最愛「だ、ダメです浜面・・・・・・ん・・・浜面ぁ・・・」

196: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/09(土) 22:36:24.36 ID:6+TBH2zN0
どうして、今自分は浜面仕上に押し倒されているのか。

その根本的な原因は、2週間程前のとある一言だった。





「…最近、はまづらがおかしい」

病室のベッドに体を預けながら、滝壺利后はそう言った。

肩より少し長めの髪に、ピンクのジャージという、いつもと変わらない姿で。

「…浜面が超おかしいのは前々からだと超思いますけど。

 …具体的にはどんな風に超おかしいのですか?」

それに答えたのは小柄な少女だった。

小学生にしか見えない容姿に、下着が見えそうで見えないギリギリの丈のワンピース。

『窒素装甲』の能力者、絹旗最愛である。

「…なんだか、はまづら、最近わたしにつめたい」

「…冷たい?あの浜面が?」

浜面仕上という人間は、基本的にはいい奴だったりする。

無能力者の集団(というか、不良グループ)『スキルアウト』のリーダーだったこともあったが、女の子にはめっぽう優しい奴だ。

現に、自分が身分証明を作れと言えば、ブツクサ言いながらも作ってくれる。

そんな奴が、好きな女の子に冷たい態度をとるだろうか?

「うん。きぬはた、何かしらない?」

滝壺はそう言うと、首を少し傾けた。

「うーん…」

腕を組み、考えてみる。

最近何かと浜面と行動することが多い絹旗だが、いくら考えてもそれらしい原因が思い浮かばない。

(この前会った時も超普通でしたし…。

 何か超とんでもない超秘密でもあるんでしょうかね?)

一度気になるととことん気になる性格な彼女は、しばらくうんうん唸った後こう言った。

「…では私から超それとなく浜面に聞いときます。

 何か解ったら超連絡しますね」


注目記事




201: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/09(土) 23:00:11.60 ID:6+TBH2zN0
(…さて、超どうしましょうか)

滝壺の病室を出た後、絹旗は駅へと向かいつつ、浜面からどうやって理由を聞き出そうか考えていた。

(超ストレートに『浜面、最近何かありましたか?』とかは超露骨過ぎますし…)

 かといって、あの超鈍感(というよりも最早バカ)な浜面のこと。

回りくどく聞いても正鵠を射た答えは期待できない。

(うーん…)

馬鹿を相手にすると何だか超面倒ですね、と思いながら絹旗は駅構内の本屋へと入った。

そして雑誌コーナーまで行くと、全く売れている気配の無い映画関連の雑誌を一冊手に取り、パラパラとページをめくった。

浜面のことも考えなくてはならないが、趣味だって大事だ。

(さてさて、今月は超面白そうなC級はやってますかね…ん?)

適当にページをめくっていた手が止まる。

そこには、『恋人との過ごし方』というタイトルの、聞いたことも無い役者による映画の情報が乗っていた。

(…見た感じ超素人くさいですね、コレ…)

大方、どこぞの超大金持ちのバカ御曹司が自主制作し、

これまたバカみたいな金払って上映させたのだろう。

常盤台中学のようなお嬢様学校が数多く存在する学園都市ではそう珍しくも無いことだ。

(映画自体はC級中の超C級でしょうけど…話題の足場にはなりますかね?

公開日は…2週間後ですか。

ちょっと報告は遅くなりそうですが、まぁ、超急ぎすぎても良くないでしょう)

絹旗はそう結論付けると、雑誌をもとの場所へと戻し本屋を後にした。


彼女は気付いていなかった。

どこぞの少年のように、自分が不幸に逢う事に。

記事の端っこに書いてあった、『R‐18』の文字に。

203: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/09(土) 23:34:27.88 ID:6+TBH2zN0
―――2週間後。

絹旗はとある小さな映画館の前にいた。

いつものワンピースに身を包み、浜面を待っているのだ。

腕時計を見ると、時刻は午後の1時45分。上映開始まであと15分程だった。

「お、いたいた。おーい、絹旗ー」

不意に聞こえた声に顔を上げると、浜面仕上がこちらに歩いてくるのが見えた。

ダボダボのスウェット、大きめのパーカー、そして止めと言わんばかりの金髪。

私は不良です、と公言しているような服装ももう見慣れたものだ。

「…待ち合わせは1時半のはずです。超遅刻ですよ、浜面」

「悪ぃ悪ぃ、来る途中に面倒な爆にゅ…アンチスキルにつかまっちまってよ」

「…日ごろの行いが超悪いからそうなるんですよ、浜面」

「…元『アイテム』のお前がそれを言うのか?

 お前確か車とかブン投げてなかったか?」

「まぁ、そのあたりは超どうでもいいですけど」

絹旗は本当にそうでも良さそうにそっぽを向くと、浜面に尋ねた。

「…例のものは超ちゃんと持ってきましたか?」

「おぅ。バッチリだ。…ホラ、これ」

そう言って浜面がポケットから取り出したのは、学園都市内にある大学の生徒手帳である。

と言っても、浜面は大学生ではないし、絹旗も大学生ではない。

二人で映画を見に行くときは決まって、浜面が絹旗の偽造した身分証明書を作成する。

何故なら、彼女が見る映画は決まってC級。大概の映画がR指定なため、実年齢13歳の絹旗には見られない映画のほうが多いのだ。

205: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/10(日) 00:11:36.89 ID:kH82/w9u0
しかし、この日はいつもとは違った。いつもは生徒手帳を受け取って終わるだけなのだが、絹旗が首を傾げたのだ。

「…大学…?」

いつも浜面が作ってくるのは高校の身分証が多い。理由としては偽造しやすく、二人の実年齢的に一番近いからである。

だが、この日は何故か大学の身分証だった。

受付まで歩きつつ、絹旗は尋ねた。

「…浜面、何故今日は超大学の生徒手帳なんですか?」

それは何となく気になっただけで、大した意味も無い質問だった。

しかし、浜面の答えは絹旗の度胆を抜くものだった。

彼はスウェットのポケットに両手を突っ込みながら、何でもない事のように言った。


「いや、だって今日の映画18禁じゃねぇか」




206: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/10(日) 00:15:46.72 ID:xBdaSUUv0
18禁…その3文字に気付かなかった…


 迂闊っ…       

          

あまりにも迂闊っ…
207: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/10(日) 00:34:52.71 ID:BRPVhUKzP
迂闊すぎるwww
238: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/10(日) 16:33:18.06 ID:kH82/w9u0
「…え」

彼の一言に、思わず絹旗は立ち止まった。もし擬音をつけるなら、『ピシッ…』という感じである。

「いやー、びびったぞ。お前からタイトル聞いてググったらエロシーンありの18禁だったからなぁ」

浜面は絹旗の様子には全く気が付いていないようで、一人で受付へと向かっていく。

「……」

「まぁ、高三の生徒手帳ならギリギリ入れるんだけど…なーんか白い目で見られそうだからな」

そう言って浜面は受付でチケットを購入しようとしていた。

そこでようやく、絹旗のフリーズが溶けた。

彼女は『窒素装甲』を靴の裏に展開すると、浜面の元へ跳んでいく。

「すいませーん、チケットぉごぉぉぉぉぉぉぉ!」

そして浜面の首に腕を引っ掻けるように後ろから引っ張り、そのまま直進、受付から十分距離をとったところで浜面に耳打ちをした。

「いいい、いいですか、浜面!超勘違いしないで下さい!!

私が超見たかったのはC級映画そのものでして、いわゆる、その…え、エロいのが、超エロいのが見たかったわけでは超ありません!!第一、この映画が超18禁なのは超知らなくて…!」

羞恥で珍しく顔が赤くなっている絹旗なのだが、それを真っ先にからかいそうな浜面は慣性の法則とフック式弾丸ラリアットのせいでとっくにのびていた。

248: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/10(日) 18:04:21.31 ID:kH82/w9u0
ブー、というブザーの音で浜面は目が覚めた。

「んぁ…?」

目を開けたはずなのに視界が暗い。

その不思議な感覚に戸惑うも、前方のスクリーンに映像が映ると、自分が劇場のシートに座っている事に気づく。

(…あの後絹旗が引っ張ってきたのか)

ため息を一度だけ吐いて、肘掛に乗っている手を動かす。

すると、肘掛けの先にあるカップホルダーにジュースが入っている気がついた。

どうやら冷たい飲み物らしい。ひんやりとした感覚と、水滴が手に伝わった。

(…絹旗が買っといてくれたのか?)

仮に絹旗の物でも、触った感じカップは大きい。恐らく絹旗一人では飲みきれないだろう。

(何か寝たらのど乾いたな…少し貰うか)

浜面はひょい、とカップを持ち上げる。

スクリーンには映画が写り始め、劇場内も少し明るくなった。

これから始まる映画に少しだけ期待をして、浜面はジュースを一口飲んだ。

255: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/10(日) 20:22:32.03 ID:kH82/w9u0
超失敗した、と彼女は心の中で思った。

まずは映画のこと。滝壺の悩みのために功を焦り、この映画が18禁であることを見逃していたことだ。

入場の際一応身分証は提示したが、受付のオバサンに『アンタは本当に大学生か?』というニュアンスを含んだ目で見られたりもした。

そして、今。

自分のために買ったジュースを、浜面が飲んでしまった。

彼の座っている左手側にカップを置いていたからだろうか。一応彼の分も、同じく彼の左手側に置いてあるが、そちらには気がついていないようだ。

(超どうしましょう…。これに口付けたら超間接キスですし)

彼女も年頃の少女である。男性の口に触れた飲み物を飲むのは抵抗がある。

かと言って、彼のジュースを貰うのは不可能だ。

そのためには彼に取ってもらう必要があるのだが、この後真剣な話をしようと思っているのに『お前との間接キスなんか嫌だ』と言わんばかりの相手の心証を下げる行為は控えたい。もっとも、浜面仕上はその程度でへそを曲げたりはしないのだが。

(うむむむむっ…!)

本来の彼女なら、こんなことに悩んだりはしない。だが、今回は自分の友人の恋路がかかっているのだ。

自分のプライドと、友人の幸福と。

その二つのバランスにさんざん頭を悩ませ、結局。

(…映画が超始まったから…。始まってしまったから、取ってもらうと浜面に超悪いから、これを飲むんです…!全ては滝壺のために…!)

そうやって誤魔化して、絹旗はジュース飲むのだった。

何だかいつもより少し甘い味がした気がしたが、勿論気のせいである。

257: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/10(日) 20:56:42.85 ID:kH82/w9u0
(…なんじゃこりゃ)

浜面仕上は映画を見ながらそう思っていた。

映画が始まって30分程。映画自体は1時間半の作品なのだが、ここまでの30分、一組の男女が映画を見て、買い物をしているだけの展開が続いていた。

(…こりゃなんつーか。C級どころかD級と言っても頷けちまうな)

このところ絹旗と映画に行くことが多くなり、多少はC級映画を語れるようになった彼なのだが、その彼から見てもこれは酷かった。

C級映画というものは、基本的に制作費が少ない中で作られている。

そのため基本的に役者は素人同然だし、CGなどはほぼ使われない。そんな状況でC級映画を楽しむ方法が、時間と関係していたりする。

しょぼい配役と映像効果で客を飽きさせないために、C級映画とは短く作られるのが普通である。

だが、その理論に反するのがこの映画だ。

グダグダの展開と、逆光上等のカメラアングル。そして一般映画並の上映時間。

チラリ、と隣を見る。

そこには、真摯な目で映画を見る絹旗がいた。

(…まぁ、コイツが席を外さないってことはまだ見る価値があるってことだしな)

浜面は腕を組むと、再び映画に向き直った。

271: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/10(日) 23:11:14.40 ID:kH82/w9u0
絹旗は映画に集中できていなかった。

それというのも、先ほど口にしたジュースの所為である。

(超間接キスしてしまいました…)

滝壺のために起こした行動のはずなのに、結果として間接キスに至ってしまった。

いや関節キス位で何だよ、と思うかもしれないが、彼女は未だうら若き中学生。ようやく思春期の門を叩いたばかりなのだ。

映画鑑賞は彼女の唯一の趣味なのだが、彼女は浜面のことばかりを見てしまっている。最初は横目で見る程度だったが、今では首を少しだけそちらに動かしている。

(…浜面は)

映画を見る彼の横顔を見ながら、彼女は考える。

(…浜面は、どういう風に超感じたんでしょうか…?)

自分より幾つか年上の彼にとっては、何でもない事なのだろうか。

(それとも…)

そこまで考え彼女ははっ、と我に返った。

(…超何を考えているんですか、私は…)

首を振る。こんな考えは滝壺にも、浜面にも失礼だ。

(…超気を取り直して映画に超集中しましょう…)

ふぅ、と一息つく。

(…よし)

そして、彼女は顔をあげた。

「……え゛?」


272: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/10(日) 23:34:44.09 ID:kH82/w9u0
(あー…)

浜面は、どうしたものかと考えていた。

スクリーンには男女の情事シーンが映されていた。

ポリポリと首筋をかき、隣を盗み見る。

絹旗は口元に手を当てながらそのシーンを見ていた。見たくないが、興味は超ありますと言わんばかりに食い入って見ている。

浜面仕上という男は、くのいちの裸が直視できなかったり、絹旗の下着を見ただけで鼻血が出る等、初心なところがある。

が、それは現実の話。

10代後半にいる彼は、勿論いかがわしいビデオは見慣れている。

つまるところ、映像程度では殆どといっていいほど反応を示さないのだ。それは最早、見慣れているというよりも見飽きている、という感覚だ。

(18禁指定されてるってことは…こりゃ全部映すかもな)

彼はそんなことを考えながら、もう一度絹旗を見る。

暗くてイマイチはっきりしないが、顔は真っ赤になっているように見える。

(…こういう絹旗は珍しいな)

彼はそのまま、普段は見ない表情の絹旗を見ていた。






279: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/11(月) 00:25:53.52 ID:kONId8Uo0
実技的な保健体育の時間は、突然やってきた。

(はわわわわわわ…)

片手を口に当てて、絹旗はスクリーンを凝視していた。

そこには主人公がヒロインを押し倒し、衣服を脱がしにかかっていた。

行為の生々しさ、ここで急に鋭くなったカメラアングルで映される女の表情、その全てが妖艶に映されている。

(…こここ、こんな、こんな…!)

男の口づけが首へ、そして更に体を這うように下へ下へと向かっていく。その度、スクリーン女性から漏れる声。

『…あぅ…あん…』

無論、彼女は彼らがこれから何をしようとしているのか知っている。一応保健の授業で男女の営みについては学んでいた。

しかし、眼に映るその情事は彼女の想像を遥かに超えていた。

少女マンガの情事シーンから想像していたそれは、もっと綺麗で、ぽわぽわした空気の中行われるものだと思っていた。

しかし、この現実。

“フィクション”“リアル”

 幻 想と真 実のあまりのギャップに、思わず逃げ出したくなる。が、足が動いてくれない。扉を叩くに止まっていた彼女の知識は、ここに来てその先を踏み込もうとしていた。

知りたくないのに、知りたい。

そんな矛盾を内包しながら、彼女は映画を見続けた。



310: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/11(月) 17:37:31.85 ID:kONId8Uo0
スクリーンには絹旗の想像の遥か上を行く行為が続いていた。

自分の目で見ているというのに、その光景がとても理解できない。

(…くくく、くわえてます!超くわえてますよ!!)

(は、さむ…?あ、アレをですか!?)

(自分から超上に乗って超動くなんて…!)

もはやそこにはいつもの絹旗最愛はいなかった。自分の事ではないのに恥ずかしさがこみ上げ、頬が朱に染まる。

スクリーンではさらに行為が激しくなっていくが、絹旗はふと我に返った。

(…そう言えば、浜面はあ、あんなことを超させるんでしょうか…?)

例えば、滝壺と。

(く、くわえさせたり、超上に乗せたり…挟むのは、まぁ、彼女では超無理っぽいですが…)

間接キスでウジウジと考えていた彼女はどこへやら。知ってしまった知識があまりにも強烈で、今ではそんな事などどーでもいいと言える勢いである。

チラリ、と横を向く。

すると、浜面と目が合った。

(!)

バッ、と顔を元に戻す。

気のせいではない。確かに今、浜面はこちらを見ていた。

(…何故、超何故このタイミングで私の事を超見ているんですか浜面は!)

スクリーンでは未だ情事が続いている。

絹旗は、隣を気にせずにはいられなくなってしまった。

308: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/11(月) 17:32:46.86 ID:EmPKfIMW0
挟むのは、まぁ、彼女では超無理っぽいですが…


何気にひでぇwww
313: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/11(月) 18:58:33.32 ID:kONId8Uo0
(今思いっきりこっち見たよな…)

絹旗観察をしていた浜面であるが、つい先ほど絹旗がこちらを向いたかと思えば、速攻で顔を背けられた。

艶かしい声が響く映画館の中、この場所には彼女と自分の二人しかいない。

ひょっとして彼女は、自分のことを意識してくれたのであろうか。

(…んな訳ねぇよな。そんな都合主義なんかありえねぇ)

一緒にいた男が偶然自分だっただけの話だ。ここに別の男が座っていても彼女はこちらを見ただろう。

何たって彼女は未だ中学生。こういったシーンを見て異性が気になるのは仕方ないことなのだと思う。

(さて…)

腕時計を見ると、映画はあと20分ほど。

退屈な映画を見るには長いが、照れた絹旗を堪能するには短すぎる、と彼は思った。

318: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/11(月) 20:25:02.33 ID:kONId8Uo0
映画が終わった。

絹旗はぽーっとした足取りで映画館を出ると、近くの壁に手を付いてため息を吐いた。

(や、やっと終わりました…)

浜面と目が合ってからの時間は、ほとんど拷問みたいなものだった。

チラチラと隣を見れば浜面は決まって自分を見ているし、C級映画ゆえの二人っきり。その緊張感と圧迫感は凄まじいものがあった。

(…超ダメですね。気を超取り直さないと…)

胸に手を当てて、深呼吸。

これから友人の恋路を掛けた仕事が待っているのだ。

出だしは躓きかけたが、ここからが今日のメインディッシュ。前菜を気にしてなどいられない。

出てきたばかりの映画館へ向き直る。丁度浜面があくびをしながら出てきたところだった。

(…よし)

浜面に近づく。さっきの今で浜面に話しかけるのは恥ずかしいのだが、仕方が無い。

大丈夫、自分は『窒素装甲』の大能力者。そうそう防壁を突破されたりはしない。

「…で、では超次行きましょうか、浜面」

…不覚。声が上ずった。
327: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/11(月) 21:02:52.05 ID:kONId8Uo0
「…?次があんのか?」

浜面はついそう聞き返した。普段絹旗と映画に行くとき、大概は映画を見た後はそのまま解散することが多いからだ。

まぁ、そんなことより彼女の声が上ずった理由が気になるところだが。

「ええ、まぁ。ちょっと買い物に超付き合ってください」

ちょっとなのか超なのかどっちなんだよ、と心中で思いながら彼はそれに承諾した。


さて、ここからが勝負だ。

(まずは一緒に行動して、浜面の様子を超監視します。その後家に帰って、真相を超聞きだしてやります…!)

彼女は計画をもう一度脳内で復唱し、軽く拳を握り締めた。

では行きましょうかと思ったところで、映画館のガラスに映る自分の姿を見た。

いつもと同じ、スカートの中が見えないように計算されたワンピース。

中は見えないのだが、太ももから先はバッチリ見えてしまっている。

「……」

絹旗は、先ほどの映画でたしか主人公が太ももに興奮するだの何だの言っていたようなことを思い出すと、

「…まずは服を買いに行きましょう、浜面」

そう言って早足で歩き出した。

329: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/11(月) 21:28:01.67 ID:kONId8Uo0
学園都市第七学区には、セブンスミストという店が存在する。

お子様からお年寄りまで、老若男女全ての服装がこの店で買えるほどの豊富な品揃えとお手ごろな価格が売りの巨大な衣服販売店である。

なんとあの名門常盤台中学のお嬢様方も御用達という話だ。

絹旗と浜面の二人は、その中でもティーン女性向けの店にいた。

(…超場違いじゃねぇ?俺スキルアウトの元リーダーよ?)

ピンクやイエローといったやたらと目がチカチカするようなファンシーな壁紙の囲まれながら浜面はそう思った。

キョロキョロと見渡せば周りにいるのは女の子ばっかりだし、みんなしてちゃんとした服装をしている。浜面のようにパーカーにスウェットという、○ーコにダメだしされまくること間違いない服装をしている人はいなかった。

絹旗はと言えば、先ほどから店員と話したり服を手に取ったりと大忙し。とてもこちらを気に掛けているようには見えない。

(…どうすっかな)

と浜面が頭を悩ませ始めたとき。

ドン、と。

後ろから何かがぶつかってきた。

331: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/11(月) 21:41:30.21 ID:kONId8Uo0
「うおっと…」

一瞬ふらつく浜面だったが、ぶつかって来た勢いがそれほど強くは無かったので一歩で踏みとどまった。

彼が振り返ると、そこにはしりもちをついた女の子がいた。

年は10歳前後といったところだろう。水玉模様の淡い色のワンピースを着て、頭頂部からピョコン、と可愛らしく髪が一本はねていた。

そこまで見れば普通の女の子なのだが。

(…なんで暗視ゴーグルなんかぶら下げてんだ?)

その子の首からは、軍用のゴツイ暗視ゴーグルがぶら下がっていた。小さな体に合わないことこの上ない。

「いたた…」

不意に女の子がそう呟いて、浜面はそんな疑問を引っ込めた。

「悪ぃ、大丈夫か?」

彼はしゃがむと、女の子と目線を合わせるようにした。

女の子は微笑みながら顔を上げると、

「うん、大丈夫だよ。それよりぶつかってゴメンなさい、ってミサカはミサカは謝ってみたり」

と、そう言った。


332: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/11(月) 21:44:30.13 ID:EmPKfIMW0
アホ毛ちゃんキタwww
333: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/11(月) 22:12:15.29 ID:kONId8Uo0
(…あれ?)

その顔を見たとき、浜面は一瞬デジャブに襲われた。

正確に言うのなら、それはデジャブとは少し違う感覚だった。この子本人でなく、この子の姉や母を見たことがある気がする、とそんな気がしたのだ。

(…あー…?)

その女の子は打ち止めと言い、実は以前に浜面が命を狙ったとある女性の間接的な血族に当たる少女だった。

だが浜面は気がつかない。思い出したいのだが、頭がそれを拒んでいるような気がした。

「あなたのほうは大丈夫?ってミサカはミサカは尋ねてみたり」

そんなことを考えていると、不意に少女が尋ねてきた。

「ん?あぁ、大丈夫だ。…ほら」

そう言って浜面は手を差し出し、少女を立ち上がらせる。

「ありがとう、ってミサカはミサカは感謝してみたり。あなたは見かけと中身が反比例、ってミサカはミサカは覚えたての言葉で賞賛してみたり」

「いや、別に大したことしてねぇよ」

つーか変なしゃべり方する子だなー、等と思いつつ浜面は女の子をもう一度見る。

そして先ほどの疑問を思い出すと、それを口にした。

「…ところで、そのゴーグルは何で首にかけてんだ?」

すると女の子は得意げに胸を張って言った。

「へっへーん。実はこれは戦利品なの!ってミサカはミサカは自慢してみたり!お姉さんから取ったんだ、ってミサカはミサカは更に自慢してみる!」

いやそれは自慢にならねぇ、と浜面は心の中で呟いた。
335: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/11(月) 22:36:23.37 ID:kONId8Uo0
(さっきから超何をしているんですか浜面は…!)

絹旗は服を掴みながら怒りに震えていた。

というのも、入店して以来浜面が全く自分の相手をしないのだ。あまつさえ、他の女の子を物色するようにキョロキョロと見渡している。

(超まがいなりにも私と買い物に来ているというのに…!)

ここに来た本来の目的は、太ももを隠せる服を買うためと、滝壺の話の前に彼と気楽な話しやすい雰囲気を作るためなのだが。

他の女の子を見ている(ように見える)彼を見ていると、そんなことも忘れて彼を睨みつけていた。すると。

トントン、と肩を叩かれ、声をかけられた。

「すみません、少々よろしいですか?とミサカは見知らぬ方に声をかけてみます」

振り返ると、そこには常盤台の制服に身を包んだ少女がいた。




395: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/12(火) 21:14:53.08 ID:HuW2GSnG0
「…超何ですか?」

浜面への怒りが残り、かえした言葉が刺々しくなってしまった。

目の前にいた少女は、身長は160cmくらい。肩ほどまで伸びた髪に、端正で、しかし無表情なな顔立ち。

感情を察し量れない眼が少し怖いが、自分より一つか、二つ上に見えた。

そんな常盤台のお嬢様は胸より少し下のあたりで手を水平にすると、

「このくらいのミサカに良く似た少女を見かけませんでしたか?とミサカは目標の身体的特徴を述べつつ尋ねます」

ミサカ、というのは彼女の名前なのだろうか?それにしても超特徴的なしゃべり方ですね、と絹旗は思った。

「いえ…超見ていませんけど」

自分がそう答えると、ミサカさんとやらは「そうですか…」と呟いた。

絹旗はおや?と思った。

先ほどまで感情が読めなかった彼女の目に、憂いの色が見えたからだ。

「…超どうかしたんですか?」

何となく気になった絹旗は、思わずそう尋ねていた。

「…ミサカの最も大切なものを盗んだ妹を探しています、とミサカは恨みに身を震わせながらお答えします

見つけたあかつきには、彼女を決して許しません、とミサカはここに宣言します…!」

「……」

どうやら、憂いが映ったわけではないらしい。

最初のイメージはすっかり吹き飛び、意外にこの人は超可愛いかもしれない、と絹旗は思った。




400: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/12(火) 22:32:56.49 ID:HuW2GSnG0
「それでね、ミサカはねっ、ゴーグルを取ったときにねっ」

「はいはい、ゴーグルついでにペンダントもパクッてきたんだろ?もう三回目だぞその話…」

浜面は、正直カンベンしてほしいと感じていた。

ゴーグルの話を聞いてからというものの、ミサカと名乗る女の子の話は矢継ぎ早に飛んできた。

曰く、ゴーグルと共にペンダントも奪った。

曰く、以前にもこんなことをして遊んでいた。

曰く、本気の姉はとんでもなく怖い。

等々、様々な話を聞いた。

浜面は一度心のため息を吐くと、女の子に言った。

「…つーかさぁ、いくら姉とは言え人のモン盗んじゃダメだろうが」

かつてATMごと大金を盗んだ(が、爆乳アンチスキルに逮捕された)男浜面であるが、彼にも人徳というものはある。

話を聞くと、彼女はレベル3のエレクトロマスターらしい。10歳の段階でそれだけ出来れば、常盤台などのエリートコースだって夢ではない。

そんな少女に、浜面は、例え遊びでも、自分のようなことはして欲しく無かった。

「むー、でもこうしないと計画が、ってミサカはミサカはむくれてみたり」

「…計画?」

なんとこの上にまだ何かする気らしい。

…油断ならない女の子だなぁ、オイ。

「あ、いや、何でも無いよ、ってミサカはミサカは目を逸らしながら言ってみたり」

彼女はしまった、と口に手を当ててそう言った。

いや絶対何かする気だろテメェ、と言おうとして、

「…何をそんな超ロリータ少女と超話しこんでいるんですか浜面は」

レベル4の脅威と、何故か修羅の如き怒りを背中に感じた。

 

401: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/12(火) 22:34:46.25 ID:r6gz1A/n0
イイヨイイヨー
403: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/12(火) 22:49:02.55 ID:YF5TigLu0
絹旗に嫉妬されて窒素装甲で攻撃されたい
408: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/12(火) 23:31:36.89 ID:HuW2GSnG0
怒りに拳をプルプルと震わせているお嬢様を見て、絹旗は思わず尋ねた。

「…その妹さん?はどんな超どんな格好をしているんですか?」

聞いた理由などは特には無い。何となくだ。

「…ひょっとしたらここに来るまでに超見かけていたかもしれません。何か特徴はありませんか?」

お嬢様は絹旗を一瞥すると、丁寧に妹の特徴をつげた。

「…水玉模様の淡い色のワンピースを着ています」

ふむ、と頷く

「頭頂部でアホ毛が一本踊っています」

…髪質が癖っ毛なのだろうか?

「ピンクのポーチを下げて」

想像してみる。…うん、淡色のワンピースにも合いそうだ。

ただ、考えるとそんな子供は超沢山いる。

仮に見ていても超覚えていませんね、と彼女が考えたところで、お嬢様は言った。


「それから、暗視用ゴーグルを首から下げています、とミサカは伝えます」

「超見てません。絶対に」

410: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/12(火) 23:37:31.30 ID:HuW2GSnG0
首から暗視ゴーグルを提げた少女など、見たら忘れるはずがない。

「…やはりそうですか、とミサカは落胆してみます」

彼女は一度ため息をつくと、うむう、と腕を組んだ。

「……」

そんな彼女の様子を見て、絹旗は時計を確認しながら考える。

(…時間的には、超余裕がありますね)

時間はまだ4時を回ったばかり。滝壺の話のことを考えても、まだ1時間程度なら余裕がある。

彼女はこれからの脳内で予定を組み直してから、お嬢様へと言った。

「…なんなら、一緒に妹さんを超探しましょうか?」

411: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/12(火) 23:41:17.72 ID:HuW2GSnG0
「…え?」

その言葉はお嬢様には意外だったらしく、鳩が豆鉄砲をくらったような、ゲコ太が超電磁砲をくらったような顔をしていた。

「時間的に1時間くらいなら超協力できますし、私には超使えないですけど連れが1人がいます。3人で探せば超早く見つかると思いますよ」

絹旗が笑顔でそう言うと、お嬢様は数回パチクリと瞬きしてから、なるほど、と呟いた。

そして微笑むと、絹旗に言った。

「…貴女は」

「はい?」

「貴女は優しいのですね」

「…?」

「そんな貴女のためであれば、好きな人から頂いたペンダントを一時的に手放すことにも納得できます、とミサカは正直な感想を述べます」

「…???」

一体このお嬢様は何の話をしているんだろう、と首をかしげると、そのお嬢様が、あ、と声を上げた。

彼女は店の入り口側を指差すと、言った。

「見つけました、とミサカは報告します」

その指の先には。


小さな女の子と談笑する、浜面仕上の姿があった。


プチン、と頭の中で何かが弾けた。

(へ、へぇぇぇぇぇ。そうですか。私と来ているのに他の女の子を超見るだけに飽き足らず、あんな超小さな女の子にまで手を出しますかそうですか…!)

彼女はお嬢様をその場に残し、スタスタと早足で浜面の元へと向かった。

そしてありったけの凄みを込めて、その背中に言った。

「…何をそんな超ロリータ少女と超話しこんでいるんですか浜面は」


413: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/12(火) 23:46:22.19 ID:niAnY2710
ゲコ太消し飛ぶwwww
461: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/13(水) 22:02:01.05 ID:/OPVsMPB0
振り返ると、そこには鬼がいた。

「私と買い物に来ているというのに、私を放っておいて別の女の子とお楽しみとは超いいご身分ですね、浜面…」

腕を組み、こめかみを引くつかせながら彼女は言った。

「…いや、お楽しみっつーか」

ただ話を聞かされていただけなのだが。

「言い訳など超結構です。大体浜面はですね…ん?」

人差し指を立て、説教を始めようとしたところで彼女は近くにいた少女に気がついた。

水玉模様の淡い色のワンピースに、ピョコンと跳ねたアホ毛。肩から下げたピンクのポーチ。そして、首から下げた暗視ゴーグル。

(……)

絹旗は浜面と少女を交互に見ると、浜面の肩に手を置いた。

てっきり『窒素装甲』でぶっ飛ばされるのものだと思っていた浜面はビクっとしたが、

「…超よくやってくれました。流石ですね、浜面」

いきなりそう褒められて、絹旗風に言うのなら、超戸惑った。


464: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/13(水) 22:38:24.86 ID:/OPVsMPB0
「案外早く見つかって良かったです、とミサカは心から貴方がたに感謝してみます」

お嬢様は妹さんから暗視ゴーグルを剥ぎ取り、ポーチからハートを模ったペンダントを取った。

ゴーグルをおでこにつけ、ペンダントを首にかけると彼女は妹の頭に手を置くと、二人に感謝した。

「むー…、こんなにあっさり捕まるとは、ってミサカはミサカは悔しがってみたりぃ…」

この特徴的なしゃべり方は姉譲りなのか、と浜面は妙な関心をしつつ二人を見ていた。

(…しっかし、スッゲー似てんな、この二人)

怒気を全身に纏った絹旗の後には、一人の女の子が付いてきていた。

制服を見たところ、どうやらあの名門常盤台の学生らしい。なるほど、確かにお嬢様っぽい上品(ただの無表情だが、品性とは縁のない浜面はその辺りに疎い)な顔をしている。

どうやら自分にぶつかってきた女の子の姉らしく、詰まる所ゴーグルの所有者であった。

「いえいえ、見つかって超何よりですよ」

お礼を言ってきた二人に、絹旗は笑顔でそう返した。こういうときの絹旗の笑顔は結構可愛い、と浜面は密かに思っている。

「ほら、お二人に迷惑を掛けたのですから、貴女も謝るべきです、とミサカは姉の貫禄を見せ付けつつ促します」

「むー…ゴメンなさい」

そう言ってペコリ、と女の子は頭を下げた。

「いいよ、気にすんな。たまたまぶつかったのが俺だっただけなんだからよ」

浜面は自分の出来る限り優しく言った。素直に謝れる子は、嫌いではない。

「…で、謝ったところで聞きたいんだけど、ってミサカはミサカは恐る恐る話しかけてみたり」

「はい?何ですか?」

浜面が答えるより早く、絹旗が妹さんに答えていた。…結構、子供好きなのかもしれない。

「うん、それじゃあ…」

妹さんは一拍置いてから、言った。


「二人はお付き合いしてるの?ってミサカはミサカは大胆に聞いてみたり

466: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/13(水) 23:15:32.46 ID:/OPVsMPB0
「え゛?」

それまで終始笑顔だった絹旗の笑顔が固まった。

「休日に二人でお買い物なんて素敵だよね、ってミサカはミサカはある人を思い出しながら憧れてみたり。そういうことってカップルがすることなんでしょう?ってミサカはミサカは確認してみたり」

妹さんは手のひらを祈るように組み、好奇心でキラキラと輝いている瞳で二人を見つめた。

「…いや、俺らはそんなんじゃ」

「ちちち、超、超、超違います!!」

自分が否定する前に、絹旗が否定してしまった。

「私は、その、浜面なんかとは超付き合っていません!!私は浜面なんか超眼中にありませんし、第一浜面には滝壺という女の子がっていや今超関係ないか、じゃなくてそうじゃなくてとにかく!」

ここまでを一息でまくし立てると、絹旗は止めを刺すように強く言った。

「…私と浜面は、超そんな関係ではありません!」

はぁはぁ、と息を荒げ絹旗は言い切った。

いやそこまで言わなくてよくね?と浜面は思ったが、(恐らく酸素不足で)顔が真っ赤な絹旗を見ていると、そんな言葉は引っ込んでしまった。

妹さんはというと、絹旗の突然のシャウトに面食らっていた。が、急に笑顔になると、

「なるほど!これが『ツンデレ』ってものなんだね!ってミサカはミサカは感心してみたり!!」

「なっ―――!」

と言って、更に絹旗を真っ赤にさせた。

472: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/14(木) 00:04:39.58 ID:th760LLx0


違います私は超そんなんじゃありません!と妹さんに方を掴みながら力説している絹旗を見ていた浜面なのだが、突然声をかけられた。

「あの、どうもありがとうがとうございました、とミサカはもう一度お礼の言葉を述べてみます」

声をかけてきたのは常盤台のお嬢様だった。…そう言えば、名前を聞いていない。

「いや、何度も言わなくてもいーよ。ホントに俺はなんもしてねーんだって」

頭をポリポリと掻きながら、浜面は答えた。

「いえ。ゴーグルはともかく、このペンダントは、安物ですがとても大事なものなのです、とミサカはペンダントを見せながら恩人へと伝えてみます」

片手でペンダントを持ち、それを愛おしそうに見ながらお嬢様は言った。

中学生にこんな表情ができるのか、と思えるほど大人びた微笑だった。

「…恋人からのプレゼントとかか?」

思わず、浜面はそう尋ねた。

お嬢様は、「いえ…」と首を振ると、

「…片想いです」

何か複雑な事情でもあるのだろうか、その声は悲しげだった。

何と言い返せしていいかわからず、しばしの沈黙が流れる。

(…やっべ、会話止まっちまった)

浜面は逃げるように視線をずらす。未だ妹さんと絹旗はギャアギャアと言い合っていた。

何か話題ねぇかなー、と考えていると、

「…しかし」

と、お嬢様が呟いた。

「?」

「…しかし、年頃の女というものにとっては」

彼女は先ほどの悲しみも飲み込んだ表情で言い切った。

「好きな人からの贈り物とは、どれ程安っぽくても何より大切な物なのです、とミサカは独白してみます」

476: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/14(木) 00:36:48.07 ID:th760LLx0
「……」

イキナリ何の話なのかと疑問に感じた浜面だったが、お嬢様が「さて、ケンカをそろそろ止めなくては」と妹さんの方へ向かったのでそれ以上は考えることをやめた。

「…俺もそうすっか」

と浜面は呟くと、顔を真っ赤にして、気のせいか若干涙目に見える絹旗を止めにいった。


「じゃあねー!ってミサカはミサカは手を振ってみたりー!」

そう言うと、手を繋いで二人は歩いていった。一人っ子の浜面にはその光景が少しだけうらやましく思えた。

「…で?どうするよ?これから」

隣では絹旗が二人の背中に手を振っていたが、浜面がそう声をかけると、に少し大げさに反応しながら言った。

「あ、え、ええと…とりあえず買い物を超続けようと思います…」

「…?」

何だろう、急に絹旗がしおらしくなっている。先ほどの言い合いで疲れたのだろうか?

まぁ、何にせよやることは決まった。

二人は微妙は、それでもいつもより近い距離を保ちながら、洋服店へと戻った。

479: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/14(木) 00:42:27.02 ID:th760LLx0
気の済むまで手を振った後、打ち止めは姉へと告げた。

「ねぇねぇ、これで大丈夫だった?ってミサカはミサカは尋ねてみたり」

10032号はポケットから携帯電話を取り出すと、それを操作しながら言った。

「ええ、グッジョブです、とミサカは惜しみない賞賛を贈ります」

そして電話をかける。

Prrrrr……prrrrrr…ガチャリ

「こんにちは、とミサカはとりあえず定型文を述べてみます」

すると、電話の相手は返答を返してきた。

「はい。指示通りに浜面仕上・絹旗最愛両名と接触、各自に伏線を仕込んでおきました」

『…?…、…。』

「はい。第二作戦へと移行ですね。了解しました」

『……。』

「はい。…では」

とても簡潔な言葉だけで通話を終了させると、10032号は携帯の電話帳から別の人物の番号をだし、呼び出した。

Prrrr…prrrr…

「行きましょう、打ち止め。第二作戦の始まりです、とミサカは開戦をここに宣言します」

Prrrr…ガチャリ

「あぁ、こんにちは、とミサカは挨拶をしてみます」

10032号は相手の相槌を聞いてから、告げる。

「今日は貴方にお願いがあって電話を差し上げました、とミサカは正直に告げてみます」

すると電話の相手は言った。


「…俺に出来ることなら、どんな頼みだって聞いてやるよ。…御坂妹」




527: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/14(木) 22:33:16.17 ID:th760LLx0
「…では、超試着してみますかね」

二人を見送った後店内を適当にうろつき、眼鏡にかなう服を見つけると、彼女はそう言った。

「一応言っておきますが、の、覗いたら超殺しますよ?」

彼女は慌てたような目で浜面を見ると、カーテンを閉めた。彼はしばらく彼女が入っていったカーテンを見つめていたが。

「……いや、覗かねぇけどよ」

誰に言うでもなくそう呟くと、近くにあったイスに腰掛け、思案し始めた。

…さっきから絹旗がおかしい。

528: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/14(木) 22:36:47.04 ID:th760LLx0
あの姉妹と別れた後からだろうか、いきなり彼女の態度が変わってしまった。

何て言うか、急によそよそしくなったのだ。ふとした瞬間に浜面が近づくと離れられるし、手がちょっと触れただけで

『ひゃあ!?』

とか叫ばれた。アレには軽くショックを受けたが、絹旗の異常事態を前にそんなことは言ってられない。

(思い浮かぶ原因としては……)

腕を組んで考える。彼女がこうも態度が変わったのは…。

(…映画だよなぁ、やっぱり)

後半が情事シーンのみで構成されたあの駄作。きっとアレで種がまかれ、さっきの妹さんの質問で芽が出てしまったんだろう。

つまるところ、異性が気になってんだろうな、と浜面は結論付けた。

まぁ無理も無い。彼女は去年まで小学生だったのだ。急に情事シーンを見てしまい、その上異性を意識させられるような質問をされれば気にもなろう。

(何つーか、大変だよなぁ、思春期)

自分も通ったはずなのだが、記憶に無い。灰色の性徴をしたもんだな、と彼が自重したところで、試着室のカーテンが開いた。

そちらに目を向けると、青いフレアスカートに真っ白なふわふわしたセーターを着た絹旗がいた。

「……」

いつものワンピースとは一線を画すその組み合わせに、浜面は一瞬言葉が出なくなった。

何と言うか、とても可愛いと思えたのだ。

「…ど、どうですかね?超似合ってますか…?」

絹旗が恐る恐る訊いてくる。

ようやく開いた唇からは、思わず本音が飛び出した。

「すっげぇ可愛い…」

531: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/14(木) 23:04:30.65 ID:th760LLx0
超何なんですか、と絹旗は自問自答した。

あの二人と別れてから、浜面が気になって仕方が無いのだ。近づかれると体がこわばり、それが嫌でつい離れてしまう。手が触れたときなんか、思わず叫び声を上げてしまった。

(これではまるで、超本当にツンデレみたいじゃないですか…!)

恐らく彼女は正しく『ツンデレ』という言葉を理解していないだろうが、何となく聞き及んだ話の感覚から察してそう思った。

何でもいいから一旦浜面と離れたい。そう思って彼女は試着室へと飛び込んだ。

訳の分からない感覚に悩んでいても、一応服はちゃんと試着するあたり彼女は立派な少女であった。

ワンピースの裾を持ち上げて、頭の方へと抜いていく。下着姿になりスカートを履こうとしたところで、試着室に備え付けられた鏡に映る自分が見えた。

「……」

鏡の正面に立、白い下着を身につけた子供っぽい体型の自分の肢体を見つめた。

「……はは、随分とまぁ、超魅力の無い体ですね」

胸はないし、足も締まり無くぷにぷに。腰にはくびれがあるものの、先ほどの映画の中で見た女優とは雲泥の差だと絹旗は思った。

533: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/14(木) 23:13:23.77 ID:th760LLx0
そう思うと、彼女は先ほどまで頭を悩ませていた熱が急激に冷えたように感じた。

絹旗は鏡から目を逸らすと、スカートとシャツを着て、セーターを羽織った。

そしてもう一度鏡を覗く。

…浜面はどう思うんでしょうかね。

やはり子供っぽい。身長が低い所為なのだろうか、と彼女は思った。

しばらくそうしてから、彼女はカーテンを開けた。浜面は近くのイスに腰掛けていた。

自分を見て、その目に驚きの色が宿った。

素敵な言葉など期待していない。どうせ自分には、そんな魅力は無い。

そう思いながら、彼女は恐る恐る尋ねた。

「…ど、どうですかね?超似合ってますか…?」

すると彼は、あろうことかとんでもない一言を放った。

「すっげぇ可愛い…」

537: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/14(木) 23:26:05.11 ID:th760LLx0
絹旗最愛は学園都市でも屈指の防御力を誇る『窒素装甲』の能力者で、その上レベル4である。

そんな彼女にかかれば、例え銃器であっても大概の物理攻撃は何の意味もなさない。

だが、浜面仕上の放ったの弾丸は絹旗の心臓を確実に打ち抜いた。

たった一言、音速の弾丸で。

「あ…」

致命傷としか言いようの無い攻撃を受け、絹旗は本日3度目のフリーズをした。

浜面も自分の言った一言に恥ずかしくなったのか、『あぁ、いや、今のは』と手を振りながら必死に弁解しようとしている。

「~~~っ!」

そんな浜面が見れなくなった彼女はカーテンを閉めると、カーテンに背を向けて崩れるようにしゃがみこんだ。

そして顔を上げる。当然、鏡が見えた。

そこには、顔を真っ赤にした女の子がとても嬉しそうな涙目で座り込んでいた。

(…あ、あれ?)

何で彼女は、自分は嬉し涙など流しているのだろう。

ただ一言で。

たったの一言で。

先ほどまで、あんなに悲しかったというのに。

(…何なんですか、超何なんですか…!)

分からない。こんな感情を、自分は知らない。

こんなにも温かくて、嬉しくて、胸が苦しくなるものなど、未だ知らない。

これではまるで―――

(…まるで?)

そこではた、と気付く。その想いの正体に。

(……あぁ、)

そっか、と彼女は納得した。

つまり、これがそういうことなんだ。

540: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/14(木) 23:47:22.09 ID:th760LLx0
セーターの袖で涙を拭くと、絹旗は立ち上がった。鏡を見れば、そこにはわだかまりの消えた表情の自分が映っていた。

(…よし)

一度鏡に向かって笑顔を作ってみる。…うん、バッチリだ。

彼女はカーテンを開けると、ブーツを履いた。そし店員に購入の意思を告げると、レジへと向かう。

「お、おい、絹旗!」

すると浜面が声をかけてきた。

「さっきは…その、いきなり変なこと言って悪かった」

頭を掻きながら浜面は謝った。絹旗は微笑むと、

「いえ、超問題ありません。私の方こそイキナリカーテンを超閉めてしまってすみませんでした」

そう言って、会計を済ませた。着てきたワンピースを紙袋に入れてもらい、店を出る。

542: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/14(木) 23:53:27.55 ID:th760LLx0
「では超次に行きましょう、浜面」

夕暮れ時の学園都市を二人で並んで歩く。ビルに囲まれたこの界隈でも、夕日というものは綺麗に見える。

こうして二人っきりで歩いていると、何だか恋人のようだ。

(…って超乙女ですね私…)

何だか自分はムードという物に弱いらしい。ちょっといい雰囲気になっただけでコレだ。

「まだどっかに行くのか?」

浜面はそう言うと、頭の後ろで手を組んだ。

「あんまり遠出すると終バス逃すぜ?」

浜面は別に終バスを逃しても問題はない。彼は家にほとんど帰らないし、夜中ずっと街をうろつくこともある。

だから、それは絹旗を思った一言だ。

そんな言葉にすら、絹旗は嬉しさを感じていた。

「いえ、その辺りは超大丈夫です。…次は超私の家ですから」

絹旗はバスターミナルへと歩を進めつつ言った。

「は?お前ん家?何で?」

「ええ、実はお話が―――」

と、そこまで言って思い出す。

滝壺利后。

今日の最終目的が、彼女の依頼であることに。

545: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 00:02:39.06 ID:EiSR4LVC0
つくづく自分は馬鹿だ、と絹旗は思った。

そもそも、今回こうして二人でいるのは彼女の相談があったからだ。

彼の異変を調べ、彼の恋人たる滝壺に報告すること。

そのためにここにいるというのに。

(私は一体、超何をしているんですか…)

調べるべき相手に想いを寄せて、一挙一同に心を揺らし、あまつさえ友人の依頼すら忘れかけ…。

(…超最低ですね)

浮かれていた心が再び沈む。こんなことになるのなら、いっそ―――

「…絹旗?」

「…え?」

声を掛けられて、絹旗は我を取り戻した。

「どうした?いきなり黙って」

何も知らない浜面は、心配そうに言った。

「あぁ、いえ…」

罪悪感でその顔が直視できない。思わず目を逸らし、ぶっきらぼうに答えてしまう。

絹旗は泣きそうな心を必死に押さえつけ、出来るだけ平然を装って言った。

「超何でもありません。それよりも、私の家へ向かいましょう。…超お話があります」


547: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 00:13:03.25 ID:EiSR4LVC0
絹旗の部屋は数多くある学生寮のうちでも、1,2を争う高級な寮の角部屋である。

そこらへんの貧乏学生には到底手が出せない部屋の広さに、浜面は思わず感嘆の声を上げた。

「すげぇ…」

玄関で靴からスリッパに履き替え、リビングへと通される。

部屋の大きさもさることながら、浜面でも余裕で寝転がれそうなソファーや、30インチは下らない大きさのテレビ。

不良・浜面には縁のない世界のものばかりだった。

「超適当に掛けてください…。飲み物超持ってきますから」

どこか落ち込んだ様子で絹旗はそう言うと、キッチンへと消えた。

浜面はソファーに腰掛けると、そのフカフカとした感触に驚きながら絹旗に持たされた紙袋をテーブルに置いた。

が、バランスが悪かったのか、それがコテン、と倒れてしまう。

そして中から、四角い箱が転がった。

「…ん?」

はて、と思う。

あんな箱は買った覚えも貰った覚えも無いのだが。

浜面はその箱を拾うと、げっ!?っと目を見開いた。


548: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 00:19:24.75 ID:EiSR4LVC0
超お待たせしました。…って超何をしているんですか?」

絹旗が二つのグラスとジュースを持ってくると、浜面がワンピースの入った袋をいじっていた。

「うおっ!?絹旗!?」

そしてバッと離れると、手を背中に回した。

「…?今、何か隠しませんでしたか?」

ジュースをテーブルに置いてそう尋ねると、浜面は明らかに動揺した。

「い、いや?何の話だ?」

「……」

まぁ、超どうでもいいですけど、と呟いて絹旗はジュースを注ぐ。

そしてそれを浜面の前に置くと、自身もソファーに腰掛けて、話し始めた。

549: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 00:29:47.91 ID:EiSR4LVC0
「…最近、滝壺のお見舞いに超行っていないそうですね、浜面」

「…あー…」

その話か、と言わんばかりに浜面は明らかに目を逸らした。

「彼女、超寂しがっていましたよ。最近貴方が超冷たいと」

「……」

彼は何も言わず、ただジュースを飲むだけだった。

「…超何かあったんですか?私に力になれるとこがあるのなら、超協力しますから、言ってみてください」

彼への気持ちへと気付いた彼女にとって、その言葉は自分を苦しめるものだった。

しかし、それも全ては滝壺の、親友のためなのだ。

「……」

しばらくの沈黙。秒針の音だけがやたらとハッキリ聞こえた。

先にその沈黙を破ったのは浜面だった。

彼ははため息をして、ジュースを飲み干すと、言った。


「…実は、好きな人がいるんだ」

550: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 00:33:03.26 ID:DoIqw0860
なっ…
553: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 00:41:44.61 ID:EiSR4LVC0
「……え」

その言葉は、絹旗を二重の意味で驚かせた。

一つは、滝壺への裏切り。そしてもう一つは、自分の失恋。

首を絞めて聞いた結果は、更に彼女の首を絞めた。

「……何ですか」

彼女は言う。

「…超何なんですか、その答えは…!」

「……」

浜面は何も答えない。バツの悪そうに下を向くだけだった。

絹旗はテーブルを思いっきり叩くと、浜面を糾弾した。

「貴女だって超わかっているでしょう!彼女には貴女が超必要だって!」

「…あぁ」

「それなのに…!超それなのに、そんなことを超言うんですか!」

「…確かに、俺は全部わかってる。…けどな」

浜面は顔を上げた。その目には迷いの色など無い。

「それでも、俺は自分の想いを曲げらんねぇ…!」

555: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 00:50:17.03 ID:EiSR4LVC0
「なっ…!」

何をふざけた事を、と言おうとしたが、自分だって浜面に恋をしたのだ。滝壺に申し訳ないというのなら、自分だって人の事は言えない。

「……」

浜面は真剣な眼差しで自分を見ていた。さっきの言葉は、それだけ本気の言葉だったのだ。

絹旗は一度息をつくと、浜面に尋ねた。

「……相手は?」

今度は絹旗が下を向く番だった。何となく、浜面が見れない。

「せめて、相手の名前くらい超教えてください…。そうでもないと、滝壺も私も超納得できません…」

後半は消え入るような声だった。今の絹旗にとって、浜面はそれほどに重要な人間になってしまっていたのだ。

560: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 01:06:09.50 ID:EiSR4LVC0
しばらくして浜面から掛けられた言葉は、実に意外なものだった。

「…お前、泣いてんのか…?」

「え…?」

泣いている?自分が?

言われて目元を拭う。確かに、そこには水滴があった。

「あ、あれ、超何ででしょう…。あはは、超おかしいですよね、泣くのは滝壺のはずなのに…」

顔だけで笑顔を作り、彼女は精一杯冗談めかして言った。そうでもしないと、心が折れそうだった。

「お前…」

「超気にしないで下さい。こんなの、ただの超もらい泣きですから…」

絹旗はそう言うと、ソファーから降りてジュースのボトルを掴む。

「ほら、グラスが超空ですよ、浜面。超ついであげますよ…」

震えまくる声でそう言いつつ、絹旗はジュースを注ごうとした。

が、その腕を浜面が掴む。

「はま、づら…?」

その意図がつかめず、絹旗は戸惑った。

「…馬鹿野郎」

浜面は、そんな絹旗の目を見ると、言った。


「…好きな女が目の前で泣いてんのに、ジュース注がせる馬鹿なんかいる訳ねぇじゃねぇか」


563: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 01:08:33.74 ID:nLUdgoQK0
キャーッwwwwww
569: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 01:18:18.98 ID:EiSR4LVC0
「…え…」

絹旗は、一瞬何を言われたのか分からなかった。

…好きな女?

…誰が?

浜面はやっちまった、という感じで目線を下へと向けている。髪の毛で表情が見えにくいが、頬は真っ赤になっているように見えた。

「ええぇぇぇぇぇぇ!?」

思わず絶叫、頭が超混乱している。

「え、でもでも、浜面には滝壺が超いて、でも、超好きな人がいて、それが私で…!?」

『自分だけの現実』をマスターしている彼女なのだが、最早何の意味もなしていなかった。

そこにいるのは、ただの女の子。レベルなど、この場において何の役にも立たなかった。

「きゃっ!?」

頭が混乱を極めていると、掴まれていた腕からソファーに持ち上げられ、そして。

「…絹旗…!」

「あっ…」

とても優しく、押し倒された。

572: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 01:22:42.11 ID:EiSR4LVC0
「…絹旗」

そうして自分に覆いかぶさっている彼の目を、絹旗は見た。

まるでやっと手に入れた骨董品を見つめるように、

どこまでも真摯で、それ故に強い意志を宿す瞳。

そこには驚きと、少しの恐怖を含む表情の自分が映っていた。

…果たして、彼は今何を感じているのだろう。

「ま、待って、超待ってください、浜面。

 いくら何でも超いきなり過ぎます、

 っていうか、第一滝壺が・・・あっ」

いるじゃないですか、と続けようとして言葉が途切れた。

浜面が自分のことを抱きしめたのだ。

組み敷かれて、慌てたところにこの追撃。

絹旗はまたもや思考が停止した。

そんな彼女を気にも留めず、彼は抱きしめ続ける。

きつく、しかし、思いやりのある強さで。

575: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 01:25:09.42 ID:EiSR4LVC0
「はま、づら…」

当然、抱きしめられた程度の圧迫で息が続かなくなる訳はない。

彼に抱きしめられたことによる驚きと歓喜、その二つが入り混じって打ち消されたのだ。

「…超、何を、しているんですか…」

彼は答えない。聞こえていないかのように、答えない。

耳元で囁いて聞こえぬはずなどないのに。

「…あなたには、滝壺がいるじゃないですか…。

 こんなことして、許されると超思っているんですか…?」

彼女は気づいていない。

この言葉も、体も。全てが震えていることに。

心の奥底で、自分を抱く男のモノにされることを望んでいる事に。

「……だったら」

彼が、ようやく口を開いた。

「…だったら、能力使って俺をぶっ飛ばせよ」

「…え…?」

彼は続ける。

「お前の『窒素装甲』なら俺なんて一瞬でぶっ飛ばせるだろ。

 …『大能力者』が、『無能力者』に勝てねぇ道理なんてねぇんだから」

「…それは…」

実は浜面は『超能力者』を倒したことがあるのだが、アレは特殊なケースだ。

絹旗は慢心などしない。勝ち方に固執などしない。

彼の言うように、勝てぬ訳など無いのだ。

「お前が俺を拒むってんなら、俺はそれでもいい。

 …ただ、拒むなら徹底的に突き放せ」

そう言って、彼は少しだけ腕に力を込めた。

577: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 01:28:45.47 ID:EiSR4LVC0
「…そん、な…」

彼女は言葉を失くした。

彼のことは好きだ。

『アイテム』の下っ端程度にしか考えていなかったのに、

いつの間にか彼を信頼して、

そして今日、気がつけば好きになっていた。




―――だけど。自分は身を引くのだ。


半分は、滝壺理后のために。

彼女には、彼が必要だ。

恋だとか、愛だとか。そんな概念でなく、その外側で彼は必要とされているのだ。


もう半分は、彼のために。

『アイテム』の残党である自分には、いつ危険が迫るかも解らない。

そんな危険に、彼を付き合わせたくない。

無能力者は、いつだって虐げられてしまうのだから。




―――だから、自分は身を引くのだ。

578: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 01:32:30.09 ID:EiSR4LVC0
どの位の時間、こうしていたのだろうか。

体はとても火照っていた。

抱きしめられている所為だけではない熱を感じる。

絹旗の思考は既に停止していた。

むせ返るような熱が頭を侵し、不規則になる呼吸をすることしか出来なくなっていた。

「絹旗…」

「…っ」

彼は片手で体を支えると、もう片手で絹旗の頬を撫ぜた。

そしてそのまま、彼女の顔へ、正確には唇へと近づく。

「…ちょう、ダメですよぉ…はまづらぁ…」

先ほど、彼は能力を使えと言った。

だが、彼女にはもう能力の使い方が解らない。

計算式は組み上げる前に崩れ去ってしまう。

だからもう、彼女には両手で彼の胸を押して拒むことしかできなかった。

能力の使えない彼女の力など、彼の前では無力に等しい。

それでも、浜面は一度止まった。

「…絹旗」

そして、最後の一言を放つ。

「…好きだ…」

579: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 01:36:36.12 ID:EiSR4LVC0
「あ…」

聞いてしまった。

確実に、彼女はその一言を聞いてしまった。

滝壺理后の顔が浮かぶ。

その表情は、悲しんでいるように見えた。

(滝、壺…)

目の前には、自分の想い人がいる。

そしてその男は、滝壺の想い人でもある。




(…超…どうしろっていうんですか…)

好きな人とは当然結ばれたい。

だけど、そのために一人の少女から希望を奪わなくてはならない。

滝壺利后か、浜面仕上か。

友情か、恋情か。

彼女の脳内は混乱を極め、そして―――

「…私、は」

彼女は、告げた。

「…私も…」

心の中で、滝壺へ必死に謝りながら。

「…私も、浜面が…超、好きです…!」

586: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 01:46:10.01 ID:EiSR4LVC0
ここにきて、彼女を守る装甲は破壊された。

そして、装甲を破壊した『無能力者』の浜面仕上は。

「んむ…っ!」

『大能力者』絹旗最愛の唇を奪った。




「ん…はぁ…」

唇が離れ、思わず吐息が漏れる。

(これが、キスなんですね…)

昼間にあんな映画を見てそれなりに知ったつもりだったのに、実際にしてみるのは全く意味合いが違った。

体が震える。心臓は、大太鼓のように大きく耳に直接響いている。

「絹旗…!」

「んっ…!」

浜面はまだ足りないと言いたげに、絹旗の唇を奪う。そして離すと、四角い箱を取り出して、それを開けた。

「…?」

絹旗にはそれが何かわからなかったが、箱の裏側に『コンドーム』という文字を目にすると、目を大きく開いた。

589: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 01:57:47.55 ID:EiSR4LVC0
「ななな、何を超使おうとしているんですか、あなたは!」

絹旗はありったけの声で講義した。

「え?いや、ゴムだけど」

一方、浜面は落ち着いたもので、だから?みたいな顔をしていた。

「見れば超分かります!何でそんなもの持ってるんですか!」

もしかしてこうなると予想して、いやそれともいつも持ち歩いているのか。

「いや、何か良くわかんねーケド、紙袋ん中入ってた」

紙袋?ワンピースを入れていた?

「わ、私は超いれてませんよ!?」

「でも俺も入れてねーぞ?」

「そ、そんな訳超ないでしょう!」

このままでは自分がとてもイヤラシイ女の子みたいじゃないか。

「ま、イーじゃん。どっちでも」

彼は屈託のない笑顔でそう言うと、一度彼女の唇を奪ってから言った。

「何にせよ、俺は絹旗が欲しいんだから」


590: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 02:02:44.64 ID:EiSR4LVC0
「…はぅぅ…」

好きな男にそんな風に言われて、断わりたい訳はない。

ただ、そんなに軽く体を売っていいものなのか。

そうして悩んでいる間にも、浜面は唇だけでなく首筋にもキスをしてくる。

「だ、ダメです浜面……ん…浜面ぁ…」

抵抗する力が篭らない。言葉と裏腹に、体は動いてくれない。

だが、コレだけは許可したくない。まだ自分には、自分たちには早すぎる行為だ。

「……」

絹旗がなかなか許可をださないことに業を煮やしたのか、浜面は絹旗の耳元へ顔を寄せた。

何か言うつもりなのだろうか。まぁ、何を言われても体は許さないが。

そして絹旗意外には誰にも聞かせないとばかりに小さな声で囁いた。

「……愛してるぞ、最愛」

…それは、超反則だ。

596: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 02:07:15.37 ID:EiSR4LVC0
絹旗は浜面の背中に手を回した。

「もう…超仕方ありませんね…」

そしてとてもその年齢に見合わない艶かしい表情をすると、浜面に言った。

「私を、超あなたのモノにして下さい…」

そして一度口付けを交わす。

「でも…、超優しくしてくれなくちゃ、嫌ですからね?」



604: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 02:17:45.05 ID:EiSR4LVC0
二人が結ばれた数日後、とある病室の前に絹旗と浜面は二人は立っていた。

「…では、超行きますよ」

「…おう」

ネームプレートには『滝壺利后』の文字。

二人は話し合った結果、自分たちのことをキチンと滝壺に話そう、と決めた。

そして、それが今から始まるのである

コンコン。

『はぁーい』

ノックをすると、そう返事が返ってきた。絹旗は扉をスライドさせ、病室へと踏み込む。するとそこには。

「おや、奇遇ですね、とミサカはリンゴの皮を剥きながら話しかけてみます」

「久しぶりー!ってミサカはミサカは再会の感動を体で表現してみたり!」

「「……」」

何か知らんが、あの姉妹がいた。

606: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 02:25:31.17 ID:EiSR4LVC0
「きぬはた、はまづら、久しぶり」

「おお、久しぶり…」

「久しぶり…」

滝壺にそう声を掛けられ、二人は同じタイミングで返答した。

「あ、何か真剣な表情してるかもってミサカはミサカは推測してみたり」

「むっ、言われてみれば確かに、とミサカはなぜか気の抜けた顔をしている二人を眺めつつ同意します」

それは主にお前らの所為だ、と浜面は思ったが、今日は真面目な話をしにきたのだ。こっちにかまけている暇はない。

「あのさ、滝壺。ちょっといいか?」

滝壺はベッドから上半身だけ起こすと、頷いた。

「うん。なに?」

「ああ、実はな…」

そこまで言ったところで、絹旗が手を握ってきた。

大丈夫、と浜面は握り返す。

「…俺と絹旗、付き合ってるんだ」

浜面は言い切った後、何も言われても良い様に心がまえをした。

が、彼らに帰ってきた答えは、全く予想とは異なる、言ってしまえば期待はずれの答えだった。


「うん、しってるよ」

「「…え?」」


607: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 02:30:32.45 ID:q8+bGEPv0 BE:3532983089-2BP(502)
なんと!
611: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 02:37:03.88 ID:EiSR4LVC0
「と、いうかね」

滝壺は微笑みながら続ける。

「私が、そうなるようにしたの」

「……」

絹旗と浜面は顔を見合わせる。

全く意味が分からなかった。

「はまづらの気持ちが私じゃなくてきぬはたに向かってたのに気がついて

彼女は確認するように続ける。

「きぬはたが、はまづらをきにしてるのもわかってたから」

だから、と彼女は更に言い足した。

「そこの二人に協力してもらったの」




つまり、だ。

二人が惹かれあってることに気がついた滝壺は、(どこで知り合ったのか)ある姉妹に協力を仰ぎ、『お互いにお互いへの気持ちを膨らませる作戦』と決行したのだとか。

要するに、セブンスミストで二人に合ったのは計画通りだったらしい。

ちなみにコンドームは、お嬢様の方の知人に買ってきてもらったそうだ。話を聞くに、その人は頼まれたとき『不幸だぁぁぁぁ!』と叫んだらしいが。

612: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 02:39:00.73 ID:q8+bGEPv0 BE:736038735-2BP(502)
上条さんwwwwwwwwww
613: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 02:45:32.11 ID:EiSR4LVC0
「超そういうことだったんですか…」

話を聞いて、絹旗は神妙な顔をしていた。

無理もない。一番の懸念事項が全ての黒幕だったのだ。

「うん。ごめんね、きぬはた。はまづらが冷たいって嘘ついて」

「いえ、いいですよ。お陰で私は今浜面と超付き合えているわけですし…」

「そうだね、でも…」

「?」

「わたし、まだ、はまづらを諦めてないから」

「!?」

「かくごしておくこと、だね。ふふふ…」

「へ、へーんだ。私と浜面は今超ラブラブですから、超絶対大丈夫ですよーだ!ね、浜面?」

「……」

「…浜面?

「…いや、あのバニーは捨てがてぇ…」

「…はーまーづーらぁ」

「その口調は誰かを思い出すからヤメロってかおま、能力展開してんじゃ…ぐぇぇぇ!」




「何だか、あの人たちみたいな人見たことあるかもってミサカはミサカは記憶を辿ってみたり」

「ええ、実はミサカもそう思っています、とミサカはペンダントをいじりながら答えてみます」

「今度はあなたの番かな?ってミサカはミサカは提案してみたり」

「…遠慮しておきます。シスターズとお姉様、総勢1万人弱であの人を追ってはあの人が不幸すぎます、とミサカは名残惜しげに言っておきます」

「…あの人は最初から不幸じゃんってミサカはミサカは黄泉川の物真似しながら言ってみたり」

614: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/01/15(金) 02:47:21.99 ID:uDWnLLP1O
一見落着か
これで安心して寝れる……

 

注目記事!




関連記事
  タグ:

コメントの投稿



お知らせ
また、サイトを見やすいように改造しました

改造したところ:
カテゴリをあいうえお順にしました、

時折修正していきますので、今後ともよろしくお願いします

旧ブログはこちら  旧ブログ

Twitter

SSなびのTwitterアカウントです

最新記事
ピックアップカテゴリ
カテゴリ
人気記事
RSSリンクの表示
リンク
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:


※メールの打ち間違いにお気をつけください。
返事無い時は、メールの打ち間違いの可能性がありますので、再度送信していただくか、コメント欄をご使用下さい。

フリーエリア