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ハルユキ「妹?」

1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/07(土) 15:15:41.05 ID:4zu4Pbnvo
学校から帰ると、珍しく母親が帰ってきていた。

「母さん、今日はやけに早いんだね」

ハルユキはそう告げると、冷蔵庫から麦茶を取り出し、コップへ注ぐ。

「ハルユキ、今日は大事な話があって」

「大事な話って?」

「とりあえず聞いて」

「うん」

軽く返事をし、麦茶を口に含む。

「妹、欲しくない?」


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2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/07(土) 15:16:48.80 ID:4zu4Pbnvo
ブーーーー!

あまりにも突拍子もない母親の発言に、麦茶を噴き出すハルユキ。

「か、か、かあさん!それって……妊娠?ていうか、父親……」

「はぁ?何バカな事言ってるの。それより、その床を拭きなさい」

「ゴメンなさい」

「あのね、今度会社の上級職に上がるチャンスがあるんだけど、その中で社会貢献プログラムってのがあるの」

「うん。それで?」

「それで……養子を迎え入れようと思うの」

「へぇ……って!それが年下の女の子?」

「そう。だから一応ハルユキには先に言っておこうと思って」

「うん……」

「嫌?」

「あ、良いとか悪いとか、す、直ぐには答えられないよ」

「そうよね。でもね、母さんの出世の為にも良く考えて欲しいの。如いては、ハルユキの将来の為でもあるから」

「う、うん……前向きに考えるよ」

ハルユキは雑巾で床を拭きつつ、多方向に考えを張り巡らせる。

(妹かぁ……)
3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/07(土) 15:18:13.81 ID:4zu4Pbnvo
「で、明日家族面談するから、夕方5時には帰宅しておいてね」

「あ、明日!?」

(相変わらず何でも自分のペースで決めちゃう人だな。それで考えてとか……)

その夜のハルユキは、何をやっても手に付かない状態だった。



~翌日~

早朝のラウンジに向かうと、いつもの様に黒雪姫が居た。

「おはようございます。今日も早いんですね」

「おはよう、ハルユキ君。何度も言っているだろう、君を待たせるより君を待ちたい。とな」

先輩のストレートな発言にハルユキは少しモジモジとする。

「ところで昨夜は参戦しなかったようだな?」

「はい。少し家庭の事情で色々とありまして……」

「ふーん。幾ら私と君の関係でも個人のプライベートまでは踏み込めないので聞かないでおく」

「あ、別にそんな大した事ではないんですが……あの……その……」

「ん?どうした?」

「あの、その、妹が出来るみたいなんです……はい」

「妹?」

「母さんが上級職に就く為に、社会貢献プログラムの一環として養子を取るんです」

「ほう……妹か。で、それはどんな子なんだい?」

「それが、まだ知らなくて。今日会う事に」

「……」
4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/07(土) 15:20:02.27 ID:4zu4Pbnvo
黒雪姫は日の射す窓を見つめる。

「あの、先輩?」

「いや、別に。ただ、ハルユキ君が他の女と住むと思うとな、何故か複雑な気分になる」

「一応『妹』になる訳ですから!」

「まぁそうだが……な」

「すみません、こんな話しちゃって」

「いや、こちらこそ悪かった。もし妹が出来たら是非私に紹介してくれよ、ハルユキ君」

「はい!勿論、喜んで」

「あと……妹が出来た記念のパーティーも」

「ええ、勿論。タクやチユも―――みんな呼んで盛大にやりましょう」

「それに上手く行けば、君の『子』になるかも知れない。一番近いリアルになるからな」

「それって、ブレイン・バーストの事ですよね」

「そうだ。君は今レベル……」

「6です」

「そうだったな」

「これも先輩のおかげです」

「いや、君が頑張ったからこそだ」

「ありがとうございます」

「では、また詳細を聞かせて貰おう、ほら早く飲まないと冷めてしまうぞ?」

「はい!いただきます」

そして、学校が終わり、『妹』に逢う時間が刻一刻と迫った。
5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/07(土) 15:20:40.53 ID:4zu4Pbnvo
~自宅~

帰宅し、ドアを開けるとリビングから声が聞こえる。

母親と男性の話声。

(第一印象が大事だ!ここは元気よく行こう!)

「ただいまー」と元気に声を出し、ドアを開ける。

「ハルユキ、遅かったわね」

「初めまして。社会福祉センターの川原と申します」

「ハルユキ、挨拶しなさい」

そんな母親の声など、右の耳から入り、左の耳から放出されていた。

視点は一点集中。

初老の社会福祉センターの男性の向こうに座る女の子に釘付けとなる。

「ハルユキ?」

全てが凍りつき、指先すら動かせない。

そんな空気を破壊するかのように小さな女の子が挨拶を始めた。
6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/07(土) 15:27:59.27 ID:4zu4Pbnvo
「初めまして。上月由仁子と申します」

とっさに小さく口の中で僕はコマンドを唱えていた。

彼女もそれに合わせるように……

「「バーストリンク」」


「よう、クロウ。久しぶりだな!」

「スカーレット・レイ……ニコ!ど、ど、どうして?」

「仕方ねぇだろ、養子希望調査があってよ。面倒なんで兄が欲しいと書いたら―――」

「書いたら?」

「たまたま条件の合う家が養子を欲しがってた訳だ」

「ええ!たったそれだけでうちなのか……」

「まっ、他にも色々書いたけどな。心配するな、面接だけ済ませて、あとで嫌だと言えば良いだけだからな」

「あ、うん……」

「それにお前は嫌だろ?」

「あ、いや、別に嫌って事は無いよ。妹とか憧れるし」

「はぁ?何考えてんだこのド変態野郎!」

「べ、別に何も変な事は考えてないよ」

「どうだか」

「ぼ、僕は……ニコがいいなら。いや、ニコなら妹でも」

「ば、ば、馬鹿の事言うな!」

「本当だよ!」

「あのなぁ、赤の王と黒の王の直属、それも『子』が同居なんてありえないだろ!」
7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/07(土) 15:28:47.49 ID:4zu4Pbnvo
「ふぇ?それって問題なの?」

「当り前だろうが!」

「そうかな?というか、今までも何度かここで泊まった訳だし」

「それとこれとは別問題だ!」

「でも……」

「でももへったくれも有るか!とりあえず全力でこの話、潰す!」

「あ、待って!」

「ん?なんだよ」

「ニコは僕の……僕の妹になるのは嫌なのかな」

「あ、あったりめーだ!」

「そっか。それは残念だよ。僕はニコなら本当の妹でも良かったと思ってたから」

「な!もうそれ以上言うんじゃねぇ!」

元々赤い顔をもっと赤くして怒るスカーレット・レインにシルバー・クロウはうつむき加減で

「ゴメン」

と呟いた。

そして、解除コマンドを唱える。

「「バーストアウト」」
8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/07(土) 15:29:43.40 ID:4zu4Pbnvo
「初めまして、有田春雪です」

「宜しくお願いしますね、『ハルユキさん』」

「良かったら、君たち同士で話してみたらどうかな?」

川原はそう告げて、僕とニコを僕の別の部屋へ行かせようとする。

「ハルユキ、母さんは大事な話を進めるので、自室で話でもゲームでもしてなさい」

厄介払いされるように僕達はリビングから出て、自室に向かった。


~自室~

「あー、堅苦しい!」

「まぁ、リラックスして好きにしてよ」

「あったりめーだ!つーの。何か新しい本とかマンガとか無いのかよ?」

「そこの棚に有るけど」

「どれどれ?相変わらずしょっぺぇ本が多いな」

「そ、そんな事無いよ。この『復刻版 電脳コイル』はお薦めだよ」

「電脳コイルはもう読んだ。まぁまぁの内容だったな」

「じゃ、こっちは?」

「ん?おお!どこで手に入れたんだよ?」

「それ、再版されたんだよ」

「マジか?」

「うん。つい、ネットショッピングでポチっと」

「ポチっとねぇ」

「ソードアート・オンラインは名作だよ」

「名作ねぇ」

「良かったら貸しておくから」

「そうかい。ならちょっと……ていうか、そんな事より―――」
9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/07(土) 15:30:27.63 ID:4zu4Pbnvo
「ニコ、最近はどうなの?」

「何が?」

「BBだよ」

「別に何ら変わりねぇよ。あの女も全然動きを見せねぇじゃねーか」

「最近は領土の拡張もできたし、他のレギオンとも、そう諍いが起きる訳じゃないし」

「それが問題だろ。あの女はLv10を目指してんだろ?」

「うん。まぁ、そうだけど」

「いつ動いてもおかしくは無い。そう推測してんぜ、他の奴らは」

「その件に関しては、色々と含むところが有るみたいだけど、僕達にはさっぱり」

「そうかい。ま、あの黒の事だ、腹ん中でどろっどろの奇策でも考えているかもな」

「そんな事は無いよ。多分……」

「まぁいいわ。どっちにしろ、負ける気などしねぇ」

「そっか」

「ところでよ、そろそろ始めるか?」

「何を?」

「デュエル、それもリアルでデュエル」

「はぁ?」
10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/07(土) 18:05:54.78 ID:4zu4Pbnvo
「何もガチでやろうと言ってる訳じゃない。ちょっと口げんかのフリでもすれば、気が合わないって思われるだろ」

「それはそうだけど……」

「なんだよ?」

「ねぇニコ。あのさぁ……ニコは家族欲しくないの?」

「それは―――」

少しの間を置き、ニコは言葉を続ける。

「前にも言っただろ、BBはリアルを薄めるんだよ」

「だから?」

「だから、どうでも良いんだよ、リアルの事なんて」

「そうかな?」

「なんだよ、ハッキリ言いやがれ」

「僕は……僕はバーストアウトする度に寂しいと感じるんだ」
11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/07(土) 18:06:41.51 ID:4zu4Pbnvo
「はぁ?なんだよそれ?私には全っ然っわっかんねぇ」

「あのさ、いつもバーストアウトすると、誰も居ないこの部屋が寂しく感じるんだ」

「ふーん」

「でね、もしも、もしもだよ。そんな時に誰かが一緒に居れば……」

「甘いわ、ボケ」

「ボケって……」

「私とお前が『お兄ちゃん、今日はとっても楽しかったね、黒の王を追い詰めて』とか言うのかよ」

「べ、別に先輩を追い詰めなくても……」

「あのな、実際はそうだろ。私もお前も別レギオンで、共闘した事はあっても基本敵対している」

「それはそうだけど」

「んなもん、リアルに戻った瞬間に『てめぇ!よくもさっきはやりやがったな!』ってなんだろ」

「うん。そうなるよね」

「だったら諦め―――」

「いや、僕はそれでもいい。喧嘩する相手も居ないんだからさ」

「ちょ、馬鹿だろお前。変態でボケで馬鹿とは思わなかったわ、いや思ってたけど、ドMも追加だな」

「酷いな。ていうか兄妹げんかしたら僕がやられ役なんだ」

「まぁ、トータルで考えても―――これは無い話だ」
12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/07(土) 18:07:48.15 ID:4zu4Pbnvo
「そっか。なら仕方がない。じゃあ悪者は僕一人で良いよ。僕が嫌だと言えば」

「お前……」

「まぁちょっとは残念だけどね。ニコの焼いたクッキーが超美味かったから、また焼いて貰えると思ったんだけど」

「って、おい!そんな話すんな!」

「結構気に入ってるんだ、ニコの焼いてくれたクッキー」

「んなもん、2回だろ!」

「クロムの時のクッキーは最高に美味かったよ。あの時、ニコが本当の妹なら良かったのに、とも思ったさ」

「そ、そうかよ……」

「仕方がないよね。僕とニコの考え方の違いを整合させようと無理をすればどちらかの負担になる」

「う、うん……」

「だからさ、とりあえず僕に任せて」

「分かった……」

「任せておけって、心配しなくても大丈夫!!ここは兄貴に任せたと思って」

「うん……」

暫くして、母親が僕達をリビングに呼び戻す。
13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/07(土) 18:08:51.86 ID:4zu4Pbnvo
「どうだった?」

「えっと、まぁ何というか、話が合わないというか……」

「そうなの?」と、母親が怪訝な顔をする。

「おや?同じような趣味を持っているので大丈夫だと思ったのですが」と続けて川原。

「由仁子ちゃんは春雪の事、好感持てなかった?」

「いえ、そんな事はありません……私、春雪さんの妹になりたいです!」

(えぇー!ニコ!さっきの話と全然違うじゃないか!)

驚いてハルユキはその場で立ち上る。

「まぁ、由仁子ちゃん。春雪の事、気に入ってくれたのね」

「はい。とても優しそうな人でしたので」

(ニコ、どういうつもりなんだよ!)
14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/07(土) 18:09:17.70 ID:4zu4Pbnvo
「なら話は早いわ。川原さん、手続きお願いできます?」

「はい、早急に致します」

「じゃ、春雪。兄妹の仲を深める為に、今夜は一緒に御飯でも食べてきなさい」

「えっと……母さんは?」

「悪いけど、さっき会社から緊急の用が入ったの。私が居ないと事が進まないって言うから」

「でも」

「由仁子ちゃん、いい?」

「はい、『お母様』」

「まぁ!でも、そう堅苦しく呼ばなくてもいいわよ。お母さんで良いからね」

「はいっ!お母さん」

「じゃ、春雪。帰りはちゃんと送って行きなさいね」

「はい……」

「じゃ、行ってきますね、お母さん。『お兄ちゃん』行こうよ!」

「あ、うん……」

僕らは家を出て近くのファーストフードへと向かった。

勿論、終始無言で。
17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/07(土) 19:22:03.39 ID:4zu4Pbnvo
「ニコ、どういう心算なんだ!」

「別に。気が変わっただけだ」

「気が変わったって……」

「何となく面白そうだったからな」

「何が?」

「色々。そんな事より、何食べる?お兄ちゃん」

「くっ!」

(ニコの『お兄ちゃん』ってある意味、必殺技だよ、本当に)

「で、一緒に住む訳だが、条件が有る」

「条件って……」

「リアルとBBの取り決めだ」

「あ、うん」
19: 18訂正 2012/07/07(土) 19:23:53.25 ID:4zu4Pbnvo
「リアルでは『風呂は覗くな』ぐらいだけどな」

「ええー」

「お前、覗く気満々かよ……今度あっちで3回ぐらい殺すぞ?」

「ごめんなさい。ていうか、先に入ったのはニコの方―――」

「あ゙ぁ゙?」

「ご、ごめん!」

「BBの件だけどな、私とは不交戦協定だ」

「当り前じゃないか!というか、僕が殺される」

「あと、お前がその気なら、赤のレギオンに来ないか?」

「あ、それ無理。絶対に無理」

「だろうな。そうだと思った」

「それだけは絶対に出来ない!」

『本当にダメ?お兄ちゃん』

「くっ……だ、だめー!」
21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/07(土) 19:24:52.99 ID:4zu4Pbnvo
「チッ」

「チッって……」

「まぁ、その他は今まで通りでいい。全て今まで通り」

「あ、うん」

「あ、そうそう。リアルでの追加注文な」

「何?」

「あの女を家に来させるときは私に一報しろよ」

「うん。でも何で?」

「そりゃ、あの女の事だ、私がお前の妹になったと知ったら、どうなる事やら」

「うっ……」

「家の中でどちらかがポイント全損するまで戦うかも知んねぇし」

「それは僕から―――」

「だから、心構えって奴よ」

「―――出来たら、戦わないでほしいんだけど」

「それは、あの女に言うべきだな」

「うん」

「それと―――」
22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/07(土) 19:26:10.49 ID:4zu4Pbnvo
「それと?」

「万が一、私がポイント全損になってもお前とはいつまでも遊べるからな」

「えっ?」

「覚えてるだろ?全損したらニューロリンカーにあるアドレスに連絡って話」

「勿論だよ」

「リアル兄弟なら、そんな心配もいらねぇからな。あの約束がさぁ、ついついOKしてしまったんだよ」

「ニコ!」

「別にお兄ちゃんが心配でOKしたんじゃないんだからね!」

(うぐぅ……死ねる)

「他にも心意システムの訓練だったいつだって出来るようになるし、願ったり叶ったりだろ?」

「あ、うん、まぁ」

「さぁ、食べようぜ。食べたら今夜は泊まりだ!お前の秘蔵コレクションを漁らせて貰うから」

「終わった……また終わった、本当に終わった」

「そんな顔すんなよ、この先ずっと一緒なんだぜ?楽しもうぜ、こっちでは」

「うん」

齧り付いたハンバーガの味も分からないまま、ハルユキは食事を終え、ニコと二人帰宅した。
23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/07(土) 19:27:21.24 ID:4zu4Pbnvo
~翌日~

昨日は秘蔵以上の最上級機密までもニコに探られ、結局殆ど眠れなかった。

ニコは朝一番のバスに乗り、帰宅した。

その足で、少し早いが学校に行き、ラウンジで黒雪姫を待つ。

暫くし、黒雪姫がハルユキを見つけ、若干歩みを加速させる。

「おはよう、ハルユキ君。待たせたかな?」

「いえ、僕も今来たばかりです」

「そうか」

「すみません、何か悪い事をしたみたいで」

「否、私も新たな発見をしたよ。君に迎えられる朝はいつも以上に気持ちが良い」

「はぁ……」

「ところで、昨日はどうだった?」

「あの、それが……ですね」

「ん?どうした?」

「まぁ何というか。話は上手くついたというか、決定しました」

「おめでとう。良かったじゃないか、妹君が出来て」

「その事なんですが、えっと、ははは……」

ハルユキはテーブルの上のカップを見つめ黙りこむ。
24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/07(土) 19:29:04.82 ID:4zu4Pbnvo
「なんだ?どうした?君らしくもない。私には何でも遠慮なく言いたまえ」

「えっとですね、妹ですが……」

「うん」

「ニコ」

「は?今何と?」

「ニコです」

「冗談は―――」

「養子に来るのはニコ、赤の王スカーレット・レインなんです!」

一瞬空気が張り詰める。

そっと頭を持ち上げ、黒雪姫の顔を見上げる。

一文字にきつく結ばれた唇が微かに動く。

「わ、私はまだ夢を見ているようだ。うん、これは夢だ。どうりでおかしいと思った。ハルユキ君が先に来ているなど―――」

「先輩!夢じゃないんです、夢じゃ……」

その言葉に黒雪姫は立ち上り、踵を返しラウンジから立ち去る。

「あっ!先輩」

来た時よりもさらに歩みを加速させ、ハルユキの視界から消えてしまった。

(ああ、やっぱりこうなるんだ……どうしよう)
25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/07(土) 19:29:49.77 ID:4zu4Pbnvo
ハルユキはラウンジから離れ、教室に向かう。

丁度、登校してきたタクムとチユリと出くわす。

「「おはよー、ハル」」

「直ぐに屋上まで来てくれ!」

ハルユキはタクとチユの手を掴み、出せる全力で階段を上る。

「どうしたんだい?」

「いいから早く!」
26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/07(土) 19:30:54.79 ID:4zu4Pbnvo
「―――という事なんだ」

「……」

「……」

「なんだよ!二人とも。何とか言ってくれよ」

「御愁傷様」

「アーメン」

「なんだよ!僕は死んでしまったのかよ!」

「マスターとの関係も終わりか……」

「絶対に100回は殺されてポイント全損だよね」

「そんなぁ~」

「いや、今のは冗談だけど、その話は本当なのかい?」

「本当さ、タクやチユに嘘をついてどうすんだよ!」

「そっか。でもまぁ、リアルで親が決めた事なら仕方がない気がする」

「だよね。赤の王との密約が無ければ、黒雪姫先輩も分かってくれるんじゃないかな?」

「そうさ。赤の王は敵対レギオンのマスターではあるが、うちのマスターとは上手くやっている訳だし」

「で、ニコちゃんはいつ来るの?」

「今週の土曜日に」

「じゃ、土曜日は歓迎会しなくっちゃ」

「チユ。お前はどうしてそう楽観的なんだ?」

「楽観的?どうしてそんな事言うかな?ハルに妹が出来たんだよ?嬉しい事じゃない」

「うんうん。BBの事は別として、赤の王もハルが嫌いなら養子に来たりはしないさ」

「でも……」

「大丈夫。黒雪姫先輩には私がちゃんと話しておくから」

「チユ……任せていいの?」

「うん。大丈夫!」

「僕も最大限の協力をするよ」

幼なじみ二人に安心を与えられ少し安堵するも、翌日からラウンジで黒雪姫を見かける事はなかった。
31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 00:45:58.65 ID:85NveNaio
~土曜日~

早朝からチユとタクムがやってきて、部屋の飾り付けを始めた。

少し遅れて謡がやってくる。

【UI> おはようございます】

「おはよう」

【UI> ニコさんは?】

「12時頃来る予定だよ」

【UI> しかし驚きです。まさかあの赤の王が妹さんになられるなんて。大出世ですね】

「あはは……」

ピロン!

表玄関の呼び鈴と連動したニューロリンカーからポップアップウィンドが出る。

来客を確認し、開錠する。
32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 00:47:06.18 ID:85NveNaio
「やぁ、来てくれたんだ」

「えっと……おはようございます」

「ごめんね、急な話で」

「いえ、私的にはラッキーな話ですから」

「え?どういう事」

「ライバルというか、競合相手が一つ消えたって事です」

「ん?はぁ……良く分かんないけど……」

「分かってくれないと困るのですが?」

そう言いながら、ハルユキの最短距離に顔を近づける。

「あの……綸ちゃん、その、あの、みんないるから」

日下部綸、ハルユキの好敵手アッシュローラーその人である。

そして、黒雪姫に続き、ハルユキに告白した正真正銘の「女性」である。

「噂によれば、黒雪姫さんも少しヘソを曲げられているとか……」

「誰に聞いたんだよ……チユか!」

「ん?何?呼んだ?」

「あー、何でもない!」

振り向いたチユリに両手を振りながら話をごまかす。
33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 00:48:00.66 ID:85NveNaio
「赤の王が妹、それが気に入らなくてマスターが貴方から離れるなら私、大チャンスですよね?」

「あの、その……ですよねー、あははは……」

「私、諦めていませんから」

「はぁ」

「ハル、話は程々にして準備準備」

タクムに助け船を出され、準備作業に戻る。

「ところで、お母さんは居ないのかい?」

「そうなんだよ、タク。昨日のうちにセンターで会って話し合ったから、今日は仕事に行くって」

「何というか、ハルのお母さんらしいや」

「まぁ、歓迎会するって言ったら、『お兄ちゃんの自覚が早速出来て嬉しいわ』だって」

「良かったじゃない、お母さんを安心させられるっていいことだよ」

「まぁそうだけど」

「僕の母さんも色々心配してたけど、大丈夫そうだね」

タクムは軽く微笑み、ハルユキの肩をポンと叩いた。

その後、少し遅れて楓子がやってきた。
34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 00:49:37.92 ID:85NveNaio
正午きっかり、来客を知らせる呼び鈴。

ニューロリンカーのウィンドには見覚えのある女性が映っている。

「はい、今開けます」

玄関まで迎えに行くと、そこには赤の王スカーレット・レインこと上月由仁子とブラッド・レパードことパドが荷物を抱えていた。

「さぁ入って」

ニコは終始無言で、パドは軽く会釈し「yr」とだけ呟いた。

「パドさんが乗せてきてくれたんですね」

「y」

「そうだと思ってちゃんと人数分の料理とかケーキ用意していますからね!」

「thx」

少し浮かれ気味のハルユキに対し、プロミネンスの二人は完全に警戒モードに入っている。

アッシュ・ローラーを除けば、ここに居るのはネガ・ネビュラスのメンバーばかりだから仕方があるまい。

リビングのドアを開けると―――
35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 00:50:27.37 ID:85NveNaio
「おめでとう!ニコ!」

と全員がクラッカーを鳴らし歓迎する。

「って……ここまですんな!大してめでてぇ話じゃねえし」

「いいじゃない。それにそんなに警戒しなくても大丈夫よ」

楓子の言葉に辺りを見回すニコ。

「何だ、黒いのが居ないじゃないか」

そう呟くと、テーブルの上座に着く。

その脇にレパードが着席する。

「さっきから連絡してるんだけど、繋がらなくて」

心配そうにチユリがリンカーを操作しながら呟く。

「大丈夫、必ず来るから」

楓子がそう小さく呟くと、全員着席した。
36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 00:51:18.23 ID:85NveNaio
「しっかし、おめーらも暇だな。別にこんな事してくれなくてもいいのによ」

「ニコちゃん、今日はニコちゃんの為でもあるし、ハルの為でもあるんだよ」

「ちゃんとか付けんな。ニコでいいんだよ、ニコで」

「ゴメンね」

チユリが小さく首を竦めると、タクムが乾杯をしようとジュースを注ぎ始める。

「おい、ところで―――そこのお前、誰だ?」

ニコは綸を指さし、ふんぞり返り声を掛ける。

「あーそっか、初めてだよね」

タクムが綸を紹介しようとするとニコが遮る。

「前回のカレーパーティーには居なかっただろ?新人か?」

「いえ、私は……アッシュ・ローラーこと日下部綸と申します」

「アッシュ・ローラー?だと?」

「はい」

「おい、どういう事だ」

「何が?」

「何がじゃねーだろ、クロウ!」

「はい?」
37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 00:52:37.84 ID:85NveNaio
「アッシュローラーと言えば、緑のレギオンの面子でお前の敵だろうが!」

「そうだけど?」

「そうだけどって……お前の所のレギオンはどうなってんだ!?」

「別にレギオンが違ってもいいじゃない。友達なんだし」

「おめぇはそれでいいかも知れないが、私のリアルはどうすんだよ!!」

「ああ、大丈夫。絶対に漏らしたりしないから。それにニコだってレギオン違いだけど、うちとは上手くやってるじゃないか」

「それは災禍の鎧の件で……それと、アッシュ・ローラーって、もっと厳つい野郎だろう」

「うーん、それも色々あって、不一致なんだ」

「信用しろってか?」

「今はそれだけしか言えない。ただ、僕を信用してくれないかな?兄妹として」

「ふんっ、こんな時にそんなのを切り札に使うな。あと、なんでそいつはお前の服を掴んでんだ?」

「そりゃあ、ニコが怖いからだろ。もっと優しくしてやってよ」

「べ、別に怖がらせようなんて―――つか、お前等どういう関係だ?正直に言ってみろや」

「いや、だから、その……」

ハルユキの言葉を遮り、綸が話す。

「今後ともよろしくお願いします。もしかすると、私の妹になるかもしれない赤の王さん」

瞬時に場の空気が凍る。

が、ニコの大笑いで溶ける。
38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 00:54:31.66 ID:85NveNaio
「あっはっは!これは何の余興なの『お゙兄゙ぢゃん』」

「ニコ……顔が怖いよ」

「あたりめぇだろ!兄貴が出来た途端に今度は姉とか……」

「冗談ではなんです、私、ハルユキさんの事、慕ってますので」

薄々は気付いていたレギオンのメンバーも、流石にこうもハッキリ宣言されると再び凍りつく。

いや、怒りを具現化したオーラも所々から発せられている。

「あー、もーどうでもいいわ。しっかし、うちの『お兄ちゃん』はそんなにモテるのか?」

「ニコ、そんな事無いよ」とハルユキが言い訳すると、

「ファンは多いですからね、BBでも」と楓子が付け加える。

「この丸っこい人畜無害なのがねぇ」

「w」

レパードが小さく笑ったところで、チユリが

「今日は前回約束した、ペスカトーレだからね!」

と、立ち上り料理を取りに自宅へ戻る。

その言葉にニコは小さく笑い、もう一度、今度は深く椅子に腰かけた。
39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 00:56:18.45 ID:85NveNaio
「チユママのペスカトーレは本当に美味いんだぜ」

「へー、ま、期待せずにまっとくわ」

「うんうん」

「ところで、あの女は御機嫌斜めか?まぁ仕方がねぇ。逆の立場なら私だって拒むかもな」

「そんな事無いよ。必ずマスターは来ます」

「どうだか。ハカセ、賭けでもするか?500BPぐらい賭けてもいいぜ」

「いやいや、この勝負、賭ける前から僕の勝ちですよ。チーちゃんが戻ってきたようだし」

リンカーで連絡を受けたタクムは立ち上り、ドアを開けに廊下に出る。

何やら表で話声がする。

「タク、どうした?」

ハルユキが心配して玄関に出ると……漆黒のドレスを纏った黒雪姫が凛と立っていた。

「やぁ、遅れてすまんな。少し探し物をしていて」

「丁度、エレベーターで乗り合わせてね」

少し興奮気味にチユリが話す。

「あ、いや、良く来てくれました」

「来ないと思ったか?」

「いえ……」

「私の大事な人に妹が出来たのだ、祝福しないでどうする」

「先輩!」

左手に鉢植えを抱え、黒雪姫がリビングに入るとすぐさまニコが反応した。
40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 00:56:58.95 ID:85NveNaio
「よぅ黒いの、来ないかと思ったぜ」

「赤いの……いや、今日からはハルユキ君の妹なので、私もニコと呼ばせて貰う。ニコ、これからもよろしく」

「あ、う、お、おう」

「これは私からのプレゼントだ。受け取りたまえ」

小さな赤い花を付けた鉢植えが手渡される。

「何だよこれ」

「アカバナルリハコベだ。ニコのアバターネーム、スカーレット色の花だ」

「そ、そりゃどうも」

「ちなみに花言葉は『変わり身』だ」

「変わり身ねぇ」

「今日のニコにはぴったりだろう」

「そうだな。有難く戴いておくよ」

「ああ」

何か起こるのではないかと心配した周囲は、それが杞憂に終わり一安心した。
41: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 00:57:48.84 ID:85NveNaio
が……

「ところでハルユキ君、私の席だが」

「えっと、こちらに」

「っ」

一瞬、黒雪姫の顔が強張る。

いつもならハルユキの左右に陣取る二人―――黒雪姫と綸だが、今日は兄妹が並ぶ。

そうなるとハルユキの片側は必然的に埋まる。

空いた片側には……既に綸が座っている。

よって、黒雪姫は綸の隣となる。

「あの……えっと……」

おどおどするハルユキにニコが声を掛ける。

「別に兄妹並ぶ必要もない。それよりも今日は隣に座ってくれないか、黒の王」

低い声でニコが提案すると黒雪姫はニコの隣に座る。

ハルユキと綸は一つ席をずらし、問題は解消した。

テーブルの中央にチユが大皿を置く。

「ママの特製ペスカトーレですよ!」

テーブルから良い香りが漂う。

それを取り分け、ハルユキの挨拶、ニコの挨拶のあと、タクムが乾杯の音頭を取り、パーティーは始まった。
42: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 00:59:14.24 ID:85NveNaio
美味しい物を目の前にすれば、たとえ王と言えど「普通の人」となる。

和気藹藹と特製ペスカトーレを平らげ、ケーキを切り分け、本当の友達の様に話し合う。

「しっかしあれだな、黒のレギオンはいつもこうなのか?」

「まぁ領土戦をここでやる場合はね。終わったらパーティーをする事も有りますね」と楓子が返答すると

「羨ましいです」と日下部綸が口をはさむ。

「ところでアッシュローラーは違うレギオンなのに、なんで黒の連中と仲が良いんだ、?」

「えっと……それは」

「はーい、それは私が親だからです」

「スカイレイカー、お前が親なら尚更だろ。黒に入れるべきだろ!」

「いいえ、同じレギオンだとクロウvsローラーが楽しめないじゃないですか」

「はぁ?」

「それに、複雑な乙女の事情もあるのですよ」

「事情ねぇ……ここは事情持ちばっかだな。おっと、BB自体そうだったな」

「そうだ。だからこそ、我々は強く結ばれるのだ、赤の……ニコ」

「そうかい」

「ところで、黒の王として赤の王に話が有る」

「ん?いいぜ、なんなりと。こっちも丁度話そうと思ってたところだ」
43: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 01:01:27.06 ID:85NveNaio
「君はハルユキ君と一つ屋根の下で暮らす訳だが、ハルユキ君を赤に引き抜いたりしないでくれたまえ。先程の話じゃそうなりえる」

「分かってるよ。それどころか、こいつに一つ屋根の下で住む条件に移籍を促したら見事に断られたぜ。美しい子弟関係だな」

「そうか。もう一つ、私は今後ともハルユキ君に会いにここに来るが、咎めないでくれよ」

「ああ、それも分かってる。ただ、事前に私も知る権利はある」

「いいだろ」

「それ以外は今までどおりだ。別にああだこうだ言う気も無けりゃ、聞く耳ももたねぇ」

「そうか。それなら安心だ」

「話はそれだけか?」

「そうだな。あとは間違っても一緒に風呂に入ったり、一緒に寝たりするな」

「それは約束できねぇな」

「なに!」

「こっちが断ってもクロウが入ってくるかも知んねぇぜ?」

「ハルユキ君」

「はい!しません!絶対にしません!」

「そうか、なら安心だ」

緊張した面持ちのメンバーも話し合いが平穏に終わり、一安心といった顔に変わる。

その夜は遅くまでハルユキのゲームコレクションを引っ張りだし、みんなでやったのは言うまでもない。

この幸せが延々と続くと誰もが錯覚するほどに。
44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 01:12:44.88 ID:85NveNaio
明け方、ハルユキがふと目を覚ますと、窓辺に佇む黒雪姫が居た。

「先輩?」

「やぁ、ハルユキ君、おはよう」

「おはようって時間でも無いのですが」

「少し話そうか」

「はい」

「この一週間、すまなかった」

「え?」

「朝のラウンジだ」

「はぁ」

「私もまだまだ子供だな。頭では理解しているのだが―――心が理解しようとしない」

「いえ、そんな。こっちこそスミマセン」

「君が謝る事は無い」

「でも」

「本当にすまなかった」

黒雪姫はハルユキの頬を撫でる様に触り、そして……
45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 01:14:01.63 ID:85NveNaio
「必ず自分の中でケリを付ける。が、私もそう強い心を持っている訳ではないから、君を困らせるかも知れない」

「はい」

「我慢―――許してくれるか?」

「勿論です」

「そうか。やはり君は優しいな」

「……」

「私は絶対に君を裏切らない」

「僕もです」

「そうか、それを聞いて安心したよ。では、寝なおすとするか」

「はい。それじゃ……」

「ハルユキ君、腕枕の一つもしてくれないのか?君は」

「え?!えぇぇっと……無理!無理です!」

「ははは、君は本当に素直で正直だな。では、元の所で寝るとするよ」

「すみません」

「それじゃ、おやすみ」

「お休みなさい」

窓の外は、黒から紫に、そして青に変わろうとしていた。

ただ、ハルユキの頬は夕焼けの様に真っ赤であったが・・・・・・
46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 01:15:24.49 ID:85NveNaio
~2ヵ月後~

「いってきまーす」

「いってきます」

二人で自宅を出て途中まで一緒に通学する。

ニコは養子と同時に、ハルユキの学校の系列である松乃木学園初等部に編入した。

「学校は慣れた?」

「まぁな。というか、何だよアレ、飼育部ってのは!」

「嫌なの?」

「嫌じゃねーけど」

「メイさんと同じ学校だし、知った顔だし、帰りはまた一緒に帰られるし」

「お前、本当にそれでいいのかよ?」

「え?」

「黒の王と帰ったりしないのか?」

「ああ、先輩は元々生徒会の方が忙しいから一緒に帰るのは少ないんだ」

「そうかい」

「うん。それに……」

「それに?」

「あ、いや。何でもない。じゃ、気を付けて行ってこいよ、ニコ」

「うん、お兄ちゃんも気を付けてね」

手を振り、ニコと別れ、学校に到着する。

今までは朝のラウンジに直行する事が多かったが、最近は教室に向う。

それは―――ここ数日、ラウンジに黒雪姫が再び来なくなってしまったからだ。
47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 01:15:56.52 ID:85NveNaio
「おはよータク」

「おはよう、ハル」

「昨日のアッシュ戦は凄かったねぇ」

「何だよ、見てたのかよ」

「そりゃ誰だって見るさ」

「本当に驚いたよ、またバイクがパワーアップしてたからな」

「アッシュさん、Lv7になったんだろ?」

「うん、ここ最近物凄いペースだよな」

「別に驚く事もないけど」

「え?」

「そりゃそうさ、ハルだってLv7になっただろ」

「まぁ、僕の場合は……」

「ハルの加速にアッシュさんも追いつこうと必死なんじゃないかな?」

「そうなのかな」

「きっとそうさ」
48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 01:17:23.16 ID:85NveNaio
~放課後~

「ふぅ、終わった」

飼育小屋の掃除を先に済ませ、謡とニコが来るのを待つ。

【UI>こんにちは】

「ただいま、お兄ちゃん」

少し休憩していると、二人がやってくる。

「今日も御苦労様、お兄ちゃん。はい」

ニコからドリンクボトルを受け取り、飲み干す。

謡が餌を与えている間、ハルユキとニコは外で待つ。

終わると、日報にサインし、施錠し帰宅する。

3人で途中まで歩き、謡を見送った後、マンション下のスーパーで買い物し、晩ごはんを作り食べる。

「今日も穏やかな一日だったなぁ(先輩に会えなかったのは残念だけど。。。)」
49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 01:18:41.42 ID:85NveNaio
「なに寛いでんだ?さぁ、始めるぜ」

「あ、うん」

ここ最近は日課のように、ニコとBBへ。

それも無制限中立フィールドへのダイブ。

「「アンリミテッド・バースト」」
50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 01:19:31.71 ID:85NveNaio
「ようクロウ、さっきぶりだな」

「お、おう?」

「さぁ今日もエネミー見つけて、ガンガン狩るぜ」

「うん」

二人はエネミーを見つけるや否や、即攻撃開始。

その派手さに周囲5km以内の者は誰もが気付く。

しかし、Lv9の不動要塞とLv7の飛行型アバターがドンパチやっている訳で、

眺める事はあっても近寄ったり、攻撃する事は無い。

レッサーなら15分、ワイルドですら60分と掛からない。

「今日のノルマはこんなもんか」

「はぁはぁ。ニコ、超疲れたよ」

「何言ってやがるんだ。あと30体ぐらい倒してもいいんだぜ?」

「30体って……」

「まぁいいわ。さてと……」

「ん?」

「クロウ、もうそろそろLv8へ上がるだけのポイントは貯まったか?」

「あ、いや、まだだよ」

「えー、まだかよ。お前、通常対戦でどんだけポイント漏らしてんだよ」

「あはは……」

「しょうがねぇな、一旦出るぞ」

「うん……」
51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 01:20:30.20 ID:85NveNaio
~リビング~

「今日も楽しかったね、お兄ちゃん」

「楽しかった……っていうか、何この体育会系のノリは!」

「しょーがねーじゃん、頼りない兄貴を強くするためだ」

「……」

「心意システムも大事だけど、BB世界じゃLvも必要。看板ってやつさ」

「看板?」

「BBを始めた当初、格上の敵だと気が引けただろ?」

「うん、まぁ」

「それはいつまで経ってもそうなのさ。今のお前は実際の能力に対し、Lvが低過ぎるんだよ」

「でも……」

「格下にしょっちゅう対戦申し込まれ、連戦で疲れて集中力が低下して負けんだよ」

「はぁ」

「だからある程度のLv、8以上欲を出せば9。それならおいそれとザコは挑んでこねぇ。

それでなくても一度は戦いたい飛行型なんだからよ」
52: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 01:20:59.63 ID:85NveNaio
「そっか」

「ま、いざとなったら私と直接対戦すればいいだけの話だけどな」

「え?」

「2~3発殴られて時間切れになれば一気にポイント上がるだろ?」

「それって……アビューズ行為じゃないか!」

「まぁそうなるな。しかし、どこにも禁止って書かれて無いぜ?」

「そうだけど……」

「レギオンのメンバー同士ならポイントの融通はある事だ」

「でも、その理屈だと僕らは……」

「リアル兄妹、理由にならねぇか?」

「いやそんな事は……」
53: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 01:21:58.34 ID:85NveNaio
「そうそう、これは妹からのお願いと思って聞いてくれ」

「うん」

「万が一 ――― 誰にも負けねぇ自信はあるが、私が他の王に倒されたら仇を取ってくれ」

「え?」

「その為にはLv9でないと意味がねぇ」

「あ、うん」

「だからLv9になれ。それと、その仇相手が黒の王であってもな」

「それは……」

「黒は別か?」

「僕は―――先輩を裏切らないと決めたんだ」

「裏切り?」

「そうさ、いつまでも付いて行くって」

「だからって、妹の仇も取れないの?お兄ちゃん」

「あ……いや……」

「必ずその日は来る。今の平穏無事な状態がいつまでも続く訳がない」

「そうなの?」

「ああ、きっと来る。私がこの家に来た時の花を覚えているか?」

「なんとかハコベ?」

「アカバナルリハコベだ」

「そう、それ!」

「あれの花言葉は覚えているか?」

「えっと変わり身だっけ?」

「そうさ。それ以外に『約束』『追憶』があんだよ」
54: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 01:22:33.11 ID:85NveNaio
「調べたの?」

「まぁな。それをどう解釈する?」

「え?」

「私が思うに、お前との約束は『追憶』になったと言う意味じゃねーか?」

「追憶って……」

「昔を懐かしむ。お前が子になった頃の事を懐かしく思う。あの女の心変わりを表してんだ」

「でも」

「もう一つ『変化』という意味もあるからな」

「でも、でも、それって偶然だろ!先輩は、先輩は―――」

「最近、黒雪姫と話したか?」

「……」

「お前が避けているのか?それとも」

「そう言われると……」
55: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 01:23:08.48 ID:85NveNaio
「領土戦にも出てこねぇ。きっと動くタイミングを見計らっている」

「そんな……」

「どっちにしろ、有田兄妹は黒の王から始末される」

「考え過ぎだよ!」

「そうかい。お前がそう思うならそれでもいい。でもな……もういいや」

「えっ?」

「お兄ちゃん、お風呂入ってきなよ」

「うん……」
56: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 01:23:52.81 ID:85NveNaio
~浴室~

(はぁ……ニコがあんな事言うから頭ん中グチャグチャだよ)

ハルユキは顔半分まで湯に浸かり、ブクブクと泡を出して考えていた。

(ま、ニコの考え過ぎだろう。それにタクやチユは今までと変わらないし)

(でもLv9かぁ……ニコには言わなかったけどLv8以上へのポイントは十分にある)

(しかし、僕がLv9になるとニコとの心意の練習すら出来なくなるし……他の危険も伴う)

ガチャ

「!!!」

「お兄ちゃん、背中流してあげようか?」

いつか見た事のある、バスタオル1枚の姿でニコが浴室に入ってきた。

「ニ!コ!オ!マ!!!!!」

「ん?何々?覗いちゃダメって言ったけど、一緒に入っちゃダメって言わなかったし」

「ちょ!もう出るから!」
59: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 10:02:15.36 ID:85NveNaio
「まぁ、そういうなよ、クロウ」

ニコは浴槽の縁に腰かけ、ハルユキのニューロリンカーを外す。

「な、何を……」

「あとでこのニューロリンカーも調べてみるか」

「えっ……」

「バックドア仕込んでいてもおかしくは無い」

「それって……」

「監視」

「まさか」

「お前、黒いのと直結はした事あんだろ?」

「うん……でも、考え過ぎだよニコ。それに僕達を監視するって言っても……」

「黒い自称姫の目的は2つだろう。お前の裏切りと―――」

「と?」

「もう一つは、私とお前が越えちゃいけない一線を越えないか、心配してんじゃね?」

「!」
60: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 10:02:47.08 ID:85NveNaio
「あのな、クロウ。これだけはハッキリ言っておくぜ。私もあいつもあっちの世界で過ごした時間は莫大だ」

「うん」

「その間に脳は延々と働く。人格の乖離は前にも教えただろ?」

「えっと、長く向こうに居ると肉体と精神のバランスが合わなくなるって」

「そう、その通り。言っちゃなんだがこう見えても精神年齢は二十歳越えてるんで、私から見ればお前なんてガキ同然だぜ」

「ガキって……」

「だからさ、お前の知らない事もいっぱい知ってるぜ?なんなら教えてやろうか?」

「えっ?」

「オ・ト・ナの世界ってやつを」

「ちょ、ニコ!ま、まって、そんなの……兄妹だし」
61: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 10:03:26.82 ID:85NveNaio
「ばーか!冗談だ。知識は豊富になっても体はガキのまんまだからよ」

「あは、あはは、はは……もう!心臓に悪いよ!」

「それともあれか?少女幼女大好きなのか?」

「ち!ちがう!」

「まぁそうだろうな。Z指定にそういうのは無かったしな」

「はうぅ!」

「ま、そういう事で、あの女も今頃悶々としてるのかもよ?」

「ええええ!」

「ところで、そろそろ入りたいから、詰めろよ」

「あ、ゴメン」

「はぁ、いい湯だな」

「って!ちがーう!もう出る!出るから!」

「はいはい、お兄ちゃん。ちゃんと100まで数えて出ようね」

「……」
62: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 10:04:20.32 ID:85NveNaio
フラフラになり浴室から出る。

着替え終わり、ニューロリンカーを装着するや否や着信を知らせる。

「えっと送り主は……母さん?」

そのメールを開くと無意味な文字列が現れる。

「あっ!」

次の瞬間、アラート無しでファイル操作が高速で行われた。

電源切断は間に合わず、結局そのメールごと消えてしまった。

「お兄ちゃん、どうしたの?」

浴室のドアを少し開けてニコが心配そうに覗きこむ。

「なんかウィルス付きのスパムみたいなのが……」

「ふーん、ついに動いたか。とりあえずメンテモードでリンカーを待機させておけ」

「あ、うん」

暫くし、パジャマ姿のニコがリビングに戻る。

「お母さんからのメールを開けたらファイル操作が始まって瞬時で消えた訳だな」

「うん……セキュリティはスルーしちゃったんだよ」

「となると、最新のウィルスか、かなり高度な技術で作られているかのどちらかだな」

「そんな、今の時代、ウィルスに対しては秒刹レベルなのに」

「世界的に出回る前に、いやお前のニューロリンカー直撃だけの為に作ったとすれば?」

「それは……」

「個体サンプルが無かったりベースコードの流用で書かれてなきゃ、アンチウィルスなんて屁のツッパリにもならねぇよ」

「うん……」

「偽装メールだし……問題は誰が仕込んだか、何を消したかだな」
63: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/08(日) 10:05:27.42 ID:85NveNaio
「えっと……消されたぽいのは無いんだよね」

「一番考えられるのは『バックドア』を消し去ったって事じゃね?」

「ま、まさか!」

「そのまさかが一番濃厚な線だろ。何せ量子暗号化証明タグの名前欄を改変できる奴がいるぐらいだからな」

そう言いながら、ニコはにやりと笑う。

「あっ」

「あいつのスキルは半端ねぇよ」

「じゃ、さっきの話は……」

「間違いねぇな。あとな、言わなかったが、鉢植えの中にも奇妙なチップが入っていたぜ」

「ええ!」

「解析しようとしたら自己破壊しやがった」

「そんなぁ……」

「あの女は―――お前を見限ったと思う」

「うそ……嘘だ!そんなの!」

「じゃ、明日本人に確認したらどうだ?ついでに直結してメモリ内にバックドアのサーバがないか見てくるのも興だぜ?」

「ううう……」

「ま、そう落ち込むな。寝ようぜ、『お兄ちゃん』」

「う、うん……」

その夜、不安に駆られながらもエネミー狩りで疲れていた為、深い眠りについた。
69: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 08:36:14.58 ID:cNnXWaYWo
~翌朝~

エレベーターでチユリと会い、表に出たところでタクムと合流する。

「おはよう、ハル、ニコ。昨日連絡したのに出なかったね」

「ゴメン、タク。ちょっとリンカーの調子が悪くてメンテモードだったんだ」

「そっか。という事は、昨日の事件については知らないんだね?」

「事件?」

「青の王が倒されたという噂が飛び交ってる」

「ええ!マジで?誰に?」

「それが……分からないんだ」

「分からないって」

「目撃者が居ない」

「Lv9の王だろ!」

「考えられるのは2つ。無制限中立フィールドでポイント全損までやられたか、Lv9同士で負けたか」

「なんだって!」

「ふ~ん、そんな事が有ったのかよ」

ハルユキとタクムの話にニコが割って入る。
70: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 08:37:43.58 ID:cNnXWaYWo
「赤の王……ニコは知らなかったのかい?」

「生憎、昨日は私もとっとと寝ちまったからな」

「そう……」

「ま、凡その見当は付くけどな」

「それって……」

ハルユキがニコを見たところでタクムがメガネの縁を持ちあげ、話を続ける。

「マスターが動いたとでも?」

「ま、そう考えるのが妥当だろ。何せ他の王共は不可侵条約が有るし、何より他の王を狩ろうと思ってるいのは、あの女だけだ」

「でも……」

「だから、今日学校で聞けば分かるだろう?」

「聞いたところでマスターが答えてくれるだろうか……」

「ま、私も注意するわ」

「あ、うん」

「じゃあね、お兄ちゃん!また放課後」

「いってらっしゃい」
71: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 08:38:34.92 ID:cNnXWaYWo
ニコが小走りで別れて姿が見えなくなったと同時にハルユキが口を開く。

「昨日、ニューロリンカーにウィルスが送られてね」

「え?」

「ニコが言うには、バックドアが仕掛けられていたんじゃないかって……」

「……」

「あ!別にこれはタクを……」

「分かってるって。それを仕掛けたのは―――」

「うん。ニコは黒雪姫先輩だって。鉢植えからも謎のチップが出て来たとか言ってたし」

「本当に?」

「うん……取りだしたら自己破壊したらしい」

「とりあえず学校に着いたら、マスターに聞いてみる必要はありそうだね」

「うん」

3人は駆け足で学校に向かった。
72: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 08:39:07.21 ID:cNnXWaYWo
早朝のラウンジの一番奥のテーブルに、今日も黒雪姫の姿は無かった。

「教室かな?」

「まだ来てないかも?」

ボイスコールを試みるが繋がらない。

「まだ学校に来ていないみたいだよ」

「じゃあ、昼休みにでも」

「そうだね」

仕方なく3人は教室に向かった。

結局この日、黒雪姫は学校には来なかった。
73: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 08:41:24.95 ID:cNnXWaYWo
放課後、飼育室の掃除をしていると謡がやってくる。

「あれ?ニコは?」

【UI> 今日は急用ができたとか】

「そっか。じゃ、僕らも早く済ませて帰ろうか」

謡は餌をやりながら話始める。

【UI> ところで青の王の事聞きました?】

「あ、うん」

【UI> やったのは―――ロータスさんでしょうか?】

【UI> 皆はそう言ってますが、私には信じられません】

「僕だって信じられないよ」

【UI> 他の王たちも昨日の件から鳴りを潜めているようです】

「そっか……」

【UI> これからどうなってしまうんでしょうね?】

「そんなの僕にも分からないよ」

【UI> ですよね。ゴメンなさい】

「あ、気にしないで。みんな不安なのは一緒だから」

【UI> はい。じゃあ帰りましょうか】

「うん」

二人は施錠の後、いつものように日報にサインし送信する。

【UI> では私はこっちなので】

「気を付けてね」
74: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 08:42:36.53 ID:cNnXWaYWo
謡と別れた直後―――

【HERE COMES A NEW CHALLENGER】

と文字列が浮かび上がり、そして燃え消えた。


「よう、久しぶりだな、シルバー・クロウ!」

「アッシュ・ローラ!」

「HEYHEY!挨拶はその辺でTODAYは俺とLONG TALKと行こうぜ、乗れよ」

そういって、アッシュは自分のバイクの後部座席をサムアップで指示し、シルバー・クロウを誘う。

「うん」

クロウはためらい無く後部座席に腰を下ろす。

その瞬間、アッシュ・ローラーがアクセルを全開しウィリー発進する。

「ヒャッハー!今日はケツが重いからフロントが浮きまくりだぜ」

「ちょ!落ちる!」

「落ちたらFLYしろ」

「ええー」
75: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 08:43:48.38 ID:cNnXWaYWo
「ところでよ、青の件は知ってるか?」

「うん」

「なら話は早い。昨日は中立へ、ザコエネミー狩りに行った訳よ、アンダースタ~ン?」

「んでぇ、そこでLOOKしちまった」

「何を?」

「青の王と―――お前の所の黒の王」

「本当かよ!」

「ああ。これはマジ、TRUEと書いてマジだぜ」

「戦ってたのか!?」

「いや、俺様が見かけた時はそんな雰囲気ではなかった」

「え?」

「何か交渉をしているかのようにも見えたが、自慢じゃねぇけど俺様のマシンはこの音だろ?」

「うん」

「近づいたら逃げられた。つーか、消えちまいやがった」

「そっか」

「でもよぉ、今朝になって青の王の事を聞いて……」

「疑っているのか!」
76: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 08:45:38.59 ID:cNnXWaYWo
「慌てんなよ。俺が言いてぇのはそんな事じゃねぇ。どうでもいい事だ」

「え?」

「この先、お前は誰を守るんだ?」

「え?」

「このまま各レギオンを巻き込んだ戦争になったら。お前は誰を守る」

「そんなの決まってるじゃないか」

「やはり黒の王か」

「当り前だろ」

「じゃあ、スカーレット・レインはどうすんだ?」

「それは……」

「こう言っちゃなんだが、俺とお前は敵対レギオンだから戦う。BUT!万が一うちと黒とが全面戦争になったらお前に付く」

「えっ?」

「可愛い妹が俺をそうさせるのさ!HAHAHA」

「アッシュ……」

「だからよ、クロウ。テメーもテメーの中で決めておけよ。」

「あ、うん……」

「親を取るか、リアルの妹を取るか、はたまた俺様の妹を……おっと別にお前にやる訳じゃナッシーーーーーーング!」

「……」

「始まってからじゃ、おせーんだぜ?」

「分かったよ、アッシュローラー」

「OK!ならTODAYはたっぷり時間が有るからマウントフジ目指そうぜ!イヤッハー!」

「えぇ……」

横浜を抜ける頃、時間切れで引き分け。

しかしアッシュのバイクはただ黙々と富士を目指し疾走した。

座席の上で二人はそれ以上何も話すことなく。
77: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 08:46:57.53 ID:cNnXWaYWo
~自宅~

「ただいま~」

「あ、おかえり、お兄ちゃん」

「ニコ、今日はどうしたんだよ?」

「今日は、クラスの子とちょっと買い物に誘われてね」

「そっか」

「うん」

鞄を置き、冷蔵庫からお茶を取りだそうと扉を開けると、白い小箱を見つける。

「あ、それね、帰りにケーキ買ってきたんだ」

「食べていいの?」

「うん、いいよ。お兄ちゃんの為に買ってきたんだから」

「そっか、ありがとう」

「いいえ、どういたしまして」

「ところで今日はやらないの?」

「何を?」

「なにをって……エネミー狩り」
78: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 08:47:36.97 ID:cNnXWaYWo
「あー、モンスターワールドね、いいよ一緒にやろう」

そういうとニコは立ち上り、リビングのモニターにリンカーを接続しゲームを待機させる。

「え?」

「え?」

「いや、僕が言ってるのはBBの事で」

「BB?なにそれ?」

「おいおい、悪い冗談はやめてくれよ」

「ん?エネミー狩りと言えばこれでしょ?」

「ニコ……まさか……」

「まさか?」

「BBの事……」

「さっきから変だよ、お兄ちゃん。BBってゲームあった?」

ハルユキは暫し考え、呟く。

「バースト・リンク!」

すぐさま対戦ウィンドを開く。

そして唖然とする……
79: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 08:48:07.17 ID:cNnXWaYWo
(ない!スカーレット・レインの名前がない!)

(ということは……ニコは……)

暫し呆然とし、リターンコマンドを唱え復帰する。

「ニコ、ごめん。ちょっと出掛けてくる!」

「あ、うん……あ、お兄ちゃん!」

「ん、何?」

「今日の晩御飯ハンバーグだからね!早く帰って来てよ」

「う、うん」

(どういう事だ!何が有ったんだ!)

ハルユキは自宅を飛び出し、タクムの自宅へ向かった。
80: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 08:48:38.72 ID:cNnXWaYWo
~タクム宅~

「タク!」

「ハル!」

「え?」

「聞いたか!?紫の王が……」

「そんな事より!ニコが!ニコが……ブレインバーストを……」

「え?なにどういう事?」

「ニコが消えちまった……」

「う、嘘……だろ?」

「嘘じゃねえよ!俺がさっき、BBしようぜって言ったら「なにそれ」って」

「……」

「冗談だと思ってリンクしたら……出て来なかったんだ、名前が!」

「そ、そんな……赤の王に続き紫の王も」

「紫の王も!?タク、俺どうしよう……」

「とりあえずマスターに連絡を!」

「あ、うん」

ハルユキはリンカーを操作し、黒雪姫にコールする。
81: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 08:50:36.05 ID:cNnXWaYWo
「私だ」

「せ、先輩!」

「ハルユキ君か、久しぶりだな」

「先輩、今どこに?」

「自宅だが?ここ数日、体調が芳しくなくてな」

「それで学校にも……」

「すまない。朝の件は―――ハッキリ言おう、嫉妬で君の顔を見るのが苦しいのだ」

「ええ……すみません。僕がニコの話をするから……」

暫し無言状態にハルユキは陥る。

「まぁ、その話はまたゆっくりとな。で、何か用なのか?」

「あの、単刀直入に聞きます!青の王、紫の王、赤の王を倒したのは先輩ですか?」

「なに!?」

「え?」

「ハルユキ君、今の話は本当か?」

「し、知らなかったんですか?」

「知るも何も、今聞いたばかりだ!」

「じゃあ、他の王を倒したのは先輩じゃないんですね?」

「当り前だ。もし私が倒したならば、即座に君たちに報告する」

「それじゃあ……」

「残る王、若しくは―――加速研究会」

「ですか」

「そうだ。すまないがハルユキ君、レギオンの皆を集めて私の所へ来てくれないか?」

「わかりました!」
82: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 08:51:06.24 ID:cNnXWaYWo
通話を切り、ハルユキはタクムに事の詳細を告げる。

タクムはすぐさま、各員に連絡を廻す。

30分足らずで、謡と楓子が車でやってきた。

「何かとんでもない事になったようですね」

そう、楓子が飄々と語る。

車に乗り込むと同時にニコへ連絡をし、今日は帰れないかも知れない旨を伝える。

「うん、分かったよ、お兄ちゃん」

少し寂しそうな声が耳に残る。

「じゃあ行くね」

タクム、チユリ、謡、楓子、そしてハルユキを乗せた車は黒雪姫の自宅へ向かった。
83: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:01:46.12 ID:cNnXWaYWo
~黒雪姫宅~

「先輩!」

「やぁハルユキ君、久しぶりだな」

「お久しぶりです。体調はどうですか?」

「なに、心配には及ばんよ。ちょっとした疲れだ」

「そうですか……」

「それより、どういう事か詳しく説明してくれないか?」

「はい」

ハルユキはもう一度、自分の中で整理しながら黒雪姫に説明する。

断片的な情報しか知らなかった謡や楓子も全ての事の次第が飲み込めたようだ。

「―――という事です」

「なるほど。それは間違いなく私が疑われる。しかし、私ではない」

そう断言する黒雪姫をハルユキは直視できなかった。

「どうした、ハルユキ君。やはり私の言う事は信用できないか?」

「いえ、そんな事は……」

「そうは言いつつも、君の顔は違うと言っているぞ」

「……」

「疑心暗鬼では、この先色々厄介な事が起きなくもありません。全部曝け出した方が良いのでは?」

と、タクムが促す。
84: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:02:56.87 ID:cNnXWaYWo
【UI> そうです。みんな仲間ですから、本当に信用できるまで話すべきです】

「そうだな、二人の言うとおりだ」

黒雪姫の言葉にハルユキは意を決して口を開いた。

「青の王が倒される前に、うちのレギオンのメンバーと接触したという噂が有ります。誰ですか?名乗り出てください」

「私だ」

黒雪姫は即答した。

「やはり、あの時のバイクの音はアッシュ・ローラーだったか」

「はい。アッシュから聞きました。先輩は何故青の王と会っていたのですか?」

「そこまで知っているのなら話そう。交渉さ」

「交渉?」

「ああ、不可侵条約破棄を促す交渉さ」

「それは……」

「君も知っての通り、我がレギオン以外の王同士は戦わないとなっている」

「はい、それは勿論」

「その現状を私が良く思わない事を君たちは知っているだろう」

「はい」

「そこで私は青の王に条約破棄を促したのだ」

「何故です?何故今になって」

「簡単な事だ。そんな条約が何の意味も成さなくなるからだ」

「え?」
85: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:05:07.99 ID:cNnXWaYWo
「君たちはLv10への事は知っているな?」

「はい」

「そのLv10に到達する為にはLv9を5人倒す必要がある」

「勿論知っています」

「Lv10到達に特殊なボーナスがあるとすれば?」

「ボーナス?」

「ああ。私は開発者に会えると思っているんだが、そうでない者も居る」

「他の王はゲームが終わると思っているので、条約が結ばれた---が、他の事を考えている奴らも居る」

「マスター、もしかするとごく一部で囁かれている永久の事ですか?」

「そうだ。Lv10になれば、ポイントに関係なく加速できるという話だ」

「出所は不明ですが、そんな噂は出ていますね。まぁ、推測に尾ヒレが付いて一人歩きした噂でしょうけど」

「しかし、それを信じている者も居る。そいつらが今何をやっているか知っているか?」

「いえ……」
86: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:05:58.28 ID:cNnXWaYWo
「アビューズさ」

「「「アビューズ!」」」

「アビューズって何?」

ゲームに疎いチユリが尋ねる。

「アビューズってのは、ゲーム世界で互いに事前相談の上戦って、ポイントをやりとりする事だよ」

「それがどんな意味が有るの?」

「例えば、チーちゃんが僕を一方的に叩けば勝てるだろ?」

「うん」

「それを事前に話し合って決めるのさ」

「それが?」

「正々堂々と戦わないって事さ」

「それってズルだよね?」

「そうだね。それを続ければLv9もあっという間だよ」

「え?そうなの?」

「そりゃ、負ける事がないからね。僕らは勝ったり負けたりしながらポイントを少しづつ増やしているだろ?」

「うん。でも、わざと負ける人にメリットがあるの?」

「例えば、勝率を落としたいとか、リアルでお金でやりとりするとか、色々とね。まぁBBの場合、前者より後者が濃厚な線だね」

「う~ん……卑怯だよ、そんなの」

チユリは考えるように呟く。
87: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:07:10.43 ID:cNnXWaYWo
「だが、実際にそういう事はある。そしてそれをLv10の為に行おうとする者がいる」

「Lv9が5つ『生産』されれば、Lv10になるのも簡単という事ですね、マスター」

「でも、Lv9同士で負けたら、BBと一緒に記憶も消えちゃうんでしょ?お金の約束とか分からないじゃない」

黒雪姫が答えようとするのを遮り、興奮気味にチユリが尋ねる。

「そうだね。でも、やろうと思えば、なんとでも」

「例えば?」

「大勢でリアル拘束し、Lv9になった瞬間に狩る」

「え……」

「他にも兄弟だったら、弟を差し出して兄が金銭を得ることも可能」

「そんな卑怯な事……」

「だから私は青の王に時間がない、すぐにでも戦う事を提唱したのだ」

「で、青の王はなんと?」

タクムが真剣な眼差しで黒雪姫に尋ねた。

「彼は即答しなかったが、前向きに検討すると言ってくれたよ」

「じゃ、前向きに検討した結果、他の王と直接対戦したって事ですか?」とハルユキが問う。
88: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:08:01.27 ID:cNnXWaYWo
「否、奴が私の案に賛同したなら、他の王に対して条約破棄を宣言してからだろう」

「という事は……」

「我々の動きを予測した何者かが、王を狙ったのかも知れない」

「……」

「七大レギオンでやりそうなのは、黄だろう」

「イエロー・レディオ!」

「そうだ。奴らならな。条約が有れど、その他に先を越されるなら―――といったところだろう」

「ニコは!ニコはイエローにやられたんですか?」

「まだ決まった訳ではないが……ハルユキ君、これでもまだ私を疑うのかい?」

「いえ……それは……」

「ならこうしよう。君が私を監視すればいい。ずっと一緒に居れば私が他の王と争ったかどうか分かるだろ?」

「それってハルと黒雪姫さんが一緒に住むって事ですか?」

チユリがビックリしたような声で尋ねる。

「ああ。ここに住んで一緒に学校に通う。帰りも勿論一緒だ」

「ええぇ!でも……」

「でも?家に残した妹が心配か?」

「は、はい……でも……先輩の為にも……」
89: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:08:30.82 ID:cNnXWaYWo
丁度その時、スカイ・レイカーこと楓子に着信が入る。

「はい……ええ……えっ?―――分かったわ」

楓子は大きく息を飲み、そして呟く。

「今、イエローが倒されたとあっちでは大騒ぎみたい」

「うそ……だろ?」

「アッシュ―――綸から連絡が有ったわ」

「これで私の潔白はレギオン内では証明された訳だが」

「はい……」

ハルユキは後ろめたさで俯く。

「なに、気にするな。少し残念だがな。君とここで一緒に生活するのも悪くないと思っていただけに」

「は、ははは……」

「さて、残る問題は誰が4人の王を倒したかという事だ」

「緑の王か白の王、若しくは加速研究会やその他だが」

黒雪姫がちらりとタクムを見る。
90: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:09:22.70 ID:cNnXWaYWo
「僕が思うに、加速研究会とその他は無いと思います」

「何故だね?」

「Lv9を作ったなら、わざわざそれを失うリスクを負ってまで、既存の王を倒す必要はありますか?」

「流石だな。確かにそうだ、急造品のLv9と経験を積んだLv9では勝負にならん」

「それに条約が有る内は急ぐ必要も有りません。まぁ、こちらが先に動けば、否応なしでも動くとは思いますが」

「なかなか鋭い読みだな」

「となると……」

「私は白だと思っている」

「理由は?」

「個人的な主観だ。ただ私の知る限り、緑と白では―――やるのは絶対に白だ」

「よく分からない処もありますが、あの寡黙な緑の王よりも普段姿を見せない白の方が何かのモーションを起こしてもおかしくはありません」

「だな
91: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:10:16.09 ID:cNnXWaYWo
黒雪姫とタクムのやりとりを聞きながらハルユキは考える。

「ちょっといいですか?」

「ん?なんだ、ハルユキ君」

「ここ連続して王が狙われた訳ですが、今で4人倒された事に成りますよね?」

「ああ。青・紫・赤・黄の4人だが?……む」

「そう。もうリーチなんです。さっき話通りなら、次に狙われるのは緑の王か―――先輩になります」

「「「!!」」」

「それに、毎回目撃者が居ない、どの王に倒されたか分からないという事を考えると―――」

「と?」

「直結または限られたネットワーク上での対戦だと思うんです」

「なに?」

「前に、黒雪姫先輩と黄の王の戦いを見ました。あの凄さはどんなバーストリンカーでもその格の違いに気が付きます。派手ですからね」

「うむ、それで?」

「通常エリアであれ中立エリアであれ、王同士の戦いなら絶対に誰かが気付く筈です」

「ほう、それで?」

「誰にも気づかれず対戦をするとなると……やはり、リアル割れではないでしょうか?」

「なるほどな。リアルを割り、直接ないし限定ネットワーク上での戦いという事か」

「はい。何らかの形でそういう状況に持ち込んだのではないかと」

「じゃあさ、もしかしたら黒雪姫先輩も狙われるって事?」

チユリが心配そうに声を掛ける。

「そうだね、マスターが狙われる可能性があるね」
92: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:10:49.94 ID:cNnXWaYWo
「どうするの?」

「う~ん……リアルの警護となると」

「それには及ばん。こう見えて、鳴りを潜めるのは得意だからな」

「でも……そうだ!先輩!僕の所に来てください!」

「ん?」

「うちで寝泊まりすればいいじゃないですか!通学時はタクもチユも一緒だから安全度は高いと思います」

「しかし……」

「家の事は心配しないでください」

「可能ならばそれが一番安全かも知れないわね」と楓子が言葉を添える。

「分かった」

楓子の後押しで黒雪姫は意を決し、今夜からハルユキの自宅に泊まる事にした。

「じゃ、私は先に謡を送ってきますね。その後、4人を鴉さんの家まで送りますわ」

「うむ、その間に少し荷物をまとめさせて貰おうとするか」

楓子と謡が出た後、チユリは黒雪姫の手伝いをしに行く。

残されたタクムとハルユキはテーブルをはさむ形で座り、そして無言だった。

お互いそれぞれの思いを胸に。
93: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:11:16.23 ID:cNnXWaYWo
「ハル、これでマスターの嫌疑は晴れた訳だけど」

「うん……ただ、何か引っ掛るんだ」

「僕もだよ」

「何かがおかしいんだよ」

「何かか……」

「!」

「ん?ハル、どうしたの?」

「あ、いや、何でもない」

「そっか」

暫くして、チユリがリビングに戻る。

「チユ、先輩は?」

「今、来ると思うよ?」

「分かった!」

ハルユキはリビングを飛び出し、黒雪姫の自室に向かう。
94: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:12:25.04 ID:cNnXWaYWo
丁度、部屋から出てきた黒雪姫を見つけ

「先輩!少し、二人だけで話をしませんか?」

「ああ、実は私も君と話をしたかったんだ、ハルユキ君」

黒雪姫は閉じた扉を再び開け、中にハルユキを招き入れた。


「ここが先輩の部屋……」

「すまない、個人的趣味に走っていて」

「いえ、べ、別に……」

部屋には沢山の子ブタのぬいぐるみが置かれていた。

「で、話とは?」

「実は―――」

ハルユキはゆうに30分の時間をかけ、黒雪姫に考えをうち明かす。

「ほう。なるほどな。私も実のところ、あまりにも話が出来過ぎていると思っていたんだが、もう一つの可能性が見えたな」

「じゃあ、取り止めにしますか?」

「いや、乗り込む。そっちの方が面白そうじゃないか」

「でも」

「気にするな、いつか来る日だ」

「はい」
95: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:12:51.66 ID:cNnXWaYWo
部屋を出たと同時に、楓子が戻る。

「では行きましょう」

車内では誰もしゃべる事無く、タイヤのロードノイズとエンジン音だけが響いた。

「さぁ、着きましたよ」

「本当に有難うございました」

「いいえ~、鴉さん、ちゃんと守るべき人を守るのですよ?」

「あ、はい」

(やはりあの人は気付いていたんだ……)

「さて、行こうかハルユキ君」

「はい」

「戦場はすぐそこだ」
96: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:13:33.19 ID:cNnXWaYWo
~自宅~

「ただいま~」

「あ、お兄ちゃんお帰り!っと……」

「こんばんは、ニコ」

「えっと……こんばんは黒雪姫さん」

「突然お邪魔して申し訳ないな」

「今日から少しの間だけ、先輩が泊まる事になったから」

「そうなの?やったー!じゃあ、またゲーム一緒にしようね」

「ああ、しよう。お風呂も一緒に入ろう」

「うん!」

「じゃ、僕とチーちゃんはこれで」

「ありがとうな!」

「ハル、頑張れよ」

「うん」

「?」

チユリは首をかしげる。

「チーちゃん、少し僕の部屋で話そうか」

「うん、いいけど……」
97: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:14:06.87 ID:cNnXWaYWo
~タクム宅~

「という事なんだ」

「えぇ!」

「だから、今夜が山だと思う」

「私達は何も出来ないの?」

「いざという時はいつでも行ける様にしておけばいい」

「じゃ、頑張って徹夜待機だね」

「うん」

「それじゃ、私はここで待機するね」

「え?」

「たまにはいいじゃない。一人でいるより、タッ君と話している方が寝ないし―――不安もないからね」

「そ、そう……ねぇ、チーちゃん……いや、なんでもない」

「ん?」

タクムは少しだけ目を細め、チユリを見つめる。

「じゃあ、私一旦家に帰って用意してくるね!」

「うん」
98: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:14:45.00 ID:cNnXWaYWo
~ハルユキ宅~

「お姉ちゃんはお兄ちゃんと同じぐらいゲーム上手いね」

「そうか?私などハルユキ君に比べれば……」

「あはは」

「ところで、二人ともそろそろ時間も遅いし、明日も学校が有るから寝ようぜ」

「うん」

「そうしよう」

「ねぇねぇ、お姉ちゃん。今日はニコと一緒に寝ようよ」

「そうだな。そうしよう」

「じゃ、僕も」

「ばーか!お兄ちゃん、そんな事したらお母さんに言っちゃうよ?」

「えっと……」

「女子会に男子は入れないぞ?ハルユキ君」

「って……分かりました」

「ではまた明日、おやすみハルユキ君」

「おにいちゃん、おやすみ」

黒雪姫とニコが、寝室に入るのを確認した後、ハルはニューロリンカーを開く。

「さて、これで良しっと」
99: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:15:31.97 ID:cNnXWaYWo
~数時間後~

「……」

薄暗い部屋の中に小さな影が一つ浮かび上がる。

「わりぃな、別にお前に恨みが有る訳じゃねーんだけどさ」

小さな影は黒い物体を取り出し、電源を入れる。

パチパチと音を立て、青い光を放つ。

その光が黒雪姫の体に触れる瞬間―――

「ほう、なかなか面白い物を持っているな、赤の王!」

とっさに身を翻し、後ろに跳び退ける。

「なんだ、起きてたのかよ」

「悪いが、お前のやっている事はお見通しだ」

「ほう。そうかい」

「ああ。お前は少し話し過ぎた。私とハルユキ君との信頼関係を見損なって貰っては困るな」

「ふん、まぁいいわ。じゃ、どうする?直結でやるか?それとも中立へ行くか?」

「貴様と繋ぐケーブルは持ち合わせていない」

「そうかい。じゃあ、行こうぜ」

「ニコ!!」

勢い良く扉があき、ハルユキとタクムとチユリが現れる。

「なんとまぁ、よくまぁ全員の揃いで」

「ニコ、どうしてこんな事を!」

「さぁな、そんな事お前に説明する義理はねぇよ」

「そんな……」

「まぁどうしても聞きたいってんなら、あっちで教えてやんぜ?ポイント全損覚悟が出来てるならな」

「アンリミテッドバースト!」

ニコは無制限中立フィールドへのコマンドを唱える。

遅れて4人もダイブする。
100: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:16:03.77 ID:cNnXWaYWo
~無制限中立フィールド~

「おせぇよ。何分待たせんだ?」

「てっきり逃げていたかと思ったぞ、赤の王」

「てめぇとはケリを付ける必要があんだ。逃げるかっつーの」

「殊勝な心掛けだ。始める前に一つ聞いておくが、他の王はお前がやったのか?」

「そうさ、おまえにしようとしたのと同じ手口でな」

「スタンガンで失神させ、直結し倒すという事か」

「ああ。これなら誰にも気が付かれねぇからな」

「り、リアルはどうやって……」

「クロウ、お前も私に割られただろ?もう忘れたのかよ」

「え?」

「お前にしたような事を都度やっただけの事さ」

「えええ!」

「ま、最近やった訳じゃねぇ。有り余るポイントの有効利用で、昔からやってたって事だ」

「そんな……」

「ただし、有り余るポイントも使えば補充は必要だからな。わりぃがお前に協力して貰った訳だ、クロウ」

「エネミー狩り?」

「ご名答。お前は私に協力してたって訳だ」

「そんな……信じてたのに、信じてたのに」

「本当にお前は馬鹿だな。私が養子縁組を承認した時点で疑えよ」

「うっうっ……」
101: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:16:54.17 ID:cNnXWaYWo
「BB不起動の細工は?」とタクムが尋ねる。

「別のニューロリンカーまで用意したのさ」

「それって……個体判別で……」

「知ってんだろ?私の生い立ち。施設なんていい加減なんだぜ。違う幼児のニューロリンカーを取り間違って装着させたりする事は日常茶飯事さ。」

「ええ……」

「だから、私とニューロリンカーの交換出来る奴は、前の学校にも居んだわ」

「すると……」

「そうさ、借りてきたニューロリンカーを装着すりゃ、BBは起動しねぇ」

「そんなことまでして……」

「不信感を植え付けりゃ、離れると思ったんだがな」

「ロータスをやった後、お前がBBに居残ってLv9になれば狩る算段だった訳さ」

「なるほどな。それで自己消滅プログラムを送り、チップの話はでっち上げたと」

「ま、そういう事だ。流石はブラックロータス、『お兄ちゃん』と違って、頭の回転が早ぇな」

「そんな稚拙な細工、引っ掛る奴など―――」
102: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:17:26.12 ID:cNnXWaYWo
「一人いたじゃねーか」

「……」

「ま、何でもいいわ。とりあえずお前を倒せば、最後の一つは白でも緑でもアビューズでレギオンの誰かをLv9にすればいいだけだからな」

「貴様!」

「おっと……卑怯だなんて言うなよな。手段は選ばねぇのが私のやり方だからよ、お前と同じでな」

「殺す」

「いいねぇ、いいねぇ、さぁこいよブラック・ロータス!」

「スカーレット・レイン!貴様だけは絶対に許さない」


「じゃ、こっちも行くぜ」

スカーレット・レインの強化外装が出現し、不動要塞が構築される。

「遠慮なく行かせて貰うぜ!そこのザコ共、流れ弾に当たりたくなきゃ、逃げとけよ」

「君達、手出しは無用だぞ!」

3人は退避し、王の戦いを静かに見守る。
103: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:18:00.65 ID:cNnXWaYWo
一進一退の攻防が続く。

「タッ君、黒雪先輩のHPが勝ってる!勝てるよね?」

「いや、決まるのは……恐らく、必殺技ゲージが共に貯まった瞬間」

「心意は?」

「ここまでの戦い方から無いかもしれない」

「なんで?」

「推測だけど、もしかしたら二人ともBBの原点に回帰しているのかも」

「え?」

「Lvを上げると必殺技を覚えるという、BBのシステムの基本に則れば、真意はイレギュラーだからね」

「そっか」

「先輩、決めてください!」

両者のゲージがフルチャージされ、共に発動する瞬間が来る。

「デス・バイ・ピアーシング」

「ヘイルストーム・ドミネーション」

ブラックロータスが一気に詰め寄る。
104: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:19:17.03 ID:cNnXWaYWo
眩い光の後、大きな衝撃音が鳴り響く。

ブラックロータスの両手が不動要塞の中央部を突き抜く。

スカーレットレインが撃ち放った全てがブラックロータスに集中する。

砂埃が消えた瞬間、不動要塞が崩れ落ち、両足を失ったスカーレット・レインがコクピットから転げ落ちる。

「やった!」


が、ブラック・ロータスも肢体を失い地面に転がっていた。

「せ、先輩!」

「っ……残念だったな……あと30センチ上を狙えよ……くっ」

痛みに耐えながらスカーレット・レインが言葉を吐き捨てる。

「じゃ、トドメを刺させて貰うぜ」

「うぅ……」

痛覚2倍のフィールドで全手足を切断された激痛にブラックロータスは唸る。
105: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:20:35.25 ID:cNnXWaYWo
「まってくれ!」

シルバークロウが駆け寄り、ブラックロータスを抱きかかえる。

「先輩を、先輩を殺さないでくれ」

「退け、クロウ」

「嫌だ!僕は―――僕は先輩を守るって決めたんだ!」

「そうかい、ならお前もそいつと一緒にあの世へ行きな」

「は、ハルユキ君……もういいんだ」

「せ、先輩」

「わ、私の分も頑張ってくれ……あいつを止めるのは……君にしか出来ない」

「先輩!」

「赤の王よ、決めろ」

「へっ、言われなくても分かってるぜ」

スカーレットレインは腰の銃を取り出し照準を合わせる。

「楽しかったぜ」

小さな発射音のあと、ブラックロータスのHPゲージが0になる。

ロータスの体はデータのパケットになり光り輝く。

そして闇の中に消えさった。
106: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:21:23.44 ID:cNnXWaYWo
「うぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

闇の中でクロウが叫ぶ。

「ニコ、俺は……俺は……貴様を倒す」

「倒してどうすんだ?そるあ今の状況なら、お前でも勝てるだろ。が、1時間後には完全復帰した私に勝てるのか?」

「勝つ!俺は勝つ!」

「おもしれぇ、やってみろよ、ほら」

ブラックロータスとの戦いで体力が尽きたスカーレットレインが叫ぶ。

次の瞬間、シルバークロウが駆け出し、シアンパイルに攻撃をする。

「タク、すまない。今は黙って俺に倒されてくれ」

「え?」

「いいから!」

あらん限りの力でシアンパイルを殴打し、そしてHPが0になった瞬間、地面にシアンパイルの墓標がマーキングされる。

「あっはは!気でも狂ったか?お前が倒すべき相手は私だろう」

高らかに笑うスカーレット・レインを無視し

「チーちゃん、ごめん!」

と、シアンパイルに続き、ライムベルをも殴打する。

「い、痛いよ!」

「我慢してくれ、先輩の仇を討つために!」

「え?」

「頼む、頼むチユ!もう少しなんだ!」

その言葉を言い終えると同時に、ライム・ベルは光の柱になり、そして消え地面に「60」のマーク残る。
107: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:22:00.12 ID:cNnXWaYWo
「おいおい、クロウ。頭大丈夫か?」

「ふーふー」

「さぁ、今度は私か?やれよ。どうせこの体じゃポータルまで行くにも時間が掛かる。一旦殺されりゃ足も戻るからな」

「はぁーはぁー」

「おい、聞いてんのか!」

「ニコ……もうこれで終わりにしよう」

「だから終わんねぇよ」

シルバークロウは視界の片隅に光るアイコンをタップする。

画面にはLv8の文字が光る。

「おいおい、この期に及んでLv8の必殺技で倒そうってか?無駄無駄!」

「ふーふー」
108: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:22:26.00 ID:cNnXWaYWo
再び、視界の片隅に光るアイコンをタップする。

「Lv9なら無駄かいニコ」

「お前……」

「僕は馬鹿でおっちょこちょいだから、ポイントの余裕もない時にLvアップした事が有ってね」

「まさか」

「ああ。だから今では十分なポイントが貯まるまで上げなかったんだよ」

「じゃあ、私に言った『まだ足りない』ってのは」

「ごめんね、嘘ついて」

「は、はは……こりゃ一杯食わされたわ」

「さぁ、ニコ終わりにしよう」
109: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:23:20.57 ID:cNnXWaYWo
「なぁクロウ、私と手を組もう、な?」

「手を組んでどうする?」

「こっちでもあっちでも仲良くしよう、な?」

「そんなの許されると思ってるのか?」

「なぁ、私達『兄妹』だろ?」

「うん、そうだね。兄妹だよ。だから……」

「分かってくれたか」

「うん、とても理解している。悪い妹は兄が責任を持って叱る必要があるってね」

「え……や、やめてよ、お兄ちゃん」

「はは……ニコ、聞きわけがないぞ」

「お願い、止めて。嫌だ、加速を失いたくない!」

「僕は尊い先輩を無くしたんだ!」

「お前と私は兄妹だろ!」

「うん。だから何度も同じ事言わせないでよ、悪い妹は……」

シルバークロウは立ちあがれないスカーレットレインを抱きかかえ、抱きしめる。

そしてスカーレット・レインの耳元でそっと呟く。

「もう悪い子にはなっちゃダメだぞ?」

「え?あ、うんうん!わかった!」

「そっか、ちゃんと理解してくれたんだね」

「うんうん!」

スカーレットレインは小刻みに首を縦に振る。

「じゃあ、帰ろうかニコ。僕達の家に」

シルバークロウはそニコの胸に手を当て、次の瞬間手を立て爪先をそっと押しこんだ。

「あ……ごめんな、お兄ちゃん」

「うん」

刹那の間を置き、ニコの体が崩れ黒雪姫と同じようなパケットになり、闇に消えた。
110: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 13:23:46.88 ID:cNnXWaYWo
ハルユキは膝を抱え、一人座っていた。

あれから1時間が経過し、タクムが復帰する。

そして暫くしチユリも復活する。

「まさかハルがLv9になるなんて思いも寄らなかったよ」

「うん。ごめんな二人とも。痛かったろ?」

「ううん。ハルの気持ちの方が……」

三人はその場で抱き合い、大声で泣いた。

散々泣いた後、3人でポータルを目指す。

いつもなら数人のプレイヤーに遭遇するのだが、今日は誰にも会わない。

殆どのキャラクターがバーストアウトし、報告に行ったのであった。

バーストアウトし、部屋に戻った二人が見たのは、床で寝ている黒雪姫とニコの姿だった。

必死に二人を抱きかかえ、ベッドに寝かしハルユキは呟く。

「おやすみ……また明日」
116: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:01:59.07 ID:cNnXWaYWo
~自室~

ハルユキは寝ずにこれからの事を考えていた。

しかし、何の答えも見つからない。

起床時間が近くなったので、ニコの部屋へ行く。

「おーい、二人とも起きてるか……」

そっとドアを開けるとそこには着替え中の二人がいた。

「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!馬鹿兄貴!」

「は、ハルユキ君!幾ら私と君が付き合っているからと言っても、やっていい事と悪い事が有るぞ!」

飛んできた目覚まし時計を額で受けそうになり、仰け反るハルユキ。

「あわわ……」

ドスン!
117: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:02:43.77 ID:cNnXWaYWo
「痛ってぇ……あれ?」

ハルユキが辺りを見回すと、そこは自分の部屋であった。

「なんだ、寝てしまってたのか……」

時計を見ると、丁度6時を指していた。

「ちょっと早いけど起こしに行くか」

ハルユキは先程の夢を思い出し、ノックする。

しかし返事は無い。

「あれ?おーい、ニコ!あけるよー」とドア前で声を張り上げても返事は無い。

「何だよまったく、返事ぐらいしてもいいのに……」

そっとドアを開け、片目で部屋を覗く。

ベッドの上には、寝かしつけたままの状態の二人が居た。
118: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:03:09.79 ID:cNnXWaYWo
「ニコ、学校に行くから起きなよ」

「先輩、朝ですよ、起きてください」

ハルユキが声も掛けるも、二人は微動だにしない。

「おーい!寝たフリしないでよ!」

ハルユキはカーテンを開け、光を取りこむ。

そこに眠る二人はまるで天使の様に見える。

「しょうがないなぁ……」

ハルユキはニコの体をゆすり起こそうとする。

しかし、何の反応もない。

「おい……ちょっとなんだよこれ……」
119: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:04:00.16 ID:cNnXWaYWo
部屋を飛び出て、リビングで直ぐにタクムを呼びだす。

事情を説明すると直ぐにタクムとチユリが飛んできた。

寝たままの二人を見て、

「うん大丈夫、死んでる訳じゃない」

というタクムの言葉にハルユキはヘナヘナとその場にへたり込んでしまった。

結局、チユリが救急車を手配し、二人は病院へ運ばれる。

家には警察が事情聴取に来たが、外傷や薬物反応が無かった為、

二人して何らかのショックを受け、一時的にこん睡状態になったと病院側の見解により

ハルユキが咎められる事は無かった。
120: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:04:28.20 ID:cNnXWaYWo
数日し、集中治療室から出た黒雪姫とニコは一般病棟に移され、一応の面会が可能になった。

学校が終わり次第、タクム・チユリと共に病院へ駆けつけた。

「先輩、ニコ……早く目を覚ましてくれよ」

「ハル、ちょっといいかな」

「うん」

「あのさぁ、こんな時になんだけど、BBはどうするんだい?」

「えっ……」

「今、スカイレイカーさんが代理を務めているけど……Lv9のハルがレギオンを背負うべきじゃないかな?」

「いや、それは出来ない」

「どうして?」

「俺、BBをアンインストールしようと思うんだ」

「え?」

「もうこんなのヤダよ」

ハルユキの瞳に大粒の涙が浮かぶ。
121: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:05:11.45 ID:cNnXWaYWo
「そっか……でも、君はそれで良いかも知れないが、黒雪姫さんとの約束は?」

「あの人が見れなかったLv10の世界を代わりに見ないのかい?」

「それは……」

「ハルが止めるなら、僕もチーちゃんも止める心算、他の人もね」

「え?」

「ハルが立つというなら、僕らは精いっぱいの協力をする、そうチーちゃん達と話したんだ」

「タク……」

「そうだよ、『私の分まで頑張ってくれ』って黒雪先輩は言ってたじゃない」

「チユ……」

「それにあっちの世界では凄い事になってる。新しい王をかなりの数のバーストリンカーが待ってる」

「え?」

「青、赤、黄、紫のレギオンだった人が銀の王を待ってるんだよ」

「うそ……」

「とりあえず、スカイレイカーさんが対応してくれているけど、そろそろタク自身の声をみんなに聞かせないとね」

「新生ネガネビュラスの、新しい王を見せてあげなよ、タク」

「うん……」

病院を後にし、3人はBBへ。
122: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:05:45.61 ID:cNnXWaYWo
「おい、銀の王が来たらしいぜ」

「マジかよ」

「どこに行けばいいんだ?」

「杉並らしいぜ」

「杉並か、よし行こうぜ!」

あちらこちらでバーストリンカーが反応し、移動が始まる。

レイカーが指定した善福寺川緑地公園には数百のリンカーが集っていた。

「鴉さん、やっと来てくれましたね。もう大変だったんですよ」

「す、すみません」

「今、ここに居る半分以上のリンカーが私達のレギオンに参加希望だそうです」

「えぇ~!」

「まぁ、緑や白の面々も偵察に来ているようですけどね」

「そ、そうですか」

「さぁ、みんなに挨拶して」

スカイレイカーに背を押され、聴衆の前に姿を現す。

あちらこちらから歓声がわき上がる。
123: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:06:32.84 ID:cNnXWaYWo
「えーっと、皆さんお集まり戴いて、誠に恐縮です」

「えっと、ブラックロータスさんの後を継ぎ、黒のレギオンの王となる、シルバークロウです」

「おいおい、銀のレギオンじゃねーのか?」

聴衆の中からヤジが飛ぶ。

「いえ、僕は先代の黒の王の遺志を引き継ぎ、このBBが本来のBBになる事を願い、レギオン名はそのままで行きます」

「ま、クロウのクロでクロのレギオンとも呼べるぞ!」

ベンチに座り、ノートパソコンを広げたデュアルアバターが叫ぶ。

「そ、そうっすねぇ……」

そんなやりとりが爆笑を誘う。

「ところで、みんなに聞いてほしい事が有ります」

「僕達は何のためにこの世界に居るんでしょう?」

「加速の為ですか?」

「いいえ、僕は違うと思います」

「この世界では他人と戦う事以外に、信頼や愛情を育む一面が有る事も僕は知りました」

「然しながら、基本的に対戦ゲームであり、Lvアップする事を目的とします」

「それを忘れてしまっては、ただの単純作業です。他の面はリアルで追い求むべきです」
124: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:07:28.46 ID:cNnXWaYWo
「故に―――ここに宣言します」

「新生ネガネビュラスは、今後一切の不交戦には応じない。誰とでも戦い続けます」

「例えそれが親子や同レギオンの仲間で有っても」

「戦い続けることこそが、BBの本質です」

「僕を越えてでもLv10を目指す者はうちに来てください!」

「ご清聴ありがとうございました」

一斉に拍手がわき上がる。

「おい!俺を入れてくれ!」と加入希望者が一斉にクロウの前に詰める。

「加入希望者はこれからお伺いしますので、順番に―――」

そんな言葉をかき消すかのように、爆音が迫る。
125: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:08:38.04 ID:cNnXWaYWo
ドドド

「おうおう、偉く格好つけてんじゃねーか、シルバークロウ、いや銀の王」

「アッシュローラー!」

「まぁ、60点ってところだな、今の演説じゃ」

「あはは……で、今日は何かな?いきなり対戦申し込みって事は無いよね?」

「ああ?今言った事忘れたのかよ」

「あ、でも今日は何かとやる事が多くて」

「今から加入希望者を伺うって言ったんじゃねーのか?」

「はぁ。まぁそうですけど……ええ!」

「俺もお前のレギオンに入るぜ」
126: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:10:56.49 ID:cNnXWaYWo
「ええ!」

「ま、あんまり深く考えんなよ、それに言わなきゃなんねぇ事が有る」」

「何?」

「少し俺に時間をくれないか?」

「いいけど」

「おう、テメーら、耳の穴かっぽじって聞きやがれ!」

「この中に緑のレギオンの奴は居るか?もし居て、銀の王に付きたい奴は―――好きにしろ!」

「えぇ!なんだってー!」

「これは緑のレギオンマスターからの言葉である」

「すげー、緑すげー!余裕あり過ぎんだろ。つーか、緑も移籍先に良くね?」

「だな、俺元々ミドリ系だし」

「いやいや、緑より飛行型の王であるシルバークロウがイチオシだろ」

あちらこちらで、アッシュローラーの言葉に反応が起きる。

「あとこれだけは言っておくぜ、緑もクロと同じだ、誰とでも戦う、戦い続ける、戦わない奴らには王からの一撃があんぜ?そこんとこ夜露死苦!」

「アッシュ……それは本当なのか?」

「ああ、緑の王から直々に伝えろと言われたんだぜ」

「そうなんだ。でもアッシュローラーは……」

「前に言ったろう、俺はお前を守るって」

「あ、うん」
127: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:11:33.57 ID:cNnXWaYWo
「それをレギマスに話したらこんな事になっちまった」

「流石緑の王、余裕ですね」

「あ!師匠!お久しぶりです」

「お久しぶりなのです。でも貴方が来てくれるとなるととても心強いわ」

「あ、ええ、まぁ……」

「明日からBBは変わるわよ」

「そっすかね?」

「貴方も変わったでしょ?」

「まぁそうですけど」

「楽しくなるわね」

そしてこの日を境にBB世界は一変する。

対戦し、笑い、泣き、そして手を握る、そんな世界に生まれ変わった。
128: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:12:04.56 ID:cNnXWaYWo
~4年後~

「ハル、進学先はどうするんだい?」

「一応、防衛大のつもり」

「へぇ、やっぱりそっちに行くんだ」

「まぁ、そういうの好きだからね」

「タクは?」

「僕は電子工学系の大学に」

「そっか、如何にも『ハカセ』って感じだよな」

「もう、その呼び方は止めてくれよ」

「ははは」

暫くすると、駆け足でチユリがやってくる。

「うわぁ、ハル。また背伸びたんじゃない?」

「うん……今何センチ?」

「178」

「タッ君は?」

「僕も178」

「どうりで。遠くから二人の背中しか見えなかったけど、どっちがどっちか分からなかったよ」
129: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:12:50.58 ID:cNnXWaYWo
「あはは、だからって間違えて俺に抱きつくなよ、チー」

「そこまで間違えたりしないもん」

「はいはい、そうですね。彼氏を間違うようじゃ駄目だしな」

「あはは、ハルも言うようになったなぁ」

「ところでチーは進学どうするの?」

「私は陸上の推薦が掛かったので体育大に」

「そっか。なら将来は体育の先生か、オリンピックでメダルとって芸能人か」

「わたし、そんなの全然興味ないし」

「へ~」

「大学出たらタッ君のお嫁さんになるんだよ!」

「ちょ、チーちゃん」

「焼けるねぇ、逆プロポーズ入りました~。式には必ず呼んでください」

「あまり茶化すなよ、ハル。ところで、ニコは元気かい」
130: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:14:04.46 ID:cNnXWaYWo
「ああ、そりゃもうね。最近は悪いんだよ」

「そうなの?」

「今年から高校に入ったけど、もう3年まで〆たとか」

「「!」」

「見た目があれだから、男子は言いなりだし」

「あはは、ニコらしいね。でも物凄く可愛くなったよね」

「もう少しお淑やかに出来ないものかと。黙ってりゃそれこそ自慢の妹だぜ」

「そのうち落ち着くさ、でもハルの言う事は聞くんだろ?」

「まぁな。意識不明から半年経って目覚めた時、ワンワン泣いただろ?」

「そうだったね、『ごめんね』の連発だったね」

「そ、なんか怖い夢を見たって言ってた」

「それってやっぱりBBの記憶なのかな?」

「どうなんだろ?そこの所はタクが研究者になったら解明してくれよ」

「了解」

「BB懐かしいね」

「ああ、本当にいい思い出だよ」

「今でも覚えてる?」

「そりゃもうね、あれだけ熱い戦いをしたんだから忘れる筈はないさ」

「シルバークロウ、怒涛の4人抜きか、懐かしいな」
131: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:15:18.60 ID:cNnXWaYWo
「まぁな、あんな啖呵切ったもんだからLv10目指す奴が一気に増えて、毎日が大変だったよ」

「でも、凄く活気があったよね」

「活気?俺は殺気しか感じなかったぞ?」

「あはは、ハルはそうだったね。タッ君もか」

「だね。レイカーさんからサブマス譲られてから酷かったよ」

「当のレイカーさんは『宇宙でも見てきますわ』だし」

「あれは笑ったな」

「笑うなよ、ハル」

「でも一気にLv9が4人も来て、ついにBB初のLv10になったんだからね」

「あの時は凄かったよな、空が金色に輝いて全バーストリンカーが強制的に呼ばれてさ」

「凄かったね」

「しかし、その後が酷い。みんなゲームが終わるだの、何か起きるだの騒いでさ」

「結局、何も起きなかったよね」
132: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:17:28.41 ID:cNnXWaYWo
「まあな。ペナルティとしか思えない待遇と用途不明のアンインストールキットが景品だもんな」

「でもあの後、Lv10に到達したのは数名だよね」

「いや、俺が知る限りではもう少し居るぜ」

「そう?」

「うちだけでも、チユとタクとレイカーさんに謡だろ?」

「そう言えば、パドさんもなったよね」

「緑の王もなった」

「「あと、アッシュローラー!」」

「なんだか思い出すだけで可哀想だよ」

「『俺を残して行くな!』って本当に泣いてたもん」

「あれから結局、アッシュ戦は見られないもんね」

「そりゃそうさ、Lv10の特権待遇が「不可侵」で誰とも戦えないんだからね」

「体の良い隠居さ。傍観者になれって事なんだろ?」

「そっかそっか」

「結局、あれで冷めちまって、殆ど見に行く事もないからな」

「というか、行くと騒ぎになるし」

「でも、あのアンインストールキットは気になるよね」

「まあな。でも俺はあのキットこそが使った時に何か起こると思ってるんだ」

「で、それを今日試すと?」

「ああ、そういう事さ」

「おおごとにならなきゃいいけど」
133: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:18:00.99 ID:cNnXWaYWo
~病院~

「こんちわ~」

「あ、お兄ちゃん!」

「お?ニコ来てたのか」

「うん、そうなんだ」

「ニコちゃん、こんにちは」

「タクムさんにチユさん、こんにちは」

「大きくなったね」

「そうですか?」

「2年ぶりだっけ?引越ししてから」

「そうですね」

「なかなかの美人だろ、うちの妹は!」

「お兄ちゃん!」

「タクには嫁が居るからやらん。俺がちゃんと立派な婿を探してやるから」

「別にいいです、自分で探せます」

「あはは」

「ところでお兄ちゃん、今日は?」

「まぁお見舞いと色々」

「色々?」

「ああ、色々さ」

「ふ~ん。じゃあ、私先に帰るね!晩御飯、今日はペスカトーレでいい?」

「ああ、頼んだ」

「オッケー!じゃあね」

「バイバイ」
134: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:19:06.23 ID:cNnXWaYWo
「さてと、始めるかな」

「うん」

「「「バーストリンク」」」


「久々だな」

「そうだね」

「うわぁ、ハルって今の体型とアバターと変わらないね?」

「だろ?背が伸びて横が縮んだからな」

「昔のハルを知ってる人はみんな驚くからね」

「はは。さてと早速だけど始めるね」

「いいよ」

「準備OK!」

ハルユキはアンインストールキットをタップする。

起動マークが出て「アンインストールしますか?」と表示される。

「うーん、やっぱりただのアンインストールなのか?」

「他に何か無い?」

「無いね。とりあえず、yだ!」

「ええ!」

「お、『本当にアンインストールしますか?』って出た」

「ハル……」

「別に加速なんて今の僕には必要ないから良いんだよ」

「そっか……」

「それに多分だけど、このパスを使ってアンインストールした場合、通常とは違って記憶に残ったりするんじゃないかなとも考えてる」

「そっか。万が一、BBを忘れても僕達が親友である事に変わりは無いからね」

「そうさ。そういう事」

「じゃ、お先に!y!」
135: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:19:34.02 ID:cNnXWaYWo
暫くすると、画面にアンインストール開始の文字が流れ、バーが伸びる。

そして―――99%に到達した時点で画面が暗転し、別窓が出現する。
136: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:24:53.73 ID:cNnXWaYWo
「READ ME TEXT」

やぁ、ついにBBを卒業する日が来たんだね。
おめでとう。
お祝いのプレゼントにBBの記憶を全て持ち帰りたまえ。
君はもう加速に頼らなくても大丈夫な立派な大人になった。
だから信用に値する、この気持ちを汲んで口外無きように。
おっと、挨拶を忘れてたね、私は開発者だ。
個人的な名前は意味がないので名乗らない。


卒業する君にBBの最大の目的を説明する。
BBとは、コンプレックスを抱える子供を矯正するプログラムである。
尚、Lv9までに消滅した人達の事が心配だと思うので、少し触れておく。
BBは脳の働きを活性化させる。
その為、BBにいる間に脳は成長し、大人に近づく。
故にBBから全損退場になった人が不幸かと言えばそうではなく、
多少のコンプレックスなど気にもしない人間になる。
私は、幼少期のコンプレックス=外観に対する内面の弱さだと考えた。
実験で概ね裏付けに成功したのでBBを開発し、「内面の強化、大人の思考に近づける」に至った。
以上で、BBの趣旨についての説明とする。
尚―――こちらの予想を遥かに上回る時間、BBに滞在した場合は全損後、一定期間、脳管理プログラムにより脳の成長を止める信号をニューロリンカーより放出している。
その間に体が追いつき、精神と体のバランスが取れると自動的に停止し目覚める。
次回リリース版ではこういった事が無いようにBB利用制限期間を設ける心算でもある。
あと、脳管理プログラムによる脳の再起動が行われない場合、この後に出現するパッチを実行してほしい。
もし、君の大事な人がこういった事態に陥った場合、助けられるのは君だけである。
申し訳ないが、開発の不備の解消を君に託す。

以上
137: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:26:14.82 ID:cNnXWaYWo
「なんだ?これは!」

「って事は……」

「先輩は再起動出来てないのでリセットしなきゃならないって事?」

「という事になるね」

「ニコちゃんは半年で回復したのにね」

「って事は……長い間BBにて、本人は精神年齢20歳とか言ってけど……」

「たった半年分しか成長していなかった」

「って事だね」

「はは……ははは」

「いやはや、ご自慢の妹は凄いね」

「タク、怒るぞ!」

「ごめんごめん。でもこれでマスター―――先輩も再起動出来そうだね」

「ああ」

「じゃ、そういう事でお先に」

「ああ、上手く行けば僕達もあとから行くよ」

「じゃあな、楽しかったぜタク、チユ」

「うん!」

ハルユキは画面上に現れたパッチexeをタップする。
138: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:27:21.85 ID:cNnXWaYWo
【制御を開放します】

突然あたりの景色が変わる。

BBからアウトしたように通常の世界が広がる。

但し、タクとチユが動かない。

【ターゲットを直視てください】

【センターの赤い十字が緑に変わるまでターゲットに接近してください】

「おいおい、ターゲットって……」

【30センチ先です】

【20センチ先です】

【10センチ先です】

【5センチ先です】

「この先って……いいのか?」

「悩んでも仕方がないな」

「先輩、好きです!」

【ワクチンプログラム注入中】

【プログラム「白雪姫」作動確認、強制切断します】

次の瞬間、視界が真っ白になり、そして

「THANK YOU」の文字が光り、消えた。
139: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:28:05.02 ID:cNnXWaYWo
だんだんと視界が戻る。

全てが動きを取り戻す。

真っ赤な顔をしたタクとチユリ。

「なんか凄い世界だったな」

「わ、私達動けなかったんだけど全部見た!」

「えええ!」

「ごめん、瞼すら閉じれなかったんだ」

「それよりハル!ど、どうなの?」

「えっと……」

3人はベッドに横たわる黒雪姫を見つめる。
140: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:30:31.47 ID:cNnXWaYWo
暫くし、微かに目が開けられ、唇が動く。

「は、ハルユキ君」

「せ、先輩!」

「ただいま」

「お帰りなさい」

「私は長い夢を見ていた。魔女に毒リンゴを食べさせられて深い眠りに……」

「はい」

「君が王子だったよ」

「はい」

「ありがとう。好きと言ってくれて」

「はい。何度でも言います。先輩、好きです。大好きです」

「ふふ、照れるじゃないか。それに後ろの二人が困っているぞ」

「いいんです、今日は」

「そうか、じゃあもう一回言ってくれないか、ちゃんと名前でな」

「はい。大好きです、愛しています、白雪先輩」

「うん、私も。ハルユキ君、好き」




おわり
141: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) 2012/07/09(月) 21:36:24.52 ID:cNnXWaYWo
ここで一旦終わりです。
この後の二人はまぁ「リア充死ねボケ」って感じでしょうね。

アクセルワールドを読み始めた頃から、黒雪姫=白雪姫と思っていました。
家を出て一人暮らしってのも、童話「白雪姫」の設定にあります。
7人の小人は出てきませんが、子ブタは出てきます。
ということで、童話に沿ったようなendingとなり、黒雪姫の名前は「白雪」なんだろうねと。
アクセルワールドは白雪姫、三匹の子ブタ、シンデレラ等のメジャーな童話の一部がはいてんじゃね?とか思ってます。



では、またどこかでお会いしましょう。
142: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/07/09(月) 22:01:06.49 ID:vI1jXKOp0
>>1乙!次回作期待してるよ!
145: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/19(木) 07:12:22.88 ID:NvuSDgWK0
乙!
個人的には上手いラストだと思いました!

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