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184: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:21:54 ID:DUtC6N3c
………………十年後 春 喫茶店

文乃 「………………」

フゥ

文乃 「……遅いなぁ」

通行人1 「……わっ、すごい美人」

通子人2 「きれいな髪~。肌も真っ白よ」

通行人3 「喫茶店でお茶をする姿も、様になってるなぁ……」

文乃 「……?」

文乃 (なにか分からないけど、じろじろ見られているような……)

?? 「……あっ、いたいた。悪い、待たせた。古橋」

文乃 「あっ……」 ハッ (し、しまった。嬉しそうな顔をしてしまったけど、ダメだよ)

文乃 (時間を守るのは社会人の基本。ここは厳しい顔をして叱ってあげなくちゃ)

文乃 「……も、もうっ。ダメだよ、成幸くん」

文乃 「時間、十五分も過ぎてるよ?」
185: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:22:43 ID:DUtC6N3c
成幸 「悪い悪い。会議が長引いてさ。許してくれよ」

成幸 「先生ってのはほんと、話好きな生き物だよ」

成幸 「みんな好き勝手喋るんだから、会議なんて終わるわけないよな」

文乃 「ふーん、だ。言い訳は聞きたくありませーん」

成幸 「だから、悪かったって……ごめん。パフェ奢ってやるから許してくれよ」

文乃 「パフェ!?」 パァアア……!!

ハッ

文乃 「……じゃない! そんなんじゃ誤魔化されないからね、成幸くん!」

成幸 「なんだよ。いま少し誤魔化されかけただろ」

成幸 「悪かったよ。俺は何をすればいいんだ?」

文乃 「………………」

文乃 「……つまで、……はし、って……ぶの?」

成幸 「へ? どうした? 全然聞き取れなかったんだけど……」
186: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:23:22 ID:DUtC6N3c
文乃 「っ~~~~~~~~」

文乃 「だ、だから!」

文乃 「……いつまで、古橋って呼ぶつもりなの、って……」

文乃 「……言ったんだよ。バカ」

成幸 「へ……? あっ」

成幸 「俺、古橋、って呼んでたか」

成幸 「すまん。えっと……」

成幸 「……ごめん。悪かったよ、文乃」

文乃 「っ……////」

文乃 「しっ、仕方ないから、今回は、それとパフェに免じて許してあげる」

成幸 「本当か? ありがたい」 ニコッ

成幸 「でも、遅れて本当に悪かったな。文乃」

文乃 「っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
187: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:24:05 ID:DUtC6N3c
………………

文乃 「……ん~、美味し~~い! ここのパフェは絶品だよ!」

成幸 「喜んでもらえて何よりだよ。相変わらずよく食う奴だな」

文乃 「むっ……人を食いしん坊みたいに言ってぇ……」 モグモグ

成幸 「もぐもぐしながら喋るなよ。せっかくの美人が台無しだぞ?」

文乃 「びっ……美人、って……。な、何を言ってるのかな、まったく……」

成幸 「?」

文乃 「……で、今日は一体どんな用なのかな? いきなり呼び出すなんてめずらしいよね」

成幸 「ん……まぁ、ちょっと、な……」

成幸 「………………」

文乃 「……? うつむいちゃってどうしたの? 何か悩み事?」
188: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:24:58 ID:DUtC6N3c
成幸 「……まぁ、悩み事って言ったらそうだな」

成幸 「文乃ぐらいにしか話せそうになくてさ」

成幸 「というか、文乃に聞いてもらいたい話がある、というか……」

文乃 「わ、わたしに?」

成幸 「ああ。お前にしか言えないんだ」

文乃 「な、何の話かな?」

ドキドキドキドキ……

文乃 (これは、ひょっとして……ひょっとすると……)

文乃 (……いや。大体こういうときは、ただの早とちりで終わるんだ。だから、きっと……――)

成幸 「――……実は、結婚指輪のこと、なんだ」

文乃 「ふぇっ!? ほ、本当に!?」

成幸 「へ……? 何で驚いてるんだ、文乃?」

成幸 「俺まだ話してないだろ? 結婚指輪をなくしたこと……」

文乃 「へ……?」
189: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:25:39 ID:DUtC6N3c
文乃 「……? あっ」

文乃 (わたしは一体何を考えていたのだろう)

文乃 (どうして、こんな恥ずかしい勘違いをしていたのだろう)

文乃 (……目の前の、唯我成幸という男は)

文乃 (もうすでに結婚しているではないか)

文乃 (ああ、そうだ。そして、わかった。そうだ。どうして気づかなかったのかな)




文乃 (これは、夢だ)




文乃 (だから、記憶は曖昧で、目の前の成幸くんも少しぼやけていて、)

文乃 (わたし自身の輪郭も曖昧なんだ)

文乃 (これは、将来を思い描いた、わたしの夢だ)

文乃 (そしてその夢の中で、成幸くんはどこかの誰かと結婚しているのだ)
190: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:26:32 ID:DUtC6N3c
文乃 「……なくしちゃった? 結婚指輪を?」

成幸 「ああ。いつもは薬指にちゃんとつけてるからなくすはずはないんだ」

成幸 「でも、先週水泳の補習の監督を頼まれてしまってな」

成幸 「さすがにプールに入ることになるから、外したんだよ」

成幸 「でも、ちゃんとロッカーの中にしまったんだぜ」

文乃 「鍵は?」

成幸 「………………」

文乃 「……かけてなかったんだね」

成幸 「面目ない。まさかあの短時間でなくなると思わなかったんだよ」
191: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:27:29 ID:DUtC6N3c
文乃 「それで、一週間かけて毎日校内を探し回ったけど、見つからなかった、と」

成幸 「そうなんだよ。もう考えられるところは全部見たんだよ」

成幸 「でも、見つからなくて……」

成幸 「文乃だったら何か思いつくんじゃないかと思って、相談したんだ」

文乃 「そう言われてもねぇ……」

文乃 (一ノ瀬学園には、もう十年くらい戻っていない)

文乃 (……って、これは夢の中だから、実際は毎日登校しているのだけど)

文乃 (っていうか、夢の中のことに、わたしは何を必死になってるんだろ)

文乃 (どうせ夢から覚めたら忘れてしまうようなことなのに)

成幸 「うぅ……」

文乃 (……でも、)

ハァ

文乃 (放っておけないよね)

文乃 (わたしはこの人の、お姉ちゃんだから)
192: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:28:41 ID:DUtC6N3c
………………一ノ瀬学園

成幸 「悪い。学校まで来てもらって……」

文乃 「べつにいいよ。それより有給取って出てきてるのに、」

文乃 「職場に戻って大丈夫? 気まずくない?」

成幸 「それくらいは我慢するよ。仕事は全部終わらせてるから、先生方も文句はないだろ」

文乃 「ふーん……」

文乃 (……夢の中とはいえ、十年後の世界)

文乃 (なんか、わくわくするなぁ)
193: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:29:43 ID:DUtC6N3c
………………プール 男子更衣室

文乃 「ふむふむ。ここで水着に着替えたんだね」

成幸 「お前ってなんていうか、結構すごいよな」

文乃 「へ?」

成幸 「調べるためとはいえ、男子更衣室にためらいもなく入るところとか」

文乃 「………………」 ジロッ 「……わたしはべつに協力しなくてもいいんだけど?」

成幸 「うわぁ! すまん、冗談だよ、文乃!」

文乃 「……まったく。本当に君は調子がいいんだから、成幸くん」

文乃 「で? 指輪はたしかに外したんだよね?」

成幸 「外したよ。外して、上の棚にのせたんだ」

文乃 「影も形もないねぇ。下にも落ちてはなさそうだし」

成幸 「ああ。補習が終わって戻ってきたら、もうなかったんだ」

文乃 「……ふむ」
194: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:30:38 ID:DUtC6N3c
成幸 「……一体どこにいったんだろうな」

文乃 (……はぁ)

文乃 (そんなのわかりきってるでしょ、と言ってやりたいよ)

文乃 (ロッカーの扉がひとりでに開くわけがない)

文乃 (指輪が勝手に転がり落ちるようなわけもない)

文乃 (こんなの、答えは当たり前のように出ている)

文乃 (……誰かが鍵のかかっていないロッカーを開け、成幸くんの指輪を持ち出したのだ)

成幸 「うぅ……奥さんに申し訳なくてさぁ……」

文乃 「………………」

文乃 (……言えるかー! だよ!)

文乃 (こんな純朴で良い子に育った弟に、そんな人の悪意が介在するようなこと、言えるかー!)

――――――ガサッ
195: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:31:49 ID:DUtC6N3c
文乃 「ん……?」

女子生徒 「あっ……」

文乃 (女の子……? なつかしい。うるかちゃんと同じ水着だ。水泳部かな?)

文乃 (でも、この子……今、男子更衣室を覗いていたの……?)

成幸 「ん……? ああ、○×。今日も部活か。ご苦労さんだな」

女子生徒 「は、はい。唯我先生も、お仕事お疲れ様です」

成幸 「はは、こどもが大人を労うもんじゃないよ」

成幸 「それに今は一応有給休暇中だ。仕事じゃない」

女子生徒 「……あの」

成幸 「ん?」

女子生徒 「そちらの方は……?」
196: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:32:54 ID:DUtC6N3c
成幸 「ああ、先生の古い友人でな。古橋文乃さんっていうんだ」

成幸 「ここのOGだから、○×の大先輩だな」

女子生徒 「そ、そうなんですか……。はじめまして。○×です」

ジロッ

女子生徒 「わたし、唯我先生が担任なんです」

文乃 「へ……? あ、そ、そうなんだー」

文乃 「はじめまして。古橋文乃です。そういえば、わたしも昔は成幸くんに勉強を教わってたんだよ」

女子生徒 「……“成幸くん”……?」 ギリッ

文乃 「……?」

女子生徒 「あ……あはは。なんでもないです。すみません」

文乃 (この子……)
197: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:33:38 ID:DUtC6N3c
キラッ……

文乃 「ん……?」

文乃 「ねえ、あなた。その手に持ってるのは……」

女子生徒 「!? あ……」

女子生徒 「す、すみません。用事を思い出しました! 失礼します!」

タタタタ……

成幸 「お、おい? 廊下は走るなよーーーー!!」

成幸 「……? ○×のやつ、一体どうしたんだ……?」

文乃 「………………」

文乃 「……なるほど」

成幸 「文乃?」

文乃 「成幸くん、君は、まったく……」

文乃 「ほんと、罪な男だよねぇ」
198: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:34:32 ID:DUtC6N3c
成幸 「い、いきなり何の話だ?」

文乃 「なんでもないよ。相変わらず女心が分からない愚弟だよ君は」

文乃 「わたしの出す女心の練習問題をしっかりやってこなかったせいだよ、まったく」

成幸 「なんだかわからんが、すまん……」

文乃 「……わたしさ、なんとなく指輪がどこにあるか検討ついちゃったんだよね」

成幸 「なに!? 本当か!? それはどこだ!?」

文乃 「……内緒。君には言えないよ、成幸くん」

成幸 「な、何で……?」

文乃 「何でもだよ。いいから、少し待っててよ」

文乃 「……わたしが、指輪を取ってきてあげるから」
199: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:36:04 ID:DUtC6N3c
………………女子トイレ 個室内

女子生徒 「………………」

キラキラ……

女子生徒 「……これ、どうしよう――」

?? 「――どうしようも何も、返すしかないんじゃないかな?」

女子生徒 「!? だ、誰!?」

?? 「名前は名乗らない方がいいんじゃないかな。お互いのためにも」

?? 「トイレの壁一枚隔てて、会話もできるわけだしね」

?? 「わたしは君のことが誰だか分からないし、君もわたしが誰か分からない」

?? 「それでよくないかな?」

女子生徒 「……どうして、ここにいるってわかったんですか?」

?? 「そりゃまぁ、競泳水着のまま行ける所なんて限られてるからね」

?? 「プールサイドにいない。女子更衣室にもいない。だとすれば、このプール併設のトイレしかないよね?」

女子生徒 「……そう、ですね」
200: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:37:13 ID:DUtC6N3c
?? 「……さて、本題に入ろうか」

?? 「君が今手に持って眺めているであろうその指輪を、どうするかという話だよ」

女子生徒 「………………」

?? 「うん。まぁ、君がそれを認めたくない気持ちもわかる」

?? 「でも、そこにそれがあるのは紛れもない事実のはずだよ」

?? 「わたしはさっき、君が指輪を隠し持っているのを、見てしまったからね」

?? 「競泳水着にポケットなんてないもんね。指輪を持つなら手の中しかない」

女子生徒 「……わ、わたしはっ」

女子生徒 「これを、盗もうとしたわけじゃないんです」

女子生徒 「悪いことだって分かってました。男子更衣室に侵入して、勝手に先生のロッカーを開けて……」

女子生徒 「……指輪を少し眺めて、それでよかったんです」

女子生徒 「でも、そのときちょうど、水泳部の男子が来る声が聞こえて……」

女子生徒 「指輪を持ったまま、逃げ出しちゃったんです……」
201: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:38:24 ID:DUtC6N3c
女子生徒 「唯我先生を困らせるつもりなんてなかったんです」

女子生徒 「ただ、ほんの少し……近くで、見てみたくて……」

?? 「………………」

?? 「……大好きな唯我先生の指輪を?」

女子生徒 「……!? な、なんで……?」

?? 「うーん、君がはるか年下の女の子じゃなければ、「わからいでか!」ってツッコんでるところだよ」

?? 「成幸くん良い子だもんねぇ。きっと良い先生なんだろうねぇ」

女子生徒 「……良い先生です。いつもわたしたちのために一生懸命だし、」

女子生徒 「わたしたちのために学園長とも戦ってくれるし、」

女子生徒 「わたしたちのこと、全力で庇ってくれるし、」

女子生徒 「……格好良いんです。唯我先生は。って、あなたはよくご存知ですよね、きっと」
202: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:39:32 ID:DUtC6N3c
?? 「ちなみに君が誤解しているようだから言っておくケド、わたしは彼の奥さんじゃないよ?」

女子生徒 「へ……? 違うんですか?」

?? 「違うよ。奥さんは別の誰か。わたしは彼の古い友人だよ」

?? 「……とまぁ、そんな話は置いておくとして、」

?? 「わたしからひとつ提案があるんだ。聞いてくれるかな?」

女子生徒 「……提案?」

?? 「わたしは学生のころ、“眠り姫”なんてあだ名されるくらいの寝ぼすけでね」

?? 「どんなところでも寝られるんだ……っていうのは言いすぎだけど」

?? 「わたしはいますごく眠い。だから、ちょっと洗面台で手を洗っている間に寝てしまうかもしれない」

?? 「そのとき、隣に誰かが立って、そっと洗面台に指輪を置いていっても、きっと気づかない」

女子生徒 「………………」

?? 「……とまぁ、そういう提案だよ。もしわたしが起きたときに指輪があったら、」

?? 「成幸くんには指輪は女子トイレに落ちてたよ不思議だねぇ、とだけ言おうかな」

?? 「きっとあの純朴な好青年は、それをまったく疑うことなく受け入れるだろうね」

?? 「……さて、どうする?」
203: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:40:55 ID:DUtC6N3c
………………

文乃 「……ほら」

成幸 「!? わっ、本当に指輪だ!?」

成幸 「どうやって見つけたんだ!? っていうかどこにあった!?」

文乃 「女子トイレに落ちてたよ。たぶん、君が眼鏡を外している間に、」

文乃 「指輪はコロコロ転がって女子トイレまで行ったんだろうね」

成幸 「……?」

文乃 (……少し苦しいかな?)

成幸 「なるほど。女子トイレだったら俺が今まで見つけられなかったのも合点がいく」

成幸 「女子トイレとは盲点だったな。ありがとう、文乃。さすがは俺の師匠だ」

文乃 「……成幸くん、君はさぁ」

成幸 「ん?」

文乃 (……少しは人を疑うってことも覚えた方がいいと思うよ?)

文乃 (って、わたしの夢の中の君に言っても仕方ないから、言わないけどね)
204: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:42:00 ID:DUtC6N3c
………………唯我邸前

文乃 「……本当に、いいから」

成幸 「そんなわけにいくかよ」

グイグイ……

成幸 「ぜひお礼をさせてくれ。電話で伝えたら、奥さんもお礼が言いたいって言ってたぞ」

文乃 「……いや、でも……」

文乃 (夢の中とはいえ、成幸くんの奥さん……)

文乃 (誰だろう。気になるけど、見たいような、見たくないような……)

文乃 (誰だろう、っていうのも野暮な定義だ)

文乃 (……“どちらだろう”と言うべきかもしれない)

……――ガチャッ

? 「……あら? 帰ってらしたんですか、あなた」

? 「そんな玄関前にいないで、入ってらしたらいいのに」

文乃 「……あっ」
205: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:43:09 ID:DUtC6N3c
? 「ああ、あなたが古橋文乃さんですのね」

? 「主人からお噂はかねがね聞いております」

? 「なんでも、すごい天才でいらっしゃるのに、苦手分野に挑戦したすごい人だと」

? 「わたくし、一度でいいからしっかりお話したかったんですのよ」

? 「主人があんまりにも楽しそうにあなたのことを話すものですから、」

? 「わたくし、実を言うと少しあなたに嫉妬しておりましたの」

成幸 「お、おい。やめろよ。恥ずかしいだろ……」

文乃 「なっ……」

? 「? 冗談のつもりだったのですけど、少し不謹慎すぎたかしら……?」

? 「不愉快にさせるつもりはなかったんですの。ごめんなさいね」

文乃 「なっ……なんなの……?」

ギリッ




文乃 「――――あなたは、誰……!?」
206: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:44:12 ID:DUtC6N3c
文乃 (この女性は、誰だ……?)

文乃 (りっちゃんではない。うるかちゃんでもない)

文乃 (当然、小美浪先輩でも、桐須先生でもない)

文乃 (誰……?)

成幸 「お、おいおい。何言ってんだ、文乃。結婚式で少しだけ話もしただろう?」

成幸 「俺の奥さんだよ。○○○○だよ」

文乃 「誰?」

成幸 「へ……?」

文乃 「……だから、誰だって、言ってるんだよ?」

文乃 「君は一体誰と結婚をしたんだって訊いてるんだよ!」
207: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:44:52 ID:DUtC6N3c
文乃 (だっておかしいだろう)

文乃 (こんなのあんまりだろう)


―――― ((大丈夫 絶対ない))

―――― ((絶対好きになんてなるはずがない))

―――― ((友達が 好きな人のこと))


文乃 「わたしは、だって……!」

文乃 「君が、わたしの友達と……りっちゃんと、うるかちゃんと……」

文乃 「……だから、わたしは……」

文乃 (だから……? だから、なんだというの?)

文乃 (友達のことを思っていた。だから?)

文乃 (だから、わたしは、彼のことを、あきらめた……?)

………………………………………………

………………………………

………………
208: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:46:00 ID:DUtC6N3c
………………

『……おい、古橋……』

『……古橋……』

『……文乃……』

『……文乃っち~……』

文乃 「あ……」

パチッ

文乃 「……あれ……?」

文乃 「ここは……」

成幸 「何寝ぼけてんだ、古橋。図書室だよ」

成幸 「気持ち良さそうに居眠り始めやがって。今日の分全然終わってないじゃねーか」

文乃 「………………」

文乃 「……成幸くん?」

成幸 「……? どうした、古橋? なんか変だぞ?」
209: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:47:23 ID:DUtC6N3c
文乃 (そっか……。夢、覚めたんだ)

文乃 「………………」

文乃 「……ううん。なんでもない。寝ちゃってごめんね。すぐ追いつくから」

カリカリカリ……

成幸 「お、おう。そうか。がんばってな」

文乃 「うん!」

文乃 「………………」

文乃 (ふふ……。変な夢を見たなぁ。途中から夢だって分かったし)

文乃 (あれが明晰夢ってやつだね。貴重な経験をしたよ)

文乃 「………………」

文乃 (……大丈夫。自分でも驚くくらい、平静だよ)

文乃 (わたしは、大丈夫。変な気持ちもない)

文乃 (わたしは……)
210: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:48:13 ID:DUtC6N3c
文乃 (……もしも、成幸くんがりっちゃんか、うるかちゃんと結ばれて、)

文乃 (そうしたらわたしは、それを心の底から喜ぶことができる)

文乃 (きっとできる)

文乃 (……でも、どうなのだろう)

文乃 (わたしは、それ以外の誰かが、成幸くんと結ばれたら、どう思うのだろう)

文乃 (あの夢は、あくまで夢だ。夢の中だから、変なことを思ってしまっただけだ)

文乃 (……けど、)

文乃 (もしも本当にそうなったとき、わたしは後悔せずにいられるのか?)

文乃 (もしかしたら、わたしは、自分では気づいていないだけで、すでに……)

文乃 (成幸くんのことを……)

成幸 「……古橋?」
211: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:49:56 ID:DUtC6N3c

文乃 「へ……?」

成幸 「大丈夫か? 顔色悪いぞ?」

理珠 「文乃、大丈夫ですか?」

うるか 「文乃っち。なんか元気ないよ」

文乃 「あ、いや……」

文乃 「あはは。ちょっと寝ぼけてるだけだよ。大丈夫……」

文乃 (……そう。わたしは、大丈夫。大丈夫でなければならない)

文乃 (夢の中のようなことには、きっとならない)

文乃 (だって、わたしの友達は、こんなにも魅力的な女の子だから)

文乃 (わたしは、そんなふたりの応援ができれば、)

文乃 (そして、成幸くんの幸せな未来を、お姉ちゃんとして応援できればそれだけで……)

文乃 「……うん。大丈夫だよ。心配かけてごめんね」

ニコッ

文乃 (わたしはそれで満足だから)

おわり
212: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/19(水) 01:51:28 ID:DUtC6N3c
………………幕間  兄も幕間もわたしのもの

水希 「どうも、古橋さん」

キラキラキラ……

水希 「わたしがお兄ちゃんの嫁の水希です」 ニコッ

文乃 「おおう……」



おわり

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