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143: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:02:05 ID:SWSJNpPk
………………図書館

成幸 「………………」

フゥ

成幸 (久々にひとりの勉強時間が取れたから、めちゃくちゃ捗ったな)

成幸 (今日やりたいと思っていた分がもう終わるとは)

成幸 (……んー、受験生としては、時間があるならもっと勉強しておくべきなんだろうけど、)

成幸 (気分転換がてら、久々に本でも読もうかな。参考書じゃなくて、小説でも……)

成幸 (そういえばオススメの本が入り口近くに展示してあったな)

成幸 (行ってみるかな)
144: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:02:54 ID:SWSJNpPk
………………

成幸 「へー、古典SF特集なんてやってるのか」

成幸 「読んだことはないけど、知ってるタイトルばっかりだな」

成幸 (とはいえ、全部は読めないし……ん?)


『天の光はすべて星』


成幸 「このタイトル……どこかで……」


―――― 『まさに「天の光はすべて星」だね』

―――― 『あっ えっと そういうタイトルの古い本があってね』


成幸 「あっ……」 (そうだ。古橋が好きだって言ってた本だ……)

成幸 「……読んで、みようかな」

成幸 (とはいえ、古橋が好きだっていう本だし、)

成幸 (俺にはちょっと難しいかもなぁ)
145: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:04:07 ID:SWSJNpPk
………………夜 唯我家

成幸 「………………」

ペラッ……ペラッペラッ……

水希 「? お兄ちゃん、今日は勉強勉強言わないね。本読んでるけど……」

成幸 「………………」

水希 「……お兄ちゃん?」

成幸 「ん……? ああ、すまん。水希、何か言ったか?」

水希 「えっ、いや、何も……」

成幸 「そうか」

ペラッ……

水希 (めずらしい。お兄ちゃんが勉強以外ですごく集中してる)

水希 (普段本なんてあんまり読まないのに……)

ピキューン

水希 (……女の気配がする)
146: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:05:19 ID:SWSJNpPk
………………深夜

成幸 (……どうしよう。そろそろ寝ないと明日の学校に差し障りが出る)

成幸 (分かっているのに、読むのをやめられない)

成幸 (決して、そこまで面白い話ではない。地味であまり抑揚のない物語だと思う)

成幸 (アメリカナイズなかけ合いはややくどいし、主人公は情熱的に見えてかなりニヒルだ)

成幸 (……でも、)

成幸 (続きが気になって仕方ない……!)

ペラッ……

成幸 (……!? うぇ!? ええっ!?)

成幸 (ここでこうって……!? ん……!? いやいや、それじゃ……ずっと……!?)

成幸 (………………)

ペラッ……ペラッ……
147: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:06:19 ID:SWSJNpPk
………………翌朝 学校 3-B教室

成幸 「………………」

グターッ

大森 「……? 唯我の奴どうしたんだ?」

小林 「なんでも、徹夜で本を読んじゃったらしいよ」

小林 「眠くて仕方ないから放っておいてくれってさ」

大森 「めずらしい。受験に命かけてる唯我が勉強以外でグロッキーなんて」

小林 「俺もまったく同感だよ」

成幸 「………………」 (めちゃくちゃ面白かった……)

成幸 (……そうだ。古橋に、この感動を伝えなきゃ)

成幸 (いや、違う。俺がただ単に、この本について語れる相手がほしいというだけだ)

成幸 (ぜひ、古橋と話したい……)
148: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:07:26 ID:SWSJNpPk
………………3-A

ピロン……

文乃 「うん……? 成幸くんからメッセージ?」


『大事な話がある』


文乃 「へ……?」


『今日の昼休み、いつもの場所に、ひとりで来てほしい』


文乃 「ふぇっ……?」


『頼む』


文乃 「い、一体なんだっていうの、かな……?」

文乃 「とりあえず、返信を、と……」


『どうしたの? どういう用件かだけ、今教えてくれない?』
149: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:08:24 ID:SWSJNpPk
鹿島 「? 古橋さん、どうかしたんですか~」

文乃 「へっ? い、いや、何でもないよ、鹿島さ――」

――ピロン


『メッセージじゃだめなんだ』

『お前に会って、面と向かって、言いたいことがあるんだ』

『頼む。いま、お前に会いたくて仕方ないのを我慢してるくらいなんだ』

『昼休みより先なんて考えられない』


鹿島 「あら~……」

文乃 「ち、違うからね!? きっとなんか、成幸くんとち狂ってるだけだからね!?」

鹿島 「まさかこんな熱烈なメッセージが来ているとは……」

鹿島 「わざとではないにせよ、勝手に画面を見てしまって申し訳ございません~」
150: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:10:07 ID:SWSJNpPk
文乃 「違うからね!? 鹿島さんが考えてるようなことは何もないからね!?」

鹿島 「昼休みですね。いつも唯我成幸さんとの逢瀬に使っている場所ですね~?」

鹿島 「誰も近づかないように見張っておきますので、ご安心くださいね~」

文乃 「!? いつも成幸くんと話してるあの場所を知ってるの!?」

鹿島 「それはもちろん、いつも覗いていますから~……って、これは内緒なんでした」 テヘペロ

文乃 「てへぺろじゃないよ! っていうか、えっ? えっ? えっ?」

鹿島 「ふふふ~。私の相手なんかしてる場合じゃないですよね~?」

文乃 「こんな熱烈なお誘い、どうされるおつもりですか、古橋姫?」

文乃 「……そ、そんなの……」

ドキドキドキドキ……

文乃 (こ、これって……どういうこと、なのかな……)

文乃 (そういうこと、なのかな……)
151: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:12:13 ID:SWSJNpPk
文乃 「い、いや、そんな、まさかぁ。きっと成幸くんのことだから、」

文乃 「何か間違えてるだけだって。水希ちゃんへのメッセージを間違えて送ってるだけとかじゃないかな」

鹿島 「実の妹にこんなメッセージを送っている方が問題と思いますが~」

ピロン


『どうした? 今日は都合が悪いのか? だとしたら、無理を言って悪かった』

『明日でもいい。その先でもいい。できるだけ早く、お前に会える日を教えてくれ』

『時間は取らせない。古橋、お前に少し話があるだけなんだ』


文乃 「ふぁっ……」

カァアアアアア……

鹿島 「あらぁ~」 ニヤァ 「しっかり名指しされちゃいましたねぇ~、古橋さん」

文乃 「もっ、もうっ! 鹿島さんは向こう行ってて!」
152: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:13:40 ID:SWSJNpPk
文乃 「………………」

ドキドキドキドキ……

文乃 (こ、こんなの……)

文乃 「………………」

ピッ……ピッピッ……


『大丈夫だよ。昼休み、お昼ご飯持って、いつもの場所、行くね』


文乃 (とりあえず、これで……)

ピロン


『ありがとう。急に変なこと言い出して悪かったな』

『嬉しいよ。楽しみにしてるな』


文乃 「なっ……」

文乃 (何が楽しみだって言うの~~~!?)
153: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:14:25 ID:SWSJNpPk
………………

鹿島 「……かくかくしかじか、ということがありまして~」

蝶野 「なんと。そんなことがあったっスか」

猪森 「苦節数ヶ月。唯我成幸の方からその気になったのなら僥倖と言うべきか」

猪森 「そもそも、古橋姫の美貌を考えればなびかぬ方がどうかしている」

鹿島 「ふふふ♪ 私、いまから楽しみで仕方がありません」

鹿島 「いばらの会総力をあげて、唯我成幸さんの“大事な話”とやらを守ろうではありませんか~」

蝶野 「当然っス。古橋姫の恋路を実らせる。それが目下の我々の目標っスから」

猪森 「幹部以外も総動員だ。メッセージの通達は我々で分担する」

猪森 「鹿島は作戦の子細立案を頼む。昼休みまでだが、いけるか?」

鹿島 「ふふ、当然です~。私を誰だと思っているんですか~?」

鹿島 「いばらの会リーダー、鹿島の名は伊達ではありませんよ~」
154: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:15:35 ID:SWSJNpPk
………………3-B

成幸 (……しまったな。興奮してメッセージをたくさん送ってしまった)

成幸 (謝っておくか。いや、それでまたメッセージを重ねてしまっては本末転倒だ)

成幸 (っていうか、ちょっと小説の影響を受けてアメリカナイズなメッセージになってしまった……)

成幸 「……ま、古橋なら笑って許してくれるよな」

成幸 「はぁ~。昼休みは古橋に会える……」 (そしてたくさん語り合える……)

成幸 「楽しみだなぁ」

小林 「!?」 (な、成ちゃん……!? とうとう、女の子と……!)

小林 (そうかぁ。成ちゃんは武元でも緒方さんでもなく、古橋さんを選んだのか……)

ホロリ

小林 「……智波ちゃんに、武元を慰める会を開いてあげてってメッセージ送っとかなきゃ」

大森 「………………」

ギリギリギリギリ……!!!

大森 「くそぉぉおおおおおおお! 俺の春はどこだぁあああああああああ!!!」
155: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:25:11 ID:SWSJNpPk
………………3-A

古橋 (うぅ……今日は幸いにして成幸くんと同じ授業はないけど……)

キリキリキリ……

古橋 (それが余計に昼休みまでの重圧を強くするよ……)

古橋 (一体全体、成幸くんは何を考えてあんなメッセージを送ってきたんだろう)

古橋 (それに、話があるって……何の話だっていうのかな)

古橋 (そっ、それに……)


―――― 『お前に会って、面と向かって、言いたいことがあるんだ』

―――― 『頼む。いま、お前に会いたくて仕方ないのを我慢してるくらいなんだ』


古橋 (なっ、何を言ってんの、もーっ////)

古橋 (……って、わたしったら、何を喜んでいるのかな)

古橋 「………………」

ハッ

古橋 (!? 喜んでるの!? わたしが!?)
156: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:26:23 ID:SWSJNpPk
桐須先生 「で、あるからして、当時の列強諸国はどの国もこういった政策を……」

桐須先生 「……?」

古橋 (わ、わたしが!? 唯我くんに情熱的なメッセージをもらって!?)

古橋 (喜んでるの!?)

桐須先生 「……古橋さん? 顔が真っ赤だけれど、調子でも悪いのかしら?」

古橋 (そんなわけないない! だって現に、胃がすごく痛いし!)

キリキリキリ……

古橋 (うん、痛い! 大丈夫! 痛いもん!)

古橋 (……いや、胃が痛くて喜んでどうするのわたし……)

桐須先生 「今度は真っ青よ? 百面相ね。というか、私の話を聞いてるかしら?」

古橋 (いや、でも……実際……)

古橋 (もし、成幸くんに……ゴニョゴニョ……されちゃったら、わたしは……――)

桐須先生 「――――古橋さん?」

古橋 「ひっ……!? き、桐須先生!?」
157: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:27:03 ID:SWSJNpPk
桐須先生 「私の授業なんて、聞く意味もないという確固たる意思表示かしら?」

桐須先生 「良い度胸ね……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

古橋 「ち、違うんです! ちょっと、考え事があって……」

桐須先生 「ほぅ。私の授業より大事な考え事。とても興味深いわね」

桐須先生 「……話は後で聞かせてもらうわ。昼休み、生徒指導室に来なさい」

古橋 「へ……?」

古橋 「本当ですか!?」 パァアアアア

桐須先生 「不可解。なぜ嬉しそうなの、古橋さん」

古橋 「なんでもありません! 昼休み、生徒指導室ですね!」

古橋 (ただの対処療法なのは百も承知だけど!)

古橋 (これで、昼休みに成幸くんと会わない口実ができた!)

古橋 (いまの精神状態で成幸くんに会ったら、どうなるかわかったもんじゃないもんね!)
158: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:28:24 ID:SWSJNpPk
………………休み時間 3-B


『ということで、ごめん、成幸くん』

『昼休みは桐須先生に呼び出されてしまったので』

『会えそうにないです』


成幸 「………………」

ガクッ

成幸 「……まぁ、桐須先生に呼び出されたんじゃ仕方ないよな」

成幸 「大丈夫だ。気にするな……送信、と……」

ピッ

成幸 「はぁ……。残念だなぁ。会いたかったなぁ、古橋……」

小林 (寝不足のせいかもしれないけど、いろいろダダ漏れだよ成ちゃん……)

ガラッ

桐須先生 「時間厳守。五秒後にチャイムが鳴るわ。席に着きなさい」

成幸 (やべっ。次、桐須先生の授業か。準備しないと……)
159: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:29:44 ID:SWSJNpPk
………………

成幸 (……やばい)

成幸 (徹夜のツケが、こんなところで……)

成幸 (ねっっっっむい……)

桐須先生 「……と、いうことで、列強諸国の施策に対し、我が国は……」

成幸 (しかも古橋と会えないって分かって、少し落ち込んでるから……)

成幸 (余計に……眠い……)

成幸 (ッ……!) ブンブンブン (しっかりしろ、唯我成幸!)

桐須先生 「……? 唯我くん?」

成幸 (勉強をさせてもらっている学生という身の上で、授業中に寝るなど言語道断!)

成幸 (働いてくれている母さんにも! お弁当を作ってくれている水希にも申し訳が立たない!)

桐須先生 「唯我くん。聞いているのかしら? 唯我くん?」

成幸 (俺はVIP推薦をもらわなきゃならない! 授業中に寝ている暇なんか――)

桐須先生 「――……唯我くん?」

成幸 「ひっ……!? き、桐須先生!?」
160: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:31:07 ID:SWSJNpPk
桐須先生 「私の授業はそんなに退屈かしら、唯我くん?」

桐須先生 「世界史の授業に日本の歴史もまじえて、分かりやすく話をしていたつもりなのだけど」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 (し、しまった! 寝ないことに集中するあまり、授業を聞いていなかった!)

成幸 「ち、違うんです、桐須先生! ちょっと眠くて……」

桐須先生 「なるほど。私の授業は居眠りに最適な退屈な授業、と……?」

成幸 「!? そうじゃないんです、先生!」

桐須先生 「話は後で聞きます。昼休み、生徒指導室に来なさい」

成幸 「は、はい……。わかりました……」

成幸 (しょうがないよな。居眠りしそうになってた俺が悪いわけだし……)

成幸 「ん……?」

成幸 (桐須先生に呼び出された……? それって……)
161: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:41:04 ID:SWSJNpPk
………………昼休み 生徒指導室

文乃 「………………」

文乃 「ど、どうして……」

文乃 「どうして君まで生徒指導室に来るのかな!? 成幸くん!?」

成幸 「いや……ちょっと授業中に居眠りしそうになっちゃってさ……」

桐須先生 「喧噪。ここは生徒指導室よ。静かにしなさい、古橋さん」

文乃 「あっ……す、すみません……。つい……」

文乃 (……これほんとに、ほんとのほんとのマジのやつだー!!)

文乃 (成幸くんは本当にわたしに会いたくて会いたくて仕方なかったんだー!)

文乃 (だからわざと桐須先生に怒られるようなことをして……)

文乃 (生徒指導室に呼ばれてわたしに会おうと……)

文乃 (そっ、そこまでして……?)

文乃 (そこまでして、わたしに会いたかったの……?)

カァアアアア……
162: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:42:22 ID:SWSJNpPk
桐須先生 「あなたたちの今日の態度は、いくらなんでもだらけすぎです」

桐須先生 「普段の素行は問題ないので、今日はお説教と反省文だけで済ましますが、」

桐須先生 「今後も続くようであれば、本格的な生徒指導に入りますよ?」

桐須先生 「とにかく、しっかりとしなさい」

文乃 「は、はい……」

成幸 「返す言葉もありません。すみませんでした……」

桐須先生 「……よろしい。では、この原稿用紙に反省文を書きなさい」

文乃 (ほっ……。桐須先生には悪いことをしたけど、反省文で済んで良かった)

文乃 (先生の監督があれば、成幸くんとふたりきりになることはないだろうし……)

桐須先生 「書き終えたら、私に提出すること」

桐須先生 「書き上がらない場合は、放課後も残しますからそのつもりで」

桐須先生 「では、私は仕事があるので職員室に戻ります」

文乃 「へ……?」
163: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:43:18 ID:SWSJNpPk
文乃 「せ、先生!? 行ってしまうんですか!?」

桐須先生 「し、仕方ないでしょう? 私だって、他に仕事があるのだから……」

桐須先生 「古橋さん、あなた、今日は本当に変よ? 何かあったの?」

文乃 「何か、って……」 チラッ

成幸 「?」

文乃 (い、言えるわけねー!! だよっ!)

文乃 「……すみません。大丈夫です」

桐須先生 「そう? 何かあったらすぐに言いなさい」

桐須先生 「それじゃ、しっかりと反省文を書きなさい。いいわね」

ガチャッ……

文乃 (い、行っちゃった……)

成幸 「……さ、書くか」

文乃 (結局成幸くんとふたりきりだよー!)
164: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:44:02 ID:SWSJNpPk
………………

成幸 「………………」

カリカリカリ……

文乃 「………………」 ジーッ (……何か言い出すんじゃないかと身構えたけど、)

文乃 (身構えてたのがバカみたい。成幸くん、真面目に反省文書いてるだけだよ)

文乃 (やっぱりわたしの勘違いだったのかなぁ……)

成幸 「……よしっ。これでいいだろう」

文乃 「あっ、成幸くん、できたの?」

成幸 「おう。やってしまったこと。その原因。対策。しっかりと書いたからな」

成幸 「反省文の見本にしてもらっても恥ずかしくないくらいだぜ」

文乃 「ふふ。ほんと、面白いこと言うなぁ、成幸くんは」

文乃 (よかった。普通だ。この分なら、やっぱりわたしの勘違いだったんだね)

成幸 「俺が書き上がってるくらいだから、お前はもう書き上がってるだろ?」

成幸 「じゃあ、改めて、場所は違うけど、ここで話をしてもいいか?」

文乃 「へ……?」
165: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:44:59 ID:SWSJNpPk
成幸 「………………」 キリッ

文乃 (勘違いじゃなかったー!! めっちゃ真面目な顔してこっち見てるよー!)

文乃 「だ、だめだよ、成幸くん! わたしまだ書き上がってないから!」

文乃 (ほんとは君が書き上げるはるか前に書き上がってたけど!!)

成幸 「へ……? あ、そうなのか……」

シュン

成幸 「すまん……。てっきり、古橋はもう書き上がってると思ったから……」

文乃 「うっ……」

文乃 (成幸くん、君はなんて罪な顔をするんだい……?)

文乃 (そんなしょぼくれた顔しないでよ……。嘘ついたのがすごく悪いことに思えるよ……)

文乃 「……ち、ちなみに」

成幸 「ん?」

文乃 「話、ってどんな話なのかな? それだけでも、教えてくれると……」

文乃 (心の準備ができるんだけど……)
166: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:46:30 ID:SWSJNpPk
成幸 「いやいや、お前まだ反省文書き上がってないんだろ?」

成幸 「まずそれを終わらせないと、また桐須先生に怒られるぞ?」

文乃 「そ、そうだね」

成幸 「それに、メッセージでは“時間は取らせない”なんて言ったけどさ、」

ニコッ

成幸 「よく考えたら、すぐ終わりそうにないからさ」

文乃 (君は一体何を言うつもりなのー!?)

文乃 「………………」

文乃 (……いや、これは、もう確定的)

文乃 (成幸くんは、きっと、わたしに……ゴニョゴニョ……しようとしてるんだ)

文乃 (……で、でも、成幸くんには、りっちゃんとうるかちゃんがいるし)

文乃 (友達の好きな人と、なんて……だめ。わたしにはできないよ……)
167: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:47:40 ID:SWSJNpPk
成幸 「……古橋? えんぴつが動いてないぞ?」

文乃 (成幸くんを傷つけたくない)

文乃 (何より、成幸くんと気まずくなりたくない)

文乃 (成幸くんに勉強を教えてもらいたい)

文乃 (……だから、わたしは)

成幸 「古橋?」

文乃 (ずるい女だ、わたし……)

文乃 「……ねえ、成幸くん。ごめん」

成幸 「へ?」

文乃 「成幸くんがしようとしてる話を、わたしは聞けない」

成幸 「えっ……?」

成幸 「ど、どうして……」
168: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:48:41 ID:SWSJNpPk
文乃 「だって、それは……わたしにとって、本当に大事なものを裏切ることになるから」

文乃 「裏切ることにならなくても、傷つけることになってしまうかもしれないから」

成幸 「………………」

文乃 「……成幸くんの気持ちは嬉しいよ? でも……」

文乃 「わたしは、その大事なものを壊したくないんだ」

文乃 「……君も、その大事なもののひとつだから」

成幸 「古橋……」

成幸 「……すまん。俺が悪かった」

成幸 「安易な俺を許してくれ……!」

文乃 (わ、わかってくれたぁ……) パァアアアア

文乃 「ううん、いいんだよ、成幸くん」

文乃 「わたしの方こそごめんね。君の言葉すら聞いてあげられなくて」

文乃 「でも、君の気持ちは嬉しいから。それだけは覚えておいて」
169: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:49:22 ID:SWSJNpPk
成幸 「ああ、古橋……。俺は、なんて愚かなことをしようとしていたんだ……」

文乃 「いいんだよ。本当にごめんね」

成幸 「謝らないでくれ、古橋!」

ヒシッ

文乃 「ふぇっ……?」

文乃 「!?」 (何で!? どうしてわたしの手を取ってるのかな、成幸くん!?)

成幸 「お前にとって本当に大事な思い出だもんなぁ……!」

ポロポロポロ……

文乃 「ふぇっ!? 泣いてるの、成幸くん!?」

成幸 「うぅ……すまん。古橋……」

文乃 (泣くほど辛かったんだ……)

文乃 (……それなのに、わたしは)

文乃 (その想いを聞いてあげることすらできないって……)

文乃 (……それは、いくらなんでも、ひどい気がする)
170: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:50:07 ID:SWSJNpPk
文乃 (だってもし、わたしが将来……ゴニョゴニョ……するとき、)

文乃 (相手からこんな風に、言う前に拒絶されてしまったら、きっとショックだもん)

文乃 (だから、わたしは……。きちんと断ってあげないといけないんだ)

文乃 (断って……)


―――― 『かっこいいよな。古橋は』


文乃 (……どうして)

文乃 (どうして、旅館に泊まったときのことなんて、思い出してるの……)
171: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:51:10 ID:SWSJNpPk
文乃 (わたし……わたしは……っ)

文乃 (違う。断るのが怖いんじゃない。今までの関係が壊れるのが怖いわけでもない)



文乃 (――わたしが成幸くんの言葉を、拒絶できないって分かってるから、怖いんだ)



文乃 「………………」

文乃 「……いいよ」

成幸 「へ……?」
172: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:52:04 ID:SWSJNpPk
文乃 (それでも、わたしは……聞いてあげないといけない気がする)

文乃 (ううん。認めるのは怖いけど、認めてしまおう)

文乃 (わたしは、成幸くんの言葉が聞きたいんだ……)

文乃 「話して。大事な話があるんでしょ?」

成幸 「で、でも、それはお前にとって、とっても大切な……」

文乃 「……そうだよ。でも、聞いてあげたいって思うのも、本当のことだよ」

文乃 「わたしは今、君の言葉を聞きたいって思ってるんだよ」
173: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:53:36 ID:SWSJNpPk
成幸 「古橋……」

ジーン

成幸 「ありがとう、古橋。本当にありがとう」

成幸 「じゃあ、言ってもいいか?」

文乃 「うん。どんとこい、だよ」 (わたしは、きっと……)

文乃 (成幸くんの言葉を、受け入れて……――)



成幸 「―――――― 『天の光はすべて星』 読んだよ! めちゃくちゃ面白かったよ!」



文乃 「わ、わたし、わたしは……」


文乃 「………………」


文乃 「……は?」
174: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:54:40 ID:SWSJNpPk
成幸 「いや、本当におもしろくてさ!」

成幸 「昨日偶然図書館で見つけて読んでみたら止まらなくてさ!」

成幸 「徹夜で読んじまったよ! だから居眠りしそうになったんだけどな」

成幸 「お前と語り合いたくてさー。だから昼休みゆっくり話したかったんだけど……」

成幸 「でも、そうだよな。あの本、お前とお袋さんの思い出の本だもんな」

成幸 「俺みたいな、SFもそう詳しくない奴と話したくはないよな」

成幸 「気遣いさせて悪かったな。語り合えはしないまでも、感想だけでも言えてすっきりしたぜ」

文乃 「………………」

成幸 「……? 古橋? どうかしたか?」

成幸 「顔真っ赤だぞ? 手もプルプル震えてるし、涙目だし……」

成幸 「や、やっぱり、俺がこんな話するの、嫌だったか……?」

文乃 「……べつに、なんでも、ないですし」
175: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:56:00 ID:SWSJNpPk
成幸 「へ……? なぜ丁寧語?」

文乃 「なんでもないです。ほら、早く提出しに行くよ。成幸くん」

成幸 「え? でもお前、反省文書き上がって……る!? いつの間に書いたんだ古橋!?」

文乃 「うるさい。いいから。早く出しに行こう」

成幸 「な、何を怒ってるんだよ。古橋」

文乃 「怒ってないです。怒ってると思うなら、その原因を探してください」

成幸 「やっぱり怒ってるじゃないか!?」

文乃 「女心の練習問題だよ! 少しは自分で考えろバカー!」
176: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:57:18 ID:SWSJNpPk
………………放課後

成幸 「……なんていうか、今日は本当に悪かったな、古橋」

文乃 「その話はもうしないでって言ったでしょ」

成幸 「うっ……。わ、わかった……」

成幸 (結局、謝罪は受け入れてくれたようだけど、何に怒っているのかは未だに教えてくれていない)

成幸 (やっぱり、安易にお袋さんとの思い出に触れてしまったから、怒ってるんだろうか……)

ズーン……

成幸 (俺は無神経だ。古橋と同じように親父を亡くしている俺が、)

成幸 (古橋の気持ちを慮ってやれないなんて……。教育係失格かもしれん)

文乃 「………………」

文乃 (……はぁ。また変なこと考えてへこんでいるんだろうなぁ)

文乃 「……言っておくけど、成幸くんが『天の光はすべて星』を読んでくれたことは、すごく嬉しかったんだよ」

成幸 「え……?」
177: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:58:43 ID:SWSJNpPk
文乃 「……嬉しくないわけないでしょ」

文乃 「友達が、わたしの大切な思い出を話したこと、覚えてくれてて、」

文乃 「……本まで読んでくれるなんて。そんなの、嬉しいに決まってるじゃない」

成幸 「古橋……」

成幸 「ん……? だとすると、一体何に怒ってたんだ?」

文乃 「………………」

ツーン

文乃 「……知らない。自分で考えろ! だよ」

成幸 「なんでそこは教えてくれないんだ!?」

文乃 (……教えられるわけ、ないじゃん)

文乃 (君から……ゴニョゴニョ……されると思い込んでいたなんて)

文乃 (……そして、その言葉を、たぶん、期待してしまっていた、なんて)

文乃 (……言えるわけ、ないじゃん)

文乃 (成幸くんの、バカ)

おわり
178: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:59:32 ID:SWSJNpPk
………………幕間1 唯我家

水希 「……お兄ちゃんの様子がおかしいときは、メッセージのチェックをしないと」

水希 「ん……? 古橋さん宛に大量のメッセージが……」

『大事な話がある』
『今日の昼休み、いつもの場所に、ひとりで来てほしい』
『頼む』
『メッセージじゃだめなんだ』
『お前に会って、面と向かって、言いたいことがあるんだ』
『頼む。いま、お前に会いたくて仕方ないのを我慢してるくらいなんだ』
『昼休みより先なんて考えられない』
『どうした? 今日は都合が悪いのか? だとしたら、無理を言って悪かった』
『明日でもいい。その先でもいい。できるだけ早く、お前に会える日を教えてくれ』
『時間は取らせない。古橋、お前に少し話があるだけなんだ』
『ありがとう。急に変なこと言い出して悪かったな』
『嬉しいよ。楽しみにしてるな』

水希 「………………」 ニヤリ 「……へぇぇえ」

水希 「……さて、とりあえず、古橋さんと、“お話”しないと……」

ユラリ

水希 「ふふ……ふふふふ……」


※その後、誤解はちゃんととけました。
179: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 22:00:30 ID:SWSJNpPk
………………幕間2  いばらの道のいばらの会

鹿島&蝶野&猪森 「「「………………」」」 ニヤニヤニヤニヤ

文乃 「……なに? 鹿島さんたち」

鹿島 「いえいえいえ。残念でしたね、古橋さん~」 ニコッ 「告白ではなくて」

文乃 「聞いてたの!? だってあそこ生徒指導室だよ!?」

蝶野 「ふふ、甘いっスよ、古橋さん」 キリッ 「桐須先生が怖くて我らの責務が果たせるか、っスよ」

猪森 「まぁ、放課後、生徒指導室に張り付いていたことについてみっちりお説教は受けたがな」

猪森 「しかし“氷の女王”恐るるに足らず! この程度で我々が反省すると思っ――」

桐須 「――ほう。まだ反省していないのね」 ゴゴゴゴゴ……!!!

鹿島&蝶野&猪森 「「「!?」」」

桐須 「三人とも来なさい。今日は最終下校時刻に帰れると思わないことね」

アアアアアーーーオタスケヲーーーオジヒヲーーー……ズルズルズル………

文乃 「……ふぅ」 (……あの三人がいないと)

文乃 (平和で、いい……)
180: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 22:01:16 ID:SWSJNpPk
………………幕間3 慰める会

海原 「うるか、元気出して!」

川瀬 「ああ。男は唯我だけじゃないぞ」

うるか 「へ……? へ? へ?」


おわり

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