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このスレ:
【ガルパン】西「四号対空戦車?」 【1】 【2】 【3】 【4】

265: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/18(火) 21:35:28.08 ID:nRPlxJ8u0

【病院 エントランス】


西「ほっせほっせ…」キコキコ

西「はぁ…はぁ…」キコキコ

西「やっと…着いた………」フゥ...


西(歩けばすぐだけど車椅子だと結構だったなぁ…)キコキコ

西(…にしても)



西(しつこいなぁ…!)






「あら、車椅子でリハビリでもしてるのかしら?」
266: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/18(火) 21:37:10.84 ID:nRPlxJ8u0
西「えっと…初めましてですかな?」

カチューシャ「この間のエキシビション戦と大学選抜戦で会ったじゃないの!」

西「あぁ! カチューシャさんでしたか!お久しぶりであります」ビシッ

ノンナ「привет там」

西「そしてモンナさんもお久しぶりです」フカブカ

ノンナ「モではなくノです。ノンナです」

西「あ…失礼しました」

西「…と、言うことはお二方はお見舞いに来て下さったのですか?」

カチューシャ「そうよ。このカチューシャ様がお見舞いに来たんだから感謝なさい!」

西「はるばる来てくださって有難うございます」フカブカ
267: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/18(火) 21:38:44.76 ID:nRPlxJ8u0
カチューシャ「…にしても、あなたのことだからまだ眠りこけているかと思ったけど、意外に早いお目覚めね」

西「あはは。とはいっても1週間くらい寝ていましたけど」

カチューシャ「それだけ寝たら元気になるわよ」

西「ええ。寝る子は育つと言いますからね。少し背も伸びたような気がします」

カチューシャ「それは本当なの?!」ガタッ

西「あとで看護婦さんにお願いして測ってもらおうと思います」

カチューシャ「ノンナ! 明日からお昼寝の時間を増やすわよ!!」

ノンナ「寝過ぎれば良いというものではありませんよ同志カチューシャ」
268: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/18(火) 21:41:25.40 ID:nRPlxJ8u0
西「あれ? そういえば試合の方は?」

カチューシャ「もちろん勝ったわよ。だから次の相手が決まるまで少しだけ皆を休ませてるの」

カチューシャ「このカチューシャのご厚意に感謝することね!」

西「そうでありましたか!」

カチューシャ「特に無人機は色々大変だから人も機会もしっかり休ませたげるのよ! 偉いでしょ!」エヘン

西「確かに。戦車とは勝手が違うので大変な思いをしました」

カチューシャ「しっかし理不尽なルールよねぇ。使う側が言うのも何だけど」

ノンナ「同意です。高校間の"格差"を広げる改悪に過ぎません」

西「やはり皆さんもそうお考えですよね」

カチューシャ「ということは、あなたもなの?」

西「ええ。無人機でこっ酷い目にあった一人です」

西(…まぁあれは私の浅はかさが原因だけど)
269: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/18(火) 21:58:57.62 ID:nRPlxJ8u0
西「無人機といえば、つい先程、西住さんたちがいらっしゃいました」

カチューシャ「ミホーシャが?」

西「ええ。次はサンダースと対戦するとのことです」

カチューシャ「ミホーシャも気の毒ね。立て続けに強豪校とブチ当たるんだから」

西「そうですね…。それでも、大洗の皆さんが"また"無人機を落としてくれる事に期待しています」

ノンナ「…」

カチューシャ「…無理よ」

西「な、何故ですか?!」

270: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/18(火) 22:00:18.19 ID:nRPlxJ8u0
カチューシャ「あなたはサンダースが何持ってるか知ってて言ってるの?」

西「お恥ずかしながら、よく存じ上げないのであります…」

カチューシャ「高度1万メートルを飛ぶ大空の要塞よ」

西「!」

ノンナ「残念ですが、大洗女子学園が所有する対空戦車では、高度1万メートルの無人機を撃墜するのは困難かと思われます」

西「…」

カチューシャ「カチューシャたちの無人機ですらそこまで行くのは大変なんだからね」

カチューシャ「だから、ミホーシャたちもここまでよ。残念だけど」

ノンナ「…」
271: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/18(火) 22:01:32.51 ID:nRPlxJ8u0
西「果たしてどうでしょう」

カチューシャ「なによ。勝算でもあるのキヌーシャ?」

西「今まで色んな苦悩を乗り越えてきた西住さんです」

西「西住さんなら、たとえ高度1万メートルを飛行する無人機の対抗策もきっと編み出すでしょう」

カチューシャ「無理よ。絶対に無理なんだから!」

西「1万メートルを飛ぼうが大気圏を飛ぼうが…」チラッ

ノンナ「?」

西「何とかしてくれますよね?」

ノンナ「えっ…?」


カチューシャ「出来るのノンナ?!」

ノンナ「いえ…さすがn

西「カチューシャさんがお願いすれば出来ます」

ノンナ「え」

カチューシャ「ノンナ…出来るの…?」

ノンナ「Да」

カチューシャ「凄いじゃない! さすがノンナだわ!!」

ノンナ「…」←褒められて嬉しい


西(振っといて言うのも何だけど、ノンナさんがちょっと心配になってきた)



西(しかし…)
272: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/18(火) 22:03:12.64 ID:nRPlxJ8u0
ノンナ「…」

西「気になりますか?ノンナさん」

ノンナ「はい?」

西「どうも駄菓子屋からここへ戻ってくる間、ずっとこんな感じでして」

ノンナ「…何がでしょう?」

西「私も"あれら"が何を知りたいのか存じませんが、ずっと付けられていますね」

ノンナ「………」



ノンナ「では、気付いてたのですか?」
273: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/18(火) 22:04:33.15 ID:nRPlxJ8u0
西「ええ。幼いころからよく隠れんぼをやっていましたので、こういうのには敏感だったりします」

ノンナ(隠れんぼ…?)

カチューシャ「ちょっとノンナ! キヌーシャ! このカチューシャを仲間外れにしないでよねっ!」

ノンナ「」ボソボソ

カチューシャ「えっ!ていさモゴゴゴゴ...」

ノンナ「シーッ」

西「…」


西(このお二方の所からではなさそう…かな?)

西(…ふむ。ここはひとつ)

274: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/18(火) 22:06:06.99 ID:nRPlxJ8u0
西「ノンナさん、カチューシャさん」

カチューシャ「今度は何よ?」

ノンナ「はい」

西「…」ジッ

ノンナ「!」ピクッ

ノンナ「…どうされましたか?」

西「実は私はこう見えて」



西「けっこうアホなんです!」デーン!



ノンナ「…」

カチューシャ「…」

西「…」

カチューシャ「…知ってるわよそんなもん」シレッ

西(…そう返ってくるのは分かってたけど、やっぱり辛いものがある)
275: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/18(火) 22:07:53.47 ID:nRPlxJ8u0
西「そんな私ですが、ついこの間は聖グロリアーナ相手に "完 全 勝 利" をしました!」

ノンナ「その試合については私達もよく知っています」

カチューシャ「そうね。あなたにしてはホント良くやったと思うわ」

西「自他共に認めるアホな私ですが、あの強豪校である聖グロに勝ったのには」



西「秘密兵器を使ったからです!!」



ノンナ「何ですって!?」ガタッ

カチューシャ「ちょっと!それどういうことよ!!」

西(ノンナさん演技上手いなぁ。カチューシャさんは素だけど)
276: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/18(火) 22:09:08.87 ID:nRPlxJ8u0
西「」キョロキョロ

西「…誰にも見られていませんね?」

カチューシャ「大丈夫よ」

ノンナ「…大丈夫です。気配は感じません」

西「…わかりました。その秘密兵器というのが………コレです」

ノンナ「これは一体…?!」

カチューシャ「キヌーシャ! 勿体ぶらないで教えなさい!!」

西「これは…」

ノンナ・カチューシャ「…」ゴクリ





西「(さっきの駄菓子屋さんで買った)"水飴"ですっ!!!」バーン!
277: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/18(火) 22:10:49.08 ID:nRPlxJ8u0
カチューシャ「………は?」

西「"水飴"には脳の働きを活性化させる成分が入っております」

西「それによってヒトの力を 最 大 限 発揮できるようになるのです!」

西(甘いものは脳を活性化させるんだ。間違ったことは言ってない…はず)


西「私はコレのおかげで、対・聖グロ戦で 圧 倒 的 勝 利 を実現することが出来たのですっ!!」

ノンナ「…」

カチューシャ「…あんた、カチューシャを馬鹿にしてんの?」

カチューシャ「そんなモン食べて試合に勝てるんならみ~んな食べてるわよっ!!」

カチューシャ「ノンナも黙ってないで何か言ってやりなさい!!」
278: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/18(火) 22:12:31.47 ID:nRPlxJ8u0
ノンナ「…」アゼン


カチューシャ「ノンナ…?」

ノンナ「………」

カチューシャ「ちょっとノンナ!!」

ノンナ「…そう…ですか………」

カチューシャ「ふぇっ?!」



ノンナ「西さんも、気付いてしまったのですね…」



カチューシャ「ノンナ…?」

ノンナ「同志カチューシャ、ここでの話は他言無用です…!」

カチューシャ「えっ、えっ?!」オロオロ

ノンナ「に、西さん…これはかなり危険な話です。…その、あまり深追いはしないように…!」アセアセ

西「…えぇ。心得ております」

西(ノンナさんにこんな真剣な顔されたら何を言われても信じちゃいそうだ。…昔演劇でもやってたのかな?)
279: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/18(火) 22:14:18.13 ID:nRPlxJ8u0
カチューシャ「き、キヌーシャ! その"水飴"ってのはそんなに凄い効果なのっ!?」オロオロ

西「えぇ…それはもう…」


西「疲れたときに食べれば元気になります」


カチューシャ「それじゃ今すぐニーナたちにも食べさせるべきよ!!」

ノンナ「ええ。是非とも(クラーラが喜びそうですね)」

西「ただし!!」クワッ

ノンナ・カチューシャ「!!」ビクッ

西「"水飴"(の糖分)は脳を活性化させますが、食べ過ぎると逆に脳の動きを低下させてしまう"副作用"もあります」

カチューシャ「そ、そうなの?!」

西(おやつ程度にしておかないとね。食べ過ぎはダメ)
280: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/18(火) 22:18:09.63 ID:nRPlxJ8u0
ぐれも摂取し過ぎないように注意してください…!」

カチューシャ「…わかったわ」

西「また、"水飴"の中には身体を侵食する成分も含まれております…!」

西「ですので、摂取したあとは必ず身を清めてください…!」

西「さもないと………」

カチューシャ「さもないと…?」オロオロ



西「鋭利な刃物でその身を削ることとなるでしょう」



カチューシャ「ひぃっ!!?」ガクガク

ノンナ「お、恐ろしい…」

西(いわゆる"虫歯"ってやつだ)

カチューシャ「で、でもでも…! 身を清めるって何をどうすればいいのよっ!!」ガタガタ

ノンナ「毎日お風呂に入り、歯を磨くことです」
281: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/18(火) 22:21:50.72 ID:nRPlxJ8u0
西「…あと」

カチューシャ「ま、まだあるのっ?!」

西「えぇ。絶大な効果がある反面、その副作用もまた………!!」

カチューシャ「っ…!!」

西「巷では"水飴"の効果を盲信した者がバタバタと倒れているそうです…!」

カチューシャ「ひぇっ…!」ビクビク

西「それだけ、身体に大きな負担をかけるのです…!」

カチューシャ「そ、そんなのどうしろって言うのよっ!!」カタカタ

西「負担を軽減するためには、様々な成分を併用して摂取しなければなりません」

西「そして、その成分は野菜、魚、肉などから抽出されます」

西「つまり、これらの成分によって"劇薬"の副作用を抑え、利点だけをもたらすよう調整するのです…!」

カチューシャ「そ、そうなのねっ?!」

西(食事は好き嫌いせずバランス良く食べよう)
282: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/18(火) 22:23:47.74 ID:nRPlxJ8u0
西「プラウダ高校のナンバー2であるノンナさんは、他校にもその実力が知れ渡るほど優れた方です」

カチューシャ「え、えぇ! ノンナはすごいのよ!!」エッヘン

ノンナ「凄いのです」

西「元から並外れた才能・センスをお持ちなのはもちろん、"水飴"によってその力を最大限に発揮してきたからです」

カチューシャ「それ本当なのノンナ!?」

ノンナ「えぇ。私はこれらをバランス良く摂取しております」

ノンナ「今のポテンシャルが保てるのもそのおかげでしょう」

西(本当にノンナさんは良いポテンシャルしております。何がとは言わんが)
283: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/18(火) 22:24:53.31 ID:nRPlxJ8u0
西「最後に」

カチューシャ「…」ゴクリ

西「"水飴"による身体へのダメージを少しでも緩和するためには」

西「長時間の稼働をしないことです」

カチューシャ「…そうなの?」

西「えぇ。疲労が蓄積された状態では最大限の力を発揮できません」

西「無理は厳禁。そして適度な休養を」

西(良い子は早く寝よう)

カチューシャ「て、適度ってどれくらいなのよ!?」

ノンナ「7時までに布団に入ればギリギリ大丈夫です」
284: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/18(火) 22:28:26.07 ID:nRPlxJ8u0
ノンナ「…しかし、驚きました」

西「…」

ノンナ「この事を知っているのは、私だけだと思っていました」

ノンナ「それが完全なる自惚れだったと…!」ギリッ...

西「私もこの事を知ったときは、人体実験をしてるかのような心境でした」

西「自分は極めて危険な道へ足を踏み込んだと…!」

ノンナ「………」

西「………」


ノンナ「行ってしまわれましたね」

西「えぇ、芝居に付き合って下さってありがとうございました」フカブカ



西(コソコソと私たちの会話を盗み聞きしてた助平らが何をしたいのかはわからない)

西(しかし、この"芝居"に引っかかったら、連中が誰なのかわかるかもしれない)

西(‥それにしてもノンナさんの迫真の演技には驚いたなぁ)

西(カチューシャさんは見事に乗せられたし、そうでない人もあんな顔されたら信じちゃうに違いない)

西(…あとは偵察してた連中がどうなるか)
285: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/18(火) 22:32:30.54 ID:nRPlxJ8u0
― その後、"水飴"の素晴らしさを知ったカチューシャさんは、ノンナさんと共に大急ぎでプラウダ高校へ戻りました。

カチューシャさんには悪いことをしたけれど、ノンナさん曰く、


『ここ最近は夜更かしに好き嫌いと不健康な生活をしており、それらが改善出来たので感謝しています』


…とのことなので、まぁ大丈夫だろう。

昔は公園とかでおじさんが紙芝居をやってくれたのだが、残念なことに最近ではそういうのは"不審者"として扱われる。

世知辛い世の中になったものだなぁ…。


なお、その後プラウダ高校では空前の"水飴"ブームが到来しているらしい。

特に留学に来ていたロシア人の方が大喜びとのことで、

『この素晴らしいメズアメをお父様にも教えましょう!』

と、嬉しそうに"水飴"を買い占めて、特殊部隊出身のお父様がいるロシアの実家へ大量に郵送したそうです。

ついでにカチューシャさんの無茶振りも無くなって"同志"の皆さんも喜んでるとのこと。


人生どこで何が起きるかわからないものだ。

そんな思いを胸に私は今日も水飴を練っている。あま~い。
286: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 21:58:05.16 ID:Zy8DL1IR0

【またとある日 西の病室】



西「zzzz」スースー

コンコン

西「…とっかん……ムニャ…」zzzzz

コンコン

西「……やった…ゆうしょぅ…」スピー


ガチャ
287: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 21:59:38.90 ID:Zy8DL1IR0

「ごきげんよう絹代さん。…って、まだ寝てたのね」


西「…ンー……」zzzz

ダージリン「やれやれね」

西「…フシュー…フシュー…」zzzz

ダージリン「あなたは食べる時と寝る時は静かね」クスッ

ツンツン

西「………フニュ…」zzz

ムニュ

西「…フミ……」zzz

ダージリン「ふふっ」ツンツン

288: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:01:13.99 ID:Zy8DL1IR0
西「………ぅ……ぁ…」ウーン...

ダージリン「…あら?」

西「…だ……じりん…」

ダージリン「えっ…?」


西「………だめ…」


ダージリン「!」

西「…ぃかな…ぃ…で………」

ダージリン「…」

ダージリン「…大丈夫よ」クスッ

ダージリン「私は何処にも行かないわよ」ナデナデ








西「………そっち……こえだめ…」zzzz








ダージリン「」ブチッ

ダージリン「さっさと起きなさいっ!!!」バサッ!

西「もがぁっ!!?」

289: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:01:56.71 ID:Zy8DL1IR0
ダージリン「おはよう。絹代さん」

西「………オハヨウゴザイマス」ジトー

ダージリン「なによ」

西「…嫌な夢を見ました」ジトー

ダージリン「どうやらそのようね」シレッ

西「肥溜めに落ちr

ダージリン「言わなくていいわよ」

西(むぅ。助けてやったのに。…一緒に落ちたけど)

290: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:03:05.04 ID:Zy8DL1IR0
西「…で、どうしてここに?」ジトー

ダージリン「あら? 私がここに来てはいけなかったかしら?」

西「いえ、そういうわけでは…」

西「いらっしゃるならご一報頂ければと」

ダージリン「御免なさいね。あなたの連絡先を知らないもので」

西「だから寝込みを襲ったと…?」

ダージリン「…殴るわよ?」

西「やめてくださいしんでしまいます」
291: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:04:37.44 ID:Zy8DL1IR0
ダージリン「そんなことより早く準備なさい」

西「はい?」

ダージリン「準備よ準備」

西「何の準備ですか?」キョトン

ダージリン「あなた今日が何の日か知らないの?」

西「燃えないゴミの日ですか?」

ダージリン「違うわよ」

西「えぇ…。何だったかなぁ…」ウムム

ダージリン「大洗とサンダースの試合」

西「あ…!」
292: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:05:29.45 ID:Zy8DL1IR0
ダージリン「わかったなら早く準備なさい」

西「…その……」

ダージリン「今度は何よ…」

西「…着替えるので………」モジモジ

ダージリン「…はいはいわかりました。着替えたら呼んで頂戴」

ダージリン「あなたもこういう時だけは恥じらうのね」フゥ

スタスタ


西「………ダージリンのすけべー」ボソッ

スタスタスタ

パチコーン!

イッデェェェ!!!
293: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:07:27.42 ID:Zy8DL1IR0

【病院 エントランス】


ローズヒップ「ダージリン様ぁ! おっ待ちしておりましたでございますのぉ~!」

ダージリン「落ち着きなさいローズヒップ」

西「おはようございます。えーと…」

ローズヒップ「ローズヒップと申しますのよ」

西「ローズヒップさんですね。私は西絹代と申します」フカブカ

ローズヒップ「よろしくお願いしますっ!」

西(ほうほう。知波単の皆に負けないくらい元気だな)ウムウム


ローズヒップ「ではでは行っきますわよ~!!」

ダージリン「くれぐれも安全運転でお願いするわ、ローズヒップ」

ローズヒップ「はいっ! おまかせ下さいまし!」

ダージリン「さぁ、乗って頂戴」ガチャ

西「お邪魔します」
294: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:09:33.51 ID:Zy8DL1IR0

【車内にて】


ピー!!

プップー!!

ピピー!!


ローズヒップ「全っ然進まないですわ…!」イライライライライラ

ダージリン「落ち着きなさいローズヒップ」

西「この時間帯は出勤ラッシュ直撃ですからね…」

ダージリン「だから早く準備しなさいと言ったのよ」

西(何の事前連絡も無しに朝5時に叩き起こしといてそりゃないだろう!)

ダージリン「まぁ、試合には間に合うから安心なさいな」ズズ


ローズヒップ「」イライライライライラ

西「試合はともかく、ローズヒップさんが…」

ダージリン「ローズヒップ。今日はいつものは持ってきてないのかしら?」

ローズヒップ「もっちろんありますわよ!」イライライライライラ

ダージリン「だったらそれでも食べて気を紛らわせなさい」

ローズヒップ「わかりましたの」ゴソゴソ

西「いつもの?」

ダージリン「よほど気に入ったのか気付いたら食べてるのよ」フフッ

ローズヒップ「♪」ネリネリ




ダージリン「"水飴"をね」




西(あんたらかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!)

295: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:13:01.20 ID:Zy8DL1IR0
ダージリン「何でも、うちのアッサムが『"水飴"には凄いヒミツがありますのよ!』って」

西(私はアッサムさんのヒミツを知ったよ…。"コロッと騙されやすい"っていう…)ハァ..

西(まぁ、あの場には"役者"のノンナさんがいたし、私がアッサムさんの立場だったら騙されるかもしれないけど…いや、ないか…あるか?…うーん…)

ダージリン「どこから仕入れてきた情報なのかわからないけれど、」


アッサム『私が独自入手した情報によると、水飴には脳を活性化させ、並外れた力を発揮する』キリッ


ダージリン「…って」

西「ヘーソウナンデスカー」シレッ

ダージリン「それでアッサムがこの子にあげたらとても気に入ったと」クスクス

西(自分で試さずローズヒップさんで実験するところが何とも…)

296: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:14:34.22 ID:Zy8DL1IR0
ダージリン「あなたも食べたほうが利口になれてるから良いわよ?」

西「大きなお世話です。そういうダージリンは食べないのです?」

ダージリン「私はベタベタしたものはあまり好きじゃないわ」

西「性格はベタベタどころかドロッドロのギットギトのクセに…」ボソッ

ゲシッ!!

西「いだっ!!」

ダージリン「口を慎みなさい」

西「ダージリンは絶対食べたほうが良い! 暴力的なのは脳が正しく機能していない証拠ですぞっ!!」ヒリヒリ

ダージリン「その原因はあなたにあるのよ?」

西「あー言えばこー言 <ゲシッ!!> いでぇぇぇ!!」

ダージリン「それはコッチのセリフでしてよ」フン

ローズヒップ「~♪」ペロペロ
297: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:16:49.26 ID:Zy8DL1IR0
【試合会場】


ガチャ

ローズヒップ「到着でございますわよ~!」


オレンジペコ「お疲れ様です。ダージリン様、西さん」

西「おはようございます、ペコさん」フカブカ

ダージリン「ご苦労様。ペコ」

ローズヒップ「ダージリン様! 私も! 私もですの!」

ダージリン「ええ。ご苦労様ねローズヒップ」

ローズヒップ「はいでございますの!」エヘヘ


ブロロロロロロロ!


ダージリン「…おや?」

「ヘイハニー!グッモーニンっ!!」
298: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:18:48.04 ID:Zy8DL1IR0
ダージリン「あらケイ。こんなところでアブラを売って大丈夫なのかしら?」

ケイ「あははっ! 折角ダージリン達が観に来てくれたんだから挨拶しないとねっ!」

西「ケイさんお久しぶりでございます!」ビシッ

ケイ「おっキヌ! 元気になったんだ!!」

西「えぇ、お陰様でこの通り! ピンピンしておりますぞ!」ハッハッハ

ケイ「あっはっは! オーケイオーケイ! それでこそキヌよっ!!」ワッハッハ

ダージリン「ケイ。こんな言葉がありましてよ」

ケイ「ん?」

ダージリン「"バカは風邪引かない"」

ケイ「へ?」
299: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:21:00.21 ID:Zy8DL1IR0
西「む…」

ダージリン「この子は無駄に頑丈だから心配する必要なんてないわ」

ダージリン「ねぇ、絹代さん?」ニヤリ

西「…」


西(ダージリン真似)「こんな格言を知ってるかしら?」

西(ダージリン真似)「"貪欲であれ、愚かであれ"」


オレンジペコ「スティーブ・ジョブズの言葉ですn…ええっ!!?」

ケイ「うわっはっははははっ! めっ、メチャクチャ…クヒッ…似てるじゃない…!!」アハハハハハ


西(ダージリン真似)「人生、おバカな方が刺激があって面白いのよ?」ニコッ
300: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:22:19.91 ID:Zy8DL1IR0
ケイ「あははははひゃはははひゃひぃ…やめてぇぇ…笑い死ぬぅぅ……!」ゲホッゲホッ!オェェッ!!

ダージリン「………」イライラ


西(ダージリン真似)「あなたもそう思うd <ドゴッ!!> グフォォォォォッ!!?」


ダージリン「人を馬鹿にするのも大概になさい!」

オレンジペコ「み…見事なボディーブローです…」オロオロ

西「ンぐぬぉぉぉ………(自分だって馬鹿にしたクセにっ!)」

オレンジペコ「お、恐ろしいほどソックリでした…」

ダージリン「似てないわこんな猿真似」

ケイ「あひっ…ひぃひっあひ……」ハァハァ

ダージリン「あなたもいつまでもゲテゲテ笑わない!」

ケイ「アヒヒッ…ヒッヒッ…い…息が…ヒィ…フヒィ…」コヒューコヒュー....

オレンジペコ「そ、相当ツボに入ったみたいですね…」



301: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:23:56.18 ID:Zy8DL1IR0

【数分後】


ケイ「へぇー。そんなに色んな人が来てたんだ」←復旧した

西「えぇ。お陰で入院生活もなかなか充実してましたよ」

ダージリン「そのままニートにならないか心配だわ」ヤレヤレ

西「に、ニートぉ!?」ガーン

ダージリン「あんな快適な所にずっといたら元に戻れなくなってしまうわよ?」

西(なんか前にも言われたなぁ…)

ケイ「へぇー、そんな快適なんだ。ちょっと行ってみたいなぁ~」

ダージリン「やめておきなさい。サンダースの隊長がニートだなんて示しがつかないわ」

ケイ「No problem!そん時ゃアリサにでも養ってもらうよ」アハハハ
302: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:24:47.10 ID:Zy8DL1IR0

アリサ「あ、アタシがですかぁ!?」バッ


西「うぉっ、びっくりした!」

ケイ「おっ、アリサお帰りー」

アリサ「だ、ダメですからね! ニートになったらダメですからね隊長っ!?」

ケイ「あはははーどーしよっかなぁ~?」

ダージリン「ほら、年下の子をいじめないの」

ケイ「はーい」アハハハ

西(…人のこと言えるのだろうか?)

ダージリン「なによ」

西「何でもないです」プイッ

303: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:26:34.29 ID:Zy8DL1IR0
ナオミ「隊長、準備完了だ」

ケイ「サンキューナオミ。それじゃ行こっか!」

アリサ「Yes mam. 今度こそ大洗に勝ちましょう!」


西(ケイ真似)「負けたら反省会だからね?」ボソッ


アリサ「ひぃぃっ!!?」ビクッ

ナオミ(似てる…)

ダージリン「っぐ…!」プルプル

ケイ「こらっキヌ! うちのアリサにまで手を出すなーっ!」

西「あははっ。お気をつけて」ケイレイ

アリサ「何よぉ…何なのよもう…!」

ナオミ「ほらアリサ。行くぞ」ポンポン

アリサ「ひぃーん…」
304: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:28:04.29 ID:Zy8DL1IR0
西「サンダースもなかなか個性的な方が多いですな」

西「ダージリンもそう思いません?」

西「…あれ?ダージリン?」


ダージリン「っふ…あはははっ!くふっ…ヒィ…!」プルプル


西「」

オレンジペコ「ダージリン様も一度ツボに入るとこうなっちゃうんです…」

西「そ、そうなんですか…」

オレンジペコ「えぇ…」アハハ...

西「まぁ、笑う門には福来ると言いますし、良い事だと思います」

オレンジペコ「あはは…」
305: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:29:59.81 ID:Zy8DL1IR0
ダージリン「あぁ…。笑いましたわ…」フゥ

西「お、ようやく戻ってきた」

ダージリン「まったく。あなたは下らない事に関しては超一流ね」ハァー

西「む、失礼な…」

ダージリン「本当のことですわ。入院生活が退屈だからってこんな猿真似を極めるくらいですもの」

西(猿真似だなんて失礼な!)

西「…でも結構似てると思いません?」

ダージリン「似てないわよ。特に私のは」フン

西「えぇ…」

ダージリン「あなたごときが私の真似なんて出来る筈がないわ」フフン

西「」ムカッ


西(ダージリン真似)「ペコ。あなたはどう思うかしら?」キリッ


オレンジペコ「そ、そっくりです…。まるでダージリン様が二人いるような…!」

ダージリン「ちょっとペコっ!?」


西(ダージリン真似)「ふふっ。そうよね」ニコッ


オレンジペコ「は、はぃ…///」ドキッ

西(ペコさん可愛いなぁ。知波単専属の家政婦さんになってくれないかなぁ)
306: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:31:35.76 ID:Zy8DL1IR0
ダージリン「まったく。"誰かの真似をするくらいなら、一番素晴らしい自分でいればいい"のに」

オレンジペコ「じ、ジュディー・ガーランドですね」アセアセ

西(ダージリン真似)「"あまり強い言葉を遣うなよ 弱く見えるぞ"」

オレンジペコ「それは…護廷十三隊五番隊隊長の藍染惣右介の言葉ですね」オロオロ

ダージリン「何を言ってるのかしら。"他人のものはもちろん、たとえ自分の仕事でも、なぞってはだめ"よ?」

オレンジペコ「お、岡本太郎です…」ヒヤヒヤ

西(ダージリン真似)「そんなこと無くてよ。"お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの"ですの」

オレンジペコ「ミュージシャンの剛田武ですね」アハハ

ダージリン「"一番になりたければ、他の人がやらないことをやりなさい。"」

オレンジペコ「えっと、流 音弥ですか…?」

西(ダージリン真似)「"アンタ達はいつ己を捨てた?"」

オレンジペコ「5代目風影の我愛羅ですね」

ダージリン「…」

西「…」

オレンジペコ「…」


西ダジ「「おやりになるわね…」」

307: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:33:12.97 ID:Zy8DL1IR0
ダージリン「」ムカッ

ツネェェッ!!

西「いいい痛い痛い痛いいだぁぁぁぁぁぁい!!!」ジタバタ

オレンジペコ「あわわわ…」オロオロ

ダージリン「ペコ。この子は長い入院生活のせいでだいぶ頭がおかしくなってるから真に受けては駄目よ?」

オレンジペコ「えっ、ええ……?」

西「ほ、ほら! ペコさん困ってるじゃないですかっ!」ヒリヒリ

ダージリン「そんな事はないわ。とてつもなくお馬鹿なあなたと違ってペコはお利口さんですもの」

西「」ムカッ


西(ペコ真似)「ダージリン様のお小言にはこりごりです…」


オレンジペコ「ええっ?!」ビクッ

ダージリン「…あらペコぉ?そんな事思ってたの?」ニッコリ

オレンジペコ「ち、違います違います!!」オロオロ

オレンジペコ「に、西さんっ…」アセアセ

西「あはは。ペコさんは聖グロで一番ですから、その様な事は言いませんよ」

オレンジペコ「い、一番…えへへ///」テレテレ

ダージリン「知ってるわよ。一番かどうかはさておきね」

オレンジペコ「むぅ…」

西(ペコさんは小動物的な可愛さがあるな)ウンウンン
308: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:34:17.65 ID:Zy8DL1IR0
― しばらくして


ワシャワシャ

西(なんかダージリンが私の髪で遊びだした…)

ワシャワシャ

西「ダージリン、髪で遊ばないでください」

ダージリン「遊んでないわよ。良いからじっとしてなさいな」シュルシュル

西「…一体何をなさるおつもりで?」

ダージリン「大丈夫よ。取って食べたりはしないわ」クイッ

西「本当ですかねぇ…」ジトー

ダージリン「ええ」クリンクリン
309: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:35:32.38 ID:Zy8DL1IR0
ダージリン「ホラ、出来たわ」フフッ

西「?」

オレンジペコ「わぁ~!」

ダージリン「これであなたも少しは上品に見えるはずよ」

西「…一体何をなさったんですか?」ジトー

ダージリン「ふふっ」

オレンジペコ「こんな風になってます」つ[鏡]


西絹代(ギブソンタックver)


西「な、なんと…」

ダージリン「なかなか似合ってるわよ」

西「そ、そうですか…?」

オレンジペコ「はい。よく似合ってます」

西(ちょっと後頭部に違和感あるけど…まぁいっか)
310: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:36:36.91 ID:Zy8DL1IR0
西「…ところで何ゆえこの様なことを?」

ダージリン「こうやって私達と肩を並べているのだから、あなたにもこの髪型の良さを知ってもらおうと思ってね」

西「なるほど。郷に入れば郷に従えですな」

ダージリン「ええ。そいいうことよ」フフッ

西「ならばダージリン達が知波単へ参られた時は是非とも吶k

ダージリン「それは遠慮するわ」シレッ

西「………ケチ」ボソッ

ダージリン「何か言った?」

西「いいえ何でもありません。私はペコさんと仲良く突貫しますから」シレッ

オレンジペコ「え、私がですか?」

西「ええ!一緒に"ダージリンのバカヤロー!"って叫びなg <ツネッ> あいでででで!!!」ジタバタ

ダージリン「バカヤローは絹代さんだけで十分」

西「むぅ…」ヒリヒリ

オレンジペコ「あはは…」
311: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/20(木) 22:37:07.88 ID:Zy8DL1IR0

オレンジペコ「あ…試合、始まるみたいですよ」

西「ではでは。ゆっくり観戦させていただきましょう」

ダージリン「ふふ。楽しみですわね」


312: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 20:14:35.47 ID:AgOoSeIg0

~~~


オレンジペコ「どうやら大洗が無人機を発見したみたいです…!」

ダージリン「ずいぶん高いところを飛んでいるわね」

西「あれはB-29ですね」

オレンジペコ「えっ? B-29は爆撃機ですよね? 搭載弾数が限られている以上は不要の長物なのでは?」

ダージリン「恐らくケイはB-29の飛行高度を選んだのよ」

オレンジペコ「高度ですか?」

西「B-29は上空10,000mを飛行する"大空の要塞"です」

西「大洗の既存の対空戦車では攻撃が届きません」

オレンジペコ「!!」
313: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 20:20:21.85 ID:AgOoSeIg0
ダージリン「私達の無人機でも、あの高度にたどり着くには時間がかかるわ」

西「あそこまで高く飛べない無人機も多いですしね」

オレンジペコ「で、では大洗側の対抗手段は…」

西「現状では皆無です」

オレンジペコ「そんな…!」

西「このまま大戦末期の大日本帝国のように為す術もなくやられるか」

西「あるいは、何かしらの対策を見出すか」

西「どちらかですね」

ダージリン「ケイも随分大人げないことをするわね」
314: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 20:21:31.62 ID:AgOoSeIg0
オレンジペコ「あっ!攻撃が始まりました!」

ダージリン「…」

西「…」

オレンジペコ「そんなぁ………」

西「案の定、対空攻撃が全然届いていないです」

オレンジペコ「ど、どうすればいいのでしょうか…」ソワソワ

西「あとは西住さん次第ですね」

315: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 20:27:36.45 ID:AgOoSeIg0

~~~~~~



アナウンス『サンダース大付属高校 B-29・飛行不能!』



オレンジペコ「お、大洗がB-29を落としました!!!」パァァ

ダージリン「Amazing、ですわね」フフッ

西「………」

ダージリン「どうしたの絹代さん?驚いたあまり言葉も出ないのかしら?」フフッ

西「いえ」

ダージリン「…」

西(さすがです西住さん…)

西("あそこ"から活路を見出すなんて!!)


ダージリン「絹代さん」

西「へっ?」

ダージリン「あなた、何かみほさんに言ったの?」

西「いいえ? お見舞いに来てくれたときに雑談に花を咲かせたくらいです。ボコというぬいぐるみですね。あはは」

ダージリン「そう………(嘘ついてるわね)」
316: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 20:30:27.75 ID:AgOoSeIg0
オレンジペコ「あぁっ!!!」

西ダジ「!」

オレンジペコ「B-29の破片がIV号戦車に…」

西「なっ!? あの中には西住さん達が!!!」

ダージリン「落ち着きなさい。車内はカーボンで保護されているわ」

西「っ…」

オレンジペコ「でも司令官である西住さんを失ったのは大きな痛手です…!」

西「やっとの思いでB-29を攻略したというのに…!」

ダージリン「勝負は時の運とも言うわ。まだわからないわよ」

西「…」
317: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 20:32:59.84 ID:AgOoSeIg0



アナウンス『サンダース大付属高校 M4A1シャーマン 走行不能!』

アナウンス『フラッグ車走行不能により、勝者・大洗女子学園!』




オレンジペコ「か、勝ちましたぁ…!」

西「流石です西住さん、そして大洗女子学園…!」

ダージリン「本当にお見事ですわ」

オレンジペコ「B-29を撃破してからの展開は凄かったです…!」

ダージリン「えぇ。対空戦車ではなく普通の戦車で無人機を撃破するなんて、普通の考えからは生まれませんもの」

西(知波単の戦車が聖グロの無人機を撃ち落としたけど、黙っておこう)

オレンジペコ「何度も"お見事です"って言いたくなる素晴らしい作戦でした。これは勉強になりますっ!」
318: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 20:34:47.61 ID:AgOoSeIg0
オレンジペコ「あ、ケイさんに抱きつかれてますよ西住さん」アハハ

ダージリン「ケイの抱きつき癖は相変わらずね」

西「抱きつきというよりあれはプロレス技に近いのでは…」

オレンジペコ「確かに。こっちにまでミシミシと音が聞こえて来そうです」

ダージリン「言うことを聞かない誰かさんに打って付けな躾かもしれないわね」

西「聖グロの隊長がそんな下品なことして良いんですか?」ジトー

ダージリン「こんな格言を知ってる?"あたらしい門出をする者には新しい道がひらける
"」ミシミシ

西「いだだだだだだだ!! ギブギブ!!」パンパン

オレンジペコ「相田みつをですね」ハハハ...
319: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 20:37:56.54 ID:AgOoSeIg0
ダージリン「さて。お暇しましょうかね」

西「え? ケイさんに会われないんです?」

ダージリン「ケイは大洗の皆とパーティーよ。邪魔するのも野暮よ」

西「そうですか(パーティーって参加したこと無いんだよなぁ。ちょっと羨ましい)」

オレンジペコ「ダージリン様、片付けが終わりました」

ダージリン「ありがとう。ペコ」

西「お手伝いできず申し訳ありません」

オレンジペコ「いえいえ」


西「」ブルッ

ダージリン「どうしたの?」

西「あの…トイレ…」モジモジ

ダージリン「ハァー。紅茶の飲みすぎよ」

西「む。ダージリンだってしこたま飲んでたじゃないですか」

ダージリン「私は嗜む程度よ。あなたみたいにジャバジャバ飲んでないわ」

西(嘘つけ! 絶対私の倍は飲んでた!)


ダージリン「ほら。一人じゃまだおトイレ出来ないのだから行くわよ」

西「むっ。ちょっと引っかかる言い方です…」

ダージリン「あら? だったら絹代さんは一人でおトイレ行けるのね?」フフッ

西「ぐぅ。…いいもん。ペコさんに連れてってもらいますから!」

オレンジペコ「えっ!?……ま、まぁ良いですけど」
320: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 20:40:16.54 ID:AgOoSeIg0
ダージリン「悪いわねペコ。そこらへんの草むらで良いわよ」

西「なっ!!」

オレンジペコ「大丈夫ですよ。ちゃんとお手洗いまで行きますから」アハハ

西「ダージリンは行かなくても平気なんです?」

ダージリン「行くわよ。後で」

西(自分だって結局行くじゃないか…)

ダージリン「なにか?」

西「…そこで漏らせばいいのに」ボソッ

ダージリン「ペコ。肥溜めがあったらその子を放り投げてやりなさい」

西「なっ! またその話ですか!」

ダージリン「えぇ。何しろ私を夢に呼び出して肥溜めに放り投げるんですもの」

西「違う! あれは勝手にダージリンが!!」

オレンジペコ「はいはい。行きますよ」

西「むぅ…」
321: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 20:42:44.39 ID:AgOoSeIg0
【試合会場 お手洗いまでの道】


西(ということで、ペコさんに車椅子を押してもらってます)


西「それにしても、大洗女子の皆さんの敢闘はお見事でしたね」

オレンジペコ「はい。まさか戦車を対空砲として運用するだなんて思いませんでした」

西「あの咄嗟の判断はさすが西住さんです。我々知波単も見習わねば」

オレンジペコ「ですが、西住さん達のIV号戦車は…」

西「ええ。派手に大破してしまったようです」

西「幸い、乗員の皆さんは全員無事とのことでしたが」

西「IV号戦車は次の試合までに修理が間に合うかどうかは…」

オレンジペコ「! それでは次の試合は…」

西「…もしかしたら、IV号戦車無しで臨むことになるやもしれません」

オレンジペコ「そんな!?」

西「…」


西(あくまでそれは最悪の場合だ。恐らく、何かしら手は打つはず…)

西(………私の方で何か、力になれないだろうか)
322: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 20:45:14.18 ID:AgOoSeIg0

オレンジペコ「どうして…」

西「ん?」



オレンジペコ「どうして、頑張ってる人ばかり辛い思いをするのかな………」



西「!!」

オレンジペコ「大洗女子はいつも頑張ってるのに、いつもピンチで…」

オレンジペコ「だけど、もっと頑張って乗り越えて」

オレンジペコ「そしたらまたピンチになって…」

西「…」

オレンジペコ「一体何のために頑張ってるのかわからなくなりそうです………」

西「そんなの決まってるじゃないですか」キッパリ

オレンジペコ「えっ…?」

西「自分たちが大事にしてきたものを奪われないようにするためですよ」

323: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 20:48:09.75 ID:AgOoSeIg0
オレンジペコ「西さん…?」

西「人間、不思議なもので、普段はグータラなのに」

西「自分やその周りの人を守りたいって思った時にものすごい力を発揮出来るんですよね」

西「火事場の馬鹿力ってやつでしょうか」

オレンジペコ「…」

西「全ての人に出来るというわけではありませんし、無理はして欲しくないですが」

西「少なくとも西住さんや大洗の皆さんはその火事場の馬鹿力でこの苦境を乗り越えると私は思います」

西「先程の無人機を撃墜した時のように」


オレンジペコ「………」



西(現に西住さんはこうやって絶望的な状況をひっくり返して"完勝"した)

西(だから、たとえ戦車が使えなくなろうと、必ず次の手を見つけて勝利を掴み取るはず…)



西(それでもダメというなら………)
324: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 20:49:59.30 ID:AgOoSeIg0
オレンジペコ「…そうですよね」フフ

西「おっ、ペコさんが笑った!」

オレンジペコ「えっ…?」

西「やっぱりペコさんはしょぼくれた顔よりもニコニコ顔がお似合いですな!」ウンウン

オレンジペコ「むぅ…。またそうやって人をからかうんですから…」

西「別にからかってなんかいませんよ。本心です」

オレンジペコ「はいはい。そういうことにしておきますよー」

西「む。ダージリンといいペコさんといい、どうして聖グロの人は素直じゃないんですか」

オレンジペコ「はいぃ? 捻くれてるのはダージリン様だけですから」キッパリ

西「えー」

オレンジペコ「私はダージリン様とは違いますもの」フフン
325: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 20:51:12.70 ID:AgOoSeIg0
西「そうなんですか?」

オレンジペコ「はい」ニコッ

西「"同じ穴の狢"って言ったら怒ります?」

オレンジペコ「怒ります」

西「えー」

オレンジペコ「私はダージリン様みたいにしたり顔で格言を言ったり、回りくどいことを言ったりしません」

西「お、言いましたな? これはダージリンに報告せねば!」ニヤリ

オレンジペコ「あ、ちょっと?!」

西「ダージリンがどんな顔するか見てみたいのであります」ニシシ

オレンジペコ「だっ、だめです! 許しませんからね!?」

西「くひひ。下克上ならぬペ克上ですなー」

オレンジペコ「むっ。その辺にしないともう紅茶淹れてあげませんよ?」ジトー

西「え゛っ!? それは困りますっ!!」
326: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 20:53:45.11 ID:AgOoSeIg0
オレンジペコ「そうですよね。何しろあれだけたくさん飲んでたのですから」

西「あはは。とても美味しかったのでついつい」エヘヘ

西「あんな美味しいお茶なら何杯でも飲めちゃいますよ」」

オレンジペコ「…そうですか?」←ちょっと嬉しい

西「ええ」

オレンジペコ「ダージリン様の淹れた紅茶とどっちが美味しかったですか?」

西「む。なかなか難しい質問ですな…」

オレンジペコ「どっちです?」

西「うーん…」

オレンジペコ「どっちですか?」


西(や、やけに食いついてくるな?!)

西(でも、実際どちらの紅茶も美味だったしなぁ。こりゃ順位なんて付けられんぞ)

西(うん。どっちも美味しい。毎日飲みたい!!)
327: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 20:55:03.59 ID:AgOoSeIg0

西「どっちも美味しかったです」(`・ω・)V


オレンジペコ「む…」

西「どちらの紅茶も真心込めて淹れて下さったのです」

西「それに優劣をつけろなど私には不可能であります」

オレンジペコ「…ふふっ」

西「ん?」

オレンジペコ「西さんらしい回答ですね」クスッ

西「ふぇ? そうですか?」

オレンジペコ「ええ」

西「あははは」

西「もしも私が聖グロ生だったら、恐らく毎日紅茶を浴びるように飲んでますな!」
328: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 20:56:26.97 ID:AgOoSeIg0
オレンジペコ「ダージリン様とどっちが多いでしょうね」フフッ

西「あ、やっぱりペコさんもダージリンの飲む量は多いと思いますよね?」

オレンジペコ「えぇ。本当に血液まで紅茶で出来ているんじゃないかと思うほどです」

西「あははっ! それダージリンも言ってましたよ」

オレンジペコ「まったく…ダージリン様は」アハハ..

西「そういえば、ダージリンにたくさん紅茶を飲んでいるのに試合中トイレ大丈夫なのかと聞いてみたんですよ」

オレンジペコ「そしたらダージリン様は何と?」

西「"助平"」

オレンジペコ「…でしょうね」
329: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 20:57:38.39 ID:AgOoSeIg0
西「不埒なのは重々承知ですが、利尿作用のある紅茶を大量摂取して催さないのは聖グロ七不思議の一つだと思います」

オレンジペコ「七不思議だなんて大げさな…」

西「それくらい不可解なことですからね」

西「あ、ちなみに七不思議の1つに"ペコさんがダージリンの格言に対し的確に出典を言い当てる"ってのもありますよ」

オレンジペコ「えぇー…」

西「ダージリンがしたり顔で格言を言う横で、その格言が誰のものかを解説する」

オレンジペコ「それほど大したことでは…」
330: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 20:59:28.75 ID:AgOoSeIg0
西(ダージリン真似)「ペコ。こんな言葉を知っているかしら。"余は常に諸氏の先頭にあり"」


オレンジペコ「栗林忠道中将ですね…って何やらせてるんですかっ!///」カァァ

西「あはは。やっぱり的確に答えてくれます」

オレンジペコ「むぅ…」プクー

西「他にも"戦闘中の戦車内で紅茶をこぼさず保ち続ける"とかも々ありますけどね」

西「ガタガタ揺れる戦車の中で湯呑みに入った液体を保ち続けるのは至難の業です」


オレンジペコ「こぼす時はありますよ?」


西「え」

オレンジペコ「昔ダージリン様の紅茶を頭から派手に被ったことがありまして…アッサム様が」

西「…なかなか苦労人なんですねアッサムさん」

オレンジペコ「それで車内で大喧嘩したことがありまして…」
331: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 21:02:15.87 ID:AgOoSeIg0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



ガクン!

バシャッ!

アッサム「あづぅぅぅ!!?」ジタバタッ

ダージリン「あ…ごめんあそばせ…」

アッサム「"ごめんあそばせ"ではありませんのよダージリン!!」ポタポタ

ダージリン「ま、まぁ落ち着きなさいアッサム。"人の世に失敗ちゅうことは、ありゃせんぞ"」

オレンジペコ「さ、坂本龍馬ですね…」オロオロ

アッサム「ほぉ…? これが失敗じゃないと仰るのですね?」

ピタッ ジュッ

ダージリン「熱っ!!?」

アッサム「あらごめんあそばせ。足にカップが当たってしまいましたわ」オホホホ

ダージリン「ちょっとアッサム! "目には目をという考え方では、世界中の目をつぶしてしまうことになる"わよ!」

オレンジペコ「ガンジーですね…」ヒヤヒヤ

アッサム「上等ですわ! 表へ出なさい! あなたのそのヒン曲がった性格を矯正してさしあげますわ!!」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



332: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 21:03:27.74 ID:AgOoSeIg0
オレンジペコ「…ということがあったんです」

西「…なんというか…個性的ですね……」ハハ...

オレンジペコ「ダージリン様とアッサム様は昔は結構仲が悪かったみたいでして…」

西「え? そうなんですか?」

オレンジペコ「ええ。他の先輩によると入ったばかりの頃は色んな事で競ってたとのことです」

西「意外ですね。良いコンビに見えるのに」

オレンジペコ「今となっては良きパートナーですが、昔は良きライバルだったんでしょうね」

西「ほほう。雨降って地固まるってやつですな」

オレンジペコ「徹夜でチェスしたり、料理で対決したりと…まぁ、色々とやってたそうで」

西(いや戦車道しましょうよ。人のこと言えないけど)

333: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 21:05:06.32 ID:AgOoSeIg0
【試合会場 トイレ】


オレンジペコ「さて、着きましたよ」

西「ありがとうございます」

ガチャ バタン

オレンジペコ「早くしないと置いてっちゃいますからねー」

西『なっ! 待ってくださいよ!』

オレンジペコ「ふふ。冗談ですよ」クスッ

西『むぅ。今日のペコさん辛口ですぞ。スパイシーペコさんです』

オレンジペコ「何ですかそれ。微妙に語呂が良いですし…」
334: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 21:06:59.79 ID:AgOoSeIg0
西『あはは。ペコさんのニックネームって何気に汎用性高いんですよ』

オレンジペコ「そうなんですか…」

西『他にもアレンジペコとかハレンチペコとかもありますよ』ニシシ

オレンジペコ「なっ! アレンジはともかくハレンチはイヤですっ!!」

西『そうですね。ハレンチなのはダージリン一人で十分です』ゴソゴソ


「あら? ダージリンはハレンチなのかしら?」


オレンジペコ「」

西『えぇ。今日なんて寝ているところ襲われましたし』フゥ…

オレンジペコ(寝てるところ襲われたんですか?!///)


「それはそれは。災難でしたわねぇ…」


オレンジペコ「わわわ…」オロオロ

西『ええ。全くですよ』フキフキ







西『…ん、この声って』ジャー

335: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 21:10:19.74 ID:AgOoSeIg0
「それで? 絹代さん」

西『げえっダージリン?! どうしてここに!?』

ダージリン「あなた達の帰りが遅いから心配して見に来たのよ」

ダージリン「なにしろ絹代さんは助平ですもの」

ダージリン「うちのペコをトイレに連れて行って淫らな事をしてないか心配で心配で」

西『なっ! 失礼にも程がありますぞ!! 人を獣みたいに言いやがってからに!!!』

オレンジペコ「そ、そんな事するつもりだったのですか?!////」

西『違 い ま す!!』


西『こらダージリン!! ペコさんに変な誤解与えたじゃないですか!! 責任取って下さい!!』

オレンジペコ「せ…責任…!/////」プシュー

西『こらぁぁぁぁ! 絶対わかって言ってるでしょ!!』ガァァァァァァ!!!

オレンジペコ「はて、何の事でしょう?」キョトン

西『………ハレンチペコ』ボソッ

336: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 21:12:13.26 ID:AgOoSeIg0
オレンジペコ「はぁいぃ?! もう西さんなんて知りませんっ!」

西『あ、ちょっと! ハレンチは撤回するからお助けを!!』

オレンジペコ「しぃーらない」プイッ

西『む! さっき言ったことダージリンにバラしますよ!?』

オレンジペコ「あっ! ダメだって言ったじゃないですか!!」

ダージリン「あらペコぉ? "さっき"は何て言ったのかしら?」フフフ


西(オレンジペコ真似)「私はダージリン様みたいにしたり顔で格言を言ったり、回りくどいことを言ったり、人をツネったりしません」


オレンジペコ「ちょっと! 最後は言ってませんよ!!」

ダージリン「つまり最後以外は言ったと?」ニコッ

オレンジペコ「あ゛っ!!」

ダージリン「ペコの処遇は追々考えるとして、絹代さん」






ダージリン「最期に言い残すことはあるかしら?」ニッコリ
337: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 21:14:37.08 ID:AgOoSeIg0
西『あの、執行猶予はつきますか?』

ダージリン「つかないわよ?」

西『で、では不服申立てによる控訴は…?』

ダージリン「無いわよ?」

西『…釈放は?』

ダージリン「極刑よ?」

西『酷い! 横暴だ! こんなの絶対認めない!!』

ダージリン「良いからさっさと出てきなさい」

西『やだやだ絶対やだ!!出たらダージリンまたツネるんだもん!!』


ダージリン「そう。ならばずっとそこにいなさいな」

西『え』

ダージリン「あなたは陽の当たる快適な部屋よりも暗くてきったないそこがお似合いよ」

西『それどういう意味ですかーっ!!?』

ダージリン「嫌なら早く出てきなさい」

西『ペコさん! いますよね!? 聖グロの興廃はあなたに掛かっていますっ!!』

西『ダージリンの暴走を止めてくださーい!!』ウワーン

オレンジペコ「知りません」シュン

西『そんなぁ………』ガーン
338: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 21:18:57.40 ID:AgOoSeIg0
ダージリン「日が暮れるから早く出てきなさい」

西『ツネらない?』

ダージリン「出てきなさい」

西『ツネらない?』

ダージリン「早く」

西『ツネらない?』

ダージリン「…」

西『…』

ダージリン「…ハァ」

ダージリン「わかったから早く出てきなさいな」

西『!!』パァァ

カチャン



― このあと滅茶苦茶デコピンされた。



ちなみにペコさんは罰としてダージリンの肩揉みをやらされることになりました。
339: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 21:20:31.03 ID:AgOoSeIg0

【お仕置き後】



西「だーじりんきらい」シクシク ヒリヒリ

ダージリン「自業自得でしてよ?」

西「どこが!!」

オレンジペコ「あはは…」モミモミ

西「"ツネらない?"と聞いて、"わかったから出てこい"と言って出たらデコピンするんですよ?!」

ダージリン「勘違いしないで頂戴。"わかった"と言っただけで"イエス"とは言ってませんわ」

西「捻くれ者め」

ダージリン「今度はどこがいいかしら?」ワキワキ

西「や、やめてください!! たた助けてペコさん!」

オレンジペコ「えーどうしましょう」アハハ モミモミ

ダージリン「ペコ、もっと右…そう、そこ…」ホヘー
340: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/21(金) 21:23:10.19 ID:AgOoSeIg0
西「む。さてはペコさん、笑顔で人を地獄に叩き落とすタイプですな? きゃーこわい」

オレンジペコ「むかっ。そんなわけないじゃないですか!」

西(オレンジペコ真似)「えへっ! ダージリン様の紅茶にワサビ入れちゃった♪」テヘペコ

西「とか」

オレンジペコ「そ、そんなことしませんよ!!」

ダージリン「年下の子をいじめない」ツネッ

西「いでぇぇぇ!! ど、どの口が言うかっ!!!」バタバタ

ダージリン「ペコ、もっと首の近くもお願い」

オレンジペコ「はーい」モミモミ

西「ペコさん、そのまま首をキュッとやっても大丈夫ですよ。ニワトリみたいに」

ダージリン「ペコ、やるならそこの助平にやってあげなさい」

オレンジペコ「は…はぁ…」モミモミ

西「スケベスケベ言うなっ!」
341: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/22(土) 21:43:52.22 ID:8ZarQEPh0

トボトボ....



西「あれ…ケイさん?」

ダージリン「わかっているじゃない。危機管理という"計算"が出来ないから減らず口を叩けると」

西「違います。ほら後ろに」

オレンジペコ「本当だ。ケイさんです」

ダージリン「えっ?」クルッ


ケイ「………」


西「おーい! ケイさーん!!」ブンブン

ケイ「ふぇっ?! き、キヌ!?」

ダージリン「あらケイ。てっきりパーティーに参加していると思いましたの」

ケイ「ははは…ちょっとはしゃぎ疲れたから休憩よ」

西「ケイさんが休むから休ケイですな」

ダージリン「…面白くないわよ」

ケイ「ははは…ハァ…」
342: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/22(土) 21:45:45.12 ID:8ZarQEPh0
ダージリン「浮かない顔ですわね? どうかしまして?」

ケイ「いや…ね」

ダージリン「試合でコロリとやられたからですの?」

オレンジペコ「だ、ダージリン様」オロオロ

ケイ「んー。確かに負けたのは少しヘコんだけどさ…」

ケイ「でもミホのあの快進撃見れてすごい満足だったよ?」

ダージリン「でしたらどうしてそんな顔を?」

ケイ「そりゃあ…」


西「IV号戦車でしょうか?」


オレンジペコ「!」

ケイ「…ザッツライト」ハァ..
343: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/22(土) 21:48:21.79 ID:8ZarQEPh0
ダージリン「あれは事故ですの。無人機を使う以上あのような事が起きるのも想定内」

ケイ「…そうだけどさ。よりによってミホたちの戦車に当って」

ケイ「しかも損傷が激しいってメカニックに言われてさ」

ダージリン「メカニック?」

西「整備を担当しておられるレオポンさんですね」


ケイ「決勝戦には修理間に合わないって…」


西・ダージリン・オレンジペコ「!!」

オレンジペコ「それじゃ、やっぱり…!」

ケイ「アンジーは気にするなって言ってくれたけどさ」

ケイ「IV号って大洗の指揮車両でしょう?」

ケイ「しかも大洗にとって主力級の戦車」

西「かなりの痛手ですね…」

ダージリン「言い方は悪いかもしれないけれど、大洗は」



ダージリン「戦術で勝って、戦略で負けたのかもしれないわね」
344: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/22(土) 21:50:23.85 ID:8ZarQEPh0
西「っ…!」

ケイ「そうなのよ…」

ケイ「ミホはまだこれから戦わないといけないってのに…!」

ダージリン「あなたのところから戦車を差し上げてはいかがですの?」

西「…」

ケイ「そ、そうよね!やっぱりウチの戦車貸してあげるべきだよね!?」

ダージリン「ええ」

ケイ「ウチのファイアフライだったら火力でも申し分ないわ!」

ダージリン「何なら全ての車輌を寄付しても良いですのよ?」フフッ

ケイ「えー! そしたらウチらの戦車無くなっちゃうじゃない!」

フフッ

アハハハハハ
345: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/22(土) 21:51:44.40 ID:8ZarQEPh0
西「…」

オレンジペコ「西さん…?」

西「あの、水を差すようで恐縮なのですが…」

ケイ「なーに?」

西「大洗のあんこうチームは5名でしたよね?」

ダージリン「それが何か?」

オレンジペコ「…あっ!」

ケイ「jesus」

西「ええ。シャーマン・ファイアフライは4人乗りなので定員オーバーであります」

西「それに、無人機の対策もしなければいけませんし…」

オレンジペコ「確かに…」
346: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/22(土) 21:54:12.68 ID:8ZarQEPh0
ダージリン「あら、随分と冷淡ね?」

西「…」

ダージリン「あなたなら"ならばどうぞ我が校の戦車を使ってやってください!!"とでも言うかと思ったけれど」

西「残念ながら、黒森峰やプラウダを相手にするとなれば、知波単の既存戦力では太刀打ちできませんので…」

ケイ「…」

ダージリン「…」

西「プラウダのT-34、黒森峰のティーガー、これら戦車の装甲を知波単の戦車で貫くのは極めて困難です」

西「一方で、相手の主力戦車はこちらの戦車の射程外から撃破可能」

西「…それらを鑑みると、残念ながら我々の戦車では大した戦力にならないのです」

ダージリン「なかなか冷静な分析ね。珍しい」

西「なので、そういったことを鑑みてこのたび新しい戦車を導入することにしました」
347: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/22(土) 22:03:53.99 ID:8ZarQEPh0
ケイ「ワーオ! それ本当?!」

オレンジペコ「羨ましいです」

ダージリン「ッ…!」

西「ええ。ただ今回の試合には間に合わないので、お貸しすることは出来ませんけどね」

オレンジペコ「そうなると私達にとって知波単学園がもっと脅威になるわけですね…」

オレンジペコ「喜んで良いのか悪いのか…」アハハ

ダージリン「…………」

西「あはは。聖グロだって"クロムウェル"を導入したじゃないですか」

オレンジペコ「確かにそうですけど…」

西「王室を倒し、共和制を敷いた大将の名を持つ"勝利の戦車"です」

ダージリン「…!」

西「それは聖グロにとって大きな意味を持つ戦車でしょうな」

オレンジペコ「そうなんですか??」

西「ええ」

ダージリン「…」フフッ




― 彼女もまた、聖グロの隊長としての"宿命"を背負っているの

― ええ。ダージリンもOG会に縛られているわ…


― そんな中、OGたちを押し切って新しい戦車を導入したとすれば?

― "大したものだ"と言うべきですわね




西(ダージリンの苦労は誰も知らない…)
348: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/22(土) 22:16:48.30 ID:8ZarQEPh0

ダージリン「それで、みほさんの戦車の件は?」

西「ええ。これは私の考えなのですが」


西「まずは、大洗の皆さんに任せてみませんか?」


ケイ「Why?!」

西「言わずもがな私も手を差し伸べたい気持ちで一杯です」

西「でも、まずは大洗の"やり方"を尊重しようと思うのです」

ダージリン「つまり静観していろと?」

西「ええ。恐らく大洗の皆さんも動くでしょうから」

西「なので外野から彼是いうのは、彼女たちの努力に水を差す行為になってしまうのです」

ケイ「んー、確かにねぇ…」

西「それで、駄目だった時に改めて私達が助けの声をかければ良いのです」

ダージリン「なるほど…」
349: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/22(土) 22:25:34.16 ID:8ZarQEPh0
西「それに…」

ケイ・ダジ・ペコ「?」

西「此処から先は"戦車だけ"、"対空戦車だけ"では厳しくなるかと思うのですよ」

ダージリン「どういう意味かしら?」

西「つい先日、西住さんからお話を伺ったのですが、以前にプラウダ高校と練習試合をしたそうです」

西「その時にプラウダ側は3機の無人機を投入したとのことですが」


西「その結果、大洗は開始10分で全滅したそうです」


ケイ・ダジ・ペコ「!!!」

西「今年の優勝校であり、私達を率いて大学選抜チームを相手に勝利した西住さん達大洗女子ですら」

西「無人機が相手では絶対的な力の差が出てしまうのです」

ケイ「確かにね。今回の試合もミホの奇策がなければ対抗手段は無かったわけだし」

西「その上、プラウダも黒森峰も装甲・砲ともに優れた戦車を保有しています」

西「その戦力差は天と地ほどの差と言っても過言ではありません」


西「なので、4号戦車、あるいは4号対空戦車が復活しましたでは駄目なんです」

オレンジペコ「で、ではどうすれば良いんですか!?」

西「戦車も無人機も叩ける戦車が理想ですね…」

ダージリン「そんな戦車あるわけないでしょう」

西「ええ」




西「だから、大洗の皆さんに任せるのです」
350: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/22(土) 22:55:19.93 ID:8ZarQEPh0
オレンジペコ「それは一体どういう

ブロロロロロロロ!!


ダージリン「あら。お迎えが来たわね」

ローズヒップ「ダージリン様ぁ!おっ待たせしましたのぉー!」

ダージリン「丁度良かったわローズヒップ。また送って頂戴」

ローズヒップ「喜んでですの!さぁさぁ絹代様も乗ってくださいまし!」

西「これはこれは恐れ入ります」ガチャ


オレンジペコ「私はお先に学園艦へ戻りますね」

ダージリン「あら? 何か用事でも?」

オレンジペコ「実はアッサム様からお言い付けがありまして…」

西「…"水飴"ですか?」ボソッ

オレンジペコ「ええ…」

西「…ご愁傷さまです」

オレンジペコ「あはは…」

西(プラウダでは良い方向に話が進んだみたいだけど、此方ではそうでもないみたいだ…)

西「アッサムさんに"おデコに塗りたくると効果抜群ですよ"とでもお伝えください」シレッ

オレンジペコ「あはは。わかりました」

ダージリン「?」

351: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/22(土) 22:58:46.12 ID:8ZarQEPh0
【帰りの車内】


ローズヒップ「かっ飛ばしますわよ~♪」オッホホホホ

西「行きと違って帰りは道が空いているので快適ですな」ハッハッハ

ローズヒップ「快適すぎてご機嫌ですのよ~!」

西「あははは。突撃をしているみたいですよ」

ダージリン「制限速度と交通ルールはちゃんと守るのよローズヒップ」

ローズヒップ「もっちろんでございますのよ~!」
352: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/22(土) 23:01:49.80 ID:8ZarQEPh0
西「…」チラッ

ダージリン「………」

西(ダージリン…何か悩んでることでもあるのかな…?)

ダージリン「……えっ?」

西「ん?」

ダージリン「いま何か言ったかしら?」

西「いいえ」

ダージリン「そう…?」

西「…あー、ダージリン?」

ダージリン「何かしら?」

西「次の試合で大洗、西住さん達はどうなるでしょうか」

ダージリン「…」


ダージリン「やはり、みほさん達のIV号が破損されたのが致命的ね…」
353: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/22(土) 23:03:43.11 ID:8ZarQEPh0
西「ですね…」

西「でも、おそらく大洗は次の試合までに代替となる戦車を探すでしょう」

ダージンン「そうね。"戦車がなくて試合に出ません"は有り得ないもの」

西「そこで入手する戦車が、既存の戦車なのか…それとも」


西「我々の知らないトンデモな戦車なのか」


ダージンン「トンデモって何よ…」

西「先程言った"戦車も無人機も叩ける戦車"です」

ダージンン「さっきも言ったでしょう? そんな戦車あるわけ無いと」

西「ええ。その通り」

ダージンン「人の話はしっかり聞きなさいな。そんな都合の良いものは新しく作りでもしない限…っ!!」

354: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/22(土) 23:04:54.41 ID:8ZarQEPh0
西「…そうなんです」

ダージンン「そんなの不可能よ。まずレギュレーションが通らない」

西「そこを上手く掻い潜る方法が見つかったとすれば…?」

ダージンン「………あなた、何か心当たりがあるの?」

西「ありません。ただ…」


西「大洗ならそんな修羅場もきっとくぐり抜けるだろうなぁ…と」


ダージンン「………」
355: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/22(土) 23:06:35.38 ID:8ZarQEPh0
ピー!!

プップップー!!

ピピー!!!


ローズヒップ「全っ然進まないですの…!」イライライライライラ

西「あははは…」

西(見事に帰宅ラッシュにめり込んでしまったな)

ローズヒップ「行きはともかく帰りも渋滞だなんてどーなっていますのっ!?」イライライラ

西「はは…。他の運転手も皆おなじ面持ちでしょうな」

ローズヒップ「ぐぬぬ…」ブツブツ

西「まま。ここは"水飴"でも食べて気分転換されてはいかがでしょう?」

ローズヒップ「残念ながら"水飴"は1日3個までですの」

西「へ? そうなんですか?」

ローズヒップ「アッサム様から言われていますの」

ローズヒップ「"水飴は脳を活性化させるけれど、食べ過ぎると逆に脳の動きを低下させてしまいます"って!」

西「………ソウナンデスネ」

ローズヒップ「だからガ マ ンですのっ」イライライラ

356: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/22(土) 23:08:29.33 ID:8ZarQEPh0
西「あれ? ローズヒップさんご存知ではないのですか?」

ローズヒップ「…何がですの?」ジロッ

西「(早くも噛み付かれた) "水飴"の食べ過ぎは確かに脳の動きを低下させます」

西「しかし、ずっとイライラした状態だとそれ以上に脳の動きを低下させてしまうと」

ローズヒップ「そうなんですの?」

西「ええ。イライラはダメなんです」

西(間違ったことは言ってない。ストレスは脳にも体にも毒である)

西「はい。ですので、今みたいなイライラを払拭するための"水飴"の使用は別段問題ないと」

ローズヒップ「そうなんでございますのっ!?」パァァ

西「ええ」ニコッ

ローズヒップ「では! では! 良いんですわね!?」パァァ

西「ええ。どうぞ」ニシッ

ローズヒップ「いやっほーいですのっ♪」
357: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/22(土) 23:10:04.79 ID:8ZarQEPh0
西(ペコ太郎といいローズヒップさんといい、聖グロは愛くるしい方が多いですな)

西(ダージリンさんもさぞ後輩を可愛がり甲斐があるだろう)

西(もちろん知波単にも可愛い後輩はいるぞ!福田は可愛い!)

西(…ところでダージリンは?やけに静かだな?)


ダージリン「…」スヤァ


西「あはは。お疲れのようですね」

ローズヒップ「おーっほっほっほー♪」ネリネリ

西「おっと、ローズヒップさん、ダージリンがご就寝のようです。お声の音量を落として頂けますか?」

ローズヒップ「これは失礼しましたのー」ボソボソ

西「ご協力感謝致します」フカブカ
358: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/22(土) 23:11:26.28 ID:8ZarQEPh0
ヘクチョン!!


西「ん?」

ダージリン「クチュン!!」

ダージリン「…」ブルブル

西(ああ。屋根のない車だから風がまともに当たってしまうか…)

西(風邪をひかれても困るしな)パサッ


ダージリン E:浴衣の羽織


西(…これで良しっと)

ダージリン「……エヘヘ…」zzzz

西(ダージリンも"えへへ"って笑うことがあるんだなぁ)シンミリ

西(まぁ、何だかんだ言ったってダージリンも女の子だしね)ウンウン

西(ただ…)


西絹代 E:浴衣


西「さもい…」ブルブル
359: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/22(土) 23:13:00.11 ID:8ZarQEPh0
コテン


西「ん?」

ダージリン「…」ムギュッ

西(おっと、枕にされてしまったぞ)

ダージリン「…フスー…フスー」zzz

西「あはは。有難うございます。とっても暖かいです」ホッコリ

ダージリン「…フフ……」zzzz


360: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/22(土) 23:21:08.20 ID:8ZarQEPh0

【病院 エントランス】


キキーッ


ローズヒップ「到着で御座いますのー(小声)」


シーン


ローズヒップ「あれ?」キョトン


西「…」zzz
ダージリン「…」zzz


ローズヒップ「ふむ…」

ローズヒップ「!」ピコーン

ローズヒップ「少々お待ちくださいましー(小声)」スタタタタッ
361: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/22(土) 23:22:13.06 ID:8ZarQEPh0
看護婦「はいはい?」タッタッタッ

ローズヒップ「お部屋までお願いしますのー」タッタッタ


ローズヒップ E:担架


看護婦「………そういうことね」ニヤ

ローズヒップ「そういうことでございますのよー!」ヨッコイショ



(数分後)


ローズヒップ「ではでは、お休みなさいませですの~」ペコッ

ブロロロロ....
363: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/25(火) 20:30:31.89 ID:pfb36CDZ0
【同日夜 西絹代の病室】


西「ん……」パチッ

西「あれ…ここは…?」

西「………病室?」

ダージリン「スースー…」zzzz

西「っ?!」ビクッ


西(えーと…)

西(確か私達は大洗とサンダースの試合を観戦して)

西(そのままローズヒップさんに送ってもらって…)

西(そこから記憶がない)

西「ふむ………」


西「まぁいっか」パタン


西「お休みなさいダージリン」

ダージリン「…ムニャ」zzz

西「私は寝込みは襲いませんからね」

ダージリン「…ムゥ……」zzz

西「ふふっ」ナデナデ

ダージリン「…エヘヘ……」zzz
364: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/25(火) 20:31:46.79 ID:pfb36CDZ0
― よほど居心地がいいのか、ベッドの寝心地がいいのか

ダージリンはぐっすりと眠っている。

私がかつて眠りたくても眠れなかった時期はあったことを思うと、ダージリンにも眠れない日があったのかもしれない。

そう考えると、今の私に出来るダージリンへの恩返しは…

嫌な事を忘れる事ができる、居心地のいい空間を提供することなのかもしれない。


この頃からか、私はダージリンに特別な感情を抱いていた。

ダージリンが嬉しそうにしていれば私も嬉しいし

ダージリンが悲しいと私も悲しい。

お世話になった方々や、知波単の皆とは違う感情。


でも、私はこの事について特に深く追求することはなかった。
365: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/25(火) 20:32:47.36 ID:pfb36CDZ0
ダージリン「んぅ…?」パチッ

西「あ、おはようございます。…といっても夜ですけど」

ダージリン「………ここどこ?」

西「あはは…私の病室です」

ダージリン「そう…」

西「ええ」

ダージリン「…」

西「…」



ダージリン「何で病室にいるのよっ!!?」ガバッ


西「わっ!」

366: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/25(火) 20:33:36.21 ID:pfb36CDZ0
ダージリン「…ローズヒップに送ってもらったところまでは覚えているわよ」

西「ええ」

ダージリン「そして途中で寝てしまって」

西「はい」

ダージリン「気づいたらここ」

西「うん」

ダージリン「どういうことなの…」

西「さぁ?」

ダージリン「…」

西「…」

ダージリン「今、何時?」

西「ちょうど10時ですね(まだ10時かぁ。もう深夜だと思ってたのに)」
367: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/25(火) 20:34:24.57 ID:pfb36CDZ0
ダージリン「ハァ…またこんなところに来る羽目になるなんて…」ズーン

西(その"こんなところ"でとてもとても幸せそうに寝ておられたわけですがね…)ジトー

ダージリン「…何よ」

西「何でもございません」

西「きっとローズヒップさんが気を利かせてここまで連れてってくれたのでしょう」

ダージリン「どうやって…」

西「"水飴"の食べ過ぎで脳が超常現象起こして空間移動能力使えるようになったとか?」

西(ローズヒップ真似)「おーっほっほっほ! マネジメントですのっ!」

西「…って」

ダージリン「バカなの?」

西「…もうバカで結構です」ムスッ

ダージリン「そうね」

西(ダージリンは寝起きの機嫌が悪い。…低血圧なのかな?)


ブーブー

ブーブー
368: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/25(火) 20:35:27.53 ID:pfb36CDZ0
ダージリン「ほら電話。鳴ってるわよ」

西「はーい。…おっ、ペコさんからだ」

ダージリン「ペコ?」

西「大方ダージリンのこと心配されておるのでしょう。良い後輩ですな」シミジミ

ダージリン「それは申し訳ないことをしたわね」

西「まったくです」ピッ

オレンジペコ『夜分遅くにすみません。西様のお電話でしょうか』


西(みほ真似)「いえ…西さんではなく西住ですけど、オレンジペコさん…?」


ダージリン「何してるのよ…」

オレンジペコ『えっ?確かこの番号で合ってた…あ、いえ、ごめんなさい間違え

西「ははは。合ってますよペコさん」
369: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/25(火) 20:36:32.48 ID:pfb36CDZ0
オレンジペコ『え?』

西「私ですよ。知波単の西絹代でございます」ハッハッハ

オレンジペコ『もうっ! ビックリしたじゃないですか!!』プンスカ

西「あはは。失礼しました」

オレンジペコ『あの、それでダージリン様のことなんですが…』

西「あぁ、ダージリンなら私の横でぐっすり寝てますよ」

ダージリン「起きてるわよ…」ハァ

オレンジペコ『えぇっ!? もうそんなことを?///』カァァァ

西「ん? そんな事とは??」

オレンジペコ『そ、それは…あの…アレですよ…/////』モジモジ

西「アレ…?」キョトン






オレンジペコ『………………ぇっちぃことです…/////////』ボソッ
370: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/25(火) 20:38:06.33 ID:pfb36CDZ0
西「…」

オレンジペコ『…/////』カァァァ

西「………は?」(゚д゚;)

西(この小娘は何を宣っとるのだ…???)

オレンジペコ『…え?』

西「あの………ただ単にご就寝されてただけですが…?」

オレンジペコ『』

西「…」


オレンジペコ『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!////////』ジタバタ


西「わっ!?」キーン

ダージリン「さっきから何してるのよ…」

西「何かペコさん、ご乱心のようですよ…?」

ダージリン「ご乱心?」
371: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/25(火) 20:40:06.37 ID:pfb36CDZ0
オレンジペコ『に、西さんなんか大っ嫌いですっ! うわぁぁぁぁぁぁぁん!!』バタバタ

西「ちょっと待って下さいよ! 私なにか悪い事としましたか!?」

オレンジペコ『悪いことも悪いことですっ! 西さんが助平だからいけないんですっ!!』

西「なっ失礼な!? 私は決して助平なんかじゃありませんぞ!!」

ダージリン「あなたは十分助平だからご心配なさらずとも」

オレンジペコ『西さんが"私の隣で寝てる"って言うからいけないんですよっ!!』

西「はい裁判長! 冤罪であります! 私は見たままを述べただけでありますっ!」

オレンジペコ『被告人の要求を棄却します! 死刑です!!』

西「そんなぁ…あ、ちょっと!」

パッ

ダージリン「御機嫌ようペコ。私よ」

オレンジペコ『ダージリン様ぁ…西さんがいじめますぅ…』

ダージリン「絹代さんにはあとでキツ~い罰を与えておくからご安心なさい」

オレンジペコ『…絶対ですからね?』

西「ち、ちょっと待って下さい! なんで私が罰を受けにゃならんのですかっ!?」
372: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/25(火) 20:42:16.05 ID:pfb36CDZ0
ダージリン「はいはい。それで、ご用件は?」

オレンジペコ『あっ、ごめんなさい。その、ダージリン様への伝言だったんですが…』

ダージリン「ええ。私が直接承るわ」

オレンジペコ『先程ローズヒップさんから事情を聞いたのですが』

オレンジペコ『曰く"お病院にお運びしましたわよー!"とのことでして…』

ダージリン「ええ。どうやらそのようね。起きたら入院患者になってましたわ」

オレンジペコ『あはは…。それで、夜も遅いですから、また病院で泊めて頂けないかと』

ダージリン「…良いかしら絹代さん?」チラッ

西「キツ~い罰を取り止めて下さるのなら」シレッ

ダージリン「仕方ないわね」

西(なぁにが"仕方ないわね"だ全く…)ヤレヤレ


ダージリン「絹代さんが"泊まって下さいお願いします"って言うから、仕方な~くまた一泊するわ」

西(こんにゃろ好き放題言いやがってからに…!)グギギ

オレンジペコ『なんか…それはそれで心配です…何しろ西さんですので』

西「おいこらハレンチペコ。そりゃどういうこった」

オレンジペコ『聞こえてますよ!ハレンチって言わないで下さい!』プンスコ

西「事実ですしお寿司」シレッ

オレンジペコ『事実じゃありませんっ!!』

ダージリン「ちょっと。私を挟んで傷の舐め合いをしないで下さる?」

西「ペコ太郎があまりに面白くてついつい」
373: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/25(火) 20:52:24.47 ID:pfb36CDZ0
オレンジペコ『ぺ、ペコ太郎…』

西「あはは。他にもラーメンペコとかペコ煎餅とかペコ饅頭とかクールペコとか」

ダージリン「ラーメンペコ…美味しそうね」フフッ

オレンジペコ『ダージリン様も悪ノリしないで下さいまし!』ムスッ

西「あはは。ペコさんのあだ名は色々浮かび上がるので、また面白いの出来上がったら発表しますぞ」

オレンジペコ『結構です。西さんが名前を悪用するなら私も悪用しますもんね』ムスッ

西「あはは。どんなのが出来るか楽しみですなぁ。"絹おねーちゃん"とか大歓迎ですぞ!」

オレンジペコ『呼 び ま せ ん』キッパリ

ダージリン「あら?お姉様って呼んでくれても良いのよペコ?」ウフフッ

西「気持ち悪っ」ボソッ

ガンッ!

西「いでぇっ!!!」

オレンジペコ『ダージリン様まで…』ヤレヤレ
374: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/25(火) 20:53:33.33 ID:pfb36CDZ0
西「私のあだ名かぁ…楽しみだなぁ」

オレンジペコ『とんでもないの付けますからね?後悔しても知りませんよ?』ムスッ

西「わくわく」

オレンジペコ『まぁでも…今は思い浮かばないので絹代様のあだ名は思いついた時にでも』

西「あはは楽しみです」

西「ん?」

オレンジペコ『えっ?』


ダージリン「"絹代様"?」


オレンジペコ『あ…』

西「ほほう絹代様かぁ…これは斬新ですなぁ」

ダージリン「別に普通じゃない」

西「そりゃダージリンは常に"ダージリン様"って呼ばれてるからですよ」

西「それにしても絹代様かぁ…」フムフム

ダージリン『い、今のはですねっ!』アセアセ



375: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/25(火) 20:55:20.68 ID:pfb36CDZ0
ダージリン「ペコ、こんな子に"様"なんてつけては駄目よ。呼び捨てでも良いくらいですの」

西「あ、ペコ太郎、ダージリンはこれから"ダージリ貧"で良いですよ。私が許可いひゃいいひゃいほっへひっはははいへ!!!」

ダージリン「誰がジリ貧ですって?」ビローン

西「はーひひんへふほ!!!」ジタバタ

ダージリン「ほぉ?」Wビローン

西「いひゃぁい!ひょうへははんほふへふっ!!!」バタバタ

ダージリン「両手だけじゃ足りないわ」

西「いいはらははっふははひへ!!」ジタバタ

ダージリン「何言ってるかわからないわよ」パッ

オレンジペコ(普通に会話してるじゃないですか…)


西「フニュー…ダージリン酷いです」ホッペサスサス

ダージリン「口は災いのもと。自業自得でしてよ」

ダージリン「どうせ喋るのなら有益なことを喋りなさいな。私のように」フフッ

西「…妖怪口から糞出す大便ジリンめ」ボソッ

ツネッ ミシッ!

西「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁいだぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!」ジタバタバンバン

ダージリン「あんたは品を良くしなさいって言ってるでしょうがッ!!!」


オレンジペコ(あはは…絹代様も懲りないですね……)
376: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/25(火) 20:57:10.99 ID:pfb36CDZ0
西「ところでペコ太郎は今何されてるんです」ヒリヒリ

オレンジペコ『結局ペコ太郎なんですか…』

西「気に入ったんですよね"ペコ太郎"って響きが」ニシシ

オレンジペコ『そうですか…。というか私が何してるかなんて知りたいんですか?』

西「んー、何となく聞いてみただけです」

オレンジペコ『何となくで女の私生活覗きたがるなんて、やっぱり絹代様は助平です』

西「まーた助平言う…」

ダージリン「助平よ」

オレンジペコ『助平です』

西「どいつもこいつも助平助平ってちきしょう…」ワナワナ

オレンジペコ『日頃の行いですね』


西(オレンジペコ真似)「ぇ…ぇっちぃことも日頃の行いですか?(モジモジ」ボソッ


オレンジペコ『なっ!? あれは!!!/////』カァァァ...

西「私が助平だったらペコ太郎も助平でダージリンはその百万倍助平です」

ゴンッ!

西「いでっ!!」

ダージリン「助平はあなただけで十分」

西「むっ…」
377: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/25(火) 20:59:08.49 ID:pfb36CDZ0
オレンジペコ『まぁ…今は電話してますけど、先程まではルクリリ様とニルギリ様のお相手をしていました』

西「ほぉ…(誰?)」

ダージリン「ニルギリもルクリリもうちの車長よ」

西「なるほど」

オレンジペコ『それで、"面白いゲーム手に入れたからやるぞペコ!"って』アハハ

西「ん? 聖グロもゲームやるんですか?」

ダージリン「やる子はやるんじゃないかしら? 私はやった事がないけれど」

西「"やる相手がいない"の間違いでは?」


  げ ん

  こ つ


ダージリン「ゲームをするのも良いけど、程々にね?」

ダージリン「そうでないと隣にいるお馬鹿さんみたいになってしまうわ」

西「」ヒリヒリ

オレンジペコ『はい…。(絹代様、入院延びちゃうんじゃないかな…)』
378: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/25(火) 21:00:25.15 ID:pfb36CDZ0
西「ちなみにどのようなゲームです?」ヒリヒリ

オレンジペコ『スーパーマジノブラザーズです』

西「…はい?」


『ペコ? 誰と電話してるの?』


ペコ『あ、お帰りなさいルクリリ様。知波単学園の隊長さんとお話してました』

西(この声…どこかで聞いたことがあるような…)

ルクリリ『知波単学園…』

西「この声…」

西・ルクリリ「『あーーーっ!』」

ダージリン「あら? 面識あったかしら?」

ルクリリ『あ、あんたはエキシビジョンの時に私をハメやがった…!』

西「そういうあなたは!!」






西「…どちら様?」

電話『』<ガタンッ!!

オレンジペコ『…ルクリリ様?』
379: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/25(火) 21:02:53.86 ID:pfb36CDZ0
ルクリリ『いててて…覚えていないのかよ…。エキシビジョンマッチの時に戦った相手じゃないかぁ…』

西「あー…ウチの福田が言ってた"二度も騙されたか!!"の方ですな?」

ルクリリ『"騙されるか"だ! というかその覚え方はおかしいっ!!』

西「あはは。あの時はお世話になりましたよ」

ルクリリ『ん…、こちらこそ』

西「で、どちら様?」

電話『』<ガタガシャーン!!!


ダージリン「さっき言ってた"ルクリリ"よ。ウチのマチルダIIの車長」

西「ほうほうルリリさんですか」

ルクリリ『し、知らなかったのか!? っていうかルリリじゃない! ル・ク・リ・リ!』

西「あら、失礼しました」

ダージリン「ルクリリ」

ルクリリ『え…今の声誰?』

西「あぁ。私の友人ですよ」

ルクリリ『友人? でも私の名前をいま…』

ダージリン「…」チラッ

西(なんで私を目で見るんです……ってそういうことか)


西「あはは。あれだけ大きな声で叫べば聞こえますよ」

ルクリリ『…そっか』

ダージリン「」コクリ

西(ダージリンもなかなかイタズラっ子だなぁ…)
380: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/25(火) 21:04:03.64 ID:pfb36CDZ0
ダージリン「自己紹介が遅れたましたわ」

ルクリリ『あ、うん。初めまして』

ダージリン「絹代さんの友人を"してやってる"者ですの」

西(し、してやってる!?)ガーン

ルクリリ『私はルクリリ。聖グロで戦車長をやっているわ』

ダージリン「これはこれはご丁寧に。同じく聖グロの隊長をやっている者でございますの」

ルクリリ『はぁ?』

ダージリン「あら、どうかしまして?」

ルクリリ『いや。なかなか面白いジョークだなって』ハハハ

オレンジペコ『…』オロオロ

ダージリン「ほう?」

西(ルクリリさん、電話の相手がダージリンだって気付いてないな…)

381: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/25(火) 21:05:45.22 ID:pfb36CDZ0
ルクリリ『ウチの隊長はダージリンって言うちょっと変だけど面白い隊長なのよ』

西(ちょっと?)

ダージリン「」ギロッ

西「ナンデモナイデス」

ダージリン「それはそれは。さぞかし優秀な隊長ですのね?」

ルクリリ『そうだね。変だけど』アハハッ

ダージリン「…変?」

ルクリリ『ええ。後輩にしょっちゅう格言とかジョークをドヤ顔で語ったりするの』クスクス

ルクリリ『そうでしょうペコ?』

オレンジペコ『…え…ええ…?』オロオロ

ルクリリ『それがあまりに滑稽で、巷じゃ"喋るだけで面白い女"とか言われてるらしいの』アハハハ

ダージリン「ふふふっ。それは面白いわね」

ルクリリ『でしょでしょ! あっはっははは!』

ダージリン「ところでルクリリ」

ルクリリ『あはは。なぁに~?』ケタケタ
















ダージリン「こんなジョークを知ってる?」








ルクリリ『え』

西(ご愁傷様です)

382: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/25(火) 21:07:04.71 ID:pfb36CDZ0
ダージリン「アメリカ大統領が自慢したそうよ。"我が国には何でもある"って」

ルクリリ『え゛っ?!』

ダージリン「そうしたら、外国の記者が質問したんですって」

ルクリリ『あ、あの…もしかして…』オロオロ


ダージリン「"地獄のホットラインもですか?"って」


オレンジペコ『お国柄ジョークですね』

ルクリリ『』

ダージリン「それはそうと、"喋るだけで面白い女"のお話、もっと聞かせてくださる?」

ダージリン「ル ク リ リ」ニコッ

ルクリリ『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁごめんなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!』ウワーーン


西(ルクリリさん、地獄のホットラインの方がずっとマシですぞ)

西(何しろ私なんかすぐ真横に"地獄"がいるわけですから)

383: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/25(火) 21:08:36.81 ID:pfb36CDZ0
ダージリン「まず相手が誰かを確認してからモノを言うことね」ズズ...

ルクリリ『ももも申し訳ありませんでしたっ!!』

ルクリリ『まさか電話の先にダージリン様がいらっしゃるなんて知らなかったもので!!』ヒィィ

ダージリン「あら、電話の先が私でなければ"喋るだけで面白い女"のお話の続きをしていたと?」

ルクリリ『あっ、いえ…それはその…』オロオロ

ダージリン「何かしら?」

ルクリリ『ひぃぃっ!』ガタガタ

西「まま、ダージリン、その辺でご勘弁を」

ダージリン「…そうね。絹代さんに免じてこの辺にしておくわ」

西(私に免じて?)

ルクリリ『あ、ありがとうございますぅ絹代様ぁ…!』パァァ

西「なんだか今日はやたら"絹代様"って言われるなぁ…」
384: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/25(火) 21:11:04.67 ID:pfb36CDZ0
ダージリン「そういうわけだから、ペコ、ルクリリ。あまり遅くまで遊んでいては駄目よ?」

ルクリリ『はいっ!』

オレンジペコ『かしこまりました』

ダージリン「それと私はこちらで過ごすから、明日はお願いね?」

オレンジペコ『はい。絹代様にも宜しくお伝え下さい』

ダージリン「ペコが宜しくですって」

西「すぐ横にいるんだから直接言ってくださいよ」

オレンジペコ『絹代様、ダージリン様をお願いします。くれぐれもフラチなことをなさいませぬよう』

西「ふ、不埒ぃ?!」

オレンジペコ『ええ』ニコッ

西(ペコ太郎め…だんだんダージリン化してきおる…)グヌヌ

西(………そうだ!)ペコーン


西「ルクリリさん、後輩の指導がなってないようですが?」


ルクリリ『え? あ! こらペコッ! 絹代様に向かってその口の聞き方は何だっ!』

オレンジペコ『えぇぇっ?!』

西「ふははは」

ダージリン「ルクリリ。程々にね?」

ルクリリ『心得ております』

ダージリン「それではお休み」

ルクリリ『お休みなさいませ!』

オレンジペコ『お休みなさい。ダージリン様、絹代様』

プツッ
385: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 22:57:50.17 ID:9bZwe9Ud0
西「…」

ダージリン「…」

西「…あははっ」

ダージリン「なによ」

西「いやぁ、聖グロの皆さんは楽しいなぁと思いまして」ハハハ

ダージリン「良くも悪くも個性的な子が多いからね」ズズ

西(その個性的な聖グロ生のなかでも群を抜いて個性的なのがダージリンなんですけどね)

ダージリン「グー」

西「ま、まだ何も言ってないじゃないですか!」

ダージリン「どうせ良からぬことを考えているのでしょう」ズズ

西「そんなことないです。…というかダージリンだけ紅茶ずるいです。私にも下さいな」クレクレ

ダージリン「どうぞ」 つ[ティーカップ]

西「え。それダージリンが飲んでたやつじゃ?」


ティーカップ(空)


西「」

西「ダージリンっ!!」ガァァァ!!

ダージリン「もう、騒がしいわね」

西「いくら何でも飲み干したティーカップ差し出すこたぁ無いでしょうに!」

ダージリン「冗談よ。今あげるから大人しく待ってなさい」コポコポ...

西「むぅ…」

386: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 22:59:49.73 ID:9bZwe9Ud0
ダージリン「…でも、さすがに紅茶だけだと少し寂しいわね」

西「確かに。そういえば晩御飯も食べておりません………あ!」

ダージリン「なに?」

西「冷蔵庫の中に色々入ってたと思うので、良かったらそれをどうぞ」

ダージリン「良いの?」

西「ええ。私一人じゃさすがに食べきれないですし、折角の差し入れを腐らせては申し訳無いので」

ダージリン「そう。ならお言葉に甘えて」ガチャ


冷蔵庫ちゃん<ビッシリ


ダージリン「…」

西「どうされました?」

ダージリン「色んなものが入っているから驚いたのよ…」

西「地元の人や学校関係者など色々な方が来て下さったので」

西「お陰でお見舞の品が増えて感謝感激雨あられであります」アッハッハ

ダージリン「お見舞というよりお葬式に近いわね。この量」

西「勝手に殺さないで下さい」

387: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 23:00:59.75 ID:9bZwe9Ud0
ダージリン「…それじゃあ、これを頂くわね?」

西「どうぞどうぞー。…ってそれ結構な量ですが、お一人で…?」

ダージリン「あなたは食べないの?」

西「良いのですか?」

ダージリン「あなたのお見舞品なのよ?」

西「あ、そうでしたね。では少しだけ」

西「ところでこれは所謂"けぇき"というものでしょうか?」

ダージリン「ケーキじゃないわ。ミートパイよ」

西「みーとぱい?」

ダージリン「ええ。イギリスの伝統料理で、パイ生地の中にひき肉を入れて焼き上げるのよ」

西「ほうほう」

ダージリン「ただね。ミートパイの起源はイギリスではなくフランスだって主張する人もいるのよ」

西「よくわかりませんが、ダージリンが好きそうな料理ですな」

ダージリン「ええ」フフッ

西(お、当たりかな?)

388: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 23:03:05.40 ID:9bZwe9Ud0
ダージリン「でも冷たいままだとちょっと…」

西「あ、電子レンジは冷蔵庫の隣にありますよ」

ダージリン「何でもあるのね…」

西「ここでなら一人暮らし出来そうですぞ!」

ダージリン「死ぬまで出られなくなりそうね」

西「それ笑えないです…」


チーン

ホッカホカ


ダージリン「ふふっ。良い香り」

西「美味しそうです」

ダージリン「うふっ♪」

西「随分とご機嫌ですね。そんなにこのパイとやらがお好きなのですか?」

ダージリン「ええ。ミートパイは格別よ」

西「あはは。それは良かった。冷めないうちに頂きましょう」

ダージリン「ええ♪」

西(ダージリン、本当にこのパイが好きなんだなぁ)フムフム

389: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 23:05:19.17 ID:9bZwe9Ud0
西「これはこれは、なかなか美味ですね」モグモグ

ダージリン「ふふっ。先輩方に作って頂いたミートパイの味を思い出すわ」シンミリ

西「先輩? アールグレイさんですか?」

ダージリン「アールグレイ様もだけど、色んな方に茶請けのお菓子や料理を振る舞って頂いたのよ」フフッ

西「そうなんですか」

ダージリン「思えば、学問、料理、戦車…色んなことを教えて頂いたわね…」シミジミ

西「…」

ダージリン「…また変なこと考えてるのかしら?」ジトッ

西「いえ、ダージリンが1年生の頃ってどんなだったのかなぁ…って」

ダージリン「何を言うかと思えばそんなこと」

西「そりゃ気になりますもん。ダージリンの過去」

ダージリン「…」

西「話によると、アッサムさんとは昔はライバル同士だったとか」

ダージリン「…またペコね」ハァ...

西「あ、ペコ太郎は悪くないですよ。私が聞いただけですので」

390: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 23:10:19.11 ID:9bZwe9Ud0
ダージリン「…今もよ」

西「ん?」

ダージリン「アッサムとは今もライバルよ」

西「そうなのですか?」

ダージリン「ええ。砲手をやってるけど、彼女の洞察力、行動力は隊長として十分すぎるものよ」

ダージリン「油断していたらすぐに追い抜かれてしまうわ」

西「!」

ダージリン「それに、アッサムは戦車道では砲手を務めているけれど」

ダージリン「彼女はGI6のトップも兼任しているわ」

西「GI6…?」

ダージリン「正式名称は"聖グロリアーナ女学院・情報処理学部第6課"」

ダージリン「我が校の"情報処理学部"の一つよ」

西「ほうほう?」

ダージリン「主に他校の情報収集をお願いしているわ」

西「なんだかスパイ映画みたいですな!」

ダージリン「他にも課によって地図の作成、プログラミング、コード(暗号)の作成…など、様々なことをやっているの」

西「ふむふむ…」

ダージリン「それら情報処理学部のトップがアッサムなの」

西「なるほど…」


西(そんな人が"水飴"に引っかかるのかなぁ…)

391: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 23:11:35.06 ID:9bZwe9Ud0
ダージリン「アッサムは言ってみれば聖グロリアーナの頭脳」

ダージリン「戦車道の技術はもちろん、ありとあらゆる情報を駆使して有利に事をすすめる」

ダージリン「味方ながら恐ろしいほど頭の切れる女よ」

西「一つ、宜しいですか?」

ダージリン「何かしら?」

西「失礼な言い方になるかもしれませんが…」

ダージリン「あなたが失礼なのは今に始まったことじゃないわ」

西「む…」

ダージリン「良いから言ってみなさいな」

西「そんな凄いアッサムさんがいるのに、どうしてダージリンが隊長なのでしょう?」

ダージリン「…」

西「…」


ダージリン「勝ったからよ」


西「勝った?」

ダージリン「ええ」


ダージリン「あれは私達が一年の頃の話…」

392: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 23:13:58.42 ID:9bZwe9Ud0
~~~

~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~



●聖グロリアーナ女学院 入学式



ダージリン(一年)「何から何まで噂通りのお嬢様学校ね…」

「ちょっと退きなさいな。邪魔よ」

ダージリン「えっ?」

アッサム(一年)「何処のご令嬢かは存じませんけど」

アッサム「私が通る道を塞がないで頂けますこと?」

ダージリン「あら、ごめんなs」

アッサム「随分と庶民的な立ち振舞いですわね」

ダージリン「っ…!」

アッサム「てっきり他校の生徒かと思ったほどですの」

ダージリン「た、他校ですって?!」

アッサム「ここは名門校の聖グロリアーナ女学院でしてよ?」

アッサム「貴女のような庶民派が来る場所ではありません」フフッ

ダージリン「」イラッ

アッサム「せいぜい学園の品を損ねないことです」スタスタ

ダージリン(何よあの女! 感じ悪い!!)ギリッ



~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~

~~~
393: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 23:14:54.75 ID:9bZwe9Ud0
ダージリン「元々聖グロはお嬢様学校だけども、その中でもアッサムは典型的なお嬢様だった…」

西「…」

ダージリン「第一印象は最悪だったわ。クシャクシャにしてゴミ処理場に放り投げてやりたいと思うほどに」

西「しかし、それが今では良き相棒というのですから不思議です」

ダージリン「…そうね」

西「?」

394: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 23:17:11.72 ID:9bZwe9Ud0
~~~

~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~



『勝者 ----!!』


隊長「見事ね」

アッサム「この程度、私の手にかかれば造作もありません」フフッ

副隊長「早くも隊長候補が決まったわね」

3年A「これで私達が抜けても聖グロは安泰ですの」

アッサム「ご安心下さい。私が聖グロリアーナを変えてみせます」

副隊長「ふふっ。期待しているわよ」




アッサム「ほら。アナタたち。何をモタモタしていますの? 早く整備なさい」

ダージリン「…」

アッサム「あら? 何かご不満でも?」

ダージリン「整備は下級生の役目じゃなかったかしら? あなたも下級生ならやりなさい」

ダージリン「それとも、下級生を装った留年生かしら?」

アッサム「…フン。整備などあなたたち格下の仕事です」

ダージリン「整備を知らずに戦車の事を知ることができるのかしら?」

アッサム「整備を知ったところであなたが私に敵うとでも?」


~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~

~~~

395: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 23:18:13.01 ID:9bZwe9Ud0
ダージリン「アッサムは上から戦車道を見ていた。態度だけでなく実力も」

ダージリン「一方で私は下から彼女を見上げるだけ」

西「同じお嬢様なのに考え方も異なるのですね」

ダージリン「アッサムは良家の生まれよ。本当の意味で貴族出身。だから頭一つ置いて高飛車だったわね」

ダージリン「そして態度だけでなく実力も相当で、"自分より上は存在しない"…と」

ダージリン「あの時のアッサムは本気でそう思っていた」

西「そうですか…」

396: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 23:20:29.02 ID:9bZwe9Ud0
~~~

~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~


アッサム「はぁ? 試合? この私と?」

ダージリン「ええ。お手合わせ願えるかしら?」

アッサム「ッフ…」

ダージリン「…」

アッサム「あはははははっ!」

ダージリン「…っ」

アッサム「何を言うかと思えば"手合わせしたい"ですって? 随分なジョークですわ!」

ダージリン「…」

アッサム「自分の立場を弁えては如何です? 貴女のような凡人が私に敵うわけがない!」

ダージリン「やってみなければわからないじゃない」

アッサム「お気の毒ですが、あなたの勝率は限りなく0%ですわ」

ダージリン「…」


~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~

~~~

397: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 23:21:47.20 ID:9bZwe9Ud0
西「それで、お手合わせの結果は…?」

ダージリン「"完敗"よ」

西「えっ?!」

ダージリン「私はアッサムに撃たれて、見るも無残に敗れてしまったわ」

西「でも先程は勝ったと…」

ダージリン「ええ、最終的には…ね」

西「??」

398: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 23:22:50.86 ID:9bZwe9Ud0
~~~

~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~


『A車 走行不能!』

『よって勝者、B車!』



隊長「やはりあの子が一番ね」

3年A「ええ。あの状況で完璧に相手の戦車を捕捉していましたわね。ケチのつけようがありませんわ」

副隊長「一方で相手の子は全然ね」クスクス

隊長「まだ入りたてだから仕方無いわ。あの子が凄すぎるだけで」





ダージリン「………」


~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~

~~~
399: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 23:25:42.28 ID:9bZwe9Ud0
西「正直言うと、信じられないです」

西「どうしてもダージリンがアッサムさんに負けるという図が想像できません」

ダージリン「それでも事実ですの。私はあの時アッサムに負けた」

西「それで、アッサムさんは?」


ダージリン「不思議なことに何も言わなかったわ」


西「えっ、あの高飛車なアッサムさんが…?」

ダージリン「ええ。私も未だにそれが不思議なの…」

西「そのことを聞いてみてはいかがでしょう?」

ダージリン「私がその話をしようとすると嫌がるのよ」

西「えっ」

400: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 23:28:51.06 ID:9bZwe9Ud0
~~~

~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~


「あら。随分丹念に戦車を整備してくれるのね?」

ダージリン「…!」ゴシゴシ

「でも、戦車の汚れは涙や鼻水じゃ落ちないわよ」フフッ

ダージリン「…何か…ご用ですの………」ズビッ

「聖グロに似つかわしくない"煤けたお嬢さん"がいるから、気になってね」フフッ

ダージリン「………」

「こんな格言を知っているかしら?」

「"天才とは努力する凡才のことである"」

ダージリン「…知りません」

「確かに彼女は天才かもしれないわ。聖グロでも十年に一度来るか来ないかの"逸材"」

ダージリン「…」

「…でもね」

「あなたや他の人が思ってるような"天才"って、案外脆いのよ?」

ダージリン「…」

「そして天才が…」


「努力に勝る日が来ることは無い」


ダージリン「!」

「もしアッサムが生まれ持った天才ならば」

「あなたは"努力の天才"になりなさいな」フフッ
401: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 23:31:41.52 ID:9bZwe9Ud0
ダージリン「……私に努力なんて…」

「簡単なことよ?」

ダージリン「えっ…」

「誰にでも出来ることをやれば良いのよ?」

「別段難しいことをやれというものでは無いわ」クスクス

ダージリン「だったら誰だって…!」


「その代わり、やるなら徹 底 的 にやれ」


ダージリン「!!」

「"何だ、そんなことか"と思うことを、誰よりもやりなさいな」

「そして、五感全てに染み込ませなさい」

「寝ぼけ眼(まなこ)でも完璧に再現できるほど体に浸透させなさい」

「…それが努力よ」

ダージリン「っ…!」

「精神論や根性論を語るつもりはないけれど」

「結局のところ、人を分けるのは誰でも出来ることを誰よりもやって来たか、そうでないかの違いなのよ?」

ダージリン「…そう…ですの?」

「ええ。…そうね。面白いことを教えてあげるわ」

402: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 23:35:24.20 ID:9bZwe9Ud0
「私、天才ちゃんに勝ってしまったわ」ニコッ



ダージリン「ええっ!!?」

「確かに素晴らしい才能とセンスの持ち主だった」

「そしてあの子の戦術には隙間の無いように見えた」

「でもね、私には彼女の"隙間"が見えたの」

ダージリン「隙間ですって…?!」

「だから、そこを突いたら案の定アッサリと崩れた」

ダージリン「信じられません…。あの人に隙間があるだなんて…!」

「普通の人じゃまず見つけられないでしょうね」フフッ


ダージリン「そ、その隙間とは一体何ですの!?」

「ヒントはおしまい。あとは自分で探しなさい」フフッ

ダージリン「うっ…」

「まぁ…でも、もう1つ」

ダージリン「?」

「あなたが彼女の隙間を見つけたとき」


「彼女が天才ではないことを理解するでしょうね」


ダージリン「えっ…?」

「整備もほどほどに。適当なところで切り上げるのよ?」フフッ

ダージリン「あ、あのっ…!」

「何かしら?」

ダージリン「お名前、教えて頂けませんか?」



「アールグレイよ」


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403: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 23:37:17.41 ID:9bZwe9Ud0

ダージリン「今思うと、あのやり取りが無かったら聖グロの隊長は私ではなかった」

ダージリン「それどころか、聖グロに居続けたかどうかも怪しい…」

西「…」

ダージリン「そして、そこから私の戦車道が本格的に始まった」

西「…」

ダージリン「お嬢様学校の生徒らしからぬ泥臭さだった…」シミジミ

西「…」

ダージリン「聞いてるの?」

西「ええ。ちゃんと聞いてますよ」

ダージリン「そう。静かだからてっきりお馬鹿な事を考えてるのか寝てしまったのかと思ったわ」

西「失礼な…」





― 馬鹿なことを考えたり、うたた寝をしたり

そんなこと出来るわけがない。

ダージリンが歩いて来た道は、私が今歩いている道なのだから。


404: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 23:40:27.66 ID:9bZwe9Ud0
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副隊長「………」

隊長「驚いたわね。あの子が"天才"に勝つなんて…!」

3年A「まだ入学して1年も経過していないのに、追いついちゃうなんて信じられない…」

3年B「なにかイカサマでもしたのでは?」

3年C「そうに違いありません! きっとあの小娘が!!」


アールグレイ「ご心配なさらず」


隊長「アールグレイ…?」

副隊長「あなたも見たでしょう? あの"天才が負けた"のよ?!」

アールグレイ「ええ。"彼女は見事に天才に勝利"しましたわ」

3年A「前の試合じゃ全く歯が立たなかった子がですのよ? こんなのおかしいわ!」

アールグレイ「彼女は"隙間"を見つけたから勝てたのです」

副隊長「そんな馬鹿なことがあってたまるものですか! あの子は聖グロの…!」

アールグレイ「先輩方はこの私の目が節穴とでも仰るおつもりで?」

3年「………」


隊長「あなたがそこまで言うのだから、彼女の実力は確かなのでしょう」

アールグレイ「間違いありませんわ。私の戦車道生命に懸けてお誓い致します」

隊長「そう…」


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405: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 23:42:27.03 ID:9bZwe9Ud0
ダージリン「アールグレイ様の言う通り、アッサムの戦術には"隙間"があった」

ダージリン「その隙間を見つけ出して、そこを突いたら本当にあっさりと崩れた」

ダージリン「そして私はアッサムに勝った…」

ダージリン「10年に1度の逸材と言われたアッサムに………」

西「アッサムさんの"隙間"とは一体?」

ダージリン「それは教えない」

西「む…」

ダージリン「あの時は私にとっての"突破口"だったけれど」

ダージリン「今はそれが聖グロの"弱点"の一つですもの」

西「えっ、ということは…?」

ダージリン「今もなおアッサムはあの弱点を克服できてない」

西「あのアッサムさんが?!」

ダージリン「ええ」

西(一体どんな弱点なんだろう…)

406: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 23:44:03.94 ID:9bZwe9Ud0
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ダージリン「何処へ行くのよ」

アッサム「………」

ダージリン「私の質問に答えてくれるかしら」

アッサム「………もうここに用はありませんの」

ダージリン「はい?」

アッサム「今までこんなことはなかった」

アッサム「誰にも負けなかったのに…」

ダージリン「負けを知るのも教訓の一つよ。良い機会じゃない」

アッサム「あなたに何がわかるというの!!」

ダージリン「…」

アッサム「多くの人に期待されるということがどういうことなのか!!」

ダージリン「100%期待に応えることなんて誰にも無理よ」

アッサム「それでも! 私は応えなければいけなかった!!」

アッサム「だから…ずっと……」

ダージリン「?」

アッサム「ずっと………」







アッサム「頑張ってきたのに………」


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407: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 23:54:38.72 ID:9bZwe9Ud0
ダージリン「アッサムは"天才"だと思っていた。けれど違った」

ダージリン「名家のご令嬢を装う裏では常に多くの人からの期待という重圧に苦しんできた」

ダージリン「彼女もまた私と同じ、努力家だったの…」


― 彼女が天才ではないことを理解するでしょうね


西「アールグレイさんは既にアッサムさんの事を気付いておられたのですね」

ダージリン「ええ。そしてアッサムの本当の顔を知ったと同時に」


ダージリン「私は彼女の積み重ねてきたものを壊してしまったことに気付いた」


西「ッ!!!」

ダージリン「誰にも気づかれない場所で誰よりも苦労を重ねてきたのよ…アッサムは」

西「…」

ダージリン「彼女は名家の娘だから、常に色んな人の目につくと…」

ダージリン「だから、少しでも粗相を起こせば、それは家の看板に傷をつける事だと何よりも恐れた」

ダージリン「あの高飛車な態度は、それを、弱みを見せないための仮の姿だったって………」

西「それでもアッサムさんは聖グロを出て行こうとしたのですよね?」


ダージリン「引っ叩いて引きずり戻したわ」


西「え」

ダージリン「冗談よ。勝った理由を教えたら納得してくれたのよ」

ダージリン「そしたら」


アッサム『一度勝っただけで良い気にならないことですわ』

アッサム『あなた程度の"努力"など一晩でひっくり返して差し上げますの』


ダージリン「…ってね」

西「なるほど。どことなくアッサムさんらしいですね」

ダージリン「ええ。私はなんとかアッサムの戦う術と場を取り戻すことに成功した…」

西「…」
408: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 23:56:54.12 ID:9bZwe9Ud0
ダージリン「そこから色んなことで競い合うようになったわね。学問、スポーツ、お料理、早食い」

西「は、早食い?!」

ダージリン「どうして早食いが出てきたのかはよくわからないけれども」

ダージリン「もう二度とやりたくないわね…」

西「まさか聖グロで"早食い"という単語が出てくるとは思わなかったです」

ダージリン「…私もよ」ゲンナリ

西(相当厭な勝負だったみたいだ…)




~~~

~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~


アッサム「ここまで30勝30敗」

ダージリン「ええ」

アッサム「次の勝負で私は貴女を負かしてみせます」

後輩「では次は早食いで勝負してみてはいかがでしょう?」

ダージリン・アッサム「早食い!?」

後輩「ええ。ちょうどランチの余りが大量にありまして」

後輩「このままでは廃棄処分になってしまう、それをお二方に…」

アッサム「…」

ダージリン「…」

アッサム「…ダージリン、まさか逃げるつもりで?」

ダージリン「何ですって…?」


~~~~~~~~~~~~

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409: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/26(水) 23:59:07.37 ID:9bZwe9Ud0
西「…」

ダージリン「…賛成したアッサムがいけないのよ」

西「…」

ダージリン「私は嫌だったのに」

西「…」

ダージリン「…何よ」

西「…で、結果は?」ジトッ

ダージリン「二人ともお腹を壊して病院送り」

西「」

ダージリン「後ほど先輩方にこっ酷く叱られましたわ」

西「馬鹿なんですか?」

ダージリン「私はイヤだと言った。馬鹿はアッサムでしてよ」

西(あなたも十二分馬鹿である)

ダージリン「何よ」ギロッ

西「いえ…聖グロ史上最高に意味のない勝負だなぁと…」
410: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/27(木) 00:03:32.85 ID:1AjhjHuM0
ダージリン「…そういえば、アッサムに勝った直後だった」

西「何がです?」

ダージリン「私達がそれぞれ"ダージリン"と"アッサム"というニックネームを授かったこと」

西「ほうほう」

ダージリン「あの勝負で、私やアッサムが改めて評価された」

西「一年生ながら天才として台頭したアッサムさんと、それを打ち破ったダージリンですから」

西「その時に先輩方から評価されるのはごくごく順当かと思われます」

ダージリン「そうね」

西「聖グロの皆さんはニックネームの方ばかりですよね」

ダージリン「ええ。幹部クラスには紅茶に因んだニックネームがついているわ」

ダージリン「チャーチルの操縦手の"ルフナ"、マチルダ車長の"ルクリリ"」

ダージリン「そしてクロムウェル車長の"ニルギリ"」

ダージリン「これらの名前はアールグレイ様が付けて下さったわね」

411: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/27(木) 00:05:20.01 ID:1AjhjHuM0
西「ではペコ太郎やローズヒップさんはダージリンが?」

ダージリン「ええそうよ。ローズヒップはクルセイダー部隊のリーダーで、その下にもジャスミン、クランベリー、バニラって子がいるわ」

西「なるほどなるほど」

西(………)

ダージリン「…ネーミングの異論は受けないわよ?」

西「ち、違いますよ!」

ダージリン「じゃぁ何かしら?」

西「いやぁ…あははは…」

ダージリン「言いなさい」

西「別に大したことじゃないですよ?」

ダージリン「良いから」

西「むぅ」

412: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/27(木) 00:07:30.12 ID:1AjhjHuM0
西「もしも、もしもですよ? 私が聖グロの生徒だとしたら、どの様な名前を頂けるのだろうかと思っただけです」

ダージリン「そうね。紅茶に因んで」




ダージリン「"茶番"なんてどうかしら?」




西「………」

ダージリン「冗談よ。そんな顔しないでちょうだい」クスクス

西「何でか知りませんが妙にグサッと来ました…」

ダージリン「そんな大げさなこと言わないで頂戴」

西「衝撃的すぎたので明日から"聖グロリアーナの茶番"と名乗ります」

ダージリン「悪かったわ。許して頂戴」フフッ

西「ダージリンのばか」プクー

ダージリン「はいはい」

西「む」

ダージリン「そうね。あなただったら―――」

413: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/27(木) 00:10:35.61 ID:1AjhjHuM0

― 知らなかった。聖グロやダージリンたちにそんな過去があったなんて。

この事を知っているのはアールグレイさんはじめ当時の先輩方、アッサムさん、

そして私だけらしい。

西住さんやカチューシャさんといった他校の皆さんには勿論、ルクリリさんやペコ太郎にすらこの事は話していないそうだ。

ダージリンは何故、ペコ太郎や他の後輩よりも先に私にこの事を話したのだろう…?


そして、その過去を知った今、ダージリンが更に親しく感じた。

いや、"親しく"じゃない


ダージリンの幸せが私の幸せであり

ダージリンの苦痛が私の苦痛である。

ダージリンと過ごしたことによって

ダージリンの気持ちが私の気持ちのように分かるようになってきた。


…そんな感情だった。



それから数日後、私は退院した。

腕や足のギプスは取れ、歩けるようになり、酷使さえしなければリハビリも出来るようになった。

414: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/27(木) 00:13:34.06 ID:1AjhjHuM0
【知波単学園】


西「おはよう諸君! 久しぶりだなっ!!」

玉田「西隊長殿ぉご無事で!!」

細見「おおおお西殿!!良くぞ戻って参られました!!」

福田「おかえりなさいでありますっ!!」

「ケガの方はもう大丈夫でありますか?」

「また突撃が出来るであります!!」

「是非とも突貫しましょうぞ!!」

「知波単学園、万歳!!」

「いえす!いえす!」


バンザーーーーイ!!!

ワーワーワー!!

ワイワイガヤガヤ

415: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/27(木) 00:14:57.53 ID:1AjhjHuM0
西「心配かけてすまなかった!私は復活したからま…た……!?」


ワイワイガヤガヤ

ゾロゾロゾロゾロゾロ


西「おおおい!? どうなってんだこりゃあ!?」

玉田「ご説明しましょう! 隊長殿の知波単魂は知波単学園全土に響き渡り」

玉田「その後"我こそは!!"と勇敢にも知波単戦車道の門を叩く者が殺到し、現在に至りますっ!」

西「そ…そうか…」



私の居ない間にえらいことになっていた。

軽く見積もっても入院前の3倍はいる。そういえば学長さんもそんなようなことを言ってたな。

…戦車足りんぞこりゃ。

でも戦車道に興味を持ってくれる人が増えるのは嬉しい。

せっかくだし戦車だけでなくリハビリも兼ねて体力トレーニングをまたやるか!
416: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/27(木) 00:16:43.64 ID:1AjhjHuM0
西「諸君ッ!!」

西「まずは戦車道を選んでくれたこと感謝するぞ!!」

西「そして、日頃の訓練を経て、より強靭な体と心をもつ真の知波単生となり」

西「その名を全国に轟かせようぞ!!」


ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!

バンザァァァァァァァァァァァイイ!!!!!


西「玉田ァ! 知波単の伝統とは何だ!!!」

玉田「はッ! 勇猛果敢に突撃し、敵の猛攻を掻い潜り、懐へ潜り込み、これを攪乱させることにあります!!」

西「細身ィ!! これからの知波単はどう動く!!」

細身「はいッ!! 突撃部隊と緊密なる協同の下に敵主力部隊を打破、我がチームを勝利に導くことにあります!!」

西「その通り!! 知波単学園は今まで背負ってきた伝統と」

西「新たな戦術を巧みに織り交ぜ」

西「新たな強豪校として、我ら一丸となりて全国の頂点を目指そうぞ!!!」


ウォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!

チハタンバンザァァァァァァァァァイ!!!!!!

417: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/27(木) 00:17:27.46 ID:1AjhjHuM0
知波単学園は生まれ変わった。

突撃は伝統だけど、それだけが全てじゃない。

あらゆる状況に応じて柔軟な戦術を模索する。



知波単学園は生まれ変わった。

強豪校を目指して、全国優勝を目指す新たな仲間を迎える事ができた。



知波単学園は生まれ変わった。

入院生活は退屈かなと思ったけれど、色んな人が来てくれたお陰で充実した日々だった。

さすがに布団に寝転がってずっと過ごすのは嫌だけど、ダージリンや皆と楽しく過ごせたのはとても幸せなことだったと思う。




私は変わることが出来たかな?




                ◆1 入院生活 おしまい

420: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 07:46:19.88 ID:xu4BL+Pa0








◆2 "ヴェニフーキ"








421: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 07:48:27.11 ID:xu4BL+Pa0
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~~~~~~~

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【とある日 聖グロリアーナ女学院】



「これが聖グロリアーナ女学院…」



夏の暑さが落ち着いてきた頃、私は聖グロリアーナ女学院に転校することになった。





「今までは留学をされていた…と」

「はい。父の仕事の都合で、中学卒業後はイギリスのインターナショナル・スクールに通っておりました」

「それでしたら我が校の校風にも馴染みやすいと思います」

「ええ。英語は苦手ですけど、どうか宜しくお願いいたします」

「こちらこそ。よろしく」




諸々の手続きを経て、私は晴れて聖グロリアーナ女学院の生徒となった。

校舎のデザイン、学校の雰囲気、生徒の口調、何をとっても"お嬢様"な学校だった。

私はお嬢様でも何でもないけれど、果たして馴染めるのだろうか。

422: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 07:49:45.61 ID:xu4BL+Pa0
「初めまして。ヴェニフーキと申します」



「ヴェニフーキ? 聞き慣れない名前ですわね」

「一体どのような紅茶の品種なのでしょう」



聖グロリアーナの生徒は、幹部クラスや将来を期待された優等生に紅茶に因んだニックネームを与えられる。

ダージリン、アッサム、ルクリリ、オレンジペコ、ローズヒップ………

ただ、私は最初から"ヴェニフーキ"というニックネームを頂いた。

過去の経験がそのまま評価され、聖グロリアーナOGから直々に名前を授かった。






「あの、ヴェニフーキ…さん?」

ヴェニフーキ「何でしょう?」

「その、目の下にクマが出来ておりますわよ?」

ヴェニフーキ「…」

「お体が優れないのでしたら無理をなさらずに」

ヴェニフーキ「大丈夫です。ありがとう」

「…」



「何だかヴェニフーキさんって無愛想ですわね…」

「顔色悪そうだし目つきも悪いし…」

「留学先で何かあったのかしら?」

「問題を起こさなければ良いけど…」


423: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 07:52:39.91 ID:xu4BL+Pa0

【聖グロ 練習場】



「あなたが新しく転校された方ですね?」

ヴェニフーキ「初めまして。ヴェニフーキと申します」

アッサム「私はアッサム。聖グロリアーナの隊長を務めています」

オレンジペコ「同じく、隊長車の装填手を担当しているオレンジペコです。どうかよろしくお願いします」ペコリ

ヴェニフーキ「宜しくお願い致します」



必修科目は戦車道を履修した。

戦車道が行われる練習場へ行ったら隊長と装填手がやってきた。

本来ならこちらから出向くべきだったが、ご丁寧に先に来て色々案内して下さった。

どうやらOG会からの紹介ということもあって、手厚く饗してくれるようだ。

424: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 07:54:16.82 ID:xu4BL+Pa0
ローズヒップ「いっきますのよぉー!!」


戦車道へ参加したら、いきなり紅白戦を行うことになった

私は過去に戦車道をやっていたということもあってか、クルセイダー巡航戦車の車長に選ばれた。

同じクルセイダー乗りには一年生のローズヒップさんがいて、その配下にジャスミン、クランベリー、バニラという名の3人の部下がいる。

ローズヒップさんの掛け声とともにクルセイダー隊が猛スピードで走り出す。

この手のスピードのある戦車は乗っていて悪い気はしない。

かつての学校では似たような戦車に乗っていたし、行進間射撃も得意だったからだ。





『勝者 紅組!!』


そして試合は私達が勝った。

相手のフラッグ車であるチャーチル歩兵戦車の背後に回り込み、至近弾を浴びせて走行不能にしてやった。

クルセイダーと違いチャーチルは重装甲ではあるが、その分機動性に劣る。

接近して回り込むことは難しくはなかった。


この結果に隊長は相当驚いたらしい。

425: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 07:55:13.59 ID:xu4BL+Pa0

アッサム「…まさか私達が白旗をあげるとは」

ヴェニフーキ「偶然です。勝負は時の運とも言うものですから」

アッサム「ですが運も実力の内と言います。あなたの強さを改めて実感しましたわ」

オレンジペコ「あの、ヴェニフーキ様」

ヴェニフーキ「何でしょう」

オレンジペコ「留学先は相当な強豪校だったりします?」

ヴェニフーキ「かつてはベスト4に入るほどの実力はありました」

オレンジペコ「わぁすごい…!」

アッサム「それは頼もしい。あなたの活躍、期待してますわよヴェニフーキ」

ヴェニフーキ「身に余るお言葉です」




戦車乗りとしての評価は概ね良好のようだ。

なにしろ聖グロは強豪校だから力不足では困る。

426: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 07:57:15.10 ID:xu4BL+Pa0

ヴェニフーキ「…今日も異常はありませんでした」

『そう。さすがに何日も時間はかけられないわね』

ヴェニフーキ「ええ。私としても早く解決したいです」

『そうね…。向こうから出てこないのなら、こちらからアクションを起こしてみたらどうかしら』

ヴェニフーキ「アクション?」

『ええ。揺さぶってみるの』

ヴェニフーキ「…揺さぶる?」

『ええ。それでボロが出るように誘導して』

ヴェニフーキ「私ならまだしも、相手はアッサム様です」

ヴェニフーキ「そう簡単にボロを出すとは思えない」

『そうなのよね』


『ここは"ブランデー入りの紅茶"をやってみてはどうかしら』

ヴェニフーキ「私もアッサム様も未成年なのですが、未成年飲酒でもしろと?」

ヴェニフーキ「というか、あなたもまだ10代ですよね」

『ふふっ。あくまで"ブランデー入りの紅茶"は比喩よ』

ヴェニフーキ「良かった。てっきり呑んだくれにでもなったのかと」

『…失礼ね。お酒はあなたが無事に帰ってきた時にいただくわ』

ヴェニフーキ「私が帰ってきても未成年なら許しませんよ?」

『ふふ。手厳しい』

ヴェニフーキ「…それで、その作戦というのは?」

『それはね…』




私は単なる転校生じゃない。

私が聖グロに来た目的は…




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427: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 08:06:30.42 ID:xu4BL+Pa0


【知波単学園 練習試合】



西「お久しぶりであります! ペコ太郎! アッサムさん!」

アッサム「ごきげんよう。絹代さん」

オレンジペコ「ですからそのペコ太郎というのはやめてくださいと…」

西「あはは。結構気に入ってますよこの呼び方!」

オレンジペコ「絹代様が気に入っていても私がダメというのだからダメなのです」

西「ええー…」

オレンジペコ「えーもびーもありません」

アッサム「ふふっ。無事に退院できて良かったです」

西「おかげさまで健康体です。この通り逆立ちも出来ますぞ! よっと!」

アッサム「ちょっ! スカートですのよ!?」ワタワタ

西「あはは。冗談ですよ」

オレンジペコ「元気なのは相変わらずですね」アハハ



退院して知波単学園に戻ってから数日後、聖グロから練習試合の申し込みがあった。

新たな戦車を迎え、編成を変えた我がチームがどれほど成果を出せるか知りたかった。

あと、久しぶりにダージリンにも会いたかった。

だから二つ返事で承諾した。
428: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 08:08:03.05 ID:xu4BL+Pa0

西「…あれ? ダージリンは?」

オレンジペコ「あっ…」

西「?」

アッサム「ダージリンは…その、休養中でして…」

西「えっ!?」

オレンジペコ「日頃の疲れが出て、体調を崩しちゃったみたいで…」

西「そ、そうなんですか…」シュン


西「でしたら、せめてお見舞いでも!」

アッサム「そ、それはなりません!」

西「え? どうしてですか!?」

アッサム「あなたも御存知の通り、ダージリンはプライドが高いのです」

アッサム「…だから弱ってる姿を見られることは、ダージリンにとって好ましくありません」

オレンジペコ「絹代様のお気持ちはわかりますが、私達も面会は控えておりますので…」

西「そうなんですか………」




ダージリンのことを聞いたとき、明らかに様子が変だった。

まるで、何かを隠しているような…。

結局、その隠し事が何なのか判明することなく、モヤモヤした状態で練習試合は行われた。

試合は我々知波単学園があっけなく勝利した。

私達が強くなったのか、ダージリン不在の聖グロが弱くなったのか。

何もわからなかった。何も得られなかった。

寂しい練習試合だった…。

429: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 08:09:32.80 ID:xu4BL+Pa0

【試合後 西の病室にて】


西「これだけあると一度じゃ持っていけないなぁ…」ガサゴソ

西「食べ物は一旦冷蔵庫に入れて、先に衣類とかを持って帰るか」

西「うおっ、なんだこれ!? 重たいぞ?!」グヌヌ



私は退院してからも病院には何度か足を運んでいた。

順調に回復しているか、異常がないか検査をするからだ。

それと入院中にお見舞いに来て下さった方々に頂いた品が相当な量なので、一度に全部持って行けず何度も往復しなければならん。


皆が手伝うと言ってくれたが、私事を仲間たちに手伝わせるのも申し訳ないから一人でやることにしたのだ。
430: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 08:11:08.84 ID:xu4BL+Pa0

オレンジペコ「あっ…」



西「ん?」

オレンジペコ「こ、こんにちは…絹代様」

西「おおペコ太郎! 先程の練習試合はありがとうございました」

オレンジペコ「その、こちらこそ…」ペコリ

西「あはは。お見舞いにも来て下さってありがとうございます」

オレンジペコ「いえいえ、どう致しまして」

西「ですが、御存知の通り、もう体はピンピンの健康体ですよ!」ピョンピョン

オレンジペコ「そ、そうですよね!」

西「うむ。これでいつでも戦車で突撃出来ますぞっ!」ハッハッハ

オレンジペコ「えへへ…」




なんだかペコ太郎の様子がおかしいな…。

というより、練習試合の時から聖グロの雰囲気がおかしい。

ダージリンもいなかったし、聖グロの皆さんもどこかよそよそしい。

何かあったのだろうか?

431: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 08:13:22.68 ID:xu4BL+Pa0
西「おや…顔色が優れませんな? 何かお困りごとですかな?」

オレンジペコ「い、いえ…。そういうわけでは…」

西「差し支えなければ私に悩みをお聞かせください」

オレンジペコ「………」

西「あ、でも言い辛い事でしたら、私でなくてもダージリンや他の先輩とかでも大丈夫です!」

西「溜め込んでいると心身に良くありません。…まぁ私が言えたことではありませんが」ハハハ

オレンジペコ「そう…ですよね…?」

西「ええ。無理は禁物です」

オレンジペコ「………」

西「…?」

オレンジペコ「………」

西「………」

オレンジペコ「………」


オレンジペコ「………………フゥ…」



しばらく無言の時間が続いて、決心したのかペコ太郎はようやく口を開いた。

そして、次の言葉が



































              私の逆鱗に触れた









432: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 08:14:08.04 ID:xu4BL+Pa0





「ダージリン様は聖グロリアーナ女学院を退学されました」












 ぱりん



頭のなかで何かが割れる音がした。







433: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 08:15:39.67 ID:xu4BL+Pa0

西「………は?」

オレンジペコ「あの、ですから…ダージリン様は退学を…」

西「はは。ペコ太郎も冗談を言うようになったんですね?」

オレンジペコ「いえ…冗談ではなくて…」

西「…」

オレンジペコ「…あ…あの…」



西「………で、どういうこと?」




オレンジペコ「ひっ!?」

西「教えてくれますか?」

オレンジペコ「…い…嫌ぁぁ……!!!」




この子は知らないかもしれないが。

ダージリンは退学したんじゃない。退学させられたんだ。

聖グロ一優秀なダージリンが理由もなく自ら退学を選ぶはずもない。

アイツらによって無理やり追放された。

考えれば考えるほど体の底からどす黒いものが溢れてくる。
434: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 08:16:51.67 ID:xu4BL+Pa0

西「………」

オレンジペコ「ち、ちがう…わたし………」

西「…やっぱりいいです。帰ってください」

オレンジペコ「…で…も……」

西「帰って…」

オレンジペコ「…ぁ……ごめん…なさい……」

西「ごめんね、ペコ?」

オレンジペコ「………」



最低なことをした。

あろうことか、報告に来てくれたペコに怒りを向けてしまった。

そして「帰れ」と追い払ってしまった。


…でも、そうしなかったら彼女に暴言を吐き散らしていたかもしれない。

胸ぐらをつかんで怒鳴り散らしたかもしれない。

壁際にあった花瓶を彼女めがけて投げてたかもしれない。

本当に取り返しのつかない事をしてしまったかもしれない。


本当に…

435: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 08:19:14.29 ID:xu4BL+Pa0

西「………そが」





「クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああぁぁぁぁああああ!!!!」





犯人はわかってる!!

あいつらだ! あいつらがダージリンを葬った!!

何の苦労も知らない腑抜けな連中が! 誰よりも苦労して誰よりも頑張ったダージリンを突き落とした!!!



― 彼女もまた、聖グロの隊長としての"宿命"を背負っているの

― ええ。ダージリンもOG会に縛られているわ…

― 貴族たちの"機嫌"を損ねてしまった

― OG会の采配一つで隊長どころか学園からも追放することも出来るから



何がOG会だ!!!

他人の旨い汁啜ってブクブク肥え太った阿婆擦れの掃き溜めじゃないか!!

生まれてこの方何一つ苦労せず老いぼれてった阿婆擦れ共が苦労しか知らないダージリンに手をかけやがってッ!!


視界が赤くなっていく。

OG会がダージリンに接近する姿が脳裏に浮かぶ

退学を宣告されて青ざめるダージリンの顔が脳裏に浮かぶ

積み重ねてきたものを破壊されたダージリンの絶望感が頭から離れない!!

436: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 08:20:13.44 ID:xu4BL+Pa0
「あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああァァァァァァァぁぁぁぁあぁああぁぁぁああああァァァァァァあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああガがかカかがぁかがガぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!」



「ちょっと!なにやってるの!!誰か来て!!誰かぁぁ!!!」

「とにかく押さえろ!! 早くロープをもってこい!!」




どれだけ暴れてもゴボゴボと怒りが溢れてくる

どれだけ叫んでもダージリンの青褪めた顔が頭から離れない

どうしてダージリンが。ダージリンだけがこんな目にあわないといけないのだ


どんだけ叫んでも怒りが収まらない。

頭から必死に追い出そうとしても次から次へとその光景が捩じ込まれて記憶が蘇る。

頭がおかしくなりそうだ。



「クソったれがぁぁぁぁぁぁアァァァァァぁぁぁぁああああぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁあああぁァァァァァァぁぁああああ!!!!!!!」



「舌を噛んじまうぞ! 口に布を詰め込め!!」

「とにかくベッドへ! 早く縛り付けろ!!」

「こらっ! 暴れるな!!!」


437: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 08:22:11.47 ID:xu4BL+Pa0


~~~~~~~~~~~~~~~




西「………グ…ムグゥ…」

「…落ち着いたかしら?」

西「グゥ…ムグゥゥ…」

「ああ、ハイハイ。今取ってあげるわよ」スッ

西「ハァハァ………落ち着くわけないでしょう……というよりこれ解いて欲しいんですが」

「出来れば解きたくないんだよね。また暴れそうだから」

西「………」

「何しろあなた相当発狂してたから」

西「………」

「顔は真っ赤にして涙と鼻水でグチャグチャ。暴れ回ったせいで部屋は荒れ放題…」

西「………」

「最初見た時、悪霊に取り憑かれたのかと思ったほどよ?」

「あまりの奇行だったから、先生方が精神病棟へ移すべきかって話し合ってるわ」

西「………」

「何か嫌なことでもあったの?」

西「…嫌なこと過ぎて何もかもブチ壊したくなる気分ですね」

西「こんなに頭に来たのは生まれて初めてですよ」

「それ、他の先生に言わない方がいいわよ。間違いなく精神病棟へ送られるわ」

西「…」

438: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 08:24:05.42 ID:xu4BL+Pa0

駆けつけた医師たちに押さえつけられ、そのまま束縛されて精神安定剤を打たれ、現在に至る。

どうやら精神科のお世話になるほど狂ってたらしい。

私は言葉通り怒りで我を忘れて暴れていた。

ダージリンが受けた仕打ちが、怒りが、苦痛が…私の脳に鮮明に映った。

当事者でもない私ですらここまで腸が煮えくり返る思いをするのだから、ダージリンは………。



しばらくして、精神科医が来てカウセリングを受けた。

原因を聞かれたのでありのままに答えた。

そうしたらもうしばらく入院しろという。冗談じゃない。

ダージリンが今も苦しんでいるのに、のんびり布団になんか入ってられるはずがない。

薬だけ貰えばあとは何とかすると言って入院だけは回避した。

439: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 08:25:11.85 ID:xu4BL+Pa0

『はい』

西「お久しぶりです。西です」

『あら、お久しぶり。お元気でした?』

西「ええ。数人に押さえつけられるほど元気ですよ」

『…それはそれは元気そうで何よりですわね』フフ..



カウンセリングを終えたあと、電話をかけた。

入院中にお世話になった人で、ダージリンの事をよく知っている人だ。

あいにくダージリンの連絡先は知らないし、ペコにはさっき酷いことをしてしまった。

そうなると頼れるのはこの人しかいない。
440: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 08:26:28.74 ID:xu4BL+Pa0

西「それで、用件なのですが」

『ん? 何かしら?』

西「またアールグレイさんと一緒にお茶をしたいなぁ。と思いまして」

アールグレイ『あらあら。絹代さんから誘ってくれるなんて嬉しいわ』

アールグレイ『…でも、ごめんなさい。今は忙しくてしばらく予定を開けられそうにないの…』

西「そうですか。残念です」



西「一緒にダージリンのお話でもしようかと思いましたのに」



アールグレイ『………』



「首を横には振らせないぞ?」と言わんばかりにアールグレイさんにそう告げる。

このとき私は相当歪んだ顔をしていたに違いない。

ペコが小動物のように怯え上がるくらいに。


441: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 08:28:42.03 ID:xu4BL+Pa0
アールグレイ『…そうね。また時間がある時にでも』

西「それでは困るんですよ」

アールグレイ『あら、どうしてかしら?』

西「ちょっと急いでいるものでして」

アールグレイ『急いでる?』

西「ええ。あなたならご存知のはずです」

西「聖グロリアーナから退学者が出たことを」

アールグレイ『………』

西「………」



アールグレイ『それ、どこで聞いたの?』




西「直接お会いしてお話をしたいです」

アールグレイ『…わかりました。予定を空けましょう』



『退学者』と口にするや否や、アールグレイさんの雰囲気が変わった。

『なんでお前がそれを知ってるんだ?』と言わんばかりに。

彼女もまたダージリンの退学について何か知っているのだろう。

…いや、知らないはずがない。

なぜなら彼女はダージリンの育て親みたいなものだから。

442: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 08:30:27.09 ID:xu4BL+Pa0

【数日後 とあるカフェにて】



西「お久しぶりです。アールグレイさん」

アールグレイ「ええ。無事退院できて良かったわ。少し痩せたかしら?」

西「そうかもしれませんね。これもアールグレイさん始め、聖グロの皆様のおかげです」

アールグレイ「ふふっ。お上手ね」

アールグレイ「…でも」


アールグレイ「入院してた頃とはずいぶん雰囲気が変わったわね?」


西「どうしたものか、ここ最近頭に血が上りやすくなったみたいで。カルシウム不足でしょうか。ははは」

アールグレイ「それはそれは。お互い健康でいたいものね」

西「…さて、本題に入りたいのですが」

443: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 08:31:59.84 ID:xu4BL+Pa0
アールグレイ「その前に」

西「ん?」

アールグレイ「あなたがどこまで知ってるか、教えて下さらないかしら?」

西「ダージリンが、強制退学された。というところまで知っています」

アールグレイ「それは誰から?」

西「オレンジペコさんからです」

アールグレイ「………」

西「………」



少しの間沈黙が続いた。

アールグレイさんは言おうか言うまいか迷っているのだろう。


ダージリンのことはペコから聞いた。

練習試合の時は何も言わず語らずだったのに、あの時病院までやって来た。

そして私に打ち明けた。

本来なら身内の事であり、部外者である私に言うべきことではないはずなのに。

私がダージリンと親密な関係だったからだろうか。


それとも、これが意味することは………


444: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 08:33:44.12 ID:xu4BL+Pa0
アールグレイ「腸が煮えくり返る思いだったわ」



西「…!」

アールグレイ「OG会は私が手塩にかけて育てた後輩を切り捨てた」

アールグレイ「あろうことか根も葉もない噂をでっち上げて」

西「奇遇ですね。私も生きたまま腹を割かれ、内臓を引きずり出される気分でしたよ」

アールグレイ「そうね…まさにそんな感じ」



考えが整理される前にアールグレイさんが口を開く。

相当憤怒されたようだ。今まで見たことないくらい鋭い目をしている。

もっともそれは私も同じだろうけど。

知らない人が見たらこのまま殴り合いでも始めるんじゃないかと勘違いするほど、私達は殺気立っていたに違いない。

小洒落たカフェにはあまりにも似つかわしくない。

445: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 08:35:37.45 ID:xu4BL+Pa0
西「彼女から話を聞いた次の瞬間には、その時その場の光景がぶわっと浮かび上がって」

西「他のことを考えて気を紛らわそうにも、ゴボゴボと怒りが溢れるばかりで」

西「だんだん視界が真っ赤になっていって」

西「気がついたら病院のベッドに縛られて、精神安定剤を打たれていました」

アールグレイ「そう…」


西「こんな私のような破落戸であれば切られるのはわかります」

西「しかし、何故、あなたも認める聖グロ一の優等生は切られたのですかね?」

アールグレイ「………その目、私に向けないでくれるかしら?」

西「えっ…?」

アールグレイ「私はあなたが考える"悪者"ではないことはご存知でしょう?」

西「? 失礼」

アールグレイ「牙は最後まで仕舞っておきなさい」



悪者…ダージリンを葬ったOG会のことだ。

アールグレイさんもまたOGの一人だが、連中とは別だと言いたいのだろう。

牙を向けたつもりなど一切無かったが、アールグレイさんに窘められた。

…私はそんなにも怖い顔をしているのか?


そういえばあの時、ペコにも怯えられた。

まるで暴漢にでも襲われたかのような顔をしていた。

顔に出ていたのかもしれない…。

446: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 08:38:06.94 ID:xu4BL+Pa0

アールグレイ「ところで、精神安定剤がどうとか言ってたわね?」

西「ええ。それが何か?」

アールグレイ「もしも持っているのなら、今のうちに飲んだほうが良いわよ」

西「?」

アールグレイ「間違いなく、あなた発狂するわ」

西「!」



"あなた発狂するわ"


それは私を発狂させるには十分すぎるくらいの事実が待っていることを意味する…。

その言葉だけで既に発狂しそうなくらいだ。

言われるがままに精神科医から貰った薬を呷る。


しばらくすると薬が効いて気分が落ち着いてきた。

…というより、全ての事がもうどうでも良くなった。

あれほど怒り狂ったダージリンのことも、数錠の薬で興味を失ってしまう。

悲しいことだなぁとは思ったけれど、薬のせいで悲しくはならなかった。
447: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 08:39:48.97 ID:xu4BL+Pa0

アールグレイ「…そろそろ効いて来たかしら?」

西「ええ。先程までの苛立ちが嘘みたいです。薬って怖いですよね」

アールグレイ「…怒ってたからじゃなかったのね」

西「えっ?」

アールグレイ「何でもないわ。…薬を飲むのも程々にね?」

西「…話の続きをお願いします」

アールグレイ「…」

アールグレイ「それで、ダージリンの退学理由だけれども」




アールグレイ「"素行不良"よ」




西「素行不良? あのダージリンが?」

アールグレイ「そう」

西「あはは。まるでダージリンには当てはまりませんね」

アールグレイ「当然よ。あくまで"取って付けた"理由ですから」

西「つまり、退学の理由はこじつけで、他にあるということでしょうか?」

アールグレイ「ええ」


アールグレイ「ダージリンはOG会を敵に回し続けた」

アールグレイ「その結果、OG会による根回しでダージリンは学園を強制追放された」

448: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 08:41:17.47 ID:xu4BL+Pa0
西「あなたは確か前に、ダージリンが"貴族の機嫌を損ねてしまった"と言いましたね?」

アールグレイ「ええ」

西「私が知る限り、『クロムウェル』という戦車を導入したことしか思い当たる節がありません」

西「それはOG会にとって、そこまで不快な出来事なのでしょうか?」

アールグレイ「確かにOG会の意に反する戦車の導入は、反感を買う結果となった」

アールグレイ「でも、それは些細なことで、今回の原因にはならないわ」

西「では何故?」

アールグレイ「OG会がダージリンを追放するための根拠は2つ」

西「…」

アールグレイ「一つは成績不振による隊長としての"信頼の喪失"」

アールグレイ「もう一つは頻繁に他校の生徒の元へ足を運ぶという"不純交遊"」

アールグレイ「この2つが聖グロの生徒として"不適切"と判断され、ダージリンは退学をさせられた」

西「…なるほど」

西「それってつまり、ダージリンが退学したのは」

449: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 08:42:18.61 ID:xu4BL+Pa0















西「私が原因ってことですよね」















451: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 17:17:07.88 ID:xu4BL+Pa0
アールグレイ「…」

西「成績不振…今行われている大会の初戦で、私が聖グロを打ち負かしたことでしょう。手も足も出ないほどに」

西「不純交遊、これは私の病室にダージリンが何度も寝泊まりしたことですね」

アールグレイ「そうね…」

西「結果として…それらが…私が…ダージリンを破滅に追い込んだ」

アールグレイ「…」


西「私が…ダージリンを………………」



俯いたら涙が出た。薬が効いているはずなのに。

だけどそれを拭おうとも思わなかった。

薬のせいでもうそんな気力も湧かない。



私がダージリンを潰した。



ダージリンは常に私を助けてくれたのに、私はダージリンを助けるどころか地獄へ突き落とした。

どれだけ泣こうが嘆こうが、ダージリンはもう聖グロにはいない。私のせいで。

それでも私は泣くことしか出来なかった。

薬で怒りは抑えられても、涙だけは止めてくれなかった。

泣いて全部帳消しに出来れば良いのに、私が懺悔すれば全部許してくれたら良いのに。

そして、アールグレイさんが、

冗談よ。全部ウソ。ダージリンは退学なんてしてないわ。

って言ってくれるのをずっと待ってた。


でも、とうとう何も言わなかった…。
452: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 17:18:53.35 ID:xu4BL+Pa0
アールグレイ「薬、効かなかったわね…」

西「………」

アールグレイ「…」スッ

西「………」

アールグレイ「ダージリンの現住所よ」

アールグレイ「もしもあなたに思うことがあるのなら、直接会って打ち明けなさい」

西「どうして…」

アールグレイ「その方があなたも彼女も多少は納得できるでしょう」


西「どうして…私を責めないのです………」


アールグレイ「…」

西「あなたが…大切に育てた人を葬ったのは…私なのに………」

アールグレイ「葬ったのはあなたじゃない。OG会よ」

西「その原因をつくたのは私です……」

西「もし私が逆の立場だったら…掴みかかって喉笛を噛み千切ってた…」

西「なのに……」

アールグレイ「私を人殺しにするつもりかしら?」

西「………」

453: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 17:20:56.13 ID:xu4BL+Pa0
アールグレイ「あなたなら分かるでしょうけど、今のダージリンは全てを失ってしまったわ」

アールグレイ「だから、」


アールグレイ「"ダージリンが困った時は、どうか助けてやって下さい"」


西「……………私で…いいの……?」

アールグレイ「ええ。もうあなたしかいない」



悲しいお茶会は終わった。

泣き腫らした目で紙に書かれた住所を確認し、そこへ向かった。

距離はそこそこあったが、ウラヌス…愛車に跨がればあっという間だった。

454: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 17:24:25.24 ID:xu4BL+Pa0
たどり着いたのはそこそこ大きな屋敷だった。

何も考えず、呼び鈴を鳴らすと女性が出てきた。格好からして家政婦だろうか。

私の顔を見て不審な顔をするので、挨拶と自己紹介をして、ダージリンに会いに来たという旨を伝えた。


しかしダージリンは面会を拒絶しているとのことだ。

ここにいるのかと尋ねたら、はいと答えたので、西が来たとお伝え下さいと言う。


しばらくすると、家政婦が戻ってきた。そして面会は出来ないと拒否される。

なので、ダージリンに会うまで帰らないと言ったら家政婦さんも観念したようで、ダージリンの部屋まで案内してくれた。

455: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 17:31:59.48 ID:xu4BL+Pa0

【ダージリンの部屋】


西「お久しぶりです。絹代です」

西「ダージリン、いますか? 開けますよ?」



扉の向こうからの返事はない。

家政婦によると帰省して以降、ずっと閉じ籠もっているとのことだ。

となれば10日近くこの状態ということになる。

嫌な予感がしたので、扉の向こうからの答えを待たずに扉をこじ開けた。


ダージリンの部屋は聖グロのような英国風の絢爛豪華なものを想像していたが違った。

床に絨毯が敷いてあって、机があって、ベッドがあって、本棚があって…。

おそらく普通の女の子の部屋だろうと思うくらいにはシンプルだった。

それだけに"淑女"に憧れ聖グロに来たダージリンのことを想うと胸が痛い。

456: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 17:41:55.94 ID:xu4BL+Pa0
ダージリン「………」

西「ダージリン……」


ダージリン「来ないで」


西「っ…」

ダージリン「何で来たの…」

西「ダージリンが退学したと聞いたので、居ても立ってもいられなくて…あはは」

ダージリン「………」

西「その、大丈夫ですか?」

ダージリン「余計なお世話よ………」

西「あはは…」



部屋には寝間着姿(ネグリジェと言うらしい)のダージリンがいた。

髪はボサボサで、光を失った目の下には隈ができている。

あまりのショックで満足に眠ることも出来なかったのだろう。

かつての凛々しいダージリンの面影は無く、別人かと思うくらい変わり果ててしまった。

無理もない。今まで積み重ねてきたものを一気に崩されたのだ。

そんな酷い仕打ちを受けてなお平静を保てる人間などまずいない。
457: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 18:06:21.87 ID:xu4BL+Pa0
ダージリン「それに…私はもう"ダージリン"じゃない………」

西「それでは何と呼べばいいですか?」

ダージリン「呼ばなくていい。…さっさと出ていって」

西「…」

ダージリン「私はもう、あなたの思ってるような私じゃない」

ダージリン「…だから、私のことは放っといて」



ダージリンの視線は鋭利で、返ってくる言葉は冷たい。

入院中に一緒に過ごしたあの時間が嘘のように…。

あの時馬鹿な私に付き合ってくれた優しいダージリンは、今では"早く出ていけ"と目が語る。

いや、"お前のせいで私は全てを失ったのに、いけしゃあしゃあと来やがって"と言っているのかもしれない。

私のせいでダージリンは退学させられたのだから…。


ただ、不謹慎極まりないけど…まずは安心した。

何故ならダージリンは生きていたから。

あれだけ酷い仕打ちを受けたのだ。世を儚んで生命を絶つことだって十分考えられる。

もしもそんな事があったら………

458: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 18:09:20.33 ID:xu4BL+Pa0
西「ダージリンに生きて会えて良かったです」

ダージリン「何よそれ。意味がわからない…」

西「でも、あり得ない話でもない」

ダージリン「楽に死ねたら良いわね。いっそのこと」

西「ダージリンが死ぬなら、私も死のうと思います」

ダージリン「…好きにすれば?」

西「ええ」

ダージリン「………」



冗談を言ったつもりは一切ない。

もしも扉を開けて、ダージリンが"もういない"とわかったら、私も後を追いかけるつもりだった。

ダージリンのいない世界に未練なんかない。

459: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 18:12:17.99 ID:xu4BL+Pa0
ダージリン「で、何の用?」

西「ダージリンに謝罪しに来ました」

ダージリン「…謝罪?」

西「私のせいでダージリンがこんな事になってしまったから」

ダージリン「入院してただけでしょ…」

西「それが"不純交遊"とみなされたと」

ダージリン「アールグレイ様ね。…余計なことを」

西「アールグレイさんもあなたの事を心配していました」

ダージリン「…」

460: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 18:14:58.93 ID:xu4BL+Pa0
ダージリン「………別に」

西「ん?」

ダージリン「別に、あなたは何も悪くない。…だから気にしなくて良い」

西「何故です?」

ダージリン「…いくら聖グロだからって、不純交遊があっても一度で退学は無い」

西「聖グロの校則はわかりません。しかしアールグレイさんはそのように…」

ダージリン「仮にそんなことがあっても、まず注意か停学」

西「…」

ダージリン「実際それで停学になった子を何人か見てきた」

ダージリン「…中には退学した子もいるけど」

ダージリン「だからといって即退学はあり得ない」

西「なら、成績優秀で聖グロの隊長を務めるダージリンなら尚更なはずです」

ダージリン「…」

西「…」












ダージリン「OG会の"私刑"よ」

461: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 18:17:38.90 ID:xu4BL+Pa0
西「…私刑?」

ダージリン「OG会は私を退学させたかったから退学させた。それだけ」

ダージリン「理由なんてどうでも良い」

西「…」

ダージリン「あの人達は私が気に食わなかった。だから、成績不振だの不純交遊だのと、理由を作った」

ダージリン「そして、強制的に追い出した」

西「…」

ダージリン「満足した?」

西「…」

ダージリン「私から話すことはもう無い。だからもう帰って」

西「…」

ダージリン「私のことなんてもう忘れて」


西「薬が効いてて助かりましたよ」


ダージリン「はぁ?」



…実を言うと、ダージリンのところへ行く前に、また精神安定剤を飲んだ。

そのおかげで、こうやってダージリンと"普通に"会話をすることが出来る。

でなければ変わり果てたダージリンを見て、冷たい眼差しと鋭利な言葉で串刺しになって、私はまた発狂した。



それ以前に、ここまで来ることが出来たか怪しい

462: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 18:19:40.84 ID:xu4BL+Pa0
西「薬がなかったら、この部屋が滅茶苦茶になるほど暴れ回ってたでしょうな」

ダージリン「発狂するなら他所でやって。迷惑だから」

西「聖グロの私刑に比べりゃ穏やかな方ですよ」

ダージリン「…」

西「虚偽の風説をばら撒いて」

西「意義を申し立てる間もなく退学・追放」

西「まるで恐怖政治ですね。あははは」

ダージリン「…酔ってるの?」

西「お酒じゃなく薬ですね。おかげでこうやって減らず口が叩けるんですよ。あはははは」

ダージリン「あっそう」

463: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 18:23:42.42 ID:xu4BL+Pa0
西「あはは。ペコからダージリンのことを聞いた直後」

西「まるで、自分がダージリンになったみたいに、頭の中でその光景が鮮明に再現されて」

西「頭がおかしくなるほど頭にきて」

西「気づいたらベッドに縛られてました。ははは」

ダージリン「………」

西「それで精神安定剤を処方されました。…今日はまだ2度目ですけど。あはは」

ダージリン「やめて」

西「ん?」

ダージリン「そんな薬飲まないで」

ダージリン「そして私のことなんてさっさと忘れて」

ダージリン「無関係なあなたにまで気遣われるのが一番迷惑」

西「…」

464: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 18:26:02.61 ID:xu4BL+Pa0
ダージリン「これは私だけのことだからあなたは関係ない」

ダージリン「二度と私と関わろうなんて思わないで」

西「………」

ダージリン「私はもう聖グロの人間じゃない」

ダージリン「だからもうあなたと会うことも無い」

ダージリン「あなたは自分や仲間のことだけ考えていれば良い」

ダージリン「そうすればすぐに忘れられる」


西「あははは。無理ですよ無理」


ダージリン「…あんた、私を怒らせたいの?」



今までダージリンを怒らせたことなんて何度もあった。

デコピンされたり、引っ叩かれたり、ツネられたり。

土手っ腹に鉄拳を食らったこともあった。


だけど、今のダージリンは本当に怒った顔をしている。

いや、怒った顔というより、嫌悪や憎悪といったもので満たされた顔だ。

このまま何か言い続けたら手に持った花瓶を私めがけて投げつけるだろう。

当たったら痛いだろうな。きっと血が止まらなくなるだろう。

だけど、それでダージリンの鬱憤が少しでも晴れるのなら、私は構わない。


私はそのまま話を続けた。

465: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 18:33:48.34 ID:xu4BL+Pa0
ダージリン「早く出て行け…!」

西「私が病院で押さえつけられた日から、アールグレイさんと会った今日まで」

西「ダージリンを苦しめた輩に対する怒りと、ダージリンの受けた苦痛が自分のモノとして同時に襲いかかってきて」

ダージリン「聞こえなかったの? 早く出て行けって」

西「頭の中すっちゃかめっちゃかになって、おかしくなりそうだったから」

西「結局薬を絶つことも、ダージリンを忘れることも出来ませんでした。あはははは」

ダージリン「………な、なによそれ…馬鹿じゃないの!?」


西「目を閉じればダージリンの苦痛が明瞭に再現されて、私が処刑されてるみたいに苦しくて」

西「薬を飲んで抑えようにも、数時間後には効き目が切れる」

西「そうするとまた…あはははは」

ダージリン「やめて」

西「寝て紛らわそうにも、夢の中にまで出て来るせいで思うように眠れなくて」

西「医者や看護婦、他の患者がOG会に見えてきて…」

466: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 18:39:11.75 ID:xu4BL+Pa0
西「しまいには薬の副作用なのか体が震えだして」

西「ダージリン助けるつもりだったのに逆にダージリンを苦しめてたと知ったら」

西「とうとう薬が効かなくなってしまったんですよね。あはははは」

西「そしたらだんだん生きてるのが辛くなって」

ダージリン「やめて……」

西「早く死ななくっちゃって」

西「最低な人間をこの世から消せるって思ったんです」

西「だけどダージリンが苦しんでるのに私はまた逃げて」

西「最期まで屑だから。わたしは」

西「屑らしく見窄らしく死んで、それで償おうと」


ダージリン「…もう…やめて………」

467: ◆MY38Kbh4q6 2017/04/30(日) 18:44:21.27 ID:xu4BL+Pa0
西「あの時、ダージリンと一緒に食べたパイを切った包丁を探したのですが」

西「何処にも無かったんです」

西「きっと医者が撤去したんですね。私がパイにならないようにって」

西「ダージリンがくれたティーセットも割れたら破片が凶器になるから」

西「ダージリンと作ってたチャーチルのプラモデルも工具やランナーで目を突いてしまうって」

ダージリン「…やめてってば………」

西「死のうと思って使おうとしたものなんですが」

西「プラモデルも、ミートパイも、ティーセットも」

西「みんな、ダージリンと一緒に過ごした思い出だったんですよね」

西「…だけど、」




西「みんな取られちゃいました。あははははは」




ダージリン「………ッ…」





だけどもう涙も出なかった。

アールグレイさんの前であれだけ泣いたせいで。

そんな私の代わりにダージリンが涙を流す。私のせいで。

謝りに来たのに、謝るどころか余計にダージリンを困らせてる。

私はどれだけ迷惑な存在なんだろう。

469: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/01(月) 19:09:26.35 ID:zr6+Jmp/0
ダージリン「何よ…あなたまで不幸になっちゃったじゃない……」

西「ダージリンを不幸にした私のせいなので自業自得です」

西「私がいなければ、ダージリンがこんな目に合うこともなかった」

ダージリン「…私が…あなたの所に入り浸り過ぎたからよ……!」

西「私が入院しなければ…そうなることもなかった…」

ダージリン「違うッ!! どうしてわからないのよ!!!」

西「ははは…。わからずやです…さ、最低な人間…ですよね……あは、あはははは…」





ダージリン「あなた…手が震えてるわよ…?」

470: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/01(月) 19:11:50.64 ID:zr6+Jmp/0
西「薬…切れちゃったみたいです…あはは…ははは……」

西「さ、最近…すぐ切れるようになったんですよね…あはははは」

ダージリン「いっ、一体どれだけ飲んでるのよ…!」

西「…ウラヌスに乗ってる時…運転中にダージリンのこと…考えたら…」

西「私が…ダージリンを…葬ったって…」

西「絶対……死にたくなるから………飲んで……あははは……」


フラッ

バタッ


ダージリン「っ!!」

西「…ぅぅ………」

ダージリン「ちょっと、しっかりしなさい!!」

西「…あはは…だいじょ…ぶ……ちょっと目眩がする…だけ……あははははは」

ダージリン「そんなわけないじゃない! 立てなくなるなんて異常よ!!」

西「…あはは……」ブルブル

ダージリン「と、とにかく、ベッドに入ってなさい!」

西「あははは………ダージリン…」

ダージリン「お医者様呼んでくるから待って!」

西「…ダージリン……」

ダージリン「いい? 絶対に大人しくしてるのよ?!」









西「……ダージリン……………」
471: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/01(月) 19:13:56.74 ID:zr6+Jmp/0
ダージリン「な、なに?!」

西「………ふるえ……とまるまでで…いい………」

ダージリン「えっ…?」

西「…ごめん…なんでもない……………」

ダージリン「………」

ダージリン「…わかったわよ。お言葉に甘えてここ居させて頂くわ。…だから…」



ダージリン「だから……泣かないで…お願い………」



西「……ありがと…………」ツー

ダージリン「………ばか…」




悲しくて、寂しくて、情けなくて…

薬の効果が切れるにつれて色んなものが頭の中に入り込もうとする。

ダージリンが退学になったこと

その退学の原因が自分にあること

私のせいでダージリンが苦しんだこと

ダージリンの冷たい視線を浴びたこと


体は震えるし頭は殴られたようにガンガンする。

もう出ないと思ってたのにまた涙は止まらなくなるし…。

472: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/01(月) 19:16:54.37 ID:zr6+Jmp/0
~~~


西「…わたし…最低だ………」

ダージリン「どうして?」

西「…ダージリンに謝って…助けるために来たのに…」

西「また…ダージリン困らせちゃった………」

ダージリン「…大丈夫よ。あなたのお陰で私も幾分か気が楽になったから」

西「そんなんじゃ…駄目だよ…」

ダージリン「えっ?」

西「ずっと頑張ったのに…退学になったら…」

西「何のために今まで頑張って来たのかわかんない……」

ダージリン「!!!」

西「……皆に火の粉が降りかかるの嫌だから…全部一人で背負ったのに…」

西「OG会の仕打ちも…全部耐えてきたのに…」

西「ずっと…嫌なこと我慢して…頑張ってきたのに………………」ツー

ダージリン「なんで……」




ダージリン「なんであなたが知ってるのよ………!」



西「………」

ダージリン「…アッサムにも…ペコにも言ってない…誰も知らないはずなのに………」

西「わかるよ…ダージリンのことだもん…」

西「そうじゃなきゃ…こんな薬飲まない………」

ダージリン「………ばか…」

473: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/01(月) 19:18:39.99 ID:zr6+Jmp/0

戦車道を廃止にするという宣告を受けてから、私は結果を残すために死に物狂いだった。

だから、私の戦車道は今もまだ続いている。

…でも、同じように、血の滲むような努力をして隊長まで上り詰めたダージリンは


何もかも失った。


それが許せなかった。

誰も知らないところで、誰よりも苦労を重ねたダージリンが、誰よりも酷い仕打ちを受けた。


安全面に考慮された戦車道で人が死ぬことはまずない。

だけど…

隊長を降格させられ

ありもしない噂をばら撒かれ

そして抗議する時間も与えられず学園から追放され

聖グロリアーナ女学院の隊長としてのダージリンは"抹殺"された。


その事実はどれだけ発狂しても泣き叫んでも、もう私の頭から消えそうにない。
474: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/01(月) 19:20:35.27 ID:zr6+Jmp/0
西「…ごめん…ダージリン…」

ダージリン「……別に良いわよ」

西「…」

ダージリン「他の学校を探せばいいだけのこと…」

西「…」

ダージリン「学校が駄目なら就職すればいい」

ダージリン「アルバイトとかならきっと何処かが雇ってくださるはず」

ダージリン「あわよくば誰かのところに嫁ぐって道もあるかもしれないわね」

西「…っ……」

ダージリン「だから、あなたが心配することなんて何もないわよ」

西「………」ツー

ダージリン「…どうして泣くのよ」

西「…そうなると……ダージリンとはお別れなんだなぁ…って………」

ダージリン「大袈裟ね。今生の別れじゃあるまい」フキフキ

475: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/01(月) 19:28:28.53 ID:zr6+Jmp/0

~~~


西「…ハァ……」

ダージリン「…落ち着いた?」

西「…多少は………ごめん……」

ダージリン「そう…。飲み物でも持ってくるわ」

西「ダージリンは大丈夫なの…?」

ダージリン「ええ。…完璧ってわけじゃないけれど」

ダージリン「でも、あなたのお陰でだいぶ楽になった」

ダージリン「ありがとう。絹代さん」

西「…そっか……」

ダージリン「すぐ戻ってくるから首吊ったり舌噛んだりしないでよ?」

西「………」

ダージリン「約束破ったら地獄の果てまで追いかけ回すわよ?」

西「…」

ダージリン「それが嫌なら大人しく待ってなさい」

西「…ダージリンがいるなら……地獄でも良いかな…って…あは、あははははは」

ダージリン「馬鹿なこと言わないで頂戴!!」

西「…ごめん。ダージリン………………」

ダージリン「………!」



その約束、きっと守れない。

あんなにズタズタにされた上に、今ダージリンがいなくなったら…。

476: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/01(月) 19:36:36.67 ID:zr6+Jmp/0

ダージリン「…あなたが馬鹿なことを事を考えるならば、私も手段は選ばないわ」

西「…!」

ダージリン「ほら、手。後ろに回しなさい」

西「…」

ダージリン「…悪く思わないで頂戴。あなたが死んだら困るの」

西「…」

ダージリン「こうでもしないと心配なのよ…」

西「………」



また手足を縛られた。窓から飛び降りないようにと。

口には布を詰められ、その上からテープを貼られた。舌を噛み千切るからって。

だから返事をすることも出来ない。病院のときと同じ。


477: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/01(月) 19:38:28.70 ID:zr6+Jmp/0
西「…」ツー...

ダージリン「ほら、泣かないの」フキフキ

西「…」

ダージリン「私が戻ってくるまで、大人しくしてるのよ?」

西「…」

ダージリン「安心して。私にそういう趣味は無いわ。戻ったらちゃんと解いてあげる」

西「………」



そう言い残して、ダージリンは部屋を出た。

部屋の外では家政婦の喜ぶ声が聞こえる。

なにしろ何日も部屋に引きこもっていた人が部屋から出て来たのだから。

あんな残酷な仕打ちを受けたのに、それでも復帰できるダージリンはすごい。


それに比べて私は…
478: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/01(月) 19:40:48.73 ID:zr6+Jmp/0
西「…っ! っぐぅぅ!!」



薬が切れてくるにつれて、また頭の中に様々なものが押し掛けて来た。

様々な光景が頭の隙間に押し込まれ流し込まれ、グチャグチャと汚物をかき混ぜるように、次から次へとフラッシュバックして襲い掛かってくる。

これ以上入り込む隙間なんてないのに、僅かな隙間をこじ開けようと生々しい記憶が蘇る。

副作用のせいで体は震えるし、頭もガンガンする。


腸が煮えくり返って

辛くて

悲しくて

寂しくて


そして………

479: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/01(月) 19:42:05.53 ID:zr6+Jmp/0
ガチャ

ダージリン「お待たせ。絹代さん」

コトッ

ダージリン「…絹代さん?」


西「………」

ダージリン「…?」

西「………」

ダージリン「絹代さん!!?」ガタッ

西「…ムグ……」

ダージリン「…ビックリさせないでよ………」

西「……ッグゥゥ…」

ダージリン「大丈夫? 今解くから動かないで」

シュルシュル

パサッ

西「…ハァ……ハァ……」

ダージリン「ほら、飲み物持ってきたら」

西「…ありがと……」

480: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/01(月) 19:44:44.36 ID:zr6+Jmp/0
西「……っぅぅ…」ズキズキ

ダージリン「大丈夫…?」

西「…だ、大丈夫……薬が切れるといつもこうなるから…あははは………」

ダージリン「お医者様呼ばなくても平気?」

西「あはは…しばらくすれば…収まり…」

ダージリン「そうなの…?」

西「…うん……」

ダージリン「…もうあの薬は飲んじゃ駄目よ?」

西「………」

ダージリン「聞こえた?」

西「…善処…します」

ダージリン「善処じゃだめ。絶対」

西「…頑張る」

ダージリン「もう…」

西「…」



私だってこんな苦い薬、好きで飲んでいるわけじゃない。

こんな不味いものよりダージリンが淹れる紅茶が飲みたい。

入院中に何度もダージリンが淹れてくれた優しい味の紅茶は今でも忘れない。

それが叶わなくなったから、飲まなきゃいけなくなった…。
481: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/01(月) 19:48:09.57 ID:zr6+Jmp/0

ダージリン「そっち行ってもいい?」


西「!! …だ…だめ!」

ダージリン「どうして?」

西「来ちゃだめ…」

ダージリン「理由は?」

西「だめ…だから……」

ダージリン「何か隠してるの?」

西「違う…」

ダージリン「なら良いじゃない」

ダージリン「寒いから私もベッドに入りたいのよ」

西「だ、だめ…」

ダージリン「だからどうして」

西「だめ…だから……」

482: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/01(月) 19:51:21.71 ID:zr6+Jmp/0

ダージリン「私の部屋で私のベッドなのよ? あなたがどうこういう権限は無いわよ」

西「副作用…薬の…」

ダージリン「だったら尚更よ。…体、寒いんでしょう?」

西「違う…」

ダージリン「じゃぁ何よ…?」

西「さっきまで…抑えてたものが色々頭にめり込んで来て…」

ダージリン「ええ」

西「その………」

西「………」

ダージリン「また歯切れが悪い…。ハッキリ言って頂戴」

西「…頭のなかに……ダージリンが…その…一杯になって…」

ダージリン「!」

西「えっと………」

ダージリン「…」























    「………優しく…抱きしめて欲しいなぁ…って………」


483: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/02(火) 09:00:52.72 ID:c6dL2CBJ0
ダージリン「…」

西「…」

ダージリン「………」

西「…ごめん………」

ダージリン「…」

西「…薬の…副作用だから…気にしないで………」

ダージリン「………」








ダージリン「…良いわよ」
484: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/02(火) 09:02:32.03 ID:c6dL2CBJ0
西「…え…あっ……!」

ダージリン「入るから。もっと奥へ行って頂戴」

西「だ…だめ………」

ダージリン「なに?」

西「また…ダージリンを不幸にする……」

ダージリン「何を今さら」

西「でも…」

ダージリン「…こんなに震えちゃってるじゃない」


西「!!!!」



生まれて初めて家族以外の人に抱きしめられた。


真っ黒になったコーヒーにミルクが注がれていくように、汚いものが浄化されていく錯覚がした。

頭に隙間さえあれば容赦なくねじ込まれた辛いもの、悲しいもの、苦しいもの

そういったものから解放されていく気がした…


ダージリンの腕の中は優しくて、暖かくて、安心できる

そんな場所だった…

485: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/02(火) 09:03:51.74 ID:c6dL2CBJ0
西「…こわかった」

ダージリン「ん?」

西「ダージリンに…あんな冷たい目で………」

ダージリン「…ごめんなさい」

西「…うん……」

ダージリン「でも…」

西「…?」

ダージリン「あの時、絹代さんがあのまま帰っちゃったら…」

西「うん…」











ダージリン「もう未練なかった」











それはきっと私も同じだと思う。

あの時は薬の効果が残っていたから平気だったけど、あのまま帰って薬が切れたら。

私はきっとこの世にはいなかったと思う。

そう考えると最悪の事態を回避することができたのかもしれない。

ダージリンの腕の中で少しだけ安堵した。


………だけど、

486: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/02(火) 09:05:23.86 ID:c6dL2CBJ0
ダージリン「ふふっ。温かいわね絹代さん」

西「…あの、ダージリン…?」

ダージリン「なぁに、絹代さん?」

西「わたし…ガマンするから…」

ダージリン「ダメ。そうやって自分を追い詰めるのだから」

西「違う…」

ダージリン「じゃぁ何?」

西「その…少しの間…我慢するから…」

ダージリン「ええ?」





西「………お風呂…入ろ?」





ダージリン「………」

西「………」

ダージリン「………」

西「………ごめん」



色々張り詰めたものが解けたら、今度は別のものが気になりだした…。


487: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/02(火) 09:06:57.98 ID:c6dL2CBJ0

【バスルーム】


シャァァァァァァ

ダージリン「………」ゴシゴシ

西「………」

ダージリン「………」ガシャガシャ

西「…あの…ダージリン…?」

ダージリン「………何」ガシガシ

西「…怒ってる?」

ダージリン「別に」ワシャワシャ

西「怒ってる…」

ダージリン「どうせ私は不潔な女よ…」

西「その…誰だって何日も風呂に入らなければ不潔になります…」

ダージリン「ええ。なにしろ"抱いて"って言われた相手に」

ダージリン「"汚いから風呂入れ"なんて言われたのだから」

西「ごめん…」シュン

ダージリン「…」
488: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/02(火) 09:08:44.36 ID:c6dL2CBJ0
西「その…私は不衛生なダージリンも悪くないって思う…けど………?」

ダージリン「不衛生って言わないでッ!!」

西「ご、ごめん…」

西「でも…やっぱり、ダージリンは綺麗な方が良いかなぁ…って」

ダージリン「そうね。きっと何処かに"綺麗なダージリン"がいるから探したらいかが?」

西「むぅ…」


ダージリン「………でも、感謝しているわよ」

西「えっ?」

ダージリン「あなたのお陰でお風呂に入るくらいは元気になれたのだから」

西「!」

ダージリン「…ありがと」

西「お礼を言わなきゃいけないのは私の方です」

ダージリン「どうして?」


そう。

本当にお礼を言わなきゃいけないのは私の方。

大洗戦のとき、入院してからの日々、そして今。

私はずっとダージリンに助けられて生きてきた。

もしもあの時ダージリンがいなかったらと思うと…。

489: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/02(火) 09:11:54.78 ID:c6dL2CBJ0
ダージリン「………そう」

西「…」

ダージリン「なぜ私がそうしたか、今ならわかるでしょう?」

西「ええ。やっと謎が解けましたよ」




西「ダージリンも私と同じだったんですね」




ダージリン「不思議だった。悩みなんてまるで無さそうなあなたが、まさか私に近い存在だったなんて」

西「私も同じ考えです」

ダージリン「そう?」

西「ええ。全然正反対な性格なのに、同じ立場で同じ考えだったなんて」

ダージリン「そうね…」



たまたま一緒にいる時間が長かったからそう思えただけで、私ではなく他校の隊長でも同じなのかもしれない。


一隊長として、自分や仲間の道を守るために命をかけて闘った。

隊長であるが故に孤独だった。


もちろん私もダージリンも『仲間』がいないわけではない。

しかし、『隊長』という立場は同じ『隊長』でないと理解できない。

常に先頭に立たされるプレッシャー

降りかかる火の粉から仲間を守る責任

隊長となったその日から、隊長としての苦悩を抱えて生きてきた。

誰にも相談できず、誰にも理解されない隊長にしかわからない苦悩を抱えて。


そんな孤独な二人があのとき出会った。
490: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/02(火) 09:13:03.86 ID:c6dL2CBJ0
ダージリン「…というか何であなたまでお風呂にいるのよ」

西「…それ、今さら言いますか」

ダージリン「すけべ」

西「どうせダージリンのことで頭が一杯になって切なくなるドスケベ女ですよ私は」

ダージリン「…」

西「ダージリンに抱かれた時に体が"準備"出来ちゃったぐらいですし」

ダージリン「ち、ちょっと…!」

西「何なら今ここで自慰でもすれば良いですか?」

ダージリン「やめなさい!」



入院中はダージリンのお誘いに戸惑っていた私なのに、今は何も考えずにそのまま一緒に風呂に入った。

浴槽でカミソリを使って腕を切ってしまわないか

シャワーのホースで首を吊らないか

ダージリンが私のことを心配するように、私もダージリンのことが心配で仕方なかった。

491: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/02(火) 09:13:48.63 ID:c6dL2CBJ0
チャプ...

ダージリン「ほら、お馬鹿なこと言ってないでもっと奥へ行って頂戴。私が入れないわ」ギュッ

西「…どうして私にしがみつくんです?」

ダージリン「……その方が温かいからよ」

西「湯船に浸かれば温まりますよ?」

ダージリン「…心がってこと」

西「………」

ダージリン「…どこ見てるのよ助平」

西「む…」



湯船に浸かりながらダージリンに抱きしめられた。

ダージリンの言う通り、身体だけでなく、心まで温まっていく…。

あれ以来ずっと灰色だった世界に、少しずつ色が戻っていくような気がした。

ずっとこのままでいたい。何も考えずに………。

492: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/02(火) 09:15:41.09 ID:c6dL2CBJ0


ダージリン「…それにしても」

西「…ん?」

ダージリン「変わったわね…あなた」

西「変わった?」

ダージリン「垢抜けたというか…落ち着いたというか…何と言えばいいのかしら」

西「落ち着いた? 発狂しまくって情緒不安定な薬物中毒者なのに?」

ダージリン「そんなこと言わないで頂戴。…その、幼さが無くなったというか…上手く説明できないけれど…あっ!」

西「?」


ダージリン「そう! 眼力よ!」


西「がんりき…?」

ダージリン「今のあなたの目つき、昔に比べかなり鋭くなったわ」

西「…そうですか?」

ダージリン「誰かに言われなかった?」

西「…確かに。色んな人に言われましたね」

ダージリン「そうでしょう」

西「看護婦さんには"悪霊に取り憑かれた"なんて言われるし、」

西「アールグレイさんには"私に牙を向くな"と怒られ」

西「ペコ太郎に至っては、小動物みたいに怯えられて」

西「あと、先ほど家政婦さんにもかなり警戒されましたよ」

ダージリン「最初のは違うと思うけど…」

西「けれど、尽く怯えられたり警戒されたりしました」

西「ただ目を合わせただけなのに…」

493: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/02(火) 09:17:41.56 ID:c6dL2CBJ0
ダージリン「でしょうね。昔のあなたを知る人ならその"眼力"に皆驚くわよ」

西「私、そんなに怖いです?」

ダージリン「別に?」

西「…本当?」

ダージリン「ええ。普通の絹代さんよ」

ダージリン「私はあなたを知っているからね」

西「…そう言ってくれるのはダージリンだけです」シンミリ

ダージリン「けれども、事情を知らない人はあなたの目を見たら驚くでしょうね」

西「…」ブクブク

ダージリン「ショック?」

西「そりゃぁショックですよ。色んな人に怯えられたのですから…」

ダージリン「間抜け面するよりも貫禄が出て隊長らしくなったと思えば良いのよ」

西「以前は間抜け面だったんですか…?」

ダージリン「物の例えよ。…あとは」

西「?」

494: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/02(火) 09:19:07.07 ID:c6dL2CBJ0
ダージリン「…少し、色っぽくなった?」


西「え…」

ダージリン「子供っぽさが抜けて、少しだけ"大人の女性"って雰囲気がするのよ」

西「…大人の女性?」

ダージリン「独りでバーでお酒を飲んでる人のような?」

西「また小難しいことを仰りますね…」

ダージリン「だって本当ですもの。私が知る限り、今のあなたが同年代の中で一番大人びた顔をしているわよ」

西「それって単純にやつれて老けただけなんじゃ…」

ダージリン「そうなのかしら…」



あの時は本当に頭がどうかなってしまうんじゃないかというくらい怒りが爆発した。

その後遺症なのだろうか、顔や目に"それ"が出るようになったのかもしれない。

ダージリンは"眼力"だの"垢抜けた"だの"大人っぽくなった"と言うが、要はやつれて人相が悪くなっただけだろう。

知波単の皆やお世話になった人たちにはどんな顔して会いに行けばいいのだろうか。

玉田や細見はともかく、福田に泣かれないか心配だ…。

495: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/02(火) 09:20:40.02 ID:c6dL2CBJ0

ダージリン「…ところであなた学校は?」

西「えっ?」

ダージリン「今日は平日なのよ?」

西「あっ!」

ダージリン「ハァ…」

西「ダージリンの事で頭いっぱいで学校どころじゃなかったので…」

ダージリン「それはどうも。でもこんな格言を知っている?」

西「知らないです」

ダージリン「まだ何も言ってないわよ。…"日々、私たちが過ごしている日常は、実は奇跡の連続なのかもしれない"」

西「やっぱり知らないです」

ダージリン「あなたが当たり前のように学校に通えるのは、別の人にとっては奇跡のようなもの」

西「…」

ダージリン「その"当たり前"は大切になさい」

西「はい…」



今までダージリンから聞いた、どんな格言や名言よりも心に重くのしかかる。

私にとっての何気ない日常は、ダージリンにとってもはや奇跡になってしまったから…。

496: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/02(火) 09:22:13.73 ID:c6dL2CBJ0
西「そういうダージリンは大丈夫なのですか?」

ダージリン「ええ、おかげ様で。私の分まで悲しんで発狂してくれた人がいますもの」

ダージリン「いや、私以上かもしれないわね…」

西「…」

ダージリン「どちらにせよ驚いたわ。私が思ってた事抱えてた事を全部をあなたが言うのだから…」

西「あはは。自分でも不思議です。こうまでもダージリンの思いが頭に浮かぶなんて」

ダージリン「…」

西「?」

ダージリン「それなら、今私が何考えてるか、わかるかしら?」

西「………"ラーメン食べたい"とか?」

ダージリン「そんなわけないでしょ…」ハァ...

西「じゃぁ…"カレーが食べたい"とか?」

ダージリン「食べ物以外の候補はないのかしら…」

西「だってカレーもラーメンも食べたいですし」

ダージリン「それはあなたの考えでしょう」

西「あ、そうですね」

ダージリン「まったくもう」

497: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/02(火) 09:23:12.55 ID:c6dL2CBJ0
西「まぁ、明日から頑張りますよ」

ダージリン「そう…」

西「ダージリンこそ、ゲーム廃人になったり、匿名掲示板でドヤ顔で格言を投稿したりしないで下さいよ?」

西「特にダージリンの場合、すぐに特定されそうd 熱ッ!」

ダージリン「余計なお世話よ」

西「ドライヤーこっち向けないで…」

ダージリン「髪の毛。乾かすでしょう?」

西「乾かすにしてもそんなに密着させません」



ダージリンが元気になるにつれて、私も少しずつ回復していくような気がした。

498: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/02(火) 09:26:03.53 ID:c6dL2CBJ0
ダージリン「ふぅ。さっぱりした」

西「さすがに10日ちかく風呂に入らなければそうなりますよね」

ダージリン「ええ。お風呂に入る気力すら無かったわね…」

西「………きったない」

ツネッ

西「痛っ!」

ダージリン「私の気持ちがわかるのなら想像つくでしょう」

西「…まぁ」



私は精神科の先生方にお世話になったお陰で、食事もとれたし風呂にも入れた。

しかし、そうでなければきっとダージリンのように虚無感に支配されて何もすることが出来なかったはず。
499: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/02(火) 09:27:40.84 ID:c6dL2CBJ0

【再び ダージリンの部屋】


チュン チュン...


ダージリン「頭が痛くなるほど眩しいわね」

西「そういえば今日は晴れてましたね」

ダージリン「外にいたのに気付かなかったの?」

西「ええ。薬のおかげで視界は灰色だったので」

ダージリン「…副作用、大丈夫なの?」

西「気づいたら手の震えが無くなってますね」

ダージリン「そう。良かった…」

西「ご心配おかけしました」

ダージリン「…もうあの薬は飲んじゃ駄目よ?」

西「善処します」

ダージリン「だから善処じゃなく絶対」

西「ダージリンがちゃんと生活してくれるなら、薬でも何でも断ちますよ」

ダージリン「わかりましたわ…」ハァ...



実を言うと、まだ寒気がするし頭痛もする。薬物依存はそう簡単には消えてはくれない。

でも、これ以上ダージリンに迷惑をかけたくないから強がりを言った。

しばらくは苦しいだろうけど、ダージリンが元に戻ってくれるなら私はきっと耐えられる。

500: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/02(火) 09:29:47.67 ID:c6dL2CBJ0
ダージリン「」ファァ..

西「お、ダージリンがあくびしてる」

ダージリン「…いけないかしら?」

西「なんだか珍しいなぁって」

ダージリン「私だって人間ですもの。あくびの一つくらいするわよ」

西「そうですよね。あくびもするし鼻もほじr <ツネッ!!> 痛っ!」

ダージリン「前言撤回するわ。あなたは昔のまま変わらずおバカよ」

西「むぅ…」


ダージリン「…ほら、こっちおいで」

西「お邪魔します」モゾモゾ

ダージリン「はいはい。甘えん坊さん」

西「…」クンクン

ダージリン「…くさくないわよ」ギロッ

西「ええ。石鹸の香りがします。きったないダージリンじゃ無くなって一安心です」クンクン

ダージリン「きったないって言わないで頂戴」

西「はーい」

ダージリン「…全く」

501: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/02(火) 09:31:10.29 ID:c6dL2CBJ0
西「…」クンクン

ダージリン「で、どうしていつまでも匂い嗅いでるのよ…」

西「あはは。ダージリンの匂いが好きだからです」フスーフスー

ダージリン「もう…」キュッ

西「鼻づままないで下さい。窒息します」

ダージリン「口で呼吸できるでしょう」

西「む…」



ベッドの中にダージリンと私が向かい合って寝転がっている。

本来は一人用のベッドなので、そこそこ詰めているわけだ。

だからダージリンとの距離が近い。

ちょっと手を伸ばせばダージリンの顔に触れる。


でも、それでも遠く感じた…



ダージリン「………なに?」

西「いや、」

ダージリン「…?」

西「…もっとそっちに行っていいですか?」

ダージリン「どうぞ…?」



さっきより、ダージリンとの距離は近くなった。

だけど、あまり変わらない。
502: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/02(火) 09:32:39.56 ID:c6dL2CBJ0
ダージリン「何よさっきから…」

西「あはは。…何でもないです」

ダージリン「…」

西「…」グイッ

ダージリン「ちょっ…!」



ダージリンの肩を掴んで、こちらへ引き寄せた。

ダージリンの顔がまさに"目と鼻の先"にある。

呼吸が顔に当たるくらい近い



ダージリン「…なに………」

西「………」


ここまでやってもダージリンは私を拒否しなかった。

ダージリンが遠ざかることはないけど、結局近づくことはなかった。

でも、もっと近づかないと、もう近づけないような気がした。

だから…
















良いよね? ダージリン。

503: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/02(火) 09:33:48.78 ID:c6dL2CBJ0
ダージリン「!!!」

西「…」







    この日、私とダージリンは繋がった。










格下を相手に優越感に浸るダージリンの顔

ドヤ顔で格言を語るダージリンの顔

馬鹿やった私を引っ叩く時のダージリンの顔

誰も信じられず、拒絶するときのダージリンの顔

悲しくて涙を流すダージリンの顔


いろんなダージリンの顔を私は見てきた。

中には私だけしか知らない顔もあって、私も知らない顔もあるかもしれない。

だけど、今のダージリンの顔は・・・・






ダージリン「………ばか…」








私が心の底から愛するダージリンの顔でした。

504: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/02(火) 09:36:07.62 ID:c6dL2CBJ0

西「ごめんなさい。好きです」

ダージリン「………なんで謝るのよ」

西「その、好きになっちゃった…から」

ダージリン「…ばか」

西「もう一回、してもいいですか?」

ダージリン「…」




ダージリンの返答を待たずにもう一度した。

ダージリンはぎゅっと目を瞑るが、私を突き飛ばしたりすることはなかった。

でも、すればするほど寂しくなるから、唇がふやけるんじゃないかってくらい、何度も何度もした。



西「ダージリンは…私の事どう思ってます…?」

ダージリン「………私で良いの?」

西「ん?」

ダージリン「本当に良いの…? 私なんかで…」

西「ダージリンじゃなきゃ嫌です」

ダージリン「ありがと…絹代さん…」




~~~~

505: ◆MY38Kbh4q6 2017/05/02(火) 09:37:19.64 ID:c6dL2CBJ0


ダージリン「…久しぶりにぐっすり眠れそうね」

西「今寝たら昼夜逆転しますよ」

ダージリン「いいのよ。細かいことは気にしない」

ダージリン「それに、あなたも寝不足でしょう?」

西「私は別に」

ダージリン「ウソおっしゃい。目の下に隈が出来てるわ」

西「…」

ダージリン「私が言えたことじゃないけど、寝不足はお肌の敵よ」

西「まぁ、眠れない日々が続いたわけですからね」

ダージリン「そうでしょうけど…」

西「なのでお言葉に甘えてぐっすり寝ます。ダージリン抱き枕にして」

ダージリン「はいはい。おやすみ絹代さん」

西「んっ…!」

ダージリン「ふふっ」

西「…おやすみなさい。ダージリン」



こうして私は、抱いて抱かれて眠りについた。

ベッドのシーツも私達が入浴中に家政婦さんたちが取り替えてくれたおかげでフカフカになっている。

本当に久しぶりに安らかに眠ることができた。きっとダージリンも同じだろう。


…ダージリンにキスされたので顔が熱い。


次スレ:

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