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1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/12(月) 21:52:26.61 ID:VPOb+rO4o
東京丸の内のオフィスビル内某都銀系列のシンクタンク 午後9時


?「橘君、もうあがっていいよ」

純一「あ、はい。女先輩。もう少し整理できたら帰ります」

女先輩「・・・・・・きりがないよ。もう、今日は止めておこう」

純一「でも、××市のプロポのプレゼン用の資料、まだ揃ってないんですが」

女先輩「今日中に終わらないし、きりがいいとこで上がったほうがいいよ・・・・・・どうせプレゼン前数日は徹夜になるんだから」

純一「わかりました」

女先輩「よし、食事してこう。ご馳走するからさ」

純一「すいません、帰れるのなら少しでも寝ておきたいんで、今日は失礼します」

女先輩「付き合い悪いなあ。ま、いいか。じゃ、お疲れ」

純一「お疲れ様です」

純一(やった! この時間ならアパートに帰って美也に電話できるな)

純一(・・・・・・美也と話すの久しぶりだな。あいつ寂しがってないかな)

純一(いや、むしろ怒ってそうだな。アパートからしか電話できないのが辛いな)

純一(・・・・・・早く帰って美也と電話で話そう)
2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/12(月) 21:53:51.66 ID:VPOb+rO4o
前スレ(美也と純一の大学時代の話)

美也「にぃにお願い・・・・・・もう許して」純一「美也、僕のこと好きなんだろ?」



前々スレ(美也と純一の高校時代の話)

純一「ええっ!?お、同じ大学?」美也「今のうちに一部屋あけといてよね」


9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/13(火) 22:22:10.32 ID:ivkxchfOo
翌日 朝 オフィス内


純一「おはようございます」

女上司「おはよう橘君。今日も早いね」

純一「・・・・・・いえ(あ~あ。昨日は早く帰れたのに、美也のやつ電話に出ないし)」

純一(10時近かったのに、何してたんだろ)

女上司「橘君、始業前で悪いけどちょっといい?」

純一(だから大学近くのアパートに一人で過ごさせるのは嫌だったんだよな)

女上司「橘君?」

純一「・・・・・・あ、はい。すいません」

女上司「今日からうちのチームに新人が加わるからね。あとで紹介するけど、銀行本社採用の総合職の子なんで少し気を遣ってあげてね」

純一「あ、はい。出向なんですか?」

女上司「研修だよ、1年間の。銀行に総合職で採用された人はグループ企業を回って偉くなっていくからね」

純一「そうですか」

女上司「あなたと同期の子みたいよ。本社採用なら優秀な子だろうと思うから、橘君の負担も少しは減るんじゃないかな」

純一「はい」

女上司「うちはあたしのほかは、研究員は君と君の同期の長瀬君だけでしょ?事務員の女の子もよくやってくれるけど、研究員が一人増えると相当楽になると思うよ」

純一「それは助かりますね(あ~あ。どうせ本社採用じゃプライドの高いやつなんだろうなあ、面倒くさい)

女上司「・・・・・・あとさ、その子、すごい可愛い女の子だって、人事課長が言ってたよ」

純一「え?女性なんでですか」

女上司「ずいぶん、食いつきがいいねえ?橘君」クスクス

純一「いや、違いますよ。残業とか平気なのかなあって」

女上司「総合職で入ってるんだ。甘えたことは言わさないよ」

純一「はい(この人、こういうところ格好いいよな)」

女上司「さて、新人を人事課に迎えに行ってくるか。今日の朝ミーティングはあたしが戻ってから始めるからね」

純一「はい(それにしても美也、まさか浮気してるんじゃないだろうな)」
10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/13(火) 22:33:58.79 ID:ivkxchfOo
オフィス


?「よ、橘。おはよ」

純一「おはよう。って、おまえいつもぎりぎりだな」

長瀬「昨日も遅かったんだよ。出張先のヒアリングでさ」

純一「ま、始業時間に間に合ってるからいいんだけどさ。で、おまえ聞いた?」

長瀬「何を?」

純一「今日からうちのチームに一人研究員が増えるんだって」

長瀬「おお~。それは助かるな。ただでさえ、デートもできないくらい働かされてるんだしな」

純一「・・・・・・おまえはデートがありますからって言って一人で帰っちゃうじゃないか」

長瀬「・・・・・・そんなことより、何でこんな中途半端な時期に人事異動なんだ?」

純一「本社採用の同期の子が研修で配属されるんだってさ」

長瀬「おまえ、今、子って言ったよな?ひょっとして女?」

純一「みたいだな」

長瀬「そうか。可愛い子だといいなあ」ニヤニヤ

純一「何ニヤニヤしてんだよ。おまえ、うちのチームの事務員ちゃんにも声かけてるだろうが」

長瀬「そりゃそうだけどさ、どうせなら本社採用のエリートの彼女を落とすとかってしてみたいじゃん。何か萌えない?」

純一「朝から何言ってるんだおまえ」

?「おはようございます」

純一「おはよう」

長瀬「おはよう事務員ちゃん。あれ?何か髪型変わった?」

事務員「あ、わかりますか?長瀬さん。昨日美容院行ったんですよ」

長瀬「すげー似合ってるよ。やっぱ事務員ちゃんは美人だね」

事務員「やだ、もう。長瀬さんって朝から冗談ばっかり」

長瀬「冗談じゃないって」

純一「・・・・・」
11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/13(火) 22:47:49.40 ID:ivkxchfOo
女上司チームの朝ミーティング


女上司「おはようございます」

チーム員「おはようございます」

女上司「今日は、新しい仲間を紹介します。今年本社採用になった石上由里子さん。1年間研修ということで一緒に働いてもらいます」

石上「今日からこちらに配属になりました石上です。よろしくお願いします」

チーム員パチパチ

女上司「石上さん。今、うちでとりかかっているのはプロジェクトは2件あってね。うち一つは受注済みで今レポートをまとめている段階なの。もう一つは××市役所のプロポーザルに向けて資料作成をしているんだけど、こっちは何が何でも取りたいのよ。福祉分野の計画策定なんだけど、うちが弱い分野だし、今回は他社に負けられないの。こっちは橘君が担当しているんで、石上さんは橘君と一緒にそっちを担当してもらうから。詳細は橘君に聞いてね」

石上「はい。橘さん、よろしくお願いします」

純一「こちらこそよろしくお願いします」

長瀬「おい、橘」ヒソヒソ

純一「何だよ?」ヒソ

長瀬「おまえだけずるいぞ。俺にもチャンスをくれるんだろうな?」

純一「チャンスって何だよ」

長瀬「食事とか飲む機会があったら俺も誘えってこと。しかし、びっくりしたな。本社の総合職採用なんてどんな女かと思えば、すげー可愛いじゃんか」

事務員(・・・・・・)

純一「おい、事務員ちゃんおまえを睨んでるぞ」

長瀬「あ、やべ」

女上司「はい、じゃあ仕事にかかりましょ。長瀬君、納品する報告書のアウトラインを見せてくれる?」

長瀬「はい」

女上司「じゃ、石上さんは橘君にプロポの説明を聞いてね」

石上「はい」

純一「じゃあ、レクチャーするからあっちに行きましょうか」

石上「よろしくお願いします」

純一「あ、いや。こちらこそ」
12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/13(火) 23:04:24.74 ID:ivkxchfOo
ミーティングルーム


純一「じゃあ、石上さん。ここで説明しますね」

石上「あの、橘さん。同期なんで、敬語じゃなくてもいいですよ」

純一「そうだけど・・・・・・厳密に言えば同じ会社の同期じゃないし」

石上「でも、今は同じ部署の同期じゃないですか。名前も呼び捨ててくれた方が気が楽ですよ」

純一「あ、はい。じゃあ、石上さん。ざっと概要を説明するね」

石上「はい、橘君.お願いします」

純一「来月××市役所でプロポーザルの審査があるんだけど、それに向けて今提案書を作ってるんだ。で、提案書の骨格は出来ていて、今はは必要な資料を補充して、企画の根拠を固める作業をしてるとこ。それが終わったらパワーポイントでプレゼンの準備をしなきゃいけないいだけどね」

石上「はい」

純一「具体的には僕たちで案を作成して、主任研究員の女上司さんに説明してOKなら、その方向でプレゼン資料を固めていくっていう感じかな。具体的な説明はこの後時間をかけてするけど、概要はこんな感じ」

石上「橘君、すごいんですね。同期とは思えないわ」

純一「え?何で」

石上「わたしたちは今までずっと銀行で研修を受けてただけなのに、シンクタンク採用の人ってもう会社に貢献してるんだね」

純一「それは本社採用の人はそれだけ大切に育てられてるんでしょ」

石上「そんなことないよ。でも、ここに配属されてよかった。いろいろ勉強できそうで」

純一「石上さんって、大学と専攻は何なの?」

石上「○○大学の法学部」

純一(げっ。一流私大じゃんか)

石上「橘君は?」

純一「うん。△△大の経済だよ(肩身狭いなあ)」

石上「国立なんだ。優秀なんだね」

純一「地方の国立大学だよ。皮肉?」

石上「あ、そんなことないよ。そう聞こえちゃったならごめん」

純一「あ、こっちこそごめん(結構素直ないい子だな。銀行採用を鼻にかけないし)」
15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/14(水) 21:32:16.30 ID:gKH/aQM9o
純一のアパート 午後11時30分


純一(やっと家に帰れた~ふぅ)

純一(これから美也に電話したら怒るかな?)

純一(美也の声聞きたいけど、今日は我慢するか)

純一(・・・・・・そういや美也、3月には内々定が10社くらい出てたって言ってたけど)


注:アマガミの年代設定は90年代でバブル崩壊後ですが、それでも今よりは就職状況はよかったようです。


純一(もう5月だし、正式内定出てるんじゃないかな)

純一(とりあえず明日電話して聞いてみよう)

プルルルルル

純一(あ、電話だ)

純一「はい」

?『もしもし、にぃに?』

純一「ああ、美也か」

美也『よかった。にぃに、もう寝ちゃったかと思ったよ』ニシシ

純一「まさか。寝るどころか今帰ったところだよ」

美也『・・・・・・女の子と遊んでたんじゃないでしょうね』

純一「んなことあるか。ここんとこずっと残業続きでさ」

美也『ああ、ごめんごめん。にぃに、ちゃんとご飯食べてる?面倒くさがらないでちゃんと食事しないと体壊しちゃうよ』

純一「ああ、ありがと美也(やっぱり美也と話すと落ち着くなあ)」

美也『じゃあ、明日も早いだろうからあまり長電話はやめておくね』

純一「気にするなよ。むしろ少しでも長く美也と話したいのに」

美也『にぃに・・・・・・みゃーもにぃにと話したい、ううん。早く会いたいよ』

純一「美也・・・・・・。今度の週末休めたらおまえのところに行くからな」

美也『・・・・・・行くじゃないでしょ、にぃに』

純一「え?」

美也『みゃーのところには、行くじゃなく帰るでしょ』

純一「ああ、そうだね。おまえは本当に可愛いやつだな」

美也『ありがと、にぃに。それでね』
16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/14(水) 21:53:25.41 ID:gKH/aQM9o
純一「うん」

美也『みゃーね、正式内定がもらえたんで、就職先決めたんだ』

純一「え、マジで?おまえ正式に決めるときは僕に相談するって言ってたじゃん」

美也『ごめん、にぃに。でも会社聞いたら絶対にぃにだって賛成するって』

純一「そんなにいい会社なのか?」

美也『ヒ・ン・ト。にぃにの身近にいられるかもしれない会社』

純一「うん?ま、まさかうちの会社?いやいや、うちは社員の親族は採用されないぞ」

美也『へへへ。××銀行に内定もらったの。うちの大学の学部卒の女性では総合職採用は10人目くらいだって。すごいでしょ』

純一(うちの親会社?え)

美也『にぃに、何とか言ってよ。みゃーを誉めてくれないの?』

純一「う、うん。おめでとう。でも、うちの親会社の社員かあ。複雑な気持ちだよ」

美也『親会社じゃないもん!にぃにのとこは別の企業じゃん』

純一「グループ内の中核企業なんだから親会社と一緒だよ。うちの社長だってプロパーじゃなくて銀行本体の役員から来てるし」

美也『・・・・・・にぃに?もしかして怒ってる?』

純一「・・・・・・怒ってないよ、美也。ごめん、ちょっと僻んじゃっただけだよ。おめでとう美也」

美也『にぃに、みゃーは少しでもにぃにの側にいたかっただけだよ。僻むとか言わないで』シクシク

純一「(やべ美也を泣かしちゃった)美也、泣くなよ。僕が悪かったよ。美也、よかったな。おめでとう」

美也『・・・・・・にぃに、怒ってない?』

純一「怒ってないよ。それに僕はシンクタンクで研究職になろうと思ったんだし、銀行本体とはあまり関係ないしな。考えたら僻む必要なんかなかったね。ごめん、美也」

美也『そうだよ、にぃに。にぃにのところはみんな高学歴じゃん。ほとんどが院卒なんでしょ・・・・・・って、あ』

純一「・・・・・・僕は学卒だけどな」

美也『と、とにかく、銀行とシンクタンクと比べる方がおかしいよ。それに』

純一「・・・・・・」

美也『にぃには、美也が同じグループ企業で働けるの嬉しくないの?一緒に東京に住めるんだよ』

純一クス

美也『にぃに?』

純一「それを言われたら喜ぶしかないな。おまえ、卑怯だよ」

美也『女性の武器だよ、にぃに。じゃ、にぃには明日早いんだからすぐ寝てね?カップラーメンとか食べちゃダメだよ』

純一ドキ「わかったよ。おまえも内定決まったからって油断するなよ。これから卒論だってあるんだしさ」

美也『わかってるよ。じゃ、にぃに。週末はうちに帰ってきてね』

純一「連絡する」

美也『わかった、にぃに』チュ

純一「美也?」

ツーツーツー

純一(銀行採用か・・・・・・石上さんの1年後輩になるんだな)

純一(今日、石上さんにコンプレックス抱いたばっかりなのに、まさか美也が)

純一(・・・・・・カップラーメン食って寝よ)
17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/14(水) 22:17:25.94 ID:gKH/aQM9o
金曜日 ××市役所


純一「いつもお世話になっております。○○総研公共事業本部の橘と申します」

市役所職員「ああ、どうも」

石上「○○総研の石上です、よろしくお願いします」

市役所職員「まあ、どうぞ」

純一・石上「失礼します」

市役所職員「それでですね、今回のコンペですけど、発注の意図は」


打ち合わせ終了後 ××市役所の食堂


純一「食事の時間、あまりないんでここでいいかな」

石上「いいですよ。でも、入社して1月ちょっとの新入社員がクライアント廻りを任されるなんて、橘君ってすごいんだね」

純一「いや、うちは長瀬もそうだし。最初の2、3回は女上司さんがついてきてくれたけど、あとは一人でやれって感じかな」

石上「でも、それでさっきみたいに打ち合わせ出来ちゃうなんて、やっぱり橘君ってすごいよ。市役所の人も感心してたみたいだし」

純一「そんなことないけど」

石上「・・・・・・」

純一「どうかした?石上さん」

石上「えーと。橘君、列がつかえてるから早く注文しないと」

純一「あ、悪い(また、やっちゃったよ)」


市役所の食堂のテーブル


石上「橘君って、新人離れした仕事振りなのに、メニュー選ぶときは何でこんなに優柔不断なの?」クス

純一「い、いや。今日は慣れない食堂のメニューだからたまたまだって」

石上「それは、うそ。昨日うちの社食の時も列が全然進まなくて、どうしたんだろって思ってってたら先頭に橘君がいて、それで」

純一「わかったって。ごめんなさい」

石上「ふふふ」

純一「な、何?」

石上「橘君って、同期なのにすごく大人な人だなあって思ってたけど、何か親近感わいてきちゃった」

純一「もしかして、・・・・・・からかわれてる?僕」

石上「さあ、どうでしょう」クスクス

純一「ま、いいや。早く食べて次行こ」

石上「うん」

純一(本社採用の幹部候補なのにちっとも気取らない人だな)

純一(ちょっと感じいいかも・・・・・・って、いかん。昔の過ちを繰り返しちゃだめだ。僕だって経験から学んでるんだし)

石上「何か見られてます?わたし」

純一「あ、ごめん。見てません」ドキドキ

石上「ふふ」
18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/14(水) 22:39:34.87 ID:gKH/aQM9o
同日 夜


電話中

純一「はい。市役所の方からヒアリングもできましたし、その後、資料収集もできました・・・・・・あ、はい」

純一「社に戻って報告しましょうか?」

純一「明日でもいいですか。じゃあ、今日はこれで直帰します。石上さんも一緒ですけど」

純一「な、何言ってるんですか!まっすぐ帰りますよ」

純一「じゃあ、これで失礼します」

ガチャ

純一「女上司さん、今日は直帰していいって」

石上「うん」

純一「石上さんはどうやって帰るの?」

石上「あたしは東横線だけど。橘君は?」

純一「僕はJRだから。じゃあ、今日はお疲れ様。また、明日ね」

石上「・・・・・・あ、橘君」

純一「何?」

石上「何か食べていきません?」

純一「え?」

石上「今日はいろいろと教えてもらちゃったし、お礼にご馳走させてくれない?」

純一「いや、僕は何も教えてないし。それに同期でお礼なんて水くさいじゃない」

石上「・・・・・・うん。じゃあ、言い方変えるね」

純一「?」

石上「同期なんだし橘君のこと、もっと知りたいって言ったら迷惑かな」

純一(・・・・・・こんなことストレートに言える子って自分に自信があるんだろうな)

純一(ひょっとして好意をもたれてるのかな?)

純一(いやいや銀行採用の総合職で○○大学の法学部出身。で、この可愛さなら絶対彼氏いるだろ)

石上「橘君、一人暮らしでしょ?夕食のついでに少し飲んで行きたいな」

純一(何で僕なんか誘うんだろ)

石上「・・・・・・だめ?」

純一(同じチームなんだし、ここまで言われたら断る理由はないか。美也に電話できる時間までに帰れればいいし)

純一「ああ、いいですよ。でも明日も仕事だし軽くね」

石上「やった。じゃあ、行きましょ」

純一(そうだ。美也のこと話しておくか。石上さんの1期後輩になるんだし)
25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/15(木) 22:35:54.04 ID:U9SUpIpdo
居酒屋


純一「居酒屋でごめん。僕いこのあたり全然わからなくて」

石上「でも、美味しそう。何食べようかな」

純一「生ビールでいい?」

石上「はい」

純一「食べるものは任せるね」

石上「うん、それがいいと思う。橘君が選んでたら朝までかかるかもしれないし」

純一「・・・・・・否定できないな」

石上「じゃあ、適当に選ぶね」クス

純一「よろしく」


オマタセシマシター


石上「じゃ、乾杯」

純一「お疲れ様」

石上「今日はありがとう。すごくわかりやすい説明だったし、実際に外での打ち合わせに連れてきてもらえて勉強になりました」

純一「その方が覚えるでしょ?本社はわからないけど、うちはこうやって覚えさせてるみたいだよ」

石上「わたしは入社から5月までずっと研修だったなあ」

純一「僕はずっと女上司さんの下でOJTだったよ。研修なんて2週間で終わったなあ」

石上「でも、研修期間って同期と仲良くなれるのはメリットですよね」

純一「うちは採用数そんなに多くないし。内定後の懇談会でもう全員覚えちゃったくらい」

石上「そうかあ。うちの同期もでもグループ企業に研修に出る人ってそんなに多くないのね。だから、同期の子とも会えなくなるし、何でわたしがって思ってたんだけど」

純一「うん」

石上「でも、総研に研修に来られてよかった。仕事も面白そうだし。何よりグループ企業の同期の人と知り合えたのって、将来財産になると思うのね」

純一「知り合えたって・・・・・・僕と長瀬だけじゃん。財産にはなるわけもないよ、僕たちじゃ」

石上「そんなことないよ。長瀬さんのことはよく知らないけど、橘君と会えただけでもこの1年間は無駄じゃないと思う」

純一「それはほめすぎ」

石上「・・・・・・本当なんだけどな」
26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/15(木) 22:50:15.57 ID:U9SUpIpdo
1時間後


石上「橘君って地元、東京じゃないんでしょ?何で東京の会社受けたの?」

純一「別に理由はないんだ。一応、地元の企業とか地元の公務員試験とかも受かったんだけど、ここが一番面白そうだったから」

石上「何で銀行受けなかったの?金融に興味なかった?」

純一「地元の地銀は内定もらったよ。うちの本社は僕なんかが入れるわけないしさ」

石上「そんなことないですよ。わたしだって入れたんだから。橘君と同じ会社なら研修の1年間が終わっても一緒にいられたのに」

純一(もしかして僕に気がある?いや、やめとこう。何度同じ失敗を繰り返すんだよ、僕は)

純一「学歴が違うじゃん。駅弁大学だしね、僕は」

石上「でも、橘君と同じ大学の人いたよ?同期で」

純一「へえ、そうなんだ・・・・・・あ、そうだ」

石上「なあに?」

純一「(石上さんの仕草って、一々可愛いな)いやさ、妹がいるんだけど、今年内定出たんだよね」

石上「ああ、一つ違いなんだ。どこですか」

純一「石上さんと同じとこ」

石上「えーー!!うちのなの?じゃあ、妹さんわたしの後輩になるのかあ。総合職だよね?」

純一「うん。妹のことよろしくね、石上さん」

石上「妹さんって大学はどこ?」

純一「僕と一緒だよ」

石上「そうなんだ。ねえ、今度妹さん紹介してよ。わたしが研修を終えた頃に入社するんだよね。何か楽しみ♪」

純一「楽しみって・・・・・・。機会があったら紹介するよ」

石上「橘君って、妹さんの話をする時、幸せそうな表情するね」

純一「!?な、何言ってるの」

石上「妹さんのこと大切にしてるんだね。何か少しうらやましい」

純一「そんなことないって。からかわないでよ」

石上「ふふ。ごめんなさい」
30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/15(木) 23:26:51.59 ID:U9SUpIpdo
2時間後


純一「ああ、ご馳走とかいいよ。僕も払うから」

石上「わたしの方から誘ってつきあってもらちゃったんだし、ご馳走させて」

純一「本当にいいって」

石上「・・・・・・じゃあ、橘君が気になるなら次にまた2人で飲んだ時に、橘君がご馳走してね」

純一「次って・・・・・・(つうか、また2人で飲むって)」

石上「じゃ、帰りましょうか」

純一「う、うん」
27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/15(木) 23:16:28.81 ID:U9SUpIpdo
純一のアパート


純一(・・・・・・外出先から直帰できたのに結局10時過ぎかよ)

純一(まあ、この時間なら美也に電話しても平気だな)

純一(よし)

プルルルルル

純一(美也か?)

純一「はい」

美也『にぃに?』

純一「美也、今こっちからかけようと思ってたとこ」

美也『本当?みゃー損しちゃったな』

純一「損って、どうして?」

美也『もう少し待ってれば、にぃにの方から電話かけてもらえたのに』

純一「ごめんな美也。いつも帰りが遅くて」

美也『お仕事だからしかたないよ。今日も残業だったんでしょ?』

純一「あ、いや今日は・・・・・・って、うん。残業(あれ?美也に嘘つく必要ないのに)」

美也『おつかれさま、にぃに』

純一「おまえはどう?ちゃんと大学入ってるか?」

美也『うん。でもほとんだ単位取れちゃってるから、結構暇だよ』

純一「そうだな。今のうちにのんびりしときナよ。社会人になるとそうはいかないんだから」

美也『それはそうだけど・・・・・・暇すぎるよ。ねぇ、にぃに。みゃー、本当にみゃバイトしちゃだめなの?』

純一「必要ないだろ。仕送りは充分だし、何か欲しいものがあるなら僕が買ってやるよ」

美也『欲しいものとかはないけど、社会人になる前にバイトくらい経験した方がいいかなあって』

純一「だめ!僕が一緒に住んでるわけじゃないんだぞ?バイト先でトラブルに巻き込まれたらどうすんだよ」

美也『トラブルって?』

純一「バイト先の男に告られるとかさ・・・・・・」

美也『何よそれ。みゃーを信じられないの?』

純一「だっておまえ・・・・・・そんだけ可愛いいのに野放しにできるか」

美也『な!?可愛いって・・・・・・ はぁ。まあ、にぃにのヤキモチはいつものことだからしょうがないか』

純一「ヤキモチじゃないって」

美也『わかったよ、バイトは諦めるよ。で、週末は帰ってこれそうなの?にぃに』

純一「わからん。でも、仕事じゃなかったら絶対帰るよ」

美也『もう2月近く会ってないんだよ。みゃー寂しいよ・・・・・・』

純一「ごめんな、美也。でも、多分週末は帰れると思う。駅まで迎えに来てな」

美也『うん。みゃー運転上手になったよ。初心者マークもはずれたし』

純一「本当か?今度確かめてあげるよ。じゃあ、また電話するな。愛してるよ美也」

美也『みゃーも愛してるよ、にぃに』

純一「おやすみ」

美也『おやすみなさい、にぃに』
31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/16(金) 22:31:43.69 ID:gkUCpqHBo
金曜日午後 オフィス


石上「橘君、ちょっといいですか」

純一「うん、いいよ」

石上「・・・・・・ちょっと困ったことがあって。相談に乗ってもらえないかな?」

純一「いいよ、どうぞ(仕事で行き詰ったのかな?でも、石上さん行き詰るどころかすごく優秀だし)」

石上「ここではちょっと話づらいな。今晩、付き合ってもらえません?」

純一「え、今夜?(土日は仕事なさそうだから、今夜美也のところに行こうかと思ってたんだけどなあ)」

石上「本当にごめんなさい。でも、ちょっと切羽詰まってて」

純一(仕方ない。明日朝早く帰ればいいか。まだ、美也に連絡してないし)

純一「いいよ。でも、今日も残業だし、遅い時間からになりそうだけどね」

石上「ありがとう橘君。橘君がよければ、わたしは遅くても平気だから」

純一「じゃあ、仕事終わったら話聞くよ」

石上「うん」


同日夜 前に入った居酒屋


石上「・・・・・・あ、橘君。ここ」

純一「ごめん、遅れて」

石上「いえ、わたしが無理に誘ったんだし」

純一「出掛けに女上司さんに仕事をもらちゃってさ」

石上「え、そうなの?わたしも手伝うよ」

純一「ありがと。来週お願いするかも(いい人だな、偉ぶらずに。本社採用なのにな)」

石上「・・・・・・ビールでいい?」

純一「あ、うん」

オマタセシマシター

石上「じゃ・・・・・・今日は急に誘ったのにありがと」

純一「うん、お疲れ」

石上「お疲れ様です」

純一「で、相談って何なの?」

石上「そんなに急かさないで。おつまみ頼んじゃってからでいい?」

純一「う、うん。ごめん(切羽詰ってるんじゃなかったのかよ)」
32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/16(金) 22:52:41.40 ID:gkUCpqHBo
純一「で、どうかしたの?」

石上「うん。長瀬さんのことなんだけど」

純一「長瀬のこと?(ひょっとして石上さん、長瀬のこと好きなっちゃったかな。あいつモテるからなあ)」

石上「その・・・・・・自意識過剰なのかもしれないけど、最近よく長瀬さんに誘われるの」

純一「へぇー。気が付かなかったよ。職場でそんなことあったんだ」

石上「ううん。職場ではほとんど話さないんだけど・・・・・・」

純一「え?じゃあ、どうして」

石上「夜、家に電話がかかってくるの。ここのとこ毎晩」

純一「え、職場で一緒なのに、わざわざ夜つうか仕事帰りなら夜中だよね?夜中に電話してくるの?」

石上「うん。親からはこんな時間に誰からだって怒られるし」

純一(あいつ、何やってるんだ)

石上「かといって職場の人の電話を無下に切れないし」

純一「どんなこと話してくるのか聞いてもいい?」

石上「・・・・・・うん。何かわたしが優秀で感心するとか、そ、その可愛いとか。とりあえずわたしをほめるだけの電話なのね」

純一「うーん」

石上「で、最後の方で、今度飲みに行こうとかデートしようとかって」

純一「まあ、あいつは女に手が早いからね」

石上「やっぱ、そうなんだ」

純一「まあ、石上さん実家だし、毎晩遅い時間に電話じゃ迷惑だよね」

石上「うん。電話する人にもよるけど」

純一「うん?石上さんは彼氏いないの?」

石上「今はいないかな。その・・・・・・好きな人は最近できたけど」

純一「そう。じゃあ、長瀬には興味ないんだよね?」

石上「うん。ないです」

純一「じゃあ、しょうがない。僕から長瀬に注意しとくよ。石上さんは心配しないでいいよ」

石上「でも、いいの?」

純一「ああ。あいつも話せばわかるやつだからさ」

石上「・・・・・・よかった。橘君を頼って正解だった」

純一「同じチームだもんね。これくらいはさせてもらうよ」

石上「・・・・・・ねえ、橘君」

純一「うん」

石上「うまく行かないものだよね。電話して欲しくない人からは電話されて」

純一「そうだね」

石上「・・・・・・気になる人は身近にいるのに電話もしてくれないしね」

純一「そうなの?」キョトン

石上「まあね。今の忘れて。さあ、じゃあ飲もうか。今日はご馳走させてもらうから」

純一「今日はって、次は僕が払う番じゃなかったっけ?」

石上「覚えててくれたんだ。次にふたりで飲んだ時にご馳走してね」

純一(?)
33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/16(金) 23:08:59.21 ID:gkUCpqHBo
翌日土曜日午前10時 駅


美也(・・・・・・にぃに、まだかな)

美也(昨日の夜は残業になったって留守電にメッセージが入っていたけど、今朝帰るって言ってたし)

美也(着く時間を聞いておけばよかったな)

美也(でも、にぃにをお迎えしてあげたいしね。いいや、ここで何時間でもにぃにを待ってよう)


午前11時30分


美也(まだ、来ないな)

美也(何かあったのかな・・・・・・一度おうちに戻ろうかな。にぃにから電話があると困るし)

美也(じゃあ、車に戻ろう)


午後 美也のアパート


ガチャ

美也(電話はっと・・・・・・あ、留守電入ってる)ピッ


注2:アマガミの年代設定の90年代は、携帯電話は大学生や若手社員層にはまだそれほど普及していませんでした。


純一『ごめん美也。昨日遅くなっちゃって寝坊したんで、そっち行くの夕方になるから』

純一『仕事だったんでしょうがなかったんだぞ?変な誤解するなよな』

純一『じゃあ、夕方おまえのところに行くから。迎えは要らないから、夕食だけ頼むな』ピーーー

美也 クス

美也(にぃにったら、またみゃーのこと、すっぽかして)

美也(でも、お仕事大変なのにみゃーのところに帰ってきてくれるにぃにが大好き)

美也(さて。じゃあ、にぃにの好みの夕食でも用意しようかな)ルンルン
35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/17(土) 22:30:52.23 ID:7zHdh4Boo
美也のアパート


美也「にぃに、遅いよ!」ダキツキ

純一「悪かったな美也。昨日寝たの遅くてさ、寝坊しちゃったよ」

美也「・・・・・・駅で待ちぼうけだよ。にぃにのばか」

純一「美也、会いたかったよ」ダキ

美也「みゃーもだよ、にぃに」ウットリ

純一「じゃあ、もう許してくれるか?」ナデナデ

美也「もう・・・・・・。にぃには都合が悪くなるとすぐみゃーを撫でるだから///」

純一「・・・・・・本当に悪かったよ。でも、今日と明日が終わったらまたしばらく会えないんだ。仲直りしようよ」

美也「勝手なにぃに。わかったよ、許してあげる」




美也「ご飯食べようよ。にぃにの好きなさわらを焼いといたよ」

純一「おお、うまそうだな。最近、こういう食事してないから嬉しいよ」

美也「・・・・・・まさか」

純一「ち、違うよ美也。カップ麺とか食ってないって。いや、そりゃたまに食べる時はあるけど、普段はちゃんと食べてるって」

美也「ちゃんとって、どういうの食べてるの?」

純一「仕事帰りの居酒屋でつまみとかさ」

美也「居酒屋?だ、誰と行ってるのよ?」

純一「あ・・・・・・。ほら、前に話しただろ?同期の長瀬ってやつとかさ、先輩とかとね」

美也「ふ-ん」

純一「おまえ、何か疑ってる?」

美也「別にー。にぃにが誰と付き合ったってみゃーには関係ないしね」ツーン

純一「また、無理して。ヤキモチか」

美也「ふん・・・・・・知らない」

純一「冗談だって。普段はコンビニのお弁当買ってるし。つうか、さっきから話題がループしてるぞ」

美也「浮気してないならいいのよ。ってかコンビニのお弁当はダメだっていったでしょ?」

純一「ああ、そうだった。今後は気をつけます」

美也「まあ、今日は許してあげるよ」
36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/17(土) 22:46:29.93 ID:7zHdh4Boo
食後


美也「にぃに、お風呂沸いてるよ」

純一「おまえ、先入っていいよ」

美也「にぃにが先に入りなよ。にぃにが帰ってくるから、せっかくお風呂の掃除もしたのに」

純一「・・・・・・じゃあ、一緒に入る?」

美也「な!?にぃにのエッチ!」

純一「今更照れるような仲じゃないだろ」

美也「・・・・・・死ね」バシ

純一「痛いって」

美也「ほら、さっさと入りなよ」

純一「でも、前にお風呂で一緒になったことあったよな?高校の頃」

美也「ああ、あったあった。懐かしい・・・・・・って、あの時はみゃーが体洗ってたらにぃにが突然入って来たんでしょ!」

純一「あの時、初めておまえの全裸を見たんだよなあ、懐かしい」

美也「しみじみと、いい思い出みたいに言わないでよ、エッチなバカにぃに。ほら、さっさとお風呂入るよ」

純一「え、ああ。結局一緒に入るんじゃないか」

美也「うるさい!うるさい」ドカドカ

純一「痛いって、美也」


バスルーム


純一「一緒に入ると浴槽はちょっと狭いかな」

美也「みゃーのアパートってユニットバスだからね。実家みたいには広くないよ」

純一「この方がおまえが近くていいかも」ギュ

美也「あ・・・・・・。にぃにのエッチ」

純一「何を今更」

美也「だって・・・・・・一緒にお風呂に入って」

美也「そこでにぃにに触られたり抱きしめられたりって初めてじゃん」

純一「そういやそうだな。こんなに何度も愛しあったのに、不思議だな」サワ

美也「あ、あん」

純一「可愛いよ、美也」ナデナデ

美也「い、いや、にぃに」

純一「おまえに会えなくて寂しかったよ・・・・・・」モミモミ

美也「はぁはぁ、みゃーもだよ、にぃに」

純一「感じてる?美也」モミシダキ

美也「はぁはぁ・・・・・にぃに」ウットリ
37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/17(土) 23:01:20.69 ID:7zHdh4Boo
寝室 美也のベッドの上


純一「美也、きれいだよ」

美也「・・・・・・何か恥ずかしいよ。しばらくにぃにに会ってなかったからかな」

純一「・・・・・・なんで胸隠してるの」

美也「だからあ!久しぶりで照れてるの!」

純一「?」

美也「にぃに。社会人になってからまた格好よくなったね」

純一「何、それ?」

美也「何か、ワイルドっていうか精悍な印象になった」

純一「別に僕には変わったっていう自覚はないけどなあ」

美也「でも、さっきにぃにに会ったらドキドキしちゃったもん。今もだけど、ほら」

純一「わかったから、おまえの胸に僕の手を持ってくのはやめてくれ、つうか今まで隠してたくせに」

美也「にぃには胸は大きい方が好き?」

純一「何をいまさら」

美也「ちゃんと答えないとダメ!」

純一「小さくても大きくても僕が好きなのは美也の胸だけだよ」

美也「え///」

純一「僕が好きなのは美也だよ。美也の髪も顔も腕も手も足も全部好きだよ」

美也「にぃに・・・・・・。みゃーもにぃにの全部が好き!」ギュ

純一「美也・・・・・・」

美也「にぃに・・・・・・」

純一「美也・・・・・・って、おい」

美也「なあに」

純一「そこにあるのは何だよ」

美也「首輪と手錠と縄だよ」

純一「・・・・・・」

美也「だって、にぃにが好きだと思って昔よく使ってたやつを探しておいたんだよ」

純一「・・・・・・ふふ」

美也「えへ」

純一「そんな物なくてもいいよ。美也、愛してるよ」ダキ

美也「あ・・・・・・あん。にぃに」
39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/17(土) 23:31:47.10 ID:7zHdh4Boo
翌日 美也の車の中


純一「違うって!右にウィンカー出せ、右に」

美也「だから出してるじゃん」

純一「それは左折の合図だ!」

美也「そうか、失敗失敗」

純一「・・・・・・おい」

美也「なあに?にぃに」

純一「何でそこ曲がった」

美也「え?だって右折でしょ」

純一「そこは高速道路への入り口だ!って、やめろ!Uターンできるわけないだろ。もうしょうがないから高速に入って次のインターで降りるんだ」

美也「はーい」



寿司屋の前の駐車場


純一「おまえの運転する車に乗ったの初めてだけど」

美也「うん」

純一「昔はさ、運転するおまえの肌に悪戯しようかと思ってた時期もあったけど」

美也「そういや、そんなこと言ってたね。にぃにのエッチ」ニシシシ

純一「それどころじゃなく運転下手だな、おまえ。僕はもう決めた。美也はしばらく運転するんじゃない」

美也「ええーー!せっかく免許も取って車も買ったのにー」

純一「僕は可愛い彼女を死なせたくないから言ってるんだ」

美也「だって、軽だけど車買ってぬいぐるみとか一杯飾ったのに」

純一「悪いことは言わないから、おまえの車はそのままぬいぐるみ博物館にしとけ」

美也「にぃに、ひどい!」

純一「だいぶ遅れちゃったな。ほら行くぞ」

美也「うん」
41: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/17(土) 23:39:28.73 ID:7zHdh4Boo
寿司屋


?「へい!いらっしゃーい!!!」

純一「うるせーよ梅原」

梅原「よう!久しぶりだな大将」

棚町「おおー。純一と美也ちゃん、お久しぶり!」

純一「遅くなったな、梅原、薫」

美也「棚町先輩、梅ちゃん。ご無沙汰してます」

梅原「よく来てくれたな、大将。仕事はどうだ?」

純一「ああ、まあ何とかやってるよ」

棚町「あいかわらずはっきりしない男ね。何とかじゃわからないでしょうが」

純一「あはは。悪い悪い、薫。だいぶ仕事にも東京にも慣れてきてたよ」

棚町「それならよかったわ。あたしもこいつもあんたと美也ちゃんのこと心配してたんだからね」

美也「棚町先輩・・・・・・ありがとう」

棚町「いいのよ、美也ちゃん。それより早く座って。何飲む?何食べる?お任せでいいかな」

梅原「少し落ち着けよ、薫」

棚町「落ち着いてるわよ。うるさいなあ、あんたは」

純一「・・・・・・おまえらの結婚って早すぎて心配だったけど、うまくやってるみたいだな」

梅原「そらあ、ラブラ」

棚町「あんたに心配される筋合いはないわよ。むしろあんたの方が心配だったわ」

梅原(・・・・・・)

美也「でも、梅ちゃんがこんなに立派なお店の店長なんてすごいよ」

梅原「まあ、兄貴が本店を継いだんでさ。俺は普通に就職しようかと思ってたんだけど」

純一「うんうん」

梅原「親父がさ、遠回りすることないから支店を任せてやるって話になってな」

梅原「まあ、挑戦?って言うの?そういう意味でチャレンジしたんだけどな」

美也「梅ちゃん、格好いい」

棚町「まあ、真相はどこにも内定しなかったこいつのためにお父さんがお店を作ってくれたんだけどね」

梅原「・・・・・・」


(結婚したんで棚町は旧姓になりますが、このまま棚町表記でいきます)
45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/18(日) 22:04:11.07 ID:Dzlw/yWAo
棚町「純一、お任せでいい?」

純一「あんまりお勘定が高くならなければそれでいいよ」

梅原「任せとけって。サービスしてやるからよ。大将はビールでいいよな。美也ちゃんはどうする?」

美也「みゃーは車の運転があるからウーロン茶でいいです」

純一「いや、おまえ飲んでいいよ。帰りは僕が運転する」

美也「・・・・・・何でよ?」

棚町「何でさ?」

純一「こいつの運転怖いし。酒を我慢して自分で運転した方がよっぽど気が楽だ」

美也「にぃに、ひどい」

梅原「初心者なんだろ?下手に決まってんじゃん。運転させないといつまでたっても上手にならないぞ」

棚町「そうだよ、純一。大体あんた昔から少し過保護だよ。美也ちゃん可哀想じゃん」

美也「もっと言ってやってください。棚町先輩」

棚町「あたしだって、初心者の頃は下手だったけどさ、こいつの車借りて毎日練習してたらいつのまにか上手になってたわよ」

梅原「・・・・・・その間、俺の愛車3台潰されたけどな」ボソ

棚町「うん?」ニコ

梅原「い、いや。ともかく大将、あんまり過保護だと美也ちゃんだって息苦しくなるだろ?おまえ、美也ちゃんのバイトだって止めてるらしいじゃねえか」

美也「もっと言ってやって。梅ちゃん」

純一「そうじゃないよ。僕は兄としての保護責任というか、うちは両親が家にいないから」モゴモゴ

棚町「モゴモゴ言うな。もっとはっきり喋りなさいよ、あんたは」

梅原「ああ、いいや。とにかく大将はこの生ビール飲め!ついでに俺も飲む」

棚町「ほー。仕事中の職人が酒飲むんですか、お父さんに言いつけるわよ」

梅原「まあ、いんじゃんか。せっかく大将と美也ちゃんが来てくれたんだしさ。大体他の客なんていないんだし」

棚町「自慢することか!それ」

純一「まあまあ、ふたりとも。わかったよ。今日のところは美也の運転で帰るよ」

美也「任しといて!」

純一「・・・・・・」
46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/18(日) 22:27:37.03 ID:Dzlw/yWAo
1時間後


棚町「ははは。純一、ほらお酌してあげるよ」

純一「ちょっと、おまえらペースが早いって。僕は日本酒はそんなに飲めな・・・・・・ああ、注ぎすぎだよ、こぼれたじゃんか」

梅原「大将、細けえことはいいんだよ。とにかく飲んで食えって」

純一「食えって、おまえろくに寿司握ってないじゃんか。さっきから飲んでばっかでさ」

棚町「おろ?そういやそうだ。ほら、あんたさっさと何か握りなさいよ」

梅原「うーん?握るのは薫の役目だぜ。つでにフェラ」バチコーン

棚町「いいから早く寿司出せ」

純一「他に客がいないからいいけどさ。いつもこんな営業してるの?」

棚町「んなわけないでしょ。いつもは夫婦2人で真面目にやってるわよ」

純一「でも、客来ないなあ。梅原、おまえの店大丈夫か」

美也「・・・・・・ねえ、にぃに。あの看板」

純一「え、何?」


『本日貸切』


純一「え?な、何で?さっきはこんな札貼ってなかったぞ」

棚町「いいじゃん、いいじゃん。あたしたちは2人とも純一と美也ちゃんに会えるの楽しみにしてたんだからさ」

梅原「気にすんな大将。これで俺も心置きなく酒が飲めるってもんよ」

棚町「あんたは寿司握ってなさい」

梅原「・・・・・・」

美也「ふふふ。やっぱり梅ちゃんと棚町先輩面白い」

純一「そうだな、美也。あと大学の頃おまえと一時期別れてた頃も、こいつらにお世話になったんだよな」

棚町「こら、こいつらって言うな」

純一「ああ、悪い悪い。ほら、酒注ぐからもっと飲みなよ」

棚町「あんたも社会人になってこういう芸を覚えてるようになったのねえ」

純一「芸って何だ芸って」

美也「うふふ」
47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/18(日) 22:38:49.96 ID:Dzlw/yWAo
2時間後


梅原「ほら、こんだけ寿司握ればもう充分だろ?俺も飲むぜ」

棚町「まあ、いいでしょう」

純一「つうか、これ作りすぎだろ。10人分くらいあるじゃんか」

梅原「いいから食えよ大将。いいネタ使ってやったんだからよ」

美也「でも、本当に美味しい。梅ちゃんって実は凄かったんだね」

梅原「おうよ。もっとほめて、もっと」

棚町「何かおかしいなあ」

純一「おかしいって?」

棚町「ノリがイマイチよくない。何でだろ」

純一「今でも、ノリは良すぎると思うんだ」

棚町「あ!わかった!美也ちゃんが素面だからだ」

美也「え?でも美也は運転が」

梅原「うちの駐車場にとめてるんだろ?明日までそのままでいいじゃん」

純一「いや、そういう訳にも」

棚町「今日はタクシーで帰ればいいじゃん。てか、泊まってきなよ」

純一「おいおい薫」

梅原「どうせ、今日は実家に帰るんだろ?タクシーどころか歩いたって帰れるじゃんか」

純一「でもさ」

美也「・・・・・・じゃあ、みゃーもお酒頂くね」

棚町「やったー!じゃ、お酌してあげる」

美也「みゃー、日本酒ってあまり飲んだことないんだけど」

梅原「美也ちゃん、それ福島の吟米大吟醸の冷酒だぜ?絶対美味しいよ」

美也「じゃあ、頂くね」

純一「おいおい、美也」

梅原、棚町、美也「乾杯~!」

純一「・・・・・・」
48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/18(日) 22:52:36.89 ID:Dzlw/yWAo
3時間後


棚町「でさあ、純一。東京の会社ってドラマみたいな感じなの?」

純一「何言ってるんだよ薫」

棚町「イケメンの上司とかさあ、可愛いOLとかいるんでしょ、このこの」

梅原「やっぱ、女のレベル高いか」ワクワク

純一「う~ん、まあ普通だな」

棚町「え~、つまんないの」

梅原「女の子いないの?職場に」

純一「いることはいるけどさ、同期の奴がつば付けてるし」

棚町「残念そうだね、純一」

純一「んなことあるか。って、え」イタイ

美也「にぃに、残念なんだ」ツネ

純一「ち、違うって」

棚町「美也ちゃんの嫉妬きたー!」

美也「嫉妬じゃありません。にぃにがだらしないから怒ったんです」ツン

棚町「美也ちゃんのヤキモチ可愛い。萌え~」

棚町「ほら、美也ちゃんもっと飲んで飲んで」トクトク

美也「あ、はい」グビ

梅原「薫、次ぐペース早すぎだって」

棚町「だって、美也ちゃん飲み始めたの遅かったじゃん」

梅原「あんまり美也ちゃんを酔わせるなよ。で、美也ちゃんは就活どう?」

純一(・・・・・・)

美也「あ、はい。一応決まりました」

棚町「結局、地元の地銀にしたの?そうならうちのお店もよろしくね」

美也「い、いえ。都銀に決めたんですけど」

梅原「お、すごいじゃん、美也ちゃん。どこの銀行?」

純一(・・・・・・)

美也「え、えーと。××銀行です」

棚町「・・・・・・え?えっと」

梅原「え・・・・・・」

純一(やっぱりこの反応かよ)
51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/20(火) 05:25:43.40 ID:HXgxaW2so
棚町「純一、元気出しなよ。美也ちゃんの方がいい企業に就職したからって、気にすることはないからね」

純一「別に気にしてないけど・・・・・・」

梅原「まあ、何だ。大将。親会社とは言え、美也ちゃんとは職種も全然違うんだし、比較してもしょうがないって」

純一「・・・・・・だからあ、グループ企業なだけで親会社とかじゃないし。別に比較とかしてないって」

棚町「純一。美也ちゃんにコンプレックス感じることはないのよ。何よりあんたたちは愛し合ってるんだから」

純一「おまえら、ちょっとは人の話聞け!」

梅原「まあ、飲め。大将、今夜は俺のおごりだからな」

棚町「そうよ、純一。今日は徹底的に飲もう!話聞いてあげるからね」ヨシヨシ

純一「・・・・・・もう、勝手にしろ」

美也(・・・・・・)
52: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/20(火) 05:26:24.48 ID:HXgxaW2so
深夜


梅原「こんな時間に帰ることないだろ?店の2階に部屋空いてるんだから泊まってけよ」

純一「ありがと、梅原。でも、歩いても15分くらいで実家に着けるからさ」

美也「ありがとう、梅ちゃん。明日車取りに来るから一晩駐車させてね」

梅原「それはいけどよ・・・・・・もう帰っちゃうのかよ。つまんねんなあ、久しぶりに2人に会えたのに」

棚町「ほらそこまでにしときな。美也ちゃんと純一だって久しぶりに会えたんだから、二人きりになりたいでしょ」

純一・美也「・・・・・・///」

梅原「おっと、そうか。悪い悪い」

棚町「相変わらず気が回らない男ね。よくそれで客商売しているわね」

純一「まあまあ、薫。梅原ありがとな。勘定してくれる?」

棚町「だからいいって。今日はお店のおごり」

純一「いや、そうはいかないだろ」

梅原「気にすんな大将。俺と大将の仲じゃんか」

棚町「変な遠慮いらないからね」

純一「・・・・・・じゃ、ご馳走になるな。またな、薫、梅原」

美也「ご馳走様、梅ちゃん。棚町先輩」

梅原「おう、また来いよ!」

棚町「気をつけて帰るのよ。純一、美也ちゃんをちゃんとエスコートしなさいよ」

純一「わかってるよ。じゃ、またな」
53: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/20(火) 05:26:55.23 ID:HXgxaW2so
帰路


美也「・・・・・・」

純一「・・・・・・」

美也「・・・・・・ねえ、にぃに」

純一「うん?疲れたか」

美也「そうじゃなくてさ・・・・・・ にぃにって、やっぱり××銀行にみゃーが入行するの気になる?」

純一「まあ、正直最初聞いた時は兄としてちょっと格好悪いかなって思ったんだけどさ」

美也「・・・・・・」

純一「でもま、美也とか薫たちの言うとおりで比較する方がおかしいのかもしれないな」

美也「・・・・・・」

純一「何より、おまえと身近に暮らせるのが嬉しいからさ」

美也「・・・・・・」

純一「だから、もう気にしてないよ」

美也「・・・・・・にぃに、ごめんなさい」

純一「なんでおまえが謝るんだよ」

美也「みゃーが勝手に就職先決めちゃったから・・・・・・。第1志望の企業からから内定もらって舞い上がっちゃってさ」

純一「それは誰でもそうなるだろ」

美也「ううん。みゃーはにぃにのことをまず考えなきゃいけなかったのに。これからはにぃにのことだけを優先しようって決めてたのに」

純一「そっちの方がおかしいだろ」

美也「え?」

純一「おまえのそういう気持ちは嬉しいけどさ、僕だっておまえのことを優先したいんだぜ?」

美也「にぃに・・・・・・」

純一「僕なんかの情けないコンプレックスを思いやってくれて、結果的に美也を第1志望じゃない企業に入らせるなんて、僕の方が耐えられないよ」

美也「にぃに・・・・・・」

純一「・・・・・・はは」ダキ

美也「にぃにってやさしいから、大好きよ」コテ

純一「もう、この話はやめ。お互い自分の会社で頑張ればいいんだしな」ナデナデ

美也「うん。にぃに、愛してる」

純一「・・・・・・早く、家に帰ろうか。美也」ギュ

美也「でも、にぃに、酔ってない?」

純一「大丈夫だよ。明日帰らなきゃいけないんだし、今夜は寝かせないよ」

美也「!・・・・・・な、何、外で恥ずかしいこと言ってるのよ!」

純一「僕の正直な気持ち」

美也「・・・・・・みゃーもそう思ってたとこ」シナダレ

純一「はは」

美也「ふふふ」
54: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/20(火) 05:27:51.86 ID:HXgxaW2so
美也のアパート


美也「にぃに、お風呂入る?って」キャ

純一「美也、おまえを抱きしめたかったよ、梅原の店にいる間ずっと」ダキ

美也「に、にぃに。そんないきなり///」

純一「美也、おまえを今すぐ抱きたい」ナデナデ

美也「ぷっ。クスクス」

純一「ちょ、おまえ、そこ笑うところじゃないだろ」

美也「ごめんごめん、にぃに」ニシシシ

美也「何か必死なにぃにが可愛かったからさ」

純一「風呂とかいらないじゃん。僕は明日の夜帰らなきゃいけないし、今度会えるのだっていつになるかわかんないんだぞ」

美也「そうだね、にぃに。ふざけてごめん。にぃにと会話するのが久しぶりで楽しかったんで。でも、ごめんね」

純一「美也・・・・・・」グイ

美也「あ・・・・・・にぃに」


事後


美也「ねえ、にぃい」

純一「うん」

美也「にぃにが忙しくてみゃーのところに帰れないなら」

純一「うん」

美也「みゃーがにぃにのアパートに会いに行ってもいい?」

純一「それは来てくれれば嬉しいけど・・・・・・でも、僕が帰る時間遅いぞ?ここのとこ残業続きだし」

美也「それでもいいよ。にぃにのご飯とか用意できるし」

純一「・・・・・・美也、おまえ本当に可愛い奴だな」

美也「今頃気づいたの?にぃに。わたし、もう卒論のゼミくらいしか大学入ってないし、誰かさんのせいでバイトも禁止だし、時間あるからね」

純一「その、何だ。おまえ、本当にバイトしたいの?」

美也「したいよ。でもバイト禁止がにぃにのヤキモチから言ってるんなら嬉しいから我慢する」

純一「え、それって」

美也「ヤキモチ以外の理由でバイト禁止なら、にぃにの言うことなんて無視してバイトする」

純一「あ、えーと」

美也「何でバイト禁止なの?ねぇねぇ」

純一「あー、もう!おまえが男と一緒に働くのが嫌なの!ヤキモチだよ、悪いか」

美也「はい、よろしい」クス

美也「にぃにのためにバイトはしないであげるよ」

純一「何で上から目線なんだよ」

美也「でもさあ、真面目な話。みゃーが就職したらそういうヤキモチは抑えないとダメだよ?」

純一「・・・・・・う」

美也「心配しないで、にぃに。みゃーは一生にぃにしか好きならないから」

純一「わかったよ・・・・・・。あまりヤキモチとか心配しないようにする」

美也「よろしい。じゃあ、もう1回しよ?」ニコ

純一「え?」
57: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/20(火) 22:31:29.42 ID:HXgxaW2so
月曜日朝 社内 女上司チームの朝ミーティング中


女上司「ありがとう長瀬君。じゃあ、次。橘君進捗状況をお願い」

純一「はい。市役所の担当の方とのヒアリングで、企画意図が若干ずれていたようなので、資料を微修正します・・・・・・資料はその日中に収集できましたので、2日もあれば終わると思います」

女上司「企画意図って一からやり直すわけじゃないよね?」

純一「はい、あくまでも微修正です。ですので、今週中にはパワーポイント作成も終了できると思います」

女上司「じゃあ、来週月曜日に報告できるわね?」

純一「大丈夫だと思います」

女上司「じゃあ、課長の日程を抑えておくからプレゼンできるようにしておいて」

純一「課長って?女上司さんにまずプレゼンしないと」

女上司「あたしはこれまで報告を受けてるからいいよ。それに橘君なら大丈夫でしょ」

純一「あの、僕はまだ入社1年目なんですけど」

女上司「うちは銀行と違って年功序列意識は低いから。実力があれば1年目とか関係ないよ」

純一「はあ」

女上司「そのかわり出来が悪くても援護しないからね。課長と一緒に酷評してあげるから」ニコ

純一「は、はい(この人は鬼か)」

女上司「はい、じゃ解散。仕事始めて」
58: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/20(火) 22:44:56.62 ID:HXgxaW2so
石上「・・・・・・大変なことになっちゃったね」

純一「一気に課長プレゼンかあ。今週は残業続きになるなあ」

石上「わたし夜更かしとか得意なんで大丈夫ですよ。頑張りましょ」

純一「夜更かしって、遊びじゃないんだから」

石上「・・・・・・表現おかしかったですね。ふふ」

純一「まあ、石上さんは適当に帰っていいから」

石上「どうしてそんなこと言うの?」

純一「あ、いや。でも女性を深夜まで働かせるのって何かまずいでしょ?」

石上「同じチームじゃないですか?何かおまえは役に立たないから帰っていいよって言われた気分です」

純一「あ、違うよ!石上さんは優秀だと思うしいて貰うと助かるけど、あくまで研修でここに来てるんでしょ?」

石上「お給料をもらってる以上はプロパーの人並みに仕事しないとね」ニコ

純一(助けてくれようとしてるのか。本当にいい人だな)

石上「・・・・・・あ。プロパーって言い方気に障った?ごめんね」アタフタ

純一「いや、そんなことないよ。じゃあ、お願いする」

石上「うん!」

純一「じゃあさ、この間追加で収集した資料から、プレゼンに使えそうな画像とか数値データとかを拾っておいてください。ストーリーに沿ってどんな画面が必要か考えれば、必要な資料は絞り込めると思うんだ」

石上「うん。じゃあ、やってみるね。橘君はシナリオを修正するんだよね?」

純一「その前に長瀬と話をしてくる。あいつ今日一日外出だからその前に」

石上「・・・・・・あ。プレゼン終わってからでもいいですよ。こんなに忙しいとこ申し訳ないし」

純一「土日も電話あった?」

石上「それは・・・・・・うん」

純一「だよね。じゃ、ちょっと行って来る」

石上「ごめんね、橘君」
59: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/20(火) 23:02:02.65 ID:HXgxaW2so
純一「長瀬、出掛けに悪い。ちょっとだけ時間いいか?」

長瀬「おう。いいよ、つっても10分くらいならな」

純一「じゃ、ここじゃなんなんで」

長瀬「?」


ミーティングルーム


長瀬「何だよ?橘。こんなとこまで連れてきて」

純一「はっきり聞くけどさ、おまえ石上さんの家に夜電話しまくってるだろ」

長瀬「・・・・・・それ、石上さんに聞いたのか?」

純一「彼女に相談された。遅い時間におまえから電話が来るんで両親にも怒られて困ってるって」

長瀬「そうか。石上さん、橘に相談したのか」

純一「おまえ、石上さんのこと好きなの?」

長瀬「ああ、好きだよ。悪いのか?」

純一「そんなに突っかかるなよ。好きならもっと電話の時間とか配慮してやれよ」

長瀬「だって、担当が違って社内じゃほとんどすれ違いなんだからしょうがないだろ。彼女いつもおまえとべったりだし」

純一「べったりって・・・・・・仕事以外の関係はないぞ」

長瀬「その相談って、どこでされたんだよ?」

純一「え?ああ、直帰した時に居酒屋で」

長瀬「それは仕事以外の関係じゃねえの?」

純一「違うよ。遅くなったから仕事帰りに食事して行こうってなっただけだよ」

長瀬「・・・・・・なあ、橘。彼女何って言ってたんだ?つきあってる奴いるって言ってたか?」

純一「あ、ああ。いや。つきあってる男はいないけど好きな人はいるって」

長瀬「それは俺じゃないわけだな」

純一「・・・・・・」

長瀬「なあ、橘。おまえもひょっとして石上さんのことが」

純一「そんなわけないだろ!だいたい住む世界が違うし、親会社の社員だし」

長瀬「わかってるならいいよ。遅れるとまずいからもう行くな」

純一「おい」

長瀬「心配するな。もう夜電話するのは止めるよ」

純一「それならいいんだけど」

長瀬「なあ、橘」

純一「何だよ」

長瀬「おまえが石上さんに気がないならいいけどよ、おまえと石上さんじゃ出身大学も容姿も経験も全然違うからさ。変な夢見ないほうがいいぞ」

純一「だから、違うって。それにしてもそんな言い方はないだろ。確かにおまえは一流国大出身だけどさ」

長瀬「まあ、そういうことだ。同じ会社の同期でも序列はあるんだからな。少しは気にしろ」

純一「・・・・・・」

長瀬「同期の誼で忠告してやったんだよ。じゃあな」
60: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/20(火) 23:23:06.46 ID:HXgxaW2so
深夜


純一「(今日予定してたよりはかどったな)石上さん、切りのいいところであがろうか」

石上「・・・・・・」

純一「石上さん?」

石上「あ、ごめんなさい。ちょっと集中してて」

純一「切りがよければそろそろ帰ろうか」

石上「あ、うん。とりあえず画像だけ先に選んで加工しといたんだけど、ちょっと見てくれる?」

純一「ああ、いいですよ」

純一「いいじゃない。今日一日で画像は揃っちゃったね」

石上「ホント?やった!」

純一「あとはデータだね。見せ方に工夫がいるから。生データはグラフ化するとかする必要があるから、少し時間かかるかもね」

石上「うん。それは明日以降やります」

純一「じゃ、帰ろうか」

石上「はい・・・・・あの、長瀬さんとお話できた?」

純一「あ、そうか。まだ話してなかったね」

石上「お話聞きたいんで、今日もちょっとだけ付き合ってもらえないかな」

純一「え、これから?(まいったな。また美也に電話できなくなるな)」

石上「遅い時間から悪いんだけど、こんなところじゃ聞けないし」

純一「もう電話しないって言ってたよ。とりあえず安心していいと思うんだけど」

石上「でも、どんな感じの話だったのか直接聞きたいし。わがまま言って申し訳ないけど」

純一「(彼女も不安なんだろうな、しょうがないか)じゃ、ちょっとだけなら」

石上「うん!いつも付き合わせちゃってごめんね。橘君」


いつもの居酒屋


石上「最近、ここばっかだね」

純一「最近って・・・・・・知り合ったばかりでしょ、僕たち」

石上「まあ、そうなんだけど。あ、生ビールでいいんだよね」

純一「うん」

石上「今日は遅いからつまみも一緒に頼んじゃうね。夜食代わりでいいんでしょ」

純一「まあ、これから家で食べる気しないしね・・・・・・石上さんはお母さんが夕食用意してるんじゃないの?」

石上「朝のミーティングで今週は遅くなりそうだと思ったんで、家に電話してキャンセルしてあるの」

純一「そうか」

石上「あ、すいませーん!」
64: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/23(金) 21:18:12.02 ID:/zIalUiMo
石上「いつも無理に誘ってごめんね」

純一「いや・・・・・・。まあ、石上さんも気になるだろうし」

石上「ごめんなさい」

純一「いや。まあ、さっき言ったみたいに、夜の電話は止めるって長瀬も言ってたよ」

石上「よかった。ありがとう橘君」

純一「で、石上さんって好きな人がいるみたいだよとも言っておいた」

石上「・・・・・・石上さん、何か言ってた?」

純一「う、うん。石上さんの好きな人が自分じゃないってことは理解したよ、長瀬も」

石上「そか。嫌な役目させちゃって本当にごめん!」

純一「君が謝ることはないよ。どっちかって言うと石上さんは被害者なんだし」

石上「・・・・・・橘君、長瀬さんと話した後すごく困ったみたいな表情で出てきたじゃない?」

純一「石上さんはよく見てるね」

石上「全部話してもらいたいの。長瀬さんに何か言われたんでしょ?」

純一「・・・・・・まあね」

石上「聞いちゃだめかな」

純一「長瀬にさ、おまえも石上さんのこと好きなんだろ?って言われた」

石上「え?」

純一「僕と石上さんじゃ出身大学も容姿も経験も全然違うから、変な夢見るなってさ」

石上「・・・・・・ひどい」

純一「あ、違うよ?僕は石上さんとどうこうなんて思ってないけど」

石上「・・・・・・」

純一「思ってないんだけど、おまえは学歴とか容姿とかいろいろ底辺なんだよって言われた気がしてさ」

石上「橘君・・・・・・」

純一「長瀬とは気が合うと思ってたんだけどな。でもほら、あいつは一流国立大学出身で、仕事も出来てイケメンでさ・・・・・・。一番仲のいい同期だと思ってたのに、長瀬は僕のこと見下してたのかなって考えたら少し寂しくなっちゃってね」

石上「・・・・・・」

純一「あ、ごめん。だから、困った顔というか浮かない顔してたとしても、長瀬のせいというよりは僕のコンプレックスのせいなんだよね。だから、石上さんが責任を感じることはないからね」
65: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/23(金) 21:32:09.06 ID:/zIalUiMo
石上「・・・・・・ねえ、橘君」

純一「うん」

石上「わたしが前に言ったこと覚えてる?」



回想


石上「うまく行かないものだよね。電話して欲しくない人からは電話されて」

純一「そうだね」

石上「・・・・・・気になる人は身近にいるのに電話もしてくれないしね」


回想終了


純一「気になる人が電話くれないとかって言ってたね」

石上「うん」

純一「石上さんの気になる男って、大学時代の知り合い?それとも本社の同期かな」

石上「・・・・・・」

純一「あ、悪い。興味本位に聞いちゃって。答えてくれなくていいからね」

石上「わたしが最近気になってる人ってね、研修で配属された関連企業の同期の男の子なの」

純一(それって。長瀬じゃないとすると。 ・・・・・・え?)

石上「同じチームで、仕事ではわたしをリードしてくれて、交際関係のトラブルも面倒くさがらずに処理してくれる人で」

純一「・・・・・・もしかして僕?」

石上「うん。わたしが今気になってるのは、橘君です」ニコ
66: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/23(金) 21:51:01.80 ID:/zIalUiMo
純一「あのさあ」

石上「なあに?」

純一「・・・・・・僕と石上さんじゃ出身大学も容姿も経験も全然違うじゃない?何で僕なんかを」

石上「それって、橘君の想い?それとも長瀬君に言われたことをそのまま喋ってるの?」

純一「あ・・・・・・」

石上「あと、橘君って好きって告白している女の子に、いつも何で?って聞き返すの?」

純一「・・・・・・」

石上「何でかなんてわからないよ。今まで付き合った人だって、何でこの人を好きになったのかなんてよくわからないもん」

純一「ごめん」

石上「謝らなくてもいいですよ。 ・・・・・・でも長瀬君ってひどいことを言うのね」

純一「正直、結構ショックだったよ」

石上「今まではね、長瀬君のことは興味がないだけだったんだけど、橘君の話を聞いたら本当に嫌いになっちゃったみたい」

純一「・・・・・・同じチームだし、あまり感情的にならないでくれると助かります」

石上「橘君はあんなひどいことを言われても平気なの?」

純一「平気じゃないけど、職場では感情は抑えないと」

石上「うん。そういう大人の対応ができるところも好き」ニコ

純一(僕に好きだって告白したのに、卑屈にならず余裕を持って笑えるんだな、石上さんは。自分に自信があるからだろうな)

石上「ごめんね、変なこと言っちゃって。 ・・・・・・わたし、橘君に告白したんだけど、返事は急がないからね」

純一「え、いや・・・・・・」

石上「・・・・・・橘君。わたし冷静に喋ってるように見えてるかもしれないけど、胸の仲はどきどきして、舞い上がってて大変なんだよ?」

純一「(・・・・・・これは、まじめに答えないといけないな)ゴメン、石上さん。僕にも気になる・・・・・・いや、好きな子がいるんで、石上さんの気持ちには応えれないんだ。すいません」

石上「うん。わかった」

純一「・・・・・・ごめん」

石上「いいよ。あ、グラス空だね。そろそろビール以外にしない?」

純一「うん・・・・・・」
67: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/23(金) 22:09:26.23 ID:/zIalUiMo
石上「橘君?」

純一「うん」

石上「・・・・・・元気出してよ。どっちが振られたんだかわからないじゃない」

純一「あ、ごめん」

石上「明日からも普通に接してくれる?」

純一「もちろんだよ、石上さん」

石上「・・・・・・よかった。告白して、大切なお友達を失うくらいなら告白しない方がよかったって後悔しちゃうから」

純一「明日からまた仕事頑張ろうか」

石上「うん。これからもよろしくお願いします」クス

純一「こちらこそ(・・・・・・やっぱりもてる女性は振られても余裕なのかな)」



純一のアパート 深夜


純一(何か疲れたな。 ・・・・・・今日はシャワー浴びてすぐ寝よう。明日も遅くなりそうだし」


プルルル


純一(美也かな?)

?『もう! 帰るの遅いよ、にぃに』

純一「悪い悪い、美也。アパートに帰れるのって、今週はずっとこんな時間になると思うよ」

美也『お仕事忙しいの? にぃに』

純一「うん。今週が一つの山場だな」

美也『そうか。にぃにともっと話したいけど、今週は我慢するね』

純一「ごめんな、美也。僕ももっとおまえと話したいんだけど」

美也『わかってるよ、にぃに。 体に気をつけてね。 ちゃんと食事もしないと駄目だよ?』

純一「うん・・・・・・。 おまえと会えないと寂しいよ」

美也『みゃーも寂しい。 でも、来年になったらにぃにと一緒に住めるんだから、みゃー我慢するね』

純一「・・・・・・僕も我慢するよ、美也」

美也『にぃにが寝不足になるといけないから、もう切るね』

純一「・・・・・・もう電話切っちゃうのか」

美也『あ、そうだ。にぃにが朝起きる時間にみゃーが電話してあげるよ』

純一「本当か?それは助かるよ」

美也『小学校の頃からにぃにを起こすのはみゃーの役目だったしね』

純一「じゃあ、6時30分に起こしてくれるか?」

美也『(え?早すぎじゃない)う、うん。いいよ』

純一「ちょっと早すぎるかな。無理しなくていいよ、美也」

美也『む、無理なんかじゃないもん。明日から毎日モーニングコールするからね。ちゃんと起きてね、にぃに』

純一「毎日朝美也に起こされるなんて、実家に2人で住んでた頃みたいだな」

美也『そうだね。じゃあ、今日はもう電話切るね。明日からみゃーの電話に2コールで出るんだよ』

純一「・・・・・・善処する」

美也クス『じゃあ、お休みにぃに』

純一「おやすみ、美也」
70: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/24(土) 22:33:53.92 ID:HHmAwJg5o
翌日 純一のアパート



プルルル


純一「うーん」


プルルル


純一「あ、いけね」


ガチャ

純一「ふぁい」

?『起きてよ、にぃに。遅刻しちゃうよ。また、高橋先生に怒られるよ』

純一「何だ? 高橋先生って誰だよ・・・・・・。つうか美也か?」ウーン

美也『にぃに、おはよう!』

純一(・・・・・・)zzz

美也『・・・・・・にぃに?』

純一(・・・・・・)zzz

美也『起きろ!!!ばかにぃに!』

純一「・・・・・・うん? ああ、美也か。おはよう」

美也『おはようじゃないよ!』プンプン

純一「ああ、悪い。起こしてくれて助かったよ、美也」

美也『みゃーと話してる最中に2度眠とか信じられない』

純一「完全に目が覚めたよ」

美也『それならいいけど。ちゃんとご飯食べて行ってね?』

純一「わかってるよ。ちゃんと買ってある」

美也『・・・・・・カップラーメンじゃないでしょうね?』

純一「・・・・・・」
71: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/24(土) 23:07:11.43 ID:HHmAwJg5o
オフィス 早朝


純一「カップラーメンを朝飯にしてたこと、美也にばれちゃったな」

純一「でも、美也のおかげで遅刻しなくてすんだ・・・・・・つうか随分早く社に着いちゃった」

純一「(あ・・・・・)・石上さん、おはようございます」

石上「おはようございます、橘君。昨日は付き合ってくれてありがとう」ニコ

純一「いや、こちらこそ・・・・・・(やっぱり気まずいな)」

石上「橘君。今日は早いのね」

純一「う、うん。いや・・・・・・別に」

石上「うん?ああ、もしかして昨日のこと気にしてる?」

純一「まあ、少し」

石上「・・・・・・そうだよね、ごめん。でも、普通に接してくれるって約束したじゃない」

純一「そうだったね」

石上「・・・・・・そうだよ」

純一「・・・・・・」

石上「・・・・・・」

純一(気まずい・・・・・・)


?「おはよう石上さん」


石上「・・・・・・おはようございます」

純一「おはよう、長瀬」

長瀬「・・・・・・石上さんっていつも早いよね。大学時代からそうなの?」

純一(・・・・・・無視か)

石上「・・・・・・そんなことないですけど」

長瀬「朝早く出社って社会人の基本だもんな・・・・・・。まあ、誰かに起こしてもらわないと一人では起きられない奴もいるみたいだけどな」チラ

純一(こ、こいつ。高校・大学と妹に起こしてもらってたなんて、こいつに言わなきゃよかった)

長瀬「そんなんだから駅弁しか受からなかったんだろうけどな」

純一(!)

石上「じゃあ、橘君さえよかったら、わたしがモーニングコールしてもいい?」

長瀬「え?」

純一「え」

石上「橘君にはいろいろ教えてもらってばかりだし。せめてそれくらいはさせてもらえないかな?」

純一「・・・・・・」

長瀬「・・・・・・」
72: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/24(土) 23:22:33.39 ID:HHmAwJg5o
昼休み


純一(よし、順調だ。これなら来週にはプレゼンできそうだ)

純一(ビジュアルの方はどうだろ)

純一「石上さん、データの整理はどうかな?」

石上「あ、橘君。今日中には終わると思う」

純一「どれ。ああ、いいね。LOTUS123でデータをグラフ化したんだね」

石上「123は、これまで表計算しか使ってなかったんでちょっと時間かかっちゃったけど」

純一「じゃあ、出来たら見せてください。プレゼン資料に組み込むから」

石上「うん」


ビルの出口


純一(さて、ランチ難民にならないうちに飯食うか。今朝は美也にカップ麺に駄目だしされたんで、朝飯抜きになっちゃったし)

純一(・・・・・・あ、石上さんと長瀬?)


長瀬「いいじゃない。まだ時間あるし、一緒に食事でも。おれ、男女七人夏物語でロケに使われた店知ってるんだけど、結構美味しいぜ」

石上「ごめんなさい。今日はなるべく早く戻って仕事続けたいの」

長瀬「それ、橘に言われたんだろ?気にしなくていいよ、俺が橘に言っておくから。・・・・・・あいつ、仕事で自分ばっか目立とうとしてるんだよ。ガツガツしてて品がないよな。まあ、2流大学出身だから焦ってるんだろうけどさ、石上さんまであいつのペースに巻き込まれることはないんだぜ」

石上「そんなこと・・・・・・。あ!橘君」


純一「え?」

石上「ごめん、遅くなって。食事しながらアイディアを練るんだったよね?」

長瀬「・・・・・・」

純一「あ、ああ。そうだね。じゃ、行こうか」

石上「うん!」ギュ

純一「ちょっと、石上さん。何で手を握るの」ヒソ

石上「ごめん!少しだけ我慢して」ヒソヒソ


長瀬「・・・・・・」チッ
73: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/24(土) 23:47:50.78 ID:HHmAwJg5o
定食屋

石上「・・・・・・」

純一「ごめん。僕、お洒落な店とかって疎くて」

石上「そうじゃないのよ。定食は2種類しかないのに何でそんなに迷うのかなあって思っただけ」クス

純一「悪いね、優柔不断で」

石上「わたしこそ、ごめんね。また迷惑かけちゃって」

純一「長瀬のことは、石上さんのせいじゃないよ」

石上「それはそうだけど」

純一「あいつ、わかってくれたと思ったんだけどな。夜、電話しない代わりに社内でしつこくするとはね」

石上「・・・・・・本当言うとね」

純一「うん」

石上「わたし、こういうの慣れてるから、長瀬さんのことも自分で何とかしちゃえるの」

純一「石上さん?」

石上「こういうこと言うとすごく自惚れているようだけど・・・・・・。昔から男の人に誘われるのは結構頻繁にあったし、うまくお断りするのは得意なの」

純一「・・・・・・じゃ、じゃあ。何で僕に長瀬のこと頼んだの?(なんなんだ一体)」

石上「ごめん、橘君」

純一「いや、いいけど。君の言ってることよくわからないや」

石上「・・・・・・本当にわからないの?」

純一(・・・・・・本当はわかるような気がする。長瀬を利用して僕と親しくなりたかったのかも)

石上「わかってるみたいね。長瀬さんには悪いけど利用させてもらったの。橘君と親しくなるために」

純一「・・・・・・そう」

石上「嫌な女だと思った?」

純一「いや、思わなかった(不思議と嫌悪感はないな。石上さんには卑屈な感じがしないせいか)

石上「ねえ、橘君」

純一「うん」

石上「言い寄ってくる人から避けるのは得意って言ったけど」

純一「うん」

石上「でも、結構疲れるのよね、こういうのって」

純一「それはそうかもね」

石上「わたし、橘君に振られたのはわかってるけど、もう少し協力してもらえないかな」

純一「・・・・・・かまわないけど」

石上「多分、今夜長瀬さんに誘われると思うんだ」

純一「・・・・・・」

石上「あ、自意識過剰な女だって思わないで。でも、絶対とは言わないけど多分声かけられると思うの」

純一「・・・・・・そうなんだ」

石上「その時はまた助けてもらっていい?」

純一「助けるって?」

石上「わたしの話に合わせてくれればいいの。お願い」

純一「まあ、それくらいなら」

石上「よかった。じゃあ、早く食べて社に戻りましょ」

純一「・・・・・・うん」
77: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/25(日) 21:04:18.43 ID:AkYSK4Kbo
フィス 午後


石上「橘君、資料ここに置いておくね」

純一「うん、ありがと」

石上「あとコーヒー、よかったらどうぞ」

純一「・・・・・・わざわざいいのに」

石上「自分ののついでだから。あ、ネクタイ曲がってるよ?」

純一「うん・・・・・・(え?)」

石上「ちょっとじっとしててね」

純一「いいよ、自分でやるから・・・・・・」

石上「はい。直ったよ」

純一「ありがとう」

石上「どういたしまして♪」ニコ

純一(昼休み過ぎてから、石上さんやたら話しかけてくるな)

純一(・・・・・・しかも今日は長瀬が外回りじゃないのに)チラ

長瀬(・・・・・・)ムス

純一(すごい目で石上さんを追ってるな。あれ、絶対怒ってるな)

純一(って、いかん。仕事に集中しないと)


オフィス 午後8時


純一(よし、思ったより進んだな)

純一(そろそろあがろうかな。ちょっと、トイレに行って)


純一(すっきりしたし、帰ろう・・・・・・。あれ、長瀬?)
78: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/25(日) 21:21:34.89 ID:AkYSK4Kbo
長瀬「・・・・・・本当に少しだけでいいんだ。相談させてもらえないかな」

石上「ごめんなさい。もう、遅いですし」

長瀬「まだ8時過ぎじゃない。それとも何か用事があるの」

石上「ええ。実は」キョロキョロ

石上「あ、橘君。もう帰れる?」

長瀬「・・・・・・橘?」

純一「え?あ、ああ。そろそろ帰ろうかと」

石上「よかった。約束忘れられたんじゃないかと心配しちゃったじゃない」

純一「(あ、そうか)う、うん。大丈夫忘れてないから」

石上「今日は橘君と食事の約束があるの。ごめんなさい長瀬さん」

長瀬「・・・・・・橘、今の本当か」

純一「あ、ああ」

長瀬「おまえ、俺がせっかく忠告したこと全然わかってないようだな」

純一「・・・・・・」

長瀬「どこに行くつもりなんだ?」

純一「おまえには関係ないだろ」ムカ

石上「・・・・・・橘君、遅くなっちゃうよ」

純一「ああ、そうだね。行こうか」

長瀬(・・・・・・)


いつもの居酒屋


純一「驚いたな。結局昼に石上さんがいったとおりになったね」

石上「ごめんね、橘君。話に合わせてもらえて助かったわ」

純一「うん。最初ちょっと戸惑ったけど、話をあわすことができてよかった」

石上「何だか橘君には助けてもらってばっかりだね」ニコ

純一「そんなことないけど」

純一(何かここ最近毎日朝から夜まで石上さんと一緒だな)

純一(僕、確かに石上さんの告白断ったよな)

純一(なのに何で、石上さんはこんなに楽しそうに笑って話せるんだろ)

石上「・・・・・・ちょっと、橘君。話聞いてる?」

純一「あ、ごめん。ちょっとぼうっとしてた」

石上「もー。さっきからわたし一人で喋っててバカみたいじゃない」

純一「申し訳ない」

石上「冗談よ」クス

純一(やっぱり可愛いな)ドキ

石上「じゃあ、飲みましょう。今日はそんなに遅くないからゆくっりできるね」

純一「え?」

石上「あ・・・・・・ごめん。迷惑だよね?」

純一「そんなことなはいけど(石上さんの上目遣い、破壊力高いなあ)

石上「やった。じゃあ、おつまみも注文しちゃうね」

純一「よろしく」
79: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/25(日) 21:45:29.02 ID:AkYSK4Kbo
1時間後


純一「ふうん。じゃあ、石上さんって大学に入るまでずっと女子校だったんだ」

石上「うん。だから大学に入って普通に男の人と一緒に授業受けてるっていうのが何か不思議な感じだったなあ」

純一「お嬢様なんだね、石上さん」

石上「そんなことないよ」

純一「女子校ってどんな感じなの?」

石上「見たらきっとがっかりすると思うよ」

純一(何だろう。さっきまで早く帰りたかったのに。僕、石上さんとの会話を今結構楽しんでるな)

石上「女子校の実態見たら女に幻想を抱かなくなるかもね」フフ

純一「そういうものなんだ。秘密の花園みたいで憧れてたんだけどなあ」

石上「ふふ。憧れを壊しちゃってごめんね。あ、グラス空だね。同じのでいい?」

純一「うん。ありがと」

石上「どういたしまして」

純一「石上さん、これまでもてたでしょ?」

石上「なあに、突然。だから小学校から高校までずっと女子校だって」

純一「でも、もててたと思うな」

石上「橘君って何気に鋭いとこあるよね。まあ、そこそこお付き合いはしたかな」

純一「やっぱりね」

石上「でも、何かみんなピンと来なかったなあ」

純一「そうなの?」

石上「今まで好きになった人で、本気になっちゃったのは2人かな」

純一「そうなんだ」

石上「うん。一人目は初恋の人でね。従兄弟のお兄さん」

純一「はは。可愛い思い出だね」

石上「うん。で、2人目は橘君」

純一「・・・・・・ごめん」

石上「あやまらないで。恋人になれなくても一緒にいるだけで楽しいんだから」

純一「・・・・・・うん」

石上「長瀬さんに感謝しなくちゃね」

純一「その必要はないと思う」

石上「そうね」フフ
80: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/25(日) 22:07:09.61 ID:AkYSK4Kbo
2時間後


石上「で、橘君の初恋は?」

純一「中学の時かな、ちゃんと相手を意識したのは」

石上「同級生なの?橘君の方から告白したの?」ワクワク

純一「そんなに面白い話じゃないよ。っていうか、どっちかって言うと暗い話だし」

石上「でも、聞きたいな」

純一「中学の時さ、同級の女の子から告白されてさ」

石上「うんうん」

純一「で、舞い上がっちゃってさ。毎日彼女のことだけ考えてた」

石上「橘君も彼女のこと好きだったのね」

純一「うん。ずっと片思いだった子だったんだけど、まさかその子から告白されるなんて信じられなくてさ。あの時は本当に幸せだったなあ。イブまでは」

石上「イブに何かあったの?」

純一「クリスマスイブの初デートにすっぽかされてそれで終わり」

石上「え?何で?」

純一「後から聞くとどうも罰ゲームとかそういうヤツだったみたい。しばらくショックで彼女作りたいとも思わなかったな」

石上「罰ゲームって・・・・・・ひどい。橘君、初恋で辛い思いしたんだね」

純一「うん。でも、まあもう昔の話だけどね」

石上「高校とか大学で彼女いたんでしょ?」

純一「うん、まあ」

石上「橘君もてそうだもんね」

純一「そんなことないし。てか石上さんこそもてるでしょ」

石上「うん。でも、好きな人には好きになってもらえないんだよね」

純一「・・・・・・ごめん」

石上「だから。何度も謝らないでよ。それで、今は?」

純一「え」ドキ

石上「好きな人がいるっていってたじゃない?」

純一「う、うん」

石上「どんな娘?よかったら教えて」ニコ

純一「昔から知ってる女の子で、大学の後輩なんだ」

石上「橘君に好かれるなんてうらやましい」

純一「そんなことはないけど」

石上「わたしも橘君と同じ大学受ければよかったなあ」

純一「ははは」

石上「そうすれば橘君とわたし、大学時代に出会って付き合ってたかもしれないじゃない?」

純一「出会うって、1学年に何人の学生がいると思ってるの」

石上「何人いても関係ないでしょ。わたしも目立つ方だし、何よりわたしが橘君を見逃すわけないよ」

純一「・・・・・・」
81: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/25(日) 22:22:53.64 ID:AkYSK4Kbo
駅前のタクシー乗り場 午前1時


石上「じゃあ、おやすみなさい。今日も遅くまで付き合ってくれてありがとう」

純一「おやすみ。気をつけて帰ってね」

石上「うん、ありがと。また明日」

純一「さよなら」


純一のアパート


純一(はあ、疲れた。この時間じゃ美也に電話できないな」

純一(でも、何か楽しかったな。美也以外の女の子とこんなに打ち解けたのって、女友と付き合ってる時以来かもな)

純一(さて、明日も早く起きなきゃ行けないし、シャワー入って寝るか」



翌朝 午前6時30分



プルルルル



純一「うーん。ああ、モーニングコールか」

純一「はいはい、起きたよ~」

?「おはよう橘君」

純一「橘君って、何言ってるんだおまえ」ファー

?「寝ぼけてるの?そろそろ起きないと遅刻するんじゃない?」クス

純一「わかったわかった。はい、起きたよ」

?「よかった。橘君さえよかったらこれから毎朝電話してもいいかな?」

純一「うん?おまえ何言って・・・・・・(え?この声)石上さん!?」

石上「まだ、寝ぼけてるの?モーニングコールしてあげるって言ったじゃない」

純一「ああ。うん、そうか。ありがとう、目が覚めたよ(あぶね、美也って呼ばなくてよかった)」ドキドキ

石上「じゃあ、後でね。二度眠しないでね」

純一「うん、また後で・・・・・・」



美也(何度かけてもお話中・・・・・・)

美也(こんな朝早くから誰と電話してるのよ)

美也(にぃに、まさか)

美也(・・・・・・)
84: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/26(月) 21:43:47.83 ID:WmAKp5bFo
10分後


プルルルル


純一「はい」

?「・・・・・・」

純一「・・・・・・もしもし?」

?「・・・・・・」

純一「(ああ、もう面倒くさいな)おはよう美也」

美也「・・・・・・にぃに、誰かと電話してたでしょ?」

純一「してたよ。仕事の話」

美也「ふーん。朝の6時半に仕事の電話するんだ?にぃにの会社って」

純一「ちょっと急ぎの案件があって、上司に電話してたんだよ」

美也「人使いの荒い会社なんだね・・・・・・みゃーはその間に5回くらい電話かけたのに」

純一「だから仕事で」

美也「みゃーだって目覚まし時計3つもかけて、にぃにが遅刻しないようにって頑張ってるのに」

純一「わかってるよ。なあ、美也」

美也「何よ」

純一「話中だったのは悪いけど、何もやましいことはしてないぞ?」

美也「・・・・・・そんなこと言ってないじゃん」

純一「悪かったよ、美也のモーニングコール受けられないで。でも、いつも感謝してるんだぞ?」

美也「・・・・・・」

純一「ごめん、美也」

美也「うん・・・・・みゃーこそごめんなさい、にぃに。お仕事ならしかたないのに」

純一「美也、早くおまえと一緒に暮らしたいよ」

美也「ねえ、にぃに?」

純一「うん」

美也「みゃー、来週東京に行くから」

純一「え?遊びに来るの?」

美也「内定者の懇談会があるの。にぃにのとこに泊まるから」

純一「おお、そうか。今週末は仕事で帰れないんで、また美也に会えないと思ってったんだ」

美也「そんなにみゃーに会いたいの?」クス

純一「あたりまえだろ。おまえに会えなくて毎晩寂しいよ」

美也「・・・・・・毎晩って夜しか寂しくならないんだね、にぃには」

純一「そういう意味じゃないって!」

美也「わかってるよ。さっき怒っちゃってごめんね・・・・・・って、え?」

純一「どうした?」

美也「にぃに、すぐ着替えて!もう7時30分だよ」

純一「話し込んでたらいつの間に。じゃあ、美也。またな」

美也「明日も朝起こしてあげるね」

純一「頼むよ。じゃあな」
85: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/26(月) 22:20:56.16 ID:WmAKp5bFo
レクチャールーム 週明け


純一「・・・・・・以上で××市役所のポローポザルでのプレゼンテーションを終わります。ありがとうございました」

課長「うん、おつかれ。大体いいかな。細かいところで言いたいことはあるけど、全体としてはよく出来てたよ。な?」

女上司「はい。これならいいところまで行けるんじゃないかと思います」

課長「うん。まあ、いいところまでじゃ困るけどね。この仕事は絶対に取ってもらわないと困る」

女上司「はい。そのためには少し細部を調整しようと思います」

課長「そうだな。僕の意見はメモにして君に渡すよ。修正したら本番までにもう一度ここでプレゼンしてな」

女上司「わかりました」

課長「じゃ、おつかれ」

純一・石上「ありがとうございました」


オフィス


石上「橘君、やったね!課長に認められましたね」

純一「うん。石上さんが頑張ってくれたからね」

石上「橘君の企画じゃない?謙遜しなくていいと思うよ」

純一「でも、ビジュアルは石上さんの仕事だし、僕はそっち方面苦手だしね」

石上「・・・・・・2人で譲り合っててもしょうがないか」クス

純一「そうだね。2人の共同作業の結果だな」ハハ

長瀬「課長の受けが良かったんだってな。おめでとう、橘」

純一「・・・・・・長瀬」

長瀬「そんなに睨むなよ。素直に祝ってやってるんだぜ」

純一「それはどうも」

長瀬「まあ、福祉ってうちが弱い分野だし、失敗してもいい訳できるってのはマジでうらやましいぜ。気楽に取り組めていいよな」

純一「・・・・・・」

長瀬「俺なんて、うちの得意な都市計画の仕事してるからよ。失敗しても言い訳できないんだよな」

長瀬「でもまあ、プレゼンはいい出来だったんじゃないの?内容はともかく視覚効果に助けられてさ。おまえ、石上さんにお礼言っといたほうがいいな」

純一「・・・・・・何が言いたいんだよ?」ムカムカ


石上「橘君、橘君」ヒソ

純一「・・・・・・うん」ヒソ

石上「相手しちゃだめ。それよりもう昼休みになってるよ。一緒にお昼に行こう」ヒソヒソ

純一「・・・・・・うん」


長瀬「また内緒話かよ。ま、いいや。よかったた橘」

純一「・・・・・・」

石上「じゃあ、行こうよ。橘君」

純一「うん・・・・・・」
86: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/26(月) 22:46:51.44 ID:WmAKp5bFo
定食屋


純一「さっきはありがとね」

石上「いいよ。わたしも長瀬君の話あれ以上聞きたくなかったし」

純一「・・・・・・石上さんは大人だな」

石上「そんなことないよ・・・・・・。でも、橘君って意外と子供っぽいのね」

純一「え?」

石上「だって。入社数ヶ月で課長が感心するようなプレゼンをすると思えば」

純一「う、うん」

石上「長瀬さんの見え見えの挑発にかっとなったりしてるし」

純一「反省してるよ」

石上「橘君が反省することはないけど。あ、そうだ。今週の作業って結構忙しいかな?」

純一「いや、もう微修正だけのはずだし、意外と今週は楽だと思うよ」

石上「じゃあ、明後日の水曜日、本社に行っても大丈夫?」

純一「大丈夫だと思うけど。何かあるの?」

石上「来年度の内定者の集まりがあるんだって。それで、うちの人事から先輩の経験談っていうのをスピーチしてくれって」

純一「ああ、そういやうちの妹もそんなこと言ってたな」

石上「妹さんも来るんだよね」

純一「うん」

石上「夜、懇親会もあるみたいだから、橘君の妹さんとお話できるかもね」

純一「ああ、そうだね。妹をよろしく頼みます」

石上「ふふ。わかりました。で、実家って銚子でしょ?妹さん、橘君のところに泊まるの?」

純一「妹は最初からそのつもりで予定たててるよ」

石上「何か橘君嬉しそう。妹さんが泊まるのがそんなに嬉しいの?」

純一「な、何言ってるんだよ」

石上「シスコン」

純一「違うって」
87: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/26(月) 22:47:31.53 ID:WmAKp5bFo
石上「・・・・・・でもうらやましい」

純一「妹だよ?」

石上「橘君の恋人になれないなら友達でもいいと思ってたけど」

純一「・・・・・・」

石上「友達より妹ならもっと良かったな」

純一「な、何で?」

石上「だって橘君って、本当に妹さんを大切にしてるんだもん」

純一「普通の兄妹だと思うけどな」

石上「橘君、好きな子がいるって言ってたでしょ?」

純一「う、うん」

石上「不思議とその子のことを知りたいとか、その子に嫉妬するとかってないのよ」

純一「・・・・・・」

石上「でも、何でだろ?橘君の妹さんには嫉妬しちゃうんだよね。何で橘君の好きな子じゃなくて妹さんが気になるのかな」

純一「何言ってんの」

石上「ねえ橘君。妹さんの名前教えて?」

純一「・・・・・・美也だけど」

石上「美也ちゃんか。明後日会うのが楽しみだなあ。きっと可愛いんでしょ?」

純一「まあ、普通じゃないの」

石上「そうか・・・・・・あ、料理来た。早く食べないと昼休み終わっちゃうね」

純一「うん」
90: saga 2011/09/27(火) 22:44:08.50 ID:dchTP6zUo
数日後 東京都千代田区丸の内 ××銀行本店


美也(うわあ。1時間前なのに受付で行列作ってる。1,000人採用で内400人が総合職って言ってたし、これくらいになるか)

美也(にぃにに言われたとおり、早めに来ておいてよかったな。帰ったらにぃににいい子いい子してあげよう)クス

美也(・・・・・・カジュアルな服装でお越しくださいって書いてあったけど、見事にみんなリクルートスーツだなあ。スーツにしといてよかった)

美也(今日これから4時間拘束か。その後も夜も懇親会があるからにぃにとはイチャイチャできないな)

受付「はい、次の人お名前をどうぞ」

美也「あ、はい。橘美也です」



人事部の社員「では次にみなさんの1年先輩たちの体験談を聞いていただきます。最初は、去年入社して現在××投資信託銀行に出向中の先輩です」

先輩「こんにちは~」

内定者たちパチパチ

美也(何だか眠くなっちゃうな・・・・・・。でも周りの人はみんな真面目に聞いてるし、みゃーもちゃんと聞かないと)

人事部の社員「では、次は本店の経営企画室で勤務している○○さんです」

美也(頑張れ、みゃー。ちゃんと聞かないと)

人事部の社員「では、次に現在××総研の公共本部に出向中の石上さんのお話です」

石上「みなさん、こんにちは」

内定者たち(おおー、知的な美人だ)パチパチ

美也(××総研の公共本部って、にぃいがいる部署だ)

美也(綺麗な人・・・・・・。ちょっと大学時代、にぃにの彼女だった女友さんに似てる)

美也(でも、この人の方が何か知的に見えるし、服装のセンスもいいかな)

石上「・・・・・・という訳で、今はとても遣り甲斐のある仕事を任せていただいています。みなさんも入社したら本店勤務だったり支店にいったり出向したり、いろいろな道に分かれると思いますけど、わたしは総研でいい同僚ともめぐり合えたし、仕事も勉強になるし、出向させていただいたことに本当に感謝しています。みなさんも頑張ってください」

内定者たち(綺麗だなあ、この人)パチパチ

美也(・・・・・・にぃにもこの人のこと知ってるのかな?えーと石上さんだっけ。覚えておいてにぃにに聞いてみよう)
91: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/27(火) 23:01:29.52 ID:dchTP6zUo
都心のホテルのバンケットルーム 同日夜


人事部の社員「では、内定者の懇親会を行います。はじめに人事部長の△△からあいさつを」


1時間後


石上(こんだけ多いと中々美也ちゃんを見つけられないな。あ、事務方で来ている人事課の彼に聞いてみようかな)

石上「鈴木君」

鈴木「ああ、石上さん。お久しぶり」

石上「ちょっと聞きたいんだけど。えーとね。知り合いが内定出て、今日来ているらしいんだけど見つけられなくてね」

鈴木「あー、そりゃこんだけ人が多いといれば見つけるの難しいと思うよ」

石上「人事課の鈴木君なら何とかしてくれるんじゃないかと思って」ニコ

鈴木ドキ「そ、そりゃ同期の誼で何とかしてあげたいけど。特に石上さんの頼みなら」

石上「どうしたらいいかな?」

鈴木「う~ん」

石上「お願い?」ウワメヅカイ

鈴木ドキドキ「・・・・・・石上さんに頼まれちゃしょうがないな。何て名前?」

石上「橘美也っていう子。△△大の子なんだけど」

鈴木「何だ、知り合いって橘さんのことか」

石上「え?鈴木君知ってるの?」

鈴木「うん、まあ。一般職も含めて今年の内定者の中で一番可愛いっていう評判だよ。人事課内では」

石上「・・・・・・君たち、どういう基準で内定出してるのよ」

鈴木「い、いや、違うよ。真面目に選考した結果残った子だけど、その子の容姿がたまたますごく可愛かったということ。一般職と違って女性の容姿なんか評価対象外なのにね」

石上「要するに優秀な上に可愛いってことね」

鈴木「まあね。△△大から女性の総合職採用するのは久しぶりみたいだよ」

石上「そうか。で、橘さんに挨拶したいんだけど、どうすれば見つけられる?」

鈴木「立食で席決まってないからなあ。放送で呼び出すくらいしか手はないね」

石上「お願いできる?恩に着るから」

鈴木ドキドキドキ「しょうがないなあ。じゃあ、こうするか」

石上「なあに?」

鈴木「地方から来てる子たちにはホテル用意してるんだけど、彼女はホテルの用意不要って返事してきたんだよね」

石上「そうでしょうね・・・・・・(お兄さんのところに泊まるしね)」

鈴木「そういう回答した女の子って彼女だけだから念のために宿泊先を確認するという名目なら放送で呼び出しても不自然じゃないかも」

石上「さすが鈴木君。あいりがとう!今度お礼するからね」
92: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/27(火) 23:12:20.70 ID:dchTP6zUo
?「君、橘さんだっけ?」

美也「はい(誰だっけ)」

?「1次面接の待合室で一緒だったでしょ?ほら、少し話したじゃん」

美也「(全然覚えてないけど)そうでしたっけ」ニコ

?「(か、可愛い)うん。お互い最後まで残ってよかったね」

美也「そうですね」

??「話中ごめん。確か橘さんですよね?」

美也「はい」

??「俺のこと覚えてない?2次面接一緒だったんだけど」

美也「あ、はい(誰?)」

人事課A「橘さん、おめでとう」

美也「あ、はい。ありがとうございます」

人事課A「君がうちに決めてくれてよかったよ。今だから言うけど同業他社に取られちゃうんじゃないかと思ってた」

美也「いえ。最初から御社が第一希望でしたから」

人事課A「もう、御社って言わなくていいよ。で、ぶっちゃけメガバン他社から内定出てたんでしょ?」

美也「はい。頂きました」

人事課A「本当によく決めてくれたよ・・・・・・あ、グラス空だね?どうぞ」

美也「頂きます」

人事課A「酒入ってるから言うけど、君の評価すごく高いよ。多分、出向じゃなくて本社勤務になると思うな」

美也「ありがとうございます」
93: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/27(火) 23:36:59.97 ID:dchTP6zUo
アナウンス「橘美也さん。いらっしゃいましたらクロークまでおいでください」


人事課A「何だ?」

美也「すいません。呼ばれてるみたいなんで言ってきます」

人事課A「そうだね。行った方がいいな(話の途中なのに)」チ

美也「失礼します」


バンケットルーム外クローク前


鈴木「ああ、橘さん、呼び出してごめん」

美也「(人事課の人だ)いえ」

鈴木「念のために確認なんだけどさ。君って自宅都内じゃないでしょ?ホテル用意しなくて本当に大丈夫だった?」

美也「あ、はい。家族が都内にいるものですから、そこで泊めてもらうことになってます。ご心配いただいてありがとうございます」

鈴木「それならよかった。女性なんでちょっと心配になってね」

美也「はい。大丈夫です。ありがとうございます」

鈴木「うん。用事はそれだけです。石上さん?」

石上「ありがとう、鈴木君。あ、Aさんがあなたのこと呼んでるみたいよ?」

鈴木「やべ。呼び出しのアナウンスのこと聞かれるな。じゃあね」

美也(??)

石上「はじめまして、橘さん。わたしは今年入行した石上です。よろしくね」

美也「よろしくお願いします。先ほどのお話、参考になりました」

石上「今日橘さんが来るって聞いてたんで、会えるの楽しみにしてたのよ」ニコ

美也「え?」

石上「わたし、総研の公共本部であなたのお兄さんと一緒に仕事させてもらってるのね。それで、橘君から美也さんのこと聞いてたから」

美也「そうなんですか!兄と一緒に仕事されてるんですね。いつも兄がお世話になってます」

石上「ううん、わたしが橘君にいろいろ教わってるの。わたしの方がお世話になってるのよ。お兄さん、本当に優秀だね」

美也「そんなことないですよ。兄がご迷惑かけてるんじゃないですか?(こんなところでにぃにの話題が出るなって何か嬉しい)」

石上「そんなことないって。橘君、新人離れした仕事振りだし、クライアントの受けもいいし。橘君と知り合ったばかりだけど、わたしなんかとても敵わないいなあ」

美也「兄を誉めていただいてありがとうございます。でも、石上さんの買いかぶりですよ」

石上「1年しか違わないんだから、かしこまらないで。美也ちゃんだっけ?名前で呼んでもいい?」

美也「はい」

石上「自己紹介が遅くなったけど、石上由里子です。よろしく。美也ちゃんの1年先輩。それで、1年間の出向で橘君と一緒に仕事させてもらってるんだけど」

美也「よろしくお願いします」

石上「こないだ二人きりで飲んだ時に、妹がわたしの後輩になるんでよろしくって頼まれたの」

美也(え?二人きりって)

石上「これから仲良くしましょうね。美也ちゃん」

美也「はい。よろしくお願いします(二人きり?にぃに最近忙しくて毎日残業とか言ってたのに)」

石上「じゃあ、あっちのテーブルで何か食べようか」

美也「あ、はい」
99: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/28(水) 22:56:18.34 ID:OiuMLSvko
バンケットルーム内 立食テーブル


石上「ねえ美也ちゃん。ちょっと聞いていい?」

美也「あ、はい。何でしょう」

石上「美也ちゃんのお兄さんって、大学時代から好きな女の人がいるって本当?」

美也「え?兄がそう言ったんですか?」

石上「最近よく橘君と二人きりで飲みに行ったりするんだけれど」

美也(・・・・・・何よそれ)ムカ

石上「それでちょっとそういう雰囲気になったって言うか・・・・・・。付き合ってる人がいるかとかそういう話になってね」

美也「・・・・・・」

石上「それで、橘君が好きな女の子がいるって言ってたから少し気になっちゃって」

美也(何、この女。最初に考えていたほどいい人じゃないかも・・・・・・っていうか、にぃにに気があるの?)

美也「大学時代お付き合いしてた人はいましたけど」

石上「うんうん」

美也「・・・・・・でも別れちゃいましたし」

石上「うーん、そうか。誰なんなろう?」

美也「何でそんなことを知りたいんですか?」

石上「え?ああ、あはは」

石上「美也ちゃんってブラコンでしょ?」

美也「!?」

石上「橘君もいい加減シスコンだと思ったけど」

美也「違います!」

石上「いいじゃん。兄妹が仲がいいなんてうらやましいよ」

美也「・・・・・・」

石上「橘君と異常なほど仲がいい美也ちゃんなら橘君の好きな人を知ってるかと思ってたのになあ」

美也「(異常って何よ異常って)よくわからないです。ごめんなさい」

石上「仲が良くてもしょせん兄妹か。好きな人のことまで相談する仲じゃないんだね」

美也「はい(この人、先輩だけど何かむかつく)」
100: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/28(水) 23:10:25.75 ID:OiuMLSvko
石上「人事の鈴木君に聞いたんだけど、美也ちゃんって相当期待されてるみたいだね」

美也「そうなんですか?自分ではよくわからないですけど」

石上「そんなことないでしょ? 美也ちゃんって自分の優秀なところとか可愛いところとかよくわかってるような気がするな」クス

美也「え?」

石上「わかってて演技してるでしょ?」

美也「何を言われているのかわからないんですけど」キッ

石上「いいのよ、わからなければ。気にしないで」

美也「・・・・・・石上先輩も」

石上「うん」

美也「ご自分の綺麗さとか頭がいいところとか良くわかっていらっしゃるみたいですね」

石上「え?」

美也「それでもそういうことを鼻にかけない、いい人に見えますよね」

石上(何、この子・・・・・・)

石上「あはは。そんなことないんだけどな。わたしって同期の人たちからは『天然』って言われてるくらいだし」

美也「先輩の同期の方たちって素直で信じやすい人ばかりなんですね」

石上「そうなのかな」ウフフ

美也「そうですよ」フフ

石上「人事の鈴木君から聞いたんだけど、美也ちゃんって一般職の子も含めて今年度の内定者の中で一番可愛いって言われてるらしいよ」

美也「そうですか。わたしはあまりそういうことに興味がないんで・・・・・・先輩こそ、去年人事の人から同じこと言われたんじゃないんですか?」

石上「そんなことないよ~。わたしは職場で女を売り物にしなきゃならないほど、能力がないって思ってないし。あ。もちろん美也ちゃんには負けるけど」

美也「いろいろためになる話をありがとうございます。兄にも先輩にはお世話になったって報告しておきますね」ニコ

石上「そこでお兄さんが出て来るんだー。本当に相違相愛のカップルみたいだね。何か嫉妬しちゃうなあ」

美也「・・・・・・」
104: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/29(木) 23:00:33.77 ID:2JeBWUA9o
当日夜 純一のアパート


純一「それで、内定者懇談会はどうだった?知り合いとか出来たか?」

美也「う~ん。出来たって言えば出来たんだけどさ」

純一「何だよ、それ」

美也「同期の子達とはお話したけどあまり覚えられなかったよ」

純一「まあ、おまえのとこは採用数多いし、しかたないね」

美也「それより1期先輩の人にずっと話しかけられててさ。正直少しうざかったな」チラ

純一「お、おまえ、そいつに言い寄られたり変なことされてないだろうな?」

美也「・・・・・・何言ってるの、にぃに。女の先輩だよ」

純一「何だ、そうか・・・・・・あれ、ひょっとして石上さんか?」

美也「うん」

純一「うちで研修中の子なんだよね。美也のことよろしくって頼んでおいたんだ。そうかあ、さっそく美也の面倒みてくれたのか」

美也「・・・・・・面倒みてもらってはないと思うけど、話しかけてはくれたよ」

純一「彼女、いい人だろ?美人で優秀だけど、それを少しも鼻にかけないし」

美也「・・・・・・にぃにも女の人を見る目がないね」ボソ

純一「え?何だって」

美也「何でもないよ。そんなことより、仕事で毎日遅いんだよね?にぃには」

純一「そうなんだよ。プレゼンの本番が終われば少し楽になると思うけどな」

美也「忙中閑ありか」

純一「何だって?」

美也「そんなに忙しいのに石上さんとは『二人きり』で飲みにいったりする時間は取れるんだね」

純一「な、何言ってるんだよ美也」ドキ

美也「隠したってだめだよ。石上さんから聞いたんだから」

純一(石上さん!これは一体どういう嫌がらせだよ)

純一「勘違いするなって。飲みに行ったというよりは、残業後に食事して帰っただけだからな。実際、家で夕食なんて作ってる時間ないし、カップラーメンはおまえに禁止されてるし」

美也「まあ、いいよ。にぃにのこと信じてるから。でも、石上さんって絶対にぃにを狙ってるよね」

純一「・・・・・・そんなことないよ。仮にそうだとしても僕はおまえ以外の女の子に興味ないしな」ドキドキ

美也「うん。それは信じてるよ」ダキツキ

純一「美也?」

美也「にぃに、こんな話はもうやめてベッドに行こ?」

純一「・・・・・・美也」ダキ
105: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/29(木) 23:22:26.82 ID:2JeBWUA9o
翌朝


美也「にぃに、起きてよ。遅刻しちゃうよ」

純一「・・・・・・ああ、美也。おはよ」ダキ

美也「早く起きてね。食事できてるから」チュ

純一「美也・・・・・・」ナデナデ

美也「ちょ、ちょっと、にぃに。こんなことしてる時間ないよ。昨日の夜ので満足できなかったの?」ジタバタ

純一「普段おまえと会えないからな。でも、わかったよ。遅刻できないし起きるよ」

美也「みゃーだって我慢してるんだから、にぃにも少し我慢しなきゃダメ」

純一「わかったって。愛してるよ、美也」チュ

美也「にぃにったら///。みゃー、今夜もここに泊まるからね」

純一「うん。残業になると思うけど、できるだけ早く帰って来るからね」

美也「食事してきちゃダメだよ?みゃーが夕食作るんだから」

純一「楽しみだよ、美也」

美也「にぃにが喜んでくれるとみゃーも嬉しいよ」ギュ


プルルルル


美也「電話?朝の6時30分前に??」

純一(げ!?やべ)

美也「電話に出ないの?にぃに」

純一「あ、いや。うん、今電話に取るとこ」
106: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/29(木) 23:23:09.99 ID:2JeBWUA9o
ガチャ


純一「はい」

石上『おはよう、橘君。今日は起きてたみたいだね』クス

純一「あ、お、おはようございます・・・・。その件につきましては、出社してすぐご報告いたしますので」

石上『・・・・・・橘君?寝ぼけてるの?』

純一「いえ。準備はできていますので、大丈夫です」

石上『・・・・・・もしかして女を連れ込んでる?』

純一「いえ!そんなことはないです。詳細は朝のミーティングで報告しますので」

石上『一緒にいるの妹さんじゃなくて、好きな子なのね』

純一「いえ。本当に問題ありませんから」

石上『ま、いいや・・・・・・。今は許してあげるね。出社したら説明してもらえるんだよね?』

純一「はい、もちろんです。再プレゼンの準備はできてますので」

石上「ま、いいか。じゃあ、あとでね」

純一「失礼します。また、後ほど」


ガチャ


美也「にぃにの会社って人使い荒いんだねえ。早朝から電話が来るなんて」

純一(何とかごまかせたか)「まあね。今は佳境に入ってるからな」

美也「じゃあ、今日も遅くなるの?」ウルウル

純一「美也と少しでも一緒にいたいから頑張るよ」ウワノソラ

美也「にぃに?」

純一(ああ~。石上さんには何と言い訳すればいいんだろ。まさか、妹が好きな子で彼女ですなんて言えないし)

美也「にぃに、早く顔洗って食事しちゃってよ」

純一(大体石上さんの告白はきっちり断ったのに、何でこんな目に会うんだろ)

美也「にぃに!」

純一「あ、ああ。わかった」ドキ
110: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/30(金) 22:10:37.86 ID:T9T4bfRXo
2時間後 オフィス内


純一「おはようございます」

石上「おはようございます、橘君」ニコ

純一「・・・・・・」

石上「はい。コーヒーどうぞ」

純一「あ、ありがとう」

石上「いいえ。ついでだから」ニコニコ

純一「えとさ、石上さん」

石上「はい?」ニコ

純一(すごくいい笑顔なのに寒気を感じるのは僕だけかな?)

長瀬「おはよう、橘。おはよう、石上さん」

純一「あ、おはよう長瀬」

石上「おはようございます」

長瀬「橘、職場は仕事をする場所なんだから、少しわきまえてくれナかな」

純一「何言ってるんだよ」

長瀬「朝っぱらから職場で女口説くなって言ってるんだよ。しかも無駄な努力だしよ」

純一「別にやましいことはしてないよ。つうかおまえに言われたくないよ」

石上「・・・・・・やめましょ、橘君。相手しちゃだめ」ヒソ

純一「う、うん」ヒソ

長瀬「また二人でひそひそ話しか。職場ではそういうのを止めてほしいんだけどな」

石上「スルーして橘君」ヒソ

純一「・・・・・・」

長瀬「ま、いいや。嫌われてる仲間はずれ男はもう邪魔しないからさ。じゃあな」スタスタ

石上「・・・・・・ふぅ」

純一「ありがと、石上さん」

石上「どういたしまして」ニコ
111: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/30(金) 22:32:31.00 ID:T9T4bfRXo
純一「・・・・・・ようやく長瀬がいなくなったか」

石上「そんなことより朝のことだけど」

純一(ドキ)

石上「誰か部屋にいたでしょ?」

純一「う、うん。妹が内定者懇談会に出席するんで、うちに泊まってたけど」

石上「・・・・・・ああ、そうか。でも妹さん以外の異性を泊めたりしてなかった?」

純一「妹が来てるのに彼女を連れ込むなんて出来るわけないだろ」

石上「じゃあ、何で電話を誤魔化そうとした?妹さんに、職場の同僚の電話を誤魔化す必要なんてないじゃない」

純一「い、いや。つまり」

石上「・・・・・・つまり?」

純一「職場の人からの電話にしては時間が早いだろ?妹に変に勘ぐられるのが嫌だったんだよ」

石上「変に勘ぐられるって。ただのモーニングコールじゃない?彼女ならともかく家族にも隠さなきゃいけないの?」

純一「そうじゃないけど」

石上「わたしは橘君の彼女じゃないから、別に気にする必要ないでしょ?っていうか、仮にわたしが橘君と付き合っていたとして」

純一「う、うん」

石上「わたしって、妹さんにわたしが彼女だっていうことを隠したくなるほどレベルの低い相手だってこと?わたしと付き合ってるなんて勘違いされたら恥ずかしいの?」

純一「いや、極端なこと言うなよ。前にも言ったと思うけど、出身大学も容姿も経験も僕なんかじゃ敵わないし仮にそういう仲だとしたら恥ずかしいどころかむしろ自慢してると思うよ」

石上「じゃあ、何で!?」ニラミ

純一「石上さん、声大きいよ」

石上「あ、ごめん。でも、早起きしてどきどきしながらモーニングコールしたのに・・・・・・。結構ショックだったんだよ」

純一「ごめん・・・・・・」

石上「ねえ橘君。本当にそう思ってくれてるなら何で美也ちゃんに隠そうとしたの?美也ちゃんしかいなかったんでしょ」

純一「だ、だからそれは」

石上「ひょっとして橘君と美也ちゃんって、兄妹にしてはお互いに依存しすぎてるんじゃない?」

純一「・・・・・・」
112: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/30(金) 22:53:06.92 ID:T9T4bfRXo
お昼休み いつもの定食屋


純一(女上司さんに呼ばれたから石上さんの追及は途中で終わったんだけど)

純一(石上さん、絶対美也のこと気にしてるよな)

純一(共依存?そんなんじゃないけど。むしろ前向きな恋人関係だよな、僕と美也は)

純一(まあ、兄妹だからその辺を深く追求されても困るわけで)

純一(石上さんにお昼を誘われる前にダッシュで社から出てきちゃったけど、考えたらほとんどここで昼飯食ってるし追いかけられたらまた朝の話の蒸し返しになっちゃうな・・・・・・石上さん、今日は社食に行ってくれないかな」)

純一(まあ、美也にはっきり言えばすむ話なんだけれども。石上さんから告白されたけど断ったって)

純一(僕と美也はこれまでいろいろなことを乗り越えてきて、お互いを信頼できるようになったわけだし)

純一(・・・・・・こんなことを隠していて何が恋人だよっていう気もするな)

純一(はぁ。自己嫌悪だ。美也に申し訳ないな)

純一(って、あれ?石上さん)

純一(長瀬と一緒だ。また無理に誘われたのかな)



長瀬「だめもとで声をかけたのに、本当に一緒に食事に来てくれるんだ。嬉しいよ」

石上「長瀬さん大げさだよ。昼食くらいで」

長瀬「だって、今朝だって橘と二人で俺のこと睨んでただろ?石上さんにはすっかり嫌われたと思ってたよ」

石上「そんなことないですよ。ただ、同じチームの橘君と食事したり飲みに行くたびに変に勘ぐるのはどうかと思いますけど」クス

長瀬「ごめん!これまで嫌な態度とって悪かったよ。橘はともかく石上さんに嫌な思いをさせたなら謝るよ」

石上「別に気にしてませんよ」

長瀬「本当? ならよかった。あ、あそこ空いてるよ」

石上「うん」



純一(・・・・・・)

純一(何なんだ?あいつら仲良さそうじゃん)

純一(まあ、僕には美也がいるからどうでもいいけど。石上さんも長瀬と仲良くなるできるなら、何で僕にあんな嫌な役目を僕にさせたんだろ)

純一(何かもやもやするな。まあ、石上さんの告白を断った僕には何も言う権利はないけどな)

純一(あれ、明日からはモーニングコールないのかな? ないなら美也に言い訳しないですむから助かるんだけど)
113: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/09/30(金) 23:10:29.67 ID:T9T4bfRXo
オフィス 午後


石上「長瀬さん、コーヒー入れるけど飲む?」

長瀬「え?俺にも入れてくれるの」

石上「まあ、お昼ご馳走になっちゃったし、お礼ということで」

長瀬「ありがと。感激だよ」

石上「大げさね。でもいいの?事務員ちゃんが睨んでるよ?」クス

長瀬「いいのいいの。石上さんが気にすることじゃないよ」ヒソ

石上「知らないよ?どうなってもフォローしないからね」クスクス

長瀬「全然、無問題!任せといてよ」

石上「ならいいけど」


純一(石上さん、午後は僕に話しかけないで、長瀬とばっか話してるな。まあ、仕事で調整することはないから、いいっていやいいんだけど)

純一(もう今朝の電話の件は、忘れてくれたんだろうか)

純一(・・・・・・にしても、ちょっと長瀬とばっかり話しすぎだろ?石上さん)

純一(い、いや。僕には美也がいるし、石上さんの告白を断ってるんだし。石上さんと長瀬が付き合ったって無関係なんだけど)

純一(それにしてもここは会社だしな。職場は仕事をする場所なんだから、少しわきまえてくれないと)

純一(あれ?・・・・・・これって、今朝長瀬に言われたセリフじゃないか)

純一(はあ、仕事しよ。来週はプレゼン本番だし)

純一(何であの二人の会話が気になるんだろ?僕には最高の恋人がいるのに)

純一(今日は食事しないで帰らないと、美也が怒るな)

純一(・・・・・・美也。早くおまえに会いたいよ)
119: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/01(土) 20:57:03.16 ID:fu6XRYZTo
オフィス 午後8時


純一(だいぶ出来たし、今日はもう帰っても大丈夫そうだな)

純一(長瀬と石上さんもまだ仕事してるな・・・・・・少し帰りづらいけど、今日は美也が待ってるし)

長瀬「あ~疲れた。そろそろ帰るか」

石上「おつかれさま、長瀬君」ニコ

純一(長瀬さんって呼んでたのにいつのまにか長瀬君になってるんだ・・・・・・まあ、どうでもいいけど)

長瀬「石上さんは、まだ帰らないの?」

石上「もう少しやっていこうかと思って」

長瀬「そうか。じゃあ、お先に」

純一(やけにあっさり帰るんだな。あれ?じゃあ石上さんと二人きり?)

純一(まあ、でも美也が待ってるからもう帰らないとな)

純一(・・・・・・)

純一(・・・・・・長瀬が帰っても石上さん、話しかけてこないな)

純一(もう帰るか)

純一「石上さん、悪いけど今日は先にあがります」

石上「おつかれさまでした」

純一「じゃ、お先に(そっけないなあ)」

長瀬「ああ、まいったなあ。雨降ってるよ、外」

石上「あれ、長瀬君どうしたの?」

長瀬「傘持ってなくてさあ。結構振ってるぜ?傘なしじゃ駅まで行けないくらい」

純一(雨か・・・・・・置き傘ないし、どうしようかなあ)

長瀬「橘、傘余分に持ってない?」

橘「余分にどころか自分の分だってないよ」

長瀬「使えないやつだなあ」

橘ムカ

石上「長瀬君、駅までなら入れていこうか」

長瀬「え、いいの?」

石上「置き傘あるし・・・・・・駅までだけど」

長瀬「駅のキオスクで傘買えるから助かるよ。でも残業いいのか」

石上「うん。もういいや。じゃ、支度するからちょっと待ってね」

長瀬「おう」

純一(・・・・・・)
120: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/01(土) 21:30:29.22 ID:fu6XRYZTo
純一(二人とも帰っちゃったな)

純一(しかし石上さんも訳わかんないよな。長瀬の電話が迷惑だとか言ってたくせに。あと長瀬には興味がないとも言ってた・・・・・・。つうか、僕のこと好きだって言ってたのに)

純一(これだから女は面倒くさい。やっぱり彼女にするのは妹に限るな)

純一(・・・・・・)

純一(何か寂しい。しかも帰りたくても傘がないし)

純一(雨やまないかな。いつまで待ってればいいんだろ)


プルルルル


純一「(え。こんな時間に電話か?)はい。××総研公共本部です」

?『あ、あの、いつも兄がお世話になっております。橘純一の家の者ですけど、橘をお願いしたいんですが』

純一「美也?」

美也『あ、にぃにが出たんだ。よかった』

純一「どうしたの?会社に電話してくるなんて」

美也『雨降ってきたでしょ?にぃに、傘持ってるのかなあって思って』

純一「持ってないんだよ。悪いな美也。止むまで帰れないかも」

美也『お仕事はもういいの?』

純一「仕事は終わってるんだけど、雨が」

美也『ふふ、電話してよかった』

純一「え?」

美也『今、にぃにの会社の外にいるの。傘もあるから降りてきて」

純一「美也・・・・・・」

美也『どしたの?にぃに』

純一「わざわざここまで迎えに来てくれたのか」

美也『・・・・・・うん。迷惑だった?』

純一「・・・・・・愛してるよ美也」

美也『いきなり何言ってるの。それよか早くしてよね』

純一「すぐ行くよ。じゃあ電話切るよ」

美也『うん』
121: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/01(土) 21:44:55.21 ID:fu6XRYZTo
純一「美也」

美也「こっちだよ、にぃに」

純一「結構振ってるなあ。これじゃ傘なしじゃ絶対帰れなかったな」

美也「はい、これ。にぃにの傘だよ」

純一「・・・・・・これ使わなくてもいいんじゃない?」

美也「そう言うと思ったよ。相合傘する?」

純一「うん。僕が傘を持つよ・・・・・・それじゃおまえが濡れるからもっとこっちに来な」グイ

美也「ちょ、にぃに痛いよ」

純一「あ、悪い。でももっと僕にくっつかないと濡れちゃうよ」

美也「・・・・・・うん」ダキ

純一「じゃあ、家に帰るか。お腹すいたし」

美也「あ、それなんだけど」

純一「どうした?」

美也「今日、夕食準備する前ににぃにを迎えに来ちゃったから、何にも用意してないの。ごめんなさい」

純一「そか。じゃあ、雨宿りがてらこの辺で何か食べていくか」

美也「うん。にぃにが普段行ってる店がいいな♪」

純一「お昼によく行く定食屋はもう閉まってるから、居酒屋になっちゃうぞ」

美也「にぃの行きつけのお店?」

純一「行きつけってこともないけど、僕はあまり飲み屋とか知らないからさ。飲みに行く時は大概その店に行くな」

美也「じゃあ、そこに連れて行って。にぃにと夜に家の外でお酒飲むなんてなんかどきどきする」

純一「この間、銚子の梅寿司で一緒に飲んだじゃん」

美也「地元の梅ちゃんのお店で飲むとの、東京でにぃに飲みに連れて行ってもらうのじゃ全然違うよ」

純一「そういうものなのかなあ」

美也「そうなの!いいから早く行こ」
122: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/01(土) 22:02:27.36 ID:fu6XRYZTo
いつもの居酒屋


純一「結構混んでるなあ。みんな雨宿りしてるのかな」

美也「天気予報でも今日は晴れだったもんね」

純一「じゃあ、注文しよう。おまえ、お酒飲むの?」

美也「飲むに決まってるじゃん。居酒屋に来てるんだし」

純一「・・・・・・そういや、おまえと二人でお酒飲むのって初めてじゃない?」

美也「あ、そう言えばそうかも」

純一「何飲む?」

美也「にぃには何飲むの?」

純一「生ビール」

美也「じゃあ、みゃーも同じの」


オマタセシマシター


美也「じゃあ、にぃに。おつかれさま」

純一「乾杯」

美也「にぃに、お料理はみゃーが選んで頼んじゃっていい?」

純一「任せる」

美也「うん」



純一「おまえさ、大学時代の彼氏とはよく飲みに行ってたの?」

美也「2君?2君はあまり強くなかったから、お酒付きのデートは全然なかったよ・・・・・・にぃには?」

純一「うん?」

美也「女友さんとはよく飲みに行ってたの?」

純一「まあな。あいつ酒好きだったしね・・・・・・まあ、すぐ酔いつぶれるんだけどな」

美也「そういや、にぃには聞いた? 女友さん結婚したの?」

純一「え!まじで?」

美也「うん。大学卒業してすぐに先輩さんと」

純一「ああ、やっぱりな。あの二人ならお似合いだよな」

美也「にぃに、ショックなんじゃない?」

純一「そんなことあるか。女友のことは心配だったから、ほっとしたよ」

美也「そうか」

純一「2君はどうしてるの?大学で会ってるんだろ?」

美也「たまに見かけるけど・・・・・・。 あんな別れ方したからね。ほとんど話ししないよ」

純一「そうかそうか」ニコ

美也「こら、にぃに!そこはしんみりするとこでしょ。何嬉しそうに笑ってるのよ!」

純一「悪い。おまえ、僕の目の届かないところにいるから心配でさ」

美也「・・・・・・にぃにのシスコン!」

純一「おい、声が大きいって」

美也「あ、いけない」
123: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/01(土) 22:27:36.53 ID:fu6XRYZTo
居酒屋店内


?「・・・・・・にぃにのシスコン!」


石上「あれ、この声って?」

長瀬「どうかした?石上さん」

石上「うん。何か知り合いの声が聞こえて・・・・・・」キョロ

長瀬「そうなんだ。でもさ、君と一緒に雨宿りできるなんて今日はラッキーだったな。突然の雨に感謝だな」

石上「うん、そうね」キョロキョロ

長瀬「話は戻るけどさ、君のサークルの先輩って、俺よく知ってるよ。首都リーグでよく対戦してたし」

石上「あ!」

長瀬「どしたの?」

石上「橘君だ(・・・・・・美也ちゃんと一緒?)」

長瀬「ああ、本当だ。女連れてるねあいつ」

石上(美也ちゃん?)

長瀬「女いたんだな、あいつ。橘には少しひどいこと言っちゃったけど、これで誤解も解けたし仲良くしてやろうかな」

石上「え?」

長瀬「君と橘って何でもなかったんだな。まあ、そうだよね。学歴も住んでた地域も何かも違うもんな。俺が勝手に勘違いしたせいで、橘にも悪いことしちゃったから、ここで謝っておくか」

石上「・・・・・・ちょっと、長瀬君、何言ってるの」

長瀬「お~い!橘~!」

石上「ちょ、ちょっと止めてよ」
124: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/01(土) 22:28:07.74 ID:fu6XRYZTo
純一「あれ? 長瀬だ」

美也「にぃにのお友達?」

純一「前に話したじゃん、職場の同僚・・・・・・あんまり好きじゃないけどな、僕は」

美也「にぃに、職場なんだから好き嫌いは抑えないと」

純一「わかってはいるんだけどな」

長瀬「よう、橘」

純一「・・・・・・長瀬」

長瀬「おまえ残業だったんじゃねえの?」

純一「区切りのいいとこで帰ったんだよ。悪いか?」

長瀬「そんなに突っかかるなよ。悪かったよ、これまでいろいろ」

純一「え?」

長瀬「それより紹介しろよ」

純一「あ、ああ。こいつ僕の妹の美也。美也、同僚の長瀬だよ」

長瀬「妹さんだったのか。よろしくね、美也ちゃん」

美也「はじめまして。いつも兄がお世話になってます。橘美也です」

長瀬「そんなに丁寧にあいさつしなくていいのに。俺の方こそたまにはお兄さんにお世話になってるよ」

純一(たまにはって。てめえ、殺すぞ)

長瀬「よかったら一緒に飲まない?ちょうど男女比1:1だしさ。石上さん~!こっちで合流しようぜ」

美也(せっかくにぃにと二人で楽しんでいたのに)

純一「しょうがないなあ。いいのか長瀬? せっかくおまえ、石上さんと二人なのに」

長瀬「いいよ・・・・・・。なあ、橘。本当に悪かったよ。ちょっとおまえに嫉妬してたんだよ、おまえは学歴なんか関係なく優秀だしな。よかったら仲直りしてくれよ」

純一「わかったよ、長瀬。もういいから」

長瀬「ありがとな、橘。お~い!石上さん。こっちのテーブルに合流しようぜ」

石上「あ、はい。美也ちゃん、昨日はどうも」

美也「こんばんは」

石上「長瀬君、お酒持って来たよ」

長瀬「ああ、ありがとね」

石上「美也ちゃん、何飲んでるの?」

純一(石上さん、僕のことは無視かよ)
130: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/02(日) 21:58:22.19 ID:5K1nTXG6o
長瀬「じゃあ、自己紹介しようか」

美也「あ、石上さんには昨日お会いしてます」

石上「昨日は付き合ってくれてありがとう、美也ちゃん」

美也「こちらこそありがとうございました」

長瀬「あれ?じゃあ、俺だけが美也ちゃんと初めましてだったんだ」

石上「そうみたいだね、長瀬君」フフ

純一「・・・・・・」

長瀬「まあ、いいや。とりあえず乾杯しようぜ」

美也・石上・長瀬「乾杯!」

純一「・・・・・・おつかれ」ボソ

長瀬「いやあ、美女二人と飲めるなんて今日はラッキーだな。雨が降ってくれたせいだ」

石上「そうだね。さっきまでどうやって帰ろうか悩んでたのにね」クス

長瀬「何か不思議だな」

美也「お二人とも雨宿りしてたんですか?」

長瀬「そうなんだよね。傘も石上さんの折りたたみしかないしさ」

石上「会社からここまで二人で来るだけでも無理があったね」

長瀬「悪いね、俺が傘持ってなかったばっかりに」

純一「・・・・・・」

美也「・・・・・・お二人とも仲がいいんですね。何かうらやましいな。ね?にぃ・・・・・・お兄ちゃん」

純一「・・・・・・うん。そうだね」

長瀬「美也ちゃんは今日は橘とデート?」

美也「え?いえ・・・・・・。ああ、そうですね」チラ

石上「・・・・・・」

純一「・・・・・・」

長瀬「デートかあ、いいなあ。兄妹でデートって禁断の恋っぽくって憧れるな」

美也「何言ってるんですか。長瀬さんは兄弟いないんですか?」

長瀬「いるよ。可愛くない弟が。ああ、妹欲しいなあ。お姉さんでもいいんだけどさ」

石上「じゃあ、わたしが妹になったげようか?」

長瀬「え、本当?」

石上「本当なわけないでしょ」クスクス

美也「・・・・・・仲いいんですね?石上先輩と長瀬さん」

長瀬「そう見える?橘、おまえの妹さん勘がいいなあ」

純一「・・・・・・そうかな」ボソ

美也「・・・・・・にぃ、お兄ちゃん、どうしたの?どっか具合悪いの?」

純一「いや、平気だよ?」

美也「ならいいけど。はい、お皿貸して」

純一「うん?」

美也「サラダとってあげる」

長瀬「よく出来た妹さんだなあ。おまえら恋人みたいじゃん。ね、石上さん」

石上「・・・・・・」
131: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/02(日) 22:17:25.79 ID:5K1nTXG6o
長瀬「石上さん、昨日美也ちゃんと何話したの?」

石上「何って、内定者懇談会だもん。会社の話とかだよ」

長瀬「石上さんも美也ちゃんも銀行本部採用のエリートだもんなあ。肩身狭いだろ?橘」

美也「そんなこと・・・・・・。比べるものじゃないですよ」

純一「・・・・・・おまえだって、僕と同じ会社じゃないか」

長瀬「だって俺はT大卒だもん。総研採用だけど本部採用に負けない自信あるからな」

石上「そうそう。本部とか総研とか気にし過ぎだよ」

美也「そうですよねえ」

長瀬「俺は気にしてないけどな」

純一(おまえが言い出したんだろうが・・・・・・)

石上「長瀬君、グラス空だね。何飲む?」

長瀬「あ、石上さんありがと。どうしようかな」

石上「はい。ドリンクのメニュー」

長瀬「サンキュ。さてどうしようか。つうかここ酒の種類少なすぎだな」

石上「ごめんね、この辺じゃここしか知らなくて」

長瀬「橘の行きつけの店でしょ?ここ。石上さんが謝ることないじゃん」

純一(・・・・・・僕のことだけじゃなくて、僕の好きな店までこの二人に馬鹿にされてなきゃいけないのかよ)

美也「お兄ちゃんは、何飲む?みゃーが頼んであげる」

純一「美也・・・・・・。ありがと。じゃあ、生ビールで」

長瀬「よくできた妹さんだなあ、橘。じゃあおれも同じでいいや」

石上「じゃあ、お店の人呼ぼうか。すいませーん!」

美也「にぃに、本当に具合悪くない?大丈夫?」ヒソ

橘「うん、平気だよ。心配するな、美也」ヒソヒソ

長瀬「・・・・・・何か、おまえらって兄妹というより恋人っぽいよな。本当に実の兄妹なの?」

橘「本当に決まってるだろ!ふざけるな」イラ

美也「にぃ・・・・・・お兄ちゃん」

長瀬「あ、悪い。冗談だよ・・・・・・冗談」

石上(・・・・・・)


オマタセシマシター


長瀬「お、お代わりきた」

石上「美也ちゃん、もう少し何か食べ物頼まない?」

美也「そうですね。さっきから飲んでばっかだし」

石上「長瀬君に任せるとこうなっちゃうの。飲んでばっか」

美也「お兄ちゃんもそうなんですよ。優柔不断なんで、いつもお酒の見ながらメニューとずっと睨めっこなんです」

長瀬「橘のとこって、妹さんの方がしっかりしてるな」

美也「そんなことないです。大事なことはいつも兄に相談するんですよ」

長瀬「橘にねえ。泥舟みたいな気がするけど」

美也「そんなことないです!」

長瀬「あ、悪い。冗談だけど言い過ぎた」
132: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/02(日) 22:41:33.52 ID:5K1nTXG6o
美也「お兄ちゃん」

純一「うん?何」

美也「お手洗いどこ?」

純一「ああ。そのカウンターの奥に入って左側」

美也「ちょっとすいません」

石上「行ってらっしゃい」

長瀬「あ、俺もトイレ行こ。橘、連れションしねえ?」

純一「しないよ!」

長瀬「連れションだけに連れねえなあ」ハハ

純一(氏ね)

長瀬「じゃ、ちょっと失礼」



純一「・・・・・・」

石上「・・・・・・ねえ」

純一「何」

石上「何か怒ってる?橘君」

純一「別に怒ってないよ」

石上「本当に?」

純一「本当だよ・・・・・・大体、怒る理由なんて何もないじゃないか」

石上「だって橘君、さっきからずっと不機嫌じゃない」

純一「・・・・・・疲れてるだけだよ」

石上「ねえ、橘君」

純一「だから何?」

石上「もしかしてさ、わたしの自惚れだったら謝るけど」

純一「・・・・・・」

石上「ひょっとして、わたしと長瀬君の仲を気にしてない?」
133: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/02(日) 22:52:28.20 ID:5K1nTXG6o
純一(!!)

石上「勘違いかもしれないけど、昼間から橘君の態度変だもん」

純一「・・・・・・君だってそうだろ!?長瀬のこと迷惑みたいなこと言っててさ、僕に嫌な役目させて・・・・・・。それで一日僕のこと無視して長瀬とイチャイチャしてたじゃないか!結局、仲良しになるんだったら何であんなこと僕にさせたんだよ!」

石上「ちょっと待ってよ。それを気にしてたの?」

純一「ああ、悪い。もうそのことはいいや。気にしないで」

石上「あのさあ」

純一「・・・・・・」

石上「わたしだって、勇気を奮って告白して、橘君に断られてさ。それでも橘君と繋がっていたから、なけなしの勇気を振り絞って橘君に、モーニングコールしたいって言ったのよ」

石上「そして、朝電話したら、橘君に変なお芝居されたんだよ?」

純一「あ・・・・・・」

石上「ちょっとだけむかついて、長瀬君に近づいて橘君にやきもち焼かせようとしたら悪いの?」グス

純一「ご、ごめん」

石上「長瀬君と仲良くしたって、橘君が好きになってくれるわけじゃないかもって考えたけど」

石上「わたしバカだから、橘君に振り向いてもらうのにこれくらいしか考え付かなかったの」クスン

純一「悪かった・・・・・。石上さん・ごめん」゙

石上「・・・・・・橘君?」

純一「嫌な態度してごめん。僕の方こそ、石上さんに無視されて寂しくて」

石上「・・・・・・」

純一「それで子供みたいに拗ねてたんだ。ごめんね」

石上「・・・・・・許さない」

純一「え?」

石上「キスしてくれなきゃ許さない・・・・・・わたしだって長瀬君と一緒にいても君のことばっか気になって」

石上「辛かったんだよ」

純一「あ、いや・・・・・・でも、僕には好きな子が」

石上「それはわかってる・・・・・・。でも、これでもうしつこくしないから」

石上「美也ちゃんと長瀬君が帰ってくる前に・・・・・・頬でいいからキスして」

純一「え?いや、だって」

石上「お願い」

純一(ここまで言われたらしょうがないだろ?ごめん、美也)チュ

石上「・・・・・・うれしい。ありがと、橘君」

純一「・・・・・・」
134: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/02(日) 23:11:05.31 ID:5K1nTXG6o
長瀬「いやあ、トイレ混んでたぜ」

石上「お帰り、長瀬君」

長瀬「あれ、石上さん何か顔赤くない?」

石上「え?あはは。結構酔ったかな」

長瀬「そんな飲んでないじゃん」

石上「そ、そんなにお酒強くないから」

美也「ただいま、お兄ちゃん」

純一「お帰り、美也」ドキ

美也「お兄ちゃん。みゃーじゃない、あたし冷たい日本酒頼んでいい?」

純一「おまえ、そんなの飲んで大丈夫か?」

美也「前に梅寿司で飲んで美味しかったお酒あるじゃない?」

純一「福島の純米大吟醸ってやつだっけ」

美也「うん。それがメニューにあるの」

純一「へえ。確かにあれは飲み易くて美味しかったけど」

美也「ねえねえ、これ二人で頼もうよ」

純一「まあ、おまえがいいならいいけど」

石上「あ、わたしも飲みたい」

長瀬「石上さん、酔ってるんじゃないの?」

石上「でも、美味しそうじゃない」

長瀬「じゃあ、俺も飲もうかな。てか、梅寿司って何?美也ちゃん」

美也「千葉県の銚子にあるお寿司屋さん。お兄ちゃんの親友が経営してるお店なんです」

長瀬「ほう。じゃ、注文するか」



石上「あ、これ。飲みやすいね」

美也「そうでしょう。やっぱ美味しいな」

長瀬「ほら、橘。酌してやるからグイっと空けろよ」

純一「おい、注ぎ過ぎだよ、こぼれるって」

美也「石上先輩も、どうぞ」

石上「あ、ありがと。美也ちゃん。じゃ、美也ちゃんも」

美也「ありがとうございます」

長瀬「おい橘・・・・・・。何か、女たちの方が酒強いんじゃないか」

純一「そうかもな。あ、ちょっとトイレ行って来るな」

長瀬「おう」

美也「気をつけてね、お兄ちゃん」

長瀬「たかがトイレ行くくらいで橘の心配するとは~。さすがブラコン」ハハハ

美也「違います!」

石上「・・・・・・わたしもお手洗いに行くね」

長瀬「気をつけてな」

美也「・・・・・・長瀬さん、たかがトイレ行くくらいで石上さんの心配するとは~」アハハ

長瀬「・・・・・・うっ」
135: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/02(日) 23:11:37.03 ID:5K1nTXG6o
純一(トイレ混んでるし汚かったなあ)

純一(とりあえずすっきりしたけど・・・・・・。あ、もう12時じゃんか。そろそろ帰らないとな)

?「橘君」

純一「え、石上さん?」

石上「橘君・・・・・・」

純一「石上さん・・・・・・。男子トイレの前で何してるの?」

石上「・・・・・・けないから」ボソ

純一「え?」

石上「わたし、橘君の好きな人に負けないから」

純一「石上さん何言って」

石上チュ

純一(って、唇に!)

石上「やっぱり嫉妬させるとかそういうのやめたから」ギュ

純一「お、おい。こんなところで・・・・・・ヤバイって」ジタバタ

石上「・・・・・・妹さんなんかに負けないから、わたし」チュ

純一「(!?)石上さん何言って」
141: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/03(月) 22:29:33.28 ID:TkCL1PFgo
美也「あ、お兄ちゃんお帰り」

長瀬「石上さん、座って座って」

石上「・・・・・・うん」

長瀬「石上さん、やっぱ顔赤いよ?飲むと顔に出るんだな」

石上「え?そ、そうかな///」

長瀬「そこがまた色っぽいんだけどな」

純一「・・・・・・」

美也「おにいちゃん。お酌してあげる」

純一「う、うん」

長瀬「しかし橘にこんないい妹がいたなんてな」

石上「そうね」

長瀬「いやさあ、何て言うの?女の子の可愛らしさと優秀な頭脳と両方備えてる上に、奥ゆかしく気も遣える・・・・・・そんな女の子滅多にいないよ」

美也「誉めすぎですよ」

石上「長瀬君、美也ちゃんのこと相当気に入ったみたいね」クス

純一(・・・・・・気の多い男だな。美也にまで関心あるのかよ、長瀬は」

長瀬「いやあ、美女二人と飲めて今日は幸せだ・・・・・・それでさ、美也ちゃんは今彼氏とかいるの?」

純一(・・・・・・)ムカ

石上(橘君)ギュ

純一(え?テーブルの下で手を・・・・・・)

石上ニコ

純一ドキドキ

美也「さあ?どうなんでしょうね。ご想像にお任せします」

長瀬「さすが美也ちゃん。さらっと流したな」

石上「残念だったね、長瀬君(・・・・・・橘君)」ギュ

長瀬「いやあ、俺には石上さんがいるから」

純一(・・・・・・美也の前で。見つかったらまずい。振りほどかないと)

石上(・・・・・・)ギュー

美也「お兄ちゃん?」

純一(・・・・・・)

美也「お兄ちゃんってば!」

純一「!あ、ああ」

美也「そろそろ帰らないと、もう1時近いよ」

長瀬「明日も仕事だしな。名残惜しいけど解散するか」

石上「そうだね。早く行かないとタクシー乗り場も混んじゃうしね」

長瀬「じゃ、ちょっとお勘定してくるわ」
143: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/03(月) 22:43:10.06 ID:TkCL1PFgo
オフィス 翌日朝始業前



純一「おはようございます」

石上「おはよう、橘君」

純一「あ・・・・・・」

石上「・・・・・・昨日はごめんね?」

純一「い、いや。別に」

石上「わたしが言うのも何だけど、昨夜のことあんまり気にしないでね」

純一「・・・・・・と言われてもなあ」

石上「あなたのこと好きだけど」

純一「おい、事務員ちゃんに聞かれるって」

石上「パントリーに行ってるから大丈夫よ。でね、だけど美也ちゃんの名前出しちゃったのはごめん」

純一「・・・・・・」

石上「昨日の席で、橘君と美也ちゃんすごく仲が良さそうだったから、思わず口に出しちゃったけど」

純一「・・・・・・うん」

石上「大切な妹さんのことあんな風に言われたら気分悪いよね」

純一「まあね」

石上「妹さんにまで嫉妬するなんてどうかしてた、わたし。嫉妬するのは橘君の好きな子なのにね」

純一「石上さん、長瀬のことはどうするの?」

石上「わかってる。突然態度を翻したりしないよ。いい友達に軟着陸させるから」

純一「それならいいけど」

石上「だから、ちょっと長瀬君と仲が良さそうに見えるかもしれないけど、勘違いしないでね?」

純一「僕は別に・・・・・・」

石上「あと」

純一「何?」

石上「昨日も言ったけど、わたしとりあえず橘君のこと諦めないから」

純一「・・・・・・」

石上「じゃ、今日も頑張るか。ちょっと飲みすぎで頭が重いけどね」フフ
144: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/03(月) 23:10:14.59 ID:TkCL1PFgo
レクチャールーム 金曜日の午後


純一「・・・・・・以上が、前回のご指摘を受けて修正した××市役所のプローポザル用のプレゼンテーションです」

課長「うん、おつかれ。よし、これで行くか?」

女上司「はい。ビジュアルもよくなったし、何よりストーリーも論理的に構成されています。前より良くなったと思います」

課長「そうだな。じゃあ、橘。これで来週のプレゼンに行って来い。期待してるぞ」

純一「はい。頑張ります」

課長「説明は橘がやるとしも人数は揃えて行けよ?この仕事に熱意があることを示さなきゃいけないからな」

女上司「はい。私を筆頭にうちのチーム全員を連れて行きます。長瀬君たちも動員しますから」

課長「そうだな。最低でも5~6人くらいは連れて行かないとな」

女上司「そのつもりです」

課長「俺と課長補佐も行くから7人になるかな」

女上司「そうですね」

課長「よし、橘。土日は仕事しないでゆっくり休めよ」

純一「はい」
145: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/03(月) 23:10:43.31 ID:TkCL1PFgo
石上「橘君。課長、高評価だったね」

純一「うん、まあね」

石上「やったじゃん」

純一「でも、社内で評価されただけじゃしょうがないよ。この仕事を取らないと」

石上「まあ、そうだね」

純一「とりあえず月曜日に持っていく物の準備しようか?朝、市役所に直行だから今日持って帰らないといけないしね」

石上「うん」



長瀬「おーい、橘」

純一「長瀬・・・・・・。月曜のプレゼンはよろしく頼むよ」

長瀬「わかってるよ。足は引っ張らないからよ」

石上「長瀬君、市役所の人にいつもの軽口たたいちゃだめよ?」

長瀬「ひどいな、石上さん。おれだってビジネスの上では超常識人だぜ」

石上「なら、いいけど」クス

長瀬「石上さん、俺のこと信頼してないだろ?」

石上「そんなことないよ。安心してね」クスクス

純一(何かこの二人が仲良くしてると気持ちが乱されるな)モヤモヤ

純一(石上さんは僕のこと好きだって言ってたけど、僕には美也がいる)

純一(そんで長瀬は、どこまで本気かわからないけど石上さんに気がありそう)

純一(それなら何も気持ちが乱される理由はないのにな)

石上「橘君」

純一(せめて美也がまだいてくれたらなあ。あいつ昨日帰っちゃったし)

石上「橘君ってば」

純一「あ、うん」

石上「PCとかパワポの資料とかは用意できたけど、紙の資料は何部持ってく?」

純一「多めに用意しておこう。20部くらいかな」

長瀬「じゃあ、原稿よこせよ。事務員ちゃんに用意してもらうから」

純一「悪いな、長瀬」

長瀬「ばーか。こういう時は任せろ」

長瀬「おーい事務員ちゃーん!コピーお願いできる?」




石上「・・・・・・気になる?」

純一「え?何が」

石上「わたしと長瀬君が話してる時、橘君の表情険しくなってたから」

純一「そんなことない・・・・・・と、思うけど」

石上「気にしてくれてるなら、わたしは嬉しいけど」

純一「・・・・・・」
147: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/03(月) 23:34:53.03 ID:TkCL1PFgo
純一のアパート 金曜日夜


純一(特にやらなきゃいけないことはない)

純一(月曜日のプレゼンの準備は終わってるし)

純一(土日を千葉に帰って美也と過ごしたって、何にも問題はないんだけど)

純一(そうすれば美也も喜ぶだろうなあ)

純一(でも、入社後初めてのプレゼンだし。何となく気を緩めたくない気持ちもあるな)

純一(・・・・・・僕もすっかり社会人になったなあ)

純一(週末はとりあえずプレゼンの脳内シミュレーションを少しして)

純一(あとはのんびりするか。美也のところには来週帰ることにしよう)
148: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/03(月) 23:35:55.10 ID:TkCL1PFgo
プルルル


純一「はい。橘です」

石上「遅い時間にごめんなさい、橘君。石上です」

純一「ああ、石上さん」

石上「こんな時間にごめんね」

純一「どうしたの?」

石上「何かプレゼンが週明けにあると思うと緊張しちゃってね」

純一「ああ、僕もだよ」

石上「土日になんかやっておいた方がいいことってないかなって思って電話したの」

純一「それはないでしょ。ここまで準備したんだもん。土日はジタバタしてもしょうがない」

石上「でも、落ち着かないのよ。何かすることがある方が気が楽だわ」

純一「まあ、正直に言うと僕もそう。気持ちはわかるよ」

石上「ねえ、パワポの4画面目の画像、今から修正したら駄目かな?」

純一「駄目に決まってるでしょ!もう資料にプリントされちゃってるじゃん」

石上「あ、そうか。完璧に見直したつもりだったんだけど、結構土壇場になって気づいちゃうものなんだね」

純一「もう修正とか考えずにリラックスした方がいいよ」

石上「だって・・・・・・」

純一(石上さん、研修で手伝ってくれてるだけのに、本気でこの仕事に打ち込んでくれてるんだな。何か、彼女がいとおしく感じるな」

石上「ああ、どうしよう。今からドキドキしてきた」

純一「落ち着いて。課長だって土日はゆっくりしろって言ってたじゃん」

石上「そんなの無理だよ」

純一「・・・・・・気晴らしにドライブでもする?」

石上「する!」

純一(あ・・・・・・僕は何を言ってるんだろ)

石上「橘君、車持ってるの?」

純一「ほとんど乗っていないけど、千葉から持って来てはいる(僕は何を言ってるんだろ)」

石上「都内だし駐車場代高いんじゃない?」

純一「まあ、ドライブするの好きだしね(僕は・・・・・・何を・・・・・・)」

石上「本当に誘ってもらってもいいの?」

純一「プレゼンまで落ち着かないんでしょ?同僚としてフォローしなきゃね」

石上「うん!すごく楽しみ」

純一「石上さんは、男の車でドライブなんて慣れてるでしょ?僕なんかと一緒じゃ楽しくないかもよ?」

石上「そんなことないよ。すごく楽しみ・・・・・・何かプレゼンのプレッシャーが消えてく感じがするし」

純一「・・・・・・じゃあ、明日10時ごろ迎えに行くね。家の場所教えて」

石上「うん!えとね。環8をね・・・・・・」
155: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/04(火) 21:05:18.29 ID:dO2eXQWQo
土曜日 朝9時30分


純一(この家か。よし、ちょっと早めに着いたな)

純一(・・・・・・それにしても気が重いな。胃がしくしくする)ハァ

純一(何でドライブに行こうなんて言葉が口から出ちゃったんだろ)

純一(こんなことしても、僕にとっても美也にとっても・・・・・・石上さんにとっても何もプラスにならないのに)

純一(まあ、誘ってしまったものはしょうがない。無難に横浜にでも行って来よう)

純一(早く着いちゃったから、30分は待つようだな)

純一(・・・・・・しかし、綺麗つうかお洒落な住宅街だな。世田谷区ってこんなとこばっかなのか)キョロキョロ

純一(って、でかい家だな。まあ、うちの実家と似たような感じだけど、こっちは世田谷区だもんなあ)

純一(・・・・・・あ)

石上「おはよう橘君」

純一(え? 石上さん何かいつもとイメージが違う・・・・・・スーツじゃなからだ)

純一「お、おはよ。石上さん・・・・・・って、まだ約束の30分前なのに。何で家の外に出てるの?」

石上「絶対早めに来てくれると思ったの。それで何かお出迎えしたくて」

純一(・・・・・・)

石上「じゃ、お邪魔します」

純一(何か灰色だった車内がいきなり華やかになった感じだ。それにいい香りもする)ドキ

石上「今日は誘ってくれてありがとう。誘ってもらえなかったらプレゼンのこと考えちゃって緊張した週末になるところだったわ」

純一「ああ、それならよかったけど」

純一(あれ?何か心が軽くなった・・・・・・? 僕も今日ののドライブを楽しみに感じてる?)

石上「それで、今日はどこに連れて行ってくれるの?」

純一「う、うん」
156: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/04(火) 21:30:59.67 ID:dO2eXQWQo
純一の車の中


石上「横浜に行くの久しぶりだなあ。とっても楽しみ」

純一「横浜にはよく行くの?」

石上「大学時代はよくドライブしてたなあ。元町とか山手の方とか好きだったけど。1年以上行ってない。橘君は?」

純一「僕はあまり・・・・・・。実家が銚子市だったし、大学時代は千葉市内だったから。神奈川県とかってよく知らないんだ」

石上「ほら何だっけ、アクアライン?あれができると千葉から神奈川ってすごく来やすくなるんじゃない?」

純一「ああ、もうすぐ開通するんだってね。一度通ってみたいな」

石上「あたしも! それに千葉県って近いわりにはあまり行ったことないし。橘君、アクアラインが開通したら今度連れて行ってくれます?」

純一「う、うん」

石上「今日はどこに行きます? 山下公園とか港が見える丘公園とかに行く?」

純一「僕、横浜ってよく知らないんでさ。ちょっと情けないけど行き先は任せてもいい?」

石上「いいよ。みなとみらいとかより山下町とか山手の方がいいよね?」

純一「うん。みなとみらいって、こどもの頃、横浜博覧会ってやっててさ、美也が行きたがったんで、家族で行ったことがあったな」

石上「あ~。わたしも行った、それ。会場で橘君とすれ違ってたかもね」フフ

純一「まさかあ」ドキ

石上「・・・・・・美也ちゃん、うらやましいなあ」

純一「え?何で」

石上「20年以上も橘君と一緒の思い出があるんでしょ?美也ちゃんには」

純一「それは家族だからね」

石上「だからうらやましいの」

純一(・・・・・・)
157: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/04(火) 22:03:41.81 ID:dO2eXQWQo
横浜 山下町



純一「何か雰囲気がいいところだね」

石上「この辺が山下町なの。海側にあるのが山下公園ね」

純一「車、どうしようか」

石上「公園の端に駐車場があるからそこに止めましょう。ここからなら山手にも中華街にも歩いて行けるから」

純一「うん」

純一(何か修学旅行に来た高校生みたいだけど、わくわくして来た)

純一(不謹慎だけど。助手席にフレンドリーで綺麗な女の子を乗せて、あまり知らない土地にいるっていうシチュエーションがそう感じさせてるのかもな)

石上「橘君、そこ。その駐車場に入って」

純一「うん」




石上「途中混んでいたからもうお昼だね」

純一「もうお昼か。車で初めて来たせいかあっという間に感じた」

石上「・・・・・・わたしも、そういう感じだった。橘君と一緒だったせいかな?」

純一「え、えーと。お昼どこで食べようか」ドキドキ

石上「せっかくだから中華街に行きましょうか。土曜日だから少し混んでると思うけど」

純一「お店とかよくわからないんだけど」

石上「わたしの知ってるところでいい?結構美味しいと思うよ」

純一「うん。お任せする」


中華街


純一「すごい人出だね。いつもこうなのかな」

石上「土日はいつもこうだと思うよ。駐車場待ちがなくてラッキーだったね」

純一「そういうものなんだ。何かこの人込みだと、石上さんとはぐれちゃいそうだな」

石上「じゃあ、こうしよ♪」ギュ

純一「え」ドキ

石上「人込みではぐれないように、手をつないでいましょう」

純一「・・・・・・そうだね(やばい。一瞬本気でときめいちゃった。美也のこと思い浮かべて耐えなければ)」

石上「こっちの小さな道に入るの」

純一「うん(美也、美也。僕の恋人は美也だけ・・・・・・って、あれいい匂いがしてきたな)」グー

石上「・・・・・・朝食食べてこなかったの?橘君。今、おなかが鳴ったよ」クス

純一「あ、ごめん。面倒なんで普段朝飯食べないんだ。美也にカップラーメンを禁止されてるせいもあって」

石上「橘君のこと心配してるんだね、美也ちゃん。いい奥さんになりそうね」

純一「さあ、どうかなあ。あいつ料理とか家事とか下手だしさ。なまじ成績がいいせいもあって、キャリア志向もあるしね。いい奥さんって感じじゃないよ」

石上「さすがはシスコンの橘君。美也ちゃんのことよくわかってるのね」

純一「・・・・・・まあ、兄妹だから」

石上「自分のことをよくわかっててくれて、心配してくれる人がいるって幸せなことだよね」

純一「うん?」

石上「ううん。何でもない・・・・・・このお店だよ」
158: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/04(火) 22:31:05.23 ID:dO2eXQWQo
中華街 ××楼本店内


石上「やっと座れたね」

純一「結構待ったよね。やっぱり混むんだな」

石上「土日とあと平日でもランチタイムはね。橘君じゃないけどおなかすいちゃった。何食べようかな」

純一「本格的な中華って注文の仕方難しそうだね。二人だとどれくらい頼めばいいのかな」

石上「そんなの適当でいいじゃない。何か食べたいものある?」

純一「いや、よくわからない」

石上「じゃあ、適当に決めちゃってもいい?嫌いな食べ物とかなければ」

純一「特にないな」

石上「じゃあ、任せて」

純一「よろしくお願いします」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・




石上「日差しと海から吹く風が気持ちいいね」

純一「うん。でも食べ過ぎて坂を上るのが辛いけど」

石上「何、年寄りみたいなこと言ってるの。手を引いてあげようか」クス

純一「いやいや。さっきのお店、美味しくて食べ過ぎちゃった。中華って奥が深いんだね」

石上「わたしも少し食べ過ぎたかな。今日のお店は広東料理だったんだけど、四川とか上海とかのお店もいいところがあるのよ」

純一「へえ。食べてみたいなあ」

石上「じゃあ、また教えてあげるね」

純一「石上さんって、いろいろ経験してるんだなあ」

石上「別にそんなことないよ」

純一「一緒に出かけると意外な面に気づくことってあるんだな」

石上「なあに?それ。変なの」フフ

純一(僕って行動的じゃなかったんだなあ。美也と出かけるっていっても買い物とか水族館とかだったしな。あとはずっと家でくつろいでるばっかりで)

純一(美也にはどこも楽しいところに連れってあげてないんだなあ。美也に悪いことしちゃったな)

純一(それにしても、石上さんっていろいろ知ってるし行動的だけど、何も経験してない僕なんかにも普通に優しく接してくれるし)

純一(優秀で美人だけど、それを鼻にかけないし気取らないよな。こういう感じのいい人って、本当にいるんだな)

石上「ねえねえ、橘君。ちょっとそこのアンティークの雑貨のお店見ていってもいい?」

純一「ああ、うん。見て行こうか」
163: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/05(水) 21:21:03.12 ID:RG349AFYo
純一の車の中 同日夜


石上「帰りは意外とすいてるね」

純一「うん。これなら7時前には家に着いちゃうね」

石上「今日は楽しかった。橘君ありがとう」

純一「いや、僕も気晴らしになったよ。こっちこそありがとね」

石上「久しぶりにこの道通るなあ。景色が懐かしい」

純一「このあたりって、昼間通った時はいい印象なかったんだけど、夜は結構綺麗なんだね」

石上「工業地帯だからね。でも、わたしはこの辺の夜景って結構好きだったなあ」

純一(石上さんの横顔って綺麗だ。本当にこういう子が自分の彼女だったら知り合いに自慢しまくっちゃうだろうな)

純一(知り合いには彼女として紹介できない美也とは、全然違う付き合い方をするんだろうな・・・・・・何だろう。この少しだけ胸がうずく感じは)

石上「工業地帯の無機質な夜景に囲まれてると、何か自分がSF小説の中の登場人物みたいでわくわくするの」

純一「うん。本当に綺麗だね(本当に綺麗な横顔だ)」

石上「こら。首都高で100キロ出しながら夜景を見てちゃだめでしょ」

純一「いや。そんなにじっと見てたわけじゃないし(つうか夜景なんか見てなかったし)」

石上「プレゼン前の週末に事故を起こすなんて洒落にならないよ」クス

純一「そうだね。気をつけて運転するよ」

石上「そんなにスピード上げなくていいじゃない。それとも早く家に帰りたい?」

純一「いやいや。帰っても一人きりだし特に用事もないし」

石上「そうなの?じゃあ、よかったら食事して帰らない?今日全部ご馳走になっちゃったから、お返しさせて?」

純一「石上さん、家で食べなくて平気なの?」

石上「うん。わたしは大丈夫だけど、橘君は迷惑だよね?」

純一「いや、そんなことないよ(食事くらいならいいよね。寝る前に美也に電話しておけば)」

石上「やった!じゃあ、学生時代に横浜から帰る途中よく行ってたお店でもいいかな」

純一「僕はお店とかよくわからないからどこでもいいよ」

石上「じゃあ、ナビするね」

純一「よろしく(いかん。何かドキドキしてきちゃったぞ)」
164: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/05(水) 21:40:40.12 ID:RG349AFYo
××市役所ロビー 月曜日 朝


純一「30分前に着けた。予定どおりだな」

石上「橘君、おはよう」

純一「あ、おはよう石上さん。ずいぶん早いけど何時に来てたの?」

石上「遅刻したらまずいと思って。早く家を出たら1時間前に着いちゃった」

純一「え!それは早すぎるよ」

石上「遅刻するよりいいでしょ?それに新人なんだから上司より後に来るのも嫌だし」

純一「まあ、それはそうだね。まだ、誰も来てないし、少し最終確認しておこうか?」

石上「はい」

純一「パワポの操作とプレゼン自体は僕がします」

石上「はい」

純一「説明終了後の質問は、答えられる範囲は僕が答えるけど、データ関係で詰まったら石上さんが回答ね」

石上「うん。女上司さんにもそう言われてたので、準備はしてあるから」

純一「まあ、本当に二人とも回答できない状態になったら、課長や補佐や女上司さんが答えてくれることになってるけど」

石上「うん、わかってる。でも、そこまで行ったらわたしたちの負けだよね」

純一「まあ、負けってことはないけど。それに完璧に答えられたとしても受注できなければ負けなんだし」

石上「うん、それはわかる・・・・・・でも、女上司さんたちに助け舟出されるなんて悔しいじゃない。ここまで二人で準備してきたのに」

純一「まあ、それもわかるけど」

?「おはよう石上さん」

石上「おはよう長瀬君」

純一「おはよ長瀬」

長瀬「おう、いたのか橘。目に入らなかったわ」

純一「おい」

長瀬「ジョークだよジョーク。本番前に緊張している橘をリラックスさせてやろうと思ったんじゃねえか」

純一「余計なお世話だよ」

長瀬「ははは。その調子ならそんなに緊張していないみたいだな」

純一「・・・・・・まあね。ありがと」

長瀬「おう」
165: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/05(水) 21:56:47.39 ID:RG349AFYo
××市役所会議室(プレゼンテーションの待合室)


石上「ねえ、橘君。ここにいる人たちみんな他社の人たちなの?」

純一「うん。銀行系のシンクタンクと、社会福祉専門の独立系のシンクタンクとか、あとはコンサルタントとかが参加してるみたい」

石上「何社参加してるのかな」

純一「今回は規模が大きい仕事だし、10社くらい来てるみたいだね」

石上「何か落ち着かないな。周囲がみんな優秀そうに見えちゃって」

純一「向こうだって同じこと考えてるさ」

課長「橘と石上さん、ちょっと」

純一・石上「はい」

課長「おまえたちプレゼンの本番は初めてだから念のために言っておくけど」

課長「先方の質問に意地になって答えるなよ?わざとピントをぼかしてバカな質問をしてきたりとか」

課長「わざとプレゼンの内容に難癖つけたりされるけど、それはうちがどの程度深く研究して企画してるか試してるんだからな。そこで向きになって反論するな。内容で答えられないからだと思われるからな。どんなつまらない質問にも冷静に正面から答えろよ」

純一・石上「はい」

課長「あと、少しでも詰まりそうなら俺たちを頼れ。意地になって全部自分たちで対応しようとするなよ。仕事を取ることが目的なんだからな」

石上「・・・・・・」

純一「石上さん」ヒソ

石上「あ、はい」

純一「そうします」

課長「よし。出来はいいんだ。自信持ってやれ」

純一・石上「はい」


市役所職員「じゃあ、次。××総研さん、会場に入ってください」
166: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/05(水) 22:17:49.54 ID:RG349AFYo
オフィス 数日後の夕方


事務員「橘さんと石上さん、課長がお呼びです。ミーティングルームに行ってください」

純一「(・・・・・・来たか)はい」

石上「わかりました」

長瀬「・・・・・・幸運を祈ってるぜ。橘」

純一「あ、ああ、どうも。行こう石上さん」

石上「ええ」


ミーティングルーム


課長「おお、来たか。まあ、座って」

純一・石上「失礼します」

課長「××市役所から通知が来た・・・・・・おめでとう。やったな」

純一・石上「え?」

女上司「うちが選ばれたのよ。よくやったわ二人とも」

課長「社会福祉分野はうちの弱点だったからな。専門のシンクタンクやコンサルを抑えた意味は大きいぞ。特に君たちは新入社員だしな。本当は、新人二人に任せるような仕事じゃないんだが、人出不足と、あと、女上司が橘なら出来そうだって提言があってな。まあ、結果は女上司の言うとおりになったわけだけど」

女上司「5千万円の受注よ。福祉分野では珍しい規模なの」

純一「(やった!)ありがとうございます」

石上「(・・・・・・おめでとう橘君)ありがとうございます」

課長「ただし、忘れるなよ。君たちが今回作ったのは成果品じゃないんだ。市役所が評価したのは、あくまでこのプレゼンの内容なら期待している成果品を出してくれるだろう、というところだけなんだ。仕事はこれから本当に始まるんだからな。気を抜かないでくれよ」

純一「はい。承知しています」

課長「具体的な進め方は女上司から指示を受けてくれ。他のプロジェクトに参加している研究員の掛け持ちもを含めて5人体制でチームを作る。プロジェクトリーダーは女上司だ。橘と石上さんは主担当として引き続き頑張れ。残りの3人はうちの課の他チームから参加させるからな」

純一・石上「はい」

課長「まあ、いろいろ言ったけど今日は女上司チームで、プレゼンの打ち上げをやるそうだから、今日くらいは羽目を外していいよ」

純一・石上「はい。ありがとうございました」

女上司「じゃあ、引き続きこのプロジェクトの打ち合わせをするからね。課長、ありがとうございました」

課長「よろしくな」
167: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/05(水) 22:52:23.65 ID:RG349AFYo
バー 打ち上げの2次会


女上司「しかし君たち息がぴったり合ってるよね。プレゼンの時とかさ、二人でフォローしあってて。あたしら出る場面とかなかったじゃん」

純一「そ、そうですか?」

石上「そう言っていただけると嬉しいです」ニコ

女上司「何お礼言ってるのよ?二人の仲をからかってるのに」グビ

純一(女上司さんも酒入るとキャラ変わるなあ。薫とか女友系だな、うん)

石上「でも、うれしいですよ。プレゼンの出来を誉めていただいているのと一緒ですから」

女上司「あんたもよくやってるよね。正直本社採用の腰かけ意識の女の子だったら思い切りしごいてやろうと思ってたんだけどさ。ここまで研修先の仕事に打ち込まれると何にも言えないわ・・・・・・あ、これは皮肉じゃないからね」

石上「それも嬉しいです。ありがとうございます」

女上司「研修報告ベタぼめしてあげるからね。この仕事がうまく行ったら」

石上「はい」



長瀬「なあ、橘」

純一「うん」

長瀬「おまえ、やっぱすげえや。学歴とかいろいろ言って悪かったよ」

純一「いいよ、もう」

長瀬「ただよ」

純一「何だよ」

長瀬「おまえ、石上さんに手を出すなよ」

純一「何だよそれ。いや、出さないけどさ、何でおまえにそんなこと言われなきゃいけないんだよ」

長瀬「だっておまえ彼女いるだろ?」

純一「え?い、いや。今はいないけど」

長瀬「嘘つくな。態度見てりゃわかるんだよ・・・・・・まあ、それに美也ちゃんもいるしな」

純一「美也は妹だし関係ないだろ」

長瀬「本当にそう言い切れるのか?このシスコン野郎」

純一「・・・・・・おまえ、実は全然僕に謝る気ないだろ?」

長瀬「お、わかっちゃった?さすが鋭いな橘君は」

純一「おまえはさ、石上さんのこと本気なの?」

長瀬「・・・・・・うるせえよ。おまえには関係ないだろ」
168: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/05(水) 22:52:56.43 ID:RG349AFYo
石上「ねえねえ、二人で何のお話してるの?」

長瀬「おお、石上さんが隣に来てくれた。女上司さんのくどい話からやっと開放されたんだ」

純一「あ、ばか。長瀬」

女上司「・・・・・・長瀬くーん。ちょっと二人でお話しようか」ニコ

長瀬「(ヤバ)・・・・・・あ、はい。ただいま」



純一「ばかなやつだ」

石上「でも、憎めない人よね。長瀬君って」

純一「長瀬のやつ、本当に石上さんが好きな気がする」

石上「・・・・・・どうしてそう思うの」

純一「何となく。まあ、勘だけど」

石上「彼は事務員ちゃんによく声かけてるんじゃないの?」

純一「あれは半分冗談だよ。一緒に飲みに行ったことすらないはずだよ」

石上「何で?」

純一「何でって・・・・・・」

石上「何で、橘君はわたしに長瀬君の話をするの?」

石上「わたしと長瀬君をくっつけたいの?」

純一「そんなことないよ」

石上「わたし、はっきり誰が好きなのか言ったよね?」

純一「・・・・・・」

石上「あと、一度振られたけど諦めないって言ったよね」

純一「うん」

石上「土曜日ドライブに誘ってもらって本当に嬉しかった。実際、橘君と二人でデートすると本当に楽しかったし」

純一「・・・・・・」

石上「だから、わたしは諦めないの。橘君には迷惑かもしれないけど」

純一「いや、別に迷惑とかないし。土曜日は僕もたのしかったし」

石上「本当?そう言ってもらえるとすごく嬉しい」

純一「あ、いや」



女上司「長瀬、おまえもっと飲め」

長瀬「いや、それストレートのウィスキーじゃないですか。さすがに無理っす」

女上司ジロ

長瀬「いただきます!」
179: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/08(土) 21:53:29.36 ID:/248NtuFo
オフィス 午後


女上司「橘君、石上さん、ちょっといい?」

石上「はい」

純一「・・・・・・zz」

石上「・・・・・・橘君、橘君」ヒソ

純一「あ」

石上「女上司さんがわたしたちを呼んでるよ」

純一「ごめん、つい」

石上「ふふ。昨日は全員で3次会まで行ったしね。眠いでしょ」

純一「うとうとしてた。見つからないでよかったよ」

女上司「おーい。早く来なさい」

石上「あ、はい」

女上司「こら。二人とも呼ばれてからあたしんとこ来るまで時間かかりすぎだよ。上司を放って、いちゃいちゃしてんじゃないわよ」

純一「そんなことしてませんよ」

石上「すいませんでした」

純一(謝るのはいいけど、いちゃいちゃのところは否定しろって)

女上司「ま、いいや。あんたたち、明日から3日間ってスケジュールどうなってる?」

純一「資料収集と作業ですね」

石上「わたしもです」

純一「あ、あとチーム会議がありました」

女上司「それは延期。じゃあ、大丈夫だね」

純一「はい?」

女上司「急で悪いけど明日から3日間、神戸に出張してきて」

純一「はい・・・・・・って二人でですか!」

石上「・・・・・・」

女上司「あんたたち二人の担当業務の出張だもん。二人で出張することの何がおかしい」

純一「そりゃそうですけど・・・・・・。一体何しに行くんです?」

女上司「うちの神戸支社がさ、今度うちが受注したのとほぼ同じ仕事を去年手がけたんだって」

純一「え?そんなこと聞いてませんよ」

女上司「誰もわからなかったのよ。支社の受注実績に載せ忘れてたみたいなんだ」

純一「それ知ってたらプロポの準備も楽だったのに」

女上司「結果的に受注できたんだから細かいことはいいじゃない。その担当のアポとっておいたから話聞いておいで」

石上「でも、ヒアリングなら3日間もかからないんじゃないですか?」

女上司「うるさいなあ。移動と仕事で1日は使うでしょうが。あと2日間は受注のご褒美よ。がたがた言ってないで楽しんどいで」

石上「・・・・・・ありがとうございます」

純一(・・・・・・)
180: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/08(土) 22:25:15.91 ID:/248NtuFo
女事務員「橘さん、新幹線のチケットと宿泊するホテルのメモです」

純一「ありがとうございます」

女事務員「あと、神戸支社の電話番号と住所、担当の方のお名前はこっちのメモに書いてありますから」

純一「うん、わかりました」

女事務員「2人分なんで石上さんにも渡しておいてくださいね」

純一「はい」

長瀬「・・・・・・橘」

純一「(やっぱりこいつに絡まれるのか)何だよ」

長瀬「わかってるだろうけど、変な期待するんじゃないぞ」

純一「だから、しないって!くどいよおまえ」

長瀬「おまえと石上さんじゃつり合わないんだからな・・・・・・下手に抜け駆けしやがったら、って痛い痛い!」

女事務員「あ、ごめんなさい、長瀬さん。うっかりハイヒールのかかとで足を踏んじゃいました」ニコ

長瀬「い、いや。大丈夫だから気にしないで」

女事務員「本当にごめんなさいね」ニコニコ

長瀬(・・・・・・)

長瀬「とにかくだ、石上さんに手を出すなよ」ヒソヒソコソコソ

純一「え?聞こえないよ。もっと大きな声で言ってくれ」

長瀬「・・・・・・」
181: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/08(土) 22:25:46.97 ID:/248NtuFo
純一(石上さんと二人でお泊りって、何かいろいろまずい気がする。もちろん、変なことする気はないけど)

純一(美也に知られたら、絶対疑われるな)

純一(仕事なんだから断れないけど、せめて美也に言うのはやめよう。美也が家に来てる時じゃなくて本当によかった)

純一(あ、石上さん。資料室から戻ってきた)

純一「石上さん。これ、新幹線のチケットとかメモとかだって」

石上「うん、ありがとう・・・・・・ちょっと資料をデスクに置くまで待っててくれる」

純一「あ、悪い」

長瀬「気が利かない男だぜ、全く」

純一「・・・・・・」ムカ

石上「ごめんなさい」

純一「こっちこそ。はい、これ」

石上「ねえ、橘君」

純一「うん」

石上「わたしと二人で出張するの気が進まない?」

純一「そんなことないよ。仕事なんだし」

石上「1泊で帰らせてもらえるか、女上司さんに聞いてみようか?」

純一(あれ?石上さん落ち着いた口調だけど、手が震えてる・・・・・・」

純一(・・・・・・あ)



回想


石上「・・・・・・橘君。わたし冷静に喋ってるように見えてるかもしれないけど、胸の仲はどきどきして、舞い上がってて大変なんだよ?」


回想終了



純一(そうだよな。完璧に見える石上さんだって、傷ついたり悩んだりしてるんだよな。表情に出さないようにしているだけで)

純一(逆の立場で考えると。仕事の出張にまで一緒に行きたくないと思われたらショックだよな)

純一「石上さんさえよかったら、仕事終わったら一緒に観光していく?」

石上「・・・・・・いいの?」

純一「うん。せっかく女上司さんが気を遣ってくれたんだし」

石上「一緒の出張、迷惑に思われてると思ってたのに・・・・・・ありがとう、橘君」ポロ

純一「ちょっと石上さん・・・・・・泣くなよ。長瀬が見てるって」ヒソ

石上「あ、ごめんなさい」
182: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/08(土) 22:43:40.51 ID:/248NtuFo
同日 大学構内


?「あ~!橘先輩だ」

美也「ああ、後輩ちゃん。久しぶり~」

後輩「お久しぶりです。先輩、今日はどうしたんですか?」

美也「卒論の準備で図書館にいたの。もう帰るところ」

後輩「橘先輩、大学に来てるんならサークルにも顔出してくださいよ」

美也「4回生が邪魔しちゃ悪いじゃない」

後輩「ぜーんぜん邪魔じゃないですよ。今日はもう練習終わっちゃったけど、次は試合してください」

美也「考えとくよ」

後輩「あ、そうだ。思い出した・・・・・・いいところで先輩にお会いしました」

美也「なあに?」

後輩「うちのゼミの4回生の先輩たちとうちのサークルの女子で、明日飲み会やるんですけど」

美也「ふ~ん」

後輩「先輩も来ませんか?」

美也「え、何で」

後輩「・・・・・・そ、それは。久しぶりに先輩とお話したいですし」

美也「それなら別な日に飲みに行けばいいんじゃないの?」

後輩「それはそうなんですけど・・・・・・、まあ、ぶっちゃけゼミの先輩から橘先輩を紹介してくれって言われてまして」

美也「え」

後輩「飲んだときだったんで安請け合いしちゃって」

美也「・・・・・・」

後輩「すっかり忘れてたんですけど、今日先輩の顔を見たら思い出しちゃって」

美也「あたしはそういうのはいいや」

後輩「そういうのって、ただ飲んでお話するだけじゃないですか?」

美也「また、今度にするよ。あたしも今いろいろ忙しいし」

後輩「忙しいって、先輩内定も出てるし講義もないし、バイトもしてないじゃないですか」

美也「・・・・・・うっ」

後輩「ねえ先輩、一緒に行きましょうよ」

美也(にぃに以外の男の子となんて飲みに行きたくもないのに)

後輩「先輩?」

美也「・・・・・・」
184: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/09(日) 21:40:34.74 ID:bnCVBZh9o
東京駅 翌日朝8時


純一「おはよう、石上さん」

石上「おはようございます、橘君」

純一「今日もも早いね」

石上「習慣かなあ。父親に待ち合わせには一番早く着くくらいでいいんだっていつも言われてたから」

純一「いいお父さんなんだね」

石上「ありがと、自慢の父です。ちょっとファザコン気味かも」

純一「そうなの?」

石上「うん・・・・・。・橘君って、ちょっと父に似てるわ」

純一「え? え~と・・・・・・。じゃ、行こうか」

石上「うん」


純一「もう乗れるね。何号車だっけ」

石上「橘君、こっちだよ」

純一「うん」

石上「ここだね。二人席の側でよかった」

純一「そうだね。石上さん、窓側と通路側とどっちがいい?」

石上「橘君が好きな方に座って」

純一「いや。僕はどっちでもいいし、石上さん選んでいいよ」

石上「気を遣ってくれてありがと。じゃあ、わたしが窓側でいい?」

純一「うん、いいよ」

石上「女の子ってさ、そんなに親しくないい異性と一緒だと、出入りに気を遣うから通路側の席を選ぶんだって」

純一「そうなの?」

石上「それで・・・・・・親しい仲の異性と一緒だと、そんなに出入りりに気を遣わないし、奥のほうが彼氏に守られてる感じがするので、窓側を選ぶの」

純一「へぇ~。知らなかったけどそう言われてみればそうかもね」

石上「心理学的にも証明されてるんだって」

純一「そうなんだ」

石上「・・・・・・なんてね」クス

純一「え?」

石上「ごめん、嘘。今適当に考えたたの」

純一「何だ~。すっかり信じちゃったよ」

石上「でも、わたしの正直な気持ちではあるんだよ」クスクス

純一「・・・・・・今度は本当?」

石上「本当よ・・・・・。橘君、週末もつぶれちゃうのに一緒に出張してくれてありがと」

純一「何だよ、それ。仕事じゃんか」ドキドキ

石上そうね。でもこれ買って来ちゃった」

純一「うん?」

石上「神戸のガイドブック」

純一「ああ」

石上「神戸に着くまでの間、行きたいところ考えよ。一緒に考えてくれる?」

純一「・・・・・・うん」
185: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/09(日) 22:24:39.73 ID:bnCVBZh9o
美也のアパート 同日朝


『プルルル』

美也「・・・・・・」

『プルルル』

美也(・・・・・・にぃに、何度電話しても出ないな。これじゃ、遅刻しちゃうじゃない)

『プルルル』

美也(早く起きろ、馬鹿にぃに。会社遅れちゃうよ)イライラ

『プルルル』

美也(全然起きないじゃん。どうしよう)

『プルルル』

美也(7時40分・・・・・・。ああ、もう。にぃに、遅刻確定だよ)

『プルルル』

美也(・・・・・・)

『プルルル』

美也(駄目だ、にぃに起きない・・・・・・って、みゃーも今日も大学に行かないと)

『プルルル』

美也(・・・・・・)


大学の構内 1時間後


?「あ、橘先輩。おはようございます!」

美也「後輩ちゃん。おはよ」

後輩「先輩、今日も図書館ですか」

美也「ううん。今日は指導教授と面談の日なの」

後輩「じゃあ、それ終わったら一試合どうですか?」

美也「ごめん。ラケットもウェアとかも持ってきてないし」

後輩「・・・・・・むぅ。昨日お願いしたのに」

美也「悪い悪い」ニシシ

後輩「じゃあ、先輩。試合しなくてもいいけど、お茶しましょうよ?」

美也「うん、いいよ」

後輩「じゃ、部室にいますから。終わったら来ていただけますか?」

美也「わかったよ。じゃ、後でね」
186: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/09(日) 22:25:11.76 ID:bnCVBZh9o
英文学科の指導教授の部屋


教授「いいんじゃないですか、橘さん。この方向で書き続けるといいよ」

美也「はい」

教授「サキは特異な作家だからね。修論ならともかく卒論でテーマにする生徒は久しぶりだよ」

美也「前から決めてたんです。卒論はサキを取り扱ってみたいって」

教授「珍しいね。ところで君、就職決まったんだっけ?」

美也「はい。銀行に内定を頂きました」

教授「そう。僕はビジネスのこととかよくわからないけど、君なら英文でマスターとかドクターとかでもやっていけるのにね」

美也「ありがとうございます。でも、内定頂いているところで働こうかと思っています」

教授「・・・・・・まあ、少し大学に残るのもいいかなって思っただけだよ。君なら企業に就職しても十分にやっていけるだろうけど」

美也「あ、はい」

教授「じゃ、このまま書けばいいよ。来月にまたここに来てね」

美也「はい。ありがとうございました」

教授「うん。じゃ、帰る時次の人呼んでくれる?」

美也「はい」
187: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/09(日) 22:49:18.89 ID:bnCVBZh9o
神戸市内 午前11時


石上「あ、このビルみたい」

純一「本当だ。神戸支社ってプレートに書いてあるね」

石上「思ったより小さいビルに入ってるんだね」

純一「ま、シンクタンクの支社なんかこんなもんでしょ。全国に支社がある方が少数派みたいだし」

石上「そうなんだ」

純一「ま、都銀とは違うよ」

石上「そうかもね。あ、エレベーター来たよ。17階だっけ」

純一「うん」


××総研神戸支店


純一「失礼します。本店公共本部の橘です」

?「ああ。橘君、いらっしゃい。女上司さんから電話もらってますよ。神戸支社の相原です、よろしく」

純一「公共本部の橘です。よろしくお願いします」

石上「え・・・・・・!?」

純一「石上さん?」

相原「え?もしかして由里ちゃん?」

石上「・・・・・・栄治君!?」

純一(うん?何だ??)

相原「由里ちゃん・・・・・・何でここに」

石上「びっくりした。栄治君、××総研に勤めてたの?」

相原「うん。勤めてもう10年になるけど・・・・・・知らなかったの?」

石上「だって。伯母様、何も言ってくれないし」

相原「っていうか。由里ちゃんも、もしかして」

石上「あ、わたしは××銀行に今年入行して、研修で1年間総研に出向してるの」

相原「それこそ初耳だよ。何だ、総研本社に由里ちゃんがいたなんて。俺、結構本社に出張してたのに」

石上「全然、顔会わせなかったね」

相原「そうだね・・・・・・って、申し訳ない。橘君、僕は神戸支社の主任研究員している相原で」

純一「あ、はい」

相原「由里ちゃん・・・・・・、いや石上由里子の従兄弟です」

純一「え?従兄弟??お互いどこに勤めているか知らなかったんですか?」

石上「そうなの、橘君。うちの親族はあまり仲良くないんで、栄治君・・・・・・、相原君が総研にいたなんて知らなかった」

相原「うん。僕も由里ちゃんが××銀行に勤めたなんて初耳だったなあ」

純一「へえ!こんなことあるんですねえ」

相原「びっくりしたよ」

石上「栄治君、あれから元気だった?」

相原「まあね・・・・・・でも、個人的な話は後にして仕事の話をしようか」

石上「・・・・・・うん」

純一「あ、はい」

相原「じゃ、とりあえず支社長に紹介しよう。こっちに来てくれる?」
188: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/09(日) 23:01:36.79 ID:bnCVBZh9o
大学構内


プルルル

美也(やっぱり、にぃに出ない。会社に行ったんだ。遅刻しちゃったかな)

ガシャ

美也(会社に電話してみよ)

プルルル

?『はい。××総研公共本部です』

美也「すいません。橘純一の家の者ですが。いつも橘がお世話になっております」

?『美也ちゃん?』

美也「え?あ、橘美也と申しますけど」

?『俺。長瀬だよ、美也ちゃん』

美也「あ、長瀬さん」

長瀬『どうしたの?美也ちゃん』

美也「はい。あの。兄はいますか?」

長瀬『え?美也ちゃん聞いてないの?橘は神戸に出張してるよ』

美也「え!?」

長瀬『石上さんと二人で今日の朝から。3日間神戸滞在の予定だけど』

美也(・・・・・・)

長瀬「美也ちゃん、聞いてる?美也ちゃん??」



サークルの部室


後輩「わあ、橘先輩。ちゃんと来てくれたんですね」

美也「まあ、約束したから」

後輩「卒論どうでした?っていうか元気ないですね?先輩」

美也「・・・・・・そんなことないよ(にぃにのばか!)」

後輩「ならいいんですけど。じゃ、お茶しに行きましょ」

美也「そうね(みゃーに黙って石上さんと二人で出張とか信じらんない)」

後輩「いつものカフェでいいですよね」

美也(何でみゃーに一言言わないのよ。絶対後ろめたいから黙ってたんだ)

後輩「先輩?」

美也「まさか、石上さんとにぃに。出張中に過ちとか)

後輩「先輩!!」

美也「あ、ごめん。考え事してた」

後輩「いつものお店でいいですよね?」

美也「うん」
192: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/10(月) 21:48:44.22 ID:1ZX0cB2jo
大学近くのカフェ


後輩「ねえ、先輩。本当に今日来てくれないんですか?」

美也「だからさ、合コンみたいに知らない男の人が来る飲み会は気が進まないんだって」

後輩「合コンじゃないですって!知り合い同士でちょっと飲みに行こうってノリの飲み会なんですけどね」

美也「あたしは今日来る男の人って別に知り合いじゃないもん」

後輩「・・・・・・先輩、いつも優しいのに。何か嫌なことでもありました?」

美也「べ、別にないよ(にぃにのバカ)」

後輩「いつもの優しい先輩じゃないじゃないですか」

美也「そんなことないって(にぃにの浮気者)」

後輩「それなら今日一緒に来てくださいよ。保護者として」

美也「何で保護者よ(にぃに・・・・・・。何でみゃーに一言出張だよって言えないのよ?」

後輩「先輩と飲みたい後輩たちの願いをかなえってやってくださいな♪」

美也「・・・・・・あなた本気であたしと飲みたい訳じゃないでしょ?」

後輩ドキ

美也「白状しなさい?何でしつこくあたしを誘うのか」

後輩「・・・・・・先輩、やっぱ鋭い」

美也「やっぱり」

後輩「ごめんなさい、先輩!」

美也「え?」

後輩「先輩と同期の八木先輩って知ってます?経営学部の」

美也「知らない。そういや後輩ちゃんも経営学部だったね」

後輩「昨日も話しましたよね? 八木さんってゼミの先輩がとにかく橘先輩と飲みたいってうるさいんですよ」

美也「そう(知らない男とお酒飲んだって知られたら、にぃにがヤキモチ焼いて大変なんだから」

後輩「八木先輩にはちょっと借りがありまして。やばいんですよ、あたし」

美也「借りがあるのか(にぃにのヤキモチって半端じゃないからなあ)」

後輩「だから協力してくださいよ。もし橘先輩が八木先輩とかに口説かれたら、あたしたち後輩軍団が先輩を守りますから」

美也「何よ、それ(でも、にぃににみゃーを怒る資格はないよね。みゃーに内緒で、石上さんと二人きりで神戸に行ってるんだから)」

後輩「先輩お願い!」

美也「(とにかくみゃーに出張を隠したっていうのが気に入らない)う~ん」

後輩「八木先輩に約束しちゃって、今更引っ込みがつかないんです。橘先輩、本当に今日駄目なんですか?」グス

美也「(たまにはにぃにに心配させてやるか)・・・・・・しょうがないなあ。今日だけだからね」

後輩「はい!感謝です、先輩」

美也「・・・・・・」
193: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/10(月) 21:52:50.37 ID:1ZX0cB2jo
××総研神戸支社 会議室


相原「まあ、参考になるかどうかわからないけど、支社で納品した内容はこんな感じだよ」

純一「いえ、すごく参考になりました。来てよかったです」

相原「それならよかった。受注規模の大きな仕事だって女上司さんに聞いたよ。頑張ってね」

純一「ありがとうございます」

相原「じゃ、これが成果品のレポートね。ちょっとかさ張るけど参考までに持って行って」

石上「・・・・・・お兄ちゃん、じゃなかった。栄治君すごいね」ウットリ

相原「何言ってるの由里ちゃん」

純一(あ。確か前に聞いた本当に好きになった人って・・・・・・)



回想


石上「今まで好きになった人で、本気になっちゃったのは2人かな」

純一「そうなんだ」

石上「うん。一人目は初恋の人でね。従兄弟のお兄さん」

純一「はは。可愛い思い出だね」


回想終了



純一(ああ、相原さんが石上さんの初恋の従兄弟の『お兄ちゃん』かあ)

純一(何だか微笑ましいな)

相原「そんなことより由里ちゃん綺麗になったね」

石上「え?お、お兄ちゃん何言ってるの///」カァ

純一(あれ?石上さん真っ赤になってる)

相原「もうすぐ定時だけど、二人は何か予定あるの?」

石上「え、え~と」チラ

純一(あ、そうか。気を利かしてあげようかな)

純一「特にないんです。ホテルに帰って寝るだけですね」

相原「じゃあ、よかったら食事に行かない?美味しいところ案内してあげるよ」

石上「うん・・・・・・橘君、いい?」

純一「あ、僕はホテルで今日聞いた内容を整理したいんで遠慮しておきます。石上さん、相原さんに連れて行ってもらいなよ」

石上「・・・・・・橘君?」

相原「すごいね。今回の仕事にのめりこんでるんだねえ、橘君は」

純一「え、ええ。まあ」

石上「橘君も一緒に行こうよ・・・・・・」

純一「(石上さん、気を遣っちゃって)いや、僕のことは気にしないでいいから。久しぶりの再開なんでしょ? 『お兄ちゃん』と」クス

相原「からかうなよ、橘君」

石上「・・・・・・(橘君?)」
194: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/10(月) 22:15:21.15 ID:1ZX0cB2jo
大学近くの居酒屋


美也「遅れてごめん」

後輩「遅いですよ~先輩。はい、そこの席空けておきましたから」

後輩2「橘先輩、お久しぶりですぅ」

後輩3「先輩、元気でした? たまにはサークルに顔出してくださいよ~」

美也「ははは、ごめん」

後輩「先輩、生ビールでいいですか?」

美也「うん」

後輩「すいませーん!」





後輩「じゃ、紹介しますね。こちらは同じゼミの4回生の八木先輩」

八木「よろしく。学部が違うんで俺のこと知らないと思うけど、橘さんのことはよく見かけていたよ」

美也「はじめまして。橘です」

後輩「残りの二人は八木先輩のお友達。合コン男2さんと合コン男3さん・・・・・・でしたっけ?」

合コン男2・3「よろしく・・・・・・。って最初から思い切りMOB扱いかよ」

後輩「橘先輩、料理は適当に頼んじゃいましたよ」

美也「うん。任せるよ」

八木「橘さんって文学部だっけ?」

美也「うん。英文科」

八木「じゃあ、○○教授って知ってる?」

美也「ああ、あたしの指導教授ですよ」

八木「え!そうなの?」

美也「うん。八木君は何で知ってるの?経営学部なんでしょ」

八木「あの人、俺の叔父さんなんだ」

美也「そうなんだ」

八木「叔父さんの指導どう?」

美也「ぶっきらぼうな先生だけど、とてもわかりやすいよ。今日も卒論の指導受けてたの」

八木「そうか。よかった」

美也「八木君が先生の甥っ子とはねえ」

八木「今度、叔父さんに美也ちゃんのこと聞いてみるよ」

後輩「八木先輩、いきなり名前で呼んでますよ」

美也「・・・・・・」

八木「あ、ごめん。思わず口を出ちゃった」

後輩2「相変わらず女たらしですねえ」

八木「そんなんじゃないよ」

美也「いいよ、美也で」クス

後輩(え?橘先輩・・・・・・)
195: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/10(月) 22:30:57.60 ID:1ZX0cB2jo
神戸市内のビジネスホテル


純一(女上司さん、この出張は受注のご褒美だったと言ってたけど)

純一(相原さんの仕事、すごく役に立つぞ。見れば見るほどよく出来てるし)

純一(ただ、環境が違うからこのままは使えない・・・・・・って、当たり前か)

純一(先行研究がそのまま使えるようなら、役所だってわざわざ新規発注することないもんな)

純一(とりあえず、住民の年齢層や所得階層が違うから、前提条件が全く異なるよな)

純一(・・・・・・相原さんのは地方の過疎進行地域が対象だけど、うちの仕事は比較的現役で仕事や子育てをしている若い世代が対象だから)

純一(とりあえずその辺りは修正しないと)

純一(でも参考になるな。こういう風にアプローチすればいいんだな。これがわかっただけでも出張してよかった)

純一(・・・・・・)



3時間後


純一(この辺にしておくか。まだ、1日目だしな。あれ、もう9時か。腹減ったな)

純一(石上さん達にどういう事情があったかしらないけど、今頃積もる話に花を咲かしているんだろうな)

純一(気を利かしてあげたけど、さすがに遠いところで一人切りは寂しいな)

純一(美也に電話しようかな。何か美也に言えなくて黙って来ちゃったけど、実際やましいことはしてないわけだし)

純一(何より美也の声が聞きたいな)

純一(よし)

『プルルル』

『はい、橘です。留守にしておりますので伝言がある方は、ピーという音がしましたら』

ガチャ

純一(9時過ぎなのに家にいないのかよ。美也何やってるんだろ)

純一(はぁー。美也も石上さんも相手してくれない)

純一(外に食事に行くか)
196: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/10(月) 22:54:04.02 ID:1ZX0cB2jo
大学近くの居酒屋


後輩「八木先輩、結局実家の仕事するんですか?」

八木「うん。最初は同業他社で修行を積むって話もあったんだけどさ」

後輩2「いきなり後継者ですかぁ」

八木「い、いや。違うよ。親父からは他の新入りと同じに扱うからなって言われてるよ」

後輩3「でも、将来の社長は約束されてるんですよね?いいなあ」

後輩「橘先輩。八木先輩は八木食品のオーナー経営者の長男なんですよ」

美也「ふ~ん。そうなんだ」

八木「美也ちゃんは内定は?」

美也「うん。××銀行に決まった」

八木「え?すごいじゃん。総合職でしょ」

美也「うん」

八木「××銀行ってうちのメインバンクなんだ」

美也「そうなの?お得意さまなんだね」

後輩「そういや橘先輩って、まんま肉まん好きだったですよね?」

美也「うん!小さい頃からの大好物だよ!!」

後輩「すごい食いつきですね。八木食品ってまんま肉まんを製造している企業なんですよ」


美也「ええええええ!!!!」

後輩「な、何でそんなに驚いてるんですか!」

美也「だって、あの『まんま肉まん』を作っていた会社が八木君のおうちなんて」

後輩{はい?」

八木「え?」

美也「あたしの小さい頃からの大好物なんだよ? まんま肉まんは。まさかそれを製造している人と会えるなんて!」

八木「い、いや。別に俺が作ってるわけじゃないけど」ドンビキ

美也「すごいすごい! ああ、何かまんま肉まんたべたくなっちゃった。後輩ちゃん、ちょっと買ってきてよ」

後輩「何でですか!」

美也「ねえねえ、八木君。まんま肉まんって普通の肉まんと違うじゃない?あのコクとか食感とかさ。何か秘密があるの?」ワクワク

八木「え、いや」

美也「やっぱり企業秘密?」ウルウル

八木「(か、可愛いな。橘さん。よし!)まあ、そうだけど。よかったら今度工場見学に来ない?うちに来ればいろいろと肉まんのヒミツを教えてあげられるよ?まんま肉まんを考案した長老みたいな工場長からも話聞けるし」

美也「行く!」

後輩(橘先輩、肉まんに釣られちゃったよ・・・・・・どうなっても知りませんからね)

八木「じゃあ、連絡するから電話番号とか住所を」

美也「うん、教える!メモして」

後輩(・・・・・・これがメガバン数社から総合職で内定とった人なのかな。肉まんごときで釣られすぎでしょ)

美也「ねえねえ、いつ連れて行ってくれるの?」

八木「うん。来週とかでよければ・・・・・・」

美也「楽しみにしてるからね。連絡してね」

後輩(橘先輩も八木先輩の毒牙に・・・・・・って、あたしのせいじゃないよね?自業自得っていうか)

後輩(・・・・・・はぁ)
200: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/11(火) 21:48:57.33 ID:r9R6grDbo
神戸市内のホテル 夜


純一(・・・・・・まさか、神戸まで来てホテルの部屋でカップラーメンを食べるとは)

純一(でも、何かこの辺りの店って一人では入りにくいしなあ。結局コンビにでカップ麺買って来てしまった)

純一(まあ、嫌いじゃないからいいんだけど、美也に知られたら怒られるな)

純一(・・・・・・3分たった。食べるかな)


ズルズル


純一(関東ではあまり見かけないカップ麺だけど、これはなかなか美味しいな)


ズズ


純一(スープも美味しいな・・・・・・。だが、侘びしい)

純一(自分の部屋なら一人でも平気なんだけどな。この部屋夜景が綺麗だし、外がはカップルで溢れているし)

純一(・・・・・・美也、今日は飲み会なのかな。全然、電話に出てくれないし)

純一(今頃、石上さんは相原さんと楽しくやってるんだろうな。久しぶりに再開したみたいだし、二人きりにしてあげてよかった)

純一(行きの新幹線内で、今日の夕食は人気のあるステーキ・ハウスに行きたいって石上さん言ってたけど)

純一(今日相原さんとそこで食事しちゃってるかもな)

純一(・・・・・・昔のイブのあの嫌な感覚が心に押し寄せてくる)

純一(もう、寝よう・・・・・・。って、明日は仕事ないし、どうするのかな)

純一(相原さんは昼間は仕事だろけど。でも休暇を取って石上さんと二人で過ごす可能性も。石上さんに確認しておけばよかった)

純一(つうか彼女、今日ホテルに帰ってくるのか?)

純一(まさか、残り二日間一人きりじゃないだろうな?)

純一(もしそうなら、早目に帰って千葉の美也のところに言ってたらまずいかな?)

純一(まあ、いいか。明日は普通に起きて食事して、石上さんの連絡を待っていよう)

純一(寝よ)
201: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/11(火) 22:06:26.85 ID:r9R6grDbo
神戸市内のホテル 朝7時


プルルル

純一(う~ん)

プルルル

純一(・・・・・・電話?美也のモーニングコールか)

プルルル

純一(美也なわけないか。出張のこと話してないし)

ガチャ

純一「はい」

?『橘君おはよう』

純一「・・・・・・石上さん」

石上『起こしちゃった?』

純一「うん、いや。起こしてくれてよかったよ」

石上「昨日は一人にしちゃってごめんね。ちゃんと食事した?」

純一「・・・・・・うん」

石上「朝食に行かない?展望ラウンジのビュッフェみたいだけど」

純一「うん。10分待ってくれるなら・・・・・・ああ、先に行っててもいいよ」

石上「一緒に行きたいから待ってるね。わたし、隣の部屋だから行く時に寄ってね」

純一「うん」

石上「・・・・・・隣って右隣だよ?」

純一「チェックインした時に一緒にいたから覚えてるよ」

石上「じゃあ、待ってるね」

純一「う、うん」


10分後


純一「悪い、お待たせ」

石上「どういたしまして。じゃ、朝食に行きましょ」

純一「うん」
202: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/11(火) 22:31:20.50 ID:r9R6grDbo
展望ラウンジ


ホテルの従業員「こちらのお席にどうぞ」

石上「窓際だね。海がよく見えるわ」

純一「うん(石上さん、昨日何時に帰ったのかな?)

石上「これだけ高いところから360度景色が見えるなんて、すごいね。メリケン広場とか六甲の方とか全部見える」

純一「うん(まあ、ホテルも門限あるし。い、いや、朝帰りなら門限とか関係ないしな)」

石上「夜来てみたいな。ここ、夜景が綺麗でしょうね」

純一「うん(でも、従兄弟同士だし。つうか従兄弟って別に結婚してもいいんだよな)」

石上「ちょっと、ちゃんと聞いてる?橘君」

純一「あ、うん」

石上「ビュッフェだって。お食事取りに行こ?」

純一「うん(やっぱり綺麗だな石上さん。周りの男達がさりげなく見つめてるし)」

石上「じゃあ、行こう。おなかすいちゃった」


石上「橘君って朝は和食派なんだ」

純一「いや、そういうわけでもないんだけど、旅先の朝食は何かご飯と味噌汁とかがいいなって」

石上「そういう好みなのね。覚えておこう」クス

純一「い、いや。別に覚えてもしょうがないでしょ」

石上「そうかもね」

純一「え?」

石上「何でもないよ。橘君、今日はどうする?」

純一「え、え~と」

石上「今日何か変だよ?橘君」

純一「そんなことないんだけど」
203: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/11(火) 22:31:53.74 ID:r9R6grDbo
石上「・・・・・・気になる?」

純一「え、えと」

石上「わたしとお兄ちゃん・・・・・・栄治君が昨日の夜何してたか気になるの?」

純一「・・・・・・」

石上「あ、朝から変なこと言ってごめん」

石上「・・・・・・」

純一「正直に言うと」

石上「え?」

純一「ちょっと気になるかな。相原さんって石上さんの初恋の人でしょ?」

石上「・・・・・・そうだけど」

純一「偶然同じ会社ってわかって劇的に再会したんじゃない?それは気になるよ」

石上「昨日さ」

純一「うん」

石上「お兄ちゃんと食事して、お洒落なバーでお酒飲んで久しぶりな会話してね」

純一「・・・・・・」

石上「お兄ちゃんにホテルまで送ってもらって、それで肩を抱かれて」

純一「え」

石上「わたしの初恋も一方通行じゃなくて、お兄ちゃんと両思いだってこともわかって」

純一「そうか」

石上「で、ホテルの前まで来て、お兄ちゃんキスされかけた時、ホテルの部屋で一人で仕事している君の姿が頭に浮かんだ」

純一「・・・・・・え」

石上「それで・・・・・・。やめて!って叫んでお兄ちゃんを突き飛ばしちゃった」

純一「それって」

石上「お兄ちゃんに謝って、お兄ちゃんも謝ってくれて。あ、お兄ちゃんってもう結婚してるんだけどね」

純一「え!!」

石上「それで、何とかホテルの門限に間に合って、橘君の部屋をノックしたけど出てくれなくて、現在に至る。以上」

純一「あのさ」

石上「何も言わなくていい。わかってるから。でも、今は自分の感情に素直になりたいの」

純一「本当に好きになった最初の人なんでしょ?」

石上「うん。でも、今のところ最後に本当に好きになった人は」

純一「・・・・・・」

石上「もう変な遠慮はしないでね?」

純一「う、うん」
204: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/11(火) 22:43:30.41 ID:r9R6grDbo
美也のアパート 同日


プルルル

美也「はい」

?『橘さんのお宅ですか』

美也「はい、そうですけど」

?『昨日お会いした八木です。ごめん、突然電話して』

美也「ああ、八木君。昨日は送ってくれてありがとう」

八木『いや。そんなことより、美也ちゃん。今日は何か予定が入ってる?』

美也「・・・・・・何で?」

八木『昨日話した工場見学なんだけどさ』

美也「あ、うん!」

八木『工場長に話したらすごく喜んじゃって。昔からのまんま肉まんのファンの方ならぜひお会いしたいって』

美也「え、本当?」

八木『うん。工場長って長老みたいな人でさ、まんま肉まんを考案して会社をここまでにした人だから、肉まんへの愛着がすごく強いんだよね』

美也「そうなんだ」

八木『それで、迷惑じゃなかったら今日見学に来ない?』

美也「う~ん(今日は何が何でも神戸のにぃにに連絡して、説教してあげようと思ったんだけど)」

八木『急に誘っても無理かな?』ドキドキ

美也(でも、仕事してるだろうしホテルの電話番号を知ってるくらいじゃ昼間は連絡つかないよね)

八木『今日無理でも別な日にまたセッティングするけど』

美也「いいよ。あたしもぜひまんま肉まんが作られてるとこ見てみたいし」

八木『よかった。じゃあ、車で迎えに行くね』

美也「そんなの悪いよ。場所を教えてくれれば、自分の車で行くから」

八木『いやさ』

美也「何?」

八木『後輩ちゃんから、危険なんで美也ちゃんにはなるべく運転させないでねって言われて』

美也「・・・・・・」
210: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/13(木) 21:39:55.83 ID:2GCzUZclo
神戸市内


石上「一度神戸の異人館見てみたかったんだ」

純一「横浜のと同じ感じだけどな」

石上「そんなこと言わないの・・・・・・でも、横浜にドライブした時も元町の異人館には行かなかったね」

純一「まあ、時間もなかったし。プロポのコンペ前で心の余裕もなかったなあ、あの時は」

石上「うん。わたしもそうだったけど。でもさ?」

純一「うん?」

石上「わたしがプレゼンテーションを週明けに控えてパニックになってた時に、ドライブに誘ってくれたじゃない?あれって、本当に嬉しかったんだよ」

純一「そうか」

石上「『そうか』ってどういう反応なの?」クス

純一「まあ、あの時は楽しかったよね。料理も美味しかったし」

石上「・・・・・・橘君。昨日の夜、何食べたの?」

純一「カップラーメン・・・・・・かな?」

石上「・・・・・・」

純一「な、何か反応してよ」

石上「美也ちゃんの気持ちが今一瞬わかった気がしたわ」

純一「何だよ、それ」

石上「何って・・・・・・。あ、見えてきた。あれが『英国館』だよ」



純一「そろそろお昼だね」

石上「そうだね。どうする?」

純一「え~と。昨日言ってたステーキハウスってさ、その」

石上「お兄ちゃんとは行ってないよ。もともと橘君と行きたかったんだもん」

純一「そ、そう。じゃ、そこ行く?」

石上「うん!何か楽しみだな。神戸牛っていうのもあるけど、味だけじゃなくて古い洋館を改装した店で雰囲気がいいんだって」ワクワク

純一「・・・・・・でも、石上さん。そういう雰囲気のいいお店って慣れてる感じだけどな」

石上「それはそうだけど・・・・・・。君と二人で行けるんだもん。カップルが多いお店なんだって」

純一「あ、あはは」ドキ

石上「じゃ、行こ? ここからなら歩いて行けるみたい」

純一(どうしよう。何か楽しいしドキドキする・・・・・・。昨日の夜寂しかったせいもあるかもしれないけど)

純一(石上さんが長瀬とベタベタしてた後もそうだったけど。まさか石上さんわざとやってるんじゃないよな)

純一(いや、まさか。僕なんかにそんな手の混んだことをする理由がないし。こんなこと考えるだけで彼女に失礼だ)

純一(まあ、悪いことをしているわけじゃないんだ。今は素直に石上さんと楽しむか)

純一(・・・・・・美也だって出張って言えばわかってくれるさ)

石上「橘君?」

純一「あ、悪い」

石上「早く行こうよ」

純一「(え?腕を組むの?)う、うん」
211: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/13(木) 22:19:03.98 ID:2GCzUZclo
八木の車の中


八木「ごめんね美也ちゃん。急に誘っちゃって」

美也「それはいいけど・・・・・・。そういえば八木君の会社ってどこにあるの」

八木「館山なんだ。少し時間かかるよ」

美也「そうか。八木君って南房出身なんだね」

八木「うん。大学で千葉市に来るまではずっと館山。美也ちゃんは?」

美也「あたしは生まれた時からずっと銚子」

八木「同じ千葉県出身でも南北に離れて育ったんだな」

美也「そうね。でも、まんま肉まんって館山で作ってたんだ。小さい頃からの好物なのに知らなかったな」

八木「それは製造地まで確認して食べる人って普通いないでしょ」

美也「それはそうだけど。でも、大手の製パンメーカーとかが作ってるんじゃなかったんだなあ。県内で作ってるって知って何かうれしい」

八木「本当にうちの肉まん好きなんだね。ありがとう」

美也「お礼を言いたいのはあたしの方だよ。まんま肉まんを作って売っててくれてありがとう」ニシシ

八木「工場長が聞いたら泣いて喜ぶよ。そのままショック死するかもね」

美也「何言ってるの。でも、あたしもその人に会うの楽しみ」

八木「そうか。あ、そろそろ着くよ。会社のオフィスに行っても面白くないんで、工場に直行するからね」

美也「うん」


工場の敷地内


八木「はい、ついたよ。お疲れ様、美也ちゃん」

美也「ここが聖地かあ」

八木「・・・・・・聖地って何言ってるの」クス

美也「だって、本当にそういう感じなんだもん。何かどきどきする」

八木「じゃあ、工場に入ろうか」

美也「う、うん」ワクワク
212: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/13(木) 22:42:10.94 ID:2GCzUZclo
ステーキ・ハウス内


ウエィター「お待たせいたしました。2名様、窓際の席にどうぞ」

純一「・・・・・・やっと入れたね」

石上「まさか1時間以上待つとは思わなかった。橘君ごめんね」

純一「何で謝るの?」

石上「・・・・・・だって」

純一「石上さんといろいろ話してたら待ってる時間なんてあっという間だったよ」

石上「ありがと」

純一「何でお礼言うの?」クス

石上「本当だね。何でだろ・・・・・・惚れた弱み?」ニコ

純一「よせよ」

石上「ああ、悪い。忘れて」

純一「それより、何食べようか」

石上「このお店はコースで頼んだ方が無難みたいよ」

純一「じゃあ、そうしよう。ステーキの種類を選ぶんだね」

石上「わたしはヒレステーキのコースにしようかな」

純一「じゃ、僕はサーロインにしよう」

石上「・・・・・・ワイン頼まない?」

純一「いいけど。僕は全然ワインの種類とか知らないけど」

石上「じゃ、無難にハウスワインにしときましょ」
213: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/13(木) 22:42:45.73 ID:2GCzUZclo
ウエィター「ご注文はお決まりですか」

純一「あ、はい。ヒレのコースとサーロインのコースを一つづつお願いします」

ウエィター「かしこまりました。お飲み物はどういたしましょうか」

純一「あ、ええと。ハウスワインを」

ウェイター「赤でよろしいですか。ボトル、デキャンター、グラスのどれをお持ちしましょう?」

純一「え?ええと」パニック

石上「ボトルの赤をお願い」

ウェイター「かしこまりました」

純一(僕って情けないな。こういう店で注文も満足にできないなんて)

石上「どうしたの?橘君」

純一「いや、こういうちゃんとしたお店に慣れてないから、注文も下手だったでしょ?石上さんに恥かかせちゃったかなって」

石上「ちゃんとしたお店って、ここはステーキハウスじゃない。緊張するようなお店じゃないよ」

純一「・・・・・・」

石上「それよかボトルで頼んじゃったけど、デキャンターでよかったかな」

純一「まあ、余ったら余ったでいいでしょ」

石上「うん・・・・・・お店にいる人たち、みんなカップルだらけだね」

純一「そうだね」

石上「本当にこのお店美味しいのかな」ヒソ

純一「どうして?」

石上「何となくだけど。本当に美味しいお店って、若いカップルより年配の人たちの方が多い気がする」

純一「僕にはよくわからないけど」

石上「はずれだったらごめん。橘君に喜んで欲しかったんだけど、客層見て不安になって来ちゃった」

純一「何言ってるの。二人でこうしているだけでも楽しいよ」

石上「・・・・・・それ、本当? 橘君」

純一「(あ、やべ。つい口から出ちゃった)う、うん」

石上「うれしい」

純一「え?石上さん何泣いて・・・・・・」

石上「泣いてないよ、ごめんね」グス

純一「・・・・・・」
214: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/13(木) 23:02:07.31 ID:2GCzUZclo
八木食品株式会社館山工場


八木「ここは展示スペースになってるんだ」

美也「うん」

八木「ほら、ここにある写真がまんま肉まんの第1号製品だよ」

美也「本当だ!これが原点なんだあ」ワクワク

美也「あ、何か説明のパネルがあるね」



展示パネル


『千葉県内で人気製品となっているまんま肉まんは、八木食品株式会社の創始者、八木源一郎の代に初めて発売された。当時、横浜中華街の料理屋で修行したシェフを工場長として迎え、中華街の肉まんに独特の工夫を加え、日本人好みに仕上げて発売したのが、現在のまんま肉まんの始まりである。発売からしばらくして、千葉県内では大手製パンメーカーの肉まんを抑え、シェア第1位となった。このシェアは発売開始から30年経過した現在でも変化はなく、千葉県内では一番消費者に愛されている肉まんとして現在でも当社の主力商品となっている』


美也「へえ。もともとは中華街の料理人が考案したんだ」

八木「うん。そのシェフが今でも現役で工場長をしてるんだよ。社長の親父や俺なんか全然頭があがらないんだけどね」

美也「あたしが生まれる前から人気商品だったのね」

八木「最近まで千葉県内限定だったんだけど、東京とか神奈川とかからも引き合いが来てるみたいだよ」

美也「あたしも来年からは東京に住むんで、都内でまんま肉まんが買えるようになったら嬉しいな」

八木「じゃ、美也ちゃんのために都内の販売を絶対実現させるよ」

美也「ありがと。期待してるね」

八木「でも、せっかく知り合えたのに、美也ちゃん東京に行っちゃうのか。ちょっと寂しいな」

美也「八木君、館山で勤めるんでしょ?あたしが千葉とか銚子にいても同じじゃん」

八木(さらっとかわされてしまった。まあ、これからゆっくり落とそう)ニヤ

美也「うん?どうしたの」

八木「い、いや。それよりこっちの展示・・・・・・。製品のバリエーション広げてみたやつ」

美也「あ、本当だ。まんま餡まんは知ってたけど、まんまピザまんとかまんまカレーまんとかまんまチョコまんとかある」

八木「最新の商品はこれ。まんまビーフストロガノフまん!」

美也「・・・・・・え(何それおいしいの?)」
221: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/14(金) 22:36:27.41 ID:Yhb7g28so
神戸市内のステーキハウス


純一「僕はグルメじゃないからよくわからないけどさ、このステーキすごく美味しく感じるんだけど」

石上「よかった。わたしが決めた店で橘君が喜んでくれなかったら落ち込んでたとこだよ」

純一「・・・・・・ありがと。そこまで考えてくれて」

石上「好きな人のことだから」アッサリ

純一「で、石上さんとしては味はどう思うの?」

石上「最初心配したほどまずくない、っていうか美味しいよ」

純一「石上さんがそう言うならいい店なんだろうね」

石上「・・・・・・はい。橘君」

純一「え?な、何」

石上「サーロインは脂肪の甘さで美味しく感じちゃうこともあるからね。ヒレで美味しければ本当にいい肉なんだって」

純一「それはそうかもしれないけど」

石上「だから味見して?はい」アーン

純一「う、うん」パク

石上「どう?美味しい」

純一「・・・・・・美味しい」モグモグ

石上「そう。よかった」ニコ

純一(何か僕達二人ってどこから見てもカップルにしか見えないよな)

純一(石上さんって、美也とも女友とも全く違うタイプだな。最初は女友と似てるかと思ったんだけど)

純一(一途かと思えば冷静な大人だし。冷静な大人かと思えばプレゼン前なんか子供みたいに不安な様子だったし)

純一(長瀬の言うとおりだ。住む世界が違うっていうか踏んできた場数が違うって言うか。確かに僕なんかじゃ彼女に釣り合ってないのは確かだ。でも、そんな彼女が僕のこと好きだって言ってくれて)

純一(実際、他の男より僕のことを優先してくれている)

純一(そして今。僕は楽しいし、くつろいでるし)

純一(う~ん・・・・・・)

石上「・・・・・・橘君、考え事はもう終わり?」

純一「あ、悪い(石上さんを放っておいてしまった)」

石上「ううん、気にしなくていいの。でも、早く食べないと冷めちゃうよ?」

純一「うん」
222: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/14(金) 22:39:34.42 ID:Yhb7g28so
工場4階 工場長室


八木「じいちゃん、入るよ?」トントン

?「はいよ」

八木「さ、どうぞ。美也ちゃん」

美也「う、うん」

八木「じいちゃん。昨日話した俺の大学の友達だよ。橘美也さん」

美也「はじめまして。橘です」

?「おうおう。まんま肉まんが好きな子だな。こんにちは」

八木「うちの工場長の陳さん。まんま肉まんを考案して育てた人だよ」

美也「あの、あたし小さい頃からまんま肉まんが大好きなんです。ですので、お会いできて嬉しいです!」

陳「そうですか、こちらこそ。そう言っていただけると嬉しいですよ」

八木「じいちゃん、美也ちゃんを工場に案内したいんだけどさ」

陳「おうおう。じゃあ、案内しようかね。ちょっと、ここで待っててね」

八木「え?」

美也「ありがとうございます!お願いします」

八木「へええ」

美也「何?」

八木「いやさ。じいちゃん自らお客さんを案内するなんて滅多にないんだぜ」

美也「そうなの?」

八木「だって会社の最大の功労者でさ。うちの親父だって頭が上がらないんだ」

美也「じゃあ、ラッキーだったんだね」

八木「普通なら誰かに案内させようって言うのにな。じいちゃん、初対面なのに美也ちゃんのこと余程気に入ったんだね」

美也「八木君、陳さんのことじいちゃんって呼んでるんだね」

八木「ああ。本当の祖父じゃないけど、小さい頃から身近にいてさ。何となく子供の頃からそう呼んでた」

美也「八木君の子供の頃は、陳さんだってまだ若かったでしょ」

八木「何言ってるの。じいちゃん、いくつだと思ってるの?」

美也「60代?」

八木「今年80歳だよ」

美也「えええ!見えない!」

八木「死ぬまで現役で工場にいる気だしね、じいちゃんは」

美也「・・・・・・八木君、陳さんのこと好きなんだね」

八木「え?あ、まあね」

八木(・・・・・・)
223: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/14(金) 22:54:55.62 ID:Yhb7g28so
八木「じゃあ美也ちゃん。これ着てくれる?あと、そこで手を消毒してね」

美也「うん」

八木「そしたらこのキャップをかぶって。髪の毛が全部キャップの中に入るようにしてね」

美也「はい」

陳「じゃ、案内しようかね」

美也「よろしくお願いします」



製造ライン


八木「ここでまんま肉まんの餡を作ってるんだよ」

美也「お肉を煮てるの?」

陳「ああ。昔みたいに手作業は出来なくなったけどな。でも、餡を作る部分はちゃんと調理してるのさ。大手じゃスチームを通して調理したりしてるんだけどな」

美也「何かいい匂いですね」

陳「昔、日本の肉まんは肉が少なくて筍とかで増量してたんだよ。逆に中華街で手作りしていた肉まんは肉の塊でね。肉としょうがだけなんていうの売ってたな。そういうのも不味くはないんだけど、日本人には肉を少なくして、でも日本の肉まんみたいに具が少ないっていうのを改善して、まんま肉まんができたんだ」

美也「そう言われてみれば、中華街の手作りの肉まんって中身が重くてひとつ食べたらお腹一杯になっちゃいますね」

陳「そうだろ。で、日本のコンビニとかの肉まんは中身が濃い味のペーストで、その味で皮を食べさせるっていう感じだろ」

美也「確かにそうですね」

陳「単純な話で、その中間を狙ったんだよ、この肉まんは。そうしたら売れちゃったのさ」

美也「でも、本当に美味しいですよね。最強のおやつだとあたしは思います」

陳「うんうん。食事じゃなくておやつというのはぴったりな表現だね」

美也「皮も美味しいですよね」

陳「皮には特に秘密はないよ。ただ、これも餡と一緒で本格的な肉まんほど厚く重い皮でもなく、日本の肉まんみたいにふわふわした軽い皮でもないんだ」

美也「餡と同じでその中間なんですね」

陳「そうだよ。お嬢ちゃんはよくわかってるね」

美也「そんな」テレ

八木「美也ちゃんは小さい頃からのまんま肉まんのファンだからね」

陳「おう、そうか。嬉しいね」
224: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/14(金) 23:07:02.04 ID:Yhb7g28so
神戸市内 夕食後


石上「今日は楽しかった。橘君付き合ってくれて本当にありがと」

純一「僕の方こそ楽しかったよ。いろいろプラン決めてくれてありがとう。昼のステーキも夜の中華も美味しかったよ」

石上「橘君に喜んでもらえてよかった。明日は午後1時頃の新幹線だっけ?」

純一「そうだね。余裕持って帰れるよね」

石上「・・・・・・」

純一「・・・・・・」

純一「(・・・・・・これ以上、石上さんに気を遣わせる訳にはいかないな)あのさ」

石上「う、うん!」

純一「えと、よかったらさ。その」

石上「うん」

純一「・・・・・・少し、どっかで飲まない?」

石上「え?」

純一「あ、いや。相原さんと約束あるならいんだけど」

石上「ないよ」ボソ

純一「え?」

石上「お兄ちゃんとは昨日お別れしてるし」

純一(お別れってどっちの意味だろ)

石上「今日は何も約束してないよ」

純一「じゃ、じゃあさ。今日朝食を取った展望ラウンジの夜景見たいって言ってたでしょ?」

石上「・・・・・・うん」

純一「あそこ、夜はバーになってるから、よかったら一緒に行ってみようか」

石上「橘君・・・・・・」チュ

純一(え!?)

石上「橘君、ありがとう。じゃあ、行きましょう」

純一(・・・・・・)
230: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/15(土) 00:00:43.36 ID:aBtBg3oDo
>>228
いひひNTR・・・・・・現在迷ってる最中でっせ

>>229
作者冥利につきますが・・・・・・

だが、美也への誹謗中傷は許さん
232: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/15(土) 21:39:30.05 ID:aBtBg3oDo
千葉県館山市内 八木食品の直営レストラン


八木「じゃあ、よかったらここでお昼にしない?うちの直営のレストランなんだ」

美也「レストランも経営してるのね」

八木「まあ、何でもありのお店なんだけどさ。ここでしか食べられないまんま肉まんとかあるんだぜ」

美也「本当?」ワクワク

八木「本当だよ。今日はご馳走させてもらうからね」

美也「だって、そんなの悪いよ」

八木「そんなこと言ったって、俺がこの店に入ったら支払いなんてさせてくれないしな」

美也「ああ、そうなんだ。じゃ、遠慮なくご馳走になるね」

八木「うん、そうして。じゃ、入ろうか」



店長「いらっしゃいませ・・・・・・ああ、何だ。坊ちゃんか」

八木「こんちは。っていうか、坊ちゃんはやめてよ。来年から入社するんだしさ」

店長「ああ、そうでしたね。ごめんごめん。八木君、いらっしゃい。これでいい?」

八木「わざとらしい」

店長「ははは。ところで今日は彼女連れなの?珍しいじゃん」

八木「違うって。こちらは大学の友達の橘さん。さっきまで工場見学してたんだよ」

店長「ようこそいらっしゃいました」

美也「あ、はい。こんにちは」

八木「美也ちゃんは、小さい時からの筋金入りのまんま肉まんファンなんだぜ」

店長「それは嬉しいですね」

八木「じゃあ、席に案内してよ。限定品のまんま肉まんも頼むね」

店長「わかってるって、坊ちゃん。じゃなかった、八木君か」

八木「そうそう」

店長「じゃ、こっちの景色のいい個室の方にどうぞ」

八木「・・・・・・いいの?」

店長「今日は予約が入ってないしね」

八木「ありがたいけど、親父に怒られない?」

店長「そんなもん黙ってればわからないよ。はい、こっちですよ橘さん」
233: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/15(土) 21:57:44.71 ID:aBtBg3oDo
ホテル最上階の展望ラウンジ


純一「この店って、何か周りはみんなカップルなんだね。僕たちって場違いかな?」

石上「え?何で」キョトン

純一「だって他の人はみんなデートしに来てるんでしょ?僕たちは出張で来てるだけだし」

石上「そんなことわからないでしょ。外から見れば単なる男女のカップルじゃない」

純一「まあ、それはそうだけど」

石上「それとも橘君、ここで仕事の打ち合わせをするつもりなの?」

純一「そんなわけないでしょ」

石上「でしょ?じゃあ、わたしたちもここにいるカップルと何にも違わないよね?」

純一(い、いや。周りは恋人同士かこれから付き合おうとしているカップルかどっちかでしょ。僕たちは違うじゃん)

純一(何でそう口に出せないんだろうな。石上さんを傷つけるからか?)

純一(それとも・・・・・・。僕自身がこの恋人ごっこみたいなのを楽しんでいて、それを終わらせたくないからか)

石上「橘君?」

純一「あ、うん」

石上「何を考えてたの?」

純一「・・・・・・ここってお酒の種類多そうだけど、何飲もうかなって」

石上「そうね。少なくともジョッキで生ビールとかって注文しないでね?」クス

純一「・・・・・・僕のこと馬鹿にしてるでしょ?」

石上「まあ、ちょっとだけ」クスクス

純一「こいつ~!(僕何やってるんだろ。でも楽しい)」

石上「きゃーやめて~」ボウヨミ

ウエィター「コホン」

純一「あ」

ウエィター「ご注文はお決まりですか」

純一「石上さん、お願い」コソ

石上「結局そうなるの?いいよ、任せて」クス
234: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/15(土) 22:17:43.11 ID:aBtBg3oDo
レストラン八木の個室


ウェイトレス「お待たせしました」

八木「これが、ここでしか食べられないまんま肉まんだよ」

美也「へぇ~。点心みたいに蒸篭(せいろ)に入ってるのね。あとサイズも小さい」

八木「それは普通に売っているサイズを出したら、それだけでお腹ふくれちゃうしね」

美也「そういえばそうね」

八木「さ、どうぞ」

美也「いただきます・・・・・・。あ、美味しい♪」

八木「それならよかった」

美也「普通にお店で売っているまんま肉まんとは違うけど、これはこれで好きよ」

八木「うん。人気メニューなんだけどね。じいちゃんはこれ認めてないけどさ」

美也「え?そうなの?」

八木「うん、まあいろいろあってね。それよか、こっちの蒸篭。新作のビーフストロガノフまんの小さいやつ。感想聞かせてほしいな」

美也「うん」モグ

八木「どうかな?」

美也「これはこれで美味しいけど・・・・・・。あたしはやっぱりまんま肉まんの方が好きだなあ」

八木「そうか」

美也「あ、不味いってことじゃないよ?でも、大手の変わり肉まんとどう違うのかなって。まんま肉まんみたいな個性が感じられないというか」

八木「美也ちゃんって、じいちゃんと同じこと言うんだね」

美也「そうなの?」

八木「じいちゃんが美也ちゃんのこと気に入る訳だ」

美也「・・・・・・何のお話?」

八木「あ、いや。何でもない。じゃあ、次は何食べようか?ここ、普通の中華も結構いけると思うよ」
235: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/15(土) 22:18:14.76 ID:aBtBg3oDo
千葉市内 美也のアパートの前


美也「送ってくれてありがとう、八木君。今日は楽しかったよ」

八木「美也ちゃんに喜んでもらえたならよかったよ」

美也「あとご馳走様でした。限定のまんま肉まんを食べられるなんて今日はラッキーだったな」

八木「どういたしまして。あ、そうだ。これ」ガサガサ

美也「なあに?」

八木「じいちゃんから預かったんだった。ほら、うちの商品。真空パックのまんま肉まん20個入り。よかったら食べて」

美也「え?悪いよ」

八木「じいちゃんがこういう風に気を遣うって滅多にないんだぜ。受け取ってやってよ」

美也「じゃあ、ありがたくいただくね」

八木「うん」

美也「ねえ、八木君」

八木「うん?」

美也「今度よかったら食事しない?あたしの友達がやっている美味しいお寿司屋さんがあるの」

八木「・・・・・・よろこんで!(お?思ったより早く美也ちゃんを落とせるかも)」ニヤ

美也「今日のお礼にご馳走させて(にぃにに怒られるかな)」

八木「絶対行くよ、美也ちゃん」

美也「よかった(でも、にぃにに怒る資格なんてないよね。自分は石上さんと二人でみゃーに内緒で神戸に行ったくせに)」

八木「じゃ、電話して。これ、俺の連絡先だから」

美也「うん」

八木「じゃあ、おやすみ美也ちゃん。今日は付き合ってくれてありがと」

美也「それはあたしのセリフだよ・・・・・・。じゃ、おやすみさない」

八木「おやすみ美也ちゃん」
236: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/15(土) 22:34:14.82 ID:aBtBg3oDo
展望ラウンジ


純一「ここいいね。料理も美味しいしお酒もいろいろあるし」

石上「カクテルの種類が豊富でいいよね」

純一「夜景も綺麗だし」

石上「本当ね」

純一(石上さんも綺麗だし)

石上「なに?」

純一「いや、何でも」

石上「ねえ?橘君」

純一「うん」

石上「周り見て何か気がつかない?」

純一「周り?いい雰囲気のカップルだらけだなとは思うけど」

石上「こら。総研の研究員なんだからもっと観察力を磨かないと」

純一「え?何だろ」

石上「座り方」

純一「はい?」

石上「座り方よ。カップル同士みんな窓の方に向って並んで座ってるでしょ?」

純一「ああ、本当だ。最初は向き合ってたのに」

石上「わたしたちだけ浮いてない?」

純一「それは、まあそうかも」

石上「ようやく気がついた?」クス

純一「うん」
237: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/15(土) 22:34:45.43 ID:aBtBg3oDo
石上「じゃ、こちらにどうぞ。橘君」

純一「え、いいのかな」

石上「周りに合わせないと、店の雰囲気を悪くしちゃうじゃない。いいから隣に座って」

純一「う、うん。じゃあ、お邪魔します」

石上「やっと隣に来てくれた」コテ

純一(石上さん!? 僕にもたれかかって肩に頭を乗せた?)

石上「空気を読んで周りに合わせないとね」ウットリ

純一「そ、そうか」

純一(周りはどうしているんだ?ああ、みんな彼女の肩を抱き寄せてるのか。じゃ、じゃあ)ソー

石上「そんなに遠慮しないで。もっと強く抱いていいのよ」

純一「い、いや。僕には好きな人がいるし、石上さんに悪いから」シドロモドロ

石上「わたしがそれでいいって思ってるんだから、そんなの橘君が気にしなくてもいいでしょ」

純一「・・・・・・石上さんがそれでいいなら」ダキヨセ

石上「・・・・・・夜景、本当に綺麗だね」シナダレ

純一「うん」ギュ

石上「このままずっとこうしていられればいいのに」

純一「(石上さん・・・・・・)夜景より君の方が綺麗かも」ボソ

石上「嬉しいよ・・・・・・。橘君」チュ

純一「石上さん」チュ

石上「二人だけの時は由里子って呼んで」ウットリ

純一「由里子・・・・・・綺麗だ」

石上「純一って呼んでもいい?」

純一「うん」

石上「純一」

純一「・・・・・・由里子」ギュ
244: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/16(日) 20:50:08.24 ID:+10dwWAAo
ホテルの部屋の前


純一「今日は楽しかった・・・・・・えと、その。ゆ、由里子」

石上「わたしもよ、純一」

純一「明日は東京に帰って本社に直行だね」

石上「もっと純一と一緒に過ごしたかったな」

純一「・・・・・・僕もそう思うよ。初日の夜は余計な気を利かしてごめんね」

石上「・・・・・・」

純一「じゃ、じゃあ。おやすみ由里子」

石上「・・・・・・」ギュ

純一「えーと。手を離してくれないと自分の部屋に行けないんだけど」

石上「・・・・・・もっと一緒にいたい」

純一「え」

石上「シンデレラでもいいから、今日だけはもっと一緒にいたいの」ギュ

純一「あ、うん。じゃあ、外で飲みなおす?」

石上「わたしの部屋で飲もうよ」

純一「・・・・・・」

石上「さ、入って。純一」グイグイ
245: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/16(日) 20:58:36.22 ID:+10dwWAAo
ホテル内 石上の部屋


石上「お部屋のミニバーにハーフボトルのワインがあったけど、これでいい?」

純一「う、うん」

石上「窓際のテーブルに座って」

純一「うん」

石上「はい、お待たせしました。白ワインだけど」

純一「部屋の中にワイングラスまで揃ってるんだね」

石上「そうだね。じゃ、乾杯」

純一「乾杯」


チーン

石上「ふふ。いい音。いいグラスなんだね」

純一「う、うん」

石上「さっきは隣で一緒にいたのに、また向かい合っちゃったね」

純一「・・・・・・じゃあ。由里子の隣に椅子を動かしていい?」

石上「嬉しいわ、純一」

純一(結構酔ったせいか、何かいろいろ抵抗がなくなってきちゃった。つうか、由里子の隣ってすごく居心地いいな)

石上「純一?どうかした?」

純一「・・・・・・由里子って、いい匂いがする」

石上「そう?香水かな」

純一ダキヨセ

石上「あ・・・・・・」

純一「こうしてると何か落ち着くよ」ダキ

石上「・・・・・・わたしも。今は自分にとって純一の隣にいるのが一番自然な自分みたい」

純一「うれしいよ、由里子」
246: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/16(日) 21:01:35.00 ID:+10dwWAAo
石上「ねえ? 純一」

純一「うん」

石上「今日は朝まで一緒にいてくれる?」

純一ドキ「い、いや。僕には好きな人がいるし、そういうのって由里子に悪いよ」

石上「わたしは別にそれでいいから」

純一「でも・・・・・・」

石上「いいの。純一に好きな人がいても。純一ともっと親しくなりたい・・・・・・。安心して。わたし純一のこと困らせないから」

純一(女の子にここまで言わせてるんだ。これ以上由里子に恥をかかせるわけには)グイ ダキアゲ オヒメサマダッコ

石上「きゃっ」

純一「・・・・・・ベッドに行こう」

石上「シャワー浴びてもいい?」

純一「(そんなことしてたら。その間に美也のこと思い出して萎えちゃうって)いいから」

石上「え、でも。汗臭いかも」

純一「ベッドに連れて行ってあげるよ」

石上「ちょっと、純一。重いでしょ」

純一「いや。由里子って軽いな」

石上「(純一)・・・・・・」ダキツキ


ベッド


ドサ! プチプチ ガサゴソ ヌガセ

チュ

石上「・・・・・・あ、あん。純一、好きよ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
247: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/16(日) 21:17:59.54 ID:+10dwWAAo
同時刻


ホテルのフロント『申し訳ありません。その番号の部屋のお客さまは電話にお出になりません』

美也「そうですか。ありがとうございます」


ガチャ


美也(長瀬さんに教わったホテルに電話してもにぃには出ない・・・・・・)

美也(寝ちゃってるか、石上さんと飲みに行ってるかだけど)

美也(あの女、絶対にぃにに気があるし。神戸でデートしてるんだろうな)

美也(ま、にぃにとみゃーはいろいろな危機を乗り越えてきた仲だし、そんなには心配しなくていいんだろうけど)

美也(でも、にぃにって押されると弱いところがあるからなあ)

美也(ばかにぃに。どうしてくれよう)

美也(この辺で少しにぃににヤキモチを焼かせておくか。どうせ八木君にお礼もしなきゃいけないしね)

美也(えーと、八木君の電話番号はっと)

美也(よし)


プルルルル


?『はい。八木ですけど』

美也「あ、八木君?橘です」

八木『あ、美也ちゃん。こんばんは』

美也「こんばんは。こんな時間にごめんね」

八木『いや、俺は平気だけど。美也ちゃん、どうしたの?』

美也「えとね。もし、よかったらだけど。明日、美味しいお寿司を一緒に食べに行けないかなって思って」

八木『ああ、美也ちゃんそう言ってたね。まさか明日とは思わなかったけど』

美也「えーと。突然で迷惑かな?」

八木『(美也ちゃん、可愛い声だな。つうか間違いなく俺に気があるだろ)迷惑なんかじゃないよ。喜んでご一緒させてもらうよ』

美也「よかった。銚子市内なんで少し遠いいんだけど。いい?」

八木『全然OKだよ。じゃあ、車出そうか(・・・・・・明日中に、大学一の美少女と言われている美也を落とせるかも)』ワクワク

美也「ううん。千葉駅で待ち合わせして電車で行こ? その方がお酒も飲めるし」

八木『(・・・・・・!? これは間違いなく明日中にやれる!)うん。わかった。楽しみにしてるよ』

美也「じゃあさ、午後の4時に改札のところで、待ち合わせしよう」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
253: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/18(火) 22:05:36.65 ID:BHNmzQJto
総研本社 午後4時


純一「ただいま戻りました」

女上司「おう、お帰り、お二人さん。どうだった?」

純一「どうって、行って良かったですよ。神戸支社の相原さんの仕事、すごく参考になります」

女上司「やっぱ、そうか。あいつさ、わたしと同期なんだけど、前から優秀でさ。受注額でもトップに近いし、論文の発表数も群を抜いてるんだよね」

女上司「だから、似たテーマをあいつが手がけたんなら絶対に参考になると思った」

純一「それは、頂いた報告書見てもわかりますよ。環境が違うんでそのままは使えませんけど、アプローチの仕方とかだいぶ参考にできると思います」

女上司「まあ、行った甲斐が合ってよかったね。で、仕事ばっかしてたわけじゃないんでしょ?そっちの方はどうだったのよ?」ニヤニヤ

石上「はい。すごく楽しかったです」

女上司「え?」

長瀬「え?」キキミミ

純一(お、おい)

石上「前から神戸って好きな街だったんですけど、今回が一番楽しかったなあ」ウットリ

女上司「おいおい。そんなに橘君とデートできたのが嬉しかったのか?」

純一「あ、いや。そうじゃなくてですね・・・・・・。神戸支社の相原さんって、実は石上さんの従兄弟だったんです」アタフタ

女上司「え?マジで」

石上「あ、はい。何年も会ってなくて、総研に勤めてたことも知らなかったんですけど」

純一「神戸支社訪問で、いきなり劇的に再開したんです」

女上司「へえ~。石上さんって相原君の親戚だったのかあ。世間は狭いなあ」

石上「わたしもびっくりしました」

純一「で、夜は相原さんと石上さんと久しぶりに二人きりで再会を楽しんだわけなんで、石上さんにとってはいい出張になったわけです」

石上「・・・・・・別にそれで楽しかったと言ったわけじゃないんだけど」ボソ

女上司「で、その時橘君は何してたの?」

純一「・・・・・・ホテルの部屋でカップラーメンを食べながら仕事してました」

女上司「つくづく運が悪いやつだな、君は」ハァー

純一「これ、お土産です。じゃ、出張報告まとめますので」

女上司「急がないでいいよ。今日は疲れたろうから早く帰りな・・・・・・。何なら、神戸でイチャイチャできなかった分、石上さんと飲みに行ってもいいよ」

純一「何ですかそれ」

石上「気を遣っていただいてありがとうございます」

純一「石上さん!」

長瀬(ふ~ん。やっぱこいつら何かあったのかな)

長瀬(・・・・・・)
254: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/18(火) 22:20:31.57 ID:BHNmzQJto
千葉駅総武線改札口 同時刻


八木「あ、美也ちゃん。こっちこっち」

美也「早いね八木君。待った」

八木「いや。今来たとこだよ」

美也「急に誘っちゃってごめんね」

八木「ちょうど何も予定がなかったところだったから」

美也「よかった。じゃあ、行こうか?」



銚子市内


八木「銚子って初めて駅から外に出たよ」

美也「そうなんだ」

八木「うん。高校時代まで美也ちゃんはここで過ごしてたんだね」

美也「うん」

八木「何か歴史があるせいか、落ち着いた雰囲気の町並みだね」

美也「うん。あたしもここの雰囲気大好き」

八木「俺なんか館山から出たくて仕方なかったけどなあ」

美也「ああ。あたしも、高校くらいまでは千葉とか東京に住みたくてしょうがなかったんだけど、今はここで暮らしたいと思うようになっちゃった」

八木「俺は今でも東京に出たいなあ。一度東京に本社を移そうって言ったら、親父とじいちゃんに怒鳴られちゃったよ」

美也「それはそうでしょう。地元に密着している企業なのに」クス

八木「まあ、半分冗談だったんだけどね。でも、東京に支社を置いてまんま肉まんを千葉県外に広めたいと言ったら、親父は少し考え込んでたな」

美也「陳さんは?何と言ってたの」

八木「うん、それはまあ。いろいろあってね。ところでそのお寿司屋さんって遠いいの?」

美也「歩いて20分くらいだけど。歩くのが疲れるならタクシーで行く?」

八木「いや。せっかく初めての街に来たんだし、美也ちゃんさえ平気ならぶらぶら歩いて行きたいな」

美也「じゃあ、そうしよ。あ、あそこの坂道をあがるとあたしの母校があるの」

八木「本当だ。丘の上に校舎が見えてるね」

美也「何か懐かしいなあ。あの頃に戻れればいいのになあ」

八木「何言ってるの。メガバンクに内定も決まった将来有望な人が」

美也「それはあんまり関係ないよ」

美也「あ、あそこに見えてきたお店。あそこが梅寿司だよ」
255: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/18(火) 22:39:27.71 ID:BHNmzQJto
梅寿司店内


棚町「いらっしゃいませ~。って、え?美也ちゃんじゃん」

美也「棚町先輩、こんにちは」

梅原「え、美也ちゃん?」

美也「あ、梅ちゃん。食べに来ちゃった」ニシシシ

棚町「よく来てくれたわ。さ、入って入って・・・・・・って、あれ」

美也「えーと。こちらは大学の友達の八木さんです」

梅原「え、えと。いらっしゃいませ」

八木「お邪魔します。八木といいます、はじめまして」

棚町「あ、どうぞどうぞ。で、純一はいないの?」

美也「だって平日ですよ。東京で仕事してます」

梅原「そらそうだな。ははは。ま、まあ座って。カウンターでいい?」

美也「あ、いいえ。梅ちゃん、できればテーブル席でお願い」

梅原「ええ~。それじゃ、美也ちゃんと話できないじゃん」

棚町「いいからテーブル席に案内しなよ」ヒソ

梅原「だ、だってよ」ヒソヒソ

美也「どうしたの?梅ちゃん」

棚町「な、何でもないから。さ、こっちのテーブルにどうぞ」

美也「じゃ、行こうか。八木君」

八木「うん」

棚町「美也ちゃん、今日は車?」

美也「いえ。車だとお酒飲めないから」ニシシ

棚町「じゃあ、飲み物どうする?」

美也「八木君、とりあえずビールでいい?」

八木「美也ちゃんに合わせるよ」ニコ

美也「じゃあ、ビールをお願いします。あと、おつまみと握りはお任せで・・・・・・それでいい?八木君」

八木「うん」

棚町「OK。じゃあ、お任せで作らせるからね」

美也「お願いします」
256: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/18(火) 22:55:58.27 ID:BHNmzQJto
棚町「はい。ビールお待たせしました」

美也「先輩、ありがとうございます」

八木「すいません」

美也「八木君。このお二人はあたしたちの大学の先輩なんだよ。あと、あたしの高校の先輩でお兄ちゃんの親友なの」

八木「あ、大学の先輩だったんですか。それは失礼しました」

棚町「八木君って大学で美也ちゃんの知り合いなの?」

美也「最近、知り合ったんです。学部が違ってたんで」

棚町「そうか。じゃ、後輩二人が来てくれたんだからサービスしちゃうね。ちょっと待っててね」


美也「はい、八木君。どうぞ」トクトク

八木「ありがとう、美也ちゃん。じゃ、美也ちゃんもどうぞ」

美也「じゃあ、工場見学させてもらってありがと。乾杯」

八木「こちらこそ。誘ってくれてありがと」

美也「この店はね。知り合いだから贔屓にしてるんじゃなくて、本当に美味しいのよ。期待しててね」

八木「うん。っていうか。この店の雰囲気、何か来たことがあるような」

美也「それはないでしょ。開店したばっかだし。第一、八木君は銚子は初めて来たんでしょ」

八木「それはそうなんだけど」


棚町「はい、今日の前菜ね。平目の縁側を軽く炙ったの。銚子の平目だし美味しいよ」

美也「本当に美味しそう」

八木「うん、本当に。あの、棚町先輩」

棚町「はい?」

八木「間違ってたらすいません。このお店って東寿司と関係あります?」

棚町「うん。よくわかったね。あそこで寿司を握ってるウチの旦那の父親とお兄さんでやってるのが東寿司なの。うちの旦那は次男なんで、独立して梅寿司を開業させてもらったのよ」

美也「よくわかったね、八木君。すごい」

八木「東寿司って千葉の名店だし、館山にもお店があってさ。うちの会社でもよく使わせてもらってるから」

梅原「お、嬉しいねえ。館山支店は兄貴が仕切ってるんだけど、お得意さまだったんだねえ」

八木「はい、先輩。よく使わせていただいています」

梅原「おいおい、そんな敬語使わないでよ。美也ちゃんの友達で兄貴の店のお得意様なんだからさ」

八木「はい!ありがとうございます。先輩」

棚町「じゃあ、ごゆっくり」

美也「先輩、ありがとう」
257: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/18(火) 23:17:00.21 ID:BHNmzQJto
梅寿司カウンター内(厨房)


棚町「ねえ」

梅原「何だよ」

棚町「・・・・・・美也ちゃんが純一以外の男と二人きりで飲みに来るなんて、一体何があったんだろ?」

梅原「さあ?たまたま知り合いと食事に来ただけじゃねえの?」

棚町「あんたねえ。純一の嫉妬深いの知ってるんでしょ。美也ちゃんだってそんなこと百も承知なのに」

梅原「まあ、そう言われてみれば薫の言うとおりだな。美也ちゃんと大将、上手く行ってないのかな」

棚町「こないだうちの店に来た時には、ラブラブだったじゃん」

梅原「まあ、そうだけど」

棚町「あれから何かあったのかな」

梅原「・・・・・・薫」

棚町「うっさいな。わかってるわよ。別に余計なお世話をする気はないけどさ。でも、純一がこのこと知らないとすると可愛そうじゃない」

梅原「別に美也ちゃんの浮気だって決まったわけじゃないだろ」

棚町「でも、純一の性格を考えると、美也ちゃんが男と二人きりで飲みに行くのを許すとは思えないんだよね」

梅原「まあ、美也ちゃんのバイトまで禁止してるくらいだしな。だからじゃね?」

棚町「何がよ」

梅原「美也ちゃんも大将の拘束とか愛が重くなって、息抜きしたくなったんじゃねえの」

棚町「純一に内緒だったらまずいでしょうが」

梅原「・・・・・・おまえさ。大将のことになると本当にむきになるよな」

棚町「そんなことないわよ」

梅原「ちょっと嫉妬するぜ」

棚町「な!?何言ってんのよ、この馬鹿亭主」

梅原「痛いって! まあ、少し様子見ようぜ」

棚町「そんなんでいいのかなあ」

梅原「ひとつ言えることは」

棚町「何よ?つまらないこと言ったら承知しないからね」

梅原「美也ちゃんが浮気とかしてるんなら、わざわざうちの店に来るわけないだろ」

棚町「・・・・・・それもそうか」

梅原「薫が大将のこと大好きだって、美也ちゃんは知ってるわけだしよ。隠れて浮気とか息抜きしたいならわざわざ薫のいる店になんて来ねえだろ」

棚町「それは正論だけど・・・・・・。だけど、あたしが純一のこと大好きって何よ! あんた自分の女房を信じられないの?」ゲシゲシ

梅原「ち、違うって!話がそれてるぜ」イタイイタイ
260: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/19(水) 21:45:24.94 ID:ifeyLcTVo
美也「じゃあ、乾杯」

八木「乾杯」

美也「今日は付き合ってくれてありがと」

八木「いや。今日も美也ちゃんと会えるなんて思ってなかったから嬉しいよ」

美也「すかっりご馳走になったし、まんま肉まんのこともよく教えてもらったからお礼だよ」

八木「気にしなくてよかったのに」

美也「いいからいいから。あ、この突き出し。縁側を炙ったやつだっけ?美味しい♪」

八木「・・・・・・うん。本当に美味しいね。ここ、味では館山店に負けないんじゃないかな」

美也「それ聞いたら梅ちゃん喜ぶよ」フフ


棚町「お待たせ美也ちゃん。お造りだよ」

美也「あ、すごい。ねえねえ八木君。これ伊勢海老じゃない?」

八木「本当だ。美味しそう」

棚町「地元で獲れたネタばっかりなのよ」

八木「本当に美味しそうですね」

棚町「ありがとう。じゃ、ごゆっくり」

棚町(・・・・・・)


20分後


棚町「これ、焼き物ね。今日はさわらの西京漬けなの」

美也(あ。にぃにの大好物・・・・・・)

八木「これも美味しそうな色ですね」

棚町「いい西京味噌を使ってるのよ。純一はこれが好物だったわね」チラ

美也「・・・・・・や、八木君、さわら好き?」

八木「うん。嫌いじゃないよ」

美也「八木君が喜んでくれて嬉しいよ。このお店に来てもらった甲斐があったよ」ニシシシ

八木「美也ちゃん・・・・・・。ありがとう(可愛い笑い方だな、美也ちゃん。何か興奮してきたぜ)」

棚町(・・・・・・この二人普通に仲よさそうだけど。でも美也ちゃん、あたしが料理を持ってくるタイミングでわざわざ八木君に馴れ馴れしくしてるような)

棚町(あたしに八木君との仲を見せつけているみたい」

棚町(いったい美也ちゃんは何がしたいんだろう?あたしが純一の味方なのは十分に知っているはずなのに)

棚町(ああ、面倒くさいな。高校の頃、登校中にいちゃいちゃしてた純一と美也ちゃんに説教してた頃の方がよほどシンプルで楽だったわ)

美也「八木君、まだ食べられる?」

八木「どうしたの?」

美也「あたし、これ全部食べちゃうとお腹一杯になっちゃうから少し助けてくれる?」

八木「あ、ああ。いいけど」

美也「じゃ、これ」アーン

八木(こ、これは)パク

棚町(うーん)
261: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/19(水) 22:12:23.20 ID:ifeyLcTVo
1時間後


美也「八木君?グラス空だけど、どうする?」

八木「美也ちゃんはどうするの?(ここは多少強めの酒を飲ませておきたいところだけど。無理は禁物)」

美也「あのね。美味しい冷酒があるんだけど、それを頼んでもいい?」

八木「(日本酒来たー!! しかも冷酒)うん、冷酒は好きだよ」

美也「じゃ、そうするね。先輩すいません!」

棚町「はいはい。ちょっと待ってね」

美也「八木君、お酒強いの?」

八木「まあ、普通じゃないかなあ。美也ちゃんは?」

美也「自分ではよくわからないけど。弱くはないみたい」

八木「じゃあ、せっかくだから今日は飲んじゃおうよ」

美也「いいよ」クスクス

棚町「お待たせ、美也ちゃん。次の料理はちょっと待ってね。少しお店が混んできちゃって」

八木「全然大丈夫ですよ。お気になさらず」

棚町「ありがとう。料理出すの遅くてごめんなさいね」

八木「いえ(むしろ美也にお酒飲ませることが出来て好都合ですよ、先輩)」ニヤ

美也「先輩、この間頂いた福島の冷酒ってありますか」

棚町「ああ、あるある。2合の瓶でいいかな」

美也「はい」

棚町「じゃ、すぐ持って来るからね」
262: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/19(水) 22:12:57.36 ID:ifeyLcTVo
八木「美也ちゃん、ここよく来るの?」

美也「ううん。先輩達がお店始めてまだ3ヶ月くらいしか経ってないし。今日で二度目だよ」

八木「そうかあ。前は一人で飲みに来たの?」

美也「・・・・・・誰と来たのか気になるの?」クス

八木「そんなことはないけど。って、いや。やっぱ気になる」

美也「お兄ちゃんと来たんだよ」

八木「本当?」

美也「疑ってるの?」クスクス

八木「そんなことは・・・・・・」

美也「誰と来たと思ってたの?」

八木「い、いや」

美也「八木君に疑われてあたしショックだなあ」

棚町「はい。お待たせしました。ご注文の冷酒ね」

美也「ありがとう先輩。ねえ先輩」

棚町「どしたの?美也ちゃん」

美也「八木君が、あたしが最初にこのお店に誰と来たか気になるんですって」

八木「おい、美也ちゃん」

棚町「え?」

美也「ちゃんと彼氏じゃなくてお兄ちゃんと来たって証明して、八木君を安心させてください」

棚町「う、うん。純一と美也ちゃんと二人で来てくれたんだけどね(何がどうなった?純一の妹じゃなければ単なるビッチじゃん、この娘)

八木「だから疑ってないって」

美也「・・・・・・本当?」

八木「本当だよ。ほら先輩が困ってるじゃないか」

美也「はい、お酌してあげるね」

八木「ありがと」

棚町(・・・・・・)
263: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/19(水) 22:26:09.81 ID:ifeyLcTVo
2時間後


美也「でねでね」

八木(美也って、やっぱり可愛いな)

美也「八木君、聞いてる?」

八木「あ、ああ。聞いてるよ。アクアラインの話でしょ」

美也「そうそう。あれ開通したら一度通って横浜に行ってみたいよね」

八木「そうだね。木更津から川崎だっけ?」

美也「うん。で横浜に行くの」

八木「来週でしょ?開通するの。来週よかったらアクアラインを通って横浜の方にドライブする?」

美也「うん。したいなあ」

八木「じゃ、行こうよ。そんでさ、横浜の中華街でじいちゃんがシェフやってた老舗の店があるんで、そこで食事でも」

美也「行く!まんま肉まんの原点のお店見てみたい!」

八木「じゃあ、約束しよう(・・・・・・何となく大学一の美少女の美也を落としたいって、今まで考えていたけど)」

美也「うん、約束だよ」ニシシシシ

八木(まだ、何もしてないのに、俺、この娘に惹かれてるな。寝るとかどうでもいいから美也を俺の彼女にしたいな)

八木(ちくしょう。何でこいつこんなに可愛らしいんだろ)

八木(特定の彼女作らない主義の俺だったのに、どうしてこうなった)

八木(こうなったら、いっそプロポーズして結婚・・・・・・)

八木(とりあえず今付き合ってる女たちと別れておこう。美也といつでも付き合えるように)

美也「八木君?どうかした」

八木「いや。中華街楽しみだなあって。じいちゃんって、まだその店の名誉顧問みたいなことやってるんで、いろいろ頼んでおくよ」

美也「本当?」ワクワク

八木「原点の肉まんも食べられるかもね」

美也「楽しみだな。絶対、行こうね?」

八木「もちろん」
264: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/19(水) 22:47:53.84 ID:ifeyLcTVo
梅寿司のカウンター内(厨房)


梅原「ようやく客足がひいたな」

棚町「そうだね。おつかれさん」

梅原「しかし、こんなに客が入るならよ。俺達二人じゃ無理があるな」

棚町「まあ、常識的にはホールと厨房と一人づつくらいは増やすべきなんだろうけど」

梅原「全く親父に騙されたよ。最初からこんな客席数いらないっていったのによ。これじゃ、二人でやれる規模を超えてるぜ」

棚町「客が付いてくれてるんだから贅沢な悩みを言わないの。お義父さんかお義兄さんに職人を紹介してもらえばいいじゃん」

梅原「そうだな。で、ホールの方はアルバイトでも募集するか」

棚町「二人きりでお店をやりたかったけど、お客に迷惑かけちゃってるし仕方ないか」

梅原「・・・・・・薫。おまえ、そんなに俺のことを」

棚町「それにしてもさ」

梅原「そこで話題変える?普通」

棚町「美也ちゃん、いったいどうしたんだろ」

梅原「・・・・・・スルーですかそうですか。って、何かあった?」

棚町「あんな美也ちゃんは、あたしは嫌いだな。純一にふさわしくない」

梅原「あんな美也ちゃんって何だよ」

棚町「発情した犬みたいに、八木って男に尻尾振って誘惑してるわよ、美也ちゃん」

梅原「おい! 美也ちゃんは親友の大将の妹だぞ。発情とか尻尾振るとか言うなよ!!」

棚町「・・・・・・だって本当だもん。さっき、美也ちゃんの隣のテーブル片付けてたら、アクアラインを通ってドライブしようって二人で盛り上がってたよ」

梅原「アクアラインかあ。そういや来週開通だってな。俺達もドライブするか?」

棚町「いくら美也ちゃんが純一に束縛されてて、たまには息抜きしたいからって、あれじゃ本当の浮気だよ」

梅原「また、スルーか。まあ、決め付けるには早いだろ」

棚町「決めた」

梅原「え?」

棚町「明日、純一に電話して今日のこと報告するわ」

梅原「おまえ、それはやばいって!」

棚町「だって、純一可愛そうじゃない。浮気されてるのも知らないで必死で残業して働いてさ」

梅原「とにかくだな。まず美也ちゃんに事情を聞いてから」

美也「先輩、すいませ~ん。冷酒もう一本頂けますか?」

八木「美也ちゃん、ペース早いねえ。俺も負けないぞ」アハハ

美也「何競ってるのよ?ばか」ニシシシ

梅原・棚町(・・・・・・)
271: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/20(木) 21:52:53.73 ID:x6FYY3Xto
美也「何か運命的な出会いだよね。まさか、大学生活最後の年に、あのまんま肉まんの関係者と知り合えるなんてね」

八木「まんま肉まんの関係者って・・・・・・。でも、そうかも。4回生になるまでお互い知らなかったのにね(どうしよ?俺。美也と寝るだけならもう少し飲ませれば行ける気もするけど)」ドキドキ

美也「ましてさ、まんま肉まんを考案した人にまで会えるなんて」

八木「じいちゃんも美也ちゃんに会えて喜んでたよ(でも、それだけじゃもったいないよな、やっぱり。こんだけ可愛い子と付き合えるなら)」ソワソワ

美也「また陳さんにお会いできるかな」

八木「もちろんだよ。じいちゃん、美也ちゃんのこと気に入ってたみたいだしさ。美也ちゃんと会えればじいちゃんも喜ぶよ(やっぱり急いで落とすよりじっくり攻めて、長く付き合えるようにした方がいい。正直この先、美也以上の女と出会える気がしないし)」

美也「嬉しい。じゃあ、また館山の工場に連れて行ってね」ニコ

八木「うん。美也ちゃんさえよければいつでも。あと直営レストランの店長もまた美也ちゃんを連れておいでって言ってたよ(むしろじっくりと付き合いを深めて、美也の家庭環境とかも調べよう。結婚するとなると八木食品の社長婦人になってもらうんだしな)」

八木(つうか美也ちゃん、彼氏いるのかな)

美也「そう?嬉しい」

八木「美也ちゃん?(よし)」

美也「うん。なあに?」

八木「俺は美也ちゃんがうちの製品のファンで、工場見学とか来てもらって嬉しいけど」

美也「うん」

八木「正直、何度も俺と二人きりで過ごすと嫉妬する男がいるんじゃない?」

美也「え・・・・・・。い、いないよ、そんな人・・・・・・」

八木「そか。美也ちゃん、今彼氏いないんだ(よっしゃ!ラッキー)」

美也「うん。八木君こそ嫉妬する彼女いるんじゃないの?」ジー

八木「いないよ、そんな人(いるけど、別れちゃえば嘘にならないしな。どうせ金目当てのビッチばっかだし)」

棚町「はい、冷酒おまたせ。美也ちゃん、飲みすぎてない?大丈夫?」

美也「大丈夫ですよ。先輩」

棚町「あんまり美也ちゃんを酔わしちゃうと、純一に怒られるからさ」

美也「大丈夫ですよ。にぃ、お兄ちゃんは過保護なんだから」

棚町「そうか。じゃ、ごゆっくり」

八木「ありがとうございます。先輩」

棚町(今、美也ちゃん、彼氏いないって言ってたな。本当に何考えてるんだろ? まさか純一よりこいつの方が好きになったとか?)

棚町(・・・・・・)
272: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/20(木) 22:28:50.28 ID:x6FYY3Xto
同日 東京 いつもの居酒屋


純一(・・・・・・出張帰りで疲れてるのに)

純一(どうしてこうなった)

長瀬「おい、橘」ヒソ

純一「何だよ?」

長瀬「どうしてこうなるんだよ!?」ヒソヒソ

純一「それは僕が聞きたいよ。出張の慰労会やってやるって言い出したのはおまえだろう」

長瀬「だからってよ。このメンツはないだろう」

純一「僕が声かけたわけじゃないぞ」


女事務員「じゃあ、石上さんって今は彼氏いないんですかぁ」

石上「だからタメ口でいいって、事務員ちゃん。年はわたしの方が上だけど、社歴じゃ事務員ちゃんのほうが先輩なんだから」

女事務員「そんなわけには行きませんよ。それに本社の総合職の方とか世界が違いますしぃ」

石上「でも事務員ちゃんは、長瀬君とはそんなにかしこまらないで話できてるじゃない」フフ

女事務員「長瀬さんは総合職ですけど、同じ総研の社員ですし」

石上「それだけ?」

女事務員「えぇ、何言ってるんですかぁ、石上さん///」

石上「そんなに照れなくても」

女事務員「石上さんこそ、橘さんといい雰囲気じゃないですか。それとも本社とかにいい人いるんですか」

石上「何言ってるの事務員ちゃん。あ、みんなお酒なくなってるね。何か頼もうか」

女事務員「じゃあ、長瀬さんに注文聞いてきますね」スク



長瀬「だから何で事務員ちゃんが来てるんだよ!」ヒソ

純一「僕が誘ったわけじゃないぞ」

長瀬「俺は純粋に出張帰りのおまえらを慰労しようと思ったのによ」ヒソヒソ

純一「長瀬。おまえ、石上さんと事務員ちゃんと一緒だと困るの?」

長瀬「・・・・・・うるせえ。黙れ、いやむしろ死ね」

純一「何でだよ!」


石上「橘君、二人で何のお話ししてるの?」

純一「いや、大した話じゃ(由里子ちょっとくっつき過ぎだよ。長瀬に疑われるって)」

長瀬「ふ~ん。出張から帰ったらずいぶん仲良しになってるんだな・・・・・・って、痛い痛い!」

女事務員「あ、長瀬さん。ごめんなさい。また足踏んじゃいました」ニコ

長瀬「ああ、平気平気。事務員ちゃん、飲んでる?」ズキズキ

女事務員「はい。長瀬さんグラス空ですよ。何を頼みます?」

長瀬「う、うん。じゃあ、同じのを」

女事務員「はーい」
273: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/20(木) 22:32:06.17 ID:x6FYY3Xto
石上「ねえ、純一」ヒソ

純一「!その呼び方ここじゃやばいって」

石上「大丈夫だよ。事務員ちゃんが長瀬君に張り付いていてくれるから」

純一「・・・・・・もしかして、そのために事務員ちゃんを誘ったの?」

石上「うん」

純一「・・・・・・」ゾワ

石上「次は何飲むの?純一」

純一「えと。君と同じのでいいや」

石上「由里子」

純一「え?」

石上「二人きりのときは君じゃなくて石上さんじゃなくて由里子って」

純一「だって二人きりじゃないでしょ」

石上「だから、大丈夫だって。ほら」


長瀬「ちょ、ちょっと。事務員ちゃん、同じ椅子に一緒に座るのは無理があるって」

女事務員「長瀬さん、あたしの近くにいるの嫌なんですか」ウルウル

長瀬「だからそうじゃなくて」

女事務員「やっぱり日本で一番偏差値の高い大学出身だと、短大出の一般職のOLなんかと一緒にいるところを見られるのが恥ずかしいんですね」シクシク

長瀬「んなこと言ってねえじゃん。俺は学歴とかそんなこと気にしないし」

女事務員シクシク

長瀬「事務員ちゃんと一緒にいるとすごくドキドキしするしよ」

女事務員「本当!」ダキツキ

長瀬(あ、やべ。ちょっとフォローし過ぎた・・・・・・)


石上「ね?気にしなくて大丈夫でしょ」クス

純一(・・・・・・)
274: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/20(木) 22:41:07.02 ID:x6FYY3Xto
石上「ねえ純一」

純一「う、うん」

石上「本当に大丈夫だから。わたしだって社会人1年生で変な噂になるようなことをする気はないし」

純一「う、うん。だけどさ」

石上「今日だってちゃんと考えて事務員ちゃんとか誘ってるんだから、純一は安心してて」

純一「でもリスキーすぎるよ。それは事務員ちゃんは長瀬にべったりだけどさ」

石上その辺のことはうまくやるから心配しないで」

石上「あと。本当にわたし、純一と純一の好きな子の邪魔はしないから」

純一「・・・・・・そんなこと心配してないよ」

石上「・・・・・・」

純一「石上さん?どした」

石上「・・・・・・由里子」

純一「由里子どしたの?黙っちゃって」

石上「ううん。何でもない」

女事務員「石上さん!」

石上「どしたの?」

女事務員「そろそろ、ここは上がって2次会でカラオケに行きませんか」

石上「わたしは別にいいけど・・・・・・。長瀬君はどうするの?」

長瀬「まあ、2時間くらいならいいんじゃね?って事務員ちゃん首絞めないで!苦しいって」

石上「・・・・・・純一は?」

純一「う、うん。そんなに遅くならないなら(美也。また今夜もおまえの声が聞けないな)」

石上「橘君も行くって。じゃあ、お代わり頼むの止めて出ましょうか」

長瀬「お、おう。じゃあ、会計してくるわ・・・・・・だから事務員ちゃん、一度離れて」
275: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/20(木) 22:55:15.32 ID:x6FYY3Xto
深夜 梅寿司店内


棚町「ごめんね、美也ちゃん。盛り上がっているとこ悪いけどそろそろ閉店時間なんだ」

八木「あ、すいません。先輩。遅くまで居座っちゃって。すごく美味しかったです」

棚町「そう?よかった。また、来てね」

美也「棚町先輩、ご馳走様でした。梅ちゃん、また腕を上げたね」

梅原「おうよ、ありがとな。また来てくれよな」

美也「うん。じゃあ、お勘定お願いします」

八木「あ、いいよ。俺が払うから」

美也「今日は、昨日のお礼にあたしが誘ったんだから」

八木「美也ちゃんに誘ってもらえただけで十分にお礼になってるから。お幾らですか、先輩」

棚町「じゃあ、・・・・・・円になります」

美也「え?」

八木「先輩、会計間違えてますよ。そんなに安い訳ないですよ」

梅原「遠慮すんなって。美也ちゃんと美也ちゃんの友達がわざわざ千葉市から来てくれたんだ」

棚町「そうよ美也ちゃん。変に遠慮すると純一に言いつけるからね」ジー

美也「・・・・・・何言ってるんですか先輩。ここで遠慮しないとかえってお兄ちゃんに叱られますよ」ヘイゼン

棚町「・・・・・・(うーん。純一の名前を出しても動揺しないな、美也ちゃん)」

梅原「とにかくさっさと・・・・・・円払えって。辺に遠慮して先輩に恥かかせるな」

八木「じゃあこれで」

棚町「はい、確かに。ありがとうございました」

美也「だからあたしがご馳走するって言ったのに」ツネ

八木「痛いよ、美也ちゃん。じゃあ、この次はお願いするよ」

美也「しょうがないなあ君は」プンプン

棚町・梅原(・・・・・・)
279: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/21(金) 21:27:37.13 ID:cs7YxPGXo
美也「じゃ、先輩、梅ちゃん。ご馳走様でした」

八木「美味しかったです。また来ますね」

梅原「おう。いつでも来てよ」

美也「じゃ、八木君。行こうか」

棚町「あれ?行こうかってさ、もう千葉行きの終電は終わっちゃってるけど。美也ちゃん、今晩実家に泊まるの?」

美也「あ、もうこんな時間か。実家に行っても誰もいないしどうしようかなあ」

棚町「つうか、八木君はどうするの?君のアパートも千葉でしょ?」

八木「あ、はい。俺はタクシーで帰りますから」

梅原「おいおい。タクシーって、千葉までどんだけ金かかると思ってんだよ」

八木「父から社用のタクシーチケットもらってるんで大丈夫です」

梅原「・・・・・・おまえ、どんだけブルジョアなんだよ」

八木「そんなことはないですけど」

棚町「じゃあ、美也ちゃん。実家で一人が寂しいならうちに泊まってく?」

美也「あ、う~ん。どうしようかなあ。あたしも明日大学の図書館に行こうと思ってたんですけど」チラ

八木「じゃあ、一緒に帰ろうよ。乗せていくよ」ワクワク

美也「本当!?ありがと、八木君。助かるよ」

八木「いやあ。俺も一人で帰るの退屈だし。一緒に来てくれると嬉しいな」

棚町「・・・・・・」

美也「じゃあ、おやすみなさい」

梅原「おう。二人ともまたな!」
280: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/21(金) 21:28:09.85 ID:cs7YxPGXo
千葉市に向うタクシーの車内


八木(美也とこんなに近くに座るの初めてだけど、いい匂いがする)

八木(何か可愛いよな・・・・・・やっぱり落とそうとか考えるのやめた。真剣に交際を申し込もう)

八木(何か俺らしくないけど。でも、美也・・・・・・いや、美也ちゃんって呼んだ方がいいな)

八木(美也ちゃんって大切にしたくなる女の子だよな。俺が女に対してこんな気持ちになるの初めてかも)

八木(親父の会社を継ぐんだし、いつまでも女と遊んでる場合じゃないし。ちょうどいいタイミングなのかもな)

八木(もしも・・・・・・だ。もしも、美也ちゃんとこの先婚約して結婚できたら)

八木(俺、家庭を大事にしながらうちの会社を発展させるとか、そういう生産的な生活が出来るようになるかもしれないな)

八木「美也ちゃん・・・・・・?」

美也スースー

八木「寝ちゃってるか。寝顔も可愛いな。何か胸が締め付けられるような感じがする」

美也コテ

八木(!美也ちゃん、俺にもたれかかってきた)

八木(美也ちゃんの柔らかい髪が頬に触れてくすぐったい)

美也(うーん)ノビ

八木「痛て!」バシ

美也(うーん。にぃ)ムニャムニャ

八木「え?」

美也ダキツキ

八木「美也ちゃんが抱きついてきた!!・・・・・・よし」グイ

八木(華奢で柔らかい・・・・・・。俺今までいろいろ無駄なことしてきたんだな。もっと早く美也ちゃんに出会えてれば)

八木ギュ
281: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/21(金) 22:22:02.51 ID:cs7YxPGXo

東京 カラオケ店内


長瀬・女事務員「かぁ~なぁ~しみの~」

長瀬(何で俺がこんな歌をデュエットしなきゃならんのだ)

石上「事務員ちゃん、デュエット曲ばかり連続して6曲くらい入れてたから、しばらく二人でお話できるよ、純一」

純一「う、うん。まあ、大きな声出さないと会話しづらいけどね」

石上「それくらい我慢しよ?4人で飲みにきて二人きりで話せるなんてラッキーじゃない」クス

純一「しかし、事務員ちゃんを誘うとは石上さんもよく考えついたね」

石上「由里子」

純一「あ、悪い。由里子」

石上「事務員ちゃん、長瀬君と腕を組んでるけど何かしがみついてるみたいに見えるね」

純一「そんなに長瀬のことが好きだったんだなあ」

石上「長瀬君ってね」

純一「うん?」

石上「意外とって言ったら失礼かもしれないけど」

純一「うん」

石上「事務員ちゃんのこと、結構本気で気に入ってるんじゃないかと思うよ」

純一「そうかなあ」

石上「そうだよ。長瀬君がわたしのことが気になるって言うのは」

純一「うん」

石上「自信家の長瀬君としては、事務員ちゃんよりブランド力の高い女が自分じゃなくて純一になびいているのが面白くなかっただけだと思うな」

純一「ブランド力って・・・・・・。事務員ちゃんだっていい子だよ」

石上「純一、わたしより事務員ちゃんの方がいいの?」

純一「そういうことじゃないって。ただ、事務員ちゃんだって一生懸命仕事してるし、自分より劣るみたいな言い方は止めた方がいいと思うんだけど」

石上「気を悪くした?でもね、わたし偽善って一番よくないと思うの」

純一「・・・・・・」

石上「事務員ちゃんはいい子だけど、普通はみんな容姿・学力・家柄・資力とかっていう指標で人を判断するじゃない?」

純一「それだけじゃいけどね。少なくとも僕は」

石上「人柄?誠実さとか健気さとかそういうことを言ってるの?純一」

純一「まあ、そうだね」

石上「純一から見て、わたしって性格悪くて人柄に難があるように見える?」

純一「いや、そうは言わないけど」
282: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/21(金) 22:22:34.07 ID:cs7YxPGXo
石上「・・・・・・わたしね、演技も上手なんだ」

純一「突然、何?」

石上「周囲の人たちには、優秀で美人だけど、それを全然鼻にかけないいい人に見えてると思うな」

純一「何が言いたいの?」

石上「でも、全然そんな人間に見えないでしょ?」

純一「・・・・・・」

石上「わたしね、純一にはありのままの自分を見て欲しいの。純一の前だけは、演技するの止めたの。神戸で純一に抱かれた時から」

純一「そ、そう。でもさ」

石上「うん」

純一「本心では、人間の価値が容姿・学力・家柄・資力で決まるって思ってるならさ。何で僕なんかを好きになったんだ?」

石上「純一、今言ったことでひとつも人に劣ってないじゃない」

純一「え?」

石上「容姿はわたしの好み。学力は、大学は地方の国大かもしれないけど、仕事振りを見てれば真の実力はわかるよ。家柄・資力も」

純一「買いかぶりすぎだよ。少なくとも家柄・資力は備わってないだろ」

石上「美也ちゃんが来春入社するじゃない?」

純一「うん」

石上「家庭環境調査とかするでしょ?銀行とかって」

純一「・・・・・・」

石上「人事課の同期の男の子に色仕掛けに近いやり方で、純一の家庭のこと聞き出しちゃった」

純一「おい」

石上「お父様は、一流商社のロンドン支店長。お母様は、大手広告代理店の管理職」

純一「・・・・・・」

石上「サラリーマン家庭かもしれないけど、普通に知的で裕福な家庭だよね」

純一「石上さんさあ」

石上「由里子」

純一「由里子・・・・・・。いったい何が目的なの?何で僕に近づいた?」

石上「純一のこと好きになったから」

純一「そんなつまらない指標で人を好きかどうか決めるの?それなら君の大学とか社の同期の中で条件のあう奴を探せばいいだろ!」

石上「わたしが好きなのは純一なの。昔から決めてたんだけど、本当に好きになった人には、自分を飾るのやめようって」

純一(何か、前にも聞いたことがあるセリフだ。何だっけ?)

純一(あ、そうだ。あの時)
283: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/21(金) 22:23:38.66 ID:cs7YxPGXo
回想


女友「あ・・・・・・ごめん。純一、気を悪くした?」

純一「いや、しないけど。今まで何人くらいと付き合ってたの?」

女友「4人かな。寝るとこまでいったのは」

純一「・・・・・・おまえ正直だな」

女友「怒らないでね。あたし、純一には嘘つきたくないから」


回想終了


純一(女友も昔そんなこと言ってたな。僕の前では飾らないようにしたいって)

純一(由里子も正直な気持ちを話しているだけなんだ、きっと。外形的な条件を気にしない女の子なんていないだろうし)

純一「それはわかったけどさ、そんなにいつも演技してて疲れない?」

石上「疲れるよ、あたりまでしょ」

純一「じゃ、じゃあ、僕も前だけじゃなくて普段から正直に生きたら?」

石上「もう習慣になっちゃってるの。今更生き方は変えられないよ。それに、今まで演技がばれたことってないし」

石上(あ。この間、美也ちゃんに)


回想


美也「・・・・・・石上先輩も」

石上「うん」

美也「ご自分の綺麗さとか頭がいいところとか良くわかっていらっしゃるみたいですね」

石上「え?」

美也「それでもそういうことを鼻にかけない、いい人に見えますよね」

石上(何、この子・・・・・・)

石上「あはは。そんなことないんだけどな。わたしって同期の人たちからは『天然』って言われてるくらいだし」

美也「先輩の同期の方たちって素直で信じやすい人ばかりなんですね」

石上「そうなのかな」ウフフ

美也「そうですよ」フフ


回想終了
284: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/21(金) 22:24:34.94 ID:cs7YxPGXo
石上(美也ちゃんには負けられない)

純一「石上さん?どうした」

石上「・・・・・・由里子」

純一「由里子。どうした?」

石上「わたしは自分の気持ちや感情を全部正直に話したわ、純一」

純一「うん」

石上「聞いてどうだった?嫌いになった?」

純一「・・・・・・いや。隠されていて後から気づいたら嫌いになったかもしれないけど」

純一「今は、嫌な感情はないよ」

石上「なら、よかった。事務員ちゃんのこといろいろ言っちゃったけど、けして嫌いでもバカにしてもいないのよ?」

純一「うん、わかってる」

石上「純一・・・・・・。本当に好きなの」ウルウル

純一(由里子がさっきから震えているのはわかってた。冷静そうに見えて常に感情を抑えて我慢している子なんだよな)

純一(他の人が彼女の話を聞いたら嫌味な嫌な子だと思うんだろうけど、そんなに単純な話じゃない)

純一(何かいとおしい)ナデナデ

石上「純一、ありがとう」



長瀬「もう5曲目だよ、事務員ちゃん。少し休まない?」

女事務員「だめですぅ! この前約束したじゃないですか。とことんわたしの歌に付き合ってくれるって」ギュー

長瀬「でも、喉が痛い・・・・・・。酒飲みたい」


イントロ

女事務員「あ、次の歌入りましたよ」

長瀬(・・・・・・)
285: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/21(金) 22:36:59.57 ID:cs7YxPGXo
千葉市内


美也「う~ん」

八木「美也ちゃん・・・・・・。美也ちゃん」

美也「あ、みゃー寝ちゃってた?ごめんね」

八木「(自分のことみゃーって言ったな。可愛いな美也ちゃん)いや、いいよ。お酒も結構飲んだしね」

美也「・・・・・・ここ、どこ?」

八木「もう、千葉市内に入ったんで起こしたんだ。ごめんね」

美也「何で謝るのよ?ばか」ギュー

八木「(美也ちゃん・・・・・・やばいって。胸が俺の肘にあたってる。まあ、あまり大きくはないが)そろそろ美也ちゃんのアパートに着くよ」

美也「何か物足りないなあ」

八木「な、何言ってるの美也ちゃん(ここは耐えるんだ、俺。美也ちゃんほど可愛くて頭のいい子なら絶対男の下心とかよくわかっているはずだ)」

八木(俺は美也ちゃんに試されてるんだ。美也ちゃんを俺の物にしようと決めたからには長期戦で行かないと)

八木(いつものナンパとは違うんだ)

美也「八木君?どしたの」

八木「いや。結構お酒も入ってるし、もう遅いから」

美也「え~。何かつまらない。八木君ってノリ悪いんだね」

八木「だって、美也ちゃん。明日、ってもう今日か。大学の図書館に行くんでしょ?(落ち着け、俺)

美也「それはまた今度でいいや。どっかでの飲みなおそうよ」

八木「本当に行きたいの?美也ちゃん」

美也「本当だよ。もしかして今からお店探すの面倒ならあたしのアパートで飲みなおす?」ニシシシ

八木「(行きてぇ~)いや、それはまずいでしょ。じゃ、お店探そうか」

美也「うん!」
293: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/23(日) 22:11:44.43 ID:Xh0mMGFKo
数日後(金曜日)午後 ××市役所との第1回中間打ち合わせ


純一「基礎データの収集状況と今後の検討方向については以上のとおりとなります」

市役所職員「この15ページ目の意向調査のデータだけど、年齢階層別のデータはないの?」

純一「あ、えーと。そのデータはネットから収集したものなので、これ以上細かい分析結果があるかどうか」

市役所職員「え? あるかどうかも確認してないんですか? っていうかソースはネットなの? 役所の計画の基礎データに出所不明の数字は使えないよ」

女上司「申し訳ありません。数字の出典は確認いたしますので」

純一「・・・・・・申し訳ありません」

石上「あの」

純一「え」

石上「そのデータはネットで公表されているものですけど、もともとは厚労省発表のものなのでソースは確認できています」

市役所職「厚労省の・・・・・・。そ、そう」

石上「それと階層別データにつきましては厚労省のホームページにも掲載されていませんでしたので、とりあえず今日には間に合いませんでした。ただ、総務省の統計センターに行けば閲覧できるそうなので、次回までには揃えられます。対応が遅くて申し訳ありません」

市役所職員「そうですか、それなら結構です。じゃ、次の打ち合わせは1月後ですね。引き続きよろしく」

女上司「はい。ありがとうございました」

純一・石上「ありがとうございました!」


市役所ロビー


女上司「じゃあ、おつかれさん。あたしは社に戻るからあんたたちはデータの収集に行っておいで」

純一「はい」

女上司「それにしても石上さん、ナイスフォローだったわ。橘の弱点を綺麗にカバーしたね。全くいいコンビだわ、あんたたち」

石上「ありがとうございます」ニコ

女上司「・・・・・・あんたたちの仲をからかってるんだからちょっとは照れなさいよ」

純一「だから、そういう発言は・・・・・・。石上さんにも迷惑ですし」

女上司「だって、石上さん、全然迷惑がってないじゃん? ま、いいや。じゃあね。あんたたちは仕事終わったらそのまま直帰していいよ」

純一・石上「おつかれさまでした」



午後7時 新宿のバー


石上「乾杯」

純一「乾杯」

石上「統計センターで階層別のデータを簡単に拾えてよかったね」

純一「・・・・・・」

石上「純一?」

純一「・・・・・・」

石上「純一ってば!」

純一「あ、ごめん」

石上「・・・・・・何を考えてるの? 純一」

純一「あ、いや・・・・・・。何でもない」

石上「・・・・・・」
294: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/23(日) 22:17:50.57 ID:Xh0mMGFKo
純一「悪い悪い。何か食べようか」

石上「うん」

純一「じゃ、いつものように任せるよ」

石上「わかったよ、メニュー取ってもらえる?」

純一「はい、これ」

石上「今日は何食べようかなあ」

純一(神戸から戻って1週間も美也と連絡がつかないってどういうことだ?)

純一(いつ電話しても留守電だし。折り返し電話するようにメッセージを入れても電話がかかってこないし)

純一(何かトラブルかと思って心配してかあさんに電話したら、かあさんぬh,昨日普通に美也から電話があったって言ってたしな)

純一(もしかして避けられてるのか?僕)

純一(・・・・・・ま、まさか。由里子とのこと知られた!?)

純一(いや、それはないな。あいつは千葉にいるんだし、万一にもばれるわけがない)

純一(どうしてこうなんたんだろ? いや、こうなったのは全部自業自得なのはわかってるけど)

純一(由里子とは本気の付き合いじゃないし、彼女もそれでいいと言ってくれた。僕が本当に好きなのは妹だけなのに)

純一(肝心の妹が連絡して来ないとは)

石上「・・・・・・ねえ、純一」

純一「うん」

石上「また、わたしたちの関係のことを悩んでるの?」

純一「い、いや」

石上「わたしは純一の邪魔をする気はないのよ。純一が好きな子と付き合えるようになったら本当にきれいに別れてあげるから」

純一「・・・・・・」

石上「それで、万一純一がその子に振られたら、わたしが慰めてあげる」

純一「・・・・・・」

石上「それとも、ひょっとしてもう付き合ってるの?」

純一「そんなことないけど」

石上「・・・・・・そう。純一がいいなら、あたし控えの選手でいいのよ? っていうか純一と別れないですむならむしろその方が」

純一「・・・・・・何言ってるんだよ」

石上「まあ、とにかくわたしはセフレでもいいんだから、あまり深く考えないでね?」

純一「・・・・・・うん。わかったよ由里子」

石上「愛してるわ純一」

純一「由里子・・・・・・」

石上「じゃ、この話はもうおしまい。飲も?」

純一「うん」

石上「このカクテル、この店のオリジナルなんだって。結構美味しいよね」

純一「そうだね(由里子、これじゃまるで僕に都合いのいい女みたいだけど)」
295: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/23(日) 22:18:34.08 ID:Xh0mMGFKo
石上「あ、そうだ!」

純一「どうしたの? (これだけ条件のいい女性が何で僕なんかにそこまで夢中になるんだろ?)

石上「前にしてくれた約束、覚えてる?」

純一「・・・・・・何だっけ? (何でこんなに一途なんだ・・・・・・そう考えるとやっぱり由里子っていとおしいな)」

石上「覚えてないの? 純一」

純一「ごめん。何だっけ? (でも、僕には愛する妹・・・・・・美也が)」

石上「いいのよ、純一。わたしも今まで忘れてたんだから」

純一「一体何だっけ」

石上「アクアライン」

純一「ああ、そうだった」

石上「もう開通したんでしょ? アクアラインを通って千葉に連れってってくれる約束してくれたじゃない?」

純一「うん、いいよ。いつにする?」

石上「急だけど、明日じゃ駄目?」

純一「え、明日? ま、特に用事はないけど(先週末は神戸で今週末は千葉か。美也より由里子の方と頻繁にデートするようになっちゃったな)」

石上「やった! 泊りがけでも大丈夫?」

純一「あ、ああ(まあ、いいか。どうせ美也には連絡取れないし。しかし美也、何をすねてるんだろう)」

石上「じゃあ、何時に出かける?」

純一「そうだな・・・・・・」
296: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/23(日) 22:50:44.92 ID:Xh0mMGFKo
翌日土曜日 午前8時 世田谷区内の石上の自宅前


純一(また今日も30分前についてしまった)

純一(相変わらず綺麗な家だな)

純一(あ! ドアが開いた)

純一(って、え?何何?)



石上「何でパパが一緒に出て来るのよ?」ブツブツ

石上「いくら娘とはいえプライベートなお付き合いにまで親が出てくるなんてやめてよ」

?「まあ、そう言うなよ。君のプライベートにまで口を出す気はないよ」

石上「じゃあ、何で急に彼にあいさつするなんて言い出すのよ! 今までの彼氏とは会うのも嫌だって言ってたくせに」

?「あの橘さんの息子さんだろ? それなら話は別だ。とにかくあいさつくらいはしないと」

石上「橘君のお父さまと知り合いなの!? 初耳だよ」

?「おはようございます。橘君」



純一「あ、は、は、はい! おはようございます」

石上「おはよう、じゅんい・・・・・・橘君」

純一「おはよう、石上さん」

?「私は由里子の父です。今日は娘をよろしくね」

純一「は、はい(何なんだ? この顔あわせ)」

石上父「お父上はお元気ですか?」

純一「え?」

石上「橘君、急にごめんね。父が橘君のお父さまと知り合いみたいで、ぜひ挨拶したいって」

石上父「君のお父上にはロンドンで大変お世話になったことがあってね。一緒に食事したりゴルフしたこともあるんだ」

純一「そうでしたか。父がお世話になってます」

石上父「ははは。こちらこそお世話になってるよ。しっかりした息子さんで父上も安心だね」

石上「パパ。わたしたちもう出かけるから」

石上父「ああ、わかってるよ。橘君、これからもよろしく」

純一「こちらこそよろしくお願いします。あ、お嬢さんをお預かりします」

石上父「あ、そうだ。そういえば美也ちゃんは元気かい?」

純一「!?」

石上(パパ!?何で美也ちゃんのこと?)

石上父「橘さんとロンドンで食事とかゴルフする時は、橘さんいつもお嬢さんを連れて来てね」

純一「そうだったんですか(美也がロンドンの学校に行ってた頃、美也がて何をしてたのか僕は全然知らないからな)」

石上父「仲のいい親子だよね、橘さんと美也ちゃん。何か、高校の時まで一緒にお風呂に入ってたとか」

石上「何言ってるのよ?パパ」

石上父「ははは。じゃあ、楽しんどいで由里子」

石上「じゃあ、行ってくるね」

純一「失礼します」
301: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/24(月) 21:41:48.82 ID:EbAHdKOeo
純一の車の中


石上「ごめんね、突然父が出てきちゃって。何か恥ずかしい」

純一「いや、別に。でも由里子のお父さんが親父の知り合いなんて驚いたなあ。君は前から知ってたの?」

石上「ううん。今朝父に誰とどこに行くんだ?って聞かれたの」

純一「うん」

石上「父は普段は放任でね。わたしが男の子と出かけても全然興味示さないんだけど。何でかなあ? 今朝だけは誰と? って聞かれたのね」

石上「で、隠すこともないし今出向中の会社の同僚で、橘純一君という人とアクアラインを通ってドライブに行くって言ったら」

純一「言ったら?」

石上「橘純一って何か聞いたことあるぞって」

純一「・・・・・・」

石上「で、その橘君のお父さんってもしかして××商事のロンドン支店長の橘さんじゃないか? って」

純一「・・・・・・君は美也の家庭環境調査の結果を見てるから、親父のこと知ってたんだもんな」

石上「うん。で、そうよ何でパパは知ってるの? って聞いたら、いいからいいからって」

純一「それで君のお父さんがあいさつに出てきたわけだ」

石上「そうなの。本当にごめんね」

純一「いや、もういいよ。でも、美也のことまで知ってたのは驚いたけど」

石上「・・・・・・美也ちゃん、高校生の頃お父様と一緒にお風呂に入ってたの?」クス

純一「あ、いや。あれは変な意味じゃなくて昔からの習慣で」

石上「ちょっと安心しちゃった」

純一「何が?」

石上「美也ちゃんってブラコンだと思ってたけど、意外とファザコンなのかもね」

純一「・・・・・・」

石上「お父様に嫉妬する?」

純一「しないよ! さっきから何言ってるの」

石上「冗談だよ純一。ごめんごめん」

純一「・・・・・・」
302: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/24(月) 22:13:32.08 ID:EbAHdKOeo
純一「まあ、その話はもういいよ。でも、今日の計画は狂ちゃったね」

石上「え? 何で」キョトン

純一「君のお父さんに知られちゃったんだし、まさか最初の予定通り泊まりでって訳にいかないでしょ」

石上「だから何で?」

純一「だって、君のお父さんに知られて」

石上「もともと一泊で行くって言ってあるよ。あ、母にも」

純一「え?」

石上「言ったでしょ? うちは昔から放任だって」

純一「男と泊まるって言っても? 放任にも程があるでしょ」

石上「そうかな? うちは昔からこうだし。お姉ちゃんがが結婚した相手とまだ付き合ってた頃も、両親は全然干渉してなかったよ」

純一「信頼されてるのかな?」

石上「それはわからないけど。とりあえず、今日の父の感触だと、我が家では純一との交際は大歓迎みたい」クス

純一「・・・・・・」

石上「あ、その先のジャンクションで分離するみたいだよ。海ほたるまではトンネルなんでしょ?」

純一「あ、うん。海ほたるから木更津までが橋だね」

石上「せっかくだから海ほたるも見て行こうよ?」

純一「うん。でも混んでいると思うよ。オープンしたばかりで」

石上「泊まりの日程で時間に余裕があるし、別にいいじゃない。それに純一と車の中でお話いているだけでも楽しいし」

純一「・・・・・・まあ、君がそう言うなら」
303: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/24(月) 22:34:10.27 ID:EbAHdKOeo
海ほたる前の渋滞


純一「やっぱり混んでるね。こりゃ車を止めるまでに1時間以上はかかりそうだ」

石上「いいよ、それでも。ところでさ、今気が付いたんだけど、今日ってどこに泊まるつもりなの?」

純一「・・・・・・え?」

石上「何となく昨日勢いで泊りがけになっちゃったけど、泊まるところとかどこに行くかとか全然考えてなかったね」

純一「言われてみれば、全くのノープラン・・・・・・ごめん」

石上「やっぱりそうか」

純一「本当に悪い! 海ほたるについたらホテル予約できるか聞きまくるから」

石上「いいよ、そんなの。純一と一緒にいられるなら車中泊でもラブホテルでもいいよ」

純一「石上さんをそんなところに泊まらせるわけにはいかないよ。ご両親に申し訳ないし」

石上「由・里・子!」

純一「・・・・・・由里子」

石上「それよか、成田空港以外に千葉って行ったことないんだけど、どこに連れて行ってくれるの?」

純一「あ、そうだな。水族館とか?」

石上「行きたい!」

純一「(マジかよこの食いつきのよさ)じゃあ、いっそ僕の実家に泊まる? 両親も美也もいないし」

石上「泊まる!! ・・・・・・でも、いいの?」

純一「いいのって何が?」

石上「・・・・・・何がって」

純一「うん?」

石上「まあ、純一がいいならいいや。純一の育った家とか見てみたいなあ」

純一「じゃ、そうしようか。まず、木更津に着いたら食事して、それから水族館に行くか」

石上「水族館ってどこにあるの?」

純一「僕の行きつけの水族館は、実家のある銚子市内の水族館と鴨川市にある水族館だけど」

石上「じゃあ、水族館のハシゴしよう」

純一「・・・・・・意外と由里子と趣味合うね」

石上「意外とって何よ? 意外とって」

純一「いや。由里子って大人っぽいし、水族館みたいな家族的な娯楽はどうかと思ったんだけど」

石上「純一もわたしのことよくわかってないのね」

純一「え?」

石上「もっとわたしのこと知ってもらおうかな? この小旅行の間に」

純一「・・・・・・」

石上「あ、ようやく海ほたるのパーキングに入れそうだよ」
304: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/24(月) 22:46:27.23 ID:EbAHdKOeo
東京湾アクアライン 海ほたるパーキングエリア展望フロア


純一「ようやく入れた」

石上「でも、お話してたらあっと言う間だったよね」

純一「それならいいけど」

石上「あ、ごめんね? 運転する人は疲れるよね」

純一「そんなこともないけど」

石上「あ、ほら。みなとみらいのランドマークタワーとかよく見えるよ」

純一「うん」

石上「ここから木更津までは橋の上を走るんでしょ」

純一「そうみたいだね。まあ、この混み方じゃ走るというよりはノロノロ動くって感じだろうけど」

石上「その方が景色をゆっくり見られていいじゃない」

純一「さっきから君は前向きだなあ」

石上「何度も言わせないでよ。とにかく純一と一緒にいられるのが嬉しくてたまらないの。先週神戸で純一に愛してもらったばかりなのに」

石上「今週末も一緒にいられるとは期待してなかったから」

純一「・・・・・・まあ、僕もそうだけど」

石上「本当?」

純一「え、いや。あの」

石上「・・・・・・今の本当?」

純一「・・・・・・本当だよ。僕も由里子と一緒だと楽しい」

石上「・・・・・・嬉しい。本当に幸せ」

純一「そんな大げさな」

石上「純一」セノビ

石上チュ

純一「由里子・・・・・・」ギュ

石上「しばらく、こうしていて」ウットリ

純一「・・・・・・うん」


?「え!? にぃに?」

純一「み、美也!?」
310: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/25(火) 21:57:55.64 ID:qZnJd6uZo
東京湾アクアライン 海ほたるパーキングエリア展望フロア


純一「美也・・・・・・。おまえ、ここで何をして」

美也「にぃ、お兄ちゃん」

石上「ああ~。美也ちゃんだ! 偶然だねえ」

美也「石上さん・・・・・・」

純一「そ、そうだ、美也。おまえここんとこずっと電話にでなかったけど、一体何やってたんだよ」

美也「・・・・・・」

純一「美也? あ、別に怒っているわけじゃなくて。その、心配したというか」

美也「・・・・・・」

八木「美也ちゃん、どうしたの?」

美也「あ、八木君」

純一(!? だ、誰だこいつ)

石上「美也ちゃん。そちらお友達?」

美也「あ、はい。大学のお友達の八木君です。八木君、あたしの内定している銀行の1期先輩の石上さん」

石上「こんにちは」

八木「あ、はじめまして。八木です」

八木「えと?」

美也「・・・・・・お兄ちゃん」ボソ

八木「え?」

美也「だからあたしの兄」

八木「あ、美也ちゃんのお兄さんですか! 八木と言います。よろしくお願いします」アタフタ

純一「ああどうも」ブス

石上「純一、なあに『ああどうも』って。もう少し愛想よくしたら?」クス

美也(石上さん『純一』って・・・・・・)

純一「美也。留守電のメッセージ聞いたら連絡くらいしろよ? 心配するだろう」

美也「・・・・・・」

純一「だいたい、連日遅くまで何してたんだよ」イラ

美也「・・・・・・関係ないでしょ」ボソ

純一「え?」

美也「お兄さんには関係ないでしょ。お母さんには毎日連絡してたし」

純一「美也・・・・・・」

美也「・・・・・・」

石上(ふ~ん。やっぱりそうかな?)
311: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/25(火) 22:19:31.54 ID:qZnJd6uZo
美也「石上さんたち、川崎の方から来たんですか?」

石上「そうよ。美也ちゃん達は木更津から来たの?」

美也「はい。アクアライン通ってみたかったんで、八木君にお願いしたんです」

八木「結構混んでいて予定よりだいぶ遅れちゃったけどね」

石上「そうそう。わたしたちも海ほたるに入るまでずっと待っちゃったよ」

八木「でも何かすごい偶然ですね」

石上「本当だねえ。東京湾の反対側からお互いにそれと知らないでアクアラインを通って、ここでいきなり出会うなんてね」アハ

八木「こういうこともあるんですねえ」ハハハ

石上「やっぱり橘家の兄妹の絆ってすごく強いのねえ」チラ

美也「単なる偶然ですよ」ブス

純一(美也怒ってるのか? 由里子とキスしてるところ見られたのかな)

石上「美也ちゃん達はこれからどこに行くの?」

美也「えと。中華街にお食事に行って、あとは鎌倉でも観光していこうかと」

純一(とにかく美也と二人きりにならないと誤解も解けないし。・・・・・・つうか誤解じゃないけど)

石上「あら。いいわねえ。就職も決まってのんびりとデートなんて、うらやましい」

純一(デートって。いったいこいつと美也ってどういう関係なんだ)

美也「石上さんもいい週末を過ごしてるみたいじゃないですか」ムカ

純一(もしかして僕と由里子のこととは関係なく、美也とこいつって。も、もしかして)

石上「うん。わたし千葉県って成田空港くらいしか知らないから、純一にお願いしたの」

純一(・・・・・・おい。純一って呼ぶのは二人きりの時だけって約束だったでしょ)ハラハラ

石上「そうしたらアクアラインを通って千葉県の水族館巡りに連れって行ってくれることになって」

美也(水族館・・・・・・)

石上「何か偶然だけど、わたしも水族館に行くの好きだから。今日は楽しみだな」

美也「よかったですね。石上先輩」

石上「ありがと、美也ちゃん」

美也「今日は長瀬さんはいないんですか」

石上「(何言って?)うん、いないよ。どうして?」

美也「だって、前にご一緒に飲んだときにとても仲良しだったじゃないですか」

石上「それ、美也ちゃんの勘違いだよ。ただのお友達」

美也「そうですか・・・・・・」
312: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/25(火) 22:39:28.98 ID:qZnJd6uZo
石上「あ、偶然と言えばね」

美也「はい」ブス

石上「今朝、純一に家まで迎えに来てもらったんだけど、その時に」

純一(ああ、もう何も言わないで欲しいよ。まあ、由里子は美也は単なる妹だって思ってるだろうから、素直に喋っているんだろうけど)

石上「その時にうちの父に紹介したんだけど」

純一(わーわーわー! 何も聞こえない!! 何も聞きたくない!!)

美也(紹介って)

石上「そしたらね。うちの父、美也ちゃんたちのお父様と知り合いだったのよ」

美也「え? うちのお父さんと石上先輩のお父様って知り合いなんですか?」

石上「パパは美也ちゃんのことも知ってたよ。美也ちゃん覚えてないかな? 美也ちゃん高校時代にロンドンの学校に留学してたことあるでしょ」

美也「あ! 石上さんってあの石上さんですか!? 覚えてますよ、懐かしい。あたしが学校お休みの時に、うちのお父さんと石上さんのお父さまと3人でゴルフしたりお食事したりしました」

石上「覚えててくれたみたいね。父も懐かしがってたよ」

美也「郊外にあるあたしの学校の寄宿舎まで父と二人で迎えに来てくれて、そのまま乗馬に行ったりしてましたよ。お父様お元気ですか?」

石上「うん。おかげさまで。今度うちに遊びに来てね? 純一と一緒に」

美也「はい! ・・・・・・って(にぃにと二人で?)。あ、いえ」

石上「え?」

美也「い、いえ。あ、八木君。そろそろ行かないと中華街に着くの遅くなっちゃうよ」

八木「え? 今、海ほたるに着いたばかりなのに」

美也「いいじゃん。とりあえず中に入ったら十分でしょ、単なるパーキングエリアだし」

八木「美也ちゃんがいいなら、別にいいけど」

美也「じゃあ石上先輩、失礼します。お父様によろしくお伝えください」

石上「美也ちゃん、もう行っちゃうの?」

美也「はい」

八木「石上さん、失礼します・・・・・・え、ええとお兄さん、これで失礼します」

純一(美也。僕とは口も聞きたくないのか。それは由里子とキスしてたかもしれないけど、僕が一番好きなのは美也なのに)

石上「ちょっと、純一」

純一(美也がその気ならもういいよ。こっちが健気に美也のことを一番に考えているのに、連絡もよこさず男とデートか)ムス

石上「純一ってば!」

純一「あ、ああ。さよなら。美也のことよろしく」ブス

美也(!?)
313: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/25(火) 22:53:52.59 ID:qZnJd6uZo
八木「妹さんをお預かりします。失礼します・・・・・・行こうか。美也ちゃん」

美也「うん・・・・・・そうだね」

石上「じゃ、またね美也ちゃん」

美也「さようなら」

純一ムス


石上「美也ちゃんのことが気になるの? 純一」

純一「・・・・・・何が」

石上「無理しなくっていいって。大切な妹さんが男の子と二人でデートしているの見かけたら、ショックを受けても無理ないわ」

純一「そんなことないって」

石上「わたしの前では無理しなくていいって」

純一「無理してないよ(由里子っていい子だな。ここまで僕のこと心配してくれるんだ)」

純一(さっきの僕を無視してた美也とは大違いだ。あいつ、僕に黙ってデートなんかしやがって)

石上「純一」ギュ

純一「由里子・・・・・・」グイ

石上「あ」

純一「僕たちもそろそろ行こうか。ここは人だらけで落ち着かないし(こうなったら意地だ)」

石上「そうね」シナダレ

純一「じゃあ、とにかく車に戻ろうよ(・・・・・・美也の方から電話してくるまで、美也が誤って仲直りしたいと言ってくるまで)」

石上「うん。じゃ行きましょう」

純一(こっちから連絡なんてしてやるか。美也のやつ人の気持ちも知らないで)

純一(石上さんとか八木とは普通に喋っていたくせに、僕だけ無視しやがって)

石上「純一?」

純一「あ、うん。じゃ、行こう」

石上(よく偶然が続くな、今日は)

石上(わたしにとってラッキーデーなのかな)フフ
314: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/25(火) 23:06:44.40 ID:qZnJd6uZo
東京アクアラインの橋上 純一の車の中


石上「ねえ純一。お昼はどうするの?」

純一「あ、うん。どうしようか」

石上「さすがのわたしも千葉県内のお店は知らないよ?」

純一「・・・・・・いくら頼りない僕でも自分の地元で、由里子にお店を聞いたりしないよ」

石上「本当? 頼もしいわ」ヨリソイ

純一「あ、うん。任せておいてよ(ど、どうしよう。定食屋と学食と居酒屋くらしか知らないぞ)」

純一「(あ、そうだ)すごく美味しい寿司屋が地元にあるんだけど、そこでいい?」

石上「うん。お寿司好きよ。楽しみ」

純一「そう、よかった。僕の親友がやってる店なんだけど、味は保証するよ。あと開店したばっかなんで店も綺麗だし」

石上「銚子にあるの?」

純一「そうだよ。このまま銚子に行って、そこでお昼食べよう。で銚子の水族館を見てから家に泊まればいいじゃん」

石上「うん」

純一「もし、お昼にその寿司屋気に入ってもらえたら、実家から歩いて行ける距離なんで夜もそこでお酒でも飲もうか」

石上「素敵なプランね。見直した」ウットリ

純一「よかった(由里子と話しているとさっきの美也の態度とか忘れられる)」

石上「ねえ、周り全部海だよ。すごく綺麗ね」

純一「うん(こうなったら意地だ。由里子といる間は美也のこと忘れよう)」

純一(由里子に失礼だし。何より美也だってどうせ僕のことなんか忘れてるんだろうし)

純一(・・・・・・)
319: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/26(水) 21:32:13.96 ID:LmmzMp7jo
梅寿司

純一「ここなんだ。まだオープンしたばかりだけど、美味しい店だよ」

石上「純一の親友が経営してるって言ってたね」

純一「うん。梅原っていうんだけど。高校大学と一緒でさ。地元では有名な名店の次男で、小さい時から親父さんに仕込まれてるから、腕は確かだと思うよ」

石上「オープンしたてって言ってたけど、純一は来たことあるんだ」

純一「うん・・・・・・。美也と」

石上「美也ちゃんとかあ」

純一「あ、あとさ。梅原の奥さんも高校大学で一緒だったやつでさ。で、その」

石上「? どうしたの」

純一「からかわれるのも何なんで・・・・・・。由里子のこと職場の同期って紹介するから」

石上「・・・・・・」

純一「由里子?」

石上「・・・・・・わかった」

純一「ご、ごめん」

石上「謝らないで『橘君』。心配しなくても、ちゃんと話あわせるから」

純一「じゃ、じゃあ、入ろうか」

石上「・・・・・・」

純一「由里子?」

石上「あ、ごめんなさい。『橘君』」



棚町「いらっしゃいませ。って、え? 純一じゃん!」

梅原「おお! 大将か。おまえ来るなら来るって、電話くらいしろよ」

純一「悪いな梅原。急にこっちに来ることになったんでな」

棚町「まあ、座ってよ。カウンターでいい?」チラ

純一「・・・・・・ああ。紹介するよ、同じ会社で一緒のチームで仕事している石上さん」

石上「はじめまして。石上です」

棚町「こんにちは~。純一の親友の梅原薫です。そっちのアホ面があたしの亭主。二人とも純一の親友なのよ」

梅原「そうそう。純一の親友のうめ・・・・・・って、アホ面はねーだろ」

純一「また夫婦漫才が始まった」

石上「ふふ」

梅原「まあ、よろしく。しかし、綺麗な人だねえ。大将、おまえ恵まれてるな」

棚町「あら。あんたは今の職場に何か不満でも?」ウフフ

梅原「・・・・・・もちろんないです」

純一「じゃ石上さん、カウンターでもいいかな」

石上「うん」

棚町「ごめんなさいね。今昼時でテーブルとか座敷席とか一杯になっちゃって」

純一「いや、それはいいけど。満席なのにこんなにのんびり話してて平気なのか」

棚町「あ、いけない。ほら、さっさと握って」

梅原「おう。大将、少し落ち着いたら話しようぜ」

純一「わかったから、早く仕事しろ」

石上クス
320: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/26(水) 21:50:52.71 ID:LmmzMp7jo
梅寿司店内


棚町「で、何にする? ランチでもいいかな?」

純一「石上さん、ランチでいい?」

石上「はい」

純一「じゃあ、それで」

棚町「うん。ランチ二つね! ごめんね。今ピーク時なんだけど、もう少し空いてればお好みで握ってあげられたのに」

純一「いいよ。ランチ時に来たんだから、わがままは言わないって」

棚町「純一、今日はお酒飲めるの?」

純一「いや、車だから」

棚町「・・・・・・そういや、土曜日だけど。今日は仕事?」

純一「え、ええと」

石上「はい、仕事です。橘君と一緒にしているプロジェクトの取材で、ここまで来ました」ヘーゼン

棚町「ふ~ん? 休みの日にスーツも着ないで?」

純一「そ、それはだな」

石上「まあ、取材といっても現場を自分の目で見て写真撮影するのが目的ですし、誰とお会いするわけでもないので」

棚町「そうか。でも残念だなあ。車じゃなきゃ一緒に飲めたのに」

純一「ああ、それなら大丈夫。今日も夜来るから」

棚町「え? 車はどうするの。泊りがけの仕事なの?」

純一(あ、やべ)

石上「え、ええ。時間が遅くなりそうなので、明日東京に帰る予定なんです」

純一「そうそう」

棚町「・・・・・・何か怪しい」

純一「薫、おまえ怪しいって。石上さんに失礼だろ」

棚町「ああ、ごめん。つい、いつもの調子で喋っちゃった。石上さん、気にしないでね」

石上「気にしてくれなくても平気ですよ。橘君、もてるから。一緒に組んで仕事しているとあっちこっちから誤解されたり嫉妬されたりするんですよ」

棚町「ほうほう。いい話を聞いたわ。夜来るならその辺のことをじっくり聞くからね、純一」ニヤー

純一「(由里子ナイス! 薫の関心がそっち方面にずれてくれたぞ)わかったよ、夜はお任せで頼むよ」

棚町「わかってるよ」

梅原「おい薫。上がったから座敷の2番に運んでくれ」

棚町「おっと、いけない。仕事仕事。じゃあ、もう少し待ってね」

純一「おう」
321: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/26(水) 22:07:45.19 ID:LmmzMp7jo
純一「話をあわせてくれてありがと」

石上「・・・・・・うん。そういうのは得意だから気にしなくてもいいよ」

純一「そうみたいだね。ナイスフォローだったよ」

石上「別にこんなこと誉めてくれても嬉しくないけど」

純一「石上さん?」

石上「何でもないよ。約束したのはわたしだから、純一が気にすることはないの」

純一「あのさ」

石上「・・・・・・」

棚町「お待たせしました。遅くなってごめんね。お昼のランチになります」

石上「あ、すごく美味しそう。それに盛り付けも備前焼の長皿に盛り付けされててすごく綺麗」

棚町「ありがとう。ネタは地元のネタだし、お皿は岡山の工房から取り寄せてるんだよ」

純一「こだわってるなあ」

棚町「まあ、本店で購入してるんだけどね。でも、ネタは銚子の市場に旦那が行って選んできてるのよ」

純一「薫は一緒に行かないの?」

棚町「あぁ? 純一あんた何言ってるの? あたしが午前4時とかに起きられるわけないじゃん」

純一「・・・・・・」

棚町「じゃあ、ごゆっくり」

石上「ありがとうございます」



石上「あ。本当に美味しい。とても繊細な味ね」

純一「僕には上手に表現できないけど、美味しいのは確かだと思うよ」

石上「何か久しぶりに美味しいお寿司食べたわ」

純一「それはよかった」

石上「うん」

純一「・・・・・・」

石上「・・・・・・」
322: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/26(水) 22:42:27.66 ID:LmmzMp7jo
銚子市内の水族館 大遊泳水槽前


純一(あれから何か気まずい)

純一(・・・・・・薫たちの前で単なる同僚のふりをさせたせいだな)

純一(でも、薫たちは僕と美也の関係を知っている数少ない理解者だし。と言っても、そんなこと由里子に言うわけにはいかないし)

純一(会社関係者以外の人の前で他人の振りをさせられたら、それは不快だろうな)

純一(いっそ薫たちは僕の好きな子の知り合いなんでっていい訳してみるか)

純一(・・・・・・却下。よけいに話がややこしくなるだけだ)

純一(僕って、美也の浮気で混乱した気持ちを由里子に癒してもらってくるくせに、彼女の気持ちを全然考えてない)

純一(七咲や女友の時から何も成長してないじゃないか)

純一(ああ、面倒くさい。そもそも美也が他の男と出かけたりするからこんなことになったんだ)

純一(美也のこの仕打ちを考えれば、由里子の方が僕のこと考えてくれてるよな)

純一(僕はもっと由里子を大切にするべきなんじゃないか)

純一(冷静に考えれば、普通なら僕なんかには縁がないほどハイスペックな彼女が、僕なんかのために嫌な思いをしてるんだし)

純一(・・・・・・美也のことなんか気にしている場合じゃない。どうせ、美也は僕より八木ってやつに夢中なんだし)

純一(そうだよ。何で僕だけこんなに美也に気を遣って遠慮しなきゃならないんだ。あいつは僕に連絡もせず好き勝手に遊び歩いてるのに)

純一(さっきだって一言も僕に話しかけないし、目も合わせなかった)

純一(何かいろいろ馬鹿馬鹿しくなってきたな)

純一「(よし)由里子」グイ
323: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/26(水) 22:43:11.72 ID:LmmzMp7jo
石上「・・・・・・」

純一(肩を抱き寄せても反応がないっていうか、逃げはしないけど体を強張らせてる)

純一「ごめん」ギュ

石上「・・・・・・」

純一「ごめん、本当に。僕、自分勝手だったよ」ギュー

石上「・・・・・・何のお話?」

純一「今日、梅寿司に行ったら薫たちにさ。石上さんのこと僕の彼女って紹介してもいいかな?」

石上「・・・・・・そんな無理しなくていいよ」

純一「無理じゃないよ。お昼に変なこと頼んだ僕が悪かった」

石上「・・・・・・」

純一「ごめん。態度はっきりさせなくて」

石上「いいの。わたしが自分で純一のセフレでも控え選手でもいいって言ったんだから」

石上「わたしの方こそごめんなさい。何か、愛人とか日陰の女とかってこういうことを言うんだなって考えちゃって」

石上「わたし、そういうお付き合いしたことなかったんで、ちょっと悲しい気持ちになっちゃって、ちょっと悲しくなっちゃった」

純一「ごめん」

石上「ううん。自分で純一に約束したのに守れないなんてあたし最低の女よね」ポロポロ

純一「(由里子をこんなに悩ませてしまってたんだ)好きだよ由里子。僕なんか長瀬の言うとおり君とは全然釣り合わないと思うけど」

石上「え?」

純一「それでもいいなら正式に僕と付き合ってください」

石上「純一? 好きな人がいるんでしょ」

純一「もう、どうでもよくなっちゃった。今、一番大切にしたいと思うのは由里子なんだ」

石上「・・・・・・うそ」

純一「駄目? かな」

石上「純一!!」ダキツキ

純一「・・・・・・由里子」ギュ
328: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/28(金) 20:47:23.43 ID:stDe3Bwdo
夕暮れ 銚子市内の水族館 海に面したベンチ


石上「・・・・・・純一?」シナダレ

純一「うん」

石上「もう2時間もここに座って海を見てるよ? わたしたち」

純一「うん」ダキ

石上「何か不思議。何もしないでただ寄り添って夕暮れの海を見ているだけなのに」

石上「とっても落ち着く。こんな気持ちになるの初めてよ」

純一「まあ、僕もそうかも」

石上「・・・・・・」コテ

純一「・・・・・・」ダキシメ

石上「・・・・・・もうすぐ日が落ちるね」

純一「寒くない?」

石上「ううん。むしろ暖かいよ。純一の腕の中にいると」

純一「そうか」

石上「うん」

純一「何かいつまでもこうしていないな」

石上「・・・・・・わたしと同じこと感じていてくれて嬉しい」

純一「うん。でも、そろそろ閉館だし。梅寿司に戻って食事しようか」

石上「そうだね。あ」

純一「何?」

石上「あのさ。さっきはああ言ったけど。梅寿司では仲のいい同僚のままでいいからね」

純一「どうしてさ? さっきは悪いことしちゃったし、今度こそ僕の彼女って紹介するよ」

石上「すごく嬉しいけど。でも、あの二人の前で演技しちゃったし、今日はもうそのままでいいよ」

石上(何か美也ちゃんの味方っぽい匂いがするしね、棚町さんって。一応用心しとこ)

純一「まあ、由里子がそれでいいなら」

石上「それでいい。純一と両思いになれたんだもん。もう悲しくなんてならないから」

純一「(可愛い)じゃ、行こうか」ギュ

石上クス

純一「うん?」

石上「少し手を緩めてくれないと、立ち上がれないよ」クス

純一「あ、ごめん」

石上「好きよ、純一。大好きなの」チュ

純一「由里子・・・・・・」
329: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/28(金) 21:29:37.85 ID:stDe3Bwdo
梅寿司


棚町「いらっしゃい」

純一「遅くなっちゃった」

梅原「おせーよ、大将。いろいろ用意しといたのによ」

石上「ごめんなさい。仕事が長引いちゃって」

棚町「仕事なんじゃしょうがないね。個室空いてるけどどうする?」

純一「え~と」チラ

石上「カウンターでいいですか? その方が二人ともお話できますし」

棚町「(あれ、この子)そう? じゃあ、カウンターにどうぞ」

梅原「大将、酒はどうする? 今日は車うちの駐車場に置いていくんだろ?」

純一「一晩駐車しといていいか? 梅原」

梅原「おう。じゃ、料理は任せてもらっていいよな」

純一「頼むよ」

棚町「最初はビールにする? 純一」

純一「ゆり・・・・・・。石上さん。ビールでもいい?」

石上「うん」

純一「じゃビールで」

棚町「了解。じゃ、ちょっと待っててね」

純一「うん。って、薫」

棚町「何よ? 純一」

純一「昼はあれだけ混んでたのに、今はお客さん誰もいないじゃんか。まさか」

棚町「あんたが気を遣うことじゃないよ。お客さんがいたらあたしたちが純一と飲めないじゃん」

純一「また、貸切にしたの?」

梅原「おうよ! 常連さんを断るの大変だったぜ」

純一「・・・・・・そこまでしてくれなくていいのに」

棚町「あたしたちがそうしたいんだから、あんたは口を出すな」

純一「僕は嬉しいけど、薫。でも、商売大丈夫かよ」

棚町「いつもは満席なんだから大丈夫よ。じゃ、ちょっと準備してくるから」
330: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/28(金) 21:31:13.03 ID:stDe3Bwdo
石上「本当に仲がいいんだね。純一たちって」

純一「まあね。多分こいつらとは一生こんな感じだと思うよ」

石上「薫さんてすごいよね」

純一「え。どうして?」

石上「薫さんって、昔純一のこと好きだったんじゃないかなあ」

純一「何言ってるの。それはないよ」

石上「多分間違っていないと思うよ。・・・・・・純一が気が付かなかっただけで」

純一「薫と梅原は大学入ってすぐ付き合いだしたんだよ? ふざけているように見えるかもしれないけど、お互いにベタ惚れなんだ」

石上「うん。それは見ていてわかる。でもこうなるまでに薫さんすごく悩んだと思うな」

純一「・・・・・・」

石上「わたしが薫さんをすごいと思うのはね。棚町さんって、純一への昔の恋心を昇華させて、本心から純一のいい親友になってるじゃない。それがすごいと思うの」

純一「・・・・・・由里子の思い過ごしだと思うけどなあ」

石上「まあ、そうかもね。とにかく大切にした方がいいよ。薫さんたちのこと」

純一「そうだね」
331: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/28(金) 21:52:43.93 ID:stDe3Bwdo
棚町「お待たせ~。はい、ビールどうぞ」

石上「ありがとうございます」

棚町「はい、石上さん。お酌してあげるね」

石上「あ、すいません」

棚町「ほら。ついでにあんたも」

純一「僕はついでかよ」トクトク

棚町「じゃ、突き出し運んでくるからね。今日は平目の縁側の焼き物よ」

石上「あら。おいしそう」

棚町「銚子の平目だし、本当に美味しいのよ。この間、美也ちゃんが来てくれた時も、美也ちゃんとお連れさんすごく喜んでたし」チラ

純一「え? 美也来たの?」

棚町「(・・・・・・よし)うん。夜に八木君って言う大学の男の子と『二人』で来てくれたんだよ」ドキドキ

純一「ふ~ん。そうか。じゃあ、突き出しも楽しみだな」アッサリ

棚町「(え)純一・・・・・・」

純一「薫、どうかした?」

棚町「え? いや、何でもない。じゃ、楽しみにしてて」

石上「はい!(ふーん。美也ちゃんが男の人と二人でねえ)」



棚町「はい、どうぞ」

石上「うわあ。美味しそう。それに器がとっても素敵。備前焼ですね」

純一「本当だ。この間来た時は寿司桶に10人前くらいの握りが詰まってたけど、今日は綺麗に出してくれたんだな」

棚町「こないだは、わたしたちも宴会気分だったからさ。ちょっと手を抜いちゃったのよ」

石上「でもこの器、お店で出すような物じゃないんじゃないですか?」

梅原「お、よく気づいてくれたね。普段お客に出すのと違って、これは古備前なんだぜ」

棚町「普段は飾ってあるんだけどね。今日はせっかくだから使ってみた」

梅原「大将、それ割るなよ」

純一「割らないけど、そんな物出されたら気を遣うじゃんか。普通の皿で出せよ」

棚町「わかってやってよ純一。こいつだってあんたとは違う道に進んだけど、それなりに頑張ってるって純一に自慢したいのよ」

梅原「おい、薫。お、おまえ」

棚町「ほら図星だ」

梅原「・・・・・・」

純一「ははは」
332: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/28(金) 22:06:40.87 ID:stDe3Bwdo
梅寿司 深夜


純一「じゃ、そろそろ帰るよ。ごちそうさま」

梅原「お~い。もう帰っちゃうのかよ? 大将」グデングデン

棚町「あんたはちょっと飲みすぎよ。全く酒飲ませる前に料理させておいてよかったわ」

石上「でも、とっても美味しかった。あと、お二人とお話できてとっても楽しかったです」

棚町「(ふー~ん。普通にいい子じゃん。純一とどんな関係なんだろ)それならよかったわ。純一の友達ならあたしたちの友達よ。また、いつでも遊びに来てね」

石上「ありがとう。今度機会があったら一人で来ちゃおうかなあ」

梅原「おう! 大将なんていなくてもいいからぜひ来てよ」

純一「おい、梅原。それじゃ、僕が邪魔みたいじゃないか」

棚町「(純一狙いなのかな? この子。絶対ただの同僚じゃないよね。全く美也ちゃんも何やってるのよ。純一を放っておいてあんな男に尻尾振ってさ)純一、あんたは邪魔邪魔。石上さん、本当にいつでも来てね」

石上「うん。嬉しいです」

梅原「ところで、おまえらホテルはどこ? タクシー呼ぼうか」

純一「いや、いいよ。今日は実家に泊まるから歩いて帰る」

棚町「え?」

梅原「実家って、今誰もいないんじゃねえの?」

純一「そうだよ。でも掃除とかはしてもらってるから大丈夫だよ」

梅原「いや、そういう話じゃなくてよ。会社の同僚と同じ部屋にってよ」

純一「同じ部屋じゃないよ。同じ家だけど」

石上「・・・・・・」

棚町「・・・・・・ま、二人がいいならいいじゃん。じゃ、純一。またね」

純一「うん。また来るよ。今日も安くしてもらって悪いな」

棚町「あんたで商売しようとは思わないよ。じゃ、石上さんもおやすみ」

石上「おやすみなさい」
336: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/30(日) 20:20:45.95 ID:DHVvfTlio

美也への意地と意趣返しが半分。由里子の魅力と愛おしさに心を惹かれたのが半分。僕が由里子と付き合い出した理由はそんなところだった。

そして、僕の心の中では美也はまだ僕の恋人で僕たちは一時的な仲違いしている。しかも二人とも意地を張り合って仲直り出来ないでいる・・・・・・由里子と付き合い出した最初のころは僕もまだそんな風に思っていたのだ。だけど、夏が去り秋の気配が深くなる頃になっても、美也は僕に電話ひとつよこさなかったし、僕も意地になっていてこちらから美也に連絡しようとは思わなかった。

その間には、美也たち来週入社予定の学生が集められ2回目の内定者懇談会と会社施設説明会が行われたようだったけど、以前のように美也がその夜に僕のアパートに泊まりに来ることはなかった。
 ・・・・・・頼まれもしないのに由里子が同期の人事課の男に問い合わせてくれたところによると、美也はその夜は会社が用意したホテルに泊まったようだ。

こうして美也と疎遠になるのと反比例して、由里子と僕の仲はだんだん深い付き合いになっていった。何しろ、毎日同じチームで仕事をし毎日昼休みを一緒に過ごし、毎日ではないけどかなりの頻度で仕事の後にデートをしていたのだから、二人の仲が深まらない方が不思議だったろう。夜いつもの居酒屋で食事を兼ねてお酒を飲み、仕事の話を少しと他愛ない会社の噂話に興じる。

付き合い出した最初は愛し合う時は円山町や新宿のラブホテル(会社の近辺は危険なので)に行っていたけど、すぐにそのナンセンスさに気づき、僕の方から由里子を誘って僕のアパートに泊まるようになった。

これは今でも不思議なのだけど、由里子の両親は彼女が僕のところに何泊しても気にしていないようだった。それどころか、由里子によれば僕を家に連れてこいと父親に勧められているそうだ。由里子の父親と僕の父がロンドンでの知りあいということもあってか、僕達の付き合いは少なくとも彼女の家に隠す必要は全然なかったのだ。
337: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/30(日) 20:46:46.87 ID:DHVvfTlio
由里子と付き合い出して、僕は自分がこれまで知らなかった世界を知ることになった。田舎町の国立大学で過ごした僕と違って、由里子は大学時代からいろいろな分野で活躍する友人がいっぱいいた(中には元彼も結構いたようだけど)。由里子は僕をの人たちに「わたしの彼氏」と嬉しそうに紹介してくれたけど、その中にはよくテレビで見かける新鋭の映画監督やロックのミュージシャンも含まれていた。テレビで見かける有名人たちも由里子には親しげに話しかける。そういう時でも由里子は、有名人の知人よりも僕を見つめてくれる。会社では僕達の仲を秘密にしているせいもあってか、堂々と彼氏と紹介できる環境が嬉しくてたまらないという表情で、僕の腕にしがみつき笑顔で僕を見上げてる。

どうしてこんなレベルの高い、僕なんかとはいろいろな意味で釣り合わない彼女が僕を好きと言ってくれるのだろう。その答えはいまだにわからない。

多分、女上司さんや長瀬は僕達の仲を疑っていたと思うけど、意外なことに女上司さんに遠まわしにからかわれる以上のことはなかった。由里子が研修出向中で別会社の社員ということで、追求が甘かったせいもあるかもしれないけど。

そんな訳で、僕の日常から美也の姿が次第に薄れ、代わりに由里子の姿がくっきりとした印影で僕の心に住み着いていくようだった。
338: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/30(日) 21:09:54.38 ID:DHVvfTlio
大学のキャンパス内


?「お~い。橘先輩」

美也「ああ。後輩ちゃん。久しぶりだね」

後輩「前に飲んで以来ですよね。あれは5月だったのにもう9月ですよ」

美也「だいぶ涼しくなったもんね」

後輩「先輩、今日は図書館ですか?」

美也「ううん。今日は先生との面談日なの」

後輩「じゃあ、終わったら時間あります?」

美也「いいよ。でも試合はできないよ」

後輩「わかってますよ。お茶でも飲みに行きませんか?」

美也「わかったよ。じゃあ、終わったら部室に寄るから」


指導教授の部屋

指導教授「うん。じゃあ、もう疑問点はないね」

美也「はい。ありがとうございます」

指導教授「じゃあ、これで論文提出までは来なくていいよ」

美也「はい」

指導教授「・・・・・・ところで橘君? 君は都銀に内定してたんだよね」

美也「あ、はい」

指導教授「今更こんなことを聞くのもどうかと思うけど」

美也「はい?」

指導教授「君、英文学の研究者になる希望はないの?」

美也「えぇ~~~!!」

指導教授「いや、君。大学の成績もいいし、もともと英文学科に来たのって文学に興味があったからなんでしょ?」

美也「はい。高校時代にイギリスのパブリックスクールに留学してて、そこでサキの原文に触れて英文を志望しました」

指導教授「そうだろうね。翻訳から入った子達と明らかにレベルが違うしね」

美也「あ、はい。ありがとうございます」

指導教授「最近、文系、特に文学系は人気なくてね。優秀な学生は理系か文系でも法学部や経済学部に取られてね」

美也「そうなんですか」

指導教授「英文でもマスターやドクターコースに進む人が減ってるんだ。つまり、次世代の教員候補が育たないんだよね」

美也「そうなんですか」

指導教授「・・・・・・君なら院に進めばこのままうちの研究室の助手になって、そこからは公募になるけどうちの大学の教員には十分なれると
思うんだけど。どうかな?」

美也「有難いお話しですけど、もう内定もらっていますし。辞退すると来年度の卒業生に迷惑かかりそうですし」

指導教授「まあ、自分の人生だからね。もう少し考えてみたらどうかな? 本当に自分のしたいことが金融なのか文学なのか」

美也「・・・・・・」
339: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/30(日) 21:41:38.92 ID:DHVvfTlio
キャンパス近くのカフェ


後輩「先輩、こないだの飲み会の時、八木先輩とデートの約束してたじゃないですか?」

美也「ああ、うん」

後輩「実際にデートしたんですか?」

美也「・・・・・・デートというか、工場見学とかさせてもらったけど」

後輩「それだけじゃないでしょ? ちゃんと情報入ってますよ。学内の噂だと、先輩と八木先輩っていつも一緒にいるらしいじゃないですか?」ワクワク

美也「一体誰に聞いたのよ? そんなこと」

後輩「誰って。まあ、八木先輩本人からですけど」

美也「八木君が? あたしとデートしたって言いまわってるの?」

後輩「ち、違いますよ。八木先輩が嬉しそうに『明日は美也ちゃんと横浜と鎌倉にドライブに行くんだ』って言ってたのが印象に残ってて」

美也「・・・・・・」

後輩「ほら八木先輩って色んな女の子と遊んでたじゃないですか? その八木先輩が橘先輩とドライブに行くんだってすごく嬉しそうに話してたんで」

美也「うん」

後輩「なのですごく印象に残ったんですよね。子供みたいに喜んでいた八木先輩の表情が」

美也「そう。でも八木君とは別にお付き合いしてるわけじゃないのよ」

後輩「橘先輩だっていつまでも彼氏なしという訳にもいかないでしょ・・・・・・いくら先輩がブラコンだって、実際にお兄さんと付き合えるわけじゃないんですし」

美也「!? な、何言ってるのよ」

後輩「隠してるつもりですか? サークルじゃみんな知ってますよ。先輩が重度のブラコンだってこと」

美也「・・・・・・そんなことないよ」

後輩「だって、先輩のお兄さんが女友先輩と別れたのだって、お兄さんが先輩に気を遣ったからだって噂になってましたよ」

美也「誤解だよ、それ」

後輩「先輩のお兄さん、在学中すごく女の子にファンが多かったんですよ」

美也「・・・・・・」

後輩「なのに特定の彼女ずっと作らなかったじゃないですか」

美也「そうだっけ」

後輩「そうですよ。で、ようやく女友先輩と付き合ったんですよね。あの時はさすが橘先輩、あの美人で人気の高い女友先輩を振り向かせるとはって、サークルでも盛り上がったんですけどね」

美也「・・・・・・」

後輩「でもすぐ別れちゃって。それからいつも先輩たちって兄妹で仲良くキャンパス内で過ごしてましたよね」

美也「お兄さんの恋愛とあたしとは関係ないけど」

後輩「またまた~。ま、話し変わりますけど、八木先輩が今彼女いないって知ってました?」

美也「ううん」

後輩「常に数人と付き合っていたあの浮気者が、女関係を全部清算したらしいですよ。先輩、さすがですね」

美也「え? あたしには関係ないよ」

後輩「そんなに隠さなくてもいいじゃないですか。あ、先輩と八木先輩が付き合ったらあたしが縁結びしたことになるのかな」ワクワク


美也「・・・・・・」
346: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/31(月) 22:11:35.04 ID:Vz0MoVRbo
同日夜 千葉市内のバー


美也「でね。先生のお誘いは一応断ったんだけど、もう少し考えてみたらって言われた」

八木「ふ~ん。まあ、美也ちゃんなら銀行員でも大学の先生でもどっちでも十分やっていけると思うよ」

美也「そうかな・・・・・・」

八木「そうだよ。だから後は美也ちゃんが本当にしたいことはどっちなのかと言うことになるよね」

美也「う~ん。正直に言うとさ、金融業界そのものにはあまり興味はなかったのね。あ、もちろん就活するために勉強はしたけどさ」

八木「そうか。美也ちゃんは本当は英文学の方をやりたいんだろうと思ってたけどやっぱりね」

美也「うちってさ、お父さんもお母さんも働いているし、兄も普通に就職したんで何となく自分もそうなるんだろうなって漠然と思ってて」

美也「何かその延長で銀行に就職決めちゃった。でも、今更迷うことになるとは考えもしなかったわ」

八木「ああ。それは何となく俺にもわかるな。俺も小さい頃から親父の会社に入るのが当然みたいな雰囲気の中で育ったからさ」

美也「八木君も他にやりたいことあるの?」

八木「あ、まあ・・・・・・。美也ちゃんの英文学とかに比べたら夢みたいな話だよ」

美也「何々? 聞きたいな」

八木「本当にどうしようもない話だよ?」

美也「いいじゃん。話してよ」

八木「俺、カメラとか写真が昔から好きでさ。今でも一番の趣味なんだけど、それを職業にできたらなって考えたことはある」

美也「え~。八木君写真撮るの趣味なの?」

八木「まあ、本当にアマチュアなんだけどね。だからプロなんかになれないと思うけどさ。でも、どっかのスタジオで助手から修行できないかなって」

美也「そうか・・・・・・」

八木「ありえない話なんだけどね」

美也「ありえないって何で?」

八木「だってそんなことすれば勘当されるだろうし。正直言うと俺、贅沢に慣れちゃってるからさ。写真スタジオの下働きの給料じゃ絶対やっていけないよ」

美也「まあ現実は厳しいよね。あたしっだって銀行に入るのと院を出て助手をするのでは年収が桁違いだろうし」

八木「まあ、美也ちゃんは大学に残ったからって親に勘当されたりはしないでしょ?」

美也「それはない。したいことしていいって言われてるし(にぃにも確かそんなこと言ってたな・・・・・・)」

八木「それなら少し考えてみればいいじゃん。そんでやっぱり銀行に行くと決めたら、これ以上しつこくしないように叔父さんにも釘さしとくから」

美也「そうか。先生って八木君の叔父さんだったね」

八木「うん。叔父さんはいいよな。会社を親父に任せて自分は好きな道に進んだんだから」

美也「そうか・・・・・・」

八木「しかし叔父さん、よほど美也ちゃんのこと買ってるんだね」

美也「そうなのかな」
347: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/31(月) 22:26:27.56 ID:Vz0MoVRbo
同じバー 1時間後


美也「でもさ」

八木「うん」

美也「少なくとも八木君の会社は社会貢献してるじゃん。やりがいのある仕事だと思うな」

八木「地方の中小企業だぜ? しかも特に社会貢献している企業でもないし」

美也「ヒント。まんま肉まん」

八木「・・・・・・美也ちゃんって本当にうちの肉まん好きだよね」

美也「むしろ愛してるといってもいいね」ニシシシシ

八木「(可愛い笑顔だ)美味しい肉まんを製造販売するくらいでは社会貢献と言わないでしょ」

美也「でも、これだけ地域で愛されてるんだよ? 何十年の間変わらない味を消費者に届けてるんだもん。立派に社会に貢献してるよ」

八木「だって商売でやってるんだし」

美也「陳さんとか工場の人たちは絶対商売だけじゃないと思うな。愛着とか絶対あるよ」

八木「・・・・・・鋭いね、美也ちゃん。でも愛着だけじゃ企業は成長しないだよ」

美也「うん?」

八木「いや。何でもない・・・・・・グラス空いたね。次何飲もうか」

美也「メニュー見せて?」

八木「はい。どうぞ」


バーテンダー「おまたせしました」


美也「まあ、先生の話少し考えてみようかな」

八木「どっちにするにせよ、納得のいく選択ができるといいね」

美也「八木君に話せて少し気が楽になったよ。あたし今相談できる人いないし」

八木「美也ちゃん、友達いっぱいいるじゃん。七咲さんとか中多さんとかさ」

美也「あの子達も今自分の将来を考えて大変なのよ。こんなこと相談できないよ」

八木「七咲さんはすごいよね。体育系の大学でもないのにさ。名門の実業団入りが決まりそうなんでしょ」

美也「うん。だからとてもこんなつまらない悩みを相談できる状況じゃないしね」

八木「中多さんは?」

美也「紗江ちゃんはね、お家が凄く厳しいのよ。就職どころか花嫁修業させられそうなんだって」

八木「今時そんな家庭あるの?」

美也「普通はそう思うよね。だからさ、紗江ちゃんには相談するというよりはされてるのね」

八木「そうか。じゃあ、頼りないだろうけど僕でよかったらいつでも話聞くからさ」

美也「ありがとう。八木君」

八木「いいよ、お礼なんて言わなくて。それより明日のドライブだけどさ」

美也「うん」
348: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/31(月) 22:53:41.99 ID:Vz0MoVRbo
東京 同日夜7時


石上「ごめんなさい。予定があったでしょ? 急に誘っちゃって悪い」

長瀬「・・・・・・いや。別にいいけど、どういう風の吹き回し?」

石上「たまには長瀬君と懇親を深めたいと思ったんだけど。迷惑だった?」

長瀬「・・・・・・今日は、橘はどうした?」

石上「残業してるよ。もうすぐクライアントとの2回目の打ち合わせだし」

長瀬「いいの? 橘だって淡白なようだけどやきもちくらい焼くと思うけどな」

石上「別に彼にやきもちを妬かせるようなことを長瀬君とする気はないよ」

長瀬「・・・・・・君さ、自分を飾るの止めてるだろ? 今」

石上「うん。わかる?」

長瀬「わかるよ、それくらい。何で可愛らしい優等生のふりするの止めたんだ?」

石上「・・・・・・長瀬君ならわかるでしょ?」

長瀬「あのさあ、君に相手にされなかった俺に何を求めているんだよ」

石上「またそんなこと言って。長瀬君、別にわたしのことなんか本気で好きになんかなってないでしょ」

長瀬「・・・・・・何でそう言い切れる?」

石上『わかるよ、それくらい。何でT大出で優秀だけど女好きのいいやつのふりするの止めたんだ?』モノマネ

長瀬「・・・・・・そういう駆け引きみたいなのやめようぜ」

石上「わかった。でも、君はわたしのことが好きなんじゃなくて、わたしを自分の飾りにしたかっただけでしょ」

長瀬「まあ、認めるよ、それは。橘みたいな駅弁大学出身のやつに恋愛で負けるのも格好悪いと思ったからな」

石上「やっぱりね」
349: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) 2011/10/31(月) 22:54:13.34 ID:Vz0MoVRbo
長瀬「そんなことを確認するために俺を誘ったのか? 今日はまだ橘、一人で仕事してるんだろ?」

石上「それはね。わたしと純一の仲を社内で察しているのって、女上司さんと長瀬君くらいでしょ」

長瀬「橘と付き合ってるって認めるんだ」

石上「・・・・・・前から察してるくせに」

長瀬「君はいったい俺に何が言いたいの?」

石上「純一とわたしの仲を社内外でペラペラ言い触らさないでってお願いしたいだけだよ」

長瀬「別に知られたっていいだろうが。君は来年の春には本社に戻っちゃうんだし」

石上「銀行って保守的だからね。なるべく穏便にしておきたいのよ。彼と結婚するまでは」

長瀬ブー

石上「汚いなあ。何で吹き出すの」フキフキ

長瀬「結婚ってさ。飛躍しすぎだろうが。まあ、君が本当に2流の男に心底惚れこんだのなら何も言わないけどさ」

長瀬「もっと条件のいいやつがいるだろうが? 橘なんかじゃなくても」

石上「それが君だと言いたいの?」

長瀬「いや、違うね。俺は君みたいに面倒くさい女はごめんだね」

石上「本当に正直になったのね。長瀬君」

長瀬「まあ、正直俺には事務員ちゃんみたいな子が似合ってるんだろうな。無条件で俺のこと好きでいてくれるし」

石上「事務員ちゃんが無条件で?」フフフ

長瀬「な、何だよ」

石上「そんな訳ないでしょ」

長瀬「君に何がわかるんだよ」

石上「長瀬君。試しに明日にでも事務員ちゃんに『俺、作家になりたいから会社やめてバイトしながら創作活動するわ。貧乏させちゃうけど俺について来てくれるか』って聞いてみたら?」

石上「事務員ちゃん、何て答えるかな」

長瀬「・・・・・・本当に嫌な女だな、自分を隠さない時の君は」

石上「とにかくわたしと純一のこと誰にも言わないでくれる?」

長瀬「それ、俺にどんなメリットがあるんだよ」

石上「いろいろあるんじゃないかな、将来的には」

長瀬「・・・・・・」

石上「少なくとも短期的にはわたしを敵に回さないですむよ」ニコ

長瀬「わかったよ。つうか何か橘が可愛そうになってきたぜ・・・・・・」

石上「・・・・・・純一はわたしを好きだって言ってくれたわ」

長瀬「今日の君を見ても、純一はそう言うのかね」

石上「・・・・・・」
352: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県) 2011/11/02(水) 22:51:01.80 ID:+jX6C8Qvo
数日後の夜 純一のアパート


プルルルル

ガチャ

純一「はい。橘です」

純一「ああ、母さん。お久しぶり。え? ああ、うん。元気だよ」

純一「うん。ちゃんと食べてるよ。うんうん」

純一「まあ、仕事は忙しいよ。僕も社会人になって母さんと父さんの大変さがようやくわかってきたよ」

純一「だから! ちゃんと食事はしてるし洗濯もしてるって」

純一「母さんはどうなの。忙しいの?」

純一「・・・・・・そうか。相変わらず大変なんだね」

純一「で、今日はどうしたの? 母さんが電話してくるなんて珍しいね」

純一「美也から電話があった? そ、そう」

純一「え!? 本当? いや。僕は聞いてない・・・・・・美也のやつ、いったいどうして内定辞退なんか」

純一「院に進学? 何でそんなこと今更決めるんだよ」

純一「だから僕は初耳だって! 知ってたら母さんに報告してるよ・・・・・・ていうか最近美也とは全然会ってないし」

純一「美也と喧嘩? そんなんじゃないよ。お互い忙しいからね、自然に合わなくなってるだけだよ」

純一「でも、この時期に内定辞退って。そんなに簡単じゃないんじゃないの?」

純一「え? もう銀行の人事の人に話した? 酷いこと言われたって・・・・・・」

純一「美也が泣いてた? そうか・・・・・・」

純一「・・・・・・うん、わかったよ母さん。とりあえず美也に電話してみるよ」

純一「うん。じゃあ、これで電話切るよ。お休み」


ピポパポパ

『プルルルル』

純一「・・・・・・(美也、僕と話ししてくれるかな)」

『はい橘です。ただいま留守にしております。ピという音が鳴ったら』ガチャ

純一(今夜もどっかに出かけてるのか・・・・・・)

純一(内定辞退? 院試受ける? 何でまたそうなるんだ)

純一(・・・・・・)
353: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県) 2011/11/02(水) 22:55:12.49 ID:+jX6C8Qvo
プルルルル

ガチャ

純一「はい。橘ですけど」

?『遅い時間にごめんね。由里子です』

純一「ああ、由里子。別にいいよ。どうしたの」

石上『純一、美也ちゃんのこと聞いた?』

純一「美也のことって・・・・・・もしかして内定辞退のこと?」

石上『純一、知ってたんだ。美也ちゃんから聞いたの?』

純一「いや。ついさっき母さんから電話があってさ。それで初めて聞いた」

石上『そう・・・・・・純一にも事前に相談しなかったんだ。美也ちゃん』

純一「母さんにも今日事後報告の電話があっただけみたい」

石上『人事部の鈴木君がこっそり教えてくれたんだけど』

純一「そうか」

石上『・・・・・・本社の人事の人たちも相当怒っているって』

純一「・・・・・・この時期の内定辞退だからな」

石上『まあ、同業他社への入社じゃないってことがわかって、最後は仕方ないかって結論になったらしいんだけど』

純一「大学に残るみたいだな」

石上『美也ちゃん、人事部に相当期待されてたみたいだから。採用担当の人たちも裏切られたって感じちゃったみたいね』

純一「妹が迷惑をかけるね」

石上『わたしは別に・・・・・・。人事をやってるわけじゃないし。何より純一の妹さんのことだもん。心配はしてるけど迷惑なんてとんでもない』

純一「ありがとう、由里子」

石上『美也ちゃんと一緒に働けると思っていたから、それは残念ではあるけどね』

純一「悪いな」

石上『気にしないで、純一。それより美也ちゃんとは直接話してないの?』

純一「母さんから電話で聞いて、すぐ美也に電話したんだけど留守みたいだ」

石上『そうか。あまり美也ちゃんを怒らないであげてね? 自分のやりたいことが今になってわかる事だってあると思うし』

純一「・・・・・・そうするよ」

石上『じゃあ、また明日。明日は朝9時に市役所のロビーで待ち合わせだったね』

純一「うん。あまり早く着かないようにしろよ」

石上『何で?』

純一「彼女を待たせるわけにはいかないでしょ。僕の睡眠時間が減るじゃないか」

石上『うふふ。優しいのね、純一』

純一「じゃあ、明日」

石上『おやすみなさい。純一』チュ

純一「・・・・・・おやすみ、由里子」
354: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県) 2011/11/02(水) 23:16:22.35 ID:+jX6C8Qvo
同時刻 新宿のプールバー


長瀬「もう遅いしそろそろ帰らない?」

女事務員「もう~。長瀬さんノリ悪いですぅ。まだ、こんな時間じゃないですかあ」ダキ

長瀬「だって明日辛いだろ? 事務員ちゃん朝早く来てみんなのデスクの掃除とかお茶入れとかしてるしさ」

女事務員「やさしいんですね、長瀬さん」

長瀬「いやさ。俺みたいに始業のチャイムとともに出社って訳にいかないでしょ? 事務員ちゃんは」

女事務員「一般職の女の子はそういうものですよ。もう慣れちゃいました」

長瀬「・・・・・・そうか」

女事務員「長瀬さん、同じお酒でいいですか?」

長瀬「あのさあ」ボソ

女事務員「はい?」

長瀬「もしもだよ? もしも、俺が会社辞めるって言ったらどうする?」

女事務員「はぁ? やだ、何言ってるんですか。長瀬さん」キャハハ

長瀬「もし、俺がさ。万が一会社辞めたとしてさ」

女事務員「へ?」

長瀬「事務員ちゃん、そんでも俺と付き合う気ある?」

女事務員「キャハハ」

長瀬「え・・・・・・」

女事務員「長瀬さんみたいなエリートが会社辞めるなんてありえないでしょ」ハハハ

長瀬「そう思うんだ」

女事務員「はい。むしろ・・・・・・。辞めるとしたらあたしの方かなあ」チラ

長瀬「え?」

女事務員「あたしたちは、結婚したら寿退社するしかないですしね」チラチラ

長瀬「・・・・・・」

女事務員「もう一試合しましょ。長瀬さんのブレイクショット凄いなあ。教えてくださいね」

長瀬「・・・・・・」
362: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県) 2011/11/08(火) 21:56:23.69 ID:ZzUsJVFno
千葉市内のバー


美也「・・・・・・でね。いろいろ迷ったんだけど結局院試受けることにしたの。正直、内定辞退の電話を入れた時はつらかったけど」

八木「・・・・・・」

美也「先生の話を聞いてね。この先都銀のお仕事で自分が満足した生活を送れるのかなって考えちゃって・・・・・・正直、東京に行きたかった唯一の理由もなくなっちゃったみたいだし」

八木「そう・・・・・・」

美也「それなら故郷の県で好きなことした方がいいかなって思って。八木君はどう思う?」

八木「・・・・・・」

美也「八木君?」

八木「あ、ごめん。美也ちゃんがやりたいと思ってる道を素直に選べばいいんじゃないかな」

美也「そうか。大学で研究したいことはいっぱいあるの。学部の4年ではやりきれなかったこととか」

八木「・・・・・・」

美也「八木君?」

美也「どうしたの? 今日ちょっと変だよ」

八木「あ、いや。何でもない。ごめん」

美也「何でもなくないよ。お酒のペースも早いし、ずっと何か考えているみたいだし」

八木「美也ちゃんが気にするようなことじゃないんだ」

美也「やっぱり何かあるんじゃない。話してくれない? 最近わたしの相談に付き合ってくれるのって八木君だけだし、わたしだって頼りないけど話し聞くくらいならできるのよ?」

八木「ありがと、美也ちゃん。ごめんな、心配させて」

美也「何があったの?」

八木「今日親父に呼ばれたんだ」

美也「うん」

八木「それで『おまえには先に話しておくけど、工場長を解任するからな』って言われて」

美也「え?」
363: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県) 2011/11/08(火) 22:20:49.66 ID:ZzUsJVFno
美也「それって陳さんのこと? 解任って首にするの?」

八木「じいちゃんは取締役工場長だけど、多分工場長から外して相談役とかにするつもりだと思う」

美也「陳さんを現場からはずすって、どうして? 会社の一番の功労者なんでしょ」

八木「理由なんて山ほど思いつくよ。うちの親父がじいちゃんを煙たがってることとか、社員から人気があるのは親父じゃなくてじいちゃんだってこととか」

美也「・・・・・・」

八木「じいちゃんは俺の祖父の戦友だからね。一緒に一からこの会社を育ててきたし。親父がじいちゃんに頭が上がらないのももっとだし」

美也「でも、今まではそれでやってこれたんでしょ? 会社の業績も順調だし」

八木「親父はもっと拡大路線を取りたいんだよ。君が内定辞退した銀行からもしきりに勧められてるみたいだし」

美也「そうなの」

八木「でも、いつもじいちゃんが反対して話がつぶれるんだよ。身の丈にあった経営が一番だって言うんだ。地域の人に愛される肉まんを作り続けることでやってきた会社なんだからって」

美也「部外者が無責任に言って悪いけど、まんま肉まんのファンのわたしとしては陳さんの言うことよくわかるなあ」

八木「・・・・・・そりゃ美也ちゃんはもう内定辞退したから、銀行の方針に反することも言えるだろうさ」

美也「そんなつもりじゃ」

八木「ごめん。でも、俺はじいちゃんのことは大好きだけど、来春から親父の会社で平社員として働くんだぜ。簡単にじいちゃんの言うとおりだなんて言える立場じゃないんだ」

美也「・・・・・・」

八木「それに。正直、じいちゃんの言うとおりにしてても会社は発展しないと思う。親父の言っていることも一理あるよ」

美也「そうなんだ・・・・・・じゃあ、何でそんなに悩んでるの? さっきからいつもの倍以上のペースで飲んでるよ」

八木「頭じゃ親父の言うとおりだと思うさ、それは。でも、じいちゃんとは昔から実の祖父より親しくしてるんだぜ? 平然と何かしていられるわけないだろ!」

八木「今日だって親父と喧嘩別れして社を飛び出しちゃったよ。じいちゃんの気持ちを考えるとつらくてさ」

美也「ごめんなさい・・・・・・」

八木「俺の方こそ・・・・・・大声出してごめん」

美也「陳さんはどうなるの?」

八木「非常勤相談役として今と同じ報酬を出すって親父は言ってた」

美也「そう・・・・・・。でももうまんま肉まんの製造には関われないのね」

八木「ああ。親父に近い技術屋が商品開発部長なんだけど。ほら、前に食べてもらったビーフストロガノフまんとか開発した人だけど」

美也「・・・・・・う、うん」

八木「その部長が工場長に昇進することになるみたいだ。いろいろアイディアを出す人だから、親父も期待してるんだと思う」

美也「八木君も板ばさみでつらいね」

八木「ありがとう。話したら少し楽になったよ・・・・・・でも、本当にじいちゃんとこれからどう接していけばいいのかな」

美也「・・・・・・」
364: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県) 2011/11/08(火) 22:31:55.06 ID:ZzUsJVFno
バーの外


八木「話聞いてくれたりいろいろありがと、美也ちゃん、格好わるいところ見せちゃってな」フラ

美也「そんなこといいけど。八木君大丈夫? フラフラしてるよ」

八木「ちょっと飲みすぎたかもね。でも、大丈夫だよ、もう一軒寄って行こうよ」

美也「え? 駄目だよそんなの。今だって立っていられないくらい酔っ払ってるでしょ」

八木「ごめん」フラフラ

美也「まあ、でも八木君の気持ちはわかるよ。本当に陳さんのことが好きなのね」

八木「美也ちゃん・・・・・・」フラ

美也「八木君が陳さんのことを聞いても平然としてたら、わたしは八木君のこと嫌いになったと思うな。でもこれだけ陳さんと仕事の板ばさみになって悩んでいる八木君は偉いと思うよ」

八木「美也ちゃん(これって)」フラフラグルグル

美也「さ、行こ? 今日は特別にわたしが八木君を送っていってあげる」ニシシ

八木(これって)ドキドキ

美也「八木君?」

八木「美也ちゃん・・・・・・」ダキシメ

美也(え?)
365: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県) 2011/11/08(火) 22:40:00.76 ID:ZzUsJVFno
八木「美也ちゃん、好きだよ」

美也「ちょ、ちょっとやめ」

八木「こんなに俺のこと考えてくれた子は美也ちゃんが初めてだよ」ギュ-

美也「八木君、は、離して。やめて」ジタバタ

八木「美也ちゃん」グイ

美也(キスされる!?)

美也「やめて!!」ドン!

八木「あ」ドタ

美也「やめてよ! 何するの」ハアハア

八木「・・・・・・」

美也「みゃー、もう帰る!」ダッ

八木(・・・・・・)

八木(・・・・・・あ~あ。やっちゃった。これまで自分を抑えて慎重にやってきたのに)

八木(これで美也ちゃんとも終わりか)

八木(そんで来週はじいちゃんにも嫌われるんだよな)

八木(俺にはもう誰もいなくなっちゃうのか・・・・・・自業自得だけどな)

八木(頭が痛いけど、歩道のアスファルトが冷たくて気持ちいいな・・・・・・)ジワ

八木(ちくしょう。こんなに泣くのなんて何年ぶりだろ)

八木(・・・・・・)
366: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県) 2011/11/08(火) 22:56:24.30 ID:ZzUsJVFno
美也(あ、タクシーだ)

運転手「はい。どちらまで?」

美也(・・・・・・)

運転手「お客さん?」

美也「あ、あの・・・・・・」

美也(やっぱり今は一人のアパートに帰るのは耐えられない)

美也「あの、品川駅の方まで行ってください」

運転手「へ? 東京の? 1時間以上かかりますけどいいですか」

美也「・・・・・・はい。お願いします」

運転手「高速乗りますけどいいですね」

美也「はい(にぃにに会いたい。石上さんと付き合ってるかもしれないけど)」

美也(それでもにぃにに会わなきゃ)ブルブル

美也(すごく久しぶりなこの感じ、あの時のフラッシュバックだ・・・・・・が、我慢しなきゃ。車内で泣き出すわけにはいかない)ブルブル

美也(にぃにに会うまで我慢しなきゃ)パニック

美也(にぃにに冷たくされてもいい。怒鳴られてもいい。石上さんと二人で一緒のところを目撃して心がえぐれるような痛みを感じてもいい)ガタガタ

美也(今は。今は・・・・・・にぃにに会わなきゃ。にぃにに抱きしめてもらわなきゃ)
367: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県) 2011/11/08(火) 22:56:59.97 ID:ZzUsJVFno
フラッシュバック


工場内の風景


DQN4「さあ、そろそろぶち込んでやろうかな」ハアハア

美也「・・・・・・お願いやめてください。好きな、好きな人がいるんです」ウッウッ

DQN4「あ~? 聞こえねえよ。美也の好きな男はおれだけじゃねえの?」モミモミ

美也「許して」

DQN4「美也の泣き顔、すげえそそるぜ。じゃ、そろそろおれの女にしようかな」グイ

美也「!?」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・


八木「美也ちゃん、好きだよ」

美也「ちょ、ちょっとやめ」

八木「こんなに俺のこと考えてくれた子は美也ちゃんが初めてだよ」ギュ-

美也「八木君、は、離して。やめて」ジタバタ

八木「美也ちゃん」グイ

美也(キスされる!?)

美也「やめて!!」ドン!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・



運転手「お客さん、大丈夫ですか?」

運転手「お客さん?」

美也「・・・・・・はい。平気ですけど、なるべく急いでください」ガタガタガタ

運転手「気持ち悪くなって吐きそうだったら声かけてくださいね」

美也ブルブルブル
370: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県) 2011/11/09(水) 21:57:00.08 ID:6boAuJYWo
渋谷駅


純一「結構飲んだね。6時から飲んでるから6時間くらい同じ店にいたんだな」

石上「でも、楽しかったよ? あなたといると時間がたつの本当に早く感じる。今まであまりそんなことなかったんだけど」

純一「あまり? って言うことは」

石上「・・・・・・意地悪」ギュ

純一「ごめん。これからどうする?」

石上「今日は家に帰らないと。着替えもなくなちゃったし」

純一「そうか」

石上「ごめんね純一。でもうちの親が寛大だからって3日連続外泊するわけにもいかないのよ」

純一「そてはそうだね。じゃ、タクシーで送っていくよ」

石上「帰るの遅くなっちゃうよ? いいの純一」

純一「明日休みだし。それに由里子と余分に一緒にいられるしね」

石上「嬉しい・・・・・・優しいのね」

純一「でも、タクシー乗り場、行列してるね。タクシー乗るまで結構時間かかりそうだ」

石上「・・・・・・その分長く一緒にいられるよね?」

純一「由里子の言うとおりだね」ダキ

石上「純一」チュ
371: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県) 2011/11/09(水) 22:05:35.24 ID:6boAuJYWo
純一のアパートの前


純一(今日は一人寝か。最近いつも彼女と一緒だから何か変な感じがするな)

純一(この週末は由里子と約束もないし休日出勤もない。久しぶりにのんびりできるな)

純一(・・・・・・まあ、ちょっと寂しい気もするけど。でも最近はいつも由里子と一緒だったからな。久しぶりに梅原の顔でも見に行くか)

純一(僕の方から一人で千葉に帰るなんてまるで美也に会いたいみたいに思われるかもしれない)

純一(思われるって。誰を気にしてるんだ僕は。実家に帰るだけじゃないか)

純一(・・・・・・別に美也に会いに行くんじゃないしな。実家に泊まって梅寿司に行くくらいならいいだろ)

純一(美也と会えるわけじゃないんだし。そうと決まれば、今日は早く寝よう・・・・・・ってあれ?)

純一「み、美也?」
372: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県) 2011/11/09(水) 22:10:41.25 ID:6boAuJYWo
美也「にぃに・・・・・・」

純一「え? おまえ、どうしてここにいるの?」

美也「にぃに・・・・・・助けてお願い」グッタリ

純一「こんな時間に、え? お、おまえもしかして具合悪いのか?」

美也「ごめんなさい、にぃに。またあの発作が出ちゃったみたい」ブルブル

純一「発作って。高校の時のやつか? と、とにかく中に入ろう」アタフタ

美也「・・・・・・た」

純一「美也? 大丈夫か」

美也「た、立てないの。本当にごめん。発作が置きかけた時、ここしか来るところと思い浮かばなくて」

純一「美也」ダキ

美也(あ)

純一「抱き上げてやる。ちょっとじっとしてろ」ダキアゲ

美也(何か・・・・・・。何かにぃにに触れられただけで少しだけど呼吸が楽になった)ギュ

純一(くそ! 早く寝かせないと。美也を抱き上げながら鍵を開けられるかな)カチャカチャ

純一(よし。ドア開けたぞ)

純一(戸締りとか全部後だ。とりあえず美也を寝かさないと)

純一(そっと美也をベッドに横たえて)フサ

純一「美也、とりあえずこのままベッドに横になってろ。今、水持ってきてやるから」

美也「にぃに、行かないで! みゃーの側にいて」

純一「すぐ戻ってくるよ。じっとしてるんだぞ」

美也「・・・・・・ごめん、にぃに」

純一「こんな時に何度も謝るな。じゃ、ちょっと待ってろ(いったい何があったんだろ。美也のこの発作ってすっかり治ってたんじゃなかったのか?)

純一(ま、まさか。男に何かされたんじゃないだろうな)

純一(いや・・・・・・そんなことは後で考えよう。とにかく今は美也を落ち着かせないと)
373: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県) 2011/11/09(水) 22:15:21.72 ID:6boAuJYWo
純一の寝室


純一「美也、水飲めるか?」

美也「・・・・・・ごめん、にぃに。身体を起こせない」

純一(あの時、美也の症状が落ち着いてイギリスに留学に行く前、美也が発作を起こした時どうしてたっけ?)

純一(水を飲ませる。薬を飲ませる・・・・・・あとは。あ! そうだ、誰にも身体を触らせなかったけど、僕に抱かれてる時だけは発作が収まったんだった)

純一(ただ、あの時は僕と美也は恋人同士だったし。今みたいな関係でも効果があるのか? いや、考えていてもしかたない。美也を少しでも楽にしてやらないと」

純一「(よし!)美也」ダキ

美也ビク

純一「・・・・・・美也? 大丈夫か」

美也「・・・・・・」

純一「じっとしてろ。何も考えないようにするんだぞ」ギュ

美也「うん・・・・・・(ああ。身体と心が軽くなっていく。やっぱりにぃになんだ)」

美也「少し楽になってきたよ、にぃに」

純一「・・・・・・よかったあ」ホ

美也「(やっぱりみゃーにはにぃになんだ)にぃに?」

純一「うん」

美也「にぃにには迷惑だと思うけど、今日はみゃーのこと抱きながら添い寝してくれる?(やっぱりみゃーはにぃにが・・・・・・)」

純一(妹が本当に苦しんでるんだ。由里子だってわかってくれるさ。まあ、黙ってたらわからないし。今はとにかく美也を落ち着かせないと)

美也「にぃに?」

純一「わかった。今日は風呂も着替えも省略してこのまま寝ろ。ずっと一緒にいてやるから」

美也「ありがと、にぃに」グス

純一「泣くな! お礼も言うな。兄なんだからつらいとき助けるのは当然だろ。まあ、今日は何も考えないようにして、このまま目をつぶりな(何があったんだ? まさか八木ってやつに)」

美也「(やっぱりみゃーはにぃにが好き・・・・・・)うん」ウツラウツラ

純一(寝てくれそうだ)

純一(・・・・・・以前の経験からすると、ここまで落ち着いてくれたらもう明日には治ってるな」

美也スースースー

純一(・・・・・・)

純一(美也、寝たか)

純一(・って・・・・・。まずい。こんな時に何でだ)

純一(妹が病気で苦しんでるのに、何で興奮してるんだ、僕は)

純一(・・・・・・こいつ柔らかい。そして石上さんより華奢だけど、体温は美也のほうが少し高くて)

純一(目を閉じた美也の整った顔・・・・・・。病気のせいか少し赤みを帯びた顔)

純一(僕にしがみついている細くて白い腕・・・・・・)

純一(・・・・・・)ハッ

純一(な、何考えてるんだよ、僕は。な何かほかのことを考えよう)

純一(・・・・・・)ドキドキ
376: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県) 2011/11/10(木) 23:14:17.31 ID:alUMPuzMo
翌朝 純一の寝室


純一(う~ん)

純一(腕が痛い・・・・・・っていうか身体全体がきしむように痛む)

純一(変な格好で寝ちゃったからか、って美也は大丈夫か?)

純一(・・・・・・まだ寝てる。でも表情も寝息の苦しそうな様子はないな、よかった)

美也スースー

純一(結局一晩美也を抱きしめてたのか。あんな煩悩だらけの状態で我ながらよく眠れたもんだ)

純一(美也・・・・・・。あのまま発作がひどくならないで本当によかった)

純一(久しぶりに美也と一緒に寝たけど、何か落ち着くな。安らぎを感じるというか。由里子の隣で目覚める時とは全然違う感じだ)

純一(・・・・・・やっぱり美也は可愛いな。意地で由里子と付き合い出しちゃったけど)

純一(そして由里子の住む華やかな世界に目が眩んでいたけれども)

純一(一緒にいて本当に安らぐのは美也だけなのかな)

純一(でも肝心の美也は僕のことをどう思っているんだろ。昨日僕のところに駆け込んできたのだって、発作が起きて他に頼れる人がいなかったからだろうし)

純一(こいつ最近僕に連絡さえしてこなかったし)

純一(でも美也には高校時代のトラウマがあるから、美也が普通に男女の関係になれるのって僕だけなんじゃないか?)

純一(兄と妹・・・・・・。由里子と付き合い出した理由は今までいろいろ自分の中で考えたけど、実は人には話せない後ろめたい関係を清算したいって言う気持ちもあったのかもしれないな)

純一(でも。美也の恋人になれるのが僕だけしかいないなら)

純一(そしてもし美也もまだ僕のことが好きなら)

純一(・・・・・・)

純一(・・・・・・今、起きると美也も起こしちゃうな。もう少しこのままでいるか)ハァ
378: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県) 2011/11/10(木) 23:16:14.18 ID:alUMPuzMo
美也(う~ん・・・・・・、もう朝? あ、発作が治まってる)

美也(よかった。あのまま死んじゃうかと思った。やっぱりみゃーは昔と全然変わってないんだな)

美也(あの発作がひどかった頃も、薬じゃ全然治らなくてにぃににずっと抱きしめてもらったら治まったんだけど)

美也(・・・・・・今でもやっぱりみゃーにはにぃにがいないと駄目なんだ)

美也(どうして意地を張ってにぃにに冷たくしちゃったんだろ。にぃにはもう石上さんと付き合ってるのかな)

美也(海ほたるで抱き合ってたし、やっぱりもう・・・・・・)

美也(にぃにに嫉妬させようなんてしなければよかったんだ)

美也(にぃに、まだ寝てる。にぃにに抱きしめられて体がふわふわ浮いてるようだ)

美也(にぃにの顔が近い。久しぶりのこの感じ・・・・・・落ち着くし心が安らぐ)

美也(にぃにとよりを戻せるのかとか今は考えないようにしよう)

美也(今はにぃにと同じベッドで、にぃにに抱きしめられているんだから)

美也(もっとにぃにに抱きつこう)ギュ

美也(にぃに・・・・・・)

美也(・・・・・・だめだ。ドキドキして落ち着かないな)

美也(ドキドキって言っても発作じゃないからいいんだけど。むしろ久しぶりににぃにのことを考えてドキドキしてるね、みゃーは)

美也(いらいらしながらにぃにと石上さんに嫉妬していた昨日までとは全然違う気分だね)

美也(にぃにって。え?)

純一「美也・・・・・・」ナデナデ

美也「にぃに?」

純一「美也」ギュ

美也「え? にぃに、おきてるの?」

純一「う~ん。美也」チュ

美也(え?)

純一「美也、好きだよ」ムニャムニャ

美也「にぃに! みゃーも愛してるよ」ダキ

純一「う~ん」zzz

美也「・・・・・・寝てるの? にぃに」

純一zzz

美也「にぃにったら///」
379: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県) 2011/11/10(木) 23:17:04.10 ID:alUMPuzMo
純一のアパート 午前10時


純一「う~ん」ノビ

純一「よく寝たな。結局二度寝しちゃったのか」

純一「あれ? 美也がいない・・・・・・」

純一「美也? おい美也!」ガタ

純一(あ、シャワーの音がする)

純一(・・・・・・美也、シャワー浴びてるのか。よかった、本当に回復したんだ)

純一(僕も顔洗うか)

純一(さて、美也と顔をあわせたら何を話せばいいんだろ?)バシャバシャ

純一(美也の発作再発の原因か?)シャコシャコ

純一(いや。そんな美也に嫌なことを思い出させてどうする? それよりまだ僕のことが好きかどうか確認するとか)

純一(でも、先に浮気したのは僕の方みたいだし、とてもそんなことは聞けないしな)フキフキ

純一(・・・・・・内定辞退のこととか、今日これからどうするのかとか。そういうことを話すか)

純一(この週末は美也と一緒に過ごせないかなあ)
380: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県) 2011/11/10(木) 23:17:33.10 ID:alUMPuzMo
ガチャ

美也「あ、にぃに。おはよう」

純一「(美也、裸で!)み、美也。悪い。決して疚しい気持ちがあったわけじゃなくて。僕はただ顔を洗おうと」アタフタ

美也「・・・・・・別に気にしないよ、みゃーは。あ、にぃに。バスタオル貸して」

純一「あ、ああ。はい、これ」ドキドキ

美也「ありがと、にぃに・・・・・・困ったな。今日着る服がないや」フキフキ

純一「あ、あるけど」

美也「え?」

純一「だから、おまえの服とか下着なら替えがあるけど」

美也「にぃに?」

純一「うん」

美也「何でそんなものがにぃにのアパートにあるのよ?」ジト

純一「何でって。おまえがここに置いていたんだろ? 泊まりに来る時着替え持ってくるのが面倒だからって」

美也「ああ。そういえば内定者説明会の時、着替え一式持ち込んだんだっけ」

純一「そうだよ。おまえがしまったところにあるからそれに着替えたら?」

美也「・・・・・・」

純一「どうした?」

美也「にぃに、やっぱりみゃーはにぃにが好き・・・・・・」ブルブル

純一「え? ど、どうした? 美也」

美也「連絡しないでごめんなさい。八木君と一緒に遊びまわっててごめんなさい」

純一「美也」

美也「にぃに。もうみゃーのこと嫌いになっちゃった?」

純一「・・・・・・」

美也「・・・・・・」

純一「美也。そんなわけないだろ」グイ

美也「・・・・・・にぃに?」

純一「僕も美也がいちばん好きだよ・・・・・・寂しかったよ、美也」ダキ

美也「にぃに・・・・・・みゃーもずっと寂しかったの。ごめんね、にぃに」シガミツキ

純一「美也」ダキシメ
381: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県) 2011/11/10(木) 23:18:04.43 ID:alUMPuzMo
純一「美也」

美也「うん」シナダレ

純一「もう体調は大丈夫なのか」

美也「うん。にぃにと一緒にいたら良くなったよ」

純一「よかった。昨日は本当に心配したんだぞ?」

美也「心配させちゃってごめんなさい。にぃに」

純一「いいよ。それよりおまえ、そろそろ服着ないと風邪ひくぞ?」

美也「にぃに」

純一「だから風邪を・・・・・・え?」

美也「にぃに」

純一「・・・・・・ベッドに戻る?」

美也コク

純一「じゃ、連れてってやるよ」ダキアゲ

美也「にぃに!」ギュ


・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・

純一「・・・・・・美也、すごく可愛いよ」

美也「あ、あん にぃに、にぃに」

純一「美也、感じてるのか」

純一「にぃに、意地悪しないで。もうだめ、にぃに。お願い」

純一「美也、美也。もうおまえを絶対に離さないからな」

美也「にぃに。嬉しい」

純一「美也」

美也「にぃに、みゃーもう。お願いにぃに、一緒に」

純一「美也!」

美也「にぃに!」
386: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/12(土) 22:16:01.02 ID:X8dlgcrqo
翌日土曜日 東京湾アクアライン上 純一の車内


美也「・・・・・・」

純一「・・・・・・」

美也「・・・・・・ねえ」

純一「どうした? 美也」

美也「みゃーとにぃにって、これからどうなるの?」

純一「どうなるのって言われても・・・・・・」

美也「にぃにに連絡しなかったり、黙って進路を変えちゃったり」

純一「・・・・・・うん」

美也「八木君としょっちゅう出歩いたりして、本当にごめんなさい」

純一「いや、おまえが謝るな。僕の方こそ悪かったんだし」

美也「前に海ほたるで偶然会った時だって、本当はにぃにと話したかったんだけど、にぃにと石上さんが抱き合って・・・・・・き、キスしてるの見ちゃって混乱して」

純一「(!!)おまえ・・・・・・見たの?」

美也「・・・・・・うん。正直すごくショックだった」

純一「ごめん、美也。おまえから連絡なくて寂しくてつい」

美也「でもね、みゃーも考えたの。ただでさえ、寂しがり屋のにぃにに冷たくしたら、女の子にもてるにぃにが他の子に靡いちゃってもしょうがないかって」

純一「・・・・・・」

美也「そこで素直ににぃにに謝ればよかったんだけど。みゃーも意地になってたから、他の子と付き合ったことを後悔させてあげようと思って」

純一「美也・・・・・・」

美也「それで八木君を誘って梅ちゃんのお店に顔を出して、棚町先輩からにぃににみゃーが男の人と夜一緒だってにぃにに伝わるようにして」

美也「でも、やり過ぎて八木君が本気になっちゃった」

純一「おまえやっぱりあの八木って男に何かされたんだな」

美也「されそうになったけど、逃げ出したの。でも、八木君をその気にさせちゃったのはみゃーの方。だからいつかちゃんと八木君に謝らないと」

純一「そうか・・・・・・」

美也「ねえ、にぃに」

純一「うん」
387: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/12(土) 22:29:58.29 ID:X8dlgcrqo
美也「みゃーとにぃにって、これからどうなるの?」

純一「・・・・・・」

美也「にぃに、寂しくてついって言ったよね?」

純一「あ、ああ」

美也「今は? みゃーと一緒にいても寂しい? 石上さんがいないと物足りない?」

純一「それはない。昨日からおまえと一緒で本当に心が安らいでいる感じなんだ」

美也「・・・・・・えと」

純一「うん」

美也「にぃにと石上さん・・・・・・その、お、お付き合いしてるの? 正式な恋人として」

純一(美也、今にも泣き出しそうな表情で僕のこと見つめていて。何だか胸が締め付けられるように苦しい)

美也「・・・・・・」

純一(でも、もう逃げられない。逃げちゃいけない、もう美也に嘘をつくことはできないんだ。もうそういう駆け引きをしてる時じゃないんだ)

純一(僕と妹の美也との将来を決める時が、今訪れたんだ)

純一「美也」

美也「・・・・・・うん」

純一「美也、僕と一緒にこの先も二人で生きて行きたいと思うか」

美也「質問で質問に答えるのは卑怯だよ。もうみゃーには嘘をつかいないで」

純一「嘘はつかないよ。でも、答える前に聞かせてくれ・・・・・・おまえは、実の兄貴と生涯一緒に暮らしていきたいと本心から思えるか?」

美也「にぃに・・・・・・」

純一「もうすぐおまえも社会人になる。いい年になっても彼氏や旦那ができないおまえは、職場や友人から変な目で見られることになるんだ」

美也「・・・・・・」

純一「僕とのことも世間には話せずに、それでも前みたいに変な噂が流れて社会的に窮地に追い込まれることだってありえる」

美也「・・・・・・」

純一「周りの友達が可愛い子供に恵まれて子育てしているのを眺めながら、おまえには僕しかいないんだ」

純一「それでも、僕と一生一緒に過ごす気があるのか」
388: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/12(土) 22:43:29.95 ID:X8dlgcrqo
美也「・・・・・・」

純一「・・・・・・美也?」

美也クスクス

純一「美也おまえ何笑ってるんだ」

美也「にぃにって、本当に普段から何も考えずに生きてるんだね。気楽でいいなあ」クスクス

純一「な、何言ってるんだ。僕は真面目な話をしてるんだ」

美也「経験から学習もしないしね」クス

純一「美也・・・・・・?」

美也「ねえ、にぃに」

純一「う、うん」

美也「にぃにが今深刻そうに話したことなら高校時代にイギリスに行かされて、にぃにと別れていた時とか大学時代にお互いに誤解して、それぞれ違う人と付き合ってた時とかにずっと考えていたことなんだよ」

純一「え?」

美也「むしろ、今、にぃにがみゃーに言ったことを考えなきゃいけないのは、にぃにの方じゃないかな」

純一「おまえ・・・・・・」

美也「みゃーの覚悟は何年も前から出来ています・・・・・・だから、今はにぃにの考えを聞きたいな」

純一「そうか・・・・・・」

美也「改めて聞くね? 石上さんとは正式にお付き合いしてる?」

純一「・・・・・・してる」

美也「そうか・・・・・・。何となくそんな気がしてた」

純一「美也」

美也「にぃに、昔からもてるもんね。何でこんな優柔不断な男がもてるんだろ」ポロポロ

純一「美也。泣くなよ・・・・・・」

美也「石上さんなら父親同士も知り合いだし、何の障害もないよね」グス

純一「・・・・・・」

美也「みゃー、また失恋したのかな? にぃに」グスン
389: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/12(土) 22:56:28.70 ID:X8dlgcrqo
純一「なあ、美也」

美也「・・・・・・うん」グス

純一「おまえがそれでいいならさ」

美也「え?」

純一「僕も腹をくくるよ。石上さんには酷いことをしたことになるけど、おまえが僕と一緒にいてくれるなら、週明けにでも彼女と別れる」

美也「・・・・・・」

純一「美也?」

美也「・・・・・・本当?」ウワメヅカイ

純一「ああ本当だ。おまえがそこまで考えてくくれているなら、僕ももう迷わないよ。石上さんとは社内で気まずくなるとおもうけど、それでも美也と一緒にいたいから(美也可愛い)」

美也「にぃに・・・・・・」

純一「ずっと僕と一緒に、僕の側にいてくれるか? 美也」

美也グスングスン

純一「美也」

美也「にぃに」ポロポロ

美也「しょ、」

純一「え?」

美也「しょ、生涯で、生まれてきて、今が一番嬉しいよ。にぃに!」ダキツキ



対向車のクラクション


純一「うわ! 美也、自動車道で運転中に抱きつくのはよせ。生涯一緒どころかこの瞬間に一緒に墓場行きになる」

美也「・・・・・・ごめん」ギュー

純一「美也」ダキヨセ

美也「にぃに・・・・・・。みゃーももう変なことするのやめるから」

純一「うん」

美也「ずっとにぃにだけのものになるから。にぃにももう迷わないでね」チュ

純一「・・・・・・美也、愛してる」ギュ

美也「みゃーもだよ。知ってた? にぃに。生まれた時からみゃーにはにぃにしかいないんだよ」ニシシシ ポロポロ

純一「もう泣くなよ」

美也「嬉し泣きだからいいの!」

純一「・・・・・・」ダキシメ
394: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/13(日) 20:54:10.99 ID:4mMdA5U4o
月曜日 いつもの居酒屋


石上「遅れてごめん、純一」

純一「あ、いや。僕も今来たとこ」

石上「まだ飲み物注文してないの?」

純一「君を待ってた」

石上「先に飲んでいてくれていいのに」

純一「来たばっかだしね」

石上「じゃあ注文しましょう」




石上「週末は純一に会えなくて寂しかったわ」

純一「そ、そう」

石上「家にいても落ち着かなくて。何度も純一の家に電話しちゃった」

純一「あ、ごめん。土日は実家に帰ってたんで」

石上「うん。そうじゃないかと思ってた。でね、昨日は大学時代のお友達が、あ、彼芝居をやってるんだけど。劇団を独立して自分の小劇団を立ち上げたのね。その記念パーティーに招待されて行ってきたんだけど、やっぱり純一のことが気になって何を話してたかも覚えてないの」

純一「・・・・・・そう」

石上「純一? あ、友達って本当にただのお友達だよ? 女の子達もいっぱい来ていたし。変な心配しないでいいのよ?」

純一「いや。そんなことは心配していないよ・・・・・・」


オマタセシマシター


石上「そう。じゃ、乾杯」

純一「うん・・・・・・」

石上「何か元気ないね・・・・・・ひょっとして何かあった?」

純一「あ、あのさ」

石上「うん」

純一「・・・・・・」

石上「気になるから言いかけたことを途中でやめないで。本当にどうしたの?」

純一(美也のためにもはっきり言わないとだめだ。このまま二股かけてたら美也と石上さんと二人とも悲しませることになる)

石上「純一?」

純一「あのさ」ドキドキ

石上「・・・・・・」
395: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/13(日) 21:14:22.42 ID:4mMdA5U4o
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・


純一「・・・・・・」

石上「・・・・・・うん。話はわかった」

純一「由里子、あ。石上さん」

石上「好きだった子と再開して、告白して付き合うようになったってことね」

純一「う、うん」

石上「で、わたしと別れたいと」

純一「・・・・・・ごめん」

石上「わたしが泣くと思った? 純一」ニコ

純一「え」

石上「純一にしがみついて泣き喚くと思ってた?」

純一「あ、いやその」

石上「心配しないで純一」

純一「・・・・・・どういう意味?」

石上「前にも言ったよね? わたし純一のことが大好きだから、彼女とうまく行ったら身を引いてあげるって」

純一「それは聞いたけど。今回は僕の方から君に告って」

石上「そんなの関係ない。わたしはそれだけ純一のことが好き」

純一「・・・・・・」

石上「分かれてあげるよ、純一」

純一「本当にごめん!」

石上「でも、ひとつだけ約束して。その子と別れることがあったら、今更わたしに悪いとか思わないですぐにわたしに電話して」

純一「石上さん・・・・・・」

石上「わたしはいつまでも純一を待ってるから。たとえその時彼氏がいても、純一がつらい時は純一の側で寄り添ってあげるから」ポロ

純一「い、いや。それって。そんなの君に失礼だよ」

石上「わたしがそうしたいの。だから、この先何かあったら遠慮しないで。あ、もちろんその彼女と仲良くやっていくことを願ってはいるけど」フキフキ

純一「由里子・・・・・・」

石上「こら。もう由里子って読んじゃ駄目でしょ」ニコ

純一「あ、ごめん」

石上「純一の好きな子ってどんな子だろうなあ」

純一「(美也のことを石上さんに隠すのは卑怯だ。思い切って)実は彼女って」

石上「いいよ、言わなくて」

純一「え」

石上「ごめん、知りたくないの。じゅん・・・・・・橘君」

純一「(橘君か)わかった」

石上「じゃあ、悪いけど先に帰るね。ここ、ご馳走してもらっていい?」

純一「うん。石上さん、本当にごめん」

石上「・・・・・・それ以上謝ったら本当に怒るわよ。じゃあね、橘君。明日また職場で」

純一「さよなら・・・・・・石上さん」
396: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/13(日) 21:32:13.70 ID:4mMdA5U4o
1時間後 純一のアパート


美也「あ、おかえりなさい。にぃに」ダキツキ

純一「美也」チュ

美也「・・・・・・どうだった?」

純一「うん。着替えたら話すよ」

美也「食事はしてきたんでしょ? お風呂沸かしてあるよ」

純一「いや、食事できるような雰囲気じゃなくてさ」

美也「そうだよね。一応簡単なものなら用意できるけど」

純一「ああ、頼むよ、美也。じゃ、風呂入ってくる」

美也「うん」


風呂上り 食卓


美也「石上さん、そんなこと言ってたんだ」

純一「おまえには隠さないで知っておいてもらった方がいいと思って」

美也「うん。全部話してくれてありがと。にぃにのこと本気で好きだったんだ。石上さん」

純一「気になるか? 美也」

美也「それは気になるよ。でも、にぃには譲らないし、にぃにがみゃーと別れて石上さんに電話するようなことは絶対させない。石上さんには悪いけど」

純一「そうだよな、美也。僕たちのすれ違いもこれを最後にしような」

美也「・・・・・・にぃにがそれを言う?」

純一「まあ、そうなんだけどさ」

美也「でも、にぃにの言うとおりだね。これからはお互いに嫉妬させたりとかしてる場合じゃないよね」

純一「うん?」

美也「これからみゃーとにぃにが立ち向かうのは、両親とか世間とかになるんだよ? みゃーたちが喧嘩してる場合じゃないよ」

純一「・・・・・・甘えん坊のおまえがずいぶんしかっりしたことを言うんだな」

美也「にぃにが呑気な分、みゃーがしっかりしないとね」ニシシシシ

純一「誰が呑気だ。誰が優柔不断だ」

美也「優柔不断とまでは言ってないけど・・・・・・自分でもわかってるんだ、にぃに」ニシ

純一「まあな。美也、本当に愛してるんだ」

美也「うん。そんなことわかってるよ、にぃに」

純一「もうどこにも行かないでくれ。僕の側にこれからもずっと一緒にいてくれ」

美也「それは、にぃにに言われたくないけど。でも、みゃーも同じ気持ちだよ。ずっと一緒にいようね? にぃに」

純一「美也」

美也「にぃに」

純一「ベッドに行く?」

美也「いいよ、にぃに。連れて行って」
397: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/13(日) 21:55:32.89 ID:4mMdA5U4o
美也の卒論はほとんど完成していて、指導教授にも太鼓判を押されていた。
だが、美也が院に進み研究室に残ることを決めると急に教授の要求する水準が上がったと言う。完全じゃないならもっと早く指摘して欲しかったと、美也は文句を言っていた。

引用文献の確認や原典の引用部分のチェックが急に厳しくなり、美也はミススペルも含めて、一から確認しなおさなければならなくなった。それだけではなく、論文の論理構成の方はこれまでその部分を誉めていた教授が急に手のひらを返すように、ひとつひとつのロジックに疑問点を記した付箋を貼り付けて美也に返してきた。これらの作業を進めるため、比較的余裕のある大学生活を送っていた美也も急に多忙になった。
美也が銀行に内定していた頃は、もう提出まで教授の研究室に来なくていいと言われていたのだが、研究室への残留が決まった途端に教授から週2日は卒論の添削の指導を受けるようにと言い渡された。

それでも。美也は、普段は僕のアパートで過ごすようにになった。大学時代の同棲生活が再現され、僕と美也は久しぶりの同居生活でお互いに酔いながら暮らすようになった。僕の仕事の方も多忙になったため普段家に帰れるのは深夜になっていたけど、帰宅した時のアパートから漏れる灯りや美也のおかえりにぃにと呼びかけてくれる声のおかげで、仕事がつらいとは少しも思わなかった。

石上さんは相変わらず頼りになるパートナーで、業務時間中も僕を避けることもなくこれまでどおり打ち合わせをし、冗談に笑い、たまにコーヒーも入れてくれたので、僕たちの仲が急変したんなんて、女上司さんも長瀬も事務員ちゃんにも気がつかれていないようだった。

その頃の僕と美也は、ただ二人きりの甘い時間を堪能していただけではなかった。いろいろな試練を乗り越えて、現実に立ち向かう必要があることを認識したからだ。二人で愛し合う時間以外の時間に、繰り返し真剣に話し合った僕たちの未来予想図は。

来年の4月以降も美也は大学に残る。通学時間はかかるが僕のアパートから大学に通う。大学の近くの美也のアパートはそのままにしておいて、美也が大学で遅くなった時はそこに帰る。
僕は基本的に今の生活を続けるけど、美也がこちらに戻れない週末は僕が美也のところに行く。

そう。
僕たちはそんな生活を描きながら幸せだった。
あの高校時代の頃のように。
別れてまた付き合い出した大学時代のように。
403: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/14(月) 21:41:57.35 ID:engmxZ1Go
会社の近くのバーのカウンター


長瀬「悪い。待たせたか」

石上「突然誘ったのは私の方だから。気にしないで」

長瀬「まあ、口で言うほど気にしちゃいないけどな」

石上「長瀬君らしいね」クス

長瀬「隣いいか?」

石上「もちろん、どうぞ」



長瀬「モスコミュールをお願いします」

バーテンダー「かしこまりました」



石上「長瀬君とふたりきりでお酒飲むなんて、事務員ちゃんに恨まれちゃうかな」

長瀬「君と会うなんて彼女に言うわけないだろうが」

石上「そうよね。ごめんね、気を遣わせちゃって」

長瀬「で? 橘抜きで何で俺を呼び出した? 君たちのことは一言も口外してないぜ」

石上「うん。それは信用してる。そうじゃないのよ」

長瀬「じゃあ何で俺を呼び出したんだよ。まさか俺に恋愛相談するつもりじゃないだろうな」

石上「・・・・・・」

長瀬「どうした? え、マジで相談なのか?」

石上「ううん。相談ではないの。長瀬君にはわたしたちのことを秘密にしててもらうとかお願いしてたたし、だから報告というか」

長瀬「報告? ってか、今日の君、ちょっと変だな。自分を隠さない時の自信に満ちた態度はどうなった? また演技してるのか」

石上「・・・・・・」

長瀬「ま、いいけど。で、報告って何だよ」

石上「・・・・・・」

長瀬「あのさあ、俺にも予定があるんだよ。話すことないなら帰るぜ」

石上「・・・・・・れたの」ボソ

長瀬「ああ? 何だって」

石上「別れたの。橘君と」

長瀬「え?」

石上「長瀬君には迷惑かけたと思ってるから、それだけ報告しておかないといけないと思って」

長瀬「・・・・・・別れたって、付き合い出したばっかじゃんか」

石上「そうだけど。でも、もう別れたの。わたしたち」

長瀬「・・・・・・」
404: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/14(月) 22:11:55.27 ID:engmxZ1Go
長瀬「やっぱりそうなったか」ハア

長瀬「・・・・・・絶対こうなると思ってたよ。住む世界が違いすぎる恋人同士なんてうまく行くわけないじゃん・・・・・・。俺はさ、確かに嫉妬もしてたけど、半分は真面目に橘のこと心配しておまえたちのこと邪魔してたんだぜ?」

石上「・・・・・・」

長瀬「橘みたいなやつは、自分と同じ境遇で地方でのんびりと育った同士で緩く付き合った方が幸せになるんだよ。だから、橘にも変な夢見るなって言ったのによ」

石上「・・・・・・」

長瀬「君が橘みたいな平凡な男で満足するわけないだろうが。初めての出向先で、頼れる同期の橘に幻想を抱いて好きになったって思い込んだんだろうけど、君がいずれ橘に飽きるなんてことは俺には最初か」

石上「待って」

長瀬「え?」

石上「待って。そうじゃないの。わたしが橘君に振られたの」

長瀬「橘が君を振った?」

石上「うん。昨日の夜」

長瀬「・・・・・・嘘だろ」

石上「嘘ならどんなに幸せだろうと思うけど。残念ながら本当」

長瀬「理由は? あ、そうか。わかったぞ。君の知り合いの華やかな世界とかそういう付き合いに引け目を感じて、これ以上耐えられなくなったんだな橘は。それならわかる」

石上「違うよ。橘君に新しい彼女ができたから」

長瀬「嘘付け。確かに橘は駅弁出のダサい気の利かない男だけどよ。あいつは付き合い出したばかりの彼女がいるのに新しい女に手を出すようなやつじゃない」

石上「・・・・・・長瀬君。何だかんだ言って橘君のこと好きなんだね」

長瀬「余計なこと言わなくていいよ。今の嘘なんだろ?」

石上「本当なの。でも、長瀬君の言ってることも間違ってないよ。橘君はそんな軽い男じゃない」

長瀬「よくわかんねえよ。結局どっちなんだよ」

石上「橘君にはもともと好きな子がいたの。でも、私が横から橘君を誘惑して自分のものにしちゃったのよ」

長瀬「・・・・・・おい」

石上「わたしも長瀬君と同じ。わたしみたいな完璧な女が露骨に好意を示しているのに、靡いてくれない橘君が許せなかっただけ」

長瀬「・・・・・・」

石上「それにわたしは最低な女かもしれないけど、約束は守りたいの」

長瀬「約束?」

石上「うん。橘君を誘惑してる時、迷ってる彼にこう言ったの『本当にわたし、純一と純一の好きな子の邪魔はしないから』って」

長瀬「そうか」

石上「約束は守らないとね。だから、もう純一とはおしまい。万一彼女とうまく行かなかったらまた出番はあるかもしれないけど。あまり期待しないで待ってることにする」
405: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/14(月) 22:27:05.15 ID:engmxZ1Go
長瀬「おまえ、自分に靡かない橘が許せなかっただけじゃないの?」

石上「え?」

長瀬「そんな理由だったら橘のこと待ち続ける必要なんてねえじゃん。一度は橘を自分に振り向かせたんだしよ、新しい獲物探しでもすればいいじゃん」

石上「それは・・・・・・」

長瀬「本当に橘に惚れちゃったのか?」

石上「・・・・・・そうみたい」

長瀬「だせえの。誘惑して振り向かせておいて自分の方が橘に夢中になっちゃったのかよ」

石上「悪い? それが何か悪いの」キッ

長瀬「別に。悪いかどうか知らんしわりとどうでもいいや、俺には」

石上「・・・・・・そうでしょうね」

長瀬「でも、何か変だな」

石上「何が?」

長瀬「セフレでもいいからとかって誘惑した結果かもしれないけど、それでも一度は橘に真剣に告られたんだろ?」

石上「・・・・・・う、うん」

長瀬「さっきも言ったけど、橘は付き合い出したばかりの彼女がいるのに新しい女に手を出すようなやつじゃない」

石上「でも・・・・・・」

長瀬「別にフォローするわけじゃないけど。あいつがおまえに告ったんなら相当真面目に考えた結果だと思うぜ」

石上「え」

長瀬「よっぽど深い仲の彼女がいてその子と仲違いしたタイミングでおまえに誘惑された。それならわからんでもないけど(って、そういや)」


・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

回想


長瀬「ただよ」

純一「何だよ」

長瀬「おまえ、石上さんに手を出すなよ」

純一「何だよそれ。いや、出さないけどさ。何でおまえにそんなこと言われなきゃいけないんだよ」

長瀬「だっておまえ彼女いるだろ?」

純一「え? い、いや。今はいないけど」

長瀬「嘘つくな。態度見てりゃわかるんだよ・・・・・・まあ、それに美也ちゃんもいるしな」

純一「美也は妹だし関係ないだろ」

長瀬「本当にそう言い切れるのか? このシスコン野郎」

純一「・・・・・・おまえ、実は全然僕に謝る気ないだろ?」

長瀬「お、わかっちゃった? さすが鋭いな橘君は」

純一「おまえはさ、石上さんのこと本気なの?」

長瀬「・・・・・・うるせえよ。おまえには関係ないだろ」
406: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/14(月) 22:45:10.82 ID:engmxZ1Go
回想終了


長瀬(え? あん時は半分冗談だったけどまじかよ。あいつ、実の妹と・・・・・・?)

石上「長瀬君」

長瀬「お、おう」

石上「今、何か思いつたでしょ? 話してくれないかな」

長瀬「・・・・・・別に大したことじゃないし、確信があるわけでもねえし」

石上「昨日橘君と別れた時。彼、好きな子のこと話してくれようとしたんだけど、その時は断ったの。平静に聞いていられる自信がなかったし、泣き喚くところなんか彼に見られたくなかったし」

長瀬「・・・・・・そうか(馬鹿かおまえは、橘。妹と付き合うなんて言おうとするかよ普通)」

石上「でも長瀬君が何か知ってるなら知りたい。その子が本当に橘君にふさわしいかどうか」

長瀬「そんなのおまえが決めることじゃねえよ」

石上「わかってる。でも本当に好きなっちゃったのよ、純一を」ブルブル

長瀬(こいつ演技するの忘れてやがる・・・・・・何か気の毒になってきたな)

長瀬「いや。これは橘の問題だし。それに俺が邪推してるだけかもしれないしな」

石上「・・・・・・邪推って、どういうこと? 何かよくないことなの?」

長瀬「(いけね)いや。とにかく俺が勝手に想像してるだけて橘から直接聞いたわけじゃねえしよ・・・・・・」

石上「長瀬君お願い。純一のこと気になるの。決して純一が不幸になるようなことはしないから、わたしのこと信じて」

長瀬「・・・・・・」

石上「お願い・・・・・・」

長瀬「(くそ! すまん橘)あのさ、あくまで想像だけど」

石上「うん」ゴクリ

長瀬「橘の好きな女って」

石上「・・・・・・」

長瀬「あいつの実の妹だと思うぜ」

石上「!!・・・・・・美也ちゃん!?」ガタ
409: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/15(火) 21:19:05.00 ID:4ebgApAqo
石上フラフラ

長瀬「おい! 声でかいって。つうか顔色悪いぞ、大丈夫か」

石上「それって、美也ちゃんが重度のブラコンだっていうだけじゃないの」ブルブル

長瀬「おまけに身体が震えてるぞ、落ち着けって!」

石上「ごめん。確かにわたしも純一と美也ちゃんって兄妹にしては仲がよすぎると思ってた。正直美也ちゃんに嫉妬したこともあったわ、で、でも、兄妹で男女の仲って」

長瀬「うん。単にお互いに依存しあってて、自分より他の異性が兄とか妹の側にいるのが許せないだけっていう場合もありえる」

石上「うん! じゅ、純一の場合もそれで、別に男女の仲じゃないんじゃないかな」

長瀬「聞いていいか」

石上「な、何よ」

長瀬「おまえ橘と寝た?」

石上「!」

長瀬「あ、悪い、別に答えてくれなくていいや」

石上「・・・・・・どういうこと?」

長瀬「橘だって健康な男だしよ。つまり橘がいくら妹のことが超大切なシスコン野郎だとしても」

石上「うん」

長瀬「男女の関係まで行ってる、しかも付き合い出したばかりの彼女を振るなんてことは普通はないだろ」

石上「じゃ、じゃあ、仮に純一とわたしがそういう関係だったとして、それでも美也ちゃんを選んだとすると?」

長瀬「・・・・・・その場合は男女の関係なんだろうな。実の妹と」

石上「・・・・・・」

長瀬「それなら単なるブラコンシスコンの問題じゃなくて、女同士が一人の男を取り合ってるっていう単純な話になるよな」

石上「純一と美也ちゃんが恋人同士・・・・・・。兄妹なのに」

長瀬「おい。あくまで想像で証拠はねえんだからな」

石上(純一が幸せになるなら身を引いてもしょうがないって思ってた。わたしらしくないけど、それだけ純一のことが好きになってた)

石上(でも、近親相姦なんてわたしの純一にふさわしい道じゃない)

石上(・・・・・・やっぱり美也ちゃんには負けられない。純一を不幸にする美也ちゃんには)

長瀬「おい。聞いてんのかよ」

石上「・・・・・・」ブツブツ

長瀬「おいって!」
410: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/15(火) 21:22:26.52 ID:4ebgApAqo
翌日


純一(・・・・・・石上さん体調崩して休みか。今日までに仕上げる予定のデータ修正、まだ終わってないはずだけど)

純一(まあ、体調崩しても仕方のない仕打ちを受けたんだし。会社で僕と平静に接するだけでもストレスだろうしな。しょうがないな)

純一(今日はデータと関係のない部分から取り掛かるか。どうせやんなきゃいけないんだしな)

長瀬「橘、ちょっといいか」

純一「ああ、いいよ。何?」

長瀬「石上さんが何で休んだのか、女上司さんから何か聞いてるか?」

純一「いや。聞いてないよ」

長瀬「(昨日の今日だし、嫌な予感しかしないな。あの後もずっと様子がおかしかったし)そうか、聞いてないか」

純一「どうかしたか?」

長瀬「い、いや。石上さんが体調崩して休みなんてここに配属されて初めてだろ? ちょっと彼女のことが心配・・・・・・って、痛っ!!」

女事務員「ごめんなさい、長瀬さん。ヒールで足踏んじゃいました」ニコ

長瀬「いや、大丈夫。しかし事務員ちゃんはよく俺の足を踏むね」

女事務員「ごめんなさーい。あたしドジですから」フフ

長瀬「・・・・・・」

純一「・・・・・・」

長瀬「なあ、橘」

純一「うん」

長瀬「おまえが俺のこと嫌ってることも信用してないこともよくわかってる」

純一「別にそんなことないよ」

長瀬「だけどよ、この先何かあったらとりあえず俺に話してくれないか」

純一「? 何かって何があるんだよ」

長瀬「何かは何かだよ。いいな、同期なんだし俺に相談しろ」

純一「何言ってるのかわからないよ。一体何なんだ」

長瀬「わからなくていいよ。あと考えるな、どうせ駅弁出のやつが考えたってわかりっこないんだからよ」

純一「喧嘩売ってるのか? おまえが僕が助けるなんてそもそもありえなだろ」

長瀬「まあ、俺の責任もありそうだしな」ボソ

純一「思わせぶりなこといいやがって・・・・・・本当に何なんだよ」

長瀬「ま、いいや。とにかくそういうことだから。俺、打ち合わせがあるからもう行くぜ。じゃあな」

純一「おい! 長瀬」
411: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/15(火) 21:24:02.63 ID:4ebgApAqo
?「おまえ、今日は仕事休みなのか」

??「うん。ちょっと体調が優れなくてね」

?「それはいけないね。休んでいた方がいいじゃないか」

??「わかってるわ、パパ。それよりお願いがあるんだけど」

?「言ってごらん」

??「あのね。ロンドンにいる橘君のお父様の連絡先わかるかな」

?「橘さんの連絡先? ああ、わかるが。何でそんなことを知りたいのかな?」

??「お願いパパ。理由は聞かないで教えてもらえないかな」

?「・・・・・・それはおまえが橘さんに連絡を取りたいということか」

??「うん」

?「私が間に入って伝言するんじゃだめなのか?」

??「それじゃ駄目なの、パパ」

?「橘さんに迷惑のかかることじゃないだろうな。橘さんは今大事な時期なんだ。次の役員改選期でボード入りするかもしれないんでね」

??「迷惑なんてことはないと思う。むしろ橘君のお父様さんからは感謝されると思うわ」

?「それならおまえを信用するか。ちょっと待っていなさい」

??「うん」

?「ほらここに連絡先が書いてあるよ。電話するなら時差を考えるんだぞ」

??「うん。ありがとう、パパ(これで二人を不幸から救えるんだ)」ニコ
412: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/15(火) 21:44:36.73 ID:4ebgApAqo
夜 純一のアパート


美也「ねえ、にぃに」

純一「うん? さすがに今夜はもう無理だぞ。そもそも明日は早出だしな」モミモミナデナデ

美也「そんなこと言ってないでしょ? にぃにのエッチ」ペチペチ

純一「よせよ美也、痛いって。それより何を言いかけたの?」

美也「うん。にぃにといちゃいちゃするのは昔からだけど、最近はにぃにと将来のことを具体的に話し合うようになったでしょ?」

純一「美也も大学卒業だし、そろそろ将来のことをしっかりと考えておかないとね。今までみたいにただ一緒にいていちゃいちゃしてるだけじゃ何も決まらないよ」

美也「うん。みゃーもそう思うよ。でもさ、何かこういうのって恋人というよりフィアンセ同士が結婚後の生活を話し合ってるみたいで何か嬉しい」

純一「まあ、そうだね。僕も少しわくわくするよ」

美也「結婚が決まっているカップルってこういう感じなのかなあ」

純一「うん。そうなんだろうな」

美也「何か恥ずかしいけど嬉しい。こういうのが女の幸せっていうのかな」ダキツキ

純一「別に女に限ったことじゃないでしょ。僕も美也と将来の生活のこととか話し合ってる時って幸せなんだと思うよ」

美也「そう感じてくれて嬉しいよ、にぃに」

純一「僕もだよ、美也」

美也「あ、そういえばさ。にぃにがみゃーのアパートに泊まる時に必要な雑貨も揃えておかないとね」

純一「まだいいだろ?」

美也「できる時にやっておかないと。年度末はにぃにも仕事が忙しくなるだろうし」

純一「まあ、納期の頃だから確かに忙しくなりそうだな」

美也「あとさ。うちのアパートのベッドは狭いから買い換えようよ」

純一「ダブルベッドなんて入れたら母さんに怪しまれるだろ」

美也「セミダブルとか大き目のシングルベッドとかなら平気だって。この週末は仕事ないんでしょ?」

純一「多分ないと思うよ(石上さんのデータの修正が終わらないともうできることはなくなっちゃったしな)」

美也「じゃあ、土曜日にIK○Aに行こうよ。にぃに車出してね」

純一「そうしようか」

美也「何か本当にわくわくするね。予算はいくらくらいまでにする? あ、あとみゃーの軽自動車も無駄だから処分するね? 二人でにぃにの車を使えばいいし」

純一「おまえは危ないから免許自体を処分してもいいと思うよ」

美也「うるさい!」

純一「ははは」

美也「・・・・・・ねえ?」

純一「どうした?」

美也「もう一回だけしない? 何ならみゃーの腕を後ろ手に縛ってもいいからさ」

純一「・・・・・・おい」
419: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/20(日) 20:37:02.43 ID:+VMILK3Jo
翌日水曜日朝 社内


純一「おはようございます」

女事務員「おはようございます、橘さん」

石上「・・・・・・おはようございます」

女事務員「おはようございま~す、石上さん♪」

純一「(石上さん、今日は出来てきたんだ)石上さん、もう大丈夫なの?」

石上「ありがとう橘君。昨日は迷惑かけました。もう大丈夫だよ」

純一「ま、まあ。データ修正はまだ間に合うし、別に迷惑だなんて」

石上「ごめんなさい」

純一「だから、問題ないって。それよか体調はもういいの?」

石上「ええ。もう平気よ」

純一「・・・・・・それならよかった」

石上「本当にごめんなさい。仕事で迷惑かけるなんて社会人失格だね」

純一「もういいって。病気だったんだからしょうがないよ」

女事務員「体調の悪い時もありますよ石上さん・・・・・・って、あ! 長瀬さんおはようございま~す!!」

長瀬「おはよう事務員ちゃん。今日も元気だね・・・・・・石上さんもおはよう」

石上「・・・・・・おはようございます」

長瀬「体調どうよ? 石上さんが休むのって珍しいよな」

石上「もう大丈夫よ。ありがとう」

女事務員「長瀬さん、結局昨日はどこで遊んでたんですか? あたしを飲み屋に置いて行っちゃうなんてひどいです」

長瀬「ごめんって。ちょっと呼び出されちゃってさ」

石上「・・・・・・」

長瀬「このとおり謝るからさ。機嫌直してくれよ事務員ちゃん、な?」

女事務員「しょうがないなあ。ちゃんと埋め合わせしてくださいね」

長瀬「わかってるって。さあ、今日もクライアントのところに行ってくるか」

女事務員「いってらっしゃい。あ、前の経費の精算も早くしてくださいね」

長瀬「・・・・・・やべ。忘れてたわ」

女事務員「もお。そうだと思いました」

長瀬「悪い悪い」
420: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/20(日) 20:43:43.53 ID:+VMILK3Jo
社内


石上チラ

純一(・・・・・・?)

純一(何だ? 今日の石上さん落ち着きがないと言うかそわそわしてると言うか。さっきからこっちを気にしてるみたいだ)

純一(まだ本調子じゃないのかも・・・・・・あと、僕のせいで精神的にまいってるのかもな)

純一(・・・・・・)チラ


プルルルル


石上「はい。××総研公共本部です・・・・・・あ」

石上「・・・・・・石上です。こんにちは美也ちゃん」

純一(え!!)

石上「橘君に変わるね、美也ちゃん・・・・・・橘君、妹さんから電話です」

純一「ご、ごめん(何を謝っているんだ僕は)」

純一「美也? 僕だけど」

美也『にぃに、突然電話してごめんね』

純一「どうかした?」

美也『石上さんが出たんでびっくりしちゃったよ』

純一「・・・・・・うん」

美也『今、大学にいるんだけどさ。さっきお母さんに電話したら、お母さん今夜実家に帰るからみゃーも実家に帰っておいでって』

純一「そうか。母さんが実家に戻れるなんて久しぶりだな」

美也『お母さんに会うの久しぶりだから、今夜は実家に泊まるから』

純一「わかった。母さん、何で美也に実家に来て欲しいんだろうな」

美也『さあ? 何か話があるっぽいけど』

純一「話? 内定辞退のことかな」

美也『そうかもね。よく説明してくるよ』

純一「その方がいいね。じゃあ、明日には帰って来いよ」

美也『・・・・・・にぃに、今夜みゃーがいなくて寂しい?』

純一「え? あ、いや」ドキ

美也『寂しいんでしょ?』ニシシシシ

純一「おい。今会社にいるんだぞ」ヒソヒソ

美也『ああ、そうだった。ごめんごめん』

純一「じゃあ、仕事もあるしもう切るぞ? 母さんによろしく言っておいてな」

美也『うん、わかったよ。じゃあ、また明日ね』

純一「じゃあな」


石上(・・・・・・)

石上(・・・・・・これでよかったのかな?)

石上(純一、ごめんなさい。でも純一のためなの。私を嫌いにならないで)

石上(・・・・・・)
421: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/20(日) 20:59:21.92 ID:+VMILK3Jo
翌日夜


純一(よし、終わった・・・・・・今日はここまでにしようかな。石上さんのデータが上がってきたから仕事がはかどるようになったし)

純一(しかし、本気出すと石上さんすごいなあ。遅れを一気に取り戻しちゃったよ)

純一(今日は美也が帰ってきてるはずだし、そろそろ帰ってやらないと。あいつッ寂しがりやだしな)

純一「石上さん」

石上「はい」

純一「悪いけど今日は上がらせてもらうね」

石上「はい。お疲れ様でした」

純一「・・・・・・石上さんも区切りのいいとこで上がった方がいいよ。仕事はもう追いついてるし、何より病み上がりなんだし」

石上「ありがとう・・・・・・もう少ししたら帰るから」

純一「そう? じゃあ悪いけどお先に失礼します」

石上「お疲れ様でした」

石上(・・・・・・)


純一のアパート


純一「ただいま~。ってあれ? 電気がついてない?」

純一「美也? もう寝たのか?」

純一「居間にはいないな」ガチャ

純一「・・・・・・寝室にもいない」

純一「あれ? 昨日実家に泊まって今日こっちに帰ってくるはずだったよな」

純一「何かあったのか? とりあえず実家に電話するか」

ピポパポ

純一(・・・・・・)

純一(誰も出ない・・・・・・。おいおい、美也どうしちゃったんだ? まさか、また八木とかに絡まれてるんじゃ)

純一(こんな時間だけど、母さんの会社に電話してみよう・・・・・・確か会社の直通電話は。あ、これか)

ピポパポ

純一(・・・・・・)

?『はい。×報堂メディア戦略事業部です』

純一「夜分申し訳ありません。橘の家の者ですけど橘をお願いしたいんですが」

?『申し訳ありません。橘部長は本日の午後からロンドンに出張しております』

純一{え? ロンドンって聞いてないんですけど!」

?『・・・・・・失礼ですが?』

純一「あ、すいません。橘の息子の純一です」

?『ああ、部長の息子さんですか。橘部長にはいつもお世話になってます』

純一「こちらこそ。っていうか母はロンドンに向ってるんですか?(何やってんだよ母さんは。美也が行方不明だっていうのに)」

?『ご存知ないんですか? 部長は妹さんと一緒にお父様のところに向われてます。まあ、半分出張で半分プライベートですかね』

純一「美也も!?」

?『はい・・・・・・もしもし? もしも~し! 聞いてますか』

純一(・・・・・・美也が? 一体何で突然)

純一(・・・・・・)
422: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/20(日) 21:22:40.06 ID:+VMILK3Jo
ロンドン行きの機内


橘母「美也、いい加減に泣き止みなさい」

美也「・・・・・・」

橘母「泣いてたって仕方ないでしょう? もうこうなった以上、お父さんに会ってみんなで話し合うしかないでしょ」

美也「・・・・・・」

橘母「それに・・・・・・泣きたいのはお母さんの方よ」

美也「・・・・・・」

橘母「・・・・・・確かにあんたち二人きりで放っておいた親にも責任はあるし」

橘母「昔から仲のよい親に手間をかけさせないいい兄妹なんで、あたしも油断してたけど」

橘母「・・・・・・まさか、あんたたちが兄妹以上の関係になってるなんて」

橘母「今にして思えば美也は大学もレベルを落として純一と同じ大学に入ったし、アパートも純一と一緒に住むって言い張ってたし」

美也「お母さん、もうやめて・・・・・・」

橘母「・・・・・・ねえ美也」

橘母「確かに純一は我が息子ながらいい子よ。ずっと一緒に育った美也が好きになる気持ちもわからないではないよ。でもね」

美也(・・・・・・)

橘母「あんたたち。そ、その、身体の関係になってるんでしょ? それも高校時代から」

美也「・・・・・・誰がお父さんに言いつけたの?」ボソ

橘母「それはわからないわ。お父さんも詳しく話してくれないから。でも、兄妹でこんな関係になってれば今まで世間に知られなかったのが不思議なくらいよ」

美也「・・・・・・」

橘母「美也?」

美也「・・・・・・るさない」ボソ

橘母「え?」

美也「みやーとにぃにのことをお父さんに告げ口した人をみゃーは絶対に許さない・・・・・・」

橘母「美也! いい加減にしなさい。自分たちのしていることをよく考えなさい!」

美也「・・・・・・」

橘母「・・・・・・とにかくお父さんと相談しましょう。純一だってせっかく大手のシンクタンクに就職してこれから将来がある身なのよ」

美也「・・・・・・(絶対に許さない)」ブツブツ

橘母「美也?」

美也ブツブツ

橘母(・・・・・・はぁ。どうしたらいいのかしら)

橘母(・・・・・・)
426: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/22(火) 22:39:06.57 ID:4MpIWw97o
翌朝 社内


石上「・・・・・・」

石上(お休み?)

石上(・・・・・・やっと始ったのかな。しばらくは辛いと思うけど)

石上(わたしと二人きりで過ごせば、わたしが純一を慰めれば・・・・・・そうなれば純一の傷口も塞がるし、また私のことをを見てくれる)

石上(わたしと妹さんとどっちが純一にふさわしいか)

石上(わたしと美也ちゃんと、どっちと一緒にいる方が純一の人生にプラスになるか)

石上(・・・・・・大丈夫。純一もきっとわかってくれる)

石上(純一・・・・・・)

?「おはよ」

石上(・・・・・・)

?「橘、今日はいねえの?」

石上「・・・・・・長瀬君」

長瀬「橘が休むなんて珍しいな。石上さんと入れ替わり立ち代り休んでるみたいだなあ」

石上「偶然でしょ」

長瀬「橘のやつ、君と一緒にいたくねえんじゃないの?」

石上「・・・・・・そんなことないよ」

長瀬「そんなことないんだ?」

石上「そんなことない!」

長瀬「・・・・・・何かさあ」

石上「・・・・・・」

長瀬「最近余裕ないよな、石上さん」

石上「そんなことないよ」

長瀬「橘が休むようなこと、何かやらかしたのか?」

石上「(・・・・・・!)べ、別にそんなこと」

長瀬「何かやったんだな」

石上「あ、あなたには関係ないでしょ!」ガタ

長瀬「まあそうだけどね」

石上「もう行くね。女上司さんに報告することがるし」

長瀬「・・・・・・ああ」
427: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/22(火) 22:43:55.11 ID:4MpIWw97o
純一のアパート


純一(もうロンドンに着いてるはずなのに。父さんのところに電話しても誰も出ない)

純一(教えてもらった母さんの宿泊先に電話しても連絡がつかない・・・・・・つうか先方の英語もよくわからないし)

純一(いったい何があったんだ? 母さんが美也をイギリスに連れてくのはありそうな話だけど、いくらなんでも急すぎるだろ。それに僕に連絡しないとか、母さんならともかく美也がそんなことするわけがないし)

純一(母さんの会社の人に聞いても出張の期間は未定だって言ってたけど。管理職の海外出張でそんなことあるもんか)

純一(何で美也を連れて行った? 美也の内定辞退が父さんの逆鱗に触れたのか? 確かにありえるな。美也の内定先を聞いて一番喜んでいたのは父さんだし)

純一(それにしても美也が僕に何も連絡しなかったのは何でだ・・・・・・。ああ胃が痛いし呼吸がしづらい。何だろう? 凄く嫌な気分だ)

純一(・・・・・・もう暗くなってきたな。電気つけなきゃ。あ、今日朝から何も食べてない)

純一(・・・・・・美也)


1時間後


純一(美也・・・・・・)

純一(と、とにかく僕だって社会人だし。あ、明日は出社しないと。石上さんの作業ペースだとそろそろ僕に追いつくだろうし)

純一(寝ようかな・・・・・・美也)

純一(美也、おやすみ。ってあれ何で涙が)ポロ

純一(別にたまたま連絡がつかなかっただけなのかもしれんないしな。明日には会社に国際電話が入るかもしれないし)

純一(・・・・・・)ポロポロ
428: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/22(火) 22:56:09.37 ID:4MpIWw97o
翌日 社内


長瀬「え? 今日もあいつ休みなの?」

女事務員「そうなんですよ。さっき電話があって体調不良なんで休みますって言ってました」

長瀬「もうすぐ2回目の中間報告だっつうのに橘のやつ何やってるんだよ。駅弁大学出身者は体調管理もできんのか」

女事務員「誰だって病気になる時はありますよ? 長瀬さん。橘さん死にそうな声でしたし。あんまりひどいこと言っちゃ駄目ですよ」

石上(・・・・・・)

女事務員「ね? 石上さん」

石上「・・・・・・」

女事務員「おーい! 石上さん」

石上「あ、ごめん。そうだよね」

女事務員「2日間も休むなんて本当に具合悪いんじゃないですか? 石上さんお見舞いに行かなくていいんですか」

石上「え?」

長瀬(・・・・・・)

女事務員「母性をアピールするチャンスですよ」フフ

石上「そんなこと・・・・・・体調不良の時に同僚になんて来て欲しくないでしょ。純一も」

女事務員「へ?」

長瀬(・・・・・・)

女事務員「へええ? 純一って呼んでるんですかあ。仲良しさんなんですね♪」

石上「あ! いえ別にわたしは・・・・・・」

長瀬(・・・・・・)
429: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/22(火) 23:24:42.23 ID:4MpIWw97o
終業後 会社の近くのバーのカウンター



長瀬「呼び出して悪かったな」

石上「・・・・・・今日は用事があるの。なるべく早く帰りたいんだけどな」

長瀬「おまえだってこれまで好き勝手に俺を呼び出してたじゃねえか」

石上「まあいいわ。それよりわたしに大事な用事って何?」

長瀬「うん。ご希望通り手短に済ませるようにするけどよ」

石上「それはご親切に」

長瀬「おまえ、橘と美也ちゃんに何かしただろ?」

石上「・・・・・・どうしてそう思うの?」

長瀬「タイミング考えりゃ誰だって思うだろ。俺からあいつら兄妹の恋愛関係を無理やり聞きだして、その後おまえが休んで」

長瀬「そんで今度は橘が2日間も休んでるんだぜ?」

石上「偶然でしょ? 風邪も流行っているし」

長瀬「・・・・・・」

石上「・・・・・・そんな言い訳通用しないか。さすがにこの国で一番高い偏差値の大学を卒業しているだけのことはあるね」クス

長瀬「いったい何をやらかしたんだ」

石上「純一のお父様ってさ、わたしの父の知り合いなんだ」

長瀬「え?」

石上「本当に偶然だったんだけど、わたしが純一に夢中になりだした頃わかったんだけどね」

長瀬「何でここで橘の親父さんが出て来るんだよ」

石上「橘君のお父様、ロンドンに駐在されてるのね。それでうちの父に連絡先を聞きだして」

長瀬「まさか」

石上「おたくの息子さんと娘さんが両親不在がちの環境で、ずっと二人きりで寄り添って過ごしているうちに」

石上「世間には言えない過ちを、兄妹で肉体関係を持ってしまったみたいですってお伝えしたの」クスクス

長瀬「・・・・・・」

石上「それでね。会社の同期の男の人にも感づかれてるみたいですよ、その同僚って口が軽い人だから早急に手を打たないと、橘君の社会人として将来も閉ざされますよって」

長瀬「・・・・・・おまえ最低だな」

石上「どうして? 橘君のお父様、相当ショックだったみたいだけど最後には感謝されたよ」

長瀬「おまえが女じゃなかったらぶん殴ってたとこだぜ」

石上「長瀬君はさ」

長瀬「・・・・・・」

石上「クールなようで案外人情に厚いじゃない? 橘君とも仲が悪いようだけど、実は結構いい同僚であろうとしてるでしょ」

長瀬「それがどうした?]

石上「だから君にはわかってもらえると思ってる。わたしのしたことを」

長瀬「・・・・・・」

石上「可愛そうだけど、今頃美也ちゃんはロンドンのお父様のところにいて。そして二人の関係が消えてほとぼりが冷めるまで2、3年は帰国できないんじゃないかな」

石上「橘君たちの将来は本人たち次第だとしても」

石上「橘君のお父様の役員昇格に影響しかねない話じゃない? あ、橘君のお父様って来期の役員候補なんだけど」

石上「ね? わかってくれたでしょ。長瀬君♪」
432: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/23(水) 23:07:52.24 ID:8NPX5eBXo
結局、橘の野郎は続けて3日間も休みやがった。今日が3日目というわけだが2回目の中間報告を控えていた橘のチームはピンチに陥った。石上が収集して分析した新しいデータを報告書に反映で
きなくなったのだ。優秀な石上なら何とかするんじゃないかと思ってたが、まずいことに石上はこれまで全体の構成に携わってこなかったため、橘のピンチヒッターと言うわけにはいかなかった。

そして俺が尊敬する女上司さんはさすがに判断が早かった。病気の橘には療養に専念させよう。石上が構成とデータ分析を両方するのは無理がある。よって、橘のチームに優秀なやつを代理で入れ
てテコ入れしよう。女上司さんの判断は正しいと思った。彼女を賞賛した。俺もこういう上司になりたいとまで思った。


・・・・・・その仕事を引き受けるのが俺だと知るまでは。
おい、俺だって忙しいんだぜ。何で橘ごときの仕事を代打で引き受けなきゃいけねえんだよ。確かに俺の仕事は山を越えているし、クライアントの担当者にもベタほめさえている。今は余裕がある
と言ってもいいくらいだ。


だが。
俺にだって私生活はある。最近は俺の主義には反するのだが、女事務員に攻勢をかけている最中でそのためにこれまで付き合っていたビッチたち数人とは会うのを控えている状態だ。女事務員ちゃ
んはどうも俺の容姿や学歴や能力に惚れているようで、俺を心底から好きになってくれない。それを何とか打破しようとしている最中なのに、橘の仕事なんて引き受けられるか。ただでさえ女事務
員ちゃんは俺を独り占めしたいと思っているのに。まあ、事務員ちゃんが俺のことを好きなのは間違いないけどな。その証拠にカラオケに行くたびに無理やり歌わされる『悲しみの向こうに』を歌
い終わるといつも大きな声で『ナイス!』と声をかけてくれる。まあ、niceのあとに微妙にボートという単語が聞こえるのは、俺が学生時代にアメリカに1年間留学して語学が堪能になってせいで、
事務員ちゃんは心底俺のことをナイスと考えているみたいだ。


上司の命令ならしかたない。俺は引継ぎ(と言っても橘はいないのだが)と今後の予定確認のため、石上と二人きりでミーティングルームで打ち合わせをすることになった。ひどいもんだったね。
石上のやつ、最初の15分ほど必要最小限の情報を俺に理解させた後、仕事とは全く関係のない話を延々と話し続けた。思い出せる範囲で記すと。
433: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/23(水) 23:18:36.34 ID:8NPX5eBXo
石上いわく

自然界では近親交配は避けられるような生態学的システムができている
それは生物の生存戦略上不利だからであり、文明を気づいた人類にも当てはまる真理である

橘とその妹はこの自然界の摂理に反した行動を取っているため、彼らのことを真に心配している人間がこれを止めてあげなくてはならない。一見すると彼らに意地悪しているようだが真に彼らのことを思えばわたしの取ったこの行動は理解される

それでも橘たちは言うかもしれない。『兄妹を好きになったわけではない。好きになった相手がたまたま兄妹だったのだと』

だが遺伝子的な側面を別にしても欧米では近親相姦は軽蔑される。なぜなら兄妹の恋愛は外部でもてない同士が手近な兄妹で恋愛の欲求を解消しているものと見做されるからだ。橘兄妹は恋愛の愛転移は不自由しないはずで、何もわざわざタブーを犯してまで近親相姦する意味はない

したがって、生物学的・遺伝子学的にも社会学的にも橘兄妹を別れさせることは正しい


・・・・・・メンヘラとか強迫的な執念に囚われた人間の目だったね。


俺は頭を抱えたよ。正直橘と美也ちゃんのことなんてどうでもいいと思っていたが、石上の病的な執念を2時間近く聞かされると他人に冷たい俺でもさすがに橘が気の毒になった。あと、橘と妹の
仲を石上に教えてしまったのが俺だっていう後悔の念も心の中に芽生え始めていた。


ようやく石上の話から開放された俺は社外に外回りに出た。仕事が終わった後に訪れなきゃいけないところはもう既に頭の中に入っていた。
434: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/23(水) 23:38:34.71 ID:8NPX5eBXo
純一(・・・・・・もう夕方か。また仕事休んじゃった。そろそろ中間報告がやばいのに)

純一(美也と連絡が取れるまで何度でも電話しようと思ったけどそろそろ限界・・・・・・・心が折れそうだよ)

純一(一体どうしたんだ。美也が連絡なしに父さんの所に行くのはわからないでもないけど、何で父さんとも一緒に行った母さんとも連絡取れないんだよ)

純一(美也・・・・・・。今までもいろいろあったけど、やっぱり美也がいないと僕は駄目なんだ。昔離れ離れになってた時だっていつかは一緒に暮らせると信じてた。でも、突然妹が姿を消して連絡が取れないなんて初めてだ)

純一(明日仕事行かないとな・・・・・・無責任なことは出来ないし、僕が傷つけた石上さんだって気を取り直して仕事してくれてるんだし)

純一(美也・・・・・・)


ピンポン


純一(だれだ? 今は誰とも会いたくないのに)


ピンポンピンポン


純一(・・・・・・)


ピンポンピンポンピンポン


純一「(ああ、うるさいなもう)はい」

ガチャ

?「てめえ、ドア開けるの遅すぎだよ。忙しい俺の時間を無駄にするな低脳」

純一「長瀬?」

長瀬「見りゃわかるだろ。わざわざお見舞いに来てやったんだ。中に入れろよ」

純一「わざわざ悪いな。でも大丈夫だから」

長瀬「大丈夫なら仕事休むんじゃねえよ。いつまで学生気分でいるつもりだよ」イライラ

純一「具合悪かったのは嘘じゃないよ。でも石上さんとかに仕事で迷惑かけてるのは申し訳ないけど」

長瀬「石上に迷惑? は。笑わせるな」

純一「何なんだよいったい」

長瀬「美也ちゃん」

純一「え?」

長瀬「美也ちゃんとのトラブルの原因しりたいか?」

純一「何でおまえがそれを!」グイ

長瀬「・・・・・・よせ! 痛いって馬鹿野郎!!」

純一「おまえ美也のこと何か知ってのか? おい何とか言え」

長瀬「聞きたいならまず手を離せ、バカ」

純一「あ、ああ」

長瀬「あと、俺腹減ってるから何か食べさせろや。あ、酒もな」

純一「・・・・・・わかったから知っていること教えてくれ」ブルブル
438: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/24(木) 23:14:05.50 ID:Eyb15HqMo
純一のアパートの室内


長瀬「最初に言っておくけどよ。俺は別におまえと美也ちゃんが付き合っていようが男女の関係になっていようが」

純一「え?」

長瀬「別に何も偏見はねえよ。まあ、それほど関心も興味もないから応援しようとも思わねえけどな」

純一「長瀬。おまえ、何で・・・・・・」

長瀬「何でって。おまえあれだけ人前でいちゃいちゃしといてよ、それでおまえら兄妹の関係が誰にもばれてないとでも思ってたのか?」

純一「だ、だけど! いつから知ってたんだ?」

長瀬「残業してたら急に雨が振った日があったろ? 俺と石上が雨宿りしに居酒屋に行ったらおまえらと会ったじゃんか。あの日からだな」

純一「そうか。ばれてたのか」

長瀬「だから妙な偏見は持ってないから気にするな。それより美也ちゃんのことだけどよ」

純一「う、うん」ドキドキ

長瀬「今、ロンドンにいるらしいな」

純一「・・・・・・うん」

長瀬「知ってたのかよ。まあ、家族の情報だしそれくらいは知ってるか」

純一「ああ。長瀬が知ってることって、美也が今ロンドンにいることだけ?」

長瀬「そうでもない。これから話してやるけど、その前に何でおまえが落ち込んで会社をサボってんのか話せよ」

純一「それは」

長瀬「今更隠すな、恥じるな。おまえたちが最低の近親相姦野郎たちっだってことはもうバレて・・・・・・ウグッ!」バ゙シン

純一「美也をバカにするな! それ以上美也を辱めたらこんなもんじゃすまないぞ」ハァハァ

長瀬「いててて。おい、いきなり人の顔を殴るのかよ。ちくしょう口の中が鉄の匂いで溢れてるじゃんか。つうか殴られたよろけた時にぶつかった頭の方が痛いけど」サスサス

純一「冗談でも美也を辱めるな! 蔑むなら僕だけにしろよ。悪いのは全部僕の方なんだ」

長瀬「悪いって言ったか? 俺は今までおまえらの関係が悪いなんて一言も言ってないぜ」

純一「あ」

長瀬「悪いって思ってるんだな? おまえは」

長瀬「おまえ自身が美也ちゃんとの関係に罪悪感感じてるんじゃねえか、アホ」

純一「長瀬に悪いなんて思っていないよ。罪悪感があるとしたら美也に肩身の狭い思いをさせてるからだよ」

長瀬「ほら、また出たよ、肩身が狭いだの罪悪感だのってよ」
439: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/24(木) 23:26:24.92 ID:Eyb15HqMo
長瀬「まあいいや。おまえが何を感じてようと俺には関係ないしな。それで、本題だけど」

純一「あ、ああ」

長瀬「・・・・・・」

純一ゴクッ

長瀬「美也ちゃんはこのままだと2、3年間は帰国しないかもしれないぞ」

純一「ど、どうしてそんなことに!」

長瀬「美也ちゃんが急にロンドンに行ったのは、おまえの親父さんがおまえらの禁断の仲を知ったからだ」

純一「父さんが? 父さんに何でばれたんだ。まさか母さんが気づいて父さんに」

長瀬「原因はおまえと俺にあるかもな」

純一「長瀬に? 僕に?」

長瀬「おまえの親父さんにおまえたちの仲をチクったのは」

純一「・・・・・・チクルって」

長瀬「石上だよ」
440: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/24(木) 23:48:40.07 ID:Eyb15HqMo
ロンドン


美也「絶対にいや!」

?「僕は世間の常識のことだけで言っているんじゃないんだよ。おまえたち二人のことを真剣に心配してるんだ。自分の子供たちの将来を心配するのがいけないのか?」

美也「お父さんがあたしたちの幸せを望んでくれているなら、みゃーたちを理解してよ。みゃーはにぃにじゃなきゃ駄目なの!」

橘父「またそういうことを軽く言う。おまえは今まで純一と距離が近過ぎただけだよ。少し距離を置いて知り合いを増やせば、また別な考えも生まれるだろう」

美也「あり得ないよ! みゃーとにぃにはこれまでそんなこと何度も乗り越えてきたんだもん。お互いに他の相手と付き合ったことだってあったけど、やっぱり」

橘母「美也。純一が社会的に不幸になってもいいの?」

美也「みゃーがにぃにを不幸になんてさせない。信じてお母さん」

橘父「おまえがそう言っても世間には通用しないよ。純一の会社だって社員のプライベートだから干渉しないなんてあり得ない。要するにこの関係を続ければ純一の将来は閉ざされるんだ」

橘母「よく考えなさい。美也が純一のことを本当に大切に思っていることは母さんたちに伝わったわ。でも、それなら。それほど純一のことが大切なら、純一の将来を閉ざすようなことをあなたがしていいの? お母さんたちは美也のことだけじゃなく、純一のことを心配しているのよ」

美也「そんな。にぃにがみゃーといて不幸になるなんて絶対に」

橘父「絶対にないと言い切れるのか」

美也「・・・・・・」

橘父「美也は銀行に入行するのをやめて大学に残りたいそうだな。どうせならイギリスの大学で勉強したらいい。どうせやるなら本場で研究した方がいいよ」

美也「え?」

橘母「うちだって決して裕福な家庭じゃないけど、美也がイギリスで英文学の研究をしたいなら何とか節約してさせてあげるわよ」

橘父「おまえは今の大学の教授から買われてるそうじゃないか。それくらいなら来期からこっちのマスターコースに入るくらい大丈夫だろ」

橘母「もちろんよ、あなた。美也の大学の成績は純一よりはるかにいいのよ」

橘父「それならこっちで院に入るのに問題はないな。美也、とりあえずよく考えなさい。そしてこれだけは忘れるなよ。お父さんたちは美也だけじゃなくて純一のことも心配してるんだよ。大事な息子なんだから」

橘母「・・・・・・美也?]

美也「・・・・・・考えてみる(にぃに)」
442: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/26(土) 21:17:12.17 ID:SXc3LLPro
純一「え? 石上さん? 何で石上さんの名前が出てくるんだ・・・・・・(頭が混乱する、何がなんだかわからなくなってきた)」

長瀬「え? 石上さん? じゃねえよ。おまえよく考えりゃ思い当たること多過ぎなくらいだろうが」

純一「・・・・・・確かに僕は石上さんと関係を持ったし、そ、その、告白もして付き合ってたけど。でも、短い間だったしすぐ目が覚めて別れたし」

長瀬「石上なんか今の俺にはどうでもいいけど、おまえの言い草って何か腹立つな。そんなのてめえの勝手な想いだろう? 短いって言うけどよ、本当に好きになった相手に短い間だけ身体を弄ばれて、やっぱり別な子が好きだから別れようって言われた方の身になったことあんの?」

純一「わかってるよ。彼女には酷いことをしたし、こうされてもしょうがないのかもしれないけど。だけど、石上さんは美也と僕のことは知らないはずで」

長瀬「ああそのこと? 悪いな、俺が喋っちゃった」

純一「・・・・・・」

長瀬「おっと、危ね。何また殴りかかってんだよ。おちつけ、バカ」

純一「・・・・・・」

長瀬「そんなに睨むなよ。とにかくそういうことだ。石上がおまえの親父さんに美也ちゃんとの関係を洗いざらい喋った。多分、親父さんから日本にいるお袋さんに連絡が行き、美也ちゃんはすぐにロンドンに連行されたってことだろうな。美也ちゃん、パスポートまだ有効だったろうしな」

純一「美也・・・・・・」

長瀬「そうだ。美也ちゃんは今つらいだろうな。両親から近親相姦の罪を咎められ、おまえと別れるように説得されてと思うぜ」

純一「よくわかったよ。ありがと長瀬。殴って悪かったな・・・・・・」

長瀬「場合が場合だから特別に許してやるよ。そんで、おまえの部屋酒ないの?」

純一「悪いな。普段飲まないんでないよ」

長瀬「じゃ、仕方ない。俺が持参したバーボンを空けるか。グラスと氷持って来いよ」

純一「・・・・・・(美也)」

長瀬「・・・・・・勝手に用意した方が早そうだな」
443: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/26(土) 21:28:04.60 ID:SXc3LLPro
長瀬「ほら。酒作ってやったから飲め、橘」

純一「ありがと」

長瀬「・・・・・・さすがいいバーボンだな。うまい」

純一「・・・・・・」

長瀬「何考えてる? 石上への復習とかか?」

純一「いや。石上さんの行動の原因は僕にあるんだし、彼女を責めようとは思わないよ」

長瀬「だってあいつが余計なことしたせいで、今美也ちゃんがつらい思いをしてるんだぜ。おまえ平気なのか」

純一「両親に関しては、僕と美也の仲がばれるのは時間の問題だったんだよ。最近そういうことをきちんとしようって美也と話し始めていたところだったしな」

長瀬「・・・・・・まあ、おまえが納得できるならその方がいいかもな。石上は同じチームだし。まあ、正直石上が凹むところも一度見てみたい気はするけど」

純一「彼女とは普通の仕事仲間として接するようにする。それ以上でも以下でもなく」

長瀬「そうか。おい、もっと飲め。この俺が付き合ってやってるんだからよ」

純一「うん」

長瀬「・・・・・・おまえの仕事、当面俺がフォローることになったんだけど」

純一「悪いな」

長瀬「で、いつから出社する気なんだ? ずる休みの橘君は」

純一「・・・・・・」

長瀬「つうか、おまえ美也ちゃんとのこと、今後どうするの?」

純一「僕が今落ち込んでいるのはさ。美也と離されて美也につらい思いをさせてるのもあるんだけど」

長瀬「・・・・・・ああ」

純一「さっき長瀬が言ってただろ? 僕自身が美也との関係に罪悪感感じてるんじゃないかって」

長瀬「言ったよ。それで?」

純一「そのとおりだと思う。僕は高校の頃からいつも罪悪感を感じてたのかもしれない。美也に対しても両親に対しても美也と仲違いをしてる時に付き合った女の子に対しても」

長瀬「二股かけてた子には罪悪感感じてあたりまえだ、あほ」

純一「うん」

長瀬「まあ、両親に対する罪悪感って言うのも当然かもな。何せ両親の一人娘を禁断の道に誘惑しちゃったんだからな」

純一「・・・・・・誘惑って! まあ、そうなるかもな」

長瀬「で?」

純一「で? って」

長瀬「美也ちゃんに無理やり言うことを聞かせたわけじゃないだろ。居酒屋の時も美也ちゃんお兄ちゃんラブラブ視線を飛ばしまくってたしな」

純一「美也にはいろいろ無理をさせてたんだよ。大学だってもっといいところに行けたのに僕と同じところに入学したり、僕との関係で親に責められたり」

純一「僕と一緒に過ごすことで美也の将来にプラスになることなって何一つなかったんだなって、今考えて気づいた」

長瀬「・・・・・・おまえ、本当にバカだな。これ以上面倒見切れないぜ」タメイキ
444: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/26(土) 21:52:32.96 ID:SXc3LLPro
瀬「で、おまえはこれからどうするの?」

純一「美也には普通に幸せになってほしい。遅すぎたかもしれないけど、不自然な関係を清算するいい機会だったのかもしれないな」

長瀬「・・・・・・」

純一「2、3年間本場の大学で学ぶのも美也のキャリアには有意義だろうし、両親も納得するだろうし」

長瀬「・・・・・・」

純一「明日から出社する。長瀬には迷惑かけられないし。何よりあの仕事は最後まで自分でやりたい」

純一「石上さんとも普通に話すようにするよ。いろいろ吹っ切れたよ。ありがとうな、長瀬」


ドカ


純一「痛い! やめろ長瀬」

ドカドカ

純一「だから痛いって。よせ」

長瀬「結構利いたろ? 俺は頭いいだけじゃなくて喧嘩も強いんだぜ」

純一「さっき殴ったことへの仕返しか?」

長瀬「ばーか。俺には仕返しとかつまんない感情はねえよ」

純一「じゃあ何で蹴りを入れたんだよ」

長瀬「あのさあ」

純一「何だよ?」

長瀬「おまえと美也ちゃんって、どう考えても美也ちゃんのほうがしっかりしてるよな」

純一「何だよ? それ」

長瀬「おまえらのくそ近親相姦暦の中で、将来のこととか話したかともあったんだろ? ちっとはよ」

純一「あ」

長瀬「美也ちゃんのほうがしっかり考えてるんじゃねえの? で、おまえを信頼してるから今はつらいだろうけど、連絡もしないで両親と戦ってるんじゃねえの?」

純一(そう言えばあの時)
445: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/11/26(土) 21:55:43.48 ID:SXc3LLPro
回想

純一「もうすぐおまえも社会人になる。いい年になっても彼氏や旦那ができないおまえは、職場や友人から変な目で見られることになるんだ」

純一「僕とのことも世間には話せずに、それでも前みたいに変な噂が流れて社会的に窮地に追い込まれることだってありえる」

純一「周りの友達が可愛い子供に恵まれて子育てしているのを眺めながら、おまえには僕しかいないんだ」

純一「それでも、僕と一生一緒に過ごす気があるのか」

純一「・・・・・・美也?」

美也クスクス

純一「美也おまえ何笑ってるんだ」

美也「にぃにって、本当に普段から何も考えずに生きてるんだね。気楽でいいなあ」クスクス

純一「な、何言ってるんだ。僕は真面目な話をしてるんだ」

美也「経験から学習もしないしね」クス

純一「美也・・・・・・?」

美也「ねえ、にぃに」

純一「う、うん」

美也「にぃにが今深刻そうに話したことなら高校時代にイギリスに行かされて、にぃにと別れていた時とか大学時代にお互いに誤解して、それぞれ違う人と付き合ってた時とかにずっと考えていたことなんだよ」

純一「え?」

美也「むしろ、今、にぃにがみゃーに言ったことを考えなきゃいけないのは、にぃにの方じゃないかな」

純一「おまえ・・・・・・」

美也「みゃーの覚悟は何年も前から出来ています・・・・・・だから、今はにぃにの考えを聞きたいな」

回想終了


純一「美也・・・・・・」

長瀬「あ~あ。バカと話してると本当に疲れるわ。おまけに酒を差し入れてやったのに殴られるしよ」

純一「・・・・・・」

長瀬「橘。おまえ今週は休んでいいよ。女上司さんには見舞いに行ったら風邪をこじらせて出社は無理そうだって言っておいてやる」

純一「え?」

長瀬「少しゆっくり考えてみたら? おまえの片方の手には美也ちゃんが乗っている」

純一「何言ってるんだよ・・・・・・」

長瀬「もう片方の手には、両親とか会社とか美也ちゃんが好きな道に進めるとか世間体とかいっぱい乗ってるわけだよ」

純一「そんなこと」

長瀬「わかってるだろうけどな。それでも美也ちゃんの方が重くて天秤が美也ちゃんの乗ってる方に傾くならよ」

純一「・・・・・・」

長瀬「ほら。たとえばこういう道もあるぜ」バサ

純一「何? パンフレットか」

長瀬「じゃあな、橘。俺はもうこれ以上おまえに関わらねえからな。来週の月曜日には仕事に戻れよ? あ、酒は置いっていってやるわ」

純一「長瀬・・・・・・」

長瀬「じゃあな」バタン

純一「何なんだあいつ・・・・・・」

純一「何のパンフレットだろ」


『○○県職員採用上級職試験案内』

純一「何だ? これ・・・・・・」
448: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/12/03(土) 22:50:05.43 ID:v+kw2cwAo
・・・・・その週末を橘がどう過ごたかなんて俺にはわからなかったし、奴に聞こうとも思わなかった。

橘は月曜日から仕事に復帰した。俺は前の週に奴の仕事を引継ぎかなりの改良を加えてやっていたのだが、再度俺からプロジェクトを引き取った橘はその大部分を元に戻しやがった。そして癪に障ることに女上司さんも石上も橘の判断を支持した。全く、俺の好意を無にしやがって。

橘は、職場ではすっかり以前の仕事熱心な新入社員に戻っていた。石上とは(少なくとも表面上は)いい同僚という関係に落ち着いたようだった。それでも石上の方はたまに思いつめた様子でデスクに座ってパソコンに向っている橘を見つめていたり、何かを橘に話しかけようとしていたが、橘の方がそのきっかけを与えなかった。やつは何かを割り切り、何かを決意したんだろう。
その決断に俺のアドバイスがどこまで関与していたのかはわからないけどな。少なくとも今は。

橘たちのプロジェクトは無事2回目の中間報告を終え次の山場に向って、橘のチームは再び多忙になっていった。そんな状況だから、チームの研究員たち土日も休まずに仕事に没頭していた。
・・・・・・そんな時、橘が2日間だけ休んだことがあった。多忙な時でもありプロジェクトの中心人物の橘の突然の休暇申請に、あの細かいことに拘泥しない女上司さんが、橘に苦言めいたことを言ったのも理解できるタイミングだったが、橘は同ぜず予定どおり2日間休暇を取得した。そして休暇明けには何事もなかったかのように、再び仕事に没頭していった。
449: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/12/03(土) 22:52:40.93 ID:v+kw2cwAo
某地方都市の県庁


純一(もう迷っていてもしょうがない。やることは決めたし出来ることはやった。とにかく成果を出そう)

純一(そして目途が立ったらどうにかしいて美也に伝えよう・・・・・・。美也がこのことをどう考えるかは別として)

純一(美也は僕のことを忘れてしまっていないだろうか? ロンドンでの目新しい日々に夢中になったりはしていないだろうか)

純一(いや・・・・・・。もう決めたことだ。優柔不断な僕でもさすがに理解できるよ。今が、僕の・・・・・・僕と美也の人生の転機なんだ)

純一(長瀬には感謝しないとな)


?「橘純一さん、どうぞ」

純一「あ、はい! 失礼します」

純一「受験番号266番。橘純一です。よろしくお願いいたします」

面接官「どうぞ、お掛けください」

純一「失礼します」

面接官「面接票によると、橘さんは今年大学を卒業して、現在は東京の××総研に勤めているみたいだけど、どうして今の会社を辞職して田舎の県庁の採用試験を受けることにしたんですか?」

純一「はい。今の所属はは公共本部というところで、主に国や自治体の計画策定を支援している部署なんですが、ここで仕事をしているうちに公共部門の仕事をしてみたいと思うようになり、志願いたしました」

面接官「君、在学中に公務員試験は受験した?」

純一「・・・・・・していません」

面接官「では卒業して数ヶ月で今の仕事をやめて県庁で勤めたくなったということですか?」

純一「・・・・・・ですから、公共部門をサポートする仕事をしているうちに、公共部門自体で仕事をしたくなったということで」

面接官「多忙な民間企業に嫌気が差したんじゃないでしょうね?」

純一「それは違います」

面接官「田舎の役所なら楽できるとか思っていないですか?」

純一「そんなことは全く考えていません」

面接官「公務員志望なら都庁とか、地元の県庁とかを志望するのが普通だと思うんだけど、何でこんな田舎の県庁を受験したんですか」

純一「(・・・・・・)昔から田舎に憧れていたのもありますし、この県の政策が全国でも先進的だということを知ったからです」

面接官2「じゃあ、僕からも質問だけど。今の職場で受けている給与と比べると地方の役所の給与は相当低いけど、そういうことを理解して受験しているんですか」

純一「はい。それは・・・・・・」


30分後


純一「ありがとうございました」

純一(終わった。結果はともかくやれるだけのことはやったんだ。あとは今のプロジェクトに没頭しよう)

純一(美也。もう少し待っていてくれ。必ず連絡するからな)

純一(・・・・・・)
450: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/12/03(土) 22:58:07.13 ID:v+kw2cwAo
一月が過ぎると。にぃにから引き剥がされたせいで、あれだけ取り乱して、ざわめいて、鋭い痛みを感じた胸のうちが穏やかにおさまるようになった。それは諦めとか慣れではなく、昔誓ったことを思い出したからかもしれない。

・・・・・・もう、にぃにを疑わない。にぃにからは全く連絡がないし、にぃにへの連絡もできない状態でも、みゃーはにぃにを信じる。にぃには日本でただ泣いているだけじゃない。みゃーとにぃにのこの先のことをどうするべきか考えているはず。もちろん、みゃーのことを諦めたりもしない。
だからみゃーもただ泣くだけの毎日を振り捨てた。両親の勧めるようにこちらの大学院を受験はしなかったけど、お父さんの家で毎日原書を読んで研究を続けようと努力していた。

今はみゃーにできることは、にぃにを信じて待つこと以外に何もない。にぃになら必ず何とかしてくれる。もうそのことだけは疑わないことにした。それでも胸のうちに鈍い痛みのような感覚は残ったけど、それさえなくなったら、にぃにのことを忘れてしまいそうで怖い。



その冬は長かった。長瀬さんから、お父さんの留守中に一本の国際電話がかかってくるまでは。
451: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/12/03(土) 23:01:50.36 ID:v+kw2cwAo
翌年4月 梅寿司


棚町「店の前の桜が満開よ。綺麗だね」

梅原「ああ」

棚町「この店ももうすぐ一周年か。去年は桜はすぐ散ってしまったけど、今年は長く咲き続きそうだね」

梅原「そうだな」

棚町「あんた・・・・・まだ、純一と美也ちゃんのことに納得できないの?」

梅原「そうじゃねえんだけどよ。大将も冷たいなって思ってよ」

棚町「あんたの気持ちも分からないじゃないけど。でも、ここまで重い決断を他人に相談するようなやつじゃないよ、純一は」

梅原「俺は大将のこと他人だなんて思ったことはねえよ。薫だってそうだろ?」

棚町「そりゃ純一は親友だけど、やっぱり親友だって他人なんだよ」

梅原「・・・・・・おまえ、ずいぶん冷たいこと言うじゃねえか」

棚町「あたしたちは純一がどう判断してもそれを受け入れてあげることはできるよ。高校時代の純一と美也ちゃんの関係を受け入れたように」

梅原「ああ」

棚町「でもね。今度のことは、純一と美也ちゃんにとって人生で一番大きな転機なのよ。いえ、純一と美也ちゃんだけじゃない。純一のお父さんとお母さんを含めた純一の家族にとって、家族の姿を変えてしまうほど重大なことなの」

梅原「そんなことは分かってるよ! それでも俺たちは、俺は大将を支えようと思ってたんだぜ」

棚町「純一はそんな重い友情をあんたに負わせたりする奴じゃないよ。そろそろわかってあげなよ。これは純一と美也ちゃんだけで決めなくてはならないことだったの」

梅原「・・・・・・」

棚町「それに遅かったけど手紙をくれたじゃない? 何があったか全部書いてくれて」

梅原「わかってるよ。でもよ、何で大将と美也ちゃんがあんな田舎に篭って生活しなきゃならねえんだよ」

棚町「二人は今幸せだと思うよ」

梅原「エリートコースを歩んでいた大将と美也ちゃんが、あんな日本の端にある県庁に就職してひっそりと暮らすなんてよ」

棚町「・・・・・・両親に隠れて二人で生きていくには、そういう所しかなかったんでしょ。両親にさえ居場所を隠しているのを、あたしたちには教えてくれたんだよ?」

梅原「・・・・・・でもよ」ブツブツ

棚町「ははあ。わかった、あんた寂しいんでしょ」

梅原「・・・・・・(!)」

棚町「寂しいのね?」

梅原「・・・・・・そうだよ、悪いか?」

棚町「・・・・・・あんたにはあたしがいるでしょ?」

梅原「・・・・・・」

棚町「今度、店を閉じて純一のところに遊びに行こうよ。サプライズでさ」

梅原「・・・・・・そうだな、薫。おまえは正しいよ」

棚町「・・・・・・泣かないでよ」

梅原「泣いてねえよ」

棚町「バカ亭主」ダキ

梅原「薫・・・・・・」ダキシメ
452: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) 2011/12/03(土) 23:05:14.17 ID:v+kw2cwAo
某地方都市のアパート 午後7時


純一「ただいま」

美也「おかえり、にいに。仕事どうだった?」

純一「うん。前の職場の経験を考慮してくれて、福祉局に配属してくれたんで今までの智識が役に立つし、何よりやる気になるのがありがたいよ」

美也「よかった。みゃーのせいで、にぃにのやりたいことができなくなちゃったらどうしようかと心配してたけど」

純一「僕の本当にやりたいことはこれくらいしかないよ」ダキ

美也「・・・・・・にぃに」ギュ

純一「美也こそ後悔してないの?」

美也「しつこいよ、にぃに。その質問何回目よ」

純一「だって、おまえは院に進むか留学して研究するかの道があったのに、大学卒業してこっちに来てからは、毎日アルバイトだろ?」

美也「にぃにが安月給になちゃったし、親からの仕送りもなくなったからね」

純一「・・・・・・悪いな、美也」

美也「こら。謝るな! みゃーは幸せだよ。本当の意味でにぃにと二人で暮らせる日が来たんだし。それに文学なんて本と頭と時間があればどこでも研究できるんだよ」

純一「そうだな。前向きに考えような」

美也「・・・・・・にぃにがみゃーに後悔してるかとか聞く時って、にぃにが自分で後悔してる時なんだよね」

純一「あ」

美也「前にも言ったでしょ? みゃーの覚悟は何年も前に決まってるって」

純一「・・・・・・うん、そうだな」

美也「やっとわかったみたいね、にぃに」

純一「じゃあ、美也。あらためてこの先もずっとよろしくな」

美也「こちらこそ。あ、そうそう。前のアパートから必死でこれだけは持ち出さなきゃって荷物があってさ」

純一「うん?」

美也「お母さんから逃げ出す時に重い荷物持てないから、千葉から宅配便で送っておいたんだけど」

純一「うん・・・・・・何?」

美也「今日、届いたんだよ・・・・・・これ」

純一「おい。お、おまえ・・・・・・。これは」

美也ニシシシシ

純一「何で手錠と縄と首輪!? っていうか全然大切な物じゃない・・・・・・」

美也「だって、みゃーとにぃにの馴れ初めの品物でしょ? さ、今日はどれ使う?」

純一「・・・・・・」プッ

美也「にぃに?」

純一「美也」

美也「うん?」

純一「愛してるよ美也・・・・・・これからもよろしくな」

美也「仕事ではもう一緒に会えなくなっちゃったけど・・・・・・みゃーも愛してるよ。これからもよろしくね! にぃに♪」


fin
453: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(愛知県) 2011/12/03(土) 23:27:43.26 ID:LaIFA9H7o
これで終わりか……
はじめからずっと楽しませてもらいました乙
454: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(中部地方) 2011/12/03(土) 23:37:41.94 ID:8CDrzvsno
ありがとう、胸が温かくも切なくなりました

アパートの夕日が射す一室、この世界にたった二人だけ
寄り添いあい幸せそうに微笑んでいる
そんな情景が浮かんだ

お疲れ様です
456: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(宮城県) 2011/12/04(日) 14:07:59.83 ID:ZRQ5aKKDo
完結おめ、お疲れ様でした。

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