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【ぼく勉】水希 「わたしとお兄ちゃん」

121: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/16(日) 15:16:28 ID:l3ORh6EU
………………唯我家

水希 (わたしのお兄ちゃんはかっこいい)

水希 (わたしのお兄ちゃんは頭がいい)

水希 (わたしのお兄ちゃんは優しい)

水希 (わたしのお兄ちゃんは頼もしい)

水希 (わたしは、お兄ちゃんが大好きだ)

水希 (……だというのに)

理珠 「成幸さん、この設問なのですが、出題者の意図がわかりません。なぜこんな回りくどい問題を作るのですか?」

文乃 「ふぁー。成幸くん、どういうわけか方程式からxが消えるんだよ。どうしてだと思う?」

うるか 「成幸ぃー! アルファベットが文字に見えなくなってきたよ! これがゲシュタルト崩壊ってやつ!?」

水希 「………………」 ギリッ

水希 (……そんなお兄ちゃんが、どういうわけか最近よくモテている)


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122: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/16(日) 15:17:28 ID:l3ORh6EU
水希 (昔はそんなことはなかった)

水希 (それこそ、数ヶ月前。高校三年生に進級して少しした頃からだ)

水希 (まず、家に女の子をふたり、連れてきた。緒方さんと古橋さんだ)

緒方 「ふむ……。よく分かりました。ありがとうございます、成幸さん」

文乃 「そっか。ここの項を整理しないからこんがらがっちゃうのかぁ。ありがとう、成幸くん」

水希 (……それでも、その頃はふたりはもう少しお兄ちゃんによそよそしかったと思う)

水希 (今は、なんというか、こういう言い方は絶対に適切ではないのだけど、)

水希 (お兄ちゃんを、すごく信頼しているように見える)

水希 (そして……)

武元 「……28,29,30。あ、ほんとだ。目をつむって三十秒数えたらちゃんと英語に見える! ありがと、成幸」

水希 (中学生の頃から話には聞いていた、水泳部の武元さん)

水希 (これは、とても癪だけれど、断言してしまっていいだろう)

水希 (この人は間違いなく、お兄ちゃんのことを狙っている) ギリッ
123: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/16(日) 15:18:29 ID:l3ORh6EU
水希 (それに、この三人だけじゃない)

水希 (お兄ちゃんが最近、嬉しそうに話すことがある)

水希 (よく勉強を教えてくれる先生がいる。その人がいると集中できて勉強が捗る、と)

水希 (嫌な予感がして詳しく聞いてみれば、なんと若い女性の先生だという)

水希 (そして、メイド喫茶……)

水希 (お兄ちゃんが通い詰めているメイド喫茶の、カリスマ店員と呼ばれる“あしゅみー先輩”)

水希 (全員が全員、お兄ちゃんに好意を持っているとは思わないけど、)

水希 (お兄ちゃんはボーッとしているところがあるから、そこをつけこまれないか心配だ)
124: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/16(日) 15:19:20 ID:l3ORh6EU
………………ファミレス

小林 「……で、俺を呼んだわけなのね」

水希 「小林さんも受験生なのに、すみません」

小林 「それはいいけどさ。急に成ちゃんからこんなメッセージが来たからびっくりしたよ」



『たすけてください』



小林 「何事かと思ったら、成ちゃんじゃなくて水希ちゃんが送ってたとはね」

水希 「うちは携帯電話が家族共用なので……」
125: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/16(日) 15:20:13 ID:l3ORh6EU
小林 「それで、具体的に俺は何をしたらいいのかな」

小林 「いくら水希ちゃんのお願いでも、成ちゃんを彼女たちから引き離すっていうのはできないよ?」

水希 「そこまでしてもらおうとは思ってません。ただ、教えてほしいんです」

水希 「お兄ちゃんと仲の良い、あの人たちのことを。性格とか。小林さんの印象でいいので」

小林 「ふーん? まぁ、それくらいならお安い御用だけど」

小林 「といっても、俺、そこまであの子たちと関わりないよ?」

水希 「小林さんの観察力を信じます!」

パサッ

小林 (……ノートを広げだした。これは滅多なことは言えないな)
126: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/16(日) 15:21:15 ID:l3ORh6EU
水希 「では、まず緒方理珠さんからお願いします」

小林 「緒方さんかぁ。うーん……」

小林 「あんまり人付き合いは得意じゃなさそうな感じかなぁ」

水希 「ふむふむ……」 メモメモ

小林 「もう何度か顔を合わせたけど、たぶん俺の名前も覚えてないんじゃないかな」

水希 「なるほど! 薄情な人なんですね!」

小林 「誘導尋問するのはやめようか?」

小林 「こらこら、俺が言ってもないことをメモしちゃいけないよ水希ちゃん」
127: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/16(日) 15:22:24 ID:l3ORh6EU
小林 「元々人の名前を覚えるの苦手なんじゃないかな。あんまり人に興味がないっていうか……」

水希 「……? でも、わたしの名前は覚えてくれていたみたいですけど」

小林 「それはたぶん、水希ちゃんに興味があるんだよ、きっと。成ちゃんの妹だからね」

水希 「将を射んと欲すればまず馬を射よ、ということですか。なるほど。良い度胸です」

水希 「わたしを籠絡できると思っているなら考えが甘いですね」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

小林 「たぶん間違いではないけど怖いからその表現はやめようか」

小林 (実際、水希ちゃんを手なずけられた子が成ちゃんに近づける気はするけど)

小林 「何にせよ、悪い子じゃないよ。一生懸命成ちゃんに勉強を教わっているみたいだし」

小林 「すごい努力家だって成ちゃんも言ってたよ」

水希 「……ソウデスカ。ワカリマシタ」

小林 「そういうところをメモしてくれると俺としてはとても嬉しいなぁ?」
128: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/16(日) 15:23:34 ID:l3ORh6EU
水希 「次は古橋文乃さんについて教えてください」

小林 「古橋さんは、おっとりした子だよね」

小林 「正統派の美人さんだし、男子にモテる感じかな。実際たくさん告白されてるみたいだし」

水希 「なるほど。色んな男に色目を使うふしだらな女、と」

小林 「うん。本当の本当に、一言もそんなこと言ってないからね、俺は」

水希 「……さすがに失礼だった気がするので訂正します」

水希 「そういう人じゃないのは、見ていてわたしにもわかりますから」

小林 (変なところ律儀なんだよなぁ。こういうところ、成ちゃんにそっくりというか、なんというか)

小林 「成ちゃん曰く、歯に衣着せぬところがあるらしいけど」

水希 「口が悪い、と……」

小林 「だからいちいち曲解するのはやめよう」

小林 「でも、やっぱり緒方さんと同じく、すごい努力家みたいだね」

水希 「……へー」
129: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/16(日) 15:24:18 ID:l3ORh6EU
水希 「次は、武元うるかさんです」

小林 「武元ね。一応中学校から一緒だから少しは知ってるけど」

小林 「明るくてスポーツ万能で、誰とでも仲良くなれるやつだよね」

水希 「たしかに、色んな男子に勘違いされてそうな人ですよね」

小林 「勘違い?」

水希 「……“あいつ、俺のこと好きなんじゃないか”って」

小林 「ああ……。分かる気がする」

小林 「少しバカだけど、本当に明るくて良い奴だよ」

小林 「あと、料理もめちゃくちゃ上手だって成ちゃんが言ってたかな?」

バキッ

水希 「……あ、エンピツが折れちゃった。しまったしまった」

小林 (……怖い。目がピクリとも笑ってない)

水希 「お兄ちゃんはいつ一体どこで武元さんの手料理を食べたんでしょうね???」

小林 「ご、ごめん。俺にもそこまでは分からないや……」
130: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/16(日) 15:25:15 ID:l3ORh6EU
水希 「では、気を取り直して、次の方に行こうと思います」

小林 「!? その三人だけじゃないの?」

水希 「あしゅみー先輩、って知りませんか?」

小林 「……ん? ああ、成ちゃんから聞いたかな。予備校の先輩だって」

小林 「それ以外分からないよ。でも、夏にふたりで海に行ったとか言ってたかな?」

バキバキッ

水希 「……あれ、おかしいな。エンピツ、また折れちゃった……もったいない……」

水希 「エンピツだってただじゃないのに……ああ、本当に、もったいないもったいない……」

小林 (……昔はもう少し普通の子だったんだけどな……)
131: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/16(日) 15:27:31 ID:l3ORh6EU
水希 「最後です。桐須真冬先生ってご存知ですか?」

小林 「……うん。社会科の先生だけど」

水希 「どういう先生ですか?」

小林 「どういうって……うーん。第一印象は怖い先生、かなぁ」

小林 「でも教え方はすごく上手だよ。教材とかもよく考えられてる気がするし……」

小林 「ああ、そういえば成ちゃんが、実はすごく優しくて生徒想いな先生だって言ってたかな」

小林 「桐須先生とふたりで勉強すると、すごく捗るんだって」

水希 「……へぇ。ふたりきりで勉強。なるほど。出るとこ出れば勝てそうな案件ですね」

水希 「この地域の教育委員会の電話番号は、と……」

水希 「あと、一応警察の少年課と児童相談所も調べておかないと」

水希 「一ノ瀬学園の理事に直接携わる方に一報入れてからの方が効果的かなぁ……」

小林 「良い先生だからやめてあげてね? 他意はないと思うから。多分」
132: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/16(日) 15:28:55 ID:l3ORh6EU
………………数時間後

パタン……

水希 「よくわかりました。ありがとうございました、小林さん」

小林 「………………」 グッタリ

小林 (結局あれで終わらずに、全員について事細かに聞かれてすべてメモされてしまった)

小林 (成ちゃん、ごめん……)

小林 「……水希ちゃん、」

水希 「はい?」

小林 「成ちゃんのことが好きなのはわかるけど、いつかは兄離れしなきゃいけないんだよ?」

小林 「幼なじみで水希ちゃんのことを小さい頃から知ってるからこそ、言うけどさ」

小林 「成ちゃんがもし幸せになるようだったら、それを応援してあげてほしいって、俺は思うな」

水希 「………………」

水希 「……そんなの、わかってますよ」

グスッ

小林 「……!?」
133: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/16(日) 15:29:47 ID:l3ORh6EU
水希 「………………」

グスッ……シクシク……

小林 「ご、ごめん、水希ちゃん。水希ちゃんが成ちゃんのこと大好きだって知ってたのに、」

小林 「無神経なことを言ったよ。ごめんね?」

水希 「……小林さんは、優しいですよね」

水希 「小林さん以外の人だったら、きっと引いてますよ」

グスッ

水希 「でも、仕方ないじゃないですか。お兄ちゃんのこと、好きなんだもん……」

小林 「……うん。わかるよ。俺も成ちゃんのこと大好きだからさ」

小林 「俺も、成ちゃんのことを不幸にするような女の子が現れたら、」



小林 「――……どんな手を使っても成ちゃんから遠ざけるよ」



水希 「小林さん……」

小林 「だから安心してよ、水希ちゃん。学校ではちゃんと、成ちゃんのこと、俺が見てるからさ」
134: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/16(日) 15:30:45 ID:l3ORh6EU
………………

小林 「……落ち着いた?」

水希 「はい……。ありがとうございます。わたし、本当に、小林さんがお兄ちゃんの友達でよかったです」

水希 「昔から、お兄ちゃんとわたしの傍にいてくれて、本当に……」

小林 「それはこっちの台詞だよ。昔、家でひとりだった俺はさ、成ちゃんと水希ちゃんがいたから、寂しくなかったんだよ」

水希 「小林さん……――――」



? 「――――お゛い、俺の妹を泣かせてるって奴は、お前か……?」



小林 「へ……? 成ちゃん……?」

成幸 「……ん? んん?? んんん???」

ガクッ

成幸 「……なんだよ。小林かよ。全力疾走してきて損したぜ」

水希 「お兄ちゃん、どうしてここにいるの?」

成幸 「いや、実は……」
135: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/16(日) 15:31:45 ID:l3ORh6EU
………………少し前 学校

成幸 (……ふぅ。今日は誰の勉強を教える必要もないから、自分の勉強が進む進む)

成幸 (とりあえずこの前の模試の確認をもう一回と、あとは……――)

――――prrrr……

成幸 「……電話? 緒方から……?」 ピッ

成幸 「もしもし? どうかしたか、緒方?」

理珠 『成幸さん! 大変です!』

成幸 「……? 急にどうした」

理珠 『お店の出前中に見かけたのですが、妹さんが……! 水希さんが!』

成幸 「水希がどうかしたのか?」

理珠 『チャラそうな男に! 泣かされています!!』

成幸 「……は?」

プツン……
136: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/16(日) 15:32:34 ID:l3ORh6EU
………………現在

成幸 「……そこから先、あまり記憶はない」

成幸 「学校からここまで全力疾走して、お前たちを見つけたんだ」

小林 「……成ちゃん、遠目で俺だって気づいてくれないのは、ちょっと傷つくな」

成幸 「うぅ……。すまん、小林」

成幸 「水希が泣かされているって聞いて、頭がどうかしててさ」

水希 「お兄ちゃん……」 キュン

成幸 「どうせお前のことだから、水希から何か相談されてただけだろ?」

成幸 「ありがとな、小林。あと、怖がらせて悪かった」

小林 (……ほんと、似たもの兄妹だよなぁ。水希ちゃんが絡むとほんと怖いんだから、成ちゃんは)

小林 (成ちゃんのお嫁さんになる女の子も大変だろうけど、)

小林 (水希ちゃんをお嫁にもらう男の子は、もっと大変かもしれないね)

小林 「いいよ。気にしないで」 ニコッ 「成ちゃんはシスコンだからね」

成幸 「!? し、シスコンじゃねーよ! 変なこと言うな!」
137: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/16(日) 15:33:42 ID:l3ORh6EU
水希 「お兄ちゃん、わたしのことが心配で、勉強も放り出してきてくれたんだ?」

成幸 「ん……。そりゃ当然だろ。お前は俺の大切な妹だからな」

水希 「……えへへ。嬉しい」 ギュッ

成幸 「な、なんだよ急に。くっつくなよ。恥ずかしいだろ」

水希 「……今だけ。お願い」

成幸 「……仕方ねーな」

小林 (ほんと、昔から変わらず仲良し兄妹だこと)

小林 (水希ちゃんも満足そうな顔しちゃってまぁ……)

小林 (……ま、幸せそうだから、いっか)

小林 (それにしても……。“チャラそうな男” ……)

小林 (緒方さん、俺の名前どころか、顔すら覚えてくれてなかったかぁ……)


おわり
138: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/16(日) 15:37:34 ID:l3ORh6EU
………………幕間 翌早朝 学校

小林 「こんな早い時間に呼び出して一体どうしたの?」

海原 「……ねぇ、陽真くん」 スッ

海原 「この子、誰? どうしてふたりきりでファミレスにいたの? ねえ、陽真くん」

小林 (……しまった。まさか智波ちゃんに見られていたとは。しかも写メまで……)

小林 「いや、それは――」

海原 「――この子、泣いてるよね? 一体何をしたの、陽真くん。別れ話をしているように見えたんだけど」

小林 「いやいやいや、違うって。それは――――」

海原 「――――怒らないから、正直に言って? ねえ、お願い。陽真くん」

小林 「いや、だから……――」

海原 「――ねえ、わたし怒ってないから、教えて?」 ゴゴゴゴゴ……!!!

小林 (……成ちゃん、頼む。今日はできるだけ早く学校に来てくれ)

※その後ちゃんと誤解はとけました。


おわり
141: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 17:05:29 ID:aWniQkPA
なかなか良かった 乙

 

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