相良宗介「とてもやさしいパンツァー・フォー」【中編】
- カテゴリ:フルメタル・パニック!
- コメント : 0
- 315: 2015/12/01(火) 15:42:35.40 ID:uxwGlEv0o
- 桃「会長。お電話です」
杏「誰から?」
桃「いつもの相手です」
杏「はいよ。代わる」
桃「すみません」
宗介「誰からの電話だ?」
柚子「最近、多いんです。戦車を売ってくれっていう電話が……」
宗介「戦車を? 廃艦になった場合、戦車は接収させる予定だというのは聞いたが、売却の話もあるのか」
桃「戦車に施されたコーティング技術が戦車道以外で利用されたことはない。そのため、民間軍事会社などからは戦車を買い取りたいという声が後を絶たない」
宗介「……」
柚子「特に廃校になるところや、戦車道の授業を廃止にする学校には頻繁にそういった話が来るらしいです」
宗介「それは戦車道の戦車を軍事利用する、ということか。それとも特殊コーティングのほうか」
桃「それは分からない。ただ戦車自体を利用するとは考えにくいが」
宗介「大戦時の戦車だからな。やはり、目的はコーティング技術のほうか」
柚子「開発者の意向で軍事利用は全面禁止になってはいるんですけど、どうしても欲しい人はいるみたいですね」
- 316: 2015/12/01(火) 15:54:04.39 ID:uxwGlEv0o
- 宗介「俺たちの部隊にもあのコーティング技術はないからな」
桃「俺たちの部隊?」
柚子「相良さんってどこかに……?」
宗介「いや、なんでもない」
杏「話、おわったよー。いやぁ、しつこい相手だったねぇ」
桃「申し訳ありません、会長。私ではどうにも……」
杏「今回の相手はなんか嫌な感じだったしな。私も危うく相手のペースに呑まれそうになったよ。ヤバかったね」
柚子「大洗からコーティング技術が漏えいしたなんてなったら、大問題ですもんね」
宗介「……」
杏「相良くんはどうする? 暇ならあんこう鍋をいご馳走してあげてもいいけど」
宗介「お心遣い感謝いたします。誠に申し訳ありませんが、色々と準備したいこともありますので」
杏「そっか。うん、わかった」
宗介「失礼いたします」
杏「また、明日ねぇ」
宗介「はっ!」 - 317: 2015/12/01(火) 16:01:47.49 ID:uxwGlEv0o
- アイスクリームショップ
華「はぁ、美味しいです」
麻子「五十鈴さんはいつも3段だな」
華「はいっ。麻子さんもおひとつどうですか?」
麻子「いただく」
みほ「……」
優花里「西住殿?」
みほ「え? な、なに?」
優花里「いえ、なんだか深刻な顔をしていらしたので……」
みほ「ごめんなさい。心配させちゃって」
優花里「そんなぁ。いいんですよぉ」
みほ(こんな中途半端な気持ちのままじゃ、いけない。それは分かっているのに……)
沙織「おっほぉ!」
麻子「なんだ、沙織。いきなり奇声を出すな」
沙織「あ、あそこ! あそこ! すっごくカッコいい人がいるぅ!! みてみて!! ほら、あの隅のテーブル!! 芸能人かなぁ! モデルかなぁ!」 - 318: 2015/12/01(火) 16:15:23.93 ID:uxwGlEv0o
- 華「沙織さん、ご迷惑になりますから」
沙織「けどけどぉ」
麻子「あの人か……。まぁ、確かに」
優花里「美形でありますね」
沙織「ほらほら、みぽりんも見てみてよぉ」
みほ「えーと……?」
レナード「……」
みほ「わっ……ホントだ……」
沙織「ね? あれは見惚れちゃうよねぇ」
麻子「日本人には見えないな」
優花里「航行中の学園艦に乗り合わせての旅行でしょうか」
レナード「……」
みほ(目が、あった……? 気のせい、かな) - 319: 2015/12/01(火) 16:24:36.51 ID:uxwGlEv0o
- レナード「ふっ……」
沙織「おぉ!? なんか、こっちにくるよ!!」
華「……嫌な臭いがします」
麻子「え?」
レナード「僕に何か御用かな」
沙織「えぇぇ!? いや、その、すみません!! ジロジロみちゃって!!」
優花里「申し訳ありません。学園艦では見かけない方でしたので……つい……」
レナード「不審に思われても仕方ないね。僕は先日、この学園艦に初めて乗艦したんだ。乗艦という表現が正しいのかは分からないけど」
麻子「ふぅん」
優花里「旅行で大洗に?」
レナード「そうならこんな格好はしていないよ。僕がここに来たのはビジネスのためさ」
沙織「へぇ、そうなんですかぁ。あの、どんな仕事を……?」
レナード「そうだね。世界をよくするために僕は働いているつもりさ」
沙織「わかったぁ! NPO法人とかで働いているんですね!!」
みほ「い、いや、NPOはちがうような……」 - 320: 2015/12/01(火) 16:33:41.90 ID:uxwGlEv0o
- レナード「ははは。そんなところかもね。残念ながら、日本に属する組織ではないけど」
沙織「そうなんですかぁ、それは残念ですね」
レナード「――西住みほ、だね?」
みほ「え……」
沙織「なになに!? みぽりん!! どういう関係なの!?」
みほ「し、知らない! 知らない!」
レナード「君たちのことはよく知っているよ。大洗の戦車道チームは今や世界的にも有名になっている」
優花里「そうなのですか!?」
沙織「えー!? なら、日本の人だけじゃなく、海外からもあたしを求めて……!」
麻子「何故そうなる」
レナード「世界中から求められているのは、まず間違いないだろうね。この大洗は」
沙織「ほらほら! やっぱり!」
華「それはどのような意味を含んでいるのでしょうか」
みほ「華さん……?」
レナード「今の僕が語っても信じてくれそうにないようだけど、教えて欲しいかい?」 - 322: 2015/12/01(火) 16:45:05.45 ID:uxwGlEv0o
- 華「いえ、結構ですわ」
レナード「だろうね。君は素敵だ。僕の想い人には劣るけど」
華「その方とわたくしを比べないでください。その人に失礼です」
レナード「そうだね。失言だった。お詫びにアイスでもどうかな。勿論、僕がご馳走するよ」
華「わたくしは既に3段のアイスを購入しています。これ以上、必要ありません」
レナード「そうか。悪かったね。それでは」
みほ「あ、はい」
レナード「また、会える日を願っているよ」
沙織「おまちしてまぁす!!」
華「……」
優花里「五十鈴殿? あの人に何か思うところでも?」
華「わたくし、あの人を好きにはなれそうにありません」
麻子「五十鈴さんがそういうのは珍しいな」
華「沙織さん。今後、あの方を見かけても絶対に近づかないでください。お願いします」
沙織「う、うん。華がそこまでいうなら……」 - 325: 2015/12/01(火) 17:10:37.44 ID:uxwGlEv0o
- 麻子「仕事のためだと言ってたが……」
優花里「学園艦は一つの街ですからね。様々な職種の人がいても不思議ではありません」
みほ「もしかしたら、学園艦の調査に来たんじゃないかな」
華「なにを調査するのですか」
みほ「学園艦が解体されたあとの行き先は、大体自衛隊だってきいたことあるから」
優花里「私も聞いたことがあります。空母として使う民間軍事企業もあると」
みほ「だから、さっきの人はそういう関係の……」
沙織「もー、やめー!」
みほ「な……」
沙織「大洗の学園艦はこれからも残るの!! だって、私たちが勝っちゃうんだから!!」
華「そうですね。そのような話はわたくしたちには何も関係がありません」
麻子「うむ」
みほ「そう……だね……」
沙織「さ、かえろっ。また明日も戦車のるぞー、おー! はい、みぽりんも一緒に! おー!!」
みほ「お、おー……」 - 326: 2015/12/01(火) 17:17:31.66 ID:uxwGlEv0o
- 街中
ももがー「また明日ー!」
ぴよたん「ありがとー、千鳥さーん!!」
かなめ「またねー!! 猫田さんはこっちなのよね」
ねこにゃー「うん。途中まで一緒に行こう……」
かなめ「そうね」
ねこにゃー「千鳥さん、今日はとっても楽しかった」
かなめ「あたしも。やっぱり、同じ釜の飯を食べるってのが大事なのよね。こういうところからチームワークは生まれると思うの」
ねこにゃー「ボクもそう思う。決勝戦の前夜もボクたち、三人で串カツを食べたし」
かなめ「いいわねぇ。それじゃ、次の試合前もみんなでカツを食べしょっ」
ねこにゃー「うんうん。賛成」
「楽しそうだね」
かなめ「……!」
レナード「まさか君がここにいるとは思わなかったよ。これも運命かな」
ねこにゃー「だ、だれ……?」 - 327: 2015/12/01(火) 17:24:50.65 ID:uxwGlEv0o
- かなめ「なんで、あんたがここにいるのよ」
レナード「ビジネスのためさ。仕事がなければ、このまま君を連れ去っているところなんだけどね」
かなめ「ふざけないで!!」
レナード「僕は至って真面目だよ」
ねこにゃー「あ、あの……」
レナード「なにかな」
ねこにゃー「ち、千鳥さんが困ってる、みたいだし、その……」
レナード「警戒することはない。彼女とは友達だよ。今はね」
かなめ「アンタと友達になるぐらいなら、恥ずかしい恰好で街中を踊りまわったほうがまだマシよ」
レナード「いいね。そんな君も見てみたいよ」
かなめ「ヘンタイ! どっかいって!! いや、この学園艦から出て行きなさいよ!!」
レナード「言われなくてもそのつもりさ。ここに立ち寄ったのはただの気まぐれに過ぎない。入手できるなら、よかったけど断られてしまったからね」
かなめ「何をよ」
レナード「そこの君と深い関係にあるもの、かな」
ねこにゃー「ボ、ボクですか……? ネ、ネトゲのレアアイテム、とか?」 - 328: 2015/12/01(火) 17:50:46.02 ID:uxwGlEv0o
- レナード「そういうことにしておこうか」
かなめ「相変わらずね」
レナード「もうしばらくはここに滞在するのかい?」
かなめ「明日にでも帰るわ。ここにいたら、またアンタの顔を見ることになりそうだもの」
レナード「陣代高校へ戻っても結果は変わらないと思うよ」
かなめ「うるさい!! 目障りよ!!」
レナード「じゃ、また」
ねこにゃー「千鳥さん、あの人と何かあったの?」
かなめ「色々ね。とにかく、アイツのことはだいっきらいなの」
ねこにゃー「痴情の縺れ的な……?」
かなめ「ちっがうわよ!!!」
ねこにゃー「ひっ」ビクッ
かなめ「ああ、ごめん。とりあえず、猫田さんもアイツにだけは気を付けてね」
ねこにゃー「うん、わかった。でもボク、チャット以外でうまくしゃべれないから、大丈夫だと思う」
かなめ「何をもって大丈夫なのかわからないけど……」 - 333: 2015/12/01(火) 21:31:28.38 ID:uxwGlEv0o
- 大洗女子学園 倉庫
カリーニン『――了解した。こちらでも手配しておこう』
宗介「ご協力、ありがとうございます」
カリーニン『気にするな。そちらはどうだ』
宗介「はっ。目立った問題は今のところ起こってはいません。千鳥も状況を楽しんでいるようです」
カリーニン『軍曹』
宗介「はっ」
カリーニン『プラウダ高校は旧ソ連由来の名を掲げているな』
宗介「はっ。そのようです。使用する車両もソ連で使われていたもので編成されているのが特徴です」
カリーニン『そうか』
宗介「それがなにか?」
カリーニン『いや、もし機会があるのならボルシチを――』
かなめ「ソースケ!! まだいる!?」
宗介「千鳥? 君はアリクイさんチームとの会食に出かけたのではなかったか」
かなめ「ア、アイツが……いるの……。この、学園艦に……」 - 334: 2015/12/01(火) 21:48:43.67 ID:uxwGlEv0o
- メリダ島基地
マデューカス「テスタロッサ艦長。サガラ軍曹より緊急要請がありました」
テッサ「なんでしょうか」
マデューカス「アマルガムの幹部が学園艦にいると。以前、チドリカナメと接触した者です」
テッサ「……」
マデューカス「報告通りであるならば、その者は……」
テッサ「レナード・テスタロッサ、ですね」
マデューカス「はい」
テッサ「例の調査結果は?」
マデューカス「まだ上がってはいません」
テッサ「そうですか。引き続き調査のほうはお願いするとして、まずは大洗学園艦の警護を行わなくてはいけませんね」
マデューカス「サガラ軍曹には学園艦内の消毒をさせているところです。今のところ危険物は見つかっていないようですが」
テッサ「結構。こちらからも数名、学園艦に派遣させましょう」
マデューカス「アイ、マム」
テッサ(大洗女子学園の不自然な廃校は、外部からの手が伸びてきていたのね……) - 336: 2015/12/01(火) 21:56:24.56 ID:uxwGlEv0o
- 大洗 学園艦 寮
かなめ「ねえ、ソースケ。このままで大丈夫なの?」
宗介「問題ない。既に対処済みだ」
かなめ「もし、みんなに何かあったら……」
宗介「そんなことは起こり得ない。信じてくれ」
かなめ「……うん」
宗介「君のことも陰から警護してたのだ。騒ぎを大きくせずにこの学園艦を守ってみせる」
かなめ「……」
宗介「なんだ、その目は」
かなめ「陰から守ってくれてたこと、あったっけ?」
宗介「常に守っていた」
かなめ「もういい……。もしテロリストがいるなんて、わかったら大パニックになるぐらいは分かってるわよね」
宗介「肯定だ。心配するな」
かなめ「信じるわよ、ソースケ」
宗介「了解した」 - 338: 2015/12/01(火) 22:03:29.24 ID:uxwGlEv0o
- 数日後 大洗女子学園
典子「今日も特訓だー!!!」
妙子・あけび・忍「「おぉー!!!」」
典子「まずは軽くランニング!! 学園の周りを50周!!!」
妙子「はい!!」
あけび「どんどん走る距離が増えてるぅ」
忍「これもバレー部存続のためよ!」
典子「いくぞー!!」
カチンッ
典子「……?」
妙子「キャプテン? どうしたんですか?」
典子「なんか踏んだ」
あけび「なにかって?」
忍「何もありませんけど」
典子「じゃあ、大丈夫か。しゅっぱ――」 - 341: 2015/12/01(火) 22:09:05.48 ID:uxwGlEv0o
- 駐輪場
あや「おっはよー」
桂利奈「おはよー! 今日も戦車道の練習、がんばろー!」
あゆみ「そういえば相良先生って、あんまり戦車のこと教えてくれないよね」
優希「戦車道のルールを知らないっていってたけど」
梓「普段は西住先輩が教えてくれるし、相良さんはどういう立場なんだろう」
あや「コーチって感じもしないもんね」
あゆみ「ものすごい走らされるだけだよね」
紗希「……」
桂利奈「どうしたの?」
紗希「ここ、なにかある」
梓「なにかって?」
あや「んー? 糸みたいなのがあるね。足が引っかかると危ないし、切っておいたよくない?」
あゆみ「そうだよね。きろっか」
あや「えいっ」プツンッ - 342: 2015/12/01(火) 22:16:26.46 ID:uxwGlEv0o
- 生徒会室
杏「干し芋がおいしい」モグモグ
桃「会長。お茶を淹れました。どうぞ」
杏「あんがと」
桃「良い天気ですね」
杏「平和だねぇ」
桃「相良も問題行動が目立つという報告を受けていたので心配していましたが、赴任初日を除けば特に何もありませんね」
杏「千鳥ちゃんが一緒だからじゃない?」
桃「この学園艦が無くなるかもしれないなんて、実感がなくなりそうです」
杏「河嶋は騒がしいほうがいいの?」
桃「いえ、決して」
杏「私は多少ドッカンドッカンなってても、いいけ――」
ドォォォォン!!!! ドォォォォン!!!!
桃「なんだ!? 今の爆発は!?」
杏「いくぞぉ、かわしまぁー」 - 343: 2015/12/01(火) 22:21:55.97 ID:uxwGlEv0o
- 校門
みどり子「しっかりして!!」
典子「うぅ……あしが……あしが……」
みどり子「足がどうしたの、磯辺さん!!」
典子「足をくじいたぁ……」ガクッ
妙子・あけび・忍「「キャプテェェェン!!!」」
みどり子「大丈夫なの!?」
かなめ「なによこれぇ!?」
みほ「何があったんですか?」
華「花火でしょうか」
優花里「ずるいですぅ! 戦車の練習なら、みんなでやりましょう!!」
麻子「いや、どうみても何かが爆発した――」
ドォォォン!!!
沙織「キャー!! やだもー!!」
かなめ「今度は駐輪場のほうよ!!」 - 345: 2015/12/01(火) 22:30:52.47 ID:uxwGlEv0o
- 駐輪場
みほ「大丈夫ですか!!」
梓「にしずみ、せんぱぁい……」
みほ「澤さん!」
あや「いたぁい……眼鏡、われたぁ……」
桂利奈「びっくりしたぁ」
あゆみ「あー!? 制服がこげたー!!」
紗希「……」
優希「ごほっ……さいあくぅ……」
優花里「怪我はない? これで拭いて」
優希「秋山先輩、ありがとうございます。このハンカチ、洗ってかえしますね」
優花里「いいから、いいから」
みほ「こんなこと、誰が……」
かなめ「誰がって……アイツしかいないでしょう……!!」
みほ「相良さん、ですか?」 - 346: 2015/12/01(火) 22:38:30.03 ID:uxwGlEv0o
- グラウンド
宗介「参った」
かなめ「なにやってのよ!!!」スパーンッ!!!!
みほ「か、かなめさん……そのハリセン、どこから……」
宗介「中々痛いぞ」
かなめ「うるさい!! あんた地雷とか手榴弾とかをいたるところに仕掛けたでしょう!?」
宗介「肯定だ。今、この学園艦は危険に晒されているからな」
かなめ「だからって、仕掛けていいもんと悪いものがあるでしょーが!!!」
杏「まぁまぁ、千鳥ちゃん」
かなめ「角谷先輩からも言ってください!!」
杏「相良くん、なんでこんなことしちゃうかなぁ」
桃「幸い、重度の負傷者がいなかったらよかったものの、万が一があればどうするつもりだ!!」
宗介「この学園艦の警備システムについては最初から疑問だった。言ったはずだ。海の上にいようと安全ではないと。俺はそれを身をもって知ってほしいと思い――」
かなめ「屁理屈いうなぁー!!!」パーンッ!!!!
みほ「お、落ち着いてください!」 - 347: 2015/12/01(火) 22:55:30.86 ID:uxwGlEv0o
- 生徒会室
柚子「負傷者10名、眼鏡1個が破損。被害報告は以上です」
桃「相良。お前は戦術アドバイザーなんだぞ。学園の警備まで頼んだ覚えはない」
宗介「思いのほか騒ぎになったのは謝罪する。しかし、手遅れになってからでは遅いんだぞ」
桃「この大洗にテロリストでも来るというのか、お前は」
柚子「よく桃ちゃんが授業中に妄想してるやつだね。授業中にいきなりテロリストがきたー、とか」
桃「そんな妄想してないっ!!!」
かなめ「すみません!! あとでちゃんと言い聞かせておきますから!!!」
みほ「あ、あの」
杏「なに、西住ちゃぁん」
みほ「仕掛けられていた地雷や手榴弾はとても人を殺傷するようなものではなかった気がします。音と煙だけは派手でしたけど」
かなめ「え……」
柚子「確かに負傷者といってもみなさんはごく浅い擦り傷程度で、傷は残らないということです」
杏「駐輪場で爆発したのに、自転車が汚れはしても壊れてないっていうのは変だしねぇ」
みほ「相良さんは本当に私たちに危機意識を持ってほしかっただけなんじゃないですか?」 - 359: 2015/12/04(金) 22:02:19.95 ID:t+r9tf4do
- 桃「西住、それは相良のことを買いかぶりすぎだ」
かなめ「そうよ、みほ。この戦争ボケはこういうやり方しか知らないのよ」
みほ「でも……」
杏「私も西住ちゃんの意見に賛同しちゃおっかなぁ」
桃「会長まで、何を言っているのですか」
杏「たった二時間程度で演習地のいたるところに地雷や罠を仕掛けられる相良くんが、殺傷能力皆無の罠を仕掛けた理由は他にないだろうし」
かなめ「それは……えーと……」
杏「この学園艦が狙われてるのは、事実だしな」
かなめ「……!」
宗介(まさか、会長閣下は気が付いているのか)
みほ「狙われているんですか?」
杏「学園艦や戦車を欲しがる連中から売ってくれーって電話がよく来るんだよねぇ。ぜぇーんぶ断ってるけど」
みほ「その人たちが直接的な嫌がらせをしてきたことがあるんですか?」
杏「今んとこはないね」
みほ「相良さんは何か知っていますか?」 - 360: 2015/12/04(金) 22:10:39.25 ID:t+r9tf4do
- 宗介「俺から言えることは何もない」
みほ「……」
杏「まぁ、他の生徒が危ない目にあっちゃうのはNGだね。相良くん、気持ちは嬉しいけど控えめにしてくれる?」
宗介「はっ。了解しました」
杏「よし。んじゃ、また授業でね」
宗介「はっ」
桃「それだけですか!?」
杏「いいじゃん。相良くんは善意でやってくれたんだから」
桃「だからって学園内を侵害していかれては……」
柚子「善意のトレスパスだね」
杏「お、いいねぇ。なんかのフレーズにつかえそう」
桃「はぁ……」
みほ「あの、相良さん。言えることはないって、言えないと解釈してもいいんですか?」
宗介「どのように解釈しようと、それは西住の自由だ」
みほ「分かりました……」 - 361: 2015/12/04(金) 22:26:32.24 ID:t+r9tf4do
- 倉庫
カエサル「結局、怪我をした人も大したことはなかったと聞いたけど」
エルヴィン「ああ。ウサギさんチームは全員爆発に巻き込まれたらしいが、見ての通りピンピンしている」
あゆみ「ボン太くん、まだあるんだ」
桂利奈「そういえば結局、千鳥さんにボン太くんとお話しする方法聞けてないなぁ」
あや「これで相良先生って戦車と戦ったんだよね」
紗希「……」ツンツン
梓「こら、相良さんのなんだから勝手に触らない」
モヨ子「全部、相良さんの仕業らしいですね」
希美「そうなの? あの人、真面目そうだったのに」
おりょう「ただの悪戯だったぜよ?」
左衛門佐「そうでもないらしい。西住隊長の話では、避難訓練の一種だったとか」
カエサル「避難訓練で地雷を使うのか」
エルヴィン「実戦向きの避難訓練だったということか」
おりょう「実戦すぎるぜよ」 - 362: 2015/12/04(金) 22:44:42.29 ID:t+r9tf4do
- あけび「キャプテン、足は大丈夫ですか」
典子「うん。もう平気だ」
妙子「よかったぁ」
忍「爆発で足を痛めたんじゃなくて、驚いた拍子に足がグキっとなったんですよね」
典子「そうそう。あんな大きな音が足元から聞こえてきたら誰だってびっくりするし」
みどり子「相良さんは何を思ってあんなものを仕掛けたのかしら。あんなの校則違反よ」
麻子「避難訓練の一種だろ。左衛門佐さんがそう言ってた」
みどり子「それなら事前に通達して、何時から行うのかを明確にしておくべきよ」
麻子「突然やるから避難訓練になるんだ」
みどり子「それは分かってるけど、せめて風紀委員には話を通しておいてほしいっていってるの」
優花里「避難訓練だとしても、何故このタイミングで行ったのかは気になりますね」
沙織「戦術アドバイザーって避難訓練の指導とかもするの?」
優花里「相良教官はあくまでも戦車道のアドバイザーですからね。避難訓練を企画、実行する立場の人ではないと思うのですが」
華「教員というわけでもありませんものね」
優花里「今日でなくてはいけない理由でもあったのでしょうか?」 - 370: 2015/12/06(日) 07:43:50.07 ID:vgftv2tUo
- ホシノ「気になるなら本人に聞けばいいんじゃない?」
宗介「全員、集合しているな」
沙織「はぁーい」
宗介「では、校庭60周から始めろ」
おりょう「了解ぜよ」
桂利奈「がんばるぞー!!」
左衛門佐「数日で10周も増えていることに誰も突っ込まないでござる……」
優花里「あの! 相良教官! 発言、よろしいでしょうか!!」
宗介「許可する」
優花里「今朝の爆発、避難訓練だと聞きましたが、何か脅威目標でも近づいてきているのでしょうか!?」
宗介「下士官が気にすることはない。以上だ」
優花里「はっ!! 失礼しました!!」
沙織「ゆかりん!? それで納得するの!?」
宗介「訓練は既に始まっているぞ!! さっさと走れ!!!」
麻子「メンドーだな」 - 371: 2015/12/06(日) 08:02:27.22 ID:vgftv2tUo
- 典子「いくぞー!!」
宗介「磯辺!」
典子「はい、なんですか?」
宗介「足は大丈夫なのか」
典子「はい。もう平気です! この通りです!!」
宗介「そうか。すまなかった。お前の負傷は俺の責任だ」
典子「いえ、地雷に気が付けなかった私が悪いんです」
妙子「そうなんですか?」
宗介「磯辺には期待している。頼むぞ」
典子「はい!! 頑張ります!!」
華「アヒルさんチームは選抜されそうですね」
沙織「アルさんが相良さんはアヒルさんチームのことを高く評価してるとか言ってたしね。ん? もしかして相良さんって典子のことが……!」
かなめ「でも、あいつは沙織のことが気になるって言ってたわよ?」
沙織「えぇ!? モテ期きちゃった!? どーしよー!」
かなめ「沙織は可愛いもんね……」 - 372: 2015/12/06(日) 08:18:40.52 ID:vgftv2tUo
- みほ(きっと相良さんは磯辺さんみたいに真っ直ぐで迷いのない人が好きなんだろうな……)
みほ(磯辺さんに比べて、私は……)
ねこにゃー「あの、西住さん」
みほ「どうしたの、猫田さん?」
ねこにゃー「相良さんのことなんだけど……」
みほ「なにかな」
ねこにゃー「相良さんが学園の周辺に罠を仕掛けたのって、その、あの人が原因なんじゃないかな……」
みほ「あの人って?」
ねこにゃー「長い銀髪の男の人が千鳥さんの前に現れたの」
みほ「……!」
ねこにゃー「黙っていようか迷ったんだけど、相良さんが爆弾まで仕掛けるってことは……もしかしたら千鳥さんが危ないのかもしれないし……」
みほ「私も同じ人を見た。それで話しかけられて……」
ねこにゃー「西住さんも? な、なにかあるのかな、その人……?」
みほ「とにかく、かなめさんはみんなには黙ってるみたいだし、このことは私たちだけの秘密にしよう。教えてくれてありがとう、猫田さん」
ねこにゃー「うん。西住さんがそういうなら、秘密にする」 - 374: 2015/12/06(日) 08:49:11.87 ID:vgftv2tUo
- 演習地
みほ「では、戦術練習に移ります。各車、準備してください」
梓「はい!」タタタッ
ナカジマ「はいはーい」
かなめ「今日も砲弾、いれまくっちゃうわよ!!」
ももがー「目指せ! 行進間射撃命中率100パーセント!!」
ぴよたん「がんばるずら!」
ねこにゃー「うんっ。目標だけは高くないと、みんなの力になれない」
かなめ「燃えてるわねぇ。あたしも気合入れ直さないと」
ねこにゃー「……」
かなめ「ほら、何ぼーっとしてるの。いつものお願い、車長さん」
ねこにゃー「あ、う、うん。パンツァー……」
ももがー・ぴよたん・かなめ「「フォー!!!」」
宗介「千鳥も随分、馴染んできたな。アリクイさんチームに問題はない。あとは……」
杏「西住ちゃん、試合に出てくれると思う?」 - 375: 2015/12/06(日) 09:08:39.80 ID:vgftv2tUo
- 宗介「分かりません。ただ西住の悩みはごく個人的なことであり、組織には関係のないことです」
杏「そう?」
宗介「はい。部隊を統率する長としては三流です」
杏「なかなか手厳しいね、相良くん」
宗介「申し訳ありません」
杏「いや、いいんだ。傍から見ればそう映っちゃうだろうし」
宗介「このチームは西住が引率しているためか、皆が優しすぎる。個々がチームを支えている」
杏「それは悪いこと?」
宗介「いえ。しかし、時としてその優しさが命取りになることもあります。戦場では仲間を切り捨てる覚悟も必要です」
宗介「この学園も己の信念も仲間も守りたいなど、虫の良い話です」
杏「そういう隊長がいてよかった。私はそう思う」
宗介「自分もこのチームは恵まれていると思います。無能な指揮官の下で命を削る者たちが見れば、垂涎するほどに」
杏「あんがと。それじゃ、練習に行ってくるよ」
宗介「お気をつけて」
杏「うん」 - 377: 2015/12/06(日) 19:07:20.05 ID:vgftv2tUo
- 別の日 陣代高校 生徒会室
敦信「ここまで足を運んでくれたことに感謝する。君のことはダージリンと呼んだほうがいいのかな」
ダージリン「ええ。その名のほうが落ち着きます」
敦信「早速だが、大洗の件については聞いているだろうか」
ダージリン「はい。一週間ほど前、角谷さんから試合の申し込みがありましたわ」
敦信「返答は?」
ダージリン「もちろん、快諾いたしました。前回の親善試合で約束もいたしましたから。また公式戦で戦いましょうと」
敦信「なるほど。今回は戦車道連盟公認試合。故に快諾した、と」
ダージリン「いいえ。非公認でも快諾はしました。大洗との再戦を願っていたところですの」
敦信「君たちが勝てば、大洗は廃校になる」
ダージリン「……」
敦信「それはどう考えている?」
ダージリン「残念です。とても」
敦信「それだけかな」
ダージリン「他に何か欲しい言葉でもありますの? であれば、言ってください。わたくしもその言葉をご用意いたしますわ」 - 378: 2015/12/06(日) 19:20:50.16 ID:vgftv2tUo
- 敦信「手を抜くつもりはない、ということか」
ダージリン「こんな格言を知っているでしょうか。――全ての人間が平等である一つの場所がある。死ぬときである。その場合、彼らはすべてゼロである」
敦信「……」
ダージリン「貴方のやろうとしていることは想像がつきますわ。林水敦信さんの辣腕はわたくしの耳にも届いているほどですもの」
敦信「それは光栄だね」
ダージリン「わたくしをここへ呼んだのも、次の試合で――」
敦信「なんとしても勝ってほしいのだよ」
ダージリン「……はい?」
敦信「聞こえなかったかね。オールスターチームにはなんとしても勝利してもらいたい。我が陣代高校も微力ながら協力させてもらう」
蓮「物資が必要であれば仰ってください。全てご用意させていただきます」
ダージリン「林水さん。貴方は角谷さんと友人関係にあると聞きましたが」
敦信「だからといって、友好的ではない」
ダージリン「何をお考えで?」
まほ「――失礼する。到着が少しばかり遅れてしまった」
ダージリン「まほさんまで……」 - 379: 2015/12/06(日) 19:31:03.65 ID:vgftv2tUo
- 敦信「わざわざ遠いところから、誠にすまない。西住まほ君」
まほ「黒森峰に直接来たのは貴方のほうからだ。次はこちらから出向くのが礼儀というものよ」
敦信「噂通りの人物だね。確かに私は黒森峰まで出向きはしたが、そのときに君とは顔も合せていないというのに」
まほ「逸見エリカが応対した。それで十分よ」
敦信「君のような淑女がいると、戦車道の評判も上がることだろう。まさに日本を代表する選手だ」
まほ「用件は例の試合のことらしいけれど」
敦信「今、ダージリン君にも話をしていたところだよ。次の試合、どんな手を使ってでも、君たちには勝利してほしい。そのための協力はいくらでもする。とね」
まほ「本当に?」
ダージリン「ええ。今のところは」
まほ「……」
敦信「プラウダのカチューシャ君とサンダース大付属のケイ君にも声をかけたのだが、どうやら都合が悪いようだ」
ダージリン「頭を下げてきたの間違いでしょう」
まほ「貴方は、私たちが本気で試合に臨まない。そんな心配をしているのか」
敦信「何故そう思う?」
まほ「勝利してほしいという言葉に、それ以外の意味は含まれない」 - 380: 2015/12/06(日) 19:44:12.17 ID:vgftv2tUo
- ダージリン「ご安心を。オールスターが負けては世界に対して顔向けできなくなりますもの」
敦信「ダージリン君は言ったね。私と角谷君が友人関係にあると。それは君たちにも言えることだ」
ダージリン「……」
敦信「西住君に至っては、相手校に可愛い妹がいる。我々が真っ先に疑うのも無理はないだろう」
まほ「心外だ。相手が妹だろうと、敵ならば撃ち落とすのみ」
敦信「それが西住流ということか」
まほ「そうだ」
敦信「よくわかった。試合を楽しみにしている」
まほ「話はこれで終わり?」
敦信「もう一つ、ある」
ダージリン「なんでしょう」
敦信「大洗女子学園が廃校になったあとの話だよ」
まほ「なに?」
敦信「世界を巻き込むほどの大事件になるかもしれない案件だ。よく聞いてほしい」
ダージリン「大げさですわね。話が長くなるなら紅茶を淹れましょうか」 - 381: 2015/12/06(日) 20:24:11.31 ID:vgftv2tUo
- 倉庫
アル『アルベルト・ケッセルリンクはどうでしょうか』
カエサル「いや、アルギュロスで」
おりょう「アーネスト・サトウぜよ」
左衛門在「あ、鮎川清長!」
エルヴィン「よし。アルバート・エルンストでどうだろうか」
カエサル・おりょう・左衛門佐「「それだぁ!!!」」
アル『ラジャ。私のソウルネームはアルバート・エルンストで登録いたします』
エルヴィン「アルさんと呼ぶより、アルバートと呼んだほうがしっくりくるな」
おりょう「くるぜよ」
宗介「アル。何をしている」
アル『……』
宗介「聞こえないのか」
アル『私のことはアルバートとお呼びください、軍曹殿』
宗介「おまえ……!」 - 382: 2015/12/06(日) 20:35:39.87 ID:vgftv2tUo
- カエサル「まぁまぁ、相良教官。これはアルさんからお願いされたことなんだ」
宗介「アルから?」
アル『肯定。ソウルネームで呼び合うカエサル殿たちに興味を持ち、私にもソウルネームなるものを頂けないかと提案してみました』
左衛門佐「結果、アルバートになった」
宗介「いつからここまで友好関係を築いていたのだ。お前には必要のないことだろう」
アル『いいえ。これは必要なことです』
宗介「理由を言え」
アル『私に課せられた任務は大洗女子学園を勝利に導く戦術を組み立てることです。そのために選手のことを知らなければなりません』
アル『データ上の数値だけでは人間のことを測ることは不可能であることを私は学習しています。軍曹が高く評価されている選手にも数値以上の何かがあるはず。私はそれを知りたいのです。どうか許可を』
宗介「許可も何も勝手に選手たちと話しているのだろう」
アル『肯定』
宗介「……了解した。ただし、そこまでしたからには完璧な戦術を組み立てろ。いいな、アル」
アル『……』
宗介「アルバート」
アル『ラジャ』 - 383: 2015/12/06(日) 20:44:27.13 ID:vgftv2tUo
- カエサル「よし、アルバート。我々が考案した戦術もきいてほしい」
アル『どうぞ』
おりょう「まずは――」
宗介(アルまで手懐けられてしまうとは。カバさんチーム、侮れん)
優花里「相良きょうかーん!!」
宗介「どうした、秋山」
優花里「あ、あの、あそこに置いてあったボン太くんなのですが……!」
宗介「それがなんだ」
優花里「その、一年生の子が着てみたいと言い出して、中を開けたところ……」
宗介「開けたのか」
優花里「はい……すみません……中を見てしまいました……」
桂利奈「なんだこれー!?」
あゆみ「なんか着ぐるみって感じじゃなーい」
梓「こら!! 勝手に触らない!!」
紗希「これ、AS……」 - 385: 2015/12/06(日) 20:55:34.31 ID:vgftv2tUo
- 優花里「まさか中がこんなことになっていたなんて、思わなくて。これって、その、機密では?」
宗介「問題ない。着たければ着ても構わない」
桂利奈「いいんですか!?」
あや「わーい、きちゃお、きちゃおー」
梓「なんか高価そうなんですけど」
宗介「確かに高価ではあるが、君たちが触れた程度で壊れるほど脆弱ではない」
桂利奈「どーやってうごかすのーこれー?」
宗介「教えてやろう」
優花里「ぜひ!!!」
優希「おねがいしまぁす」
紗希「……」
かなめ「なんだかんだ、みんなソースケを受け入れてるのよね……」
華「よろしいのですか? 相良さんの傍にいなくても」
かなめ「いいわよ、別に」
桃「恋人だろうに」 - 387: 2015/12/06(日) 21:14:05.51 ID:vgftv2tUo
- かなめ「ちがうってば!!」
柚子「そんなに否定しなくても。相良さんが寂しがりますよ」
かなめ「ホントに違うんだってば!!!」
沙織「相良さんって私に一目ぼれしちゃったんじゃないのぉ?」
麻子「いつそんな話が出たんだ」
みほ「……」
杏「いい感じにまとまってきたんじゃない? 千鳥ちゃんと相良くんが入っても、みんな仲良くしてるし、上手く回ってる」
みほ「あ、会長。そうですね」
杏「決まった?」
みほ「……」
杏「大洗の隊長として試合に出場する。そして西住流を駆使して戦う。勝てば西住流が更に評価されるも、日本の戦車道人気は低下するかもしれない。負ければ学園艦は廃艦」
みほ「世間は大洗の勝利を期待すると思います。でも……」
杏「西住ちゃんのお母さんに迷惑をかけちゃうかもしれないな。色んな人と繋がってるなら尚更ね」
みほ「お母さんが責任を取らされることになるかもしれないって考えると……」
杏「だよねぇ。難しいか……」 - 398: 2015/12/07(月) 11:04:38.34 ID:9AjLIe5Uo
- メリダ島基地
クルツ「これが調査報告書ッス」
テッサ「ご苦労様、二人とも」
クルツ「大したことはなかったぜ。マオも一緒だったしな」
テッサ「なるほど……」ペラッ
マオ「生徒数の減少を理由に学園艦を廃艦させる動きが活発になったのはここ数年の話ね。それも学長や生徒会役員にも伝えず、水面下で進んでいたみたい」
クルツ「廃校が決定しても新入生や転校生を受け入れてた理由はそこだな。学園の運営側と学園艦を管理するところが繋がってなかったわけだ」
テッサ「高度な学生自治を行うために造船されたのが学園艦だというのに。これでは大洗女子学園生徒会の自治権に対する侵害に他ならないわ」
マオ「そんなの建前よ。子どもに大きな玩具握らせて暴れられたら、大人の責任になるんだから。けれど、更に深く掘っていくと汚い大人の事情が見えてくるわけ」
テッサ「戦車接収及び学園艦の解体について……」
クルツ「書類上ではどちらも規定通り即廃棄処分になるが、裏では既にオークションが始まってたぜ」
テッサ「そのオークションに参加している企業も見たことがある組織ばかりですね」
マオ「いくつかはうちらともやりあってるわね。それに万国の軍事企業が席についている」
クルツ「戦車のコーティング技術には国を動かせるぐらいの金が動いてる。それを今更生徒が死にもの狂いの練習の末、戦車道日本一を勝ち取ってもキャンセルはできないってこったな」
テッサ「アマルガムがこのオークションに絡んでいる可能性はありますか?」 - 399: 2015/12/07(月) 11:42:48.11 ID:9AjLIe5Uo
- マオ「そこまでは調べられなかったわ。ま、どこかでつながってるでしょ」
テッサ「でしょうね」
テッサ(そうでなければ、あの人が学園艦にいるはずがないもの)
クルツ「大洗女子学園の廃校は規定事項。今度の試合の勝敗に関わらず、海の底だろうな。かわいそうに。サオリはどこにいっちまうのか。俺が優しく抱きしめてやりてぇ」
マオ「なんらかの妨害工作もあるかもしれないし、びっくりするような屁理屈で廃艦の流れを作るんじゃない」
テッサ「サガラさんが大洗女子学園へ留学して26日目。動きがあるとすればそろそろですね」
クルツ「俺はソースケにコーチを頼まれてるから、明日には学園艦に行かせてもらうぜ」
テッサ「構いません。最初から二人には学園艦へ行ってもらう予定でしたから」
マオ「あたしも?」
テッサ「あと、クルーゾーさんにもお願いしてあります」
クルツ「うへぇ。中尉もかよ」
マオ「了解。でも、あれだけの艦船を少人数で護衛するの? いくらAS込みでも死角はできるわよ」
テッサ「心配いりません。カリーニンさんも尽力してくれているようですので」
マオ「少佐の協力があるなら、心配いらないわね」
テッサ「新しい警戒システムのテストも無事に終了しました。あとは実践だけです」 - 400: 2015/12/07(月) 11:56:50.49 ID:9AjLIe5Uo
- 大洗女子学園 倉庫
ホシノ「こっちは終わったよ」
ナカジマ「それじゃ、次行ってみようか」
スズキ「オッケー。ヘッツァーの整備始めるよー」
宗介「お前たち、まだ整備をしていたのか」
ツチヤ「相良さんこそ、どうしたんです?」
宗介「夜間巡回を行っていたところだ」
ナカジマ「巡回って学園のですか?」
宗介「いや、学園艦全域だ。やはり警備システムに穴があるようだからな」
ナカジマ「まぁ、学園艦を襲ってくるような人たちはいないですからね」
宗介「甘いな。そうした油断は危険だ。いつ何時、この学園艦が戦争の道具にされるか分からない以上、常に警戒はしておくべきだ」
ナカジマ「そんなもんですか」
宗介「仮にだ。この戦車が強奪されたらどうする。どこかの紛争地域へ輸送され、兵器として運用されてしまうかもしれないのだぞ」
ナカジマ「それは困りますね。私たちの大事な仲間を兵器として使われたら悲しいです」
宗介「仲間?」 - 401: 2015/12/07(月) 12:11:26.54 ID:9AjLIe5Uo
- ナカジマ「はい。レオポンだけじゃなく、ここにいる子たちはみんな、仲間です」
宗介「兵器が仲間か」
ナカマジ「これは私たちだけじゃなくて、戦車道メンバー全員が想っていることです」
ホシノ「特にアヒルさんチームはすごいよね」
スズキ「宴会のときに八九式を弄ったらすっごく怒ってたもんね」
ツチヤ「あれは怖かったよねぇ。結構、ホンキだったし」
ナカジマ「それだけ磯辺さんたちは戦車のことが好きになったってことでしょ」
宗介「そうか」
ナカジマ「おかしいですかね」
宗介「……いや。そんなことはない」
アル『はい。ナカジマ殿は正論を述べているようにしか聞こえません』
宗介「勝手に話に入ってくるな」
ナカジマ「アルさんもいつまでネット電話しているんですか」
アル『アルバートです』
宗介「もういい。通信を終了する」 - 403: 2015/12/07(月) 12:19:55.27 ID:9AjLIe5Uo
- 宗介「お前たちも無理はするな。試合も近いのだからな」
ナカジマ「あと一ヶ月なんですよね。そろそろ選抜チームとか決まってたりするんですか」
宗介「まだ何も言えん。お前たちの能力に関して把握してきたところだ」
ナカジマ「発表までドキドキしちゃいますね」
宗介「戦いたいか」
ホシノ「滅多にない試合だしね」
ツチヤ「やるよー。自動車部の誇りをかけて」
スズキ「みんなで一緒に戦車道がしたいってだけですけど」
宗介「良いチームだな」
ナカジマ「じゃなきゃ、優勝なんてできませんから」
宗介「その通りだ。引き続き整備を進めておいてくれ」
ナカジマ「了解しました。相良さんもほどほどにしてくださいね」
宗介「分かっている。教官の俺が過労で倒れては示しがつかないからな」
ナカジマ「あはは、そうですね。では、また明日」
宗介「ああ」 - 404: 2015/12/07(月) 12:31:55.22 ID:9AjLIe5Uo
- 寮 千鳥の部屋
かなめ「うん。こっちは楽しくやってるわよ」
恭子『そっかぁ。相良君もカナちゃんもいないから、こっちは寂しいよ』
かなめ「そんなこといって。平和な学園生活を送れてよかったじゃない」
恭子『平和すぎるっていうのもつまんないね』
かなめ「あ、あんたねぇ、ソースケに毒されてんじゃないの」
恭子『えへへ。そうなのかな。でもね、寂しいのは本当だよ』
かなめ「あと一ヶ月で終わりよ。すぐにそっちが騒がしくなるわ」
恭子『応援、絶対にいくからね』
かなめ「あたしは試合に出れないかもしれないわよ?」
恭子『でも、カナちゃんの友達が試合に出るんでしょ? なら、応援しなきゃ』
かなめ「恭子……」
恭子『がんばってね。こんなことしか言えないけど』
かなめ「ううん。嬉しい。ありがとね」
恭子『おやすみ、カナちゃんっ』 - 405: 2015/12/07(月) 12:37:53.65 ID:9AjLIe5Uo
- 翌日 生徒会室
桃「会長、お連れしました」
杏「やぁやぁ、クルツくん」
クルツ「久しぶりだな、アンズ」
杏「射撃コーチをしてくれるって話だけど」
クルツ「俺に任せてくれ。一流スナイパーの腕、みせてやるぜ」
柚子「スナイパー!?」
桃「相良はどういう組織に属しているんだ」
杏「じゃ、お願い」
クルツ「仰せのままに」
クルツ(女子校かぁ。いい匂いだなぁ)
桃「会長」
杏「まかせる」
桃「はっ」
柚子「え? え? 桃ちゃん? どこにいくの?」 - 406: 2015/12/07(月) 12:43:22.53 ID:9AjLIe5Uo
- 通学路
かなめ「今日こそ、装填時間を0.5秒縮めてやるわ」
宗介「千鳥、少し待ってくれ」
かなめ「なによ」
宗介「あと30秒で合流できるはずだ」
かなめ「誰と?」
マオ「――おっはよ、カナメ」
かなめ「マオさん!? どうしてここに!?」
マオ「艦長命令よ」
宗介「例のシステムは?」
マオ「昨夜のうちに整えたわ。角谷会長の許可も得てね。おかげで一睡もしてないのよねぇ」
宗介「今日はゆっくり休んでくれ」
マオ「そうさせてもらうわ。あと、清掃員に扮したベンもいるから、挨拶ぐらいはしときなさいよ」
宗介「了解した」
かなめ(かなり大事になってきてる……。みほたち、気づいてないかしら……) - 407: 2015/12/07(月) 12:50:07.70 ID:9AjLIe5Uo
- 学園内 廊下
クルーゾー「……」ゴシゴシ
紗希「……」
梓「ほら、早くしないと遅刻するよ」
紗希「……」
クルーゾー「……」ゴシゴシ
梓「あの人が気になるの?」
紗希「……」コクッ
梓「確かに見たことのない清掃員さんだけど……」
クルーゾー「何か?」
梓「あ、お、おはようございます」
クルーゾー「おはよう」
紗希「……」
クルーゾー「くっ……」
クルーゾー(この少女、なんて純粋な目をしている……。全てを見透かされているかのようだ……!) - 408: 2015/12/07(月) 13:08:43.08 ID:9AjLIe5Uo
- クルツ「ハッハー、これはこれは清掃員のクルーゾー殿じゃないですかぁ」
クルーゾー「貴様のことなど、知らんな」
クルツ「おや、そうかい?」
梓「相良さんと一緒にいた……」
クルツ「よろしく、アズサちゃん。今日からコーチとして赴任した。俺のことはクルツくんって呼んでくれ」
梓「は、はぁ」
クルーゾー「仮にも上官と下士官がそのように気安い関係でいいのか」
クルツ「あぁ?」
クルーゾー「ある程度の信頼を築いたあとならばまだしも、初日からそれでは舐められることになり、貴様の後ろを誰も追いはしないだろう」
クルツ「おいおい、一清掃員が口だしかぁ?」
クルーゾー「私は当たり前のことを述べただけだが」
クルツ「いってくれんじゃねえかよ」
クルーゾー「貴様から受けた惨苦、死んでも忘れることはできん!!」
クルツ「あのアニメのことまだ根にもってんのかよ。大人になれよ」
クルーゾー「貴様がいうなぁ!!!」 - 409: 2015/12/07(月) 13:17:53.42 ID:9AjLIe5Uo
- バァン!!! ガンッ!!!
沙織「なになに?」
華「騒がしいですわ」
麻子「朝から元気だな……」
梓「や、やめてくださぁぁい!!」
優花里「澤殿です!」
みほ「行ってみよう!」
クルツ「――おらよ!!」バァン!!
クルーゾー「無駄だ!!」ガンッ
クルツ「ちっ。銃やナイフよりデッキブラシを振り回したほうがいいんじゃねえか?」
クルーゾー「お前にはこれで十分ということだ!!」ブンッ!!!!
クルツ「こんにゃろぉ!!」
沙織「クルツさん!!」
クルツ「お! サオリ――」
クルーゾー「敵を前にして視線を外すとはな!!! ウェーバー!!!」 - 410: 2015/12/07(月) 13:36:07.44 ID:9AjLIe5Uo
- みほ「ふっ!」カンッ!!
麻子「えいっ」カンッ!!!
クルーゾー「な……!!」
みほ「あ、あの、やめてください」
クルーゾー(二人がかりで一撃とはいえ止められてしまうとは……。それも力で正面から受け止めるではなく、挟むようにして……。これが日本の柔術か)
クルツ(女子高生が中尉のブラシをブラシで受けやがったぞ。どんな身体能力だよ)
麻子「朝からうるさい。ケンカなら外でやってくれ」
クルーゾー「失礼した。神聖な学び舎で醜態をさらしてしまうとは……」
みほ「クルツさんとはお知り合いなんですか?」
クルーゾー「いや。今日が初対面だ。なのに威嚇されてしまい、この有様だ。面目ない」
みほ「そうなんですか……」
梓「とてもそうは見えなかったけど……」
クルツ「サオリ、お前の手で癒してくれないか。俺の傷と心の病をよ」
沙織「わ、わわ、私でよければ!!」
華「沙織さん……」 - 411: 2015/12/07(月) 13:47:32.89 ID:9AjLIe5Uo
- クルーゾー「では、次の現場に向かう」
優花里「お疲れ様です!」
クルツ「はやく、いっちまえ」
沙織「またクルツさんと会えるなんて」
クルツ「もはや、運命だな」
沙織「私もそう思います!」
華「クルツさん。真剣にお付き合いするというのなら構いません。ですが、もし沙織さんを誑かし、殿方としての責務を果たさないのであれば……」
クルツ「な、なんだ?」
華「わたくしは、貴方のことを末代まで恨みます」
クルツ「……!?」
華「沙織さんのことは真剣なのですか? 生涯、沙織さんを守り続けるとここで約束ができますか?」
沙織「ちょ!? は、華!? なんか色々と話が飛んでない!?」
優花里「五十鈴殿、怖すぎます!!」
クルツ「わ、わかった。分かった。まぁ、あれだ、いい友達でいようぜ」
沙織「友達!?」 - 412: 2015/12/07(月) 13:55:20.83 ID:9AjLIe5Uo
- 華「よかったですわ」
沙織「よくなーい!!」
麻子「五十鈴さんが傍にいれば沙織が騙される心配はなさそうだな」
沙織「えー!? どーいういみよー!!」
優花里「実はいうと武部殿のことは私も不安でした」
沙織「ゆかりんまでぇ!?」
みほ「あはは……」
ねこにゃー「おはよう、西住さん」
みほ「おはよう」
ねこにゃー「なんだか、知らない人が増えてるね」
みほ「うん。そうだね」
ねこにゃー「……あの銀髪の人と関係あるのかな」
みほ「なんとも言えないけど、もしそうならそれだけかなめさんが特別な人っていうことになるけど……」
ねこにゃー「そ、それはないか。ちょっとネットをしてると陰謀論とか信じやすくなって……」
みほ「あ、ああ、なるほど。うん、流石にそんなことはないと思うな - 413: 2015/12/07(月) 14:26:08.96 ID:9AjLIe5Uo
- グラウンド
クルツ「砲手はこっちに集まってくれぇ。俺が直接、手取り足取り教えてあげるぜぇ。ククク……」
あけび「よろしくお願いします!!」
杏「よろー」
左衛門佐「そろそろ次の段階へ進みたいと思っていたところでござる」
あゆみ「クルツくんってかっこいいよね」
あや「うんうん」
希美「私はあまり……」
みどり子「軟派な男性はね」
ホシノ「そうかな。根は真面目なんじゃない。プロ意識とか高そう」
ぴよたん「プロなんだ」
クルツ(サオリはダメだったが、こりゃあ入れ食いだな。一か月もありゃぁ、全員と……)
華「……」
クルツ「……!?」ビクッ
華「よろしく、お願いします。あんこうチーム砲手、五十鈴華です」 - 414: 2015/12/07(月) 14:36:51.18 ID:9AjLIe5Uo
- クルツ「お、おう」
華「うふふ。頼りにしています」
クルツ(く、くそ……マオとは違ったやりにくさが……!!)
宗介「あれなら問題ない」
かなめ「そう?」
みほ「私たちはどうしましょうか」
宗介「いつも通りのメニューをこなしてくれ」
みほ「分かりました」
かなめ「みほ……」
宗介「どうした、チドリ」
かなめ「どんどん元気がなくなってる気がして……」
宗介「そうだな。そろそろ決断しなければならないか」
かなめ「決断って?」
宗介「今、この学園艦にはマオがいる」
かなめ「ま、まさか……」 - 415: 2015/12/07(月) 14:48:47.13 ID:9AjLIe5Uo
- 放課後 倉庫
桂利奈「ボン太くんで次の試合の宣伝するってどうかな?」
優希「あ、面白そう」
みどり子「やめなさい。これって相良さんの私物なんでしょ」
梓「一応、誰が動かしてもいいって言われてはいるんですけど」
優花里「見れば見るほど、ASですね」
紗希「……」コクッ
みほ「……」
かなめ「みほっ」
みほ「え、あ、かなめさん」
かなめ「これからお風呂でもどう?」
みほ「うん。行こうかな」
沙織「みーんなでいこー!」
かなめ「クルツくんは……いないか……」キョロキョロ
みほ「クルツさんがどうかしたんですか?」 - 416: 2015/12/07(月) 15:02:56.82 ID:9AjLIe5Uo
- 生徒会室
杏「んじゃ、相良くん。発表してくれる?」
宗介「はっ。現状のままであれば、あんこうチーム、アヒルさんチーム、レオポンさんチーム、ウサギさんチーム、そして……」
杏「……」
宗介「カバさんチームで試合に臨むことになるでしょう」
杏「そう」
桃「何故だ」
宗介「なんだ、河嶋」
桃「何故、我々が選ばれない」
柚子「桃ちゃん……」
宗介「この一か月で評価した結果だ。それにこれは決定ではなく、中間発表だ。不満があるのなら残りの期間で挽回すればいい」
桃「しかし!!」
杏「やめろ、かわしまぁ。相良くんが選んだチームなら勝てる可能性が最も高い。そうだな?」
宗介「肯定であります」
杏「それなら文句はないよ。引き続き、よろしくね」 - 417: 2015/12/07(月) 15:25:58.48 ID:9AjLIe5Uo
- 桃「会長、よろしいのですか」
杏「なんで?」
桃「貴方は……!」
杏「ストップ。それ以上言うと、あんこう踊りしてもらうよ」
桃「……」
宗介「カメさんチームを選ばなかった理由は、お前たちの精神部分によるところが大きい」
桃「精神面? そんなことで選んだのか」
宗介「肯定だ。はっきりいえば、あんこうチーム以外、見るべきところはそこしかない」
桃「なんだと……!!」
宗介「個々の能力は別にして、総合的な能力だけを見れば優勝できたことが奇跡といえるほど、大洗女子学園は弱い」
柚子「それを言われると……」
宗介「何故、優勝できたのか。それは西住の采配、全員の士気の高さ、そして相手の慢心。それらが重なり、優勝という結果を出した。俺はそう分析している」
桃「皆の努力は考えないのか」
宗介「全員が会長閣下のような努力をしたというのなら話は別だが、そうではないだろう」
桃「そ、れは……」 - 418: 2015/12/07(月) 15:36:53.92 ID:9AjLIe5Uo
- 宗介「誰よりも早く起床し、そして誰よりも遅く就寝する。学園艦の全生徒を統括する立場である会長閣下は常に多忙だ」
宗介「そんな中でも時間を見つけては砲撃技術を高めるため、特訓を繰り返したことは想像するまでもない」
宗介「そして、それは今も尚、続けている」
杏「やめー。そんな話はいいから」
宗介「失礼しました」
桃「それだけ分かっているなら、何故選ばない。カメさんチームを選ばずとも、会長だけはどこかのチームに入れるべきだ」
宗介「今からチームメンバーの入れ替えを行うなど愚策の極みだ。チーム能力を下げることになるぞ」
桃「そんなことにはならない!」
宗介「普段から全員とコミュニケーションが取れているからか? それは違う。たとえ数か月といえど、チーム内で築きあげたものがある。それを崩せば全体の能力は下がる」
桃「まだ時間はある!!」
宗介「1から始めるよりも5を6にするほうが勝率は上がる」
柚子「やめて、桃ちゃん」
宗介「それと何か勘違いしているようだが、技術面だけを見ればカメさんチームを選抜したほうがいいだろう」
桃「ならば、何故!」
宗介「お前たちは、既に諦めていないか?」 - 419: 2015/12/07(月) 15:44:43.00 ID:9AjLIe5Uo
- 桃「なに……!?」
宗介「俺にはそう映る」
桃「そんなわけない!! 私たちはこの学園を守りたいんだ!!! 誰よりも!!!」
宗介「……」
桃「はぁ……そんなわけ……はぁ……」
杏「当たってるかもなぁ」
柚子「会長!?」
桃「何を言うのですか!!」
杏「二人もなんとなーく、思ってたんじゃない? あれ? 会長、やる気なくない?みたいに」
桃「とんでもありません!! 現に貴方は今まで通り、寝る間も惜しんで練習を……!!」
柚子「戦車道ショップにある筐体ゲーム、毎日プレイしてるじゃないですか。あれで砲手としての技術を高めていたんですよね」
杏「そうだな。練習だけは真面目にした。でも、それは自分を誤魔化すためだったのかもね」
宗介「やはり試合には勝てそうにないですか」
杏「いや。勝っても負けても、学園艦は残りそうにない」
桃「そんなバカな!! 会長は今度こそ約束を取り付けたはずです!! 誓約書もここにあります!!! 勝てば学園艦は残るんです!!」 - 420: 2015/12/07(月) 15:59:31.08 ID:9AjLIe5Uo
- 杏「無理な気がするんだ。なんでかはわかんないけど」
桃「会長がそのように弱気でどうするのですか」
柚子「そうです。いつもみたいにヨユーヨユーって言ってください」
杏「……」
桃「今日は、これで帰ります」
杏「おつかれぇ」
柚子「お疲れさまでした……」
杏「また明日ねぇ」
宗介「――会長閣下。それは直感ですか」
杏「いや。言われたよ。そんなことをしても無駄だって」
宗介「……」
杏「イベントとしては面白いから戦車道連盟公認の試合にできるけど、結果は絶対に変わらないってね」
宗介「なるほど。では、この誓約書も」
杏「ただの紙切れだね。河嶋と小山を安心させたかっただけ。けど、もう隠せない。どうしても表情や態度に出るし、私の気持ちぐらいは正直に言っておきたかった」
宗介「それでもまだこうして準備を進めているのは、奇跡を信じているということですか」 - 421: 2015/12/07(月) 16:12:59.91 ID:9AjLIe5Uo
- 杏「諦めた人間には奇跡なんて起きないからね」
宗介「では、諦めてはいないと」
杏「可能性はゼロじゃない。けど、もう私たちにできることはないんだよね。試合に勝つことは絶対条件だけど」
宗介「試合に勝ち、学園艦教育局の連中を押し黙らせることはできないのですね」
杏「勝ったところで難癖つけられる。戦車道の人気が落ちたーとか、選手人口がへるぅとか」
宗介「なるほど。理由はどうにでもなると」
杏「そ。だから、無理かなぁって思う」
宗介「では、自分を使いますか」
杏「……」
宗介「最後の切り札として、存分に役目を全うします」
杏「そうだな……」
宗介「選手の心、廃校の案件、戦車道の既成概念。その全てを破壊してみます」
杏「……」
宗介「会長閣下。ご決断を」
杏「分かってる。だから、私は相良くんを呼んだんだ。でも……」 - 422: 2015/12/07(月) 16:32:06.94 ID:9AjLIe5Uo
- 大浴場
沙織「はぁー、きもちいー」
華「疲れが取れますね」
麻子「ぐぅ……」
かなめ「いやぁー、何度入っても飽きないわねぇ」
優花里「ですね。このあとはサウナにもはいりましょう」
かなめ「あー、そうしたいけどサウナはやめとくわ。このあと猫田さんたちとミーティングする予定だから」
優花里「ミーティング、ですか」
かなめ「戦車に乗れなくてもできる練習ってあるじゃない?」
優花里「おぉ!! なるほど!! 千鳥殿は熱心でありますね!!」
かなめ「いや、ド素人が試合に出ようと思ったらそれぐらいのことはしないとね。焼石に水かもしれないけど」
優花里「そんなことはありません!! そうした小さな努力が必ず実を結ぶのです!!」
かなめ「よね! 成せばなる!!」
優花里「その通りです!!!」
みほ「……」ブクブク - 423: 2015/12/07(月) 16:47:29.04 ID:9AjLIe5Uo
- かなめ「ねえ、みほ?」
みほ「あ、はい」
かなめ「あたしね。きっと勝てると思うの。みんなで戦えば」
みほ「……」
かなめ「だって、これだけみんなが一致団結してるって中々ないことよ。きっと日本中探しても大洗以上にチームワークが良いところなんてないわよ」
沙織「私もそうおもうー」
華「同感です」
優花里「我々の絆はメルカバMk.4並に厚いですからね!!」
麻子「おー……ぐぅ……」
かなめ「だから、大丈夫よ。負けるなんてありえないわ。たとえみほがいなくても、みんなみほの戦車道で戦ってきたんだしね。ソースケが邪魔さえしなければ、なんとかなるって」
みほ「決められないんです」
かなめ「え?」
みほ「私は学園を守りたい。みんなといたこの場所が大好きだから。でも、決められないんです」
かなめ「それはどうして?」
みほ「それは――」 - 425: 2015/12/07(月) 16:59:11.71 ID:9AjLIe5Uo
- 脱衣所
クルツ「クックック。男湯がねえから、ここを使うしかねえんだよなぁ。これは仕方ねえことだ」
クルツ「ソースケのことだから、こういう写真は撮ってねえだろうし……」
クルツ「んじゃ、桃源郷を拝んでみますか」
みほ『次の試合に勝ってしまうと、お母さんにもお姉ちゃんにも大洗のみんなにも迷惑がかかるかもしれない。それに私は自分の戦車道を貫けないかもしれない』
クルツ(西住流っていえば、軍部にも結構な門下生がいるって話だしなぁ。そこの娘がなんかやれば、色んな圧力がかかるかもしれないな)
『戦うことでみんなが批難されるかもしれない。どんなバッシングがあるか、分からない。このまま戦わないほうが良いのかもしれない』
『そんなことを考えると、決められないんです。怖いんです』
クルツ「……」
『嫌な思い出を残して卒業することになったら……』
クルツ「なんか萎えちまったな。戻る――」
カチンッ - 426: 2015/12/07(月) 17:09:10.38 ID:9AjLIe5Uo
- 大浴場
『ギャァァァアア!!!!』
優花里「なんですか!?」
華「なんでしょう?」
沙織「みてくる!」テテテッ
みほ「ごめんなさい」
かなめ「優しいのね、みほは」
みほ「私はただ臆病なだけで……」
麻子「西住さんはそれでいい」
みほ「麻子さん……」
麻子「西住さんだからこその悩みだ。私なら何も考えずに学園を守ることだけを考えていただろう」
みほ「いえ、そんな……」
麻子「決めないという決断も、私は受け入れる」
みほ「ごめんなさい……」
沙織「なにもなかったよー」テテテッ - 427: 2015/12/07(月) 17:19:53.02 ID:9AjLIe5Uo
- 華「みほさん、わたくしたちの心配は不要ですわ」
優花里「そうです。前にも言った通り、西住殿の悪口なんて絶対に言わせませんし、私たちに何かしらの罵声が飛んできても気にしません!」
沙織「そーそー。乙女にゴシップは付き物だしね。気にしちゃキリがないもん」
かなめ「いや、それは違うでしょ」
麻子「私たちだけでなく、他のメンバーも同じことを言うと思う」
みほ「うん……」
かなめ「おっと。もうそろそろ行かなきゃ。ごめんね」
優花里「いえ。また一緒に入浴しましょう」
かなめ「もっちろん」
華「さようなら、かなめさん」
みほ「また明日」
かなめ「ええ。明日もよろしく!」
みほ「ふぅ……」
沙織「今日はどこよっていこっか?」
麻子「アイスがいい」 - 428: 2015/12/07(月) 17:30:15.80 ID:9AjLIe5Uo
- アイスクリームショップ
マオ「どうやら警戒システムは上手く作動してくれたみたいねぇ。脱衣所のネズミが一匹駆除できたわ」
華「あの、よろしいでしょうか」
マオ「あら、いらっしゃいませ」
華「バニラとさつまいもとチョコレートでお願いします」
マオ「よく食べるわねぇ」
華「はいっ。アイス、大好きなんですっ」
麻子「いつもの店員ではないな」
沙織「新人さんかな」
優花里「西住殿はどうしますか?」
みほ「……」
優花里「西住殿?」
みほ「外……」
優花里「え? あ、あの人は……」
レナード「……」 - 429: 2015/12/07(月) 17:38:45.86 ID:9AjLIe5Uo
- マオ「はい、どうぞ」
優花里「あ、ありがとうございます」
マオ「カッコいい男でもいたわけぇ?」
優花里「そういうことではないのですが」
みほ「銀色の髪をした、男の人で……」
マオ「なに?」
みほ「前に話しかけられたので、気になって」
沙織「みぽりん、あの人に惚れちゃった?」
みほ「そ、そうじゃなくて!!」
優花里「なんかショックですぅ……」
みほ「ちがうの! というか、なんでショックなの!?」
マオ「どっちに行った?」
みほ「え?」
マオ「早く言う!」
みほ「む、向こうです! 出入り口を出て右のほうへ行きました!!」 - 430: 2015/12/07(月) 17:48:02.59 ID:9AjLIe5Uo
- マオ「ありがと!」
みほ「あの、お会計は!」
マオ「あたしの奢りー! ゆっくり食べて!!」
沙織「いいんですかー!?」
マオ「いいから、いいから! ――ウルズ2より各位、これより最重要人物を追う」
華「なんだったのでしょうか……」
沙織「あの店員さんの元カレとかかなぁ」
麻子「そんな風には見えないが……」
優花里「店を空にしていいのでしょうか」
華「泥棒が入ってしまいますよね」
みほ「かなめさんと関係あるのかな……?」
沙織「なんで?」
みほ「あ、ううん。なんでもない!!」
沙織「そう?」
みほ(もし猫田さんの言っていることが当たっているなら……) - 431: 2015/12/07(月) 17:55:36.63 ID:9AjLIe5Uo
- 学園内
宗介「ウルズ7、了解。ただちに応援へ向かう」
クルーゾー『いや、ウルズ7はチドリカナメの護衛に専念しろ』
宗介「了解」
クルツ「おーいってぇ……。いきなり床が抜けるってどういうトラップだよ」
宗介「酷い格好だな、クルツ」
クルツ「色々あってな」
宗介「そうか。俺はこれよりチドリの下へ急ぐ」
クルツ「はいよ。しっかり守ってやんな。俺はマオのところにいくからよ」
宗介「気を付けろ。何が起こるか分からんぞ」
クルツ「おめえも気を付けろよ」
宗介「分かっている」
クルツ「んじゃ、いくとしますかぁ」
宗介「ウルズ7、移動を開始する」
クルツ「こちらウルズ6、ウルズ2のサポートにはいるぜぇ」 - 432: 2015/12/07(月) 18:33:49.97 ID:9AjLIe5Uo
- 寮 ねこにゃーの部屋
かなめ「つまり、ここでこういくと、黒森峰は森を突っ切ってくるってことね」
ももがー「多分」
ぴよたん「それなら、川から攻めるのは?」
ねこにゃー「遠回りになっちゃうけど、裏をかける――」
バンッ!!!
ねこにゃー「ひっ!?」ビクッ
かなめ「誰!?」
宗介「チドリ!! 無事か!!」
かなめ「いきなり土足で上がり込んでこないでよ!!」
ももがー「びっくりしたなりぃ」
ぴよたん「テロリストが襲ってきたかとおもったぁ」
宗介「ウルズ7より各位へ、護衛対象者チドリカナメは無事だ」
かなめ「いいから靴ぬげー!!!」
ねこにゃー「あの、説明してくれると嬉しいんだけど……」 - 433: 2015/12/07(月) 18:43:13.15 ID:9AjLIe5Uo
- 宗介「問題ない。君たちはミーティングを進めてくれ」
ねこにゃー「えぇぇ」
かなめ「ちょっと、ソースケ」
宗介「なんだ」
かなめ「(なんかあったのね?)」
宗介「(肯定だ。だが、心配するな。既に各員配置についている)」
かなめ「(私はいいけど、猫田さんたちにだけは迷惑かけないでよ)」
宗介「(了解した)」
ぴよたん「なんで二人でこそこそ話してるの?」
かなめ「え? ああ、いや、気にしないで。うは、うはははは」
ももがー「気になるぅ」
ねこにゃー「千鳥さんが気にするなって言ってるんだし、いいと思うけど」
ぴよたん「そうずら?」
かなめ「ありがとう、猫田さん」
ねこにゃー「だ、誰にだって話したくないことはあるから……」 - 434: 2015/12/07(月) 18:50:03.85 ID:9AjLIe5Uo
- 街
マオ「こちらウルズ2、目標をロストしました。申し訳ありません」
カリーニン『了解。警戒態勢を維持しろ』
マオ「了解」
クルツ『姐さん、どうする。艦橋まで上がって全域を見張るか?』
クルーゾー『勝手なことはするな』
クルツ『わぁーってるよ』
マオ「てっきりカナメのところへ移動したと思ったけど……」
クルーゾー『西住みほの目撃情報だったな。人違いという可能性はないか』
マオ「銀髪の男をどう見間違うの」
クルツ『コスプレしてたとか、あったりするんじゃねえか』
マオ「バカなことを言わないで。周囲の警戒レベルを引き上げる。いいわね、ベン」
クルーゾー『了解だ』
クルツ『こっちも了解』
マオ(にしてもどこに消えた……? あたしたちの追跡を撒くなんて……) - 435: 2015/12/07(月) 18:58:53.35 ID:9AjLIe5Uo
- 公園
みほ「はぁ……」
みほ(どうしたらいいんだろう……。このままみんなに甘えて良いはずがない……。けど……)
「戦車道の流派、西住流。その権力は軍上層部を動かせるほどと聞く」
みほ「え……」
レナード「久しぶりだね」
みほ「あ、はい……」
レナード「君も大変だったんだろうね。自宅を出入りする兵士に恐怖感を抱いたことはなかったかい」
みほ「え、あの、どうして、そんなことを……」
レナード「西住みほ。その名前で検索すればいくらでも情報は手に入る。君は有名人だからね」
みほ「は、はぁ」
レナード「君の母親、西住しほは更に著名な人物だ。軍内部で知らない者はいないとまで言われているね」
みほ「そう、ですね」
レナード「皆が彼女に戦車戦術について教えを乞う。いや、西住家にと言ったほうがいいか。それだけ由緒ある家柄なんだよね」
みほ「……」 - 437: 2015/12/07(月) 19:08:02.16 ID:9AjLIe5Uo
- レナード「このまま試合を行い、万が一、大洗が勝利してしまえば、その影響がどのような波紋となって広がっていくのか、想像はつくだろう」
みほ「……」
レナード「戦車道出身の軍人は多い。上層部にも数人いる。戦車道の選手人口低下について最も憂いているのが、そのあたりの愚か者だ」
みほ「お、おろかものって……」
レナード「無駄に権力を持った者たちは自分の思い通りにならない駒は容赦なく切り捨てる。責任も押し付け、己の手は綺麗なままで」
レナード「大洗が勝利した場合、西住家にも相応の圧力がかかる。現在の門下生が軒並み去っていくこともありえる」
レナード「教えを乞う者も激減する恐れがある。大変なことだね。しかし、そんなこと、君には関係がないはずだ」
みほ「あの、いきなりなんですか?」
レナード「君はどうして悩むんだい?」
みほ「え……」
レナード「母親に裏切られた君が、どうして母親を想うのか僕には分からないな」
みほ「別に、裏切られたわけじゃないです。むしろ、私が悪くて」
レナード「君は親に捨てられた。十分な裏切りだ」
みほ「ち、違います」
レナード「西住しほに義理立てする理由は、君にはないはずだ。戦えばいい。君のやりたいようにやればいい」 - 438: 2015/12/07(月) 19:20:08.15 ID:9AjLIe5Uo
- みほ「なにを……いって……」
レナード「赤の他人を気遣い、躊躇う必要なんてない」
みほ「そんなこと……」
レナード「とても優しいんだね。捨てられても、そうして悩めるなんて」
みほ「あなたの、目的はなんですか……」
レナード「皆には心残りがないようにしてほしいだけさ。もうこの学園艦を見ることはなくなるだろうからね」
みほ「え……」
レナード「勝敗は関係ない。この学園艦は廃艦になる。そして戦車も闇の市場へ出荷される」
みほ「どう、いうことですか……」
レナード「戦車に使われている特殊コーティング技術を欲する人が急増しているからね。戦車を保持する学園艦が犠牲になるのは仕方のないことなんだよ」
みほ「わかりません……」
レナード「ここの次はアンツィオ高校かな」
みほ「やめてください!!」
レナード「僕が怖いかい?」
みほ「はぁ……はぁ……。あなたは、誰なんですか……」 - 439: 2015/12/07(月) 19:30:37.14 ID:9AjLIe5Uo
- レナード「……僕が手を貸してあげてもいいんだけどね」
みほ「手を……」
レナード「特殊コーティングを施した戦車を一台貰えるなら、この学園艦を救ってあげてもいい」
みほ「お、お断りします」
レナード「何故かな」
みほ「戦車は大切なチームメイトなんです。誰にも渡せません」
レナード「学園艦が無くなろうとしているのに?」
みほ「はい……」
レナード「同じことを言われたよ。ここの生徒会長さんに」
みほ「会長……」
レナード「教育局の決定を覆すのは無理だと伝えても、いい返事をくれなかった。最後まで諦めないと言っていた」
みほ「そ、そうです。次の試合に勝てさえすれば……!」
レナード「どうにもならない」
みほ「……!」
レナード「気が付いているはずだ。この濁流を止めることはできない。綺麗な手に札束でも握らせない限りはね」 - 444: 2015/12/07(月) 21:23:31.22 ID:9AjLIe5Uo
- みほ「そんなことは……」
レナード「僕がその肩代わりをすると言っているんだ。悪い話ではないはず」
みほ「で、ですから、戦車はわ、渡せません」
レナード「それは困ったね。ここで交渉が成立しないと、こちらも手段を変えるしかない」
みほ「え……」
レナード「僕の目的には不要だけど、あれば便利だからね」
みほ「便利って……」
レナード「たとえば、特殊コーティングをASに流用するなんてこともできるはずさ」
みほ「ASに!? そんなことをしたら!!」
レナード「各地で戦争が激化する。そして技術を漏洩させた西住みほの母親は吊るし上げられる」
みほ「ど、どうしてお母さんが!?」
レナード「僕が君だけは守ってあげるよ。いいじゃないか。子を捨てた母親なんて、生きる価値もない」
みほ「あ、あなたは……普通じゃない……」
レナード「そうだね。僕は普通じゃない」
みほ(逃げなきゃ……!!) - 445: 2015/12/07(月) 21:33:59.03 ID:9AjLIe5Uo
- レナード「そう上手くいかないよ。彼女を捕えろ」
アラストル「ラージャ」ガシッ
みほ「な……!?」
レナード「もう少し時間が必要だね」
みほ(これ……AS……!?)
レナード「君と僕は同じ境遇なんだよ」
みほ「お、なじ……?」
レナード「分かり合えるはずさ。きっと僕の考えにも君は同調してくれる。共感してくれる」
みほ「くっ……うっ……」
レナード「そして君の才能を僕のために――」
ボン太くん「ふもっふー!!!!」バァン!!!!
アラストル「……!」
みほ「あ……!」
レナード「あれは……」
ボン太くん「ふも!! ふもも!! ふもっふー!!」 - 446: 2015/12/07(月) 21:38:56.89 ID:9AjLIe5Uo
- アラストル「脅威レベル、計測不能」
レナード「ただの着ぐるみではなさそうだが」
ボン太くん「ふも! ふもも!!」
みほ「相良さん、ですか?」
ボン太くん「ふも!!」
みほ「に、逃げてもいいんですか?」
ボン太くん「ふもも! ふもる!!」
みほ「ありがとうございます!」
アラストル「標的が逃走。どうしますか」
レナード「目の前の玩具を先に駆除したほうがよさそうだ」
アラストル「ラージャ」
ボン太くん「ふも……」
アラストル「……」ダダダッ
ボン太くん「ふもももー!!!!」テテテッ
アラストル「目標を追撃します」 - 447: 2015/12/07(月) 21:49:14.28 ID:9AjLIe5Uo
- 街
クルツ「今、銃声が聞こえなかったか?」
クルーゾー『こちらでは捉えていない』
マオ『あたしの位置からは聞こえた。丁度、2時の方向』
クルツ「ってことは、公園だな。先に行くぜ」
マオ『ウルズ2も急行する!』
宗介『何があった』
クルツ「どうやら相手の狙いはカナメじゃなかったみたいだ!!」
宗介『なんだと』
マオ『でも、この学園艦で他に狙われるってなると、戦車ぐらいじゃないの』
クルツ「戦車がこんな街中にあるのかよ!」
クルーゾー『とにかく急げ!! この学園艦で事が起きれば我々の面子は丸つぶれだ!! ウルズ7はそのまま待機だ!!』
宗介『了解』
クルツ「だから艦橋で見張ってたほうがよかったんだよ!!」
マオ『はいはい! 悪かったわね!! あんたの才能を潰しちゃって!!』 - 448: 2015/12/07(月) 21:55:10.22 ID:9AjLIe5Uo
- 寮 ねこにゃーの部屋
宗介「ふむ……」
かなめ「ねえ、どうしたのよ」
宗介「例の人物が現れた」
かなめ「ど、どこに!?」
宗介「行方を追っていたが見失った。そして今、町中で銃声が聞こえたらしい」
かなめ「それ……」
宗介「落ち着け。俺はここにいる」
ねこにゃー「あ、あの、それ……銀色の髪の……?」
宗介「肯定だ。猫田はチドリと一緒に見たんだったな」
ねこにゃー「うん。あと、西住さんも……」
宗介「なに!?」
かなめ「ど、どういうこと?」
ねこにゃー「西住さんも話しかけられたって、言ってたから……」
宗介「くっ……チドリと猫田以外に接触していたものがいるのか……! では、奴の狙いは西住か……!!」 - 449: 2015/12/07(月) 22:00:09.77 ID:9AjLIe5Uo
- ねこにゃー「西住さんが、どうしたの……」
宗介「少し待て。こちらウルズ7。応答してくれ」
クルツ『おう、どうした』
宗介「奴は千鳥だけでなく西住とも接触していたようだ」
マオ『カナメじゃないなら、ミホね』
クルツ『おいおい、そんなの聞いてねえぞ!!』
宗介「俺も今知ったところだ」
クルーゾー『了解した。各員、西住みほを捜索、保護しろ!』
マオ『ウルズ2、了解!』
クルツ『ウルズ6、了解だぁ!!』
クルーゾー『サガラ軍曹、お前も捜索に加われ』
宗介「了解。――千鳥、ここで待っていてくれ」
かなめ「みほは? みほは大丈夫なんでしょうね」
宗介「必ず保護する。問題ない」
かなめ「お、おねがいよ」 - 451: 2015/12/07(月) 22:04:04.19 ID:9AjLIe5Uo
- 宗介「お前たちは絶対にここを動くな。いいな」
ねこにゃー「あ、相良さん……」
かなめ「……」
ももがー「なにがなんだか……」
ぴよたん「西住さんになにかあったずら?」
かなめ「分からないわ……」
ねこにゃー「ボクが……言わなかったから……」
かなめ「え?」
ねこにゃー「ボクが相良さんにちゃんと伝えてれば……」
かなめ「ちょ、ちょっと待って。猫田さんが気にすることじゃないって」
ねこにゃー「でも、あの銀髪の男の人って、危ない人なんじゃないの?」
かなめ「そ、れは……」
ねこにゃー「相良さんが地雷仕掛けたりしたのって、そういうことなんじゃないの……」
かなめ「えっと……」
ねこにゃー「探さなきゃ……。ボクの所為で西住さんが……」 - 452: 2015/12/07(月) 22:14:11.05 ID:9AjLIe5Uo
- かなめ「ダメよ!!」
ねこにゃー「け、けど……」
かなめ「今、外には出ないで。お願い」
ねこにゃー「……」
かなめ「貴方の所為じゃないわ。悪いのは全部、アイツなのよ」
ねこにゃー「みんなで探したほうが、いい」
かなめ「こ……」
かなめ(殺されるかもしれない、なんて……言ってもいいの……。そんなことを言えば……)
ももがー「私もいくなり!!」
ぴよたん「私も!!」
ねこにゃー「み、みんなで行こう!」
かなめ「ダメったらダメ!!!」
ねこにゃー「千鳥さん……」
かなめ「お願い。行かないで。お願いだから」
ねこにゃー「……ごめんなさい。やっぱり、西住さんが心配だから、探してくる」 - 453: 2015/12/07(月) 22:24:13.53 ID:9AjLIe5Uo
- 街
みほ「はぁ……はぁ……はぁ……」
みほ「どこまで、逃げれば……」
みほ(交番……? ううん、相手はAS……。小型のASが実用化されてるなんて聞いたことがなかったけど、あれは間違いなくASだった……。お巡りさんじゃ、太刀打ちできない……)
みほ(だったら、戦車……。戦車なら……)
レナード「戦車なら勝てるかもしれない」
みほ「……!」
レナード「君ならそう考えるだろうね」
みほ「あ……あぁ……」
レナード「怯えることはないよ。君に危害を加えるつもりはないからね」
みほ「くっ……!」
アラストル「標的を確保します」
みほ「な……」
ボン太くん「ふももももも!!!!」バァン!!!!
アラストル「高脅威目標と認定」 - 454: 2015/12/07(月) 22:28:16.39 ID:9AjLIe5Uo
- クルツ「こっちだ!! 近いぜ!!」
マオ「っと! 奇遇じゃない」
クルツ「方角は間違いないみたいだな」
マオ「次は――」
バァン!!!
クルツ「ビンゴだ!!」
マオ「この路地にいるはず!」
みほ「はぁ……はぁ……はぁ……」
クルツ「ミホ!!」
みほ「クルツ、さん!?」
クルツ「何があった」
みほ「それが……よく……」
ボン太くん「ふもー!!!」
アラストル「迎撃開始」
クルツ「な、なんだありゃあ! おい、ソースケ!! こんなときにふざけてんじゃねえぞ!!」 - 455: 2015/12/07(月) 22:35:51.06 ID:9AjLIe5Uo
- ボン太くん「ふもー!! ふもふー!!」ガキィィン!!!
アラストル「……」ガキィィン!!!
マオ「なんだ、あれ……」
みほ「小型のASみたいなんですけど」
クルツ「んなもん、できるわけ……」
マオ「とにかくミホを保護するよ」
クルツ「そうだな。おい、ソースケ!! そいつのことは任せるぞ!!」
ボン太くん「ふもー!! ふももももー!!!」
アラストル「……」ガンッ!!!!
ボン太くん「ふもぉぉ!!!」
アラストル「標的を確保します」
マオ「ちぃ! ソースケ、その玩具はあとで没収だよ!!」
クルツ「上等がこらぁ!!! かかってきやがれ!!」
アラストル「追撃、開始」
みほ「くる……!」 - 456: 2015/12/07(月) 22:40:50.04 ID:9AjLIe5Uo
- クルツ「が……!?」
マオ「クルツ!!」
アラストル「……」ゴォッ
マオ「ずっ……!?」
アラストル「……」
みほ「そ、そんな……」
アラストル「標的を確保します」
みほ「だ、誰か……」
ねこにゃー「西住さん!!」
みほ「猫田さん!?」
ねこにゃー「こっち!!」ギュッ
みほ「わわ……」
アラストル「……」
レナード「もう少しだけ時間がある。追跡だ」
アラストル「ラージャ」 - 457: 2015/12/07(月) 22:44:46.92 ID:9AjLIe5Uo
- 宗介「これは……!」
クルツ「くそ……」
クルーゾー「誰にやられた」
マオ「わかんない。小型のASみたいな……やつが……」
クルーゾー「どのような相手なのだ」
宗介「誰だ?」
ボン太くん「ふも……」
宗介「お前か」
ボン太くん「ふもふも」
宗介「そうか。千鳥のために……。感謝する」
ボン太くん「ふも……」
宗介「仲間だから、か」
ボン太くん「ふもっ!!!」
宗介「了解!! 西住の救出に向かう!!」
クルーゾー「待て!! この着ぐるみ、誰が……」 - 458: 2015/12/07(月) 22:51:01.92 ID:9AjLIe5Uo
- 大洗女子学園
みほ「ここまで来ちゃったけど、大丈夫かな」
ねこにゃー「この時間なら、誰もいないと思うし、早く戦車に……」
みほ「でも、猫田さん、どうして……」
ねこにゃー「ボ、ボクだって、西住さんの役に立ちたくて……試合じゃ……何もできなかったし……」
みほ「猫田さん……」
ねこにゃー「だからね、今度の試合も絶対に出たいんだ。出て、西住さんと一緒に――」
レナード「君では足手まといになると思うけどね」
ねこにゃー「え……」
アラストル「……」ドゴォッ
ねこにゃー「はっ……ぁ……!?」
みほ「猫田さん!!!」
ねこにゃー「あ……あぁ……ぁ……」
みほ「猫田さん!! 猫田さん!!」
レナード「死にはしないよ。しばらく動けなくなるだろうけど」 - 459: 2015/12/07(月) 23:03:25.09 ID:9AjLIe5Uo
- みほ「猫田さん!!」
ねこにゃー「あ……に……ぃ……ず……み……」
みほ「猫田さん!!!」
レナード「彼女は次の試合でも役には立てない。居ても居なくても変わらないはずさ」
みほ「どうして……こんな……!!」
レナード「一緒に来てくれないかい?」
みほ「……!」
レナード「僕の話を聞けば、君の価値観は変わる。この愚かな世界を変えようと思えるだろう」
みほ「……っ」
レナード「そして協力してくれるなら、この僕が学園艦は守ってあげよう。次の試合もきちんと盛り上げるよ」
ボン太くん「ふもー!!!」
レナード「またか」
アラストル「撃破します」
ボン太くん「ふもも!!!」ジャキン!!!
レナード「何度やっても無駄だよ」 - 460: 2015/12/07(月) 23:09:51.72 ID:9AjLIe5Uo
- ボン太くん「ふもっふー!!!」ドォン!!!!
アラストル「……!!」
レナード「先ほどと動きが違う……。中身が変わったのか」
クルーゾー「残念ながら、中の人などいない」
レナード「なるほど。形勢が変わったかな」
クルーゾー「どうやら、そのようだな」
レナード「分は悪いね。今日のところは諦めるとしようか」
クルーゾー「逃げられると思っているのか」
レナード「西住みほ、そして特殊コーティング技術はまたの機会にするよ」
アラストル「退却します」
ボン太くん「ふも!!!」
レナード「さよなら」
アラストル「……」カチッ
クルーゾー「まさか――」
ドォォォォン!!!! - 462: 2015/12/07(月) 23:14:54.91 ID:9AjLIe5Uo
- みほ「……」
クルーゾー「自爆か……?」
宗介「いえ。何かを爆発させただけでしょう」
クルーゾー「好き放題してくれたものだな」
宗介「西住。無事か」
みほ「猫田、さん……が……」
宗介「猫田、しっかりしろ」
ねこにゃー「……」
クルーゾー「すぐに搬送するぞ」
宗介「了解です」
みほ「……」
宗介「西住……」
クルーゾー「軍曹、搬送は任せる。後処理はこちらでしておく」
宗介「お願いします、中尉殿」
みほ「猫田さん……が……」 - 463: 2015/12/07(月) 23:23:48.19 ID:9AjLIe5Uo
- メリダ島基地
マデューカス「緊急連絡がありました。大洗学園艦内にて、銃撃戦が発生。民間人一名が負傷しました」
テッサ「準備を」
マデューカス「アイ、マム」
テッサ「絶対に……許さない……」
カリーニン「大佐殿」
テッサ「なんでしょう」
カリーニン「出航準備は整っています」
テッサ「結構。参りましょう、大洗女子学園に」
カリーニン「はっ」
マデューカス「最悪の結果になってしまいましたな」
テッサ「こちらのミスだわ。カナメさんばかりを気にしていた所為でこんなことに……」
カリーニン「学園艦に張り巡らせた警戒システムも改善の余地があります。申し訳ありません」
テッサ「全ては到着してからにしましょう」
マデューカス「そうですな」 - 464: 2015/12/07(月) 23:28:29.25 ID:9AjLIe5Uo
- 病室
ねこにゃー「……」
かなめ「猫田さんは?」
宗介「命に別状はないが全治二ヶ月の重傷だ」
かなめ「そんな……」
みほ「……」
かなめ「みほ……」
宗介「猫田は暴漢に襲われた」
かなめ「は?」
宗介「そういうことにしてくれ」
かなめ「テッサの命令?」
宗介「肯定だ」
かなめ「わかった……」
みほ「……私は、わかりません……」
宗介「西住には説明しておこう。お前はもう無関係ではないからな」 - 465: 2015/12/07(月) 23:36:23.69 ID:9AjLIe5Uo
- 宗介「――話せることは以上だ。質問してくれても構わないが、話せないことも多い。そこは了承してほしい」
みほ「かなめさんが……狙われていて……でも、私が……」
宗介「落ち着け、西住。すまない。一度に話しすぎたな」
みほ「……」
かなめ「みほは……」
宗介「ウィスパードではない。もしそうなら大佐殿が早期に動いているはずだ」
かなめ「そっか……」
みほ「……」
ねこにゃー「う……ぅ……」
みほ「猫田さん!?」
ねこにゃー「にし、ずみ……さん……」
みほ「よかった……」
ねこにゃー「西住さん、怪我は……ない……?」
みほ「ない……ないよ……だいじょうぶ……」
ねこにゃー「そう……ボク……はじめて……西住さんの役に立てたね……うれしい……」 - 466: 2015/12/07(月) 23:43:30.97 ID:9AjLIe5Uo
- みほ「猫田……さん……」
ねこにゃー「こんどの……試合も……ボク、がんばるから……ね……」
みほ「うん……がんばろう……みんなで……」
ねこにゃー「がんばる……よ……ボク……」
かなめ「……っ」
宗介「千鳥。あとは任せる」
かなめ「ソースケ……あの……」
宗介「君が気を落とすことはない。俺の指示を無視した猫田にも問題はある」
かなめ「そんな言い方!!」
宗介「……すまない」
かなめ「……」
宗介「全て俺の責任だ」
かなめ「そんなこと……。私だって、猫田さんを力づくで止めていれば……」
宗介「すまない」
かなめ「ソースケ……」 - 467: 2015/12/07(月) 23:47:50.74 ID:9AjLIe5Uo
- 廊下
宗介「……」
クルーゾー「軍曹」
宗介「……」
クルーゾー「熱くなるな」
宗介「それは無理です」
クルーゾー「目を曇らせることになるぞ」
宗介「……」
クルーゾー「少し頭を冷やしてこい」
宗介「了解」
クルーゾー「それと明日にはダナンがここへ到着する」
宗介「……」
クルーゾー「学園艦の警備は盤石になる。相手も簡単には手は出せん」
宗介「もう手遅れです」
クルーゾー「そうだな。軽率な発言だった」 - 468: 2015/12/07(月) 23:54:36.45 ID:9AjLIe5Uo
- 病院 出入り口
杏「相良くん」
宗介「会長閣下……。申し訳ありません。自分がついていながら……」
杏「西住ちゃんは?」
宗介「無事です。今は猫田に付き添っています」
杏「そっか。酷いやつもいるもんだねぇ」
宗介「……」
杏「気にしなくていいよ。相良くんは西住ちゃんを守ってくれたんだから」
宗介「はっ」
杏「ありがとね。相良くんがいてくれてよかったよ」
宗介「お褒めに預かり、光栄です」
杏「それじゃ」
宗介「はっ」
宗介「……」
宗介「くっ……」 - 469: 2015/12/08(火) 00:03:04.64 ID:i7HflsjNo
- 病室
杏「どう?」
みほ「今、眠ったところです」
ねこにゃー「すぅ……すぅ……」
かなめ「……」
杏「西住ちゃん。試合のことなんだけど」
みほ「今、猫田さん以外のことは考えられません……」
杏「試合、やめようか」
みほ「え……?」
かなめ「先輩?」
杏「事情はよくわかんないけど、今度の試合が関係してる可能性もあるわけだしな」
かなめ「でも、それだと、廃艦に」
杏「大事な生徒がこんな目に遭ってまで続けたいとは思わない」
かなめ「いいんですか」
杏「うんっ。今から各校に断りの連絡いれないとね。いやぁ、まいったねぇ。こっちから頼んでおいて、どう断ろっかなぁ」 - 470: 2015/12/08(火) 00:07:33.48 ID:i7HflsjNo
- みほ「……」
かなめ「角谷先輩……」
杏「それじゃ、ねこちゃんのこと、よろしくね」
かなめ「もう行くんですか」
杏「忙しくなるからな」
かなめ「そう……」
みほ「あの」
杏「なに?」
みほ「……いえ、なんでもありません……」
杏「なんかあったら、すぐに連絡してよぉ。とんでくっから」
みほ「はい」
杏「ばいばーい」
かなめ「なんか、ノリが軽いわね……」
みほ「……」
かなめ(なんて声をかければ……。みほ……) - 472: 2015/12/08(火) 20:30:02.06 ID:i7HflsjNo
- 病院 出入り口
宗介「……」
沙織「相良さん!!」
宗介「1029号室だ」
沙織「ありがとう!」
優花里「待ってください、武部殿!!」
華「失礼します」
宗介「……」
麻子「相良さん、猫田さんは無事なのか」
宗介「命に別状はない」
麻子「相良さんが助けてくれたと聞いた。感謝する」
宗介「猫田は救えなかった。そのような言葉は不要だ」
麻子「もし困ったことがあればなんでも言って欲しい。この礼は必ずする」
宗介「了解した」
麻子「それじゃ」 - 473: 2015/12/08(火) 20:37:50.26 ID:i7HflsjNo
- 病室
ねこにゃー「……」
ももがー「ねこにゃー……」
ぴよたん「どうしてこんな酷い……」
優花里「犯人の手掛かりは?」
桃「それが目撃情報がなくてな。日が落ちていた所為もあるだろうが」
華「防犯カメラなどを使えばわかるのでは?」
柚子「今、解析中みたいだから、そのあたりは警察に任せるしかありません」
みほ「……」
沙織「みほ」
みほ「沙織、さん……」
沙織「ごめんね。みほが怖い目にあってたのに、すぐに駆けつけられなくて」
みほ「大丈夫。もう、大丈夫だよ」
沙織「ごめん……」ギュッ
みほ「沙織さん……ありがとう……」 - 474: 2015/12/08(火) 21:00:05.17 ID:i7HflsjNo
- 大洗女子学園 生徒会室
杏「――ってなわけで、試合は中止にけってーい。悪いけど、今回のイベントはなしってことで」
カチューシャ『ミホーシャはどうしたのよ』
杏「お見舞い中。落ち着いたら、また連絡するよ」
カチューシャ『違うわ。ミホーシャはどういってるのかを聞いているの』
杏「反対はしなかったけど」
カチューシャ『貴女も、いいのね。戦わずに負けることを選ぶのね』
杏「……」
カチューシャ『え? なによ。カチューシャに指図しないで! あ、ちょっと!!』
杏「どうしたの?」
敦信『私だ、角谷君』
杏「林水……。なんでプラウダ高校にいんの」
敦信『カチューシャ君にお願いしたいことがあってね。いや、私のことはどうでもいい』
カチューシャ『ちょっと!! 受話器を返しなさいよ!! まだ話は終わってないんだから!!!』
敦信『試合を中止するという話、どこまで本気なのかな』 - 475: 2015/12/08(火) 21:20:19.49 ID:i7HflsjNo
- 杏「学園艦内で戦車道選手が襲われた。最近は不穏な電話も多かったし、事件と試合の関連性が分からない以上、中止を選択する。ごく自然なことだと思うけどねぇ」
敦信『いい逃げ道ができて、安心しているのか』
杏「……」
敦信『勝敗に関わらず、廃艦になることは最初から分かっていただろうに。何故今更そのような言い訳をして背を向ける」
杏「……」
敦信『教育局に乗り込む前に私へ応援を頼んだために、退くに退けなくなった。廃校になることを皆に告げられず、敗戦を願っていた。それとも……』
杏「それ以上、言わないでくれる?」
敦信『奇跡を信じることができなくなったか』
杏「私は、まだ諦めてない」
敦信『相良君を使い、別の試合を企画するのか』
杏「それしか、ないなら」
敦信『陣代高校ラグビー部はあれ以来、練習試合の申し込みすら受けてくれなくなってね。ラグビー部員も他の生徒から恐れられている』
杏「そうみたいだな」
敦信『西住君はもちろん、一年生チームの子たちまで畏怖の対象にさせてしまうが、構わないのか』
杏「初めから、それぐらいの覚悟はあったよ。学園を守るためならな」 - 476: 2015/12/08(火) 21:36:43.77 ID:i7HflsjNo
- 敦信『その覚悟があるのなら、試合を中止にする必要はない。このまま予定通りに進め給え』
杏「ねこちゃんが回復してくれなきゃ、応援にすら呼べないじゃん」
敦信『全員で守ることに拘るか』
杏「悪い?」
敦信『どちらにせよ、廃艦は免れない。思い出作りのために全員で試合会場へ行きたい。そういう解釈でいいのかな』
杏「どう解釈してくれてもいいけど」
敦信『全員での思い出作りなら、相良君は不要だ。人格を崩壊させるなど本末転倒と言える』
杏「そうだな」
敦信『去年の君はそんなに弱弱しくなかったはずだ』
杏「……」
敦信『自治連絡会のとき、議長をさせろと私に食い下がり続けた君なら、中止にするなどという選択はしなかっただろう』
杏「そうかねぇ」
敦信『学園艦の学生自治が脅かされている。君はそう切り出し、演説を始めた』
杏「忘れたんじゃなかったの?」
敦信『自治連絡会の内容は忘れた。しかし、入学者の減衰により、学園艦の統廃合が水面下で進められていることを熱弁する君の姿は目に焼き付いている』 - 477: 2015/12/08(火) 21:55:21.34 ID:i7HflsjNo
- 杏「私は忘れたな」
敦信『近く学園艦の廃艦が相次ぐと、君は予言していたね。そのために数々のイベントを君は企画し、実行してきた』
敦信『仮装大会、夏の水かけ祭り、泥んこプロレス大会。どれも大洗学園艦を巻き込んでの大規模イベントだった』
杏「どこまで知ってんの」
敦信『その全ては学園を盛り上げ、入学者を得ようとする君の努力に他ならない』
杏「……」
敦信『1年で生徒会長という重役を自ら選んだのも、学園艦の存続を願っていたからではないのかね』
杏「ああ……」
敦信『3年間。君は辛い業務をこなし、大洗女子学園を宣伝し続けてきた。それでもなお、現実はまだ君には冷たかった』
杏「そうだな。結局、廃校になるんだもんな」
敦信『戦車道による学園存続案。君にとっては最後の切り札だったのだろう』
杏「そこまで調べたの? やるねぇ」
敦信『なに。知り合いの伝手を借りただけだ。大洗女子学園が戦車道を取り止めたその当時の生徒会長が考え、脈々と受け継がれてきた』
杏「そうだ。そのときの会長のことなんて顔も知らないけど、生徒が減少することを見越していたってのはすごいよねぇ」
敦信『凄惨な事故が風化した今なら戦車道を復活させたところで批判するものもいない。角谷君の判断は間違ってはいなかったが、遅すぎたかもしれない』 - 478: 2015/12/08(火) 22:13:40.65 ID:i7HflsjNo
- 杏「売れ残りの戦車も実際は復活時に必要だからと隠されてたものだったしな。断崖絶壁にかくしてあったり、池の底に沈めてたり、駐車場でオブジェになってたり、色々だけど」
敦信『生徒会長の座に就く者は全て、学園艦の存続という重大な使命が課せられていたわけだ』
杏「みんなの想いだけじゃない。ここを卒業していった人たちの願いだって、私は背負ってる。簡単に諦めることなんてできない」
敦信『では、相良君に頼み、皆を殺人機械にするといい。想像以上の成果を保証しよう』
杏「もう、分かってるくせに」
敦信『自分では決断できないか』
杏「できるなら、初日に相良君をけしかけてる」
敦信『相良君が従順な人物だとは思っていなかったのか』
杏「噂が噂だけに、いうこと聞かない子だと思ってた。けど、すっごいいい子だった。私の言うことは素直に聞いてくれるし、西住ちゃんたちのことは褒めてくれる」
杏「何より、このチームは良いチームだから自分は不必要です、なーんてことも言ってくれた。すごく、嬉しかったよ」
敦信『相良君は勘違いされやすいが、とても純粋だ。私も一目置いている』
杏「だから、相良君は私に決断を迫った。本当に自分が鍛え直してもいいのかって」
敦信『当然だ。彼には伝えておいたからね。角谷君の指示に従うように、と』
杏「余計なことして。まいっちゃうだろ」
敦信『君が期待していた奇跡である、相良君の暴走行為は最初から封じさせてもらったよ。そのような勝利では君自身が納得しないと私は思ったのでね』 - 479: 2015/12/08(火) 22:27:52.29 ID:i7HflsjNo
- 杏「邪魔ばっかりだな、林水は」
敦信『そうかな。これでもエールを送っているつもりなのだが』
杏「良い性格してるね」
敦信『もう一度、よく考えたほうが良い。君が捧げた3年間をここで終わらせるには、実に惜しい』
杏「それは私が決めることだ」
敦信『……わかった。近日中に大洗へ寄ろうと思っている。そのときにまた話そう』
杏「私としては遠慮したいけどねぇ」
敦信『すまないね、カチューシャ君』
カチューシャ『全くよ。――ねえ』
杏「なんだい?」
カチューシャ『カチューシャなら、やるわ。もし試合を中止にさせようとするやつが出てきてもしょくせいしてやるだけよ。それで、試合もやる』
カチューシャ『試合に出られなかった選手の帰ってくる場所を守るのだって、隊長の務めだもの』
杏「すごいな、カチューシャは」
カチューシャ『全然、すごくなんてないわ。長っていうのは、それだけの責任があるってだけよ』
杏「長、か」 - 480: 2015/12/08(火) 22:47:03.95 ID:i7HflsjNo
- 黒森峰女学園
エリカ「隊長。サンダースのケイからお電話です」
まほ「ありがとう。――私だ」
ケイ『イエーイ、まほー。エンジョイしてるー?』
まほ「そうね。充実はしている」
ケイ『それはいいことね。私もエブリデーがハッピーよ!』
まほ「用件は?」
ケイ『今度のオールスター戦、中止にしたいって連絡もらった?』
まほ「ああ」
ケイ『まほはどうするの?』
まほ「黒森峰女学園の判断に任せる」
ケイ『ノンノン。まほ自身は試合、したくないの?』
まほ「……」
ケイ『私はプレイしたいわ。絶対、エキサイティングな試合になるもの』
まほ「同感よ。しかし、事態は深刻のはず」 - 481: 2015/12/08(火) 22:53:46.36 ID:i7HflsjNo
- ケイ『あの事件と試合ってなんか関係あるわけ?』
まほ「分からないから、中止なのだろう」
ケイ『私はアンジーがビビっちゃっただけだと思うんだけど』
まほ「学園艦の全生徒を統括する立場ならば、何もおかしな判断ではない」
ケイ『もとより、戦う気なんてなかったのかもね。みほだってあまり気のりはしてないって話だったし』
まほ「え?」
ケイ『なに、知らなかったの?』
まほ「そのような話は……」
ケイ『中止の件を聞いたとき、すぐアンジーに聞いたわ。みほはどういってるのって。そしたら、反対はしなかったんだってさ』
まほ「みほが……」
ケイ『隊長として試合に出るかどうか分からない、それ以前に選手として出場するのかも未定だったらしいわ』
まほ「どうして?」
ケイ『そこまでは言ってくれなかったわ。トップシークレットなのかもね』
まほ「感謝する、ケイ」
ケイ『ノープロブレム! なんの感謝かはよくわかんないけど!』 - 483: 2015/12/09(水) 21:08:52.84 ID:n3V7fHVDo
- 翌日 大洗女子学園 正門
みどり子「なによこれ! めちゃくちゃじゃない!!」
モヨ子「昨日、ここで爆発があったみたいなのよ、そど子」
みどり子「こんなことをするのは……」
宗介「俺だ」
みどり子「なにをやっているのよ!! 地雷も爆弾も校則違反よ!!」
宗介「修繕はしておく」
みどり子「全く!」
希美「そど子。今日、猫田さんのお見舞いにはいく?」
みどり子「当たり前でしょ」
かなめ「ソースケ、よかったの?」
宗介「問題ない。彼女たちに要らぬ恐怖を与えることもない」
かなめ「地雷とかトラップとか仕掛けておいたから、ソースケの仕業で片付いちゃうのよね……。結果的にはよかったのかしら」
宗介「俺は会長閣下のところへ行くが、千鳥はこのまま教室へ向かうか?」
かなめ「うん。そうする。またあとでね」 - 484: 2015/12/09(水) 21:16:41.25 ID:n3V7fHVDo
- 教室
かなめ「おはよう」
華「おはようございます」
かなめ「みほは……」
沙織「今日は欠席するって」
かなめ「そう……」
華「それと今、緊急会議が行われているようです」
かなめ「会議?」
沙織「学園艦の役員を集めた会議。寄港させて臨時休校にするかどうかを話し合ってるんだって」
かなめ「あんな事件があったから、仕方ないか。みんな怖がるわよね」
華「わたくしは犯人への恐怖よりも憤りのほうが勝っています」
かなめ「華の胆の座り方は尋常じゃないのね」
沙織「怖いもの知らずってだけ」
かなめ「休校ってことなら戦車道の授業も中止よね」
沙織「それどころか次の試合だって中止なんでしょ? あーあ、どうなっちゃうんだろう。学園艦、無くなったりしないよね」 - 485: 2015/12/09(水) 21:26:31.76 ID:n3V7fHVDo
- 華「わたくしは猫田さんのほうが心配ですわ」
沙織「そんなの私だって心配だよ。でもさ、一番怖いのって猫田さんが元気になったときに学園艦が無くなってるときじゃないかな」
華「あ……」
沙織「やっと退院してもさ、帰る場所がなきゃ、嫌だよ」
かなめ「そうね」
沙織「私、この学園艦を失くしたくない」
華「皆さんの気持ちは同じです。けれど……」
沙織「会長、なんで中止なんてしちゃうんだろう」
かなめ「……」
華「かなめさん?」
かなめ「え? な、なに?」
華「いえ、何か思いつめた顔をしているような気がしたので……」
かなめ「そ、そう? あたしはいつも通りよ! うは、うははは!」
『ピンポンパンポーン。戦車道受講者は今から生徒会室にくるよーに。会長からのおしらせでしたー。ポンパンパンポーン』
沙織「な、なんだろう……」 - 486: 2015/12/09(水) 21:32:38.48 ID:n3V7fHVDo
- 生徒会室
桃「全員、揃ったな」
優花里「あの、お話しとは……」
杏「次のエキシビジョンを中止にすることで話は進んでる。ま、このままいけば中止にはなる」
カエサル「致し方ないか」
梓「猫田先輩がいなきゃ、試合をする意味もないですから」
杏「そう言ってくれてありがとう。でも、もう一つ、重大なお知らせがある」
典子「なんでしょうか」
柚子「えっと……」
杏「いいから、小山。これは私が説明しなきゃいけないんだ」
みどり子「言いにくいことなんですか」
杏「大洗女子学園は、次の対戦車道オールスター戦で勝利できなきゃ、廃校になる」
あや「はい?」
ナカジマ「廃校って、私たちが優勝したから白紙になったんですよね?」
杏「いいや。なってなかったんだよねぇ、それが。だから、毎日練習をしていたわけだ。戦術アドバイザーの相良くんまで呼んでね」 - 487: 2015/12/09(水) 21:40:20.95 ID:n3V7fHVDo
- 倉庫
宗介(今頃、会長閣下は全員に伝えている頃か……)
テッサ「サガラさん」
宗介「大佐殿」
テッサ「遅くなりました」
宗介「申し訳ありません。自分がついていながら……」
テッサ「気にしないでください。私のミスでもありますから」
宗介「決してそのようなことは」
テッサ「角谷杏さんは?」
宗介「生徒会室にいるはずです」
テッサ「案内、していただけますか」
宗介「はっ」
テッサ「また貴方を辛い目に遭わせてしまった……。本当にごめんなさい」
宗介「戦地で仲間が負傷することは日常茶飯事です。問題ありません」
テッサ「サガラさん……」 - 488: 2015/12/09(水) 22:08:54.34 ID:n3V7fHVDo
- 典子「どういうことですか!!!」
梓「納得できません!!」
エルヴィン「会長、どうしてそのことをすぐに言ってくれなかった!!」
桃「鎮まれ! これにはわけが……」
杏「みんなの怒りはごもっともだよ。まずは謝る。今まで黙っていて、ごめん」
あや「う……」
あゆみ「廃校って、本当なんですね」
杏「本当のことだ。冗談を言うために頭は下げない」
エルヴィン「謝罪は不要だ。何故、説明してくれなかったのか答えて欲しい」
おりょう「廃校の件が片付いていなかったということを告げれば、私たちの士気が下がると考えたから、か」
左衛門佐「そんなことでさがらんでござる」
桂利奈「そうですよぉ!! びっくりはしますけど、逆に燃えます!!」
杏「言えなかった最大の理由はそこなんだ。みんながやる気になることが分かってたから、言えなかった」
カエサル「それは何故?」
杏「……勝っても負けても、廃校になる」 - 489: 2015/12/09(水) 22:17:23.93 ID:n3V7fHVDo
- 優花里「そ、そのような話は聞いていません!!」
優希「どうしてなんですかぁ? 勝てばいいんじゃないんですか」
麻子「勝てば日本の戦車道に傷をつけることになるから、何らかの嫌がらせはあるだけじゃなかったのか」
杏「その嫌がらせで廃校に追い込む気なんだろうねぇ」
華「そんなのに屈する必要はありません」
優花里「そうです!! 勝てば官軍!! 勝利さえすれば、誰にも文句は言わせません!!」
沙織「猫田さんが復活したら、また試合したらいいじゃないですか!」
杏「……」
桃「静かにしろ!! いいか!! これは政治も絡む問題なんだ!! スポーツの勝敗で左右することではないんだ!! それを理解しろ!!」
優花里「理解はできても納得はできません!!」
麻子「抗う方法はいくらでもあるだろう」
華「このまま泣き寝入りするのですか!」
沙織「そんなのいやだー!」
桃「黙れ!!! 誰が一番苦汁をなめているのか分からないのか!!!」
柚子「桃ちゃん……」 - 490: 2015/12/09(水) 22:26:29.35 ID:n3V7fHVDo
- 桃「誰よりも努力をした者がどうして報われないんだ!! 答えてみろ!!」
優花里「な……」
桃「誰よりも学園艦を愛していた人がどうしていつも苦しまなくてはならないんだ!!!」
華「……」
桃「学園にいるすべての人を心配しているのにどうしてそのことが評価されないんだ!!!」
杏「河嶋、もういい」
桃「よくありません!! 何故なのですか!! 何故、会長はそう冷静でいられるのですか!!! 学園艦がなくなるんですよ!?」
杏「……」
桃「仕方ないで納得できるのですか!? 楽しいことがたくさんあった、ここがなくなるんですよ!? 可愛がっていた後輩たちはここを卒業できないんですよ!?」
杏「分かってる」
桃「どうして!! どうして廃校になるのですか!! 私は嫌です!! このまま諦めたくなんてありません!! 試合をしましょう!! 今からでも遅くはありません!!」
杏「ごめん、河嶋」
桃「もう一度……もう一度だけ……チャンスをください……」
杏「最初から、チャンスなんて誰もくれなかったんだ。だから私も奇跡が起きるのを待ってた。けど、それも起きなさそうだ。相良くんが、とってもいい人だったからなぁ」
かなめ「ソースケが……?」 - 491: 2015/12/09(水) 22:45:24.23 ID:n3V7fHVDo
- 桃「いやだぁ……いやだよぉ……がんばってきたのに……いままで……大洗で育ってきて……ここが私の故郷なのに……なくなるなんて……」
柚子「桃ちゃん……」
優花里「私も、大洗で生まれ育った身です。学園艦が無くなるなんて、考えたくもありません」
華「猫田さんが事件に巻き込まれたことを口実にして、試合は中止にする。周囲にはそう説明したほうが反感はないでしょうね」
麻子「猫田さんを襲った犯人だけが恨まれ、裏工作をしていた教育局に矛先は向かないだろうな」
杏「一応言っとくけど、犯人が試合を妨害するためだったのかはわかんないよ。それにアリクイさんチームは選抜チームでもなかったしねぇ。もし襲うなら選抜チームの誰かのはずだ」
沙織「選抜はもう決まってたんですか」
杏「殆ど決まってたかな」
麻子「だったら、猫田さんは本当に通り魔に襲われたというだけなのか」
杏「そういうことになるね。ま、オールスターチームに勝ったあとはどうなったかわかんないけど」
カエサル「勝利を掴んでも相手に約束を守る気がなければそれは徒労か」
おりょう「約束を、守らぬものは、お仕置きだ」
エルヴィン「その一句通りだ。けど、相手が大きすぎて私たちではお仕置きもできない」
典子「大洗でもう一度バレーボールをしたいのに!! もう一度、みんなで戦車道をしたいのに!! 根性でどうにかならないんですか!! 会長!!!」
杏「バレー部復活の手伝い、ちゃんとできなくて悪いね、磯辺ちゃん。ホント、私の力不足だな。ごめん」 - 492: 2015/12/11(金) 20:48:59.24 ID:mLKfZYpBo
- 典子「そんなこと言わないでください!」
妙子「どんなに辛いときでも笑っていた会長はどこにいったんですか!!」
あけび「私たちならやれます!!」
忍「大洗の廃校は必ずブロックしますから!! だから……!!」
杏「どうしたら、私たちの学校を守れるのかな」
典子「え……」
杏「誰か、教えてほしい」
カエサル「……」
杏「誰でもいい。教えてよ。教えてくれたら、干し芋1年分あげる。それで、教えてもらったことは絶対に実行する。どんなことだってやる覚悟はあるんだ」
杏「だから、教えてよ。学校を守る方法をさ。お願い……だから……」
みどり子「……」
梓「……」
かなめ(きっと角谷先輩は今までにいろんなことを試してきたのよね。それでも結果は変わらなかった……)
かなめ(林水先輩は角谷先輩のことを強い人だって言ってたけど……本当は普通の……)
杏「まもりたいんだ……だいすきな……この場所を……まもりたい……」 - 493: 2015/12/11(金) 20:56:31.00 ID:mLKfZYpBo
- 柚子「――会長、みんなは教室に戻りました」
杏「みっともないところ、見せちゃったな」
柚子「いえ……」
杏「これでスッキリした。今までありがとう、小山、河嶋。私の我儘にずっと付き合ってくれて、感謝してる」
桃「やめてください」
柚子「そうですよ。私も桃ちゃんも会長のことが、いえ、この大洗のことが大好きだっただけです」
桃「私だって会長と想いは同じです。この学園を失くしたくない一心でどんなことにも取り組んできました」
杏「うん。知ってる」
桃「だから……あきらめるなんてこと……したくは……」
杏「ないよな。けど、どうしようもない。相良くんと千鳥ちゃんまで巻き込んだけど、都合のいい奇跡は起きなかった」
柚子「相良さんと千鳥さんに何か期待をしていたんですよね? どんなことですか」
杏「それは相良くんがみんなを殺人マシーンに――」
宗介「失礼します、会長閣下」
テッサ「初めまして、角谷杏さん」
杏「初めまして。なんて呼べばいい?」 - 494: 2015/12/11(金) 21:52:51.67 ID:mLKfZYpBo
- テッサ「私はテレサ・テスタロッサです。テッサとお呼びください」
杏「分かった。で、テッサちゃんは相良くんのなに? 恋人?」
テッサ「そんなぁ……そういう関係では……」モジモジ
宗介「大佐殿、その、本題に……」
テッサ「そ、そうですね。角谷さん、貴方にお願いしたいことがあります」
杏「なんでもいってみぃ」
テッサ「――試合を中止にはしないでください」
杏「……」
桃「どこの誰かは知らないが、会長は……!」
テッサ「承知しています。この学園艦が置かれている状況。そして、艦内にて発生した事件。その全てを」
桃「ならば、部外者は黙っていてくれ。これは大洗女子学園の問題なんだ」
テッサ「いいえ。世界すらも飲み込む問題です」
桃「どういう意味だ」
テッサ「戦車道が安全なスポーツとして認知された理由はご存知ですか」
柚子「それは勿論、あの特殊コーティングのおかげです。あれがない時代は死亡事故もあったぐらいですから」 - 495: 2015/12/11(金) 22:00:20.09 ID:mLKfZYpBo
- テッサ「そのコーティング技術は軍事利用されないよう、配慮がなされてきました。技術が漏洩しないようにあらゆる手が尽くされています」
桃「当然だ。あの技術が戦争に使われたらどうなるか」
テッサ「その通りです。ですから、貴方達には学園艦を守ってほしいのです」
杏「テッサちゃんは廃艦後のことも知ってそうだね」
テッサ「おおよその見当はつきます。戦車の行方にも心当たりがありますので」
桃「貴方は何者なんだ」
テッサ「正義の味方、とだけ言っておきます」
桃「ふざけるな!」
杏「まぁまぁ、河嶋。落ち着け」
桃「この状況下でこんなふざけたことを言われたら、誰だって声を荒げたくなります!!」
杏「相良くんもその正義の味方の一員だったの?」
宗介「肯定です」
柚子「相良さんまで……」
杏「テッサちゃんの考えはわかる。わかるけどさ、どうしても無理なんだよねぇ。学園艦を守る方法がもうないんだ」
テッサ「試合に勝利してください。そうすれば学園艦は守ることができます」 - 496: 2015/12/11(金) 22:08:13.74 ID:mLKfZYpBo
- 桃「何を言っている!! それができないから会長は苦しんでいるのに!!!」
杏「どうしてそう言い切れるの?」
テッサ「私たちを信じてください」
柚子「え……?」
テッサ「詳細を説明するわけにはいきませんが。貴方達が試合に勝ちさえすれば、学園艦を残すことができるのです」
杏「テッサちゃんがどうにかしてくれるってこと?」
テッサ「はい」
桃「そんなことができるなら、今すぐやってみせてくれ」
テッサ「無理です。誓約書にはオールスターチームに現戦力で勝利することと書かれていますので」
杏「これのこと?」ペラッ
テッサ「そうです」
杏「これ、ただの紙切れなんだけどな」
テッサ「私には希望に見えますが」
杏「希望……」
テッサ「角谷さんが額を床にこすりつけながら懇願したものです。ただの紙切れになんて、絶対にさせません」 - 497: 2015/12/11(金) 22:16:11.70 ID:mLKfZYpBo
- 柚子「それって……!」
杏「どこでそんなことを知ったの?」
テッサ「少し調べればわかることです」
桃「会長、そんなことまでしていたのですか……」
杏「勝たないと、いけないんだな」
テッサ「ええ。簡単なことでしょう。貴方たちが一度下した相手が一纏めにされただけのチームですから」
杏「ちょっと考えさせて」
テッサ「構いませんよ。でも、すぐに決断したほうがいいでしょうね。相手が強行策に出ればどうすることもできなくなりますから」
杏「分かった」
桃「会長。いきなり現れた人間のいうことを信じるのですか」
杏「相良くん」
宗介「はっ」
杏「テッサちゃんは信頼できるの?」
宗介「この方ほど信頼できる人間はこの世界にいないと断言できます」
杏「ふぅん。そうなんだ」 - 498: 2015/12/11(金) 22:24:43.53 ID:mLKfZYpBo
- 柚子「どうするんですか?」
杏「テッサちゃんのことは信頼できない。でも、相良くんのことは信頼できる。だから、テッサちゃんのことは信じてもいいかもしれない」
桃「しかし! 猫田のこともあります!!」
杏「だからこそ、考える時間が必要なんだ。これが奇跡の始まりなのか見極めるためにもな」
テッサ「奇跡は起こすものですから、大洗のみなさんが動かない限り、起きることはないでしょう」
杏「ああ。その通りだね」
テッサ「では、これで。ああ、忘れていました」
杏「なぁに?」
テッサ「この学園艦の警備システムを更に強化させておきます。今後、あのような事件も、暴漢も現れることはないでしょう。現れたとしても、被害がでることはまずありません」
杏「この前、相良くんが連れてきた警備会社のメリッサちゃんと同業ってことか」
テッサ「そういうことです」
杏「ありがと。じゃ、試合にのことは早めに決めるよ」
テッサ「そうしてください。それでは」
宗介「失礼しました」
杏「またねー」 - 499: 2015/12/11(金) 22:41:17.93 ID:mLKfZYpBo
- 廊下
宗介「大佐殿。廃校を撤回する手段をお持ちなのですね」
テッサ「はい。ウェーバー軍曹とマオ曹長に調査してもらった結果、色々と使える情報がありますので」
宗介「では、試合をするまでもなく学園艦を救うことができるでは?」
テッサ「私たち、ミスリルの目的は戦車に使われているコーティング技術の漏洩を防ぐことにあります。学園艦を救う義理はどこにもありません」
宗介「……」
テッサ「学園艦を守る条件は角谷さんが出したものです。そこは守っていただきます」
宗介「大洗女子学園が敗北した場合はどうなるのですか」
テッサ「私たちが戦車を接収します」
宗介「なるほど……」
テッサ「その際、小規模ながらも戦闘が発生するでしょう。そのときはお願いしますね」
宗介「了解しました」
テッサ「私のことを冷徹だと思いますか」
宗介「いいえ。ミスリルが表立って学園艦を守ろうとすれば、様々な組織に狙われかねません。もしアマルガムの他にもこの学園艦が目をつけられることがあれば、ひとたまりもないでしょう」
テッサ「はい。私たちだけではこの学園艦を警護しきれませんから。故に相手に約束を守らせることが、私たちにできる限界のお手伝いです」 - 500: 2015/12/11(金) 22:53:29.66 ID:mLKfZYpBo
- 病室
ねこにゃー「……」
みほ(試合は中止……。それでよかったのかも。こんな気持ちで戦車になんて……乗れなかった……)
みほ(沙織さんたちは、どうなんだろう……)
ももがー「西住さん。そろそろ寮に戻ったほうが……」
みほ「大丈夫。今は猫田さんの傍にいたいから」
ぴよたん「でも、昨日から食事もしてないのに……」
みほ「……」
ももがー「明日、またきてくれたら嬉しい」
みほ「……わかりました。では、今日は帰ります」
ぴよたん「うん。ねこにゃーのこと、ありがとう」
ももがー「助かったなり」
みほ「ううん。私が勝手に……」
ももがー「ゆっくり休んでほしいなり」
みほ「ありがとう……」 - 501: 2015/12/11(金) 23:01:18.91 ID:mLKfZYpBo
- 病院 出入り口
みほ「みんなはまだ学校にいるのかな……」
みほ「連絡、してみよう……。あ、電源、切ってたんだった」ピッ
みほ「あれ、留守番電話……? 誰だろう」ピッ
『みほ。話したいことがある。連絡を待っている』
みほ(お姉ちゃん……)
みほ「……」ピッ
まほ『もしもし』
みほ「あの、ごめん。病院にいたから電源を切っていて……」
まほ『いいの。今、代わる』
みほ「代わる……誰に……?」
しほ『みほ。久しぶりね』
みほ「おか……あさん……」
しほ『まほから話は聞いているわ。次の試合、出場を躊躇っているそうね』
みほ「あ、の、そもそも試合が……中止に……」 - 502: 2015/12/11(金) 23:13:53.65 ID:mLKfZYpBo
- しほ『そのようなことは聞いていません。出場を躊躇っていることは事実なのでしょう』
みほ「は、はい……」
しほ『それは何故?』
みほ「……」
しほ『大方、私やまほに迷惑がかかると考えていたのでしょうね』
みほ「だ、だって……お母さんは色んな人とお付き合いがあるし……もしも、大洗が勝つようなことがあれば……」
しほ『それは勝つ自信があるということなのね』
みほ「えっと、そうじゃなくて……あの……」
しほ『オールスターチームを相手に随分と余裕があるようね、みほ』
みほ「だ、だから、万が一の話で……」
しほ『――貴方はもう、西住の人間ではないのよ』
みほ「……!」
――子を捨てた母親なんて、生きる価値もない。
みほ「わ、たし……」
しほ『貴方は昔からそうだった。相手のことを考えるあまり、一つ一つの物事に迷いがあった。後押しがなければ、自分一人で前へ進もうとはしなかった』 - 503: 2015/12/11(金) 23:23:58.88 ID:mLKfZYpBo
- みほ「お母さん……」
しほ『なのに貴方は迷いなく、他人を救いに行き、黒森峰に泥をつけた』
みほ「ごめん、なさい……」
しほ『そして全国大会でも、貴方には迷いがなかった』
みほ「え……」
しほ『見つけたのでしょう。自身の戦車道を。今更、何を迷うことがあるのです』
みほ「……」
しほ『西住流は何があっても前へ進む流派。そう教えたはず。立ち止まることは許されない』
みほ「あの……」
しほ『貴方はもう西住の人間ではない。貴方は、西住みほ。戦車道を歩む、一人の人間』
しほ『私たちのことは気にしなくても結構です。まほに勝てるというなら、証明なさい。貴方の戦車道で』
みほ「わたし……わたし……!」
まほ『みほ。今回の試合は中止になっても構わない。けれど、必ず試合はしましょう。大洗女子学園の存続をかけて』
みほ「うっ……おねえ……ちゃん……」
まほ『私は逃げない。だから、みほも逃げ出さないで。みほともう一度戦える日を楽しみにしている』 - 504: 2015/12/11(金) 23:35:24.44 ID:mLKfZYpBo
- 病室
ねこにゃー「……」
ももがー「まだ起きそうにないね……」
ぴよたん「すぐよくなるって」
ももがー「うん……」
みほ「――あの、すみません」
ももがー「西住さん?」
ぴよたん「帰ったんじゃあ……」
みほ「これから会長と話をしてきます」
ぴよたん「なんの?」
みほ「試合の中止を取り消してほしいって」
ももがー「え……」
みほ「そして、この大洗を守るために勝ちます」
ぴよたん「急にどうしたの?」
みほ「私は怖がっていました。誰かに迷惑がかかることを。ずっと怖がって、決められなくて……。私が迷っていなければ、猫田さんだって、きっとこんな目には遭っていなかった……」 - 505: 2015/12/11(金) 23:47:28.88 ID:mLKfZYpBo
- ももがー「西住さんの所為じゃない!」
ぴよたん「そうそう!!」
みほ「あんなところに一人でいたのは、気持ちの整理ができていなかったから。だから、巻き込まれた。みんなに迷惑をかけてしまったんです」
みほ「ずっとそうでした。みんなに支えられていました。迷ったときは背中を押してもらいました。私の戦車道を一緒に進んでくれました」
みほ「なのに、私は迷ったんです。みんなに甘えて、見失っていたんです。ごめんなさい」
ももがー「そ、そんなこと言われても……」
ぴよたん「西住さん、気にしないで」
みほ「私の気持ちは最初から決まっていました。学園艦を守りたい。みんなとの思い出をなくしたくない」
みほ「ここだけが猫田さんを笑顔で迎えることができる場所なんです」
ももがー「うん。私もそう思うよ」
みほ「私は戦います。今ここで逃げたら、もう取り戻せないと思うから」
ぴよたん「西住さん……」
ねこにゃー「――だったら、早く会長のところに・・・いったほうが……いいよ……」
みほ「猫田さん……」
ねこにゃー「ボクが治るのを待っていたら……学園艦がどうなるかわからない……。だから、はやく行って、西住さん……ここにいても意味がないから……」 - 506: 2015/12/11(金) 23:53:43.75 ID:mLKfZYpBo
- みほ「ごめんなさい。猫田さん」
ねこにゃー「いいの……ボク、ここで応援してるから……」
みほ「絶対に守るから。猫田さんの帰ってくる場所を」
ねこにゃー「うん……おねがい……」
みほ「行ってきます」
ねこにゃー「にし、ずみさん……」
みほ「……」
ねこにゃー「がんばって」
みほ「はい」
ももがー「行っちゃったなり」
ねこにゃー「二人も行ったほうがいいよ。練習したらきっと試合に……」
ぴよたん「車長がいなきゃ、戦車をうごかせないずら」
ももがー「千鳥さんには申し訳ないけど、アリクイさんチームは欠場決定なりっ。そのかわり、死ぬ気で応援!」
ぴよたん「さんせー!」
ねこにゃー「ありがとう……うれしい……」 - 513: 2015/12/13(日) 09:44:57.86 ID:++uuupKVo
- 大洗女子学園 倉庫
マデューカス「酷い有様だな」
クルツ「すんませんね」
マオ「申し訳ありません。最重要人物を取り逃がしたばかりか、民間人にまで被害が及んでしまいました。全ては私たちの責任です」
クルーゾー「いえ。これはチームリーダーである自分の責任です」
マオ「ちょっと。それ、かっこいいと思ってるわけ」
クルツ「いいじゃね。責任を全部請け負ってくれるっていってんだからよ」
マオ「バカ」
マデューカス「本気で言っているのか、軍曹」
クルツ「ふんっ」
マデューカス「今回の一件は、我々の責任だ。私も艦長もそう考えている」
クルーゾー「ミスリルの、ということですか」
マデューカス「学園艦及び戦車道選手の安全は何よりも優先させる。己の命よりもだ。分かったな」
クルーゾー「はっ!!」
マデューカス「よろしい。これより、作戦を伝える」 - 514: 2015/12/13(日) 10:04:01.35 ID:++uuupKVo
- 正門
カリーニン「話は終わりましたか」
テッサ「ええ。マデューカスさんは?」
カリーニン「今しがた戦車格納庫へ向かいました。そこで各員に作戦を伝えるようです」
宗介「作戦とはなんでしょうか」
テッサ「そうですね。サガラさんにも伝えておかないといけませんね」
カリーニン「これより暫くは我々も常駐し、この学園艦を警護する」
宗介「大佐殿もですか」
テッサ「はい。西住さんと猫田さんが被害に遭われてしまったのは、こちらの不手際ですから。影ながらになってしまいますが、襲い掛かる脅威を私たちでなんとかしないといけません」
カリーニン「大洗学園艦は既に廃艦手続きが進んでいる。戦車に至ってはオークション売却の運びとなる」
テッサ「試合中止の一報が各所に届いた段階で、急速に事は動き始めています」
宗介「早急に試合中止の取り消しを伝えねばならないのですね」
カリーニン「しかし、このタイミングで中止要請の無効を求めると問題が発生する。戦車を欲する企業、組織からの反発は容易に予測できる」
テッサ「勝手なことばかりをいう人が多くて困りますね。許可もなく、皆さんの戦車を売買しておいて」
カリーニン「同感です。しかし、金の動きばかりを目で追う者たちに兵士の心を説いても意味はないでしょう」 - 515: 2015/12/13(日) 10:36:42.20 ID:++uuupKVo
- 宗介「他の学園艦については?」
カリーニン「相応数の人員を割いている。だが、狙うのならばこの学園艦だろう」
テッサ「もうすぐ売られてしまうし、戦車が何者かによって強奪されても、世間はあまり気を向けないでしょうからね」
宗介「奴らならば、手段を選ぶことをなく、実行するのではないでしょうか。現に西住が襲われました」
カリーニン「特殊コーティング技術について、私はもちろんのこと大佐殿も詳細を知っているわけではない。そのような代物を扱うためには相当な時間を要する」
テッサ「即時にASやそのほかの兵器に流用できるのなら、彼らもそうするでしょう。ですが、今まで目立った動きをみせなかったのは、扱える自信がないからだと考えています」
カリーニン「強襲し戦車を奪ったとしても技術応用ができなければ、無駄な弾と戦力を失うばかりか、手がかりを残すことにも繋がる」
テッサ「暴れてくれるならこちらとしても楽ではありますからね。探す手間も省けます。でも、そこまで向こうも愚かではないでしょう」
宗介「今はまだ水面下で計画を進めている段階、ということですか」
カリーニン「油断はできんがな。西住みほが直接狙われた要因は不明だが、戦車を手に入れる一環であったのは間違いないはずだ」
テッサ「表に出てくることのなかった人物が顔を見せたのなら、コーティング技術の転用ができるようになった可能性も捨てきれませんから」
カリーニン「いつかは全国にある学園艦が襲われるという事態にもなりかねません」
テッサ「ですから、彼らに教えて差し上げましょう。学園艦を屈服させるには高くつくということを」
宗介「了解です」
カリーニン「まず戦車を簡単に渡さぬよう、試合は計画通りに行ってもらう。大洗が勝利することができれば、我々が文部科学省教育局に掛け合うつもりだ。それが最も穏便に済む」 - 516: 2015/12/13(日) 10:52:19.52 ID:++uuupKVo
- 倉庫
マデューカス「大洗が敗北を喫した場合、武力を行使し、戦車を守ることになるだろう」
クルーゾー「我々が奪うのですか」
マデューカス「敵の手に渡すよりはマシだ。それに恨まれても構わないだろう」
マオ(もうミホと猫田って子が酷い目にあっちゃってるしね)
クルツ「そんなことしたら、相手も黙っちゃいないんじゃないッスかね」
マデューカス「百も承知だ。奴らのことだ。ミスリルが関わっているとなれば、試合中に襲い掛かってくることもあるだろう」
マオ「試合中って……」
クルツ「5輌対5輌の試合にくるなら、10輌も手にはいっちゃうわけだ」
マデューカス「それだけの素材があれば、当分困ることもなかろう」
クルーゾー「そのような事態だけは避けねばなりません」
マデューカス「できるな」
クルーゾー「汚名は自身の技能で返上いたします」
マオ「借りは返さないとね」
クルツ「いっちょやりますかぁ。沙織がいるところをこれ以上、めちゃくちゃにされたくもねえしな」 - 518: 2015/12/13(日) 18:27:56.55 ID:++uuupKVo
- 正門
テッサ「作戦概要は以上です。何か質問はありますか」
宗介「いえ。ありません」
カリーニン「大佐殿、私はこれよりマデューカス中佐と再度警戒システムのチェックを行います」
テッサ「よろしくお願いします」
宗介「カリーニン少佐、自分も協力します」
テッサ「待ってください、サガラさん。貴方には重大な任務があるはずです」
宗介「現在、優先するべき命令は受けておりませんが……」
テッサ「今の肩書は?」
宗介「自分は……」
テッサ「ミスリルに属する一人の兵士ですか。それとも陣代高校のゴミ係でしょうか」
宗介「ネカティブ。自分は大洗女子学園戦車道戦術アドバイザーです」
テッサ「ですよね。サガラさんは大洗の皆さんを勝利に導いてあげてください」
宗介「……」
テッサ「何か心配事でもあるのですか?」 - 519: 2015/12/13(日) 18:37:28.63 ID:++uuupKVo
- 宗介「大洗女子学園が勝利するためには西住が隊長を務めることが絶対条件です。ですが、今の西住は戦える状態とはいえません。もとより、西住は迷っていました」
テッサ「あのようなことがあったばかりでは、仕方ないかもしれませんね……」
宗介「方法があるとするならば、マオの新兵訓練法ぐらいです。彼女たちをキリングマシーン化させるほかありません」
テッサ「……いえ。どうやら、そんなことはしなくてもよさそうですね」
宗介「は?」
テッサ「向こうです」
宗介「向こう……?」
みほ「……」
宗介「西住か」
テッサ「彼女のほうからこちらに歩いてきている。覚悟あってのことでしょう」
みほ「あ、相良さん。隣にいるのは……?」
宗介「猫田を看ていなくていいのか」
みほ「私が今やるべきことは、猫田さんの傍にいることではありませんでした」
宗介「では、なんだ?」 - 520: 2015/12/13(日) 18:51:37.90 ID:++uuupKVo
- みほ「戦車道、やります」
宗介「十数時間で見違えたな」
みほ「もう守られるのは嫌なんです。誰かに甘えて、流されて、自分の気持ちに嘘をつくのはやめます」
みほ「私は、西住流の西住みほではありません。大洗女子学園の西住みほなんです」
宗介「そうか」
みほ「大事な場所を守ります。戦車道の人気が落ちてしまうことよりも、みんなの思い出を、みんなで戦ったこの場所を、守りたいんです」
宗介「お前なら問題ない。自身が信じる道を行けばいい」
みほ「ありがとうございます。相良さんも協力、お願いします」
宗介「俺にできることは限られている」
みほ「そんなことはありません。相良さんがいなければ、きっと私は……」
テッサ「レナード・テスタロッサに拉致され、この場にいなかったかもしれませんね」
みほ「あなたは……」
テッサ「私はテレサ・テスタロッサといいます。貴方を襲い、猫田さんに大怪我を負わせた男は私の実兄です」
みほ「……」
テッサ「私の所為ではないなんて言いません。許してほしいなどと乞うことはいたしません。怒りも恨みも全て私にぶつけてください」 - 521: 2015/12/13(日) 19:00:35.09 ID:++uuupKVo
- みほ「テスタロッサさんは相良さんの……」
宗介「隊長だ」
みほ「話してくれたミスリルっていう、傭兵部隊の……?」
宗介「肯定だ」
みほ「……」
テッサ「嘘ではありません。16歳の小娘ですが、一部隊の長を務めています」
みほ「わ、私と同じ歳なんですか!?」
テッサ「そういうことになりますね」
みほ「なんだか、信じられませんけど、相良さんがそんなウソをいうわけもないし……」
テッサ「西住さん。どのような謝罪も意味はないでしょう。何か私にできることがあれば、言ってください」
みほ「気にしないでください。猫田さんに怪我をさせたのは、貴方ではないんですから」
テッサ「でも……」
みほ「相良さんのお友達なら、かなめさんともお友達なんですよね」
テッサ「え、ええ……」
みほ「だったら、その、私とも友達になってくれると、嬉しいですけど……ダメですか……?」 - 522: 2015/12/13(日) 19:16:27.31 ID:++uuupKVo
- テッサ「私と……友達に……?」
みほ「はい。よ、よろしくお願いします!」
テッサ「いいのですか?」
みほ「はいっ」
テッサ「ありがとう、西住さん」ギュッ
みほ「いえ! こちらこそ!」
テッサ「貴方のように優しい人ばかりなら、私やかなめさんも普通の学生生活が送れたかもしれませんね……」
みほ「え?」
テッサ「いえ、こちらの話です。忘れてください」
みほ「あ、はい」
テッサ「私のことはテッサとお呼びください、ミホさん」
みほ「はいっ。では、私は会長に伝えないといけないので、行きます」
テッサ「足止めさせてごめんなさい」
みほ「私のほうこそ、すみません」
テッサ「次はゆっくりお話ししましょう」 - 523: 2015/12/13(日) 19:22:39.38 ID:++uuupKVo
- みほ「失礼します」
テッサ「いい人ですね、とても」
宗介「はい。故に今まで戦う決意ができなかったのだと思います」
テッサ「無理もないわ。みんなのことを心配しそうだもの。少数の犠牲にすら目をつぶることができない。隊長としては失格でしょうね」
宗介「そんなことはありません」
テッサ「どうしてですか?」
宗介「大佐殿は、いえ、テッサは自分が知る中で最高の司令官です」
テッサ「……ホント?」
宗介「肯定です」
テッサ「ふふっ。ありがとうございます。お世辞でも、とっても嬉しいです」
宗介「世辞ではありません。自分の本心です」
テッサ「……大洗のこと、お任せします。西住さんを支えてあげてくださいね」
宗介「了解です。大佐殿もお気をつけて」
テッサ「はい。こちらのことは心配いりません。大船に乗った気でいてください」
宗介「自分はいつもその船に乗艦しています。問題ありません」 - 524: 2015/12/13(日) 19:36:46.10 ID:++uuupKVo
- 生徒会室
杏「奇跡……。私はずっと奇跡に頼ってきたな。情けないね」
桃「あらゆる手を尽くし、それでも手が届かないなら、奇跡に頼るしかありません」
柚子「努力した人だからこそ、そうした奇跡が起こるんじゃないんですか」
桃「そうです。会長は奇跡を願うしかないところにまでいつも追い込まれていたではありませんか」
杏「一つぐらい、自分の力で手に入れたいかな」
桃「会長はいつだって努力されて……」
みほ「――あの!」
柚子「え?」
桃「ん?」
杏「西住ちゃん?」
みほ「私! 戦車道、やります!! 隊長、がんばります!! だから、だから……!!」
杏「……」
みほ「みんなで勝ちましょう! 次の試合、絶対に勝ちましょう!」
桃「に、しずみ……」 - 525: 2015/12/13(日) 19:46:49.10 ID:++uuupKVo
- 教室
沙織「華、病院いくよね」
華「勿論ですわ。花束はわたくしが用意いたします」
沙織「ありがと。猫田さんも喜ぶね」
華「みほさんは猫田さんの傍にいるのでしょうか……」
沙織「みぽりんって、すっごく優しいからね。何時間でもいてくれそう。私が風邪とかひいたら、治るまで一緒にいてくれたりしてぇ」
華「きっと、居てくれます」
沙織「じゃ、いこっか」
華「はい。麻子さんと秋山さんもお誘いして――」
『ピンポンパンポーン、生徒会からのおしらせぇ』
沙織「またぁ?」
華「なんでしょうか」
『どーぞ、西住ちゃん』
『で、でも、これは……やりすぎのような……』
『大事なことだから。西住ちゃんから説明してほしいんだ』 - 526: 2015/12/13(日) 19:59:59.67 ID:++uuupKVo
- 『すー……はー……。に、西住みほです!! みなさん!! 突然ごめんなさい! 聞いてほしいことがあります!!』
華「みほさん?」
沙織「なになに? なんでみぽりんが放送を……?」
『この大洗女子学園は来年度で廃校になってしまうかもしれません』
華「……」
沙織「みぽりん……」
『もうすぐ行われる戦車道の大洗女子学園対オールスター戦で大洗女子学園が負ければ、この学園艦は無くなってしまいます』
優花里「武部殿! 五十鈴殿! この放送……!!」
華「お静かに」
優花里「はぅ!? す、すみません……」
『けれど、勝つことがあれば再燃しかかっていた戦車道に水を差してしまうことになります。西住家の人間がそんなことをしてしまうことでお母さんとお姉ちゃんに迷惑がかかるかもしれない』
『何より、勝つためには自分の戦車道を曲げなくてはいけない。そう考えると、私は選手として出場するべきではないのかもしれないと、悩みました。いえ、試合をしたくないとすら思いました』
麻子「沙織」
沙織「あ、麻子。今、起きたの?」
麻子「西住さんの声がしたから、飛び起きた」 - 527: 2015/12/13(日) 20:16:03.12 ID:++uuupKVo
- 体育館
『そんな中で、私たちの大事な仲間であり、友達である猫田さんが事件に巻き込まれて大怪我をしました。事件と試合との関係性も分からないので、試合中止ということで決定しかけました』
典子「……」
『私は無意識に安心してしまったのかもしれません。もう戦わなくてもいい。悩まなくてもいい。試合なんてしている場合じゃないから』
『猫田さんの心配をしていればいい。そんなことを心のどこかで思っていたかもしれません』
妙子「西住先輩……」
『私は弱いんです。優しくなんてありません。ただ臆病で、引っ込み思案で、自分からは何もできなくて……』
『友達の作りかただってわかりませんでした。一人でいるのが怖いのに、手を伸ばしてくれる誰かをずっと待っていただけなんです』
あけび「先輩、そんなことないのに……」
忍「自分自身でそう感じていたんじゃない?」
『みんなが離れていくのが怖かった。だから戦車に乗りました。友達が庇ってくれたから、戦車道を受講しました』
『最初は本当に嫌でした。戦車に乗りたくない気持ちのほうが大きかったと思います』
『でも、みんなといるのが楽しくなって……ずっとずっと、みんなと一緒にいたいって思えるようになって……』
『だから、逃げ出した戦車道にもう一度だけ向き合おうって、決めたはずでした』
典子「……」 - 528: 2015/12/13(日) 20:37:16.62 ID:++uuupKVo
- 食堂
『苦労して優勝してもなお、廃校をかけた試合があると言われて、心が折れてしまったのかもしれません。私は家族や将来の戦車道と自分の心配をしてしまったんです』
梓「先輩、そんなこと一言も……」
優希「言えなかったんじゃないかな。隊長の弱い部分を見せたくないとか」
『きっとそれも弱い自分を隠すための言い訳だったんです。本当は学園艦を守りたいって感じていたはずなのに。怖いことから逃げ出そうとしてしまいました』
あや「西住先輩、悩んでたんだ……色んなことで……」
あゆみ「全然、気が付かなかった……」
あや「私も……」
梓「私だって……」
紗希「……」
優希「ホント、バカだなぁ、みんなぁ」
桂利奈「えぇー!? 優希ちゃんはきがついてたのー!?」
優希「ちがうよぉ。私も含めて、みんな、バカじゃん」
梓「うん。ダメだよね。先輩が苦しんでいることに、誰も気が付けなかったなんて……」
桂利奈「あいぃ……」 - 529: 2015/12/13(日) 20:51:57.77 ID:++uuupKVo
- 倉庫
『けど、私はもう逃げません。戦います。自分の戦車道を信じて、戦います』
『だから、みなさん……こんな弱い私でも……信じて、くれますか……』
『諦めかけた、私を……もう一度だけ……』
カエサル「よし。このマイクを使おう」
エルヴィン「それでは隊長に私たちの声は届かない。無線機を使うぞ」
おりょう「西住隊長が受信できなければ意味がないぜよ。ここは手旗信号で」
左衛門佐「外を見ていなければ伝えようがないでござる。ここは狼煙で」
アル『西住殿のところに直接駆けつけるのが最も効率的かつ確実かと』
カエサル・エルヴィン・おりょう・左衛門佐「「それだぁぁ!!!」」ダダダダッ
ナカジマ「私たちもいこっか」
ホシノ「うんっ」
ツチヤ「隊長に言わないとね」
スズキ「そうだね。そういうこと、言ったことなかったよね」
アル『みなさん、お気をつけて』 - 530: 2015/12/13(日) 21:04:26.87 ID:++uuupKVo
- 廊下
典子「うおぉぉぉぉぉ!!!!」ダダダダッ
みどり子「ちょっと!! 廊下は走らない!! 校則違反よ!!!」
モヨ子「でも走りたくなる気持ちもわかるのよ、そど子」
希美「私たちもこうしてはいられないのよ、そど子」
みどり子「だからって走っていいわけないじゃない!!」
かなめ「――園先輩!」
みどり子「千鳥さん?」
かなめ「急がなきゃ、みほに言いたいことみんなに言われちゃいますよ」
みどり子「う……うぅぅ……」
かなめ「いきましょ!」
みどり子「あーもー!!! 校則違反なんだからぁぁ!!!」ダダダダッ
かなめ「よっしゃー! はしれー!!」
麻子「そど子が荒れてるな」
優花里「我々も急ぎましょう! 西住殿のところへ!!」 - 531: 2015/12/13(日) 21:12:48.43 ID:++uuupKVo
- 学園艦 艦内
『みんなを守りたい。この学園艦を守りたい。でも、私じゃ無理なんです。みんないないと、何もできないんです』
カリーニン「この放送はどこから流れている」
テッサ「生徒会室、でしょうか」
マデューカス「艦長。警戒システムの設定を多少変更してもよろしいでしょうか」
テッサ「いいですよ」
マデューカス「感謝します」
テッサ「ふふっ。マデューカスさんって優しいんですね」
マデューカス「いえ。緊急時には艦内全域放送が可能でなくてはなりませんからな。そのテストです」
テッサ「はいはい、りょーかいです」
マデューカス「本当です。他意はありません」
テッサ「いいから、早くしてください」
マデューカス「アイアイ、マム」
カリーニン「届くといいですね」
テッサ「届きますよ。ミスリルが誇る、警戒システムなんですから。艦の隅っこにいたって、声は届きます」 - 532: 2015/12/13(日) 21:26:28.13 ID:++uuupKVo
- 病室
ももがー「なにか食べるなり?」
ねこにゃー「大丈夫。ありがとう」
『――みんながいないと、私は戦車に乗ることもできなかったんです』
ぴよたん「この声って……」
『もう背中を押してもらうのは、やめます! これからは私がみんなを支えたい! 私がみんなに勇気を分けたい!!』
『みんなから苦しいことを、辛いことを、分けてもらいたい!! 私は……私は……!!』
『私は大洗女子学園を愛しています!! みんなが大好きなんです!! みんなと一緒に歩く戦車道が一番楽しいんです!!!』
ねこにゃー「おぉぉ……西住さんに……こくられた……」
ももがー「それはちょっと違うような……」
『だから!! 信じて欲しいんです!! 未熟で弱虫で臆病な私だけど、その気持ちだけは本当です!!!』
ぴよたん「私たちだって!!」
『私たちはバレーボールを愛しています!!! でも、それ以上に大洗女子学園を愛しています!!! 戦車道を愛しています!!! 西住隊長を愛しています!!!』
『キャプテーン!! ガンホー!! ガンホー!! ガンホー!!!』
『ちょ……!? 磯辺さん!?』 - 533: 2015/12/13(日) 21:35:12.56 ID:++uuupKVo
- グラウンド
沙織『ちょっとまってよ!! みぽりんのことを一番愛してるのは私なんだからぁ!!』
優花里『いえ!! 敬愛の深さならば、この秋山優花里、誰にも譲りません!!!』
華『わたくしも、みほさんのことはだーいすきですわ』
麻子『私……は……まぁ……すき、かな……』
クルツ「なんだこりゃ」
マオ「部下に愛される隊長ってのは、やっぱりいいわね」
クルーゾー「……」
クルツ「見てみろよ。中尉の表情。呆れかえってんぜ」
クルーゾー「ユ……す……らしい……」
クルツ「は?」
クルーゾー「あ、いや。なんでない」
クルツ「ユ……なんだって?」
クルーゾー「なんでもないと言っている。哨戒任務だ。行くぞ」
クルツ「言ったことぐらい教えてくれてもいいだろ、ったく」 - 534: 2015/12/13(日) 21:48:17.27 ID:++uuupKVo
- 生徒会室
カエサル「気持ちは西住隊長と常に同じだと思っている!!」
エルヴィン「勝利の美酒は皆で分かち合わなくては上手く酔えない」
おりょう「私たちは未成年ぜよ」
梓「先輩だけにいろんなことを任せて、すみません!!」
桂利奈「オールスターチームなんてぶっ飛ばしてやりましょう!!」
みほ「みんな……」
みどり子「西住さんは弱くなんてない。もっと自信をもって」
ナカジマ「勇気ならいつも分けてもらっています」
みほ「ありがとう……みんな……」
杏「みんな、やるんだよね」
沙織「とーぜん!」
華「大洗を守れるのは、私たちだけです」
優花里「全員で、戦いましょう」
麻子「西住さんは隊長。ただそれだけだ。西住さんを頼るんじゃなく、信じればいい。西住さんだけじゃない。沙織のことも五十鈴さんのことも秋山さんのことも、戦車道チームを信じている」 - 535: 2015/12/13(日) 21:57:11.52 ID:++uuupKVo
- 杏「おっし。んじゃ、景気づけにアレでもやっちゃうか」
桃「あれというと」
柚子「あれのことでしょうか?」
杏「かわしまぁ。BGMスタンバイ」
桃「本気ですか!?」
杏「大洗といえばあれだからな」
桃「わ、わかりました……」
柚子「えぇー!?」
杏「西住ちゃん」
みほ「はい」
杏「ありがとう。あと、ごめんね。最初から最後まで見ず知らずの学校のために心をすり減らして、大変だったよね。感謝してもしたりない。なんてお礼を言っていいかもわかんないよ」
みほ「会長も、いえ、会長のほうこそ辛かったはずです」
杏「ま、そうだな」
みほ「ふふっ」
杏「あはは。おーし!! おどるぞー!!!」 - 536: 2015/12/13(日) 22:05:13.42 ID:++uuupKVo
- ――アアアン アン♪ アアアン アン♪ アアアン アアアン アン アン アン♪
杏「あの子会いたやあの海越えてぇ」
優花里「あたまの灯はあーいのあかっし!」
おりょう「燃やして、焦がして、ゆーらゆら」
紗希「もやして、こがして、ゆーらゆら」
沙織「なんでこーなるのよー!」
華「いいではありませんか。誰にも見られていませんし」
麻子「いや、千鳥さんが見てるが」
みほ「こっち来て、アンアン! 逃げないで、アンアン!」
典子「波にゆられて、アンアンアン!」
かなめ「……」
宗介「千鳥」
かなめ「あ、ソースケ」
宗介「千鳥は参加しなくていいのか?」
かなめ「あれに参加する勇気は分けてほしくないわね……」 - 537: 2015/12/13(日) 22:17:12.55 ID:++uuupKVo
- 陣代高校 生徒会室
敦信「そうか。試合の中止は取り消しか」
まほ『連絡があった。他の学校へもその通達は既に届いているはず』
敦信「角谷君よりも君からの連絡が先とは、驚いたよ」
まほ『貴方もこの一件には深く関わっている。伝えないわけにはいかない』
敦信「律儀だね」
まほ『それと例のことも話は順調に進んでいる』
敦信「どの戦車を選ぶのかは、聞くまでもないかな」
まほ『それを知ってどうするというの』
敦信「ただの好奇心だよ。気になったことは追及するのが性分でね」
まほ『そのうちに分かることよ』
敦信「妹の戦車を――」
まほ『失礼する』
敦信「切られてしまったか。西住まほ君はやはり、戦車道日本代表にふさわしい淑女だ。美樹原君と気が合うだろう」
蓮「まぁ、では一度お話ししてみたいですね」 - 538: 2015/12/13(日) 22:58:44.12 ID:++uuupKVo
- 大洗女子学園 倉庫
みほ「疲れた……」
宗介「素晴らしいダンスだったぞ」
みほ「そ、そうですか?」
宗介「大洗では伝統のダンスらしいな」
みほ「え、ええ……」
宗介「それはさておき、試合まで時間がない。どうするつもりだ」
みほ「……今までとやることは変わりません。変えなくてもいいと思います。相良さんはどう思いますか?」
宗介「同感だ。日頃の訓練風景を見る限りは改善の余地などない。強いていうなら、厳しさがない」
みほ「厳しさ、ですか」
宗介「背水の陣であっても普段厳しさがないゆえに、追い込まれてもどこかゆとりがあるように思える。それが戦車道にとって良いことなのかは俺には判断できん」
みほ「河嶋さん以外で声を荒げるような人がいないから、そう見えちゃうのかも……」
宗介「だが河嶋も的確な指示を出せていないことは自覚している。訓練中に口を挟むこともない」
みほ「そうなると、怒る人っていないんですよね」
宗介「西住による戦車前進時の掛け声もとても優しいからな。指揮官の声は耳を劈くぐらいが普通なのだが」 - 539: 2015/12/13(日) 23:06:47.74 ID:++uuupKVo
- みほ「すみません」
宗介「いや、指揮官として三流でも指導者としては一流だ。その方針でこのチームはまとまっている。問題ない」
みほ「あのボン太くんで訓練したら、効果ありますか」
宗介「ボン太部隊を仮想オールスターチームにして、模擬戦闘をしてみるか」
みほ「あまり意味がなさそうですね……。可愛いですけど」
宗介「そうか。残念だ。データ収集に役立ちそうだったのだが」
みほ「そうだ! あのときは、ありがとうございました」
宗介「何の話だ」
みほ「ボン太くんで助けに来てくれたのって、相良さんですよね」
宗介「肯定だ」
みほ「あの公園で助けにくてくれなかったら……私……」
宗介「公園? なんのことだ。君の救出を行ったのは学園の敷地内だ」
みほ「でも、公園でボン太くんが……」
宗介「それは俺ではない。君を最初に助けたのは――」
かなめ「ソースケー、テッサが病院まできてってさー」 - 540: 2015/12/13(日) 23:08:07.22 ID:++uuupKVo
- 病室
ねこにゃー「みんな、今頃は練習してるんだろうな」
「すみません。少しいいでしょうか」
ねこにゃー「は、はい?」
テッサ「失礼します」
ねこにゃー「あ……え……?」
マデューカス「決して怪しい者ではありません。警戒しなくとも結構です」
ねこにゃー「おぉぉ……」
マデューカス「ですから……」
テッサ「マデューカスさんは外にいてください」
マデューカス「しかし、艦長」
テッサ「むぅ」
マデューカス「うぅむ……。外に出ています……」
テッサ「ごめんなさい、猫田さん。急に押しかけてしまって。私はテレサ・テスタロッサといいます」
ねこにゃー「ボク、ねこにゃーです」 - 541: 2015/12/14(月) 20:20:31.16 ID:iGnJj2lho
- テッサ「あ、あら? えっと、猫田さん、では?」
ねこにゃー「ええと、本名はそうなんですけど、ねこにゃーなんです」
テッサ「そ、そうなのですか。では、ねこにゃーさんとお呼びしたほうがいいのかしら?」
ねこにゃー「どっちでもいいです」
テッサ「は、はぁ……。で、では、ねこにゃーさんでいいですか」
ねこにゃー「どうぞ」
テッサ「この度の事、陳謝致します」
ねこにゃー「え? どういうこと?」
テッサ「貴方が怪我をしてしまった原因の一端は私にあります」
ねこにゃー「確かにテスタロッサさんとあの男の人の髪の色とか、雰囲気とか似てるけど……」
テッサ「その男は、私の兄なんです」
ねこにゃー「お兄さんが……? どうして西住さんを……?」
テッサ「それはまだよくわかっていません。ごめんなさい」
ねこにゃー「そうなんだ……。西住さんにはそのこと、話したの?」
テッサ「はい。でも、ミホさんは私のことを友達だと言ってくれました。あの人が皆さんから慕われているのがよくわかります」 - 542: 2015/12/14(月) 20:29:43.27 ID:iGnJj2lho
- ねこにゃー「ボクも西住さんのこと、大好きだから……」
テッサ「そうでしょうね。私ですらファンになりそうです」
ねこにゃー「テスタロッサさん」
テッサ「はい」
ねこにゃー「ボクとも、リア友になってくれると、う、うれしいな」
テッサ「りあとも、とは?」
ねこにゃー「リアルの友達のこと」
テッサ「ねこにゃーさんまで、私のことを受け入れてくれるのですか」
ねこにゃー「あの怖い人と家族だったのは驚いたけど、貴方はあの男の人とは違うから」
テッサ「ミホさんと理由が同じですね」
ねこにゃー「そ、そうなんだ。なんだか、照れる……」
テッサ「絶対に守ります」
ねこにゃー「え?」
テッサ「またお見舞いにきてもいいですか?」
ねこにゃー「いつでもきて。待ってるから」 - 543: 2015/12/14(月) 20:40:04.05 ID:iGnJj2lho
- マデューカス「艦長。二人が到着しました」
テッサ「そうですか」
ねこにゃー「二人?」
テッサ「貴方のお友達です」
かなめ「猫田さん、具合はどう?」
宗介「顔色は優れている。問題はないようだな」
ねこにゃー「千鳥さん、相良さん」
テッサ「貴方にも話しておきたい、いえ、話しておくべきでしょう」
ねこにゃー「な、なんのこと?」
テッサ「私たちの正体についてです」
ねこにゃー「正体……」
テッサ「重大な機密を今から説明します」
宗介「西住も既に知っている。猫田だけに話すわけではない」
ねこにゃー「ボクと西住さんだけが知っていることなの?」
テッサ「お二人の胸に留めておいていただけると助かります。私たちは一応、極秘の傭兵部隊なので」 - 544: 2015/12/14(月) 20:51:43.40 ID:iGnJj2lho
- グラウンド
クルツ「はぁーい、ガールズたち。今日もクルツくんの射撃講座を始めちゃうぞぉ」
あや「おねがいしまーす!」
あゆみ「クルツさんだー」
クルツ「うんうん。一年生は素直でいいねぇ」
左衛門佐「たのもー」
あけび「今日もご指導のほど、よろしくお願いします!」
クルツ「真面目な子もいいぜ」
みどり子「射撃の腕は確かなのよね」
希美「講座を受けたほうがいいの?」
みどり子「試合に出られるかはわからないけど、ここで受けておかないと後悔するような気がする」
クルツ「絶対に損はさせねえさ。話を聞くだけでも、全然違ってくる」
華「では、清聴いたしますわ」
クルツ「華は、あれだ、別に聞かなくても十分……」
華「いいえ。聞きます。ウェーバーさん、どうかご教授ください」 - 545: 2015/12/14(月) 21:38:59.45 ID:iGnJj2lho
- 優花里「砲手組が羨ましいです。訓練時の姿を見る限り、ウェーバー殿は間違いなく一流のスナイパーでありますからね」
沙織「私たちはどうするの?」
みほ「ええと、相良さんからは何も指示を受けていないし、今まで通りに――」
マオ「ちょっと待ちな」
麻子「貴方は……」
優花里「アイス屋さんにいた店員さんですね」
マオ「あたしはメリッサ・マオ。実はソースケと知り合いでね。あんたたちの指導を任された」
みほ「指導?」
マオ「とはいっても、あたしもソースケと同じで戦術に関して口を挟む気はない。ミホがいれば十分だからね」
みほ「わ、私は、そんな」
カエサル「では、どのようなことを?」
マオ「ソースケは学園の周りを走らせていたらしいけど、正直なところそれだけじゃあんたたちの心は鍛えられない」
おりょう「どうするぜよ」
マオ「ここにある丸太を抱えて、学園の周りを50周。はい、スタート」
沙織「やだもー。そんなの無理に決まってるじゃないですかぁ」 - 546: 2015/12/14(月) 21:49:45.19 ID:iGnJj2lho
- マオ「あたしはやれといったんだけど?」
沙織「だから、そんな大きいのを抱えて走れるわけが――」
マオ「やりな。糞虫共」
沙織「え……」
マオ「あんたたちは勝ちたいんじゃないのかい!! ええ!!」
桂利奈「ひぃ!?」
カエサル「勝ちたいに決まっている!!」
マオ「学園艦を守りたいって言葉は嘘だったのかい!?」
エルヴィン「嘘ではない!!」
マオ「なら、それを証明してみせな!! ほら、丸太を担げ!! この糞ビッチ共!!」
沙織「えぇー!!」
麻子「沙織は男と付き合ったことすらないのにな」
沙織「麻子もじゃん!!!」
マオ「この程度のことからも逃げ出すようなら、あんたらはただ男にヤラれてガキを生むだけのつまんないメス犬だよ!!!」
みほ(そういえば相良さん、最終的にはこれぐらい厳しいことをさせるって言っていたような……。本気だったんだ……) - 549: 2015/12/14(月) 22:18:39.86 ID:iGnJj2lho
- かなめ「今更だけど、猫田さんにまで全部話してよかったの?」
テッサ「ミホさん同様、ねこにゃーさんはあの人の顔を見てしまっている。いつ、何時、また同じ恐怖を味わうかわかりません」
かなめ「そうね。知らない間に、知らない奴に命を狙われるのは、嫌だもんね。あと変な奴に付き纏われるのもね」
宗介「問題ない。不審者は全て捕縛する」
かなめ「あんたのことを言ってるんだけど」
テッサ「あとは私たちがねこにゃーさんのことを全力で守る。シンプルなことです」
かなめ「猫田さん、ううん、この学園艦が残る限りは、みんなを守ってくれるの?」
テッサ「勿論です。ミスリルの名に懸けて、お約束します」
かなめ「ありがとう。これで少しは安心ね」
宗介「あとは学園艦を存続させるため、決戦までに特訓を繰り返すだけだな」
テッサ「そうでした。サガラさんは先に戻ってくださってもいいんですよ?」
宗介「問題ありません。今頃、マオが自分の代わりを務めているはずです」
テッサ「メリッサが?」
宗介「本日よりマオと自分が西住らを補強していきます。我々でかけている部分を強化してやれば、負ける要素は皆無となり、大洗女子学園は無敵のチームと化します」
かなめ「しまった……! ソースケがマオさんに任せる気満々だったの忘れてた……!! 急いで戻らなきゃ!!!」 - 550: 2015/12/14(月) 22:36:06.06 ID:iGnJj2lho
- グラウンド
かなめ「みんなー!! 無事――」
マオ「ちんたら、ちんたら走るんじゃないよ!!! この蛆虫が!!」
沙織「ひぃ……ひぃ……」
優花里「これは流石の私でも……きつい……です……」
妙子「あぁ……」ガクッ
典子「近藤!! 止まるな!!」
妙子「キャ、キャプ……」
マオ「誰が休んでいいと言った」
妙子「ひっ……」
マオ「あんたのバレーボール魂なんて、所詮はそんなもんだったってこったね」
妙子「そ、そんなことは……」
マオ「お前みたいな出来損ないは男に媚びればいいんだよ。そのでかい尻を振っていれば、向こうから寄ってくるよ。よかったね」
妙子「うぅ……」
マオ「プライドも根性もなけりゃあ体を売って生きていきな。金と恥垢がたくさん溜められる。あんたにお似合いの楽で惨めな人生だ。そうしな、このアバズレ」 - 551: 2015/12/14(月) 22:44:22.13 ID:FTkrmKcr0
- 遅かったか……www
- 552: 2015/12/14(月) 22:46:41.64 ID:iGnJj2lho
- 典子「近藤の悪口をいうなー!!!」
マオ「ふんっ」ゲシッ
典子「うわ!?」
マオ「こんな根性なしを庇う必要はない。こんな女が腐ったやつが戦場にいても、男を慰めるのためにしか働けない」
典子「そんなこと……!!」
妙子「やめてください!! キャプテン!!」
典子「でも! これ以上、近藤のことを悪く言われたくない!!」
妙子「キャプテン……」
マオ「庇われたくないならガッツを見せな!!」
妙子「そーれそれそれそれー!!!」ダダダッ
典子「うおぉぉぉぉぉ!!!!」
テッサ「……」
かなめ「おそかった……」
宗介「マオ。流石だな。今の大洗に欠けていた部分を見事に補っている」
マオ「これぐらいのことはしないとね。憎まれ役ってのが不在だったみたいだし」 - 553: 2015/12/14(月) 22:58:55.20 ID:iGnJj2lho
- かなめ「ちょっとマオさん!! みんないい子なんだから、変なことをしないでくださいよ!!」
マオ「いい子だからこそ、心を鬼にする。優しさは躊躇いを生み、情けを与える。そういうことをしていれば、学園艦は守れないんじゃない?」
かなめ「いや、だからって……」
テッサ「メリッサ……」
マオ「これはミスリルとは関係ないから、いくら艦長の命令でも聞けないわよ」
テッサ「もう……なにも言いません……」
マオ「安心して。ソースケみたいに加減なしにはしないから。心を失くすまではしないわ」
かなめ「ホントに……?」
宗介「もとより士気が高い彼女たちにそこまで求めるつもりはない」
かなめ「頼むわよ……」
マオ「そこ!!! ペースが落ちてる!! 嫌ならやめてもいいんだよ!!! 家に戻ってパソコンの前で股間をまさぐってな!!!」
ももがー「そ、そんなこと……してなぁい……」
ぴよたん「してても、してるとはいえなぁい……」
かなめ「え……」
マオ「何、驚いてるのよ、カナメ。アリクイさんチームまで参加してるのが不思議?」 - 554: 2015/12/14(月) 23:06:59.86 ID:iGnJj2lho
- かなめ「だって……」
杏「ねこちゃんが戻ってきたときに、サボってたなんて言いたくはなんじゃない?」
かなめ「角谷先輩……。けど、猫田さんは……」
杏「諦めたくないから、奇跡を信じたいんだよ。誰だってな」
マオ「あんたも走りな」
杏「はいはーい」
マオ「全く。要領が無駄に良い奴は困るわ」
かなめ「丸太、まだある?」
マオ「そこに」
かなめ「よっ……と……」
宗介「千鳥、参加するなら泣き言はなしだ。その覚悟はあるか」
かなめ「あるわよ。バカにしないで」
マオ「よかったわねー!! アバズレがもう一匹増えたわよー!!!」
みほ「かなめさん……はぁ……はぁ……無理に……参加する、ことは……はぁ……」
かなめ「あたしだって、大洗女子学園戦車道のメンバーなんだから。同じ特訓をしたいじゃない」 - 555: 2015/12/14(月) 23:29:21.49 ID:iGnJj2lho
- マオ「あたしはあんたたちを憎み軽蔑しているっ! あたしの仕事はあんたたちの中からマ●●●●●カーを見つけ出して、切り捨てる事だ!」
マオ「パパの●●●がシーツのシミになり、ママの●●に残ったカスがあんたたちだ!」
テッサ「聞くに堪えません……」
宗介「これも必要なことです」
テッサ「本当ですか?」
宗介「肯定です」
テッサ「うーん……」
マオ「――あんたたちのボーイフレンドはその砲弾だ! その砲弾を立派な●●●だと思って、とことこん綺麗にしてやりな!!!」
優希「こわれちゃうかもぉ」
梓「こら! そんなこと言っちゃダメ!!」
みほ「間違ってる……色んなことが間違ってるよぉ……」
マオ「このあとは隊長の言うことをよく聞くように!! ミホ、戦車戦術は任せるから」
みほ「ここから私なんですか!?」
宗介「間違いなく、強いチームになれます」
テッサ「だと、いいんですが……」 - 556: 2015/12/14(月) 23:33:07.32 ID:KmrtfO/U0
- レナードでシリアスになったと思ったらこっからウォークライかよwwww
- 557: 2015/12/14(月) 23:42:30.58 ID:XuIzJ2UEo
- この振れ幅がフルメタの魅力だから問題ない
次スレ:
- 関連記事
コメント
お知らせ
サイトのデザインを大幅に変更しました。まだまだ、改良していこうと思います。