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2: ◆PL.V193blo 令和元年 05/06(月)16:08:43 ID:g7w

「遠いところから、ほんまようお越しくださいました」

 着物をたおやかにひらめかせる貴婦人の労りを、彼は会釈と微笑みで頂戴した。

「うちの人、もう間もなく来はりますから、ちびっと待っとって下さいね」

 和らかな雰囲気が、彼女の娘にそっくりで、母娘なのだな、と思う。
 想像していたより、愛嬌のある女性だった。
 しかし、踵の返し方、茶の出し方をひとつとっても、非常に洗練されていることが分かった。着物美人は撮影の現場で何度となく目にするが、そういう急ごしらえで作ったものとは違う、生粋の――――と言えばしっくりくるか。
 生まれながらの京者とは、こういうものかと感じる。今の彼女の娘とは、それは異なる印象であった。

「……」

 含んだ茶の熱さに心地よさを感じる。
 じっくり話せ、という事か。
 今日の話は、少し長くなりますよ、という事なのだろう。
 ――――話は、二週間ほど前に遡る。
3: ◆PL.V193blo 令和元年 05/06(月)16:09:33 ID:g7w
「――――よし、全員集合! 本番まで三週間! 余裕があるようであッという間だ! 各自、焦点を絞って仕上げていくように! 解散!」
『はいッ!!』

 毎回、レッスンの風景を見るたびに、さすがだなと思わされる。
 可憐な容姿で愛らしい振り付けを目いっぱい表現する、その瞳は一流アスリートと比較してもなんら遜色ないほどに鋭く、トレーナーの号令に一挙手一投足をサッと合わせる姿は、洗練された自衛隊の集団行動のよう。
 油断したら刺されてしまいそうなほどの凄みは、未だ多くが十代中ごろの少女に過ぎない彼女たちの、紛れもない、一線級のプロとしての姿だ。

「あ、プロデューサーはん。おおきに。お疲れさんどす」
「こっちこそお疲れ様ですよ、紗枝さん」
「いややわあ、もっとくだけて、お紗枝はん、て呼んでーっていうとるやんか」

 ポニーテールにまとめたうなじから流れる汗を拭いながら、上気した頬でくふふっ、と笑う。
 上品に口元を隠した、おかむろさんのようなあどけない表情。先ほどの迫力が、嘘のように幼い。

「鬼気迫る感じ、ありますね」
「んー……ほら、こないだ話してたやつ……あるやろ?」

 どことなく、もじもじとして歯切れの悪い言葉。
 プロデューサーは、ピンと来ていた。
4: ◆PL.V193blo 令和元年 05/06(月)16:09:50 ID:g7w

「お父様とお母様は、なんと?」
「お母はんは来るー言うてたけど……お父はんは、返事ないなあ」

 ごまかすように頬を掻いて、あいまいな笑みを浮かべた。

「特命ですね」
 
 少し背の高い彼女のプロデューサーは、スーツの襟を羽織を張るようにパンっと正す。

「少しだけお待ちください。必ず吉報をお持ちいたします」

 彼女の影響なのか、元々の素養なのかはわからないが――――
 彼女のプロデューサーも時折、数百年前からタイムスリップしたような、時代がかったしぐさや言葉を使う時があった。
5: ◆PL.V193blo 令和元年 05/06(月)16:11:17 ID:g7w

(年頃の娘と父は折り合いが悪くなる宿命と言うが……はて)

 華やかではないが品の良さが一目でわかる高級な和室には、庭からのさわやかな風が抜ける。
 京都には今でも、洛中、洛外と言う考え方がある。賀茂川のほとり、洛中に位置する小早川家の屋敷は、自らそうとは言わずとも、100年以上続く名家の気風がそこ、かしこにある。

「お客人、楽におし」

 茶に再び伸ばしかけた手を、その気配でひっこめた。

「お世話になっております。ご無沙汰しておりました」

 かつて一度、紗枝さんが当事務所に所属するときにご挨拶はさせて頂いた。
 しかし、なぜか今日、初めて会ったような気もする。
 今日の小早川家当主は、以前と違った顔に見えた。

「剣のお人か」
「は……?」
「頭下げる時に、平背のまま平伏せずに上目の端っこにあたしの足を残しとる。不意に斬りかかられても猫みたいに跳ね退ける、坂東もんの所作の名残や」

 向かい座にすくりと、音も無く座った人物は、なるほど良家の旦那様という風で、上品で線の細い。
 しかし、妙な迫力があった。

「あかんなあ、剣のお人は好かん。剣とか、鉄砲とか……なにより、その眼ぇしとるお人は、どうにも好きになれんえ」

 着流しに羽織であぐらを組んだ姿は、とても武張った風はない。
 しかしその視線は、頭の裏まで射抜かれるように鋭かった。
6: ◆PL.V193blo 令和元年 05/06(月)16:11:47 ID:g7w

「今週末のオールスター感謝ライブ。上半期で最も大きなイベントの一つです。当社でも指折りのアイドル達が参加します。もちろん、娘様――紗枝さんも出演されます。ご案内は既にご覧になられましたか?」
「ああ、来とったね。そんなん」
「でしたら、ぜひ、ご観覧を……」
「行く気はない」

 ぴしゃりとした物言い。京者のくせに、随分はっきりと言うのだな、と感じた。

「まだ、お返事をいただいていないと言うことは、検討の余地があるという事ですよね」
「今のが返事でっしゃろ」
「娘様にも同じように告げられますか?」

 また、あの眼だ。じろりとねめつける、その眼。
 空間を挟んで、二間余り。肚を割って話すというには、やや遠い。
 きちんと正座をした男は、その眼を受けて微動だにしない。背筋をぴしりと揃えてはいるが、もし抜き打たれれば、ひらりと身を翻して躱すだろう。
 そういう目をしている。
7: ◆PL.V193blo 令和元年 05/06(月)16:12:38 ID:g7w
「……」

 当主は、その目が嫌いだった。思い出したくもない事を、思い出してしまう。
 忌々しくなり、懐の携帯電話に手を伸ばす。
 
「ああ、おおきに。お世話になっとります。346プロダクションはん? あんな、うちの娘の……ああ、そう、お紗枝の面倒みてくれてはるプロデューサーはんがいらっしゃってましてな。それが、なんやわからん事を申されるんですわ。あたしらも、ちびっとなんぎしてもうてね。
 お宅様、どんな仕事をさせてるんかなあ、と……ええ、誤解やったらええんやけど……うん、うん、確認してくれはります? ほな、そういうことで、よろしゅう」

 ピッと、と、携帯の電源を切ると、もう目も合わせない。

「……ちゅうことです。そう遠からんとお電話かかってくるやろし、早めに東京に戻られた方がええのんとちゃいますかなあ」

 いうが早いか、プロデューサーのスーツ左胸のポケットから、耳障りな着信音が鳴り始めた。外回りをするサラリーマンなら、なるべく聞きたくない無機質な音。
 会社との連絡手段用にのみ使われる二つ折りの配備ケータイを、プロデューサーが開いたとき、用は済んだとばかり、紗枝の父は腰を浮かしかけた。
8: ◆PL.V193blo 令和元年 05/06(月)16:13:23 ID:g7w
 ――――バキリ。

 耳慣れない音が鳴って、唐突にけたたましい着信音がぶつりと途切れた。

「勘違いをされておられる。私がこの首を預けているのは、会社ではなく、上司でもありません」

 ぶらん、と、本来曲がってはいけない方向に、何のためらいもなく折られた携帯電話を、紗枝の父は点になった眼で見ていた。

「身命を賭して仰せつかりました。話を聞いて頂かないまま、おめおめと帰るわけには参りません」

 ずい、と、一間分、膝を折ったまま器用ににじり寄る。
 身に寸鉄すら帯びてはいないが、剣気のみなら、十分、届く距離であろう。
9: ◆PL.V193blo 令和元年 05/06(月)16:13:42 ID:g7w
「……京に生まれたもんは、京の事だけ知っておればええんどす」

 半刻か、四半刻か。いや実際には、1分も経っていなかったような気もする。
 紗枝さんのお父様は、少しぬるくなった茶で喉を潤し、重い溜息を吐くような語気で言った。
 
「そんな時代でもありません。可愛い子には旅をさせよ、と言うではありませんか」
「……歳、いってから出来た子ォや。可愛くないわけがないわ」
「ええ。涼やかで、優しく。その上、度胸も責任感もある。近頃では、私の方が頼りにしてしまう場面も多いほどです。」
「……頼もしい、か。あんなぽわんっ、としとって、甘えたやった、うっとこの子ォがなぁ」

 お父様は腕を組んで、まるで瞑るように、どこか遠くを見る眼差しをした。

「……あの子には、叔父さんがおった。おった筈や、言うた方が正しいかもな。あの子は、その事をまだ知らんけどな」

 思わぬ話だ。そう思いながらも、プロデューサーはお父様の言葉に耳を傾け続けた。
10: ◆PL.V193blo 令和元年 05/06(月)16:14:46 ID:g7w
「じゃあなりすと……言うんか。広い世界を見るんや、いうて、この小早川の家を飛び出していきましたわ。言い出したらきかん奴で、前しか見てない、まっつぐの目ぇした小僧やった。」

 ずる、と、茶をひと啜りする。

「腕っぷしなんかなまっちろくて、てんで弱っちい癖になぁ。目だけぇは、あんたとおんなし、まっつぐの目やった。あんたは……きっと、お強いんやろうけどな」

 再び、一つ。思いのほか、重い音だ。
11: ◆PL.V193blo 令和元年 05/06(月)16:15:29 ID:g7w

「鉄砲の弾がばかすか飛ぶような国に飛び込んで、二度と帰ってこんかったですわ。あたしが家内と一緒になる、ずっとずっと前の話どす。
 そん時の、うっとこのお袋の落胆ぶりたら、忘れられません。親はおろか兄貴より先に旅立ってもうた、ほんに不孝者どす。」
「……」
「紗枝が生まれた時、家内には万が一つもそんな思いはさせまいと、決めておったんどす。大袈裟なと思うかも知れまへんけど、娘を持つ親の身ィからしたら、一つも大袈裟な事あらしまへん。京で生まれて、京で生きて、それの何が不満なんか。
 この家を継いで、当たり障りない婿さんもろたら、それで幸せになれるやないか。それで十分、上等でっしゃろ。生き馬の目を抜くあずまの里の芸能界なんて、ほんまは一刻も早う辞めてほしい。一日も早く、綺麗なあの子のまんまで帰ってきて欲しい。それが本音どす」

 少し、湯飲みを持つ手が震えていた。
 初めて、この人の声を聞いたような気がした。
12: ◆PL.V193blo 令和元年 05/06(月)16:16:16 ID:g7w

「確かに……ひょっとしたら紗枝さんは、もう、貴方の知る紗枝さんではないのかもしれません」
「……」
「東京に来たばかりの頃、地下鉄の乗換すら満足に出来なかった彼女が、今はたった一人で映画のオーディションに乗り込み、堂々と主演を勝ち取ってくるようになりました」

 声が自然と震える。畳に押し付けるように突いた拳に、思わず力が入っていた。

「決して平坦ではなかった。着ぐるみに入って踊ったし、ビールケースをステージにして通行人に無視されながら??を手ずから配りました。オーディションは何度も落とされました。
 自分はひとつも悪くないのに、大人の気まぐれで何か月越しの努力がフイにされた事もあった。この故郷の家を離れて知り合いもいない東京の夜、一人で悔しさを噛み殺しながら送った夜は、十夜や二十夜では利かないでしょう。」
「……」
「それでも――どれほど報われなくても、頑張ったことが台無しにされても、弱音を吐きませんでした。何度倒されても、口元の泥を拳で拭って、凛とまなじりを結んで、挑戦する事を止めなかった。
 あの小さな体と涼し気な微笑みのどこに、それほどの根性があるのだろうかと思うほど、強くて、気高い女性です。貴方の何十分の一にも満たない時間でしょうけれども、私がそばで見てきた彼女は、そういう人です。
 そして今週、紗枝さんはアリーナを満杯にする数万人と、数百万人がめくるペーパービューの前で、日本で最も有名なアイドルの一人として、ステージに立つ」

 およそ、自分の事であるならば、これほど饒舌にはなれはしない。
 しかし、自分よりも信じている人の事だから、この上なく自信をもって、言い切ることができた。
 なにより、そんな紗枝さんを作ったのは紛れもない、この人たちであるのだから。
13: ◆PL.V193blo 令和元年 05/06(月)16:16:57 ID:g7w

「彼女をそうさせた一念は……紗枝さんの心は、昔と変わらず此処にあります。見て頂ければわかるはず」
「……」
「『有名になって、親に言うてみたいんどす。二人の娘は、どこに出しても恥ずかしくない娘やで、って』……
 紗枝さんが、私と初めて会った時に言っていた言葉です。彼女は、その通りの事をやってみせました。その彼女のたっての願い、叶えられずに帰るわけには参りません」

 うなじをお父様に見せるように、畳に額をこすりつけていた。思わず、と言った所作であったように思う。

「もし彼女に火の粉や露が掛かることがあれば、私は髪の毛一本に至るまで、それを掃うことに尽くしましょう、ですから」

 下げられるものならば、下げられる限界まで頭を下げたい。そういう気持ちだった。
14: ◆PL.V193blo 令和元年 05/06(月)16:17:12 ID:g7w
「男なんて所詮、母親に一言『立派になった』と言ってもらえりゃ、それで全部が報われてしまうもんでしょう。女の子だって、きっと同じだ。誰よりも自分のお父さんに、綺麗になったなと、言ってほしいに違いないんです」
「……」
「娘様の晴れのお姿、何卒、見てやってください」

 しん、と、鎮まった和室。
 お父様がどんな顔をしていたのか、プロデューサーからは見えない。

「……はあ。強情張りや。ほんま、そっくりやねえ」

 それは、かつてこの家を飛び出したという弟様とか。それとも、これまた家を飛び出して一人であずまの都に渡った、一人娘の事か。
 どちらの事かは、わかりかねた。

「敵わんなあ。やっぱり、剣のお人は嫌いやわ」
15: ◆PL.V193blo 令和元年 05/06(月)16:17:28 ID:g7w

「――――……」

 控室は、熱気と緊張と喧騒が互い違いに所狭しと駆け回っている。
 プロデューサーが押し黙っているのは、冷静さからだけではなかった。そうしていなければ、たちまち、この緊張感に流されてしまいそうだったからだ。

「…………っ」

 ステージ側から聞こえてくる、地鳴りのようなファンの声援。それだけで肚の底が震える。
 控室で、自分たちのアイドルを見守るだけの、大の男の自分たちですらがそうなのに――――
 これを360℃から全身で浴びる少女たちのプレッシャーとは、どれほどのものなのか。想像すらできない自分が、歯がゆくもある。

「なぁに怖い顔してはるの? プロデューサーはん」

 ぽすん、と、背後から腰のあたりを叩かれた。
 振り返れば、頭一つ分以上は低い、小さな相棒が居た。
16: ◆PL.V193blo 令和元年 05/06(月)16:17:47 ID:g7w
「紗枝さん……すいません、少し、緊張していまして」
「なんであなたが緊張しはるの。歌って踊るの、うちやのに」

 くすくす、と、彼女は笑う。
 もう、出番は次の次だというのに、この落ち着きよう。本当に、立派になったものだ。
 そこに比べると――毎回、この段階で自分を情けなく思わない事はない。どんなにアイドルによりそったつもりでも、結局、最後の最後には見守ってやることしかできないからだ。
 ――――そんな風に奥歯を噛んだら、紗枝さんの掌が、握りしめていた拳をそっと包んだ。

「なーんも心配、あらしまへん。プロデューサーが育ててくれはったあいどるやもの」

知らずのうちに握りしめていた拳が、彼女の少し冷たい掌にほどかされる。

「あんな、うち、あいどる初めてから、辛かったことひとつもないんよ」
17: ◆PL.V193blo 令和元年 05/06(月)16:18:03 ID:g7w
プロデューサーの武骨な体温が、紗枝の柔らかな指に、血が通うように移っていく。
紗枝は、それを優しく額に手繰り寄せた。

「こぉして……プロデューサーはんがちびっとの勇気、分けてくれはったら、それだけで、うち、なんでも出来るような気ぃになるんどす」

祈るようにほんの数秒、目を瞑ったあと、ぱっと花が開くように、華やかな笑顔が咲いた。

「プロデューサーはん、約束守ってくれはったから。今度は、うちがピシッと決める番ですやろ?」

にっと微笑んだ表情の奥には、折っても折れそうにない、固い意思の込められた強い瞳があった。

「ほな、行ってきます」

十五の少女と思えないほどの頼もしげな背中が、ステージの煌めきの中に飛び込んでいく。
18: ◆PL.V193blo 令和元年 05/06(月)16:18:22 ID:g7w
煌めく舞台は、融けるような目映い輝きを放つ。
スポットライトは、真夏の太陽より熱く。
万衆の視線と嵐のような歓声は、ただ、ひとりの少女を包み込む。
少女は、一度、なにかを探すように視線を回すと、とびきりの表情でマイクを構えた。
震えるアリーナ。地鳴りのような万感の期待に応えて、胸を張って堂々と。
花簪が、かくも美しく、踊り出す。

「お父はん、観ぃに来て良かったねえ」

狂騒に近い熱狂の中、どこか場違いなほど澄ました雅な着物姿の婦人は目を細めた。
懐かしむような、あるいはいとおしむような。
そんな表情。

「お紗枝、お天女さんみたいに綺麗やんなあ」

関係者席に腰掛けたまま、こんちきちんのお囃子に合わせて、楽しげに体を揺らす。

「幸子ォー!! カワイイぞ、幸子ォー!!」
「乃々ぉー!! 最高だぞ、乃々おぉー!!」

隣のとなりから、賑やかな応援が聞こえる。
あれも、父兄さんかな。

「ほんに……立派になりましたねぇ」

傍らの、和装に小粋な山高帽子を被った仏頂面の主人に語りかけた。

「……フン」

 あんなに肌出して、はしたないわ。
 帽子を目深にして、そんな風に言って、父は潤んだ瞳をごまかしていた。
19: ◆PL.V193blo 令和元年 05/06(月)16:18:43 ID:g7w

「紗枝さん!」

舞台の袖でプロデューサーが、すべてを終えて、歓声を背に引き揚げてきた紗枝にタオルを手渡そうとした。
舞台に上がる前の凛とした表情とうってかわって、どこか惚けたような曖昧な表情の紗枝は、差し出されたタオルに目もくれず、ぼすんとプロデューサーの胸に倒れ込むように飛び込んだ。

「……ごめ。やっぱ、り、緊張、したわ……」
「いいんです、いいんです。最高でした。よくやってくれました」
「ほんま? うち……はあっ……ちゃんと、できてた?」
「文句のつけようないです。最高です、ありがとう」

プロデューサーはありったけを出し切ってきた彼女を抱き留めて、荒い息を吐く彼女の首筋に言葉を落とす。
両腕に納まった、あまりの小さな肩に改めて驚く。

「この、小さな背中で、よく」

裏手に繋がる関係者通路で思わず呟いた言葉に、

「もうっ……小さいは……余計、ですよ?」

 彼女は頬をつねるような笑顔で返した。

「お紗枝」
20: ◆PL.V193blo 令和元年 05/06(月)16:19:11 ID:g7w
 ふと、目の前の彼ではない誰かに呼び止められた。
 それは意外で、しかし、とても懐かしい声。

「お母はん……わぷっ」
「観とったよ、綺麗やったねぇ!」

 火照った身体の汗だくの娘を、お母様は走り寄って抱き締めた。
 
「……お父はん」

 少し背の高い、母親の懐かしい香にくすぐられながら、肩越しに見たのは、一番、逢いたくなかったようで、逢いたかった人だった。
 その紳士は、面映ゆさを隠すような帽子のつば越しに、随分久しく会っていなかったような気のする娘を見遣る。
 なんと声を掛けるべきだろう。
 あんな大勢の人たちの期待に応えられるほど、立派になった娘は、こうして母親に抱きすくめられていると、記憶の中にいる、幼いころの娘と何も変わらないように見えた。
 少し不安げな表情が、舞台の上に凛として立つ先ほどの彼女に重なった。
21: ◆PL.V193blo 令和元年 05/06(月)16:19:25 ID:g7w

「久しぶり……綺麗になったなぁ、お紗枝」
「――――お父はん」

 幼い子のように、顔をくしゃくしゃにした娘が、母に背中を押されて走りよってくる。
 飛び込んできた小さな肩と燃える様な体温は、まるで父の知るそれよりも、一回りも二回りも、大きくなったような気がした。
22: ◆PL.V193blo 令和元年 05/06(月)16:19:59 ID:g7w

後日。

「プロデューサーはん、あんときはいけずして堪忍なぁ」
「いえ、私はなにも」
「迷惑ついでにな、ひとつ頼まれ事があるんやけど」
「なんなりと」
「うちの娘、貰ってくれんか?」
「!?」

お泊り編へ続きます……
23: ◆PL.V193blo 令和元年 05/06(月)16:37:12 ID:g7w
あかん……やはりR板にスレ立て出来ひん。
続きはpixiv様のほうでアップします。成人指定よ!お兄さん方、いらっしゃいな!
(なぜかおーぷんチャンネル様だと立てれる……しかしこっちにR板があるのかわからん)

今まで書いたものは

高垣楓「君の名は!」P「はい?」
周子「切なさ想いシューコちゃん」
速水奏「ここで、キスして。」
【モバマス】P「付き合って2か月目くらいのlipps」
モバマスP「速水奏との答え合わせ」

R18
高垣楓「甘苦い、35.8℃のメープル」※R18注意

などです

次は楓さんと北海道旅行いく話か、久々Lippsの面々といちゃこくSS書きたいです。
あと炎陣のネタが溜まってるからそれでもいいなあ……

pixiv様のURLはこちら。

https://www.pixiv.net/novel/member.php?id=15257491


今回もありがとうございました。

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