エルシィ「私の神にーさまがコミュニケーション不全なわけない」【前編】

1: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/22(月) 22:29:25.15 ID:ZhfNyb60
桂馬「だからお前は何度いったらわかるんだ!!」

桂馬「ブランド別にわけてあるゲームを勝手に整理するんじゃない!!」

エルシィ「う~、う~」

麻里「……」

エルシィ「あ、にーさまお夕飯は」

桂馬「いらないよっ」

バタン


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2: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/22(月) 22:42:11.71 ID:ZhfNyb60
エルシィ「また、にーさまをおこらせてしまいましたぁ」

麻里「エルちゃん、ちょっと」

エルシィ「はい、なんでしょうお母様」

麻里「いまさらなんだけど、あの子学校で、どう?」

エルシィ「……どう、といわれましても」

麻里「桂馬、エルちゃんのおかげで変わってきたけど」

麻里「ホラ、半ヒキコモリみたいなものだし」

麻里「あの子、トモダチも家に連れて来たことないし」

麻里「近頃どうにも心配で心配で夜も眠れないのよ~」

エルシィ「あ、あのっあのっ、にーさま大丈夫ですよ!!」

エルシィ「まいにち元気でやってます!(主にゲームを)」
3: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/22(月) 22:58:06.85 ID:ZhfNyb60
麻里「なら、いいんだけど。ねぇエルちゃん、これからも桂馬のことよろしく頼むわね」

エルシィ「ははは……」

 こうして私はお母様に神様のことを頼まれてしまいました。まぁ、頼まれたからってなにができるわけでもないんですが。

 正直に私の心情を吐露すると、神様の性格を改変するのはたぶん不可能です。

 だって神様は、神様ですから。(←ヒドイ)

 どうやらお母様はテレビのニート特集を見て神様のしょうらいに益々不安を募らせちゃったみたいです。

 テレビの見すぎもよくないものですね。

 今後は私もひかえます。

 それから、今日以降いつも以上に神様の行動を注意深く観察することにしました。

 あと、私はいろいろと忘れやすいので細かなこともメモに残し、データをしゅうしゅうすることにしました。

 あれ、なにかにーさまの攻略みたいですね、これ。

 さて明日に備えて今日は休みますね。おやすみなさい。
4: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/22(月) 23:10:34.23 ID:ZhfNyb60
エルシィ「おはよーございます、にーさま」

麻里「おはよう、桂馬」

桂馬「おはよー」

 神にーさまの朝は早い。

 ……というか、目が真っ赤に充血しまくってます。また徹夜ですか。

桂馬「ふはははっ!!」

エルシィ「ひいっ!?」ビクゥッ

桂馬「おっといかん、謙信ちゃんとしぃちゃんの掛け合いを思い出してしまった。久々のヒットだったな、あれは」

 とりあえずいつもどおり気持ち悪いです。

 もちろんにーさまの話題は、ゲームの話なので、私もお母様もその内容をうかがい知ることはできないのですが。

麻里「桂馬、学校行くなら朝飯キチンと食べてきな。アタマまわらないよ」

桂馬「すばらしいな。しかし、なぜ輝元ちゃん。元就ちゃんではなぜいけなかったのか」

 どうやらにーさまの頭の軸は、朝からフルMAXで回転しているみたいです。回ってはいけない方向に。

エルシィ「うー、にーさま。口あけてください。あーん」

桂馬「あーん」

 機械的に切り分けたベーコンエッグを口の中に運びます。

 さながら私はアシカの飼育員です。
5: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/22(月) 23:24:01.24 ID:ZhfNyb60
登校フェイズ

桂馬「……」

 ぴっぴこぴー(電子音)

エルシィ「うー、ぽかぽかして気持ちいい日和ですね」

桂馬「……」

ぴっぴこぴー

エルシィ「あ、そーいえば今日の英訳当たるじゅんばんだったんだ。だいじょぶかなー」

桂馬「……」

ぴっぴこぴー

 にーさまといつものように楽しくおしゃべりをしながら登校します。

 この時ばかりは、日々の激しい駆け魂狩りを忘れ、心健やかに過ごすことが出来る癒しタイムなのです

エルシィ「えっ、やだ。にーさま、宿題はちゃんとあのあと、済ませておきましたよー。同じミスは二度も繰り返しませんっ」

桂馬「……」

ぴっぴこぴー

 ――もちろん楽しく登校しつつも駆け魂の気配を探ることも忘れません。

 私は常に努力を怠らないのですから。
9: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/23(火) 13:03:16.55 ID:O0hjGZY0
エルシィ「おはよーございまーす」

クラスメイト「おはよー」

クラスメイト2「エリーおはよー」

桂馬「……」

チャラチャラ~チャ~

 にーさまは無関心の極みですね。

 これではいけません。挨拶は基本的なコミニュケーションですよ。

10: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/23(火) 13:04:38.10 ID:O0hjGZY0
エルシィ「にーさま、朝の挨拶を」

桂馬「ん。そうか、そういえばまだだったな。おはようよっきゅん」

桂馬「よっきゅんかわいいよよっきゅん。ちゅっちゅっ」

 サイアク。

 にーさまがゲーム機にキスした瞬間、周囲の子たちが一斉に机を引き離しました。

女子1「うわ、マジでオタメガそれはないわ」

女子2「二次コンきわまれりwww」

 チャラチャラ~チャ~

エルシィ「にーさま~」

桂馬「しっ、静かに!」

 突如として起立すると、両手を前方に突き出し静止します。

 にーさま、もう完全に別次元に行ってしまわれたのですね……。

二階堂「……」

 ああ、先生の目が冷たいです。

二階堂「で、桂木くん。私はいつ朝のHRに入れるのかね」

桂馬「静かにしろといっている!! ――いま、イベント降りてくる」

 ピコーン!

桂馬「よし、回収。あ、どうぞ続けて」

二階堂「……とりあえず桂木兄妹は次の時間廊下な」

エルシィ「にーさまー」

 ザワザワ。

歩美「……あほ」
11: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/23(火) 18:20:22.54 ID:yfGP8E.o
神にーさまは顔良し頭良しでスペックだけなら最高レベルなんだけどな
12: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/23(火) 18:20:40.36 ID:O0hjGZY0
1時限目 国語 『廊下』

桂馬「……」

エルシィ「う~、にーさまのせいで廊下に立たされちゃいました~」

桂馬「ボクは静かにゲームができるので一向に構わん」

エルシィ「かまいますよ~恥ずかしいです~」

 ガラリ

二階堂「こら桂木。ちゃんとバケツ持て」

桂馬「おい、いまどき罰則が両手に水の入ったバケツもって副立哨なんてありえるのか」

二階堂「ふむ」

二階堂「私も始めてやらせたが意外と楽しい」

桂馬「教室に入れないのは問題じゃないのか」

 にーさま。よっぽどバケツ持つのがいやなんですね。

二階堂「お前を教室に入れておくほうが問題なんだよ」
13: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/23(火) 18:22:38.64 ID:O0hjGZY0
 ピシャリ

 先生は無情にも教室に戻っていきます。

桂馬「……アイツ、教師として問題ありすぎるな」

 にーさまにだけはいわれたくないと思われます。

桂馬「おい、エルシィ。ボクの分のバケツも持て」

エルシィ「ひとりで四つは無理ですよ」

 それにしてもたっぷりと水を汲んだバケツを60分間持ち続けるなんて。

 これを考えた人はマゾですね。

エルシィ「も、むりー」

桂馬「ボクの手はバケツを持つように出来ていないんだ。PFPを持つために出来てるんだ」

楠「……なにやってるんだ、お前は」
14: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/23(火) 18:24:11.63 ID:O0hjGZY0
どこかで聞いた声に顔を上げると、そこにはあきれた顔をした楠さんがにーさまを見つめていました。


桂馬「主将。サボリですか」

楠「私は教室移動だ。お前といっしょにするな!」

桂馬「冗談ですよ」

 かつてのにーさまの攻略対象だった、春日楠さん。檜さんの件以来で、こうして顔を合わせるのは久しぶりです。

 だからでしょうーか、彼女はにーさまとの距離感をはかりかねているのか、どこかもじもじしています。

 にーさまはいつもどおり不動の姿勢ですが。
15: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/23(火) 18:25:28.64 ID:O0hjGZY0
楠「それにしてもいまどき廊下に立たされるとは。お前は自分のクラスでも問題児のようだな」

桂馬「問題などなにもありません」

チャラチャラ~チャ~

楠「ひととはなしをする時は、ちゃんと目線をあわせろ!!」

桂馬「おうっ」

 楠さんがにーさまの耳をつかんでひっぱります。たまらずにーさまもゲーム機をしまうと、視線を彼女に向けました。が。

楠「……」

桂馬「……」
16: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/23(火) 18:26:25.99 ID:O0hjGZY0
 えーと、なんで無言で見つめ合ってるのでしょうか。

楠「//////」

桂馬「で?」


楠「ひ、ひとの顔をじろじろと見るなーっ!!」
桂馬「なんでだっ」

 なぜか正拳突きが見事に決まりました。このひとは何がしたいんでしょうか。

楠「とにかく。日ごろの生活態度の悪さは途中で見放してしまった私にも問題があるみたいだな。うむ」

楠「……桂木、放課後道場に来い。お前の歪んだ根性を一から叩きなおしてやる」

 楠さんはいいたいことだけいって去っていきました。
17: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/23(火) 18:27:52.89 ID:O0hjGZY0
桂馬「なぜだ。楠の話はエンドを迎えているはずなのに」

桂馬「どうなっているんだ、エルシィ!!」

エルシィ「そんなこといわれてもー」

桂馬「これだから、リアルはクソゲーなんだよ。幕は降りたんだ。これ以上物語を続ける必要もないだろう」

エルシィ「楠さんは檜さんがらみで他の方より多く会う機会がありましたから」

桂馬「あいつ、エンカウント率高すぎだぞ。記憶、ちゃんと消せてるんだろうな」

エルシィ「うー、自信ないです」
18: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/23(火) 18:39:53.48 ID:O0hjGZY0
桂馬「このバグ魔が」

エルシィ「バグ魔じゃないです~」

二階堂「で、お前は上級生と放課後デートの約束か」

桂馬「げ」

二階堂「余裕だな、桂木くん」

桂馬「……」

二階堂「授業妨害の上にナンパか。よっぽどお前は私が嫌いなようだが」

エルシィ「あわわわ~」

二階堂「お前のイジメ、もとい罰は明日以降発表してやる。楽しみにしているんだな」

 ガラッピシャッ

桂馬「……はやく教えろよ」

エルシィ「自分だって気づかなかったくせに~」

二階堂「というわけだ。楽しい授業に戻る」

歩美「……」

ちひろ「……」

桂馬「あっ、またイベント取りこぼしたっ!」

 ピッピロピ~
19: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/23(火) 18:56:57.38 ID:O0hjGZY0
1時限目休み時間

桂馬「まだ昼休みにもなってない」

桂馬「無意味に長すぎだろ」

桂馬「もう学校は放課後のシーンだけで充分だな」

エルシィ「現実に都合よく時間が進むわけないじゃないですか~」

桂馬「……」

エルシィ「無視しないでください」

桂馬「時間のムダ!」

エルシィ「それにしてもにーさま。放課後、楠さんの道場に行くんですか」

桂馬「行くわけないだろ。暴力の匂いしかせん」

桂馬「それにあいつのストーリーはFDまで終了してる」
20: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/23(火) 18:57:46.40 ID:O0hjGZY0
エルシィ「FD?」

桂馬「あいつの姉の話をこの間やったばかりじゃないか」

桂馬「三度も登場するなんて図々し過ぎるぞ」

桂馬「勝手に出てきて余計な分岐を作るんじゃない」

桂馬「ほとんど曲芸商法だぞ。ボクは買わん」

歩美「ね、ねー桂木」

 私たちが話をしていると、同じクラスの歩美さんとちひろさんが話しかけてきました。

 もっともにーさまに話しかける人はほとんどクラス内でも限られていますが。

ちひろ「この前? もそうーだったけどアンタ春日先輩と知り合いなの?」

ちひろ「オタの桂木と先輩じゃ接点なんか何一つなさそうなんだけど」

桂馬「……」

 あ、にーさま。いまあからさまに嫌そーな顔しましたね。

桂馬「知り合いだよ」
21: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/23(火) 19:10:08.18 ID:O0hjGZY0
歩美「……」

ちひろ「……」

桂馬「……」

エルシィ「……」

歩美「ってそれじゃ話が終わっちゃうでしょーが」

ちひろ「あんたコミ不全? ちょっとは会話のキャッチボール出来ないの?」

エルシィ「え、えーとえーと」

 まずいです。このままではにーさまのクラスにおける社会的地位がっ!(←もともと無い)

桂馬「それは正しくないな」

ちひろ「へ?」

桂馬「出来ない、のではない。必要が無いので行わないだけだ」

歩美「あのね……」
22: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/23(火) 19:11:25.66 ID:O0hjGZY0
チャラチャラ~チャ~

桂馬「口なんて飾りだよ」

桂馬「Y/N」

桂馬「実際リアルに関しての返答はこれだけあれば充分だ」

歩美・ちひろ「「いまのってどういう発音」」

 にーさまの、にーさまの、声がとってもメカニカルです。

桂馬「だいたいボクと彼女がどうこうってどーでもいいだろ」

歩美「ど」

歩美「どーでもよくない!!!」

 どうしたんですか、歩美さん。怖いです。

 彼女は、怒鳴った瞬間我に返ったのか、顔を真っ赤にしてきょときょと視線を彷徨わせ始めました。

桂馬「はぁ」
23: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/23(火) 19:26:29.89 ID:O0hjGZY0
桂馬「――このまえ、ボクとエルシィが不良に襲われていた所を助けてもらったんだ」

歩美「……ホントに?」

桂馬「それ以来、目をかけてもらってる。彼女、面倒見がいいみたいだからな」

ちひろ「そ、それだけ?」

歩美「え?」

ちひろ「え?」

 ふたりは顔を見合わせたまま固まり、それからほとんど同時に目線をそらしました。

ちひろ「そ、そーだよな。あの春日先輩が桂木みたいなメガネオタ相手にするわけないもんなー」


歩美「そ、そーだよね。桂木みたいなメガネを」

桂馬「メガネはどーでもいいだろ」

歩美「だって、先生がデートだとかなんとか」

桂馬「は?」

歩美「う」

歩美「なんでもないよっ。じゃあねっ!!」

 歩美さん。……ちょっとわかりやすすぎますよ。

桂馬「……なんなんだいったい」

桂馬「これだからリアルにはついていけないよ」

エルシィ「にーさま」

 にーさま。にーさまはリアルでも日ごろ否定されているテンプレ主人公を体現しているのですね。

桂馬「さーて、ゲームゲーム」

ガラガラッ

児玉「オラーっ、桂木ぃゲームしまえーッ!!」

桂馬「げーむぅ……」
25: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/23(火) 20:35:13.14 ID:O0hjGZY0
―そして昼休み―

桂馬「ゲーム、ゲーム」

 チャイムと同時に、にーさまは席を立つとどこかに飛び出して行きました。

 こっそりとついていくことにします。

 ゲームに集中しているときは周りを全然見ていないので、たぶん大丈夫です。

 この方向は、屋上ですね。

 ベンチに腰を下ろすにーさまを確認してから、私は茂みに身を隠すと、買い置きのサンドイッチを頬張りながら監視を始めました。

桂馬「ふう。これでようやく誰にも邪魔されずゲームができるよ」

月夜「……」

月夜「……あ、あの」

 なんか見たことある人が、えーと誰でしたっけ?

楠「桂木じゃないか」

 なんか見たことある人をさえぎって楠さんの登場です。

 でも、にーさま、余裕で二人の問いかけに無視。

 さすがです。

桂馬「……」

楠「いま、その、昼食か?」

桂馬「ふひひ」

 あっ、この距離からでもわかります。楠さん、かなりムカッときてます。

楠「無視、す・る・な」

 ぎゅうううっ

桂馬「ぶっ!?」

 にーさまの耳が、……さながら、ダンボみたいに。

桂馬「なんですか、主将。いちいち人の肉体を痛めつけないと会話出来ないのですか」
26: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/23(火) 20:52:54.48 ID:O0hjGZY0
楠「お前がいうな」

桂馬「……」

楠「……」

 あ、でもベンチの隣には座るんだ。ひたすら嫌な空気ですけど。

楠「その、なんだお前に礼をいおうと思ってだな」

桂馬「礼?」

楠「姉上の件でいろいろと世話に、なったような……」

楠「あれ? あれ? 世話になったよな。なぁ?」

桂馬「ボクに聞かないでください」

 あちゃー。確か地獄の電力不足で、記憶の消し方がかなり雑だったから。

 彼女の中で幾分齟齬が生まれているみたいですね。

 ちなみにどのように消しているかは私にもわかりかねます。

楠「不思議だ。でも、ここでお前に姉上のことで相談したことは覚えているのに」

桂馬「……」

楠「なあ、少し話を聞いてくれるか」

桂馬「聞くだけなら」

楠「お前と姉上に関しての記憶。どうも曖昧なんだ」

 それは、たぶん楠さんに関しては二回も記憶を上書きしているから。

 人間の脳、特に記憶の改ざんに関してはかなりの負荷を掛けていると。

 室長に聞いたことがあります。

 記憶をつかさどる大脳新皮質のつくりは堅牢ではない。

 そこに地獄から強圧力の電波を送って書き換えを無理に行っているので、回数を重ねるごとに危険度は増す、と。

楠「無理に思い出そうとすると、頭の奥がひきつるように痛む」
32: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/30(火) 20:09:31.98 ID:fkz.rKI0
楠「思い出せないことが、私にとってはストレスだった」

桂馬「主将」

楠「でも、不思議なんだ」

楠「お前と話していると、痛みがやわらぐ気がする」

楠「なあ、桂木。おまえはなにか、私に隠していることがないか?」

 にーさまは、ゲーム機から目を離すと傍らに置き、両腕を組んで蒼穹を見上げます。

桂馬「で、この話いつまで続けるんですか?」

 えーと。にーさま、それはあんまりです。女の子は繊細なんですよ。

楠「……っ! そんないいかたないだろう」

桂馬「――思い出せないなら別に、無理して思い出す必要もないと思う」

楠「そんな」
33: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/30(火) 20:10:55.31 ID:fkz.rKI0
桂馬「ボクは限られた時間を有効に使いたいだけだ。これ以上あなたの話を聞いてもしかたがありませんね。元々、ボクとあなたは他人なんだし」

楠「他人とか、いうな」

桂馬「他人、じゃないですか」

楠「でもっ、おまえは私の道場のっ」

桂馬「檜さんがアメリカに帰った以上、ボクにはもう無関係な場所だ」

楠「――空手部の時もそうだが、自分からはじめたことを次から次へと投げ出して恥ずかしくないのか!!」

楠「この根性なしがっ」

楠「よわむしっ!」

楠「それでも男かっ。少しはいい返したらどうなんだっ!!」

 一度に怒声をはなったせいか、彼女の両肩が大きく上下しているのが見えます。

 楠さんは、眦を決してにーさまに指を突きつけると、いまにも牙をむきそうな猛獣のように身構えます。

 あわわ、にーさまピンチです。

 たたた、助けなきゃ。

桂馬「それで終わりですか? あなたはもう少し語彙を増やしたほうがいい」

楠「おまえはっ!!」

34: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/30(火) 20:11:53.12 ID:fkz.rKI0
桂馬「ンごっ!?」

 スコーンっとどこからともなく茶筒の長いのみたいなのが飛んできて、にーさまの側頭部を直撃しました。

楠「桂木っ」

 楠さんが慌てて倒れたにーさまを抱き起こします。

 う~、出るタイミングを逸しました。なによりはたから見ていて止めなかったことがにーさまにばれると余計怒られそうな気がして、躊躇し

てしまいます。

 でも。

エルシィ「にーさまっ」

楠「うわっ、とおまえは桂木の妹。おい、それよりそこのやつ。なんのつもりだ」

 あれ、これ。私知ってます。望遠鏡です。私は落ちていた筒を拾い上げると、楠さんの背中に隠れながら、筒の飛んできた方向を向きまし

た。

月夜「騒々しいですね。まったく」

月夜「痴話喧嘩なら、他でやってください」

楠「ち、痴話喧嘩っ、ち、ちがうっ」

エルシィ「にーさま~、だいじょうぶですかぁ~」
35: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/30(火) 20:13:08.30 ID:fkz.rKI0
桂馬「おまえな、見てたんならとめろよ。このスットコダメ悪魔」

エルシィ「すみませ~ん」

楠「騒がせて気分を害したなら謝る。しかし、いやおうなしにこれはないんじゃないか」

エルシィ「そーです。そーです、にーさまからかわいい顔をとったら何も残りません」

楠「そうだ。桂木のかわいい顔がっ」

桂馬「……」

楠「……」

エルシィ「……」

楠「なにをいわせるんだっ!!」

 ドバキッ!!

桂馬「ンごっ!?」

エルシィ「なにもいってませ~ん」

楠「//////ッ!!」

月夜「どちらにしても、その嘘つきとかかわってもいいことはありませんよ」

桂馬「……うそつき?」

月夜「ずっと待っていたのに」

月夜「結局、うつくしいものなんてこの世のどこにもないのですね」
36: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/30(火) 20:14:34.62 ID:fkz.rKI0
桂馬「――おい」

 思い出しました。この小柄な方は九条月夜さんです。私の頭は自分でもどうなっているのしょうか。不安です。

桂馬「ちょっと、待て」

月夜「さわらないでっ!」

月夜「このっ、うらぎりものっ!!」

 激しく傷ついたような声が、屋上に響き渡りました。

 その時、私は月夜さんの目に確かに涙が浮かんでいるのが見えたのは、気のせいなんかじゃないです。
37: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/30(火) 20:15:54.68 ID:fkz.rKI0
桂馬「……」

楠「……」

エルシィ「……」

 彼女の座っていたベンチにぽつぽつと涙のあとが数滴こぼれていました。

 置き忘れたのか、人形がひとつ。

 私たちをじっと責めるように見つめている。そんな気がしました。

ドロドロドロドロドロドロドロ

エルシィ「え、えええーっ!?」

 私の駆け魂センサーが反応しています。これってまさか。

ドロドロドロドロドロドロドロドロ

エルシィ「にーさま、間違いありません。彼女の中に、また駆け魂がっ!!」

桂馬「ウソだろ。同キャラ連回攻略なんて、曲芸商法レベルだ」

桂馬「やっぱりリアルなんて」

桂馬「クソゲーだっ!!」

OP 『God only knows』
http://www.youtube.com/watch?v=JQd0ICIJ1FM

38: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/30(火) 20:17:18.11 ID:fkz.rKI0
楠「おい。どういうことだ、桂木」

桂馬「へ?」

楠「へ、じゃない。姉上といい、いまの女といい。説明してもらうぞ」

桂馬「なあ、エルシィ」

エルシィ「はい、なんでしょう」

桂馬「これと同じシーンは少なくとも50回以上見てるぞ。いずれもバッドエンド直行だ」

エルシィ「あ、あわわ」

桂馬「クイックセーブからロードできないか? できれば今日の朝からが望ましい」
39: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/30(火) 20:18:28.57 ID:fkz.rKI0
エルシィ「むりですぅ」

桂馬「早朝からやり直させろ。そしたら今日は学校を休む」

楠「安心しろ。なんの話か知らんが。明日から私が家まで迎えにいってやるぞ」

桂馬「……エルシィ。時間がない、耳を貸せ」

エルシィ「に、ににににーさま」

桂馬「ボクは月夜を追うっ、そいつはまかせたっ!!」

 ドンッ!

楠「まてーっ、桂木っ!!」

エルシィ「はぅ、ひどいです!」
40: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/30(火) 20:19:31.67 ID:fkz.rKI0
桂馬「ハァハァ、最近こんなのばっかりだ。大体ボクのスペックは飛んだり跳ねたりするのに向いてない」

桂馬「肺が痛い。走りすぎた」

桂馬「さてと」

 ボクは呼吸を整えると、かつての攻略相手、九条月夜のいる2Aの教室の前に立った。

桂馬「そろそろ昼休みも終わる、普通なら授業を受けるため教室に戻っているはずだが」

桂馬「それにしても」

 月夜が大事にしていた人形『ルナ』を指先で弄びながら目の前の扉に手をかけた。

 あれほど大事にしていた人形を忘れてしまうなんて、本当に慌てていたのか。それとも記憶の消去が不完全なのか。

 あるいは、彼女の中にこそ、ディアナが探していた『女神』が存在するのか。

2A女子「九条さん? まだ、教室に戻ってないけど(なにこいつキモッ!!」

桂馬「そうか。ところで、いくつか質問させてもらってもいいか」

2A女子「ええ」

 ボクは極めて的確に用意していた質問をリアル女子問うと、いくらかの情報を得てその場を後にした。

2A女子「きゃー、きゃーっ、オタメガと口きいちゃったーっ」
41: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/30(火) 20:20:30.41 ID:fkz.rKI0
女子B「うっそー、あいつマジやばくね?」

女子C「うっわ、あいつ人形抱きかかえてた、人間捨ててね?」

女子A「マジキモいんですけど」

桂馬「ふん、モブどもか」

 ボクは偶像は認めない主義なんだ。2次元にこそ神は宿る。

桂馬「なにもわかってないやつらだ。これだからリアルは精度が低い」

 授業開始のチャイムが鳴り終えると同時に、月夜が所属している天文部の部室に到着した。

桂馬「誰も居ない。帰ったか?」
42: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/30(火) 20:21:45.18 ID:fkz.rKI0
エルシィ「うー、おいてきぼりなんてひどいです」

桂馬「おまえか。ったくこのポンコツ。楠はまいたのか」

エルシィ「楠さんものすごーく怒ってました。命の危機でしたよー」

桂馬「そんなことはいい」

エルシィ「にーさま、ひどいですよ」

桂馬「ひどいのはお前らのほうだっ、なんなんだあれはっ、また駆け魂にとりつかれてるじゃないかっ。地獄のやつらはキャッチアンドリリー

スしてるのか!」

エルシィ「そんなことするはずないじゃないですかー」

桂馬「エルシィ。いちど駆け魂を出したやつに、もういちど駆け魂が入るってケースは多々あるのか」
43: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/30(火) 20:23:13.32 ID:fkz.rKI0
エルシィ「わかりません。でもありえないことじゃないと思います」

桂馬「一度埋めたはずの、心のスキマがまた広がったのか」

桂馬「ボクが埋めた以外の外因が新たに増えたのか」

エルシィ「あー、それよりも、にーさま午後の授業」

桂馬「授業なんてどうーでもいい。だいたいおまえは悪魔なんだから勉強しなくていいんだっ。本末転倒してるぞ」

エルシィ「……」

エルシィ「おお」
44: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/30(火) 20:24:16.03 ID:fkz.rKI0
桂馬「……」

エルシィ「ひぃいいいっ。無言でほっぺをひっぱらないでくださいーい」

桂馬「なあエルシィ、ボクの推論では月夜の中にディアナがいってた女神がいる可能性が高いと思う」

エルシィ「そうなんですかっ!?ってそれよりもにーさまにいわなければならないことがあるんですっ」

桂馬「なんだ」

エルシィ「ふたつです」

桂馬「ふたつ?」

エルシィ「月夜さんの中に居る駆け魂、反応がふたつありました」

桂馬「なんだよそれ、どうなるんだ」

エルシィ「わかりません。いま室長に連絡しましたが、極めて珍しいケースだそうです」

エルシィ「彼女の中の駆け魂が、いま身体の中でどのような影響を与えているのかもよくわからないそうです」

桂馬「それじゃあ、彼女の中に女神がいるかどうかってのも、記憶のあるなしでは判別できないな」

桂馬「不確定な情報ばかりだが。まずは月夜を探すのが先決だ」

エルシィ「どうするんですか」

桂馬「選択肢総当り戦だっ!!」

エルシィ「またー」

桂馬「つべこべぬかすなっ! ホラ行けっ。少しは役に立てっ」
45: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/30(火) 20:25:03.88 ID:fkz.rKI0
エルシィ「はーい、がんばりますっ!!」

桂馬「……」

桂馬「あいつ、ホントにアホだな」

桂馬「センサー使えば一発なのにな」

桂馬「とりあえず、いくつか確かめたいことがるので、エルシィには席を外してもらおう」
46: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/30(火) 20:26:21.55 ID:fkz.rKI0
移動フェイズ

屋上

桂馬「ゲームならワンクリックだけなのに。リアルめ。どれだけボクを苦しめるつもりだ」

 屋上に着くと案の定、月夜が泣きそうな顔で辺りを見回しているのが見えた。

月夜「ない……」

桂馬「探してるのはこれか?」

月夜「!?」

桂馬「どうした。ホラ」

47: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/30(火) 20:27:04.85 ID:fkz.rKI0
月夜「こないでっ、桂馬。ずっと待ってたのに」

桂馬「待ってた?」

月夜「美しいものいっしょにさがそうって」

月夜「私のために命をかけてくれたっ」

月夜「このベンチで、ひぐっ、いつか、桂馬のほうから声をかけてくれるって、信じてたのに」

月夜「あんな女とっ、ひぐっ。イヤっ、こんなの美しくない」

桂馬「ちょっと待て、楠のことか。おい、おまえの考えてるのとたぶん全然違うぞ」

 月夜の身体の回りに黒い瘴気のようなものが漂いだしているのが見えた。

 まずい。

 かなりまずいぞ、これは。

桂馬「まて、落ち着け」

月夜「こないでほしいのですっ!!」

桂馬「ちょっ、待て暴れるなっ」

月夜「私以外の女と仲良くしてたっ!!」

 ガチョン!

 月夜を止めようともつれあっているちに、ボクの懐からPFPが転がり落ちる。
48: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/30(火) 20:28:05.52 ID:fkz.rKI0
偶然だろうかゲーム機に電源が入り、画面上にいとしのよっきゅん(※ボクの嫁)の画像が映し出された。

月夜「またゲーム。私も、私も」

月夜「この醜い世界で生きているのはもうたくさんなのですっ!!」

 瞬間、黒い瘴気を払うように、PFPから拡散された光が辺りを薙いだ。

桂馬「っ。どこだ、月夜」

 いない。どこにもいない。

 首筋から背骨、骨盤までいいようのない悪寒が電撃的に貫く。脳みその奥が、ちくちくと痛む。

桂馬「月夜ーっ!!」

月夜「――ここです」

桂馬「え」

桂馬「えええええええええええっ!?」

 全身の力が抜け、ボクは腰砕けにその場に座り込んだ。

 ボクの目の前のPFPの画面中央に。

 デフォルメされた『月夜』らしいゲーム女子が、こちらに向けて声を投げかけていた。
59: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/10(金) 00:41:49.55 ID:i6ctJFw0
『放課後:教室』

桂馬「ん~」

桂馬「放課後になってしまった」

エルシィ「にーさま、いったいどこにいってたんですか! 月夜さんも見つかりませんし」

桂馬「しっ」

エルシィ「?」

月夜『桂馬、この方はどなたですか』

エルシィ「にーさま、ゲームしてる場合じゃありませんよ」
60: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/10(金) 00:42:45.13 ID:i6ctJFw0
桂馬「慌てるな。これが月夜だ」

エルシィ「にーさま」

 エルシィの目がドブ川に落ちた野良犬を見るような目つきに変わったのがすぐに理解できた。

 何度もいうようだが、こいつは時々ボクを無意識的に下に見ている部分が、あからさまに外面に出ることがある。不愉快だ。

桂馬「おい、ボクは現実逃避しているわけじゃないぞ」

エルシィ「にーさまぁ」

 エルシィの語尾が濁音で滲んだ。黒々とした瞳があっというまに潤んでいく。

 まったく人の話を聞かないやつだ。ボクは、PFPを机の上に置くと、月夜には聞こえないくらいの小声で耳打ちした。

桂馬「たぶん、駆け魂の影響だ。前回は小人化だったろ。今回は2D化した」

エルシィ「つーでーか」

 一瞬で内容が処理領域を踏破したのか、エルシィの顔から表情が消え去った。

 まるでアホの子のようだ。

 いや、アホなのか……。

月夜『桂馬』

桂馬「月夜」

エルシィ「にーさま、きもちわるいです」

桂馬「うるせ」
61: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/10(金) 00:43:36.49 ID:i6ctJFw0
月夜『まだ、話の途中なのですね』

 画面上でデフォルメ化された彼女が、つんと顔を横向きに反らせる。

 リアルでやられればウザイだけだが、なぜだろう。2次元では全てが許される。

 背景シーンの塗りと、人物のコントラストの差も完璧だ。実に申し分ない。

桂馬「なぁ、エルシィ。月夜、このままでいいかな」

エルシィ「いいわけないでしょう!」

月夜『別に私はかまわないです』

月夜『ここにいれば、私はずっと桂馬といっしょにいられます』
62: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/10(金) 00:44:19.47 ID:i6ctJFw0
月夜『桂馬、ずっといっしょに居てくれますよね』

桂馬「……ああ」

エルシィ「にーさまの二次コンを甘く見すぎていました」

 何が二次コンだ。これぞ完璧な世界の融合だ。究極の一だ。

月夜『桂馬』

桂馬「月夜」

63: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/10(金) 00:44:51.48 ID:i6ctJFw0
エルシィ「にーさま!!」

 エルシィがボクの腕を発狂したチンパンジーのような握力でぐいぐいと引き寄せる。

 しかたなしに、月夜の入ったPFPを机に置いて壁際に移動した。

エルシィ「にーさまはそれでいいかもしれませんが、私は彼女がゲーム機の中で幸せになれるとは思えません」

エルシィ「冷静になってください」

桂馬「ボクはいつだって冷静だ」

 冷静すぎるくらい冷静だ。

エルシィ「ぜんぜん冷静じゃありませんよ」

桂馬「失敬な。おまえにボクの何がわかる」

エルシィ「私のほうが、にーさまよりも、にーさまのこと一番わかってるんですっっっ!!!」

 そんな無茶苦茶な。これだからリアルは。

 真っ赤に顔を引きつらせたエルシィは、両手を水車のようにぶんぶん振り回しつつ、距離を詰めてくる。
64: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/10(金) 00:45:26.92 ID:i6ctJFw0
 本能的な恐怖を感じた。ボクは、理性的に事態を打開しようと、彼女を説得にかかった。

桂馬「おまえの理論は破綻している」

エルシィ「きーっ!!」

桂馬「わー、ばか、やめろ、こら。暴れるな」

 事態が悪化した。現実は非常だ。

歩美「なんだなんだー」
65: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/10(金) 00:46:13.79 ID:i6ctJFw0
ちひろ「どーした、エリー馬鹿兄貴にいじめられたのかー」

 先ほどから教室の隅で、こちらをちらちら気にしていた野次馬どもが、ここぞとばかりに介入してくる。

エルシィ「わーん。ちひろさーん、にーさまがゲームばっかで、私のことかまってくれないんですー」

ちひろ「なにー、桂木。こんなかわいい妹をいじめるなんて、どうしようもないなー」

歩美「妹にはやさしくしてあげなさいよね」

桂馬「だーれが、妹だ。誰が」

 やっかいなのが沸いてきた。

桂馬「このバグ魔が……」
66: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/10(金) 00:46:47.26 ID:i6ctJFw0
これ以上横道に逸れさせるんじゃない。ボクは今、どうやって駆け魂を出すか必死に考えているのに。本当に、役に立たないヤツだ。

エルシィ「ひん、ひん」

歩美「桂木」

ちひろ「クズー、人間のゴミー」

 ダンゴ虫のように丸まったエルシィを抱きかかえるようにして、二人がこちらを睨みつけている。

 クソ、不完全リアル女子がっっ!

 腹の底ではなに考えているかわからないくせに、こんな時ばかり団結したふりしやがって。
67: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/10(金) 00:47:19.08 ID:i6ctJFw0
桂馬「月夜、とりあえずこの場を離れるぞ」

月夜『ここは騒がしいのです。静かな場所に行きましょう』

 ボクがPFPの月夜に向かって話しかけるのを見とがめた歩美は、傷ついたような顔をして眉をひそめた。

歩美「かつらぎぃ」

ちひろ「とうとう脳が……」

 脳が何だというんだ!!

 ボクはバッグを背負うと悠然と、教室を後にした。
68: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/10(金) 00:47:57.03 ID:i6ctJFw0
移動フェイズ『校門前』

月夜『どこに向かっているのですか?』

桂馬「ボクんちだよ」

 三々五々、下駄箱から吐き出されていく人ごみに紛れて歩くと、一日の疲れがどっと圧し掛かってくるような気がして、軽い眩暈を感じた。

月夜『桂馬、だいじょうぶですか? 顔色が悪いのです』

桂馬「問題ないよ、それより」

桂馬「おまえ、今の自分の状態、理解しているのか?」

月夜『――よくわかりません』

桂馬「聞きかたが悪かった。月夜から、ボクはどうみえる?」

月夜『どうって、私は今自分の部屋に居るみたいです』

月夜『でも、どうしてもドアから外に出られないのです』
69: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/10(金) 00:48:32.69 ID:i6ctJFw0
月夜『目の前には、普通に窓があって、そこから桂馬の顔が見えるのです』

桂馬「ボクの顔?」

月夜『桂馬の顔と、周りの風景。見える場所は刻々と変わっていくのです』

月夜『ドキュメンタリ番組を延々と見させられている気分です』

桂馬「ふむ」

月夜『ケージに入れられた、猫か犬といった気分ですね』

桂馬「体調は、どうなんだ」

月夜『その、なんだか胸がモヤモヤして頭がぼーっとします。でも、悪くないです』

月夜『特に、桂馬の顔を見ていると、なんだか胸がいっぱいで……。うまく、言葉で言い表せないです』

桂馬「そうか」
70: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/10(金) 00:49:02.88 ID:i6ctJFw0
月夜『ところで』

月夜『屋上で会った女性のこと聞かせて欲しいです』

桂馬「あ、あれか? あれは、ボクの妹だ」

月夜『そちらではありません。背の高いほうです』

桂馬「ちょっとした顔見知りだ。たぶん、もう会うこともない」

月夜『……その会うこともない方が、しおらしくお待ちになっているのですっ』
71: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/10(金) 00:49:51.80 ID:i6ctJFw0
楠「……」

 月夜の噛み付くような口調に顔を上げると、校門の前には獲物を待ち伏せる猫科の猛獣の目をした女が、

 一片の隙も無く、ボクとの距離を測っていた。

桂馬「主将」

楠「桂木」

 視線が絡み合う。彼女の瞳に慈悲を探したが、皆無だった。

楠「じゃあ、ちょっとお話しようか」

 ボクが知る彼女の中で、もっとも美しい笑顔だった。

桂馬「弁護士をよんでもいいかな?」

楠「むり」

月夜『けいまぁ』
72: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/10(金) 00:50:27.82 ID:i6ctJFw0
桂馬「ごめん、ちょっと隠れてて」

月夜『んぐーっ』

 ボクはPFPをバッグに仕舞い込むと楠から距離をとった。

楠「……」

楠「おしいな、いますぐそのゲーム機を粉々にしてやろうと思ったのに」

 こうしてボクは殺人を未然に防いだ。

桂馬「主将、ホント、今日は混みいってて、時間がないんですよ」

桂馬「だから」

楠「なんだよ」
73: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/10(金) 00:51:13.35 ID:i6ctJFw0
楠「そんなに、私とは話す価値も無いのか?」

 彼女とボクの背は、ほとんど同じだ。直視した瞳に、背後の蒼穹が溶かし込んだように見えた瞬間、不意に歪むのを見た。

 両腕を組んで強気に振舞っているが、心理学的にいえば防御姿勢であり身構えている自分を守る典型的なサインだ。

 表情こそ怒ったように強張らせているが、知らない場所に置き捨てられたような子犬の目ですがられると、ボクの胸の奥が軋むように痛ん

だ。

桂馬「はぁ」

 学内でも評判の楠とこれいじょう校門前で言い争っても衆目を集めるだけでたいした意味は無い。むしろマイナスだろうか。

 くそ、攻略以外ではリアルと接触しないと決めていたのに。

 不合理すぎる。

桂馬「わかりましたよ、別の場所で話しましょう」

 どうせリアル女子と言い争って勝てるはずも無いのだから。
74: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/10(金) 00:51:41.76 ID:i6ctJFw0
移動フェイズ『下校』

楠「♪」

桂馬「……」

 背中に負うたデイパックの中から必殺の気合を感じる。間違いなく月夜のものだ。

楠「ん、んーゴホン。私も、いろいろと忙しい身なのだが。後輩たる桂木の面倒も見なければならないのがツライところだ」

 気合の波動が強まったのを感じた。間違いなく、ボクの寿命は大きく削られている。

楠「そ、その、男子と学外を歩くことはあまり無くてな。なにか、気恥ずかしいな」

 必殺の潮合。極まった。
75: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/10(金) 00:52:39.97 ID:i6ctJFw0
桂馬「主将、そんなにボクのことが嫌いですか」

楠「ん? なんのことだ?」

 こんなイベントいらねーよ。

楠「ところで、どこにむかっている」

桂馬「ボクの家」

楠「っ、おい。まだ、そんな、ちょっと早すぎるぞ。その、私はお前のことまだよく知らないし。いや、そーゆうことではなく、桂木が基本的
には悪いやつではないということは知っているが、その段階を踏んでだな」

桂馬「……」

桂馬「そーいうのもーいーから」

楠「な、なにーっ!!」
76: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/10(金) 00:53:11.33 ID:i6ctJFw0
電柱

歩美「……うそ」

ちひろ「……」(←ちょっとムッとしている)

エルシィ「にーさま、駆け魂はーどーすれば」

ちひろ「ねーエリー。桂木のやつどこに向かってるかわかる?」

エルシィ「はやや。たぶんおうちだと思いますー」

歩美「――なんで」

ちひろ「よし、ふたりは私の後をしっかりついてくるよーに」

エルシィ「わわわー、歩美さん。しっかりしてくださいーい」
80: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 09:19:31.19 ID:rFxUO2AO
神にーさま超COOL
81: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 14:39:42.37 ID:rVUJpjY0
桂馬「なんだろう」

楠「どーしたんだ、いきなり立ち止まって」

桂馬「着々と何かが進行している気がする」

桂馬「つまりはいやな予感だ」

楠「――さっさと進め」

桂馬「いちいち頭を叩かないでください、データが飛ぶ」

 そんなやり取りをしながらしばらく歩いていると、自宅兼喫茶店であるカフェグランパが見えたきた。
82: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 14:41:31.23 ID:rVUJpjY0
 営業時間は9:00~17:00、休みは火曜定休だが、母さんの気分によって急遽しまることがよくある、こじんまりとした店だ。

 20人も入ればいっぱいになってしまうこの店はほとんど趣味としか思われない。

 島の家が壊れた際に、じーちゃんが住んでたここにボクら家族は越してきた。

楠「なんだ、桂木。喫茶店じゃないか、ここは」

桂馬「ここがボクんちなんです。一階は店です」

楠「へぇ~(どきどき)」

楠「ん、んっ。軟弱な(か、かわいいお店だな)」

 ゲーム内では美人の先輩との下校シーンなど垂涎モノのはずだが、リアルに置き換わるとあら不思議。

 気は使うわ、体力は使うわ、ストレスが溜まるわ、SAN値が高まるわでいいとこなどなにもないわ。
83: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 14:42:18.65 ID:rVUJpjY0
桂馬「……にしても、ゲームならワンクリックで移動できるのに、どうして現実はこんなにも不親切な設計なんだ」

楠「またゲームの話か。おまえの頭の中にはゲームしか詰まってないのか」

楠「なんていうか、本気で心配になってきたぞ」

楠「あ、あくまで先輩としてなんだからなっ!」

 リアルツンデレうざいです。
84: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 14:42:51.30 ID:rVUJpjY0
楠「あ」

桂馬「どうしたんですか」

楠「その、お前のご家族の方がやってらっしゃるのだろう。手土産を持ってくるの忘れてしまった」

桂馬「……ここがボクんちなんです。一階は店です」

楠「おい、流すな」

麻里「いらしゃーい、あら桂馬。おかえりなさい」

 丸窓に格子の入ったガラスを嵌め込んであるドアを手前に引くと、母さんがグラスを拭く手を止めてこちらを見た。

桂馬「――ただいま」

楠「こ、こんにちわ」
85: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 14:43:27.24 ID:rVUJpjY0
麻里「こんにちわー」

桂馬「……」

楠「……」

客「……」

客「……(なんだ、このプレッシャーは)」カタカタ

麻里「えー、えーと。桂馬、ちょっとちょっと」

桂馬「なに?」

麻里「お、おめでとう」

桂馬「だからさっきから何の話をしているんだ」

麻里「え? 彼女つれてきたんじゃないの?」

楠「///」
86: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 14:45:16.29 ID:rVUJpjY0
楠「ちがいますっ。あの、お母様、私は3年の春日 楠と申しまして、今日は」

麻里「あらー、ふたりで仲良くいちゃいちゃしにきたんでしょー。
ごめんねー気が利かなくてー。うちの子こんなんだけど仲良くしてあげてねー。かわいいところもあるのよ、ホント」

楠「そ、その確かにかわいいところはありますが……」

麻里「あららー。ごちそうさま」

楠「ちょっ、ちちちがいます。おい、桂木、そのお前のなんとかいってやれ」

麻里「そっかー。楠ちゃんはお姉さんなのね。かわいがってね」

楠「だ、だから」

 果てしなく不毛な会話だ。ここまでテンプレ通りの流れは、もはや様式美に属する。

 ゲームでは。ボクは、不貞腐れながらソファーに腰掛けると、視線で彼女に座るよう促した。
87: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 14:45:52.71 ID:rVUJpjY0
楠「なんというか、すごい母君だな」

桂馬「あまり相手にしないでいいです」

麻里「もー、桂馬ったらてれちゃって。貴方は紅茶でいいかしら」

楠「恐縮です」
88: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 14:46:59.35 ID:rVUJpjY0
桂馬「もー、こっちにくんなよなー」

麻里「はいはい。お邪魔翌様」

 薄笑いを張り付かせながら、母さんはカウンターの奥に引っ込んでいく。

 だから、ここに連れてくるのは気が進まなかったのだが。

楠「紅茶、美味しいな」

桂馬「どーも」

 彼女は、この店に入った瞬間、借りてきた猫のようにおとなしくなってしまった。

 うつむいたまま、小鳥のように小さな口を開け、カップを傾ける。

 母さんを意識しているのか、時々ちらちらと目線を奥に流しているのがわかった。
89: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 14:47:41.70 ID:rVUJpjY0
楠「で、だな。何の話だったか」

桂馬「手短に済ませてください。ボクはこうみえても忙しいんだ」

楠「お前はまったく、ずるいな。このような小洒落た場所で私の気勢を削ぐとは」

楠「いいたいことも、いいにくいじゃないか」

 ウソをつくな。いつもいいたいほうだいじゃないか。

楠「うむ。では本題に入らせてもらうか。主に、お前の普段の生活の改善についてだが――」

 彼女が話し始めようとした瞬間に、店の扉がさえぎるように音を立てて開いた。

麻里「いらっしゃーい。ってあれ、天理ちゃん?」
90: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 14:48:47.96 ID:rVUJpjY0
天理「……」キョロキョロ

天理「……っ!?」

 なんで今日に限って店に来るんだ。

 天理は、ボクの存在に気づくと、一瞬顔を上げたが、隣の楠に気づいた途端、しゅんと肩を落とし俯いた。

 両手にはイエロー系の淡い巾着を持っており、うなだれるようにして袋を結んでいる紐がぶらぶらと左右に揺れた。

天理「桂馬、くん」

天理「あの」

天理「こんにちわ」

桂馬「なにか用か?」
93: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 16:57:52.62 ID:rVUJpjY0
 ボクが声をかけると、水を掛けられた犬のようにびくびく身を震わせる。

 こいつはビクビク系幼馴染だ。

楠「おい、桂木。この子は」

桂馬「鮎川天理」

楠「あのな。それだけじゃわからないだろうが」

桂馬「情報は必要なものを最小限に」

楠「あのな。それだけじゃわからないだろう」

麻里「天理ちゃんは、桂馬の幼馴染なの。隣に住んでるのよ」
94: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 16:58:31.68 ID:rVUJpjY0
桂馬「まったく精度の低い幼馴染だが。何か用なのか。ボクは今、大変立て込んでいる。簡潔に済ませてくれ」

天理「あ、あのね桂馬くん、私」

天理「私……」

桂馬「うん」

天理「あの、ね」

桂馬「続けろ」

天理「……」

桂馬「ツ・ヅ・ケ・ロ!!」

天理「ひ」

楠「おいおい、桂木。女の子相手にそんな高圧的に話すんじゃない。ほら、君もそんな所で立っていないで、ほら、掛けなさい」
95: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 16:59:01.07 ID:rVUJpjY0
天理「は、はい」

 うながされるままに、ソファに掛ける天理。天理ちゃん、マジ空気読めないのな。

天理「桂馬くん、今日ね。調理実習でクッキー焼いたの。その、うまくできたから、よければその、食べて欲しいなって」

桂馬「ボクは甘いモンが嫌いなんだよっ」

天理「うん、知ってる。だから、甘くないよ」
96: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 16:59:38.34 ID:rVUJpjY0
桂馬「ふん」

 包みから出てきたクッキーは、丸い形をしており、アーモンドの香ばしい匂いがしている。

 口の中に入れると、確かに天理のいうように甘くは無かった。むしろ。

桂馬「こりゃ、せんべいだろ」

天理「うん。だから、甘くないよ。桂馬くんの好みに合わせたよ」

桂馬「まあ、悪くないな」

麻里「……まあ我が子ながら、不運なヤツ」

 母さんは、ボクの後ろで合掌すると、そそくさとカウンターの奥に引っ込んでしまった。

 なんなんだ。
97: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 17:01:48.61 ID:rVUJpjY0
楠「……」ピクッピクッ

楠「へえ、桂木。興味があるのはゲームだけかと思いきや、こーんなかわいい彼女が居るなんて」

天理「か、かかかか」

楠「――そーいえば、姉上にもちょっかいだしてたし。私のようなガサツな女に付きまとわれてさぞ迷惑だったろうな、は・は・は」

桂馬「あ、あだだだだっ!!」
98: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 17:02:20.03 ID:rVUJpjY0
は・は・はの笑い声で、リズムに乗って、ボクの太ももに蹴りが入る。

天理「か、彼女じゃありません!!」

楠「は」

楠「はははは、そーなのか。桂木?」

 もー知らん!!

楠「そーか、そうだろうな。わ、私としたことが。すまない、痛かったか、桂木。不意に怒りの神が降りてきてな」
99: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 17:06:02.98 ID:rVUJpjY0
キイイイインッ

ディアナ「そうです、彼女ではありません。天理と桂木さんは、運命で結ばれた婚約者です」

 三者、一様に真顔。

 辺りを見回すと、残っていた最後の客も風を食らって退散したのか、店内はセルフ貸切状態に陥っていた。
100: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 17:06:40.36 ID:rVUJpjY0
楠「こ、こんにゃく?」

ディアナ「こんにゃくではありません。婚約者です」

楠「婚約者ぁあっ!?」

ディアナ「許嫁です。ラブです。愛です」

桂馬「おおおいっ!!」

 ボクは硬直した楠を放置し、ディアナの手を取り、壁際に引き寄せた。

ディアナ「ダメです、桂木さん。あの方が、見ています」ふるふる
101: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 17:07:15.84 ID:rVUJpjY0
桂馬「どーいうつもりなんだよ、お前は!! いきなり出てきて!!」

ディアナ「どういうつもりか、と聞きたいのはこちらのほうです。天理というステディがありながら他の女性にうつつを抜かすとは」

ディアナ「このような暴挙、天が許しても女神が許しません」

ディアナ「天理がここにくるのにどれだけ勇気をふりしぼったか、その脳みそで理解しているのですか」

ディアナ「あの女性にはとっとご退場願って、とっとと私とイチャイ……もとい、天理と愛を育む作業を続行しなさい。勘違いしないでくださいね、これは全部天理のためですので。愛が育たなければ、女神の力も取り戻せないのですよ?」
102: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 17:07:57.45 ID:rVUJpjY0
こいつ、一息で喋りやがって。

楠「ちょっと待った!!」

楠「婚約者だのなんだの、いきなりなんの話なんだ。いきなり出てきて失礼な」

ディアナ「失礼? いうにも事欠いて彼になんて事を」

桂馬「いまのは絶対ボクにじゃないぞ!! わざとやってるだろ!! おまえ!!」

ディアナ「そう、私と桂木さんは、あなた・おまえで呼び合う親密な関係なのです」
103: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 17:08:25.54 ID:rVUJpjY0
楠「……先ほどと、かなり雰囲気が違うな」

ディアナ「と、いうわけで同じ学園の先輩後輩程度の仲よりかは、私たちの方が深い関係なので、お引取り願いませんか」

楠「――どうやら桂木の生活態度改善には、外因的要因の排除も必要なようだ」

 バキッ、バキバキッ!!

 楠は、両拳の間接を鳴らすと、上体をややかがめ、猫科の猛獣が飛び掛る寸前に行う、筋肉のしなりを見せた。
104: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 17:09:26.51 ID:rVUJpjY0
ディアナ「愚かな、たかが人間風情が」

楠「私は桂木のような男でも簡単に見捨てたりはしない」

ディアナ「愛の力を見せ付けてあげましょう」

桂馬「やめろ――やめろ」

 グラップラーどもが、必殺の気合を引っさげ、激突の潮目を見極めるため、じりじりと間合いを詰めていく。

楠「ふっ」
105: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 17:10:33.03 ID:rVUJpjY0
 最初に仕掛けたのは、楠だ。限界まで引き絞られた弓から、矢が放たれるがごとく、右の回し蹴りが、空間を裂いて唸った。

 ディアナは、咄嗟に紙一重の差で後方に飛ぶ。足先の触れた前髪が、数本ちぎれ、宙に舞った。続いて、楠の正拳が弾丸のように打ち出される。ディアナは、左手でパリィすると同時に、右ひざをかがめ楠のわき腹に肘うちを叩き込んだ。

 がくりと、倒れこむかに見えた楠は、そのままの勢いを殺さずヘッドバッティングをディアナの額に見舞った。

 ディアナは額を押さえ、低くうめく。
106: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 17:11:25.31 ID:rVUJpjY0
 楠のローキックが、ピンポイントでディアナの左腿を叩きこまれた。痛みに耐えかね、倒れこんだかに見えたディアナだが、そのまま転がるようにして、地を這うと、両腕をブリッジの要領で床に突き立て、両足をまっすぐ矢のように垂直にし、楠の胸に蹴りを見舞った。

 楠は牽制の蹴りを放った後、壁に手をつき呼吸を荒げる。わずかに彼女の方が分が悪いように見える。

 しかし、なぜこんな展開に。

 神のみぞ知るセカイは軽いラブコメじゃなかったのか。

楠「……八歩蟷螂拳の穿弓腿。素人ではないようだな」

ディアナ「天理の愛の深さをおもい知りなさい」

 もう、やだこの女神。
111: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 20:18:23.11 ID:rVUJpjY0
桂馬「待てよ……」

 もう、こいつらほっておいてここから逃げ出せばいいんじゃないだろうか。

 そう思っていた時期が、ボクにもありました。

 けれど。
112: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 20:19:17.87 ID:rVUJpjY0
エルシィ「神にーさまーただいま戻りましたー」

 悪魔が。

ちひろ「へー、ここがエリーの家かー。中々オシャレな店じゃん」

歩美「わ、私はたまたま部活が休みだから来たんだからねっ。ホント、たまたまだから。別に他意はないんだからねっ」

結「へーここが、桂木くんのおうちかい」

かのん「こ、こんにちわー」

美生「失礼するわ」

 こんな時に真価を発揮するなんて、思いもしませんでした。

エルシィ「にーさま、あの……」

桂馬「……」

エルシィ「あの、なんですか。もしかしてすごく怒ってます」

桂馬「ごめん、エルシィ」
113: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 20:19:58.11 ID:rVUJpjY0
エルシィ「なんですか、急に改まって」

桂馬「ボク、おまえのこと誤解してた」

桂馬「おまえって、本当に悪魔だったんだなーって」

楠「な、なんだなんだ急に。桂木のクラスメイトか」

ディアナ「またお邪魔虫が、ぞろぞろと」

桂馬「こら、ヘッポコ。ちょっとこい」

エルシィ「いたい、いたい、はなしてくださーい」

桂馬「どういうつもりでこの面子を集めてきたんだよ!!」
114: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 20:20:49.88 ID:rVUJpjY0
エルシィ「え? えーと」

エルシィ「特には」

桂馬「お前にロジックを求めたボクが馬鹿だったよ」

エルシィ「まあまあ、いいじゃないですか。みんなにーさまの知り合いですよ。記憶無いけど」

桂馬「全然よかーない」

 ボクが気まずいんだよ。もしかしたら、こいつの頭の中にはボクの存在がインプットされてないのか?

ディアナ「もしかして桂木さん、この方たち」

桂馬「……」

桂馬「そーだよ。ボクが攻略した相手ばかりだ」

ディアナ「――(ムカッ)」
115: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 20:21:35.38 ID:rVUJpjY0
~当人達の談~

ちひろ「いやー、別に寄る気はなかったんだけどさー、エリーがどうしてもっていうんで」

歩美「私はちひろが行くっていうから。特に桂木がどうこうっていうわけじゃ」

結「ボクは、途中でたまたま会ってね。友達の家に遊びに行くのに理由はいらないだろ」

美生「私は、その、今日はバイトも無かったし。結にたまたま行き会わせて」

かのん「その、私今日休みだから。桂木くんの家、喫茶店だっていうし。この前のテストの時のお礼もしてないし」

楠「だから、私が先口だっていっているだろうが」

ディアナ「全て天理の為です」

~証言おわり~
116: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 20:22:12.90 ID:rVUJpjY0
麻里「……」ぎゅ~っ(←自分の頬を抓ってる)

麻里「え、なに、どういうことなのエルちゃん?」

エルシィ「そのー、にーさまはみんなに愛されてるってことで」

桂馬「こら、うまくまとめたつもりか。ヘボ悪魔」
117: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 20:22:46.25 ID:rVUJpjY0
どーして事態を悪化させるのだ。PFPを完全にスリープ状態にしておいてよかった。

 月夜ルートが収束するところだった。

麻里「まー、こんなに桂馬の友達が来てくれたなんて初めてじゃないかしらー。よし、今日はおごっちゃう。みんな好きなもの頼んでねー」

 母さんのはからいに、黄色い歓声が飛ぶ。それぞれ、なんとはなしに紹介をしあっているようだが、ギャルゲで鍛えたボクにわかる。

桂馬「なんという、うわべ感」

 かのんについてはノータッチですか。そうですか。母さんも触れないようだが。

 メガネか? メガネのせいで気づかないのか?

 キャッキャッ、ウフフ
118: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 20:24:52.51 ID:rVUJpjY0
桂馬「よーし」

エルシィ「あ、なにしてるんですかー。皆さんとおしゃべりしましょうよ」

桂馬「馬鹿な、いまこそ千載一遇のチャンス。ゆーっくりとやつらに気づかれないようドアまで移動するんだ」

 ちなみに失敗は、即、死だ。

 戻ってCG回収も不可能。

ハクア「こんちわー!!桂木ーっ、エルシィー! 元気にやってたーっ、て」

 ドアの所までステルス移動していたのに。どうして、こうも、邪魔をするんだ。
 
 事態は、今最悪の時を迎えている。

 残念、桂木桂馬の冒険は終わってしまった!!

ディアナ「現実逃避しないでください」
119: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/11(土) 20:25:31.81 ID:rVUJpjY0
ハクア「あ、アレ、アレアレ!? ね、ねえ桂木、もしかして私お邪魔だった?」

ちひろ(鎌だ……イベント帰り? 桂木の知り合い? オタ友? 女? 美人?)

歩美(でっかい鎌)

かのん(え、なに? 鎌?)

結(コスプレ?)

美生(変なカッコ。鎌?)

楠(……だ、だれなのだ、もう! これ以上増えないでくれ)

ディアナ(新悪魔の方。確かハクアさん)
129: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 19:40:36.41 ID:CnYJRUQ0
エルシィ「どうしたのーハクア、遊びに来たの?」

ハクア「うん、そうなんだけど。いま、大丈夫?」

桂馬「全然大丈夫じゃない!」

ハクア「お前には聞いてない!」

 ゴッ

桂馬「んがっ」

 いちいち鎌で殴るなよ。
130: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 19:41:08.03 ID:CnYJRUQ0
歩美(なんだ、エリーの知り合いか……って、なんで安心してるかー、私ーっ!!)

ディアナ「どうも、お久しぶりです。ハクアさん」

ハクア「あ、あー。天理久しぶり」(←知り合いを見つけてちょっと、ほっとしている)

エルシィ「えー、なになにーっ。ハクア、天理さんといつの間に仲良くなったのー」

ディアナ「ええ。この間、桂木さんとデゼニーシーでデートをした時にですね。軽く、会いまして」
131: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 19:41:40.59 ID:CnYJRUQ0
チラッ。

 その時ボクは、店内の人間全員が、真昼に白竜が蛇行するのを見たような顔つきで、こっちを注視したのを理解した。

 やめろー、やめろー。ナイスボートだ。このルートだけは、このルートだけはっ!

ちひろ「え、デート!! 桂木がっ、ってかこの子とっ!?」

歩美「え、え、え? なに、なんなの?」

結「へー、やるじゃないか」

エルシィ「えー、私も知りませんよー。ハクアー!」
132: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 19:42:06.14 ID:CnYJRUQ0
ハクア「私も行ったんだから、てか、さり気に私を従にするなー!」

かのん「……桂木くん、それほんとう?」

エルシィ「えー、ハクアばっかりずるいー。にーさま、なんで私も連れて行ってくれなかったんですかー」

桂馬「ディアナ、お前は、ボクに恨みでもあるのか?」
133: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 19:42:45.98 ID:CnYJRUQ0
あと、エルシィ。お前に発言権は無い。

ディアナ「恨み? そんなものはありませんよ。私は天理のために、よりよい選択肢を取り続けるのみです」

桂馬「この中に女神がいるかもしれないだろ。お前の発言は、パワー減につながるんじゃないか」

ディアナ「……失念していました。私としたことが。これも全て桂木さんのせいです」

桂馬「おい」

 くそ、このままではどうしようもないな。全然話が進まない。

 月夜に今日中に確かめて置かなければならないこともあるし、ゲームも進めておきたい。

 使いたくは無かったが、再びやるしかないのか。

 あの、禁断の強制展開技を。

楠「――っ!?」
135: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 20:23:11.37 ID:CnYJRUQ0
ボクが対象を物色し始めると、一番近場にいた楠が距離を開けた。

かのん「あの、どうしたんですか。急に」

楠「いや、何故だか急に悪寒が……」

桂馬「……ちっ」

ディアナ「桂木さん、もしやいつぞやと同じような手を使うつもりでしたか?」

ハクア「いつぞやって、あの、ノーラの時の、胸を、さ、さわ、ってなに考えてんのよっ!!」

ハクア「変態!! 不埒者!」
136: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 20:23:56.09 ID:CnYJRUQ0
 安心しろ、ハクア。お前は大丈夫だ。何しろ掴む所がないからな。

ハクア「なぜかしら。いま、非常に不愉快なオーラを感じたわ」

 ダメだな。女神や悪魔は、以外に勘が鋭い。

 そうだな、かのんにするか。意外と、トロそうだし。

かのん「?」

ハクア「だから、やめろっていってんの!!」
137: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 20:25:31.08 ID:CnYJRUQ0
 やむを得ない、プランBだ。ボクは、携帯を隠しながらメールを打ち、速やかに送信した。

ハクア「あ、ちょっと。桂木、いま妙な動きしなかった? なに、隠してるのっ。見せなさいっ! このーっ」

桂馬「だが断る」

ディアナ「やめてください。この人にあまりくっつかないで、と以前にもいいませんでしたか?」

ハクア「だれがこんなやつにくっつくかっ! 気色悪いっ!」

 ハクアの鎌が、うなりをあげてボクの腰に叩き込まれる。

 耐えろっ、耐えるんだっ!!

歩美「ちょっと、やりすぎじゃないの!? やめたげなさいよ!」

ちひろ「そうだー。コスプレ女は帰れー!」

ハクア「だれがコスプレかーっ!」

 混乱が猖獗を極めたその時、高らかに両手を打ち鳴らす音が、店内に響き渡った。
138: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 20:29:31.91 ID:CnYJRUQ0
エルシィ「はーい、はいはい!! 皆様お静かに願いまーす!」

エルシィ「本日お集まり頂いた淑女の皆様。いろいろとにーさまに聞きたいことがあるようですが、このままここでお話を続けていても収拾がつかないかと」

エルシィ「そこで提案がありまーす」

エルシィ「ここはいったん場所をにーさまの部屋に移しまして、個々に面談をする、というのはどうでしょうか?」

エルシィ「いろいろと他の方に聞かれたくないこともあると思われますし」

ディアナ「私はそれでかまいません」
139: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 20:29:59.31 ID:CnYJRUQ0
ハクア「べ、べつにいいケド」

かのん「私も、彼に個人的に確かめたいことがあります」

エルシィ「では、順番にならんでくださーい。整理券を配布しまーす」

美生「……」

結「おもしろそうだね。ボクも参加するよ」

楠「ちょっと待て、私が一番最初だぞ! これだけは譲れん!」
140: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 20:30:50.72 ID:CnYJRUQ0
エルシィ「順番は抽選でーす」

 助かった。エルシィがメールに気づかなかったら、そう思うとぞっとする。

 ふふふ。飼いならされた羊どもめ。日本人は列を作りたがる。

 それに、半ば強制的だとしても、自分の決めた選択肢には従ってしまうものなのだ。

 既にエンディングを迎えた攻略相手とはいえいいかげんなゲーマーだと思われたくないしな。

 アフターケアも万全、それが神のクオリティだ。ついでに女神の辺りもつけておけば、一石二鳥。


 ――さあ、各個撃破してやる。ここからが、ボクのターンだ!
141: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 20:31:37.32 ID:CnYJRUQ0
『桂馬の部屋』

一人目~エリュシア・デ・ルート・イーマさん~


エルシィ「にこにこ」

桂馬「……で」

エルシィ「さあ、はりきってお話しましょー」

桂馬「わかりにくいボケかたすんなっ! なんで、さりげにお前まで参加してんだっ!!」

エルシィ「そんなこといわないでくださいよう。お喋りしましょうよ! ホラ、ちゃんとお菓子とお茶も用意しましたっ」

桂馬「おまえは頭の悪いOLか」

エルシィ「でも、さっきはすぐメールの指示通り行動しましたよー。ほめてください」

桂馬「ああ。だが許さない」
142: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 20:32:07.35 ID:CnYJRUQ0
エルシィ「なんでっ、ほめてほしーです」

桂馬「つけあがるなよ、この小悪魔」

桂馬「――もういい。それより話は、月夜の事だ」

エルシィ「え? にーさまの、これ以降の進退問題についてじゃないんですか?」

桂馬「なんでナチュラルにボクを退場させようとしてるんだよ。とにかく、お前は今から月夜についての情報を集めて来い。スキマが出来たのは、たぶん何かしら理由がある」

エルシィ「え、でも、この後かのんちゃんとお話しよーと思ってたのに」
143: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 20:32:57.01 ID:CnYJRUQ0
エルシィ「私、かのんちゃんの振り付けたくさん練習したんですよー。チェックしてもらおーかと」
 きゃっきゃっ

桂馬「情報取ってくるまで帰ってくるな、次」

エルシィ「えー」

桂馬「えーじゃない。だいたいなんで歩美やちひろまで連れて来たんだっ。どこかで適当にまいてこいよ!」

エルシィ「それはですねー。私にも学園における地位というか、グループ内における微妙なパワーバランスがありまして。乙女はいろいろと複雑なのですよ」

 そんなドロドロした女特有の力関係なんてどーでもいい。

桂馬「いけっ!!」

エルシィ「ひゃんっ」

エルシィ「ひどいです、にーさま。腰を蹴りつけるなんて」

 ブツブツいいながら、窓から旅立っていく悪魔。サクサク進めていかないと、今日中に終わらんぞ。
144: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 20:33:34.58 ID:CnYJRUQ0
二人目~高原歩美さん~

 コンコンと、控えめにドアをノックする音がする。ボクはPCラックの前にある椅子に深く腰掛けたまま、向こう側で立ちすくむ人物に声を掛けた。

桂馬「どうぞ、開いてるよ」

歩美「へへ、ど、どもー」

 いつもの快活さとは打って変わり、歩美の態度はどことなく挙動不審だった。数台のマシンを同時に起動させているので、室内の空調は常に一定に保たれている。

 カリカリとCPUが刻む、冷たく厳かな駆動音が辺りを覆っている。照明は落としてあるので彼女の表情は見えにくい。ボクは、眼鏡を外すと、疲労でしこった眼球をリフレッシュさせる為、眉間と目蓋をぐいぐいと揉み解した。

歩美「あ、眼鏡はずしてる」
145: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 20:34:05.49 ID:CnYJRUQ0
歩美「が、学校じゃ、外さないよね。は、初めて見たかな。はー」

 彼女は、放心したように立ったまま、視線だけは動かさないので、なんとなく気恥ずかしさを感じた。

桂馬「かけなよ。どーしたんだ、キョロキョロして」

歩美「その、私男の子の部屋って入ったことあまりなくて」

桂馬「あまり?」
146: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 20:34:47.92 ID:CnYJRUQ0
歩美「あ、あまりじゃないです。実は初めてです、はい。そ、その人形とか飾ってないんだ」

桂馬「別にボクは特典には固執しない性質なんだ。3次元になると手入れも大変だし。
実のところそっちはあまり興味は無い。ギャルゲーはデータだけあれば充分だ」

歩美「そうなんだ。いや、わかっていたというか、わかりたくなかったというか」

桂馬「ところで、今日はボクに何か話があって来たのか。何かあるなら、簡潔に済まそう」

歩美「いやいやいや。別にー、今日来たのは直接桂木になにか用があったから来たんじゃなくて、
その、帰りにエリーと会って? その私たち結構仲良いのに? 
お互いの家にも行ったこと無くて、その、流れ? というか」

 さすが、現役女子高生。まとまりの無い喋り、ここに極まれり。
147: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 20:35:13.87 ID:CnYJRUQ0
桂馬「じゃあ、特にないのなら――」

歩美「と、思っていたんだけど。お店に入っていろいろと疑問がうまれました、はい」

歩美「……」

歩美「あー、なんか調子でないなー。うん、私らしくない。よし、はっきりいこうじゃない!」

歩美「――その、今日お店に居る人の中で、桂木と付き合ってる人って、いる?」

 はっきり、と啖呵切ったわりには、ずいぶん尻すぼみじゃないか。
148: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 20:36:40.90 ID:CnYJRUQ0
歩美「か、勘違いしないで欲しいんだけどっ、ただ、あれじゃん? 
彼女とかいたら、私らそのマズかったかなー、と。
その、かのんちゃんがアンタなんか相手にするわけ無いけど、
その、鮎川さんとか、コスプレの人とか、春日先輩とか。
特に、春日先輩は前にも教室にアンタのこと呼びに来てたし、そのお」

桂馬「いない」

歩美「ほんとう?」

桂馬「ボクに付き合っている人なんて居ない」

桂馬「なぜなら、ボクのメインヒロインはいつでもここにいるからっ!」

 ボクはPFPを歩美に突き出すように見せ付けると、声を大にして宣言した。
151: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 21:27:32.83 ID:CnYJRUQ0
 そう、この中にはセカイの全てが詰まっている。

 完全無欠で、究極の一が。

歩美「は」

歩美「はははははははっ、そーだ。そーだった、そういえばアンタはそういうやつだった」

歩美「はー、バッカバッカしー」

桂馬「馬鹿馬鹿しいとは何事だ。ここには人類の全てが詰まっているんだぞ」

歩美「ところでさー、ひとつ気になったんだけど」

歩美「桂木ってさ、マジで、女の子に興味ないの?」

桂馬「ちょ、おい、近いって」
152: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 21:28:25.17 ID:CnYJRUQ0
歩美「いいからっ、答えてよ」

桂馬「ふっ、ボクは2進数のセカイの人間。血と肉を持ったリアル女子等に興味は――」

歩美「本当?」

 気づけば彼女の顔が、ボクの前髪に触れる位置まで近づいていた。

 黒々とした瞳が、モニタの僅かな光を映しこみ、夜の河のようにゆらゆら揺れている。

 睫が震えるように瞬いた。ぷっくりと膨らんだ唇が、誘うように開く。小さく真っ白な歯が、闇の中で蠢く。

 燃え立つような朱に染まった頬が網膜を裂いてちらついた。ボクという観念が消える。存念が失せる。確固たる理想が止揚する。

歩美「ね、試してみない?」

桂馬「――た、試す」

歩美「桂木の手、やらかいね」
153: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 21:29:33.01 ID:CnYJRUQ0
桂馬「ボクに、ふれるな……」

歩美「ここから先、任せてもいいかな」

 甘えるようなその声に、思考が硬直化した。

 攻略はゲームの延長。遊戯は遊戯でも命をかけたゲーム。ベットの対象はボクの命だ。

 首筋に巻かれた重たげな契約が、常に囁いている。
154: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 21:30:14.43 ID:CnYJRUQ0
 大脳が燃えるようにじんじんと疼く。

 歩美のことを想う。

 青く、涼やかな清流を駆ける、雌鹿のように引き締まった身体が、今目の前にある。

 深く座り込んだ椅子に圧し掛かるようにして、熱い吐息が耳元に触れた。

歩美「ね……」

 意識が白濁していく。曙光は見えない。

エルシィ「はいはーい、時間切れー。時間切れでーす!」

桂馬「げっ」

歩美「っ!!」

 歩美はボクを突き飛ばすと、真っ赤な顔をして走り出していった。

 あ、なんだったんだ今の。落ち着け、たかがリアルだ。

 曖昧なリアルの駄フラグを立ててる場合じゃないぞ。

 ふと気づくと、エルシィが両腕を組んでじっとりとした目線を向けていた。
155: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 21:30:45.52 ID:CnYJRUQ0
桂馬「なんだよっ、行ったんじゃなかったのか」

エルシィ「にーさまの、えっち」

桂馬「はぁ!? いいがかりだっ!! ボクが、毒フラグに乗るとでも」

エルシィ「でもー、いい雰囲気でしたー。私が止めなければー攻略でもないのにー」

桂馬「う、うるさいなっ、次だ、つぎっ」

エルシィ「ごまかそうとしてます。攻略でもないのにーキスをー」

桂馬「さっさと行けっての!」

桂馬「……クソ、これだからリアル女子は。前振りも無くルート開放しようとするんじゃない」

 それにしても、歩美は女神なのか。

 キスすれば、いっそはっきりしたかもな。

 正直、主導権を取られるのは苦手だ。
159: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/12(日) 22:03:23.91 ID:/uJpsjgo
さすが「ばかっ、ばかっ、ばか!!!」の歩美
破壊力が凄いな
163: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/16(木) 00:09:10.51 ID:rHmJwHw0
これ以上考えても時間の無駄か。次。
 
三人目~青山美生~

美生「ど、どうも」

 猫目で、明るい髪色で、デコが出てて、ツインテールで、小柄な子の登場だ。

 サクサク流してこー。

 美生は緊張しているのか、部屋に入ったきり微動だにしなかった。
 塗り固められた、彫像のようにうっそりと立つ姿を見ながら、ボクは激しく強張っていく肩の凝りと、
この夜を越えていくことの出来る可能性を想った。
164: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/16(木) 00:10:48.54 ID:rHmJwHw0
美生「あの、私たち初対面よね、ほぼ」

 最初に口火を切ったのは、彼女だった。ボクはギロチン首をさすりながら、眼鏡の弦の座りを無意味にいじると、応えた。

桂馬「ほぼ?」

美生「その、あなたには売店の前で、小銭の使い方を聞いたことがあるわ」

 攻略直後に会った?
165: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/16(木) 00:11:27.52 ID:rHmJwHw0
桂馬「あー、そういえば、外パンの」

 結と入れ替わっていた時期にパン屋で会う前に、一度顔を会わせていたかも知れない。

 それに同じ学内で、学年なら何度かすれ違っていたこともありうる。

 もっとも、興味ないから気にしたこともなかったが。

 そんな事をつらつら考えていると、目の前の症状は、わざとらしい咳払いをして、

 一歩前に出て、見上げるようにしてボクの顔を覗き込んだ。

美生「私、2Aの青山美生、よ。貴方は?」
166: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/16(木) 00:12:33.13 ID:rHmJwHw0
桂馬「桂木桂馬」

 既知の人間に自己紹介されるとこんな気分になるのか、とややテンションを下げながらも観察は怠らない。

 そういえばディアナがいっていた。女神は封印の力を使い果たし動けなくなっている、かもしれない、と。

 美生の記憶は完全に書き換えられていた。だが、本当に居ないと断定していいのだろうか。
167: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/16(木) 00:13:19.13 ID:rHmJwHw0
 彼女ら、の中に女神が居たとしても、力が残っていなければ、人格の表層上に出てこられない、ということもある。

 ディアナは、宿主の表面に出て、身体を自由に動かすまで十年かかっている。

 ボクの仮説では、女神はボクと出会いやすい位置に存在する。

 新悪魔の、エルシィではなく、もっと上のやつらがボクをバディに選び、

 駆け魂を出す方法を恋愛に沿うよう誘導していったのは女神に愛を与え、覚醒を促すものだったとしたら。
168: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/16(木) 00:13:47.91 ID:rHmJwHw0
 ある程度は当たりを付けていたのかもしれない。

 会いやすい、顔を合わせやすい、共通点を見つけやすい。

 そういった点では、楠は学年がひとつ上にもかかわらず、姉を通してだがエンカウント率は極めて高かった。つまりは、女神として疑える。

 いや、同クラスの歩美やちひろを除けばダントツかもしれない。他の対象者を考察してみよう。

 かのんは出席自体が稀だ。彼女はひとまず置いておくとして。
169: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/16(木) 00:14:20.14 ID:rHmJwHw0
 ここで、美生を考えてみると、同学年でもあり、バイトを行っている固定キャラという属性も付随する。

 即ち、いざという時、イベントは起こしやすいし、居場所の特定も便利だ。

 ここまで穿って考えると、彼女の家の没落も、父親の死すら疑わしくなってくる。

 やるだろうか。

 あるだろうな、やつらはどういいつくろおうと、悪魔だ。
170: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/16(木) 00:15:09.21 ID:rHmJwHw0
 仮定として、女神の覚醒が段階的で、記憶の保持が遡って復活するかもしれない、

 という可能性を残しておくと、こいつの中に女神が居ても、別段不思議ではない。

 黙り込んだボクが気を害していると勘違いでもしたのか、

 美生は、所在無げに佇んでいたが、思い切ったように顔を上げると、一気にいい放った。
171: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/16(木) 00:15:50.92 ID:rHmJwHw0
美生「な、なによ。私は結に付き合ってお店に来ただけで、その、庶民なんかに興味なんてないんだからねっ! 
前々からなんとなく気になってなんかないんだからっ!」

 いわでもいいことをいってしまい、顔を伏せる美生。

 それにしても、なんというツンデレ率。

 正直、最近流行ってないぞ。

美生「ねえ、私たち、どこかで会ったことってないわよね」

 美生が不安げに、眉を八の字にして尋ねてきた。
172: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/16(木) 00:16:31.23 ID:rHmJwHw0
桂馬「うん?」

美生「な、なによ。なにかいいなさいよっ。これじゃあ、私がいい寄ってるみたいで、その。
   別に、いつもの私はそんなに軽い女じゃなくて、そのホントよ、信じてっ、あなただけなんだからっ」

桂馬「おい、ちょっと」

美生「本当よ、こんな気持ち。自分でも抑えられない。どうしてなの、わからないの」

 小柄な美生が、崩れるようにして、ボクの胸の中に倒れこむ。清潔なシャンプーの香りが漂う。それにしても、ボクの部屋には何かリアル女

 子のテンションをおかしくする物質でもあるのか。甚だ疑問だ。
173: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/16(木) 00:20:28.55 ID:rHmJwHw0
美生「この感じ」

桂馬「ととっ」

 触られるのは苦手だ。ボクは自分の顔が紅潮していくのを感じ、

 またそれが妙に気恥ずかしく、とめどなく頭の芯が茹っていくのを止められない。

 どーして、現実の女は我がままで、非効率的で精度が低いのにこんなに柔らかいんだ。

 美生のちっちゃな指先にある白い爪が、視界の隅をちらつくたび、息苦しくなる。

 こんなもの、物理的反射だ、動物的情動だ、と頭の中で連呼しても、その先に続くイメージだけが勝手に肥大していく。
174: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/16(木) 00:22:08.19 ID:rHmJwHw0
 ああ、くそ。リアルの壁は、思った以上に重厚で難物だ。

美生「ごめんなさい」

 潤んだ瞳が、心細げに秋波を送ってくる。

 意図的なものなのか、それとも無意識の産物なのか。女は生まれながらにして娼婦だ、

 とはよくいったもの。全ての現実を踏破すると誓った胸に、あっさりと亀裂が入る。

美生「はしたないってわかってるのに。もう少しだけ、もう少しだけ」

 子犬のように彼女が頬を摺り寄せた。

 と、その時。

 カーン、カーン、カーン、と。 

エルシィ「はーい、はなれてくださーい。コーヒーブレイクです!」
175: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/16(木) 00:24:05.43 ID:rHmJwHw0
フライパンを叩きながら、羽衣でティーセットを持ち上げつつエルシィが入室してきた。

桂馬「とりあえず、落ち着いて話そう。時間はある」

美生「うん」

 どう考えても、初対面の人間同士が行うスキンシップではない。
176: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/16(木) 00:24:54.50 ID:rHmJwHw0
 あの夜の続きを、そのまま補完していると考えたほうが理解しやすい。

 美生も記憶といくらか残った感情のギャップに戸惑っているのか。少し離れたクッションに腰掛け、

 ちらちらボクの顔色を伺っているのが見て取れた。

エルシィ「うー」

 エルシィは、親の敵を見るような目で、ボクをにらみ付けると部屋を出て行った。

 あいつ、扉の向こうで聞き耳でも立てているのか……?


『ドアの向こう側』

ハクア「ど、どうだった! ねえ、どうだったの!?」

エルシィ「うー、美生さまと抱き合ってましたっ」

楠「不純な。男女七歳にして席を同じゅうせず、という言葉を知らんのか」

天理「桂馬くん」ショボン

ちひろ「……まさか、あいつにそんな甲斐性が」
178: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/16(木) 00:29:32.77 ID:rHmJwHw0
かのん「ウソだ、ウソだ、ウソだ、ウソだ」

~再び桂馬の部屋~

美生「ねえ、ひとつだけ聞かせて」

 絶対ひとつで終わらんな、これは。

 今みたいに切り出した場合、女の問い詰めはひとつじゃ終わらないんだよっ!

 ゲームでは。

美生「貴方は、私と夜会に出かけたの?」

桂馬「おかしな質問だな。どうして、それをボクに問う」
179: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/16(木) 00:30:06.50 ID:rHmJwHw0
美生「それは」

美生「記憶が判然としないの。私の記憶では、運転手だった森田と行ったことになってる」

美生「森田にダンスを教えて、いっしょに踊って」

美生「あいつは、その最初は手に触れただけで真っ赤になって」

美生「なんだか私も、つられてすごく照れくさくて、でも不思議といやじゃなくて」

美生「そして、最後に、そのキスを」

桂馬「じゃあ、それが真実だ。いずれもボクには関係ない」

美生「ちがうの、ちがうのよっ!! それでは嫌なのっ!! そんなことあってはならないっ!!」

 美生の悲壮な顔。セカイがパースペクティブを失い、セピアに染まった。

 視界が逆転すると同時に、身体の内側が激しい搔痒を覚える。

 ボクの胸が、ずきりと痛んだ。

美生「大切な誰かがいってくれた」
180: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/16(木) 00:30:36.13 ID:rHmJwHw0
美生「私の笑顔を見たいって」

美生「私の心に住みたいって」

美生「例え、私の記憶が誰かに消されようと、その人はずっと居るの」

美生「もうダメだって思った時も、つらくて泣きそうな時も、顔すら思い出せないその人を思えばがんばれるのよ」

美生「ごめんね、それがあなたのような気がしたの」

美生「ホント、馬鹿みたい。迷惑よね」

美生「私の勘違いよね」

 寂しそうに笑う彼女の横顔を見た時、ボクは初めてこの契約を心の底から呪った。

 人の記憶をいじるんだ。

 代償を理解していたつもりだったけど、事実それはつもりでしかなかった。

 人間のココロまでは、どんな精巧な機械も演算できない。
181: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/16(木) 00:31:35.27 ID:rHmJwHw0
 ここでたやすく彼女に、それはボクだと云えたらどんなに楽だろう。

 もし、彼女の中に女神が居なかったら? これからも攻略は続けなければならないんだぞ。

 その時、この感情は枷になる。

 指先から全身が冷えていくように、ボクのココロを凍結させる。
182: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/16(木) 00:34:15.55 ID:rHmJwHw0
 神に感情はいらない。必要なのは冷徹なロジックと鋼のメソッドだ。

 目の前の女を人間と認めるな。今はまだ、見切りが出来ない。

 愛を与えるということが、これほどに重いとは、知らなかった。
183: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/16(木) 00:34:49.07 ID:rHmJwHw0
美生「ねえ、キスして」

美生「そうしたら、きっと」

 女神はいずれ出さなければならない。なら、躊躇う必要などないはずだ。

 ボクは無言で、美生を引き寄せる。

 瞬間を永遠に感じる。

 唇が触れ合う。頭の奥で明度の高いランプが灯る。

 頬に、あたたかな涙を感じた。

美生「なに?」

桂馬「なにか、思い出せたのか」

美生「な、なにも、でも」

美生「もう一度したら、思い出せるかも」

 上気した頬で、恥ずかしそうに呟く。落胆と怒りと、悲しみを同時に感じた。

桂馬「ひとつだけ教えてくれ。お前の中に、女神はいるか」
184: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/16(木) 00:36:49.07 ID:rHmJwHw0
美生「女神? なに、言葉遊びかしら。それよりも――」

桂馬「そうか。じゃあ、ボクの用事は済んだ。出て行ってくれないか」

美生「え」

 努めて平静に喋ったつもりだ。

美生「え、え、なんで? ね、ねえ。そんなに私とするの嫌だった?」
185: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/16(木) 00:37:43.51 ID:rHmJwHw0
桂馬「ああ」

 この上も無く彼女の顔が歪んだ。今度は冷静に云えたと思う。

美生「うそよ。だったらなんで」

桂馬「理由なんか無い。しいていえば、相手が君だからだ」

美生「っ!」

 鋭い嗚咽が聞こえた。たまらず顔を背ける。

 視界の端に、彼女の唇が僅かに動くのを感じた。

美生「――さよなら、無駄な時間取らせたわね」

 無理に微笑もうとしたのか、その相貌がますます幼く見えた。握り締めた拳。ボクは汗ばんだ手のひらを、開きまた握った。

 消え入りそうな声とともに扉が閉まる。地上から音が消えたような気がした。

 誰も居なくなった部屋に息を呑むような、激しい孤独を感じる。

 知らず、右腕で死の首輪を掴んでいた。窓際に近寄り、闇に沈んだ道路を眺める。

 眼下に点在する街路灯が濡れたような光を放射している。

 小さくなっていく美生の背中を見ながら、ボクは確かな決別を感じる。

 窓際のカーテンを閉める。

 もう二度と、振り向かなかった。
191: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/18(土) 17:17:03.47 ID:Ko77cfY0
四人目~中川かのんさん~

桂馬「気を取り直していくか」

桂馬「人間の体細胞なんて2ヶ月で全部入れ替わるし」

かのん「抱き合ってるのはウソ、抱き合ってるのはウソ、抱き合ってるのはウソ、ってるのはウソ、抱き合ってるのはウソ、抱き合ってるのはウソ、抱き合ってるのはウソ、抱き合ってるのはウソ、抱き合ってるのはウソ、抱き合ってるのはウソ、抱き合ってるのはウソ、抱き合ってるのはウソ、抱き合ってるのはウソ、抱き合ってるのはウソ、抱き合ってるのはウソ、抱き合ってるのはウソ、抱き合ってるのはウソ、抱き合ってるのはウソ、ウソ、ウソ、ウソ、ウソ」

桂馬「でも、このドアは開けたくない気がする」
192: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/18(土) 17:17:55.75 ID:Ko77cfY0
桂馬「……でも、開けるしかないのか」

 ガチャリ

かのん「――はっ」

かのん「じーっ」

かのん「ど、どうも」

 かのん、か。会う機会の頻度から考えると、こいつはボクの仮説からかなり離れているんだよな。

そもそも、テスト受けにしか来てないぞ、たぶん。

 かつての攻略相手、つまりは女神候補のひとりに数えられるが、エンカウント率は低い。

 まだるっこしいことはやめて、直に行くか。
193: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/18(土) 17:18:29.31 ID:Ko77cfY0

エルシィ「にこにこ」

ハクア「じーっ」

桂馬「あのな、お前ら」

桂馬「いったい、いつの間に入ってきたんだ。内包型ウイルスか!? かのんが話しにくいだろう。出てけよ」

ハクア「出てけ? ンまぁ、私たちを追い出してどんな卑猥なことをするつもりなのよ。この、変態クズ男!!」

桂馬「エルシィ」

 ボクはこめかみに軽い疼きを感じ、利き手で最初にハクアを指し、次に出口を示した。

エルシィ「えっと、私はハクアを止めたんですけど」

エルシィ「ハクアはかのんちゃんが一番危ないって」

桂馬「何を考えてるんだ」
194: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/18(土) 17:18:57.77 ID:Ko77cfY0
ハクア「だって(その子が、ずば抜けてかわいいから)」

エルシィ「じーっ」

桂馬「なんだよ」

エルシィ「あのぅ、にーさま、何かありましたか? その雰囲気が」

桂馬「ふいんき (←なぜか変換できない)がどうしたんだ」
195: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/18(土) 17:19:29.01 ID:Ko77cfY0
エルシィ(神にーさま、いつもより元気ないです。何かあったんでしょうか)

かのん「あのう、何の話でしょう」

ハクア「私たちのことは気にしないで、桂木がわるさしないよーに、見張ってるだけだから」

かのん「……大変申し訳ないんですけど、席外してもらいません?」

ハクア「え?」

エルシィ「え?」

かのん「え?」

 なに、この展開。悪い予感しかしない。
196: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/18(土) 17:20:16.98 ID:Ko77cfY0
桂馬「わかった、こうしよう」

 ガチャ、

ハクア「アンタが部屋を出て行ってどーする」

桂馬「わかった」

かのん「……」

 ガチャ

ハクア「だから、ふたりで出て行ってもしょーがないでしょ!!」

桂馬「どーしたいんだよっ!!」

桂馬「もしかして、アレか。お前はあれなのか?」

ハクア「//////」

ハクア「だ、だれがヤキモチなんかお前なんかに妬くかっ! バカっ!! 自意識過剰!! 変態男っ!!」

桂馬「ちょっ、まっ、まだボクはなにもいっとらんっ!」

ハクア「なによっ、なんでそいつの肩ばっか持つのよっ!」

エルシィ「ハクア……」

ハクア「もー知らん!! 桂木なんか、こんにゃくに頭ぶつけて死ぬれっ!!」
197: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/18(土) 17:20:47.81 ID:Ko77cfY0
 ハクアは、真っ赤な顔をして叫ぶと、低反発マクラをモニタに叩きつけ、部屋を駆け足で去っていった。今日はいったい、何しに来たのか。

エルシィ「……にーさま、ハクア怒って出て行っちゃいましたよ」

桂馬「追いかけてやれ」

エルシィ「はい」

 排除完了。

 さて、ぬるいリアルの壁などでは、真理に到達したボクを遮ることなど出来ない。

桂馬「さ、お邪魔虫は追い払った。何か話があるんじゃないか?」

かのん「うん、その。この間のお礼もまだ、だったから」
198: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/18(土) 17:21:46.88 ID:Ko77cfY0
かのん「桂馬くんに教えてもらったおかげで、私ちゃんと百点取れたんだよ」

かのん「いつもはお仕事であんまり勉強できないから、学校にはテスト受けに来てるだけになっちゃってるけど」

 一度喋りだすと、最初のぎこちなさはどこにいったのだろうか。

 エルシィもかくや、という勢いで、取りとめも無い話のやりとりをボクらは始めた。

 こうして話すと、特に変わった話題でもないが、とうとうと彼女のお喋りは流れていく。

 おそらく、アイドルという仕事上、かような無為の時間もほとんど取れないのだろう。

 学校に来ないのであれば、腹を割って話す友達も作れないのか、

 彼女は自分の仕事のこと、日常のちょっとしたこと等をさもうれしそうに話していた。

 聞き役に徹しているボクは、注意深く彼女の表情を見ながら、情報を集めていく。

 どいつもこいつも、このくらい話してくれれば攻略は楽なのに。

かのん「――で」
199: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/18(土) 17:22:35.17 ID:Ko77cfY0
桂馬「よし、次の選択肢だ!」

200: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/18(土) 17:28:12.72 ID:Ko77cfY0
 キスの事を聞く
 懐のスタンガンについて
 西川かのんについて
201: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/18(土) 17:44:00.95 ID:Ko77cfY0
→キスの事を聞く
 懐のスタンガンについて
 西川かのんについて

桂馬「なんだ、他の二つの選択肢は」
202: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/18(土) 17:44:31.33 ID:Ko77cfY0
かのん「え、どうしたの?」

桂馬「回りくどいことはやめて、直接聞くぞ!!」

かのん「あ、私も桂馬くんに聞きたいことがあります」

 ガクッ

桂馬「話の腰を折るなよ」
203: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/18(土) 17:45:06.26 ID:Ko77cfY0
かのん「桂馬くんって呼んじゃった、でもいいよね。クラスメイトなんだし」

桂馬「ボクの呼び方は好きにしてくれ、それより――」

かのん「さっきのツインテールの子とはどういう仲なんですかっ!!」

かのん「(私、桂馬くんに振られてるし、もしかしたらさっきの子とつきあってるのかな)」

桂馬「どういう仲でもない。少なくとも、君が思ってる関係じゃない」

かのん「じーっ」

かのん「あやしいな」

 警戒心を抱かせてしまったようだ。ボクは速やかに情報を取得したいだけなのに。

桂馬「じゃあ、どうしたら信用するんだ」

かのん「――キ」

桂馬「? 聞こえないよ」

かのん(キスしてみてなんて、いくらなんでも恥ずかしくていえないよー)
204: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/18(土) 17:47:11.03 ID:Ko77cfY0
桂馬「どうした――」

 ボクがかのんの声を聞こうと、近づいた瞬間。ベッドに置いてあったPFPに明かりが灯るのが見えた。

 スリープ状態にしてあったはずなのにっ!?

月夜『桂馬、ここ、どこですか? 桂馬?』

かのん「女の子の声?」

桂馬「あ、あははははっ。ゲーム、ゲームの声だよ」

 マズイ、マズイぞ! 月夜が起きてしまったらかのんのことは説明しづらいぞ!

 これいじょう、好感度を下げるのはまずい。

 考えろ、考えるんだ、マクガイバー!!
205: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/18(土) 17:47:47.91 ID:Ko77cfY0
この窮地から奪取する妙手を――っ!!

エルシィ「にーさまっ!!」

桂馬「今度は何だっ!!」

 ドアを勢いよく開いてエルシィが飛び込んできた。うまいぞ、このイベントを上手く活用すれば。あるいは。

エルシィ「下でハクアと歩美さんたちが喧嘩してますー」

桂馬「……オイ」

かのん「桂馬くん、大丈夫? 顔が灰色だよ。気分悪いの?」

桂馬「かのん、時間はいいのか」

かのん「うん? あーっ、もうこんな時間っ! スタジオに行かないと間に合わないよ」

桂馬「下まで送るよ。タクシーも呼んでおこう」

かのん「あ、ありがと。でも、ホント大丈夫? 今度は真っ青に」

桂馬「ハハハ、それは今日のお月様が冴え冴えと輝イテイルカラダヨ」

エルシィ「にーさまの顔色が糸コンニャクのよーに」
207: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/18(土) 23:26:48.87 ID:1v415cAO
桂馬じゃかったら卒倒するレベルの修羅場wwww
208: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 19:23:00.34 ID:GDRPmmo0
トットットットッ、ダンっ!!

エルシィ「きゃっ、急に立ち止まらないでください」

 階段を下りると、そこは戦場だった。

ハクア「だから、何度もいわせないでっ!! カンケーないやつは帰れっ!!」

歩美「だから、私たちは桂木に会いに来たんじゃないってば!」

ちひろ「そうだー、コスプレ女は巣に帰れー」

天理「わわわ、喧嘩はやめようよ……」

楠「お前ら、近所迷惑だぞっ! いい加減にしろっ」
209: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 19:23:33.70 ID:GDRPmmo0
桂馬「……」

かのん「あ、あの桂馬くん?」

桂馬「お前ら――」

 人がやりたくも無いアフターケアや女神探しに心血を注いでいるっていうのに。

 こっちは、もう昼からゲームやってないんだぞ。

 ――やるか。
210: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 19:25:57.27 ID:GDRPmmo0
ここに再び、落し神無双降臨っ!!

 超

 ――強制展開技ッッ!!

ハクア「なにが近所迷惑よーっ、このっ!」

楠「いい年して常識も理解できないのかっ、それに目上の人間には敬語を使うものだっ」

桂馬「あー、ブレイクブレイク」

ハクア「っ! 何よっ、引っ込んでてよねっ」

楠「そうだ、女同士の話し合いだ、桂木は引っ込んでろ」

桂馬「ボクが裁定してやる」

楠「……っ!?」

ハクア「ッ!?」

 ムニョン

 その時、空間は凍結した。
211: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 19:31:44.57 ID:GDRPmmo0
ボクは何の脈絡も無く二人の両胸を同時に掴むとやわやわと揉み解した。

楠「……あ、あ」

ハクア「ふ、あぁ……」

桂馬「ふむ」

桂馬「楠主将のかちー」

 硬直したままの楠の右手を取って勝ち名乗りを上げさせる。

 ――どうだ、前回はこれで悪魔たちを退散させた。今回は。

楠「ふ、ふぇええええっ」
212: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 19:32:51.87 ID:GDRPmmo0
桂馬「へ?」

楠「み、みらいのっ、ひくっ、旦那さまにしかさわらせないってきめてた、っく、のに」

桂馬「え、あ、ちょ、マジで!?」

 ガン泣きかよ。ありえん。

桂馬「ん、酒? 誰だ、飲ませたやつは!」

エルシィ「え、これジュースじゃないんですか?」

エルシィ「その前にいうことがあるんじゃないですか?」

桂馬「んー」

桂馬「主将、アンタはそんなキャラじゃないはずだ」

楠「ふぇええええっ」

ハクア「なんで!! 私の負けなのっ、も、もういっかい、ホラもういっかい試しなさいよっ!!」

エルシィ「ちょっ、ハクアーっ!!」

歩美「さ、最低っ!! 最低っ、最低!!」

ちひろ「変態!! クズ!! 色情魔っ!! 腐れゲーム脳っ!!」

麻里「こ」

麻里「この、バカやろーっがあああああああああああああああっ!!」

 ガッ!!!

 脳裏に、電光が走った瞬間、最期に思ったのは。

 母さん、いたんだ……。
213: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 19:33:59.47 ID:GDRPmmo0
『神のみぞ知るセカイ』 
BADEND【私の神にーさまはコミュニケーション不全でした】
EDテーマ
集積回路の夢旅人

作・桂木桂馬

ランプに火を灯したら さあ出かけよう
始まるよ ホール・ニューワールド

FEELING HEART
感じるよ このトキメキ
(ドキ ドキドキ)

HEALING HEART
どんなこともかなう
(困った時は SAVE&LOAD)

約束の場所で君に会える

素敵な世界の無敵なボクさ
素敵な世界の無敵なボクさ
214: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:08:09.91 ID:dZAu46Eo
あれ?まさか終わりなんてことないよね・・・?
217: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:16:23.65 ID:GDRPmmo0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・

ゲームを続けますか? Y/N
218: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:17:59.84 ID:1uDl4EAO
Y
219: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:19:31.41 ID:GDRPmmo0
→Y

ロードしました。

天理「けーまくん」

天理「起きて、ねぇ」

桂馬「はっ! ここは? みんなは」

エルシィ「帰りましたよ。もう」

麻里「あのね、桂馬。女の子は繊細なの。はぁー、ゲームしかやったことの無い桂馬には彼女なんてやっぱ無理なのかなー」

桂馬「っつつ」
220: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:20:56.52 ID:GDRPmmo0
麻里「とっさに手が出ちゃったのはやり過ぎだけど、母さんは謝りませんからね」

麻里「ふたりには明日謝っておきなさい、いい?」

 ふ、ふふふ。さすがだ、一瞬にして場面展開させた。

 ゲーマーに不可能はないぜ!!

麻里「ひ・と・の・は・な・し・き・い・て・る!?」

桂馬「はい」

麻里「そうだ、アンタ天理ちゃんにお礼いっておきなさい。気がつくまで膝枕してくれたんだから」

桂馬「ひざまくら」

天理「う、うん」

 天理はボクと目が合うと、恥ずかしそうに視線をそらし、スカートの裾を掴んで顔を伏せた。

桂馬「その、すまない」

天理「い、いーよ。私が無理いってしたんだし。うん。それよりも、桂馬くん。もう平気なの」

桂馬「……」

桂馬「ああ、全部天理のおかげだよ、ありがとう」

 キラキラ(←男前な顔)
223: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:21:39.03 ID:GDRPmmo0
天理「//////」

桂馬「ふむ」

 あいかわらず単純なヤツだ。

エルシィ「うー、私もにーさまに膝枕してあげたかったのにーっ」

麻里「ま、エルちゃんたら。桂馬ー、モテモテじゃない!」 

天理「ふふ」

 キャッキャッ、ウフフ。

 で、綺麗に終わるはずもなく。

結「ああ桂木くん、気がついたかい。心配したよ」

桂馬「……え」

エルシィ「結さん、心配して残ってくれたんですよー」

 不運の底には、底があることを、ボクはまだ知らなかった。
224: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:22:34.37 ID:GDRPmmo0
~家の外~

ハクア「私も心配して帰らなかったのにー。うぅー入りにくい空気が醸成されてる」

ハクア「私もコーンスープ飲みたいっ、ううっ」



~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~


 五位堂結のことについて語ろうか。といっても、ボクが結に関して持っている情報はそう、多くない。

 私立舞島学園2年A組在籍。ちなみにウィキぺディアに載ってる情報はD組となっているが、間違いだ。

 打ち込んだ者はとっと訂正することをお勧めするよ。正確な情報でなければ、限られたWEB資源の無駄遣いだしね。

 他には、平時は和服を着ていたとか、見たまんまのお嬢様(テンプレ通り!)だったとか、

 ほとんどが過去形なのは、攻略後、需要があるかないかわからないボクっ子にチェンジしてしまったこと。

 そーいえば、ちひろが発足させた2BPENCILSにドラムで加入したとか。その程度だな。

 以上に述べたことは、人間的な本質とはいっさい関わり無い。

 ボクとも関わりなく彼女の人生は、CTRL押しっぱなしに進んでいくと思っていたんだが。
225: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:23:12.78 ID:GDRPmmo0
~家の外~

ハクア「私も心配して帰らなかったのにー。うぅー入りにくい空気が醸成されてる」

ハクア「私もコーンスープ飲みたいっ、ううっ」



~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~


 五位堂結のことについて語ろうか。といっても、ボクが結に関して持っている情報はそう、多くない。

 私立舞島学園2年A組在籍。ちなみにウィキぺディアに載ってる情報はD組となっているが、間違いだ。

 打ち込んだ者はとっと訂正することをお勧めするよ。正確な情報でなければ、限られたWEB資源の無駄遣いだしね。

 他には、平時は和服を着ていたとか、見たまんまのお嬢様(テンプレ通り!)だったとか、

 ほとんどが過去形なのは、攻略後、需要があるかないかわからないボクっ子にチェンジしてしまったこと。

 そーいえば、ちひろが発足させた2BPENCILSにドラムで加入したとか。その程度だな。

 以上に述べたことは、人間的な本質とはいっさい関わり無い。

 ボクとも関わりなく彼女の人生は、CTRL押しっぱなしに進んでいくと思っていたんだが。
226: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:23:39.51 ID:GDRPmmo0
桂馬「おい、待て。そこでとどまれ」

 無意識のうちに顔が真っ赤になる。

結「どうしたんだい、急に?」

 ボクは大きく深呼吸をすると、眼鏡の位置を直し、彼女の顔を見つめる。

桂馬「よし、その位置だ。そこなら問題ない」

天理「桂馬くん……」

 天理は何か勘違いしたように、しょんぼりと俯く。

 ちがうぞ、これはちがうぞ!

 おそらく、結とボクの身体が入れ替わっていた時の残滓だろう。やたらに触れたり、近づいたりしなければ大丈夫のはずだ。

エルシィ「にーさま、まさか」

結「つれないじゃないか、それにしても気分の方はどうだい? もし、体調がよろしくないのなら、ボクはこの帰らせていただくが」
227: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:24:16.82 ID:GDRPmmo0
桂馬「なにか話があったんだろう。もう、外も暗い。送りながら聞くよ」

麻里「桂馬ー、すぐ戻る?」

桂馬「ああ」

結「そうかい、桂木くん。ボクは全然かまわないさ」

 店を出ると、既に外は日が完全に落ちきっていた。

 気温が低く、冷たい夜空には月が冴え冴えと輝いている。

 疾駆するいくつかの雲の群れが、時折光を遮った。

結「なんていうか、君とこうして歩いているのが不思議だな。あ、そういえば、改まって自己紹介したことはなかったよね。ボクはA組の五位堂

結、よろしく」

桂馬「桂木桂馬だ」
228: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:25:33.65 ID:GDRPmmo0
 結と当たり障りの無い会話を続ける。バス亭まで歩いているうちに、いつしかボクの意識は深い底に潜行していった。

 ――完全に忘れている、のか? 

 もっとも、彼女が必ずしも真実を述べているとは限らない。

 かといってウソをつく必要も無い、のか?

 ディアナがいったように、女神のいる対象者は記憶を補完している筈なら、

 今までの攻略相手がひとりもボクにアクションしてこなかったのは、異様、とさえいえる。

 キスまで許した相手なら、当然興味があってしかるべし。

 それが、今日の今日まで、話を聞きに来るでもなければ、顔を見に来るわけでもなかった。

 これはいったい、何を指し示している。

 記憶は残っているのか?

 消えているのか?

 それとも、段階的に復元しているのか?

結「――桂馬、くん」
229: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:26:10.77 ID:GDRPmmo0
桂馬「すまない」

結「あは、桂馬くんって案外ぼーっとしてる所があるんだね。見た感じは、そう、まるで王子さまみたいなのに」

桂馬「やめてくれ、ゾッとしないな」

結「はは、ま、かいつまんでいうとこれを機に、ボクと友達になってくれないかな、って

話なんだ。どうかな」

桂馬「ああ。かまわない」

結「――よかった」

 結が莞爾と微笑む。その瞳を網膜に焼き付けた時、ボクの背筋から腰骨を一直線に火が走るのを感じた。

~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~
230: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:27:05.75 ID:GDRPmmo0
エルシィ「にーさま、遅いです」

桂馬「居たのか、エルシィ」

エルシィ「ごはんが冷めちゃうと思って、あれ? あれ?」

ドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロ

桂馬「おい、これってまさか……」

エルシィ「間違いありません、これは」

桂馬「いつもの間違いであってくれよ」

エルシィ「ひどいです、にーさま。こと駆け魂に限って、私に間違いはありません」

エルシィ「結さんに、駆け魂の反応が……」

桂馬「ふ、ふふはははははははっ」

エルシィ「に、にーさま」

エルシィ「にーさまが壊れてしまいましたぁー」

桂馬「もういい」

桂馬「もう何でもこいだっ!!」

桂馬「面白い、リアルがボクに逆らうというのなら!!」

桂馬「何度でも再攻略してやる!!」

桂馬「ボクの二つ名がなぜ、落とし神と呼ばれているか、教えてやろう」

エルシィ「お遊戯の神様ですけどね」

桂馬「ふふふ、お前はあとでオシオキだ」

エルシィ「え、えええええーっ!?」

エルシィ「なんでですか?」

桂馬「自分の胸に手を当ててよく考えてみるんだなっ!」

エルシィ「ん~」

エルシィ「私、なにかしましたかぁ~」

桂馬「したよ、いろいろと。お前は何かしても問題だし、何もしなくても大問題なんだよ」
231: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:28:01.85 ID:GDRPmmo0
エルシィ「お仕置はいやです~。堪忍してくださ~い」

桂馬「いやだ、ベンベン」

桂馬「馬鹿なこといってないで、明日以降の攻略手順をだな――」

月夜『どこにいっていたのですか』

桂馬「う」

月夜『私は、こんなふうになってしまって、すっごく不安なのに』

 部屋に入った瞬間、自分の頭から血の気が引いたのがわかった。

桂馬「ちがう、ボクの話を聞いてくれっ!!」

月夜『知りませんでした。桂木さんは、随分と女性の方に好かれているのですね』

 マズイ、マズイぞこれは。

 ここからは、答え方ひとつでバッドエンドに直結する――!

桂馬「あのな――」

月夜『ケダモノっ、二度と信用ならないのですっ!!』
232: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:28:38.81 ID:GDRPmmo0
桂馬「あ――」

 PFPの画面が、プツンと音を立てて落ちた。

桂馬「……ふ、ふふふ」

エルシィ「にーさま、どうすんですか、これから」

桂馬「寝る」

エルシィ「えぇーっ!!」

桂馬「あ、お前は情報集めとけよ、月夜と結の分だ」

エルシィ「いまからですかー!?」

桂馬「ZZZZZZZZZ」

エルシィ「そんな、ベタ過ぎですう」
233: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:29:07.70 ID:GDRPmmo0
『翌日』

エルシィ「おはよーございます」

麻里「おはよー、エルちゃん、桂馬」

桂馬「おはよう。なんだ、エルシィ、その顔。隈ができてる。夜はしっかり寝ないとダメだ。脳細胞が劣化する」

エルシィ「にーさまは、さぞよく眠れたでしょうねぇ」

桂馬「――いや」

桂馬「寝ていないよ、やることもあるしな」
234: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:30:18.24 ID:GDRPmmo0
エルシィ(にーさま、そうだ。にーさまは、月夜さんと結さんのことでよく眠れなかったんだ。
本来、駆け魂狩りは私の仕事なのに、
それを私だけ――なんて逆恨みした自分が恥ずかしいよ。
うん、私もこれからはにーさま以上に頑張らないと)

桂馬「エルシィ、苦労かけたな」

エルシィ「にーさま(やさしい)」

 ありがとう、エルシィ。おかげでちょっとはゲームがやれたよ。

エルシィ「それで、にーさま、月夜さんは」

桂馬「ほら」

 朝、一番でPFP を起動させると、画面上の月夜はベッドの中で毛布にくるまったまま、ぴくりともしない。

 こちらの声掛けにも応じず徹底抗戦の構えだ。

エルシィ「これから、どーしましょー」ひそひそ

桂馬「悪印象は好印象に変換可能。こいつが怒ってるってことはボクを強く意識しているってこと。
幸いこいつの身柄はボクがおさえている。引き続きコミュニケーションをとりながら、スキマを探っていくぞ。あとは学校で、だ」ひそひそ

麻里「ほらー、早くたべちゃわないと片付かないよー」
235: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:30:45.78 ID:GDRPmmo0
桂馬「あー、はいはい」

エルシィ「結さんの方は、どうしましょう」ひそひそ

桂馬「休み時間に会うようにしよう。それから、今日は月夜の方を重点的に攻略する。時間を置きすぎるのもよくないからな」ひそひそ

 ボクらは手早く食事を済ませると、家を出る。

結「おはよう、桂馬くん、エルちゃん。今日もいい天気だね」
236: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:31:14.88 ID:GDRPmmo0
桂馬「お」

エルシィ「おはよーございます」

 そこには、待ち構えるようにして結がいた。

結「どうしたのかな、ボクたちは友達だよ。学校にいっしょにいこうよ」

桂馬「かまわないが」

エルシィ「いっしょにいきましょー」

美生「おはよう」
237: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:31:56.12 ID:GDRPmmo0
 ……さすがにこれは気まずいだろ。結はにこにこしながら、ボクと美生を見比べる。

 美生はボクの視線に気づくと、恥ずかしげに両手を後ろに組んでモジモジし始めた。

 とことんハードルを上げてくれるなっ、リアルってやつは!!

結「うん。別に示し合わせて来たわけじゃないけど、昨日彼女とちょっとした感情の行き違いがあったんだって? 一晩立って頭も冷めたろうし、さ、仲直りしなよ」

美生「――」

美生「……う、うん。まあ、庶民がどーしても仲直りしたいっていうんなら、
特別に結の顔を立てて、昨日のことは水に流してやってもいいかしらっ」

エルシィ「にーさま、昨日美生さんとなにかあったんですか」

美生「……」

美生「//////」

美生「水に、流してあげ、る」
238: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:32:22.13 ID:GDRPmmo0
朝から泣き喚かれても、はぁ。しょーがないな。ここで冷たい態度を取っても結にはマイナスなだけだろうし。

桂馬「ボクとナカナオリシテクダサイ」

美生(ホッ)

美生「まったく、しょーがないわね♪」

結「うんうん」

 なんだよ、そのドヤ顔は。
240: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:32:57.62 ID:GDRPmmo0
エルシィ「にーさま、リア充すぎますよ」

 その存在とは対極的なものだ。エルシィは間違っている。

 仲良く談笑しながら歩く。いちいち結に会いに行く手間は省けたとはいえ、これは。

桂馬「ところで、お前に聞きたいことがあるんだが」

結「ボクに?」

美生「しょーがないわね。特別に庶民に答えてあげるわ。特別にっ」

 美生が。

桂馬「それでだな――」

美生「もぅ、なんでそんなに聞きたがりなのっ。この庶民は」

結「……」

 美生が果てしなく――。

桂馬「ちょっ、お前には」
241: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:33:26.88 ID:GDRPmmo0
美生「庶民は、もう少し身だしなみを整えたほうがいいわね。素材は悪くないのだから」

結「あ、あのね。ボクにもしゃべらせて」

美生「桂馬、明日からはあなたが私の家まで来なさい。その方が効率がいいわ」

 ウザキャラにジョブチェンジしてしまった。

美生「桂馬は――」

美生「桂馬♪」

結「あのね、美生。ボクにも話させて――」

美生「それでね、あのパン屋の主人ったら」

 女の頭の中からは都合の悪い記憶は自然に消去される仕組みなのか。

 なに、この超展開は。
242: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:33:52.86 ID:GDRPmmo0
エルシィ「学校に着きましたよー」

桂馬「ぜ、全然、結と会話出来なかった」

エルシィ「美生さん朝から元気でしたねー」

桂馬「お前も少しはなんとかしろよ」

エルシィ「私は結さんとたくさんおしゃべりしちゃいましたよー」

桂馬「お前があいつの好感度あげてどーすんだ」
243: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:34:29.01 ID:GDRPmmo0
エルシィ「昨日喧嘩したんですか? でも、よく仲直りできましたねー」

桂馬「そんなワケあるか。アイツの目は、笑っていなかった。つまりは毒フラグだ」

エルシィ「どく、ですか」

桂馬「今の状態で個別ルートに入るわけにはいかない。駆け魂狩りも出来なくなる」

桂馬「その時こそ、ボクとお前の本当の終わりだ」

エルシィ「どーしましょう、どうしましょう! にーさま、マズイですよお」

桂馬「そうならないように考えているんだ。ゲーム展開が進むにつれ、
主人公の能力が制限されていくなんて、Dカウンター上がりまくりだよ。
こんなんじゃDダイヴできないよ」

エルシィ「?」

桂馬「お前はニーナ、いやディクだな」
244: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:35:11.42 ID:GDRPmmo0
エルシィ「??」

エルシィ「え、私は別に不自由してませんが」

桂馬「だからお前を主に考えるんじゃない!! お前が従なの!」

エルシィ「えー。それにしても記憶は消されてる筈なのに」

桂馬「地獄の消去方も機能しているか疑わしいな。
よし、エルシィ。出来るだけお前は他のリアルどもが接触してきたら遠ざけるようにするんだ。ここから先は、本当の戦場だ」

エルシィ「あのー、だったら学校を休んで、月夜さんを攻略すればいいのではないかと。結さんの駆け魂はその後に」

桂馬「馬鹿だな、お前は。単位が足りなくなったらどうするんだ」

桂馬「日常はゲームじゃないんだぞ、まったく」

エルシィ「……(堂々と授業放棄してる方がよくいうなあ)」

桂馬「いま、なんか思ったな」
245: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/12/19(日) 20:35:56.97 ID:GDRPmmo0
エルシィ「え、ぜんぜん。なにも思ったりしませんから」フルフル

桂馬「そうか、ってバレてんだよ!」

エルシィ「ひーん、信じてくださいー」

 これいじょう攻略(済)どもにまとわりつかれたら、どーしようもないぞ。効果的にスットコを使用していかないと。

楠「あ」

桂馬「うん。うわ!」

楠「……」

楠「//////」

 ダッ! トントントンッ!

 何もいわずに走りさっていった。

桂馬「せめてなにかいえよ。また不条理なフラグが」

エルシィ「わー、かお真っ赤でしたねー。へー、にーさま攻略以外ではリアルに妥協しないっていってましたよねー」

桂馬「おい、なんだその平坦な口調は」

エルシィ「……」

 お前も無言になるなよ!! わけがわからん!

次スレ:

エルシィ「私の神にーさまがコミュニケーション不全なわけない」【後編】


 

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