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「かぐや姫」

1: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/08/26(月) 09:32:18.921 ID:xzqmQQBN0
女は男に「好きだから付き合ってほしい」と言い寄られたときに、「どうして私なの…?」と答え、理由を求めた。

「いや…だって、それこそどうしてだ?恋愛にそういうのは関係ないだろう」と正面に坐る女を訝しみ睨みつける。
2: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/08/26(月) 09:33:07.167 ID:xzqmQQBN0
そこは何処かのカフェテラスだった。

丸テーブルを挟んで先ほどから向かい合っている男女は、
片や骨ばった指で取っ手を摘みやつれた顔にコップを運ぶサラリーマン風の男、
片やまだ未熟な顔つきをして細い指を膝の上に重ねている学生服に身を包む女、
という世間でいうところの後ろめたいな組み合わせでだった。

ましてその女の眼は紅く淡い髪色をしていたので、
その女を目にした誰もが奇異の表情から言いようのないような顔をして、
気まずそうに口を噤みながら目線を避けて歩き去っていく。

彼女はつい最近まで憲法上人ですらない悪霊リリスとアダムの子孫、
悪魔リリムだった。
3: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/08/26(月) 09:33:29.285 ID:xzqmQQBN0
「どうしても理由が知りたい」と、いうので、
渋々「その…優しくて、芯があって、女の子らしいというか…」と、
やや顔を俯かせ口をまごつかせ上擦った口調で言うのを見て、女は答える。
4: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/08/26(月) 09:33:53.684 ID:xzqmQQBN0
「わかったよ、貴方と付き合います。だから代わりに私がこれからいう4つのことを叶えてほしい」
と条件を出してくる。

そんなことにも目もくれず女と付き合えると有頂天になった男は
構わずに「わかった」と意気揚々と答える。
6: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/08/26(月) 09:34:50.385 ID:xzqmQQBN0
女の言う願い事は一つクリアする毎に言い渡される。


一つめに出された条件は『どうかしっかり定職に就いてほしい』と言うもの。

男はフリーターである。
まさかこの人に限って、
と顔にだした男は「…低収入のままだと付き合えないと言うことか?」と思わず聞き返した。

やはり金…と思いを巡らせた辺りで
「いいえ、貴方さえいてくれれば、お金…他は何もいりません。貴方さえ幸せなら、それで…」
と女は答えた。
9: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/08/26(月) 09:35:24.321 ID:xzqmQQBN0
「だからどうか定職に就いてほしい」と机に求人情報誌を起き、
こちらの目をじっと見る。

あまりにも真摯な顔つきで言うので、男は思わず「…わかった」と承諾してしまう。
男にとっては女を自分の手元に置いておく事の方が問題でだった。

職業訓練でも資格取得でも何でもやってやる。虚しい万能感を抱き、
男はやや遅い就職活動に奮闘する。
10: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/08/26(月) 09:36:19.659 ID:xzqmQQBN0
男はこれまでの貯金を全部下ろして女を連れて都会にやってくる。
職業訓練を受けることのできる施設は町に一つしか置かれていない。
だから男は駅最寄りに小さな借宅を借りる。

「家賃、大丈夫?」という女の問に、
「通勤に時間が喰われるなら金を喰われる方がましだ」と相も変わらず男は強がりながら答える。
12: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/08/26(月) 09:38:02.722 ID:xzqmQQBN0
男が職業訓練に出払っている昼の間、
女はその借家で家計簿をつけたり家事をしているらしい。

だが、男は一つ引っ掛かる。どうも、自分にまだ心を見せていないような、
霞がかった感触に、破局の言葉が頭を離れなかった。

果たして彼女のイエスの含蓄はいくらか、今更心細く思うのだった。
15: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/08/26(月) 09:41:05.978 ID:xzqmQQBN0
女は自分と付き合う条件として男に4つの事を要求する。

一つは「職に就くこと」
二つは「友人を持つこと」
三つは「会社繋がりで同年代の女性と付き合いを持ち、敬愛すること」
四つは「その女性と結婚し子供を設けること」

つまり女は最終的に男に自分と別れることを要求したのだった。
17: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/08/26(月) 09:43:54.405 ID:xzqmQQBN0
4つめの要求を伝えられた男はとうとう確信する。
「お前は元々自分と付き合うつもりはなかったんだ」と、
別の女と子を作れとはつまりそういう事じゃないか、と。

男の怒りを噛み殺した問いに、
女は柔らかい澄んだ目をしながら「そうだよ、今更気が付いたの」と受け答える。

酷く傷ついた顔をした男は涙を堪え憤慨し、毒を吐き捨てる様に彼女を去る。
18: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/08/26(月) 09:45:14.772 ID:xzqmQQBN0
やはり初め感じた自分の霞でも掴むような感覚は、
女の恋人としての違和感は誠であった。

翌年男は職場にいる同年代の女と婚約し子をもうけた。

ワイドショーではリリムの人権問題について有識者によって語られていた。
リリムについて悪く言う人間はまだ多く、彼らを悪魔といって嘲笑するものもいた。
中には、リリムと一緒にいるだけで侮蔑する人間もいるらしい。
19: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/08/26(月) 09:46:31.979 ID:xzqmQQBN0
子を抱く女の幸せそうな姿を見て、
自分にいつの間にか築かれていた家庭と財産を顧み、
ただのフリーターが此処まで成りあがってと、思った所で、ふとある事が頭をよぎる

酷い罵声を浴びせ非難してそのままであるが故に、
認めたくはないが、頭に落雷したその警鐘は、一生男の中で響き渡る事になる。

その女の「お金は要らない、貴方さえいればいい」とは、
「貴方さえ幸せならそれでいい」とは、つまりこう言うことだったのではないか、と。
20: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/08/26(月) 09:48:21.808 ID:xzqmQQBN0
おわり

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