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勇者「あなたはいつでもそうやって…」【前編】

1: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 02:02:31.47 ID:1z5tvHI00
「魔族と内通し勇者の情報を流したのは貴様だな?」

「私だけではない!!他にも魔族と内通している貴族達が居るはずだ!!なのに私だけを裁くのか!?」

「貴様を始末した後に奴らも始末する…勇者に仇なす者には死を…」

「頼む!!妻と娘がいるんだ見逃してくれ…」

「お前も貴族ならばオレがどのような存在かは知っている筈だ……」

「やめろ、助けてくれ…」

ヒュッ

「助けゃッ」

ブシャッ…ゴロン…





「神よ、この者の魂を救いたまえ…」

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2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/03(月) 02:09:50.95 ID:1z5tvHI00
「我々の一族は代々勇者に仇なす者を葬ってきた、魔王が復活し世に混乱が生じた時、魔族に組する輩が必ず出てくる」

「そして、四百年の時を経てついに魔王は復活した、魔王自体の力はまだ不完全だがその求心力は凄まじい」

「魔王は瞬く間に魔族を統率した」

「魔王が復活した時、勇者もまた現れる」

「覚醒したばかりの勇者の情報は旅を開始するまでの僅かな間秘匿される、知る者は諸国の王、そして王に使える少数の貴族のみ」

「これは力を自覚したばかりの勇者を魔族に襲撃させない為だ」

「だが一部貴族が魔族へ情報を漏洩させた」

「本来であれば、我々一族にも勇者が誰なのか、どこにいるのかは旅の開始まで知らされないのだが、事態は急転し勇者の護衛、及び件の貴族暗殺が王より命じられた」

「今、勇者は壱の国の都にいる」
3: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 02:12:13.46 ID:1z5tvHI00
「魔王復活までの四百年、やはり人も変わったのでしょうか?父上」

「魔族の甘言に惑わされる者はいつの時代にもいる、人間は目先の欲に目を奪われる」

「だが貴族は別だった」

「貴族とは元々は王宮騎士、その中でも魔族に親兄弟を殺害された者を王は貴族にしたという、だが四百年が経ち少しずつ薄れていったのだろう」

「勇者様は無事でしょうか?」

「今まだ無事としてもいつ襲撃されてもおかしくは無いだろう、だからお前が守らなければならない」

「魔王自身は力を完全に取り戻すまで自ら動く事はないだろうが、勇者様はそうはいかんからな…」

「承知しております」

「息子よ、幼さい頃から過酷な修練ばかりで父らしい事を出来ないで済まない、だが私も祖父達もそうだったのだ、分かって欲しい」

「いえ、誇りに思います、勇者様を守れるのですから」

「そうか…では旅の無事を祈る」

「では行って参ります」ガチャ

バタン…




「息子よ…すまない…神よ…どうかお許しを」
4: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 02:21:52.30 ID:1z5tvHI00
壱の国ー都

「ここが都か…凄いな、今まで見た街とは全く違う」

早く王宮に向かわなければ…

タタタッ ドンッ

「きゃっ」ドサッ

十歳位の女の子だ、大丈夫だろうか。

「助けて!!わるい奴に追われてるの!!」

「えっ」

『どこに行った!? 早く探せ!!』

騎士?この娘を追っているのか

…!? はぁ、仕方ない。

「訳は後で聞くよ、とりあえずこのローブを羽織って」

「ありがとう、お兄ちゃん」バサッ

『こっちにはいない!! 路地裏を探せ!!』

「じゃあ、歩きながらお話ししてくれる?」

「うん…」
5: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 02:24:15.52 ID:1z5tvHI00
「王宮でお稽古か、大変そうだね」

「本当に大変なんだよ!!朝から晩までやりたくないことばっかり…」

この年頃なら稽古より遊びたいだろう。

「でも戻らないと」

「うん…心配かけちゃうし、でも怒られるかも」

「大丈夫、僕は王宮に用がある、君に道案内して貰ったと言えば何とかなるさ、嘘にはならないし」

「そうなの!?じゃあ、行こっ!!」
6: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 02:28:32.68 ID:1z5tvHI00
王宮ー大門前

やっと着いた…途中途中でお菓子やら何やら買わせられ、疲れたと言えばおぶり、今はどうやらはしゃぎ過ぎた様で背中で寝ている。

「着いたよ」ユサユサ

「う?ん、分かった?」ポケー

「ほら行こう」

「王宮に何用か?」

「王に謁見を、手紙はここに」

「ふむ、暫し待たれよ、して、そちらのローブの娘は…」

「ただいま…」バサッ

「姫様っ!!皆心配したのですぞ、ささっ早くこちらへ!!」

「このお兄ちゃんと一緒に入っていい?」

「もう何でも良いですから!!早く参りましょう、王が心配しておりますから」

「姫様だったのか」

「何だかあんまりビックリしてないね」

「だって手紙にあった紋章と同じ指輪をしてたから」

「実はこれパパのなんだ、カッコイイでしょ」エヘヘ

「怒られないの?」

「あっ…どうしよう?」フルフル

「それは流石に僕には庇えないよ」
7: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 02:38:33.40 ID:1z5tvHI00
謁見の間

「いやぁ?良かった良かった!!心配したぞ?姫」ナデナデ

「指輪のこと、怒らないの?」

「そんなの無くたってパパは王だから大丈夫さ!!チンケな指輪より愛する娘の方が大事に決まってるだろう?」

チンケって…あれは王家に代々伝わる指輪のはずだが…


「何かよく分かんないけどパパかっこいい!!」キラキラ

「ハハハッ!!そうだろう、そうだろう」ニッコニコ

「してそなたは?」

「私は『守り手』で御座います」

「!!…姫、部屋に戻りなさい」ニコリ

「はい」

「大臣よ、娘を部屋まで頼む」

「畏まりました」

「お兄ちゃん、またね」フリフリ

「またね」フリフリ

「さっ、姫こちらへ」

ガチャ

パタンッ
8: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 02:43:31.28 ID:1z5tvHI00
「若いな、父が来るかと思ったのだが…務まるか?」

「問題ありません」

「そうか、『勇者』『魔王』そして『守り手』共に四百年振りの事、もう先代魔王の驚異を知るものはいない」

「だが着実に魔族による被害は増え人々は怯え始めている、勇者には確実に魔王を倒して貰わねばならん、その為の協力は惜しまない」

「だが知っての通り、一部貴族が魔族に情報を漏らしたのだ…済まない…」

「頭をお上げ下さい、四百年あれば諸々が変わってしまうのも仕方ない事、今は勇者様の護衛と…」

「暗殺か…辛い責務を与えてしまった…」

「いえ勇者様に仇なす者は誰であろうと死を以て償わせるのが我々です、四百年前も…今も…」

「そうだったな…勇者は今、中庭で剣術の修練をしている、まだ幼いが…凄まじく飲み込みが早い、剣術・魔法共に旅に出ても問題無い強さだろう」

「話はしてある会ってくるがよい」

「はっ」
9: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 02:46:06.85 ID:1z5tvHI00
貴族が暗殺されれば他の者達も『守り手』の存在を恐れ、魔族と結託などしない筈。

王が選んだ者が魔族と内通したと知れれば浅くはない痛手を負うことになる、事を公にせず秘密裏に終わらせられる。



       
10: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 02:51:41.18 ID:1z5tvHI00
だがそれは全て勇者の為…

           ー守り手ー

    ー勇者の守護者であり穢れを背負う者ー

     
      あの青年は耐えられるだろうか?

    
    ー『勇者』が守る『人間』を殺すことをー

   
     奥底にある黒い醜さを見続けることを…







11: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 03:09:00.90 ID:1z5tvHI00



           何よりも





     自分が『暗殺者』であるということに…







31: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 22:42:25.19 ID:ZeNr+cZo0
王宮ー中庭


勇者「ハッ!!」ヒュッ

師範「むん」シュッ

ガギッ ギリ…ギャリ

勇者「うぅ……やっ!!」クンッ

師範「ぬっ」グラッ

勇者「ッ!!」ブンッ

師範「ぜあっ!!」シャッ

ガギンッ

勇者「んっ!!」ググッ

師範「甘い!!」ドカッ 

勇者「うわっ」ガクン

師範「ふんッ!!」シャッ

勇者「くっ」バッ

ビタッ

勇者「また、負けた…」ガックリ

師範「勇者様、魔物は正攻法では無いのです、もっと視野を広げなさい…」

勇者「はい!! ありがとうございます!!」

師範「ですが、剣を手にして数日で王家剣術指南役の儂と打ち合えるとは…」


勇者「僕は勇者だから!! でも、もっと強くなって魔王を倒さなきゃ…」


勇者とはいえ、まだ十六の子供…

架せられた運命を受け入れるのは容易な事ではない筈だ。

だがこうして、この子の瞳を見ていると成るべくして成った様に感じる。

この子ならばきっと……


32: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 22:44:10.67 ID:ZeNr+cZo0


師範「勇者様……そうですな、勇者様ならば必ずや魔王を…おや?」



「初めまして勇者様」ペコリ


勇者「えと、誰ですか?」


「私は守り手でございます」


師範「そうか…貴殿が…では勇者様、儂はここで失礼致します」ザッ

勇者「うん、稽古ありがとう!!」


33: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 22:45:51.00 ID:ZeNr+cZo0


勇者「えぇと、王様が言ってた人だよね?」


「はい、お目に掛かれて光栄です」ニコッ


勇者「っ!!!!」ゾクッ


「如何しました、勇者様?」


勇者「もういいよ、嘘をつかなくて」


「……………」ズズズ


勇者「だってあなたは……いや…お前は」






勇者「人間じゃないっ!!」



「ウグルァ…」メキャメキャ



勇者「コレが……コレが魔物っ!!」ギリ


ドラゴン……直に見たことは無いけど誰だって知っている。

その強さも…


勇者「だけど…負けられない!!」ジャキ

34: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 22:48:51.06 ID:ZeNr+cZo0

「ゴァァッ!!」ブンッ



勇者「せいっ!!」ヒュッ

ガッ ギャギャリ 

勇者「硬いっ!! ぐっ、うあッ」ググッ

バキンッ  トサッ

勇者「やっぱり稽古用の剣じゃ…」


「グウウッ」コォォ


勇者「っ!?」ダッ


「グヴァッ!!」ゴバッ


ヒュゴォォォ…!!


勇者「危なかった…はぁっはぁっ」ゴロゴロッ


「グラァッ!!」ビュン


勇者「爪が伸びたっ!!」


勇者「避けきれないっ」バッ

ザグリッ

勇者「脚がっ」ドクドク


「ヴルル」コォォ

35: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 22:49:50.71 ID:ZeNr+cZo0
勇者「またブレスか…使うしか…無い……」

勇者「王様っ、ごめんなさいっ」


勇者「聖雷・大!!」カッ

ズズ… 

ドッ!! ギャガガガガ!!!!


「ググァァ!!ギィアアアアァァ…」シュゥゥ


勇者「はあっ、倒せた…またいっぱい壊しちゃったけど……」


『ゾンビ兵か!! 数が多い!! 固まるなっ!!』ワァァ


勇者「大門の方から!? 治癒・小」パァァァ

勇者「はっはぁっ」ガク

勇者「やっぱり魔法っは疲っれるな…ふうっ、よしっ!! 急がないと…!!」ダダッ


36: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 22:52:29.86 ID:ZeNr+cZo0
王宮ー廊下

ドッ!! ギャガガガッ…

「何だろう?」

ダダッ

近衛兵「大変です…王宮内に魔物が!!」

「っ!? 勇者様はどこに!?」

近衛兵「中庭でドラゴンと交戦していたのを目撃した者がおりますが…」

「ドラゴン!? 他に魔物は、それに都はどうなってるんです!?」

近衛兵「突如大門付近にアンデッドが多数確認されました!!」

近衛兵「おかしな話しですが、都には魔物は出現していません」

完全に王宮のみ狙っている、目的はやはり勇者様か…

「そうですか……では大門には僕が、あなたは王に報告を!!」

近衛兵「了解しました!!」ダダッ

「情報が漏れて三日も経たぬうちに襲撃とは…流石に対応が早いな」

「急がないと…」ダッ
37: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 22:54:06.53 ID:ZeNr+cZo0
大門

『ゾンビ兵か!! 数が多過ぎる!! 固まるな!!』

「ゲャギャア」ブンッ

騎士「しまった!!」

ガギンッ

「無事か!?」

騎士「師範殿っ!!」

師範「これ以上は好きにさせんぞ哀れな死兵共っ!!」グッ

ズバッ

「ギエッ」

サラサラサラ

師範「土に還ったか…」

師範「皆の者!! 儂の後ろに付け、これ以上進ませる訳にはいかん!!」

『はっ!!』

師範「誰一人……誰一人とて死なせはせんッ!!」

ザンッ ズギャッ ドッ…… 

騎士「師範共!! 前方より増援がっ!!」

師範「ふむ……儂は残る、おぬし等は王宮内へ」

騎士「流石に師範殿一人では…」

師範「ここらの死兵はあらかた倒した、残るは前方の奴等のみ、怪我人もおる…行け」

騎士「ですが!!」

師範「行けッ!!」

師範「育てた若者が死ぬのは見とうない…」

騎士「っ!!」

騎士「全騎士に告ぐ!! 負傷者を王宮内へ!! 」


『了解!!』ザッ
38: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 22:56:32.27 ID:ZeNr+cZo0
師範「行ったか……おうおう…ワラワラ湧いて来よるわ、丁度ちょこちょこと斬るのに苛々していた所…」

師範「意志無き魔王の死兵…今 楽にしてやる」スッ

師範「剣技・風の太刀…」チャキ


ドヒュッ………キィィンッ……


ドゥッッ!! ズバババババババババッッッ!!!!

『ぐぎゃぎゃギャゃギエッゃゃ』

サラサラサラ………

師範「死者と云えども人を斬るのは気持ちの良いものでは無いな…安らかに眠れ」

師範「魔王め、王宮に直接魔物を召還するとは…勇者様の居場所は旅が始まるまで知らされぬ筈、いったい何が起きているのだ……」
39: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 22:58:27.99 ID:ZeNr+cZo0
大門

『ゾンビ兵!! 数が多すぎる!! 固まるな!!』


『ゲギャア』

『しまった!!』

『無事か!?』

『師範殿!!』

『これ以上好きにはさせんぞ哀れな死兵共!!』

「まずいこのままでは死者が……っ!?」ゾクッ

何だ…今の感じは……どこにいる!?


「城壁の上っ…ローブの男、あれは魔導士か!? 此処にいるゾンビ兵共々魔法で攻撃するつもりか!!」

「くっ、魔法を放たれれば終わりだ、まず奴を潰さなければっ」ダッ
40: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 23:01:11.06 ID:ZeNr+cZo0
城壁上

魔導士「あの爺は厄介だな…そろそろやるか」

「待たせたな」スッ

魔導士「……!? ふふっ、大事な勇者様の所へ行かなくてよいのか?『守り手』よ…」

魔導士「いや善人の皮を被った『暗殺者』…」

「オレの事などどうとでも呼ぶが良い、だが勇者様は決して負けない、そして貴様には此処で死んで貰う」

魔導士「ハハハッ!! 最早『殺人者』の方がお似合いだな!! まあ良い、此処でお前を消せば今後楽になる」ゴッ
41: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 23:02:08.69 ID:ZeNr+cZo0
「すぅ、はぁぁ、来い……!!」ジャキ

魔導士「ふふっ、魔氷・槍」ビュン

ドッ!! ヒュパパパパッ


「………」スッ


ギャギギギギン パラパラ…

魔導士「ふむ、全て弾くとは…面白い!!」

42: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 23:03:29.65 ID:ZeNr+cZo0

「…………」ググッ 

「殺陣・影断ち」 フッ


魔導士「むっ!?魔炎・円!!」ゴッ

ボウッ!! メラメラ…

魔導士「(この炎では間合いには入ってこれないばず、だが忌々しい事に奴の気配も感じられん)」

魔導士「だが全方位に魔法を放てば良いことだ、つまらんな…」


「あぁ、そうだな」シャッ


魔導士「なっ!?」

ドドドッ

魔導士「ぐっ、なんだコレは…」ガクガクッ


「破魔の力を宿したナイフだ、貴様等にとっては毒だろうな、もう魔法は使えない、戦闘を楽しむなど愚かだな」

43: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 23:04:58.93 ID:ZeNr+cZo0


魔導士「ふふっ…やはり人形如きではお前を殺せそうにないな」


やはり本体ではないか…

「聞きたいことがある」


魔人形「何だ?長くは保たんぞ」シュゥゥ

「目的は勇者殺害か?」

44: ◆jPpg5.obl6 2012/12/03(月) 23:11:30.60 ID:ZeNr+cZo0

魔人形「……ふむ…いいだろう、話した所で何の支障もない……目的は勇者殺害ではない、覚醒して間もなくドラゴンを倒したのには少々驚いたがな」

魔人形「本来の目的は、お前を抹殺する事だった」


「………」


魔人形「魔王様でもない我々の様な魔族では勇者は倒せまい…だが人間ならどうだ? 勇者は躊躇い無く人間を殺せるか? 出来んだろう、お前は出来るだろうがな」ニヤ

魔人形「そう…『守り手』であるお前を消してしまえば我々が直接手を下さずとも殺す方法など幾らでもある、人間を使ってな…」

魔人形「ふふっ、勇者は守るべき者に殺されるのだ、実に愉快な話しだろう?」

「させないさ…その為にオレがいる、『勇者』は人々にとって唯一の希望…精々策を練るがいい」シャッ

ズバッ  ゴロッ…

魔人形「コレかラ、オ前ハ誰 モ信じられズ、死んデ いくノだ、魔族に怯え、人を疑イ、夜を怖レ死ンで逝クノダ…」

魔人形「ハひゃハギャハハハッ!!!」

「覚悟の上だ、そんな事は分かっている」ブンッ

グシャ…

「はヒャ…ギャはヒュ………」シュゥゥ…




「あぁ………分かっているさ…」ザッ




46: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 02:02:35.26 ID:nZbq0Klb0
大門

勇者「師範さん!! 無事ですか!?」ハァハァ

師範「勇者様、怪我人は出ましたが皆無事ですぞ」

勇者「良かった……本当に良かった」

師範「他に魔物は居ない様ですので、ひとまずは安心して良いでしょう…」

勇者「あの人は誰だろう? っ!?」ジャキ

師範「勇者様如何なさった!? あれは先程の…」

勇者「さっきの『守り手』と名乗った方は魔物でした!! 気を付けて下さい…」

師範「なんですと!?」スッ

「皆さん、ご無事ですか!?」ハァハァ

勇者「そこから動かないで下さいっ!!」

「…あなたが勇者様ですか?」

勇者「…!? なんで、分かったの?」

「それは『勇者』の『守り手』だからです…」

勇者「………師範さん、さっきの偽物からは何か嫌な感じがしたけど、この人からは感じません」

師範「ふむ…そうか」

勇者「疑ってしまってごめんなさい…」

「いえ…その様な事があったのなら当然の事です」



47: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 02:04:42.93 ID:nZbq0Klb0


勇者「えぇと、初めまして勇者です、あなたが僕の…『勇者』の守り手…」

「はい…私は貴女の守り手、『勇者』を守護する者です」

勇者「あの、お名前は?」


困ったな…勇者様には『守り手』がどんな役目かは知らされない。

精々、旅の共の様なもの位にしか…

勇者様には、勇者様にだけは知られてはならないのだから。



「僧侶、僧侶とお呼びください…」





勇者「僧侶さんですか、よろしくお願いします」ニコッ



48: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 02:07:14.23 ID:nZbq0Klb0



この笑顔を曇らせてはならない…

何が起きても…


僧侶「はい、よろしくお願いします勇者様」ニコッ

勇者「僕の事は勇者でいいよ、くすぐったいし、僕も僧侶って呼ぶからさ」ヘヘッ

僧侶「…分かりました、勇者」ニコッ


師範「お二方、王に報告を頼まれてくれないか、儂は少し此処に残る…」

『はい!!』 『えぇ分かりました』

僧侶「行きましょう」

勇者「言葉遣いも普通でいいよ、えっと、ほら…仲間だし!!」


勇者様と云えどもまだ子供なのだな…仲間か…


僧侶「分かったよ、勇者」

勇者「よし!! じゃあ行こう、僧侶っ」ニコッ


49: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 02:10:02.47 ID:nZbq0Klb0
大門

師範「まだ若かろうに、あの青年『僧侶』と言ったか……」

上手く消していたが凄まじい殺気をその身に纏っていた…

いったい、どれ程の修練を積んだのだろうか?


『守り手』…魔王復活までの四百年の間も技を磨き一子相伝を貫いた一族。

儂の剣技などとは全くの別種、

殺人術…文字通り人を殺める術。

そこらの魔物も足下にも及ぶまい…

師範「折れるでないぞ…僧侶よ、心が折れればおしまいじゃ…」



52: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 03:49:09.06 ID:nZbq0Klb0
謁見の間

王「報告ご苦労、今回の襲撃は勇者を狙ったものだろう」

勇者「王様ごめんなさい…僕のせいで大変な事に…」

王「勇者よ、そなたが謝ることなどない、幸い死者も出なかったのだ」

王「しかし所在が知れた以上、このまま此処に留まることは……」

勇者「はい…僕はこのまま僧侶と魔王討伐の旅に出ようと思います」

王「僧侶? ……!! なる程…分かった、勇者そなたは旅の支度をせよ」

勇者「はい、では行きます…お姫さまに、お元気でとお伝え下さい、王様もお元気で!!」ニコッ

勇者「僧侶っ、行こう」

王「待て、僧侶そなたには少し話しがあるので残れ」チラッ

僧侶「はっ」コク

勇者「……?? じゃあ僕は先に支度しておくよ」

僧侶「分かった、後でまた」

勇者「うんっ」ニコッ


53: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 03:54:23.04 ID:nZbq0Klb0
王「僧侶よ、報告を頼む」

僧侶「はい」

僧侶「狙いは勇者様でなく私でした…魔族は人間を使い勇者様を殺害しようと画策している様です」

王「……なる程、その為にまずそなたを狙ったか、勇者は心優しい純粋な子だ、どこにいてもおかしくない年頃の娘だ…魔族の手下に成り下がった人間すら斬れまい」

僧侶「それが奴等の狙いでしょう」

王「ふむ…そなたにとって辛い旅になりそうだな…」

僧侶「もとより覚悟しておりました、何より勇者様には笑っていて欲しい、あの方は希望の象徴…必ず守り抜きます」

王「勇者を頼む……」

僧侶「はっ」


54: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 03:56:40.05 ID:nZbq0Klb0



王「それと件の貴族だが……先程の襲撃に乗じて逃亡したようだ」

僧侶「場所は?」

王「都の近くの港街に向かっている…今夜出航の船に乗る前にやらねばならん」

僧侶「お任せ下さい」ズズッ

王「」ゾクッ


先程までの勇者に対して見せた慈愛に溢れた表情など欠片も感じられん!! 

この青年の本質が掴めん…

一体、幾つの顔を持っているのだ…

勇者ならば、勇者ならばこの青年の心を癒やすことが出来るかもしれん…



55: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 03:58:54.82 ID:nZbq0Klb0


王「僧侶よ…覚えておけ、勇者はそなたにとっても希望なのだ……」

僧侶「………」

王「…いずれ分かる」

僧侶「はい、覚えておきます」

王「それと渡す物がある、まず旅の路銀三十万ゴルと先程の襲撃で勇者が倒したドラゴンの牙と鱗そして爪だ」


王「今夜出航の船で弐の国へ行き鍛冶屋を訪ねると良い、必ずや良い武具と防具を鍛えてくれる」

僧侶「ありがとうございます、そんな大金まで…」

王「これくらいしか出来んのだ、すまない…無事を祈っているぞ」


僧侶「では、私も行きます…」

王「また何時でも来るが良い」

僧侶「はっ、では」


63: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 21:01:58.29 ID:mzKCVqE10
王宮の一室

勇者「元々荷物は少ないし、早く済ませちゃおう」ガサゴソ

チャラッ…

勇者「あっ…これは神父様がくれたロザリオだ……みんなに、会いたいな…」ギュッ…


勇者「帰りたいっ、戦いたくないっ!!  死にたく…ないよぉ…」グスッ

勇者「僕はっ……私は勇者なんかじゃない、弱虫で泣き虫で…何で私が勇者になったんだろう……」グスッ



僧侶「……………」



64: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 21:03:18.90 ID:mzKCVqE10


『勇者』である前に人、

それも十六の子供……

戦いとは無縁の人生から一転し魔王討伐を任せられ、戦乱の中に放り込まれれば戸惑わない訳がない。

これから、彼女は自分が『勇者』だということを旅を通して更に実感するだろう……


オレは旅の中で彼女に与えられるだろうか?


優しさや……心の安らぎを…


真に、『守る』とは何なのだろう……

勇者「でも、泣いてちゃダメだよね……世界中の人達が待ってるんだ、悲しんでいる人達だって沢山いるんだ」ゴシゴシ

勇者「僕が、僕が守るんだ……」グッ

コンコンッ


65: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 21:05:17.95 ID:mzKCVqE10

勇者「僧侶かな…入っていいよ」

ガチャッ

僧侶「待たせたね、準備は出来た?」

勇者「うんっ、ちょうど今終わったとこだよ」ニコッ

僧侶「じゃあ行こうか」

勇者「えっと、どこに行くの?」

僧侶「ごめんごめん、言ってなかったね…」

僧侶「まずは都を出て港町に向かう、そして今夜出航する船で弐の国へ、明日の昼には着くと思う」

僧侶「それと王様が都の外に馬車を手配してくれている、夕方には着くから港に着いたら出航まで休もう」

勇者「船かぁ…じゃあ早く港に行って休もう!! 疲れたし……」ハァ

僧侶「はははっ、そうだね」ニコッ



66: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 21:06:08.14 ID:mzKCVqE10

王宮ー廊下


師範「おやっ、勇者様、僧侶殿も御一緒ですな」

勇者「うんっ、これから港に向かうんだ、王様が外に馬車を用意してくれてるって」

師範「もう行かれるのですか…寂しくなりますなぁ…」ショボン

勇者「すぐ魔王を倒してくるから!! また会えるよ師範さんっ」フフッ

師範「そうですな…また会える日をお待ちしております」ニコリ

勇者「じゃあ、行って来ます!!」

師範「武運長久を祈ります、お気を付けて!!」


67: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 21:07:32.81 ID:mzKCVqE10

師範「おっと、そうじゃった…僧侶殿」チョイチョイ

僧侶「はい、何でしょう?」クルッ

師範「『勇者』としてではなく、あの子の『本当』を見てやりなさい、守る方法は幾らでもある…戦う事だけではないぞ」ボソリ

僧侶「はい…ですが私は『守り手』です、戦う他には…」

師範「『守り手』以前に人じゃろう?お主の心はそこまで冷えてはおらんよ」

僧侶「…………」



  『僧侶置いてくよ!!』オーイ



師範「お主自身にとって『勇者』とは何か、今一度考えて見ると良い、まだ若いんじゃ、悩め悩めっハッハッハ!!」

僧侶「…ありがとうございます、師範殿……オレは…オレは『勇者』を『彼女』の笑顔を守ります…では」ザッ


68: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 21:08:37.02 ID:mzKCVqE10

師範「やはり若者はああでなくてはな…」ニコリ

まだ危うさはあるが、あの子と居れば変わる筈……

あの子もいつか心の脆さを晒す時が来るだろう、その時は頼むぞ、若者よ…


69: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 21:12:14.74 ID:mzKCVqE10
港町

僧侶「着いたよ勇者」

勇者「う、うぅん…ごめん僧侶、少し寝てたみたい」

僧侶「馬車の運転お疲れ様」

僧侶「あんな事があったんだし仕方ないさ、早いとこ宿屋に行って出航まで休もう」

勇者「うん、そうだね」


ー宿屋ー

店主「いらっしゃい、お二人様、宿泊でよろしいですか?」

僧侶「いや、夜に出航する弐の国行きの船が来るまで休ませて頂きたい」

店主「一泊分の料金になりますが?」
僧侶「構いません」

店主「ではお二人で200ゴルになります」

僧侶「……」チャリ

店主「お部屋は二階の一番奥の部屋になります」


70: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 21:13:14.69 ID:mzKCVqE10

宿屋ー部屋ー

勇者「やっと休めるよぉ」ボフッ

僧侶「少し寝ると良い、船が来たら起こすから」

勇者「ねぇ、僧侶は休まないの?」

僧侶「オレは大丈夫、気にしないで休んでていいから」ニコリ

勇者「そっか…あんまり無理しちゃダメだよ?」

僧侶「あぁ、分かった」

勇者「じゃあ、おやすみ」

僧侶「おやすみ…勇者」

…………………

勇者「スゥ…スゥ……」ムニャムニャ

僧侶「日も暮れた…そろそろ行くか」ガチャッ

パタン


71: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 22:56:39.09 ID:PS/hr3up0


僧侶「貴族の情報を集めるか…」


ー酒場ー


オヤジ「いらっしゃいっ!!」

僧侶「ストリチナヤをくれ」

オヤジ「はいよ!!」コトン

僧侶「………」グイッ

僧侶「ふぅ、なあオヤジ、貴族を見なかったか? 渡す物があって探してるんだが……」コトッ

オヤジ「あんた王宮から来たのか? あんな奴に使われるなんて気の毒だな」


72: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 22:58:49.13 ID:PS/hr3up0

僧侶「……だろ? 全く、飲まなきゃやってられんっ!!」

オヤジ「ハッハッハ!! まぁ気を落とすな、一杯サービスしてやる」コトン

僧侶「すまないな…」グイッ

オヤジ「アイツ、ウチに来て酒も飲まず散々バカにしていきやがってよぉ」

僧侶「災難だったな…それで、どこにいるか分かるかい? 早く渡さないと何を言われるか…」

オヤジ「ハハッ!! 悪い悪いっ、アイツならボロい宿屋には居られないとか言って町外れにある屋敷に行くって言ってたな」ウン


73: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 23:02:56.12 ID:PS/hr3up0

僧侶「そうか、助かったよ…御馳走様」チャリン

オヤジ「おっ、おいおい、こんなにいらねぇよ」

僧侶「愚痴聞いてもらって気分がいいんだ、受け取ってくれよ」ニコッ

オヤジ「そうか? じゃあ遠慮なく…おい!! また来いよ、サービスすっからよ!!」ニカッ

僧侶「……あぁ、また来るよ」ガチャッ



僧侶「今行くぞ…待っていろ」ザッ


74: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 23:07:26.91 ID:PS/hr3up0

町外れー屋敷ー


僧侶「ここか、屋敷の周囲を護衛が巡回している、5人か…」スッ

護衛兵「全く、何でオレがあんなヤツの護衛しなきゃならないんだ」

ザザッ…

護衛兵「んっ、なんだ? ッ!!」ドサリ

僧侶「済まない、少しの間寝ていてくれ」ゴソゴソ


『おい!! 誰か倒れてるぞ!!』

『なに!? 警戒しろ!! まだどこかに潜んでいる筈だ!!』


75: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 23:11:07.88 ID:PS/hr3up0

貴族「おい!!どうなっている!?」

護衛兵「護衛が一人倒れていました、何者かに襲撃されたのかと…」

貴族「役立たずがっ!! 今すぐ馬車を用意して私を港町に連れていけ!!」


まさか…奴が追って来たのか…!! 

死んでいれば良かったものを、魔族の屑共め、情報を差し出したと言うのにしくじりおって!!


護衛兵「分かりました!! 此方へ!! 貴族様、お乗り下さい」


貴族「分かっている!! 早く出せ!!」

護衛兵「はっ!!」


76: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 23:31:40.80 ID:PS/hr3up0

焦らせおって…だがこのまま港に着けば逃げ切れる。


『守り手』とかいったか、捕まりさえしなければどうという事はない。


ほとぼりが冷めるまで弐の国の同胞の下に身を置けば済む話し…


王もバカではない、事を公にして私を指名手配する様なことはせんだろう。

もし知れれば王自身の失脚、いや壱の国そのものに混乱を招き諸国からの信用はガタ落ちだ。


勇者だの魔王だの興味は無い、勝手に殺し合えばいいのだ。


77: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 23:33:27.56 ID:PS/hr3up0

貴族「…ん? まだ着かんのか!?」

護衛「……」

貴族「おいっ!! 聞いているのか!! ……っ!! 馬鹿者っ!! どこに向かっている!! 港へはこの道ではないぞ!!」

護衛兵「貴様が港に着くことはない…此処で死ぬのだからな」バサッ

貴族「おっ、お前は!! 嫌だ、助けてくれぇっ!!」

カカカッカカカッ……カカッ…ピタ

僧侶「降りろ」チャキ

貴族「ヒィィッ!! やめてくれ!!」

僧侶「早くしろ…」ザワッ

貴族「分かった!! 分かった!!」ガクガク


78: ◆jPpg5.obl6 2012/12/04(火) 23:36:24.51 ID:PS/hr3up0

僧侶「魔族と内通し勇者の情報を漏らしたのは貴様だな?」

貴族「私だけではない!! 他にも魔族と内通している者達がいるはずだ!! なのに私だけを裁くのか!?」

僧侶「貴様を始末した後に、他の奴らも始末するさ…勇者に仇なす者には死を…」

貴族「頼む!! 妻と娘がいるんだ見逃してくれ!!」

僧侶「貴様も貴族ならばオレがどのような存在か知っているはずだ……」スッ

貴族「やめろ……助けてくれっ」

ブンッ

「助けゃッ」

ブシャッ……ゴロッ…





僧侶「神よ…この者の魂を救いたまえ…」




86: ◆jPpg5.obl6 2012/12/05(水) 23:16:52.85 ID:syDvkU7q0
ー港町ー


事は終えた…明日の朝には貴族の亡骸が見つかるだろう。

奴は何故魔族に情報を流した?

金、権力、地位、身の安全…

理由など幾らでもあるが、他にも何かがある気がする。


貴族が死んだことは他の者達にも知れる。

当然『守り手』の存在にも気付くはずだ…

悪しき者達よ、己の愚かさを呪い、怯えているがいい…

魔族と手を結んだことは必ず償って貰う……


『貴族の死』これにより魔族に加担する輩が居なくなればよいのだが。

そう簡単には行かないだろうな。

僧侶「宿屋に戻ろう…」ザッ


87: ◆jPpg5.obl6 2012/12/05(水) 23:21:26.11 ID:syDvkU7q0


宿屋ー部屋ー


勇者「すぅ…すぅ…」スピー


僧侶「まだ寝ているな、余程疲れていたのだろう…」

あの時、勇者様は泣いていた…声を掛けるべきだったのか?

慰めるべきだったのか?



88: ◆jPpg5.obl6 2012/12/05(水) 23:23:34.52 ID:syDvkU7q0

…………………


ー守る方法など幾らでもある…戦う事だけではないぞー


師範殿、やはり私には戦う他に守る術がありません…

この両の手を血で染めることになろうとも、

『勇者』の『守り手』なのだから…


ー『守り手』以前に人じゃろう? お主の心はそこまで冷えてはおらんよー

ー勇者としてでなく、あの子の『本当』を見てあげなさいー


ーお主にとって『勇者』とは何なのか今一度考えてみるといいー


89: ◆jPpg5.obl6 2012/12/05(水) 23:24:39.10 ID:syDvkU7q0

ーオレは…オレは『勇者』を『彼女』の笑顔を守りますー

これはオレの『本当』だ…

勇者の守護は我が『一族』の責務、


彼女の笑顔を守りたい…

これはオレの、『僧侶』の意志だ。

今はこれが答えでいい…『僧侶』は間違ってはいない。


90: ◆jPpg5.obl6 2012/12/05(水) 23:26:41.36 ID:syDvkU7q0

僧侶「そろそろ時間か…勇者、そろそろ船が来る」トントン

勇者「おはよう、僧侶…もう真っ暗だね」グシグシ

僧侶「おはよう、じゃあ行こうか」ニコリ

勇者「うんっ!! 僕、船に乗るのは初めてだから楽しみだな」ワクワク

ー船着き場ー


勇者「うわぁ…凄い船だね、かなり大きいよ?」

僧侶「貴族も乗るからね、部屋も多いし内装の豪華らしい、船の中にカジノや酒場もあるみたいだよ?」

勇者「凄いねっ!! 僕はもっと普通っていうか小さい船だと思っていたから……」

僧侶「確かに…こんな豪華な船に乗る機会は普通ないからね、とりあえず乗ろう」

勇者「僕…船酔い大丈夫かなぁ…」ボソッ

91: ◆jPpg5.obl6 2012/12/05(水) 23:37:00.21 ID:syDvkU7q0

船内ー客室ー

勇者「僧侶っ!!」クワッ

僧侶「どうした? そんな声出して…」

勇者「部屋が広い!!」

僧侶「はははっ、そうだね、王様がこの部屋を取ってくれたんだ、本来なら貴族じゃないと使えない部屋みたいだよ?」

勇者「いいのかな? こんな贅沢しちゃって…」

僧侶「旅の始まりだからね、王様からのお祝いみたいなものだよ、きっと」

勇者「そっかぁ、でも凄いよ? お風呂あるし、ベッドはまるでお姫様のみたい…大きいし」

勇者「でも、ベッドは一つだし寝る時は一緒でいいよね?」

僧侶「勇者は一緒で大丈夫? 何だったら乗務員に布団でも頼むけど…」


92: ◆jPpg5.obl6 2012/12/05(水) 23:37:47.90 ID:syDvkU7q0

勇者「こんな大きなベッドで眠れるなんてこの先ないよっ!? 勿体ないし一緒に寝よう? ねっ?」

僧侶「……分かった、分かったよ…あんまりはしゃぎ過ぎるなよ?」ハァ

勇者「はいはい、分かってますよ」

僧侶「せっかく豪華な船に乗ったんだし、船内を見て回ろうか?」

勇者「うんっ!!」ニコッ

僧侶「はしゃいで迷子にならないように手でも繋ごうか?」

勇者「僕はそんなに子供じゃないよ!! 全く…」

僧侶「ははっ、じゃあカジノにでも行こうか」

勇者「無駄遣いはダメだよ?」ジッ

僧侶「見学するだけさ、賭けはしないよ」

勇者「ならいいよ」ニコリ


93: ◆jPpg5.obl6 2012/12/05(水) 23:39:11.06 ID:syDvkU7q0

船内ーカジノー

ガヤガヤガヤ…

『あぁっ負けたぁ!! チクショー!! もうひと勝負!!』

勇者「人多いね、あんなの楽しいのかな? お金が勿体無い……」

僧侶「まぁ、確かに…何かないかな? 子供用のクレーンゲームとか…」

勇者「僧侶……怒るよ?」ギラ

僧侶「ごめんごめんっ、ん…?」


94: ◆jPpg5.obl6 2012/12/05(水) 23:40:08.58 ID:syDvkU7q0

『この八個のコップ!! この中の一つにコインを入れます、そして私がコップをシャッフル!! どのコップにコインが入っているか見破った方には……なんと』


『この太陽の指輪と、月の指輪を差し上げましょう!!』

『ただし、外れた場合は二万ゴル頂きます』

『今のところ37名が挑戦しましたが誰も見破った方はおりません、さぁ他に挑戦する方は!?』


95: ◆jPpg5.obl6 2012/12/05(水) 23:41:10.29 ID:syDvkU7q0

僧侶「勇者、ちょっと見てみようか」

勇者「うん…いいけど……やるの?」

僧侶「いや、景品の指輪が気になるだけ」

勇者「ふぅん…見るだけだよ?」

僧侶「うん、見るだけ見るだけ」

勇者「全く…僧侶の方が子供だよ」ボソッ

96: ◆jPpg5.obl6 2012/12/05(水) 23:42:37.13 ID:syDvkU7q0

ディーラー「おっ、挑戦かい?」ニコッ

僧侶「その前に景品の指輪が見たいんだ、それから決めるよ」

ディーラー「あぁ、いいよ」カチャカチャ…

勇者「僧侶っ!!」

僧侶「見るだけだってば、大丈夫だよ」

ディーラー「はい、コレだよ」スッ

勇者「わぁっ…凄く綺麗……こんなの見たこと無いよ…」

ディーラー「だろう? 何せコレはこの世に一つしか無い指輪だからね、そんじょそこらの物とは比べる事すら失礼な品さ…」

ディーラー「この指輪は二つで一つ…作られたのは何百年も昔らしいけど輝きが失われた事は無い」


97: ◆jPpg5.obl6 2012/12/05(水) 23:43:43.42 ID:syDvkU7q0

僧侶「何故、そんな物をあなたが?」

ディーラー「……さぁ、何故だろうねぇ」ニコッ

僧侶「…………」

勇者「僧侶、指輪は見たしもう行こうよ?」クイッ

僧侶「……ディーラー、挑戦させてくれ」


98: ◆jPpg5.obl6 2012/12/05(水) 23:44:53.74 ID:syDvkU7q0

ザワザワザワザワ

『バカだなアイツ 当たりっこねぇよ どうせ指輪もガラクタだろ』


勇者「僧侶っ!! 挑戦しないって言ったでしょ!!」

ディーラー「いいのかい? そちらのお嬢さんは乗り気じゃないみたいが…」チラッ

僧侶「あぁ、やるよ……勇者…頼む、やらせてくれないか?」

勇者「……分かった、一回だけだよ?」

僧侶「大丈夫、一回で済むから…」

ディーラー「…………」

僧侶「ディーラー、始めてくれ…」


99: ◆jPpg5.obl6 2012/12/05(水) 23:47:44.22 ID:syDvkU7q0

ディーラー「分かった…じゃあ、いくよ」 パッ

スッ スッスッスッスッ シャッ  

僧侶「………」カッ

シャシャ シャッ シャシャシャシャシャ ピタッ… 


『お前見えたか? 見えたら指輪貰ってるよ… まぁ無理だろ 分かる訳ないって』

勇者「こんなの分かりっこ無いよ……やめようって言ったのに…」

ディーラー「さぁ、どれかな?」ニコッ

僧侶「コレだ…」スッ

ディーラー「いいのかい?」

僧侶「あぁ…開けてくれ」

ディーラー「…………」バッ


100: ◆jPpg5.obl6 2012/12/05(水) 23:48:55.69 ID:syDvkU7q0

ディーラー「おめでとう、当たりだよ…約束通り指輪をあげよう」ニコッ


勇者「……? 何だろうこの感じ…」ピクッ


『当てやがった!! すげぇ!! やるな兄さん!!』ワァァァッ


ディーラー「はいどうぞ、大切にしてくれよ?」スッ

僧侶「あぁ、約束するよ…」スッ


101: ◆jPpg5.obl6 2012/12/05(水) 23:59:07.18 ID:syDvkU7q0

僧侶「勇者、部屋に戻ろうか? 勇者?」

勇者「……えっ!? あっ、うん」

僧侶「どうかした?」

勇者「ううん、何でもないよ…僧侶は凄いね!! 当てちゃうなんて」ニコッ

僧侶「運が良かったんだよ…じゃあ、戻ろうか」ニコリ

勇者「そうだねっ」

勇者「…………」クルッ


ディーラー「………」ニコリ フリフリ


109: ◆jPpg5.obl6 2012/12/06(木) 07:39:01.43 ID:Prdb9GRH0
船内ー客室ー

勇者「はぁ気持ちよかった、僧侶も入ってきたら?」ゴシゴシ

僧侶「あぁ、そうするよ」

勇者「僕、ちょっと甲板に行ってくるよ、今日は星空みたいだし…」

僧侶「分かった、気を付けるんだよ」ニコッ

勇者「うん、大丈夫 じゃあ、行ってくるね」

勇者「あと、僧侶も疲れてるんだから早く休みなよ?」

僧侶「あぁ、ありがとう勇者…」

パタン


110: ◆jPpg5.obl6 2012/12/06(木) 07:44:59.12 ID:Prdb9GRH0

僧侶「あのディーラー……」


奴は確かにコップにコインを入れシャッフルしたがコップを開ける時にコインをはじき、手に隠し持っていた筈…

なのに中にはコインがあった…見間違えた筈はないのだが。


それに奴はオレの何を見ていた? 

まるで心の内を見透かされている様な感じがした…


しかし、この『太陽の指輪』と『月の指輪』は紛れもない本物。

四百年前、先代勇者様が所持していた指輪だ。

一族の文献にある挿絵と同じ、忘れる訳がない。

だが文献には先代魔王との戦いとの後で紛失したと記されていた筈…

それが何故こんなところに?

魔王復活と同様にこの指輪に何か意味があるのか?…


……………………


考えてばかりでは仕方無い、風呂に入るか……

今日は色んな事があり過ぎた。




僧侶「流石に疲れたな」


111: ◆jPpg5.obl6 2012/12/06(木) 07:47:20.84 ID:Prdb9GRH0
ー甲板ー

勇者「あんまり、っていうか僕以外に人がいないじゃないかな」キョロキョロ 

勇者「でも、凄く綺麗な星空だなぁ、後で僧侶も呼ぼうかな?」

勇者「……これから始まるんだ、勇者として…魔王討伐の旅が」

「こんばんは、お嬢さん」

勇者「誰!?」バッ

「さっき会ったじゃないですか」ニコリ

勇者「あぁ、カジノの…えっと、指輪をくれた人ですよね? 僕に何か?」

「いえ、貴方を近くで見たかったので」 スゥッ…


113: ◆jPpg5.obl6 2012/12/06(木) 20:00:48.40 ID:vblPc0eF0


勇者「身体が透けてる…人間じゃないの? でも魔物みたいな嫌な感じはしない…」


「信じてくれないかも知れませんが私は先程の僧侶さんに渡した指輪の意志、精霊とでも思って下さい」ニコリ


勇者「指輪の精霊? 信じてもいいよ…けど、何故僕の前に現れたの?」


精霊「お話しておかなければならない事があるのです、今から四百年前…先代の勇者様と魔王の戦いの時、私は生まれました」


精霊「勇者様は凛々しく、そして優しかった…少し泣き虫でしたが」フフッ


精霊「先代勇者様も守り手と共に旅をしました、勇者様は強かった……ですが魔王の力はそれを遥かに超えていたのです」


勇者「じゃあ、どうやって魔王を倒したの?」



114: ◆jPpg5.obl6 2012/12/06(木) 20:03:32.51 ID:vblPc0eF0


精霊「魔王に対抗する術はたった一つ、絆の力です……私を生み出した方は、その『絆の力』を何とか形に出来ないかと考えました」


精霊「そうして生み出されたのが、月の指輪と太陽の指輪です」


精霊「指輪を身に付けた者同士の絆が…心の結び付きが強ければ強い程、身に付けた者の力は増大します」


精霊「先代勇者様はそれにより魔王を倒し、私は役目を終え眠りについていましたが…魔王は復活し、指輪の意志も目覚めた…」


精霊「だから私はこうして勇者様の前に現れたのです、現在の『勇者』と『守り手』を見極める為に…」


勇者「そうなんだ…僕達を認めてくれたの? 僕と僧侶を…」



精霊「えぇ、回り道をするかも知れませんがあなた方ならばきっと成し遂げられる筈です」ニコリ


勇者「そっか…良かったぁ」ニコッ


115: ◆jPpg5.obl6 2012/12/06(木) 20:04:49.78 ID:vblPc0eF0

精霊「それと勇者様…『守り手』は『勇者』としてではなく『貴女』を見ています……『貴女』を守ろうとしています」


勇者「…!!……本当?」ポロポロ


精霊「えぇ本当ですとも、だから焦らずとも良いのです…」


精霊「僧侶を信じなさい、そして旅の中で見つけるのです…偽り無き絆を…」パァァァッ


勇者「うんっ、ありがとう…」ゴシゴシ


ー僕はまだ僧侶の事を知らない、でも…信じようー


116: ◆jPpg5.obl6 2012/12/06(木) 20:05:34.89 ID:vblPc0eF0


『勇者』としてじゃなく『僕』を見てくれている僧侶を…


『おーい、勇者ーっ』


勇者「あっ、僧侶……」クルッ


ーたった一人の『僕』の守護者をー




勇者「ねぇ僧侶、星が綺麗だから一緒に見よう?」ニコッ


117: ◆jPpg5.obl6 2012/12/06(木) 20:07:37.23 ID:vblPc0eF0
ー???ー

「魔王様、お身体の具合は如何ですか?」


「まずまずだ……まだ完全に身体が馴染んではおらん」


「四百年…!! 四百年経ち、やっと我が寄り代に相応しい身体を手に入れた、だが力は不完全…忌々しい勇者と守り手めが…奴等はこの手で葬らねばならん!!」ゴッ


ガガッ ドッ!! ビリビリビリ…


「くっ!!」ゾワッ


凄まじいっ…これでもまだ不完全だどいうのか!?

最早、今の状態でも勇者、守り手共に楽に殺せるのでは無いのか? 


「奴等を侮るな…」

「……!!」


「四百年前、我の力は勇者など遥かに凌駕しておった、だが負けたのだ…!! 何があったのかは分からん、だが奴等と対峙した時………この我が恐怖を感じたのだ…」


「あの時の勇者の瞳の輝き、今でも覚えている……恐怖と、そして美しさすら感じた、癪だがな……」


「勇者に対しては万全を期さねば成らん…そして四百年前の屈辱を晴らし」




「……我が、世を支配する」ドッ



118: ◆jPpg5.obl6 2012/12/06(木) 20:21:27.44 ID:vblPc0eF0
壱の国ー 謁見の間ー

師範「して王よ、儂に何の話しで御座いましょう」

王「師範、急な話しだが……新たに貴族になって貰いたい」

師範「儂が貴族に!? 何故?」

王「師範、今から話す事は他言無用で頼む」

師範「……承知致しました」


119: ◆jPpg5.obl6 2012/12/06(木) 20:26:00.71 ID:vblPc0eF0


王「今日、王宮が襲撃されたのは貴族が勇者の情報を魔族に流したからなのだ」


師範「何ですと!?」


王「私が選んだ者だ…民に知れれば只では済まない」


王「そして『守り手』、いや僧侶の役目は勇者の護衛と、勇者に仇なす『人間』の……暗殺なのだ」


師範「まさかっ!?……」



王「…僧侶は貴族を暗殺する、魔族に加担する者を増やさん為の抑止力にもなる…そして師範、そなたには貴族が抜けた穴を埋めて欲しいのだ」


師範「……承知、しました…ですが若者が背負うにはあまりに重すぎる役目…『守り手』の存在は知っておりましたが、しかし暗殺など…」


王「私とて辛い…貴族の本質を見抜けなかった、私が至らなかったのだ」ギリッ


120: ◆jPpg5.obl6 2012/12/06(木) 20:27:48.10 ID:vblPc0eF0

王「あの時……僧侶が娘を連れて此処に来た時の僧侶の笑顔は実に朗らかだった、平時であれば心優しき青年であったろうに」ツゥッ


師範「……!! 王よ…僧侶は大丈夫じゃよ…」


王「……何故言い切れる?」


師範「僧侶には勇者が、いえ…守るべき者が居るのです、あの子が側に居る限り僧侶は決して折れますまい…」


師範「そして『勇者』を守る『守り手』としてで無く、己の意志であの子を守る…さすれば『絆』が生まれ、僧侶は掛け替えのない物を手に入れるでしょう」


王「絆…か、絶対の信頼と互いに己の全てを捧げる覚悟がなければ生まれはしない、今の世では最も希少で尊いものかもしれん」




師範「そうですな…ですが、あの二人ならば…と儂は思うのです」ニコリ



121: ◆jPpg5.obl6 2012/12/06(木) 20:30:06.37 ID:vblPc0eF0
船内ー客室ー


僧侶「指輪の精霊か…先代勇者様が持っていた物だし不思議ではないな…」

勇者「ねぇ…僧侶?」


僧侶「ん? どうした?」


勇者「今じゃなくて良い…でもいつか僧侶の事を教えて欲しい」


僧侶「……っ!! 勇者、オレは…」


勇者「焦らなくていいんだよ? 少しずつ、お互いを知っていこう? その為の旅でもあるんだって、僕は思うから…」ニコリ


僧侶「勇者……… すぅ、はぁぁ」


勇者「どうしたの?」



122: ◆jPpg5.obl6 2012/12/06(木) 20:37:06.98 ID:vblPc0eF0


僧侶「今から言う言葉を、『僧侶』の言葉を信じて聞いてくれ…」


勇者「……うん」コクリ


僧侶「オレは、オレは貴女を守る…何があっても、必ず貴女を守ると誓う…」


僧侶「今は言えない、けれど『守り手』としての自分の姿を貴女に晒す時が必ず来るだろう……その時は、どうか分かって欲しい……我々一族の、先祖達の思いを……」


勇者「うんっ、いいよ……」ニコッ…グスン


…キラッ…キラキラキラッ……


勇者「僧侶、ありがとうっ…」グスングスンッ

僧侶「………………」ギュッ

勇者「…ん………ありがとう」 ギュッ



……………………



勇者「もう大丈夫だよ?」グシグシ

僧侶「そうか…」スッ

勇者「何か泣いて疲れちゃった」ヘヘッ

僧侶「ははっ、じゃあそろそろ寝ようか」ニコリ

勇者「…うんっ」ニコッ




127: ◆jPpg5.obl6 2012/12/06(木) 23:07:58.05 ID:vblPc0eF0
ー客室ー

勇者「僧侶、朝だよ起きて」ユサユサ

僧侶「んっ、おはよう…」

勇者「お風呂入ってきたら?」

僧侶「そうするよ…」シパシパ

…………………

僧侶「ふぅ、さっぱりした」ガシガシ

勇者「天気崩れなくて良かったね、このままなら昼前には着きそう」


128: ◆jPpg5.obl6 2012/12/06(木) 23:11:15.78 ID:vblPc0eF0
僧侶「勇者、指輪について話しがあるんだが…」

勇者「どうしたの?」

僧侶「無くすと本当に笑えない事態になるから身に付けないか?」

勇者「うん、そうだね」

僧侶「じゃあ、勇者には太陽の指輪を、オレは月の指輪を…」スッ

勇者「分かった、でも大きいから落ちてく…!?」ビクッ


129: ◆jPpg5.obl6 2012/12/06(木) 23:14:47.98 ID:vblPc0eF0

僧侶「どうした?」

勇者「ピッタリになっちゃった…凄いや、僧侶はどう?」

僧侶「今はめてみる…おっ? 本当だ…何で出来てるんだろう」

勇者「でも本当に綺麗だね?」ニコッ

僧侶「あぁ…そうだな」ニコッ


ビダンッッッ!! ガッ!!  ドゴンッ!!!


勇者「何っ、今の!?」

僧侶「甲板に行こう!! 魔物かも知れない!!」

ダダッ…



130: ◆jPpg5.obl6 2012/12/06(木) 23:17:33.78 ID:vblPc0eF0
ー甲板ー

『グルォォォアアアアッ!!!』

『皆さん、船内に非難して下さい 落ち着いて!!』

『キャァァ!! 助けてくれぇっ!! 


勇者「何で魔物が、僕が乗ってる事はことは知られてない筈なのに!!」

僧侶「勇者!! 考えていても仕方無い、絡みついている触手を何とかしないと船が沈むぞ!!」

勇者「っ!! 分かった!! 早く触手を切断しよう!!」

僧侶「絡みついている触手はオレが斬る、勇者は船を囲んでいる触手に魔法を放ってくれ!!」ダッ

勇者「分かった!! 甲板にはもう人は居ない…よしっ!!」

勇者「聖雷・大車輪!!」カッ

ドッ!! ブゥゥン… ズギャギギャ!!!

僧侶「凄いな…周囲全ての触手が無くなった、後は絡みついているヤツだけか…」

「殺陣・影断ち」ヒュッ

「殺技・裂き太刀」グッ

ダンッ!! ズシャギャシャギャシャシャシャ


僧侶「もう無いな…」

タタタッ

勇者「僧侶っ!! 大丈夫?」

僧侶「あぁ大丈夫だよ」ニコッ



131: ◆jPpg5.obl6 2012/12/06(木) 23:19:19.99 ID:vblPc0eF0

僧侶「でもまだ本体が出てこないな…」

勇者「うん、注意しないと…」

ゴゴゴゴゴッ!!!

『来るっ!!!』


『ヴルガァァァァ!!!』

132: ◆jPpg5.obl6 2012/12/06(木) 23:20:41.84 ID:vblPc0eF0
僧侶「何だアレはっ!! まるで身体全体が口のようだ!!」

勇者「触手はそのための物だったんだ」ゾクッ

僧侶「勇者は魔法を放ち続けろ!! オレが触手から守る!!」

勇者「分かった!!」

『グルォギギャアアア』ブンッ ブンッ

僧侶「数がっ多いっ!!」ジャキン

ジャキ ズバッ ズパンッ ガッ

勇者「聖氷・大槍!!」カッ

ヒョウゥ ギチッガャチ… ドギュ!!!!

ドズン!!!!

『イギャルァアアアア』ズブズブ

バッシャァァ…  サァァァァッ

僧侶「助かったよ、ありがとう勇者」ハァ

勇者「僧侶が触手から守ってくれたからだよ……あれっ?」ムム


133: ◆jPpg5.obl6 2012/12/06(木) 23:24:20.52 ID:vblPc0eF0

僧侶「どうした?」

勇者「何か前より魔法の威力が上がってる…あんなにデカいのを一回で倒せたし、それに魔法使った後は凄く疲れるはずなのに……」

勇者「指輪のお陰かな?」

僧侶「あぁ、確か『絆』が力になるんだったか?」

勇者「うんっ、指輪の精霊はそう言ってたね」ニコッ

僧侶「まぁ、言われてみれば、あれだけ動いて疲れてないからな…」ウン

僧侶「…でも……」

勇者「ん? どうしたの?」

僧侶「いや、ビービー泣いて、あやして貰った挙げ句…手を繋いで寝る事で魔法の威力が上がるってどうなんだ?…」

勇者「ッッッ!!!!」カァァッ

ゲシッゲシッゲシッ!! ドカッ!!

勇者「このっ!! このっ!!」ブンッ

僧侶「痛い痛い!! 分かった!! もう絶対言わないから!!」

勇者「本当にっ!?」ハァハァッ

僧侶「あぁ言わないっ!!」

勇者「昨日はあんなに優しかったのに…また子供扱いしてっ!!」


139: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 20:28:14.85 ID:z7Kug8Em0
ー甲板ー

船長「本当に助かりました、乗客の皆様も無事です…本当に、何と御礼を言ったら良いか」ウゥッ

勇者「皆さん無事で良かったです、船は大丈夫ですか?」

船長「えぇ、問題はありません、予定通りに着くはずです」

僧侶「そうですか、ては私達は客室へ戻ります」


……………………


ー客室ー

勇者「もうすぐ弐の国の港に着くね」

僧侶「あぁ、港から都までは結構距離があるから途中の街や村に泊まる事になる」

勇者「そっか、やっと旅の始まりだね…」

僧侶「なぁ、勇者…」

勇者「うん?」

僧侶「辛い時は言ってくれ、オレも勇者の知らない所は沢山あるんだ…不安な時、怖い時、悲しい時、いつでもオレに言って欲しい」

勇者「うん、分かった…ありがとう僧侶」ニコッ

140: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 20:29:53.03 ID:z7Kug8Em0

僧侶「着いたみたいだな、行こう」

勇者「僧侶、荷物大丈夫? と言うか何を持ってるの?」

僧侶「ん? あぁ、これは勇者が倒したドラゴンの爪や牙さ…都の加治屋で武器、防具を作って貰えと王様が…」

勇者「武器かぁ、僕は一応王宮騎士用の剣があるけど…」

僧侶「まぁ、丈夫な武器があれば買い変える必要も無くなる、それに折角王様が気を利かせてくれたんだから」

勇者「そっか、そうだね…じゃあ行こう僧侶」


141: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 20:33:57.16 ID:z7Kug8Em0

弐の国ー港ー


よしっ!! 行こうか ザッ

『おーい!! ちょと待ってくれ!!』

勇者「んっ、何だろう?……うわっ!?」

ガヤガヤガヤ…

『ありがとう!! 君達のお陰で助かったよ!! まるで勇者様だ!! 気を付けて行くんだよっ!! 達者でなっ!!』ワァァァッ


「はいっ、皆さんもお元気で!!」 ザッ


142: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 20:34:47.42 ID:z7Kug8Em0

『礼儀正しいいい娘だったな… ああ今時珍しい しかも可愛いし… あの青年も素敵だったわ、旦那と取り替えたいくらい 』


『本当に勇者様だったりしてな? ああいう御方が勇者様なら大丈夫さ あぁ、そうだな』


143: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 20:36:55.86 ID:z7Kug8Em0

ー平原ー


僧侶「皆喜んでたな、勇者」

勇者「うん、でも魔王を倒せばもっと沢山の人達が笑顔になれる」 グッ

僧侶「………」

勇者「僧侶? どうしたの?」

僧侶「あっ、いや…そうだな」 ニコリ…

勇者「……?」

ザッザッザッ…

僧侶「この山を越えれば村がある、日が沈むまでに着ければいいが山には魔物もいる、野宿も覚悟しないとな…」

勇者「そうだね、気を付けて行こう」

僧侶「あぁ、あと魔法はあまり使わない方がいい、指輪の加護があるとはいえ負担はあるみたいだから」

勇者「そうだね、分かったよ」 ニコッ

144: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 20:42:57.94 ID:z7Kug8Em0

弐の国ー山中ー


ザンッ ズバッ ギャン…


勇者「魔物…多いね、まだ山頂まであるのに…もうすぐ日が沈んじゃうよ」グゥゥゥ

僧侶「そう言えば今日の朝食は食べてなかったな、あの魔物のお陰で…」

僧侶「よしっ、ここらで少し休もうパンならあるから」スッ

勇者「ありがとう僧侶、今日は野宿決定かぁ…仕方無いよね、夜は危険だし」ハァ


僧侶「ああ、魔物の方が夜目が利くからな…それを食べたら少し進もう、川でもあれば良いんだけど」

………………

山林ー川付近ー


僧侶「ここらで野宿しよう、川も見つかった、これで水浴びも出来る」

勇者「身体べとべとだよ…あれから魔物は少なくなったけど安心は出来ないね」

僧侶「あぁ、交代で見張りながら、仮眠を取ろう…勇者、これに火を点けてくれ」

勇者「分かった、 聖炎・小」ボウッ


パチッパチパチパチッ…


勇者「僧侶は魔法使えないの?」 

僧侶「治癒魔法と後は主に体術・剣術とかかな…」

勇者「僧侶なのに?」 フフッ

僧侶「ははっ、僧侶なのにな」 ニコッ

……………

僧侶「ふうっ、さっぱりした」 ゴシゴシ

僧侶「勇者も水浴びして来たら?」

勇者「うんっ、じゃあ行ってくる、すぐ戻るよ」タタッ


145: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 20:49:08.65 ID:z7Kug8Em0

ガサガサッ

僧侶「誰だっ!!」

「…………」 ダッ

ビュン シャッ

僧侶「くっ、早いっ!!」 ジャキ


ギャ ギリリリッ…


僧侶「殺陣・影断ち」 シュン

「…………」 シュン

僧侶「なっ…!?」


「……殺技・針雨…」


ダンッ!! ザシュシュシュッッ

ガギャガギキンッッ…


「………」


こいつ…何故我々一族の技を使える!? 今は父上と私以外に使えない筈…

僧侶「貴様は何者だ? 答えろ!!」

「……………」


勇者「僧侶っ!!」 ダッ


僧侶「っ!? ダメだ勇者っ!! 来るなっ!!」


146: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 20:51:12.64 ID:z7Kug8Em0

「…………」 シュン

「…殺技・裂き太刀……」 グッ

ダンッ!! 


僧侶「くそっ!! 勇者っ!!」 ダッ シュン

ズバッ!!! ブシャッ…

147: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 20:52:54.06 ID:z7Kug8Em0

僧侶「大っ丈夫…か? 勇者…?」 ニコリ

勇者「えっ……僧侶っ? ねぇ? 僧侶? 僧侶っ!!!」

「…………」ズズズッ

勇者「ぁぁぁっ…… お前はっ!! お前は許さないっ!!!!」 ゴゴゴゴッ



勇者「神雷・極雷槍!!」 カッ

ズズンッ!!


ドッッ!! ズギャッッ!! ジャギギャギャギャ!!!!


148: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 20:54:58.46 ID:z7Kug8Em0

勇者「治癒・大っ」 パァァァ

僧侶「はっはぁっ」ドクドクッ シュゥゥ ピタ…

勇者「僧侶!! 僧侶しっかりして!!」

僧侶「グッ…ッハァ、はぁはぁはあっ…勇っ者ありがとう」

勇者「大丈夫!?」

僧侶「あぁ傷は塞がったよ、でも血が出すぎたな」クラッ

僧侶「大丈夫、寝れば良くなるよ」 ニコリ…

僧侶「ごめん勇者…君に、人を殺めさせてしまった……」

勇者「っ!! いいんだ…僧侶が無事ならっ……あなたを守れるなら…ぼ……私もあなたを守からっ!!」 グスンッ

僧侶「…!! 勇者…ありがとう」ポロッ

勇者「僧侶は休んで」 ニコリ…

勇者「私が見張りをするから…っ!?」ゾクッ


149: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 20:56:37.30 ID:z7Kug8Em0

「…………」ザッ

勇者「なっ!? まだ生きてるなんて…」

「守り手よ……示したな…付いて来い」

勇者「付いて来いだって!? お前が僧侶を傷付けたのに馬鹿な事言うなっ!!」

「守り手よ、来るのだ」

僧侶「………いいだろう、勇者…頼む」

勇者「僧侶っ!! 正気なの!? 殺されそうになったんだよ!?」

150: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 20:58:03.42 ID:z7Kug8Em0

僧侶「大丈夫だよ、何かを感じるんだ…上手く言えないけど、何か…」

勇者「分かった、僧侶を信じる…」

「来い、こっちだ…」 ザッ

僧侶「行こう……っ!?」フラッ

勇者「全く…私がおぶるから捕まって」ハァ

僧侶「ごめん…」 ガシッ

勇者「よいしょっと」グイッ

勇者「じゃあ行くよ」 ザッ

151: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 21:02:15.69 ID:z7Kug8Em0
ー山小屋ー

「ここだ、入れ」ガチャ

僧侶「勇者済まないな、おぶって貰って…」

勇者「いいよ、そんなに重く無いし…ねぇ、僧侶を休ませたいんだけど?」

「……そこのを使え、それと勇者…お前には外して貰いたい」

勇者「そんなの聞けるわけ無いでしょ!! いきなり僧侶を襲っておいて、付いて来いとか、お前は外せとか!!」


152: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 21:06:48.44 ID:z7Kug8Em0

僧侶「勇者、もう大丈夫だよ…それに、何かあればすぐに呼ぶから」コク

勇者「分かった…」ガチャ

パタン

……………

僧侶「それで、何の目的であんな事を? それに、あの技を何故使える?」

「話すより見せた方が早い…付いて来い」ギギィッ

僧侶「地下室? つっ!!」グラッ

「……掴まれ」グイッ

僧侶「えっ? ああ…」ガシッ


153: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 21:13:43.33 ID:z7Kug8Em0

ー地下室ー


僧侶「これは…!?」

「先代の『守り手』の武具だ…」

僧侶「何だと…!?」

「信じられんか?」

僧侶「当たり前だ!! こんな山小屋に四百年も前の武具が埃一つ被らず置いてあるのを信じられるか?」

「まぁそうだな…ならばこれを見ろ」

僧侶「これは…我々一族の紋章、どの武具にも刺繍が入っている…」

「信じたか?」


154: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 21:15:51.97 ID:z7Kug8Em0

僧侶「……あぁ信じよう」

「お前が付けている指輪、月の指輪だな? 精霊には会ったか?」

僧侶「………勇者が会ったと言っていた」

「そうか、オレも奴と同じ類だ…先代の守り手の武具のな、だから技を使えた」

僧侶「お前が、精霊?」

「そうだ、お前を襲ったのはこれを持つに値する者かを見極める為」

僧侶「ならば何故、勇者を狙った!!」

「必要だったからだ、真に『守り手』たる者なのかどうか…確かめるにはな」

僧侶「守り手たるもの勇者を守って当然だろう、確かめるまでも無い」


155: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 21:29:02.66 ID:z7Kug8Em0
>>137  全裸待機して頂けるなんて…ありがとうございます。

ちょっと休憩した後、少しだけど投下します。

ss初挑戦で、需要あるのか? とか不安ですが。

頑張るので皆さん宜しくお願いします。

158: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 22:24:27.96 ID:z7Kug8Em0

「違う、オレが確かめたのはお前達の『絆』だ、守り手の真実を隠している割には信頼されているな」

僧侶「っ!? 隠してなどない、今はまだ…」

「ならば、いつ打ち明ける? 明日か? 十年後か? いつなら言える?」

僧侶「黙れっ…」

「先代は打ち明けた」

僧侶「っ!!」

「己がやって来た事、どんな理由があったとしても、人を殺めてしまった事、その全てを…」

僧侶「オレは…」

「己を背負った業を打ち明けろ、それをせず何が絆か、それとも勇者に怖れられるのが怖いか?」


159: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 22:24:55.95 ID:z7Kug8Em0

「違う、オレが確かめたのはお前達の『絆』だ、守り手の真実を隠している割には信頼されているな」

僧侶「っ!? 隠してなどない、今はまだ…」

「ならば、いつ打ち明ける? 明日か? 十年後か? いつなら言える?」

僧侶「黙れっ…」

「先代は打ち明けた」

僧侶「っ!!」

「己がやって来た事、どんな理由があったとしても、人を殺めてしまった事、その全てを…」

僧侶「オレは…」

「己を背負った業を打ち明けろ、それをせず何が絆か、それとも勇者に怖れられるのが怖いか?」


160: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 22:26:34.52 ID:z7Kug8Em0

僧侶「………」

「お前が先刻、命を懸けて守った者はその程度の人間か?」

僧侶「違う!! オレは確かに怖れているさ、彼女はまだ幼い…だが優しく清い心の持ち主だ、それ故に傷付けるのが」

「それはお前の理屈だ、勇者はお前になんと言った?」

僧侶「………」


161: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 22:29:24.59 ID:z7Kug8Em0

ーーーーーーーーー


勇者「今じゃなくて良い…でもいつか僧侶の事を教えて欲しい」


勇者「焦らなくていいんだよ? 少しずつ、お互いを知っていこう? その為の旅でもあるんだって、僕は思うから…」ニコリ


ーーーーーーーーー


162: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 22:31:34.53 ID:z7Kug8Em0

僧侶「伝えるよ…勇者に全てを…」

「覚悟は決まったか?」

僧侶「ああ…」

「ならば受け取れ、先代守り手の意志と彼の武具を…」

僧侶「一族の刺繍が入った隠密衣装…白地に赤か…それに、胸当て、脛当てにブーツ、片手直剣…後は篭手?」


163: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 22:33:12.76 ID:z7Kug8Em0

「その篭手を付けて腕を軽く振ってみろ…」

僧侶「……」スッ

ジャキンッ!!!

僧侶「刃が…!? これは?」

「先代が、ある者に頼み設計した暗殺用の特殊武器…篭手にしか見えんから誰も怪しまん」

「先代は暗殺の際、必ずその衣装と武器を身につけた、正に『守り手』の証し…そして、穢れを背負い、勇者を守護する者の象徴だ」

「『守り手』の証しと象徴…」

「誇りを持て僧侶、『僧侶』も『守り手』も、どちらもお前…」スゥッ

僧侶「ああ、もう迷わない……」



164: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 22:39:51.38 ID:z7Kug8Em0

「後一つ、魔王は世界の向こう側にいる…辿り着くには鍵が必要だ、賢者を探せ……奴なら知っている、真の絆無くして魔王は倒せん…心しておけ」パァァァ

僧侶「あぁ、分かっている…」グッ

僧侶「…行くか…勇者が待ってる」ザッ

165: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 22:48:24.81 ID:z7Kug8Em0
ー山小屋ー

勇者「そっか、あの人も精霊だったんだ…僧侶を襲ったのは許せ無いけど」ムカッ

僧侶「いやぁ、あの時の勇者は怖かったな」

勇者「当たり前でしょ!! 怒ってたんだから、それより身体はどう?」

僧侶「横になってるから楽だよ、朝には良くなってると思う…」ニコリ


166: ◆jPpg5.obl6 2012/12/07(金) 22:51:19.15 ID:z7Kug8Em0

勇者「良かった…その刺繍の入った衣装と武器防具一式が先代の守り手、僧侶のご先祖様が使っていた物なんだね…何か雰囲気があるね…」

僧侶「ああ、着るのには勇気がいりそうだ……後、もう先延ばしにはしない」

勇者「ん? 僧侶どうしたの?」キョトン

僧侶「勇者、もう隠しはしない、全てを話すよ…」

勇者「いいの? 私は待てるよ…」

僧侶「いや覚悟を決めた、だから精霊は先代の衣装と武器防具をオレに託したんだ…だから……」

勇者「………」



僧侶「あの時、船で言えかった事、『守り手』の真実を話す…」


175: ◆jPpg5.obl6 2012/12/08(土) 22:18:20.46 ID:fAp4YZXZ0

勇者「勇者に仇なす者の暗殺と勇者の守護…」

僧侶「ああ、それが我が一族の使命、これが『守り手』の真実だ」

勇者「…………」ポロポロ

僧侶「済まない勇者…」

勇者「大丈夫、私も覚悟してたから」グイッ

僧侶「そうか…」

勇者「殺す以外の方法は無かったの?」

僧侶「他に無かったんだ、言葉で解決出来るなら四百年前に守り手は存在しなかったさ」


176: ◆jPpg5.obl6 2012/12/08(土) 22:19:41.34 ID:fAp4YZXZ0

勇者「辛く…ないの?」

僧侶「それでも……それでもオレしかいない…この手が血で染まろうと魔族と結託する悪しき者を裁く」


僧侶「これが守り手の信念であり掟」


勇者「私には分かんないよ、そこまでしなきゃならないなんて」

僧侶「勇者、人は皆が綺麗な心を持ってるわけじゃない…現にオレは一人の貴族を殺した……」

勇者「そんなっ…」

僧侶「その貴族は魔族に情報を流した、だからあの時王宮に魔物が現れたんだ」

勇者「何で!? 皆は魔王を倒して欲しいんじゃないの? なのに何で…」
僧侶「理由なら幾らでもある、共通しているのは欲望や野心…だから魔族につけ込まれる」

勇者「………」

僧侶「勇者、オレは『守り手』以前に君自身を守る『僧侶』だ…無理に認めてくれなくてもいい、それでもオレは一族の意志を貫く…」


勇者「私は……」


177: ◆jPpg5.obl6 2012/12/08(土) 22:20:55.95 ID:fAp4YZXZ0



ーオレは、オレは貴女を守る…何があっても、必ず貴女を守ると誓うー




ー今は言えない、けれど『守り手』としての自分の姿を貴女に晒す時が必ず来るだろう……その時は、どうか分かって欲しい……我々一族の、先祖達の思いをー



178: ◆jPpg5.obl6 2012/12/08(土) 22:22:44.61 ID:fAp4YZXZ0

勇者「私は、『僧侶』を信じてる…『私』を見てくれたあなたを信じてる…」

勇者「でも、これ以上僧侶に人を殺めて欲しくない、私も…辛いから…」

僧侶「………」

勇者「だから…どれだけ時間が掛かっても魔王を倒さなきゃ、旅が終わったら全てが良くなるよ」ニコ…

勇者「きっと…僧侶が誰も傷付ける事の無い世界に…」

僧侶「ありがとう……勇者」


181: ◆jPpg5.obl6 2012/12/08(土) 22:28:20.07 ID:fAp4YZXZ0

弐の国ー王城ー

「協力すれば私が王になれるんだな」

「えぇ約束します、協力して頂ければ貴方が王になれるでしょう」ニコリ


「策はあるのか?」

「勿論です、貴方に面倒は掛けません…では、頼みます」

「良いだろう」


…………………


ー???ー



「醜い、いつの世も人間は変わらんな…だが我はそんな命は下してはない、王宮の件もお前が指示したのだな?」

「申し訳御座いません、ですが四百年前魔王様が勇者に敗れてから復活までの四百年間…ずっと悔いておりました、また勇者に敗れてしまうと思うと…私は……」

「もうよい…お前は四百年前も今も良く尽くしている、永らく待たせたな…御苦労だった」

「魔王様っ……勿体無い御言葉に御座います…」

「だが、我を信じよ…必ずや勇者も醜い人間共も塵一つ残さず消し去って見せよう」

「はい、信じております…魔王様」


182: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 00:19:53.02 ID:Kqq4uWp50
ー山小屋ー

僧侶「おはよう、勇者」ニコ

勇者「うぅん…おはよう……あっ、身体はどう?」

僧侶「大分楽になった、もう大丈夫だよ」ニコリ

勇者「良かった、じゃあ出発しよう? それに精霊が言っていた『鍵』と賢者を探さないと」

僧侶「だが何処に居るのかまでは……だから情報が必要だな…まずは都を目指そう」ザッ

……………

ー山道ー

勇者「やっと山を越えられるね」

僧侶「あぁ、昨日の襲撃には参っ」


『キャアアア!!』



183: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 00:20:46.35 ID:Kqq4uWp50

僧侶・勇者「っ!!」ダッ

娘「お母さん!! お母さん!!」

母「うぅっ、逃げなさい…娘!!」

『ガァァァァッ』ブンッ

娘「誰かっ!!」ギュッ…

ズギャンッ!!  ドシンッ… 

娘「っ??」

勇者「大丈夫っ!?」

娘「お母さんが、お母さんが…」

母「はぁっ…うぅぅ」

僧侶「怪我をっ… 治癒・中」パァァァ

娘「傷が…お母さん、大丈夫!?」

母「えぇ、娘…無事で良かったわ」フラッ パタン

勇者「出血が酷かったんだ…私がおぶるから、僧侶は娘さんを」

僧侶「分かった、娘さんお家まで案内してくれるかい?」

娘「はいっ!!」


………………


村ー民家ー

勇者「傷は塞がってるから、2・3日安静にしてれば良くなると思う」

娘「ありがとうございます、本当に助かりました…」

僧侶「いや、無事で良かったよ」ニコ

娘「あの…勇者様、ですか?」

勇者「えっ、なぜ知ってるの?」

娘「昨日、村の宿に泊まった方が、魔物に襲われた船を勇者様が救ったんだっ!! って…何度も話していたので」

娘「それに背格好や髪型が聞いた話しの勇者様とそっくりで…しかも絵まで描いていったんですよ? 下手でしたけど…」

僧侶「情報は回るのが早いな、まあ隠していた訳では無いし」

勇者「そうだけど、ちょっとむずかゆいね」ヘヘッ


184: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 00:21:38.35 ID:Kqq4uWp50

母「うっ…」パッ

娘「お母さん、平気?」タタッ

母「えぇ、旅の方危ない所をありがとう御座いました」ペコ

娘「お母さん、この人勇者様なんだよ?」

母「まぁ、では昨日の方のお話しは本当だったのね…まさか勇者様にお会いできるなんて」

勇者「勇者様なんて、勇者でいいですよ?」

母「優しい方なんですね…瞳が真っ直ぐで、そちらの方は? 勇者様の旦那様?」

僧侶「あっ、いや…オレ達はそういうのでは無いです」

母「でも揃いの指輪をしてらっしゃるし……お二人共お似合いですので」ニコリ

勇者「いやっ、あのっ」カァァッ

コンコン…

「入って宜しいかな?」

娘「はい、どうぞ」

ガチャ

185: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 00:24:23.13 ID:Kqq4uWp50
村長「村の者を救っていただきありがとう御座います、勇者様」ペコ

村長「大したもてなしは出来ませんが村の宿を取っております、少しばかりでも御礼をさせて下さい」

僧侶「いや、私達は都へ行かなければならないので…それに、そこまで気を使って頂かなくても…」

勇者「僧侶、少しだけ休んで行こうよ…もうすぐお昼だしご飯だけでもご馳走になろう?」

僧侶「……そうだな、少し休んでも夕方には都の手前の町に着くだろうから」

村長「それは良かった、宿の準備は出来ておりますので僅かばかりでもお休み下さい」ニコリ

村長「では、失礼します」ガチャ

パタン

186: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 00:25:22.58 ID:Kqq4uWp50
勇者「んじゃ、宿に行こっか僧侶」

娘「あのっ勇者様、ちょっとお願いがあるんです」

勇者「どうしたの?」

娘「さっき、魔物が出た所為で山菜が採れなくて…勇者様に着いて来て欲しいんです」

母「娘っ、勇者様すいません…いきなりこんな…」

勇者「大丈夫ですよ」ニコッ

勇者「んじゃ、宿に荷物置いたら来るから少し待ってて、僧侶良い?」

僧侶「いいけど…オレも着いて行こうか?」

勇者「ううん、僧侶は休んでて」ニコ

娘「良いんですか?」

勇者「勿論っ、娘さんが一人で行って魔物が出たりしたら大変だから」

母「すみません勇者様、ご迷惑惑をお掛けして…」

勇者「全然大丈夫ですよ」

勇者「んじゃ宿に行こう僧侶」

僧侶「そうだな」ニコリ


187: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 00:26:22.26 ID:Kqq4uWp50
ー村の宿ー

僧侶「ご飯…美味しかったな、けど量が多かった……」ウプッ

勇者「半端じゃなかったね、山菜の天ぷらが美味しかったけど」ケプッ

勇者「そろそろ娘さんのとこに行ってくるよ」

僧侶「気を付けていくんだぞ?」

勇者「大丈夫、早めに来るから」ガチャ

パタン


188: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 00:27:29.84 ID:Kqq4uWp50

ーーーーーーー

賢者と鍵…か、それに世界の向こう側とは何だ? 

そんな事は文献には記されてはいなかった…それも賢者が全てを知ってる…か。

ーーーーーーー

コンコンッ


僧侶「はい、どうぞ」

ガチャ

村長「僧侶様、勇者様は何処へ?」

僧侶「勇者なら先程の娘さんと山菜取りに行きましたが、何か?」

村長「いえ、お二人にお頼みしたい事があったのですが…」

僧侶「オレで良ければ聞きますが…」

村長「はい、実は村の近くの洞窟に魔物が住み着いてしまって困っとるのです……被害にあった者もいます、出来れば退治していただきたいのです…」

僧侶「…良いですよ、ご飯もご馳走になりましたから、それくらいなら」ニコリ

村長「引き受けて下さるのですか!! 良かった…」ホッ

僧侶「では今行ってきますね」

村長「ありがとう御座います、僧侶様」ペコリ

189: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 00:29:05.08 ID:Kqq4uWp50

ー洞窟ー

僧侶「ゴブリンか、まず大丈夫だろう」


ーーーーーー


ズシャ ズバッ ガギャン……


僧侶「ふうっ、結構時間が掛かったな……そろそろ勇者も戻ってる頃だろうし村へ戻ろう」

『キラキラッ…』

僧侶「んっ? 指輪が光ってる……」

『僧侶様ー!!』

僧侶「この声は娘か?」

娘「村がっ!! 勇者様がっ!!」

僧侶「…っ!? 何があった!?」


190: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 00:32:45.91 ID:Kqq4uWp50

ー数刻前ー村ー

勇者「いっぱい取れたね」ニコッ

娘「はい!! ありがとうございました」

勇者「僧侶待ってるから宿に戻るね」

娘「行くときは言って下さいね、見送りますから」ニコッ

勇者「うんっ!!」


ー宿ー


勇者「あれ、僧侶がいない…何処行ったのかな?」

女将さん「あぁ、僧侶様なら洞窟に出掛けたよ、村長さんが魔物退治頼んだみたいでねぇ」

勇者「全く…まだ身体は完全に良くなって無いのに……」ハァ

女将さん「ありゃ、イイ男だねっ!!頼まれてすぐ行っちまったよ」

勇者「ふふっ…」


『勇者様、勇者様はおらんか!!』




191: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 00:34:14.90 ID:Kqq4uWp50

兵士が沢山いる…なんだろう?


勇者「何ですか?」

兵士「城に御同行願いたい!!」

勇者「良いですけど…僧侶が来てからでも」

兵士「いえ、勇者様だけで宜しいのです」

勇者「何故急に…」

団長「いいから来い、僧侶とかいうのが来ると厄介だからな」

勇者「何を言ってるの?」

団長「ちっ、面倒だ…今すぐ着いてこないなら、この村焼き払って村人も皆殺しにする」ボソッ

勇者「なっ!?」

団長「騒ぐな…来るよな?」

勇者「分かった」コクッ

娘「勇者様ぁっ!!」

勇者「お城に行かなきゃならないみたい、僧侶に伝えて置いて?」ニコッ

娘「分かりました!!」


ガラガラガラ…

192: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 00:35:09.30 ID:Kqq4uWp50

団長「行ったか………やれ」

兵士「はっ!!」


『何をっ!! うぎゃあ!! 助けてくれ 止めろぉ!!』


ボウッ!! メラメラメラメラ…


村長「娘!! 僧侶様に伝えるのだ!! 勇者様はきっと脅されておったのだ…」


『一人残らず殺せとの命令なんでな』


村長「貴様等それでも国を守る兵士か!! 娘っ!!早く行きなさい」

娘「っ!!」ダダダッ


193: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 01:02:37.11 ID:Kqq4uWp50

ー洞窟ー

僧侶「そんな…」

娘「僧侶様っ……勇者様を…」パタン

僧侶「背中に矢がっ!! ……っ!?」ハッ

僧侶「息が……」

僧侶「っ!! 許さん……」ギリッ


ーーーーー


ー 村・焼け跡 ー

僧侶「神よ罪無き者達の魂を救たまえ」


ガラッ!! ドカッ ズリズリッ……


僧侶「あった……先代よ、今こそ使わせて貰います」バサッ


ガチャ スチャッ  ヒュッ… ジャキッ


僧侶「よし…問題なく動く」グッ




    ー奴らは決して許されぬ事をしたのだー




僧侶「覚悟しておけ外道共……『守り手』として、貴様等を殺す!!!」







   ー殺された罪なき者の痛み、思い知るがいいー





200: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 12:36:37.01 ID:VBzuhSS00

ー勇者ー

16歳・女性。

黒髪ショート・元々はロングだったがバッサリ切った。

身長162?。 胸は…普通、スレンダー。

綺麗・可愛いで言えば可愛い、愛嬌のある顔立ちで人当たりも良い。

好き嫌い無し。 

トンボが苦手、昔赤トンボに耳を噛まれたらしい。

ーーー

魔王に唯一対抗出来る者。

世界と人々を救う者。

魔王復活により突如勇者の力に目覚めた。

彼女の使う魔法は一般魔法とは異なり、聖魔法と呼ばれる。

神の力の一端を行使しているのでは無いかと思われる。

剣術・魔法なら、かなり魔法寄り。

剣術は人間相手なら強いが魔物と戦うのはまだ慣れていない。

ーーー

女性の勇者では頼り無いのでは? 少しでも男っぽく…と思い、

『僕』と言うようになったが、勇者としてでなく自分自身を見てくれる僧侶と出会い『私』に戻っていった。


201: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 12:41:06.48 ID:VBzuhSS00

ー僧侶ー


21歳 男性。

髪は赤茶、茶色寄り。

少し癖っ毛で髪は少し長め、時々結っている。

身長176? 引き締まった身体で細身。

顔立ちは爽やかで穏やかに見える。

ピクルスが大好き、砂糖が入った酢の物は大嫌い。

犬が苦手、訓練中追い回された為だとか。

ーーー

勇者に仇なす者を葬る者。

そして、勇者を守護する者

『守り手』の一族に生まれ、幼い頃から修練に励む。

母は幼い頃に病気で亡くす。

守り手一族は、魔王復活までの四百年の間も修練を続けていた。

勇者に仇なす者は躊躇い無く殺す。

その為、四百年前は守り手と言うより暗殺者としての方が名が通っていた。

主に短剣・片手剣を使うが特殊な武器の扱いも出来る。

魔法は治癒のみで、隠密体術・殺人術が主である。

ーーーー

勇者を守護し仇なす者を葬るのが使命であり一族の掟。

だが勇者が守ろうとしている『人』を殺さねばならない事に悩み始める。

だが彼女の優しさに触れ、変わり始めていき…ついに勇者に打ち明けた。

そして『勇者』も『彼女自身』も守ると誓った。



203: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 20:55:40.32 ID:ONnM736o0
ー王城ー

団長「ほら降りろ、勇者様」

勇者「何が目的でこんな事をするの?」

団長「まぁいい、世間知らずのガキに教えてやる…お前が居なくなって得をする奴もいるんだよ、ガキには分からんだろうがな」

勇者「っ!! 魔王は、魔王は誰が倒すの!! 苦しんでいる人達を誰がっ」

ガンッ  バタッ……

団長「そんなのは知ったこったゃねぇんだよ!! 魔王だろうが勇者様だろうがなっ」

団長「おいっ!! このガキを運べ…五月蠅くてかなわねぇ」

兵士「はっ!!」グイッ

ーーーー

勇者「うっ…うぅ…」ズキッ

「目が覚めたか」

勇者「お前は誰だ…?」


204: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 20:57:28.16 ID:ONnM736o0


「儂は、弐の国の大臣…始めまして勇者様」

勇者「お前っ、何故こんな…王様は何をして…まさかっ!?」

大臣「いやいや、王は所用で都におられるよ…まぁ、この城に帰って来る事は無い」

大臣「悪漢にでも殺されてな」ニヤニヤ

勇者「大臣っ……!!」

大臣「まぁ勇者様にもこれから死んで貰いますが…おいっ、魔導師」

魔導師「はい、此処に…」

勇者「魔族っ!! 何故ここに!?」

大臣「呆れる程に純粋だな……儂は魔族と手を組んだのだよ、勇者を差し出せば王になれると言うんでな」

大臣「それに我が国だけは残してくれるそうだ」

勇者「大臣…お前はそんな言葉を信じたのか!?」

大臣「あの、あの若僧が…儂の方が国の為に尽くしていると言うのにっ…奴は血筋だけで王になったのだ!!」

大臣「儂の方が、儂の方が王に相応しいっ!!」

凄まじい嫉妬と憎悪だ!! 正常な判断が出来てない…

魔族はそこにつけ込んで増幅させたんだ、奥底にあった、王に対する嫉妬と憎悪を…


魔導師「………」ニヤッ


武器は勿論、それに魔法も使えない……どうしたら良いんだ。

それに僧侶は無事なの…?

『キラキラキラッ……』

指輪が!?

そっか…そうだね、僧侶は必ず来るっ!!

少しでも時間を…


205: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 21:01:06.93 ID:ONnM736o0
ー城への道ー


僧侶「村に一頭だけ馬が残っていて助かった、都は越えた!! このまま一気に城までっ!!」カカッ カカッ

僧侶「もう日も落ちたな、……!! あの馬車…何か様子がおかしい…」

王「何のつもりだ貴様等、気でも触れたか?」

『いいや、オレ達は正常さ コレが任務なんでな 』


反逆兵「次期王の命令なんだよ…あんたには此処で死んで貰う」ジャキッ

王「次期王だと? まさか…大臣か?」

黒幕は大臣か……兵士は三人… スッ…


206: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 21:03:04.38 ID:ONnM736o0

反逆兵「流石に察しが良いな、おいっお前ら、さっさと片付けるぞ…」

ドサドサッ……

反逆兵「おいっ」クルッ

反逆兵「なっ!? 誰だ!! 出てこいっ!!」

「これは裁きだ…貴様等には躊躇い無く刃を突き立てられる、死ね…」

ジャキッ ザグッ……

反逆兵「ぐッあッ!! …!? 白 い 死に 神 かッ…」

ブシャッ!! ドサ…

王「……お前は?」

「私は『守り手』、勇者の守護者」

王「そうか、お前が…何にせよ助かった、礼を言う」

「いえ、それより急がねば…勇者が城に連れ去られ、一つの村が壊滅…村人は反逆兵により虐殺されました…」

王「なにっ!? 大臣、奴は何を…守り手よオレも城へ行く、頼まれてくれるか…?」

「王よ、今の城は危険です…恐らく魔族も関与している筈」

王「いや、策はある…それにオレは王だ、見届けなければならない」


覚悟ある者の瞳…


「……承知しました」

王「ならば一度都に戻るぞ」


207: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 21:17:06.48 ID:ONnM736o0
ー王城ー

勇者「大臣、お前は魔族に騙さてる」

大臣「ひゃはは、そんな事ある訳が無い、儂が騙されるなどない」

ダメだ、もうこの人は壊れてしまっている。

大臣「なあ魔術師?」

魔術師「ええ、勿論ですとも大臣は賢い御方です」ニヤ

大臣「そうだろう!! ひゃひひ儂が王なのだ、儂が儂が儂が儂が…」ブツブツ

勇者「……」ゾクッ


勇者「大臣っ!! 村は!! 村の人は無事なんだろうなっ!!」



   「あの村の奴らなら…」


    ー勇者は此処で初めてー


    「皆殺しにしたぞ?」


  ー『人』の醜さを知る事になるー




208: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 21:19:49.34 ID:ONnM736o0

勇者「そんなっ!! そんなっ……うっ…うわぁぁぁぁ!!!! お前は!! お前は人間じゃないっ」

勇者「人を…!! 守るべき人達を何だと思ってるッ!!」

大臣「何を言う? 王が自分の物をどうしようと問題無いだろう、この国は全て儂の物なのだから…ひゃひッ」 

狂っているっ!! 僧侶、私は甘かったんだ…こんな、こんな『化け物』に話が通じる訳が無いっ……


僧侶っ……



209: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 21:23:39.00 ID:ONnM736o0
ー城門ー

反逆兵「あの大臣はイカれてる…協力した報酬貰ったら早いとことんずらするか」


ガラガラガラ……


反逆兵「んっ、そうか今日は商人が来る日だったな…止まれっ、荷を確認する」

商人「ええ、ご苦労様です」


ゴソゴソッ…  んっ? グッ!!……


商人「済んだか?」


「はい、王よ…城へ入りましょう…」


王「そうだな…」


210: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 21:26:20.15 ID:ONnM736o0
ー王城ー

『大変です、城内に侵入者が!!』

僧侶が来てくれたんだ…でも兵士は沢山いる、僧侶がここを見つけられるかも分からない……私はもう

大臣「魔術師よ侵入者を始末しろ、勇者は儂が殺す…ひゃひひ」

魔術師「……」

魔術師「はい、畏まりました…大臣、あなたは本当に素晴らしい方ですね」ニコッ

ガチャ パタン…

大臣「ひゃひッ、さて殺すか…儂は王だ、王王だオウ王だからな、ふひゃっ」ニヤニヤ

チャキッ


ダメだ、殺されるっ…


211: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 21:29:15.97 ID:ONnM736o0
ー王城ー

魔術師「侵入者は?」

『おぉ、魔術師 ヤツはあちらです 中々手強くて手間取っておりました』

ギィン ギャリ!! ザンッ

魔術師「魔炎・射弾」

ドッドッドッ!!

「ぐっ!!」

魔術師「其処までだ守り手よ」

「くくっ」

魔術師「………!? まさかっ!!」


王「一国の王たる者、国を守る為、民を守る為ならばこの身を投げ出すなど造作ない、『人』を舐めるなよ…化け物が…」フラッ


魔術師「チィッ!! 小賢しい」ギリッ

ドンッ!! ガラガラッ!!!! 


魔術師「爆発っ!?」


王「人は蘇りはしないが、城など建て直せば済む、化け物…お前は其処でじっとしていろ」ニヤッ


212: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 21:51:56.75 ID:ONnM736o0
ー王城ー

ドンッ!! ガラガラッ!!

大臣「ひゃひッ、なんじゃなんじゃ? ばくはつかぁ? まぁ良いゆうシャをコロ殺せば儂が王だぁ」

バリンッ!! 

大臣「なんじゃァ?」

勇者「僧侶っ!! 危ないっ!!」

ザシュッ!! 

団長「やっぱ陽動だったか…」

「貴様が、貴様が団長か……」ボソッ ユラッ

団長「コッチに来てせい」

スッ…ジャキンッ ザクッ!!

団長「きゃッ」ドサッ


僧侶「勇者…今、助けるからな」

大臣「ダれダァ? いだイな王にナニかヨうか?」


「人を捨て…罪無き者を殺した愚か者よ…」


「貴様の罪は死を以てしても決して許されはしない!!」ダッ


大臣「ナにぃ? わシはイイだい王ダぞぉ!!」ブンッ


僧侶「殺技・紅吹雪…」ググッ

ダンッ!!

ジャキッ!!  ザギャッ!! ズシャシャシャシャシャッ!!

大臣「ゲギャッ わ シハ 王に 」

ブッシャァァァッ!! ボタボタボタッ…


僧侶「眠れ、偽りの王よ………地獄でな…」


216: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 23:31:29.74 ID:ONnM736o0
ー王城ー

僧侶「勇者っ!! 大丈夫か?」

勇者「私、怖かった…怖かったよぉ」ポロポロ

僧侶「………」ギュッ

勇者「村の人が、みんながっ!!」ギュウゥ

僧侶「……分かってる、今は此処から出よう…今、手錠を外すから」カチャ

勇者「…………」フラッ バタッ…

僧侶「勇者っ!! ショックが大き過ぎたんだ…それに自分の所為だとも思っているんだろう……」ギリッ

僧侶「とにかく城を出て都へ行かないとっ!! 今見つかるのはまずい」ガシッ

ダダッ!!


ーーーーーーーーー


弐の国都ー宿ー


兵士「僧侶様、王が城へお呼びです」

勇者「すぅ…すぅ…」

僧侶「分かりました、すぐに支度します」

兵士「勇者様は…まだ……」

僧侶「大丈夫です、彼女ならきっと…大丈っ夫ですっから」ポロッ


……っ!! 大臣の死体を見た時どんなに残忍な奴かと思っていた……


でもこの方は違う…こんな慈愛に満ちた目を出来る方が只の残忍な殺人者である訳がない……


兵士「行きましょう、僧侶様…」





この方は、確かに『守り手』なのだ。



217: ◆jPpg5.obl6 2012/12/09(日) 23:39:19.60 ID:ONnM736o0
ー王城ー

王「来たか守り手、今回は助かった…無論お前は勇者の為にやったんだろうが、結果反乱分子も一掃できた…」

王「例を言う」スッ…

僧侶「頭を上げて下さい、今回の事は私が勇者から目を離さなければ起きなかったのですから」

王「過ぎた事だ、後々ああなっていたよ…それと城に居た魔族だが、姿を消した様だ」

王「それより勇者はまだ…」

僧侶「ええ、眠ったままです…目覚めても心の傷は癒えません」

王「それは、どうしようもないな」

僧侶「……えっ?」

王「幾らお前が心配しようと勇者自身が己の力で乗り越えるしかない」

僧侶「………」

僧侶「一つ願いが御座います…」

王「何だ言ってみろ」

僧侶「滅びた村の者達の埋葬と墓を建てて欲しいのです」

王「そうか、そうだな…分かった、すぐに取り掛からせよう」

王「それと僧侶、お前は賢者を探しているのだったな」

僧侶「ええ、そうです」

王「オレの友人が知っているかもしれん」

「あんまり持ち上げるんじゃねぇよバカ!! 分かりませんでした、何て事になったらウチの会社の信用が落ちるだろうがアホ!!」

僧侶「あの、そちらの方は?」

王「コイツがオレの友人のバカ、もとい、女商人だ…クソが、ボソッ」

女商人「聞こえてんだよバカ、自分でボソッ、とか言ってんじゃねぇよ」

王「こんな奴だが忌々しい事に商才があってな、商会の会長をやってるんだ、神は優し過ぎるとは思わんか? 守り手?」

僧侶「えっ?」

女商人「おい、ウチの大砲で城壊すぞこの野郎…」

王「下らない話しはこの辺にして、都にあるソイツの商会に行き情報を集めて来い、そんなバカでも役に立つかもしれんからな」ウン

女商人「後で大砲持って来っからな覚悟しとけよ…」

女商人「おい、守り手!! 行くぞ!!」

僧侶「あっ、はいっ!!」ダッ



220: ◆jPpg5.obl6 2012/12/10(月) 01:40:59.12 ID:RK3UYzxZ0
都ー女傑商会ー

僧侶「凄い名前ですね」

女商人「だろっ!? 女舐めんなよって理由で付けた名前なんだよ…あと敬語止めろ痒いから」

僧侶「分かったよ、女商人…で賢者の情報はどうやって?」

女商人「それなら大丈夫だ、女傑商会の仲間は世界各地に居るからな…2・3日待てば分かる筈だ」

僧侶「それじゃあ、オレは宿に戻る…それとオレの事は僧侶でいい」

女商人「おう、宜しくな僧侶、あとな…その…」

僧侶「どうした?」

女商人「アイツはアイツなりに、お前を励まそうとしてんだ、分かってやってくれ」ポリポリ

僧侶「ああ、女商人と王のやり取り見てたら元気出たよ、ありがとう」

女商人「そっか……勇者はお前を待ってる、引き留めて悪かった」

僧侶「いや、助かったよ…じゃあまたな」ガチャ

パタン

ーーーーー


都ー宿ー

勇者「うぅん……外…真っ暗だ」

僧侶「くぅ…くぅ…」

勇者「僧侶、側に居てくれてたんだ」フフッ

勇者「僧侶のあんな顔、初めて見たな…」


ーーーーー


「人を捨て…罪無き者を殺した愚か者よ…」


「貴様の罪は死を以てしても決して許されはしない!!」ダッ


大臣「ナにぃ? わシはイイだい王ダぞぉ!!」ブンッ

僧侶「殺技・朱吹雪…」ググッ

ジャキッ!! ザクッ!! ザシュッザシャシャシャッ!!

大臣「わ シハ 王ッ 」

ブッシャァァァッ!! ボタボタボタッ…



僧侶「偽りの王よ、眠れ…地獄でな……」

221: ◆jPpg5.obl6 2012/12/10(月) 02:14:46.49 ID:RK3UYzxZ0

勇者「あれが『守り手』の僧侶…あんなに凄絶な光景だったのに怖くなかったな……」

何より、守るという意志と決意を感じた…着ていた御先祖様の衣装も、まるでずっと前から着てたみたいに似合ってた……

僧侶「うっ、うぅっ」ギュッ

勇者「あっ…そうだよね、僧侶も辛いよね」ギュッ

勇者「寝よう、そして明日は村に花を供えに行こう…お休み、僧侶…」

ーーーーー

ー宿ー

勇者「僧侶っ、起きて」ユサユサ

僧侶「うんっ?……!?」

僧侶「勇者っ!! 目が覚めたのか…良かった…大丈夫、なのか?」

勇者「辛いよ、でもね…幾ら考えても悪い人の考えなんて分からないって事が分かったよ」

勇者「確かに大臣の様に魔に魅入られた人もいる、でもそれも真実だし…認めなきゃならないんだ」

僧侶「…勇者……」

勇者「ねぇ、村に行こう…手を合わせたいんだ……」

ーーーーー


ー村跡地ー

勇者「どうか安らかに眠って下さい…それと私は諦めない、もうこんな事させないから…」

僧侶「…………」

強くなった…気高くなった。

変わって行くんだな、僧侶もオレも……

隣に立つ者として、彼女の守護者としてオレも進んで行かなければ。


勇者「じゃあ、行きます…また、必ず来ますから……」

パァァァッ…  ブワッ!!

僧侶「勇者、見てみろ」

勇者「えっ?」クルッ

勇者「……!? 花が…咲いてる」

僧侶「綺麗だな」ニコッ

勇者「うんっ、そうだね」ニコリ

僧侶「……都に、戻ろう……」

勇者「そうだね……」

ー勇者様っ!! 負けないでねっ!!ー

勇者「うんっ」ザッ


224: ◆jPpg5.obl6 2012/12/10(月) 14:49:35.02 ID:Uzj27prS0
ー弐の国の王ー

26歳 男

金髪碧眼、とても綺麗な顔立ちで女商人には女顔と言われる。

身長178 痩せ型。

甘い物好き、トマトが大嫌い。

虫全般苦手。

ーーーーー

母は産まれてすぐに亡くし、父である王も早くに死去したため若くして王に。

故に一部から反発もあったが、王としての資質は十分ある。

砕けた性格で、民からはとても好かれている。

女商人とは幼い頃からの付きあいで、父同士が仲が良く、女傑商会の前身である女商人の父の商会には先代の王が出資した。

女商人は彼にとって王として接する事のない数少ない存在。

ーーーーー

ー女商人ー

27歳 女性 綺麗と言うより格好いい顔立ち。

赤髪ロングに黒い瞳。

身長174 誰もが羨むスタイル。

辛いものが好き、甘いのは嫌い。

カエルが苦手。

ーーーーー

言動は兎も角、凄まじい商才と行動力がある。

父から受け継いだ商会を女傑商会に改し更に成長させた。

父、母共に健在。

互いに憎まれ口を叩いてはいるが、王の事は信頼している。


234: ◆jPpg5.obl6 2012/12/11(火) 00:40:47.78 ID:eUI0DWCY0
何故こんな目に……俺が魔族だからか? 魔族だから殺されるのか?

人間が魔族の住む此の地に攻め込んできたから数日が経った。

最初は何とか防げたが敵は数が多い、それに統率がとれてる。

個人の力は魔族の方が上だが戦略もクソもない…

そして数多くの魔族が死んだ、父さんも母さんも俺を守って死んだ…

魔族は生きてちゃいけないのか?

殺されるのを待つだけなのか?

嫌だ、俺は生きたい…死にたくない。

戦おう、戦わなければ死ぬ…このままでは皆死んでしまう。


           ー人間共ー


         ー皆…殺してやるー




235: ◆jPpg5.obl6 2012/12/11(火) 00:43:10.75 ID:eUI0DWCY0
ーーーーー

ー野営地ー

「本当に戦うのか? しかもたった二人でか?」

「戦える大人達は皆死んだ、もう俺達しかいない、この村も次攻められれば終わりだ」

「まぁ、そうだな…で? どうするんだよ?」

「今から奴等がいる野営地を襲撃する、何度打てるか分からないが魔力が尽きるまで打ちまくる、お前は奴等の中で魔法を使える人間を殺せ」

「お前の魔力が切れたところなんて見たことねぇよ、全く…魔法の才能がある奴は羨ましいね…オレには剣しか使えないからな」

「いや、お前には補って余りある素早さと力がある…お前は茂みに隠れてろ、俺が魔法を打ち始めたら奴等の背後から攻めろ…頼むぞ」

「おうっ、任せとけ」スッ…

「父と母、そして殺された魔族の痛み…思い知れ人間共」

「闇雷・槍雷」ズッ

ビカッ!! ズドッズギャギャン……

『魔族の襲撃だ!! 魔法の数が多いぞ 敵は複数か!!』

『魔法隊!! 防御壁を張れ!!』

「させるかよ」ニヤッ

ダッ!! ズバババババハッ!!


『うぎゃああ!! なんだ!! なにか居るぞ!!』

『魔法隊がやられた!! マズい!! 退けっ!!』

「逃がさん、焼き尽くしてやる」

「闇魔・這炎」ズッ

ゴッ!! ズズズズズズズッ!!

『炎がっ!! 炎が這ってくるっ!! 』

ゴォォォォッ!!!

ーーーーー

「おうっ、やったな!!」

「ああ、だが一時だけだ」

「これからどうする? 流石に二人じゃキツいぜ?」

「集めよう…共に戦う者を、奴等に怨みを持たない者はいない」

「そうだな…じゃあ、行くか? 仲間探しに?」ニッ

「ああ、行こう」ザッ


236: ◆jPpg5.obl6 2012/12/11(火) 00:45:20.13 ID:eUI0DWCY0
「うっ…うぁぁ」

「大丈夫か? 何があった?」

「おい、どうした?」

「子供が倒れてる…人間共の襲撃から逃れたんだ」

「じゃあ、こいつ以外は」

「もう死んだだろうな」

「お 母さん…お兄…ちゃん」

「治癒・小」パァァァッ

「おい、どうするつもりだ?」

「連れて行く」ガシッ

「そんなガキ足手まといにしかならないぞ? 良いのか?」

「見つけてしまったんだから仕方ない、俺が背負えば問題無いだろ? 人間が出たら頼むぞ」

「ちっ、分かったよ」

「助けてくれてありがとう」

「いや、お前の運が良かっただけだ、後は好きにしろ」

「行く所は無いです、私の住んでた村は無くなりした…父も母も兄も死にました、人間に殺されて」

「お前はどうしたい? 人間と戦うか? 着いてくるか?」

「おっ、おいおい…そんなガキほっとけよ、戦えるわけねぇ」

「行きます、あなた達に着いて行きます」

「あぁもう!! 勝手にしろっ」

「俺達は人間と戦う為に仲間を探してる、生き残りは少ないだろうが俺達だけでは流石に無理がある」

「仲間…戦えば人間を追い出せるんですか?」

「さあな、だが大人達は死に…残っているのは若い奴かお前の様な子供しかいないだろう」

「3日歩いて見つけたのがこんなガキ一人だからなぁ、オレらみたいな奴なんて生きてんのか?」

「それでも探す、そして此処から奴等を追い出す、そしていずれは」

「なんだよ?」

「今は良い、まず仲間探しが先だ」

「へいへい、分かりましたよ」

「そろそろ行くぞ、おい…来るのは良いが死ぬなよ」

「ありがとう…ございます」

「ったく、オレは面倒みねぇからな」

237: ◆jPpg5.obl6 2012/12/11(火) 00:47:02.90 ID:eUI0DWCY0

「なあ、結構仲間集まったな、そろそろやるか?」

「ああ、良い頃合いだろう」

「全く大したもんだ、今や立派な指導者だな」

「魔族に足りないのは統率力、人間と魔族の大人達の戦いが教えてくれた、人間は統率された数の力がある」

「荒くれ揃いの連中をよくまとめ上げたもんだ」

「これで準備は整った、後はあの砦を攻めるのみ」

「奴等は見捨てられたんだろうな、あれから増援もない」

「やっと、此処まで来た…あれを落とせば此処に人間はいなくなる、行くぞ」

「おうっ!!」


『魔族が来ました!! 本国から増援は!? 畜生ッ!! 俺達は見捨てられたんだ!!』

「皆…死んでいった魔族の恨みを晴らせ」


『オオオォオオオォ!!』



「意外に粘るなあいつ等」

「俺が行く、皆を呼び戻せ」

「だから最初からお前がやれば早いって言っただろうが」

「皆も人間を殺したかったろうからな、父、母を失った子供達だ…親兄弟を殺した人間を殺す事で少しでも気持ちが晴れればいいだろう?」

「お前もじゃねぇのかよ?」

「そうかもな、皆引き返したな…行ってくる」ザッ


238: ◆jPpg5.obl6 2012/12/11(火) 00:50:43.05 ID:eUI0DWCY0

『退いたぞ!? いや、魔族が一人向かって来ます!! なにぃ?』

「愚かで醜い人間共!! お前等は全員殺す!!」

『あいつバカか? 一人で砦が落とせる訳が』


「闇炎・獄」ズッ


ドッ!! ゴォォォォ!! ボォォォォッ!!

『ギアァァ!! 火が火がァッ!!』


「痛みを知れ…人間共」



「おうっ、お疲れさんっ!!」

「そうでもない、それより怪我をしている者がいないか見てきてくれ」

「仕方ねぇなあ、後で祝杯を挙げ酔うぜ!!」

「ああ、そうだな」

「終わりましたか?」

「お前か…随分成長したな」

「あなたのお陰です、あの時出逢え無かったら…私はここには居ませんから」
「そうか…だが、まだ人間との戦いは終わりでは無い」

「どういう事ですか?」

「皆を呼べ、それからだ」

ーーーーー

「皆揃ったか?」

「はい、揃いました」

「今度は何すんだ? ここに人間はもういないぜ?」

「それを今から話す」


239: ◆jPpg5.obl6 2012/12/11(火) 00:52:30.74 ID:eUI0DWCY0

「皆ご苦労だった!! 俺達は人間に勝利した!! だが奴等はまたやってくる!!」

「ならば!! ならば此方から攻める!!」


ザワザワザワ……


「奴等人間がいる限り、俺達に平穏はやって来ない!!」


「奴等を…人間を滅ぼすのだ!! 魔族の為、死んでいった者達の為に!!」


『そうだ…奴等がいるから… 人間を滅ぼせ!! 人間を滅ぼせ!!』


「そして俺は、『人間』の恐怖と脅威の象徴として、これより」







「魔王と名乗る!!!!」


『ワァァァァァっ!!!魔王様ァァァァァァ!!!!』


240: ◆jPpg5.obl6 2012/12/11(火) 00:59:16.20 ID:eUI0DWCY0
魔王「我は滅びない、世界から人間を滅ぼし魔族の平穏を手に入れるまで」

魔王「貴様等人間は醜い!! 我は見てきたのだ!! その醜さを」

勇者「魔王…私は『人』を守る為に戦った…お前は『魔族』を守る為に」

魔王「貴様等人間が我々の暮らしを愚かな欲望で壊さなければ、こうはならなかった」

魔王「偽りの正義だ、しかし我々の真実など歴史の闇に葬られる…だが!! 何年何百年掛かろうと必ず蘇り人間を滅ぼす」

「これが我の誓い…だ」サァァァァ

ーーーーー

「魔王様?」

魔王「ん、ああ…少し眠っていた様だ」

「魔王様の寝顔を見れるなんて」

魔王「懐かしい夢を見た…夢の中のお前は、まだ幼かったな」

「私、これでも結構成長したんですよ?」

魔王「そうだな……魔女よ…少し一人にしてくれ」

魔女「……はい、畏まりました」ヒュッ

ーーーーー


魔王「魔族を守る為、か…」



241: ◆jPpg5.obl6 2012/12/11(火) 01:18:44.49 ID:eUI0DWCY0
弐の国ー都ー

ー宿ー

勇者「ねぇ僧侶、そう言えば壱の国の王様から貰った荷物があったよね?」

僧侶「あっ!! そうだった、加治屋に行かないと…」

勇者「んじゃ行こうか? あんまりじっとしてたくないし…」

僧侶「そうだな…んじゃ、行くか!!」ニコリ

勇者「うんっ」ニコッ

ー加治屋ー

職人「おお、話なら聞いてるよ!! 嬢ちゃん、丈夫な武器防具作っから安心してくれ!!」

勇者「お願いしますっ」ニコッ

職人「任せとけ!! 時間は掛かるが、それだけの価値がある物になるからよ!!」ニカッ

僧侶「では、宜しくお願いします、行こうか勇者」

勇者「うん、夕ご飯食べよう?」ニコッ

僧侶「そうだな」ニコ

ーーーーー

勇者「女傑商会かぁ、その女商人さんが調べてくれるの?」

僧侶「ああ、2・3日待ってくれと言われたよ…良い機会だし休める時に休んでおこう」

僧侶「それに弐の王には改めてお礼を言わないと」

勇者「うん?」キョトン

僧侶「勇者を助ける時、王にも協力して貰ったんだ…それに混乱の最中に城から逃げる手伝いと宿の手配までしてくれたんだ」

僧侶「後…村人達の埋葬と墓を建ててくれると約束してくれた」

勇者「そう…だったんだ…」

僧侶「でも、もう夜だし明日行こう」

勇者「うん……そうだね」

勇者「ねぇ、僧侶?」

僧侶「どうした?」

勇者「私を助けてくれてありがとう」ギュッ

僧侶「本当に、本当に無事で良かった…」ギュウッ

勇者「私は大丈夫…だから僧侶、一緒に歩んで行こう?」

僧侶「ああ…」

247: ◆jPpg5.obl6 2012/12/12(水) 22:30:29.08 ID:7N02LwcC0

ー王城ー

王「よく来たな勇者」

勇者「初めまして王様、村の事…ありがとうございます」

王「礼はいい、お前には辛い思いをさせた、大臣の異変には気付いていたが…魔族絡みだとは思わなかった」

勇者「いえ、いずれは知るべき痛みだったんだと…思いましたから」

王「そうか…勇者、人は弱い…確かに心の醜い者達もいるだろう、それは魔王を倒しても無くなりはしない」

王「だが、当然救われる者達もいる…我が国の民、そして全ての者達に希望を与えてくれ」

勇者「はいっ!!」

王「偉ぶった事は言ったものの格好が付かないな、急がせてはいるんだが城が穴だらけだ…」

僧侶「すいません…」

王「ははっ、あの時のお前の必死さは凄まじかったな…王に陽動を頼むなど並みの奴なら出来んぞ?」

王「まあ、オレも城へ行くと言った以上覚悟はしていたが一部ではあるが城を爆破するとはな」

勇者「王様にそんな事頼んだの!? 爆破!?」

僧侶「いやっ、あの時はっ」

王「はははっ!! いいさ、そうそう出来る体験では無いしな、僧侶…お前には感謝している」


248: ◆jPpg5.obl6 2012/12/12(水) 22:31:49.47 ID:7N02LwcC0

僧侶「いえ、そんな…」

王「ところで女商人は何と?」

僧侶「2・3日には、と言っていました、それに鍛冶屋に武器防具を頼んでいるので暫くは都にいます」

王「そうか、暇なら女商人の所に行ってやれ、ああ見えて寂しがり屋だからな」

僧侶「……はい」

勇者「王様とはどんな?」

王「只の腐れ縁さ、父同士仲が良かったのもあるがな」

王「…まあいい、良い機会だ都もじっくり見てくれ」

勇者「はいっ!! 僧侶、行こう?」

僧侶「では王よ、私達はこれで」ザッ


ーーーーー


ー都ー


勇者「こうやって僧侶と歩くのは初めてだね?」

僧侶「そうだな…旅に出る前から魔物に襲撃されたり大変だったな」

勇者「うん…そうだね」

僧侶「なあ…勇者は王宮に行くまでどんな暮らしをしてたんだ?」

勇者「そう言えば話して無かったね、私の故郷は小さな村で、家は牧場で毎日父さん母さんの手伝いをしてたんだ」

勇者「それで村に熊が下りて来て…隣のお家の子が襲われそうになった時、急に熊に雷が落ちて…」

勇者「それから暫くしたら王宮の兵士が迎えに来たんだ…父さん母さんは泣いてたけど…最後は村の人達全員笑顔で見送ってくれた」ニコ…

僧侶「勇者の故郷か…旅が終わったら行ってみたいな、きっと良いところなんだろう」

勇者「うん、皆いい人だよ…神父さんは泣きながら御守りくれたし」

僧侶「ははっ、温かい人達だな」

勇者「ふふっ、僧侶が来たら家で作った牛乳飲ませてあげるよ、凄く美味しいよ」

僧侶「楽しみにしてるよ」ニコリ

249: ◆jPpg5.obl6 2012/12/12(水) 22:34:31.64 ID:7N02LwcC0
ー女傑商会ー

女商人「ほぉ、お前が勇者か…ちっこいなぁ」ワシワシ

勇者「うわっ、僧侶っ女商人さんって」

僧侶「そんな感じの人だ…多分、誰に対しても」

女商人「ところで何で来たんだ?」

勇者「女商人さんは寂しがり屋だからって、王様が」

女商人「あの野郎…今度張り倒す、あっ…そうだ鍛冶屋の爺さんが僧侶に話があるってよ」

僧侶「オレに? 頼んだのは勇者の武器防具なはずなのに」

女商人「訳は詳しく聞いてないから何とも言えねぇけど、日が落ちる前に行ってやれよ?」

僧侶「じゃあ、すぐ行ってこよう…勇者は女商人と居てくれ」

勇者「分かった」

女商人「勇者、ヒマだし私が都案内してやるよ、美味い店知ってるからさ」ニカッ

勇者「ありがとうございます!!」

僧侶「じゃあ、頼むよ」

女商人「おうっ!! 爺さんによろしくな」

勇者「行ってらっしゃい、僧侶」

僧侶「ああ、じゃあ後でな」


ーーーーー

ー鍛冶屋ー

職人「おぉ、来たか」

僧侶「私に何か? 頼んだのは勇者の物ですが…」

職人「あんたの身に付けてる篭手を見せて欲しい、見たときビビっときてな」

僧侶「………」スッ

ジャキンッ!!


職人「おぉ!! やはりか!!」

僧侶「私の先祖が使っていた物です、知っているのですか!?」

職人「いや、儂も鍛冶屋は長い事やっててな…そういった、暗殺武器の様な物も考えてはいたんだ」

僧侶「………」

職人「その発想の中にそれと同じ物があってな…」ゴソゴソ

職人「これがそうだ」ガチャ

僧侶「かなり…いや、酷似している」

職人「今日呼んだのはあんたに渡そうと思ったからだ」

僧侶「……何故ですか?」

職人「こういった物は持つべきで無い奴に渡ると無闇やたらに人を殺しかねない、だが…あんたならば、と思った」

職人「武器は人を傷付ける物、命を終わらせる物…正しかろうが何だろうが、武器を使えば人は死ぬ」

僧侶「では、なぜ?」

職人「……儂はずっと考えていた、武器を客に渡した時ありがとうと言われると、上手くは言えないが人殺しの道具を造り続ける事が………」

僧侶「職人さん……」
250: ◆jPpg5.obl6 2012/12/12(水) 22:36:48.69 ID:7N02LwcC0

職人「とにかくこれは、あんたにやる…何かの縁だろうからな」

職人「刃は儂が持つ中で最高の鉱石を使っている…篭手もそこらの剣なら容易く防げる強度だ、安心してくれ」

職人「長い間仕舞い込んでいたが手入れは済んでいる、受け取れ…あんたには役立つだろう」

僧侶「……何故、そう思うんです?」

職人「只の感だよ…そして守るべき者の為に武器を振るう男だと思った…」

僧侶「………」スッ

スチャ… ヒュッ ジャキッジャキン!!


職人「やはりあんたが持つべきだ、違和感が無い…ソイツも喜ぶだろう」

僧侶「有り難く使わせて貰います…守る為、守るべき者の為に」

職人「……」ニコ

職人「あっ!! そうだそうだ!! 後、嬢ちゃんのも出来てるぞ、ドラゴンの牙なんぞ滅多にお目に掛かれないから熱が入ってしまってな!!」

職人「牙からは剣、爪からは短剣、短剣には破魔の力を付加してある、鱗からは鎧と盾だ…」

職人「鎧・盾共に薄く軽いが強度は保証する、嬢ちゃんには丁度良い筈だ…色が派手なんで気になるなら服の下に着ると良い…それと牙は手間が掛かったが…今や白銀の剣の様だろう?」

僧侶「ありがとうございます!! こんなに早く仕上げて頂いて」

職人「いやいや!! こんなに気持ち良く武器を作ったのは久々だ、ありがとよ!! 嬢ちゃんによろしくな!!」

僧侶「はい!! では」ガチャ

パタン

職人「若いな…ふふっ、あっ!! 金貰うの忘れてた!! まあ…いいか」ニカッ

ーーーーー

勇者「美味しかったぁ、ありがとうございます!!」

女商人「ははっ、良かった良かった!!」

女商人「ところで勇者? その…あのな?」

勇者「どうしたんですか?」

女商人「私はこういうの慣れて無いから、上手く言えないけどよ…前向いて生きろよ、お前が笑ってりゃ村の奴らも笑ってくれる」

勇者「優しいんですね」ニコッ

女商人「あぁ、痒いっ!! 恥ずかしくなってきた!! 慣れない事はするもんじゃねぇな」ガリガリ

勇者「ふふっ」

女商人「ふっ、じゃあ飯も食ったし戻るか、お前も宿に戻れ僧侶の奴もそろそろ終わったろ」

勇者「そうですね、今日はありがとう」

女商人「あぁ忘れてた、敬語は止めろ…後、女商人でいいから」

勇者「じゃあ、ありがとう女商人!! またねっ!!」

女商人「おうっ!! 賢者の事が分かったら呼ぶから」

勇者「分かった」ニコッ

タタタッ…

女商人「あんな小せぇのが勇者だもんな…私も頑張らねぇとな」グッ

251: ◆jPpg5.obl6 2012/12/12(水) 22:39:38.60 ID:7N02LwcC0
ー宿ー

僧侶「お帰り勇者、楽しかったか?」

勇者「ただいま、凄く楽しかったよ!! ご飯美味しかったなぁ」

僧侶「へぇ、今度オレも行ってみたいな」

勇者「じゃあ、明日一緒に行こう」ニコッ

僧侶「ああ、それと勇者、職人さんからこれを」トサッ

勇者「わぁっ!! もう出来たんだ? あれ? 僧侶、その篭手は?」

僧侶「ああ、職人さんが昔作った物らしい…店頭に出さず仕舞い込んでたらしいけどオレにくれたんだ」

勇者「そっか、私のは…鎧・盾と剣」スッ

スラッ キラリ…

勇者「凄い綺麗な剣だね、鎧は…ちょっと派手だけど」

僧侶「薄いから服の下に着れるって」

勇者「うん、そうします」ウン…

僧侶「あっ!!」

勇者「わっ!? どうしたの!?」

僧侶「お金払うの忘れた」

勇者「……明日、払いに行かなきゃね? 僧侶」ゴッ

僧侶「…ごめん」


ー翌日ー

勇者「ダメだよ、お金はちゃんと払わないと」

僧侶「ごめん…でも三万ゴルとは、思ったよりかなり安かったな」

勇者「まけてくれたんだよ、きっと」

僧侶「だよな、助かったよ…じゃあ、昨日勇者が行った店にでも」

女商人「よっ!! 待たせたな!!」

僧侶「女商人…分かったのか!?」

女商人「ああ、さっき情報が入った…来てくれ」

252: ◆jPpg5.obl6 2012/12/12(水) 22:46:38.67 ID:7N02LwcC0
ー女傑商会ー


僧侶「場所は?」

女商人「伍の国、現地では神の山と呼ばれている」

勇者「神の山… 」

女商人「だが…条件があってな」

僧侶「なんだ?」

女商人「賢者は勇者一人で来て欲しいと言っているんだ」

勇者「……分かった、私は大丈夫だよ」

僧侶「………」

離れるのは危険だが伍の国はエルフの女王が統治している、閉鎖的だが平和だと聞くし…まず安全だろう。


僧侶「ならオレは此処で待つよ」

女商人「僧侶、そうも行かないんだ…」

勇者「どういう事?」

女商人「本格的に魔族が動き出した、士の国が侵攻されているとアイツから連絡が来たんだ」

勇者「なら私も…」

女商人「ダメだ…賢者は明日に伍の国に入らなければ協力しないと言っていた」

勇者「そんなっ!!」

僧侶「まるで事態を把握して言っている感じだな…だが、そう言っているなら仕方ない、士の国にはオレが行く」

勇者「ダメだよ!! 私も行く!!」

僧侶「勇者っ!!」

勇者「っ!!」ビクッ

僧侶「魔族に動きがある以上放っては置けない…それに、いつ魔王自身が魔物・魔族を率いて侵攻してくるかわからない…」


僧侶「オレが士の国へいる間、勇者は賢者から魔王の情報と『鍵』の在処を聞いて欲しい、そして世界の向こう側について……今は行く術すら分からない」

勇者「そう…だよね…」

僧侶「暫く離れる事になるが、事が終わったら此処に戻る…勇者もそうしてくれ」

勇者「……………」

女商人「出発は明日!! 私はこれから準備に取り掛かる、今日は休んでくれ!!」
254: ◆jPpg5.obl6 2012/12/12(水) 22:48:32.11 ID:7N02LwcC0
ー宿ー

勇者「………」

僧侶「勇者…賢者にも何か考えがあるんだろう」

勇者「でも!! 魔族や魔物に襲われてる人達を見捨てるなんて嫌だよ!! 私、勇者なのに…」グスッ

勇者「それに、僧侶一人だけで行くなんて……嫌だよ」ポロポロ

僧侶「なあ勇者?」

勇者「うぅ……なに?」

僧侶「オレは君が『勇者』ならそれでいい、誰も君を責めはしない…士の国はオレに任せろ」

勇者「…っ!! 分かった」グシグシ

僧侶「もう遅い、明日に備えて寝よう」

勇者「うん…ねぇ、僧侶? 一緒に寝て良い?」

僧侶「……ああ、いいよ」

勇者「ありがとう」ゴソゴソ

勇者「暖かい……気を付けてね、僧侶…絶対帰って来てね」ギュッ

僧侶「必ず帰ってくる、オレは君の守り手だから」ナデ

勇者「うんっ…うん」ポロ


255: ◆jPpg5.obl6 2012/12/12(水) 22:57:10.99 ID:7N02LwcC0
ー女傑商会ー

女商人「よしっ、来たな!!」

女商人「まず各自の移動手段を話す、船は港に準備してある、僧侶は私の部下が、勇者は私が連れて行く」

僧侶「分かった、オレはもう行く…女商人、勇者を頼む」

女商人「おうっ!! 任せとけ!! 僧侶、さっさと帰って来いよ!!」

僧侶「……ああ、分かってる」

勇者「僧侶っ!! 行ってらっしゃい!!」ニコリ

僧侶「ああ、行ってくる!!」ニコッ

ガチャ  パタン…

256: ◆jPpg5.obl6 2012/12/12(水) 22:59:40.55 ID:7N02LwcC0
ー港ー

部下「あなたが僧侶さんですね、会長から聞いています…此方へ」

僧侶「分かった」

部下「士の国へはそう遠く無いので、夜には到着します」

僧侶「その方が安全だろうな、宜しく頼む」

部下「はいっ!! では出発します!!」


ーーーーー

ー女傑商会ー

勇者「よし!! 私は私の出来る事をやらないと!!」

女商人「なぁ? お前ってさ」

勇者「ん? なに、女商人?」

女商人「えっとだな…その、お前は僧侶に惚れてんのか?」

勇者「うん」

女商人「……っ!? 随分あっさり認めるなぁ、びっくりした…でも、いい男だな…あいつ」

勇者「へへっ」

女商人「ふふっ、全く……んじゃっ!! 私らも行くかっ!!」

258: ◆jPpg5.obl6 2012/12/12(水) 23:43:32.18 ID:7N02LwcC0
船ー甲板ー

部下「僧侶さん、そのローブは? まさか…死に装束?」

僧侶「いや、これはオレの先祖が着ていた物だ、戦地に行く事になった時コレが一番合っているかと思って」

部下「なる程、もう少しで着きますので」

僧侶「分かった…」

部下「僧侶さん?」

僧侶「はい?」

部下「弐の国の大臣の話し、聞きました…僧侶さんの事も」

僧侶「そうか…」

部下「凄く怖くて寡黙な人かと思ってました、それにとてもお強いんでしょう……けど柔らかくて優しい方ですね」

僧侶「そうかな? 多分、変わったんだと思う…ほんの少しだけど……」

部下「大事な人がいるんですね」ニコ

僧侶「ああ、その人の為なら…」ズズ…

部下「どうしました?」

僧侶「いや、何でもないよ…」


ーーーーー


部下「僧侶さん、着きました…」

僧侶「分かった、此処からは小船で行く…」

部下「お気を付けて、ご武運を…」

僧侶「ああ、帰ったら女商人に宜しくな」

ギコッギコッ……

ーーーーー

ー士の国ー

僧侶「着いたな、もうすっかり夜か…向こうに村が見える、行こう…」ザッ

259: ◆jPpg5.obl6 2012/12/13(木) 00:02:42.95 ID:tUZqWT8q0
ー村ー

僧侶「酷い…皆、死んでいる」ピクッ

僧侶「誰だ?」チャキッ


「待て…オレは人間だ」

僧侶「何故此処にいる? 名は?」

「助けに来たんだ…遅かったけど、名は剣士だ…あんたは?」

僧侶「オレは僧侶だ、魔族を止めに来た」

剣士「僧侶? もしかして守り手か?」

僧侶「何故知っている?」

剣士「この前爺ちゃんに聞いたんだ、名前もそうけど、風貌と気配が聞かされた物と似てるからそうかなと思った」

僧侶「師範さんの孫…どうして士の国に?」

剣士「単純に武者修行…のつもりだったんだけどな、何時の間にか魔物が」

『グルル ゲギャギャ グヴァ』

剣士「こんな風に湧いて来て…」

剣士「剣技・雷一閃」ギン


ギャン!! ズッバァァァ!!

『ギィィアアア……』シュゥゥ…


剣士「…僧侶、オレも連れて行ってくれないか?」

僧侶「………」

剣士「これ以上こんな光景を見るのは嫌なんだ」

僧侶「分かった…行こう」

剣士「ありがとう…… 村の皆、遅れてごめん…」ギリッ

僧侶「…っ!!」

剣士「よしっ!! この先にまだ無事な町があるから、そこへ行こう」

気丈な子だ…年も勇者と変わらない。

僧侶「分かった」ザッ

何故士の国が狙われたか分からない…少しでも情報が欲しい。

それに、オレもこれ以上魔族の好きにはさせたくはない…

261: ◆jPpg5.obl6 2012/12/13(木) 01:03:49.41 ID:tUZqWT8q0
ー町ー

町長「村は…どうじゃった?」

剣士「ダメだったよ…」

老人「そうか…都も心配じゃな…ところで其方の方は?」

剣士「この人は僧侶、この国を助けに来てくれたんだ」

町長「そうでしたか…この町は比較的安全です、剣士も僧侶さんもお疲れでしょう、宿で休んで下さい…」

僧侶「ありがとうございます」


宿ー深夜ー


剣士「すぅ…すぅ」

僧侶「…………」

僧侶「そろそろ行くか…」スッ

町長「都へ行かれるので?」

僧侶「…!? 町長さん…えぇ、もう発ちます…剣士には町を守ってくれと伝えて下さい」

町長「置いて行かれるのですか?」

僧侶「はい、剣士…いや、彼女は強いですが脆い、私と共に行った後この町が滅ぶ様な事があれば…彼女は耐えられないでしょう」

町長「…そうですか、剣士には伝えておきます……僧侶さん、家の馬をお使い下さい」

僧侶「ありがとうございます…では」ザッ





町長「彼に神の御加護を…」ギュッ


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