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1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 20:23:08.08 ID:Le8dtFHM0
「え?なのは、今日家に一人なの?」

「うん、そうなんだ」

ある日の下校中。

私の友達、高町なのはとの会話。

なのはのご両親も、お兄さんもお姉さんもみんな用事で出払ってしまい、今夜、なのはは一人っきりになるらしい。

「一人っきりって……その、大丈夫?」

「あはは、フェイトちゃんってば心配性だなあ。昔から一人でいることは結構多かったから。大丈夫、平気だよ!」

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 20:26:14.35 ID:Le8dtFHM0
そう言ってなのはは微笑んだ。でもその表情はどこか……。

……うん、やっぱり決めた。

「ねぇ、なのは……」

「ん?なに?」

「も、もし良かったら……その……ウチに泊まりに来ない、かな……?」

「えっ……いいの?フェイトちゃん!」

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 20:28:11.46 ID:Le8dtFHM0
こうして今夜、なのはがウチにお泊りに来ることになった。

リンディ提督……じゃなくて、母さんも賛成してくれた。

なのはがウチにお泊りに来るのって、初めてだよね?

「ふふ、どうしたのフェイト?そわそわしちゃって」

「えっ?え、えと……な、なんでもないです!」

あ、また敬語遣っちゃった……早く慣れなきゃ……。

けど母さんはそのことには言及せず、優しく微笑んでくれた。

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 20:31:03.45 ID:Le8dtFHM0
ぴーんぽーん

呼び鈴が鳴る。

その瞬間、私の体は電流が流れたようにびくりと反応してしまった。

それを見た母さんにくすくすと笑われる。

私は顔を赤くしながら、急いで玄関へ向かった。

玄関を開けると、そこには待ちわびた顔が。

「えへへ……今日はよろしくね、フェイトちゃん!」

「う、うん……!いらっしゃい、なのは!」

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 20:33:49.76 ID:Le8dtFHM0
「いらっしゃい、なのはさん。

フェイトったら、あなたが来るのが待ち遠しかったみたいでずっとそわそわして落ち着きが……」

「か、母さん……!」

「あらあら、ごめんなさい。くすくすくす……」

「き、気にしないでねなのは……」

「あはは、うん、大丈夫。私も今日のお泊り、すっごく楽しみだったから!」

良かった……深く考えてないみたいだ。もう、母さんってば……。

「ま、それよりもうお夕飯できてるわよ。

なのはさん、荷物を置いてらっしゃい。すぐにご飯にしましょ!」

「はーい!」
7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 20:36:34.14 ID:Le8dtFHM0
「いただきまーす!……わ!すごく美味しいです!」

「ふふ、気に入って貰えて良かったわ」

母さんの作るご飯はいつもとても美味しい。

なのはもとても美味しそうに食べている。

でも私はいつもより箸が進まなかった。

「……?どうしたのフェイトちゃん。私の顔に何か……?」

「えっ?」

「あ、もしかして……私の口の周り、すごく大変なことになってたり!?」

「え、あ、な、なんでもないよ!大丈夫、大丈夫だから!」

「?あはは、変なフェイトちゃん」

「あ、あははは…」

いけないいけない……気を付けないと……。

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 20:40:10.43 ID:Le8dtFHM0
ご飯を食べ終わってなのはと二人でのんびりしていると、母さんから声をかけられた。

「二人とも、もうお風呂沸いたから今から入っていらっしゃい」

「あ、はい」

「はーい。じゃ、行こっかフェイトちゃん!」

「う、うん!」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 20:43:00.96 ID:Le8dtFHM0
「な、なのは……」

「んー?」

「やっぱり二人で一緒に湯船に浸かるのはちょっと無理があるんじゃ……」

「そう?私はこのままの方が好きだなー」

「な、なんで……?」

「だって、この方がフェイトちゃんとくっついていられるもん」

「えっ!?そ、そそそそう……かな……」

「うん、そうだよ……ってあれ?フェ、フェイトちゃん!顔が真っ赤だよ!のぼせちゃった!?」

「わ、私もう上がるね……これ以上はちょっと……耐えられないかも……」

「う、うん。大丈夫?」

「大丈夫……大丈夫……」

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 20:44:40.00 ID:Le8dtFHM0
「……ふー……」

先に上がって部屋で少し休み、落ち着きを取り戻せた。

まったくもう……なのはってば……。

人の気も知らないで……。

「フェイトちゃーん?」

突然扉の外から声がし、びくりとする。

「な、なのは?何?どうしたの?」

「ごめーん。今両手ふさがっちゃってるのー。ここ開けてー」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 20:46:56.41 ID:Le8dtFHM0
「え?う、うん、わかった」

急いで扉まで行き、扉を開ける。

「なのは?それは……?」

「じゃじゃーん!瓶の牛乳だよ!お風呂上りにフェイトちゃんと飲もうと思って家から持ってきたの!」

「瓶の牛乳……?」

「うん!お風呂あがりの牛乳は美味しいけど、

瓶の牛乳はもっと美味しいんだってお父さんが言ってたんだ!はい、フェイトちゃん!」

「そうなんだ……。ふふ、ありがとう。なのは」

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 20:48:52.24 ID:Le8dtFHM0
それから牛乳を飲んで、お喋りをして、どちらからともなく欠伸をしたところで眠りに就くことにした。

「それじゃ電気消すね、なのは」

「うん、おやすみ。フェイトちゃん」

電気を消し、ベッドの中、なのはの横に躊躇しながらも潜り込む。

少し大きいベッドだから二人並んで寝ることができる。

私は最初、床に布団を敷くからベッドはなのは一人で使っていいよ、

って言ったんだけど、なのはも譲らなくて……。

結局、二人で一緒に寝ることにした。

今夜は、あまり眠れそうにない。

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 20:51:25.52 ID:Le8dtFHM0
「……んっ……んん……」

朝、鳥のさえずりで目が覚めた。

軽く伸びをし目をこすり、隣をちらりと見る。

私の大切な、大好きな友達、高町なのはが

すやすやと気持ちよさそうな寝息を立てている。

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 20:54:05.80 ID:Le8dtFHM0
大好きな友達、と言ったが、自分でも気付いている。

この『大好き』は……一般的な『大好き』とは違うのだと。

友達として好きというのではなく……そう。

いわゆる同性愛というものだ。

なのはと一緒にいたい、一緒になりたい、肌を重ねたい……。

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 20:55:53.71 ID:Le8dtFHM0
でもそんなこと、言える訳がない。

わかっている。

これは普通じゃない。

どう考えても『異常』だ。

こんなことをなのはに知られたら……。

もしかしたら、優しい彼女はこんな異常も受け入れてくれるかもしれない。

そんな思いはある。

でも受け入れてもらえなかったら……?

……怖い。

それはあまりに怖い想像。

だから、ずっと我慢してきた。

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 20:57:31.79 ID:Le8dtFHM0
昨日だって、ずっと我慢してた。

お風呂の時なんか……。

あぁ、思い出しただけで顔に血が昇ってくる。

なのはってば、私の気も知らないであんな……。

でも、我慢した。

昨日の夜だって、羊を何匹数えたか分からない。

なのはを襲ってしまおうかと何度考えたか分からない。

でも、我慢した。

この幸せを失うのが、怖いから。

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 20:59:45.64 ID:Le8dtFHM0
そう、私は今、幸せ。

大好きななのはと一緒にいられて、友達でいられて、幸せ。

これ以上の幸せを望むなんて、わがままだ。

わがままな子は、叱られる。罰を受ける。

だから、私は我慢した。

我慢しなくちゃ、いけないんだ。

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 21:01:22.08 ID:Le8dtFHM0
「……まだちょっと時間は早いかな……?」

時計を見るといつも起きる時間より30分も早く起きてしまった。

多分、なのはが一緒だったからだ。

なのはを見る。

まだぐっすりと眠っていて起きる気配がない。

まるで何をしても起きそうにないくらい熟睡している。

……何をしても、起きそうにないくらい。

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 21:03:24.99 ID:Le8dtFHM0
「だ、だめだよ……!」

頭に浮かんだ考えを、わざわざ『だめだ』と口に出し振り払う。

そんなことをしてなのはが起きたら……考えるだけでも恐ろしい。

そうだ、早くなのはを起こしてしまおう。

そうすればこんな妄想もしなくて済む。

まだ時間は早いけど起こしてしまおう。

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 21:05:15.31 ID:Le8dtFHM0
「なのは、朝だよ起きて」

「すー……すー……」

「なのは、朝だってば。なのは」

「すー……すー……」

……起きない

声をかけてだめなら、と肩を揺さぶってみる。

「ほらなのは、起きてってば」

「ん……すー……すー……」

……起きない……。

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 21:08:17.94 ID:Le8dtFHM0
困ったな……。

最近自主訓練も一生懸命みたいだし、疲れがたまってるのかな?

全然起きそうにない……。

そう思いながらなのはの顔を眺める。

声をかけても揺さぶっても可愛い寝顔で可愛い寝息を立て続けるなのは。

気付けばその顔を眺めるというより、見つめていた。

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 21:11:12.53 ID:Le8dtFHM0
……なのはのほっぺ……柔らかそうだな……。

ちょっとだけ……ちょっとつつくだけならいいよね?

おかしくないよね?

ゆっくりとなのはのほっぺに人差し指を近付け……

 ぷに

触れた

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 21:14:01.82 ID:Le8dtFHM0
「柔らかい……」

 ぷに ぷに ぷに

意識せず、何度も何度もその柔らかな肌を、肉を、押してしまう。

 ぷにぷにぷにぷに

柔らかい……柔らかい……気持ちいい……気持ちいい……。

…………美味しそう…………

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 21:17:21.11 ID:Le8dtFHM0
何回も頬をつつく内、私の気はどんどん大きくなっていた。

頬から指を離し、かわりに顔を近づける。

なのはの顔に自分の顔が近付くにつれて、いい匂いがしてくる。

なのはの匂い……。

なのはの……寝汗の匂い……吐息の匂い……。

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 21:20:05.96 ID:Le8dtFHM0
その匂いはまるで麻薬のように私を恍惚とさせ、正常な思考を妨げる。

なのはの頬が文字通り目と鼻の先まで近付く。

私は軽く開けた口から舌を少し突き出し……。

舌で彼女の頬をつつく。

 ぷに ぷに ぷに

やっぱり柔らかい……。

つつく内に、無意識の内に、舌で触れる面積が大きくなる。

一度に触れている時間が多くなる。

なのはの味を知りたくて。

なのはを味わいたくて。

 ぷに ぷに ぺろ ぺろ ぺろ

つつくという行為から舐めるという行為へと

次第に変容していく。

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 21:24:08.95 ID:Le8dtFHM0
「美味しい……」

普通に考えれば美味しい訳などない。

人間の肌がそんな味、するわけない。

でも、美味しい……。

「はぁ……はぁ……」

自分の鼻息でなのはを起こしてしまわぬようできるだけ呼吸を抑え舐め続ける内、逆に次第に息が荒くなっていく。

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 21:27:57.44 ID:Le8dtFHM0
はたから見るとどうみても異常だろう。

一人の少女が一人の少女の頬を息を荒げながら舐め続けているのだから。

だが今の私はなのはの匂いと軽度の酸欠、

そして極度の興奮でとてもまともに思考を働かせることなどできない。

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

 ぺろ ぺろ ぺろ ぺろ

なのはの頬を舐めていると、ふと目に留まるものがあった。

「……なのはの……唇……」

ごくり……と自分で唾を飲む音が聞こえた。

私の……ファーストキス……なのはにあげたい……。

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 21:31:08.10 ID:Le8dtFHM0
きっとなのはもキスは未経験のはず。

なのはのファーストキスも私が欲しい……。

でも……女の子にとってファーストキスはとっても大事なもの。

それを勝手に奪うのはなのはに悪い気がする……。

でも、なのはの唇、柔らかそう……美味しそう……。

試しに指で触れてみる。

 ぷに

やっぱり柔らかい。

……あぁ……この唇はどんな味がするのだろう。

どんなに甘くて……

どんなに私の脳をとろけさせてくれるのだろう。

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 21:36:32.99 ID:Le8dtFHM0
……そうだ

舐めよう。

舐めるだけならキスにはならない。

なのはのファーストキスを勝手に奪ったことにはならない。

……普段ならこんな意味の分からない発想は浮かびもしないだろう。

だが……そう考えた時にはすでに、私の舌はなのはの唇を這っていた。

ちろ ちろ

なのはを起こしてしまわぬように細心の注意を払って唇を味わう。

「はぁ……はぁ……甘い……」

私の理性は、もう限界だった。

いや、とっくの昔に限界を超えていたのかも知れないが……。

とにかく限界だった。

私はなのはの顔から自分の顔を離し、目線をなのはの体へと向ける。

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 21:39:18.02 ID:Le8dtFHM0
 ぷつっ ぷつっ

下から順番に、パジャマのボタンをはずしていく。

パジャマの下には何も着ていない。

素肌の上に直接パジャマを着ている。

だからボタンを全部はずし、布を左右に開いた時

直接それは見えた。

「なのはのおっぱい……可愛い」

私はなんのためらいもなく唇を押し当てた。

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 21:41:32.15 ID:Le8dtFHM0
ちゅぱ ちゅぱ ちゅぱ

赤ちゃんのようになのはの胸に吸い付く。

お乳はでないけど、やっぱりすごく美味しい。

「ん……んむ……はぁ……はぁ……ぁむ……」

その時だった。

「……んぁ……なに……?ん……くすぐったいよ……」

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 21:44:14.73 ID:Le8dtFHM0
「あ……んむ……なのは……ちゅ……」

「……ふぇっ!?な、なに?なになになに!?

フェイトちゃん!?なんで、なんで……!?え……!?」

「ぁむ……ごめんね……なのは……んむ……」

「ちょっと……フェ、フェイトちゃ……やめて……!やめてよ……!」

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 21:47:02.17 ID:Le8dtFHM0
私の理性は完全に吹き飛んでいた。

なのはが目を覚まし、慌てふためいているにも関わらず、行為をやめようという気はまるで起きなかった。

「ッ……だめ……やっ……やめてよフェイトちゃん……!」

「ん……はぁ……ちゅ……ぁむ……」

構わず行為を続ける。

すると……

「こんなの……やめて……やめてってばぁ!!!」

  パァン!!

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 21:51:37.92 ID:Le8dtFHM0
「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」

聞こえる音はなのはの荒い息だけ。

一瞬、何が起こったのか分からなかった。

少し遅れて右頬に熱を感じ、それがじんじんとした痛みに変わり、

自分は今、なのはにビンタされたのだと気付いた。

途端に、理性が戻ってくる。

私は……何てことを……!

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 21:55:13.90 ID:Le8dtFHM0
手が震える。

唇も震える。

全身が震える。

涙さえ浮かんでいたかもしれない。

恐る恐るなのはを見る。

なのはは、目を潤ませ、その瞳でこちらを睨んでいる。

「………………」

「ぁ……な……のは……その……えっと……」

言葉が出てこない。

「なのは……あの……ご、ごめ……」

「おかしいよ……」

「え……」

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 21:58:16.76 ID:Le8dtFHM0
「女の子同士でこんなの……変だよ……普通じゃないよ……おかしいよ……」

「な……なの……は……」

「………………」

痛い沈黙が続く。

数秒後、なのはの静かな声で沈黙が破られた。

「……私、先に行くね。学校、遅れちゃう」

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 22:01:19.46 ID:Le8dtFHM0
そう言い、部屋から出て行くなのは。

バタン、とドアが閉められる。

……潰れた。

希望が、潰れた。

「変……だよね……普通じゃ……ないよね……おかしいよね……。……ぅ……ひぐっ……ぐすっ……」

『もしかしたら』、『ひょっとすると』……。

そんな淡い希望が、潰れてしまった。

もしかしたら、なのはは受け入れてくれるかもしれない。

ひょっとすると、なのはも私のことを好きかもしれない。

そんな、自分勝手な、でも切実な、淡い希望が……潰れてしまった。

……潰れてしまった?違う……自分でも分かってるはずだ。

潰してしまったんだ。

潰したのは……私じゃないか。

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 22:06:43.26 ID:Le8dtFHM0
私が自分で……可能性を潰してしまった。

面と向かってなのはに告白すれば。

はっきり『好きです』と伝えれば、結果は違っていたかも知れない。

断られたとしても、優しいなのははきっと笑顔で、友達ではいてくれたはず。

それをどうして……私は、欲望に身を任せて……。

あんな……無理やり……。

どうしてこんなことになったのだろう。

どうしてあんなことをしてしまったのだろう。

「ひぐっ……ぅ……ぅあ……ぐすっ……ぁあ……ぅ……」

ほんの十数分前まで暖かさで満たされていたはずの部屋は、今はただ後悔と、絶望と、嗚咽で満たされていた。

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 22:09:50.81 ID:Le8dtFHM0
涙を拭き、自分も部屋から出る。

朝食を食べるためにリビングへ降りていくと、

少し大きめの人影がこちらを振り返った。

「あ、おはようフェイト。待っててね、すぐに朝ごはん用意するから」

「……ありがとうございます、母さん……」

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 22:14:04.66 ID:Le8dtFHM0
「あら、フェイトなんだか元気がないわねぇ……。体調でも悪いの?大丈夫?」

私の様子を見て、おかしいと感じたのだろう。

母さんは心配そうな顔をしてくれた。

けど本当のことなんて言える訳がない。

「大丈夫です、まだちゃんと目が覚めてないみたいで……」

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/22(月) 22:19:15.94 ID:Le8dtFHM0
テーブルにはなのはが座って、朝食を食べている。

私は恐る恐るなのはの向かい側に座った。

「…………」

なのはは黙ったまま、黙々とご飯を口に運んでいる。

顔をあげてこっちを向いてくれない。

いつもみたいに笑いかけてくれない。

……きちんと謝っておこう。

きちんと謝らなきゃ……

「な、なのは!その……さっきはごめ」

「ごちそうさま、リンディさん!とっても美味しかったです!」

84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 15:03:06.53 ID:GODUm7A70
「あらあら、もっとゆっくり食べても良かったのに」

「美味しかったからつい早く食べ終わっちゃいました。えへへ……」

母さんと話しながら、なのはは席を離れる。

「あ、なのは……!」

慌てて呼び止めようとすると、なのははやっと私を見てくれた。

いや……見ていない。

その瞳には、感情がこもっていない。私が映っていない。

ただ、眼球がこっちを向いている。

それだけだ。

86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 15:04:59.07 ID:GODUm7A70
「私今日早く学校に行かなきゃいけないから。先に行ってるね、じゃあね」

聞こえた声からも感情は読み取れない。

私が何か言う前に、なのはは部屋に着替えに戻ってしまった。

…………泣いちゃダメだ。

ここで泣くとまた母さんに心配かけてしまう。

「…………いただきます。美味しそう……」

89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 15:08:44.16 ID:GODUm7A70
私が学校に行き始めてから、なのはが一緒じゃない登校なんて、きっと初めてだ。

「それでさ、新しいゲームのラスボスがまたねちっこい訳よー!」

「もう、アリサちゃんったら……ゲームばっかりしてると成績下がっちゃうよ?」

「ふふん!すずかったら、私を誰だと思ってるわけ?そう簡単に成績トップの座は譲らないわよ!」

「あはは、アリサちゃん頭えぇもんなぁ。にしてもゲームかぁ……

そう言えばあたし、あんまりやったことないなぁ。今度遊びに行ってもえぇ?」

アリサはいる、すずかもいる、はやてもいる。

でも、なのはがいない。

それだけで、こんなに寂しいものだったのか。

91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 15:13:23.73 ID:GODUm7A70
学校に行くと、なのはは居た。

「あ、いたいた。やっほー、なのは!」

アリサが最初になのはに声をかける。

なのははその声に反応してすずか、はやてと挨拶を交わし、いつもの様にお喋りが始まった。

いつもの様に……

「ったくもー。これだからなのはは……」

「にゃはは……ごめんごめん……」

「ほらフェイト、あんたも黙ってないで何か言ってやんなさいよ」

「え?あ、う、うん……えっと……し、しっかりしなきゃダメだよ、なのは……」

「うん、そうだね。それでねすずかちゃん……」

…………違う。

こんなの、お喋りじゃない。

なのははやっぱり……私を見てくれてない。

92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 15:17:57.11 ID:GODUm7A70
授業中

ちらりとなのはを見る。

いつもなら、なのはは私の視線に気が付いて

こっちを見て微笑んでくれる。

でも今日は微笑んでくれない。

視線に気付いてもくれない。

ううん……きっと気付いてるけど……

こっちを見てくれない。

94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 15:21:40.18 ID:GODUm7A70
お弁当の時間

やっぱりなのはは私に笑いかけてくれない。

お喋りしてくれない。

寂しい。

寂しいよ……。

寂しいよ……なのは……。

96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 15:25:40.38 ID:GODUm7A70
そして、放課後。

今日はみんな塾もお稽古もない日だから、いつもならのんびりお喋りをしてから帰るはずだった。

でも今日は違った。

「ごめんねみんな、私ちょっと今日用事があって……先に帰るね!」

「あら?今日はやけに忙しいのね、なのは」

「用事じゃ仕方ないよね……。また明日ね、なのはちゃん」

「また明日なー。ほな、気ぃつけてー」

「うん、じゃあねみんな!また明日!」

なのはは早足で逃げるように帰ってしまった。

97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 15:30:00.98 ID:GODUm7A70
なのはの姿が見えなくなってアリサが最初に口を開いた。

「登校も一人、下校も一人なんて珍しいこともあるものね」

「よっぽど忙しい用事でもあるのかなぁ?」

「お家の用事か何かやろか?あんまり考えても仕方ないことやけど」

私はみんなの会話に混ざる余裕などなかった。

そうだ、今しかない!

「ご、ごめんみんな!私もちょっと用事があるんだ、先に帰るね!」

そう言い残し、みんなの返事も聞かずに教室を飛び出して急いでなのはを追った。

98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 15:35:04.04 ID:GODUm7A70
なのはに追いついたのは学校を出てしばらく進んだ、少し細い道。

周りに人の気配はない。

これならなのはと人目を気にせず話せるはず。

もう一度謝れるはず。

「なのは!!」

声をかけるとなのはは、振り向きはしないけど立ち止まってくれた。

100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 15:40:22.74 ID:GODUm7A70
「…………」

この機を逃してはいけない。

「なのは……ごめんなさい……私……その……ずっとなのはのことが好きで……それで……その……

あんなことする言い訳にはならないかも知れないけど……えと……本当に……

そのっ……ぐす……本当に……っ……ひっく……ご、ごめん……なさい……」

最後の方は嗚咽でうまく言葉にならなかった。

でも、気持ちは伝えた。伝わったはず。

そして少しの間をあけて、なのはが振り向いた。

「……フェイトちゃん」

「な、なのは……!」

「私たちもう……仲良くするのやめよ?」

「……え」

103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 15:45:57.59 ID:GODUm7A70
拒絶の言葉。

分かってたはず。

許されないかも知れないと分かってたはずだった。

それなのに、実際にこの言葉を聞いて、私の全身の血液は凍り付いてしまった。

寒さで震えが止まらない。

足元から崩れそうになる。

嫌だ……嫌だ……嫌だよ……。

「そ……んな……な、なのは……待って……なのは……!」

「じゃあね……さよなら、フェイトちゃん」

嫌だ嫌だ嫌だ……なのは……なのは……!

「なの……は……ぅう……ぁ……うわぁあああああん……!」

106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 15:52:28.04 ID:GODUm7A70
……なのはが立ち去ってどのくらいたっただろう。

何人かの通行人が泣きじゃくる私を見て声をかけたけど、構わずずっと泣き続けた。

でももう涙は枯れたみたいだ。

今はただ、ぼーっと立っているだけ。

きっと今の私の顔……酷いことになっているんだろうな……。

と、また一人の通行人に声をかけられる。

「どうした、……酷い顔だぞテスタロッサ」

ほらね、やっぱり酷い顔だ……。

…………え?

109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 15:56:58.37 ID:GODUm7A70
聞き慣れた声に顔を上げると、そこには見慣れた顔があった。

「シグ……ナム……。ど、どうしてここに……?」

「主はやての迎えだ。何も不思議なことはない、いつものことだろう。それより……何があった?」

「その……なんでも……」

「なんでもない訳はないだろう……何があったのか、話してはくれないか」

110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 16:04:48.43 ID:GODUm7A70
このまま隠し通すのはきっと無理だ。

泣き顔を見られてしまった。

それに、なのはに拒絶された今となってはもう……。

話して楽になってしまった方がいいかも知れない。

「どうだ、話してくれるか。どうしても話したくないと言うのであれば無理強いはしないが……」

「……いえ、話します。実は……」

112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 16:07:55.37 ID:GODUm7A70
「そうか、そんなことが……」

「あんまり……驚かないんですね……」

「まったく驚いてないといえば嘘になるさ。そんなことより、お前はこれからどうするつもりだ?」

「…………」

正直、私の方が驚いていた。

この話をするときっとシグナムも私を軽蔑するだろうと思っていたから。

でも……『そんなことより』って……。

シグナム、あなたはどうして……。

115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 16:12:45.07 ID:GODUm7A70
「……もう、いいんです。悪いのは私なんですから……」

そう言い、私は視線を落とす。

……俯くと、枯れたはずの涙がまた出てきそうだ。

悪いのは私。

私が過ちを犯さなければこんなことにはならなかったんだ。

「しかし……」

そう呟いたのはシグナムだ。

「あの高町なのはが本当にそんなことを言うだろうか」

117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 16:16:38.39 ID:GODUm7A70
「え……?」

意表を付かれ、シグナムに顔を向ける。

彼女の言おうとすることがよく分からない。

「あの、それはどういう……?」

「お前も知っている通り、私が知っている限り、あの子はとても優しい。

これまでの付き合いで多少、人となりは理解しているつもりだ。

罪悪感に苛まれている今のお前には分かり辛いかも知れないが……よく考えてみろ。

自分が傷付けられたからと言って簡単に相手の心を傷付けるような、

そんな事を言うような人間ではないと思わないか?」

「えと……それは……」

118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 16:22:30.56 ID:GODUm7A70
「心から謝る人間を突き放すような、そんな人間ではないと思っていたが……」

シグナムは少し考えるそぶりを見せ、しばらく沈黙した後、口を開いた。

「確証も何もあったものではないが……何か理由があるのかも知れないな」

「……理由……?」

「あぁ、それを考えてみれば何か解決策が見つかるかも知れん」

「でも……なのはに聞こうにも、きっともう私と話してくれないだろうし……」

「要らない世話だと言われればそれまでだが……お前さえ良ければ、機会を見つけて私が聞いてみよう」

119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 16:27:55.14 ID:GODUm7A70
「え……?」

「あくまでもお前さえ良ければの話だがな」

……どうして……。

どうしてシグナムはそこまで……。

どうして私のためにそこまで……?

私の疑問はどうやら顔に表れていたらしく、シグナムは言った。

「お前と私は言わば戦友。困っている友を黙って見ているほど、ベルカの騎士は薄情じゃないさ」

そうしてシグナムは私の頭をなで、優しく微笑む。

温かい手のひら……。

……そうか……そうだ……。

シグナムは……こんなにも、こんなにも優しい人だったんだ……。

「どうだ。私に任せてくれるか?」

「はい……お願いします……ありがとう、シグナム……」

「あぁ、任せておけ」

122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 16:35:46.62 ID:GODUm7A70
車椅子を押し、主はやてと会話を交わしながらも、頭の中は今しがたの出来事で一杯だった。

テスタロッサから相談を受け、高町なのはと話をする約束をしたのは良いが……

内容が内容なだけに簡単に話が付くとは思えない。

色恋沙汰か……それも少し特殊な。


124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 16:37:30.20 ID:GODUm7A70
剣を交えて決着がつくような内容でもないからな……。

不慣れではあるが口で話し合うしかないだろう。

それにいつ実行するか……。

できるだけ早い方がいいだろうな。

だがわざわざ呼び出すというのも変に身構えられる恐れがある。

それは避けたほうがいいかも知れない。

そうこう考える内に、家へと着いた。

125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 16:40:52.84 ID:GODUm7A70
「みんな、ただいまー」

「今帰った。主、お疲れ様です」

「あ、はやておかえりー!」

「おかえりなさいはやてちゃん。シグナムもご苦労様」

「おおきになシグナム。いつもいつも送り迎えしてもろて。ほんまありがとう」

「いえ、これも主に仕える者としての役目ですので」

127: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 16:45:07.23 ID:GODUm7A70
「ヴィータ、車輪の掃除を」

「あいよー」

「では主、失礼します……っしょっと」

「ん、ありがとう」

主を抱え、家の中へと入る。

ソファーまで運んだところで、シャマルが声をかけてきた。

「ねぇシグナム、帰ってきて早速で悪いんだけど、おつかいに行ってくれない?お茶がもう切れちゃってて……」

「あぁ分かった、行ってくる。では主、行って参ります」

「ごめんな、シグナム。なんやこき使うてるみたいで……。気ぃ付けてな?」

「いえ、お気になさらず」

一人でじっくりテスタロッサの件について考えることができてむしろ好都合だ。

そんなことを思いながら、私は玄関を出た。

129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 16:51:19.13 ID:GODUm7A70
頼まれた物を買い、それを片手に帰宅する。

「……少し……風が強いな……」

今夜は荒れるかも知れない。

そんなことを思いながら少し歩くと……見慣れた人物に出会った。

「あれ、シグナムさん。こんにちは。こんなところで会うなんて珍しいですね」

「あぁ……奇遇だな、高町なのは」

本当に奇遇だ。

こうも早く機会が訪れるとは……。

早速だが、こちらの用事に付き合ってもらうこととしよう。

「少し話したい。時間はあるか?」

「?はい、大丈夫ですよ」

130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 16:56:32.81 ID:GODUm7A70
道端の通行人が多い所で話す様な内容ではないので近くの少し広めの公園へと移動した。

風も強くもう日も暮れかけているのでほとんど人はいない。

何も話さずここまで歩いてきた為いよいよ気になって仕方がなくなったのか、

彼女から話し掛けてきた。

「あの……話ってなんですか?シグナムさん……」

「あぁ、単刀直入に言う。テスタロッサのことについてだ」

「ッ……」

「大体の話は本人から聞かせてもらった。何も隠す必要はない」

「……聞いたんだったもういいじゃないですか。そういうことです。何も話すようなことはないです。

それに、少しきつい言い方になってしまいますけど、シグナムさんには関係ありません」

132: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 17:03:04.99 ID:GODUm7A70
「…………」

この子のこのような態度は初めて見る。

が、ここで引き下がる訳にはいかない。

「関係ない……か。確かにな。色恋沙汰など、本来は他人が首を突っ込む問題ではない。だが聞かせてくれ。

私にはな、とてもじゃないがお前がテスタロッサにあのような態度をとるとは思えん。理由が知りたいんだ」

「理由も何も……女の子同士なんて変じゃないですか。シグナムさんもおかしいと思うでしょ?」

「……そうだな……あぁ、確かに私もそう思う」

だったら……と彼女が何か言いかけるが、私はその前にすぐに言葉を重ねる。

「だが、どうしてそれを忌み嫌う?普通と違うものをどうして拒絶する?」

134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 17:07:53.34 ID:GODUm7A70
「…………」

「普通ではないからと言って忌み嫌う、それがどういうことか。

そんなことが分からないお前ではないはずだろう?」

彼女は答えないが私はさらに続ける。

「たとえそれが同性であろうと、なぜ自分を恋い慕う者を拒絶する?

襲われたからか?傷付けられたからか?確かにそれは許されがたいことかもしれない。

だがお前は……心から謝る者を許さないような人間だったか?」

……勝手なことを言っているのは重々承知だ。

自分を襲った相手を無条件に許せと、それも第三者が言っているのだから。

135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 17:14:07.86 ID:GODUm7A70
しかしここまで真剣に相手に語りかけたのは我々守護騎士が……私が造られてから初めてかもしれない。

不慣れではあるが、言いたいことは伝えられたはず。

これで目標を達成できなければ、私の力不足。

または私が高町なのはという人物を理解していなかったということ。

彼女にとってテスタロッサの行動は絶対に許されざるべき行動だったということになる。

もしそうだった場合は……。

そんな私の思考を遮ったのは、彼女の小さな呟きだった。

「……怖いんです」

「……怖い?テスタロッサがか?襲われるのが怖いと言うのであれば……」

「違います!」

私の言葉は突然の大きな声に遮られた。

「私は……フェイトちゃんを傷付けちゃうのが怖いんです」

136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 17:18:55.94 ID:GODUm7A70
「……言ってる意味がよく分からないな。傷付けるのが怖くてあのようなことを言った、と言うのか?

それでテスタロッサが酷く傷付いた。まさかそんなことに気付いていない訳ではないだろう」

そう詰め寄ると彼女は目に涙を浮かべ、叫んだ。

「私も……私もフェイトちゃんのことが好きなんです!

普通の好きじゃなくて、フェイトちゃんから私への『好き』と、おんなじ種類の『好き』なんです!」

「っ……!?」

140: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 17:23:22.86 ID:GODUm7A70
予想外の返答にさすがに驚いてしまう。

この子も、テスタロッサに恋愛感情を……二人とも、互いを好き合っていた……?

しかし、それならなおさら解せない。

それならばなぜこの子はテスタロッサにあのようなことを……?

この疑問に答えるべく、高町なのはは話し始めた。

「いつからフェイトちゃんにこんな感情を持ってたのかは、よく覚えてません……」

142: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 17:26:37.75 ID:GODUm7A70
「でも、この感情に気付いた時のことはよく覚えてます。

すごく……すごく怖かった……!フェイトちゃんを好きすぎて、

どうにかなっちゃいそうな自分が……すごく怖かった……!

絶対に我慢しなきゃいけない……もし我慢できなかったら……。

私はきっとフェイトちゃんのことなんか何も考えずに、自分の思いを満たすことしか考えずに……

暴走して……フェイトちゃんを…………。

そう思ってずっと我慢してたんです……なのに」

143: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 17:31:52.52 ID:GODUm7A70
「今日、知っちゃったんです。フェイトちゃんの気持ちを……。

フェイトちゃんも、私とおんなじだって知っちゃったんです。

最初の一瞬は、すごく嬉しかった。私とフェイトちゃんは両想いだったんだ!って。

でも……」

「それだときっと我慢できなくなる。感情に歯止めが利かなくなる。

だからテスタロッサを拒絶し、距離を取った。

テスタロッサを傷付けぬように、壊さぬように。そういうことか……」


144: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 17:38:14.14 ID:GODUm7A70
彼女は黙って頷く。

確かに……これなら理屈が通っている。

しかし……

「なぜお前はそれを本人に話さない?」

「え?だって……」

「おそらくお前は自分の気持ちを伝えるより相手を拒絶して、

距離をおいた方が良いと考えたのだろうが……それが本当に最善手だったか?」

「最善手……」

「まぁ、何が最善手だったかなどというのはすべてが終わっても本人には分からないものだ。

だが考えてみろ。お前が望む未来はなんだ?お前の、本当に幸せな世界はどんな世界だ?

それは……テスタロッサが幸せな世界だろう?」

147: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 17:44:19.80 ID:GODUm7A70
「もちろんです。私は、フェイトちゃんが幸せならそれでいい。

だから私は自分が幸せになるのを諦めて……」

「ならば聞こう。今テスタロッサは、幸せだと思うか?」

「ッ……そ、それは……今は確かに寂しいかも知れません……でもきっといつか……」

「本当にそう思うか?自分が好いている者に拒絶され、本当に幸せになれると思うか?」

「自分が好いている者に……あっ……!」

148: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 17:47:34.57 ID:GODUm7A70
シグナムさんの言葉で思い出した。

フェイトちゃんのお母さん、プレシアさんのこと。

そうだ、フェイトちゃんはあの時

自分のお母さんに捨てられて……心が壊れかけたんだった。

でも、立ち直れた。

どうやって……?どうして立ち直れたの……?

そんなこと分かってるはずだ。

そうだ、心の支えになってくれる人が……私がいたからじゃないか……。

私のおかげでフェイトちゃんが救われた、私がフェイトちゃんを救ったんだ、

なんて自慢する気はまったくない。

けど、これはきっと事実。

じゃあもし、そんな私にまで拒絶されたら……?

大好きな人から二度も捨てられるなんて経験を、もししてしまったら……?

149: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 17:52:53.48 ID:GODUm7A70
「……私……勘違いしてました……」

「…………」

「こんなことじゃ……フェイトちゃんは絶対に幸せになんかなれない。今、わかりました。

フェイトちゃんに……私の気持ちを伝えます」

「……あぁ、やっとわかったか」

「はい、それに……」

151: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 17:57:11.16 ID:GODUm7A70
「私、可能性を、希望をひとつ自分で潰してたんですね。

気持ちを伝えて、私とフェイトちゃん、両方が幸せになるっていう……

とても小さいけど、素敵な希望を」

そう言って俯いた私の頭に暖かいものが触れる。

顔を上げると、シグナムさんが私の頭に手を乗せて微笑んでいた。

「小さな希望なものか」

「えっ……?」

「お前とテスタロッサなら、きっと大丈夫。お前も、テスタロッサも、誰も傷付くことなく幸せになれるさ」

その言葉に、思わず目頭が熱くなる。

「シグナムさん……!はい!がんばります!」

153: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 18:00:34.31 ID:GODUm7A70
どうやら一件落着だな。

緊張が解けたところで、急に妙な可笑しさがこみ上げてくる。

「しかし……どうにも不器用なやつだな。戦闘に関してはあれほど器用だというのに……。

テスタロッサ……あいつは本当に可笑しな奴だ」

「あはは、早く治して貰わないといけませんよね」

「それはお前にも言えることだぞ、高町なのは。

お前も似たようなところで不器用な奴だ。早く改善することだな。

まさかこの私が不器用さを他人に説教する日がくるとは……」

「にゃははは……善処します……」

154: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 18:03:52.73 ID:GODUm7A70
「さて、もう暗い。帰るぞ。あまり遅くなってはお前の家族が心配するだろう」

「はやてちゃんたちも、ですよね」

「……主は優しいお方だからな」

クスクスと彼女は笑う。

と、ぴたりと歩みが止まった。

「なんだ、どうした?」

「シグナムさん、これ……」

そう言って彼女が指した先を見ると……木に何か引っ掛かっている。

……金色の糸?

「よく気付いたな、こんな細い物」

「はい、一瞬日の光でキラッて。それよりこれ、最初は糸かと思ったんですけど……」

彼女が指で摘んだそれをよく見ると……金色の毛だった。

191: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 23:26:38.85 ID:GODUm7A70
~数十分前~


「ただいまー……」

「あ、フェイト。おかえり」

「ただいま、母さん」

「あら?今朝よりちょっと元気になったみたいね」

そう言って母さんは安心したように笑う。

シグナムのおかげで、ちょっとだけ希望が湧いたみたいだ。

……単純だな、私。

195: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 23:32:45.14 ID:GODUm7A70
リビングでしばらく体を休めていると母さんがあら、と声を上げたのが聞こえた。

「?どうかしたんですか?」

「お塩が切れちゃってるわ。これじゃお夕飯が……。待っててね、ちょっと買ってくるから」

「あ、お買い物だったら私が行きます」

「え?でもフェイト、大丈夫……?」

「はい、体調は別に悪くはないです。心配かけちゃってごめんなさい。それじゃ、行ってきますね」

「じゃあお願いするわね。いってらっしゃい、気をつけてね」


196: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 23:39:47.99 ID:GODUm7A70
「ちょっと風が強くなってきたかな……」

スーパーマーケットに行く途中には、少し大きな公園の横を通る。

公園の木が風でざわざわと揺れる。

と、その時。

ふと、風と木々の音に混じって聞き慣れた声が聞こえてきた。

「……グナムさ……も……おかし……もうでしょ……」

「ぁ……わた……うおも……」

この声……なのはとシグナム……!?

197: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 23:46:27.80 ID:GODUm7A70
声がどこから聞こえたのか、もう一度耳を澄ませてみる。

「………………」

……何も聞こえない……。

そのまましばらくたったけれど、耳に入ってくるのは風の音ばかり。

気のせいか、と歩き始めたのとほぼ同時だった。

……聞こえた、風上の方だ……!

私は声の聞こえた方に駆け出す。

少し行くと木々の陰から二つの人影が見えた。

……間違いない、なのはとシグナムだ。

私はさっと大きめの木の後ろに隠れ、様子を伺う。

198: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 23:52:53.59 ID:GODUm7A70
風で揺らめく枝の音が大きく、ここまで近付いても会話は聞き取りづらい。

神経を耳に集中させ、二人の会話を聞き取ろうとする。

それにしても、こんなに早く……。

シグナムとはついさっき話したばかりなのに……。

彼女はなのはの真意を聞き出せてくれているのだろうか……。

と、一瞬風がやみ、二人の言葉がはっきりと聞こえた。





「テスタロッサ……あいつは本当におかしな奴だ」

「早く治して貰わないといけませんよね」



え……?

202: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/23(火) 23:58:53.81 ID:GODUm7A70
目の前が真っ暗になったような気がした。

私が……おかしな奴……。

あれ……?

シグナムはさっき……あれ?

シグナム……私の味方……だよ……ね……?

でも……そのシグナムが……私のことを……あれ……?

それになのは……。

『早く治して貰わないといけない』……?

これじゃまるで……精神病患者みたいじゃない。

確かに私の感情は普通じゃないけど。

そんな風に言わなくても……。

何もそこまで言わなくても…………。

205: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 00:04:56.13 ID:yl2VYn9A0
次の瞬間、最初に聞こえた二人の声が頭の中でテープのように再生される。


『……グナムさ……も……おかし……もうでしょ……』

『ぁ……わた……うおも……』


あぁそうか、これは……。


『シグナムさんもおかしいと思うでしょ?』

『あぁ、私もそう思う』


なんだ……シグナムも最初から私のこと……。

そういう目で見てたんだ……。

206: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 00:07:48.81 ID:yl2VYn9A0
変人だって……頭のおかしな奴だって……そう思ってたんだ……。

さっきの優しい言葉は、その場を収めるための……。

……あはは……そうだよね……。

こんな頭のおかしな人間のことなんて……。

分かってくれる人がいる訳なかったんだ……。

それを私は勝手に勘違いしちゃって……馬鹿だな……。

本当に……馬鹿だな……。

私は、その場から走り去った。

207: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 00:10:20.16 ID:yl2VYn9A0
「……ただいま……」

「ご苦労様、フェイト。お塩あった?」

「その、やっぱり途中で具合が悪くなって……引き返してきちゃったんです……ごめんなさい」

「まぁ……大丈夫?いいのよ気にしなくて。お夕飯はお塩の使わないものにするわね」

「あの……私、食欲がないからお夕飯はいりません。部屋に戻って着替えてもう寝ます……」

「本当に大丈夫……?お薬は飲まなくてもいい?」

「はい、一晩寝れば治ると思いますから……」

心配そうな顔の母さんを尻目に私はのろのろと階段を上る。

自室に戻り、私はベッドには向かわず、着替えもせず、

机へと向かった。

212: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 00:14:54.35 ID:yl2VYn9A0
 カリカリカリ……

静かな部屋に鉛筆が紙の上を走る音だけが聞こえる。

しばらくして、その音は止んだ。

「……うん、このくらいで良い、かな」

私はそう呟いてイスから立ち上がり、部屋の扉へと向かう。

そしてドアノブへ手を伸ばしたところで、聞き慣れた声が机の上から聞こえた。

「……Sir.」

218: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 00:20:51.98 ID:yl2VYn9A0
「……お前から話し掛けてくるなんて珍しいね、バルディッシュ」

「Can’t you try to think?(考え直すわけにはいきませんか)」

「うん……ごめんねバルディッシュ。あ……それにリニスにもごめんねだよね」

私のためにバルディッシュを作ってくれたリニス。

私のために生まれてきてくれたバルディッシュ。

……ごめんね。

「次は、もっと良い人に使われるんだよ。分かった?」

「…………」

「分かった?バルディッシュ」

「……………………………………Yes,sir.」

その返事を聞き、バルディッシュに向かって微笑み、

私は音を立てないよう静かに部屋を出た。

224: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 00:25:40.35 ID:yl2VYn9A0
「……はぁ……はぁ……」

さっきシグナムさんと別れてからの帰り道、

私の足は次第に歩みを速め、いつのまにか駆け出していた。

早くフェイトちゃんに会いたい。

会って、本当の気持ちを伝えなきゃ。

さっきの金色の毛のこともあり、私の足はさらに回転を速めていった。

227: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 00:30:33.82 ID:yl2VYn9A0
着いた、私のお家のすぐ近く、フェイトちゃんのお家だ。

乱れた呼吸を整え、インターホンを鳴らす。

数秒待つと、すぐに聞き慣れた声が聞こえた。

「はい、どちら様でしょうか」

「あ、リンディさん。高町なのはです」

「あぁなのはさん。ちょっと待っててね」

すぐに玄関の扉が開かれた。

228: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 00:32:27.72 ID:yl2VYn9A0
「どうぞ、あがってちょうだい」

「はい、おじゃまします」

「それでどうしたの?お泊りの時の忘れ物かしら?」

「あ、いえ。えっと、フェイトちゃんとお話したいことがあって……」

「あー……実はフェイト、体調が優れないらしくて今寝てるのよ……」

「え?そうだったんですか……?」

じゃああの金色の毛はただの考えすぎだったのかな……。

234: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 00:37:53.02 ID:yl2VYn9A0
「でも、なのはさんが会いに来たって知ったらきっとあの子喜ぶわ。

顔だけでも見に行ってあげてちょうだい」

「そうですか?じゃあお見舞いみたいになっちゃいましたけど、ちょっとだけ会ってきますね」

「はい、どうぞ」

そうして私はフェイトちゃんの部屋へと向かった。

……ドアの前に立ち呼吸を整え、軽くノックする。

「フェイトちゃん、体の具合、大丈夫?」

……返事はない。

寝ちゃったのかな?

「開けるよ?フェイトちゃん……」

静かにドアを開け、中を覗くと……。

「あれ……?」

誰もいない……?


237: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 00:44:09.30 ID:yl2VYn9A0
部屋の明かりを点け、中をぐるりと見回す。

確かに誰もいない。

お手洗いかな?

と、机の上に置いてあるものに目が留まった。

「あれ、バルディッシュと……紙?」

近付いて紙を手に取り、書いてある文字を読む。

「手紙か何かかな……。……ッ!!」

その瞬間、私は足元から崩れそうになった。

なんとかその場にへたり込むことは免れたけれど、

まだ足はがくがくと……いや、全身が震えている。

「何……これ……!!こんなの……これじゃまるで……」

そう、それはまるで……遺書だった。

242: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 00:49:21.96 ID:yl2VYn9A0
私はすぐ横のバルディッシュを掴み、外へ飛び出す。

「あら、なのはさん?どうしたの?」

階段を転げ落ちるように下り外へ飛び出した私にリンディさんが声をかけたみたいだったけれど、

私にはとても返事をする余裕なんてなかった。

「フェイトちゃん……フェイトちゃん……!!」

243: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 00:52:30.98 ID:yl2VYn9A0
「バルディッシュ!」

私は走りながら手の中のバルディッシュに向かって叫ぶ。

「フェイトちゃんは……フェイトちゃんはどこに行ったの!?」

「…………」

「お願い!答えて!教えてよ!フェイトちゃんはあなたのマスターでしょ!?」

「…………」

「あなたのマスターが……フェイトちゃんが……いなくなろうとしてるんだよ!?」

「…………」

「お願い……バルディッシュ……答えてよぉ……!」

244: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 00:58:23.36 ID:yl2VYn9A0
私はバルディッシュに語りかけながら、その場に泣き崩れてしまった。

フェイトちゃん……いったいどこにいっちゃったの……?

こんな悲しいお別れなんて……。

嫌だ……嫌だ……嫌だよ……。

嫌だ嫌だ嫌だ……フェイトちゃん……フェイトちゃん……

「……This is my mere guess……(……これは単なる私の憶測にすぎませんが……)」

248: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 01:02:56.84 ID:yl2VYn9A0
風が強い。

沖合いの方は嵐なのかも知れない。

そう思える程に、とてもあの時と同じ海だとは思えない程に、

波は激しく飛沫を撒き散らし荒れていた。

「ここで私はなのはと……友達になったんだ……」

251: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 01:06:19.59 ID:yl2VYn9A0
嬉しかったな……。

あの時の幸せな気持ちは忘れたことがない。

今でもあの時の気持ちははっきりと思い出せる。

なのはは、私と友達になりたいって言ってくれた。

……そう……なのは私と……

『友達』になりたかったんだ。

それを私は裏切った。

なのはの…………あの子の気持ちを裏切った。

あの子の望んだ関係を、自らの手で壊してしまった。

ごめんね。

252: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 01:09:30.18 ID:yl2VYn9A0
終わらせよう。

本当の私を始められたこの場所で

今度は私を終わらせよう。

手すりから身を乗り出し、下を見下ろす。

この海なら、きっと終わらせられる。

確実に、終わらせられる。

手すりを跨ぐ。

この手を離して体を少し傾ければ全てを終わらせられる。

さよなら……ごめんね。

最後にもう一度、君の笑顔が、見たかったな……

「フェイトちゃん!!」

255: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 01:13:01.10 ID:yl2VYn9A0
「……え?」

始めは幻聴かと思った。

私の……あの子への執着が生み出した幻かと思った。

でも違った。

振り返り、声のする方に目をやると、そこには……

「だめ……だめだよフェイトちゃん!」

「……あ……」

256: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 01:14:43.39 ID:yl2VYn9A0
息を切らしている。

きっとここまで走ってきたんだろう。

そしてその左手には、バルディッシュ。

バルディッシュ……

誰にも内緒だって言ったのに、喋っちゃったんだね。

お前が私の言うことを守らなかったなんて初めてじゃないかな。

まったく、悪い子だ……。

257: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 01:17:43.68 ID:yl2VYn9A0
「バルディッシュは、えっと……自分の想像を喋っただけ!だから叱らないであげて……」

私の考えていることが分かったのか、あの子はそう言う。

私は視線をバルディッシュからあの子に戻した。

「……何しに来たの……?」

「何って……フェイトちゃんを止めに来たに決まってるじゃない!」

「止める?なんで?君は私のことが嫌いなのになんで止めるの?」

「何言ってるの!違うよ!フェイトちゃんのことが嫌いなんかじゃない!

大好きだよ!フェイトちゃんのこと、大好きなの!」

259: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 01:19:57.18 ID:yl2VYn9A0
「……ありがとう」

「フェイトちゃん……だから、早くそんな危ないところから離れて……」

「優しいね、君は。でも……無理しないで。嫌いなのに、無理に好きなんて言わないで」

「そんな……フェイトちゃん……!どうして……どうして分かってくれないの!?」

「……聞いちゃったんだ。今日、君とシグナムが話してるところ」

「え……?」

261: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 01:22:12.91 ID:yl2VYn9A0
「言ってたよね。私のこと、頭がおかしいって」

「何……言ってるの……?」

「隠さなくてもいいよ。あと、こうも言ってたよね。

あのおかしな頭を早く治して貰いたいって。全部、聞いちゃったんだ」

「何言ってるの……?何言ってるの……!?違う……!違うよフェイトちゃん……!」

「ごめんね……私、気持ち悪かったよね。女の子のくせに、気持ち悪かったよね」

266: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 01:26:38.31 ID:yl2VYn9A0
「ぅ……ひぐっ……ぐすっ……違う……違うよぉ……!」

「……ぁ……」

見ると、あの子は泣いていた。

気付けば、私も泣いていた。

そうか、そうだった。思い出した。

友達が泣いてると、同じように自分も悲しいんだ。

あの時も、そうだった……。

268: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 01:32:00.97 ID:yl2VYn9A0
「……泣かないで」

「ぅ……フェイトちゃん……?」

「君が泣いてると、私も悲しい……

だから、笑って。いつもみたいに、笑って。

君が笑ってくれれば私、きっと大丈夫だから」

「フェイトちゃん……!うん……うん……!笑うよ……!」

273: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 01:37:20.17 ID:yl2VYn9A0
私は一生懸命だった。

フェイトちゃんを止めるために一生懸命だった。

フェイトちゃんが私に笑って欲しいなら、私は笑うよ……!

急いで涙を拭き、思い切り笑顔を見せた。

私が笑えばフェイトちゃんはきっと……

きっと戻ってきてくれる。

きっとまた、名前を呼んでくれる。

そう信じて、涙をこらえてがんばって笑った。

277: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 01:40:49.72 ID:yl2VYn9A0
「……ありがとう。やっぱり君は優しいね」

そう言ってフェイトちゃんも、笑ってくれた。

「フェイトちゃん!これで……」

「うん、これで私、きっと大丈夫。きっと……天国に逝ける」

え……

「さよなら、なのは。好きになって、ごめんなさい」

287: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 01:45:27.80 ID:yl2VYn9A0
「ゃ……フェイトちゃああああああああああああん!!!!!!」

フェイトちゃんは背を向け、その体を傾ける。

そんな……笑えば……きっと戻ってくるって……。

きっと今までみたいに笑い合えるって……なんで……!

フェイトちゃんが手すりから手を離すより先に私は駆け出す。

間に合って……!

あと5歩……4歩……3歩……届いて……!





私の手は、空を掴んだ。

299: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 01:49:42.60 ID:yl2VYn9A0
「ぃ……ぁ……ぃやああああああああああああああ!!!!!!!!!」

手すりから身を乗り出し、下を見る。

それと同時に どぼん と聞こえたか聞こえないか。

フェイトちゃんが落ちたあとの水面の泡は

荒い波にあっという間にかき消されてしまった。

私はその場に崩れ落ち、泣き叫ぶ。

「いやぁあああ……!フェイトちゃん……ごめんなさい……ごめんなさい……!

ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!

フェイトちゃん……フェイトちゃああああん!うわああああああああああ!!!」

308: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 01:54:17.99 ID:yl2VYn9A0
どうしてこんなことになってしまったのだろう。

どうしてあんなことをしてしまったのだろう。

どうして……どうして……!

私は、フェイトちゃんに幸せになってほしかった……。

大好きなフェイトちゃんを……傷つけたくなかった……!

なのに……それなのに……!

…………分かってる。

私が悪いんだ。

何もかも、私が悪いんだ。
316: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 01:58:54.41 ID:yl2VYn9A0
ごめんなさいフェイトちゃん。

分かってる。

謝って許されることじゃないなんて、分かってる。

でも、ごめんなさいフェイトちゃん。

ごめんなさい。

ごめんなさい。

ごめんなさい……ごめんなさいごめんなさいごめんなさ……

「レヴァンティン!!」

「Schlangeform!」

324: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 02:03:59.59 ID:yl2VYn9A0
突然聞こえた声に驚き、顔を上げる。

「えっ……シ、シグナムさん!?どうしてここに……」

「黙っていろ!!」

そのあまりの迫力にびくりと体を竦ませてしまう。

シグナムさんは目をつぶって神経を集中させている。

「レヴァンティン、まだ伸ばせるな?」

「Ja.(はい)」

「ならば伸ばせ!可能な限り!たとえ全ての魔力を使い果たそうとも!!」

「Jawohl!(了解!)」

328: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 02:08:58.69 ID:yl2VYn9A0
数秒後、シグナムさんは閉じていた目を開いた。

「……ッ!見つけた!」

そう叫びレヴァンティンを振り上げる。

シュランゲフォルムのレヴァンティンが水面から引き上げられ、

その先は何かに巻きついていた。

それは……

「……げほっ!ごほごほっ!げほっ!」

「フ……フェイトちゃん!」

331: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 02:13:01.04 ID:yl2VYn9A0
「レヴァンティン」

シグナムさんの合図でレヴァンティンは元の剣の状態に戻り、待機状態になった。

シグナムさんはフェイトちゃんを抱きかかえ、こちらへ歩いてくる。

「シグナムさん!どうしてここに!?フェイトちゃんは無事ですか!?なんで……」

「落ち着け。質問は一度につき一つにしろ」

「ご、ごめんなさい……」

332: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 02:14:59.49 ID:yl2VYn9A0
「テスタロッサなら無事だ。海水はほとんど吐き出しているし呼吸も整っている。

今はただ気を失っているだけだ」

「そう……ですか……!よかった……!」

私は今度は安心して、地面に座り込んでしまう。

「まったく、まさかレヴァンティンをこのような釣りまがいのことに使う日が来ようとはな」

シグナムさんはそう冗談っぽく言って笑った。

337: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 02:19:34.59 ID:yl2VYn9A0
帰り道、フェイトちゃんを背負って歩くシグナムさんに二つ目の質問をする。

「あの、どうしてあの時あそこに……?」

「あぁ、実はあの後どうしてもあの金色の毛が気になってな。

シャマルに無理を言ってテスタロッサの居場所を探させたんだ。

初めは確認程度のつもりだったが……どうにもおかしいところに見つかった。

そこで駆けつけてみるとあのような状況だったというわけだ」

「な、なるほど……」

「シャマルにはもちろん主や他の騎士たちにもお前たちのことは公言していない。

このことを知っているのは私たち三人だけだ。

あとで理由を聞かれるかも知れんがうまくごまかすさ」

「あ、ありがとうございます!」

341: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 02:22:11.16 ID:yl2VYn9A0
「しかし……」

ここでシグナムさんは背中で眠っているフェイトちゃんをちらりと見て言った。

「テスタロッサにはたっぷりと灸を据えてやらねばな。

自害など、戦いの中の騎士の行動としてなら別だが……この場合はとても褒められたものではない」

「そうですね……。私も、フェイトちゃんをたっぷり叱った後で、

誤解を生んだことをきちんと謝らないといけません」

「ふっ……あぁ、よく分かってるじゃないか」

342: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 02:26:42.35 ID:yl2VYn9A0
「……んっ……んん……」

気が付くと、そこは自分の部屋だった。

目を開けて真っ先に飛び込んできたのは、なのはの顔。

「フェイトちゃん、気が付いた?」

……あぁなんだ、ここは天国か。

だってなのはがいるんだもん、天国に違いない。

私、ちゃんと天国に逝けたんだね……。

神様、ありがとう。

次の瞬間。

 パァン!!!

346: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 02:31:37.21 ID:yl2VYn9A0
右頬に熱を感じる。そしてそれはじんじんとした痛みに……。

あぁ、この感覚……

ようやく意識がハッキリし出した。

「私……生きて……どうして……」

「シグナムさんが助けてくれたんだよ」

意識が覚醒してくるにつれて視界が広がってくる。

部屋の隅には、腕を組み壁に寄りかかって立っているシグナムの姿があった。

「シグナム……?どうして……私を助けたんですか……?

あなたも私のことを悪く言ってたはずじゃ……」

「なんだまだ寝ぼけているのか。私も一発殴っておいた方がよさそうだな」

349: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 02:35:01.35 ID:yl2VYn9A0
どうして二人とも私を助けるの……?

私のことが嫌いなはずじゃ……。

………………もしかして、全部私の勘違いだった?

そうだったらどんなにいいか……。

でも、本当に……?分からない……分からない……。

「フェイトちゃん。私がみんな話すよ。だから、今度はちゃんと話を聞いて。

ごめんなさいシグナムさん、ちょっと二人っきりにして貰えますか?」

「あぁそうだな。二人でゆっくり話し合うことだ」

350: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 02:37:51.38 ID:yl2VYn9A0
ごめん寝かして

あと少しなんだけど明日も朝から用事なんだ

保守してくれたら嬉しい
383: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 13:54:27.54 ID:yl2VYn9A0
「……ふぅ……」

部屋を出、がちゃりと扉を閉める。

戦闘以外のことでこんなに気を張ったのは久方ぶりだ。

よもや自分がこのようなことに巻き込まれることになろうとは……。

いや、訂正しよう。

『首を突っ込んだ』のだったな。

384: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 13:59:05.45 ID:yl2VYn9A0
階段を降りるとそこには椅子に腰掛けたリンディ提督の姿があった。

「あ、シグナム……。どう?フェイトの様子は……」

「えぇ、何も問題はありません。しかし申し訳ありません、無理を言って。

あなたも彼女の傍に居てやりたいはずなのに……」

「良いのよ、二人きりにしてあげるくらい。それは、私もちょっと心配だったけど……

なのはさんと一緒ならフェイトの気も休まるでしょう」

387: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 14:07:51.80 ID:yl2VYn9A0
「でも、ごめんなさいねシグナム。うちのフェイトが迷惑かけちゃって……」

「とんでもない、気付かなかった我々に責任があります。あなたの謝ることではありません」

「あとで注意しておかなきゃ。具合が悪いのに私に内緒で自主訓練なんて……無茶な子だわ」

しばらくリンディ提督と談笑する。

提督には、自主訓練をしていたテスタロッサが急に具合を悪くし家まで運んできた、とごまかしておいた。

多少無理があるとも思ったが、深く言及されることもなくこの言い訳は通ったようだ。

いや……もしかしたら既に事態に勘付き、二人の関係を認めているのかもしれないな。

……考えすぎか。

389: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 14:12:52.29 ID:yl2VYn9A0
「では、私はそろそろ帰りますね。主たちも待っていると思いますし」

「えぇ、それじゃまた今度。嘱託魔導師の仕事、頑張ってね」

「はい、ありがとうございます。では」

提督と別れの挨拶を交わし、外へ出る。

さて……早く帰ろう。

主に要らぬ心配をかけたくはないからな。

390: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 14:17:35.46 ID:yl2VYn9A0
家の玄関を開けた途端、出迎えてくれたのはシャマルの説教だった。

「あ、シグナム!もう、どこに行ってたの?

いきなり『テスタロッサの居場所を探してくれ』なんて頼み込んできたと思えば

見つかった途端に飛んで行っちゃうし……。何か事件かと思って心配だったんだから!」

「あぁ、すまない……。少し野暮用があってな」

「なんだー野暮用って?気になるじゃんか」

「お前が気にすることじゃない、ヴィータ。大したことのない用事だ」

「本当にそうかしら……。大したことないって様子じゃなかったように見えたんだけど……」

「ん~なんやなんや。シグナムなんか隠しとるん?隠し事はあかんよ~」

「あ、主……」

これは……少しまずい展開になった。

391: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 14:22:18.51 ID:yl2VYn9A0
「そーだそーだ。『主はやて』が言ってるんだぞ。隠さねぇで言っちまえよ」

「あたしもなんや、ちょっと気になってきたなぁ。

よっしゃ、夜天の主、八神はやての命や!何があったんか言うてみ?ん?」

主が笑顔で私に詰め寄る。

主はやての命……。

主の命は絶対だ……今までも、そしてこれからも……。





「……………………申し訳ありません。言えません」

394: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 14:28:55.02 ID:yl2VYn9A0
「えっ……!?」

その瞬間、皆の表情が驚きのものへと変わる。

「あの馬鹿が付くくらい夜天の主に忠実なシグナムが……」

「主の命に面と向かって背くなんて……。

こんなこと、長いヴォルケンリッターの歴史の中でも始めてじゃないかしら……」

「申し訳ありません、主はやて……。主の命に背くなど、守護騎士としてあるまじきこと。

私は、私には……主に仕える資格などありません。」

395: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 14:34:39.88 ID:yl2VYn9A0
「主の命を忠実に受けるのが我ら守護騎士の務め。

将の私が務めを果たさぬなど、許されがたいことです。今すぐに私のプログラムを……」

と、主が慌てて口を挟む。

「わーったたたた!待った待った!冗談、冗談や!」

「しかし……」

「えぇから!こないなしょうもないことでシリアス展開なられてもろても困る!

今のは忘れよかみんな!な!

そや、シャマル、ヴィータ、お風呂入ろかお風呂!ほら早よ早よ!」

主はやてはそうまくし立てるとあっという間に三人で風呂場に行ってしまわれた。

396: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 14:38:27.63 ID:yl2VYn9A0
「はぁ……」

ソファに腰掛け、目を瞑り天を仰ぐ。

と、今まで黙っていたものが口を開いた。

「……主への忠誠心より優先させるべきものができたか」

「ザフィーラ……あぁ、まあそんなところだ」

「そうか……」

「ん……お前は追及しないのだな」
397: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 14:43:05.44 ID:yl2VYn9A0
「主に背いてまで我を通したお前だ。私が何を言ったところで何も変わりはしないだろう」

「ふ……その通りだな」

「それに……」

「ん?」

「私はそれで構わん。お前は少し主に忠実すぎるきらいがあった。まぁ、私も人のことは言えないがな」

「……違いない」

以前シャマルにも言われたが……今なら自分でもはっきりわかる。

私も、随分と変わったものだ。

398: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 14:47:05.61 ID:yl2VYn9A0
ザフィーラとの会話が終わり、私は一人、寝室へと戻る。

椅子に腰掛け、少し体を休める。

今日は本当に色々なことがあった。

あとは高町なのはに任せよう。

あの子ならきっと大丈夫。

これで、テスタロッサも、誰一人、悲しむことも傷付くこともない。

あの子なら、テスタロッサを幸せにしてやれる。

これで良かった。

これが、最善手。

目を瞑ると、彼女の可愛らしい笑顔がまぶたの裏に浮かぶ。

「……テスタロッサを幸せにしてやってくれ。高町なのは」

一筋の雫が頬を伝って、ぽたりと膝へと落ちた。

400: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 14:51:20.16 ID:yl2VYn9A0
「……本当に?本当に本当に?」

「うん……本当の本当だよ。嘘なんかじゃない」

なのはから聞かされた話は、嘘のような話。夢のような話。

私がなのはを好きなのと同じように、なのはも私が好きだった。

だから、あんなことを言った?あんな態度を取った?

本当に、夢じゃないの……?

それともまさか……ここは本当に天国?

402: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 15:05:59.52 ID:yl2VYn9A0
「嘘じゃ、ないんだよね……?」

「嘘じゃないよ、フェイトちゃん……ほら……」

そう言ってなのはは私の手を取り……自分の胸に当てる。

「な、なのは……何を……!」

「私の心臓、すごくドキドキしてるでしょ……?」

「あ……」

本当だ……すごく高鳴ってる……。

今の私の心臓と、同じくらい……。

403: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 15:11:08.90 ID:yl2VYn9A0
「信じてくれた……?」

「……ぅ……ぁ……」

信じたい。

信じたいのに……信じなきゃいけないのに……怖い……!

信じるのが怖い……信じて裏切られるのが怖い……!

「……ぅ……ひっく……」

何回泣けばいいのだろう。

本当に、どれだけ泣いても私の涙は枯れないのだろうか。

そんなことを考える間にも目からぽろぽろと雫が溢れだす。

404: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 15:20:18.44 ID:yl2VYn9A0
「フェイトちゃん……」

「ごめ……ごめん……なさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」

信じたいのに……信じるのが怖い……信じることができない……。

私は……最低だ……せっかくなのはが打ち明けてくれたのに……。

なのはの勇気を……私への気持ちを……踏みにじってる……。

最低だ……本当に最低だ……!

ごめんなさい……なのは……ごめんなさい……ごめんなさい……。

「いいんだよ、フェイトちゃん」

405: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 15:26:46.02 ID:yl2VYn9A0
「え……?」

私の体が温かい何かに包まれる。

なのはが、私を抱きしめていた。

「ゆっくりでいいの……今は信じられないかも知れない……。

だけど、私がんばるから。信じてもらえるように、がんばるから」

そして、ふっと体が離れ、なのははその場を立ち去ろうとする。

「だから、いつかは私の気持ち、受け止めてね……」

次の瞬間、私はなのはの手を掴んでいた。

「フェイト……ちゃん……?」

406: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 15:31:27.07 ID:yl2VYn9A0
今のなのはの温もり……

その温もりのおかげで、私の凍りついた心が溶けていくのを感じる。

「ごめんね、なのは……私、バカだったね……。でも、今ので目が覚めたよ……」

「フェイトちゃん……!」

「信じたいのに信じられないなんて、そんなのあり得ない。

信じたいのなら……信じるしかないんだ」

「うん……うん……!」

今度は二人で、お互いを抱きしめた。




 (ひとまず)完
407: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 15:34:38.46 ID:yl2VYn9A0
このあとも一応続きあるけどなんか蛇足なような気がするからここでいったん完

せっかく書いたから投下するけどおまけ程度に思ってください
409: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 15:36:37.88 ID:yl2VYn9A0
何分間こうしていただろうか。

しばらくすると、なのはが口を開く。

「ねぇ、フェイトちゃん……」

「なに?なのは」

「今日の朝のことなんだけど……私が眠ってる間に、何をしたの?」

「ぁ……あ……ご、ごめんなさい……!」

反射的に謝ってしまう。

けどなのはは言った。

「も、もう謝らなくていいってば……怒ってないし許したでしょ!

そうじゃなくて……その……」

急に顔を赤くして俯くなのは。

「……?」

つい首を傾げてしまう。

411: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 15:41:02.14 ID:yl2VYn9A0
「そうじゃなくて……なに?」

「その……ただ自分が、どんなこと……されてたのかなって……。

き、気になっちゃって……にゃはは……」

「あぁ……えっとね………………ぁ」

そういうことか、と教えてあげようとして口に出そうとした瞬間。

一気に顔に血液が上ってきたのが分かる。

冷静に考えると、ものすごく恥ずかしいことをしてたんだ……!

思い出すだけでも恥ずかしい。

それなのに口に出すなんて……!

必死に声を絞り出し、言葉を紡ぐ。

「ぁ……あの、その……な、なのはが……眠ってる、間、に……」

「うん……私が……ね、眠ってる間に……?」

413: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 15:45:39.98 ID:yl2VYn9A0
このままじゃいつまでたっても教えてあげられない。

なのはが待ってるのに……覚悟を決めるんだ、フェイト・T・ハラオウン!

「その……まず、ほっぺを……ぷに、ぷに……って……」

「…………」

なのはは黙って、顔を真っ赤にさせながらも、真剣な面持ちで私の言葉を聞いている。

そ、そんなに見つめなくても……。

「それから……ほっぺを……な、舐め……舐め、ました……」

なぜか敬語になってしまった。

「ッッ……!!」

なのはは顔をさらに赤面させ、自分の頬に手を当てる。

きっと私の顔も同じくらい赤くなっているだろう。

415: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 15:49:19.95 ID:yl2VYn9A0
「次に……く、くち……唇を……ぷにぷに……して……」

ごくり、となのはの唾を飲む音が聞こえたような気がする。

「唇も……舐め……まし、た……。

あ、あとは……なのはが目を覚ました時の通り、です……」

恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだ。

どうしてあの時はこんなことが易々と出来たのだろうか。

しかし、なのはの反応は思っていたものと随分違った。

「ふぇ?そ、それだけ……?」

「それだけって……なのは……いったいどんなのを……」

「いやその……***……は……?」

「え?ご、ごめんなのは。もう一回……」

急になのはの声が小さくなり、よく聞こえなかった。

「ふぇぇ~……恥ずかしいよぉ……」

418: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 16:00:22.40 ID:yl2VYn9A0
「ご、ごめん……」

「もう……あと一回しか言わないよ!だからその……」

今度はしっかりと集中する。

耳に全神経を集中させるくらいの気持ちで……

「その……『ちゅー』は……しなかったの……?」

「……へ?」

420: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 16:07:39.54 ID:yl2VYn9A0
「『ちゅー』って……キ、キスのこと……?してないけど……」

「ど、どうして……?」

「どうしてって……やっぱり、ファーストキスは……

勝手に貰っちゃうのはダメかな……って……」

「なんだ……そんなこと……?」

「そ、そんなことって……。ファーストキスは女の子にとって……んむっ……!?」

私は、最後まで言葉をつむぐことができなかった。

理由は……言うまでもない。

……あぁ……やっぱりここは天国だったんだ。

神様、ありがとう。

「……っぷはぁ……。えへへ……フェイトちゃんのファーストキス、貰っちゃった」

「……君の唇は温かいね、なのは」




422: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/02/24(水) 16:10:51.91 ID:yl2VYn9A0
終わりです。

俺の妄想に付き合ってくれたみんな、ありがとう。


今回は割りと真面目な百合だったけど、変態キチガイ百合も大好き。

志望推定時刻とつぶあんのフェイトちゃんは至高。

じゃあの。

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