏子「もう呪わなくていい。せめて楽に、終わらせてやるよ」

 魔女を真っ二つに裂いて、決着をつける。
 結界が解ける。
 杏子は足元のグリーフシードと、椅子に置いたポップコーンを拾って、少し考え込んだ。

QB「やれやれ、君達はつくづく理解しがたいね」

杏子「てめぇは……」

QB「同胞と知っても、手にかける。殺しながらも、慈悲の言葉をかける。
 しかも、矛盾しながらも、魔法少女としては益々強力になってきている」

 杏子は怒りの表情を引っ込めて、その場を去る事にした。
 朗読のような言葉が、背中に浴びせられる。

QB「感情というのは、論理的に説明できそうでいて、時々こんな矛盾を見せる。
 僕達が長年理解できずにいる人間のステロタイプを、今の君は一身に纏っているね。
 実に興味深い。今キミは、どんな気分なんだい?」

 結局、映画は見ないまま外に出る事にした。
 そう言えば、そろそろ学校が終わる時間なのだ。
109: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/17(日) 18:34:59.03 ID:3RNaMLYEo
 公園。通学路から少し離れた場所。
 さやかと恭介がベンチに座って話す。
 二人が放課後待ち合わせる時は、大抵この場所を選んだ。
 ただ、誘うのは常にさやかの方だったが。

さやか「ねえ、恭介。
   もしも、もしもだけどね、あたしが醜い化物になったら、恭介はどうする?」

 恭介は返事をせずに考え込む。
 あれから松葉杖も取れて、魔法の話も少しは聞いていた。いかにも突飛な話であっても、
つれない態度をとってはいけないという事を、恭介は重々承知している。

恭介「そうだねぇ。そういう時は、さやかが好きな曲を弾いてあげるよ」

さやか「え」

恭介「だって、そういうものだからね。そういうストーリーってさ。
  魔女の呪いは愛で解けるって、相場は決まってるだろう?
  だから僕に出来る事と言えばもちろん、演奏する事だよ」

 さやかは安堵したような、落胆したような、複雑な気分になる。
 この極端にニブい頓珍漢ならば、魔女の秘密さえも受け入れてくれるのではないかという期待が
あったのだが、その期待は、上も下も行かない形で的中してしまいそうだ。
 不満ではないが、満足な回答でもなかった。

さやか「じゃあ、それで姿が戻らなかったら?」

恭介「えーっと……それはやっぱり」

さやか「やっぱり、何?」

恭介「何でもないよ」

 言いよどむ恭介の態度は、さやかの不安と好奇を同時に煽る。
 しつこく食い下がるさやかと、のらりくらりかわそうとする恭介のじゃれ合いは、しばらく続いた。
110: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/17(日) 18:38:08.91 ID:3RNaMLYEo
 ビルの屋上。
 杏子が風に煽られながら、さやかの様子を見ている。

杏子「ちぇっ、何やってんだアイツ」

 望遠鏡を外して、一人ごちた。
 この所ずっと、杏子はさやかに対して、機嫌が悪い。
 さやかがすっかり『幸せバカ』になってしまった事が面白くないのだ。

杏子「ゲーセンでも誘うかと思ったけど……」

 その計画は敢え無く中止である。
 杏子は下校中の生徒の列を眺めながら、物思いにふける。
 人が多い街。その中に、つい見知った顔を探してしまう。

杏子「ちょっと、魔法少女が増えすぎたかな」

 人が多い場所は魔女も生まれやすい。とはいえ、魔法少女が一箇所に五人も集まれば、
グリーフシードの需給がバランスを崩す日も遠くないだろう。

杏子「……潮時、かな」

 その時、生徒の列の中に目当ての顔を見つけた。
 まどか、ほむら、それから面識の無い緑髪の少女が並んで歩く。
 杏子はテレパシーを飛ばす。

杏子『オーイ、ちょっとツラ貸しなよ』

まどか『杏子ちゃん?』

ほむら『なにかしら』

杏子『いやー、なに、ちょっとさ、遊びにでもいかない? たまには楽しまないとさぁ』

 相当な距離があったが、杏子の視力には、二人が笑いを堪える仕草がしっかり見えた。
 杏子はムッとして、言う。

杏子『んだよ、嫌なら無理にとは言わないよ』

まどか『違うよ、杏子ちゃん。わたし達も呼ぼうと思ってたところ』

杏子『あー?』

まどか『マミさんの家にお呼ばれしてるの。杏子ちゃんも一緒に行こう?』
111: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/17(日) 18:45:16.94 ID:3RNaMLYEo
 見滝原の幹線道路。
 巴マミはかつて事故に遭った現場を訪れている。
 そこは両親を失った場所でもある。

マミ「私、まだ生きてるよ」

 花を捧げ、見つめていると、事故の顛末が思い起こされた。

マミ「もしもあの時、違う願い事をしていたら……」

 両親を生き返らせて、と願っていたら。
 マミは頭を振って、気を取り直す。
 懺悔するかのように、自分の半生を振り返る。

マミ「自分のために祈った私は、ずっと人のために生きると思ってたの。
  見返りなんてない。怖くても辛くても一人で我慢するのが当たり前で……」

マミ「でもね、友達が出来たんだよ。
  その子は私の事、もう一人ぼっちじゃないって言ってくれた」

マミ「父さん、母さん」

マミ「私もう少し生きてみる。
  化け物だとしても、醜い生き方だとしても、私は、大好きなあの子達と一緒に
  もう少しだけ生きていたい」

マミ「ごめんなさい。せめて会いに行く時は、化物に変わる前にするから……
  だからどうか、許して」

 マミは花の墓標に背を向けた。
 零れそうな涙を拭いて歩き出す。
 歩きながら、いつもの柔らかい笑顔を作って、これからの事を考える。

マミ「さ! お茶の準備をしなくちゃね。あの子達を待たせたら、可哀想だもの」
112: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/17(日) 18:50:56.14 ID:3RNaMLYEo
 マミの自宅。玄関前。

 まどかとほむらは二人、友人達が集まるのを待つ。
 仁美は相変わらず稽古事が忙しいらしく、下校途中で別れた。
 杏子はさやかを連れてくるらしい。無茶な事をしないかと、少し心配だった。
 ほどなく家主も帰ってくるのだが、その前に招かれざる客もやってきた。

まどか「キュゥべえ? あなた、もしかしてまだ何か企んでるの?」

QB「まさか。もはやまどかの未来は確定してしまったからね。
 君は魔女にならないし、エネルギーも生まない。
 そして、その最期に全ての魔女を道連れにするなら、僕達の計画は既に破綻したも同然さ」

ほむら「だったら、どうして私達に付き纏うの」

QB「結論が出たとはいえ、まどかの祈りは未だ進行形だからね。
 それが世界を揺るがす中心である事に変わりはない」

ほむら「そうやって、まどかを唆す隙を探ってるのね」

QB「否定はしないよ。
 ……それじゃ、今日は別の子の所へ行くね。せっかくの集まりに水を差すと悪い」

 キュゥべえは音も立てず、去った。

ほむら「これで良かったのかしら」

まどか「え?」

ほむら「ワルプルギスの夜を倒しても、それで魔女が消えるわけじゃない。
   今もどこかで涙を流す魔法少女がいる。
   結局、私のした事はエゴだったのかもしれない」

まどか「いいんだよ」

 まどかの表情は自信に満ちていた。

まどか「エゴでも我が儘でもいいの。それで皆を守れたんだから」

 祈るように、言葉を紡ぐ。

まどか「いつかあった悲劇も、いつか起こるかもしれない悲劇も、全部変えてみせるから。
   だからね。それまでの間、もう少しだけ、この幸せが続いてほしい」

 エレベーターが動き、まどか達の居る階に近づく。

まどか「大丈夫。信じようよ。
   だって、魔法少女はさ、夢と希望を叶えるんだから」

 もうすぐ、エレベーターから降りて、友人達が顔を見せるだろう。
 それまでの間、まどかは最高の笑顔を、このかけがえの無い親友に向けるのだった。



おしまい。
113: ◆NqJArk5IVdBU 2011/07/17(日) 19:04:31.36 ID:3RNaMLYEo
これで終わります。感想貰えたら嬉しいです。

予定外に時間取れたので、予定より早く書き終わったけど、思った以上に大変だった!
書き始めは適当に俺得のオナニー展開できれば良いと思ってたんだけど
QB絡みの話書くのが予想外に難産で、苦労しました。

とりあえず書きたいものは書いたんで、自分の中では満足。
やはり本編が鬱展開なんで『解決編』が見たかったというのと
OP映像や、magiaジャケットとかの未回収なイメージを盛り込んだ話が欲しかったのです。
元々熱心に創作活動する方では無いので、これでしばらくは落ち着けるかなぁ
118: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/07/18(月) 10:50:40.62 ID:V8vH9/mNo
おつかれさまでした!
いいハッピーエンドでした
OPEDの要素まで盛り込んであって、とても好きな作品になりました

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