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【ぼく勉】 真冬 「今年こそ」

449: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:11:56 ID:T80BSgvU
………………年の瀬 真冬の家


『拝啓 真冬お姉様

 こちらはとても寒いです。日本も、とても寒いようですね。

 今週末には実家に帰ります。お姉様も帰ってくれると嬉しいです。

 ……もし無理そうなら、日本にいる間に、一度お姉様のおうちに伺います。

 それでは、風邪などに気をつけて、良い年をお迎えください。

 敬具

 美春』


真冬 「……わざわざ遠征先から手紙だなんて、まったく、マメな子ね」

真冬 「でも、ごめんなさい、美春。今年も実家へは帰れそうにないわ」

真冬 「なぜなら……」

グッチャアアアァアアアア

真冬 「この部屋の惨状をどうにかしなければならないから……!」
450: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:12:49 ID:T80BSgvU
真冬 (二学期の成績処理や担任団と進路指導部のヘルプに入ったおかげで、)

真冬 (家に帰っても寝るだけという生活をしていたせいね)

真冬 (毎年のことではあるけれど、二学期の後半からこっち、)

真冬 (“どうせ大掃除をするのだからそのときでいい” なんて考えてしまうのが悪いのよ)

真冬 (……そして毎年毎年、結局、綺麗な部屋で年を越せた憶えがないわ)

真冬 (今年こそ、大掃除をやりとげなければ!!)

真冬 (……とりあえず、通販で買ったものを開封するところから始めようかしら)

真冬 (段ボールをまとめて捨てて、それから、部屋を片付けるだけのこと)

真冬 (大丈夫よ、真冬。ひとつずつこなしていけば、今日中にでも終わってしまうわ)
451: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:13:26 ID:T80BSgvU
………………図書館

成幸 「……はー、今日は勉強はかどったな」 ホクホク

成幸 (今日は久々にひとりでゆっくり勉強できたし、まんぞくまんぞく……)

成幸 (午後からは家の大掃除の約束だからな。名残惜しいけど、急いで帰らないと)

成幸 「……ん?」

真冬 「………………」

成幸 (桐須先生? 真剣な顔して、何か本でも探してるのかな……?)

成幸 (……それにしても、桐須先生は知的に見えるから、図書館が似合うなぁ)

成幸 (ジャージにコートを羽織った装いじゃなければ、だけど……)

真冬 「……ん、あった」

成幸 (お、本、無事見つけられたみたいだ) ハッ (って、これじゃ俺、先生のストーカーみたいだ)

成幸 (挨拶だけして帰ろう)

真冬 「……届かないわね」

成幸 (ん? 近くにあった踏み台を持ってきて、置いて、乗って……)

成幸 (先生大丈夫かな。いや、さすがに踏み台に乗ったくらいで落ちたりしないよな……) ハラハラ
452: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:14:22 ID:T80BSgvU
真冬 「む……これでもまだ足りないかしら。仕方ないわ」

ピョンピョン

成幸 (あっ、俺この先の展開読めた)

真冬 「あっ……」

グラッ……

成幸 「やっぱりドジって落ちるー!」

……ドサッ

真冬 「……あ、あれ? 痛くない……?」

真冬 (何か、やわらかいものが下に……?)

真冬 「!? ゆ、唯我くん!?」

成幸 「……間に合って良かったです。ケガしてないですか?」

真冬 「え、ええ。ケガはないけれど……きみは?」

成幸 「俺も大丈夫です。けど、とりあえず、上からどいてもらってもいいですか?」

真冬 「あ、ごめんなさい! すぐ降りるわ!」

真冬 「……大丈夫? 立てるかしら」 スッ
453: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:14:57 ID:T80BSgvU
成幸 「あっ……すみません」 ギュッ

真冬 「でも、一体どうしてきみが私の下敷きに……?」

成幸 「あー、えっと……」

成幸 (……先生が踏み台に乗った時点で嫌な予感がしたから駆け寄りました!)

成幸 (なんて言ったら絶対怒るよなぁ……)

成幸 「本を探してたら偶然近くにいただけです」

真冬 「そう……? まぁ、何にせよ助かったわ。ありがとう」

成幸 「いえ……」

成幸 「ところで、どの本を取ろうとしてたんですか? 俺、取りますよ」

真冬 「本当? 助かるわ。えっと、一番上の列の……」

ハッ

真冬 「………………」

成幸 「……先生?」

成幸 (一番上の列って……あっ)

『年の瀬に最適! 片付け・掃除術コーナー!!』
454: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:15:40 ID:T80BSgvU
成幸 (先生、また部屋を汚くしたのか……)

真冬 「……不覚。生徒にあんな棚の本を取ろうとしていたところを見られるなんて」

成幸 「い、いやいや、ああいう本を読んで基本を確認するのも大事ですよ」

成幸 「べつに恥ずかしい話ではないと思いますよ」

成幸 「っていうか、今まで散々部屋を片付けてきた俺に見られたところで何の問題が……?」

真冬 「へ、変なこと言わないでちょうだい。散々っていうのは言いすぎだわ」

成幸 「……あー、はい。すみません。……ってことで、どの本ですか? 取りますよ」

真冬 「……一番右の」

プクゥ

成幸 (またむくれて……。子どもみたいだ)

成幸 (えっと、一番上の列の、一番右の本は、と……)

『馬鹿でも猿でもできる! ゴミ屋敷脱出術!!』

成幸 (……挑戦的すぎるだろあのタイトル)

成幸 「よっ……と。はい、取れましたよ、先生」

真冬 「……ありがとう」
455: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:18:18 ID:T80BSgvU
成幸 (……っていうか、この人の場合、本を読んでできるようになるレベルの掃除オンチじゃないよなぁ)

成幸 (新年までそう日にちもないし、汚い部屋のまま年越しっていうのは辛そうだ……)

成幸 「……ところで先生。秋ごろに一度俺が掃除をしたはずですけど、」

成幸 「まさかもうグチャグチャに……?」

真冬 「ち、違うわ。少し、片付けを工夫しようかな、って思っただけよ」

真冬 「決して、汚くなった部屋を大掃除しようとして逆にゴミ屋敷のようにしてしまったわけではないわ!」

成幸 「………………」

ハァ

成幸 「……俺、手伝いに行った方がいいですか?」

真冬 「………………」

真冬 「……ごめんなさい」 カァアアア 「お願いしてもいいかしら」

成幸 (はぁ。まぁ、放ってはおけないよなぁ……)

成幸 (後で水希に謝らなくちゃいけないな)

成幸 「じゃ、行きましょうか」
456: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:19:40 ID:T80BSgvU
………………真冬の家

成幸 「おおう……」

グッチャアアアァアアアア……!!!!

成幸 (な、なんだこれは……想像を絶するぞ……)

成幸 (今までで一番グチャグチャじゃないか……!?)

真冬 「あっ、あんまり見ないでちょうだい、唯我くん……」 カァアアアア…… 「恥ずかしいわ……///」

成幸 (時と場合によってはドキドキしそうなセリフだけど……)

成幸 「本気で恥ずかしがってます!? よくここまで散らかせましたね!?」

真冬 「し、失礼。大掃除に失敗してしまっただけよ」

成幸 「大掃除に失敗ってあります!?」

真冬 「ため込んだ通販の荷物を取り出してから掃除をしようと思ったら……」

真冬 「段ボールから出した荷物とゴミが混じり合ってわけのわからないことに……」

成幸 「何でまず段ボールを開けるんです!? 普通、掃除してから開けません!?」

真冬 「め、面目ないわ……」 シュン
457: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:20:19 ID:T80BSgvU
成幸 「あっ……」

ハッ

真冬 「………………」 ズーン

成幸 (……今ここで先生を責めても仕方ない。っていうか、そんなことをするためにここに来たわけじゃない)

成幸 「すみません、先生。言いすぎました」

真冬 「え……?」

成幸 「俺も手伝いますから、なんとか今日中に片付けが終わるようにがんばりましょう!」

真冬 「あっ……」 プイッ 「そ、そうね。がんばりましょう」
458: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:21:29 ID:T80BSgvU
………………唯我家

水希 「………………」 ルンルン♪

花枝 「どうしたの、あの子。ごきげんね」

和樹 「今日は午後からみんなで大掃除だからなー」

葉月 「姉ちゃんずっと楽しみにしてたからー。久しぶりにお兄ちゃんと一緒、って」

花枝 「ふーん……」

水希 「えへへ……お兄ちゃん早く帰ってこないかな~」

prrrr……

水希 「あっ、電話。わたし出るよー」

ガチャッ

水希 「もしもし?」

成幸 『あ、水希か? 俺だ』

水希 「お兄ちゃん? どうしたの?」

成幸 『すまん。今日、大掃除の約束だったけど、事情があって帰れなくなった……』

水希 「えっ……」
459: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:22:12 ID:T80BSgvU
成幸 『本当にごめん! 埋め合わせは必ずするから、今日だけは許してくれ!』

水希 「………………」

水希 (ずっと楽しみにしてたけど……)

水希 (お兄ちゃん、すごく真剣な声だもん。きっと、やむにやまれぬ事情があるんだよ……)

水希 (ワガママを言っちゃダメ。ここは、妹として余裕を見せてあげないと……)

水希 「だ、大丈夫だよ。みんなでやっておくから。お兄ちゃんは気にしないで」

成幸 『すまん。助かる。みんなにも謝っておいてくれ』

ドンガラガッシャーン

成幸 『あ……』

水希 「!? お兄ちゃん!? すごい音したけど大丈夫?」

成幸 『あ、ああ。だ、大丈夫……だと思う、けど、ちょっと、もう切るな?』

水希 「えっ? ちょっと待って。お兄ちゃんいま何を――」


  『――ゆ、唯我くん! 悪いけど、助けてくれると嬉しいわ!』


水希 「!?」 (女の声!?)
460: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:22:51 ID:T80BSgvU
成幸 『わかりました! いま行きます!!』

成幸 『ってことで、ごめん、水希。もう切るな』

ブツッ

水希 「お兄ちゃん!? お兄ちゃんってば!!」

花枝 「……? 成幸、どうかしたの?」

水希 「………………」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

花枝 「水希……?」

水希 「……女」

花枝 「女?」

水希 「お兄ちゃん、女と一緒にいた……」

花枝 「ああ……」

水希 「わたしのお兄ちゃんを奪った女……!! 絶対許さない……」

花枝 「……さ、お姉ちゃんは放っておいて、そろそろ大掃除を始めましょうか」

葉月&和樹 「「はーい!!」」
461: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:23:27 ID:T80BSgvU
………………真冬の家

成幸 「何でゴミ袋にゴミを入れていただけなのに棚が倒れてくるんですか!?」

真冬 「ゴミを拾うのに夢中になっていたら、お尻から棚にぶつかってしまって……」

成幸 (相変わらずドジだけは器用な人だ……)

成幸 「よい、しょっ……と」

ゴトッ

成幸 「……ふぅ。気をつけてくださいね、先生」

真冬 「面目ないわ。穴があったら入りたいくらいよ……」

成幸 「気にしなくていいですから。とにかく、いらないものを捨てていきましょう」

成幸 「俺はグチャグチャの台所を片付けてますから」

真冬 「……ごめんなさい。よろしくお願いするわ」
462: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:24:10 ID:T80BSgvU
………………数時間後

成幸 (……ふぅ。だいぶ片付いていたな)

成幸 (この分なら、夕飯には間に合うかな……)

成幸 (っていうか、お昼食べてないからお腹空いたな……)

真冬 「………………」

キュッ……キュッ……

成幸 (さすがに部屋が汚いまま年越しは嫌なのか、先生もいつになく真剣だ)

成幸 (……ん、そういえば……)


―――― 『それに 姉さまがこっちの道に戻ってくればきっと』

―――― 『父さま母さまだって……』


成幸 「……先生」

真冬 「? どうかしたかしら?」

成幸 「年末年始は、ご実家に帰られたりしないんですか?」
463: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:25:08 ID:T80BSgvU
真冬 「……そうね」

フッ

真冬 「実家には帰るつもりはないわ。しばらく帰ってもいないしね」

成幸 「あっ……」 (やっぱり、何か事情があるんだ……)

成幸 「すみません……変なこと聞いて」

真冬 「……気にしないでいいわ。べつに、どうでもいいことだもの」

成幸 「ん……」 (どうでもいい、こと……?)

真冬 「……? 唯我くん?」

成幸 「……すみません。えっと、その……」

成幸 「すごく、失礼なことを言ってしまうことになってしまうかもしれませんけど……」

成幸 「どうでもよくなんて、ないんじゃないですか……?」

真冬 「えっ……?」

成幸 「だって、どうでもよかったら、そんな顔、しないですよね……」

真冬 「っ……。そんなの、べつに……」
464: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:25:46 ID:T80BSgvU
成幸 「あと、たぶん、これは想像ですけど……」

成幸 「先生みたいなまっすぐな人のご家族だったらきっと……」

成幸 「どうでもいいような人たちじゃ、ないんじゃないですか……?」

真冬 「………………」

成幸 「あっ……す、すみません! また、変なこと言ってしまって……」

成幸 「俺には関係ないことでしたよね! 忘れてください!」

真冬 「……そうね」

成幸 「……?」

真冬 「家族のことを、どうでもいいなんて言うのは、ダメね」

真冬 「……あなたは家族のことが大好きなのね、唯我くん」

成幸 「へ? あ、ああ、まぁ……そうですね。大好きです」

真冬 (……やはり、まっすぐな子。唯我くん、本当に良い子ね、きみは)

真冬 (あなたにとって、家族とは、本当に大切な存在なのでしょうね……)

真冬 (私も、あなたみたいに……なんて、そんなこと考えても仕方ないわね)

真冬 (私は、私にしかなれなかったのだから)
465: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:26:17 ID:T80BSgvU
………………

成幸 「………………」

真冬 「お、終わったわ……」

ピカピカピカピカ……

成幸 「……なんとか終わりましたね」

成幸 (結局、夕飯の時間を過ぎてしまった……水希、怒ってるだろうなぁ……)

真冬 「結構な時間になってしまったわね……」

真冬 「お礼というとアレだけれど、出前でも取るわ。何か食べていきなさい」

成幸 「あっ……いえ、その……、今日はすみません。もう家に帰らないといけないので……」

真冬 「そ、そうよね。年の瀬だもの。お家でやることがあるわよね……」

真冬 「……忙しい師走の終わりに、私事に巻き込んでしまって本当に申し訳ないわ」 ズーン

真冬 「今日は本当にありがとう。埋め合わせは必ずするから、気軽に何でも言ってね」

成幸 (また何でもとか言ったぞこの人……)

成幸 「では、先生。今年は大変お世話になりました。また来年もよろしくお願いします」

真冬 「ええ。こちらこそ、来年もよろしくお願いします」
466: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:27:20 ID:T80BSgvU
………………大晦日

水希 「~~~~~♪」

成幸 「なんだ、水希? ご機嫌だな」

水希 「えへへ、わかる?」

成幸 「そりゃ、まぁ……」 (鼻歌してりゃな……)

成幸 「どうしてご機嫌なんだ?」

水希 「ふふ、内緒♪」

成幸 「……?」

水希 (……えへへ、お兄ちゃんったら!)

水希 (そんなの、お兄ちゃんと一緒におせち作ってるからに決まってるよ……///)

葉月 「姉ちゃんほんとにご機嫌ねー。大掃除の日はおかんむりだったのに」

和樹 「兄ちゃんが埋め合わせにおせち作り手伝うって言ったら途端にアレだもんなー」

花枝 「……あの子の将来がそろそろ真剣に心配だわ」

水希 「えへへ……えへへへへ……」

水希 (こうやってふたりで台所に立ってると……新婚さんみたい)
467: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:28:25 ID:T80BSgvU
………………

花枝 「……で、ご機嫌でおせち作りをしていたら、こうなった、と?」

水希 「……はい」

バーーーーン

花枝 「こんなに作ってどうするのよ……。お重に入りきらないじゃない」

水希 「ごめんなさい……。つい、やる気が入り過ぎちゃって……」

成幸 「すまん。俺も、作りすぎだって気づくべきだった……」

花枝 「……ま、いいわ。あんたに任せっきりにしちゃった私も悪いし」

花枝 「こんにゃくとかゴボウの煮物とか、茶色い物ばかりだけど……」

花枝 「ご近所さんにちょっと配ろうかしら……」

成幸 「……ん」


―――― 『実家には帰るつもりはないわ。しばらく帰ってもいないしね』


成幸 (……そういえば、先生はああ言ってたけど)

成幸 (たぶん、おせちなんて何年も食べてないんだろうな……)
468: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:29:23 ID:T80BSgvU
………………真冬の家

真冬 「………………」

カタカタカタカタ……

真冬 (部屋がきれいだと仕事もはかどるわ……)

真冬 (……って、なぜ私は大晦日に仕事なんかしているのかしら)

真冬 (やっぱり、年末年始の休業日に仕事なんか持ち帰るべきではなかったわね)

真冬 (まぁ、どうせ、家にいたところですることもないのだけど)

真冬 (……暗いことは考えない方がいいわね。区切りも良いし、カップ麺のソバでも食べようかしら)

ピンポーン

真冬 「……?」 (こんな時間に一体誰かしら? 何か注文していたかしら……?)

真冬 「ん……?」

真冬 「唯我くん……?」
469: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:29:59 ID:T80BSgvU
………………

ガチャッ

成幸 「あっ、先生。夜分にすみません……」

真冬 「唯我くん、こんな時間にどうしたの?」

成幸 「大したことじゃないんですけど……」 スッ

成幸 「今日、妹とお正月のおせち料理を作っていたら作り過ぎちゃって……」

成幸 「良かったらもらってくれませんか? 妹の料理はとても美味しいので、味は保証します!」

真冬 「おせち料理……?」

真冬 「あっ……」 (まだ温かい……作ったばかりなのね……)

真冬 「……とても、嬉しいわ。もらってもいいの?」

成幸 「はい! 尋常じゃない量なので、もらってくれるとありがたいです」

真冬 「ありがとう。いただくわ。明日、食べさせてもらうわね」

成幸 「はい、ぜひ!」

真冬 (……あまり、利害関係者からの物の授受というのはよくないのだけど)

真冬 (そんな固いこと言うものではないわね。こんなに美味しそうなお料理、もらえなかったらもったいないわ)
470: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:31:34 ID:T80BSgvU
真冬 「……ごぼうとこんにゃくの煮物ね」

成幸 「あ、はい。恥ずかしいですけど……」

成幸 「うちはあまり裕福ではないので、おせちの中身もそういう安上がりなお料理ばかりで……」

真冬 「恥ずかしいことなんてないわ。これも立派なおせち料理よ

真冬 「ゴボウはまっすぐ伸びることから、ゴボウの煮物は子どもたちの健やかな成長を祈るお料理よ」

真冬 「そして手綱こんにゃくは、家庭内の不和をなくし、家庭円満を祈願するお料理よ」

真冬 「だから誇るといいわ。とても良いおせち料理だわ。素敵なご家庭ね」

成幸 「そ、そうですか……?」 テレテレ 「そう言ってもらえると、嬉しいです」

真冬 (本当に嬉しそうな顔をして……。ご家族のことを褒められるのが本当に嬉しいのね)

真冬 (家族……か)

真冬 「………………」

真冬 (……私も、いつまでも逃げてはいられないかしら)

真冬 「……唯我くん、二度目の挨拶になってしまうけど、」

真冬 「良いお年を」

成幸 「はい! 先生も、良いお年を!」
471: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:32:09 ID:T80BSgvU
………………

『美春

 手紙が届く頃にはもう日本にいないかもしれないと思い、メールで返信します。

 家には帰りません。ごめんなさい。

 でも、あなたが私の家に来る必要もありません。

 そんな暇があるなら、このオンシーズンの調整に当てなさい。

 勝手な姉と思うかもしれません。そう思われても仕方ないと思います。

 でも、勝手なお願いとは分かっているけれど、もうすこしだけ待ってほしいです。

 ……勝手なことばかり言ってごめんなさい。

 あなたも体調管理に気を遣って、良いオンシーズンを。

 真冬』


おわり
472: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:32:40 ID:T80BSgvU
………………幕間 「ひどい」

真冬 「ひどい……」

真冬 「ひどすぎるわ、唯我くん……!!」

ムシャムシャムシャムシャ……!!!!

真冬 「こんなにおだしの効いた美味しい煮物を食べちゃったら、」

真冬 「レトルト食品やカップ麺が美味しく食べられなくなっちゃうじゃない……!!」


おわり
473: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/31(月) 23:35:12 ID:T80BSgvU
>>1です。
読んでくださった方ありがとうございました。
年末の某イベントが無事終わったので、気兼ねなくSSを書くことができました。

今年は「ぼくたちは勉強ができない」という素晴らしい作品と出会えたいい年でした。
また来年も投下すると思います。
失礼します。

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